1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/21(月) 23:28:42.54 ID:TyOxA2/W0
橘「夏といえば!?」

田中「海の家で食べる不味い焼きそば!」

棚町「だ、誰の髪型が不味い焼きそばみたいだって!?」

絢辻「あら?確かにこれは不味そうね?」

橘・田中・絢辻・棚町「うぇーい!」

橘「と、まぁ、浮かれてはみたものの」

橘「『高校生活最後の夏!』とか、僕らには特に関係ない話だったよ……」

田中「遊んでる場合じゃないもんね……私達受験生だし」

絢辻「えぇ……あたし達に出来ることといえば夏期講習の合間に学食で燻ることくらいよ」

棚町「……せっかくの夏なのにねぇ」

引用元: 橘純一「夏っていいよね!みんな薄着になるし!」 




4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/21(月) 23:38:16.46 ID:TyOxA2/W0
絢辻「ま、あたしは意外とこの生活気に入ってはいるんだけどね」

絢辻「朝から夏期講習に参加して」

絢辻「講習が終わったら、みんなで図書室で勉強会!」

絢辻「……で、適当な所で勉強会を切り上げて、自販機でジュースを買って駄弁りながら帰る」

絢辻「ふふっ、意外と青春っぽくない?」

橘「……そう言われてみれば確かに」

棚町「で、でも!夏らしさが足りないのよ!」

棚町「夏らしい要素なんて、冷房の効きすぎた図書室くらいじゃない!?」

橘「うんうん。それでみんな上着を羽織るから、僕としては大変面白くない」

橘「こうっ……ブラウスから透けた 着とかさ!すごく素敵なのに!」

絢辻「……えっ?何?」

田中「透けた 着?」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/21(月) 23:44:56.52 ID:TyOxA2/W0
橘「オホンッ……!そうそう、夏らしいことといえば」

橘「昨日の夜のことなんだけど」

絢辻「蚊が鬱陶しくて寝れなかった?」

橘「そ、そんなこと一々報告しないよ?」

棚町「じゃあ何よ?」

橘「いやさ、昨日の夜に突然の来訪者がね」

田中「来訪者?お客さん?」

橘「うん。僕を困らせることに至上の喜びを感じるラブリーな大学生こと、森島はるかさんがね」

橘「……金属バット片手に殴り込みにきた」

田中「えっ……?」

絢辻「何それ怖い」

棚町「で!?で!?」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/21(月) 23:54:56.80 ID:TyOxA2/W0
橘「それがさ、スイカ割りをしたかったらしいんだよ。」

橘「『橘君!?夏といえばスイカ割りよ!?』ってさ」

絢辻「あぁ、だからバット持参なのね?」

橘「うん。だけど、肝心のスイカなんてないし、夜だから外真っ暗だし……」

橘「だから『はははっ、明るいうちにスイカを持って出直してきやがれ!この暇人め!』って言い返したんだけど」

橘「……それが全ての間違いだったことにすぐに気付かされたよ、うん」

田中「……というと?」

橘「まず、何故かうちにスイカがあった。しかも冷やされてた」

田中「えっ?」

橘「……あとで美也に問いただしたらわかったことなんだけど、森島先輩から連絡があったから、こっそりと準備しといたそうでね」

絢辻「獅子身中の虫、ね」

棚町「それで?どうしたの?」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/22(火) 00:05:06.18 ID:rky3wK/V0
橘「さっきもいったけど、もう外は真っ暗だったんだ」

橘「それに夏期講習の予習があったし、今からは出かけられないと、先輩へ告げたんだよね」

橘「そしたら……」

棚町「ま、まさか!?」

橘「『むむむっ!ならここでスイカ割りをすれば解決ね!』とか言い出して」

橘「目隠しをしながら『バットに額を当てて10回回ればいいのよね!?そーれ、一回!二回!』とか僕が止める前に始めちゃってさ」

絢辻「……自由すぎるわね」

田中「家の中でスイカ割りはエキセントリックすぎるよ」

橘「いやー、もうね。久し振りに必死になっちゃったよ!」

橘「『あぁ~!橘君!目が回るわ!』とかいって危なっかしいったりゃありゃしないし!」

棚町「……ねぇ?その後どうしたの?」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/22(火) 00:15:04.21 ID:rky3wK/V0
橘「仕方が無いから、苦戦の末に割ったということにして」

