1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 02:51:57.74 ID:FtzdOBFg0
商店街の人「おめでとうございまーす! 孤島リゾート施設、五泊六日、ペアチケット! 大当たりでーす!」

幼馴染「す、すごいよ! 男! やったぁ! 楽しみだね!」

友子「ちょっと待てよ。幼馴染ちゃん。なんで幼馴染ちゃんが行く事が決まってるのさ。アタシだって行きたいのに」

眼鏡「や、やったでヤンス! おいらも行きたいでヤンス!」

男「ま、まあ待てよ。二人しかいけないんだろ。オレが当てたんだし、行く相手はオレが決め……」チラッ
男(女さんと行きたい。女さんと行きたい。女さんと行きたい。女さんと行きたい。女さんと行きたい)

女「あらあら。ペアチケットですし、私は遠慮しておきますね」

男「」 




2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 02:52:18.31 ID:FtzdOBFg0
友子「さて、幼馴染ちゃん。雌雄を決するときがきたようだね」

幼馴染「そうだね。友子ちゃん。勝つのはどっちか一人」

友子「男といくのはあたしだ」キッ

幼馴染「そうはいかないよ。友子ちゃん」キッ

 バチバチバチ

眼鏡「おいらも行きたいでヤンスのに……」

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 02:52:45.15 ID:FtzdOBFg0
男「あー。そんな行きたいならお前らでいってこいよ」

幼馴染・友子「「えっ!」」

幼馴染「そ、それじゃあ意味がないよ! 男!」

友子「幼馴染の言う通りだよ男! 一人はお前で決まりだ」

男「……なんでだよ」

幼馴染「な、なんでだっていいじゃん!」

友子「そ、そうだそうだ! 細かい事を気にするな!」

男「細かいのかなぁ……」

幼馴染・友子「「絶対に負けない!」」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 02:53:21.89 ID:FtzdOBFg0
男「おい。お前ら。喧嘩するくらいなら、このチケット捨てるぞ。争いのタネになるくらいなら、いらねーだろ」

幼馴染「だ、だめだよ!」

男「だったら喧嘩するなって」

幼馴染「くっ……。仕方ないわ。だったら私が、全員分のチケットを用意するよ」

男「……いいのかよ」

幼馴染「別に構わないよ。全員で旅行行くくらいのお小遣いなら、毎月もらってるし」

男「毎月だと!?」

幼馴染「どうかしたの?」

男「さすが、金持ちだ……」

幼馴染「……ちぇー。二人で行きたかったのになー」ボソ

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 02:53:54.49 ID:FtzdOBFg0
■孤島リゾート到着■

男「うおー! すっげえ! マジで孤島!」

眼鏡「そりゃそうでヤンス。それにしても東海地方にこんな島があるなんて、知らなかったでヤンス」

友子「森もあるし、海、超キレイだし! 泳ぎたーい!」

女「でしたら、一旦荷物を置きにいきましょうか」

幼馴染「そうだね。そうしよっか」

眼鏡「ううう! 白球ばかり追いかけてたおいらが、女子たちとこんなリゾートにこれるだなんて。この世の春が来たでヤンスううう!」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 02:54:25.63 ID:FtzdOBFg0
眼鏡「高そうでヤンス! セレブでヤンスー!!」

男「フロントとか、あるのかな」

眼鏡「係りの人がいないでヤンスね……」

男「まあ、チケットで部屋はわかるし、行ってみるか」
男「じゃあ各自、自分の部屋まで荷物を置きに行って、あとで集合な」

眼鏡「おいらは男くんと同じ部屋でヤンスね」

男「って、女さんたちは何を話し合ってるんだ?」

友子「ああ。男か。それがさー、二人部屋が二つみたいでさ。どうしよっかなって」

女「じゃあ、わたしが一人で寝泊りしますよ。ちょっと寂しいですけど」

男「女さん。だったらオレが一緒に……」キリッ

幼馴染・友子「「じとー」」

男「何でもないです」

友子「さすがに悪いから、交替交替にしようよ。代わりばんこ。どうしても寂しかったら、一緒に寝よう?」

男「お、オレもっ………………、いえ、なんでもないです」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 02:55:14.51 ID:FtzdOBFg0
男「ちょっとトイレいってくる」

男「おや。オレたち以外にも結構宿泊者がいるみたいだな」

じじい「ぜーはーぜーはー」

ばばあ「だ、大丈夫ですか? お爺さん。私も荷物、持ちますよ。階段は大変でしょう」

じじい「き、気にするな婆さん。この歳になって、初めての新婚旅行だ。エスコートさせてくれ」

ばばあ「……お爺さん」

じじい「あっ」ヨロッ

男「おっと。あぶない。大丈夫ですか? お爺さん」ヒョイ

じじい「す、すまん……」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 02:55:51.53 ID:FtzdOBFg0
男「よろしければ、お部屋まで荷物をお持ちしますよ」

じじい「じゃ、じゃが」

男「こんなところで怪我したら、お婆さんが悲しんでしまいますよ」

じじい「う、うむ……」

男「何か困ったことがあったら、呼んでください。できるだけ手伝いますし」ニコ

じじい「……すまんな。君は」

男「あ、オレ、男っていいます。203号室です。じゃあ、行きましょうか。お二人の部屋はどこですか?」

じじい「304号室じゃ。ありがとう」

ばばあ「ほんとに、ありがとうねえ」

男「いえいえ」



男「お待たせ」

友子「遅い」

幼馴染「遅い」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 02:57:09.59 ID:FtzdOBFg0
女「まあまあ。とりあえず、海へ行きましょうか」

ワーワー        アハハ
  キャーキャー
 ワーワー       ウフフー
    キャー
ワー       アハハー
    ワー
         キャー
 イヤーン
      ツカマエテゴランナサーイ

男「楽しかったな」

眼鏡「ヤンスー♪」

女「ですねー。それにしても、男さんったら、意外とお茶目なんですね」

男「そ、そうかな」

男「…………暗く、なってきたな」

 男はふと空を見上げた。
 先ほどまで晴れ渡っていた空に雲が侵食してきている。
 遠くを見れば、雷をまとう黒雲が海の上を覆っていた。
 それは、これから先の未来を暗示しているようで、胸に不吉な動悸が走った。

幼馴染「どうかしたの? 男」

男「いや、なんでもない」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 02:58:01.07 ID:FtzdOBFg0
男「ふー。やっと洋館に帰ってきたぜ。着替えも終わったし、夕飯にでも……」

じじい「お、男くん!」

男「お爺さん? どうしたんですか?」

じじい「さっきから婆さんの姿が見えんのだ! 見てないか?」

男「いや、知りませんね。誰か知ってるか?」

一同が首を横に振る。

男「……すみません。わかりません」

男「捜すのお手伝いしますよ」

友子「あたしも手伝うよ」

幼馴染「わたしもー」

@捜索中....


