1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 12:54:53.20 ID:ECFBPSy40
兄「ロボット乗り回すのもマンネリ化してきたぜ……」
(↑リアルロボット系SF)

弟「もう剣も魔法も疲れたよ……元の世界に帰りたい……」
(↑異世界ファンタジー)

姉「業界に長く居すぎて厨二病も醒めちゃった」
(↑裏社会ガンアクション)

妹「誰でもいいからお願い代わって!!」
(↑怪奇ホラーサスペンス)





2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 12:55:59.31 ID:ECFBPSy40
兄「代わって欲しいのはみんな一緒だ。何なら俺代わろうか?」

妹「あの言っとくけどね、ホラーって慣れることがないの」

妹「いつも正体不明なものが色んなパターンで不安を煽ってくるの」

妹「ぞっとする噂や変死体から始まるオカルト、怪現象、時にクリーチャー……」

妹「この前なんて、暗がりの柱の陰から何かがじっと見つめてきて……」

姉「何かいたの?」

妹「ううん……怖くて確かめられなかった……距離もあったし……」

姉「そういうときはスタングレネードよ」

妹「えっ?」

姉「状況にもよるけど、私なら投擲と同時に前転で飛び込むパターンね」

弟「暗い場所なら闇属性の魔物なんじゃない? 光魔法が有効だよ」

兄「いやビームで柱ごと吹っ飛ばしたほうが手っ取り早いだろ」

妹「世界観の垣根が壊れてく!!」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 12:57:24.45 ID:ECFBPSy40
兄「俺は愛機のロボットさえあれば、とりあえずどうにかなると思ってる」

姉「アンタのところ凄いよね。装甲車輌や戦闘機がオモチャなんでしょう」

兄「なんたって宇宙規模の戦争だからな。武力といえば巨大戦艦と搭乗型ロボが常識だ」

兄「こっちのロボット1体でも貸せば、姉貴のとこも少しは楽になるんじゃないの?」

姉「ならない。1体だけじゃ」

姉「むしろそのロボをめぐって工作員が入り乱れたりして、私はかえって忙しくなるかもね」

妹「プロ思考すごい」

弟「僕のとこはロボット欲しいなぁ。ドラゴン相手でも楽に勝てそう」

兄「そんなのも出てくるのか? 何メートルぐらいあるんだ?」

弟「えと……メートルってどれくらいだっけ……」

妹「弟君って、そっちの世界に迷い込んでからどれくらい経つの?」

弟「もうかれこれ1年ぐらい……あ、こっちの1年って何日だったっけ」

姉「メートル法も太陽暦も忘れちゃったんなら、もうあっちに根を下ろした方がいんじゃない」

弟「嫌だよ! 元の世界に帰りたいよ!」

兄「最終回まで頑張れな」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 12:59:37.56 ID:ECFBPSy40
兄「最終回といえば、みんないつになったら主人公降りられるんだ?」

兄「俺はまだ当分先なんだ。ついこの間ロボットが大幅改造されて、機体名も変わったし」

姉「強くなったんなら、その分あんたの戦争も早く終われるんじゃない?」

兄「最初の後継機だぞ。少なく見積もっても、あと折り返し分ぐらいあるもんなんだよ」

弟「どうして?」

兄「だって主人公なんだぜ。乗り換えたばかりでお役ごめんじゃ新型が無駄になるだろ?」

兄「ってことはオモチャもゲームも売れなくなるだろ!?」

妹「何の話!」

弟「僕も、ファンタジーの主人公終わるの、当分あとになりそうだよ」

弟「一応の目的は、異世界で生じている諸悪の根源をやっつけることなんだけど」

弟「まだ正体がつかめてないんだ。『悪の化身』『強大な力を持ってる』なんて聞き飽きたよ」

姉「不便な世界ね。いいこと、正確な情報は命の次に大事なものよ。常に危機感を持ちなさい」

妹「正確な情報、私も欲しい……ホラーのルーツは、未知からくる危険信号だから……」

兄「俺の界隈じゃ、情報なんて端末一個ありゃいくらでも手に入るけどな」

弟「タンマツ? 僕の世界じゃタイマツしかないよ……」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 13:01:10.52 ID:ECFBPSy40
姉「私が主人公降りるとき? 決まってるじゃない、死ぬときよ」

