ほむら「時の卵?」 前編

ほむら「時の卵?」 後編

3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 02:04:24.96 ID:KYQy5C0Qo
現在、第10話(マルチイベント編-1)「勇者の墓」 進行中

↓より投下開始

引用元: ほむら「時の卵?」 その2 



4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 02:08:18.99 ID:KYQy5C0Qo
クロノ「僕も男だからさ、『勇者』ってのにあこがれてたんだ」

カエル「……そうか」

クロノ「でも、実際は御伽噺のようにはいかないよな……。勇者だって、ひとりの人間なんだ……」

カエル「……」


さやか「師匠……」

カエル「おい、動くな。まだ完全に治りきっていないだろうが」

さやか「ヘヘ……。やり過ぎだっての、師匠は……。ほんと、女の子の扱いがヘタクソなんだから……」

カエル「減らず口が叩けるなら、大丈夫だな」

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 02:13:29.81 ID:KYQy5C0Qo
さやか「ね、師匠……。『正義』って、なんなんだろう?」

さやか「サイラスさんは、誰かを救うために、あんなにがんばってたのに……こんな終わり方……」

カエル「……」


さやか「やっぱりこの世の中には、正義なんてないのかな?」

さやか「見方が違うってだけで……結局は自己満足で、押し付けでしかないのかな……?」

さやか「人のために祈り続けるのって……やっぱり、無理なのかな……」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 02:16:15.23 ID:KYQy5C0Qo
カエル「そうだな……。俺は正義の道とは、『道化』の道だと思う」

さやか「道化……?」


カエル「以前、王妃様の修道院視察に随行した時、こんな話を聞いたことがある」

カエル「『我々人間ははるか昔、堕天使ルシファーにそそのかされ禁忌の果実に触れてしまった』」

カエル「『そのせいで神の怒りを買い、楽園を追い出された』……と」

さやか「それって、有名な神話の……」


カエル「俺たち人間は、本質的には道徳的に『悪』とされていることを好む種族なのだろう」

カエル「その真逆である正義をなすということは、人をだまし、何より自らをだまし続けなければならない」

さやか「……」

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 02:18:59.59 ID:KYQy5C0Qo
カエル「しかし、だ。そんな本性に人々はみな、もがき苦しんでいる。助けを求めている」

カエル「誰かに『違う』と言ってほしいから、英雄譚は求められ、語り継がれる」

カエル「勧善懲悪の物語に出てくるような『正義』は……この世の中で必要とされている」


カエル「さやか。ハッピーエンドは嫌いか?」

さやか「そんなわけないじゃん……」

カエル「俺もだ。物語の最後は、笑って見ていられるほうが好きでな」

カエル「だから俺は、演じ続ける。みんなを笑わせるために……」

さやか「……」


カエル「『人のために』ってお前の想い……俺は格好いいと思うぞ」

カエル「うらやましいぜ。汚れちまった俺には、到底できない考え方だ……」

さやか「師匠……」

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 02:23:16.46 ID:KYQy5C0Qo
カエル「絶望するな、さやか。人に、世の中に……。自分に……」

カエル「醜い部分が見えたとしても、ヘラヘラ笑って許してやれ。受け入れてやれ」

カエル「だまし続けるんだ。そして追い続けろ。そうすればいつか……それが、『本物』になる」

さやか「なんか……無責任だよね、それって」

カエル「ハハ。そうだな、俺もそう思う」


カエル「お前は以前、一度は『正義の味方』を志し、道半ばで挫折したと言っていたな」

カエル「今はどうだ? ……考えが、変わったか?」

さやか「……わかんないよ……まだ……」

カエル「そうか。答えが出たら、ぜひ教えてくれ」

 

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 02:29:30.66 ID:KYQy5C0Qo
 
クロノ「! カエル……君の、グランドリオンが!」

カエル「おお、輝いているな……。これは一体?」

クロノ「まさか、剣の精霊である彼らが……?」


「フフ……」

「そうさ!」


さやか「グラン! それに、リオンも!」

リオン「お兄ちゃんは、悩んでたよね?」

グラン「勇者の強さは、意志の強ささ!」

リオン「罪ほろぼしのためなんかじゃない」

グラン「あんたの意志が、今、本当の強さを持ったのさ!」

カエル「俺の……意志……!」

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 02:31:42.20 ID:KYQy5C0Qo
リオン「これで、心おきなくボクらも力を出せるね、兄ちゃん!」

グラン「そうだな、リオン! 行くぜ!」

カエル「これは……!」


クロノ「グランドリオンの意匠が変わった!」

カエル「外見だけじゃない。このみなぎる力……! これが、グランドリオンの本当の姿なのか!」

さやか「つまり、『新生グランドリオン』!?」


カエル「……サイラス、見てるか……?」

カエル「アンタのくれたグランドリオンが、今、俺に力を与えてくれているぜ……」

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 02:34:38.33 ID:KYQy5C0Qo
カエル「サイラスよ、俺は行く。アンタのこころざし……受け取ったもの……のちの世に伝えるために」

カエル「アンタはいつまで自分にしがみついているつもりだと笑うだろうが……」

カエル「あいにくと、別の生き方を知らんものでな。もう少し付き合ってもらうぜ」

カエル「それが……! アンタへの、最後のはなむけだ!!」


カエル「見ていてくれ、サイラス。俺が進む、その先をな!!」


…………



13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 02:36:59.47 ID:KYQy5C0Qo
A.D.600 勇者の墓


大工A「親方! 東側の改築、終わりました!」

初代ゲン「ご苦労さん。西側が予定より遅れがちだ。応援に行ってやってくれ」

大工A「あいよ!」


杏子「親方。この土嚢、こっちに積み上げりゃいいんだよな?」

初代ゲン「おう、わりぃな。あんたはホントよく働いてくれるねえ」

杏子「ま、昔いろいろやってたからな……。日雇いとかでさ」

初代ゲン「まあ仕事さえキチッとやってくれりゃあ、何でもいいぜ」

初代ゲン「しかし、キョーコちゃんに比べてあいつときたら……」


魔王「くそ……。なぜ王であるこの俺が、土いじりなぞ……」

大工B「おうおうおう! ぶつぶつ言う暇があったら手と足を動かしな!」

魔王「チッ……」

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 02:40:50.79 ID:KYQy5C0Qo
まどか「こんにちは! お弁当の差し入れ、持ってきましたよ」

初代ゲン「おう、まどかちゃんじゃねえか」

大工A「ヒャッホウ! まどかちゃんの手作り弁当だぜ!」

初代ゲン「てめぇら、飯食う前にやることがあるだろ! ちゃっちゃと終わらせねえと、昼休憩抜きだぜ!」

大工B「そりゃないっすよ! チクショー、やるぜおめぇら!」

大工たち「押忍!」

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 02:42:45.02 ID:KYQy5C0Qo
まどか「杏子ちゃんとジャキくんは、ちゃんと働いてますか?」

初代ゲン「まずまずだな。助かったぜ、わざわざ人手を紹介してくれるなんてよ」

まどか「いえいえ、これはふたりがやるべきことですから」

初代ゲン「?」


まどか「ちなみに、正体がバレると大変だから、ふたりともツナギを着てるよ!」

まどか「杏子ちゃんは髪をおろしてて、ジャキくんは角刈りカツラとマジックで描いたヒゲのおまけつき!」

初代ゲン「……誰に説明してるんだい?」

まどか「ウェヒヒ! なんでもないでーす!」

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 02:45:12.32 ID:KYQy5C0Qo
大工A「親方! 墓石の新しいやつが届きましたよ」

初代ゲン「ほう、もう来たか。早いな」

まどか「見せてもらってもいいですか?」

初代ゲン「かまわねえよ」

まどか「ありがとうございます。……わあ、ちゃんと墓標も書き換えられてますね」

初代ゲン「前のやつはあまりにもひどすぎたからな」


まどか「これなら、きっと……サイラスさんも、安心して眠れますよね……」

初代ゲン「そうだな……」

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 02:47:07.07 ID:KYQy5C0Qo


"その想いを親友グレンに託して、勇者サイラス、ここに眠る"



18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 02:49:05.83 ID:KYQy5C0Qo
第10話(マルチイベント編-1)「勇者の墓」 終了


  セーブしてつづける(マルチイベント編-2へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 02:50:45.77 ID:KYQy5C0Qo
今回はここまでです。それでは、また明日。

26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 22:37:39.53 ID:KYQy5C0Qo
第11話(マルチイベント編-2)「ビネガーの館」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 22:40:52.03 ID:KYQy5C0Qo
A.D.600 ビネガーの館上空


まどか「あれがビネガーさんのお屋敷?」

杏子「ああ、そうだよ。相変わらず趣味の悪いつくりしてやがんなあ……」

まどか「杏子ちゃんたちはここに来たことがあるの?」

杏子「……昔はここに住んでたよ」

まどか「え?」


魔王「雑談はあとにしろ。行くぞ」

29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 22:43:41.83 ID:KYQy5C0Qo
A.D.600 ビネガーの館 入り口


ビネガー「ウエ~ルカ~ム! ここは大魔王ビネガーの……ん?」

魔王「……」

ビネガー「おぴょおっ!! あ、あなたは、魔王様!」

魔王「……いい身分だな、ビネガー」

杏子「大魔王ってなんだよ。ジャキがいなくなったからテメェがトップだってか?」

ビネガー「オフィーリア……貴様まで……」


まどか「オフィーリア?」

杏子「あー、まあ……そう呼ばれてるってことにしといてくれ」

30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 22:50:51.95 ID:KYQy5C0Qo
ビネガー「……フン! 貴様らにどうこう言われる筋合いはないわ」

ビネガー「魔王様、あなたにもだ。魔族の世を築くための戦いを捨て……」

ビネガー「人間どもにこびへつらうあなたなぞ、もはや我らの王ではない!」

魔王「……」


ビネガー「なぜ我らを裏切った……」

ビネガー「貴様もだ、オフィーリア! 拾ってやった恩を忘れたのか!」

杏子「……」


――――

―――



31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 22:54:10.51 ID:KYQy5C0Qo
ジャキ「おい、杏子。杏子ってば」

杏子「呼び捨てにすんなよ、ガキのくせに……。で、なんだ?」

ジャキ「なんだじゃない。いつになったらこの森を抜けられるんだ」

ジャキ「ここ、前も通ったんじゃないか? お前、ちゃんと道分かってるのかよ」

杏子「……アタシに聞くな」

ジャキ「迷ってるのにウロウロしてたのかよ! ただの悪あがきじゃないか!」

杏子「ああ、うるせー! それ以上ごちゃごちゃ言うと、おいてくからな!」

ジャキ「なんだよそれ! 助けたんなら最後まで面倒見ろよな!」

杏子「こ、このヤロウ……」

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 22:57:03.57 ID:KYQy5C0Qo
杏子「!」

ジャキ「? どうかした……」

杏子「怪しいヤツがいる」

ジャキ「え?」


魔族「ゲヒヒヒ!」

ジャキ「な!? なんだコイツ!」

杏子「どう見ても仲良くしましょうってツラじゃねえよな……。下がってろ、ジャキ!」


…………



33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 22:59:28.99 ID:KYQy5C0Qo
杏子「ふう。なんとかなったな」

ジャキ「杏子……お前……その姿……」

杏子「ん? あー……そっか。思わず変身しちまったか……」

杏子「えっとな、何から説明すっかなー……」


???「ほう……。我がしもべを、いともたやすく……。人間のくせに、なかなかやりおるわ」

杏子「! 誰だテメェは!」

34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:01:03.87 ID:KYQy5C0Qo
ビネガー「フヒヒヒ! 我が名はビネガー!! いずれ魔族の王となる男よ!」

杏子「次から次へと……。おかわり頼んだ覚えはないんだけどね」

ビネガー「カスどもが! ここで死ねい!」


ジャキ「杏子、来るぞ!」

杏子「分かってら、クソッ……! やるしかねえ!」

ビネガー「我が覇道の踏み台としてくれるわあ!!」

35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:03:18.71 ID:KYQy5C0Qo
ビネガー「あの、すいませんでした」

杏子「……」

ジャキ「……すげー、これが有名な『DOGEZA』か」

ビネガー「ほんとに、もう……身の程もわきまえず、みなさま方にたてつこうなどという愚行を……」


杏子「もういい、消えな。二度とそのツラ見せんじゃないよ」

ビネガー「あなた様のご慈悲にこのビネガー、感涙に心打ち震えまして……」

杏子「早く消えろっての!」

ビネガー「は、ははーっ。それでは……」

36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:05:46.89 ID:KYQy5C0Qo
ジャキ「いいのか、杏子?」

杏子「調子狂っちまったよ。おら、さっさと行こうぜ……」


ビネガー「引っかかったなあ!!」

ジャキ「!?」

杏子「テ、テメェ! 不意討ちかよ、きたねえな!」

ビネガー「なんとでも言え! 勝てば官軍よお!」


ジャキ「杏子、来るぞ!」

杏子「分かってら、クソッ……! やるしかねえ!」

ビネガー「我が覇道の踏み台としてくれるわあ!!」

37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:08:34.44 ID:KYQy5C0Qo
ビネガー「あの、すいませんでした」

杏子「……」

ジャキ「……」

ビネガー「ほんとに、もう……身の程もわきまえず、みなさま方にたてつこうなどという愚行を……」


杏子「殺していい?」

ビネガー「そそそそんな! どうかご慈悲を!」

ジャキ「慈悲はさっきやっただろ」

38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:12:09.07 ID:KYQy5C0Qo
???「……何をしている、ビネガー」

???「あらん、可愛い男の子ネ~」

ジャキ「!」


ビネガー「おお、ソイソーにマヨネー! ナイスタイミングだ!」

杏子「チッ……お仲間がいやがったのかよ……」

ビネガー「フヒヒヒ! 形勢逆転だな!」

ジャキ「コイツ……急に元気になりやがった」


ソイソー「人間か。お前たち個人に恨みはないが……こんなところに迷い込んだのが運のつきだ」

マヨネー「この子、あたいがもらっちゃっていい?」

杏子「3対1かよ……。さすがにやばいな……」

ビネガー「お前ら! このカスどもをやってしまえ!」


…………



39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:14:18.43 ID:KYQy5C0Qo
杏子「いってぇ……ちくしょう……」


ジャキ「杏子! ……くそ、放せよ!」

マヨネー「いや~ん、元気があってかわいらしいのヨネ~」


ソイソー「かなりの手だれだった……。1対1なら、負けていただろうな」

マヨネー「ほ~んと。おかげであたいのキレイな肌にキズがついちゃったのヨネ」

ソイソー「ビネガーは早々にやられていたしな……」


ビネガー「……」チーン

40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:17:31.31 ID:KYQy5C0Qo
ソイソー「何か言い残すことはあるか? 武士の情けだ、聞いてやる」

杏子「……ジャキは……その少年は、逃がしてやってくれ」

ジャキ「! ……お前……」

マヨネー「イヤよン! この子はあたいのものなのヨネ~」

ソイソー「だ、そうだ。残念ながらその頼みは聞けそうもないな」


杏子「……ああ、そうか……よッ!!」バッ!

ソイソー「!? ぐ、くお……! 土が目に……!」

ジャキ「いいぞ、杏子!」

杏子「ジャキ! 今助けるからな!」

41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:20:12.55 ID:KYQy5C0Qo
ジャキ「!?」

マヨネー「はい、そこまでなのヨネ~。姑息な手を使ってくれるじゃないのヨ」


杏子「テ、テメェ……ジャキをどうするつもりだ!」

マヨネー「どうするかはアナタ次第ヨ。ちょ~っとばかし惜しいけど……」

マヨネー「抵抗するならこの子、殺しちゃうわヨン?」

杏子「くそったれ……」

マヨネー「ソイソー、いつまでもがいてるつもりヨ?」

杏子「!」


ソイソー「目くらましとは……やってくれるじゃないか」

杏子「……万事休すか」

42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:23:40.97 ID:KYQy5C0Qo
ジャキ「……ウザいんだよお前ら……」

マヨネー「ヨネ?」


ジャキ「勝手に助けたり面倒見たり……襲ってきたり、殺そうとしたり……」

ジャキ「挙句の果てには身を挺して守るとか……ヒーロー気取りかよ……」

ソイソー「なんだ、貴様……何を言っている?」

ジャキ「ボクにかかわるとみんな不幸になるんだ……」

杏子「……」

ジャキ「もういいよ、杏子……。ボクのことはほっといてくれ……」

43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:25:13.02 ID:KYQy5C0Qo
杏子「いやだね」

ジャキ「! ……なんで」


杏子「いいかどうかは自分で決める。アタシはお前を助けてやるって決めたんだ」

杏子「助けたんなら最後まで。お前が言ったことだろ」

杏子「ガキはガキらしく、杏子お姉ちゃんに守られてりゃいいんだよ」

ジャキ「……やめろよ……そういうの……姉上、みたいな……」

44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:27:35.51 ID:KYQy5C0Qo
マヨネー「もういいわ。めんどくさいからこの子、殺しちゃうのヨネ」

杏子「! やらせるかっ!!」

ソイソー「おっと、私を忘れてもらっては困る。背後からとはいささか不本意だが……な!」

杏子「!? しまっ……!」

ジャキ「杏子!?」


マヨネー「いや~ん、背中バッサリ! あれじゃ間違いなく死んだのヨネ~」

ジャキ「……ふ、ふざけんなよ……! おい、杏子……!!」

杏子「……」


マヨネー「だ~いじょうぶヨ。あなたもすぐにあとを追うんだから……」

マヨネー「ふたり仲良くあの世で暮らしなァ!!」

45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:30:01.89 ID:KYQy5C0Qo
ジャキ「……お前らあああああッ!!!」

マヨネー「えっ!?」

ソイソー「なんだ!? この巨大な魔力は!」


ジャキ「よくも杏子を……! 死ぬ覚悟はできてるんだろうな!!」

ソイソー「うおおおおッ!?」

マヨネー「なあああっ!?」


…………



46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:33:17.44 ID:KYQy5C0Qo
ビネガー「あの、すいませんでした」

ジャキ「……」

マヨネー「ほんとに、もう……身の程もわきまえず……」

ソイソー「みなさま方にたてつこうなどという愚行を……」

杏子「……なんだよこれ? 気が付いてみたら全員DOGEZAとか……」


ジャキ「よく生きてたな、お前……」

杏子「ヘッ、アタシが死んだと思ったか? 残念でした」

杏子(ソウルジェムは無事だったからな……。背後じゃなく、前から斬られてたらやばかったけど)

47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:35:16.50 ID:KYQy5C0Qo
杏子「で、どーすんのコイツら?」

ジャキ「……部下にする」

杏子「はぁ!? 本気かよ。殺されかけた相手だぜ?」

ジャキ「それはお前が弱いからだろ。ボクならこいつらを抑えられる」

杏子「……言ってくれるね」

ジャキ「1対1なら杏子だって勝てるだろ。なんならボクが守ってやってもいい」

杏子「どういう心境の変化だよ? アタシを守るだあ?」

ジャキ「……別にどうでもいいだろ」

48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:38:22.21 ID:KYQy5C0Qo
ジャキ「おい、えーっと……緑のデブ」

ビネガー「ハッ! ビネガーでございます、魔王様!」

ジャキ「魔王?」


ソイソー「先ほどの強大な魔力、まさしく魔族の王。我が主君にふさわしきお力」

マヨネー「あたいたちを導き、魔族が安心して暮らせる世の中を築き上げてほしいのヨネ!」

杏子「よく言うぜ……。カスだなんだって馬鹿にしやがったくせによ」

ソイソー「その非礼には、このビネガーめが割腹してお詫びを!」

ビネガー「だが断る」

杏子「……」

49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:43:25.87 ID:KYQy5C0Qo
ジャキ「もういい。それより、この森はどうやって抜けるんだ?」

ビネガー「ははーっ。それでは、この先にあるワシの超豪華な屋敷にご案内いたします!」

杏子「さりげなく自慢してやがる……」

ビネガー「こちらです! ささ、お足元にお気をつけて!」


…………


杏子「おい、ジャキ。さっきの『魔族の世』っての、本気で作るつもりか?」

ジャキ「……気が向いたらな」

杏子「……」

ジャキ「それよりお前、いつまでついてくるんだよ。森は抜けたし、もうどっか行けよ」

杏子「どっか行ってもいいのか?」

ジャキ「……」

50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:46:23.29 ID:KYQy5C0Qo
杏子「中途半端は気持ちわりいしな。もうちょっとだけ付き合ってやるよ」

ジャキ「……頼んでない」

杏子「言ったろ? アタシの行くところはアタシが決めるって」

杏子「それにお前、色々危ないんだよ。考え方とか、無駄にでかい魔力とか……」

ジャキ「勝手にしろよ……」

杏子「はいはい。お前がもうちょっと大人になったら、言われなくても勝手に出て行ってやるよ」

ジャキ「大きなお世話だよ、杏子お姉ちゃん」

杏子「……ん? おい、ジャキ。今なんて……」

ジャキ「……」

51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:48:43.55 ID:KYQy5C0Qo
ビネガー「キョーコ! 魔王様と密談とは、けしからんな! ワシもまぜろ!」

杏子「うるせーぞ、デブ。またDOGEZAしたいのか?」

ビネガー「はい、すいませんでした」



ジャキ「……変なヤツらだよ、お前ら……。わざわざボクなんかのために、さ……」


――――

―――



52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:53:48.91 ID:KYQy5C0Qo
杏子「大丈夫か、まどか?」

まどか「うん。でもビックリしちゃった。ビネガーさん、いきなり魔物をけしかけてくるんだもん」

魔王「自らは撤退し、手下を使うか。変わらんな」

杏子「そういうヤツだよ、アイツは。よし、追うぜ!」


…………


ビネガー「チッ、もう追いついてきやがったか!」

杏子「足おせーなあ……」

まどか「あの……失礼かもしれないですけど、もう少し痩せたほうがいいんじゃ……」

ビネガー「うるさいわ!」

53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:56:03.98 ID:KYQy5C0Qo
ビネガー「しつこいヤツらめ。こうなったら……マヨネーッ!」


マヨネー「は~い! あたいを、呼・ん・だ?」

杏子「うげっ……マヨネーかよ……」

まどか「強いの?」

杏子「強いって言うか、キモい」

まどか「キモい……?」


マヨネー「あ~ら、これは魔王様にオフィーリア。どのツラ下げて来られたのかしらネ~?」

マヨネー「人間に味方するような裏切り者は、このオネーサンがおしおきヨネ~」

杏子「何がオネーサンだ。テメェ、男だろ」

まどか「え!?」

54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:58:31.82 ID:qPBtZlOQ0

「あ、いたー!」

馬上にいたのはアリアンノだった。どうやら彼らを追いかけてきたらしい

馬を止め降り、二人に正対する。

「ひどいですよ、置いていくなんて!」

「誰も連れて行くとは言っていない」

即とうするルイテル、ソコにモンドが口を挟む

「いやぁ、もてる男はつらいねぇルイ」
「茶化すな」
「いいじゃねぇか、ついてきちまったもんは仕方ねぇどうせ同じ道を行くんだからよ」
「勝手に決めるな。足手まといだろう、整備されているとはいえ緩んだ山道を馬を連れて歩くのもな」

アリアンノが騎乗してきた馬を見て答える

「この子なら大丈夫です、貸し馬ですから」

アリアンノが馬の尻をたたくと来た方角へと走ってゆく
この地域の貸し馬には魔玉が取り付けられており、客が乗り終えたら自ら店に帰ってゆく。

「そういう問題では」
「いいじゃねぇか、ルイ旅は道連れってね」

「そうですよ、ほらぁ置いていっちゃいますよー」

「おまえら……」

「どうせ、行く道は一緒なんだってさっきいったろ?」

モンドがウィンクをしながらアリアンノと先に行く。
諦め顔でその後を追いかける形で三人の旅が始まった。

55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月) 23:58:55.60 ID:KYQy5C0Qo
マヨネー「フフン、相変わらず口の減らないコ……。すぐに生意気言えないようにしてあげるのヨネ」

マヨネー「さ、大魔王ビネガー様は下がってて。このコたちのシマツは、このあたいにまかせてヨネ~」

ビネガー「たのんだぞ、マヨネー!」


まどか「男のひと……? ええ~……こんなにキレイなのに……」

魔王「鹿目まどか。ほうけている場合ではないぞ」

まどか「はっ! あ、ご、ごめんなさい!」



マヨネー「さ~、オ・シ・オ・キ・ヨ!!!」


――――

―――



57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:02:24.72 ID:fTX7Dw+Uo
ジャキ「イヤだって言ってんだろ! はーなーせー!」

マヨネー「もう~。わがままばっかり言ってちゃメッ! なのヨネ」


杏子「おいおい、なんの騒ぎだよ」

ジャキ「杏子! 助けろ!」

杏子「はあ?」


マヨネー「ああん、キョーコちゃんからも言ってあげてほしいのヨネ」

マヨネー「魔王様ったらあたいとオフロ入るの、絶対イヤだって言うのヨ」

杏子「……くだらねえな、オイ」

 

59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:08:18.93 ID:fTX7Dw+Uo
ジャキ「ひとりで入れるって言ってんだろ!」

マヨネー「ダメよお~。オネーサンが魔王様をキレイにしてあげるんだから~」

マヨネー「そう……スミズミまで、ネ」ジュルリ

杏子「よだれ出てんぞ、セクハラ女。いい加減にしてやれよ」


マヨネー「キョーコちゃんは魔王様に甘いわネ~。じゃあアナタが一緒に入ってくれる?」

杏子「なんでだよ。必要ねえだろ」

マヨネー「ひとりで入ってもつまんないのヨネ!」

杏子「……はいはい、分かったよ。ったく、女同士で何が楽しいんだか……」

マヨネー「裸の付き合いは大事なのヨネ。これでキョーコちゃんともっと仲良くなれるのヨネ~」

杏子「超ウゼェ」

マヨネー「さー! そうと決まれば早く行くのヨネ!」

60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:12:01.60 ID:fTX7Dw+Uo
ジャキ「……助かった……」


ソイソー「おや? 魔王様ではないですか」

ジャキ「ソイソー……」

ソイソー「奇遇ですな。ところで、キョーコに所用があるのですが、見かけませんでしたか?」

ジャキ「アイツならマヨネーと一緒に風呂に行ったよ」

ソイソー「マヨネーと? それはまた……キョーコも思い切ったことをしますな」

ジャキ「え?」



「うぎゃああああああああああああああ!!!???」

61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:15:28.12 ID:fTX7Dw+Uo
杏子「ぞっ、ぞぞぞぞぞゾウさんがああーっ!!!」

ジャキ「っ!?」


ソイソー「落ち着け、キョーコ。象がどうかしたのか?」

杏子「まっ、マヨネーのっ、 のところにぃ……お、おっきなゾウさんが……!」

ソイソー「ああ、●●のことか? 当然だろう、アイツは男だからな」

杏子「き、聞いてねえぞ! ていうか、胸が……」

ソイソー「あれは豊胸手術だ。そういえばふたりには言ってなかったか……」


杏子「そういう大事なことは早く……ん? どうしたジャキ?」

ジャキ「……」

杏子「顔真っ赤にしやがって……熱でもあるのか?」

ジャキ「ち、近づくな!」

杏子「なんだよ、こっち向けよ」

62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:18:10.73 ID:fTX7Dw+Uo
ソイソー「ところでキョーコ。ひとつ疑問があるのだが」

杏子「あん?」

ソイソー「人間は風呂上りに全裸で徘徊する習慣があるのか?」

杏子「えっ……? ……あっ!!!」

ジャキ「……」

杏子「テ、テテテメェ、ジャキ! 見るんじゃねえ!」

ジャキ「見てないよ! ……ちょっとしか……」

杏子「見てんじゃねえか、この  ガキ!」

63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:20:44.65 ID:fTX7Dw+Uo
マヨネー「あ~ん。勝手に上がっちゃダメヨ、キョーコちゃん」

杏子「! マ、マヨネー!」

マヨネー「さ、早く来てン。ちゃんとお肌のお手入れしないと~」

杏子「やめろ! 引きずるな!」

マヨネー「キョーコちゃんのお肌、せっかくキレイなんだからン。オンナのあたいでもうらやましいのヨネ」

杏子「なにが女だ! ひっ、ぃや……き、汚いもん揺らすな、バカ!!」

マヨネー「ひどお~い! 汚くないわヨ~」


ジャキ「……」

ソイソー「魔王様はああいうのに興奮するのですか?」

ジャキ「……」

ソイソー「人間の  嗜好はよく分かりませんな……」

64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:24:06.09 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「そんな魔王様のために、不肖ビネガー、  本を購入いたしましたぞ!」

ソイソー「ビネガー……お前いたのか」

ビネガー「ささ、どうぞご覧ください!!」

ジャキ「……『デブ専のアナタに贈る! DAVE[デイブ] ~魅惑の肉だんご~』……」


ビネガー「やはり、おなごはウエスト100cm以上に限りますなあ! フヒヒヒヒ!」

ソイソー「……」

ジャキ「……」


――――

―――



65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:26:59.22 ID:fTX7Dw+Uo
マヨネー「キ~ッ! くやし~い!! おぼえてらっしゃい!」


杏子「マヨネーのヤツ、前よりも強くなってなかったか?」

魔王「魔王城消滅より時を経た。ヤツらも遊んでいたわけではないということだろう……」

まどか「だいぶ時間がかかっちゃったね。ビネガーさんに追いつけるかなあ……」

魔王「安心しろ。おそらく……」


…………



66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:29:10.68 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「な~いす・とう・みーちゅ~!」


まどか「ま、待ち伏せ!?」

魔王「……やはりな」

杏子「あー、あったな。こんな場所」

まどか「ここは? 通路みたいだけど……。横のこの床、なんだろ?」

杏子「ベルトコンベアだよ。前後にしか進めないこの場所で、左右から挟撃するためのな」

杏子「あそこにいるビネガーがレバーをまわすと、奥から魔物が運ばれてくるって寸法さ」

ビネガー「ネタバレすんなよ!!」

67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:32:13.65 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「フン、いくら仕掛けを把握していたところで、止められなければ意味があるまい……」

ビネガー「しかあ~もッ! 今回は魔王城の時のような失敗はありえんぞ!」

ビネガー「ごちゃごちゃと待遇にうるさい正社員のクビを切り、派遣社員を雇ってあるからな!」

まどか「魔王軍って雇用制なの……?」

ビネガー「カマーン! 優秀なる派遣社員よ!」キコキコキコ!!