男「……見つからないな」

幼馴染「だねえ」

男「そういえば、そろそろ食事の時間ですし。先に食堂へ行ってるのでは?」

じじい「う、うむ……」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 03:00:54.86 ID:FtzdOBFg0
■食堂■

男「食堂も豪勢だな。金が掛かってそうだぜ」

女「男くん、ねえ、あれ、なんでしょうか……?」

男「え? なんだ……? 中央のテーブルに、何か乗ってるな」

 それは、正方形の上に球体がくっついたような、不思議な物体にみえた。
 赤い斑点模様の布切れをまとっているように見える。

男「……ッ。なんだこの匂い。近付くにつれて、ひどくなる」

じじい「…………そんな」

男「お爺さん、どうしたんですか? って、あっ! そんなに走って、転ばないように気をつけてくださいよー」


じじい「ア、ア、ああ、あああああああああァっ!」


男「お爺さん!?」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 03:01:41.99 ID:FtzdOBFg0
幼馴染「え、これ、人間……?」

男「マジかよ…………」

じじい「婆さんっ! 婆さんんんッ! う、うあ、あ、あああああっ!」

 それは両腕と両足の欠けた、老女だった。
 赤い血が、白いテーブルクロスに染み込んでいる。
 溢れだした液体が、ぽたりぽたりと床に滴り落ちていた。

じじい「なんで、どうしてじゃ。そんな、婆さんっ、婆さんっ。なあ、頼む。返事を、返事をしてくれ婆さん」

 瞳は見開かれたままだ。
 表情は苦痛に染まっている。
 それはまぎれもない、人間の死体だ。
 爺さんは服が汚れるのも構わず、しがみつくようにして叫んでいた。

 そこへ食堂への扉が開く。
 ぞろぞろと、他の宿泊客たちがやってきた。

オッサン「そろそろメシの時間やって聞いたんやけど。……って、なんでその爺さんは叫んどるんや」
ギャル「ご飯食べにきたんだけどぉ、準備できてるぅ?」
オバン「おかわりとかできるのかい?」
大学生「んだよ、この臭い。まさかこれがメシかぁ?」

じじい「そんな、婆さん……。婆さんっ……!」

オッサン「なんやねん。この爺さん。何見とんねん……って、ひいいいい。し、死んどる! 人が、死んどるううう!」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 03:02:21.34 ID:FtzdOBFg0
オッサン「一体何があったんや! お前らがやったんか!? ああん!?」

男「お、オレたちがここに来たときにはもう」

オッサン「ホンマかいな。信じられへんわ。おっと、お前ら動くんやないで。こっちに一歩でも来たら、殴り殺したるでぇ~」

男「ま、待てよ。椅子なんか振りかぶったら、危ないだろ!」

オッサン「来ンなやッ!」



 そこへ、ジジジ、と何か機械じみた音が食堂に響いた。


 ブツン

『――ようこそ、お集まりいただいた諸君。私はこの館の主だ』

「「「!?」」」

『突然の事で驚かれたと思う。そのことについて説明しよう。ああ、私のことは【マスター】とでも呼んでいただこうか』

男「どこから……、スピーカーか!」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 03:03:10.51 ID:FtzdOBFg0
マスター『さて。これから諸君は得がたい体験をすることになる。人の死、苦痛、裏切り、命懸けの駆け引き』

男「何をいってやがんだよ」

マスター『本当に信じるとは何なのか、信頼に足るものは誰なのか、普通に生きるだけでは得られない、濃密な時間』

男「何を、いってんだよてめええ! 人が一人死んでんだぞっ!」

マスター『私はこれから真実を告げよう。…………この中に、殺人者が紛れ込んでいる』

男「んなこた、判ってるさ。てめえだろうが!」

マスター『私は決して手を下さない。殺人者は、君たちの中の誰かだ。君の隣にいる人物かもしれない』

 全員がお互いに顔を見合わせる。
 恐れるかのような、警戒したかのような、そんな表情で。

マスター『なぜそんなことを、という疑問を諸君らは抱くだろう』
マスター『私は人の疑心や、裏切りなどが大好物でね。そのような人間は思いのほか多い』
マスター『そんな人間のために、君らには踊ってもらおう』

男「ふざけるなっ!」

マスター『我々の用意した殺人者は、これからも殺害を続けていく。それを止めたければ、見つけ出すことだ』
マスター『いいや、別に見つけずとも構わない』
マスター『今諸君らは、この中の全員に恐怖を感じたはずだ。ならば、することは一つではないか?』

男「何を言って……」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 03:04:02.23 ID:FtzdOBFg0
マスター『そうだ。殺してしまえばいい。疑わしい者を殺してしまえば、君の命は保証されるのだから』
マスター『警察のことなら心配は要らない。この島は私の所有物であり、誰も来ない。一人で生き残って一人で帰れば、告発するものなど誰もいない』
マスター『さあ、踊れ。存分に。自分の命が保証されたと思うまで、踊り狂え』
マスター『一週間後に迎えを出す。だから、せいぜいそれまで生き残ってくれたまえ。そして楽しませてくれたまえ』
マスター『しかし、ただでこのようなゲームにつき合わせるのも心苦しい』
マスター『ゆえに、褒美を用意した』
マスター『生き残った方々には、日本円で二千万を支払おう。それを人数で割って欲しい』
マスター『口先だけで言っても信じてもらえないだろう。金はすでに、この館の倉庫に置いてある』



