--雪の町--

雪の降る夜、路地裏。

太男「ぐへへ。観念したかい?猫のお譲ちゃん」

細男「あ、あっー!いいですねぇその獣耳っ!わしゃわしゃしてあげたいですっ」

中男「ねーこーみーみー」

白猫亜人「ひ、ひぃ。怖いですにゃ……。お、おやめ下さい!それに私は貴方達と違って亜人ですよ?汚らわしいのでは……?」

細男「わ、わわわかってませんねぇ中には亜人じゃなきゃ駄目っていう人種もいるっていうことおぅふっ!!」

白猫亜人「にゃっ、にゃぁ……」

路地裏の奥へと追い込まれる白猫亜人。

???「待てぇい!!」

中男「ぬ!?何奴!?」

男達が声の主を探す。
声の主は、屋根の上で月を背にして立っていた。 






3: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/06(月) 03:09:45.15 ID:sRFRH.U0


--雪の町--

太男「な、なんだあいつはぐふ」

???「ひとーーつ、人の世の生き血を啜り」

バッ、ババ!!

屋根の上の人影はポーズを取る。

???「ふたーーつ、不埒な悪行三昧」

バッ、ババッバ!!

屋根の上の人影はセクシーポーズを取る。

???「みーーーーっつ、醜い浮き世の鬼を退治てくれよう!!!!」

ビシィン!!!!

人影は某超時空シンデレラの決めポーズを取った。

太男「キラッだ!」

細男「キラッだ!」

中男「キラァアアアアアアッ!!」

赤マントと鎧を身に纏った人影は、一人歓喜に酔いしれていた。

???「……決まった!」

4: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/06(月) 03:10:58.09 ID:sRFRH.U0


--雪の町--

???「とうっ!!」

赤マントは屋根の上から飛び降り、白猫亜人の前で着地する。

シュタッ!!

???「情けない……。女一人に対して三人がかりとはな。チャバネゴキブリどもめ!」

太男「お、おまえなんかに言われる筋合いはないんだぐふ!!」

細男「そ、そそそうですっ!鉄仮面に赤マントなんて、かっこつけてっ!!」

中男「邪魔をするのなら死ねぇい!!」

白猫亜人「あ、危ない!!」

太男は赤マントに突進した。

ドシン!

???「甘い!」

赤マントは太男の突進を左手一本で受けとめる。そして正拳突き。

ドボッ!!

太男「ぐはっ!?」

巨体でありながら宙を舞う太男。

5: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/06(月) 03:11:35.07 ID:sRFRH.U0


--雪の町--

細男「!!……こいつ。一筋縄ではいかなそうですね……」

中男「俺がやるお!」

中男は背中の剣を抜き走りだす。

中男「おおおお!!」

ヒュッ!

振り下ろした剣を赤マントは中指と人差し指で受けとめ、

バキン!

???「……安い剣だ」

いとも簡単にへし折って捨てる。

中男「え、え、え」

???「そして軽い振りだ。剣はこうやって振るうのだ」

ズバッ!!

中男「っっ!!!?」

抜いた瞬間すらわからない。中男が気付いた時には、既に大剣で切り裂かれた後だった。

6: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/06(月) 03:12:15.62 ID:sRFRH.U0


--雪の町--

中男「があああ!!いでぇえええ!!」

???「……深くはない。すぐ医師に見せれば死ぬこともない」

中男「あぎょおおおおおおおおお!!」

???「……はぁ」

赤マントが中男に近づいた瞬間、

ヒュッ!!

???「!!」

ガイン!!

赤マントの頭部を石の塊が襲う。

細男「つ、つつつ土属性魔法レベル1!!や、やややりましたっ!!」

7: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/06(月) 03:13:32.78 ID:sRFRH.U0


--雪の町--

思わぬ角度からの攻撃だったのか、不意を突かれた赤マントは鉄仮面が外れてしまう。

ガンっ

細男「おぅふっ!!わ、わわ私は魔法が使えるんですっ!!え、エリートなんですっ!!」

???「……」

赤マントはゆっくりと振り返った。

細男「はへ?……っ!?あ、あがががががが!!!」

???「……ちょっと痛かった」

細男「ろ、ろろロリ娘!!??」

8: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/06(月) 03:14:15.34 ID:sRFRH.U0


--雪の町--

少女の額には小さなこぶが出来ていた。

細男「も、ももも申し訳すいませんっ!!よ、よよ幼女に手を出すなどと紳士としてあるまじき行為でしたっ!!」

???「……」

ザッザッ

少女は何も言わず細男に近づいて行く。

細男「し、しし真の  コンたるもの、現実のロリには手を出さず、守るべし!!その私が、き、気概を加えてしまうなど!!」

???「……」

ザッザッザっ

細男「あ、あぁなんたることだぁ!!……こうなったら、痛いところをなでなでしてあげるしかないっ! ぺろしてあげるしかないっ!!さぁ、こっちへ来るのです!!わたしあがぺっ!?」

ボゴっ!!!

少女の拳が細男の頬にめり込む。

???「……ぶっ飛べ!!」

その後、少女は風属性魔法を使用し、三人の悪漢を吹き飛ばしたという。

9: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/06(月) 03:15:06.58 ID:sRFRH.U0


--雪の町--

???「全く!あんなのばかりなのか世の中は!!」

少女は腕を組んで怒っている。

白猫亜人「ありがとうございましたにゃ……そんな小柄なのに、お強いんですね」

???「あ、大丈夫だったか?怪我は無い?」

白猫亜人「はい。なんとお礼を申し上げればよいのか……」

???「いい、そういうのも私の仕事なんだ」

白猫亜人「……え?そんな若いのに警護団か何かの方なんですか?」

???「いや、違う」

白猫亜人「じゃあ……騎士様?」

???「それも違う、私は……」

少女の赤マントが揺れる。

???「私は勇者だからなっ」

22: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/07(火) 19:23:00.98 ID:9JhRlTw0


--雪の町--

???改め勇者「すまない、寝床を貸してもらって」

白猫亜人「いえいいんですにゃ!助けてもらったお礼をしたかっただけなんですから……」

勇者「そんなに気にしなくてもいいのに。ありがとう」

白猫亜人「……」

白猫亜人は紅茶を勇者のカップに注いだ。

白猫亜人「この町にはどういったご用で?」

勇者「あぁ、この町というか、近くのダンジョンを制圧しにきたんだ。もう終わったけど」

ズッ

白猫亜人は勇者が紅茶を飲んでいるのを凝視している。

勇者「?どうしたんだ?」

白猫亜人「にゃっ!?あ……あ、えと、確かにさっきは強かったですけれど、本当に勇者様なのかにゃ、と……」


23: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/07(火) 19:24:07.99 ID:9JhRlTw0
10

--雪の町--

勇者「うん、まぁよく言われることだからな。私は成長も……あれだからよく疑われるんだ。ちょっと待ってくれ」

勇者は鎧の胸部分に手を入れるとまさぐり始めた。

白猫亜人「にゃ、にゃっ!?」

突然の出来事に驚く白猫亜人。

勇者「んと……あったあった、テレレレレレ~ゆうしゃしょうめいしょ~~……こ、コホン、これを見てくれ」

勇者は赤面しながら証書を渡す。

白猫亜人「……この者を勇者と認める。なお、本人確認をする際には、その限りなく平らな胸を見てもらえればわかることとおも」

バシッ!!

勇者は白猫亜人から勇者証明書をひったくった。

勇者「……」

白猫亜人「……どうやってこれが入ってたのかと思ったけど、胸の部分はスペースになって」

勇者「違うから勇者じゃないから」

勇者の目は笑っていない。

24: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/07(火) 19:25:07.30 ID:9JhRlTw0
11

--雪の町--

白猫亜人「え?」

勇者は自分で勇者と名乗っておきながら、勇者であることを否定した。

勇者「ち、ちち違うもん!!勇者じゃないから別にこれは!!」

白猫亜人「にゃにゃ!?貴女は勇者様なんですよね!?そして証書にある通りに胸は断崖絶壁ギアナ高地と」

勇者「そんな説明文じゃ無かったはずだ!!」

白猫亜人「むしろマイナスと」

勇者「へこんでないよ!!」

白猫亜人「着物はスレンダーの方が似合うかと」

勇者「慰めになってないよ!!」

ズイッ

白猫亜人「……とりあえず、確認させていただきますにゃ」

勇者「や、やめろぉぉぉぉぉぉ!!」

25: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/07(火) 19:26:00.56 ID:9JhRlTw0
12

--雪の町--

チュンチュン朝チュン。

勇者「絶望した絶望した絶望した絶望した絶望した絶望した絶望した絶望した絶望した失望した絶望した絶望した絶望した絶望した」

白猫亜人「正真正銘の勇者様とお見受けいたしましたにゃ!!」

ベッドで恨めしそうに白猫亜人を睨む勇者。

勇者「……私をこんなに辱めてまで、確認したかった理由はなんだ?」

白猫亜人「あ……」

勇者「もとい、私が本当の勇者なのかを確認したかったのはなぜ?」

白猫亜人「……」

白猫亜人はしばらく沈黙し、そして勢いよく土下座した。

ガッ!

白猫亜人「無礼をお詫び致します勇者様!!大変申し訳ありませんでした!!私は、私は本当の勇者様を探していたんです!!是非お力をお貸し下さい!!」

勇者はベッドに座り直すと、真面目な表情で口を開いた。

勇者「聞こう。何があった?」

26: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/07(火) 19:26:41.02 ID:9JhRlTw0
13

--雪の町--

白猫亜人「始まりは彼ら、王国の研究員達がこの地に来たことから始まりますにゃ」

勇者(……王国の研究員……)

白猫亜人「彼らはモンスターの生態調査だと言って、町外れに一軒の建物を建てたんですにゃ」

勇者(研究員が、もしあの人が来ていたなら……きっとまともな形で終わらせはしないはず……)

白猫亜人「彼らは確かに調査をしていました。でもモンスターの生態調査というよりは、何かの実験を繰り返しているようでした……」

白猫亜人の声は次第に震えたものとなる。

白猫亜人「彼らはたまに人員を募集してきました。モンスターの相手をするには我々だけでは難しいから、と。でも……戻ってきた人は一人も……いません」

勇者「……それで?」

白猫亜人「町の人達も変だと思っていたんです。でも役人さん達は彼らに協力しろ、と一点張りで……それで……それで二週間前に、夫……も」

勇者「連れていかれたのか」

27: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/07(火) 19:27:28.91 ID:9JhRlTw0
14

--雪の町--

白猫亜人「私、怖かった!!だからあの人に行かないで、って何度もお願いしたんです……でも、あの人は正義感が強い人だったにゃ」



白猫夫『俺、行くよ。彼らが何をしているのか知りたいし、悪いことをしているんだったら止めたい』

白猫亜人『で、でもっ……もし、もし貴方が帰って来なかったら私っ!!』

白猫夫は白猫亜人の肩にそっと手を乗せる。

白猫夫『絶対に帰ってくる。俺はお前たちを残して死んだりしないから』

白猫亜人『……あなたっ!!』

白猫夫『お前っ!!』

ヒシッ



白猫亜人「そこから二時間にも及ぶ交 が」

勇者「台無しだよ!!」

28: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/07(火) 19:28:11.38 ID:9JhRlTw0
15

--雪の町--

白猫亜人「それであの人をずっと、ずっと待ちました。でも、いてもたってもいられなくて……私は……あの施設に行きました」

勇者「え……」

白猫亜人「あ、そういう意味じゃないです、忍び込んだんです。私元々盗賊だったんで隠密行動は得意なんですにゃ」

勇者(盗賊スキル+亜人の身体能力。確かにばれずに忍び込めるかもしれないな)

白猫亜人「過酷な重労働をさせていると思ったんです。だからその実態を紙に書き記し、役人に届けようと……思っていました……甘かった」

勇者「……」

白猫亜人「中の惨状を上手く説明出来る……自信がありません……私、私……」

彼女が見た施設の内部は、地獄だったという。
人間同士の殺し合い、攻撃魔法の威力実験のために貼り付けられた人、突然焼け死ぬ人間や、モンスターの顔や手足と交換させられた人間。

そして、

??『し、侵入者、はは、はっけン』

白猫亜人『!?……え?』

侵入した彼女を最初に発見したもの、それは

白猫亜人「四本の脚と毛むくじゃらの両手そして……夫の顔を持つ化物でした……」

29: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/07(火) 19:28:47.67 ID:9JhRlTw0
16

--雪の町--

白猫亜人「必死で目を擦った!!でも、でもそれはああぁぁん!!」

白猫亜人は大声で泣き喚いた。自らの体を引き裂かれたかのようなひどい声で。

勇者「……く」

白猫亜人「私はっ、逃げました!!そして役所に伝えました!!でも!」



役所員『……はぁ、ったく怖い形相で話し始めるからなにかと思えば……。昼間っから夢見てんじゃねぇよ奥さん』



白猫亜人「……頼れる人はもういません。愛する人ももう……。だからお願いです……お願いです勇者様!!あの施設を破壊して下さい!!」

30: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/07(火) 19:30:08.84 ID:9JhRlTw0
17

--施設--

この世界は地獄。

感電している少年「ぎゃあああああ!!」

???「……あれが始まってからどれくらいになる?」

?「……さぁ。もうずっとですよ~」

感電している少年「あああああ!!」

???「かわいそうだな……早く楽になっちゃえばいいのに。ああなったらどのみちおしまいなんだから」

?「そうですね~」

地獄は続く。生きているからこそ続く。

なまじ他人より強いせいで、私は他人より長くここにいる。

感電している少年「あああっ、ああ、あ、ああ」

???「そろそろか……」

?「そうですね~」

いいなぁ……弱くて。

31: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/07(火) 19:30:37.38 ID:9JhRlTw0
18

--施設--

感電している少年「ああ……あ……あ」

私はちょっとだけ強いからいつまでもここにいる。
明日は私の番だと、ずっと怯えて生き続ける。

感電している少年「……」

???「終わったか。南無……」

?「……ふ」

全く持って羨ましい限りだ。
彼はほんのちょっとしか地獄を味わわずにあの世に逃げ込んだ。
それもこれも彼が弱いからこそ手に入れた特権。

?「ふふ……ふふふ~」

???「……気でも触れたのか?」

?「ふふふふふふ~」

早く私にもあれが来ないかな。

???「いや……それも当然か……。早く寝たほうがいいぞ36号」

?改め36号「ふふふふ~」

だって私は早く死にたいのだから。

32: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/07(火) 19:31:48.15 ID:9JhRlTw0
19

--施設--

研究員「中々持ちこたえまーすねー、本国から持ち込んだあの三十番台はー」

ロン毛研究員「百番台がゴロゴロと死んで行く中すごいですよね。三十番台はどんなアプローチでしたっけ?」

眼鏡研究員「確かモンスターと中身全とっかえ……あ、あれは五十番台か。えーと」

研究員「鬼の心臓。それと細胞の活性化ですかーね」

眼鏡研究員「おお、そうだそうだ。あの伝説の生物と言われる鬼のサンプルを利用した実験番台でしたな。鬼など眉唾物でしたが……こうまで成果を見せ付けられては、信じるしかないかもしれませんね」

ロン毛研究員「私は見たものしか信じません。石のようになった鬼の血の結晶だなどと……あれはきっと魔石か何かで……」

研究員「なんでもいいじゃないですーかw今は人造勇者の実験中、他のことなんかに目もくれーず、成果にだけ目をむけまーしょ」

33: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/07(火) 19:32:41.58 ID:9JhRlTw0
20

--施設--

ゴポッ

ロン毛研究員「それはなんですか研究員?」

研究員「あー、これですーか?見せたこと無かったでしたけー?」

ロン毛研究員はカプセルに入った胎児を指さして言った。

研究員「これはですねー、人造勇者実験と同時進行でやってるんですーよ。着手したのはこっちのが早いんですがねー」

ロン毛研究員「へぇ……胎児のわりに、魔力量が恐ろしい数値を示していますね……。研究員、貴方世界を滅ぼしたりしないでくださいよ?」

研究員「あはー。そんなことするわけないじゃないですかー」

眼鏡研究員(……ちょっと不安ですね。北の王とまた違ったベクトルの頭脳の持ち主……最狂の頭脳……)

研究員「あーはーはーはー」





            勇者募集してたから王様に会いに行った
               番外編ss・isの踊子

54: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 11:58:05.99 ID:/Kiw7os0
21

--施設--

勇者「……」

勇者は施設のダクト内に忍びこんでいる。



勇者『駄目だ、君はここで待機していろ』

白猫亜人『え!?にゃ、にゃぜですか!?私はある程度だけど施設内の構造を理解しています。役に立てる自信はあります!!それに頼むだけ頼んで自分は傍観だなんて、いやです!!』

勇者『駄目だ』

白猫亜人『なぜ……ですにゃ』

勇者『私は諸事情により単独行動がなれている。そして……』

白猫亜人『……』

勇者『き、君では狭くて通りづらい場所でも……私なら入れるし』

白猫亜人『ごめんにゃ』

55: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 11:59:31.40 ID:/Kiw7os0
22

--施設--

勇者(ここも通れそうだな。よし、装備換装、軽装ver)

バシュッ

勇者の装備が鎧からセーラー服に変化する。

勇者(……便利な魔法なんだけど、なんでこれ……まぁいいや)

勇者はほふく前進でダクトの中を通っていく。

もぞもぞ

勇者(うー……埃が。我慢我慢)

もぞもぞもぞもぞ

勇者(ん?)

芋虫実験体「……」

勇者の目の前に人並大の芋虫がいた。

56: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:00:28.69 ID:/Kiw7os0
23

--施設--

勇者「ぎゃっ、ぎゃわああああああああああああ!!!!!!」

芋虫実験体「おぎょぽぽぽぽぽぽ!!!!?」

ドゴオオオン!!!!

勇者はダクトを破壊した。


ロン毛研究員「何事です!?この騒ぎは!?」

警備員「一部の実験体が暴れています!!」

眼鏡研究員「そんな、警備用の完全に制御した実験体以外、厳重に管理しているはずなのに!!」

研究員「……ふむー」

研究員は手元の小石を眺めている。

研究員「ふふーん」

57: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:02:16.45 ID:/Kiw7os0
24

--施設--

ペガサス実験体「んー……ペガサスデース」

キリン実験体「ふー、ふー」

勇者「……つい取り乱してしまった」

合成実験体「し、しんぬーさ」

合成実験体は口から火炎弾を吐き出した。

勇者「!?」

ドオオン!!!!

施設内で巨大な火柱が上がる。

キリン実験体「やったか?」

ペガサス実験体「ちょwそのセリフはまずいデース」


58: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:03:15.88 ID:/Kiw7os0
25

--施設--

勇者「熱いなぁもう」

燃え盛る炎の中から、大剣を構えた勇者が涼しい顔で歩いて出てくる。

ペガサス実験体「かすり傷すら無いデース」

キリン実験体「おのれ!!名を、名を名乗れ!!」

勇者(こいつらも……元は人間……なんだよね。でもこうなっては)

キリン実験体「名乗りやがれええええええ!!!!」

キリン実験体が叫ぶと、体の周囲に竜巻が発生する。

勇者(……可哀そうだけど、やるしかないよね)

キリン実験体「くらえええええええええ!!」

竜巻が勇者を襲う。

59: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:04:12.61 ID:/Kiw7os0
26

--施設--

ペガサス実験体「び、便乗するしか無いデース!」

ペガサスは鼻から水を大砲のように発射する。

ビュオオオオオオオオオオ!!!!

勇者「……ごめん、炎属性付与」

勇者が大剣に炎を宿す。そして振り抜く。

ゴオオオオオオオオ!!!

ペガサス実験体「!?」

60: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:05:08.97 ID:/Kiw7os0
27

--施設--

ゴオオオオオオオオ

施設内が劫火に支配される。

ペガサス実験体「そ、そんなバカな……トゥーンデース」

勇者「……やっぱり……私には仲間なんていらないのかもしれない」

勇者は自分の大剣を見つめて佇んでいる。

キリン実験体「俺らの、魔法攻撃を一振りで押し返しただと!?」

勇者「ちょっと本気でやれば周囲がこれだもの……」

合成実験体「う、うほーーーーーー!!!!」

合成実験体は勇者に向かって突進する。

キリン実験体(俺達はこれでも、伝説の勇者の力を組み込まれた存在だってのに、こいつ……)

61: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:07:13.21 ID:/Kiw7os0
28

--施設--

???「なんだ?さっきから外が騒がしいな……」

36号「とんちきパーティでもしてるんですかね~」

???「そんなわけないだろう」

36号の隣室にいる女性はため息をつく。

???「きっと何かあったんだ」

36号「ふふ……あったからなんだと言うんです?貴女こそ長いことここに入れられてたせいで狂っちゃいましたか~?1号」

???改め1号「……」

36号「いいじゃないですか、なんであれ。誰かが助けに来ることは無い。私達が助かること、それだけは絶対にありえない。それさえわかってればいいじゃないですか~」

1号「お前……」

36号「トラブルにしろ、新しい実験にしろ、早く私達が終わるように祈っていましょう~」

62: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:08:22.99 ID:/Kiw7os0
29

--施設--

眼鏡研究員「ちょ、ちょっと!!この魔力反応を見てください!!」

眼鏡研究員は六角形の石を二人に向けた。

ロン毛研究員「!?まさかこの膨大な勇者因子反応は……オリジナルですか!?」

眼鏡研究員「あぁ、恐らくどこから情報を手に入れて潰しに来たんでしょう!!まずいぞ、勇者には俺達がこんな実験をしているだなんて教えていないんだ!」

ロン毛研究員「くそ!!……!?いやまてよ、だったらこれは王国の研究だと勇者に言えばいいだけじゃないんですか!?」

研究員「無理でしょーねー」

ずずっ

コーヒーをすすりながら研究員が口をはさむ。

眼鏡研究員「!?なんでですか研究員さん!!」

研究員「あの子は徹底的に教え込まれ叩きこまれていますからねーあのお硬い大賢者様にーww。そこに悪事があればなんであれ叩き潰すようにとー」

63: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:10:17.45 ID:/Kiw7os0
30

--施設--

ロン毛研究員「いやでも、見知った私らの顔を見れば納得してくれないものでしょうか?これは王の命であり王国の意志なんだすよ?」

研究員「あの子が私達を発見したら、即座に攻撃してきますよー。王国に扮したどこぞの手先、いや王国の裏切り者と考えつくかもしれませんねー」

ロン毛研究員「うぐ……じゃあどうすれば……」

研究員「逃げます」

眼鏡研究員「!!そんな簡単に言いますが、資料やデータを整理する時間だって!!」

研究員は自分の頭をこつこつと指でつつく。

研究員「もう全部入ってますー」

ロン毛研究員「!?……は、はは。やっぱりアンタはすごい人ですよ!!」

64: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:11:38.14 ID:/Kiw7os0
31

--施設--

ロン毛研究員「よし逃げましょう!!一刻も早く!!」

研究員「待って下さいー。王国がやっていたという証拠だけは消していかねばなりませんよー」

眼鏡研究員「しかしもう王国の研究部隊がこの施設を使用しているという情報は周知の事実です。今更……」

研究員「北の王国にその届け出を出したのは眼鏡さんですよねー?」

眼鏡研究員「え?あ、はいそうですけど」

研究員「そして勇者に顔を知られているのは貴方達二人だけとー」

ロン毛研究員「何を今更……それを言うなら貴方だって」

研究員はポケットから錠剤のようなものを取りだした。

眼鏡研究員「それは?」

65: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:12:42.42 ID:/Kiw7os0
32

--施設--

研究員「うふふー」

研究員はそれをポイと自分の口の中に放り込んだ。

ロン毛研究員「!?なんだ、何を食ったのです!?まさか自殺する気では!?」

研究員「あほですかぁ、しませんよー。これは自分の顔を変える薬ですよー。やれやれ、魔法の才能からきしだから、変身するにも道具の力を借りなければならないなんて不便ですー」

ボコボココ

研究員の顔が波打ち、顔の造形が変わっていく。
研究員は変形が終わるころ合いを見計らい、ポケットから手鏡を取りだして自分の顔を確認した。

研究員「おうおう、いいじゃないですかー」

それはまるで蛙の顔。

眼鏡研究員「い、いとも簡単に自分の顔を捨てやがった……」

66: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:13:13.92 ID:/Kiw7os0
33

--施設--

ロン毛研究員「く、くっ!!背に腹は代えられない!!早く私にもそれを下さい!」

研究員「え?何を言ってるんですかー?これは私一人分しかないですよー?ゲロゲロww」

ロン毛研究員「ええ!?それじゃあ私達はどうするんですか!?」

研究員「そうですねー」

研究員はさも考え事をしているかのようなポーズを取る。そしてカプセルのところに行く。

コツコツ

研究員「起きて下さいー。君を使う時が来たようですー。ちょっと時期が早かったですけど仕方がないですからねー」

????『ゴボッ』

バキっ、バキィン

カプセルにひびが入り、緑色の液体が廊下を濡らしていく。

眼鏡研究員(……)

67: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:13:55.91 ID:/Kiw7os0
34

--施設--

????「ヴー……」

バキバキ

二つの尻尾を持つ胎児がカプセルを割りながら出てくる。

パシャっ

ロン毛研究員「そいつには何か能力があるんですか!?そいつがいれば私たちもなんとかなるんですか!?」

研究員「えー。なんとかなりますよー。さぁ、とりあえずあれだ、やってごらんー」

研究員は胎児に命令を下すと、胎児が動き出した。

????「ヴー」

バヂン

眼鏡研究員「……え」

一瞬のことだった。
胎児は跳躍し、一瞬でロン毛研究員の頭部を粉砕した。

68: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:15:07.23 ID:/Kiw7os0
35

--施設--

????「ヴー」

研究員「ほぉう。中々素晴らしいじゃないですかー。では次は……」

眼鏡研究員「ひっ!?あ、貴方!!元から私達をここで始末する気だったのですか!?」

研究員「いえね、私が一人で逃げるのと、貴方達と一緒に逃げるのと、どっちの方が安全かなんて考えたら一目瞭然じゃないですかー」

????「ヴー」

研究員「貴方の口から情報が漏れる心配もありますしー。ほら、人の口にはどうのこうのって言うじゃないですかー」

眼鏡研究員「ひ、ひっ!!」

研究員「他人の実験の仕方も見れて有意義でしたー。と言っても貴方方の無能さは目に余りますねーw結局私自身が行った1号と36号以外3日も生き延びられなかったのですから」

????「ヴー」

研究員「ここでの研究を糧に、本国に帰ったら必ずや成功体を作ることをお約束いたしますー。ではではー」

ベチャッ

69: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:15:57.86 ID:/Kiw7os0
36

--施設--

ペガサス実験体「ば、化物デース……」

勇者「……」

フロアには数十体の実験体が無造作にころがっている。

ペガサス実験体「わ、わたしたちは弱くナイデース!!弱くない……筈なのに……こうも簡単に……」

じゃり

勇者がペガサスに視線を向ける。

ペガサス「どきっデース!!」

勇者「……お前ももうおやすみ」

勇者の掌に赤い光が灯る。

ガシャアアアアン!!!!

勇者「!?」

施設の二回のガラスが破られ、中から5人の実験体が飛び出してきた。

70: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:17:20.93 ID:/Kiw7os0
37

--施設--

がいこつ実験体「バカメ!!スキガデキルノヲマッテイタノダ!!雷属性魔法レベル4!!」

トイレ実験体「土属性魔法レベル4!!」

扇風機実験体「水属性魔法レベル4!!」

納豆実験体「火属性魔法レベル4!!」

靴下実験体「氷属性魔法レベル4!!」

ドッゴオオオオオオオオオオオオン!!!!

各属性の最強魔法が勇者を襲う。
しかし勇者は微塵も揺らがない。

勇者「全方位逆転バリアー」

がいこつ実験体「なに、」

全ての魔法が反射される。

チュドドドドドオドオオオオオン!!!!!

