勇者と魔王がアイを募集したFINAL+ 前編

343: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:10:47.43 ID:AYO7Ud690
462

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

フォーテ「なんか」

ハイ「あ」

フォーテ「面白く無ーいー」

ズズズズズズズズズズズ!!!!

フォーテの呪いが強まった。

オオオオオオオオオオオオ

ぐじゅ、じゅぞぞぞぞ

名状しがたい奇妙な物体がそこかしこから出現し、闇は濃さを増していく。

ギチギチギチ……

アッシュ(……おい、これ詰んだんじゃないか?)

レン(お迎えついでに全力で殺しに来るとか……なんでにゃ)

ポニテ(まいった……腹くくるしかないね)

ザッ!

フォーテ「っ」

全力の殺意を放つフォーテに対し、アッシュ達三人も応戦の構えを取った。

フォーテ「嘘……僕のことが怖くないの?」
 



344: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:11:57.42 ID:AYO7Ud690
463

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

アッシュ「怖いさ」

レン「超怖いにゃ」

ポニテ「   びしょびしょだよ!」

各々が答える。

アッシュ「――だが、ここで死ぬわけにはいかない」

レン「そう、たった一つのシンプルな答えってやつにゃ」

ポニテ「だから相手が誰であろうとも、私達は絶対に諦め無い」

ザンッ!

ハイ(……凄い、こんな魔力の持ち主相手に恐れながらも立ち向かっている……そうだ、この人達はそうなんだ、いつだって)

ぱんっ

ハイは自分の頬を叩く。

ハイ「……私も動揺してる場合じゃないですね」

345: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:14:06.31 ID:AYO7Ud690
464

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ハイ(でも、はっきり言ってアッシュ先輩達じゃどうあがいても勝てませんよねフォーテさんに……。私が加勢したって全く意味無いレベルですし……私に出来ること……この窮地を脱する何か……)

ユー「……」

ユーは悩むハイに身振り手振りで何かを伝える。

しゅばばっばば

ハイ「え? 未来で何を見てきたのかって? そりゃあ……」

アッシュ(あいつ! フォーテを目の前にしておしゃべりしてやがる!)

レン(バカなのか凄いのかもうわけわからんにゃ!)

ポニテ(凄いな新人さん……)

ハイ「……あ……あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

フォーテ「っ」

突然の大声にびっくりするフォーテ。

ハイ「ちょっと私行って来ます!」

ダッ!

346: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:15:46.82 ID:AYO7Ud690
465

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

アッシュ「あ、おい!!」

ズズズ

フォーテ「わけわかんないお姉ちゃんだねー。僕から逃げられると思ってるのかなっ?」

ビャッ!!

ハイ「!?」

走り出したハイに迫る大量の死者の腕。

アッシュ「ちぃ!」

シュンッ、ズババッ!!

ハイ「」

それらがハイに触れる前に、間に入って全てを切り刻むアッシュ。

ボトボトボト!

ポニテ「! 今まで私の隣にいたのに……アッシュ君速くなったね!」

レン「……そうみたいにゃね」

ハイ「アッシュ、先輩」

アッシュ「早く行けハイ! 何かに気づいたんだろう!? ならここは俺らに任せて行け!」

フォーテ「……」

347: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:18:45.53 ID:AYO7Ud690
466

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ハイ「すいません、すぐ戻りますからーー!!」

ダダダダダダ……

フォーテ「……」

アッシュ(……? えらいあっさり見逃してくれたな?)

フォーテ「……わっかんないなー」

ズズッズズズッズズズズズズ!!

フォーテの魔力の影響が強まって、その場にいるもの全員の五感が狂っていく。

アッシュ(うぐっ!? 目が回る)

ポニテ(何この異臭!)

レン(重力がっ、地面がわからないにゃ!)

フォーテ「お兄ちゃん達程度で僕を足止めできるわけ無いじゃない」

ドカカカカカッ!!

アッシュ「!?」

戸惑うアッシュ達の手足を闇の槍が突き刺さる。

アッシュ(見えもしなかった!)

レン(感じることさえ!!)

フォーテ「お兄ちゃん達はぁー、フォーテが邪魔だと思ったらー、それだけで消えなきゃいけないレベルの存在なんだよぉ?」

フォーテの邪悪な笑み。

ポニテ「――さぁ、それはどうかなー?」

フォーテ「」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

フォーテを炎の渦が襲う。

348: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:20:48.15 ID:AYO7Ud690
467

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ゴオオオオオオオオオオ……パチ、パチ……

フォーテ「……」

ポニテ「ありゃ、やっぱりレベル4程度じゃ魔力障壁突破は無理かー。あははー」

アッシュ(あいつ、体を一瞬魔力に変えて槍の束縛を解いたのか……?……そっちも怠けていたわけじゃなさそうだな)

ぱきんっ

レン「あー、痛かったにゃ。頭部だったらあれだけで闘い終わってたにゃ」

ゴーレム「もっ」

気づけばレンの周りから槍が無くなり、代わりにゴーレムが二体立っていた。

しゅぅう……

槍にやられた傷口も完全に塞がっている。

フォーテ「……」

ズズズ……

フォーテ「おかしいな……なんでお兄ちゃん達は絶望しないのー? 僕に勝てないことくらいわかってるよねー?」

アッシュ「……あぁ、それくらいわかっているさ。だが絶望するほどじゃあないな」

ドズン!!

アッシュ「!!」

アッシュの心臓に闇の槍が突きたてられる。

フォーテ「そう。これでも?」

349: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:22:07.34 ID:AYO7Ud690
468

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

アッシュ「がっ、はっ……」

ぽたっ、ぽたぽた……

フォーテ「……」

アッシュ「……あぁ、これでもさ」

フォーテ「っ」

アッシュ「絶望するのは死んだ後でも遅くは無い」

アッシュは血を吐きながらにやりと笑う。

ユー「……」

フォーテ「……本当にわけわかんないや。お兄ちゃん達の今の状況は、手足をもがれて殺虫剤に浸けられてる虫と変わらないってのにさ」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

フォーテ「なんで……そろいもそろってそんな目をしてるの?」

フォーテは、

フォーテ「むかつく」

ズッ!!!!!

凶悪な力を解放した。

350: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:22:49.78 ID:AYO7Ud690
469

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ズッ
ズッズ

ズズズズズズズズ!!

アッシュ(!! なんだこれは!!)




あ9-pw8-4gjkはおろgかえ
w-
あれdがえrがろg-8いじ-ゃおれいwj
ごあんrどgなおrfdg
あ-お-れ8ぎうあ9れwjごふぁlkj-でぎおうあhんdlkgfks--jhんkvjんしlf--じゃぃすdhgかdfjvmがいれう

ghばkdg----
あldしghじ-ゃお--いdjgぃあjd
gなおdjgfあ
あ--dk--gじゃおいjgdきあjd-ljぁげり  jn  いあf  あうえzkg
あろぎおsれいgj0934lzg  りgtじょあいr4 -- 

dg

-


ズズズズズ

1、あッシュが首ヲネジ切られて死亡。蘇生不可。
2、ポニ手が内蔵を引きずりダされテ死亡。蘇生不可。
3、れンガ脳をカき回されて死亡。蘇生不可。
4、パーてィ全滅。蘇生不可。
5、人類全滅。やリ直し不可。



フォーテ「なら飛び切りの絶望を味あわせてあげるね。どうあがいても絶望ってやつを……」





※今回は自動で選択肢を選ばせてもらいます。

351: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:23:57.91 ID:AYO7Ud690
470

--暗黒森林、保管庫、最下層--

ダダダダダダ!

ハイ「はっ、はっ、はっ!!」

ハイは暗闇の中を駆けている。

ハイ「思い出せ思い出せ、ツインテ先輩がいる場所の情報を思い出せ思い出せ」

ハイは走りながら頭を叩いている。

ハイ「く、実際に経験したことと一度読んだことじゃ記憶に差があり過ぎる……そのせいでさっきも」

ハイはその時ふとしたことに気づく。

ハイ「……そういえば」




月の光が差し込んでいるのを見つけたぱっちはその牢屋の中へ。

?「……」

そこに入っていたのはペンダントをつけたツインテールの少女。

ぱっち『うわびっくりした!? 気配がなんもなかったっぱ。って……これはまた綺麗な奴隷さんっぱね~』

ぱっちは逃げることも忘れ、月明かりに照らされた美しい顔に引き寄せられた。



ハイ「……月、明かり?」

ハイが見渡すこの場所は暗闇。月が差し込むなんてことはない。

ハイ「……もしかして場所間違えた?」

352: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:26:47.84 ID:AYO7Ud690
471

--暗黒森林、保管庫、最下層--

ハイ「え、えぇ!? どこだっけ!? ツインテ先輩いるのどこだっけ? 一旦状況整理しよう。えっと、うちのカバ上司がお金に困ってコレクションのツインテ先輩を売るとかで、でも本当は売りたくなくて最後に……あ……ツインテ先輩あの人の屋敷だ……」

とんでもないことに気づいてしまったハイ。

ハイ「え、えー!? どうしよう!? 最下層から出口なんてあるの!? でも今上にいったらフォーテさんいるし……くっ!!」

奴隷「――おいおい、なんだなんださっきからうるせーなおめーは。見張りじゃねぇのか?」

ハイ「え?」

牢屋に入れられていた奴隷が声をかけてきた。

奴隷「お、なんだまぁまぁ可愛いじゃねぇの。へへ、そこで何してるかしらねぇけどよ、こっちこいよ。遊ぼうぜ」

ハイ「……」

ツカツカツカツカ

ハイは言われるがまま近づいていく。

奴隷「へへ、素直じゃねぇか。よしよし可愛がって……」

ハイ「攻撃」

ぺち

ハイのでこぴん。

奴隷「あたっ、な、何するんでぇ」

ハイ「条件達成、レベルアップ」

ばしゅっ

奴隷「……え?」

ハイ「レベル2、騎士……こうなりゃ、仕方ないよね」

353: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:28:28.51 ID:AYO7Ud690
472

--暗黒森林、保管庫、最下層--

ズガッ!!

奴隷「!?」

そして今度は壁にヘッドバッド。

パラッ

ハイ「いっ……たぁ……」

奴隷「お、お前なにしてんだ!?」

ハイ「すぅー……」

がんっ!! がんっ!! がんっ!!!!

奴隷「お、おいー!! そんな本気でお前! 頭割れちまうぞ!?」

ぶしゅっ!!

ハイ「わ、割ろうと、してるんですっ!!」

どがっ!!

ぶしゅー!!

奴隷「あ、あわわ……」

ぼたっ、ぼたぼたぼたっ

ハイ「じょ、じょうへん……た、たっせい……れべるあっぷ」

バシューン!!

ハイの体が魔力に包まれ衣装が変わる。

ハイ「レベルッ3ー! 銃士!!」

奴隷「なんなんだこいつ……」

354: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:31:08.41 ID:AYO7Ud690
473

--暗黒森林、保管庫、最下層--

ドクドクドク

レベルアップに伴ってハイの頭部のダメージは多少回復するも、まだ血は出続けている。

ジャコッ!!

ハイ「……月の位置はあっちだった。それで月明かりが差し込むってことは多分こっち……いや、あの時間が今と一緒かはわからない……」

ハイは壁に銃を向けてぶつぶつと呟いている。

ハイ「うぅ……あの屋敷どっちにあったのかな……くー、早くしないといけないのに!」

奴隷「お、おい大丈夫か……? あんなに血が出てて」

心配そうに見ている奴隷。

ハイ「他に参考になる文章はー! えーっと!」

奴隷「屋敷ってあれか? でっかい成金の屋敷のことか? その屋敷の方向を知りたいのか?」

ハイ「うるさいですよ! 今考えてるんだから話かけないでください!!」

奴隷「ひぃっ!?」

どすん

奴隷は驚いてしりもちをついてしまう。

ハイ「全く時間無いって言うのにぃ!……え、でっかい屋敷?……それだと思います! 知ってるんですか!? 知ってるんですか!?」

がしゃん!!

ハイは鉄格子に飛びついた。

奴隷「ひぃい!! 怖いよぉ!!」

355: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:32:59.15 ID:AYO7Ud690
474

--暗黒森林、保管庫、最下層--

ハイ「いいから質問に答えてください! 知ってるんですか!?」

奴隷「お、俺も元々そこにいたんだよ。カバの旦那の所に……でも今回売りに出されて……そんで」

ハイ「カバ! そうですカバ!! そのカバの屋敷はどっちですか!?」

すっ

奴隷は指差した。

奴隷「そこの端の所に地下通路がある。それがその屋敷に繋がってるんだ。旦那はよくここのオークション利用してるからな、特別に事前に品物を見るために作らせたとかで……。あ、でも今は鍵が」

ハイ「あっりがっとうございーますっ!!」

ババババババババババ!!

ハイは銃を乱射し、道を塞ぐもの全てを破壊する。

ドガアアアアアアン!!

ハイ「ツインテ先輩! 待っててください!!」

356: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:36:04.64 ID:AYO7Ud690
475

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ゴゴゴゴゴゴゴ

アッシュ「……一体……どういうことだ?」

ポニテ「こんなことが、ありうるの?」

レン「……信じられないにゃ。誰か嘘だと言って欲しいにゃ」

ゴゴゴゴゴゴゴ

フォーテ「はぁ、はぁ、はぁ……」

ユー「……」

フォーテ「今度は全力だよっ!! ルート!!」

ズズズッ!!


1、アッシュ、ポニテ、レン、ユーが爆発して死亡。
2、アッシュ、ポニテ、レン、ユーが感電して死亡。
3、アッシュ、ポニテ、レン、ユーが溺死して死亡。


ユー「……!」

バッ!!

それに呼応してユーが手をかざす。すると

ぴしっ、ぴしぴし


1、アッ ュ、  テ、レ 、ユ が   て 亡。
2、ア シ   ニテ、 ン、 ーが感 して死 。
3、 ッシ 、 ニ 、レ 、 ー   して  。


フォーテ「う、嘘だ……」

ぱきぃーん!!


1、フォーテが転んでなぜかユーに抱きつく。その際お互いの顔は相手の●●の前に来てしまう。
2、フォーテが転んでなぜかフォーテの   は脱がされてしまう。中に手が入ることも。
3、よくわからないけどなぜかフォーテの服の中に手が入ってしまい    を む。  はつまむし う。


フォーテ「また書き換えられたー!?」

357: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:38:06.46 ID:AYO7Ud690
476

--暗黒森林、保管庫、下フロア--


2、フォーテが転んでなぜかフォーテの   は脱がされてしまう。中に手が入ることも。


フォーテ「じょ、冗談じゃないよ! そんな運命覆してやる!!」

ズズズズズ!!

フォーテは死者の腕を総動員させてユーを殺そうとするのだが、

がしがしがし!

死者の腕が絡まってしまい、強引に進もうとした死者の腕が闇を引っ張る。

ずる

その拍子でフォーテの背後に設置していた闇から本体が出現。本体はフォーテにぶつかって、

ドンッ

フォーテ「あ、あ、あわわ」

前に投げ出されるフォーテ。

ユー「……」

そしてその先には真顔で両腕を広げているユー。

フォーテ「や、やだーーー!!」

ドシーン

アッシュ「……」

ぺろん

フォーテ「あ、やだー! 本当に脱がしたー!!」

ポニテ「……」

むにゅ

フォーテ「ひっ!? お、お尻触るなー!!」

レン「……」

フォーテ「う、うえぇえええええん!! この体はお姉ちゃんのものなのにー!! 汚されたーーうわああああああああん!!」



※フォーテちゃんは男の娘ですので。

358: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:39:21.02 ID:AYO7Ud690
477

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ゴゴゴゴゴ

アッシュ「なんだこのラブコメ展開は……あのフォーテがこうも簡単に   を脱がされるとは」

真顔で汗を垂らしているアッシュ。ついでにレンのゴーレムの治療を受けている。

ポニテ「……あのルートってやつ凄まじいね。運命を操る力なのかな」

ポニテは震えながら見ている。

レン「詳しいことはわからないけれど、ルートの書き換え合戦……これは多分とんでもないことにゃ」

全身の毛が逆立っているレン。

ユー「……」

フォーテ「そ、そんな……」

すっかりもみくちゃにされて右肩が露出しているフォーテ。

フォーテ「トリガーからもらったこの力が効かないだなんて」

ユー「!」

359: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:40:17.43 ID:AYO7Ud690
478

--暗黒森林、屋敷、地下牢--

ダダダダダ!

ハイ(思いっきり音を立てちゃったからね、速攻で見つけなきゃ!)

ダダダダダ!!

走り回るハイ。だがそこはあっさりと見つかった。

ハイ「! 月明かり……!」

がしゃん!

鉄格子越しに牢屋を見る。すると。

?「……」

ハイ「あ……つ、ツインテ、先輩……」

月明かりに照らされた、美しいツインテールの男の娘がそこにいた。

360: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:41:45.83 ID:AYO7Ud690
479

--暗黒森林、屋敷、地下牢--

ハイ「ツインテさん! 助けにきました!!」

?改めツインテ「……」

しかしツインテはぴくりとも反応しなかった。

ハイ「! そうか、今は心を閉ざしてる完全ガード状態だったんですよね……」

   屋敷兵「おい地下から大きな音がしたぞ!!」

その時上の階から慌しい物音が。

ハイ「! 気づかれ……るよねそりゃ。早くしないとここにも来ちゃう!」(何を言えばツインテ先輩は心を開いてくれる!? 思い出さなきゃ思い出さなきゃ!!)

ダダダダダ!!

ハイ「あ、あのですね! 私は未来から来た貴方の仲間なんです。信じられないかもしれないですけど、でも本当のことで、えっと……えっと!!」

ツインテ「……」

ツインテは人形のように宙を見ている。

ハイ(あわわわ! やっぱり私頭使うのなれてないーー!)

バンッ!!

屋敷兵「! そこのお前!! 何している!!」

ハイ「あ――お、起きてください! ゼロさん!!」

ツインテ「」

ぴくっ

361: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/06(火) 02:44:40.08 ID:AYO7Ud690
480

--暗黒森林、屋敷、地下牢--

屋敷兵「お前……この地下通路から無理やり忍び込んだのか!? ふざけやがって!」

ハイ「ツインテゼロさん! お願いです私と一緒に来てください! 大変なんです! 早くしないと先輩達がみんなフォーテさんにやられちゃう!!」

ツインテ「」

屋敷兵「こぉのっ!!」

ゴッ!

ハイ「ぎゃっ!!」

どたんっ!

屋敷兵は棍棒でハイの後頭部を打ち付けた。鉄格子でバウンドしたハイはそのまま床に倒れこむ。

ハイ「いっ……たぁ……」

どくどくどく

屋敷兵「けっ、どこの手のものかしっかり拷問した後で聞き出してやる……! ほら立て!」

ばしゅっ

屋敷兵「……ん?」

ツインテ「――君が誰だか僕には記憶が無いけれど」

すっ

ゆっくりと立ち上がったツインテの髪型はショートになっていた。

ツインテ「僕のことを君は知っているみたいだ。誰一人として知らないはずの本当の僕のことまで」

屋敷兵「お、お前、喋れて……」

ハイ「ゼロ、さん……」

368: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 03:56:58.12 ID:moiQcL4n0
481

--暗黒森林、屋敷、地下牢--

屋敷兵「これは驚きだ……旦那がこれを知ったらさぞ嘆くだろうな。しかしなんでまた今になって喋りだしたんだ?」

ツインテ「ごめん。黙っててくれないか」

ぱきぃん

屋敷兵「」

ツインテが手をかざすと屋敷兵はそのまま床に崩れ落ちた。

どさり

ハイ「え……何をしたんですか?」

ツインテ「しばらくの間寝ていてもらうだけさ。さぁ」

びきっ、がららん

ツインテが一歩足を踏み出すと、鉄格子が独りでに細かく切断されて散らばった。

ツインテ「話してもらうよ。全部」

369: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 03:58:07.27 ID:moiQcL4n0
482

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

フォーテ「げぶっ!」

びしゃっ

アッシュ「! あのフォーテが吐血……? 俺にはよくわからないが、そこまで追い込んでいるのか?」

レン「あのユーって人間、ただものじゃないにゃ」

フォーテ(ぐ……力を使いすぎちゃった……これ以上ルートは使えない……)

フォーテは自分の体をめちゃくちゃに弄り回したユーを睨む。

フォーテ(一体、何者……?)

ズズズズズ

再び闇が波のように押し寄せる。

フォーテ「――お兄ちゃん、勝った気でいるならまだ早いよ。僕はたとえ手足をもがれたって諦めない」

オオオオオオオオオオ

フォーテ「僕とお姉ちゃんの間に入ってくるやつは……皆殺しなんだああああああああああああああああああああ!!」

死者の腕がユーを襲う。

370: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 03:59:00.77 ID:moiQcL4n0
483

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

べキッ!

フォーテ「……え?」

それは攻撃を繰り出したフォーテにも想像しなかった結果。

バキッ! ドカッ!!

ユー「……!!」

ユーはレイピアで防御しようとしているのだが、その動きは遅く、一方的に嬲られていた。

フォーテ「なんで――。そうか、そうなんだ? その力はルートにしか使えないの!?」

ドギャッ!!

明らかに先ほどより動きが鈍っているユー。

フォーテ「それとも回数制限があるのかな?? きゃはは! なーんだ! どっちにしろ、悩むことなんて無かったんだ!!」

ズズズズズズズズズ!!

フォーテ「ルートなんか使わなくたって、僕の呪いで十分だったんだっ!!」

無数の闇の槍がユーに狙いをつけた。

371: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:02:19.98 ID:moiQcL4n0
484

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

フォーテ「しんじゃえっ! 邪魔者っ!!」

ドヒュドヒュドヒュドヒュドヒュドヒュドヒュガギギイン!!

フォーテ「……弱っちぃお兄ちゃん達は後でゆっくり殺してあげるよぉ。フォーテはね? 今はその変なお兄ちゃんから殺したいの。だから邪魔しないで欲しいなぁ」

フォーテの前に立ちはだかるアッシュ、ポニテ、レン。

アッシュ「悪いな、いちいちお前の予定に合わせてはいられない」(やっべー! 目の前にするとやっぱこえーーー!!)

ポニテ「こんな魅力的なおねーさんをスルーとか、いけない子だよフォーテちゃん」(   はいて無くてよかった……)

レン「くっさ」

ユー「……」

フォーテは自分の前に立っている三人の背中を眺めている。

フォーテ「……フォーテ、そういうの嫌いだよっ。弱いくせに庇いあうってやつ」

ズズズズン!!

ポニテ(あ、あれ?)

アッシュ(! こいつパワーダウンしたと思ったんだが……)

レン(更に膨れ上がるのかにゃ……)

372: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:03:51.74 ID:moiQcL4n0
485

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

フォーテ「フォーテね?……虫けらに邪魔されるの嫌いなのっ……潰れちゃえぇえええ!!」

ズオオオオオオ!!

ねじれ曲がった巨大な死者の腕がアッシュ達に迫る。

アッシュ「はぁあああああああ!!」

ポニテ「あああああああああ!!」

ドギイイイイイイイイイイイイイン!!

その攻撃を二人がかりで受け止めることに成功する。

ぎしっ、ぎしいいいいいいいい!!

フォーテ「! 止めた……? 脆弱で矮小なお兄ちゃん達が僕の攻撃を……?」

レン「――人は成長する生き物なのにゃ」

フォーテの死角に移動していたレンは、弓を構えていた。
フォーテがそちらに向くより早く、

レン「効果二重付与、貫通切断!」

ドシュッ!!

矢がフォーテに命中する。

373: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:05:43.24 ID:moiQcL4n0
486

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ブシュッ、ズバッ、ドチャッ!!

フォーテ「」

矢がフォーテの肉体を切り刻み貫通する。

どばちゃっ

レン(当たった……にゃ)

ポニテ(うお……最初に会った時のことを思い返せば、これは出来すぎだね)

アッシュ(俺達も成長した……が、それだけではこうはなるまい。やはりそれだけフォーテも消耗させられていたんだな)

フォーテ「あ……あ……」

胴体を両断させられたフォーテは自らの血で作った水溜りで泳ぐ。

ばちゃっ、ばちゃっ

フォーテ「い、痛い……痛いよぉ……」

ポニテ「……今思うと人に撃つような技じゃないよね」

レン「つい……」

374: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:07:25.27 ID:moiQcL4n0
487

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

フォーテ「よくも」

ドロッ

フォーテの至る穴から血が流れ出す。

ざぁ……

アッシュ「! ヤバイ!」

その血は瞬く間に建物全体を覆っていく。

ざぁあ……

ポニテ「……参ったな。ちょっとはいい感じだと思ったんだけど……やっぱり倒せる気がしないや」

とぷん……くすくすくすくすくすくすくすくすくす

周囲から薄気味の悪い笑い声が聞こえてくる。

保管庫の奴隷「あー、あー、あー」

がしゃんがしゃんがしゃん

真っ赤に染まった奴隷達が鉄格子を掴んで歌を歌い始める。

レン「……底が知れないにゃ。やっぱりフォーテは世界観が違う感じにゃ」

375: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:09:12.65 ID:moiQcL4n0
488

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ずるっ……

内臓を引きずりながらフォーテが這う。

フォーテ「ねぇ……お兄ちゃん達はどうやって殺して欲しい? えへへ……」

真っ黒な眼窩から赤い血をたれ流して笑うフォーテ。

フォーテ「なんでも言ってっ。僕ならなんでも再現できるんだよよ? えへへ、あはは、いひひ」

アッシュ「……ポニテ後ろだ」

フォーテ「!」

ヒュッ!

後ろから迫っていた触 を紙一重で交わすポニテ。

ポニテ「うお、あぶなー……アレ食らったら多分一発だったかも」

フォーテ「……」

アッシュ「悪いなフォーテ。俺らの間にあるのは力の差だけだ。もう、飲まれたりはしない」

フォーテ「……」

376: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:12:14.00 ID:moiQcL4n0
489

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

オオオオオオ……

フォーテ「……意味がわからないなぁ……僕には絶対に勝てないし、お兄ちゃん達は絶対に死ぬんだよ? それなのに何その余裕……なんで怖がらないの?」

アッシュ「絶対に勝てない、までは同意する。お前は強過ぎる、俺達でどうにかなる相手じゃあない。だが絶対に死ぬとは限らないぜ」

フォーテ「……はい?」

アッシュ「俺らには信じられる仲間がいる。そいつら次第じゃあ、あるいはなんとかなるかもしれないな」

びしっ

突如闇の空間に亀裂が走る。

びしっ、びしびしっ

そこからかすかな光が差し込んだ。

フォーテ「?……僕の制圧した空間が外から解除されている? こんなことが出来るのは……」

びしびしびしっ!!

アッシュ「……」

アッシュ達は薄目でその光の向こうを見る。

アッシュ「……久しぶりだな」

びしっ……ばりぃぃぃぃぃぃぃん!!

暗闇を吹き飛ばして現れたのは、

ツインテ「……」

377: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:13:18.62 ID:moiQcL4n0
490

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

すたっ

ツインテ「……」

フォーテ「お、お姉ちゃん!?」

ツインテ「フォーテ、ちゃん」

元のツインテールに戻っているツインテは、ゆっくりとフォーテに近づいていく。

ぱしゃ、ぱしゃ

ツインテ「もう……こんなことはやめよう? フォーテちゃん」

フォーテ「お姉ちゃん……で、でもねっ、このお兄ちゃん達がっ」

がばっ

ツインテはフォーテを抱きしめる。

フォーテ「……お姉ちゃん」

しゅる……

フォーテの肉体が再生していく。

ツインテ「……」

378: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:16:11.95 ID:moiQcL4n0
491

--過去、暗黒森林、屋敷、地下牢--

ツインテ「――なるほど、そういうことなのか」

ハイ「な、納得していただけました?」

ツインテ「信じがたい話だけど、それしか辻褄が合わないからね。納得するに足りる情報ばかりだったし」

ハイ「はぁ。こんなにあっさり信じてもらえたのは初めてかもしれません。盗賊さんはなんかカウントしたくない」

ツインテ「しかしだとするとこれはチャンスかな」

ハイ「え?」

ツインテ「フォーテがここに来ているんだろう?」

ハイ「はい……って、こんな話してる場合じゃないです! 早く皆さんを助けにいかないと!!」

ツインテ「そのことなんだけど、話を聞くに君とそのユーって人がいればフォーテを倒せそうなんだよね」

ハイ「……はい?」

ツインテ「知ってのとおり僕の目的はフォーテの抹殺だ。でも僕一人ではまだきついと分析してたから、近づいて少しずつ精神を狂わせていく算段だったんだ。でも君達がいるのならこの場で抹殺できそうだ」

ハイ「フォーテさんを……殺す、ってことですか?」

379: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:18:44.40 ID:moiQcL4n0
492

--過去、暗黒森林、屋敷、地下牢--

ハイ「で、でもツインテさんはフォーテさんのことを大事な妹だとおっしゃってましたよ!? それなのに殺すだなんて……」

ツインテ「訂正するよ。正確には弟だ。あと君が言ってるツインテって言うのはおどおどしたボクのことだよね? あれのことは気にしなくていいよ。あれはそういうように設定した人格に過ぎないんだから」

ハイ「!そ……そんな言い方って」

ツインテ「知ってると思うけど主人格は元々僕なんだ。他のは役割を演じてるだけに、にに、に、に」

ハイ「? ツインテさん? どうしました? なんだか表情が引きつってるような……」

バツンッ!!