マスター『そうそう。得がたい体験で、一つ言い忘れていたことがある。この島で君は、殺害を体験できるかもしれない』

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 03:04:34.66 ID:FtzdOBFg0
オッサン「な、なんなんやねん! こんなの、許されへんで! わいは丹生速出商事の社長やぞ!」

オッサン「今すぐ部下に迎えに……、あ、あかん。ここ、電波通じとらん。とにかく! わいは一人で帰らせてもらうで!」

オッサン「せやでっ! 乗ってきた船があったはずや!」

ギャル「ま、待ってってゆーか! うちも乗せてほしいしぃ!」

オッサン「犯人かもしれへん奴と、一緒にいられるかい!」 バキッ

ギャル「ぎゃっ」ドスン

オッサン「ま、あとで助けは呼んできたるさかいに! ほな、達者でな!」ダダッ

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 03:04:57.46 ID:FtzdOBFg0
 オッサンが走り去ったあと、爺さんはゆっくりと立ち上がり、呟く。

じじい「……誰じゃ」

男「え」

じじい「婆さんを殺したのは誰だと聞いとるんじゃ! 殺してやる! 絶対に、殺してやる!」

男「お、お爺さんっ。落ち着いてくださいっ」

じじい「触るな! き、貴様も信用できん! とにかく、婆さんの仇は、絶対に見つけ出して討ってやる!」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 05:20:30.34 ID:FtzdOBFg0
オバン「ちょっと待ちな。死体をこのままにゃ、できないだろ。おちおち食事もとれないわさ。あたしがなんとかするわさ」

じじい「お、おい! 婆さんに勝手に触るな!」

オバン「爺さん。あたしゃこれでも医者やってるんだわさ」
オバン「アンタも、奥さんをこのままにできないだろう? 少しでも綺麗に整えて、どこかに安置してやったほうがいいとおもうわさ」
 そういってオバサンは、お婆さんの目を閉じさせた。

じじい「ぐ……。…………頼む」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 05:20:50.88 ID:FtzdOBFg0
オッサン「あかん! あかんでえ!」

ギャル「何しに戻ってきたんだよテメー」

オッサン「船が、壊されとった……」

男「マジかよ……」


オッサン「今夜はもう寝させてもらうでえ……。おどれら、わいの部屋に近付くんやないでえ? ワイは、社長なんやでえ?」
オッサン「おう。殺人鬼。聞いとるかいな。わいに、なんかしてみい! 日本に戻ったら、目にモン見せたるでえ!」
オッサン「ほなな!」


ギャル「ぺっ。なんなの、あのオッサン! 頭おかしいってゆーか!」
ギャル「そもそもぉ、殺されたら社長なんてカンケーねーじゃん! サイアクー!」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 05:21:11.47 ID:FtzdOBFg0
男「俺らも、戻ろうか……。って、女さん!? 大丈夫か!?」

女「う……はい。だい、じょぶ、です」ヨロメキ
女「これから、私たち、どうなっちゃうんでしょうか……」

男「……大丈夫だから。大丈夫だよ。…………殺させたり、するもんか。もう二度と、絶対に……。全員で、帰るんだ……」

女「お、男くん?」

男「……なんでもないよ。ごめん。部屋まで送るよ」


 こうして、俺たちは、孤島のリゾートに滞在する事になった。
 誰とも知れない殺人者と共に。

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 05:21:52.72 ID:FtzdOBFg0
 その日、俺は夢をみた。久しぶりの夢だ。

男(……懐かしいな。父さん、母さん)

男(…………そして、妹。二度とツラなんて、見たくないのにな。もう顔も思い出せないけど)

------------------------------------------------
父「はっは。男はお父さんが作ったハンバーグが好きだな」

幼男「おいしぃよー」

母「お父さんも忙しいんですから、休日にまで家事しなくてもいいんですよ」

父「はっは。男が喜んでくれるんだ。こんなのなんでもないさ」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 05:22:19.63 ID:FtzdOBFg0

幼男「いもうとも、おいしい?」

妹「…………うん」

 妹の顔があるべき場所には、ただ黒があった。
 目と口の形の空洞がくりぬかれているだけに見える。

幼男「いもうとの、蝶の髪飾り、今日も似合ってるねえ」

妹「…………うん」

母「そんなことより、男が喜んでくれるのが一番よねえ」

父「そうだ。男がよければそれでいいんだ」

 そうだ。父さんも、母さんも、俺だけを見てた。

 だから、だからだから、だからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだからだから


 だから、あんなことに。

 なってしまったんだ。



――シーンが、切り替わる。

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 05:22:40.52 ID:FtzdOBFg0
 血まみれの妹が包丁を持っている。

 空洞のような目と、真っ赤な口を、笑みの形に歪める。

妹「これでもう。お兄ちゃんが見られることはないね。本当に、よかった」

幼男「あ、ああ……」

妹「こいつが、こいつらがっ!」ゲシッゲシッ

 妹は、俺の両親だったものを足蹴にしていた。

妹「こいつらが、こいつらがああああっ!」ゲシッグチャッ

 やめて、やめて、やめて。もうやめて。
 俺は、何も見たくないのに。
 ぼくは、何も見たくないのに。
 どうしてこんなことをするの?

