1 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:41:41.70 l5AcOoEYo  

ほむら「……また、何時もの白い天井から始まる、新しいループ」

ほむら「何度繰り返してもワルプルギスの夜が倒せない……」

ほむら「誰にも頼らないって強がっても、無理なものは無理」

ほむら「……」

ほむら「今回の一ヶ月は、仲間作りに全力を尽くす事にしましょう」

ほむら「ただの協力関係にあるだけでない、本当の絆で結ばれた仲間……」

ほむら「そのために必要なのは……」

ほむら「高い確率で敵対した挙句、魔女になって まどかを苦しめる
      さやかをも受け入れる『寛容さ』の向上に」

ほむら「いつも言葉足らずで 皆に余計な誤解を招いてしまう『伝達力』不足の改善……」

ほむら「もう、私も繰り返しの中で、長い間生きてきた。何が駄目なのかは分かってるわ」

ほむら「……今度こそ……」



※注意

タイトルはペルソナ4を意識していますが、
ペルソナ4世界に入り込んだほむらの話じゃありません。
ペルソナも使いません、一部が似た描写はありますが。

番長補正のはいった、中身はおばちゃんに近い ほむらの話です。
明らかなキャラ崩壊しています


2 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:42:40.10 l5AcOoEYo  

…………見滝原中学校。
その中の、ガラス張りの教室の中。
朝のホームルームがはじまる。

いつもの様に、女教師・早乙女和子が転入生である私を紹介する前に、
意味不明なことを喚く。

1人の男子生徒に飛び火した後、ようやく私の話題となった。

和子「はい、あとそれから、今日はみなさんに転校生を紹介します!」

和子「ただれた都会から地方都市に飛ばされてきた上、
    この地の病院に半年間も入院していた哀れな子……

    いわば、落ち武者よ!」

ほむら「誰が落ち武者よ」


何時もの様にという表現は前言撤回することとする。

和子という女教師は自分の感情の赴くまま
話が脱線する事は しばしばだったが、

目の前の、しかも初対面に近い相手を
クラスメイトの面前で罵倒する事はなかった。

内心 首をかしげていると、
視界の隅で青いのが立ち上がり、大きな声を上げた。

???「ああああーーーっ!!! ほむほむ!」

ほむら「誰がほむほむよ」

青いのが喚いた後、少し弱気そうな、
しかし聞くものを和ませる柔らかな声があがる。

???「さやかちゃん、今 ホームルーム中だから、迷惑だよ。
     ほむらちゃんも困ってるじゃない」



3 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:43:20.82 l5AcOoEYo  

和子「あら、すでにクラスメイトに知り合いがいるのね」

ほむら「はい、病院でちょっと……」

和子「成程、上条くんですね……
    さすが、ただれた都会から来た女。手が早いわね……」

ほむら「……」

和子「……一部の子は既に知っているようですが、落ち武者さん、自己紹介を」

ほむら「……落ち武者でも、ほむほむでもない、暁美ほむらです。

     ただでさえ、転校生としてここの事を知りませんし、
     半年間入院していた所為で色々ご迷惑をおかけする事もあるかと思いますが……

     一日も早く、ここの学園生活に慣れるよう頑張りますので、
     皆さん、これからよろしくお願いします」

和子「よし、自己紹介終わりね!
    さあ、貴方の席は……」


女教師が空いてる席に私を誘導する間、
さきほどの2人のクラスメイトはこちらに手をパタパタ振ってくれる。

ちょっとドジでのろまっぽいけれど、
癒し系のかわいい、超絶かわいい子が鹿目まどか。

青いのが、美樹さやか。

女教師が察した通り、同じ病院に入院していた上条恭介という少年を通し、
この二人とは接触済みである。

……席に着き、静かにその時の事を思い出す。

自分の病室を間違う振りをして、
私が上条恭介の病室に居座ったのだ。

ある意味 一番厄介な、さやかの問題を解決する為に。


4 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:44:43.46 l5AcOoEYo  

「あんた、何もかも諦めた目をしてる

 いつも空っぽな言葉を喋ってる。今だってそう

 あたしの為とか言いながら、ホントは全然別な事を考えてるんでしょ?

 ごまかし切れるもんじゃないよ、そういうの」


……何周目のループかは忘れてしまったが、美樹さやかに言われた言葉だ。

妙に鋭い所のある あの娘のこと。

前と同じような対応では 見透かされるのがオチだろう。

数々のループであった対立さえ無視すれば、
青いのだって悪い娘ではない。

うざいけど。

今度の私はまどかだけじゃない、目の前の人……美樹さやかや 上条恭介

2人のことを見すえた上で進めようと思う。


ほむら「……病室、間違えてごめんなさいね」

ほむら(まあ、病院自体違うし、わざとだけどね)

恭介「いや、構わないよ。誰もいなくて、退屈していたところだし……」

ほむら「上条くんは、私と同い年くらいにみえるけど、中学生?」

恭介「うん。見滝原中学の2年生」

ほむら「そう、偶然ね。私、退院したらそこの中学に転校する予定なのよ」

恭介「へぇ、そうなんだ」

ほむら「学年も一緒ね。もしかしたら、同じクラスになるかもしれないわね」

恭介「そうなったら、よろしくね。友達も紹介するよ……」


5 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:45:12.25 l5AcOoEYo  

恭介「あ、そうだ!」

ほむら「?」

恭介「たぶん、もう少ししたら、友達が僕の見舞いに来てくれると思うんだ」

ほむら「へぇ、仲がいいのね。男の子?」

恭介「いいや。女の子だよ。幼馴染と、その親友の子」

ほむら「へぇ……興味が湧いたわ。私、ここで待っててもいい?」

恭介「いいよ。検診とか問題ないなら、話し相手になってよ」

ほむら「ええ。私でよければ……」



中学の事について、全く知らない振りをして
上条恭介に質問する。

そんな風にして時間を潰していると、
突然 扉が勢いよく開いた。


さやか「可愛い女の子かと思った? 残念、さやかちゃんでした!」



さやか「……って、あれ……っ!? 本当にかわいこちゃんがいるんですけど!」


6 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:48:55.77 l5AcOoEYo 6 

まどか「さやかちゃん……かわいこちゃんって死語だよ……」

さやか「恭介、この子だれっ???」

恭介「今度 うちの中学に転校してくる暁美ほむらさん」

ほむら「なるほど、この子が美樹さんか……」

さやか「えっ? 私を知ってるの?」

ほむら「はい。とっても元気ないい子だって、上条くんから聞いたところよ?」

さやか「えっ? そ……そう? いい子?」

恭介「ちょっと! 暁美さん、何言ってるんだ!」

ほむら「……? あなたから聞いた内容を纏めると、そう聞こえたのだけれど……
     違うのかしら?」

恭介「……はぁ。ち、違いはしないけどさ……」

さやか「え、えへへ……」

ほむら「それから、あなたが、鹿目まどかさんね。よろしく」

まどか「あ、うん。よろしく。私の事も聞いてるんだ」

ほむら「ええ、今日 上条君のお見舞いに おそらく二人が来るって聞いたから
     もうすぐ転校する身としては、挨拶しておこうと思って」

まどか「そっかぁ、わざわざありがとね!」

さやか「そっか、転校生なんだよね、よろしく。
     暁美さんは……恭介と、元々知り合いなの?」

ほむら「いえ、私も病院に入院中だったのだけど、うっかり病室を間違えちゃって……」

ほむら「上条くんとは、今日は初対面。
     話しているうちに、偶然、同じ中学になることが分かったから……」

さやか「そっか、なんだ……」


7 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:49:51.69 l5AcOoEYo 7 

ほむら「……」

さやか「……」

ほむら「……安心してる?」

さやか「へっ!? な、なんでっ!?」

ほむら「鹿目さん…… 彼女、これで隠せてるつもりなの?
     初対面の私でも分かったわよ?」

まどか「てへへ……、さやかちゃん達は、ちょっと鈍い所があって……」

さやか「ええっ!? まどかまで 何言っているの!?」

恭介「……? さやかちゃん達には、僕も含まれてるのかい……?」



真っ赤になって何やら必至に弁解している美樹さやかに、
対照的に分からない風な上条恭介。

彼女達が嫌がるギリギリの線を越えないよう、
その二人を煽り続けた。

まどかが、時計を気にし始める。

それを見て、煽るのが楽しくなりつつあった自分の気持ちを抑え、
この場を切り上げる事にした。



8 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:50:18.02 l5AcOoEYo 8 

ほむら「……そろそろ、検診の時間ね。病室に帰らないと」

さやか「おっとぉ! こんな時間。さやかちゃんも そろそろ帰らないと」

まどか「それじゃ、お開きだね」

恭介「さやか、鹿目さん。お見舞いありがとうね。
    暁美さんも、また暇なら遊びにきてよ」

ほむら「あら? 美樹さんの前でそんな事言っていいの?」

さやか「こらあああっ! だから、そんなんじゃないの!」

ほむら「……転校前から、こんなに弄り甲斐のありそうな人と知り合えて良かったわ。
     美樹さん」

さやか「いい性格してるわ、暁美さんって……」

ほむら「……ほむら」

さやか「ん?」

ほむら「もし良かったら、ほむらって呼んで欲しいわ」

さやか「あ! うん、ほむら。私の事もさやかでいいよ」

ほむら「ありがとう、さやか。鹿目さんもいい?」

まどか「うん! よかった、仲間外れにされなくて。ほむらちゃん、まどかって呼んで?」

ほむら「あらやだ。まどか、仲間外れだなんて……ないわよ。可愛いわね、この子……」

まどか「えっ、か、かわいい? ……てへへへ」

さやか「ふふん。まどかは私の自慢の嫁なのよ」

まどか「もう、さやかちゃんたら」


9 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:51:04.03 l5AcOoEYo 9 

ほむら「私も嫁にしたくなってきたわ」

さやか「だめだー、まどかは渡さん!」

ほむら「ですよね。それなら、まどかの2号さんならどう?」

さやか「それならよし!」

まどか「もー……二人とも……」



まどかと美樹さやかと一緒に、上条恭介の病室から退室した。

その日は、それで終わり。

夜に病院から抜け出し、虐待される幼女を助けたりとか色々とやったが
さやか達とは関係が無い。


それからまた翌日、私は上条恭介の病室にお邪魔し、煽っていた。


10 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:51:46.76 l5AcOoEYo 10 

ほむら「いいわね、上条君。私も恋人でも居れば、入院生活も少しは楽しいだろうに……」

恭介「……えっと、何度も言ってるけど、僕とさやかはそんなんじゃ……」

ほむら「……ふーん、そうなの」

恭介「そうだよ」

ほむら「……実際、さやか、貴方に好意を持っていると思うけど?」

恭介「からかわないでくれよ。そんな訳がない」

ほむら「そうかしら?」

恭介「そうさ。僕みたいな軟弱な男……さやかがそんな風に思うはずがない」

ほむら「えっ?」

恭介「……なんだよ、その顔。鳩が豆鉄砲くらったような」

ほむら「それ、本気でいってるの? あんなに甲斐甲斐しくお見舞いに通っているのに」

恭介「さやかは……優しいんだよ。
    バイオリンしか特技の無い僕が、それすらも無くなって 元気をなくしている。
    それを心配してくれているんだ」

ほむら「……」


上条恭介は、美樹さやかに対して強い劣等感を持っていたらしい。

頭がいいとはいえないけれども、元気一杯で
クラスの中でも目立つ存在の美樹さやか。

決して根明とはいえない 上条恭介なら、
そういう気持ちがあっても不思議はない……か?

この時間軸で 初めて知った。

今まで、上条恭介と親しく話そうとした事など なかったのだから……。


11 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:52:58.63 l5AcOoEYo 11 

ほむら「……私を基準にして考えれば……」

恭介「……」

ほむら「中学二年生の女の子よ?
     勉強に、部活に、遊びに、恋愛。やるべき事、やりたい事が一杯ある」

ほむら「そんな時に、同情で毎日の様にただの幼馴染の為に病院に通うと思う?」

ほむら「CDだって一、二枚買うだけで
     普通の中学生の女の子は月のお小遣いが吹っ飛ぶの」

ほむら「色々と犠牲にした上で、貴方と一緒にいる事を選ぶさやかは、
     本当に凄い努力をしていると思うわ。」

恭介「……だから、それは さやかが優しいからなだけだって!!!」

ほむら「……そう」

恭介「君はさやかが僕の事を好きだって言いたいらしいね!
    そんな事があるはずがない!」

恭介「あいつは何時だって元気で、まっすぐで友達想いで……
    それと比べて、僕には何も無いじゃないか……」

ほむら「……」

ほむら「本当に?」

恭介「……」



12 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:54:00.35 l5AcOoEYo 12 

恭介「いや……あった。そうだ、僕はあいつに認めて欲しくてバイオリンをはじめた」

恭介「僕にはそれだけだったのに、それなのに、僕はそれすら……失ってしまった」

恭介「今のところ、この手は治るかどうか分からないらしい」

恭介「あいつに認められる事なんて、何もないんだよ……そんな僕を……」

ほむら「……そう。でも、貴方間違ってるわ。何もないわけじゃない」

恭介「何がだよ!」

ほむら「貴方、さやかの事が好きだったのね。誰にも負けないくらい」

恭介「……えっ」



上条恭介の頬は 心なしか赤く染まっているようだ。

見当外れの事を言った訳でもなかったらしい。


ほむら「……上条君、否定しないのね」

恭介「……あ、その……友達として、幼馴染として、僕は……」

ほむら「そう……。本当に?」

恭介「……」



13 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:54:33.42 l5AcOoEYo 13 

ほむら「あの子の気持ちが信じられないなら、
     今度見舞いに来てくれたときに、聞いてみるといいわ」

ほむら「「さやかは僕の為にどうして、こんなに尽くしてくれるんだい?
      友達だから? 幼馴染だから? それとも、僕の事好きでいてくれるのかい?」って」

ほむら「あの子は恋愛ごとはへたれ、
     そして貴方が真剣に聞けば、嘘はつけなくて、否定はしないとみた。
     でも、肯定も出来ない。

     こう、顔を真っ赤にして、あたふたするのが目に見えるわ」

ほむら「本心を晒すのが怖いのよ。
     上条君と一緒」

恭介「……好き勝手、いってくれるよ……」

ほむら(ま、咄嗟の嘘をついてしまうルートに入ってしまったら、
     あの子 自己嫌悪で手の負えないルートに行っちゃいそうだけど)

ほむら「さやかが、私の言ったとおりになったら、貴方達は両想いよ。
     間違いないわ」

恭介「君は僕達と会ってそんなに経ってないのに、なんではっきり断言できるの……」

ほむら「人生経験が違うの。私は人を見る目はあるわ」

恭介「自信満々だな……」

ほむら「あたりまえじゃないの。私を信じなさい」


14 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:55:11.05 l5AcOoEYo 14 

恭介「……ははっ…… そうだね、もしさやかが、暁美さんが言うとおりの反応だったら、
    信じる事にする」

ほむら「なるほど。じゃあ、一歩進めるのね?」

恭介「えっ?」

ほむら「相手が動揺していると、自分は落ち着けるものよ。
     普段以上の、勇気を出せると思うわ」

恭介「そうかな」

ほむら「そうよ。うふふ、楽しみだわ」

恭介「……なんで、そう僕達をくっ付けたがるのか」


上条恭介は苦笑しながら、私の提案に否定も肯定もしなかった。

私のやった事が、どの様な結果を生むか、
まだ分からない。

上条恭介に言いたい事だけ言って、その後はまた
別のやるべき事に取り組んでいたからだ。

例えば、とある黒猫を助けたりとか。

青いのの反応を見る限り、
私がやった事に対して問題は起きてなさそうだが……


15 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:56:12.43 l5AcOoEYo 15 

――
まどか達と既に友達であった事から、
転校初日の質問攻めイベントをスルーし、2人にくっ付いていた。

そのため、休み時間は平和に過ごせた。

放課後に、見滝原のショッピングモールにあるハンバーガー屋さんにて、
まどか、青いの、それから緑色でウェーブがかった髪質の志筑仁美が一緒に、
私の歓迎会を開いてくれた。


さやか「ほむほむぅーーー!!!! 改めてよろしくね!」

まどか「さやかちゃん、テンション高いね……。ほむらちゃん、私だって、改めてよろしくね」

ほむら「勿論よ。これからはクラスメイトとして、友達として、更に仲良くして欲しいわ」

仁美「えっと……私も仲良くしたいですわ」

ほむら「ええ。えっと……仁美さんって呼んでいい?」

仁美「はい! もちろんですわ!」

ほむら「じゃあ、私の事、ほむらって下の名で呼んでね。仁美さん」

仁美「はい! ほむらさん」

さやか「それじゃあ、これからの この4人の友情を願って、かんぱーーーい!」



16 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:56:43.79 l5AcOoEYo 16 

4人でジュースのコップをぶつけ合う。

わー、仲の良い友達っぽい、こういうの久しぶりね。

珍しいこの時間の到来に感動をかみ締めつつ、
平静を装った。


仁美「……ふふ。文武両道で才色兼備のクールなほむらさんなので、
    ちょっと近寄りがたさを感じていましたが……

    友達といると、顔がゆるんでくれてますね」

さやか「クールぶってるのに 意外と表情に出るのがいいよね!」

まどか「てへへ、ほむらちゃん、かわいいー!」


ばれてた。そっとしておけ。

見滝原の学校の事や、遊び場所、生活に必要な所など、
知らないフリで色々聞いていく。

その中で、志筑仁美が思い出したように、
私に向き直り、質問してきた。


仁美「そういえば、3人はどこで知り合ったんですの?
    さっき聞きそびれましたが……」

さやか「ふふふ、ほむほむはねー、さやかちゃんの恋のキューピッドなのだー!!!」


仁美「……えっ?」

ほむら「え?」

まどか「えっ?」



17 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:58:10.94 l5AcOoEYo 17 

ほむら「さやか、貴方、まさか……」

まどか「上条くんと……っ!?」

さやか「はーい、付き合い始めちゃいました! ほむほむのお陰でね」

さやか「私と恭介の事、色々心配して助言してくれたみたいで」

さやか「そしたら、恭介の方から、その、告白してくれて……」

まどか「ほむらちゃん、すごーーーいっ!」

ほむら「いえ……まさか、こんなに早く進むとは思っていなかったわ。
     思った以上に、貴方達、実は固い絆で結ばれていたのね」

さやか「えーーーっ、そんなことは、まぁ……あるかも……にしししっ」

まどか「さやかちゃん。おめでとうね?」

さやか「ありがとう、まどか!」

ほむら「おめでとう、さやか」

さやか「ありがとう、ほむほむ!」

ほむら「ほむほむ……引っ張るわね……」

さやか「いいじゃん、かわいいから」

まどか「ほむほむ、確かにかわいい。私も呼んじゃおっかな、てへへ」

ほむら「……むー」



18 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 21:59:38.93 l5AcOoEYo 18 

ほむほむ……は、回避したい所だが……

回避策を考える為に
まどかと さやかから視線を逸らしたところで、
ようやく気がついた。

今までの時間軸ではさやかを制し、
いつも上条恭介を勝ち取っていた志筑仁美。

この時間軸では、逆となっている。

志筑仁美の表情は硬い。

しかし、私の視線を感じ取ったのか、
志筑仁美は慌てて 外面を取り繕った。

年齢に見合わない、強い子だ。


仁美「あ、えっと、さやかさん、おめでとうございます」

さやか「ありがとう、仁美!」

仁美「まだまだ、上条君は入院が長引きそうで大変だと思いますが……」

さやか「うん、リハビリとか色々あるしね。私も頑張んなきゃ!」

まどか「おー……、さやかちゃん、燃えてるね?」

さやか「うん、まー、燃え上がっちゃってますね、私。

     恭介、まだ怪我とか治る目処が立ってないし。

     変に浮かれるのは間違いだって思うけど……



     恭介の事、これからは このさやかちゃんが、

     今まで以上にガンガン支えまくっちゃいますからねー!」


19 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:01:11.75 l5AcOoEYo 19 

それからも、浮かれまくる 美樹さやか。

はやし立てる まどか。

静かに微笑む志筑仁美。


……しばらくして

志筑仁美は「お茶のお稽古がありますので、ごめんなさい……」
そう言って、席を立った。

それを切欠に、歓迎会はお開きとなった。


さやか「ねぇ、まどか、ほむほむ。これからCD屋に寄ろうかと思うんだけど……」

まどか「いいよ、上条君のだね」

さやか「へへ、まあね」

ほむら「ごめんなさい、私はこの後 用事が入っているの」

さやか「えーー! ほむほむとは ここでお別れ?」

まどか「そっか、残念」

ほむら「ふふ、また明日、ね。残念がってくれるのは嬉しいけど」

さやか「そっか、用事じゃしょうがないよね。またね、ほむほむ」

まどか「また明日。ほむほむちゃん」



20 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:02:10.60 l5AcOoEYo 20 

……どうしよう、ほむほむが固定になってしまう。

改善策が思い浮かばないまま、
次の目的地へと、私は向った。


「一般の方 立ち入り禁止」の警告を無視し、
無骨なコンクリートが露出する、一見廃屋の様に見える場所に私は居る。

業務員用の通路だ。

そこを歩いていると、綺麗な金色で、
針金を中央に通したかのような 重力を無視した巻いたツーテールが目立つ
グラマラスな女が立っていた。

一見、中学生には見えない。

中学で一年先輩で、
魔法少女としてはベテランの域に達してる巴マミだ。

無論、ベテランと言っても私ほどではないが。


ほむら「もう、来てくれてたのですね。巴先輩」

マミ「今、来た所よ。使い魔らしい反応も確認したわ」

ほむら「近くに魔女もいるはずですよ」

マミ「……そうね。近いわね。ほんとう、貴女のいった通りね。暁美さん」

ほむら「ちゃっちゃと やってしまいましょう」



21 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:03:37.46 l5AcOoEYo 21 

美樹さやかと上条恭介を煽った後、
私は巴マミと良い関係を結ぶ為にも時間を充てていた。

今回は、この場に出るであろう薔薇園の魔女を退治するため、
巴マミと待ち合わせしていたのだ。

巴マミは無駄は多いが、
戦闘能力はすこぶる高い。

結界内に入ると、使い魔を蹴散らし、
あっという間に魔女の元へ。

薔薇園の魔女自体も、私と巴マミのコンビの前では大した敵ではなかった。
1分と経たず、グリーフシードへと変化し、結界は解けた。

……よし、この場では、まどかと美樹さやかに
魔法少女の事を知られずにすんだ。

巴マミも二人の事は知らない。

後は、インキュベーターが余計な事をしなければ……


まどか「ほむら……ちゃん? その格好……それに戦って……?」

さやか「今の、お化けは、一体……」



22 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:04:08.66 l5AcOoEYo 22 

……まどかと美樹さやかが 巴マミと接触する前に、

私と既に知り合ってる巴マミと協力して使い魔や魔女を倒し、

3人を知り合いにしない……。

そんな私の計画は、あっさりインキュベーターに出し抜かれた。

馬鹿だ、私は。

あいつは、何時ものループでのタイミングより少し早く、
魔女がいる場所に 二人を呼べばいいだけなのに。

私達をちょっと観察していれば、容易に実行できるだろう。

今回は人との関わりを重視するつもりだが、
少なくとも この件に関しては、インキュベーターを監視する方が効果的だった。

内心舌打ちしながら、2人に聞く。

ここから、挽回しなければならない。

別に致命的なミスではないのだから。


ほむら「まどか、さやか……。どうして、ここに……?」

まどか「助けてって、呼んでる声が聞こえて……」

さやか「私はまどかを追っかけて……そしたら、ほむほむが見えたから」

ほむら(やはり……)

マミ「……暁美さん、2人は知り合い?」

ほむら「ええ。私のクラスのお友達よ」

マミ「……転校した初日に、もう友達が出来たのね」

ほむら「え、ええ……」

ほむら(そこ!?)



23 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:06:19.22 l5AcOoEYo 23 

マミ「えっと、助けてって呼ぶ声っていうのは……魔女の口付けの被害者かしら?」

???「いや、僕だよ」

マミ「きゅうべぇ!」

QB「使い魔に追われてたんだ。
   それで、近くの魔法少女か、素質のある子に助けを求めたってわけさ」

ほむら「あら? その割に、私達には聞こえなかったわよ?」

QB「……君は、誰だい? 見る限り、魔法少女の様だけど……」

マミ「えっ? きゅうべぇ、貴方が知らないの?
   貴方と契約する以外に、魔法少女になる方法なんてあるのね」

QB「僕が知る限りは、ないはずだけど……」

ほむら「そう言えば、貴方とまだ会ってなかったわね?」

ほむら「私は貴方と契約した魔法少女よ。
     まぁ、私の願いの所為で、貴方は忘れているけどね」

ほむら(もちろん、嘘だけど)

QB「……そうかい。ちなみに、僕にその願いを教えてくれるつもりはあるかい?」

ほむら「ないわ」

QB「……」

マミ「……」


さやか「えっと……」

まどか「そろそろ、私達を放っておかないでくれたら、嬉しいかなって……」



24 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:06:59.42 l5AcOoEYo 24 

マミ「私達は、この見滝原を守る魔法少女よ。
   私は、貴方達の一つ上の学年の、巴マミ」

ほむら「そして、さっきの、顔に沢山薔薇が咲いているようなデカ物が魔女、
     タンポポの綿毛にヒゲが生えているようなのが使い魔。

     こいつらを退治し、人々を守るのが私達の役目なの」

さやか「……まじか」

まどか「すごいよ、ほむらちゃん! まさか、本物の魔法少女だなんて!」

ほむら「……黙っててごめんなさいね。貴方達を巻き込みたくなかったものだから」

まどか「そんな、謝らないでよ! きっと、普通の人には秘密なんだよね!」

さやか「そっか、私達、秘密にしなきゃね」

まどか「うん!」

マミ「……ちょっと待って、そこの二人」

ほむら「!」

まどか・さやか「は、はい?」

マミ「貴方達、二人ともきゅうべぇが見えるのよね?」

QB「二人とも、素質がありそうだ。僕と契約して、魔法少女になってよ!」

まどか「えっ?」

さやか「私達も?」



25 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:07:28.57 l5AcOoEYo 25 

QB「僕は、君たちの願い事をなんでも一つ叶えてあげる」

QB「何だってかまわない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ」

さやか「うわぁ……金銀財宝とか、不老不死とか、満漢全席とか?」

まどか「いや、最後のはちょっと」

まどか「……でも、私が、魔法少女かぁ……そっかぁ……

ほむら「……まちなさい」

マミ「暁美さん?」

まどか「ほむら……ちゃん?」

ほむら「そんなに軽々しく 決めていいことではないわ」

マミ「……そうよね。貴方達、この後 時間あるかしら?」

まどか「えっと……、はい、大丈夫ですけど」

さやか「私も、大丈夫です」

マミ「なら、私の家に来ない?
   私と暁美さんで、魔法少女にまつわること、
   そのメリット、デメリットについて、教えてあげるわ」

QB「……」

さやか(恭介に行けなくなったって、連絡しとかなきゃな……)


26 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:11:04.44 l5AcOoEYo 26 

――何時も綺麗でおしゃれな、巴マミの部屋。

私やまどか、美樹さやかがテーブルに座っていると、
紅茶とケーキを巴マミが持ってきてくれた。



……ふと、気に掛かることが。

何時もの事といえば、何時もの事なのだが……


ほむら「巴先輩……」

マミ「何かしら、暁美さん」

ほむら「何で、人数分のケーキが出せるの? 先輩の家、直行でしたのに」

マミ「へっ!?」

ほむら「まさか、ケーキとかお菓子ばかり食べてるんじゃ……」

マミ「い、いや、そんな事ないわよ!」



27 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:11:35.75 l5AcOoEYo 27 

ほむら「駄目よ、いくら若いからってそんな食生活ばかりじゃ……。歳とってから後悔するわよ?」

ほむら「私がまだ入院中に、よくしてくれたおじさん達も
     糖尿病で片目失明しかけてたり、プリン体の採りすぎで痛風になったりしていたわ」

ほむら「将棋の相手をしてもらいながら よくその辛さを語っていたものよ……」

ほむら「健康って言うのはね、失われてからその大事さに気がつくの!」

ほむら「もっと必要な栄養素をバランスよく摂取する事を……」


……食生活の大事さを語っていると 若干くどくなってしまったようだ。

3人が明らかに引いた顔をしている。

私は軽く咳払いをし、何とか誤魔化そうと考えている所
痛いところを突っ込まれる事となった。


マミ「……えっと」

まどか「ほむらちゃんって……」

さやか「ちょっと おばさん臭いところあるよねー」

ほむら「そ、そんな事ないわよ!」


28 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:12:19.23 l5AcOoEYo 28 

今まで無数にループを繰り返していた所為で、
体感的にはかなり長く生きてしまったが。

おばさんはないでしょう。
体は立派に中学2年生だ。

ループを20年分は繰り返してしまったが、
体は若い。


マミ「だいたい、暁美さんこそ、食生活の大事さを語る割には 痩せすぎよ」

まどか「ほむらちゃん、ちゃんと食べてる?」

さやか「ほむほむって逆にサプリメントとかに気を使いすぎて
     食の楽しみを忘れてそうなキャラクターだよねぇ」

さやか「そうか! 外見はクール系美少女で、中身はおばちゃん。
     これがギャップ萌えか! いや、ロリばばぁ萌えっ!?」

ほむら「……話がこっちの不利になりそうだから、話題を戻すわね」

ほむら(さやかは、後で殺そう)