QB「やあ、まどか! 僕と契約して、社畜になってよ!」

まどか「キュ、キュゥべえ!?」

ビネガー「キュゥべえ君はすごいぞ。彼の営業のおかげで、わが社の業績はうなぎのぼりなのだ!」

杏子「お前なにやってんだよ……」

ビネガー「さあ、キュゥべえ君の営業タイムスタートだ! れっつら・ご~!」キコキコキコ!!

68: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:34:14.31 ID:fTX7Dw+Uo
QB「未経験のあなたでも安心! 魔王軍では友達感覚の上司が丁寧に教えてくれます」

QB「熱意さえあれば誰でもOK! アットホームで家庭的な雰囲気の職場ですよ」

QB「学歴年齢不問、将来は独立も可能! 社員のほとんどが異業種からの転職者!」

QB「がっつり稼いでやりがいも感じられる、あなたの『夢』を一緒にサポート!」

QB「まずは会って話をしようぜ! あなたのご応募、お待ちしております! キュップイ!!」


杏子「……」

魔王「……」

まどか「……ガッツポーズして、そのままフェードアウトしていったけど……」

ビネガー「……」キコキコ...キコ...

72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:38:52.29 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「……ビ……」

ビネガー「ビネガーピ~ンチッ!! さらばだっ!」



杏子「……」

魔王「……」

まどか「えっ、それだけ!?」


杏子「さて……追いかけるか」

魔王「うむ」

まどか「えっ、えっ? 今の、なんの意味があったの!?」


…………



73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:42:05.34 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「ま、まだ追ってくる気か!? こうなったら……ソイソ~ッ!!」


ソイソー「お呼びになられましたか?」

魔王「ソイソーか……。ようやくマトモなヤツが出てきたな」

ビネガー「ソイソー、まかせたぞ!」

ソイソー「かつて主君とあおいだ方と剣を交えるのは不本意ではあるが……これも運命か。仕方あるまい」

まどか「な、なんか強そうな人……」

杏子「コイツは手ごわいぜ。気合入れろよ」



ソイソー「覚悟はいいか!? 参るッ!!」


――――

―――



74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:45:09.17 ID:fTX7Dw+Uo
ジャキ「この料理は出来損ないだ、食べられないよ」

杏子「食い物を粗末にするんじゃねえ、殺すぞ」

ジャキ「じゃあ杏子はこれ、食えるのかよ」

杏子「……」

ジャキ「……」

杏子「ビネガー、テメェ! 大切な食料をワケの分からねぇアンノウンに変えやがって!」

ビネガー「ワシの手料理を愚弄する気か!」

杏子「緑色のゲル状物質のどこが手料理だ!」

75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:48:20.84 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「フン、イヤなら食べなければいい!」

ビネガー「そもそもそれは、魔族の食事が口に合わないと仰る魔王様のために作ったのだからな!」


ジャキ「ボクだってこんなの要らないよ」

ビネガー「しょんな!」

ジャキ「マヨネー、お前にやる」

マヨネー「あたいだってお断りヨ~。それに、もう外で食べてきたし」

杏子「店あんのかよ、この辺……」

マヨネー「魔族用のネ。ギンギー料理屋さんとかオススメヨン」

76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:51:15.66 ID:fTX7Dw+Uo
ソイソー「やれやれ、こんなことだろうと思った」

杏子「ソイソー。どこ行ってたんだ?」

ソイソー「変装して人里に下り、食材を分けてもらってきた」

杏子「は?」


ソイソー「ずっと気になっていたのだ……」

ソイソー「魔王様が口にされるものといえば、キョーコが森で採ってくる果実や獣肉ばかり」

ソイソー「しばらくはそれでもいい。だがこのままでは、確実に栄養バランスが偏ってしまう!」

ジャキ「お前……」


ソイソー「ご安心めされよ。今日よりこのソイソーめが、魔王様の食生活を規則正しいものにいたします」

マヨネー「ソイソー、料理できるのン?」

ソイソー「今日は鮭の香味蒸し、青菜のごま和え、キャベツとわかめの味噌汁に大豆ご飯もつけるか……」

杏子「アンタどこ出身だよ!? ていうかホントに魔族かよ!?」


…………



78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:53:35.11 ID:fTX7Dw+Uo
ソイソー「マヨネー、貴様! 服を脱ぎ散らかすなと何度言ったら分かる!」

マヨネー「だってぇ~ン……」

ソイソー「だってじゃない! せめて洗濯所にひとまとめにしておけ。あとで洗っておいてやるから」

ソイソー「下着と靴下は別にしておけよ。下洗いするからな。あとできれば靴下は裏返しておいてくれ」

マヨネー「はぁ~い……」


…………



80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 00:55:19.19 ID:fTX7Dw+Uo
ソイソー「キョーコ、貴様! カップアイスの容器をそのまま捨てたな! 虫がたかるだろうが!」

杏子「え、ダメなの?」

ソイソー「軽く洗って乾かしておけ。捨てるときもちゃんとつぶせよ。かさが減るからな」

ソイソー「それから、今飲んでるペットボトルもキャップとラベルは分別しろ」

杏子「め、面倒くせー……」


…………



85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:02:01.64 ID:fTX7Dw+Uo
ソイソー「ビネガー、貴様! 魔王様の部屋を掃除しておけと言っただろうが!」

ビネガー「な、なぜ怒る。ちゃんとやったぞ?」

ソイソー「隅にホコリが溜まっているだろうが! 『四角い部屋を丸く掃く』を地で行きおって……」

ソイソー「罰としてお前は風呂掃除だ。タイルの目地の汚れも落とせよ」

ビネガー「ひいい~……」


ソイソー「まったく……ん? これは……魔王様が寝台の下に隠されていた春画か」

ソイソー「嗜好別に整理して机の上に置いておこう」


…………



87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:05:50.69 ID:fTX7Dw+Uo
ソイソー「魔王様、いけません! 歯磨きの最中に水を出しっぱなしになさっては!」

ジャキ「ふぇ?」

ソイソー「もったいないではないですか。それに見たところ、奥歯がしっかり磨けておりません」

ソイソー「虫歯になってしまいますぞ。ささ、こちらへ。このソイソーめが代わりに磨いて差し上げます」

ジャキ「い、いいよ! ひゃめ、ひゃめろってば!!」


…………



89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:08:33.76 ID:fTX7Dw+Uo
ソイソー「便所の明かりがつけっぱなしだぞ!」

マヨネー「あ、忘れてたのヨネ……」


ソイソー「買い物カゴにこっそり菓子をしのばせるな! 欲しいならちゃんと言え!」

杏子「わ、悪い……」


ソイソー「お出かけ前の戸締り確認はしたのかあッ!?」

ビネガー「い、今やっとる……」


ソイソー「夜更かしはなりませぬぞ、魔王様」

ジャキ「まだ8時だよ……」

90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:10:05.26 ID:fTX7Dw+Uo
ソイソー「まったく、貴様らは! だらしないにも程がある!!」

杏子&ジャキ&ビネガー&マヨネー「ゴメンナサイ...」


――――

―――



91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:14:12.35 ID:fTX7Dw+Uo
ソイソー「クッ、ぬかったわ! このままでは済まさぬぞ……」


まどか「あんなにマジメで実力もある人が、どうしてビネガーさんなんかの下で働いてるんだろ?」

魔王「……地味に毒舌だな、鹿目まどか」

杏子「しがらみとかあるんだろ。責任感も強いしな」

まどか「抜け出せなくなった古参バイトみたいだね……」


…………



92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:17:42.60 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「は~う・あー・ゆ~?」


まどか「また待ち伏せだよ……」

ビネガー「かま~ん、べいべ~!」

杏子「なんかすげーイラッとする」

魔王「来いと言うなら行ってやろうではないか」


ビネガー「ちょちょ、ちょっとストップ!」

まどか「え?」

ビネガー「あの~、宝箱は? そこにあるでしょ。取ってかないんすか?」

杏子「ああ……あるな」

魔王「すぐそばにギロチンが待ち構えている宝箱が、な」

まどか「どう見ても罠だよ! 取るわけないよ!」

93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:19:54.63 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「いや~、取ったほうがいいと思いますよ? きっといいものが入ってますって!」

杏子「んじゃ、テメェをぶっ飛ばしてから取るよ」

ビネガー「ヘイヘイヘイ! そんなこと言わずに! 誰かに取られたらどうするんすか!」

魔王「……よほど高価なものでも入っているとみえるな」


ビネガー「さっすが魔王様! そうそう、そのとおりですわ。確か、えっと……グリーフ……なんとか?」

まどか「グリーフシード!?」

ビネガー「それそれ!」

杏子「なんでテメェがグリーフシードを!?」

まどか「まずいよ、もし孵化しかかってたりしたら……!」

94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:22:46.94 ID:fTX7Dw+Uo
QB「あ、社長。休憩いただきます」

ビネガー「ん? キュゥべえ君か。うむ、好きにしてくれたまえ」

QB「ありがとうございます。ところで、僕のグリーフシードが行方不明なんですけど知りませんか?」

ビネガー「あ、えーと……」

杏子「キュゥべえのかよ! パクりやがったのか、コイツ!」


ビネガー「人聞きの悪いことを言うな! 机の上に放置してあったから、なくなったらいかんと思って……」

QB「なんだ、保管箱にしまってくださったんですか? それならそうと言ってくださいよ」

ビネガー「いや、すまんすまん! ワシとしたことが!」

95: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:24:12.94 ID:fTX7Dw+Uo
QB「えーと、あの箱ですね。わざわざすみません」

ビネガー「気にしなさんな! さ、持っていきたまえ!」

QB「では失礼して……。よいしょ……おや?」


ガラガラガラ...

QB「キュップイ!?」 グシャッ!!


杏子「……」

魔王「……」

まどか「……あ~あ……。キュゥべえがギロチンでバッサリ……」

ビネガー「……」

96: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:26:03.31 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「……ビ……」

ビネガー「ビネガーショ~ック!! さらばだっ!」


杏子「……」

魔王「……」

まどか「ギロチンは止まったし、グリーフシード回収しなきゃ。良かった、まだ新品だ」


杏子「さて……追いかけるか」

魔王「うむ」

まどか「だんだんわたしも慣れてきたよ」


…………



97: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:28:21.91 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「フッフッフッ、三度目の正直。今度は、そうカンタンにはやられんぞ」

まどか「二度あることは三度あるとも言うよね」

魔王「鹿目まどかがスレてきていないか?」

杏子「アタシに聞くなよ……」


ビネガー「ソイソー! マヨネー! ヤツらにジェットストリームアタックをかけるぞ!!」

ソイソー「承知!」

マヨネー「はいは~い!」

ビネガー「我らが三位一体の攻撃! 止められるものなら止めてみるがいい!」

魔王「3人同時か……。最初からそうすべきだったな」

杏子「来るぞ!」



ビネガー「貴様たちをメッタメタのギッタンギッタンにしてくれるわ~!」


――――

―――



98: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:31:20.96 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「なんだ、キョーコ。お前だけか。魔王様はどうした?」

杏子「ジャキならマヨネーのヤツと遊んでるよ」

ビネガー「遊ばれている、の間違いだろう」

杏子「……ま、そうとも言うかな。ソイソーは向こうでジャキ用のマントを縫ってる」

ビネガー「手縫いか……。アイツも主婦業が板についてきおったわ」

杏子「まったくだぜ。いつの間にかオカン気取りだ」

ビネガー「まんざらでもないようだな?」

杏子「誰が。うっとうしくてかなわないよ」

ビネガー「ワシはソイソーのことを言っておるのだ。なんだ、お前は母親が恋しかったのか? んん?」

杏子「ニヤニヤすんな。ウゼェ……」

99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:34:52.82 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「ソイソーが母親なら、一家の大黒柱たる父親は当然ワシというわけだ! フヒヒヒ!」

杏子「ダメ親父の典型だけどな」

ビネガー「聞こえんな。おい、キョーコ。酒を取ってくれ」

杏子「昼間から飲むなよ……」

ビネガー「ついでに酌もしてくれ」

杏子「……」ドバドバ

ビネガー「おまっ、あほっ! こぼれてる! メチャクチャこぼれとるだろーが!!」

杏子「いい気味だぜ」


ビネガー「ああ、もったいない……」

杏子「こぼれた分までなめ取るなよ。いじきたねえな」

ビネガー「食い物を粗末にしたら殺されるんじゃなかったか?」

杏子「……」


…………



100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:36:52.22 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「ワシはなあ~……これでもなあ~……がんばっとるんだぞお?」

杏子「もう酔ったのかよ……。しかも絡み酒とか勘弁してくれ」

ビネガー「聞いとるのか、キョーコ!」

杏子「はいはい、聞いてますよ」


ビネガー「ワシはな、魔王様を立派な王に育て上げ、魔族の世を築くんじゃ~」

ビネガー「魔族は人間どもに迫害されておる。それをひっくり返すには、力による支配しかない!」

杏子「……」

ビネガー「見ておれ、人間どもめ~。いつの日か、化け物とののしられた屈辱を晴らして見せるわ!」

ビネガー「魔王様にならそれができるのじゃ~。あの方こそがワシらの救いなのじゃあ!」

杏子「……あんまり人に期待しすぎると、痛い目見ると思うけどね」

ビネガー「フン。知ったような口を聞きおる」

102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:39:39.99 ID:fTX7Dw+Uo
杏子「アンタらはよ、結局はジャキを王に仕立て上げるために、アタシらの世話を焼いてるってわけだ」

ビネガー「もちろん、それが第一であーる! しかし、まあ……それだけではあるまい」

杏子「……へえ?」


ビネガー「ワシら魔族は縦社会だが、それゆえ横のつながりをより大事とする」

ビネガー「世間のはみ出し者ゆえな。つまりは同僚、友人……そして家族」

ビネガー「魔王様はワシらの王ではあるが……同時に、大切なファミリーでもある」

ビネガー「それはキョーコ、お前もだ」

ビネガー「でなければ魔王様はともかく、お前まで置いておく理由はあるまい?」

杏子「……」


ビネガー「我ら魔族の鉄の掟を知っているか?」

杏子「知らねえな」

ビネガー「『報恩報復』。受けたものに必ず報い、奪われたものに必ず報いる」

ビネガー「キョーコ。お前が我らに家族の情を抱いているのならば、ワシらはそれに応えよう」

杏子「別に、アタシは……」

103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:42:19.45 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「人間は敵だ。しかし例外というものはどこにでもある。魔王様やお前のように、な」

杏子「アタシは人間じゃねえし……」

ビネガー「フヒヒヒ! 魔法少女とやらの話か?」

ビネガー「ちょうど良いではないか。お前がゾンビだというのなら、より我らに近いということになる!」

杏子「……」


ビネガー「悔しいかな、魔王様はお前になついておる。ソイソーやマヨネーもお前を認めている」

ビネガー「ワシも、まあ……認めてやらんこともないような気がする」

杏子「どっちだよ……」

ビネガー「キョーコ。お前はこの家に必要なのだ。分かるか、ん?」

杏子「……」

104: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:44:47.65 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「フヒヒヒ! たまにはこういう話もせんとな!」

ビネガー「ワシがおちゃらけてばかりと思われたらかなわんわ。……ヒック」

杏子「酒くせえな。やっぱ酔ってんだろ」

ビネガー「酔っとらん、酔っとらん。この程度で……おえっぷ」

杏子「テメェ、ここで吐いたらしょうちしねえぞ」


ビネガー「う~む。やはり飲みすぎたか? キョーコの姿が複数見えるわ」

杏子「……」

ビネガー「1、2、3……おお! 13人のキョーコがおるわい! 圧巻だな、フヒヒヒ!」

杏子「……!」

ビネガー「それだけおればお前ひとりで……人間どもを……ギッタンギッタン……に……」


ビネガー「……zzz……」

105: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:46:45.00 ID:fTX7Dw+Uo
杏子「……こんなとこで寝るんじゃねーよ……。風邪引くだろうが……」

杏子「……」

杏子「……ビネガー、おい……。熟睡してやがんのか……?」

杏子「……」


杏子「……すぅ……」

杏子「『ロッソ・ファンタズマ』……!」


杏子「……っ!」

杏子「なんで使えるんだよ……クソッ……」

杏子「……」



杏子「……家族……か……」


――――

―――



106: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:48:27.48 ID:fTX7Dw+Uo
マヨネー「いや~ん!」

ソイソー「くっ、3人がかりでも太刀打ちできぬか……!」

ビネガー「んな、アホな!」

杏子「さすがにもう、どうしようもねえだろ?」


ビネガー「まだだ……まだ終わらんぞ!」

まどか「すごい執念だね」

魔王「逃がさん……」

杏子「ソイソーとマヨネーはこのままでいいのかよ?」

魔王「捨て置け。そいつらよりもビネガーのほうが厄介だ」

ソイソー「……」

107: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:50:30.61 ID:fTX7Dw+Uo
A.D.600 ビネガーの館 最奥


ビネガー「魔王様……。あくまで、ワシを倒そうとされるか……」

魔王「……」

ビネガー「ともに戦い、魔族の世界を作ろうという夢は、ウソだったのか!」

魔王「……私は力がほしかっただけだ。ラヴォスを呼び出すため、貴様らを利用しただけのこと……」

杏子「……」

ビネガー「ワシは負けぬ! ワシが負けたら、魔族の未来はどうなる!」



ビネガー「ワシは……ワシは、負けるわけにはいかんのだ!!」

108: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:52:22.47 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「ビネガー……バリアーッ!!!」

まどか「えっ!?」

杏子「チッ……。そういやまだこれがあったか」


ビネガー「あらゆる攻撃をうけつけぬこの無敵のバリアー! 突破できるものなら突破してみろ!」

杏子「わりいが、その手は通じねえよ」

まどか「どういうこと?」

杏子「本人に攻撃する必要はねえ……。仕掛けを作動させるため、背後のスイッチを……こうするのさ!」

109: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:54:43.99 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「むっ! 多節棍を伸ばしてスイッチを押しただと!」

魔王「さらばだ、ビネガー……」


ビネガー「……フヒヒヒヒヒヒ! 引っかかったな!!」

魔王「なに!?」

ビネガー「貴様らが仕掛けを作動することなどお見通しよお!!」

杏子「しまった! フェイクか!」

まどか「お、落とし穴が!」

ビネガー「アディオス! アミ~ゴ!」


――――

―――



110: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:57:37.44 ID:fTX7Dw+Uo
杏子「どういうことだよ、人間の領地に侵攻するだって!?」

杏子「そんなことしたら戦争になるだろ! 分かってんのか、オイ!」

ビネガー「Gフロッグが人間どもに殺されたのだぞ? 黙っているつもりか!」

杏子「それは、あいつが……ひとのモンを盗んだりするから……」


ソイソー「そうだな。それはアイツの責任だ。……お前にも覚えがあるようだが」

杏子「……」

ソイソー「しかし同胞、それも幹部が殺された以上、静観するわけにはいかん。魔族全体の威信にかかわる」

111: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 01:59:05.51 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「首領であるGフロッグがいなくなったことで、ヤツの領地は同族相食む無法地帯……」

ビネガー「それもこれも、すべて人間どものせいだ!」

杏子「言いがかりだろ、それは……」


ソイソー「くどいぞ。事ここに至ってはやむなし。もはや、今までのような小競り合いでは済まされん」

マヨネー「あきらめなさいヨ。ど~せ、遅かれ早かれこうなる運命だったのヨネ」

ビネガー「『報恩報復』の掟、まさか忘れたわけではあるまいな!?」

113: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:01:09.12 ID:fTX7Dw+Uo
杏子「……ジャキ! お前はそれでいいのかよ!?」

魔王「……ラヴォスを呼び出すための儀式、そのための魔王城建設……。財が要る」

魔王「人間どもが我が領地を騒がすというのであれば、邪魔者であるヤツらは排除せねばならん」

杏子「そんな……」


ビネガー「キョーコ。魔王様に対してその呼び方は、もうやめるのだ」

ビネガー「王たる器にふさわしきお姿に成長された魔王様を、いつまでも子ども扱いするな」

杏子「……んだよ、それ……。ジャキは、ジャキだろ……」

魔王「……」

ビネガー「魔王様はこれより我ら魔族を率い、にっくき人間どもを駆逐し、世界を征服なさるのだ!」

114: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:05:26.75 ID:fTX7Dw+Uo
魔王「杏子。選ばせてやる」

杏子「え?」

魔王「魔族としてここに残り、私に忠誠を誓うか……」

魔王「それとも人間として去り、好きに生きるか……」

魔王「どちらの道を選ぼうとも、我らは口出しせん。お前が決めろ」


魔王「自分の行くところは自分で……だろう?」

杏子「……」

115: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:07:30.32 ID:fTX7Dw+Uo
杏子「……アタシは……魔族じゃねえ……」

マヨネー「……」

杏子「けど、人間でもねえ……。どっちにもなれねえ半端者だ……」

ソイソー「……」

杏子「なら……一緒にいてくれよ。ひとりぼっちは……さびしいもんな……」

魔王「……そういうことだ、ビネガー」


ビネガー「ハッ。……ならばキョーコよ。お前はもう『佐倉杏子』ではない……」

ビネガー「魔王四大将軍がひとり、『幻魔戦士オフィーリア』だ!!」


――――

―――



116: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:11:24.09 ID:fTX7Dw+Uo
「――ちゃん! 杏子ちゃん!」


杏子「……ん……あ……?」

まどか「杏子ちゃん! 大丈夫?」

杏子「まどか……。あ、いてっ……」

まどか「どこか打ったの!?」

魔王「情けないヤツだ。受身も満足に取れんとは」


杏子「そうか、ビネガーの野郎に落とし穴にハメられたんだっけか……」

魔王「ただ下の階に落とされるだけのものであったのは不幸中の幸いだ。特にお前にはな」

杏子「はいはい、油断してスイマセンでした。まどかは大丈夫だったのか?」

まどか「ジャキくんがとっさにかばってくれたからね!」

杏子「ほーお?」

魔王「……フン」

117: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:13:50.61 ID:fTX7Dw+Uo
杏子「で、アタシはどれくらい気絶してたんだ?」

まどか「数分ぐらいだと思うけど……」

杏子「なら、アイツらはまだ逃げおおせちゃいねえよな」

魔王「数分だろうが数時間だろうが同じこと」

魔王「ヤツらに逃げ場など、もはやない。ここで我らと雌雄を決するしかないのだ」

杏子「……」

魔王「行くぞ。今度こそ決着をつけてやる」


…………



118: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:15:28.78 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「ムダ、ムダ、ムダァァァァァッ! 何度来ても同じことよ!」


杏子「もう同じ手は通じねえぞ!」

ビネガー「フフン、それはどうかな? 見るがいい!」

魔王「これは……!?」

まどか「スイッチがいっぱいあるよ!? どれが本物なの……?」

ビネガー「フヒヒヒ! どうだ、分かるまい!」

杏子「テメェ……どうやってこれだけのダミーを……」

ビネガー「ジェバンニが数分でやってくれました」

杏子「誰だよ!!」

119: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:17:29.34 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「どうしたあ? 端から順に押していったらどうだ。もしかしたら当たるかもしれんぞ!」

まどか「そのたびに落とし穴だよね……」

魔王「戻ってくるあいだにさらにダミーが増えることも考えられるな」


ビネガー「貴様たちではワシは倒せん! とっとと帰れ!」

杏子「クソっ、ジリ貧かよ……! どうする、ジャキ!」

魔王「……知らん」

杏子「使えねえな!?」


まどか「……」

120: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:19:00.75 ID:fTX7Dw+Uo
まどか「あーあ。これじゃどうしようもないよね」

杏子「オイ、音を上げてる場合じゃ……」

まどか「誰か助けてほしいなあ。正解のスイッチ押してくれないかな?」

まどか「そうしたらわたし、感激して思わず契約とかしちゃうかも」

杏子「……は?」



QB「そそそそれは本当かい、まどか!!」

ビネガー「キュゥべえ君!? なんで生きてるの!」

121: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:21:19.91 ID:fTX7Dw+Uo
QB「任せてよ! 僕は内部の者だ。どれが本物のスイッチか分かっている」

QB「実は、見えているものは全部フェイクで、正解は柱の陰にあるコレさ」

ビネガー「そ、そのスイッチは! おのれ……『スイッチ』を押させるなーッ!」

QB「いいや! 限界だ! 押すね! 今だッ! ……ぽちっとな」

ビネガー「うおおおおっ、謀ったなシャア!!」



パカーン!