 そしていもうとがぼくをみてほほえんだ

妹「よかったね。お兄ちゃん」

幼男「あ、あああ、ああああああああああああああああああああああ....あ......」

-------------------------------------------------------------------

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 05:23:32.64 ID:FtzdOBFg0
男「あ、あああ、アァアアアアあああっ、ああああ!」

眼鏡「男くんっ! どうしたでヤンスか! 男くん!」

男「ぜはっ、は、はひゅ、はぁ、あぁ……。…………朝か。すまん。眼鏡。騒がしくしちまって」

眼鏡「そんなことどうでもいいでヤンス! 男くんは大丈夫でヤンスか?」

男「……大丈夫だよ」

眼鏡「なら、いいでヤンスけど……」

男「心配かけて悪いな。とりあえず、幼馴染たちの部屋に行くぞ」

眼鏡「ひょおう! 女の子の部屋にいけるでヤンスか! は、初めてでヤンス! ちょっとまってほしいでヤンス」

@15分経過
男「そろそろいいか?」

眼鏡「ま、まだでヤンス。眼鏡の角度が決まらないでヤンス!」

@30分経過
男「そろそろいいか?」

眼鏡「帽子の角度が決まらないでヤンス!」

男「どうして野球帽なんて被ってるんだよ!?」

眼鏡「おいらの正装でヤンス」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 05:24:02.88 ID:FtzdOBFg0
@45分経過

コンコンッ

男「誰かきたな。ちょっと見てくるわ」

男「って、幼馴染たちじゃないか」

幼馴染「来ちゃったよ。とりあえず、会議しようよ。これからのこととか」

男「だな」

女「すみません、本当は昨日やらなきゃいけなかったのに。私が倒れたばかりに……」

男「だ、大丈夫だから! き、気にしないでくれ」

眼鏡「お、おいらの、女の子の部屋デビュー(   もあるよ!)が、パーでヤンス……」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 05:24:36.26 ID:FtzdOBFg0
友子「それにしても、これ、相当いやらしいね」

男「……だな」

眼鏡「どどど、どういうことでヤンスか!? おいら、やらしくないでヤンス!」

友子「昨日みんなで、二千万の話が本当かどうか、確認したじゃんか。それで、本当にあったじゃんか」

眼鏡「二千万もあれば、ふひ、ふひひ……」

友子「それがやらしいっていうんだよ」

眼鏡「ご、ごめんでヤンス!」

友子「ちげーっつーの。眼鏡のことじゃねーよ」

男「眼鏡。これは、二千万を山分けするゲームだ。判るか?」

眼鏡「あ……」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 05:25:10.72 ID:FtzdOBFg0
男「つまり、俺が死ねば、お前の取り分は増える」
男「生き残ったのが一人なら、全部独り占めさ」

眼鏡「お、おいら、男くんたちを押しのけてまで、そんなの要らないでヤンス……」

男「ありがとよ。俺も、同じ気持ちだ。金なんかよりも、俺はお前らとギスギスするほうが嫌だ。死ぬなんて、もってのほかだ」

友子「あたしは、少なくとも男にゃ死んで欲しくないね。できたら全員な」

幼馴染「わたしもそうです。もちろん、みんなで生き残りたいです」

女「私もですよ。怖いですけど、ね。皆がいるから、頑張れます」

男「じゃあ、約束だ。俺たちは、俺たちを裏切らない。信じあおう。そして、生き残ろう!」

みんな「「「おー!」」」

 この時の俺は信じてた。
 この五人が固い友情で結ばれてるって、信じてたんだ。
 どうしようもない隠し事をしてるやつがいるなんて思わなかった。
 それに、誰かが裏切るだなんて、欠片も思ってなかったんだ。

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 05:46:27.80 ID:FtzdOBFg0
■広間 AM10:00■

ギャル「あーもー! なんなのよこれ!」
大学生「うるさい! 騒ぐなよ! イライラするだろうが!!」
オバン「…………」
じじい「…………」ギロリ

男「おはようございます」ゾロゾロ [幼,友子,眼鏡,女]

眼鏡「そういや、この洋館の人っていないでヤンスかね? 一度もみてないでヤンスし……。これは、ヤバいでヤンス……」

男「どうしたんだ?」

眼鏡「館の管理人がいないってことは……ご飯が食べれないってことでヤンス!!」

オバン「食い物なら、調理室にあっただわさ。適当に調理して食べればいいだわさ」

眼鏡「そうするでヤンスー♪」

大学生「ま、待て! 勝手なことは慎んでもらおうか」

眼鏡「ヤンス?」

大学生「お前らが、毒を入れないって保障はできんのかよ!!!」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 05:46:48.49 ID:FtzdOBFg0
男「俺たちはそんなこと……!」

大学生「保障できねえだろうがよ!」

男「確かに、その通りだ。じゃあ、調理室へ行くときは全員で、ってことでいいか?」

オバン「でも勝手に入られたら意味がないだわさ」

男「…………確かにその通りだ。じゃあ、食料はみんなで分けよう」
男「そういや、昨日のオッサンは?」

ギャル「いないんだから、しょーがないじゃん。ウチらだけで分けちゃおうよ!」
ギャル「ちょっと金持ってるからって調子のってて、ウチ嫌いだしィ」

男「そういう訳にはいかないだろ。きちんと等分しよう。迎えに行ってくる。確か部屋は三階だったな」

女「私も行きます」

男「いいよ。ちょっと呼んで来るだけだし。またかんしゃく起こされたら困るしな」テコテコテコ

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 05:47:18.09 ID:FtzdOBFg0
■オッサンの部屋(301号室)AM10:30■

男「すみません。丹生速出さん、ちょっといいですか?」コンコン

男「すいませーん!」ゴンゴン

男「……おかしい、返事がないな」

男「いないんですかー?」

男「ったく。どこいってんだよ……。鍵は、…………え? あいてる?」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 05:54:37.98 ID:FtzdOBFg0
――ガチャリ

男「丹生速出さ、ん……? え……」

 そこにいたのは、いや、あったのは、オッサンだった。
 うつ伏せで、床に赤いものをこびりつかせている。
 そして、背中には大降りのナイフが刺さっていた。

男「う、うわ、うわあああああ!」

男「し、しっかりしてください! 大丈夫ですか!? はっ。そうだ、脈……!」

男「くそ、脈がない!」

ドタドタドタ!

