1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 16:08:43.74 ID:rFScgHaX0
女「そう……、ゾンビ」

男「君がゾンビだってのか?」

女「うん、そうよ……。それでね、肉が欲しくてたまらないの」

男「いやちょっと待ってくれ、俺は見ず知らずの一般人だろう」

女「うん。だからこそよ。後腐れなく食べられるでしょ……」

男「いやいやいやいや、確かに君は美人さんだ。美人さんに襲われるシチュというのは大変魅力的ではあるがだがしかし」

女「……いい? 覚悟は出来た?」

男「できてねーよ」

引用元: 男「……ゾンビ……?」 



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 16:10:46.90 ID:rFScgHaX0
女「でも、私に食べられたら君もゾンビになれるの。一緒にゾンビになれるのよ」

男「意味がわからん。そりゃ噛まれたらゾンビになるだろうけど……」

女「正直に言うとね、一目惚れなの。……食べたい」

男「 的な意味なら大歓迎なんだがな……」

女「ごめんね、もう私には食欲しか残ってないから」

男「せめて●●を捨ててからじゃないと成仏できん」

女「ゾンビになるから成仏は無理よ……」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 16:13:06.01 ID:rFScgHaX0
男「……しかしゾンビという割に肉体は新鮮そうだな」

女「だってゾンビになって日が経ってないもの」

男「日が経ってないって……、ん? まさかゾンビって蔓延してるのか?」

女「知らないの……?」

男「ニュース見ないし、外もあんまり出ないからな」

女「そう。じゃあ教えてあげる……」

男「ありがたい」

女「君を食べたらね……」

男「意味ないじゃねえか!」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 16:15:39.99 ID:rFScgHaX0
女「ゾンビウィルスなるものが世界中にばらまかれたのよ」

男「うはwwwテラ世紀末wwww」

女「それでね……世界人口の半分は既にゾンビ化しているわ」

男「なんて壮大なストーリー」

女「もう人類が助かる術なんて残されちゃいないの。生きている意味なんてないでしょ? 早く私に食べられて……」

男「だからー! 俺は●●捨てるまでは死ねないんだよ! 死んでも死にきれん!」

女「死ぬ訳じゃないって言ってるじゃない……」

男「ゾンビになったら死んでるも同然じゃないか!」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 16:18:06.37 ID:rFScgHaX0
女「そんなに●●が捨てたいの?」

男「男として、むなしいでしょ」

女「私……は、ダメか……。組織の崩壊が始まってるから、膣圧がないわ」

男「美人さんが躊躇いなく膣圧とか言うから不覚にもおっきした。どうしてくれる」

女「私に食べられるしかないわね」

男「くっ! このままじゃ走っても逃げられない! 何故ならエレクトマイサンが邪魔だからな」

女「うふ、逃げちゃいやよ……?」

男「くそう!」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 16:20:43.74 ID:rFScgHaX0
女「あ、良いこと考えた」

男「なんだよ……」

女「私が、君の●●を捨てる手伝いをするわ」

男「は? 君はゾンビだから……」

女「違うわ。生きている人間と 交渉できるように導いてあげるって事。それで、●●を捨てたら、君の事食べさせて?」

男「う、魅力的な提案だが食べられることに変わりはないのか……」

女「ダメ?」

男「……まあ、●●が捨てられるならそれで良いか」

女「契約成立ね。私は女。君の名前は?」

男「男だ。よろしく」

女「ええ」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 16:24:43.37 ID:rFScgHaX0
男「それで、具体的にはどうするつもりだ?」

女「そうね、名付けて『美少女救出大作戦』よ」

男「わかりやすい」

女「でしょ? ゾンビに囲まれている美少女を助けて、感謝されて、深い仲になって、そして 交渉の流れね……」

男「おお、それは今の世界の現状を考えると上手く行きそうな気がする!」

女「ふふん、私に任せなさい」

男「よし、それじゃあ早速ゾンビに襲われてる美少女を探しに行こう!」

女「ちなみに幼女だったらどうするの?」

男「助けて『お兄ちゃんありがとう』って言って貰う!」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 16:28:03.18 ID:rFScgHaX0
男「街に来たけど……、予想以上にグロいな」

女「そうね……。死体ばっかり」

男「でもこれ、またゾンビになるんだろ?」

女「うん、ゾンビになるまでには死んでから数時間のラグがあるわ」

男「じゃあ早いこと退散しとくべきか」

女「それが得策ね」

男「……ところで、ゾンビと戦ってる人たちはいないのかな?」

女「ショッピングモールに行けば良いんじゃない?」

男「やだよ、死亡フラグビンビンじゃないか」

女「私と並んで歩いてる時点で死亡フラグが立ってるけどね」

男「まあ……それはそれさ」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 16:31:37.90 ID:rFScgHaX0
幼「いやあああ! こないで!」

男「あ、幼馴染みの幼だ」

女「……可愛い娘じゃない。おあつらえ向きにゾンビに襲われてるわ」

男「よし、助けに行くぞ!」

女「頑張ってね。武器は持った?」

男「店から金属バットを拝借してきた」

女「ゾンビの弱点は頭よ。ゾンビは小脳メインで動くの」

男「ああ、わかった……」

男(ん? そのわりに女さんはやけに賢いような……)

女「どうしたの? 早く行かないと、あの娘食べられちゃうわよ……」

男「うおっといけない! 俺の●●喪失のためにいざ出陣!」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 16:35:11.69 ID:rFScgHaX0
幼「いやだ……いやだよぉ……こないで……」

ゾンビ「あうー」

ゾンビ「うあー」

ゾンビ「あうあうあー」

男「幼!」

幼「え、男君……?」

男「今助けに来たぞ! 待ってろ!」

幼「男君……!」

男「俺の●●喪失のため、お前らには死んで貰うぞゾンビ! ……いや、もう死んでるのか」

ゾンビ「あうあー」

男「ふっ、動きがとろいぜ!」ドチャ

幼「ひっ……!」

男「さぁ来たまえ諸君!」

ゾンビ「うぅあー」

男「どりゃっしゃああ!」ズガッ

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 16:38:48.40 ID:rFScgHaX0
男「行くぜぇ!」ズチャッ

女「それにしてもこの男ノリノリである」

男「ゆあっしょっーく!」ガンッ

ゾンビ「あ、う……」

男「完・全・勝・利!」

幼「男君……」

男「もう大丈夫だ幼。怖かったろ」

幼「う、うん……。ありがとね……」

男「何気にすることはない。もし君が俺に恩義を感じているのであれば、どうか君の純潔を僕に捧げて欲しいとは思うが」

DQN「お、幼! 無事だったのか!」

幼「あ、DQN君! うん、なんとかね……」

DQN「いやあ、よかったなあ……。お前が無事で何よりだぜ」

男「何この展開」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 17:10:12.75 ID:rFScgHaX0
DQN「って、男か」

男「ああ……」

DQN「お前が幼を助けてくれたのか。ありがとよ……ほんとに」

男「あ、いや、困ってる人を見かけたら助けるのが善良な市民たる俺の努めだ」

幼「本当にありがとうね、男君」

男「あ、うん……」

DQN「それじゃあ幼、早く避難場所に行こうぜ。男も……そっちの彼女さんと一緒に早く来いよ」

女「あらあら……」

幼「それじゃあね男君!」

男「……ああ」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 17:14:00.45 ID:rFScgHaX0
男「なんてことだ……。俺がヒキしてる間に優しかった幼に彼氏が」

女「残念でしたね」

男「計画失敗……くそっ! 俺がゾンビを倒した意味がない!」

女「良いじゃないですか、少なくとも人の役には立ちましたよ」

男「既にゾンビと化してる君が言うかね……」

女「潔く幼さんのことは諦めて、他の美少女を捜したらどうですか?」

男「幼に会えたのはかなりラッキーだったのになあ……」

女「とにかく街を歩きましょう……」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 17:19:46.20 ID:rFScgHaX0
ピザ「いやぁ、こないでぇ! そ、そこの人、助けてぇ!」

男「……俺は何も見ていない」

女「君って結構鬼畜?」

男「可愛いは正義、ピザブスネクラは絶対悪だ」

女「ひどい人ね」

男「俺は●●をあんなのでなくしたくない!」

女「そもそも 交渉までこぎ着けられるかが疑問だけど……」

男「ああいうのに限って、自分には魅力があると勘違いしてやがるんだ」

ピザ「いやああああああ、ごないでええええええええええ!」

男「……あーもう!」

女「ふーん、行くの?」ニヤニヤ

男「あの耳障りな悲鳴を上げられるんだったら、助けた方がマシだ!」

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 17:23:23.11 ID:rFScgHaX0
ピザ「ありがどおおおおお」

男「ああいや気にしないで良いから」

女「……くすくす」

男「笑うな!」

ピザ「あの、よかったら……メアド……」

男「逃げるぞ女!」

女「きゃっ! いきなり女性の手を握るとはどういう事?」

男「んなこと気にしてる場合かよ! あいつは……あいつからはなんだか近寄っちゃいけないオーラが!」


ピザ「●●臭い子に逃げられちゃったわぁん……ざぁんねぇん」

ゾンビ「あうー」

ピザ「ひっ……! 来ないで……!」

ムシャムシャ……バキッ、ドチャ……グチャ……

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 17:28:33.88 ID:rFScgHaX0
男「さて、これまでに助けたのは酔っぱらいの親父やらガリ勉君やらおばんやら」

女「みんなの役に立ってるじゃない……」

男「それじゃダメだろ! 俺の●●を捨てるにふさわしい美少女じゃなきゃ!」

女「……でも、さっき幼女を助けたでしょ」

男「まあな……。『お兄ちゃんありがとう』とも言ってもらえたのでそれは良い」

女「じゃあ、食べて良い?」

男「ダメだって! 最終目標は●●喪失! 幼女にお礼言われたからといってこれは譲れん!」

女「……やれやれ」

男「で、何か案ないの? 『男の●●喪失キャンペーン』特別顧問の女さんよ」

女「……う~ん、兎にも角にも、人がたくさんいるところに行けば良いんじゃない? 新しい出会いがあるかもよ」

男「お姉さんそして婦警好きの俺からしたら警察署しか選択肢が残されていないのであった」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 17:35:26.90 ID:rFScgHaX0
 

【警察署】

ゾンビ「うあー」

ゾンビ「あうー」

男「うわ……ゾンビだらけ」

女「あ、見て……」

男「ん? あ、警官が拳銃で撃ってる……」

女「やっぱり拳銃は威力が高いねー」

男「のんきだな……。君も殺されるかも知れないのに」

女「まあね。でも、ゾンビに見える?」

男「……見えない」

女「そういうことよ」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 17:40:09.65 ID:rFScgHaX0
婦警「そこの二人! 早く署内に逃げ込みなさい!」

男「うっはww俺の好みwwwどストライクwww」

女「わかったから早く入ろう」

男「あんなお姉さんにエスコートされたいなあ……」

女「これからどうとでもなるでしょ。早く入って休もうよ。歩き疲れちゃった」

男「ゾンビが歩き疲れるもんなのか?」

女「生前体が弱かったからかもねー」

男「ふーん……。まあいいや、早く入るか! お姉様のために! そしてお姉様の中に! ふひひ!」

女「 欲は人をここまで動かすのね……」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 17:46:07.65 ID:rFScgHaX0
婦警「まだ生存者がいたとは……」

男「俺、男です! よろしくお姉さん!」

女「女です。よろしく」

婦警「ああ、よろしく」

警官「婦警、そろそろ交代の時間だ」

婦警「はい。ありがとうございます」

警官「やれやれ……、まさか拳銃がこんな風に役立つ時が来るとはな……」

婦警「そこの君たち。案内するよ、ついてきなさい」

男「は~い!」

女「ノリノリだね……」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 17:51:15.44 ID:rFScgHaX0
婦警「この署には、数百人の生存者がいるんだ」

女「世界中が混乱しているこの状況で、よくそれだけ助けられましたね」

婦警「当然だろう。市民を守るのが我々の役目だ。……だが、そのために払った犠牲も少なくはない」

男(なんかすっげぇディープ……。俺の●●喪失サクセスストーリーはどこへ?)

婦警「死して尚歩き出す同僚たちをこの手で撃つのは……なかなか辛いよ」

女「お気持ち、お察しします……」

婦警「なんだかすまないね。君たちにこんな事を言っても、不安を増長させるだけだというのに」

男「い、いえ! あなた様のお話だったらどんなことでも喜んで聞かせて頂きます!」

婦警「そうか。……ありがとう」

男「いえっ!」

女「……元気ね」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 17:54:34.66 ID:rFScgHaX0
婦警「ここが生存者に待機して貰っている道場だ。狭いかも知れないが、我慢してくれ」

男「いえ、そんなことは……。婦警さんはどちらへ?」

婦警「屋上で……風を浴びてくる」

男「あの、お供させて貰っても良いですか?」

婦警「ああ、別に構わないが……」

男「よっしゃー!」

婦警「変な子だな、君は」

男「女さんはどうする?」

女「私は、ここで少し休むわ……。疲れちゃったもの」

男「そっか。じゃ、そういうことでっ!」

女「……本当、元気ねー」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 18:02:14.10 ID:rFScgHaX0
婦警「……風が気持ちいい……が……見える景色は地獄そのものだな」

男「はい……」

婦警「君は……どうしてここまで生き延びてこられた?」

男「え?」

婦警「君たちの逃げてきた方向は、既にゾンビどもで一杯だ。……どうしてなんだ?」

男「さ、さぁ……?」

男(女さんがいたからかな?)

婦警「……守るべきものがあるから、かい?」

男「え?」

婦警「一緒に来た子……、君の彼女だろう?」

男「ちちちち違いますよっ! 俺はあいつより、断ッ然、婦警さんの方が好みですから!」

婦警「くく、そうかい……。嬉しいことを言ってくれる」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 18:06:03.58 ID:rFScgHaX0
婦警「……少し昔話をして良いかな」

男「は、はぁ……」

婦警「まだ私が警官になりたてだった頃……、私には交際していた人がいたんだ」

男(や、やっぱり婦警さんも大人の女性だしなぁ……)

婦警「彼は、元気な人だった。どことなく、君に似ているよ」

男「俺に……。……ん? だっ『た』?」

婦警「ああ……彼は、踏切に入ってしまった子供を助けるために、その命を散らした」

男「……」

婦警「……その場には、私もいた。だが……私には飛び込む勇気がなかった。死んでしまうかも知れなかったからね」

男「婦警さん……」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 18:10:00.21 ID:rFScgHaX0
婦警「私は卑怯だったな……、うん」

男「……」

婦警「彼は……死ぬ間際にこう言った。『お前は望んでこの職に就いたんだろ? その事をよく考えてくれ』ってね」

男「……それで、婦警さんは……」

婦警「うん、たとえ自分が死ぬことになろうと、全力で市民を守ると誓った。私にあるべき姿を見せてくれた彼のためにも」

男「……婦警さん」

婦警「いずれ、この警察署も陥落するだろう。……だが、ここに来た人たち、私たちを信頼してここまで来てくれた人たちはぜったいに守り抜く」

男「……あなたなら、婦警さんなら出来ますよ。ぜったい!」

婦警「ありがとう。彼もきっと同じことを言っただろうね」

男「……はい」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 18:13:24.76 ID:rFScgHaX0
婦警「……会って間もないのに変な話をしてしまったね」

男「いえ、婦警さんのことを知れたようで、なんだか嬉しいです」

婦警「そうか、それはどうも。……君は……」

男「?」

婦警「……君は必ず、彼女を守りきるんだよ。私との約束だ」

男「……あー。はい」

婦警「煮え切らないな?」

男「あ、多分彼女タフなんで……」

婦警「男としてそれではいかんな……。私が男とはなんたるかを教えてやる!」

男「え、ちょ! どうせなら保健体育を教えて欲しかったりなんかしちゃって!」

婦警「ほう、今時良い子だな」

男「マジですか!?」

婦警「薬物は怖いぞ……」

男「そっちか!」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 18:15:12.77 ID:rFScgHaX0
【道場】

女「人が一杯……。うーん、でも……それじゃあ男さんとの契約違反か」

女「お腹減ったなぁ……」

女「……横になったら忘れるかな?」

女「…………ぐぅ」

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 18:18:44.94 ID:rFScgHaX0
婦警「つまりだ。麻薬は依存性が高くてだな」

男「はいっ! クロロホルムで誘拐なんて無理って事ですね!」

婦警「そんなことは言っていないぞ男君!」

男「はいっ! つまり六ヶ月経てば落とし物が俺のものに!」

婦警「それも違う!」

男「すいませんっ!」

婦警「……もしかして君、寝ぼけていないか?」

男「すいませんっ! 正直、昨日から一睡もしていません!」

婦警「それであの娘をここまで連れてきて……。大変だったろう、ふむ、講義は中止だ」

男「ありがとうございます!」

婦警「道場は狭い。屋上でのんびりと寝るが良いさ。……夕日も綺麗だ」

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 18:22:10.66 ID:rFScgHaX0
男「でも、婦警さんの方が綺麗です!」

婦警「君は……よくそんな台詞が言えるね。お世辞が上手い」

男「偽りなく俺の本心です! 俺は婦警さんに一目惚れしました!」

婦警「……寝ぼけているんだろう? もし起きていたとしたら、趣味が悪いよ」

男「いえっ! 俺は女性には嘘をつかないつもりです!」

婦警「……そうか……」

男「婦警さん……」

婦警「すまない……やはり、私の中にはあの人がいるんだ……」

男「そうです、よね……」

婦警「だけれども……膝枕くらいなら、彼も笑って許してくれるさ」

男「え!」

婦警「筋肉質で堅いかもしれないが、私の膝でよければ……どうぞ」

男「お、お、おおおおお願いしますっ!」

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 18:29:24.80 ID:rFScgHaX0
婦警「その……」

男「なんですか? ……あー、婦警さんの膝枕気持ちいいー」

婦警「堅くないかい? 頭は、痛くない?」

男「全ッ然、大丈夫です! どうしてですか?」

婦警「ああ、その……膝枕はしたことがなくて…………」

男「じゃあ俺が、婦警さんの初めてを頂いたって事ですね!」

婦警「君ッ! その言い方はよくないぞ。警官として修正してやる」

男「うはっ、体くすぐるのは無しですってば、うひゃひゃひゃ!」

婦警「君のような変 さんにはこうだっ」

男「うわ、やめて、やめてくださいってば、あひゃひゃ!」

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 18:33:12.68 ID:rFScgHaX0
【道場】

女「……目が覚めちゃいました」

女「男さんは……屋上でしたね」

女「……邪魔してあげましょうか」

女「でもそれだと契約違反……。 交渉できていたらどうしようも……」

女「男さんに限ってそれはないですよね」

女「しかしお腹が空きました」

女「思えば昨日今日と何も食べていません」

女「ご飯……いっぱい……」

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 18:37:49.49 ID:rFScgHaX0
女「ちょっとくらいならバレませんよね……」

女「馬鹿な男の一人や二人、トイレに連れ込んで首筋をがぶりと……」

女「でも、それで良いの……?」

女「……ま、食欲には勝てませんからね。あははっ」


チンピラ「あー、可愛い娘いねぇかな。こんな時だからこそ●●まくれるだろうしな」

女「あのー、そこのお兄さん」

チンピラ「おっ、なになに、俺に何か用?」

女「あの……下が疼いちゃって仕方ないんです……だから……」

チンピラ(きたきたきたあああああああ!)

女「あの、誰もいないトイレで……ね?」

チンピラ「そうだね! 早く行こう!」

女「……ご飯ゲット」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 18:41:01.98 ID:rFScgHaX0
婦警「……夜だね」

男「夜ですね」

婦警「そろそろ交代の時間かな……」

男「ああ、なんと名残惜しい……」

婦警「喜んでくれたようで、何よりだよ」

男「いやあ、もう、俺の思い出アルバムの頂点です、これは」

婦警「ありがとう……。君のおかげで、もっとがんばれる気がするよ」

男「本当ですか!? それじゃあじゃんじゃん俺のために膝枕してください!」

婦警「君はすぐ調子に乗って……」

男「あははっ」

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 18:46:01.13 ID:rFScgHaX0
チンピラ「ああ、君……早く……」

女「もう、そんなにがっつかないでくださいよ……。お楽しみはこれからなんですから」

チンピラ「そうは言っても……もう、我慢の限界を越えて……」

女「行けませんよ、そんなんじゃ……。だから女性にモテないって、早めに気づくべきでしたね」

チンピラ「へ、何を……?」

女「良いこと教えてあげます。今からあなたは――」

チンピラ「え……?」



女「――私のご飯になれるんですよ」グチャッ

チンピラ「あ、がっ……」

女「やだ、まずっ……。でも、食べなきゃ辛いですし……我慢我慢♪」

グチャ、バリッ、ベリッ……ギュチャグチャ、ムギュ、ブスッ、ジュチャズチャ……

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 18:52:12.18 ID:rFScgHaX0
女「……ま、適当に放置しときましょ」

チンピラ「……」

女「う~ん、味のランクはDマイナス。もっと美味しくなる努力をしなさい」

女「なんて、言っても無駄ですけどね」

女「……血で汚れちゃってるなぁ……。顔洗いましょうっと」

【屋上】

男「……婦警さん……、あの、さっき、ここにいる人みんなを守るって言ってましたよね」

婦警「言ったね」

男「その中に、あなた自身は含まれてますか?」

婦警「……」

男「自己犠牲って、格好良いかもしれないけど、その実……最低なことだと思います。俺は、ですけど」

婦警「……」

男「それだけです……。ごめんなさい」

婦警「……何かを犠牲にしてでも、守らなくてはならないものがあるんだよ。私はそう信じている」

男「婦警さん……」

82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 18:54:33.03 ID:rFScgHaX0
おばさん「やだわ、こんな時に尿意が……って、きゃああああ!?」

チンピラ「……」

おばさん「ひ、人が死んでる……人が死んでるわああああああ!」

チンピラ「……ぅ」

おばさん「う、動いた? 息があるの、あなた、ちょっとしっかり!」

チンピラ「……う、うおああー」バッ

おばさん「え……」

グチャ

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 18:59:10.57 ID:rFScgHaX0
婦警「……なんだか下が騒がしいな……? なにが……」

警官「婦警! まずいぞ、署内に奴らが入り込んで……!」

婦警「なんだと……!? すぐに行く!」

男「え、署内にゾンビ……女っ!?」

婦警「男君、君は逃げろ! 彼女と一緒にだ!」

男「は、はい……って、婦警さんは……!」

婦警「生きている人はいる。その人たちを逃がしきるまで、私はここで戦う!」

男「でも、それじゃあ!」

婦警「……死ぬかもな。それでは、またいつか――いつか会おう、男君!」

男「婦警さん、婦警さぁぁぁぁぁんっ!」

87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 19:02:48.53 ID:rFScgHaX0
【道場】

女「阿鼻叫喚の地獄絵図とはこのことですか……」

男「女さんっ!」

女「あ、助けに来てくれたんですか?」

男「いやそれはない。……逃げるぞ!」

女「あれ、聞かないんですか?」

男「聞くまでもないだろ、くそっ!」

女「……そうですか。怒ってます?」

男「わりとな……! あらかた食欲に負けたんだろ……!」

女「大正解、賢いですね、男さん」

男「んなこと言ってる場合かよ!」

女「まあまあ、多分男さんは死にませんよ」

男「んなことじゃない……、婦警さんが死んじまうかもしれないだろ!」

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 19:07:23.86 ID:rFScgHaX0
警官1「くそっ、撃っても撃ってもきりがない!」

婦警「生きている方は、焦らずに、一列に並んで、この扉を出て市の体育館まで逃げてください!」

警官1「弾切れかよ、くそっ! 婦警、予備の弾薬は!?」

婦警「残りわずかだ……。署長たちも外で戦っているが……」

警官2「婦警さん! 生存者の列からゾンビが!」

婦警「なんだと!? 死体を抱えて並んでいたというのか……愚かな!」

警官3「ダメだ、列がぐちゃぐちゃになってる! 俺たちも逃げないとまずい!」

婦警「だが……、生きている市民がいるんだ! その人たちを助けない限り!」

警官3「馬鹿! 確かに俺たちの役目は市民を守ることだ! けど、生きてなかったらその役目すら全うできないんだぞ!」

婦警「…………くっ」

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 19:11:05.37 ID:rFScgHaX0
男「おいおい、俺たち完璧に逃げ遅れてないか」

女「どどんまい」

男「ふざけてんのかあんた」

女「私……男さんとなら……」

男「こんな時だけラブロマンスモード入るなよ……。つーかあんた死なないだろ」

女「じゃあ、死なないことを生かして戦います!」

男「どうやってだよ……武器なんて……」

女「このさすまたで」

男「……頑張ってください」

女「私に任せなさい! ほあたああ!」

男(あれ、こいつが元凶だよな……? でも、今は生きることが重要だ!)

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 19:16:19.02 ID:rFScgHaX0
【廊下】

婦警「くそっ、墜ちろカトンボ!」バンッバンッ

ゾンビ「うあー」

ゾンビ「あうー」

婦警「きりがないっ!」

ゾンビ「あー」

婦警「後ろっ!?」

男「飛んでけぇっ!」ズガンッ

婦警「男君!」

男「婦警さん、助けに来ました!」

女「正確には助けられに来ました、ですね」

婦警「まだ逃げていなかったのか!?」

男「女さんと合流するのが遅れて……。とにかく、今は逃げるのが先決です、逃げましょう」

95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 19:20:18.13 ID:rFScgHaX0
婦警「だが……」

男「まだ渋っているんですか! 何かを犠牲にした上で得た結果に価値なんてないんですよ!」

婦警「!」

男「今は逃げましょう! ……命がある限り、挽回するチャンスはあります!」

婦警「……わかった……」

女「格好良いですね、男さん」

男「そりゃどうも」

女「ふふっ、恋する男の子は強いですね」

男「うるさいっ」

婦警「仲が良くて羨ましいことだ」

96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 19:26:45.59 ID:rFScgHaX0
【出入り口】

ゾンビ「あうー」

ゾンビ「うあー」

ゾンビ「あー」

ゾンビ「うおー」

男「ゾンビだらけ……! どうすりゃいい……!」

婦警「向こうの部屋に行こう! 扉は頑丈だから、少しの間立てこもって考える時間はある!」

女「それしかないみたいですね」

男「くっ、何が何でもみんな生きて脱出するぞ!」

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 19:31:20.53 ID:rFScgHaX0
【小部屋】

男「って取調室かよ!」

婦警「くく、なかなか頑丈だとは思うよ」

女「出口は……外へ続く窓……ただし鉄格子付き」

男「ぶっ壊せば何とかなるか……! 早く壊そう!」

婦警「だが生憎と私に武器はない……。拳銃はあるが、弾も残りわずかだ」

男「貴重な武器を使うわけにも行かないですし……。金属バットじゃ力不足だ……」

女「このさすまた、使えませんかね」

男「……いや、使えるかもしれないな……。てこの原理で無理矢理……」

女「力技なら任せてください」

男「……流石ゾンビ」

婦警「?」

103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 19:35:51.84 ID:rFScgHaX0
女「くっ、とっ、はああっ」

男「頑張れ、女さん!」

女「堅いですねこれっ! 腹立たしいッ!」

男「いやまあそりゃ堅いだろうよ」

ゾンビ『うあー』バンバンバン

婦警「まずいな……奴らはこっちに気づいているようだ……。いくら頑丈とは言え、大質量で扉にのし掛かられれば終わりだ」

男「くそっ、女手伝うからいっせーの、でいくぞ!」

女「了解っ」


104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 19:38:38.24 ID:rFScgHaX0
女「いっせー!」

男「のーっ!」

ガキンッ ドバッ

ゾンビ「うああああー」
ゾンビ「あうあうあうー」
ゾンビ「うおおおおおー」

婦警「くそっ! 男君、女さん、早く外へ!」

男「わかりました! 婦警さんもなるべく急いで……」

婦警「いや、私は死に場所を見つけたよ……男君」

男「何をっ!?」

107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 19:42:55.85 ID:rFScgHaX0
婦警「悪いけど、このさすまた、お借りするよ!」

女「あ、はいどうぞ……」

男「最後の最後で何してんですか! みんなで逃げるから意味が――」

婦警「ここで私が逃げても、このゾンビどもは必ず追ってくる。……ここで、足止めしておいた方が君たちが助かる可能性は高い」

男「だけど!」

婦警「受け取れ男君ッ!」

男「えっ? ……拳銃……」パシッ

婦警「私が私であったことの証だ! 最後に君を守って死ねるのならば、それも悪くない!」

男「婦警さん!」

婦警「……君からの告白、嬉しかった」

男「婦警さん、ダメですってば、そんな……!」

婦警「……さようなら……! 必ず、必ず生き残ってくれよ……!」

男「婦警さん!」

婦警「婦警巡査、突貫します!」ダッ!

109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 19:44:54.98 ID:rFScgHaX0
婦警「うおおおおおおおおおおおっ!」

ゾンビ「あうー」
ゾンビ「うあー」
ゾンビ「あうあうあうああー」
ゾンビ「うおおおおあー」


男「婦警さん……!」

婦警「……逃げ、て…………!」



ドチャッ……ブシャア……グチャ、グチャ……


男「うわああああああああああああああ!」

111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 19:46:48.06 ID:rFScgHaX0
女さんの小ネタ講座

女「婦警さんは、ガンダムが好きだったようだね」

女「台詞の端々に、色々あるよ」

女「じゃねー」

123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 20:12:15.57 ID:rFScgHaX0
男「……」

女「男さん……」

男「……どうして……婦警さんは……」

女「……」

男「……どうして、君は……」

女「……」

男「…………くそっ」

女「……ごめんなさい」

126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 20:16:30.46 ID:rFScgHaX0
男「謝るなよ……謝らないでくれよ……」

女「でも……」

男「君が謝ってしまえば、君を責めて責めて責めるしかなくなるだろ……」

女「男さん……」

男「君はゾンビだ。……それはもう、どうしようもない事だから……仕方、なかったんだよな……」

女「……」

男「……生きよう。俺は生きるよ、女さん……」

女「……そう」

男「まあ……その前に、●●喪失しなきゃね……」

女「お手伝い、します……」

男「……そうと決まれば……行こうか……」

女「……うん」

128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 20:22:16.90 ID:rFScgHaX0
女「どこに行くの……?」

男「ショッピングモールかな」

女「え?」

男「中に立てこもれば、数日間は生活できるよ」

女「ついでに●●喪失?」

男「出来ればいいけどね……」

女「うん、まあ頑張ってね」

男「おうよ」

女(……男さんには、悪いことしちゃったよね……。それでもこうして笑ってくれる……。ごめんなさい……)

男「どうした女さん。早く行こうぜ」

女「あ、うんっ」

129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 20:26:59.69 ID:rFScgHaX0
【ショッピングモール】

男「おー、人が一杯いる」

女「バリケード……これはすごいね」

男「すんませーん、中に入れてもらえませんかー」

おっさん「おぉー、まだ生きてる奴がいるとは。入れ入れ」

男「どうもっ!」

女「ありがとうございます!」

おっさん「いいってことよ! 中でゆっくり休みな!」

男「はい! 女さん、行こう」

女「うん」

131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 20:32:38.12 ID:rFScgHaX0
女「…………」

男「なんか、元気ないぞ、女さん」

女「そうかな」

男「……婦警さんのことは」

女「!」

男「もう、大丈夫だから。……食欲には勝てないもんな」

女「……」

男「ったく……、君ってそんなにうじうじする奴だったっけ?」

女「……でも」

男「あー、イライラする! 女さん、デートだ、デートしようぜ!」

女「デート……?」

男「デートだ」

女「でも私……ゾンビだし……」

男「いーんだよ、俺が君とデートしたいんだからさ! ……ここまで一緒に生きてきた仲だろ?」

女「……はい」

133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 20:38:27.40 ID:rFScgHaX0
男「まあまずは順当に……ショッピングだな」

女「……ショッピングモールだもんね」

男「何が見たい? 服? ブランドものがいっぱいあるけど……」

女「服はあまり興味がないなあ」

男「元が良いのにそれじゃあもったいないだろ……。なんか新しいのにしようぜ。……俺たちどっちも、服汚れてるし」

女「うん……」

男「ほら、元気だせってば!」

女「……」

男「……うーん、これは難度が高いミッションだ……。俺の●●喪失より難しいんじゃ」

134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 20:43:42.25 ID:rFScgHaX0
男「よし、女さんはこれが良いな!」

女「……」

男「……おーい……」

女「ごめんね……」

男「あのなー、女さん……。謝るんだったら、どうして俺についてきたんだ?」

女「……それは……」

男「いやまあ無理に言わなくても良いけどさ。……俺は●●喪失のため、女さんにまだまだ協力して貰わなきゃならないんだ」

女「うん……」

男「だから、そう落ち込まれてると調子が狂う。俺を食べるぞーって意気込んでた頃の女さんに戻って欲しいな」

女「……男さんは、それで良いの」

男「なにが」

女「私が、婦警さんを殺しちゃったのに……」

男「あのさ……怒るよいい加減」

135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 20:49:35.97 ID:rFScgHaX0
男「あれは仕方のないことだし、婦警さんが結局ああする事を望んだんだ」

女「……」

男「それに、遅かれ早かれ警察署は陥落するって婦警さんも言ってた。……ただ、それが少し早まっただけのことだ」

女「……」

男「つーか、君はゾンビだろ? いちいち死んでしまった人のことを考えてどうするんだよ」

女「そう、だけど……、でも……。男さんは、空元気を出してるみたいで……。それが、私のせいだから、見ていられなくて……」

男「空元気ねぇ……。確かにそうかもしれんよ。けどね……、俺は今生きてる。過去を振り返るよりも、前を見て歩いた方がよっぽど良いだろ?」

女「……」

男「前を見るためだったら、空元気でも何でも出してりゃいいのさ。……いつか必ず、心の底から元気になるよ」

女「……男さん……」

139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 20:52:18.61 ID:rFScgHaX0
男「そして元気になるためには●●喪失が一番だ。だろ?」

