ほむら「時の卵?」 前編

469: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 21:29:34.51 ID:OeViC6fVo
第5話「もう誰にも頼らない」


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  よろしくない




470: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 21:35:15.76 ID:OeViC6fVo
年代不明 時の最果て


カエル「たまげたな。からくり人形が動いてしゃべるとは」

ロボ「ロボでス。カエルさんの話、ルッカから聞いてマス。トテモ勇敢な戦士だトカ」

ルッカ「ふふん、ロボだって強いんだから。負けてないわよ」

カエル「なぜお前が威張るんだ……」


エイラ「お前、エイラ、似てる。イオカ族か?」

マール「違うよ~。でもほんと、なんだか他人の気がしないっていうか……不思議だね」

マミ「もしかして、血のつながりがあるんですかね?」

さやか「マミさんも実はふたりの子孫だったりして! 金髪だし巨 だし!」

マール「私は、ふたりほどおっきくないけどね~」

471: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 21:38:38.62 ID:OeViC6fVo
ほむら「ずいぶん大所帯になったものね……」

老人「ホッホッホ。ここがこんなににぎやかなのは、初めてじゃわい」


クロノ「僕はクロノ! ツンツン頭がトレードマークの、日本刀使いです!」

ほむら「きゅ、急にどうしたのよ……」

クロノ「いやあ、久しぶりの出番だろ? 忘れられてやしないかと思って、改めて自己紹介をさ」

ほむら(クロノが壊れた……)

473: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 21:40:46.82 ID:OeViC6fVo
ほむら「はいはい、みんな。おしゃべりはそこまでにして」

さやか「ほむら、お母さんみたい」

ルッカ「せめて先生にしてあげなさいよ」

ほむら「……あなたたちがまとまりないから、仕方なくやってるのよ」

クロノ「ほむらはリーダー適任だな!」

ほむら「あの、えっと……ごめんなさい」

クロノ「なんで謝るんだよ?」

474: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 21:45:18.50 ID:OeViC6fVo
ほむら「ゴホン。とにかく、これまでのいきさつはみんな把握してくれたわね?」

マール「いよいよラヴォスとの対決かあー。なんか、ドキドキしちゃうね」

カエル「まだそう決まったわけじゃないけどな」


マミ「それで暁美さん。あのゲートには誰が入るの? 3人までなんでしょ?」

エイラ「エイラ、あばれる! 連れてけ!」

ほむら「そうねえ……って、私が選ぶ流れになってるけど?」

ロボ「ほむらはリーダーですカラ、その権利がありマス」

ルッカ「ルッカちゃんの出番ね!」

さやか「いやいや、ここはさやかちゃんっすよ!」

ほむら「このふたりは論外として……」

さやルッカ「「なんで!?」」


ほむら「……」チラッ

クロノ「?」

476: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 21:50:02.74 ID:OeViC6fVo
B.C.65000000 ティラン城跡


クロノ「僕で良かったのかい? 他に行きたい人、いっぱいいたと思うけど」

ほむら「いえ、いいのよ。クロノ、それにマールも。頼むわね」

マール「うーん! 腕が鳴るね!」

クロノ「勘が鈍ってるかもしれないのが心配だな。刀を握るのも久々だし」


ほむら「時の最果てでは何をして過ごしていたの?」

クロノ「モノマネゲームさ! もとは、現代のリーネ広場のお祭りでの催し物なんだ」

クロノ「管理人さんと対戦してたんだけど、これが意外に手ごわくてね。つい白熱しちゃって」

クロノ「いま、48勝48敗なんだぜ! 次の一戦が天王山なんだ!」

ほむら「……あの……私、これからはもう少しクロノのこと気にかけるわ……」

クロノ「なんだよ突然?」

ほむら「だから、そんなキラキラした少年のような目でこっちを見ないで……」

477: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 21:52:09.48 ID:OeViC6fVo
ほむら「あ、マール……あなたは……」

マール「クロノと管理人さんの対戦を見てた! 面白かったよ!」

ほむら「あ、そうなの……。えーと、放置してたことについては……」

マール「うーん。私は、クロノと一緒にいられればそれでいいかな? って」

ほむら(こいつら、いつの間にフラグを!?)


クロノ「長話もなんだし、そろそろ行こうぜ!」

478: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 21:54:55.98 ID:OeViC6fVo
B.C.12000 小さな洞窟


ほむら「ここは……」

マール「洞窟かな?」

クロノ「あっちに出口があるみたいだぞ」


…………


ほむら「さささささせがわささみ! じゃなくて寒い!!!」

マール「吹雪で何も見えないよ~。クロノ~ほむらちゃ~ん……いるよねー!?」

クロノ「手を離すなよふたりとも!」

479: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 21:57:42.81 ID:OeViC6fVo
B.C.12000 天への道


ほむら「死ぬかと思ったわ……」

クロノ「洞窟を出た途端、猛吹雪だもんな。どの時代だろ、ここは?」

ほむら「こんなところでラヴォスと戦いたくはないわね……」


マール「この建物、なんだろうね? ずいぶん近代的なつくりみたいだけど」

ほむら「雪をしのげればなんでもいいわ」

クロノ「おーい、ふたりとも! こっち来てみなよ!」



マール「なになに、どうしたの?」

ほむら「これは……魔方陣?」

クロノ「あやしいよな?」

ほむら「見たこともない図式だわ……。ルッカかロボなら分かるのかしら……」

480: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 21:59:46.49 ID:OeViC6fVo
マール「不思議だね。どうやって描かれてるんだろ……きゃっ!?」

クロノ「大丈夫か? 足元気をつけろよ」

マール「えへへ、こけちゃった……あれ?」キイイイイイン...


マール「な、なにこれ! 体が浮いて……きゃあああああっ!」

クロノ「マール!!」

ほむら「うそ……空に向かって飛んでいったわ……」

クロノ「ほむら! 行こう!」

481: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:03:39.61 ID:OeViC6fVo
B.C.12000 浮遊大陸


ほむら「……」

クロノ「なんだこれ……」

マール「すっ……ごおおおおお~い!!! 陸地が空に浮いてる!」



♪時の回廊


ほむら「あの魔方陣は、地上とここをつなぐ転送装置だったのね……」

クロノ「なんか、天国に来た気分だよ」

マール「あっちに町があるよ! 行ってみよ!」

482: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:07:37.47 ID:OeViC6fVo
ほむら「ご機嫌ね、マールは」

クロノ「女の子だからな。夜景とか好きだろ、ほむらも」

ほむら「さあ、どうだったかしら……。少なくとも、この景色は嫌いではないわ」


マール「ふたりとも何してるの~! 早く早く!」

ほむら「はいはい、せかさないで」

483: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:12:26.28 ID:OeViC6fVo
B.C.12000 エンハーサ


マール「みてみてクロノ! 本から炎が! あ! あっちは噴水だ!」

クロノ「なんというか、まあ……驚きすぎて言葉も出ないよ」


魔法生物?「ここは永遠なる魔法王国ジール。すべての望みのかなう場所さ」

魔法生物?「だけど、その代償がどのくらい高くつくかは知らないけれどね……」

ほむら「……」


光の民「この国をみちびくのは女王ジール様。この世にふたりといない、美しく偉大なお方です」

マール「女王さまか~。こんなきれいな国の王さまなんだもの、会ってみたいよね!」

クロノ「そうだな……ん?」

484: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:14:57.47 ID:OeViC6fVo
少年「……」

マール「どうしたの、ボク? 迷子かな?」

少年「……黒い風が泣いてる……」

ほむら「!」


少年「あなたたちのうち、誰かひとり……死ぬよ、もうすぐ……」

485: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:17:42.77 ID:OeViC6fVo
クロノ「え!?」

マール「な、なに言ってるの……? クロノ……この子、なんだか気味悪いよ……」

ほむら(黒い風……どういうこと? この子、魔王と何か関係が……)



???「やれやれ。やっと見つけたよ」

少年「……!」

ほむら「え? ……な……!? え……っ!!!???」

486: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:23:25.96 ID:OeViC6fVo
QB「ジャキ。駄目じゃないか、あんまり遠くにいっちゃ」

ほむら「イ……インキュベーター……!!!」


QB「うん? その名称を知ってる君は、何者だい?」

ほむら(な、何故ここにこいつが……どういうこと!?)

QB「ふーむ。見たところ、魔法少女みたいだね。でもおかしいな、君とは契約した覚えがないんだけど」

ほむら(私のことを知らない? 別の個体なのかしら……)

488: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:27:08.86 ID:OeViC6fVo
ジャキ「何の用だよ、●獣」

QB「『●獣』はやめておくれよ。僕の名前はキュゥべえだ」

ほむら(やっぱりこいつ、キュゥべえじゃないの!)


ジャキ「どうでもいいよ。ボクのことはほっといてくれって言っただろ」

QB「そうはいかない。もうそろそろ宮殿に帰らなくちゃ」

QB「遅くなったら、ジールに叱られるのは僕なんだよ? それにサラも心配してるんじゃないかな?」

ジャキ「……分かったよ。ちぇっ……なんでこんなやつがアルファドの代わりなんだ……」

QB「死んでしまったペットのことを僕のせいにされてもなあ。あ、待ちなよ!」

ジャキ「ついてくんな!」

491: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:31:04.67 ID:OeViC6fVo
クロノ「行っちゃったな……」

マール「ほむらちゃん、大丈夫? さっきから顔色悪いよ?」


ほむら「……宮殿……宮殿に行きましょう」

クロノ「あの子を追いかけるのか?」

ほむら「あの子もそうだけれど……インキュベーターをあのままにしてはおけないわ」

マール「いんきゅ……なんとかって、さっきの白いウサギさんだか猫さんみたいな動物のこと?」

ほむら「! あいつが見えたの?」

クロノ「見えちゃまずかったのか?」

ほむら(あの少年にも見えていた……。なぜ? 彼らはインキュベーターが選んだ人間なの……?)

493: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:33:34.97 ID:OeViC6fVo
ほむら「……こんなこと、突然言っても驚くだけだと思うけど……あいつは敵なの」

ほむら「放置してはおけない。お願い、私を信じて……」

クロノ「……分かった。何か事情があるんだな?」

マール「いつか聞かせてね。今は、追いかけよ!」

494: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:35:55.75 ID:OeViC6fVo
B.C.12000 ジール宮殿


マール「宮殿っていうから一般人は立ち入り禁止かと思ったけど、あっさり入れちゃったね」

ほむら「インキュベーターは!?」

クロノ「真っ白で目立つからな。きっとすぐに……おや? あれはさっきの少年……」


…………


マール「この扉の向こうの部屋に入っていったみたいだね」

ほむら「! ……扉が開いてる……待って、なにか聞こえるわ。話し声……?」

495: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:39:05.81 ID:OeViC6fVo
B.C.12000 ジール宮殿 おやすみの間


♪サラのテーマ


サラ「はい、できたわよ」

???「わあ、ポニーテールだ!」

サラ「いつものもかわいいけど、たまには他の髪型も似合うんじゃないかと思って」

???「サラちゃんに髪さわられるの、気持ちいいから、わたし好きだよ」

サラ「ふふっ、ありがとう」

???「そうだ! サラちゃんも髪型変えてみようよ! わたしのリボン貸してあげるから」

サラ「ええ? いいわよ、私は」

???「いいからいいから! ほら、座って。今度はわたしがやってあげる!」

サラ「もう、強引なんだから。わかったわ、じゃあお願いね……」



サラ「まどか」

496: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:42:14.95 ID:OeViC6fVo
ジャキ「あねう……えっ!?」

サラ「あら、ジャキ。おかえりなさい。……どうかしたの?」

ジャキ「姉上がまどか姉さまで、まどか姉さまが姉上に……」

まどか「??? なに言ってるの?」

サラ「きっと髪型のことよ」

まどか「あーそっか。ジャキくん、わたしのポニテとサラちゃんのツインポンポン、どっちが好み?」

ジャキ「ど、どっちでもいいよ……」

まどか「照れてる~。ウェヒヒヒ! かわいいなあ!」

ジャキ「やめろよっ。はなせよっ」

まどか「……」

498: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:44:46.94 ID:OeViC6fVo
サラ「……まどか。タツヤくんのことを思い出していたの?」

まどか「え? ち、違うよ? ……あ、ごめんね。抱きついてたら暑苦しいよね」

ジャキ「……別に。まどか姉さまがこうしてたいなら、仕方ないからもうちょっとだけ我慢してやるよ」

まどか「え、でも……」

サラ「いいのよまどか。ジャキだって甘えたいのに、素直じゃないんだから」

ジャキ「そ、そんなんじゃないよ!」

499: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:46:32.29 ID:OeViC6fVo
サラ「……ごめんね。いつでも私がそばにいてあげられたらいいのだけれど。でも母様の計画が……」

ジャキ「あんなヤツ、母様じゃない! 姿かたちは母様だけど中身は別のモノだ!」

サラ「……それでも私には……。ゴメンなさい、ジャキ……」

まどか「大丈夫だよ。サラちゃんがいないときは、わたしがそばにいてあげるから」

ジャキ「まどか姉さま……」


ガタンッ

ジャキ「! 誰だ!?」

500: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:48:36.81 ID:OeViC6fVo
マール「ちょ、ちょっと押さないで……あ~あ」

クロノ「やばい、見つかった……いやーハハハ。僕たち決してあやしいものでは……」

マール「確実にあやしい人が言うセリフだよそれ!」

マール「……って、いつもならほむらちゃんのツッコミが入るはずなのに、あれ?」

クロノ「ほむら?」


ほむら「……」

まどか「え……うそ……夢……?」

ほむら「……夢じゃ……ない、わ……。ずっと……ずっと、あなたを探してた……」

501: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:49:29.56 ID:OeViC6fVo
まどか「ほむらちゃん!!!」

ほむら「まどかあーっ!!!」


…………



502: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:51:42.32 ID:OeViC6fVo
サラ「良かったわね、まどか。お友達が見つかって」

まどか「うん、うん……!」

ほむら「あの、あなたは……」

サラ「私はサラ。この子はジャキよ」

ジャキ「……」

まどか「サラちゃんはこの国の王女さまで、ジャキくんは王子さまなんだよ!」

マール「王族なの!? すごい!」

クロノ「いや、君も王女さまだろ」


ほむら「まどかにいろいろ良くしてくれて、ありがとうございます」

ほむら「このご恩は忘れません。さあ、まどか。行きましょう。マミやさやかも心配してるわよ」

まどか「マミさんやさやかちゃんも!? ……あ、でも……」

ジャキ「まどか姉さま! 行っちゃうの!?」

ほむら「まどか、なにしてるの? 早く帰りましょう。あなたの居場所はここじゃないでしょ?」

クロノ「お、おい。ほむら……」

503: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:54:04.60 ID:OeViC6fVo
女官「失礼いたします、サラ様。鹿目様。女王がお呼びです」

女官「至急、海底神殿のほうに下りていただきたいとのことです」

まどか「え? わ、わたしも?」

女官「計画に変更があったとか。わたくしどもには詳しい内容は知らされておりませんが……」


ほむら「まどかを連れていく気? させないわ」

女官「な、なんですかあなたは!? それは武器ですか!?」

クロノ「おい、ほむら! よせ! 銃をおろせ!」

ほむら「っ! はなして! クロノ! 放しなさい!」

マール「ほむらちゃん、どうしちゃったの!? いつもの冷静なほむらちゃんらしくないよ!」

504: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:55:58.33 ID:OeViC6fVo
女官「無礼な……衛兵! 来なさい、ここに不届き者が……」

サラ「っ! 待ってください。母様が呼んでいるのでしょう? 早く行かないと」

女官「……そうでしたね。遅れると私が女王様に……分かりました、こちらです」

サラ「さあ、まどか。あなたも……」

まどか「う、うん……」

ほむら「待って、まどか! ……放しなさい! 放しなさいよおおっ!!」


…………



505: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 22:59:12.89 ID:OeViC6fVo
ジャキ「バカなヤツ。姉上がとりなしてなかったら、今ごろ囚われの身だぜ」

ほむら「……」

マール「クロノ、もう放してあげたら?」

クロノ「そうだな……」


ほむら「ああああああああっ!!!」ドンッ!

ジャキ「ひっ!? な、なんだよこいつ……急に床を……」

マール「やめて! ほむらちゃん……殴った手を見せて。血が出てるじゃない!」

クロノ「深刻だな……。そんなにあのまどかって子が大事なのか……」

ほむら(せっかく……せっかく会えたっていうのに……!)

マール「大丈夫だよ。呼ばれただけなんでしょう? きっとすぐ戻ってくるよ。だから、ね……」

507: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:01:53.29 ID:OeViC6fVo
QB「それはどうだろうね」

ジャキ「●獣!? なにしてんだよ、ここにお前は出入り禁止だって言っただろ!」

QB「そんな場合じゃないんじゃないかな。あのふたりをほっておいていいのかい?」

クロノ「どういうことだ?」

QB「説明してあげなよ、ジャキ。海底神殿のこと。それに、預言者と巫女のことも」


クロノ「預言者? 巫女?」

ジャキ「……フードで身をおおった、うさんくさいヤツらだよ。突然あらわれて、母様に取り入った」

ジャキ「未来に起きる出来事を的確に当てるってんで、預言者だの巫女だの呼ばれてあがめられてる」

509: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:06:25.12 ID:OeViC6fVo
クロノ「海底神殿ってのは?」

ジャキ「『大いなるエネルギー』……この国は、そう呼ばれるものですべてが成り立ってる」

ジャキ「そのみなもとが海中深くで発見されたってんで、神殿を建設してるのさ……」

QB「預言者たちの協力のもと、ジールは神殿の建設にやっきさ。まもなく完成するだろうね」


クロノ「なるほどな。しかし、サラたちは何のために呼ばれたんだ?」

QB「サラもまどかも、ものすごい魔力の持ち主だからね。まどかは才能という意味でだけど」

クロノ「関係あるのか?」

QB「大有りさ。来なよ、いいものを見せてあげる」

510: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:08:38.90 ID:OeViC6fVo
B.C.12000 ジール宮殿 魔神器の間


クロノ「これは……!?」

QB「『魔神器』さ。『大いなるエネルギー』の回収および増幅装置といったところかな」

QB「これを作動させるのは常人では無理だ。そこで、サラの出番というわけさ」

QB「まどかが連れていかれた理由は不明だけど。ジールの考えてることは僕にも分からない」

QB「たぶん、手伝いでもさせるんじゃないかな? もしくは、サラに言うことを聞かせるための人質か」

ジャキ「……」


ほむら「……そんなこと、させないわよ……」

マール「ほむらちゃん!?」

ほむら「マール、もういいわ。血は止まった。だから手を離して」

マール「でも……」

511: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:11:10.26 ID:OeViC6fVo
ほむら「インキュベーター。お前がどうしてこんなことを私たちに話すのか、今はどうでもいいわ」

ほむら「お前を殺す暇も惜しい。教えなさい、女王はどこにいるの」

QB「やれやれ。どうして僕が殺されなきゃいけないんだい? わけがわからないよ」


QB「……まあいいか。それより、気になってたんだけど。そこの君」

マール「えっ? わ、私?」

QB「君の持つペンダント、サラのと同じものだね? 何故なのかはしらないけど、この状況では好都合だ」

QB「ペンダントを魔神器にかざしてごらん」

マール「こう? ……わっ!」キイイイイイン...


QB「ペンダントに『大いなるエネルギー』が注入された」

QB「女王の間は『封印の扉』によって閉ざされている。でもこれで入れるよ」

ジャキ「女王の間はこっちだよ……。お前ら気に入らないけど、姉上たちを助けるってんなら協力してやる」

512: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:16:23.64 ID:OeViC6fVo
B.C.12000 ジール宮殿 女王の間


ダルトン「ずいぶんとノンビリしたご到着ですなあ、サラ様に鹿目様。何か変事でも?」

サラ「ダルトン。いいえ、母様の側近であるあなたを煩わせるほどのことは何もありませんわ」

ダルトン「さようで。まあどうでもいいんですけどね、ヘッ」

ジール「ひかえろ、ダルトン。ふたりに話があるのはわらわぞ」

ダルトン「はッ! 失礼いたしました……」


サラ「母様……」

ジール「そう構えるな、サラ。今回はただの下見だ。本番に向けてのな」

ジール「海底神殿はまもなく完成する。そのあかつきには……フ……フハハ……」

サラ(母様は変わってしまわれた。『大いなるエネルギー』の力に魅せられて……)

513: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:18:34.57 ID:OeViC6fVo
ジール「鹿目まどかよ。お前にもついてきてもらうぞ」

まどか「わ、わたしは……」

サラ「なぜです母様! まどかは関係ないはず……」

ジール「こやつは『予備』だ。何かあったときのためのな……」

ジール「用意は抜かりなく、だったな? 巫女よ。お前の発案、受け入れてやった。これでいいのだろう?」

巫女「……」


ザワザワ

ダルトン「ん? おい、なにごとだ! 騒がしいぞ!」

514: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:20:06.13 ID:OeViC6fVo
ほむら「まどかっ!!」

まどか「ほ、ほむらちゃん!?」

ダルトン「なんだお前ら、どうやってここに入った? ひかえろ、女王陛下の御前だぞ!」

ほむら「女王ジール……!」

ジール「!」

サラ「!? ほむらさん、やめて!」


ダァン!!

515: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:21:50.12 ID:OeViC6fVo
ダルトン「こっ!? こいつ、撃ちやがった!?」

ジール「……お、おのれ……貴様……わらわの顔にキズを……!!」

ほむら「くっ、はずした! ……ッ!?」

巫女「……」ガスッ!

ほむら「う! あっ……」


予言者「そのまま締め上げろ」

巫女「……」ギリギリ...

ほむら「あ、ああ……う、腕が……」

まどか「ほむらちゃん! やめて! やめてよ!!」

517: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:23:58.08 ID:OeViC6fVo
予言者「お分かりいただけましたか? 女王よ」

予言者「この者どもこそ、私の警告した『わざわいをなす者』たちです」

ジール「異国の者め……! 貴様らも、三賢者ども同様このジールにたてつこうというのか……」


ジール「ダルトン!!!」

ダルトン「は。残りのテロリストどもは捕らえましてございます」

マール「く、クロノ~……」

クロノ(また牢獄行きか……)

518: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:25:35.06 ID:OeViC6fVo
ジール「安心しろ、すぐには殺さぬわ……」

ジール「あらゆる悲しみ、苦しみ……そして恐怖を味わわせてから殺してやる……」

ジール「わらわの計画に逆らったこと、後悔するがいい……フフフ……」


ジール「アーッハッハッハッ……!」

519: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:27:29.65 ID:OeViC6fVo
B.C.12000 ジール宮殿 監獄の間


ほむら「……」

クロノ(くそ……なんだよ、この光線……体がまったく動かない。口も……)

マール(私たち、ここで死んじゃうのかなあ……)


…………


サラ「どう、まどか?」ボソボソ

まどか「待って……。うん、誰もいないみたい」ボソボソ

サラ「よし、じゃあ扉を開けるわね……」ボソボソ

520: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:29:11.34 ID:OeViC6fVo
まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「!」

サラ「しーっ! 大声出すと気づかれるわよ」

まどか「あ……ご、ごめん」


ジャキ「バカなヤツら。あれだけ忠告してやったのに、結局つかまってるじゃん」

サラ「待っててくださいね、今助けますから。えっと端末は……確か、ここを操作して……」

521: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:31:12.13 ID:OeViC6fVo
ほむら「っ……はあっ! た、助かったわ……」

まどか「ほむらちゃん。それにクロノさんとマールさんも。ここから逃げて!」

サラ「このままではあなた方は大罪人として処刑されるだけです。ジャキに案内させますから、どうか……」

ジャキ「めんどくさいなあ」


サラ「そして、できることなら『命の賢者』様をお助けしていただきたいのです……」

マール「命の賢者様って?」

サラ「かつてこの国には、3人の賢者様がおられました。命の賢者様はそのおひとり」

サラ「でも、母様の計画に反対した命の賢者様は追放され、今は『なげきの山』に幽閉されて……」

まどか「あとのふたりの賢者様も、行方が知れないの。お願い、賢者様を助けてあげて!」

ほむら「でも、私はまどかを……」

523: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:33:55.79 ID:OeViC6fVo
予言者「そこまでにしてもらおうか」

クロノ「! お前らは……」

予言者「好き勝手してくれたものだな、サラ。こんなことをして、ただですむとでも?」

ジャキ「おいッ! 姉上たちに手を出したら許さないからな!」

予言者「……安心しろ。あなたたちをどうこうするつもりはない」


予言者「しかし、うしろの3人はそうもいかないがな……」

巫女「……」

まどか「やめて! ほむらちゃんたちにひどいことしないで!」

525: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:36:08.52 ID:OeViC6fVo
予言者「……フッ。よかろう、そいつらの命は助けてやる」

サラ「!」

予言者「そのかわり、あなたには力をかしてもらうぞ。サラ……」

サラ「……それで、この方たちが助かるのであれば……」

予言者「決まりだ。さあ、お前たちがどうやってこの時代へ来られたのか教えてもらおうか……」

527: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:39:38.45 ID:OeViC6fVo
B.C.12000 小さな洞窟


予言者「ほう、こんなところから……」


予言者「さあ、サラ。こいつらをその中に放りこんだら、そこに結界を張るのだ」

サラ「結界!? そんなことをしたら、もうここは通れなくなって……」

予言者「私の言うとおりにしなければ、その者たちの命はない」

サラ「……わかりました」


まどか「ごめんね、ほむらちゃん。ごめんね……」

ほむら「まどか……! 待って! まどかは関係ないでしょう? 彼女だけでも連れていかせて!」

予言者「くどいぞ。死にたいのか?」

ほむら「私はどうなってもいい! でも……でも、まどかだけは!」

528: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:42:30.59 ID:OeViC6fVo
巫女「まどかがここでいなくなれば、アタシたちがジールに疑われる」

ほむら「!?」

クロノ(しゃ、しゃべった!?)

マール(あの子、しゃべれたんだ……)


予言者「……そういうことだ。さあ、さっさと消えろ」

ほむら「で、でも……」

巫女「早く……行けっての!」グイッ

ほむら「お、押さないで!」

529: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:45:08.26 ID:OeViC6fVo
巫女「ジールがまどかの素質に気づいちまった」ボソッ

ほむら「!?」

巫女「アタシの立場じゃあ、アイツを予備扱いしてできるだけ関わらせないようにするのが精一杯だ」

ほむら「あなた……誰なの!? どういうことよ!?」

巫女「……やれやれ。錯乱しすぎだぜ、ほむら」


巫女「ちっとは頭……冷やせって、の!」ドンッ!

ほむら「! ま、まど……!」


…………



530: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:47:07.35 ID:OeViC6fVo
サラ「……終わりました。……ごめんなさい……みなさん……」

予言者「これでもう、このゲートからヤツらが来ることはあるまい」

まどか「ほむらちゃん……」

予言者「帰るぞ、巫女」

巫女「ああ……」


まどか「待って! 巫女さん……あなた、もしかして……」

巫女「……」

予言者「早くしろ」

巫女「分かってる。今行くよ……」

531: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:49:37.28 ID:OeViC6fVo
年代不明 時の最果て


ルッカ「ロボ、何か分かった?」

ロボ「スキャンの結果、このペンダントに蓄積されたエネルギーはラヴォスのものと同一ト判明」

ロボ「マタ、時空ジャイロによる検査では王国暦前1万2千年代のものと判明しまシタ」

クロノ「『大いなるエネルギー』ってのはつまり、ラヴォスのエネルギーか」

カエル「身震いするぜ。生活に使うエネルギーが実は破壊神によるものだったなんてな」

ルッカ「B.C.12000……便宜上、『古代』とでも名づけましょうか」

さやか「超古代文明かあ……。漫画なんかだと王道ですよね」


エイラ「みな、なに言ってる? エイラ、頭、火山。マミ、説明してくれ」

マミ「え? えーと……。うん! エイラ、あっちで遊んでましょうか?」

カエル(投げた)

さやか(投げたね)

532: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:52:46.76 ID:OeViC6fVo
ルッカ「こうなってくると、その海底神殿ってやつは是が非でも止めないといけないわね」

さやか「エネルギーのみなもとってラヴォスっすよね? モロじゃん!」

カエル「しかし、古代に続くゲートは封印されてしまったぞ」

クロノ「八方ふさがりか……」


ロボ「ルッカ。ワタシに考えがあるのデスガ」

ルッカ「どうするの?」

ロボ「このペンダントで開くという扉、そこに描かれた紋章ハ確かワタシの時代にもあったはずデス」

ロボ「紋章の出自が古代であるナラバ、その先に何かあるのではないでショウカ?」

ルッカ「ふむ……確かに行ってみる価値はありそうね」

533: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:54:37.29 ID:OeViC6fVo
ルッカ「ただ、リーダーであるほむらがあの状態じゃあねえ」


ほむら「……」

マール「元気出して、ほむらちゃん。ほら、アイス食べる?」

ほむら「ハーゲンダッツじゃないとやだ……」


クロノ「ほむらは僕とマールで見てるよ。みんなは、調査のほうを頼む」

さやか(ていうかあれ、とっくに回復してなくない?)

