656

--宿屋、前--

宿屋の店主「そわそわそわそわ」

ツインテ「あ」

宿屋の店主は宿屋の前でぐるぐると回っていたが、ツインテ達4人を見つけると急いで駆け寄ってきた。

宿屋の店主「お、おかえりなさい!帰ってこなかったらどうしようかと思ってずっと…………ツインテさん」

ツインテ「あ、あは。みんなして同じようなリアクション取らないでくださいよ」

宿屋の店主「だ、だだだってあなた……くぅ」

だばだばと泣き始める宿屋の店主。

ツインテ「お、大げさですよ」

ポニテ「ていうかあの守銭奴が泣いてる!!」

レン「……気持ち悪い」

宿屋の店主「う、うるさいです!!食事も用意してあるしお風呂も沸いてます!!だから好きなようにしてくつろいでいってね!!」

至れり尽くせりの気持ち悪さだった。


その夜。

レン「すー、すー」

ポニテ「ぐおーぐおー」

ハードな一日を終えたレンとポニテは、ツインテをしっかり抱きかかえて寝ていた。

ツインテ「う、うぅ。寝苦しいよ……でもこれも最後か……」

ツインテは天井に右腕を伸ばす。

ツインテ「……」

否、伸ばそうとしてみるだけ。

ツインテ「……ちっとも高い代価じゃなかった。むしろ安すぎるくらい……でも……」

ツインテはそっと目を閉じた。

ツインテ「うん……明日は、ちゃんと言わなくちゃ」

3: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/02/19(土) 20:34:28.37 ID:6ugweEVF0
657

--宿屋、前--

翌日。

ポニテ「お世話になったの!」

ツインテ「お世話になりました」

宿屋の店主「いえ、こちらこそこの数日間は楽しかったですよ。その……」

宿屋の店主はツインテの右腕の部分を一瞬見る。

宿屋の店主「気を付けて下さい。これ、お守りですから」

宿屋の店主は緑色の宝石のペンダントをツインテに渡した。

ツインテ「これは……」

宿屋の店主「妻の形見です。なんでも所有者を危険から救ってくれるまじないがかけられているとか。私が持っていても仕方がありませんし、どうか持って行ってくれませんか?」

ツインテ「え、で、でもこんな」

宿屋の店主「これはお願いです」

ツインテ「……わかりました。ありがたく貸してもらいますね。旅が終わったら返しにきます」

宿屋の店主「……ふふ。待ってますよ」

ポニテ「なんだかんだですっげーいい人じゃんおじちゃん!宿代も最初に言ってたのより随分安かったし」

宿屋の店主「そ、そんなことありませんよ。貴方達の知らない所でしっかりお代は頂いているんです!!」

レン「……つよがり」

宿屋の店主「あ、レンさんはもうちょっと自分の体型にあったデザインの 着をつけることをお勧めします」

レン「!!」

田代だった。

4: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/02/19(土) 20:35:06.84 ID:6ugweEVF0
658

--船着き場への道--

ポニテ「さいってーだよ!!あの●●店主!!」

アッシュ「全くだ。男の風上にもおけんやつよ……さて、次の目的地だが」

ツインテ「あ」

レン「?どうしたのツインテ」

ツインテはわざとらしく咳をしてみんなの注意を促す。

ツインテ「その、あのですね」

ツインテはちょっと恥ずかしそうに頭をかく。

アッシュ「?忘れ物か?なら俺が取りに言ってやるぞ」

ツインテ「いや、ちょっとですね」

ポニテ「ばかっ!!アッシュ君のバカ!!女の子には男の子がふれちゃぁなんねぇ私物とかだってあるんだよ!?」

アッシュ「む?それはすまない……」

ツインテ「そうじゃなくてですね」

レン「?ゆうしゃしょうめいしょならレンが持ってるよ。昨日とばくし達に返してもらったから」

ツインテ「……違うんです」

アッシュ「……ツインテ?」

ツインテ「次の目的地は、その三人で決めてもらいたいんです。ボク……このパーティを抜けようと思うんです」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

アッシュ、ポニテ、レン「なにい!?」

5: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/02/19(土) 20:36:14.69 ID:6ugweEVF0
659

--船着き場への道--

アッシュ「な、何を言っているんだお前は!!ぜ、絶対にそんなことをきょ、きょきょきょかしなななな」

ポニテ「な、なんでなんで!?私のせい!?」

レン「レンが悪いの!?レン!?」

ツインテ「ち、違いますよ!!皆さんのせいじゃないです!!むしろ……」

ツインテはマントを右腕の付け根を見せる。

アッシュ「……っ」

ツインテ「ただでさえ……ボクは戦力になりませんでした……この王国に来る前だって、来てからだって……でもこれで決定的になったんです。今のボクじゃ、今まで以上に皆さんの足を引っ張ることになる」

ポニテ「ツインテちゃん……」

ツインテ「あ、勘違いしないでくださいね?こうなったことは後悔していません。むしろ誇りに思っています。こんな無力なボクでも、レンさんの命を守ることができたんですから……」

レン「……ツインテ……」

ツインテ「でも、もうボクはまともに戦えない。皆さんと一緒に……ひっく……旅をすることができない……うっ……魔王討伐なんて……ボクなんかがいたら……う、うぅ!!」

ボロボロと泣きだすツインテ。

アッシュ(ストレート状態のツインテを知っている俺からしたら、十分戦えると思うんだが、それを今言うのはさすがに空気読めてないか)

ポニテ「じゃーもう勇者やめる!」

ツインテ「!?」

レン「……」

アッシュ「な、何言って」

6: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/02/19(土) 20:37:03.48 ID:6ugweEVF0
660

--船着き場への道--

ポニテ「ツインテちゃんと一緒にいられないんじゃ意味ないもん!!だったら勇者やめる!!魔王討伐なんてどうでもいいっ!!」

レン「れ、レンも!!」

アッシュ「お、おま」

ツインテ「何言ってるんですか!!駄目です!!ポニテさん達の実力は一番近くで見てたボクがわかります!!ポニテさん達ならいつの日か魔王を倒せます!!ポニテさん達が魔王を倒さないで誰が倒すんですか!!誰が世界を救うんですか!!」

ポニテ「いーのっ!!」

がばっ

ポニテはツインテに抱きついた。

ポニテ「私だって本当は勇者になりたい。勇者になるために始めた旅だもん!!……でももうそんなことよりツインテちゃん達と一緒にいることのほうが大事になったんだ!!」

ツインテ「ぽ、ポニテさん……」

ポニテ「だからもういい……ずっと田舎で療養でもいいの!!世界が滅んじゃったっていいの!!」

レン「レンもツインテがいるところに行く!!」

アッシュ「あ、アッシュも!!」

ポニテ「お前は抱きつくんじゃねぇ!!」

ゲシッ

顔面を蹴られるアッシュ。

7: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/02/19(土) 20:37:56.06 ID:6ugweEVF0
661

--船着き場への道--

アッシュ「っつつ……けどよ、本気で言ってるのか?」

ツインテ「……そ、そうですよ」

アッシュ「本気でこのパーティを抜けたいってことと、勇者をやめるってこと」

ツインテ「今のボクじゃ本当に何も……」

ポニテ「いーもんねー!私小さな村の中で勇者目指すから!!」

レン「随分規模が小さくなった」

アッシュ「……お前らの気持ちはわかった」

アッシュはぼりぼりと頭をかいてツインテ達に背を向けた。

ツインテ「あ……」

ポニテ「……アッシュ君……」

レン「アッシュ……」

そしてアッシュは歩きだした。

ツインテ「あ、アッシュ君、このペンダント!ボクが持ってても仕方が無いから……」

アッシュ「断る。それはお前が預かったものだろう?人におしつけるな」

ツインテ「あ、う……」

ポニテ「ひどいよアッシュ君!!バーカ!!」

アッシュ「うっさい!!早く行くぞ!!砂上船は午後に一本しかないんだから!!」

ツインテ「……え?」

ポニテ「砂上船?」

アッシュ「お前ら……昨日の砂漠の風の女のお礼、忘れたのか?」

8: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/02/19(土) 20:38:33.05 ID:6ugweEVF0
662

--過去、夜道--

占隊長「部下が迷惑をかけたみたいだから、お礼に占ってあげるわ」

ツインテ「占い……?」

盾男「あぁ、占隊長の占いは超高確率で当るからな。もう予言に近いレベルだぞ」

占隊長「余計なことは言わなくていいんです。ではどの子を……うん、ツインテールの子、占ってあげるからこの水晶に手をかざしてね」

ツインテ「え、あ、はい」

ぼわー

占隊長「ネレバネルホド~」

アッシュ「なんだその呪文」

弓女「そうね……東に言ってみなさい。いいことが起こるはずよ」


--船着き場への道--

ポニテ「あーそういえばそんなこと言ってたっけ」

レン「言ってた。ポニテの忘れん坊」

ポニテ「食うぞ猫」

レン「にゃんっ!!」

9: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/02/19(土) 20:39:31.73 ID:6ugweEVF0
663

--船着き場への道--

ツインテ「いやでも……」

アッシュ「……それに知らないのか?東の王国は医療魔法、医術は世界最高レベル。もしかしたらツインテの右腕をどうにかする手立てがあるかもしれない」

ツインテ「!!」

ポニテ「!!」

がぶ

レン「どさくさにまぎれてレンを噛むなー!!」

ツインテ(まだ右腕をどうにかする方法が……ある?)

アッシュ「だ、だからそれまで勇者は廃業だ。ただの冒険者、いや観光客だ!!」

顔を真っ赤にして宣言するアッシュ。

ポニテ「わーい!!なんだかんだ言って優しいからアッシュ君好きっ!!」

レン「ツンデレ」

アッシュ「ちげぇし!そんなんじゃねぇし!?」

わーぎゃー

ツインテ「……」

10: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/02/19(土) 20:40:44.11 ID:6ugweEVF0
664

--過去、夜道--

占隊長「でも大変なことになっちゃったね。まだ若いって言うのに……」

ツインテ「あはは……」



--船着き場への道--

ツインテ「……」

……そんなことないです。

ポニテ「よしこのさいだからアッシュ君も味見しておこうかなっ!!」

アッシュ「なんだこのカニバ!!やっぱりお前は除隊だ除隊!!」

レン「レンが抑える」

わーきゃー

ツインテ「あははは」

ツインテは涙を拭って思いきり笑った。



だって不便になっちゃったけど、不幸じゃないですから。



      酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった
              第二部
         武術大会 in 西の王国コロシアム
               完




アッシュ「あ……そういえば金髪を忘れていた!!」

45: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:42:58.00 ID:HADo9Cup0


--砂漠--

ビュオオオオ!

吹き荒れる砂嵐。

謎の男「……」

謎の女「……ッ」

その中で対峙する男と女。

ツインテ「あぐっ……ぽ、ポニテ、さん、レン、さん」

ツインテは血だらけになった体でポニテ達にはい寄ろうとする。

ポニテ「……」

ポニテはレンを抱きかかえたまま事切れているようだ。

ツインテ「ッ……アッシュ、くん?」

ポニテから3メートル程離れた場所で、アッシュは8つの肉片に切り裂かれていた。

ツインテ「そんな……なんで、なんでこんなことに……」

謎の男?「……」

謎の女?「っ!!」

ガキィン!!

残骸となった砂上船の上で、男と女が火花を散らす。

46: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:45:53.39 ID:HADo9Cup0


--過去、砂漠--

遡ること10分前。

ザザザザー

ツインテ「うわぁ。これが砂上船……ボク、初めて乗りました!」

アッシュ「砂漠は危険だからな。飛行生物に乗っていく選択肢もないわけじゃないが、奴らを手なずけられるレベルの者となると貴重でな。自然と依頼料が高くなる」

ポニテ「がばばば。砂おいしー♪」

ポニテは船から身を乗りだして砂に頭を突っ込んでいる。

ツインテ「死んじゃうからー!」

レン「……飛行生物……。調教師操ってた。ばじりすく」

アッシュ「あれはまだ幼体だからよくて二人までしか運べない。それにあいつらにはあいつらの旅がある。俺らに構ってる暇は無いさ」

ツインテ「……」

47: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:47:41.88 ID:HADo9Cup0


--更に過去、夜道--

賭博師「お嬢ちゃん、本当ありがとうな、目が覚めたよ。それと右腕……すまねぇ。謝って許してもらおうだなんて考えちゃいねぇが……俺ら」

ツインテ「過ぎたことです、気にしないでください」

にこりと笑うツインテ。

賭博師「……つええなお嬢ちゃん。いや、ツインテ様」

ツインテ「……ん?」

調教師はツインテの手を両手でつかむと瞳をキラキラ輝かせて言った。

調教師「ツインテ様の言葉、身に染みました。これからは私達が不幸にしてしまった人達を助け、世界中の不幸な人達に手を差し伸べて生きて行きたいと思います!!」

ツインテ「ツインテ……様?」

賭博師「これからは旅の行く先々でツインテ様の教えを世界中に伝道していきます!」

ツインテ「や、ちょっ!」

調教師「ツインテ様マジ教祖!」

賭博師「ツインテ様マジ女神!」

赤面するツインテ。

調教師「美少女!」

賭博師「美少女!」

調教師「美少女!」

アッシュ「イジメかっ!!」

新たな宗教が誕生した。

48: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:48:11.24 ID:HADo9Cup0


--更に過去、夜道--

賭博師「じゃあ俺らはここいらでおいとまさせていただきますよ」

ツインテ「え。こんな夜遅くにですか?」

賭博師「まぁ、変化師に見つかると色々めんどくさいしなぁ」

ぼりぼりと髭をこする賭博師。

調教師「善は急げ、ということにしておけばいいのに……」

ポニテ「調教師ちゃん!次は負けないからね!」

調教師「……はい」

ポニテと調教師はガバッと抱き合う。

レン「……」

その様子を見ているレン。

調教師「あ……」

それに気付く調教師。

調教師「あ、その……」

調教師は言葉に詰まる。

レン「……ごめんなさいにゃ」

調教師「え」

49: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:48:53.35 ID:HADo9Cup0


--更に過去、夜道--

レン「勝手にわかったようなことを言って、ごめんなさいにゃ。きっと、調教師は傷ついた」

調教師「……ッ」

レン「思いあがりだったにゃ。だからごめんなさい」

調教師「あ……」

調教師はレンのもとに少しずつ近づいていく。

調教師「私の方こそ、ごめんなさい!貴女にはとてもひどいことをしてしまった……」

ツインテ「……」

レン「……レンなら大丈夫。ツインテにもらったから」

顔に手を当てる調教師。

アッシュ「……やれやれ。謝る対象がいっぱいだな。連鎖してやがる、ややこしい」

ツインテ「そ、そんな言い方しなくても」

賭博師「……ほれ、そろそろ行くぞ調教師」

調教師「あ、はい。……それじゃあレンさん」

レン「うん」

賭博師「じゃあツインテ様、俺達は行かせてもらいますよ。どうかご達者で」

ツインテ「はい。賭博師さん達もお気を付けて」

賭博師「っと、そうだ」

賭博師は背中を向けたところで立ち止まる。

賭博師「……亜人保護団体には気を付けてくだせぇ」

50: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:51:49.22 ID:HADo9Cup0


--過去、砂漠--

ツインテ「あの去り際の一言はどういう意味だったんでしょうね」

アッシュ「さぁな。俺はあまり東の王国については詳しくないからな。それにあの国はあまり情報を開示していない」

ポニテ「はいはいはーい!レンちゃんをパーティに入れてるから、勘違いされちゃうってことじゃないのかな?」

レン「レン?」

ポニテ「ほら、亜人保護団体て亜人の不当な扱いとか、人権を無視したきつい労働とか取り締まってるじゃん。私達、こんな幼いレンちゃんを冒険の旅につれていってるんだよ?」

ツインテ「……ありえます。幼いレンさんを危険な旅に同行させて酷使してると思われたら……」

レン「れ、レンはじぶんのいしでついていってるんだよ?」

アッシュ「あっちは洗脳しているんじゃないかと疑ってくるだろうな。ダメージ履歴なんて調べられたら一発でアウトになるだろう」

ツインテ「あ」

ポニテ「社会的地位が低い者達を守ろうとする集団ってのは、やろうとしてることは立派なんだけど、やってることは過剰で危険だったりするからね!」

ツインテ「やめて下さい。ポニテさんまじでやめて下さい」

ポニテ「xxxxx海の糞犬」

ツインテ「あ、そういう方向なら全く問題ないですね。てゆうか上の説明と違いますよね」

ポニテ「ツインテェ」

51: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:52:23.02 ID:HADo9Cup0


--過去、砂漠--

アッシュ「……」

ツインテ「……アッシュ君、心なしか元気がありませんね」

ポニテ「あぁ多分あれじゃない?金髪の女の子!浮気相手!」

ツインテ「……」

じわぁとツインテの瞳に涙が。

ツインテ(あの時の哀しい気持ちが)

アッシュ「うるせぇな。まぁそうだよ。自分から約束したのに当の俺が忘れてたとか……」

アッシュは頬杖をかいて、流れる砂を見ている。

アッシュ「せめてあいつらに忠告でもしておくべきだったか」


--更に過去、夜道--

弓女「じゃあ、私らそろそろ行かなきゃいけないから」

ツインテ「はい。色々ありがとうございました」

斧女「……」

斧女はツインテを抱き寄せた。

斧女「けなげな子……。これからの旅はもっと気をつけていくのですよ?……そちらも男は頼りないようですから」

アッシュ「なぬ!?」

52: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:52:49.19 ID:HADo9Cup0


--更に過去、夜道--

ツインテ「そんなことないです。すごく頼りになるボク達のリーダーです」

アッシュ「つ、ツインテ……」

ポニテ「浮気癖があるけどね」

レン「てき!」

盾男「彼も可哀そうな立場なのだな……いや素直にうらやましい」

占隊長「ほら貴方達、ボス達を待たせているのですから行きますよ」

弓女「はーい。じゃあなツインテ達。もしお前らにその気があるならうちんとこ来いよ。入れてやっからさ!」

ツインテ「そ、それはどうなんでしょうか。世界的指名手配には……」

斧女「ふ。でもこういう人生も楽しいですよ」

斧女はポケットからナイフを取り出した。

斧女「砂漠の風の証です。これを見せれば隊員達から攻撃されることはなくなるでしょう」

ツインテ「あ、ありがとうございます」(砂漠の風の一員だと思われて国家権力に捕まることはないのかな?……)

53: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:53:44.45 ID:HADo9Cup0


--過去、砂漠--

ツインテ「そうだ。このナイフって武器にはなるんでしょうか、アッシュ君」

アッシュ「ん……どうだろうな。俺はナイフ使いではあるがそんなに詳しいわけでは」

レン「ツインテ、それ貸して」

レンは錬成工場を展開させて言った。

ツインテ「レンさん。もしかしてわかるんですか?」

レン「レン、少し鑑定できるから」

アッシュ「ほぉ。便利だな」

ポニテ「てゆうかすごい便利だよレンちゃん。幅広い知識とスキルでサポート役としては完璧だよ!どっかの誰かさんとは大違いだよ!」

ツインテ「はう!」

アッシュ「今のは俺に言ったのか?……このごくつぶしが!!」

ポニテ「うふふふ!残念でした!美少女はいるだけで役に立つんだよ!」

アッシュ「なら美少年もいるだけで役に立つだろ!」

レン「ばかばっか」

54: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:54:47.10 ID:HADo9Cup0
10

--過去、砂漠--

わーきゃー

アッシュとポニテは喧嘩をしている。

ツインテ「はわわわ!や、やめましょうよ二人とも!」

レン「ツインテ鑑定できた」

レンはツインテの服をぐいぐいと引っ張った。

レン「このナイフはちょくせつせんとうはむり」

ツインテ「あ、やっぱりそうですか」

レン「?わかってたの?」

ツインテ「いえ、なんとなくですけど」

レン「……。でもこのナイフは特殊な力が宿っている……と思う」

ツインテ「特殊な力ですか」

わーきゃー

ツインテ「あ!あの二人止めないと、ってきゃー!!」

ポニテ「がふがふっ!!」

アッシュ「クマに食われるのってこんな感じなのかな、ママ」

アッシュの腹部を食い散らかしているポニテがいた。

55: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:55:28.43 ID:HADo9Cup0
11

--過去、砂漠--

ツインテ「な、仲間内で喧嘩するのやめてくださいよぉぉ!!そ、それとポニテさん!!人食べるの禁止いいい!!」

わんわん泣きながらツインテは二人を説教する。

ポニテ「つ、ツインテちゃん、いつのまにかちょっと強くなったね」

顔面をぼこぼこにされたポニテが呟く。

アッシュ(ツインテのもう一つの一面の影響か……?)

レン「ツインテを泣かすの許さない」

レンは拷問機械を錬成していた。

ザザザザー

リボンの少女「あ、待ってもこもこー!」

もこもこ「きゅー」

もこもこと呼ばれたもこもこした生物と少女が駆け寄ってくるもこ。

ポニテ「わー!なにこれ可愛い!!」

ポニテは近づいてきたもこもこを抱きかかえた。

もこもこ「きゅー、きゅー」

ツインテ「わ、すごい……もふもふしたい」

アッシュ「可愛いきゅんっ」

56: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:56:25.30 ID:HADo9Cup0
12

--過去、砂漠--

リボンの少女「あ、ありがとうお姉ちゃん達、もこもこ捕まえてくれて」

ポニテ「この子もこもこって言うの?可愛いね!はいっ!」

ポニテはもこもこを少女に手渡した。

リボンの少女「うん!私の大事な友達なの!!」

リボンの少女はまぶしい笑顔で答える。

もこもこ「きゅー」

ツインテ「これ、初めて見たんですけど、やっぱりモンスター……ですよね?」

リボンの少女「うん、そうだよ」

アッシュ「もこもこ。ふわふわモンスター。なまえのとおりもこもこしたがいけんのかわいいモンスター。あいがんどうぶつとしてひとびとにあいされている」

レン「何図鑑?」

ツインテ(モンスターでも共存していけるのがいるんだ……)「触ってもいいですか?」

リボンの少女「うん、いいよ!」

ツインテはもこもこの頭を優しくなでる。

もこもこ「きゅー」

57: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:56:54.57 ID:HADo9Cup0
13

--過去、砂漠--

リボンの少女「お姉ちゃん達、東の王国に何しにいくの?」

ツインテ「えっと、怪我しちゃったから治療を受けに行こうと思って向かっているんですよ」

リボンの少女「怪我?」

ツインテ「はい……ちょっと」

ツインテはちょっと困り顔で笑う。

リボンの少女「ふーん。早く治るといいね!」

ツインテ「うん、ありがとう」

ポニテ「ちなみにこの子って食用?」

もこもこ「きゅ、きゅー!」

ツインテ「ポニテさん、そういうのやめてって言いましたよね?」

ツインテの魔力で作りあげた半透明な触 がポニテを拘束して持ちあげた。

ポニテ「か、軽い冗談だよツインテちゃん!っていうかツインテちゃん、ちょっと怖いかなっ!!」

58: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:57:36.99 ID:HADo9Cup0
14

--過去、砂漠--

女旅行客「!?きゃ、キャー!!」

男旅行客「な、なんだこいつら!!」

ツインテ「!?」

砂の海から船に何かが乗り込んできた。

砂魚人「ぎょえええええ」

アッシュ「モンスター……。砂上船に飛び込んでくるほどの速度とは」

バチン

アッシュはナイフを取り出す。

ポニテ「おおー!!やっと昼ごはんにありつけるよー!!」

ギャリン

ポニテも二本の剣を引き抜いた。

ツインテ「あ、あわわわ」

レン「ツインテ、こんどこそレンが守る!錬成!!……え」

レンは自分の体に違和感を感じた。

レン「???」

ツインテ「レン、さん?どうかしたんですか?」

レン「これって……」

59: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:58:08.10 ID:HADo9Cup0
15

--過去、砂漠--

ポニテ「おりゃああああああ!!」

ズババッ!!

砂魚人「ぎょええええ!!」

アッシュ「ふんっ!!」

ドシュッ!!

砂魚人「ぎょおおおああ!!」

アッシュ「くそ、船に乗るとこんなことばっかりだな」

ポニテ「ちょっと数が多いかも!」

ポニテとアッシュが次々に砂魚人を倒していく。

リボンの少女「すごい……」

もこもこ「きゅー」

船員「こ、この中に戦闘が出来るお客様はいらっしゃいませんかー!?」

謎の女「……」

柵を背に座っている女が立ちあがった。この暑さだというのに、彼女はマフラーをしている。

60: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:58:35.35 ID:HADo9Cup0
16

--過去、砂漠--

ツインテ「え、え、レンさん、その魔力反応……」

レン「う、うん……この力……この、属性」

レンは自分の魔力に驚きを隠せない。なぜなら、

レン「!!試してみる!水属性攻撃魔法、レベル2!!」

ドバシャアア!!

アッシュ「!?」

ポニテ「!?」

アッシュとポニテはレンの魔法を避ける。

砂魚人「!?ぎょええええ!!」

ドパーン!!

砂魚人は砂漠へと押し戻された。

レン「やっぱり……」

ツインテ「レンさんの属性が……水に!?」

61: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 21:59:02.18 ID:HADo9Cup0
17

--過去、砂漠--

レン「……土属性防御魔法、レベル1」

メキキ

レンは自分の右腕に土属性魔法をかけてみる。

ツインテ「変わったわけじゃない……じゃあレンさんは二つの属性を使えるように!?」

ポニテ「す、すごいー!!」

アッシュ「っ!!……デュアルか」

レン「……これもツインテのおかげ。ツインテが助けてくれたおかげ」

ツインテ「副作用が出てしまったのかと……よかった」

ザバアアアアアアアアア!!

超砂魚人「ぎょぼえええええええええええええええええ!!」

ツインテ「!?」

砂上船の前方に巨大な砂魚人が立ち塞がった。

アッシュ「くっ!さっきのやつらの親玉ってとこか!!」

ポニテ「こいつはでかいね!!」

再び武器を構えたアッシュとポニテ。

62: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 22:00:16.01 ID:HADo9Cup0
18

--過去、砂漠--

ツインテ「あ、あわわわ」

レン「今のレン達なら、大丈夫」

レンはポニテ達にかけよる。

アッシュ「……俺はまた相性が良くなさそうだからひっこむか」

そう言ってアッシュはナイフをしまう。

ポニテ「……いつもそんな感じじゃない?」

アッシュ「う、うるさい!」

ポニテ「壁にもならないし攻撃能力も低いし魔法駄目だし!」

アッシュ「ぐ、ぐぬぬ」

ツインテ「そ、そんなことないですよ!!ポニテさん言いすぎですよ!!お腹が好きすぎて悪い子になってますよ!」

アッシュ(ツインテは優秀な回復役、レンは二重属性のサポート役、それに……ポニテの突破力は悔しいが強力だ……くそ!これじゃ俺に残されているのはイケメンだということだけじゃないか!)

アッシュは悔しそうに地面を叩いた。

超砂魚人「攻撃してもよい?」

63: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 22:01:25.32 ID:HADo9Cup0
19

--過去、砂漠--

超砂魚人「ぎょおおおおおおおおおおおお!!」

ポニテ「!?しもた!?」

アッシュ「!!間に合わない!!」

振り下ろされる巨大な腕。

リボンの少女「きゃあああああああああ!!」

ザっ

レン「!?」

謎の女「……」

レン達の前に謎の女が現れた。

ツインテ「あ、あぶな!!」

ズバン!!

超砂魚人「ぎょええ!?」

超砂魚人の腕は巨大な手裏剣で両断される。

謎の女「……」

64: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/07(月) 22:02:26.64 ID:HADo9Cup0
20

--過去、砂漠--

ズズズゥゥン!!

超砂魚人「ぎょええあああああ」

砂漠に沈む超砂魚人。

ツインテ「す、すごい。一分足らずで……しかもたった一人であのモンスターを!!」

謎の女「……」

男観光客「あ、ありがとうございました皆さん!」

ポニテ「いいところは取られちゃったけどねー」

女観光客「君たちもすごかったわ!ありがとう!!」

男旅人「あ、あの、もしかして……勇者様に縁ある人では?」

アッシュ「!!」

ポニテ「ありゃ!?気付いちゃったかー!やっぱりオーラがにじみ出ちゃうのかなー!あはははー!」

照れ臭そうに頭をかくポニテ。

男旅人「いや君達じゃなくて」

謎の女「……うん」

ツインテ「え」

謎の女「私は勇者パーティの一人、シノビ」

アッシュ「え」

ポニテ「え」

ツインテ、アッシュ、ポニテ「えええええええええええええええ!?」

83: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:06:49.18 ID:gKzVzw2b0
21

--過去、砂漠--

男旅人「あぁやっぱり!!東の王国出身の勇者パーティの一人に、長いマフラーを巻いた女性がいるって聞いたもんだから!!」

謎の女改めシノビ「うん」

女観光客「え!?本当に勇者パーティの一員なのですか!?あ、握手してください!!」

わーきゃー

ツインテ「……」

アッシュ「なん……だと」

ポニテ「ど、どういうことなの?」(cvゆっくり)

レン「にゃー……」

ツインテ「勇者さんって、ほ、ほかにいたんですね……」

アッシュ「……そんなはずが」

シノビ「?」

シノビは困惑するツインテ達に気付いて近寄ってきた。

シノビ「大丈夫?けがはない?」

84: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:12:22.19 ID:gKzVzw2b0
22

--過去、砂漠--

ツインテ「あ、はい。大丈夫です。怪我は、ないです」

アッシュ「……」

シノビ「そう」

ポニテ「あのさー!おねーさんしつもーん!!」

シノビ「?」

ポニテは勢いよく手を挙げた。

ポニテ「あのさ!おねーさんって本当に勇者パーティの一員なの!?」

シノビ「うん」

アッシュ「証拠は……あるのか?」

男旅人「ちょ、ちょっと君達!!助けてもらったのに失礼じゃないか!!」

シノビはごそごそとマフラーの中に手を入れると、ある紙を取りだした。そしてそれをアッシュに手渡す。

アッシュ「!!……右の者を勇者パーティの一員として認める……東の王」

85: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:19:57.26 ID:gKzVzw2b0
23

--過去、砂漠--

ツインテ「!?」

レン「勇者は各国から一人まで認定できる……勇者の素質が王が認めたのなら」

アッシュ(しかも勇者だけに渡すのならともかく、パーティの一人一人にまで渡しているとは……力の入れようが違う)

ポニテ「そ、そんなの悔しくないもんねー!!私達だってもってるもん!!レンちゃん!!」

レン「勇者は廃業したって、にゃっ!」

ポニテはレンの衣服の中に手を突っ込んで勇者証明書を取りだした。

男旅人「あはははは。そんなバカな。勇者様が二人もいるなんて聞いたことが無いよ」

ポニテから証明書を受け取ったシノビは、

シノビ「……本物」

女観光客「え!?」

群がってくる人達。

男観光客「右の者達を三人で勇者として認める……」

ツインテ「仲間の一人でさえ証明書持っているって言うのに、ボク達は三人で一枚……」

アッシュ「泣けるな」

87: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:29:44.52 ID:gKzVzw2b0
24

--過去、砂漠--

シノビ(本当に本物……北の王、あの人は何かを企んでいる……?)

ポニテ「どーだおねーさん!!つまり私達はライバルってことなのだ!!」

シノビ「残念だけど違うわ」

ポニテ「なにッ!?」

シノビ「知らないと思うけど……勇者因子って、知ってる?」

アッシュ「……」

ツインテ「わからないです……みんなは知ってますか?」

ポニテ「うんにゃ」

レン「レンも」

シノビ「……勇者因子っていうのは、世界中で一人だけに現れる勇者の証。これを持つ者は全ての属性を操れる」

ツインテ「全て……すごい。レンさんでさえ二属性なのに」

レン「ふんす」

シノビ「そしてあの人は、ちゃんと六属性を使いこなしている」

アッシュ「!?」

88: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:37:16.69 ID:gKzVzw2b0
25

--過去、砂漠--

ポニテ「ん?どゆこと?」

ツインテ「え、えっと。その勇者っていうのは同じ時代に一人しか存在しなくて、勇者っていうのは全属性使えるものらしい……です」

ポニテ「?私火しか使えないよ?」

ツインテ「ボクも……水しか使えません」

ポニテ「?おかしくない?」

ツインテ「いえ、おかしいとかじゃなくて……」

シノビ「そう、言いたくないけれど、君達は勇者じゃない」

シノビはきっぱりと言い放つ。

ポニテ「な、なにーーーー!?」

シノビ「だからもし、魔王討伐の旅をしているのだったら諦めて帰って。怪我をしないうちに」

ポニテ「な、なるんだもん!私勇者になるんだもん!!」

ツインテ「廃業するとか言ってたわりにめっちゃ執着してますね……」

レン「にゃー」

89: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:43:12.98 ID:gKzVzw2b0
26

--過去、砂漠--

男旅人「お譲ちゃん達、君たちも十分強かった。それに証明書も本物っぽいのは認める。だけれどもう勇者様はいるんだよ。諦めて故郷に帰ったほうがよくないかい?」

ポニテ「……」

リボンの少女「お、お姉ちゃん……」

もこもこ「きゅーきゅー」

あからさまにテンションがガタ落ちするポニテ。

ツインテ(まさか……こんなことが……)

アッシュ「……」

レン「レンはツインテが勇者じゃなくてもついてくよ?」

ツインテ「あはは……」

シノビ(言いすぎてしまったかな。いや、それがこの子達のためになるのなら)

ザッバアアアアン!!