女「うん……」

男「●●喪失のために、君は俺に協力してくれると言った」

女「うん……」

男「俺が空元気出してるって思うんだったら……君は何をしてくれればいいのか、わかるね?」

女「うん……!」

男「良い子だ。……今日は、休もう。……デートはまた明日だ」

女「うん……」

男「……家具販売店にベッドがあったから、そこで少し休もう」

女「うん……。男さん……」

男「何?」

女「……一緒に寝ても良い?」

男「……あ、うん……」

144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 21:01:28.88 ID:rFScgHaX0
男「……何故こんな事に……。●●喪失前に女性とベッドインとは……」

男「むしろベッドインするから●●喪失? ……いやわけわからん」

女「何言ってるの?」

男「今のこの状況を理解できないんですよ」

女「うん、私も。……何で一緒に寝たいなんていったんだろ」

男「それこそわからんわ」

女「……なんだか、落ち着く」

男「俺は全然落ち着かないけどな」

女「……暖かいね、男さん」

男「女さんは冷たいな……ゾンビだし」

女「そこは……優しく抱きしめるところじゃないの?」

男「無理です。●●にそんな度胸ございません」

145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 21:05:44.00 ID:rFScgHaX0
女「じゃあ私から抱きつく」

男「おい……、女さん、なんかおかしいぞ?」

女「さっきも言ってたじゃない」

男「いやさっきとは別ベクトルで」

女「……そう? 嫌? 嫌ならやめるけど」

男「嫌じゃないけど……。女さん美人だし……」

女「ふふ、ありがと」

男「……それにしても百八十度性格が違うがな」

148: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 21:11:54.57 ID:rFScgHaX0
男(結局朝まで悶々として眠れなかった……。●●は辛いぜ)

女「ん……んぅ、おはよう……男さん」

男「あ、ああ、おはよう……」

女「顔赤いよ?」

男「服がはだけてる……」

女「あ、ほんとだ……。見る?」

男「いらんっ! ……それにしても、女さん……、細胞が崩壊を始めてるって言う割には、まだ綺麗な体だね」

女「……え? あ、うん……それもそうだね」

男「それに、ゾンビのくせに知能も高い……」

女「へ!?」

男「……無理に聞く気はないけど、何か隠してるだろ」

女「……ごめん」

男「そっか。……ま、いいや。女さんは女さんだし。……さぁてどうする?」

女「何が?」

男「デートだよ、デート」

150: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 21:17:40.46 ID:rFScgHaX0
女「デート……」

男「デート」

女「……昨日は見れなかった洋服とか……、映画とかも良いかも」

男「……映画ってやってんのか?」

女「あ」

男「……うーん、ま、考えるより行動した方が良いか。このショッピングモール、全長2kmらしいしな」

女「そんなに?」

男「全部の店回れば、時間なんてあっという間に潰れるよ」

女「楽しみだなぁ……」

男「そうと決まれば早く行こうぜ」

154: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 21:20:38.44 ID:rFScgHaX0
女「ねぇねぇ、この服、どうかな?」

男「似合ってるけど……こっちの方が良いな」

女「……センスないね……」

男「うるさい。●●を舐めるな」

女「それ自慢する事じゃないでしょ」

男「うるさいっ! ●●で何が悪いか!」

坊や「ままー、どうていって、なにー?」

ママ「だめよ坊や、見ちゃいけませんっ」

坊や「はーい。ばいばい、どうていのおにいちゃん」

男「あの子供●●の意味わかってんじゃねえだろうな……!」

女「考えすぎだよ、あははっ」

161: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 21:30:50.35 ID:rFScgHaX0
男「おぉー……綺麗だな……」

女「そ、そうかな……」

男「似合ってると思う、凄く!」

女「お、お世辞が上手いね、あはは」

男「俺は……女性には嘘をつかないつもりだ!」

女「そ、そうなんだ」

男「そうだ。だから、今の女さんは本当に綺麗だよ」

女「……ありがと」

男「じゃあ、次は何にしようか?」

女「小物とか見てみたいかな……」

男「よし、行こう!」

162: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 21:34:01.34 ID:rFScgHaX0
女「それにしても……いいのかなぁ」

男「なにが?」

女「洋服、無断で持ち出して来ちゃったよ?」

男「こんな状況で金儲けしたがる奴なんていないってことだね。……どうなるのかな、俺たち」

女「いつか必ず、死んじゃうだろうね……。そしてゾンビになる」

男「ま、それなら生前に楽しい思い出を作っておくに越したことはないな」

女「うん……っ!」

163: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 21:39:03.18 ID:rFScgHaX0
男「アクセサリーショップか」

女「可愛い……。ね、見ても良いかな?」

男「良いに決まってるだろ。そのために来たんだから」

女「えへ、そうでした……。うわぁ…………」

男(熱心に選んでるな。……さて、俺は……おっ)

女「男さん、ねぇ、このネックレス、どう思う?」

男「ん、ああ、可愛いんじゃないかな。……でも、女さんには少し子供っぽく見えるよ」

女「そうかなぁ……? 可愛いと思ったんだけど」

男「俺はこっちをオススメするね」

女「……男さん、やっぱりセンスないよ」

男「う、そうか……」

女「でも……男さんが選んでくれたんだったらこれでもいいかなー、なんてね」ニコッ

男(その笑顔は……反則です……)

166: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 21:44:20.56 ID:rFScgHaX0
男「……結局、それにするのか?」

女「うん、男さんは、これが似合ってると思うんでしょ?」

男「まあな」

女「じゃあ、これで決まりだよ。……はい、これ」

男「……ネックレス?」

女「おそろいのなんだけど……ダメかな」

男「いや、ダメじゃない。……喜んでつけさせて貰うよ」

女「ありがとう、男さん」

男「いやいや、むしろ美人とペアルック出来る俺の方からお礼を言うべきだ」

女「ふふ、私、男さんに会えてよかった」

男「おいおいいきなり不吉な事言うなよ。そいつは死亡フラグだぜ」

女「そうかな? ごめんごめん。ただ、一応言っておきたいと思って」

男「そいつはどういたしまして、だな」

167: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 21:48:48.60 ID:rFScgHaX0
 
【女さんのワンポイント講座】

女「幼さんの彼氏はDQNって名前だったけど、実際は違ったよね」

女「これは、作者が書きだめ投下していないことの表れだね」

女「初めは糞野郎を書くつもりだったらしいよ」

173: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 22:06:02.89 ID:rFScgHaX0
男「飯にするか?」

女「うん、お腹減っちゃった」

男「……って、それはいかんいかん……」

女「あ、大丈夫だよ……?」

男「なにがだ。人を食べたらだめだぞ」

女「蛋白質をたくさん摂れればいいから……、お肉十五人前くらいかな」

男「……食い過ぎだろそれ」

175: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 22:10:30.44 ID:rFScgHaX0
男「……あ、なあ……」

女「なに?」

男「●●って蛋白質が――」

女「――フルスイング!」ズバンッ!

男「ぶほっ!」

女「そ、そういうのはまだ早いっ!」

男(……昨日ベッドで寝なかったっけ……)

178: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 22:14:52.77 ID:rFScgHaX0
男「よし、こんなもんかな……。これくらいでいい?」

女「うん。山形牛、飛騨牛、松阪牛、オージービーフ……って、一つだけ見劣りするね」

男「いいじゃん、量が多いし」

女「まあ、そうだけど……。それにしても、このモール、まだ電気が通ってるんだね」

男「そういやそうだな。……まだ発電所は死んでないって事か……?」

女「だとすると、ここが潰れたら行くところは決まりだね」

男「あんまりそういうことは考えたくないもんだけどな……」

女「そうだね、私も同じ」

男「今、こうしてのんびり流れてる時間は……かけがえのないものだよ」

女「……うん」

180: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 22:19:38.23 ID:rFScgHaX0
男「いただきまーす」

女「いただきます」

男「しかし女さん、生肉で良いのか?」

女「うん。問題ないよ」

男「まあゾンビだしな」

女「うん、ゾンビだもん」

男「……あー、このサラダ美味い! やっぱトマトは野菜で一番だぜ」

女「わかんないなー」

男「なにが?」

女「肉ほど美味しくて肉ほど素晴らしい食べ物はないのに。……もぐもぐ」

男「まあ、そりゃ君からしたらそうだろうけどさ」

181: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 22:23:17.18 ID:rFScgHaX0
男「ごちそうさま」

女「ごちそうさまでした」

男「あー、食べた」

女「食べたね」

男「今度は……アミューズメント系のとこに行こうか」

女「ゲームセンターとか?」

男「いいね。久しぶりにガンシューやりたいな」

女「ゾンビ撃つ奴? 私もやりたいな」

男「よく考えると、なんかそれおかしい図だよな」

女「ふふ、そうだね」

男「ま、いっか。よし、次の目的地はゲーセンだ」

女「おー」

186: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 22:27:13.66 ID:rFScgHaX0
【ゲームセンター】

男「あれま、なかなか盛況だね」

女「仕方ないよ……。閉鎖された状況で、娯楽はこれくらいしかないんだから」

男「全くだ。……その分、クレジットなしで稼働するようになってんのか」

女「そうでもしなきゃやってられないよ、きっと」

男「だな。……どうする? 音ゲーでもやるか?」

女「ガンシューティングじゃないの?」

男「いやでも……、ほら、あの人だかり」

女「……うーん、凄腕の人なんじゃない? 見に行こっ」

男「うわっ、引っ張るなって……!」

188: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 22:33:34.00 ID:rFScgHaX0
【ガンシューティングゲーム筐体前】

周り「うお、すげえ!」

周り「なんだこいつ……、ほとんど神業じゃねえか」

周り「こいつにモノホンの銃持たせたらゾンビ殺せるだろww」

キモオタ(ふひっ、ついに僕が脚光を浴びる時が来た……!)

キモオタ(今までは周囲の罵倒に耐えながら、一人寂しくガンシューの腕を磨く毎日)

キモオタ(だけど今の僕は違う! 僕はヒーローだ! 今の僕は……何でも出来るんだ!)

男「うっひゃー、すげぇなあの人」

女「ほんと。全部クリティカルヒットじゃない?」

男「やっぱり得意な人はとことん得意なんだな」

キモオタ(ふひひ、もっと僕を褒めろよ、崇めろ、称えろよ! ふひひ!)

192: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 22:38:09.45 ID:rFScgHaX0
キモオタ(これでっ……! クリアだ!)

周り「おおおおっ! 文句なしのパーフェクトクリアだ!」

周り「すげぇ、すげぇぞこの人!」

周り「俺は今神を見た! 神 降 臨 !」

キモオタ「いやいや、それほどでもないですよ」

男「さて、と、じゃあ次は俺たちの番だな」

女「あんな凄い人の後だと、恥ずかしいなあ……」

男「何言ってんだよ。楽しめればそれで良いんだよ、ゲームなんて」

女「それもそうだね」

キモオタ(こいつらか、次のプレイヤーは……)

キモオタ「君たちにクリアできるかはわからないけど、せいぜい頑張ってね」

男「そのつもりだよ」

197: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 22:41:50.20 ID:rFScgHaX0
【ステージ1】

男「女さん、君は俺のフォローに回って。仕留め損ねた奴を頼む」バンバンッ

女「任せてっ。えいえいっ、墜ちろカトンボ!」バンバンバンッ

男「おらおらおらっ」バンバンバンバンッ

女「えーい!」バンッ

周り「おー、このカップル、凄い連携の良さだ!」

周り「さっきの神よりも少し頼りないけど、それでも良い感じだぞ!」

周り「行け行け兄ちゃんと姉ちゃん!」

女「あはは、カップルだってよ」バンバンッ

男「そう見えるのかねぇ……?」バンバンバンッ


200: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 22:45:49.74 ID:rFScgHaX0
【ステージ1・ボス】

キモオタ(ここがビギナー最初の難関……。みんなに褒められて舞い上がってるようだけど、どうなるかな?)

女「うわっ、ボス気持ち悪い……」

男「グレネードを口にぶち込むんだと。女さん、頼むね」

女「りょーかいっ」

男「くらいな化け物!」バババンッ

女「グレネード!」バシュッ

周り「おお、やっぱり息が合っている!」

周り「兄ちゃんに隙が出来たら姉ちゃんがカバー、姉ちゃんに隙が出来たら兄ちゃんがカバー!」

周り「凄いぞこの二人! 妬けるぜ!」

男「後一発だ。ノーダメクリアってとこか?」

女「くらえっ! ふん……他愛もない。鎧袖一触とはこのことか……なんてねっ」

204: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 22:53:12.55 ID:rFScgHaX0
周り「いけいけアベックッ!」

周り「古いぜおっさん!」

周り「黙れ! この二人を応援するぞ!」

周り「頑張れ~!」

女「なんだか凄い熱気だね」

男「いつの間にか最終ステージだ……まあ、仕方ないな」

女「しかも何気なくノーダメージだよね」

男「女さんがパートナーだからかな」

女「ありがとっ。さ、始まるよ!」

キモオタ(な、なんてことだ……。既に愚民どもの関心は僕からこの二人に移っている……!)

キモオタ(これはいけない……! どうすればいい……、考えるんだ僕!)


208: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 22:59:40.25 ID:rFScgHaX0
【最終ステージ】

女「さぁ、最終ステージ、生本番行くよっ!」

男「下品な表現はやめろよ……」

女「何考えてるの……」

男「なんでもないですっ。……さぁ、やるぞ!」

女「了解ッ!」

男「ちっ、流石に最終ステージともなるとなかなかきつい、な……!」

女「そうだね、ダメージ受けちゃったね男さん……」

男「だけど、ダメージ受けてても死んでるわけじゃない!」

女「そうだ、その意気だよ!」

210: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 23:03:45.08 ID:rFScgHaX0
キモオタ(ふふ、残念だったね……。序盤でダメージをうけているようじゃ、中盤を乗り越えられない)

キモオタ(そうすると、男が死んで、残るのは可愛いこの娘一人……)

キモオタ(そこに僕が颯爽と登場すれば……、みんなの関心とこの娘のハートも僕のものだ……)

キモオタ(我ながら、笑いが止まらないよ、ふひ、ふひひひひ)

男「くそっ! 死ぬのかっ!」

女「男さんっ!」

男「死んだっ、悪い……!」

キモオタ「僕に任せてっ!」ガチャッ……バンバンバンッ

女「え?」

キモオタ(決まった! これでみんなの関心が僕の……もの……)

周り「なんだあいつ」

周り「空気が読めてないというか何というか」

キモオタ(な、なんだよこの評価!)

216: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 23:09:27.71 ID:rFScgHaX0
男「……あー、そのなんだ……。どうぞ続けて」

キモオタ「あ…………うん……」

女「あの、あなただったら一人でも大丈夫ですよね……? それじゃあ」

キモオタ「え、君……あ……」

周り「こいつなんだよ」

周り「頭おかしいんじゃねえのか」

周り「増長しすぎって事だな」

周り「目立ちたがり屋って事か」

周り「でも結果として目立ててるわけだし、成功じゃね?」

周り「違いねぇ、あはははは!」

キモオタ(くそっ、くそっ、くそっ! なんでだよ、このゲームは僕が一番上手いんだ! 僕が一番上手く扱えるんだ! くそっ!)バンバンバンッ

キモオタ(死ね、死ね、ここにいる奴らはみんな死ねッ!)バンバンバンバンバンバンッ

220: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 23:11:29.18 ID:rFScgHaX0
男「ふー、なんだったんだ? あの人」

女「わかんない。けど……面白かったね」

男「そうだな。次はどうする?」

女「音ゲーしようよ」

男「音ゲーは俺の得意分野だぜ」

女「そうなのっ?」

男「マイバチあるからな」

女「……無駄に用意が良いね」

男「マニアとはこういうものさ。●●舐めるな」

女「●●関係ないじゃない」

221: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 23:15:11.67 ID:rFScgHaX0
キモオタ(くそっ、くそっくそっ……! 僕は、僕はただ……)

キモオタ(みんなに評価して貰いたかった、褒めて貰いたかっただけなのに……!)

キモオタ(それなのに……! あいつが、あいつらが! 憎い……! 憎いよ……!)

キモオタ(殺したい、殺してやりたい……! でも、そんなこと出来るわけがない)

キモオタ(僕は所詮、ピザでキモいオタクだ……。もう、死のうかな……)

キモオタ(どうせ……、生きている意味なんてないんだ……)

キモオタ(死んだらどうなるのかな? ゾンビになって……)

キモオタ(どうでも良いか、そんなこと……)

227: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 23:20:32.35 ID:rFScgHaX0
【モール・出入り口】

キモオタ(……ここから出れば、一歩踏み出せば死の世界だ)

キモオタ(……あはは、死のう、早く死んで、楽になろうっと……)

ゾンビ「うあー」

キモオタ(でも待てよ……? 僕だけ死ぬのは不公平じゃないか)

キモオタ(……みんな平等に……。最後くらい……僕のわがままが通っても良いじゃないか)

ドガッ、ドガッ、ドガッ

おっさん「ちょ、兄ちゃん! なにやってんだ! 奴らが入って来ちまうぞ!」

キモオタ「構いやしませんよ! 僕は死ぬ! でも、僕だけじゃ不公平なんだ!」

おっさん「な、何言って……!」

キモオタ「ミッション・コンプリート……」

おっさん「ぞ、ゾンビどもが……」

キモオタ「――地獄のショッピングモールへようこそ」ニヤリ

232: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 23:23:33.86 ID:rFScgHaX0
男「なんか外が騒がしいな」

女「ほんとだね。どうしてかな?」

男「嫌な予感がするぞ……」

女「うん……。でも、大丈夫。必ず男さんは生き残るよ」

男「……そうだと良いな」

女「私が保証します」

男「ありがとう。……さて、何が……っ!?」

女「え……ゾンビ……!」

男「ここも陥落したのか!」

235: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 23:25:52.90 ID:rFScgHaX0
キモオタ「あははっ、踊れ踊れー! 今さっき、僕はモールにいる人たちの命を左右できた」

キモオタ「それって神にも等しいじゃないか! あははっ、僕は神になったんだ!」

ゾンビ「……うあー」

キモオタ「ひっ!」

ゾンビ「あうあー」

ゾンビ「うあー」

キモオタ「く、来るなよっ! 来るんじゃないっ!」

ゾンビ「うあー」

キモオタ「う、うわあああああ!」スタコラサッサ

ゾンビ「あうー」

ゾンビ「うーあー」

237: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 23:28:58.43 ID:rFScgHaX0
男「くそっ、金属バットだけじゃ心許ない! 何か武器は……」

女「隊長! チェーンソーがありました!」

男「マジで?」

女「マジです!」

男「とりあえず、女さんはそれで第一種戦闘配備につけ!」

女「了解!」

男「確かここには……射撃場があったはず! 俺はそこに行く!」

女「待って! 私も行く!」

男「けど……」

女「……男さんと一緒にいたい」

男「……わかった」

243: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 23:33:55.13 ID:rFScgHaX0
【射撃場】

男「婦警さんの形見……。弾薬は四つだけだから、これに合う奴を探さなきゃ」

女「でも、わかるの? 種類……」

男「わからん!」

女「だめじゃない……」

キモオタ「ひっ、ひっ、ひぃ……っ」

男「あ、さっきの人!」

キモオタ「え、お、お前ら…………!」

女「あのっ、あなた、銃について詳しくないですか!?」

キモオタ「じゅ、銃……? 人並み以上には……」

男「じゃあこれ、これは、なんていう銃かわかりますか」

キモオタ「……にゅ、ニューナンブ式38口径……」

男「ありがとう! 女さん、探すよ!」

女「うんっ」

253: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 23:39:25.59 ID:rFScgHaX0
女「あったよ!」

男「よし、それを出来るだけポケットに……!」

キモオタ「き、君たち……」

男「何?」

キモオタ「ま、まさか奴らと戦う気か……?」

女「うん。……生き残るためには、戦うしかないでしょ?」

男「そういうことさ。……よし、弾薬補充はすんだ」

キモオタ「あ、ま、待って……」

女「……?」

キモオタ「もし行くなら、この防弾チョッキを着けていった方が……」

男「それもそうだな、ありがとう! 俺は男、君は?」

キモオタ「き、キモオタ……」

女「ありがとう、キモオタさん。私は女です。生きてたら、また会いましょうね」

キモオタ「あ、いっちゃった……」

255: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 23:42:38.89 ID:rFScgHaX0
キモオタ「ぼ、僕は……あいつらを殺したかった……」

キモオタ「けど、あいつらは……」

キモオタ「僕に笑ってくれた……。僕は、最低なことをしてしまったんだ……」

キモオタ「これで良いのか……?」

キモオタ「僕は、最低なことをやるだけやって、そのまま震えているだけなのか……?」

キモオタ「違う、違うはずだ……」

キモオタ「僕だって、死ぬ前に出来ることの一つや二つがある……!」

キモオタ「幸いここには……銃がある……」

キモオタ「……僕は……やる……! 死ぬまで戦わなくちゃ……僕は一生、ダメな男のままだ!」

265: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 23:47:16.42 ID:rFScgHaX0
女「さぁ~、地獄のショウタイムの始まりよ~!」グィン、ガガガガガガガガ

ゾンビ「あうー」
ゾンビ「うあー」
ゾンビ「あうあうー」

女「天翔龍閃!」ズバババババババババ

男「なんて破壊力だ……。俺も負けてらんねえ! くく……選取り見取り!」バンバンバンッ

271: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/22(土) 23:51:02.04 ID:rFScgHaX0
女「あぁん、もぅ! 血で切れ味が悪い……!」

男「無理しないで捨てろ!」

女「りょーかいっ! でも他に武器あったかなぁ」

男「そこに、鉄パイプが落ちてる!」

女「これで頭だけフルスイングしろってこと?」

男「イグザクトリィ」

女「危なくなったら助けてよっ」

男「ああっ! ……って君はゾンビだろうに」

女「今は……君と一緒に生き残ることだけを考えてる人間だよっ!」

男「そうかい! じゃあ、しっかりと護衛させて貰うぜ!」

277: ◆XtpqcHhpns 2009/08/22(土) 23:57:22.06 ID:rFScgHaX0
女「当たってっ!」ズガンッ

ゾンビ「う、あー」ブチャッ

男「頭だけを狙って……撃つ!」バンッ

ゾンビ「あー……」ビチャッ

男「上手いこと倒せてはいるけど……っ、埒があかない!」

女「なにか、一気に倒せる方法があればいいけどね……!」

ゾンビ「うあー」

ゾンビ「あうあー」

男「くそっ!」バンバンバンッ

女「えーいっ!」ドガッ


『二人とも! 伏せてッ!』

男&女「!」

293: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 00:04:24.66 ID:YWGGGf320
キモオタ「お前ら纏めて、光になれえええええええええ!」ババババババババ

女「き、キモオタさん!」

男「助けに来てくれたのか!」

キモオタ「……僕は最低な野郎だ! だから、贖罪のためにここに来た!」

男「……キモオタ君……」

キモオタ「別に君たちを助けに来た訳じゃない! ここにゾンビがたくさんいそうだったからだ!」

女「それでも……嬉しいよ!」

キモオタ「……。……ここに来たゾンビは、僕が責任を持ってみんな屠る! カラシニコフがあってよかったよ!」

304: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 00:09:59.48 ID:YWGGGf320
キモオタ「うわあああああああああああ!」

男「だ、大丈夫なのか?」

女「大丈夫じゃないかな……。一応頭に当たってるし」

男「……俺たちに飛んでこないよな」

女「だ、大丈夫じゃないかな」

男「……心配だ」

女「大丈夫だよ! ……多分」

キモオタ「うっひょー! これが人を撃つって事か! なんて……カ・イ・カ・ン……!」

男「……うぜぇー」

313: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 00:15:33.69 ID:YWGGGf320
【数分後・モール広場】

男「何はともあれ、助かったよ……キモオタ君」

女「ありがとう、助かったわ」

キモオタ「だから、別に君たちを助けに来た訳じゃないんだ。僕が来たところに、たまたま君たちがいただけのことだ」

男「まあ、君がそういうのならそうなんだろうけどね。でも、おかげで助かったのは事実だ」

女「一緒に戦ってくれるの?」

キモオタ「……君たちが、どうしても、というんだったら一緒に戦ってもいいけど……」チラッ

男「頼む。……仲間は多い方が良いからね」

女「私からもお願い。……どう?」

キモオタ「そういうことなら仕方がないな、はは。僕に任せておきなよ」

男「ああ、よろしく」

326: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 00:21:58.04 ID:YWGGGf320
男「……それで、君のいってた贖罪って……?」

キモオタ「いきなりそれかい……」

男「あ、嫌なら良いよ。話せる時に話してくれれば」

キモオタ「じゃあ、そうしてもらえるかな……」

女「……」

男「さてと、何はともあれ生存者救出だな」

キモオタ「え?」

男「え?」

キモオタ「生存者救出? なにそれこわい」

男「いや、普通やるだろう」

キモオタ「ここから生きて出るのが先決だろう!」

男「昔の俺だったらそう考えただろうけどね」

女「男さん……」

男「今の俺には、とある人の想いが流れてる。……生きているかもしれない人を、見捨てるわけにはいかないよ」

332: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 00:26:24.07 ID:YWGGGf320
キモオタ「まあ……僕自身のことを考えると、文句も何も言えない奴だから……君に付き合うよ」

男「ありがとう。……さて、女さん、どこら辺に生存者がいるかな」

女「たぶん……食べ物がたくさんある食料品店当たりは全滅だと思う。……無機質なものばかりの区画なら……」

男「じゃあ、家具量販店当たりをメインにしようか」

女「それが良いと思うよ」

キモオタ「あの、質問……」

男「何?」

キモオタ「君たちは……恋人同士なのかい?」

女「え……」

男「あ……」

335: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 00:32:01.13 ID:YWGGGf320
女「えっと、その、なんていうのかな……」

男「恋人だ」

女「ええっ!?」

男「だから、変な気はおこさないでくれよ」

キモオタ「ちぇっ、それは残念……。●●には辛いよ、君たちの甘いムード」

男「俺も●●だ」

キモオタ「ええっ!? 恋人って、出来たらすぐに●るもんじゃないの!?」

男「そいつは間違いだ。なかなかガードが堅いんだよ、女さんは」

キモオタ「そ、そうなのか……。  ゲってやっぱり違うんだな……」

男「俺も彼女と付き合ってそれを知ったよ」


女(え、私が……男さんの恋人……? で、でも……そんなの、え、嬉しいけど、でも……)

347: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 00:44:32.86 ID:YWGGGf320
男「つーか……」

キモオタ「?」

男「女さんに手を出したら即座に眉間ぶち抜くからそのつもりで」チャキッ

キモオタ「い、いえす、さー」

女「お、男さん」

男「ま、冗談だけどね。結構彼女シャイだから、あまりからからかわないであげてよ」

キモオタ「……」コクッコクッ

男「さ、家具量販店に行こう」



キモオタ「さ、三次元こわいよ……」

349: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 00:48:16.18 ID:YWGGGf320
男「……おー、なるほど……簡易バリケード……」

キモオタ「な、中に入れないのか?」

男「無理っぽいなあ……。おーい、すいませーん」

モブ「悪いな兄ちゃん、今開けたら奴らが入って来ちまう! 他を当たってくれ!」

女「ふかふかのベッドは、望むべくもありませんか……」

男「参ったねぇ、どうも。ま、生きてる人がいるってだけめっけもんかな」

キモオタ「こ、この後はどうするんだ?」

男「無機質だらけの電機量販店だな」

キモオタ「あ。この前出た新型機のゲーム、プレイしていい?」

男「あ、俺もやる!」

352: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 00:54:28.32 ID:YWGGGf320
【電機量販店】

男「ここにもバリケード」

キモオタ「くそっ」

女「……男さん、ここの人たち、このままじゃ死んじゃうよ」

男「どうして?」

女「食料を得る区画が全滅しているこの状況で、外界からの接触を断ってるんだよ。外には出ないつもりだろうから、飢えちゃうよ」

男「……。何とかして外に出せないかな」

女「無理だろうね……。飢えに耐えきれず、外に出てもゾンビたちが待ち構えているだけ……。何にせよ、閉じこもってしまった人々は……」

キモオタ「死ぬ、のか……?」

女「うん……。悲しいけど、これが彼らの選択だから」

キモオタ(死ななくてよかったはずの人まで巻き込んで……僕は……!)

男「キモオタ君?」

395: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 06:35:29.73 ID:YWGGGf320
キモオタ「……もう、隠していても仕方ない……。僕のしてしまったことを、話すよ」

男「……」

女「……」

キモオタ「僕が……、このモールにゾンビを引き入れたのは、僕だ」

キモオタ「ゲーセンで……みんなに馬鹿にされたのが悔しくて悔しくて」

キモオタ「昔からそうだった。僕はとろいし頭も悪いから……、馬鹿にされてばかりだ」

キモオタ「でもあの時だけは違った……。僕はヒーローだったんだ」

キモオタ「けど……君たちが来て……」

キモオタ「みんなの関心が君たちに移って、結局ゲーセンにもいられなくなって。……死のうと思った」

キモオタ「どうせ僕に生きている意味なんてない。……それで、バリケードを壊して……!」

398: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 06:45:29.01 ID:YWGGGf320
キモオタ「僕の贖罪は……こう言うことだ」

男「……そっか」

女「……」

キモオタ「責めないのかい? 怒らないのか? 殴らないのか……?」

男「薄々……気がついてたしね」

女「隠し事が下手だよ、キモオタさん」

キモオタ「……、じゃあ、君たちは、そんな僕だとわかっていながら一緒に行動してくれてたのか……?」

男「……たとえ何かまずいことをしでかしても、生きている限り挽回するチャンスはあるんだ」

キモオタ「……」

男「だから君は死んじゃいけないし、死なせはしない。……生きて、その罪を背負うんだ」

キモオタ「う、うん……」

女「良い子だね……。君の気持ちもわかるよ……。全てを壊したくなったんでしょ?」

キモオタ「うん……」

女「……今は少し……お休み?」ナデナデ

399: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 06:49:25.31 ID:YWGGGf320
男「……女さん、保母さんみたいな役が似合いそうだね」

女「なんで?」

男「キモオタ君を寝かしつけてた時の顔……優しかったから」

女「保母さんじゃなくて……、お母さんが良いなあ」

男「お母さん……?」

女「うん。……お父さんは当然男さんで……、子供はふたりっ」

男「ダメだな。……女の子の双子に、その下に男の子で決まりだ」

女「よこしまな考え持ってるの?」

男「持ってないよ! 双子って、なんか可愛いじゃん」

女「わかるけどさ……」

男「……」

女「……」

400: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 06:52:46.86 ID:YWGGGf320
女「……黙ってないで、何か喋ろうよ」

男「と、言ってもだね……。なかなかどうして言葉が見つからないんだ」

女「ふ~ん、じゃあ、態度で示して?」ササッ

男「うわっ、み、密着しすぎじゃないか……?」

女「……一緒のベッドで寝た仲でしょ」

男「それにしたって……!」

女「……男さん……たくましくなったね」

男「何が……」

女「最初は●●喪失ばっか叫んでたのに……。今はこんなに、頼もしい」

男「……そういう女さんだって、俺を食べる気持ちはもうなくなったんじゃないの?」

女「……うん。食欲以外の感情が湧いてくるなんて……不思議」

男「…………」

402: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 06:57:54.60 ID:YWGGGf320
男「……しかし、キモオタ君をベンチで寝かせてるのは良いのかな」

女「大丈夫だよ。……逃げたいオーラが出てるよ、男さん」

男「ははは何を言っているんだ……」

女「…………ねぇねぇ、ここから生きて出るでしょ?」

男「何を今更……。当然だよ」

女「じゃあ……、ぜったい成功するおまじないかけてあげようか」

男「絶対に成功する?」

女「……キス、っていうんだけど……。……どうする?」

男「う……それは……」

キモオタ(……ああああああもう! ●●にこんなシーン見せないでくれよおおおおおお!)

403: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 07:03:27.22 ID:YWGGGf320
女「……ん……」

男(えっと……マジですか……? いやいやそりゃ嬉しいけどね? でも、色々重要な課程をすっ飛ばして……るわけじゃないのか)

女「……男さん……?」

男「…………今更キャンセルは無しだぜ」

女「するわけないじゃない……」

男「…………」

女「……ぁ……」

キモオタ「ふおおぉぉぉぉぉぉぉ!」

女「っ!?」

男「き、キモオタ君?」

キモオタ「●●にそんな甘いシーンを見せないでくれよ! 死にたくなるじゃないか!」

女「……うー。キス失敗……」ジロッ

キモオタ「あ、なんかすいません……」

407: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 07:10:48.63 ID:YWGGGf320
【モール三階】

女「不完全燃焼……」

男「あ、あはは……ま、まあ良いじゃない……」

女「うー……」

男(食欲がなんか違うベクトルの欲求に入れ替わってるのか?)