絢辻「あぁ、そういう体にしたのね?」

橘「台所でスイカを切り分けて、縁側で二人で美味しく頂いたよ。月を見ながら」

棚町「風情があることをしてんじゃないわよ」

橘「まぁ、それで満足したらしく帰ってくれたんだけど」

橘「去り際に『これで終わったと思わないことね!?覚えてなさい!?』って言い捨てていったのが、気になって気になって……」

絢辻「……そう、受難はまだまだ続くのね」

田中「あははっ、本当に退屈させない人だよね、森島先輩って」

棚町「ホント、どんな大学生活を送ってらっしゃるのか気になっちゃうわよね」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/22(火) 00:24:24.13 ID:rky3wK/V0
田中「あ!そういえば!」

田中「今日は花火大会だよね!」

絢辻「そういえば、そうだったわね」

田中「あっ……でもっ……」

橘「ははっ……花火の音を聞きながらの勉強も悪くないかもね……」

棚町「純一……あんた……」

絢辻「う~ん……そうね。よし、決めた!」

絢辻「今日の勉強会は中止とします!」

橘「えっ?」

田中「ななな、何で!?」

絢辻「他ならないあなた達だから、歯に衣着せぬ言い方をするけどね?」

絢辻「毎日毎日!バカの相手をするの、疲れたの!たまには休みを頂戴!?」

棚町「おぉ、ついに本音が出たわね」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/22(火) 00:37:01.60 ID:rky3wK/V0
橘「で、でも!予習に復習に日々の学習が!」

絢辻「そんなの睡眠時間を削ってやりなさい!花火を見に行くことはもう決定事項!」

棚町「お、横暴よ!?」

絢辻「いーやーだー!みんなと花火を見にいーきーたーいーのー!」

田中「あ、絢辻さんが……いつも冷静な絢辻さんが駄々をこねるなんて!」

橘「わ、わかったよ!今日の勉強会は中止にしよう!」

絢辻「……初めからそうすればいいのよ」

橘「……ただし条件があるよ?」

絢辻「条件、ねぇ?試しに言ってご覧なさいよ?」

橘「ぜ、全員浴衣でくること!以上!」

田中「ゆ、浴衣で!?」

棚町「そうね!こんなことがないと着ないし!」

絢辻「……わかったわ、その条件を飲みましょう」

橘・田中・絢辻・棚町「うぇーい!」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/22(火) 00:46:25.59 ID:rky3wK/V0



絢辻「純一?花火……綺麗だね?」

棚町「恵子……君の方が綺麗だよ……」

絢辻「も、もう!純一ったら!」

棚町「恵子……」

絢辻「純一……」

棚町「……みたいな?」

絢辻「あー、あると思うわ」

絢辻・棚町「うぇーい!」

橘「い、いくら僕でも!そんなのないよ!?」

田中「そ、そうだよ!陳腐すぎてびっくりだよ!?」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/22(火) 00:59:31.45 ID:rky3wK/V0
棚町「あんたがあたし達の浴衣に見惚れて言葉を失ってるから、間をもたせてやったんでしょうが」

絢辻「妄想する時間を与えてやったんだから、感謝しなさいよ?この変 」

田中「……で、どうかな?」

橘「す、スゴくいいと思います……」

棚町「ん?誰の浴衣姿が?」

橘「み、みんな違ってみんないい!」

絢辻「はぁ?そんな言葉聞きたいわけじゃないんだけど?」

橘「で、でも!僕としては……た、田中さんの浴衣姿が……一番グッときたかも」

田中「……ありがとう、橘君」

絢辻「はー、これだからカップルは嫌ね!棚町さん?」

棚町「ホントよねー!あたしも素敵な彼氏がいたらなー!」

絢辻・棚町「うぇーい!」

橘「くっ……こいつら……」

田中「まぁまぁ、抑えて抑えて」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/22(火) 01:09:55.33 ID:rky3wK/V0
棚町「それにしても、あんたもよく浴衣なんて持ってたわね?」

