兄　「夜になったな」

兄　「敵は居ないようだ」

妹　「うん」

兄　「じゃあ、この平原をまっすぐに一気に突っ切るぞ」

妹　「うん」

兄　「じゃあ行くぞ、離れんなよ」

妹　「うん」

兄・妹　　（ダッッ！）

兄　「ふう、やっと水場に着いたな」ﾌｩ

妹　「うん、ハァハァ」

兄　「どうだ」

妹　「わあすごい、まるで海みたい」

兄　「だろ」

妹・兄　「ｺﾞｸｺﾞｸ」

妹　「ふう、生き返った」

兄　「体に染み渡るって、こんな感じか」

兄　「しばらくここで休もう」

妹　「うん」

　ガタッ！

　ガタッ！

兄　「何だこの音は」

妹　「ひゃ」

兄　「敵か？」

妹　「逃げようよ」

兄　「逃げるっていっても、この大平原じゃ無理だ」

　ガサガサッ！

兄　「畜生、来るなら来い」

友達　「やあっ！」

兄　「あっ、なんだ友か」ﾎｯ

妹　「なんだ友さんか」ﾎｯ

友　「どうしたんだ？」

兄　「敵かと思ったんだ」

友　「俺と敵を間違えんなよ、全然違うだろ」

兄　「ごめん」

友　「ここは初めてか」

兄　「ああ」

兄　「でも長居は無理そうだな」

友　「食糧が無いからな」

兄　「そうみたいだな、本当に何もない」

友　「腹減ったから出かけてくる」

兄　「そうか、久々なのに残念だな」


友　「じゃあな、あばよ」

兄　「ああ、また会おう」

妹　「一緒に行かないの？」

兄　「駄目だ、まとまって動くと敵にやられる」

妹　「私たちも離れるの？」

兄　「バカだな、お前と離れるわけないだろ」

妹　「ホッ、良かった」

兄　「僕らも食糧探しに行こう」

兄　「このエリアなら食いもんありそうだな」

妹　「うん」

兄　「あっ、風上から良いにおいがする」

妹　「うん」

兄　「行ってみようか」

妹　「うん」

兄　「敵に注意しながら行こうな」

妹　「うん」

兄　「結構歩いたな」

妹　「うん」

兄　「疲れたか」

妹　「大丈夫」

兄　「もう少しだから頑張ろうな」

妹　「･･････」

兄　「どうした？」

妹　「あれは･･････」

兄　「あれはって？　なんだ友じゃないか」

妹　「結局一緒になっちゃったね」

友　「なんだ、お前らも結局ここに来ちまったのか」

兄　「また会ったな」

友　「まあいいや、歓迎するぜ」

妹　「わあ、食糧がいっぱいある」

兄　「ふぅ、ご馳走様」

友　「良いとこだろ、ここ」

妹　「良いとこね、一生住んでいたい」

友　「それは無理だな」

妹　「えっ？」

友　「ここにも敵が来る」

妹　「そうなの、残念」

兄　「じゃあ食べ終わったらすぐ逃げよう」

友　「なに、急ぐことないさ」

兄　「なぜ？」

友　「ここはな、定期的な爆撃さえかわせば平和だ」

兄　「なるほど」

友　「お前ら今日はどうするんだ？」

兄　「どうすると言っても」

妹　「ねえ」

兄　「敵の攻撃から逃げるだけで精一杯だし、何も考えてないよ」

妹　「うんうん」

友　「仕方ないな、俺の隠れ家に来い」

兄　「良いのか？」

友　「困ったときはお互い様さ」

兄　「有難う」

妹　「ありがとう」

友　「じゃあ、俺の後について来い」

兄　「うん」

友　「ここが俺の隠れ家だ」

兄　「廃ビル街の谷間か」

友　「まあそんなもんだ」

兄　「あまり文化的な場所じゃなさそうだがな」

妹　「お兄ちゃん、友さんに失礼でしょ（小声）」

友　「相変わらずだな、おまえらも（苦笑）」



友　「しばらくはここで暮らせ」

兄　「有難う、感謝する」

妹　「友さん、ありがとう！」

友　「いや、その･･････真顔で言うなよ」ﾃﾚｯ
 

友　「もう寝ようぜ」

兄　「ああ、おやすみ」

妹　「うん」

兄　「zzz」

妹　「すやすや」

友　「･･････（妹か）」ｺﾞｸﾘ

兄　「おはよう」

友　「水場に行こうぜ」

兄　「ああ」

妹　「うん」

友　「ここの壁沿いにまっすぐ行って、突き当たりを登れば目的地だ」

兄　「昨日の道とは違うが」

友　「近道だ」


 