キモオタ「それで、どうするの?」

男「家具量販店、電機量販店は話を聞いてくれすらしない……。後は虱潰しに、生存者を捜すしかないな」

キモオタ「でも……生きてる人なんているのかな……。この地獄で、生き残れる人なんて……」

女「希望を持っている人は、きっといるよ。……その人たちだけでも、でしょ?」

男「……ああ」

キモオタ「……わかった。僕も精一杯やるよ」

408: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 07:15:11.36 ID:YWGGGf320
ゾンビ「うあー」

ゾンビ「あおうあー」

ゾンビ「うーあー」

軽い男「う、うわっ! 逃げるぞ!」

軽い女「ま、待ってよタカシ! 足がもつれて!」

タカシ「こんな時に何してんだよクソアマッ!」

クソアマ「クソアマって何よ!? 彼氏なら助けてよ……!」


キモオタ「……。いたよ、生存者」

男「よし、助けるぞ!」

キモオタ「……助けたくないなぁ、あの二人……」

男「……気持ちはわかる。けど、俺はあの人のためにも彼らを救う! 女さん、キモオタ君!」

女「準備は良いよっ!」

キモオタ「任せてよ!」

412: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 07:19:46.02 ID:YWGGGf320
男「散れ散れ!」バンバンバンッ

女「鉄パイプアタック!」ガァンッ

キモオタ「逃げないやつはよく訓練されたゾンビどもだ、ほんとショッピングモールは地獄だぜ!」バババババババ

タカシ「な、何だ……? 助かったのか……?」

クソアマ「で、でも何かしらあれ……。鉄砲?」

タカシ「さあな……」

男「そこの人たち、二階は安全ですから、逃げておいて!」バンバンッ

タカシ「あ、ああ……」

女「死にたいの? 死にたくないなら早く」ズガッ、ガンッ、ドゴッ

キモオタ「いやっほぅ~!」バババババババ

414: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 07:23:19.37 ID:YWGGGf320
【モール二階】

男「何はともあれ、無事なようでよかった」

タカシ「あ、あいつらは……お前らが……?」

女「ええ。頭を壊せば、ゾンビは活動を停止しますから。慣れれば楽です」

キモオタ「ほんと戦場は地獄だぜぇ」

男「あの、向こうから逃げてきたみたいですけど……、他に生きている人たちはいませんか?」

タカシ「な、なんでだよ……?」

男「もしいるのであれば、助けたいんです」

タカシ「ば、馬鹿じゃねえのか……? お前らが逆に死ぬぞ!?」

男「まあ、いつかはそうなるでしょうけど……」

女「何言ってんの。男さんは死なないよ」

男「ありがと、女さん」

416: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 07:27:24.72 ID:YWGGGf320
タカシ「お、俺は、マユミと逃げるので精一杯だったから……わからねぇ」

マユミ「多分、生きてる人はいなかったんじゃない? きっとそうよ」

男「……そうですか。女さん、どうだろう」

女「リスクは、高いよ。……向こうは食品店区画だから……、ここよりもさらにたくさんいるはず……」

男「……弾薬も持たないか……。くそっ」

タカシ「……な、なあなあ……」

男「へ?」

タカシ「それ本物の銃だろ……? ちょっと貸してくれよ」

男「……嫌です。これはとある人から託された大事なものだ。人に少しでも渡すわけにはいかない」

タカシ「……ちっ」

キモオタ(……もし、男君と女さんに害を為すようであれば……僕はこいつらを殺そう)

417: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 07:31:49.62 ID:YWGGGf320
男「……とにかく、まだ生きている人がいるかもしれないから……、ここを中心に探そう」

女「うん、わかった」

キモオタ「了解」

タカシ「は、え? お前ら、まだあそこに行くのかよ」

男「生きている人がいるかもしれませんから」

マユミ「馬鹿じゃないの? 普通は自分の命だけで十分でしょ!?」

キモオタ(男君に助けられたお前らが言うか……!)

男「……それでも俺は行きます」

タカシ「ちょ、ちょっと待てよ、手伝えなんていわれても手伝わねぇぞ」

女「別に良いですけど。……一カ所にとどまっているのは割と危険ですよ。あなたたち、武器もないみたいですし」

タカシ「……くそったれが!」

キモオタ(…………それはお前だろう)

419: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 07:36:15.71 ID:YWGGGf320
男「……みんなで固まって動いた方が良いな」

女「うん。ここでグループ分けしても、返って危ないだけだよ」

キモオタ「……ねぇ、二人とも。……あいつら、大丈夫かな」

男「…………あまり、人は疑いたくないけど」

女「十中八九私たちの邪魔になるよ」

男「ズバッと言うね……」

女「見てたらわかるよ。……まあ、その時はその時だよ、ね?」

キモオタ「う、うん……」

タカシ「お、この時計いいじゃん」

マユミ「えー? こっちのバッグはどう?」

タカシ「いーんじゃね? いやぁ、ゾンビどもが来てくれて品物取り放題、いいねぇ」

男「……」

女「ブランド街に、ゾンビたちはいないね。……生存者も……」

男「次を当たろう」

423: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 07:44:46.75 ID:YWGGGf320
男「……本屋か……。でかいな」

女「それに本棚が死角になって……もしかしたらゾンビたちが潜んでるかも」

キモオタ「注意して進まないと……」

タカシ「おい、これってコミック読み放題じゃね!」

マユミ「そうかもそうかも!」

タカシ「早く行こうぜ!」

男「あ、おい……! そっちにゾンビがいるかもしれない!」

タカシ「いるわけねぇだろバーカ!」

ゾンビ「うあー」

タカシ「ひっ……!」

女「言わんこっちゃない」

男「くそっ、助けるぞ!」

キモオタ(どさまぎにあいつらも撃てないかな……。いや、ダメだ。それじゃあ僕が生きてる意味がなくなる)

424: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 07:47:37.53 ID:YWGGGf320
男「くそったれが!」バンバンババンッ

ゾンビ「うあー」バシッ

キモオタ「広辞苑で防御した!?」

女「……知能が上がっている……?」

男「くそっ! 頭を隠してやがる……!」

ぞんび「うおあー」バシッ バシッ

キモオタ「投げつけてきた!」

女「効かないよ、そんなのっ!」

男「うお、痛い! いてっいていてっ!」

女「……男さん」

426: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/23(日) 07:51:37.66 ID:YWGGGf320
タカシ「は、早く殺せよ!」

男「出来たらやってる!」

タカシ「え、偉そうに俺たちを連れてきたわりに、てんでダメじゃねえか!」

キモオタ「!」

タカシ「ガキのくせに偉そうにしてくれてよ……!」

男「こんな時に何言ってんだ!」

タカシ「るせぇ!」バキッ!

マユミ「タカシかっこいいー!」

男「ぶっ!」バタッ

女「男さんっ!」

タカシ「へ、へへ……マウント取られたらどうしようもないだろ……?」

男「……ゾンビがいるのに、こんなことしてどうするんだ」

タカシ「うっせぇ! お前らだけ食われて俺たちは逃げるんだよ馬鹿が!」

428: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/23(日) 07:56:35.91 ID:YWGGGf320
キモオタ「……! ゾンビの意識が二人に流れた。今がチャンス!」バババババババ

ゾンビ「う、うあー……」ドテッ

男「ナイスだキモオタ君……」

タカシ「あん? てめえが気にするのはこっちの方だろうよ!」バキッ

男「ぐっ……!」

女「男さん……!」

キモオタ「なぁ。いい加減にしろよ、あんた……」

タカシ「んだと!? デブ眼鏡、てめえも同じ目に……」

キモオタ「今すぐ彼の上から退け。……さもなくばお前を殺す」チャキンッ

タカシ「は、はっ……出来るのかよ、お前に……」

キモオタ「…………」ババンッ

タカシ「ひ、ひいっ!」

キモオタ「威嚇射撃だよ。……僕は本気だ。早く退け」

タカシ「く、糞野郎が……!」

436: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/23(日) 08:07:31.21 ID:YWGGGf320
男「……助かったよ、キモオタ君」

キモオタ「……無事で何よりだね」

女「男さん!」ダキッ

男「うおっ!」

女「ごめんね、助けに行けなくて……」

男「い、いや、良いよ……、キモオタ君が助けてくれたし……。あの時は本気で撃とうと思ったし」

キモオタ「……汚れ役は僕が全部引き受けるからさ」

男「キモオタ君」

キモオタ「こんなんで贖罪になるとは思ってない。僕の自己満足だけど……それでも、良いさ」

女「……辛いでしょ……?」

キモオタ「でも、今は……君たちがいるじゃないか。……僕たちって、仲間だろう?」

男「当然! 何を今更!」

女「たとえキモオタさんが過去に何をしたとしても……、今のあなたは立派だと思う。自分の罪をしっかり背負おうとしてるもの」

キモオタ「……ありがとう、二人とも」

440: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/23(日) 08:13:24.07 ID:YWGGGf320
男「……しかしまあ、これで彼らとの対立は避けられなくなったな」

女「仕方ないよ……。どうせこうなるってわかってたし」

キモオタ「……夜だ……。そろそろ休むかい?」

女「……それが良いね」

男「わかった。……そこの二人」

タカシ「んだよ」

男「もう夜になったから、探索は打ち切って休もう」

マユミ「休む場所なんてあんのー?」

男「……探せばあるよ、多分」

タカシ「随分と適当だな、俺たちを助けてくれたヒーロー様はよ」

男「……」

女「……まだ懲りてないの?」

タカシ「おー、怖い怖い……。そしてウゼェな……!」

キモオタ「捨て台詞だけ残して言っちゃったよ。負け犬ってああ言うことかな」

444: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/23(日) 08:20:18.08 ID:YWGGGf320
男「いやあ、キャンプ用品店があってよかったよかった。寝袋ゲット」

キモオタ「屋上で寝る?」

男「そうしようか。……ゾンビ来たら終わりだけど」

女「こないよ。階段上るだけの脚力ないから。……たぶん」

キモオタ「でも、知性が上がってたゾンビもいたし……」

男「エレベーターで上がってくるかもな」

キモオタ「随分とシュールな光景だね」

男「全くだ」

女「あ……」

男「どうした?」

女「ちょっと、席外すね」

男「え、何で?」

女「……●●●」

男「はい?」

キモオタ「……トイレだよ。君って案外図太いんだね」

446: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/23(日) 08:29:20.44 ID:YWGGGf320
タカシ「……畜生……あんなガキに舐められてばかりで終われるかよ……!」

マユミ「確かに、むかつくけど……。あいつらのおかげであたしたち助かったわけだしー」

タカシ「うるせぇ! こんなんで良いのか!? 良いわけないだろ……!」

マユミ「知らないよー。変なことするんだったら勝手にしてね」

タカシ「お前それでも俺の彼女か!?」

マユミ「……なーんか、この一見でタカシの人間の小ささがわかったって言うか……幻滅?」

タカシ「な……なんだとこのクソアマ……」

マユミ「ほら、そうやってすぐ威圧的になるじゃん。なんか、小物臭いよ」

タカシ「……あいつらをギャフンと言わせた後、お前もヒイヒイ啼かせてやる……!」

マユミ「ギャフンだって、ギャフン! 古っ、古すぎ! タカシ頭おかしいんじゃない!?」

タカシ「……くそったれが!」

マユミ「あれ、どこ行くの?」

タカシ「トイレだよくそが!」

449: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/23(日) 08:33:00.77 ID:YWGGGf320
【トイレ前】

女「あ」

タカシ「あ」

女「こんばんは」

タカシ「……へっへ……良いところであったなクソガキ」

女「……なにか」

タカシ「……いやな、ムシャクシャしてんだよ……。てめえらのせいでな」

女「……だから、なんですか?」

タカシ「あの男が泣いて喚くような、そんなことがしたいんだよ……」

女「……」

タカシ「てめえをグチャグチャに●してやれば……奴も泣いて俺に跪くかもなぁ、くく、くははははっ」

女「……強 ですか」

タカシ「……まあ、お前を人質に奴の拳銃を奪うのも良いな……。くく、夢が広がるぜ」

女(……ダメだこいつ)

タカシ「まあいいよ、ちょっとこっちに来い!」

452: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/23(日) 08:36:13.32 ID:YWGGGf320
女「そういわれて、ほんとに行くと思ってるんですか……」

タカシ「まあ、こねえだろうよ。だが、追いつけば問題はねえ!」ダッ

女「……!」タタタタタッ

タカシ「ひゃははは! 待てよ待てよ待てよ!」

女(屋上まで、十五メートル……! 階段を上ると……ぎりぎりってところ……)

タカシ「おらおらおらおら!」

女(……こんな人でも、男さんは助けたいって言ってた……。食べるわけにはいかない……! でも、どうすれば?)

タカシ「へへへ、あと少しだぜぇ!」

女(階段……! 最後まで、頑張って……私の体!)

タカシ「そっちには愛しの彼か!? だが、そうは問屋が卸さないぜぇ! ひゃはははぁっ!」

女(間に合え、間に合え、間に合えぇぇぇ!)


460: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/23(日) 08:41:39.48 ID:YWGGGf320
【屋上】

女「男さんっ!」

タカシ「捕まえたぜっ!」ガシッ

男「お帰り女さ――お前は……!」

タカシ「ひゃっはー、捕まえたぜ……ひゃひゃひゃ……!」

キモオタ「……まだ懲りてないのか、あんた」チャキッ

タカシ「へっ、へへへっ……! この女を人質に取ったら、お前ら何にも出来ないだろう……? あぁん?」

男「くっ……。性根まで腐ってやがったか……!」

タカシ「へ、へへへ……この女、よく見るとマユミより可愛いじゃねえか、なぁ……?」ペロッ

女「い、いやぁ……! 気持ち悪い……!」

男「お前ぇぇぇ! 女さんに何して……!」

タカシ「これからお前らの前で公開xxxだよ……けへへ」

男「やめろ! やめてくれ!」

タカシ「……人にものを頼む時は……土下座だろ、クソガキ?」

男「土下座でも何でもしてやる……! だから……!」

462: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/23(日) 08:45:01.25 ID:YWGGGf320
男「頼む……女さんには手を出さないでくれ……!」

タカシ「ひゃひゃひゃ、ほんとに土下座しやがったぜコイツゥ! こっち来いよ、お前よぉ」

男「……」

キモオタ「男君!」

男「いいんだ。あれで彼が満足して、女さんが解放されるならそれで……」

タカシ「……へっへっへ、来たか……。じゃあ跪けよ、俺様の前に」

男「……」

タカシ「ひょー、良い眺めだぜ。ヒーロー様が俺にかしずいてやがる!」

男「くっ……」

タカシ「……なぁ、お前……、俺の靴舐めてくれよ」

男「……!」

タカシ「さもなくば……」ムニュ

女「やぁっ……!」

男「クソ、外道が……!」

タカシ「勝てば官軍って言うだろぉ?」

465: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/23(日) 08:49:08.37 ID:YWGGGf320
タカシ「ちなみに、銃は捨てろよ。そこのデブ眼鏡もだ」

キモオタ「ちっ……」ガシャン

男(婦警さん……すいません、あなたの形見、いったん……)

タカシ「てめえの銃は俺が頂くがな」

男「な……」

タカシ「へへへ……変な動きを見せれば、この女の頭が吹っ飛ぶぜぇ?」チャキ

女「男さん……私に……構わず、コイツを……」

タカシ「黙れクソアマッ!」

男「やめろ! お前が望むなら、靴だろうと何だろうと舐めてやる!」

タカシ「ほれ」

男「……くっ……!」

タカシ「本気で舐める気かよこいつ! ひゃはは、傑作だぜ!」

男(……女さんのためだ。ここで彼女がゾンビだと知れたらそれこそ……!)ペロッ……

男「う、うぅ……」

467: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/23(日) 08:53:31.09 ID:YWGGGf320
タカシ「あー、なんかキメェ。蹴り入れてやんよ!」ドガッ!

男「もがっ!」

女「男さん!」

キモオタ「男君!」

男「ぐ……が、……はぁ、ぐっ……!」

タカシ「ひゃはは、傑作傑作! あのヒーロー様が地面に這いつくばってるたぁな!」

男「…………クソ、野郎……」

タカシ「へっ! ここで今すぐ、お前の頭をぶち抜いても面白いな? デブ眼鏡はすぐ殺せるし、後はこの女とじっくり楽しめる」

男「……」

キモオタ(くそっ! あいつ……! 今すぐカラシニコフで……!)

タカシ「おっとデブ眼鏡。その銃、こっちに投げておけよ」

キモオタ「……!」

タカシ「さっきから挙動不審なんだよなあ? お前の狙いはわかりやすいぜ、ひゃはは!」

キモオタ(くそっ……! もう、武器もない。男君と女さんを……救える方法は……!)

470: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/23(日) 08:56:56.85 ID:YWGGGf320
キモオタ(奴に突っ込めば、まず間違いなく撃たれる)

キモオタ(怖いだろうし、痛いだろうな……)

キモオタ(でも、何もしていない僕より女さんの方が怖いはずだし……、男君の方が痛かったはずだ)

キモオタ(……。彼らは僕を仲間だと言ってくれた)

キモオタ(こんな僕でも、仲間になれた。仲間にしてくれた。短い間だったけど、凄く楽しかった)

キモオタ(僕は、そんな時間を守りたい)

キモオタ(男君と女さんが一緒に笑っていられるような時間を……!)

キモオタ(なら、僕に出来ることは何だ! 一つしかない……、そうさ……)

キモオタ(……奴へ突撃する……。死ぬかも知れないけど……、彼らの笑顔を守れるなら、僕の仲間を助けられるなら悔いなんてあるものか!)

478: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 09:04:06.57 ID:YWGGGf320
タカシ「それじゃあ、さようならだぜ……ヒーロー様よぉ!」

キモオタ「させるかクソ外道があああああああああああああああ!」

タカシ「な、なにっ!? デブのくせに早い……!」

キモオタ「デブはなッ! 短距離は得意なんだよッ! 必殺・キモオタックル!」ドガッ!

タカシ「ぐおおっ!?」ドタンッ

男「キモオタ君……!」

タカシ「ちっ、話せ糞野郎がッ!」

キモオタ「糞はお前だ! お前を見てる腹が立つんだよ! 昔の僕を見てるみたいで!」

タカシ「てめえと一緒にすんじゃねえよ!」 

キモオタ「いいや、一緒だ! お前も僕も……社会のゴミ屑だよ!」

タカシ「んだとてめええええええええ!」

キモオタ(来るか……!)

タカシ「死ね、死ね、死ねえええええええ!」バンッ、バンッバンッ!

キモオタ「ぐ……っ!」

483: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 09:09:32.21 ID:YWGGGf320
キモオタ「……」

タカシ「ひゃ、ひゃはははあっ! 死んだか、死んだのか……? けけけっ!」

男「てめえ、てめええええええええ!」

タカシ「う、うわっ!」

男「よくも、よくも、よくも……俺の仲間を! 死んで償え! 殺してやる、殺してやるぞ糞野郎が!」

タカシ「や、やめろっ! 撃つぞ!」

男「うるせぇ!」バキッ

タカシ「ぐおっ……!」

男「婦警さんの形見でお前を殺すのは忍びない……。殴り殺してやる!」

女「男さん……!」

男「なんで、どうして……こんな事をしやがるんだ! ちっぽけなプライドより、命の方が大事だって、何でわからないんだよ!」

タカシ「ぐ、あ、ぐぅ……!」

男「お前は……! お前はああああああ!」

485: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 09:12:41.70 ID:YWGGGf320
キモオタ『待つんだ男君!』

男「……キモオタ君……?」

キモオタ『今ここで激情のままコイツを殴ったら、君はこの屑と同じになってしまう』

男「……だが、コイツは君を」

キモオタ『撃った、撃ったね……』

男「なら、コイツも同じ目に……!」



キモオタ「……でも、誰が死んだなんて言ったんだい?」

男「キモオタ君……!」

女「キモオタさん、無事で……!」

キモオタ「防弾チョッキを着ておいたのは大正解だったな」

男「生きてたのか……! キモオタ君!」

キモオタ「……ああ。そう簡単には死ねないよ。君たちには笑っていて貰いたいからね」

490: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 09:16:31.38 ID:YWGGGf320
タカシ「…………」

男「……コイツには悪いことしたかな」

キモオタ「いいんじゃない? それ相応の罰を与えて然るべきだよ」

女「……」

男「女さん、ごめんね、助けられなくて」

女「ううん、いいの……。男さんこそ、大丈夫?」

男「ああ、ここ数日間でかなりタフになったよ」

女「……よかった」

キモオタ「とりあえずコイツを、あのビ  の元に送り届けようか」

男「そうだな」

497: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 09:26:13.29 ID:YWGGGf320
【モール・出口】

男「……結局、量販店の人たちは出てこなかったね」

女「……うん、でも、それが彼らの選んだ答えだから」

キモオタ「……」

男「どうしたんだ、キモオタ君。早く行こう」

キモオタ「いや、僕は一緒には行けないよ」

男「え?」

キモオタ「ここにいた人たちを死なせてしまったのは僕の責任だ」

キモオタ「僕はその罪を償わなくちゃいけない。ゾンビになった彼らを殺すことが償いだとは思わない、けど」

キモオタ「それでも僕にはこれしかできない。……それに、僕たちがいなくなったら、量販店の人たちが死んじゃうよ」

女「それはそうかもしれないけど……」

キモオタ「僕の軽率な行動が、彼らをああさせたんだ。僕にはその責任がある。……大丈夫、簡単には死なないよ」

男「キモオタ君……」

キモオタ「君たちに会えてよかったよ。本当に」

499: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 09:29:42.72 ID:YWGGGf320
キモオタ「僕はモールの守護者になる。いつかまた、暇が出来たら……会いに来てよ」

男「ああ……。必ず、会いに来るよ」

キモオタ「その時は、精一杯もてなすよ。お土産話も聞きたいし、君たちの仲睦まじい姿も……妬けるけど、見たいからね」

女「……うん」

キモオタ「それじゃあ、これでお別れだ。元気で」

男「君こそ、どうか元気で」

女「……死なないでね、キモオタさん」

キモオタ「勿論。……さぁ、早く行ってくれ。僕みたいなキモいデブの泣き顔なんて、見たくないだろ?」

男「……違うな。君は確かにデブかも知れないけど……。確実に、世界で一番格好いいよ」

キモオタ「……男君」

男「女さん、行こう。別れが辛くなる」

502: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 09:32:52.78 ID:YWGGGf320
女「さよーならー!」

キモオタ「さようなら! またいつか必ず会おう!」

男「じゃあな、キモオタ君!」

キモオタ「……うん、さようなら! さようなら……僕の……友達……ぐずっ」

キモオタ「…………」

キモオタ「…………」

キモオタ「…………」


キモオタ「……やろう。彼らに、堂々と胸を張って会えるように。僕は変わる」

キモオタ「……僕はやるよ。必ず――責任は果たす!」


【第二部 ショッピングモール編・完】


512: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 09:49:34.02 ID:YWGGGf320
【第三部 運動公園編】

女「男さん、次はどこに行くの?」

男「弾薬は補充したし、女さんの新しい武器……薙刀も手に入れた」

女「チェーンソーがよかったな……」

男「怖いよ。……というか、俺たちって特に当てのない旅をしてるんだよな」

女「あれ、●●喪失は?」

男「……女さんと一緒にいられるなら、どうでもよくなったよ」

女「…………うれしい」

男「……。さて、本格的にどうする?」

女「……来る日も来る日もゾンビ狩りじゃあ、疲れちゃうから……、人がたくさんで安全そうなところが良いな」

男「と、すると……市民避難場所の運動公園かな」

女「うん、じゃあそこに行こっ」

514: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 09:52:49.29 ID:YWGGGf320
【運動公園入り口】

男「うわ、厳重……。ていうかガードマン?」

女「嫌な予感がするなぁ」

ガード「……お前たち、市民か」

男「ええ、まあ」

ガード「よくもまあ、こんな貧弱な奴らが生き残っていたものだ」

女「……コツさえ掴めば簡単ですよ」

ガード「ふん……。とりあえず、そこの机に、身につけているもの全てを出して貰おうか」

男「え? なんでですか?」

ガード「我々市民は、ゾンビどもと戦っている。そのためには、お前たちから提供される物資も重要な意味を持ってくるのだ」

男「……」

ガード「女、お前は薙刀をおけ。私たちが有効活用してやる」

女「えー。キモオタ君からのプレゼントなのに……」

517: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 09:55:44.26 ID:YWGGGf320
男「……ここは逆らうのは得策じゃないよ」

女「は~い」

男(とは言っても、婦警さんの形見を差し出すのも忍びないよなぁ……)

ガード「ちなみに、ボディチェックもある。ボディチェック時に怪しいものを身につけていた場合、今後の入場を禁ずる」

男「マジかよ……。くそっ」ガタッ

ガード「ほう、拳銃とはな。ガキのくせに大層なものを持っている」

男「汚い手で触るなよ。それは俺の大事な人の形見なんだからな」

ガード「ふん、せいぜい私たちがゾンビ狩りに利用させてもらうさ。入れ」

男(……選択肢を間違ったかな)

女(……男さんの中では、やっぱり婦警さんは大きいんだよね……。でも、負けない)

519: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 10:00:26.69 ID:YWGGGf320
女「うわぁ……、広いんだね」

男「そうだな……。この運動公園は……市のシンボルだし」

女「あ、屋台とか出てるよっ。すごいねっ」

男「久しぶりに……ゆっくり休めそうだな」

女「うんっ! でも、お肉食べたい……」

男「……どっかにあるよ。肉屋。……でも、食べ物とかってどこで仕入れてるんだ?」

女「お肉屋あったー!」

男「うわっ! 走らないでくれよっ!」

女「ついておいでよーっ!」

男「まったく、女さんは無邪気なんだからな」

523: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 10:05:22.39 ID:YWGGGf320
【肉屋ミート】

女「こんにちはっ!」

幼「はい、こんにちは……」

男「すいません、連れがご迷惑を……」

幼「おとこ、くん……」

男「幼か……、久しぶりだな」

幼「うん。元気だった?」

男「……色々経験したよ。お前は、ここで働いてたのか」

幼「うん……。毎日ダラダラ過ごすよりは、体を動かしてた方が良いと思って」

男「違いない」

幼「それで、何にしますか、お客様?」

女「お肉十五人前!」

男「少し控えめにしとけって」

527: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 10:19:18.50 ID:YWGGGf320
女「はむはむ……。美味しいですね、はむはむ……」

男「まさかまたお前に会えるとは思ってなかったよ」

幼「私も……」

男「あの後彼氏と無事に逃げたんだな」

幼「……うん」

男「……? 何かあったのか?」

幼「別れたの」

男「……あ、そうか……。それは……」

幼「ううん、私が切り出したんだ。……元はといえば、私も、彼も、本気の付き合いじゃなかったから」

男「……そっか。でも、まあ、幼ならすぐ恋人の一人や二人出来るだろ」

幼「……励ましてくれるんだ」

男「そりゃな。……長いこと付き合いのある幼馴染みだし」

幼「そう、ありがとね」

530: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 10:22:40.41 ID:YWGGGf320
女「完食! 美味しかったです!」

幼「それはよかった。また食べて下さいね」

女「はいっ! それと……男さん!」

男「ん?」

女「……浮気しちゃ嫌だよ?」

男「ばっ! 幼とはそんな関係じゃないっ!」

女「でもー、鼻の下伸ばしてたし」

男「伸ばしてない!」

女「それなら良いけど……えいっ」ダキッ

男「うおっ、いきなり腕に抱きつくな!」

女「いいじゃん、ね?」

男「やれやれ……。俺は女さんのお守りがあるから、これで。じゃな、幼」

幼「……あ、うん、ばいばい」

532: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 10:27:00.56 ID:YWGGGf320
男「やれやれ……。女さん、何がしたいんだ」

女「ただなんとなくっ」

男「……それで幼と気まずくなったらどうするんだよ」

女「その時はその時!」

男「刹那的な生き方はやめようぜ」

女「もうこの世界では、刹那的な生き方でしか人生楽しめないよ」

男「ゾンビの君が言うかね」

女「まあね。……ねぇ、他に何があるのかな?」

男「さて……。探してみようか」

女「うんっ、デートだデート!」

男「……少し休みたい気も」

女「えー」

男「わかりました、行きます行きます」

534: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 10:36:25.74 ID:YWGGGf320
女「ゲームセンターないのかな」

男「ないだろう……」

女「残念。じゃあ何があるのかな……?」

男「……なぁ、あれ、遊園地っぽくないか?」

女「え、遊園地? ここに遊園地ってあるの?」

男「……確か運動公園は遊園地があったな……。小さいけど、ジェットコースターもある」

女「そうなのっ!? 行こう、今すぐ行こうよ!」

男「待てって……。人が多いし、はぐれたら事だ。だから」ギュッ

女「あ……」

男「これで完璧。行こう」

女「あ、はい……」

男「自分から近づくのは大丈夫なのに、何を照れる必要があるんだ」

女「……男さんから歩み寄ってくれるのが、なんだか嬉しいから……」

男「……そ、そう……」

539: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 10:46:11.38 ID:YWGGGf320
男「……ふ~ん、本格的だな」

女「……」

男「どうしたの?」

女「う、うん……」

男「いつもの女さんらしくなくて、随分としおらしいな?」

女「……緊張、してるかも」

男「人は苦手なのか?」

女「……私の正体がバレるかも知れないって思うと……、怖い」

男「大丈夫だろ。何を今更」

女「……それで、そんなゾンビと一緒に歩いていた君が……どんな扱いを受けるのか……」

男「心配ないよ。たとえ何があっても、俺は女さんと共にあり続ける……つもりだ」

女「……そ、それって……本当……?」

男「前も言ったけど、俺は女性には嘘をつかない……つもり」

女「……し、信じます……。あなたのことを……」

543: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 10:50:47.18 ID:YWGGGf320
男「うじうじ悩んでてもどうしようもない。楽しもうぜ」

女「……はい」

男「じゃあ、お化け屋敷からな」

女「えっ……」

男「え?」

女「メリーゴーランドにしない……?」

男「それは後で。……怖いの?」

女「そ、そんなことないよっ。私ゾンビだし、怖い事なんてないもんっ」

男「じゃ、行こうか」

女「……は、はいぃ……」

男「出た後のメリーゴーラウンドで、女さんのこと抱えて馬に乗ろうかなって思ってるんだけど」

女「へ……」

男「……なんか、今日はいつもよりずっと近くにいたい気分だからね」

女「……楽しみにしてる……。うん、お化け屋敷、頑張る」

男「……怖いんじゃないか」

545: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 10:55:50.12 ID:YWGGGf320
【お化け屋敷】

女「……っ」ガシッ

男「随分と力強いですね」

女「こ、怖くはないよっ。ただ、ちょっと、寒気がねっ」

男「それ怖いんじゃない? ま、俺としては女さんの新たな一面を見れて嬉しいけど」

女「……く、来るなら来い!」

お化け「うおあああああああああああ」

女「きゃああああっ!?」

男「おいおい、ゾンビの方が怖いだろ……」

女「そ、それはそうだけどっ!」

549: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 11:02:01.23 ID:YWGGGf320
男「女さん、お化け行っちゃったよ」

女「……は、はぃ……」

男「どうしたの?」

女「腰、抜けちゃった……」

男「……」

女「いやっ、そんな可哀想な娘を見るような目で私を見ないでっ」

男「いや、可愛いなあって思ったんだよ」

女「へ」

男「こんなお化け屋敷でも怖がるなんて、女さんって可愛いな」

女「嬉しいけど……嬉しくないよっ」

550: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 11:07:19.57 ID:YWGGGf320
女「……おんぶして」

男「元からそのつもりだよ。よいしょ、っと」

女「男さんの背中……大きいね」

男「……そうかな」

女「そうだよ。絶対そう」

男「自分では考えたこともなかったな」

女「安心する」

男「そいつはよかった」

女「……こうしていれば、お化けも怖くないや」

男「そっか。うおっとと」ムニュ

女「ひゃんっ」

男「ご、ごめん、躓いて……」

女「悪気はないと思うけど……。……●●●」

男「それ言う必要ないじゃないか」

女「男さんはわかってないなぁ」

552: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 11:11:00.03 ID:YWGGGf320
女「出口だ……」

男「出口だね」

女「……ありがと、男さん」

男「いやいや……、気にしないで。俺が好きでやってることだ」

女「……うん。でも、ありがとう」

男「どういたしまして」

女「ふふっ」

男「ははっ」

554: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 11:16:40.79 ID:YWGGGf320
男「さ、次はメリーゴーランドだ」

女「あ、膝の上に乗せてくれるんだったよね?」

男「乗りたい?」

女「乗りたいっ」

男「よし、じゃあ二人で乗ろう」

女「楽しみだなぁ……、男さんの膝」

男「堅いよ、多分」

女「男さんの近くにいられるんだもん……それ以上のことはないよ」

男「女さん……」

女「……あ、ダメ。ここでこういうムードは……。だから、その……夜、に」

男「楽しみにしておくよ」

女「……えへへ」

557: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 11:23:06.46 ID:YWGGGf320
【メリーゴーランド・回転中】

男「う~ん、回ってる」

女「ひゃ、んっ、んんっ、あ、んっ……」

男「女さん……?」

女「馬が、上下に動くから……っ! んっ!」

男「……まあ、それはそうだけど、その声はちょっと危ない……」

女「だ、だって、んんっ、男、さんの、膝がぁ……!」

男「ひざ? うお、すいません!」

女「べ、別に……良いけど…………」

男「……しかし、  いな女さん」

女「……でもゾンビだよ」

男「関係ないかなーって、近頃思えてきた」

女「見境ないの、男さん……」

男「女さんだからだよ……っ」

女「え、こんなところで……んんっ」

568: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 11:50:15.93 ID:YWGGGf320
男「満喫満喫」

女「……恥ずかしい」

男「ま、これも滅多に出来る体験じゃないし」

女「そうだけど……」

男「さて、次は……」

女「ジェットコースターは?」

男「良いよ」

女「あ、怖くないんだ」

男「別に……。面白いじゃない」

女「ふーん、残念。男さんが怖がるかと思ったのに」

男「むしろ女さんじゃないの?」

女「コースターに関しては大丈夫だよっ」

574: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 11:59:44.61 ID:YWGGGf320
【コースター・レール上】

女「た、た、高いよ男さんっ」

男「ジェットコースターだし」

女「ここから降りるの? 死んじゃうよ、死んじゃう死んじゃう!」

男「もう死んでるだろ……」

女「そ、それはそうだけど、精神的に死んじゃうよぉ!」

男「……とりあえず、俺の手を握って……、それで落ち着かなかったら、まあその時はその時で」

女「うん……」ギュッ

男「どう?」

女「落ち着いた……かも……ってきゃああああああああ!」

男「うおおおおおおおおっ、気持ちいいぃぃぃ!」

女「死んじゃうよぉ、千切れちゃうぅぅぅ!」

576: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 12:02:56.30 ID:YWGGGf320
女「もう、ダメだよぉ……」

男「女さんは、結構苦手なものが多いんだね」

女「……馬鹿にしてるー」

男「いやいやそんなことはございません」

女「……」

男「そうすねるなよ。気持ち悪いならそこのベンチで休もう? 膝枕してやるよ」

女「ほんと?」

男「うん」

女「わ~い、男君の膝枕~」

男「元気じゃないか……」

580: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 12:09:19.47 ID:YWGGGf320
男「……気持ちいいか?」

女「うん……、男さんの膝、ちょうど良い感じ」

男「そうか……」

女「眠くなっちゃったよ……」

男「俺もだ。でも、デート中に寝るのは頂けないよな」

女「うん……、そうだけど…………すぅ」

男「この娘、寝おった……」

幼「……あれ、男君」

男「……え? あ、幼、か……どうも……」

幼「デート中?」

男「……ごらんの通りで」

582: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 12:13:28.56 ID:YWGGGf320
幼「隣、良い?」

男「ああ……」ナデナデ

女「……すぅ、すぅ……」

幼「可愛い娘だね」

男「……そうだな」

幼「……彼女さん、だよね」

男「……ああ。俺の大事な人だ」

幼「……そう。……なーんか、男君が遠くに行っちゃった感じがするな」

男「……?」

幼「昔は、私が世話してたけど……、今はなんだか、大人になった感じ。自分で考えて、自分で動いてる」

男「……うん。……色々、経験したから」

幼「……そっか。でも、ついに男君にも恋人か……。二人とも本気の恋してるみたい。羨ましいな」

583: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 12:17:30.67 ID:YWGGGf320
男「……でも、幼だってまだまだ……」

幼「ううん、ダメだよ。私は、本気で相手にぶつかれない。……抱いてる気持ちは、嘘偽りだもの」

男「……?」

幼「……当てつけ、っていうのかな。……ほんと、子供みたいだよね」

男「あて、つけ……? 誰に……?」

幼「男君のそういうところ、私は好きだな。ニブチンさんめっ」ピンッ

男「いてっ、デコピンとか、小学生以来だな……」

幼「ふふ……、そうね、昔は……よかったなぁ。あの時は、毎日が輝いてた」

男「いまは?」

幼「ゾンビの襲来とか、いろいろグチャグチャでわからない。私が、何をしたいのか、何をしているのかも」

男「……いつか、答えが出ると良いな」

幼「うん」

584: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 12:24:00.92 ID:YWGGGf320
幼「デートの邪魔したみたいで……ごめんね」

男「いや。幼と話せてよかったよ。知り合いに全然会わないしな」

幼「もしよかったら、今度、お話しできないかな? 良い喫茶店があるの……」

男「構わんよ。昔から世話になってる幼馴染みの願いとあれば、断るわけにも行きますまい」

幼「ふふっ、ありがとう。男君は、変わったけど……、やっぱり昔のままだね」

男「?」

幼「優しいって事。……じゃあねっ」

男「ああ……じゃあな……」



女「……んぅ……」

男「起きたの?」

女「……他の女の人の匂いがします。うー……」

男「あー、素晴らしい嗅覚ですね」

587: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 12:31:15.29 ID:YWGGGf320
男「……」

女「どうしたんですか?」

男「いや……」

男(幼……の言動に、何となく引っかかりを覚えたんだが……気のせいか?)