その時ツインテの右側だけヘアスタイルが変わった。

ツインテ「――そ、そんなことは、さ、させま、せん!!」

ツインテ(ゼロ)「馬鹿な……僕が表に出ている時に割り込んできた……?」

ぎぎっぎぎっ

ハイ「な、何がどうなってます!? 顔凄いことになってますよ!!」

380: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:21:01.20 ID:moiQcL4n0
493

--過去、暗黒森林、屋敷、地下牢--

ツインテ(ゼロ)「これは……脳内会議を発動する必要がありそうだね」

ふっ

意識が飛び、ハイに向かって倒れるツインテ。

がしっ

ハイ「わっ、大丈夫ですかツインテさん!?」



--過去、ツインテの中--

ツインテ「う……ここは」

ツインテ(ストレート)「はぁ……久々に起きれたと思ったら脳内会議かよ、くそっ」

ツインテ(サイド)「ねー。たまには外の空気を吸ってみたいー」

ツインテ(ウェーブ)「……」

ツインテが気づくとそこは一度見たことのある光景が広がっていた。

ツインテ「! そうです! もう一人のボクがフォーテちゃんを消そうとしていて!……あれ? いませんね? そういえばあの人は一体……」

ツインテ(ストレート)「? 何の話だ? っていうか誰が開いたんだこの会議」

ツインテ(ゼロ)「僕だよ」

ツインテ(ストレート)「! 俺達以外の声!? 誰だ!? どこにいやがる!!」

ツインテ(ゼロ)「僕はここさ。この空間そのものが僕だ」

381: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:23:09.27 ID:moiQcL4n0
494

--過去、ツインテの中--

ツインテ(ストレート)「……なんだと……?」

ツインテ(サイド)「ありえない。もしそれが本当なら……私達とは次元が違うレベルの存在じゃない」

ツインテ(ウェーブ)「私達の産みの親……」

ぼそりと呟くウェーブ。

ツインテ(ストレート)「……そもそも俺達はお前自体ろくに知らねぇんだよな……」

ストレートはウェーブを睨む。

ツインテ(サイド)「……なるほどー、私達の分岐元ってわけね。それで? その主人格様が私達に何の用なのかな?」

ツインテ(ストレート)「なっ、てめっ、何勝手に納得して話進めてんだ! 万回殺すぞ!!」

ツインテ(サイド)「納得しないと話が先に進まないじゃん。それに多分本当のことだし」

ツインテ(ストレート)「だからなんでそれがわかるんだよ!」

ツインテ「……魂が……そう言ってる」

ツインテが呟いた。

ツインテ「なんとなくわかります。彼こそが主人格なんだって」

382: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:30:01.03 ID:moiQcL4n0
495

--過去、ツインテの中--

ツインテ(ゼロ)「理解が早くて助かるね。さすがは僕たち。……本当なら何も知らせずに各々の役割を果たしてもらうつもりだったんだけど」

ツインテ(ストレート)「……役割だぁ?」

ツインテ(ゼロ)「攻撃のストレート、情報のサイド、防御のウェーブ、治癒のツインテ。それが君達の役割。僕たちは一人で五役、一人のパーティなんだよ」

ゼロは笑う。

ツインテ(ゼロ)「――フォーテを抹殺するためのね」

ツインテ(ストレート)(サイド)「「!?」」

ツインテ(ゼロ)「その時が来た。どうか力を貸して欲しい。フォーテ抹殺の時が来た」

ツインテ(ストレート)「い、いきなり過ぎるし説明も足りねぇ!……一体何を言ってんだかさっぱりだぜ!」(……でも)

ツインテ(サイド)「右に同じー。大体あの子は歪んでいても弟なのよ? そんなこと出来るわけないじゃない」(……なぜか心の奥底で彼の言葉に従おうとしている)

ツインテ(ウェーブ)「……」

ツインテ「……」

383: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:35:50.11 ID:moiQcL4n0
496

--過去、ツインテの中--

ツインテ「ボクはいやです――」

ツインテはきっぱりと断った。

ツインテ「ボクはフォーテちゃんを殺したくなんてありません。たとえボク達がそのために生み出されたのだとしても、ボクは嫌です」

ツインテ(ストレート)「お前……」

ツインテ(サイド)「……ねぇ、一つ質問いいかな?」

ツインテ(ゼロ)「構わないよ。どうぞ」

ツインテ(サイド)「フォーテを抹殺するのが目的っていうのは……わかった。それを私達に隠してた理由も勝手に自己解決したよ。――でもそれならなんで今更私達に教えるわけ? 今まで内緒にしてきたんだし、貴方なら無自覚のまま操ることが出来たんじゃないの?」

ツインテ(ゼロ)「……」

ツインテ(サイド)「――予想外のことが起きたのね?」

ツインテ(ゼロ)「……あぁ」

その一言を聞いたストレート、サイド、ウェーブはツインテに目をやる。

384: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:38:46.88 ID:moiQcL4n0
497

--過去、ツインテの中--

ツインテ(ゼロ)「……っと、言葉よりもこっちの方が君達を納得させられるかな。今、君達に僕の知る情報の全てを送ったよ。最初からこれをすればよかった。僕も焦っているのかもしれない」

その情報に目を通すツインテ一同。

ツインテ(ストレート)「……ち」

ツインテ(サイド)(……私達が作られた存在だっていうのはやっぱりむかつく……でもこれを見たら、納得しないわけにもいかないわ。一番平和的に世界を護る方法を、必死に考えたうえで行動に移したっていうのが痛いほどわかるから)

ツインテ「嫌です」

ツインテ(ウェーブ)「……」

ツインテ(ストレート)「お、おいちゃんと読んだか? 男女」

ツインテ「何を見せられてもボクの意見は変わりません。どんな理由があってもフォーテちゃんを殺す理由にはなりません」

ツインテは一切怯えることなく、つかえることなく、しっかりと背筋を伸ばして言い切った。

ツインテ(ゼロ)「……」

ツインテ「フォーテちゃんは絶対に殺させません」

ツインテゼロはかつてのツインテを思い返す。一人じゃ何も出来なかった頃のツインテを。

ツインテ(ゼロ)(戦力を高めるためにと、旅に出したのは失敗だったのか……)

385: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:42:22.91 ID:moiQcL4n0
498

--過去、ツインテの中--

ツインテ(ゼロ)「……君のいいたいことはわかった。でもね、そもそも君達に権利は無いんだ。僕は今君達に協力を願っているけれど、もし僕の意見に賛同できないのなら君らを作りかえるだけなんだよ。精神操作はおてのものだからね」

ツインテ(ストレート)「!? てめぇ!」

ツインテ(サイド)(話をこうもっていきますかー! 今なら主人格に何が出来るかわかっちゃってる……これじゃあ従うしか……無いじゃない)

ツインテ「……」

ツインテ(ゼロ)(……そもそもツインテは他の人格と事情が違った。フォーテに取り入るために作り上げた存在……だからこう成長するのも仕方が無いことなのかもしれないが……だがこれ以上暴走する前に、不安要素は消さなくてはならない)

ゼロは返答いかんによってはツインテの再構成を決意する。

ツインテ「―もっと、いい方法があると思いませんか?」

ツインテ(ゼロ)「……なんだって?」

ツインテ「殺さなくてもいい方法です」

ツインテ(ゼロ)「……フォーテはトリガーのヨリシロだ。破壊しなければ意味が無いよ。他の方法などありえない」

ツインテ「そうでしょうか? トリガーさんがヨリシロに選ぶほどの存在なんですよフォーテちゃんは」

ツインテは……笑う。

ツインテ「敵として殺しちゃうより、味方にしちゃう方が素敵じゃないですか?」

386: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:45:27.87 ID:moiQcL4n0
499

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

フォーテ「あ、あああ、あああああああああああああああああああああああお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん!!」

フォーテはツインテに抱きついて体全体で愛情を表現する。

フォーテ「会いたかった! 本当に会いたかったよぉ!!」

ツインテ「うん……ボクもだよフォーテちゃん」

フォーテ「嬉しい嬉しい嬉しいよぉお!! ごめんねお姉ちゃん今まで助けにきてあげられなくてぇえ!! 本当にごめんねぇっ!!」

ツインテ「いいの、それよりフォーテちゃん。時間が無いから率直に言うけど、お願いしたいことがあるの」

フォーテ「ん? 何? フォーテに何かお願いだって? フォーテ聞くよ! フォーテお姉ちゃんの言うことならなんだって聞くよ!!」

ツインテ「本当? じゃあ……フォーテちゃん前に言ってたでしょ? ボクが勇者になって、フォーテちゃんは魔王になって、ずっと殺しあおうってやつ」

フォーテ「うん言った!! 素敵だよねお姉ちゃんっ! 勇者と魔王の関係って永遠なんだってさぁ!! 永遠に殺しあい憎みあう、それは何よりも深い関係なんだって!! 早くお姉ちゃんとそういう関係になりたいなぁああっ!!」

目を輝かせて言うフォーテ。

ツインテ「フォーテちゃん。ボクは嫌だ」

フォーテ「……え?」

ツインテ「ボクはフォーテちゃんとそんな関係になりたくない」

フォーテ「え……………………どうして?」

フォーテの黒目から光が消える。

387: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/13(火) 04:48:28.75 ID:moiQcL4n0
500

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ツインテ「どうしても何も、そんなのおかしいよ。だって殺しあうんだよ? そんなのちっともいいと思えない」

ズズズズズ

フォーテ「お姉ちゃんは……フォーテと深い関係になるのが嫌、なの? 永遠の関係になりたくないの……?」

ツインテ「ボクはフォーテちゃんと普通の兄弟でいたいよ。一緒にお洋服を買いに行ったり、ケーキを作って食べたり、お昼寝したり……。ボクはそういう方がずっと楽しいと思う」

フォーテ「そういうほうが楽しいの?……で、でも……」

フォーテは困ったような顔をする。

ツインテ「……そう。ボクの言うことわかってくれないんだね」

フォーテ「!? ち、違うよそんなんじゃ」

ツインテ「はぁ、残念だな。これじゃあボク、フォーテちゃんのこと、嫌いになっちゃうかも……」

フォーテ「                                                         

                                                              

               !?                                             

                                                              

                            」

ツインテ「だってボクは好きな人と殺し合いなんてできないもん。なのにフォーテちゃんがどうしてもしたいっていうなら……フォーテちゃんのこと嫌いになるしか……」

フォーテ「や、ヤダーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!! 嫌いになっちゃ、ヤダーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

ツインテ「え、でも……」

フォーテ「ごめんなさいごめんなさいお姉ちゃんごめんなさいお願いだからごめんなさいフォーテのこと嫌いにならないでぇえええごめんなさあああああいっ!!」

ツインテに抱きついて号泣するフォーテ。

ツインテ「……じゃあもう魔王になるとか言わない?」

フォーテ「言わない言わない絶対に言わないからっ!!」

ツインテ「そう……よかった」

ツインテは優しくフォーテの頭をなでる。



ポニテ「……な、なにこれ」

アッシュ(なんか暫くみない間に話の持ってきた肩が上手くなってるような可愛いケッコンしたい)

フォーテが仲間になった。

397: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 02:27:46.73 ID:cDEykskH0
501

--ツインテの中--

ツインテ(ゼロ)「……ありえない」

ツインテ(ストレート)「な、だから言ったろ? あいつならなんとかなるって」

ツインテ(サイド)「フォーテのことを相容れない異物としてか見てなかった貴方には想像も出来かったでしょ? こんな解決策があったなんてさー」

ストレートとサイドテールのツインテがにやにやと笑っている。

ツインテ(ゼロ)(それが出来るなら苦労しない。出来るはずが無かったから今まで……いや)

ゼロはツインテの目を通してフォーテの泣き顔を見る。

ツインテ(ゼロ)「……これを見させられては、何も言う資格は無い、か」

398: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 02:29:35.30 ID:cDEykskH0
502

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

フォーテ「お姉ちゃんー、もっと頭なでてよー。ぐすん」

ツインテ「はいはい。フォーテちゃんは甘えん坊さんだね」

フォーテ「えへへへー」

ツインテ「……でもフォーテちゃん、魔王のこともそうですが、もう悪いことはやっちゃ駄目ですからね?」

フォーテ「ふぉ、フォーテ悪いことなんてしてない……よ」

ツインテ「……」

フォーテ「あぁあああごめんなさいごめんなさい真顔になるのやめてお姉ちゃんそりゃ美の女神も真っ青なくらい美しい造型してるお姉ちゃんだから真顔でもとっても綺麗だけどフォーテの心に刺さるのっ!! もう悪いことしないからずっといい子にしてるからそんな目で見ないでーーーー!!」

ツインテに思い切り甘えているフォーテ。そしてその二人を静かに眺めているハイ達。

アッシュ「……まじで? まじであのフォーテが敵じゃなくなったのか……?」

ポニテ「無敵最強フォーテちゃんが……仲間に、なったの?」

レン「もう中身バシャーっとかされなくても大丈夫なのかにゃ?」

アッシュ達三人は信じきれず、フォーテが何かアクションをする度にびくついていた。

399: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 02:31:17.83 ID:cDEykskH0
503

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ハイ「しかし……まさかあのフォーテさんを仲間にすることが出来たなんて……」

ユー「……」

驚きを隠せないハイと後ろで頷いてるユー。

ツインテ「そうだ、フォーテちゃん。さっきアッシュ君達にいけないことしてましたよね?」

フォーテ「ふにゅっ!?」

ツインテ「いけないことしたら謝らないと駄目なんですよね?」

フォーテ「で、でもあれはあのお兄ちゃん達が……」

ツインテ「フォーテちゃん……?」

ツインテがフォーテの頬を優しくなでる。

ツインテ「……いけないことをしたら謝る。それがいい子の条件ですよね……?」

まるでフォーテのような世界を呪う雰囲気を出してみせるツインテ。

フォーテ「目が笑ってないお姉ちゃんも素敵っ!!」

400: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 02:32:32.07 ID:cDEykskH0
504

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

とて、とてとて……

フォーテはツインテから離れるとアッシュ達の方にゆっくりと近づいていく。

アッシュ「!!」

アッシュ達は再び臨戦態勢に移るのだが、

フォーテ「お……」

ポニテ「お?」

もじもじ

フォーテ「お、お兄ちゃん達……痛めつけちゃってごめんなさい……」

と、フォーテが謝った。

アッシュ「」

そして驚きのあまり固まるアッシュ。

レン「き……気にしてない、にゃ」

ハイ「なんですかその返答」

オオオオオオ

その後ろで死者の腕と握手しているユー。

401: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 02:35:37.34 ID:cDEykskH0
505

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

フォーテ「ゆ、許して、くれる?」

もじもじしながら涙目で上目遣いなフォーテ。

ポニテ「ゆ……許すよーーーー! 許すに決まってるじゃない! むしろ何も無かったよ! ただじゃれあって遊んでただけだもんねお姉ちゃん達ーーーー!!」

ぶしゃーーー!

大量の鼻血を吹き出しながらフォーテを抱きしめようとするポニテ。だが今までの経験が体に染み付いていて、拒絶反応から前に進めずぴくぴくと震えている。

ポニテ(動けよ! 今動かなきゃなんにもならないんだ!)

フォーテ「えへ! お姉ちゃーん! お兄ちゃん達許してくれるってー!」

たたたた、ばふっ!

フォーテはツインテに駆け寄って飛びついた。

ツインテ「もう、アッシュさん達だから許してくれたことですが、本当ならしっかり償わなくちゃいけないことなんですよ? 今までやってきたこと……一緒に償っていこうね?」

フォーテ「うん、フォーテ、お姉ちゃんと一緒ならなんでもするーっ!」

きゃっきゃっ

レン「……いやはや恐ろしい変わりっぷりにゃ……シスコン具合は前と変わらないけど……」

ポニテ「はー、可愛いよぉフォーテちゃん……。もうフォーテちゃんの姿見るなり恐怖のあまり失禁しなくていいんだよね? これからは嬉ションの方でいいんだよね?」

ハイ「どっちにしろ漏らすんですか!?」

アッシュ「正直に言うと俺、後ろも漏らしちゃってんだよね」

オオオオオオ

死者の腕と名刺交換しているユー。

402: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 02:36:50.33 ID:cDEykskH0
506

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ツインテ「っと、そうでした。何より皆さんの傷を治さないと」

ツインテは周囲の地獄絵図をなんとかするべく奥義を展開する。

しゅいーーん

アッシュ(……暖かい……ツインテの魔力はなんて心地よいんだ……)

ポニテ(衝撃的展開の連続でスルーしてたけど……ツインテちゃん久しぶりだね……ほんとよかった……)

レン(昔と変わらず美しいにゃ……ってか全く変わってないのはどゆことにゃ)

夜の番人「きもちいー……」

アッシュ、ポニテ、レン「「「!?」」」

さりげなくみんなと一緒に蘇生された夜の番人。

403: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 02:39:18.09 ID:cDEykskH0
507

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

夜の番人「ん……?」

アッシュ「お、おいツインテ! こいつは蘇生しなくていいんだ! めんどくさいことになるぞ!」

ツインテ「え……駄目ですよアッシュ君。好き嫌いしちゃ」

レン「好き嫌いとかそういう問題じゃないのにゃ! こいつ五柱クラスの戦闘力ある敵なのにゃ! だから蘇生はよくな」

ズンッ!!

夜の番人「な、なんだかよく覚えてないけど、おまえら……侵入者でしね?」

夜の番人が戦闘態勢に入る。

アッシュ(あかん)

夜の番人「ぼくちんの仕事場に勝手に入ってきて、全く悪い子達でしねぇ……こりゃあお仕置きが必要でし」

夜の番人は気味の悪い笑みを浮かべるとともに、強力な魔力を発する。

ゴゴゴゴゴ……!!

アッシュ「ち、またやるしかねぇか……」

しゅぴぃん

アッシュはナイフを取り出して構える。

ツインテ「ちょっ、待ってください! ボク達は争うつもりはないんです! ここもすぐでていきますから!」

夜の番人「問答 無用」

ダンッ!!

夜の番人が飛び掛った。

404: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 02:41:42.79 ID:cDEykskH0
508

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ごしゃっ!!





夜の番人「あ……あえ?」

飛びかかろうとした夜の番人は、どこからとも無く現れた死者の腕に殴られて、

どがぁああああん!!

壁に叩きつけられた。

アッシュ「っ!」

オオオオオオオオオオ……

目の前にばかり集中していたアッシュ達の背後から、静かに闇が忍び寄る。

フォーテ「おじちゃん……ツインテお姉ちゃんのせっかくの温情を無駄にしちゃうの……?」

ポニテ「!!」

フォーテは目を見開いて、じっと夜の番人を見つめている。

オオオオオオオオオオ

夜の番人「にゃ、にゃにがおこったでし……? ぼくちんが、い、一撃へ……ありへにゃい!」

脳を強く揺さぶられた夜の番人は立ち上がることすら出来ない。

フォーテ「お姉ちゃんの言うことを無視する人はぁ……万死に値するよね?」

405: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 02:42:57.88 ID:cDEykskH0
509

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ぎゅりぎゅりぎゅり、ドシュドシュドシュ!!

死者の腕が捩れて槍のように変形し、夜の番人を襲った。

ヒュオン!!

夜の番人「ひ、ひいい!?」

ツインテ「フォーテちゃん! そこまでですよ!」

ビタタッ!!

夜の番人「」

無数の槍は、夜の番人のわずか数センチ先で停止する。

夜の番人「はぁ、はぁ、はぁ……!!」

ツインテ「フォーテちゃん?」

フォーテ「ふぉ、フォーテ悪い子じゃないよ? あのおじちゃんがお姉ちゃんに悪いことしようとしたから……その……」

ツインテが話しかけると途端におろおろしてしまうフォーテ。

オオオオオオオオ

死者の腕も汗をたらしながら怒らないであげたげてよぉ、とツインテをなだめる。

ツインテ「――それはわかってます。でもやり過ぎは駄目なんです。あの人だって職務を全うしようとしただけに過ぎないんですから」

フォーテ「しゅん」

406: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 02:43:44.10 ID:cDEykskH0
510

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

アッシュ「え、てか五柱レベルでもワンパンなの? よく俺ら耐えられたな……」

フォーテ「五柱? 何それ美味しいの?」

レン「普通にその台詞を聞くとは思わなかったにゃ」

すっ

ツインテ「立てますか?」

ツインテはいつのまにか夜の番人に近づいて手を差し伸べている。

アッシュ「なっ! おい!」

ハイ「ツインテ先輩!? さすがに危ないですって!」

フォーテ「なんかあったら今度は……」

ゴゴゴゴゴゴ

ポニテ「ほ、ほらツインテちゃん! フォーテちゃんが凄い顔で見てるから!!」

じょじょじょー

407: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 02:46:00.20 ID:cDEykskH0
511

--暗黒森林、保管庫、下フロア--

ツインテ「弟が失礼をしました。今治療しますね。水属性回復魔法レベル4」

ぽわぁあ

夜の番人「! ぼ、ぼくちんに回復魔法を、かけてくれるんでしか……?」

ツインテ「もちろんです。この程度で償いきれるとは思いませんが……でもせめて」

暖かい光が夜の番人の体を包む。

夜の番人「……敵に回復魔法をかけるだなんて……」

がばっ!!

アッシュ「! てめぇ!! 変なまねするんじゃねぇ!!」

夜の番人は、

夜の番人「……うっ、うぅ……ぼ、ぼく●●●んなに優しくしてもらったの……初めてでし!!」

ツインテの手を両手で握りしめ泣き始めた。

アッシュ「……あ?」

夜の番人「ぼく●●●んな顔だから子供の頃からずっと人の嫌がる仕事ばっかさせられてきたんでし! だれもぼくちんに優しい言葉をかけてくれる人なんていなかった……それなのに……嬉しいでし! ぼく●●●んなに嬉しいの初めてなんでし!!」

夜の番人は号泣している。

ポニテ「あの人●●●●●●言ってなかった?」

408: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 02:48:29.27 ID:cDEykskH0
512

--暗黒森林、宿--

ホーホー

ツインテ「い、いいんでしょうかあっさり帰してもらっちゃいましたけど……」

ポニテ「いいんじゃない? ツインテちゃんも奪還できたしフォーテちゃんも仲間入りだし、いいこと尽くめだよー!」

ポニテはツインテの膝の上に座っているフォーテの頭をなでたいと思っているのだが、中々なでられない。

レン「まー、競売品のツインテとポニテを奪われたあげく、保管庫までぼろぼろにしちゃったのにゃ。あの人責任とらされそうにゃね」

レンは久しぶりにツインテにくっついて甘えたいのだが、フォーテがツインテの膝の上に乗っているので中々実行に移せない。

アッシュ「あぁ。しかし思った以上の成果だ。……何か忘れてるような気もするがな」

アッシュは久しぶりのツインテが眩しくて見えない。

ハイ「この流れは……いけそうですよね! ね、ユーさん!」



ユーは無言でサムズアップ。

ハイ「……しかしなんか忘れてるような……」



--暗黒森林、保管庫--

夜の番人「……」

侍「……」

夜の番人「この死体はこっちで処理しちゃっていいんでしかね」

409: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 02:51:02.45 ID:cDEykskH0
513

--暗黒森林、宿--

アッシュ「――で、これからどうするんだ」

ハイ「はい?」

アッシュ「はいじゃない。ツインテを奪還することには成功した。ならこの後はどうするんだと聞いている。バッドエンドを覆すつもりで過去に飛んだのだろう?」

ハイ「……そうでした。まだ終わりじゃないんです。むしろここからが本番……」

ぎゅっ

ハイは自分の服を握り締める。

ハイ(歴史が少しずつ変わって来てる……もちろん私の手で変えるつもりだったんだけど……自分の知らない流れになるのはやっぱり怖い)

レン「ま、ここまで来たら協力するにゃ。ツインテを助けられたのはハイのおかげにゃし」

ポニテ「でも未来から来たなんてかっこいーよねー。いっぱい仲良くしよーねーハイちゃん」

ハイ「は、はい……!」

ハイは顔を上げる。

ハイ「……」

ツインテ、アッシュ、ポニテ、レン、そしてユーとフォーテ……長い間離れ離れになっていた仲間が、自分のパーティ(+α)がここにある。

ハイ(……がんばろう。今度はあんな結末にならないように!)

410: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 02:54:21.78 ID:cDEykskH0
514

--暗黒森林、宿--



~ハイの説明タイム~



ツインテ「……」

レン「ふぅ……二回目の説明ともなると大分理解できるようになったにゃ」

アッシュ「俺は三回目になる」

ポニテ「……そのトリガーってのが全ての元凶だったんだねぇー……まさかお父さんとお母さんも関係してたなんて……」

フォーテ「うん、ハイお姉ちゃんの言ってることは結構当たってると思うよ。魔王陣営に関する情報もハイお姉ちゃんの言う通りだもん」

ツインテ「ボクは元よりハイさんのことを疑ってはいませんよ」

ぱー

天使のような笑顔のツインテ。

レン「一個いいかにゃ?」

ハイ「あ、はい。何か気づいたことがありましたか?」

レン「気づいたというかなんというか、その終盤のレンの見せ場である魔王の力を封じる指輪の作成のことにゃ」

ハイ「はい」

レン「それ……今から取り掛かったほうがいいにゃよね?」

ハイ「あ、はい、そうですね。早い方が助かるかと!」

レン「その指輪のサンプルとかって今あるにゃ?」

ハイ「さん、ぷる……?」

411: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 02:56:22.04 ID:cDEykskH0
515

--暗黒森林、宿--

レン「そう、サンプルにゃ。さすがのレンも無から作り上げるのは厳しいにゃ。魔王の情報少ないし」

ハイ「えっと……勇者さんとキバさんが持っているかと……」

レン「その二人が今どこにいるかわかるにゃ?」

ハイ「ちょ、ちょっと待ってください……体験した記憶と読んだ記憶、両方探ってみますから」

レン「よろしく頼むにゃ。それがどうやらキーになりそうみたいにゃし」

ツインテ「あの」

おずおずとツインテが手をあげる。

ツインテ「勇者さんの居場所はわからないですけど、キバさんならあったことあるし、ボク探せるかもしれません」

ハイ「え!」

ツインテ「あ、もちろんボク一人では無理なんですけど、今はフォーテちゃんがいるので」

フォーテ「何!? フォーテお手伝い!? いいよっ! なんでもやるよお姉ちゃんっ!」

アッシュ「……なるほどサイドテールの力か」

レン「情報収集……それをフォーテの力で強化するのかにゃ?」

ポニテ「……なんかフォーテちゃんが絡めばなんでも出来ちゃいそうな気がしてくるなー」

412: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 02:58:27.91 ID:cDEykskH0
516

--暗黒森林、外--

ぼしゅっ

ツインテ(サイド)「うわ、ほんと範囲やばっ! この星の半分くらいのことなら手に取るようにわかるー! あ、早速キバさんみっーけ」

上空に打ち出した特大のリングから情報を引き出しているツインテは驚きの声をあげる。

アッシュ「星の半分……さすがに規格外過ぎるな」

レン「ツインテ、その情報レンに送れたりしないかにゃ?」

ツインテ(サイド)「レンちゃん舐めて貰っては困るねー。情報転送はお手のものだよ、ほいほいっと」

ばしゅっ

レン「!? がっ!……ちょ……もうちょっと情報量考えて欲しかったにゃ」

ぽたたっ

鼻血をたらすレン。

レン「……なるほど、この魔力反応にゃね」

きぃん

ポニテ「お、久々の錬金ツール」

ばしゅっ!