絢辻「確かに。男の人って持ってないイメージがあったけど」

田中「……橘君のことだから、何か由来があるんだよね?」

橘「あー、うん。これはね……」

橘「森島先輩の従姉妹にジェシカさんって方がいらっしゃるんだけど」

棚町「セクシーさんのこと?」

橘「そうそう、セクシーさん。森島家はミドルネームからして攻めの姿勢なのが素晴らしいよね!」

絢辻「で?そのジェシカさんがどうかしたの?」

橘「あ、うん。ジェシカさん、つい最近来日されたんだけど」

橘「……先週くらいかな、急に二人で訪ねてきてさ」

橘「ジェシカさんが『ジュンイチ!何でニッポンジンなのにワフクを着てないの!?』とか言い出して」

橘「そこに森島先輩も悪ノリも加わってね?……うぅっ」

田中「……無理矢理買わされたんだね?」

橘「うん……」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/22(火) 01:22:25.52 ID:rky3wK/V0
橘「酷いよね……僕は着せ替え人形の気持ちを言葉ではなく心で理解したよ……」

絢辻「橘君……」

橘「……あ、でも!あの二人が浴衣の代金の殆どを払っていったから、経済的にはそこまで打撃はなかったんだけどね!」

棚町「……それは不幸中の幸いだったわね」

橘「まぁ、こうしてみんなと浴衣で出かけることもできたし。悪いことばかりではないかな。ははっ」

田中「じゃあさ?その浴衣は森島先輩とジェシカさんが選んだんだ?」

橘「う、うん。二時間くらいあーじゃないこーじゃないが続いた結果かな」

棚町「……ん?恵子?……これはもしかして?」

田中「嫉妬!……というか、焼き餅かな!その浴衣ね、橘君にバッチリ似合ってて悔しい……」

田中「こ、今度は私と買いにいこうね!?」

橘「う、うん!?そ、そうだね!はははっ……」

絢辻「みなさーん!また見せつけてくれちゃってますよー!」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/22(火) 01:32:55.78 ID:rky3wK/V0



橘「……とか何とか言ってる間に会場についちゃったね」

田中「わぁ!やっぱり見にきてる人が沢山いるね!」

棚町「恵子……人だかりではぐれないよう、手を繋ごうか?」

絢辻「……う、うん。純一?頼りにしてるね?」

棚町「……あるわね」

絢辻「……間違いないわ」

絢辻・棚町「うぇーい!」

橘「い、いい加減にしろ!」

田中「まぁまぁ、落ちついて」

棚町「とりあえずさ、出店で何か買って食べながら花火をみない?」

絢辻「あ、共食いがみれるのね?」

棚町「あ、あんたねぇ!?誰の髪型が焼きそばみたいだって!?」

橘「……落ち着けよ、薫」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/22(火) 01:43:12.26 ID:rky3wK/V0



ヒュー……ドーン!パラパラパラ……

棚町「綺麗ね……」

絢辻「……うん。これは見にきた甲斐があったわ」

田中「来年も……またこうしてみんなで花火を見にきたいね」

棚町「……そうね。あ、でも絢辻さんはあたし達とは志望してる大学が違うし……」

絢辻「あたしね?……あの家にはあまり帰りたくないけど」

絢辻「……みんなと遊ぶためなら、帰ってくるから」

橘「うん、待ってるよ!」

絢辻「ま、今から来年の話をしても仕方がないけどね!」

絢辻「明日からも勉強頑張りましょう!」

橘・田中・絢辻「うぇーい!」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/22(火) 01:52:30.18 ID:rky3wK/V0