シノビ「!?」

ツインテ「!?さっきの大きい魚人が立ちあがってます!!」

超砂魚人「……」

90: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:44:45.95 ID:gKzVzw2b0
27

--過去、砂漠--

シノビ「……確実に仕留めたはず……」

超砂魚人「やれやれ。こいつは結構使えると思ったんだけど、見かけ倒しか」

ツインテ「男の人の……声」

ズバシャッ!!

超砂魚人の体は真っ二つに割れ、中から何かが飛び出してきた。

ダンっ

謎の男「よっと」

くるくると回転しながらの着地。謎の男はぱっぱと服の埃を払うしぐさを見せる。

謎の男「庶民の船はほこりっぽいから嫌さ。さてシノビちゃん、やっと見つけたよ。魔王の骨を渡してもらおうか、持ってるんだろ?」

シノビ「……ッ!」

アッシュ「魔王の骨……」

男旅人「あ、あんたまさかあのモンスターを操ってたのか!?」

ドスっ

男旅人「ぐっ!?」

謎の男「悪いけど男には興味ないんだよね。近寄らないでくれるかな」

謎の男は男旅人の胸を剣で刺した。

91: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:45:20.73 ID:gKzVzw2b0
28

--過去、砂漠--

女観光客「きゃあああああああああああ!!」

ツインテ「い、いきなりなにを!!」

ポニテ「あいつ悪者だ!!」

シノビ「……撒いたと思ったのに……しつこいぞ電王……」

謎の男改め電王「悪いけれどそれが任務なんだよね。一人の女性にいつまでも執着しているのは我ながら情けないとは思うんだけど」

アッシュ「!!電王……だと」

レン「アッシュ……知ってるの?」

ツインテ「今治しますから!気をしっかり持って下さい!」

ツインテは男旅人の治療を開始する。

シノビ「あんたなんかに渡すものなんて……無い」

電王「そうかい……残念だよ。それじゃあ……って、ちょっと待ってよ今いい所なんだから……まぁいいか。女性と闘うのは好きじゃないしね。はいチェンジ」

シノビ「?」

電王が目を閉じて再び目を開けると……

電王「……っくく。やっと闘えるぜぇ」

92: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:46:45.16 ID:gKzVzw2b0
29

--過去、砂漠--

ツインテ(あの人容赦無く急所を……そのせいで少し時間がかかりそう)

アッシュ「ツインテ、この船を降りるぞ!!」

アッシュはツインテの肩を掴む。

ツインテ「え?ど、どうしたんですかいきなり。ちょっと待って下さい!もう少しでこの人の」

アッシュ「そんな場合じゃない!!」

ポニテ「あ、アッシュ君どうしたの!?」

アッシュ「レン!急いで小型船を作れ!!」

レン「すぐには無理……」

ツインテ「ま、待って下さい!!まだ治療がすんでないんです!!」

アッシュ「ほっとけ!!どのみち助からない!!」

シノビ「多重人格にして、多重職業……確かその人格は」

電王「はんっ!!!くらいな!!スキル、剣嵐!!」

ドシュドシュドシュドシュ!!!

アッシュ「!?くそ!!」

アッシュはツインテの前に立ち、両手を広げた。

ツインテ「……え」

93: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:47:31.93 ID:gKzVzw2b0
30

--砂漠--

ビュオオオオ!

吹き荒れる砂嵐。

電王「……」

シノビ「……ッ」

その中で対峙する男と女。

ツインテ「あぐっ……ぽ、ポニテ、さん、レン、さん」

ツインテは血だらけになった体でポニテ達にはい寄ろうとする。

ポニテ「……」

ポニテはレンを抱きかかえたまま事切れているようだ。

ツインテ「ッ……アッシュ、くん?」

ポニテから3メートル程離れた場所で、アッシュは8つの肉片に切り裂かれていた。

ツインテ「そんな……なんで、なんでこんなことに……」

電王「……」

シノビ「っ!!」

ガキィン!!

残骸となった砂上船の上で、男と女が火花を散らす。

94: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:48:06.98 ID:gKzVzw2b0
31

--砂漠--

電王「やるじゃねぇか女ぁ!ちぃと気にくわねぇが俺の攻撃を耐えるだなんてよぉ!!」

シノビ「!!よくも!!」

ガキィン!!

ツインテ「アッシュ君……ボクを庇ったせいで、こんな……」

アッシュは誰よりも前にいたはずなのに、今は誰よりも遠くで転がっている。

ツインテ「……ひどい……」

シノビ「ああああああああああああ!!」

電王「っ!!しゃああ!!」

ギィンギィン!!

ツインテ「ボク達は……無力過ぎ」

ツインテはアッシュの顔に手を伸ばすが、届くこと無く

ツインテ「……る」

ドサリ

ビュオオオオオオオオオ!


      酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった
              第三部
         あああああああああああああ(仮)

95: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:48:43.19 ID:gKzVzw2b0
32

--失われた王国--

ポニテ「さぁここはどこでしょーかっ!!」

レン「あの世に一票」

ツインテ「あ、ボクも」

便乗してツインテも手を挙げる。

アッシュ「……まじでどこだここ」

ツインテ達は石造りの家の一室で目が覚めた。

ツインテ「……ボク達……砂漠で死にました……よね」

アッシュ「ツインテが蘇生したんじゃないとすれば……天国もありうるのか」

ツインテ「……窓から見える景色、ここも砂漠なんでしょうけど……オアシス」

老人「お、気付いたかね少年少女達」

部屋に老人が入ってくる。

ツインテ「……えっと」

老人「あぁ状況が読めないぜよ?お前達は砂漠で死んでたから拾ってきて蘇生したぜよ」

ツインテ「さらっと死んでたとか言われるとショックですね」

96: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:49:24.40 ID:gKzVzw2b0
33

--失われた王国--

老人「……何があったぜよ?そらぁもうひどいありさまだったぜよ。多分他にも乗客がいたんだろうけど、船の上にあったのはお前達の死体だけだったぜよ」

ツインテ「……!」

アッシュ「……多少の対抗力が無ければコマ切れ状態で砂上にまで吹っ飛んでるだろうな……」

ポニテ「ね、ねぇおじいちゃん、私達より小さな女の子がいたはずなんだけど……」

老人「……残念だけど言ったぜよ。お前達だけだった……ってな」

ツインテ「そんな……」

レン「ツインテ……」

老人「まぁ……もしかしたらどっかで生きてるかもしれないぜよ。悲観的になるよりもとりあえずお前達は飯を食えばいいぜよ」

ポニテ「全く持ってその通りぜよ!!」

ポニテは勢いよくベッドから飛び上がると老人の横をすり抜けていった。

老人「おっと。元気のいいお譲ちゃんぜよ。食事は一階に用意してあるぜよー」

ポニテ「匂いでわかるー!」

老人「動物?」

97: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:49:56.65 ID:gKzVzw2b0
34

--失われた王国--

ツインテ「とりあえずお礼を。本当にありがとうございました。おかげさまで助かりました」

老人「おうおう。やっとお礼の言葉が聞けたぜよ。……そのなんだ、お前の右腕は元から失ってたんぜよな?」

ツインテ「あ、はい。そうです」

老人「ぜよな。断面が古かったから。まぁしばらくゆっくりしていきんさいぜよ。ここはいいとこぜよ?人はここを楽園と呼ぶ」

アッシュ「楽園……」

老人「かつて何百年、何千年前に砂漠の王国っちゅーもんがあったんぜよ。ここはその遺跡ぜよ」

普通に住んじゃってるけど、と老人。

ツインテ「本で読んだことがあります。かつて砂漠に繁栄を極めた王国があったと……」

アッシュ「そんなものが砂漠にあったのか」

レン「ツインテ物知り!」

ツインテ「そんなことないですけど。てへぺろ」

98: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:50:34.62 ID:gKzVzw2b0
35

--失われた王国--

カチャカチャ

ポニテ「がふがふっ!!」

老人「す、すごい食べっぷりだぜよ……」

ツインテ「す、すいません。お金は後で何とかして支払います……」

老人「お金はここじゃなんの価値もないぜよ」

ツインテ「え」

老人「働かざるもの食うべからずぅぅ」

ツインテ「は、働くって、な、何をしたらいいんですか……?」

老人「ふ、ふふふふふふふふ」

アッシュ「貴様!!はめたな!?」

ツインテ「はめる!?」

アッシュ「あ、いや、そっちじゃなくて……」

99: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:51:30.20 ID:gKzVzw2b0
36

--失われた王国--

老人「っと、そうじゃな、ツインテールの君は……」

老人はツインテの右腕の部分を見ながら喋る。

老人「そこの猫の君、この子の義手を作ってあげたらどうぜよ?」

レン「もう作ってある」

ツインテ「え?」

レンはテーブルの下に潜り込み、何かをごそごそ。

レン「これ!」

そして取りだしたるは銅色の義手。

ツインテ「!!」

レン「にゃんにゃんアーム一号。今ある材料じゃこれしか出来なかった……。でも、日常生活に支障をきたすようなものじゃないとレンは胸を張る」

ツインテ「レンさん……ありがとうございますっ!」

ツインテは本当に嬉しそうにレンの頭を撫でた。

むしゃむしゃ

ポニテ(レンちゃんの職業、誰も言ってないよね?)

100: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:52:10.14 ID:gKzVzw2b0
37

--失われた王国、酒場--

その夜。

わいわいがやがや

ツインテ「で……これが仕事ですか」

そこにはバニー姿のツインテ達が!!

老人「うむ。ここのマスターがウェイトレスを募集してると言ってたからなぁ。手伝ってやれぜよ」

男兎亜人「助かるよ先生。ただでさえ人数厳しいってのに、うちのが風邪ひいちゃってて数たんなかったんだよ」

老人「なぁに助け合い助けあいぜよ。いつもマスターにはいい酒飲ませて貰ってるぜよから」

ポニテ「うひー。これはずかしーww」

レン「猫なのに兎て。耳6つもあることに……」

アッシュ「お前らはいいだろ。俺はただの変 だぞ」

そこにはバニー姿のアッシュが!!

老人「お前だって食うたぜよ。食ったら働く。シンプルぜよ」

アッシュ「にしたって俺がこんな格好しても重要が無いだろうが」

青髭「そこのぼうやー!ちょっとこっち来なさいー!」

老人「……ふふふ」

101: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:53:11.28 ID:gKzVzw2b0
38

--失われた王国、酒場--

わいわいがやがや

ツインテ「お待たせしましたー!ビール三つでーす」

イルカ亜人「おおありがとうお譲さん。可愛い」

ミノタウロス「ぶひいいいいいいいいいいいい!!義手っ娘萌ええええええええええええええ!!」

ツインテ「あ、あははは」

頭髪が薄めな男性「こらっ!!不謹慎ですよ!!」


ポニテ「ほいほいーこっちもお待ちどうさーん!」

ドンっ!!

魚人マダム「あらん。元気で可愛いうさちゃんだこと。食べてしまいたいギョ」

アリクイ亜人「奥さん、人食いはやめたっていってたじゃないかニョロ」

魚人マダム「そうだったわおほほほ」

ポニテ「どっちが先に食い終わるか競争してみない?」

じゅる

魚人マダム「え?」

102: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:53:57.19 ID:gKzVzw2b0
39

--失われた王国、酒場--

レン「……それだけ?」

レンは上目遣いで豚を見る。

豚「ぶ、ぶひいいいいいいいいいいいいいい」

枝豆亜人「おつまみ適当に二皿追加って言ってるマメ」

レン「……それだけ?」

レンは上目遣いで豚を見る。後、手をにゃんってやってる。

豚「ぶひゃああああああああああああああああああああ!!」

枝豆亜人「お酒じゃんじゃん持ってきてって言ってるマメ」

レン「ありがとにゃんっ」

豚「~~~~~~~~~~」

枝豆亜人「……なんと末恐ろしいにゃんこ。将来が楽しみマメ。」

レン「……あれ?そういえばアッシュがいない」

103: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/23(水) 22:55:11.32 ID:gKzVzw2b0
40

--失われた王国、酒場の裏--

アッシュ「や、やめろおおおおおおおお!!」

青髭「んもうっ!!ちょっとくらいサービスしなさいよぉ!!」

サソリ亜人「尻尾ねじ込む」

アッシュ「こ、この手のネタは偉大なる先人だけやってりゃいいんだよ!!二枚目の俺がやることじゃない!!」

青髭「自分で二枚目とか自・意・識・過・剰・さ・ん。んふ。でもそこが可愛いぜごるぁあ!!」

アッシュ「ひぃ!!よくあるオカマな人の変貌が!!」

アッシュは人として失ってはならないものを失おうとしていた。(差別的表現)


パチャッ

月明かりが照らす夜の世界。

パシャっ

人知れず、池の中から少女がはいあがってきた。

わーきゃー

酒場は相も変わらずにぎわっている。

リボンの少女「……もきゅー」

112: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/03/31(木) 23:59:38.84 ID:mY/eG4Aa0
41

--西の王国--

西の王「やれやれ……随分と国を引っ掻き回してくれやがって」

秘書「お疲れ様です」

秘書は西の王の上着を預かる。

コンコン

側近兵「お休みのところ失礼します王様。先程王国から緊急の書簡が届いた次第で」

西の王(姉さんからか?)「入れ」

側近兵「はっ」

秘書「……」

西の王は側近兵から書簡を受け取り目を通した。
そこに書かれていたのは……

西の王「む……!?これは……」

113: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:00:07.10 ID:DmbWwsBq0
42

--北の王国--

北の王「王国から書簡ん?はて。一体全体なんのようでっしゃろ」


--東の王国--

東の王「ふん……」

東の王国は書簡をパンと叩く。


--西の王国--

秘書「なんと書かれていたのですか?」

西の王は険しい表情をしている。

西の王「………………人造勇者達が各地で魔王化している、と」

秘書「!!」

西の王「現在確認されているのは3体。ストロンガー、J、G。製造工程が同じことから、今後も増えることが予想される……」

西の王は書簡をグシャグシャに握り潰す。

西の王「姉さん……」

114: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:01:05.23 ID:DmbWwsBq0
43

--西の王国--

秘書「だ、大丈夫です。姉君は一つ前の段階の人造勇者です。彼らと同じようになると決まったわけでは」

西の王「だからと言ってならないとは言いきれないだろ!」

秘書「うっ」

西の王「元々安定度で言えば姉さんの方が圧倒的に下だ!!何かの拍子に変わってしまってもおかしくはない!!」

秘書「それは……」

西の王「馬車を出せ、王国に行く」

秘書「え、ええ!?」

西の王は急いで正装に着替え始めた。

バタン

秘書(め、名君なんだけどなぁ……)

秘書は部屋を出た後ため息をついた。

秘書(太陽とシスコンむーん……)

秘書は兵士に馬車の手配を命じた。

115: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:01:31.26 ID:DmbWwsBq0
44

--失われた王国、酒場--

ポニテ「あはははは」

レン「にゃはははは」

ツインテ「誰だ未成年にお酒飲ませたのー!」

老人「ミーぜよ」

老人はビシッと自分を親指で指す。

ツインテ「な、なんて堂々と……」

老人「この国では子供だろうとちょっとならお酒飲めるんぜよ」

ツインテ「み、未成年の飲酒は体によくないんですよー!!」

老人「ちょっとだって。ちょっとぜよ」

ポニテ「あははははツインテちゃんあわててる~。かーいいんだからー」

ポニテはツインテに抱きつくとそのまま押し倒した。

116: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:02:14.21 ID:DmbWwsBq0
45

--失われた王国、酒場--

むぎゅっ

ツインテ「わぷ!ちょ、ポニテさんまとわりつかないでくださ」

ポニテ「……」

ツインテ「?……あ、あの?」

ポニテ「ベッド……行こうか?」

ツインテ「い、いやー!!」

レン「レンもー」

ツインテ「いやー!!」

アッシュ「アッシュもー」

ポニテ「ワンパターンか!!」

ドゲシ!

ポニテのキックですい臓が破裂するアッシュ。

アッシュ「!!…っ!!っっっっ!!」

嫌な汗を流して崩れ落ちるアッシュ。

117: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:03:42.61 ID:DmbWwsBq0
46

--失われた王国、酒場--

ポニテ「ってかいつのまにもどってきたんら?ひっく」

アッシュ「っっ!!ひゅっ!!っっっひゅー!!」

滝のような汗。それと涙に涎に鼻水に。アッシュはガクガクと痙攣を起こしている。

老人「……まずくねー?」


・・・・・


ツインテ「お、終わりました」

ツインテの治療魔法が終わるとアッシュが体を起こした。

アッシュ「はっ、はっ、はっ……殺す気か!!」

ポニテ「殺す気なり」

レン「!!似てるにゃ!」

ツインテ「あのロボットそんなこと言わないですよ!」

アッシュ「ツッコミで死にかけるとは……うかつにボケもできんじゃないか……」

ツインテ「ボケだったんですかあれ」

118: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:04:16.35 ID:DmbWwsBq0
47

--失われた王国、酒場--

まぁいい、とアッシュ。

アッシュ「……朗報だ」

ポニテ「?らにが?」

アッシュ「入り口のところを見てみろ」

ツインテ「?」

ツインテが視線を送った先には、

がつがつがつ

リボンの少女「きゅー」

ツインテ「!!あ、あの子は!!」

ポニテ「!!」

レン「にゃあ」

入り口近くのテーブルで、少女ががっついて料理を口に運んでいた。

119: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:05:03.09 ID:DmbWwsBq0
48

--失われた王国、酒場--

ポニテ「よかったー!助かってたんだね!?」

ポニテは急いで少女に駆け寄る。

リボンの少女「?きゅー……」

リボンの少女はポニテに抱き締められ、困ったような顔をした。

ポニテ「きゅー?」

リボンの少女「きゅー」

ポニテ「……」

リボンの少女「きゅー」

ツインテ「!!」

アッシュ「……恐らく失語症だろう」

ポニテ「そっか……酷い目にあったもんね」

ぎゅ

リボンの少女「もきゅー?」

120: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:05:36.43 ID:DmbWwsBq0
49

--失われた王国、酒場--

ツインテ「失語……」

レン「!?」

ツインテの魔力がざわざわとささくれだつ。

ツインテ(あの時の、あの時のレンさんのような!!)

レン(っ!やっぱりアレはツインテのトラウマになってしまった!!)「アッシュ!!」

アッシュ「どうした?……っ!!ツインテのリボンが震えて……」

ツインテのリボンは風を受けているかのように靡いている。

レン「アッシュ!!ツインテの気を紛らわせて!!」

アッシュ「!!了解した!!来いポニテ!!」

事の甚大さを誰よりも理解しているアッシュはポニテを呼んだ。

121: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:06:18.10 ID:DmbWwsBq0
50

--失われた王国、酒場--

ポニテ「ん?なにー?」

アッシュ「なんかお前芸はないか!?」

ポニテ「ゲイ?」

アッシュ「言うと思ったシネ!芸だよ芸!!パーティーとか飲み会でする一発芸はないのか!!」

ポニテ「あーあーあれね。鯨取って来たらいいのねー?」

アッシュ「そーそーそー、ってそれは捕鯨やないか!!」

ビシッ

アッシュとポニテはその場で地団太。

アッシュ、ポニテ「うぅぅー!!シー、シェパード!!(掛け声)」

ツインテ「……」

レン「……」

122: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:07:22.97 ID:DmbWwsBq0
51

--失われた王国、酒場--

アッシュ「くっ……駄目か……しぶといやつめ」

ポニテ「密かに練習していたというのにショックだよ……次行こう!アッシュ君!!」

アッシュ「待て!『奴』はもういっぱいいっぱいだと言ってるぞ!!赤面してるぞ!!そしてすごく滑ってるぞ!!」

ポニテ「スキーとギャグは滑ってなんぼだよアッシュ君!!何を恐れることがあろうか!!」

アッシュ「なにそれかっこいい!!くそ!毒を食らわばなんとやらだ!!ポニテ、Mの5だ!!」

ポニテ「らじゃー!!」

こほんこほんと咳をするポニテ。

ポニテ「この前ねー?友達が家に遊びに来たんですよー、お土産にすげえ高そうなケーキ買ってー。で、居間でお茶飲みながらもくもく食べてたらですね、テレビの番組の司会者が言うわけですよ。
なんかね、この時期やたらと幽霊が出るらしいんだ、って。そんなバカな話があるかいー。って思って振り返ったら……友人がいないんですよ。
さっきまで一緒に喋ってたのに。もしかしたら帰ったのかと思って玄関に行ってみたんだけど鍵はしっかりかかってるの。内側からしかかけられないやつまで。
友達が来たのは夢だったのかな?って一瞬考えるんだけど、テーブルの上には手付かずのケーキがちゃんとおいてあるの!!本当、怖いよね!!」

アッシュ「お前が怖いわ!!」

ビシッ

アッシュとポニテはその場で地団太。

アッシュ、ポニテ「ううー!!シー、シェパード!!」

ツインテ「……」

レン「……」

123: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:08:07.80 ID:DmbWwsBq0
52

--失われた王国、酒場--

アッシュ「もう耐えられない……」

ポニテ「負けちゃ駄目だよアッシュ君!てか心が折れるのは私のはずだよ!!」

アッシュ「こんなの俺のキャラじゃない……もっとイケメンらしい仕事があるはずなんだ……」

ポニテ「イケメンイケメン煩いよアッシュ君!!次、Wの2!!」

やれやれ……、とアッシュ。

アッシュ「去年のクリスマスだったかな。俺はケーキを予約するの忘れてたから急いで当日に買いに行ったんだ。そしたら人気の店だったんだが運良く1ホール残っててな。『これ下さい』って買ったわけだ。そしたら売り場のお姉さんが、『ありがとうございますー。今日は彼女さんと過ごされるんですか?ww』……って」

ポニテ「……」

ツインテ「……」

レン「……誰の実体験?」

124: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:08:35.68 ID:DmbWwsBq0
53

--失われた王国、酒場--

ツインテ「とりあえず落ち着きました……ご迷惑をおかけしました」

アッシュ「あ、あぁ……気にするな」

ポニテ「うん……」

レン「すげぇテンション下がっちゃってるにゃ」

リボンの少女「きゅー」

ツインテ「そう言えばこの鳴き声って、もこもこちゃんのですよね……」

アッシュ「……一緒にいない所を見ると死んだか。もこもこのことが忘れられないんだろうか」

ポニテ「可哀そうだよ……」

レン「いつもなら美味しそうだったのにとか言うのに……」

ポニテ「私そこまで不謹慎じゃないもんっ!」

125: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:09:05.54 ID:DmbWwsBq0
54

--失われた王国、酒場--

リボンの少女「きゅー」

ツインテ「そういえばこの子、どんな目的で東の王国行きの船に乗っていたんでしょうか?両親も乗ってたのかな……」

アッシュ「わからん。だがこの年齢で一人旅というのはおかしいな」

ポニテ「うん……。ねぇ!東の王国についたらこの子の家族、親族を探してあげようよ!!」

レン「今回はポニテがまともだ!」

老人「ほう」

ツインテ「いいですね。賛成です!ボクは構いませんよ!」

アッシュ「ふん……断る理由が無い」

ポニテ「アッシュ君たら素直じゃないんだからーw」

リボンの少女「きゅー」

126: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:09:31.54 ID:DmbWwsBq0
55

--失われた王国、露天風呂--

カポーン

ツインテ「……どこにでも露天風呂あるんですね」

ポニテ「なんかあのおじいちゃんが作ったとか言ってたけどねー!やっぱり気持ちいいやねー!!温泉っ!!」

レン「ぬくい」

リボンの少女「きゅー」

アッシュ「きゅー」

目隠しをした状態で温泉に入っているアッシュ。

ポニテ「言っておくけどその手ぬぐい取ったらひどいからねっ!?ここは混浴だし、分けて入るほどスペースも時間も無いから今回だけなんだからね!!」

ツインテ「あははは……」(もう慣れましたボク)

アッシュ「つ、ツインテと同じ風呂……」

静かにボルケーノしようとしていた。

127: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:10:11.24 ID:DmbWwsBq0
56

--失われた王国、露天風呂--

ポニテ「!……ふふふ」

ツインテ「な、なんですかいきなり嫌な笑い方して」

ポニテ「いやーさー。なんでかむしょうにツインテちゃんの肌を撫でまわしたくなっちゃったわけでへへへへ」

レン「ポニテ、サポートして。レンが奴の動きを止めたらレンもろともで構わんやれ」

ポニテ「了解」

ツインテ「な、ななななな!」

風呂の中で後ずさるツインテ。手をわきわきさせながら迫る二人。

リボンの少女「きゅー?」

それを見守る少女。

アッシュ「な、何が行われようとしている!?」

128: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:14:51.05 ID:DmbWwsBq0
57

--失われた王国、露天風呂--

ばしゃばしゃばしゃ

ツインテ「や、やです!やめて下さいよぉ!!」

ポニテ「うへへうへへ」

レン「にゃはははは」

ツインテ「実はまだ酔ってた!?」

ばしゃばしゃ

アッシュ「な、こ、こんな時に見えないとは全く持って使えぬ目玉め!!」

アッシュは悔し涙で手ぬぐいを濡らした。

ツインテ「あっ!ちょっ、レンさんそこは」

アッシュ「!!何が起こっている!!」

アッシュは必死に考えた。

アッシュ(手ぬぐいを取らずに見る方法だ、どうすればいい、どうしたら……心の目?いやそんなものあるものか。あぁくそう!!)

アッシュはばしゃばしゃと湯を叩いた。

リボンの少女「きゅー?」

129: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:15:26.24 ID:DmbWwsBq0
58

--失われた王国、露天風呂--

かちん

ポニテ「あたっ!って……かちん?」

ポニテのひじがあたったのはツインテの義手……。

ツインテ「あたた。もうふざけ過ぎです……よ?」

ポニテとレンが涙ぐんでツインテを見ていた。

ポニテ「ご、ごめ、わ、私のせいで、こ、これ」

レン「ひっく。れ、レンのせいで」

ポニテとレンはツインテに抱きついてわんわん泣き始めた。

ツインテ「な、泣き上戸に変わった!?てゆうか裸でくっつかないでください!!お、お   」

130: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:16:10.33 ID:DmbWwsBq0
59

--失われた王国、仮部屋--

アッシュ「む!?思いだした……そう言えば盗賊の上級スキルに確かあったぞ。しかし……今の俺にそんな大それたことができるものなのか?……は、柄にも無く弱気なことを言っちまったぜ……いくらこの先で必要な場面があろうと、今を逃したら意味がない!!行くぞ!!」

アッシュは眼球に魔力を集約させた。

アッシュ「我が眼は全てを見通す死神の眼なり!!うおおおおおおおおおお!!」

ばっしゃあああん!!

アッシュは立ちあがり、月に向かって吠える。

アッシュ「スキル、透視眼!!!!」

びかっ!!

アッシュの量目が眩い光を放つ!!

アッシュ「で、出来た!!出来たぞ!!さすが俺!!」

手ぬぐい「ぴきーん。魔力反応を感知、眼球を潰します」

ばちゅん

それを感知したレン特製の手ぬぐいがアッシュの眼を……。

アッシュ「あぎゃー!!!!」

131: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/01(金) 00:17:01.57 ID:DmbWwsBq0
60

--失われた王国、仮部屋--

すーすー

リボンの少女「きゅー」

皆が寝静まった頃リボンの少女はベッドを抜け出して月を眺めていた。

リボンの少女「きゅー」

硝子のような瞳。動かぬ表情。

リボンの少女「きゅー」

めりめり

突然少女の背中が隆起しだしたかと思うと……

めりめりめり!!

少女が真っ二つに分かれてそこからもこもこの顔が飛び出した。

もこもこ「きゅー」

がたっ

ポニテ「んー?少女ちゃん?」

ポニテが目をごしごしと擦りながら起きてきた。

リボンの少女「きゅー?」

少女は何事も無かったのように首をかしげる。

140: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 21:54:12.62 ID:DmbWwsBq0
<1> 

 カーン。

 先輩「おーい行ったぞそこの一年!!走って取りに行け!!」

 坊主「うすっ!!」

 俺は今年入学したばかりの高校一年生。所属は野球部。故に頭は坊主。
 背はそんなに高くない。体重もあまりあるわけじゃない。バッティングは得意とは言えない。別段足が速いわけではない。かと言って守備が巧いなんてわけにもいかない。
 でも運動神経が悪いわけじゃなくて、あくまで良くないだけ。ついでに言えば学業もそこそこ。おまけに言えば顔もそこそこ……うん。

 坊主「あの先輩無駄に飛ばしすぎだろう……しかも大ファールだし」

 入部して1週間が立ち、やっと部活の流れにも慣れ、どの先輩が怖いのか正確に理解しはじめた今日この頃。 

 坊主「はっ!はっ!」

 ボールは校庭の隅から校舎の裏へと駆けていく。これは野球部のグラウンドの立地上、最も長い球拾いコースとなる。

 坊主「あーラッキー!木陰でちょっと休んで……駄目だあの先輩ずっと見てるし」

 振り替えると先輩は鬼の形相でこちらを睨んでいた。先輩は後輩を監視してケチをつける義務でもあるのかと思いつつ、俺は素直に観念して校舎裏へと足を踏み入れた。

141: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 21:54:47.24 ID:DmbWwsBq0
<2>
 
 坊主「こっちに来たけはずだけど……草の下入ってたらやっかいだなぁ……あ」

 ここは人気の少ない校舎の裏である。そして綺麗に折り畳まれた制服が……地面に置いてある。
 
 坊主「これ……も、もしかして」

 まごうことなきうちの女子の制服だ。っていうことはだ。もしかしてそういうことなのか?  
 
 坊主「いやでもこんなご丁寧に畳んで……しかも全部」

 ん?

 坊主「いや、ってことはこの中身の人は」

 ザっ

 魚人「あ」

 坊主「あ?」

 ……ご想像出来るだろうか?

 坊主「あ、あが……」

 魚人「見られて、しまった……」

 校舎裏には真っ裸の魚人フェイスの女の子がいた。

142: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 21:55:22.19 ID:DmbWwsBq0
<3>

 坊主(ぴ……ピンク……)

 いかに異様な頭部を持とうとも、直ぐ様目線がそこに向かってしまったのは男としてしょうがないことと言いきれるだろう。てゆうか見られているのに全く隠そうとしない女の子。女の子?

 魚人「それ、私の」

 ジャリ

 魚人は俺の持っている制服を指さし、砂を裸足で踏みしめてゆっくりと近づいてきた。

 坊主「あ、あわ」

 異様な光景である。
 めちゃめちゃ異様な光景である。

 坊主「う、う、うわああ!!」

 俺は制服をその場に置いて逃げ出した。一糸まとわぬ(少し疑問の残る表現だが)姿を見られた彼女の方が普通は逃げ出す側なのだが、

そこはほら、俺はまだ少年だし?
 