71: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:18:02.41 ID:/Kiw7os0
38

--施設--

ペガサス実験体「レベル4魔法を全部跳ね返したデース!!で、でたらめデスゆーぎボーイ!!」

勇者「……残るはお前のみだ」

勇者は大剣を構える。

ペガサス実験体「……逃げるが勝ちデース!!」

バサバサ

勇者「に、逃げるなっ!」

戦闘で空いた穴からペガサスは逃げ出した。

勇者「……まぁいいか。一体くらい。あんま危害を加えそうな奴じゃないし」

72: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:18:37.72 ID:/Kiw7os0
39

--施設--

その後勇者が施設を探索していると、ある部屋の扉が急に開いた。

研究員「た、助けてゲロー!!」

中からカエル顔の人間が飛び出してきた。

研究員「もう実験される人生は嫌だゲロ!!あんた助けに来てくれたゲロね!?よかったゲロー!」

????「ヴー」

研究員は胎児を抱きながら勇者のもとに駆け寄った。

勇者「……そうだ、助けに来た。他にもまだいるのか?」

勇者は燃えている資料と、床に散らばった二人の死体を見ながら問うた。

研究員「この階にはもういないゲロが、地下にはまだいるかもゲロ」

勇者「そうか。じゃあ地下に行こう」

勇者は踵を返し、地下への階段を探す。

研究員(うーふーふー)

73: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:19:38.21 ID:/Kiw7os0
40

--施設--

勇者「地下への入り口がどこにあるかわかるか?」

研究員「多分あっちかなゲローリ」

????「ヴー」

勇者「ここ……かな?」

勇者が瓦礫をどかすと、地下へと続く空洞を発見した。

研究員「おぉーあったゲロー!よかったゲロー」

勇者は通路を確認した後、大剣の柄に手を伸ばし研究員を切り付けた。

ブシッ

研究員「!?なんでゲロ!?」

深くは無い傷口を押さえながら研究員は叫ぶ。

勇者「……白々しい。貴方はこの施設の人間だろう?」

研究員「!!……」

74: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:20:41.83 ID:/Kiw7os0
41

--施設--

勇者「顔は変えようとも、体に染み付いた薬品の匂いは誤魔化せない」

研究員「や、薬品をかぶっちまったんだゲロ!!」

勇者「その割りに服は濡れてないじゃん」

研究員「……濡れるッ!!」

勇者「ただ言いたかっただけでしょ!!」

????「ヴー」

勇者「なぜ他の研究員を殺したの?やっぱり口封じ?……研究員さん」

研究員「!!……ふふふ。しばらく見ない間に、ちょっとは成長したみたいですねー。この状況化でもちゃんと観察しているしー。段々勇者が板についてきたようですなー、勇者ちゃん」

75: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:21:21.83 ID:/Kiw7os0
42

--施設--

勇者(……やっぱり)

研究員「例え半信半疑でのかまかけだったとしても、十分評価に値しますよー。でも、なぜ私だと?」

勇者「貴方の実験は結果だけを求めているから品が無いんです。すぐに……わかる」

研究員「ふふふ。全ては結果が出てから取り繕えばいいと思ってますのでー。しかし無駄になっちゃいました、この顔。ゲコッ」

勇者「……これは王様の命令なんですか……?」

研究員「さあねー」

勇者「ッ!」

勇者は大剣を強く握り締める。

研究員「ふふふ。勇者ちゃん、今、嘘発見スキル使ってるでしょ。お見通しさっ」

76: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:22:22.70 ID:/Kiw7os0
43

--施設--

勇者「……」

研究員(これ以上話して情報を与える必要は無さそうだなー)

????「ヴー」

研究員「あぁ、ごめんごめん、もう行こうねー。じゃあ勇者ちゃん、私はおいとまさせていただくよー」

研究員はひらひらと手を降って勇者に背を向けた。

勇者「!!逃がすか!!」

研究員「やっぱり顔見知りの私でも殺すの?」

勇者「殺す。私は全ての悪しき行動を駆逐する義務と権利がある!!」

研究員「ふーん。一体勇者様って何様な職業なんだろねー。まぁいいやー」

研究員は再び勇者と向かい合う。

研究員「勇者ちゃん、一つだけ忠告してあげるー。勇者ちゃんはきっと悲劇的な結末を送ることになるよー」

77: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:23:12.27 ID:/Kiw7os0
44

--施設--

勇者「な、何を言って」

研究員「……今のは私なりの勇者ちゃんへの贈り物。未来がわかっているなら覚悟もしやすいでしょ?」

勇者「ッ!!ただの呪咀にしか聞こえない!!」

勇者は全力で切り掛かった。

????「ヴー」

ガキィィィン!!

勇者「……な」

しかし大剣は胎児の尻尾で防がれてしまう。

研究員「じゃあ、次があるかはわからないけど、またねー」

ズブブ

胎児から天使のような羽が生える。

バサッバサッ

勇者(私の攻撃が……防がれた?)

勇者は彼らが穴から外にでていくのを呆然と眺めていた。

78: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:24:16.25 ID:/Kiw7os0
45

--施設--

白猫亜人(うわ、随分すごいことになってるにゃ)

ダクトの中から白猫亜人が顔を出す。

白猫亜人(やっぱりマジもんの勇者様だったんだ……)

シュタッ

ダクトから飛び降りて着地。

白猫亜人(やっぱり勇者様にだけ任せておけない……あの人は、あの人だけは!!)

白猫亜人は四足で疾走する。そこは野生の力なのか、風のように通路を駆け抜ける。

白猫亜人(確か前はここら辺辺りで……)

道の先まで見渡すも、生物の姿を確認することもできない。

白猫亜人(……捜し回るにゃ)

79: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:25:22.79 ID:/Kiw7os0
46

--施設--

勇者(この施設で一体何の実験をしていたんだろう。資料は燃えていたからな……)

カンカン

勇者は地下への階段を降りていく。

勇者(どの実験体も強かった。大賢者様を除けば、あれほど強い敵はみたことがない)

カンカンカン

勇者(!!……何か感じる。何だこの感覚……呼び合っている?共鳴?)

勇者は新しい感覚に戸惑いを感じた。

80: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:25:51.89 ID:/Kiw7os0
47

--施設--

1号「……何かが来るね。凄いプレッシャーだ……でもこれを知っている」

36号「なんでですかね~……」

1号「多分」

ギィ

彼女らのいるフロアのドアが開かれる。

勇者「ここか?」

勇者は檻の中に入れられている二人の少女の姿を確認した。

1号「……あれがオリジナルなんだろう」

36号「……ふ、ふふふふ!」


81: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:26:35.75 ID:/Kiw7os0
48

--施設--

勇者「君達……二人だけか?」

勇者は辺りを見回しながら質問する。

1号「助け……なのか?……そして勇者、だな?あんた」

1号は警戒しながら立ちあがった。

勇者「……あぁ、そうだ」

勇者は檻に近付いて行く。

勇者(……彼女たちは、大丈夫なのか?人に害をなさないようであれば助けるのだが)

36号「ふふ、ふふふふ!!」

36号は立ちあがり檻を掴む。

ガンっ

36号「貴方が、貴方が天下の勇者様ですか~!!」

勇者「?」

82: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:27:18.02 ID:/Kiw7os0
49

--施設--

1号「おい」

36号「今も人助けの最中なんですか?勇者様は~。さすが勇者様です~。こわーい人達に体をいじくり回されている可哀そうな私達を助けに来てくれたんですか~?感激です~」

勇者「……何が言いたいんだ?」

36号「全ての元凶が何様だって言ってるんですよ~」

勇者「!?」

1号「おい36号……」

36号「でも残念ですね~ここに人はいませんよ~?ここにいる実験体は全て、ある化物から抽出されたエキスを元に、非人道的な改造を受けた化物もどきですからね~!!」

勇者「まさか……まさかそういうことなのか?」

36号「そうですよ~。間違いありません~。いじくられた私の体が答えるんですよ~。分かたれた体がそこにあるってね!!」

83: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/09/23(木) 12:28:13.35 ID:/Kiw7os0
50

--施設--

36号は檻を揺らす。

36号「お前が、お前が全ての元凶だ!!お前なんかがいたから人は夢を見たんだ!!人類の希望?はっ!!私達にとってはちっとも希望なんかじゃない!!」

勇者「っ……」

勇者は36号を直視できず視線をずらす。

1号「もう気が済んだだろ、やめるんだ」

36号「1号は悔しくないんですか!?憎くないんですか!?こいつがいなければ私達がこんな目にあうことなんて無かった!!こいつが人知を超えた化物だったからっ……くっ」

36号は地面にしゃがみ込んだ。

1号「……なぁ、あんた。あんた……自分のデータとか、血液とか、誰かに渡したことあるか?」

勇者「……あぁ」

36号「!!」

99: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 21:50:07.04 ID:ZmaCCcs0
Qw0「こんばんはー………………人生どないしよ」

①しょぼいとこでもとりあえず就職だっ!!
②男なら夢に生きるんだ!!






お久しぶりです。10時ごろからss再開したいと思います!
どうかそれまでに、あの、おさらいとかしておいた方がより楽しめるかと……長くあいたせいでお忘れでしょうから……

m(__)m!!

102: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 22:00:49.28 ID:ZmaCCcs0
51

--施設--

1号「自分から提供したのか?」

勇者「いや。……だが今思えばそれが何に使われるのかなんて、容易に想像できたことだな」

1号「……だろうな」

勇者はいまだに自分のことを睨んでいる36号に向き直る。

勇者「しかし私を怨むというのなら逆恨みだ。私の存在まで恨まれる理由は無い」

35号「ぐう!!」

勇者「ともかく、君らは外見上は人と変わらないし、会話も十全に出来るようだ。もし君らが人を傷つけないと約束するのなら、そこから出そう」

1号「人を傷つける?そんな気なんてないさ。この力だって欲しくて手に入れたわけじゃないんだ」

勇者「そう……だろうな」(でも人に恨みは……)

103: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 22:06:55.48 ID:ZmaCCcs0
52

--施設--

36号「腹が煮え繰り返りそうです……なんで、なんであんたなんかに命を握られなきゃならないんですかっ……」

1号「もうやめろ……彼女の言う通り、それは逆恨みだ。恨むなら施設の研究員達を恨め……」

36号「わかって……ます、わかってますよ!!それでも恨んでないと狂いそうになる!!少しでも今の状況を生み出したことにかかわり合いがある奴を、片っ端から!!」

36号は涙に滲んだ瞳で勇者を睨む。

36号「正しいとか真実とかどうだっていい!!」

36号は過去を振り替える。かつて自分のことを姉と慕う少年の笑顔。

36号「私の日常が奪われたことには変わりないんだ!!」

黒服の男達に連れ去られようとしている幼き日の自分。

36号「私の体を元通りにしろ!!」

黒服の男達に飛び掛かった弟は切り捨てられる。

36号「ただ……ただお前が憎い!!」

1号「……!?これは……暴走!?やめろ36号、落ち着け!!戻れなくなる!!」

36号の体の所々が裂け始め、魔力が漏れはじめる。

104: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 22:14:49.66 ID:ZmaCCcs0
53

--施設--

空を漂う研究員と羽の生えた胎児。二人は鳥も飛ばない高度から施設を眺めていた。

研究員「そろそろ彼女らは接触しましたかねー。36号は勇者と会った時にスイッチが入るようにしてありましたから。さて、最後の実験は高みの見物ですー」

1号「36号!!ダメだ!!」

36号「う、ううう!!ウアアイアアアア!!」

36号は鉄枷を粉砕する。

1号「!?対魔物質で出来た枷を!?」

勇者「!!」

ギギギィ

36号が手を触れると、檻は簡単に歪み始めた。

36号「アアアアアアア!!」

そして強力な魔力爆発が発生する。

ドゴォォォン!!

105: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 22:23:17.57 ID:ZmaCCcs0
54

--施設--

勇者「げほっ、ごほっ。今のは一体……」

粉塵を払い、視界を確保しようとする。

ユラッ

勇者「……っ」

立ち上がった影が視界の端に映る。そして、

36号「あ、亜は波はは!!凝んな体にナッテカラ、本気なんてダシタコトなかっ他けど、スゴい……なんてちから!!今ならドンナも野でも壊せそう~」

勇者「……力に飲まれている」

1号「や、やめるんだ!抑えろ36号!!」

106: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 22:31:56.19 ID:ZmaCCcs0
55

--施設--

36号「……もう無理デスよ1号……私、リミッター外れちゃったミタイデスもん~……貴女はニゲテくだ再~貴女まで傷つける理由ナンテ無いデスから~」

1号「自分の身を案じて言ってるわけじゃない!」

36号「わかってマスよ、それくらい私二だって……でも、モウ、止められ、ない!!」

36号は渾身の力を込めた右足で勇者を狙う。

ドゴッ!!

勇者「ぐっ!」

勇者はそれを左腕でガードするが、いとも簡単に弾き飛ばされてしまう。

ドザッ

勇者「私が……ガード仕切れない?」

勇者は痺れた自分の左腕を見て驚いていた。

107: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 22:40:54.14 ID:ZmaCCcs0
56

--施設--

36号「アタリマエです夜~いくら模造品と言えど私の力は貴女の力。効かぬ道理は無いです余~」

36号は跳躍し、勇者に次の一撃を放つ。

36号「ドゥリルゥ……」

36号は空中で回転する。右足に一極集中された魔力は閃光を放ち、光の帯のように目に映る。

勇者(やばい……あの光は私の、六色魔法の光!!)

36号「イナズマ蹴り!!」

足に集中させたのとは別の魔力を反対方向に放出。36号は空中で推進力を得て、爆発的な速度で落下した。

ギュン!!

勇者「!!」(回避がまにあ)

ドギャギャギャギャギャ!!

108: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 22:47:30.51 ID:ZmaCCcs0
57

--施設--

勇者は防御体制を取るだけで精一杯。クロスした両腕の上で36号はコマのように回転している。

ビヂ、ビヂャヂャヂャヂャ!!

あっという間にガントレットは突破され、その下の肉が掘られ始める。

勇者「ぐっ、ぐああっ!!」

36号「ヤリ、ますねェェ、まさか、今のワタシの攻撃をスキルも魔法も使わずにタエテルだナンテ!!」

しかし回転は止まらず、勇者の血が部屋を塗りつぶしていく。

1号「36号!!」

勇者(ダメだ、まずい、ガードを下げたいけど踏張ってないと押し込まれる!!でもこのままじゃ自分から差し込むことに!!)

36号「おら、オラオラ、おララララー!!」

36号は更に魔力を放出、回転速度が増していく。

109: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 22:52:33.66 ID:ZmaCCcs0
58

--施設--

勇者(だめっ!!もう耐えきれない!!)

バヂュン!!

腕を粉砕した36号の爪先が勇者の平たい胸に接

勇者「独自開発魔法、アリスパーティ」

ビャー!!

36号の攻撃が身体に触れるか否かの瞬間、六色の光が勇者から放たれた。

1号「ぐっ!?」

36号「うおっまぶし!」

眼も眩むような閃光。

110: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 22:55:48.75 ID:ZmaCCcs0
59

--施設--

36号「なにが……起こったンデ巣か~……」

気付けば36号の回転は止まっていた。しかも空中であの体勢のまま。

36号の自分の右足を見てみると、そこには4つの変な物がまとわりついていた。

?「やいやいやい、よくもうちのアリスをいじめてくれたにゃ」

??「アリスさん、今腕を治しますっ」

???「ひひww久しぶりだなぁおっおっww」

????「お、おで」

36号「!?」

奇妙な猫と、眼鏡をかけたウサギ、動く帽子と、巨大なうさぎ。

111: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 23:04:55.58 ID:ZmaCCcs0
60

--施設--

眼鏡をかけたウサギはぴょんぴょんと跳びはねて移動する。そこには片腕のとれた小さな少女がいた。

??「アリスさん!大丈夫ですか!?」

勇者改めアリス「痛い……」

少女は体育座りをしてうずくまっている。

アリス「早く治して……白兎」

??改め白兎「了解です」

白兎は小さな両手をアリスの腕に向けると、水の治癒魔法がかけられた。

白兎「すぐよくなりますよ、私のアリス」

112: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 23:08:35.74 ID:ZmaCCcs0
61

--施設--

???改め帽子屋「ひひひwおいらは帽子屋ww」

?改めチェシャ猫「俺はチェシャ猫だにゃ」

????「お、おで!」

帽子屋「ひひひwこのどんくさいのが三月兎www」

????改め三月兎「お、おで」

36号「な、なんデスかこれは~。何かのお遊戯デスか~……ふっ!!」

36号は身体を思いきり捻り、足に纏わりついていた奴らを弾き飛ばす。

1号「36号やめろ!仮にも勇者の魔法なんだ、しかも追い詰められた状況で使ってきた。これは危険だ!!もう馬鹿なことはよせ!!」

36号「駄目デスヨ1号~。今やらなきゃ無残に朽ちて行ったハラカラが浮かばれません~私の恨みがキエマセン~」

113: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 23:17:37.55 ID:ZmaCCcs0
62

--施設--

36号(こいつらがヤバイッテのは分かって益代~……マガリナリニモ今の私ノ攻撃を無傷デ不正じゃったンデスカラ~)

36号は地面を踏みしめた。

びしぃっ!!

それだけで地面はひび割れ、無数の石が舞う。

36号「雷属性攻撃魔法、雷石砲!!」

36号は空中を漂う石々目がけ、電力を帯びた右足で蹴りだした。

バチィっ

チェシャ猫「にゃ?」

ドシュドシュドシュゥぅん!!!

115: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 23:23:50.59 ID:ZmaCCcs0
63

--施設--

電速の砲弾が放たれる。
しかし、

三月兎「おでっ!!」

三月兎は全身を土塊と化し、その攻撃を全て弾いた。

36号「!?」

三月兎「!し、しまった」

ヒュン!

仕損じた石がアリスに向かって飛んでいく。

アリス「!……守って」

その一言でアリスの影から炎が出現しアリスを覆う。
石はアリスを守る炎の膜によって跡形もなく融かされた。

116: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 23:31:03.25 ID:ZmaCCcs0
64

--施設--

1号「なんだこの魔法は……本体の勇者が、先ほどより圧倒的に弱体化している……そんな魔法ありえるのか??」

アリス「……」

帽子屋「教えてやんよwwwおいら達はアリスパーティwww友達も仲間も、あいつの傍には一人たりともいないwwそんな中で苦し紛れに産みだしたのがおいら達さwwwwあいつは自分の魔力で作りだしたものしか友達がいねぇんだよwwwぶべっ!!」

三月兎の拳が帽子屋の頭を叩く。

三月兎「あ、アリスさんの、悪口は良くない……」

帽子屋「けへへww何言ってんだよwwお前だってそういう用プログラミングされてるだけなんだぜwwwおいらは皮肉がかりなのさwww」

1号「……ややこしすぎる魔法だな」

36号「……」

117: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 23:31:39.82 ID:ZmaCCcs0
65

--施設--

36号「は、一人が寂しい~?何をイッテンダカ~。とりあえず、あの人の能力が激減シタトいうことは……」

ドッ

36号は跳躍し、再び空中で回転を始める。

36号「アッサリと殺しやすくナッタってことにほかならないじゃないデスカ~!!」

チェシャ猫「そうはいかねぇんだにゃ」

36号「!?」

36号は驚きのあまり体勢を崩す。それもそのはず、いきなり顔だけの猫が出現したのだから。

36号「なっ」

チェシャ猫「スキル、インビジボゥ。さらにポリゴンフラッシュ!!」

ビカッ!!

チェシャ猫の眼球が光り輝き、36号の視覚を奪い去る。

1号「36号!!」

118: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 23:32:24.45 ID:ZmaCCcs0
66

--施設--

36号「くぅ~くらくらします~吐き気をもよおします~」

36号は地面に着地した後も立ちあがることが出来ない。

帽子屋「うぅしwwおいらもやってやんよwwサンダーww」

ビッシャァアアン!!

36号「ぎゃうっ!!」

帽子屋「ひひひwwいてぇだろwwwおいら達は勇者から一属性ずつ奪って独立してんだwww雷魔法だけなら勇者とそん色ねぇんだぞww」

チェシャ猫「……お前ばらしすぎてんぞ。いくら喋りたがりのうるさい設定だからっていいすぎにゃ」

帽子屋「うwるwせwww」

36号「……奪う~?」

1号(勇者は全六属性……そしてあのへんてこなやつらは全部で4体。なら今の勇者本体は2属性しかないとでも?)

119: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 23:33:00.69 ID:ZmaCCcs0
67

--施設--

36号(これはイイことを聞きました~。さっきの白兎は水の魔法を、でかい兎は土、うるさい帽子は雷、そして本体は火をツカッタわけです~。本体を叩くのに適していない属性は風、これは駄目です~。火に負けちゃいマスカラね~。あと出てないのは風と氷ですけど、相性的に水で押すのが安定ですカね~)

36号は両手を合わせて魔力を圧縮する。
そして

36号「対単体水属性攻撃魔法、レベル3!!」

激流のような水が36号の掌から放出される。

帽子屋「あーwwwやっちまったなwwwwばーかばーかww」

36号「!?」

帽子屋「おいら達は自由意志があるようでいてねーのさwwさっきから言ってるようにプログラミングされてっからよぉwww」

1号(!!嫌な感じが)

チェシャ猫「完膚なきまでの殺意を感じたにゃ。アリスのためにお前を殺す」

120: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 23:33:46.09 ID:ZmaCCcs0
68

--施設--

白兎「アリスさん下がってください!水属性防御魔法、水鏡!!」

ドバッシャーン!!

白兎が作りだしたのは薄い水の壁。本来なら激流に耐えるわけがないのだが、まるで水の鏡が別次元への入り口にでもなっているかのように水を無効化していた。

三月兎「ふんっ!!」

激流を掻い潜って接近してきた三月兎は、36号の下からアッパーを繰り出す。

ガシィン!!

36号「っ!!」

36号はそれを左のひざで防ぐも、その破壊力の前に後ろに倒されてしまう。

チェシャ猫「ほーれ」

36号の落下位置にチェシャ猫の顔が出現する。大きく口を開けたと思うと、その中から小さな風の刃が無数に飛び出して36号を襲った。

バシュバシュバシュ!!!!

121: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 23:34:21.36 ID:ZmaCCcs0
69

--施設--

36号「ぎゃああああああ!!!!」

1号「なぜだ……完全体の勇者ですら押していた36号が、なんでこうも一方的に……」

帽子屋「そりゃー当たり前だぜww確かにおいら達は勇者の6分の1しかパワーがねぇ。でもおいら達には勇者にある弱点が存在しねぇのさww」

36号「弱……点?」

チェシャ猫「おい喋り過ぎだにゃん。この帽子ひっぱって使い物にならなくしてやるにゃん」

ぎぎぎぎぎ

帽子屋「あてててwwwwひひwwどんだけひっぱってもおいらは喋るぜwww男は数でも早さでもねぇ、皮の伸び具合だwwwww」

チェシャ猫「またろくに見てないやつのネタを使ってるにゃ」

帽子屋「勇者の弱点、それはなww迷いだ」

122: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/07(木) 23:35:29.59 ID:ZmaCCcs0
70

--施設--

帽子屋「どんな人間にもそりゃぁあるさwwでもな、あいつのは異常だぜwwマイナススキルとしてくっついてんのよwwwどうやっても取りようがねぇ不治のスキルwwwただおいら達には関係ねえのさww」

36号「!!」

帽子屋の帽子の中からナイフが飛び出してきて36号の腹部を抉った。

36号「!!!!」

帽子屋「ひひひwwおいら達の姿がファンシーだからってあなどんなよwwwこうなったおいら達はガチの殺意を持ってお前らを殺すんだぜwwwガチの殺意は実力差だってひっくり返すのってことを覚えとけよwwヒーハー!!!!」

ザクザクザクザクっ!!!

36号「ぐっ、あうっつ!!あああああああああああ!!!!」

チェシャ猫「まぁそういうことだにゃん」

猫は36号の前で口を開き、

三月兎「おっで!」

三月兎は36号に拳を振り下ろした。

べゴン!!!!

148: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 21:06:10.90 ID:AZOqHoA0

71

--施設--

帽子屋「ひひひひひwwwどういうつもりだお姉ちゃん??」

1号「っ」

右手で帽子屋のナイフを、左手で三月兎の拳を、背中で猫の攻撃を防いだ一号。

1号「すまなかった勇者!!もうこの辺でやめてくれ!!36号だってどうしようもなかったんだ!!」

アリス「……」

アリスは一号の言葉に反応を示さず、ぼーっと足元を見ている。

1号「おい、聞いているのか!!勇者!!」

帽子屋「聞いてるけど聞いてないよwww」

1号「!!」

帽子屋の中から6本の細い腕が飛び出し、それぞれの手に握られたナイフで切りつけた。

149: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 21:10:14.57 ID:AZOqHoA0
72

--施設--

ドシュっ

1号「ぐっ!!」

帽子屋「あそこでうずくまってるのは勇者じゃねぇww確かに核であることに変わりはねぇけど、おいら達も勇者の一部だっつーのww」

1号は36号を抱えてそこから走り出す。

36号「1、ごう」

帽子屋「ひひひひwwこの魔法は、誰にも頼れない勇者が危機に陥った時に発動する魔法だwww」

チェシャ猫「勇者が戦闘続行になるまでの間、俺らが全力で守るにゃん」

三月兎「お、おで」

帽子屋「この魔法は勇者が完全回復するか、完膚無きまでに敵を破壊するまで解除されないんだじぇwwwwwやめてって言っても強制だからやめられんのよwwwww」

150: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 21:15:35.30 ID:AZOqHoA0
73

--施設--

ドゴオン!!

白猫亜人「あきゃっ!!」

??改め白猫実験体「うぎゅるるる」

勇者達とは違う所で、二人は闘っていた。

白猫亜人「あ、あなた……」

白猫実験体「ふしゅrぅうろぁう」

白猫実験体の背中から蟷螂の腕が飛び出し、白猫亜人を襲う。

シュッ!!

151: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 21:19:30.60 ID:AZOqHoA0
74

--施設--

白猫実験体の攻撃は白猫亜人の腕をかすめただけだが、かすり傷とは思えないほど出血している。

白猫亜人「あなた……やっぱり私の事、思い出せないにゃ?」

白猫実験体「うぎゅるるる」

白猫亜人「そう……そうだよにぇ……」

白猫亜人は右手の指先に力を込める。

白猫亜人「……あれはどう考えても死亡フラグだったものね」

白猫亜人は駆ける。

白猫実験体「が、がぱっ」

突然白猫実験体の口は開かれ、そこから魔力が発射される。

ドゴオオオッ!!

152: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 21:23:05.51 ID:AZOqHoA0
75

--施設--

1号「止められない……だと」

帽子屋「今あいつの意識は無いのさwww言わばオート、故の躊躇無しだww」

帽子屋はナイフを投げつける。

1号「っ!」

ギイン!!

1号は落ちていた瓦礫の破片でナイフを打ち落とす。

1号(……いや、勇者が完全回復するまでと言ったな?なら時間稼ぎをすれば……)

1号はそっと36号を地面に下ろす。

36号「1号?」

1号「落ち着いたか?もう発散できただろ……しばらく離れてろ」

バキっ

1号は自分の手枷を破壊する。

36号「っ!」

153: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 21:27:26.18 ID:AZOqHoA0
76

--施設--

帽子屋「なんだお姉ちゃん、やっぱりあんたも敵なのかいwwじゃあ……」

1号「そんなつもりじゃないが、しばらくの間お相手願うよ」

1号は右手に風、左手に炎の魔力を集中させる。

チェシャ猫「!」

そして両手を中央で合わせる。

パンっ

1号「二属性複合攻撃魔法、二色剣」

154: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 21:31:26.32 ID:AZOqHoA0
77

--施設--

帽子屋「ひひひひww四つ属性が足りねぇんじゃねぇのかお姉ちゃんwww勇者もどきなんだろ?六ついっぺんに使ってみなよwww」

1号(そんな簡単に六属性使えるか!魔力消費も維持するコントロールも楽じゃないんだ、ただでさえ持久戦になりそうだってのに)

帽子屋の攻撃を二色剣で切り払う。

三月兎「おでっ!!」

三月兎は跳躍し、1号に飛び蹴りを放つ。

1号「っ」

1号は二色剣を分離させ、雷の剣で足に斬りつけた。が、

バチっ

1号「しまった、こいつ土ぞくせ」

ドギョッ

三月兎の蹴りは一号の右腕をへし折った。

155: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 21:35:33.04 ID:AZOqHoA0
78

--施設--

1号(強い、単純に強い!!)

ドザザッ

1号は36号の傍まで吹き飛ばされる。

36号「い、1号、何やってるんですか、やめて下さいよ」

1号「……ったく誰のせいでこんな目に合ってるんだか」

1号はすぐに立ちあがりアリスパーティに向かい合う。

1号「勇者を怨むのはやめようぜ」

36号「……今だってあいつは私達を苦しめているんですよ」

1号「それは36号が追い詰めたからだ。いいか?6等分されたようなやつらに私達は押されてるんだぞ?勇者が本気で私達を殺そうとしているのならとっくにやられてる」

36号「!!」

1号「通常時の勇者は36号に一度も攻撃をしなかったしな」

156: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 21:40:32.87 ID:AZOqHoA0
79

--施設--

帽子屋「はっwwしらねぇよwww何の話をしてるんだかwwそんな話したところで意味ねぇのに、おいら達は具現化された殺意、あいつの敵は全部殺すのよwwww」

1号は右手の雷の剣を失ったことに気付き、片手だけで新たに二色剣を作りだす。

1号(……もう私達の身体なら回復が始まってるはず。それなのに36号は立てない。……心が折れてしまったか。喧嘩っぱやいくせに心がなぁ)

1号は剣を回しつつ様子をみる。

1号(話を聞く限りじゃこれらは勇者の分身らしいし……倒したらまずい感じがするな)

チェシャ猫「行くにゃよ!!」

宣言とともにチェシャ猫が姿を消す。

157: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 21:44:32.31 ID:AZOqHoA0
80

--施設--

1号(消えた!!なら……)

1号は二色剣を水と雷に変化させ、空間をなぎ払った。
すると電気を浴びた水流が発射される。

バシャっバチバチっ!!