さやか「強引だなぁ、ほむほむは」

ほむら「誰がほむほむよ」

QB「僕も早く話題を戻して欲しいなぁ……」


29 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:12:49.47 l5AcOoEYo 29 

マミ「……これを見て頂戴」


巴マミが、美しい黄色の宝石をあしらったネックレスを手に。


ほむら「巴先輩の手にあるのが、ソウルジェム」

マミ「キュゥべえに選ばれた女の子が、契約によって生み出す宝石よ」

ほむら「魔力の源であり、魔法少女であることの証でもあるの」

まどか「何でも望みを叶えて貰えて、ソウルジェムまで貰えるんだ」

ほむら「……だけれど、魔女と戦う使命を課されるの」

さやか「あ、そうだよね。魔女……さっきの、化け物かー」

QB「そうだね」

QB「願いから産まれるのが魔法少女だとすれば、魔女は呪いから産まれた存在なんだ」

QB「魔法少女が希望を振りまくように、魔女は絶望を蒔き散らす」

QB「しかもその姿は普通の人間には見えないから性質が悪い」

QB「不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ、そういう災いの種を世界にもたらしているんだ」

マミ「理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ」

マミ「形のない悪意となって、人間を内側から蝕んでゆくの」

ほむら「魔女は、結果内に潜み、人間を誘い込み、喰らう」

ほむら「結界っていうのは、さっき私達がいた 奇妙な世界ね」

マミ「そういう恐ろしい魔女を相手にしなければならないから……」

ほむら「はっきり言って、戦いは命懸けよ」




30 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:13:50.58 l5AcOoEYo 30 

まどかと美樹さやかが息をのむ。

当然だ、先程の結果内で、既に魔女と魔法少女との戦いは見ているのだから。

どうせ見られるのなら、苦戦してる様を見せれば良かった。

私の話術で、どうにかなるだろうか……


ほむら「今日の魔女は、平均以下の弱い魔女よ」

ほむら「巴先輩が凄く強いから、楽勝に見えたでしょうけど……」

ほむら「場合によっては、骨折や、手足が千切られて食べられたり、潰されたりする事もある」

ほむら「腹が裂かれ、出血を魔力で抑えるので精一杯……
     しかたなく、小腸が飛び出してくるのをガムテープで止めながら戦った事だってあるわ」

ほむら「そもそも、魔女との初陣で魔法少女が生き残る確率は半分よ」

マミ「……暁美……さん、ちょっと言いすぎじゃない?」

ほむら「巴先輩は素質があって元々 強いからよ。

     私は素質に恵まれなかったから、それこそ戦いに慣れるまでは
     涙と鼻水と汗と血に塗れた 汚らしい戦いだったわ」




31 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:15:06.14 l5AcOoEYo 31 

マミ「えっと……鹿目さんも、美樹さんも 怯えた顔しているわよ……」

さやか「小腸……ガムテープ……」

まどか「手足食べられるって、そんなのってないよ……あんまりだよ……」

ほむら「私が経験してきた戦いの事実よ。知っておいて貰いたいわ」

QB「……だけど、2人の素質はちがう。
   特に、鹿目まどか。君の素質は素晴らしいの一言に尽きる」

QB「どんな魔女でも、君の前では敵わないんじゃないかな」

まどか「……わたし……が?」

マミ「……そんなに? すごいじゃない! じゃあ、暁美さん、そんな心配……」

ほむら「……」


糞、グロイ体験を詳細に語って、引かせる作戦は失敗か。

それなら、泣き落とししかないじゃない。

既に友好関係にある 今の状況だからこそ、生きてくるものがある。


ほむら「……それでも、私……お友達……殺し合いに、巻き込みたくない……」

マミ「……あっ」

まどか「な、泣かないで、ほむらちゃん!」

さやか「ほ、ほむほむ、泣かないでよ! わかったってば!」

QB「……」


32 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:15:49.88 l5AcOoEYo 32 

マミ「た、確かに、暁美さんの言うとおり、魔女との戦いは危険よ」

マミ「私だって、死にそうになった事は何度もある」

マミ「現状、この街は二人の魔法少女がいるのだし、
   焦ってなる必要もないわ」

マミ「もし、どうしても叶えたい願いがあって、戦う覚悟が出来るのなら、
   その時、改めて考えるというのはどうかしら……?」

ほむら「……グスッ」

さやか「は、はい……」

まどか「大丈夫だよ、ほむらちゃん。私、今、そこまでして叶えたい願いなんてないし」

QB「……しばらく、様子見かな。残念だよ」

QB「まぁ、もし魔法少女になる決心がついたら、何時でも呼んでよ。
   僕の方はいつでも準備できてるからね」


インキュベーターはこの場でできる事は無いと見切りをつけたのか、
部屋から出て行った。

ちょっとは伝達力があがったのだろうか。

話術だけで、事態を好転する事が出来た……。


33 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:18:27.65 l5AcOoEYo 33 

さやか「……ほむほむ、でも、恩人のあんたが、そんな辛い戦いをしているなら、私だって……」

まどか「あっ、そ、そっか……」

ほむら「……さっきも言ったわ。巴先輩は強いから、貴方達まで、こんな事に巻き込まれないで」

さやか「……」

マミ「あ、暁美さんの言うとおりよ! 私がいる限り、この子にそんな辛い思いなんてさせないから!」

まどか「巴先輩!!! ほむらちゃんをお願いします!」

さやか「ほむほむ、巴先輩、何か私にできる事があったら、何でも言ってください……」

まどか「私も! 何にも出来ないかもしれないけど……」

ほむら「ありがとう……」

マミ「うんうん、美しい友情ね……。羨ましいわ……」

ほむら「巴先輩も、ありがとうございます」

マミ「ううん、いいのよ。私も、一緒に戦ってくれる貴方の事は大事だし……」

さやか「……それにしても、巴先輩ってやっぱり強いんだ」

まどか「戦い方も格好良かったもんね、こう、華麗というか……」

さやか「ほむほむも格好いいけど、ちょっと違うよね。質実剛健って感じ」

まどか「巴先輩の方が魔法少女っぽいよ! あの、なんだっけ……でっかい大砲みたいな!」

ほむら「ああ……ティロ・フィナーレね」

さやか「ティロ……フィナーレ……?」



34 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:18:53.49 l5AcOoEYo 34 

さやか「ティロ・フィナーレって……なに?」

マミ「えっ???」

ほむら「だから、あの巴先輩の得意技の、大砲みたいな銃で……」

さやか「いや、それは分かってるけど……」

まどか「さやかちゃん! 決まってるでしょ!」

さやか「?」

まどか「必殺技だよっ! てへへ」

さやか「……そ、そっか。ごめんなさい、変な事聞いて……」

マミ「あ……あの、おかしいかしら? ティロ・フィナーレ」

マミ「イタリア語で、最後の射撃という意味なのだけど……」

ほむら「いいえ、おかしくないわ。巴先輩、むしろハイカラよ」

マミ「ハイカラ……。そ、そうよね! ハイカラよね!」

ほむら「ええ、ハイカラよ」


さやか「……ねぇ、まどか」

まどか「なに?さやかちゃん」

さやか「魔法少女って…… ちょっと独特な感性の人が……多いよね」

まどか「え? そう? 私もティロ・フィナーレって、かっこ……いや、ハイカラだって思うけど!」

さやか「味方がいない……」



35 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:19:28.84 l5AcOoEYo 35 

その後空気は弛緩して行き、
ただのお茶会へと姿を変えていった。

何事も無く、その日は解散となる……。

----

翌日、私は1人で学校に向っていた。

かなり先のほうに、元気のなさそうに歩く女の子が見える。


あれは……ワカメ……じゃない、志筑、仁美……



ほむら「仁美さん、おはよう……」

仁美「あ、あけ……じゃない、ほむらさん。おはようございます」

ほむら「今日もいい天気ね」

仁美「ですわねー……」

ほむら「そんな天気の割りに、貴方一人、憂鬱そうにも見えるけれど」

仁美「……そ、そうですか? そんな事ないですわ」

ほむら「……」

仁美「……」


36 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:19:58.47 l5AcOoEYo 36 

ほむら「仁美さん……」

仁美「あ、えっと……なんですの? ほむらさん」

ほむら「私は会ったばかりで、まどかや さやかと比べると、繋がりが薄いかもしれないけど」

仁美「……」

ほむら「でも逆に、そんな私になら言えること、あるんじゃないかなって思って」

仁美「……ほむらさん」

ほむら「……私、口はかたいわよ。吐き出したい事があるなら、いつでも言って頂戴」

仁美「……なんのことか、わかりません」

ほむら「そう……」

仁美「……」

仁美「……ごめんなさい、ほむらさん。私、先に行きますわね。
    通学路が同じなのなら、明日からご一緒しましょう……」




37 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:20:28.58 l5AcOoEYo 37 

志筑仁美は走り出す。
親密さが足りなかったか。

私が彼女との距離を縮めようとした事は初めてだ。

美樹さやか以上に勝手がわからない。

上条恭介よりは ましかもしれないが……
どうしたものか。

別に、ワルプルギスの夜への対策に彼女が必要な訳ではない。

現時点では、放っておいてもいいといえばいいのだが。

……その後、まどか達とも会い、
翌日からは一緒に登校することを約束しながら

学校へと向った。


――志筑仁美に振られた日の夕方。

巴マミのお誘いで、市内のパトロールを行う。

……それはいいのだが


マミ「これが昨日の魔女が残していった魔力の痕跡」

マミ「基本的に、魔女探しは足頼みよ」

マミ「こうしてソウルジェムが捉える魔女の気配を辿ってゆくわけ」

さやか「意外と地味ですねー」

まどか「魔法で調べるって訳じゃないんですね」

ほむら「……」



38 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:22:03.97 l5AcOoEYo 38 

さやか「……ほむほむ、不機嫌そうだなぁ」

まどか「ごめんね、ほむらちゃん……」

マミ「わ、私が責任もって二人は守るから大丈夫よ?暁美さん」

ほむら「いえ…… 魔法少女以外の子が同行するのって初めてだから、
     気が張ってるだけよ。気にしないで」

マミ「そ、そう……」

さやか「えと、私がどうしても 知りたかったから……
     ほむほむがそんな危ない事してるって知ったら、その……」

まどか「わ、私も……ちゃんと、知っておきたかったの……ごめんね、ほむらちゃん」

ほむら「二人も気にしないで。ただ、気を引き締めていてね」


私の気がたっているのは、別に二人がいるからではない。

二人がこの場に居るのは気に喰わないが、
それより重要な問題がある。

今日はよりによって、病院であらわれるお菓子の魔女と
遭遇し易い日だ。

巴マミはこの二人がいると、いい所を見せようとしすぎ、
油断して頭を毟られる可能性が高くなる。

そんな日に見学したいとは……
なんというタイミングだ。

しかも、つかず離れずの所に、奴……インキュベーターの気配もする。

油断してはならない。



39 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:22:30.91 l5AcOoEYo 39 

――案の定、病院でグリーフシードが発見された。

美樹さやかが慌てだす。


さやか「きょ、恭介が! ど、どうしよう、はやく何とかしないと!」

ほむら「落ち着きなさい、さやか」

マミ「もう孵化寸前ね。こうなったら、魔女になったばかりを狙うのが一番かしら」

QB「……言ってる間に、結界ができ始めたよ。皆、気をつけて!」

まどか「わわわ!」

ほむら「……やっぱり、いたか。きゅうべぇ」



結界が私達を包み……そして、閉じた。

甘ったるさ漂う、お菓子だらけの空間。

その中にヌイグルミの様な外見の、お菓子の魔女が現れた。

巴マミを先頭に、一歩下がって私。

QBを肩に乗せたまどかと、美樹さやかは 私のさらに後ろにいる。


40 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:23:44.12 l5AcOoEYo 40 

まどか「かわいい……っ!」

さやか「くっ、なんてファンシーな外見なの」

ほむら「外見に騙されては駄目よ、あの魔女は強いわ。
     二人とも、下がってて」

マミ「……いえ、暁美さん」

ほむら「?」

マミ「今回は、貴方も見てて」

ほむら「……は?」


マミは突然、私のほうに振り返って
私達の周りに魔法少女の守りの結界を張った。


ほむら「ばっ…… 何を!」

マミ「大丈夫よ、暁美さん。私はずっと1人で戦ってきた」

マミ「貴方も守れるくらいには、私は強いつもりよ」

マミ「この魔女を倒して、それを証明してあげるわっ!!!」


41 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:24:36.59 l5AcOoEYo 41 

そして、巴マミは何時もどおりの華麗な……

見せ付けるような戦いを始める。

まどかと美樹さやかは、素直に見とれてた。

私はというと……



ほむら「あんの……馬鹿が……」

まどか「……えっ?」

さやか「ひっ!」



まどかと 美樹さやかが何かに怯えた声を出した。

そんなものは無視する。緊急事態だからだ。

あの人に魅せる戦い方は、巴マミが最も死に易いパターンであるから。

私は盾から、固い結界を破壊するのに適したものを取り出す。

小型の掘削機械だ。



42 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:25:04.32 l5AcOoEYo 42 

さやか「ぎゃっ! なんじゃ、こりゃ! でけえ!」

まどか「ちょ、ちょ、ほむらちゃん、なにこれ!」

QB「……僕も初めて見るね。なんだい、これは」

ほむら「岩盤を掘り進めるための小型の掘削機械よ」

さやか「どこが小型よ! この中 一杯一杯じゃない!」

ほむら「上下水道トンネル等を掘る際の、硬岩掘削に使う機械としては小型ってことよ。
     正式には、小断面用自由断面掘削機よ。

     幅1.5m、高さ1.8m、長さ7.2mあるわ。
     先端の黒いトゲがついたような巨大なドリルがあるでしょう?
     それ、カッターブームといって、回転しながら硬岩だろうが結界だろうが
     削り取るように 破壊してくれるわ!」

さやか「だから何で守りの結界 壊すんだよぉおおおおおっ!!!!」

ほむら「うるさい! あぶないから 機械に近寄るんじゃないわよ!」


掘削機に魔力を通し、掘削機が動き出した。

そのまま先端のドリルを結界にぶつけ、破壊する。

巴マミはっ……!

ヌイグルミのような魔女をリボンで封じ、
ドヤ顔でこっちを見たまま固まった巴マミが見える。

巴マミは気がついていないが、
捕まった魔女から本体が抜け出し、巨大な恵方巻のような姿を現す。

大きく裂けた口から見える牙は凶悪だ。

眼前の獲物の頭を喰いちぎらんとばかりに巴マミに迫り……

カチリッ!




43 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:26:10.31 l5AcOoEYo 43 

――時間を止めてる間に 体内に投げ込んだ手榴弾にやられ、
お菓子の魔女の中身の恵方巻の化け物が倒れる。

ついでに女装した使い魔を踏み潰し、
お菓子の魔女のグリーフシードを拾った。

巴マミはというと、自分が死に掛けていた事を悟り、
体が震えだしていた。

言葉はない。

まどかと美樹さやかは、未だ呆けた顔をしている。


ほむら「……魔女と戦うって、こういうことよ。何時 死に掛けるかわからないわ」

さやか「いやいや! 今、マミさん明らかに
     ほむほむの所為で気を逸らしていたよね!?」

ほむら「そんな事はないわ」

まどか「ほむらちゃん…… マミさんこっち見たまま固まってたよ?」

ほむら「……戦闘中に気を逸らすのは駄目よ」

さやか「こんなものが出てきたら誰だって気がそれるよ!」

ほむら「……む」



44 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:26:41.91 l5AcOoEYo 44 

しまった、頭に血が上ってしまった。

確かに、客観的に見ればそうかもしれない。

私はループの所為で、このパターンだと
巴マミが高い確率で死ぬ事はしっていたが……


ほむら「……だとしても、よ。命に関わる戦いに臨んで、
     ほとんど断りも無く 行き成り 除け者にして。

     怒るなという方が無理よ」

さやか「まぁ、そこ等へんは分からなくもないけどさ……」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「なに? まどか」

まどか「マミさんは、きっと 前のお茶会の時に、
     ほむらちゃんが不安そうにしていたから、

     自分は強いからって、安心させてあげたかったんだと思う。
     あまり責めないであげて……」

ほむら「……」


……私は寛容さが やっぱり 足りないだろうか?

いや、命のやりとりの場で、あれはないはずだ。

駄目な事を駄目だと言ってあげるのも、本人の為のはず。

だけれど、まどかと美樹さやか。

特にまどかの視線に負け、優しげな声で、巴マミに声を掛けた。



45 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:29:17.47 l5AcOoEYo 45 

ほむら「……大丈夫ですか? 巴さん」

マミ「……え、えぇ……」

ほむら「あまり大丈夫じゃなさそうです。
     派手な事をして 気を逸らせてすいません。

     今日はこれで帰りましょう。
     私が送っていきますから」



まどかと美樹さやかは、一瞬 不安そうに互いを見た。

だが、何も言わなかった。

病院に何も無かったことだけを確認し、
二人と別れ、巴マミの部屋へと向う。




46 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:31:37.40 l5AcOoEYo 46 

ほむら「……つきましたね。もう、夜です。晩御飯、どうします?」

マミ「……食欲、ないわ」

ほむら「スープなら飲めますか?」

マミ「そうね……それなら……」

ほむら「……台所、借ります」

マミ「……」


盾の中に食材を入れていた事を思い出し、引っ掻き回す。

カボチャや玉ねぎが入っていた。
ついでに、クリームシチューの元も。

まどか用にストックしてたやつだ。

これで、カボチャのクリームシチューでも作るとする。

巴マミの胃に重くないといいが……。

ちょっと重いかな……栄養はたっぷりだが。

台所に立つ私に、
巴マミは ぽつりぽつりと、話しかけてきた。


47 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:32:06.79 l5AcOoEYo 47 

マミ「あ……、暁美さん、怒ってる……?」

ほむら「……別に怒ってません」

マミ「ほんと……?」

ほむら「……」

マミ「貴方くらい強ければ、私があんな事したら 怒るわよね、当然よ」

ほむら「……私は、強くなんてないですよ」

マミ「うそ」

マミ「貴方、私なんて必要ないくらいに 強いじゃない」

マミ「私の作った結界を あんなおっきな機械で簡単に壊して、
   あの間合いから 一瞬で 私を助けて 敵を倒すなんて……」

ほむら「……」

マミ「あの機械、なに? あなたの魔法で作ったの?」

マミ「私とは次元が違うわね……」

ほむら「……あの機械は 魔法で作り出したものじゃないわ。
     ちょっと 借りてるだけのものよ」

マミ「実際にある機械を、あんな質量と体積のあるものを、あんな短時間で呼び寄せられるの?
   すごい……」

ほむら「……」

マミ「私なんて、いらないわね」



48 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:32:51.25 l5AcOoEYo 48 

巴マミは 追い詰められると 脆い。

どうやら負のスパイラルに入り込んでしまったようだ。

実際、見た事だけから判断すれば、凄い力の持ち主に見えてもおかしくはない。

願いの所為で 能力が特殊、それだけに過ぎないのだが。


ほむら「巴マミ」

マミ「! は、はい……?」

ほむら「私には、貴方が必要よ」

ほむら「私は、貴方と同じなの」

マミ「私と?」

ほむら「1人ぼっちで戦うのは、寂しいわ。

     1人で戦う力があっても、心はそうじゃない」

マミ「……そう、ね。私も……そう……だわ」


49 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:33:39.75 l5AcOoEYo 49 

マミ「ごめんなさい、貴方にいい所を見せようとしちゃったの。
   一緒に戦いたい、信用して欲しいって相手に、やる事じゃなかったわね」

ほむら「その事に関して、私は貴方を許せない」

マミ「……」

ほむら「でも、貴方の優しさから来たって事は、
     理解しているつもりよ」

ほむら「貴方の事、ちょっと信用出来なくなったけど、
     一緒にいる事に対して、信頼する事は出来る……と思う」

ほむら「私の事を信じて、一緒に戦ってくれますか? 巴さん……」

マミ「……はい、暁美さん!」


何とか、持ち直したのだろうか。

動く余裕は出てきたようだ。

巴マミには、食事を用意している間、
風呂に入ってもらう事にした。

魔法少女の状態を解除しても、
精神的ショックからか冷や汗で制服が濡れている。


50 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:34:22.43 l5AcOoEYo 50 

――随分 長く入っているが、巴マミが出てきそうな気配がない。

シチューはあとは煮込むだけなので、
暇になってしまった。

折角出来た時間、軽く掃除や洗濯でもやってやるかと、
浴室に向って 段取りを聞こうとした。

……その時、巴マミの独り言を聞いてしまった。



マミ「きゅうべぇめ……、やっぱ暁美さんが怪しいなんて、嘘じゃないの」

マミ「私を助けてくれたし、あんなにいい子なのに……」

マミ「ちょっと、堅い所はありそうだけど……」

マミ「……」

マミ「ふふ……。パパ、ママ……マミね、もーちょっと、生きていられそうだよ?」

マミ「一緒に、これからも戦ってくれそうな、お友達ができたの」

マミ「もうちょっと、頑張ってみるね」

マミ「こっちで頑張ったら、そっちに行ったとき、マミのこと迎えてくれるよね?」

マミ「パパとママを、見殺しにしちゃった私だけど……」

マミ「パパ……ママ……」



51 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:34:56.08 l5AcOoEYo 51 

マミ「きゅうべぇめ……、やっぱ暁美さんが怪しいなんて、嘘じゃないの」

マミ「私を助けてくれたし、あんなにいい子なのに……」

マミ「ちょっと、堅い所はありそうだけど……」

マミ「……」

マミ「ふふ……。パパ、ママ……マミね、もーちょっと、生きていられそうだよ?」

マミ「一緒に、これからも戦ってくれそうな、お友達ができたの」

マミ「もうちょっと、頑張ってみるね」

マミ「こっちで頑張ったら、そっちに行ったとき、マミのこと迎えてくれるよね?」

マミ「パパとママを、見殺しにしちゃった私だけど……」

マミ「パパ……ママ……」


……巴マミ。

彼女の生い立ちはしっている。

両親と共に交通事故にあい、父母は死。

自分も瀕死の状態で、インキュベーターに助かる事を望み、魔法少女になる。

どうやら、その時 願いによっては父母を助ける事が出来たはずなのに、
それをしなかった自分を悔やんでいるようだ。

ずっと、巴マミは私の先輩という立ち位置で……

でも、そう。所詮14歳の少女でしかない。

ループの中で中身だけは年老いた私とは違い、
彼女には本当は、近くにいてくれる親が必要なのだろう。


52 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/15 22:35:34.20 l5AcOoEYo 52 

ほむら「……巴、マミ……」

彼女の精神的な脆さも、そこに起因しているのだろうか。

本当に支えてくれる人が、いない。

ループによっては、まどかや、美樹さやか、佐倉杏子が近くにはいた。

だが、所詮 後輩。

……もしも、親代わりの人がいれば、精神的な成長を促せる人がいれば
彼女もまた、変わるのだろうか。

そうだとしたら、私…… 私は?

結局、私はまどか以外にも、皆を助けたい。

本当に、仲間となるなら、それはより強くなるだろう。

魔法少女になってる子を救いたいと考えるのであれば、
魔法少女のあり方だって、変えなければ。

色々と、考えねば。




61 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:29:23.75 iikZY6eeo 53 

――翌日、朝。

私とまどか、美樹さやか……それに巴マミは、一緒に学校に向っている。

巴マミを誘ったのは 私だ。

朝一番、巴マミの部屋の扉の前に待機して
拉致してやった。

まどかと美樹さやかも、巴マミを連れてきた私を見て、
ちょっと安心したようだった。


ほむら「……そういえば、仁美は今日は如何したの?」

マミ「仁美……さん?」

さやか「あ、マミさんは仁美の事 まだ知らないですよね」

まどか「私達の友達なの!いつも、4人で登校してるんだよ」

マミ「仲良し四人組なのね」

ほむら「これからは、五人組になりましょう」

マミ「! そ、そうね」

さやか「マミさんなら 大歓迎!」

マミ「本当?」

まどか「勿論です、マミさん。……てへへ、嬉しいな」

マミ「……うふふ……ありがとう」



62 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:31:02.05 iikZY6eeo 54 

さやか「それでね、仁美は、ちょっと体調悪いみたい。
     私のところにメールが来たよ」

ほむら「そう……それは心配ね」

まどか「大丈夫かなあ、仁美ちゃん。お稽古とかでいっつも大変だもんね……
     症状は、結構おもそうなの?」

さやか「二、三日休むかもって言ってたしなぁ……」

まどか「お見舞い行く?」

さやか「うーーん、学校終わったら行くねって、メール送ったら、
     断られちゃった。うつしたら悪いって」

まどか「風邪かなぁ」

ほむら「……」

さやか「仁美が復活したら、マミさんにも紹介しますね」

まどか「すっごくお上品で綺麗な いい子なんだよ!」

マミ「そう、楽しみだわ」

まどか「ふふふふー、仁美ちゃんにマミさんを自慢するの、楽しみだね!」

マミ「えっ?」

さやか「そうだよねー、まどか。こんな綺麗でかっこいい先輩とお友達になれたんだもん。
     ほむらに続いて、仁美に嫉妬されちゃうね」

まどか「だよね、てへへ!」

マミ「そ、そんな わたしなんてqあwせdrftgyふじこlp」

ほむら「……落ち着きなさい、巴さん」


63 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:31:35.20 iikZY6eeo 55 

私が最初からまどか達二人に介入した所為で
巴マミとの仲の進展具合が今一であったが、
それも解消したらしい。

巴マミを私に依存させつつ、
まどかと美樹さやかの二人の仲がいい状態は
理想といっていいかもしれない。

後は、適度に魔法少女になら無いように釘を刺す程度で
この子達は問題ないだろう。

インキュベーターは巴マミには私の悪口を吹き込んでいたようだが、
他に表立っての行動はない。

今後の懸念事項は、志筑仁美か?

全く介入していない佐倉杏子のこともそろそろ考えなければ。



64 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:33:31.79 iikZY6eeo 56 

――しかし、問題は幾らでも発生する。

佐倉杏子をどう攻めるか、計画を立てていると
美樹さやか から、電話が掛かってきた。

外は既に暗く、一般家庭では晩御飯も終わった頃だろう。

中学二年生が外出する時間帯ではない。

だが、私と会いたいという。

動揺した声、鼻を啜る様な音。

……嫌な予感がした。

会う事を約束し、待ち合わせ場所の公園へと急いだ。


ほむら「……さやか。待たせたかしら」

さやか「ううん、ごめんね。こんな時間に呼び出して」

ほむら「いいのよ。理由があるのでしょう?」

さやか「う……、うん……」

さやか「……あのね、ほむら」

ほむら「ええ」

さやか「私、魔法少女になる。ならなきゃ……」


65 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:35:04.89 iikZY6eeo 57 

ほむら「……何を馬鹿なことを」

さやか「馬鹿な事じゃないよ!」

ほむら「上条君がどうかしたの?」

さやか「……っ!? どうして……」

ほむら「いいから、答えて。もしかして、彼の手の事……?」

さやか「……ほむら。ほむらって、本当 鋭いよね」

さやか「ほむらが忠告してくれた事、忘れたわけじゃないよ」

さやか「でも……わたし、あんな恭介見てられないよ……!」

ほむら「……駄目よ。貴方はその道を選んでは駄目」

さやか「だって! 私が犠牲になれば、恭介は、またバイオリンを弾けるんだよ!」

ほむら「……落ち着きなさい」

ほむら「貴方を犠牲にして、上条くんが喜ぶと思うの?」

ほむら「さやか、自分が上条君を犠牲に助かったと、考えて見なさい」

さやか「……分かってるよ! それでも、それでも、私 美樹さやかは、
     上条恭介の為なら死ねるんだよ!」


66 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:35:43.11 iikZY6eeo 58 

ほむら「さやか」

さやか「何よ!」

ほむら「その道は 上条恭介も 殺すわよ」

さやか「……恭介を、殺す……?」

ほむら「さやか、もう一度言うわ。落ち着きなさい」

さやか「……」

ほむら「いい? さやか。 何で、貴方は 私に相談に来てくれたの?」

さやか「……それは、えっと……」

さやか「……やっぱり、怖かったの。
     マミさん、本当に死んでたかもしれない。

     私なんて、恭介を残して、いつ死ぬか分からない……」

ほむら「そうよ」

さやか「……っ!」

ほむら「貴方だけじゃない。私達の仲間になれば、いつ死ぬか分からない」


67 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:36:22.34 iikZY6eeo 59 

ほむら「だから、貴方は私に止めて欲しかったの。
     自分と、上条君が幸せになれる道を、私と一緒に探したかったの。

     わかる?」

さやか「……」

ほむら「そして、お手柄よ、さやか」

さやか「えっ???」

ほむら「命を投げ出すなんて邪道を選ばず、
     貴方は、正解を選べた。

     全て、私に任せなさい」



68 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:37:02.53 iikZY6eeo 60 

さやか「え…… 全て……? えっ?」

ほむら「上条君も治るし、貴方達は幸せになれるわ」

さやか「そんな……、いや、でも」

ほむら「出来るわ」

さやか「……奇跡も、魔法も、あるのかな……」

ほむら「魔法はあっても、奇跡はないわ。

     だから、戦うの。戦って、勝ち取るのよ。
     幸せな未来を」

さやか「……ほむら、私、何をすればいい?」

ほむら「貴方にしか出来無い事。上条君の傍にいて、支えてあげていて」

ほむら「残念ながら、時間がかかる事なの」

さやか「何をするの?」

ほむら「私は貴方達のために、魔法少女、医者の双方から
     神経回復の最高のスペシャリストを見つけてみせる」

ほむら「その二つが手を組めれば、不可能はないはずよ」

ほむら「ただ、そこまでの間を持たせるのは、貴方しかできない」

さやか「……うん、わかった」


69 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:38:03.31 iikZY6eeo 61 

さやか「でも、そんなお医者様を頼むの、お金もかかるし、
     他の魔法少女の助けって、簡単に得られるものなのかな……」

ほむら「問題ないわ。お金の問題じゃないし、伝手はある。
     他の魔法少女の助けっていうのも、
     この件に関わり無く 魔法少女のあり方を私は変えるつもりだったから、
     成し遂げて見せるわ」

さやか「魔法少女のあり方……?」

ほむら「それはスキームが出来たら 改めて話すから。
     今は頭の中にとどめる程度にしておいて」

さやか「うん」

さやか(すきーむってなんだろう……)

ほむら「枠組みの出来てる計画のことよ」

さやか「!!!」



70 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:38:40.52 iikZY6eeo 62 

さやか「と、とにかく……ありがとうね、ほむら」

さやか「私、ほむらに迷惑かけてばかり……じゃない?」

ほむら「ええ、本当ね」

さやか「……」

ほむら「これからも、掛け続けるがいいわ。それが貴方らしい」

さやか「……なにそれ! もう……」

ほむら「ふふ……」

さやか「……ちぇっ、ほむほむさあ」

ほむら「なに?」

さやか「恭介いなかったら、同性でもあんたに惚れかねないね」

さやか「こういっちゃ何だけど、恭介よりずっと男らしいや」



71 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:39:46.14 iikZY6eeo 63 

ほむら「あはっ、それはありがとう……でいいのかしら。
     ま、私はそっちの趣味はないわ」

さやか「それは本当かなー。
     ほむほむは まどか見る目は また何か違う気がするんだよね」

さやか「しかも、今日の朝、マミさんとも怪しかったし……」

ほむら「失礼ね。男に興味を持った事もないけど、
     女の子をそういう目で見たこともないわよ」

さやか「……未だ男に興味を持ってない時点で、
     目覚めてないだけで 素質はありそうじゃん……」

ほむら「……ないわよ、たぶん」



美樹さやかが 私に笑いかけてくれる。

不思議な暖かみが、私を包んできた。

今までのループでは反発される事の方が多かった。

その美樹さやかが、そう、まるで私に力を与えてくれるかのよう。

そんな気さえした。

こんな事は初めて……


72 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:40:28.01 iikZY6eeo 64 


さやか「ね、ほむほむ。私、ほむほむやマミさんの為にも、
     魔法少女に、なるべきなんじゃないかって、そう思った」

ほむら「……」

さやか「でも、本当に、私達のこと、幸せになってくれるよう行動してくれる ほむらを見てね、
     奇跡に頼らずに、戦う・・・そりゃ、魔法少女だけど、
     過剰に頼らず、現実的に戦おうとする ほむら見てね、考え直したよ。

     私は、今の私なりに、戦うよ。恭介の事、幸せにしたい」

ほむら「そうよ、そうするべきだわ」

さやか「そして、ほむほむの為にも、今のわたしなりに、力になりたいから」

ほむら「・・・そう。ありがとう」

さやか「これは、その証」

ほむら「……?」




73 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:40:55.29 iikZY6eeo 65 

美樹さやかは、自分の髪留めを外した。

そういえば、このループの美樹さやかの髪留めは、ff(フォルテッシモ)の飾りがついている。

いつもの髪留めとは、違うような・・・


さやか「この髪留め、付き合いだしてから 恭介に貰った髪留めなの」

ほむら「ええ・・・」

さやか「これね、ffだけど、f(フォルテ)一つずつに分離できるんだ」

さやか「勿論、クリップは片方にしかついてないけど・・・」

さやか「こっちの、クリップのついてる方、ほむほむ、持ってて!」

ほむら「ええっ? ちょっと待って、上条君に貰ったものなんでしょう?」

さやか「ほむほむと私は、これから戦友になるんだよ。
     フォルテは、強くって意味。
     フォルテが二つのフォルテッシモで、非常に大きく、強くって意味」

さやか「ほむほむと、私が一個ずつもってることで、
     私達二人で、より強くなるって、そういう誓い」

ほむら「……そう、わかったわ。でも、クリップなしのほうでいいわ」

さやか「大丈夫、私は髪留め一杯もってるし、すぐ髪につけられるよう加工できるし」

ほむら「ふふ、わかった。じゃ、遠慮なく、貰うわ」

さやか「うん!」



74 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:42:03.77 iikZY6eeo 66 
宜しくね…… 戦友さん!