535: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:57:26.01 ID:OeViC6fVo
さやか「となると、戦力になりそうなのは……」


マミ「うふふ、どう? エイラ」

エイラ「お、おお……。マミ、エイラ、のど、なでる。気持ちいいぞ……」ゴロゴロ


さやか「あのふたりはなんか別の世界にいってるし……」

カエル「よし、俺が行こう。準備しろ、さやか」

さやか「待ってました!」

ロボ「デハ、ワタシが紋章の場所まで案内しマス」

ルッカ「私が留守番か。まあいいわ、ちょっと調べたいこともあるしね……」

ルッカ「あんたら、なんでもいいから手がかりつかんできなさいよ!」

537: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:02:02.44 ID:M6LmT3nro
A.D.2300 アリスドーム付近


さやか「この廃墟しかない世界が、あたしたちの未来か……。なんか、やるせないね……」

カエル「こうならないようにするのが俺たちの役目だ。気張れよ、さやか」

ロボ「目的地はここから南下した場所にある地下水道ヲ抜けた先にありマス」


…………


地下水道跡


さやか「くさっ!? ここ下水道じゃん!」

ロボ「正確には跡地デス」


さやか「え~……ここ通るの? 濡れるし、臭いが服につきそうでやだな~……」

カエル「お前はちょいちょい、どうでもいいことを気にするな」

さやか「女の子にとってはどうでもよくないの! そんなこと言ってるからモテないんだよ師匠は!」

カエル「どどどど●●ちゃうわ!」

538: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:04:39.04 ID:M6LmT3nro
ロボ「おふたりとも、あまり騒ぐとミュータントに気づかれマスよ」

カエル「ミュータント? 魔物のことか?」

ロボ「そう理解していただいてかまいマセン。ここを束ねているのハ……」


\ウオオオォォォォ!!!/


さやか「な、なに!?」

カエル「敵襲か!?」

539: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:07:20.64 ID:M6LmT3nro
クロウリー様「xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx!!!」

みはり「出た……クロウリーさんの1秒間に10回xxx発言!」

クロウリー様「SATSUGAI SATSUGAIせよ! SATSUGAI SATSUGAIせよ!!」

おやぶん「うわあああ! 最高に猟奇的だ!」

こぶん「Go to DMC!! Go to DMC!!!」


さやか「……」

カエル「……」

ロボ「ここの主、ヨハネ・クロウリー様II世コト、クロウリーさんデス」

カエル「係わり合いにならんほうがよさそうだな……」

ロボ「賢明な判断デス。興味本位による干渉はクロウリーさんに対する冒涜デス」

さやか「ロボ……あんた……いや、なんでもないわ」

540: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:10:49.95 ID:M6LmT3nro
A.D.2300 監視者のドーム


カエル「ここか……」

さやか「待って師匠! なんかいる……」


なぞの物体「……」

さやか「な、なんなのこいつ……生き物?」

ロボ「生体反応はありマセン」

カエル「眠っているようにも見えるが……。動き出されても困る。放置しよう」


ロボ「扉はこれデス」

カエル「よし、開けるぞ!」

541: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:12:29.50 ID:M6LmT3nro
さやか「まだ先があるみたいだね……あれ?」

カエル「何か見つけたのか?」

ロボ「音声データチップですネ。お待ちクダサイ、今再生シマス」



「……扉を開けた者たちへ……。私は、理の賢者ガッシュ……」


さやか「ガッシュってクロノさんたちが言ってた、三賢者のひとりの?」

カエル「そのようだな。待て、続きがあるようだぞ……」

542: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:17:58.31 ID:M6LmT3nro
「扉を開けた者たちへ……。私は、理の賢者ガッシュ。魔法王国ジールの、ガッシュ」


「私はジールの大災害のおり、この時代へとばされた」

「驚いたことに ラヴォスが現れるのは私の時代だけではなかった」

「ラヴォスははるか太古の時代に空より落下し、ジールに出現し……」

「地中深くひそみ、この地球のエネルギーを吸いながら成長を続けた……」


「王国暦600年。魔王が呼び出し、一時その姿を現す」

「王国暦1999年。再びその姿を現し地表を破壊しだす」

「この世の終わりかと思われたが、すべてを破壊することなく再び眠りについたようだ」

「王国暦2011年。大嵐によって、あまたの生命が失われた。嵐は1年半続いたと記録にある」

「王国暦2012年。ジールではこの年に世界が終わるとされてきた。長期暦が、この年で終わるからだ」

「予言は事実となった。ラヴォスが四度その姿を現し、ついに地表をそのテリトリーにしたのだ」

「嵐はやんでいた。思えば、あれはラヴォス復活の前兆――最も強力な『黒き風』であったのだろう」

543: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:22:33.83 ID:M6LmT3nro
「ラヴォスはその後、まるで卵を生むかのように自らの分身を次々と誕生させていった」

「私はその場所を『死の山』と名付けた……」

「ラヴォスは、星全体に巣くう巨大な寄生虫なのだ」


「私は、ここでラヴォスの監視と研究を続けて来た」

「だが、すでに限界じゃ。こんな時代に正常な精神をたもつのは不可能なのかもしれぬ……」

「私の精神が死をむかえる前に、この記憶を残しておくことにする。私の生がい最後の発明と共に……」


「私は自分の時代になんとか帰ろうと研究を続けた」

「しかしこの研究が完成するころには、私自身、寿命を感じていた」

544: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:24:53.18 ID:M6LmT3nro
「だから、託すのだ。ここを開く者に」

「時代を行き来できれば……時代を超えて人間が、この星そのもののためにひとつになれば……」

「あのラヴォスをどうにかできるかも知れぬ……」


「可能性はゼロに等しい……。しかしゼロでない限り、かけてみる」

「この扉を開く者に、この地球のすべてを……」

「さあ、開けるがいい、最後の扉を。そして手に入れるのだ。私の最後の発明……」



「『時をわたる翼』を……」

545: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:27:08.81 ID:M6LmT3nro
A.D.2300 監視者のドーム 格納庫


カエル「これは……!」

さやか「で、でかい卵!?」

ロボ「乗り物のようデスネ。中央に操縦室がありマス」

さやか「『時をわたる翼』……つまり、タイムマシンってこと!?」



♪シルバード ~時を渡る翼~


さやか「すげーすげー! ドラえもんじゃん! デロリアンじゃん!」

カエル「どら……なんだ?」

ロボ「前者はA.D.1969より連載開始サレ世界的に有名になったSF漫画作品デ、後者はA.D.1985ニ……」

カエル「いや、いい。説明されても分からん」

546: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:30:09.26 ID:M6LmT3nro
なぞの物体「驚いてくれたようだな」

さやか「!?」

なぞの物体「私だよ。ガッシュだ。この物体に、私の頭脳をコピーしておいたのだ」

ロボ「そんなことマデ……」

カエル「ダメだ、俺にはついていけん。とにかく、これがあれば古代時代に行けるんだな?」

ガッシュ「ほう……。君たちは、私の元いた時代に行こうというのか」


ガッシュ「これも何かの運命かもしれんのう。君たちが何をなすため時空を越えるのか興味があるが……」

ガッシュ「私はすでに託したのだ。こいつを、役立ててやってくれ」



ガッシュ「このタイムマシン……『シルバード』を、な!」

547: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:33:15.45 ID:M6LmT3nro
年代不明 時の最果て


ルッカ「まさかだわ。タイムマシンを見つけてくるなんて……」

老人(あの男、完成させたか……。時をわたる翼を……その命と引き換えに……)


さやか「ふふん、さやかちゃんにかかればこんなもんすよ!」

マミ「すごいわ美樹さん!」

カエル「あまり調子に乗らせるなよ、巴。作ったのはこいつじゃないんだからな」


マール「でも、これでまどかちゃんを助けに行けるよ。良かったね、ほむらちゃん!」

ほむら「……」

さやか「感謝しろよ、ほむら~」

カエル「こいつ、さっきの俺のセリフ聞いてねえな……」

548: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:35:45.08 ID:M6LmT3nro
ほむら「そうね……。どうもありがとう、さやか」

さやか「ぅえ?」

ほむら「なによ?」

さやか「いや、別に……」

さやか(ほむらが素直にありがとうとか言うなんて……。やっぱりまだ調子悪いのか?)


クロノ「それで、ルッカのほうはどうだったんだ? 何か調べてたろ」

ルッカ「まあね。いろいろ興味深いことが分かったわ」

マミ(あ、難しい話始まりそう……。エイラ、大丈夫かしら……)

エイラ「?」

549: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:38:12.01 ID:M6LmT3nro
ルッカ「ま、結論から言うと古代の人たちがあれだけ繁栄したのはラヴォスの影響なの」

クロノ「『大いなるエネルギー』のことか?」

ルッカ「それもまあ、そうだけど。もっと根源的な部分で……」


ルッカ「原始の時代から、魔法を覚え行使し、歴史上最も進んだ文明を持つ『ヒト』への進化」

ルッカ「これは『ドリストーン』によるものとされる説があるわ」

ルッカ「そしてドリストーンとはラヴォスの破片……。わたしたちヒトは、ラヴォスの子とも言える」


さやか「まじで!? ラヴォスがあたしらのママ!?」

マミ「女の子なのかしら? ラヴォスって……」

カエル「そこはどうでもいいだろ……」

550: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:41:32.59 ID:M6LmT3nro
ロボ「ラヴォスが飛来する前にもドリストーンは存在していマシタガ?」

ルッカ「それはたぶん、先行して落ちてきた欠片なんじゃないかしら」

さやか「隕石みたいなもんですもんね~、ラヴォスって」


ルッカ「ドリストーンの原石は長い年月を経て失われたとは言え、形を変えて今も残っているわ」

ルッカ「マールのペンダント、カエルのグランドリオン、古代にあるという魔神器」



ルッカ「そして……ソウルジェム」

ほむら「!?」

552: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:43:52.96 ID:M6LmT3nro
マミ「ええっ!? 私たちのソウルジェムが、ドリストーン!?」

マール「赤くないけど……」

ルッカ「原石が赤い色してるだけよ。現に、そのペンダントも赤くないでしょ」

さやか「で、でもこれはあたしらの魂で……」

カエル「魂? どういうことだ?」

さやか「……あ。い、言っちゃっていいのかな……」

ほむら「……仕方ないわ。必要になればと思っていたけれど、今がそのときというのなら……」


…………



553: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:46:52.75 ID:M6LmT3nro
マール「ひ、ひどい……。魂を抜き取って宝石に変えちゃうなんて……」

クロノ「とんでもないやつだな、そのインキュベーターってのは……!」

ほむら「私があいつを『敵』だと言った理由、分かってもらえたかしら」


ルッカ「つまりこうね。私たちは魔法の民の子孫。魔法とはラヴォスの力によるもの」

ルッカ「私たちの中にある最も濃い『ラヴォスとしての部分』を抽出、宝石化したものがソウルジェム」

マール「ル、ルッカ……そんな淡々と……」

ほむら「……」

さやか「……」

マミ「……」

ルッカ「……可能性の高い自論を述べただけよ」

554: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:48:50.95 ID:M6LmT3nro
ロボ「ワタシ、思うのデスガ。ワタシの魂とはどこにあるのデショウカ?」

ほむら「え?」


ロボ「ワタシのこの身体は機械デス。いわバ、ハードウェアでス」

ロボ「ではCPUや内蔵記憶装置が魂なのデショウカ? ワタシはそうは思いマセン」

ロボ「ルッカたちと出会ったコト。ほむらたちと旅したコト。そこで感じたコト。思い出……」

ロボ「それらが今のワタシをかたち作ってイマス。それが魂なのだト、ワタシは思いマス」

ほむら「ロボ、あなた……」

555: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:50:49.61 ID:M6LmT3nro
カエル「いいこと言うぜ、ロボ」

さやか「師匠……?」


カエル「安心しろさやか。俺なんて、カエルだぜ?」

カエル「だがサイラスのこころざしを受け継いだ魂は、ここにある。大事なのは、心だ!」

カエル「お前もゾンビが嫌ならカエルになってみればいいさ!」

さやか「なにそれ……。全然なぐさめになってないっての、もう……アハハ」

556: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:52:42.97 ID:M6LmT3nro
エイラ「そのとーりだ!」

マミ「エ、エイラ? 大丈夫? 頭から湯気が出てるけど……」


エイラ「みな言うこと、さっぱり分からん! でも、エイラ、分かることある!」

エイラ「マミはマミ! なにあっても、変わらん! エイラ、トモダチ!」

マミ「……ありがとう、エイラ……」

557: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:54:37.11 ID:M6LmT3nro
クロノ「つらいこと、聞いちゃってゴメンな。僕たちにどうこうできる問題ではないけど……」

マール「でも、手伝えることがあったら何でも言ってね! 仲間だもん、支えあわなきゃ!」

ルッカ「……ま、そういうことよ」

ほむら「問題ないわ。私たちは覚悟しているのだから」

マミ「でも、みんなの気持ちうれしかったわ」

さやか「これからもよろしくってことで! そうと決まれば、まどかを助けに行かなくちゃね!」


クロノ「よし、みんな! 旅の準備だ! まどかを助けるまでは帰れないぜ!」


…………



559: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 00:56:59.95 ID:M6LmT3nro
ルッカ「あなたは秘密が多いのね」

ほむら「知的好奇心の旺盛な誰かさんは、興味津々でしょうね」

ルッカ「意地悪な言い方しないでよ。悪かったわ」

ほむら「別に、怒ってないわよ」

ルッカ「どうだか。最近は丸くなってきたと思ってたのに、今のあなたは最初に出会ったころのようだわ」

ルッカ「『もう誰にも頼らない』って顔、してるわよ」

ほむら「……」


ルッカ「ねえ、ほむら。いつか……すべて話してくれるときが来るのかしら?」

ほむら「……なにが言いたいの?」

ルッカ「信頼されるようにがんばらなきゃなってことよ」

ほむら「……」

561: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 01:01:53.35 ID:M6LmT3nro
ルッカ(ほむら。あなたはまだ何か隠してる……)


ルッカ(ほむらたちが持っているグリーフシード……。あれも、調べたところドリストーン製)

ルッカ(ドリストーンは、ヒトの希望と絶望を糧とするもの)

ルッカ(グランドリオンが、持ち主の意志によって聖剣にも魔剣にもなるという話……)


ルッカ(ならソウルジェムは? 絶望を吸えば、どうなるの? グリーフシードになるのではないの?)

ルッカ(魔法少女の魂。魔女のみなもと。あれらの石が、ともにドリストーンなのだとしたら……)

ルッカ(魔女と魔法少女は関係があるんじゃないの?)


ルッカ(教えてよ、ほむら。私たち……仲間でしょ……)

ルッカ(あなたの背負うもの、私たちが一緒に背負うことはできないの?)



ルッカ(ねえ、ほむら……)

562: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/20(土) 01:04:44.07 ID:M6LmT3nro
第5話「もう誰にも頼らない」 終了


  セーブしてつづける(第6話「本当の運命と向き合えるかい?」へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

580: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 21:31:51.51 ID:a1fvDYyto
第6話「本当の運命と向き合えるかい?」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

581: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 21:35:46.84 ID:a1fvDYyto
B.C.12000 小さな洞窟付近


ほむら「ここは、最初に来た場所の近くみたいね」

マール「シルバードから出たら、また吹雪だよね……。今回はちゃんと防寒してきたけど……」

クロノ「さて、これからどうする? 罪人扱いされてる僕らが宮殿に乗り込むわけにもいかないし……」

ほむら「私はそれでいいと思うけど」

クロノ「いやいや」


マール「ね、気になってたんだけど。向こうの空に、おっきくて黒い影があるよね?」

ほむら「吹雪でよく見えないけれど……山、かしら?」

マール「うん、私もそう思う。あれ、『なげきの山』なんじゃないかなあ?」

クロノ「命の賢者様がとらわれている場所か」

マール「賢者様の協力が得られれば、宮殿に入る方法も見つかるかもしれないよ」

ほむら「なら、近くまで行ってみましょうか」


…………



582: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 21:39:31.95 ID:a1fvDYyto
クロノ「驚いたな。山は山でも、空に浮いてるぞ」

ほむら「それも地上から鎖につながれて、ね。本当になんでもありよね、この時代は」

クロノ「あの山に行くには鎖を伝っていくしかないのかな……」


マール「……むにゃむにゃ……」

クロノ「って、おぉい!? 寝るな、マール! 死ぬぞ!」

ほむら「そこに洞窟があるわ。とりあえず避難しましょう」

583: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 21:42:02.41 ID:a1fvDYyto
B.C.12000 アルゲティ


アルゲティ長老「おや、サラ様たち以外のお客さんが来るとは珍しい……」

マール「え……人? この洞窟、人が住んでるんですか?」

アルゲティ長老「洞窟か……。そう思われるのも無理はない。しかしここは一応、村なのだよ」

マール「あ……ご、ごめんなさい」

アルゲティ長老「かまわんよ。あんた方、異国の者じゃろう」

アルゲティ長老「ようこそ、地の民の村アルゲティへ。わしはこの村の長老じゃ」

ほむら「地の民……?」


アルゲティ長老「魔法を使える者は『光の民』と呼ばれ、浮遊大陸で人生を謳歌する」

アルゲティ長老「しかし魔力を持たぬ我ら『地の民』は天空の王国を追放され、極寒の地で暮らすしかない」

マール「ひどい……」

ほむら「華やかな王国の裏に隠された闇……か」

584: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 21:44:35.95 ID:a1fvDYyto
アルゲティ長老「あんた方、こんなところにわざわざ何用じゃ? 観光なら浮遊大陸のほうに行けばええ」

アルゲティ長老「……いやしかし、『天への道』は今は封印されておったか……」


クロノ「僕たちはなげきの山に行きたいんです」

アルゲティ長老「あのような危険な場所へ進んで入りたがるとは……何か理由でもあるのかね?」

マール「私たち、命の賢者様を助けに行くんです!」

アルゲティ長老「なんと……」

585: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 21:48:52.65 ID:a1fvDYyto
アルゲティ長老「サラ様や鹿目様、三賢者様たちぐらいのもんじゃ……」

アルゲティ長老「わしらを自分と同等に扱ってくださり、こんな村に何度も足を運んでくれてのう……」

アルゲティ長老「彼女らのおかげで、わしらは腐らずにおれる」

ほむら「まどかが……」


アルゲティ長老「あんた方が賢者様を助け出してくれるというなら『ドロクイの巣』への道を開けておこう」

アルゲティ長老「そこを通れば、なげきの山をこの大地につなぎとめている鎖のところまで行けるはずじゃ」

アルゲティ長老「わしからもお頼み申す。賢者様を助けてあげてくだされ……」

586: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 21:51:32.51 ID:a1fvDYyto
B.C.12000 ドロクイの巣


ドロクイ「モルスァ」

ほむら「アリクイならぬドロクイ、ね」

マール「キモカワイイってやつかな?」

クロノ「襲ってきた時点で可愛いも何もないけどな」

ほむら「見えたわ。あれが鎖の連結地点ね」


…………


ビュウウウウウ...!

ほむら「うあ……!!」

マール「高い寒い怖い風が強い!!!」

クロノ「下を見るなよ! 進めなくなるぞ!」

587: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 21:53:43.99 ID:a1fvDYyto
B.C.12000 なげきの山


ほむら「ハァ……ハァ……。……な、なんとかたどり着けたわね……」

クロノ「帰りもあるぞ。しかも下り」

ほむら「今は考えたくないわ……」


マール「浮遊大陸と違って、この山は整備されてないね~」

ほむら「山自体が牢獄のようなものでしょうしね」

マール「ふわあ……この崖の端から落ちたらひとたまりもなさそう」

クロノ「気をつけて進まなきゃな」

588: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 21:55:31.65 ID:a1fvDYyto
B.C.12000 なげきの山 山頂


ほむら「ここに命の賢者が閉じ込められているのか……」

マール「あれ? なんだろ、台座の上に何か……氷塊……?」

ほむら「待って。透けて中が見えそう……人よ! 中に人が!」

クロノ「賢者様か!?」


キイイイイイン...

ほむら「! 氷塊が……」

マール「消えちゃったよ!?」


ズズズズズ...!

クロノ「何か来るぞ!」

589: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 21:57:29.51 ID:a1fvDYyto
ギガガイア「グオオオオォォォ!!!」


クロノ「で、でかい!」

マール「巨人!?」

ほむら「なんて大きさなの……! ティラン城のブラックティラノより大きいじゃない!」

クロノ「こいつをなんとかしろって言うのか!? むちゃくちゃだな……!」

590: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 21:59:09.88 ID:a1fvDYyto
ほむら「……ふん。ちょうどいいわ……」

マール「ほむらちゃん……?」

ほむら「鬱憤がたまってたのよ……。これだけ大きければ、よけれられる心配もないわね」


ほむら「『M252 81mm迫撃砲』!!」

クロノ「なっ……なんだよ、その筒!?」

ほむら「発射ッ!!」

591: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:01:19.04 ID:a1fvDYyto
ズドドドドッ!! ガガアアアァァァン!!!

ギガガイア「ゴオオオオォォォ!?」


クロノ「ゆ、ゆれる! 山が揺れている!」

マール「わわわわわっ!? 立ってられないぃ~……」

ほむら「ああ、気持ちいい。図体がでかいだけのでくの坊ね。そのまま死ねばいいんだわ」


クロノ「! マール、あぶない! 土砂崩れだ!」

マール「えっ……! きゃああ!!」

ほむら「あら、失敗。着弾地点が広範囲すぎて、周囲にも損害が出たわね」

592: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:03:40.87 ID:a1fvDYyto
クロノ「大丈夫か、マール!」

マール「う、うん。なんとか……」

クロノ「ほむら! なに考えてるんだよ、味方にも被害が出てるじゃないか!」

ほむら「そう、ごめんなさいね。邪魔だから下がっててくれる?」

クロノ「おい……!」


マール「ほむらちゃん……。ど、どうしちゃったの……」

ほむら「邪魔よ、マール。バックブラストの餌食になりたいの?」

マール「えっ……」

593: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:05:44.47 ID:a1fvDYyto
ほむら「『M136 AT-4』!!」ドォン!!

ギガガイア「グアアオ!!」ズガアン!!


マール「ゲホ、ゲホ! なにこれ……煙が!」

ほむら「だから邪魔だって言ったじゃない」

マール「あ、あの……ごめん……」

ほむら「どんくさいわね。足手まといは嫌いよ」

マール「……」


クロノ「……! ほむらッ!!」ドン!

ほむら「いたっ……!? 何するの、クロノ! 頭にきたからって、突き飛ばすことは……」

594: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:08:53.56 ID:a1fvDYyto
ギガガイア「ウオオオオォォォ!!!」

ほむら「!?」

ギガガイア「ガアアッ!!!」ズドオン!!!


ほむら「くっ……! あの巨大な腕、振り下ろされるだけで脅威ね……」

マール「ほむらちゃん! 大丈夫?」

ほむら「さっきの場所にいたらつぶされていた……。クロノ、あなたはそれを知らせるために……?」

マール「あ、あれ? クロノ!? クロノがいないよ!」

ほむら「え……!? ま、まさか……私をかばって……」

595: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:11:10.20 ID:a1fvDYyto
ギガガイア「オオォォォッ!!!」

『ダブルハンドブラスター』

ズオオオオッ!!!


マール「きゃああっ!!」

ほむら「こいつ……! ただ力任せに振り回すだけでなく、魔法まで……!」



ギガガイア「シイイイイ...!」

『防御アームでヘッドを回復』

マール「回復されちゃった……」

ほむら(右腕で攻撃、左腕で回復……。両腕があけば、強力な魔法が飛んでくる……)


ほむら「厄介ね、あの腕は……!」

596: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:13:16.55 ID:a1fvDYyto
ギガガイア「グ...!? ゴオオオ...!!」


マール「あれ……? 巨人の様子が変だよ?」

ほむら「背中を気にしている……?」

マール「かゆいのかな?」

ほむら「冗談を言ってる場合じゃないでしょ」

マール「うーん、でも巨人だって人でしょ? かゆかったらムズがるんじゃない?」

ほむら「……人……あれが……」

597: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:16:07.15 ID:a1fvDYyto
クロノ「やれやれ……。振り落とされるかと思ったよ」

マール「あ、あれ!? クロノ!?」

ほむら「巨人の背中に張り付いている……! なるほど、だからヤツが気持ち悪がったのね」


クロノ「うまく接近できたな。よし、食らえ! 『みだれ斬り』!!」

ギガガイア「ギャバア!!!」

マール「連続攻撃がクリーンヒット! クロノすごーい!」


ギガガイア「グアアア!! オオオオオォォォ!!!」

ほむら「すごい痛がりようね……」

クロノ「うわ、わ……! さすがにこう動かれると張り付くのは無理だな。離脱、っと」

598: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:18:20.41 ID:a1fvDYyto
マール「クロノ! 無事だったんだね!」

クロノ「へへ、振り下ろされた腕を伝って登ってやったよ。対巨人戦闘の常套手段だろ?」

ほむら「よくやるわね、あなたは。私をかばいながら、その一瞬で……」

クロノ「ほむら、危なかったな。あのままだったらぺちゃんこだったぜ」

ほむら「……ヘイストで避けられたわ」

クロノ「それもそうか。ほむらは強いもんな。余計なことしちゃったかな?」

ほむら(……気づいていれば、だけれど。あの状況では、きっと間に合わなかったわね……)

599: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:21:20.39 ID:a1fvDYyto
ギガガイア「グウウゥゥ...!!」

『防御アームでヘッドを回復』


マール「また回復されちゃった……」

クロノ「くそっ! せっかくダメージを与えてやったのに……」

ほむら「いえ、クロノ。あなたのおかげでヤツの弱点が分かったわよ」

クロノ「ホントかい?」

ほむら「ええ。マールの言うとおりだったわ」

マール「私の……?」

ほむら「巨大さばかりに惑わされてはいけない。あいつを、人もしくは人型生物とみなせば話は簡単」

600: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:24:52.69 ID:a1fvDYyto
ほむら「人体の急所のひとつ、頭部。目、鼻、アゴ、こめかみ、眉間。果ては、そのすぐ下の首まで……」

ほむら「衝撃を受ければ致命傷となる部分が集中している頭部を狙われることを、あの巨人は嫌がっている」

ほむら「だから腕で顔をかばい、優先的に回復しようとしているのよ」


マール「そ、そっか。じゃあ頭を重点的に狙えば……」

ほむら「そのためには、あの腕をなんとかする必要がある。作戦はこうよ」

ほむら「私とマールの『れんけいわざ』で腕のガードを引き剥がす。いいわね、マール」

マール「オッケー!」

ほむら「クロノ、あなたがトドメを刺しなさい。眉間にその刀を思いっきり突き立ててやればいいわ」


クロノ「……へへっ」

ほむら「なにを笑っているのよ。今の話に面白いところなんてあったかしら?」

クロノ「そうじゃないよ。ほむらの調子が戻ってきたみたいだからね」

ほむら「……」

クロノ「やっぱり君は頼りになる。それでこそ僕らのリーダーだ」

602: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:28:07.85 ID:a1fvDYyto
ギガガイア「グアアアア!!!」

マール「巨人が攻撃してくる!」

ほむら「散開して!」


『ガイアマグナード』

ズガァン!!


クロノ「ぐっ……! さすがにキツイな!」

マール「でも、距離を取ったおかげでそこまで被害は大きくないよ!」

ほむら「今度はこちらの番! いくわよ、マール!」

603: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:30:02.93 ID:a1fvDYyto
マール「『アイスガ』!!」

ほむら「『M26手榴弾』!!」


ほむら&マール「ふたりわざ『メドローアボム2』!!」

ギガガイア「グゲッ...!! グググ...!!!」


マール「手をついた!」

ほむら「体勢は崩したわ……クロノ!」

604: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:33:09.89 ID:a1fvDYyto
クロノ「ふたりが作ったこのチャンス……。逃す手はないよな!」

クロノ「うおおおおっ! 『ぜんりょく斬り』!!」


ズバアンッ!!