 坊主「うあああああああああ!!」
 
 軽く涙を零しながら俺は走る。最初に見た異性の裸があんなのなんて思いたくなかったのだ。
 なんとかしてこの頭の中の画像を消してしまいたい。そのためならば、今なら先輩の鉄拳制裁もありがたく受け入れられる。
 
 坊主「うああああああああああ!!」

 没個性の塊。そんな俺にとって彼女は眩しいくらいに個性的存在だった。
 いや、冒涜的だった。




    冒涜的な彼女。

143: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 21:55:49.40 ID:DmbWwsBq0
<4>

 地味子「ちょっと付き合って欲しいのだけれど」

 次の日の放課後速攻で呼び出された。

 坊主「あ、う、うん」

 眼鏡「うお!なんだよ坊主!!もしかしてお前地味子と!?」

 絡んできた隣の席の眼鏡。

 坊主「ちげぇよそんなんじゃねぇよ」

 呼び出された理由次第では本当に。

 すたすたすた

 俺が了承の意思を示したのを確認するとさっさと教室から出ていってしまう地味子。

 坊主「あ、おい」

 ガタっ
 
 慌てて地味子の後を追った。

 眼鏡「ちぇー。坊主に先こされたわー」

144: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 21:56:20.35 ID:DmbWwsBq0
<5>

 すたすたすた

 自分の先を歩く女の子を見る。

 地味子「……」

 地味子。図書委員でいつも本ばっかり読んでる典型的な暗い子。発言することさえ稀有なクラスの中でも目立たないタイプ。

 坊主(……そんな地味子があんな大胆なことをするかな?……でもそういう奴に限って変なことするとも言うし)

 すたすたすた

 坊主(って、なんであの件のことだと決めつけてるんだ俺は。違う要件で俺を呼びだしたのかもしれないじゃん。そもそも同じ学年の同じクラス同士って出来すぎだし……そうだよ、きっと違うんだ)

 すたすたすた

 坊主(第一俺は顔は見てないから確認のしようが無いし……あっちからは俺の顔見えてたんだろうけど)

 ぎぃ

 着いたのは、屋上。

 地味子「足気を付けて」

 坊主「あ、うん」 

145: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 21:56:48.90 ID:DmbWwsBq0
<6>

 坊主(屋上来たの初めてだわ。ていうかそんな簡単に開いちゃっていいのかよ、色々問題になってるだろうに)

 俺は屋上に踏み入れて外の景色を見まわす。田舎なので絶景。と言っても見飽きた感のあるいつもの風景だが。

 地味子「坊主君。昨日見たよね?」

 いきなり直球が飛んできた。

 坊主「えっと……なにを?」 

 見逃しのストライク。まだだ。まだアレのことだと決まったわけでは……。

 地味子「裸」

 坊主「……」

 ツーストライク。い、いやまだだ。誰のかって特定してないし場所も聞いてな

 地味子「昨日校舎の裏で私の裸、見たよね?」

 坊主「見ましたごめんなさい。ピンクでした」

 三振。そしてなぜか反射的に謝ってしまった。

 地味子「……」

 坊主「って、お、俺が悪いわけじゃねぇぞ!!そっちがあんなところで裸だったのが悪いんじゃねぇか!!一体何をしてたんだよ!!」

 地味子「それは……」

 急にもじもじしだした地味子。

146: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 21:57:17.27 ID:DmbWwsBq0
<7>

 地味子「その……放課後に図書館で調べものをしていたのだけれど、クトゥルフ様関連の書籍があって読み耽ってしまったの」

 坊主「クトゥルフ様?」

 なんだそりゃ。しかも様付けとか……。

 地味子「そうしたら段々ム ム してきちゃって……深きものどもは普段一体どんな気持ちでいるのか、とか考えていたらその気持ちを味わいたくなっちゃって……つい」

 坊主「つい!?ついで校舎の裏で素っ裸になってたの!?」

 地味子「丁度手頃な魚人の被りものがあったからつい……」

 坊主「丁度そんなものが学校にあるかよ!!」

 いかん。駄目かもしれないこの子。
 俺はぼりぼりと頭をかく。あ、フケだ。
 
 坊主「……で?俺はどうしたらいいの?別に釘刺さなくても黙ってるつもりだったけど?」

 地味子「イア、違うの。そういうことじゃないわ」

 坊主(イア?……いや、か)

 地味子「坊主君、多分狙われることになるわ」

147: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 21:57:49.49 ID:DmbWwsBq0
<8>

 坊主「え?国家権力に?」

 なんでだよ。この場合猥褻物陳列罪が適用されて地味子が捕まるんじゃないのかよ。いつだって男は弱い立場だよ。

 地味子「違う。もっと恐ろしい存在よ」

 坊主「軍が動くのか!?」

 それも国家権力な気もするけど。ていうか軍が動くとか相当だよ?秘密兵器の設計図でも地味子の体に書かれてたのか?俺は●●しか見て無かったけど……。てゆうか軍て。

 地味子「……旧支配者よ」

 坊主「……」

 冒涜的というよりももはや電波的だった。さっきから言ってることがさっぱり理解できずにいる。

 地味子「私はあそこで儀式を行っていたの。そして坊主君はその儀式を見てしまった……」

 坊主「……儀式」

 段々ひどい方向に向かっているのがわかる。そして段々俺はイライラし始めていた。

148: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 21:58:20.55 ID:DmbWwsBq0
<9>

 地味子「どの眷属が坊主君の命を狙ってくるかわからない。だから」

 坊主「あーもううっせぇ!!わけわかんねぇことばっか言ってんじゃねぇ!!」

 地味子「!?」

 怒鳴ってしまった。

 坊主「さっきから電波的な単語並べやがって!!素直に謝って欲しいとかそういうんならストレートに言えよ!!回りくどいんだよ!!」

 怒りながら少し罪悪感。なんで俺が怒ってるんだよ、しかも女の子に対して……。ちょっと弱い者いじめをしているような気分になってきた。

 地味子「……SAN値に早くも変化が現れた。危険な兆候だよ」
 
 坊主「……」

 前言を撤回する。駄目だこの人。

 地味子「これからは出来る限り一緒に行動しようと思うの。少なくとも学校にいる間だけでも」

 なんか言いだした。

149: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 21:58:51.16 ID:DmbWwsBq0
<10>

 坊主「……え?いや、一緒にって、え?」
 
 地味子「坊主君が勝手に首を突っ込んできたせいなんだけど、まきこんでしまったことにも変わりが無い。だから私が責任を持って、坊主君を立派な崇拝者にして見せる」

 地味子はものすごく真面目な顔で俺を見ている。

 坊主「いや……あの」

 地味子「そうだ。はい、これ」

 坊主「?」

 地味子が渡してきたのはラヴクラフト全集という本。6冊。

 坊主「明日までにちゃんと読んで来てね。知識があるのと無いとじゃ危険度が違うから」

 坊主「……」

 何が……何が危険なんですか?
 
 こうして俺と地味子の冒涜的な生活が始まるのでした。

150: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 21:59:30.03 ID:DmbWwsBq0
<11>

 次の日。

 地味子「坊主君。聖書はちゃんと読んできた?」  

 坊主「あぁ、一応……」(聖書って)

 地味子「うん、いい心がけだよ」

 そう言って地味子はニコっと笑った。

 坊主「……」

 内容は……ホラーな内容だった。あまり例えるのは得意でないからなんと表現すべきかわからないけれど、ようは直視することさえはばかれるような化物を崇拝したりしなかったりする話だ。

 坊主(……なんで素直に徹夜して読んじゃうかな俺も)

 昨日の夜は熾烈を極めた。今まで一度も眼にしたことが無い文字、辞書を引いても存在しない専門用語のオンパレード。野球しかやってこなかった俺の脳はいともたやすく許容オーバー。

 地味子「ね、ね。どの旧支配者に興味を持った!?」

 坊主(本当にこいつは狂信者だなぁ)

151: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 21:59:55.90 ID:DmbWwsBq0
<12>

 数学の先生「はい、じゃあね。この問題を二人で組んで出来たら持ってきてね。終わった人から休み時間にしていいよ」

 眼鏡「何が出来たやつからだよ。この問題めちゃめちゃむじいじゃん!おい坊主……ってお前と組んでもなぁ」

 坊主「うるせぇ、俺だってお前と組みたくねぇよ」

 地味子「じゃあ私と組もう、坊主君」

 坊主「!?」

 気付けば後ろから地味子が這い寄ってきていた。

 坊主「地味子……お前」

 眼鏡「おっ!そういや地味子成績いいもんな、よかったじゃん坊主!」

 坊主「こいつ。絶対楽しんでやがる」

 坊主は眼鏡を睨む。

 地味子「大丈夫、私SAN数は得意よ」

 坊主「いや数学なんですけど」

152: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 22:00:31.73 ID:DmbWwsBq0
<13>
 
 眼鏡「ってーかさ。地味子はこいつのどこがいいの?」

 坊主「何を聞いてやがる」

 地味子「?言ってることがよくわからないけれど」

 眼鏡「えー?だってお前ら付き合ってんじゃねーの?」

 坊主「違うっつってんだろ」

 地味子「私達は恋愛関係じゃないよ。同じ神を崇拝しているだけ」

 坊主「やめろ、頼むからやめろ。そんな説明はだめだ」

 眼鏡「そっかー。まぁそうだよなー。坊主が俺より先に彼女が出来るわけねーもんなー。なんてったって坊主と違って、俺様こんなにイケメンだし?なぁお前もそう思うだろう地味子」

 眼鏡は髪の毛をサラッとやって見せる。
 
 地味子「非常に名状しがたいフォルムをしているよね」

153: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 22:01:11.87 ID:DmbWwsBq0
<14>

 地味子「ここよ」

 坊主「理科実験室……本当にそれっぽいな」

 今俺は地味子に案内されて理科実験室にまで連れてこられた。
 理科実験室。放課後は名称を変え、

 地味子「ここがラヴクラフト部。略してラ部の部室よ。素敵でしょ」

 坊主「なんで公式に認可された部なのかが不思議だわ……」

 ガラララ

 坊主「うっわ気持ち悪い!!」

 中には、もうこれ見よがしに儀式しますよ的なアイテムが勢ぞろいしていた。

 地味子「まだあの子達は来て無いみたいね」

 坊主「なんだ、他にも同じようなのがいるんか」

 地味子「えぇ、坊主君で5人目よ」

 坊主「俺を数に入れるなよ!!俺野球部入ってるし!!」

 地味子「あ!そこの魔法陣を視界に入れてはいけない!!脳を焼き切られるよ!!」

154: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 22:01:42.75 ID:DmbWwsBq0
<15>

 翌日。
 
 坊主「どういうことか説明してもらおうか」

 地味子「?何を?クトゥルフ様の魅力について?」

 坊主「いらんわ!!俺が野球部を止めさせられたことについてだよ!!」

 地味子「あっ」

 坊主「あっじゃない!あっじゃないよ!?」

 地味子「さ、さぁ私は知らないわ。っていうか一端の生徒がそんなこと出来るわけないじゃない」

 坊主「今日先輩に言われたんだよ!!あの鬼のような先輩がガタガタ震えながらお前は今日から野球部に来るな、じゃないと俺はあの女に殺される、って!!」

 地味子はそれを聞いてニヤリとほほ笑む。

 地味子「いい感じのSAN値減少具合ね」

 坊主「言ってる場合か!!しかも顧問に話をしようとしたのに今日いないみたいだし」

 地味子「莫迦め! 顧問は死んだわ!」
 
 坊主「死んだの!?まじでなにしたてめぇ!!」

155: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 22:02:35.99 ID:DmbWwsBq0
<16>

 坊主「くそ……なんかよくわからないけれどまじで野球部退部させられたし」

 地味子「仕方ないよ。あんな球ころ遊びなんてしてる暇じゃないんだから」

 坊主「お前は今全国の野球ファンを馬鹿にした」

 地味子「命には代えられないでしょ?」

 坊主「本当に危険ならな」

 はぁ、っとため息をつく坊主。

 坊主「しかしお前本当に寝ても覚めてもクトゥルフなのな。他に好きなもんないのかよ。オタクっぽいんだからアニメとかはみないのか?」

 地味子「そういう低俗なのは……と言いたいけどアニメはEVAとか好き」

 坊主「お。俺もEVAは好きだぜ。じゃあ本当に好きなら、好きなセリフとか言ってみなよ。俺はやっぱ、笑えばいいよ、かなぁ」

 地味子「私はそうね。私アスカが好きだし、あのセリフかな」

 坊主「ほう。あんたバカァ?とかか?」

 地味子「ミサトもイア。シンジもイア。ファーストはもっとイア。パパもイア。ママもイア。でも自分が一番イア!もぉぉイア。がまんできない!!……っていうセリフが」

 坊主「ちょっと手を加えてません!?」

156: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 22:03:13.84 ID:DmbWwsBq0
<17>

 坊主「もっと女の子らしい趣味を見つけるべきなんじゃないのか?」

 地味子「別に私は無理にほかの趣味を見つけようとは思わないんだけど……」

 坊主「おさげだってやめて前髪もいじれば結構可愛くなるんじゃないの?」

 地味子「……」

 坊主「後は、そうだな。うちの妹もそうだけど大抵ディ○ニーキャラ好きじゃん。その感じじゃディ○ニーランドとか行ったことないんじゃないのか?」

 地味子「あまり興味が持てない。あ、でもインスマウスには行ってみたいかな」

 坊主「なんでそれ出した!?関係無いじゃん!!」

 地味子「人外による夢の世界ということで。鼠顔が魚顔の違いしかないし」

 坊主「マスコットキャラかどうかで随分違うわ!!」

 地味子「ミッキーインスマウス」

157: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 22:03:41.71 ID:DmbWwsBq0
<18>

 坊主「おい。今日も他のやつこないのかよ」

 地味子「色々みんなも忙しいんだと思う。やることいっぱいあるから」

 坊主「……この部の目的ってなんだ?」

 地味子「……坊主君はあまり知らないと思うけれど、実はこの町は世界中から色んな本が集められてるの」

 坊主「なんか嫌な感じがしてきた」

 地味子から借りた本の中にはとんでもない書物が登場していた。そんなものが実在するとは思えないが。

 地味子「実はこの町に来たナコト写本が何者かによって盗まれたの」

 坊主「とんでもねぇ!!絶対嘘だ!!ってか実在しないだろ!!」

 地味子「いやいやするし」

 坊主「しないし!!創作だし!!」

 地味子「私達はそれを悪用される前に見つけ出して保管することが目的なの」

 坊主「流しやがった……」

158: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 22:04:18.39 ID:DmbWwsBq0
<19>

 坊主「くそ。まじがいきちさんじゃないかあいつ……」

 坊主母「あら、今日は早いのね?野球部はどうしたの?」

 坊主「あぁ~!!やめたんだよ!!」

 坊主母「え!?やめたってどういうことよ!?ちょっと!!」

 だんだんだん

 坊主は階段を駆け上がり自分の部屋のドアノブに手をかけた。

 坊主(うっせぇ。俺だってどういうことだか聞きてぇっての……全部あいつのせいだろうけど)

 バタン

 坊主「はぁ、疲れた。飯までひと眠り……んおっ!?」

 窓を見て坊主は凍りついた。なぜなら窓には血のような真っ赤な液体で、

 『明日は牡猫の血を持ってきて。儀式に使うから』

 と書かれていた。

 坊主「窓に!窓に!」

159: Qw02 ◆0H/0dQv4.Q8B 2011/04/01(金) 22:04:53.49 ID:DmbWwsBq0
<20>

 パタン

 地味子「ただいま」

 にゅる

 「オカエリ。最近トテモタノシソウダネ?」

 地味子「うん。今日もとても楽しかった」

 地味子は鞄を置くと制服を脱ぎ始めた。

 「ソレハ坊主トイウ子のオカゲ?」

 地味子はネクタイを解く指を止めた。

 地味子「……そう、かもしれない。まだ坊主君はイアイア私に付き合ってるようだけど……」

 にゅる

 「……ハヤク本当ノ意味デ仲良ク出来ルトイイネ」

 地味子「うん。ありがとうショゴス」

 地味子が上を見て笑った。そこには天井に貼りつくアメーバのような存在がうごめいていた。

 地味子「てけり・り!てけり・り!」

 「てけり・り!てけり・り!」

172: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 21:36:23.80 ID:rdrv8T+l0
61

--失われた王国--

ポニテ「んじゃありがとねー!!」

老人「うむ。気を付けていくぜよ」

ツインテ「本当に昨日のウエイトレスだけで恩は返せたんでしょうか?」

老人「十分すぎるぜよ。君らの写真も飛ぶように売れて、げふんげふん」

アッシュ「貴様一体裏で何をやっていた……それを寄こせ!」

レン「どうりでパシャパシャ音がしてるとおもったにゃ」

老人「特にツインテールの子のはけがよくてね」

ポニテ「くっ!美少女ツインテールおしとやかボクっ娘に更に義手属性まで加わったツインテちゃん!!私たちに勝ち目はもうないのか!?」

レン「レンは元より勝つ気などない!!」

ツインテ(あはは。男の子なんですけどねー……)

アッシュ「いくらだ!?いくらで買えるんだ!?」

173: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 21:38:59.30 ID:rdrv8T+l0
62

--砂漠--

ざざざざー

ツインテ「すごいですねレンさんのこの船!小型だけどざくざく砂の上走ってます!!」

レン「にゃー。レンの作るものは基本的に動力が魔力だから心配だったの。さすがに東の王国までは道のりが長いから……でもツインテの魔力ならどうってことなかったかもしれないにゃ」

ポニテ「ふひぃんふぇちゃん、きつくない?替わろうか?」

ポニテは老人に持たせて貰ったおにぎりを頬張りながらツインテに声をかけた。

ツインテ「全然大丈夫ですよ。ボクも少しくらい皆さんの役に立ちたいですし!そしてやっぱり食料はボク達の口には入らないんですね」

アッシュ「食糧が尽きる前に着くしかないな」

リボンの少女「きゅー」

リボンの少女がツインテの服を引っ張る。

ツインテ「あ、喉が渇いたんですか?ちょっと待って下さいね」

ツインテは水属性魔法で水を作りだし、水筒に注いでいく。

じょろろ

ポニテ「あ!ツインテちゃんが汁出してる!!」

ツインテ「言い方を変えて下さい!!」

174: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 21:51:21.28 ID:rdrv8T+l0
63

--砂漠--

アッシュ「つ、ツインテ。その、なんだ……俺も喉が」

ツインテ「あ、はい。あっ、でも水筒今使っちゃってますし……じゃあボクの手でよかったら」

ツインテは自分の手でお椀を作る。

ポニテ(どういうイベントだー!!)

アッシュ「ツインテ汁はぁはぁ」(む、そうだな、いれものがないんじゃ仕方ないな)

ポニテ(変 だー!もとい反対だー!)

ポニテはにやにやしながらその光景を見ている。

レン「!?つ、ツインテそんなのむぐっ」

ポニテはレンの口を塞ぐ。

アッシュ「じゃ、じゃあ」

アッシュはツインテの手に舌を這わせる。

ぴちゃ

ツインテ「あはは。なんかくすぐったいです。それに右手の隙間から水垂れちゃってますね」

アッシュ「レロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロ」

ツインテ「……なんでそんなに必死なんですかね?」

175: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 21:51:58.53 ID:rdrv8T+l0
64

--砂漠--

ポニテ「あ、見えたよ東の王国!!あれでしょ!?」

アッシュ「あぁ。思ったより把握着いたな。ツインテ御苦労」

ツインテ「いえ、全然大丈夫ですよ」

レン「にゃー」

リボンの少女「きゅー」

ぐらぐら

ツインテ「あ、あれ?これ船の揺れとは違いますよね」

ズオオオオオン

砂亀「あんぎゃー!!」

船の前方に巨大な亀が出現した。

ポニテ「!?」

ツインテ「お、お、おおおきいいいいいいいいい!!」

176: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 21:53:19.91 ID:rdrv8T+l0
65

--砂漠--

ポニテ「ううし!アッシュ君食後の運動だ!」

アッシュ「馬鹿か?食後なのはお前だけだ」

アッシュはシャリンと音をさせてナイフを抜き取る。

ポニテ「えへへごめんー!」

ポニテも二本の剣を抜いて構えた。

ツインテ「ぼ、ボクも」

レン「ツインテはいい。ここに来るまでに魔力使ってるんだから」

レンは錬金ツールを取りだして巨大な鎌を作り上げる。

ポニテ「じゃあ行くよ!早いもん勝ちだからね!!」

ダンっ

アッシュ「一人で倒せるのか?」

トッ

レン「二属性試してみたい」

ぴょんっ

ツインテ「う、うぅ……皆さんカッコイイ。ボクもいつかあの中に……」

177: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 21:54:34.83 ID:rdrv8T+l0
66

--砂漠--

ポニテ「プラズマ火球やばかったねーw」

アッシュ「思った以上に強力だったな……」

レン「ふんす!」

レンはどや顔で決めポーズを決めていた。

アッシュ「……元々器用だったレンが二重属性になったことによって、幅広くなんでも出来るようになったな」

ポニテ「うん。ツインテちゃんの細胞使ったせいか魔力も増加してる。もう私達より強いかもしれない」

アッシュ「……」

レン「ふんす!」

アッシュ「ふ……そうかもしれん」

ツインテ「皆さん大丈夫ですかー!?お怪我のほどは!?」

アッシュ(常に俺達の回復してたくせに……あるわけないだろ)

178: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 21:55:27.28 ID:rdrv8T+l0
67

--砂漠--

ポニテ「うひひ。さーて亀のお味はどんなかなー?」

アッシュ「まてやめろ」

ポニテ「うえ?」

アッシュ「……こいつには毒を打ちこんだ。お前でも危険かもしれない」

ツインテ「毒?いつのまに毒なんて打ちこんでたんですか?というか携帯してたんですか」

ポニテ「……なるほど」

アッシュ「……丁度いい、話しておこう。俺は欠陥属性の持ち主で、属性は毒なんだ」

ツインテ「!?」

ポニテ「ふえー!そんな属性あったんだー!?」

レン「……だろうと思った」

アッシュ「あんま他の奴らに言うなよ?知ってるやつ少ないんだから」

ポニテ「にひひーww」

アッシュ「なんだよ気持ちわりい」

ポニテ「いやいや、なんだかアッシュ君もちっとは丸くなって打ち解けて来たかなってさ!!」

ツインテ「すごいですね!レアな属性だなんてかっこいいです!!」

レン「隠してたとこ悪いけど、誰もそれで差別したりしないにゃ」

アッシュ「……」

179: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 21:56:32.36 ID:rdrv8T+l0
68

--砂漠--

ぱちぱちぱちぱち

アッシュ「?」

砂漠の中を拍手しながら歩いてくる剣士がいる。顔に傷を持つ、髭を生やした侍のような男が。

?「素晴らしい腕でござった!これほど大きな砂亀を大した被害も無く討伐せしめるとは……いやはや感服!」

ポニテ「おっさん誰?」

?「おっさ!……拙者まだ20代でござるのに……まぁいいでござるよ。拙者、辻斬りと申すもの。訳あって武者修行中の身にござる」

ツインテ「辻斬りって……辻斬りですよね?」

?改め辻斬り「いかにも!やや!!これはまた麗しいおなごでござるなぁ!!」

辻斬りはツインテの前で跪くとツインテの左手を手にとり、甲にキスをした。

ポニテ「おー!」

ツインテ「はわっ!?」

レン「侍そんなことしない」

アッシュ「ってめぇ!!」

アッシュはナイフで辻斬りを切りつけた。

180: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 21:57:47.90 ID:rdrv8T+l0
69

--砂漠--

ひゅばっ!

辻斬り「おっと」

アッシュ「!?」

アッシュのナイフは完全に空振り、辻斬りはいつのまにかアッシュの後ろへと移動している。

辻斬り「危ないでござるなぁ。刃物はむやみやたらに人に向けてはいけんでござるよ?」

アッシュ「……っ!!」

辻斬り「しかし折角腕利き同士が出会ったんだ、」

チンっ

辻斬りは刀の鍔に手をかけた。

辻斬り「どっちがより強いか試してみるのもまた一興」

ツインテ「ま、待って下さい!!ボク達は別にもめごとを起こすためにここに来たのでは!」

アッシュ「どいてろツインテ、こいつ元々俺達と戦うために近づいて来たんだ」

ポニテ「やる気むんむん!辻斬りだって自分で言ってたしねー」

ツインテ「そんな……」

辻斬り「なぁに殺しはしないし苦しめるつもりもござらん。ただ拙者の修行のためにいっちょお手合わせ願うでござるよ」

181: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 21:58:44.04 ID:rdrv8T+l0
70

--砂漠--

アッシュ「……俺は本気で行くからな。死んでもしらんぞ」

辻斬り「怖いでござるなぁ、はっはっ。そしたらそしたらでござるよ。ではいざ尋常に」

アッシュ「!!」

ダッ!

アッシュは駆けだした。

辻斬り「?無策で突っ込んできた?いやきっと何かあるでござるな。ではその罠にかかってみよう」

シュンっ

辻斬りの一閃。

アッシュ「!?」

それはアッシュの腹部をチラリとかすめて流れていった。

辻斬り「おお!!完全に両断したと思ったのに!!」

ギィアン!!

そのまま突っ込んできたアッシュのナイフを鞘で受ける辻斬り。

182: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 22:00:11.77 ID:rdrv8T+l0
71

--砂漠--

ギリギリギリギリ

辻斬り「今のはなんでござろう?タイミングをずらした走法なんでござろうか?その齢にしてはまっこと恐るべき才能!!」

アッシュ(こいつ、何のためらいも無く振り抜きやがった!しかもあの速さ、避けるどころか防げぐことすら……)

ギィン!

アッシュ「ぐっ!!」

ポニテ「アッシュくーん!手伝おうかー?」

アッシュ「煩い!不要だ!!」

アッシュは体勢を立て直し再び辻斬りに挑む。

レン「……あの人相当強い」

ツインテ「た、たしかに強そうです」

ポニテ「アッシュ君、対術だけなら相当強いはずだよ。でも完全に遊ばれちゃってる」

ギギギギン!!

辻斬り「うーん、素晴らしいでござる!!溢れる才能というやつか!?うらやましいでござるなぁ」

アッシュ「ッ!!舐めやがってぇええ!!」

183: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 22:01:16.30 ID:rdrv8T+l0
72

--砂漠--

ドス

倒れたアッシュの顔の前に刀を突き立てる辻斬り。

辻斬り「ふう。拙者の勝ちでござるな。いやはや危なかった……数年取ったらまた勝負したいですな!」

辻斬りが手を差し伸べる。

アッシュ「ふざ……けるな!!」

どぷ

辻斬り「!」

アッシュの体から毒が溢れだして砂漠すら汚染する。

じゅわわ

ポニテ「う、おお。これは中々凶悪な属性だね」

レン「!空気も吸っちゃだめ!ツインテ、風上に!」

ツインテ「だ、駄目ですよアッシュ君!!そんなことしちゃ!!」

アッシュとの距離を開けた辻斬りは嬉しそうに顔を歪めた。

辻斬り「『ラッカー』……これは次と無い好機でござるな!!」

184: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 22:02:21.59 ID:rdrv8T+l0
73

--砂漠--

アッシュ「毒漬けにしてやる!」

ぶくぶくぶく

辻斬り「よぉし、編み出したばかりのこのスキルを試すでござる!!」

ツインテ「や、やめてくださいよーー!!」

アッシュ「ああああああああああ!!」

辻斬り「スキル、無物斬り!!」

ヒュン

まだアッシュとの距離があるというのに辻斬りは刀を振るう。
すると

すぱっ

アッシュ「!?なっ!!」

アッシュの体を纏っていた毒が全て飛び散った。

辻斬り「おおお!!出来たでござる!!ひゃほーい!」

アッシュ(毒だけを斬ったってのかよ!?しかもあの距離から……馬鹿な)

辻斬り「これで女の子の服だけを斬ることが出来るでござる!!」

レン「服は物体じゃん」

185: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 22:04:56.96 ID:rdrv8T+l0
74

--砂漠--

アッシュ「ぐうう!!」

辻斬り「いやあいい体験でござった。感謝するでござるよ。毒だろうが水だろうがあまり関係なかった気がするでござるがね」

アッシュ「!!」

辻斬り「いや?毒ガス範囲外から攻撃できるとわかっただけでも非常に有意義でござるな!!」

アッシュ「」

アッシュは我を忘れて駆けだした。
その時

ポニテ「あ、あのー……ごめん、なんかすごいことになっちゃったw」

レン「にゃん……」

リボンの少女「きゅー!きゅー!」

どずん!!

アッシュと辻斬りの間に着地したのは、

ツインテ「お前ら……」

アッシュ「!!弾けるリボンの香り!!」

バツン

ツインテ「やめろっつってんだろーが!!」

どごっがごっ

186: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 22:06:03.80 ID:rdrv8T+l0
75

--砂漠--

ツインテ「す、すいません!!これボクがやったんですか?ほんとごめんなさい!!」

アッシュ「……」

辻斬り「あっはっはっ……恐ろしい威力でござった。じゃがいもの気持ちがわかるでござる」

ツインテは二人の怪我を治療していた。

ポニテ「なるほど……あれがツインテちゃんのもう一つの顔、ストレートモード。昔も雪山でらりっちゃってた時があったけど、あれも関係してるのかな?」

レン「とりあえずレンはいつものツインテが好き」

ひしっ

ツインテ「あはは……」

辻斬り「いやはやつい調子に乗ってしまって申し訳ない。拙者反省しているでござるよ」

アッシュ「けっ」

ポニテ「うし!その怪我治し終わったら私ともやろーよ!」

ツインテ「駄目です」

真顔でポニテを見つめるツインテ。

ポニテ「そ、そのほんのり笑顔は怖いかなー。で、でもそのおにーさんだってきっとやりたいと」

ツインテ「駄目です」

ポニテ「はい」

187: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 22:06:51.51 ID:rdrv8T+l0
76

--東の王国、大門--

辻斬り「ここでござるよ」

ツインテ「わざわざありがとうございます!」

辻斬り「いやいや大したことじゃないでござるよ」

アッシュ「けっ」

ポニテ「アッシュ君入国する時いつも機嫌悪いww」

レン「子供」

リボンの少女「きゅー」

辻斬り「……」

ツインテ「どうかしましたか?」

辻斬り「知っていてやっていることかもしれないし、余計なことかもしれないのだが……その子」

ツインテ「?あぁこの子は砂上船で事故にあった子で……この国に送り届けに来たんです」

辻斬り「……敢えて言うまい」

ツインテ「?」

辻斬り「それよりもだツインテ殿」

ツインテ「はい?」

辻斬り「拙者の子を産んで下され」

188: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 22:07:50.00 ID:rdrv8T+l0
77

--東の王国、大門--

東の王国門番兵「えー、時刻は午後2時32分、容疑者確保。連れてけ」

東の憲兵「おらこっちだ!しっかり歩け!!」

辻斬り「ち、違う!!拙者  コンじゃござらん!!ただ純粋にツインテ殿のことを!!」

東の憲兵「みんなそう言うんだよ  コンは」

辻斬り「背が低くて可愛くて従順で胸がペタンコな子が好きなだけなんでござるって!!」

東の憲兵「これ以上自分を不利にする発言はやめるべきだ」

辻斬り「恋愛に歳の差は関係無いって言ってたもん!!」

辻斬りは捕まった。

ツインテ「……」

アッシュ「けっ、いい気味だ」

ポニテ「……」

レン「にゃー」

リボンの少女「きゅー」

189: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 22:09:02.18 ID:rdrv8T+l0
78

--東の王国、城下町--

ポニテ「うわー!個性的な街並みだねー!」

アッシュ「東の王国。他と違う独自の文化を多々持っている王国だ」

ツインテ「あ、あのそう言えば聞きたいことがあるんですけど」

アッシュ「ん?」

ツインテ「アッシュ君、髪の毛灰色っぽくなってませんか?」

ポニテ「え?そうなの!?そういう描写が無かったから気付かなかったよ!」

アッシュ「む……。さっきは少し毒を使いすぎたからな。毒素が抜けて色が変わったんだ」

ポニテ「なにそのおもしろ設定」

ツインテ(ということは毒の魔法は多様出来ないってことなのかな……)

アッシュ「まぁ心配しなくていい。魔力が補充されればすぐよくなるだろう」

ポニテ「そっか!!じゃあさっそく宿屋に行こうか!」

ツインテ「だ、駄目です!!まずはこの子の家を探してあげましょうよ」

ポニテ「あ、そうだね。それにツインテちゃんの腕もどうにかしないといけないしね」

190: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 22:11:26.34 ID:rdrv8T+l0
79

--東の王国、城下町--

農家のおじさん「ん?あ!!君は聖騎士さんとこのお孫さんじゃないか!」

ポニテ「おじさんこの子のこと知ってるの!?」

農家のおじさん「あぁ!!しかし砂上船が事故にあったと聞いてたから心配していたんだが……そうか」

リボンの少女「きゅー」

ツインテ「……ボク達この子と同船していたんです。なんとかボク達は助かったんですけど、この子は言葉が……」

農家のおじさん「!!……そうかい。辛かったろうに」

農家のおじさんは少女を優しく抱きしめた。

農家のおじさん「残念なことだが……ご両親は遺体で発見されたそうだ」

ポニテ「!?……やっぱり」

農家のおじさん「この子は両親と三人で生活していた。当然身寄りもいない……だからこの子が望むなら私が引き取るとするよ。あの家とは家族ぐるみの関係だったからね」

アッシュ「……」

農家のおじさん「君達、この子を助けてくれて、送り届けてくれてありがとう!今晩の宿は決まっているのかい?よかったらうちに止まって行かないか?うちも若いのが出ていったから、家内と二人暮らしで部屋はあまってるんだよ」

191: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 22:12:53.77 ID:rdrv8T+l0
80

--東の王国、城下町--

ポニテ「……ううん、私達急いでるの。だからそれはいいや」

アッシュ「……いいのか?」

ツインテ「ボクは一日くらいどうってことないですよ?」

ポニテ「うん、別れはすぱっとしなきゃね!」

農家のおじさん「そう、かい。残念だな。話を聞きたかったんだが」

ポニテ「少女ちゃん、がんばって生きるんだよ!!暗い過去に押しつぶされちゃだめだよ!!」

ポニテは少女に抱きつくとすぐに離れた。

リボンの少女「きゅー……」

ポニテ「じゃあね!!」

ツインテ「ふっ。お元気で」

リボンの少女「きゅー」

少女は無垢な瞳でツインテ達を見ていた。

農家のおじさん「しかしこの世界に神はいないな……ただでさえ両親を亡くしたというのに、こんな小さな子の声まで奪っていくだなんて……」

農家のおじさんは悲しい表情で少女を見つめている。

東の憲兵「すいません、ここらへんで少女に抱きついた中年男性がいる、という通報を受けて駆けつけたのですが」

192: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/06(水) 22:15:51.65 ID:rdrv8T+l0
それでは本日はここで終わりにしたいと思います。
疑問、質問等がございましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

    次回予告

賢者です。この前親戚の子が来た時に遊戯王が好きだっていうので勝負をしてみたんですよ。懐かしいなぁ遊戯王、何年ぶりなんだろう?
自分は売るのもめんどくさくてしまってあったデッキを見つけ出し、勝負をしたんです。
うふふ、驚くぞう。だってこのデッキにはあの伝説のブルーアイズが三枚入っていて、サンダーボルトももちろん三枚!!こんなカード持ってないだろう?と大人げなく自慢しつつ、社会の厳しさを教えてやろうと考えていました。

親戚「うわー、ふっりーw」

賢者「はっはっ。ってこれ親戚が生まれる前のカードじゃん」

親戚よりお年を召したカードが私の手の中にありました。

とりあえず禁止とかあるみたいだけど無視!だってこれしかないから!