幼馴染「どうしたのっ! 男!」

大学生「何があったんだ! って、う、うわあ。また、死んでるっ!」

男「み、みんな……」

大学生「わ、わかった! 犯人はお前だろ! 男! オッサンを今殺したんだろ!」

友子「男はそんなことしない! 絶対にしない!」

大学生「だ、だったらどう説明するんだよ! あいつが死体みっけたんじゃねえかよ!」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 06:02:50.91 ID:FtzdOBFg0
幼馴染「そう。男が死体を見つけたね。でも、見つけただけだよ。それだけで何を決め付けてるのよ」

眼鏡「そうでヤンス! 男くんがそんなこと、する訳ないでヤンスよ!」

女&友子「コクコク」

大学生「バカかてめえら! 昨日あんな状況で、鍵を開けっ放しで寝る訳がねーだろうが!」
大学生「ははん。そうか。判ったぞ。お前らグルだな! 俺とギャルとオバンとじじいを殺すつもりだろう!!」
大学生「男が殺したに決まってる!!」

幼馴染「ハァ……。本当に頭が悪いのね。もしわたしたちがグルで、殺人を辞さないなら、あなたたち、既に死んでるよ」

大学生「お、脅そうたってそうはいかねえぞ」

幼馴染「考えてもみて。わたしたちは、五人いる。あなたたちは昨日別々の部屋で泊まってた」
幼馴染「ということは、全員で一人ずつ殺害することができるんだよ?」

大学生「う、え……」

オバン「……まだ誰が犯人ともいえないわさ。死後硬直の具合からいって、死んだのは六時間以上前だわさ」ケンシチュー

幼馴染「ほら、男は犯人じゃない」

オバン「というのも、まだ判らないわさ。判ってるのは、誰かがオッサンを殺した人間がいるということだわさ」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 06:10:27.67 ID:FtzdOBFg0
■男の部屋■

男「とりあえず、やる気マンマンのやつが一人いるってことだよな」

幼馴染「そうだね」

男「とりあえず、俺たちは犯人じゃないはずだ。俺は昨日、ずっと眼鏡と一緒にいたしな」

眼鏡「ず、ずっと一緒なんて照れるでヤンス///」

男「幼馴染たちも一緒にいたんだろ?」

幼馴染「そのこと、なんだけど、ね……」チラ

友子「あー……」チラ

女「いいですよ。大丈夫です。昨日、私は自分の部屋に忘れモノをして、取りに行きました」

男「忘れ物っていっても、そんな長い間じゃないんだろ?」

女「なかなか見つからなくて、三十分くらいですね」

男(殺すには、十分な時間だな……。いや、いやいやいや! 女さんがそんなこと、するはずがないじゃないか)

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 06:19:35.64 ID:FtzdOBFg0
友子「それならあたしもトイレに行ったよ。二十分くらいかな。女さんがいない間にね」

男(ってことは、友子にも、可能なのか……? いや、それを言えば、友子と女さんがいない間、幼馴染も一人だった?)
男(ということは、女子連中にアリバイはないってことか? 待て。考えるだけ無駄だ。俺たちに犯人はいないのだから)

 キラッ



男「って……え? なんで髪留めなんか、俺の部屋に落ちてるんだ……?」ヒョイ

男「………………おい、おいおいおい。なんでだよ」

友子「ど、どうしたんだ?」

男「いや、なんでもない……」

 それは喋々の形をした髪留めだった。
 俺の妹が昔、いつもつけていたやつによく似ていた。

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 06:21:25.21 ID:FtzdOBFg0
男「に、似てるだけかもしれないしな。……な、なあ、この髪留め、誰のだ……?」

幼馴染「わたしじゃあ、ないよ?」

友子「あたしでもないな」

男「とすると……」ジッ

女「あ、私も違いますよ」

眼鏡「もちろんオイラでもないでヤンス」

男(なぜだ。持ち主がいるはずなのに、なんでいないんだ。……誰かが、嘘をついてるのか?)

 みればみるほどに、消息不明になった妹の髪留めに似ている。

男(この三人の中に、妹が……? そんな訳がない。荒唐無稽な想像でしかない)
男(俺がこいつらを、守るんだ。今度こそ、誰も死なせないんだ……!)

 俺が決意を固めていると、頭の中で、顔のない妹が笑みを深めた気がした

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 06:35:29.51 ID:FtzdOBFg0
■男の部屋 PM2:00■
男「なあ、眼鏡。お前顔色悪くないか?」

眼鏡「そんなことないでヤンス!」

男「ならいいんだけどさ」

男「でも、ツメをかむのはやめたほうがいいぞ?」

眼鏡「……そうでヤンスね」ガジガジガジガジ

男「なあ。本当に大丈夫か……? って、眼鏡。その紙なんだ? それをみてから、様子がおかしいと思うんだが」

眼鏡「さ、触るなでヤンス! ……男くんには関係ないでヤンス」

男(一体何を隠してるんだ……?)

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 06:44:47.06 ID:FtzdOBFg0
眼鏡「男くんは、本当に犯人じゃないでヤンスか……?」

男「おい、どうしたっていうんだよ。眼鏡」

眼鏡「よく考えたら、一緒の部屋だから、昨日殺してないとはいえないでヤンスよ」

男「どういうことだよ。眼鏡、お前、俺を疑うのかよ」

眼鏡「……オイラが寝てる隙に部屋を抜け出すなんて、簡単なことでヤンス」

男「い、いや、でもな? 俺には動機が……」

眼鏡「あるでヤンス!」

男「え」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 06:45:57.61 ID:FtzdOBFg0
眼鏡「あ、いや……。きっと、金でヤンス」

男「……お前、ふざけるなよ。言っていいことと悪いことがあるだろうが!」

眼鏡「ず、図星をさされたから、怒ったでヤンスね?」ガジガジガジガジ

男「ち、ちがう。俺は、眼鏡も、女子の連中も、みんなで生き残りたくて……」

眼鏡「こんな殺人犯かもしれないやつと、一緒にいられないでヤンスよ!」

男「違う、俺はやってない!」

眼鏡「とにかく、オイラは別の部屋にいくでヤンス」

 告げて眼鏡は、自分の荷物をまとめ、部屋から出て行った。

男「なんでだよ。眼鏡……」

男(あの、眼鏡の持ってた紙、何が書いてあるんだよ……? そもそも、誰が……)