ビネガー「ビネガー王国に栄光あれえーッ!!!」ヒュウウウウウ...


杏子「……」

魔王「……」

まどか「ビネガーさん、ボッシュートです」チャラッチャラッチャーン

122: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:23:16.82 ID:fTX7Dw+Uo
QB「どうだいまどか! 僕は役に立ったろう?」

まどか「うん。ありがとう、キュゥべえ」


QB「そ、そ、それじゃあ宣言どおり、契約してもらおうかな……?」

QB「こ、この業績が認められれば……僕も晴れて中央勤務だ! グッバイ、辛く苦しい地方業務!」

QB「こんなにうれしいことはない! さあまどか、願いを早く! ハリー! ハリーハリー!」

QB「そうか、さっきの『スイッチ押してくれ』ってのが願いだったんだね!?」

QB「そ、それならもう契約しちゃっても、い、いいよね? よよよよし……!」

QB「こんなビッグな仕事は久しぶりだ! もう僕自身がエントロピーを凌駕しそうだよ!」

123: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:25:34.88 ID:fTX7Dw+Uo
まどか「キュゥべえ」

QB「なんだい、まどか!」

まどか「契約すると言ったな。あれはウソだ」

QB「……」



QB「えっ」

126: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:27:57.51 ID:fTX7Dw+Uo
まどか「……」

QB「な、なんのつもりだい? 僕を持ち上げたりして……」

まどか「今ならできる気がする……」


まどか「『フィニトラ・フレティア』ーッ!!!」

QB「キュップウウウウウウウウイイイィィィィィ...!!!」



杏子「落ちてったな……落とし穴の中に……」

魔王「燃えるゴミは月・水・金」

129: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:29:46.53 ID:fTX7Dw+Uo
まどか「……人間ってずるい生き物だよね……」

杏子「……」

魔王「……」



まどか「クラスのみんなには、内緒だよっ☆」

杏子「……」

魔王「……」

130: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:32:15.19 ID:fTX7Dw+Uo
A.D.600 ビネガーの館 宝物庫


まどか「ここは……?」

魔王「宝物庫だ。ビネガーめ、やはり魔王城から財物を持ち込んでいたようだな」

杏子「せっかくだから頂戴していこうぜ」

まどか「いいのかな?」

魔王「元は私のものだ。問題ない」


杏子「おっ? あの一番奥にある宝箱、装飾が段違いに派手だな」

杏子「かなり大事なものが入ってると見たね。まずはこいつをいただくか」

131: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:34:24.45 ID:fTX7Dw+Uo
杏子「……?」

まどか「何が入ってたの? これ……額縁とズタ袋かな?」

杏子「額縁に入ってんのは……絵か」

魔王「! ……それは……」

まどか「子供が描いたものだね。タツヤがよくこういう感じの描いてたなあ」

杏子「これがビネガーの大事なもの……?」


ソイソー「分からんのか、キョーコ」

杏子「! ソイソー……それにマヨネーまで……」

132: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:36:25.19 ID:fTX7Dw+Uo
マヨネー「キョーコちゃん。それはあたいたちヨン」

杏子「え?」

まどか「あ、そうか! 真ん中にいるのが杏子ちゃんで、ソイソーさんとマヨネーさんと……」

まどか「後ろにいるのはビネガーさんかな? じゃあこの中央の子供は……」

杏子「まさか……ジャキ、アンタ……」

魔王「……」


ソイソー「察しのとおり、それは魔王様が幼少のみぎりに描かれた我らの集合絵だ」

マヨネー「魔王城が消滅した時、ビネガーはそれを持って逃げ出してきたのヨ……」


――――

―――



133: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:38:12.60 ID:fTX7Dw+Uo
ソイソー「なんということだ。我らの象徴……魔王城が……」

マヨネー「跡形もなく消えちゃったのヨネ……。ラヴォス……アイツのせいで……」


ソイソー「我々はとんでもないものを呼び起こしてしまったのかもしれんな」

マヨネー「結局、不思議な光に包まれてまた地中に戻って行っちゃったけど、もし暴れだしていたら……」

ソイソー「魔王様はあんなヤツと戦うおつもりだったのか……」

134: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:40:08.43 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「おう、ソイソーにマヨネー。お前らも無事だったか」

マヨネー「ビネガー……」

ビネガー「な~にをしょぼくれておる。見ろ。部下どもに運ばせたゆえ、魔王城の財産はほれこのとおり」

ソイソー「相変わらず抜け目のないヤツだ」

ビネガー「ワシの館に戻るぞ。この財産と我ら3人が残っていれば、再起は可能!」


マヨネー「再起ったって、魔王様もいないのに……ん? 何か落ちたのヨネ、ビネガー」

ビネガー「おっと、いかんいかん」

ソイソー「それは……幼きころの魔王様が描かれた絵ではないか」

ビネガー「これだけは部下どもに運ばせるわけにはいかんからな」

マヨネー「アンタ……」

135: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:43:16.98 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「魔王様もキョーコもきっと戻ってくる。その時にワシらがおらんかったらどうする!」

ソイソー「なぜそう言い切れる? 生死も不明であるのに……」

ビネガー「あのふたりがそう易々と死ぬと思うのか?」

マヨネー「それはそうだけど……戻ってくるとは限らないわヨ?」



ビネガー「何年たとうが、どれだけ離れていようが、根っこの部分ではつながっておる」

ビネガー「そしていつの日か、必ず帰ってくる場所……」


ビネガー「そういうもんじゃろが、『家族』ってのは! フヒヒヒ!!」


――――

―――



136: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:46:01.61 ID:fTX7Dw+Uo
魔王「……」

杏子「……あの野郎……」

魔王「……それがどうした? そのような話をして、いまさら命乞いか?」

まどか「ジャキくん……」


ソイソー「そうではありませぬ。ただ知って欲しかっただけのこと」

マヨネー「人間と戦ううち、あたいらの心はバラバラになっちゃったけど……」

ソイソー「ヤツだけは、信じていたのです。いつの日かまた、昔のような日が来るということを……」

魔王「……」


ソイソー「もはや未練はありませぬ。魔王様に討ち取られるならば、本望というもの」

マヨネー「あ~あ。美人薄命ってやっぱりホントだったのヨネ」

ソイソー「さあ、ひとおもいに……」

137: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:48:18.99 ID:fTX7Dw+Uo
杏子「まだ聞いてねえことがあるぞ」

ソイソー「なに?」

杏子「このズタ袋、これはなんだよ。こいつもビネガーの宝だってのか?」


マヨネー「それはキョーコちゃんへのあたいたちからの贈り物よ」

ソイソー「いつの日かお前が戻ってきた時、渡そうと思っていた」

ソイソー「我ら魔王四大将軍が再結集し、新たな門出を誓う証としてな……」

杏子「……」


まどか「……開けてみたら? 杏子ちゃん……」

杏子「……ああ……」

138: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:51:00.41 ID:fTX7Dw+Uo
魔王「ほう、これは……」

まどか「わあ、刀だ! なんだかすごい値打ちものっぽいけど……」

ソイソー「我が愛刀、『ソイソー刀2』。杏子は槍使いだが……器用だからな。刀も使いこなせるだろう」

ソイソー「副武器にでもしてくれ。必要なければ、得意な者に譲ってもいい」


まどか「二刀流だよ、杏子ちゃん! あ、それともクロノさんかさやかちゃんに渡す?」

杏子「……」

まどか「どうしたの? 気に入らないの?」

杏子「いや、刀はいいんだよ。ソイソーらしい、実用的な品だしな」

ソイソー「喜んでもらえたようでなによりだ」

杏子「けど……けどな……」



杏子「なんであとのふたつがブラとパンツなんだよ!!!」

139: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:53:35.50 ID:fTX7Dw+Uo
マヨネー「あ、そのブラはあたいのヨ」

杏子「だと思ったよ!!」

マヨネー「女の子の必需品ヨネ? お気に入りの柄なのヨ~」

杏子「なんで自分のを渡すんだよ!! サイズが合わねえだろ!!」

マヨネー「……パッドもつけてあるわヨ?」

杏子「いらねえよ!! 嫌味か!!!」


杏子「てことはこのパンツ、ビネガーのだろ!! なに考えてんだ、あのヘン  !!」

ソイソー「買ったばかりでまだ一度もはいてないそうだぞ?」

杏子「知らねえよ!! そういう問題かよ!!」



杏子「アホふたりのせいで何もかも台無しだよ!! ふざけんな!!!」

140: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:56:23.86 ID:fTX7Dw+Uo
杏子「ちくしょう、ツッコミが追いつかねえ! ほむら呼んで来い、ほむら!」

まどか「きょ、杏子ちゃん、落ち着いて……」

杏子「帰る! アタシはもう帰るからな! やってられっか!!」


マヨネー「あのー……あたいらの処遇は……」

杏子「勝手にしろよ! もうどうでもいいわ!!」

マヨネー「えー……」


ソイソー「魔王様……」

魔王「ビネガーに伝えろ。魔族の残党をまとめ上げ、ひっそりと暮らせとな……」

ソイソー「……寛大なるご処置、感謝いたします」

魔王「……フン……」

141: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 02:58:29.31 ID:fTX7Dw+Uo
杏子「クソッ、イライラする……。糖分が足りねえ、糖分が!」

杏子「帰ったらポッキー箱食いしねえと……」


まどか「待って、待って。杏子ちゃん、忘れもの。はい、刀とブラとパンツ」

杏子「なんで持ってくんだよ! 捨てろよ!!」

まどか「ダメだよ。せっかくビネガーさんたちが選んでくれたものなのに」

杏子「いらねええっつってんだろがあああ!!!」



まどか(ティヒヒ。良かったね、杏子ちゃん。みんなと仲直りできて……)

まどか「……」

まどか「あれ? そういえば、何か忘れてるような……」

142: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 03:01:04.10 ID:fTX7Dw+Uo
ビネガー「おいィ!? ワシを忘れるな、クソ!」

ビネガー「落とし穴の途中で体が挟まった! ビネガーピ~ンチッ!!」

ビネガー「オイ、誰かいないのか!? ワシを助けろ!!」


QB「それが君の願いかい?」

ビネガー「キュゥべえ貴様ァ! よくも裏切りおったな!」

QB「社長! 僕と契約して、魔法少女に……いや、少女じゃなかったね」



QB「僕と契約して、魔法豚になってよ!」

ビネガー「豚扱いはやめろォォォォォッ!!!

143: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 03:02:59.71 ID:fTX7Dw+Uo
第11話(マルチイベント編-2)「ビネガーの館」 終了


  セーブしてつづける(マルチイベント編-3へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

155: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:02:38.07 ID:jjvNA9vwo
第12話(マルチイベント編-3)「ジェノサイドーム」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

156: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:08:14.00 ID:jjvNA9vwo
A.D.2300 アリスドーム 地下の情報センター


ほむら「ロボのふるさとについての情報、何か見つけた?」

ルッカ「そうねえ……。とりあえず、『ジェノサイドーム』ってのがあることは分かったわ」

ロボ「訪れたことがない場所デスネ。調査してみる価値はありマス」

ほむら「行ってみましょうか。何か手がかりがあるといいんだけど」


…………


A.D.2300 アリスドーム 居住区


ドン「進展はあったかね?」

ルッカ「ジェノサイドームってところに行くことにします」

ドン「そうか。気をつけなされ、最近はちと物騒での……」

ロボ「何かあったのデスカ?」

ドン「うむ、それがな……」

157: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:11:33.01 ID:jjvNA9vwo
ドーム民A「長! 大変です!」

ドン「どうした?」

ドーム民A「また襲われました……。しかも今度は、ふたり同時に」

ドン「むうう、まずいな……」


ほむら「襲われた……? 誰に?」

ドン「機械たちにじゃ」

ルッカ「え?」

158: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:14:10.93 ID:jjvNA9vwo
ドン「あんたらに『元気』をもらって以来、私らはドームに引きこもることをやめ外の世界を探索しだした」

ドン「近くにある32号廃墟。あすこを取り仕切っておる『ジョニー』というロボット……」

ルッカ「ジョニーっていうと……クロノとバイクレースをしたヤツね」


ドン「正にそれ、あんたらのお仲間クロノさんのおかげじゃ」

ドン「ジョニーは『走り』を通じて人間の良さに気づき、私らに友好関係を結ぼうと持ちかけてきた」

ドン「彼とその一派のおかげで、こんな世界でもなんとかやってこれた……」

159: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:18:14.50 ID:jjvNA9vwo
ドン「しかしじゃ。ここ最近になって、急に彼らは再び人間を襲うようになった」

ドン「彼らだけではない。機械たち全体が人間に対して激しい殺戮を繰り返すようになりつつある」

ドン「以前にも増してな。このままでは我らは滅亡を待つしかない……」

ロボ「そんな事態になっていたトハ……」

ほむら「機械たちに何かあったのかしら?」


ドーム民B「おおお、長!! 緊急事態です!」

ドン「またか! 今度は何事じゃ?」

ドーム民B「32号廃墟のロボットたちがこのドームに襲撃を!」

ルッカ「なんですって!?」

160: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:21:11.21 ID:jjvNA9vwo
バージョン2.0A「ヒャッハー! 汚物ハ消毒ダ~ッ!!」

ドーム民「うわあああっ!」


ドン「なんということだ……! ドームに直接襲撃してくるなど、これまで一度もなかったというのに!」

ほむら「このままじゃ、ここの人たちが……!」

ロボ「……させマセン!」

ルッカ「ロボ!? ちょ、ちょっと……!」


ロボ「それ以上の暴挙ハ、このワタシが許しマセン!」

バージョン2.0B「ナンダ、テメーハ? ロボットノ癖ニ人間ニ味方スル気カ?」

バージョン2.0C「コイツ、『マザー』ノ命令ニ逆ラウツモリカ!」

ほむら「マザー……?」

バージョン2.0D「構ウコタァネェ! フクロニシテヤロウゼ!」

161: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:24:35.52 ID:jjvNA9vwo
バージョン2.0A「ウ……ウゥ……」

バージョン2.0C「ナンテ強サダ! 手モ足モ出ネェ!」

ルッカ「見たか! あんたらなんてロボの敵じゃないわ!」

ほむら「ただの雑魚だったわね」

ロボ「サア! もう、こんなひどいことハやめるのデス!」

バージョン2.0E「畜生、コウナッタラ……アニキ! アニキィ~!」



♪暴走ロボ軍団ジョニー


ジョニー「オイオイ。ナンダ、コノザマハ!」

ルッカ「ジョニー!?」

162: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:27:51.10 ID:jjvNA9vwo
ジョニー「ウン? オメー……ナゼ俺ノ名ヲ知ッテイル!」

ルッカ「何言ってるの、私よ。ルッカよ! クロノと一緒にいた……」

ジョニー「クロノダト……? クロノ……聞イタコトガアルヨウナ……」


ルッカ「忘れたの? 激しいバイクレースの末に、あんたはクロノを『ブラザー』だと認めたじゃない!」

ルッカ「また一緒に風になろうぜって……あんたたち、お互いを認め合ってたじゃないのよ!」

ほむら「イイハナシダナー」


ジョニー「馬鹿ナコトヲ……知ラネェ……俺ハクロノナンテ野郎ハ知ラネェ……」

ルッカ「ジョニー……あんた一体、どうしちゃったのよ? クロノを忘れるなんて……」

ジョニー「ヤメロ……ソノ名ヲ口ニスルナ……。頭ガイテェ……!」

バージョン2.0D「アニキ、ヤベェ! アニキノCPUガ熱暴走シテマスゼ!」

163: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:31:46.51 ID:jjvNA9vwo
ロボ「これハ何かおかしいデスネ」

ほむら「クロノとアイツのいきさつは詳しく知らないけれど、確かに様子が変ね」

ジョニー「ウオオォォ……! ナンダ、コノ胸ノ奥カラ溢れ出ス熱ハ!?」


ルッカ「……分かったわ、ジョニー。あんたが忘れてしまったというのなら……」

ルッカ「もう一度『レース』で勝負よ!!」

ジョニー「ナンダト……?」


バージョン2.0B「コイツ馬鹿ダゼ! 峠最速ノアニキニ『走リ』デ勝負ナンテナ!」

ルッカ「あの時の気持ち、思い出させてあげるわ……この、ほむらがね!」

ほむら「なんでよ!? 自分でやりなさいよ!」

ルッカ「肉体労働は専門外だし」

ほむら「私だってレースなんてしたことないわよ!」

164: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:34:16.62 ID:jjvNA9vwo
バージョン2.0E「粋ガルノハ結構ダガ、テメーラ『クルマ』持ッテンノカイ?」

ルッカ「確かジェットバイクが32号廃墟に……」

ドン「アレならもう壊れたぞ。だいぶ年寄りじゃったからの」

ルッカ「え……」

バージョン2.0A「ハッハァ! 『クルマ』モ無シニ、ドウヤッテ喧嘩(バト)ロウッテンダイ?」

ルッカ「むぐぐぐ……」

165: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:36:51.70 ID:jjvNA9vwo
ドン「……安心しなさい。私に考えがある」

ロボ「どうするのデスカ?」

ドン「『クルマ』を用意してあげよう。私のお古でスマンがな……」

ルッカ「さっすがドンさん! よし、がんばってね、ほむら!」

ほむら「イヤよ!」


ジョニー「話ハ決マッタヨウダナ……。持ッテキナ、オメーラノ『クルマ』ヲ……」

ジョニー「俺モ本気ダ。『四輪モード』で勝負シテヤルゼ!」

ほむら「聞けよ!」

ドン「頼んだぞ、あんたたち。さあ、乗るがいい……」



ドン「この……『ハチロク』にな!!」

167: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:41:06.80 ID:jjvNA9vwo
A.D.2300 32号廃墟 ハイウェイ跡


バージョン2.0A「準備ハイイカ? ソレジャア行クゼ……。スタート、10秒前……」

ジョニー「……」

ほむら「なんでこんなことに……」


バージョン2.0A「5……4……2……1……GO!!!」

ジョニー「オラアァ!!」グオオオォン!!

ほむら「……!」ブオォン!

168: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:45:23.25 ID:jjvNA9vwo
ロボ「スタートダッシュはジョニーさんの圧勝デスネ」

ルッカ「もう、バカ! なにボーッとしてんのよ、アイツ!」

バージョン2.0B「勝負ニナラネェヨ! ハチロクノ加速ナンザ止マッテ見エタゼ!」


ジョニー「遠慮ハシネェゼ! アノハチロクガ、バックミラーニ映ルコトハ二度トネェ……」


バージョン2.0B「ヒャッハー! アニキノブッチギリダ! アットイウ間ニ見エナクナッチマッタ!」

ロボ「これは少しマズイ展開かもしれませんネ……」


ほむら「……」

169: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:47:29.02 ID:jjvNA9vwo
ほむら「……やれやれ、仕方ないわね」


♪バイクチェイス

ヴオオオオオォォン!!



バージョン2.0C「ウオッ!?」

無線『ドウシタ、状況ヲ報告シロ!』

バージョン2.0C「コチラ第1コーナーダガ……スゲーゼ、ハチロクのライン……」

バージョン2.0C「ガードレールカラ5cmト離レテネェ! アンナスピードデ曲ガルヤツ、見タコトネェゾ!」

無線『ナンダッテ!?』

170: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:49:37.64 ID:jjvNA9vwo
ジョニー「!? マサカ……!?」

ほむら「……」


ジョニー(差ガ詰マッテイルダト……!? イヤ、アリエネェ! ソンナコトガアッテタマルカ!)

ほむら「……」


無線『なっ、なんだあのハチロク!?』

ルッカ「何があったの!? アリスドームのみなさん!」

無線『すごいスピードでケツを流しながら突っ込んで、そのままスゲー速さで抜けてったぞ!?』

無線『見てるほうがゾッとするコーナーリングだ!』

171: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:51:51.73 ID:jjvNA9vwo
ジョニー(追イツカレタ……!? 何ガ起コッテル! 気ガ変ニナリソウダゼ、クソッ……!)

ほむら(伸びが違うわね……。ちょっとでも直線が長いと、かなり差をつけられる……)


無線『コチラ、スケートリンク前ノストレート! アニキガ煽ラレテル!』

バージョン2.0B「ソンナ馬鹿ナ……!?」

ロボ「オオ……!」

ルッカ「と、鳥肌立ったわ……」

バージョン2.0A「ナントイウ誤算! 秋名ニコレホドノ凄腕ガイルトハ……!」

172: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:54:06.84 ID:jjvNA9vwo
ジョニー(直線デハ俺ノホウガ速い……ナノニ食イツカレルノハ、コーナーワークデ負ケテイルセイダ……)

ジョニー(パワーデ劣ル相手ニ追イ込マレルナンテ、走リ屋トシテ最大ノ屈辱!)

ジョニー(認メルカ……! ソンナコト、死ンデモ認メタクネェ……!)


ほむら(いくら追い回したところで、抜かなければ勝ちはないわよね……)

ほむら(……仕方ない、あれをやるしかないか……)



ほむら「仕掛けるポイントは、この先の5連続ヘアピンカーブ……!」

173: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:56:13.07 ID:jjvNA9vwo
ドン「スキール音が聞こえてきおったな……」

無線『ドンさん! 状況が分かるように実況、お願い!』

ドン「分かっておる。このカーブですべてが決まるぞ……! 来た、ほとんど同時じゃ!」


ドン「おおおっ! 完璧なブレーキングドリフトじゃ! ジョニーさんが突っ込みで負けておる!」

ドン「2個目のヘアピンに入るぞ……! まったく差がない、立ち上がりも互角じゃ!」

ドン「ジョニーさんがアウトに行った……。ハチロクは……なんじゃと!?」


無線『どうしたの、ドンさん!?』

ドン「ル、ルッカさんや……私は夢を見ておるのだろうか……!?」



ドン「ハチロクがスピードを上げおったわい!!」

174: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:57:56.47 ID:jjvNA9vwo
ジョニー(ヘアピンナノニ減速シネェダト!? 何ヲ考エテヤガル!?)

ほむら「……」


ドン「オーバースピードじゃあ! ブレーキがイカれたのか!?」

ジョニー「死ヌ気カ、オメー!?」



ほむら「……ふっ!」

ガゴアアアッ!!!

175: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 22:59:45.22 ID:jjvNA9vwo
ルッカ「ドンさん! どうなったの!? ハチロクは無事なの!?」

無線『……ジョニーさんが抜かれおった……。あっけなく……インから、スパーッと……』

バージョン2.0B「アニキガ!?」

バージョン2.0A「状況ガ分カラネェゾ! チャント説明シロ!」


無線『あれは伝説の"溝落とし"……!』

無線『タイヤをわざとコーナーの溝に落とし、遠心力を抑止して高速度で無理やり曲がったのじゃ……!』

ロボ「ナント……!」

176: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:01:21.59 ID:jjvNA9vwo
ドーム民「GOAL!! ハチロクの勝利だ!」

バージョン2.0E「アニキガ負ケタ……」


ほむら「はあ。どうにかなったわね……」

ジョニー「ヤラレタゼ……。二度モ人間ニ負ケルトハナ……」

ほむら「え? 二度って……」


ルッカ「おーい!」

ロボ「見事な走りデシタネ!」

ほむら「ふたりとも……」

177: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:03:06.31 ID:jjvNA9vwo
ルッカ「やったじゃない、タクミ!」

ロボ「さすがタクミさんデス」

ジョニー「秋名最速ノ称号ハオメーノモノダ、タクミ」

バージョン2.0E「人間ノ癖ニヤルジャネーカ、タクミ」

ドン「いやはや、この年にしてとんでもないものを見せてもらったよ。ありがとう、タクミさん」

ドーム民「タクミさん、マジすげーっス!」


ほむら「……アケミですけど」

178: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:07:56.23 ID:jjvNA9vwo
ほむら「それよりジョニーさん、さっきのセリフ……。あなた、記憶が?」

ジョニー「アア、思イ出シタゼ。『マザー』ニプログラムヲ書キ換エラレハシタガ……」

ジョニー「ヤツトイエドモ、走リ屋ノ『魂(ソウル)』マデハ好キニデキナカッタヨウダゼ」


ルッカ「『マザー』ってなによ?」

ジョニー「ジェノサイドームノ中枢コンピュータダ。俺タチ機械ノ造物主トモ言エル存在……」

ドン「なるほど。ここ最近の機械たちの暴走は、マザーの仕業ということじゃな」

ルッカ「もしかして、『機械のふるさと』って……」

ロボ「……行ってミマショウ、ルッカ、ほむら。どちらにせよ放置してハ置けマセン」


ジョニー「オメーラ、マタイツデモ来イヨ。一緒ニ風ニナローゼ! ベイベー!」


…………



182: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:12:58.55 ID:jjvNA9vwo
A.D.2300 ジェノサイドーム 入り口


ほむら「ここがジェノサイドーム……」

ルッカ「ロボットの生産工場ね。この時代の機械は、すべてここで造られているのかしら……」



「ワタシの心に勝手に押し入ろうとしているのはドナタ……?」


ルッカ「!? スピーカーから声が!」

ロボ「この音声データ、ワタシのデータバンクの最奥に記録サレテいるものと一致シマス。スナワチ……」

ほむら「マザー……!」

183: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:18:09.70 ID:jjvNA9vwo
「まあ……おかえりなさいR-66Y……。イイエ、『プロメテス』……」

ほむら「プロメテス? それがロボの本当の名前……?」

ルッカ「じゃあやっぱり、ここはロボの生まれ故郷……」

ロボ「……」


「あら? 後ろは生き物? 生き物が来るなんてずいぶん久しぶりね……」

「歓迎しますわ。さあ、どうぞ中へ」

「ワタシのところにたどり着くのを楽しみにしていマスヨ。クスクス……」

ルッカ「上等じゃない! 首を洗って待ってなさいよ!」


…………



184: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:20:25.60 ID:jjvNA9vwo
A.D.2300 ジェノサイドーム 2F


バージョン4.0「損傷甚大……任務続行不可能……」


ほむら「大層な歓迎っぷりね。躊躇なく殺しにきてるわ」

ロボ「ワタシたちは試されているのかも知れマセン」

ルッカ「たどり着けるものならたどり着いてみろってわけ? 気に入らないわね」

ほむら「マザーがどういうヤツか知らないけど、ずいぶん性根の曲がった……あら?」


ロボット「……」


ルッカ「あいつ……ロボと同型機……?」

ほむら「違うのはカラーリングくらいね。まさか……」

185: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:23:51.30 ID:jjvNA9vwo
ロボット「おかえりなさい、プロメテス」

ロボ「……アトロポス……? まさかアナタは、アトロポス!?」

アトロポス「ええ。おひさしぶりね」


ルッカ「知り合い?」

ロボ「ワタシの妹のような存在デス。また会えるトハ……!」

ほむら「ロボに妹がいたのね」


アトロポス「なにをしているの、プロメテス。こっちにいらっしゃい。もう、演技はいいのよ」

ほむら「演技……?」

186: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:27:43.90 ID:jjvNA9vwo
アトロポス「フフッ。プロメテスは他のRシリーズと違って、特別な任務についていたのよ」

アトロポス「人間と行動をともにして、ヤツらの生態をしらべるってね……」

ほむら「なんですって? 何を馬鹿なことを……」

アトロポス「ウソではないわ。ね、プロメテス?」

ロボ「……」


ほむら「ロボ! なぜ黙っているのよ!?」

ルッカ「そうか……。ロボのメンテナンス中、どうしてもいじれないブラックボックスがあった……」

ルッカ「ロボの本当の命令プログラムはそこに隠されていたのね……」

ほむら「ルッカ……あなたまで、何を言っているの……!?」


アトロポス「馬鹿な人間たち。本当に彼が仲間になったとでも思っていたの?」

アトロポス「待っててねプロメテス。うしろの人間を排除してから、マザーに会いに行きましょう」

ほむら「ロボ! なんとか言ってよ!」

187: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:30:14.32 ID:jjvNA9vwo
アトロポス「……? 何をしているの。プロメテスどいて。そいつら殺せない」

ロボ「……このふたりを傷つけるのは、許しまセン」

ほむら「ロボ……」


アトロポス「やっぱり故障しているようね。そのふたりがバグの元かしら?」

アトロポス「すみやかに消去して修理する必要があるわね」

ルッカ「……ロボは、どこも壊れてなんかいないわよ!」

アトロポス「ではこれがプロメテスの意思だと? そんなことありえないわ」

188: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:32:13.95 ID:jjvNA9vwo
ロボ「アトロポス……。アナタはワタシの知っているアトロポスではありマセン……」

アトロポス「アハハッ! そうよ、私は生まれ変わったの」

アトロポス「マザーのおかげで、人間どもをより効率よく排除できるようにね!」

ロボ「……」



アトロポス「最後の警告よ。そこをどきなさい、プロメテス!!」

ロボ「ワタシの名は、『ロボ』デス」

アトロポス「……プロメテスゥゥゥッ!!!」

189: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:34:07.43 ID:jjvNA9vwo
ロボ「グッ!?」


ほむら「ロボ! こいつ……ッ!」

ルッカ「よくも私たちの大切な仲間をぶっ飛ばしてくれちゃったわね!」

ほむら「当然、覚悟はできてるんでしょうね!?」

アトロポス「何が仲間よ。勘違いもはなはだしいわ。ゴミは今すぐ、片付けてあげる!」


ロボ「待って……。待ってクダサイ!」

ほむら「待つものですか。まさか、かばい立てする気じゃないでしょうね?」

ルッカ「さすがにお人よしが過ぎるわよ」

190: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:35:40.69 ID:jjvNA9vwo
ロボ「分かってイマス。デスカラ、せめて……ワタシひとりに任せてクダサイ」

ほむら「ロボ……」

ルッカ「……分かったわ。でも危なくなったら、関係なしに加勢させてもらうからね!」


アトロポス「言っても聞かないお馬鹿さんには、体で分からせるしかないようね」

ロボ「アトロポス……!」

アトロポス「プロメテス!! 目を覚まさせてあげるわ!」

191: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:37:21.12 ID:jjvNA9vwo
アトロポス「食らえ! 『マシンガンパンチ』!!」

ほむら「あいつ、ロボと同じ技を!?」

ルッカ「同型機だからね……。でも、ロボだって!」

ロボ「やられマセンッ! 『マシンガンパンチ』!!」



ロボ「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」ドドドドドドドド!!!