チェシャ猫「あびびびび!!」

1号(うし、姿が消えてるわけじゃないんだな)

帽子屋「……うーんww結構めんどくさい敵やなぁww勇者の適応力を上手く使えてやがるぜwwww」

白兎(発想は至って単純。見えない敵に対して、面で攻撃しただけ……。でもこの状況下で、瞬時に属性を変えて対応してきた。それは確かな彼女の力……)

白兎はじっと1号を観察していた。

158: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 21:49:05.98 ID:AZOqHoA0
81

--施設--

1号(いやな感じだなあいつ……探ってやがる。後ろに控えてるって意味でもそうなんだろうな。なら)

1号は二色剣を氷と土に変え、地面に突き刺した。

バキバキバキバキ!!

1号「地形変化亜種、氷迷宮」

地面から氷がせりあがり、アリスパーティ達を分断した。

チェシャ猫「にゃっ!?」

白兎「なっ!!」

三月兎「お、おで」

帽子屋「ひひひwwww……やられたぜ」

159: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 21:57:20.68 ID:AZOqHoA0
82

--施設--

1号(これで少しは……いやだめだ、風属性がいた。すぐに破壊されてしまう!!)

1号は属性の相性を思い出し、腕に回復魔法をかけながら迷宮へ向かう。

三月兎「お、おで寒いの、にが、て」

三月兎は一歩も歩くことが出来ず、ガタガタと震えている。

ザクザク

帽子屋「ひひひwwこんなナイフじゃちっとも削れねぇww雷も有効じゃねぇしwwてかこの氷、透けて向こう側が見えるくせに、反射しまくってて位置がわからねぇww」

チェシャ猫「この氷……結構魔力錬り込んでるにゃね。これで時間稼ぎしようと考えたんだろうけど、風属性の俺がいることを忘れてるにゃ?いやそれだけ焦ってたのかにゃ?どちらにせよ、選択ミスだにゃ。こんだけおおがかりにやっちゃったら破壊された時の損失もドデカだにゃ」

そう言ってチェシャ猫は口を大きく開けた。

バリィン!!

チェシャ猫「!?」

大きく息を吸い込み吐き出そうとした瞬間、破壊しようとした目の前の氷から1号が飛び出してきた。

160: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 22:02:08.96 ID:AZOqHoA0
83

--施設--

チェシャ猫(!?向こう側には何も映っていなかったのに……しまっ)

ドジュウ!!

二振りの炎の剣がチェシャ猫に突き刺さる。

チェシャ猫「ぐぶふっ!!この氷……幻覚症状を……付加して……にゃ」

ドサリ

1号が剣を引き抜くと、チェシャ猫は地面に倒れこんだ。

1号「よし、厄介なのは倒せた。後は」

1号は剣を氷属性に変化させる。

1号(腕も修復し終わった。十分戦闘に耐えられるレベルだが、ここは迷宮の維持に力を割いた方がいいな)

作り上げた剣を地面に刺す。

161: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 22:06:58.09 ID:AZOqHoA0
84

--施設--

チェシャ猫「……止めは刺さないのかにゃ?それも仕損じではなく、わざと」

むくりとチェシャ猫の頭が持ち上がり、1号の方を向く。

1号(!?まだ動けるか!)

チェシャ猫「俺らを一体でも倒してしまうと、勇者は甚大なダメージを受ける……そう考えたんにゃね」

1号「……」

チェシャ猫「優しい人だにゃ。命をかけた戦いの最中だというのに、相手のことまで考えてあげるだにゃんて」

1号「別に……」

チェシャ猫「でもおばかさんだにゃ。俺らには躊躇いも戸惑いも一切無いんだにゃ」

チェシャ猫は口から無数の風の刄を吐き出した。

162: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 22:10:01.71 ID:AZOqHoA0
85

--施設--

1号「!!」

バリバリバリィン!!

暴風と風の刄が、容赦無く氷ね迷宮を破壊していく。

チェシャ猫「……情けをかけた相手が、君に情けをかけるとは限らない」

ガラガラガシャァン

1号「しまった!」

既に後の祭り。
全ての氷が破壊されたわけでは無い。だが、この損傷では迷宮の意味を成さない。

163: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 22:22:50.37 ID:AZOqHoA0
86

--施設--

帽子屋「ひひひwwズタボロじゃねぇかチェシャ猫ww」

三月兎「み、みんな、いた」

白兎「アリスさんは無事ですよ。今チェシャ猫さんも治してあげます」

1号(一瞬で集まった!?まずい、せめてチェシャ猫だけでも!!)

1号は急いで振り返るもそこにチェシャ猫の姿は無かった。

チェシャ猫「ごめんよ嬢ちゃん」

どこからか響いてくる声。

1号(迷彩……か)

帽子屋「ひひひww形勢逆転だなぁwwじゃあ食らってみるか?勇者の極みを」

三月兎「勇者の極みを」

白兎「勇者の極みを」

アリス「…………」

164: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 22:27:25.51 ID:AZOqHoA0
87

--施設--

白猫亜人「がはっ!!」

ドガシャン!!

白猫実験体「ぎゅるりる」

白猫亜人は、白猫実験体の毛深い腕に掴まれ、何度も壁に打ち付けられている。

白猫亜人(……図体のわりにこのきど)

ドゴッ

白猫亜人(ぐっ!!……機動力。しかも私を遥かに上回るこ)

バキャッ

白猫亜人(がはっ!……攻撃力と防御力。でも)

バキッ

白猫亜人(ぐっ!……で、でも、スキルを使うことは出来ないっぽいにゃ!!)

ドシャっ

白猫亜人「これなら私でも殺してあげられるにゃ」

165: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 22:32:13.75 ID:AZOqHoA0
88

--施設--

白猫実験体「!?」

白猫亜人は腫れた顔で笑うと、するりと白猫実験体の手からすりぬけた。

白猫亜人「スキル、猫じゃらし抜け」

白猫亜人は着地するや否や、飛び掛かる。

白猫亜人「猫ひっかき!!」

ズバシュッ!

白猫実験体「ぎゅるりる!!」

白猫亜人(浅い、そして硬い!)

その攻撃は白猫実験体の両腕で防がれてしまう。しかもほとんど効いてはいないようだ。

166: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 22:33:00.63 ID:AZOqHoA0
89

--施設--

白猫実験体「ぎゅるりる!!」

シュバババ!

猛攻。
恐ろしい早さで繰り出される手刀、打撃、掌底。
それらが一撃でも当たろうものなら、体はバラバラになってしまうかもしれない。

白猫亜人「っっ」

それらを紙一重で交わし続ける白猫亜人。

ビシッ!!

白猫実験体「ぶっ!」

嵐を掻い潜った白猫亜人の一撃か顎に着弾、白猫実験体をわずかに仰け反らせる。

167: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/25(月) 22:33:59.43 ID:AZOqHoA0
90

--施設--

白猫実験体「ぎゅるりる!!」

白猫亜人「!!」

続けざまに攻撃を加えようとした白猫亜人を右の手刀が襲う。

ガチィ!!

白猫亜人は即座に反応し、左肘と左膝で白刃取りを試みる。が、

ブシュッ

白猫亜人(つっ!!少し間に合わなかった)

手刀の先端が白猫亜人の腹部に埋没している。
……。
先っちょだけ入ってしまった。

白猫実験体「先っちょ!先っちょだけだから!!ね!!」

白猫亜人「……」

172: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:10:03.96 ID:bc1CD9U0
91

--施設--

ギリギリ

白猫実験体「ぐぁば!!」

白猫実験体は手刀を振りぬき、地面に叩きつけようと企む。

白猫亜人「んっ!!」

白猫亜人はまるで猫の様に体をひねらせ、地面に手をつく。そして腕の力で跳躍し、顔面を蹴った。

どがっ!!

白猫亜人(……普通にヤレルと思ったけど、ダメージはほとんど与えられてない……やっぱりこれしかないにゃ)

白猫亜人は両手に魔力を集中させる。

白猫実験体「ぐりゅりぃる!!」

白猫亜人(攻撃を繰り出すだけで避けようとはしないのね。防御も反射的にとっているだけのようだし)

173: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:11:17.70 ID:bc1CD9U0
92

--施設--

白猫実験体「ぎゅるりる!!」

ボゴ

白猫亜人は頭部を攻撃するように見せ掛けておいて足を殴った。

白猫実験体「おぐ!」

白猫亜人(本当に堅い……でもフェイントにも対応出来ないのなら)

白猫亜人が何かのアクションをするたびに白猫実験体は過剰に反応する。

ボゴ
ボゴ
ボゴボゴ

幾度となく蜘蛛のような足に殴打を加える。

白猫亜人(まだ!?こんなに殴ってるのに!)

シュ!!

焦りから生まれた一瞬の隙を敵が突いてくる。

ブチャ

白猫亜人「あがっ……」

白猫亜人が気付いた時には、自分の顔の右側が無くなっていた。

174: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:11:56.06 ID:bc1CD9U0
93

--施設--

白猫亜人(か……かろうじて交わしたのに、いや擦った?擦っただけでこんな……)

白猫亜人は目眩を起こしながらもなんとか距離をとる。
そして恐る恐る右側を触ってみた。

ピチャッ

触っても痺れていて感覚がない。だが顔の骨格はある。ちゃんとついているようだ。致命打ではない。

白猫亜人(でも片目と耳は失ったみたい……)

触る迄もなく、視界の変化で気付けようものだが、気が動転していて、眼窩に触れるまで理解出来なかったのだ。

白猫実験体「ぎゅるりるる」

白猫実験体はゆっくりと近づいてくる。それに呼応して構えようとするが、ぐらりと態勢を崩してしまう。

白猫亜人(ん……思ったより深刻なダメージかもしれない。早めに決着をつけないとにゃ)

白猫実験体はゆっくりと近づいてくる。

705: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/01/09(日) 00:50:03.78 ID:JU6bj260


93,5

--施設--

白猫亜人「……」

白猫実験体「ぎゅる……り…よ」

しかし、白猫実験体は明らかに動きが鈍くなっていた。

白猫亜人(常時発動スキル。分類、蓄積攻撃。効果、移動速度低下……やっと効いてきたのかにゃ)

白猫実験体「ぎゅる、るり」

今度は白猫亜人の方から、白猫実験体に近づいた。

白猫亜人「今までお世話になりました。ご苦労様……でしたにゃ」

白猫実験体「ぎゅ……らり……」

白猫実験体はゆっくりと手をのばして、

白猫亜人「!!」

白猫亜人のお腹を、愛でるように撫でた。

白猫亜人「っ……………………………………………………………………………スキル、鋼爪っ!!」

ザシュ

175: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:12:29.64 ID:bc1CD9U0
94

--施設--

帽子屋「ひひひwwwやるじゃなイカwww」

チェシャ猫「しぶといにゃ」

三月兎「おふ、おふ」

白兎「……ここまで持ったことは誉めてさしあげます。けれどもう限界でしょう……」

1号「はっ!はっ!はっ!」

1号の体はあまりに無惨。切り裂かれて叩き潰されて血まみれになりながらも必死に耐えていた。

白兎(とはいえ、後一歩が中々届かない……。確実に勝てる、これは決まり切ったこと。なのにゴールが近づいてこない……よくもまぁあの状態でのらりくらりと致命打を避けますね……)

36号「い、1号!!もうやめてください!!自分の体が今どうなってるかわかってます!?」

1号「仕方ないだろ……やるっきゃないんだから、さっ」

ガキィン!

帽子屋のナイフを氷の剣で弾く。

176: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:13:09.09 ID:bc1CD9U0
95

--施設--

白兎「……帽子屋くん、もうやめましょう」

帽子屋「あ?何言ってんだてめぇwwやめられるわきゃねえだろww」

1号(?仲間割れ?それとも時間制限がきたのか?)

白兎「勘違いしないでください。このままやってても時間制限がある分こちらが不利なんです。だから、あれをやりますよ」

チェシャ猫「!!……えげつない奴にゃ」

帽子屋「ひ、ひひひww参謀長の命令じゃあ仕方ねぇ……やるぜ、我らがアリスの抜群の目覚めのためにwww」

三月兎「ゆ、融合魔法陣、展開」

バジューン

三月兎が地面を殴ると光り輝く陣が出現する。

177: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:14:13.72 ID:bc1CD9U0
96

--施設--

チェシャ猫「許せにゃ嬢ちゃん。せめて苦しまないようにやったげるにゃ」

陣の中に帽子屋、チェシャ猫、三月兎、白兎の四体が入る。

1号(融合魔法……禁術じゃないか。どこでそんなものを!)

アリスパーティの四体は融合し新たな姿となる。

?「ふしゅるるる」

36号「……化け物」

?「我が名はジャバウォック」

178: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:14:44.87 ID:bc1CD9U0
97

--施設--

?改めジャバウォック「ウゴォォォ!!」

黒光りしたむき出しの筋肉。魔獣のような頭部に唸り声。
まさしくそれは化け物と呼ぶにふさわしい。

ビリビリ

1号(……駄目だ話にならない。さっきのと戦闘力が違いすぎる。あの小さな勇者の体にこれほどの力があるなんて……)

36号(何かに捕まっていないと吹き飛ばされる気さえします……)

ジャバウォック「ねぇ力欲しい?ねぇねぇ」

1号&36号「うっざ!!」

179: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:15:56.58 ID:bc1CD9U0
98

--施設--

ジャバウォック「力が欲しけりゃくれてやんよ?」

1号「……。えと、くれるのか?」

ジャバウォック「やんよやんよぉ。はい受け取ってちょ」

そう言ってジャバウォックは魔力球を形成し発射した。

1号&36号「!?」

チュドオオン!!

1号がかろうじてその攻撃を交わすと、後ろの施設が吹き飛んだ。

1号「っ!……」

ジャバウォック「なんだぁ受け取れよぉん。愛のキャッチボールっうふっ」

180: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:16:45.08 ID:bc1CD9U0
99

--施設--

1号「……質問がある」

ジャバウォック「ん?なにかなレディー。おじさん何でも答えちゃうよん」

1号「お前でそれほどの力があると言うのに、なぜ勇者は先ほど遅れをとったんだ」

ジャバウォック「んん?言わなかったっけ?勇者は甘ちゃんのへたれだって。だぁからあんな海賊版なんかに追い込まれたぁのよぉ」

1号「……それだけとは思えない」

ジャバウォック「……んふ悪いけどぼくちんの役割は帽子屋と違って秘密をばらしちゃったりはしないんだなぁ。ぼくちんの役割は」



ジャバウォックが地を蹴ると一瞬で1号の目の前へ。

ジャバウォック「ストレスを発散し、敵を絶対に破壊すること」

1号「っ」

ドグシャァア!!

36号「い、1号ーー!!」

181: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:17:38.40 ID:bc1CD9U0
100

--施設--

ジャバウォック「んあ?これ……氷?」

1号(氷属性魔法、氷像分身。こいつにはかなわない、時間稼ぎも出来ない。なら)

ジャバウォック「あぁん……成る程。逃げようってのね。むっちりバデーのお姉ちゃんもいなくなってるし。でもなぁ」

ジャバウォックは胸が倍に膨らむほど空気を吸い込む。

ジャバウォック「ごばあ!!」

そして炎を吐き出した。

ジャバウォック「逃げても無駄よっ!この炎はぼくちん以外の生命反応を追尾して燃やし尽くすのさっ」

しかし炎は前進せず、それどこらかジャバウォックの方に向かってくる。

ジャバウォック「んん!?なんでかなっ!?かなっ!?ぼくちん達は安全なはずなのにあちっ!!あちあちっ!誰だこの熱い炎吐いた奴!!畜生!!」

ジャバウォックは自らの吐いた炎を振り払おうとしている。

182: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:18:19.90 ID:bc1CD9U0
101

--施設--

ジャバウォック「まてまてまだ慌てる時間アッチィ!!どゆことだどゆこと!?対象を書き替えたの?いやそんな高度なことをこの短時間の間には出来アッチィない」

ジャバウォックが振り替えるとアリスの周りにまで火が近づいていた。

ジャバウォック「アリスちゃんは炎シールドでなんとかなるから大丈夫だけど……まさか」

ブゥン

1号がアリスの上空から接近する。

1号(ステルス化と飛行能力付加!!一つに集合したのがあだとなったな!!)

1号は炎の膜に手を突っ込んだ。

ジュッ

1号「ぐっっ!!っっでも!!」

ジャバウォック「なっ!何をするだァ――ッ」

1号「回復させる!!」

183: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:18:56.25 ID:bc1CD9U0
102

--施設--

1号が行った回復魔法によりアリスの体は一瞬で回復する。

ジャバウォック「……やられたずぇい!!」

1号「よし、これで……」

1号は焼け焦げた腕を引き抜く。

ジャバウォック(戦力を集中させたのが裏目に出たか……まさか最初から狙って……はないね)

ジャバウォックは二人に向けて拍手を送る。

ジャバウォック「ブラボー! おお… ブラボー!!そのままアリスを倒すことも出来ただろうに……。感動した!」

1号「はいはいどーも……ててて」

1号は自分の体に回復魔法をかけている。

1号「というかいつまでいるのだ?まさか治りきったら戻るというのは嘘だったのか?そんならもう詰みなんだが」

184: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:19:33.99 ID:bc1CD9U0
103

--施設--

ジャバウォック「うにゃ、もう戻るさ。では、」

そういってジャバウォックは紳士のように頭を下げる。

ジャバウォック「アリスへの配慮、誠に痛み入る。願わくば二人の未来に幸があらんことを」

1号「気にするな。元々こちらの不手際だ」

スクッ

アリスがゆっくりと立ち上がり、そして手を伸ばす。

アリス「おいで、ジャバウォック」

バシュ

ジャバウォックの体はアリスの体の中に入っていく。

1号「……」

36号「……」

ジッジジジ

全ての要素を取り入れたアリスは変貌していく。

185: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:20:24.39 ID:bc1CD9U0
104

--施設--

シュウウ

勇者「……ん?ここは……」

1号「……」

36号「……」

勇者「……」

1号「……」

36号「……」

勇者「……な、なんかあったの?」

勇者は無自覚だった。

186: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:21:28.46 ID:bc1CD9U0
105

--施設--

1号「……ふっ」

36号「はぁ……あれだけ暴れといてよくもまぁ~……もう怒る気力も無いです~」

36号は天を仰ぐ。

36号(……本当はわかってた。勇者だって同じように利用された実験体なんだ。……でも黒い感情が抑え込めきれなくて……私は何てバカなことをしたんだ。……勇者はもっと辛い思いで戦ってきたのかもしれないのに)

勇者「ん?んん?」

1号(いつの間にか36号からあの感覚が消えている……制御出来るようになったのか?……それとも、ストレスを発散出来たとかの可能性も……てことは全て勇者の手のひらの中?……いや考えすぎだな)

そうして1号は自分の体に回復魔法をかけるのをやめた。

36号「?まだ傷が残って、って!私なんか回復させる必要ありませんよ!!もうだいぶ治ってきてるんですから!」

1号は36号に回復魔法をかけ始める。

勇者(……これあいつらやったのかな……。緊急時だったから構成ミスったのかな?……やばあ)

1号「……うん、もう私の体は限界みたい……だからさ」

36号「!?」

187: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:22:10.59 ID:bc1CD9U0
106

--施設--

勇者「あわ、あわわわわわ!?」

勇者はガクガクと震えている。

1号「いや、断じて言うが君のせいじゃないよ。体をいじくられたせいで、どのみち長くはなかったんだ」

36号「1……号」

1号「よかったよ。36号が無事に生き延びられただけでも。この日だけを待っていた」

1号は36号の頭を撫でる。

1号「勇者、この子を頼みたい」

36号「!!」

勇者「……」

188: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:23:12.07 ID:bc1CD9U0
107

--施設--

1号「強がりばっか言うし、何事にも感情が先行しちゃうめんどくさい子だけどさ……私の娘みたいなもんだから」

36号「い、ち……ごう」

1号「それにこの子も実験体だ。そう寿命が残ってはいないだろう……旅の途中で勇者の足手まといになるかもしれない。でも!勝手だとわかっていても……」

勇者は1号に向かって直立不動の姿勢を取る。

勇者「私は勇者だ。私の旅の同行は、はっきり言って最大級の危険を伴う。彼女は旅の最中に何度も危険な目に会い、もしかしたら四肢を失うかもしれない」

1号「……」

36号「……」

勇者「だが誓おう。彼女を私に預けてくれるのなら、決して死なせはしない。私が守ってみせる!勇者の名にかけて!!」

36号「な、な、」

1号「……すまない。お願いするよ」

1号は勇者に向かって微笑む。

勇者「貴女の願い、聞き入れた」

勇者は1号に向かって微笑む。

フォン、グシャ

189: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:23:54.38 ID:bc1CD9U0
108

--施設--

36号「……………」

勇者「!!!!」

1号は

研究員「……やれやれー。一体全体どんな結末になるのかと思いきや……興ざめですー」

急降下してきた

????「あうー」

羽と尻尾の生えた胎児に踏み潰された。

36号「あ、う……あ」

36号はとっさに飛び散った脳をかき集めている。

研究員「それにやったらやりっ放しというのも人間としてまずいですしー、ちゃんと責任取って後片付けに来ましたー。先ほどお別れを済ましたというのに申し訳ないです勇者ちゃんー」

36号「いち、ご……」

190: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:24:35.96 ID:bc1CD9U0
109

--施設--

研究員「ん?えっと……型番は忘れてしまいましたがなんとか号君ー。貴女を潰すつもりで落ちて来たんですけども……しくじっちゃいましたね。じゃあこっちできちゃないジャムになってるのは元妻かー」

36号「……ひっ」

36号は地面に頭をつけて涙を流す。

研究員「最後くらい話をしとこうと思ったけど、まぁいいかー。実験材料にすると決めた時に、この人との縁は切ったのだしー」

????「あうー?」

研究員「あぁいいですよそれもう潰しちゃってもー。もうこのシリーズでやれることはもうありませんからー」

胎児は36号の頭を掴み持ち上げた。

研究員「脳を掻き集めればまだ蘇生は可能だと考えたんですかー?無駄ですよ。もうこの人の寿命では蘇生出来ないレベルでしたからー」

36号「うっ、……うああ」

191: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:25:34.01 ID:bc1CD9U0
110

--施設--

研究員「にしても甘ちゃんな勇者ちゃんなら少しは邪魔してくると考えていたのですがおかしいですねー?それとも実験体の命には興味が無いですかー?この研究所内でも殺して回ってましたしねー。勇者ちゃんの邪魔がないのならやりやすくて嬉しいのですー手間が省けますー」

????「うー」

研究員「あぁごめんよー。もういいよ、ばきゃしなさいばきゃー」

ボッ

????「!」

胎児は咄嗟に36号から手を離した。

ブオン!!

そして空を勇者の大剣が切り裂く。

????「あ、あう」

勇者は36号と研究員達の間に立つ。
その顔はまるで鬼のようで。

勇者「研究員……お前は許さないッッ!!!!」

192: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:26:30.10 ID:bc1CD9U0
111

--施設--

研究員「……なんだ、やっぱり邪魔しにくるんじゃないですかー。時間差はやめてくださいよー」

研究員はおどけた感じに頬を膨らます。

研究員(この子が手を引いた……?圧倒的な強度を持っているこの子が身の危険を感じたということー?)

勇者「……こんなこと、こんな残酷なこと!王国の総意であるはずがない……これは全てお前の独断だったんだな!?」

研究員「違うですよー……と言っても聞く耳持たないですよねー。なんでそんなに怒っているのか理解に苦しみますよー。なんでその子を庇うのですかー」

勇者「私は頼まれたんだ……お前らが踏みつぶしたあの人から、彼女を守るように!!」

ガァン!!!!

????「あ、あだ」

勇者の斬撃から研究員を庇う胎児。
おっかなびっくりで自分の尻尾を見るも傷一つついていない。それを確認した胎児はほっと安堵の息をつく。

勇者「……その赤ん坊、そういや硬かったんだっけ。なら……全属性複合攻撃魔法、六色剣っっ!!」

ギイイイイイイイイン!!!!

勇者の大剣が六色の光に包まれる。

193: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:27:06.85 ID:bc1CD9U0
112

--施設--

研究員(死の光というやつですかー。……さすがのこの子でも今はまずいかもですねー)

ドギャッ!!

勇者の高速の斬撃を食らい、研究員の視界から胎児は消えた。

????「ぶえ?!」

ドゴオン!!

弾き飛んだ胎児を追い、勇者は駆けて行く。

勇者「ああああああああああああああ!!!!」

????「あー!!」

フォン!!

胎児が迎撃のために放った尻尾の攻撃を、勇者はなんなく交わして見せる。

ドジュドジュ!!

そして二撃、胎児を切りつけた。

194: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:27:58.37 ID:bc1CD9U0
113

--施設--

ドロッ

????「あ?……う、うぶっ!!あーん、あーん!!」

自分の身体が傷つけらたことを知って胎児は泣きだした。

勇者(今のは完全に殺すつもりで斬ったのに、切傷があまりに浅い……)


36号「……」

その戦いを36号は抜け殻のように眺めていた。

研究員(やれやれー。というか今地味に絶対絶命じゃないですか私ー。私戦闘能力皆無なんですから、この実験体の心が折れて無かったら私死んでるじゃないですかー)

195: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:28:54.08 ID:bc1CD9U0
114

--施設--

ガギン!ギン!ブシュッ!!

勇者(危険だ、この子はまずい。絶対にこの場で仕留めなくては……今を逃せば手が出せなくなるかもしれない!!)

????「あーん!あーん!!」

胎児の攻撃を悉く掻い潜り、弾き返し、返しの刃で傷を付けていく。

ドシュドシュドシュっ!!!!

研究員(ひゅー。恐ろしい剣捌きに体捌きですー。あのでたらめなスペックのうちの子相手にああまで押すとはー。まぁ人間相手ではそうはいかないんでしょうがねー)

斬撃を幾重にも重ね、一点のみを斬り続ける。

ドパッ

????「ぶっ!?」

そして遂に胎児の右腕は斬り落とされた。

196: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:29:27.94 ID:bc1CD9U0
115

--施設--

研究員(まずいですねー、やはりさすがに次期が早すぎたということでしょうかー。撤退ですね)

研究員は服の中から赤色の玉を取りだした。

研究員「今回はこの辺で終わりにしておきましょー勇者ちゃん。私の負けでいいですからー」

ボウン!

研究員が赤色の玉を地面に投げつけると赤い煙が辺りを包み始める。

勇者「!!」

????「あうあー!!」

胎児は煙幕に乗じて研究員のところにまで行くと、急いで抱えて空に飛んで行った。

バサッ

勇者「!!逃げるな!!」

研究員「またどこかでお会いすることがないよう願ってますよー勇者ちゃーん」

研究員はひらひらと手を振っている。

勇者(くそっ!!……今の現状を越える力がいる……。あの赤ん坊や魔王を倒すための……奥義が)

無力さを感じ、大剣を強く握る勇者。
そして36号はじっと勇者を見ていた。

197: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:30:10.67 ID:bc1CD9U0
116

--雪の町、町はずれ--

三日後。

勇者「さて……と」

パンパン

勇者は手についた土を落とすために手を叩く。
勇者は今回の件で死んだ者全ての墓を作ったのだ。

勇者(偽善だってわかってる。今後同じようなことがあっても、また弔う時間があるとは限らないんだ……)

それでもやれる時は、と呟いて手を合わした。

白猫亜人「ありがとうございましたにゃ。もう犠牲者が出ることもない……それに旦那も死んでゆけましたにゃ」

勇者「うん。いや、私は何も出来なかったよ……腑甲斐ない」(行くなと言ったのにこの人研究所に忍び込んだな。右のガーゼ……)

白猫亜人「何をおっしゃいますやら!勇者様のお力が無かったら、きっと何も変わりはしなかったにゃ」

勇者「……どうだろう」

198: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:31:03.02 ID:bc1CD9U0
117

--雪の町、町はずれ--

白猫亜人「……あの勇者様?失礼なのは重々承知でお願いがありますにゃ」

勇者「だめ」

白猫亜人「私を魔王討伐の旅に連れていってくだ……にゃっ!?」

勇者「だめ」

白猫亜人「ななな、なんでですにゃ!私こう見えて優秀なんですよ!?きっとお役に立てると思いますにゃ!!」

白猫亜人は勇者に抱きつき舐め始めた。

ペ ペ ペ ペ 

勇者「あ、ひゃっ!?や、やめっ!くすぐ、わっ!!」

白猫亜人「勇にゃんペ ペ (^ω^)」

勇者「もうペ ペ はしないって約束したじゃないですかー!」

一時間後の、話の本筋に戻るまでペ ペ は続く。

199: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:32:54.65 ID:bc1CD9U0
118

--雪の町、町はずれ--

勇者「はぁんっ……はっはっ」

白猫亜人「さすがに、はっはっ。舐めすぎましたにゃ」

既に満身創痍の二人だった。

勇者「はっ、はっ、と、とにかく……理由は貴女の体が、一番よくわかってるでしょ?」

白猫亜人「……うく」

白猫亜人は俯く。

勇者「その子にいっぱい愛情を注いであげること。それが貴女が一番やらなくちゃいけないことでしょう?」

白猫亜人「……ぐす。はいにゃ」

勇者「それに私には既に仲間がいる。だからその申し出は却下させてもらう。……これからは今までの分も幸せに」

白猫亜人「……っはい!……ありがとうございましたにゃ。勇者様!!」

200: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:34:11.16 ID:bc1CD9U0
119

--雪の町、町はずれ--

勇者「さて、次は東の王国に……いやそろそろ戻って見ようかな」

勇者は一人、町の門を潜る。36号はあれから……姿を消した。

勇者(あんなことがあった後だ。やっぱりすぐには決断がつかないだろう。だが私も忙しい。彼女が決断できるまで待つわけにはいかない)

勇者は門を振り返る。

勇者(ごめん。約束護れなくて。でも本当にあの子のためを思うなら、私の旅に連れていくのは得策じゃない……)

勇者は一礼すると、草原へと続く道を歩きだす。



??「やー、ひどいですね~連れてってくれるって行ったのに置いてっちゃうつもりだったんですか~?」

突然声がかけられる。
勇者が視線をあげると、岩の上に彼女が立っていた。

勇者「な、なにその寒そうな服!?」

??「あぁこれですか~?いいでしょ~自分で縫ったんですよ~。服屋さん回っていらない布とかもらって。いつまでもあんな服じゃいられないですし~」

彼女は肌を露出させた服を身に纏っている。

そう、所謂、

露出魔があらわれた!