ギガガイア「ギャオオオオ!!!」



マール「やったあ! 今度こそ……」

ほむら「! いえ、まだよ……!」


ギガガイア「グギギギ...!」

マール「耐えてる……! しぶといなあ、もう!」

ほむら「とはいえ、もう少しだわ。私たちの攻撃で腕もボロボロ。あれでは頭部を回復させることも……」

605: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:35:07.78 ID:a1fvDYyto
『アームを復活』


マール「え!?」

ギガガイア「ウオオオオ...!!」

ほむら「冗談でしょ!? 腕が再生していく……!」

マール「ど、どうしよう、ほむらちゃん! プランBは!?」

ほむら「ないわよそんなもん!」

606: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:37:58.57 ID:a1fvDYyto
クロノ「いや、ある!」

マール「クロノ!?」


クロノ「ヤツは満身創痍……。ほむら! 今こそ僕と君の『れんけいわざ』を叩き込むときだ!」

ほむら「私とあなたの……!?」

クロノ「今度はちゃんと狙ってくれよ。あの筒……一点集中で、ね!」

ほむら「! 『M252 81mm迫撃砲』……」

クロノ「合わせてくれ、ほむら!」

607: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:39:34.77 ID:a1fvDYyto
クロノ「『サンダガ』!!」

ほむら「『M252 81mm迫撃砲』!!」


マール「こ、これは……!」

クロノ「無数の落雷と砲弾のシャワー! 耐えられるかい、巨人!」

ギガガイア「ゴオオオオオ!?」



クロノ「そのまま沈めッ!! ふたりわざ『ダークスパーク』だ!!」

608: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:41:47.51 ID:a1fvDYyto
ギガガイア「ギャアアアアアアアアアァァァオオオオオォォォ...!!!」


マール「巨人が倒れていく……」

ほむら「やられる姿すら迫力満点ね。我ながら、よくなんとかなったものだと感心するわ」

クロノ「ほむらの知略と僕らの戦力。合わせれば、どんな敵でも対処できるって僕は信じてたよ」

マール「うんうん。ほむらちゃんのおかげだね!」

ほむら「あまりおだてないで。お世辞は好きじゃない」

マール「お世辞じゃないってば~」

ほむら「……」


ほむら(……『コンビネーションの質の高さが、実力以上の力を発揮させている』……か……)

609: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:44:08.69 ID:a1fvDYyto
クロノ「それにしても、あの巨人がここの牢番だったのかな?」

ほむら「とんでもない牢番もいたものね」

マール「あ、見て! 氷塊が戻ってきたよ」


パリーン!!

ボッシュ「うう……ここは……?」

ほむら「ボッシュさん!?」

610: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:46:17.51 ID:a1fvDYyto
ボッシュ「いかにも、ワシはボッシュじゃが……なぜワシの名を? 会うのは初めてじゃぞ」

クロノ「ボッシュが命の賢者様だったのか。でも、現代にいたはずじゃ?」

ほむら(元は古代の人間だったのね。ということは、このあとなんらかの理由で時間跳躍を……?)

ボッシュ「まあええわい。助けてくれたこと、礼を言おう。ところで女王は? 海底神殿はどうなった?」


ゴゴゴゴゴ...!

マール「きゃあ! じ、地震!?」

クロノ「空に浮いてるのにか!?」

ボッシュ「いかん、ここの封印を解いたため山が落ちるぞ! 急いで下りるのじゃ!」

611: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:48:14.39 ID:a1fvDYyto
B.C.12000 アルゲティ


地の民A「長老! な、なげきの山が!!」

アルゲティ長老「彼らは、やってくれたか……」


地の民の子供「ママ、お山が落ちてくるです~!」

地の民B「大丈夫よタラちゃん。ここにいれば安全だからね……」


…………



612: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:50:36.37 ID:a1fvDYyto
ボッシュ「そうか……。女王の心は、既にそこまで……」


ボッシュ「ラヴォスに、人としての心を食われてしまったのじゃろう。もはや女王は正気ではない」

アルゲティ長老「何も知らされず、わしらは奴隷として重労働を強いられました。神殿を建設するため……」

ボッシュ「魔神器を海底までおろせば、ラヴォスそのものを目覚めさせてしまうかもしれぬ」

マール「なんとかしないと!」

ほむら「宮殿へ乗り込む方法は?」

ボッシュ「そうじゃな。まずは天への道の封印を解いて……」


地の民「長老! サラ様がおいでです!」

ボッシュ「なに、サラが?」

613: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:52:42.49 ID:a1fvDYyto
アルゲティ長老「おお、サラ様……。それに、鹿目様も……」

ほむら「まどか!」

まどか「えっ!? ほ、ほむらちゃん!? どうやってこの時代に……」

クロノ「いやあ、タイムマシンでちょっとね」

まどか「タ、タイムマシン!?」

サラ「みなさん、良かった……」

ジャキ「へこたれないヤツらだよ」

614: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:55:47.73 ID:a1fvDYyto
ボッシュ「サラ。久しぶりじゃな」

サラ「ボッシュ……。なげきの山が落ちたので、ここに来ればきっと会えると……」

ボッシュ「宮殿を抜け出したりして、大丈夫なのか?」

サラ「それどころではありません。神殿が……海底神殿が、完成してしまったのです!」

ボッシュ「! 間に合わなんだか……!」


サラ「しかし、私かまどかでなければ魔神器は動きません……」

サラ「私はまどかと逃げます。天への道は開いておきました。みなさん、どうかお願いします……」

サラ「女王を……母を、止めてください!」

まどか「お願い、ほむらちゃん。サラちゃんの頼み、聞いてあげて!」

ほむら「まどか……どうしてあなたは、そこまでこの国のことを……」

615: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 22:58:22.58 ID:a1fvDYyto
ダルトン「そこまでにしていただきましょうか」

サラ「ダルトン!?」

ダルトン「たまげましたねえ。甘ちゃんの王女さまが、とんだ暴挙に出たもんだ」

ダルトン「鹿目様の入れ知恵かね? かごの中の鳥は、おとなしくさえずってりゃいいんですよ」


ボッシュ「ダルトン! おぬしの好きにはさせんぞ!」

ダルトン「ジジイは説教くさくてたまらねえ。黙らせろ、衛兵」

ボッシュ「ぐはっ!」

まどか「ボッシュさん!」

616: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:00:59.55 ID:a1fvDYyto
ダルトン「連れていけ。ふたりともだ」

ほむら「!」

ジャキ「姉上! まどか姉さま! こいつら……その手を放せ!」

ダルトン「王家のガキはどいつもこいつも……気が強くていけない、ね!」バシッ!

ジャキ「うあっ!」

サラ「ジャキ!」


マール「あんたたちぃ……!」

ダルトン「おーっと、お前たちも手を出すなよ? 俺様は女王など少しも恐れちゃいない」

ダルトン「ふたりともと言ったが、必要なのはどっちかひとりだ」

ダルトン「要らんほうのクビをここでハネてもいいんだぜ? そうだなあ……やはりここは、鹿目様かね?」

ほむら「そんなことをしてみろ。次に飛ぶのは、お前のクビよ……!」

ダルトン「やってみるか?」

617: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:02:54.12 ID:a1fvDYyto
まどか「やめて……お願い。言うとおりにするから……」

ダルトン「それでいい。素直なのが一番ですぜ」

ほむら「まどか!」

ダルトン「さーて行きましょうか。やさしいお母上がお待ちかねですよ」


ダルトン「ハッハッハッハ!!!」


…………



618: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:04:56.42 ID:a1fvDYyto
ほむら(またまどかを救えなかった……! どうしてこう、邪魔ばかり入るの!)


クロノ「ボッシュ、大丈夫か?」

ボッシュ「うむ、すまん……。まずいぞ、なんとしてもふたりを救い出さねば、大変なことに……」

アルゲティ長老「無茶です! いかにボッシュ様といえど……」

ボッシュ「この計画が実行されれば、すべての人間……いや、すべての生命が危機にさらされるんじゃぞ!」

アルゲティ長老「し、しかし……」


クロノ「……マール」

マール「言われるまでもないよ!」

クロノ「……ほむら」

ほむら「だから言ったでしょう? さっさと乗り込むべきだって」

クロノ「……よし!」

619: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:07:48.22 ID:a1fvDYyto
♪クロノ・トリガー


ボッシュ「何をする気じゃ……」

マール「決まってるよ!」

クロノ「僕たちに任せてくれ!」

ほむら「まどかを救うついでに世界も救ってあげるわ」

ボッシュ「お、お主ら……。すまぬ……名も知らぬお前さんたちに、何から何まで……」


ほむら「気にしないで。あなたには借りがあるから」

マール「名前なら、そのうち知ることになるよ!」

ボッシュ「な、なに???」

クロノ「よし、宮殿に行こう!」

620: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:09:51.24 ID:a1fvDYyto
ボッシュ「待て、これを持っていけ」

ほむら「これは……ナイフ?」

ボッシュ「そいつは魔神器と同じ赤き石のかけらで作られたもの。それなら魔神器を壊せるじゃろう」

ほむら(ドリストーン……)


ボッシュ「ワシも、あとのふたりの賢者に連絡して、すぐにあとを追う。頼んだぞ、お主ら!」

621: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:11:35.38 ID:a1fvDYyto
B.C.12000 ジール宮殿 女王の間


ほむら「ジール!!!」

マール「……誰もいないね」

ほむら「……」

マール(勢いつけて飛び込んだ分、反動で恥ずかしさが加速してるほむらちゃんカワイイ)

クロノ「というか、宮殿自体に誰もいなかったな。どこに行ったんだろう……」

622: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:14:23.41 ID:a1fvDYyto
QB「海底神殿が完成したからね。ラヴォス復活に備え、みんなそっちへ行ってるのさ」

ほむら「インキュベーター……!」

QB「おっと。どうして君は、会うたび僕を殺そうとするんだい?」

マール「……」

QB「……うしろのふたりも、以前と様子が違うね。何を話したんだい?」

ほむら「お前に教える筋合いはないわ」

QB「やれやれ。結局、君もまどかと一緒か。彼女も僕の話を聞こうとしなかった」

QB「それどころか、彼女の影響でサラもジャキも僕を嫌う始末さ」

ほむら「いい気味だわ」

623: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:18:28.33 ID:a1fvDYyto
QB「……僕たちは共通の敵を持っている。ラヴォスは、最終的には倒されなければならない存在だ」

QB「その点において、僕たちは協調できると思うんだけどな」

ほむら(ラヴォスは星のエネルギーを食らいつくす寄生虫)

ほむら(確かに、管理側のこいつらにしてみれば天敵とも言えるわね。でも……)


ほむら「お前との協力なんて、こっちから願い下げよ」

QB「そうかい。まあいいけど。僕は僕で、動かせてもらうよ」

ほむら「……邪魔はさせないわ」

QB「邪魔なんてしないよ。海底神殿に行くんだろう? ほら、ここから下りられるよ」

クロノ「ほむら、行こう! 時間がない」

ほむら「命拾いしたわね、インキュベーター」

QB「……」


…………


QB「行ったみたいだね。さて、僕も追いかけようか」

624: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:22:34.70 ID:a1fvDYyto
B.C.12000 海底神殿


リオン「やあ、お姉ちゃんたち」

ほむら「リオン!? なぜあなたが……」

リオン「黒い気が、高まってくる……。こわいものが目を覚ましちゃうよ」

クロノ「何を言って……うおっ!?」


ゴゴゴゴゴ...!

マール「ま、また地震!?」

ほむら「まさか……!」


…………



625: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:25:07.07 ID:a1fvDYyto
ジール「さあ、サラよ。魔神器のパワーを限界まで上げるのだ」

サラ「……」

ジール「サラ! わらわの言うことが聞けぬのか!?」

サラ「分かりました……母上……」


キュイイイイイイン...

ジール「おお……なんとまばゆい輝き! すばらしきラヴォス様の力よ!!」

まどか「サラちゃん……」

予言者「……」


…………



626: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:26:41.60 ID:a1fvDYyto
光の民「異国の者、立ち去れ……。神聖なるラヴォス様の復活……邪魔はさせない……」

ほむら「どきなさい!」

光の民「ラヴォス様……万歳……ギャギャギャギャギャ!!」

マール「人間が魔物に……!?」

クロノ「ラヴォスの影響か!?」

ほむら「強行突破よ!」


…………



627: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:29:13.65 ID:a1fvDYyto
ジール「ああ、感じる……感じるぞ! 永遠の生命の鼓動を……!」

まどか「な、なに……この黒い気の渦……!?」

巫女「……!!」


キュイン! キュイン! キュイイイン...!!

側近「ま、魔神器の様子が……! 女王様、これ以上は危険なのでは……」

ジール「臆病者はこの場にふさわしくないな……。死ね!!」

側近「ギャアーッ!?」

サラ「母上……! なんてことを……」


…………



628: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:32:30.40 ID:a1fvDYyto
グラン「ボクらはナイフにこめられたボッシュの希望なんだよ……」

ほむら「このナイフが……? じゃあ、もしかしてこれは……」

グラン「さあ、女王たちのところに行くつもりなら急がないと。頼むぜ、姉ちゃんたち」


…………



サラ「う……ッ!」

ジール「続けるのだ、サラ! あともう少しだ……」

ジール「わらわは永遠の生命を手に入れる! 我がジール王国は……神の光に包まれるのだ!」


ジール「ククク……フハハ……アーッハッハッハッ……!」


…………



629: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:37:39.19 ID:a1fvDYyto
ダルトン「ったく、予言者のヤローが中に入れて、なぜ俺様が見張り……む?」


ほむら「ダルトン!!」

ダルトン「お前ら、マジでこんなところまで追いかけてきやがったのか……」

マール「サラさんとまどかちゃんは、どこ!?」

ダルトン「予言者のヤツらが何かボロを出すかと思って泳がせておいたが……もうお前らも用済みだな」


ダルトン「お前らの始末はコイツがつけてくれる! いでよ、ゴーレム・シスターズ!」

ダルトンゴーレム・シスターズ(姉)「わたくしたちの出番ですね」

ダルトンゴーレム・シスターズ(妹)「がんばるさー!」


クロノ「空間からゴーレムが!?」

ほむら「くっ、こんなことしてる時間はないのに!」

ダルトン「いさぎよく死ねーいッ!」

630: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:41:42.06 ID:a1fvDYyto
シスターズ姉「ダルトン様の野望を邪魔立てする者に死を。『エネルギーボール』!!」

マール「きゃあっ!?」

クロノ「マール!」


ほむら「どきなさい! あなたたちを相手にしている暇なんてないのよ!」

シスターズ妹「ここを通ろうってんなら、自分らを倒してからにするさ」

ほむら(すぐ目の前に、まどかがいるっていうのに……こいつら……!!)


クロノ「ほむら! 相手はふたりだ。ここはなげきの山の時のように『れんけいわざ』で……」

ほむら「うるさいッ!!」

クロノ「!?」

631: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:43:42.52 ID:a1fvDYyto
ほむら「『89式小銃』!!」

シスターズ妹「おっと危ない! 『鉄球』!!」

マール「鉄の塊!?」

シスターズ妹「そんな豆鉄砲、この鉄球には効かないぞ! このまま押し込んでやる!」

ほむら「!? 鉄球を盾にしたまま強引に突っ込んできた……!」

マール「ほむらちゃん、逃げて!」


シスターズ妹「そーれっ!!」ドスッ!

ほむら「あ、がふっ……!」

632: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:47:19.15 ID:a1fvDYyto
シスターズ姉「あらあら。見事なまでにお腹にめり込みましたね」

ほむら「……ぐ……うぐ……!」

シスターズ妹「ハハハッ! そこでそのまま、うずくまってればいいさー!」

ほむら「げほっ……えぅ……が、えほっ……」ビチャビチャ!

シスターズ姉「ふふ、吐血しましたか。内臓のいずれかがつぶれたのではないですか?」


マール「ほむらちゃん! しっかりして、今回復を……」

ほむら「……必要……ない、わ……!」

マール「え……?」

ほむら「必要ないと言っているの! こんなもの、魔力ですぐ修復してやるわ!」

マール「で、でも……」

ほむら「何をやっているのよ、あなたは! 余計な心配をする暇があったら、あいつらを殺しなさい!!」

マール「ほむらちゃん……」

633: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:49:06.31 ID:a1fvDYyto
シスターズ妹「殺すだって? よく言うさ。そんなボロボロで何ができるって言うんだ?」

シスターズ姉「油断はなりませぬ。追い詰められたネズミに噛まれる前に、トドメを刺しましょう」

シスターズ妹「オッケー。みんなまとめてあの世行きだぞ! 『ダークレイ』……」


ほむら「やらせるかああッ!!」

シスターズ姉「!」

ほむら「『FN MINIMI M249パラトルーパー』!!」

634: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:50:59.57 ID:a1fvDYyto
シスターズ妹「うぎゃーッ!? こ、こいつムチャクチャだぞ!」

シスターズ姉「なんてデタラメな弾幕……! どこを狙っているのです!」


ほむら「ああああああッ!!」ドガガガガガガ!!


マール「きゃあああっ!?」

クロノ「ほむら、クソ……! ダメだ、見境をなくしている!」


ダルトン「うおおおッ!? あ、あぶねえ! こっちにまで流れ弾が!」

シスターズ姉「ダルトン様! 危険です、お下がりください!」

ほむら「……!」

635: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:53:13.09 ID:a1fvDYyto
マール「はあ、はあ……。あうう~……ちょっと足にかすっちゃったよ……」

クロノ「どういうつもりなんだ、ほむらは……。こんな……!」

シスターズ妹「ふい~……。なんとか切り抜けたぞ……」

シスターズ姉「!? あの女がいません! どこに行ったのですか!?」

マール「え……」


ダルトン「シ、シスターズ……! 助けてくれえ……」

シスターズ姉「ダルトン様?」

636: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:54:50.02 ID:a1fvDYyto
ほむら「……捕まえたわ……!」


シスターズ妹「な!? あ、あいつ、ダルトン様を!?」

シスターズ姉「なんのつもりです、貴女!」

ほむら「大事な大事なご主人様を殺されたくなかったら、投降しなさい……」


マール「ほむらちゃん!? 何してるの!?」

ほむら「人質よ。テロリストの私たちにはお似合いでしょう?」

クロノ「き、君は……!」

637: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:57:19.76 ID:a1fvDYyto
ほむら「あなたたちがこいつの安否を気にしているのを見てね、ひらめいたのよ」

ダルトン「ひいいッ! やめろ、銃を向けるな!」

ほむら「当然よね、自分の主なんだもの。見殺しにできるわけがない」

シスターズ妹「卑怯だぞ、お前!」

ほむら「まどかをいいように利用し続けたあなたたちに言われたくはないわ」


ほむら「さあ、そこをどきなさい。私たちが先に進み、安全が確保されたらこいつは放してあげるわ」

シスターズ姉「……仕方ありません。ダルトン様に危害を加えさせるわけにはいきませんから……」

ほむら「お利口さんね……。クロノ、マール。行くわよ」

マール「……」

638: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 23:59:05.48 ID:a1fvDYyto
ほむら「……!? ぐっ……!」

ダルトン「む……?」

ほむら(ま、まずい……視界がボヤける……。思ったよりダメージを受けすぎていた……!)


ダルトン「バカめ、ヒザを突いたな? 隙だらけだぞ!」ドスッ!

ほむら「あうっ……!?」

マール「ほむらちゃん!」

639: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:00:49.72 ID:fw7wNjbjo
シスターズ妹「やったぞ! ダルトン様が解放された!」

シスターズ姉「損傷の激しい腹部への肘打ち。お見事です、ダルトン様」

ダルトン「チッ、このアバ  が! よくも汚らしい手でこの俺様に触れてくれたな……」


シスターズ妹「さ~て、ナメた真似をしてくれたお礼だぞ。楽には死なせてやらないさ」

シスターズ姉「非道なる行い、目に余ります。あなたはこの美しき王国にふさわしくありませんね」

ほむら「……!」


ダルトン「ぶっ殺せ! シスターズ!!」

640: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:03:01.07 ID:fw7wNjbjo
クロノ「『ぜんりょく斬り』!!」

シスターズ妹「!?」ガキィン!!

クロノ「くそ……防がれた……!」ギリギリ...!!

シスターズ妹「こ、こいつ……! 邪魔するなぁっ……!」ギギギギ...!!

クロノ「ほむらに手出しはさせない……ッ!」ガギギギ...!!


シスターズ姉「つばぜり合い状態……!」

ダルトン「何をしているッ! さっさと押し切ってしまえ、シスターズ!」

641: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:04:30.55 ID:fw7wNjbjo
ほむら「ああ……いいわね、クロノ。その状態、すごくいいわよ」

クロノ「な……んだっ、て……? ほむら……とにか、く……そこから下がれ……!!」

シスターズ妹「うぎぎぎ……!!」

ほむら「そのまま、そいつを押さえつけておいてね……」



ほむら「『パイプ爆弾』!!」

クロノ「なっ!?」


ドカァン!!

642: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:06:35.82 ID:fw7wNjbjo
シスターズ妹「うぎゃーっ!?」

クロノ「ぐあ……っ!」


マール「ク、クロノーッ!!」

ダルトン「信じらんねえ!? 味方もろとも爆破しやがった!」


マール「ほむらちゃん、なんてことを!」

ほむら「敵が拘束されていたのよ。チャンスじゃない」

マール「だからって……!」

ほむら「魔法って便利よね。さっさとクロノを回復してあげなさい。死ぬわよ、彼」

マール「あなたねえ……!!」

644: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:08:45.22 ID:fw7wNjbjo
シスターズ妹「うぎぎ……オ、オマエェ……ッ!!」

ほむら「!」

シスターズ妹「よくもやってくれたな!」

シスターズ姉「貴女は第一級の危険人物ですね。速やかに排除せねばなりません」


マール「クロノ! 大丈夫!?」

クロノ「ゲホッ、ガハッ……! なんなんだよ、これ……。なんでほむらは……!」

645: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:10:47.95 ID:fw7wNjbjo
ダルトン「クソ忌々しい女が! 早く殺せ、シスターズ!」

ほむら「……どいつもこいつも……ギャーギャーわめきたてて……うっとうしいったらありはしない……」


ほむら「『M252 81mm迫撃砲』!!」

マール「あの筒……なげきの山の時の……!」

クロノ「おいおいおいおい! 冗談はよしてくれ……!」



ほむら「みんな、みんな……消えなさいッ!!」

646: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:12:29.07 ID:fw7wNjbjo
ダルトン「正気かアーッ!? あの女、室内で砲撃しやがった!!」

シスターズ妹「ぎゃーっ!? 天井が崩れる!」

シスターズ姉「ダルトン様……!」


マール「きゃああああッ!!」

クロノ「マール! クソッ……!!」


ズズウ...ン!!

648: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:14:08.11 ID:fw7wNjbjo
ほむら「……はあ、はあ……ゲホッ……」

ほむら「……」

ほむら「全部……瓦礫の下敷きね……。ざまぁみろ……」


クロノ「ぐ……いて……。大丈夫か……マール……」

マール「う、うん……。クロノがかばってくれたから……」


ほむら「あら、生きていたの。たいした生命力ね」

マール「……ほむらちゃん……」

ほむら「ヤツらは瓦礫につぶされておしまい。上々の戦果でしょう?」

マール「……」

ほむら「なによ、その顔は。言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ」

651: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:16:51.93 ID:fw7wNjbjo
クロノ「いい加減にしろよ、ほむら!」

ほむら「……」

クロノ「君らしくないよ、こんなやり方! 君はもっと冷静で、頼りになる……」

ほむら「知ったような口を聞かないで」

クロノ「……!」

ほむら「私らしいって、なに? 私のこと、何も知らないくせに」

クロノ「それは君がちゃんと話してくれないからだろう!」


マール「やめて、ふたりとも! 仲間割れしてる場合じゃないでしょ……」

クロノ「マール……」

マール「じっとしてて……。クロノもほむらちゃんも、もうボロボロなんだから……。私に任せて……」

ほむら「……」

652: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:19:46.49 ID:fw7wNjbjo
ほむら「クロノ。憎いなら、その刀で私を刺せばいいわ」

クロノ「……」

ほむら「でも、できるならまどかを助けてからにしてほしいわね」

ほむら「そのあとなら、私はどうなってもいいわ。好きにしてくれていいわよ」

クロノ「……ほむら……君は……」


マール「なに言ってるの、ほむらちゃん! 今のあなた、おかしいよ!」

ほむら「ええ、おかしいわ。仲間だなんだとぬるま湯に浸っていたことが、そもそもおかしかったのよ」

マール「やめて……。そんなこと言わないで……」

653: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:22:17.34 ID:fw7wNjbjo
ダルトン「くそッ! お前ら……よくもやってくれたな!」


クロノ「ダルトン!」

ほむら「ちっ……しぶといヤツ。まだ生きていたのね」

ダルトン「シスターズがやられたか……! こうなりゃマスター・ゴーレムで……」



ズゴゴゴゴゴゴゴ!!!

ほむら「! この地響き、魔王城の時と同じ……!」

ダルトン「な、なんだこの不気味な気の高まりは? これがマジもんのラヴォス!?」

654: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:25:05.50 ID:fw7wNjbjo
クロノ「ちくしょう、時間がない!」

ダルトン「……永遠の力を手に入れたとしても、死んじまっちゃあ元も子もねえ……」

ダルトン「今日のところは見逃してやる! あばよッ!」


マール「逃げちゃった……」

ほむら「ほっときなさい。今は、まどかを助け出すことが最優先だわ」

クロノ「……サラも、だろ。きっとこの先だ。行こう!」

マール「う、うん……」

ほむら「そんなおびえた目で見なくても、後ろから撃ったりしないわよ」

マール「あ、や……そういうわけじゃ……」

クロノ「もうやめろ。行くぞ、ほむら」

ほむら「私に命令しないで」

マール「……」

656: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:29:55.31 ID:fw7wNjbjo
B.C.12000 海底神殿 魔神器の祭壇


ほむら「まどか!!」

まどか「ほむらちゃん! 来てくれたんだ……」


ジール「貴様らか……。呼んだ覚えはないぞ」

クロノ「ジール、やめるんだ! ラヴォスは災いしか生まない!」

ジール「貴様らにはラヴォス様の偉大さが分からんと見える……。感じないのか? このゆらぎ……」

マール「こ、これ……次元のゆらぎ……」


サラ「み、みなさん……もう間に合わない……。逃げて……あああっ!!」

予言者「サラ!」

ジール「何をやっている! 魔神器の波長が乱れているぞ、サラ!」

ほむら「今よ……! こいつを食らいなさい!」

657: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:33:46.87 ID:fw7wNjbjo
ジール「!? 魔神器が……! なんだ、あのナイフは!」


グラン「よし、行くぞリオン!」

リオン「うん、グラン兄ちゃん!」

グランとリオン「止まれえええええーッ!!!」


マール「あ、あれ!? ナイフが剣に……」

ほむら「やっぱりあれは、グランドリオン……!」

クロノ「よし、聖剣の力さえあれば!」

658: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:35:18.20 ID:fw7wNjbjo
ジール「フ、フフフ……フハハハハ!」

ほむら「!? ……止まらない……」

サラ「い、いけない……あの剣だけでは、この力を抑えきることは……」

予言者「来る……!!」



ジール「ラヴォス神の降臨だ!! アハハハハハハッ!!!」

659: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:37:19.31 ID:fw7wNjbjo
♪ラヴォスのテーマ


「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」


ほむら「う……うそ……」

マール「これが……本物の……」

クロノ「ラヴォス……!」



『天からふりそそぐものが世界を滅ぼす』


側近たち「!? ぎゃああああ……!!」

まどか「み、みんな……あっ!?」

ほむら「! いけない、まどか! 逃げて!」

660: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:39:15.37 ID:fw7wNjbjo
まどか「……う……あ、あれ……? なんともない……」

巫女「ぼーっとしてんなよ、まどか」

まどか「巫女さん!?」

巫女「アタシが防御結界を張る。こいつとふたりで、隠れてろ」

サラ「まどか! 大丈夫!?」

まどか「サラちゃん!」


巫女「打ち合わせどおり、ふたりは避難させたぜ。やっちまえ、ジャキ」

661: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:42:36.64 ID:fw7wNjbjo
予言者「どれほど待ちわびたことか……。この時がくるのを……」

魔王「久しぶりだな、ラヴォス!!」


マール「え……!? 予言者が……魔王!?」

まどか「あ、あれ……? ジャキくん? でもなんだかずいぶん年がいってるような……」

サラ「……」

ほむら「じゃあ……あなたは、やっぱり……」


巫女「やっぱりってなんだよ」

杏子「あーあ。ださいフードかぶってた意味ないじゃん」

662: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:44:54.07 ID:fw7wNjbjo
魔王「お前は変装が下手すぎる。もっと隠す努力をしろ」

杏子「うっさいよ」

ジール「クックック……」

魔王「!」


ジール「偽りの予言者めが……こんなことだろうと思ったよ……」

まどか「ジールさん、なに言ってるの!? ジャキくんなんだよ!」

サラ「まどか……無駄よ……。母上はもう、正気を失っている……」

663: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:46:57.57 ID:fw7wNjbjo
魔王「遠いあの日、俺は誓ったのだ。ラヴォス、貴様だけは……この手で叩き潰してやると!」

魔王「たとえそのために、何を失うことになろうともな……!」

杏子「……」


魔王「ついに誓いを果たす時が来た! 死ね、ラヴォスよ!」

ジール「できるかな、お前に? ラヴォス様の餌食にしてくれるわ!」

魔王「!? ……うぐ……ま、魔力が……吸い取られてゆく!?」

ジール「アッハッハッハ! その程度か?」

魔王「や、やられぬぞ俺は……ラヴォス……! 貴様を倒すためだけに、闇の中……俺は……!」

664: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:49:16.83 ID:fw7wNjbjo
杏子「ジャキ! ……くそっ! そこにいろよ、ふたりとも!」