親戚「じゃあぼくのたーんね、ぼくはこのカードをしょうかんするのね」

賢者「攻撃力200wwしかも攻撃表示ってちょっとww」

親戚「これのこうかでてふだからこいつをとくしゅしょうかん」

賢者「ちょっと待って」

親戚「?」

賢者「なんでいきなり二体もでちゃったの」

親戚「こーゆー効果なの」

賢者「……なるほど。あれかそういえばそういう奴がいたなぁ。おっさんの奴」

親戚「で、これとこれをぼちにおくってシンクロしょうかん」

賢者「ちょっと待って」

親戚「?」

賢者「ちょ、今これ、どっからだしたの?」

親戚「えくすとらでっき」

賢者「どこそこ」

親戚「ここ」

賢者「なんで出てくるの」

親戚「シンクロするとでてくるの」

賢者「まじで」

親戚「まじで」

頭の中では虹が流れる。

賢者「なんで白いの?」

賢者「しらないww」

   次回、サンダーボルト三枚入ってるのに負けました。今の遊戯王はおっさんにはちとよくわかりません。勉強したいと思います。

203: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:01:32.67 ID:Zgi6S8wu0
81

--大学病院--

医者「このサイズの腕ならすぐいけそうだね。お金あります?」

医者はあっさりと言い放つ。

ツインテ「……え!!」

ポニテ「え!?ほ、本当に治るの!?ツインテの右手再生するの!?」

医者「あはは。蜥蜴じゃないんだから。簡単に言えば移植するんですよ。他人の右腕をね」

ツインテ「……え」

ポニテ「そ、それってどうなの……」

医者「100%自分の体じゃなきゃだめだって言うのなら再生治療という手もあります。ただ再生治療はまだまだ実験段階の域をでないですし、費用もかなりかかっちゃいますね」

あと時間も。と医者が言う。

レン「……」

ポニテ「その移植する人の腕って、誰かのを切って移植するんでしょ……?」

医者「……」

医者はにやにや笑う。

医者「なるほど。だから君達困ったような顔してるのかぁ。違う違う」

206: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:05:39.98 ID:Zgi6S8wu0
82

--大学病院--

医者「僕達は提供されたものしか使わないよ」

ツインテ「せ、世界中のどこに自分の腕を提供する人達がいるんですか」

医者「お金に困ってる人」

ツインテ「!!」

医者「それと聞こえは悪いけれど、死体とか、ね」

ポニテ「だめじゃん……」

医者「ダメじゃん?それは随分と視野の狭い考え方ですね。不要になったものを必要なもののために役立てる。これが悪いことかな?」

レン「……にゃー」

医師はカリカリとカルテに書きこんでいる。

医者「自分が死んだら他の困っている人のために使って下さい、という立派な決断だ。彼らの意思を尊重するのなら受け入れるべきじゃないだろうか」

ツインテ「う……」

207: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:09:03.04 ID:Zgi6S8wu0
83

--大学病院--

医者「……とはいえ無理強いをするつもりは無いけれどね。有難迷惑だなんて言われちゃ彼らにも申し訳が立たないし」

ツインテ「……」

レン「……」

医者「医者である僕の意見を言わせてもらえるのなら、ツインテちゃん、早くに手術した方がいいと思う」

ツインテ「!!」

医者「君はまだ若いんだしチャンスがあるならすがりつくべきだ。その義手も中々いい出来だけどそれに慣れちゃいけない。それに少しだが魔力の拒絶反応が出ている」

レン「え……」

医者「魔力の巡りが少し調子が悪いんだ。今は症状すら出ないだろうけど、年月とともにそれは蓄積される」

ツインテ「……」

レン「ツインテ、本当?」

ツインテ「自覚はないですよ。あ!だ、だからそんな悲しい顔しないでください!!」

208: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:12:39.04 ID:Zgi6S8wu0
84

--大学病院--

医者「そう言えばレンちゃんだっけ?彼女の頭部の施術は良くできていたよ。人体を他人の一部に変化させるとは素晴らしい技術だ。後遺症も無いと思う」

ツインテ「は、はぁ」

医者「ボクとしては君は医療関係の道に来て欲しいな。ちゃんとしたところで学べばきっといい医者になれるよ」

ツインテ「ほ、本当ですか!ボクお医者様になれるんですか!?」

アッシュ「おい!」

ポニテ「それでいいのか勇者候補!」

医者「っと、話がずれたね。まぁゆっくり考えたらいいよ。大事なことだからね」

ツインテ「……」

医者「でも出来ることなら、移植をお勧めするよ。提供して下さった人達の意思を無駄にしないためにもね。君みたいな美少女に使われるなら本望だろう」

ツインテ(とうとう女の子で通ってしまいました……)

209: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:19:17.69 ID:Zgi6S8wu0
85

--メインストリート--

ポニテ「はーあー!ツインテちゃんの腕がにゅるんと生えてくるもんだと思ってたのになー」

ツインテ「人外ですかボクは!」

レン「にゃー」

アッシュ「でもどうするんだ?費用ならなんとかできるぞ」

ツインテ「はい……結構、考えちゃいますよね」

ポニテ「……でもさー。ツインテちゃんがレンちゃんにしてあげたこととあまり変わらないよね」

ツインテ「!……」

レン「ポニテ!」

レンはポニテにかじりついた。

ポニテ「あいたっ!!だ、だってそうじゃん!ツインテちゃんは自分の身を犠牲にしてレンちゃんを助けたんだ!!それと変わらないでしょ!あいたっ!!こら猫!!」

レン「にゃーにゃ!!」

ツインテ「う……」

アッシュ「俺も……ツインテがいいならやった方がいいと思うぞ」

210: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:25:09.78 ID:Zgi6S8wu0
86

--メインストリート--

アッシュ「今後に影響が出るんだろ?なら貰っちまえばいい」

ツインテ「アッシュ君……」

ポニテ「そうだよ!誰もむりやり奪いとったりするわけじゃないじゃん!!ツインテちゃんは人を助けたからその分助けてもらう!それでいじゃん!!猫!いい加減にしろ!!」

がぶ

レン「にゃーーーー!!」

アッシュ「やばいレンが  顔してる!!まじだ!!」

アッシュは慌ててポニテとレンを引き離す。

ツインテ「……そうですね……あ、でもボクが貰ってしまったら他の人が」

アッシュ「そんなこと言ってたらいつまでたっても誰かのためになれないかもしれない」

レン「……ツインテ」

レンはツインテにとことこと近寄ってくる。

ツインテ「レンさん」

レン「ツインテ、貰おう」

211: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:32:09.26 ID:Zgi6S8wu0
87

--メインストリート--

レン「感謝して大事に使わせて貰おうよ」

ツインテ「……」

ポニテ「うん!医者さんも言ってたけどツインテちゃんの一部になれるなら本望に決まってるはずさ!!」

アッシュ「気がねするな」

ツインテ「皆さん……そうですね。わかりました。明日にでもお願いしに行きたいと思います!!」

レン「にゃー!」

ポニテ「よおし、そうと決まれば前祝いでご飯いくぞー!!」

アッシュ「いつも食ってるくせに」

ツインテ「あ」

レン「?ツインテどうしたの?」

ツインテ「そう言えば辻斬りさんはどうなったんでしょうか」

ポニテ「あ」

212: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:33:08.85 ID:Zgi6S8wu0
88 

--牢獄--

監獄長「し、失礼いたしました!!」

辻斬り「あーあー、いいでござるよ。拙者もちと悪かったでござるし」

監獄長「は、はぁ!!全く憲兵の奴は……おい!この方の刀をお持ちしろ!!」

見張り「はっ!!」

ガチャガチャと音を立てて走る見張り。

辻斬り「やれやれ……」


--メインストリート--

アッシュ「あいつなら大丈夫だろ」

レン「にゃー」

ポニテ「アッシュ君よっぽどあの人のこと嫌いなんだねーw」

アッシュ「違う。そんなんじゃない……あいつは恐らく」

213: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:41:52.49 ID:Zgi6S8wu0
89

--牢獄--

見張り「お持ちいたしました!」

監獄長「いやぁ立派な刀ですねぇ!もしや噂に名高い父君の名刀では!?」

辻斬り「……関係無いな」

辻斬りは刀をひったくる。

監獄長「も、申し訳ありません!!このことは父君にはどうかご内密に……」

辻斬り「関係無いと言ってるでござろう!!」


--メインストリート--

アッシュ「あいつはあの剣豪だ」


--牢獄--

辻斬り「父上とは……剣豪とは既に縁を切ってござる!!」

214: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:42:37.43 ID:Zgi6S8wu0
90

--王国--

新王「この度は遠路はるばるお越しいただき、恐悦至極……」

東の王「……前置きはいい要件に移れ」

西の王(姉さん姉さん姉さん姉さん姉さん姉さん姉さん!あぁ姉さん!!相変わらずなんて美しいんだ……!)

北の王「いやはや懐かしい顔ぶれでっしゃなww皆老いたようですが、それはそれで渋くていいでんなww」

妃「相変わらずの北の王節ですね~不快~」

秘書(全くもって)

北の王「ててて。こりゃ手厳しいww」

新王(やれやれ。全ての国のトップの会談か……こりゃ相当胃にくるだろうね……)

キリキリ

215: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:45:40.98 ID:Zgi6S8wu0
91

--王国、牢獄--

カツンカツン

新王「こちらです。足下が暗くなっているのでおきをつけて」

カツンカツン

北の王「見せたいものって牢獄にいるんですのん?」

新王「ええ。先日我が王国の領土内にて三騎士が捕えました」

東の王(三騎士……)

新王「……これです」

新王は地下のろうそくに火を付ける。

ぼっ

北の王「!?こ、これは」

東の王「……」

影月「……まぶしいなぁ」

新王「皆さんをここに集めたのも彼です」

216: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:46:06.18 ID:Zgi6S8wu0
92

--王国、牢獄--

新王「人造勇者の一人、影月です」

北の王「こいつは……たしか東の王国に所属した……」

東の王「……」

影月「やれやれひどい扱いやなー。せっかくわいがボロボロになりながらも情報持って来てやったって言うのに」

影月は切れた唇を舌でなめている。

新王「彼が言うには他の人造勇者が集まって何かを企てている……と」

東の王「そんなことを言うためにお前はここに来たのか?」

影月「そんなことってなんやねん。大事なことなんやぞー」

東の王「……三年前に我が国から逃げ出したお前の言うことを俺が信じられるとでも?」

北の王「もうそんなに前になりまっか~。あれはてっきり王国さんがしかけた罠かと思いましたでほんま」

妃「まぁ先代の王様ならそういうことを企んでいてもおかしくないですけどね~」

217: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:46:32.69 ID:Zgi6S8wu0
93

--王国、牢獄--

新王「三年前、人造勇者達は、まるで申し合わせたように失踪した……全ての国から一斉に。その理由から答えてもらおうか」

影月「それは簡単なこっちゃ。わいらには時間がないからや」

東の王「……時間?」

影月「具体的なことはまだ言えん。言ったら殺されるかもしれんしぃ」

東の王「ッ」

ズラッ

東の王は腰に指していた剣を引き抜いた。

東の王「言わねば即刻その首を切り落とす」

影月「それでも言わんわな」

新王「やめておきましょう東の王。それよりも今は彼から情報を引き出すことが大事です」

北の王「そ、そうでっせ!わて血は苦手なんですよぉ!!」

新王「勇者さん……勇者に匹敵する力を持った者達が集まって一体何をするつもりなのか、全て教えてもらうとしましょう」

218: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:47:18.73 ID:Zgi6S8wu0
94

--大学病院--

医者「それじゃあ麻酔するから気を楽にしていてね」

ツインテ「はい。お願いします先生」

医者「うん。けど一日で決断してくれるとは思わなかったな」

ツインテ「素直に受け取ろうと思ったんです。ボクなんかが腕を貰っても貰う価値が無いと思ったんですけど……ボクがその腕を使って他の人達を救えばいいと決めました」

医者「ほう……」

ツインテ「あ、なんか眠くなって……きました」

医者「安心して。眼がさめる頃には全部終わってるから」

ツインテ「ふぁい」

医者「……」

ツインテ「くー、すー」

医者「むらむらしてきた」

219: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:48:04.22 ID:Zgi6S8wu0
95

--大学病院--

ポニテ「ツインテちゃん大丈夫かなー」

アッシュ「眠らされるんだろ!?やばいよな!?あんな美少女が診察台に無防備な姿で寝てるんだぞ!?やばくね!?止めに行こうぜ!?」

レン「アッシュきょどりすぎにゃ……一緒にいこう」

ポニテ「あははー!二人ともツインテちゃんのこととなると大変だねー!」

アッシュ「あ、当たり前だろ!?仲間なんだから!!」

レン「ツインテは俺の嫁」

ポニテ「じゃぁ、じゃあ!私が同じようなことになっても心配してくれるんだよね!?」

アッシュ「勝手に●されてろ」

レン「死ね」

ポニテ「ひでぇ!!」

220: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:48:39.38 ID:Zgi6S8wu0
96

--大学病院--

3時間後。

ツインテ「う……んぅ……」

医者「はっ、はっ……お、起きたかい?しゅ、手術は無事成功だよ……!」

ツインテ「あ、ありがとうございます先生……先生?」

医者「ん!?ど、どうしたのかな!?」

ツインテ「なんで急いでズボンのベルトを治そうとしているんですか?」

医者「ちょっとした手違いがあってね。大丈夫だ問題ない」

ツインテ「とっても怖いんですけれども……あ」

ツインテは自分の右腕を見た。

ツインテ「……すごい、動く」

医者「……どうだい?久しぶりの自分の右腕は」

ツインテ「……すごいです……こんなにも暖かい」

ツインテは少し細身の自分の右腕を動かしている。

221: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:49:06.63 ID:Zgi6S8wu0
97

--大学病院--

がちゃ

アッシュ「!?ツインテ!!」

ツインテ「ぐすっ……あ、皆さん。もう入って大丈夫、ですよ」

レン「!!!!なんでツインテ泣いてるの!?」

ポニテ「まさかー!!」

ツインテ「あ、違うんですよ。ちょっと先生が」

アッシュ「おのれ  コンめ何をしたー!!」

バンっ!!

アッシュがツインテを押しのけて部屋に入ると、

医者「すーはー!つ、ツインテちゃんが三時間寝てた診察台の香り!!」

かちゃかちゃ

ポニテ「アウトだあああああああああ」

222: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:49:57.02 ID:Zgi6S8wu0
98

--スラム街--

ポニテ「いやーでもよかったねー!ちゃんと相性もいいって言ってたし、当日に退院できるなんて!」

ツインテ「魔法医療も発達しているらしいですね。後は一週間この飲み薬を食後に朝昼晩一錠ずつ飲めばいいらしいです」

アッシュ「ほ、本当に何もされてないんだな!?お、お父さんは心配で」

レン「医療費は半額でいいよ、っとか言ってたからなおさら心配にゃ。あの医者、ツインテの残り香シーツをどうするつもりなんにゃろう……」

ツインテ「あはは、考え過ぎですよ皆さん。とてもいいお医者様でしたよ。ボクもあの人のような立派なお医者様になれたらいいなぁ」

アッシュ「もう勇者とか魔王の文字がでてこねぇ……ってあれ?話しながら歩いていたら雰囲気が違う通りにでたな」

レン「すごく……スラムっぽいです……」

ポニテ「うんスラム街らしいよー」

ツインテ「ポニテさん、知ってるんですか?」

ポニテ「だって↑に書いてあるじゃん!」

ツインテ「ひでぇ!!」

223: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:50:26.34 ID:Zgi6S8wu0
99

--スラム街--

包帯イカ亜人「……」

道路の脇に座り込む亜人がツインテ達を見ている。

ツインテ「……こう言うのもなんですけど、貧しい感じの人達の集まりのようですね。あと亜人が本当に多い」

ポニテ「というかほとんど亜人だね。亜人のスラム街なのかな」

アッシュ「……異様だな」

レン「うん。レンが昔いたところも荒んでいたけれど、ここまでひどくなかった」

ツインテ「町並みは綺麗……だから尚更に感じてしまい……ますよね」

松葉づえ狐亜人「……」

ポニテ「もしかしてここはあれかな。戦争とかで被害にあった人達が身を寄せ合って生きている場所なのかな」

ツインテ「……かもしれません」

レン「逆にそうじゃなきゃ……おかしいにゃ」

ポニテ「だ、だよね!じゃなきゃみんながみんなこんなことになってるわけないよね!」

224: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/13(水) 22:51:05.45 ID:Zgi6S8wu0
100

--スラム街--

包帯インコ亜人「……」

車いすアルマジロ亜人「……」

ツインテ「み、みんな見てますね」

レン「……気を付けて。敵意を感じる」

アッシュ「急いでメインストリートに戻るぞ」

その時、一人の子供の亜人が駆け寄ってきた。

包帯犬亜人「ま、まって!」

ツインテ「?な、なんでしょうか」

包帯犬亜人はじぃっと何も言わずツインテを見ていた。

包帯犬亜人「……」

レン「なんの用にゃ!」

包帯犬亜人「……それ」

包帯犬亜人には、

包帯犬亜人「返して」

右腕がついて無かった。

238: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:36:21.18 ID:QbPeGrgS0
101

--丘の洋館--

キバ「げほっ!ごほっ!」

魔法使い「おwかwゆwあwちwいwwwwうぇっ」

魔法使いは笑いながら、自分の顔にぶっかけられたおかゆを拭く。

キバ「あ、ごめんね魔法使い……せっかくぶほっ!!」

魔法使い「もうナレーターwwwってまたwww」

キバはベッドでおかゆを食べている。

魔法使い「ったく、俺様が看病してるんだから早く治れってのwww」

キバ「うん……ごめん」

魔法使い「w」

キバ「でも……勇者さんもこんな感じだったのかな……」

魔法使い「え」

キバ「魔王に……近づくことがこんなにも……」

魔法使い「……」

239: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:36:53.16 ID:QbPeGrgS0
102

--メインストリート--

アッシュ「やってくれたぜ……」

ポニテ「何が亜人保護地区だよ!!ひどいよ!!そんなのって無いよ!!」

レン「にゃー!!ツインテ大丈夫?」

ツインテ「えぇ、ボクは大丈夫です……」

ツインテは強く噛み締める。

ツインテ「……ですがあの先生ともう一度お話する必要がありますね!!」

ツインテは右腕に義手を装着して言った。

アッシュ「無理はするなよ?またかなりの血を失ったんだ」

ツインテ「大丈夫です。鉄分は比較的取ってますし。というか取らされてます」

240: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:37:43.84 ID:QbPeGrgS0
103

--大学病院--

医者「あれ?また君たちか。どうしたんだい?……ってツインテちゃん右腕は!?」

医者はツインテの右腕に生身の腕じゃなく義手がついているのを見て驚いた。

医者「落としちゃったのかい!?」

ポニテ「そんな簡単に取れるかっ!」

ツインテ「あるべき場所に返しました……」

医者「あるべき場所?……そうか、君達あの地区に入ったのか。困ったな」

ツインテ「……あの右腕の持ち主の子が……ボクに返して、って言ってきたんです」

医者「……やれやれ。平然と契約違反とはねぇ。これだから教育を受けてないものは困る。やっぱり亜人も学校に通わせるべきだよなぁ」

ツインテ「何言ってるんですか!?あの腕!あの子から無理やり奪ったものだったんですね!?」

医者「……」

ツインテ「あの場所にいた人達……みんな同じだった……方腕が無かったり方足が無かったり方眼が無かったり……みんな、みんな貴方達が!!」

医者「あまり院内で大声を出さないで欲しいな。診察室に行こうか。お友達も一緒にね」

ポニテ「あ!ここからちょっとめんどくさい話になるので苦手な人は<112>にスキップしてね!!」

ツインテ「今誰に言ったんですか!?」

241: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:38:24.55 ID:QbPeGrgS0
104

--大学病院--

医者「結論から言うと、僕達は提供された人体しか使用していない」

ポニテ「何言ってるんだよ!!提供した人が返せなんて言うものか!!死んだ人がどうとか言ってたくせに!!」

医者「んー……詳しくは話せないんだけどなぁ。でも話がややこしくなるよりかはいいのかな」

医者は棚から書類を取り出した。

医者「あの子のは……これか。ほらご覧、誓約書ってやつさ」

ツインテ「……!」

そこには、私は自分の意志で右腕を提供します。という旨のサインが書かれていた。

アッシュ「無理やり書かせたに決まっている……!」

医者「うーん……君たちには難しいかもしれないがこれは取引なんだ」

レン「こんな取引あるものかにゃ!」

医者「当たり前過ぎてわからないだろうけれど、居場所っていうのはとんでもなく大事なことなんだ」

医者は会話が成り立たないと判断し、一方的にしゃべりだした。

242: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:39:13.06 ID:QbPeGrgS0
105

--大学病院--

医者「自分の居場所。国であったり、県であったり、市であったり、地区だったり、心の拠り所だったり。みんな自分自信の場所を見つけるために人は生きている」

ツインテ「……」

医者「君たちだって治療のためにこの国に来たんだろうけど、帰る場所はあるだろう?帰れる場所が。帰っていい場所が。そんな当たり前のものすら持たない人達がいるんだ」

医者は足を組む。

医者「そういう人達の居場所を求める願望っていうのはもの凄く強いんだ。渇望と言ってもいい。彼らは自分の居場所を作るためにあらんかぎりの努力をする」

医者はツインテと視線を合わせた。

医者「ツインテちゃん、今の世界を見て答えてほしい。亜人はどんな立場にいる?」

ツインテ「……それは」

ツインテはレンを見る。

レン「にゃあ……」

医者「っと。亜人が仲間にいる君たちに言うのは少し意地悪だったな……。まぁわかるだろうから言うけど、とてもひどい状況に立たされているよね」

レン「……」

243: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:39:57.49 ID:QbPeGrgS0
106

--大学病院--

医者「敗戦国家……というのもあるけどもとから扱いがイーブンじゃあなかったね。残念だけど亜人は人じゃない、なんて公然と言う人だっている」

医者はコーヒーに口をつける。

医者「彼らの言うこともわからなくはない。だってモンスターと亜人の違いは明確に存在していないんだから」

ツインテ「!!そ、それはあまりにも!!」

医者「いや実際遺伝子レベルで似てるんだよ。亜人は人とコミュニケーションを取れるモンスター、っていう言い方をした学者もいたけど、モンスターだってコミュニケーション取れるもんね。片言だけど喋れる種族もいるし」

ポニテ「そんなのっ、外見でわかることじゃん!!人と亜人は似てるもん!!」

医者「人間によく似たモンスターもいるし、限りなくモンスターに近い亜人もいるじゃないか」

ポニテ「っ!」

医者「結局のところぽいかぽいじゃないかでしか判断出来てないんだよね」

ツインテ「……話がずれてます」

医者「そんなことないよ。ようは今の人間達は、モンスターみたいな生き物と隣り合わせに住みたくなんて無い、ってことさ」

244: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:41:49.11 ID:QbPeGrgS0
107

--大学病院--

医者「亜人の大多数は南の王国で暮らしていた。でも南の王国がああなってしまったので逃げて来た亜人もいるんだ。そういう亜人は住むところが無くて食べるものもない。そんな生活が続くとどうなる?結局彼らは犯罪に走るしかなくなってしまうんだ。結果、亜人のイメージをより悪くしてしまう……悪循環だね」

ツインテ「……」

医者「そんな彼らを受け入れたのが我が王国の亜人保護団体だ。世界中に支部を持っているけれど、受入場所は本国のあの地区しかない」

レン「受け入れる代わりに……体の一部を寄越せと脅したのか!」

医者「違う違う!そう噛み付かないで欲しいな……。彼らを受け入れることには国も了承した。でもそこまで。国も国民も、税金を消費してまで難民を養おうとは考えなかった。まぁ普通そうだよね。不景気なんだし」

ツインテ「そこは亜人さん達に働き口を斡旋してあげたらいいじゃないですか!」

医者「亜人に出来る仕事なんて無かったんだよ」

アッシュ「……」

医者「知っての通り亜人は総じて強力な肉体を持っている。それを有効活用できたらいいんじゃないかと誰でも考える。でも実際人間てなんでも出来るんだよ」

なんでもは言いすぎか、と医者が笑う。

医者「東の王国は国土のわりに人口が多いしね。働き口自体がそもそも不足していると言える。なのにわざわざ亜人を採用するべきなのか?」

ポニテ(大事な話だけど飽きてきちゃった)

245: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:43:35.89 ID:QbPeGrgS0
108

--大学病院--

医者「しかも亜人というだけで偏見を持つ人は多い。受け入れた職場が上手く機能しなくなるのでは?って声もあったね。そりゃそうだ。もし隣に座ってるのが肉食系だったら?僕なら仕事に身が入らないだろう」

アッシュ(ポニテも似たようなもん……亜人に失礼か)

医者「ゆえに必然的に亜人がする仕事は、人間が嫌う仕事か、体を売るか……ってなっちゃったんだよ」

ツインテ「無責任過ぎます!保護するって言ったのに……結局してることは虐待じゃないですか!その選択肢を選ばざるを得ない状況にしてるんです!!」

医者「そうだね。弱った亜人は働けないから体を売るしか無いしね……でも嫌なら出ていくべきなんだ」

レン「!」

医者「牢に繋いで監禁してるわけじゃないんだ。どうかこの国に居座り続けて下さいなんて、言ってるわけでもない。逃げたきゃ逃げればいい。でも彼らが逃げないのはそれでもまだマシだからなんだよ」

ツインテ「そんな……。あの人達、ボク達のことを凄い目で睨んでました……みんな本当に辛い生活をしているはずなのに……」

医者「優しいねツインテちゃんは。でもどうしようも無いんだよ。こんなこと言いたくないんだけれど僕達程度の力じゃどうにもならない事なんだ……。だからせめて僕は、提供された生体部品があますことなく役立てられるように努力してるんだ。亜人の体でも拒絶反応無く人に使えるように」

ツインテ「っく……じゃあ彼らはあのままなんですか?搾取され続けるんですか?」

医者「……自国の問題は自分たちで解決すべきだと思うし、種族の問題なら尚更だよね」

ツインテ「……」

246: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:46:09.52 ID:QbPeGrgS0
109

--大学病院--

ツインテ「せ、先生なら少しは働きかけることができるんじゃないですか?事実を知る先生なら!」

医者「……僕は亜人を差別なんてしたりしない。だけど特別に扱ったりもしない。もちろん差別している人達が一番悪いと思ってるけど、彼らにも全く咎が無いとは言えないよ。それに一介の町医者たる僕に出来ることは限られている。今の状況を打破できる可能性があるとすれば彼ら自身がやるしかない」

ツインテ「そう……ですか」

医者「……まぁ納得はしてくれてないとは思うけど、今日の所はそれで勘弁してくれないかな。医療費ももちろん返すよ。患者を満足させてあげられないなんて医者として失格だからね」

ポニテ「あーうー……」

医者「それと、また自分で腕を切り離したんだろ?そんなおいそれと付けたりはがしたりするもんじゃないないんだよ、普通は。おいで、見てあげよう」

ツインテ「あ……ありがとうございます」

アッシュ「……」

レン「ツインテ……」

247: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:46:48.40 ID:QbPeGrgS0
110

--メインストリート--

ツインテ「はぁ……」

ポニテ「なんか大人のずるい言い訳に言いくるめられた感じー」

レン「レンぷりぷり」

アッシュ「……だがどうしようもないよな」

ポニテ「!アッシュ君までそんなことを言い出すとは思わなかったよ!!」

アッシュ「亜人保護団体の庇護が無ければやつらは住む場所すらない。これは事実だろ!」

ツインテ「アッシュ君……」

アッシュ「仕方が無いで済ませようとは思わない。だがどうしようもないだろ……」

ポニテ「うー……」

ツインテ「……ボク」

ツインテは右肩を抑えた。

アッシュ「!……」

ポニテ「ツインテちゃん……」

レン「ツインテ……」

ツインテ「ボク……腕一本が、こんなに重いものだなんて、思わなかった……!」

248: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:47:28.60 ID:QbPeGrgS0
111

--大学病院--

医者「……」

大豚亜人「ぶひ。医者君~なかなかの名演説だったぶひよ~?」

医者「!!……いらっしゃったんですか院長」

大豚亜人「ぶひひ」

大豚亜人は、顔に包帯を巻いたナースを二人連れて現れた。

大豚亜人「丁度通りかかったらおいしそうな匂いがしたんでとなりの部屋から見させてもらったぶひ」

医者「はぁ。相変わらずですね院長」

大豚亜人「あんのツインテールの娘もいいけど猫耳の娘もおいしそうだったぶひ。次来たら……ぶひひ」

包帯ナース「……」

包帯ミニスカナース「……」

大豚亜人「それと医者君?……実験のことには喋ってないぶひよね?」

249: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:48:00.79 ID:QbPeGrgS0
112

--宿屋--

ツインテ「今日はここでチェックインですね。中々古風で素敵です!」

アッシュ「今思ったんだが、リボンの少女とわざわざ別れて宿取る必要無かったよな」

ポニテ「わかってないなーアッシュ君は!!前も言ったけど別れはスパッとするもんなんだよ!!」

レン「宿代のことも考えろにゃ」

ポニテ「なんだとー!?この猫ー!」

レン「猫で何が悪いっ!」

アッシュ「昨日はなんだかんだで野宿だったしな」

ツインテ「テントでの雑魚寝は正直苦しかったです……ポニテさんやめてっていうのに色々触ってくるし……」

レン「上を見上げるとアッシュの褌下半身だったにゃ」

ポニテ「赤褌だよ赤褌!」

アッシュ「そんなギップル的イベントをした記憶はない」

250: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:48:38.34 ID:QbPeGrgS0
113

--宿屋--

レン「記憶にございません、とかまるで腐った政治家」

ポニテ「……ツインテちゃんにギップルポジションについてもらったらどうだろうか?」

アッシュ「ツインテ、今日も野宿にしないか?キリッ」

レン「ツインテが褌!?」

ツインテ「あはは……ボクテント張る機能無いんですけど」

アッシュ「張れなくてもいい、ただ無防備な下半身を晒してくれればいい」

ポニテ「なんかイケメソが最低なことを言い出した!!」

レン「レンならテント張る機能を追加させることもできる」

レンはチラッチラッツインテを横目で窺う。

ツインテ「ね、寝てる間にボクを改造とかしないでくださいね……?」

ポニテ「魔改造」

251: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:49:10.59 ID:QbPeGrgS0
114

--宿屋--

ポニテ「まぁなにはともあれチェックインだよ!!たのもー」

宿男「はいはいはい」

パタパタと音を立てて宿の中から現れた宿男。

宿男「あれ、お子さん四人だけで宿泊ですか?」

ポニテ「……あれぇ?」

アッシュ「こいつ……」

レン「どっかで見た顔にゃ」

ツインテ「西の王国の店主さん!?」

宿男「……西の王国の彼に会ったんですか?」

ポニテ「ここまで似てて別人!?あ、兄弟とか!?」

宿男「いえ、全くの他人ですよ。それどころか向こうは私のことは知らないでしょう」

ツインテ「ふ、複雑な関係なんですね……」

レン「パワポケで見た設定にゃ」

252: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:49:55.99 ID:QbPeGrgS0
115

--宿屋--

宿男「彼を知っているのであれば……特別に安くしましょうね」

ポニテ「きゃほーい!!おじさんありがとー!!」

ツインテ「あ、ありがとうございます」

宿男「一部屋でいいんですよね?」

アッシュ「いや男と女分けるだろjkjk」

レン「アッシュにレン達を襲う勇気はない」

ポニテ「アッシュ君が襲うとしたらツインテちゃんだけだしね!!」

ツインテ(襲う!?……やっぱりボクアッシュ君に嫌われてるのかな……)

アッシュ「な、なにをバカなこと言ってやがる!!お、俺は別に」

アッシュはチラッチラッツインテを横目で窺う。

レン「とりあえず同室でいいにゃ」

253: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:50:44.80 ID:QbPeGrgS0
116

--宿屋--

ギシッ
ギシッ

ポニテ「なんか全体的に暗い感じだねー」

宿男「結構古い建物でして……」

ツインテ「少し怖いです」

宿男「あ……言うの忘れてましたが、夜中の十二時以降、絶対に部屋から出てはいけませんよ……?」

ポニテ「なんかフラグ来たー!」

アッシュ「なぜだ?」

宿男「なぜと言われましても……お客さまの身の安全を保証するためですから」

ギシッ
ギシッ

宿男「ではここがお部屋になります。洗面所、お手洗いはあちらです。それではごゆっくりと」

ギシッ
ギシッ

レン「ちょーこわーい」

254: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:51:27.94 ID:QbPeGrgS0
117

--宿屋--

ツインテ(まぁこのメンバーなら何が起きても大丈夫だよね……)

カチャリ、ギィ

ツインテが部屋の鍵をあけドアノブを回す。

ツインテ「おじゃましまーす……」

中は和風な一般的旅館部屋。

ツインテ「ほ。思ったより普通だ」

アッシュ「当たり前だ。こんなちょっと町から離れ寂れた所にある暗い感じのボロ旅館だからって、そんなベタなお約束はあるまいよ」

ツインテ「そ、そうですよね!ベタ過ぎますよね!あ、皆さん上着掛けますよ。ボクやります」

ツインテがみんなから上着を受け取ってクローゼットを開ける。

人形「……」

ツインテ「……」

中には荒縄で縛られた両腕の無い人形があった。

ツインテ「ぴぎゃぁぁぁ!!」

255: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:53:22.37 ID:QbPeGrgS0
118

--宿屋--

ポニテ「ツインテちゃんどうしたの!?今時ぴぎゃぁぁぁは無いよぴぎゃぁぁぁは!!うっ!?」

アッシュ「……こ、こんな所に人形を置くか普通」

赤い着物を着た黒髪の人形は異様な雰囲気を醸し出している。

レン「……昔この地域では人食い鬼がいたとされる伝承がありました……」

アッシュ「なんか語りだした!?」

ツインテ「あわ、あわわ……あれ?」

ポニテ「どうしたの?」

ツインテ「……この畳の汚れ……血……みたいに見えませんか?」

ツインテが腰を下ろした畳には、確かに染みがあった。

アッシュ「……まるで血だらけの人間がはい回ってついたような感じの染みだな」

ツインテ「ぴぎゃぁぁぁ!!」

ツインテは慌てて立ち上がり壁に手を付けた。

ツインテ「ま、まずくないですか!?まずくないですか!?この旅館まずい感じがしませんか!?」

256: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:54:04.75 ID:QbPeGrgS0
119