レン「……出来たにゃ。キバ探知レーダーにゃ!」

ぴこーんぴこーん

413: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 03:01:13.92 ID:cDEykskH0
517

--暗黒森林、外--

レン「この点滅してるのがキバの現在位置にゃ。これで誰でもキバを探しにいけるにゃ」

アッシュ「ほう、中々凄いものを作ったな。パクリだけど」

ポニテ「ほんとほんとー。デザインももろドラゴンレーダーじゃん」

レン「う、うるさいにゃ! 先人のいいところはどんどん取り入れてくのがレンのスタイルなのにゃ!」

ハイ「さすがレン先輩です! じゃあ一刻も早くキバさんに会いに行きましょう! 時間はそれほどありませんから!」

レン「うん、それにゃんだけど、レンは二手にわかれた方がいいと思うのにゃ」

ハイ「え?」

レン「聞けばこれから亜人保護団体が一悶着起こすらしいじゃにゃいか。その混乱が無ければ対魔王戦ももっと上手くいくと思うのにゃ。それに奴らがやろうとしてる超巨大魔法陣。それをそっくりそのままいただくつもりなのにゃ」

ハイ「いただくって……どういうことですか……?」

レン「その魔法陣の術式を改造するのにゃ。魔王の力を抑えるリングと同じ術式に」

ハイ「!!」

レン「そうすればもうちょい強力なものが出来るのにゃ。だからハイ達には亜人保護団体の説得に行ってもらいたいにゃ」

414: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 03:07:25.89 ID:cDEykskH0
518

--暗黒森林、外--

ハイ「なるほど……確かにそれが出来たら、前よりもずっと勝率があがりそうな気がします!」

アッシュ「決まりだな。長距離移動するならスピードが重要だ。俺はキバ捜索チームの方に入ろう」

レン「少しでも早く指輪を研究したいからレンも捜索チームにゃ」

ポニテ「あー……じゃあ私もそっちに入ろうかな。戦力不足してるし」

アッシュ、レン「「どういうこと!?」」

ツインテ「ではボクはハイさんに付いて行ってもいいですか?」

バランスを考えて発言するツインテ。

ハイ「はい、よろしくお願いします!」

フォーテ「僕はツインテお姉ちゃんと一緒にいられるならどこにでもいくよー!」

ユー「……」

俺もこっちとばかりにハイを指差す。

アッシュ「ふむ、説得チームはハイとツインテとフォーテとユー。捜索チームは俺とポニテとレン。上手い具合に分かれたな」

レン「じゃあ……さっそく出発するにゃ。もはやこの闘いは一分一秒を争うものになってるにゃ」

ポニテ「え!? 今すぐ!?……ポニテちゃん、ちょっと食事休憩とかしたいなー、なんて……」

レン「そんな時間は無いにゃ。道中で道草でも食べろにゃ」

ポニテ「ひどい!! 食べたら食べたで怒るくせに!!」

415: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 03:11:26.34 ID:cDEykskH0
519

--暗黒森林、外--

ツインテ「さっきの話ですと……代表さんはこの競売に来ていらっしゃるんですよね?」

ハイ「そう、ですね。だから私達はまた、闇に潜んでひっそり会いに行くことになるんでしょうかね」

フォーテ「わーい! 潜入捜査楽しそうー!」

ユー「……」

泥棒のようなほっかむりをつけているユー。

アッシュ「……」

すっ

アッシュは無言で拳を突き出した。

ポニテ「!……」



ハイ「……あぁ」

すすす

それを見た仲間たちは同様に拳を突き出す。

アッシュ「――出来るだけ早く戻ってくる。それまでにそっちは説得しておけ。ヘマするんじゃないぞ?」

ツインテ「はい、精一杯頑張ります」

アッシュ「あ、いやツインテに言ったわけじゃなくてね!?」

ハイ「では……皆さんよろしくお願いします。またここでお会いしましょう!!」

アッシュの声をさえぎってハイが笑いながら宣言する。

ツインテ「はい!」アッシュ「おう!」ポニテ「うん!」レン「にゃ!」ユー「……」フォーテ「おー」

ごつっ

416: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/20(火) 03:13:23.80 ID:cDEykskH0
520

--暗黒森林、代表別荘--

ひゅおぉぉおおおぉぉ……

もぬけのからと化した屋敷でたたずむハイ達。

ハイ「……どう思いますこれ」

ツインテ「えっと……何かトラブルがあって、急いで撤収した、って感じでしょうか」

ユー「……」

ユーは虫眼鏡で痕跡を探している。

フォーテ「勘のいい人みたいだねー。何かに気づいて逃げ出しちゃったんだー」

ハイ「……確かに代表君はそういう感覚優れてましたけど……」

ツインテ「……急ぎましょう。まだ遠くには行っていないはずです。夜が明ける前に追いつかないと!」

ハイ「……はい!」






……パカラッ

427: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:24:32.52 ID:mJpP1oCD0
521

--暗黒森林、外--

ぱから……

ハイ「ん……? この足音は……」

ぱからっ

ユニコーン「ひひん」

ハイ「あ、ユニちゃんですか。縄ほどいてきちゃったんですか? いけない子ですねぇ」

ツインテ「ハイさんの馬、というかユニコーン、ですか? 可愛いですね」

ツインテは近寄ってきたユニコーンの頭をなでる。

ユニコーン「ひひひん」

フォーテ「ふぉ、フォーテのほうが可愛いよっ!」

ぷくー!

ハイ「丁度今ユニちゃんを迎えに行こうと思ってた所でした。さすがユニちゃん、主の心を察するとは、です」

ユニコーン「……」

428: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:27:24.82 ID:mJpP1oCD0
522

--暗黒森林、外--

ぱからぱから

ツインテ「あ、あのハイさん……」

ハイ「なんですかツインテ先輩?」

ツインテ「えと、ユニコーンは初めてなので、その……乗ってみては駄目でしょうか?」

ハイ「いいですよ! きっとユニちゃんも喜びますよきっと。美少女大好きだし!……私は違いますけど」

そう言ってハイはツインテに手を伸ばす。

ツインテ「あ、じゃあお願いします」

にこりと笑うツインテはハイの手を握る。

ストッ

ユニコーン「!?」

その時ユニコーンに電流走る。

ユニコーン「ッ!」

慌てて振り返り、自分の背に乗る者の顔を見るユニコーン。

ハイ「? どうしましたユニちゃん?」

ユニコーン「ひ、ひひん……?」

ユニコーンは自分の背にたまたまの感触を感じていた。ユニコーンの野郎とビ  発見レーダーに間違いは無い。

ツインテ「うわぁ、高いです。動物に乗るのって、こんなに素敵なことなんですねっ!」

ユニコーン「……??」

本能は男が背に乗っていると判断しているのだが、ユニコーンの瞳に映るのは可愛い女の子のみ。ユニコーンは錯乱していた。

429: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:29:24.63 ID:mJpP1oCD0
523

--暗黒森林、外--

夜の番人「うんせ、ほいせ」

ハイ「あ、先ほどの夜の番人さん」

夜の番人「あぁツインテ様方! 先ほどはどうもでし!」

夜の番人は人並みの大きさの袋を担いで歩いていた。

ハイ「こんな時間に何をされてるんですか?」

夜の番人「やー、保管庫があんなことになっちまったんでその後片付けでし。そんでこれはその時にでた死体でし。今から埋めに行くんでし」

ハイ「う……なんだか耳が痛いですねぇ。後片付けやらせちゃってごめんなさい。本当なら私達も手伝わなきゃいけないんですが」

ツインテ「え、死者が出てしまったんですか? 全員治したと思ったのに……。あの、ボクに蘇生やらせていただけませんか?」

夜の番人「!! それは願ったりかなったりでし! むしろこちらからお願いしたいでし!」

ドサッ

そう言って夜の番人は死体を下ろし、袋から取り出した。

ごろん

侍「……」

ツインテ「……あ」

ハイ「忘れて、ましたね……」

430: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:32:14.71 ID:mJpP1oCD0
524

--暗黒森林、外--

ホーホー

侍「ぷくー」

ハイ「ご、ごめんなさい侍さん! ばたばたしてたのですっかり忘れてました! 後いい大人がぷくーやっても可愛くないです」

ツインテ「ごめんなさい侍さん……」

侍「……まー拙者も? 常識人な大人でござるし? たしょーのことじゃあ怒らないでござるが? さすがに今回のことは? ちょっといただけないんじゃないかっていう?」

ぷりぷりしてる侍。

フォーテ「おじちゃん、おこなの?」

侍「……おこじゃないです。はい」

ツインテの腰に抱きついているのがフォーテだということに気づいて一瞬で血の気が引く侍。

侍「……あの、これ……どういうことなんでしょうか。説明が欲しいです」

ハイ「あぁ、肝心な時にずっと死んでた侍さんは知らないですよね? 実はなんやかんやあって、あのフォーテさんが仲間になったんですよ!」

さりげなくひどいハイ。

侍「! なんと! それはまことでござるか!!」

ツインテ「はいそうなんです。だからもうフォーテちゃんと戦わなくてもよくなったんです。ねー?」

フォーテ「えへー」

にこやかなツインテの笑顔に釣られてにこにこするフォーテ。

侍「これはこれは……姉妹ど」

ぬるっ

よからぬ想像をした侍の頬を死者の指がなでた。

431: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:35:06.01 ID:mJpP1oCD0
525

--暗黒森林、外--

ハイ「やぁ、でもよかったです侍さんがいてくれて! もう少し人手があればなー、って思ってた所だったんですよ!」

侍「む? ヒトデ? もちろん拙者でよければ力を貸すでござるよ」

ハイ「ありがとうございます。実はやらなきゃいけないことがもう一個あったんです。時系列的に少し後のことなので、この件が終わってから対処しても間に合うと思うんですが……歴史がどこまで前と同じように進むのかわかりませんからね……」

侍「む……なるほど。して、拙者に任せたいこととは?」

ハイ「はい、実はこの後、各地の妖精郷が襲われることになります」

ツインテ、侍「「!?」」

ハイ「精霊様を殺害して十代目勇者さんの能力をパワーダウンさせるのが目的みたいです。……他にも目的があるのかもしれませんが、そこまでは私も……」

侍「ぬぅ、それは一大事でござるな……しかし困ったことがあるでござるよ。拙者はおろか、妖精郷への入り口を知る者は人間界にはあまりいないでござるよ?」

ハイ「です。でもそれは妖精さんに案内してもらうので大丈夫です」

侍「へ?」

ハイ「ここの競売品として、ぴっちさんとぱっちさんがいるはずですから、ぴっちさんたちに案内をお願いしてください」

432: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:38:23.51 ID:mJpP1oCD0
526

--暗黒森林、外--

侍「なるほど……確かに妖精についていけば妖精郷にたどり着くでござろうが……果たして妖精がこんな話を信じてくれるのかどうか」

フォーテ「だいじょーぶ、フォーテが呪いをかけちゃえば簡単だからーっ!」

びくっ

フォーテが言葉を発するだけで、条件反射で冷や汗をかいてしまう侍。

ツインテ「駄目ですよそんなこと。ぴっちさん達はいい妖精さん達なんですから。ちゃんとボクが説明します」

フォーテ「むーっ……」

ツインテのお腹に顔をうずめて左右に動かすフォーテ。

ハイ「でも、そんな時間も無いんですよね。私達はすぐ追わなくちゃならないですので」

ツインテ「あ……」

ハイ「ですから侍さん、そちらは侍さんに任せてもいいですか?」

侍「……やれやれ、随分と投げやりでござるな。それとも信用のたまものなんでござろうか」

よっこいしょ、と侍は立ち上がる。

侍「――麗しの女子達にお願いされたら、断るわけにはいかないでござるよ」

いい顔の侍。

フォーテ「駄目だったら僕がお仕置きするねっ!」

侍「ッ!?」

情け無い顔の侍。

433: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:40:23.94 ID:mJpP1oCD0
527

--暗黒森林、外--

ユニコーン「ひひーん」

ハイ「ツインテ先輩、代表君はこっちの方角でいいんですよね?」

ツインテ「はい。サイドさんが調べましたから間違い無いかと」

ハイ「了解です。侍さん、そっちはよろしくお願いしますね」

侍「心得た」

フォーテ「ねーえー、ツインテお姉ちゃーん。こっちに乗らないのー? これはこれで乗り心地いいんだよー?」

オオオオオ

フォーテは死者の腕の上であぐらをかいている。

ツインテ「ごめんね、ちょっとユニさんに乗ってみたくて」

ユー「……」

コキッ

ユーは準備運動を済ませ、首を鳴らす。

ハイ「では行きますよ! はいやユニちゃん!」

ばしっ!

ユニコーン「ひひーん!」

だからっだからっだからっ!!




だだからっ

434: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:41:33.21 ID:mJpP1oCD0
528

--暗黒森林--

だからっだからっだからっ!

夜の森を駆けるハイ達。

ツインテ「わー……すっごい速いです! んっ!……振動が……ちょっと痛いですけど」

股をもじもじさせるツインテ。

ハイ「これでもユニちゃんは振動が無い方なんですよ? そういうことも考えて走れる優秀な子なんです」

ユニコーン「ひひーん!」

だからっだからっだだからっ!

ハイ「……」

ハイは何かを察して左後方を振り返った。

ユー「?」

ユーはどうかしたのかとハイに問う。

ハイ「……いえ……少し気になったもので。勘違い、かな?」

435: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:42:30.93 ID:mJpP1oCD0
529

--暗黒森林--

だからっだからっだからっ!

フォーテ「うー! いいなぁハイお姉ちゃん、ツインテお姉ちゃんにぎゅっとしてもらって……羨ましい……羨まし過ぎて……僕……」

オオオオオオ

死者の腕が脈動する。

ぴくっ

フォーテ「」

何かを感じ取ったフォーテが左後方を確認する。遅れてユーも視線を向けた。

フォーテ「……」

ユー「……」

だからっだからっだだからっ!

ハイ「っ! やっぱり!!」

バッ!!

ハイはパチンコを取り出して狙いをつけた。

ツインテ「え? どうかしたんですか? ハイさん」

ハイ「何者かはわかりませんが、私達を追ってきてる人がいます!」

ツインテ「!?」

436: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:43:18.19 ID:mJpP1oCD0
530

--暗黒森林--

だからっだからっだからっ!
だだからっだだからっだだからっ!

ハイ「……ユニちゃんの足音に巧妙に隠してる……もっと早く気づけていたらこんな場所で戦うことにはならなかったのに」

ひょい

ツインテ「あ、あれ?」

死者の腕がツインテを抱き上げた。

フォーテ「ツインテお姉ちゃんは僕が護るよ。そっちの方が安心だし安全だよね?」

ハイ「はい、お願いします!」

ユー「……」

だだからっだだからっだだからっ!!

敵はスピードを上げ、木々の向こうでハイ達と並走している。

???「くすくすくす」

暗闇の中にいる敵が笑う。

437: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:44:04.47 ID:mJpP1oCD0
531

--暗黒森林--

だからっだからっだからっ!
だだからっだだからっだだからっ!

ハイ「……」

ツインテ「は、ハイさん……」

ハイ「……っ!」

びしゅっ!

ハイは暗闇に向かって小石を放つ。

びしっ!

ハイ「」

攻撃は成功した。しかしほぼ同時に自分の肩に小石が当たった。

ハイ「じょ、条件達成、レベルアップ! レベル2、騎士!!」

438: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:45:30.91 ID:mJpP1oCD0
532

--草原--

ぼふっ!

変身を終えると同時に木々を抜けた。

ばささっ!

ハイ「っ!」

ばっ!!

並走していた者が初めて姿を現した。

???「くすくすくす」

二角を持った六本足の黒いバイコーン。そしてそれに跨る紫色の兜と甲冑を纏った騎士。

だだからっ!

それは方向を急に変えるとハイに向かって突進する。

ハイ「っ! ユニちゃん!」

ユニコーン「ひひーん!!」

だからっだからっだからっ!

ハイもそれに向かっていく。そしてお互いランスを繰り出した。

ボッ
ボッ

ガシイイイイイイイイイイイイン!!

お互いのランスは両方とも相手の脇腹をかすめ、金属と金属がこすれあって火花が散った。

???「くすくすくす」

すれ違う瞬間、ハイの耳元で笑う敵。

439: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:47:02.58 ID:mJpP1oCD0
533

--草原--

グッ

ユー「……!」

フォーテ「やめたほうがいーよお兄ちゃん。お兄ちゃんもさっき力を使いすぎたはずでしょー?」

ユー「……」

加勢しようとしたユーを止めるフォーテ。

フォーテ「……あれだけ力を使ったんだもん、今は結構厳しいんでしょ? だからここは見に徹しようよー。アレがなんなのか見極めておきたいし。だからお姉ちゃんも加勢したいとかいっちゃ駄目だからねっ」

ツインテ「うぅ……で、でもハイさんが……」

ガキン! ガキキン!! ガガアアアン!!

ハイ「あああああああああああ!!」
???「あはははははははははは!!」

ランスを突き合う二人。どちらも決定打を繰り出せずにいる。

フォーテ「多分遅れはとらないと思うよ」

ハイ(っ! 仕方ない……私には次のレベルアップがあるし、ツインテ先輩という回復役もいる! ここは肉を切らせて骨を絶つ!)

440: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:47:45.88 ID:mJpP1oCD0
534

--草原--

ハイ「行って! ユニちゃん!!」

だんっ!!

ハイの叫びと同時にユニコーンが全力で走り出す。

???「……くす」

だだんっ!!

紫の騎士も同様に走り出す。

ハイ「はああああああああああああああああああああ!!」

???「くすくす」

ズガシャアアアアアアア!!

ハイ「――がはっ!!」

ハイのランスは敵の、敵のランスはハイの胸部をそれぞれ貫通した。

???「げっほっ……」

441: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:49:54.13 ID:mJpP1oCD0
535

--草原--

ばしゃしゃっ!!

お互いランスから手を離し、自分の胸に刺さったランスを引き抜く。

ズボッ!!

ハイ(い、痛過ぎる……でもこれで……敵を、倒した)

だからっ

ハイ「じょ、条件達成、レベルアップ」
???「条件達成、レベルアップ」

ハイ「!?」

ハイと同じような台詞がもう一つ。

ハイ(そんな……)「れ、レベル3、銃士!!」

???「レベル3、ガンナー」

バシュッ!!

ハイと敵は同タイミングで変身を終えた。

ハイ「う……そ」

しゅうぅうう……

バイコーンに乗る敵の姿が甲冑から布面積の少ないカウガールの衣装へと変わる。兜も無くなり、素顔が表に出る。

ツインテ「! そんな……」

???「くすくす。なぁに? そんなにショックだったぁ?」

ハイ「嘘……わ……私?」

敵は、ハイと瓜二つの顔立ちだった。

442: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:50:38.69 ID:mJpP1oCD0
536

--草原--

ジャコッ

???改めビィ「くすくすくす」

ハイ「はっ!」

ガガガガガガガガガガッ!!

一瞬遅れて銃を構えるハイ。

キンキンビチッ!

撃ちもらした銃弾がハイの腕をかすめていく。

ハイ「っ!!」

ガガガガガガガガガガガン!!

ハイ「っ! ユニちゃん! 左前方の林の中に入って!!」

ユニコーン「ひひーん!!」

だからっだからっ!!

ビィ「あれぇー? 逃げちゃうのかなぁー?……逃がさないけど?」

だだからっだだからっ!!

チュンチュンチュイン!!

443: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:53:25.02 ID:mJpP1oCD0
537

--草原--

ガガガガガッ……

加速するハイ達を追うツインテ達。

ツインテ「……あれが話に聞いた別ルート存在……それもハイさんの……」

フォーテ(おかしいな。僕あんなのがいるなんて聞いてないよ? しかもなんでトリガーは、残り少ない力を使ってまであんなのの別ルート体を呼び寄せたのかなー?)

ユー「……」



--林--

ガガガガガガガ!!

真っ暗闇の中で打ち合う二人。見えるものは発砲の光のみ。

どくんどくんどくん!

ハイ(なんで……なんで私の別ルートが……? ありえないでしょ、私は普通の一般人なのに、特別な力も無いのに……どうせ別ルートからひっぱってくるならツインテ先輩とかもっといい人がいるはずなのに!)

ガガガガガガガッ!! ビチチッ!!

銃弾が頬をかすめる。

ハイ(っつ! 動揺してる場合じゃない……今はなんとしても、私を止めなくちゃ!!)

ハイは覚悟を決める。

ハイ「たとえ、相打ちになってでも!!」

フォーテ「――その必要は無いよ、ハイお姉ちゃんっ」

ハイ、ビィ「「!?」」

ズズッ

突如暗闇の中から現れたフォーテ。

ズドズブブブブブブッ!!

ビィ「」

そしてありとあらゆる方向から死者の腕が繰り出され、一瞬にしてビィの体は引き裂かれた。

ブチブチブチィッ!!

フォーテ「観察は終わりっ。結局考えても意図はわからなかったからー、とりあえず殺しちゃうねっ!」

444: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:55:11.68 ID:mJpP1oCD0
538

--林--

ビィ「ごふっ!!」

四肢を捻じ切られ、はらわたを引きずり出され、瞬く間に無残な姿になったビィ。

ビィ「げほっごほっ!……くす」

だが、ビィは笑うのをやめない。

フォーテ「」

そしてフォーテだけがその違和感に気づく。

フォーテ「――何この体……」

ビィの体内にあったものは

どどくんどどくん

――五つの心臓。

フォーテ「」

フォーテは、理解出来ないそれから感じる何かに恐怖を抱いた。

フォーテ「う、うわあああああああああああああ!!」

ボッ!!

フォーテが膨大な魔力をこめて繰り出す呪いの一撃。

ビィ「――最終条件達成」

それが届く一瞬前に

ビィ「レベルアップ、レベル4、アークエネミー」

と、ビィが呟いた。

445: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:58:42.55 ID:mJpP1oCD0
539

--林--

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

フォーテ「あああああああああああああああ!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアン!! ドギャギャギャアアアアアアアアアアン!!

魔法の威力換算でレベル6相当の攻撃を乱発するフォーテ。木々は全て吹き飛び、辺りは荒地と化していく。

ハイ「ちょっ! フォーテさん! やりすぎ!! オーバーキル過ぎだから!!」

ズンッ

フォーテ「――あ」

暴走するフォーテの体を杭が貫いた。

ハイ「!? ふぉ、」

フォーテ「あ……う、嘘だ……」

ビィ「あー、危なかったー」

ギャリリリリリリリリリリリリリリリイイイイイイイイイイ!!

そしてその杭がドリル回転。辺り一帯に飛び散るフォーテの肉片。

ビチャチャチャッ!!

ハイ「フォーテさん!!」

フォーテ「あ、ありえ、ない……僕は、魔王だって、倒せる、は、ず……」

ビィ「そーだねー。フォーテちゃんは確かに最強だよねー。でもぉー? フォーテちゃんでも完全な魔王は倒せないよね? よそから引っ張ってきただけのまがい物の魔王と違ってー、私は勇者因子を持たない者からのダメージはうーケーつーけーなーいーのーでーすーーーーー」

446: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/01/27(火) 02:59:30.86 ID:mJpP1oCD0
540

--林--

ガシガシガシガシガシガシ!!

死者の腕がフォーテからビィを引き離そうと掴むのだが、

ぱんっ

ビィが払っただけで消滅していく。

ビィ「残念ッ★」

グシャッ!!

ビィは、フォーテの頭部を握りつぶした。

ハイ「あ……あ……」

ガシャッ

紫色と濃い赤色が混ざった鎧。それを纏うビィからは、確かに魔王の圧力を感じていた。

ハイ(これが私の、別ルート……)

ビィ「さて、と」

ビィは血塗れたパイルバンカーをハイへと向ける。

ビィ「死んでもらうよ、私ぃ」

459: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 22:34:08.83 ID:Af2PAnFx0
541

--林--

ハイ「私を……殺す?」

ビィ「そ、私を殺す★」

びちゃ、びちゃ、びちゃ

ビィは血溜まりをスキップしてハイに近づいていく。

ハイ(私を殺す……そりゃトリガーが別ルートからわざわざ引っ張ってきた存在なんですから、盗賊王さんのように何かしら戦う理由があるんでしょうけど……)

ビィ「ふふ」

ハイ(でも、私がここまで変貌するルートなんて存在するんでしょうか……)

ビィ「じゃあ『次』が待ってるから手早く済ませちゃうね」

シュッ

ビィはハイにパイルバンカーを押し付けた。



フォーテ『それで勝ったつもりっ?』

ハイ「!」

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

血溜まりが波打って、無数の死者の腕がビィに掴みかかった。

ビィ「――んーん。思ってないよ、フォーテちゃんはしぶといもんね」

シュババッ!!

フォーテ「!?」

ズガッ!!

その全ての攻撃を粉砕し、闇に潜むフォーテの頭部を引きずり出し、パイルバンカーを突き立てた。

460: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 22:36:24.84 ID:Af2PAnFx0
542

--林--

フォーテ「こ、攻撃が、読まれて……」(ぐ、なんか、体が、だるい。おもう、ように、うごかない)

ビィ「チミドロミキサー★」

ギャリギャリギャリギャリギャリギャリーーーー!!

フォーテ「――ッ――ッッ!!」

ハイ「ありえ、ません」

チュルルルルルゥン……ズポッ

ビィ「あらららー、随分見通しよくなっちゃったねー、フォーテちゃんー。フォーテちゃん越しに地面が見えるー。あははっ★」

ハイ「……私がフォーテさんを完封しちゃうなんて、ありえない……!」

シャッ、シャッ、シャッ、ザッ!!

ユー「……!」

タタタッ!

ツインテ「!? フォーテちゃん!!」

そこに遅れてユー達がやってきた。

ビィ「おやおやおやー?」

ユー「!」

シャキィン!!

ユーは一瞬で状況を理解すると、レイピアを抜いてビィに向かっていく。

461: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 22:39:28.61 ID:Af2PAnFx0
543

--林--

ザザザザザッ!!

ビィ「あらーユーさんじゃないですかー、お久しぶりー。っと……今の姿だとユーさん相手じゃ超不利だねぇ」

ビィは自分の姿を確認して笑う。

ユー「!」

ボボボボボッ!!

ユーは無防備なビィに向かってレイピアのラッシュを叩きこむ。

ビィ「じゃーレベルダウン、レベル3」

ブンッ

ハイ(!! あえてレベルダウンすることで勇者因子から逃れるつもり!?)

ずぼぼっ!

攻撃が到達するよりも早く地面がめくりあがり、そこから何かが飛び出してユーのレイピアを受け止めた。

ガギギギギギギィイイイイン!!

ビィ「――ネクロマンサー」

ハイ(ネクロ、マンサー……? 私と微妙にレベルの職業が、違う……!)

ビィ「くすくすくす。ありがとうー下僕共ー★」

ザッ!!

ハイ「!」

気づけば無数の亡者がハイ達を取り囲んでいた。

462: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 22:41:55.31 ID:Af2PAnFx0
544

--林--

オオオオオオオオオオオオオ……

ハイ「……! こんなに沢山の死者が!?」

ツインテ「フォーテちゃん! 今回復魔法をかけるからね!」

ユー「!」

ズギャギャギャギャギャギャギャーーー!!

亡者「おあああああぁああ」

迫る亡者を次々に吹き飛ばしていくユー。しかし少しずつビィから距離を離されていく。

ビィ「あっはっ★ 凄い凄いさすがユーさんだぁ……。この程度の亡者の群れなんてなんともないよねぇ……じゃあ」

ドスッ

ビィは自分の胸を指で貫いた。

ハイ「!」

ごぽっ、びちゃちゃっ

ビィ「最終条件達成、レベル4、アークエネミー」

ボッ!!

ハイ「なっ!?」

ビィは再びレベル4へと変身する。

ビィ「……倒すなら魔王にならなきゃね」



ユー「!!」

ビィが掌を向けた瞬間、ユーは防御の構えを取る。

ユー「対単体六属性攻撃魔法、レベル5」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

463: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 22:47:06.45 ID:Af2PAnFx0
545

--荒地--

ハイ「ユーさーーーーーーーーーーん!!」

しゅううう……

ハイ「……そんな……」

しゅぅううううう……

ビィ「あっは★ かったーーーーい。複合魔法の、それも六属性のレベル5直撃で生きてるとか、いくら防御型とはいえちょっと化物すぎませーん?」

ユー「ッ……ッ」

ぶしゅっ、ぶしっ!