まどか「杏子ちゃん!」


ほむら「杏子、手を貸すわ」

クロノ「詳しい事情はまだ分からないけど……」

マール「今は、みんなでラヴォスを止めなきゃ!」

杏子「アンタら……」

665: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:50:25.60 ID:fw7wNjbjo
ジール「愚か者どもめ……。ちっぽけな貴様らの力などラヴォス様には通用せぬわ!」


『カオティックゾーン』


ほむら「なっ!?」

魔王「ぐおおおおおっ!?」

杏子「うあっ!」

666: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:52:09.17 ID:fw7wNjbjo
まどか「きゃあああっ!」

杏子「! くそっ……結界が……!」

サラ「う、ぐ……! 母上……もう……やめてください……。もう、これ以上は……!」

ジール「邪魔だてするな、サラ。もはや運命は変えられぬ」

ジール「ラヴォス様の偉大なる生命の力は、わらわの中に息づいておる。お前も、その一部なのだぞ?」


ジール「この世のすべての生き物は、ラヴォス様の中で一体となるのだ!!」

667: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:56:05.71 ID:fw7wNjbjo
ほむら「まどか……せめて、まどかだけでもなんとか……」

ジール「ほう? まだ動ける者がいたようだな。存外にしぶとい……」


ジール「フフ……よかろう。わらわからの贈り物だ」

ジール「黒髪の女よ。永遠の生命となり、ラヴォス様の中で生きるがよい」

ほむら「!」

ジール「忘れてはおらぬぞ……。貴様が、わらわの顔にキズをつけたこと……」

ジール「喜べ! 貴様はラヴォス様の、最初のいけにえに選ばれたのだ! アーッハッハッハッ!!」



"あなたたちのうち、誰かひとり……死ぬよ、もうすぐ……"

668: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 00:59:49.51 ID:fw7wNjbjo
ジール「! ……何のつもりだ?」

クロノ「……」


ほむら「ク、クロノ……!? あなた……何を……」

クロノ「ほむら。大切な人を守るって、大変だけど気分いいな」

ほむら「え……」

669: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 01:02:35.85 ID:fw7wNjbjo
クロノ「ずるいぜ、君は。こんなカッコいいこと、たったひとりでやってきたんだろ?」

クロノ「君にとって大切な、まどかを守るってこと……ずっと続けてきたんだろ?」

クロノ「たまには、守られる側にも回ってみなよ。意外とそっちのほうが似合ってるかもしれないぜ」


ほむら「……私……は……あなたに守られる資格なんて……」

クロノ「そんなことを言っちゃダメだ」

ほむら「……」

クロノ「守られる資格がないとか、どうなってもいいとか、自虐するのはよしてくれ。悲しくなるだろ?」

ほむら「クロノ……」


クロノ「僕は君やルッカのように頭がいいわけじゃあない」

クロノ「バカだから……目の前で君が辛そうにしているのをほっておけないんだ」

クロノ「ただ、それだけなんだ……」

670: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 01:05:50.38 ID:fw7wNjbjo
クロノ「悪かったよ、さっきは。決戦を前に、僕もちょっと変にテンションが上がっちゃったみたいだ」

ほむら「……私の……ほうこそ……」

クロノ「……へへっ。良かったよ、喧嘩したままじゃあ、覚悟が鈍っちゃうからね」

ほむら「なに……なにを言ってるの……クロノ……」

クロノ「みんなにゴメンって伝えといてくれ」

ほむら「やめ……やめて……!」


ジール「やるというのか? 異国の少年……お前に何ができる」

クロノ「……」

671: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 01:07:39.50 ID:fw7wNjbjo
ほむら「クロノ……! ダメ……逃げて……!」

クロノ「ほむら。もうひとつだけ、お願いしてもいいかな」

ほむら「え……?」


クロノ「頼ってくれよ、僕を。僕らを……」

ほむら「! ……」

クロノ「君の力になりたいんだ。きっとみんな、そう思っている……」



クロノ「じゃ……あとは任せたぜ、リーダー」

672: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 01:09:26.19 ID:fw7wNjbjo
ジール「その傷ついた体でただひとり、ラヴォス様に挑むのか? ククク……勇敢なことだ……」

クロノ「ジール……そしてラヴォス……。お前たちの好きにはさせない……!」

ジール「虫ケラめが……。死ねい! ラヴォス様の力を見よ!」


クロノ「うおおおおおおおおおおおーッ!!!!!」

「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」



「クロノ……!? クロノーッ!!!」

673: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 01:12:40.98 ID:fw7wNjbjo
ジール「アハハハハハハハッ! ゴミクズのように消し飛びおったわ!」


マール「クロノ……!? クロノは、どこ……!? いやあーッ……!!」

ほむら「……うそ……うそよ……」

まどか「ひどいよ……こんなの……あんまりだよ……」

サラ「……クロノ……」


ゴゴゴゴゴ...!!

杏子「! やべえ、神殿が……!」

674: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 01:15:05.33 ID:fw7wNjbjo
ジール「崩れるか……まあよかろう。ラヴォス様の聖なる住処として、生まれ変わってもらうとするか」

ジール「その前に、まずは不要となった以前の住居をきっちり掃除しておかねばな……」

魔王「待て、ラヴォス……!」


ジール「さあ行きましょう、ラヴォス様。この星のすべてをあなた様の支配下に。フハハハ……!」



魔王「……ぐっ……。俺の力では、ヤツに勝てぬというのか……!」

杏子「ジャキ、どうする!? ここは海の底だぞ!」

魔王「無駄だ……もはや……脱出はかなわん……」

杏子「あきらめるのかよ!?」

675: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 01:17:50.29 ID:fw7wNjbjo
サラ「私の最後の力を振り絞れば、みなさんを地上に飛ばすことぐらいはできるでしょう」

まどか「サラちゃん!?」

サラ「許されるはずはないけれど……どうか母を……この国を憎まないで……。ごめんなさい……」


魔王「……サラ!」

サラ「ジャキ……さようなら……」

杏子「光が……!?」

676: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 01:19:43.18 ID:fw7wNjbjo
まどか「サラちゃん! ダメ、やめて! あなたも一緒に……!!」

サラ「まどか……今まで、ありがとう……。私、あなたのこと忘れないよ……」

まどか「サラちゃん……! わたし、わたし……!」

サラ「泣かないで、まどか。きっとまた会えるから」

サラ「忘れないで。私はずっとあなたのそばにいる。ずっと、守ってあげるから」

サラ「だから……ほんのちょっとだけ……お別れ、だね……」


まどか「サラちゃああああああんッ!!!」


…………



677: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 01:22:22.87 ID:fw7wNjbjo
サラ「……まどか……」

サラ「……」


QB「鹿目まどかは数多の世界の運命を束ね、因果の特異点となった特別な存在だ」

サラ「……キュゥべえ」

QB「しかし、サラ。驚くべきことに、君にもまどかに劣らない素質がある」

QB「まったく、どういうわけだろうね? こんなすばらしい魔法少女候補が同時に存在するなんて」

サラ「ずっと狙っていたのね、あなたは……こうなることを……」

678: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 01:24:37.14 ID:fw7wNjbjo
QB「ラヴォスは浮遊大陸を破壊し、その後この星のすべてを焼き尽くすだろう」

QB「君の魔力はさっきの転送ですべて尽きてしまった」

QB「サラ。君は、この星の本当の運命と向き合えるかい? いや、無理だね」


QB「それに、必要もない。僕なら、君の中に眠る魔法の力を限界を超えて引き出すことができる」

QB「避けようのない滅びも、嘆きも、すべて君が覆せばいい」

サラ「……」



QB「さあ、サラ・キッド・ジール――その魂を代価にして、君は何を願う?」

サラ「……私の……願いは……」

679: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 01:26:31.83 ID:fw7wNjbjo


「契約は成立だ。君の祈りは、エントロピーを凌駕した」



680: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 01:28:11.58 ID:fw7wNjbjo
第6話「本当の運命と向き合えるかい?」 終了


  セーブしてつづける(第7話「こんなの絶対おかしいわ」へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

689: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 21:52:51.07 ID:XYECFjvCo
第7話「こんなの絶対おかしいわ」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

690: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 21:56:48.68 ID:XYECFjvCo
B.C.12000 残された村


ほむら「……」

マール「……うう……クロノ……クロノ……!」

まどか「……サラちゃん……」


ほむら「私たちだけ……か……」

アルゲティ長老「倒れていたのは、あんた方だけじゃった。そのキョーコさんとやらも、見当たらん」

ほむら「ここは……地の民の村?」

アルゲティ長老「海底神殿から起こった大災害で、たったひとつ残された村じゃ」


アルゲティ長老「何もかも無くなってしもうた。浮遊大陸も、ラヴォスに破壊され崩壊した」

アルゲティ長老「じゃが、ラヴォスは不思議な光に包まれて再び眠りについた。吹雪も晴れた……」

アルゲティ長老「ワシら人間はまた、ここからやり直すべきなのじゃろう……」

691: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:01:25.86 ID:XYECFjvCo
ほむら「ボッシュさんは……」

アルゲティ長老「大災害の時、黒いゆがみのようなものが現れての……」

アルゲティ長老「吸い込まれそうになったジャキ様を助けようと、ボッシュ様を含め、三賢者様はみな……」

ほむら(ゲートか。ジャキ……たぶん、子供のほうね……。じゃあ魔王は……)


まどか「サラちゃんはどうなったの……」

アルゲティ長老「分かりませぬ……。サラ様の姿は誰も見ていない……」

まどか「そんな……」


アルゲティ長老「無事なのは、あんた方の船ぐらいじゃ。驚くほど頑丈じゃな」

アルゲティ長老「あんたらのあとを追うように、ここに流れ着いておった。不思議な船じゃ……」

ほむら「シルバードは無事なのね……」

692: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:03:41.54 ID:XYECFjvCo
アルゲティ長老「鹿目様。これを……」

まどか「これ……サラちゃんのペンダント……。どうして……」

アルゲティ長老「鹿目様の肩の上にありましたんじゃ。そう、まるで守るようにのう……」

まどか「……」


ほむら「戻りましょう……。時の、最果てに……」

693: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:06:17.80 ID:XYECFjvCo
年代不明 時の最果て


ルッカ「ウソ! ウソよ!! クロノが死んだなんて……冗談でも、そんなこと言わないで!!」

マール「……」

マミ「冗談じゃ……ないんですね……」

カエル「なんてこった……。サイラスばかりか……クロノまでも……」

エイラ「負けた者、死ぬ。大地のおきて。……でも……」


ルッカ「ほむら!! あんた何やってたのよ! あんたがついていながら、どうして!」

ほむら「……」

694: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:10:07.34 ID:XYECFjvCo
ルッカ「……ッ! なんとか言いなさいよ!!!」

ほむら「っ……!」


ロボ「ルッカ!? やめてクダサイ! 喧嘩はいけマセン!」

ルッカ「放しなさい、ロボ!!」

ロボ「イイエ、放すのはアナタデス! ほむらの胸倉をつかんだその手を放してクダサイ!」

ルッカ「だって……! だって、こいつが……!!」

ロボ「それ以上言ってはいけマセン! その先を言えバ……取り返しがつかなくなりマス……」

ルッカ「……ぐっ……」

ほむら「……」


ロボ「落ち着いてクダサイ。ほむらのせいではありマセン。イエ、誰のせいでもナイ……」

ルッカ「分かってる! 分かってる……けど……」

695: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:14:24.46 ID:XYECFjvCo
まどか「……」

さやか「まどか、大丈夫? 顔が真っ青だよ?」

まどか「さやかちゃん……。ひどすぎるよね、こんなの……絶対、おかしいよ……」

さやか「……」


ルッカ「おかしいと思ったのよ……。やっぱりあんた、普通じゃなかった……」

ほむら「……」

ルッカ「それが分かっていながら、どうして……。なんでついて行かなかったの、私は……」

ルッカ「クソ……。日和ったあの時の私を、ぶっ飛ばしてやりたいわ……」

マミ「ルッカさん……」

エイラ「……むぅ……」

696: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:17:26.67 ID:XYECFjvCo
ルッカ「……あきらめないわよ……」

ロボ「ルッカ?」

ルッカ「シルバードが無事だったんだもの……。クロノだって、きっと……」


ルッカ「ほむら! なにボサッとしてんの!」

ほむら「……え……」

ルッカ「必ず手がかりはあるはずだわ。もう一度戻るわよ、古代に!」

ほむら「でも……彼は、もう……」

697: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:20:25.01 ID:XYECFjvCo
ルッカ「あーもう! ウジウジした空気は嫌いなのよ!」ムニー!

ほむら「ひょっ……ひゃめへ……ほほをふめらはいで……」

ルッカ「私が言いすぎた! やりすぎたわ、ゴメン!」

ほむら「……」

ルッカ「しっかりしてよ、ほむら……。あんたがそんな調子だと、張り合いがないのよ!」

ほむら「ルッカ……」


ルッカ「任されたんでしょ……クロノに!!」

ほむら「……!」

698: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:23:51.51 ID:XYECFjvCo
ほむら「そう……そうね……。嘆き悲しむのはあとにしましょう」

ルッカ「よっしゃ! 頼むから、ローテンションほむらちゃんはこれっきりにしてよね」

ほむら「……善処するわ」

ルッカ「なんか頼りないなあ~。やっぱり私がついてないと、ダメね!」

ほむら「はいはい」


ロボ「仲直りハ早いうちニ。オオゴトにならズ、ホッとしまシタ」

ほむら「ロボ……。あなたが仲裁してくれたおかげよ」

ロボ「イエイエ、ワタシは何もしていマセン」


カエル「クロノはお前に任せるか。頼んだぜ、ほむら」

ほむら「カエルさん、どこに行くの?」

カエル「ああ、気にするな。お前の話を聞いていて、気になることがあったからな。すぐ戻る」

699: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:26:29.37 ID:XYECFjvCo
マミ「ねえ暁美さん。古代に行くなら、エイラも連れていってあげてくれないかしら?」

ほむら「エイラを?」


マミ「最近、体がなまっちゃってるみたいなのよね。本当なら私も行きたいところだけれど……」

エイラ「エイラ、あばれる!」

ルッカ「いいんじゃない? エイラなら、何があっても大丈夫そうだし」

ほむら「分かったわ。よろしくね、エイラ」

エイラ「任せろ!」

700: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:28:58.10 ID:XYECFjvCo
マール「ほむらちゃん……」

ほむら「マール、ごめんなさい。確かにルッカの言うとおり、最近の私はどうかしてたわ」

ほむら「クロノはそれを教えてくれたのよね。やっと、分かった……」

マール「……」


ほむら「彼にもう一度会って……謝って……ちゃんと、ありがとうって言わないと」

マール「……うん! クロノ、きっと待ってるよ!」

701: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:31:36.73 ID:XYECFjvCo
B.C.12000 残された村 広場


アルゲティ長老「おや、戻ってきたのか……」

ほむら「あのあと、なにか変わったことはあった?」

アルゲティ長老「変わったのはお前さんじゃないかね? 目に生気が戻ってきとる」

ほむら「え……」

アルゲティ長老「フォッフォッ。まぁそれはさておき、変わったこと、か……」

アルゲティ長老「あるぞ。それも、少々やっかいな問題じゃ」

ほむら「問題って……」


親衛隊A「え~い、頭が高い! 新王ダルトン様のおな~り~!」

アルゲティ長老「ほれ、噂をすれば……じゃ」

702: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:35:40.85 ID:XYECFjvCo
ダルトン「なんだなんだ、おめえら! せっかく生き残ったってーのにそのシケたツラは!」

ほむら「ダ、ダルトン!? あいつ……」


ダルトン「あのイカれた女王も、こざかしい予言者もいなくなった」

ダルトン「しかぁ~しッ! どんなときでも上に立つ者は必要だ! ん? そう思うだろう?」

ルッカ「あれがダルトン? 聞いた話以上にウザそうなヤツね」


ダルトン「そこでだ! このダルトン様が迷える子羊どもを導いてやろう! 感謝しろ!」

地の民たち「Boooooooo!!!」

ダルトン「ええい、黙れ黙れ! いいか、これからジール王国は『ダルトン王国』とするッ!!」

703: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:39:12.27 ID:XYECFjvCo
地の民A「冗談じゃねぇぞ! ほら、あんたも文句言ってやれ!」

光の民「ええ!? わ、私ですか? しかし、私は……あのダルトンのようにあなた方を……」

地の民B「関係ないわよ。浮遊大陸もなくなった今、生き残った私たちは運命共同体なんだから」

地の民A「そういうこと! いいか、俺の真似をして立てた親指を下に向けるんだ」

光の民「こ、こうでしょうか……」

地の民B「うまいわよ!」


村民たち「Boooooooo!!!」

704: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:44:37.59 ID:XYECFjvCo
ほむら「皮肉なものね。王国とともに、差別意識も破壊されたなんて」

ルッカ「あのダルトンってヤツ、そういう意味ではなかなかいい悪役してるじゃない」

ルッカ「人が団結するには共通の敵を作るのが手っ取り早いってね」

ほむら「本人はそんなこと考えてもいないでしょうけど。ただ欲望に忠実なだけだわ」


エイラ「ハハハ! お前ら、面白い! エイラもやる!」

地の民の子供「ボクもやるですー!」

村民たち「KA・E・RE!! KA・E・RE!!!」

ダルトン「ぐぬぬぬぬぬぬ……! 人が優しくしてりゃ付けあがりやがって……」

705: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:47:50.46 ID:XYECFjvCo
ダルトン「愚民連中には少しばかり教育が必要なようだな! おい、兵士ども!」


親衛隊A「はッ、ただちに! 貴様ら、調子に乗る……ニャー!?」バリバリ!!

親衛隊B「うおおっ、なんだこの凶暴な女は!」

エイラ「こいつら、傷つける。エイラ、ゆるさない!」


ダルトン「なっ……誰だお前は!? ええい、何とかしろ!」

親衛隊C「む、無理ですぅ~。この人、強すぎますぅ~」

ほむら「さすがエイラね。私たちが出る幕もなかったわ」

706: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:50:51.10 ID:XYECFjvCo
ダルトン「お、お前……テロリストの女か! しぶとく生き残ってやがったとは……」

ルッカ「テロリストって……あんた何やったのよ」

ほむら「やんごとなき理由によるものよ」


ダルトン「お前がここにいるということは……そうか、外にある乗り物はお前らのか」

ダルトン「以前ガッシュが設計していたものとそっくりだ……大方、それも盗んだんだろう!」

ルッカ「ちょっとちょっと。とんだ言いがかりよ。あれは譲り受けたもので……」

ダルトン「事実などどうでもいい! よーし、決めたぞ」

ダルトン「お前らにゃ過ぎたオモチャだ。この新王ダルトン様の愛機にしてやろう!」

ほむら「なに勝手に決めてるの? あなたバカなの?」

707: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:53:19.94 ID:XYECFjvCo
ダルトン「こ、この口の減らないガキめ……。おい、この犯罪者をひっとらえろ!」


親衛隊B「や、やめろ! 噛むな! 俺はおいしくないぞ!」

親衛隊C「ダルトン様ぁ~! 助けてくださいぃ~」

エイラ「逃げるな! 戦え!」


ダルトン「……」

ほむら「部下の失態は上司の責任。上に立つって大変よね」

ダルトン「お……おのれ……」

ルッカ「で、どうしましょうか。こいつ、縛っちゃったほうがいいのかしら?」

ダルトン「……」


ダルトン「あっ!? 女王陛下!!」

ほむら「えっ!?」

708: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:55:21.39 ID:XYECFjvCo
ダルトン「引っかかったなァーッ!!」

ほむら「うあっ!」


ダルトン「ヒャアッハッハッハ!! 捕まえたぞ、これで形勢逆転だなあ~?」

ほむら「しまった……!」

ルッカ「ちょっと! なんちゅー古典的な手法に引っかかってるのよ!」

ほむら「く、屈辱だわ……」

709: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 22:57:31.47 ID:XYECFjvCo
ダルトン「そこのメガネと金髪の女! 仲間を殺されたくなければ、おとなしくしやがれ!」

エイラ「むお?」ガジガジ

親衛隊B「なんか噛まれるの気持ちよくなってきた……」

ルッカ「くそ……ほむらが人質にされてちゃ手が出せない……」


ダルトン「ついてきてもらおうか。安心しろ、お楽しみは黒鳥号に戻ってからだ……」

ダルトン「お前らにはたっぷりお仕置きしてやる。  同人みたいにな!」

親衛隊A「本が薄くなるな……」

ダルトン「ヒャアッハッハッハッハ!!」


…………



710: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:01:46.26 ID:XYECFjvCo
B.C.12000 黒鳥号 営倉


ほむら「う……」


ルッカ「やっとお目覚めか」

ほむら「ルッカ……ここは……」

ルッカ「飛行船の中よ。黒鳥号って言うらしいけど」

ほむら「飛行船……? そんなものまで……」

ルッカ「理の賢者ガッシュが設計したものを、彼の失踪後にダルトンが指示して完成させたみたいね」

ほむら「ずいぶん詳しいわね」

ルッカ「ヒマだったからね。いろいろ調べたわ」

ほむら「調べたってどうやって……」

711: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:03:58.72 ID:XYECFjvCo
エイラ「お? ほむ、起きたか!」

ほむら「エイラ!? どうして上半身だけ壁から……!?」

ルッカ「よく見なさい。エア・ダクトよ。ここからこっそり抜け出して、機内の様子を探ってたの」


ルッカ「で、どうだった? 私たちの装備、見つかったかしら?」

エイラ「小部屋、ある! 武器、いっぱい!」

ほむら(そういえば身包みはがされてるわね。ソウルジェムが無事だったのは不幸中の幸いか……)

ほむら(素っ裸にされたわけでもなし。服飾の一部と思われたのかしら)

712: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:05:39.25 ID:XYECFjvCo
ルッカ「オッケー。ほむらも目が覚めたことだし、そろそろ脱獄といきましょうか」

ほむら「なんだかずいぶん手馴れてるわね」

ルッカ「こちとら二回目だっつーのよ。慣れもするわ」

ほむら「あなたこそ、いったい何やったのよ……」

ルッカ「言っとくけど、つかまったのは私じゃないからね」


エイラ「エイラ、穴、はさまった! 助けろ、ほむ!」

713: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:10:09.90 ID:XYECFjvCo
B.C.12000 黒鳥号 エア・ダクト内


ほむら「狭いわね……」

ルッカ「贅沢言わない」

ほむら「おまけにホコリっぽいし……。ちょっと! おしりさわらないで!」

エイラ「すまん。エイラ、間違えた」

ほむら「気をつけてよ、もう……」

エイラ「ほむ、ケツ小さい。元気な子、産めないぞ。マミ、デカイ。見習う!」

ほむら「大きなお世話よ……」

ルッカ「ちょっと静かにして。通風孔から下が見えるわ。格納庫……?」

714: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:13:03.33 ID:XYECFjvCo
B.C.12000 黒鳥号 格納庫


ダルトン「貴様らっ、キリキリ働けよ! 手を抜いたりしやがったら、承知しねえからな?」

ダルトン「なにしろコイツは、この新王ダルトン様の空飛ぶ玉座なんだからな!」

整備班「うぇ~す……」

ダルトン「コイツが完成すりゃあ、この世界は俺様の意のままだぜ。ヒャアッハッハア!」


…………


ほむら「あ、あいつシルバードを……」

ルッカ「なんてことすんのよ! シルバードは私が改造する予定だったのに!」

ほむら「怒るとこ、そこ?」

エイラ「シルバード、助ける! ほむ、ルッカ、武器取り戻す! 早く!」

715: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:17:36.34 ID:XYECFjvCo
B.C.12000 黒鳥号 武器庫


親衛隊A「  同人みたいにってことはよォ~、やっぱ複数人xxxなんかね?」

親衛隊B「俺、無理やりは好きじゃないんだよなあ。なんとかラブラブ   に持ち込めないかな」

親衛隊A「無理だろ……」

親衛隊C「   なのはいけないと思います!」

親衛隊A「まぁなんにしても、ダルトン様のお許しがないことには何も……ん?」チョンチョン


親衛隊A「誰だ、俺を呼ぶの……わあッ!?」

エイラ「ニイメンハオ」

親衛隊B「お、おま……!?」

エイラ「あいさつは?」


ドタン ガタン! ギャー! ウワー!!!

716: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:19:59.14 ID:XYECFjvCo
親衛隊たち「きゅ~……」


ルッカ「はい、お疲れさま」

エイラ「エイラ、武器、この体! 戦える!」

ほむら「エイラをつれてきて正解だったわね」


ルッカ「さてと。装備を取り戻したはいいけど、どうしたものかしら。脱出しても空の上じゃあね」

ほむら「ブリッジをおさえる?」

ルッカ「乗っ取りか。それしかないかな……」

ほむら「じゃあ、もう一度エア・ダクトを通って……」

ルッカ「待って。それよりもいい手があるわ。この部屋にあるコレを使って……」

717: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:21:45.92 ID:XYECFjvCo
B.C.12000 黒鳥号 通路


警備兵「……」

警備兵「! 誰かそこにいるのか!?」

警備兵「……なんだ、ダンボールか。やれやれ、見回りも楽じゃないよ……」


ルッカ「見たか! 古今東西、潜入任務にはダンボールよ!」コソコソ

エイラ「この箱、すごい。エイラ、土産、する」コソコソ

ほむら「なんでバレないのかしら……」コソコソ

718: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:27:29.09 ID:XYECFjvCo
B.C.12000 黒鳥号 主翼


ゴオオオオオオオ!!!

ほむら「か、風が……!!」

ルッカ「ハシゴから手を離したら死ぬわよ!!」

ほむら「こんな危険なところからブリッジに上がる意味はなんなのよ!!」

ルッカ「なに!? 聞こえない!!」

ほむら「わざわざ外から回る理由はって聞いてるの!!」

ルッカ「真正面はさすがに無理でしょ!! 奇襲よ、奇襲!!」

ほむら「その前に死んだら意味ないわよ!!」


エイラ「おー。ここ、見晴らしいい。ほむ、ルッカ、はよ来い」


ほむら「なんでエイラは平気なの!!」

ルッカ「チートだからでしょ!!」

ほむら「最近こんなのばっかりよ、もう!!」

719: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:29:43.11 ID:XYECFjvCo
マスターゴーレム「脱走犯、見つけたの」

ほむら「!」

マスターゴーレム「可及的速やかに処理すべしとの命令なの」

ルッカ「や、やばい! この状況じゃ……エイラ! 助けて!」


エイラ「雲、流れる、すごい速さ! 風、気持ちいい!」キャッキャッ


ルッカ「聞こえてねえええ!!!」

720: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:33:07.49 ID:XYECFjvCo
マスターゴーレム「超破壊必殺魔法~!」

ほむら「なんとかしてよルッカ! あなた天才なんでしょ!」

ルッカ「私にだって……できないことぐらい……ある……」

マスターゴーレム「5、4……2……」

ほむら「ま、まずい!」


マスターゴーレム「え~と……どこまで数えたっけ? 5、4……」

ほむら「え?」

721: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:35:22.22 ID:XYECFjvCo
マスターゴーレム「……2……ダメん、こわい~!」

ルッカ「は?」

マスターゴーレム「たかいとこニガテなの~! うわ~ん!!」

ほむら「……」


ルッカ「どっか行っちゃった……わね」

ほむら「あれ、ダルトンのゴーレムよ。確か以前、マスターゴーレムがどうのこうの言ってたし……」

ルッカ「ああ……。だと思ったわ……」

722: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:38:46.94 ID:XYECFjvCo
B.C.12000 黒鳥号 格納庫


ダルトン「へーちょ」

整備班長「風邪ですか?」

ダルトン「ふん、下界ではこの新王ダルトン様の噂で持ちきりなのだろうよ」

整備班長「はあ……」

ダルトン「それより! まだ完成せんのか!?」

整備班長「ご安心ください。たった今、すべての作業が終わったところであります!」

ダルトン「よし、見せろ!」

723: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:41:19.71 ID:XYECFjvCo
ダルトン「……ほう」

整備班長「いかがですか? 閣下のご要望どおり、美しい翼でしょう!」

ダルトン「脚がないようだが?」

整備班長「あんなの飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」

整備班A(偉い人ってダルトン様だよな)

整備班B(ていうか飛行機に脚は必要ねえだろ)


ダルトン「うむ、気に入ったッ! さっそく処女飛行といくぞ!」

724: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:44:43.60 ID:XYECFjvCo
♪クロノ・トリガー


管制官「進路クリア、オールグリーン! 発進どうぞ!」

整備班長「整備班退避! ハッチ開け! ダルトン様が出られるぞ!」


ダルトン「待て待て待てぇ~いッ!!」

整備班長「は? 発進中止ですか?」

ダルトン「そうではない! 音響班、BGMが違うだろうが! やり直せ!」

整備班長「……」

725: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:46:25.99 ID:XYECFjvCo
♪危機一髪


ダルトン「フハハ! これだ、これだ! 出すぞ!」

管制官「あ、えと……発進どうぞ……」

整備班長「ハッチを……え、もうとっくに開いてる? あ、そうですか……」



ダルトン「よおおぉ~しッ! 新王ダルトン様の玉座、名づけて……」

ダルトン「『スカイ・ダルトン・ギョクーザ』!! 発進んん~ッ!!!」

726: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:49:26.78 ID:XYECFjvCo
B.C.12000 黒鳥号 主翼


ほむら「くっ……もう少しで、ブリッジに……」


キイイイイイン...!!