--宿屋--

ポニテ「あははは。ツインテちゃんたらやだなぁ。そんなことあるわけないじゃまいか」

チョロチョロ

ツインテ「ぽぽぽポニテさああん!!下が大洪水ですうう!!小川レベルじゃない!!」

おもらしポニちゃん。

レン「ポニテ、まさか……」

ポニテ「う、うううう!!」

ポニテは頭を抱えてしゃがみ込んだ。

ポニテ「わ、私食べられないものは苦手なんだよぉぉ!!お化けとか!!」

ツインテ「判断基準がわからないです!!」

ガタ

その時壁に手をついていたツインテは掛け軸に触れてしまった。

257: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:55:06.98 ID:QbPeGrgS0
120

--宿屋--

ツインテ「あ、と。掛け軸が曲がってしまいました。直さないと。あ」

バサバサ

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

掛け軸の裏にはお札がびっっしりと張られていた。
しかも掛け軸でよくわからなかったが、壁をよくみると染みのようなものがあり、それは人の形をしている……。
お札はまるで、壁の染みを封じているように見えた。

じょろろろ×4

ポニテ「こんなところで連れションするとは思わなかったよ!!」

アッシュ「よぉし、みんなでオムツを買いに行くぞ!!」

ツインテ、ポニテ、レン「おお!!」

今、一致団結の時……!(←アオリ文)

258: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/18(月) 21:58:03.17 ID:QbPeGrgS0
前半のシリアスが嘘みたいさ!(こんばんは)
それでは本日はここで終わりにしたいと思います。
疑問、質問等がございましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

         次回予告

その昔、西の王国に武王を名乗る女王ありき。

<どどん>

魔族に攻め込まれて死亡した西の王国の支配者、西の女王。これは彼女が存命していた時の物語。


東の王「……あいつは最悪に魔女だった」

         次回「サウスクイーン」


次回「ってか読んでくれてる皆さんにサイドストーリーを好き勝手に書いてもらうっていう企画はどう(ry」

友人「ねーよ」

270: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 20:55:47.75 ID:Xju1Z6hg0
121

--宿屋--

アッシュ「そしてなんでご丁寧に戻ってきたんだ俺達は」

ツインテ「キャンセルしてそのまま違う宿に行けばよかったのに……」

ポニテ「とりあえずクローゼットは開けないこと、あの畳には近づかないこと、掛け軸周辺は見ないこと。OK?」

ツインテ、アッシュ「サー、イエッサー!」

一斉に全員で部屋の隅で丸くなり、目を閉じ耳を塞ぎガタガタと震えだす。

ツインテ「怖くない怖くない怖くない」

アッシュ「人形はSxxxx、畳は血尿、壁は邪王炎殺黒龍波」

ポニテ「さっき掛け軸がずれた時に、『おい、黒龍波くらったみたいになってんぞ!』……ってツッコミ入れてたら神だったなぁアッシュ君」

レン「黒龍波で出来た跡って結局ダメにゃん」

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

ツインテ、アッシュ、ポニテ「怖くない怖くない怖くない怖くない」

271: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 20:56:29.31 ID:Xju1Z6hg0
122

--宿屋--

宿男「皆さんお食事の準備が整いました……」

ツインテ、アッシュ、ポニテ「ぴぎゃぁぁぁ!?」

レン「い、いきなり入ってくるにゃよ」

宿男「すいません、ノックはしたんですがね……フェーフェッフェッ」

アッシュ「お前そんな笑いじゃなかっただろ!?後からキャラ作ろうとしてんじゃねぇ!!」

宿男「こほん。失礼。では参りましょう」

宿男はそういうとツインテ達に背を向けて、掛け軸をじっと見た。

宿男「……」

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

272: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 20:57:52.84 ID:Xju1Z6hg0
123

--宿屋--

レン「……」

宿男「……」

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

宿男「……じゃあいきますか」

ツインテ「いやいやいや!!なんか言って下さいよ超怖いですから!!」

アッシュ「なんだ!?なんだその思わせ振りな沈黙は!?」

ポニテ「またちびるぞ!?いいのか!?この歳になってのおもらしはかなり恥ずかしいんだぞ!?」

レン「ムーニーマン倍プッシュだ」

273: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 20:58:37.78 ID:Xju1Z6hg0
124

--宿屋--

ギシッ
ギシッ

ツインテ「うぅ……なんでこんなことになったんでしょうか……」

アッシュ「……思い当たる原因があるとすれば、今アイツが怖い話にはまってるってことだ」

ポニテ「外部要因ひでぇー」

アッシュ「夏を先取り!とかわけわからないことを言いながら読み漁ってるらしい」

ツインテ「どうせはまるならけいおん!とかそういう萌え萌えしたものにして欲しいです……それならお茶飲んでお菓子食べて幸せです」

アッシュ「なるたるとかエルフェン読み返されたらどう影響が出るかわからんな……」

レン「ギャグパートのメタ過ぎ発言は当ssの特徴としてお捕らえくださいにゃ」

ギシッ
ギシッ

274: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 20:59:31.87 ID:Xju1Z6hg0
125

--宿屋--

宿男「はい、こちらがお食事の部屋となっています」

どよ~ん

ツインテ「いやいやいやこんなに広いのに蝋燭一本とか!!」

ポニテ「くらぁっ!!(叱る意味で)」

宿男「で、こちらが皆さんの席になります。ご自分の写真があるところにお座り下さい」

ツインテ「いやいやいやこれ不謹慎過ぎますよ!!」

ポニテ「イェーイ!!」

アッシュ「ちょっと洒落にならない」

レン「かなりだにゃ」

275: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 21:00:34.14 ID:Xju1Z6hg0
126

--宿屋--

もくもくもくもく

ツインテ「……なんか満足に味わえないです」

ポニテ「うぅ。部屋のはじっこだから蝋燭の明かりが心許ないよぉ」

アッシュ「二メートル先にあるはずの向こうの席が見えん」

ポニテ「むぐ……………………~~~!!!!」

ツインテ「どうしたんですかポニテさん……ってキャー!!く、口から髪の毛がいっぱい!!」

宿男「あ、私の髪の毛が混入してたみたいですねすいません」

アッシュ「お前のかよ!!どっちみち不快じゃねぇか!!」

ポニテ「この量はまずい量だよ!!」

276: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 21:01:28.80 ID:Xju1Z6hg0
127

--宿屋--

宿男「あ、そちらのお客さん、もう食べていいんですよ?」

ポニテ「?もう私達勝手に食べちゃってるけど……ん?そちらの?」

ぺちゃ

ツインテ「!?」

むしゃむしゃ

ツインテ「こ、これは……」

ポニテ「卑猥な音が聞こえるよ!!」

レン「食事の音にゃ」

ツインテ「え!?え!?目の前にお客さんいるんですか?暗くてわからないけど!」

アッシュ「いつのまにそこに座ったんだ!?」

むちゃむちゃ

レン「気配は……ある」

むちゃむちゃ

277: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 21:01:59.14 ID:Xju1Z6hg0
128

--宿屋--

ポニテ「あぁ見えないことがこんなに怖いなんて!!」

アッシュ「ポニテ!火魔法で照らせ!!」

ポニテ「!!さっすがアッシュ君!火属性魔法レベル0.1!」

ポッ

ポニテの人差し指に火が灯る。そしてその光が映し出したものは……食い漁ったかのように汚く残された配膳だけ。

ツインテ「ひぃ!!誰もいない!!」

アッシュ「だが今の今まで食っていた痕跡があるぜ……」

レン「気配は一瞬で消えたにゃ」

宿男「もうお食事はいいので?」

ツインテ「……もうボクは喉を通りません。食べ物を粗末にはしたくないのですが」

ポニテ「私も……いい」

アッシュ「ポニテが食事を残すだとぉ!?」

レン「天変地異の前触れにゃ……」

278: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 21:02:36.11 ID:Xju1Z6hg0
129

--宿屋--

宿男「じゃあお風呂に行かれたらいかがですか?温泉はの本場と言えば東の王国ですから。ゼハハハ」

レン「さっきと笑い声が違うにゃ」

ツインテ「しかし……お風呂……ですか」

ポニテ「……一日くらい入らなくてもいいよね?」

アッシュ「女としてその発言はどうなんだ?」

ポニテ「もう……ゴールしてもいいよね?」

ツインテ「アカン!!」

ポニテ「あーのーうーみーーー」

アッシュ「とりあえず部屋に戻るか」

ガラ

アッシュが廊下に出た時、アッシュは何かしらの違和感を感じ取った。

アッシュ(?……何か視線を感じる?)

アッシュが廊下の先を見ると

人形「……」

部屋にいたはずの人形がそこにいた。

279: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 21:03:19.31 ID:Xju1Z6hg0
130

--宿屋--

アッシュ「あんぎゃあ!!」

宿男「あらあら。みんなが食事に行っちゃって淋しくてついてきたのかな?」

ツインテ「さらりと凄いこと言った!?」

宿男「あ、私がちゃんと部屋まで持ってくんで先階段あがってください」

アッシュ「その人形俺達の部屋に置く必要あるのかなぁ!?」

ツインテ「そそそそうですよね!!」

宿男「いやぁでもこれもオプションに入ってるし」

レン「今日のありがた迷惑スレはここですか!?」

宿男「この子だってお客さんのことを気に入ってるみたいだし。なぁ」

人形「……ニィ」

と笑ったように見えた。



膀胱「開門!!全部開門だ!!いそげぇぇ!!」

括約筋「へへ……こいつは忙しくなるぜぇ!!」

↑ただいまイメージ映像でお送りいたしております

280: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 21:03:45.62 ID:Xju1Z6hg0
131

--宿屋--

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

げっそり。

ツインテ「……もうボク水分残ってないです」

ポニテ「私もなんだよ」

アッシュ「俺なんて後ろまで盛らした……」

レン「にゃあ」

ツインテ「最初にサービスオプションにチェック入れた人、手をあげてください」

スッ

挙手するポニテ。

ポニテ「……ごめん。素敵なサムシングって書いてあったから」

アッシュ「それ関東しかわからないっぽいよ」

ポニテ「まじか」

281: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 21:04:25.65 ID:Xju1Z6hg0
132

--宿屋--

レン「……っていうか、」

人形「……」

市松人形「……」

レン「なんで増えたの」

ツインテ「サービスオプション追加した人、手をあげてください!!」

スッ

挙手するアッシュ。

アッシュ「すまん……夜のお供に☆って書いてあったからてっきり……」

ツインテ「あははははははははははははははははははははは!!」

ポニテ「あぁ!!ツインテちゃん壊れた!!懐かしい!!久しぶり!!」

アッシュ「あぁもうなんでこんなことになったぁ!!」

レン「レンこんなツインテはじめて!」

282: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 21:05:05.92 ID:Xju1Z6hg0
133

--宿屋--

ツインテ「あはははは」

レン「ツインテ怖い。真顔は怖い」

アッシュ(これも人格チェンジなのか?いやリボンは無事だ。リボンが重要な役割を果たしているのかと思っていたが)

ポニテ「……ねぇ、ちょっとちょっと」

アッシュ「あぁ?なんだよ今考え事の真っ最中なんだよ」

ポニテ「ちょっと!」

ポニテはアッシュの首を回し強引に振り向かせた。

人形「……」

アッシュ「……」

アッシュのすぐ後ろに人形が……。

アッシュ「きゃ、キャー!!な、なんで!?部屋の隅に置いてあったよね!?」

ポニテ「だよね!?だよね!?位置変わってるよね!?あとね?あとね?」

アッシュ「なんだよ早く言え!今みたいなのはもうごめんだぞ!?」

ポニテ「も………………………………もう一体が………………見当たらないんだよね」

283: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 21:05:36.84 ID:Xju1Z6hg0
134

--宿屋--

ツインテ「あははは……は」

レン「……」

アッシュ「……そ、それもう完全に移動してんじゃん……」

ポニテ「うわーん!!なんでこんなことになったんだよー!!誰か安価間違えたろ絶対ー!!」

レン「シリアスパート入るかと思ったら実はそんなこと無かった」

アッシュ「正直差別とか亜人問題とかもうどうでもいい。早くこの旅館から脱出したい」

ツインテ「……はぁ。やっと落ち着いてきました」

レン「あ、もとのツインテだ」

ポニテ「……それよりさ。探さないとまずいよね?あの人形……」

アッシュ「あぁちゃんと把握しておかねばおちおち眠ることも出来ない」

レン「……」

ポニテ「沈黙はフラグくさいからやめてっ!!」

レン「も、もう片方も、いないんだけど」

284: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 21:06:04.87 ID:Xju1Z6hg0
135

--宿屋--

アッシュ「……」

ポニテ「……」

ツインテ「……」

レン「にゃ、にゃー?」

ポニテ「……オーケー……こうなりゃやけだ、徹底交戦だ」

ポニテは両手に火の玉を作り出す。

レン「火事はやめろにゃ」

アッシュ「く……よし、宿男に頼んで人形だけでも持ってってもらうとしよう」

ツインテ「そうですね……。それが一番良さそうです」

ポニテ「……ってことはこの部屋を出て会いにいくわけだ。この旅館のどこにいるかわからない人を探して」

アッシュ「仕方ないだろ?ならお前こんな状態で寝れるのか?」

ポニテ「う、うぅ」

ツインテ「……行きましょう。早くしないと出歩いちゃまずい時間になっちゃいますし」

レン「にゃー」

四人はー部屋をー脱出したー。

285: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 21:06:30.51 ID:Xju1Z6hg0
136

--宿屋--

ギシッ

アッシュ「い、行くぞ」

ポニテ「お、おー」

むぎゅっ

ツインテ「ポニテさんそんなにくっつかないで、あんっ」

レン「ツインテー、手つないで?」

ポニテ「わ、私もだよ!!」

ギシッ
ギシッ

アッシュ「しかし暗いな……ぽつぽつとランプがあるだけだし……」

ツインテ「うぅ……ランプの赤い光怖いよぉ」

286: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 21:06:57.63 ID:Xju1Z6hg0
137

--宿屋--

ポニテ「階段はそこを左だよね?」

レン「確かそうにゃ」

アッシュ「くそ、なんで階段のとこにランプつけとかないんだよ、暗くてあぶねぇだろが、シネ」

ボッ

ツインテ「あ、階段の下の方でランプの光が!」

ポニテ「店主がつけてくれたのかな?アッシュ君今言ったこと聞こえちゃったかもねー!」

アッシュ「ふん、知るか」

ギシッ
ギシッ

四人は階段を降りたところで違和感を覚える。

レン「……誰もいないにゃ」

ツインテ「ゆ、床にランプが置いてあるだけですね……これを持ってきた人はどこに行ったんでしょうか……?」

アッシュ「わからん……とりあえずこれを使わせてもらうか」

アッシュはランプを拾う。

287: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 21:07:38.88 ID:Xju1Z6hg0
138

--宿屋--

アッシュ「おい店主!話があるから出てこい!」

シーン

アッシュ「……ぬ」

ツインテ「い、一階にいないんでしょうか?」

ポニテ「てかアッシュ君、出てこいはないぜ」

レン「とりあえず進んでみよう」

ギシッ
ギシッ

アッシュ「ん、ここは飯食ったところか」

ツインテ「ろくに食事出来ませんでしたけど」

ポニテ「うぅ、あまり食べてないことを思い出したらお腹が空いてきた。あぁ、なんか食事の幻聴まで聞こえてきたよぉ」

カチャカチャ

ツインテ「……ボクも聞こえますね」

ぺちゃ、ぬちゃ

レン「……」

288: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 21:08:46.15 ID:Xju1Z6hg0
139

--宿屋--

アッシュ「そんなバカな……」

アッシュはそーっと襖をずらして中を覗く。
しかし中は真っ暗で何も見えない。

むしゃむしゃ

アッシュ「……こんなに暗いのに飯が食えるのか?……」

ぴた

アッシュ「!!」

アッシュの声が聞こえたのか、突如食事の音が止まる。アッシュは反射的に襖を閉めた。

パタン

アッシュ「……さ、先を急ぐぞ」

ポニテ「う、うん。あ!!」

ぼーん、ぼーん

ツインテ「!?」

その時、旅館全体に時計の音が鳴り響いた。

ポニテ「……まずいよ?私の腹時計だと12時になっちゃった……」

ツインテ「正確だー!!」

アッシュ「く……急ぐぞ!!」

ギシッ
ギシッ

289: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/20(水) 21:09:22.67 ID:Xju1Z6hg0
140

--宿屋--

四人は管理人室前に到着する。

ツインテ「こ、ここですね。いるとすれば」

ポニテ「た、多分」

アッシュ「あぁ……じゃあ開けるぞ」

アッシュがドアに手を掛けようとしたその時、

ツインテ「きゃあああああ!!」

アッシュ「ど、どうした!?」

ポニテ「耳元で大声出さないでよー!!」

ツインテ「れ、レンさんが……レンさんが……」

ツインテは一度しゃがみこみ、再び立ち上がった。

にゃんこ「にあー」

ツインテ「れ、レンさんが暫く見ない間に猫になっちゃってます……」

アッシュ、ポニテ「な、なんだってー!?」

にゃんこ「にゃにゃにゃん」

ポニテ「やべー!可愛いー!!っ言ってる場合じゃねぇ!!なんで!?いつ気がついたの!?」

ツインテ「さっきまでずっと手を握ってたんですけど、食堂過ぎた辺りからレンさんが手を離したんです……変だなぁとは思ったんですけど……うぅ」

アッシュ「これがまさか12時を過ぎたらという……」

暗闇を恐怖が支配する。

298: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 20:55:07.80 ID:eQBIXoPP0
141

--宿屋--

ポニテ「まじもんの猫ちゃんになっちゃうなんて……」

アッシュ「……いや、すり替えられたんじゃないか?」

ツインテ「すり替え!?だ、誰にですか!?」

アッシュ「わからん……わからんが」

ポニテ「あ!変化の魔法って可能性もあるね」

アッシュ「!!ツインテ!!この猫のダメージ履歴を見てみろ!!レンならこの前の頭部のやつがあるはずだ!!」

ツインテ「は、はい!!」

にゃんこ「にゃっ」

しかしぬこはツインテの腕を擦り抜けて闇の中に消えていった。

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……レンちゃんのことは諦めよう」

299: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 20:55:45.15 ID:eQBIXoPP0
142

--宿屋、管理人室--

ガチャリ

アッシュ「……ここにはいないみたいだな」

ツインテ「ですね」

アッシュ「ならどこにいる?見回りでもしているのか?」

ツインテ「どうなんでしょう……レンさんのことも気になりますし……」

アッシュ「あぁ。そうだな……レンをまず探そ……つ、ツツツツインテ!!お、おおおお前何と手繋いでるんだ!!」

ツインテ「何ってポニテさんじゃないですか。ねぇポニテさん」

市松人形「……」

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ツインテ「もうやらぁぁぁぁ!!うわーん!!」

ツインテ号泣。

バツン

後、

ツインテ「ざけんなぁ人形っころがぁぁ!!」

暴走。

301: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 20:56:21.59 ID:eQBIXoPP0
143

--宿屋--

アッシュ「きた!メイン救世主きた!これでかつる!!」

ツインテ「んでこんなことになってんだテメー!!」

がば!

ツインテはアッシュの胸ぐらを掴むと持ち上げた。

アッシュ「あひゅん!」

ツインテ「あっちの俺の精神力が0になっちまってんじゃねぇか!!それにポニテ達を……お前●●ついてんだろうが!!びびってねーで女守れや!!」

アッシュ「デュフフフwwし、しーましぇーんww」

ツインテ「……はぁ。ここはどこだ?今の状況を説明しろ」

アッシュ「ぶくぶく…………」

ツインテ「……墜ちやがった」

302: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 20:57:20.65 ID:eQBIXoPP0
144

--宿屋--

アッシュ「……は!!」

ツインテ「やっと起きたかカス虫」

アッシュ「カス虫……」

アッシュは自分の顔を撫でる。

アッシュ「な、なんか顔が痛いんだが」

ツインテ「起こすために肉体言語使ったからな」

アッシュ「……」

ツインテ「まぁとりあえず話せ」

五分後。

ツインテ「……なるほどね。そりゃああっちの俺様じゃあ耐えられねぇわ」

アッシュ「……」

ツインテ「とりあえずあの二匹探すぞカス虫」

アッシュ「か、カス虫っていうのはその……」

303: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 20:59:00.84 ID:eQBIXoPP0
145

--宿屋--

ツインテはアッシュの喋っていることを無視し、ランプで自分の周囲を照らした。

ツインテ「……ほぉ……消えたな人形」

アッシュ「!?市松人形が……」

周囲には先程まであったはずの市松人形が消えていた。

ツインテ「アッシュ、スキル使用透視眼」

アッシュ「む?アレは生きているものにしか効かないが……」

ツインテ「怪奇現象が生きてねぇっていうのか」

アッシュ「……幽霊はそりゃあ生きてねぇよ?」

ツインテ「てめぇ、いくつだよ!!幽霊なんざいるわきゃねえだろ!!」

アッシュ「えぇ!?30レスくらいかけてやってきた流れを全部否定した!!」

ツインテ「ほらやれ」

ツインテはアッシュの頭を手で掴み、力を込めた。

アッシュ「あたっ!す、スキル使用、透視眼」

ぎぃぃん

304: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:00:14.67 ID:eQBIXoPP0
146

--宿屋--

アッシュはその状態でキョロキョロと見回す。

アッシュ「何もね……!?二階に何か光ってるもんがあるな……」

ツインテ「どこら辺だ」

アッシュ「?そこら辺」

アッシュは天井に向かって指差した。

ドガァン!!

その瞬間、ツインテはアッシュが指差した部分を触 で破壊した。

パラパラ

アッシュ「な、なんばしよっとね!?」

ツインテ「捕まえ……た!!」

ビタン!!

一階に叩きつけられたのは市松人形。

アッシュ「ひ、ひぃ!!」

305: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:01:25.11 ID:eQBIXoPP0
147

--宿屋--

ツインテ「大方次に俺等が移動しそうな場所に先回りしようとしてたって所か」

ツインテは触 で市松人形の手足の自由を奪い、釣り上げた。

市松人形「……」

ツインテ「あいつらをどこにやった」

市松人形「……け」

市松人形の顔に表情が形づくられる。

市松人形「けひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」

アッシュ「ひいい!!わ、笑ったああ!!」

ツインテ「あ?うるせえよ」

メギャッ

ツインテは市松人形の頭部を掴むとそのまま握りつぶした。

ツインテ「あ。こわしちった」

アッシュ「えぇぇぇ!?」

306: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:02:36.35 ID:eQBIXoPP0
148

--宿屋--

ツインテ「せっかく四肢をちぎりながら拷問してやろうと考えてたのによ」

アッシュ「えぇぇぇ!?」

市松人形「ぎ、きひ、きひひひ」

市松人形はぐしゃぐしゃになった頭部を震わせながら笑った。
眼球は一つ飛び出し、中の素材が所々見えている壮絶な状態である。

市松人形「呪ってヤルゥゥ……呪ってやるゾオオオオオ」

ツインテ「お、大丈夫だったか。じゃ拷問開始しまーす」

キュイイイイイン

市松人形「……けひ?」

ツインテは残りの触 をドリル状に変化させる。

その回転する先端が人形の腹部を掘る。

市松人形「る、るるるるるるるるるるるるるるるる」

307: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:04:17.83 ID:eQBIXoPP0
149

--宿屋--

アッシュ「う、おぶ!……もう見れません!!見たくありません!!」

ツインテ(部品に戻るまで粉々にしてやったのに動力炉が見つからない。完全な操り人形なのか、もしくは……)

ふよふよふよ

アッシュ「ぬ!?か、髪の毛だけ飛んでる!!空飛ぶスパゲティモンスターのよう!!」

ツインテ「そこか!」

シュバ!

ツインテは触 でそれを捕縛する。

ギシ

髪の毛『……ひ』

ツインテ「三つ数える前に出てこい。さもないと、あの人形よりもっと悲惨な目に合わせてやる」

キュイイイン

ドリルフル回転。

ツインテ「ひとーつ」

髪の毛『……ぴ』

バサ

髪の毛を払いのけ出てきたのは、

?『すいませんでしたっぴ!!だからもう勘弁して下さいっぴ!!』

308: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:04:48.72 ID:eQBIXoPP0
150

--宿屋--

アッシュ「!!こいつ……妖精か……!?」

二対の羽を持つ可愛らしい妖精が恐怖に怯えた顔で現れた。

ツインテ「……こんな人里にまで妖精がいるとはな……」

?『す、すいませんでしたっぴ!やっておいてなんですけど、妖精はいたずらをしないと死んでしまう体質なんですっぴ!だから許して欲しいっぴ!』

妖精は涙を流しながら謝罪した。

アッシュ「……ち。妖精はイタズラ好きと聞かされていたが……やられたぜ」

ツインテ「んなわけねぇだろ」

ツインテはドリルをキュイキュイ言わせながら妖精に迫った。

妖精『ぴ!?』

ツインテ「イタズラしなきゃ死ぬとか、どう考えても無理ある設定だろ」

妖精『……』

アッシュ「設定否定……」

ツインテ「つか普通に考えてありえねえだろが」

妖精『ほ、本当に申し訳ないですっぴ!!ほんの出来心だったんですっぴ!!息をするように嘘をついてしまう生き物なんですっぴ!!』

309: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:06:09.29 ID:eQBIXoPP0
151

--宿屋--

ツインテ「ぴっぴぴっぴうるせぇ!!当初アイドルポジションで作られた存在なのに黄色い鼠にその座を奪われたモンスターが主人公のマンガを思い出すからやめろ!!」

妖精『残念、デクナッツリスペクトですっぴ』

ツインテ「……」

キュイイイン

妖精『あー!ごめんなさいごめんなさい!!でも語尾は差別化のためにも外すことができないっぴ!』

ツインテ「ちっ……。お前仲間いんだろ?呼べ」

妖精『へ?』

ツインテ「他の仲間をここに呼べ」

妖精『え、えっと……』

キュイイイン

妖精『あ、そ、それやめて!!怖い怖いほじられちゃうから!!』

310: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:07:35.66 ID:eQBIXoPP0
152

--宿屋--

人形『ど、どうもすいませんでしたっび』

妖精『もっと深く頭下げるっぴ!!怒られるぴよ!?』

ツインテ「……謝るときぁは」

人形『び?』

ツインテ「姿見せろやぁぁ!!」

バキャーン

妖精『わ、わーー!!』

ツインテは人形を踏み砕いた。

赤妖精『び……びっくりしたっび……』

中から飛び出した赤妖精は半泣きになりながら地面に腰をついていた。

ザッ

ツインテ「……」

赤妖精『び、び?』

311: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:08:13.26 ID:eQBIXoPP0
153

--宿屋--

ツインテ「自己紹介、始め!!」

赤妖精『び、びー!!』

妖精『了解しましたっぴー!!僕はぴっちですっぴ!!』

赤妖精『私はび  ですっび!!』

アッシュ「片方名前が可哀想!」

ツインテ「……赤い方、お前気にくわねえから改名しろ」

赤妖精改めび  『え?な、なんでですかっび?いい名前だと思ってるっび』

ツインテ「いいから改名しろ」

妖精改めぴっち『な、なんて傍若無人な御方だっぴ……』

び  改めぱっち『いやさすがにそう簡単に名前を変え……変わってるっぱ!?どういう力で……って語尾まで変わったっぱ!?』

ツインテ「よし」

ぴっち『そんなばなな……』

312: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:10:20.76 ID:eQBIXoPP0
154

--宿屋--

ぱっち『……ご察しの通り、私達はここに住み着いてる妖精なんですっぱ。お客さん達にここを満喫してもらうために私達は日々頑張って痛い痛い痛い!!羽もげますっぱ!!引っ張らないで下さい!!』

なんとかツインテから解放されたぱっち。

ぱっち『血……血出てないっぱ?』

ぴっち『なんとか大丈夫みたいっぴ』

ツインテ「俺様に嘘をつくな。次嘘をついたら、トンボの羽をむしるようにお前達の羽をむしる」

ぱっち『趣味でした』

ぴっち『ここの宿は何か人ならざる者を呼び寄せる力があるみたいなんですっぴ。僕ら以外にもたまに同業者がくるんですっぴ』

レギュラーは僕達だけですけど、と付け足すぴっち。

ぱっち『いやでも本当お客さん達いいリアクションでしたっぱ!!みんなすぐ漏らすから私達クスクス笑ってたんだっ痛い!!貴女達のでこぴんが私達にとってどれだけ致命的なダメージを与えるか理解してるっぱか!?』

ぴっち『あわわわ』

ぱっちは吹っ飛んだ首を回収しぶつくさいいながら装着した。

ツインテ「嘗めた口を叩くな。次にふざけたことをぬかしやがったら理科室でやった蛙の解剖実験のようにしてホルマリンに漬けてやる」

ぴっち『この度は我社の不手際により、お客様方に不快な思いをさせてしまったことを深くお詫びいたします』

ぐしゃ

結局踏んだ。

313: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:12:02.00 ID:eQBIXoPP0
155

--宿屋--

ぴっち『ぱぁぁぁぁち!!』

ツインテ「おっと、間違えた」

アッシュ「お、おいツインテそれはさすがにやりすぎじゃ」

ツインテ「あ?黙ってろ。こいつらにとっちゃこんなこと屁でもねぇ。妖精は不死身なんだからよ」

ぴっち(つーても痛いもんは痛いですっぴよ……)

ツインテ「とりあえずあいつらを連れてこい」

ぴっち『あいつら……と申しますと?』

ツインテ「はぁ?あいつらはあいつらだろ!ポニーテールと猫だ」

ぴっち『あぁお連れさん達のことですっぴか』

ツインテ「てめーらが連れ去ったくせによくもまぁいけしゃあしゃあと……」

パキッ

ツインテを左手の骨をならす。

ぴっち『ぼ、暴力反対ですっぴ!!お、お連れさんを連れてきたらいいんですっぴね!?行ってきまーす!』

ぴっちはぱっちを抱えると闇の中に消えていった。

314: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:13:12.24 ID:eQBIXoPP0
156

--宿屋--

レン「むにゃむにゃ?」

アッシュ「気が付いたか?レン」

結局妖精達では運べないということで、妖精はポニテ達の居場所に案内する形になった。

レン「アッシュ……?あ!ツインテ!」

レンはツインテに抱きつこうとする。

ツインテ「軽々しく触れるな」

バチィ

ツインテの触 に弾き飛ばされるレン。

レン「にゃ……これは噂のツインテストレートモード?」

レンは頬を押さえる。

ツインテ「時にレンよ。おぬし、なかなか強いな。俺様は殺す気で殴ったのだぞ。誉めてつかわす」

アッシュ「どこの蟻だ」

315: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:13:54.41 ID:eQBIXoPP0
157

--宿屋--

ポニテ「とにもかくにも全員無事に全員集合でよかったね!一時はどうなることかと思ったけど」

ぴっち『じゃ、じゃあ僕達はここら辺でおいとまさせていただきたいなぁ、って』

ツインテ「待て」

ぴっち『ぴ!?』

ツインテ「まさかお前、これだけ俺達に迷惑をかけておいてばっくれるつもりか?」

ツインテの魔力が空間を支配していく。

ぴっち『怖い!!な、何をすれば許して貰えるんですかっぴ!!』

ぴっちはぱっちを抱き抱えたままがたがたと震える。

ツインテ「そうだな」

ツインテはぴっち達を掴み上げた。

ツインテ「お前達は未来永劫俺様に仕えろ」

ぴっち『ぴ、ぴー!?』

ポニテ「……話には聞いてたけど、むちゃくちゃな性格だっぴ」

ぴっちとぱっちが仲間(しもべ)になった。

316: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:14:34.79 ID:eQBIXoPP0
158

--宿屋--

翌朝。

ツインテ「う、うーん!……あ、あれ?いつのまにボク寝てたんでしょうか?気絶しちゃったのかな……って、み、皆さん大丈夫ですか!?」

ツインテが見たものは天井からぶら下げられてるアッシュ達だった。

ポニテ「あっ……お目覚めですかツインテ様……」

ポニテは顔を赤く染めもじもじ君。

アッシュ「お、おはようございますツインテ様。私は醜い豚でございます。ぶひぶひ」

レン「  縛りとかくせになったらどうしてくれますにゃ」

三人は敬語で、ぶら下げられてて、  縛りだった。

ツインテ「……も、もう一人のボクが出てきたんですね。何を……やらかしたんでしょう」

ポニテ「何って……やん!」

ポニテはクルクルと回っている。

ぴっち、ぱっち『ツインテ様!!おはよござっす!!』

ツインテ「ひぃ!?人形がスクラム組んで挨拶してきた!!」

317: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:15:24.14 ID:eQBIXoPP0
159

--宿屋--

ツインテ「なるほど……そんなことが」

アッシュ「やー、何から何までツインテ様のおかげっすよ。あざっす!!」

ポニテ「私達が今無事なのも、ケツに  開いてるのもツインテ様のおかげっす!あざっす!!」

ツインテ「それはボクと関係ないですよ!?」

レン「ツインテ様ー」

ぴっち、ぱっち『セット!ハッ!ハッ!』

ツインテ「な、なんですか?昨日の夜、ボク何したんですかぁ!?そして人形さんそれはアメフトですよ!!」

ポニテ「いやーでもよかったよみんな何事も無くてー」

レン「こわかったの」

アッシュ「全くこのイタズラ妖精共が」

ぽこ

ぴっち『いた!痛いっぴよ!!』

アッシュ「しかし一体どうやってレン達を連れ去ったたんだ?タネを明かせ」

ぱっち『連れ去ったって……なんのことっぱ?』

318: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:16:31.30 ID:eQBIXoPP0
160

--宿屋--

アッシュ「こいつら……ツインテがおとなしくなったら途端にこれだ。今更しらばっくれてんじゃねぇ」

ぴっち『いやいやいやもう僕達嘘はつかないっぴ!お腹開かれてホルマリンに漬けられるのなんて嫌っぴもん!!』

アッシュ「……」

ぱっち『昨日もなんか話が噛み合ってない気がしたっぱよ』

アッシュ「お前らがポニテ達をさらったんだろうが!だからツインテに言われて隠し場所に案内したんだろ!?」

案内した……アッシュは自分で自分の言葉に疑問を感じた。

ぴっち『何言ってるっぴ!僕達はツインテ様に、ポニーテールの子達を連れて来いって言われたから探しに行っただけだっぴ!!でも僕達じゃ運ぶことなんて出来なかったからお前達を呼びに言ったんじゃないかっぴ!!』

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

アッシュ「待て待て待て、ってことはポニテ達を連れ去ったのはお前達じゃないのか!?」

ぴっち『だからそう言ってるっぴ!見つけるのだって凄く大変だっぴよ!!』

319: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:18:36.75 ID:eQBIXoPP0
161

--宿屋--

ポニテ「……食堂にいたのは君達なんだよね?」

ぴっち『食堂?僕達は廊下にいたっぴよ?』

ツインテ「……あの、一つ良いですか?」

アッシュ「なんだ?ツインテ様」

ツインテ「あ、様付けはやめてください。……あのですね。屏風のところに染みがあったじゃないですか」

ポニテ「あったねツインテ様。なんか札で封印してた感があったよねツインテ様」

ツインテ「様はやめてください。で、今ふと気になってみたら……染みが無いんですよ」

ばっ!