201: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:35:42.34 ID:bc1CD9U0
120

--雪の町、町はずれ--


??「……私が行かないとでも思ったんですか~?」


  どんな生にも意味はある。


勇者「……思わない」


  そして人の生の意味は、誰のために死ねたかなんだ。と、あの日私は結論付けた。


??「ふふ。またイライラしてきたらこの前みたいに攻撃しちゃうかもですよ~?ナウなヤングは危ないのです~」


  あの人は私のために死んだ。


勇者「それならまた返り打ちにするだけだ」


  なら私はこの人のために死のう。


??「……ふふ」


  それが私の仕返しと恩返し。

だって人は死を重ねて未来に進んで行くんだから!

202: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/10/28(木) 12:37:42.78 ID:bc1CD9U0
121

--草原--

勇者「とゆーわけでだ。私は君と出会ったのは南の王国で、ということにする」

??「えー?なんでですか~?」

勇者「……今説明したのに。だーかーらー!今回の事件のことが私の仲間の耳に入ったら、変な詮索を受けることになるかもしれないでしょ?」

今回の一件は、
事情を知らない人からしたら北の研究所が襲撃されただけのことだし、彼女の身分を証明するものがないのも事実。

??「別に構わないんですけど~……まぁいいや了解です~」

勇者「うん。それじゃ……あれ?そういや名前なに?」

??「えー!!まだ私の名前言ってなかったでしたっけ~」

勇者「言ってない絶対」

??「じゃあちゃんと覚えてくださいね勇者様~。私の名前は」

草原でくるりと舞う彼女は言った。



町はずれに作った墓。
その中の一つに、オンシジウムの花が添えられている。

そしてその墓には粗末な板がささっており、幼さの残る字が書いてあった。

名も無き母の墓。



            勇者募集してたから王様に会いに行った
               番外編ss・isの踊子
                    完


216: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 21:23:50.49 ID:mB1c2LI0
154

--船--

??「というわけじゃ。めでたしめでたし……ってあら。つい黄色の本まで読んじゃったわおほほほ」

ポニテ「くー、すー」

??「寝とる!?」

ポニテは腹を出して寝ていたのでした。

ジジジ

そこにスキルを解除したアッシュが姿を現した。

アッシュ「……こいつが何か迷惑を?」

??「おやおや、お連れさんかえ?」

アッシュ「……えぇ……仲間です」

??「そうかいそうかい。何も迷惑なんてかかっちゃいないよ。孫が、いいやひ孫がいたらこんな可愛いのかしら、なんて思えてねぇ」

アッシュ「……こいつが肉親なんて、俺からしたら考えられません」

アッシュはポニテを担ぎあげる。

アッシュ「こんなことされても起きないほど、不用心だし」

??「ふぇっふぇっ。信用の証なんじゃないのかね」

アッシュ「……」

アッシュはぺこりと頭を下げるとそこから立ち去った。

218: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 21:29:51.25 ID:mB1c2LI0
155

--船--

ポニテ「ねねね!!釣りしたい釣り死体!!」

アッシュ「起きたそうそう元気だな!!……勝手にすればいいだろ?」

ポニテ「道具無い!餌ない!!」

アッシュ「勝手に工夫してやんなさい……」

ポニテ「えー!?じゃぁ、じゃぁ私の剣とー……あ!!」

ポニテはいきなり駆けだしレンに飛びついた。

レン「ふにゃっ!?」

ポニテ「餌みぃーーけっ!!よぉし、レンちゃんを糸で潜りつけて、っと」

レン「にゃーにゃー!!にゃああああああああ!!」

ツインテ「ちょっ!!だめっ!やめて下さい!レンさんが可哀想ですよぉ!!」

219: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 21:32:40.75 ID:mB1c2LI0
156

--船--

?男「お譲ちゃん達ずっと元気だねぇい。はっはっは」

ツインテ「あ、すいません騒がしくしてしまって!!気分を害されましたか?」

髭の生えたワイシャツ姿の男は陽気に笑う。

?男「いやいや気にしなくていいよぉ。若い女の子が戯れてるのを見るだけでおじさん歓喜だから。むしろお金を払わなくちゃいけないよ」

ツインテ「え、え、え?」

?少女「こほん。ご主人さま……」

傍で控えていたメイド服の女の子が咳をする。

ポニテ「おっ!なになに?なにかおもしろいものでもみっけたの??」

220: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 21:38:22.02 ID:mB1c2LI0
157

--船--

?男「お譲ちゃん達、この船に乗ってるってことは武術大会に出るつもりなんだろぃ?」

ポニテ「ほえ?武術大会??なにそれ!おもしろそう!!」

ツインテ(確か……聞いたことがあります。ぶっちゃけちゃえば天下一武道会)

アッシュ(何?……そう言えばそんな時期か。めんどくさいな)

レン「にあー」

レンはメイド服の女の子の傍へ近寄ると匂いを嗅ぎ始めた。

?少女「っ!」

アッシュ「俺達はそれには出ない」

221: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 21:41:27.62 ID:mB1c2LI0
158

--船--

レン「……懐かしい匂いする」

レンは抱きついて首の匂いを嗅いでいる。

?少女「や、やめてくださいっ」

ツインテ「こ、こらレンさん!いけませんよ!?」

ツインテが近寄ってレンを引き離す。

レン「……すん」

?男「……ふぅん、でねぇんだ。もったいねぇ。今年の優勝賞金はすごいって話だぜぃ?」

ポニテ「それ強い人いっぱいくる!?ねぇねぇ!!私わくわくしてきたぞ!!」

ツインテ「ポニテさん!アッシュ君は出ないって言ってますよ!」

222: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 21:46:12.16 ID:mB1c2LI0
159

--船--

?男「まぁ出たくないのに無理やりでてもな。なぁお譲ちゃん、船の上じゃ暇だろ?せっかくなんだし俺とちょいと勝負しねぇか?」

男はツインテを指さした。

ツインテ「え?ぼ、ボクですか??」

ポニテ「えー!!私したい私死体ーー!!」

?男「わりぃな元気なお譲ちゃん。まずはそこの大人しいお譲ちゃんからだ」

ツインテ「えっと……痛くしないでくださいね?」

?男「……誤解されちまうじゃねぇか」

223: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 21:52:07.94 ID:mB1c2LI0
160

--船--

アッシュ「ツインテ」

男に近づくツインテにアッシュが声をかける。

ツインテ「あ、はい。なんですか?」

アッシュ「……気をつけろ」

ツインテ「?は、はぁ」

ツインテは頷いてから男の前に座る。

?男「いいか、ルールは簡単。このダイス転がして、ってダイスわかるか?サイコロだサイコロ。これを振って出た目が奇数なら俺の勝ち、偶数ならお譲ちゃんの勝ちだ。いいか?」

ツインテ「え、ええと、わかりまs」

アッシュ「まて」

224: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 21:56:16.30 ID:mB1c2LI0
161

--船--

?男「どうしたんだ兄ちゃん?」

アッシュ「振る前にダイスを確認させてくれ」

?男「ヒュー。ひひひwほらよ」

アッシュは男からダイスを奪うと確認する。

アッシュ「……6面ダイスだが、6が無くて代わりに1が二つあるぞ」

?男「がはははwばれちゃったww」

ツインテ「ず、ずるいです!!自分の方が有利じゃないですか!!」

?男「わりぃわりぃ。じゃあ逆にしよう。俺は偶数が出たら勝ち。奇数が出たらお譲ちゃんの勝ちだ。お譲ちゃんが勝ったら1万円やろう」

ツインテ「え、それってかなりボクが有利じゃ……」

ポニテ「もーー!!なんでもいいから勝負やってよーーー!!」

225: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:00:11.85 ID:mB1c2LI0
162

--船--

アッシュ「!!ばっ、まだ相手が」

?男「ふっ。成立だ。俺が勝ったら」

男はダイスを投げた。

カツン

?男「お譲ちゃんは俺に惚れる!!」

ツインテ「!?」

アッシュ「!!!!」

コロコロコロコロ

ツインテ「な、なに言って。そんなの勝負じゃないです。だって、ぼ、ボクが人を好きになるのかどうかなんてボクが決めることで」

コロリ

ダイスが示した数字は4。

226: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:03:31.55 ID:mB1c2LI0
163

--船--

アッシュ(馬鹿野郎!!相手の条件をちゃんと聞かずにやるから!!)

?男「にっ、俺の勝ちだ」

ツインテ「で、でもボクそんな、うっ」

ポニテ「ツインテちゃん?どうしたの?」

レン「……ツインテ?」

ツインテ「………」

アッシュ(聞いたことがある。限定的な条件下で魔法、スキルの効果をはね上げさせる方法があると……これは)

ツインテ「あはんっ!!惚れたっ!!」

アッシュ「チャーム!!!!」

227: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:08:18.27 ID:mB1c2LI0
164

--船--

ツインテ「あーん、なんてカッコイイんですかーっハートハート。ボクどうにかなっちゃいそう……」

?男「はっはっはっ、可愛いぜぇお譲ちゃんw」

ツインテはくねくねしている。

ポニテ「そ、そんな!ツインテちゃん、こんなおじさんが好みだったのかっ!!」

レン「ツインテー、ツインテー」

レンはツインテの服を引っ張るのだが反応は無い。

?男「よぉーし、じゃあ下の客室行こうかー、はっはっはっw」

アッシュ「まて!!」

228: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:11:22.12 ID:mB1c2LI0
165

--船--

?男「ん?どうした兄ちゃんよ」

アッシュ「……お前、賭博師だな」

?男改め賭博師「おうよ、いかにも。紹介が遅れたな、俺はさすらいの賭博師だ。そんでこいつが俺の相棒の調 師」

?少女改め調 師「ぺこり」

アッシュ(はめられた!!……運を底上げする賭博師のスキル、この勝負元から勝ち目は無かった!!)

賭博師「……兄ちゃん達、結構素材は良さそうなのにまだ経験が足りないな。怪しいことしてたのに気づいたなら、最後まで疑い通さなきゃ」

アッシュ「っ!!」

ツインテ「ねー、賭博師様ー。早く行きましょう。ボク……はーとはーとはーと」

229: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:18:43.25 ID:mB1c2LI0
166

--船--

アッシュ「な、つ、ツインテ!!?」

ツインテの赤らめた顔を見てアッシュは膝から崩れ落ちる。

賭博師「あーりゃりゃ。おもしろくなってきたわwほれどうすんだ兄ちゃん。奪い返さないのか?」

アッシュ「!!……やるに決まってんだろ」

アッシュは腰からナイフを取り出した。

調 師「!?」

賭博師「おいおい、血の気が多くていけねぇ。普通ここはギャンブル勝負って展開になるはずだろう?」

アッシュ「こっちの方が手っ取り早い」

ユラリ

ポニテ「おもしろそうだけど、だめー!!」

ポニテがアッシュを捕まえて羽交い絞めにする。

230: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:24:01.66 ID:mB1c2LI0
167

--船--

アッシュ「なっ!?こ、コラ貴様!!離せ!!」

ポニテ「今暴れると駄目だよー!!アッシュ君が本気でやったら、この人達殺しちゃうし船も沈んじゃうもん!!」

賭博師「……おいおい物騒だな」

レン「……ツインテ返して」

レンはくいくいと賭博師の服を引っ張る。

ツインテ「っ、賭博師様に触れないでください!」

バシッ

レン「!!」

ツインテはレンの頬を叩いた。

231: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:28:14.67 ID:mB1c2LI0
168

--船--

レン「に、にゃあぁ。ツイン……テ?」

賭博師の前にツインテが立ち塞がった。

ツインテ「賭博師様に害をなすというのなら、ボクが相手になります!!」

賭博師「ひゅー」

アッシュ「そん……な」

かくっ

アッシュは燃え尽きたボクサーのように色を無くす。

ポニテ「……」

レン「う、ツインテ……うぅ」

レンは大粒の涙を眼に浮かべる。

ポニテ「ねー、おじさん?」

賭博師「ん?」

ポニテ「ツインテちゃん、返して?」

232: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:31:06.37 ID:mB1c2LI0
169

--船--

賭博師「貰ったものは返せないーw」

ツインテ「さいっこ……まじしびれる。はーとはーと様はーと」

ごごご

ポニテ「ツインテちゃんは私達の大事な仲間なの。これからもずっと一緒に旅したいんだー。だからお願い。わがまま言わないでさー」

ごごごご

賭博師(……こ、こえー。笑ってるのにめっちゃこえー)

調 師「ご主人さま……」

ポニテ「そっちは最初ずるしようとしたんだし、あの勝負だって後から条件言ってずるい。少しぐらいは私達の言い分聞いてくれてもいいでしょ?」

ちりっ

賭博師(が、ガソリンぶっかけられてマッチ棒つきつけられてるみたいな恐怖感だぜ……)

233: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:36:27.76 ID:mB1c2LI0
170

--船--

?軽い女性「やれやれ、そこらへんでやめてくんないかなー。うちらまでひやひやするよー」

この一件をずっと見ていた三人の大人が口を出す。

?眼鏡女性「それに大人が子供を手玉に取っているのは、はたから見ていておもしろいものじゃないです」

?大男「なぁ、アンタ。大人げないことしてないでスキル解いてやりなよ。それとも奴隷商人とかじゃあないんだろ?……」

賭博師(おいおい、変なのまでひっかかっちゃったよ。ぱっとみどれも強いなぁ……名をあげてる人間はいなさそうなのにまぁ。世界は広いってことなのかね)

賭博師は冷静に三人を観察した後、ポニテに向き合った。

賭博師「ふぅ……でもお譲ちゃん。全部が全部お譲ちゃんの言うとおりだとしてもだ。成立した内容を問答無用でひっくり返せというのは少々強引なんじゃねぇか?仮にも俺らは勝負をしたんだぜ」

ポニテ「うっ」

234: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:42:05.66 ID:mB1c2LI0
171

--船--

賭博師「俺は真剣勝負のつもりでやったんだ。負けても文句はないけど、それじゃあ道理がさぁ」

アッシュ「ふざけるな!お前のやったことは詐欺同然だ!!」

ヒュー、と口笛を吹く。
威勢がいいねぇと賭博師。

賭博師「ならどうだお譲ちゃん。ギャンブルの不満はギャンブルで。不服があるんなら再戦を挑めばいいだけなんじゃねぇか?」

ポニテ「!受けてくれるの?」

賭博師「おうよもちろんww」

?眼鏡女性「……また騙そうとしているのが見え見えです。なんならここで」

眼鏡女性は壁に立てかけていたハルバートに手を伸ばす。

?軽い女性「やめな。ここで騒ぎを起こしてどうするんだよ。それにあの子らだって馬鹿じゃないでしょう」

235: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:45:45.21 ID:mB1c2LI0
172

--船--

ポニテ「じゃあ、私が勝ったらツインテちゃんを解放してね」

賭博師「オッケー!じゃあ俺が勝ったら元気のいいお譲ちゃんと猫のお譲ちゃんを貰う」

レン「にゃっ!」

ポニテ「えー!なんでなんでー!こっちは二人も出さなきゃいけないのさー!!」

アッシュ(一応帽子で猫耳は隠してあるんだが……まぁ色々ばればれか)

賭博師「なんでって、ツインテちゃんがそれだけ可愛いから」

ポニテ「ぶっちゃけたー!?」

ツインテ「きゃるるーん」

236: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:48:23.76 ID:mB1c2LI0
173

--船--

ポニテ「うぅぅう!!じゃぁ勝負方法は決めさせてもらうよ!!」

アッシュ「反論しないのかよ!」

ポニテ「自慢じゃないけど無理だよ!!あの白くて滑らかな肌!!透明感があって艶艶で……もう同じ生物とは思えないほどなんだよ!!もう陶器だよ!!人間陶器!!すべすべで綺麗で一度良い匂いがしてたまらない!!肌を撫でたり舐めまわしたりした日にはもう夜も寝れないくらいなんだよっ!!」

アッシュ「毎晩そんなことしてのか!!そら寝苦しいとか言うわけだよツインテ!!」

賭博師「……ちら」

賭博師はそっとツインテの頬に触れる。

ツインテ「はぅぅ。賭博師様ぁ」

ツインテは頬を赤らめて目を潤ませて見つめている。

賭博師「ごくり」

?軽い女性「なんだか私の好きな匂いがする。ベーコンでレタス的な」

237: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:49:10.36 ID:mB1c2LI0
174

--船--

ポニテ「じゃあ勝負は各々が持ってるサイコロを振って、出た目が大きい方の勝ちね!!」

賭博師「おっけー……って、各自が持ってるサイコロ?お譲ちゃん達も持ってるのか?」

ポニテ「うん!もちろんサイコロは六面で最高の数字は6だよ!ルールはそれでいい?」

賭博師「よおしわかった。じゃあどっちから振る?」

ポニテ「おじさんからお願い!!あ、レンちゃんちょっと」

レン「なに……?」

ポニテはレンの耳をつまみ上げ内緒話。

238: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:50:08.24 ID:mB1c2LI0
175

--船--

賭博師「よぉおし、ダイスロール!!」

賭博師は宣言して賽を振った。

カンカラララ

アッシュ(そうか、なるほど。あいつのサイコロは6が無い、どころか最低の数である1が二つもある。こっちがまともなダイスを使えば、必然的に勝率が高くなる……だが)

賭博師「……そうだお譲ちゃん。一つ言い忘れてたけどさ」

ポニテ「なに?」

賭博師は左の掌の中身を見せた。

賭博師「……俺がほかにダイスを持ってないとは言わなかったよ?」

掌のダイスには1が二面。まごうことなく先ほどのいかさまダイスだった。

239: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:50:52.99 ID:mB1c2LI0
176

--船--

出た目は6。

賭博師「……おまけに運もついてるんだなぁこれが」

ポニテ「!!」

アッシュ(まずい!!最高数字の6……最低でも6を出さないとこちらの負けだぞ……どうするつもりだポニテ!!)

賭博師「さぁ、お譲ちゃんの番だ。ダイスを振りなよ」

ポニテ「……ちょっと待って。まだダイスの準備が出てきてないの」

賭博師「?この期に及んで何を言ってるんだい?各々が持っているサイコロって言ってたじゃないか?」

ポニテ「うん、だからちょっと待ってよ」

レンがポニテの後ろで赤い石を取りだした。

レン「……錬金ツール、起動」

240: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:51:26.74 ID:mB1c2LI0
177

--船--

バシュッ!

アッシュ「!!」

一瞬でレンの周りを道具が埋め尽くす。しかもふよふよとそれらは浮いている。

レン「素材は……この貝でもいいか。錬成開始」

バチィっ

?軽い女性「……へぇ」

?大男「はは、こりゃとんだ余興を見れることになったな」

賭博師(錬金工場を必要とせず錬成を行えるっての?いやこれが持ち運び可能な錬成工場ってことなのか?)

レン「錬成終了……ポニテ」

レンはぽいとそれを投げてよこす。

ポニテ「ありがとー!!レンちゃん!!いざ勝負だ!!」

ポニテは賽を振るう。

241: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:52:09.48 ID:mB1c2LI0
178

--船--

からからから

アッシュ「……」

調 師「……ごく」

カラン

ダイスの目は


ハゲ男「うおおおおおおおお!!6をひいたぜえええええ!!」

レン「びくっ!!」

いつの間にか周りはギャラリーでいっぱいになっていた。

ワーキャー

ポニテ「引き分け!!」

242: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:52:51.65 ID:mB1c2LI0
179

--船--

賭博師「ふっ……ははははっw何が引き分けだっつーの。これ全部『6』じゃねぇかw」

ポニテ「うんそうだよwだってルールは『サイコロは六面で最高の数字は6』だもんね!全部6でもルール破ってないよね!」

アッシュ「……アホだ」

賭博師はサイコロを色々な角度から眺めている。

賭博師「うーん……参った!次の勝負をする必要も無く俺の負けだ!抜けてるかと思いきや中々やんじゃんお譲ちゃんw」

ポニテ「えへへwって!早くツインテちゃん返して!!そういう約束でしょ!!」

賭博師「へーへー。つうか、もうそろそろ解けるころじゃないか?」

ツインテ「L・O・V・E・らぶ……あれ?ここは……」

アッシュ「!?スキル解除もしてないのに……」

賭博師「……へ、どうよ。西の王国まで退屈せずに済んだぜ?」

プオー!

ラッパの音が鳴り響く。港の近い証拠だった。

243: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:53:42.50 ID:mB1c2LI0
180

--船--

ハゲ男「なんだ。お遊びの勝負だったのかよつまらねぇ」

ギャラリーは港に近づいたということもありその場からいなくなっていく。

ポニテ「なんだー!元からこういうつもりだったの?!」

賭博師「ギャンブルを楽しむのに一番必要なのは緊張感だからなw」

ツインテ「な、なんかよくわからないけどひどいことをしていたような……」

レン「……」

レンは無言でツインテに抱きついた。

アッシュ(……腑に落ちない。『サイコロは六面で最高の数字は6』……仮にも賭博師であるこいつがそんな穴だらけのルールを見逃すだろうか)

ポニテ「あ、ちなみになんだけど、調 師さんて、やっぱりモンスターとかを調 してるんだよね?」

調 師「はい。夜は賭博師さんに調 されていますけど」

賭博師「うぉおおい!!」

244: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:54:25.65 ID:mB1c2LI0
181

--船--

調 師「でもよかったのですか?ご主人様。数字が全部6のサイコロはご主人様だって……」

調 師は小さな声で賭博師に話しかける。

賭博師「あーあー、いいんだよ」

賭博師はそれを手で払う。

賭博師「やっぱしお譲ちゃん達大会に出ないか?結構いい所まで行けると思うぜ?」

ポニテ「私は出るつもりだよー!!」

アッシュ「出ない!!というか西の王国内に入るつもりはない、ここで船を乗り換えるだけだ!」

ツインテ「ほっ」

ポニテ「えー!?やだー!!出る出る絶対出るー!!ね!?ツインテちゃんも出たいよね!?」

ツインテ「絶対に出たくないですはーと」

245: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:55:00.09 ID:mB1c2LI0
182

--船--

ずずん

ふとっちょ船員「ん?なんか今の揺れおかしくないか?」

ひげ船員「んん……もしかして……海のモンスターか?」

船員たちが海面を見ようと顔を乗りだすとそこには



ポニテ「うわーんやだー!!出るったら出るのー!!一人でも出るんだからー!!」

賭博師「あー、個人戦は確か今日が決勝だ。もう出られないぞ……」

ツインテ「ぽ、ポニテさん、ここは抑えて」

ワーキャー!!

その時船首の方から悲鳴が聞こえた。

ふとっちょ船員「い、イカだ!!侵略に、ひっ!!イカが侵略にきたぞおおおおおおおおい!!」

246: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:55:26.05 ID:mB1c2LI0
183

--船--

巨大イカ「げっそげそげそげそげそげきげそげそ」

でかい。
巨大イカが水面から体を出すと、ツインテ達の場所に影が出来るほどに。

ツインテ「っきゃー!!」

アッシュ「で、でかい!!あの時のゴーレム程とはいかないが」

ポニテ「うわーイカだー!!おいしそー!!」

?軽い女性「やれやれ、楽観的でいいわね」

軽い女性は弓を取りだした。

?軽い女性「海上でモンスターと出くわしたら倒さなきゃ。じゃないと私達は海の藻屑よ」

ポニテ「もずく!!」

247: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:55:52.91 ID:mB1c2LI0
184

--船--

巨大イカ「いかー!!」

巨大イカは巨大な手を振り下ろした。

ビュウン!!

アッシュ「!!」

ドシン!!

ツインテ「きゃああああああああ!!!!」

イカの一撃で船は揺れる。

バキバキバキ

248: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:56:45.97 ID:mB1c2LI0
185

--船--

ポニテ「これはイカんよ!!ただちにやっつけなくちゃ!!」

ツインテ「ででで、でもどうやって!?」

レン「ツインテは下がってて……おいで、ゴーレム」

レンの服の中から小さなゴーレムが出現する。

ゴーレム「ががががが」

ゴーレムは巨大イカに突進する。

べしっ

小さな体で果敢に挑むゴーレムであったが、巨大イカの触 に弾かれ海へと吹き飛ばされてしまった。

レン「はうっ!!」

249: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:57:19.78 ID:mB1c2LI0
186

--船--

アッシュ「あんなんでなんとかなるわけないだろ……ここは俺が、っと」

アッシュはナイフを取り出すが思いとどまる。

アッシュ(俺がやったら海の生態系が崩れるかもしれないか……)

アッシュはナイフをしまうと振り向いた。

ポニテ「ほえ?」

アッシュ「ポニテ」

くいっと親指で指図。

ポニテ「ほえーい!!」

ポニテは万歳のポーズでその意図を受け取ったとアピール。

250: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:57:51.19 ID:mB1c2LI0
187

--船--

ガインガイン!!

?眼鏡女性「っ!肉が厚くて硬い……盾男さん!」

?大男改め盾男「おう!!」

ガイン!!

巨大な盾でイカの攻撃を弾く。

盾男「ちっ、こりゃきつい相手だ……弓女ならいけんじゃないのか?」

?軽い女性改め弓女「……無理ね。試してみたけど私の弓じゃ弾かれちゃうわ。大体斧女の攻撃で弾かれるってどんな装甲よ」

?眼鏡女性改め斧女「……海に逃げますか?」

盾男「いやそれも考えたが、多分奴の眷属が待ちかまえてると思うぜ」

ハゲ男「ぎゃああああわああああ!!」

盾男「ほれ」

251: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:58:23.25 ID:mB1c2LI0
188

--船--

賭博師「ふぅむ。お前これどう思うよ」

調 師「ご主人様のすごく……大きいです」

ばちん

調 師「あいたっ!!」

賭博師「……うし、ここは避難安定だな。あいつ呼び出せ」

調 師「あいつって、シーモンさんですか?」

賭博師「そう」

調 師「わかりました。すー」

調 師は大きく息を吸うと、

調 師「ぴしぇ92いqj4gtぁ」

超音波を発射した。

252: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 22:59:34.43 ID:mB1c2LI0
189

--船--

アッシュ「!?な、なんだこの音は!!」

斧女「なにを、やっているの?」

調 師「ふぅ。もうすぐ来るそうです」

賭博師「そうか」

弓女「ちょっと!!あんたたちも手伝ってよ!!触 何本あると思ってんのよ!!」

ザバァ!!

遠くの海が盛り上がる。何か大きなものがこの船に迫っていた。

斧女「なに?またモンスター!?」

ザババッ!!

シーモン「シーモンキー!!!!」

大きな猿が海から出現した。

盾男「シーモンキーは猿関係ねぇから!!」

253: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 23:00:23.49 ID:mB1c2LI0
190

--船--

シーモンキーは賭博師と調 師をいそいそと担ぎ始める。

賭博師「じゃあそういうことで、後よろしくぅ」

調 師「皆さんお先に失礼します」

調 師がぺこりと頭を下げるとシーモンキーは海へと飛び込んだ。

盾男「!?な、ばか!!下には眷属のイカが!!」

がばっ

盾男が急いで下を除くとそこにはイカを踏み台にして元気に走り回るシーモンキーの姿が!