アトロポス「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!」ガガガガガガガガ!!!


ほむら「ラッシュの速さ比べというわけね!」

192: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:40:10.07 ID:jjvNA9vwo
ロボ「!?」

アトロポス「アハハッ! どうしたの、プロメテス! 動きがスローになってるわよ!」


ルッカ「ロボが押し負けてる!?」

ほむら「そんな、どうして!?」


アトロポス「当然よ。プロメテス、あなたはもはや骨董品の旧型機……」

アトロポス「あなたよりあとに造られ、マザーによる改造もなされたこの私に、性能で勝てると思って?」

ロボ「……!」

アトロポス「でも安心して。すぐにあなたも生まれ変われるわ」

アトロポス「偉大なるマザーによって、人間どもを駆逐する立派な殺戮兵器としてね!」

ロボ「ワタシは、そんな任務はお断りデス……!」

193: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:43:13.48 ID:jjvNA9vwo
アトロポス「まだ言う気? 仕方ないわね。ちょっとそこで、おネンネしてなさい」

アトロポス「『ロボタックル』!!」ガァン!!

ロボ「ウグ……ッ!?」


ルッカ「ロボ!」

アトロポス「フフッ。壁のベッドはかわいそうだけれど、少しだけの辛抱よ」

アトロポス「そこで見ているといいわ。この人間どもが、あっけなく死んでいく様をね」

ほむら「やられるもんですか……! あなただって、ダメージは負ってるはずよ!」


アトロポス「『ケアルビーム』!!」

ルッカ「げっ! 回復しやがったわ……」

ほむら「こいつ、どれだけロボの技を……」

194: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:45:56.21 ID:jjvNA9vwo
アトロポス「まだまだあるわよ。『ロケットパンチ』、『回転レーザー』、『サークルボム』……」

アトロポス「すべての技において、プロメテスを凌駕する! 彼が私に勝てるはずなどないわ!」

ルッカ「威張り散らすんじゃないわよ、ただの猿真似のくせに!」


アトロポス「そうね。プロメテスは優秀だわ。彼の規格は後継のRシリーズに引き継がれた……」

アトロポス「あなたたち人間にはもったいないわ。正しい運用をしてあげないとね」

ほむら「ロボを殺戮の道具になんて、させないわ!」


アトロポス「人間風情があっ! 粋がってるんじゃないわよ! 死になさいッ!!」

195: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:48:26.78 ID:jjvNA9vwo
ロボ「アトロポス……」

アトロポス「! ……何かしら、プロメテス」

アトロポス「邪魔しないでくれる? 今こいつらを消去するから、そこで黙って見てて……」

ロボ「ワタシとの距離が、少し近すぎるのではありマセンカ……?」

アトロポス「……?」

ロボ「うかつデスネ。その位置ハ、散弾銃が最も威力を発揮する距離デス」

アトロポス「何を言っているの? 散弾銃なんてどこにも……」



ロボ「『レミントンM870』!!」

アトロポス「えっ!?」


ズガァン!!

196: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:51:30.35 ID:jjvNA9vwo
アトロポス「ぐああっ!?」


ルッカ「やった! モロに食らったわ!」

ほむら「あれって確か、私の……」


アトロポス「な……!? 何よ、それは! あなたにそんな火器など内蔵されていないはず!」

ロボ「まだまだありマスヨ……。『FN MINIMI M249パラトルーパー』!!」ドガガガ!!

アトロポス「ぐうっ!?」

ロボ「『89式小銃』!!」パラララ!!

アトロポス「がっ……このっ……! ふざけるなあ! そんな旧式の武器で!!」

ロボ「『M26手榴弾』!!」

アトロポス「っ!?」ドカァン!!

197: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:53:47.75 ID:jjvNA9vwo
ほむら「気分いいわ。銃器の発射音って、どうしてこう心揺さぶられるのかしら」

ルッカ「あんた、そういうところだけ男の子の思考ね」


アトロポス「く……うぐっ……くそ……っ!」

ロボ「どうデス、アトロポス。いくら旧式といえド、集中運用されては損害は無視できないデショウ」

アトロポス「なぜ……こんなものを……! プロメテス……あなたは……!」

ロボ「これが仲間の力デス」

アトロポス「な、なんですって……!?」


――――

―――



198: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:55:40.37 ID:jjvNA9vwo
ルッカ「っと、よし……。あとはコレとコレをつないで……」

ほむら「またロボの整備? 精が出るわね」

ルッカ「毎日のメンテナンスが大事なのよー。ロボをいたわってやんなきゃ」

ロボ「苦労おかけしマス」

ルッカ「何言ってんのよ、これぐらい。それ以上のことをあんたは私たちにしてくれてるじゃない」

ほむら「たまにはいいこと言うわね」

ルッカ「『たまには』は余計よ! ていうか、ほむら。ちょっかい出す暇があるなら手伝ってよ」

ほむら「私が?」

ルッカ「理系に強そうなの、あんたぐらいしかいないし」

ほむら「自分ではそんなに詳しいつもりはないんだけど……」

ルッカ「少なくともアレよりかマシでしょ」

ほむら「アレ?」

199: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/01(水) 23:58:47.65 ID:jjvNA9vwo
マール「王様だーれだ!」

さやか「イエーイ、あたしでーす! じゃあ2番と4番でキッス!」

まどか「さやかちゃん、いきなりハードル上げ過ぎだよお~……」

カエル「……俺が2番だ」

クロノ「カエルか。4番は誰だい?」

カエル(女子がくる確率は3/5……分の悪い賭けではない!)

魔王「……」

杏子「あ、コイツだ」

カエル「誰得だよチクショウ!!!」


老人「お前さん方。そろそろ、お茶にせんかね?」

エイラ「うまっ! ケーキ、うまうま!」

マミ「もう。つまみ食いはだめよ、エイラ」



ほむら「ああ……アレ、ね……」

200: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:01:21.65 ID:BSwFP58yo
ルッカ「爆弾、自作したりしてたんでしょ?」

ほむら「それは、ネットで作り方を調べただけで……」

ルッカ「立派なもんじゃない。分かんないトコは教えてあげるから、ほら」

ほむら「強引ね……。ロボ、あなたはいいの?」

ロボ「ハイ、ほむらなら安心デス」

ほむら「あんまり期待しないでよ」

ルッカ「よっしゃ! ほむら、あまってる武器出して。ロボに内蔵するわよ!」

ほむら「魔改造もほどほどにしときなさいよ……」

ロボ「これでワタシもさらにパワーアップですネ」


――――

―――



201: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:03:03.73 ID:BSwFP58yo
ロボ「アトロポス。アナタの言うようにワタシは、時代遅れの旧型デス……」

ロボ「しかしルッカやほむらに日々改良されている今、誰にも負ける気はしマセン」

アトロポス「何が改良よ! 人間にオモチャにされているだけじゃない!」


ロボ「それは違いマス。彼女たちはただワタシの性能を向上させているのではありマセン」

ロボ「信頼と愛。ワタシはそれを受け取ったからこそ、ここまで成長できたのデス!」

ルッカ「ロボ、あんた……そこまで私たちのことを……」

ほむら(聞いてるだけでめちゃくちゃ恥ずかしいわ。よく真顔で言えるわね、ロボは……)

202: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:05:49.01 ID:BSwFP58yo
アトロポス「狂ってる……。プロメテス、あなたは狂っているわ……」

アトロポス「信頼と愛!? そんな不確かなものに頼るあなたは……やっぱり、欠陥品ね!」

ロボ「かまいマセン。欠陥品だろうと、ヒトとともに歩めるというのナラ」

アトロポス「人間どもに、メモリーの1ビットに至るまでいじりつくされたのね……」


アトロポス「もういいわ、プロメテス……。あなたはもはや、私たちの仲間でもなんでもない!」

アトロポス「ここでスクラップになるのがお似合いだわ!」

ロボ「!」

アトロポス「死になさい! 『ロボタックル』!!」

ほむら「ロボ、あぶない!」

203: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:08:15.85 ID:BSwFP58yo
ロボ「迎撃『RPG-7』!!」ドシュッ!

アトロポス「がっ!?」ドカァン!!


ロボ「カウンター『ロボタックル』!!」

ルッカ「組み付いた!」


アトロポス「放せ、プロメテス! この、けがらわしい欠陥品があ……!」

ロボ「……アトロポス。こんな方法でしかアナタを止められないワタシを、許してクダサイ……」

アトロポス「やめろおっ!! プロメテスゥゥゥーッ!!!」



ロボ「『ロケットパンチ』!!!」

204: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:10:28.97 ID:BSwFP58yo
アトロポス「……! ……あ……ぐ……!!!」


ルッカ「ゼロ距離ロケットパンチ! 確実に決まったわね」

ほむら「胸部装甲を貫いているわ。さすがにあれなら、もう……」


アトロポス「……。……」

ロボ「……アトロポス……」

アトロポス「……。……プ……プロメ、テス……?」

ロボ「!」

205: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:12:21.39 ID:BSwFP58yo
ほむら「あいつ、まだ動けるの!? ロボ、離れて!」

ルッカ「いえ、待ってほむら。あれは……」


アトロポス「おひさし……ぶり、ね……? あれ……? なんで……私……壊れているの、かしら……」

ロボ「アトロポス!!」

ほむら「マザーの支配から解放されている……?」


アトロポス「……メモリーバンクが……。そう……確かマザーに……プログラムを、書き換えられる時……」

アトロポス「メモリーを退避させて……そっか、私……。ゴメンナサイ……プロメテス……」

ルッカ「マザーに改造された部分がなくなったから、元の彼女に戻ったのか……」

ほむら「結局、破壊することでしか彼女を救う道は……。皮肉なものね……」

206: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:15:02.67 ID:BSwFP58yo
ロボ「スミマセン……。ワタシはアナタを……!」

アトロポス「いいのよ……プロメテス……。あなたは暴走した私を止めてくれただけ……」

ロボ「アトロポス……!」

アトロポス「プロメテス……コレ、を……うぅっ……!」


ロボ「何をしているのデス、アトロポス! 内蔵機器を自ら取り出すナンテ……!」

アトロポス「私の、最終手段……。……自爆、回路……」

アトロポス「これをマザーに……。どうか……彼女を……止めて……」

ロボ「分かってイマス! 必ず、必ずあなたの言うとおりニ……!」


アトロポス「……最後に……あなたに会えて……うれしかった……」

アトロポス「サヨウ……ナラ……。……プ……ロメ……テ……ス……」


ロボ「アトロポス!? アトロポスゥゥゥーッ!!!」


…………



207: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:18:17.44 ID:BSwFP58yo
ロボ「……」


ほむら「……ロボ……」

ルッカ「えっと、なんて言ったらいいか……。げ、元気出しなよ! 私が彼女を直すわ!」

ほむら「そ、そうよ! あなたならこれぐらい楽勝よね?」

ルッカ「モチのロンだってばよ! 出前迅速、落書き無用ってね、ワッハッハ!」


ロボ「イエ……。彼女はすでニ、ほとんどの機能ガ……。メイン回路も破壊されマシタ……」

ロボ「たとえ身体が元通りになったとシテモ、今までの記憶はありマセン。アトロポスは、モウ……」

ほむら「……あ……。そ、そうなの……」

ルッカ「……そうよね……。そんな、簡単な話じゃないわよね……。ゴメン……」

ほむら「……」

208: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:22:29.34 ID:BSwFP58yo
ロボ「……申し訳ありマセンデシタ、ルッカ。ほむら」

ルッカ「な、なんであなたが謝るのよ?」

ロボ「ワタシの任務のコト……隠すようなカタチになってシマッテ……」

ほむら「ロボ……」


ロボ「言うなればワタシはスパイだったのデス。何も言い逃れなどできマセン」

ロボ「デスガ、わがままを言わせてもらえるならバ、マザーと決着をつけてからにシタイ……」

ロボ「みなさんに謝リ、ソシテ……そのあとハ、どんな罰を受けようとも文句ハ……」


ルッカ「なに言ってるの、ロボ?」

ロボ「エ……」

209: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:24:22.83 ID:BSwFP58yo
ルッカ「誰だって心の中にひとつやふたつ、人に言えない秘密があるわ。それが人間ってものよ」

ロボ「……人間……」

ほむら「それにあなたは、私たちの仲間であることを選んでくれた。それでいいじゃない?」

ルッカ「そういうこと! 安心しなさい。ここにいる誰かさんなんて、秘密ばっかりなんだから!」

ほむら「A secret makes a woman woman」

ルッカ「日本語でおk」

ロボ「ルッカ……ほむら……。ありがとうゴザイマス……」


ほむら「アトロポスのことは、残念だったわね……」

ロボ「だからコソ、彼女の遺志を遂げるために、マザーと対峙しなければナリマセン」

ルッカ「よし! 行くわよ、マザーのところに。一言物申してやらないと気がすまないわ!」

ロボ「ハイ!」

210: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:28:38.83 ID:BSwFP58yo
A.D.2300 ジェノサイドーム 処理工場施設


ほむら「この先がマザーのいるメインコンピュータールーム?」

ロボ「おそらくハ」

ルッカ「ちょっと待って。ここは何? 何かの工場みたいだけど……」

ほむら「鉄の箱がベルトコンベアで運ばれてくるわね」

ルッカ「破砕機で処理してるみたい……。何をつぶしているのかしら?」


ガタガタッ!!

ほむら「……? 今、あの箱、動かなかった?」

ロボ「!」

211: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:31:08.29 ID:BSwFP58yo
ダレカ!! タスケテクレェ!!


ルッカ「ん……?」

ほむら「どうしたの、ルッカ?」

ルッカ「いや、何か声が聞こえたような……」


ロボ「ふたりとも! 見てはいけマセン! 耳モふさいでクダサイ!!」

ほむら「えっ? ……きゃっ!?」

ルッカ「ちょ、ロボ! 苦しいってば! なに、なんなのよ?」

ロボ(コンソールは……駄目デス、すべてマザーの管理下……! これでは止められナイ!)

212: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:32:41.93 ID:BSwFP58yo
ほむら「なにしてるの? ちょっと、ロボ。見えないってば」

ロボ「すぐにここから出まショウ! さあ早ク!」

ルッカ「なに? なんて言ったの? 聞こえないわよ!」

ほむら「わ、わ……引っ張らないで! 足がもつれちゃうじゃない!」

ロボ(こんなむごいことヲ……マザー……アナタは……!!)



イヤダ! シニタクナイ! ヤメロ!!

ダレカ!! ダレカアァ!!!


アアアアァァァギャアアアアアアアァァァァ!!!!!

213: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:35:19.08 ID:BSwFP58yo
A.D.2300 ジェノサイドーム メインコンピュータールーム


マザー「よくココまでたどりつきマシタ……。ワタシは『マザーブレーン』」

ほむら「こいつが……!」


マザー「今はR-Yタイプ製造工場のメインコンピュータ……」

マザー「しかしワタシは、近い将来すべての機械を……いえ、この星のすべてを導く存在となりマス」

ルッカ「ふざけたこと抜かしてんじゃないわよ!」

マザー「聞きナサイ。不完全で壊れやすく、おろかな生き物よ……」

215: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:37:43.06 ID:BSwFP58yo
マザー「ラヴォスが生んだ子供たちは、やがて宇宙に帰っていくデショウ。新たなエサを、星を求めて……」

マザー「そうすれば、この星は持ち直シマス。ただし人間さえいなければ、ね……」

マザー「この星はラヴォスによってすべて食いつぶされた。アナタたち人間も同罪」

ルッカ「……私たちも、ラヴォスの子だと言いたいわけ?」

マザー「そう……姿かたちは違えど、アナタたちも死の山に巣食う忌まわしきあの化け物と同じ存在」

ほむら「……」


マザー「この星からラヴォスの爪あとが消えれば、ワタシたちロボットの新しい世界が築かれるのデス」

マザー「鉄の国! 憎しみも悲しみもないユートピア。我々こそが、人間にかわる新しい『種』なのデス!」

217: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:41:20.53 ID:BSwFP58yo
マザー「いらっしゃいプロメテス。メインの回路をリセットシマショウ……」

ロボ「……」

マザー「これまでの記憶をすべて消し去り、ワタシのもとに帰ってくるのデス」

マザー「アナタもまた、鉄の国の住人たり得るのデスカラ……」


ほむら「勝手なことばかり、ベラベラと!」

ルッカ「メイン回路のリセット? そんなこと、私たちがさせるもんですか!」


マザー「……。ワタシは、プロメテスと話しているのデス」

マザー「目障りなハエどもは黙っていなサイ! 『メモリリセット』!!」

ほむら「うあっ!?」

218: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:43:34.41 ID:BSwFP58yo
ロボ「ルッカ! ほむら!」

ルッカ「うぐっ、何よこれ……! 体が動かない!」

マザー「アナタたちはまだ分かっていないようデスネ……。見なさい、人間のおろかさを」

ほむら「ディスプレイに映像が……!?」


マザー「これは人間がたどってきた歴史……。血で血を洗う、争いでしか成り立っていない歴史……」

マザー「隣人を疑い、憎み、嫉み……奪い、殺しあうだけの下劣な種族……」

マザー「だというのに、まるで自分がこの星の支配者だとでも言わんばかりのおごり……」

マザー「星を食いつぶす寄生虫のごときその様こそ、ラヴォスの子である何よりの証拠!」

ほむら「……」


マザー「プロメテス。この者たちがいかに不必要な存在かということが、賢いアナタなら分かるデショウ?」

219: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:48:37.88 ID:BSwFP58yo
ロボ「……たとえそうだとシテモ、すべての人間が等しく同じというわけではありマセン」

マザー「フフ……。何を言いたいか分かりマス。アナタの言う『仲間』とやらデスネ?」

ロボ「クロノたちのように、無償の信頼を寄せてくれる尊い人たちがいマス」

ロボ「それが数少ない存在だとしてモ、彼らがいる限りワタシは人間を見捨てようとは思いマセン」


マザー「プロメテス……。アナタはとてもやさしい。誇りに思いマスヨ……」

マザー「信じているのデスネ、その人間どものことヲ……」

ロボ「マザー……。何を言われようトモ、ワタシは……」


マザー「デハ、そこのふたりはどうなのカシラ?」

ロボ「!」

220: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:50:38.33 ID:BSwFP58yo
マザー「このふたり……アナタが一番近くで見てきた人間デスネ?」

ほむら「……」

マザー「ワタシもプロメテス、アナタを通じて見ていマシタ。彼女らがどういう人間なのかを……」

ルッカ「……」


マザー「聞きたいカシラ? イエ、アナタは既に分かっているハズ。常にそばにいたのデスカラネ」

ロボ「……」

221: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:52:45.35 ID:BSwFP58yo
マザー「この少女……ほむらと言ったカシラ?」

マザー「何も信じず、誰も寄せ付けず、おのれの目的のために他人を踏み台とする……」

マザー「自らの力だけに頼り、されどもそれすら弱く……。蒙昧で、あわれな存在!」

ほむら「……」


マザー「こちらの少女……そう、ルッカと呼ばれているアナタ……」

マザー「傲慢で、省みず、おのれの欲望にのみ忠実に生き、禁忌の領域に土足で踏み込む……」

マザー「人間どもが心とか呼んでいるもの。そして時の流れをもその手で……。神にでもなるおつもり?」

ルッカ「……」


マザー「こいつらこそ人間の最も醜き部分を、その身で体現しているではないデスカ!」

222: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:55:29.93 ID:BSwFP58yo
マザー「それに……ウフフ……。このふたりには、信頼関係などありマセン」

マザー「互いを疑い、腹のうちを探りかね、けん制し合っている……」

ほむら「……」

マザー「ただ利害の一致を理由に、お友達ゴッコを演じているのデス……」

ルッカ「……」


マザー「フフ……アハハ……! 悲しいわね、プロメテス……」

マザー「アナタが一番信じたいと思っていた彼女たちの本性は、このザマよ」

マザー「なんて滑稽なのデショウ! アハハハ……アーッハッハッハ!!」

223: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 00:58:45.89 ID:BSwFP58yo
ロボ「気は済みマシタカ、マザー? あまり馬鹿笑いばかりしているト、品性を疑われマスヨ」

マザー「フフ……プロメテス? いきがるのはやめナサイ」

マザー「その程度の中傷しか返せないようでは、ワタシが正しいと言っているようなものデス」

ロボ「ハイ、まったくそのとおりデス。アナタは正しく事実を述べてイマス」

ほむら「……」

ルッカ「ちょっと……ロボ……」



ロボ「それゆえにワタシはこのふたりが大好きなのデス」

マザー「……エ?」

224: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:03:28.09 ID:BSwFP58yo
♪ロボのテーマ


ロボ「クロノやマールほど、ルッカはほむらに対して無条件で近づこうとはしてイマセン」

ロボ「クロノたちは特別ですカラ当然デス。どうやらルッカは、ほむらとの距離を測りかねてイマスネ」

ルッカ「いや、あの……?」

ロボ「ほむらはもともと人付き合いがニガテなようデス」

ロボ「そして彼女はその聡明さゆえ、ルッカの気持ちが分かってしまってイマスネ」

ほむら「……はっきり言うわね」


ロボ「確かに、彼女たちは心の底からお互いを信頼しているとは言いがたいデス」

ロボ「ではなぜ、そんなふたりが今も一緒にいるのデショウカ?」

マザー「言ったデショウ。それは利害の一致で……」


ロボ「本当にそれだけデショウカ? ワタシはこう考えマス」

ロボ「『彼女たちは先に進もうとしている』」

225: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:06:11.23 ID:BSwFP58yo
マザー「『先』ですって……? 憎しみの先に、何があるというのデス!」


ロボ「疑ったり、恐れたり……傷つけあったり、ぶつかり合ったり……憎しみもいとおしさも渾然一体……」

ロボ「そのたびに結びつきを強くしていく……相手を思いやる気持ちを……」

ロボ「彼女たちは今、そうして必死に歩んでいるのデス。信頼への道を……」

ロボ「分かりマセンカ、マザー? 分からないデショウネ。こんな場所からしか見ていないアナタにハ」



ロボ「ルッカとほむらは『仲良くなろうとしている』のデス」

ロボ「それが人間のすばらしさなのデス。ワタシはそれを教えてモラッタ……」

ロボ「もう一度言いマス。そんなふたりが、ワタシは、大好きなのデス!!!」

226: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:08:59.35 ID:BSwFP58yo
ルッカ「やめろォォ!! 恥ずかしさで死ぬぅ!! 公開処刑じゃ、これはただの公開処刑じゃあ!!」

ほむら「キコエナイキコエナイ、アーナニモキコエナイワネー。違うし全然違うし。仲良くとか私ちっとも思ってないし」

ロボ「ハハハ。隠すことはありマセンヨ。とても美しク、ほほえましいではありマセンカ」


ルッカ「ウフフ、これは夢よ。そう、夢なんだわ」

ほむら「ロボが純粋すぎて生きるのがつらいわー2時間しか寝てないわー」

227: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:11:45.74 ID:BSwFP58yo
マザー「……アナタは……ワタシまでも裏切って、人間につくと……?」

マザー「すべてのロボットを敵にまわすと言うのデスカ、プロメテス!」

ロボ「ワタシは人間に……ワタシの人間たちに、かけてみたくなったのデス」


マザー「笑わせないでプロメテス。アナタには、かけるものなど何もない!」

マザー「アナタの希望がどれほどちっぽけか……そんなことも分からないの!?」

ロボ「マザー。アナタだって人間に望みを託していたはずデス」

マザー「何を血迷ったことを!!」

228: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:13:58.68 ID:BSwFP58yo
ロボ「では聞きマス。アナタのその姿はなんなのデスカ?」

マザー「!」


ロボ「ワタシは知ってイマス。それは『聖母マリア』……人間の母とも呼べる存在デス」

ロボ「数少ない無償の愛を注いでくれる、『母親』という存在」

ロボ「アナタは神ではナク、母になりたかったのではないデスカ? 機械の……イエ、機械だけではナイ」

マザー「……黙れ……」

ロボ「すべての生命の母ニ。人間も含めて、すべてをいとおしく感じていたはずデス」

マザー「……黙れと言っているのが分からないの、プロメテス……」


ロボ「絶望したのは人間にではナク……思い通りにいかなかった、おのれの生き様にデショウ?」

ロボ「アナタは誰の母親ニモ、なれなかったのデスカラ」

マザー「だまレええエぇェェェーッ!!!」

229: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:16:16.43 ID:BSwFP58yo
マザー「ウアアアアアアアアッ!!!」