ガクガクと震えるユー。レイピアも鎧も破壊され、もはや立っているのがやっとだった。

ハイ(よかった生きてた!……でもおかしい……これはおかしすぎる……!)

カチャッ

ハイ「はああああああああああ!!」

ユーからビィを引き離すために、ハイは銃を連射する。

ガガガガガガガガ!! チュインチュイーン!!

ビィ「ん、そんなの意味無いのに私ったらおばかさん」

ハイ(誰も通らないような辺鄙な場所なのに、こんなに大量に死体が埋まってるもの……? それもまだ埋められて新しい死体が……!)

ビィ「うっとおしいよ、氷属性攻撃魔法レベル4」

ピキャアアアアアアアン!!

ハイ「くっ……!」

バッ!!

ハイは回避しようとするのだが

ビシッ

左足をもっていかれる。

464: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 22:49:54.82 ID:Af2PAnFx0
546

--荒地--

バキバキバキーーン!!

ハイ「ぐっ……あ!」(動きも、おかし過ぎるんだ……! 私は、たとえ魔王になったとしてもここまで戦えない……だっていうのにこれは……まるで……)

ビィ「全てを見通してきたような感じだなって、思ってるでしょ?」

ハイ「」

ビィ「くすくす。自分だけだと思った?……くすくす」

ハイ「――」

ビィは矛先を再びハイの方向へ。

びちゃ、びちゃ、ざく、ざく

ビィ「フォーテちゃんの動きもユーさんの動きもツインテ先輩の動きも、私の動きも……なぁーんでも知ってるよん★ 持たざる凡人は、こうでもしなきゃ勝てないものだからねぇ」

ハイ(――この人が歩んできたルートは)

ビィ「じゃあ、バイバイねー」

バッッ!

フォーテ「やらせないよっ」

ツインテ「やらせません!!」

復活したフォーテとツインテがビィの背後から襲い掛かる。

ビィ「――うん、知ってる」

465: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 22:51:47.37 ID:Af2PAnFx0
547

--荒地--

フォーテ「くらっ、ちゃえーーーーーーーーーーー!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

フォーテの規格外の一撃でさえ、魔王化しているビィには届かない。

ツインテ「!」

フォーテ「やっぱり……本物、だ」

ずるるるる!!

続いてフォーテは闇を広げて死者の腕を大量展開する。

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

ビィ「今度は数で押せばなんとかなるって? いやいやそんなわけないでしょう? まさか本気で効くと思ってるのかな?」

フォーテ「……いや」

ガシガシガシガシ!!

ハイ「っえ!?」

死者の腕はハイ達を抱えると一目散に逃げ出した。

シャーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

フォーテ「……超むかつくけど、今回は逃げるっ」

466: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 22:53:15.59 ID:Af2PAnFx0
548

--荒地--

ダバダバダバダバ!!

ハイ「!! あのフォーテさんが、逃げる!?」

ツインテ「フォーテちゃん……」

フォーテ「し、仕方ないでしょっ! 今は僕だって本調子じゃないし、それにツインテお姉ちゃんを傷つけさせるわけにはいかないのっ! そのためならっ、僕はなんだってやるっ!!」

ビィ「ぽかーん」

ビィは去っていくフォーテ達をただ眺めていた。

ビィ「ふぉ、フォーテちゃんが私なんかから、にっ、逃げるなんて……」

くねくね

ビィは大げさに体を捩らせて――言った。

ビィ「知ってた★」

ニィ……

夜の番人「ぎしゅるるるるる!!」

ツインテ「!? あの人は」

ハイ達の進行方向で待ち構えているのは、夜の番人。

ハイ「夜の番人さん!? なんでこんな所に……」

フォーテ「……あれ死体だ。あのお姉ちゃんに操られてるよっ!」

夜の番人「しゅぎゃああああああああああ!!」

バッ!!

フォーテ「邪魔だよっ!」

どぎゃっ!!

フォーテは躊躇無く夜の番人の頭を破壊する。

467: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 22:55:26.66 ID:Af2PAnFx0
549

--荒地--

ダバダバダバダバ!!

ツインテ「ちょっ、フォーテちゃん!? 絶対回復領域!」

ぱしゅん!

ツインテは夜の番人の横を通り過ぎたタイミングで回復と蘇生を同時にかける。

ツインテ「ううぅ……そんなぽんぽん人を殺しちゃいけませんよぉ。悔い改めなきゃだめなのにぃ」

フォーテ「……」

ダバダバダバダバ!!

ハイ「それより追ってきてません、ね……? 不自然です。まさか逃げ切れたんでしょうか?」

フォーテ「……に」

ユー「……!」

みんなの意識が後方にいっている中、ユーのみが気づく。

フォーテ「……」

フォーテが全く動かなくなっていることに。



じゃり

ビィ「くすくす。ぽんぽん頭ふっ飛ばしちゃうのも、私知ってるんだ~~」



ぱっ

ハイ「! 闇が消えて!?」

ドサドサドサドサー!!

ハイ「ぎゃんっ!!」

闇が引き、死者の腕が消滅したことでハイ達は地面に投げ出されてしまう。

468: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 22:58:23.55 ID:Af2PAnFx0
550

--荒地--

ツインテ「あたたたっ……ふぉ、フォーテちゃん大丈夫!?」

フォーテ(あ り え な い  た い か ん す ぴ ー ど が お そ す ぎ る  こ れ じ ゃ ま る で  あ の と き ぼ く が や っ た の と お な じ だ)

じゃり……

ビィ「くすくすくす。でっばっふ~~」

ハイ「!?」

いつのまにか近づいて来ていたビィ。

フォーテ「こ……の」

ビィ「わぁお。これだけやってもまだ動いちゃう? さすがだねー」

ビィはフォーテに人差し指を向けると、その先端が光る。

ビィ「ではではダメ押し。デバフっ、デバフっ、デバフー★」

ぎょんぎょんぎょんっ!!

フォーテ「  」

フォーテは、微動だにしなくなった。

ビィ「くすくす。デバフ特化魔王とか新しいよね」

ユー「……!」

ぐぐっ

ユーは先ほどのダメージが響いて立ち上がれない。

ビィ「――始まりの勇者様と魔王を超えた化物。くすくすくす。愉快だわぁ痛快だわぁジャイアントキリングだわぁ。その二人を相手にして勝っちゃうのが、『ただの人間』だっていうんだから」

469: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 23:01:24.64 ID:Af2PAnFx0
551

--荒地--

ビィ「くすくすくす」

ツインテ「っ!」

たたっ!

ツインテは妨害魔法を解除しようとフォーテに近づく。

ハイ(! 解除の時間を稼がなきゃ!)「り、理解できません……! 『レベル』は、そう簡単にレベルアップ出来るものじゃないんです!」

ビィ「……はい?」

ハイは突然大声を出してビィの意識を自分に向けさせる。

ハイ「『レベル』はリスクが大きいだけ強くなれる職業……だからただの人間でも強くなれるんです……なのに、なのにあなたの条件はあまりに軽過ぎる」

ビィ「……そんなことないよ、レベルアップ条件は私と貴女は一緒」

ハイ「――え? い、いや、でも、レベル4は一人じゃ絶対になることが出来ないはずじゃ」

ビィ「察しが悪いねー。それともわざと現実から目を背けてるのかな?」

ぐちゅ、ぎちちち

ビィは……自分の胸を開いて見せた。

ぶしゅっ! ぐちゅちゅっ!

ビィ「――ほら、いるよ? みんなはここに」

どくん!

ビィが見せたのは五つの心臓。

ハイ「!?」

ビィ「これが私のパーティ★」

470: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 23:05:31.43 ID:Af2PAnFx0
552

--荒地--

ハイ「そ、それはまさか……!! そんな……そんな方法で一人パーティを!!」

ビィ「こんな方法思いつかなかったでしょー? くすくす。レベルの弱点も頑張れば克服できちゃうんだねー★」

ハイ(かんがえ、つく? そういうことじゃない!! 自分の仲間なのに、大切な人たちなのに……なんで、なんでそんなことを)

ぐに

ビィ「この少し大きいのがアッシュ先輩でー、この色が薄めの可愛いのがツインテ先輩のでー」

ハイ「――どうして貴女はそんなことが出来るんですかっっ!!!!」

ビィ「」

ツインテ「……ハイさん」

ユー「……」

ビィ「くすくすくす……素敵な表情するね……まだ本当の絶望を知らない時の私の顔だぁ。懐かしいなぁ……くすくすくすくす、くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす」

ハイ「あな、たは……」

ジャリ

フォーテ「やっぱり、それ、ツインテお姉ちゃんのだったんだ……」

ハイ「フォーテさん……」

デバフを解除されたフォーテがビィを睨んでいる。

フォーテ「許せない……どのルートのツインテお姉ちゃんだとしても、それはツインテお姉ちゃんなんだ……ツインテお姉ちゃんを傷つけるやつは、僕が絶対に許さない!!!!!!!!」

ぼっ!!

溢れる膨大な魔力。

ビィ「――何度も回復&復活でさすがにうんざりかな。このルートは、ここでおしまいにしておきましょうか」

ぼっ

フォーテ「」

だが、魔王であるビィの魔力がそれを上回った。

ビィ「サヨナラ」

471: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 23:06:53.83 ID:Af2PAnFx0
553

--荒地--

ひゅっ、ドギャシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

ビィ「!」

ハイ「……あ」

ビィの魔力弾がハイ達に届く前に、蒼い閃光が間に割って入った。

???「……ぢっ!!」

ばしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

そしてそれは魔力弾を空中に弾き飛ばす。

どがあああああああああああああああああああああああああああああん!!

空中で大爆発を起こす魔力弾。そして、弾いたその人物は焦げ付いたマントを投げ捨てた。

ふぁさっ

ハイ「あなたは……十代目さん……」

???改め十代目「……」

472: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 23:09:36.94 ID:Af2PAnFx0
554

--荒地--

ビィ「……十代目さん……?……そんなことって、あるの?」

ほとんど表情を変えなかったビィだが、ハイの眼には微かな動揺が見て取れた。

十代目「――初めて見るが……どうやらお前は魔王のようだな」

ビィ(勇者因子が反応したのかな?)「やだなー、間違えてますよ勇者様。私はただのかよわい一般人です★」

ちゃき

十代目「……倒させてもらう」

だっ、ザンッ!!

ビィ「ッ」

一瞬で近寄った十代目は防御するビィの左腕を切り裂いた。

ぶしゅっ!! ぽたたたっ

ビィ「……聞く耳、持ちませんか。やれやれ強引ですねー」

ハイ(傷を与えられた……い、いやそれもそうか……だって十代目さんは、まごうことなき勇者なんだからっ!!)

十代目「……」

ビィ「……やー……面食らっちゃったなー。まさか十代目さんがここで出てくるルートがあったなんてねー。れろっ」

傷口をいやらしく舐めるビィ。

473: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 23:12:55.00 ID:Af2PAnFx0
555

--荒地--

ビィ「参ったなぁ……フォーテちゃんにユーさんに十代目さん。この面子をいっぺんに相手どるのはさすがに辛過ぎだよねぇ……」

鎧使い「――は? それだけじゃないんだけど?」

ざざざんっ!!

戦士「……うすっ!」

僧侶「きゃははっ!!」

シノビ「…シノビン…推参」

ハイ「皆さん……!」

いつの間にかハイ達の隣に十代目勇者パーティが勢ぞろいしていた。

ビィ「はぁ」

ビィはわざとらしく困ったポーズ。

ビィ「……しょーがない、今日は引きますかー。あーあ、今回は長丁場になりそうだーあ」

くるっ

ビィ「ちゃお★」

ビィはひらひらと手を振ると後ろを向いて歩いていく。

鎧使い「あ、まて!……十代目どうする? 追うか?」

十代目「……」

十代目はビィを追うことは無く、ビィの気配が無くなるまで臨戦態勢を解かなかった。

ツー

十代目「……」

十代目は一筋の血を額から流した。

474: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 23:14:39.64 ID:Af2PAnFx0
556

--荒地--

ツインテ「たす……かったんですか?」

へなへなと座り込むツインテ。

フォーテ「むすー」

やられっぱなしのためむくれるフォーテ。

ハイ「……あっ、そうか時間切れだったんだ!!……頭が回らなくて気づかなかったけど、もう彼女は戦えなかったんだ!」

ツインテ「時間切れ? どういうことですか?」

ハイ「……人は何にでも成れます。勇者にだろうと魔王にだろうと……それが人の可能性の力。それがレベル。でもレベルには時間制限があるんですよ」



--草原--

だだからっだだからっだだからっ
ばしゅーっ

禍々しい鎧が消滅し、ビィは元の 着のような格好に戻る。

ビィ「ふぅー……やれやれ、これだけやってもまだ見てないパターンがあるんだねぇ……これは先が長いということなのかしらん……」

バイコーン「ぶひるんっ!!」

ビィ「くすくす。大丈夫よ、諦めたりはしないわバイちゃん。私は――必ずエンディングを迎えてみせるんだから」

475: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 23:17:45.05 ID:Af2PAnFx0
557

--荒地--

ホーホー

ハイ「……でも本当に助かりました。ありがとうございます十代目さん方。九死に一生でしたよ」

十代目「いや……気にしなくていい。人助けは勇者の勤めなのだから。それよりもここで何があったのか詳しく教えてくれないか? 私達は最近まで前線で戦っていてこっちの情報に疎いんだ」

ハイ(そう、でした。今の時期だと十代目さんは魔王軍との最前線で……ん、北の王国の滅亡が無くなったからこの人たちの動きも変わったんですね?)

がくっ

鎧使い「ちょっと! 大丈夫なの? ほらしっかりなさい。し、心配してるわけじゃないんだからねっ!」

鎧使いは気が抜けて崩れ落ちたハイを支える。

ハイ「す、すいません、安心したら気が抜けちゃったみたいで……」

フォーテ「ハイお姉ちゃん、疲れてるとは思うけど説明するのはハイお姉ちゃんの役目だよ? ハイお姉ちゃんが僕らの指針で、僕らの中じゃ一番持ってる情報が多いんだから」

ハイ「ん。はい、そうですね。ろくに戦ってもいないんですし、せめて説明くらいしなきゃです」

十代目「……?」

ハイ(十代目さん達を説得するには材料が少なすぎる気がするけど、でも話してみなくちゃ始まらない。少なくとも今の私にはそれしかやれないんだから)

476: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 23:20:10.71 ID:Af2PAnFx0
558

--荒地--

ホーホー

ハイ「――と、いうことなんですけれど……」

十代目「……」

鎧使い「う、胡散臭過ぎる……(実は北の王国に寄った時に北の王様に話を聞いてるんだけど……さすがに未来から来たってのは聞いてない……)ねぇ十代目、この話」

十代目「わかった、信じよう」

鎧使い「……嘘ー。普通に信じちゃうんだー。……お人よしすぎるだなんて、思ってないんだからねっ!?」

十代目「お人よしとかそういうことじゃなくて。私は彼女の話が信じるに足ると思っただけなんだ」

鎧使い「どーこーがーよー?」

十代目「理由はいくつかあるが、あえて言う必要もないだろう」

鎧使い「……納得しがたいからその説明を求めているのに」

十代目「……」(なんにせよ、彼女らが魔王に狙われていたのは事実。それだけ重要な人間だということ……)

477: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 23:22:27.66 ID:Af2PAnFx0
559

--荒地--

十代目「で、これから君達はどうするつもりだ?」

ハイ「あ、はい。私達は……あ! そういえば代表君を追ってたんだった!!」

ツインテ「! 忘れてました! 用事の途中で裏ボスみたいな人とエンカウントしたせいです……」

フォーテ「ふぁーあ。むにゃむにゃ」

ユー「……」

回復魔法をかけて欲しいのだが全身に大ダメージを受けているためジェスチャーできずにもがいているユー。

十代目「代表? 亜人保護団体の代表のことか」

ハイ「はい、そうです。すみません、このお礼はまた今度させてください。私達は急がなくちゃいけないので……ユニちゃん!」

ユニコーン「ひひーん!」

ツインテ「ほらフォーテちゃん起きて。もう出発するよ?」

フォーテ「えー? フォーテ眠いよぉ」

ツインテ「ごめんね、でもフォーテちゃんの力が無いと私達移動できなくて」

478: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/03(火) 23:26:16.95 ID:Af2PAnFx0
560

--荒地--

十代目「それならこういうのはどうだ? ピューイ」

十代目が指笛を鳴らすと

ばさっばさっ!!

大きなロック鳥が現れた。

十代目「風のピューイだ。こいつに乗っていこう」

ハイ「あ、ピューイってオノマトペじゃなかったんですね」

ピューイ「ヒューイ」

十代目「さぁ、急ぐのだろう? 乗りなさい」

そう言って一番最初に乗り込む十代目。

ハイ「……ん?」

十代目「では鎧使い。しばらくの間パーティのリーダー役を任せるぞ」

鎧使い「……んん!? なんだって!?」

十代目「私はしばらくハイ達の手伝いをすることにする。鎧使い達は先ほどの話にでていた、精霊郷の襲撃に備えてくれ」

鎧使い「ちょっ、ちょちょちょ! どういうことどういうこと!! 勝手に何決めてんの!?」

ばさっ、ばさっ、ばさっ

ハイ達を乗せたロック鳥が夜の空へと吸い込まれていく。

鎧使い「……え、ろくに説明もしないで本当に行っちゃうんだ!?」



十代目が仲間になった。

487: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:00:23.20 ID:FfqgIQul0
561

--???--

カツン、カツン、カツン

ビィ「たっだーいまぁー。はーぁ。疲れたわー……」

桃鳥「あらビィさん、おかえりなさいですって私思っちゃいます」

ぱたぱたと飛びながらビィを出迎える桃鳥。

ビィ「ただいまですー。桃鳥さん相変わらずメンドクサイ語尾ですねー」

ガション、ガション

銀蜘蛛「アリャ? ビィチャンジャン。オカエリーー。ドッカイッテタンデショ? ナンカオミヤゲナイノー?」

ビィ「本当なら首の一つや二つ持って帰る予定だったんですけどねぇー、中々うまくいかないものなのですね」

ぺんぺん、と銀蜘蛛の装甲を叩く。

トリガー「お帰り、ビィちゃん」

ビィ「……ただいま、トリガーさん」

488: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:03:49.89 ID:FfqgIQul0
562

--空--

びゅおおぉおおおお!!

ツインテ「思ったり寒くないといいますか、あまり風が無いんですね、こんなに早く飛んでいるのに」

ハイ「多分、軽い魔力障壁が張ってあるんだと思います。今の私じゃどんなものなのか探れないのでよくわかりませんが」

ツインテ「あっ……ボクったら考えなしでしたね。もっとしっかりしないといけないのに」

そう言って恥ずかしそうに笑うツインテ。ただそれだけで周囲にいる人間の精神障壁を破壊するのだ。

ハイ(ほんと可愛い人……これはアッシュ先輩じゃなくてもころっとやられちゃいますね……かなわないなぁ)

フォーテ「( ˘ω˘)スヤァ」

ユー「( ˘ω˘)スヤァ」

ヒュオォオオ

十代目「ん……ピューイ、もう少し左にそれろ、この先乱気流がある」

ピューイ「ゴシャッセー」

ツインテ「……さっきから気になってたんですけど、十代目さんはどうしてあのようなことが事前にわかるのでしょうか」

ハイ「あぁ、十代目さんは猫亜人三大希少種の一つ、『蒼天』だと聞きました。そして蒼天は自然と会話することが出来るのだとか。だからきっと今回もその能力で風に聞いたんじゃないでしょうか」

489: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:07:39.94 ID:FfqgIQul0
563

--空--

ツインテ「へー、なるほど。そんな素敵な力があるなんて、やっぱり凄い方なんですね。でもハイさんも凄いです。博識なんですね」

ハイ「いえ、私は凄く無いですよ。私はやり直してるから知っているのであって博識なわけでは……ん?」

ツインテ「? どうかしました?」

ハイ「いえ、何でもありません。ただ……」


   十代目「いや……気にしなくていい。人助けは勇者の勤め。それよりもここで何があったのか詳しく教えてくれないか? 私達は最近まで前線で戦っていてこっちの情報に疎いんだ」


ハイ「……蒼天の能力で自然に聞けば、そんな情報いつでも手に入れられたはず……勇者ともあろうお人が情報収集を怠ったなんてことは無いでしょうし……」

ハイは少し不安げに小声で呟いて、十代目の背中を見つめた。

十代目「――君の口から直接聞きたくてね」

ハイ「!? あ、あれ、聞こえて……ました……?」

十代目「私は耳がよくてね」

そう言って十代目は振り返った。流し目がイケメン。

ハイ「う……なんかすいません……でも直接、とは?」

十代目「君がどのように喋るのか。どこまで本気で喋るのか。何か後ろめたいことがあれば嘘を交えるはず……そんな感じで君を見定めさせてもらった。何せ未来から来た少女というのは、私も初めてだったものでね」

490: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:11:21.65 ID:FfqgIQul0
564

--空--

ビュオオオオオオ

十代目「結果的に私は君を信じることにした。君の真っ直ぐな瞳や言葉に、嘘や偽りは混ざっていなかった」

ハイ「話すだけで、わかっちゃうものなんですか?」

十代目「あぁ。私の耳は嘘に敏感なんだ」

ぴこぴこ

ハイ「はぁ……でも、信じてもらえてありがたいです。これからのことを考えれば、仲間は多いほうがいいですから」

ツインテ「ふふ、そうですね。出来ることなら全ての方と仲間になりたいです。戦いあう関係は好きじゃないですから」

ハイ「……ですね」

十代目「ん、見えてきたぞ」

十代目は地平線に浮かぶ建物を指差す。

十代目「亜人保護団体本部だ」

491: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:13:39.11 ID:FfqgIQul0
565

--亜人保護団体本部--

がたごとがたごと

馬車で移動している代表達。

代表「やれやれ、僕が勝手に出てきちゃったことに運営がそろそろ気づく頃かな?」

護衛姉「です」

護衛妹「ます」

熊亜人「ぐま」

代表「はー。だよねぇ。怒ってないといいんだけどなぁみんな。大体、僕がいるからって競売がうまくいくってわけじゃないんだからさ、毎回出席を強制してくるのはどうかと思うよねぇ?」

熊亜人「……貴方には力があるのぐま。貴方の顔がそこにあるだけで、金持ち達は安心するのですぐまよ」

代表「んー……信用問題か」

……ばさっ

代表「ん?」

代表達は空を見上げる。

ピューイ「ピューーーーイ!!」

熊亜人「ロック鳥……ぐま?」

492: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:15:58.77 ID:FfqgIQul0
566

--亜人保護団体本部--

がたごと……ざり

代表「ありゃりゃ。もしかして……僕が感じた悪寒はあれが原因かな?」

馬車から降りながら代表は空のロック鳥を凝視する。

ザッ

護衛姉妹が抜刀の構えを取り代表を下がらせる。

護衛姉「代表様は早く塀の中へ」

護衛妹「殿は私達にお任せを」

代表「そうだね、僕が戦場にいても役立たずのへっぽこだ。急がせてもらうよ」

熊亜人「ぐま!」

熊亜人が代表の真後ろにぴたりとつき、ガードしながら城門へと向かっていく。

護衛姉妹「「……」」

護衛姉妹もピューイから視線を外さずに後退していく。

ハイ「! あ! いました! あの馬車から降りた人! あの人です!」

493: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:17:52.67 ID:FfqgIQul0
567

--亜人保護団体本部--

ダダダダダダダダダ!!

バサッ! バサッ!!

代表(中々攻撃してこないね? となると僕の命が狙いってわけじゃなさそうだね。生け捕り? それとも他の何かをご所望?)

ハイ「待ってくださーーーーーーい! 代表くーーーーーーーーーーーん!!」

護衛姉「代表」

護衛妹「君?」

大声で代表を呼ぶハイ。それにつられて熊亜人の脇の横から顔をだして確認する。

代表「……やけになれなれしく呼んでくれるね……あれは僕のクラスメイトか何かかな?」

ハイ「お話があるんですーーーー! 私達は怪しいものじゃありませーーーん!!」

代表「……いや知らない顔だ。怪しさMAXじゃないか……」

門番A「代表様、お早く!!」

がごぉん……

城門が開きその中に入っていく代表達。

ハイ「あぁ……行っちゃいました」

ツインテ「代表君、って、お知り合いなんですか?」

ハイ「はい。未来でちょっと」

494: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:20:08.35 ID:FfqgIQul0
568

--亜人保護団体本部--

バサッ、バサッ……すたっ

ピューイはハイ達を地上に下ろすと十代目に顔をこすり付けた。

ピューイ「ごろろろろ」

十代目「助かった、ありがとう。ここはもうすぐ戦場になる。お前は早く離れるんだ」

ピューイ「ピューイ」

バサッ、バサッ!

ツインテ「あ、ありがとうございました! 乗り心地とてもよかったです!」

ピューイに手を振るツインテ。

ユニコーン「ひひーん」

尻尾を振るユニコーン。

ハイ「え? 今さりげなく戦場って? え?」

フォーテ「むにゃむにゃ。お姉ちゃんおしっこー」

ツインテ「え?……どうしよう、こんな所にトイレなんて……あの塀の中ならあるだろうけど……」

がごぉん

ツインテは閉められていく門を見て暫く考える。

ツインテ「……うん、貸してもらえるよう、ボク頼んでみます」

495: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:22:36.77 ID:FfqgIQul0
569

--亜人保護団体本部--

ざっ、ざっ

十代目「おい、前に出るな、危ないぞ」

ツインテ「え?」

十代目「奴らはもう戦闘態勢になっている」

じゃかかっ

門番達は城門の上から銃を構えていた。

ハイ「! ちょっ! 私達戦いに来たんじゃないんです! ただお話をしに」

門番A「嘘をつけ!! 巨大なロック鳥に乗って代表様を付けねらっていたくせに!! 一体何が望みだ!?」

ハイ「いや、だからただお話をするというのが望みであって……」

門番B「しらを切りやがって……!!」

じゃかかっ!!

門番達はハイ達に狙いをつけ始める。

ハイ「ど、どうしよう……あの人たち全然話になりません」

十代目「この状況ではな。彼らは敵が多いし過敏になってるんだろう」

ツインテ「あのすいません、ボクの弟がトイレを我慢してまして、良ければ貸していただきたいのですが」

ハイ「ツインテ先輩空気読んで!!」

496: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:24:08.89 ID:FfqgIQul0
570

--亜人保護団体本部--

門番A「黙れ!! 去れ!! 去らないと言うのなら……」

バンッ! チュゥン!

ツインテ「いたっ!」

門番が放った銃弾はツインテの右腕をかすめた。

ぽたっ

ツインテの右腕から血が滴り落ちる。

門番A「次は頭に当てるぞ!! これは脅しではない!!」

十代目「……やはり話し合いでは解決しないか」

十代目が剣を抜こうと柄に手を伸ばしたその時、

フォーテ「ね ぇ 、 な に や っ て る の ? ? ? ?」

門番A「!!??」

目を見開いたフォーテが、真横から門番の顔を覗き込んでいた。

497: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:26:18.52 ID:FfqgIQul0
571

--亜人保護団体本部--

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……

門番B「な、なんだこいつ! 一体いつの間に!!」

フォーテ「今お姉ちゃんを傷つけたよね? よね? よねぇえ!? お姉ちゃんを、傷つける者はぁ……」

ズズズズズズズズズ!!

フォーテを中心にして闇が急速に広がっていく。

フォーテ「――皆殺しなんだよっ」

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

門番A「ひ、ひいいいいいいいい!!」

門番B「あひゃあわああああああ!!」

ガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

堅牢な城壁が暴れ狂う死者の腕によっていとも容易く破壊されていく。

ドガァアアンン!!

ツインテ「! フォーテちゃん駄目っ!!」

フォーテ「許さない、絶対に許さないからっ!!!!」

おぞましい魔力を纏ったフォーテは我を忘れて攻撃し続ける。

ハイ「っていうか門開いちゃったし」

498: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:28:30.72 ID:FfqgIQul0
572

--亜人保護団体本部、主塔--

ドガァアン、ドガガガアアアン!!