ルッカ「なに? 耳鳴り!?」

ほむら「! 違うわ……あれは!」


ダルトン「ヒャヒャヒャアーッ!! 実に気分爽快だ!」

ルッカ「シ、シルバードが……」

ほむら「飛んでるーッ!?」

727: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:51:47.86 ID:XYECFjvCo
ダルトン「む? あんなところに虫ケラどもが……」

ダルトン「ちょこまかとうっとうしいヤツらだ! ちょうどいい、レーザー砲の試運転といくか!」

ダルトン「空のもくずと消えろーッ!! ヒャハハ!」


ルッカ「な、なんか撃ってきそうよ!?」

ほむら「ダメ、避けられない!」

728: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:53:58.36 ID:XYECFjvCo
エイラ「ほっほーい!!」

ほむら「エイラ!」

ルッカ「もっと早く助けなさいよね、もう!」


ダルトン「チッ、はずしたか!」

ダルトン「あの金髪女、なんつー身体能力だ。人ふたりを抱えて飛び跳ねられるとは……」

ダルトン「だがしかぁ~しッ! そう何度も避けきれるかな!?」


ルッカ「また来るわよ!?」

729: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:56:19.15 ID:XYECFjvCo
エイラ「ほむ、ルッカ。つかまれ、しっかり。離すな!」

ほむら「え……ちょっと……」

ルッカ「ま……まさか……」


エイラ「大ジャアァァァ~ンプッ!!!」

ほむら「いやああああああっ!!!」

ダルトン「なにいいいっ!?」

730: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/25(木) 23:58:20.08 ID:XYECFjvCo
エイラ「ほいっ! っと」

ダルトン「こ、こいつ……飛び移りやがった!?」


ルッカ「落ちる落ちる落ちる!!」

ほむら「ダルトン! どきなさい!」

ダルトン「アホぬかせ! どいたら俺様が落ちて死ぬだろうが!」

ルッカ「シルバードはあんたのオモチャじゃないっつーの!」

ダルトン「シルバードではない! スカイ・ダルトン・ギョクーザだ!!」

ほむら「なによそのダサい名前! エイラ、ここ開けて!」

エイラ「ぶっ壊していいのか?」

ダルトン「バカ、やめろ! ハッチが!」

731: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 00:02:06.32 ID:2u/E7qwVo
ダルトン「あばばばばばば! 俺様の高貴なるヘアーが風で乱れる!!」

ほむら「どけ……っつってんでしょ……!」

ダルトン「やめろ、押すな! 押すなよ! 絶対に押すなよ!」

ルッカ「はいはい……! 押せってこと……よ、ね!」

ダルトン「俺様は芸人じゃねえ! だから押すなって!!」

ほむら「くっ……こいつ、意外にしぶとい……!」


ダルトン「調子にのりやがって! いでよ、マスターゴーレム!」

ルッカ「残念、あんたのゴーレムはさっき逃げ出しちゃったわよ!」

ダルトン「ぬ、ぬあにぃ~!?」

ほむら「往生際が悪いわよダルトン!」

732: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 00:06:28.23 ID:2u/E7qwVo
ダルトン「くそ……こうなっては俺様の最終兵器を使わざるを得んな……!」

ほむら「最終兵器ですって!?」

ルッカ「こいつ、まだそんなものを!?」

ダルトン「切り札は最後まで取っておくもんだぜ!」

エイラ「やらせない!」

ダルトン「遅いわあッ! 食らえッ!!」



『オナラぷー』 モワッ

733: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 00:09:15.35 ID:2u/E7qwVo
ほむら「はあ!?」

ルッカ「サ、サイアク! レディの前でおならを……」

エイラ「? 臭い、ないぞ?」

ダルトン「……」


ほむら「……? こいつ、仁王立ちのまま動かないけど……」

ルッカ「! そうか、そういうことね!」

ほむら「なにがよ?」

ルッカ「私たちがいるのは船首方向、対してダルトンは船尾方向。つまり、風下……」

ほむら「……まさか!」



ルッカ「そう……ヤツは『自爆』したッ!!」

734: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 00:12:30.04 ID:2u/E7qwVo
ダルトン「……」ヒュウウウウウ...


ルッカ「気絶したまま落ちてったわね……」

ほむら「ビネガーといい、ダルトンといい、なんで落下オチなのよ……。こんなの絶対おかしいわ」

エイラ「ダルトン、死んだか?」

ほむら「どうかしら。あいつ、空間を操る魔法の使い手らしいし、途中で気づけば……」


ビー! ビー!

ほむら「今度はなによ!」

735: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 00:16:33.73 ID:2u/E7qwVo
エイラ「シルバード、落ちる! 大変!」

ほむら「高度が……! ルッカ、どうにかならないの!?」

ルッカ「ちょっと待ってよ! くそ、あいつらが変にいじくり回したせいで操縦方法が……!」


ルッカ「ええと、ええと……こ、これかな?」ポチッ

『Laser system running』

ルッカ「えっ」

736: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 00:18:19.50 ID:2u/E7qwVo
B.C.12000 黒鳥号 艦橋


ブリッジクルー「スカイ・ダルトン・ギョクーザより再攻撃!」

艦長「ええい、ダルトン様は気でも違ったのか!? 我らを殺すおつもりか!」

ブリッジクルー「主翼がやられました! 墜落します!」

艦長「もういい! 総員退艦! 急げ!!」

738: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 00:20:12.91 ID:2u/E7qwVo
B.C.12000 残された村 広場


光の民「黒鳥号が、墜ちる……」

アルゲティ長老「なんちゅうもろい船じゃ」

地の民A「ダルトンのヤツ、ざまあねーや!」


地の民B「見て、あそこ!」

アルゲティ長老「おお……。あの船は異国の者たちの……飛んでおる……!」

739: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 00:25:17.28 ID:2u/E7qwVo
B.C.12000 シルバード


ルッカ「ふーッ、大体わかったわ」

ほむら「大惨事が起きたけどね」

ルッカ「ま、まあいいじゃない? どのみち、黒鳥号をほっておくわけにはいかなかったでしょ」

ほむら「それはそうだけど」

エイラ「シルバード、元気! シルバード、鳥なった!」

ほむら「怪我の功名ってやつかしら。これで、行動範囲が一気に広がるわね」


ズズズズズズ...!!!

ほむら「なに!?」

ルッカ「シルバードの時空ジャイロに高エネルギー反応!? まさか……ゲート!?」

ほむら「あれは……」

740: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 00:27:12.03 ID:2u/E7qwVo
♪黒の夢


エイラ「デカイ巻き貝!」

ルッカ「船? いえ、城? とてつもない存在感だわ……」

エイラ「アレ、憎んでる! エイラたち憎んでる!」

ほむら「私たちを呼んでいるの……? この感じ……以前にも……」


ほむら「間違いない……。あそこに、ジールが……ラヴォスが、いる!!」

741: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 00:29:42.64 ID:2u/E7qwVo
エイラ「ラヴォス! 突入するか?」

ほむら「いえ、やめておきましょう。今の私たちでは勝てる見込みがないわ」

ルッカ「シルバードもメンテしなきゃいけないしね」

ほむら「そういえばハッチが壊れたままか……」

エイラ「このイス、臭い」

ほむら「ダルトンのアレね……」

ルッカ「それに関してはロボになんとかしてもらいましょう。こんなときのための消臭機能だし」

ほむら「ロボも災難よね……」

742: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 00:34:29.29 ID:2u/E7qwVo
ルッカ「そして、シルバードが万全になったら……! この子さえいれば!」

ほむら「ルッカ?」


ルッカ「クロノを探すわよ! 世界中をめぐり、いくつもの時代を越えてでもね!!」

ほむら「……」

ルッカ「付き合ってもらうわよ、ほむら」

ほむら「……任せておいて。迷路の出口を探すのは、慣れてるから」

ルッカ「どういうこと?」

ほむら「……そのうち、ね」

ルッカ「また秘密主義ってわけ? まーいいけど」

エイラ「クロ、強い! クロ、死なない!!」

743: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 00:36:27.95 ID:2u/E7qwVo


ほむら「そうね。探しに行きましょう……クロノを」



744: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 00:38:01.85 ID:2u/E7qwVo
第7話「こんなの絶対おかしいわ」 終了


  セーブしてつづける(第8話「そんなの、私が許さない」へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

749: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 21:31:03.36 ID:2u/E7qwVo
第8話「そんなの、私が許さない」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

750: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 21:33:48.00 ID:2u/E7qwVo
ズゴゴゴゴゴゴゴ!!!


サラ「魔神器が……!」

ボッシュ「駄目か! グランドリオンをもってしても止めることができぬ!」

ガッシュ「やはりムリであったか!? 人の手で、この力をコントロールするのは……!」

ハッシュ「むう……! この次元のゆがみは……!?」

ボッシュ「いかん……! このままではヤツの次元の渦にのみこまれるぞ!!」


ジャキ「姉上ッ!!」

サラ「いけない、ジャキ! 来てはダメ……!」

ジャキ「で、でも……!?」

751: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 21:37:10.56 ID:2u/E7qwVo
ズズズズズズ...!!!

ボッシュ「こ、これは……!!」

ハッシュ「まさか、タイムゲート!?」

ガッシュ「しまった……!!」


ジャキ「あ……姉上ーッ!!」

サラ「ジャキッ!?」



「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」


…………

………

……



752: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 21:39:40.73 ID:2u/E7qwVo
ジャキ「う、うう……ここは……」


ジャキ「姉上!? 姉上、どこにいるの!」

ジャキ「誰もいない……。それに、見たこともない森の中だ……」

ジャキ「ラヴォス……! ちくしょう、ちくしょう……!!」


…………



753: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 21:41:59.32 ID:2u/E7qwVo
ジャキ(夜が更けてきた……)

ジャキ(あれから歩き回ったけど、木ばっかりで何もない……。出口も分からないし……)

ジャキ(どこなんだよここは……。くそ……もう……歩けない……)

ジャキ「……」

ジャキ(おなか減ったなあ……)


アオオオォォーン!!!

ジャキ「!? ……遠吠え……獣の……」

ジャキ(そうだよな……森なんだし……いる、よな……)

ジャキ(……エサとして食べられてしまうかも……。ここで死ぬのか……ボクは……)


ジャキ「……あね、うえ……」


…………



754: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 21:46:44.45 ID:2u/E7qwVo
ジャキ「……ハッ!?」

???「ん? よっ、目が覚めたかい?」

ジャキ「な、なんだお前!?」

???「なんだはねえだろ。命の恩人に向かってさ」

ジャキ「恩人……?」

???「森ん中でぶっ倒れてたのを助けてやったんだ、感謝しろよ?」

ジャキ「助けたって……ここはまだ森の中じゃないか!」

???「しょうがねえだろ。アタシだって、ワケ分かんねえうちに突然こんなとこ飛ばされたんだ」

ジャキ「……使えないヤツ」

???「……口の利き方がなってねえな。誰かさんそっくりだよ」

755: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 21:49:52.01 ID:2u/E7qwVo
ジャキ「誰かさんって誰のこと……」グウゥゥ...

ジャキ「……ッ!」

???「アハハッ。お前、腹減ってるんだろ?」

ジャキ「う、うるさいな……え?」


???「食うかい?」

ジャキ「これ……リンゴ?」

???「そこの木の上に生えてたんだよ。ま、オコサマにはちょっと手が届かないかな?」

ジャキ「……」シャクシャク

???「お前なあ……ありがとうぐらい言えねえのかよ、ったく」

756: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 21:52:55.43 ID:2u/E7qwVo
ジャキ「『お前』じゃない。ジャキだ」

???「は?」

ジャキ「名前だよ」

???「あ、そ。アタシにも『お前』じゃなくてちゃんとした名前があるんだけどね」

ジャキ「聞いてやるよ」

???「……っとに、可愛くないな。まあいいか……」



杏子「アタシは佐倉杏子だ。よろしくな、ジャキ」


――――

―――

――



757: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 21:56:03.84 ID:2u/E7qwVo
B.C.12000 北の岬


魔王「お前と出会ったのも、それが最初だったな……。あれから色々あったものだ……」

杏子「……」

魔王「何年たってもお前はあの時のままだな、杏子」

杏子「魔法少女はピーク年齢まで成長したらそこで止まるんだよ。誰に聞いたか忘れちまったけど……」

杏子「っつーか、なんなんだよ。思い出話をするために、わざわざこんなトコまで来たのか?」

杏子「ラヴォスとの戦いで受けた傷だって癒えちゃいないんだろ。なのに……」


魔王「お前との奇妙な縁もこれで終わりということだ」

杏子「はあ!? なんだよ、それ! まだこれからだろ!」

杏子「あの空に浮かぶ『黒の夢』――変わり果てちまった海底神殿に乗り込んで、ラヴォスを倒すんだろ!」

魔王「話は終わりだ。迎えが来た……」

杏子「え?」

758: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 21:58:19.97 ID:2u/E7qwVo
カエル「気づいてやがったのか、魔王……」

魔王「人の過去話を盗み聞きとは、いい趣味だな……」

カエル「偶然聞こえちまっただけだぜ」

杏子「カエル男……」


魔王「我が城でラヴォスを呼び出すことをお前に邪魔され、杏子とともにたどり着いた先がこの時代……」

魔王「皮肉なものだ。歴史を知る私は、予言者として女王に近づきラヴォスとの対決を待った……」

759: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:00:32.28 ID:2u/E7qwVo
魔王「ヤツが作り出した渦に飲まれ中世に落ちて以来、私はヤツを倒すことだけを考え生きてきた……」

魔王「そう、それだけだった……。すべてを犠牲にするつもりだった……」

杏子「ジャキ……?」


魔王「だがどうだ? 結果は、このザマだ。私には甘さがあった……だから負けたのだ!」

魔王「お前のせいだ、杏子。お前のせいで私は弱くなった……」

杏子「……」

760: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:03:06.55 ID:2u/E7qwVo
魔王「私は立ち返らねばならぬ……。あの日感じた、憎しみの業火の中にな……」

魔王「ラヴォスの前では、すべての者に黒き死の風が吹きすさぶ。ちっぽけな情などヤツの前ではゴミ同然」

魔王「そんなものに頼る弱き者は虫ケラのように死ぬ。あのクロノとかいうヤツと同じようにな!」

カエル「……! あいつを侮辱する気か……!」


魔王「剣を抜け、カエル……いや、グレン。お前にかかずらうのも、もはやこれまで」

杏子「!」

魔王「ここで決するとしよう。一騎打ちでな!」

カエル「……」

魔王「どうした? 疲弊した私を殺すこともできぬほど、お前は弱いのか!」

761: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:08:30.46 ID:2u/E7qwVo
杏子「やめろ! やめてくれ、ふたりとも!」

魔王「邪魔をするな、杏子! これはヤツと私の、男の矜持をかけた戦いだ!」

杏子「なにが男だ! 今のアンタは、ただのひねくれジャキ坊やだよ!」

魔王「なんだと……!?」


杏子「一度失敗したくらいであきらめて、自棄になって……」

杏子「挙句、自分でケリをつける勇気がないから、コイツに殺してくれって頼んでるだけだろ!」

魔王「……」

杏子「ふざけんじゃねえぞ……。そんなの、アタシが許さない!」

762: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:10:25.90 ID:2u/E7qwVo
杏子「カエル男……いや、グレン、だっけか」

杏子「ジャキに手を出すってんなら、アタシが先に相手になる!」

カエル「……」


杏子「二度も……失うのは、ゴメンなんだよ!」

763: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:12:38.73 ID:2u/E7qwVo
カエル「……もういい」

杏子「え?」

カエル「今キサマを倒したところでクロノは戻って来ん……。サイラスもな……」

魔王「……」


カエル「魔王。お前はさっき、仲間の情などくだらんと言ったが、俺はそうは思わない」

カエル「『時代を超えて人間が、この星そのもののためにひとつになれば』」

魔王「……!」

カエル「お前の時代の人間、理の賢者ガッシュが遺した言葉だぜ」

764: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:15:37.78 ID:2u/E7qwVo
カエル「佐倉杏子。お前は魔王城で対峙したあの時、俺たちを殺そうとはしなかった」

カエル「そうしようと思えばできたはずなのにな。これで、借りは返したぜ」

杏子「アンタ……」


カエル「お前の言うとおりだ。一度失ったものを取り戻すには、大変な労力が要る」

カエル「大事にしてやれ……。恋人なら、な」

765: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:18:54.27 ID:2u/E7qwVo
杏子「は? なんのこと?」

カエル「へ?」

杏子「ジャキがアタシの恋人? なんだよそれ、ありえねー。ていうかキモい」

カエル「キモい!?」

魔王「……」


杏子「コイツはアタシの弟みたいなもんだよ。家族同然のヤツを大切に思うのは、当たり前だろ?」

カエル「え、家族? 同然? ファミリー的な……?」

杏子「それともなに、アンタ近   マニア? うわー、勇者サマってやっぱぶっ飛んだ思考してるわ」

カエル「やめろォォ! 俺をイジって三枚目キャラにおとしめるのは、さやかだけで十分だ!」

766: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:21:16.81 ID:2u/E7qwVo
カエル「俺はシリアス担当、俺はシリアス担当……」ブツブツ

杏子「な、なんだよコイツ。急にいじけだしたぞ」

魔王「フ……ククク……。これでは勇者ではなく、ただの道化師だな……」

杏子「ジャキ?」


魔王「グレン。私と杏子を連れていけ」

カエル「な、なに!? ふざけるな、そこまでしてやる義理はない!」

魔王「ヤツを……クロノを生き返らせる手、ないわけではない……」

カエル「なんだと? 何を知ってるんだ、お前……」

魔王「詳しく話してやる。さあ、杏子の仲間のもとへ案内しろ」

767: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:25:02.39 ID:2u/E7qwVo
年代不明 時の最果て


さやか「っとに、あんたはもう……。敵対したり、仲間になったり、なんだっつーのよ!」

杏子「悪かったって。落ち着いたら、話すよ」

マミ「でもこれで、バラバラになったみんながようやくそろったわね!」

ほむら「ここまで長かったわ……」


まどか「あの……ジャキくん……」

魔王「鹿目まどか。その呼び方はやめろ」

まどか「ぇう……なんだか怖いよ、ジャキくん……。前みたいに、お姉ちゃんって呼んでくれないの?」

魔王「……」

768: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:26:59.16 ID:2u/E7qwVo
カエル「さて、魔王。そろそろクロノを生き返らせる方法ってやつを教えてもらおうか」

マール「……!」


魔王「『クロノ・トリガー』……別名、『時の卵』だ」

ほむら「時の卵?」

魔王「失った時を戻し、死者をよみがえらせる……」

魔王「運命を『やり直す』ための、禁忌の扉を開くことができる唯一の鍵……」

ほむら「運命を……やり直す……」

769: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:30:54.89 ID:2u/E7qwVo
ルッカ「まさしく神の所業ね。で、それはどこにあるわけ?」

魔王「時の賢者ハッシュが研究していたと聞いている」

ロボ「ハッシュさんはどこにいるのデスカ?」

魔王「……知らん」

さやか「ダメじゃん!」


マミ「それでも、何も手がかりがないよりはマシじゃないかしら?」

ほむら「そうね。シルバードで、まだ訪れたことのない場所をしらみつぶしに当たってみるわ」

さやか「気の長い話だな~……」

770: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:33:06.69 ID:2u/E7qwVo
マール「私も行くよ、ほむらちゃん!」

ほむら「いても立ってもいられないって感じね。いいわ、行きましょう」


ルッカ「時の卵か……。未来の情報センターで何か分からないかな?」

ロボ「デハ、ワタシたちはそちらへ向かいマショウカ? ガッシュさんにも話を聞いてみマショウ」

ルッカ「シルバードはほむらたちが使うから、私たちはゲートで行くわよ!」


エイラ「マミ! 卵、いっぱいある! イオカ、行く!」

マミ「うーん……食用卵とは違うと思うけど。でもまあ、じっとしているよりは、いいか」

771: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:35:07.26 ID:2u/E7qwVo
さやか「あたしらはどうしよ? 師匠」

カエル「そうだな。俺たちはボッシュのじいさんのほうでも当たってみるか」

さやか「じゃあ現代だね!」


杏子「やれやれ、忙しいやつらだな」

魔王「人ひとりのためにご苦労なことだ」



まどか「……」


…………



772: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:39:55.47 ID:2u/E7qwVo
数日後


さやか「ダメだあ~。なんにも分かんなかったよ~」

カエル「ボッシュのじいさんも知らないとなると、な……」

さやか「ゲートでバラバラになったんじゃね……。あたしらだって、お互いの場所は知らなかったわけだし」


さやか「マミさんのほうはどうだったっすか?」

マミ「ダメね。まあもともと、可能性は薄かったけど……」

さやか「戦利品はケーキだけか。つか、なんでケーキ作ってきてるんですか……」

マミ「だ、だってエイラが食べたいって言うから……」

エイラ「うまっ! めちゃうまっ! ふわふわ! 卵、ふわふわ、なった! マミ、まじ魔法使い!」

カエル「お前ら何しに行ったんだよ……」

773: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:43:29.57 ID:2u/E7qwVo
さやか「あとは、ほむらとルッカさんのほうで何か……お、噂をすれば」

ヒュウウウウウン...

カエル「シルバードの駆動音か。帰ってきたみたいだな」


ほむら「何か分かった?」

カエル「それを聞くということは、そっちもダメだったみたいだな」

マール「うん……」

ほむら「マール、大丈夫よ。まだ行ってないところはたくさんあるのだから」


杏子「ジャキ。アンタ、ほんとにハッシュの所在、知らないのか?」

魔王「……」

774: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:46:27.98 ID:2u/E7qwVo
まどか「……」


老人「みな、苦労しているようじゃな」

まどか「管理人さん……」

老人「幸せですな、クロノさんは。こんなにも思ってくれる人たちがいる……」

まどか「そう、ですね……」


老人「死んだ者を生き返らせる。今まで何人の人が、望んだことだろうね」

老人「だがそれは、決してかなわぬ、かなえてはならぬ願いじゃ。そうは思わんか、まどかさん」

まどか「わたしは……」

775: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:50:04.16 ID:2u/E7qwVo
老人「命はひとつであるもの。時の流れは、人の手によっておいそれと変えていいものではない」

老人「神に近づこうとした人間はみな、重くつらい業を背負うことになる。それは、歴史が証明しておる」

老人「運命がその者に滅びと絶望を与えるのであれば、甘んじて受けるべきじゃ。違うか?」

まどか「それは違います!」

老人「ふむ?」

まどか「あ……いえ……すべてが違うわけじゃ……。管理人さんの言うことも、もっともだと思います……」

老人「続けなさい」

776: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:55:00.04 ID:2u/E7qwVo
♪クロノとマール ~遠い約束~(クロノ・リメンバー)


まどか「わたし……誰かにばっかり戦わせて、自分で何もしない卑怯な子で……なんの取り柄もなくて……」

まどか「でも、ほむらちゃんと出会って……わたしのために、苦しんでるのに……」

まどか「わたしを……守ってくれて……望んでくれて……」

まどか「さやかちゃんも……マミさんも杏子ちゃんも……みんな……がんばってて……」

まどか「わたしなら……なんでもできるって……でも、なんにもしちゃいけないって……」


老人「……」

まどか「ごめん、なさい……。なに言ってるか、分かんないですよね……。頭、ぐちゃぐちゃで……」

777: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 22:57:59.66 ID:2u/E7qwVo
まどか「サラちゃん、が……ひっく……わたしと同じように、無力な自分に……悩んでて……」

まどか「友達に……なれたのに……助けてあげられたのに……わたし……う、うう……」

まどか「サラちゃん……最後は……わたしを守って……ううん……きっと……」

まどか「きっと……今もどこかで、戦ってると思うんです……。ペンダントが、教えてくれてる……」

老人「サラのペンダントか……」

778: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:00:01.02 ID:2u/E7qwVo
まどか「わたしも……何かしたい……! でも、分からないんです……。何を願えばいいのか……」

まどか「だから……ぅ、ぐっ……ぇぅ……これだけは……信じ続けようって……」


まどか「希望を抱くのが……間違いだなんて言われたら……わたし……」

まどか「そんなのは違うって……何度でも……いつまでも……言い返す……って……」

まどか「……ひっく……ぇぐ……うわあああああん!!」

老人「……」


…………



779: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:02:17.30 ID:2u/E7qwVo
老人「……落ち着いたかね?」

まどか「はい……。あの、すみませんでした……」

老人「ええんじゃよ。私のほうこそ、泣かせてしまってすまんかったの」

まどか「そんな……管理人さんのせいじゃ……」


老人「お前さんの気持ち、聞かせてもろうた。若いのう。もろくはかなく、とても危うい」

まどか「う……。や、やっぱり、そうでしょうか……」

老人「それだけに、とてもみずみずしい。私は、そういうもののほうが好きじゃよ」

まどか「管理人さん……」

780: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:06:21.65 ID:2u/E7qwVo
老人「ジジイのたわごとに付きおうてもろたお礼じゃ。お前さんにこれを差し上げよう」

まどか「これは?」

老人「『時の卵』じゃ。その卵をかえす方法は、あの時の翼を作った男に聞きなさい」

まどか「えっ!?」


老人「結局のところ、正しい答えなんぞないのかもしれん……」

老人「だが答えや結果のために行動するわけじゃあるまい? 行動するから結果がついて来る……」

まどか「管理人さん……。もしかして、あなたが……時の賢者……ハッシュさん……」

老人「フフ……。そう言われたこともあるような気がするよ……。そう、はるか昔……な」



老人「まどかさん。ゆっくり探すとええ。お前さん自身が導き出す、お前さんだけの答えを、な」

781: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:12:46.20 ID:2u/E7qwVo
カエル「驚いたな。なぜお前がこれを?」

さやか「ていうか持ってたなら早く出してよ! あたしら骨折り損じゃんか~」

まどか「えっと……別にわたしが持ってたわけじゃ……」

マミ「ハッシュさんから譲り受けたの? 彼、どこにいたのかしら?」

まどか「そ、それは……あのぅ……」チラッ


老人「……」ニコニコ

まどか「ど……どこなんでしょうね?」

マミ「ええ???」


ほむら「もういいじゃない、質問攻めはかわいそうよ。大切なのは、時の卵が入手できたということ」

杏子「お手柄だぜ、まどか! あとはコイツの使用法をガッシュのジジイに聞きに行けばいいんだろ?」

782: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:15:28.48 ID:2u/E7qwVo
ルッカ「その必要はないわ!」

ほむら「ルッカ。いつ帰ってきたのよ」

ロボ「先ほどデス。ハッシュさんの居所は分かりませんデシタガ、時の卵について情報を入手しまシタ」

さやか「やるじゃん! で、どうやって使うの?」


ルッカ「時の卵をかえす方法は、大きく分けて三つ」

ルッカ「ひとつ。本当にその人が大切で、その瞬間に戻りたいと心の底から強く願うこと」

ルッカ「ひとつ。『死の山』に赴き、山頂にて言霊をつむぐこと」

ルッカ「ひとつ。そのものを時の流れの外に連れ出すならば、代わりとなる存在を用意すること」

783: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:18:07.13 ID:2u/E7qwVo
ルッカ「以上よ」

ほむら「最後のひとつがよく分からないわね。『代わりとなる存在』ってなに?」

ロボ「ガッシュさんが言うにハ、『ドッペル人形』……その人ソックリの人形でもアレバ、という話デス」

さやか「そんなの、どこにあんのさ」

ルッカ「それについても調べてきたわ。『ノルシュテイン・ベッケラー』なら制作が可能よ」

マール「あ、その人知ってる! 世界的に有名なマジシャンで、父上が千年祭にゲストとして呼んでたよ」

ルッカ「というわけで現代のリーネ広場に行くわよ、ほむら!」

ほむら「はいはい」


まどか「……あ、あの!!」

784: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:20:12.23 ID:2u/E7qwVo
ほむら「まどか、どうかしたの?」

まどか「あのね、ほむらちゃん……。わたしも、連れていってくれないかな?」

ほむら「え?」

マミ「ドッペル人形を手に入れたら、次は死の山よ? 危険じゃないかしら」


まどか「分かってます。でも、お願いします。なんの役にも立たないかもしれないけど……」

まどか「もう十分、泣きました。だから今度は……探しに行きたいんです」

老人「……」

785: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:22:18.49 ID:2u/E7qwVo
ほむら「……分かったわ。一緒に行きましょう」

まどか「ありがとう!」


杏子「いいのかよ?」

ほむら「危険があれば私が守るわ。その代わり、サポートお願いね」

まどか「うん! お薬ぐらいならわたしでも使えるよ!」

杏子「……ふーん……」

786: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:23:59.56 ID:2u/E7qwVo
カエル「そういうことなら、スペッキオのヤツに頼んでみればいいじゃないか」