兄「いきなり物騒になったな!」

妹「お姉ちゃん死んじゃうの?」

姉「死ぬの。ガンアクションの主人公なんて、半分は死んで劇終だわ」

弟「姉ちゃん死なないで!」

兄「いやいや待て、何も殺されて死ぬとは言ってないだろ。こう、ベッドで安らかにとかさ」

姉「分かってないのね。人を撃った人間は必ず撃たれるの。そう、あんたもよ!」

兄「俺もだった!!」

弟「ねえ、妹ちゃんはいつ主人公降りられるの?」

妹「私? たぶん、いま私の町で起きてる怪奇現象を解決するまで、かな……」

妹「でもね、きっとろくな終わり方じゃないよ。ホラーだもん」

妹「全てが解決したとみせかけて、実は悪夢はまだ続いているとか、絶対そんな感じ」

兄「やる気がそがれるな。モチベーション続かんだろ」

姉「頑張って妹ちゃん。陰で応援してるから」

妹「ごめんお姉ちゃん、私のジャンル柄、陰でどうこうするのはやめて」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 13:03:19.01 ID:ECFBPSy40
兄「ところでさ。俺毎回ロボットに乗り回してるんだけど」

兄「とにかくいつも戦闘がキツくてキツくて。なんか疲れない戦い方とかないもんだろうか……」

姉「キツイってロボット乗ってるのに?」

兄「いやいやロボットに乗ってるからだよ」

兄「まず、常に自機の状況は把握しなきゃならない。損傷度とかエネルギー残量とか」

弟「自分の状態把握するのは、生身で戦うときだって似たようなものじゃないの」

兄「次に開きっぱなしの回線で、上からの指令や仲間の状況には常に敏感にならなきゃならない」

姉「常識ね。私だって小型無線なかったらあっという間に詰むわ」

兄「敵機撃破や誤射防止のために、めまぐるしく動く敵味方の位置は把握しなきゃならない」

妹「相手との位置関係って、ホラーじゃ割と肝なんだけど」

兄「マニュアルなんて役に立たん、あらゆる状況に臨機応変に対応しなきゃならない」

兄「ミスったら死ぬ。命がけだ」

姉弟妹「「「なにをいまさら」」」

兄「じゃあお前らいっぺんコックピット入ってみろよ!!」

兄「あやっぱいい、コレお前らどうせ入りたいって言う流れだもんな……」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 13:05:35.38 ID:ECFBPSy40
弟「僕、この間すごい武器手に入れたんだ!」

兄「ほう、火力は?」

姉「制圧力は?」

弟「えっ? えっ……」

妹「どんな武器? って訊かれたかったんだよね」

弟「う、うんそう、なんと昔の英雄が使ってた、聖なる大剣なんだ!」

弟「攻撃力もあるし、振りかざすだけで光属性の効果もつくんだ。すごいでしょ」

兄「それ俺んとこの量産型ロボット全部についてるぞ」

姉「光る目印なんて的じゃない。諜報工作には使えないわね」

妹「そこ、自分達の世界を展開しない!」

弟「むー、じゃあお兄ちゃんとお姉ちゃんは、どんなすごい武器使ってるの?」

兄「どんな装甲もぶちぬくビーム砲とビームの剣と、基地ひとつ一発で破壊できる超火力兵器」

姉「武器なんてグロック17が一丁あれば十分。武器の真価を決めるのは性能じゃない。戦況よ」

弟「えっ? えっ……」

妹「ねぇその聖なる大剣、たぶんホラーや怪奇に効果あるよね。今度貸してね」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 13:08:20.60 ID:ECFBPSy40
姉「ところでみんな、報酬はどのくらい貰ってるの」

妹「いきなり率直ながらもシビアな話に!」

兄「給料ねえ。俺は一応安定してるかな。名目上は軍人ってことになってるし」

姉「そう。今度ワインボトル一本奢りなさい」

兄「なんでだよ! 姉貴だって組織かなんかに属してるんだろ? 裏方役ならきっと高報酬だろ?」

姉「私は飼われてるだけ。成功報酬はほとんど組織がさらうわ」

姉「私は好きに使えるお金が欲しいの。おこづかいが欲しいの」

妹「な、なんで私見るの!? 私だってそんな持ってないよ!!」

弟「ほうしゅう……クエストの報酬のこと? うん、難しいのだったらたくさん貰えるよ!」

兄「ドラゴン1頭1万円とか?」

弟「ドラゴンは成竜で金貨50枚!」

姉「小規模な組織の幹部一人でユキチ50枚」

妹「毎月おこづかい5000円!」

兄「俺は軍事機密だから給料言えない!」

姉「↑奢り決定」 妹「決定!」 弟「ありがとうお兄ちゃん!」 兄「どうしてそうなった」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 13:09:59.80 ID:ECFBPSy40
妹「でもみんな何だかんだで楽しそう」