女「あー、他の女性のこと考えてた!」

男「は!?」

女「……顔に出てるもん」

男「……マジで?」

女「デート中に他の女の人のこと考えるなんて……男さんはマナーがなってないっ」

男「いや、デート中にいきなり寝始める君に言われたくはないかな……」

女「う、言い返せない……」

男「まあ、確かに考えてたのは事実だ。ごめんね」

女「あ、いや、その、真面目に謝られるとこっちが逆に居心地悪いというか……」

男「夜だし、そろそろナイトパレードが始まるらしいよ。女さん、行こう」ギュッ

女「あ……はい……っ」

591: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 12:37:01.76 ID:YWGGGf320
ずんちゃっずんちゃっずんちゃっちゃ♪
ずんちゃらずんちゃらずんちゃらちゃ♪

男「綺麗だな……」

女「ほんと……」

男「…………」

女「…………」

男「……綺麗だね」

女「うん……」

男「…………」

女「…………」

男(会話に詰まる!)

女(な、何を言えばいいのかな……。困るなぁ……)

?「……」チョイチョイ

593: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 12:39:32.55 ID:YWGGGf320
男「はい? 女さ――」

ゾンビ「うあー」

女「ゾンビっ!?」

モブ1「な、何でゾンビが!」
モブ2「に、逃げろ逃げろぉっ!」
モブ3「ままー!」
モブ4「坊や、逃げるのよ!」

男「何でゾンビがいやがるっ!」

女「わ、わからないよ! 男さん、武器は!?」

男「任せろ――って、ないんだった!」

女「えええっ!? どうするの!?」

男「逃げる! 走れ女さん!」

女「りょ、了解っ!」

596: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 12:45:18.92 ID:YWGGGf320
【遊園地・外れ】

男「こ、ここまで来れば大丈夫だろ……」

女「うん……」

ガード1「ゾンビどもを狩るぞ!」
ガード2「ウーッス!」
ガード3「市民から徴収したバールが役に立ちますね!」

男「癪だけど、奴らにゾンビは任せればいい」

女「なんで、ゾンビが現われたのかな……?」

男「……あの中に感染者がいた……とか」

女「でも、ここは外界から閉ざされてるも同然だし……、それに、ゾンビに噛まれた人はガードマンが問答無用で殺すよ」

男「まあな。……となると、誰かが招き入れた……か」

女「なんで……?」

男「さてな……」

603: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 12:47:47.71 ID:YWGGGf320
男「それより気になるのは」

女「うん」

男「あれだけの至近距離でありながら、あのゾンビは俺をすぐに噛もうとはしなかったことだ」

女「え?」

男「奴は俺の肩を叩いて……注意を自分に向けてから襲いかかってきた。何か意味があるのか?」

女「わ、わからないけど、でもその行動って……、確実に、知性を得てるって事だよね」

男「……そうだな。モールでも、広辞苑でガードした奴がいたんだ。……自身の欲を自制できる奴が出来てもおかしくないか」

女「……手強くなるね」

男「仕方ない。……キモオタ君、無事だと良いけどな」

608: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 12:51:45.25 ID:YWGGGf320
男「……とにかく、休みに来たここで厄介ごとに巻き込まれるのは面倒だ。寝る場所を探そう」

女「うん」

男「色々考えるのは、明日で良いだろ」

女「そうだね、今日はぐっすり休もう」

男「あー……宿、どこだ?」

女「さぁ……」

男「野宿はいやだなぁ……。いやまあ、寝袋あるけど」

女「……二人寄り添って寝るのも、良いんじゃないかな」

男「……じゃあ、そうしようか」

女「うんっ」

611: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 12:57:08.67 ID:YWGGGf320
今更だけど

男「仕方ない。……キモオタ君、無事だと良いけどな」
  \  、\ ,.=-‐-、___// _∠.r.ムイ
ヽー‐デ >_ r-、ヽ.  \ ̄ ̄ _,.  _/
 `7´ ,イ /´,ィkム、ヽ.Yニ、、ヽ-‐'´-=ニ、,___,.ィ
  //// /    \ ヤ‐_ヾ、ト-.、   ,.  /
 /′//i  i / ,.ヘ,ヾy'ri`!ニ二._`く‐''"´ クズが…まだ生きていたのか
    {'  〈ヾi、!k∠「  ,r’ノャ=、- 、,_\
   _,.、-ヘ.`Z_ン`   ト5′ヽ ` _,.>'^ー
      ̄`入´ ‐   ,イ i    〉)'´  ⌒
    ∠´.ィ/\ _,/丿 |_,rイ/-ー''⌒`ヽ

繋がって見えてどうしようもなく笑える……のは俺だけですかそうですか

616: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 13:00:21.68 ID:YWGGGf320
男「……そういえば、どうしてゾンビウィルスってばらまかれたんだ?」

女「わからないけど……。世界の主要国では、どこもみんな研究してたらしいよ」

男「……なんで?」

女「このウィルスさえあれば、半永久的に兵力の確保が出来る……だったかな」

男「知性がひどいことになってるけどな」

女「うん。だから失敗なんじゃない? 今頃お偉方も焦ってるよ」

男「……最悪だな」

女「ほんと、最悪」

625: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 13:10:04.74 ID:YWGGGf320
【朝】

女「……ん、朝……?」

男「おお、おはよう」

女「あれ、早いんだね」

男「ああ。ちょっと用事が出来てな」

女「……幼さんなの?」

男「当たりだ。凄いな」

女「……うん、気をつけてね」

男「はい? ああ、まあ気をつけるけど」

女「あの娘と深く関わると、多分……よくないよ」

男「なんだそりゃ。あいつのことは、俺が一番知ってるよ。……あ、もしかして嫉妬?」

女「……それもあるけど、純粋に男さんが心配なの」

男「……その気持ちは、受け取っておくよ。じゃあね」

女「気をつけて……」

631: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 13:13:05.47 ID:YWGGGf320
女「……心配だな……」

女「ついて行こうかな……」

女「でも、それって嫌な女だよね」

女「……私、どうしちゃったのかな」

女「食欲しかなかったはずなのに……、今は男さんのことばかり」

女「……幼さんと男さんが仲良く話してるの見ると、なんだか悲しい」

女「……嫌な女だな……」

女「……お肉、食べに行こう」

女「他のお店で、だけど」

640: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 13:19:38.20 ID:YWGGGf320
【喫茶店・コン=ファイン=メント】

男「それで、話って何だ?」

幼「ちょっと、男君と一緒にお話ししたかっただけ。迷惑だった?」

男「いや。何を話す?」

幼「……女さんのことを知りたいかな」

男「なんで?」

幼「……どうやって、男君と出会ったのか、とかね?」

男「それ聞いて、どうするんだ?」

幼「人の恋愛譚、聞くのは面白いじゃない」

男「恋愛か……恥ずかしいことを言ってくれる」

645: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 13:23:00.41 ID:YWGGGf320
女「……お肉屋さんって、ここしかないんですね」

女「まあ幼さんはいないでしょうけど……」

女「気が引けるなあ……」

女「……いいや、入りましょう」


店長「らっしゃい」ニコニコ

女「……牛のお肉、十五人前ください」

店長「悪いね姉ちゃん、今は豚肉しかないんだ」ニコニコ

女「……やっぱりそうですか」

店長「……やっぱり、とはどういう意味かな、姉ちゃん?」ニコニコ

女「いえ、前回来た時も、そうでしたから」

店長「そうかい、ちょっと待っててくれよ、新鮮な豚を捌いてくるぜ」ニコニコ

650: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 13:26:21.36 ID:YWGGGf320
女「……」

店長「お待ちっ」ニコニコ

女「ありがとうございます」

店長「生で行くのかい? 豚は危ないよ?」

女「お気遣いありがとうございます。……それでは」ガチャリ



女「私は生でも大丈夫ですし、何よりこれは……豚じゃないでしょう」モグモグ

女「食べ慣れた味ですよ……はむはむ」

女「……人肉とは……えげつない。……もぐもぐ」

女「男さんが聞いたらショック受けるでしょうから、話さない方向で行きましょう」

女「……って、あれ? ……このままだと、幼さんと密会中の男さんが危ないのでは……」

656: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 13:31:38.77 ID:YWGGGf320
男「……と、いうわけだ」

幼「それじゃあ、女さんとは、結構長い間一緒にいるんだ」

男「ああ。……といっても二週間かそこらだけどな」

幼「私ね、思うんだ」

男「ん?」

幼「愛情って、一緒に過ごした時間の長さで深さが決まるのよ」

男「……何が言いたい?」

幼「男君と女さんは、まだまだ一緒にいる時間、短いでしょ? 二人の愛情は、まだまだ浅いのよ」

男「……そうかもしれないけど、お前がそれを言ってどうするんだ? 俺たちの問題だろ、それは」

幼「違うわ」

男「……」

幼「男君と、女さんと――私の問題」

男「……何を言ってるんだ…………」

幼「……わからないの? ニブチンさんだよね、相変わらず」

663: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 13:39:46.18 ID:YWGGGf320
男「……馬鹿なことを言うためだけに俺を呼んだのなら、返らせて貰うぜ」

幼「出来るものならね……?」

男「出来るものならだと……っ……体が、動かない……?」

幼「……ここって、医療施設もあるんだけど、警備がざるなの。筋弛緩剤を少し頂いて来ちゃった。えへへ」

男「よ、幼……お前…………」

幼「ずっと昔から好きだったのにさー、気づいてくれないんだもん。受け身より、自分から攻めるべきだったなって、昨日気づいたの」

男「……よう……」

幼「その点は、あの薄汚い 豚に感謝だよね? あははっ」

男「く、そっ…………!」

幼「無駄だよ。男君は、逃がさない」

668: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 13:43:05.03 ID:YWGGGf320
女「どこに……どこに男さんがッ!」

女「……いや、男さんを見つけても……、武器のない私じゃ勝ち目がない」

女「でも、どうすれば……」

女「逆に考えなさい私。……武器がないなら、武器を持てばいい。単純明快の真理だよ」

女「でも武器はどこに? ……ガードマンの詰め所……」

女「危険だよね……。ううん、ダメだよ、ここですくんでちゃ、絶対ダメ」

女「……男さんのためなら……やれるでしょ? ……良い子よ、私」

女「幼さんに、男さんを好きにさせてなるものですか!」

676: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 13:49:08.92 ID:YWGGGf320
【倉庫】

ドタッ

男「っぐ……」

幼「ごめんね、手荒なことはしたくないんだけど……」

男「……」

幼「前の彼氏のせいで、とにかく痛めつけないと興奮しないんだ、私」

男「……おまえ、目的は何だ……」

幼「男君の彼女になること。 豚を殺すこと」

男「そいつは無理だ……」

幼「無理って、初めから決めつけたら出来るものも出来ないんだよ。まあ、出来る、じゃなくて、『やる』だけどね」

男「……お前……そんな奴だったか…………」

幼「こうなったのは、誰のせい? 私の思いに気づかない……男君のせいでしょ?」

男「…………ちが、ぅ……だろ……」

682: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 13:55:02.07 ID:YWGGGf320
【ガードマン・詰め所】

女「……来たは、良いけど……」

女「どうすればいいの……?」

女「武器を取り戻しに来たのに、取り戻すために武器が必要って……」

女「あーもう……!」

ガード1「ん……なんだお前。怪しい奴だな」

女「え、あ、どうもこんにちは!」

ガード1「……目障りだ、とっとと失せろ」

女「…………なにあいつ」

女「……いやそんなことはどうでもいいよ……。早く武器を得る術を考えなきゃ、男さんが……!」

686: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 13:59:26.46 ID:YWGGGf320
【倉庫】

幼「……男君の、指……」

男「はっ、斬る気か……?」

幼「そんなもったいないことしないよ……。舐めるの」

男「……舐める……?」

幼「そう、一つ一つ、丁寧に丁寧に……私の唾液を……んんっ」ペロッ

男「うわっ」

幼「ん、はむっ、ん……ちゅ、ん……」

男「こ、こそばいっ! く、くあああっ……」

幼「根性ないぞ、男君」

男「くそっ……、体が縛られてるから……どうにもこうにも……!」

692: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 14:03:38.71 ID:YWGGGf320
女「何か……手立ては…………」

女「……ゾンビを引き入れる……」

女「いや、だめ……。男君にも危害が及ぶ可能性が」

女「……ん? あの肉屋って……何で人間を解体してるんでしょう」

女「……斧、とか厚刃の肉切り包丁……? それさえあれば、人並みには戦える……」

女「人肉であることをネタに脅しを賭ければ、包丁の一つや二つ……」

女「やるしか……ない……!」

697: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 14:08:28.81 ID:YWGGGf320
【肉屋】

店長「おや、いらっしゃい」

女「……あなたに、尋ねたいことがあります」

店長「なにかな?」

女「……どうしてここでは、豚肉しか売ってないんでしょうか」

店長「在庫が切れているんだよ」

女「では、なぜ……、あの豚肉は、豚肉じゃないんですか?」

店長「……何のことかな?」

女「あれは、豚の味じゃありません。……人間の味ですよ」

店長「……おいおい、少し口に合わなかったからと言って、そういうクレームは受け付けていないよ」

女「……厨房、見学させて頂けませんか?」

店長「……なる、ほど。……ああ、残念だね……。前にも、君と同じことを言った若造がいたよ」

女「……」

店長「残念ながら彼は、ミンチになった。……今頃、土に還っているね。……くくくく」

700: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 14:15:58.41 ID:YWGGGf320
女(く……何故かいきなりバトル物の展開……!)

女(迷走していると言われても……言い返せないっ!)

店長「……さて、君のどの部分を切り取ってあげようかな……? やはりその豊満な かな……?」

女「こ、この    は……、男さんだけの物ですからっ!」

店長「そいつは残念」

女「と、いうか! 私は……身も心も男さんの物です! だから、負けるわけにはいきません!」

店長「……さて、どうする。……勝負と行くかい?」

女「行かせて貰います。あなたに勝って、武器を手に入れますっ!」

705: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 14:21:09.45 ID:YWGGGf320
【倉庫】

幼「……ふふ、ねぇ、どう? 気持ちいい? 男君」

男「最悪……だ……っ!」

幼「ふーん、そういう事言うんだ。……もっと、もっーと責めてあげる」

男「ぐ、くそ……っ、すまない…………女さん……!」

幼「!」

男「……はぁ、はぁ、はぁ…………」

幼「……私と二人きりなのに」

男「……へ……?」

幼「どうして他の女のこと考えるかな!?」

男「っ、幼、やめろ……!」

幼「どうしてよ、どうして、どうして私を見てくれないの! そんなにあの 豚が良い!? 私じゃダメなの? 昔から、男君に尽くしてきたじゃない……。男君だって、幼をお嫁さんにするって、言ってくれてたでしょ……? ねぇ、違うのっ!?」

707: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 14:25:37.48 ID:YWGGGf320
男「確かに、言ったがな……! それは、昔の……、まだ純粋だった頃のお前に対しての言葉だ!」

幼「……なによ、それ……」

男「今のお前は……ただの狂った女だ! ……くそっ……、本当に俺が好きなのかよ、お前は!」

幼「好きだよ! 大好き……大好きじゃなきゃ、こんなことしない!」

男「大好きなら何でこんな事しやがるんだ! ……くそっ、お前とは、良い幼馴染み同士でいたかったのに……」

幼「私はそれじゃ嫌だ! 男君と結ばれるの! そうじゃなきゃ、私は……!」

男「…………」

幼「男君は、昔から優しくて、格好良かったから。でもお間抜けさんで。私がついていないと、ダメなんだもんっ!」

男「それは昔の話だろうが……! 今の俺は……違うんだよっ! お前の知ってる俺じゃないんだ! いい加減、目を覚ませ!」

709: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 14:30:50.77 ID:YWGGGf320
幼「何で変わっちゃうのよ! 昔の男君のままでよかったのに!」

男「変わったんだから、仕方ないだろ……! 目の前で人の死を体験して、ゾンビ倒して……、守るべき物を見つけて! 変わるんだよ、人は!」

幼「そんなの……嫌だ……! 男君は、男君は私がついていないとダメな男君じゃないとダメなの……!」

男「なにがだ! 話にならない……、早く縄をほどけ、幼!」

幼「絶対にやだよっ! もし、男君が変わってしまったのなら、また元に戻せばいいんだもんっ!」

男「何言ってやがるんだ……?」

幼「……私がいないと、生きていけないような男君に 教するの……。そうすれば、男君は私から離れていかない」

男「アホなこと考えてるんじゃない!」

幼「私は、本気だぁぁっ!」

男「くそっ……!」

712: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 14:34:28.34 ID:YWGGGf320
【肉屋】

女「……」

店長「いやぁ、驚いた。まさか君みたいな女の子に、腕を切り落とされるとはね」

女「のわりに、平然としていますね……!」

店長「当然さ。未だかつてこれほどの敵に出会ったことがない。……脳内麻薬がビンビンだ」

女(意味がわからない……)

店長「さて、と。そのチェーンソーは私の商売道具だから……返して欲しいんだがね」

女「無理ですね」

店長「ほぅ」

女「私に一番合ってるのは、チェーンソーみたいですから。お返しするわけには参りません」

店長「まあ、それも良い。……力尽くで取り返すまでだがね!」バッ

717: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 14:38:54.40 ID:YWGGGf320
店長「よくも私の腕をぉぉ!」バッ!

女(コックピット……じゃない、一撃で仕留められる場所……急所だけを狙えるか……!?)

店長「うおおおおおおおお!」

女「そこだあああああああっ!」

ズガッ、ガ、ガガガガガガガガガ……



……ズンッ

女「はぁっ……はぁっ……!」

女「……敵ながら、見事……!」

女「……っ、男さんっ!」

728: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 14:46:17.40 ID:YWGGGf320
幼「あはは……やっぱり、繋がるのが一番手っ取り早いかな……」

男「!? やめろ、俺は●●だ!」

幼「いいじゃない……、ちょうど、●●喪失できるよ?」

男「俺は純潔を守る! 俺がこれを捧げるのは……女さんただ一人だっ!」

幼「……また、あの女」

男「……?」

幼「男君はあいつのことばっかり! 何が違うのよ! 私と、あの女と!」

男「全部だよ! お前は、一生掛かっても女さんには追いつけやしない!」

幼「なんですって……?」

男「彼女は、変わろうと努力をしている! だけどお前はどうなんだ! 変わろうとなんかしてないじゃないか!」

幼「っ!」

男「挙げ句、自分のレベルに俺を合わせようとしている……。そんな奴に、惚れる要素なんかないんだよっ!」

733: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 14:52:22.70 ID:YWGGGf320
【詰め所】

女「突貫します!」ガガガガガガガガ

ガード1「それは一人前の男の台詞だ!」ガキィン

女「うぬぬぬぬ……! 退いて下さい! 人の命が掛かっているんです!」

ガード1「黙れ! お前のような怪しい奴を、通すわけにはいかん!」

女「あああああっ、退けええええっ!」

ガード1「な、なんだ!」 

女「キィーック!」(ぴー)

ガード1「ぬほぁぅ!?」

女「男は辛いですね! さぁ、私に潰されたい人は……来なさい!」

ガード2「ぬ、ぬぅ……」
ガード3「こ、これは……」

737: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 14:56:03.65 ID:YWGGGf320
女(武器は手に入れたっ!)

女(後は……、男さんのいる場所……!)

女(どこっ……!?)

744: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 15:02:09.00 ID:YWGGGf320
男「……幼。お前も変わらないと、この現実を受け入れないとダメなんだよ」

男「……お前、今の現実に対処しきれてないんだろ?」

男「ゾンビが襲ってきて、知り合いがみんな死んでって」

男「だから……、昔から知っている俺に助けを求めたんだ」

男「……その表現方法は過激だったけど」

男「……お前も、わかってるんだろ? 変わらないとダメだって」

男「……なぁ、だから、もしお前が変わるって言うのなら、俺は協力する」

幼「……私が、変わるとして」

男「……」

幼「男君は、私を見てくれる?」

746: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 15:05:14.59 ID:YWGGGf320
男「それは……」

幼「ね、詰まるでしょ? それじゃあ、変わる意味なんてないんだよ」

幼「私にとっては、たとえ世界がどうなったって、男君が一番なの」

幼「その男君から愛されないようじゃ……意味ないわ」

男「馬鹿……、俺に固執する必要がどこにあるってんだ!」

幼「それこそ全部だよ! 声も、顔も、手も足も、目も、全部全部、男君の全部が好きなの!」

男「……っ」

幼「男君が振り向いてくれない世界なら……私はいらないよッ!」

 

756: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 15:12:18.42 ID:YWGGGf320
バンッ!

女「甘ったれるな!」

男「女さん……!」

幼「出たな…… 豚……」

女「振り向いてもらえないからだって!? ふざけるな!」

女「君は、最初から諦めてるじゃない!」

女「自分を磨いて、真摯に接すれば、人はそれ相応の評価を下してくれるんだよ!」

女「どうしてそれに気づかないの!」

幼「それは……そんなのは、あなたが男君に選ばれた人だから言えることでしょう!?」

女「……わからないの?」

幼「なにが!」

女「……もし、そうだとしたら……、男さんはどうしてあなたにここまで真摯に接したの!」

幼「……」

女「あなたのことを想ってるから……そうでしょ!? まだ、生きている限り挽回するチャンスはあるんだよ!」

765: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 15:16:12.90 ID:YWGGGf320
女「……それだけ」

幼「……」

男「女さん……」

女「何で裸なの」

男「いや、ていうか君も血だらけじゃないか」

女「あ、ああ……これ? ……ちょっとね」

男「……そう」

女「あ、はいこれ。婦警さんの……形見」

男「あ、取り戻してくれたんだ……」

女「うん。大事な物でしょ?」

男「ああ。……俺の信念を支えてくれる、大事な物だ」

774: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 15:21:38.97 ID:YWGGGf320
男「……幼」

幼「……」

男「……お前が変わるのを、待ってる」

幼「……」

男「……いつかまた、今度は笑顔で会えると良いな」

女「……」

男「さあ、出よう」

女「うん……」

幼「……私」

男「ん?」

幼「変われるのかな」

男「その人次第だと思うけど。お前なら、きっと変われる」

幼「……お世辞、上手だよね」

男「俺は、女性には嘘をつかない主義だぜ」
 

783: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 15:26:49.83 ID:YWGGGf320
男「……久しぶりに、新鮮な空気を吸った気分だ……」

女「……大丈夫だった?」

男「ん、ああ……。大丈夫だよ。どってことないって」

女「なら……良いんだけど」

男「でも、女さんは大丈夫なのか?」

女「なにが……?」

男「その、血。……どうしたの?」

女「転んじゃって」

男「見え見えの嘘だな」

女「……殺した」

男「……何を、とは聞かないけど……。辛かったろ」

女「……ううん、男さんを助けるために必死で、何も感じなかった……。私、これで良いのかな」

男「……」

女「ごめんね、変な事言って。……もうそろそろ、ここも、出ようか」

男「……そうだな」

826: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 15:49:21.63 ID:YWGGGf320
【ショッピングモール】

キモオタ「やれやれ……。モールのゾンビたちはあらかた倒したかな……」

キモオタ「みんなの協力ももらえて、死体は焼却炉で灰になるまで燃やしたし」

キモオタ「これでこのモールも少しは安全かな……」

キモオタ「ていうか、ずっと戦いっぱなしだったから……もしかして僕、やせた?」

キモオタ「とすると、デブ眼鏡からただの眼鏡にランクアップ……?」

キモオタ「きたああああああああああ!」

833: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 15:51:58.87 ID:YWGGGf320
タカシ「うっせーぞ糞デブ!」

キモオタ「な、良いじゃないか、痩せたかも知れないんだから」

タカシ「そりゃ、まあ……確かに少しは痩せたかも知れないけどよ」

キモオタ「本当かい? きたああああああああああ!」

タカシ「だーっ、もうっ! うっせえよ糞デブ!」

キモオタ「君にもこの喜びを分けてあげたいくらいだよ!」

タカシ「いらねー。まじいらねー」

キモオタ「さて、ゾンビのいない今、僕はジムで体を鍛えることにするよ! ひゃっほう!」

タカシ「……アクティブな野郎だぜ」

845: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 15:59:29.78 ID:YWGGGf320
キモオタ「……なんだかんだで一週間……」

キモオタ「あの二人、元気にしてるかな……」

キモオタ「いや、元気に決まってるさ。……僕が信じなくてどうするんだ」

キモオタ「よし、今日も巡回だ。行こう、タカシ!」

タカシ「呼び捨てやめろ糞デブ」

キモオタ「いいじゃないか、もう、苦境を乗り越えた仲間だろ?」

タカシ「……けっ、気持ち悪い」

キモオタ「ツンデレさんだな」

タカシ「なんだよそれ……」

 

8: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 16:40:49.81 ID:YWGGGf320
【第四部・国際空港編】

男「……」

女「男さん。これからどうするの?」

男「……幼に会って気づいたんだけど……、ずっと家族のことを頭の外に閉めだしてたんだ」

女「……」

男「だから、無事かどうか確かめに行こうと思う。……もしダメなら、その時は……この手で……」

女「男さん……」

13: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 16:43:24.03 ID:YWGGGf320
女「無事だと……良いね……」

男「ああ。……そうあることを願うよ」

女(男さんが悲しむ顔……これ以上見たくないよ……)

男「女さん?」

女「あ、ううん、何でもない……」

男「そうか、なら、良いんだけど」

女(もし、最悪のことが起きたら……、その時は、私が彼を支えてあげなくちゃ)

17: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 16:48:57.60 ID:YWGGGf320
【男自宅付近】

男「……思えば、女さんと始めて出会ったのもここだったな」

女「うん、そうだね」

男「いきなり、食べさせて、だもんな。頭おかしいんじゃないかと思ったよ」

女「う……、でも、本当にお腹が空いてて」

男「わかってるよ。……あの時君に会えて、よかったと思ってる」

女「男さん……、それって不吉なんでしょ?」

男「……ごめんごめん。……ただ、言っておきたかったから」

女「そういうことは、もっと、後が良いな」

男「もっと、後って?」

女「……ごーる、いん……とか」

男「……ははっ、そりゃいいな。うん、凄く良い」

女「ほんと?」

男「……ああ。ゴール目指して、生きような」

女「……はい!」

23: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 16:53:22.94 ID:YWGGGf320
男「……しっかし、人っ子一人いないぞ?」

女「なんでかな」

男「さて……な」

女「……男さん」

男「大丈夫。どんな結果が見えても、俺は生きるから」

女「無理はしないでね。……泣いても良いんだから」

男「……ああ」

女「私がついてるから」

男「頼もしい限りだよ。本当に」

女「どういたしまして。えへへ」

26: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 16:57:19.78 ID:YWGGGf320
【男・自宅前】

男「入るよ」

女「うん」

ガチャ……ギィィィィ

男「……まずはリビングからだ」

女「うん……」

【リビング】

男「……何も、ない? 血の跡も、暴れた形跡も何も……」

女「もしかして、生きてるんじゃないかな、男君のご両親」

男「……ああ、そうかもしれないな……」

女「他のところも、探そう? 私、二階に行くね」

男「気をつけてな」

女「大丈夫、私にはこの相棒――チェーンソーがあるからっ」

27: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 17:01:43.72 ID:YWGGGf320
【一階】

男「……何もない。俺が出て行った時と、何もかもそっくりそのままだ」

男「つーか、律儀にコンセント抜いてやがる。……これ生きてるんじゃないか?」

男「だけど、それじゃあどこ行った?」

男「一階には手がかり無しか……。二階の女さんが何か見つけてくれてるかな?」

【二階】

女「来ました、男さんの自室……。ごくり」

女「……なんだか、すごく   な気分になりますね」

女「……えーい、そんなことではだめです私。集中集中。とりゃーっ!」バタンッ

女「……あれ、割とこじんまりとした部屋ですね……。汚れてもいないし」

女「あれは……男さんのベッド……寝ても、良いですよね……」キョロキョロ

28: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 17:04:18.61 ID:YWGGGf320
女「せーっ、のっ!」バフンッ

女「あ、ああ……男さんの匂いが……んぅ……」ゴロゴロ

男「……おーい、女さん、何か見つか……っ、た……?」

女「い、いえ……」

男「そ、そう」

女「は、はい……」

男「……ごゆっくり」パタン

女「ああ、そんな目で私を見ないでっ! 男さんっ」

31: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 17:07:32.34 ID:YWGGGf320
男「何をしていたのか、は敢えて聞かない」

女「はい……」

男「でも、母さんたちの書き置きを見つけられたのは僥倖だ」

女「だよねっ」

男「……」

女「すいません……」

男「よし、読むよ」

『男へ。これを読んだのならば、すぐに国際空港に来て下さい。
 私たちはそこで、姉と一緒にあなたを待つことにします。
 どうか無事で、姿を見せてくれることを願っています。 母』

男「だってさ。生きてるんだ、母さんたちは」

女「よかったね!」

男「ああ。これで次の目的地は決まりだな」

女「国際空港っ!」

男「よし、行こう!」

34: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 17:13:40.02 ID:YWGGGf320
男「……♪」

女「ノリノリだね、男さん」

男「まあな、家族が生きてるんだ……。嬉しいよ」

女「そっかー」

男「あ……悪いこと言ったな……」

女「あ、気にしないで。……そういう記憶、ないから」

男「ないのか……。じゃあ、いつかは俺のことも」

女「それは、ないよっ! 絶対にない」

男「断言しますね」

女「忘れるわけないじゃないっ。ここまで一緒に生きてきた、一番大事な人を」

男「……そうだな。ごめん」

女「私もたまに怖くなるけど、でも、そういう時こそ自分と、相手を信じなきゃ」

男「ああ」

38: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 17:19:20.46 ID:YWGGGf320
女「ところで、ここから国際空港までどれくらいなの?」

男「歩いて四十分ちょいかな」

女「そうなんだ。だったら、ゾンビたちに囲まれない限りは今日中に到着できるね」

男「だな。暗くなると道がわかりにくいし、なるべく急いだ方が良い」

女「りょーかい」

「た、助けてくれえええっ! Help me!」

男「……そうも行かないみたい」

女「大変だね」

男「……いや、構わんさ」

41: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 17:23:13.75 ID:YWGGGf320
男「やっぱりゾンビども! 数は、7!」

女「右は私が叩くから、左はお願い!」

男「任せろっ!」バンバンッ

女「斬るよっ!」ギュイイイイイン、ガガガガガガガ

ゾンビ「うあー」
ゾンビ「あうあー」
ゾンビ「あーあー」

男「……おい、女さん……。このゾンビども、どこかで見たことないか……」

女「奇遇だね、私もそう思ってたところ……」

男「くそっ、嫌な予感がするぜ!」

43: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 17:26:08.99 ID:YWGGGf320
男「落ちろ落ちろ落ちろ!」バンバンバンッ

女「さよならっ!」ガガッ、ガガッ、ガガガッ

男「六体、撃退完了…………!?」

女「……そんな……やっぱり……!」

ジョン「サンキュー、Boy and Girl! 俺の名前はジョン! よろしく頼むぜ……って、どうした?」

婦警「…………あ。あー」

男「婦警、さん……っ!」

52: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 17:30:40.72 ID:YWGGGf320
婦警「お、とこ……くん…………あい、たかっ……た…………あー」

男「婦警さん……」

婦警「おと、こ……くん……」

ジョン「そのWoman、さっきからそれしか言わないんだゼェ? なんなんだよ一体」

男「婦警さん……俺も……」

女「男さんっ! ダメだよっ! いくら言葉を話しているとは言え、彼女はゾンビなんだよっ!」

男「でも、俺のことを呼んでる――」

女「それは……生前、強く思っていたことを発してるだけで……!」

男「じゃあ、婦警さんは、俺のことを考えててくれたんだろ……?」

女「男さんっ!」

57: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 17:35:04.33 ID:YWGGGf320
男「俺は……俺は……!」

女「目を覚ましてよ! 男さんっ!」

ジョン「Boy! そのまま行けば、お前さんは死んじまうぞ! それでいいのか!?」

婦警「お……とこ…………くん……」

男「俺は、婦警さんを助けたいだけだ……」

女「それなら! もっと落ち着いて考えてっ! お願いだからっ!」

男「落ち着いて……?」

女「ねぇ、婦警さんは、どうして死んだの……? 私たちを、守るためでしょ……?」

男「……」

女「そんな彼女が、今こんな姿になって、君を襲うことを……望んだと思うの……?」

男「それは……」

女「私は、手を出さない……。だから。君が、婦警さんを救ってあげて……。最後の、手向けだよ……」

婦警「おとこ……おと、こ……」

男「……俺は……っ!」

66: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 17:42:29.92 ID:YWGGGf320
男「俺は……。婦警さんを、救いたい」

婦警「お、と、こ……」

男「だから……婦警さんから託されたこの拳銃で……っ!」

婦警「あ……あー……?」

男「もしもこうして再び会えるなら、笑っていたあなたが見たかった……!」

婦警「おと、こ…………。……っ……て」

男「……!」

婦警「おとこ……。…………て……」

婦警『男君。私を撃ってくれ。今までは多分、君は私の思いを継ぐつもりで、戦ってきたんだろう?』

婦警『でも、それじゃあいけない。人の思いを継ぐだけで、長く戦えるわけがない』

婦警『確固たる信念を持って、そして戦うんだ』

婦警『君には、守る人がいるだろう。……ならば、その人のために、全身全霊を持って、戦いたまえよ』

婦警『私に囚われるのは、もうやめにするんだ。いいね……』

男「婦警、さん……っ! さようならっ……!」……バンッ!