さやか「スペッキオって戦の神様の?」

カエル「鹿目が俺たち同様、魔法の民の子孫であるならば、その力を引き出してもらえるだろ」

さやか「うーん……それっていいのかな……」

カエル「何か問題があるのか?」

ほむら「……」


魔王「……無駄だと思うがな」

杏子「どういうことだよ?」

魔王「試してみればいい。すぐに分かる」

787: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:26:52.69 ID:2u/E7qwVo
スペッキオ「ダメだ」

まどか「え? ダ、ダメってどういうこと……?」

スペッキオ「おめー、どエラい力持ってる。オレ、手に負えない」

まどか「……」

スペッキオ「あきらめろ。オレ、おめーにしてやれること、ない」

788: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:28:52.83 ID:2u/E7qwVo
まどか「ダメだったよ……」

魔王「やはりな」

エイラ「まど、血、引いてないか?」

魔王「そうではない。あのスペッキオというヤツは、私の力を引き上げることも不可能だった」

魔王「神とうそぶいているが、強大な力を扱うことはできぬようだ」

魔王「あるいは、あえて避けているのかもしれぬがな……」


カエル「当てが外れたな……」

ほむら「……まあ、問題ないわよ。当初の予定どおりなんだし」

まどか「やっぱりわたしじゃ、なんの力にもなれないのかな……」

マール「まどかちゃん……」

789: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:34:01.85 ID:2u/E7qwVo
ルッカ「……と、ここで、殺伐としたスレに天才ルッカちゃんが!!」

ほむら「は?」

ルッカ「ロボ、アレを持ってきなさい!」

ロボ「まどかさん、ドウゾ」

まどか「これは……ボウガン?」


ルッカ「ただのボウガンじゃないわよ。ロボのパーツを流用することにより、大幅パワーアップ!」

ルッカ「従来の手持ちタイプでなく腕部装着型に変更、連射速度・射程・威力ともに申し分なし!」

ルッカ「おまけに軽量・無反動・自動照準機能つきでオコサマでも安心!」

杏子「よい子は使っちゃダメだぞ。杏子お姉さんからのお願いだ」

791: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:36:12.33 ID:2u/E7qwVo
ルッカ「矢の装填もカートリッジ式でスムーズ! 使い方は簡単、ハンドルを回すだけ!」

ルッカ「どーですか、奥さん!」

マミ「えっ、わ、私……? えっと……このボウガンのおかげで私にも友達ができました!」

ロボ「効果には個人差がありマス」


ルッカ「さらには今回、キャンペーンといたしまして……」

ルッカ「アタッチメントとして付け替え可能な小型大砲や炸裂弾もご用意!」

マミ「あらステキ。でもお高いんでしょう?」

カエル(巴が悪ノリしだしたぞ……)

793: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:39:22.51 ID:2u/E7qwVo
ルッカ「いえいえ、ここまでお付けしてお値段……なな、なんと! たったの9980G!!」

マミ「ええ!? そんなに安くて大丈夫なんですか?」

ルッカ「はい、決して損はさせません。さあみなさん、今すぐお電話を!」


ロボ「フリーダイヤル『0120 - 6578(るっかちゃん) - 1031(てんさい)マデ」

ロボ「商品番号96番『狂戦士の連弩』デス。深夜ですノデ電話番号のお間違えないようご注意クダサイ」


ほむら「チャンネル変えていい?」

795: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:42:12.83 ID:2u/E7qwVo
まどか「えっと私、お金持ってないんですけど……」

カエル「こいつのアホに付き合わんでいい」

ルッカ「アホとはなによ。ま、もともとお金なんて取るつもりはないわ」

マール「いいなー。私も欲しいよ!」

ルッカ「残念だけどこれ1台きりよ」

まどか「ありがとう、ルッカさん!」


ほむら「もういいかしら? いい加減、話を進めたいのだけれど」

796: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:45:19.60 ID:2u/E7qwVo
A.D.1000 リーネ広場 ベッケラーの小屋


ベッケラー「ようこそ、ノルシュテイン・ベッケラーの実験小屋へ。世にも恐ろしいショウが始まるよ」


ルッカ「この人がノルシュテイン・ベッケラーね」

ほむら「人っていうか……顔と手だけしかないんだけど……」

まどか「ベッケラーさん! お願いがあるんです……」


ベッケラー「ドッペル人形がほしい? 君たちのかい?」

まどか「えっと、私たちのじゃなくて、クロノさんっていうんですけど……」

ベッケラー「ふむ。本人しかダメなんだが今日は特別さ。それじゃあ今からゲームをしてもらおうか」

ルッカ「ゲ、ゲーム?」

ほむら「まあ、タダでもらえるわけはないわよね……」

798: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:47:28.96 ID:2u/E7qwVo
ベッケラー「アシスタント、カモーン!」

クロノ?「……」

ルッカ「えっ!? ク、クロノ……!?」

ほむら「違うわ、人形よ……」

まどか「そっくりだね。でも、どうして……」


ベッケラー「おや、君たちが欲しいのは彼だったのかい?」

ベッケラー「偶然だなあ。つい最近、ふと思い立って作ってみたんだよ」

ほむら(こいつ……何者……)

799: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:51:05.65 ID:2u/E7qwVo
ベッケラー「さて、これからやってもらうのは『モノマネゲーム』さ!」

ほむら「それって、クロノが夢中になってた……?」


ベッケラー「ルールは簡単、このドッペルくんと同じポーズをとり続けるだけ!」

ベッケラー「みごとパーフェクトを達成すれば、彼は君たちのものだ!」

まどか「パーフェクトって何回やればいいんですか?」

ベッケラー「そうだなあ……じゃあ100回」

ルッカ「ひゃ、100回!?」


ベッケラー「それじゃあいくよ。ドッペル・ゴー!」


…………



800: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:53:32.29 ID:2u/E7qwVo
デデーン! マドカ、アウトー!

まどか「ぁうっ!」パチーン!


デデーン! ルッカ、アウトー!

ルッカ「う゛いッ!!」バシーン!!


デデーン! ホムラ、アウトー! タイキック!!

ほむら「いやあああ!!!」

801: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:55:36.97 ID:2u/E7qwVo
ルッカ「ぜぇ……はぁ……」

まどか「うう……おしりがヒリヒリするよお……」


ベッケラー「おやおや~? クレジットがなくなっちゃったみたいだね」

ベッケラー「シルバーポイントを貯めて、また来てよ!」


…………


まどか「なんか、後半に進むにつれてスピードが上がっていってましたよね……」

ルッカ「無理。あきらめましょう」

ほむら「早いわよ! あきらめたらそこで試合終了よ……!」

ルッカ(タイキックされて涙目になってるくせに……)

803: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:57:00.68 ID:2u/E7qwVo
まどか「どうしよう……。あのお人形さんが手に入らないと、時の卵が……」

ほむら「仕方ないわね、彼女の手を借りましょう。ふたりはここで待っていて」

ルッカ「誰を連れてくる気よ?」

ほむら「魔法少女界の高橋名人よ」


…………



805: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:02:05.29 ID:pUZ4y/K6o
杏子「誰が高橋名人だ!」


ほむら「任せたわ、名人」

まどか「がんばって、名人ちゃん!」

ルッカ「期待してるわよ、名人」

ベッケラー「今度はその子が挑戦者かい? 『高橋名人』でスコア登録していいのかな?」


杏子「違うっつってんだろ! アタシの名は……『クイーン』」

杏子「ゲームセンターあらしとして名を馳せ、あまりにも有名になりすぎたがゆえに出禁店多数……」

杏子「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ! 『ゲームマスター・クイーン』とはアタシのことだ!!」


ほむら「暇だったのね……普段……」

杏子「モノマネゲーム? へっ、『Dog Drug Reinforcement.』で鍛えたアタシにかかりゃ楽勝だぜ」

ベッケラー「たいした自信だね~。じゃあいくよ? ドッペル・ゴー!」


…………



807: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:04:38.64 ID:pUZ4y/K6o
杏子「……どういうことだ……オイ……」


「Marvelous! Rank『A+』!!」

ベッケラー「こりゃすごい。『キング』のハイスコア更新だ!」


杏子「なんでパーフェクトが出ねえんだよ!!」

ほむら「最後のところでミスったわね」

ルッカ「おしかったわねえ。今回こそはと思ったのに」

まどか「杏子ちゃんでもダメかあ……」

杏子「クソッ、まだだ! もう1回やらせ……いてて……尻がいてぇ……」

ほむら「もうシルバーポイントがないわよ」

811: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:07:51.12 ID:pUZ4y/K6o
???「見苦しいぞ、クイーン」

杏子「!? 誰だ!」

???「我が名は『ジャック』……」


ジャック「貴様の実力はその程度か? フ……。クイーンが聞いてあきれる……」

杏子「なんだと……! 急に出てきやがって、なにもんだ、テメェ!!」



まどか(あっ、ジャキくんだ)

ほむら(仮面かぶってるけど、あれ魔王よね?)

ルッカ(いつの間に来たのよ……)

813: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:10:52.01 ID:pUZ4y/K6o
ジャック「どいてもらおう。次は俺の番だ」

杏子「ヘン、どうせ一発ミスだろ」

ベッケラー「1回40シルバーポイントだよ」

ジャック「……これで足りるはずだ」

ベッケラー「はい、確かに。それじゃあいくよ。ドッペル・ゴー!」


ジャック「はああああ……ッ!!!」カッ!!

817: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:13:15.54 ID:pUZ4y/K6o

                       ヘ(^o^)ヘ いいぜ
                         |∧
                     /  /
                 (^o^)/ てめえがパーフェクトなんか
                /(  )    取れっこねえって思ってるなら
       (^o^) 三  / / >
 \     (\\ 三
 (/o^)  < \ 三
 ( /
 / く  まずはそのふざけた
       幻想をぶち殺す

819: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:15:58.58 ID:pUZ4y/K6o
「Congratulation! Rank『S』!! Perfect!!!」


杏子「う、うそだろ、オイ……何がどうなってやがんだ……」

まどか「すごい! 一発クリアだ!」

ジャック「フ……。こんなもの、児戯に等しい……」


ベッケラー「いや~、たまげたね。おめでとう、ドッペル人形進呈だ!」

ジャック「そのようなもの、俺には必要ない。そこにいるヤツらにでもくれてやれ」

ほむら「……いいの?」

ジャック「かまわん。オーディエンスを沸かすのは、王者の勤め……」

ルッカ(ていうか魔王なんだから、最初から私たちのものよね)

820: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:19:12.23 ID:pUZ4y/K6o
杏子「くそ……このまんまじゃ引き下がれねえ……!」


杏子「ジャック! クイーンとして、テメェに勝負を申し込む!」

ジャック「ほう……。勝負方法は?」

杏子「この広場の全ゲームで、ハイスコア勝負だ!」

ジャック「ククク……よかろう……。だが決闘(デュエル)には立会人が必要だ……」

杏子「それなら……ルッカ! 頼むぜ!」

ルッカ「なんでよ! 嫌よ!」

822: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:20:58.06 ID:pUZ4y/K6o
杏子「これで文句ねえだろ? さあ、とっとと始めようぜ!」

ジャック「クイーンの名、今日限りで返上させてやろう……。フゥーハハハ!!!」

杏子「テメェこそ、あとで吠え面かくなよ!」

ルッカ「はーなーせええぇぇぇ……!!」


…………


まどか「ジャキくんが楽しそうで何よりだよ!」

ほむら「あ、そうですね……はい……」

826: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:26:55.62 ID:pUZ4y/K6o
ベッケラー「もう行くのかい? じゃ、これはオマケだ」

まどか「え? これ……私たちのドッペル人形?」

ほむら「私のと、まどかのと……ルッカのまであるわね……」

ベッケラー「大変有意義な時間をすごさせてもらったからね。お礼だ。突貫制作だけど、我慢してくれよ」


ベッケラー「本当は、クイーンとジャックの分も渡そうかと思ったんだけど……」

ベッケラー「彼らはハイスコア登録者だ。ゆっくりじっくり、作らせてもらうよ」

ベッケラー「完成したらこの小屋にでも飾っておこうか。彼らも有名になるだろう」

ほむら(どっちかっていうと、さらし者よね……)


ベッケラー「君たちの幸運を祈ってるよ。時の卵、かえるといいね」

まどか「! どうしてそれを……」

ベッケラー「さてね。三賢者のじいさんたちに会ったら、よろしく伝えといておくれ」

828: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:29:55.19 ID:pUZ4y/K6o
A.D.2300 監視者のドーム


マール「というわけで補充メンバーとして私が来たよ!」


まどか「時の卵とドッペル人形、そろえてきました!」

ガッシュ「うむ、よいじゃろう。死の山がお前たちを受け入れる時が来たようじゃの」

ガッシュ「ゆめゆめ忘れるな。チャンスは一度きり。よく考えて行動するのじゃぞ」

ほむら「……」


ガッシュ「私がこの物体に入力した、本当に最後のプログラム……」

ガッシュ「お前たちをあの山へ導くサポートシステムを起動させよう。少し下がっていなさい」

829: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:31:55.44 ID:pUZ4y/K6o
「プログラム スイコウ カイシ!」

「リョウカイ! モクテキチ シノヤマ!」

「リョウカイ! リョウカイ!」


マール「わっ!? なんか飛んでったよ?」

まどか「小さなお人形さんみたいでしたけど……」

ガッシュ「今、旅立った三つの分身が、お前たちを死の山から守ってくれるじゃろう」

ほむら「ありがとう、ガッシュさん。何から何まで……」


ガッシュ「扉を開いた者たちよ。進むがよい。君たちの先に、きっと『未来』がある……」

ガッシュ「この星を……託したぞ……」

830: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:34:18.07 ID:pUZ4y/K6o
なぞの物体「プログラム『ガッシュ』ハ終了シマシタ。電源ヲキッテクダサイ」

なぞの物体「プログラム『ガッシュ』ハ終了シマシタ。電g……。……」



マール「……」

ほむら「……お疲れさま、ガッシュさん……」

まどか「……おやすみなさい……」

831: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:35:44.70 ID:pUZ4y/K6o
A.D.2300 死の山 ふもと


まどか「うぅ……すごい強風! 目を開けていられない……」

ほむら「また風なの……」

マール「ふたりとも、こっちにわき道があるよ! ここから登ろう!」


…………



832: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:37:41.96 ID:pUZ4y/K6o
プチラヴォス「キュアアオォアオーン...!!!」


マール「はあ……びっくりしたあ。ラヴォスかと思っちゃった」

ほむら「ガッシュさんの研究によると、今のはラヴォスの幼生体ね」

マール「子供なら、今の私たちでもなんとかなるもんだね~」


ほむら「まどか、大丈夫?」

まどか「うん。ルッカさんのボウガンのおかげで、わたしもなんとか戦えるよ!」

マール「まどかちゃんの援護、ばっちりだったもんね」

ほむら「ルッカはエイラがチートだと言っていたけれど……こと機械に関しては、彼女も十分チートよね」

833: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:39:32.04 ID:pUZ4y/K6o
A.D.2300 死の山 中腹


まどか「開けた場所に出ちゃいましたね」

マール「うーん。ここから先はこの風の中を進むしかないのかなあ……」

まどか「ちょっとでもバランスを崩したら、あおられて転がり落ちちゃいそうですよ……」

ほむら「死の山に吹きすさぶラヴォスの黒き風……か」

834: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:41:35.41 ID:pUZ4y/K6o
マール「あれ? ちょっと待って。道の途中に何かあるよ?」

まどか「あ! あれ、ガッシュさんが飛ばしたお人形さんですよ!」

マール「なんであのお人形さんの周りだけ風が吹いてないんだろ?」

ほむら「……! まさか、防御結界!? とても微弱だけれど……」


まどか「結界って、マミさんや杏子ちゃんが使ってるやつ?」

ほむら「それと同じかどうかは分からないけど、似ているわ。つまり、風除けね」

マール「お人形さんを盾にして進めばいいんだね! ちょうど三つあるし!」

まどか「ガッシュさんのおかげですね!」

ほむら「山頂は近いわ。行きましょう」

835: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:46:00.36 ID:pUZ4y/K6o
A.D.2300 死の山 山頂


まどか「ここが……死の山のいただき……」

マール「枯れ果てた木が1本あるだけで、なにもないね……」

ほむら「こんなところに長時間いたら、頭がおかしくなってしまいそうだわ」


マール「そうならないうちに、早いとこやっちゃおうよ!」

まどか「じゃ、ほむらちゃん。これ……」

ほむら「……」

836: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:47:44.03 ID:pUZ4y/K6o
ほむら(時の卵……運命をやり直せる神の品……)

ほむら(これがあれば……どんな時代でも、どんな瞬間にも戻れる……)

ほむら(……そう……どんな瞬間にも……)


まどか「……ほむらちゃん?」

ほむら「えっ!? あ……よ、呼んだかしら?」

マール「ぼーっとしちゃって、どうしたの? 言霊忘れちゃったとか?」

ほむら「いえ、大丈夫。ちょっと感慨にふけっていただけ……。始めるわよ」


マール「いよいよだね……」

まどか「はい……」

ほむら「……」

837: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:49:08.66 ID:pUZ4y/K6o
ほむら「……夜にふるえる、すべてのおもいよ……」

ほむら「……やみに立ち向かう、すべての生命……」

ほむら「……願わくば、我に力を……!!」


キイイイイイン...

マール「ペンダントが!」

まどか「共鳴してる……!!」



ほむら「今こそ……あの瞬間へ!!!」


ピシッ!!!

838: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:50:50.16 ID:pUZ4y/K6o
パキィィ...ィン......



ほむら「……え?」


まどか「た……卵が……」

マール「砕け……ちゃっ……た……」


ほむら「そんな!? どうして!!」

839: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:52:40.35 ID:pUZ4y/K6o
まどか「……失敗……しちゃった、の……? わたしたち、なんのためにここまで……」

マール「……うそ……。クロノ……返事をして……! 私をおいて行かないで……!!」

まどか「マールさん……」

ほむら「……」



『ひとつ。本当にその人が大切で、その瞬間に戻りたいと心の底から強く願うこと』



ほむら「……私の……せい、だ……」

840: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:54:03.23 ID:pUZ4y/K6o
まどか「ほむらちゃん……?」


ほむら(わ、私……そんなつもりじゃ……ただほんの少し、頭の片隅によぎっただけなのに……)

ほむら(どんな瞬間にも戻れるなら……もしかして、まどかの絶望の運命を変えられる瞬間が……)

ほむら(……ち、違う……私は……本当に……そんなこと……)



『ゆめゆめ忘れるな。チャンスは一度きり。よく考えて行動するのじゃぞ』



ほむら(忘れていた……。私……同じ時間を何度もめぐり続けるうち……忘れてしまっていた……)

ほむら(こ、怖い……! 『やり直せない』ことが……こんなにも、怖いものだったなんて……!)


ほむら「あ、ああ……あああ……!!」

841: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:56:16.07 ID:pUZ4y/K6o
まどか「……大丈夫、ほむらちゃん。私の手を握って?」

ほむら「ま、まどか……私……」

まどか「怖くないよ。わたしたちがいるからね……」

ほむら「え……」


マール「……」

ほむら「マール……あ……あの……私、失敗して……」

マール「ううん、ほむらちゃんのせいじゃない。きっと、あなたに全部任せちゃった私のせい」

マール「今度は私たちもそばにいるよ。だからあきらめないで、もう一度……ね?」

842: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 00:58:18.21 ID:pUZ4y/K6o
ほむら「無理……無理よ……。たとえもう一度チャンスがあったとしても……」

ほむら「きっとまた、同じ過ちを繰り返してしまう……。今までだって、ずっとそうだったもの……」

マール「今まで、何があったの?」

ほむら「そ、それは……」


マール「ふふ。ルッカの言うとおり。ほむらちゃんって、秘密が多いね」

マール「でも信じるよ、私。ほむらちゃんのこと……どんな結果になっても……」

ほむら「どうして……あなたは……何も知らないのに、そんな風に言えるの……」

マール「うーん、なんでかな? わかんないけど、たぶん、こういうことなんだと思う」



マール「クロノも、同じだったでしょ?」

ほむら「……!!!」

844: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:00:40.63 ID:pUZ4y/K6o
まどか「さあ、ほむらちゃん」

マール「もう一度、願って」



「あなたは、今、誰を救いに行きたい?」


――――

―――

――



845: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:02:37.25 ID:pUZ4y/K6o
ほむら「……」


ほむら「長い……気の遠くなるような長い、時の迷路を越えて……」


ほむら「あなたを迎えに来たわよ……」

846: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:03:44.57 ID:pUZ4y/K6o


ほむら「……クロノ」



847: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:05:31.04 ID:pUZ4y/K6o
マール「すごい……。本当に、あの時の……海底神殿でラヴォスと戦った時のままだ……」

まどか「みんな静止してる……あの時のわたしたちも……。これが時間の停止された世界なんだ……」

ほむら(なつかしいわね、この感覚……)

ほむら(そっか。こんなにさびしいものだったのね、私のいた世界は……)


クロノ「――――」

マール「ドッペル人形とすりかえて……と」

ほむら「これで、ラヴォスに消されるのはクロノ本人ではなく人形になるわけね」

マール「ああ、クロノだ! 生きてるよね!? クロノ、帰ろう。みんなのもとへ……!」

848: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:07:40.70 ID:pUZ4y/K6o
まどか「……」

サラ「――――」


まどか「ごめんね……。助けてあげたいけど、ダメなの……」

まどか「わたし、もう泣かないよ。分かったんだ、あなたがそばにいてくれてるってこと」

まどか「だから……わたし、行くね」



まどか「……ありがとう、サラちゃん」

サラ「――――」


――――

―――

――



849: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:09:50.57 ID:pUZ4y/K6o
クロノ「……」


クロノ(暗い空だ……風も冷たい……。そうか……僕は死んで、地獄に落ちたのか……)

クロノ(まいったなあ。これでも、真っ当に生きてきたつもりだったんだけど……)

クロノ(ルッカ……ほむら……。僕は、みんなの役に立てたんだろうか……)

クロノ「……」


クロノ(マール……。僕は……君のことを……)

850: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:12:05.29 ID:pUZ4y/K6o
マール「クロノ!!!」

クロノ「……え? マール……どうして? 君も死んだのかい……?」

ほむら「なにを言ってるの、しっかりして。あなたは生き返ったのよ」

クロノ「ほむら……それに君は、まどか……」

まどか「クロノさん、無事で良かった……」

クロノ「どういうことなんだ? 僕が生き返ったって……」


マール「……っ!」


まどか「わ、わわ……!」

クロノ「な、なんだよマール!? 急に抱きついてきたりして……」

ほむら「だ、大胆ね……」

マール「……」

851: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:14:15.74 ID:pUZ4y/K6o
♪クロノとマール ~遠い約束~


みんな…… みんな、待ってたんだよ。

もう…… 遠くへ行っちゃあ……、ダメだよ…

クロノがいない間にね…… いろんな事が……のよ…… そして……

……そこでね……私が…… …したの……でも……


……ねえ、クロノ! 聞いてるの?



まだまだ、ぜんぜん話したりないんだから……

852: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:16:32.58 ID:pUZ4y/K6o
年代不明 時の最果て


ルッカ「この大バカ者! マヌケ! 甲斐性なし!」

ルッカ「あんたがいないあいだ、すっごく大変だったんだから! 今度ヘマしたら、助けてやんないわよ!」

クロノ「……」

ルッカ「マールが……それに、ほむらも……でも……私だって……」

クロノ「泣くなよ……」

ルッカ「な、泣いてないわよ! バカ! ホントに……バカなんだから……!」

853: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:18:33.57 ID:pUZ4y/K6o
ほむら「あのルッカが泣くとはね」

ロボ「彼女モひとりの女の子ということデス。それにシテモ、本当に良かっタ……」

カエル「お前は幸せ者だぜ。こんなにみんなに思われてよ」

さやか「今のクロノさん、マジ主人公状態っすね!」

エイラ「クロ、戻ってきた! みんな、元気!」

マミ「ほんと。クロノさんがいるだけでこんなにも場が和むなんて……」

杏子「ハッピーエンドってヤツかね? な、ジャキ」

魔王「……フン。まだ何も終わっていないぞ」

まどか「もう~、ジャキくんもちゃんと祝ってあげないとダメだよ!」

855: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:20:46.41 ID:pUZ4y/K6o
マール「ね、みんな! 今日は……今日ぐらいは、パーッと騒いじゃってもいいよね?」

ロボ「クロノの復帰祝いデスネ」


さやか「一発芸やってよ、師匠!」

カエル「やらん!!」


エイラ「岩石クラッシュ! 旅出る前、エイラ、持ってきた! 祝い事、酒! 飲む!」

マミ「あらあら……」

まどか「ま、マミさん? よだれ出てますよ……?」

ほむら「マミを止めて。えらいことになるわよ」


魔王「私は参加せんぞ」

杏子「カタイこと言うなよ。どうせ全員、強制参加だろ」

魔王「チッ……」

856: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:22:54.70 ID:pUZ4y/K6o
クロノ「いやあ、僕のためにこんな……なんか、申し訳ないな」

ルッカ「何言ってんのよ、クロノ」

クロノ「え?」

ルッカ「あんた主賓でしょーが。そんなとこ突っ立ってないで、さっさと来なさい!」

クロノ「お、おい、引っ張るなって!」


マール「クロノー! なにしてるの、早くー!!」


…………



857: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:24:57.72 ID:pUZ4y/K6o
ほむら「……」


クロノ「ほむら、こんなところにいたのか。みんなの輪の中に加わらないでいいのかい?」

ほむら「……アレに加われと?」



さやか「うっひゃっひゃっひゃ! 師匠の腹芸、サイコー!!」

カエル「くひひ、ワイルドだろぉ~? まだまだ行くぜ!」

マミ「ダメよぉ~! ちゅぎは私が脱ぐ番なんだからぁ~!」

エイラ「いいぞ! エイラも脱ぐ!」

ルッカ「女の価値は のデカさで決まらないっつーのよ! ウガー!!」

858: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:26:49.93 ID:pUZ4y/K6o
マール「すー……すー……」

まどか「うぅ……ん……。やめて……もう飲めないよ、マミさん……」

ロボ「オヤオヤ、こんなところで寝ていてハ風邪を引きマスネ。毛布をかけてあげなけれバ……」


魔王「う……ぐ……! くそ……負けん……! 俺は酒などに負けはせんぞ……!」

杏子「意地張るなよ。ほら、気持ち悪いならこの袋の中に吐けって」

魔王「や、やめろぉ……! 俺の背中をさするんじゃあない……ッ!」



クロノ「……ハハ。みんな、楽しんでくれてるみたいでいいんじゃないか?」

ほむら「笑顔がひきつってるわよ」

859: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:31:33.01 ID:pUZ4y/K6o
ほむら「あなたこそ、主役が抜け出してきていいのかしら?」

クロノ「ん……そうだな。ちょっとばかし、ほむらに聞きたいことがあったからね」

ほむら「なに?」

クロノ「時の卵のこと、聞いたよ。失ってしまったものを取り戻せる唯一の方法だって」

ほむら「……」


クロノ「僕は君の事情を知らない。でもなんとなく分かる」

クロノ「本当に良かったのか? 君は……もっと別のことに、卵を使いたかったんじゃ……」

ほむら「クロノ」

クロノ「お、おお? どうしたんだ、そんなに怖い顔して……」

ほむら「それ以上言わないで。もし、あなたを救ったことが間違いだと言う人がいたら……」



ほむら「そんなの、私が許さない」

860: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:34:28.68 ID:pUZ4y/K6o
クロノ「……」

ほむら「聞きたいことはそれだけ?」

クロノ「ん? あ、ああ……」


ほむら「じゃあ、今度は私から質問。私の事情、あなたは知りたい?」

クロノ「え……」

ほむら「どっち? 知りたいの? 知りたくないの?」

クロノ「いや、それは……ど、どっちだろ……」

ほむら「……ハァ。あなたって、優柔不断よね」

クロノ「ええ!?」

ほむら「マールもルッカも大変ね、これは」

クロノ「なんのことだよ?」

ほむら「おまけに鈍感ときた。どこのラノベ主人公よ、あなたは」

861: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:36:30.71 ID:pUZ4y/K6o
ほむら「いいわ。私の秘密、すべてとはいかないけれど、話してあげる」

クロノ「え?」

ほむら「私たちの最後の秘密。魔法少女と魔女の関係……。そうね、みんなにも話さなきゃね」

クロノ「それが、君の事情なのか……?」

ほむら「言ったでしょう? すべてとはいかないって」


ほむら「これは、ジールに殺されそうになった私を助けてくれたあなたへの……」

ほむら「そして……無条件に私を信じ続けたおバカさんたちへの、お礼よ」

クロノ「……」

862: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:37:44.71 ID:pUZ4y/K6o
ほむら「あなたたちは私たちの正体を聞いても、平然としていられるかしら?」

クロノ「たとえ君たちにどんな事情があろうと受け入れてみせる。それが、仲間ってもんだろ?」

ほむら「甘いわね、あなたたちは……。何も知りもしないで……」

クロノ「それを言われると辛いな」


ほむら「……でも、不思議ね。今ならあなたの言葉を、素直に受け止めることができるかも……」

863: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:39:38.34 ID:pUZ4y/K6o
ルッカ「こりゃー! バカクロノにほむほむ! そんなとこで内緒話とは感心せんなあ~!?」

マミ「ふたりともお~こっちきて飲みましょ~。た~のしいわよ~!」


ほむら「やれやれ……面倒くさいのに絡まれたわね」

クロノ「ほむら……」

ほむら「戻りましょう。今は……何も考えず、楽しめばいいわ」

クロノ「……」

864: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:41:16.09 ID:pUZ4y/K6o
ほむら「ああ、そうそう。ひとつ言い忘れてたことがあったわね」

クロノ「? なんだよ」



ほむら「……おかえりなさい、クロノ」

クロノ「! ……」

865: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:41:59.26 ID:pUZ4y/K6o


クロノ「ただいま」



866: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 01:44:03.85 ID:pUZ4y/K6o
第8話「そんなの、私が許さない」 終了


  セーブしてつづける(第9話「それはとても、うれしいこと」へすすむ)

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876: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 21:55:59.41 ID:pUZ4y/K6o
第9話「それはとても、うれしいこと」


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877: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 21:58:54.12 ID:pUZ4y/K6o
ハッシュ「おーい」


ハッシュ「……」

ハッシュ(ラヴォスのタイムゲートに巻き込まれ、飛ばされた先のこの空間……)

ハッシュ(誰もいない……。いやそれどころか、何もない……チリひとつすら……)


ハッシュ「ここは……時の最果てか……?」


――――

―――

――



878: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:01:09.95 ID:pUZ4y/K6o
年代不明 時の最果て


老人(ここに飛ばされ、幾年月を経たか……。もはや思い出すこともかなわぬ……)

老人(いや、時間など1秒たりとも進んでいないのかもしれんな。ここはそういう場所……)


老人(罰だと思った。女王の暴走を知りながら、崩壊の日の時まで日和ることしかできなかった私への……)

老人(ここで誰にも知られず、気づかれることもなく……ひっそりと死ぬのだろうと……)


老人(だが……今は……)

879: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:04:05.73 ID:pUZ4y/K6o
老人「おーい」

ほむら「? 何かしら、管理人さん」


老人(……呼べば答えてくれる者たちが、こんなにもたくさんおる。それはとても、うれしいこと……)

老人(なんと心あたたかく、安らぐことだろうか。私は許されたのか……?)