賢帝「んっもぉう!! 一体これは何事よぉ! 最っ悪な目覚めぇ……」

ギィ

寝巻き姿の賢帝が自室のドアを開けて教団員達にどなりつける。

教団員「け、賢帝様! それが、何者かがここに攻め込んできたとのことでして!」

賢帝「なぁんですってぇ……? そんなバカなことをする奴はどこのどいつよ。ありえないわっ!」

どがぁん!!

賢帝は壁に穴をあけて、破壊音のする方を凝視した。

賢帝「んー……?」


フォーテ「呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる」


ぶつぶつと呟きながら大量の死者の腕を繰り出して暴れまわっているフォーテの姿が見えた。

賢帝「……あの子私より強くねー?」

499: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:29:45.87 ID:FfqgIQul0
573

--亜人保護団体本部--

ドガァアアン!! ドガガァアアン!!

フォーテ「あ は は は は は は は は は!!」

ツインテ「ふぉ、フォーテちゃん!! ボクの言うことを聞いてっ!!」

ハイ「駄目です……こうなったフォーテさんを止められる人なんてこの世にいるんでしょうか……」

十代目「……」

ダンッ!!

十代目は跳躍し、フォーテに接近する。

しゅばばっ!!

フォーテに接近するもの全てが敵とみなされて、死者の腕が十代目を襲うのだが、

ずばばっ!!

十代目「っ」

それを全て空中で切り伏せる。

500: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:32:49.95 ID:FfqgIQul0
574

--亜人保護団体本部--

十代目「やれやれ、手間のかかるお子様だな」

ぼう

十代目の左手に青い炎が灯る。

十代目「火属性浄化魔法、レベル4」

ぼぉおおおおおぉぉおう!!

ハイ「えっ!?」

ごおおおおおおおお!!

炎に包まれるフォーテ。

フォーテ「……あれ?」

それはフォーテの身を焦がしたかと思いきや、全くの無傷。

ツインテ「あれは浄化の炎……バッドステータスを無効化する火属性の魔法……凄い、モンスターの使役に、剣術。それに治療行為まで……色んなことが出来るんですね十代目さん……!」

ハイ「激昂や混乱状態を治したってことですか……いやでもあのフォーテさんの精神を立て直すっていうのは簡単じゃないですよね。そもそも私達じゃ近づくことすら……あ、でもユーさんなら近づけますかね?」

後ろを振り返ったハイ。しかしそこには誰もいなかった。

ハイ「……あれ? そういえば……いつから見てなかったっけ……」



--空--

ばっさ、ばっさ

ピューイ「ピューイ」

ユー「( ˘ω˘)スヤァ」

501: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:36:30.58 ID:FfqgIQul0
575

--亜人保護団体本部--

しゅぅううう……

ツインテ「こらっ! むやみやたらに暴れちゃだめですよフォーテちゃん! この程度の傷なんて、どうってことないんですから!」

フォーテ「うぅ……そんなこといったってぇ……フォーテ悪くないもん……悪いのはお姉ちゃんの言うことを無視して攻撃してきたあいつらだもんっ!!」

ぐしゅぐしゅと鼻をすすりながらフォーテは頬を膨らませる。

ハイ「フォーテさんを怒っちゃ可愛そうですよツインテ先輩。今回はフォーテさん悪くないです。話を聞いてくれないあの人たちがいけないんです」

ツインテ「は、ハイさんまでそんなことを……」

フォーテ「わぁい! フォーテ、ツインテお姉ちゃんの次くらいにハイお姉ちゃん好きっ!」

だきっ!

フォーテはハイに抱きついて顔をうずめた。

ハイ「!?……凄い……あのフォーテさんに私、なつかれてる」

ハイはおっかなびっくりでフォーテの頭をなでてみる。

フォーテ「そういえば気になってたけど、なんでフォーテ『さん』なの? フォーテちゃんて呼んでいーよ、ハイお姉ちゃんっ」

ハイ「あ……なんかラスボス級相手に恐れ多くて……いえ、では改めて……フォーテちゃん?」

フォーテ「えへへ。なぁーに?」

ハイ「なにこれ可愛い」

フォーテ「ハイお姉ちゃんなんか安心する匂いがする。お婆ちゃん家みたいな匂い」

ハイ「ッッ!?」

502: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:42:13.16 ID:FfqgIQul0
576

--亜人保護団体本部--

ガシャァアン!

ハイ「!」

髭長司祭「ふんっ、やってくれるじゃねぇのよお前さん方」

細目司祭「我らに爪を立てたこと、後悔させてあげましょうか」

金歯司祭「ふははは! 久しぶりにこの槍に血を吸わせてやれるわ」

右大司教「ふしゅるるる」

左大司教「狼藉者どもめぇ……」

ザンッ!!

五人の大男が破壊された瓦礫を跳ね除けて現れた。

ハイ「!! あの人たち……読んだことがある……確か侍さん達の連携に負けたけど結構強い人たちだ」

ツインテ「う……どうにか戦わずに済む方法は無いのでしょうか……私達はお話とトイレをお借りしたいだけなのに」

フォーテ「お姉ちゃんっ! 僕がぶっとばしてきちゃおっか!?」

両手をばんじゃいしながらぴょんぴょん跳ねているフォーテ。なんか太ももとか足元の地面が濡れてる気がする。

十代目「話が出来そうな相手じゃあないな。ちょっと片付けてくる」

ざっ、ざっ、ざっ

十代目は一人で歩いていった。

ハイ「なんだろうこの人たちの緊張感の無さ」

503: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:46:19.85 ID:FfqgIQul0
577

--亜人保護団体本部--

ザッ、ザッ、ザッ……

十代目「……」

髭長司祭「貴様……一人でのこのこと向かってくるとは、見かけによらず度胸あるのぉ」

細目司祭「大方謝罪でもしに来たのでしょう。ですがもう遅い。この蛮行の責任を取るには貴方達の死でしか償えませんよっ!!」

十代目「俺がお前達に望むのは」

右大司教「ふしゅる?」

十代目「ただ歯を食いしばっててくれればいい」

左大司教「え?」

ドゴッ!!

髭長司祭「!?」

ガッ!!

細目司祭「ぽっ!?」

ズガッ!!

金歯司祭「ばっ!?」

ベキッ!!

右大司教「ふしっ!!」

ズンッ!!

左大司教「お、おごごっ……ごふっ……」

どさどさどささっ!

十代目「……舌は噛まずにすんだみたいだな」

504: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:47:49.44 ID:FfqgIQul0
578

--亜人保護団体本部--

教団兵「お、おい……大司教様達が、ただのグーパンでのされたぞ!?」

団体兵「し、信じられねぇ……夢だろ、でなきゃ嘘だ……」

ざわざわ……

動揺が兵たちに広がっていく。

上位教団兵「……ひ、怯むな!! 相手はたった四人だぞ!? 数で押さえ込めばどうにかなる!! で、であえー! であえーーーーー!!」

わ……わーーーー!!

恐怖を叫びでごまかして、一斉に走り出す兵たち。

わーーーー!!

ハイ「!! ちょっ! いっぱい来ちゃったんですけど!!」

慌ててレベルアップしようとするハイ。

ツインテ「うぅ……やっぱり戦わなくちゃいけないんですね……」

悲しそうな顔をしているツインテと、

フォーテ「うんしょっ! じゃあ朝の体操がてら、ちょこーっと遊んじゃうかなーっ!」

にこにこしているフォーテ。

505: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:49:40.70 ID:FfqgIQul0
579

--亜人保護団体本部--

どがぁあああぁああああんんん!!

兵達「「「うわあああああああああああああああ!!」」」

十代目「……」

団体兵「あ、あいつ剣の一振りで数十人吹っ飛ばしたぞ!? 化物だ!!」

教団兵「あれ……よくみたらあいつみたことあるような……どこで見たっけ……!? って、勇者じゃねぇか!?」



どがあああああああああああああん!!

兵達「「「うわあああああああああああああああ!!」」」

フォーテ「きゃはっ! いっきとーせーーーんっ、無敵可愛いフォーテちゃんっ!!」

教団兵「悪魔かこのロリ!?」

団体兵「可愛いけど強すぎるぞこのロリ!!」



ぽわぁあああぁああああぁあ

ツインテ「傷ついた人はボクが治しますからボクの傍に来てくださいね」

兵達「「「はぁああああああああああんん」」」

団体兵「天使だ……いや女神様だぁ……!!」

教団兵「俺……あの宗教やめてこのお方についてくことにする……オカマとかまじ誰得だし」



ハイ「……今思ったけどこのパーティ強過ぎる」

506: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/10(火) 03:55:28.90 ID:FfqgIQul0
580

--亜人保護団体本部--

ダンッ!!

賢帝「だぁれがオカマだってぇ……?」

教団兵「ひっ!?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

瓦礫の山の上に立っている者は、賢帝――。

ハイ「!! 五柱の賢帝……!!」

賢帝「貴方達ぃ……随分好き勝手やってくれるじゃなぁい? 悪い子ねぇん……」

十代目「……まさか本当に五柱まで関わっていたとはな」

フォーテ「ねーねー。だれあれー? ゆーめーな人ー?」

ツインテ「凄い、腕が八本もあります! お料理とかするのに便利そうです!」

ハイ(誰か私と同じ価値観持ちはいないんですかっ)

賢帝「はぁ、まったく……私のお城をこんなにしちゃって……あんたたちの目的がなんなのか知らないけどぉ……これはやりすぎじゃない?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

賢帝は全ての腕を天に向けるポーズを取った。

ハイ「く!……また五柱レベルと戦うことになっちゃうなんて……今日はついてないです!」

賢帝は一度目を閉じ、そして勢いよく開いた。

カッ!!



賢帝「――降参するわ。命だけは助けてちょうだい」

教団兵「……え」

ハイ「……冷静に考えたらそうなりますよね」

ぴょんっ

フォーテ「ねーねー、気持ち悪いおじちゃん! おじちゃん有名なの? 強い? フォーテとちょっと遊んでみる?」

オオオオオオオオオオ

死者の腕が闇からはみ出して賢帝の頬をなでる。

賢帝「ちょ、ちょっ! 私は降参するっていってるのよ! やめてちょうだい! その禍々しいの近づけないでちょうだい!!」

フォーテ「じゃあ僕からでいい?」

賢帝「聞いてちょうだい!?」



--巣--

ユー「( ˘ω˘)スヤァ」




516: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:01:45.64 ID:f6EaV68p0
581

--亜人保護団体本部--

ぺちぺち

賢帝「だからぁー。ちょっと聞いてるの代表ちゃんー。聞こえてるんでしょー? 返事しなさいよー。いい? もう何もかも無意味だって言ってるのよぉ。だからあなたたちも降参して出てきて頂戴ー」

主塔に向かって訴える賢帝。その頬をぺちぺちと死者の手が触れる。

フォーテ「ぜんぜんでてこないねーっ。もしかしておじちゃん、説得できるとか言ってたの嘘だったのっ? 嘘……だったの……?」

スゥ……

フォーテの瞳から光が消えていく。

賢帝「!? ちょまっ……こるぁああ代表でてこいやあぁあああ!! もう1秒間で772回も死にたくないんじゃぼけぇえええええええ!!」

ハイ「何したの」



--亜人保護団体本部、主塔--

えぇぇぇぇぇ……

代表「まずいことになったね……なんだかわからないうちにほぼ壊滅状態じゃないか」

窓からその様子を見ている代表。

熊亜人「どうしますぐま?」

代表「……仕方ないね。計画を前倒しにする。残った人員を飛行船に集めておくれ」

517: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:07:57.63 ID:f6EaV68p0
582

--亜人保護団体本部--

ギィ……ザッ!!

護衛姉「……」

護衛妹「……」

賢帝「やぁっと出てきたわね、んもぉ……でもあなたたち、降参するような顔つきじゃないわね……」

護衛姉「当たり前だ。私達は代表様の刀……」

チャキッ

護衛妹「我が身可愛さで降参するような思考は持っていない……」

しゅぴぃん!!

護衛姉妹「「無法者共め……私達が死ぬまで相手をしてやる。かかってくるがいい」」

護衛姉妹が抜刀して刀を交差する。

護衛姉妹「「死など、恐れはしない!」」

フォーテ「へー」

フォーテは新しいおもちゃを見つけたように笑った。

518: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:10:53.55 ID:f6EaV68p0
583

--亜人保護団体本部--

護衛姉「うわぁあん! うわぁあん!」

フォーテ「ね、ね! どっちの腕もいでいい?? どっちからがいい?? こっちのお姉ちゃんに決めさせてあげるっ!!」

護衛妹「やめてよぉー! こんなひどいのやめたげてよぉー!!」

死者の腕に束縛されてる護衛姉の前で絶望の表情の護衛妹。

ツインテ「こらフォーテちゃん! 命を粗末にしちゃいけないって言ったでしょっ!?」

フォーテ「!? ち、違うよお姉ちゃん僕命を粗末になんて、してないよ……こ、殺したりしないもん? ただこの手足をちぎって花占いしようとしてただけで……ほらツインテお姉ちゃんも占い好きでしょっ!? 一緒にやろ!?」

ツインテ「ボク花占いなんてしたことないです!」

賢帝「……ねぇ、なんなのあの子。どうやったらあんな化物産まれるのよ……」

ハイ「あはは……」

519: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:13:06.65 ID:f6EaV68p0
584

--亜人保護団体本部--

護衛姉「ぐすっ、ひくっ……」

護衛妹「よかった……よかったよお姉ちゃあぁあん」

開放されて泣きながら抱き合う二人。

賢帝「死など、恐れはしない!(キリッ)。って言ってたくせに、だらしないわねぇ」

護衛姉「だってだってぇ!!」

護衛妹「びえええーーー!!」

賢帝「あぁはいはいわかったわかったよ。……正直規格外過ぎて精神の安定から崩壊しちゃうのよね。わかるわよ、私もそうだったし」

泣きつかれた賢帝はうっとおしそうに払う。

護衛姉(……でも)

護衛妹(代表様の居場所だけは絶対に隠し通す……!)

フォーテ「で、代表って人どこにいるの?」

護衛姉「は、はい!! 主塔の秘密の地下通路から隠し倉庫に向かってます!」

護衛妹「わかりにくいだろうから私達が案内します! だから血管に溶けた鉄を流し込むのだけはやめてください!!」

ツインテ「……そんなことしてたの?」

フォーテ「げ、幻覚見せただけだよっ!? 実際は……ちょ、チョコだったからっ!」

520: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:14:55.64 ID:f6EaV68p0
585

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

コツコツコツコツコツ

ズゥン……! ぱらぱらっ

代表「……熊亜人君」

熊亜人「はいぐま」

代表「あの二人で止められると思うかい?」

熊亜人「……無理だと、思うぐま」

代表「……だよねぇ。僕もそう思ってたんだよね。どうしようか?」

ズゥン!!

熊亜人「代表様」

代表「ん?」

熊亜人「先に行ってほしいぐま」

コツ……

代表「……君がいないと計画が全部おじゃんなのはわかってるよね?」

熊亜人「わかってるぐま。かたをつけたらすぐに追いかけますぐま」

代表「……ここで使うんだね」

熊亜人「……」

代表「……わかった、よろしく頼んだよ」

521: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:16:54.15 ID:f6EaV68p0
586

--亜人保護団体本部、秘密の地下通路--

コツコツコツコツコツ

……ゴゥン、ゴゥン

ツインテ「? 何か音がしますね? 何の音なんでしょう」

護衛姉(良かった、出発されたんですね代表様)

護衛妹(でも今からでもこの人たちなら追いつける……なら)

十代目「やられたな。時間稼ぎか」

護衛姉妹「「!?」」

ハイ「え?」

十代目「スムーズに道を選んでいるように見せていたが、かなりジグザグに移動していたからな」

ハイ「でも、ほとんど一本道でしたよね?」

十代目「見える道はな。正解の道はどこかに隠し扉でもあったんだろう」

護衛姉妹「「!!」」

フォーテ「それ、本当……?」

護衛姉妹「「ごめんなさい!!!!!!!!」」

522: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:18:23.07 ID:f6EaV68p0
587

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

ギィ……

ハイ「あ」

熊亜人「待っていたぐまよ」

どささっ

護衛姉「す、すいません……」

護衛妹「この程度しか時間を稼げず……」

隠し倉庫に着くなり倒れこむ護衛姉妹。

熊亜人「いや、よくやったぐま」

賢帝(本当よね……。心を折られたはずなのに、それでもちゃんと時間稼ぎをし続けたわこの子達)

熊亜人「後は……」

スッ

熊亜人は王冠の形をした魔王の骨を取り出した。

護衛姉「……」

護衛妹「……」

熊亜人「俺に任せるぐま」

523: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:20:29.83 ID:f6EaV68p0
588

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

魔王の骨は制御不能の力。それを使って戦うということは……

護衛姉(私達にはもう、巻き添えにならないようにこの場を離れる力は残っていません)

護衛妹(ならせめて、邪魔にならないように。)

護衛姉妹は何も言わず目を閉じた。

十代目「ん、あのアイテム……まさか」

ハイ「あ、あれ魔王の骨ですよ! 気をつけてください!」

熊亜人、護衛姉、護衛妹「「「!?」」」

ツインテ「魔王の骨……伝説のアイテムの一つの……」

フォーテ「あー、本当だー。それっぽい力感じるー」

十代目(……あれから滲み出す力を見れば大体の見当はつく。だが一目で判断するとは……未来帰りは一味違うな)

524: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:22:32.76 ID:f6EaV68p0
589

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

熊亜人(何もかもばれているようぐま……でも我々も今まで目標のために積み上げてきたんだぐま……簡単に諦めるわけには、いかない!!)

ガッ!

熊亜人は王冠を被る。

熊亜人「ぐっ、ぐあおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ばりばりばりばりぃいいい!!

賢帝「!? な、なによこの力……こんな力があったなんて私聞いてないわよ!? きもちわるいっ!」

ズズズズズ……

真っ黒い靄が熊亜人の体を覆っていく。

ハイ「擬似魔王化です、気をつけてください皆さん!!」

十代目「……魔王の力か……ならば手を抜いている余裕は無いな。最初から全力で行かせてもらう」

ぎぃん!!

賢帝「!?」

十代目が剣に魔力を纏わせる。

ぶわっ!!

ハイ「きゃっ!?」

その力で吹き飛ばされそうになるハイ達。

525: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:24:42.64 ID:f6EaV68p0
590

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

賢帝「ひっ!?」(あのフォーテって子も化物だけど、このイケメンちゃんも!)

十代目「奥義――勇者バスター」

ヴォン、ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアaaaaaaaaaaaaaaaアアアアアアアア!!

熊亜人「ナッ」

極太の銀色の光の帯が熊亜人を薙ぎ払った。

ドガガドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ハイ(これ、ウェンディゴさんにぶっ放したやつか……実際に目の当たりにするとおっそろしい威力です……)

前方にあったもの全てを吹き飛ばす十代目の強烈な一撃……。

ぱらぱら……

護衛姉「あ、あ……」

護衛妹「う、そ……」

しゅぅうう……かららん

熊亜人「……」

ヤムチャポーズで床に倒れている熊亜人。

526: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:27:00.92 ID:f6EaV68p0
591

--亜人保護団体本部、隠し倉庫--

護衛姉「私達の、切り札が……一撃……」

護衛妹「私達の、人生の全てが……あっさり……」

護衛姉妹はぽろぽろと涙を零している。

ハイ(擬似とはいえ、擬似魔王も魔王。普通に勇者の特効効いちゃうんだよね……あんなに侍さん達が苦戦した相手だっていうのに……)

たっ

フォーテ「僕も撃つー! おうぎー、暗黒滅殺呪壊砲ー」

ちゅどどっばっかどぎゃめぎゃずどばこーーーん!

護衛姉、妹「!?」

熊亜人「ぐまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

ハイ「なんで決着ついてたのに撃ったの!? そしてフォーテちゃんの奥義初お披露目!?」

527: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:27:31.47 ID:f6EaV68p0
592

--飛行船--

ごぅんごぅんごぅん

代表「……」

……どぉぉおぉおぉん

巨大な爆発の後衝撃で揺れる飛行船。

ぎしぎしぎしぎしぎぎぎいい!!

代表「……っ!……おいおい、大丈夫なんだろうね熊亜人君……」

代表は操縦室の窓から外を見る。

ユー「……」

代表「……」

そこには全裸のユーが張り付いていた。

528: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:28:14.89 ID:f6EaV68p0
593

--亜人保護団体本部、近辺--

しゅぅううう……

ハイ「あ、ユーさん」

ユー「……」

よっ、と手をあげるユー。

ハイ「追いついてきてたんですね。……もしかしてこれ、落としたのユーさんだったりします?」

ユーはこくりと頷く。

代表「……」

墜落した飛行船を見てがっくりとうな垂れている代表。

ハイ「なんだろう……。なんだか今回は全面的に代表君に同情しちゃう」

529: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:31:53.17 ID:f6EaV68p0
594

--亜人保護団体本部、近辺--

しゅぅうう……

代表「……で、君たちは一体何が目的なのかな? 何でも言ってくれ。もう僕たちに抵抗する力は無い。はぁ……」

さすがの代表もショックを隠しきれず、顔を手で押さえたまま顔をあげられない。

ハイ「えっと……代表君と、お話しがしたかっただけなんですけどね」

にっこりすまいるハイちゃん。

代表「……は、はぁ!?」

ハイ「それだけだったのに気づけば亜人保護団体と変な巨大宗教、いっぺんに壊滅させちゃいました。あはは、チートって怖いですね!」

目は死んでるハイ。

賢帝「ひ、人が汗水たらして必死に積み上げてきたものをなんだと思ってるのかしら……恐ろしい子!!」

ハイ「私だってそう思いますよ。私をこの人たちと同じように考えるのはやめてください。――では毎度おなじみの説明タイムに突入します」

530: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:35:16.35 ID:f6EaV68p0
595

--亜人保護団体本部、近辺--

代表「……」

ハイ「――と、いうわけなんですけど」(何度も説明してきたからさすがに慣れてきましたね)

代表「時間旅行……ありえるのかな。信じられないねぇ……」

代表はそう言って眉間を押さえる。

代表「でも……あまりに出来過ぎてる感はある。君みたいな普通っぽそうな子がこれだけの傑物を率いているのもおかしな話だし」

ハイ「あはは……」

ハイは笑うしかない。

ハイ「で、どうでしょう? 信じてもらえますか?」

代表「――正直なところを言うと、僕に選択肢があるように思えないな。育て上げた組織を完璧にぶっ壊されてこの状況だからね。完全にぶちのめした後で俺の言うこと聞けや、ってのと何も変わらないでしょこれ」

代表は煙のあがる本部を眺めている。

ハイ(……そりゃそうだね!)

代表「信じる信じないなんてそもそも関係あるのかな? 僕たちは言わば捕虜だ。僕たちのことは勝った君らが好きに使うがいいさ」

ハイ「……そういうのを望んでるわけじゃ無いんですよ代表君」

531: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:40:17.02 ID:f6EaV68p0
596

--亜人保護団体本部、近辺--

代表「……そういうのではない? ならどうしろって? 数分前に会ったばかりの君の言うことを心から納得して、自分の意思で力を貸せって、そう言うのかい?」

ハイ「出来れば、それにこしたことは無いですけど……そこまでは望んでるわけじゃないですけど」

代表(……この子は他の面子と違ってあくまで普通だ。僕の独裁者の言でいくらでもペースを掴むことが出来そうだ……時間はかかるだろうけど、この子をうまく操れればまた立て直せるかもしれない。まだ逆転の目は)

ハイ「でも友達を捕虜とか、そんな風に扱いたくないんですよ」

代表「――は――?」

思わぬフレーズにあっけにとられる代表。

代表(あ、あー……そういえば言ってたな、未来で僕と友人関係だったって……いやいやでもそれは未来の僕との話だろ? 今の僕には全く関係無いことじゃないか。君と一緒に過ごした記憶は僕には皆無。僕の中では君は初めて会った赤の他人なんだ)

ハイ「……」

代表(……それでも……一方通行でも友達として思ってたい、ってこと……?)

代表の脳裏に竜子が過ぎる。

532: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:43:02.89 ID:f6EaV68p0
597

--亜人保護団体本部、近辺--

わーわー!!

代表「!」

話をしている代表達の後ろで人だかりが出来ていた。その中心にいるのはツインテ。

ツインテ「怪我をしている人は他にもいませんかー!? ボクでよければ治療させてくださいー!」

団体構成員「女神だ……こんな、罪深い私達にまで……このような慈悲を……!」

団体魔法使い「心が、洗われるようだ……」

人々は泣きながらツインテを拝んでいる。

代表「おいおいなんて顔だよ……まるで憑き物が取れたようじゃないか……」

ぱぁあああぁああ

回復魔法を発動するツインテの姿は、まるで光り輝く女神のよう。

ハイ「……止めようの無い復讐の連鎖。それを止めたかったんですよね、代表君は」

代表「!」

533: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:44:28.46 ID:f6EaV68p0
598

--亜人保護団体本部、近辺--

わー、わー

ハイ「家族を亜人に殺されて悲しみに囚われた可哀想な人達……そんな彼らを代表君は見捨てることが出来なかった」

代表「……いきなりなんの話やら」

ハイ「……でも復讐は復讐を呼ぶ。誰かが連鎖を断ち切らなくちゃいけない」

十代目「……」

ハイ「代表君が考えてる方法が正しいのか……それはわからない。でも、私は否定します。死をもって決着とするのは、私好きじゃない」

わーわー!

団体構成員「ツインテ様ぁ!!」

フォーテ「お姉ちゃんに触ったら殺すからねっ!?」

わーきゃー!

代表「……」

ハイ「ツインテ先輩の回復魔法には浄化の力が宿っているんだと思います。人々の心から負の感情を取り除いて、無限のやさしさで包み込む……きっと、悲しみも憎しみも和らぐんじゃないでしょうか」

代表「……」

ハイ「……それで問題の解決になるわけじゃないけど……でも全員を殺してしまうより、いいと思わない?」

代表「……」

534: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:48:59.18 ID:f6EaV68p0
599

--亜人保護団体本部、近辺--

ハイ「代表君の力はそんな悲しいことに使うものじゃないと思うよ。もっと他に素敵な……だから……その……」

代表「……」

ハイ(う……駄目だ。やっぱり私、誰かを説得とか無理だ……)

代表「……」

代表はただじっとその光景を眺めていた。

代表「……どうやら、僕を必要としなくなったようだね」

ハイ「……え?」

代表は背伸びをする。

代表「んー……。何も無くなっちゃったな」

代表は困ったように頭をかいた。

ハイ「えっと、代表君……」

代表「……僕は無能だ。部下がいなけりゃご飯さえ作れやしない。戦闘なんてからっきしさ。剣も振ったこと無い……それでも僕に、何かやれることがあるのかい?」

ハイ「!……はい、あります」

ハイは笑う。

代表「……そうかい。じゃあ人類の危機だというし、やれるだけのことはさせてもらうよ」

ハイ「……はい!」

代表「拒否権もなさそうだしね」

535: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/17(火) 02:51:48.59 ID:f6EaV68p0
600

--亜人保護団体本部、近辺--

代表「――で、これからのプランは具体的にあるのかな?」

ハイ「はい。これからレンさんと会ってもらって超魔法陣の書き換え作業をしたいと思ってます」

代表「魔法陣のことまでご存知か……いやはや参ったね。ん、書き換える……? それは……あぁ、いいや。どうせ僕が聞いてもわからないだろうし。僕は指図する人間であって魔法陣に関してはよくわからない。そういうのは担当してた人に聞くのが一番だ」

ハイ「担当してたのって」

代表「あの群れの中のどなたかさ」

わーきゃー!