盾男「……なるほど。てか逃げやがったよ」

254: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 23:01:02.36 ID:mB1c2LI0
191

--船--

ポニテ「うっほほーい!!」

そんな中、場違いな浮かれた声が響く。

弓女「!?ま、待ちな!!あぶねぇ!!」

ポニテはキーンのポーズで触 を駆けあがっていくではないか。

盾男「まずい!!あいつの触 で叩かれてでもしたら、あの子死ぬぞ!!」

アッシュ「……」

ツインテ「……」

レン「……」

盾男「こ、こら!お前たちもなんで止めないんだよ!!あの子危ないぞ!!」

255: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 23:01:55.82 ID:mB1c2LI0
192

--船--

巨大イカ「げそげそー!!」

ポニテ「じゅっる」

巨大イカはその時恐怖を覚えた。

自分の触 を駆けあがってくるその少女を見て、
限界まで大きく見開かれたその目で見つめられたので、

巨大イカ「い、イカーーーーー!!」

ぶーーーー!!

特大の量のイカスミ。
川の増水による鉄砲水すら上回る水圧。
しかし

ドパン

ポニテ「ぷっは!」

それを飲み干してなお直進してくるのだ。
ものっそい笑顔で。

256: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 23:02:29.75 ID:mB1c2LI0
193

--船--

ポニテ「ひょっ」

ポニテは触 を蹴って、大きく跳躍する。

巨大イカ「ゲソ!!」

そして大きく、口を、開けた。

斧女「ま、まさか」

ツインテ「こんな形ですけど、ポニテさんの今日の食費が浮きそうですね」

ポニテ「いひゃひゃひまふ」

ガブシュッ!!!!

257: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 23:03:05.96 ID:mB1c2LI0
194

--船--

ガフッ、ズジョッ、ズルルル。

ポニテ「ガフッ!!ガフガフッ!!グルルッ!!」

ズチャッ、ブヂィッ、ガブっ。

斧女「うっ!」

斧女はその光景を見て口を押さえる。

ブチブチブチっ、ジュルル。

弓女「イカを……喰ってる」

ガウッ、ハグッ。

ツインテ「やはり空腹だったんですね・・・彼女」

アッシュ「アミノ酸を自ら取り込んでいるというのか?ポニテが」

盾男「……どうでもいいけどハルバート弾いてんだぞあのイカの装甲」

259: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 23:03:58.50 ID:mB1c2LI0
195

--船--

ポニテ「ぷー!お腹いっぱい!!えへへww」

アッシュ「全部喰いやがった!!」

斧女「その体の一体どこに……」

レン「……」

プオー


巨大イカに襲われるというハプニングがあったが、船は無事港に到着したのだった。


アッシュ(……しかし、このタイミングでモンスターが?港に近いこんな場所で……)

ポニテ「見てみてツインテちゃんー!妊婦!!」

ツインテ「わーごいすー」(棒読み)

260: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 23:04:41.06 ID:mB1c2LI0
196

--港--

ポニテ「よっしゃー!!大会大会ー♪」

アッシュ「だから行かないといっとろーが!!これからすぐあっちの船で南の王国に」

でぶ船長「ん?にーちゃん南の王国に行きたいのか?でも南の王国行きの船は大会期間中はねぇぞ」

アッシュ「!?」

ポニテ「おお!?ならその間することもないんだし大会でちゃうしかないよねっ!!ねっ!!」

ツインテ「えー……大会やですよ~」

レン「にやー」

261: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 23:06:15.51 ID:mB1c2LI0
197

--港--

ツインテ「でも確かに船が無いんじゃ大会が終わるまでここに滞在しないといけませんよね」

アッシュ「!?ツインテまで!!」

ツインテ「あ、ボクもアッシュ君と同じで、大会参加には賛成しませんよ!!安心してください!」

アッシュ(……そういうことじゃねええ)

アッシュはガシガシと頭をかく。

弓女「よっ」

船から降りてきたさっきの三人組に挨拶される。

弓女「先ほどは世話になったね。あんなばけもん食っちまうとは恐れ入ったよ」

ポニテ「えへへへーww」

斧女「それでも大会で当ったら手を抜きませんよ?出ないのなら話は別ですが」

盾男「じゃあそういうことで。君達の旅の無事を祈っている」

三人は西の王国の中心街へと歩いていく。

262: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 23:07:10.12 ID:mB1c2LI0
198

--港--

ポニテ「ほらほらー!どうせすることもないんだしいいじゃなイカー!!」

ツインテ「はまってるんですか?それ」

レン「……レンも何か食べたい。ツインテ、クッキー欲しいの」

レンがツインテの服を引っ張る。

ツインテ「はい。とりあえずアッシュ君、食事にでも行きませんか?」

アッシュ「…………………」

しかしアッシュは俯いているだけ。

ツインテ「あ、あれ?アッシュ君?どうかしましたか??」

263: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 23:07:40.45 ID:mB1c2LI0
199

--港--

アッシュ「……わかった。船が動くまで、大会が終わるまでここに滞在することにする」

ポニテ「きゃほーいい!!大会は!?大会は!?」

アッシュ「好きにしろ。ただし!!」

ツインテ「??」

アッシュ「この国に滞在中は俺は単独行動を取る」

ツインテ「!?」

ポニテ「え、なんで?」

アッシュ「……うるさい。以上だ」

アッシュはフードを被り、一人歩いていってしまう。

ツインテ「あ、アッシュ君……」

264: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/01(月) 23:08:33.29 ID:mB1c2LI0
200

--港--

ツインテ「なんか……怒っていっちゃいましたね」

ポニテ「うん、なんでだろー?大会興味ないのかなー??」

ツインテ(大会がどうとか言うよりは、この西の王国全体がという気がする……)

レン「……お腹空いたー」

ツインテ「あ、ごめんなさい。ポニテさん、とりあえず中心街に行きましょう。アッシュ君にも何かあるんだと思います」

ポニテ「そっかー。そだねー」

アッシュがパーティから離脱した。



賭博師「……ほぉ」

物陰からその様子をうかがう二つの影。

調 師「ご主人様。ちょっとお話が」

賭博師「なんだ」

調 師「はい、あの……反対方向から憲兵が近づいてきています」

賭博師「……早く言えよそゆこと」

272: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:01:23.92 ID:D00Yolc0
201

--コロシアム--

ワーキャー

実況「さぁ!さぁさぁさぁ!!ついにこの武術大会の個人戦に決着がつこうとしています!!決勝はこれ以上の好カードはないんじゃないかと思われますがどうですか解説さん!!」

解説「そうでもなくね?」

実況「はい!全否定です!!赤コーナーはご存知!!西の王国の勇敢なる戦士、槍兵!!彼はまだ若いのに数々の猛者を倒してきていますからね!!近頃配属先が変わるという噂もちらほら……そこのところはどう思いますか!?解説さん!!」

解説「それソースある?」

実況「はい!ただの噂でしたね!!続いて青コーナー!!こちらもまだ若い!!流星の如く現れた可憐な闘士、包帯女!!彼女強いですねぇ。全身包帯というのがまたかっこいいですよね!!躯にしても志々雄にしても包帯で姿を隠してるやつは強いやつが多いですからね!!」

解説「ボノレノフェ……」

実況「ボノレノフ強いだろ!!ディスってんすか!!」

ツインテ「なんだこの実況と解説……」

273: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:02:54.35 ID:D00Yolc0
202

--コロシアム--

ポニテ「おおー!!でもここ来て正解だったね!!戦いも見れるし、食べるものもいっぱい売ってるし!!」

ツインテ「はは……というか大会でどこのお店も休みだったから、ここに来るしかなかったんですけどね。まぁ食べ物があってよかったです」

ドグシャッ

オオー!!

ツインテ「……あんな戦い見ながらよく皆さん食事できますね、おぶ」

レン「むぐむぐ」

ポニテ「もっきゅもっきゅ」

ツインテ「やっぱりポニテさんも食べるんですよね、わかってました……」

274: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:03:27.84 ID:D00Yolc0
203

--コロシアム--

ポニテ「あ、このイカの刺身おいしいよー!!レンちゃんもどうぞー!!」

レン「……あーん」

ツインテ「またイカ食べてんですかって、だめー!!イカ食べちゃだめー!!猫はイカダメなんですよ!?」

レン「……イカ」

ポニテ「えー、じゃあこっちの焼き玉ねぎどうぞ!」

ツインテ「だめー!!ネギ類もだめー!!レンさん殺す気ですか!?」

レン「……おにおん」

ポニテ「えーもー注文が多いなー。じゃあ、はいっ、生の豚肉ー!!」

ツインテ「……猫とか関係無くひどいし……。もしかしてレンさんのこと嫌いですか?」

レン「……ぶたにくー」

275: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:03:55.08 ID:D00Yolc0
204

--コロシアム--

槍兵「はっ、はっ……やるぜぇアンタ!!よくもまぁ、それだけの実力を持ちながら影に潜んでたなぁ」

槍兵は銀色の槍を構えながらじりじりと距離をつめていく。

包帯女「そりゃぁもう強くなるために必死だったのさ。表舞台に出てこれないほどね」

槍兵「どんな修業だよ!……まぁいいさ、俺はこの王国の兵士を代表して優勝するぜぇ。出ないと開催国として格好がつかねぇからなぁ」

ドッ

槍兵が地面を蹴り、渾身の攻撃をしかける。

ヒュッ!!

包帯女「っ!」

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュ!

まともに刺されば一撃でアウト。そんな突きのラッシュを全て掌で叩き落とす包帯女。

ババババババ!

包帯女(槍の刃には毒でもつけているんだろう?)

包帯女は的確に柄だけを攻撃している。

276: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:04:27.06 ID:D00Yolc0
205

--コロシアム--

槍兵(弾かれた衝撃で体が左右に揺さぶられたら負けだぜぇ。踏ん張れ俺の体!!)

ババババババ!!

包帯女「くっ!!」

包帯女は勢いに押され、少しずつ後ずさりをし始める。

包帯女(体力的には悔しいけど奴の方が上か!!長引かせられない!)

ドッっ!!

渾身の力を込めた掌底で大きく槍を逸らす。

槍兵(!!来るか!?)

ダンっ!

包帯女が地面を踏みしめ、右の拳を大きく引いた。

包帯女(突きには……突き!!)

槍兵「おおおおおおおおおおお!!!!」

包帯女「闘士師範代直伝!!超正拳突き!!」

278: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:05:20.12 ID:D00Yolc0
206

--コロシアム--

ごちん

レン「あぶっ」

よそ見していたレンはマントを被った人とぶつかってしまう。

?マント「ん?」

ツインテ「あ!こらレンさん!!すいませんお怪我はありませんか!?」

?マント「いや……こちらも不注意だったと謝罪する」

ツインテ(女性?でもなんか……)

?青年「おい、なにやってんだ。早く行くぞ。試合終わっちまうよ」

男が現れてマントの女性を促す。

?マント「あぁ今行く。では」

レン「……まぐろぅ……」

レンの手に持っていたまぐろの刺身は、ぶつかった衝撃で落ちてしまっていた。

279: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:06:07.14 ID:D00Yolc0
207

--コロシアム--

ポニテ「がつがつばくばくもしゃもしゃ」

ツインテ「うぅ……またも食費が……というか、ポニテさんばかり食べてないでちょっとはレンちゃんにもわけてあげてください!」

ポニテ「えへへへwごめんねぇ?はい、焼き蛙」

ツインテ「そんなもの食べてたんですか!?」

ポニテ「なんかこうやって書くと焼き鮭みたいに見えるよね」

ツインテ「右っ側だけです!!」

レン「げこげこ」

ツインテ「あぁあ!食べてるし!!」

レン「まいうー」

280: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:06:56.22 ID:D00Yolc0
208

--コロシアム--

実況「決まったああああああああああ!!!!遂に決まりました!!27分という長き戦いの果てに、勝利の栄光は槍兵選手のものとなりました!!」

ワーキャー

実況「聞いてくださいこの歓声を!!実にすばらしい試合でした!!槍兵選手と包帯女選手、そのどちらかが決勝に上がってこれなかったらこれほどの試合にはならなかったでしょう!!勝ってあっぱれ槍兵選手!負けてあっぱれ包帯女選手!!」

解説「実にいい返しでしたね。今思えば一攻防前のあの時に勝負は決まっていたかもしれませんね」

実況「真面目に解説してる!!??」

ワーキャー

槍兵「はっ、はっ、はっ。いやぁ危なかった……一手遅かったら俺の首が吹っ飛んでたぜぇ……」

槍兵は手を差し出す。

包帯女「くあー……くそ。負けるとは思わなかった。やっぱ世界には強いやつがいっぱいいるな」

包帯女はその手を掴む。

281: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:07:32.09 ID:D00Yolc0
209

--コロシアム--

ツインテ「あ!!肝心な所見ないうちに勝負がついてる!!」

ポニテ「私はちゃんと見てたよーww」

レン「レンも……」

ツインテ「う!……うぅ」

ポニテ「強かったねぇ~。本当に強かった。でもここにいる人達が世界の全てじゃないんだ」

レン「……こく」

ポニテ「中には表に出てこれない人もいれば興味を持たない人達もいる……ふ、ふふふ!!」

ツインテ「……恐ろしい話ですね。とてもじゃないですけど、あの人達にだって追いつける気がしません」

ポニテ「わーくーてーかー!!!!よし!!大会でよう!!」

ツインテ「え!?……個人戦はこれで終わりって言ってましたよね?」

ポニテ「うん、だから団体戦」

282: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:08:04.42 ID:D00Yolc0
210

--コロシアム--

ツインテ「だ、だだだ団体戦ー!?」

ポニテ「うん、さっきパンフレットもらっちゃんだ。それによるとね?シングル(個人戦)が今日で終わりだけど、明日からチーム(団体戦)が始まるの!!マックス(五人制)には出れないけど、トリプル(三人制)には出れるよね!!ぴったりww」

ツインテ「えええええええ!?あの、あそこで戦ってるような人達を相手にするんですよ!?」

ポニテ「シングルとチームは別物だから出てくるかわからないけれど、いーじゃん!力試しには持って来いだよ!!」

ツインテ「いやいやいやいやボク試すほどの力ないですもんっ!!」

レン「くあー……」

レンはあくびをしている。

283: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:08:59.63 ID:D00Yolc0
211

--コロシアム、特別部屋--

?女「シングル戦が終わりました。大したトラブルも無く進んでいます」

?男「あぁそうか。我が国に活気が戻って来ているのは見ていて喜ばしい」

?女「王様がなさることに間違いなどありませんよ」

?男改め西の王「……あぁ」

コンコン

その時不意にドアが叩かれる。

?女「何用です?今、王様は休まれているのですよ?」

ガチャリ

?蛙顔「いやはやすいませんです秘書さんー。私もちょっと上から見てみたくてーwうわ高いー!」

蛙顔の人物が部屋に入ってきた。

284: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:09:28.75 ID:D00Yolc0
212

--コロシアム、特別部屋--

西の王「……お前がそんな理由で来るはずが無い。なんのようだ?」

?蛙顔「いえですねー、例の件が結構順調でしてー、見てもらおうかとw」

?女改め秘書「ならここに持って来なさい!貴方は王に出向けと言うのですか!!」

?蛙顔「あははーwいえね、実はもう持ってきてるんですよー。お前達ー」

?1「光学迷彩解除」

?2「光学迷彩解除」

?3「光学迷彩解除」

ブゥン

秘書(!?私が気配すら感知できなかった!?)

?蛙顔「古代の対人兵器、ここまで復元できましたよー」

285: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:10:03.79 ID:D00Yolc0
213

--コロシアム、特別部屋--

西の王「ふむ……」

?蛙顔「こらー。王の御前で失礼ですよー。ちゃんと挨拶なさいなー」

?1「はっ。私はこの三体のリーダー、ウーノと申しますわ」

?2「私はドゥーエちゃんでーす!」

?3「トーレです。よろしくお願いします」

?蛙顔「チーム、セックスピストルズです」

秘書「本気にするからやめろ」

286: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:10:38.24 ID:D00Yolc0
214

--コロシアム、特別部屋--

西の王「……もう使えるのか?」

?蛙顔「はいそりゃもちろんー。一応ご説明させていただきますとー、右からお金持ちの令嬢設定でー」

?1改めウーノ「はいですわ」

?蛙顔「次の髪飾りのボンボンがついているのが妹属性のドゥーエでー」

?2改めドゥーエ「お兄ちゃんっ」

?蛙顔「最後がちょっと大人しめな幼馴染の同級生ですー」

?3改めトーレ「毎朝起こしにいきます」

?蛙顔「はい!!どうですか!?パーフェクト!?」

西の王「……実戦で使えるのか?」

287: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:11:12.42 ID:D00Yolc0
215

--コロシアム、特別部屋--

?蛙顔「実戦!!あぁさすが西の王様であらせられる!!もちろんですよー、彼女達はいかなるシチュエーションも」

ピタっ

蛙顔の男の首にナイフが当てられる。

秘書「そんなことを王様が聞いているとでもお思いですか?」

ドゥーエ「あー!パパー!」

?蛙顔「……うふふーwもちろん大丈夫ですよー。私の折り紙つきですー。彼女らを投入すれば、そうですねぇ。補給なども含めて三日もあれば一国落とせるんじゃないでしょうかー?」

秘書「!?」

288: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:12:06.84 ID:D00Yolc0
216

--コロシアム、特別部屋--

蛙顔の男はくるくると回り始める。

?蛙顔「うふふふふーよかったですねー。これで因縁深い東の王国もー、20年くらい前にお世話になった中央の王国にもー、その腰ぎんちゃくの北の王国もー、全部まとめてぶっ飛ばして世界征服できますねーw」

西の王「……そんなことが目的ではない。次の魔王を倒すために使うだけだ」

?蛙顔「うふふふふーwwいいじゃないですかー、貴方なら世界の王にふさわしいと思いますよー?自国民からは大人気のその手腕ー、世界の貧しい人達にも味あわせてあげたらいいではないですかーw」

秘書「お前がこの国のことに口を出すな!!」

ドンっ!!

ウーノ「あっと、すいません。つい自動で動いてしまいましたわ」

ドゥーエ「こんなところで危なっかしいことしちゃまずいよねーあはははー」

トーレ「だ、大丈夫ですか?」

秘書は三人に体の自由を奪われている。

秘書(ぐっ!!……初動ですら私を越える!?……一度目で私の速さを分析していたの?)

西の王「……とりあえずはご苦労だった、研究員」

?蛙顔「はいーw」

289: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:12:55.15 ID:D00Yolc0
217

--コロシアム、受付--

ポニテ「まだ団体戦のエントリー残ってますよねー!?」

受付嬢「……よくもまぁ、明日から始まるってのにそんな聞き方が出来ましたね……」

ツインテ「そうですよね!?何日も前から埋まってるに決まってますよね!!」

受付嬢「はい。特に今回は戦後初めて西の王国で開催されるということで、観客や旅行客も例年以上ですから……」

ツインテ「はい残念!!はい終了!!いやー残念でしたねーポニテさん!!こういうことなら仕方ないですよ、今回は諦めてまた次回挑戦してください(一人で)。ささ、行きましょう?今夜はボクが腕によりをかけて晩御飯作りますからっ」

ポニテ「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

ツインテ「三点リーダー多っ!!??」

レン「くー、すー」

レンはツインテの背中におぶられて寝ている。

290: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:14:14.50 ID:D00Yolc0
218

--中心街--

ツインテ「ほらぁ、ポニテさん元気出して下さいよ~」

ポニテ「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

ツインテ「うぅ……あ、ほ、ほらおいしそうなアイス売ってますよ!?西の王国限定アイスですって!ポニテさん何が好きですか??ボク買ってきます!」

ポニテ「……」

ツインテ「……はい、聞かなくてもわかることでしたね。全部ですよね、全部」

とってって

ツインテはアイス屋まで走っていく。

ツインテ「すいませーん」

アイス屋のおっちゃん「あいよぉ可愛いお譲ちゃん!!おじさん  コンだからサービスしちゃうよぉ!」

ツインテ「あはは……えっと、全種類ください。タワーみたいに乗っけてく感じで!」

アイス屋のおっちゃん「……全部?25種類?」

291: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:15:14.01 ID:D00Yolc0
219

--中心街--

ツインテ「はい、おっととと!ポニテさん買ってきましたよ!!」

ツインテは高く積まれたアイスを器用にバランスを取ってポニテの所にまで持ってくる。
どうやっておっちゃんが積んだのかは永遠の謎だ。質問されても答えられない。

ひゅばっ

ツインテがポニテの口の近くにアイスを持っていくと、アイスは一瞬で消滅した。

ポニテ「もちゅもちゅごりもちゅ」

そして咀嚼するポニテ。

ツインテ「……すいませんポニテさん。ちょっと硬かった部分なかったですか?是非吐き出して欲しいんですけど」

ツインテの右手首から先も消滅していた。

292: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/03(水) 22:16:06.13 ID:D00Yolc0
220

--中心街--

ポニテ「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

ツインテ「うわー。一瞬で喰われると痛みも鈍いんだー。こわー……痛みに気付くまでタイムラグあったよ……」

ポニテ「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

ツインテ「あーもー!ポニテさん、いい加減暗くなるのはやめて下さいよぉ。そりゃぁ確かにがっかりかもしれないですけれど、他にも楽しめることはいっぱいありますよ!!別の角度から考えましょうよ、大会を見てるだけでもきっと楽しいと思うんです」

ポニテ「……………?別の……角度?」

ツインテ「はい!!」

ポニテ「別の角度で……大会に参加?」

ツインテ「……いえ違います……」

ポニテ「別の角度で大会に参加する……つまり出場する人を闇討ち?」

ツインテ「怖い!!」

ポニテ「出場者のチームを殺して出場権を取るってことだねっ!?」

ツインテ「怖い!!!!」

ポニテ「その手があった!!ヤろう!!是非ヤろうツインテちゃん!!」

ツインテ「ポニテさんが怖い!!!!」

レン「くー」

301: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:17:59.03 ID:RWrcTJg0
221

--海沿い--

ザザーン

アッシュ「……」

アッシュは一人堤防に座り、海を見ながらたそがれていた。

アッシュ(くそ、あいつら……うぅ、ツインテ……)

はぁ、とため息をつく。

?「らんらんららん、らりらりらーん♪」

フードを被った少女がアッシュの後ろを通り過ぎていく。

アッシュ(ちっ、うるさいな。アホが。しね)

?「おろろろ!?一人で落ち込んでる少年発見っす!」

302: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:20:42.41 ID:RWrcTJg0
222

--海沿い--

ばふっ

アッシュ「!?」

?「おりおり~どうしたっすかー?青春してっかー?少年ー」

アッシュの頭に覆いかぶさる少女。

アッシュ「っ!いきなり過ぎて何も言えん!!なんだ貴様!!知らない人間に構ってくるな!」

ビシッ

アッシュはそれを払いのける。

?「あたっ」

少女はバランスを崩し、地面に尻をつく。

?「あはは、乱暴者っすねー」

フードが取れて、金色の髪の毛と小さな角が露わになった。

アッシュ「……亜人か」

303: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:21:14.96 ID:RWrcTJg0
223

--海沿い--

アッシュ(今日は亜人によく会うな……)

?改め金髪「ありゃー。もしかして君、亜人とか差別する人っすかー?」

アッシュ「……いや」

金髪「うーん。嘘はついてみてないみたいっすねー!きゃほーい!嬉しいっすー!」

万歳ポーズで喜ぶ金髪の少女。

アッシュ「だからと言って好きなわけじゃない」

金髪「うおぅっ!?」

アッシュ「じゃあそいうことだから構うな」

アッシュはそこから離れようと歩きだす。

金髪「でも君からは匂いがするっすよ。猫科の亜人の匂いが」

アッシュ「!!」

304: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:21:40.67 ID:RWrcTJg0
224

--海沿い--

金髪「友人とかー、仲間とかにいるんじゃないのかな?」

アッシュ「……だったらなんだよ」

金髪「……君はいい人っすw周りの人たちと同じようにしてるのが一番いいはずなのに。場所によっては仲間に亜人がいるだけで入れてく

れない所もあるっすよ」

アッシュ「そんなのは亜人だってばれないようにすればいいだけだ」

金髪「でもリスクがある。だって人と亜人は違う生き物なんだから」

アッシュ「……いきなり抱きついてきたり、……なんなんだオマエ」

金髪「あはは。あたいと友達になって欲しいっすよ!」

アッシュ「……嫌です」

305: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:22:52.09 ID:RWrcTJg0
225

--海沿い--

金髪「なんでー!?どうしてっす!?」

アッシュ「そのウザさが嫌だ。俺の仲……知り合いの一人に似てる」

金髪「知り合いをそんな悪く言っちゃだめっす!!」

アッシュ「今自分で自分を貶めたぞ!?」

金髪「まぁまぁー。あたい西の王国に来たばっかりで右も左もわからないんすよ。おまけに仲間もいない一人ぼっちなんす。だから」

アッシュ「……なんで一人にいるのかは聞かない。でもなんで」

金髪「追われてるっす」

アッシュ「……あ?」

306: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:23:55.55 ID:RWrcTJg0
226

--海沿い--

金髪「黒の組織っていう犯罪組織に追われてるっす。超怖いやつっす。あたいずっと変な薬作らされてたっすよ。でももうやんなって抵抗したら捕まったっす。そこで自分のポケットに隠し」

アッシュ「真実はいつも一つ。お前の言っていることは嘘だ!!」

金髪「な、なんでわかったすか!!」

アッシュ「……俺も読んでたからな」

金髪「むむむ!?同士でしたか!!いいですよねー、○ナン!!黒の組織編だけでまとめて売りだしたりしないですかねあれ」

アッシュ「まて、危ない気がするぞこの会話」

307: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:24:38.64 ID:RWrcTJg0
227

--海沿い--

金髪「まぁ黒の組織に追われているというのは嘘っすけど、追われていること自体は嘘じゃないっす」

アッシュ(……亜人。亜人ならそれもありうるか……。どこかの見世物小屋、ピー、ブラックマーケット……なにも悪さをしなくたって追われる理由がある。こいつもどっかから逃げ出してきたのだろうか)

金髪「ちなみに砂漠の風っていう盗賊団なんすけど」

アッシュ「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

金髪「そのネタは既にやったっす!」

アッシュ「じゃあな」

金髪「あぁ!!さっそうと去っていかないでってっす!!」

308: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:25:18.23 ID:RWrcTJg0
228

--海沿い--

アッシュ「いやいやいやふざけろ!!なんであんな組織と関わり合いにならなくっちゃぁならないんだ!!危険度ランクトップの最悪な犯罪集団じゃないか!!」

金髪「あ、あはー」

金髪は申し訳なさそうに頭をかく。

アッシュ「どいつもこいつも高額賞金首、隊長クラスに至っては各王国のトップスリーに匹敵すると言われ、そいつらを率いるボスは鬼のように強くて残虐だって話だ!!」

金髪「……」

アッシュ「お前が何の理由でそいつらから追われてるかは興味がない、というか言うな。俺はあんなのとは関わりたくない。じゃあな」

金髪「そうしてあなたは去っていくのね!?」

309: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:25:52.74 ID:RWrcTJg0
229

--海沿い--

金髪「うぅぅ、待って下さいっすよー、後生、後生ですからぁ!!」

アッシュ「えぇい邪魔だ!服から手を離せ!!」

アッシュが金髪を引きずっているかのような絵面。

金髪「飛び出してきたはいいけどお金も無いし頼れる人もいないんすー!!お腹もすくし、一人はさびしいんすよー!!」

アッシュ「ちぃ!!最初に飛びついて来たのは俺が一人でいたから仲間にしやすいとふんでいたのか!!」

金髪「……ソンナコトネッス」

アッシュ「嘘っぽい!!」

ドゲシっ

金髪「あうん」

アッシュのチョップで金髪は地面に倒れる。

310: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:26:38.28 ID:RWrcTJg0
230

--海沿い--

ごろつき「うぃーひっく、あぁん、バカップルが騒いでんのかとおもったけどよひっく、よくみりゃ女の方は亜人か?」

金髪「はっ」

今の倒れた拍子に角が出てしまったことをさとりフードを深くかぶり直す。

ごろつき「きったねぇ亜人が……おう兄ちゃん、今俺が助けてやるよぉ」

ごろつきは酒の入ったコップを投げ捨てると袖をまくった。

金髪「ひぃっ!!」

アッシュ「……」

ごろつき「ただの労働力が人間様こまらしちゃ駄目だろがっ!!」

ゴッ

311: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:27:11.92 ID:RWrcTJg0
231

--海沿い--

金髪「あうんっ!」

到底女子供に向ける拳ではない。正真正銘の殴打。

ドガっ

金髪「ぎひゃっ!」

アッシュ「お、おい」

ごろつき「あぁん?なんだよ、お前がやる予定だったのかよ。まさかそれともお前……」

ごろつきは金髪を掴むのをやめアッシュに近寄ってくる。

ごろつき「あいつの仲間だって言うんじゃねぇだろうな?亜人のよぉ!!」

金髪「……ぅ」

312: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:27:45.02 ID:RWrcTJg0
232

--海沿い--

アッシュ「ち、違う」

金髪「っ!!」

ごろつき「そうかい安心したぜwwほれそろそろ暗くなる。けぇんな」

シッシッと手で払い、アッシュを遠ざけようとする。

金髪「あっ、あぁ」

ざわざわ

いつのまに人が多くなってきているが誰も止めようとしない。

アッシュ(っく!!……今はまずいさすがに目立つわけにはいかないんだ……)

べきっ

金髪「あぁ!!」

アッシュ「!!」

313: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:28:17.43 ID:RWrcTJg0
233

--海沿い--

アッシュ「まて」

ごろつき「あ!?まだなんか用かよ!!てめぇこいつの仲間じゃねぇんだろうが!!」

アッシュ「あぁ」

金髪「痛い……」

金髪の少女は地面に蹲り小刻みに震えていた。

ごろつき「なら」



アッシュ「…………………ペットだ」

ごろつき「あ?ペット?」

アッシュ「そうだ、俺んちのペットだ。だから、もうやめろ」

金髪「……」

314: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:29:12.68 ID:RWrcTJg0
234

--路地裏--

日は完全に沈み、辺りは暗闇に支配されていた。
アッシュと金髪は路地裏で木箱に座り、傷の手当てをしていた。

アッシュ「……」

金髪「……」

アッシュは無言で傷薬を額に塗り、金髪は無言で俯いている。

アッシュ「……すまなかった」

金髪「差別しない、って言ったっす」

アッシュ「……」

金髪「嘘ついたっすか」

アッシュ「っ!」

金髪「それともあたいが砂漠の風に追われてるからっすか」

315: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:29:48.06 ID:RWrcTJg0
235

--路地裏--

アッシュ「……違うな、どちらかと言えば、亜人だから、だ」

金髪「やっぱり……」

アッシュ「すま」

金髪「もういいっす」

金髪は手当てをしていたアッシュの手を握る。

金髪「助けてくれたのは貴方です……感謝してるっす。ありがとう」

アッシュ「……助けてなんか、いない」

金髪「ごめんっす、逆ギレでした……貴方は自分の身を危険にさらしながらも助けてくれたと言うのに……」

アッシュ(こいつから……こいつの言葉から親しみが消えた……)

316: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:30:27.43 ID:RWrcTJg0
236

--路地裏--

金髪「うん、ウジウジしててもしゃーないっす。よいしょっと!」

金髪は勢いよく立ちあがるとパンパンと尻を叩く。

金髪「ちょっとだったけど話せて楽しかったすよ。またあたいと一緒にいたら迷惑かかっちゃうしwwじゃぁ……」

そう言って金髪は路地裏から走って行った。

アッシュ「あ……」

アッシュは金髪に向けて手を伸ばした。
伸ばしただけで動けない。

アッシュ「くそ!俺だって……せめてここじゃなかったら、レンの様に助けられたんだ……くそあの女!!」

アッシュは全速力で駆けだした。

アッシュ「待てよ!!」

317: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:31:03.19 ID:RWrcTJg0
237

--海沿い--

金髪「っ」

しかし金髪の少女は止まらない。

アッシュ「くそ!俺に速度で勝てると思うなよ!!移動速度上昇、レベル3!!」

ドッ!!