全員が一斉に掛け軸を確認する。

アッシュ「……ない」

ポニテ「一体どこへ……ってセリフ自体がすでにおかしいね!」

ツインテ「こ、ここです」

ツインテは自分の真下を差した。ツインテの布団に、なにか染みのようなものが……。

アッシュ「!!染みが……移動?つ、ツインテ何もないのか!?」

ツインテ「はい……無いと思いたいです」

ツインテは寝巻を捲って足首をみんなに見せた。
そこには

ツインテ「……これがアウトじゃないなら」

ツインテの足首には、墨を塗った手で掴んだような跡があった。



アッシュ「……チェックアウトォォォ!!」

320: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/23(土) 21:19:25.80 ID:eQBIXoPP0
162

--メインストリート、軽食屋--

アッシュ「なんという一夜の悪夢……完全に睡眠不足だ」

ツインテ「折角作戦会議をしようとおもったのに……」

ポニテ「あ。すっかり忘れてたよ!亜人保護団体の件だよ!!」

アッシュ「だが、どうする?……俺たちが亜人の力になってやれることは、はっきり言って無いぞ?」

レン「……にゃ」

アッシュ「俺達が行動することによって、逆に亜人の首を絞めてしまう可能性もある」

ポニテ「むー……」

レン「……レン、亜人だから言うけど、やっぱり何もしてほしくないと思う。今の生活は変えたいけど、今の生活すらできなくなったらと思うと……。時間に任せるのが一番」

ツインテ「……そうかもしれませんね」



1、なら、ボク達が亜人に対する考え方を、世界を変えよう。どれほどの年月がかかっても。

2、それでも目の前で苦しんでいる人を助けたい。それが正しい選択で無いとしても。

※ストーリーが極端に分岐します。

347: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:46:21.96 ID:bJBuR8bG0
163

--メインストリート、軽食屋--

1、なら、ボク達が亜人に対する考え方を、世界を変えよう。どれほどの年月がかかっても。


ポニテ「むぃー……」

アッシュ「それでいいんじゃないか?俺達が首突っ込んだからってよくなるとは思えない。それだけの力が俺達には無い……」

レン「にゃあ。――そんなに思ってくれてる人がいるだけでも嬉しいにゃ」

レンはツインテの左手を握る。

ツインテ「……じゃあ南の王国に行きませんか?」

アッシュ「!?」

ポニテ「……い、いきなり総本山だねぇ」

ツインテ「今最も亜人が差別されてるであろう亜人の国。ボク達はそれを見ておかなきゃいけないと思うんです」

アッシュ「……まぁ突貫するんでなく、現状把握の意味でなら悪くないか」

ポニテ「……ふふ」

ポニテはクスクスと笑いだした。

348: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:46:56.96 ID:bJBuR8bG0
164

--メインストリート、軽食屋--

アッシュ「何がおかしい暴食女」

ポニテ「いやぁ、最初の頃に比べてツインテちゃん随分変わったなぁ、って思って」

ツインテ「え?ぼ、ボク変わりました?体積以外で」

ポニテ「少なくともブラックジョークは言わなかったね……」

ポニテ「ツインテちゃんが恥ずかしげもなく自分の意志を示すなんて、初めてあった時の印象からは考えられなかったなぁ」

ツインテ「そ、そうですか?そんなに変わってないと思いますけど」

アッシュ「いや、お前は変わったよ。自信を持てツインテ」

ツインテ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

ツインテ、ポニテ、レン「お前がゆーなっ!」

アッシュ「!?な、なぜだ!?」

349: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:48:20.70 ID:bJBuR8bG0
165

--メインストリート、軽食屋--

ツインテ「最初はクールでかっこよかったのに!」

ポニテ「今の子達にわからない例えを出せば、ゼルガディスさんみたいだったのに!!」

アッシュ「俺のcvはグリリバさんだったのか!!」

レン「最近アニメでやったみたいだから普通にわかるかも」

ポニテ「それが今じゃ単なるネタキャラじゃないか!!ツインテちゃんは進化したけどアッシュ君は退化だよ!!」

アッシュ「う、うぐ……。ほ、ほら、クールなイケメンで近寄りづらいと思ってたんだけど、ふとしたきっかけで仲良くなったらオタ趣味全開の  ゲオタだった、っていうようなよくあることと同じじゃないか!」

レン「ねーよ」

ポニテ「しかもお母さん知ってるんですからね!?この前アッシュ君が洗濯係だった時、ツインテちゃんの服に顔を埋めているのを!!」

アッシュ「!!!!」

ツインテ「え?ボクの服?」

350: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:48:50.90 ID:bJBuR8bG0
166

--メインストリート、軽食屋--

ポニテ「今回ちょっと量が多かったから手伝ってあげようかなー、って思って見に行ったらね!?『はぁっはぁっ……さ、さっきまでツインテが来てた服……すぅーはぁー』って!!」

ツインテ「えっ!?」

アッシュ「い、いいいい言ってねーしそんなこと」

レン「したことを否定しろにゃ」

ポニテ「『あ……これツインテの汗の匂いが……すんすんすーん』」

ツインテ「なっ、どこ嗅いでたんですか恥ずかしい!!」

ツインテの顔が恥ずかしさから赤くなる。

アッシュ「だ、だって脇はチェックしておくところだと思って……」

レン「おかしくないよね?みたいな顔して言ってんじゃねぇよ」

351: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:49:19.86 ID:bJBuR8bG0
167

--メインストリート、軽食屋--

ポニテ「『……ごく。さ、さて次はいよいよメインだ』アッシュ君は息を荒げて、ツインテちゃんの使用済みの白い 着に手を伸ばした」

ツインテ「や、やめてー!!」

ツインテはポニテを掴み、ガクガクと揺さ振る。

レン「ツインテ!?ポニテを止めても過去の出来事は止められないよ!?」

ポニテ「アッシュ君は生地の触り心地を数分に渡って味わうと、そのまま顔を近付けた」

ツインテ「え、えぇー!?」

アッシュ「はわ、はわわわ」

ポニテ「『つ、ツインテの、ぱぱぱぱぱん!ぱっ、ぱぱぱぱ    !!』」

ツインテ「きゃー!!」

アッシュ「ち、違うぞ!?サンチュって言ったんだ!!」

レン「なんだか翌日あっためなおしたスキヤキのようだ」

ポニテ「チャプチュじゃねそれ」

352: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:50:37.74 ID:bJBuR8bG0
168

--メインストリート、軽食屋--

ポニテ「アッシュ君は、それはそれはいとおしそうに抱き締めた。ジョナサンがDIOの首を抱き締めているシーンをご想像願いたい」

アッシュ「く、くわー!!て、的確だー!!」

ポニテ「そしてアッシュ君はとうとう禁断の場所に手を付けようとしていた。それはつまり……裏地」

ツインテ「いーやぁぁ!!」

ポニテ「顔を近付けたアッシュ君はその一番臭いが濃い部分を嗅ぎ続けた……二時間くらい」

レン「だからあの日帰ってくるの遅かったにゃ!?」

ツインテ「あ、アッシュ君……本当なんですか?」

アッシュ「……っく!」

顔を背けるアッシュ。

ツインテ「本当のことを話して下さい。ボクアッシュ君のこと……信じたいんです」

アッシュ「……く」

353: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:51:17.71 ID:bJBuR8bG0
169

--メインストリート、軽食屋--

ポニテ「アッシュ君……」

レン「アッシュ……」

アッシュ「……あぁ、その通りさ。俺が犯人だ……」

ポニテ「それは知ってるぜ」

アッシュ「だ、だってそこに    があれば嗅ぐだろ!?  るだろ!?」

いらんことまで白状してしまうアッシュであった。

ツインテ「!!な、ななな!?なめ、舐めたんですか!?」

アッシュ「……はい」

ポニテ「罪が増えるよ!やったねアッシュ君!!」

ツインテは顔を真っ赤にしてアッシュに怒鳴った。

ツインテ「変 !!変 !!変 !!変 !!」

アッシュ「キレイ……ツインテちゃん キレイ…………」

354: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:51:48.26 ID:bJBuR8bG0
170

--メインストリート、軽食屋--

レン「こんなことばっかやってるから進みが遅くて無駄に長くなるんにゃ」

ポニテ「だねー。そのあげく滑るしねー」

ツインテ「い、いくら匂いxxxだからって限度があります!今度からボクが洗濯を受け持ちます!いいですね!?」

アッシュ「そんな!?それだけは勘弁してくれないか!?俺の癒しタイムが……」

結局ツインテはアッシュが異常なまでの匂いxxxだと認識した。

ポニテ(匂いxxxなだけであそこまでしないしょー)

レン(例え何xxxだろうとあれは許される行いではないにゃ)

ぱたぱた

ぴっち『そろそろ僕達も話に混ぜてくれっぴ』

ぱっち『完全に忘れてたぱっちね』

ぴっち『つか朝の通勤タイムに電車に乗りながら書く内容じゃないぴっち』

355: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:52:25.98 ID:bJBuR8bG0
171

--メインストリート、軽食屋--

ツインテ「あ、妖精さん達」

ツインテの周りを飛び回る妖精達。

アッシュ「そうだな。妖精を誰につけるか決めるか」

ポニテ「いきなりキメ顔されてもなぁ。この変 」

アッシュ「っ!も、もういいだろ!!」

ポニテ「で、つけるって何?」

レン「レンも知らない」

アッシュ「レンも知らないとは思わなかったな。じゃあ説明するが、妖精は戦闘をサポートしてくれる」

ぴっち『お望みとあらばっぴ』

ぱっち『正直めんどくさいけどっぱ』

アッシュ「普通にサポートしてもらうのもいいが、やはり一番いい使い方は武器やアイテムに宿らせる」

ツインテ「武器に……宿る?」

356: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:53:02.08 ID:bJBuR8bG0
172

--メインストリート、軽食屋--

アッシュ「効果付与だか属性付与だか個体によって変わってくるんだが、まぁ単純に戦闘能力は上昇すると考えていいだろう」

ポニテ「ほうー!パワーアップイベントだね!」

アッシュ「二人までしかパワーアップ出来ないがな」

ポニテ「はいはい!私ほしー!!」

アッシュ「まぁ待て。付与するものとの相性もあるし、それが使う者にとって有益じゃないかもしれん」

ポニテ「ぶー!ぶー!戦闘能力アップって言ったくせに!!」

アッシュ「基本的にはだ。例えば効果が炎の威力を弱めるとかだったらお前には使えまい」

ポニテ「む……むぅ」

ぱっち『あ、それ私の効果っぱよ』

ツインテ「……え?」

ぱっち『すげー。よくわかったぱね!私は別名、火殺しと呼ばれてるっぱ』

357: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:53:40.11 ID:bJBuR8bG0
173

--メインストリート、軽食屋--

ポニテ「………………………………」

アッシュ「……ぱっちはポニテ以外に付けよう」

ツインテ「成る程。一見プラス能力かと思いきや、組み合わせを考えないとマイナスに働いちゃうんですね」

アッシュ「あぁ。後、マイナスじゃないが、人によっては効果が全く出ないパターンもある。例えば錬金術の精巧さを上昇させたりする効果。これは錬金術師じゃないと意味が無い」

ぴっち『あ、僕その効果だっぴ!アッシュすごいぴね~まるで超能力者みたいっぴ』

アッシュ「……なん……だと」

レン「じゃあぴっちはレンが貰うにゃ」

ポニテ「うああああああああああん!!」

アッシュ「じゃあどうするか。ぱっちは俺ら三人の中で決めるとしよう。……と思ったがレンは除外だな」

レン「?どうして?」

アッシュ「妖精を一体つけるだけでも魔力消費量が増える。ためしてみればわかるさ」

358: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:54:17.54 ID:bJBuR8bG0
174

--メインストリート、軽食屋--

レン「成る程。了解したにゃ」

アッシュ「じゃあ俺かツインテってことになるが、ツインテ使ったらどうだ?魔力量も多いし」

ツインテ「うーん。と言ってもボク、水属性だから元々軽減出来るんですよね」

アッシュ「だが、無駄だじゃない。普段なら75%にまで威力を押さえることが出来たと仮定した場合、妖精をつければ50%まで軽減出来るようになる。いやこの妖精がどれだけ優秀かわからんがな」

ぱっち『失礼っぱ!ぱっちは強いっぱよ!』

ツインテ「そうですか……。もしかしてアッシュ君がぱっちさんをつけると、魔力量がおっつかなかったりします?」

アッシュ「さすがにそれは無いな。一匹なら耐えられる」

ぱっち『一匹とは酷い言いかたっぱ!!……さっきから話してる理論で言ったらツインテちゃんには私つかない方がいいっぱ』

アッシュ「?なぜだ」

ぱっち『既に妖精がついてるアイテム持ってるっぱもん』

359: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:54:57.01 ID:bJBuR8bG0
175

--メインストリート、軽食屋--

ツインテ「え!?」

アッシュ「なに!?それはどれだ!?」

ぱっち『あのペンダントっぱ』

ツインテ「西の王国の店主さんにもらったやつです……で、でも一度も姿を拝見したこと無いんですが」

ぱっち『んー、寝てるか死んでるかしてるかと』

ツインテ「し、死!?」

アッシュ「ふざけた妖精だな。叩き起こすか」

ぱっち『やめたほうがいいっぱ。誰でも自然に起きたほうが幸せっぱ』

アッシュ「ぬう。しかし役に立たないんじゃ意味が無いぞ」

ツインテ「あはは。まぁいいじゃないですか。ボクは起きてくれる日を気長に待ちます」

アッシュ「……ツインテがいいなら別にいいが」

ぱっち『じゃあ私はあんたにつくっぱ。何につけばいいっぱ?』

アッシュ「そうだな。じゃあマントに頼む」

ぱっちはマントを住みかにした。

ぱっち『くさ!年代物っぱ!!』

360: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:55:32.67 ID:bJBuR8bG0
176

--メインストリート、軽食屋--

??「ねーねー。君達ーこの子見なかったー?」

ツインテ「はい?」

突如隣のテーブルで食事をしていた女性がこちらに歩いてきて、紙を手渡した。

??「いやねー。仲間とここで落ち合う約束だったんだけどさー、キャハハ!!待っても待っても来ないんだよねー」

?「僧侶、笑うところじゃないぞ。うすっ!!」

がたいのいい男がぬっと立ちあがり、僧侶と呼ばれた女性の頭部を掴んだ。

??改め僧侶「キャハハ!女性の頭を簡単に持つなー!!」

?「すまん。で、お前達、こいつを見なかったか?無口なやつなんだが。うすっ!」

ツインテ「……これ砂上船に乗ってた人!!」

ポニテ「あー!あのお姉さんだー!」

361: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:56:32.18 ID:bJBuR8bG0
177

--メインストリート、軽食屋--

僧侶「やっぱりあの船に乗ってたのかー。うーん、ありがとー。あとはこっちでさがしてみるよっ!」

?「手間かけさせたな。情報提供の礼にここの食事代は俺達が持っておく。うすっ!」

ポニテ「まじで!?ありがとー!!」

アッシュ「まった、あんたたちあの女と仲間って言ったな」

僧侶「?言ったよん?それがどうしたのかいー?」

アッシュ「ってことは……勇者の仲間なのか?」

?「やれやれ。シノビの奴はそれを明かさなきゃいけない状況に巻き込まれたのか」

レン「ふつーに出してたけどにゃ」

僧侶「じゃー仕方ないから私達のも見せちゃうぜ!ほら!!」

毎度おなじみ勇者証明書、否、勇者パーティ証明書を提示された。

?「まぁよかろう。減るわけじゃなし」

バッ!!

ツインテ「勇者パーティの、僧侶さんと戦士さんですか……」

362: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:57:07.21 ID:bJBuR8bG0
178

--メインストリート、軽食屋--

ツインテ「なんでバラバラに旅をしているんですか?」

僧侶「それはー。十代目勇者さんがばらばらに探したほうがいいとか言ってー。そんでまおむぐっ」

?改め戦士「おいおい。口軽すぎだろ。そこらへんにしとけ」

僧侶「ぷあっ。へーへー。じゃあ私達だけで行きますかー」

アッシュ「どこ行くんだ?」

僧侶「……私達は正義の味方、勇者パーティだよ?」

ゾクッ

ポニテ「!?」

戦士「絶対的正義を行使するのみよ」

強力なオーラがツインテ達を圧倒した。

ツインテ(す、すごい!!この人達、一人一人が三強クラスかも!!)

ガララン

二人はそうして軽食屋から出ていった。

店員「お、お客さーん!!お代ーー!!」

363: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:57:47.91 ID:bJBuR8bG0
179

--メインストリート--

ツインテ「ふう。お腹も膨れましたし、それでは向かいましょう、南の王国へ」

ポニテ「……」

アッシュ「そうだな。砂上船この前破壊されたせいで更に本数減ったからな。海路という手もあるが……」

レン「でもせっかく東の王国に来たのに、残念だったにゃ」

ツインテ「っ。仕方ありませんよ。あれはボクが貰っていいものじゃありませんでした。それにレンさんが作ってくれたこの腕も、悪くはないですよ?」

ツインテは強がって笑う。

レン「ツインテ……」

ポニテ「……あ、あのさ」

アッシュ「どうした?」

ポニテ「この国を出るならさ、最後にリボンの少女ちゃんにお別れしに行かない、かな?」

アッシュ「……はぁ。あれだけスパっとした別れがいいとか言ってたくせに」

ポニテ「う、うるさいなぁ!気になっちゃうんだから仕方ないじゃん!!それにもう当分会えないんだし」

ツインテ「いいじゃないですかアッシュ君。会いに行きましょうよ」

364: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 00:58:28.22 ID:bJBuR8bG0
180

--メインストリート--

アッシュ「む……。まぁみんなが行くというのなら俺もついていくしかない」

レン「やーいツンデレー」

アッシュ「そうやってキャラを壊そうとするな!!」

ツインテ「じゃあ行きましょう!善は急げです!!」

ポニテ「おーー!!」

レン「にゃー」

ツインテ「……ん?」

アッシュ「どうした?」

ツインテがごそごそとスカートをいじっている。

ツインテ「いや、ちょっと気になることが、ありまして」

チラッ

パン  に撃ち落とされるアッシュ。

アッシュ「ぶっ!!」

ツインテ「あ、あれ?あれあれ!?嘘!!本当に!?」

ツインテは遂にスカートをめくりあげて確認し始めた。

ポニテ「つ、ツインテちゃん何をし始めているの!? 女ーー!!」

ツインテ(ど、どうしよう……●●●●が……無い!?)

ぱっち『にやり』

365: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/04/26(火) 01:00:32.72 ID:bJBuR8bG0
これからは週三ペースでいけたらなぁと考えています。まぁ色々なものと折り合いをつけてやってきますのでご容赦ください。
それでは本日はここで終わりにしたいと思います。
疑問、質問等がございましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m


        次回予告

南の方角に、黒い肌を持つ部族の村があった。
その部族には、代々先祖から受け継がれてきた言い伝えがある。


霊山に住む魔物の王に槍を突き立てし者、勇者となって世界を平和に導く


三代目勇者「……」

これは三つめの物語。

   次回、とある部族の勇者試練。

382: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:42:42.86 ID:jnVG2jCk0
181

--メインストリート--

アッシュ「一体どうしたツインテ。何か落としたのか?」

ツインテ(●●●●て落としたりするものなのかな……)

ポニテ「女の子にしかわからない悩みなら私が聞くよ?」

ツインテ(男オンリーの悩みです。いや男に聞いてもダメな気がするけど)

レン「ツインテ、どうしたの?」

ツインテ「な、何を言ってるかわからないと思いますが……その、●●●●が……無いんです」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

アッシュ「ツインテ落ち着け!それは元からだ!!」

ツインテ「元からじゃないですよ!!」

はぁ、はぁと息を荒立てるツインテ。

383: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:43:27.40 ID:jnVG2jCk0
182

--メインストリート--

ポニテ「こいつぁー、何を言ってるのかさっぱりだじぇ」

ツインテ「だ、たから●●●●が!●●●●がー!」

アッシュ「やめろ!連呼するな!……反応してしまうだろ」

アッシュは申し訳なさそうな顔で頬を赤く染める。

ツインテ「はっ!!だ、だめ……●●●●が無いと……ボク、ボク!!」

ポニテ「ツインテちゃん?」

頭を抱え込んでしゃがむツインテ。

ツインテ「に、逃げて下さい!奴が目覚める!」

レン「レン、ちゅーにでもツインテすき」

バツン

ツインテのリボンが……右側だけ弾けた。

384: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:44:40.83 ID:jnVG2jCk0
183

--メインストリート--

バサッ

アッシュ「!?リボンが……ということは」

ポニテ「サイドテール……モード?」

ツインテ「ん~……いっえーーい!!久々の外だ~!きもちいー!」

サイドテールのツインテは背伸びをする。なんか言っててこんがらがる。

ツインテ「やっほー、初めまして皆さん、私ツインテでーす」

ぶいっとばかりにダブルピース。

ポニテ「一人称が私だっ!」

アッシュ「なんか随分と女の子っぽいツインテだな。いや普段も女の子なんだけど。言っててこんがらがる」

ツインテ「あー。それはあれでしょ。君達が見てるのは中性のツインテでしょ。私は女性のツインテだからっ」

レン「はきはきしたツインテもすき」

385: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:45:36.92 ID:jnVG2jCk0
184

--メインストリート--

アッシュ「……とりあえず、なんでお前が出てくることになった?」

ツインテ「えー?●●●●が無くなったから」

自分の頬を人差し指で押しながら首をかしげるツインテ。

アッシュ(駄目だ何言ってるかわからん)

ツインテ「ふーん……。ぴっち、ぱっち。ちょっと出てきてよ」

ツインテは仲間の顔を一通り見た後、妖精を呼び出した。

ぴっち『は、はいですっぴ』

ぱっち『なんのようっぱ?』

ツインテ「これさー。あんたたちがやったんでしょ?」

ぱっち『!!』

ぴっち『べ、別にそ、そそそんなことは!!』

アッシュ「なんだ、こいつらまたなにかしでかしたのか!?」

386: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:46:19.87 ID:jnVG2jCk0
185

--メインストリート--

あわあわと震えだしたぴっちは、涙目になりながら白状する。

ぴっち『僕はついてるからこそ良いんじゃないか!って力説したんだっぴ!!こんなに可愛い子が女の子なわけがない!って!!』

ぱっち『でも中にはついてないほうがいい、っていう人もいるんだっぱもん』

ぴっち『それを言ったら普通はついてちゃ駄目だっぴ。ついてないほうが少数派みたいな言い方しちゃだめだっぴ。そこんところはきちんとしとかないとっぴ』

アッシュ「こいつらは何の話をしてるんだ」

ぱっち『だから彼らの要望を叶えるために取ってみたんだっぱ!!』

ツインテ「ふぅん。なるほどねー……」

ツインテは妖精達に近づいた。

ぴっち『ぴ!?ご、ごめんなさいっぴ!!』

ぱっち『す、すぐ元通りにするから許してっぱ!!』

ビシッ!

ツインテ「グッジョ!」

ツインテは親指を立てた。

387: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:47:35.79 ID:jnVG2jCk0
186

--メインストリート--

ツインテ「それはそれはなんて素敵なことをしてくれたのかしらあなた達!お礼にちゅーしちゃおっかなー」

レン「!!レンも!」

烈火炎装のポーズで飛びつくレン。

アッシュ「やっぱ見た目は一緒なのに変わるなぁ……」

ツインテ「うーん。あの子ったら身なりにも力入れて無いんだねぇ。スカート長いなぁ」

ポニテ「!!だよね!せっかくの美脚なのに隠しまくりでもったないよね!私たちも常々そう思っていたんだよ!!」

ツインテ「ねぇアッシュ君、ナイフ貸して?」

アッシュ「ん?……あぁいいが何に使うんだ」

ビィィィ

ツインテはアッシュから受け取ったナイフでスカートを切った。

388: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:48:12.95 ID:jnVG2jCk0
187

--メインストリート--

ツインテ「うんっ、このくらいかなっ?」

ツインテは短くなったスカートでヒラリと回転してみる。

アッシュ「ぬあ!?見えるようで見えない超絶妙なミニだとぉ!?……ぶ!!……ふ、ふともも」

レン「アッシュ最近血出しすぎ。体の色素が全体的に灰色っぽくなってる。」

ポニテ「つ、ツインテちゃん、恐るべき女子力だぜ……スカート短くしただけでこうも変わるだなんて!!」

ツインテ「よしじゃあいこっかっ」

アッシュ「ぬ?どこにだ?」

ツインテ「あれ?誰かに会いに行くんじゃ無かったっけ?」

ポニテ「あぁ?……あーそうだったそうだった。そういやそんなこと言ってたね」

レン「……大事なことじゃなかったのかにゃ」

アッシュ(ツインテール時がおとなしくて、ストレート時が暴君で、サイドテール時が明るい感じ……なのか?)

389: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:48:50.45 ID:jnVG2jCk0
188

--東の王国、村--

ポニテ「あれー?この町ってこんなに人気が無かったっけ?」

アッシュ「む。確かにそうだな。まだ昼なのに働いてる人がいないとは」

レン「……お昼時でもないし、休憩中?」

ツインテ「うーん。なんか変な臭いがするなー……」

ポニテ「リボンちゃん!遊びに来たよー!!」

リボンの少女「もきゅ?」

リボンの少女が家の奥から姿を現した。

ポニテ「あー久しぶりー!!」

ポニテは駆け寄るとフライング抱きつき。

リボンの少女「もきゅっ……」

アッシュ「全く。2日やそこらで久しぶりもないだろうに」

レン「ポニテの戯れはつらい。リボン嫌がってる」

390: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:49:22.82 ID:jnVG2jCk0
189

--東の王国、村--

ツインテ「……家の中からもしてる……?」

ツインテは家の中を嗅ぎまわる。

スッ

ポニテ達の騒ぎを聞き付けてか、農家のおじさんも部屋のドアを開けて出てきた。

農家のおじさん「もきゅー?」

ツインテ「……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

農家のおじさん「もきゅ?」

アッシュ「いやもきゅじゃなくてだな……」

ポニテ「いい歳したオッサンがもきゅとか……ないわー」

ツインテ「……」

391: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:49:54.62 ID:jnVG2jCk0
190

--東の王国、村--

農家のおばさん「もきゅっきゅ?」

そこにおばさんも加わった。

レン「全員に口調が移っちゃってるみたいにゃ」

リボンの少女「もきゅ」

農家のおじさん「もっきゅもっきゅ」

農家のおばさん「もきゅー」

アッシュ「はぁ、わかったからアンタらはもうやめろ、話にならないだろが……つかウゼー」

レン「……きしょ」

ツインテ「ねぇポニテちゃん、その子から離れよ?」

ポニテ「え?なんで?」

ツインテ「いいから。ほらこっち」

ちぇー、と言いながらポニテはしぶしぶ離れる。

392: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:50:32.02 ID:jnVG2jCk0
191

--東の王国、村--

ツインテ「アッシュ君、私はあまりわからないから聞くけど、この女の子って元々こんな喋り方なの?」

アッシュ(わからない?ツインテの記憶を全部引き継ぐわけじゃないのか?)「元々、というか最初は普通に喋ってたさ。ただ事故に巻き込まれて精神的ショックを受けた……そのせいで飼ってたペットの喋り方を真似するようになっちまった」

ツインテ「……ペット」

リボンの少女「もきゅ……」

ツインテは少女を観察している。

ポニテ「ツインテちゃん?」

ツインテ「ペットって動物……じゃあないよね」

アッシュ「恐らくモンスターだ。知ったふうな口調で図鑑説明しちまったが、正直見たことのない種類だった」

ツインテ「……」

ずる

ツインテは魔力を出して周囲を覆い始める。

ポニテ「!!ツインテちゃん何してるの!?」

393: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:50:58.10 ID:jnVG2jCk0
192

--東の王国、村--

ツインテ「アッシュ君にしては軽率だね、これからはもっと透視眼を多様するべきなんじゃない?」

アッシュ「……!まさか」

アッシュは透視眼で少女達を見た。その眼に映ったものは、

もこもこ「もきゅー?」

みちみちみち

アッシュ「寄生型モンスター……だと……」

レン「!?そんな……」

ツインテ「どんな手段で寄生してくるかわからないよ、みんな気を付けて!」

ポニテ「な、何言ってるのみんな……う、嘘だ!そんなのって嘘だ!」

ポニテは少女とツインテの顔を交互に見る。

ポニテ「だって、そんな……」

394: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:51:43.47 ID:jnVG2jCk0
193

--東の王国、村--

ツインテ「……多分死の危険に直面したことで本能的に寄生したんだと思うの。生きてた少女の体を……いや、もしかしたら死体に寄生しているのかも」

レン「……腐敗臭はしてないにゃ。人の臭いとはちょっと違うけれど」

農家のおじさん「もきゅもきゅ」

ツインテ「そしてこれは繁殖なのかな……2日やそこらで2体も増えてる。まったくもってよろしくないスピードだよね」

ぞろぞろ

近所の子供「もきゅ」

たれ眼なお姉さん「もきゅん」

家の中に入ってくる村人達。

アッシュ「!?他にもいたのか!!」

ツインテ「身なりが綺麗というのもまずいよ。確実に人の文化を理解している。喋りだしたら見分けるのも困難だ」

ツインテは触 を展開する。

ポニテ「ま、待ってツインテちゃん!!」

395: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:52:17.69 ID:jnVG2jCk0
194

--東の王国、村--

ポニテはリボンの前に立ち、両手を広げる。

ポニテ「な、何言ってるのかわからないよ!リボンちゃんにそんなの向けないでよ!」

アッシュ「ポニテ、その娘はもこもこだ。あのもこもこが人間の皮を被ってるだけだ。しかも殺して……な」

シュピィン

アッシュもナイフを抜く。

ツインテ「ポニテちゃんこっちに来て。どんな手段で攻撃してくるかわからないんだし」

ポニテ「ち、違う……リボンちゃんはそんなことしない……」

リボンの少女「もきゅー……?」

うつむいたポニテに近づくリボンの少女。

ツインテ「!!」

アッシュ「大丈夫だ。この距離ならあいつが何かする前に切り付けられる」

アッシュは乗り出したツインテを制し、二人の行動を見守っている。

396: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:52:57.85 ID:jnVG2jCk0
195

--東の王国、村--

ツインテ「ここにいる人達はやられちゃってるのに?随分と悠長だと思うよ」

アッシュ「それでも確証が欲しい。人を攻撃する瞬間を確認したい」

ツインテ「……甘いんだか冷酷なんだか」

ポニテ「ね?リボンちゃん!リボンちゃんは人を襲わないよね!?ね!?」

少女に向き合って話し掛けるポニテ。

リボンの少女「もきゅ」

ポニテ「ほら!!リボンちゃんはそんなことしないって!!」

アッシュ(……死体を操って生きるタイプだとしても、人からしたらそれは人を襲っているようにしか見えないだろうが。ここを離れたら警備隊に連絡をしよう)

レン「ポニテ……」

アッシュ(なぜだか知らんがポニテはあいつに相当入れ込んでる。……出来るなら目の前で殺したくない)

リボンの少女「……もきゅ」

397: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:53:56.78 ID:jnVG2jCk0
196

--東の王国、村--

ポニテ「だ、大体おかしいんだよ!リボンちゃんがモンスターなわけないよ!リボンちゃんはあの砂漠で私達以外に生存した唯一の生存者なんだから!」

リボンの少女「もぉきゅう」

ツインテ「!!ポニテちゃん!!」

ぎちぎちぎち

ポニテの後ろで少女の顔が裂ける。少女の頭部は四つに分かれ、まるてバナナの皮のように剥けていく。

ポニテ「だからナイフとかしまってよ!お願いだから!」

アッシュ「ばか!後ろだ!!」

リボンの少女改めもこもこ「もきゅ?」

ポニテ「リボン……ちゃん……?」

振り向いたポニテが見た物……。

アッシュ「くそ!ぐっ!?」

がしっ

農家のおじさん「もきゅう」

アッシュの腕をおじさんが掴んだ。

398: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:54:58.79 ID:jnVG2jCk0
197

--東の王国、村--

アッシュ「づ!?離せ!!」

もこもこ「もぉきゅうヴヴ」

もこもこは裂け目の中心にある赤い口を広げた。

レン「!!ポニテ!!」

ポニテ「そんな……」

もこもこの花弁がポニテに迫った。

ドガァァァン!!