ツインテを拝む人の群れを指差した。

ハイ「あー……」

代表「で? 他にやることは?」

ハイ「あ、はい。後は竜子ちゃんにも仲間になってもらう、くらいかな?」

代表「……なるほど。彼女らを説得しにいくだけならそんなに人員はいらないだろうね。チート級が何人もいるし」




--竜骸の渓谷--

ひゅおおおぉぉおお

竜子「へぶしゅっ!!……ぐすっ……なんだろう。なんか凄く嫌な予感がする」

543: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 03:58:46.75 ID:gF2HwH/i0
601

--亜人保護団体本部、近辺--

わいわいがやがや

ハイ「――では話もまとまったことですし、さっそくですが私達は竜骸の渓谷に出発したいと思います。皆さん準備をお願いしますね」

代表「やれやれ……じゃあ急いで準備しますかね、よっこらせ」

ツインテ「あの……」

ハイ「?」

すたすた

ツインテ「ハイさん。少しお話があるんですけれど……」

ハイ「はい? どうかしましたかツインテさん?」

ツインテ「すいません、自分から付いていくと言ったのにあれなんですけど……一旦パーティから離脱させていただきたいんです」

ハイ「へ? ど、どうかしたんですか?」

ツインテ「実は、フォーテちゃんのことが心配なんです」

ハイ「フォーテ、ちゃん?」

遠くからフォーテを見つめる二人。

544: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:00:03.28 ID:gF2HwH/i0
602

--亜人保護団体本部、近辺--

ツインテ「フォーテちゃん、随分無理してるんだと思います。それを表に出さないようにしてるだけで……」

ハイ「あ」

その時ハイは思い出した。


 --薄暗い洞穴--

 フォーテ「がはっ!!ぎ、がががあああああ!!」

 蝙蝠が飛び交う洞窟の中でフォーテは血を吐きもがき苦しんでいた。

 ???「何度見ても可哀そうコン……効果が効果だけに代償が大きいコン」

 ??「狐娘、薬草を取ってきてください。あれが終わったら飲ませてあげるんですから」

 ???改め狐娘「お、わかったコン」

 ????「わしらも何かすることあるアル?花師」

 ??改め花師「えっと、そうですね。風水師と占星術師は水を汲んで来てください」

 ????改め風水師「わかったあるー」

 ?????改め占星術師「わかったのよ」

 フォーテ「えへ、えへへ……お姉ちゃんに歯、もらっちゃった……えへへ!!げぼっ!!」

 花師(……呪術……恐ろしい力ですね。今回の代価は2週間の断食と3日間の激痛……普通なら肉体もそうですが、まず精神が持たないで

しょうに)

 フォーテ「あぁああお姉ちゃんんんんんっっ!!」



ハイ(そうだ……フォーテちゃんにはあの強大な力の代償があったんだ……!)

545: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:03:48.79 ID:gF2HwH/i0
603

--亜人保護団体本部、近辺--

ハイ(でも、おかしいです……私たちとの戦闘とビィとの戦闘、そしてここでの戦闘……つまり短時間で三連戦したことになるわけで)

ツインテ「ボクの、せいだと思うんです」

ハイの思考を読み取ったかのように呟くツインテ。

ハイ(!……そうか……ツインテ先輩を守るために……無理したんだ)

それでも普段通りに振舞うフォーテ。よく見ると死者の腕にもたれかかっていることが多かった。

ハイ「……すいませんでしたツインテ先輩。フォーテちゃんのことに全然気づいてあげられなかった……」

ツインテ「そんな……ハイさんが気にすることなんてありませんよ」

ハイ「いえ……わかりました、ツインテ先輩はフォーテちゃんとしばらくここで休んでいてください。それまでに私はやれることをやってきます」

ユー「……」

ユーが後ろでサムズアップ。

ハイ「いつの間にいたんですかユーさん」

546: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:06:34.27 ID:gF2HwH/i0
604

--亜人保護団体本部、近辺--

ざり

代表「やぁお待たせした。ここも最後だと思うと持って行くものが多くなってしまってね」

ハイ「もー、遅いでしょ代表君。もしかして逃げ出したんじゃないかと思ったくらいです」

代表「僕だけ逃げても行くところがないさ。で、渓谷に行くのはこのメンバーかい?」

代表はハイ、ユー、十代目の顔を順に見ていく。

代表「4人か。パーティにもう一枠空いているけどそれはいいのかい?」

ハイ「いえ、もう一人連れて行きたい人がいます。頼りになる仲間は多いほうがいいですから」

代表「ほう。それは誰かな?」

ハイ「十代目さん」

十代目「了解した」

すたすたすた
ずるずる

賢帝「……はいはい行けばいいんでしょ行けばぁ。んもぉ、こうなりゃどこにだって行ってあげるわよぉ!」

十代目に首根っこを捕まれて引きずられてきたのは賢帝。

ハイ「回復役が抜けちゃったのでその補充です。賢者の帝、ツインテ先輩の穴を埋めるのにこれ以上の人はいないでしょう」

代表「……なるほどね」

十代目「私も回復できる」←声が小さくて聞こえない。

547: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:08:13.53 ID:gF2HwH/i0
605

--亜人保護団体本部、近辺--

ざっ、ざっ、ざっ……

フォーテ「……お姉ちゃん」

ツインテ「ん? なぁに?」

フォーテ「本当に……付いていかなくていいの?」

ツインテ「うん。久しぶりに動いたから少し疲れちゃいました。ボクはここでゆっくりアッシュ君たちを待とうと思います」

フォーテ「……」

ツインテ「フォーテちゃんも休もう? よく頑張ったね」

ツインテが優しくフォーテの頭をなでる。

フォーテ「お姉ちゃん……ごぷっ」

ぼたたっ!

フォーテの口から大量の血があふれ出す。

ツインテ「……奥義、絶対回復領域」

ぱぁあああ

フォーテ「げほっごほっ!!……あ……暖かい……がはっ!!」

ツインテ(っ! せめて、痛みを和らげてあげることしか……!)

ずるる

ツインテ「?」

そのときフォーテの影が揺らめいて、そこから四人の人間が現れた。

どさどさどささっ

花師「……む? ここは……」

548: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:09:53.98 ID:gF2HwH/i0
606

--???--

ビィ「……」

かちゃり

ビィは一人テラスで紅茶を飲んでいる。

ウェイトレス「おっす! ビィ、だっけ? ここ邪魔するよー」

ビィ「えぇ、構いませんよウェイトレスさん」

ぎっ

ウェイトレスは向かいの椅子に座った。

ウェイトレス「へー。やっぱ私のことも知ってるんだねー。あ、これ私が焼いたクッキーなんだけどどう? 美味しいよ?」

ビィ「すいません。食べたいのはやまやまなんですけど、今お腹一杯なんですよぉ」

ウェイトレス「そーなの? それでもクッキーくらいなら大したことないでしょーよ? ほらほら」

ビィ「ダイエット中ですのでー」

茶肌「……」

脳筋「……」

その二人のやり取りを影に隠れて観察している二人。

549: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:11:39.80 ID:gF2HwH/i0
607

--???--

ウェイトレス「ぶー……じゃあ仕方ない、全部私一人で食べちゃおーっと」

ビィ「どうぞどうぞ★」

にこやかに笑うビィは紅茶をすする。

ウェイトレス「……うーん」

そんなビィを見てウェイトレスは頭をひねった。

ウェイトレス「ビィは切り札になる存在だ、ってトリガーが言ってたけど……ぱっと見、弱そう」

脳筋(おい、さすがに暴言だろ!)

ウェイトレス「千年くらい生きてきた私の、もの凄い洞察力をもってしてもわからない。頭がきれる、ってわけでも無さそうだし」

茶肌(キャットファイト!? キャットファイトやるの!?)

ビィ「あはは★ 相変わらずストレートですねウェイトレスさんは。久々ですその質問も」

ウェイトレス(久々……?)

ビィ「……」

ビィは一瞬だけ考えるようにして、

ビィ「そうですね。じゃあちょっとゲームでもしてみませんか? それで大体のことは納得してくれると思いますよ」

550: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:13:34.14 ID:gF2HwH/i0
608

--???--

ウェイトレス「ゲーム?」

ビィ「はい。お察しの通り、私には皆さんのような突出した武力も知力も無いです。それでも切り札として成立する……ということを納得してもらうために」(確かめたいこともあるしね)

ウェイトレス「ほー。面白いじゃない。で? 一体何のゲームでビィの価値を証明してくれるのさ」

ビィ「どんなことでも言い当てて見せます★」

ウェイトレス「……ん?」

ビィ「なんでもいいですよ。今夜の夕食はなんなのか、貴方の魔王の骨はどんなものなのか、柱に隠れている脳筋さんの 着の色はなんなのか。どんなことでも言い当てます」

脳筋「びくっ」

ウェイトレス「……本当になんでもいいの?」

ビィ「えぇ、なーんでも構わないです」

ウェイトレス「ふむふむ。じゃーあー」

ウェイトレスはビィが飲んで空になった紅茶のカップを手に取った。

ウェイトレス「これを今から床に落としてみようと思います。それでいくつに割れるでしょーか」

551: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:15:25.78 ID:gF2HwH/i0
609

--???--

脳筋(あいつ……精神看破でも索敵でも絶対にわからないことを聞いてきやがった……)

茶肌(今現在の情報ではわからないこと。そんなもの、わかるなら、予言)

ウェイトレス「あ、もちろん答えるのは私が落とす前ね? 落とし方とかも一切教えません。さー、いーくつだ」

ビィ「全部で11に割れます。細かくなり過ぎると数えるのが大変だろうから、2mm以下になったものはカウントしないということで」

脳筋、茶肌「「即答!?」」

ウェイトレス「……ほぉう! いいだろう。じゃあ、やってみよっかね!!」

ぶぉん!!

ウェイトレスは、振りかぶった。

ウェイトレス「おおおおおおおおおおりゃあああああああああああああああああああ!!」

脳筋「それは落とすとは言わない!! 叩きつけるやんけーーー!!」

茶肌「卑怯!!」

ぱりぃぃぃん!!

552: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:18:07.96 ID:gF2HwH/i0
610

--???--

ウェイトレス「く、くく……くっくっくっ……粉々だぜ。粉砕だぜ。こいつぁーどう見ても11分割なんて代物じゃないぜ!」

ビィ「じゃあ数えて見て下さい」

そう言ってビィはもう一つのカップに紅茶を注ぎ始める。

ウェイトレス「うん? 負け惜しみかな? こんなの数えなくたってわかるでしょ? こなっごななんだよーん?」

ビィ「粉々ですね。でも2mm以下のはカウントしないって言いました」

ウェイトレス「……」

ウェイトレスは足元に散らばったカップの破片を見る。

ビィ「それ以下の小ささになると分子の数とか言い出したことがありますからねウェイトレスさんは。だから2mm以下は無しにしたんですよ」

ウェイトレス「いや、でもさすがにこの量で……」

スッ

ビィ「定規です。使っちゃってください」

ウェイトレス「……」

553: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:20:11.88 ID:gF2HwH/i0
611

--???--

ウェイトレス「……11個だった」

ビィ「そうでしたか」(……やっぱり今回も想定範囲の世界か……残念)

すっ

ビィは何事も無かったかのように紅茶を飲む。

ウェイトレス「ど、どうしてわかったのさ……私は数字を聞いてからも対応を変えられたんだ。なのに……」

ビィ「それは……全部知っちゃってるからですよ。全部のパターンを」

ウェイトレス「……へぇ……千年程度の経験値じゃわからないわけだ……」

ビィ「あは★ 凡人ですから。それくらいしないと皆さんと渡り合えないんですよねぇ」

ニィ

ビィは笑う。その何気ない笑顔にウェイトレスは恐怖を感じた。

554: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:21:25.67 ID:gF2HwH/i0
612

--竜骸の渓谷--

しゅうぅううう……

ハイ「――というわけで力を貸して欲しいんです竜子ちゃん。この世界のために一緒に戦いましょう!」

竜子「なるほどなー……って、いきなりテリトリーに入ってきて全員ぶっ倒して長々と説明しておいて一緒に戦おうとかざけんなぁああああああああああ!」

火竜亜人「ぐすん」

賢帝「ほらほら、治してあげるからこっちにいらっしゃいな」

風竜亜人「だ、騙されませんよ!? あれだけ凶悪な攻撃をしておいて!! 死ぬかと思いましたよ!!」

賢帝「何よぉ、聞く耳持たずでいきなり攻撃してきたのは貴方達の方じゃないのよぉ。それにちゃんと手加減してるわ。言いがかりはよして頂戴」

風竜亜人(最初に侵入してきたのはそっちでしょうに……そして絶対手加減してなかった……)

ハイ「相手を話し合いの席につかせるには武力を行使しなきゃ駄目だってことを学びました」

目が笑ってないハイだった。

555: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:24:05.24 ID:gF2HwH/i0
613

--竜骸の渓谷--

竜子「とにかくだ。未来から来たとか意味わかんねぇし、私とお前が未来で親友だったとかわけわかんねぇし、そんなたわごとを信じてやる気はねぇ!!」

ハイ「あれ、全然話が好転するように思えませんね……どっかで間違っちゃったのかな」

竜子「いいからお前らこっから出て行け。そんで二度と入ってくんな。……私らは人間と馴れ合うつもりはねぇ!! 出て行かないって言うんなら、今度は死ぬまで抗ってやるからな!!」

十代目「……完敗したくせに」

竜子「るせぇえ!!」

代表「はぁ、全く駄目だね君は。そんな喋り方で信じてくれるのは、よっぽど察しがいい人間か疑うことを知らない無垢な人間だけさ。ただのバカにも通用しない。最初から説得は僕に任せてくれたらよかったのに」

竜子「! てめぇ代表……」

ぎり

竜子は拳を握り締めた。

代表「はいはい久しぶりだね竜子ちゃん。少し僕とお話をしようか」

その様子を後ろから観察している十代目。

十代目(……恐ろしい手腕だった。この男が戦闘を指示しなければ、ここまで楽には終われ無かったはず……必要以上に苦しみを与えず、敵味方双方に死者を出さない。戦闘が泥沼になる前に見事にスパッと終わらせた……)

賢帝(竜亜人がわんさかいるところに突っ込むって聞いた時はさすがの私もおしまいだと思ったわぁ……普通なら勇者がいたって厳しいもの……それをたったの四人で数十人の竜亜人を制圧させてみちゃうんだもの……さすがは私が手を組みたいと思った唯一の男ぉん)

ハイ「……わかりました、代表君にお任せします」

556: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:26:32.78 ID:gF2HwH/i0
614

--竜骸の渓谷--

竜子「お前と話すことは何も無い……帰れ」

代表「そう邪険にしないでくれよ。僕たちは十年来の友達だろ?」

竜子「――私に人間の友達などいない」

ハイ「え? 私達三人は友達ですよ? むしろそれを飛び越しての親友です。本当に困ってることがあるなら遠慮しないで言い合えるほどの!」

代表「話がこじれるからどっか行っててくれないかな!」

しゅん、と落ち込んだハイはとぼとぼと歩いていく。

代表「……話の腰を折るのがうまい子だ」

竜子「……話は終わりだ」

すっ

竜子は立ち上がった代表を睨みつけた。

竜子「こっちからは二度と関わらない。だからお前らもこれ以上関わらないと約束しろ」

代表「……」

睨む竜子の瞳をじっと見つめている代表。

代表「――竜子ちゃん、君のお父さんの死の真相について知りたくは無いかい?」

557: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:28:01.67 ID:gF2HwH/i0
615

--竜骸の渓谷--

竜子「」

フリーズする竜子。

竜子「……でまかせだろ」

代表「スキル、約束」

ぶぅん

代表は魔力で手錠を作り上げて自分につけた。

ガチャっ

代表「約束だ。僕は嘘をつかない」

竜子「なっ!? お前なんで自分に!?」

代表「これで嘘をつけば僕は死ぬ。とういことは、僕が生きているのなら嘘はついてないということになるよね?」

竜子「……っ」

代表「改めて言おう。僕は君のお父さんの死の真相について知ってる。知りたくは無いかな?」

竜子「……」

代表の手錠はぴくりとも動かなかった。

558: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:28:27.56 ID:gF2HwH/i0
616

--竜骸の渓谷、はずれ--

ざく、ざく

ハイ「はぁ……役立たずの烙印を押されてしまいました。駄目ですねこんなのじゃ」

はぁ、とハイは一人ため息をついた。

かぽかぽかぽ

ユニコーン「ひひん」

ハイ「ユニちゃん、心配しに来てくれたんですか?」

ユニコーン「ぶひるん」

ハイ「……優しいですね」

ユー「……」

ハイ「あ、ユーさんもいたんですね。ってかその格好、寒くないんでしょうか」

ビシッ!! とサムズアップするユー。

559: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:30:17.54 ID:gF2HwH/i0
617

--竜骸の渓谷、はずれ--

ハイ「え? 私は十分役に立ってる。だから元気をだせ、って?」

こくこくと頷くユー。

ハイ「あ、いや……実は私のテンションがあまりあがらないように見えちゃうのは、そのことが原因じゃあ無いんです」

ユー「?」

ハイ「……もう一人の私のことを考えていたんです」

ユー「……」

ハイ「何度考えてみても、あの私は……色々とありえないんです……」

ユニコーン「ひひん……」

ハイ「そりゃ私は自分のことを知り尽くしてるわけじゃないですよ。私は凡人でなんの取りえもないし、全然魅力なんてないです。そんな自分に興味を持つことなんて出来ませんから、実際自分のことなんて他人のこと以上にわかりません」

ハイは話続ける。

ハイ「でもだからこそ異常なんです。あの別ルートの私は……影が薄くない!」

ユー「……」

思わぬ発言を聞いて真顔のまま固まってしまうユー。

560: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:33:22.27 ID:gF2HwH/i0
618

--竜骸の渓谷--

竜子「……」

代表「――と言うのが僕が団体構成員達を使って集めた情報の全てなわけだ」

竜子「……」

竜子は目線を泳がしている。信じていいものか迷っているのだが、代表の手錠を見る度に代表の言葉を否定できなくなっていく。

竜子「……お前の情報が合っている保証は……ッ、いや……辻褄は合うな……」

代表「……僕が今までの人生の大半をかけて手に入れた情報だからね。僕も色々検証してみたけど、多分これが真実だ」

竜子「じゃあ……あれは最初から仕組まれてたってのか……クソッ!!――話はわかった。だが今更お前らと手を組むことはできねぇ。私は人間どもから迫害を受けたのは事実だし、私が……先生を殺したのも事実だ」

代表「わかってる。お互いやな過去を背負ってるんだ。綺麗さっぱり水に流せなんて言うつもりは無い」

竜子「……それがわかってるなら」

代表「だから――全部背負って前に進んでみないか」

スッ

代表は右手を差し出した。

代表「……一緒に」

561: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:38:28.02 ID:gF2HwH/i0
619

--竜骸の渓谷--

代表「間違えたまま人生が終わっちゃうのは嫌じゃないかい? 煮え切らないのは君が最も嫌いなことじゃないかな?」

竜子「……」

代表「裏から操られたままってのも気に食わないでしょ? 一泡ふかしてやろうとは思わない? そして何よりこの世界が無くなっちゃうのは君にとっても都合が悪いものだ」

竜子「ッ……」

代表「今は……仲間になれなくてもいい。いきなりは無理だなんてことはわかってる。でも利害関係が一致してる今、同盟にはなれるだろ?」

代表は右腕を伸ばす。

竜子「う……」

代表「友達を前提に同盟からはじめましょう。手始めに世界を救うのだ」

代表の手をしばらくの間見つめている竜子。

竜子「――あのハイって言うやつの言うことを全部信じることが前提の話だぞ? お前は、本当に信じたのか?」

代表「……僕のことを心の底から頼れる友達、って感じで接してくるんだ。僕からしたら初めて会った人なのにね」

はぁとため息を付く代表。

代表「でも僕は……僕を本気で友達だと思っている人の言うことは、信じたいと思ってしまった」

竜子「……」

562: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/02/24(火) 04:40:11.40 ID:gF2HwH/i0
620

--竜骸の渓谷、はずれ--

ひゅおおおお

ハイ「戦闘能力を見てもそうです。いくら弱っていたとはいえ、私なんかがフォーテさんやユーさんを相手どって、余裕綽々に勝っちゃうなんてこと、ありえないんです。どんな戦法を思いついたとしても、普通なら押さえ込まれちゃうんです。でももしそんなことがありえるとするのなら……」

ひゅおおぉお

ハイ「……数百、数千、数万回にも及ぶ試行錯誤と実体験……影薄い系主人公と言われる私の影が、あまりの密度に濃くなってしまうほどの人生の積み重ね……そういうのが必要なんだと私は思うんです」

ユーは真面目な顔でハイの話を聞いている。

ハイ「ビィは恐らく、バッドエンドになってしまった私なんです。私と同じように未来からやり直しに戻ってきたのに、運命に抗えず再度失敗してしまった……」

ひゅおぉぉおおおおおおおおおおおおお

ハイ「そしてどういうわけだか……永遠にバッドエンドを繰り返すことになってしまったんでしょう」

575: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:29:55.71 ID:g6IsnIll0
621

--黄金王国--

てっててって
がらがら

姫「! あ、いた参謀長!」

参謀長「……なんです姫? 私は今忙しいんですが」

膨大な資料に目を通している参謀長の後ろでぴょんぴょん跳ねている姫。

姫「大変なんだよ! みんな忙しいっていって姫ちゃんを全く構ってくれないの!! これは異常事態だよ!! 非情事態だよ!!」

参謀長「そりゃ私がみんなにやるべきことを指示しましたからね。時間が無いこの状況下、姫様になんて鎌ってられませんよ」

姫「なんてって言った!?……ま、まぁいいや。だからね? 賢い姫ちゃんは一番暇そうな参謀長と遊んでやろうと思ってここに参上しました!」

参謀長「一番忙しいです私。さよなら」

姫「さよならって言った!? うー……参謀長ー、あそぼうーよー。姫は寂しいと死んじゃうらしいよー? ねー、ねーえー」

参謀長「すいませんが本当に無理です」

参謀長は姫の方を見ようともせず、悪そうな顔で笑っている。

姫「ふえ? 何か面白いことでもあったの?」

参謀長「はい。とても面白いことを思いつきました……」

576: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:32:00.69 ID:g6IsnIll0
622

--東の王国、近辺--

ハイ「見えてきましたね、次なる目的地の東の王国が」

十代目「……しかし思い切ったな。中々の決断力だ、ハイ」

ユニコーン「ひひん」

ユー「……」

代表「いやー、改めて見ると……いくらなんでも無謀じゃないかい……?」

竜子「……くそ。なんで私がこんなことに……」

賢帝「本当よぉん。私はいつまで使われ続けるのかしらねぇん」

ハイの後ろをぶつくさ言いながらも付いてくる五人。

ハイ(なんだかちょっと三蔵法師にでもなった気分ですね)「仕方ないじゃないですか、今は時間と人員がいくらあっても足りない状況なんですから。削れるところは削らないとです」

代表「……で、それで」

魔剣使い「……」

ドォン!!

ハイ達を待ち受けていたのは、魔剣使いを筆頭にした数百人の兵士達。

代表「削ったのが東の王国攻略の人員ですか……」

竜子「おかしいだろ……jk」

577: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:35:00.08 ID:g6IsnIll0
623

--東の王国、近辺--

魔剣使い「止まってください」

ぴたっ

魔剣使いがハイ達に喋りかける。

魔剣使い「――貴方方は我が国に一体何のようがあって来られたのでしょうか? その目的をお聞かせ願いたい」

十代目(……大軍で来たのならいざしらず)

賢帝(こんな少人数の私らを迎え撃つようにして待ち構えてるだなんてやっぱり……)

代表(こっちの情報を知ってるみたいだね。知った上でこの行動……ってことは)

ハイ「はい」

ざっ

ハイは一歩前へ出る。

ハイ「申し訳ないんですけど、この国をぶっ壊しに来ました」

満面の笑顔のハイだった。

魔剣使い「……!」

竜子「あー……それ言っちまうのか」

代表(この子もなんだかんだ壊れてる気がする)

578: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:37:26.08 ID:g6IsnIll0
624

--東の王国、近辺--

ざわざわ

ハイの宣言を聞いた兵士達が動揺し、ざわついている。

東の兵「あの話は本当だったのか……」

東の重兵「まさか十代目様まで加担していようとは!」

ざわざわ!!

魔剣使い「……例え今のが冗談だったとしても……この状況下でそんなことを口にされてしまっては、我々としては無視できませんよ?」

ハイ「すいません、冗談じゃなくて、本気の本気なんです」

竜子「……ち」

代表「仕方ない、ね」

ザンッ!!

後ろの竜子達が戦闘態勢に入る。

579: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:39:29.66 ID:g6IsnIll0
625

--東の王国、近辺--

魔剣使い「――そう、ですか。なら」

スッ

魔剣使いが右腕を上げると、それを見た兵達が各々の武器を構えた。

魔剣使い「――倒させていただく」

東の兵隊長「ってーーー!!」

ドヒュドヒュドヒュドヒュドヒュ!!

兵達は一斉に弓を引き、矢を放った。

ハイ「賢帝さん」

賢帝「はいはい。もうなんでもやったげるわよぉーう。火属性範囲防御魔法、レベル3」

ボッ!!

賢帝は、ハイ達全員を覆う、巨大なドーム状の炎の膜を作り出した。

ドジュジュジュジュジュッ!!

東の兵隊長「!! 矢が焼きつくされている……これが五柱の力なのか!」

ハイ「では皆さん、先ほど説明したプランで行動開始です!」

十代目、賢帝、代表、竜子「「「おう!」」」

おー、と腕をあげるユー。

580: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:43:09.96 ID:g6IsnIll0
626

--竜骸の渓谷、過去--

ハイ「――という感じでして、もし何周分もの経験がビィにあるとするなら、私の次の行動だって簡単に予測できちゃうと思うんです。あの襲撃の時みたいに……」

自分の考えを語るハイにみんなは真剣な顔で耳を傾けている。

ハイ「こうなってくると、私が未来からもって来た情報がどこまで役に立つのかわからない状況になってしまいました……いえ、むしろそれが足を引っ張る可能性すらある……。だから私は、ビィの予測を裏切るような行動を取り続けなくてはいけないと思います。ここからは、先の読み合い合戦になるでしょう」

竜子「……」

ハイ「だから、今は少しでも戦力が欲しい。貴女の力が必要なんです。どうか、竜子ちゃんの力を私達に貸していただけませんか?」

ハイは深々と頭を下げた。

竜子「……くそ……断る……なんて言える状況じゃないじゃねぇか……。いいか? こう見えて私だってな」

竜子が仲間になった。

ハイ「! やったー! 竜子ちゃんが仲間になりましたよー!」

竜子「!? ちょいまて!? 私はまだ仲間になるだなんて一言も言ってないぞ!? 今のなんだ!?」


581: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:43:58.10 ID:g6IsnIll0
627

--竜骸の渓谷、過去--

竜子「――だー! もういいよ! 仲間でもへちまでもなんでもなってやるよ!! バカッ!」

ハイ「へちまはどうでもいいですけど、やりました! 改めてよろしくおねがいしますね、竜子ちゃん」

竜子「ふん。で? 敵さんの予測を裏切るって、具体的にはどうするんだよ?」

ハイ「えっとですね。普段の私なら絶対に考え付かないだろうし、絶対にやらないだろうことをしようと思うんです」

十代目「というと?」

ハイ「はい。東の王国を滅ぼそうと思うんです」

ユー「……」

十代目「……」

賢帝「……」

代表「……」

竜子「どういうこと……」

582: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:44:40.53 ID:g6IsnIll0
628

--東の王国、近辺--

東の兵隊長「魔法使い部隊! 放て!!」

ひゅるるるるる、どぉがぁああああん!! どがががぁああん!!

ハイ「ユニちゃん!」

ユニコーン「ひひーーーん!!」

だからっだからっだからっだからっ!!

ハイはユニコーンに跨って戦場を駆ける。

ビッ!!

ハイ「ッ!」

一本の矢がハイの腕をかすめて飛んでいく。

ハイ「条件達成、レベル2、盾兵!!」

ぼしゅうん!!

ハイは一瞬で鎧と大盾を装着するとそのまま駆けていく。

583: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:46:36.04 ID:g6IsnIll0
629

--東の王国、近辺--

魔剣使い「……」

ガイン! ガキガキィン!

矢や魔法を弾きながら突進するハイとユニコーン。

だからっだからっだからっだからっだからっ!!

魔剣使い「そのまま突っ込んでくるつもりですか……魔剣!」

ヴぃん!!

魔剣使いの握る魔剣が怪しく光ったと思うと次の瞬間、

ぱっ

ハイ「!」

その姿が消える。

ハイ(うわ、本当に見えないし何にも探知出来ない!)

シュッ

魔剣使い(殺しはしません。貴方方には聞きたいことがある。でも、後悔はしてもらいますよ)

魔剣使いは跳躍し、ハイへと切りかかった。

がきぃいいん!!

その見えない魔剣使いの斬撃を、駆け寄った十代目が弾く。

魔剣使い(!? この人)

十代目「お前の位置は、自然が教えてくれる」

584: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:47:56.11 ID:g6IsnIll0
630

--東の王国、近辺--

とすっ

土『おう十代目ー。やっこさんこっちに着地したぜー』

さささっ

風『今ここを通ったわ十代目。気をつけて、今度は本気で斬りかかってくるみたい』

魔剣使い(先ほどがまぐれなのか、これで見極める!)