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 06:55:14.58 ID:FtzdOBFg0
------------------------------------------------------------
■空き部屋 PM4:00■

眼鏡「……なんでこうなっちゃうでヤンスか」

眼鏡「男くんがあんなことするはず……、いや、騙されちゃいけないでヤンス!」

 眼鏡は手に持った紙をながめる。
 それに記されていたのは、学校での男の態度に対する考察。

眼鏡「…………オイラは友達だと思ってたのに! バカにしてたなんて、ひどいでヤンスよ!」
眼鏡「考えてみればいつも男ばっかりモテて! きっとオイラのこと、見下してたでヤンス!」

 そして。
 何よりも。

眼鏡「まさか、男くんが昔、両親を殺したかもしれないなんて……」
眼鏡「家に複雑な事情があるのは、うわさで知ってたでヤンスし」
眼鏡「男くんが両親を殺害してたというのなら……、男くんが一人暮らしさせられている理由にもなるでヤンス」

眼鏡「でも……、何かおかしいでヤンス? そういえば、どうしてこの手紙の主は、こんなことを知って――」

 コンコン

眼鏡「おっと。誰かきたようでヤンスね」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 06:59:08.22 ID:FtzdOBFg0
眼鏡「お、お前は! 何しにきたでヤンスか! そんな鈍器を持って――」

眼鏡「や、やめるでヤンス! や、やめ――がぁっ! あ……」
ガッ
ガッガッガッ
ガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッ
眼鏡「…………」
---------------------------------------------------

 その、翌日だった。
 眼鏡が死体で発見されたのは。


男「ああ、ああああっ! なんで、なんでだよ眼鏡! どうしてだよ!」

男「どうしてだよぉっ! ちくしょおおおおっ!」

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 07:04:52.73 ID:FtzdOBFg0
女「お、男くん。落ち着いてください」

男「……女さん」

女「今は、取り乱さないようにしたほうがいいです」ポンッ

男「う、うわあっ」

女「ど、どうして払いのけるんですか?」

男「ごめ、ごめん。……ちょっと、おかしいみたいだ」
男(大丈夫だ。俺たちの中に犯人はいない。いないんだ)

女「元気を出してください。――――お兄ちゃん♪」

男「!?」ガタンッ
友子「え!? それって、どういう……」

女「ど、どうしたんですか?」

男「今、なんて言った……?」

女「お兄ちゃんって」

男「は、はは……。女は、俺の、妹なのか?」

女「……? なんでそんな変なことを聞くんです? お兄ちゃんって呼ぶと、元気が出るって聞いたから……」

男「頼む。二度とよばないでくれ」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 07:09:55.16 ID:FtzdOBFg0
男「お……? 部屋の隅に、眼鏡が持ってた紙があるな」

男「……なんだよこれは」

 そこに書いてあったのは、俺の悪口のようなもの。
 そして、死んだ両親のこと。

男「……ころしたの、俺じゃねえんだけどな」

男「でも、それ以外の両親のことや妹のことは、あってる」

男「こんなこと知ってるやつなんて、妹以外に……」

男「はは……マジかよ……。妹が、ここにいるのかよ」

男「しかも眼鏡よう……。お前、なんでこんなの、信じちまうんだよ。……あと少し、信じて欲しかったぜ」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 07:26:17.73 ID:FtzdOBFg0
男(妹か、妹から話を聞いたやつがいるのは確定だな……)

幼馴染「男ー。難しい顔して、どうしたの?」

男「ああ、なんでもないぜ」
男(……こいつは、シロだよな。だって幼馴染だもんな)

男「ちょっと、二人で話がしたいんだけど、いいか?」

幼馴染「うん? いいよー」

男「すまん。女、友子。ちょっと出てくる」



幼馴染「で、呼び出して何なのかな。眼鏡が死んだっていうのにね」

男「犯人、たぶん、俺の妹だ」

幼馴染「妹!? ど、どういうこと?」

 @説明中

幼馴染「そ、そうだったんだ……」

男「誰が妹か、わからない。探すのを手伝ってくれないか?」

幼馴染「……うん。いいよ。任せて」 ニコォ

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 07:27:12.00 ID:FtzdOBFg0
 そのとき、突然大音量がなりひびいた。

「きゃああああああああああああああ!!!」


男「悲鳴だ!」

幼馴染「男っ! いくよ!」

男「おうっ!」ダッ



ギャル「ひぃぃぃぃ」ヘタリコミ

そこにいたのは、じじいの首を絞めている大学生だった

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 07:32:32.72 ID:FtzdOBFg0
好きに考えていいよー

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 07:51:37.39 ID:FtzdOBFg0
大学生「……!」ギリギリギリギリ

じじい「…………」

男「お、おい! なにしてんだてめえ!」

どさりとじじいの体が床に落とされた。

男「大学生、お前、なにしてんだ!」

大学生「ち、ちがうんだ。このじじいが、俺のことをババアの仇だって襲ってきたんだよ!」

男「そう、なのか……?」

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 08:11:19.03 ID:FtzdOBFg0
男(そもそも犯人は妹なんじゃ……)

男「いや、まてよ……?」

男「そうか……! そういうことだったのか!」

男「幼馴染。みんなを、呼んできてくれ」

幼馴染「う、うんっ」

男「大学生もギャルも、動くなよ」

~五分後~

男「全員集まったな。俺は最初、犯人は、俺たちの中に潜んでいる妹だと思っていた」

友子「」ピク
女「妹、ですか」

男「ああ。まあ、それはいい」

男「ババア殺しも、オッサン殺しも、眼鏡殺しも、ほとんどの人間にアリバイがないことで、犯人が判らなかった」

男「しかし、犯人は決定的なミスを犯した」

幼馴染「ミス……?」

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 08:12:19.80 ID:FtzdOBFg0
男「眼鏡殺しだ。眼鏡の頭を殴って殺したことだ。眼鏡は男であり、身長は平均」