兄　「よし、じゃあ皆で行こう」

友　「駄目だ」

兄　「えっ？」

友　「一緒に行動すると敵に見つかる」

兄　「たしかに」

友　「俺は妹ちゃんをエスコートするから、お前は先に行け」

兄　「ありがとう、恩にきる」

友　「じゃあ、また会おうな」

妹　「お兄ちゃん･･････」



 

　カカカカカッッ！

兄　「うわっ」

兄　「敵が撃ってきた！」

兄　「急げ!」

兄　「何が近道だ畜生」ｾﾞｲｾﾞｲ

兄　「あの路地に逃げ込もう！」

兄　「ハアハア、なんとか助かった」


 

友　「やぁ（笑）」

妹　「お兄ちゃん、大丈夫！」

兄　「てめぇ殺すぞ」

友　「怒るなよ」

兄　「この野郎、騙しやがったな！」

友　「騙して悪かったな、まあ落ち着け」

兄　「はぁ？　いきなり認めやがった」


 

友　「無事３人とも来れたんだから怒るなって」

兄　「どういう意味だ？」

友　「敵のパターンが読めれば簡単に分かるってことさ」

兄　「？」

友　「敵の攻撃はいつも単調なんだよ、先にお前が出れば敵はまず叩きに来る」

友　「その間に、俺は妹ちゃんをエスコートして動く」

友　「お前一人なら敵から逃れるのは簡単だ」

友　「だろ？」


兄　「そういえば、敵の攻撃は全然当たらなかったな」

友　「な、俺のプラン通りの結果になっただろ」

兄　「だったら最初から言ってくれ」

友　「･･････」

友　「とりあえず水飲もうぜ、喉カラカラだ」

兄　「そうだな」

妹　「うん」

兄　「さて、戻るか」

妹　「うん」

友　「今度は俺が先に出るから、お前が妹ちゃんをエスコートしていけ」

兄　「分かった」

友　「よし、いくぞぉ！」（ダッ！）


 

兄　「そろそろ僕たちも行くぞ」

妹　「あっ、あれ見て！」

兄　「戦車だ！」

 

友　「畜生めっ！　戦車に捕まった」

兄　「助けなきゃ！」

友　「来るな、お前らは逃げろ」

妹　「お兄ちゃん！」

友　「早く逃げろバカヤロー！」

兄　「だって･･････」

友　「さっさと行けっ！」


 

　バンッ、ババンッ

兄　「ん？　今度は爆撃か」

妹　「あっ、戦車がやられた」

兄　「友っ！」

友　「体痛えよっ」

兄　「今だ、逃げろ友！」

兄　「やっと隠れ家に戻ったな」

妹　「友さん大丈夫？」

友　「ああ」ｾﾞｲｾﾞｲ

兄　「手荒に扱ってごめん」

友　「いいさ、隠れ家まで運んでくれてありがとうな」ｾﾞｲｾﾞｲ

兄　「気にすんな」

友　「実はな」

兄　「なんだ」

友　「おれ、この戦争が終わったら妹ちゃんに告白するんだ」ｾﾞｲｾﾞｲ

妹　「友さん･･････」

兄　「友･･････」

友　「妹ちゃんに格好良いとこ見せたかったんだが･･････」ｾﾞｲｾﾞｲ

兄　「･･････」

友　「あばよ、俺の分も生きろ」

兄　「死んだか」

妹　「･･････」

兄　「･･････」

兄　「悲しんでも生き返らないよ」

妹　「･･････」



兄　「とりあえず、今日は寝よう」

妹　「・・・・・・うん」

兄　「あいつの言う通り生きなきゃな」

妹　「うん」

兄　「一夜明けたな」

妹　「うん」

兄　「よし、食糧の所へ行こう」

妹　「うん」




兄　「うっ、なんだこれは」

妹　「お兄ちゃん、毒ガス」

兄　「畜生」

妹　「あ！　あそこにシェルターがある」

兄　「入ろう」

兄　「何だここは、死体で一杯だ」

兄　「苦しい」

兄　「･･････この世界、狂って居やがる」

兄　（僕はここで死ぬ）

兄　（しかし第二第三の僕らが･･････）



おしまい

戦車　アシダカさん
シェルター　Ｇの死体で一杯のホイホイ
毒ガス　金○ョール
爆撃　新聞紙

水場　風呂
食糧の場所　キッチン

廃ビル　amaz○nの空き箱