アッシュ「!?」

レン「!!」

ポニテに食らい付こうとしたもこもこは弾き飛ばされ家の壁を突き破る。

ポニテ「……ツインテちゃん?」

ツインテ「……」

ひゅんひゅん、びしっ!

399: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:55:28.00 ID:jnVG2jCk0
198

--東の王国、村--

ツインテは触 を束ね、形を変形させ、根元で多数に分かれた鞭を作り上げた。

アッシュ「ノーマルは拳、ロングはドリル、サイドポニーは……鞭?」

ツインテ「ポニテちゃんのばかぁぁ!!」

ひゅひゅん

ポニテ「!?」

ツインテが振るった鞭はポニテを打ち据える。

ドガガガ!

ポニテ「きゃあああ!!あぐ!」

ポニテは生き耐えて、地に伏した。

アッシュ「!!あの硬いポニテを一撃で!?」

レン「一撃では無いけれど、すごいにゃ……」

ツインテ「アッシュ君、ポニテちゃんを抱えて!」

アッシュ「お、おう」

アッシュはさりげなくおじさんを切り捨てポニテを担ぎ上げた。

400: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:56:36.98 ID:jnVG2jCk0
199

--東の王国、村--

ツインテ「……逃げよう。私達じゃ相手に出来ない」

アッシュ「確かにお荷物込みじゃあちと厳しいな」

ツインテ「……そんなレベルじゃないと思うよ」

もこもこ「もきゅ」

もこもこは壁の穴から這い戻って来た。

アッシュ「!?ポニテを一撃で倒した攻撃を食らって!?」

ツインテ「吹き飛ばすための攻撃と打ち据えるための攻撃じゃダメージは変わってくるからね。……でも、結構本気で叩いたんだけどなぁ……」

ツインテは少し悔しそうな表情を見せる。

農家のおじさん「もきゅー」

農家のおばさん「もきゅー」

レン「……アッシュ、パーティ全体に移動速度上昇をかけて!」

401: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/06(金) 22:57:20.31 ID:jnVG2jCk0
200

--東の王国、村--

ザザザザ!!

アッシュ「はっ!はっ!はっ!」

レン「にゃっ!にゃっ!にゃっ!」

ツインテ「……っ!」

高速で村の中を駆けるツインテ達。

アッシュ「ば、ばかな!!こいつ……」

農家のおばさん「もきゅー」

ガザザザザ!

アッシュ「追い付いてきてやがる!」

ツインテ(他にも何体か後ろからついてきている。全部来てないのは必要無いと判断したから?それとも能力に差があるの?……いずれにしても、野放しにはしておけない!)


      酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった
              第三部
         あああああああああああああ(仮)





      酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった
              第三部
         




      酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった
              第三部
         もっきゅー。もきゅきゅ?もきゅ!

411: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:33:18.71 ID:uRJ8wUzN0
201

--東の王国、村--

レン「錬金ツール!!」

レンは走りながら赤い石を取り出した。

アッシュ「あ、おい!」

レン「錬金、槍!!」

ばしぃん!

レンは槍を作ると、おばさんに向かって行った。

農家のおばさん「もきゅー」

ガバッ!

おばさんの顔も分かれ、中の口が大きく開く。

ガギィィン。

レン「!!はじかれた!」

413: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:34:01.34 ID:uRJ8wUzN0
202

--東の王国、村--

農家のおばさん改めもこもこ「もぎゅぁあ」

ひゅる

もこもこの口がレンを捉えようとしたその時、レンの腹部を触 が巻き付いた。

ぎゅん!

ツインテ「おっと。大丈夫?レンちゃん」

ツインテはレンを引き寄せ抱き抱えるとそのまま走る。

レン「あ、ありがとにゃ」

ツインテ「だめだよ無策で飛び込んじゃ。敵の力もろくにわからないんだから」

レン「う、うにゃ」

もこもこ「もきゅもきゅ」

もこもこは尚もツインテ達を追尾する。

ツインテ(足止めしないと追い付かれる!)

アッシュ「ツインテ、ポニテを頼む!」

アッシュはポニテを投げてよこす。それをツインテは触 で受けとめた。

ツインテ「アッシュくん!」

414: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:34:46.23 ID:uRJ8wUzN0
203

--東の王国、村--

もこもこ「もきゅーもきゅーうぅぅ!」

もこもこはアッシュに狙いを定め方向を変える。

ガザザザザ!!

もこもこが口を突き出した瞬間、

アッシュ「複合スキル、毒沼!!」

ドジュウ!!

もこもこ「!?」

もこもこは目の前に出現した毒の落し穴にブレーキをかけることなく飛び込んだ。

じゅわわわ

ツインテ「やるぅ」

アッシュ「今のうちに逃げるぞ」

ザザザザ

415: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:35:36.70 ID:uRJ8wUzN0
204

--大学病院--

大豚亜人「ぶひゅー、ぶひゅー……」

僧侶「年貢の納めどきー。きゃはは!」

戦士「うすっ!悪は滅びる」

床にはナース達が無惨な姿で転がっている。戦闘ではなく虐殺の類がここで行われたのだろうか。

大豚亜人「そ、そうぶひか。お前達だったんぶひね!?おれっちの美術館から魔王の骨を奪った悪党は!?」

僧侶「えー?今のどこからそんな結論に?」

大豚亜人「誰よりも税金払ってるおれっちを敵に回そうだなんて考える奴はこの国にはいないぶひ!昨日はおれっちの美術館、今日はおれっちの大学病院。立て続けに狙われるなんてことがあるとしたら、よそもんの同一人物に間違いないんだぶひ!!」

僧侶「……一理あるかな?アルカナ」

戦士「うすっ。なかなかどうして。ふんぞりがえって悪道楽に金を注ぎ込んでいるだけのバカかと思っていたのだが」

大豚亜人「ちょ、調子にのるなぶひ!おれっちの根は既にこの東の王国の奥深くにまで伸びているぶひ!おれっちに手を出すということはこの国と敵対するということぶひよ!?」

僧侶「東の王国乗っ取り計画のこと?きゃはは!」

戦士「保護した亜人に、まさか裏から支配されかけているとは……先生も浮かばれないな」

大豚亜人「!?お前先生を知ってるぶひか!?」

416: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:36:35.22 ID:uRJ8wUzN0
205

--大学病院--

戦士は大豚亜人の首を掴み持ち上げた。

僧侶「恩をあだで返すなんてくそみたいな種族だねっ!」

戦士「あぁ。万死に値する」

大豚亜人「ぶひゅっ、ぶひゅる!お、おれっちを殺そうとしたところでむだぶひよ!この大学病院の医者の技術力なら簡単に蘇生……を」

大豚亜人は僧侶の首にかかっているロザリオを見た。

大豚亜人「短めの十字に、長めの×の米型ロザリオ……お前……」

僧侶「きゃはは!ご存知~?じゃあこれもわかるかしら!」

僧侶の両手に魔力が集められる。

大豚亜人「や、やめろ、おれっちが悪かったぶひ!もうしないから!手をひくぶひから!!」

僧侶「スキル、蘇生不能攻撃~!きゃはは!」

グジャ

417: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:37:35.07 ID:uRJ8wUzN0
206

--大学病院--

医者「……終わりました?」

戦士「おやクライアント。こんなとこに来てはまずいのでは?」

僧侶「きゃはは!そうだよ。あなたも同罪として裁かれちゃうかもよ?」

私達に。とぺろりと舌を出す僧侶。

医者「……それならそれでいいんですよ」

医者はしゃがみこんで大豚亜人の目を閉じさせた。

僧侶「あれあれ?優しいんだー。きゃはは!」

医者「……患者は平等に、死者は平等に」

戦士「……」

医者「ありがとうございました。私一人の力ではどうにもできなかったもので」

戦士「気にしないでもらいたい。我々の目的は悪の駆逐なのだから」

僧侶「キャハハ!まじ勇者さんの命令いみふー!そうそう!情報の提供、感謝するよきゃはは!」

418: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:38:01.77 ID:uRJ8wUzN0
207

--大学病院--

医者「……私は殺さないのですか?彼らに加担していたんですよ?」

戦士「無理やり力で従わさせられていた者まで範囲を広げたら、我々は眠る暇も無くなってしまう。うすっ!」

医者「……」

僧侶「きゃはは!それに貴方達は利用価値もあるしね!これからも頑張って仕事に励むよーにっ」

戦士「……特にこれからが本当の意味で大変になるだろう」

医者「亜人保護団体の幹部の一人がいなくなったわけですからね」

僧侶「彼が関与していたところは大きいからね。亜人保護団体は解体に向かうだろね!きゃはは!」

戦士「この国の亜人がどうなるかは全て貴方次第だ。貴方には責任がある。良かれ悪かれ、この世界のバランスを崩したのだから」

医者「……」

419: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:38:30.82 ID:uRJ8wUzN0
208

--東の王国、村--

村のじいさん「もひゅもひゅもひゅ」

アッシュ「入れ歯ねーのに無理すんなじーさん!」

ツインテ「はっ、はっ……二体おいついてきた!」

ガザザザ!

レン「……!」

レンは錬金ツールを使い、ゴーレムを作り上げる。

ツインテ「!」

レン「いけ!ゴーレム」

ゴーレム「ごぉぉ!」

ゴーレムは勢いよく飛び出すとじいさんの顔面をけたぐった。

どご

村のじいさん「もひゅ」

蹴られたことにより首があらぬ方向に曲がってしまった。

420: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:39:26.04 ID:uRJ8wUzN0
209

--東の王国、村--

ツインテ「うあ、衝撃映像」

しかし、

村のじいさん「もひゅ」

ぐぱぁっ

じいさんの顔が開く。
そしてゴーレムの足を銜え込んだ。

ずじゅる

ゴーレム「ご」

村のばあさん「もひゅひゅー」

遅れてやってきたばあ様もゴーレムに取りついた。

じゅるる

ゴーレム「ご、ごぉぉ!」

二体のもこもこに組し抱かれたゴーレムは抵抗むなしく捕食され始めた。

421: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:39:53.01 ID:uRJ8wUzN0
210

--東の王国、村--

ずぞぞ

アッシュ「!あいつらあんなものまで食うのか!?」

ツインテ「今のうちに逃げよう!まず村を出ないと!!」

ツインテ達は再び走りだしたのもつかの間、

村の少年「もっきゅー」

大事な頭部をどこに置いてきたのか。首無しの少年が四足歩行で迫る。

アッシュ「!!どうやって喋ってやがる!」

ツインテ「想像以上にまずいかも!」

レン「錬成、ブーメラン!!」

レンはブーメランを少年目がけて投げる。

ざきゅ

村の少年「もきゅ!」

ブーメランの軌道が読めなかったのか、それとも視覚が無いのか、それはあっさりと命中し少年の左腕を切断した。

レン「……っ」

422: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:40:33.44 ID:uRJ8wUzN0
211

--東の王国、村--

ツインテ「レンちゃんナイス!!」

村の少年はバランスを崩し、地面に横たわっている。

アッシュ「全体移動速度上昇、レベル2!!」

アッシュは継続のためスキルを上掛けさせた。

ザザザザ

ツインテ「ここを抜けたら……!?」

谷のような道。隆起した両側に、もこもこが二体ずつ構えていた。

アッシュ「く、一気に駆け抜けろ!!」

ツインテ達が来るのを待ち構えていたもこもこ達は、ツインテ達が接近してくるのを見計らい、自らの片腕を引きちぎる。

ツインテ「!?」

アッシュ「何をやってやがる……?」

423: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:41:18.91 ID:uRJ8wUzN0
212

--東の王国、村--

レン「……!」

もこもこ達は自らの腕を曲げ、まるでブーメランのような形にしたてあげる。

ツインテ「まさか」

ブン

もこもこの投げた腕はブーメランの軌道を描くことはなく、アッシュの足元の地面に命中した。

ドバッ!!

アッシュ「ぐ!」

もこもこ「もきゅ?」

ツインテ(あんなのでブーメランの代わりになるわけないし、狙いも雑……でも)

アッシュ(あれは……レンの真似だったのか?)

レン(真似……だとしたらなぜこいつらが?ブーメランを見せた個体とは違うはずなのに)

424: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:42:43.36 ID:uRJ8wUzN0
213

--東の王国、村--

ブブブン!!

残りの三体が腕を投げてくる。

ツインテ「みんな私の後ろに!!」

ツインテは触 を作り出し、腕を片っ端から弾いていく。

バシバシバシ!!

ツインテ(重い……!)

もこもこ「もきゅ……」

もこもこはツインテの動きをじっと観察していた。

アッシュ「!!やめろツインテ!!それも真似される!」

ツインテ「!!」

アッシュ「ち、あまりやりたくないがやるしかねぇ!!」

アッシュは毒を生成し、ナイフにしみ込ませていく。

425: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:43:18.42 ID:uRJ8wUzN0
214

--東の王国、村--

アッシュ「スキル、飛ぶ斬撃、毒属性風味!!」

どしゅどしゅどしゅどしゅ!!

空中を走る四つの毒の刃がもこもこ達を切り裂いた。

もこもこ「もきゅー!!」

その隙にもこもこ達の間を走り抜けるツインテ達。

ツインテ(あまり……効いてない?)

アッシュ「はぁ、はぁ」

レン「アッシュの色素がぬけてくにゃ。大丈夫かにゃ?」

アッシュ「はっ……余裕だぜ」

ツインテ「きゅ、きゅんっ!」

汗(脂汗)を飛び散らせたイケメンのイイ感じの笑顔。
破壊力は中々のものである。

426: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:44:10.33 ID:uRJ8wUzN0
215

--東の王国、村--

アッシュ「っし、抜けた!!後はこの街道をちょっと行った先に警備隊がいたはずだ!」

ツインテ「あと一踏張り!!」

レン「にゃん!!……!?アッシュ危ない!!」

アッシュ「ぬ?」

アッシュの下に大きな影が出現する。

アッシュ「ち!上か!!」

ひゅるるるる……ドーン!!

砲台のように飛んできたもこもこ達がツインテ達を襲う。

どごーん!

アッシュ「がはっ!!」

避けきれなかったアッシュはポニテを庇おうとするものの、二人揃って吹き飛ばされる。

427: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:44:54.73 ID:uRJ8wUzN0
216

--東の王国、村--

ツインテ「アッシュくん!」

どごーん!

ツインテ「っ!?」

ツインテの近くに落ちたもこもこの衝撃で、ツインテはバランスを崩して倒れこんでしまう。

ドサっ

レン「!!ツインテ!!」

ツインテ「はっ」

ひゅーーーーん

そこにもこもこが落ちてくる。

ツインテ(急いで触 を鞭にして迎え撃たないと。でも、落下速度で威力の上がってるあれを弾けるほどの力を出せるのかな……ってなんでこんなに考えられるのかな)

スローモーションの世界。
思考ばかりが先行し、手を出すよりも先に

ツインテ「あ」

もこもこが目の前に。

ザシュ!

428: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:45:40.63 ID:uRJ8wUzN0
217

--東の王国、村--

ド、ドーン!!

ツインテ「……え?」

ツインテの眼前に迫っていた肉の壁が消えた。

ツインテ「え」

ツインテはきょろきょろと周りを確認すると、地面には二つに分断されたもこもこの肉片がめり込んでいた。

ザリっ

?「やっ」

ツインテの前に立っている影。それは、

?改め辻斬り「怪我は無かったでござるか?」

辻斬りはにこりと微笑んだ。

アッシュ「ぐふ……あ、アイツは……」

レン「この前の男!!」

ツインテ(……誰?)

429: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:47:12.49 ID:uRJ8wUzN0
218

--東の王国、村--

辻斬り「やれやれ。拙者が偶然通りかかってよかったでござるな。あんなのを喰らっていたら体が飛散して集めるのが大変だったに違いないでござるよ」

ツインテ「あ……ど、どうも」

もこもこ「もきゅもきゅきゅー」

辻斬り「なにやら面倒くさそうなモンスターに襲われて大変な目にあってるようでござるな」

辻斬りは刀を持ち替える。

アッシュ「おい!!そいつらに手を出すな……厄介なことになる!!」

辻斬り「おや?この前の少年。そんなにボロボロになって少年らしくもない。はっはっはっ」

アッシュ「うるせい!!」

辻斬り「ふむ……しかし手を出すなとは異なこと。ここで処理せねば少年達を助けることが出来ないし、この先の城下町にも被害が出てしまうかもしれんでござる」

アッシュ「……く」

430: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:49:14.59 ID:uRJ8wUzN0
219

--東の王国、村--

辻斬り「まぁ、仕方無いと割り切るしかないでござる。なんでもかんでも上手くいくわけじゃないでござるよ人生は」

もこもこ「もきゅー!!」

もこもこの攻撃をさらりと交わす辻斬り。

辻斬り「大事の前の小事にござるよ」

ギラン

辻斬りの刀が怪しい光を放つ。

アッシュ「くそ!!そいつらはどのみちろくに攻撃が効かないんだ!!やるにしても一人じゃどうにもできねぇぞ!!」

ドシャッ

もこもこ「もぉきゅぅぅ!!」

ツインテ「!!」

一刀の元に切り捨てられるもこもこ。

辻斬り「ふむ。いい斬り応えよ」

431: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:51:57.11 ID:uRJ8wUzN0
220

--東の王国、村--

ズバシャッ!

もこもこ「ふんもっきゅー!!」

アッシュ「馬鹿な……そうやすやすと……さすがは剣豪と言ったところか」

辻斬り「剣豪?違うでござるよ……あんなのと一緒にしないで欲しいでござる」

ヒュンヒュン

辻斬りは刀を振るい、血を払う。さながらその姿は舞踏のよう。

アッシュ「!!あの剣豪じゃないのか!?それほどまでの剣技を持ちながら……」

辻斬り「嬉しいことを言ってくれるじゃないの。しかし」

ビシッ

辻斬りは刀をアッシュに向けて宣言する。

辻斬り「二度と剣豪がどうとか言わないで欲しいでござる」

普段と大して変わらないその表情。なのにそこには強烈な威圧感があった。

アッシュ「ごく」

辻斬り「さぁて、あとひとーつ」

ひゅんひゅん

もこもこ「も、もきゅ」

辻斬りは最後に残ったもこもこにゆっくりと近づいていく。

辻斬り「お前は解析のためのサンプルになってもらうでござる。だからあまり暴れて無駄な傷をつけてくれるなよ……?」

432: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/09(月) 21:53:24.40 ID:uRJ8wUzN0
ss用の体が欲しい。そしたらあと二個くらい同時にや(ry
それでは本日はここで終わりにしたいと思います。
疑問、質問等がございましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m


         次回予告

彼は魔王の魔王による魔王のための勇者。
彼は彼の仕える魔王のために、今いる魔王を倒す。

そして、

五代目勇者「もし俺が人間に危害を加えるようになったら……俺を頼む」

五代目勇者は自分の従者である二人に願いを託す。

これは五つめの物語。

         次回「半分の人類が天に昇る空」

441: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:16:46.80 ID:SivJYrJo0
221

--東の王国、城下町--

警備兵「……」

アッシュ「俺らが知る限りの情報は以上だ」

警備兵「にわかには信じたくないんだが……こう実物を提示されると信じないわけにはいかないな」

警備兵はもこもこの死体を担ぎあげる。

警備兵「状況はわかった、この件は上に支持を仰ぐことにする。もう遅いから君たちは宿に向かいなさい。あ、それと後で使いの者を送るからどこら辺で宿をとるかだけ教えてもらいたい」

レン「どうするにゃ?」

ツインテ「じゃあここら辺で宿を探してみますっ」

警備兵「そうか……わかった。それじゃあ」

警備兵は足早に去っていく。

442: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:17:16.70 ID:SivJYrJo0
222

--東の王国、城下町--

アッシュ「ううむ。大丈夫だろうか」

ツインテ「きっと大丈夫じゃない?東の王国の兵の質は高いって聞くし」

レン「上は腐ってるけどにゃ……」

ツインテ「あ、道理で静かだと思ってたらポニテちゃん死んだままだったよ、あはは」

アッシュ「わかってて放置してたんかとおもた」

ポニテを下ろしに、ツインテに近づいてくるアッシュ。

ツインテ「あ……そ、そんなこと……ない……よ?」

ツインテはアッシュを上目遣いで見ながら頬を赤くするのだった。

レン「にゃんかピンチ!?」

443: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:17:45.00 ID:SivJYrJo0
223

--東の王国、城下町--

ポニテ「あう……」

ツインテ「ごめんねポニテちゃん、あの状況じゃ意識を飛ばすしかないと思ったの……」

アッシュ「誤る必要はないぞツインテ、あれはポニテに非がある」

レン「アッシュ……」

アッシュ「なんたるざまだポニテ。お前が現実を受け入れ無かったせいで、あわや俺達は全滅する所だった」

ポニテ「!!……」

ツインテ「あ、アッシュ君そこまで言わなくても」

アッシュ「いいやここはしっかり言っておくべきだ」

ポニテ「うぅ……」

アッシュ「言え。何がお前をそうまで執着させた?なんだかんだでいつも冷静なお前らしくもない!」

ポニテ「……っ」

444: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:18:18.31 ID:SivJYrJo0
224

--東の王国、城下町--

ポニテは俯いてしまう。

ツインテ「せ、せめてもう少し経ってからにしたほうがよくないですか……?」

アッシュ「ダメだ」

アッシュはきっぱりと言い切る。

アッシュ「おそらく俺達はもこもこ討伐のために駆り出されるだろう。奴らと戦ったことがあるのは俺達だけだからな。そしてもう一度あんな状況に陥って見ろ。……次はどれだけの被害が出るかわからん」

お前の命だって、とボソリと呟く。

ポニテ「……うぅー」

アッシュ「あの少女に何かを重ねているなら思い違いだ。あれは砂上船で死んだんだ!」

ポニテ「――っ!!」

ポニテは次第に涙を浮かべる。

ポニテ「うっく……ひっく」

アッシュ「泣いてもダメよ!」

445: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:19:50.41 ID:SivJYrJo0
225

--東の王国、城下町--

ツインテ「……アッシュ君、やめよ?」

アッシュ「ツインテ、だが」

ツインテ「私達が行くことになっても、その時だけポニテちゃんをパーティーから外せばいいだけじゃない」

レン「そーだそーだアッシュのxx」

アッシュ「ぬこは黙ってろ!……確かに考えてみるとポニテは死んでたから、奴らとの戦闘経験は無いな」

ツインテ「何かがポニテちゃんに躊躇いを生じさせると言うのなら、その場につれていかなければいい」

ポニテ「あ……う」

ツインテはポニテの手を握る。

ツインテ「いいんだよポニテちゃん、言いたくないことの一つや二つ、誰だって持ってる。私達に言ったからって何か出来るわけじゃないし」

アッシュ「……わかってればサポートのしようはある」

ツインテ「ふふ。なんだかんだ言ってアッシュ君はポニテちゃんのこと気に掛けてるみたい」

ポニテ「!!」

446: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:20:18.31 ID:SivJYrJo0
226

--東の王国、城下町--

アッシュ「ち、違う!お、俺はその、俺に被害が及ぶようなことが起きないようにだな!!」

ツインテ「慌ててるー!可愛いっ」

アッシュ「なぬっ!?」

ツインテ「まぁだからこの話は一先ず置いといて……生還祝いにご飯食べいこう!」

レン「カニ食べいこう」

ツインテはポニテの手を引いた。

ポニテ「あう……ありがとうみんな」

アッシュ「ふん、俺は納得してないからな」

レン「アッシュは素直じゃないにゃ」

アッシュ「素直関係ないし!」

ポニテ「……みんなを危ない目にしてごめんね……」

ポニテはぽろりと涙を溢す。

447: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:20:58.96 ID:SivJYrJo0
227

--東の王国、城下町--

レン「ぶっちゃけると今更にゃ」

アッシュ「確かに今までも危険な目に合わされていたような気がする」

ポニテ「えぇ!?」

ツインテ「あははは」

アッシュ「……ふ」

レン「にゃー」

ポニテ「うー……いぢわる」

すねるポニテ。

ツインテ「ほら早く行きましょ?さっき警備隊の人に、ここら辺で美味しいご飯のところ聞いたんですから」

アッシュ「いつの間に!?」

レン「出来る女にゃ!」

ポニテ「……うん、いっぱい食べる!!」

辻斬り「拙者実はずっと傍にいたでござる」

448: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:21:34.05 ID:SivJYrJo0
228

--東の王国、城下町--

辻斬り「ここら辺で美味しい食べ物と言えばさばを味噌で煮込んだあれにござるよ」

ツインテ「そんな料理があるんですかー?」

上目遣いでニコニコツインテ。

辻斬り「……さっきから言いたかったのでござるが、ツインテ殿ちょっと見ない間にすごくおにゃにょこらしくなってござる。や、何を言ってるのかと思われること請け合いなのだが」

ポニテ「何ていうか、自分の可愛さを理解した上で武器として使い始めた感じだよね!」

アッシュ「はっ。辻斬りめ、何を言うかと思えば……ツインテは前から可愛かっただろうが!!」

ツインテ「じゅんっ」

レン「つ、ツインテ!?」

辻斬り「まぁとにかく行くでござるよ。拙者が案内するでござる」

ツインテ「やったーっ!東の王国の料理楽しみー!」

449: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:22:01.29 ID:SivJYrJo0
229

--東の王国、城下町--

辻斬り(くお!?こ、この何気ない会話の中で、要所要所に組み込んでくる表情や仕草!!……なんという……なんという!!)

ツインテ「?どうかしたんですか?」

耳にかかった髪をかきあげるツインテ。

辻斬り「……おじさん間違いを起こしかねんでござる。誘っていらっしゃる?」

ツインテ「えー?何をですかー?」

辻斬り「いちいち上目遣ぶはっ!!」

可愛さ余って吐血。
狂気の沙汰である。

ツインテ「だって辻斬りさん背が高いんだもん」

辻斬り「げぶはっ!!」

レン「出血死するのは店案内し終わってからにしてくれにゃ」

冷たいぬこにゃん。

辻斬り「けんぷふぁっ!!」

レン「どさくさに紛れてなんか言った!!」

450: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:22:34.25 ID:SivJYrJo0
230

--東の王国、城下町--

ポニテ「ううぅ……ただでさえ無敵に近かったツインテちゃんが前より数段可愛くなっちゃうなんて!ね!アッシュ君!!」

アッシュ「ん……そうか?」

アッシュの反応は思ったよりも淡白だった。

ポニテ「あれ?アッシュ君らしくない反応じゃない?」

レン「確かに。動揺するなりなんなりコロ助なり、この手の質問を受けたらテンションが上がるはずにゃんだけど……」

ポニテとレンは首を傾げる。

アッシュ「……可愛いことに変わりはないが、前のほうが可愛いかった気がする。なぜだかわからんが」

そう言ってアッシュは前を歩くツインテと辻斬りが話しているのを見ていた。

辻斬り「お嬢さん、今夜一緒の部屋に泊まりませんか?」

ツインテ「えー?一緒の部屋で何するんですかー?」

辻斬り「がぶすれいっ!!」

レン「もう吐血なんだかただ叫びたいのかわけがわからないにゃ……あ、わけがわからないよ!」

ポニテ「てかアッシュ君がツインテちゃんのこと可愛い可愛い連呼してる件」

451: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:23:38.83 ID:SivJYrJo0
231

--東の王国、さばの味噌煮屋--

レン「まさかメニューが一つしか無いとは思わなかった」

表の看板に書いてあるメニューを見てレンが呟いた。

辻斬り「それだけ自信がある、ということでござる。まぁ騙されたと思って食ってみるがいいでござる」

ワイルド店主「おう!わけぇ冒険者さん方。ゆっくりしてくんな!うちの飯はうめぇから」

レン「さばしか出せないくせにまずくてたまるかにゃ」

アッシュ「はい、最近レンちゃんがツンツンしてると思います」

奥のテーブルに通されるアッシュ達。

ツインテ「じゃあ、私アッシュ君の隣ー!」

アッシュの隣に座るツインテ。

ポニテ「女の子が自分から横に座ってくれてうれしく無いわけが無い!!男の心理を理解した上での行動だよ!!これで男は『あれ?実はこの娘俺に気があるんじゃ……』って勘違いさせちゃうパターンだよ!!」

レン「それでその後男がいざ告白してみても『え……ごめんそんなつもりじゃなかったんだよね……』ってやや引き気味な視線で拒絶されるパターンだっ!!」

辻斬り「男の心情は拙者に語らせてくれでござる!!」

452: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:24:06.75 ID:SivJYrJo0
232

--東の王国、さばの味噌煮屋--

ワイルド店主「さぁ食ってくんな!!」

ごたた

テーブルの上に置かれたのはさばの味噌煮と味噌汁と漬物とご飯。

アッシュ「うーむ」

ポニテ「改めて思うんだけどファンタジーに和食は合わないね!」

レン「今更にゃけどね」

辻斬り「はいじゃあ手を合わせて、いただきますでござる」

ツインテ「いただきますでござるっ」

辻斬り「ござるまで言わなくていいでござるよ。はっはっはっ」

ツインテ「えっ」

しくじった、と呟いて下を向くツインテ。

アッシュ「いただきますでござる」

ポニテ「いただきますでござる」

レン「いただきますでごにゃる」

もくもくと食事が開始される。

453: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:24:35.74 ID:SivJYrJo0
233

--東の王国、さばの味噌煮屋--

パクパクムシャムシャズズー

アッシュ「……で、だ」

アッシュは味噌汁を置く。

アッシュ「てめぇはいつまでいやがるんだ!!」

ダンッ

アッシュはテーブルを叩いた。

辻斬り「?拙者のことでござる?」

自分を箸で指して?マークな表情を浮かべる。

アッシュ「お前以外に誰ガイル……ここは俺等仲間だけで食事をとる休息の時間なんだよ。お前がいちゃ休まるものも休まらねぇ」

辻斬り「ふむ……」

辻斬りは箸を茶碗に置く。

454: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:25:07.70 ID:SivJYrJo0
234

--東の王国、さばの味噌煮屋--

辻斬り「……」

アッシュ「……」

辻斬り「え?拙者ってもう仲間じゃなかったでござる?」

アッシュ「何勝手になった気でいるんだよ!!お前なんか仲間じゃない!!」

辻斬り「はっはっはっ。こりゃ失敬。じゃあ……仲間に入れてくれでござる」

よろしく、と辻斬りはアッシュに握手を求める。

アッシュ「入れるかぁ!!」

ポニテ「えー?別に私はいーと思うけどなぁ」

アッシュ「あん!?」

ポニテ「だってアッシュ君前の章で言ってたじゃん、男の仲間が欲しいって。しかも前衛が」

レン「前の章て」

455: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:25:49.88 ID:SivJYrJo0
235

--東の王国、さばの味噌煮屋--

アッシュ「む……」

ポニテ「打たれ強いタイプじゃ無さそうだけどめちゃくちゃ強いし!ぴったりじゃないかな?」

アッシュ「むむ……」

ツインテ「辻斬りさん仲間になるんですかー!?これからよろしくどうぞっ」

辻斬り「はっはっはっ。よろしくでござるよ」

アッシュ「そこ勝手に話決めてんじゃねぇよ!!」

レン「……アッシュ」

アッシュ「なんだ!?」

レン「辻斬りをなかまにできない理由はなに?」

アッシュ「!……それは」

レン「実力は申し分ないにゃ。性格だって悪そうにはおもえない」

456: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:26:30.62 ID:SivJYrJo0
236

--東の王国、さばの味噌煮屋--

辻斬り「ぬこ殿は拙者の味方でござるか!仲間になった暁には毎晩毛繕いをさせてもらうでござるよ」

レン「さわるにゃ汚らわしい」

辻斬り「痛いっ」

アッシュ「……」

ツインテ「アッシュくん?」

アッシュは辻斬りを睨んだまましばらく黙っていた。そして、

アッシュ「お前……なんの目的でこのパーティに入ろうと考える?」

辻斬り「面白そうだからにござる」

きっぱりと言う辻斬り。

アッシュ「……このパーティの旅の目的が魔王討伐にあるとしてもか?」

辻斬り「!!魔王ってあの!?」

アッシュ「あぁ、あの魔王だ。あの魔王を俺達は倒しに行く。命懸けで」

457: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:27:08.87 ID:SivJYrJo0
237

--東の王国、さばの味噌煮屋--

辻斬り「……」

ツインテ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

アッシュ(さぁお前はどんな表情を見せる?素直に信じておじ気付くか?それとも他の大人のように子供だなんだとバカにするのか?)