ガギィイイイイイイイイイイン!

魔剣使い(防がれた! やっぱり完全にばれて)

シュッ!!

魔剣使い「ぐっ!?」

ビッ!!

十代目は剣を弾くだけで無く、追撃で魔剣使いの首を狙おうとした。

魔剣使い(あと少し……体をそらすのが遅かったら……)

魔剣使いは左手で自分の首を触る。

魔剣使い「……」

ヴぃん

魔剣使いは魔剣の効果を止めて姿を現した。

585: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:48:35.31 ID:g6IsnIll0
631

--東の王国、近辺--

だからっだからっだからっだからっ!!

ハイ「はあああああああああああああああああああ!!」

東の兵隊長「陣形を乱すな! たかが一人だ!! 止めるぞ!!」

兵達「「「おおおっ!!」」」

賢帝「邪魔はさせないってーのっ!! 火属性範囲攻撃魔法、レベル4!!」

ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

東の駆兵「うわっ!! 熱い!!」

ユー「……」

ズバズバズバズバババッ!!

東の髭兵「ぐっ!? この半裸の剣士めちゃくちゃ強いぞ!! おおおおおおおおおおお!!」

ガァアン!!

東の髭兵の大斧がユーを斬りつけた。が、

ミシッ

東の髭兵「!? 左の甲で防いだだと!? なんて硬さだ!!」

ズバッ!!

そしてユーの返しの一撃で髭を剃られてしまう。

東の髭兵「マンマ……ミーア……」

586: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:49:30.47 ID:g6IsnIll0
632

--東の王国、近辺--

どごおおん! どごおおおおん!!

ハイ「ユニちゃん! あそこです! あそこ駆け上がってください!……え? 無理? 高過ぎる? そこをなんとかがんばってくださいよ、私とユニちゃんの仲じゃないですか!」

ユニコーン「ぶひるんっ!!」

首を大きく左右に振るうユニコーン。

竜子「なら私に任せな」

ザンッ!!

驚異的なジャンプ力で追いついてきた竜子は掌に氷の魔力を発生させる。

竜子「氷属性範囲攻撃魔法、レベル2!!」

ビュオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

東の老兵「ぎゃああああああ!!」

カッチーーーーン!!

竜子が放った魔法は城壁を越えるように作られた氷の道となる。

ハイ「さすがです竜子ちゃん! やっぱり頼りになりますね!」

竜子「……ふんっ」

嬉しかったのか、竜子は氷の道に細工をして、階段のような段差を作ってやる。


587: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:50:00.98 ID:g6IsnIll0
633

--東の王国、近辺--

ガギィン! ギギィン!!

十代目(中々の太刀筋だ。よほどいい師匠がいるんだろう。だが)

ズバッ!!

魔剣使い「ぎっ!?」

十代目の剣が魔剣使いの腹部をなぞった。

ぶしゅっ、ぽたっ!

魔剣使い「いたたっ……よかったそこまで深くはないですね」

十代目「この程度なら私の敵じゃない。大人しく倒れてもらおうか」

魔剣使い「……ふ」

ぴく

その時十代目は異変に気づく。

十代目(……今奴の動きが一瞬早くなったように感じられたが……気のせいか?)

588: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:51:00.91 ID:g6IsnIll0
634

--東の王国、近辺--

魔剣使い「はあああああああああ!!」

ギギギギギギン!! ズギィン!!

十代目「これで、終わりだ!!」

ズカッ

十代目の剣は宙を斬り、

十代目「何!?」

ズバッ!!

代わりに魔剣使いの剣が十代目の脇腹を斬りつけた。

十代目「がっ!?」

魔剣使い「もういっ、ちょう!!」

ズバババッ!!

十代目「ッ!!」

589: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:52:03.36 ID:g6IsnIll0
635

--東の王国、近辺--

ひゅるるる、どおおん!!

賢帝「ちょっと十代目ちゃんっ!? 大丈夫なの!?」

ぼたたたっ

十代目「……あぁ……」

魔剣使い(焦ったせいか浅かったか……この人の的確な防御のせいっていうのもあるんだろうけど……まだまだ未熟だ)

十代目は千切れかけた左腕を舐めた。

十代目「スキル、  ぺろ」

じゅっ

魔剣使い(応急処置か。手を使わずに出来るのはいいですね。毒とかつけられてたらおしまいですけど)

十代目「……」

土『おいどうしたんだ十代目。なぜ奴への攻撃を外したんだ?』

風『そうよ。あの子、普通の動きしかしてないわよ?』

十代目「なるほど……」

十代目は目を瞑った。

十代目(サブリミナルか)

590: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:54:29.88 ID:g6IsnIll0
636

--東の王国、近辺--

魔剣使い(目を瞑った……ばれたかな?)

魔剣使いは小刻みに魔剣の能力を付けたり切ったりを繰り返していた。それによって人では理解出来ないほどの速さで、姿が消えたり現していることになる。

十代目(知らない間に脳を狂わされていたか)

視覚に頼る者のアンチ、それが魔剣使いだった。

魔剣使い(目を瞑られたら仕方ない……)

十代目「……」

ギギギギィン!!

魔剣使い(この人は見えなくても僕の位置を正確に把握してくる……。ならば、剣技と気迫で上回るのみ!!)

ギギィン!!

魔剣使い「はああああああああああああああああああああああ!!」

ギギンッ!! ギン

十代目の剣が魔剣使いの剣の軌道を最小限の力で逸らし、

スパッ

魔剣使いの剣を持つ右手首を刎ねた。

591: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:55:53.69 ID:g6IsnIll0
637

--東の王国、近辺--

魔剣使い「」

パシッ

しかし魔剣使いは一切動揺せず空中の魔剣を左手で掴み、

ドスッ!!

十代目の首元に突き刺した。

十代目「!! ぐっ!!」

魔剣使い「っ、甘いですね、それで勝ったつもりですか!!」

ズブッ、ズググググッ!!

慌てて魔剣の刃を掴む十代目。だが少しずつその刀身が十代目の体の中に埋没していく。

ブシュッ! ブシュシュッ!!

十代目「がっっ!!」

魔剣使い「あの聖騎士様を倒したと聞いていたのにっ、この程度なのですか……っ? それとも」

ブシュッ

魔剣使い「――私如きでは、本気を出していただけないのですか?」

魔剣使いの表情が曇る。

592: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:56:52.65 ID:g6IsnIll0
638

--東の王国、近辺--

ズボッ

魔剣使いは、剣を引き抜いた。

ぽたぽたぽた……

十代目「げほっ、ごほっ!!」

ぼたたたっ! ぼたっ!

魔剣使い「……残念です。十代目さん」

魔剣使いは斬られた自分の右手首を拾う。

十代目「……いや、私は本気だった……と言っても、信じてもらえないだろうか」

魔剣使い「……そうですね」

魔剣使いは薬を取り出して右手首の断面に塗ると、それを右腕にくっつけた。

ぬちゃっ

魔剣使い「っ……」

ぐぐ……

早くも指が動き始める。

593: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 03:58:34.12 ID:g6IsnIll0
639

--東の王国、近辺--

ぽたぽた

十代目「……君の気迫は凄まじかった。国を守るために全てを投げ打ったあの覚悟……見事だった。それが確かに私を超えたから、ああなったんだ」

魔剣使い「……そうだと、いいのですがね」

チャキッ

魔剣使いはまだ震える右手で魔剣を握る。

魔剣使い「……しっ!」

ガキイイイイン!!

魔剣使いが斬り込み、十代目がそれを受ける。

魔剣使い「貴方方の目的は、なんですか!?」

ギィン!

魔剣使い「ただ無意味にこんなことをする方では無いと、存じています! 何か、意味があるのでしょう!?」

ギギィン!!

十代目「それは……この国を、救うためだ」

594: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/03(火) 04:08:16.42 ID:g6IsnIll0
640

--東の王国、近辺--

ひゅるるるる、どぉおん!! どかぁあんん!!

魔剣使い「この国を、救う……?」

十代目「あぁ……この国は、魔王側と癒着している現状を知っているか?」

魔剣使い「!……魔王、ですって……?」

十代目「わからなくも無い話だ。この国の王は、絶対に勝てないと考える相手に立ち向かうことをせず、その手下に成り下がることで多くの人々の命を救おうとしたのだ……王という立場ならば、それは妙案かもしれない」

十代目は剣を構えた。

十代目「だが今世界は大きく変わろうとしている。人類全てが協力して魔王を倒そうと動き出しているんだ……恐らくこれがラストチャンス。足並みを崩されては困る」

魔剣使い「……」

魔剣使いは思い出していた。東の王の側近達のことを。彼らは亜人と言い張っていたが、それは……

十代目「そして……東の王国が共に手をとる仲間となるのであれば、絶対に勝てない相手にも勝てるかもしれないんだ。……この国のためにも、人類のためにも……この国を一度破壊し、愚かな幻想から救わなくてはならない」

魔剣使い「……」

スッ

魔剣使い「……私が守ろうとするものと、貴方の言葉……どちらが正しいのか、次の一振りにかけましょう」

ザッ!

魔剣使いは構える。

十代目「……よかろう」

スッ

十代目も構えた。

ひゅるるるるる……

十代目「……」

魔剣使い「……」

どど
ズバッ!!

おおおおおおおおんんん!!

魔法の着弾を合図に斬りこんだ二人。

ぽたっ……

十代目「……」

魔剣使い「……東の王国を……頼みました」

ぶしゅっ!!

十代目「承知した」

魔剣使いは血を流して地面に倒れた。

601: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 03:42:07.70 ID:U2WX8vfN0
641

--東の王国、近辺--

十代目「はっ、はっ、はっ……」

ぼたぼたぼたっ

十代目は傷口に手を当てて回復魔法をかける。

すぅーっ

十代目「手ごわかった。若いのにいい剣士だな」

どご、どぉおおん!!

賢帝「ちょっとぉ、十代目ちゃん!? たった一人にかまけてないで私をっ、手伝いなさいよぉ!! さすがの私もこの人数はきっついのよぉ!!」

どががぁああん!!

言いながらレベル4魔法を捌く賢帝。

十代目「ああわかった、今そっちに……?」

ぴたっ

十代目(……)

602: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 03:43:04.94 ID:U2WX8vfN0
642

--東の王国、近辺--

バッ!

十代目は遥か後方に視線を向ける。

十代目(……なぜ俺は、こんな大事な闘いで供給要請をせずに戦った……? 騎士道でも振りかざしたつもりか……?)

ヴン!

十代目は索敵範囲を広げる。

十代目(一キロ……二キロ……三キロ以内にもいない……?)



--草原--

ひゅうううううぅ

腹黒「ん……やれやれ気づかれましたか。噂どおり中々勘が鋭いようですね」

十代目がいる場所から二十キロ離れた場所で、椅子に座って優雅にコーヒーを飲んでいる腹黒。

腹黒「そのまま大人しく(ゴミ同士削りあってくれればよかったのによぉ)」


603: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 03:44:33.53 ID:U2WX8vfN0
643

--東の王国、近辺--

十代目(いた……!! くっ、それほどまで遠くにいるとは……!)

ダッ!!

十代目は駆け出した。

ダダダダダダだ!!

十代目(精神干渉の魔法……それも超々遠距離から誰にも気づかれることなく……こいつは間違いない、魔王の一角、腹黒!!)



--草原--

腹黒「ふふふ、来ますよね? 来ちゃいますよねぇ貴方方勇者は。そりゃそうだ。魔王を野放しになんてとんでもない」



--東の王国、近辺--

ぼぉん!!

十代目「!?」

十代目が踏んだ地面が爆発し、十代目を吹き飛ばした。

十代目「ぐっ!? これは、罠魔法、か!?」

604: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 03:45:59.70 ID:U2WX8vfN0
644

--草原--

腹黒「爆発系罠魔法、地雷。これが中々いい出来なんですよ。四代目魔王を倒した時のことを思い出しますねぇ」



--東の王国、近辺--

ドォンドォンドドドオォオン!!

十代目「がはっ!?」

土『おい十代目! こっちは危険だ! 遠回りで行け!』

十代目「……駄目だ、安全な道を選べば奴のところにはたどり着けない。そう仕組まれているはずだ」

ドォン!!

土『……! ならせめて直撃は避けろよ!』

十代目「踏まなくとも範囲に入っただけで爆発するようになっている……同じことだ」

ピョロロロロロ……

十代目「……?」

十代目の上空を巨大な鳥のモンスターが飛んでいる。そしてそれは無数の何かを落としていった。

どさ、どさどささ!!

十代目「!?」

近隣の少年「いたた……あれ? ここどこ?」

近隣の少女「うああああ! 足いたい、いたいよぉお!!」

十代目「子供……?」

605: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 03:47:01.98 ID:U2WX8vfN0
645

--草原--

腹黒「カーニバル」

ぱちんっ

腹黒が指を鳴らした。



--東の王国、近辺--

近隣の少年「猫のお兄ちゃん、ここどこ?」

近隣の少女「うああああん! うあああああん!!」

十代目(こんな危険な場所に子供達を……己魔王め!!)「捕まれ! 話をしている暇は無い、ここから離れるぞ!!」

十代目が少年達に手を伸ばしたその瞬間。

ぼこっ

十代目「」

近隣の少年「あ、あれ?」

少年の体が膨れ上がり、そして

ドゴオオオオオオオオオオオオオオン!!

606: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 03:49:02.08 ID:U2WX8vfN0
646

--東の王国、城壁--

だからっ、だからっ、だからっ!!

ハイ「ユニちゃん急いで! 皆さんが時間を稼いでくれているうちに!」

ユニコーン「ひひーーん!!」

だかっっ!!

ユニコーンは跳躍し、東の王国の城壁を飛び越えた。

ハイ「見えた! 東の王国の城!!」

符術師「っとー、ここまでだぜお姉ちゃん達。不法入国はいけないねぇ!」

ハイ、竜子「「!!」」

城壁の内側に張り付いていた符術師が、真下から弓で狙いをつけていた。

ハイ「符術師さん!?」

符術師(!)

ドシュッ!!

竜子「私が弾く!」

ドガッ!!

竜子の拳が符術師の矢を叩き折った。

符術師「残念、それ爆発するぜ?」

竜子「な」

ドゴオオオオオオオオオオン!!

607: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 03:50:22.23 ID:U2WX8vfN0
647

--東の王国、城壁--

ユニコーン「ぶひひぃいーーーん!」

ぼふっ!

爆煙の中から錐揉み状態で飛び出したユニコーン。

符術師(あれ? ユニコーンだけ? 他の死体は?)

ビスビスッ!

符術師「ぎっ!?」

符術師の太ももを銃弾が貫通する。

ハイ「条件達成、レベル3、銃士!」

符術師「こんな、飛び道具が! くそ煙で視界を塞いじまったのがあだに!」

パキパキパキ!!

符術師「!!」

いてつく風が煙を吹き飛ばし、中から竜子達が現れた。

竜子「今のは、ちっとだけ効いたよ。だからこれは、お返しだ!」

符術師「ぐっ!! ほぼ無傷じゃねーか!」

バキキーーーーーン!!

608: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 03:52:27.79 ID:U2WX8vfN0
648

--東の王国--

符術師「」

かきーん

竜子の攻撃を受けて氷像になってしまった符術師。

ハイ「ほらユニちゃん、気絶してないで起きてください! また走ってもらうんですから! 時間無いんですよ!?」

ぺちぺち

ユニコーン「ひ、ひひん……」

竜子「……意外とお前、どエスだよね」

すたすたすた

代表「おや、まだこんな所にいたのか。いや、丁度良かったというべきか」

ハイ「本当に歩いてきた……」

竜子「あの戦場を一人で無傷で歩いてくるとか……どうやったんだこいつ」

代表「まぁいいじゃないか。さて行こうか。こっからは簡単じゃないからね」

ハイ「今までも簡単じゃないですけどね」

609: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 03:55:21.41 ID:U2WX8vfN0
649

--東の王国、城--

通信師「――さらりと城壁の中に入られてしまいました。しかも魔剣士と符術師がやられたようです」

東の王「ふむ……芳しく無いな」

通信師「……でもなぜ彼らがこの王国に襲撃をかけたのでしょうか。本当にこの国の財宝を狙ってのことなんでしょうか。私はいまいち納得がいきません」

東の王「……」

ギィ、コツコツ……

ある館の主「なにやらお困りのご様子ですな。我々が手を貸しましょうか? 東の王様」

ドアを開けて白髪の老人が現れる。

通信師「何者ですか。作戦司令部に部外者が入ることは許されませんよ」

東の王「よい。あの者は私の知り合いだ。……下がれ通信師」

通信師「っ!? 私に、下がれと言ったのですか……? 私がいなくては今戦っている兵達に命令を伝達できなくなりますが……」

東の王「構わぬ。しばらくこの者と二人だけで話をしたいのだ。下がってくれ通信師」

通信師「……東の王様……あなたは……」

ある館の主「ほっほっ。よいではありませんか東の王様。いい機会です。全部話してしまいましょうよ」

東の王「黙れ……」

610: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 03:57:07.32 ID:U2WX8vfN0
650

--東の王国、城--

ある館の主「ほっほっほっ……」

老人が笑うと、

みぢっ

その口は耳まで裂けた。

通信師「!? お前人間ではないな!?」

ズグッ!!

構えようとした通信師だったが、それより一瞬早く老人の長い爪が腹部を貫通する。

通信師「がはっ!?」

ある館の主「遊びはもう終わりなのですよ。ほっほっほっ」

ぎちぎちと姿がピエロのように変貌していく老人。

東の王「貴様ッ、我が国の民に手を出すなと言ったはずだ!!」

ある館の主改めピエロ「ほっほっほっ、いーいじゃぁありませんかぁ? 秘密なんて抱えておくもんじゃありませんよ、ぱぱっとさらけだしてしまいましょうよ」

ぼたぼたぼたっ

通信師「ま、まぞ、く……! 東の王様……貴方は、なんてものと手を組んで……!」

611: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 03:58:40.66 ID:U2WX8vfN0
651

--東の王国、城--

ごり

ピエロは通信師の頭部を踏みつける。

通信師「うっ!」

ピエロ「取引相手に向かってなんてもの、とは……口の利き方がなっていないお嬢さんだ……これは躾が必要ですかな?」

びきっ!

通信師「ぐっ!?」

東の王「手を出すなと言っている」

ヴン

東の王は紋章が刻まれた右腕をピエロに向けた。

ピエロ「……おやおや……長年のビジネスパートナーに対して随分じゃあありませんか。ほっほっ……こんなのはほんのジョークですよぉ。そんな怒らないで」

スッ

ピエロは通信師の頭から足をどける。

ピエロ「しかし……あまり強気にでてもらっては困りますねぇ東の王様? 忘れてしまいましたか? 貴方の大事な国民と、第二王子の命は我々次第だということを」

東の王「……!」

通信師(第二……王子?)

612: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 03:59:16.11 ID:U2WX8vfN0
652

--東の王国、城壁--

どがああああああああああああああん!!

東の最上級兵「く、くそおおお!! 城壁をぶち破られた!! 誰かそいつをとめてくれええーー!!」

ユー「……」

ダダダダダダ!!

迫る兵士達をちぎっては投げちぎっては投げのユー。

シュンッ!

ユー「!」

そこに三人の兵士が現れ、ユーに襲い掛かる。

三強予備兵剣士「はぁあああ!!」

ザギイイイイイイイイイイン!!

三強予備兵槍兵「ちぇいやあああああああああ!!」

ガギイイイイイイイイイイン!!

三強予備兵魔法使い「火属性攻撃魔法レベル3!」

ボオオオオオオオオオオオオオオン!!

東の最上級兵「!! 予備兵ズ!!」

613: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 04:01:05.03 ID:U2WX8vfN0
653

--東の王国、城壁--

しゅううううううううう……

三強予備兵剣士「……僕達の同時攻撃を簡単に捌くなんて……さすがは腕に自信アリみたいですね。これは骨が折れそうだ」

ちゃきっ

三強予備兵槍兵「――私が死ぬ気で動きを止めるわ。その隙に超火力でお願い」

三強予備兵魔法使い「了解であります」

ユー「……」

ジリジリ……

ユー「……」

ぴくっ

三強予備兵槍兵「はああああああああああ!!」

ボッ!!

間合いを計り、魔力を乗せて突く予備兵。

バギィイイン!!

その槍を右手のレイピアの一撃で粉砕するユー。

三強予備兵槍兵「!?」

ズバッ!!

そして左手のレイピアで予備兵を切り裂いた。

三強予備兵槍兵「ぎゃはっ!?」

614: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 04:03:11.05 ID:U2WX8vfN0
654

--東の王国、城壁--

三強予備兵剣士「! よくも!!」

ガガガガガガァアン!!

一気に間合いを詰めてきた剣士の乱れ切り。だがその全てを華麗に捌いてしまうユー。

ズバッ!!

三強予備兵剣士「ッ! ぐ」

ズバババッ!!

三強予備兵剣士「---ッ!」

槍兵に続いて剣士も切り裂いた。

ドシャッ!

三強予備兵魔法使い「そ、そんなであります……あの二人がほんの数秒で……」

ユー「……」

ぴっ

ユーはレイピアについた血を払い、魔法使いに視線を向ける。

三強予備兵魔法使い「……ぐっ!! 二人の仇! とらせてもらうであります!!」

??「やめとけ」

615: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 04:05:26.46 ID:U2WX8vfN0
655

--東の王国、城壁--

ざんっ

そこに隻腕の剣士が現れた。

三強予備兵魔法使い「け、剣豪様……」

??改め剣豪「そいつはお前達の手に負える相手じゃねぇよ。最初の斬りあいでわかっただろうが」

三強予備兵魔法使い「う……ッ」

ざっ、ざっ

剣豪「後は俺に任せな」

すらぁ

剣豪は鞘から刀を引き抜いた。

剣豪「せっかくの仕事がパァになったところでよ、退屈してたんだ。お前で退屈を紛らすことができればいいんだがなぁ」

ユー「……」

ズッ!

ユーはしっかりと構えを取った。

616: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 04:07:01.65 ID:U2WX8vfN0
656

--東の王国、城壁--

剣豪「行くぜ……」

ダッ!

ユー「」

神速の踏み込みと斬撃。その刀はユーの首を狙って動いた。

ガギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

剣豪「ほう、簡単に防ぐもんだなぁ。中々見所あるじゃねぇか」

ユー「……!」

ユーは二本のレイピアで剣豪の攻撃を防いだ。が、

ガクガクガクガク

その両腕は衝撃に震えている。

チギィン!! ギンギンギギギギィン!!

剣豪「ははははっ!!」

剣豪の乱れ切りを受けるユーだったが足がもつれて後ろに飛んだ。

ダンッ!

剣豪「逃がさん」

ヒュッ、ズバッ!!

風の刃がユーの左腕を斬り付けた。

617: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 04:08:17.87 ID:U2WX8vfN0
657

--東の王国、城壁--

どくどくどく……

ユー「……」

めきっ!

ユーは筋肉に力をこめて出血を止める。

剣豪「……いいね……実にいいぞ。小細工無しの真っ向勝負を楽しめそうだ……。俺は、お前みたいな敵を望んでいたああああああああ!」

ダッ!!

ユー「!」

ダッ!!

剣豪が走り出すとユーも同じように駆ける。

ダダダダダダ!!

剣豪「はあああああああああ!!」

ガギィイイイイイイイイン!! ギイイン! ギイギイイイイイン!!

ユー「!」

ギィン!!

剣豪「ぬっ!?」

ユーの一撃が剣豪の刀を弾く。

618: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 04:11:11.86 ID:U2WX8vfN0
658

--東の王国、城壁--

剣豪(わからねぇなぁ……こいつは受けの剣が上手い。なのになんだってレイピアなんて使ってんだ。もっと適したもんがありそうだが)

ボボッ!!

剣豪「っとぉ!」

ユーの突きを紙一重で交わす剣豪。

剣豪「甘いぜ攻撃がみえみえだ! 狙いが素直すぎるんだよ!」

ユー「――!!」

ギィン! ギンギィン!!

剣豪「おらおらおらおらああああああああ!!」

ユーの防御をすり抜けた剣豪。そして剣豪が必殺の構えを取った。

ドゴオオオオオオオオオオオオオン!!

剣豪「!?」

ユー「!?」

ぱらぱら……

三強予備兵魔法使い「な、なんでありますか!?」

城の最上階が突如爆発し、斬り合っていた二人は動きを止める。

剣豪「なんだ……いきなりどうしやがった?」

ユー「……?」

619: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 04:13:19.58 ID:U2WX8vfN0
659

--東の王国、城壁--

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

ピエロ「……」


剣豪「ち、あのてっぺんにいるのは……魔族じゃねぇか……! どういうことだ! お前らが手引きしたのか?」

睨まれたユーは首を左右に振る。

剣豪「……嘘じゃねぇみたいだ……いや、そもそも堂々と外から来たんなら俺でもわかる。つーことは」

剣豪は剥き出しになった王の間に立っている魔族と東の王を睨む。

剣豪「……考えたくねぇな。でもそういうことなんだな、東の王」

ざっ、ざっ、ざっ

剣豪はユーに背を向けて城へ向かっていく。

三強予備兵魔法使い「け、剣豪様……!? どうされるのですか!?……我々はどうすればいいのでありますか!?」

剣豪「兵士を出来るだけかき集めて来い。この際侵入者は無視でいい、あっちの方が重要だ。俺らはあの魔族の対処にあたる」

620: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/10(火) 04:16:34.54 ID:U2WX8vfN0
660

--東の王国--

だからっ、だからっ、だからっ!

ハイ「! 見てくださいあれ!」

城の天辺を指差すハイ。

代表「……驚いた。本当に魔族がいるよ……。しかしなんで堂々と姿を現したのかね?」

竜子「ふん、知ったことか。これは私らにとって都合がいい。みんなの見ている前でぶちのめす。それだけだ」

ユニコーンの背にはハイと竜子が乗っている。背に乗ることが出来ない代表はユニコーンの腹にしがみついていた。

だからっ、だからっ、だからっ!

ハイ(あれは……私の知っている情報の中にはいなかった魔族……どんな戦闘方法をとってくるのかわからない……)

ハイは一筋の汗を垂らす。

ハイ(でも、負けられない!)

633: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/16(月) 23:52:49.13 ID:4qwxR3rH0
661

--???、過去--

ビィ「正直腹黒さんは魔王化のせいで弱体化しちゃってますよねー★」

腹黒「……」

目を閉じて紅茶を飲んでいる腹黒に話しかけるビィ。

ビィ「一度、腹黒さんが存命している段階で、魔王の力を封印したことがあるんですよ。北の王国襲撃を無視して。でも今にして思えばそれが一番ひどい結果になりました」

トリガー「一番ひどい結果っていうのはどんなのかな?」

ビィ「はい、魔王の皆さんを勇者にしてから三日後に人類が全滅しました。勇者化した腹黒さんの極悪細菌魔法で」

ウェイトレス「……細菌て」

壁に背を預けて話を聞いているウェイトレス。

トリガー「なんだか……情緒も何も無いね。核とかもあれだけどさ」

じーっと腹黒を見るトリガーとウェイトレス。

腹黒「なんですか……今の私には関係の無い話でしょう?」

634: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/16(月) 23:55:07.39 ID:4qwxR3rH0
662

--???、過去--

ビィ「もう本っ当に最悪でしたね。薬も回復魔法も効かないし、何を媒介にして感染させてるのかもわからなかったですし。治療しようとしたものからばったばったと倒れていく恐るべき感染スピード……完全に打つ手無しでしたねー」

腹黒「……で、一体何が言いたいんですか貴女は?」

ビィ「いえね、いくら魔王化で思考が狂わされているとはいえ、もうちょっと人間だった時と同じような戦い方をしてもらいたいなぁ、って思うわけですよ。戦法が単純になり過ぎです。なんでいきなり前線に出ちゃったりしてるんですか」

腹黒(いつの話だよ、俺出てねぇし……)

トリガー「確かに一理ある。彼ほど魔王化がマイナスに働いたもの者はいないかもしれないね。彼は卑劣だけど、卑劣であるがゆえに隙が無かった。目的のために一切手段を選ばないド畜生だけれど、終わってみれば最小限の犠牲で多大な成果を勝ち取ってきていた。魔王を無傷で倒した勇者は長い歴史の中で彼だけだ」

腹黒(喧嘩売ってんのかな……)

ウェイトレス「あぁ、わかるかも。絶対性格わるいよねーあいつ」

腹黒「(#^ω^)ピキピキ」

635: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/16(月) 23:56:37.63 ID:4qwxR3rH0
663

--???、過去--

ビィ(そろそろかな?)「はーあぁ。あの見事なアウトレンジ殺法は味方になると見れないんですかねぇ。敵の時だけ強くて味方になると微妙、みたいなパターンなんでしょうか。まぁ、いくら凄い人でも魔王化しちゃったらろくにものを考えられないバカになっちゃうんでしょうけどー」

ウェイトレス「あれ? それ私らもバカにされてない?」

がたんっ!