妹「私なんて毎回緊張焦り不安で、汗を垂らさないシーンなんてないっていうのに……」

兄「今度よく見とけよ。意外とみんな汗はよく垂らしてるから」

妹「それたぶん汗の種類違うから! はぁ、みんなは怖い話の一つもないの?」

弟「魔法が使えなくなったとき!」

兄「残弾やエネルギーが尽きたとき」

妹「そういうのはなんか違う気がする! もっとこう……じわじわ精神的にさ?」

妹「ない? お姉ちゃん?」

姉「ない」

妹「ないの!? 裏社会の人ってすごい!」

姉「強いていえば……居場所を失うのが……怖いかな」

妹「裏社会の人ってせつない……」

兄「俺も母艦が居場所だ。帰る場所があるのは幸せなことだ」

弟「僕も、旅をしてる仲間たちの元が居場所なんだろうなぁ。大切な居場所なんだ」

妹「……あれちょっと待って。ところでこの集まりは一体なんなの?」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 13:13:46.59 ID:ECFBPSy40
兄「よく言う台詞……『うおおおっ!』」

妹「それ台詞?」

兄「撃ったり斬ったりくらったりと汎用性高いぞ」

姉「ちなみに二番目は?」

兄「『くっ』」

弟「あ、多分僕もそれ同じ。場のつなぎとして便利だよね→『くっ』」

妹「お姉ちゃんは?」

姉「『……』かな」

妹「台詞!?」

兄「お前はどうなんだ? ホラーってことはどうせ『きゃあああっ!』とかなんだろ?」

弟「あーありそう!」

妹「違うし! 絶対教えないし!」

姉「ところで妹ちゃん、さっきからじっとこっち見てる後ろの人だれ?」

妹「『ひっ』」

姉「それね」  兄「ぷっ。『ひっ』てお前」  妹「絶対に許さない」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 13:15:22.49 ID:ECFBPSy40
弟「ねぇ、ところでみんな、普段どんなもの食べてるの?」

弟「僕は正直クセのあるやつばかりだから、元の世界の味付けが恋しくって……」

兄「クセのあるやつ?」

弟「うん。ドラゴンミートとかマジックフルーツとか……マズくはないんだけど、未だに慣れなくて」

兄「まだいいんじゃないか? 俺なんて食事の描写なんかほとんどないぞ」

妹「そなの?」

兄「ああ。大体ワントレイの宇宙食なんだが、栄養摂取目的が強いから、嗜好も何もない」

姉「うん、私もそんな感じね。仕事中は1パックゼリーやサプリメントで済ませちゃう」

姉「あと、カプセル。組織から支給されてる薬」

妹「何の薬!?」

弟「妹ちゃんはどんなもの食べてるの?」

妹「え? 私は別に……普通かなぁ」

妹「昨日はハンバーグとポテトサラダで……今朝はコンソメスープとトースト……」

兄「おいイイじゃねえか!」  弟「うらやましい!」  姉「一番豪華ね!」

妹「こんなところで一般人の強みが!!」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 13:20:50.11 ID:ECFBPSy40
姉「ねえ。主人公って大体ファッションが固定されてるものだけど、みんなはどんな感じなの?」

姉「私の仕事着はピチピチ黒スーツ。たまに変装でパーティードレスなんかも着るけど」

妹「いいナー!」

姉「でも洗濯が大変なの。専門のクリーニングにも通わなきゃならないし」

兄「急に所帯じみたな!」

弟「兄ちゃんはどんなの?」

兄「地上にいるときはシャツ。宇宙にいるときは宇宙服。うん、完全に着回しで固定されてるな」

兄「まぁ俺の世界じゃ、人間よりロボットのファッションのが大事だしな。お前は?」

弟「僕は『たびびとのふく』に甲冑パーツをいくつか付けてるんだけど」

弟「実は着心地も通気性も悪くって……でも周りはなんかそれが普通みたいな雰囲気だし……」

姉「縫製技術が発達してないのね。現代から中世ファンタジーに飛び込んだときの見えない短所ね」

弟「靴も長靴だし……革の手袋なんかもつけるし……もう、蒸れる! 妹ちゃんは?」

妹「私? 私は制服。いつものセーラー服だよ。ほら」

兄「えっ? 『ほら』ってあれ……そういえばみんな、いまどういう服装で……」

妹「そういう細かいこと突っ込んじゃダメ!!」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 13:25:00.56 ID:ECFBPSy40
妹「ね、ねえお姉ちゃん」