金髪「!?」

恐ろしいスピードで飛んできたアッシュはそのまま金髪にぶつかった。

どごっ!!

金髪「きゃん!!」

アッシュ「ごぶふっ!!」

金髪「い、痛いっす!!なにするっすか!!」

アッシュ(ごふっ……なんで俺がめっちゃダメージ受けてるんだよ)

アッシュはぐいと金髪のローブを引っ張る。

アッシュ「……一緒にいてやる。しばらくの間だけだがな!!か、勘違い、すんなよ」

318: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:31:32.50 ID:RWrcTJg0
238

--墓場へと続く道--

街灯も無い真っ暗な道に三人の影があった。

ポニテ「ぬっふっふー!!」

ツインテ「や、やめましょうよポニテさん……危ないですよぉ。暗いし、変な人が出歩いているかもしれないじゃないですか……」

レン「……はかばー」

ポニテ「甘いよツインテ隊員!!そんなことで大会に参加できるとでも思ってるのかね!?」

ツインテ「出たくないですよぉ~。それにこんなとこ歩いてる人なんていやしませんよぉ」

ポニテ「いや、いるよ!!以外とこういうところにいるもんなんだよっ!!大会参加者っていうのは!!」

ツインテ「ポニテさんが大会参加者の何を知っているというんですか!!」

319: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:32:00.33 ID:RWrcTJg0
239

--墓場へと続く道--

ポニテ「むぅ。確かに人が全然来ないね!!なんでだろう、墓場はチェックしておくべきじゃないのかな??」

ツインテ「こんなとこ観光場所として来る人なんているわけないじゃないですか」

ポニテ「いや大会で死んだ時のことを考えて」

ツインテ「死後の心配!?」

ポニテ「うーん……でもこれは間違いだったかもしれないね……あ!!」

ツインテ「ひゃあっ!!な、なんですか!?もしかして幽霊が出たんですか!?」

ポニテ「いやあれ!!なんかこっちに来てるよ!!」

ズシッ、ズシッ

重そうな音を立てて、大きな男がこちらに向かってきている。

320: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:32:41.08 ID:RWrcTJg0
240

--墓場へと続く道--

ポニテ「あの体躯、あの面構え……やるね、彼はやるよきっと!!あの顔はやる男だ!!間違いない、あの人は大会参加者だ!!」

ツインテ「馬鹿なこと言ってないで、と言いたいですけど、確かに……。むしろあの人以上に闘技場という言葉が似合う人はいないんじゃないかと思えるほどむきむきですね」

レン「まっちょ」

ズシッ、ズシッ

ツインテ「……遠近感おかしくないですか?なんとなくですけど、私達の二倍くらいの身長がある気がします」

ポニテ「そりゃ大男だもんっ大きいさ!!」

ツインテ「名前的には巨人の方があってる気がしますけど……2M半くらいでしょうか」

ズシッ、ズシッ

321: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/05(金) 00:33:30.24 ID:RWrcTJg0
241

--墓場へと続く道--

ポニテ「いよぉし、行くよツインテちゃん!!大会参加資格をかけて勝負だ!!」

ツインテ「え、えぇぇ!?本気で行くんですか!?もし参加しない人だったらとか、この際考えない方向なんですか!?」

ザンっ

ポニテは大男の前に立ちふさがった。

ズシッ

それを見て大男も歩みを止める。

ポニテ「やぁやぁ我こそは勇者の一角、ポニテ!!大会の団体戦参加資格をかけて勝負だ!!」

ポニテが腕を組んで大声で叫んでいるのを大男が眺めている。

ツインテ「ひぃぃ~!!本当に言っちゃった!!」

レン「ばか」

?筋肉質な大男「お、おで」

330: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:03:49.27 ID:v0fMVaQ0
242

--墓守の小屋--

?筋肉質な大男「そ、粗茶ですが」

大男は三人にお茶を差し出した。

ポニテ「うわーい!!」

ツインテ「よ、よかったんでしょうかホイホイついて来てしまって……ちょっとした事件ですよ……あ、ありがとうございます……」

レン「熱い……ふー」

ツインテ達は、あの後大男が住んでいる小屋に招かれたのであった。

大男が、月の出る夜、人気の無い場所にある小屋に、幼い少女達(少なくとも外見上は)を連れ込んだのである。
憤怒アグネス。

?筋肉質な大男「し、心配するな。そ、そんな特殊な 癖、な、ない」

ツインテ(なぜだろう……お前が言うな!って声が聞こえる……)

331: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:05:53.83 ID:v0fMVaQ0
243

--墓守の小屋--

?筋肉質な大男「そ、それより、団体戦に、出たいのか?」

ポニテ「うん!出たいんだ!!参加資格おくれ!!」

?筋肉質な大男「あ、あれ?湯飲みが、無い。お、おかしいな、出したと思ったのに。ま、待ってろ」

筋肉質な大男は立ち上がり、再びお茶を入れに行く。

ズシッ

ツインテ「……ポニテさん。湯飲みごといったですか……」

ポニテ「えへへ。飲み物だけだったから、歯ごたえがあるものも欲しくてつい」

ツインテ「……進化というか悪化というか、段々人じゃなくなってきてますね……そ、そろそろ本気で身の危険を感じてきました」

レン「ふーふーわふー」

332: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:09:53.03 ID:v0fMVaQ0
244

--墓守の小屋--

?筋肉質な大男「た、確かに参加資格、も、持ってる」

新しい湯飲みにお茶を入れて帰ってきた大男は、椅子に座るなり語った。

ポニテ「うおーい!ちょうだいちょうだい!!」

?筋肉質な大男「お、おでは正直、出たくないから、あげてもいい」

ポニテ「やたー!!」

?筋肉質な大男「で、でも君たちでは、あ、危なすぎる」

ポニテ「?」

?筋肉質な大男「き、君たちは、まだ、弱いから、危険。だから、渡せない」

ポニテ「!?私達弱くないもん!!勇者だもん!!」

333: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:12:05.56 ID:v0fMVaQ0
245

--墓守の小屋--

?筋肉質な大男「!!ゆ、しゃ?」

大男は驚いた表情を見せ、三人を観察し始めた。

?筋肉質な大男「ど、どこが?」

ポニテ「むきー!!」

ツインテ「あはは……」

?筋肉質な大男「き、君たちは、のびしろがある。人より、いっぱい。と、特に君と君」

大男はツインテとポニテを指差す。

?筋肉質な大男「も、もし、ちゃんと修行すれば、十年もすれば、世界でもトップレベルになれる」

ポニテ「!!」

?筋肉質な大男「で、でもそれは未来の話。か、仮定の話。い、今の君たちは、はっきり言って、弱い」

ポニテ「にゃ、にゃんだとー!?」

334: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:12:46.34 ID:v0fMVaQ0
246

--墓守の小屋--

ポニテは怒り心頭で立ち上がる。

ポニテ「私達は強いもん!北の王国でおっきなゴーレムを倒したんだから!!」

?筋肉質な大男「な、なにそれ」

ツインテ(!あの一件は隠された……ということ?)

?筋肉質な大男「と、とにかく、君たちに武術大会はまだ早い。あ、諦めて」

ポニテ「いーやーだー!!」

ツインテ「ポニテさん……」

ポニテ「だって私達は……強いんだ!!レンちゃんもアッシュ君もツインテちゃん……も私も!!」

ツインテ「ちょっとボクのとこで考えましたね!?普通に弱いから弱いって言ってくれてよかったんですけど」

ポニテ「だって私は……私はパパとママの子供だもん!!」

ボッ

ツインテ「!!」

レン「!!」

?筋肉質な大男「!!」

335: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:13:22.56 ID:v0fMVaQ0
247

--酒場--

?女「ん」

?男「?どうかしたのか?テンテン」

?女改めテンテン「いや、町外れで強力な魔力爆発が起こっただけのようだと報告」

包帯女「そっかー……って強力な魔力爆発って大丈夫なの!?」

テンテン「まぁ大丈夫だろう。範囲は極めて小規模だと観測」

包帯女「……ねぇ義足、一応憲兵とかに言っておく?」

?男改め義足「ん、まぁ大丈夫だろ。それより飲みを切り上げて懐かしの実家訪問しようぜ!せっかく帰ってきたってのにまだ行けてないからな」

包帯女「そうだな。墓参りも……夜行くもんじゃないけど」

テンテン(墓場で爆発が起こったのだが黙っておこう)

336: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:13:56.87 ID:v0fMVaQ0
248

--墓地--

メラメラ

小屋は激しく燃えている。

ツインテ「あ、危なかった……とっさに魔力障壁を出さなかったら」

レン「しっぽこげた」

小屋から離れた位置に二人はいる。その二人の衣服や髪の毛が少し焦げていた。

?筋肉質な大男「お、おでの小屋が」

大男は火の中からがっかりした顔で歩いて出てくると、膝をついた。

ガラガラ

ポニテ「ふー、ふー」

続いてポニテが瓦礫をはねのけて登場。全身から炎が吹き出ていて、まるで火の化身の様。

337: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:14:31.76 ID:v0fMVaQ0
249

--墓地--

ツインテ「ぽ、ポニテさんっ、やめてください!!落ち着いて」

ポニテ「ぶっ倒して奪ってでも出てやるもん!」

?筋肉質な大男「……わ、わかった。そ、そこまで言うなら実力を見てみよう」

ざっ

大男はゆらりと立ち上がった。

?筋肉質な大男改め闘士「も、元勇者パーティー、闘士。いざ参る」

ポニテ「!!」

ツインテ「!!」

レン「!」

ドン!!

筋肉の塊が猛然とポニテに突進する。

338: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:15:01.63 ID:v0fMVaQ0
250

--墓地--

ポニテ「と、闘士さん?……パパとママが言ってたあの」

ツインテ「この人が……」

レン「伝説の……人物」

闘士「攻撃力上昇、レベル4」

ドガァァァァァン!!

闘士の拳はやすやすと大地を裂いた。

ポニテ「あぶなっ!!あんなの食らったらさすがの私でも」

ポニテはバク転で距離をあけ、背中に差した二本の剣を引き抜く。

ジャリン

ポニテ「う、うわわ!わくわくする!行くよ!!」

339: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:15:57.83 ID:v0fMVaQ0
251

--墓地--

ポニテは高く跳躍、月を背にしての一撃。

ポニテ「ああぁぁ!!」

ズガァァン!

ポニテ「!?」

ギリッ

ツインテ「そんな!!腕で防ぐなんて!!」

闘士「ふんす」

闘士はポニテの右腕を握るとぶん投げた。

ポニテ「ぎゃんっ」

闘士「そ、そんなんじゃ危ない。やっぱり、だ、だめ」

340: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:16:26.12 ID:v0fMVaQ0
252

--墓地--

ポニテ「まだまだー!ほら、ツインテちゃんもレンちゃんも行くよ!!」

ツインテ「え、えぇ!?な、なんでボクもなんですか!」

ポニテ「あったりまえじゃない!私達全員の力を試してるんだよっ!?ほら早く!」

ツインテ「わ、引っ張らないで下さい!というかわくわくしすぎです」

ズシッ、ズシッ

ツインテ達に向かってゆっくりと歩いてくる大男。

ツインテ「……わかりました。ボクも確かめてみたいですから」

ポニテ「お!ツインテちゃんがやる気になった!!」

闘士「い、いいぞ、来い」

341: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:16:59.75 ID:v0fMVaQ0
253

--墓地--

ポニテ「対単体、炎属性魔法レベル3!!」

ドヒュン!!

炎球が闘士に向かって飛んでいくが、

バジュ

闘士の腕の一振りでかき消されてしまう。

ポニテ「!?」

闘士「き、君たちにとってそれはレベル3魔法なんだろうけど、し、質が低い。お、おでらなら、そんなのレベル2で上回れる」

ポニテ「な、なにをー!?」

342: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:17:41.18 ID:v0fMVaQ0
254

--墓地--

ポニテは一人突っ込んでいく。

ツインテ「あ、一人じゃ!!」

レン「武具錬成、羽足……ツインテ」

レンはいつの間にか工房を呼び出し、武具を作っていた。そしてそれをツインテに差し出す。

レン「これを穿けば早く動ける。魔力も使うけど、ツインテなら大丈夫だとおもう」

ツインテ「レンさん……わかりました!」

ガギィン、ギィン、ガッ、ガガ

ポニテ「かたーい!すごい、すごいね!すごく硬いね!!」

闘士「……ふ」

343: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:19:03.42 ID:v0fMVaQ0
255

--墓地--

ポニテ「じゃあ0距離だ!!炎属性魔法レベル2!!」

ドゥン!

今度は闘士の胸に着弾するも、

闘士「お、同じこと」

闘士は無傷で現れ、ポニテに張り手を繰り出す。

バチィ!

ポニテ「あぶっ!」

ガードはしたものの、またしてもポニテは吹き飛ばされてしまう。

ドシッ

それを回り込んだツインテが受けとめた。

ツインテ「大丈夫ですか!?ポニテさん!」

ポニテ「えひひ、やられちゃった」

344: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:20:15.08 ID:v0fMVaQ0
256

--墓地--

ツインテ「次は三人で挑みましょ。ボクはスピードで撹乱します。隙をついて一撃を」

ツインテは杖を構えようと……

ツインテ「……そういやボクって杖……いつから持ってなかったでしたっけ」

だらだらと汗を流すツインテ。

ポニテ「知らないけど、結構前から手ぶらだよねっ」

ツインテ「……落としたんだ……うぅ、RPGなのに。捨ててないのに」

ポニテ「まぁ、レンちゃんに新しいの作ってもらえばいいじゃない!」

レン「なんなら今すぐにでも」

レンの眼がキラリと光る。

ツインテ「……うんありがと。でもとりあえず今は素手で行ってきます」

345: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:21:23.12 ID:v0fMVaQ0
257

--墓地--

ギュンッ

闘士「は、速い」

ツインテ(体が軽い!一蹴りでこんなにも……よしっ!)

闘士「ふ、ふんっ」

ヒュバヒュバッ

闘士はツインテに向かって攻撃するが、まるで当たらない。

ツインテ(間に合わないと思ったタイミングでも避けられる。すごい)

闘士「……」

ポニテ「んー……駄目だ。こっちもしっかり警戒してる……二人を同時に視界に入れられるよう、調節して攻撃してるのかー」

ヒュッ、ヒュバ

闘士「ちょ、ちょこまかと!ス、スキル、振動波」

ダンッ!!

346: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:21:51.06 ID:v0fMVaQ0
258

--墓地--

闘士が思い切り地面を叩く。すると

ビビビビビ

ツインテ「!?振動で足が地面から離れない!!」

ポニテ「う、動けないよ!!」

レン「にゃにゃにゃにゃにゃにゃ」

スッ

闘士「う、動かないなら、速く走れる人も、無意味」

ドベキ

ツインテ「っ」

闘士の拳が、ツインテのあばら骨を砕く音が響く。

ポニテ「……ツインテちゃん!!」

347: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:23:29.27 ID:v0fMVaQ0
259

--墓地--

レン「にゃあああ!!」

地面から解放された二人はツインテに駆け寄る。

闘士「き、傷ついた仲間がいるからって、む、無策で寄ってきちゃ、だめ」

闘士は二人に対し拳を突き出した。

闘士「ス、スキル、空拳」

闘士が何もない所で正拳突きの仕草をする。ただそれだけで、

ドボッ

ポニテ「ごふっ!!」

ボゴッ

レン「にゃんっ!?」

二人が吹き飛んだ。

闘士「……や、やっぱり、駄目だ。きょ、今日はここまで」

348: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/10(水) 01:24:41.59 ID:v0fMVaQ0
260

--墓地--

ポニテ「や、やだ……私は、出たいんだ」

がくがくと震えながらポニテは立ち上がった。

闘士「……」

一方、ツインテとレンは微動だにせず地面に伏している。

闘士「き、君のわがままで、か、彼女たちを危険に捲きこんで、い、いいの?」

ポニテ「……辛いことも楽しいことも、共に味わうのが仲間なんでしょ?」

闘士「……」

ポニテ「私、学校に通ったことないの。だから人間の友達なんてツインテちゃん達が初めてなの……」

闘士「……」

ポニテ「だから、こんな大会でも一緒に出てみたいの!!一個でも多く思い出を作りたいのっ!!」

闘士はぼりぼりと頭をかき、そして、

闘士「……そ、そうか。どうしてもでたいというのなら……わかった」

ポニテ「……え?」

闘士「その代わり、一個条件がある」

372: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:06:30.24 ID:Q1eanaE0
261

--墓場へと続く道--

闘士「も、もう暗いから、気を付けていけよ」

ポニテ「うん!ありがとうね!!」

レン「ぺこ」

ツインテ「い、いきなり押し掛けて家を焼くわ、戦いを挑むわ……本当にごめんなさい!!いつか必ず弁償しに来ますから!!」

闘士「ん、ん。べ、別にだいじょぶ」

闘士はそっとツインテの頭に手をおいた。

闘士「そ、それよりもきみ。も、もっと逞しくなったら……またおいで」

ツインテ「っ!!」

ツインテは何かとてつもなく恐ろしいものを感じた……。

ツインテ「あ、は、はい」

ツインテはにっこりと微笑む闘士の顔を凝視する。

ツインテ(なんでだろう……今、恐怖を感じた……どうして?どうしてボク……お尻が怖いよ……)

373: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:07:13.39 ID:Q1eanaE0
262

--墓場へと続く道--

その様子を物陰からじっと見ている二つの影が。

賭博師「ふぅむ……」

調 師「ご、ご主人様、外が暗いです……よい子はもう寝る時間ですよ!!」

賭博師「む」

賭博師は何かを思い出し、胸の内ポケットから薬を取りだした。

賭博師「ほれ」

薬を調 師の口に放り込む。

調 師「あむん……ま、また調 されてしまった」

賭博師「濡れ衣だ!?」

闘士「そ、それよりもきみ。も、もっと逞しくなったら……またおいで」

374: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:07:40.02 ID:Q1eanaE0
263

--墓場へと続く道--

賭博師達は墓地から去っていくツインテ達の後ろ姿を見る。

賭博師「やれやれ。やっと帰ったか。まさかバトルなんて始めるとは思わなかったぜ」

調 師「です」

賭博師「まぁ、予想以上に得るものがあったな。これだから悪事はやめらんないね」

調 師「ストーカーは犯罪です」

賭博師「ストーカーじゃない。あの子らが悪漢に襲われないか心配だから見張ってただけだぜ」

調 師「ストーカーの言い訳に近いセリフですご主人様」

賭博師「むしろ襲われることを期待した」

調 師「……」

375: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:08:11.89 ID:Q1eanaE0
264

--街道--

ホーホー

三人は夜道を歩いている。

ツインテ「よかったですね、参加票譲ってもらえて」

ポニテ「うんっ!話せばわかる人でよかったよ!」

思い切り拳を交えてたくせに、とツインテ。

レン「ツインテが死んでたら回復もままならなかったにゃ……」

ポニテ「そんなことないよ?私もちょっとはできるもん」

ツインテ「火属性の蘇生、回復魔法……怖すぎます……」

レン「火は不死鳥の例があるから蘇生は一応可能だけど……」

二人は気持ちポニテから離れる。

376: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:08:50.79 ID:Q1eanaE0
265

--街道--

ツインテ「あ、そうだ。結局あの人とどんな約束をしたんですか?」

ポニテ「?約束?何のことです?」

ツインテ「条件がどうとか、言ってたじゃないですか」

ポニテ「……あの時まだ意識あったんだ!?」

ツインテ「かろうじて……ですけどありました。ボクが死んだら教会に行かなきゃならなくなりますから。そして神父様にお渡しするお金も無いですから……」

レン「そうなのかー」

ポニテ「うーんと……えへへ!内緒!」

ツインテ「うぅ……隠し事は無しですよ~。一応ボク達も血反吐吐きながら頑張ったんですよぉ?」

ツインテは大げさにため息をつく。

ツインテ「まぁ……いいです。(ボクもなぜか性別詐称してる身ですし)それにしても、あの人……一体誰だったんでしょうか」

ポニテ「ふぇ?」

377: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:09:24.32 ID:Q1eanaE0
266

--墓地--

闘士「き、今日は、野宿か」

闘士は燃え残った小屋の残骸を集めて焚き火をしている。

賭博師「よっ。さっきの戦い見てたぜ。あんた強いねぇ」

調 師「……ぺこ」

そこに賭博師達がやってくる。

闘士「……み、見られてたのには、気付いてた」

ヒュー、と賭博師。

賭博師「まぁだろうな。なぁアンタ。団体戦出ないか?俺たちと組んで」

闘士「こ、断る」

闘士は賭博師達に背を向けたまま断った。

378: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:10:09.43 ID:Q1eanaE0
267

--墓地--

賭博師「おいおい……訳も聞かずに即答かよ」

闘士「お、お前、悪い奴だ。か、金の臭いしかしない」

調 師「……」

賭博師「とんだ言い草だなwwだがまちがっちゃいねぇ。オレは自分を良い奴だと思ったことは生まれてこのかた一度だってねぇ」

闘士「……さ、去れ」

賭博師「まぁ一応話聞いてくれよ。アンタ、変化師だろ?」

闘士「!」

賭博師「西の最大戦力、三本角。その候補の一人、変化師。大方その姿も変化させてるんだろ?なんであの闘士様の格好してんのかまでは知らないが」

闘士「……ち、違う。あ、あってるが違う」

賭博師「?」

闘士「お、おでは変化師……あの闘士おじさんの甥っ子だ!」

379: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:10:46.22 ID:Q1eanaE0
268

--墓地--

賭博師「ありゃま……」

闘士改め変化師「だ、だからこの姿は変化させてるわけじゃない。に、似てるだけ」

賭博師「なるほどね……じゃあ何であの闘士の名を語る必要が?」

変化師「お、お前に言う必要なんて、な、ない」

賭博師「……まぁいいさ。なぁ頼むよ、一緒に」

変化師「くどい!」

変化師はプレッシャー、特大の殺気を二人に放つ。
しかし賭博師は涼しい顔をして、

賭博師「あの子達危険だよな」

変化師「……?」

賭博師「あまりに未熟。下手をすれば大会で後遺症を残すかもしれない」

変化師「……い、医療班は、優秀だ。そ、そんなことは、ない」

賭博師「精神の話さ」

380: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:11:30.03 ID:Q1eanaE0
269

--墓地--

調 師「……」

賭博師「一生消えない傷が出来るかもだぜ?」

変化師「……お、脅してるつもりか?お、おでが三本角候補の一人だと知っておいて」

変化師はゆらりと立ち上がり賭博師達と向かい合った。

賭博師「……そんなんじゃないさ。ただあの子達に参加資格を渡した責任を取れと言ってるのさ」

変化師「っ」

賭博師「あんたは慈悲のつもりであの子達にあげたんだろうけど、失策だね。優しさはためにならないぜ?」

変化師「……」

賭博師「俺達と組め。そんであいつらの敵を少しでも削ってやろうぜ」

変化師「……」

381: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:12:06.80 ID:Q1eanaE0
270

--墓地--

賭博師「それにもしあの子達と当たっても、あんたなら上手くあいつらを倒せるだろうよ」

変化師「ぐっ……」

賭博師「優しさを施すなら最後まで、だろ?それでもあの英雄の甥なのか!変化師!!」

変化師は強く握り締めた拳を繰り出した。

ビュッ!!

賭博師「……」

その拳は賭博師の顔の前で停止する。

変化師「……わ、わかった、チームを組んで、やる」

賭博師「……ふっ」

382: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:12:35.07 ID:Q1eanaE0
271

--宿屋--

ツインテ「はぁ……結構疲れました。心なしか体内壊されると、一層……」

ドタタタ

ポニテ「ツインテちゃんツインテちゃん!!ここ露天風呂があるらしいよ!!行こうよ行こうよ!!」

レン「……私は?」

ポニテ「あ」

ポニテは動きを停止させる。
一番亜人と仲の良いとされる国、西の王国。
しかしそれも前戦争までの話。今は……。

ツインテ「……だ、大丈夫だと思います。さすがに西の王国の宿屋が入浴拒否なんてするわけが」

レン「……客は?」

ツインテ「っ」

383: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:13:02.38 ID:Q1eanaE0
272

--宿屋--

ツインテとポニテは黙ってしまう。
それを見たレンは、

レン「大丈夫二人とも。こんなこと今までだっていっぱいあった。気にしないで行って来て、私は濡れタオルで拭くにゃ」

そう言ってレンは二人の背中を押して部屋のドアを閉めた。

パタン

ツインテ「あ」

ポニテ「あう……タオルもまだ取ってないのにー」

ツインテ「……ポニテさん」

ポニテ「うし!露天風呂行こう!!」

ツインテ「!!ポニテさん!!」

ポニテ「ふぇ?何?」

ツインテはポニテに詰め寄った。

384: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:13:31.12 ID:Q1eanaE0
273

--宿屋--

ツインテ「そ、そんな無神経すぎます!!レンさん可哀そうじゃないですか!!一人ほっておくんですか!?嫌ですそんなの!!レンさんを一人にするくらいなら一日くらいお風呂を我慢することなんて」

ポニテ「?何勘違いしてるの?レンちゃんも一緒に行くんだよ」

ツインテ「……へ」

ポニテ「当たり前でしょっw私達仲間で友達なんだから!!」

ツインテ「え、いやでも、それは」

ポニテ「というか、最初から私は反対だったんだよ。亜人であることを隠して旅をするなんて。そんな窮屈なのは絶対おかしい」

ガシッ

ポニテは部屋のドアを掴むが開かない。

ポニテ「……」

部屋には鍵がかかっていた。

385: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:14:30.75 ID:Q1eanaE0
274

--宿屋--

ポニテ「レンちゃん、開けて」

シーン。
部屋の中からの返答は無い。

ツインテ「ポ、ポニテさん、無理に」

ポニテ「ツインテちゃん、ツインテちゃんのそのやさしさはよくないよ」

ツインテ「!!」

ポニテ「ツインテちゃんが一人で可哀そうだからお風呂にはいかない。でも今はそっとしておこうとかそういうんでしょ?」

ツインテ「……っ」

ポニテ「それはツインテちゃんが怖がって逃げてるだけじゃないの?」

ツインテ(ぽ、ポニテさんが真面目だ!!ちゃんと思考してる!!)