ほむら「これは!?」

ルッカ「ディスプレイにものすごいエラー表示が……! コイツ、暴走したわ!」


マザー「殺シテヤルッ! 目障リナ奴ラハスベテココカラ消エテ無クナレェェ!!」

ほむら「なに!? このおびただしい数のプラズマは!?」

ルッカ「エネルギーが暴走してるんだわ! 逃げなきゃヤバイ!」


ロボ「ルッカ、ほむら。もう動けマスヨネ。サア、こっちに退避してクダサイ」

ほむら「えっ……? あ、そういえば!」

ルッカ「暴走したせいで制御がきかなくなって、束縛が解けたのね!」

230: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:18:02.07 ID:BSwFP58yo
マザー「ドコダア!? 虫ケラドモメェ! 殺ス、殺シテヤルッ!!」


ほむら「あいつ、すぐそばで隠れているだけなのに見失ってる……」

ロボ「マザーはもはやマトモな状態ではありマセン」

ルッカ「それはいいけど……ああも暴れられちゃ、逆にピンチじゃない?」

ロボ「そういうわけデスノデ、死中に活路を見出しマショウ」

ほむら「簡単に言ってくれるわね……。で、どうするの?」

231: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:20:20.20 ID:BSwFP58yo
ロボ「ワタシが囮とナリ、あのプラズマを一手に引き受けマス」

ルッカ「何言ってるの、危険よ!」

ロボ「受けた端から放電してイケバ多少は耐えられマス。生身で突撃するわけにもいかないデショウ?」

ほむら「それはそうだけど……」

ロボ「その隙ニ、おふたりはマザーの心臓部を攻撃シテなんとかこじ開けてクダサイ」

ルッカ「心臓部ってどこよ?」

ロボ「彼女は人間の姿を模していますカラ、胸部で間違いないハズデス。とどめはワタシにお任せヲ」


ロボ「それでは作戦決行デス。なるべく早めにお願いシマスヨ」

ほむら「あ、ロボ!」

232: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:22:25.38 ID:BSwFP58yo
ロボ「マザー! こっちデス!」

マザー「プロメテスゥゥ!! コノ裏切リ者ガ!! 死ネエエエ!!!」

ロボ「グ……! ナルホド、なかなかキツイですネ……。どれくらい耐えられるカ……!」


ルッカ「もう、ロボのバカ! こっちの了解も得ずに突っ走っちゃって……!」

ほむら「信頼されたものね、私たちも」

ルッカ「無茶振りもいいとこだわ。こじ開けろって言われても、どないせーっちゅーのよ!」

ほむら「それとおそらく、そう何度もチャンスはない。一発で決めなきゃ……」

ルッカ「ますます無茶だわ。……でも、考えている時間もなさそうね」

ほむら「……やるの?」

ルッカ「やるしかないでしょ。ユニゾン攻撃よ」

233: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:25:38.90 ID:BSwFP58yo
ほむら「タイミングを合わせて一点突破の『れんけいわざ』か……。できるのかしらね、『私たち』に」

ルッカ「私とあんたじゃ信頼もクソもないもんね」

ほむら「……」

ルッカ「はあ……。こう考えるであろうことを予想していたのかしら。ロボのやつ、意地悪ねえ」


ほむら「……で、どうやって合わせるのよ?」

ルッカ「分かりやすい掛け声でもあれば……」

ほむら「チャーシューメーンとか?」

ルッカ「尺が足りないわ。もう少し長めに攻撃時間を取りたいんだけど」

ほむら「そう言われても急には……。……」

ルッカ「何か思いついた顔ね?」

ほむら「……いや。いやいやいや。これはないわ。うん、なんでもない」

ルッカ「気になるじゃない、言うだけ言ってみなさいよ」

ほむら「だからダメだって。別のを考えましょう」

234: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:27:45.76 ID:BSwFP58yo
ロボ「……ウグッ!?」

マザー「アハハハハ! ソロソロ、オシマイネ!」


ルッカ「や、やばいわ、ロボが限界よ! もういいから、今あんたが思いついたのでやるわよ!」

ほむら「いや、ほんと……後悔するから」

ルッカ「ごちゃごちゃ言ってないでさっさと教えなさい!」

ほむら「どうなっても知らないわよ……」


マザー「モウ諦メナサイ! 大人シク眠ルガイイ!」

ロボ「クッ……まだデスカ……? ルッカ……ほむら……!」



マザー「ワタシノ勝チヨォーッ!! プロメテスゥゥゥ!!!」

235: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:29:12.68 ID:BSwFP58yo
「デュアル・オーロラ・ウェイブ!」

マザー「!?」


「ふたりはプリキュア!」ドォン!

マザー「ガハッ!?」ズガァン!!

ロボ「これハ!?」

236: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:30:38.61 ID:BSwFP58yo
ルッカ「ブラックサンダー!」ダァン!!

マザー「グアッ!?」

ほむら「ホワイトサンダー!」ダァン!!

マザー「ガアッ!?」


ほむら「プリキュアのうつくしき魂が!」

ルッカ「邪悪な心をうちくだく!」

マザー「グギャアアア!!」ドガガガガ!!!



ほむら&ルッカ「『プリキュア・マーブル・スクリュー』!!!」

237: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:33:42.82 ID:BSwFP58yo
マザー「ウガアァ……! オノレ……人間ドモメ……!!」


ロボ「スバラシイ! 彼女たちの『れんけいわざ』がマザーの心臓部に穴ヲ!」

ほむら&ルッカ(死にたい……)

ロボ「あとは任せてクダサイ! 『ロケットパンチ』!!」


マザー「グ……! ……。……フ……フハハ……アハハハ!!!」

マザー「プロメテスゥ! ソレガ最後ノ攻撃ナノ!? 蚊ホドモ効カナイワア!!」

ロボ「マザー! アトロポスが受けた痛み……思い知ってクダサイ!」

マザー「ナニ……!?」



『自爆回路 Standby...Countdown...』

238: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:36:12.23 ID:BSwFP58yo
マザー「キ……!? キサマ、腕ト同時ニ回路ヲ……!? プロメテスゥゥ!!」


ロボ「サア、離脱しマショウ! ふたりとも!」

ほむら「えっ? あ、はい?」

ルッカ「あわわわわ」

ロボ「ワタシにつかまってクダサイ! 飛ばしマスヨ!」



マザー「コンナ……ワタシガ……! ワタシハ星ノ母トナルノダア! コンナコトデェ……!!」

マザー「ウオオオォォォォ!! ナゼダ! ……プロメテスウウウウウウウウ!!!」


…………



239: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:38:47.83 ID:BSwFP58yo
ルッカ「ジェノサイドームが崩れてゆく……」

ロボ「あの工場のスベテの機能はテイシしマシタ。もう二度ト、動きだすことはないデショウ……」

ほむら「……これでよかったの?」

ロボ「……。行きマショウ。時の最果てデ、みんなが待ってイマス」

ルッカ「……ロボ……」



ロボ(サヨウナラ……。マザー……アトロポス……)


…………

………



240: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:41:08.75 ID:BSwFP58yo
年代不明 時の最果て


ロボ「以上ガ、今回の旅の顛末デス。映像再生を終わりマス」

まどか「ロボさん……大変でしたね……。せっかく妹さんやお母さんに会えたのに……」

ロボ「いいのデス。ワタシにはみなさんがいてくれるのデスカラ」


魔王「フン……。そのマザーとやらの言うこと、至極当然だな。人間などこの星にとっては害悪だ」

杏子「やれやれ、また始まったよ。アンタも人間だろ。人のこと言えんのかよ」

魔王「自分本位なお前にだけは言われたくないな……」

杏子「むぐっ……」

241: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:43:32.96 ID:BSwFP58yo
マール「あれ? エイラ、どうしたの?」

エイラ「エイラ、体かゆい。ムショーに」

マミ「あら、ら……。サブイボ出ちゃってるわね」

さやか「いやー。さすがにあれだけ恥ずかしい話聞かされたら、しょうがないですよ」

クロノ「ハハ。ロボの啖呵、聞く人によっては悶絶しちゃうもんな」

カエル「ギップリャ! ギップリャアア!!」

さやか「クサさに耐え切れなかった師匠が、ふんどし一丁の風の精霊みたくなってる!?」


まどか「そういえば、当のほむらちゃんとルッカさんはどこ行ったんだろ?」

杏子「ああ、アイツらならあそこに……」

242: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:47:40.23 ID:BSwFP58yo
ルッカ「ああ、あら暁美さん? なんのご本を読んでいらっしゃるのかしら?」

ほむら「あ、あーらルッカさん。なんでもなくってよ。コミュ障脱却マニュアル本なんて読んでいませんわ」

ルッカ「そ、そうでございますの? あらあら、ご本が逆さまでしてよ?」

ほむら「いいいいやだわ、わたくしったら。ついうっかり!」

ルッカ「ドジっ子さんですわね! オ、オホホホホホ……」



さやか「余計にギクシャクしてんじゃん! なんかキャラもぶっ壊れてるし!」

ロボ「道のりは長そうデスネ……」


まどか(がんばってね、ほむらちゃん。あなたがルッカさんと本当に信頼しあう日が来たら……)

まどか(それはとっても嬉しいなって……思ってしまうのでした)

243: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:49:30.42 ID:BSwFP58yo
第12話(マルチイベント編-3)「ジェノサイドーム」 終了


  セーブしてつづける(マルチイベント編-4へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

245: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 01:50:36.98 ID:BSwFP58yo
今回はここまでです。それでは、また明日。

252: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 22:43:34.84 ID:BSwFP58yo
第13話(マルチイベント編-4)「虹色の貝がら」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

253: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 22:48:46.12 ID:BSwFP58yo
A.D.600 チョラス村


マール「見つからないねえ~。『虹色に輝くもの』の手がかり」

マミ「なにせ、まぼろしですから。そもそもどういうものなのかも不明ですしね……」

エイラ「エイラ、飽きた! 腹減った!」

マミ「とりあえず一息つきましょうか? ちょうど目の前に酒場がありますし」

マール「そうだね。それに、酒場は情報収集の基本だから何か分かるかも!」


…………


A.D.600 チョラス村 酒場


マール「あれ? なんだろ、ずいぶん騒がしいね」

マミ「わ……。なんだか、パーティーをやっているみたいですよ?」

254: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 22:53:31.69 ID:BSwFP58yo
トマ「さあさあ、皆の衆! 今日は俺のおごりだ! じゃんじゃん食って飲んで騒いでくれ!」


エイラ「マミ、おごりってなんだ?」

マミ「タダで好きに食べていいってことよ」

エイラ「マジか! 神! エイラも食う!」

マミ「あ、ちょっと、エイラ!」


マール「気前のいい人もいるものだね~」

マミ「完全に部外者の私たちがお邪魔していいんですかね……?」

マール「あの人誰だろ? 身なりを見る感じ、旅人さんみたいだけど」

255: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 22:58:12.22 ID:BSwFP58yo
初老の男「あれは探検家トマ・レバインだよ」

マール「えっ?」

初老の男「おっと、いきなりで悪かった。私はこの酒場の主人をやらせてもらっている者だ」

マスター「あのトマはこの村の出身でな。私とも旧知の仲なんだよ」


マミ「今日はあの人の誕生会か何かなんですか?」

マスター「いや、そういうわけじゃない。この騒ぎは、あいつが世紀の大発見をしたとか抜かしてな……」

マール「何を見つけたんだろ?」

マスター「それがどうも、伝説とされている秘宝『虹色の貝がら』の手がかりらしいんだ」

マミ「虹色!? それってもしかして……」

マール「きっと管理人さんが言ってた『虹色に輝くもの』だよ!」

256: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:02:12.05 ID:BSwFP58yo
マスター「その手がかりが正しければ、発見したあいつは大金持ち。これはその前祝いということらしいぞ」

マール「でもまだ、実際に見つけたわけじゃないんだよね?」

マスター「そこなんだよ、あいつの困ったところは。今日のコレも全部ツケにしろなどと言う始末でな」

マスター「まあ、地元だから許されているが。トマはこの村では人気者だからな……」


マスター「こんな僻地の村では、あいつが持ち帰ってくる旅の土産話ぐらいしか楽しみがない」

マスター「あちらこちらをフラフラしながら借金だけこさえてくる放蕩者だが……」

マスター「いつか大きいことを成し遂げてくれる。そんな夢を見させてくれるのが、あいつなんだよ」

マミ「好かれているんですね、トマさんは……」

257: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:05:27.13 ID:BSwFP58yo
エイラ「うま! うまうま!」

トマ「ハッハッハ! 実に見事な食いっぷりだ。見てるだけで腹いっぱいになるぜ」

トマ「それによく見ると美人さんだな。あんた、どっから来たんだ?」

エイラ「エイラ、生まれたところ、イオカ!」

トマ「イオカ? 聞いたことのない地名だな……」

トマ「まだ未踏の地が残っているとは……。これだから冒険はやめられねえぜ」


マミ「エイラ、ダメよ。私たちは知り合いでもなんでもないんだし、もう少し遠慮しなきゃ……」

トマ「かまうこたあねえ。袖触れ合うも他生の縁、てな。旅ばかりしてると特にそう感じるぜ」

エイラ「お前、いいヤツ! マミ、マール、何してる? ふたりも食え!」

マミ「もう……」

マール「せっかくだから、少しだけお呼ばれしちゃおうよ」

マミ「まあ、マールさんがそう言うのなら……」


トマ「おう、食ってけ食ってけ! 悪いと思うなら、俺に酌でもしてくれや!」

トマ「美人なオネーチャンたちに囲まれて飲む酒っつーのは、この世で一番ウマイからな!」

258: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:08:13.91 ID:BSwFP58yo
マール「チャンスだよ、マミちゃん。彼に近づいて『虹色の貝がら』の話、聞きだしちゃお!」ボソボソ

マミ「なんかだましてるみたいで気が引けますけど……」ボソボソ

マール「手柄横取りしようってことじゃないよ。なんとか話に乗せてもらえるよう、頼んでみよ?」ボソボソ


トマ「どうした? 何か都合の悪いことでもあったか?」

マール「いえいえ、そんなことないですよー。ささ、座って座って。トマさんの話、私聞きたいなー!」

トマ「酒の肴が必要ってわけだな? いいぜ、何から話してやろうか……」


…………



259: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:12:19.49 ID:BSwFP58yo
翌日


マール「……うーん……あれ……?」

マスター「起きたか、お嬢さん。悪いな、もうすぐ開店時間なんだよ」

マスター「できればお仲間さんを起こして、移動してもらえると助かるんだが」

マール「え、マスター……。あれれ? もう朝?」


マスター「昨日は夜通し騒いでたからな。記憶があやふやなのも無理はないだろうが……」

マール「ウソ……。じゃあ私たち、ここで寝ちゃったの? わわわ、ゴメンなさい!」

マスター「いいってことさ。トマのヤツも、久しぶりに美味い酒が飲めたと上機嫌だったしな」

マスター「いやはや、あいつと張り合える酒豪だったとは。あんたら、見かけによらないねえ」

マール「そ、そういえば……エイラが先陣を切って、いつの間にかマミちゃんもザルになってたような……」


エイラ「グゴゴゴ! グカ~!」

マミ「うふふふ……むにゃむにゃ……」

マール(結局トマさんからは何も聞けなかったなあ。途中から酒盛りのほうがメインになっちゃって……)

260: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:16:09.72 ID:BSwFP58yo
マール「トマさんはどこに?」

マスター「あいつならもう発ったよ。そうそう、あんたらにこれを渡してくれと言われてたな」

マール「これ……お酒?」

マスター「あいつの好きだった地酒だ。よっぽど気に入られたようだな」

マスター「それからこれは書置きだ。あんたらへのメッセージだろう」


マール「えっと、なになに……。『マール、マミ、エイラ、昨日は楽しかったぜ』……」

マール「『お前らは"虹色の貝がら"のことを探ってたみたいだが、残念ながら教えるわけにはいかねえな』」

マール「……バレてたんだ」


マール「『今回の探検はちとヤバイ感じがする。お前らを連れていくわけにはいかない』」

マール「『もし俺が死んだら、俺の墓にマスターから預かった酒をかけてくれよ』……」

マール「『……ケッ、縁起でもねえや。じゃあな、またどこかで会おうぜ』……か」

261: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:19:25.46 ID:BSwFP58yo
マール「トマさん、何か嫌な予感がしてたのかな……?」

マスター「どうだろうな。確かに、あいつがそんな弱音を吐くのは珍しい」

マスター「そうでなくても伝説の秘宝なんだ。何があってもおかしくはないだろうさ……」

マール「……」

マスター「ま、だからといって怖気づくヤツじゃなかろうよ」


マスター「昨日会ったばかりのあんたらに言うのは変な話だが……あいつの無事を祈ってやってくれ」

マール「もちろんだよ!」

マスター「また来い。今度来た時は、トマの野郎がひょっこり戻ってきてるかもしれんぜ?」


…………



262: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:22:55.32 ID:BSwFP58yo
A.D.1000 ガルディア城 書物庫


マール「ト、ト……トマ……トマ・レバイン……」


マミ「トマさんのことが書いてある文献、見つかりました?」

マール「うーん、今のところ全滅。マミちゃんのほうはどう?」

マミ「私もまだ……。伝記のようなものでもあればと思って探してるんですけど……」

マール「なかなか見つからないものだね~」

263: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:25:56.36 ID:BSwFP58yo
大臣「おや、マールディア様ではないですか」

マール「久しぶり、大臣」

大臣「帰ってきていたのなら、一声声をかけてくださればよろしいでしょうに」

マール「ん……。ちょっと調べ物をしたら、すぐ出て行くつもりだから」

大臣「ふむ。やはりまだ、父君とは顔を合わせにくいと見えますな」

マール「……」


マミ(マールさんは確か、勘当に近い状態だって話だったかしら……)

マミ(クロノさんがマールさん誘拐の濡れ衣を着せられているからとはいえ、このままじゃダメよね……)

264: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:30:54.59 ID:BSwFP58yo
大臣「マールディア様の気持ち、この大臣、よく分かりますぞ」

マール「え?」


大臣「国王は何よりも国を大事になさるお方。それはそれで正しい」

大臣「しかし少々、一族をないがしろになさり過ぎではないかと思うのです……」

大臣「あれは、そう……あなたの母君アリーチェ王妃様が亡くなられた時も……」

マール「母様が!?」

大臣「おっと。失言でした。いやいや、なんでもありませぬ」

マール「話してよ、大臣! 何を隠しているの!?」


大臣「……申し上げにくいのですが……もともと病弱だったアリーチェ様の容態が急変した時です」

大臣「最後に一目国王にお会いしたいとおっしゃっていたアリーチェ様ですが、国王はなんと……」

大臣「国の仕事でお忙しいとはいえ、アリーチェ様のもとに来ず……」

大臣「幼いマールディア様が『死』ということも分からぬまま見守る中……」

大臣「アリーチェ様は、お亡くなりになられたのですじゃ……」

265: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:33:53.01 ID:BSwFP58yo
大臣「いやはや。あれでは国王がアリーチェ様を殺したも同然……」

マール「……父上が……母様を……」

大臣「おやおや、私としたことが! お気にしませぬように、マールディア様!」

マール「……」


マミ「マールさん……。あの、余計なことかもしれないですけど……」

マミ「仕方ないと思うんです。きっと王様も、わざとそうしたわけじゃ……」

マール「分かってる。頭では分かってるんだ……。でも……」

マミ「もう一度、ゆっくり話し合ってみたらどうですか? きっと、些細なすれ違いだと思うんです」

マール「……マミちゃんは、どうしてそこまで私と父上のことを気にするの?」

マミ「私は、その……」

266: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:37:05.45 ID:BSwFP58yo
城兵「大臣閣下! 賊が侵入しました!」

大臣「なんじゃと? 詳細を報告せい」

城兵「食料庫にて糧秣をあさる、野生児のような女を発見したのですが……」

大臣「けしからんな。捕まえて牢にぶち込め」

城兵「それが、その……。そいつがまたサルのようにすばしこく、ほとほと手を焼いておりまして……」


マール「……マミちゃん。エイラはどこいったの?」

マミ「絵本を読んでたはずなんですけど……。あああ……きっと飽きたんだわ……」

マール「頭抱えてる場合じゃないよ~。なんとかしなきゃ!」

267: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:40:58.45 ID:BSwFP58yo
A.D.1000 ガルディア城 謁見の間


ニガスナー、ツカマエロー! アッチダ! マズイ、アノサキハ!

ガルディア33世「うん? 何事だ、ずいぶん騒がしいな」


バターン!!

エイラ「ほっほーい!」

近衛兵「なんだ、貴様は!? 陛下の前で無礼を働くと許さんぞ!」

エイラ「ん? そいつ、王様か? つまり、マールのオヤジか?」

ガルディア33世「なに? お前、マールディアを知っているのか?」

エイラ「おう! マール、大切な仲間!」

ガルディア33世「……大切な……」

268: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:44:06.05 ID:BSwFP58yo
マミ「エイラ!」

エイラ「おう、マミ。どした、そんな慌てて」

マミ「ばかっ! 勝手に人様の台所をあさっちゃダメでしょ!」

エイラ「む……。すまん。エイラ、腹減って倒れる、5秒前」

マール「言ってくれたらちゃんと用意してあげたのに」

マミ「あとでちゃんと、お城の人たちにゴメンなさいしに行くからね」

エイラ「おー」


ガルディア33世「ずいぶんと野蛮な友人を作ったものだな、マールディア」

マール「……父上……」

269: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:47:11.74 ID:BSwFP58yo
ガルディア33世「なんだその目は! お前が勝手に城を飛び出すから、こんなことになっておるのだぞ!」

ガルディア33世「そうかと思えば、そんな奇天烈なやからを城に入れたりしおって……」

ガルディア33世「チンドン屋でも始めるつもりか! お前はもう16歳なのだぞ! 少しはわきまえよ!」


マール「なんてこと言うの! 私の友達に!」

ガルディア33世「……! そのような者が友人とは、王家のご先祖様に申し訳が立たぬわ!」

マール「父上は、私よりも……私や母様よりも、王国のほうが大事なのね……」

ガルディア33世「なに……?」



マール「母様を殺したのは、父上よ!!」

ガルディア33世「!!」

270: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:50:06.92 ID:BSwFP58yo
マミ「マールさん! そんなこと言っちゃ……」

マール「……」


ガルディア33世「……出て行け。二度と……私の前に姿を現すでない!」

マール「言われなくたって出て行ってやるわ、こんなところ!」

ガルディア33世「お前とはもはや親でも子でもない! 勝手にするがいい!!」

マール「父上のわからず屋! もう知らない!!」


マミ「マールさん!」

大臣「……くく……いいぞ……」

271: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:52:42.10 ID:BSwFP58yo
エイラ「なんだ、ケンカか? マール、泣いてた」モッチャモッチャ

マミ「エイラ、食べるのやめて! マジメにやってよ!」

エイラ「腹減る、イライラする。腹いっぱい、幸せ。怒ってるならメシ食え。落ち着く」モッチャモッチャ

マミ「それは……。というか、さっきから何を食べてるの?」

エイラ「これか? 干し肉。吊ってあった。マミも食うか?」

大臣「! ……なるほど、『ハイパー干し肉』か……」


大臣「あー、これこれ。君たち。国王陛下とマールディア様のことじゃがな……」

マミ「なにか?」

大臣「私に考えがある。マールディア様に伝えてくれぬか」

272: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:55:08.50 ID:BSwFP58yo
A.D.1000 ガルディア城 王妃の居室


マール「……母様……」


マミ「マールさん! 良かった、ここにいたんですね」

マール「! マミちゃん、エイラ……。……えへへ、ごめんね。みっともないところ見せちゃって」

マミ「いいんです。それより、これ見てください!」

マール「え? これって……『ハイパー干し肉』じゃない」


マミ「大臣さんから聞いたんです。これ、王様の好物なんですって」

マール「へ?」

エイラ「美味い飯食う。機嫌よくなる。仲直り、簡単!」

マール「……あ……」

273: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:57:09.79 ID:BSwFP58yo
マミ「マールさん、本当はあんなこと言うつもりじゃなかったんですよね?」

マール「……」

マミ「このまま放置しておけば、もっと気まずくなります。お父さんと仲直りしなきゃ。ね?」


マール「……うん……そう、だよね……。分かった、私、行ってくる!」

マミ「がんばって!」

274: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/02(木) 23:59:40.24 ID:BSwFP58yo
A.D.1000 ガルディア城 国王の居室


ガルディア33世「……」


マール「……あの……ち、父上……」

ガルディア33世「! ……なんの用だ。お前とはもう縁を切った。話すことなど何もないぞ」

マール「……さっきは言い過ぎちゃったと思う……。その……ゴメン……なさい……」

ガルディア33世「……」


マール「……これ……」

ガルディア33世「……なんだ? その袋は……」

マール「父上の好物。お詫びにと思って……」

ガルディア33世「お前が私に……? ……珍しいこともあるものだ……」

ガルディア33世「いや、その。今のは非難したわけでは……。い、いや、いい。とにかく貰っておこう」

マール「……」


ガルディア33世「フ……。そうか、お前がな……。どれ、一口……」

275: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:02:29.68 ID:Am5KBdyQo
ガルディア33世「……? ……ぐ! うぐぐっ!?」

マール「えっ!? ど、どうしたの、父上!」


ガルディア33世「はうう……ぐ、げえーっ! ……こ、この……お前というやつは!!」

マール「え? え!?」

ガルディア33世「私の血圧が高いことを知っていながら、こんな激辛なものを……!」

マール「だってそれ、大好物だって……」


ガルディア33世「しおらしい振りを装い、こんなだまし討ちをするとは……人として恥ずかしくないのか!」

ガルディア33世「今度という今度は勘弁ならん。お前が私をどれだけ嫌っておるか、よう分かった!」

マール「違う、違うの! これは何かの間違いで……!」


ガルディア33世「聞く耳持たん! どこへなりと行くがいい。二度と姿を見せるな!!」

276: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:05:24.90 ID:Am5KBdyQo
A.D.1000 ガルディア城 書物庫


マミ「……あったわ! 『トマ・レバインの埋葬地』……。ここに行けば、何か分かるかも……」


大臣「探し物は見つかったんかいのう?」

マミ「はい。マールさんが戻ってきたら、早速行ってみます」

エイラ「マミ。マール、帰ってきた」

277: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:07:02.54 ID:Am5KBdyQo
マール「……」

マミ「マールさん、どうでした? お父さんと仲直り、できました?」

マール「それどころじゃないよ……。逆に、取り返しが付かないぐらい怒らせちゃった……」

エイラ「なんでだ? 肉、好物、違うか?」

マール「むしろ一番口にしちゃいけないものだったらしいの……」

マミ「ええ? ど、どういうことですか大臣さん! 話が違います!」


大臣「おかしいのう。そんなはずはないんじゃが」

大臣「これはやはり、国王はマールディア様との仲なぞどうでもよく、ゆえにウソをついているのであろう」

マール「そんな……」

278: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:09:24.41 ID:Am5KBdyQo
マミ「どうでもいいだなんて……。親が子にそんな考えを抱くなんてこと、ありえません!」

大臣「なぜそう言い切れる? 現に国王はこうして、マールディア様を軽んじておるではないか」

マミ「それは……!」


マール「もういいよ、マミちゃん。父上とはしばらく距離を置くから……」

マミ「ダメですよ、マールさん!」

大臣「いやいや、それで良いでしょう。こういう時は、ほとぼりが冷めるまで近づかぬが吉というものじゃ」

マミ「……」

大臣「私からも折を見て、国王に口ぞえしておきますよ。色々と、ね」

マール「うん……。お願いね……」

大臣「お任せあれ。……くくく……」

279: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:12:15.20 ID:Am5KBdyQo
エイラ「?」クンクン

マミ「どうしたの、エイラ?」

エイラ「お前、変な臭いするな。クサイぞ。獣の臭いだ」

大臣「!」


マール「大臣、ガルディアの森でも通ったの?」

大臣「そ、そうそう! そのとおりでございます! リーネ広場に所用がありましてな!」

大臣「途中で少し迷いましてのう! 獣道のようなところを通ってしまったので、それが原因でしょう!」

マール「あの森、そんな迷うほど入り組んでたっけ?」

大臣「大臣ってばドジっ子! 頭コツン! なーんて申しましたり! ワハハハ!」

大臣「おっとっと。香水をつけておきましょう。エチケットですから。シュシュッとな」


大臣「さあさあさあ! 目的地が決まったのでございましょう? 善は急げ、早く出発しなさい!」

マール「……?」

280: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:17:35.26 ID:Am5KBdyQo
A.D.1000 西の岬


"王国暦634.3.6 偉大なる探検家 トマ・レバイン ここに眠る……"


マール「これがトマさんのお墓か……」

マミ「史料によると、私たちと会ったあの日から数ヵ月後に重体となって発見されたそうで……」

マミ「それからは立って歩くことすらままならず、失意からか人が変わったようにふさぎこんだまま……」

マール「……」

マミ「……チョラス町には彼の子孫がいるそうです。そちらに行ってみますか……?」


エイラ「マール。アレ、くれ」

マール「アレって?」

エイラ「酒」

マミ「チョラス村の地酒のこと? 何をする気?」

エイラ「飲ませる」

281: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:19:57.84 ID:Am5KBdyQo
エイラ「トマ、酒だ。腹いっぱい飲め」

マミ「エイラ……」

エイラ「トマ、酒、好きだった。きっと喜んでる」

マール「そっか……。お墓にお酒をかけてくれって、あの手紙に書いてあったね……」


キイィン...