姉「何? 私のかわいい妹ちゃん」

妹「お姉ちゃんは、その……カレシさんとか、いるの?」

兄「ほほう!」

妹「黙って!」

姉「カレシ? うん……いたよ」

弟「えっ? 『いた』?」

姉「まぁ、そういう世界だからね」

兄「よくあることだよな。銃弾飛び交う戦場に身を置いてりゃな。俺のとこはビームだけど」

妹「そ……そうなんだ……ごめんなさい……」

姉「いいのよ。そういう設定だったし。彼とは月イチで飲みにいってるし」

妹「えっ?」

弟「えっ?」

姉「クールぶってるけど、彼、楽屋裏だと結構陽気なの。劇中よりずっと面白い人で――」

兄「おいストップ! そこで止まれ!!」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 13:29:41.42 ID:ECFBPSy40
弟「妹ちゃんは好きなヒトいるの?」

妹「ううん、いないの。けど、周りの友達はみんなカレシいるから……」

兄「やめておいた方がいい」

妹「お兄ちゃんには言われたくない!」

兄「まだ何も言ってねえだろ」

姉「ホラーでしょ? 恋人ができても、オチは妹ちゃんが一番よく分かってるんじゃない?」

妹「え? オチって?」

兄「その恋人はバケモノだった! モンスターだった! はい弟!!」

弟「え、えっ? シャ、シャドーだった! ダークゾンビだった! カオスドールだった!!」

姉「やめなさい」

弟「モンスターと聞いてつい」

妹「ひーんお姉ちゃん、私フツーの女の子なのに、まともにレンアイもできないの?」

姉「大丈夫よ。いざとなったら、妹ちゃんのことは私が貰ってあげる」

妹「お姉ちゃん……っ!」

兄「こんなところで新しいジャンル確立すんな!」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 13:32:39.23 ID:ECFBPSy40
兄「俺はカノジョなんていないぞ。なぜなら、愛機のロボットこそ俺の」

妹「弟君はカノジョいるの?」  兄「聞け」

弟「い、いやぁカノジョかどうか分かんないけど、一応ヒロインちゃんがいるよ。エルフの」

姉「エルフの女の子。新境地が開けるような単語ね」

弟「すごく大人しくて、優しくて、回復魔法が得意なんだ。あ、あと……カワイイ……かな……」

妹「何その優良物件。付き合ってるの?」

弟「ち、違うよ! え、えっとていうか……わ、分かんないよ、そんなの」

姉「ふうん。結局、弟君一人という訳ね。この中でまともに恋愛してるのは」

兄「耳は!? エルフのミミ!!」

弟「耳? ちょっととんがってるけど、面白がって触ると、くすぐったがれるんだ」

兄「貴様ァ! 俺にも愛でさせろ!!」

弟「ええっ。や、やだよ!」

妹「お兄ちゃんなんでヘン  スイッチ入っちゃってるの?」

姉「ロボット好きだからパーツマニアという訳ね」

妹「うわぁ気持ち悪い」   兄「ありがとうございます!」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 13:36:06.56 ID:ECFBPSy40
姉「でもね、弟君。そのうちその女の子とも、別れることになるのよ」

弟「うん……僕が元の世界に帰ったら、離れ離れになっちゃうんだよね……」

弟「これまで一緒に冒険した仲間とも……。僕は元の世界に帰りたいけど、それだけは辛いよ」

姉「いいこと。恋人には、その離れ離れになったときのことを思い浮かべながら接しなさい」

姉「付き合えるうちにやることやっておかないと、後で必ず後悔するから――」

兄「姉貴……そういえば仕事でカレシを失っているんだったな……」

妹「あれ? でもさっき月イチで飲みn」

兄「というわけで弟よ。お前はくれぐれもその娘を大事にするんだぞ」

弟「もちろん!」

姉「でもその子って、『不思議なチカラ』なんかを持ってたりしない?」

弟「えっ、どうして分かるの?」

姉「王道設定ね。その子、そのうち話の中で重要な位置づけになるわ」

姉「そうなると狙われたりさらわれたり敵になったりするかもしれないから、気をつけなさい」

弟「占い師のヒトも同じこといってた! 姉ちゃんすごい!」

兄「すごくないからな。『王道設定ね』とか口走った姉貴は全然すごくないからな」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 13:41:13.67 ID:ECFBPSy40
兄「それにしても出会いと別れ……一期一会か」