辻斬り「ほう……なるほどなるほど」

辻斬りはみんなの顔を見渡して幾度か頷いて見せる。

辻斬り「だからこんなにも才能に溢れた者達ばかりなのでござるかぁ」

アッシュ「!?」

辻斬りは合点がいったとばかりににやりと笑った。

458: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:28:27.85 ID:SivJYrJo0
238

--東の王国、さばの味噌煮屋--

辻斬り「はぁ……羨ましいでござるよ。才能があり、未来があり、人生を費やす価値のある目標がある……さらに美男美女揃い……ワオッ!!羨ましすぎる!!」

そう言って辻斬りはとても悔しそうな顔をする。

辻斬り「それじゃあ拙者が入る余地など無いでござるなぁ……」

ツインテ「辻斬り……さん?」

辻斬り「ツインテ殿達があと数年間鍛えたなら、それはそれは相当な腕前になるでござろう……。しかしその頃には拙者が老いてしまう。その数年の間、拙者は全盛期を維持し続けることができるのか……?」

辻斬りは顎鬚をじゃりじゃりといじりながら喋っている。

辻斬り「……まことに残念でござる……若さというのは最強の武器でござるなぁ……失ってから初めて気付くでござる」

辻斬りは何やら勝手に納得し始める。

辻斬り「あいわかった。それほどのものを背負っているのなら拙者が入るわけにはいかんでござる。まだ若くて才のあるものを五人目に迎い入れるがよろしかろう!」

辻斬りはまたにこりと笑う。

459: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:30:50.76 ID:SivJYrJo0
239

--東の王国、さばの味噌煮屋--

レン「ようはレン達が強くなる前におじさんになっちゃうってことかにゃ」

辻斬り「でござる」

ポニテ「今いくつなの?」

辻斬り「28」

ツインテ「え!20代前半にしか見えないですけど」

辻斬り「あははは。お世辞が上手いでござるよツインテ殿」

アッシュ「……それにたかが数年。別にお前の腕がそう落ちるとは思わないが」

辻斬り「いやいやまだ若い人にはわからないだけでござる。気付いた時には昔のように無茶できない体になってるんでござるよ……拙者もまだ若い方ではあるが、それでも衰えを感じ始めているでござる」

アッシュ「……」

辻斬り「だから若いツインテ殿達は今の若さを大事に思うといいでござる。今のツインテ殿達にはなんでもできるパワーがあるのでござるよ」

ツインテ「辻斬りさん……」

辻斬り「最近●●●●が昔のような固さを維持できんのでござる」

アッシュ「何言ってんだオマエ!!」

460: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/12(木) 22:32:19.07 ID:SivJYrJo0
240

--東の王国、さばの味噌煮屋--

ポニテ「辻斬りにはそのパワーがないの?」

辻斬り「……無いでござる。思考の柔軟さすら失われていくのがわかるのでござる」

ポニテ「むー……わかんないー」

辻斬り「なんでもそうなんでござるよ。当たり前にあるものの大事さは、失わないとわからないんでござる。失う前から大事なことはわかっている、なんて拙者も思ってたんでござるがね。いやはや実際は想像以上のものを失うのでござる」

アッシュ「30代前半で老いたとか言ってたら、もっと上の層に怒られるぞ」

辻斬り「ははは。違いない」

ポニテ「ふーん。むしゃむしゃ。じゃあわたひ、らいひにいひるよ!ひまを!!」

ポニテはにっこりと笑って宣言する。

アッシュ「……おいポニテお前なにをむしゃむしゃしてやがる」

アッシュは自分の皿からさばの味噌煮が無くなっていることに気が付いた。

ポニテ「むしゃむしゃしてやった。ご飯なら誰のでもよかった」

アッシュ「よかねーよ!!

468: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:14:58.85 ID:cLd277qN0
まにあつた
では とうか いきまふ

469: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:15:31.98 ID:cLd277qN0
241

--旅館、女湯--

かぽーん

ポニテ「はわー」

ツインテ「気持ちいー……私温泉て初めてなんだよねー」

ぱしゃぱしゃとお湯を肩にかけるツインテ。

レン「いつも一緒に入ってるんだけどにゃ」

ポニテ「なんで行くとこ行くとこで温泉湧いてるんだろうね~」

レン「多分誰かの頭が湧いてるんだにゃ」

ポニテ「ほほう……うまいね!」

ポニテはグーサインをレンに向ける。

レン「ふふふ」

ツインテ(いつも入ってるんだ?一緒に。……あの子もちょっとは成長したのかな)

ツインテは口角を少しあげる。

470: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:16:02.66 ID:cLd277qN0
242

--旅館、女湯--

ポニテ「あっ!!」

レン「どうしたにゃ」

ポニテ「ツインテちゃんのあの 部を隠す光的なものが無くなってるよ!!」

レン「!本当だにゃ!……っていつも確認してたのかにゃ?」

ポニテ「うん。目を細めたら見えないかな、とか色々試してたよ!」

レン「何をやってるんにゃ」

ポニテ「というか……」

ポニテはツインテの体を上から下まで舐めるように見る。

ツインテ「な、なに?」

ポニテ「心なしか体つきまで変わったような……●●●●ちょっと大きくなった気がするし」

レン「そういわれれば腰のくびれも前より……」

471: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:16:40.48 ID:cLd277qN0
243

--旅館、女湯--

ツインテ「あはは。やだなぁ前からだよ前から!」

そう言ってツインテはポニテに抱きついた。

バシャ!

ポニテ「あぶ!」

ツインテはそのままポニテに覆いかぶさる。

ツインテ「ふふ……まぁ私も実はちょっと気にしてるんだよね~。ちっ  」

レン「……」

レンは自分の胸を死んだ魚のような眼で確認した。

レン「ちっ  ……」

ツインテ「だから……お互いに  で大きくしようぜっ!今よりさらに高みへ!!」

バシャ!

472: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:17:23.38 ID:cLd277qN0
244

--旅館、女湯--

ポニテ「あわっ!?い、いつもと立場逆だお!!あんっ!」

もにゅり

レン「れれれレンもまぜてっ!」

レンはそんな二人にダイビング。

バッシャーン!!

ツインテ「きゃはは」

ポニテ「あはは」

レン「にゃはは」

ツインテ達の笑い声が響く……。



--旅館、男湯--

アッシュ「……」

辻斬り「ザ・温度差でござる」

男湯でアッシュと辻斬りは何も喋らずに体を洗っている。

473: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:18:24.02 ID:cLd277qN0
245

--旅館、男湯--

アッシュは体を洗いいつつ横目で辻斬りを確認する。
辻斬りは長い髪をトリートメント。完全に仕草が女性のそれ。

アッシュ「くそ……時間ずらせよな」

辻斬り「?拙者に言ったでござる?」

アッシュ「他に誰がいるんだ」

辻斬り「はっはっはっ。何を言うかと思えば。裸の付き合いというものは素晴らしいものなのでござるよ。例え親の仇であろうと、湯船では友達でござる」

アッシュ「ねぇよ」

辻斬り「あるでござる!ちゃんとコーヒー牛乳、一緒にイッキもこなさないと」

アッシュ「親の仇と、んなこと出来るか!」

辻斬り「逆を言えば建物から出たら何をしようがいいでござる」

アッシュ「……極端すぎる」

風呂上がりのコーヒー牛乳を一緒に飲み合った後に殺し合いかよ、とアッシュ。

474: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:18:49.46 ID:cLd277qN0
246

--旅館、男湯--

辻斬り「まぁそれは置いといて。せっかくの温泉なんだから、楽しまな損でござるよ」

アッシュ「む……」

確かに、とアッシュは頷く。

アッシュ(……くそ。こいつといると変だ……角を取られる感じというか)

ちゃぽん

アッシュは口を湯の中にいれてぶくぶくと息を出す。

アッシュ(……そもそもなんで俺は……あぁそうか。俺はこいつにあっさりと負けたのが悔しくて)

辻斬り「ほふぃー……」

辻斬りは気持ちよさそうに身震いしている。

アッシュ(……まだまだ弱い……体も、心も。今のままじゃ、あいつらを守ってやるなんて、とてもじゃないが言えない)

アッシュは拳を握り締める。

475: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:19:30.98 ID:cLd277qN0
247

--旅館、男湯--

アッシュ(今までの旅だって運がよかっただけだ……誰一人かけることなく続けてこれたのは)

アッシュの脳裏にツインテの銅色の義手が甦る。

アッシュ(……ツインテには悪いことをした。とっくのとうにあぁだこうだ言ってる場合じゃない……な)

アッシュは何かを決心した。

辻斬り「あ!」

その時辻斬りは大きな声を出してアッシュを指差す。

アッシュ「?」

辻斬り「これは申し訳ないでござる。まさか口をつけてるとは露知らず」

ざぱ

アッシュ「?何がだ?」

辻斬り「いやその、拙者今おしっこしちゃったので」

アッシュ「ぶばはっ!!」

辻斬り「いやぁ~。まさか●●xxxをするとは……はっはっはっ」

アッシュ「笑えるかクソ野郎!!シネ!!」

476: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:20:01.56 ID:cLd277qN0
248

--旅館、女部屋--

ポニテ「お布団ふかふか~」

ポニテは敷かれていた布団の上で寛いでいる。

ツインテ「うぅ……さすがにちっ  は強く  れると痛い……」

  ではなくつねるに近かったとツインテは呟いた。

レン「レンも!」

ふんす!とばかりに胸を張る。

ツインテ(なぜ自慢気?)

ポニテ「あははー。●●●●なんていっぱいご飯食べればすぐおっきくなるよ!」

ツインテ「普通ならないよ!!」

ツインテはポニテに詰め寄った。

ツインテ「いーいポニテちゃん!!ポニテちゃんみたいな特殊体質でもない限り、普通は真っ先にお腹と頬っぺが膨らんじゃうんだから!!」

ツインテはポニテの頬をもにもにして言った。

477: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:20:55.51 ID:cLd277qN0
249

--旅館、女部屋--

ポニテ「あ、あひゅ。い、いはいよ~……」

ツインテ「うぅ~……いいなぁこの頬っぺた。凄い滑らかなフォルム……」

ポニテ「滑らかじゃないフォルムってあるの?」

ツインテ「お風呂で見たけど、全体的に無駄なお肉が一切ついてない素敵ボディ。それでいてこっちは中々のものをもっている……」

ほにゅん

ポニテ「やだツインテちゃん、くすぐったい」

身を捩らせるポニテ。

ツインテ「……う、うあー!!もうっ!!何この体ー!!卑怯過ぎるじゃんー!!」

ポニテ「な、何言ってるのさ!!ツインテちゃんだって激カワ小悪魔フェイスにしっとりスベスベお肌、アジアンいらずのさらさらヘアーなんかを装備してるくせに!!そっちに比べたら私なんてゴミカスだよ!!」

レン「自虐的過ぎるにゃー」

478: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:21:55.79 ID:cLd277qN0
250

--旅館、女部屋--

ツインテ「わかってない……全っっ然、わかってないよ!!てゆうかポニテちゃんおもいっきり美人さんじゃない!!優劣なんて無いよ、それはもう相手の趣味次第のレベル。髪の毛だっていつも人の見てない所でさり気なく手入れしてるくせに!」

ポニテ「うぐ……な、なんで知ってるの!?……そ、それにツインテちゃんてすごくいい匂いするし!!同じ石鹸使ってるはずなのにどうゆうことなの!?(cvゆっくり)」

ツインテ「そ、それは……わ、脇の臭いなのよ!!」

レン「何か言い出した」

ツインテ「ポニテちゃんこそ、その垂れ流しにしてる素敵な少女臭のせいで、一体私がどれだけム ム したことか!!」

ポニテ「え。ム ム してたの?」

ツインテ「多分。わかんないけど」

レン「てきとーなツインテもすき」

479: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:22:21.54 ID:cLd277qN0
251

--旅館、女部屋--

ポニテ「ツインテちゃんは料理も出来て素敵!」

ツインテ「戦ってるポニテちゃんの姿はさながら戦乙女!」

ポニテ「うなじ萌え!」

ツインテ「腰からお尻にかけてのライン萌え!」

ポニテ「顔小さくて可愛い!」

ツインテ「たまに見える八重歯がたまらない!」

レン「何合戦?」

ツインテとポニテは息を切らしながらお互いの長所を褒め続けている。

ポニテ「はぁ、はぁ、はぁ……絶っ対ツインテちゃんの方が可愛いもん」

ツインテ「ポニテちゃんだって超美少女なくせに……」

レン「以上、隣の芝は青かった。からお送りいたしましたにゃ」

480: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:22:54.86 ID:cLd277qN0
252

--旅館、女部屋--

ポニテ「レンちゃんは猫耳可愛い!」

ツインテ「ちっちゃくてにゃーにゃー可愛い!」

レン「なぜ飛び火したし……」



--旅館、男部屋--

アッシュ「あいつら。壁薄いから丸聞こえだっつの」

辻斬り「アッシュ殿は全くどうしてイケメンでござるなぁ」

アッシュ「……男もやるきか……」

辻斬り「うむ。お互いを知り仲良くなるいいチャンスではなかろうか!」

アッシュ「お断わりだ、お前と仲良くする気などない」

辻斬り「いじっぱりでござるなぁ」

ふ、とアッシュの耳に息を吹き掛ける辻斬り。

481: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:23:21.95 ID:cLd277qN0
253

--旅館、男部屋--

アッシュ「ぎゃあ!き、貴様なにして!!」

辻斬り「はっはっはっ。スキンシップでござるよスキンシップ」

辻斬り「しかし困った。男は誉める部分が少ないでござる。イケメンって言っておけばある程度当てはまるし」

アッシュ「そんなこと言ったら可愛いやつには美少女って言っておけば大抵当てはまるだろ。てかやらんでいい、やらんで!」

辻斬り「……む?そういえば男だけの時に必ず発生する、あるイベントを消化してなかったでござるな」

アッシュ「男同士の……イベント?」

辻斬りは浴衣をガバッと脱ぎ捨てた。

アッシュ「!?」

辻斬りの筋肉質な肉体とアレが露わになる。

辻斬り「ち☆ん☆ち☆ん☆見せ合いっこ!!」

アッシュ「するかぁぁぁぁぁ!!」

482: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:23:55.10 ID:cLd277qN0
254

--旅館、女部屋--

辻斬り「ち☆ん☆ち☆ん☆見せ合いっこ!!」

アッシュ「するかぁぁぁぁぁ!!」

ポニテ「!!と、とうとう向こうではベーコンでレタス的な展開が!」

ツインテ「ホ !?ホ なの!?きゃー!!」

ポニテ「違うよBLだよ。ホ 違うから」

ツインテ「……ごめん……なさい」

ポニテは今までに見たこと無いほどの険しい表情を見せた。

レン「にゃー、男同士とかきもちわるいにゃ」

レンは舌を出して首を振る。

ポニテ「……レンちゃんちょっとこっち来なさい」

レン「にゃ、にゃー?」

レンは有無を言わさず別室に連れていかれる。

483: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:24:31.43 ID:cLd277qN0
255

--旅館、男部屋--

辻斬り「さぁ存分に見せ合おうぞアッシュ殿!!男の魂をぉぉぉ!!」

アッシュ「やめろぉぉぉ!!って何で既に」

『つじぎりのかたくなる!』

アッシュ「状態なんだよ!!」

辻斬り「拙者バイでござるし」

アッシュ「」

とんでもないカミングアウトにアッシュのカラーは完全に白一色に。

辻斬り「はっはっはっ。片刃の刀を使いながらも両刀使いという粋な設定にござるぜ」

アッシュ「」

アッシュは言葉がでない。

辻斬り「というわけで」

ズバッ

『つじぎりのいあいぎり。アッシュのゆかたがきりさかれた』

484: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:25:00.76 ID:cLd277qN0
256

--旅館、男部屋--

アッシュ「……っは!な、何をしやがる!」

意識を取り戻したアッシュは斬られた浴衣を手で押さえ、体を隠す。

辻斬り「……なかなか魅力的な格好になったでござるな」

アッシュ「ざけんなぁ!!涎を拭うなぁあ!!なんでだよ!なんで最近俺はこんな扱いなんだぁ!!」

辻斬り「む、そうでござった。一応言っておくべきでござろうか?」

辻斬りは深呼吸をしたのちに、

辻斬り「ここから先はノンケはダメだ。すまない、ホ 以外は帰ってくれないか!」

辻斬りは誰かにそう言った。

辻斬り「よし、それでは始めるでござる」

『つじぎりのあなをほる!』

アッシュ「わ、あわ、アーッ!」

485: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:25:28.59 ID:cLd277qN0
257

--旅館、女部屋--

ツインテ「はぁ、はぁ。やべぇこれ。ずずっ……あ、ポニテちゃん達お帰り!今凄いことになっちゃって……レンちゃんどうしたの?」

レン「……」

レンは魂が抜けたようにふらふらしながら部屋に入ってきた。

ポニテ「レンちゃんにBLの良さをたたき込んであげたの」

レン「受け……責め……」

レンは虚ろな表情で呟いている。

ツインテ「……」

レン「雄同士ー、まーたー、がって」

レンは白眼をむいて何かの歌を歌っている。

ツインテ「……ようこそ、新たな世界へ。ウエルカム トゥ「ザ・ワールド」」

ツインテは直立してレンに向かって敬礼する。

486: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:26:38.82 ID:cLd277qN0
258

--旅館、裏手--

年増仲居「あら?」

外にゴミを出しに行った仲居は、暗がりの中にポツリと立っている幼女を見つける。

幼女「……」

白いワンピースを着たツインテールの幼女は俯いたまま動かない。

年増仲居「あらあら、お嬢ちゃんどうしたのこんなところで!?」

仲居は小走りで近づき、屈んで幼女に目線を合わせた。

幼女「……」

年増仲居(この子お客様の子供かしら?……顔面蒼白……ね。具合が悪いのかしら?)

幼女はしばらく仲居の顔を観察した後、その小さな口を開いた。

幼女「……き」

年増仲居「ん?どうしたの?」

幼女「もきゅ」

487: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:27:32.51 ID:cLd277qN0
259

--旅館、裏手--

突然幼女の口が大きく開かれ、中から長いホース状のものが飛び出した。

年増仲居「!!」

バギッ!

それは閉じていた仲居の口を侵略する。

バギバギっ

ホースは歯を折り進み、喉の奥を貫いた。

年増仲居「ごべっ!!」

仲居は苦しみもがくのだが、凶暴な力に勝てるわけがない。

年増仲居「がばっ、げっ」

仲居はその場に倒れた。

幼女「……」

幼女はホースをしまい、倒れた仲居を覗きこんだ。

幼女「もきゅ」

年増仲居「……………………もきゅ」

488: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/14(土) 23:28:09.65 ID:cLd277qN0
260

--国防隊城下町支部--

選抜兵「……はぁ」

警備兵「以上が今回の件の詳細です。私は非常にまずいと思うんですよ。だから一緒に行ってもらえませんかね?」

選抜兵は前髪をいじりながら答えた。

選抜兵「えー?俺が行くのかよー。やだよー、俺この後美容室予約してあるし」

警備兵「せ、選抜兵さん!そんなこと言ってる場合じゃ!」

選抜兵「最近俺全然家に帰ってないんだぜ?パンツだって三日前の裏返してさらに裏返して穿いてるレベルだぜ?他の奴に頼めよ」

中佐「おい選抜兵。行け」

イスに座って話を聞いていた中佐が口を開く。

中佐「お前レベルじゃないと駄目なんだよ。あーだこーだ言ってないで行け!」

選抜兵「ちっ。わかった……行く。行けばいいのだろ?ふん、公務員は楽なんじゃねぇのかよ。完全にブラック企業だぜ!ギブミー休みー」

警備兵(なんだって自分より若い小娘相手にこんな気苦労を……)

495: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:42:07.14 ID:eUw2aCjt0
261

--旅館、女部屋--

ツインテ「うーん。エネルギー切れてきちゃったかも」

ポニテ「エネルギー?どゆこと?」

ツインテ「まぁ例えなんだけど、前面に出るにはエネルギーが必要なんだよね。で、キャラによっていられる時間が変わってくるのよ」

ポニテ「ふ、ふむ?」

レン「ふむ」

ツインテ「で、私はもうそろそろ時間が来ちゃうんだけど……ぴっちにぱっち」

シュイーン

ぴっち『及びですかぴっち』

ぱっち『何のようっぱ?』

ツインテは手招きをして近寄らせ、内緒話をする。

ツインテ「●●●●戻して。妖精の不思議な力で」

ゴニョゴニョ

496: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:42:47.22 ID:eUw2aCjt0
262

--旅館、女部屋--

ぴっち『あ、戻す気になったんっぴね!わかりましたっぴ』

ぱっち『えー、そっちのほうが可愛いっぱ~』

ツインテ「まぁまた出てくるから。じゃあお願いね」

ぴっち『了解っぴ!』

ぱっち『了解っぱ~』

ポニテ「何の話してたの?」

ツインテ「内緒だよっ。さぁ妖精達!やるのだっ!!」

ぴっちとぱっちはツインテの頭の上を旋回し始める。

ぴっち『汝のあるべき姿にー』

ぱっち『戻りたまえー』

ぴっち『yo!!』

ぱっち『say!!』

ポニテ「夏が!?」

497: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:43:17.64 ID:eUw2aCjt0
263

--旅館、女部屋--

シュイシュイシュイーン

ツインテに光の粉のようなものが降り注ぎ、

ツインテ「……ん、んう?あ、あれ?」

ツインテが目を開いた。

ぴっち『ふぅ、なんとか成功のようだっぴ』

ぱっち『確率で言えばフィフティフィフティだったっぱ』

ポニテ「まじで!?し、失敗してたらどうなってたの!?」

ぴっち『あ、いや、その……』

ぱっち『んーと、ツインテしゃんの全ての人格が交ざり合って、人格同士の生存権をかけた争いが勃発。そのあと全部の人格が溶け合って自我が無くなっちゃう……感じっぱ』

レン「ひでぇ!!りすくをまえもってせつめいしろにゃ!!」

ツインテ「??……何か……あったんですか?」


--旅館、男部屋--

辻斬り「……力抜いて(囁くような感じでcv櫻井)」

498: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:43:45.56 ID:eUw2aCjt0
264

--酒バー--

医者「……はぁ」

通信兵「久しぶりに貴方から呑もう、なんて連絡が来たからおかしいと思いましたよ」

通信兵はビールに口をつける。

通信兵「ん。何度口にしても好きになれそうにない味です。そういえば選抜兵は呼ばなかったのてすか?」

医者「あいつは今日も忙しいらしい。誘ってはみたんだがね」

通信兵「そうですか。現場は忙しそうですね。あー裏方でよかった」

医者「……はー」

通信兵「こら。何ため息をついているんです。女々しい奴ですね」

医者「……はぁー。もう俺やってけるかわかんねぇよ」

医者はテーブルに体を投げ出した。

通信兵「……そういえば貴方のお勤め先はあの大学病院でしたね。同情します」

あの豚は私も嫌いです、と通信兵はグラスを傾ける。

499: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:44:46.00 ID:eUw2aCjt0
265

--酒バー--

医者「まぁそれもそうなんだがなぁ」

通信兵「あぁそれと」

パシィン

通信兵『私のとこに情報が入ってきたんですが、豚さんが行方不明らしいんですよ。貴方……関与してませんよね?』

通信兵は会話の途中でテレパシーに切り替えた。

医者「……」

医者はグラスをしばらく眺めた後、一気に飲み干した。

医者『してるさ』

通信兵『やはり』

医者『なんだ、もうわかってたのか』

500: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:45:16.96 ID:eUw2aCjt0
266

--酒バー--

通信兵『いえ、女の勘って奴ですよ……貴方らしくもない。堪え忍ぶのが貴方の信条じゃなかったのですか?』

医者『耐えなきゃいけないのが俺だけならそうしたさ』

カラン

通信兵「……」

医者『もうこれ以上彼らを犠牲にするのが嫌になった』

通信兵『バカですね。今までなんのために耐えてきたんですか。これじゃ全部パーじゃないですか』

医者「……」

医者はウェイターを呼びつけ酒を頼む。

医者『……なんでだろうな……なんであんなことしたのか』

通信兵『私に聞かないでください』

医者『……今までだってなんとか耐えてきたのにな。……ふむ。あの子達のせいなかもしれない』

通信兵『あの子達?』

501: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:45:56.84 ID:eUw2aCjt0
267

--酒バー--

医者『患者だ。腕を治しに来た子供たちだ。多分外国の子なんだろうな。だからあの区域に入ってしまった』

通信兵『多分外国って、出身国がカルテに書いてあるでしょうが』

医者『あぁそういやそうだった』

通信兵(……随分まいってますねこれは)

医者『患者があんなことを言ってくるとは思わなかったんだよなぁ。やっぱり俺も傲慢だったのかな……。患者を治療して、患者が笑顔になる。だからこれはそこまで悪いことじゃない。って、思ってたのかもな』

通信兵「……」

医者『患者のために。それだけを免罪符にして仕事を続けてきた。でも今回の患者は違ったんだよ。つけた腕が他人のものだと知ると切り離して持ち主に返したらしいんだ。子供がだぜ?』

通信兵『子供のくせに高い医療技術をもってますね』

医者『そこじゃないだろ。俺その姿見て……あぁ、俺こんなんじゃだめじゃないか、って思ったんだ……多分』

通信兵『……はぁ。で、勢い余って豚さんをどうにかしちゃったわけですか』

医者『あぁ。勇者パーティに頼んだ』

通信兵『!?この国に来てるんですか』

502: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:46:28.83 ID:eUw2aCjt0
268

--酒バー--

医者『二人だけだったがな。他は知らない。彼らは悪を滅するのが我らが役目、と言って快く引き受けてくれた』

通信兵『じゃあ殺したんてすね?』

医者『殺した』

はぁ、と通信兵は大きなため息をつく。

通信兵『まさか同期から犯罪者が出ようとは……しかも次世代黄金期と呼ばれるメンバーから』

医者『まぁそこは申し訳ないと……って結構みんなだめじゃね?』

通信兵『そう言えば王子が亜人誘拐して失踪してますね。侍はやりたいことがあるって言ってプラプラしてますし』

医者『まともなのはお前と選抜兵くらいなもんだ』

通信兵『あのレ のどこがまともですか。もう部署の女の子は全員食ったらしいですよ』

医者『最低だなあいつ。何やってんだ』

503: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:47:05.53 ID:eUw2aCjt0
269

--酒バー--

通信兵はビールを飲み干した。

通信兵「ぷはっ」

医者「新しいの頼むか」

通信兵「いえ。明日に差し支えるから私はここで」

医者「……そうか」

通信兵『勘違いしないでください。お役所勤めだからってチクったりしません』

通信兵は立ち上がり、料金をテーブルに置く。

通信兵『貴方は……いつか私達がやろうとしたことを先走ってやっただけなんですし』

医者『……地位を得てからの約束だったのにな。ごめん』

通信兵『……一番辛い道だったね。ごめん医者君』

潰れるのが先じゃなくてよかった、とボソリと呟いて通信兵は去っていく。

医者「……」

カラン

医者「あいつ金足りてねーじゃん」

504: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:47:43.14 ID:eUw2aCjt0
270

--旅館--

若い仲居「あ!やっときた!!年増仲居さん!!どこに行ってたんですか!?帰ってくるの遅いですよ!!」

きゃんきゃん怒る若い仲居。その横を無表情で通る年増仲居と幼女。

ハゲた中居「あれ?その子誰?」

年増仲居「……」

幼女「もきゅ」

二人の仲居は、帰ってきた年増仲居の様子がおかしいことに気付く。

年増仲居「な゛、な゛んでも……ない゛」

若い仲居「……?年増仲居さん?」

片言に近い喋り方。それは喋るのに慣れてないものが試行錯誤で言葉を発しているようで……。

ハゲた中居「おい大丈夫かよ」

幼女「もきゅ」

がぱ

幼女の口が開きハゲた中居に向けてチューブが伸びる。

ハゲた中居「ごげっ!?」

505: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:48:13.66 ID:eUw2aCjt0
271

--旅館--

若い仲居「きゃあああ!?」

若い仲居は悲鳴を上げて地面に尻をつける。

若い仲居「な、な、な!?」

年増仲居「だい゛じょ、じょじょ、うぶ」

年増仲居は若い仲居に近づくて若い仲居の頬に触れる。

若い仲居「はっ!ひっ!ひぃ!」

年増仲居「゛゛」

年増仲居は笑顔で若い仲居の頬を撫でる。

若い仲居「ご、ごめんなさいっ、ゆる、ゆるしてくだっ」

若い仲居は首をふり、涙を流し、見当違いの謝罪を繰り返す。

若い仲居「あ、あぁぁぁ!!たすけっ、た、たすけてっ」

がぱ

年増仲居の口が大きく開かれる。

若い仲居「ひ、ひぃ!?や、やがぼっぇ」

じゅる

506: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:48:43.89 ID:eUw2aCjt0
272

--旅館--

若い仲居『ゼンもこもこにつげる。ワレワレハにんげンの言語を会得シタ』

若い仲居は頭に手を当て何かを念じている。

若い仲居『コレと、殻があれば、ワレワレハ人間社会二とけコメるだろう』

若い仲居の周りにいる仲居もこもこ達は何も無かったように衣服を直している。

女将「ちょっとあんたたち?今叫び声が聞こえたんだけど何かあったのかい?」

ぱたぱたと音を立てて女将さんがやってくる。飛んでないよ。

若い仲居「いえ、ナにも無いです……」

女将「はぁ。何もないのにあんな大声出すんじゃないよ。お客様に迷惑がかかるじゃないか」

若い仲居「ハイ、ごめンナさい」

若い仲居はお辞儀をする。

女将「……ふぅ。じゃあとっとと持ち場に戻っておくれ!さっきからお前達が戻ってこないって、大変なんだよ」

年増仲居はゆっくりと女将の後ろから近づいて、

年増仲居「ごべんん、だざい」

507: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:49:18.03 ID:eUw2aCjt0
273

--旅館、女部屋--

がばっ

ツインテ「っ!……?」

飛び起きたツインテは、何か言い知れぬ不安を感じ取る。

ポニテ「むにゃむにゃ」

レン「すーすー」

ツインテ「この気配……なんだろう。何か嫌な感じがする……」

しかし実際に何かが起きたわけではないのでポニテ達を起こすのは、はばかられる。

ツインテ(……思いすごしだといいけれど)

ぶるっ

ツインテ(う。おしっこしたくなっちゃった)

ツインテは布団を抜け出し、ふすまを開けた。

508: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:49:45.60 ID:eUw2aCjt0
274

--旅館、男子トイレ--

ツインテ「……」

男子トイレの前でツインテは突っ立っていた。

ツインテ「……今、誰もいないよね。じゃあこっち使ってもいいよね」

見えない誰かに許可を取って、ツインテは男子トイレのドアをあける。

がらがらがら

ぱちっ

電気をつけ、中のサンダルに履き替えて小便器へと向かう。

ツインテ「えへへ。ここでするの久しぶりだぁ。いつも毎回座らなくちゃならないから大変だったんだよねー」

そこでツインテは気付く。

ツインテ「……しまった。ボク今女物の 着を穿いてるから……出来ない」

509: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:50:13.51 ID:eUw2aCjt0
275

--旅館、男子トイレ--

ガチャッ

ハゲた中居「……」

ツインテ「あ」

そこに中居が入ってきた。

ツインテ「あ、ち、違うんです!!ボクこんな姿ですけどれっきとした男の子なんです!だからこっちであって」

ハゲた中居「……」

中居は全く意に介さず隣の小便器に立つ。

ツインテ「あ、はは」

ツインテは必死に弁護してたのか恥ずかしくなり下を向く。

ツインテ(そもそもなんでこんなに男として生きることが大変になっちゃったんだろう……髪の毛切ろうかな)

ハゲた中居「……もきゅ」

中居はぐるんと首をツインテの方に突きだして、突然満面の笑みを浮かべる。

510: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:50:46.77 ID:eUw2aCjt0
276

--旅館、男子トイレ--

ツインテ「へ?あ、あの。ど、どうかしましたか?」

ハゲた中居「もきゅ」

中居は口を大きく広げると……

ツインテ「へ?」

中からチューブ状のものが飛び出した。

ツインテ「!?」

ドギュっ!!


--旅館、女部屋--

ポニテ「すかー、すかー」

レン「すー、ぴー」

年増仲居「……」

寝ている二人を確認した年増仲居はにやりと笑って近づいていった。

511: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:51:39.96 ID:eUw2aCjt0
277

--旅館、女部屋--

ポニテ「すかー、すかー」

レン「すー、ぴー」

がさがさ

年増仲居は四足で歩行しポニテに近づいていく。

ポニテ「すかー」

年増仲居「……もきゅ」

年増仲居はポニテの寝顔を前にすると、口を大きく開いた。

ポニテ「炎属性攻撃魔法、レベル2」

年増仲居「!?」

ボウ!!

ポニテが放った火の球は年増仲居の腹部に命中し、そのまま体を焼いた。

年増仲居「もおおきゅううううううう!!」

512: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2011/05/16(月) 21:52:11.66 ID:eUw2aCjt0
278

--旅館、女部屋--

ポニテ「……まさか……こんな所にまで出現するなんて」

年増中居「もおおおぎゅうううううう!!」

ポニテ「あの時は手を出せなかったけど、私はもう迷わない!!私は仲間を守るために闘う!!」

異変に気付いたレンも飛び起きて状況を把握する。

レン「!!」

レンがきょろきょろと辺りを見回すのとポニテがあることに気付いたのはほぼ同じ時間。

ポニテ「ツインテちゃんがいない!?」

レン「ポニテ!!ツインテがいない!!」


--旅館、男子トイレ--

ツインテ「あがっぐぶ!!」

ツインテの喉に太いチューブが差し込まれている。