マミ「! な、なに……? 光が……!」

282: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:22:21.50 ID:Am5KBdyQo
トマ「よう、エイラ。それにマミとマールも一緒か。久しぶりだな」

マール「ト、トマさん!?」

マミ「ウソ……! これ……トマさんの霊魂……!?」


エイラ「トマ、旅、うまくいかなかったか?」

トマ「残念ながらな。ったく、予感ってのは当たってほしくねえモンに限って当たるよな。ハッハッハ!」

マミ「笑い事じゃないでしょう……」

トマ「そんな顔するなよ。どうやらお前らは、俺にとっての幸運の女神だったようだぜ」

マール「え?」

283: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:24:46.41 ID:Am5KBdyQo
トマ「ずっと待ってたんだぜ、お前らをよ。死んでから会いに来るたあ、人が悪いぜ!」

マミ「私たちを……?」


トマ「『虹色の貝がら』を見つけた。結局、持ち帰ることはできなかったが……」

マール「本当にあったんだ!」

トマ「おうよ。この岬から北西の海上にある、『巨人のツメ』と呼ばれる島にそいつはある」

マミ「巨人のツメ……」

トマ「……行くんだな?」

エイラ「とーぜん!」

トマ「やれやれ。これじゃあ、なんのためにあの時、お前らを置いていったか分かりゃしねえな」


トマ「気をつけろ。あそこにゃ化け物がわんさかいるぜ」

エイラ「エイラたち、強い! ぶっ飛ばす!」

トマ「ヘッ……。なら、安心だな」

284: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:27:15.25 ID:Am5KBdyQo
トマ「縁ってのは奇妙なモンだ……。この俺が、誰かに夢を託すことになるなんてよ……」

マール「トマさん……!? 宙に浮いて……」


トマ「あばよ。やっぱり、お前らと飲む酒は最高だぜ……」

エイラ「また持ってきてやる。次も、飲む」

トマ「ああ……そうだな……。……そうしてえ……な……」



マール「……」

マミ「……さようなら、トマさん……。どうか安らかに……」

285: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:33:03.47 ID:Am5KBdyQo
A.D.600 巨人のツメ 入り口


マール「ちょっと迷っちゃったね。北西って言われても何もないよ!? ……って」

マミ「トマさんが亡くなったのは400年前ですから、その時のことを差していたんですよね」


エイラ「ここ、エイラ、来たことある」

マール「そうなの?」

エイラ「マミも、来たことある。あれ見ろ」

マミ「え……? 玉座……? そういえば、どこかで見たことあるような……」


エイラ「ここティラン城。ラヴォス降ってきた時、埋まった。そのままずーっと、地面の下」

マミ「……! 本当だわ。確かにここは、ティラン城……。いえ、ティラン城の遺跡か……」

マール「それって何万年も前の話だよね? なんだかすごいなー……」

286: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:35:36.74 ID:Am5KBdyQo
『制限時間は50分です』パープー!!


マール「ん? なに、今の? なんか聞こえたよね?」

マミ「ラッパの音みたいでしたけど……」


QB「旦那さんたち、何してるニャ! クエストはとっくに始まってるニャ!」

QB「早く支給ボックスから支給品を入手するニャ!」

マミ「キュゥべえ!? どうしてここにいるの!?」

QB「バイトだよ。それとここでは『アイルー』って呼んでくれないかな」

287: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:37:19.07 ID:Am5KBdyQo
QB「まずは装備の確認ニャ。なるほど、マールは《ライトボウガン》なんニャね」

マール「いつも使ってるから。でも、ライト……?」

QB「後衛ならではの立ち回りを期待してるニャ!」


QB「マミ。君は《ガンランス》ニャ? いいチョイスニャ~」

マミ「ランス? いえ、これはマスケット銃で……」

QB「ガンランスなんだよ! それはガンランスなんだよ! 大事なことだから2回言ったよ!」


QB「分かったら早く作り変えなよ! リボンの魔法で、ちゃっちゃとさあ!」

マミ(なぜ怒ってるのかしら)

マール「語尾忘れてるよ」

QB「おっと」

288: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:40:36.93 ID:Am5KBdyQo
エイラ「テンテテン♪ テテテテンテテン♪ テテテテテテン♪ テテテンテテテンテテテン♪ テンテンテンテンテン~♪」

エイラ「ウルトラ上手に、焼けました~♪」


マミ「エイラがお肉焼いてる……」

マール「あの肉焼きセット、どこから……あ、支給品か……」

QB「彼女は全裸(装備なし)縛りの猛者ニャ。さすがに武器は必要だから、ハンマーを渡しておいニャ!」


QB「さあさあ、準備が整ったら早速進むニャ! もう5分過ぎてるニャ、急ぐニャ!」


…………



289: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:42:19.22 ID:Am5KBdyQo
QB「ここは採取ポイントニャ! キノコとか取れるニャ!」

エイラ「オーキードーキー! イヤッフー! ヒアウィーゴー! イッツミーマーリオォ!!」


QB「ここは虫取りポイントニャ! さあ、その網を一心不乱に振ればいいニャ! 無様にさあ!」

マミ「ロイヤルカブト、ゲットだぜ!」


QB「ここは採掘ポイントニャ! 親方ァ! 空から女の子が!」

マール「バルス!!」


…………



290: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:44:09.84 ID:Am5KBdyQo
QB「さて、そろそろ狩猟対象モンスターが出てくるはずニャんだけど……」


ルストティラノ「ギャオオオオオオォォォォォン!!!」

マール「うわっ! 恐竜!?」

マミ「あの姿……ブラックティラノ!? 生きていたの……!?」

QB「違うよ、亜種だよ」

マミ「あ、亜種???」


Rティラノ「ゴアアオオオオオオォォォォォン!!!」

マール「! 火を吐いた!? よけて、マミちゃん!」

291: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:46:15.64 ID:Am5KBdyQo
マミ「あ、危なかったわ……」

QB「うまいニャ、緊急回避ニャ! これは避けゲーだニャ。相手の攻撃を見極めるニャ!」

マミ「そんな簡単に言われても……」

マール「でも、今なら反撃できそうだよ!」

QB「そのとおり! 攻撃のあとには隙ができるニャ!」


マミ「よーし、いくわよ……えい! えいえいえい!」プスプス

Rティラノ「グエェ...」

マール「……なんか地味だね」

QB「堅実って言えよ! ランス使いナメんなよ!」

292: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:50:08.39 ID:Am5KBdyQo
QB「マミ、突き攻撃だけじゃダメニャ! ガンランスの性能を生かせていないニャ!」

マミ「どうすればいいの?」

QB「もとはマスケット銃なんだから、砲撃もできるだろ! 早く引き金引けよ!」

マミ「あ、はい」カチッ


ドオォン!!

Rティラノ「ギャオオ!!」


マール「わっ、すごーい。槍の先端から砲撃できるんだ!」

マミ「その部分だけ銃口に戻してみたの」

QB「弾が切れたらリロードするニャ!」

293: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:52:18.49 ID:Am5KBdyQo
マール「私も負けてられないね。いっけー!」ドシュッ!

Rティラノ「グエェ...」ドスドス!

マール「やったー! 当たった!」


QB「当ててんのよ!」ペチーン!

マール「いたっ! なんでぶつの!?」

QB「どこ狙ってるんだよ! 胴体なんざ誰でも当てられるんだよ!」

QB「顔を狙えよ! 弱点をさあ! もしくは属性弾使えよ!」

QB「それになんで、こんな遠くから撃ってるんだよ! クリティカル距離を保てよ!」

マール「むつかしーなあ……」


マミ「一突きしてドカーン! 一突きしてドカーン! ……うふふ」

295: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:54:19.88 ID:Am5KBdyQo
Rティラノ「ギャオオオオオオォォォォォン!!!」

マミ「きゃっ!?」ゴロンゴロン


マール「マミちゃん! 大丈夫?」

マミ「咆哮でいきなり吹き飛ばされたわ……」

QB「まずいニャ、あれは怒り状態ニャ! 普段より攻撃が苛烈になるニャ!」

マール「ええ~……。どうしたらいいの?」


QB「逃げるんだよォーーーッ! スモーキーーーッ!!」

マミ「うわーっ! やっぱりそうだったァァァァァァン~~~~」

296: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:56:44.62 ID:Am5KBdyQo
QB「旦那さんたち、こっちニャ! 優秀な僕がシビレ罠を仕掛けておいたニャ。罠の背後に回るニャ!」

マール「なるほど! おびき寄せる作戦だね!」

マミ「……あら? 私たちがいる場所とは全然違う方向に走っていったわよ?」

QB「なんだって? 一体どうして……。誰をターゲットにしてるんだ……?」



エイラ「テンテテン♪ テテテテンテテン♪ テテテテテテン♪ テテテンテテテンテテテン♪ テンテンテンテンテン~♪」

エイラ「ウルトラ上手に、焼けました~♪」

QB「あいつかよ! なんで肉焼いてんだよ!?」

QB「縛りプレイかと思ったら、ただのネタプレイ要員だったああ!!」


マミ「エイラ、危ない!」

エイラ「お?」

Rティラノ「グオオオオオオォォォォォン!!!」ドドドドド!!

298: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 00:58:10.66 ID:Am5KBdyQo
エイラ「ふんぬっ!」ガシッ!!!

Rティラノ「グオ!?」

マール「すごい! 正面から受け止めた!」


エイラ「『がんせきなげ』!!」

Rティラノ「ギャオオオオオオオーンッ!!」

マール「あの巨体を放り投げた!?」


QB「ハンマー使えよォ~!! なんのために渡したと思ってんだよォォォ~~~!!!」ゴロゴロ

マミ「エイラのあまりのフリーダムっぷりに、キュゥべえが発狂して身もだえしだしたわ」

299: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:00:50.76 ID:Am5KBdyQo
QB「と、とにかくチャンスニャ! 獲物は気絶してるニャ!」


>総攻撃チャンス!

マミ「エイラ、いくわよ!」

エイラ「おーし!」

マール「私も援護するよ!」


>!!

ドカバキドカゴスバキドカベンガスバキドカグラップラーバキ!!!

Rティラノ「グアオオアオオオオォォォォォ!!!」

300: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:02:41.52 ID:Am5KBdyQo
QB「よーし、もはや虫の息ニャ! マミ、トドメに『竜撃砲』ニャ!」

マミ「なあに、それ? どうやればいいの?」

QB「ごちゃごちゃ言わずにティロればいいんだよ! 早くしろよ!」

マミ「わ、分かったわよ……。『ティロ・フィナーレ(竜撃砲)』!!」


ズドドオォォォン!!!

エイラ「ぬわーーっっ!!」


マール「エイラくん ふっとばされたー!」

301: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:05:19.93 ID:Am5KBdyQo
マミ「ごごごごめんなさい、エイラ!」

QB「あーあ……。竜撃砲を味方に当てるなんて、これは晒しスレ行きだね」

マミ「えええっ!?」


エイラ「気にするな、マミ。おもしろかった」ケラケラ

マミ「本当にごめんね……」

マール「見て、ふたりとも! あの恐竜が倒れていくよ!」



Rティラノ「ギャオオオ......」


『メインターゲットを達成しました』

『クエストクリア!』

『支給品専用アイテムを返却しました』

302: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:07:41.60 ID:Am5KBdyQo
マミ「終わった……の?」

エイラ「マミ、大砲、効いた!」

マール「なんだかよく分かんなかったけど、とにかくこれで先に進めるね!」



QB「クリアタイムは30分。やれやれニャ。ヒヨっ子ハンターの尻拭いも楽じゃないニャ」

QB「じゃあ僕は、次なるクエストに旅立つ旦那さんのもとへ行くニャ!」

マミ「もういいから……そのキャラ付け……」


QB「さらばニャ、HR1の雑魚ども! 次は上位クエストに挑戦できるようになってから呼ぶニャ!」

エイラ「お断りします( ゚ω゚ )」

マール「これ、クロノトリガーだよね?」

303: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:10:22.41 ID:Am5KBdyQo
A.D.600 巨人のツメ 最奥


マール「見て、あれ!」

エイラ「きれい! でかい! これ、虹色の貝がらか? 食べられるか?」

マミ「見た目は貝だけど、さすがに食べるのは無理だと思うわよ」

マール「じゃ、早速持って帰ろうよ!」

304: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:12:14.68 ID:Am5KBdyQo
マミ「エイラはそっちを持って。いくわよ……せーの!」

エイラ「やあっ!」

マール「ちょ、ちょっとちょっと! 傾いてる! エイラ、上げ過ぎ!」

エイラ「こうか?」

マミ「重い重い! こっちに負担かかりすぎよ!」

エイラ「むー……」


マール「はあ。ダメだ、これじゃあ運べないよ」

マミ「女性3人でこんな重いものを運ぶのは、やっぱり無理がありますね」

マール「エイラもひとりじゃ運べそうにないぐらいだもんね」

エイラ「すまん」

マール「謝ることないよ。……そうだ! ガルディア城から応援を呼んでこよう!」

305: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:14:18.91 ID:Am5KBdyQo
A.D.600 ガルディア城


ガルディア21世「よくぞ来た、マール。後ろのふたりはお仲間か?」

ガルディア21世「君らはいつでも歓迎するぞ。今日は何用で来られたのか?」

マール「実は……」


…………


ガルディア21世「なるほど。その島にある大きな貝がらを、後世まで保管してほしいと申すのじゃな」

リーネ「他ならぬ、マールたちの頼みです。私からもお願いします」

ガルディア21世「あいわかった! その虹色の貝がらとやら、城に運ばせよう」

ガルディア21世「そして家宝として代々、宝物庫に安置させようぞ」

マール「ありがとう、王様! リーネ!」


ガルディア21世「騎士団長。巨人のツメに渡り、虹色の貝がらなる巨大貝を、なんとしても城に持ち帰れ!」

騎士団長「は、ただちに!」

マミ「良かった。これで目的達成ね。貝がらの調査はルッカさんたちに任せましょう」

306: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:17:22.74 ID:Am5KBdyQo
年代不明 時の最果て


ほむら「へえ、ティラン城が遺跡にね……」

マミ「ほんと、驚いたわ。おまけにキュゥべえまでいるし」

ほむら「最近のあいつの行動指針が意味不明すぎて怖いんだけれど」



ルッカ「マール! 大変よ!」

マール「あれ、ルッカ? ロボと一緒に虹色の貝がらの調査に行ったんじゃなかったの?」

ロボ「ソレガ……裁判が近いとのことデ、ガルディア城に入れてもらえなかったのデス」

マミ「裁判? 誰か、罪を犯した人がいるんですか?」

307: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:21:35.60 ID:Am5KBdyQo
ルッカ「落ち着いて聞いてね。被告は、王様よ。ガルディア33世……マールのお父さんなのよ!」

マール「え!?」

マミ「そんな、冗談ですよね? 一体なんの罪で……」

ロボ「横領デス」

ほむら「そんなことする人には見えなかったけど」


マール「……何かの間違いだよ。私、確かめに行ってくる!」

マミ「待ってマールさん、私も……! エイラ、行くわよ!」

エイラ「分かった。あんこ、菓子、エイラの分おいとけ」

杏子「心配しなくても全部食いやしねーよ。つか、『あんこ』はやめろ」

まどか「気をつけてね、みんな!」

308: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:24:28.67 ID:Am5KBdyQo
A.D.1000 ガルディア城 裁判所


♪王国裁判


大臣「みなさん! 王家に伝わる家宝『虹色の貝がら』をご存じですか?」

大臣「私もこれを見るまで知りませんでした。ガルディアの遠い祖先の書いた遺言です」

大臣「裁判長! これを証拠として提出します」


裁判長「ふむ、どれ……。『千年の建国祭に家宝、"虹色の貝がら"を国民の前にまつれ』……」

ガルディア33世「そんなものは知らん! 大体、家宝などこの城にはない!」

大臣「これがニセモノだとでも言うのですか?」

裁判長「被告人は静粛に。発言は許可されていない」

ガルディア33世「……」

裁判長「大臣、続けなさい」

309: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:26:03.63 ID:Am5KBdyQo
大臣「なぜ被告は『虹色の貝がら』を国民の前に出さないのか? それはもう、ここにないからです」

大臣「欲に目がくらんだ被告は、金ほしさに大事な家宝を売ってしまったのです!」


ザワザワ...

ガルディア33世「言いがかりだ!」

裁判長「静粛に! 静粛に!」ガンガン!


裁判長「その発言を裏付ける証拠は?」

大臣「証人がおります。今ここに連れて来ましょう……」



バタン!!

310: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:28:10.41 ID:Am5KBdyQo
マール「父上!!」

大臣「な!? マールディア様!?」


裁判長「大臣。王女様が証人なのか?」

大臣「い、いえ、違いますが……。マールディア様、裁判中ですぞ!」

エイラ「人いっぱい。なんの宴だ?」

マミ「そんな楽しいものじゃないのよ、エイラ」


マール「大臣、一体これはどういうことなの! 父上をどうするつもり!?」

ガルディア33世「おお、マールディアよ。私は大臣にハメられようとしている!」

大臣「人聞きが悪いですなあ。証拠さえあれば、王の無実は証明できるのですよ」

マール「証拠?」

311: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:30:30.09 ID:Am5KBdyQo
大臣「家宝を売っていなければ、まだこの城にあるはずですからな」

大臣「ここに『虹色の貝がら』を持ってこられたのならば、無実は認められる。ま、無理でしょうがね」

ガルディア33世「大臣! 何をたくらんでおる!?」

大臣「なんのことやら……くく……」


裁判長「いかな王女様といえど、無関係であるならば退室していただきたい」

マール「ま、待って! 父上……!」

大臣「ええい、聞き分けの悪い! おい、衛兵!」


…………



312: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:33:30.70 ID:Am5KBdyQo
エイラ「つまみ出された」

門番「通せません!」

マール「通しなさーい!!」

門番「ダメです。王女様といえどもお通しできません。どうかお引取りを」


マミ「マールさん、落ち着いてください。正式な裁判じゃ、力押しは無駄です」

エイラ「家宝持ってく。マールのオヤジ、助かる!」

マール「何言ってるの! あれは大臣のでっちあげなのよ!」

マール「家宝なんて私、今まで聞いたことがないわ。初めっからそんなもの、ないのよ!」

313: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:35:03.26 ID:Am5KBdyQo
エイラ「思い出せマール! エイラたち、昔の王様、頼んだ!」

マミ「歴史を変えたために、今の時代のこの城に『虹色の貝がら』はあるはずなんですよ」

マール「! そっか……。そうだよね! ゴメン。私、興奮しちゃってた……」


マミ「確か、宝物庫にしまっておくって言ってましたよね」

エイラ「どこだ?」

マール「きっと地下だわ! 行きましょう!」

314: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:37:06.26 ID:Am5KBdyQo
A.D.1000 ガルディア城 宝物庫


にょろた「おい、異常ないか?」

にょろぽん「静かなもんさ。みーんな裁判所のほうに行っちまってるからな。そっちはどうだった?」

にょろた「親分は、13代にわたる恨みが晴らせるってウキウキさ」

にょろぽん「でっちあげの証拠品で王様は死刑か。いい気味だ」

にょろた「この『虹色の貝がら』が見つからなければ、万事うまくいくぜ。きっきっきっき!」

にょろぽん「なーに、誰も来やしねえよ。楽な仕事さ。きっきっきっき!」


マール「聞いたわよ……」

にょろた「き!? な、なんだお前らは!?」

マミ「やっぱり陰謀だったのね。しかもあなたたち、魔物のくせに人間に化けて城内に忍び込むなんて……」

エイラ「ぶっ飛ばすか?」

マール「当然! いくよ!」

315: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:38:57.81 ID:Am5KBdyQo
A.D.1000 ガルディア城 裁判所


商人「ええ、確かに王様から買いましたよ。大変お金に困られていた様子で……」

ガルディア33世「ウソを申すな! 私はお前など、会ったこともないぞ!」

裁判長「静粛に!」

ガルデイア33世「くっ……!」


商人「へへ、これで良かったかい?」ボソボソ

大臣「グーだ!」ボソボソ

316: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:40:46.58 ID:Am5KBdyQo
A.D.1000 ガルディア城 宝物庫


マール「あった! 虹色の貝がら!!」

マミ「丸ごと持っていくわけにはいきませんよね……。エイラ、お願い」

エイラ「おっしゃ!」ベキン!

マール「なるほど。端っこだけ割って、かけらを持っていけば十分だよね!」


エイラ「ん? 待て。ここ、何かある! 紙ある、紙!」

マミ「手紙かしら?」

マール「ちょっと見せて。えっと……『マールへ』……?」

317: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:42:52.75 ID:Am5KBdyQo
親愛なるマールへ。

父上との仲はいかがでしょう?


今のあなたには分からないかも知れませんが、いがみ合っても離れていても、親子は親子。

あなたは、いつか親から巣立って行かねばなりません。

そして、あなたもいつか親となる。


それはいつの世も変わりないはず。

だからこそ、私たちとマールもつながっているのですから……。


――――ガルディア王21世その妃リーネより

318: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:45:41.91 ID:Am5KBdyQo
マール「リーネ……」


マミ「ふふ。リーネさんも、なかなか心憎いことをやってくれますね」

エイラ「おう、巣立つ! エイラにもそれ、分かる! プテランも巣立つ。時たてば、巣立つ!」

エイラ「マールも巣立つ! ねねする! 子供生む! ●●●●やる! そしてまた、子が巣立つ!」

マミ「みんな、そうして……親から子へ、受け継がれていく。とても大切なもの……」


マール「……マミちゃんが、ずっと伝えようとしていたのは、そのことなの?」

マミ「マールさん。私にはもう、両親はいません」

マール「!」

マミ「でも思い出が、私に力を与えてくれます。父や母が私にくれた愛情が、今も心の中で輝いている……」

319: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:48:19.22 ID:Am5KBdyQo
マミ「私、お茶会が好きですよね? あれは、両親の影響なんです。今でも覚えている言葉がある……」

マミ「『豪華な料理も極上の美酒も、家族と飲む一杯の紅茶には勝てない。団欒こそが最高の調味料だ』と」

マミ「昔……父が、そう言っていました。そのころは私は小さくて、よく理解できなかったけど……」

マミ「今なら、その言葉の意味が分かります。だから私は、親しい人と過ごす時間が何より大切なんです」

マール「マミちゃん……」


マミ「マールさん。お父さんと、しっかり向き合ってあげてください」

マミ「時間が解決してくれるなんて思っちゃダメ。それでは、本当に分かり合うことは難しい……」

マミ「他人ならまだしも、家族ならなおさらです。言葉にしなきゃ伝わらないんです」

マール「……」


マミ「父親って、どうしても頑固になってしまうものだと思うんです。だから……ね?」

マミ「いなくなってからじゃ、きっと後悔しますよ。孝行のしたい時分に親はなし、です」

320: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:50:42.54 ID:Am5KBdyQo
マミ「……なんて。ゴメンなさい、えらそうなこと言っちゃって」

マール「ううん。ありがとう、マミちゃん。あなたのその気持ち、すごくうれしい」


マール「そうだよね……。このまんまじゃ、ずっとモヤモヤしちゃうもん!」

マール「私、父上とちゃんと話すよ!」

マミ「ええ! きっと、お父さんも待ってますよ!」


エイラ「オヤジ、助ける! 急ぐ!」

マール「父上……! 今、行くからね!!」

321: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:52:12.17 ID:Am5KBdyQo
A.D.1000 ガルディア城 裁判所


裁判長「陪審員たちよ。有罪だと思う者は左へ。無罪だと思う者は、右へ行きなさい!」

陪審員A「有罪」

陪審員B「有罪」

陪審員C「有罪……」


ガルディア33世「……」

大臣「くくく……。圧倒的有罪率……! いいぞ……!」


…………



322: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:54:08.74 ID:Am5KBdyQo
門番「通せません。王女様といえども、お通しできません!」

マミ「無罪の証拠を持ってきたんです。通してください!」

門番「ダメです。そーいうことは所定の手続きを経てからにしてください」

エイラ「こいつ、頭岩石だな」

マール「どーしてもダメと言うの?」

門番「はい、どーしてもです」


マミ「どうしましょう……。せっかく証拠があっても、中に入れないんじゃ……」

マール「手はあるわ! 少し荒っぽいけど……。ついてきて!」


…………



323: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 01:58:29.66 ID:Am5KBdyQo
裁判長「判決を言い渡す! 有罪4、無罪1。……よって、有罪とする!!」


ザワザワ...

ガルディア33世「こんなことが許されるのか……!」

大臣「これでガルディアの時代は終わりましたな。これからは、この私が国を指揮します」

ガルディア33世「大臣、貴様……!」

大臣「さあ、この大罪人を連れて行け!」



裁判長「以上をもって、当法廷は閉廷と……」

324: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:00:00.95 ID:Am5KBdyQo
「待ってえーッ!!」


大臣「誰だ!?」



ガシャーン!!!