386: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:14:59.76 ID:Q1eanaE0
275

--宿屋--

ポニテ「というわけであけます。筋力強化レベル2」

バキっ

いともあっさりドアを破壊して中に入るポニテ。

レン「!?」

レンはベッドの上で丸くなっていた。

ツインテ「あ、あー!無理しないでくださいよぉ!」

レンは戸惑いの視線をポニテに向けると、ポニテが手を差し伸べてきた。

ポニテ「行こうポニテちゃん!露天風呂なんだよっ!!」

ポニテはレンがいつまでも手を掴んでこないので首根っこを掴んで持ち上げた。

レン「にゃ、にゃー!!」

387: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:16:12.50 ID:Q1eanaE0
276

--宿屋--

ズンッズンッ

ポニテはレンを担ぎ、ツインテはその後ろからタオルなどをもって付いていく。

レン「にゃ、にゃっ!だ、駄目ポニテ、み、みんなに、みんなにみられ、る」

ポニテ「いーのいーの!堂々と行くんだよっ!!」

宿の店主「あー!ちょっとちょっと!お譲ちゃん達、亜人なんて連れて来ちゃだめじゃないか。って、さっきの、帽子の子?」

ドスドスと音を立てて店主が駆け寄ってくる。

宿の店主「隠してたの?こういうの困るなー……。お客さん達に迷惑がでちゃうじゃないかぁ」

レン「……」

宿の店主「はー。だいたい子供だけで泊まりたいなんていうからおかしいと思ったんだよ。こんなことなら泊めるんじゃなかったなー」

ツインテ「っ!!そ、そんな言い方って」

ポニテ「店主……焼いて喰うぞ」

388: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:17:02.56 ID:Q1eanaE0
277

--宿屋--

宿の店主「へ?」

店主は周囲の温度が急激に上がっているのに気付く。

ポニテ「黙って聞いてればべらべらと好き放題……。レンちゃんが一体誰に迷惑をかけたって言うんだ!!」

ポニテは険しい剣幕で店主にくいつく。

宿の店主「や、そりゃそうなんだけど、でも気にするお客さんはいっぱいいるんだよ!」

ポニテ「どこにいるの?会わせて。ちゃんと話し合う」

宿の店主「会わせて、って言われても……」

弓女「おーそうだそうだ。私達は別にきにしねーぞ」

宿の店主「!?」

その場に三人の浴衣姿の大人が現れた。

ポニテ「あっ!!船の!!」

弓女「よー奇遇だな、ちっこいの達w」

389: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:17:49.56 ID:Q1eanaE0
278

--宿屋--

ツインテ「弓女さん達も一緒の宿だったんですか」

盾男「うむ。中心に近い宿はどこももう空いて無くてな。だから仕方なく外れのボロ宿屋に泊るはめになった。君らもその口だろ?」

ポニテ「あははーw一緒だねー!!」

斧女「ぼろい上に食事のレベルも平均以下、なのに大会使用の割高値段設定……その上店主の性格に難があるのでしたらいっそ野宿の方がましなのではと……」

宿の店主「いっ!?」

弓女「あー、かもなーw」

盾男は店主に歩み寄る。

盾男「どうかな店主。ここにいる6人は問題無いと言っている。6人だ。今日のこの宿屋の宿泊客の過半数を占めている」

宿の店主「な、なんで宿泊客の数を」

盾男「全員がキャンセルしたら売上的にも困ると思うし、ここは店主の心の広さを見せてみてはいかがか?」

宿の店主「……う」

390: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:18:51.85 ID:Q1eanaE0
279

--宿屋、女子脱衣所--

ポニテ「やー!ありがとねーお姉さん達ー」

弓女「気にすんなってー。どうせなんくせつけて料金を上乗せしようとか考えてたんだろうぜ。あの手の顔の男はみんなそうだ」

斧女「下品な顔でした。覗き穴が無いかどうかもチェックしておかないといけませんね」

レン「にゃ、にゃー……私」

弓女「ん?何してんだよ、ほらさっさと脱げって!」

レンの服をぽいぽいと剥いでいく弓女。

レン「にゃにゃにゃー!!」

斧女「温泉はみんなで入るものです。一人風呂もそれはそれでおつなものですが、みんなで入る良さに比べたら微々たるものです」

ポニテ「そうだよ!レンちゃん!!」

レン「……レン、耳とか尻尾の毛が……お風呂汚しちゃうかもしれないよ?」

弓女「気にしねーって!!私らだっていろんなとこの毛が抜けるっつーの!!」

ポニテ(そういやなんだかなんだ言っていつも湯船に入らなかったのはそういうこと……)

斧女「あら、そういえばツインテールの子はどうしたのですか?」

ポニテ「ふにゃっ?」

391: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/19(金) 02:22:23.01 ID:Q1eanaE0
280

--宿屋、男子脱衣所--

ツインテ「はぁよかった。本当によかったです。レンさんもちゃんとみんなとお風呂に入れることになってw」

盾男「う、うむ」

ツインテ「改めてお礼を言います、ありがとうございました。おかげでポニテさんが武力で解決しなくて済みました!」

盾男「う、うむ」

ツインテはぺこりと盾男に頭を下げる。

ツインテ「ふぅ。……それと久しぶりにゆっくり男風呂に入れそう。よかったぁw」

盾男「ぶっ!!??」

そう言うとツインテはおもむろに上着を脱ぎ始める。

盾男「ちょ、ちょっと待て君ィィィーーーーー!!何をしているー!?!」

ツインテ「へ?何をって、服を、脱いでるんですけれど」

盾男「まてまてまてまて!!何を考えてるんだ!!私は確かに紳士的なポジションをやってのけられる男だ!もちろん特殊な 癖も無い!!だが」

キラッ

盾男「が、がああああ!!肌が!真珠のような肌が私を魔道にいいいいいいいい」

ツインテ「?おかしな盾男さんですねw」

盾男「駄目だ駄目だ駄目!!いくら相手が子供だろうと、駄目だ!!この年齢はさすがにアウトだ!そして犯罪だ!絶対に、絶対に一緒に入ると化そんなことがあってしかるべきではよし入ろうではないか」

そこには盾男のすばらしい笑顔が!!

※体験版ではお風呂シーンがスキップされます。

403: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 22:56:20.28 ID:sq8Xxj.0
281

--宿屋--

レン「でね、弓女にしっぽ握られた」

ツインテ「あらあらwwそれから?」

レン「あと、耳も噛まれたの」

お風呂上がり。
ツインテ達は自室の窓を開けて涼んでいた。
レンは俯せの格好でベッドに横たわり、ツインテはベッドに腰掛け、櫛でレンの髪の毛の手入れをしている。
レンは頭をツインテに預けながら、風呂で起こった事を包み隠さず報告していた。石鹸の色だとか、桶の形だとか、それこそ些細なことでさえ。
その恥ずかしさと嬉しさが入り混じった表情やうねうねと動く尻尾を見て、ツインテはつい嬉しくなってしまい、話があまり頭に入ってこなかった。

ポニテ「それはそうとさーツインテちゃん」

ツインテ「?はい?なんでしょうか」

ポニテ「なんで……男湯行ったん?」

そんな微笑ましい、ほのぼのムードを崩壊させる質問が飛んできた。
ポニテの表情は至って真剣、隙あらば喉笛に食い付こうと身構える猛獣にも見えた。
……あながち間違いではない。

ツインテ「……」

受けを誤れば……必死。
どうすれば誤魔化せる?どうしたらこの獣を納得させることが出来るだろうか……。
否、ここが真実を告げる絶好のチャンスなのではないか。
ツインテは櫛を置き、唾を飲み、キッ、と顔に力を込めてポニテに向かい合った。

ツインテ「……ボクは」

その時確かに聞こえたのだ。神の声が。
神は言っている……今はいうべきではないと。

ツインテ「……お、男湯に入りたかったので……」

ポニテ「……ビ  」

確信を持って言える。確実に受けを間違えた。

404: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:00:52.33 ID:sq8Xxj.0
282

--宿屋--

ポニテ「ビ  !デコじゃないけどビ  !」

ツインテ「ち、違いますよ!!ビ、ビビ……ッチじゃないです」

思わず赤面してしまうツインテ。

ポニテ「はしたない女の子だよツインテちゃんは!!嫁入り前の女の子が……なんてはしたない!!」

ツインテ「ぼ、ボク嫁入り前の女の子じゃないですから!!……ていうかポニテさん、そういうのとか気にしないような、もっとおっぴろげな人だと思ってました」

ポニテ「なんですて!?嫁入り前じゃない!?既婚!?」

ツインテ「違うそっちを否定したんじゃない!!」

ポニテ「誰なの相手は!!吐いちゃいなさい!!」

レン「はい」

パッと挙手する猫。

ポニテ「まさかのレンちゃん!!」

ツインテ「違いますよー!!」

ポニテ「私はアッシュ君だと思ってたのに」

ツインテ「そこはプラスとプラスです!!」

ポニテ「なにが?」

405: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:03:11.33 ID:sq8Xxj.0
283

--宿屋--

ポニテ「あぁそうだ、伝言があったんだ」

ツインテ「?伝言?誰からですか?」

ポニテ「弓女おねーさん達!団体戦で当たっても手加減無しだからなって!」

ツインテ「!あの人達も出るんでしたか……まぁあの船に乗ってた冒険者は、ほとんどの人が出るつもりでしょうけど」

レン「ツインテは、盾男と会話しなかったの?」

ツインテ「うーん、それなんですが顔も合わせてくれませんでした。ずっとそっぽ向いて鼻血を……」

ポニテ「はなぢ?」


--露天風呂--

宿の店主「……なんで男湯が血の池になってるんだ……」

406: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:06:08.44 ID:sq8Xxj.0
284

--宿屋、盾男達の部屋--

盾男「……」

弓女「なー、こいつ蘇生しなくていーんじゃないか?あんな幼い子と風呂入って出血死って……」

斧女「同感です。血液なら回収しに行かなくても輸血でなんとかなりますが、果てしなく蘇生してやろうという気持ちが起きません。紳士だと言うから、お金節約の意味も込め同部屋にしましたが、もはや信用に足りません」

弓女「……だな」

二人は盾男の死体の扱いについて考えていた。

弓女「とりあえずこいつ外だして寝ようぜ」

斧女「そうしましょう」

盾男「……」

どさっ

盾男の死体が部屋の外に投げ捨てられる。

407: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:10:00.42 ID:sq8Xxj.0
285

--路地裏--

アッシュ「くそ、まだ夜風が寒いなマジ死ね」

金髪「うぅ、路地裏だからまだマシなはずなんすけど、海に近いからですかねぇ。あばばば」

金髪はガクガクと震えて鼻水を垂らす。

アッシュ「……」

アッシュは上着を広げる。

金髪「うわ、不審者のポーズっす!ほぉーれお嬢ちゃん、みたいなっ!」

アッシュ「ち、違う!!……くそ、似合わないことはやるもんじゃねぇ」

金髪「……」

金髪はそっと近寄ってアッシュと肩を寄せる。

金髪「……うふふ、あったかいっす」

アッシュ「結局入んのかよ」

408: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:13:17.33 ID:sq8Xxj.0
286

--路地裏--

金髪「えへへ、やっぱり優しいっすね……」

アッシュ「や、優しくなんてないんだからねっ!?」

金髪「気持ち悪いっす」

アッシュ「……ほらこれも」

アッシュは巻いていたマフラーを解いて、金髪の首に回す。

アッシュ「ふん。俺は優しく無いから完全に渡したりはしないんだ。だから半分貸してやる」

金髪「ひぃ!リア充がいるっす!!」

今年も寒くなってまいりました……。

409: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:16:30.76 ID:sq8Xxj.0
287

--大木--

チュンチュン

新しい朝が来た。
賭博師達は大きな木の下で夜を越したようで、小さなテントと焚き火の跡があった。

調 師「おはようございますご主人様。朝ごはんの用意ができました」

賭博師「……ん、んぅ……あぁごくろ。ふぁあ」

あくびをしながら、腹をかきながらテントから出てくる賭博師。

賭博師「あー、朝飯なによ」

調 師「ねずみでちゅ」

ガシャーン!!

受け取った皿を投げ捨てる賭博師。

調 師「あー……おいしいのに」

賭博師「無駄にムニエルとか、凝ってんじゃねーよ!!昨日はGだったし……少しはまともなものにしてください!!」

切実な願いだった。

410: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:18:12.36 ID:sq8Xxj.0
288

--大木--

調 師「では、はいこれです」

賭博師「ん?」

大きな皿にこんもりと乗せられた土くれがそこにはあった。

賭博師「……調 師ぃ、そういうのは」

調 師「土ではないです。ねちゃねちゃしているし、芳しい匂いがしませんか?」

賭博師「む」

確かに言われてみれば、それから良い匂いがするのだ。

賭博師「むぅ~。これは一体なんだ?」

調 師「それは……」

調 師はちょこんと頭を下げスカートを両手で広げてメイドのポーズ。

調 師「ご主人様の舌で味わってみてはいかがでしょうか?」

賭博師「むむ。中々小粋な返しじゃねえか。どれ」

賭博師はそれをわし掴んで口に運ぶ。はたからみたらまるでぼた餅を食べているかのよう。

411: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:20:10.21 ID:sq8Xxj.0
289

--大木--

むちゃむちゃ

賭博師「おっ」

これは……。

賭博師は確認のためにもう一度皿に手を伸ばす。

むちゃむちゃ

賭博師「んぐ」

賭博師は何度も租借し味わった。そして飲み込む。

賭博師「調 師よ」

調 師「はい、ご主人様。お分りになりましたか?」

賭博師「あぁ、多分な」

賭博師はにやりと笑って答えた。

賭博師「これ●●●じゃね?」

調 師「●●●です」

412: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:21:36.38 ID:sq8Xxj.0
290

--大木--

賭博師は皿を持ちあげ、さながらパイ投げのように調 師の顔にぶつけた。

べちゃ

賭博師「あ、アフォかー!!食うまでわからなかったわー!香牛の糞かこれ!!あまりにいい匂いだから香水の原料になるとか言う……」

調 師「あ、朝からス『見せられないよ!』イだなんて……」

身をよじらせ頬を染める調 師。

調 師「と言いますか、味わって排泄物だとわかるということは以前にも食したことがあるのですか?」

賭博師「実は俺のこと嫌いでしょ調 師さんて」

調 師「いーえ?滅相もございません。だ・い・す・き!」

賭博師「……」

調 師「……」

賭博師「とりあえず吐いてくるぜ……」

調 師「いってらっしゃいませ」

賭博師は大木の下まで歩いていくと盛大に戻した。

賭博師「おろろろろろろろろ」

そこに既に吐瀉物があったのは何故なのか。

413: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:23:46.46 ID:sq8Xxj.0
291

--宿屋--

ポニテ「●●●とかゲロとか下品なんだよっ!!」

ツインテ「え、え?いきなりどうしたんですか?……」

レン「ふぁあ」

三人は食堂に集まり朝食を取っていた。

ポニテ「288~290を読んでみればわかるよ!」

ツインテ「発言がメタ過ぎる!!」

パタパタ

食堂に新たな人影が現れた。

弓女「おっ、早いな。おはよー」

斧斧「おはようございます、皆さん」

ポニテ「おはよーお姉さん達!!」

ツインテ「おはようございます」

レン「……おはよ」

414: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:24:51.64 ID:sq8Xxj.0
292

--宿屋--

弓女「今日からだな団体戦。よく眠れたか?」

ポニテ「うんっ!ぐっすり!!」

ツインテ「……ば、万全とはいえないです」

レン「……うん」

斧女「店主、二人分の朝ごはんを頼みます」

宿の店主「おはようございます。了解しました……ん?二人分?三人分じゃないのですか??」

弓女「あぁいい、二人分だ。もう一人はそろそろ意識を取り戻す頃だろうからな」

ツインテ「意識??」

415: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:25:51.08 ID:sq8Xxj.0
293

--宿屋--

斧女「そういえば聞くのを忘れていましたが、貴方達のブロックは何ですか?」

食事の最中、そう斧女が尋ねた。

ポニテ「ブロック?何それ?」

弓女「何それってお前……登録した時に言われただろ?紙も渡されただろうし」

ポニテ「あぁ!なんか紙は貰ったよ!!ね、ツインテちゃん!?」

ツインテ「…………………………………………………………」

ポニテの横でツインテはガクガクと震えていた。

ポニテ「……どうしたのツインテちゃん」

ツインテ「……私達、闘士さんから出場枠を譲ってもらいましたけど、受付での登録が済んでませんよね?……」

ポニテ「そんなのいるの?」

ツインテ「……多分」

レン「にゃあ」

416: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:26:41.98 ID:sq8Xxj.0
294

--中心街--

ツインテ「はっ、はっ、はっ!!」

ツインテ達三人は早朝の町中を走る。

ポニテ「うわーん!お腹減ったー!」

レン「……」


--宿屋、10分前--

弓女「なんかめちゃくちゃだなお前ら……」

斧女「しかしそれなら早く行ったほうがいいでしょう。譲るという行為がシステム上許されることなのか定かではありませんが、開会式の直後に全チームを紹介するようです。登録したチームと違うとなると……」

ガタっ

ツインテ「い、急ぎましょうポニテさん!!登録しに行かないと!!」

ポニテ「えー!!まだ朝ご飯食べてないのにー!?」

宿の店主「……すでに6人前平らげてますけれど」

417: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:27:51.19 ID:sq8Xxj.0
295

--コロシアム、受付--

ツインテ「あ、あの!!」

受付嬢「?あら昨日のお譲ちゃん達」

走ってくるツインテ達を受付嬢が視界に入れる。

ツインテ「あのっ、あのっ!」

受付嬢「……残念だけど当日なら参加出来るというものではないのよ?キャンセルも無いし、キャンセルがあったところで今更組みこめないの」

ツインテはポケットの中に手を突っ込み、ぐしゃぐしゃになった参加票を取りだした。

受付嬢「えっ!?それ……」

ツインテ「ぼ、ボク達、この人達の代わりに出ることになったんです!!」

418: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:29:12.10 ID:sq8Xxj.0
296

--コロシアム、受付--

受付嬢「……盗品?」

ツインテ「ち、違います!!その、と、闘士って名乗る人に譲ってもらったんです。……多分偽名なんでしょうけど」

受付嬢「闘士!?ちょっとそれ見せて……」

受付嬢はツインテから参加票を受け取るとそれに目を通していく。

受付嬢「……なるほど。確かにあの人はこんな大会なんて出たがっていなかった……」

ツインテ「だ、駄目……なんでしょうか?」

受付嬢(でもその嫌いな大会を子供達に押しつけるほど貴方は薄情ものではない……熱意に負けたのかな)

ポニテ「もふもふ。ふインテひゃんー。とうろくおふぁったー?」

レン「やだー!!レン食べちゃ駄目ー!!」

食人鬼がコロシアムに近づいていた。

419: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:29:38.31 ID:sq8Xxj.0
297

--コロシアム、受付--

ツインテ「あーーーーー!!何してるんですかポニテさんー!!レンちゃんをー!!」

ポニテ「ひ、ひがうよ!!ひょ、ひょっと味見をと……」

ポニテはレンの頭にかじりついていた。

レン「にゃあー!!にゃー!!」

泣きながら逃れようとするレン。しかし地味に両手を拘束しているポニテであった。

ツインテ「鬼!!悪魔!!人手無しです!!」

受付嬢「……大丈夫なんだろうかこのメンバーで」

420: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:30:12.02 ID:sq8Xxj.0
298

--コロシアム、受付--

受付嬢「こらあなたたち、こっちに来て話を聞きなさい」

ツインテ「はうっ!?」

ポニテ「ほえ?」

レン「にゃああ……唾液べとべと」

受付嬢「……本当は大会運営上のルールにおいてグレーゾーンだけど……変化師がそう望むのであれば私がなんとかしておきます」

ツインテ「……え?」

ポニテ「えええ!!よくわかんないけど、出てもいいんだよね!?」

受付嬢「えぇ。ちなみに失敗した場合は私の命が無いけれどね」

ツインテ「な、なんという……」

421: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:31:13.16 ID:sq8Xxj.0
299

--コロシアム、受付--

受付嬢「まぁ大丈夫だと思うわ。それで貴方達のチーム名だけれど、今登録されてるのはガチムチマッスルズなわけなんだけど。これは変化師とその部隊のメンバーなのかしら……」

ポニテ「やだそんなのっ!!名前はもう決めてあるんだ、『ユーシャーズ』ってね!!」

受付嬢「!?ゆ、勇者?」

ポニテ「うんっ!!」

受付嬢(勇者って、そんなまさか……いやでも変化師が参加資格を譲るくらいの力があるってことは本当に勇者だってことなんじゃ?え?嘘わかんない……)

ツインテ「あはは……」

受付嬢「!そうだ!!本当に勇者だと言うのなら、どこかの国の勇者証明書を持っているはずよ?見せて!!」

ツインテ「あ、あれですか。ちょっと待って下さい」

ごそごそと探しだすツインテ。
しかし、

ツインテ「……あれ、無い」

勇者証明書を紛失した。

422: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/23(火) 23:32:01.32 ID:sq8Xxj.0
300

--コロシアム、受付--

受付嬢「……はぁ」

受付嬢はおおきくため息をついた。

受付嬢(まぁそんなことだろうと思ったわ。そんな簡単に勇者がいてたまるものですか。しかもこんな子供が)

ポニテ「ほ、本当なんだからっ!!」

受付嬢「はいはい。とりあえずユーシャーズで登録を済ませておきます。開会式は1時間後だからそれまでゆっくりしてたら??」

ポニテ「うわーん!信じてないー!!」

ツインテ「え……どうして?ボク肌身離さず持ってたのに……なんで」

レン「ツインテ、気にしないで」


そして一時間後。

実況「それではお待たせいたしました!!武術大会 in 西の王国コロシアム、団体戦の開会式を始めたいと思います!!」

ワーワー!!

ポニテ「やっと二部のサブタイトルまで来たね!!」

ツインテ「メメタァ」

431: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:00:53.50 ID:3qPZ6Ho0
301

--コロシアム--

西の王「……以上で私の話は終わる。みんな、互いの誇りをかけて存分に闘うがいい」

ワーキャー

実況「西の王様、お話ありがとうございました!!次に出場チームの紹介に移りたいと思います!!」

ワーキャー

実況「まずはAブロックです!!なぜかこのブロックはざわざわしたチームが集まっていますよぉ!!最初のチームは、チーーーーム、かいじいいいいい!!!!」

ざわ……ざわ

実況「リーダーのかいじさんを筆頭にギャンブル狂がそろっているチームです!!負けたら焼土下座をすると意気込んでいるそうです!!」

負け前提……ざわ

解説「駄目っ……!」

実況「そしてなにがあったのかは知りませんが、紆余曲折を経てAブロックに登場、チーーーーーム、ギャンブラー!!」

ワーキャー

賭博師「Aブロックか。見てなかったわ」

実況「このチームにはなんと!我が国の変化師が入っています!優勝候補の一角と言っていいでしょう!!」

変化師「……」

432: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:01:44.28 ID:3qPZ6Ho0
302

--コロシアム--

ツインテ「!!あの人……やっぱり闘士さんじゃなかったんだ。ていうかなんで出場して……」

ポニテ「あれれー?おかしいのー!もしかして本当は出たくてたまらなかったのかな?」

レン「にゃー」

実況「というわけで癖者ぞろいのAブロック、全8チームでしたー!!続いてBブロックの出場チーム!!……こ、このブロックは死のブロックになると思われます……ま、まずは個人戦準優勝の包帯女選手率いる帰郷組チーーーーーム!!!」

ワーキャー!!

実況「本来優勝候補筆頭、と言いたいのですが、このブロックの出場チームは恐ろしいものぞろいです……。2チーム目はち、チーム機動六花……」

ざわ……

包帯女「辞退します」

433: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:02:19.74 ID:3qPZ6Ho0
303

--コロシアム--

実況「というわけでね、魔法少女ブロックでしたねBブロック。中にはね、正統派な魔法少女さんたちもいるので危ないかなー?なんて気もしますけどね。まぁ、ね。安全に終わるといいですね大会。以上全8チームでしたー!!」

解説「絶叫オフにも行きました!!」

実況「個人的なことはおやめください。では続いてCブロックの出場チーム!!このブロックは特にしばりもなければネタも無いみたいですね」

解説「たぶん勇者しばりにしようと考えたのですけど、勝てそうな相手が見つからなかったんだと思います」

実況「おおっとネタばれだー!!」

どっ

ポニテ「どっ、じゃないよ」

実況「このブロックの紹介は別にいいですね。次行きましょう」

ツインテ「ぼ、ボク達のブロックが飛ばされた……」

435: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:03:09.05 ID:3qPZ6Ho0
304

--コロシアム--

実況「そしてそして!!最後のDブロックの紹介です!!まずは、おぉすごく懐かしいですね。レオタードに身を包んだ女性怪盗!!猫目!!」

ワー北条ーキャー

実況「下手をすると知らない人もいらっしゃるんじゃないでしょうかね。都市狩人ですら古い感じですよね」

解説「全巻持ってます」

実況「続いてチームウインドー!!このチームには有名人がいないですね。急造のチームなんでしょうか?是非ともがんばってもらいたいものです!!」

盾男「俺らのチームだ」

ポニテ「あ!おねーさん達!!」

弓女「私らが当るとしたら準決勝か。それまで負けんなよ?」

ポニテ「当然!!」

ツインテ「盾男さん顔色悪いですね」

実況「以上、4ブロック、全32チームの紹介でした!!続いて校歌斉唱!!」

ツインテ「どこの!?」

436: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:04:21.55 ID:3qPZ6Ho0
305

--コロシアム--

実況「さて一回戦は今日の正午から行われます!!5日間にわたって繰り広げられる夢の祭典、ここに開催いたします!!」

ワーキャー


--コロシアム、外--

一時間後。

ツインテ「ボク達の試合は今日の七試合目らしいですね。それまでまだ時間があるかと」

ポニテ「そなの?じゃあご飯タイムだね!!」

ツインテ「またですか……それより勇者証明書を探したいのですけれど……」

ポニテ「よくない?そんなの」

ツインテ「よくないですよ!!」

437: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:05:21.73 ID:3qPZ6Ho0
306

--コロシアム、外--

???「やぁ幼女達」

ざりっ

ツインテ達の前に黒い服を着た三人組が現れる。

???「俺らはチーム義賊。そんで俺がそのリーダーの義賊だ」

義賊と名乗った青年は手に持っていた肉を食いちぎる。

ツインテ「チーム義賊……私達の初戦の相手」

???改め義賊「そゆこと。まぁ君らも思う所があって出場してるんだろうから辞退しろだなんて野暮なことは言わねぇさ。でも手加減できないかんな?覚悟しとけよ?」

ツインテ「……はい」

ポニテ「うんっ!!全力全力っ!!」

義賊「じゃぁ……戦場で」

義賊達はその場から去っていく。

438: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:06:14.42 ID:3qPZ6Ho0
307

--コロシアム、外--

賭博師「ほーん。最初の相手は義賊か」

そこに賭博師と調 師はケバブを食べながら現れた。

ポニテ「あっ!!船で逃げ出したずる男!!っていうかなんでみんな食べ物食べてるのっ!!」

賭博師「ずる男って……変なネーミングつけてくれちゃってまぁ」

調 師「ずるムあごぷっ」

調 師の口にケバブをねじ込む賭博師。

賭博師「……まぁあれだ。気を付けな。あいつらは結構有名だからな」

ツインテ「有名な義賊って……」

賭博師「んー。でも腕は立つって噂だぜ」

ツインテ「そう……でしょうか?」

439: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:07:23.12 ID:3qPZ6Ho0
308

--コロシアム、外--

ポニテ「うん。楽勝に行けそうだよね!!」

賭博師「……まじかい」

レン「……問題無い」

調 師「……」

賭博師(ま、んなの当たり前か……)

ツインテ「あれ、そう言えば賭博師さん達試合は……」

賭博師「あぁ勝ったよ。相手はチームシルバーゴールドだったかな。やっぱり三本角候補だけあってすごいわ。変化師一人で勝っちまった。相手が戦闘タイプじゃなかったんだけどもな」

調 師「私達は見てただけでした」

ポニテ「そっかーやっぱりあの人強いなー」

賭博師「……言いたいのはそんだけだ。じゃあ当ったらよろしくな」

そう言うと賭博師と調 師は去って行った。
ツインテ達に背を向けた賭博師は内ポケットから紙を取りだす。

賭博師「……勇者の力……か」

賭博師が取りだしたものは勇者証明書だった。

440: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:08:40.37 ID:3qPZ6Ho0
309

--コロシアム、外--

大会スタッフ「こんなところにいましたか!!チームユーシャーズさん、そろそろ出番ですので用意してください」

ツインテ「え、え!!ももも、もうですか?心の準備が……」

ポニテ「いよっしゃあああ!!やっと出番だああー!!!」

レン「にあー」

弓女「おー今からかー頑張れよー!ポニテ達ー」

衣服がボロボロになった弓女達がコロシアムから出てきた。

ツインテ「あ、闘ってきたんですか。どうでしたか?」

弓女「んー。そんな危なくは無かったかな」

斧女「勝ちました。確か相手はポルターガイストがどうのこうのっていう……」

レン「すまーと」

441: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:09:19.27 ID:3qPZ6Ho0
310

--コロシアム--

実況「さぁ次は一回戦第七試合です!!チーム義賊VSチームユーシャーズ!!」

ざわ

実況「あ、と言っても勇者とは全く関係無いそうです!!」

どっ

ポニテ「どっ、じゃないよ!」

義賊「さぁやろうぜ……幼女共」

実況「あ、ちなみに義賊さん達には逮捕状が出ていますので、試合終了と共に兵士達が捕まえる予定です!!」

義賊「……まじかよ」

ツインテ「……早く逃げた方がよくないですか」

442: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:10:00.78 ID:3qPZ6Ho0
311

--コロシアム--

実況「それでは、試合開始!!」

義賊「行くぞ、インビジブルフォーメーション」

義賊右「サー」

義賊左「イエッサー」

ビュゥン

ツインテ「!!消えた!?」

義賊達は開始早々姿を消した。

ポニテ「うおー!おもしろーい!!」

ツインテ「お、おもしろがってる場合じゃないですよ!!どうするんですか!!」

レン「……錬金ツール、起動」

レンは工場を呼び寄せる。

443: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:11:01.44 ID:3qPZ6Ho0
312

--コロシアム--

義賊(!?簡易用錬金術工場だと!?……)

レン「これでスキル看破の眼鏡つくる」

ツインテ「あ、な、なるほど!!でもそんなに相手が待っては」

義賊(そうさ、スキル、盗む!!)