兄「それぞれの世界で主人公やらなきゃ、新しい出会いもなかったんだよな」

弟「うん。僕はこの旅で色んな出会いがあったよ」

弟「仲間のエルフや戦士、ギルドの人たち……先生や王様、村の人たち……」

姉「一流スナイパーや百戦錬磨の傭兵、銃弾をカタナで叩き落とす猛者……」

妹「ポルターガイスト、天井裏の不気味な物音、正体不明のぐちゃぐちゃクリーチャー……」

兄「なんかおかしい流れになってんぞ!」

弟「兄ちゃんは?」

兄「うむ、俺か! 俺はまず軍の有人機プロトタイプABCから始まってだな!」

姉「私だってベレッタやブローイングの存在を知ってからは色んな銃器と出会って――」

妹「ヒト! 出会いというのは全うな人間を指してるわけで!」

兄「↑×6 のセリフ並べたお前に言われたくないわ!」

姉「弟君はどう? 素敵な『武器』との出会いはあった?」

弟「あったよ。でもせっかく愛用してても、強いの手に入ったら捨てたり売っちゃったりするんだ」

兄「とっかえとっかえの出会いだな!」   妹「お兄ちゃんはもう黙って!!」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 13:46:39.31 ID:ECFBPSy40
妹「ところで弟クン」

弟「なぁに妹ちゃん」

兄「あれ、お前らどっちが年上だったっけ」

妹「私、今日みんなのこと知った中で一番ホラーに効果的なのって、『魔法』だと思うの」

妹「オカルトには霊的なもので対抗。目には目をってわけで」

姉「妹ちゃん、この世に現代兵器でなんとかできない生き物なんていないわ」

兄「だからビーム砲一発で解決できるんだって」

妹「あくまで私に扱える対処法が知りたいの!」

姉「拳銃から入るといいわ。でも注意して、見た目より簡単じゃないから」

兄「作業用ロボットから始めてみろ! 重火器のっけりゃ戦場にも出られるぜ!」

妹「あくまで普通の女の子が扱える現実的な対処法で!!」

弟「妹ちゃん、光魔法覚えたいの? 無理だよ……そっちの世界にはマナがないはずから」

妹「そ、そうなの? マナってなに? マナ板じゃだめ?」

兄「常に持ち歩いてるもんな、マナ板!」>「ギャアアァー」

妹「……。……お姉ちゃん、ちょっとくらい分けてヨ」  姉「だーめヨ」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 13:52:04.25 ID:ECFBPSy40
弟「魔法を覚えるのは大変だったなぁ。素質ゼロからのスタートだったから」

弟「まず瞑想なんかの長い精神修養。次に儀式。それからやっと魔力発現の特訓」

兄「ああ、俺も大変だったぜ。とにかくシミュレーションの連続だった」

兄「おまけになまじ科学が発達してるもんだから、催眠学習なんてのも確立されててな……」

姉「あら、二人ともまだ楽じゃないの。特訓段階で命懸けたりしないでしょ」

兄「姉貴のは事情が事情だしな。特殊訓練の密度が段違いなはずだ」

兄「その裏づけがあるから、危険な裏社会でも気持ちに余裕を持って生きていられるんだ」

兄「分かったか妹よ」

妹「なんで私にふるの!」

兄「お前、怖い怖いという割には、ホラーに対して何も努力してないだろ?」

妹「当たり前でしょ! 何をすればいいの!」

弟「光魔法! はダメだった。マナがないんだった」

姉「でも魔法少女って素敵ね。もしなれたら、お姉ちゃん応援しちゃう」

妹「相手は『怪奇』なんだよ? 巫女さんの方がまだマシだよ」

兄「ふむ……悩ましい二択だ」   妹「そこヘンタイうるさい!」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 13:57:27.73 ID:ECFBPSy40
兄「しかし冒頭に戻って、主人公疲れたっていうのもあれだな」