73: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 17:49:31.10 ID:YWGGGf320
男「……」

女「男さん」

男「これでよかったんだ。……婦警さんもこれで、楽になれたさ」

女「……うん、きっと」

男「俺は今まで、あの人の意志を継ぐつもりで戦ってきたけど」

女「……」

男「自分自身の理由のために、戦うよ。……それが、婦警さんとの約束だ」

女「……応援、してるから」

男「うん」

ジョン「Hey! 待ってくれよそこのボーイアンドガール。ここで出会ったのも何かの縁、仲良く三人で旅しようぜェ?」

男「なんだこの面白黒人」

ジョン「Oh! なかなか辛辣、でもそれじゃあ俺は挫けないぜBaby! お前さんらの強さに惚れちまったんだよ」

女「は、はぁ……」

男「俺たちは、空港に向かってるんだけど」

ジョン「オゥ、いいね、良い感じじゃん!? 俺もAirportに向かおうと思ってたんだぜぃ」

82: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 17:53:49.11 ID:YWGGGf320
【黒人のジョンが仲間になった】

男「しかしまあ、テンション高いな……」

女「外国の人って、みんなそうなのかな……?」

ジョン「ボーイエンドガール! ナイショ話は、仲間割れの原因だぜェ」

男「あー、悪い」

女「ごめん……」

ジョン「Oh,そんなシケた面見せるもんじゃないぜ? 若い内はスマイルが基本!」

男「……テンション高いな、ジョン」

女「ほんと……」

ジョン「このご時世、こうでもしなくちゃつぶれちまうぜ」

男「……それも、そうだけど」

ジョン「ハッハー、ならば笑え笑え! 笑いは心のMealだぜ!」

90: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 17:59:47.73 ID:YWGGGf320
男「それで、ジョンはどうして日本に?」

ジョン「決まってるだろォ! アキバだYO!」

女「あきば……?」

男「秋葉原だな。俺もたまに行く。……てかそれだけのためかよ」

ジョン「ザッツライト! フィギュアって凄いぜェ! 魔改造フィギュアは勃起物だ!」

女「ぼっ……き……」

男「耳ふさいでろ」

ジョン「まあ何より? メイドさん、モエエエエエエエエエエ!」

男「……大丈夫かコイツ」

97: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 18:03:46.31 ID:YWGGGf320
ジョン「祖国の兄弟たちにィ……、俺のGetした●●●●ポスターを渡さない限り、俺は死んでも死にきれねぇよ!」

男「あー、そうかい」

女「●●、●●……」

男「耳ふさいでろって」

ジョン「なんだなんだ? お前らカッポーじゃねえのかよ? アーハァ?」

男「いや、そのつもりだけど」

ジョン「のわりにウブだぜ! ヴァージンか、ヴァージンなのか!? 中古はいらねぇ!」

男「お前どこまで日本に染まってんだよ……」

104: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 18:07:52.08 ID:YWGGGf320
【国際空港・入り口】

男「なんだかんだでようやく着いたぜ……」

ジョン「ヘイヘイヘイ、まだ話したりねーよ」

男「俺はもうお腹いっぱいだよ……。そうだよ、ルリルリがヒロインだ……」

ジョン「可愛すぎだろォ? それなのに劇場版のアキトと来たらよォ。艦長が報われねぇぜ」

女「男さん、大丈夫?」

男「少し、休みたい……。このテンションに付き合うのは骨が折れる……」

ジョン「Oh! 骨折か? 良い医者を知ってるんだ、俺に任せな!」

男「……」

119: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 18:29:34.35 ID:YWGGGf320
【国際線・出発カウンター】

女「うわーっ、人が多いね」

男「まあね……」

ジョン「安全な場所って言うと、やっぱ広くてみんなが集まる場所だからなァ」

男「……母さんたちはどこかな……?」

女「ここにいるの?」

男「姉貴が、ここのカウンター嬢なんだ。だからそこらへんに……」

ジョン「ヘイヘイヘイ! 初耳だぜ、お前にBig Sisterがいるなんてよォ」

男「言ってないしな」

ジョン「メアド教えてくれ」

男「なんでだよ! 自分で聞いてくれ!」

姉「……あ? 男、お前、男か?」

男「んっ? 姉貴! 無事だったのか!」

姉「なんだなんだ、お前も無事だったのか、そいつは何よりだなあ!」

122: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 18:34:03.65 ID:YWGGGf320
姉「引きこもりのお前が外に出たって言うから、結構心配したたんだぞ?」

男「ほっとけよ」

姉「しっかし、しばらく見ない間にこんな可愛い彼女と……面白黒人を連れてくるとはな」

男「女さんはともかく、ジョンは知らん」

ジョン「Nooooo! 俺たちの友情はこんな物だったのか!? Hey!」

男「つい三十分前くらいに出会ったばかりだろうが!」

女「あ、あはは……」

姉「ふ~ん、ま。彼女が出来たんなら父さんと母さんに知らせてやんなきゃな。喜ぶぜ~」

男「……う、ん……」

女「男さん、私、髪の毛とか服とか変じゃないかな……?」

男「大丈夫。問題なし」

ジョン「参ったな……俺がBoyのGirlfriendだなんてよォ」

男「……一生やってろ」

131: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 18:39:02.29 ID:YWGGGf320
男「……女さん、緊張しないで良いから。ウチって結構、みんなフランクだし」

女「う、うん……でも……」

男「手、握ろうか?」

女「お願い……」

男「ん……」ギュッ

女「やっぱり、安心する……」

ジョン「Boy、俺の緊張も解いてくれよ。Handだぜぇ」

男「……」

ジョン「そんな怖い顔で見ないでくれよな。チェリーの俺はチビりそうだぜ」

男「俺も●●だ」

ジョン「What!? ここまで仲良くてまだヤッてないとか、Youはおかしいんじゃねえか?」

男「……もう、嫌……」

140: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 18:47:31.76 ID:YWGGGf320
母「男……!」

父「無事だったか、男」

男「父さん、母さん……、ああ、無事だったよ。なんとかな」

母「おお、よかった……。あんたが死んだんじゃないかって、お父さんと大泣きしてたんだよ」

父「よ、余計なことはいわんでいいっ……が、よく、無事に戻ってきてくれたな……」

男「心配かけて、ごめん」

母「いいのよ、お前が帰ってきてくれただけで……」

姉「へへへ、泣かせるねぇ」

ジョン「良い話だぜェ……」

男「ジョン……お前……」

父「ところで、さっきから手を繋いでいるそちらの子は……?」

142: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 18:50:28.11 ID:YWGGGf320
女「は、は、は、は、はいっ! はじめましてっ! 男君の、こ、恋人の……女です!」

母「おやおや……あんた、どさまぎに彼女なんて作ったのかい?」

男「ああ。……彼女がいるから、俺はここまで生きて来れたんだ」

父「それはそれは……、ありがとう、女さん」

女「いえ、こちらこそっ! 男君には、色々お世話になって!」

母「あらまあ、礼儀正しい子だねぇ。どうか、男をよろしくね」

女「はいっ! ありがとうございますっ!」

男「よかったな、女さん」

女「はいっ!」


ジョン「……あのー、俺は?」

146: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 18:53:17.38 ID:YWGGGf320
男「こいつは……、さっき道端で助けた黒人のジョン」

ジョン「よろしく頼むぜェ!」

母「元気そうな人だねぇ」

ジョン「笑顔は世界を救うぜ! イヤッフゥッ!」

男「……と、まあ、テンションが無駄に高い奴だけど、悪い奴じゃない」

父「ジョンさん、どうか、男をよろしく頼むよ。コイツは奥手でね、友達があまりいないんだ」

男「ばっ、何言ってんの!」

ジョン「まっかせてくださ~い! Boyは、俺の立派なマブダチだぜェ、Year!」

152: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/23(日) 18:58:44.95 ID:YWGGGf320
姉「さて、感動の再会はまあいいとして……」

男「?」

姉「あんた、もの凄く臭いよ」

男「……マジで?」

姉「良いからシャワー浴びてきな。彼女も一緒にな!」

男「ば、馬鹿な事言うな!」

姉「それが案外そうでもなくてねぇ……。シャワールームは数が少ないから、二人で入った方が時間短縮、文句言われなくて良いんだよねぇ」ニヤニヤ

男「あ、姉貴……!」

女「わ、私……男さんなら……一緒でも……」

ジョン「ヘイ、ボーイ! 俺と一緒に入って、男と男の友情を確かめ合おうぜェ!」

男「……女さん、恥ずかしいけど……入る……?」

女「……うん……」

158: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 19:03:26.44 ID:YWGGGf320
【シャワールーム】

男(姉貴からは鍵と、シャンプーやらの入ったポーチを渡されたが)

男「……これはどこをどう見てもゴムだよな?」

男「……時間短縮しろって言ったのはあいつだよな?」

男「……何考えてるんだろ……ほんと、アホだ」

男「……てか、女さんとはそういうことは出来ません」

男「やれやれ……」

ジョン「ほおおおぉぉぉぉぉ! シャワーの水圧強すぎるよぉぉぉぉぉぉぉ!」

男「弱めろよ!」

163: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 19:08:13.33 ID:YWGGGf320
女「……準備、出来た……けど……」

男「う、うん……」

女「私の体……その……」

男「……大丈夫。女さんは女さんだから」

女「……ありがとう……」

男「じゃあ、入るよ」

女「……うん……」

ガチャリ

シャアアアアアアアア

165: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 19:12:09.46 ID:YWGGGf320
男「……精神的に死ぬかと思った」

姉「ふーん。で? ヤッたのか? あたしのプレゼント、役に立った?」

男「使ってねえよバカ姉貴」

姉「んだよ、折角愛すべき弟のためにプレゼントしたってのに」

男「いらんわ!」

姉「あぁあぁ、いつか姉ちゃんのことを思い出して泣く日が来るぞ?」

男「こねえよバーカ」

姉「何でだよ」

男「女さんだけじゃない。父さんも母さんも、姉貴も……死なせはしない。ついでにジョンもな」

姉「……へっ、口だけは一人前だな」

男「なんとでも」

姉「ただ……格好良くなったな、バカのくせに」

169: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 19:17:39.01 ID:YWGGGf320
ジョン「へい、Boy! UNOやろうぜ!」

男「……元気だな、ジョンは」

ジョン「さっきも言ったがー、こんな時こそ笑うべきだぜ!」

男「羨ましいな。ジョンの明るさ」

ジョン「お前も笑うべきだぜぇぇぇぇぇっと!」

男「兄貴かお前は」

姉「ふーん、面白い友達じゃん。くく、大事にしなよ」

男「……面白いのは認めるけどなあ」

ジョン「そらにぃ、そびえるぅ、くぅろがねのぉしろぉ!」

男「……やれやれ」

171: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 19:23:40.66 ID:YWGGGf320
女「あ、男さん……」

男「女さん……」

姉「ん~? 視線を逸らす二人、その頬はどちらも朱く染まって…………」

男「な、何をバカな」

姉「ん~ん~、さっきはああ言ってたけど、お前も大人になったって事だな」

女「あ、あの、お姉さんが考えているようなことは、何も……!」

姉「ん~? あたしが考えてる事って、何?」

女「そ、それは……その……」

姉「くくく、いじめすぎたね、悪い悪い。いやはや、見れば見るだけ、コイツにはもったいない彼女さんだ」

男「うるせぇ」

姉「……コイツねー、頑固だから大変だろうけど、頑張ってね」

女「は、はい……っ。頑張ります」

姉「そういや、夕飯はどうするの?」

女「わ、私は……良いです……。蛋白質、たくさん……」

姉「?」

178: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 19:29:46.32 ID:YWGGGf320
【夜】

女「みんなで雑魚寝なんだね」

男「人が多いしな、仕方ない」

ジョン「Hmm……、でも、飛行機は飛んでるみたいだぜェ?」

男「極地か、砂漠なら、ゾンビは生きていけないだろうからな」

ジョン「なるほど、ガッテン」

女「私たちも……そういうところに、行くのかな」

男「姉貴から聞いた話だと、そこに行けるのは抽選に当たった人だけだって。しかも倍率千越え」

女「無理か……」

ジョン「スイスはどうだ? 家に核シェルターだぜェ?」

男「一杯だろうよ」

ジョン「参ったもんだ。……まさに、この世の地獄。生きながら体験できるとはなァ」

180: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 19:33:39.41 ID:YWGGGf320
男「今日は、もう寝よう」

女「うん……。男さん、近くに寄って良い?」

ジョン「あたしもあたしも」

男「……まあ、いいけど……」

ジョン「オトコ、大好き!」

男「誤解を招くから大声で言わない方が良いぞ」

女「男さん……」ギューッ

男「……」

女「ずっと、一緒にいたい……」

男「……女さん」ギュッ

ジョン(邪魔者は退散、言われなくてもスタコラサッサだぜェ)

189: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 19:39:10.21 ID:YWGGGf320
男「……すぅ」ギュッ

女「……んぅ」ギュウッ

ジョン「…………」

ジョン「…………」

ジョン「…………」

ジョン「…………」

ジョン「……この二人を守ってやりたいもんだぜェ……」

ジョン「愛し合っている二人ほど、美しい物はないからなァ」

ジョン「Good night」

197: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 19:44:21.22 ID:YWGGGf320
男「すがすがしい朝だ」

ジョン「ぐっもーにん」

男「ああ、おはよう」

姉「いよっ、起きたかバカ」

男「ああ」

姉「おぅおぅ、抱きつかれてんじゃねえかこの色男が」

男「いいだろ、恋人同士なんだから」

姉「へへへっ、責任はとれよ、男としてな」

男「まだそこまで行ってねえよ」

姉「けど、いつかは行くんだろ? だったら、早いことそういうのは叩き込んでおいてやった方が良いのさ」

男「……」

姉「まあいい……、ほれ、これに名前書きな」

男「なんだこれ?」

姉「極地旅客機搭乗券抽選エントリーシート」

202: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 19:49:08.22 ID:YWGGGf320
男「……書いてどうするんだ?」

姉「アホ、逃げるに決まってんだよ、あのゾンビどもからな」

男「当たるかもわからないのに? というか、これ、ペアチケットじゃねえか」

姉「だから、お前と、彼女さんの二人だな」

男「……家族と、ついでにジョンを置いて行けと?」

姉「お前はまだ若い。まだまだ、人生を楽しまなくちゃ行けねぇんだよ。引きこもってた分もな」

男「けど……」

姉「つーか、当たるかもわかんねぇのにウダウダ悩むなアホ。名前書いときゃいーんだよ」

男「ったく……」

姉「毎度っ」

姉(これで良い。……子孫繁栄だの何だの政府は叫んでやがるから、こいつらの当選は決まってる。……達者で生きろよバカ野郎)

207: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 19:56:39.34 ID:YWGGGf320
ジョン「ん~? ヘイ、その紙見せてくれるかな?」

姉「あ? 良いけど」

ジョン「ほぅ、ほぅほぅ……。これ、ちゃんと彼らに説明した?」

姉「してない」

ジョン「良いのかよォ? キャンセル不可、譲渡不可……そんなんじゃ、ボーイがキレちまうぜェ」

姉「……けどな、これくらいしか、あたしらがしてやれることはないんだよ」

ジョン「ボーイの好きにさせてやるって選択肢はァ?」

姉「却下。あいつは若い。まだ、生きないと……!」

ジョン「Hmm……。日本には、良い言葉があるね。ありがた迷惑って。……ボーイにとって、君の行動はきっとそれだぜェ」

姉「へっ、下の奴は、年長者の言うこと聞いてりゃいいんだよ」

ジョン「なるほど? じゃあ俺からは何も言わないけどなァ……」

212: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 20:03:35.19 ID:YWGGGf320
姉「跡はこれを上に提出して……」

男「ストップ」

姉「あん? なんだよバカ。あたしはまだ仕事中……」

男「その申込用紙。……破らせて貰う」

姉「……ジョンか? あの面白黒人……」

ジョン「俺からは何も言わないって言っただろォ? 事実をボーイに伝えて、後はボーイに任せただけだぜェ」

姉「くっ! 男、その手を離しな。これを上に送れば……あんたらは幸せに暮らせるんだ」

男「姉貴。俺がほんとに、そういう生活を望んでるとでも?」

姉「しらねえよ。望んでようが望んでなかろうが、これがあたしら……年長者の使命なんだよ」

男「自分勝手な使命とか何とかに、俺たちを巻き込むのはやめて欲しいんだけど」

姉「あぁ? お前のことを思ってやってんだぞ? わかってんのか?」

男「だったら、俺の好きにさせてくれよ。……確かに俺は女さんと一緒に、のんびり暮らしたいと思ってる」

姉「だったら――」

男「けどな、家族と、ついでにジョンを捨てて手に入れたそんな生活……俺は耐えきれる気がしねえよ」

220: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 20:09:54.75 ID:YWGGGf320
男「……だから、頼む。そいつを提出するのはやめてくれ」

姉「……」

男「姉貴と、父さんと母さんと、女さんと、ジョン……。……それで、良いじゃないか」

ジョン「オゥ、俺もついにFamilyの仲間入りかい!?」

姉「……へっ。お前って、そんなにお姉ちゃんっ子だったっけかぁ?」

男「知らなかったのか? 俺はシスコンだぜ」

姉「……そうか……そうかよ……。バカが……」

男「なんとでも」

ジョン「姉弟愛、泣かせるねぇ……」

227: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 20:15:30.83 ID:YWGGGf320
女「そういえば、空港って着陸する飛行機はないんですね」

姉「ああ、そりゃあな。ウィルス運んでくるかも知れないしな」

女「あれ……? それだと、いずれこの空港にも飛行機がなくなっちゃうんじゃ」

姉「そうだ。問題はそこなんだよ。……政府はどうするつもりなのかね」

ジョン「へへへ、そういう時こそ裸踊りだぜベイビー! フゥゥゥゥゥ!」

男「ジョン! やめろって!」

ジョン「俺のマグナムが火を噴くぜェ!」

男「うおっ、酒臭いッ! 酔ってんのかお前!」

姉「ん~、ああ、ジョンって酒弱いんだ。……あんなの軽い軽い」

男「あんたか」

235: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 20:23:17.73 ID:YWGGGf320
男「やれやれ……」

女「ふふ」

男「なんか、疲れるけど……」

女「うん」

男「今までで、一番笑ってる気がするな」

女「そうだね……。ジョンさんとか、お姉さんとかに会えて……、楽しくなったよね」

男「……いつまでも、続けばいいのにな」

女「うん……」

男「でも、必ず……壊れるんだよな」

女「……」

男「……ごめん。たまにブルーになるから困る」

女「大丈夫。私も、だから」

239: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 20:29:32.19 ID:YWGGGf320
女「……」

男「……月が綺麗だよ」

女「……ほんとに」

男「……、生きような」

女「うん……」

男「…………」

女「…………」

男「……キモオタ君、元気かな」

女「元気だよ、多分」

男「……だよな。モールの守護者だし」

女「ふふ……。寝ようか……?」

男「……ああ」

250: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 20:37:28.95 ID:YWGGGf320
男「おはよーさん」

姉「おはー」

ジョン「グッモーニンッ!」

女「おはようっ」

父「おはよう」

母「おはよう、寝癖直しなさい」



男「なんだかんだで、こんな安らかな日々が二週間ほど続いた」

男「けれど、そんな安寧は、やはりいつも唐突に終わってしまう」

男「……それは、いつもと変わらない日の朝だった……」

269: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 21:01:47.42 ID:YWGGGf320
男「うーん、今日もすがすがしい朝だ」

女「朝ご飯、トーストだって」

男「オッケーオッケー……ん?」

ジョン「どうしたボーイ」

男「いや……あれ……。あの飛行機、こっちに向かってないか?」

ジョン「Hmm……Oh,why?」

姉「おかしいだろ……どう考えても。……着陸する機体なんてないんだから……」

女「…………不時着?」

男「だけですめばいいけどな……。女さん、一応チェーンソーを」

女「……うん」

273: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 21:07:47.56 ID:YWGGGf320
ヒュウゥゥゥゥゥゥゥ……ドゴォン……

ジョン「オゥ! 落ちちゃったぜェ!?」

男「……燃えてる」

姉「空港消防隊が鎮火しに行ったが…………」

女「だ、ダメだよっ! 見て!」



ゾンビ「うおおおああああー」
ゾンビ「うあああああああー」
ゾンビ「うおあおうあうあー」

男「ゾンビども……」

ジョン「Oh,Shit! 最悪だぜこれはァ……!」 

280: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 21:12:11.57 ID:YWGGGf320
姉「消防隊が……喰われてく……!」

男「つーか、あの炎で死んでないのかよ、ゾンビども!」

女「……どんどん、強くなってる……?」

ジョン「ヘイヘイヘイ! このままだと、いずれ建物の中にまで来ちまうぜェ!?」

男「その前に、殺し尽くさないと……」

姉「だが……あれはトリプル7だぜ……? 三百人以上、あれに乗ってんだ……」

女「全員を屠るのは……無理……?」

男「だけど、やらなかったらここは終わりだ……」

285: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 21:14:53.74 ID:YWGGGf320
姉「既に、下に何人か出てるけどな……、それでもきつい状況だ!」

男「……女さん、行こう!」

女「うんっ!」

姉「お、おいっ! 死ぬ気かよ!」

男「んなわけないだろ! 危なくなったらスタコラ逃げるさ」

女「これでも私たち、歴戦なんですよ」

男「安心しなっ! 姉貴たちは俺が守るからな!」



姉「……男……あいつ……」

ジョン「……俺に出来ることを、探しとかないとなァ」

295: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 21:18:32.22 ID:YWGGGf320
【階下・滑走路及びハンガー付近】

警備隊1「うて、撃てぇ!」

バンッ、バンバンバンバンババンッ

ゾンビ「うー」
ゾンビ「うおおおおおおおああああああー」
ゾンビ「うーあーあー」

警備隊2「ひっ、ひいっ!」

ゾンビ「あうー」グチャグチャ
ゾンビ「うーあー」バク、モグ
ゾンビ「あおー」ニュチョ

男「最悪だ……」

女「でも、殺らなきゃ殺られる……」

男「くそったれめ!」パンッパンパパンッ

296: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 21:21:55.93 ID:YWGGGf320
女「……こんなところで、死ぬわけにはいかない……!」ブルッ、ブルゥゥゥゥン……

女「……私のチェーンソーで、ぶった切ってあげる!」

男「くっそ……、みんなを守るんだ……! 死なせてたまるか!」

男「婦警さん……、力を貸して下さい!」パンッ

女「……ゾンビはやっぱり、動きがとろいよ!」ザシュッ

ゾンビ「うあ……」

女「えいっ、はっ、消えろぉっ!」ザンッ、ズシャ、ブチュッ

ゾンビ「あー……」
ゾンビ「うー」
ゾンビ「おーあー……」

302: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 21:25:50.09 ID:YWGGGf320
女「やっぱり、きりがないっ! 一人倒しても……二人がゾンビになってるんじゃダメだよ!」

男「でもどうするんだ!? まだうじゃうじゃいやがる!」

警備隊3「き、君たちは早く避難したまえ! もうここは危ない!」

男「まだやれます! ここを守らなきゃ……家族が!」

警備隊3「し、しかし……!」

ジョン「ヘイ、そんなときに俺の出番だぜ」

男「ジョン! 何を……」

ジョン「へへっ、これだ」

警備隊3「それは……、消防隊の放水ホース……」

ジョン「水圧は、時として銃弾をも上回るんじゃないかなぁ……ってなァ!」

312: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 21:30:10.16 ID:YWGGGf320
ジョン「消し飛べぇっ!」ブシャアアアアアアアアアアアアアア

ゾンビ「うおー……」
ゾンビ「うあー……」
ゾンビ「ううー……」

男「凄い、効果は抜群だ……!」

ジョン「ここは……俺に任せてっ、ボーイたちは、仕留め損ねた奴らを……!」

女「わかった! 男さんっ!」

男「おうよ!」

321: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/23(日) 21:36:51.48 ID:YWGGGf320
男「うらうらうらあぁっ!」

女「……斬るッ!」

ジョン「俺からのプレゼントをくらいな!」

警備隊3「す、凄い……! たった三人で、半分以上のゾンビを……」

男「女さんっ! 後ろ、伏せてッ!」パパンッ

女「ありがとっ、男さん!」

男「いやいや! ……まだいるぞ!」

女「うんっ!」

ジョン「ホースの振動が、気持ちいいよぉぉぉぉぉぉ!」

330: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 21:40:58.39 ID:YWGGGf320
警備隊3「……無線?」

『……滑走路だけじゃない、逆の国道沿いからもゾンビどもが集まってきている! 人員を割けないか!』

警備隊3「な、なんだって……!?」

男「国道側……滑走路の逆……みんながいるところにかよ!?」

女「えっ……!」

警備隊3「い、今すぐ行きます!」

男「くそ、俺も行きたいけど……!」

ジョン「ヘイボーイ、何をためらうことがあるんだ?」

男「ジョン……?」

ジョン「一度言ってみたかったんだよなァ。……ここは俺に任せて、早く行きな!」

339: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 21:44:45.52 ID:YWGGGf320
男「死ぬなよ!」

ジョン「俺を誰だと思ってんだァ? 泣く子も黙る、ジョン・スミス様だぜェ」

男「偽名だと言うことはよくわかった。……頼んだ!」

女「……ジョンさん、ご無事で……!」

ジョン「へっへっへ……これで良い、ヒーローの戦い方ァ、たっぷりと教えてやるぜェ!」

ゾンビ「うあー」

ジョン「残りの敵は、百体前後……。くくっ、ヒーローは逆境に置かれてこそだ!」

ゾンビ「あうー」

ジョン「来いよ糞野郎ども! お前ら全員、xxxxしてやるぜェ!」

345: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 21:48:02.79 ID:YWGGGf320
男「こっちか!」

女「ロビーが……!」

ゾンビ「あうー」
ゾンビ「うー」
ゾンビ「うあー」

男「姉貴たちは!?」

女「今、探してるけどっ!」

男「どこだ、どこだよ姉貴!」


ゾンビ「うあー」

ドガッ

姉「ちっ、流石に追い込まれてきたか……! トランク振り回すとか、やっぱ色気ないよなああたしはよ!」

350: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 21:53:06.33 ID:YWGGGf320
姉「ったく……あたしだってこんなこたあやりたくないんだよ……!」

ゾンビ「あ、ね……」

ゾンビ「……おと、こ……」

姉「でもな、やっぱり生き残りたいんだよな! そのためだから……許してくれるよな……父さん、母さんッ!」

ゾンビ「あ……ね……」

姉「くそおおおおおおっ! ……あたしには……出来ない……出来ないよ畜生……!」

男「姉貴っ!」

姉「お、おとこ? おとこ……おとこぉ…………!」

男「姉貴、無事だったのか……。よかった……。母さんと、父さんは……。っ!」

姉「ゾンビに……。で、でも……あたしには出来ない……殺せ、ないよ……」

男「守れなかった……。父さんも、母さんもっ……!」

353: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 21:57:18.02 ID:YWGGGf320
ゾンビ「お、とこ……ぉ」
ゾンビ「あね…………」

男「……父さんも、母さんも……ゾンビに……」

姉「……嫌だ、嫌だよ……男……助けて……」

男「……守れなかった……。偉そうに、言っといて……」

姉「母さんと、父さんを助けて……。誰か……」

男「くそ……腕が震えて、銃が持てない……」

姉「……う、うぅ……っ」

男「くそったれ……」

361: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 22:04:56.02 ID:YWGGGf320
ゾンビ「おと……こ……」

ゾンビ「あ…………ね……」

姉「……ねぇ、おとこ……。もう、いっしょに食べられちゃおうよ……」

姉「そうしたら……家族で、いっしょに……」

男「そうだな……、それが……」

女「男さん! 何馬鹿な事言ってるの!」

男「……女さん……?」

女「ずっと一緒にいてくれるって約束したじゃない! あれは嘘なの!?」

男「でも……家族が死んだんだ……! 肉親だぞ……! 俺をここまで育ててくれた……両親が……!」

女「辛いのはわかるけど……、でもっ! 君が死んだら、私はどうすればいいの!? 何を支えに、生きていけばいいの!?」

男「おんな……さん」

女「勝手なことだってのはわかってるけど、言わせてッ! 私は、男さんがいるからここまでやってこれたんだよ! ……だから、諦めないで……! お願い、だから……!」

男「……女、さん……」

369: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 22:11:21.04 ID:YWGGGf320
女「男さんは生きないとダメなんだよ……!」

男「…………」

女「お願い……!」

男「姉貴……」

姉「なに……?」

男「俺……親不孝者だったな……。引きこもりで、ろくに母さんの飯も食べないで」

姉「うん……」

男「これから俺……さらに親不孝者になるな……」

姉「……おとこ……」

男「……父さんと母さんの分も……生きよう……。必ず……」

姉「や、やだよおとこ……、母さんと父さんを……撃つの……?」

男「……俺は、生きないと……。女さんのためにも、俺を救うため、命を散らした人のためにも……」

姉「で、でも……。両親、なんだよ……」

男「両親だからこそ……。俺が、引導を……渡さなきゃ……。息子の……俺が……!」

373: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 22:14:52.03 ID:YWGGGf320
男「最初で最後の親孝行だ……。親不孝かな…………。……でも……!」

女「男さん……」

男「母さん。……俺を産んでくれてありがとう。
  父さん。いつも俺のことを気にかけてくれてたな。
  俺は、生きるよ。……だから……さよなら……!」

姉「いやあああああああああ!」

パーン、パーン



…………ドサッ

378: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 22:19:33.99 ID:YWGGGf320
男「…………」

姉「ばか……ばか……ばかぁ……!」

男「…………俺、だって……殺したく、なかったよ……」

姉「……じゃあ」

男「でも……あそこでおとなしく死ぬのは……ダメなんだ……。まだ、俺たちは人間なんだ……」

姉「……」

男「なりたくもないゾンビになった人たちの分まで……生きるんだ……」

姉「…………辛いよ……」

男「俺もだよ…………」

女「……男さん。……ごめんなさい」

男「何で君が謝るのさ……」

女「……ごめんなさい。……それじゃあ、他のゾンビを屠って、来るね……!」ダッ

383: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 22:27:38.22 ID:YWGGGf320
女(……私のせいだ)

女(元を正せば、全て……!)

女(男さんが、悲しむことなんてなかったんだ……!)

女(私が、変な気を起こしていなかったら……!)

女「私は……私はぁぁぁぁぁぁ!」ズザッ、ザンッ、ズチャッ、ズザザッ、ズガッ

女「ああああああああああああ!」ザザッ、ズジジッ、ズザンッ、ガガッ、ズジッ

389: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 22:31:53.45 ID:YWGGGf320
女「はぁーっ、はぁーっ……、はぁーっ……!」

女「どうして私は生まれたの!」

女「どうして! どうしてよ!」

女「何が嬉しくて、何が楽しくて、何が興味深くて私なんかが!」

女「もう……こりごりだ……」

女「こりごりだよ…………!」

391: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 22:34:48.78 ID:YWGGGf320
男「女さん……何か、叫んでる……?」

姉「……う、うぅぅ……」

男「くそ……、それにしても、まだちらほらとゾンビがいやがる……」

男「……殺す、しか……! そうしなきゃ……姉貴も、女さんも……!」

男「……膝が笑ってるな……。まともに立てる気がしない……」

男「くそっ、立ち上がれ、立ってくれよ、俺の足……!」

ギギギギギィィィィィッ!