老人(いや、この者たちの道しるべとなることが、きっと私の……)


まどか「あの、どうかしたんですか?」

老人「ん? いや、すまんすまん。ちょっとな、お前さんたちに話しておきたいことがあるんじゃ」

ほむら「じゃあ、みんなを集めてくるわね」


…………



880: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:08:46.96 ID:pUZ4y/K6o
老人「今ここに、さまざまな場所から、時代を超えて……勇士たちが集結した」

老人「ほむらさん、まどかさん、さやかさん、マミさん、杏子さん……」

老人「クロノさん、マールさん、ルッカさん、ロボさん、カエルさん、エイラさん、魔王さん……」

老人「お前さんたち12人に、この星の未来が託されておる……」


まどか「な、なんかすごいことになっちゃいましたね……」

クロノ「星を救う英雄か。男子なら、誰もが夢見ることだな」

さやか「女子だって燃える展開っすよ!」

881: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:13:07.92 ID:pUZ4y/K6o
ルッカ「ラヴォスを倒そうと誓ったあの日から、こんなにも仲間が増えるなんて……」

マール「ほむらちゃんのおかげだね!」

ほむら「私は別に、何も……」

ロボ「謙遜することはないと思いマス。ほむらが中心に立っていたのは確かデスカラ」


杏子「良かったな、ジャキ? これだけいればラヴォスを倒せるんじゃねーか?」

魔王「フン、雑魚がいくら群れたところで無駄だ……」

カエル「お前もいまや、その雑魚のひとりだぜ」

エイラ「強いヤツ、いっぱい! ラヴォス、負けない!」

マミ「そうね。みんなが力を合わせれば……」

882: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:16:07.11 ID:pUZ4y/K6o
QB「僕はそうは思わないな」

マミ「キュゥべえ!?」

ほむら「お前……なぜここに!」

QB「ゲートを通ってきたのさ。時間移動は僕たちにもない技術だ」

QB「やっぱりこの星はすごい。ラヴォスについてきて正解だったよ」

クロノ「ラヴォスについてきた、だって……?」


エイラ「マミ、あのウサギ、マミの言ってたヤツか?」

マミ「え、ええ……。エイラにも見えるのね……」

QB「ふむ。みんな見えているみたいだね」

QB「ということはやっぱり、君たちが『ラヴォスを倒しうる可能性を持つ存在』ということになる」

QB「しかし可能性はただの可能性だ。今の君たちでは、勝算は限りなく低いと言わざるを得ない」

883: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:19:38.67 ID:pUZ4y/K6o
魔王「去れ、●獣。貴様に何が分かる」

QB「おっと、君は……そうか、ジャキか。老けたね」

魔王「……なるほど、ここで死にたいらしい」

ほむら「手伝うわ、魔王」


QB「いいのかな? 僕の話を聞かなくて。このままじゃこの星も、サラも消えてなくなってしまうよ」

まどか「サラちゃんが!?」

魔王「貴様……何を知っている……! サラはどこだ!」

884: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:22:56.56 ID:pUZ4y/K6o
QB「サラはラヴォスと同化している」

まどか「え!?」


QB「彼女の魔法少女としての性質は『代替』。自らを差し出し、ラヴォスの力を封印している」

QB「そうだね、彼女の魔力なら……15000年ぐらいは眠らせておけるんじゃないかな?」

QB「ただし……何もなければ、という条件付だけどね」

魔王「……」


マール「あなたは……サラさんを魔法少女にしたの!?」

QB「そうしなければこの星は、B.C.12000の時点で滅びていた。僕はこの星を救ってあげたんだよ?」

885: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:28:56.27 ID:pUZ4y/K6o
杏子「テメェ……よくも抜け抜けと……」

QB「サラは立派に役目を果たしてくれたよ。彼女こそ、魔法少女システムの最高傑作のひとつだ」


ルッカ「あんた、何が目的なのよ! ほむらたちを食い物扱いするなんて……!」

QB「ひどい言い草だな。目的か。前に言わなかったかな? ラヴォスを倒すのが目的だって」

ほむら「どうせ、宇宙のエネルギーがどうだの言い出すつもりでしょう」


QB「色々知ってるみたいだね。まあそうさ。ラヴォスは膨大なエネルギーを生み出すけれど……」

QB「それ以上の消費者でもある。ヤツに繁殖し続けられると、宇宙の寿命は加速度的に減少していく」

QB「僕らはそれを避けたい。だからラヴォスとともに星をめぐり続け、解決の糸口を探した」

886: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:33:23.38 ID:pUZ4y/K6o
QB「そして、たどり着いたのがこの星だ。そして、君たち人類は驚くべき進化をなしとげた」

QB「ラヴォスのかけら、『ドリストーン』に触れ――そうなるよう僕らが仕向けたんだけれど……」

QB「『ラヴォスの力』を身に宿した。君たちが『魔法』と呼んでいる力をね」

QB「僕たちはその力をもう一度、高純度のドリストーンとして抽出する技術の開発に着手した」


QB「ドリストーンは持ち主の感情によって、大きくその性質を変化させる……」

QB「君たちの感情を吸ったドリストーンのエネルギーは、ラヴォスのそれを凌駕するだろうと期待したんだ」

QB「とりわけ最も効率がいいのは、第二次性徴期の少女たちだった」

QB「テクノロジーは完成した。ラヴォスの娘たちによる親殺し……」

QB「魔法少女システム――またの名を、調停者システムの完成というわけさ」

887: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:35:08.51 ID:pUZ4y/K6o
QB「力及ばず魔女と化した少女たちも、無駄死にじゃない」

QB「ソウルジェムがグリーフシードへと変わるその瞬間、膨大なエネルギーが発生する」

QB「そのエネルギーは回収され、宇宙の存続とさらなるラヴォスの研究資源として使われる」

QB「僕らは君たちの犠牲に敬意を払い、その魂の最後のひとかけらまで余すところなく役立てているんだよ」


QB「君たち人類はすばらしい。エネルギーの浪費対策と供給を、同時になしとげてしまうんだからね」

888: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:38:04.39 ID:pUZ4y/K6o
さやか「……」

QB「君はまるで、僕を悪だとののしらんばかりの顔をしているね」

QB「なぜなんだい? ラヴォスはこの星だけじゃない、宇宙全体にとっての問題だ」


QB「君たち人類だって、いずれはこの星を離れて、僕たちの仲間入りをするだろう」

QB「その時になって、ラヴォスによって食いつぶされ尽くした宇宙を引き渡されても困るよね?」

QB「悪だというなら、ヤツこそがそうなんじゃないのかな?」


QB「僕たちはそれを倒す方法を見つけたんだ。ほめられこそすれ、責められるいわれはないはずだけどなあ」

まどか「バカ言わないで! そのためにサラちゃんを……何人もの女の子たちを……。ひどすぎるよ……」

QB「僕たちはあくまで合意を前提に契約しているんだ」


QB「それに君たちだって家畜を飼い、実験には動物を使い、戦争ともなれば同胞を駒とする」

QB「どう違うんだい? 単一個体の生き死にが、そんなに重要なことかな?」

889: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:41:05.14 ID:pUZ4y/K6o
まどか「あなたは……いつまでたっても、そんなことばっかり……!」

QB「まどか。そこまで言うなら、君が契約してくれればいいじゃないか」

QB「サラと同等かそれ以上の素質を持つ君なら、ラヴォスを倒せるんじゃないのかな」

まどか「……」


ほむら「そんなことはさせないわ」

ロボ「まどかさんは大切な仲間デス。手出しはさせマセン」

カエル「鹿目を魔女に仕立て上げようってんなら、無駄だぜ」

QB「やれやれ。あれもダメ、これもダメ。君たちは本当にラヴォスを倒す気があるのかい?」

890: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:43:48.28 ID:pUZ4y/K6o
QB「魔法の力、契約していない君たちの中にも使える者がいるみたいだけど……」

QB「どうやって引き出したのかな?」

クロノ「……」


QB「だんまりか。まあいいけどね。ここに来た時、なんとなく分かったから」

QB「この感じ、スペッキオだね? 彼もこの星に来ていたのか……」

ルッカ「……なんですって?」


QB「大きな力には大きな代償。小さな代償では小さな力しか得られない。等価交換の法則さ」

QB「スペッキオではなしえない、大きな力を、ラヴォスを倒せるだけの力を与えてあげること」

QB「僕ならできるよ。協力関係を築くべきだと思うけどね」

891: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:46:20.36 ID:pUZ4y/K6o
ほむら「二度も言わせないで。そんなもの、お断りよ」

QB「……そうかい。まあ、この宇宙のために死んでくれる気になったら、いつでも声をかけて」

QB「理想はまどかだけどね。可能性を持つ君たちの中なら、誰でもいいよ」


QB「待ってるからね。そのためにこうやって、情報を提供しに来たんだから」

ほむら「ええ。とてもためになったわ。これはお礼よ」

QB「……えっ?」


ダァン!!


…………



892: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:48:08.97 ID:pUZ4y/K6o
マミ「暁美さん……」

ほむら「なに、マミ? まさかとは思うけど、かばうつもりだったの?」

マミ「……いえ……そんなこと、しないわ……」

魔王「問題ない。暁美ほむらがやらねば、私が殺していた」


ほむら「どうせすぐ復活するわよ。なんならエイラ、食べちゃってもいいわよ」

エイラ「お? じゃあ丸焼き、する!」

杏子「やめとけよ。腹壊すぞ」

895: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:52:56.34 ID:pUZ4y/K6o
ルッカ「こいつの話は聞くに堪えないものだったけれど、ある一点においては正しいわね」

クロノ「今の僕たちじゃラヴォスは倒せない、か……」

まどか「サラちゃん……。ラヴォスを倒せば、戻ってこれるのかな……?」

魔王「……」


老人「そう、今のお前さんたちではまだ力不足じゃ。私も、その話をするつもりじゃった」

さやか(やばっ……管理人さんの存在、忘れてた……)

ほむら(ひどい人ね、あなた)

さやか(テレパシーでツッコミ入れんな! ほむらだって忘れてたくせに!)

ほむら(……ノーコメントよ)

896: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:55:50.10 ID:pUZ4y/K6o
老人「ラヴォスといつ、どこで戦うかはお前さんたち次第じゃ」

老人「じゃが、くれぐれもお前さんたちだけで戦おうとしてはいけない……」

まどか「どういうことですか?」


老人「ここはすべての時に通じている。おぼろげじゃが、見えるのじゃよ」

老人「お前さんたちに力をかしてくれるものがな……」

老人「もう一度、旅をしなさい。人としてのレベルを上げ、絆という名の連携を深めるのじゃ……」

899: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 22:58:50.93 ID:pUZ4y/K6o
老人「あのキュゥべえとかいう者の言ったこと……大きな力を手に入れるための、大きな代償……」

老人「すぐに手に入れようとするから、基準以上のものを支払うはめになる……」

杏子「アタシらには耳の痛い話だな……」

老人「ホッホ。なにもお前さんたちを責めておるわけではない。切迫した状況というのも確かにある」

老人「じゃが、今はそうではあるまい? なら、急がば回れ……じゃ」


マール「それで、『力をかしてくれるもの』ってなに?」

老人「うむ……。まずは、そうじゃな……」

900: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 23:01:55.71 ID:pUZ4y/K6o
老人「中世で魔王にやぶれ、現代までさまよい続けるほこり高き騎士の魂……」


カエル「! まさか……」

さやか「サイラスさんだ! 師匠、絶対サイラスさんのことだよ!」

カエル「間違いないな。これは、誰にも譲ることはできん。俺が行く」

さやか「当然あたしも行くっしょ!」

ほむら「なら、カエルさんとさやかと……。そうね、あともうひとりはクロノ、お願いできるかしら?」

クロノ「僕か? かまわないよ」

カエル「クロノが来てくれるなら百人力だ。頼むぜ」

さやか「剣士パーティーっすね!」

901: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 23:04:42.91 ID:pUZ4y/K6o
老人「原始から未来、全ての時をまたにかけ陽の光をあつめ続ける石……」


魔王「ほう……それはおそらく、『太陽石』だな」

まどか「聞いたことあるよ。確か、古代で……なんだったかな?」

魔王「古代、さる民族が信仰していた神の神体だ。ガルディア建国以後は廃れたがな」

杏子「よく覚えてんな、ジャキ」

魔王「……お前らの物忘れが激しいだけだ」

902: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 23:06:44.07 ID:pUZ4y/K6o
ほむら「じゃあそれは、あなたたち3人にお願いするわ」

杏子「え?」

ほむら「なによ、ダメなの?」

杏子「いや、ダメじゃねーけど……アンタのことだからてっきり、『まどかは私が』とか言い出すかと」

ほむら「……別に。ただの戦力分析の結果よ。魔王に言うこと聞かせられそうなのは、あなたたちふたり」

ほむら「長年連れ添ったらしい杏子と、『まどか姉さま』ぐらいでしょ」


杏子「前にも思ったけどよ……。アンタ、変わったか?」

ほむら「……」

杏子「……ま、いーか」

903: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 23:10:42.06 ID:pUZ4y/K6o
まどか「ウェヒヒヒ! よろしくね、ジャキくん!」

杏子「おう、ジャキ? アタシのことも『お姉ちゃん』って呼んでもいいんだぜ?」

魔王「……」


クロノ「あっちは古代パーティー……いや、魔王のお姉ちゃんパーティーかな?」

カエル「ギギギ……魔王め……うらやまけしからん……! リア充爆発しろ……!!」

クロノ「こっちにも、さやかがいるじゃないか」

さやか「可愛いお姉ちゃんかと思った? 残念! さやかちゃんでした!」

904: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 23:13:26.56 ID:pUZ4y/K6o
老人「中世では、まぼろしと呼ばれる虹色に輝くもの……」


マール「虹色だって。きれいなんだろうな~」

エイラ「虹、ヘビガミさま! 雨の神様! えらい!」

マミ「ヘビガミさま? 虹蛇のことかしら? 創造と雨を降らせる力があるっていう……」

ほむら「詳しいわね」

マミ「ええ、まあ。神話とかって私、好きだから……」

ほむら「じゃあそれは、あなたたち3人の担当ね」


マール「私たちはなんだろ? 金髪パーティーとか?」

さやか「●●●●パーティーっすね!」

マミ「お、●●●……何を言い出すのよ、美樹さん……」

ほむら「チッ」

マミ「暁美さん!?」

905: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 23:16:03.66 ID:pUZ4y/K6o
ルッカ「なんでマールなのよ! 私を入れなさい!」

ほむら「ルッカ、あなたの居場所はこっちよ」

ルッカ「やめろ! 私を貧 カテゴリーに入れるな! マールよりちょっと小さいだけじゃない!!」

ロボ「バスト1cmの差ハ、競技における順位の差と等しいとワタシのデータバンクに記録されてイマス」

ロボ「すなわち3cm差で表彰台に立てるかどうかが分かれるホド、重いものダト……」

ルッカ「消せ! 今すぐその不愉快な情報を消しなさい!!」

ほむら「代わりにインプットしておきましょう。『貧 はステータスで希少価値』……と」


老人「次にいってもいいかね?」

まどか「あ、はい。どうぞ……」

906: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 23:19:30.04 ID:pUZ4y/K6o
老人「未来の時代、機械の生まれたふるさと……」


ロボ「! これはワタシの時代デスネ……」

ほむら「ふるさと、か……。ロボの生まれはどこなの?」

ロボ「ワタシがルッカたちと出会ったのはプロメテドームですガ、そこではないことハ確かデス」

ルッカ「ふむ。ならロボの出生の秘密を探りに行くとしましょうか」

ロボ「ついてきてくれるのデスカ?」

ルッカ「当然じゃない! ロボあるところに、私ありよ!」

ほむら「私も行くわ」

ロボ「おふたりトモ……ありがとうゴザイマス」


ルッカ「名づけて、天才ルッカちゃんとそのお供たちパーティーね!」

ほむら「却下。近代兵器パーティーとかでいいじゃない」

ルッカ「安直ねえ~」

ほむら「……」イラッ

907: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 23:21:53.83 ID:pUZ4y/K6o
老人「中世で逃げのびておる魔王配下の3悪の巣くう場所」


カエル「これは……」

さやか「どう考えても……」

杏子「アイツらだな」

ほむら「わかりやすいわね。やっぱり生きてたのか……。それも3人とも……」


魔王「ビネガーは魔王城に似たアジトを持っていた。逃げたとすれば、おそらくそこだろう」

杏子「しょうがねえ、アタシらがきっちりケジメつけてきてやるよ」

まどか「わたしも手伝うよ!」

908: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 23:24:43.37 ID:pUZ4y/K6o
老人「中世の時代、ひとりの女性の心によりよみがえる森……」


クロノ「女性? 誰だろ……」

カエル「……フィオナ嬢か? そういえば森がどうのと言っていたはずだが……」

さやか「フィオナさんって師匠んちの近くに住んでた人だっけ?」

カエル「たぶんな。さほど面識はないが、とりあえず話を聞きに行ってみるか」

909: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 23:28:00.32 ID:pUZ4y/K6o
老人「以上じゃ。よいか、この星のあらゆる時代の人々……いや、すべての生命の力を借りて戦うのじゃ」

老人「でなければラヴォスは倒せまい。未来を変えるには、それほどの大きな力が必要じゃ」

老人「私は示すことしかできん。この星の行く末……私はここで、ゆっくりと見物させてもらうよ」

老人「お前さんたちが、きっと成し遂げてくれると信じてな……」


老人「絶望の運命に負けぬ強い心、『希望』を……より強く、育て上げるのじゃ」

老人「待っておるぞ……」

910: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/27(土) 23:30:12.32 ID:pUZ4y/K6o
第9話「それはとても、うれしいこと」 終了


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919: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 22:48:20.30 ID:y++k1O6co
第10話(マルチイベント編-1)「勇者の墓」


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920: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 22:55:02.94 ID:y++k1O6co
A.D.600 ガルディア城


騎士団長「勇者様のご来訪! 全員、整列して面甲をあげ、粛々としてお出迎えせよ!」


さやか「わ、わ……。なにこれ……」

クロノ「そういえば、さやかは勇者だって思われているんだっけ」

カエル「良かったな。これだけの敬意を集めることなんてそうはないぞ」

さやか「いや、あのね? 騎士のみなさーん! 実はあたしは勇者じゃないんですけどお~……」


騎士団長「勇者様、謁見の間へどうぞ。陛下がお待ちです」

さやか「聞いてよ!」

921: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 22:58:47.36 ID:y++k1O6co
A.D.600 ガルディア城 謁見の間


ガルディア21世「おお、勇者殿。よく来てくれた」

リーネ「魔王軍を撃退してくださったそうですね。これでこの国も平和になるでしょう」

さやか「あ~、もう! どこから説明したらいいのやら……」


カエル「恐れながら、陛下。お尋ねしたき儀がございます」

ガルディア21世「カエルか、しばらくぶりじゃな。かまわん、申せ」

カエル「10年前消息不明となった前騎士団長、サイラスという男のこと、ご存知かと」

リーネ「……!」


ガルディア21世「サイラスか……。彼はよき友人であった」

ガルディア21世「だが今では、生きておるのか、死んでしまったのかさえ分からぬ……」

ガルディア21世「いや、サイラスは生きておれば必ず戻ってくると誓ったのだ」

ガルディア21世「あの者はその誓いを反故にするような人物ではない。だとすれば……もはや……」

リーネ「……」

922: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 23:01:50.84 ID:y++k1O6co
カエル「……ご明察のとおり、サイラスは戦死いたしました」

ガルディア21世「……だろうな」

リーネ「……ああ……」

ガルディア21世「リーネ、気をしっかり持て。お前も覚悟していたことだろう」

リーネ「……はい……」


カエル「なぜ私がそのことを知っているのか、お聞きにならないのですか?」

ガルディア21世「……いや、聞かん」

カエル「……」

923: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 23:08:04.91 ID:y++k1O6co
ガルディア21世「カエルよ。お前の聞きたいことが分かったぞ。サイラスの遺体のことだな?」

カエル「左様でございます」

ガルディア21世「残念ながら、その所在も不明だ」

カエル「……」


さやか「あ、あの!」

ガルディア21世「なんじゃ、勇者殿?」

さやか「サイラスさんは、王様にとっても大切な人だったんでしょ……」

ガルディア21世「む……。それはそうだが……」

さやか「じゃあ、なんで探してあげないのさ! 死んじゃったからって、それでもう終わりだなんて……!」

カエル「さやか、やめろ! 陛下に対してなんという不敬なことを!」

さやか「なんでよ師匠! おかしいじゃん、こんなの!」

924: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 23:12:48.01 ID:y++k1O6co
ガルディア21世「いや、いい。勇者殿の申すとおりだ……」

ガルディア21世「国王などと言ってふんぞり返っておっても、所詮この程度よ」

カエル「そのようなことは……」

ガルディア21世「王とは窮屈なものだな、カエルよ。友人を弔うために奔走することすら許されぬ……」

リーネ「陛下……」


ガルディア21世「勇者殿、良ければ今日はこの城に泊まっていってくれぬか。客間を用意させよう」

ガルディア21世「城の者たちもそなたの話を聞きたがっておるのでな」

さやか「……」


ガルディア21世「……少し疲れたな。すまぬが、休ませてくれぬか……」

925: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 23:18:50.70 ID:y++k1O6co
A.D.600 ガルディア城 客間


クロノ「いやー、すごいご馳走だったね。王族っていつもあんなの食べてるのかな?」

カエル「どうだろうな。勇者ご一行ってんで、特別に腕を振るってくれた可能性もあるぞ」

クロノ「ちょっと食べ過ぎたかもしれないなあ。腹ごなしに素振りでもしてこようかな」

カエル「付き合ってやろうか。組み手なら、より実践的だろ」

クロノ「いいね、それ。じゃ、これ使ってくれ。片方は僕が使う」

カエル「竹刀か。いつも持ち歩いているのか?」

クロノ「いつもってわけじゃないけど、稽古には欠かせないからね」


カエル「おい、さやか。俺たちは少し出てくるから……」

さやか「……」

カエル「なんだ、まだ意地を張っているのか? お前もおとなげないな」

さやか「どうせあたしはガキですよーだ」

クロノ「そんなに王様のことが気に入らないのかい?」

さやか「王様だけじゃないよ……」

カエル「なに?」

926: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 23:23:07.57 ID:y++k1O6co
さやか「会う人会う人、みーんなあたしらのこと持ち上げてさ、ゴマすって……」

さやか「勇者だー魔王討伐の英雄だーって。こっちの話なんか聞こうともしない」

さやか「あたしは違うっつってんのに。魔王だって、実際に負かしたわけでもないのに……」


カエル「別にかまわんだろ。この時代から魔王がいなくなったことには変わりあるまい」

さやか「汚いよ、師匠は! なんでそれで納得できるのさ!」

カエル「……」


さやか「それに……誰ひとり、サイラスさんのこと一言も触れようとしなかった!」

さやか「なんで? 負けちゃったから勇者じゃないの? 役に立たなきゃ忘れちゃうの?」

さやか「おかしいよ。勇者ってなんなのさ。正義の味方って誰のために戦ってるのさ!」

927: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 23:26:13.17 ID:y++k1O6co
カエル「お前はいったい何を期待しているんだ。見返りを求めて戦っているのか?」

さやか「そういうお説教はもうたくさんだよ。あたしは、ありがとうすら言えないヤツがムカつくだけ」

カエル「お前は感謝されてるだろ」

さやか「あたしのことじゃなくて、今はサイラスさんの話でしょ!」

カエル「誰も彼もが、サイラスをどうでもいいと思っているわけじゃない」


さやか「それでいいの、師匠は……。サイラスさんの親友である師匠が、そういう考えでいいの!?」

カエル「……」

さやか「見損なったよ、師匠」

カエル「やれやれ……。お前はどうも、潔癖症すぎるな」

928: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 23:34:02.24 ID:y++k1O6co
さやか「もういい! あたしは寝るから!」

クロノ「あ、さやか! ……出て行っちゃったぞ。いいのかい、カエル?」

カエル「ほっておけ。今のあいつは何を言っても聞かないだろう」


クロノ「さやかの言うことは僕も分かるよ。カエルだって、思うところがないわけじゃないんだろう?」

カエル「……」

クロノ「勇者ってなんだ、か……。僕も少し、世の中の『正義』ってやつが分からなくなってきたよ」

カエル「悩めばいいさ。いつか、自分なりの答えが見つかるだろ」

クロノ「カエルにはその『答え』ってのがあるのかい?」

カエル「……さあな。おい、稽古するんだろ。早く行くぞ」

クロノ「……」

929: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 23:37:28.26 ID:y++k1O6co
A.D.600 ガルディア城

翌日


カエル「さて、どうしたものか。サイラスのこと、陛下に聞けば何か分かるかと思ったが……」

さやか「……」

カエル(一晩寝れば機嫌が直るかと思ったが……。厄介だな、これは)


クロノ「カエル、王妃様が来たみたいだよ」

カエル「なに?」

930: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 23:40:08.46 ID:y++k1O6co
リーネ「カエル、良かった……。まだ出発していなかったのですね」

カエル「王妃様、わざわざご足労いただき恐縮です。何かご用命でも?」

リーネ「……サイラスのことです」

カエル「!」


リーネ「私、噂を聞きました。彼のなきがらが、魔族によって運ばれた可能性があると……」

クロノ「魔族が……!?」

リーネ「真実のほどは分かりません。ですが、あなたたちの助けになればと思って」

カエル「貴重な情報をありがとうございます。早速、調べてまいります」

931: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 23:42:49.33 ID:y++k1O6co
さやか「……」

リーネ「勇者様……。陛下とて、何もサイラスをないがしろにしているわけではないのです」

リーネ「魔王軍との戦い……そして今は、国の復興……。陛下には責任があり、自由に動けないのです」

カエル「分かっています、王妃様。こいつとてバカではありません。その辺の事情は察しているはず」


カエル「だよな? さやか」

さやか「そりゃ、もちろん……」

カエル「不出来な弟子に成り代わり、謝罪いたします。陛下へのご無礼、お許しください」

リーネ「ふふ。可愛いお弟子さんですね、カエル」


さやか「……あの、王妃様……」

リーネ「勇者様。またいらしてください。あなたのことは、いつでも歓迎いたしますわ」

さやか「! ……はい、また来ます!」

932: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 23:45:17.66 ID:y++k1O6co
A.D.1000 ボッシュの小屋


ボッシュ「勇者の墓じゃと?」

クロノ「400年前、魔族がどこかに運んだらしいんだ」

カエル「魔族と親交があるじいさんなら、何か知ってるんじゃないかと思ってな」

ボッシュ「ふむ……。勇者かどうかは知らんが、ここから南の大陸に廃墟がある」

さやか「廃墟……? それがどうかしたんすか?」


ボッシュ「……出るんじゃよ……その廃墟に……『亡霊』がな……!」

933: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 23:47:01.90 ID:y++k1O6co
さやか「わざわざ部屋のカーテン閉めて暗くして、懐中電灯を顔の下から当ててるよ、この人……」

クロノ「ボッシュ、カーテンの隙間から光が漏れ出てるぞ」

カエル「昼だからな」

ボッシュ「チッ、つまらん。もっと怖がらんか。メディーナ村の魔族兄弟ならチビっておったぞ」


クロノ「で、その亡霊は魔族なのかい?」

ボッシュ「分からん。少なくとも魔族連中は、あんなヤツは見たことがないと言っておった」

カエル「とりあえず行ってみるか」

934: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 23:51:44.13 ID:y++k1O6co
A.D.1000 北の廃墟


"魔王に戦いを挑んだ、おろかな男サイラス、ここに眠る"



カエル「……」

クロノ「ここだったのか……。それにしてもこれは……」

さやか「ひどい! なんて侮辱的な墓標……」

クロノ「この埋葬地も、荒れ果てて見る影もないな。本当に廃墟同然だよ」

カエル「この墓はおそらく、魔族が建てたものだろう。サイラスを、死後も冒涜するためにな……」

さやか「許せないよ! これじゃサイラスさんがかわいそう……」

935: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 23:53:45.88 ID:y++k1O6co
???「ヌグォォォォァァッ!」

クロノ「!? なんだ、今の咆哮は!」

さやか「あ、あれ見て!」


亡霊騎士「ゴオオオォォ……」

クロノ「ぼ、亡霊!? ボッシュが言ってたのは、これか!」

さやか「なんか、めちゃくちゃ怒ってますけど……襲い掛かってくる気マンマンじゃん!」

カエル「まさか……!」

936: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 23:55:50.66 ID:y++k1O6co
カエル「サイラス! アンタ……サイラスか!?」

さやか「え、ウソ!?」


亡霊騎士「……グ……レン……」

クロノ「カエルの名を呼んだ!? じゃあ、やっぱり彼は本当にサイラスさん!?」

さやか「そんな……。成仏もできずに、ずっと苦しんでたの……?」

カエル「サイラス……。こんな姿になってまで……」


亡霊騎士「グレエエエェェェン!!!」ブオン!!