兄「俺はなんだかんだいって、自分の世界が性にあってるんだな。ロボ好きだし。お前は?」

弟「僕も、なんか剣も魔法も自慢してきた感あるし、本当は言うほど疲れてないのかも。姉ちゃんは?」

姉「私も久々にみんなの顔が見れて、少しモチベーションが上がったわ」

兄「姉貴はそもそもどう疲れてたんだよ」

姉「精神が磨耗してたのよ。銃撃戦ばかりの日々だと、気持ちの根っこの部分が陰鬱になるの」

姉「『ほとんど感情のないキャラ』を演じるのも大変よ。プロったって万能じゃないし」

弟「今日の集まりで少しは気分が潤った?」

姉「おかげさまで。ちゅっ」

弟「わっ」

兄「お前いまので疲れも吹き飛んだな!」

弟「そ、そんなことないよっ!」

姉「ふふ、かわい」

妹「ねえ」

妹「主人公疲れたって話題、なんで私に回ってこないの?」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 14:00:08.80 ID:ECFBPSy40
弟「いっそそれぞれの世界の主人公を取り替えたら、話が解決できるかもしれないね」

兄「ふむ……じゃあ、お前の異世界ファンタジーの世界から考えてみようか」

兄「俺はやれる自信がある。もとから熱血系だからな。ドラゴン相手なんて燃えるぜ」

弟「兄ちゃん、いっとくけど基本的に生身なんだよ。ロボットなんてないんだよ」

兄「ああそれならダメだ。俺には無理だ」

妹「諦早!」

姉「アンタの頭の中って、常に愛機ロボットが補完されてるのね」

弟「姉ちゃんは身体能力あるから、かなりやれると思うんだけど」

姉「あたしパス。肉弾戦なんてせいぜいサバイバルナイフが関の山だし」

弟「魔法を覚えたらきっと戦えるよ!」

姉「私の集中力は、マジックパワーの為にあるんじゃないの。的確な急所を撃ち抜く為にあるのよ」

兄「こええよ!」

妹「あ、わ、私パス。運動なんてからっきしだし」

弟「でも霊感強いと思うから、魔法のエキスパートとして活躍できると思うんだけどなぁ」

妹「そ、そう? それならいいかも……」   兄「やはり魔法少女か」>「ギャアアァー」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 14:03:32.47 ID:ECFBPSy40
兄「俺の世界はシビアだぜ。有人機戦争真っ只中のサイエンス・フィクション!」

姉「私やってみたいわ」

兄「姉貴だったら、きっとすぐにエースパイロットになれるぞ!」

姉「座ったまま手足動かすだけでいいなんて、今の仕事より楽そうだもの」

兄「そんな理由で! どんだけコックピット内を舐めているんだ!」

弟「ロボットとか、宇宙とか、ちょっと規模がおっきい感じかなぁ。僕には無理そう」

兄「フフフ。さすがの魔法も、SFのスケールのでかさには遅れを取ってしまうな!」

弟「あでも、目の合った相手を意のままに操ってしまう闇の魔法なんかは使えるかな」

兄「なにそれはまずい」

妹「ロボットなんて興味ない。私は以上」

兄「お前! 女性パイロットも奮闘するんだぞ!」

妹「だって私、フツーの女の子だもん。ロボットなんて乗れっこないもん」

姉「そうね。かよわい女の子には、この軽量型のピストルが映えるものね……」

妹「お、お姉ちゃん……っ」   弟「僕もそれ欲しいなー」

兄「あちょっとまて勝手にターン終わらせるな!」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 14:10:10.62 ID:ECFBPSy40
姉「『裏社会ガンアクション』……どうかしら?」

兄「生身での銃撃・白兵戦は苦手なんだよな。一応訓練は受けてるが……」

姉「アンタみたいな直情型の熱血系が主人公だったら、戦闘開始5秒でバッドエンドね」

兄「5秒ってまだロボットがカタパルトから射出しきってない!」

弟「僕も銃なんて使えないよぉ。せいぜいクロスボウガンくらいしか……」

妹「私なんて戦闘開始3秒以下で終わっちゃう!」

姉「大丈夫よ。基本をしっかり固めれば、素人でも……」

弟「素人でも?」

姉「30秒はもつわ」

兄「1分もたねーじゃねーか!」

妹「特殊な世界だもんね。そこで毎日暮らしてるお姉ちゃんはすごいなぁ」

姉「ありがと。今度バイクに乗せてってあげる」

妹「本当!?」   弟「ばいく?」

姉「フルスロットルの途中で乗り捨てることも多いけど」

妹「やっぱいいや……」   兄「ちくしょうバイクに追悼!」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 14:19:52.29 ID:ECFBPSy40
妹「さてきました怪奇ホラーサスペンス! 略してKHS!」