男「なのに、頭頂部を殴り殺した。これは犯人の背丈がそこそこ高いことを示している」

男「女連中はみんなそれほど高くはない。普通に頭頂部を殴ろうなんてしないはずさ」

大学生「……ってことは、お前かもしれないじゃねーか」

男「ああ。かもしれない。じゃあ次の証拠だ」

大学生「ほう……?」

男「ポケットの中身をだせよ」

大学生「出したが、どうかしたかよ」

男「それだよ。その、携帯についてる高そうだがばばくさい数珠のアクセだ」

大学生「……!」

男「ババアから奪ったもんじゃねえのかよ。それをじじいに気付かれて、襲われたんじゃねーのかよ」

大学生「く、くくく」

男「元々持っていたと言い逃れをするか? どうせ、じじいが目を覚ませばわかることだ」

大学生「五十点だ。……その推理は、五十点だよクソガキ」

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 08:19:21.99 ID:FtzdOBFg0
大学生「お前は、俺の単独犯だって言いたいのか? そいつは無理だろ」

男「……く」

大学生「大事なお仲間を疑いたくないのか? 俺にすべての罪を押し付ければ、お前の平穏は守られるとでも?」

男「お、俺たちの中に、犯人なんて……」

大学生「いるのさ。俺を雇ったやつがさ」

男「や、雇っただと……?」

大学生「アルバイトだよ。アルバイト。それに俺、人とか、昔から殺してみたくってさぁ……」
大学生「ネットに死体画像を集めて、殺し方を考察するHP持ってるんだけど、そっからお誘いが来てね」
大学生「警察に捕まらず、殺し放題で、金まで貰えるんだぜ。最高だろ?」

男「ふ、ふざけるなよ! てめえ! そんなことで眼鏡や、そこの人たちを殺しやがったのか!」

大学生「そうだよ?」

男「てめえ!」

大学生「……あのさ。気付かないフリしてるみたいだから、俺から言ってやるよ」
大学生「犯人、もう一人いるよ?」

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 08:24:11.69 ID:FtzdOBFg0
大学生「あと、なんで俺がこんなにホイホイ自白すると思う?」

大学生「それは、もう俺の勝ちだからだよ」グシャ!

男「じ、じじい!」

ギャル「ひいいいい!」

大学生「男。お前も、死んどけえええ! このままみんな殺せば、俺の勝ちだあああっ」

男(まずっ。避けられない……!)

友子「お兄ちゃん、あぶないっ!」グサァッ


大学生「え、なんで、俺が、刺され……」カパァッ

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 08:38:48.85 ID:FtzdOBFg0
男「と、友子……? お前、俺の妹か……?」キョウガク

友子「やっと、気付いてくれたね。……お兄ちゃん」

友子「ずっとずっと、気付いて欲しかった。でも、気付いて欲しくなかった」

男「なんで、お前が、妹なんだよ……!」

友子「お兄ちゃんと友達でいられて、楽しかったよ」

ギャル「そ、そうってゆーか! お前がもう一人の犯人っぽいー!」

友子「……!」

幼馴染「つ、捕まえよう!」

女「そんな……。友子さん……」

友子「くっ」ダダッ

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 08:39:10.67 ID:FtzdOBFg0
■男の部屋■

幼馴染「まさか、友子が、こんなこと……」

男「……はは。信じられないよな」

幼馴染「……眼鏡殺しの、謎のメッセージは、わたしたちの誰かじゃないと無理だしね。友子が、眼鏡を誘導したに決まってる」

女「で、でも、友子さんがどうして……」

幼馴染「決まってるよ! 男の両親を殺したやつなんだよ! 異常者だからだよ!」プンスカ

女「そう、ですか、ね。何か引っかかるような……」

男「ちょっと、トイレに行って来る……」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 08:39:32.62 ID:FtzdOBFg0
男「ふう……。どうすんだよ、これから……」

友子「お兄ちゃん……」

男「!?」

男「お、俺を殺しにきたのか」

友子「そんなことしないよ……。お兄ちゃん」

男「だ、だったらなんで俺の親父たちを……」

友子「それも、殺してない。……この件に蹴りがついたら、ちゃんと話すよ。
友子「あたしは、お兄ちゃんのためにならないことは、しないよ。今までも、これからも」

男「してるじゃねえかよ! 眼鏡に、あんな手紙を――!」

友子「それ、あたしじゃないよ。お兄ちゃん」

男「じゃあ、だれが!!!」

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 08:39:53.82 ID:FtzdOBFg0
友子「その前にひとつ聞かせて、お兄ちゃん。――おとうさんとおかあさんのこと、どれくらい覚えてる?」

男「お父さんは、俺にハンバーグを作ってくれて、お母さんは、おいしい? って聞いてくれて……」
男「二人とも俺ばっかり構って、妹に構わなくて。だから妹が殺して」
男「それで、それで、それで……」







男「それ、だけだ」

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 08:40:58.07 ID:FtzdOBFg0
友子「だよね。お兄ちゃん、昔のこと覚えてないよね。思い出したくもない記憶だから」

男「え?」

友子「あの二人がお兄ちゃんだけに構ってたのは、本当だよ」
友子「あの二人はお兄ちゃんを虐待していた」
友子「だから、あたしが包丁で襲ったけど、軽い切り傷つくっただけだった」

男「で、でも二人は死ん――」

友子「死んだことになってるね。お兄ちゃんに対しては」
友子「本当は、あたしが切りつけたことが切欠で、虐待が発覚したの。それで、バイバイ」

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 08:41:23.22 ID:FtzdOBFg0
男「そ、そんなのって。お前が殺したって、俺はずっと……!」