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75 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:43:06.22 iikZY6eeo 67 
 
私が さやかから髪留めを受け取った瞬間、
先程感じた暖かみが、さらに強くなるのを感じた。

……絶対に、さやかと 上条恭介を幸せにしてやろう。

そう心に誓った。



76 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:44:18.90 iikZY6eeo 68 

――さやかを家に帰した後、私はそのままパトロールを始めることにした。

……巴マミと合流するか?

いや。

今日は、上条恭介の手が不治であると判明した日だ。

高い確率で、工場街の一角で箱の魔女が現れるだろう。

志筑仁美が巻き込まれる可能性が高いし、
時間的猶予は少ないかもしれない。

向うとするか・・・


案の定、生気のない人間達がわらわらと
工場内に入っていく姿が見えた。

……! まずい、やはり 志筑仁美の姿が見える。

さやかと上条恭介が付き合いだした事で、
志筑仁美は明らかに元気を無くしていた。

魔女の口付けを受けるまでになっていたとは……

志筑仁美を昏倒させ、拉致。

最悪、毒ガスが発生しても
影響がでなそうな離れた場所に安置した。



77 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:45:15.06 iikZY6eeo 69 

それから私は集合場所らしき屋内の様子を窺う。

混ぜちゃいけない2種の洗剤を
混ぜ合わせる準備をしてる人がいた。

ゴム弾を用い、
準備に掛かっている人たちを気絶させる。


それから屋内に侵入、洗剤を始末。

生気のないやつ等が呻き声をあげながら
こちらに向ってきた。

その対抗策として、
床にとある液体を放水銃で撒く。



78 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:46:23.91 iikZY6eeo 70 

今散布したものは、地面に撒く事で床の摩擦係数を0.01以下にし、
相手を立っていられなくして無力化する、アメリカ軍が研究中の非致死性兵器である。

理性を失っている彼らでは、
何も出来ず、立ち上がろうとしては滑って転びを繰り返し、立ち往生している。

魔女の反応がある部屋に向いながら
先程の液体を散布し、魔女の結界に近寄らせないようにした。


――箱の魔女の結界内。

浮遊感過多な空間であり、足場がない。
私はこの魔女は嫌いだ。

人間は地にしっかり足をつけているべきだからだ。

そうでないと 銃火器は狙いにくいし……。

時間を止めても、私自身に触れている物は
時間が流れるし、反動はある。

さらに、魔女は、相手の心を読む力を持ち、
私の様に考えながら戦うタイプには厄介。

実際、この魔女はさやかの様な
近接系でガンガン攻めるタイプの魔法少女の方が相性がいい。

考えるより先に殴れという事だ。



79 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:46:49.73 iikZY6eeo 71 

……盾から回転式拳銃 S&W M19 を取り出し、
箱の魔女へ向ってぶっ放す。

だが、弾道が反れる。

やはり飛び道具が当たりにくいのか。

爆発性ガスを結界内に満たして爆発させてやる手段もあるが、
ちょっと勿体無い。

仕方がない、近接戦闘は慣れていないが、やってやろう。
時間さえ止めれば、どうにかなるだろう。

なにか、手ごろな武器は……まだ、ゴルフクラブあったよな……と盾の中を探る。


ほむら「えっ?」



80 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:48:27.96 iikZY6eeo 72 

敵の前にも関わらず、思わぬ事態に固まってしまった。

自分の右手には、さやかが魔法少女となった際に
よく召喚して使っていた剣があった。

しかし、今回はさやかは魔法少女になっていないし、
そもそもこの場にいない。

以前のループでもらった事もない。」

似た剣を盾に入れた覚えも無い。

何故……?


考えが纏まる前に、使い魔どもが近寄ってくる。

剣を片手に、盾の中の武器の在庫を思い出しながら、
この魔女を倒す戦略を考える。

しかし、それを実行する前に、
勝手に手が、体が動いた。

剣による近接戦闘はほとんど経験はないが、
不思議なほど自分の手にその剣は馴染み、
敵の攻撃を防ぎ、しまいには圧倒した。

使い魔を駆逐し、次は魔女へ……

グリーフシードが落ちたときに、気がついた。
この動き、さやかの動き。



81 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:49:39.42 iikZY6eeo 73 

ほむら「どういうことなの……? 何故、彼女の力が……」


私はソウルジェムを見る。

普段とは違う色の輝き、
美樹さやかを象徴する、澄んだ水色の輝きを放っていた。

その輝きは徐々に弱まり、
私のソウルジェム 本来の色に戻った。



ほむら「さやかの力、便利ね……。そういえば、全体的に筋力も上がってた。
     恐らく、回復力も……」

ほむら「さやかが、力を貸してくれてるというの……?」


妙な暖かみを感じたのは確かだ。

あの時 感じられたのは、さやかからの友情であろうか。

深い友情で結ばれた相手から、
魔法少女は力を借りられるのか?


82 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:50:46.20 iikZY6eeo 74 

……そういえば、時間遡行能力に停止能力。

たいして素質の無い自分には過ぎた能力だ。

何故自分にこのような能力が手に入ったかというと、
ワルプルギスの夜が現れる前一ヶ月の期間限定の能力であり、
また祈りを体現する能力であったからだと考えている。

まどかを守れる自分になりたいという強い願いがあってこそだと思っていた。

……それを差し引いても、強力すぎる能力だ。

そう、このような能力、例えば、まどか程の素質の少女が望めば、
手に入るかもしれないが……。

まさか、この時間遡行能力や時間停止は
私と最初の魔法少女まどかの間に生まれていた、絆が産んだのだろうか……

だが、まどかの能力は時間に関するものでは無かったが。



83 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:52:16.23 iikZY6eeo 75 

――考えても分からない事は一旦置いて置く。

インキュベーターに聞けば分かるかもしれないが、
どっちかというと 隠しておきたいところ。

むしろ、攻撃手段が増えた、
そう考えればいい。

回復力が さやかの力で上げられるなら、
上条恭介も助けられるのかもしれない。

いい事尽くめ、ということにしておいて。

それより、志筑仁美をこのまま捨て置けない。

錯乱している者達は今は動かなくなっている。

原因不明だが倒れている人たちがいると、匿名で通報し、
私は志筑仁美を抱え、家におくることにした。


……途中で、志筑仁美の目が覚めた。



84 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:53:08.67 iikZY6eeo 76 

仁美「あ、あれ? えっと…… ほむらさん」

ほむら「……どうやら、大丈夫な様ね、仁美」

仁美「あ、ええ……。でも、なぜ私は……お姫様だっこされているのでしょう?」

ほむら「嫌かしら? 姫様」

仁美「……え、あの、嫌なわけじゃないですけれど……その……」

ほむら「……貴方、覚えてない? 何も?」

仁美「……えっと、はい……」

ほむら「町工場の小さな工場で、集団自殺に巻き込まれそうになってたの」

仁美「……えっ!?」


85 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:54:40.19 iikZY6eeo 77 

ほむら「貴方、明らかに心神喪失状態というか……
     普通じゃない状態で、街をふらふら歩いていたの」

ほむら「ただ、知らない人たちと一緒だったから、
     声が掛けづらくて、様子を窺ってて」

ほむら「……そしたら、工場に入っていって、
     混ぜちゃいけない組み合わせの洗剤を混ぜて

     皆で自殺しそうになっていたの……」

ほむら「助け出して、貴方のお家に向っているって所よ」

仁美「……」

ほむら「……大丈夫?薬を使われたのかもしれない、何か体調に異常は?」

仁美「……たぶん、大丈夫だと思います」

仁美「すいません、ほむらさん。助けていただいて、ありがとうございます」



86 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:55:06.58 iikZY6eeo 78 

ほむら「いいわ。貴方が無事なら、それで」

仁美「……えっと、その他の方々は? その、一緒に自殺しそうだったという……」

ほむら「心配要らないわ。無力化している」

仁美「……無力化???」

ほむら「貴方を助けるのに、ちょっとばかし 邪魔だったからね。
     大丈夫。警察には知らせてあるから、その内 助けがいくでしょう」

仁美「……ありがとうございます。えっと、私の事は……?」

ほむら「貴方の事は、伏してあるわ。警察沙汰になりたくないでしょう?」

仁美「……ありがとうございます」


87 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:56:06.26 iikZY6eeo 79 

仁美「……私、志筑家の者ですから、その、この辺りではそこそこの名家でして、
    その様な事に関係していると
    家の者どもに知られたらと思いますと……ぞっとします」

仁美「志筑の名を汚すような事をするな……と……お怒りを頂くところでした……」

ほむら「……」

ほむら「……貴女も、苦労しているのね」

仁美「私は志筑の娘として生まれてきたのですし……私にとって、当たり前のことなんです」

仁美「だから、そんなことは……」

ほむら「仁美にとっても、当然なことなのかしら?」

仁美「……」

ほむら「貴女は、私、ほむらの前では、ただの友人の、仁美よ」

ほむら「別に、志筑の名に興味はないわ」

ほむら「貴女の話を聞かせなさい」

ほむら「あんな状況に陥っておいて、何もないとは言わせないわよ」

仁美「……」

仁美「……私、私は……」


88 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:56:38.37 iikZY6eeo 80 

腕の中の仁美は、ぽつり、ぽつり愚痴をこぼしはじめた。

家のこと、美樹さやかと上条恭介のこと、友達のこと……

私は、志筑仁美の話を黙って聞いていた。

愚痴をこぼし終わると、志筑仁美はうな垂れた。

そして、消え去りそうな小さな声で一言。

「私って本当、最低……」そう呟いた。


ほむら「……どうして?」

仁美「本当は、志筑なんてうっとうしい。普通に遊びたい」

仁美「本当は、さやかさんの事が妬ましい」

仁美「そして、私は本当の友達なんかいないんじゃないかって、
    勝手に疎外感を感じて……」

仁美「もう、何もかもいやになって……」

仁美「助けてくれたほむらさんに、愚痴ばかりこぼして……」

仁美「最低ですわ……」


89 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:57:08.68 iikZY6eeo 81 

ほむら「……いいんじゃない?」

仁美「えっ?」

ほむら「仁美が最低になっても、さやかより随分上よ」

仁美「……それは、さやかさんに失礼ですわ」

ほむら「そっか、友人の悪口を簡単にいう、私って最低ね」

ほむら「貴女と同じよ」

仁美「……くすっ……そうかもしれませんわね」

ほむら「笑ってくれたわね」

仁美「…………はい」

ほむら「その方がかわいいわよ」

仁美「……!」


顔を赤くし、背ける志筑仁美。

私に照れた顔を見せたくないのか。

やっぱり、年頃の娘さんは初々しい。

昔は私も こうだったのだろうか……


90 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 06:57:39.18 iikZY6eeo 82 

ほむら「……貴方の家に着いたわ」

仁美「……着いちゃいました」

ほむら「降ろすわよ?」

仁美「……」

仁美「……ごめんなさい、ほむらさん」

ほむら「なに?」

仁美「最低ついでに、もう一つ」

ほむら「……」

仁美「迷惑だと思いますけど、もう少し、貴方の腕の中に居させてください」



……友人として、少し甘えてくれ始めたという事だろうか。

仁美の我がままに、付き合ってやることにしよう。


今夜はまだまだ、長い夜になりそうだ。



103 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 19:52:29.04 iikZY6eeo 83 

――眠い。魔法で睡魔を誤魔化せなかったら、
今日は休んでいた所だろう。

朝の集合場所で、私が今日は一番遅かった。

迎える4人が、挨拶してくれる。

もう、巴マミと仁美は普通に談笑しており、
互いの自己紹介が済んでいる様だ。


さやかと仁美は 何故かテンションが高い。

ちょっと、まどかとマミが不審そうな顔だ。



104 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 19:54:26.33 iikZY6eeo 84 

まどか「……なんか、さやかちゃんと 仁美ちゃん、
     ほむらちゃんに盗られちゃった気がする」

さやか「何言ってんの、まどか。私は恭介の物で、まどかは私の物だー!」

仁美「ふふっ、盗られたなんて、嫌ですわ」

ほむら「まどか、貴方を仲間はずれにするつもりなんてないわ」

ほむら「それなら、私は まどかの物って事にしましょう」

まどか「ふぇっ!? ほむらちゃんがっ!?」

さやか「おお、じゃあ、まどかの物は私の物だから、ほむらは私の物か!」

ほむら「その理論だと、最終的に 私やまどかは 上条君の物になるのね」

さやか「それ、私が要らなくなりそうだから やめて!」




105 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 19:54:55.89 iikZY6eeo 85 

仁美「ねえ、まどかさん。ほむらさん、幾らで売っていただけますか?」

まどか「と、友達を売ることなんてできないよっ!」

ほむら「つまり、私はずっと、まどかのものってわけね……」

まどか「あ、あうー、そ、そういう意味じゃ……っ」

さやか「ひゅーひゅーっ!」

仁美「妬けますわね」

さやか(あれ……仁美、なんか目が据わってる?)




106 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 19:55:25.25 iikZY6eeo 86 

さやか「ところで、マミさんは私達の共有財産だよね」

マミ「えっ? 私? 共有財産なの?」

まどか「みんなのお姉さんだもん、てへへ」

マミ「……ふふ、そうかしら、お姉さん……か」

さやか「うんうん、ほむほむも同い年の癖に年上っぽいけど、
     お姉さんって言うか、頼れる漢って感じ」

仁美「わかる。漢女ですわね」

マミ「私よりも年上みたいに感じるわ」

まどか「じゃ、ほむらちゃんはみんなのパパだ!」

さやか「おかんって感じもするけどね」

ほむら「ちょっと待ちなさい」




107 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 19:56:11.07 iikZY6eeo 87 

……あー、朝から女子中学生のテンション辛い。

あんまり寝て無いのに。

あくびを小さくすると、巴マミに気を使われた。

「暁美さん、何かあったの? 大丈夫?」とテレパシーが飛んでくる。

私は「魔女がらみに魔法少女の契約絡みで昨日ちょっとね。詳しい話は、後で話すわ」と返した。


……巴、マミ。

はあ、おかん……かぁ。


いけない。気持ちを切り替えましょう。

今日こそ、佐倉杏子を攻略しなければ。




108 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 19:57:45.57 iikZY6eeo 88 

――と思い、巴マミに断って 風見野に向おうとする寸前。

魔女の気配を感じた。

こいつは確か 結構強い魔女だ。

仕方なく、巴マミと二人、魔女狩りに向う。


ほむら「……この結界、影の魔女ね。以前、同じタイプの魔女と戦った事があるわ」

マミ「影の魔女?」

ほむら「ええ。結界は一本道で、奥には太陽をモチーフにした塔のようなものがあるの」

ほむら「その塔に一心不乱に祈ってる魔女よ。敵を前にしても背中を向け続けるわ」

マミ「……こちらの攻撃し放題ってこと?」

ほむら「いいえ。木の枝状の触手のようなものを背中から生やすの」

ほむら「手下も用いて全方位から攻撃してくるし、かなり早くて正確よ」

マミ「厄介な相手ね」



109 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 19:58:36.89 iikZY6eeo 89 

ほむら「問題ないわ。貴女という遠距離攻撃のスペシャリストがいるのよ?

     私は貴方に近づく使い魔や触手の攻撃を潰すから、
     魔女本体への攻撃は貴方に任せるわ」

マミ「わかったわ、暁美さん。……でも、近接戦闘って、貴方得意だったかしら?」

ほむら「まあまあ使えるわよ、私。
     貴方がいるなら、こっちにシフトしてもいいかと思ってね。
     弾薬の節約にもなるし」

マミ「なるほど」

嘘だが。

本当は、手に入ったさやかの力を試したい。

私のソウルジェムは青く輝き、さやかの力を体現している。




110 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 19:59:48.82 iikZY6eeo 90 

影の魔女と対峙し、巴マミとのコンビプレー。


……これがかなり嵌った。

私は戦いの経験が さやかとは段違いであるし、
少なくともコンビプレーにおいては、
今までの時間軸のさやか本人より上手く戦えている自信がある。

二人ともほぼ無傷で撃破できた。

私も軽い切り傷が出来たが、
さやかの治癒力のお陰で既に消えている。

私の戦術の幅はこれでかなり広がったといえる。

気になる点といえば、一つ。

これは自分の能力を使うより、ソウルジェムの消耗が激しいらしい……

慣れの問題かもしれないが、研究していくとしよう。


111 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:02:53.58 iikZY6eeo 91 

結界が消え、解散しようとした時……

奴が現れた。



QB「やあ、二人とも。君達が揃うと、安定感が違うね」

マミ「きゅうべぇじゃない、どうしたの? 一昨日から姿を見せないけど」

QB「僕にも色々あるんだよ」

ほむら「……じゃあ、今更 何をしに姿を現したわけ?」

QB「……」

マミ「暁美さん……?」

QB「いやね、影の魔女……エルザマリアは中々強力な魔女だ。

   それをいとも簡単に撃破して見せた君達に、
   とっても有益な情報を聞かせてあげようと思って」

マミ「有益な情報?」

QB「うん、彼女の性質は独善。全ての生命のために祈り続ける、心優しい魔女だったんだよ」

ほむら「……それが?」

QB「魔女になる前だって、正義感の強くて、信心深い子でね」

ほむら「!?」

マミ「魔女になる前?」



112 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:04:31.31 iikZY6eeo 92 

ほむら「……きゅうべぇ。貴方、何をいいだすの?」

QB「僕が言うまでも無く、君は知っていそうだね。暁美ほむら。
   でも、マミは知らない。だから、何が魔女になるのか、教えてあげようと思ってね」

マミ「……使い魔が成長して魔女になるんじゃないの?」

QB「大元の魔女はどうやって生まれたと思ってるんだい? マミ」

マミ「魔女は呪いから生まれた、絶望を振りまく存在……」

マミ「ん……? 魔法少女が希望を振りまく存在で、人間の少女から生まれる。
   とすると、もしかして魔女だって……」

QB「中々察しがいいね、マミ。でも、それだけじゃまだ足りないよ」

QB「いいかい、マミ。魔女というのは……」


113 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:06:22.06 iikZY6eeo 93 

ほむら「そこまでよ、待ちなさい。インキュベーター」

QB「……ふうん。その名前も知ってるんだね」

マミ「いんきゅべーたー……?」

ほむら「なぜ、それを突然 明かす気になったのかしら?」

QB「それは勿論、君の所為だ。
   君の所為で、エネルギーの回収効率が非常に悪くなった」

ほむら「ざまぁないわね」

マミ「きゅうべぇ……あの……」

ほむら「それで、マミに教えようって訳。なるほどね?」

ほむら「真実を知られて対策をとられるリスクをおかしてまで、
     全てを知った時の絶望に掛けようって事?」

QB「そうだね。それだけじゃ、百点満点じゃないけど……
   君に教える筋合いではない。
   マミに魔法少女の真実、教えるまで 黙っててくれるかな?」

ほむら(ワルプルギスの夜の時の戦力を言っているのね……)

ほむら「……私からも一つ、教えてあげる事があるわ、インキュベーター」

QB「なんだい?」

ほむら「なぜ、私が全てを知っているか。なぜ、貴方が私の事を覚えていないか」

ほむら「私の願いの所為だと、言ったわね」

QB「うん、確かに言ったね」

ほむら「私が貴方達がまともに活動出来ないよう、
     貴方達の存在や魔法少女、魔女の存在にバグを生じさせる様、祈ってたとしたら?」

ほむら(嘘だけど)

QB「……なんだって?」



114 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:07:56.64 iikZY6eeo 94 

ほむら「早く調査に戻った方がいいわよ。
     貴方の仕事に影響を及ぼしているのも、そのバグのおかげ。
     時が過ぎるほど、さらにその影響が大きくなるわ」

QB「……先程の君が発現したイレギュラーな能力もバグの影響かい?
   まるで他の魔法少女の力を借りているようだったが」

ほむら「ふふっ、そうよ」

ほむら(おお、ナイス勘違い。でもインキュベーターも知らないのね)

QB「……いいだろう、ほむら。僕はこの場を去るよ」

QB「だけど、僕はマミに「魔法少女の真実」というキーワードを吹き込むだけで充分なんだ」

QB「真実を、暁美ほむら、君から聞くか、僕から聞くかの僅かな差にすぎない」

QB「君が嘘を言ったって、マミは僕に確認を取るだろうから……」

QB「君のそのはったりかもしれない発言も、
   ただ事態の進展を少しばかり遅らせるに過ぎないんだよ」



115 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:09:41.49 iikZY6eeo 95 

QBは立ち去った。

私のはったりで、上手く立ち去らせる事が出来た。

確かに、マミは真実を知る事で、
絶望して魔女になるか、自殺する可能性が高い。

マミが自殺する場合だって、エネルギーこそ回収できないが
ワルプルギスの夜の撃破の可能性が低くなる分、
インキュベーターに利する事になる。

……だが、インキュベーター達は やはり感情を上手く理解できていないようだ。

同じく真実を知るとしても、
伝える相手、伝え方によって、反応は変わるものだ。



マミ「……」

ほむら「……知りたい? 巴さん」

マミ「もちろんよ、だって、もしかして、私が今まで殺してきた魔女って……」

ほむら「……長い話になるわ」

ほむら「私か、貴方の部屋に移動してから話をしましょう」

マミ「……ええ、わかった。私の部屋に、行きましょう」



116 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:19:22.93 iikZY6eeo 96 

道中は無言。

沈黙の時間を利用し、話す内容について考える。

いっそ、ループの事まで、全て話してしまうか?

いや、それは避けたい。

私の繰り返しを明かす事による、メリットは少なかろう。

むしろ、まどかに知れた場合、まどかを追い詰めるデメリットとなる。

これが決定的だ。

インキュベーターにも 時間遡行について知れる可能性が増えるのは避けたい所だ。

私の適当な嘘から生まれた とんでもない誤解を続けて、踊り続けて欲しい。

巴マミ以外にも、魔法少女の真実は兎も角、ループは話さないでおこう。

仲間にも嘘をつくのか、真実を隠すのかと、
全てを知るものがいれば 責めるかもしれないが構うものか。

そんな者はいないし、仲間を守る為なら、
多少の良心の呵責くらい、耐えてみせよう。

ただ、当然 時間遡行その他の事を話さないのだから、
ワルプルギスの夜の警告を予め出来ない。

どの道、余計な不信感を生む事が多いから、どうでもいい。

どうせ、インキュベーターはワルプルギスの夜の出現について、
早めに警告をしてくる。

最初の時間軸でも、巴マミは私と知り合ってすぐに
ワルプルギスの夜について言及している。

あいつが伝えたのだろう。

現状でも、明かした方が まどかに契約を促す事になると思われる。

警告時に、私も初めて知った顔をすればいいだろう。

それまで、秘密裏にワルプルギスの夜討伐計画を進め しらばっくれる。


117 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:20:42.28 iikZY6eeo 97 


――そんな事を考えながら、巴マミの部屋に到着。

暗い部屋で、電気もつけずに二人向き合い、
会話を始めた。


ほむら「巴さん……」

マミ「はい」

ほむら「真実が聞きたいのね? どんな真実でも、聞く覚悟はある?」

マミ「……当然よ。私は知らなきゃいけないわ」

ほむら「……なら、一つ条件があるわ」

マミ「条件……?」


ほむら「貴方を抱かせなさい」







118 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:22:23.13 iikZY6eeo 98 

マミ「……」

ほむら「……」

マミ「……えっ!?」

ほむら「駄目だというなら、この話はなかった事に」

マミ「えええええっ、いや、ちょっと、待って! 何よ、その条件!」

マミ「……というか、貴女、そっち系だったの!?」

ほむら「何を誤解してるか知らないけど、頬を染めないで頂戴。
      的なニュアンスで考えているなら、答えはNOよ。

     少なくとも、貴女相手にそんな気分にはなれないわ」

マミ「私相手にはって……。じゃあ、なんなのよ、その条件」


119 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:23:40.92 iikZY6eeo 99 

ほむら「貴女を拘束するためよ」

マミ「拘束……?」

ほむら「これから話す事は、貴女にとってかなりショックが大きいと思うわ。
     貴方の想像を超えるぐらい。貴方の正気を失わせるくらいに」

マミ「……」

ほむら「信じる、信じないは貴女の勝手だけれど、
     信じてくれた時に、私と貴女を守る為の手段よ」

マミ「……そんなに、酷い事なの? 魔法少女の、真実というのは」

ほむら「私の昔の戦友に、錯乱して、
     仲間の魔法少女の命を奪った人がいるわ」

マミ「……っ!?」

ほむら「貴女の事を信じないわけじゃないけれど、お願いよ。抱かせて頂戴」

マミ「……そんな事が不安なら、私を縛ればいいじゃない。ロープか何かで」

ほむら「……」

マミ「……」

ほむら「……守りたいのよ」

マミ「えっ?」

ほむら「貴女の、心を。貴女は、大事な人だから」

マミ「……大事な人?」

ほむら「ええ。私じゃ役者不足かもしれないけど、少しでも支えられるなら……」


120 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:25:10.95 iikZY6eeo 100 


マミ「……」

ほむら「……」

下を向いて固まっている巴マミを、抱き寄せる。

拒絶するか迷うように 少し体が動いたが、
結局 私の腕から逃げようとはしなかった。

座ってる私の胸に、マミがしな垂れかかっている形だ。

その格好で、マミの髪の毛を手で梳きながら……
それから、私は真実を語った。

魂のありか。

それから、少女が女になる時のこと……。

インキュベーターのこと。

一方的に語る私。

巴マミはというと……静かに聴いており、特に反応は無い。



121 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:27:11.15 iikZY6eeo 101 

ほむら「……以上よ。それが私が知る真実」

マミ「……」

ほむら「信じて、もらえるかしら……?」

マミ「……信じたくない」

ほむら「そう」

マミ「でも、落ち着いて考えて見れば、納得の出来る話」

マミ「じゃあ、私達、魔法少女は、死ぬしかないじゃない」

マミ「いえ、そもそも、私達 死んでるのよね。それに、元・魔法少女の子を殺して……
   私、化け物なんだ……。消えるしかない……」



122 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:28:45.03 iikZY6eeo 102 

ほむら「そんな事ないわ」

ほむら「私達は、生きた、人間よ」

マミ「……どこが? 魂を石ころに封じられて、体はゾンビ……」

ほむら「そんな風に私も捻くれた事があったわ」

ほむら「でも、違う。人間を人間と決定付けるのは、
     魂の在り処じゃないわ、魂のあり方よ」

マミ「……あり方?」

ほむら「そうよ、貴方が実際にどう考えて、どう行動するか」

マミ「……どう行動するか……」

ほむら「そもそも、貴方は生身の人間というものを特別に考えすぎよ」

ほむら「魂が肉体にあったときだって、結局私達の意識は、
     複雑に絡み合った脳神経が 
     電気信号でやり取りしあった結果、生まれてるに過ぎない。

     それを無機的に再現する事だって、人間の脳科学でだって、
     いつかは可能だっていわれてるわ?」

ほむら「それなら、前の体と、今の体……」

ほむら「有機的にやってるか、無機的にやってるかの差にすぎないのでしょう」

ほむら「割り切ってしまえば、些細な事でしかないわ」

マミ「そんなに簡単に割り切れない!」

ほむら「でしょうね。でも、歳をとれば割り切れるようになるわ。
     それまで、蓋でもして 心の奥にしまってなさい」

マミ「……」



123 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:30:48.42 iikZY6eeo 103 

ほむら「それより、今まで自分が普通の人たちを
     魔女から救ってきたっていう功績を、誇りに持ちなさい」

ほむら「魔女だって、呪いを振りまく存在から開放されて、喜んでいるはずよ」

ほむら「悪いのは、全てこのシステムを作ったインキュベーター。いい?」

マミ「……それって、自分の都合のいい所しか、見てないだけじゃない?」

ほむら「そうね、でも間違ってもないでしょう?」

ほむら「そうやって、自分の都合のいい所をみるのも人間よ。

     皆、ある程度はそうやって生きてるの。
     でないと、普通の人間だって生きていけないわ。
     生きてる、それだけで、色んな悩みを抱えていくことになる。

     全部、真正面から受け止めていたら壊れるわよ。適度に受け流さなきゃ」

マミ「貴方は、強いのね。切り替えが上手いわ。
   本当に、私より年下なの……」

ほむら「……今回で34歳になるわ」



124 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:31:55.26 iikZY6eeo 104 

マミ「……え? 何を言って……どうみても、そんな歳には…… というか、中学は?」

ほむら「魔法よ。外見も、戸籍も、魔法でどうとでもなるわ」

ほむら(勿論 嘘だが)

マミ「うそ……たしかに中学生らしくない所はおおいけど」

ほむら「もう貴方くらいの子供がいても、おかしくないのよね。ヤンママなら」

マミ「……」

ほむら「ふふふ、驚いたかしら?」

マミ「……信じられないけど、貴方ならありえそう……」

ほむら「……それって、おばちゃん臭いってことかしら」

マミ「あ、違うわよ! うん!」

ほむら「そう……」



125 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:33:16.58 iikZY6eeo 105 

マミ「でも、何で中学生になったの……?」

ほむら「秘密よ」

マミ「なんで!」

ほむら「その方が格好いいじゃない」

マミ「……なにそれ、なくはないけど」

ほむら(なくはないの?)