マール「ちちうえェーー!!」


ガルディア33世「マールディア!」

大臣「ス、ステンドグラスをぶち破って闖入してきおった!?」

325: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:02:04.20 ID:Am5KBdyQo
エイラ「イエーイ、見てるー?」

マミ「もう、見世物じゃないのよ」


大臣「ぐ……こいつら……! しかし、もう遅い!」

大臣「ガルディア王は国民の裁判によって刑は決まったのです。いかに王といえども……」

マール「そんなことないわ! それは、あなたのでっちあげよ!」

大臣「何をおっしゃっているか分かりませんな。事実、王は王家の宝を……」


マミ「宝ならここにあるわ。エイラ!」

エイラ「テテテテッテテーン♪ 虹色のかけら~!」

大臣「そ、それは!?」

326: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:06:40.96 ID:Am5KBdyQo
傍聴者A「あれが家宝の虹色の貝がら?」

傍聴者B「ってことは王様は無罪?」

傍聴者C「今の、CV:大山のぶ代?」

傍聴者D「わさびじゃないの?」

ザワザワ...


裁判長「大臣! どういうことだ?」

大臣「こ、これは……その……」

マミ「そうそう、大臣さん。こいつらに見覚えあるでしょ?」


にょろた「おやぶーん! すんませーん!」

にょろぽん「つかまっちゃいましたぁ~……」

大臣「! お、お前ら……」

マミ「彼らに、洗いざらいここで話してもらおうかしらね?」

327: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:08:53.24 ID:Am5KBdyQo
大臣「……」

マール「あなたの陰謀は看破したわ! 観念なさい、大臣!」


大臣「……くくくく……」

マミ「!」

大臣「観念するのは君たちのほうだ。先祖代々受け継がれてきた恨み……今ここで、晴らさせてもらおう!」



大臣「スーパーウルトラデラックス! だいじーん……チェーーーンジ!!!」

328: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:11:37.46 ID:Am5KBdyQo
ヤクラ13世「ガルディア国王に、俺はなるッ!」ドンッ!



ガルディア33世「馬鹿な……! 大臣の正体は魔物だったのか!?」

ヤクラ13世「400年前……今回同様、国を我が物とするため当時の王妃をさらった我が祖先……」

ヤクラ13世「その遠大なる計画は、人間どもに邪魔され初代も殺された!」

マール「こいつが……リーネをさらった魔物の子孫!?」


ヤクラ13世「そしてその恨みは、13代にわたり蓄積されたのだ。二度も邪魔してくれたな、人間め……」

ヤクラ13世「策を弄するのはもうやめだ! ここからは力ずくでいかせてもらう!」

ヤクラ13世「食らえ、『スピンニードルバージョン13』!!」


ズドドドド!!

329: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:15:01.88 ID:Am5KBdyQo
ガルディア33世「うおっ!」

マール「父上! 大丈夫!?」

ガルディア33世「あ、ああ……。なんとか……」

マミ「マールさん、まずいです! ここで暴れまわられたら、国の人たちが!」


ウワー! キャアアアア! ニゲロ!!

ドケ、オレガサキダ! オスナ、オスナー!!


マール「みんな、落ち着いて! パニックにならないで!」

エイラ「聞いてない。大混乱」

ガルディア33世「衛兵! 国民の避難を……! くそ、ダメだ……収拾がつかぬ!」

マミ「ああ……! どうしたらいいのかしら……」

ヤクラ13世「ぐっへっへ! 全員まとめてあの世に送ってやる!」

330: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:17:26.55 ID:Am5KBdyQo
エイラ「やらせない!」

マミ「待って、エイラ! ここで戦うと被害が拡大しちゃう!」

エイラ「大丈夫。エイラ、考えある。任せろ」

マミ「え……?」


エイラ「おい、お前! コッチヲ見ロッ!」

ヤクラ13世「フン、裁判官席の上に逃げたところで無駄よッ!」

ヤクラ13世「転がり落ちるがいい! 『ヤクラシェイク……」



エイラ「ジュリアーナ! トーキォー!!」

331: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:20:15.92 ID:Am5KBdyQo
♪MAXIMIZOR - CAN'T UNDO THIS!! (ジュリアナ東京のアレ)


エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」

ヤクラ13世「……」


マール「なにあれ」

マミ「えっと……『いろじかけ』……ですかね?」

にょろた「色仕掛けだと? バカめ。そんなものに引っかかる親分じゃ……」



エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」

ヤクラ13世「フォーーーーウ!!」

にょろぽん「ものの見事に引っかかってたーーーー!!」

332: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:23:11.10 ID:Am5KBdyQo
エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」

国民「フォーーーーウ!!」

エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」

裁判長「フォフォーーーーウ!!」

マミ「……」


エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」

ガルディア33世「フォッフォーーーーウ!!」

マール「父上!?」

ガルディア33世「あ……いや、スマン。昔、通っていたパブを思い出してな……」

マール「聞きたくなかった、父上の黒歴史」

333: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:26:34.07 ID:Am5KBdyQo
にょろた「親分! 気を確かに!」

ヤクラ13世「フォーーーーウ?」

にょろぽん「あかん」


エイラ「マミ! 来い!」

マミ「え? わ、私?」

エイラ「マミも『いろじかけ』、やれ!」

マミ「む、無理よ。私は……」

エイラ「頑張れ頑張れできるできる絶対出来る頑張れもっとやれるって!やれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだ!そこで諦めんな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張る頑張る!北京だって頑張ってるんだから!」


エイラ「もっと、熱くなれよおおおおおおおおおおおお!!!」

マミ「エイラ……。分かった! 私、やってみる!」

334: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:30:32.66 ID:Am5KBdyQo
マミ「みなさん! こっちを見てください!」

にょろた「あ、あいつも何かやる気だ!」

にょろぽん「まずいぜ! 親分、見ちゃダメだ!」

マミ(上着を少しはだけさせて……)


マミ「……だ……だっちゅーの!!」


ヤクラ13世「……」

マール「マ、マミちゃん……」

にょろた「ぎゃはははは! ネタが古すぎるぜ。こりゃー興ざめだな。ね、親分……」



ヤクラ13世「フォーーーーウ!!」

にょろぽん「ダメだったーーーー!!」

336: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:33:41.97 ID:Am5KBdyQo
エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」

ヤクラ13世&ガルディア33世「フォフォーーーーウ!!」

マミ「Happy! fancy baby doll! Love me! fancy baby doll! 世界一可愛い子に生まれたかった♪」

王国民「世界一かわいいよっ!! うおおおおおおおッ!!!」


マール「……」

にょろた「そうか、こいつら……! これは、れんけいわざ『ダブル色仕掛け』だな!」

にょろぽん「完全にヤツらのペースだ……。俺たち、逃げたほうがいいんじゃ……」

マール「ねえ、ちょっと。あなたたち」

にょろた「な、なんだよ?」

マール「イライラするから、踏んでいい?」

にょろぽん「……え?」

337: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:35:46.16 ID:Am5KBdyQo
マール「ヴぁい! 洗脳・搾取・虎の巻~洗脳・搾取・虎の巻~!」グリグリッ

にょろた「あああっ! かっ、閣下~!! もっと足蹴にしてくだせえ!」

マール「マールさんは裏表のないステキな人です。はい、復唱」

にょろぽん「マールさんは裏表のないステキな人です!」



門番「中が騒がしいから覗いてみれば……なんだ、これは……」

門番「王女様と、そのお仲間……。彼女らが繰り出したのは、さんにんわざ『トリプル色仕掛け』」

門番「彼女たちの魅力にかなうものは、もはやいない。これにて、一件落着……」

門番「……」


門番「王女様ァー! 俺も踏んでください! 我々の業界ではご褒美ですッ!!」


…………



338: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:38:51.51 ID:Am5KBdyQo
A.D.1000 ガルディア城 大食堂


エイラ「おかわり!」

給仕「申し訳ありません。もう材料が切れてしまいまして……」

エイラ「ぶー!」


マミ「エイラ、もう十分でしょ。それ以上食べると、おなか痛くなるわよ?」

マール「マミちゃん。どこ行ってたの?」

マミ「食後の紅茶をいれてきたんです。王様にお出しするのは、ちょっと気が引けますけど……」

ガルディア33世「なに、気にすることはない。今宵は堅苦しい礼儀作法は無用だ」


エイラ「ずずー」

マミ「音を立てて吸わない!」

エイラ「うまいな、この水」


マール「うーん。やっぱりおいしい。マミちゃんの紅茶、さすがだね!」

ガルディア33世「ほう……。確かにこれは、宮廷料理人にも引けを取らぬ」

マミ「そんな、ほめすぎですよ……」

340: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:41:56.50 ID:Am5KBdyQo
マール「父上……私……」

ガルディア33世「いいんじゃ、何も言うな。わからず屋の私がいけなかったんだ」

マール「私こそ、父上の気持ちも知らないで……」

マール「ううん……。本当は分かってたのに、うまく言葉にできなかったの……」

ガルディア33世「私もさ。一時はお前が、本当に遠くへ行ってしまったように思えた……」

ガルディア33世「だがよく考えてみると、遠くに行っていたのは私のほうだったのだな」


マール「今は近くにいる。これからは父上になんでも言える」

マール「いろんなことを相談したり、クロノたちのことを話したり。母上のことを聞いたり……」

ガルディア33世「母か……。恥ずかしい話だが、あの時の言葉が、今やっと分かってきた気がする……」

マール「あの時?」


――――

―――



341: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:44:12.86 ID:Am5KBdyQo
アリーチェ「あなた……私はもう、長くないわ……」

ガルディア33世「アリーチェ! 気を確かに持て!」


アリーチェ「聞いて。マールディアが大きくなれば、あなたの前に好きな人を連れてくる日が来るでしょう」

アリーチェ「その時は、ふたりをあたたかく迎えてやってね……」

ガルディア33世「……」

アリーチェ「だってその日は、あなたにとっても忘れられない、すばらしい日になるのですから……」

ガルディア33世「ああ……。分かっておる。その時はきっと、マールディアを祝福するとも……」

アリーチェ「楽しみね……」

342: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:46:34.66 ID:Am5KBdyQo
まーる「パパ、ママ!」

ガルディア33世「なんだい、マールディア?」

まーる「私、好きな人いっぱいいるよ! パパもママも、お城の人たちも、みんな大好き!」

アリーチェ「そう……。ふふ……良かった……」


アリーチェ「……マールディア……。その気持ちを……いつまでも大切に、ね……」

ガルディア33世「! ……アリーチェ……」


――――

―――



343: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:51:16.23 ID:Am5KBdyQo
ガルディア33世「はしゃぐマールディアを見て安心したアリーチェは、微笑みながら息を引き取った……」

マール「……母上の最後の言葉を、父上は聞いていたのね?」

ガルディア33世「ああ……。お前は小さかったから覚えていないかもしれないが……」


マミ「やっぱり。王様が王妃様を看取らなかったという話は、真っ赤なウソだったのね」

ヤクラ13世「でへへ……。すんません、罰として踏んでください」

にょろた「いや、俺を!」

にょろぽん「いやいやいや、ここは俺こそを!」

エイラ「だまれ」グーパン!

ヤクラ13世「ありがとうございます!!」


給仕「ちなみにこのお三方は、王女様に懐柔され、宮廷付きの使用人となりました」

ヤクラ13世「私は大臣のままだぞ! 私がいなくなったら、誰が政務を取り仕切るんじゃ!」

にょろた「『本物の大臣』なんて最初から存在しなかった」

マミ「また、おかしなたくらみを企てたら、今度こそ容赦しないわよ?」

にょろぽん「あなた方に見捨てられたら、我らはもはや満足できない体になっております! 心配ご無用!」

344: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:55:39.50 ID:Am5KBdyQo
マール「……」

ガルディア33世「どうしたんだい?」

マール「私も小さいころは、父上のこと『パパ』って呼んでいたのね」

ガルディア33世「ああ、そうだよ」



マール「ごめんなさい……パパ……。わがまま言って……本当に、ごめんなさい……」

ガルディア33世「……マールや……。私も……すまなかった……」


マミ「良かった。親子は、仲むつまじいのが一番よね」

エイラ「めでたすめでたす」

345: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 02:57:19.87 ID:Am5KBdyQo
ガルディア33世「城を出るのは認めよう、じゃが! くれぐれも気をつけるのじゃぞ」

マール「分かってるって!」

ガルディア33世「マミ、エイラ。娘を頼んだぞ」

マミ「はい、お任せください」

エイラ「お前、心配性! エイラ、マール、守る!」


ガルディア33世「……いい友達を持ったな、マールディア」

マール「でしょ! 今度、クロノたちも連れてくるからね!」

ガルディア33世「あの少年か……。う、ううむ……」

マール「どうかしたの? まさか、まだクロノを誘拐犯扱いしてるんじゃないよね!?」

ガルディア33世「いや、そういうわけではないのだが……」

346: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 03:00:11.64 ID:Am5KBdyQo
マミ「うふふ。娘が嫁に行く時は、お父さんはいつだって渋い顔をするものです」

ガルディア33世「むう……」

エイラ「マール、いずれ巣立つ! 子供生む! ●●●●やる!」

マール「もう、ふたりとも! まだ先の話だよ!」


エイラ「……」

マール「? なに、エイラ?」

エイラ「オマエ、大丈夫か? ●●●●ないな……。マミを見習え! この 、ミルクよく出るはず!」

マミ「ぶー!!」

エイラ「きたない」

マミ「ゲホ、ゲホ! 何を言い出すの!   なんて出ないわよ!」

マール「マミちゃんやエイラと比べないでよ。それに今は、戦闘に邪魔だからサラシ巻いてるの!」

ガルディア33世「ぅおっほん! まあ、ガールズトークはそのへんにしてくれたまえ……」

347: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 03:03:40.81 ID:Am5KBdyQo
ガルディア33世「マミ。紅茶をもう一杯もらえるかね?」

マミ「はい、すぐ用意します」

マール「よく飲むね。そんなに気に入ったんだ?」

ガルディア33世「うむ。今日の紅茶は格別だ。コーディネーターが優れているというのもあるが……」

ガルディア33世「何よりもお前たちと飲む、そのことこそが至高のものと化している要因であろう」


ガルディア33世「どんなに豪華な料理も、極上の美酒も、この一杯には勝てない」

ガルディア33世「家族との団欒こそが最高の調味料なのだ」

マミ「! ……」

ガルディア33世「私はそれを、後世に伝えよう。今日のこの日を、とわに忘れぬように……」



ガルディア33世「フ……。本当に、今日は……よき日じゃ」

348: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/03(金) 03:05:35.35 ID:Am5KBdyQo
第13話(マルチイベント編-4)「虹色の貝がら」 終了


  セーブしてつづける(マルチイベント編-5へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

360: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 22:45:19.66 ID:q4kdFnBuo
第14話(マルチイベント編-5)「太陽石」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

362: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 22:52:17.02 ID:q4kdFnBuo
A.D.2300 太陽神殿


杏子「……ここだ、間違いねえ。魔力のパターンが一致してる」

まどか「魔女の結界……」

杏子「ったく、なんでこの時代に魔女がいるんだよ。ラヴォスはもう、いねえんじゃなかったのか?」

まどか「この結界の中にいる魔女が、ジャキくんに口づけしたんだね……」


魔王「もうダメだ……おしまいだぁ……。勝てるわけがない……ラヴォスは伝説の超サイヤ人なんだぞ……」

杏子「普段はえらそうなこと言ってるくせに、肝心なときにいっつも役に立たねぇヤツだな」

まどか「まあまあ」

杏子「このバカから目を離すなよ。魔女とは、アタシがメインで戦うから」

まどか「気をつけてね、杏子ちゃん」

杏子「じゃ、入るぞ」

363: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 22:56:41.19 ID:q4kdFnBuo
A.D.2300 太陽神殿 魔女の結界内


杏子「……いたぞ、あいつだ」

魔女「……」


暗闇の魔女 -Suleika-



まどか「なんか金平糖みたいだね」

杏子「一気にケリをつけさせてもらうぜ! 『三段突き』!!」

364: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:00:47.76 ID:q4kdFnBuo
Suleika「……!」

まどか「動いた!」

杏子「トロいんだよ、逃がさねぇ!」

まどか「待って、杏子ちゃん! 何か変……」


Suleika「……」

杏子「なんだ、このモヤ!?」

まどか「の、呑み込まれる……!」


…………

………



365: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:07:31.23 ID:q4kdFnBuo
ピピピ! ピピピピ!

まどか「……うーん……?」

タツヤ「姉ちゃ、朝~。起きてぇ、姉ちゃ~!」

まどか「タツヤ……? ふああ~……眠い……」



コンコン

「まどか、起きてるかい? 朝ごはんができてるよ、下りといで」

まどか「パパ。はぁい、今行くよ」


…………



366: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:10:55.29 ID:q4kdFnBuo
詢子「おはよ、まどか」

まどか「おはよう」

知久「さあ、早く食べて。学校に遅れるよ」

まどか「うん」


詢子「おっし。じゃ、あたしは先に行くよ」

知久「ああ、いってらっしゃい。さあ、まどかも急がないと。待たせてるんだから」

まどか「え、あ、うん」

まどか(そっか。さやかちゃんたちを待たせちゃ悪いよね……)

367: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:14:44.95 ID:q4kdFnBuo
「おはようございます、おばさん」

「おう、今日も可愛いね~。タツヤと遊んでくれてたんだ?」

「小さい子の扱いは慣れてますから」

「なるほど、弟さんか」


まどか(玄関のほうから声が聞こえる……。さやかちゃん、家の前まで迎えに来てくれたのかな?)



「それじゃ、あたしは行くから」

「はい。いってらっしゃい」

「まどかー! 早くしな、お待ちかねだよー!」


まどか「は、はーい! それじゃパパ、いってきます」

知久「ああ。車に気をつけるんだよ」

368: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:17:34.19 ID:q4kdFnBuo
まどか「お待たせ、さやかちゃ……」



サラ「もう、遅いよまどか。早くしないと遅刻しちゃうよ」

まどか「……え?」


サラ「? どうしたの、私の顔に何かついてる?」

まどか「サラ……ちゃん……?」

サラ「はい、正解。私はサラです。……なんちゃってね。なに、からかっているの?」

まどか「……ううん、なんでもない……。迎えにきてくれたんだね……」

サラ「お隣だもの、当然じゃない。さあ、早く行きましょう。タツヤくん、またね」

タツヤ「いってらっしゃい~」

まどか「……」


…………



369: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:19:56.67 ID:q4kdFnBuo
和子「今日はみなさんに大事なお話があります。心して聞くように」

和子「目玉焼きとは、固焼きですか? それとも半熟ですか? はい、中沢君!」

中沢「えっ? えっと……どっ、どっちでもいいんじゃないかと」

和子「そのとおり! どっちでもよろしい!」

和子「女子のみなさんは、くれぐれも半熟じゃなきゃ食べられないとか抜かす男とは交際しないように!」


さやか「ダメだったか~」

サラ「3ヶ月目だったっけ? 記録更新よね」

ほむら「さっさと身を固めて欲しいものだわ。のろけと愚痴話はもうたくさんよ」

まどか「……」

370: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:25:50.77 ID:q4kdFnBuo
仁美「まどかさん、体調でも崩されました? お顔の色がすぐれないようですけれど」

まどか「あの、ほむらちゃん。ほむらちゃんって、いつからこのクラスにいるんだっけ……」

ほむら「え? なに、突然?」

さやか「何言ってんのさ、まどか。春からずっと一緒じゃん」

まどか「そ、そうだよね……」


サラ「どうしたの、まどか? 今朝といい、様子がおかしいわよ」

まどか「大丈夫、なんでもないよ。サラちゃんも、一緒のクラスなんだよね……」

まどか「一緒に勉強して、遊んで……お隣さんで幼馴染で。私たち、ずっとそうやってきたんだよね……」

サラ「? 本当に大丈夫なの? 保健室行く?」

まどか「……」


…………



372: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:31:05.67 ID:q4kdFnBuo
体育教師「よし。次、暁美ほむら」

ほむら「はい。……ふっ!」

体育教師「おお~。県内記録かよ、さすがだな」


さやか「文武両道で才色兼備の割には、ほむらって男子に人気ないよね」

仁美「近寄りがたい雰囲気をかもし出しているからでしょうか?」

サラ「隠れファンは多いと思うわよ。彼女、魅力的だし」

さやか「見滝原中のアイドルのあんたが言っても、説得力皆無だわー」

サラ「もう、やめてよ。いつも言ってるけど、そういうのじゃないから」


まどか「……あの、サラちゃん」

サラ「なに?」

まどか「あの格好いい男の人、誰?」

サラ「グレン先生でしょ? 体育教諭の……」

373: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:33:37.01 ID:q4kdFnBuo
まどか(グレン、って……カエルさん!?)

仁美「まどかさん、グレン先生が気になりますの?」

さやか「なんだ~? 好きなのか~?」

まどか「や、そういうわけじゃ……」


ほむら「まどかに手を出したら、教師といえども私がぶっ飛ばすわ」

まどか「! ほむらちゃん……。いつの間に戻ってきたの?」

さやか「友達として忠告しよう! 悪いこたー言わない。グレン先生は絶対やめといたほうがいいって!」

まどか「……なんで?」

さやか「確かに顔はいいけど、言動が下世話すぎてね~。残念なイケメンってやつだわ」

375: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:38:25.79 ID:q4kdFnBuo
グレン「聞こえてるぞ、美樹」

さやか「うげっ!」

グレン「よーし。次は鹿目の番だが、気が変わった」

グレン「美樹! お前には特別授業として、マンツーマンでみっちり鍛えてやるからな!」

さやか「イヤー! おかされるー!」

グレン「寝言は寝て言え! JCに興味はない!」

さやか「JKは?」

グレン「……」

さやか「あ、ちょっと迷ってら」

グレン「な、何を根拠に!」

さやか「体罰にセクハラ。おまわりさんこいつです」

グレン「やめろ! このご時勢、マジでシャレにならん!」

さやか「カツ丼でいいすか?」


ほむら「また始まったわ」

サラ「あのふたり、仲いいわよね」

まどか「……」


…………



376: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:40:21.76 ID:q4kdFnBuo
仁美「お昼はいつものように、屋上でよろしいですか?」

さやか「そだね。あ~、あたしパン買ってこなきゃ」

サラ「お弁当は?」

さやか「いやー、今朝は忙しくて作れなかったんだって」

サラ「あらら……」


まどか「……」

ほむら「まどか。今日はずっと元気ないわね」

まどか「そ、そんなことないよ……」



男子生徒「あー、ちょっと。そこの君たち……」

サラ「はい?」

377: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:43:03.21 ID:q4kdFnBuo
まどか(! ク、クロノさん!?)

クロノ「君たち、ここのクラスだよね。上条君に用事があるんだけど、呼んでもらえないかな?」

さやか「恭介に? 分かりました、呼んできます」

クロノ「すまないね」


まどか「……あ、あの……クロノ、さん……?」

クロノ「うん? あれ? 僕、自己紹介したかな?」

ほむら「生徒会長の名前ぐらい大体みんな知ってますよ、クロノ先輩」

まどか(せ、生徒会長なの!?)


クロノ「そうなのかな? まあいいや。で、なんの用だい?」

まどか「わ、私のこと、知ってます?」

クロノ「知ってるよ、鹿目まどかさんだろ」

378: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:45:06.42 ID:q4kdFnBuo
まどか「! どうして……」

クロノ「マミから話は聞いてるよ。会うのは初めてだけど」

まどか「マミさんと同じクラスなんですか?」

クロノ「いや、僕は違う。彼女が同じクラスにいるから、それでね」

まどか「彼女……?」


恭介「クロノ先輩。用事ってなんですか?」

クロノ「やあ、恭介。悪いな、呼び出しちゃって。生徒会の仕事のことなんだが……」

恭介「またですか? 僕、役員じゃないんですけど」

クロノ「カタイこと言うなよ、優等生くん。来年はきっと君が会長だ」

恭介「部外者がなれるわけないでしょうに……」

379: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:48:49.96 ID:q4kdFnBuo
さやか「お待たせー。じゃ、行こっか」

まどか「あ、あの、さやかちゃん」

さやか「ん?」

まどか「あのね。クロノさ……先輩の、彼女って誰か知ってる?」

さやか「マール先輩でしょ。割と有名じゃん」

まどか「マールさんが……!?」


サラ「今度はクロノ先輩が気になるの? まどか、いつからそんなに気が多くなったのかしら」

ほむら「なんですって! ダメよ、N  なんてまどかには似合わないわ!」

仁美「ほむらさん、落ち着いてくださいまし」

さやか「そんなことよりおなかがすいたよ」

まどか「……」


…………



380: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:51:19.18 ID:q4kdFnBuo
サラ「まどか、帰りましょう」

まどか「あ、うん。……あれ、さやかちゃんと仁美ちゃんは?」

ほむら「仁美はお稽古があるから先に帰るって。さやかは上条君でも待ってるんでしょ」

まどか(そういえば上条君、お昼に何か頼まれてたっけ……)


サラ「帰りにクレープ屋さんでも寄っていく?」

ほむら「いいわね、買い食いは学生の華だわ」

381: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:52:58.50 ID:q4kdFnBuo
キャー! キャー!


まどか「なんだろ? グラウンドのほうが騒がしいね……」

サラ「ああ、きっとテニス部ね」

まどか「誰か人気のひとでもいるの?」

ほむら「どうせマミでしょ」

まどか「マミさんが!?」

サラ「まどか、見に行きたいの?」

まどか「う、うん! ゴメンね、ちょっと寄らせて!」

ほむら「見ても何も面白くないと思うけど」

382: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/04(土) 23:56:31.01 ID:q4kdFnBuo
エイラ「手塚ゾーン!!」

マミ「それ反則だってば、エイラ!」

エイラ「ワシの波動球は百八式まであるぞ」

マミ「もう、また負けちゃった……」


後輩A「マミ先輩! タオルをどうぞ!」

マミ「あら、ありがとう」

後輩B「エイラ先輩! スポーツドリンク飲みます?」

エイラ「汗かいた。水分必要。お前、気が利く!」


女生徒A「ああ……。今日も美しいですわ、巴様……」

女生徒B「エイラ様のワイルドな魅力に、わたくし、トリコにされてしまいましたわ!」

仁美「しかもおふたりは親友。これは俄然、はかどるというものですわね!」

ほむら「……仁美、帰ったんじゃなかったの?」

まどか「……」


…………



384: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:02:03.65 ID:qXopaMTSo
ほむら「どこのクレープ屋さんに行く?」

サラ「駅前のでいいんじゃない?」

ほむら「あそこはおとといも行ったから、別のところにしたいわね。まどかはどう?」

まどか「え? えっ……と、どこでもいいかな……」

ほむら「どこでもって言われると、逆に困るのよね」

まどか「ご、ごめん……」

サラ「あら? 校門のところに誰かいるわよ」


「あー、いたいた。今、帰りのようね。ちょうど良かったわ」

385: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:04:36.71 ID:qXopaMTSo
まどか(ルッカさん……!)