絢辻「さて、花火も終わったことだし」

棚町「ぼちぼち帰りますか!」

絢辻「あ、橘君?田中さんを頼んだわよ?」

棚町「恵子に何かあったら、タダじゃおかないからね?」

橘「えっ?みんなで帰れば……」

絢辻「……あなたねぇ?あたし達の気遣いを無に帰する気?」

棚町「……仕方ないわね。ほら、絢辻さん!帰るわよ!?」

絢辻・棚町「うぇーい!」

カランコロンカランコロン……

橘「ふ、二人とも!?下駄を履いたままなのに何てスピードで!?」

田中「あははっ……じゃあ、私達も帰ろうか?」

橘「そ、そうだね!」
 

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/22(火) 02:00:37.03 ID:rky3wK/V0
田中「あ、あのさ?す、少しだけ……」

橘「公園によって、お話でもしようか?」

田中「うん!そうしよう!」

田中「えへへ、実は下駄なんて履き慣れてないから、足が痛くて痛くて」

橘「ははっ、普通はそうだよ」

橘「……おかしいのはあの二人だ。自分の目で見たことなのに、やっぱり信じられないというか……」

田中「……多分、あの二人は都市伝説になると思うよ、あははっ……」




48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/22(火) 02:07:49.06 ID:rky3wK/V0
~公園~

橘「あ、あのベンチにでも座ろうか?」

田中「うん。そうだね」

橘「……ふぅ、今日はお疲れ様でした」

田中「……うん、明日からも頑張ろうね」

橘「……花火、綺麗だったね」

田中「わ、私とどっちが?……なんちゃって」

橘「……そんなの田中さんに決まってるだろ?」

田中「た、橘君……ううん、純一……」

橘「け、恵子……」

チュッ……

パシャッ!!

橘・田中「!?」

棚町「いい絵が撮れたわよ!絢辻さん!」

絢辻「ふふふっ、褒めてつかはすわよ?棚町さん」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/22(火) 02:14:33.69 ID:rky3wK/V0
田中「はわわわわっ……」

橘「ふ、二人とも!?先に帰ったんじゃ!?」

橘「というか!その立派なカメラは何!?」

絢辻「……橘君?質問は一つずつにしてね?」

橘「じゃ、じゃあ……何でここにいるの!?」

棚町「……あんたもバカねぇ。こんな面白いの、あたし達が見逃すわけないでしょ?」

橘「そ、そっか!じゃあ、その高校生が持つのには立派すぎるカメラは!?」

絢辻「……あたしが買ったのよ?いつか使う日が来るだろうと思って」

橘「ざ、財源は!?財源はどこなの!?」

絢辻「そうね……絢辻さんの七不思議ってことにしとこうかしら」

橘「くっ……そういわれてしまうと、何も言い返せない……!」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/22(火) 02:23:43.23 ID:rky3wK/V0
田中「薫!?ひどいよ!こんなの!」

棚町「まぁまぁ、高校生活最後の夏の思い出ってことで」

棚町「あ、ちゃんとあんた達の分も焼き増しして渡すから、安心してね?」

橘「そんな心配してないから!」

棚町「じゃあ何が不満なのよ!?わっからないな~!?」

絢辻「棚町さん?きっと彼らは写りを心配してるのよ?」

絢辻「だから……今度は隠し撮りじゃなくて、堂々と正面からとってみない?」

棚町「あ、いいわね!それ!」

橘「ふ、ふざけるのも……!」

田中「た、橘君!」

橘「えっ」

チュッ……パシャッ!

絢辻「はい、大変いい絵がとれました~!」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/22(火) 02:35:17.59 ID:rky3wK/V0
~後日~

橘「あ~、夏ももう終わりか……」

田中「あははっ、勉強しかしない夏だったね」

棚町「は?なにいってんのよ?ここにあんた達が一夏の思い出を作ってる証拠が……」

田中「が、学校でそれを取り出すのはやめて!?」

絢辻「……そういえば、模試の結果はどうだったの?」

橘「僕はA判定」

田中「私はBだよ!」

棚町「Cよ!悪かったわね!?」

絢辻「はぁ、橘君はともかく、他の二人はもう少し頑張らなきゃね?」

絢辻「来年も……浴衣を着て、みんなで花火を見に行くんでしょ?もちろん笑顔で」

橘・田中・絢辻・棚町「うぇーい!」