ほむら「魔法少女なら、中学生の方が都合がいいのよ」

マミ「そんなものかしら……」

ほむら「そうよ。それより、信じてくれたのなら……。マミ」

マミ「なに?」

ほむら「前から、考えていた事があるの」

マミ「……? 考えていた事……?」


ほむら「貴方、私の子供にならない?」




126 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:34:01.54 iikZY6eeo 106 

マミ「……」

ほむら「……」

マミ「……ええええええっ!?」

ほむら「……」

マミ「こ、こ、子供? 暁美さんの!?」

ほむら「嫌かしら? 言っとくけど、本気よ?」

マミ「な、な、なんで……」

ほむら「貴方のママになりたいから」

マミ「ま、ママって……」

ほむら「ママって呼んでくれる?」

マミ「い、いやよ。恥ずかしいわ……後輩だって思っていた子を」


127 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:35:04.68 iikZY6eeo 107 

ほむら「誰に対して恥ずかしいの。私しか見ていないじゃない」

マミ「だから恥ずかしいのよ!」

ほむら「……ふむ、年頃の娘さんは難しいわね……」

マミ「私より幼く見える外見で何を言ってるの!」

ほむら「細かい事はいいのよ」

マミ「細かいかしら……」

マミ「……それより、暁美さん」

ほむら「呼んでくれないのね……なに?」

マミ「……割り切って生きていて、どうするの?」

マミ「早いか遅いかなだけ、知ってしまったからには、自ら命を絶たなきゃいけないわ」

マミ「それなら、いっそ……」

ほむら「私は、貴方に生きていて欲しいわ」

マミ「だから……!」


128 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:37:38.54 iikZY6eeo 108 

マミ「先延ばしすると……余計、怖いじゃない! いつか、自殺しなきゃいけない……」

マミ「それなら……、勢いにまかせてっ!!!」

ほむら「大丈夫よ、マミ。貴方に自殺なんて私がさせないわ。それに、魔女にもさせない」

マミ「魔女に……させない?」

ほむら「もし、貴方が絶望の淵にたって魔女になりかけたとしたら」

ほむら「その時も、こうやって、私の腕の中で……私が眠らせるわ」

マミ「……」

ほむら「貴方に自殺なんて怖い事はさせない。だから、安心して生きて、マミ」

ほむら「貴方の人生、私が責任を取る」

マミ「暁美さん……貴女……」

ほむら「一緒にいるわ、貴方と」

マミ「……」



129 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:38:51.90 iikZY6eeo 109 

マミ「……貴方、知ってるの? 知ってて、そんな事を言ってくるの?」

ほむら「……?」

マミ「私、お父さんも、お母さんも、事故で死んじゃって、
   私も死にそうで、そのとき、QBが来て……」

マミ「自分が助かる事だけ考えて……」

マミ「私は……パパ……ママ……」


顔を決して上げようとしない巴マミは、
体全身を細かく震わせている。

真実を告げて彼女を苦しめた上、
さらに辛い事を思い出させて、
追い討ちを掛けたようなものだっただろうか……


130 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:39:21.74 iikZY6eeo 110 

マミ「ゾンビになって、パパもママも見捨てて、元魔法少女を食い物にして……」

マミ「私はきっと、死んだ後にもパパやママには会えないのね」

ほむら「……」

マミ「……でも、そうなの。私は、結局、死にたいと思っても 死ぬのが怖い……」

マミ「一人で生きるのも怖い」

マミ「ねえ、本当に 甘えてもいいの? 貴方が傍にいてくれて、
   最後の時は、貴方にこうやって抱かれながら……」

ほむら「我慢する必要は無いわ、マミ。私は交わした約束は忘れない」

マミ「……っ、……うぅうううう、おかしいよ、涙が……」

ほむら「……泣きたいだけ、なけばいいわ」




131 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:40:17.51 iikZY6eeo 111 

巴マミは静かに泣きつづけた。

30分ほど、そうしていただろうか。
泣き止んだ後、そのまま寝息を立て始める。

強がってても、14、5年しか生きていない娘だ。

今は年齢相応に見える……。

犠牲にしちゃいけない。

まどかだけじゃない、
この子の未来だって変えなきゃ。

私は絶対、魔法少女の未来を変えてやる。



……巴マミの体勢を少しずらし、膝枕をしてやる。

この体勢ではまともに眠れそうにはない。
今夜もまた、長い夜になりそうだ。

痺れや血行の悪化、魔法で改善しなきゃなぁ。


132 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:42:37.49 iikZY6eeo 112 

――

ほむら「……ん、んんー…… ほむ……」

マミ「あ、起きた……?」

ほむら「あ…… 朝なのね。おはよう、マミ」

マミ「おはよう……、その……ずっと膝枕させてて、ごめんなさい」

ほむら「いいのよ。それくらい、お安い御用よ」

ほむら「それより、貴方はよく寝れた?」

マミ「うん、久しぶりに、よく寝た」

ほむら「そう……良かったわ」

マミ「……私、結構 年上の貴方に生意気いってて、あなたを振り回したのに……。
   あなたって、本当に心が広いわね」

ほむら「大したことではないわ」

ほむら「今回の私は 寛容さ・おかん級を目指しているからね」

マミ「今回……?」

ほむら「気にしなくていいわ。ママにするみたいに、甘えていいって事よ」

マミ「……う、うん……」


マミ「呼んじゃうから……ね?」


133 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:43:07.15 iikZY6eeo 113 
……ママ !

1363351301-133
その後のマミは、何かにつけて私の事をママと呼ぼうとしてくれた。

一々 照れくさそうなのが初々しい。


朝ごはんを用意しながら、

私も調子に乗って何度も呼ばせようとして、
あやうく学校を遅刻しかけた……




134 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:45:35.69 iikZY6eeo 114 

――さて、今日こそ。

私は風見野の地に立っていた。

目当ての人物を、
スーパーに付属している小さめのゲームセンターで見つけた。



ほむら「……佐倉杏子さん」

杏子「あん……? 何でアタシの事を知っているんだ?」

ほむら「これよ」


左手の甲を佐倉杏子に向ける。

そこに見えるのはソウルジェムだ。

得心したように、佐倉杏子は頷いた。




135 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:47:24.63 iikZY6eeo 115 

杏子「なるほどねぇ……。きゅうべぇにでも聞いたのかい」

ほむら「そんなところよ」

杏子「それで? わざわざ風見野まで出張ってきて、一体何の用なのさ?
    ……いや、同じ魔法少女に聞くだけ野暮ってもんか」

杏子「やるかい? 場所だけは変えなきゃな」

ほむら「その必要は無いわ」

杏子「正気か? ここスーパーだぞ? 周りに人が一杯居る」

ほむら「私の用はそんな事じゃないわ」

杏子「……あん?」

ほむら「喰うかい?」

杏子「はぁ……? 飴玉?」

ほむら「飴ちゃんは嫌いかしら。
     困ったわね、ロッキー用意しておけば……」

ほむら「お菓子は手持ちが他に無いから、後はお弁当しかないわ。
     フードコートまで我慢してね」

杏子「いや、意味が分からないんだけど。
    縄張り奪いに来たんじゃないのか?」

ほむら「いいえ、餌付けに来たのよ」


136 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:48:24.77 iikZY6eeo 116 

杏子「ちょっと待て! 餌付けだと!? アタシをか?」

ほむら「もちろん」

杏子「ふざけんな! あたしは帰るぞ!」

ほむら「ですよね。じゃあ、1人で食べるしかないし、食べきれない分は捨てるしか……」

杏子「おい、ちょっと待て。食べ物を粗末にするな」

ほむら「だって、しょうがないじゃない。貴方の所為よ」

杏子「はあっ!? なんでだよ!」

ほむら「当然でしょう。貴方の為に作ってきたのに。責任取りなさい」

杏子「なんだよそれ……」

ほむら「まぁ、ご飯食べるくらいいいじゃない。
     どうせホームレスなんだし、魔女狩り以外暇でしょう」

杏子「……こっちの事は何でもお見通しってか。
    いいだろう、話くらい聞いてやるよ。ただし、お前の事も聞かせてもらうぞ」

ほむら「もちろんよ。……と、その前に」

杏子「なんだ、これ。紙袋」

ほむら「女性用の夏用腹巻よ」


137 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:49:27.23 iikZY6eeo 117 

杏子「……はあ? なんで腹巻!?」

ほむら「ほら、貴方ってば常にお腹出してるから 心配になって。
     あまり服に余裕もないのでしょう?」

ほむら「夏だからって常にお腹出してると壊しちゃうわよ。
     ここの屋内、ただでさえ無駄に冷房効いているんだから」

ほむら「お洒落したいのは年頃だから分かるけど、
     周りに気を使わなくていい時ぐらいは ちゃんとしなさいな」

杏子(なんだこいつ……おばちゃんくせぇ……ちょーうぜぇ……)



フードコートに移動し、人のいない一角の席につく。

弁当を包んだ風呂敷を広げ、
昼飯タイムとなった。

二つのお弁当箱の前に座る、二人の魔法少女である。


ほむら「ほら、不安なら私が毒見してから食べるといいわ」

杏子「へそ出しルックしてる人間に腹巻を手土産にもってくる様な奴に
    そんな警戒してないよ」

杏子「……いただきます」



138 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:51:06.19 iikZY6eeo 118 

ほむら「若い子にしては ちゃんと「頂きます」が言えて感心ね」

杏子「おい、お前 本当に幾つだよ。魔法少女って不老で、実はおばちゃんか」

ほむら「14だったかしら」

杏子「かしらって何だ。……まぁ、あんたがおばちゃん臭いのは素なんだろうな」

ほむら「おばちゃん臭い……やっぱりそうなのね。いいわよ、どうせ中身34だし……」

杏子(あれ……気にしてら……34……?)


杏子「まあまあ、食えるじゃねぇか」

ほむら「ありがとう」

杏子「……そろそろ本題に入るか? まさか、本当に餌付けに来たんじゃないだろ?」

ほむら「本題……そうねぇ」


ほむら「貴方が欲しいの」

杏子「はあっ!?」


139 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:52:14.30 iikZY6eeo 119 

杏子「て、て、てめぇ、そういう趣味の奴か!
    あたしにはそんな趣味ねえ!」

ほむら「何を考えているのか知らないけれど、
     魔女狩りのプロとしての貴方が欲しいって意味よ」

杏子「……なんだと?」

ほむら「一ヶ月間、私の住む街で魔女狩りをして欲しい」

ほむら「そして、グリーフシードを集めて、売って欲しいのよ」

杏子「……馬鹿にしてんのか? グリーフシードだぞ? 金で売れるか!」

ほむら「契約してくれるなら、前金として五十万円を渡すわ」

杏子「……」

ほむら「……」



140 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:54:10.09 iikZY6eeo 120 

杏子「……五十万だとっ!?」

ほむら「ええ。支払いは、固定給部分+歩合給部分の二つに分ける。

     固定給部分として、
     前金として五十万円、契約期間が終了したら、更に百万円。
     これは、魔女を真面目に狩ってくれるなら、固定で支払うわ」

杏子「えっ……、えっとぉ、全部で百五十万……???」

ほむら「歩合給部分もあるから、それは正確じゃないわね」

杏子「歩合給って何だ……」

ほむら「貴方の能力しだいって事よ。
     グリーフシード一つにつき、五万支払うわ」

杏子「……五万……」

ほむら「魔女を撃破してもグリーフシードが入手できない場合、もしくは、
     自分で使わなければならない場合は三万」

杏子「グリーフシードを売らなくてもくれるのかよ……」

ほむら「ソウルジェムの濁りが激しくないなら、
     二個に一個は私に売ることを義務付けるけど」

杏子「なるほどな。それでも二個に一個か。
    まぁ、濁りを考慮に入れてくれるなら悪かねえ」



141 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:55:11.02 iikZY6eeo 121 

ほむら「更に、使い魔を倒した場合も、一体三千円支払う」

杏子「使い魔一体で三千円……!?」

ほむら「簡単に倒せる使い魔で三千なら、
     魔女を養殖しようなんて考えないでしょ?」

杏子(お見通しかよ……)


杏子「しかし、滅茶苦茶な額だな……」

ほむら「そうかしら? 命がけなのよ、当然よ」

杏子「そうかい……。しかし、使い魔にまで金を払うとは……酔狂な奴」

杏子「あ、でも、それどうやって証明するんだよ。
    使い魔なんて何も落とさないから証明できないだろ」

ほむら「貴方一人で戦わせるわけじゃないわ」

杏子「ああ、あんたと戦うのか。そうだよな」


142 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:55:43.42 iikZY6eeo 122 

ほむら「違うわよ。余裕があるときは私も行くけど、
     基本的には、私が信頼している魔法少女とのコンビよ」

杏子「あん……?」

ほむら「私が住んでいる街が……見滝原だと言ったらわかるかしら?」

杏子「……巴マミか! 通りで、私を知ってるはずだ!」

ほむら「貴方がこの契約をする最大のデメリットがそこかもしれないわね」

杏子「……」

ほむら「どうする? 佐倉杏子さん……?」

杏子「悪いが、あいつと一緒にっていうのは出来ないね」

ほむら「百五十万が確約されていても?」

杏子「ぐっ……」




143 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:57:11.42 iikZY6eeo 123 

ほむら「百五十万あれば、しばらく生活に困らないわね?

     それに、グリーフシードを私に渡さなくても、
     魔女や使い魔を狩るだけで更に額が増える。

     楽に二百万は越せるでしょう」

杏子「……に、にひゃく……」

杏子(グリーフシードをあまり渡さずにそれだけ稼げるってのはでかい……)


ほむら「貴方は生きていくのに魔法を活用しているから、
     その額があれば、かなりグリーフシードの消費も減るでしょうね。

     メリットの方が大きいと思うけど……?」

杏子「……」

ほむら「ま、それでも、いけ好かない人と仕事は出来ないわよね」

ほむら「話はここまで。付き合ってくれてありがとう。それじゃ」



144 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:57:47.33 iikZY6eeo 124 

弁当を片付け始めると、佐倉杏子は立ち上がって慌て始めた。


杏子「ま、ま、待て! そんなに急ぐ事ないだろ!」

杏子「まだ弁当だって食い終わってないだろ?」

杏子「その話が本当なら、考えてやってもいいし!」

ほむら「あら、そう?」

杏子「でも、何であんた、そんな額でアタシを雇おうとするのさ」

杏子「マミがいるんだろ?」

ほむら「魔女との戦いは危険な事も多いわ。私は安定性を高めたいの」

杏子「それじゃ、あんたがマミと戦えばいいじゃん」

ほむら「私は忙しいの。お金で時間を買いたい」

杏子「……ふーん」

杏子「マミと戦うってのが引っかかるが、一ヶ月限定って考えればいいか……」

杏子「言っとくけど、私は無駄に馴れ合うつもりはないからな?」

杏子「あんたやマミと一緒にいるのも、魔女狩りの時と金をもらう時だけだ」

杏子「後は、アタシの自由にさせて貰う」


145 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 20:59:20.62 iikZY6eeo 125 

ほむら「それで問題ないわ」

杏子「へっ……。それじゃ、五十万、早速よこせよ」

ほむら「その前に、雇用契約書に記入してもらうわ」

杏子「……うへっ……何その紙、文字小さいし、めんどくせぇ……」

ほむら「これが双方の為よ」

杏子「ちぇ……。ちょっと待て。書いてやるよ」

ほむら「内容も一応、確認して頂戴」



内容を確認しながら、佐倉杏子は
意外にも真面目に、丁寧な字で記入していく。

それから、五十万円の入っていた封筒を、
佐倉杏子に渡した。


杏子「……どうしよう、おい。本当に五十万……本物だ」

ほむら「貴方の自由にしていいのよ」

杏子「あんた、これアタシが持って逃げるって思わないのか?」

ほむら「双方損をする最悪な選択ね、それは。
     貴方はそんな馬鹿じゃないわ」

杏子「……そいつはどうも」



146 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 21:01:00.55 iikZY6eeo 126 

杏子「……ん? ちょっと待て、マミと一緒に戦うなら、
    マミの分のグリーフシードはどうすんだ?」

ほむら「マミと一緒に戦う事で、二人ともソウルジェムの濁りも抑えられると思うわ。
     その分、売ってもらえる数も多くなると踏んでる。

     それに、私は戦う機会が少ないからあまり要らないし、
     二個に一個を売ってもらえれば充分でしょう。

     だから、さっきの契約のグリーフシードの数は
     マミの取り分を考えなくていいわ

     魔女の撃破数についても、止めじゃない、協力すれば数に含む。
     契約書にも書いてあるから」

ほむら(それにグリーフシードのストックは私自身 結構あるしね……)

杏子「あっそう、りょーかい……」

杏子「……にしても、マミと仲がいいんだな」

ほむら「ええ」

杏子「……」


147 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 21:01:38.46 iikZY6eeo 127 

杏子「さて、じゃあ、早速 見滝原にいくか」

ほむら「案内するわ」

杏子「いいよ。私は住んでた事あるから。マミから聞いてない?」

ほむら「違うわよ。貴方が見滝原にいる間に住む、アパートよ」

杏子「はあ!? あんたと一緒に住むのなんてアタシはごめんだぞ!?」

ほむら「心配要らないわ。一人用のアパートよ。
     最低限の家具も揃ってる。自由に使って頂戴」

杏子「……いたれりつくせり、だな」

ほむら「ご飯が食べたくなったら、マミの部屋にくれば
     朝食と夕食もただで食べれると思うけど」

杏子「そいつはごめんだな」

ほむら「そう、残念ね。じゃあ、何か差し入れするわね」

杏子「……ちぇっ。なんだか、あんたには敵わなそうだな……」


148 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 21:03:00.83 iikZY6eeo 128 

佐倉杏子を、滞在期間中に使用してもらうアパートに案内した後、
一応 顔合わせをするために巴マミのアパートに連れて行った。

なにやら不満そうだが、大人しくしている。


インターホンを鳴らすと、巴マミが飛び出てきた。



マミ「あっ! ママ、おかえりなさい!
   チーズケーキ上手く焼けたよ! えへへ、食べて、食べて!」


1363351301-148
149 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 21:03:58.22 iikZY6eeo 129 

杏子「……」

ほむら「……」

マミ「……」

ほむら「ご、ごめんなさい、マミ……さん。予め連絡を入れておけば……」

マミ「いいの……ママ……ほむらさんは 悪くないわ……」

マミ「…………ところで、えっと、なんで……」

ほむら「あっと……、魔法少女仲間ということで、私が彼女を雇ったの」

マミ「そ、そう……」

杏子「あ、ども……」

マミ「え、ええ……」

ほむら「……」


ほむら(気まずい……)

杏子(気まずい……)

マミ(気まずい……)


150 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 21:04:30.61 iikZY6eeo 130 

杏子「……あ、あの……さ」

マミ「な、なにかしら!佐倉さん!」

杏子「わ、私は何も見なかったからな、マミ!」

マミ「そ、そ、そう……。ありがとう」

ほむら「優しいのね、杏子」

杏子「うるせぇ!」


マミ「……さ、佐倉さん。また、一緒に戦ってくれるの?」

杏子「そういう契約だからな。こいつと」

マミ「……そう、よろしくね」

杏子「ああ……」

マミ「ほむらさん、後で聞きたい事があるから」

ほむら「ですよね……」


151 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 21:09:06.49 iikZY6eeo 131 

佐倉杏子は早々に立ち去った。

私とマミだけが残される。

やはり気まずい。


マミ「……どうして……? 契約?」

ほむら「私は魔女と戦う時間がないの。どうしてもやりたい事があって……。
     だから、雇ったの。貴方と戦ってくれる人が欲しかった」

マミ「ママ、それなら、私なら別に一人で大丈夫だよ? ……信用できない?」

ほむら「貴方が一人で戦ってると思うと、心配になるのよ。
     大丈夫だと頭では分かっていてもね」

マミ「……」


マミ「……まぁ、いいけど。ママと戦えないんだ」

ほむら「ごめんなさい」

マミ「いいよ、きゅうべぇに、何かしかけてるんでしょう?」

ほむら「そうよ、私は、魔法少女の未来を変えたいの」

マミ「……そっか、私には言えない?」

ほむら「言えるわ。だけど、それはもうちょっと準備が出来て、
     具体的な計画が立ったら、ね。

     あまり不確実な事は言いたくないし」

マミ「うん、わかった」

ほむら「ふふ、いい子ね」

マミ「……」



152 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 21:09:50.38 iikZY6eeo 132 

なんだか、マミが急に挙動不審になった。

もじもじしている。
何か言いたいようだ。

遠慮がちにマミが切りだした。


マミ「えっと、いい子なら、その、お願い、聞いてくれる?」

ほむら「お願い? なにかしら」

マミ「あの、ほむら……さん、ママなんだし、一緒に、住みま……せんか?」

ほむら「……なんで敬語なの?」

マミ「な、なんとなく! それより、どう?」

ほむら「一応、寝具とか、生活に必要そうなもの、持ってきてあるわ」

マミ「! そ、それじゃ!」

ほむら「ありがとうね、マミから言ってくれて。ええ、一緒に住みましょう」

マミ「うん!」


153 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 21:11:54.17 iikZY6eeo 133 

マミは本当に嬉しそうにしてくれている。

私に抱きついてきたあと、
すぐに何かを思い出したのか、

台所に走っていった。

そして、すぐに戻ってくる。



マミ「ママ……これ」

ほむら「なに……、ティーカップ???」

マミ「これ、ママのティーカップ……えっと、ママ、もうマミのママなんだから、
   このカップにね、いつでも、マミが紅茶を用意してあげるから……」

ほむら「……私がコーヒー派だといったら?」

マミ「……あ! じゃ、じゃあ、コーヒーのこと、勉強する!」

ほむら「ふふ……ありがと」

マミ「だからね、その、家族としての、証ってことで……このカップ、受け取って……」

ほむら「ええ……わかったわ」


154 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/16 21:13:42.72 iikZY6eeo 134 

マミから手渡されたカップを手に取る。

上品なティーカップだ。

マミの手元に残ったカップと御そろいでもある。

……それはいいんだけれど。



ほむら「ねえ、マミ?」

マミ「なに? ママ!」

ほむら「このカップ……私の名前が書いてあるんだけど……」

マミ「え? うん……。家じゃ普通だったんだけど……。あ……おかしい……?」



「名前はちょっと……」の一言がいえず……

私は、何か失敗だったかしらと不安そうなマミの頭を撫でてやった。

165 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 19:45:38.19 OMkFtv4eo 135/316

――佐倉杏子とマミのコンビプレーは、やはり強力だった。

第一回のパトロールには私も付き合ったのだが、
着実に、魔女と使い魔を狩っている。

私の出る幕は殆ど無かった。

……ただし、お互い、気を許せてはいない様だ。

昔、仲違いした関係なのだから、当然だろう。

上手く、関係を改善できないものか。

マミを先に帰し、本日の清算の為に佐倉杏子のアパートについていく。

……佐倉杏子の部屋に入り込んで、第一声。

166 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 19:46:13.85 OMkFtv4eo 136 

杏子「……おい! 暁美!」

ほむら「ほむらでいいわ」

杏子「じゃ、ほむら! 昨日の事だが、なんだ、あのマミは。
    何でお前の事をママって言ってんだ!」

ほむら「あの子が私の娘だからよ」

杏子「どう見ても、お前の方が年下だろうが! それに、マミの奴は……」

ほむら「無論、義理よ。それに、貴方。本気で、私が見た目どおりの歳だと思ってるの?」

杏子「……いや。そりゃ、かなり怪しいけど。金持ってるし、おばちゃんくせーし」

ほむら「……貴方の感じたまま事実よ。私は魔法で外見や戸籍を誤魔化しているのよ」

杏子「……おばちゃんくせーって言われて、ちょっと涙目になるなよ。
    悪かったよ」




167 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 19:46:50.44 OMkFtv4eo 137 

ほむら「それより、夕ご飯どうする?」

杏子「唐突だな。あんたにもらったお金で、適当に買ってくるよ」

ほむら「添加物どっさりの物を買うくらいなら、私が作るわ」

杏子「だから、あんたと馴れ合うつもりはないって」

ほむら「大丈夫、作ったら帰るわ」

杏子「あっそう……」

ほむら「盾の中の材料……ふむ、肉じゃがでいいかしら……」

杏子「好きにしな。流石に食べ物を粗末にはしないからさ」

ほむら「わかったわ」




168 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 19:47:19.30 OMkFtv4eo 138 

――その日から、マミと佐倉杏子はコンビで魔女狩りを行ってくれている。

おかげで、私が色々と考えていた計画を進め始める事が出来る。

ループで得た様々な知識を、今 生かすときだ。

私はループの期間に関する世界の知識は「生き字引」級だ。

例えば、お金にしても……

佐倉杏子に渡したお金が、はした金に感じるほどお金を稼ぐ事ができる。

人の弱みを握る事も、付け入る事も、助ける事も容易い。

さて、何から取り掛かるとするか……



169 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 19:47:55.44 OMkFtv4eo 139 

……学校をさぼって色々とやっていたある日。

マミの部屋に帰ってくると、まどかと さやかがいた。


まどか「あ、ほむらちゃん! って、やっぱり元気そう」

さやか「まじで、ほむほむが帰ってきた。マミさんと同棲……きましたわー?」

まどか「さやかちゃん……」

ほむら「さやかが何を言ってるのか、本気でわからないけど。
     最近、ちょっと ごたついててね。
     マミさんに生活の事、色々甘えさせてもらってるの」

さやか「それで最近、学校来ないのか」

まどか「もう一週間だよ?」


170 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 19:49:12.08 OMkFtv4eo 140 

ほむら「それで心配して来てくれたわけ?」

まどか「うん……」

さやか「あたしはマミさんに ほむほむの家の場所を聞いたら、
     「私の家に居るわよ」って言うから。
     むしろ そっちに興味惹かれて……マミさんに鍵借りて来たの」

まどか「さやかちゃんってば、面白半分なんだもん。もう……」

さやか「まどかは運命の人、盗られちゃうかもって不安だったんだもんね」

まどか「さ、さやかちゃん! またそんな事言って!」

ほむら「運命の人……?」

さやか「いやー、まどかってば、
     実は ほむほむと病院で初めてあった日、
     ほむほむと前に夢であったようなとか 言い出してさ」

ほむら「えっ???」





171 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 19:49:49.42 OMkFtv4eo 141 

ぽかり!