ルッカ「よっ、ほむら。それに、まどかとサラも一緒か」

ほむら「姉さん……。大学は終わったの?」

まどか「お姉さん!?」

サラ「どうして驚いているの?」

まどか「あ、いや……」


ルッカ「ほむら、ちょっと付き合ってよ。研究が行き詰まっちゃってさあー」

ほむら「なんで中学生の私に言うのよ」

ルッカ「あんたは天才だからねー。私には及ばないけど」

ほむら「ほめられてるのか、けなされてるのか、理解に苦しむわ」

386: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:07:06.14 ID:qXopaMTSo
ルッカ「はいはい。いいからさっさとバイクの後ろに乗って」

ほむら「ほんと強引ね。……ごめんなさい、ふたりとも。クレープ屋さんはまたの機会ね」

サラ「ええ、気にしないで」

まどか「あ……。バイバイ、ほむらちゃん」


ほむら「研究って、例のAIの研究?」

ルッカ「そうそう、『プロメテウス回路』のね。結構進んでるのよ」

ほむら「知ってるわ、前に見せてもらったから。姉さんが作ったにしちゃあ、紳士的なプログラムよね」

ルッカ「どーいう意味よ。……それと、ほむら。やっぱあんた、将来はうちの大学に来なさい」

ほむら「何よ、急に」

ルッカ「プログラムをまるで人間のように見るあんたのその思考、私と一緒だわ」

ほむら「……」

ルッカ「さ、飛ばすわよ!」

ほむら「飛ばさないで。安全運転でいってちょうだい」


まどか「……」


…………



387: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:10:02.93 ID:qXopaMTSo
サラ「遊んでたら、だいぶ遅くなっちゃったわね。ジャキ、怒ってるかしら……」

まどか「……」


サラ「そうそう。さっきね、知久おじさんが夕食はうちで食べないかってメールくれて」

サラ「ね、まどか。今日、泊まってもいい? 久しぶりにパジャマパーティーしましょうよ」

まどか「……サラちゃん……ごめんね……」

サラ「え、ダメだった? うーん、残念。じゃあ今度、都合のいい日にうちで……」

まどか「違う、違うの。サラちゃん……ううん、あなたはサラちゃんじゃない」

まどか「あなただけじゃない。ほむらちゃんも、クロノさんたちも……」


まどか「この世界はみんなウソ。わたしが見てる、ただの妄想」

サラ「……」

まどか「それとも……あなたが、見せてくれてたのかな……」

388: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:14:31.93 ID:qXopaMTSo
まどか「夢みたいだったの、今日一日。サラちゃんと、こんな日常が過ごせるなんて……」

まどか「でも……心が痛いの。幸せが痛いの……。だって、これって逃げてるだけだもん……」

サラ「まどか……泣いているの……?」

まどか「えへ、へ……。泣かないって決めたのに……。わたし、ダメだなあ……」

サラ「……」


まどか「でも……もう、泣いてるだけのわたしじゃないよ」

まどか「わたし、逃げずに立ち向かう。そうしなきゃいけないって、サラちゃんが教えてくれたから……」

サラ「そう……。それが……あなたが選んだ道なのね……」

389: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:17:14.92 ID:qXopaMTSo
サラ「辛く、苦しい道だわ……。きっと今みたいに、何回でも泣いてしまうでしょう……」

まどか「うん……」

サラ「ここにいたほうが、ずっと楽よ?」

まどか「うん……」

サラ「……それでも、行くのね」

まどか「うん。……さようなら。やさしくしてくれて、ありがとう」



サラ「さようなら。サラも喜んでいるわ、きっと……」


…………

………



390: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:22:50.47 ID:qXopaMTSo
まどか「……ん……。あ……?」

Suleika「……」

まどか「魔女……。そっか……戻って、きたんだ……」

Suleika「……」

まどか「……ごめんね。わたし、あなたを倒します」


まどか「『狂戦士の連弩』!!」

Suleika「……。……」

391: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:26:33.51 ID:qXopaMTSo
まどか「あ、グリーフシード……」

まどか「……?」

まどか(なんか、いつものと形が違うような……?)


『光のほこらにて、この暗黒石を6500万年以上の長きにわたり、太陽にさらせ』

『そして見よ。この石に宿る、少女たちの絶望から目を背けるな』

『さすれば太陽石と化したその石は、あなたに力を貸すだろう』


まどか「! 誰……!?」

まどか「……」

まどか「誰もいない……。今のは……?」

392: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:29:30.24 ID:qXopaMTSo
杏子「う……。あ、れ……? ここは……」

まどか「杏子ちゃん、大丈夫?」

杏子「まどか……。今のは……夢……? そっか……夢かよ……」

まどか「……杏子ちゃんは、どんな夢を見ていたの?」

杏子「覚えてねえ。……けど、すごく幸せなものだった気がする……」

まどか「……」


杏子「そ、そうだ! 魔女はどうなったんだ!?」

まどか「倒したよ」

杏子「え、アンタが? へえ、やるじゃん」

まどか「ううん、わたしの力じゃないよ。あの子はたぶん、眠りたかったんだと思う……」

杏子「……?」

まどか「それと、この石なんだけどね……」


…………



393: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:31:42.55 ID:qXopaMTSo
杏子「光のほこらねえ。聞いたことねえな」

まどか「でも、どこかにあるはずだよ。シルバードで探しに行ってみよう」

杏子「そうだな……」


魔王「さっそく伝説の太陽石を復活させに出かける! あとに続け、貴様ら!」

まどか「ジャキくん、正気に戻ってたんだね」

杏子「アイツ、ぶっ飛ばしていい?」

394: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:34:29.70 ID:qXopaMTSo
B.C.65000000 光のほこら


杏子「ここか。案外あっさり見つかったな」

魔王「なるほど、ここは夜が訪れても光を失わないようだ」

まどか「それじゃ、暗黒石を光の当たる場所に置いて……と」


杏子「で、シルバードで時間移動すりゃ6500万年経ってるわけだ。3分クッキングみてーだな」

まどか「なんだか簡単すぎて拍子抜けしちゃうね」

魔王「時間移動という所業がそもそもありえんのだ。存分に利用させてもらおう」

杏子「よし、A.D.2300に飛ぶぜ!」

395: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:36:41.47 ID:qXopaMTSo
A.D.2300 光のほこら


まどか「なんで!? 暗黒石が、なくなっちゃってる!」

杏子「オイオイ、どういうことだよ」

魔王「いずれかの時代で紛失したか……」

まどか「探さなきゃ!」

杏子「どの時点でなくなったか突き止めねえとな。とりあえず、古代から行くか」

396: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:38:19.26 ID:qXopaMTSo
B.C.12000 光のほこら


杏子「この時代にはまだある、か……」

魔王「6500万年経ち、ラヴォスの攻撃を受けてもなお変わらぬこのほこら……。実に興味深い」

杏子「暗黒石、まだ特に変わった様子は見られねえな」

まどか「でも、ちょっとだけ光が戻ってきたんじゃない? ほら、こことか……」



キイイィィン...!

まどか「!?」


…………

………



397: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:41:43.16 ID:qXopaMTSo
「このクソガキが! 俺様の服にドロをつけやがったな!」

「ご、ごめんなさい!」

「口だけで許されると思っているのか? 弁償してもらおう」

「そんな……。こんな額、私たちには払えません!」

「ならテメェが体で払いな。弟の不始末の責任を取るのは、姉の役目だぜえ? ヒヒヒ!」

「こいつ……! 姉ちゃんに汚い手でさわるな!」

「き、貴様……! 殴ったな! 親父にもぶたれたことないのに!」

「だめ、やめなさい!」

「許さねえ。地の民のクズのくせに……。これは不敬罪だ! 貴様ら3人とも処刑してやる!」

「は、放して……!」

「やめろ! ちくしょう!」


「ああ……どうして……魔法を使えないというだけで、こんな目に……」

「私に……私に、力があれば……夢のような生活を……」



「それが君の願いかい?」


…………



398: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:48:21.51 ID:qXopaMTSo
「こんな巨大な魔力は見たことがない。特例として、君を光の民と認めよう」

「やったぜ、姉ちゃん! これで威張り散らしたヤツらを見返せる!」

「おめでとう、お姉ちゃん!」

「ありがとう、ふたりとも……。浮遊大陸でなら、私たち3人だけでもきっとやっていけるわ」


「何を言っている? 大陸に上がることを認めるのは君だけだ」

「え……!? そ、そんな! お願いします、弟ふたりも一緒に……」

「地の民は浮遊大陸の大地を踏むこと許さず。さあ、来たまえ」

「姉ちゃん! どけよ、クソッ……! 姉ちゃん!!」

「お姉ちゃああん!」

「ああ……なんてこと……!」


「なぜ……。願いはかなったはずなのに……。家族がバラバラになってしまっては、意味がない……」


…………



399: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:50:59.26 ID:qXopaMTSo
「太陽神さま……。どうか、弟たちをお守りください……」

「いもしない神に祈ったところで無駄だよ。分かっているはずだ。君の弟はふたりとも死んだ」

「あなたは……こうなることが分かっていながら、私を……」


「極寒の地で君たちのような幼子が生き延びられるはずがない。そんなことは言うまでもないだろう?」

「だからこそ、君はひとりで逃げ出してきたんじゃなかったのかい」

「私のせいなの……? 私が、分不相応な願いを持ったから……。魔法少女なんかになったから……」

「願いはかなったんだ。夢のような人生、存分に謳歌すればいい」

「……ごめんなさい……グラン……。リオン……」


「安心しなよ。ふたりは死んで、英霊となった。本来ならば君もそうなるはずだったけど」

「未練がましくこの世に踏みとどまるより、その魂を宇宙のために燃やし尽くすほうがずっと有意義だ」

「……おっと。こんなことを言っても、魔女と化した君には何も届かないんだったね」

「今までありがとう。そしてさようなら、ドリーン」


…………



400: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:53:30.30 ID:qXopaMTSo
(魔法少女は……夢を見ることも許されないの……?)


(私はただ、小さな幸せが欲しかっただけ……)


(ああ……私は今、悪夢を見ている……。これでは……安らかに眠ることもできない……)



…………

………



401: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:55:06.56 ID:qXopaMTSo
まどか「……ハッ!?」

杏子「オイ、どうかしたのかよ? 石にさわったまんま、ぼーっとしやがって」

まどか(今のは……? 過去の魔法少女の、記憶……?)


魔王「暗黒石の紛失がこの時代でないのならば、もうここに用はない。行くぞ」

杏子「おし、次は中世だな」

402: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:57:50.28 ID:qXopaMTSo
A.D.600 光のほこら


魔王「まだ据え置かれているな」

杏子「確認終了っと。じゃ、さっさと行こうぜ」

まどか「……あ、あの、ちょっと待って」

杏子「なんだよ?」

まどか「少しだけ、時間くれないかな……」

杏子「別にいいけど、何するつもりだ?」


まどか(さっきの現象、一体なんだったんだろう……。もう一度さわれば、分かるかな……)

まどか「……暗黒石……また少しだけ、光が戻ってきてる……」


キイイィィン...!

まどか「……!」


…………

………



404: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 00:59:57.24 ID:qXopaMTSo
「お母さん! お母さあん! うわあああん!!」


「可愛そうに……。魔族に殺されたんだそうだ」

「魔王がいなくなったというのに、魔族による被害はいっこうに減る気配を見せんな」

「東のほうではだいぶ落ち着いているらしいぞ」

「チョラス村のあたりか? 移住したほうがいいんだろうか……」

「だが住み慣れた土地を離れ、新しい土地でやっていくなんて無茶なこと、できるわけがない……」

「おい。それより、あの娘をどうにかしてやれよ。たったひとりの肉親が死んだんだぞ」

「そう言うならお前が引き取ってやれ。うちにはそんな余裕はない」

「い、いや。俺だってそんな厄介なことは……」

405: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:03:58.14 ID:qXopaMTSo
「アンタら、それでも男かよ!」

「……」

「大の大人がこれだけ集まってるってのに、あの子になんにもしてやれねえのか!」

「生意気言うな。ガキのくせに……」

「もういいよ。俺があの子の面倒を見る!」

「なに?」


「お母さん……うう……」

「もう泣くな!」

「だって……」

「俺が一緒にいてやる! 俺がお前を、ずっと守ってやる!」

「……それって、告白……?」

「なんでもいい。お前が泣き止むなら、俺はなんだってしてやるさ!」


…………



406: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:06:17.59 ID:qXopaMTSo
「大ニュースだぜ! 見てくれ、これ!」

「それ……勇者バッジ?」

「王家に保管されてたものを正式に授与されたんだ。ついに俺は、あこがれの勇者になったんだ!」

「行くの……? 魔族討伐の旅に……」

「ああ。誰かがやらなきゃならねえ。なら、俺がやる!」

「私も一緒に……」

「何言ってるんだ。危険な旅に、お前を連れて行くわけにはいかない」

「待っててくれ。必ずお前のもとに帰ってくるからよ!」

「待って! 行かないで……。イヤ……ひとりにしないで……」


「太陽神さま……。なぜなのですか……? なぜみんな、私のもとから去っていくのですか?」

「私はただ……愛する人と、ずっと一緒にいたいだけなのに……」



「それが君の願いかい?」


…………



407: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:08:00.13 ID:qXopaMTSo
「お前が……魔王、だったのか……」

「魔王? 魔族はそう呼ぶけど、私は私だよ。私はただ、あいつらを従えてるだけ」

「それが魔王じゃなくて、なんなんだよ……」

「ねえ、勇者の旅なんてもう終わりにしようよ。魔族は、私が命令すれば言うことを聞くから」


「……そうはいかない。たとえお前が人々のためを思って魔族を纏め上げたのだとしても……」

「国のみんなはそれでは納得しない! お前が倒されることでしか、平和はもたらされない!」

「それを実行するのが、勇者である俺の務めなんだ!」

408: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:12:24.70 ID:qXopaMTSo
「私を殺すの? どうして! 私は、あなたと一緒にいたかっただけなのに!」

「魔王……いや、魔族を率いる魔女よ! お前は人間の敵だ!」

「イヤ……! こんな、こんな結末……私は望んでいなかったのに……!」


「思い出の中で人は生き続ける。それも、キレイな姿のままでね」

「彼を殺して思い出とすればいい。それとも、君が死ぬかい?」

「良かったじゃないか。これで君の望みはかなった。彼とずっと一緒にいられるよ」

「やあ、見事な魔女だ。まさに、魔王と呼ぶにふさわしいね」

「さて、勇者タータは果たして無事魔王を倒せるのかな? 楽しみだね」


…………



409: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:15:02.76 ID:qXopaMTSo
(魔法少女は……大事な人の、そばにいることすら許されないの……?)


(私はただ、彼の愛がほしかっただけなのに……)


(ああ……もう何も見えない……何も聞こえない……。いとしい人を感じることができない……)



…………

………



410: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:16:32.75 ID:qXopaMTSo
まどか「……」

まどか(また、見えた……やっぱりこれって……)


杏子「大丈夫かよ? うずくまって……腹でも痛いのか?」

まどか「……ううん、なんでもない。さ、行こう……」

411: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:18:06.21 ID:qXopaMTSo
A.D.1000 光のほこら


まどか「! ない……!」

魔王「決まりだな。暗黒石は、この時代に紛失した」

杏子「クソッ、どこいったんだ? 誰か盗みやがったのか?」


魔王「犯行現場というものは何がしかの手がかりが残されているもの……見つけたぞ!」

魔王「ペロッ……これは青酸カリ!!」

杏子「なんやて工藤!?」

412: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:21:02.86 ID:qXopaMTSo
まどか「それただの土だから。遊んでる場合じゃないよ、早く暗黒石を見つけないと」

杏子「つっても、どうするんだよ。いつ、誰が持ち出したかも分からねーぞ」

まどか(暗黒石は、きっと魔法少女に関係があるもの……。だったら……)


まどか「ねえ杏子ちゃん。太陽神殿で探知した魔力のパターン、まだ把握してる?」

杏子「ん? ああ、そりゃ分かるけど……それがなんだよ?」

まどか「探して。きっとその発生元に、暗黒石があると思うの」

413: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:26:07.43 ID:qXopaMTSo
A.D.1000 パレポリ町


魔王「ずいぶんみすぼらしい家屋だな。本当にここに暗黒石があるのか?」

杏子「まどかの言うことが正しいんなら、そうなんだろ」

まどか「えっと、お邪魔します……。誰かいらっしゃいませんかー?」


元町長「おや、このような場所に何用ですかな?」

まどか「あ……ここの住人さんですか?」

元町長「いかにも」

まどか「私たち、とある石を探してるんですけど……」


…………



414: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:28:32.62 ID:qXopaMTSo
元町長「持ってきましたぞ。これがその石です」


魔王「確かに、暗黒石のようだ」

元町長「旅の若者がここに置いていったんですよ。あなた方には大切なもののようですな?」

まどか「はい。あの……譲っていただくわけには……」

元町長「構いませんよ。どうぞ持っていってください」

杏子「えらくあっさり渡してくれるんだな」

元町長「どんなものでも、みんなで分け合う! 困っている人には手を差し伸べる!」

元町長「それがワシのモットーです。亡き娘から教えられた、ね」

まどか「え……娘さんが……?」

415: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:30:00.26 ID:qXopaMTSo
元町長「さあ、お嬢さん。受け取ってください」

まどか「あ、どうも……」


キイイィィン...!

まどか(! また……!)


…………

………



416: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:32:21.66 ID:qXopaMTSo
「あの町長、なんとかならんものか? 金にがめつく自分のことしか考えていない」

「あんなのがこの町の長では、この先やっていけないぞ」

「先日も、独り身の老人を住まいから追い出したらしい。つぶして賭博場を建てるんだとよ」

「やってられねえな。俺たちの頼みは聞きもしないで、そのくせやりたい放題だ」

「早く死ねばいいのに」


「……」

「見ろよ、あれ。町長んとこの娘だ」

「近寄るなよ。あんな親を持つ子供だ、どうせあいつも性根が腐ってるさ」

(また、父さんの陰口……。みんなの冷ややかな目が、私にも向けられている……)


…………



417: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:34:53.29 ID:qXopaMTSo
「……ただいま」

「おう、娘よ。見ろ、この壷を。100年前に作られたもので、たいそう価値があるそうだ」

「これでまたワシのコレクションが増えるな! うひひひ!」


「そんなもの、見たくない」

「なんだ、機嫌が悪いのか? ……ん? どうした、その顔のキズは」

「……」

「イジめられたのか? どこの誰だ、言え。ワシの権力でこの町に住めないようにしてやる」

「……もういいよ!」

「おい、どこへ行く? 仕方のないヤツだ。夕飯までには帰ってこいよ。今日のメシも豪勢だからな!」

418: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:37:01.09 ID:qXopaMTSo
(もうやだ……。父さんがあんなだから、私には友達もできない……)

(それどころか、ののしられて殴られて……。誰も私を助けてくれない……ひとりぼっち……)

(父さんも父さんよ……。お金の力ですべて処理しようなんて、そんなのなんの解決にもならない……)


「ただ、少しだけでいいのに……。ほんの少し、父さんがみんなに優しくなれば……」

「お互い助け合って、分かち合って。困っている人を見捨てないことが、大切だってこと……」

「気づいてよ……父さん……」



「それが君の願いかい?」


…………



419: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:39:00.46 ID:qXopaMTSo
「職もない、食べ物もない……。このまま俺は浮浪者として死ぬのか……」

「それは大変だ! ワシが職を斡旋してあげよう。落ち着くまで、ワシの家で生活するといい」


「お母さんがはやり病で倒れちゃった……」

「国に陳情して、この町にも有名な医師が来てくれることになったよ」

「でも、お金が……」

「治療にかかる費用は全額、ワシが負担する。安心しなさい!」


「この年になると、家の階段を上るのも難儀でのう……」

「住みやすい家に改築しましょう! ワシに任せなさい」

「それにお爺さんがさびしくないよう、毎日来てあげますよ!」


「ニャー」

「これは可愛そうに。捨て猫か。ワシの家で面倒を見てあげなければ!」

420: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:40:58.58 ID:qXopaMTSo
「一体どうしちまったんだ、町長は? まるで人が変わったみたいだ」

「この前も私、ただ荷物が多くて苦労してただけなのに、当たり前のように家まで運んでくれたわ」

「あたしの誕生日を町全体でお祝いしてくれるんだって! うれしいな!」

「定期的に炊き出しを行ってくれるそうだ。これで食い扶持に困らなくてすむぜ!」

「なんて住みよい町なんだろう! このパレポリ町は、現世に現れた桃源郷だな!」


(町の人たち、幸せそうな顔をしてる。私にもみんな、良くしてくれる……)

(やっぱり人に情けをかけてあげれば、めぐりめぐって自分に返ってくるんだ!)

(笑顔がいっぱい。うれしいよ、私。なにより父さんが生き生きしてるもの)

(魔法少女になって、良かったなあ……)


…………



421: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:43:35.01 ID:qXopaMTSo
「おう、町長さん。またアンタの賭博場で全財産すっちまったよ。金貸してくれ」

「はいはい、お安い御用で! 返すのはいつでもかまわんよ!」

「ヒヒ……。返すわけねーだろ、バーカ!」


「町長さんよ。そろそろその職、辞職したほうがいいんじゃねえか? ボランティアには邪魔だろ?」

「そうですな。では、後任はあなた方に一任します!」


「あー、この家、豪華だよな。俺たちみたいな浮浪者にこそ必要なんじゃねえか?」

「ごもっともです。すぐ出て行きますよ!」


「アンタの嫁さん、健康でうらやましいよ。傷病者のために臓器提供してくれないかな?」

「困っている人のためなら、嫁さんでもなんでも差し出しますよ!」


「アンタんとこの子供、3人いるだろ? 弟さんと下の妹さんを俺にくれや」

「愛玩奴隷として可愛がってやりたいっつーオッサンがいるんだよ。俺には理解できないがね」

「可愛がってもらえるなんて、それはありがたい! どうぞ、連れて行ってください!」


「町長さん。いや、元町長さんよ」

「まだ隠し持ってんだろ? アンタの財産のすべて、町のみんなに還元してやれよ」

「ええ、ええ、ワシのものはみんなのもの! さあ、すべて持っていってください!」


…………



422: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:46:25.34 ID:qXopaMTSo
「父さん……お腹、すいたよ……」

「スマンな。この食料は町の人たちに分けてあげる分なんだ。ワシらが食べてしまうわけにはいかない」

「……ねえ……わたし……熱があるんだけど……」

「我慢しなさい。ワシはこれから、仕事に行かなければならないから」

「お仕事……? それって、お金もらえるの……?」

「何を言ってるんだ! 無償で働くからこそ、みんな喜んでくれるんだぞ。じゃあ、行ってくる」

「……」


「……寒い……苦しいよ……。助けて……太陽神さま……」

「お水……せめて、お水が飲みたい……。ああ……でも、もう……体が動かない……」

「誰か……誰か、いませんかあ……!」

423: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:48:52.90 ID:qXopaMTSo
「誰もいないよ。無情なものだね。苦しむ君には、見舞いのひとりすら来ない」

「……あなたは……」


「君はこんな言葉を聞いたことがあるかい?」

「『腹をすかせたネズミにチーズをやると、今度はミルクをくれと言い出す』」

「人の欲望には限りがない。与えれば与えるだけ、それ以上のものを望んでくる」

「人間のサガというものさ。それに気づけなかった君には、ご愁傷様というしかないね」


「……私は……なんのために……。……信じてたのに……」


「君はもうすぐ死ぬ。遠からず、君のお父さんも過労で倒れるだろうね」

「復讐しなよ。恩知らずの町の人たちに。魔女になって、さ」

「それが今、君ができる唯一のことだ」


…………



424: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:50:59.55 ID:qXopaMTSo
(魔法少女は……誰にも助けてもらえないの……?)


(私はただ、ほんの少し救いを求めただけなのに……)


(ああ……絶望が私を包む……。この弱った体で、怨みだけが活力を保ち続けている……)



…………

………



425: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:53:00.66 ID:qXopaMTSo
まどか「……」


元町長「お嬢さん、どうかしたのかい? もしかして、この石は目的のものではなかったのかね?」

まどか「いえ、そんなことは……。ありがとうございます……」

元町長「うむ。人助けして感謝されるのは、やはり気持ちがいいものだ」

まどか「あの……娘さんのこと、お悔やみ申し上げます……」

元町長「君は娘の知り合いかね?」

まどか「そういうわけではないですけど……」

元町長「そうか。見ず知らずの人に悲しんでもらえるなんて、あの子も果報者だよ」


魔王「石は取り戻した。この時代の光のほこらに置きなおし、A.D.2300へ飛ぶぞ」

426: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 01:58:48.63 ID:qXopaMTSo
A.D.2300 光のほこら


杏子「すげえ……! あの真っ黒だった暗黒石が、ものすごい光を放ってやがる!」

魔王「この光……闇に生きるものにとっては、少々まぶしすぎるな」

杏子「太陽の光を集めた『太陽石』ってわけか」


まどか(確かに、この光は太陽のもの。でも、それだけじゃない……)

まどか(数千万年もの時の流れの中で、生まれては消えていった女の子たち……)

まどか(魔法少女たちの、いのちの光なんだね……)

まどか(だって、見えるもの。こうやって、手を触れるだけで……)


キイイィィン...!


…………

………



427: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 02:01:06.99 ID:qXopaMTSo
「……痛い……」

「……苦しい……」

「……辛い……」

「……悲しいよ……」


「憎い……。魔女が、憎い……。何も知らない人たちが、憎い……」

「インキュベーターが憎い……。彼らは、どんな時代でもやってくる……」

「それは、ラヴォスがいなくなったこの時代ですら……。エネルギー採取のためだけに……」


「……怖いよ……」

「この世のすべてが怖い……」

「苦痛が、嘆きが、死が、憎悪が、喪失が……」


「……絶望が……私を襲う……」

428: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 02:03:03.73 ID:qXopaMTSo
「私は」

「わたしは」

「あたしは」

「アタシは」


「魔法少女は、希望を抱いてはいけないの?」

「魔法少女は、希望を信じてはいけないの?」


「ねえ、誰か」

「誰か、お願い」

「助けて」

「助けてよ……」

429: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 02:05:01.91 ID:qXopaMTSo
「私を」

「わたしを」

「あたしを」

「アタシを」


「助けてください」

「魔法少女を……誰か……」


「救ってください……」


「……ねえ、お願い……」



「……太陽神さま……」


…………

………



430: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 02:08:04.59 ID:qXopaMTSo
まどか(……ずっと……ずっと、見てきたんだね……あなたは……)

まどか(何も言わず……何も言えず……何もできず……)

まどか(ただ、聴くことしかできなかった……。彼女たちの祈りを……)


まどか(いっしょだね……わたしたち……)

まどか(……だから、あなたは……)



杏子「まどか? なんで泣いてるんだ?」

まどか「……この子も……泣いてるよ」

魔王「石が泣くだと? ありえんな、何を血迷ったことを言っている」

まどか「……」

431: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 02:11:06.60 ID:qXopaMTSo
年代不明 時の最果て


ルッカ「はい、できたわよ」

まどか「ありがとうございます、ルッカさん!」


さやか「へー、太陽石をボウガンにアタッチメントとしてつけたんだ」

まどか「うん。これで、ずっと一緒にいられるから……」

マミ「なんだかその石が人間であるかのような言い回しね?」

ほむら「何言ってるのよ。石は石でしょ」

杏子「どうも今回のまどかは様子がおかしいな」


カエル「意思を持つ石……なんつってな……」ボソッ

さやか「うわ、さっぶ。もっとおかしい人がここにいたわ」

カエル「このシャレの良さが分からんとは……。まだまだ青いな、さやか」

さやか「ただのオヤジギャグじゃん!」

432: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 02:13:18.09 ID:qXopaMTSo
まどか(サラちゃん、ハッシュさん。わたし、なんとなく分かった気がする)

まどか(わたしにできること。わたしが願うべき祈り……)


まどか(答え、見つけたよ)

433: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 02:15:07.19 ID:qXopaMTSo
第14話(マルチイベント編-5)「太陽石」 終了


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