姉「Killing Head Shot なんてどうかしら」

妹「お姉ちゃんは余裕そうだね……」

兄「俺だって平気だぜ? 愛機ロボットがあれば不可能なんてない」

妹「だからないんだってそんなの」

兄「ああそれならダメだ。俺には無理だ」

妹「諦早!」

姉「アンタの情けなさは別として、ロボットSFとホラーってなかなか相性悪いものね」

弟「僕もホラーなら平気。墓地や幽霊屋敷の舞台もクリアしたし」

妹「怖いんだよ? 見てるんだよ? にじりよってくるんだよ!?」

弟「何も攻撃してこないんでしょ? 僕だったら放っといて寝るよ……」

妹「まっ豪胆な子! どこぞのお兄ちゃんも見習えばいいのに」

兄「うるせえ。俺は何も怖いもんなんて」

姉「あら。アンタの肩に乗ってるのソレ何かしら」

兄「うおおおっ!」   妹「ひっ」   弟「毛玉だったー」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 14:35:34.72 ID:ECFBPSy40
兄「うーん。正直、誰かが他の世界に乗り込んでもイマイチなんだよな」

兄「結局自分の世界の文化を持ち込めないわけだからな」

妹「ロボット依存症がなにかゆってる」

弟「でも一理あるよ。僕だって魔法使えなかったら剣術しか残らないし」

姉「それ十分じゃないの。誰かと違って何もできないよりは遥かに」

兄「そこで!」

兄「いっそ世界観を混ぜ合わせたらどうだろうかと思うんだ!」

兄「例えば妹のホラー世界!」

妹「なに」

兄「俺のSF世界と融合することで、完全に怪奇もクソも消えうせる見込みがある!」

弟「なるほど!」

姉「それは融合じゃなくて席巻というのよ」

妹「でもいっそそれでもいいかな……それくらい行き詰ってるし……」

兄「その代わりお前には軍人になってもらう! 慢性的な人手不足なのだ」

妹「はいパス」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 14:44:26.69 ID:ECFBPSy40
弟「ホラーだったら、ファンタジー世界でいいかもしれないけど……」

妹「そうそう! 退魔の光でドーンと怖いものを一掃しちゃえばいいのよ!」

姉「ドーンと一掃するならランチャーも同じなのに」

兄「俺の世界ならドーンと土地ごと滅ぼせるのに」

妹「聞こえない聞こえない弟クンの言葉しか聞こえない」

弟「でも、僕は妹ちゃんの世界に出てくるモンスターなんて見たことないけど」

弟「結構、怖いよ?」

妹「へーきへーき! 怖いのは慣れてるから!」

弟「怖いってのは見かけとかじゃなくて、必ず襲ってくるって意味だよ?」

妹「えっ?」

弟「こっちが対抗手段持ってるから、相手は基本的に闇討ちとか不意打ちばかりなんだ」

弟「ちょっと油断してたらすぐにやられちゃうけど、いいの?」

妹「や、やられ!?」

姉「妹ちゃん、この世には美味しい話なんてないのよ」

兄「そうだぞ。お前は」    妹「お兄ちゃんだけはだまってて!」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 15:03:35.50 ID:ECFBPSy40
姉「ホラーとガンアクション……ミスマッチね」

兄「そもそも兵器を扱う時点で、俺のところと似通ってるとこあるしな」

弟「でも、暗闇を主体とする点では姉ちゃんの方がホラーに近いんじゃないの?」

姉「そうね。でも本当に正体不明なものが出てきたりしたら、まずは逃げると思うわ」

姉「言ったでしょ。正確な情報こそ、命に次いで大事なもの。オカルトなんて相性最悪だわ」

妹「そんなぁ……できたらお姉ちゃんに助けて欲しかったな」

兄「お兄ちゃんには?」

妹「じゃあ、ファンタジーとガンアクションなんてどうかな!」

弟「うん、それ、かなりいい混ぜ方になると思うんだ!」

姉「近代兵器と魔法ね。お互い見たことないもの同士だから、どういう化学変化が起こるかしら」

兄「まず一般市民が超強化されるな。誰でも銃器を扱えてしまうから」

兄「さらに敵の組織も、強力な魔法に乏しいであろう末端は皆それに走るだろう」

兄「その両者が戦争をしたらどうなる? 結局は近代戦争と遜色ないのさ」

弟「ドラゴンや幻獣も出るけど、どうにかなるの?」   兄「知らぬ」

姉「兵站はどうするの? 物資調達は?」   兄「知らぬ」   妹「無責任すぎる!」

 