まどかは本気で怒ったらしく、さやかの頭をぐーパンチした。

ああ、怒って殴る音さえ可愛らしいわ。まどか。

それにしても、夢であったってどういう事かしら。



さやか「殴るなよぅ! 女の子の頭をグーで殴るなよう!」

まどか「うるさーい! さやかちゃんなんて、知らないんだから」

ほむら「まどか、夢であったって……?」

まどか「うー、さやかちゃんってば、言っちゃうんだもん……。
     ほむらちゃんに似た人を 夢で見たことがあるだけだよ?
     内容もよく覚えてないし……」

さやか「だから、それ前世の因果だって。
     あんた達、時空を超えて巡り合った運命の仲間なんだわぁ!
     そう言ってからかってたんだけどね」

さやか「残念、ほむほむと運命の仲間だったのは、さやかちゃんでした!」

さやか「戦友だもんね!」

さやか「まどかはどーかなー?」

まどか「うー……」


172 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 19:50:16.33 OMkFtv4eo 142 

ほむら「上条君の話、まどかには しているのね?」

さやか「無論、まどかは私の嫁だもの」

ほむら「まどか、さやかとは確かに仲間ってことでいいわ」

さやか「えっへん」

ほむら「マミともそう」

まどか「そうなんだ……」

ほむら「そして、まどか、貴方とも 運命の仲間になりたいわ」

まどか「えっ!」

さやか「ほら、やっぱね。まどか」

まどか「わ、わたし……何にも、できないけど……」

ほむら「そんな事ないわ。貴方は超絶いやし系よ」

まどか「ちょ、ちょうぜつ いやしけい……?」



173 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 19:51:17.61 OMkFtv4eo 143 

さやか「あー、わかる。小動物系というか、マスコット系というか、
     まどかってば居るだけで癒されるよね」

まどか「え、ええっ!?」

ほむら「そうよ! ああ、まどか。今日のまどか分を補充していい?」

まどか「ひえっ!?」

さやか「うおー、あたしも補充させろぅ!」

まどか「ひょわわっ!」


私とさやかが意味不明な展開で まどかに抱きつく。

まどかが目を白黒させて顔を真っ赤に。

愛らしい。

本当に充電してる気分だ。



……意識が完全にまどかの温もりにいってたのだろう。

とある2人が部屋に入ってきた事に気がつかなかった。

咳払いが部屋の中に響き、私はようやく気がついた。


174 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 19:53:04.33 OMkFtv4eo 144 

杏子「なにやってんだ? ほむら……。人を働かせといて」

マミ「……」

ほむら「何って……充電中よ。見て分からない?」

杏子「わかるか!」

マミ「…………」

ほむら「……マミさんは、どうしてそんな怖い顔しているの?」

マミ「さあ、何ででしょうね」

ほむら「……ほら、マミ。貴方も混ざりなさい」

マミ「うん!」

杏子「ええっ!? 即答かよ!? しかも、混ざるのっ!?」

さやか「マミさん来た! これでかつる!」

まどか「私はもーいいよう! そろそろはなしてー!」



175 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 19:53:57.81 OMkFtv4eo 145 

ほむら「杏子は来ないの?」

杏子「行くわけがないだろ!」

さやか「えっと、その子は誰?」

ほむら「佐倉杏子、魔法少女。彼女も私達 運命の仲間の一人よ」

杏子「はあっ!?」

マミ「運命の仲間……?」

ほむら「あ、マミさん。勿論、貴方もよ?」

マミ「……えへっ」

さやか「わぁ、マミさん。はじめて見る位のいい笑顔。ニコニコって擬音が見えそう」




176 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 19:56:06.11 OMkFtv4eo 146 

杏子「おい、ほむら。訳わかんねーこと言ってんじゃねーよ」

杏子「アタシとあんた、マミは、金で結ばれただけの関係だ。
    馴れ合う心算はないね」

ほむら「杏子はツンデレなのよ」

さやか「なるほど」

まどか「恥ずかしがり屋さんなんだね」

杏子「誰がツンデレで、誰が恥ずかしがり屋だっ!!!」

さやか「ツンデレ杏子さん、あたしは美樹さやか。よろしくね」

まどか「恥ずかしがり屋の杏子ちゃん。私は鹿目まどか。よろしくね! てへへ」

杏子「うがーーーー!!!!」



177 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 19:57:10.45 OMkFtv4eo 147 

杏子「もういい! 今日の分の清算は明日にするぞ! じゃあな!」

さやか「あっ」

まどか「いっちゃった」

ほむら「からかうと面白いわね」

マミ「あんまり、佐倉さんを苛めちゃ駄目だよ?」

ほむら「……煽りやすいものだから」

さやか「わかる。初対面だけど」

まどか「私ものっちゃった……。怒ってないかな
     今度会ったら謝らなきゃ」



178 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 19:58:15.15 OMkFtv4eo 148 

さやか「あーっと、ところで、清算って何の事?」

ほむら「ああ、私、彼女を雇ってるの」

さやか「……なんですとっ!?」

まどか「雇う?」

ほむら「ここ最近、学校に行かなかったのも、
     私にはやるべき事があってね。
     その時間を確保する為に、彼女に相談したら、
     低賃金で働いてくれるって言うから」

さやか「低賃金……3000円くらい?」

ほむら「それくらいよ」

ほむら(ただし 使い魔一匹の値段がだけどね)

さやか「ふーん、いい子……なのかな」

ほむら「そうよ」

マミ「根がいい子なのは、私も保証するわ……」


179 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 19:58:48.47 OMkFtv4eo 149 

まどか「ほむらちゃん、やるべき事って?
     やっぱり魔法少女絡み……?」

ほむら「そんな所よ」

さやか「あ、まさか、あたしの所為だったり……するのかな?」

ほむら「さやかは関係ないわ。いや、僅かにしか関係ないわ」

ほむら「上条君絡みの話なら、魔法少女の方は問題なさそうよ。
     最近、私は回復系の技術がかなり向上したの」

さやか「へー、すごい!」

ほむら(まぁ、本当は貴方の力なのだけど……)

ほむら「今度、私だけでどうにかならないか、診てみるわね」

さやか「ありがとう、ほむほむ!」

まどか「上条君の手、上手く治るといいね!」



180 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:00:22.42 OMkFtv4eo 150 

ほむら「でも一応、専門の医者を探すのも続けてるから。
     まぁ、知人のお医者さん任せだけど」

さやか「お医者さんに知人が居るといいなぁ。頼もしい」

ほむら「そうね」


しばらく続く雑談。

楽しくてたまらないのだが、
もう時間帯は遅い。

まどかとさやかを帰らせ、
私とマミは晩御飯を作り始める。

佐倉杏子に差し入れてから、
マミとの晩御飯の時間。

さて、明日はどうするか。

さやかに話した通り、上条恭介に会いに行ってみるか……



181 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:01:15.91 OMkFtv4eo 151 

――見滝原病院、上条恭介の病室。


ほむら「……こんにちわ。上条くん」

恭介「やあ、暁美さん」

ほむら「えっと、手のこと聞いてるけど……」

恭介「うん、今のところ、やっぱり治る見込み、ないんだ。
    でも、暁美さん いいお医者さん探してくれてるんだっけ?
    僕なんかの為に、ありがとう」

ほむら「ふふ、貴方と、さやかの為よ」

ほむら「あの子も頑張ってるでしょ?」

恭介「うん、いつも 歩くリハビリに付き合ってくれるんだ。
    さやかの為にも、頑張って治さないと……」

ほむら「そうね」


182 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:02:22.00 OMkFtv4eo 152 

恭介「暁美さんは、体はもういいの?
    退院したばかりだけど」

ほむら「問題ないわ。今までにないくらい元気よ」

恭介「そっか、良かった」

ほむら「……余裕、出てきたのね。私にまで気を回せるくらいに」

恭介「余裕、無かったさ。だけど、さやかがいる。
    僕だって、いつまでも立ち止まってられないさ。

    この手だって、もう動かなかったとしても、
    今の僕なりに、生きていく道を見つけるよ」

ほむら「ふ、いい男になってきたじゃないの」

恭介「あはは、惚れないでくれよ? 僕にはさやかがいるから」

ほむら「大丈夫よ。むしろ、貴方。
     いい男でいないと、さやかが私にとられちゃうわよ?」

恭介「そっち!? 最近、なんかありえそうで怖い!」



183 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:03:27.64 OMkFtv4eo 153 

ほむら「しかし、ナンパな事いうじゃない。
     会って間もない頃の上条君にはありえないわね」

恭介「う……らしくなかったか」

ほむら「かなりね」

恭介「ま、暁美さんだからっていうのはあるよ。
    冗談でかわしてくれそうだから」

ほむら「そうね。私ならしょうがないわね」

恭介「ほら、そうやって軽くかわす」

ほむら「年の功よ」

恭介「同い年だよね」



184 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:04:07.83 OMkFtv4eo 154 

ほむら「さやかを泣かすんじゃないわよ? いい男ならね」

恭介「勿論だよ」

ほむら「そんなこと言って……。仁美さんあたりに告白されたらころっといくんじゃない?」

恭介「ないよ」

ほむら「本当かしら」

恭介「本当だよ」

ほむら「そう……」

恭介「というか、なんで志筑さんなの……」




185 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:04:52.40 OMkFtv4eo 155 

ほむら「いえね。さやかと付き合ってなかったら、あの子と貴方もありえそうだと思ってね」

恭介「……うーん。さやかと付き合えてなかったら、そりゃ、あったかもしれない」

恭介「あの子が、僕の事を好きだって言うなら……だけど。いや、ないか」

ほむら「貴方って本当に受身ね。いや、そこまで仁美に対する想いはないの?」

恭介「志筑さんって、ただのクラスメイトだし……
    いや、お友達って認識かな。お見舞いには来てくれたし」

ほむら「その程度なのに、告白されたら付き合うのね」

恭介「うーーん……。いや、もし、そういう状況の僕なら、だけど。
    自分でも馬鹿だと思うけど」

恭介「……志筑さんみたいな子と付き合えたら、
    さやか、僕の事すごいって、認めてくれるかもしれないだろ?」

ほむら「……」



186 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:05:35.20 OMkFtv4eo 156 

おい、ちょっと待て。

私の数々のループの原因の一部は、
この男の虚栄心からか……。


いけない、ソウルジェムが少し、濁ってしまった。

しかも、これは……殺意からかしら



恭介「うう……暁美さんが怖い」

ほむら「貴方、前は本当、ろくでもない男だったのね」

恭介「はっきり言われた……。い、今では、その! ないから……」

ほむら「当然よ。そうじゃなかったら殺すわ」

恭介「こ、ころっ!? わかった、絶対 さやかは僕が幸せにするから!」

ほむら「……よろしい。それなら、貴方の事。また認めてあげるわ」

恭介「……一旦、見捨てられたんだ。はい、ありがとうございます」


187 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:06:54.56 OMkFtv4eo 157 

ほむら「……ところで、上条君。その問題の、手。見せてもらっていい?」

恭介「どうぞ」

ほむら「……」


確かに、酷い有様だ。

神経組織はズタズタだ。

私だけでは不可能であろう。

……しかし、交通事故でなるだろうか?
外見は比較的、綺麗なままだというのに……。

まさか、インキュベーター……
一枚噛んでるのか……?

ありうる話だ。



188 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:07:31.13 OMkFtv4eo 158 

恭介「……暁美さん、見て分かるのかい?」

ほむら「少し、ね。参考になったわ。ありがとう」

恭介「どういたしまして、というより、こちらがありがとうだね」

ほむら「まだお礼を言われるのは、早いわ」

恭介「僕のために動いてくれる人が居るなら、当然だよ」

ほむら「そう、なら、どういたしまして……かしら」



しばらく雑談を続けたあと、上条恭介の病室を去った。

とある人物との密会の約束が入っている。

ちょっと上条恭介に時間を掛けすぎた。

急ぎ足で向っていると……しばらくぶりのとある存在が声を掛けてきた。



189 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:08:02.06 OMkFtv4eo 159 

QB「やあ、暁美ほむら」

ほむら「インキュベーター。何か用かしら?」

QB「君が言及してきたバグについて、それらしい物は見つからなかったゆえ、
   一言物申そうかと思ってね」

ほむら「あら、そう。悪いけど、急いでいるのよね。また今度にしてくれる?」

QB「常に誰かしらと会ってる君じゃ、その今度がいつくるかわからないね」

QB「それに、君が会おうとしている市議会議員より、
   実のある話を教えてあげる事が出来るんだけど?」

ほむら「……ふふ、よく私のスケジュールを把握しているのね」

QB「当然じゃないか。君は警戒すべき人物だからね」

QB「手札が全く見えない、完全なイレギュラーだよ」

QB「ずっと観察していた」

ほむら「私より、まどかの方に注目していると思っていたわ」

QB「それは君が邪魔にならなくなってからだね」

QB「単純なあの娘。君がいなければ堕とすのは簡単だろう」

ほむら「怖がられたものね。心外だわ」


190 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:08:28.96 OMkFtv4eo 160 

ほむら「それより、話をするならちょっと待ちなさい。
     貴方と話をするなら遅刻間違いないわ。
     先方に連絡しなきゃいけないわ」

QB「律儀だね」

ほむら「社会人として常識的な行動よ」

QB「君は中学生だよね?」

ほむら「歳は関係ないわ。社会の歯車としての自覚があれば、当然の行動よ」

ほむら(下手したら国際的に指名手配されかねない数々の兵器の窃盗犯だけどね)


……用事をキャンセルし、インキュベーターの相手をする流れとなった。

近くの公園の、ベンチに座る。



191 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:09:28.85 OMkFtv4eo 161 

QB「さて、暁美ほむら。マミには嘘偽り無く、魔法少女の真実を伝えてくれたようだね?」

ほむら「ええ、伝えたわ」

QB「ああなるとは、僕も思っていなかったよ」

QB「まさか、マミの心を掴み、自分に依存させるとは……」

QB「君は余程 人心掌握術に長けているようだね」

QB「いい駒を、君にとられてしまったものだ」

ほむら「長く人類に関わってきたくせに、
     ろくに感情の研究をしてないから、こうなるのよ。
     自業自得ね」

QB「……」



192 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:10:03.22 OMkFtv4eo 162 

ほむら「さて、実のある話が聞けるというのだから、
     まさか嫌味の言い合いで終わるわけではないでしょう?」

QB「……先に、聞きたい事がある。君の目的はなんだい?」

ほむら「それを、私が貴方に答えるメリットがあるのかしら?」

QB「君も知りたがっていそうな事に、仮説が立てられた。それを教えてあげよう」

ほむら「ふうん……?」

QB「君は、エリー……、箱の魔女と敵対していた時、
   奇妙なソウルジェムの反応、未知の能力の発動に驚かされたはずだ。
   君ほどの手練が敵を前に動揺していたからね」

ほむら「否定はしないわ」

QB「そして、それに留まらなかった。
   今の君は、僕が君を再認識した時より、更に多くの力を得たようだ」



193 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:11:48.90 OMkFtv4eo 163 

QB「君は恐らく知っているのだろうが、魔法少女の潜在力というのは、
   少女が背負い込んだ因果の量によって決まる」

QB「一国の女王や救世主なら、莫大な因果を抱え込み、
   普通の魔法少女とは比べ物にならない力を発揮できる」

ほむら「そのようね。以前、貴方から聞いたわ」

QB「……だが、魔法少女になった場合、因果の量を増やすのは容易ではない。
   通常は、その素質は普通の少女時代で大体決まる」

ほむら「それは、そうでしょう。普通の魔法少女が、
     因果の量を劇的に増やすほど環境を変える事なんて出来ないでしょう」

QB「そうだね、そもそも魔法少女は短命なもの、時間的余裕もない」

ほむら「そうね、そして、精神的な余裕もない、疑心暗鬼 渦巻く子が多いでしょう」

ほむら「貴方の所為でね」

QB「だが、君は因果の量を増やした」

ほむら「私は普通じゃないのよ」

QB「知ってるよ、イレギュラー」



194 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:12:18.54 OMkFtv4eo 164 

ほむら「ところで、因果の量だけでなく、質にも拠るのかしら?」

QB「さてね、僕には感情がないから推測しか出来ないが、
   同じ人数からの因果でも、魔法少女となる人物との関係性が違えば、
   魔法少女としての力にも差があるようだったよ。

   一人当たりからの量が違うからかもしれないが」

ほむら「そう。その関係性とやらによって、力の現れ方も違うのかもね?」

QB「……そうだね」

QB「君の考えも、僕の仮説と変わらないようだね。
   感情がないから、仮説の域を出なかったが……」

ほむら「実感として感じ取れているわ」

QB「そうかい。厄介だね……。このシステムに、こんな裏技があったとは」

ほむら「私じゃなきゃ見つからなかったかもね。どっちかというとバグ技かしら」

QB「……何故 君はそう、自信満々なんだ」


195 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:13:01.73 OMkFtv4eo 165 

QB「さて、君が知りたそうな情報は話した。
   どうやら、感づいていたようだが、対価は貰えるのかな?」

ほむら「さあて、そうね。勘付いていたこととはいえ、
     おまけしてもいいのだけれど……どうしようかしら?」

QB「じゃあ、僕なりに、君の目的を推測してみた。
   あってるかどうかを、教えてくれればいい」

ほむら「そう。それならいいわ」

QB「……魔法少女の救世主となる事、違うかい?」

ほむら「……救世主、ね」

QB「君がマミやまどか達に隠れて行っている行動は、
   特定の魔法少女だけじゃない、全体に益が出るよう目的とした物だ」


196 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:13:35.46 OMkFtv4eo 166 

QB「おそらく、君は契約する前に、僕達インキュベーターと魔法少女の事を知ってしまった」

QB「だから、僕達と敵対することにした」

QB「しかし、戦うためには、力が要る。だが、僕達と契約し、僕達にずっと干渉されるのは迷惑だ」

QB「だから、契約で自分のことに関する記憶をインキュベーターから消すバグを生み、
   魔法少女となった」

QB「そして、影に隠れ、全てをひっくり返す計画を立て、下準備を進めていた」

QB「それが実現可能な段階となり、一気に推し進める為、表舞台に現れた」

QB「……そんな所じゃないかい?」

ほむら「……そうね、百点満点をあげましょう」

QB「それは、ありがとう」


197 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:14:44.25 OMkFtv4eo 167 

QB「つまり、君は僕の敵というわけだね」

ほむら「そうなるかもね」

QB「暁美ほむら、百点満点をくれたお礼だ。いい事を教えてあげよう」

ほむら「なにかしら?」

QB「君は表舞台に出てくるのが早すぎたね。
   本当に気の毒だよ……。もっと力をつけてからにすれば良かったんだ」

ほむら「感情もない癖に、気の毒がるんじゃないわよ。なに?」

QB「2週間後、この見滝原にワルプルギスの夜がくる」

ほむら「……なんですって!?」

ほむら(あのセンターよりの顔、ちゃんと出来てるかしら)

QB「やっと、君の引きつった顔が見れたね」



198 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:15:14.70 OMkFtv4eo 168 

QB「ワルプルギスの夜は、今の君や、マミ、杏子。
   3人が組んだ所で、倒せやしない」

QB「倒せる可能性があるとしたら、鹿目まどか。
   彼女が契約して、魔法少女になった時ぐらいだろう」

QB「君は大事な友達に、魔法少女にはなって欲しくないようだけどね?」

QB「君がまどかに契約させず、勝ち目のない戦いに挑むのか、
   まどかを闘争の渦に巻き込むのか。

   どちらにせよ、大きく濁ってくれそうだ」

QB「君はまどか程でないにしろ、多くの因果を纏い始めた。
   敵にならないなら、もう少し育ててからにしようかとも思ったけれど、
   君は敵」

QB「はやめに退場してもらおう」

QB「願わくば、死ぬんじゃなく、魔女化して宇宙の維持に役立っておくれよ……」

ほむら「インキュベィタァアアッ!!!」



199 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:15:51.15 OMkFtv4eo 169 

勝ち誇った顔? 無表情だが、
そんな雰囲気を纏って、インキュベーターは去っていった。

時間遡行の事とは程遠い、
百点満点の勘違いをしてくれて、私は嬉しい。

あいつは感情がない所為で、
演技を見破るのも下手なようだ。

精々、私を絶望させたと思い、勝ち誇るがいい。

慢心は油断を生み、必要な判断を鈍らせる。

それに、
ワルプルギスの夜で まどかの契約の危険を煽ってる事から、
奴の策は、もう尽きたのだろう。

精々、他の魔法少女や候補者にも告げ、
不安を煽るくらいか?

こちらから、ケアをしておくとしよう。

しかし、魔法少女の救世主、ねぇ……

力の増やし方に気がついた私が、
その程度で満足すると思っている所が、一番笑える。


200 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:16:50.68 OMkFtv4eo 170 

――私は、巴マミの部屋に、まどか、さやか、マミ、佐倉杏子の4人を呼んだ。

各人、既にインキュベーターからワルプルギスの夜の話を聞いているようで、
特にまどかと さやかが動揺している。


まどか「ほむらちゃん、ワルプルギスの夜って、そんなに強いの?」

ほむら「私も見たことはないけど、単独の魔法少女ではとても対処しきれない強力な魔女よ。
     通常の魔女は結界に隠れてるけど、その魔女は結界に隠れる必要すらないという……」

さやか「……た、倒せる……のかな?」

マミ「今、見滝原には3人の魔法少女が居る。問題ないんじゃないかしら?」

杏子「……おいおい、当たり前の様に私をカウントするなよ」

マミ「えっ!?」

杏子「ワルプルギスの夜なんて、聞いてないよ。
    こいつを倒す事は契約には含まれないだろ、ほむら」

ほむら「契約期間全体の支払合計額、倍額にするわ」

杏子「……お、おう。わかった」



201 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:17:21.49 OMkFtv4eo 171 

さやか「倍額? ……六千円かぁ。安いなぁ」

杏子「ん? 六千円?」

ほむら「気にしないで。それより、問題のワルプルギスだけど」

まどか「う、うん」

さやか「どうなの?」

ほむら「実物見たこと無いから、私達は何とも言えないわ」

さやか「oh……」

まどか「そっか……、でも、強いんなら」

ほむら「ただね、マミさんが言ったとおり、ベテラン三人ならどんな魔女でも倒せる公算が高い」

ほむら「それに、強敵なのは間違いないんだから、
     成り立ての魔法少女が参加したところで死ぬだけよ」

まどか「……それでも、私なら」

ほむら「インキュベーターに、何か吹き込まれた?」



202 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:17:49.75 OMkFtv4eo 172 

まどか「三人で戦った所で無駄だって。私がならない限りは勝てないって……」

マミ「……きゅうべぇ、そんな事いったのね」

杏子「私の時には、ワルプルギスが来るって伝えに来ただけだったがな」

さやか「あ、あたしも」

まどか「見滝原が廃墟と化して、ここにいる人たち、皆 死んじゃうって……
     それ位なら……」

杏子「きゅうべぇが認めたってんなら、確かにあんたが魔法少女になれば勝てるんだろうな。
    あいつは嘘はつかない」

まどか「やっぱり、そうなんだ……」

杏子「でも、私もほむらに同意見だ。やめときな」

まどか「えっ……」

杏子「普通の人間をやめたら、帰れなくなるぞ」

杏子「ワルプルギスを倒した所で、今までの生活にはな」

杏子「当たり前の幸せに浸っていられるアンタが、なる必要はない」

まどか「……」



203 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:18:26.35 OMkFtv4eo 173 

ほむら「杏子の言うとおりよ、まどか。私は、貴方に安全にくらしてほしいわ」

まどか「でも……」

ほむら「それに、貴方ほどの素質があるからこそ……逆に、危険なの」

まどか「逆に……危険?」

さやか・杏子「?」

マミ「ほむらさん……言うつもり?」

ほむら「ええ……、本当は話したくなかったのだけれど。
     まどか、貴方が決して契約しようと思わないよう、
     大事な事を、教えるわ」

ほむら「杏子、貴方にはショックな事も多いと思う。心して聞いて頂戴」

ほむら「さやかもね」

杏子「あ、ああ……」

さやか「ほむ……ら、目が怖いな」


204 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:18:59.32 OMkFtv4eo 174 

私は3人に、魔法少女の真実を語った。

皆、ショックを隠せないようだ。


杏子「ソウルジェムが、あたしで、さらに、濁っちまったら……」

まどか「魔女に……?」

ほむら「そう。そして、強力な魔法少女は、無論 強力な魔女になるわ」

ほむら「貴方の素質だと、地球が危ないレベルなの」

ほむら「ワルプルギスの夜より、更に危険な存在になってしまうわ」

まどか「そ、そんなことって……」

杏子「……ワルプルギスの夜を生んだのも、結局はあの野郎なんだろ?」

ほむら「そうでしょうね」



205 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:19:49.17 OMkFtv4eo 175 

杏子「なんだよ、アイツが諸悪の根源か」

杏子「元から、胡散臭い奴だとは思っていたが」

杏子「インキュベーター……あの野郎、殺してやる……」

杏子「私を……ゾンビみたいな体にしやがって……」

杏子「しかも、終いには、魔女化……。化け物か、私は」

マミ「……違うわ、佐倉さん」

杏子「何が違うってんだよ、巴マミ」

マミ「貴方は人間。こんな体になって、ショックを受けるのも まだ人間だからよ」

杏子「……」

マミ「それに、鹿目さんのこと、気遣って、
   魔法少女になるなって言ってあげてたでしょ?

   化け物はそんな事、言わないわ。
   貴方は、昔と同じ、心優しい……人間よ」


206 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:21:24.54 OMkFtv4eo 176 

杏子「……へっ、別に、気遣ったわけじゃねぇ、グリーフシードの取り分が……」

ほむら「利己的なのも人間よ。
     感情も欲もない人外とは、違うわ」

杏子「そうだな……。ま、私はこの力で好き勝手に生きてこれたんだ。
    後悔はあってもやり直したいとは思わないよ」

杏子「好き勝手 生きて、魔女化する前に死んでやらぁ」

まどか「!」

マミ「……佐倉さん」

杏子「おい、まどかと、さやか つったか。
    あんた達は、絶対こうなるな」

さやか「……うん、魔法少女には、私はならない。ありがと……」

まどか「……魔女になっちゃ、いけないもんね」



207 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:22:35.53 OMkFtv4eo 177 

さやか「でも、ほむらも、マミさんも、会って間もないけど、佐倉さんも。
     その、あたし馬鹿だから、なんて言ったらいいか、分からないけど。

     あたし、見滝原を守ってくれてる、尊敬する、その……
     大事な、友達……、うん、友達だって思ってるから!」

杏子「……ありがと、よ」

マミ「ありがとう、美樹さん」

さやか「え、えへへ。ま、まどかだって、そう思ってるでしょ!?」

まどか「えっ!? う、うん! 勿論だよ……!
     ほむらちゃんも、マミさんも、佐倉さんも……死んで欲しくない……」



ほむら「……」



208 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:24:06.28 OMkFtv4eo 178 

――佐倉杏子は、一人になりたいと言い出し、
マミの部屋を後にした。

まどかとさやかも、それに続く。

私はマミの紅茶を飲みながら、
先程までの会話について考える。


佐倉杏子のメンタルは中々の強さだ。

割りきりが早い。

さやかも、時々抑制が酷く効かなくなるが、
上条恭介がいる以上、迂闊な行動はとらないだろう。

信頼している相手の話は、聞いてくれる子でもある。

マミも、今は大丈夫。

この3人は、問題ない。


だが、気になるのは……

数々の時間軸で、自己犠牲が過ぎる……


鹿目まどか。





209 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:24:35.64 OMkFtv4eo 179 

マミ「……ねぇ、ママ」

ほむら「なに? マミ」

マミ「鹿目さんの、ことなんだけど……」

ほむら「……ええ」

マミ「あの子は、魔法少女にならないとは、言わなかったよね」

ほむら「魔女になっちゃいけない、としか、言わなかったわね」

マミ「まさかとは、思うけど」

ほむら「……マミ、貴方もそう思うのね」

マミ「……ママ、行ってあげて」

ほむら「ええ、そうするわ」

マミ「マミは、佐倉さんの様子を見に行く」

ほむら「……助かるわ、マミ」

ほむら「杏子のこと、頼んだわね」

マミ「うん!」




210 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:25:08.06 OMkFtv4eo 180 

マミの部屋を飛び出し、
まどかの家へと向う。

浮かない顔をして、一人歩くまどかに、
私は追いついた。


ほむら「まどか!」

まどか「ほむらちゃん……? どうしたの?」

ほむら「……ちょっと、話せない?」

まどか「え? う、うん……いいけど」

ほむら「じゃあ、私の部屋に来てもらおうかしら」

まどか「ほむらちゃんの部屋?」

ほむら「嫌かしら? 落ち着いて話せる場所がいいんだけど」

まどか「うんん、嫌じゃないよ、ほむらちゃん。じゃ、お邪魔しちゃお」


211 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:25:38.04 OMkFtv4eo 181 

二人で、私の部屋へと歩く。

まどかを部屋にあげ、ソファに座らせる。

私の趣味で室内を魔法で広げ、
タブレット端末を宙に浮かばせてる空間。

巨大な振り子が存在感を主張しており、
まどかはちょっと引いている。

変かなぁ、ハイカラなのに。



212 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:26:35.65 OMkFtv4eo 182 

ほむら「……えっと、ホットココア。のむ?」

まどか「わあ、ありがとう。ココア好きなんだ。てへへ」

まどか「……あ、美味しい。パパの作ってくれるココアに近いかも」

ほむら「それは良かったわ……」

ほむら「……ねえ、まどか」

まどか「なに? ほむらちゃん」

ほむら「何か思いつめてる事があるんじゃない? そう思って」

まどか「……ほむらちゃんには、隠し事できないや。てへへ」

ほむら「当ててみせようかしら?」

まどか「……うん」



213 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:28:00.24 OMkFtv4eo 183 

ほむら「まどか、貴方。自分が魔法少女になって、ワルプルギスの夜を倒して……
     倒したら、魔女になる前に自殺しようかと考えてる」

ほむら「……どう?」

まどか「……ほむらちゃん、すごいや。うん、考えてた」

まどか「ワルプルギスの夜って、実感まだわかないけど」

まどか「でも、魔女はいるし、死ぬのって意外と身近だなって、思って」

まどか「ほむらちゃん達が、死んじゃうって思うと怖くて」

まどか「でも、私も、死ぬのは怖い」

まどか「堂々巡りになっちゃって、なんだか、わからなくなって」

ほむら「まどか……」



214 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:28:34.95 OMkFtv4eo 184 

まどか「でも……」

まどか「私って、昔から得意な学科とか、人に自慢できる才能とか何もなくて」

まどか「きっとこれから先ずっと、誰の役にも立てないまま、
     迷惑ばかりかけていくのかなって」

まどか「それが嫌でしょうがなかった」

まどか「だから、私の命で、もし、皆の命が、助かるのなら」

まどか「それは、とっても、喜ぶべき、ことなのかな……」

ほむら「……」

ほむら「まどか、貴方は素晴らしい人よ。
     皆を癒してくれる、可愛らしい人」

ほむら「ワルプルギスの夜程度で、失っていい人じゃないわ」

まどか「ほ、ほむらちゃん……」

ほむら「貴方にコンプレックスがあって、
     そこをインキュベーターが的確に刺激してるのは分かったわ」



215 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:29:19.01 OMkFtv4eo 185 

ほむら「まどか、焦っては駄目。貴方は皆の役にたてる人よ」

ほむら「ただ、無理して背伸びしようとしている。
     あなたは、今 自分の力で出来ることを積み重ねて大きくなるべきよ」

まどか「それは……分かっているけど」

ほむら「いいえ、貴方は分かりきれていないわ。
     貴方は力になれない自分に不満を持って、焦ってる」

ほむら「自分が子供だと思って、早く成長したい、大人になりたいって思うのは
     私達くらいの年齢だと皆 思うことよ?」

ほむら「だけどね、魔法少女になっても、大人になっても、
     結局は、ただの子供の頃の自分より、幾らか出来る事が増えるだけ」

ほむら「むしろ、子供の頃より自分への失望感は大きくなるわよ。
     本当の意味での自分の限界が、はっきり分かるだけね」

まどか「……」




216 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:30:32.67 OMkFtv4eo 186 

ほむら「それから、大人は後悔するの。子供の頃に、もっと焦らず、将来のことを考えて
     自分を伸ばす努力をすれば良かった、とね」

ほむら「大人になってからは、自分の土台を作るような成長は見込めないから」

ほむら「これは魔法少女になる場合も、同じようなもの」

ほむら「だから、まどか。今は遠回りしてる様でも、じっくり、自分で自分を成長させる努力をしなさい」

ほむら「自分の土台を大きく作れるほど、大人になってから出来る事は大きく増えるわ」

ほむら「貴方が生きて、成長すれば、ワルプルギスの夜のために
     貴方が犠牲になって救える人間より、
     もっと多くの人間を、きっと幸せにできるようになる」