腹黒は勢いよく立ち上がった。

腹黒「……いいでしょうビィさん。そこまで言うのなら見せてやりましょう……。私の知性が衰えていないということを!」

ビィ(やーん。かんたーん★)



--東の王国、近辺--

どがぁああん!!

十代目「がはっ!!」

人間爆弾と地雷により一方的に嬲られている十代目。

十代目(どういう、ことだ……最短距離で進んでいるというのに奴との距離が縮まらない……!)

636: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/16(月) 23:57:33.48 ID:4qwxR3rH0
664

--草原--

腹黒「ふん、それみたことですか。私が本気を出せばこんなものですよ。トリガーが恐れていた勇者でさえも……ふっ。土属性地形変更魔法レベル4、雷属性妨害魔法レベル4」

ごごご、ぴぃーーーん

腹黒は器用にも、両手で何種類もの魔法を同時に操っていた。



--東の王国、近辺--

ゴゴゴゴゴ

十代目「! 地形を動かされているのか!? たどり着けないのはこのせい……ぐ、耳鳴りも強烈になってきた。眩暈がする……」



--草原--

腹黒「土属性重力制御魔法レベル4、水属性拘束魔法レベル4、臭属性攻撃魔法レベル4、風属性速度低下魔法レベル4、毒、麻痺、眠り、混乱、激昂、衰弱etcetc……」

強力な魔法を雨霰と打ち込む腹黒。

637: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/16(月) 23:58:34.53 ID:4qwxR3rH0
665

--東の王国、近辺--

ドゴォン、ドドゴオオオンン!!

賢帝「モブの癖に中々やるじゃないのよあんたたちぃ……持って帰りたいぐらいだわ……」

賢帝は若い兵士達を見て舌なめずり。

賢帝「って、十代目ちゃぁあん! あんた一体何をやってるのよ! 早く手伝ってって言ってるでしょぉうう!?」

振り返る賢帝。

十代目「」

賢帝「!? じゅ、十代目ちゃん!?」

十代目は賢帝の真後ろに倒れていた。

賢帝「ボロボロじゃないのよ! 一体誰に!」

十代目「……賢帝……? そうか……私はこんな所まで戻されていたのか」

638: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/17(火) 00:00:24.84 ID:8Pa2GbVw0
666

--草原--

腹黒「無事合流できたみたいですね、いい位置です。セッティング完了」

ギギギギギギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

凶悪な魔力が腹黒の両手に集まっていく。

腹黒「では、フィナーレといきましょうか。六属性複合攻撃魔法」

キーーーーン

六色の玉を中心として力の渦が発生し、周囲の色が反転していく。

腹黒「レベル4」

ドギャッ!



--東の王国、近辺--

ゆらっ

東の剣長「ぬ、なんだ今の光は」

……ゴゴゴゴゴゴ……

遥か遠くから接近する何かが地面を揺らしている。

賢帝「!……ちょっと、しゃれにならないわよこれ……!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!



--草原--

腹黒「東の王国ごと消え去りなさい」

639: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/17(火) 00:01:56.70 ID:8Pa2GbVw0
667

--東の王国、近辺--

賢帝「火属性防御魔法レベル3、身体強化魔法レベル4!!」

ギィン!!

東の剣長「ば、ばかな……こんな魔法が、あんなに巨大な!!」

迫る黒い太陽に怯える兵士達。

賢帝「あんた達、力を貸しなさい! このままだと東の王国もただじゃすまないわよ!……いや、綺麗さっぱり無くなっちゃうわ!」

東の槍長「!……だ、だれが敵の言うことなど真に受けるか! どうせあれもお前らが仕組んだことだろう!?」

賢帝「んなわけないでしょう!? だいたい今は敵とか味方とかどうでもいいでしょ!? 見てわかんないの? このままじゃ死ぬわよ私達!!」

賢帝の魔力と気迫が兵士達を圧倒する。

東の弓長「し、しかし我々が集まったところであれは……あまりに強大すぎる……」

賢帝「ちりも積もればなんとやらよぉ! ほら、来るわよ!! 諦めることよりやれることを考えなさいッッ!!」

ドッ、ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!

賢帝「」

ガラガラガラ!!

衝突時の衝撃波で後方にある城壁が半壊する。

賢帝(いったぁ……受け止めただけで腕二本やられたわ……ふふ、笑っちゃうわもう)

640: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/17(火) 00:03:04.13 ID:8Pa2GbVw0
668

--東の王国、近辺--

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

強力な魔力の干渉で重力は狂い、全ての色がめちゃくちゃに書き換えられていく。

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

賢帝「ふっ、うぅう!!」

ズズズズズズズ!!

少しずつ後退していく賢帝。

賢帝(これは、本当にきついわ……私の奥義の何倍の火力だっての)

ブシュッ!!

賢帝の足が地面に埋まり、太ももが弾けた。

東の剣長「っ……」

それを見ていた兵士達は頷き合い、そして

ガシィッ!!

賢帝「!」

東の剣長「――我らにも、手伝わせてくだされ!」

東の槍長「う、うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

賢帝「……遅いのよバカぁっ!! 後でチューしてやるんだから」

641: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/17(火) 00:04:24.28 ID:8Pa2GbVw0
669

--東の王国、近辺--

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

東の剣長「ぬ、おおおおおお!!」

賢帝(……とは言ったものの、やっぱり数がいればなんとかなるってもんでも無さそう……万事、きゅう、す)

ザザザザザザザザッ!

ユー「!」

その時後方から走ってくるユーの姿が。

シャリシャリン!

ユーは走りながらレイピアを構えると、

ユー「奥義、勇者ラッシュ」

ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

奥義を放った。幾千の光の筋が、賢帝の防御魔法ごと六色魔法を吹き飛ばす。

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

642: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/17(火) 00:05:33.30 ID:8Pa2GbVw0
670

--東の王国、近辺--

ユー「……」

しゅぅうう……

賢帝「ゆ、ユーちゃん……貴方も大概凄いのね……げほっ」

ユー「……」

ガクッ

しかし奥義を撃った反動からか、地面に膝をつく。



--草原--

腹黒「む? 私の魔法攻撃を防ぎましたか……弾き返せるほどの実力者がいたようには思えませんでしたが……まぁいいでしょう」

腹黒は顔色一つ変えずに先ほどと同じようなポーズを取る。

腹黒「二発目を撃てば」

キイイイイイイイイイイイイイイイン!!

643: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/17(火) 00:07:32.36 ID:8Pa2GbVw0
671

--東の王国、近辺--

賢帝、ユー「「!?」」

東の剣長「ば、かな……また先ほどと同規模の魔力が……」

へた

兵士達は地面に座り込んでしまう。

賢帝「じょ、冗談じゃないわよ!!」(腕は全部おしゃかだってのに! 魔力ももう残り少ないのよ!?)



賢帝「? な、何よ十代目ちゃん」

地面に付していた十代目は賢帝の足を掴んでいる。

十代目「私を回復させてくれ……奴は私達勇者でしか倒せない……」

賢帝「……簡単に言ってくれるわねぇ。私もあまり魔力残って無いのよ? こんな場所で魔力すっからかんになったら、ここの兵士達に何されちゃうかわからないわ」

そう言って笑う賢帝は十代目に回復魔法をかけた。

東の剣長「……今はそういうことをしている場合じゃないってことくらい我々にもわかりますよ。おい、手伝ってやれ」

東の魔長「はい」

ぽあああ

東の魔長が十代目に回復魔法を重ねがけする。

十代目「……ぐ」

東の剣長「命がけで東の王国を守ってくれたんだ。貴方達が悪い人なわけがない……でも話を後で聞かせてください」

賢帝「……いいわよベッドの中でね……」

644: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/17(火) 00:08:51.09 ID:8Pa2GbVw0
672

--草原--

ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

腹黒「六属性複合攻撃魔法、レベル……ん?」

ドオオオオオオオオオオオン!!

魔法を放とうとした瞬間に、腹黒は後ろから攻撃を受ける。

腹黒「……誰です?(俺様の索敵を掻い潜ってきやがっただと……?)」

ひゅおぉおおおおおぉぉ……

風にマフラーをなびかせている二人組みが立っていた。

???「どうやらあの話は本当だったようだな……」

??「ふん、わいは最初から疑ってなんか無かったけどなぁ」

そこに立っていたのはカブトと影月。

腹黒「……まがい物さん達ですか」

???改めカブト「ここで退場してもらうぞ。魔王」

??改め影月「こいつと組むのは嫌なんやけど、まぁそんなことも言ってられへんわな」

ドドドドドゴオオオン!!

カブトと影月のキックが腹黒を吹き飛ばした。

645: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/17(火) 00:10:25.82 ID:8Pa2GbVw0
673

--草原--

ドゴオオオオオオン!!

腹黒「ふん、その程度の攻撃、ほぼノーダメージですよ?」

影月は服についた埃を払う余裕を見せる。

カブト「……ほぼノーダメージ? ということは攻撃は入るんだな?」

腹黒「!」

影月「ほっほー、これまた情報通りやな。こいつは正規の魔王じゃないから無敵設定は搭載されてへん!!」

腹黒「……」

ドゴオオオオン!!

影月のパンチを魔法障壁で受け止める腹黒。

影月「……ち」(だからなんだってんだ何が言いてぇんだ、あぁん? 攻撃が通るなら勝てるってか?? 二人がかりなら倒せるってか?? この俺様をよぉ!!)

バリバリバリバリバリバリィ!!

影月「うわ無詠唱でこんな雷だしよったでこいつ! なんや、魔法使い君のことを思い出してまうわ」

ひゅっ

カブト「ふっ」

ドギャッ!!

真後ろに現れたカブトの一撃が魔法障壁を貫いた。

腹黒「ぐっ!?」

646: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/17(火) 00:11:11.49 ID:8Pa2GbVw0
674

--草原--

腹黒(こいつ、これか、突然消えて現れた……これを使って俺の索敵範囲外から入ってきやがったのか!)

影月「余所見しとると危ないでっせ?」

ドガガガガガガガガガガ!!

腹黒「がっ!」

影月のラッシュが腹黒に叩き込まれる。

影月「おらおらおらおらおらおらぁ!!」

腹黒「げっ、ぐっぶ!」

影月「血反吐吐いてもらうでぇ! 魔王さんよぉ!!」

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

影月の強烈なアッパーが腹黒の体を宙に浮かす。

カブト「ダブル」

影月「人造勇者キック」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

647: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/17(火) 00:13:59.09 ID:8Pa2GbVw0
675

--草原--

腹黒「」

ひゅるるる、どしゃっ!

血を撒き散らし、地面にたたきつけられた腹黒。

腹黒「げはっ!」

ぼたぼた……

影月「ふん、魔王化のせいでステータスは軒並みパワーアップしとるが、それだけやな。わいら二人がかりはちと大げさだったかもしれん」

カブト「……」

ザッ、ザッ、ザッ

腹黒「……」

カブト「……」

腹黒「……確かにあのいけすかねぇ小娘の言う通りかもしれねぇな……」

腹黒は甲で血を拭う。

影月「なんやこいつ。口調が変わりよったで。ド突きまわされて自分のキャラわからんくなったんか?」

カブト「……」

腹黒「確かに俺の思考は鈍っている……この程度のことに気づくまでにこれほどまでに時間を……ははっ、ははははは……!」

腹黒はげらげらと笑っている。

影月「ぶっ壊れたか……?」

648: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/17(火) 00:14:45.12 ID:8Pa2GbVw0
676

--草原--

カブト「……! 影月」

影月「なんやなんやカブトさん。いや、みなまでいわんでもわかっとる。もう哀れで仕方ないから終わりにしてやれっていうんやろ? わいも丁度そう考えて」

カブト「逃げるぞ!!」

影月「へ?」

ユン

カブトが手を伸ばした瞬間、

腹黒「――時属性魔法」

影月の後ろに腹黒が現れた。

影月「!?」

振り返って迎撃しようとする影月だったが、

腹黒「コレは元々俺が作った属性じゃないか」

ボンッ!

影月の頭部が吹き飛んだ。

649: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/17(火) 00:15:50.33 ID:8Pa2GbVw0
677

--草原--

カブト「影月……!」

腹黒「栄枯盛衰……いつまでも全盛期のままでいられないのはわかっちゃいたが……」

ピッ

腹黒はカブトに自分の血を飛ばした。

カブト「KAGEROU!!」

ブゥン!!

カブトは時を止めて腹黒から離れようとする。

ザザザッ!

腹黒「こんな気持ちを味合わなくちゃいけないくらいなら、凡夫でよかったぜ」

カブト「!?」

停止した時の中を腹黒が追ってくる。

カブト(こいつ!!)

腹黒「水属性範囲攻撃魔法レベル4」

バッシャーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

カブト「!」

ザバーーーン!!

濁流の如き一撃に飲み込まれてしまうカブト。

650: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/17(火) 00:16:41.39 ID:8Pa2GbVw0
678

--草原--

ボゴン

カブト「がぼごぼっ!」

腹黒「スキル、生体爆弾」

カブト「!?」

ボッパアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

腹黒「その水の中には既に俺の血を混ぜておいた」

ぼどぼどぼどぼど!

カブトの体がばらばらになって地面に落ちる。

腹黒「時は動き出す」

651: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/17(火) 00:18:36.08 ID:8Pa2GbVw0
679

--草原--

びちゃっ……

腹黒「……べっ。殴られたのなんて久々ですね。あいつ、以来だ」

血を吐きながら腹黒は死体になった二人を眺めている。

腹黒「この程度の奴らに……くそ、とんだ失態だ……」

ざっ

そしてそこに、

ざんっ!!

十代目「やっと、会えたな、魔王」

ユー「……」

十代目とユーが現れた。

腹黒「……はぁ……次から次へとめんどくさいですねぇ」

腹黒は苛立ちながら十代目達を睨む。

腹黒「この二人は私に接近するための囮だった、ってわけですか?」

十代目「……さぁな」

ジャリン

十代目は剣で斬り付けた。

652: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/17(火) 00:20:37.53 ID:8Pa2GbVw0
680

--草原--

ギギギギギギギ!!

しかし十代目の剣は腹黒の魔法障壁を破れない。

腹黒「お前達程度の罠にかかっていたっていうのか? ありえるのか? そんなことが?」

フォンッ

ユー「ッ!」

ズバシャーー!!

腹黒「!?」

ユーの一撃が腹黒の体をいとも容易く斬り裂いた。

腹黒「!? この、力は!! ぐううう……まさかお前も、勇者の力を!?」

ズバズバッ!!

ユーの力ない斬撃が腹黒を刻んでいく。

腹黒「ばっ、ばかなっ!! 勇者が二人、二人も! 二人も勇者の接近を許してしまったのか!?」

659: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 04:35:44.28 ID:eTzK2S8d0
681

--東の王国--

ゴゴゴゴゴ……

ハイ「凄まじい衝撃でしたね、先ほどの攻撃……」

代表「全くね。誰かがどうにかしてくれたからよかったけど……あれは死を覚悟したよ」

竜子「あれにはさすがに私もびくったな」

ピエロ「……」

ちーん

ぼっこぼこにされて倒れているピエロ。

ハイ「っていうか竜子ちゃんやっぱり強いです。魔族を単騎で倒しちゃいますか」

竜子「くく、竜亜人なめんな?」

ピエロ「見せ場すら作れないとは……ぐす」

通信師(援軍ですか?……っていうわりにはどこかで見たような顔がちらりほらり……)

660: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 04:37:01.60 ID:eTzK2S8d0
682

--東の王国--

竜子「……」(しかしこいつ)

竜子は代表を見る。

竜子(今の闘いで私はこいつの指図を受けていたわけじゃねぇ。でもいつもより良く動けた気がする……もしかしてこいつは後ろにいるだけで仲間を強化できんのか?)

ダダダダッ!

剣豪「む?」

そこに兵士を引き連れた剣豪が現れる。

剣豪「む……」

一切の加減無くぼこぼこにされたピエロとハイ達を確認すると、口を開いた。

剣豪「……あれ? もう終わっちゃってる?」

竜子「うん」

661: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 04:38:51.73 ID:eTzK2S8d0
683

--東の王国--

剣豪「ちっ、せっかく来たのにこれかよ。じゃあ後は……」

東の王「……」

剣豪は東の王に向き直る。

剣豪「お前とお話タイムだ」

ざっ、ざっ

ハイ(……竜子ちゃんとピエロの戦いは接戦じゃあ無かった。でも、全く介入できないレベルの戦闘だったわけでもなかったのに)

代表(なのに手出しをしてこなかったね王様は)

ざっ

東の王「……」

剣豪「――こいつは、お前の仲間なのか? 東の王よ」

剣豪は刀の切っ先でピエロを指した。

東の王「……」

662: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 04:40:42.04 ID:eTzK2S8d0
684

--東の王国--

ピエロ「ひ、ひひ! 言って差し上げなさいな東の王様ぁ! 貴方は息子と民を守るために国を売ったのだとぉ!」

ぷすっ

ピエロ「あひっ!?」

ピエロの鼻を刺す剣豪。

剣豪「民はわかるが息子……? あぁ……大事故起こして行方不明になった第二王子か……」(人質っつーことか)

東の王「……ピエロを倒したところで無駄なことだ。どうせ世界は奴らに支配されている。ここにもすぐにやつらが押し寄せてくるだろう」

ピエロ「そ、その通り! 貴方方も我々のしもべになりなさいな。さすれば魔王様の庇護の下、繁栄を約束しましょうぞ!」

竜子「こいつ結構しぶといな」

がんっ!!

ピエロ「おごふっ!? ちょっ、ま、待ちなさい! 第二王子の命がどうなってもいいのですかな!?」

ぴたっ

竜子の拳が止まる。

竜子「……まぁ……知らない奴だし」

どごぉっ!!

ピエロ「ぴえっ!?」

代表「おいおいおいおい無茶するもんじゃないよー」

663: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 04:42:50.98 ID:eTzK2S8d0
685

--東の王国--

代表(こっちもそろそろ動くか)

ぱちぱち

代表は目配せで通信師に合図する。

通信師(……しばらくぶりに会ったと思ったら……スキル、テレパシー)

ぱしぃーん

通信師(お久しぶりです代表。貴方の悪名はかねがね……)

代表(あはは。お久しぶりだね通信師、元気してた?)

通信師(で、なんです? 何か用事があるのでしょう?)

代表(うん。君の能力で第二王子の探査を頼みたいんだよね)

通信師(バカにしないでください。貴方達がここに飛び込んできた時からすでにやってます)

代表(ほう、さすが黄金世代の通信師だ。でもいくらなんでも東の王国全土を索敵することはできないと思うんだけど。妨害魔法もあるだろうしね。通信師は第二王子が監禁されてそうな場所の目星がついているのかな?)

通信師(……)

664: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 04:46:07.80 ID:eTzK2S8d0
686

--東の王国--

代表(そうだ、情報は妨害してる? 今このピエロがぼこられてる光景を外に漏らしたくないなぁ。多分この魔族にも仲間がいるだろうからさ)

通信師(当たり前じゃないですか……とっくのとうにジャミング済みですよ。ここの情報は一切漏れてません!)

代表(一切?)

通信師(一切!)

代表(音波も?)

通信師(音波もです!)

代表(ふむ。素晴らしい手際だね。間違いなくこのピエロは仲間に信号を送ったりしてるはず。いつでもどこでも第二王子に何か出来なきゃ人質の意味が無いからね。その通信手段をすぐに絶ったのはいいことだよ)

通信師(ふん、上から目線ですね。私は今東の三強という立場なんですよ? 侮らないで欲しいものです)

代表(ごめんごめん。でも完全シャットダウンはまずいかもね。こいつから全く信号が送られなくなった場合でも第二王子を殺す計画になってるかもしれないから)

通信師(……)

代表(ピエロは何らかの信号送ってると思うから、その波長をコピーして君がなりすまして発信しちゃおうか。もちろんこいつにジャミングはかけたままでね。それで反応があれば逆探知できるよね)

通信師(……わ、わかってましたよ)

665: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 04:47:39.72 ID:eTzK2S8d0
687

--東の王国--

通信師(く……魔族のテレパシーの波長をコピーしろとか、簡単に言ってくれちゃって……こんなの初めてやるっつーの! でも見てなさい。どんなに難しくてもやってみせるんだから!)

代表(あ、そうそう)

通信師(何よ!? 今必死に波長を分析してるんだから話しかけないで!)

代表(ならテレパシー解除したらいいのに……。まぁ、これは勘に過ぎないから適当に聞いて欲しいんだけどさ、ハイちゃんからの話を聞く限りじゃあ、洋館の地下とか怪しいと思うんだ、そこらへんは調べたりしたかな?)

通信師(勘!? 貴方ねぇ……………………いた)

代表(お、いたか。よしよし、じゃあ近くの兵士達にテレパシー送って助け出してもらって)

通信師「もー!! なんかむかつくアンタ!!」

剣豪「びくっ!?」

666: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 04:50:30.77 ID:eTzK2S8d0
688

--東の王国--

剣豪「やれやれお前もわからんやつだな。なんでこいつらにひれ伏した? 人間を信じなかった? 息子を人質に取られたとか、それだけで魔王側につく男じゃないだろう?」

東の王「……ふ、俺を知ったような口だな。俺がいつから魔王側についていたのか気づかなかったわりに」

剣豪「知るか。俺は身内は疑わねぇ」

東の王「」

東の王は固まる。

剣豪「まぁ、もはやお前が何を思ってそっち側に行っちまったのかはどうでもいいや。重要なのはこれからだ……一つ賭けをしようぜ、東の王」

東の王「……何?」

剣豪「簡単な賭けだ。先ほどから随分でけぇ力が戦ってるみたいだ。人間側と魔王側の闘いだろうよ」

ハイ(! 気づいてましたか)

剣豪「俺は人間側が勝つ方に賭ける。お前はもちろん魔王側に賭ける」

東の王「……賭けるものは何だ」

剣豪「俺が負けたらお前と同じように魔王側についてやる。どんな汚い仕事でもやってやるよ。だが俺が勝てばお前はこいつらと縁を切れ」

667: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 04:51:35.30 ID:eTzK2S8d0
689

--東の王国--

東の王「……俺がその賭けを受ける必要はあるのか?」

剣豪「そりゃあるだろう。この場の戦力差見てわからねぇのか? 今この場においては人間側が優勢なんだぜ? 受けるしかねぇだろ」

東の王「……ふ、そうか」

東の王は半壊した玉座に座る。

東の王「いいだろう。受けよう」

ピエロ「!? ちょ、ちょっと東の王様ぁ? 正気ですか? 我らの同盟を賭けに使うだなんて、随分自分勝手じゃないですか。第二王子がむごっ!?」

ピエロの口に竜子ががれきを突っ込んだ。

竜子「お前うるさい。タフなのはわかったからちょい黙ってろ」

ピエロ「むごー!?」

ハイ(ひどいな竜子ちゃん)

代表(ほんとそう)

668: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 04:53:36.71 ID:eTzK2S8d0
690

--東の王国--

ハイ「でも剣豪さん、よくわかりましたね。魔王側と戦ってる人がいるってこと」

剣豪(俺の名前をさらりと?)「簡単だろ。さっき馬鹿でかい魔力砲がこの国に向かってぶっぱなされた。あんな魔力を扱えるのは魔王側のやつしかいねぇ……そんでそれがこの国に届かなかったってことは、防いだやつがいるって話だ」

剣豪はがれきの上に腰を下ろした。

剣豪「まぁうちのやつらじゃあねぇわな。うちのも中々実力ついてきたがぁ、あれには対抗できる気がしねぇ……もしかしてお前らの仲間がやったのか?」

ハイ「はい。多分そうだと思います」

剣豪「……お前ら何しにここに来たんだよ。討ち入りにしちゃぁよくわかんねぇぞ」

ハイ「そうですね。では……はぁ、さすがにもうめんどくさいですね。何度も何度もあれを説明するのは……代表君、もう事情はわかってると思うので、貴方に説明任せちゃっていいですか?」

代表「ん? 僕がするのかい?」(ナイスパスハイちゃん。まぁ独裁者の言は聞かないだろうけど、話術でなんとかやってみるよ)

ジジッ

通信師(波長のコピー完了……兵士達も配置についたみたいです。第二王子奪還作戦開始!)

669: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 04:54:21.48 ID:eTzK2S8d0
691

--草原--

十代目「はぁ、はぁ、はぁ……」

ぼたっ、ぼたぼたぼた

ユー「……」

腹黒「く、そ……これだけ斬られまくったのに、返り血一つ浴びてないっていうのか……?」

腹黒は血まみれで膝をついている。

十代目「お前の能力は聞いているからな」(しかしアウトレンジは長距離魔法でなぶり殺し、近づけば血を撒いて爆殺……厄介この上ないな)

ぼたっ、ぼたぼた

十代目(だからこそ、ここで始末しておきたい!)

ユー「……!」

ユーは残る魔力を右手のレイピアに込める。

十代目「ああああああああああ!!」

十代目も剣に魔力を纏わせた。

670: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 04:55:37.42 ID:eTzK2S8d0
692

--草原--

腹黒「お、お前らなんぞに……この私が負けるものかああああああああああああああ!!」

ぎゅいいいいいん!!

腹黒も対抗して魔力を溜めようとするのだが、

十代目「奥義! 勇者バスター(弱)!!」

ユー「!」

ボッ!!

二人の放つ攻撃の方が僅かに速い。

ドギャッ!!

腹黒「!? ご、ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

ギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

十代目(づっ! 残りの魔力量では押し切れんか、く、やむをえん!)「魔力供給要請!」

ドンッ!!

十代目は更に大地から魔力を吸い上げた。

びしびしっ!!

十代目の体にひびが入っていく。

671: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 04:56:03.66 ID:eTzK2S8d0
693

--草原--

十代目「お、おお、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ユー「!!!!」

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

腹黒「そ、そそそ、そ」

びしっ

ユー達の攻撃が、腹黒の耐久値を完全に上回った。

腹黒「そんなばかなああああああああああああああああああああ!!」

どがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!

腹黒の体はぼろぼろと崩れていき、完全に消滅した。

ぼふっ!!

十代目「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!」

ユー「……っ」

どさり

全てを出し尽くした十代目達も地面に倒れこんでしまう。

672: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 04:57:49.10 ID:eTzK2S8d0
694

--草原--

しゅううううう

十代目「はーっ、はーっ……かなり無理をしてしまったが……これで、勝ちだな」

ユー「……」



ごろりっ

十代目は仰向けになって空を見上げた。すると、

ぴかっ

十代目「……ん?」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

十代目「ガッ!?」

空から六属性攻撃魔法が降り注いだ。

十代目「!!!! ぐ……」



--草原の果て--

ばちばち……

腹黒「やー……危ない危ない。油断していたら、もしかしたら負けていたかもしれませんね」

十代目達から離れること約五キロ地点、立っていたのは、腹黒。

腹黒「念のために、自分を分けておいて正解でしたね」

673: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 04:58:38.62 ID:eTzK2S8d0
695

--草原の果て--

腹黒「しかし半分のリソースとはいえ、まさか突破されてしまうとは。あの小娘が言っていたように少々思考が鈍っているのかもしれませんね」

腹黒はまた巨大な魔力を練り上げる。

腹黒「しかし鈍っても私です。万が一に備えて分身を作っておいたこの私。抜かりなど無いのですよ!」

どごおおおおおおおおおおおおおおん!!

腹黒「っ!?」

その腹黒を魔力砲撃が襲った。

腹黒「ど、どこからです? 今の私を攻撃できるものなど!!」



--魔法王国、上空--

魔導長「第一射着弾なの。誤差修正、次は、全力全開なの!!」

普段使っているのよりも大きな杖を持ち、いくつもの魔法陣を展開している魔導長が狙いを定めていた。