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 15:29:52.39 ID:ECFBPSy40
兄「残るはSF&ファンタジー、SF&ガンアクションか」

兄「ふっ……ファンタジー? 話にならんな」

弟「むっ、どうして?」

兄「ドラゴンなどミサイルで落とせるからだ。圧倒的火力で全てを制圧する」

弟「ミサイルって?」

兄「飛び道具型の特大爆炎魔法だ! 我が軍はそれが何発でも撃てる!!」

姉「何発でもとか誇張しない。でも、SF兵器があれば確かにファンタジーも楽勝かもね」

妹「そうなの? なんか悔しいな、お兄ちゃんのくせに」

兄「フハハハハ、結局武力では俺の世界に勝るジャンルはないのだ!」

姉「どうかしらね。最近では『星』を話に盛り込んだファンタジーもあるし、何より」

姉「『魔法』という概念を搭載したロボットなんかが生まれたら、雲行き怪しくなるんじゃない?」

兄「なにっ」

妹「えっ? ただでさえ強いロボットに、魔法なんてつけたらどうなっちゃうの?」

弟「多分だけど、パイロットの腕っ節だけじゃどうにもならない問題が頻発するんじゃないかな……」

兄「はいでは最後! SF&ガンアクションですがー!」   妹「あ逃げた」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 15:46:42.66 ID:ECFBPSy40
兄「これこそ論ずるまでもなく、SF色の濃い世界に仕上がるでしょう!」

姉「根拠は?」

兄「そりゃ姉貴、路地裏でドンパチやるのと宇宙空間でビーム撃ち合う画じゃ、スケールが違う!」

妹「なんでお兄ちゃんの頭の中って実戦のイメージしかないの?」

弟「戦闘図だけで世界観は決まらないと思うんだけどなぁ」

姉「その通りよ弟君。こっち来て、抱きしめてあげる」

妹「なんでっ!?」

兄「なぜだ姉貴、ガンアクションはこっちでも専売特許と言っても過言では――」

姉「『裏社会』ガンアクションよ。アンタは諜報を軽んじ過ぎている」

姉「戦争中ならむしろ、私の世界よりも裏方がめまぐるしく動くわ。情報収集、工作活動、暗殺……」

姉「例えアンタが楽しくロボット乗り回せても、それは私達が動いた数歩あとのイベントに過ぎないのよ」

妹「それなら、むしろお姉ちゃんの方が活躍できる世界というわけね!」

兄「ぐぬぬ……そんなはずは……!」

弟「結局、二つの世界を融合させても、あんまり芳しい結果にならないみたいだね」

姉「じゃあいっそ全部混ぜてみる? みたいわね」   妹「もっとダメだよ!!」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 15:50:37.49 ID:ECFBPSy40
兄「さて――それぞれの世界の大変さも大体分かったことだし」

兄「そろそろ帰るか!」

弟「あれ。もうそんな時間? いま何時?」

姉「60進法わかるの?」

妹「ええー……もうちょっと一緒にいよーよー」

兄「ふっ甘えん坊だなお前は」

妹「お兄ちゃんなんかに1ミリも甘えた覚えないからこのヘンタイオタク」

兄「えっひどい……」

弟「妹ちゃん。僕も一緒にいたいけど、ちゃんと自分の世界のことは自分で頑張ろうよ」

妹「うええんお姉ちゃああん」

姉「妹ちゃん。まだ気付いてなかったの?」


 「 今まで 誰を相手に はしゃいで いたのか 」(スロー+グロ声)


妹「あqwせdrftgyふじこl」   弟「おっと危ない」

姉「なんちゃって。ってあら、意外と耐性ないのね」   兄「び、びびった……」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/02(月) 15:53:01.15 ID:ECFBPSy40
兄「じゃあまたな!」

弟「またね!」

姉「『また』があったらね」

妹「うう……戻りたくないよぉ……」

兄「兄、SF世界へ出撃だぜ!!」 ――

弟「光の紋章よ、我が道を示せ!!」 ――

姉「さよなら」 ――

妹「あ……待っ……ばいばい……っ!!」 ――




END

――――――――――――――――――――――――――――――――――

母「久々の休日、楽しかったわね!」

父「のんびりしてるヒマはないぞ。まずはSFの世界からだ、行くぞ!」


END

引用元: 兄弟姉妹「もう主人公やるのホント疲れた……」