まどか「……でも、ほむらちゃん! そうだとしても、その前に皆が死んじゃったら!?」



218 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:31:34.99 OMkFtv4eo 187 

ほむら「……」

ほむら「まどかが、自分を犠牲にするために、魔法少女になった時の話をするわね」

まどか「う、うん」

ほむら「……貴方が魔法少女になって、魔女になったら。私は絶望するわ」

まどか「えっ」

ほむら「魔女になるつもりは無いから、私も自殺する事にする」

ほむら「私達二人が死んで、きっとマミも絶望するわ」

ほむら「さやかは、私達の復活を願って、契約するかもしれない」

ほむら「杏子も悲しんでくれるかな……」

ほむら「……ほら。どう足掻いても、絶望よ。
     私の所為で、ごめんね、まどか」

まどか「ほむらちゃん……」


219 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:33:25.96 OMkFtv4eo 188 

ほむら「どの道、不幸になるなら、希望が残る方に賭けない?」

まどか「希望……?」

ほむら「私とマミ、杏子が力を合わせて、ワルプルギスの夜を倒せれば
     何も問題ないわ」

ほむら「まどか、インキュベーターより、私を、私達を 信じて頂戴」

ほむら「貴方が、私を信じてくれるなら。それは私の力となる」

ほむら「貴方が、私達がワルプルギスの夜に勝てると信じてくれるなら、
     私達は必ず勝てるわ」

まどか「……」

まどか「……ほむらちゃんには、本当にかなわないなぁ」



220 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:34:10.83 OMkFtv4eo 189 

まどか「ねぇ、ほむらちゃん」

ほむら「どうしたの? まどか」

まどか「……ちょっと、じっとしてて!」

ほむら「?」


まどかは、二つ結びを作るリボンを解き、
私の後ろにまわった。

そして、私の髪を弄りだす。



まどか「てへへ、ほむらちゃんの髪の毛、サラサラで綺麗」

ほむら「……うさぎ結びにしてくれてるの?」

まどか「うん。ほむらちゃん、すっごくかわいいな」

まどか「いつもは、なんだかおねぇさんというか、保護者みたいな感じだけど、
     すごく身近に感じられる」

ほむら「そう……」



221 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:34:38.97 OMkFtv4eo 190 
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222 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/17 20:35:28.69 OMkFtv4eo 191 

まどか「……お守りの代わりって言ったら、おかしいかもだけど」

まどか「ワルプルギスの夜を倒して、全てが終わったら、返しに来て欲しいの」

ほむら「……」

まどか「絶対に、返しに来てよ!」

ほむら「……心配要らないわ」

ほむら「私は、貴方からの力を、得る事ができた」

ほむら「女神の力を貰えた私に、力が強いだけの魔女など、大した敵ではないわ」

まどか「女神って……私……? うひひ、何だか照れちゃうな」

まどか「信じるからね、ほむらちゃん」

ほむら「大丈夫よ、私を信じなさい」

ほむら「貴方が私を想うほど、私は更に強くなれる」

まどか「うん!」


ほむら「皆に……きゅうべぇに……人の可能性を見せてやるわ!」


231 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:06:24.66 Kp1zcsNko 192 

可愛い可愛い、可愛いまどか。まどかぁーーっ!
……ごほん。

……まどかを家まで送り、マミに連絡を入れる。

まだ、佐倉杏子のアパートに居るようだ。

一応、向う事とする……


――佐倉杏子の部屋のドアをノックをし、出迎えてくれたのは、マミだった。


マミ「ママ、鹿目さんは、どう?」

ほむら「問題ないと思うわ。杏子の方は、どう?」

マミ「……佐倉さん、マミより心が強いみたい。そんなに心配要らないよ」

マミ「先輩なのに、情けないなぁ」

ほむら「貴方が居てくれたから、そう見えるだけかもしれないわよ」

ほむら「それに、弱さを認めるのも強さ、よ」

マミ「……そっか、そうだね」



232 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:07:13.68 Kp1zcsNko 193 

杏子「おい、なに玄関でコソコソ話してるんだ。
    入ってくるなら、入ってくればいいだろ」

ほむら「お邪魔するわね、杏子」

杏子「どーぞ。わざわざ来てもらって悪いけど、アタシはそんなに心配されるほど、
    柔じゃないよ?」

ほむら「ふふ、心強いわね」

杏子「……なぁ、アンタ。疑うわけじゃないが、
    アンタは、どうやってあの真実に辿り着いたんだ?」

ほむら「過去、仲間が魔女化して。その時にインキュベーターに聞いたのよ」

杏子「そうかい……。じゃあ、アンタ、何かやってるみたいだが……
    それって、インキュベーターへの復讐かい?」

ほむら「違うわ」

杏子「……へえ、なんだ。そっか」

ほむら「復讐などどうでもいいわ。私達の未来を勝ち取る為よ」



233 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:07:41.56 Kp1zcsNko 194 

杏子「私達の未来……? んなもん、あるわけが……」

ほむら「あるわ。私が作るから」

杏子「……」

ほむら「……」

杏子「いいだろう……。おい、何をやってるか、聞かせろよ」

ほむら「……そうね、ある程度、考えは纏まってきたわ。
     準備も順調に進んでた。
     いい機会ね。魔法少女の二人に、私の考えが現実的か聞いてもらうとしましょう」

杏子「……たのまぁ」

マミ「うん」


234 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:09:52.74 Kp1zcsNko 195 

……私は、私の考えていた事を話した。

魔法少女の負担を少しでも減らし、
明日に繋ぐ事が出来るような、計画を。


杏子「……私は、学がねぇから、現実的かは、わからない。
    だが、危なそうな面が幾つかあることは分かる」

マミ「……私も、佐倉さんと同じ。けど、もし、もし、上手く行ったら……」

ほむら「危険な面が多くあるのは私も承知よ。
     私は強くなって、信頼できる仲間を、増やさなきゃいけないわね」

ほむら「どうする? 貴方達は、協力してくれる?」

マミ「うん、勿論だよ。マミは、ママの味方」

ほむら「ありがとう」



235 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:10:41.11 Kp1zcsNko 196 

杏子「ああ……。あたしも、手伝ってもいいよ」

杏子「あたしは戦うくらいしか まともに出来ないがな」

ほむら「そう……、ありがとうね、杏子」

杏子「へっ、礼を言う位なら、契約期間を延長してくれよ。
    大金が入る、こんなうまい契約はないんだからな」

ほむら「そう……」

杏子「どうだい?」

ほむら「……だけど、提示したお金が払えるのは、この一ヶ月だけよ。
     私がやろうとしている事は、お金もかかる事だから……」

杏子「……なんだ、そっか。まあ、そうだろうな」


236 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:12:01.01 Kp1zcsNko 197 

ほむら「だけど、魔女と使い魔の討伐料以外に関しては
     続けたいと考えているわ」

杏子「討伐料以外?」

ほむら「貴方の事、私が養う」

杏子「……私を、あんたが?」

ほむら「ええ。貴方が嫌じゃなければ」

杏子「えっと、お金掛かるのは困るって言ったじゃねぇか……。無駄金だろ。
    そりゃ、ありがたいとは思うけど、そんな事してくれなくても、
    あたしは協力するつもりだぞ?
    インキュベーターの悔しがる顔を見てみたいからな」

ほむら「インキュベーターとの事がなくても、私はそうするつもりだったわ。
     無駄なんかじゃないの、私にとって」

杏子「……なんで」



237 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:12:49.65 Kp1zcsNko 198 

ほむら「貴方の事、大事だと思ってるわ。幸せになってほしいのよ」

ほむら「これからは、貴方には学校に行って欲しいし、
     普通に友達と遊ぶ時間だって作って欲しい」

ほむら「将来に対する夢や希望だって持って欲しい」

ほむら「その為に、必要な事は、私が全て用意する」

杏子「……な、なんだよ、それ。大体、マミに悪いよ」

ほむら「マミに?」

杏子「あ、当たり前だろ!
    あたしは、そんな、あんたとは何でもないのに、
    あたしがそんな援助うけるなんて、おかしいだろ」

杏子「マミは、あんたと親子の契りを結んでるんだろ?
    マミはあんたと一緒に居て、幸せそうだった。

    あたしが、それを邪魔するなんてこと、あっちゃいけないんだよ」

ほむら「……」



238 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:14:19.48 Kp1zcsNko 199 

ほむら「マミは……反対かしら?」

マミ「……私は、反対なんて、しないわ」

杏子「えっ」

マミ「むしろ、佐倉さんに、変に大金をあげる契約をするより、
   そっちの方がいいって思う」

マミ「この子、きっと、無駄遣いしちゃうし」

ほむら「確かにね」

杏子「そ、そんなことないよ!」

杏子「それより!」

杏子「マミは、なんで……あたし、あんな別れ方しちゃったし、
    またこっちに帰ってきてからも、あたしはつっけんどんな態度とっちゃったし」

杏子「なんで……あんた達……」



239 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:14:52.87 Kp1zcsNko 200 

マミ「佐倉さん……いえ、杏子。私は、貴女に嫌われたと思ったから
   仕方なく距離を作っていたけど」

マミ「本当は、仲直りしたいと思ってたわ」

マミ「魔女狩りの時だけでも、一緒に過ごせて、
   貴女の根っこの部分は以前のままだって、知る事ができたし」

マミ「以前みたいに、その、仲のいい、先輩と後輩……
   いえ、姉妹みたいになりたいなって、思ってるわ……」

杏子「……」

マミ「……あの、ママ」

マミ「ママも、そうでしょう?」

ほむら「ええ、そうね……」

ほむら「杏子、私の子供になりなさい」


240 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:16:32.38 Kp1zcsNko 201 

杏子「……へ、へへ。わけわかんねぇ」

杏子「あんたの子供……しかも マミの妹かよ」

杏子「やだよ、やーだ」

マミ「杏子……さん」

ほむら「……そう言われると、意地でもしたくなるわ」

杏子「そう言われると、意地でもなりたくないな」

ほむら「私は、あなたの事。死んでもお母さんって呼ばせてやるから」

杏子「なら、アンタが死ぬまで絶対に呼ばない」

ほむら「悲しい事言ってくれるじゃない」

杏子「死ぬって言うからだ」

ほむら「……」



241 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:17:04.77 Kp1zcsNko 202 


杏子「お前の事は絶対死なせねぇ、マミも絶対死なせねぇからな」

杏子「ワルプルギスの夜も、どんな魔女だって、あたしが倒してやる」

杏子「……あんたらの、あたしへの想いは、それでチャラって事にしてくれ」

ほむら「……そう、ありがとう」

マミ「……」

杏子「悪いけど、二人とも。今日のところは、帰ってくれないか」

杏子「今日は、もう、本当に独りになりたいんだ」

ほむら「……そう」


242 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:18:21.83 Kp1zcsNko 203 

マミと二人で、杏子にあてがった部屋を後にする。

マミの部屋へと、帰りながら……
マミが話しかけてきた。


マミ「ママ、佐倉さんに断られちゃったね」

ほむら「貴女だって、最初は断ったじゃない」

マミ「そうだね。私もはじめは何いってるんだろう この子はって思った」

ほむら「まぁ、体は貴女より後輩だしね」

ほむら「杏子のことだけど……」

マミ「ん?」

ほむら「貴女に話を通さず、突然 決めちゃってごめんね?」

マミ「いいよ。ママはいつもぶっ飛んでる所があるから、慣れちゃった」

マミ「私だって、あの子と仲良くしたかったし」



243 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:19:22.20 Kp1zcsNko 204 

マミ「いつか、佐倉さんとも一緒に暮らしたいな」

ほむら「そうね」

マミ「そのためにも、ワルプルギスの夜、倒さなきゃね」

ほむら「ええ。明日からは、ワルプルギスの夜対策をとらなきゃいけないわね」

マミ「対策……どんな魔女かわからないから、どうしていいかわからないや」

ほむら「グリーフシードのストック……
     私達のチームワークの強化……」

ほむら「強力な兵器のストックもあるから、
     私がそれを使う際の打ち合わせもいるわね」

ほむら「それから、出来たら見滝原一帯の一般人には、
     周辺地域に避難しておいて欲しい所だわ」

マミ「避難……って、そこまで必要なのかしら?」



244 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:19:52.64 Kp1zcsNko 205 

ほむら「強大すぎる事から結界内に身をひそめる必要がなく、
     放っておくと、現実世界にも多大なる被害をもたらすという事は聞いたことがある」

ほむら「いわば、自然災害レベルという事でしょう」

マミ「うーん……、でも、魔女が来るからって言って、避難してくれるとは……」

マミ「とても、信じてもらえるとは」

ほむら「私が、市内に爆弾を仕掛けるわ」

マミ「……はい?」

ほむら「大規模爆風爆弾兵器……モアブっていう、
     通常兵器としては最大級の破壊力を持つ爆弾があるのだけれど
     それが加害半径150m位あるのよね」

ほむら「市中どこかに隠しており、ワルプルギスの夜が現れる日に起爆するっていう、
     テロリストからの連絡が入れば、避難せざるをえないんじゃないかしら」

マミ「……念のために聞くけど、ママが持ってるわけじゃないよね?」

ほむら「……設置するのはダミーよ」



245 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:20:53.97 Kp1zcsNko 206 

ほむら「そもそも、持っていたらワルプルギスの夜に使うわよ」

マミ「周囲に被害がでちゃうよ……」

ほむら「ワルプルギスの夜の災害とどちらがマシかを計算する必要がありそうね」

マミ「……う、うん」

マミ「それと、警察の方は残って捜索、自衛隊の方は出動する自体になりそうだけど……」

ほむら「彼らは緊急時に働くのが仕事よ。
     それと、ダミーを数箇所設置し、ワルプルギスの夜から一番離れたダミーの場所を通報すれば、
     そっちに掛かりきりになるだろうから、彼らの安全も守る事は出来るわ」

マミ「じゃあ、ある程度見つけ易い設置法を考えなきゃいけないんだね」

ほむら「そうねぇ、でも事前に見つかっても駄目だし……
     そもそも、モアブって長さ10m近くあるし、重量もあるから隠すの骨なのよねぇ」

ほむら「適当な空き地に、魔法と削岩機で地中浅めの所に穴を掘り、隠すとしましょうか。
     通報前に少し陥没させれば、場所さえ特定させれば直に見つけてくれるでしょ」

マミ「ママなら優秀なテロリストになれそうだね……」

ほむら「照れるわ」


246 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:21:26.24 Kp1zcsNko 207 

ほむら「今日からパトロールは私も出るから」

ほむら「実戦で連係プレーの練習としましょう」

マミ「うん、ママ」

ほむら「日中は工作しているわ。
     手伝ってほしいことが出来たら、マミにも学校を休んでもらうかも」

マミ「いつでも呼んで」

ほむら「ふふ……頼もしいわね」

マミ「……ママも、出席日数のことを考えたら、学校 来なきゃだめだよ?」

マミ「ワルプルギスの夜が終わるまではしょうがないかもしれないけど……」

ほむら「大丈夫、根回しは完璧よ。学力的にも、私は大学出るまで全く問題ないわ」

マミ「そ、そう……」



247 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:22:31.32 Kp1zcsNko 208 

――独り、とあるビルに爆薬を仕掛けていると、佐倉杏子がやってきた。
私が何をやっているのか、不審そうだ。


ほむら「空きテナント使って、ちょっと悪さしているだけよ」

杏子「悪さ……ねぇ。まぁ、深くはつっこまないけど」

ほむら「貴方って、そういう所いいと思う。付き合いやすいわ。
     ところで、何か用があるのかしら?」

杏子「ん……。そうだな」

杏子「何がって訳でもないんだけど、パトロールの時以外、私暇だし。
    ワルプルギスの夜が相手だ。
    何かやる事があるんなら、手伝うよ?」

ほむら「じゃあ、学校に行ける様 勉強を……」

杏子「ワルプルギスの夜が迫ってるだろ!」

ほむら「じゃあ、終わったら 私が教えるから、勉強なさいね」

杏子「え、えぇー……」


248 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:23:13.03 Kp1zcsNko 209 

ほむら「さて。そうねぇ、貴方が現代兵器や爆発物に精通しているのなら、
     手伝ってもらいたい事は山ほどあるけど」

杏子「あんたはあたしに何を期待しているんだ」

ほむら「ですよね。下手に触ると、危険だし……。
     うーーーん、どうしようかしら」

ほむら「貴方達とのワルプルギスの夜対策は、今夜から
     私もパトロールに参加して、連携の強化を図る。

     他の綿密な打ち合わせは、もっと日が近づいてからにするつもりなのよ」

杏子「じゃ、今は特になしかよ」

ほむら「……そうねぇ、パソコンの扱いにでも慣れてもらおうかしら」

杏子「パソコン……?」


249 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:23:48.81 Kp1zcsNko 210 

ほむら「貴方のアパートに、パソコン一台、置いてあるけど使ってる?」

杏子「パソコンって、そんなものあったっけ……」

ほむら「居間の机の上にノートパソコンが……」

杏子「机の上……? 変なテレビみたいなのしかなかったけど、
    わけが分かんなかったな、あれ」

ほむら「OK……、貴方、私が昨日言った事、あまり理解できてないでしょう?」

杏子「う……」

ほむら「まぁ、今までの生活考えれば仕方がないわよね。
     よし、話している間に、仕掛け終わったわ。

     一緒にアパートに行きましょう。
     パソコンの使い方、教えてあげる。

     ワルプルギスの夜対策とは関係ないけど、
     私達にとって、将来的に重要な武器となるのだから」

杏子「なんか、面倒そうだな……」


250 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:25:42.30 Kp1zcsNko 211 

――佐倉杏子用のアパートの部屋で、
PCを起動し、説明しはじめる。

やっぱり、佐倉杏子は頭を抱え始めた。

涙目の佐倉杏子はそそるものがある。
少しだけ。

……しばらくして、お茶を入れてやると、
思い出したように、懐から茶封筒を出す佐倉杏子。


251 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:26:35.07 Kp1zcsNko 212 
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252 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:27:21.23 Kp1zcsNko 213 

見たことがあるような封筒だ。

これは……


ほむら「どういうつもり? これ、前金として渡した五十万よね」

杏子「いや、一万ぐらいは使ったよ」

ほむら「たった一万?」

杏子「……いや、あたし、結局、こんな額のお金渡されても、
    使い切れないみたい。

    駄菓子とか一杯買っても、使い切れなくて。
    ゲーセンにつぎ込んでも、なんか空しくなって。

    あんなに、一杯欲しかったし、やりたかったのに。

    かといって、有意義に使おうとしても、
    住む部屋とか、用意してくれてるし、
    食事とか、色々良くしてくれてるだろ?

    なんか満たされちまって、
    何に使えばいいか、わかんないんだ」

ほむら「……そう」

杏子「あたしのこと、養ってくれるって言うんなら、
    約束の金は全額、そっちに充ててくれていいや」

ほむら「それには及ばないわ」


253 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:27:51.93 Kp1zcsNko 214 

杏子「けど……」

ほむら「これは正当な報酬よ。貴方のお金」

ほむら「すぐに使う必要なんてないでしょう。
     貯金しておいて、いい使い道が見つかった時のために
     とっときなさいな」

杏子「うーん、そういわれてもなぁ」

杏子「あたし、学校にもまともに行ってない馬鹿だからさ、
    馬鹿みたいな事につかっちまったら、と思うとね。

    それなら、信頼できる奴に預けたい。

    もしかしたら、私一人で使おうとするより、
    有意義な使い方を、教えてくれるかもしれない。

    だから、あんたに、私にどうやって使えばいいか
    教えて欲しい」

ほむら「杏子にとっての有意義な使い方、直には私もわからないわ」

杏子「そっか、そうだよな」



254 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:28:22.95 Kp1zcsNko 215 

ほむら「でも、私に預けたいというのなら……いいわ、預かっておく」

ほむら「信頼してくれて、ありがとうね」

杏子「……こっちこそ、その……」

ほむら「ん?」

杏子「あ、ありがとな!」

ほむら「……かわいいわね」

杏子「なんだ急に!」



……これで、私の大事な仲間4人全て、
深い絆を結べたと言ってもいいのだろうか?

影でこの4人以外からも、多くの因果を集めているが、
質、量 共に比にならない。

今までにない力を感じる。

あの舞台装置の魔女との対決の日が迫っているというのに、
恐怖が薄い。

今度こそ……きっと、私は、このループを打ち破る。




255 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:29:25.01 Kp1zcsNko 216 

――夕飯時が近づいてきた。

引き続きパソコンについて教えていたため、
そろそろ頭から煙でもあがりそうな杏子を引き連れ、マミの部屋へ。

玄関には、マミ以外の靴がある。

どうやら、まどかとさやかだ。


ほむら「ただいま」

杏子「お邪魔するよ」

マミ「ほむらさん、おかえりなさい。杏子もおかえり」

杏子「……お、おう。ただいま……なのか?」

さやか「おふたりさん、さやかちゃんが 上がらせてもらってるよー」

まどか「わたしもー」

ほむら「よく来たわね、まどか。ついでに、さやか」

杏子「おう、どうかしたのか?」

まどか「ちょっと、ほむらちゃんに話があって……」

さやか「そのまえに、ほむほむに「ついで」って言われた事に言及したいんだけど」

ほむら「瑣末な事よ」

さやか「泣くぞ、ほむほむ」


256 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:30:15.87 Kp1zcsNko 217 

ほむら「話って何かしら?」

まどか「えっとね、私とさやかちゃん、ワルプルギスの夜や
     魔女狩りでは、やっぱり役に立てないから……」

ほむら「その必要はないわ!」

まどか「ひうっ!?」

さやか「ま、まぁ、落ち着いて聞いてよ。別に私達が魔法少女になるって話じゃないから」

ほむら「あ、そ、そう……」

まどか「そ、そうだよ、ほむらちゃん! 私の事、信じてよ!」

ほむら「ご、ごめんなさい。正直、その展開はもうトラウマレベルで……」

さやか「平常心保ててない ほむほむは、レアっちゃレアだけどさ」


257 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:31:07.32 Kp1zcsNko 218 

マミ「ほむらさんは、二人の事が心配なのよ。怒らないであげて?」

さやか「別に怒ってるわけじゃないですよ」

まどか「……私は、ほむらちゃんってば自分の事を信じてって言ったのに、
     私のことは信じてくれてないんだって思って、ちょっと……怒ったかも」

ほむら「ま、まどか……」

まどか「……だからね、ちゃんと聞いてくれたら、許してあげる」

ほむら「え、ええ! まどか、なにかしら?」


遠くでごちゃごちゃ言ってるのが聞こえる。

「ほむほむって、まどかだけ、ちょっと特別扱いというか、何か反応が違いません?」
「……私も思ったわ」
「ほむらの弱点か」

……反応したい所だが、まどかが優先だ。



258 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:32:10.44 Kp1zcsNko 219 

まどか「あのね、魔法少女じゃないなりに、私達でも
     手伝える事があるんじゃないかって思って……」

まどか「戦力にはなれないけど、やっぱり、力になりたいの」

まどか「ほむらちゃんの力に……!」

ほむら「まどか……」

さやか「あーーー、私もだからね! ほむほむ!」

杏子「おい、空気読んだ方がいいんじゃないか?」

マミ「いえ、読まなくていいとおもうわ」

杏子「……そ、そう……なのか???」



259 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:33:04.76 Kp1zcsNko 220 

ほむら「……そうね、ワルプルギスの夜対策としては、正直思い浮かばないけど……」

ほむら「魔法少女候補者である貴方達に、将来的にやって欲しい事はあるわ」

まどか「な、なにかな、ほむらちゃん!」

まどか「家事でも何でもやるよ!?」

さやか「あたしだってやるぞー、まどかよりは料理上手いぞ!」

まどか「なにー、さやかちゃん!」

まどか「掃除とか 苦手なくせにー!」

さやか「なにをー!」

ほむら「家事も手伝ってもらえると助かるけど、そうじゃないわ」

ほむら「杏子、お願い。私のPCを起動して、例のページに飛んで頂戴」



260 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:33:45.32 Kp1zcsNko 221 

杏子「ほい来た。ちょっと待っててくれ。操作、まだ慣れてないんだよ」

杏子「ええっと……ぶっくまーくは……これか、あった」

まどか「……? パソコンで、何を? ほむらちゃん」

さやか「あれ……このホームページのバナー……」

マミ「ええ、そう。ソウルジェムの画像よ」

まどか「……」

さやか「……」

まどか「えっ??? いいの? それって、魔法少女にとって とっても重要な事なんじゃ……?」

さやか「一般人には秘密なのかと……」


261 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:34:41.11 Kp1zcsNko 222 

ほむら「別に魔法少女に関する事って、秘密でも何でもないわよ。
      契約上しなきゃいけないって事はないわ」

杏子「まぁ、下手にばれたら、魔法少女を捕まえてモルモットにしたいっつー
    研究者があらわれるかもしれないけどな」

さやか「笑えないよ、それ……」

マミ「まぁ、一般人が見ても、何かはわからないわよ」

ほむら「そこのバナーをクリックしても、パスワードの入力画面に行くだけだからね」

ほむら「パスワードの入力欄をクリックすると、バーチャルキーボードが起動する」

杏子「画面上で文字選んで入力できるんだと。
    せきゅりてぃ……とやらの問題でこれで入力するようにしてるらしい。
    これで、ソウルジェムって入力すると……」

ほむら「ゲストとして、このサイトに入る事ができるわ」

まどか「……わぁ、魔法少女ネット???」

さやか「初心者支援制度……救援要請システム……グリーフシード売買制度……?」


262 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:35:34.89 Kp1zcsNko 223 

杏子「ほむらが考えたんだよ。魔法少女が相互援助 出来る場を作れないかって」

マミ「なりたての子は死亡率が高いから、戦う術を先輩達で教育する初心者支援制度。

   強力な魔女が現れた場合の、近場の魔法少女への救援要請システム。

   戦闘が苦手でも、お金を払う事でグリーフシードを得られるシステム」

杏子「最後のは、私みたいに金はないけど、魔女狩りは得意って奴にとっても便利だ」

マミ「歳をとれば、働いてお金を稼がなきゃ生活していくのも厳しいと思うわ……
   うまくこの試みが働いてくれたら、いい方向で物事が動くかもしれないわね」

まどか「すごい……」

さやか「これ、もう機能してるの???」

ほむら「まだ、試作版みたいなものよ。まだまだ煮詰めていかなきゃいけない所がある」

ほむら「完成すれば、大手のサイトに定期的に広告を張らせて貰おうかと思っているわ」

マミ「それに、本格的な立ち上げには大きな問題があるのよね」



263 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:36:17.17 Kp1zcsNko 224 

さやか「……大きな問題?」

ほむら「私達の戦力よ」

まどか「……えっと、なんで戦力が問題になるの……?」

杏子「まず一つに、グリーフシード目当ての奴が、襲ってくる場合が考えられるな」

さやか「……そんな奴がいるんだ」

マミ「逆に、戦力の問題からは外れると思うけど、罠かと思って、接触を躊躇う子もいると思うわ
   きゅうべぇに色々吹き込まれるかも知れないし」

ほむら「それに、初心者支援も、救援要請システムも戦力に余裕がないと 人足を裂けないし、
     グリーフシード売買制度も在庫に余裕が欲しいし……」

杏子「魔法少女全体を満足させるだけ確保するのが難しいかもしれねーからな」

ほむら「金銭面・設備面では仁美も協力してくれてるから、そっちの心配は少ないけどね」


264 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:36:57.39 Kp1zcsNko 225 

さやか「仁美???」

まどか「なんで仁美ちゃんが出てくるの?」

ほむら「あの子、最近やけに外出先で会うのよね……」

ほむら「色々知られてしまったの」

さやか「仁美も、最近よく休むと思ってたけど……まさか」

まどか「……ま、まぁ、仲のいいのはとってもいい事かなって」

ほむら「話、戻すわよ。私達はまず、信頼できる仲間を増やすのが第一、ね」

杏子「ま、そんな簡単にはいかないだろうな」

ほむら「今は試作版のページを見て、興味を持って接触してきてくれた子を
     面接しながら、仲間を増やそうとしてるのよ」

ほむら「私、マミさん、杏子は現場での戦いがメインになってくるの」

ほむら「だから……事務的にバックアップしてくれる人が、欲しいわけ」


265 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:37:30.29 Kp1zcsNko 226 

まどか「それが、ほむらちゃんが 言った……」

ほむら「そう。魔法少女候補者向きの戦いって事よ」

ほむら「一般人には、完全には任せられない部分も出てくると思うから」

さやか「なるほど……」

ほむら「組織として成立すれば、お給料も出せるようにしたいわ」

まどか「えっ!? い、いいよう! お金の為じゃないし……」

ほむら「そう言ってくれるのは嬉しいけど、そういう問題じゃないわ」

ほむら「貴方達という人間を抱え込みたいの。
     その場合、組織に属していても、日常生活は無視できない」

ほむら「お金が無ければ生活できないから、当然 給金をださないと」


266 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:38:43.64 Kp1zcsNko 227 

マミ「え……っと、そこまで私も話を聞いていなかったけど、どうやって そんな組織を……」

杏子「グリーフシードの売買制度で大して利益出せるとは思えねーし……
    研修や救援要請で金を取るにしても、私ら魔法少女は基本的に餓鬼だぞ……?
    金とれるのか?」