友子「あえなくしたんだから、殺したようなものだよね」

男「…………」

友子「それで、昔の記憶を忘れたお兄ちゃんに聞きたいの」

男「なんだよ」

友子「幼馴染。あの人、誰?」

男「え? 誰って、幼馴染だろ? ずっと昔から、産まれたときから仲がよかったって聞いて――」

友子「あたし、知らない。あんな人あったこともない。なんで、産まれたときから仲がいいのに、あたしが知らないの?」

男「え……」

85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 08:50:27.07 ID:FtzdOBFg0
男「で、でも、幼馴染は幼馴染で、昔から仲がよかったって……」

友子「……それ言ったの、幼馴染じゃない?」


幼馴染「何の話を、しているのかな? かなァ?」


男「お、幼馴染っ……!」

幼馴染「だめだよね。男。犯人見つけたら殺さないと。殺さないといけないよね」
幼馴染「頭を砕いて脳を潰して、目玉を抉って皮を剥いで、殺さないとだめだよね?」

男「え、あ、う……」

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 08:56:58.29 ID:FtzdOBFg0

幼馴染「まさか、友子が妹だなんて、思いもしなかったよ。でも、男の近くにいればあえるって思ってて正解だった」

友子「……あたしを探していたっていうの!?」

幼馴染「うん。そうだよ。だってさ、普通じゃないよ。いくら兄のためとはいえ、自分の両親を切りつけるなんて」
幼馴染「とても重いよね。愛情っていっていいのかな」
幼馴染「そんな強い気持ちを持つ妹が、兄に殺意を向けられたり、ましてや、殺されそうになったりしたらさ」
幼馴染「最高に素敵な顔をしてくれると思わない?」

男「おかしいよ。……お前」

幼馴染「うん。知ってるよ。でも、おかしくても大丈夫なんだよ」

男「どうして」

幼馴染「お金さえあれば大抵のことはなんとかなるから」
幼馴染「少しおかしくてももみ消したり、バレない舞台を整えたりできるんだよ」ニコォ

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 08:57:29.95 ID:FtzdOBFg0
男「け、拳銃だと!?」
パン、パン!
男「カハッ」
友子「お、お兄ちゃん!」

 友子が駆け寄ってくる。
 顔のない妹が駆け寄ってくる。
 吐き気が身体をめぐる。
 妹だと思ったとたん、顔が見えなくなった。

男「く、来るな……」

 こいつが父さんと母さんを。でも父さんと母さんは悪い人で。
 だったら妹はいい子なのか?
 かもしれない。けど、そんなの関係なく、俺は妹の存在に耐えられない。
 キモチガワルイ。

友子「お、お兄ちゃん……。ど、どうして……?」ジワァ
友子「あたしは、お兄ちゃんのために今まで、色々……」

幼馴染「あああ。すごい、すごいよおぉ。そういう顔だいしゅきぃぃ。ああん」アヘエ

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 09:02:28.74 ID:FtzdOBFg0
幼馴染「どっちからにしようかにゃぁぁああー」

幼馴染「ねえ、友子。男がいなくなったりゃ悲しいぃぃぃん?」

友子「あ、当たり前じゃない! お兄ちゃんがいなくなるなんて……!」

幼馴染「どっちかだけ殺す。っていったらどっち殺して欲しい?」

友子「……あたしを殺せばいい」

幼馴染「じゃあ、男に質問。妹さん、死んだら悲しいでしゅかあぁ?」

男「い、妹……。俺に、妹なんて……」

幼馴染「じゃあ、けってーい。男を殺しちゃいましゅううう」

男「><」
 
99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 09:17:13.97 ID:FtzdOBFg0
友子「あぶないっ……!」
パァン!

 そのとき、初めて俺は、妹の顔を見た気がした。
 黒い空洞のようではなく、どこか懐かしい妹の顔を。

男「あ、ああ、あああああ! 妹、妹っ……! 俺はまた、何も、何も進歩しちゃいない……!」

男「クズだ。俺は、最低だ……!」

幼馴染「にゃへえ。予定とちがうけど、これはこれで……」

男「てめえっ!」
 ドゴォッ!

幼馴染「ぐうっ」

男「よくも妹をっ! でも、お前のおかげでわかったぜ……! 友子は俺の大事な妹だってな!」

幼馴染「こっちには銃がっ……あっ」

パシン!

男「俺の妹をこんな目に合わせやがって! 覚悟は、できてんだろうな!」

友子「う、うう……。やっと、妹って、呼んでくれた……」エグエグ

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 09:17:37.96 ID:FtzdOBFg0
幼馴染「誰が拳銃が一丁しかないといったの!? もう一丁持って――あっ」

パシン!
男「お前だけは許さねえっ!」
 バキィ!

幼馴染「そ、そんな……」パタン

幼馴染「拳銃を持った相手に、迷いもなく突っ込んでくるなんて……! 信じられない……!」
幼馴染「くっ。どんな特殊部隊にも、こんな相手、いなかった……!」

男「特殊部隊だあ? 拳銃だあ? そんなの、知るかよ。お前は俺の妹を傷つけた。その罪は万死に値する」

幼馴染「想いの力で、まさか、ここまで……なんて……! 妹を想う力が、こんなに。へ、へへ。敵わない。こんなのに、敵うわけが……」

男「これは、ババアの分っ!」ドゴッ!

幼馴染「かはっ」

男「これは、オッサンの分っ!」ペチンッ!

幼馴染「がふっ」

男「これは、眼鏡の分!」ボコンッ!

幼馴染「たわばっ!」

男「これは、妹の分だああああ!」ドゴオオオンッ!

幼馴染「にゃへええええええ!」

103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/15(金) 09:22:04.52 ID:FtzdOBFg0
俺たちは幼馴染を縛り上げ、五日後の船を待ち、街へと帰った。
色々なことは幼馴染の父親がもみ消してくれた。
その後、幼馴染の姿をみたものはない。


そして、俺は妹というトラウマを克服した。

男「お、おい。あんまりくっつくなよ」

妹「今までの時間を取り戻すのっ! 取り戻し終わるまで、覚悟しててよね!」

男「……どれくらい掛かるんだよそれ」


おわり

引用元: 男「この中に殺人者が紛れ込んでいる」