男「な、何だ……? トラック……? こっちに、突っ込んでくる……!?」

395: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 22:37:18.30 ID:YWGGGf320
ズガッ、バリィーンッ!

男「姉貴ッ、伏せろッ!」バッ

姉「きゃ……っ」

男「……なんなんだよ……。正面ガラスぶち破って……何が……」

ガ、ガガガガガガガガ

男「コンテナが、開く……」

ゾンビ「うおー」
ゾンビ「あうー」
ゾンビ「うーおー」

男「な、何でトラックに……ゾンビが……。なんで、トラックがゾンビを運んでくるんだよ……!?」

400: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 22:43:59.86 ID:YWGGGf320
男「ゾンビどもが来る……!」

ゾンビ「うーあー」

男「くそっ! 動け、動けよォ!」

女「男さん……!」

男「女さん……、来たら、ダメだ! この数には、いくら君でも太刀打ちできない……!」

女「でも……!」

男「ダメなんだ!」

女「でも、全部私の責任だから!」

男「何、言って……」

女「私が……私がゾンビウィルスの……キャリアーだから……ッ!」

男「!」

418: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 22:48:04.42 ID:YWGGGf320
女「研究所に拉致されて……、ゾンビウィルスを植え付けられて……!」

男「そんな……嘘だろ……?」

女「全てに絶望して……、研究所を飛び出して……!」

男「やめろよ、やめてくれ……聞きたくないよ!」

女「私だけが……こんな目に遭うのが、信じられなくて、腹が立って……!」

男「やめろ、それ以上は……っ!」

女「だから、所構わず、いろいろな人を食べて食べて食べて……!」

男「やめてくれよっ! もうやめてくれぇぇっ!」

425: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 22:53:47.62 ID:YWGGGf320
女「一通りやり尽くして……、ふと立ち寄った街角で、君に出会って……」

男「女さん、頼む……もう……!」

女「最後にこの人を食べようと思ったのに……思ったのに……!」

男「女さん……、頼むよ……やめて……くれ……!」

女「一緒に、いろんな所を回る内に、どんどん好きになっていって……!」

男「いいから、もう、良いんだ……! 君の、話は……」

女「ずっと一緒にいたかったけど……それももう、叶わない……!」

男「な、何が……何がだよ……!?」

女「研究所に……連れて行かれちゃうから……」

男「研究所……、って、なんで……どうして……!」

女「私を解剖して……ワクチンを作るんだよ……」

男「解剖……!? 採血じゃダメなのか!?」

女「ゾンビウィルスの核は、子宮に植え付けられているから……」

男「そん、な……」

436: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 22:58:15.15 ID:YWGGGf320
女「このトラックは……研究所のだよ……」

男「え……」

女「私を見た人、関わった人を全員殺すために……、ゾンビまで用意して……」

男「そんな……」

女「もう……ここでお別れなのかな……」

男「い、嫌だ! 俺は女さんと一緒に生きていくって、決めたんだ! そうだろ、なあ!?」

女「でも……もう…………ダメ、だよ……」

黒服「……被献体004。……施設へ帰還の後、解剖作業を行なう」

女「……」

男「て、てめえええ! 待てよ! 女さんをそんな名前で呼ぶんじゃねえよおおおおおお!」

黒服「黙れ。貴様たちはここで朽ち果てる運命だ」

442: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 23:03:15.99 ID:YWGGGf320
女「……男さん……!」

男「女さん、待って、待ってくれ……! そこの黒服、責めて研究所の場所を教えろ!」

黒服「ふん……。生き残れるかはわからんが、教えてやろう。ここから南西にずっと進んだ、軍用施設の中だ」

男「記憶した……! 女さん、必ず助けに行くからな……!」

女「男さん……!」

黒服「無駄だろうがな」

男「やりもせずに、諦めてたまるか!」

454: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 23:06:32.14 ID:YWGGGf320
ブロロロロロロロ……

男「女さん……」

男「君の隠し事は、これだったのか」

男「確かに、なかなかきつい隠し事だった」

男「けど、今更そんなので、俺の君への想いが変わる事なんてない……!」

男「敵は数百匹。……姉貴を守りながら、戦えるか……!?」


        『お前は一人じゃないぜェ!』

473: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 23:12:16.23 ID:YWGGGf320
ジョン「ヒーローは遅れてやってくるんだなァ! これが!」

男「ジョン! 生きてたのか!」

ジョン「当然! 俺を誰だと思ってやがる? 天下のジョン・スミス様だぜェ!」

男「話は……?」

ジョン「ばっちりきっかり聞いちゃったぜ。へへへっ、シンデレラ奪還、燃えるシチュエーションじゃねえか!」

男「……ああ!」

ジョン「武器はあるか?」

男「素手だ!」

ジョン「粋だねぇ……。なら俺も、素手で行こうかァ?」

『まったく、君は少し無鉄砲なところがあるみたいだね――!』

489: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 23:15:22.01 ID:YWGGGf320
キモオタ「ほらほらタカシ、もっと飛ばして!」

タカシ「るせぇ、糞デブ! これでも精一杯だ! 痩せろ!」

キモオタ「男君! そこの人! これを使うんだっ!」ガシャッ

男「キモオタ君! それと、あの時のあの人!」

タカシ「タカシだ! 覚えとけよ!」

マユミ「あたしマユミね~」

ジョン「ヘイヘイヘイ、これはこれは無茶苦茶厚い展開じゃないかァ?」

『もう……男君ってば、まだまだ忘れてる人がいるんじゃない?』

509: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 23:20:14.81 ID:YWGGGf320
男「この声は……」

幼「久しぶり、男君」

男「幼……!」

幼「ふふ、あの時からね、私、心を入れ替えたんだ。……女さんの言葉がよく身に染みて」

男「幼……」

幼「……話は、男君の洋服に縫い付けた小型集音器で全て聞いてるわ」

男「……え?」

幼「あらいやだ、忘れてね?」

ジョン「ヘイヘイヘイ、これはすげぇ展開だぜェ!」

男「……何にせよ……全員、集合か……!」

姉「ふ、ふふっ……男ぉ、誰か忘れてるだろぉ?」

527: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 23:24:37.72 ID:YWGGGf320
男「姉貴……! 大丈夫なのか……!?」

姉「ったりまえだろうがよ! あんな話聞いて黙ってられっか!?」

男「姉貴!」

姉「いいか、女ちゃんを奪還した跡、あたしが彼女に熱い灸を据えてやる! そう決めた!」

男「ほどほどに……」

姉「あの娘のせいで父さんたちは死んじまったんだろ? 一発殴らにゃ気がすまねぇが……! だがな、それよりも、あんないたいけな少女を実験に使いやがる政府の方が気にくわねえ!」

男「姉貴!」

姉「やってやろうじゃねえか!」

535: ◆XtpqcHhpns 2009/08/23(日) 23:28:14.46 ID:YWGGGf320
男「今度こそ、全員……集合……!」

ジョン「このメンバー、面識ないのが多いけど、負ける気がしねぇぜェ!」

タカシ「ったりまえだ! 俺とマユミがいるんだからな!」

マユミ「たっぷり暴れさせて貰うよ!」

キモオタ「女さんの……僕の仲間の笑顔のために、僕は戦う!」

幼「彼女には、大事なことを教わりましたから。……感謝の言葉を、差し上げませんと!」

姉「あの娘は、弟の恋人だ……。それを助けないで、何が義姉だ!」

男「女さん……、俺たちは、君を助けに行く!」

男「そして必ず……! 君を……!」


【第四部・国際空港編・完】

17 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:24:21.14 ID:UbJCGWE0
【第五部・シンデレラ奪還】

男「……とにかく、詳しい話はまた後だな」

キモオタ「うん、まずはゾンビどもをみんな……」

タカシ「へへへっ、糞デブに仕込まれた銃の腕を見せる時が来たぜ!」

マユミ「う~ん……刀って、私にはあわないと思うんだけどなあ」

ジョン「俺の武器はルガーかよォ? JAMには気をつけないとなァ」

姉「な、なんだか濃い友人だなぁ、男……」

男「ああ。みんな個 的だけど……、頼りになる、俺の大事な戦友だ」
19 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:25:18.13 ID:UbJCGWE0
幼「……」

男「幼……も、チェーンソーなのか」

幼「ふふ、リスペクト、かな。……男君、来るよっ」

男「っ、ああ!」

ゾンビ「うあー」
ゾンビ「あうー」
ゾンビ「うーあー」
ゾンビ「あーおー」
ゾンビ「うーうー」
ゾンビ「あおあー」

キモオタ「久しぶりの……ゾンビ戦だ……。燃えてくる……!」
21 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:27:17.62 ID:UbJCGWE0
キモオタ「はぁぁぁぁぁぁ、掃射あああああああああ!」バババババババババババババ!

ゾンビ「う……」
ゾンビ「あー……」
ゾンビ「お……」

キモオタ「まだまだまだまだぁっ! 踊れ踊れ、踊れぇっ!」ババババババババババババ

ジョン「ヘイ、俺も負けてらんねーぜェ!? ダンスタイムだ、Zombieども!」ババン

タカシ「うらうらうらうらァッ!」
22 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:28:18.52 ID:UbJCGWE0
男「姉貴は下がってろ!」

姉「何言ってんだ、あたしも戦う!」

男「……でも……」

姉「でも、も、かも、もあるかよ。これから、こいつらの親玉んとこに向かうんだ。景気づけにはうってこいだぜ?」

男「……わかったよ。姉貴は、わがままだよな、やっぱ」

姉「そんなわがままを通してくれるお前のこと、嫌いじゃないぜ」

男「そいつはどーも」

姉「ははっ、さぁて……、たっぷり景気づけさせて貰うかんなぁ! ゾンビどもが!」

男「……俺も、やるか……!」

姉「うらあああああああああ!」

男「おおおおおおおおおおッ!」
24 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:30:59.26 ID:UbJCGWEo
幼「斬るよ!」ギュイイイイン……

ゾンビ「うあー」

幼「はあッ!」ザンッ

ゾンビ「う……」

幼「まだまだっ! はぁぁぁッ!」ザンッ、ズシャッ、ドチャッ

ゾンビ「あ……ぁ」

ゾンビ「う……ぉ」

ゾンビ「お……ぉ」

幼「撃墜スコア4!」

マユミ「ゾンビたち、この刀の餌食にしてやるんだから!」

ゾンビ「うー」

マユミ「……そこっ!」スパンッ

ゾンビ「う……うー……?」

マユミ「居合抜き!」

ゾンビ「あー……」ドチャッ
26 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:32:12.81 ID:UbJCGWE0
幼「男君、無事っ?」

男「心配ご無用! 女さんを取り返すまでは……死ぬもんかよ!」

幼(……やっぱり、そうだよね)

ゾンビ「うあー」

男「幼! 何でよそ見してるんだ!」バンッ

幼「えっ」

ゾンビ「あ……」

男「大丈夫か幼! 無事かっ!?」

幼「う、うん……」

男「……よかった。お前だって、俺の大事な人なんだ。……死なないでくれよ」

幼「……うん……!」

幼(そう、だよね……。男君の笑顔のために……、今は……!)

幼「必ず女さんを助け出す……っ!」
27 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:33:23.65 ID:UbJCGWEo
男「……後どれくらいっ!?」

ジョン「百体かァ!?」

姉「大体そんなもん! あと少しだ!」

キモオタ「行ける! いや……絶対に突破するんだ……!」

タカシ「そういうことならぶっ飛ばすぜ!」

幼「……ギタギタに、斬ります……!」

マユミ「……斬る!」

男「……よし、ラストスパートだ!」
28 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:34:29.03 ID:UbJCGWEo
男「……え? 死んでない……? 頭は吹っ飛ばしたのに……?」

キモオタ「男君ッ! 危ないよ、早く避けて!」

ゾンビ「……」

男「!」

幼「男君ッ!」ガシッ……ドタンッ

男「っ」

ゾンビ「……」

幼「大丈夫!?」

男「お、俺は大丈夫だ……幼は?」

幼「私は、無事だよ……。よかった……男君……」

姉「……おいおい、あのゾンビなんなんだ?」

タカシ「頭を撃っても死なないとか、おかしいだろ!?」

ジョン「……進化かァ? 薄気味悪いぜ、ゾンビのくせによォ……!」
29 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:35:30.38 ID:UbJCGWEo
キモオタ「今までのゾンビは頭が弱点だったけど……、じゃあ、弱点がなくなったって事!?」

マユミ「そんな!」

幼「チェーンソーで、バラバラに切り刻むしかないの……?」

姉「でもよ、そんなこといちいちしてたら……こっちがもたねえぞ!?」

男「でも、あいつに肉を食べられることがないから……」

ジョン「甘ぇぜボーイ……。ガールが言ってたろォ? ゾンビになるのはウィルスの仕業だ。
    幸い空気感染とまではなってねえが、あいつの爪に傷つけられたらおじゃんだぜェ」

男「……じゃあ、今度は一撃喰らうだけでも死に繋がるって……?」

ジョン「それは今までもそうだった……。俺たちは変わらず、向こうだけが強くなるアンフェアな戦いだなァ……!」
30 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:36:22.50 ID:UbJCGWEo
幼「く……っ! 切り刻んでやるっ!」

男「幼!」

幼「はあああああああっ!」

キモオタ「タカシ、彼女を援護しろ!」バババババババ

タカシ「っ! わーったよ!」パンパンパンッ

幼「はあああああっ!」ザザザザザザザザ……ズドン……

幼「右腕、左腕、左足、右足……、死ね、死ねええええええ!」

ゾンビ「……」ボトッ、ボトッ、ボトッ……

幼「……はぁっ……はぁっ……」
32 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:38:00.36 ID:UbJCGWEo
男「幼、大丈夫か!」

幼「何とか……。でも、いちいちこんなのやってたら……」

姉「一発でバラバラに出来る武器とかないのかね……?」

男「探してみるか……。何はともあれ、これで、一段落だ……。少し休もう」

ジョン「賛成だ」

幼「…………くっ……」

男「幼……助かったよ」

幼「男君」

男「……お前も、少し休めよ?」

幼「……はい」
33 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:38:57.50 ID:UbJCGWE0
男「……」

姉「……」

男「……なぁ、姉貴」

姉「なんだ?」

男「母さんたちを……埋めに行かないか」

姉「…………そう、だな」

男「……はは、重い、な……。死んでも、これは変わらないのか」

姉「ああ……」

男「…………」

姉「…………家族、二人だけだな」

男「……うん」
34 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:40:00.63 ID:UbJCGWEo
男「……父さんも、母さんも、辛かったろ……」

姉「……」

男「どうかゆっくりと……安らかに……眠って、……」

姉「……っ」

男「くれ……よ…………」

姉「…………ぅ、うぅ……」

男「……姉貴……俺らが、泣いたら……」

姉「…………そ、そうだよ……な……。くっ……」

男「……必ず生きて戻ってきて……そしたらちゃんとしたお墓を……建てるから」

姉「ああ……、私の貯金と……男のへそくり全部使って、立派なのを……」

男「ああ……。絶対……」

姉「……ぐすっ……」

男「……行こう…………姉貴……」
35 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:40:52.16 ID:UbJCGWEo
キモオタ「僕はキモオタ。よろしく」

ジョン「よろしくファットボーイ!」

キモオタ「え、やっぱ太ってる? 痩せたかと思ったんだけどなあ」

タカシ「ねーよ」

キモオタ「君は僕に恨みでもあるのか?」

タカシ「ねーよ」

キモオタ「じゃあなんで」

タカシ「お前が幸せそうだとむかつく」

キモオタ「何なんだよ君は!」

幼「仲が良いんですね、ふふっ」

マユミ「どーなんだろ。あの二人、出会った当初は凄く険悪だったんだけど」

幼「そうなんですか?」
36 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:43:01.75 ID:UbJCGWEo
マユミ「タカシがね、色々とねー。……男って、よくわかんないわ」

幼「はは……わかります。それは」

マユミ「あたしマユミ、よろしく」

幼「男君の幼馴染みの、幼です。よろしくお願いします」

マユミ「うん。正直女が少ないからさ、このメンバー、結構寂しかったんだよねー」

幼「そうですね、三人ですもんね」

マユミ「そうそう」

幼「マユミさんとタカシさんって、おつきあいされてるんですよね」

マユミ「まぁねー」

幼「……羨ましいです。ちょっと」

マユミ「幼は可愛いから、大丈夫じゃない?」

幼「昔、そう言ってくれた人がいました……。ふふっ」
37 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:45:01.53 ID:UbJCGWEo
男「帰ってきたよ」

キモオタ「お帰り、男君」

男「ああ、ただいま。……まさかキモオタ君たちが来てくれるとは思わなかったよ」

キモオタ「モールのゾンビは倒し尽くして、近辺のゾンビもあらかた狩り尽くしたんだ。
   だから範囲を広げることにしてね。それで街を回ってたら、空港にゾンビがたくさんいるのが見えたのさ」

男「そうか……。君は立派に責任を果たしたんだな……」

キモオタ「いや、まだまださ。……まだ、僕の罪は贖えちゃいないよ」
38 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:46:24.76 ID:UbJCGWEo
男「そんで……そこの強 未遂魔タカシも」

タカシ「嫌味かそれは」

男「いや……まさか君も来てくれるとは考えもしなかったからさ」

タカシ「ふん、糞デブに連れてこられただけだ。パトロールとか……下らな――」

キモオタ「こいつ、男君と女さんに謝りたいっていつも言っててさ。パトロールには必ず――」

タカシ「黙れ糞デブ! いいかお前、これは違うかんな!」

男「はは、わかってるよ。……幼も、よく来てくれた」

幼「恩人である女さんと、大好きな男君のためですからね。ふふっ」

姉「おやおや、色男だねぇ、お前」

男「うっさいな……」

ジョン「ヘイボーイ、休憩は終わりにして、そろそろ行こうかい?」

男「……ああ、そうだな」

ジョン「ハッハー! いざ研究所、目指すはシンデレラ奪還だぜェ!」
39 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:47:24.38 ID:UbJCGWEo
男「なぁキモオタ君、南西に軍用施設なんてあるかい?」

キモオタ「ある……というよりは、あった、かな」

男「……?」

キモオタ「数年前に、そこは使用されなくなったはずだけど」

姉「カモフラージュか……汚ねぇ奴らだぜ」

男「そうか……、ありがとう。……黒服の言葉は、正しかったのか……」

ジョン「そうと決まれば行くしかねぇ、早く行こうぜェ!」

男「ああ。……だけど、七人も乗れる車……あるかな?」

キモオタ「残念だけどタカシが運転してきた車は小さすぎるな……」

タカシ「るせぇ!」

マユミ「空港だし、リムジンとかあるんじゃない?」

ジョン「じゃあそれで行こうぜェ! ハハハッ、シンデレラを迎えに行くにはおあつらえ向きだなァ!」
40 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:48:15.28 ID:UbJCGWEo
幼「リムジンだね」

男「広いからね……その分武器をできるだけ積んでおこう」

姉「お、酒がついてるじゃねえか!」

ジョン「飲むのかよォ?」

姉「それも良いが、飲むのは完全勝利を勝ち取った後だな。それまでは……お預けだ」

タカシ「そろそろ出るぞ。糞デブ、マユミ、早く入れ!」

キモオタ「あいよー」

マユミ「せっかちだなあ……。だから●●なんだよ」

タカシ「黙ってろ!」

男「くく……」

姉「●●のお前が笑えんのかよ」

男「うっさい!」
41 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:49:07.55 ID:UbJCGWEo
【リムジン車中】

幼「……」

男「……」

姉「……」

キモオタ「……」

マユミ「……」

ジョン「アイゴッタァバーニンラーブッ! 青く輝く炎で、この悲しみを、燃やし尽くす時までェー!」

タカシ「うっせえからすこし黙ってろ!」

ジョン「ヘイヘイヘイ、タカシひどいなァ」

タカシ「……いきなり馴れ馴れしいな」

ジョン「ハハハ、口開けてるのはお前と俺だけだからなァ!」
42 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:50:32.36 ID:UbJCGWEo
男(……研究所……、なにがあるかは、わからない)

男(さっきのゾンビもそうだ……、奴らは進化してる)

男(倒すのには骨が折れるし、死ぬ可能性もある)

男(……むしろ死ぬ可能性の方が高いけど……、だけど)

男(尻込みなんてしていられるか。……女さんを助けて)

男(女さんに……これを渡すんだ……)

男(……そして言おう……)

男(…………結婚してくれって)
43 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:51:25.33 ID:UbJCGWEo
男「……後、どれくらいかな」

キモオタ「……十五分もないと思うよ」

男「そうか……」

姉「……いよいよだな」

ジョン「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ……」

男「誰と?」

ジョン「ボーイ、これはジョークだぜェ」

幼「ふふ、面白い人ですね、ジョンさんって」

ジョン「みんな緊張しすぎだって。笑えよ、笑えば気持ちも明るくなる!」

姉「ふ……あんたを見てると苦笑しか漏れてこねぇよ」

ジョン「だがそれも笑いには違いない。……笑わなきゃ、人は生きて行けねぇんだよォ」

男「じゃあジョン、歌い続けてくれよ。苦笑くらいは漏れてくるから。ははっ」

ジョン「必要ないぜ、もうお前は笑ってるからなァ。ハハハッ」
44 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:52:33.75 ID:UbJCGWEo
【研究所前】

タカシ「へっ……着いたぜ、シンデレラのお城だ」

男「……よし……行こう!」

ジョン「オーケィ、死ぬ気で行くぜェ!」

幼「本当に死んだらダメですけどね」

キモオタ「……よし!」

姉「へへへ……この酒のためにも、そう簡単には死ねねぇなぁ」

マユミ「まだまだ男漁りが足りないしー」

タカシ「…………」
45 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:53:24.05 ID:UbJCGWEo
男「……何の変哲もない……ただの建物だな」

姉「だが……中はおぞましい奴らが蠢く魔の城だ。……死ぬなよ、男」

男「姉貴こそ」

姉「……最後の、家族なんだからな」

男「わかってるよ……」

姉「……言ってなかったけど、あたしはブラコンなんだ」

男「は、はぁ?」

姉「……お前のハートが女ちゃんに持ってかれたかと思うと、なかなか泣けるぜ」

男「姉貴……お前……」

姉「……悲しいが、同時に嬉しい」

男「……」

姉「お前が選んだ子だからな。……へへっ、なかなか良い趣味してやがるぜ」

男「そいつは、どうも」

姉「子供の命名権は、あたしによこせよ。くくくっ」

男「やらねーよ」
47 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:56:25.39 ID:UbJCGWEo
幼「男君……」

男「……どうした?」

幼「死んじゃいやだよ。絶対に生きてね」

男「ああ、そのつもりだ」

幼「私が死んでも、気にしないで、必ず女さんを助けるんだよ」

男「幼……それは……」

幼「女さんは……笑っていないとダメな人だと思うの。そして、その笑顔を取り戻せるのは、君だけだから」パチコーン

男「いてっ」

幼「ふふっ、幼馴染みが昔から腕を磨いてきたデコピンだもん。喝が入ったでしょ?」

男「そうだな、凄く」

幼「それなら良いんだ。私は……昔から、男君の幼馴染みで、これからもずっとそうだもん」

男「……幼、でも、やっぱりダメだ」

幼「なにが……?」

男「お前も、俺も、女さんも、みんなが生きて戻るんだ。……そうしないと、女さんは心の底から笑えないはずだ」

幼「男君……」

男「だから、生きるんだ。いいな。勿論俺だって死ぬつもりはない」

幼「うん……! ……それじゃあ行こう? 女さんを取り戻すために!」

男「ああ!」
48 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:58:11.25 ID:UbJCGWEo
タカシ「あー、クソガキ」

男「ん、俺?」

マユミ「へへっ、タカシ、念願の土下座タ~イム」

タカシ「るせぇ……。……クソガキ……いや、男……」

男「……」

タカシ「あの時は、悪かったな……。お前は何ら間違っちゃいなかった」

男「タカシ……」

タカシ「……糞デブたちとモールで過ごしてく内に……、いかに俺が矮小な男だったかがわかった」

男「……」

タカシ「……俺は、女にも謝らないといけねぇ。……だから、必ず、必ず勝つぞ」

男「ああ、そのつもりだ。……協力、頼むよ」

タカシ「任せろ。……汚名挽回する時が来たぜ」

マユミ「名誉挽回ね。汚名挽回じゃ余計ダメっしょ」

タカシ「うるせぇ!」
49 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:59:03.76 ID:UbJCGWEo
ジョン「ボーイ……わかってるな? やることは一つだ」

男「女さんの、奪還」

ジョン「そうだ。お前はそれだけを考えてれば良いんだぜェ」

男「どういう意味だ?」

ジョン「そう言う意味だ。……ゾンビどもは俺たちに任せて、お前はさっさとシンデレラを取り戻すんだよォ」

男「何言ってんだよ。それじゃあ意味ないだろ」

ジョン「……」

男「お前も生きて、女さんを笑わせるんだよ」

ジョン「……」

男「つーか、全員で生き残るのが……絶対の目標で目的だ。良いか?」

ジョン「やぁれやれ……。理想論だと言いたいがァ……魅力的だな。ギャグについては俺のセンスが誰よりもぴかいちだからなァ」

男「それはない」

ジョン「ひでぇぜマイフレンド。ハハッ…………行くか!」

男「……行こう!」
50 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 20:59:57.41 ID:UbJCGWEo
【少し時間が遡って、研究所・内部】

黒服「……博士」

博士「ふん、来たか……」

女「離して……!」

黒服「……」パッ

女「っ……出たな……!」ギロッ

博士「そんな目で見るな。被検体が生意気な」

女「私をこうしたのは……あなたでしょ……!」

博士「そうだな。……いやはや、いつか試そうと思っていた実験が、成功するとは」

黒服「……」

博士「実に良いデータが採れた。感謝しようじゃないか……、被検体」

女「黙れ……ッ!」

博士「だが……、脱走したというのは頂けないな」

女「汚い手で触るな……!」

博士「……躾がなっていないか、やはり……」
51 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:00:54.79 ID:UbJCGWEo
博士「……黒服、こいつを部屋にぶち込め。私は少し休む。こいつの解剖は明日だ」

黒服「……」

博士「わかったら早くお前も消えろ、目障りだ」

黒服「……」

ガチャリ

博士「くく……。奴を解剖すれば、耐ゾンビウィルスのワクチンを作るどころか、ゾンビウィルスを死滅させるウィルスを作ることだって可能だ」

博士「そうして、それを学会で発表してみろ……」

博士「私は一躍ヒーローじゃないか?」

博士「くく……、政府は既に機能していない。故にこのプロジェクトが外部に漏れることはない」

博士「……自分で作ったウィルスを自分で殺す。それだけで評価されるんだ、実にこの世は素晴らしい、くくく」
52 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:01:54.08 ID:UbJCGWEo
黒服「……」

女「私は解剖されるの?」

黒服「……そうだ」

女「……そう」

黒服「……」

【被検体004・部屋】

黒服「……入れ」

女「……変わってないな。……暗いしジメジメしてるし、独房の方が正しいよ、これ」

黒服「……」

女「……喋らないの」

黒服「……」

女「……」

黒服「……信じることは、悪い事じゃない」スタスタスタ

女「! ……行っちゃった……」
53 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:03:28.73 ID:UbJCGWEo
女「男さんのことだよね……きっと……」

女「助けに……来てくれるのかな……?」

女「信じよう……。……きっと、必ず……」

女「男さん……。もう一度会いたいよ……」

女「みんなに……。私が出会った、かけがえのない人たちに……」

女「……だから私も……まだ諦めない……」

女「……私はまだ、生きて……生きて男さんの側にいるんだ」

女「負けるもんか……」

女「負けるもんか……!」
54 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:05:11.24 ID:UbJCGWEo
【研究所・敷地内】

男「……なにもない……」

姉「静かすぎて逆に怪しいな」

男「……というか、人がいるような形跡がない……。なんで……?」

タカシ「地下とか、そこらへんにいるんじゃねえのか?」

キモオタ「その可能性が一番高いね。廃墟の地下に研究所、よくあるパターンじゃないか」

男「……じゃあ、この建物は単なる飾り物か……」

ジョン「地下への入口を捜そうぜェ?」

男「そうしよう。……中に入るよ」
55 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:06:50.07 ID:UbJCGWEo
【研究所内部】

男「……暗いな」

マユミ「電気ないのー?」

幼「地下の施設に電力を回しているから、電気がないとか」

姉「ありえるな……、しかし暗いぞ。キモオタ君だっけか。ライトはないか?」

キモオタ「二つあります」

ジョン「two? ……七人をhalfにわけるのか」

男「……それしかないか」

姉「んじゃ、とっとと決めようぜ」
56 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:08:28.05 ID:UbJCGWEo
【男・姉・幼・ジョン】
【キモオタ・タカシ・マユミ】

男「わかれたな」

タカシ「そうだな」

姉「……男と一緒か、へへっ」

男「ぐわっ、いきなり腕に抱きつくな!」

姉「お姉ちゃん、暗いところ苦手なの~」

男「キモい」

姉「ひでぇ野郎だ」

マユミ「それじゃ、大体三十分後くらいにまたここに集合?」

男「そうだな。そうしよう。三人とも、無事で」

キモオタ「大丈夫。二人は僕が守るよ」

タカシ「るせぇぞ糞デブ。それは俺の台詞だ」

キモオタ「頼もしいね」
58 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:09:20.88 ID:UbJCGWEo
幼「……暗いね」ギュッ

姉「暗いな……」ギュッ

ジョン「くらーい」ダキッ

男「あんたら全員ひっつくな暑苦しいいいい!」

姉「いーじゃねえか、姉弟だろ?」

幼「幼馴染みだよね?」

ジョン「マブダチだろォ?」

男「そういう問題じゃねえ!」
59 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:11:05.19 ID:UbJCGWEo
男「いつどこにゾンビどもが出てくるかわからないんだ……。万全の態勢で」

姉「……へぃへぃ。わかりましたよ……」

男「姉貴っ」

姉「お前が焦ってるのはわかるけど、ちょいと落ち着けよ、な?」

男「俺は焦ってなんか……」

ジョン「焦ってるぜェ。……いいか、焦りってのは、物や人を探す上で一番まずい」

男「……」

ジョン「焦りは怒りと同じく、正常な判断、思考を妨害する……。ガールを見つけたいんなら、少しクールダウンしようぜェ」

幼「それがいいよ、男君」

男「……わかった」

姉「へへっ」

男「でも抱きつき禁止」

姉「……泣くぞ」
60 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:12:32.89 ID:UbJCGWEo
【研究所内部・一階】

姉「……扉が何個かあるけど……虱潰しに開けていくか?」

男「ああ」

幼「……じゃあ、これからだね」

ジョン「準備はオーケィだぜェ」

男「……開けるよ」……ギィ

姉「何もいねぇか……?」

幼「お姉さん、だめですっ!」

ゾンビ「うあー」ガタッ

姉「ちっ、出た!」

男「姉貴、屈んで! ……頭を……!」パァン

ゾンビ「う……」ゴトッ

幼「……死んだ……?」

ジョン「ああ。……まだ完全に全部のゾンビが進化した訳じゃねえみたいだなァ」

男「……むしろここだからじゃないかな」

幼「……地下の研究所の中には、もっと進化した奴がいるってこと……?」
63 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:13:22.03 ID:UbJCGWEo
男「そう考えるのが妥当だよ」

幼「……その時は、私のチェーンソーの出番だね」

男「頼りにしてる」

幼「うんっ、任せて」

男「だけど、任せてばかりじゃまずいな……。何か効率の良い手段を考えなきゃ」

ジョン「じゃあ、それも含めて他の部屋も探そうぜェ」

姉「そうだな、早く見つけて、女ちゃんを助けないと」

男「……そうしよう」

幼「……頑張ろう?」

男「ああ」
64 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:14:44.19 ID:UbJCGWEo
姉「……なあ、男」

男「どうした?」

姉「ここの奴らって……ゾンビを手なずけてるのかな」

男「……、わからない」

ジョン「微妙なところだよなァ」

男「俺たちが戦っている内に、あいつらは耐久力が上がってきてる。それは知性も同じだ」

男「だから……もしかしたら……、命令で動くゾンビもいるかも知れない」

姉「……手強いな」

男「……うん」

幼「……」
65 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:16:35.11 ID:UbJCGWEo
【研究所・地下実験施設】

モニター『……ザザッ……ザ……』

博士「ん……? 侵入者か?」

博士「……やれやれ、探険ごっこのつもりなんだろうが……」

博士「ここに来たのが運の尽きだったな」

博士「いずれ死ぬ運命に…………、ん?」

男『またかっ! 頭を!』パァンッ

博士「……ほぅ……これは面白いネズミが飛び込んできたな」

博士「黒服」

黒服「……」

博士「005の評価実験を行なう。標的は、あいつらだ」

黒服「……」スッ

博士「さぁて、上手く行くかな……? せいぜい楽しませてくれよ、被検体」
66 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:17:47.52 ID:UbJCGWEo
【被検体004・部屋】

女「……男君……来てくれてるのかな……。無事かな……」

?「ねぇねぇお姉ちゃん、その、男君って誰?」

女「え? 誰?」

?「ここだよここ。私の部屋とお姉ちゃんの部屋、小さな穴があるんだよ」

女「あ、ほんとだ……。ちょっと待ってて」

?「うん」

女「よいしょっ……と。もしもし?」

?「あはは、目が見えるー」

女「へへ、君もここに閉じ込められてる子? あ、私は女って言うの」

幼女「私は幼女だよ、よろしくね」

女「うん、よろしく」

幼女「それで、その男君って?」
67 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:18:59.00 ID:UbJCGWEo
女「私の大事な人。凄く格好良いんだよ」

幼女「そうなんだ……。お姉ちゃん、脱走してた人でしょ?」

女「え? うん……」

幼女「良いなぁ……。外は楽しかった?」

女「……うん、とっても」

幼女「私も、もう一度外に出たいな……。もう、いつからここにいるのかもわからないよ」

女「そうなの……。君みたいな小さな子まで……」

幼女「でも、いつか出られるよね、きっと」

女「うん。出られるよ。男君が私を助けに来てくれるから……、その時は一緒に、ね?」

幼女「うんっ、楽しみにしてる」

女「……男君……どうか、無事で……」
68 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:20:33.18 ID:UbJCGWEo
幼女「……あ、ねぇねぇ」

女「なに?」

幼女「お姉ちゃんには、何か特殊な力とかあるの?」

女「特殊な力?」

幼女「うん。例えば、力持ちだー、とか……」

女「特殊……な力か……」

幼女「?」

女「……持ちたくもないのに、手に入れた力が一つだけ。……それも、世界を滅ぼせるほどの」

幼女「そうなの? すごーい!」

女「凄くないよ……」

幼女「私はね、お人形さん遊びが出来るんだよ。全然凄くないけど。えへへっ」

女「ううん、お人形さんだなんて、可愛らしいよ。幼女ちゃんに似合ってると思う」
69 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:21:27.05 ID:UbJCGWEo
幼女「じゃあ、見せてあげるね。私のお人形さん遊び」

女「うん、お願いね」

女(ほほえましいなぁ……)

ゾンビ「うあー」
ゾンビ「うーあー」

女「ひっ……!」

幼女「ダメだよー、アシャー、エヴィン。お姉ちゃん怖がってる」

ゾンビ「う……」ショボン
ゾンビ「あ……」ショボン

幼女「あはは、良い子だね。じゃあ、一列に並んでっ!」

ゾンビ「あうー」ピシッ
ゾンビ「うあー」ピシシッ

幼女「へへっ、お姉ちゃん、どう?」

女「そんな…………。ゾンビを操るなんて……」

幼女「どーしたの? ねぇ……?」
70 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:22:57.89 ID:UbJCGWEo
女「それ……は……幼女ちゃん……」

幼女「?」ニコニコ

女「ゾンビじゃない……」

幼女「ぞんび? ぞんびってなに?」

女「……」

女(どうして、何で……、何でゾンビが操れるの……?)