カエル「!?」ガキイィン!!

937: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 23:57:32.61 ID:y++k1O6co
さやか「な!? なんで師匠を攻撃するの!? サイラスさんなんでしょ!?」

カエル「……これは……。サイラス……アンタ……」

亡霊騎士「ゴアァァッ! グレエェン!!」


クロノ「ダメだ、見境がなくなってしまっている! ここはひとまず退却しよう!」

さやか「言われなくてもスタコラサッサだぜぇ!」

カエル「……」



亡霊騎士「グレェン! オオォォアッ!! グレエエエェェェン!!!」


…………



938: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:04:12.28 ID:KYQy5C0Qo
年代不明 時の最果て


ほむら「で、逃げ帰ってきたというわけね」

さやか「しょうがないじゃん。サイラスさんをやっつけちゃうわけにもいかないでしょ」


クロノ「どうしたらいいかな、ルッカ?」

ルッカ「なんで私に振るのよ」

クロノ「いや、君なら何かいい案を出してくれるんじゃないかと」

ほむら「頼られてるわね、あなた」

ルッカ「なんでもかんでも私に頼るのはやめなさい」

939: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:07:16.41 ID:KYQy5C0Qo
ロボ「サイラスさんの暴走ハ、やはり墓所の荒れ具合によるものではないデショウカ」

エイラ「エイラ、知ってる! 墓、死者のネドコ! 静か、いい! うるさい、ダメ!」

マミ「ということは、廃墟と化したサイラスさんのお墓を建て直す必要があるってことよね」

クロノ「土木工事か……。僕らだけじゃ無理だよな……」

マール「父上に頼んであげよっか?」

さやか「いきなり国家権力っすか!?」

クロノ「さすがにそれは悪いよ。かと言って、職人さんのアテもないしなあ……」


ルッカ「仕方ないわね。クロノ、父さんに会ってきなさい」

クロノ「タバンさんに? なんでだ?」

ルッカ「仕事柄、職人の知り合いは多いのよ。土木建築関係にもツテがあるかもしれないわ」

さやか「なるほど。じゃ、早速行ってみます!」


ほむら「なんだかんだ文句言いつつも、結局助けてあげるのね……」

ルッカ「聞こえてるわよ」

940: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:09:42.00 ID:KYQy5C0Qo
クロノ「ところで、あの3人は何やってるんだ?」


まどか「もう、どうしてそんなことしたの! サイラスさんがかわいそうでしょ!」

杏子「いやホント、知らなかったんだよ。ビネガーのヤツが勝手にやったことでさ……」

まどか「言い訳しない!」

魔王「……」


ほむら「お姉ちゃん風を吹かせるまどかも可愛いわ」ホムホム

ルッカ「正座させられる魔王って前代未聞よね」

941: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:13:07.07 ID:KYQy5C0Qo
カエル「……」

さやか「師匠、何ぼさーっとしてんの。トルース町に行くんでしょ」

カエル「ああ、そうだったな……。悪い、すぐに支度する」


クロノ「……サイラスさんのことか? ビックリしたよな、突然斬りかかってくるんだから」

クロノ「やっぱり、すぐそばにいたからカエルが狙われたのかな?」

カエル「……」

さやか「……本当にそうかなあ」

クロノ「え?」


さやか「あたし、あれは偶然じゃないと思うけど。サイラスさん、怒ってるんだよ」

さやか「だって師匠、冷たいもんね。親友のくせにサイラスさんのこと、ちゃんと分かってあげてないもん」

さやか「あたしだったらそんなヤツ、一発ガツンとぶちかましてやるよ。そういうことでしょ」

クロノ「おい、さやか……。何もそこまで……」

カエル「……」

942: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:16:07.60 ID:KYQy5C0Qo
さやか「……何も言い返さないんだね。あたしが間違ってるなら、そう言ってよ」

カエル「お前は間違っていない。何も言うことはない」

さやか「っ……! なんでさ、師匠! あたしのこともどうだってよくなっちゃったの!?」

さやか「教えてよ……師匠なんでしょ……。迷ってるときに、どうして突き放すのさ……」

カエル「……」

さやか「……師匠のバカ……。根性なし……」


ほむら「なにやら雲行きが怪しいわね」

ルッカ「リーダーとして仲裁してきなさいよ、ほむら」

ほむら「いや……私にそういう類の能力を求められるのはちょっと」

944: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:19:02.46 ID:KYQy5C0Qo
A.D.1000 トルース町 ルッカの家


タバン「よう、クロノ! 久しぶりだな。ルッカのヤツは一緒じゃねえのか?」

クロノ「ええ、まあ。今日はタバンさんに用がありましたんで」

タバン「俺に?」


…………


タバン「なるほどねえ……。大工の知り合いか……」

クロノ「心当たりありませんか?」

タバン「いるぜ。ちょうどいいヤツがよ」

さやか「マジっすか!」

タバン「待ってろ。今、紹介状を書いてやる。これを持ってチョラス町に行きな」

カエル「タバン殿、感謝いたします」

945: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:23:26.35 ID:KYQy5C0Qo
A.D.1000 チョラス町 大工の家


14代目大工のゲンさん「ほお……。あんたら、あのタバンの知り合いか」

クロノ「はい。事情はその紹介状に書いてあるとおりなんですけど……」

14代目ゲン「北の廃墟か。確かにあそこは、機会があれば手をつけてえと思っていたところよ」

さやか「それじゃあ!」


14代目ゲン「……が、無理だな」

さやか「……ええ? な、なんでなんすか?」

14代目ゲン「あそこに行ったなら分かんだろ? 亡霊をどうにかしないことには、入ることすら不可能だ」

14代目ゲン「修理なんて、とてもじゃねえが危なくてやってられねえよ」

クロノ「そうですか……」

さやか「うーん。どうしよう……」

946: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:26:19.14 ID:KYQy5C0Qo
カエル「……サイラスは、400年分のうらみつらみを募らせ、ああなってしまった」

カエル「その無念を晴らすことができれば、あるいは亡霊と化すこともなくなるかもしれん」

クロノ「つまり……お墓を修繕するなら、400年前じゃないとダメだってことか?」

カエル「おそらくな」


クロノ「でもさ、僕らはともかくとして、大工さんを400年前に連れていくわけにはいかないよな?」

カエル「……まあな」

クロノ「ってことは、向こうで改めて大工さんを見つけるしかないか……」

さやか「うええ……。またそっからっすかあ……」


14代目ゲン「よく分からんが、あんたらは400年前の時代に飛べるんだな?」

さやか「あ、はい。まー、そうなんですけど」

14代目ゲン「タイムマシンだなんだのと吹聴してやがったのは、酒の席の与太話じゃなかったか」

14代目ゲン「タバンの野郎……やるじゃねえか」

947: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:28:19.26 ID:KYQy5C0Qo
14代目ゲン「これを持っていきな」

クロノ「これは……大工道具?」


14代目ゲン「うちの家系は、400年以上前から大工業を営んでいてな。これはその時代から伝わるものだ」

14代目ゲン「こいつを見せりゃあ、ご先祖様もあんたらに力を貸してくれるかもしれんぜ?」

さやか「いいんですか? そんな大事なもの……」

14代目ゲン「なあに、今じゃ骨董品みたいなもんよ。だが、そうだな……」

14代目ゲン「全部終わったら、話を聞かせてくれ。ご先祖様の仕事ぶりってのは興味があるからな」

クロノ「ありがとうございます!」


カエル「さて……お次は中世か」

948: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:31:08.48 ID:KYQy5C0Qo
A.D.600 チョラス村 大工の家


初代大工のゲンさん「こいつは……! なぜあんたらがこれを?」

さやか「まあまあ。細かいことは言いっこなしってことで」

クロノ「北の廃墟、なんとか修理してもらえませんか?」

初代ゲン「……久々にデカい仕事だな。やりがいがありそうだぜ」

さやか「それじゃあ!」


初代ゲン「……が、無理だな」

さやか「がくーん。ま、またっすか……」

クロノ「今度は何が問題なんです?」

初代ゲン「あそこは今、魔族どものたまり場だ。危なくて近寄れねえ」

クロノ「そういえば、あのお墓は魔族が建てたんだっけ?」

カエル「推測だがな。まあ……魔王の様子を見る限り、間違ってはいなかろう」

クロノ「ただの魔族なら、僕たちでなんとかできるかも知れないな……」

949: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:34:04.57 ID:KYQy5C0Qo
初代ゲン「ほう。あんたら、ヤツらとやりあえるのか。こいつはいい」

初代ゲン「交換条件だ。魔族どもはこのチョラス村でも問題になっている」

初代ゲン「それに、ヤツらが巣食っている場所では仕事はできねえ。全滅させるんだ」


クロノ「すべて退治できれば、そのときはお墓を修理してもらえるんですよね?」

初代ゲン「任せろ。ただ修理するだけじゃねえ、立派な墓に造り替えてやるよ」


さやか「決まりだね! よーし、腕が鳴るわー! 師匠なんかに任せておけないもんねー」

さやか「サイラスさんの安眠は、この魔法少女さやかちゃんがガンガン守りまくっちゃいますからね!」

カエル「……」

クロノ「はあ……。これは気苦労が絶えないな」

950: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:36:16.28 ID:KYQy5C0Qo
A.D.600 北の廃墟


ボーンナム「オッパイノペラペラソース!!」

クロノ「こいつで最後か。あとはサイラスさんのお墓がある部屋だけだな」


さやか「いつつ……」

クロノ「大丈夫か、さやか。割と手痛いのをもらっちゃってたみたいだけど」

さやか「へーき、へーき! これぐらい!」

カエル「後先考えずに突っ込むからだ。まだ直ってないな、その癖は……」

さやか「うっさいなー。いーじゃん、どうせ魔力で治るんだし」


カエル「『ケアルガ』!!」

さやか「っ……! あ……これ……回復魔法……」

カエル「俺たちと違って、お前の魔法は命を削るんだろ。使わないなら、それに越したことはない」

さやか「……」

951: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:38:11.27 ID:KYQy5C0Qo
クロノ「カエル、魔法使えたっけ?」

カエル「スペッキオに引き出してもらった。まあ、今までなかなか使う機会に恵まれなかったがな」


カエル「さやか、いいか。何度も言うようだが、さっきのような戦い方はよくない」

カエル「最後まで気を抜くな。勝利に酔いしれた瞬間こそ、隙が生じるものであって……」

さやか「おせっかいはいいよ! 何さ、こんなときだけ師匠ヅラして!」

カエル「……」


さやか「いいんだよ、別に……あたしは。魔女になっちゃう前に、さっさと死んだほうが……」

952: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:40:37.72 ID:KYQy5C0Qo
カエル「ふざけるなよ、お前!!」

さやか「……っ!」

カエル「死んでも別にいいだと? 自分の命をなんだと思っている!」

さやか「師匠には分かんないんだよ! あたしの苦しみなんか!」


カエル「ああ、分からねえな。死にたがりの精神なんて、理解したくもねえ」

カエル「テメェの命も救えねえで、他の誰の命を救える?」

カエル「テメェの命の管理もできてなかったから、大切なヤツを失っちまう羽目になったんだ……!」

さやか「……!」

953: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:43:03.30 ID:KYQy5C0Qo
カエル「お前は死ぬために生きているのか? 泣きながら死にたいのか? 後悔したまま死にたいのか!」

カエル「生きることは、辛く苦しいことばかりだ。格好良く生きるためには、裏で無様に足掻くしかねえ」

カエル「それがイヤなのか? だからやめるのか、投げ出すのか!」


カエル「何もしねえで身も心も真っ白なまま死ぬのがお前の望みか?」

カエル「ちょっとでも汚れたら生きていたくないのか? 答えろよ、馬鹿弟子が!!」

955: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:45:00.58 ID:KYQy5C0Qo
クロノ「カエル、よせ……。さやかが怖がってる」

カエル「……。……すまん……」

さやか「……」


カエル「……俺はお前に、なんにも伝えられなかったみたいだな」

さやか「……」

カエル「見限ってくれていいぜ。汚い大人のやり方に、愛想も尽きただろう……」

クロノ「カエル……」


カエル「……行くぞ。この先がサイラスの墓だ」


…………



956: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:49:02.86 ID:KYQy5C0Qo
"魔王に戦いを挑んだ、おろかな男サイラス、ここに眠る"


カエル「サイラス……。サイラスよ! 俺は帰ってきたぞ」

カエル「幼き日の誓いを。そしてアンタとの、最後の邂逅を果たすために!」

さやか「師匠……」


カエル「いるんだろう、サイラス! さあ、姿を見せろ!」

クロノ「え?」

957: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:51:40.80 ID:KYQy5C0Qo
サイラス「……」

さやか「あ……! これが本当のサイラスさん……?」

クロノ「間違いないよ。立派な騎士の姿をした、勇者サイラスさんだ!」


サイラス「よく来てくれたな、グレン。会いたかった……」

カエル「……アンタは、ずっとここにいたんだな? こころざし半ばで倒れた無念さに苛まれながら……」

サイラス「この体を魔王の炎に焼かれた時、私の心はこの世に残された人のことを思い、千々にみだれた」

サイラス「ガルディア王……リーネ王妃……魔王……」

カエル「……」


サイラス「そして、グレン……。親友の……お前のことをな……!」

カエル「!」

クロノ「サイラスさんが消えた……!? どこに行ったんだ!」

958: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:53:59.74 ID:KYQy5C0Qo
さやか「! ……う……あ……!?」

カエル「さやか!?」



さやか「フ……。やはりだ……。この者の心は今、猜疑心と虚無感で満ちている……」

クロノ「えっ……!?」

さやか「私と同じだ……。世を呪い、人を呪い、そして……グレン、お前のことを……」

カエル「ま、まさか……サイラス……!!」


さやか「グレンと切り結ぶため、少し体を借りるぞ、少女よ!!」ヒュカァッ!!

カエル「くっ!?」ガキイィン!!

959: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:56:14.79 ID:KYQy5C0Qo
クロノ「そんな馬鹿な!? さやかの体にサイラスさんが乗り移ったのか!?」

カエル「サイラス……!」

クロノ「それに、なぜカエルを攻撃するんだ! まだ亡霊になったわけでもないのに!?」


さやか「今のはすばらしい反応だったな、グレン」

カエル「……」

さやか「まるでこの私が、お前に斬りかかることをあらかじめ予想していたかのごとき動きだった……」

クロノ「なんだって……!?」

960: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 00:58:46.55 ID:KYQy5C0Qo
カエル「一合切り結んだだけだが、あの時確かに感じた……」

カエル「サイラス。アンタは俺をうらんでいる。魔王よりも……いや、他の誰よりも……」

さやか「そのとおりだ、グレン! お前が……貴様が……! 貴様さえ、いなければ……!」

クロノ「ウ、ウソだろ……」



さやか「貴様が私を殺したのだ! 死ね、グレン! 『ニルヴァーナ・スラッシュ』!!」

カエル「ぐあっ!?」

961: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:01:25.02 ID:KYQy5C0Qo
クロノ「くそっ! どうする……。さやかの体を傷つけるわけには……」


カエル「クロノ……竹刀を貸せ。持っていただろ」

クロノ「え……? た、確かにまだ持ってるけど……」

カエル「悪いな、さやか。少し痛めつけるが、あとで回復してやるから」


さやか「フ……。女相手に暴力とは、見下げ果てたヤツだな、グレン」

カエル「なあに、ちょっとばかしキツイ修行と思ってくれりゃあいいぜ。模擬戦は、何度かやったしな」

カエル「……それに、サイラス。どうやらアンタは、俺自身が乗り越えなければいけない壁のようだ……」

さやか「……」

クロノ「カエル……。分かった、グランドリオンは僕が預かる。がんばれ!」

962: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:04:04.18 ID:KYQy5C0Qo
カエル「さやか、聞こえるか? よく見ておけ。勇者というものが、どういうものなのかを」

カエル「人の……弱さってやつを……」

さやか「……貴様がそれを言える立場か、グレン? 貴様は弱い。力も、心も……」


カエル「そうだな……。俺は、ずっと……サイラス、アンタに守ってもらってきた」

さやか「……」

カエル「いや、今とてそう変わりはしない。事実、俺では魔王は倒せなかった」

カエル「魔王以上の力を持つであろうラヴォスに、俺がどこまで役に立てるものか……」


さやか「弱いだけならば良し。だが貴様はそれだけでなく、私の後ろをうろちょろと……」

さやか「目障りで仕方がなかった! 貴様の存在はずっと重荷だったんだ! 『タイフーン』!!」ビュオン!!

カエル「っ!」


さやか「チッ……。よけられたか……」

クロノ「回転斬り!? いや、あれは……さやかの技か……!」

963: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:07:46.68 ID:KYQy5C0Qo
さやか「グレン、貴様は……私にとって弟のような存在だったんだ」

カエル「ああ……。俺だって、アンタのことは実の兄貴のように思っていたぜ……」


さやか「男兄弟とは! 家族であり無二の親友であると同時に、最大のライバル!」

さやか「兄にとって弟とは! 仲が良かろうと悪かろうと、邪魔者以外の何者でもない!」

さやか「貴様がそれだ、グレン! 『スクワルタトーレ』!!」ヒュオオッ!

カエル「くっ!?」


さやか「貴様に分かるか!? 後ろから見られていることの恐怖が!」

さやか「貴様に理解できたか!? 背中を追われる、あの焦燥感を!」

さやか「私は……! 貴様に無様な姿を見せぬため、理想の兄を演じなければならなかった!」


スパアアァンッ!!

カエル「……!」

クロノ「竹刀がバラバラに……! くそ、カエル! 予備を受け取ってくれ!」

964: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:10:21.57 ID:KYQy5C0Qo
カエル「格好良かったぜ、アンタは……。俺の知っている、誰よりもな……」

カエル「そして同時に恨めしかった。なぜアンタだけが先に行ける!? 俺だって努力していたのに!」

カエル「名声も、信頼も、勇者の称号も! すべてアンタを選んでしまったんだ!」

カエル「腹が立つぜ……。ふがいない自分自身と、そしてアンタによ! 『ベロロン斬り』!!」シュバッ!

さやか「効かんッ!」バシッ!

カエル「……クソ……!」


さやか「それは貴様が甘いからだ! 努力だと? 貴様が何をした!」

さやか「ただついてきただけだろう! そして、おいしいところだけを狙っていた!」

カエル「そうすることでしか、アンタについていけなかったからだ!」

965: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:13:22.66 ID:KYQy5C0Qo
さやか「そのようなこと、私は望んでいない! 『スティンガー』!!」

カエル「ふざけるな! アンタが言ったんだろう……。一緒に来い、って! 『ダッシュ斬り』!!」


ズバァン!!!



カエル「ぐ、うぐっ……」

さやか「ちいっ……浅かったか。しかも、切り抜けざまに一撃もらってしまうとは、我ながらうかつ……」

966: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:15:27.99 ID:KYQy5C0Qo
カエル「ウソだったのか、サイラス……! ともに来いと言ったあの言葉は、ウソだったのか!?」

さやか「私は対等の関係を望んでいたんだ。金魚の糞がごとき醜態をさらせと言った覚えはない!」

カエル「俺の気持ちはどうなる!? アンタをずっと追い続けてきた、俺の気持ちは!」


さやか「こちらの意を介さず、おのれの言い分だけを通そうとする……。小僧か、貴様は!」

さやか「解ってもらおうなどというのが、そもそもの間違いなのだ!」

カエル「解れなんて言っていない! どうしてそのことを、少しだけでも考えてくれないんだってことだ!」



カエル「サイラス! アンタこそ自分の主張を押し付けているだけだろう! 『ジャンプ斬り』!!」

さやか「私が悪いのか!? 私に責を問うのか、グレン! 『シューティングスティンガー』!!」


ドドオオオォォン!!!

967: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:17:32.22 ID:KYQy5C0Qo
カエル「俺はアンタに……何も与えられなかったって言うのか、サイラス!」

カエル「どんなときでも、アンタとともにいた! その恩は、感じてくれなかったのか!?」


さやか「それだ、グレン! その言い方に、私は怒りを覚える!」

さやか「恩だと? その言葉を口にした時点で、貴様から受け取ったものは薄っぺらなものになる!」

さやか「感謝していたのに! 結局貴様は、本心では私に恩を売って優越感に浸っていたのか!」

カエル「! ち、違う! 俺はそんなこと……!」


さやか「違うものか! 語るに落ちたな、グレン! 『ニルヴァーナ・スラッシュ』!!」

カエル「うぐああっ!!」

968: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:20:02.01 ID:KYQy5C0Qo
さやか「みな、そうだ……。勇者などともてはやし、過度の重圧を与え追い込んでおきながら……」

さやか「失敗すれば、すべて私の責! 誰も彼もが、侮蔑と失望を向ける!」


さやか「魔女を殺すだけしか意味がない石ころのあたしに、誰が何をしてくれるって言うの?」

さやか「あたしのために人間やめる覚悟もないくせに、口だけで丸め込もうってのが気に入らない!」


さやか「勇者など、ただのいけにえではないか! 貴様たちはそうやって陰で笑っていたのだろう!?」

さやか「私は一体、なんのために戦ったのだ! 誰のために戦ったのだ!?」


さやか「ねえ、この世界って守る価値あるの? あたし、なんのために戦ってたの?」

さやか「誰かの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない。その仕組み、変えられないの!?」


さやか「私の生涯に意味はあったのか!?」

さやか「教えてよ、今すぐあんたが教えてよ! でないと、あたし……!!」

969: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:26:01.80 ID:KYQy5C0Qo
カエル「く……。……ア、アンタが……! そんなセリフを言っちゃいけない!」

さやか「貴様がそれを言うのか……! 私をこんな風にした、貴様が……!」

カエル「何もかもを覚悟していたはずだ! いまさら……泣き言かよ! ダサいぜ、サイラス!」

さやか「私は弱いのだ! なぜそれが分からん、グレン……」

カエル「聞きたくねえ、見たくねえ。今のアンタは、かつての俺のようだぜ」

さやか「何……!?」

970: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:29:34.98 ID:KYQy5C0Qo
カエル「さやか、お前の駄々は聞き飽きたぜ。悪いが、俺はそこまでできた人間じゃねえ」

さやか「見捨てるの、師匠!? 結局師匠も、あたしを見捨てるの!?」

カエル「人間はみな弱い。だが、いつまでもそれをさらけ出していてどうする?」

カエル「たまには弱音を吐くのもいいさ。だが最後には……泥臭かろうが、必死に生きるんだ!」

さやか「そんなの耐えられないよ……。だから助けてよ、師匠……」

カエル「知らねえな。俺はお前じゃない。解ってやることも、助けてやることもできねえ」


カエル「だが、見せてやることはできる。俺の『答え』ってやつをな……」

さやか「え……」

971: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:31:12.92 ID:KYQy5C0Qo
カエル「目ン玉ひんむいてよく見とけよ、さやか……」


カエル「そしてサイラス……。これが……俺が追いかけた、アンタの姿だ!」



カエル「『ニルヴァーナ・スラッシュ』!!」

972: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:34:02.42 ID:KYQy5C0Qo
さやか「ぐおっ!? ……ば、馬鹿な……! 貴様が、『ニルヴァーナ・スラッシュ』を……!!」

カエル「どうだ! 目が覚めたか、ふたりとも!」



さやか「……貴様は……いつもそうやって……私のすべてを奪っていく……」

さやか「守られるだけのひな鳥だったくせに……いつの間にか……私を飛び越えて……」

さやか「生涯をかけて編み出した私の必殺技をも……。そして……私が想いを寄せたリーネ様ですら……」


カエル「アンタの背中をずっと見てきた。アンタの生き様を、ずっとなぞってきた」

カエル「自分でも気持ち悪いぐらいにな。俺の人生は、アンタ抜きには語れない……」

さやか「……」

973: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:38:31.56 ID:KYQy5C0Qo
カエル「今なら俺にも分かるぜ……。背中を追われ、見られていることの恐怖が……」

カエル「前を進むものは、格好つけなくちゃならない。後ろから来るヤツが迷わないようにな……」

さやか「師匠……」


カエル「俺は、今の俺は……! アンタがいなければ、ここに立ってはいなかった!」

カエル「アンタが俺を生かしたんだ! それだけは信じてくれ、サイラス!!」

カエル「アンタの生涯に意味がなかったなんて、そんな悲しいことだけは言わないでくれ!!」


さやか「泣くなあッ、グレン! 貴様はいつもそうだ!」

さやか「泣けばすべてが許されると思っている! それでも男か!!」


カエル「アンタだって泣いているだろう!!」

さやか「……!!」

974: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:41:26.75 ID:KYQy5C0Qo
さやか「なぜだ……! この……感情……私の中の少女が泣いているのか……?」

さやか「い、いや……それだけではない……。これは、私自身の涙……」

カエル「サイラス……」

さやか「グレン、貴様が……お前が泣かせた……! この、私を……お前が泣かせたのだ!」


カエル「あのころの俺が、もう少し今のように考えられていたら……」

カエル「あのころの俺が、さやかのように、追いかけるものの隣に立てるぐらい戦えていれば……」

カエル「アンタを死なせはしなかっただろうに……。すまなかった……サイラス……」

さやか「……いまさら、だな……グレン……。本当にお前は、手がかかる……」

975: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:44:41.05 ID:KYQy5C0Qo
さやか「これで最後だ。構えろ、グレン」

カエル「……」

さやか「すべてのわだかまりを吐き出した今、道を決めるのはおのれの剣のみ」

カエル「俺とアンタの、『ニルヴァーナ・スラッシュ』……」

さやか「どちらが『先』に進むに値するか、ここで決着をつけよう……」


カエル「……」

さやか「……」


さやか「長い時間をかけて得たお前の強さは本物のはずだ」

カエル「……」

さやか「これで心おきなく眠りにつける……。グレン……。リーネ様を、頼んだぞ……」

976: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:48:07.85 ID:KYQy5C0Qo


「『ニルヴァーナ・スラッシュ』!!!」



977: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:51:34.35 ID:KYQy5C0Qo
カエル「……」

サイラス「……」


サイラス「フ……。お前の剣閃のほうが、正確で力強く、何より速かったな……」

カエル「……サイラス……」

サイラス「こちらを振り返るなよ、グレン。お前が見据えるべきは、未来だ」

カエル「……」


サイラス「お前が憎い。私の届かなかったその先に、進むことができるお前が……」

サイラス「だが……なぜだろうな。あとを継ぐものが、自分を乗り越えていくということ……」

サイラス「……こんなにも……気分がいいもの……なのか……」

978: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 01:55:35.49 ID:KYQy5C0Qo


サイラス「立派に……なったな……。……我が友にして弟……グレン……」

カエル「……さらばだ……サイラス……。我が友にして兄よ……」


…………