ほむら「もちろん、救援要請や研修でお金はとるつもりはないし、
     売買制度で利益を出すつもりは 元々ないわ。
     トントンなら御の字なんだけど、難しいでしょうね」

ほむら「金策は探偵事務所を設立するつもり」

ほむら「魔法少女の団体自体も、それを表向きの名前とするわ」

ほむら「希望者は、雇う事も考えてる」

さやか「……魔法少女なら、確かにそういう調査向いてるかもしれないけど」

ほむら「魔力をそこで無駄に使う心算はないわよ。
     私には幅広いコネクションがあるのだから
     情報なんか幾らでも得られるわね」

さやか「……? コネクション……?」

杏子「おいおい、魔法少女以外はただの中学生の癖に、何を言って……」


267 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:40:20.19 Kp1zcsNko 228 

ほむら「代表的なので言えば……とある大物政治家とのコネクションが、私にはあるわ」

マミ「……えっ?」

まどか「大物……」

さやか「政治家……?」

ほむら「汚職の嫌疑を掛けられそうになっていてね、
     その証拠を私が隠滅してやって、恩を売ってあるのよ」

ほむら(とある時間軸よりも、その議員……嫌疑を掛けられ自殺を図るまでのタイミングが、
     今回はループの時間まで遅れてたから助かったわね)

杏子「お前、まじで何でもありだな」



268 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:41:35.97 Kp1zcsNko 229 

ほむら「ま、その議員だけじゃなく、
     ここら周辺の権力者や大きな企業の社長の弱みは大体、握っているしね。

     最近掴んだネタは、市長の浮気とかかしら」

まどか「市長の……浮気?」

ほむら「コスプレ好きだったり、中、高校生相手に踏んで欲しいとか言ってて、引いたわー」

マミ「……不潔」

杏子「いや、それより、さぁ……」

さやか「ほむほむだけは敵に回してはいけない……」

杏子「そう、気にする所、そこだよなぁ」

ほむら「悪用はしてないのよ?」

さやか「それは信じてるけどさ」

マミ「ほむらさんがそんな事するわけがないわ」

まどか「そうだよねぇ」

杏子「私は信じてるというか、信じたいだな。
    それ掴んでどうするつもりだよ。
    一つ間違えれば とんでもない悪になるぞ、こいつ……」

ほむら「……ちなみに、杏子。あなた、実は最近……」

杏子「……っ、ま、待て待て!!! 何を言い出すつもりだ!」

ほむら「冗談よ」

杏子「泣くぞ まじで……」



269 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:42:30.28 Kp1zcsNko 230 

マミ「……まぁ、地道な調査とかもあるのよね。
   そういうのって、ついでに魔女のパトロールにもなりそうね」

杏子「どうせ負のエネルギー放出してそうなやつ等が頼んでくるんだろうしねぇ」

ほむら「まぁ、表向きの方は、貴方達がそんな本気でやらなくても、どうとでもなるわ。
     そっちはそっちで 人を雇うから。

     私を姐さんと慕ってくれる、逞しいお兄さんたちが
     低賃金で馬車馬の様に働いてくれるわ」

さやか「……ちょっと待って、ほむほむ」

杏子「……姐さん? 逞しいお兄さん?」

マミ「……」

まどか「……」



270 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:43:23.55 Kp1zcsNko 231 

さやか「……あの、そのお兄さん達って、背中にお絵かきしてたり……なんて……?

ほむら「さあ、どうかしら…… 見たくもないから見たことないわ」

杏子「リーゼントだったり、パンチパーマだったり……」

ほむら「あのねぇ、意外と普通の格好してるのよ? あの人たち」

ほむら「ちょっと、荒事に長けているだけで……」

さやか・杏子「……やっぱり、暴力団じゃんか! ヤクザだよ!」

ほむら「任侠団体よ」

さやか「そーいうのを!」

杏子「暴力団っていうんだって!」

ほむら「貴方達、あって間もないのに息ぴったりね」


271 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:44:23.38 Kp1zcsNko 232 


まどか「……あの、えっと……ほむらちゃん……冗談だよね?」

マミ「ま、あっ、えっと……ほむらさん、マミも信じてるから……」

まどか・さやか(マミっ!?)

ほむら「だから……、昔はそうかもしれないけど、今はそういうのは無しよ。
     平和に警備会社の設立を進めてもらっているわ」

ほむら「それに、探偵業やるのに、そっちの道に強い人はどうしてもいるの」

さやか「……でも、そんな人たちと一緒に仕事したくないよ」

ほむら「大丈夫、そもそもが別会社よ。接点は私だけ。
     基本的に貴方達と一緒に仕事する事はないわ。

     依頼という形で、調査の仕事を回すだけ」

杏子「そもそも、何でそんな奴等と関係があるんだよ」

ほむら「ああ、他所の団体の人たちと抗争が始まってて……、
     殺されかけてたから、通りがかった私が解決してあげたわけ」


272 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:45:19.53 Kp1zcsNko 233 

さやか「……」

まどか「……」

マミ「……」

杏子「……」

ほむら「……そんなに引かなくても」

さやか「……ねぇ、杏子」

杏子「なんだ?」

さやか「魔法少女って、なんだっけ……」

杏子「こいつと私を一緒にするな。
    ほむらは魔法少女ってトコが一緒なだけで、別の何かだ」


273 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:46:13.59 Kp1zcsNko 234 

……実は、その抗争の始まりや、負けそうになっていた要因は、
私が武器等 色々失敬した所為だ。

死にそうになっていて、見てみぬフリは 流石に寝覚めが悪い。

それに、その道の人たちは本当に役に立つ。

探偵業以外にも、
武器の流通ルートの把握もしやすくなるかもしれない。

時間停止が使えなくなっても、様々な情報を得易くなる。

また、戦力として期待できそうなら、魔法少女の内情を話し、
鍛え上げ、魔女との戦いの間、
銃による援護射撃を期待できるかもしれない。

彼らには見えないだろうから、指示出しが重要となるだろうが。

それから、彼らを抱え込む最も重要な点が他にある。



274 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:47:20.80 Kp1zcsNko 235 

この子達に明かす心算はないが、

魔法少女ネットを維持するのに、大きくなればなるほど、
そのシステム自体や探偵事務所だけでは、支えきれなくなると踏んでいる。

探偵事務所は、実は彼女達を納得させるための存在だ。

表向き警備会社の子達は、
ゆくゆくは日本全国にいる裏社会の人間達を
支配する取っ掛りとするつもりだ。

とある大物政治家や、志筑家にも大きくなって貰い、
人脈もさらに広げる。

表から、裏から、この国を支配してやる。

私は魔法少女として、人として強大な力を持ち、
この時間軸の魔法少女達を、私の仲間達を守る事ができるだろう。

しかし、これで私は留まれない。

魔法少女ネットも、探偵事務所も、国の支配も
私の最終目標のための手段。



275 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:48:39.05 Kp1zcsNko 236 

国を越え、様々な人間達から、
親愛を、憧れを、時には畏怖や憎悪を、私は集める。

そうして、最終的には私こそが
まどかや どんな歴代の魔法少女をも越える因果の終着点となる。

以前のループで、魔法少女となったまどかは、
ソウルジェムの穢れすら浄化して見せた。

ワルプルギスの夜ですら、一撃で倒した。

魔法少女の力は向上する事で、
とてつもない可能性を持っているのは間違いない。

魔法少女の枠を壊すほどの力を得られれば、
私は……今までの魔法少女のシステムさえも壊し……



276 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:50:20.17 Kp1zcsNko 237 
1363351301-276
新世界の神となる

277 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:50:46.47 Kp1zcsNko 238 

そうすれば、
今まで見捨ててきた別の時間軸のあの子達すら、
救えるかもしれない。

全ての時間軸の魔女を消し、
魔女化しようとする魔法少女を救う事が出来るなら、
それは私のループの終着点に相応しい。

この道のりはループを抜け出しても
はるか険しい道のりだろう。

だが、目指す価値はある。

それ位 成し遂げてこそ、
私が繰り返してきた意味がある……


278 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/18 20:53:28.24 Kp1zcsNko 239 

――ふと、まどかがポンと手を叩く。

何かを思い出したようだ。

私は現実に引き戻された。

まどか「そういえば。ママから伝言があるの」

ほむら「私に? なにかしら」

まどか「「ありがとう。おかげで経理の禿を毟る事ができたよ!」って」

まどか「一体……何の事?」

ほむら「さて、この話は終わりにしましょう! そろそろ夕ご飯の時間じゃない?
     マミさん、一緒につくりましょう」

まどか「ほむらちゃん……」

さやか「何依頼したか知らないけど、探偵としての仕事はもう始めているのね……」



292 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:18:01.56 hl5ZHJgOo 240 

――話せる事は話した。

それでも、皆はついてきてくれるらしい。

何かをまだ隠している事、折込済みで。

嬉しい事だ。

満たされた心でモアブのダミーを隠していると、
さやかから緊急の電話が掛かってきた。

何事かと電話に出ると、なんと魔女の結界にまどかが
独りで囚われたらしい。


ほむら「……場所はどこ?」

さやか「工業団地! 場所のデータをメールで送るから確認して!」

ほむら「分かったわ。私に送った後、マミと杏子にもお願い」

ほむら「それじゃ、急ぐ。電話切るわね」

さやか「うん!」



293 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:18:50.10 hl5ZHJgOo 241 

送られてき位置データを確認すると、
盾からAH-64D アパッチ・ロングボウを取り出す。

少々目立ってしまうが、仕方がない。

まどかの危機だ。

魔力を通し、操作を試みる。

問題ない、いける。

元々、高機動力が売りの攻撃型ヘリだ。

時間停止を併用することにより、
本来の時間の流れの中では10秒弱で魔女の結界付近に到達。

私を見て 飛び上がるさやかを目視する。

空中で、再び盾の中にアパッチをしまい
さやかの隣へと着地した。



294 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:19:47.16 hl5ZHJgOo 242 

さやか「なんじゃありゃああああ!」

ほむら「瑣末な事よ。それより、突入するわ。さやかは待ってて」

さやか「えっ、あ! うん!」



結界内にはいると、遠くに使い魔に追いかけられ
逃げるまどかを確認できた。

可愛そうに、恐怖に怯えているのが分かる。
攻撃を受け、怪我もしているらしい。

時間を再び止め、
使い魔を通り抜けざま、さやかの剣で切り伏せる。

それから、まどかを抱き寄せ、怪我を診る。
魔法を使い、傷を治した。


295 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:21:09.62 hl5ZHJgOo 243 

まどか「ふぁっ!? あっ、あー……、ほ、ほむらちゃん」

ほむら「よかった、無事で……」

まどか「ごめんね、助けに来てくれてありがとう」

ほむら「いいのよ。それより、結界を張るわ。
     私が魔女を倒してくる。それまで待っていて」

まどか「うん。待ってる! 気をつけてね!」


奥を探索。

魔女を確認したと同時に
TOWとM220発射機を盾から取り出す。

少々勿体無いが、まどかが結界内にいるため時間をかけるわけにはいけない。

流石、TOW

第3世代主力戦車の装甲を貫通できる
対戦車ミサイルだ。

魔女も周囲の使い魔も一撃だ。

結界は解け、まどか、さやかと合流できた。


296 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:22:16.31 hl5ZHJgOo 244 

ほむら「さ、ずらかるわよ!」

まどか「えっ? えっ?」

さやか「いいから、いそげー! ヘリ見て人が寄ってきたぁ!!!」

まどか「ヘリっ!?」

ほむら「話はあと! まどか、だっこするわ! さやか、走って!」

まどか「わきゃっ!」



297 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:22:54.43 hl5ZHJgOo 245 

まどかを片手で抱え上げ、もう一方の手でさやかの手を掴み、
時間停止。

三百メートルほど走り、人気の無い所で
ようやく、一息ついた。

抱き上げていた所為で、
まどかは私の首に手を回してしがみ付いている。

控え目な柔らかさを感じ取る事ができ……いや、役得?


まどか「ほ、ほむらちゃん、すごい。片手で私を……」

さやか「いや、それより今 世界がおかしかったような……。
     あたし達以外の全てが止まっていなかった?」

ほむら「魔法よ」

さやか「魔法すげぇ……」

まどか「すごぃ……」



298 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:23:58.20 hl5ZHJgOo 246 

まどか「それより、魔女を倒したのに、何で逃げたの。ヘリって?」

さやか「ほむらがヘリ使って、飛んできたんだよ。吃驚した」

さやか「ほむほむって言うの忘れるくらい吃驚した!」

さやか「どーすんの、あれ!? 思いっきり人目についてたよ?」

ほむら「何、問題ないわ。あのヘリは軽々しくこの辺りを飛んでいるはずがない」

ほむら「しかも、魔法で 普通の人には途切れ途切れにしか認識できてないから」

ほむら「幻覚か何かだと結論付けられるでしょ」

さやか「あれだけ、多くの人に見られてても?」

ほむら「集団ヒステリーよ。高度な政治的判断でそうなるわ」

さやか「あ、そう……」



299 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:25:26.32 hl5ZHJgOo 247 

ほむら「そう、呆れないの。魔女との接触は命の危機よ。
     貴方達を守る為なら、私にとっては冒すべきリスクなの」

まどか「ほむらちゃん……!」

さやか「そっか……、うん、ありがとう」

ほむら「でも、まどか。どうして結界に? 自分から近寄った訳じゃないのよね?」

まどか「あ、うん! 勿論だよ」

さやか「まどかと二人で、マミさん家に向ってる途中で、行動が怪しい人がいてさ
     躁状態というか、危うげな足取りなのに、楽しげで……」

まどか「魔女の口付けかなって思って、ちょっと観察してたの」

さやか「やっぱり、案の定、首筋にそれらしいのがあたし達も見えて、
     あたしがほむほむとマミさんに電話しようとして」

まどか「その間、見失わないようにね、
     私が一人でその人をつけていたら、
     さっきの場所でいきなり結界に引きずり込まれたの」


300 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:26:31.24 hl5ZHJgOo 248 

ほむら「……魔女の口付けを受けた者を、魔女が餌にでも使ったのかしら……」

まどか「そっかぁ……、やっぱ、私達だけだと、様子を伺うのもよした方がいいのかなぁ。
     ごめんね、ほむらちゃん」

ほむら「いいわ。次からは、ちょっとでも怪しいと思ったら、
     すぐに私かマミ、杏子に連絡をいれて頂戴」

まどか「うん!」

さやか「うん……」

ほむら「……どうかした? さやか。なにか、腑に落ちなそうだけど」

さやか「……いや。あたしは電話しながら、まどかを目で追っていたのだけど」

さやか「その時、一瞬、インキュベーターを見たような気がするの」

さやか「街灯の上から、まどかを見下ろすように」

ほむら「インキュベーター……を?」


301 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:27:55.51 hl5ZHJgOo 249 

どういう事だろうか。

さやかの見間違いでなければ、
インキュベーターがまどかを観察していて、
その後 すぐに まどかは魔女の結界に巻き込まれた。

偶然とは思えない。

私達、魔法少女は使用済みのグリーフシードを
インキュベーターに与えているのであるし、

あいつ自身が魔女をある程度 自由に呼べるのではないか、
そう疑わせられる場面は今までの時間軸でもあった。

そうだとして、だ。目的はなんだろうか?

まどかに、魔法少女の契約をさせるため?

その割に、インキュベーターはまどかの前に姿を現さなかった。

下手をしたら、まどかを 使い魔に殺されるという、
私にも インキュベーターにも最悪な展開が……。

ん?


302 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:28:44.57 hl5ZHJgOo 250 

今回のループでは、まどか程ではないかもしれないが、
かなり多くの因果をまとい、
膨大な感情エネルギーを得られそうな人物がいるではないか。

それは、私。

まどかは私が居る限り、魔法少女の契約を結ぶ可能性はかなり低い。

ワルプルギスの夜を越える可能性を私が持てたとしたなら……
私を標的にしたほうが 奴にとって都合がよかろう。

今回の私が仲間を大事にしているのは、奴も知っている。

まどか達を次々と殺し、私を絶望させるのが目的か。

だとすれば……、酷く厄介だ。

四六時中、まどかとさやかを 守らねばならなくなる。

マミや杏子にも負担だろう。

魔女との連戦を死ぬまで強いてくる危険性だってある。


303 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:29:35.11 hl5ZHJgOo 251 

まどか「ほ、ほむらちゃん? どうしたの?」

さやか「なんだか、怖い顔をしているけど」

ほむら「……なんでもないわ、まどか。さやか」

ほむら「それより、魔女は倒したのだし。
     マミさんと杏子と、合流しましょう」

さやか「うん、こっちに向ってるだろうし、
     安心させてあげないとね」

ほむら「さっきの結界のあった場所に来るのよね。
     戻りましょうか」

さやか「大丈夫かな」

ほむら「大丈夫、誰も私達の姿は見てないでしょ。
     ミーハーなふりをしましょう。
     それより、合流したら お茶したいわね」

ほむら「マミさん、新しいお菓子作りにまた挑戦しているから、
     楽しみにしてなさい」

さやか「おお!」

まどか「楽しみだなぁ……。じゃあ、むかおっか!」


304 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:30:03.25 hl5ZHJgOo 252 

……インキュベーター。

奴は何体倒そうが、無駄な存在だ。

幾らでも湧いて出てくる。

しかも、ワルプルギスの夜を越えたからといって、
奴の攻撃は休まるわけではない。


この危機を乗り越えられるとしたら……


奴を完全に消滅させる方法を探すか、

奴自身を、変えるしかないだろう。




305 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:30:39.61 hl5ZHJgOo 253 

――まどかとさやか、マミ、杏子とお茶会中、
呼び出しが入った事にして、マミの部屋から一人外に。

近くの川原まで歩き、橋の上から川のせせらぎを眺めながら、
独り言の様に呟いた。


ほむら「インキュベーター、いるんでしょう?」

QB「……」

ほむら「やっぱり、いた」

QB「今更、僕に何か用かい? 使用済みのグリーフシードでもくれるのかい?」

ほむら「いいえ、ちょっと話がしたかっただけよ」

QB「話? 君が今更、知りたい事があるとは思えないけど」




306 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:31:31.73 hl5ZHJgOo 254 

ほむら「……そうねぇ、今のわたし、どうかしら? インキュベーター」

QB「この短期間で、よくもまぁ、これだけ因果を集めたものだね」

QB「鹿目まどかに行き着くはずの因果を我が物としてるのか?」

QB「いや、それだけじゃないよね」

QB「君の成長速度を甘く見すぎていた。人の心はよく分からない」

QB「ワルプルギスの夜に対抗しうる力を得つつあるのは、認めるよ。
   暁美ほむら、君は強敵だ」

ほむら「そう……、ふふっ」

QB「何がおかしいんだ」

ほむら「あなたって、感情あるわよね? 敵意とイラつき、感じるわ」

QB「ないよ。何度もいってるし、僕が嘘をつかない事、知ってるだろう?」

ほむら「嘘をついてるんじゃ無い事は知ってるわ。
     ただ、感情がある事に気がついていないだけじゃないかって、思うのよ」

ほむら「あるいは、昔はあったのか……?」



307 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:31:59.54 hl5ZHJgOo 255 

QB「……」

ほむら「……」

QB「訳がわからないよ。話がそれだけなら僕はもう帰るよ?」

ほむら「……使えるエネルギーというのは、絶望のみなの?」

QB「……」

ほむら「希望から絶望への相転移のみがエネルギーとして摂取できるなんて、
     ロスが多いと思わない?」

QB「一番、抽出しやすいからね。エネルギーとして」

QB「絶望ほど、君達の感情の中で強い行動原理となるものはないだろう?」

QB「エネルギー抽出の際も、それと同じなのかもしれない。
   一番効率良く、強いエネルギーが得られるんだ」

ほむら「そう…… 絶望から希望への相転移は、エネルギーとならないわけ?」

QB「ならない訳ではないよ。それも強いエネルギーとなるはずさ」


308 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:33:07.00 hl5ZHJgOo 256 

ほむら「じゃあ、なぜ? 魔女にして終わりよりも、
     繰り返しエネルギーが得られるほうが、長い目で見れば効率的でしょう?」

QB「研究が進まないのさ」

ほむら「どうして?」

QB「希望というのは複雑だ。
   本人の資質から、人間関係から、時期から、絡む要素が多すぎる。
   そこからエネルギーを得るのも難しいんだ」

QB「逆に、絶望だって、そうだけど……。
   一つのある事象が発生する事により、
   他の物との繋がりが途絶え易い、あるいは途絶えている状況に陥っている。
   比較的、単純なんだよ。構造が」

ほむら「とはいえ、人間がウホウホ言ってる頃から見てたのでしょう?
     ちょっと位は研究が進んでも……」

QB「そうは言うが……僕達には感情が無い。それを進めるには協力者が居る」

ほむら「魔法少女で研究すればいいでしょう」

QB「感情が無いから、全てを理解した上での協力者が必要なのさ」


309 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:33:48.67 hl5ZHJgOo 257 

ほむら「ふむ……魔法少女の真実を知った上で、協力してくれる人がいるって事ね」

QB「そうだよ」

ほむら「私が、協力するといったら?」

QB「君が?」

ほむら「そうよ。私が、貴方達の研究に協力するといっているのよ」

QB「……本気かい?」

ほむら「ええ。魔法少女のあり方を、変える研究につながるなら、ね」

QB「僕達がやってきた事を知って、そんな事を言うのは君が初めてだよ」



310 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:34:22.26 hl5ZHJgOo 258 

ほむら「そう……。私も言うのは初めてだわ」

QB「それが本当なら僕は母星と連絡し、新しいプロジェクトを立ち上げるか検討しなければ」

ほむら「……クスッ」

QB「……? 何を笑っているんだい。まさか、僕を騙そうと……」

ほむら「いえ、違うわ。ただ、貴方、やっぱり感情あるでしょ。今、がっかりした」

QB「違うよ。僕に感情はない」

ほむら「……そう、それなら、そういう事にしておいてあげる」

QB「訳がわからないよ」

ほむら「貴方が感情がないとしても、一つ分かった事があるわ」

QB「なんだい?」

ほむら「貴方、知っているのね。絶望を」

ほむら「でなければ、感情の薄い貴方達が、
     そんなに絶望に詳しいはずがない」

QB「……」


311 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:35:20.51 hl5ZHJgOo 259 

ほむら「貴方達の絶望は……、貴方の行動原理である、宇宙の枯渇あたりかしら?」

QB「……僕達は君達人間と比べかなり長寿の生命体だ。
   人間にしてみれば、寿命が無く見えるかもしれないね。
   だから、人間よりも宇宙の死が身近なんだ」

QB「かつて、僕達は……宇宙が枯れ果てる未来を予測し、絶望を覚えたらしい」

QB「その絶望は、今でも僕達QBは知識として知っているよ」

QB「宇宙の維持を図るのに感情は邪魔だから、捨てたけどね」

ほむら「自分達の感情でエネルギーを生めば良かったのに……」

QB「宇宙の維持を図るのには膨大なエネルギーが必要だ。
   それこそ、当初の試算では
   全宇宙の 感情を持つ知的生命体をエネルギー源としない限り……ね」

QB「その当時の僕らは、自分達の感情を消し、使命に生きる道を選んだという訳だ」


312 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:36:38.33 hl5ZHJgOo 260 

ほむら「成程……ねぇ。ねぇ、インキュベーター」

QB「なんだい」

ほむら「協力するから、感情エネルギーの有効活用の件、しっかり研究しなさい」

ほむら「そうすれば将来的には、私が宇宙を維持できるようになれるかもしれない」

QB「……君は、何を言っているんだい? 何を馬鹿な」

QB「君は、神になるつもりかい?」

ほむら「まどかが神になるに値する願いを貴方に願った場合、どうなる?」

QB「……」

ほむら「貴方がここにいる地は、日本。八百万の神が住まう神の国よ」

ほむら「山の神様、田んぼの神様、トイレの神様、台所の神様など、米粒の中にまで神様がいる」

ほむら「貴方が認識しているより、神と人との垣根は低いわ」


313 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:37:37.48 hl5ZHJgOo 261 

ほむら「だけれど、魔法少女には未だ神がいない」

ほむら「ならば、私は因果を束ね、いつの日か魔法少女の神となる」

ほむら「魔法少女を守るなら、世界を……そして、貴方を変えないと意味がないからね」

QB「……何からなにまで規格外だな、君は」

ほむら「ある意味、貴方が生んだのよ、私を。
     さあ、私に協力するか、しないか、はっきりなさい」

QB「……」

QB「君がワルプルギスの夜を乗り越えられるか……
   それで、君という可能性を見極めさせてもらう」

QB「返答は、それからだね」

QB「とりあえず、それまで休戦とすることにしようか」

QB「どうせ、君の望みはそれだろう?」

ほむら「お見通しなのね」

QB「それ位はね」



314 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:38:42.20 hl5ZHJgOo 262 

――ワルプルギスの夜が襲来する2日前。

下準備は全て整い、連携の練習も万全。
グリーフシードのストックも充分。

ワルプルギスの夜対策は、これ以上ないのではないか。

嘘をつけないインキュベーターの言質をとったのだから、
まどか達もゲリラ的に狙われる事はない。

英気を養う意味でも、一休みすることにしよう。

朝、まどか達との待ち合わせの場所へと、
マミと一緒に向った。



315 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:39:24.76 hl5ZHJgOo 263 

まどか「あっ! ほむらちゃん!」

さやか「おー、ほむほむ。マミさん家でよく会ってるけど、制服姿を見るのは久しぶりじゃん」

ほむら「私、中学生だったのよね」

マミ「ほむらさん、忘れちゃ駄目だよ」

仁美「私はもっとほむらさんと一緒に、学生生活を楽しみたいですわ」

ほむら「そうね……」

マミ「ね、ほむらさん。
   もし良かったら、今日はパトロールも早めに切り上げて、
   お泊り会とかしてみない?」

ほむら「お泊り会?」

さやか「お、いいですね。楽しそう!」

まどか「パパとママに連絡入れなきゃ。たのし……


316 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:40:47.85 hl5ZHJgOo 264 
それですわあああああっ!
1363351301-316
317 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:41:38.89 hl5ZHJgOo 265 

まどか「」

ほむら「」

さやか「」

マミ「」

仁美「やりましょう、是非やりましょう! 私の家、今晩あけさせます!
    もう、学校行ってる場合じゃないですわ!
    私、帰ります! 今すぐ準備を……っ!」

マミ「あ、あの、志筑さん? 別に私の家でも……」

仁美「え、でも……5人泊まるなら」

ほむら「……あ、やるなら、杏子も誘いましょう。6人ね」

マミ「ちょっとその人数なら狭いかもしれないけど、
   皆で雑魚寝も、お泊り会らしくてよくない……?」

仁美「雑魚寝……ほむらさんと、雑魚寝……となりで……」

仁美「ああん! それもいいですわね! そうしましょう、そうしましょう!!!」




318 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:42:09.45 hl5ZHJgOo 266 

さやか「やっぱりかー、まじかー……」

仁美「どうしました、さやかさん! テンション低いですわよ!」

さやか「いや、ねぇ……。逆に、なんでそんなにテンション高いのさ? 仁美は」

まどか「ちょっと、高すぎない?」

仁美「え、そ、そうですか?」

マミ「頬っぺた、真っ赤にして……しかも」

ほむら「仁美……縋り付いてくるみたいにするのは、ちょっと止めて欲しかったり……」

仁美「ほ、ほむらさん! だって、あの時、私の事を全て受け入れてくれるって……!」

ほむら「……夜はパスでいいかしら?」

仁美「夜って……、な、なんでですのっ!?」



320 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:43:37.67 hl5ZHJgOo 267 

私はさやかと顔を見合わせ、苦笑いをする。

まどかとマミはというと、曖昧な笑みを浮かべながら、黙っていた。


さやか「なぁ……仁美。仁美って、ぶっちゃけ、そっち系……?」

仁美「そ、そそそ、そそそそ、そんな事ないですわっ!!!」

ほむら「そんなに豪快にきょどらないでよ……」

さやか「余計 怖いよ!」

仁美「そんな、そんな誤解をしてらっしゃるのなら、いいですわ!
    誤解を解いて差し上げますわ!!!」

さやか「どうすんのよ」

仁美「上条恭介くんに、告白してきますっ!」

さやか「やめてっ!!! なんで恭介なの!」

ほむら「よし、行ってきなさい」

さやか「おい!!!」


321 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:44:46.81 hl5ZHJgOo 268 

どっかに走っていく仁美。

慌て過ぎたのか、途中でずっこけたと思わしき音がする。

……まあ、今の彼女なら大丈夫だろう。

地味に彼女の身体能力は高いようだし。



マミ「……ほむらさん」

さやか「ねえ、ほむほむ。前から怪しいと思ってたけど」

ほむら「……何かしら? 二人とも」

さやか「いつ、仁美まで落としたの?」

ほむら「えっ? 落とす?」

マミ「全て受け入れるって……心の広い事よね」

ほむら「……そもそも、私は全てとは言ってないのだけれど。
     あれ、なんで二人共、機嫌悪そうなの?」

さやか「別に、あたしは恭介がいるしねー」

マミ「……」

ほむら「ちょっ……?」


322 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/19 20:45:47.56 hl5ZHJgOo 269 

何だこの二人。訳がわからないよ。

何故ここで さやかが恭介の名を出したのかも わからない。

助けを求めるように、私はまどかを見る。

まどかは、私の視線に気がついて、
……目を逸らされたっ!?