女(いや、それもあるけど……、こんな小さな子まで実験に使うの……?)

女(どうして…………)

女(何がしたいの…………?)

幼女「この子たちはね、私の大事なお人形さん! えへへっ」ダキッ

ゾンビ「あー」ナデナデ

幼女「えへっ……」

ゾンビ「うあー」

女「……っ」
71 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:26:12.08 ID:UbJCGWE0
女「幼女ちゃん……あなたのお人形は……」

幼女「なに?」

女「それはお人形じゃないの……。だから……」

幼女「あははっ、お姉ちゃん何言ってるの?」

女「それから離れないと……!」

幼女「どうして? アシャーもエヴィンも、こんなに優しいのに」

ゾンビ「うー」

ゾンビ「あー」

幼女「ね?」ニコニコ

女「……違うの、違うんだよ、幼女ちゃん……!」
73 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 21:32:23.43 ID:UbJCGWE0
黒服「……」ガチャリ

女「!」

幼女「あ……、何……?」

黒服「……着いてこい」

幼女「アシャーもエヴィンも一緒で良い?」

黒服「……連れてこい」

幼女「はーい!」

女「ちょ、ちょっと……! 幼女ちゃんをどこに連れて行くのよ!」

黒服「……研究所に迷い込んだネズミ退治だ」

女「ネズミ……?」

黒服「……信じた結果か……はたして」

女「!」

黒服「……行くぞ、005」

幼女「準備は完璧!」

女「だ、ダメ! これじゃあ、幼女ちゃんと、男さんが……! 待ってよ!」

黒服「……その穴は、後で塞ぐ」

幼女「お姉ちゃん、行ってきま~す」ガチャリ


女「あ……そんな……」
88 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 22:05:06.59 ID:UbJCGWE0
黒服「……」ガチャリ

博士「来たか」

幼女「あ……」

博士「随分と怯えた目をしているな」

幼女「こないで……っ」

博士「ふん……、良いか被検体。今からお前の性能評価実験を行なう」

幼女「な、なに……?」

博士「……まあ、お前は知らなくても良いことだな。腕を出せ」

幼女「え、え……?」

博士「ふん……」プスッ

幼女「あ、注射……っ……」

黒服「…………!」

博士「……これで、よしだ。005、お前は今から、ここに迷い込んだネズミを狩り尽くせ。いいな」

幼女「……………………はい」

博士「黒服」

博士「……」

幼女「行こう、アシャー、エヴィン」

ゾンビ「うー」

黒服「……っ」ガチャリ

博士「さぁて……実験は果たして成功か、それとも失敗か……」
93 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 22:14:18.71 ID:UbJCGWE0
【研究所・二階】

男「……くそ、手がかり無しだ……」

幼「手がかりはないくせに、疲労だけはたまっていくね……」

ジョン「ゾンビども、まだまだいやがるみたいだなァ」

姉「……ったく……。この部屋で二階も終わりか……」

男「どうせまた、ゾンビがいるんだろうけどさ……」

ガチャリ

幼「……」ギュィィィィィィィン

ジョン「Oh、ゾンビどもはいないぜェ」

男「ほんとだ。……しかし……広いな、この部屋」

姉「広間……?」


幼女「そうだよ……。憩いの場……、ダンスパーティのための……」

男「!?」

ジョン「オゥ、ゾンビじゃない……?」

幼「……誰……?」
96 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 22:18:36.18 ID:UbJCGWE0
幼女「誰でも良いじゃない……。それより……、一緒に踊ってよ、ネズミさん」

ジョン「マウス? 俺たちがかァ?」

幼女「……、アシャー、エヴィン、扉を閉めて」

ゾンビ「うー」

ゾンビ「あー」

ガチャン

男「ゾンビ!?」

姉「ってことは、この子も……!」

ジョン「それにしては知能高杉じゃねえか!?」

幼「あなたは……」

幼女「……お前たちには死んで貰う……」

男「くっ……!」

ジョン「中ボスってか!」

幼女「おいで、私の可愛い人形たち……」

ボトッ    ボトボトボトボトボトッ……
99 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 22:21:54.83 ID:UbJCGWE0
姉「天井、から……?」

男「落ちてくる……」

ゾンビ「うーあー」
ゾンビ「あーうー」
ゾンビ「ああー」
ゾンビ「うーおー」
ゾンビ「あーおー」

幼「いかに数が多くとも……!」

ジョン「だが、俺たち結構Tiredだぜェ……」

男「くそっ……!」

幼女「さぁ、ダンスパーティーの始まりだあ……」

幼女「みんな……踊って……」
103 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 22:27:20.60 ID:UbJCGWE0
ゾンビ「うあー」スタタッ

幼「素早いっ!?」

ゾンビ「うー」

男「させるかよっ!」パンパンパンッ

ゾンビ「う……」

男「幼、大丈夫か!?」

幼「男君……ごめん!」

ジョン「こいつら今までとは比べものにならないくらい早いぜェ!?」

姉「くそったれめ! 囲まれたら終わりだぞ!」ドゴッ

男「わかってるよ!」パンパンパン

ゾンビ「あ……」

ゾンビ「う……ぁ」

ゾンビ「あ……」

幼女「……私の可愛いお人形さんが……。でも大丈夫なの、まだまだいるから」

ドンッ ドドドドドド

ゾンビ「うあー」

男「マジかよ……」
107 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 22:34:01.90 ID:UbJCGWE0
幼「斬る! 邪魔だああああああ!」ザザザザザザザンッ

ゾンビ「うあー」

ゾンビ「あー」

幼女「うわぁ……豪快だね……。でも、まだまだ……。みんな、そこのチェーンソー女と遊んであげて……」

ゾンビ「あー」

ゾンビ「うー」

幼「っ!」

ジョン「Shit! 目標を変えて来やがったぞ!」

姉「幼ちゃん!」

男「くそっ、幼!」

幼「大丈夫、これくらい……、全部斬り捨ててやる……!」

ゾンビ「うあー……」

男「姉貴、ジョン、悪いけど他の奴を頼む! 俺は幼を!」

姉「わかってる、早く行け!」

幼「どけどけどけどけえぇぇぇぇっ!」ズガガガガガガガガガガ

男「幼! 大丈夫か! 今行く!」

幼「男君!」
109 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 22:38:10.18 ID:UbJCGWE0
幼女「……男?」

幼女「……どこかで……聞いたような……」

幼女「どうでもいいや……。みんな、その男も狙っちゃって……」

ゾンビ「あうー」

男「へっ……来いよゾンビども!」パパパパパンッ

幼「何が何でも斬り捨てる!」

ジョン「俺たちも囲みを解くぜェ!」

姉「おうよ!」ザシュッ


男「はああああああああっ!」

幼「おおおおおおおおおっ!」

ゾンビ「おーうー」

ゾンビ「うーあー」
111 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/24(月) 22:46:18.79 ID:UbJCGWE0
幼女「うーん……」

幼女「おとこ、おとこ……」

幼女「……うーん?」

幼女「……まあ、いいや……」



男「幼、後ろの敵はまかせたぞ!」

幼「うん! 背中合わせで戦うのって……なんだか漫画みたいだね」

男「だが悲しいかな現実だ! 行くぜ!」

幼「うんっ!」

男「墜ちろカトンボども!」

幼「ええいっ、寄るな、寄るなぁー!」



ジョン「Hey……、あのようじょを倒さない限り、俺たちに勝機はないんじゃねぇかァ」

姉「……ああ、そうかも知れねぇな……だけど……」

ジョン「……やれるわけねぇ……!」
146 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 18:14:04.85 ID:zPfTAZo0
幼女「……しつこいなぁ……、早く落ちてよ……!」

ゾンビ「あー」
ゾンビ「あー」
ゾンビ「うー」

男「しつこいのはそっちだっ! 次から次へと湧いて来やがって……!」

ジョン「あのようじょを倒すしかないのかァ……!?」

姉「だけど……、あんな……小さい子を……!」

男「そうだ……憎むべきは彼女じゃなくて……彼女にそうさせてる研究所の奴らだ!」
148 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 18:20:09.04 ID:zPfTAZo0
幼「……けれど彼女は、明確な敵意を持って攻撃してくる……」

男「ああ、そうだな……、でも、時折表情が変わるから……それが……」

幼「敵は排除しなくちゃ……この戦いに、終わりなんて来ない……」

男「幼……お前まさか……」

幼「……女さんに会うんでしょう! こんなところで、足を止めてるわけには……ッ!」ダッ

男「幼、待てッ! うかつに近づくと……!」

幼女「来るの? 遊んでくれるの? 踊ってくれる? あははっ、アナベル、エギーユ、カリウス……やっちゃえっ」

ゾンビ「あああああああああ!」ダダダダダッ
ゾンビ「おおおおおおおおお!」ダダダダダッ
ゾンビ「ううううううううう!」ダダダダダッ

姉「あのゾンビ、素早い!」
149 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 18:22:59.07 ID:zPfTAZo0
男「幼!」

幼「確かに早い……けどっ!」

ゾンビ「あああああああああ!」

幼「所詮はゾンビよっ!」ズシャッ

ゾンビ「あああああ……あ……」

幼「……ふん、私を敵に回すはまだまだ未熟! お前も落ちろぉっ!」ズザッ

ゾンビ「おおおおおおおお……」

幼「さぁ、どう……? 切り札はやられてるけど?」

幼女「あははっ、お姉ちゃんはまだまだ踊れそうだね……。じゃあ……」

幼「……?」

幼女「……おいで、私のお人形さん!」

幼「まだか……!」
150 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 18:26:53.27 ID:zPfTAZo0
男「幼、少し下がれ! 無理しすぎだ!」

幼「まだまだ! 男君を先に行かせるんだ……、そのためには!」

男「幼、落ち着け!」

ジョン「そうだぜェ! ユーは少しクールダウンしろォ!」

幼「私は……私は冷静だぁぁぁぁっ!」

男「どこが冷静だよ……!」

幼「敵はみんな切り刻む! 最後はお前もだ!」

幼女「あは、出来るかな?」

幼「出来る出来ないじゃない……、やるんだっ! あああああああああッ!」ザンッ
151 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/08/25(火) 18:28:53.17 ID:zPfTAZo0
幼女「踊れ踊れー、あははっ」

幼女「……うーん……」

幼女「頭がクラクラするなぁ……」

幼女「……そういえば……」

幼女「おとこ……って、誰?」

幼女「うーん……」

幼女「…………みんな、あいつらを踊らせてあげて!」

ゾンビ「ああああああううう!」
154 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 18:32:18.71 ID:zPfTAZo0
幼(ゾンビを操っているのはあの幼女……!)

幼(ゾンビは無尽蔵に出てくるし、私たちの体力は無限じゃない!)

幼(だったら……!)

幼(幼女を倒して終わりにする!)

幼「悪いけど……殺す!」

男「幼、待てッ! あんな小さい子を……!」

ジョン「そうだぜェ! あのようじょを殺したら……俺たちは後悔するぞォ!?」

幼「大丈夫」

男「何がだよ……」

幼「罪を被るのも、後悔するのも……そんな煩わしいことは、全部私が引き受けるから」

男「な……幼!」

幼「男君は女さんのことだけ気にしてればいいの!」ダッ
156 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 18:35:26.01 ID:zPfTAZo0
姉「……あーくそ、格段に早くなってやがる! 男、あたしらがこいつらを引き受けるから……」

ジョン「ボーイはデンジャラスガールを止めろ! そうしなきゃ……あの子は一生引きずるぜェ!」

男「わかってる! 頼むぜ二人とも!」

姉「お姉ちゃんを信じろって! しくじんなよ!」

男「おう!」
158 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 18:42:05.67 ID:zPfTAZo0
幼「はあああああああっ!」

幼女「くるの? させないけどねっ!」

ゾンビ「うー」
ゾンビ「あー」
ゾンビ「おー」

幼「肉の壁? ……無意味だねッ!」ザ、ザザザザンッ

ゾンビ「あ……」
ゾンビ「お……」
ゾンビ「う……」

幼女「横一文字で斬り裂いた……。あはは、やるじゃん、イカれたお姉ちゃん♪」

幼「君もすぐにこうしてやるさ!」

男「待てよ、幼!」
160 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 18:46:18.60 ID:zPfTAZo0
幼「男君……?」

幼女「おとこ……」

男「落ち付けって……、言ってんだろ……」

幼「……止めても無駄だよ、これが一番正しい選択だもん」

男「それはわかってる」

幼「じゃあ……!」

男「でも、この子は被害者だろ!? 俺たちが助けようとしてる、女と同じなんだよ!」

幼「……」

男「だから俺は……出来るなら、この子も助けたい。そりゃあ、青臭いガキの理想論だ、無茶なのはわかってる」

幼「……」

男「けどさ、こんな小さい子を殺したら……お前も俺も、一生引きずっちまうだろ……。この子は、ゾンビじゃないんだぜ……?」

幼「でも……、この子がゾンビを操ってる! それなら!」

男「この子は……何かの方法で操られてるんだ……。見ろ、彼女を」

幼女「……?」
161 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 18:50:16.98 ID:zPfTAZo0
ゾンビ「うー……!」

ジョン「オゥ、こいつはどうしたゾンビども! バッテリー切れかァ!?」

姉「へっ、そうとわかりゃあこっちのもんだ!」

ドガッ、バキッ、メチャッ


男「な? 彼女が少しおとなしくなると、ゾンビどもの動きも鈍る……」

幼「……」

男「だから、まだ可能性はあるんだよ。彼女を相手にしなくても良い可能性がさ」

幼「…………わかったよ……。男君がそこまで言うのなら、私からは何も言えないや」

男「ありがとう……幼」
162 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 18:53:22.99 ID:zPfTAZo0
幼女「……ぁ、いた、いたいよぉ……っ」

幼女「頭が……頭が……痛い……!」

幼女「ああああああ…………!」

ゾンビ「……うー」

幼女「あ、うわぁぁぁん、いたいよぉぉ……」

男「おい、大丈夫か!?」

幼女「い、いたいの……頭が……たすけて……」

幼「……男君、私は今の内にゾンビを!」

男「あ、ああ!」

幼女「ああああああ、いやあああああああああ」

男「だ、大丈夫だから、落ち着け、落ち着いて……、な?」
165 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 19:04:32.04 ID:zPfTAZo0
【研究所内部】

幼女『ああああああ、いやあああああああああ』

博士「ちっ……、もう禁断症状か」

博士「役に立たんな……」

博士「脳波でゾンビをコントロール……、感受性豊かなガキなら成功するかと思ったのだが……」

博士「……ふん、いても目障りなだけか……。黒服」

黒服「……」

博士「被検体003を出す。皆殺しにさせろ」

黒服「……は、奴を……ですか」

博士「被検体の中でもかなり頑丈かつ凶暴な003だ。……面白くなってきた」
166 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 19:10:25.41 ID:zPfTAZo0
幼女「……あ、あぁ……」

男「落ち着いたかい?」

幼女「う……ん……」

姉「男、でかした。部屋のゾンビどもは狩り尽くしたぜ」

ジョン「上から落ちてくる気配もないぜェ!」

幼「男君の言うとおりだったね……、私、もう少し落ち着かないとダメかも」

男「いや、でも……、ここのゾンビを倒し尽くせたのはお前のおかげだよ」

幼「えへへ、ありがとう」

男「さて……、この子に研究所の場所を聞かないとな……」

幼女「…………けんきゅうじょ……」
168 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 19:15:33.01 ID:zPfTAZo0
男「ああ、そうだ……。そこに、俺の大事な人が閉じ込められるんだ」

幼女「だいじな……ひと……。お姉ちゃんも同じ事、言ってた……」

幼「お姉ちゃん?」

姉「それってもしかして、女ちゃんじゃ」

幼女「……女お姉ちゃ――」

ドゴォォォォンッ

ジョン「うおっぷ! な、何が起こってんだァ!?」

姉「天井が落ちてきたんだよ!」

ジョン「何でだよォ!?」

003「……ひゃひゃひゃ、ひゃひゃひゃひゃひゃ!」

幼「……なに、あいつは……」
170 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 19:18:51.68 ID:zPfTAZo0
姉「でっか……」

ジョン「あのでぶちんの五倍はあるぜェ!?」

男「でぶちんって……キモオタ君のこと?」

ジョン「イエスッ!」

デブ「……で、デブって言うなあああああああああ! ひゃひゃひゃひゃひゃ!」

幼「な、何なのよ……!」

デブ「ひゃひゃひゃ! 落ちろォー!」

男「!」

デブ「唸れ鉄拳! アイアァァァァン、ナッコォォォォォ!」

ズガァンッ

ジョン「ヘイヘイヘイ! 床に亀裂が走ってるぜ、おい!」

姉「なんて膂力だよ……!」
173 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 19:21:45.10 ID:zPfTAZo0
幼「っ! 男君、亀裂の先に……!」

男「え?」


幼女「ふぇ……」


男「あの子ッ!」

幼「落ちちゃう……!」

男(どうする! あの子に一番近いのは俺だ!)

男(……俺が助けた言ったんだ、俺が助けなくてどうすんだ!)

男「うおおおおおおおっ、間に合え、間に合えぇぇぇぇぇっ!」ダッ

幼女「床が……」

男「君ッ!」ダキッ!

幼女「ぇ……」ギュッ

男「みんな、悪い……!」

姉「え、男っ!?」

男「うああああああああっ!」

ヒュウゥゥゥゥゥゥゥ……
174 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 19:25:19.08 ID:zPfTAZo0
ジョン「ヘイヘイヘイ……冗談だろ?」

姉「男が……下に……落ちた……?」

幼「で、でもっ、下には部屋があるはず……!」

003「ひゃひゃひゃ、無駄だなぁ……」

姉「!」

003「下は……『奴ら』で一杯だぁ……。死んだも同然……ひゃひゃひゃひゃひゃ!」

幼「っ! そんなの、ハッタリに決まってる!」

003「まぁ、信じなくても良いけどなぁ……? ひゃひゃひゃ、どうせあいつにお前らは出会えない……」

ジョン「どういう意味だァ? このFat Man! 解答次第によっちゃあ、容赦しねぇぜェ!」

003「お前らを殺すぅぅぅぅ! ひゃひゃひゃひゃひゃ!」

姉「……男……、無事でいてよ……」

幼「お姉さん、男君に会うためにも!」

姉「ああ……、そうだね、ここでこいつを倒すよ……!」
175 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 19:28:34.70 ID:zPfTAZo0
ザガッズガッズガッ……ドシィンッ

男「うごぉぁっ……」

幼女「…………っ」

男「く、……この子は……無事か……」

幼女「…………」

男「くそ……いたいな……」

幼女「…………」

男「体が……うごかねぇ……っ」

幼女「…………」

男「はやく、みんなを……」

ゾンビ「うー……?」

男「!」
205 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 22:15:57.89 ID:zPfTAZo0
ゾンビ「あー」
ゾンビ「うー」
ゾンビ「おー」

ワラワラ……

男「く、くそっ……! 体に、力が……!」

幼女「…………」

男「銃を……せめて銃を取れたら……!」

幼女「…………」

男「ダメだ……、腕も動かねぇっ……」

幼女「…………」

男「く、そっ……!」

ゾンビ「あああああああー」

男「終わりかよ……! こんな、ところで……!」
206 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 22:19:31.28 ID:zPfTAZo0
男「あれだけ大口叩いて……、また俺は……!」

男「この子を守るとか……、これじゃあ、全然意味がない……!」」

男「俺もこの子も、喰われて終わり……」

男「みんなを残して先に逝くのか……?」

男「母さんや父さんだけじゃなく……、女さんも……」

男「惚れた女一人守れないのかよ……っ! 俺はッ!」

男「くそ、くそおおおおおおおおっ!」

ゾンビ「ああああああああ」グイッ

男「……女さん……すまない……!」





『ここまで来ておいて、諦めるのか?』
207 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 22:24:19.43 ID:zPfTAZo0
黒服「……ふっ」ドカッ

ゾンビ「あー……」

黒服「……はっ」グキッ

ゾンビ「う……」

黒服「……!」シュッ

ゾンビ「お……」

男「あ、れは……、空港の……?」

黒服「……貴様がまさか生き残ってここまで辿り着くとは思いもしなかった」

男「……へっ……」

黒服「だが、期待はずれだ」

男「何を……」

黒服「……空港で見た時の貴様は……、男だった」

男「……」

黒服「今の貴様は……、単なる敗者だ」

男「!」
208 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 22:31:30.23 ID:zPfTAZo0
黒服「……あの瞳には覚悟があった」

男「何だと……? 今だって……」

黒服「いや、ない」ズカッ

ゾンビ「あ……」

黒服「……貴様は諦めていた」

男「……」

黒服「……被検体004を取り戻すのだろう?」

男「その名前で……」

黒服「……今の貴様が何をほざこうと、それは負け犬の叫び声だ」

男「っ……」

黒服「……あの時の覚悟を見せろ。そうでなくては……貴様にリークした意味がない」

男「リーク……だと……」

黒服「……良いか貴様、今は試練の時だ。乗り越えろ、その壁を。乗り越えて見せろ」

男「……ぐ、勝手な事言ってくれるぜ……」

黒服「……出来ないのか? あれだけの大口を叩いたんだ……。それともあれは……004の気を引くための演技か?」

男「っ!」
209 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 22:36:48.14 ID:zPfTAZo0
男「あれは……偽りない俺の本心だ……!」

黒服「ならば、今すぐここでそれを証明しろ。証明してみせるんだな」

男「……やったろうじゃねえか……!」

黒服「……ふん」

男「見せてやるよ……、俺の言葉が、嘘じゃなかったことをな……!」

男「っ、……く、あぁ……っ! うあああああああああああああっ!」

男「……右、足……! ひだり、足…………!」

男「立て、立つんだ……俺の……言葉が……偽りでないことの証のために!」

男「ああああああああああああああああああああああああッ!」

黒服「……ふ、出来るじゃないか」

男「お前の言うとおり……、俺は諦めてたのかも知れない……」

黒服「……」

男「だが、目が覚めた……! 礼を言うぜ……!」

黒服「……そんな下らないことに時間を費やすのなら、ここの奴らを殲滅することを考えるのだな」

男「言われなくてもっ……!」
212 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 22:44:55.28 ID:zPfTAZo0
男「……うらああああああっ!」バンバンバンッ

黒服「……はあっ!」ドンッ

ゾンビ「うあー……」

ゾンビ「あうあ……」

男(柔術……? ……しかし、強いな……)

黒服「……終わりだ。……っ!」ボキッ

ゾンビ「ぅ……」

黒服「……殲滅完了」

男「は、はは……やべ、力が抜けた……」ドサッ

黒服「……これをやろう」ヒョイッ

男「……?」

黒服「……薬だ。今の貴様は、激しく体力を消耗している。それを飲めば、一時間ほどで容態はマシになる」

男「……なんで、これを……?」

黒服「……貴様には死なれると困る」

男「なんでだ? お前は……俺たちの敵だろ?」

黒服「……敵だ」

男「じゃあ……」

黒服「……敵にも、敵はいる」

男「は……?」

黒服「……研究施設は、地下にある……。柱を探すんだな」

男「柱……」

黒服「……貴様を信じて待っている者がいる。それを忘れるな」

男「あ……おい……!」
215 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 22:49:38.68 ID:zPfTAZo0
男「なんなんだ……?」

男「とにかく、薬か……」

男「怪しい……が、あいつは……、悪い奴ではないような……」

男「どうする……?」

男「……」

男「……」

男「……」

男「飲もう。……今は、あいつを……信じるしかない」

ゴクッ

男「……はぁっ…………、な、なんだ……、視界が、ぼやける……! 体が、熱い……!」

男「……くっ、あ、……なんだ、これは……!」
216 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 22:51:17.05 ID:zPfTAZo0
男「うあぁぁ…………っ!」

男「…………」

男「…………」

男「…………」

男「…………」

男「…………」

男「…………」

男「…………」

男「…………ぐぅ」
220 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 22:55:22.58 ID:zPfTAZo0
幼女「…………ん、ぁ……」

幼女「わたし……どうして?」

幼女「アナベル? エギーユ、カリウス……どこ? キース、エイパー、ベルナルド……。……みんな、どこ?」

幼女「いない……。どうして……?」

幼女「ねぇ……みんなぁ……」

幼女「お願いだよ……、私と遊んで……」

幼女「ねぇ……。……ぐすっ……ふぇぇぇぇん……」

男「……あ……?」

幼女「う、ぐすっ……、みんなぁ……どこぉ……」

男「泣いてる……? あの……君……」

幼女「うわぁぁぁん……」
223 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/25(火) 23:00:08.21 ID:zPfTAZo0
男「子供に……泣かれた……」

幼女「うわぁぁぁぁん……、みんあ、みんなぁ……」

男(こういう時って、頭を撫でてあげると良いのかな……)

男「立ち上がって……。あれ……あれ? 体が、いたくない……」

男「あの薬の……おかげか? なんにせよありがたい……」

幼女「ふぇぇぇん…………。みんな、いないよぉ……」

男「あの、君……」

幼女「どうして……。ねぇ……。遊ぼうよぉ……」

男「……泣かないで、ね?」ナデナデ

幼女「カリウス……? じゃ、ない……」

男「ごめんね……君のお人形じゃないけど……、これくらいは、俺にも出来るから」ナデナデ
264 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/26(水) 23:05:16.84 ID:3U8fv2.0
幼女「……お兄ちゃん……う、ぐすっ……」

男「……良い子だから、ね……? 泣かないで」ナデナデ

幼女「うん……」

男「君のお友達は、遠いところに行ったんだ」

幼女「そうなの……?」

男「うん。こう言ってたよ。……『僕たちがいなくても泣かないで』だって」

幼女「……アナベルたちが……?」

男「ああ、そうさ。君のことを最後まで思ってたよ」

幼女「……うん……」

男「だから、君は、彼らを安心させてあげなくちゃいけないよ」

幼女「わかった……わかったよ……」

男(……俺が彼女の『お友達』を殺したのにな……)
268 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/26(水) 23:15:14.79 ID:3U8fv2.0
男「……どう、落ち着いたかい?」

幼女「う、うん……」

男「……俺は男。君は……?」

幼女「よ、幼女……」

男「幼女ちゃんか。……こんなに小さいのに……」

幼女「どうしたの、お兄ちゃん?」

男「お兄ちゃん……。もっと呼んでくださ――いや、幼女ちゃん、俺はこれから行かないといけないところがあるんだ」

幼女「うん」

男「それで、君に少し聞きたいことがある。……君を嫌な気持ちにさせてしまうかも知れないけれど、ごめんね」

幼女「う、うん……」

男「研究所には、どうやっていくんだい?」

幼女「!」
271 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/26(水) 23:24:56.37 ID:3U8fv2.0
幼女「お兄ちゃんは……あそこに行くの……?」

男「ああ、行く。行かなきゃならない。あそこには、女さんがいるんだ」

幼女「お姉ちゃんが……」

男「……どうやって、行けばいいのかな」

幼女「……あそこには……行きたくないよ……」

男「……どうして?」

幼女「嫌な人がいるの……。いつも、気持ち悪く笑っている人……。怖いの……」

男「……」

幼女「私たちを……、物みたいに……」

男「!」

幼女「あそこに行ったら、お兄ちゃん……あいつに殺されちゃうよ!」

男「……ああ、そうかもしれないね」

幼女「え……」

男「だけど、それでも俺は行かなくちゃならない。そいつを倒さなくちゃならないんだ」
272 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/26(水) 23:29:51.29 ID:3U8fv2.0
男「俺は、女さんを救うと決めた。約束もした」

男「死ぬ覚悟だって……今はもう、ちゃんと出来てる」

男「だけどその前に……、女さんや、君を酷い目に遭わせたそいつを……」

男「一発殴らなきゃ気が済まない。……そうだろ?」

男「君たちは、そいつのせいでこんなところに閉じ込められて……」

男「欲しくもなかった力を手に入れて……」

男「そいつは神様気取りなんだろうけど……、そんなのは間違ってる」

男「それを、叩き込みに行くんだ。……だから、幼女ちゃん……」

幼女「……真ん中の、おっきい柱に……エレベーターがあるの……」

男「!」

幼女「そこから、ずっと……降りるの……」

男「そうか……、そうなのか……。ようやく、ようやく見つけたぞ……!」

ドガシャァァァン!

男「!」

男「……上……? ……上! みんなが……ッ!」
380 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 20:32:28.50 ID:qTd3WwM0
 

男「みんなが……!」

幼女「お兄ちゃん……行くの?」

男「ああ、みんながいるんだ、あそこには!」

幼女「やめておいた方が良いよ……」

男「え……?」

幼女「被検体003は……凶暴で……お兄ちゃん一人の手には負えない」

男「そりゃそうだろうな。でも、あそこにはみんながいる……。だろ?」

幼女「ううん……無駄だよ……。勝てないよ、絶対」

男「……どうして……、そんなことが言える?」

幼女「……」スッ

男「上……?」

ボトッ

男「!」
381 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 20:39:03.05 ID:qTd3WwM0
幼女「……」

男「おい……なんだよあれ……」

幼女「……」

男「腕……? 腕……。誰の……? 腕だ……?」

幼女「お兄ちゃんは、お姉ちゃんを助けるんでしょ……? 早く、行かないと……」

男「で、でも、あれは……誰の腕だ……? ジョンか? 姉貴か? 幼か……?」

幼女「そんなこと……気にしてる暇無いでしょ……!」

男「だけど、みんなは俺の仲間なんだ!」

幼女「お姉ちゃんとみんな、どっちが大切なの!?」

男「……!」




女『ずっと、一緒にいたい……』





男「くそ……、また俺は……口だけで救えなかったのか……!」

幼女「お兄ちゃん……」

男「幼女ちゃん、行こう……。俺がもたもたしている間にも……みんなを助けられるチャンスが減っていく……」

幼女「うん……」

男(あの腕が……誰のものかはわからない……。……くそっ!)