シャッ

義賊はレンのアイテムを盗もうと手を伸ばす。

ドシュっ

ポニテ「よっと」

義賊「!?」

ツインテ「ひっ!?」

ポニテの剣が見えない何かを切り裂く。
そして、右手首が宙を舞った。

444: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:11:36.98 ID:3qPZ6Ho0
313

--コロシアム--

実況「おおーーと!!ポニテ選手!!見えなくなった義賊チームにいきなり深手をおわせたああああ!!」

ワーキャー

義賊「なっ!!て、てめぇ……俺達の姿が見えてるのか!?」

ポニテ「うんにゃ。全く見えてないよ」

義賊「ふ、ふざけやがって!!全く見えないやつが出来る攻撃じゃない!!」

ポニテ「ううん、本当に見えないよ。でも見えないだけ」

ポニテはいつのまにか抜いた二振りの剣を構える。

ポニテ「そう見えないだけ。その代わりおにーさん達が忍ばせてる足音は聞こえるし、殺気もちゃんと感じてるよ」

義賊「なっ!!」

義賊右「ど、どうしますかリーダー……」

義賊(ふざけんなよ……いくらスキル消音を使って無かったからって俺らの足音が聞こえるだなんて……そんな)

ポニテ「それに」

ポニテは怪しく笑う、

ポニテ「おにーさん達……おいしそうなニオイガスルシ……」

ツインテ「逃げてー!!義賊さん達逃げてー!!」

445: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:12:34.22 ID:3qPZ6Ho0
314

--コロシアム--

義賊「匂い……試合前喰ってた肉のことか……くそっ!!犬並の嗅覚かよ!?インビジブルフォーメーションパート2!!散開しろ!!」

義賊右「サー!」

義賊左「がふっ!!」

ズバシュッ

義賊「ん?義賊左!?どこにいる!?見えねぇんだから返事をしろ!!」

ポニテ「……ふぉふぉじゃないの?」

ポニテは何かを咥えたまま空を見上げているような体勢だ。
そして、

義賊左「あがっ……」

ブゥゥン

スキルが解除され義賊左が現れた。ポニテに腹を噛まれた状態で……

ポニテ「エーステ(erst)」

446: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:13:23.09 ID:3qPZ6Ho0
315

--コロシアム--

ビチャッ

ポニテは義賊左を吐き捨てる。

観客「ひ、ひー!!あいつ人を食ったぞー!!」

パニックになる観客達。

ポニテ「食べてない食べてない。歯で攻撃しただけだよw」

ベロリと口の周りの血を舐めるポニテ。

ツインテ「せ、説得力がありません……」

義賊「……っ!!あいつは駄目だ!!残りの二人を狙う!!リーダーは確かツインテって名前だ。そいつを狙う!!」

義賊右「サー!」

ポニテ「リーダー!?ツインテちゃんいつの間にそんなおいしいポジションを!!ひどいや!!レッドは私がやるって思ってたのに!!」

ツインテ「い、言うてる場合ですか!!登録の時に仕方がなかったんですぅ!!」

447: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:14:39.65 ID:3qPZ6Ho0
316

--コロシアム--

実況「せ、凄惨な戦いになってまいりました……。しかし、リーダーがリングアウトするか戦闘不能になるか、はたまた降参しない限り勝敗はつきません!!」

ツインテ「い、一番弱いボクがリーダーって、やばくないですかっ!?」

ポニテ「いーなー!!私も集中攻撃されたいー!!」

義賊右「くらえっ!!」

ツインテ「!?」

見えない攻撃がツインテを捕え
バクっ!!

ポニテ「あおん」

その動きを追跡して捕食するポニテ。

義賊右「ぐはっ!!あ、後は頼みました……リーダ……」

レン「ツインテ、アイテムできたー」

ツインテ「もうそれどころでは……」

ツインテ達の足元は血で出来た水たまりが……。

448: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:15:28.82 ID:3qPZ6Ho0
317

--コロシアム--

ポニテ「あぁと一匹ぃ」

ポニテが口を開くと義賊右が闘技場に落下する。
口からは唾液と血が入り混じった体液がぽたぽたと……。

義賊「こ、こいつ、鬼か……っ!!そうだ!こいつは鬼だろ!?鬼に違いない!!」

ポニテ「ひひひひどいいなああぁ、れれっきとしたああにににんげんだだだああぁあよおおお」

ツインテ「ひいいいいいいい!?」

レン「レン怖い」

ポニテは剣を投げ捨て四足移動をし始める。

ポニテ「もううう一匹はあどこだあああああ?」

解説「ここでEVAよりダマを思い出す私はハレグゥマニアです」

449: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:17:12.71 ID:3qPZ6Ho0
318

--コロシアム--

義賊(こりゃまじでリーダーだけを狙わなきゃだな!!ガキだと思ってたけどとんだ化物だ!!)

義賊はポニテから遠ざかり反対方向からツインテを狙う。

ヒュンッ!!

レン「だめ」

義賊が接近するよりも早く、レンが防御姿勢に入る。

義賊(!?あいつも俺の位置に気付いて!?)

レン「錬成、超大鎌」

レンの体の数倍はあろうかという大きな鎌が出現し、レンはそれを担ぐ。

義賊「!?錬成がはやっ!!」

レンは敵の位置に検討を付けて大鎌を振り抜いた。

ズバシャッ!!

450: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:18:27.13 ID:3qPZ6Ho0
319

--コロシアム--

実況「……え、えーっと……義賊選手が胴体真っ二つとなりましたので試合終了ーー!!視聴者ももう勘弁してくれと言わんばかりの血みどろの試合に幕が下りましたー!!勝者、チームユーシャーズ!!」

わ、わー

解説「うぅむ。大穴かもしれませんね。このチーム」

実況「おっと!?解説さんが真面目な顔をしているぞお!?このチームはどこまで勝ちぬけるのか!?がんばれチームユーシャーズ!よく闘いましたチーム義賊!!両チームにもう一度大きな拍手を!!」

ワーパチパチパチ

実況「なおチーム義賊が目を覚ます場所は牢屋の中でございます!!」

どっ

ポニテ「このノリうざいねww」

ツインテ「ボク何もしなかったですね」

451: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/11/27(土) 02:19:26.50 ID:3qPZ6Ho0
320

--コロシアム--

スタッフ「お、お疲れ様でしたー。明日もがんばってくださいー」

弓女「おーう、やっぱつえぇじゃねぇかポニテww」

ポニテ「えへー!ありがとーう!!」

ポニテは駆けよって弓女に抱きつく。

弓女「うげっ。こらこらこら、血がついちゃうだろ」

斧女(……錬金術師の強さは錬成したものの質とスピードで測れる。そのうちのスピードだけなら既に大錬金術師レベルかもしれない……レン、恐ろしい子)

レン「にゃー。おなかすいた」

盾男「では飯でも食いにいくとするか!」

ツインテ「あ、盾男さんいたんですかw」

460: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/06(月) 23:39:42.12 ID:maMBzFk0
321

--酒場--

ポニテ「きゃほー!ご飯いっぱいあるー!!」

テーブルはたくさんのご馳走で埋め尽くされている。

ポニテ「いいの!?みんな食べていいの!?」

弓女「そのみんなに私たちが含まれてなきゃな……」

ツインテ「なんで食事するだけで死活問題になってるんでしょう……」

レン「にゃあー」

斧女「今日は盾男さんのおごりですのでどうぞご遠慮無く」

盾男「ははは。臓器いくつ売れば賄えるだろうか」

事実上の死刑宣告だった。

461: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/06(月) 23:44:54.69 ID:maMBzFk0
322

--酒場--

弓女「まぁでも?こいつはツインテちゃんの裸体を拝んだわけだし?仕方ないっちゃ仕方ないわな」

ツインテ「ら、裸体って別にそんな……それに前は見られてないですけど……」

ポニテ「とゆことはお尻はみたんだね!?」

ポニテの恐るべき振り。

盾男「……」

キーワードに触発されてふるふると震えて鼻血をたれ流す盾男。

弓女「……お前食事抜きな」

斧女「不潔……」

ポニテ「  コン」

レン「社会のくず」

ツインテ(……お、おいたわしや……)

462: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/06(月) 23:52:51.56 ID:maMBzFk0
323

--酒場--

弓女「てーか女5で男1ってとんでもねぇハーレム野郎だぜ。しかもみんな美人だしなww生きてるだけで幸せだろ?」

ツインテ(比率4対2ですー)

ポニテ「そだねー!もがっ」

ポニテは口に片っ端から食料をつめていく。

盾男「……ふっ、三十路が」

弓女、斧女「!!」

ボソリと呟いた盾男の言葉に過剰に反応する二人であった。

ポニテ「おねーさん達30越えてるんだー?」

弓女、斧女「!!!!」

ツインテ「ぽ、ポニテさん大きな声で言っちゃだめっ!!」

ツインテは慌ててポニテの口に食料を注ぎ込む。

ポニテ「あがもが」

レン「……レンも食べる。あむ」

463: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/06(月) 23:58:20.93 ID:maMBzFk0
324

--酒場--

弓女「……ふ、ふふふ」

斧女「わ、わかってませんね。女はむしろ30越えてからですよ……」

盾男「……失われし湯上がり卵肌」

ガッシャーン!!

弓女「てっめえ上等だぁ!!何が紳士だ!!最初の設定はどこへ行った!?」

盾男「紳士ですら魔道に引きずり込むほどの威力がツインテちゃんの肌にはある!!」

ツインテ「ぼ、ボクのせいですか!?」

斧女「本部に帰ったら貴方の部屋を捜索します。もしそれでロリィのが出てきたらどうなるかわかってますね?」

盾男「ない、断じて無い!!むしろ俺は歳上のバインバイン派だったんだ!」

弓女「うわっ!?身の毛もよだつカミングアウトだわ!!年下でよかったー」

盾男「いや、俺の方が年下たがら……」

弓女「!?え?フケ顔?」

盾男「ぐふ……気にしてることを……」

464: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 00:05:08.62 ID:78/6CV20
325

--酒場--

包帯女「ちょっとアンタ達静かにしてよ!こっちは明日の作戦考えてんだからさ!!」

酒場の奥の方から怒鳴り声が。

包帯女「さっきから聞いてればくっだらないことで大声だして、馬鹿じゃないの!?」

ざわざわ準優勝の包帯女ざわざわ

弓女「く、下らないだぁ!?女の沽券に関わることを下らないだと!?」

包帯女「えぇ、下らないわ。こっちは今日の作戦次第では確実に死ぬのよ!!死活問題なのよ!!」

ツインテ「こ、個人戦準優勝の人がそこまで言うだなんて……明日の相手はどんな人達なんでしょうか……」

義足「あー悪いな。ちょっとこいつ今余裕無いからさ」

義足は包帯女を取り押さえようと立ち上がる。

弓女「は!大体うるさいのが嫌ならこんなとこで作戦会議なんてしてんじゃねぇよ!部屋に籠もって部屋の隅でガタガタふるえて命乞いしてな!」

465: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 00:08:48.78 ID:78/6CV20
326

--酒場--

包帯女「むかつく女……ッ!!どこで会議しようが私達の勝手でしょ!?食事も一緒に出来るんだから効率的なのよ!!」

弓女「効率的なわけがあるかよ!ビビって思考も狂ってんじゃねぇのか!?」

包帯女「なんですって!?」

ズカズカズカズカ

二人は制止を振り切り詰め寄った。

弓女「……大会じゃどうせ当たらないだろうからここでけりをつけとくか?二回戦で消えるんだろ?」

包帯女「そっちこそ!!帰りの身支度を済ませておいたら?」

ポニテ「がふがふ」

レン「あむあむ」

盾男「どくどく」

ツインテ「あ、あわわ!け、喧嘩はよくないでふっ!!」

弓女「……」

包帯女「……」

二人はにらみ合ったままお互いに一歩下がり、

弓女「っ!!」

包帯女「!!」

拳を振り抜いた。

ドガァァン!!

弓女と包帯女の拳がぶつかり合う。

466: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 00:11:52.88 ID:78/6CV20
327

--酒場--

ワーキャー、ドガシャン

テンテン「ぴぴっ。シミュレーション終了。敵、最大魔法攻撃は私の防御力を遥かに上回ると予測……ん?なにやらさわがしい」

ワーキャーガシャン

義足「あー……。ちとな。包帯女が暴れだしたんだよ……また」

テンテン「またか。全くいくつになっても騒がしいやつだ」

義賊「ははは……。ってそういやテンテン、やっぱり向こうの方が上か?」

テンテン「試しに私の惑星間攻撃ビームにも耐えられるシールドを展開したと仮定して試してみたが抜かれた」

義賊「……よくわからんがこえぇな」

467: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 00:18:51.94 ID:78/6CV20
328

--酒場--

ドカバキズガ

女同士の激しい殴りあいが始まった。

酔っぱらい「いーぞ姉ちゃん達ぃ!もっとやれぃ!!」

へべれけ「がははは!」

物が飛びかう戦場になった酒場。ツインテ達はテーブルの下に避難している。

ツインテ「あ、あわわ。どうしたらいいんですか!?早くけ、喧嘩を止めないと!!」

ポニテ「むぐむぐ。好きにさせてあげたらいいよー。おねーさん達も溜まってるんだよー」

斧女「すぐ手を出すのは弓女の悪い癖ですね。淑女たるものお淑やかに」

盾男「痛い!?何でつねってるの!?」

ツインテ「でもっ……ちょっとボク、向こうの人と話し合ってきます」

ツインテは戦場となった酒場をはいはいで進みだす。

レン「レンも行く」

その後を追うレン。

468: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 00:24:18.05 ID:78/6CV20
329

--酒場--

ドガッ

弓女「ぐはぁっ!!」

包帯女の裏拳が弓女の側頭部を直撃する。

弓女(重い……だてに個人戦で準優勝してない、か)

弓女は倒れそうになるのを踏張り、包帯を掴んで引き寄せた。

包帯女「っな!」

ガチン!!

そして強烈なヘッドバッド。

包帯女(いっっったー!!この女……中々やるわね)

469: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 00:25:12.91 ID:78/6CV20
330

--酒場--

ツインテ「あ、あのー……」

義足「あん?」

ツインテとレンは、無事に義足達のテーブルに辿り着いた。

義足「あぁ、あっちの女の人の仲間、かな?」

ツインテ「は、はいそんなところです!こ、この度はご迷惑をお、おかけして……」

義足「あはは。何言ってんの。むしろうちのがつっかかってったんだから、こっちが謝らなくちゃ」

ごめんよ、と義足。

ツインテ「喧嘩を止めたいんですけどどうしたらいいでしょうか……」

義足「んー。難しい。なんなら気が済むまでやらせた方がいいかもね。後を引いて明日の試合に影響が出たら嫌だし」

ツインテ「そ、そんなのダメ!……です」

470: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 00:26:28.35 ID:78/6CV20
331

--酒場--

義足「あはは。冗談冗談。このままやってたら憲兵来ちゃうだろうしな。どうしよかテンテン?」

レン「あむあむ」

テンテン「なにこの生き物可愛いすぎる……やばい。まじぱないっ」

テンテンはレンに焼き魚を与えていた。

テンテン「義足。これ持って帰りたいと熱望する」

レン「あむあむ」

義足「人様を物扱いすんな!」

ツインテ「あはは……」

テンテン「奴らを止める方法?私がショックガンを打ち込めばいいだけの話だろJK」

義足「俺は生命活動を止めろとは言ってないぞポンコツ」

471: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 00:27:31.07 ID:78/6CV20
332

--酒場--

ワーギャー

喧嘩の火種は飛び火して、あちらこちらで新たな争いが発現していた。

義足「っちゃー。もはや火元だけの問題じゃなくなっちまったよ」

ツインテ「あわわわ」

レン「あむあむ」

テンテン「やばいーぎゅってしたいぎゅって!!ダメかな?犯罪かな?」

テンテンはキャラ設定の崩壊が始まっている。

ツインテ「あ、気になっていたのですが、明日の対戦相手はどんな人達なんですか?個人戦準優勝の人があんなに心配する相手って想像もつかなくて……」

義足「……チーム機動六花。ってわかる?」

レン「!!」

焼き魚をはぐはぐしていたレンは動きを止めた。

ツインテ「あはは……ごめんなさい不勉強で。わからないです」

472: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 00:29:01.48 ID:78/6CV20
333

--酒場--

義足「いやこの場合は知らない方がよかったぐらいさ。変に意識すると普段の実力を出せなくなる」

ツインテは唾を飲む。

ツインテ「そ、そんなに強い相手なんですか?」

義足「強い。五柱って、わかるよね?」

ツインテ「は、はい。確か勇者に最も近いとされる五つの職業のことですよね?」

義足「そう、完全上位職業。各種につき一人、世界にたった五人しかいないとされる最強の人類」

ツインテ「……まさか」

義足「そのまさかだ。その五柱の一人が次のチームにいる」

ツインテ「!!」

レン「魔導長……」

義足「そうさ。こと破壊にかけては右に出るものはいないとされる魔導長。その彼女が率いるチームこそがチーム機動六花」

473: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 00:29:58.63 ID:78/6CV20
334

--酒場--

ツインテ「あ、あわわ」

義足「その力は各国の三大戦力の比ではない。槍兵にまがりなりにも渡り合えたのとは訳が違う。五柱はそれよりも遥かに上の存在なんだから……」

ツインテ「そ、それが相手では仕方が無いですね……」

あんなにてんぱってしまうのも、とツインテ。

義足「まーね。でもそっちのお姉さんの言うとおりさ。真面目に会議をしたいのなら宿ですればよかったんだ。あえてそうしなかったのは、少しでも活気のある所に身を置いて落ち込むムードをなんとかしたかったのかもしれない」

ワーギャー

ツインテ「落ち込む……ですか?」

義足「ん……まぁ結果的にいい気分転換になってるのかなww」

包帯女「はぁ!」

包帯女は空中で回転し踵落としを放つ。

474: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 00:30:36.57 ID:78/6CV20
335

--酒場--

義足「さてと。そろそろ二人を止めようか。憲兵来ちゃったら大会から弾かれちまうし」

義足はそう言って立ち上がると、椅子に足を乗せて右足のズボンを捲り上げる。

キラン

ツインテ「そ、それは」

ズボンの下にあったものは鉛色の色をした肌……否、

ツインテ「それは……オートメイル!?」

義足「ハガレン完結おめでとう!!お疲れさまでした!!」

475: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 00:31:22.33 ID:78/6CV20
336

--酒場--

ツインテ「こ、こほん。えと、それ……服の下に鎧をつけているんですか??」

義足「あぁこれはね。理解できないと思うけど、機械っていうロストテクノロジーらしいんだ」

ツインテ「?機械?ですか?」

義足「あぁ。俺、昔に色々あって右足の膝から下を無くしちゃってさ」

ツインテ「あっ……」

ツインテは悪いことを言ってしまったと気付き、慌てて口を押さえる。

義足「ん。全然。気にすることないさ。今じゃこっちの方が便利なくらいだ」

義足は右足についているカバーのようなものを開ける。

ツインテ(!?足がパカッて!?)

そして自分の腰に指していた青色の棒を引き抜き、右足の空洞の中に差し込んだ。

ガシャッ

義足「うし。準備完了」

476: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 00:31:56.35 ID:78/6CV20
337

--酒場--

レン「じー」

レンはそれを食い入るように眺めている。

テンテン「もういいのか?魚、もういいのか??」

テンテンは魚を振ってレンを振り向かせようと必死だった。

ツインテ「それは、なんなんですか?」

義足「まぁ、みてなよ。ブルーカートリッジリロード!」

ガシャコン!

義足の右足から人のものとは思えない音がした。
そして、

ツインテ「!!魔力反応!!」

義足「水属性拘束魔法、レベル3!!」

義足の詠唱が終わると同時に水の縄が出現し、包帯女へと向かって行った。

477: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 00:32:38.08 ID:78/6CV20
338

--酒場--

シュルルッ

包帯女「!?こ、これは義足の拘束魔法!?あっ!」

包帯女を締め上げる魔法の縄。

弓女「はっ、はっ……なんだこれ?」

包帯女「こ、このぉー!!義足ーー!!」

義足「ふっ」

ツインテ「す、すごい。なんですかこの装置!!魔力量低そうなのにすごい!!」

義足「……結構ずっぱり言うのね」

ツインテ「あっ!」

レン「じー」

レンは義足の右足を凝視していた。

478: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 00:33:34.01 ID:78/6CV20
339

--酒場--

レン「これ、どんな技術使ってるの?材質は鉄と魔鉱石?ゴムも中で使われてるのかな。すごい……こんな義肢みたことない。どうやって操作してるんだろう」

義足「ちょ、ちょっとお譲ちゃん?」

テンテン「ふふ。それは私が作ったのだ。今の世界では失われた技術だからな。どうだ、教えてやってもいいと提案」

義足「おま!西の王にだけ渡す技術だろこれ!」

テンテン「細かいことは気にするな」

包帯女「く、こ、この!!私はいつまでこの格好なのよ!!恥ずかしい!!」

弓女「はっはー。良い様だぜww」

ワーキャー

義足「あっと、しまった。あいつだけ止めても仕方ねぇな」

479: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 00:34:09.99 ID:78/6CV20
340

--酒場--

ツインテ「あ、じゃ、じゃあ後はボクがやりますね」

義足「……え?後って」

ツインテ「水属性範囲拘束魔法、レベル3!!」

バシュッ!!

ツインテが魔法を唱えると、四方八方に魔法の縄が飛んでいく。

義足「!?」

ギュル

へべれけ「なにっ!?」

シュルル

弓女「おぶっ!!」

にゅる

ポニテ「もくもくっ!?」

義足(……こ、この場所の人間全てに拘束魔法だと!?この娘……一体)

ツインテ「あ、ま、間違えて関係ない人まで!!」

盾男「……なぜ俺だけ 甲(ry」

492: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 21:58:34.35 ID:78/6CV20
341

--北通り--

アッシュ「ったくあのやろー……腹はへったけど金がないだって?完全にたかる気まんまんじゃねぇか」

アッシュは両手にたこ焼きを持って夜道を歩いている。

金髪「あ、アッシュ君ー!こっちっすこっちー!!」

ベンチに座っていた金髪は、アッシュの姿を確認するとブンブンと手を振った。

アッシュ「見えるわ!目立つな馬鹿め!」

金髪「あふっ!?こ、怖いっす!!なんでっすか!?こちとら主人をずっと待ってた犬の気持ちを行動に移してみただけっす!!」

アッシュ「わけわからん!!」

ほら、とたこ焼きを手渡すアッシュ。

金髪「わー!なんすかコレ暖かいっす!!あ、そだ。ありがとうっすアッシュ君!!」

アッシュ「うっせ。早く食え」

493: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 22:01:31.44 ID:78/6CV20
342

--北通り--

金髪「はて。これなんすか?どうやって食うっすか?」

アッシュ「ん?なんだお前たこ焼きも知らないのか……ってあぁ、まぁ東の王国とこの国くらいでしか食えないかこれ」

アッシュはたこ焼きに串を刺す。

アッシュ「!」

その時何かを思いついたアッシュはにやりと不気味な笑みを浮かべる。

アッシュ「これは、中の内容物を吸って食うんだ」

金髪「ほえー!この丸いのを吸うんすかー。周りのもおいしそうっすけど食べないんすか?」

アッシュ「そんな食い方してるのは何も知らない田舎者だけだ。ナウなヤングは吸うんだ」

金髪「はー!シティボーイってやつっすか!!」

494: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 22:06:45.79 ID:78/6CV20
343

--北通り--

金髪「この串は何に使うんすか?」

アッシュ「まずこの串でたこ焼きに穴を開けるんだ。ちょちょいと」

ぐりぐり

金髪「ほーほー。って熱っ!!熱いっすアッシュ君!!中すごい高温っすよ!?」

アッシュ「そんでこの穴に口を付けて一気に吸うんだ」

金髪「こんな熱いのを!?」

アッシュ「親の仇だと思って飲むんだ」

金髪「親の仇!?」

アッシュ「慣れてくればやみつきになる」

金髪「はー。そういうもんなんすかー……。わかったっすあたいやってみるっす!」

金髪はたこ焼きに口をつけ、内容物を一気に吸った。

ずッ

金髪「!?」

495: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 22:12:44.89 ID:78/6CV20
344

--北通り--

金髪「a0o43t7g3いjけlw93えhf29お4うえぎhkjfrk:えせlkjわおえいg!!!!」

アッシュ「あはははは!!馬鹿だ!!」

金髪「あついー!!喉が!!喉が!!ああああああ!!」

アッシュ「あはははは!!」

金髪「みずーー!!みじゅうーー!!あばばばば!!」

アッシュ「はっはっはっ!!」

金髪「みみみ水が無いのならこの際アッシュ君の生き血でもやむを得なく!!」

アッシュ「勘弁しろ。水だほれ」

ごくごくごくっ

アッシュからひったくった水を一気に飲み干す金髪。

496: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 22:15:40.39 ID:78/6CV20
345

--北通り--

金髪「うぅ、まだ喉が痛い……アッシュ君、また嘘ついたっすね……」

アッシュ「バーカ。騙される方が悪い。んなもん熱いに決まってるだろが。少しは自分で考えろ」

金髪「うっ。これだけの悪行をしておいてこの言い草!ひどい、アッシュ君、あんたは地獄の鬼の生まれ変わりに違いないっす!!」

アッシュ「はっ、鬼なんてこの世にいるか」

そう言ってアッシュはたこ焼きを一つ口に入れる。

金髪「うう~!!」

アッシュ「ほれ熱いうちに食え」

金髪「もう熱いのなんて嫌いっす……」

アッシュ「……」

すっかり拗ねてしまった金髪。

アッシュ「いらないのなら俺が食う」

ひょいぱく

金髪「あ、あー!!何してるっすかー!!」

497: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2010/12/07(火) 22:21:02.35 ID:78/6CV20
346

--北通り--

アッシュ「何って、たこ焼き食ってる」

金髪「そんなこと言ってるんじゃないっす!!どうして自分のがあるのにあたいの食べてるっすか!!」

アッシュ「いらんのだろう?」

金髪「いるに決まってるっす!どうしてそういうことができるっすか!!」

あーもー、と頭を抱える金髪。

金髪「……あむ」

そして金髪も一つ口に運ぶ。

金髪「……おいしい」

アッシュ「だろ。金だこのが一番上手い」

金髪「……おりゃ」

ひょいぱく

アッシュ「ぬあっ!?」

アッシュからたこ焼きを奪う金髪。