ほむら「ま、マドカァアーーーッ!?」

さやか「おうおう、まどかまで ほっぺた膨らませて……」

まどか「膨らませてません」

さやか「ねえ、ほむほむ」

ほむら「なによぉ……、さやかぁ……」

さやか「自覚ないのかもしれないけど、ほどほどにしとかないと その内……」

さやか「刺されるよ?」

ほむら「えっ?」

さやか「ノンケでも目覚めさせちゃう女なんだから、あんた」

ほむら「……よく分からないけど、そっとしといて頂戴」


333 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:05:37.17 E9bBZjNvo 270 

朝から馬鹿騒ぎだった その日の夜、
マミの家に集まったのは6人。

平凡な中学生の様に、
皆は楽しい時間を過ごした。

……その翌日、正体不明のテロリストから
警察や各報道機関に 見滝原に爆発物を仕掛けたと連絡が入る。

爆発物の規模が規模なだけに、
見滝原からは速やかに避難措置が執られることになった。

風見野を始めとした周囲の市町村に移動を開始。

まどか、さやか、仁美は名残惜しげに、
私とマミ、杏子に別れを告げ、避難。

私達3人は、警察や派遣されてきた自衛隊から隠れながら、
見滝原に潜み、ワルプルギスの夜に備えた。


334 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:06:03.70 E9bBZjNvo 271 

――5、4……2、1……

ほむら「来たわね」

マミ「ええ……。なんて大きさ……」

杏子「けっ、大層な数の使い魔を従えやがって……」


漸く姿を現した ワルプルギスの夜。

お祭り騒ぎの使い魔は攻撃を仕掛けてくるわけでもなく通り過ぎる。

ここまでは いつもどおりだが……

ワルプルギスの夜は、笑い声をあげていない。

魔法少女の影の様な使い魔も、
最初から現れ、戦闘態勢をとっている。


335 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:06:59.97 E9bBZjNvo 272 

私の仕掛けた爆弾情報により、
周囲にはマミと杏子以外はいない。

遠くで自衛隊や警察の方々が活動しているようだが、
それもうまく陽動に引っかかってくれている。

人の気配が少ない事が原因なのか?

……少し違和感があったが、この際どうでもいい。

倒すだけだ。




336 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:09:28.73 E9bBZjNvo 273 

私は時間を止め、現代兵器をありったけぶち込む。

ピンボールの様に飛ばされるワルプルギスの夜だったが、
どうもダメージは受けてなさそうだ。

だが、周囲に比較的建物の少ない場所に移動させる事ができた。


杏子「すっげぇ……、なんというか、魔法少女の戦い方じゃないな。やっぱり」

マミ「杏子、目を奪われるのは分かるけど、油断しちゃ駄目だよ」

杏子「分かってるって!」


337 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:10:02.93 E9bBZjNvo 274 

爆炎が薄れ、ワルプルギスの夜が
やはり無傷で存在し続けるのが見える。

同時に、彼女の周囲の建物に不気味な魔力の流れを感知。

お得意のビル投げだろう。


杏子「おい、おい! ビルが持ち上がって……、やばいって!」

マミ「逃げなきゃ……!」


ほむら「……それには、及ばないわ」

私はワルプルギスの夜が、投擲しようとしたビルを爆破した。

ビルは崩壊し、破片は落下。
こちらに攻撃は届かない。



338 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:10:42.72 E9bBZjNvo 275 

杏子「……oh.そういや、あの建物って ほむらが悪さしてたとこだよな」

ほむら「ワルプルギスの夜が破壊するか、私が破壊したかの些細な違いよ」

ほむら「強力な魔女だっていうから、ビルに閉じ込めて爆破、
     瓦礫で押しつぶしコンボを考えていたけど
     まさか、こんな風に役立つとはね」

ほむら(やっぱり嘘だけど。知らないふりって大変ね)

マミ「……大丈夫なの? あとでママが逮捕とかいやだよ?」

ほむら「私に結びつくような証拠は残してないわ」

マミ「ならいいけど……」

杏子「マミが染まってる……」



339 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:11:32.09 E9bBZjNvo 276 

無駄口を叩きながらも、
今度は魔法少女の影のような使い魔と対峙する。

こいつらが地味に厄介なのだ。

遠距離攻撃のスペシャリストであるマミの魔力を温存する為、
杏子と私、二人は槍と剣を駆使しながら使い魔を減らす。

使い魔は幾らでも沸いて出てくるため、
焦れた様に杏子が叫んだ。



340 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:12:20.95 E9bBZjNvo 277 

杏子「さて、どうする! あの空飛ぶ怪獣!」

ほむら「あいつは、通常の物理攻撃が効きづらいみたいね。
     あの火力で、大したダメージを受けていない。
     魔力の通じた魔法の力しかないわよ」

杏子「出し惜しみしてちゃ、ダメージも与えられ無そうだな」

杏子「かといって、そら飛ばれてちゃ、なぁ。近接の私にはきついな」

マミ「遠距離で火力ある攻撃……。やっぱり、ティロ・フィナーレね!」

ほむら「マミ、二人で撃つティロ・フィナーレ……、そうね! ラッフィカ・フィナーレといきましょう」

マミ「うん! ラッフィカ……集中砲火だね!」

杏子(二発で集中砲火かよ)

ほむら「杏子!」

杏子「お、おう! 任せろ、時間稼ぎだな……!
    ここが魅せどころか? はぁっ!」



341 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:13:12.67 E9bBZjNvo 278 

杏子が祈るようなポーズをとり、
続けて地面から巨大な槍が現れ、周囲の使い魔を屠る。

そのまま、私達の周りを守るように、槍を配置した。


……しかし、この技、私はトラウマだ。
早く止めさせよう。


マミ「ママ!」

ほむら「ええ! ちょっと待たせたわね、私も撃てるわ」

マミ「なら……!」

ほむら・マミ「ラッフィカ・フィナーレッ!」



342 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:13:40.53 E9bBZjNvo 279 

二つの大砲から発出される、ティロフィナーレが
ワルプルギスの夜に向う。

彼女を守る透明の防御壁みたいなものに、
一瞬 進攻を遮られたが、打ち破り、
ワルプルギスの夜に着弾。

決定的なダメージではないが……


ほむら・マミ「巻きつけっ!」

着弾地点からリボンが現れ、ワルプルギスの夜に巻きつき、
縛り上げる。



343 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:14:28.94 E9bBZjNvo 280 

マミ「……今一、ダメージがないわね」

ほむら「行動を封じられれば、御の字よ。
     マミ、リボンで奴を抑えてて。私は……」

ほむら「これを使うわ」

マミ「これ……?」


湯水の様にグリーフシードを使って
魔力を回復。

それから、右手に優しい桃色の光を発する弓を召喚する。

それに、ありったけの力を込める。

厚い雲に空は覆われ、
あたりは夜を思わせるほどの暗さ。

その所為で、
力を込めるほど、辺りは優しい光に満ちるのがわかる。


ほむら「まどか! 力を借りるわ!」




344 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:15:27.55 E9bBZjNvo 281 

私の構えた弓から、高速で放たれる光の矢。

マミが抑えてくれているお陰で、
その矢は、ワルプルギスの夜の顔を貫き 砕けた。


杏子「や、やった!」

ほむら「倒した……?」

マミ「……」



マミ「ママ、駄目! リボンに抗う力が、全然……弱まってない!」


345 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:16:23.07 E9bBZjNvo 282 

ワルプルギスの夜は 砕けた顔を引きつらせ、
口を大きく開く。

何も聞こえないが、絶叫しているのかもしれない。

……それから、全身から暗く光る炎を発し、リボンを燃やし尽くした。


マミ「くっ! なら、もう一発!」

杏子「……私もいくぜ! 特攻しかねぇ!」

ほむら「待ちなさい、マミ、杏子! 伏せて! もしかして、あいつ……」


ほむら「今からが本気よっ!!!」




346 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:17:08.25 E9bBZjNvo 283 

ワルプルギスの夜が正位置に。

それは本来の力を発揮する事を意味するらしい。

ワルプルギスの夜は、
自らの体の機械仕掛けの部分を 高速回転させはじめた。

暴風の化身となり、竜巻の様に周囲を吸い寄せ、

ひっくり返し、破壊する。

そして、私達のほうに徐々に近づき始めた。

私達は惨めに地面にへばり付き、
立つ事すら適わない。

一度 吸い寄せられれば、高速回転する彼女に叩きつけられ、
死は免れなそうだ。



杏子「なんだよ、あれ。……反則だろ」

マミ「ここまでなの……いやだ……」

ほむら「……」


347 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:17:59.60 E9bBZjNvo 284 

まどかの力を宿しているにも関わらず、倒しきれなかったのは何故か。

行使する魔法の威力自体は、私の魔力に依存する為か?

因果が私にも絡まりつき、能力は全体的に底上げされているが
それでも 素のまどかには敵わない。

……いや、それとも。

私が力を使いきれていない可能性もある。

後天的に得た能力だ、まだ使い方に慣れていないのだ。

皆の力、全て引き出せたとしたら……



348 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:23:38.06 E9bBZjNvo 285 

まどか、さやか、マミ、杏子、仁美……

他にも、私がこの街で関わってきた人は一杯いる。

その人たちの事を想うと……自然と私は
立ち上がる事ができた。

周りの暴風を無視して、平然と出来る。

私のソウルジェムは、今 黒く輝く。

濁った色ではなく、黒曜石のような煌き。

私を想ってくれる皆の力が混ざり合って、
私の中で一つになっているのか。

マミと杏子は立ち上がれない。

だけど、二人の力もまた、私を奮い立たせてくれる。


杏子「……何でお前は平然と立っていられるんだよ」

マミ「マ、ママ……」


349 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:24:04.14 E9bBZjNvo 286 

ほむら「貴方達が、私を繋ぎとめてくれているの。

     ワルプルギスの夜に吸い寄せられる弱い心を断ち切り
     私は自由でいられる」

杏子「あいつに吸い寄せられる……?」

ほむら「彼女や色んな魔女を見続けてきて、分かった気がする。
     彼女は、魔女を吸収している。使い魔を見ればわかるわ。

     彼女は人の死、他人の死に、触れたいという欲求を持っているよう。
     それが、人の絶望と死を具現化した存在である魔女を吸収させているのかもね」

ほむら「そして、死の舞台劇を演じている」

杏子「迷惑な奴だな……」

ほむら「大規模災害として人の目につき、絶望を与える彼女」

ほむら「魔法少女に規格外な力を見せつけ、自らの無力さに絶望させる彼女」

ほむら「絶対的な死の存在感があれば、それに屈し、
     どこか、楽になりたいと思うもの」



350 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:24:32.74 E9bBZjNvo 287 

マミ「……死か、今はとにかく、死にたくないけど……」

ほむら「マミには、私や杏子達がいるからよ」

ほむら「私だって、貴方達がいるから」

ほむら「貴方達と共に生きたいと強く思い、力を得た私と、
     死の象徴の集合体の様な彼女は、合わせ鏡のようなものかもね」

マミ「よく、わからないよ……ママ」

ほむら「分からなくてもいい、私のただの妄想かもしれないしね……」

ほむら「なんにせよ……」

ほむら「ちょっと、いってくるわね」



私に大した跳躍力は無かった。

しかし、今の私は、飛ぼう、それを念じるだけで……

黒い翼が生える。

ワルプルギスの夜を侵食できる、黒い翼だ。



351 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:25:41.03 E9bBZjNvo 288 
1363351301-351
352 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:26:12.96 E9bBZjNvo 289 

ほむら「あなたも、私が受け入れてあげるわ。機械仕掛けの魔女さん……」


翼を爆発させるようにはためかせ、

吸い寄せられるのではなく、自らの意思で。

一気にワルプルギスの夜に迫る。



そのまま、私の中に宿った力を解放させた。



353 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:26:40.31 E9bBZjNvo 290 

――

杏子「どうなりやがったんだ……?」

マミ「空が、急に晴れたけど……」

杏子「ワルプルギスの夜もいねぇ……、たぶん、ほむらが倒したんだ……な」

マミ「ママ…… ママは、どこ???」



ほむら「ここよ……」



マミと杏子の所に、私は舞い降りた。

マミ「ママ!! すごい、倒しちゃうなんて!」

杏子「へっ、美味しい所全部もっていきやがって……?」


二人の言葉が、途中で止まる。

私の異変に、気がついたらしい。


354 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:27:28.85 E9bBZjNvo 291 

ほむら「……ちょっと、力を使いすぎちゃったみたいね。
     加減が分からなかったわ」

ほむら「それに、彼女の呪い、引き受けてしまったみたい」

マミ「……ソウルジェム、さっきとは違って、輝いてない、どす黒く」

杏子「おい、嘘だろ……? そうだ、グリーフシード!」

マミ「大技使ったときに、私は回復に使って……」

杏子「……くそ、アタシもだ」

マミ「そうだ、ワルプルギスの夜のはっ!?」

杏子「あ、そ、そっか! 探すぞ!」


355 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:28:36.62 E9bBZjNvo 292 

ほむら「駄目よ、落とさなかったわ」

マミ「……そんな」

杏子「くそっ」

ほむら「魔女の集合体の様な存在だったからかしら。
     あんなに強いくせに、割に合わないわね」

ほむら「……なんにせよ、ここまでの様ね。
     最後に、貴方達の頭、撫でさせてもらえるかしら?」


二人とも、頭を垂れたまま、此方を見ようともしない。

仕方が無いので、勝手に撫で始める。


しばらくして、マミが震える声を絞り出し始めた。



356 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:29:21.34 E9bBZjNvo 293 

マミ「……嘘でしょ、ママ、ママ……約束したじゃない……」

ほむら「……ごめんなさい」

マミ「ママが死ぬなら、私だってっ……!」

ほむら「マミ、酷い事を言うようだけど、私は貴方に生きて欲しい」

ほむら「私は残念ながら間に合わなかったけれど、幸せな日々に手が届くかもしれないじゃない」

ほむら「マミ、貴方が居なくなったら、他に残された人たちが、それから更に遠のく事になるの」

マミ「そんな……関係ないよ。ママいなくなったら……。酷い……酷いよ……」


357 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:30:48.72 E9bBZjNvo 294 

ほむら「……杏子、マミを支えて、まどかや、さやかとも仲良く……」

杏子「……ふざけんな!」

杏子「ゆるさねぇぞ、アタシは!
    アンタは、死んでもアタシを娘にしてみせるっていっただろ!」

杏子「まだアタシはなってないぞ!」

杏子「アタシは絶対にならないからな! アンタの事、ゆるさねぇ」

杏子「まどかやさやかだって、アンタが死んだら、アンタの事ゆるさねぇぞ!」

杏子「だから、死ぬんじゃねぇよ……本当に死んでんじゃねぇよっ!!!」

ほむら「……ごめんね」



358 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:31:39.45 E9bBZjNvo 295 

ほむら「ソウルジェムの濁り、かなり進んだわ」

マミ「……」

杏子「ちっ……」

ほむら「マミ、杏子。

     私がこれからやるつもりだったこと、
     私の部屋のパソコンの中に、ToDoリストにして纏めてある。

     参考にして頂戴」

ほむら「……無理に縛られる事はないけど、貴方達が幸せになれるよう、祈ってるわ。
     さようなら」

ほむら(まどか……ごめんなさい……)

盾の中の銃を取り出し、
ソウルジェムに銃口を当てる。

そして、引き金を……



359 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:32:29.97 E9bBZjNvo 296 

杏子は銃を持つ私の手を蹴り飛ばし、
マミは私のソウルジェムのある左手に抱きついて離そうとしない。

駄目だ、この子達に 魔女となった自分は無慈悲な攻撃を加えるだろう。

この子達は逆に、戦えない。

まして、最悪な事に まどかの力や 皆の力が私に宿っている。

ワルプルギスの夜から開放された呪いも 私に纏わりつく所為で……

もしかすると、地球規模……いや、宇宙規模に災厄を与える魔女に
私がなってしまう危険性がある。

まずい、このままでは。どうすれば……





360 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:33:15.10 E9bBZjNvo 297 





QB「……お困りのようだね、暁美ほむら」

ほむら「きゅうべぇ?」

マミ「貴方っ!」

杏子「今更、何しにきやがった!」

QB「あのワルプルギスの夜を……、しかも観客が居なくて不機嫌な彼女を、
   最初は僅かな素質しかなかった魔法少女が倒したんだ。

   その最後くらい、見ておかなければね」

ほむら「……どう? 人間の力はすごかったでしょう?
     私達は、もう少しで幸せな未来を掴める所よ」


361 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:34:18.59 E9bBZjNvo 298 

QB「幸せな未来ねぇ、そこの2人が掴めるとでも思っているのかい?」

ほむら「勿論よ。この子達を私は信じてる。まどかや さやかだってね。
     私が死んでも、必ず立ち上がって歩き出せるわ」

QB「僕にはそうは思えないけどね」

マミ「……」

杏子「……」

ほむら「人間の可能性を舐めないで欲しいわね」

QB「……」




362 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:35:13.13 E9bBZjNvo 299 

QB「本当に君は魔女化に直面しているのかい?
   とてもそうは見えないが……」

ほむら「私は絶望しているわけじゃないから。
     魔力の枯渇と、ワルプルギスが最後に放った呪いが原因。そうでしょ?」

QB「そうだね」

ほむら「私は希望に溢れているわ。なぜなら、娘2人に、大事な友達2人。
     4人に明日を残せたのだから」

QB「なるほど。希望……か。ソウルジェムを見る限り、嘘ではなさそうだ」

QB「確かに、素晴らしいエネルギーのようだね。暁美ほむら」

QB「それだけの呪いを纏っても、自らの意思で屈さないとは」

ほむら「そう。感情が無い貴方にそう思わせることが出来るとはね。
     でも、もう本当に時間が無い。
     この子達を説得しなきゃいけない。
     話しかけないで頂戴」


363 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:36:02.39 E9bBZjNvo 300 

QB「残念ながら、そうはいかない。君は貴重な存在だ。
   死ぬまでデータを取らせて貰うよ」

杏子「おい……そろそろ……」

マミ「殺すわよ……貴方」

QB「……やれやれ」

QB「ほむら、君が僕に交わした約束、覚えているかい?」

マミ・杏子「いい加減にっ……

ほむら「まちなさい、2人とも」

ほむら「……私は約束は忘れないわ。ただ、間に合わなかった。残念ね……」

QB「いいや、暁美ほむら。流石だね」

ほむら「……?」



364 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:36:50.19 E9bBZjNvo 301 

QB「君は約束を違えていない。
   膨大な因果を纏う君は、高次の精神世界の存在である魔女を……
   それも、超弩級の魔女を取り込み、
   まさに次のステージに進もうとしている」

ほむら「次のステージ?」

QB「魔法少女として死んで……魔女となっても、
   君は消えない希望を抱えたまま、その意思を貫くだろう」

QB「魔女となっても、他者との約束を違えない存在は過去にも確認されている。
   君なら容易いはずだ」

QB「そして、高次の精神世界の住人として魔女を超越し、
   魔法少女を守ろうとする概念……
   君が言う、神になるのではないかな」

ほむら「……そう。それなら、マミも杏子も、まどかも さやかも 私は守る事が出来るのね」

マミ「……ママ? ……どういうこと?」

杏子「どういうことだ……おい。概念とか、神とか……」

ほむら「わからなくてもいいわ。ただ、これだけは覚えておいて」

ほむら「……私が私でなくなっても、見えなくても。
     貴方達とずっと一緒にいるから」


365 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:37:44.42 E9bBZjNvo 302 

マミ「見えなくなるなんて、やだ!」

ほむら「……マミ」

杏子「わ、私だって、嫌だからな!」

ほむら「……杏子」

ほむら「ごめんなさい……私は……貴女達のためにも……」



QB「やめておくれよ、勿体無いじゃないか」





366 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:39:03.19 E9bBZjNvo 303 

ほむら「……? どういう事かしら?」

QB「君が纏う因果は既に膨大な量だ。
   神になるだけの力は既にあるだろう。

   だが、宇宙の維持にはまだまだ足りないんだ」

ほむら「……」

QB「暁美ほむら、もっと長い時間を魔法少女として生き、
   更に因果の量を増やすんだ」

QB「そうすれば、いつの日かインキュベーターの神にもなれる。
   宇宙を維持できる、強大な神に」

QB「さあ、契約だ。
   僕の持つグリーフシードを対価として受け取れ、暁美ほむら。
   そして、それが新たな契約のはじまりだ」



QB「僕と契約して、インキュベーターと魔法少女の女神となってよ!」
1363351301-366
367 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:39:52.38 E9bBZjNvo 304 




――――ワルプルギスの夜を乗り越え、幾らか月日が経った頃。

私は東京に向う為に、駅に向っていた。

そろそろ、発車の時間……ね。

見滝原を離れるとなると、少し寂しい気がしてしまう自分がいる。

この地を去ることになる私に、
私の大切な人たちはわざわざ集まって、
小さなパーティーの様な物を開いてくれた。

もう、力は貰った。
東京にいかなければ……。




368 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:40:28.30 E9bBZjNvo 305 

駅の前に到着。

そこには、まどか、さやか、マミ、杏子。
いつもの4人がいた。

軽く挨拶し、改札を越え、駅のホームで電車を待ちながら
4人と話し始める。


ほむら「……わざわざ来てくれたの、悪いわね」

まどか「だって、ほむらちゃんと会えなくなるの、寂しいし……」

マミ「……ま……ほむらさん……」

杏子「……はやく、また戻ってきてくれよな」

ほむら「……ええ、わかってるわ」



さやか「ねぇ、2、3日、東京に行って魔法少女のセミナーを開くだけなのに
     なんで こんなお通夜モードになってるの……???」




369 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:42:16.78 E9bBZjNvo 306 


マミ「だって、東京って遠いし、何が起きるか……」

杏子「初めて会う魔法少女だっているから、何してきやがるかわかんねーし……」

まどか「やっぱり、私もいくよ! ほむらちゃん!」

杏子「……としたら、ほむらがセミナー中、まどか一人ぼっちになるよな。
    一人ぼっちは寂しいもんな、私も行くよ」

マミ「私も行くわ!」

さやか「あの、あたしが一人ぼっちになるんだけど」

杏子「お前には上条のおぼっちゃんがいるだろ」


370 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:42:58.52 E9bBZjNvo 307 

ほむら「……皆、気持ちはありがたいんだけど……」

ほむら「皆が私に力を与えてくれてるから、よっぽどの事がない限り、私は大丈夫よ」

ほむら「それに、マミ、杏子は新人研修に来た子達の面倒を見なきゃいけないでしょ?」

ほむら「まどかと、さやかは出来れば サポートしてあげて欲しい……」

杏子「でも、なんであのワカメだけついていくんだよ!」

さやか「杏子。仁美の事、ワカメは酷いよ……」

ほむら「仁美は、金銭面と多彩な人脈で 私達に 色々協力してくれているわ。
     東京でセミナーを開けるのも、彼女や彼女のお父様のお陰よ」

ほむら「しかも、仁美は既に先に行って 恙無くセミナーが開けるよう準備をしてくれてる」

ほむら「何より、あの子。私が止めても無駄だし……」


371 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:43:47.83 E9bBZjNvo 308 

マミ「きゅうべぇも行くのよね……」

ほむら「魔女や魔獣の事を説明するのに、きゅうべぇは便利なのよ。
     それに、感情の研究があるから、私の周りからあまり離れられないし」

さやか「あたし、未だに分かってないよ。魔獣って何なの? 魔女と違うの?」

杏子「さやかは実に馬鹿だなぁ。
    ほむらがセミナーを開いて、魔法少女の効率的な生き方を知ってるやつが増えてるだろ?」

さやか「……うん」

マミ「それで、魔女化する魔法少女が減ってきてるの。魔女も激減よ」

マミ「魔女は、生きてる人間を喰って、負の感情を溜め込んでいたの」

杏子「だから、負の感情の核となる物が無くて、それのみが濃くなった場所で、
    中途半端な魔獣共が生まれ始めたって訳らしい」

さやか「……そうなんだ。そうなの? きゅうべぇ」



372 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:44:44.82 E9bBZjNvo 309 

QB「否定するほど間違ってはいないと思う。魔獣が何なのかは僕にも分からないけどね」

さやか(やっぱ いたのね)

QB「だから、魔獣は魔女と比べれば 大した敵じゃない。
   その代わり、数は多い。

   それから、落ちるグリーフシードも、魔女のものと比べれば質がかなり落ちてしまうね」

まどか「……でも、同じ魔法少女だった魔女を狩らなくていいのは、
     いい事なんだよ……ね」

杏子「そうさ。魔獣は沢山わきやがるから、取り合いもしなくてすむしな」

マミ「ソウルジェムの穢れさえ、気をつけていればね」

さやか「魔力の使い方の問題か……」



373 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:45:38.91 E9bBZjNvo 310 

QB「その辺、ほむらはかなり研究してるよね」

ほむら「ええ、通常の兵器が使えるのであれば、
     魔力を消費して武器を召喚するより、楽に戦えるからね」

ほむら「通常の兵器が通じにくい敵でも、魔力を通せば、
     効きはかなり変わってくる」

ほむら「素質があまりない子でも、訓練すればかなり戦えるようになるわ」

まどか「どんどん、今までとは変わっているんだね」

ほむら「そうよ。最終的には、私達のあり方自体を変えていくわ」

ほむら「皆で、きゅうべぇ達とも協力してね」

ほむら「まだまだ、問題は山積みだけど、人生は問題解決の連続よ」

ほむら「ちょっとばかり絶望しても、諦めずにまた歩き出せれば、
     未来に繋げる事は出来る」

ほむら「そして、皆が幸せな世界をつかむのよ」

まどか「……そうだね!」


374 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:46:29.38 E9bBZjNvo 311 

ほむら「あ、さやか。セミナーが終わった後、
     ついでに、日本医師会のお偉いさんの一人とあってくるから」

さやか「ほえっ!?」

ほむら「扱いづらそうな連中だけど、なんとか神経再生のスペシャリストを
     紹介してもらえる事になったわ」

ほむら「期待して待ってなさい」

さやか「ほむほむーーーっ!!!」

ほむら「ふふっ……」

まどか「よかったね、さやかちゃん……」



375 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:47:12.91 E9bBZjNvo 312 

喜ぶさやかを眺めていると、
QBがテレパシーを飛ばしてきた。

QB(ほむら、東京にいくついでに、あって欲しい人がいるんだけど))

ほむら((誰よ、会って欲しい人って))

QB((永田町っていうサル山のボスさ))

ほむら((……あなた、そんなコネクションまであるの?))

QB((僕は人類に文明を与え、発展させてきた存在だよ?))

QB((日本の中枢に食い込んでいて当然さ))

QB((君にはより多くの因果の終着点になってもらわなきゃならない))

QB((そのためなら 僕はなんだってやるよ))




376 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:47:48.28 E9bBZjNvo 313 

ほむら((頼もしいわね……))

ほむら((急かす気持ちは分からなくもないけど、
      神となるのが概念化必須だとしたら、
      この子達が私が必要なくなるまで、私はならないわよ?))

ほむら((あの後、この子達に問い詰められて怒られたんだから……))

QB((OK.まどかやマミ達が死ぬまでか。寿命まで待ったとしても大した時間じゃない。
   その間も、君なら因果を増やせるだろう?))

ほむら((……あっそう。そうね))



377 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:48:41.64 E9bBZjNvo 314 

杏子「……あ、電車が来た」

マミ「いよいよ、ね」


ホームに放送が入る。

皆、静かになった。
少し待って、電車がホームに到着する。


マミ「ほむらさん、頑張ってきてね」

まどか「ファイトだよ、ほむらちゃん!」

杏子「ほむらなら大丈夫だと思うけどな、ヘマするなよ」

さやか「帰ってきたらまた騒いで遊ぼうね!」



378 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2013/03/20 20:49:20.25 E9bBZjNvo 315 

私は力強く頷き、電車の中に入り 席に着く。

四人は車窓のすぐ外側に待機。

電車が動き出す。私は四人に手を振った。

四人は電車が発車するのと同時にと一緒に歩きだし、
ホームの端に来る頃には走ってついて来ていた。

ちょっと離れるだけなのにな、と微笑ましく思いながら、
点くらいの大きさになりつつあるのに、手を振り続ける四人を見つめる。

私も完全に見えなくなるまで、あの子達を見続け……
それから、前に向き直った。

ループを抜け出しても、
私の道は未だ半ば。

これからも勝ち取り続けなければならない あの子達との未来の為、
私は戦い続ける……。


終わり