タタタタタタタッ
384 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 20:43:35.63 ID:qTd3WwMo
003「ひゃひゃひゃ! どうだよぉ……?」

幼「……」

姉「くっ……、うっ……おぇ…………」

ジョン「ヘイヘイヘイ! しっかりしてくれよ二人ともよォ!」

003「ひゃひゃ、ひゃひゃひゃひゃひゃ!」

ジョン「ったく……これじゃ俺が頑張るしないじゃねぇかァ? ヒーローとしてなァ」

003「訳わからんこといってんじゃねえぇぇ! ひゃひゃひゃひゃひゃ!」



ジョン「わからせてやるよ、ファットボーイ。テメエの足りないおつむに、思い切りな」


387 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 20:49:28.49 ID:qTd3WwM0
男「幼女ちゃん、どこにエレベーターがあるの!?」

幼女「えっとね……、あそこを上って……!」

男「了解!」

タタタタタッ

ゾンビ「うああああああああああ」
ゾンビ「あああああああああああ」
ゾンビ「おおおおおおおおおおお」

男「くそ、出やがった!」

幼女「待って……! お願い……みんな、今は私たちを……」

ゾンビ「……うあー」

男「す、凄い……」

幼女「えへへ。みんなが出てきたら任せてよ」

男「ああ、頼む!」

389 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 20:51:12.87 ID:qTd3WwMo
キモオタ「……ん? みんな、何か聞こえなかったかい?」

タカシ「はぁ? 何も聞こえないぞ?」

マユミ「ちょっと待って……。微かに、だけど……、地響きみたいな、そんな音がする」

タカシ「マジか?」

キモオタ「……もしかして、男君達かな」

タカシ「多分そうだな……。あいつら大丈夫か?」

マユミ「助けに行く? ここはもう何もないし」

キモオタ「そうだね……。男君達のところに向かおう!」
392 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 20:55:34.06 ID:qTd3WwMo
男「これが……柱……」

幼女「そう」

男「ここには来たけど……、でも、気づかなかったぞ……」

幼女「……仕方ないよ。……この本棚に、スイッチがあるの」

ポチッ

ガタタタタタタタタ

男「う、うわっ……」

幼女「来るよ……。エレベーター……。……地獄への片道切符」

男「……望むところだ」

幼女「うん」
393 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 20:56:42.57 ID:qTd3WwM0
男「これが……柱……」

幼女「そう」

男「ここには来たけど……、でも、気づかなかったぞ……」

幼女「……仕方ないよ。……この本棚に、スイッチがあるの」

ポチッ

ガタタタタタタタタ

男「う、うわっ……」

幼女「来るよ……。エレベーター……。……地獄への片道切符」

男「……望むところだ」

幼女「うん」
395 :やってもうた ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 21:01:24.42 ID:qTd3WwM0
ガチャッ

男「……狭くて暗いね」

幼女「仕方ないよ……」

男「で、どうして君は俺に抱きついているのかな」

幼女「……暗いのは、あまり好きじゃないから」

男「そっか……。なぁ、幼女ちゃん」

幼女「なに?」

男「……もしも俺が死にそうになったら、君はちゃんと逃げるんだよ」

幼女「……どこに?」

男「んー……まだ、この世界のどこかには、きっと安全な場所があるはずだからさ」

幼女「探せってこと?」

男「出来るなら」

幼女「考えとくね」

男「そいつはどうも」
396 :なんかパー速重いね ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 21:05:35.79 ID:qTd3WwM0
幼女「……お兄ちゃん、心配?」

男「何が?」

幼女「全部。……これからどうなっちゃうかとか」

男「そうだなあ……。今は、女さんを取り戻すことしか考えてないや」

幼女「そうなんだ」

男「俺にとってかけがえのないものは、やっぱり女さんやみんなとの思い出だから」

男「引きこもりだった俺に、色々大事なことを教えてくれたのは、女さんだし」

男「……もしも全部が終わったら、その時はその時だよ」

幼女「……そんな考え方、嫌いじゃないや」

男「あまり俺に似ると将来困るよ。はは」

ポーン

男「着いたか……」

幼女「うん……」

ギィィィ
399 :なんかパー速重いね ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 21:13:46.47 ID:qTd3WwM0
博士「……よく来たね、ネズミ君」

男「……あんたは……?」

幼女「ひっ……」

男「……そうか、あんたが……!」

博士「……ネズミ君、いやはやここまで来てもらって悪いが……」

男「てめえ!」

黒服「被検体005は返してもらおう」

スチャッ

男「っ!」

パンパンパン

男「っと、幼女ちゃん、逃げろ!」

幼女「……いや、いやぁ……」

男「幼女ちゃん!」

博士「無駄だ。……005、回収完了」

男「お前ええ! 放せ! 幼女ちゃんを放さなきゃ、撃つぞ!」

博士「やってみるかね?」

男「っ、てめえを殺してここで終わりだ糞野郎がああああああああ!」

パンッ!
400 :なんかパー速重いね ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 21:19:28.79 ID:qTd3WwM0
ガキィンッ

男「なに……?」

博士「ははは、はははははははは! 私が策無しで貴様のような猿の前に現われるとでも思っているのか?」

博士「だとしたら貴様は愛すべき馬鹿だよ……。くくくくく!」

男「てめえ……!」

博士「何でも被検体004を取り戻しに来たそうだが……」

男「その名前で女さんを呼ぶな!」

博士「無駄だと言うことが何故わからないのか……。学習能力がないものは本当に相手にしにくい」

男「お前はあああああああ!」

パンパンパンッ

博士「無駄だというのに……」

男「何でだよ! 死ねよ、死ねよぉぉ!」

博士「……黒服」

黒服「……」

スチャッ



パァンッ

男「ぐっ……!?」
401 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 21:26:09.39 ID:qTd3WwM0
幼女「お兄ちゃんっ!?」

男「あ……が……っ……!」

黒服「……」

博士「黒服。どうして腕だけなんだ?」

黒服「……奴らならまだしも、こいつは生身の人間です」

博士「お前にも情はあると? ふん……、まあいい。そいつの処理は任せる」

黒服「……はっ」

博士「奴らの餌にするなり、煮るなり焼くなり好きにしろ」

黒服「……」

博士「005は連れて行く」

黒服「……」

幼女「お兄ちゃん! お兄ちゃん! お姉ちゃんを助けるんでしょ、お兄ちゃん!」

男「あ、……く…………」

男(そういや俺……銃で撃たれたこととか無いんだな……。こんなに、痛いのか……)
402 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 21:30:11.30 ID:qTd3WwM0
黒服「立てるか」

男「んな……わけ…………あがぁっ……」

黒服「憎まれ口は叩けるわけだ……。肩を貸してやる」

男「はぁっ……、っ、ぐ……」

黒服「……すまないな。痛いだろう」

男「…………たり、まえ……」

黒服「……すぐに楽にしてやる……」

男(それは……どういう……意味……)

黒服「……」



黒服「気絶したのか。……まあいい、こちらとしてもやりやすくはなる」
403 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 21:36:28.43 ID:qTd3WwM0
003「ひゃひゃひゃ!」

ブゥン!

ジョン「アヒョーゥオ! 腕がそのまま武器になるとは流石だぜェ!」

003「うるさい……!」

ジョン「しっかし……この状況は流石にきついぜェ……」

ジョン(……デンジャラスガールは気絶……)

幼「……」

ジョン(ビッグシスターは立ち上がる気力無し)

姉「……く、……そ……」

ジョン(タカシ達が来てくれるのをwaitするしか無いかァ?)

003「ぬぅん!」

ジョン「っと、力業だけじゃ、勝てるもんも勝てないぜェ!?」

003「黙れぇ!」

ジョン「ハハッ、ヒーローの戦い方……じっくり教えてやるぜェ!」
409 :すいませんでした ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 21:48:15.17 ID:qTd3WwM0
タカシ「ったく、つーかあいつらどの部屋にいやがんだよ!」

マユミ「多分こっちで合ってるとは思うけど……」

キモオタ「大分音は近づいてる……。大丈夫だ! 早く行こう!」






003「ぬぅんっ!」

ジョン「デンジャラスガール……、ユーの得物、借りるぜェ!」

003「チェーンソーか……。無駄だ!」

ジョン「……無駄かどうかは、俺が決めるんだよォ!」

003「ぐおらっ!」

ジョン(奴の攻撃パターンは左、右と順番に腕を振り回すだけ……)

ジョン(何度かそれを繰り返した後……隙が出来る!)

ジョン「それまでは逃げ続けるぜぇぇぇ!」
410 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 21:53:51.03 ID:qTd3WwM0
003「ふぅ!」

ジョン「よっと!」

003「はあ!」

ジョン「甘いぜ」

003「ぬおっ!」

ジョン「ふっ……見えたぜ、隙がな!」

003「何……! 胸元に迫って――」

ジョン「グッバイ……ファットボーイ」ギュイイイイイイインン

ザシュッ

ジョン「……ん?」

003「ひゃひゃひゃ! 効くわけねぇよ……」

ジョン「くっ、なんだこいつ……! 鉄板でも埋め込まれてるってのかよォ!」

003「だぁ~いせぇ~いかぁ~い」

ジョン「ちっ……!」
412 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 22:00:49.40 ID:qTd3WwM0
ジョン「弱点はあるのかよォ……」

ジョン(頭……、だが、それは背丈的にきつい……)

ジョン(それに、胸に仕込んでやがるんだ……。頭にも埋め込んでるに違いねェ!)

ジョン(じゃあこれで詰みか?)

ジョン(いや、違う……全ッ然違うぜェ……)

ジョン(斬れないのなら……砕けばいい……)

ジョン(その方法は……、タカシ達が握っている……!)

ジョン(タカシ達が来るまで、俺は……)

ジョン(とにかく奴を疲れさせる……!)

003「覚悟は良いかよ、ひゃひゃひゃ!」

ジョン「やることは決まった! 行くぜェ!」
413 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 22:07:30.63 ID:qTd3WwM0
003「ん……」

ジョン「ヘイ、腕が止まったぜェ!?」

003「何もお前だけ相手にしなくても良いと思ってなぁ、ひゃひゃひゃ!」

ジョン「!」

姉「……ぐ……」

幼「……」

ジョン「そいつは卑怯じゃねえかァ? 男なら正々堂々勝負しろよォ!」

003「いやなこった……。この娘可愛いじゃないか……ひゃひゃひゃ!」

ジョン「そのデンジャラスガールは危険だからやめといた方が良いぜェ。ついでに、そっちのビッグシスターもなァ……」

003「やな、こった……!」

ジョン「てめえ、何するつもりだよォ!」

ガシッ

003「握る」

姉「あ、う……」

ジョン「ヘイヘイヘイヘイ! ちょっとそれはレディに対する態度としては間違いじゃねぇかァ!?」

003「勝てばいいのさ、ひゃひゃひゃひゃひゃ!」
414 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 22:13:30.56 ID:qTd3WwM0
ジョン(くそ、どうする! ビッグシスターに何かあったら、俺はボーイに顔向け出来ねェ!)

ジョン(いや、そんなんじゃねェ……。仲間を傷つけられてたまるかよォ!)

ジョン(……ん……? 奴の指は……仕込まれてるのか……?)

ジョン(試す価値だけはある……!)

ジョン「ヘイ、ファットボーイ! プリンセスは返してもらうぜェ!」

003「出来るのかよ、ひゃひゃひゃ!」

ジョン「正直聞き飽きた言葉だがなァ……。出来る出来ないじゃなくて、やるんだよォ!」ギュイィィィィィン

003「ひゃひゃひゃ! 死ぬ気かよ!」

ジョン「生きるために戦ってる!」
415 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 22:26:39.73 ID:qTd3WwM0
ジョン「喰らえってんだよォォォォォ!」

ジョン「ガール直伝! 天翔龍閃!」

003「ひゃひゃ、どこを狙って――」

ジョン「俺のこの手が光って唸る、お前を倒せと轟き叫ぶゥ! ああああああああああっ!」

ザシュッ

003「ひ、ひいっ……!?」

ジョン「ビンゴォ! 流石にそこまでは仕込みきれなかったってかァ!?」

姉「っ、……」

ジョン「おっといけねぇ、レディは丁重に扱わねぇとなァ……」

ダキッ(お姫様だっこ)

姉「……ん……」

ジョン「……おっといけねェ……、寝ているレディを襲うのは反則だ」

003「お、俺の指が……ひゃひゃひゃ……」

ジョン「……いける……!」
419 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 22:51:02.93 ID:qTd3WwM0
ジョン「らああああああああああっ!」

キモオタ「タカシ、掃射だ!」

タカシ「あいよ!」

バババババババババババ

ジョン「来たか……!」ニヤリ

003「仲間かよ、ひゃひゃひゃ! だが、何人来ようと同じ事だよぉ!」

キモオタ「ジョン! 男君は!」

ジョン「ボーイは色々あって別行動中だ! それよりでぶちん、ダイナマイトはあるかァ!?」

キモオタ「ダイナマイト? あるけど、それをどうするんだい!?」

ジョン「使うに決まってんだろうがよォ!」

003「ごちゃごちゃうるさいんだよ、ひゃひゃひゃ!」

マユミ「……一閃!」

シャッ

003「ちっ……」

ジョン「ナイスフォロー!」

マユミ「任せといて」
420 : ◆XtpqcHhpns 2009/08/30(日) 22:58:56.26 ID:qTd3WwM0
タカシ「おいおいおい……、チェーンソー女も、男の姉貴もダウン中かよ」

ジョン「ああ、だからすまねぇがタカシ、彼女らを連れて逃げてくれよ」

タカシ「は?」

ジョン「でぶちん、ダイナマイトをくれよォ」

キモオタ「う、うん……」

ジョン「タカシ、ライターだ」

タカシ「ライター……?」ヒョイッ

ジョン「ハハッ、こいつは行けるぜ……! 奴を破壊するには大爆発しかねェ!」

マユミ「あんた、何言って……」

ジョン「だからァ? ヒーローであるこの俺がァ……」



ジョン「奴に突っ込む!」

キモオタ「そんな無茶な!」

ジョン「ダイナマイトを投げただけでは奴に致命傷は与えられねェ……」

ジョン「なら、ギリギリまで近くにいた方が良いだろォ?」

タカシ「んなことしたら、お前が死ぬだろ!」

ジョン「ここにいたって、みんなが死んじまう……。なら、俺一人の犠牲で済めば楽な話だろォ」

マユミ「ちょ、ちょっと……! いくら何でも無茶苦茶……」
716 : ◆XtpqcHhpns 2009/10/29(木) 21:10:57.94 ID:gMG1AQ20
 

ジョン「俺は面白黒人だゼェ? 死ぬわけがねえだろ?」

マユミ「何言って……」

キモオタ「……。ジョン……」

ジョン「どうしたでぶちん」

キモオタ「……任せた」

ジョン「それでいい……それでなあ」

タカシ「な、キモオタ、おい!」

キモオタ「覚悟を決めたんだよ……ジョンは。その覚悟は、僕たちの言葉でどうこうできるもんじゃない」

マユミ「だからってここで無駄に命を散らしても……」

ジョン「無駄じゃないゼェ。仲間を助けられること……これ以上の幸せはねぇ」

タカシ「ジョン……」

ジョン「行きな! ガールとボーイを助けるんだ!」

キモオタ「……ジョン、君に会えてよかったよ。君は、僕が見た中でも一番の漢だ」

ジョン「嬉しい事言ってくれるじゃないの」
717 : ◆XtpqcHhpns 2009/10/29(木) 21:17:12.36 ID:gMG1AQ20
003「ゴチャゴチャ五月蠅いんだよ!」

ジョン「大丈夫、話は終わった。俺とお前で素敵にランデブーだぜェッ!」

003「ああああああああああっ!」

ジョン(キモオタ達は逃げた……。俺はここでリタイアだ……)

ジョン(ボーイ……)

ジョン「女を泣かせる奴は最低だって、よく覚えておけよおおおおおぉぉっ!」

003「!?」

ジョン「ジョン・スミス・ダイナマイトボンバーァァァァァァァァ!」

003「は、離せっ!」





ジョン「吹き飛べ、この化け物がよぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!」


ドガァァァァァァアンンッ
718 : ◆XtpqcHhpns 2009/10/29(木) 21:19:14.81 ID:gMG1AQ20
マユミ「あ……ああ…………」

タカシ「くっ……」

キモオタ「……行こう、みんな」

幼「ん……」

姉「……く」

キモオタ「……男君はどこにいったんだろう……」

マユミ「……」

タカシ「……探さなくちゃな……」
721 : ◆XtpqcHhpns 2009/10/29(木) 21:29:46.08 ID:gMG1AQ20
【地下・監獄】

男「がふっ……」

おっさん「……む…………人間? 数ヶ月ぶりに見たな」

黒服「……どうも」

おっさん「なんだ、お前が連れてきたのか……」

黒服「ええ」

おっさん「どうしたんだ?」

黒服「彼の腕から、銃弾を取り除いていただきたい」

おっさん「撃ったか」

黒服「仕方ありませんでした」

おっさん「道具がないが」

黒服「ここに」

おっさん「用意が良いな。……それにしても、何故こんな少年が……」

黒服「被検体003を取り戻すために」

おっさん「……ああ……キャリアーか……」
797 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:04:51.71 ID:hMDctsc0
おっさん「こいつは一体誰なんだ?」

黒服「被検体004の……恋人……なのでしょうか。わかりません」

おっさん「フン、恋人のために単身乗り込んできたってところか。泣かせるね」

黒服「……いい加減、博士のやり方は目に余ります」

おっさん「……」

黒服「……いえ、忘れてください」

おっさん「いや、お前さんの本音が聞けて案外嬉しいよ」

黒服「……」

おっさん「じゃ、久しぶりにメスを振るうとしますか」
798 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:08:55.95 ID:hMDctsc0
男「……うぅ」

おっさん「目が覚めたか坊や」

男「!? あんたは……誰だ?」

おっさん「俺は……ここに閉じ込められてる可哀想な中年さ」

男「……」

おっさん「身構えないでくれよ。俺はお前さんの恩人だぜ? 腕が軽いだろ」

男「あ……」

おっさん「黒服の頼みでな」

男「あいつが……?」

おっさん「まあいい……、さて、お前さんがどうしてここに来たのか聞いても良いかな」

男「俺は、女さんを助けるためにここに来たんだ」

おっさん「女……、被検体004か」

男「その名前で女さんを呼ぶな」

おっさん「おう、怖い怖い」
799 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:11:20.14 ID:hMDctsc0
男「あんたは、女さんがキャリアーになった理由を知ってるのか?」

おっさん「知ってる。というか、むしろ、俺がそうした」

男「――!」

おっさん「おっと、話は最後まで聞いてから行動を起こすべきだぜ」

男「……」

おっさん「ホントはなぁ、あの娘は女神になれるはずだったんだよ」

男「女神……?」

おっさん「ゾンビウィルスってのはな、細胞が死なないまんまになるんだ。言うなれば永遠の命を手に入れてるも同義だ」

男「……だけど、死んでるじゃないか」

おっさん「俺は平和利用が出来ると思ったのさ。馬鹿馬鹿しい戦争も何も終わらせられるような素敵なウィルスだ」

男「……」

おっさん「ゾンビウィルスの女王であるあの娘は……、女神になれるはずだったんだ」

男「……」

おっさん「そもそもゾンビウィルスって呼び方自体がアレだけどな、問題は博士――、お前も会ったろ、あのxxxx」

男「ああ」

おっさん「俺の弟なんだがな……、俺の研究を横取りした挙げ句、世界の支配者になるとか何とか言い出してこれだよ」

男「……そ、そんな下らない理由でここまで人を殺したのか?」

おっさん「あいつにとっては大真面目だろうよ。馬鹿馬鹿しいがな」
800 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:16:59.57 ID:hMDctsc0
男「止めないと……」

おっさん「止めて、どうなるんだ?」

男「は?」

おっさん「もう世界の人口の半分以上がゾンビか、あるいは死んでるんだぜ? コロニー落としレベルだな」

男「でも、逆に言えばまだ半数は生きてるんだ」

おっさん「へぇ、面白い事言うな」

男「俺はその人達を助けるためにも、女さんを助けるためにも、やらなくちゃいけない」

おっさん「なるほど、お前の気持ちはわかった。が、どうするんだ? 博士を殺したところで、あの娘はキャリアーのままだぜ」

男「だからどうした。俺は女さんのそばにずっといる。女さんと共に歩いていくつもりだ」

おっさん「やれやれ馬鹿だな。あの娘は生きてるゾンビなんだぜ? 死なないし、もう年も取るまいよ」

男「関係無いね」

おっさん「……はは、言い切るね。面白い。……そういう熱い奴は、俺、大好きなんだ」

男「……」

おっさん「これをやるよ」

男「ば、爆弾?」

おっさん「これで壁をぶっ壊せるだろ」
801 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:20:33.57 ID:hMDctsc0
男「あんたはなんで使わなかったんだ?」

おっさん「諦めてたのさ。弟に全てを奪われ、こんなとこにぶち込まれて、なんか、どうでもよくなっててな」

男「……」

おっさん「そんで、まあ、使わなかったけど、未来ある若者に託そうじゃねえか」

男「あんたはどうするんだよ」

おっさん「逃げも隠れもする気はないなあ」

男「……あんた、女さんをキャリアーにする技術があったんだよな」

おっさん「ああ。そうだが?」

男「女さんを普通の人間には戻せないのか」

おっさん「……やってやれないことはない。時間がかかるし設備も必要だが」

男「……この研究施設の設備だったら?」

おっさん「まあ余裕だろ。そもそもここでやってたわけだし」

男「頼む。彼女を普通の人間に戻してやってくれ」

おっさん「……」

男「彼女に、なんのしがらみもない世界を見せてやりたいんだ。ゾンビの女王でもない、キャリアーでもない、ただの、年相応な少女の目で、世界を見せてやりたいんだよ」

おっさん「……若いってのは良いねぇ」

男「頼む……」

おっさん「へいへい、お前さんの情熱には負けたよ。俺も一肌脱ぎますか」
802 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:23:19.81 ID:hMDctsc0
男「いち、にの、さん!」

バンッ

男「爆破完了」

おっさん「こっちをそのまままっすぐ行け! そうすりゃあの馬鹿弟の研究室だ! ゾンビには気ぃつけろよ!」

男「わかってる! アンタも頼むぜ!」

おっさん「はっはー、まっかせなさ~い!」

男(女さん……幼女ちゃん……今助けに行くから!)

おっさん(……何かに打ち込める奴は、見ていて清々しいよなぁ)

男「うおおおおおおおおおお!」
804 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:26:38.89 ID:hMDctsc0
【研究室】

博士「なんだ? 騒々しいな」

ビーッビーッ

博士「む、脱走か! ゾンビ部隊を出せ」

黒服「は……」

博士「005!」

幼女「ひゃんっ」

博士「部隊を動かせ。貴様のゾンビどもを動かして、あの男を殺せ」

幼女「う、……い、……」

博士「ん?」

幼女「い、ぃ、いやだぁぁっ!」

博士「!」

幼女「あ、あなたの言う事なんて、ぜっっったいにきかない!」

博士「……くく、ふふ、ふはは、反抗するのか? 私に? この私には向かうのかクソガキが!」

バキッ

幼女「きゃああっ!」

黒服「っ……」

博士「はぁ……、はぁ……、モルモットが私に逆らうな!」

バキッ
805 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:29:06.15 ID:hMDctsc0
博士「……黒服。004を出せ」

黒服「……何故です?」

博士「奴も一応、脳波でのコントロールが出来るようにしてあるからな」

黒服「……」

博士「ふふ、ふはは、ふはははは!」

幼女「お、お姉ちゃん……」

【被検体004・部屋】

黒服「……」

女「あ……、あなた」

黒服「出ろ」

女「ついに解剖?」

黒服「いや……、それよりも酷いかもしれんな」

女「え……?」
806 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:31:55.00 ID:hMDctsc0
男「うあああああああああ!」

ゾンビ「うー」
ゾンビ「あー」
ゾンビ「おー」

男「どけどけどけどけどけぇ!」

ゾンビ「あ」
ゾンビ「あ」
ゾンビ「あ」

男「後どれくらいで研究室だ!? 女さんは、幼女ちゃんは無事なのか!?」

男「ジョン、キモオタ君、タカシにマユミに幼、姉……。みんなと生きて、帰るんだぁぁぁ!」
807 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:36:30.05 ID:hMDctsc0
博士「よく来たな004」

女「……」

博士「このモニターを見ろ」

女「……あ、男さん!?」

博士「今からお前には、こいつを殺して貰う」

女「え……」

博士「お前にもゾンビをコントロールするための機構はあるからな……」

女「そんな、そんなこと……」

博士「嫌でも、してもらうがな……ククク」

女(注射器……!)

博士「ふふ、ふふふ……」

黒服「004! 幼女を連れて逃げろ!」

女「えっ?」

パンパンパンッ

博士「ぬぅっ!? 何をする黒服……!」

黒服「あなたのやり方は、目に余る。ここらが潮時でしょう」
808 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:42:32.78 ID:hMDctsc0
博士「この裏切り者がぁああああああああ!」

黒服「何とでも言え! ……あなたには拾って貰った恩があるが、もうそれもここまでだ!」

博士「がああああああああああああああああああ!」

黒服「妹を化け物にし、そして死なせた恨み、忘れはしない!」

博士「この糞野郎があああああああああああああああああ!」

黒服「これで、終わりだ――!」

博士「うおおおおあああおあおあおあああああ、わはああはははっはひっひはははああ!」

黒服「!?」

博士「おおおおおおれええええはははああはははああ、せせせせかいあいかかかかいいいいをおをををおおお」

黒服「ゾンビウィルスを埋め込んであったのか!?」

博士「わたさんああなななあああああいいいいいいい! わたさないぞおおおぞぞおぞおおおおおおおお!」

黒服(俺もここまでか……。ふ……ふふ……)

グチャッ……ベキッバリッグシャッモグモグ……ゴクン…………ゲェップ……
809 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:45:20.77 ID:hMDctsc0
【廊下】

男「どこに……」

女「男さん!」

男「えっ……」

女「男さんっ!」

男「お、女さん……、女さん、なんだね……?」

女「うん、うんっ……! 私、待ってた、信じてた、きっと、あなたが来てくれるって!」

男「女さん……。ああ、助けに来た。みんないるんだ。一緒に……一緒に帰ろう!」

女「男さん……!」

ギュッ

幼女「らぶしーん?」
810 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:47:23.82 ID:hMDctsc0
男「って、名残惜しいけどこんなことしてる場合じゃないんだ。女さん、君を普通の人にできるかも知れない」

女「え?」

男「……監獄であったおっさんが、技術を持ってるんだ。君を元に戻す、技術を」

女「そう、なんだ」

男「だから……」

おっさん「おい少年! どうなった!?」

男「おっさん!」

おっさん「おっさん言うな。……被検体004と005か。助け出したんだな」

男「ああ。ところで、出来たのか?」

おっさん「おう、ばっちりだぜ」

女「……私を、人間に戻す事が出来るんですか?」

おっさん「ああ。そうだ。それが俺のケジメでもあるかなってな」

女「それだったら私……、お断りします」

男「え」

おっさん「ほぅ」
811 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:49:42.27 ID:hMDctsc0
女「世界に混乱が訪れたのは、元はと言えば私の責任ですから」

女「私が人間に戻って、幸せに暮らしました、なんてエンディングは」

女「あっちゃ、いけないんです」

女「確かに私は望まずにこんな体にされてしまった」

女「けど、私がもっと強い心を持っていれば、ゾンビが増えることなんて無かったでしょう?」

女「私は、その罪を背負って生きていく義務があると、思うんです」

男「女さん……」

おっさん「ま、お前さんがそういうのなら俺は構わんがね」

男「女さんはそれで良いのか? 君だって、自分の幸せを求める権利があるはずだろう!?」

女「あら、それだったらもう、十分幸せですから」

女「まるで物語のお姫様のような、素敵な体験をさせてもらったから……。ね、私の王子様」

男「う……」

おっさん「若いって良いねえ」

幼女「恥ずかしいけどね」
812 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:50:48.36 ID:hMDctsc0
博士「ウゥゥゥ……」

男「ん? あの、なにあれ」

幼女「らすぼす?」

女「博士……かなあ」

おっさん「変わり果てたな、我が弟」

博士「ウギャアアアアオオオオォッ」

おっさん「おい少年!」

男「なんだ!?」

おっさん「これをやるよ」

男「レポート?」

おっさん「大事に取っとけ! いつか、必ず役に立つから!」

男「って、あんたはどこに行くんだよ!」

おっさん「最後のケジメをつけに行く! 施設を爆破して、弟もろともお星様になるさ!」

男「あんたが死ぬ必要はないだろ!」

おっさん「いや、弟を止められなかったのも、嬢ちゃんを化け物にしちまったのも俺の責任だ」

おっさん「死んで、残った俺の責任から逃げてる感じもするけど、なぁに、まあいいさ」

おっさん「大人はずるい生き物だからな」

男「おい、あんた!」

おっさん「じゃあな、少年、そして嬢ちゃん!」

タタタタタッ

男「くそっ!」

女「男さん、今は、あの人の言うとおりに外へ!」

男「……ああ、そうだな」
813 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:52:47.49 ID:hMDctsc0
博士「キサマァ、ニゲダシタノカァ」

おっさん「なあ弟よ。いい加減目を覚まそうぜ」

博士「ウルサイウルサイウルサイ」

おっさん「お前が俺のことを恨んでたのはわかるぜ。俺は天才だからな」

博士「ウウウウウウウウ」

おっさん「だけど、他人を巻き込むのは感心しねえな」

博士「ウル、サイ……」

おっさん「俺とお前の二人のケジメ、しっかりここでつけようじゃん」

博士「コロス」

おっさん「殺される前に、起爆スイッチは押させて貰った、けどな」

博士「ウガアアアアアアアアアアア」

おっさん(生きろよ少年少女達!)
814 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:55:19.70 ID:hMDctsc0
【外】

キモオタ「……」

タカシ「ジョンも、男も、女も出てきやしない……」

マユミ「……きっと、帰ってくるよ……」

幼「男君……」

姉「男……、姉貴を置いて死んでたら、許さないかんね!」

幼女「みんな~! 早く離れてええええ!」

キモオタ「え?」

幼女「屋敷が、基地が、爆発するからああ!」

キモオタ「えええええ!」

タカシ「キモオタ、車だ車!」

マユミ「えっと、お嬢ちゃん、男と女は?」

幼女「もうすぐ、来るから!」

幼「男君……!」

姉「帰って、来るんだね!」
815 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 17:58:33.09 ID:hMDctsc0
男「女さん、走れる!?」

女「ちょ、ちょっと……無理かも……」

男「わかった!」

ダキッ(お姫様だっこ)

女「え、ええっ?」

男「しっかり捕まってて! あのリムジンが、お姫様を迎えに来た魔法の馬車だ! 行くよ!」

女「男さん……」

男「……」

女「ありがとう、助けに、来てくれて」

男「当たり前だろ? ……俺の一番、大事な人なんだから」

女「うん……私も!」
817 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 18:01:51.26 ID:hMDctsc0
キモオタ「男君、女さん、乗ったね!?」

男「ああ、遅くなった!」

タカシ「よく帰ってきたな!」

姉「しん……心配したんだからね!」

幼「よかった、二人とも……」

マユミ「お疲れ。今はお休み」

女「みなさん……」

キモオタ「走れええあああああ!」

ドガァァァァァァァァァァンンッ!

幼女「あ、燃えてる……、基地が……」

女「私たちの忌まわしい記憶も、一緒に、ね……」

男「……あれ」

タカシ「どうした?」

男「ジョン、は……?」

キモオタ「……」

姉「……死んだ、よ」
819 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 18:05:55.91 ID:hMDctsc0
男「ジョンが……、死んだ……」

女「そんな……」

タカシ「デカブツを倒すためにな……」

男「……そう、か」

黒人「そんな暗い顔するんじゃないぜ。お前さんたちは生きてる。生きているならHappyだ」

全員「……」

黒人「おぅ、みんな反応が暗いぜェ?」

男「ジョン? ジョンなんだよな?」

ジョン「That's right! 面白黒人は死なない。そう、俺が正義だ!」

幼「……なんてご都合展開なんでしょう……」

マユミ「そもそもあの爆発でどうやって生きてるの?」

ジョン「マネキンにダイナマイトを括り付けてみたのさ。俺ってマジクール。イカすぜ」

男「……」
820 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 18:10:40.78 ID:hMDctsc0
こうして、なんだか釈然としないままに全員が生還し、俺たちの戦いは終わった。

……いや、終わってなどいない。まだ、始まったばかりだ。

それでも、俺は……。


男「……ふぅ」

女「男さん、モールの屋上に来てくれなんて、一体どうしたの?」

男「あ、ああ、いや、その、さ。伝えたいことがね」

女「?」

男「……あのさ、女さん」

女「はい?」

男「俺と……その……えーと、あの……」

女「なぁに?」クスクス

男「俺、女さんと、ずっとずっと同じ道を、歩いていきたいんだ」

女「……男さん」

男「それはつまりだ、うん、その、俺と、結婚してください」

女「…………はい」
822 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 18:17:06.98 ID:hMDctsc0
晴れて結ばれた俺たちは、おっさんが残したレポートを元にゾンビウィルスのワクチンを製造し、世界を回っている。

それが、女さんがしてしまったことに対しての贖罪になると信じて。

ちなみに、女さんは最近蛋白質が足りないとぼやいてばかりいる。色々まずいなあ。



タカシとマユミとキモオタ君の三人トリオは、モールを中心に元の生活を取り戻すために活動を続けている。

今やモール付近では、ゾンビ騒動が起こる前と変わらない、平和な日常がゆったりと流れているとか。

そういえばキモオタ君は、自分の内面を見てくれる素敵な女性とお付き合いしているらしい。よかったな。



姉貴は、幼女ちゃんと暮らし始めた。何だかんだ言って姉貴も寂しいんだろう。

また今度、会いにいってやらないとな。……ハグとかスキンシップの嵐になりそうだけど。

女さんとの喧嘩が勃発しないのを願うばかりだ。



幼もまた、俺たちとは違うルートで世界を回り、ワクチンを配っている。

一度狂ってしまった自分に対する戒めも含めて、らしい。

それより、俺と女さんが結婚した今も誘惑してくるのはどうにかならないのだろうか。
823 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 18:21:58.20 ID:hMDctsc0
ジョンは、いつの間にか姿を消していた。

リムジンの中にいたジョンが果たして本当にジョンだったのか、それとも幻だったのか。

今となっては確かめようがないけれど、俺は、あいつが生きてると、そう、信じている。



空港に行くと、あの日のことが思い出される。

親父と母さんを失ったあの日。女さんの真実を知ったあの日。

辛い日だったけど、それを乗り越えたから、今の俺がいる。

……俺は、あなたたちの分まで生きます。父さん、母さん。



変わり果てた婦警さん。俺は彼女の死体を、見晴らしの良い丘の上に埋めた。

市民を守ること、それだけを考えて生きた婦警さんは、街を見渡せるあの丘の上で、静かに眠るんだ。

……あなたの魂は、ちゃんと、俺が受け継いでいますから。だから、安心して眠ってください、婦警さん。
824 : ◆XtpqcHhpns 2009/12/23(水) 18:25:33.71 ID:hMDctsc0
女「男さん、ごめんね」

男「なにが?」

女「私のわがままに、付き合わせちゃって」

男「そんなことか。……気にすること無いよ」

女「でも……」

男「夫婦だろ、俺たち。……夫婦って、互いに支え合って生きていく物だよ」

女「男さん……」

男「君に出会えて、本当によかった。長いようで短い、でも、短いようで長い、そんな人生……」

女「うん……」

男「女さんと二人で、並んで歩いていこう」

女「はいっ」


――彼女が見せたその笑みは、今までに見たどんな笑みよりも、輝いていた。

男「……ゾンビ……?」
男「君がゾンビだろうと何だろうと、関係ないよ」
男「たとえ、君がゾンビだったとしても……!」

【完】