1: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:42:40.39 ID:Nxbdv+tR0
本スレは

凛「めざせポケモンマスター」 前編 

凛「めざせポケモンマスター」 後編 

凛「めざせ」 卯月・未央「ポケモンマスター!」 前編 

凛「めざせ」 卯月・未央「ポケモンマスター!」 後編  

凛「ああ、あこがれのポケモンマスターに」   

【モバマス】凛「ああ、あこがれのポケモンマスターに」(続) 前編 

【モバマス】凛「ああ、あこがれのポケモンマスターに」(続) 後編 

【モバマス】凛・藍子「1・2・3で飛び込め!」 前編

【モバマス】凛・藍子「1・2・3で飛び込め!」 後編

の5スレの続きです

・ポケットモンスター×アイドルマスターシンデレラガールズのクロスSSです
・アイドルたちがポケモン世界を冒険します
・本SSの舞台は架空のガラル地方です。地名は同じですが、ホップやダンデ等は出てきません
・各世代から色々なポケモンが登場します
・ゲームともアニメとも異なるオリジナル設定が存在する可能性があります
・基本デレマスの子が出てきますが、稀にゲストが混ざる場合もあるかも
・メガシンカ、Zワザ、ダイマックス全てが登場する予定です
・ときどき安価あり
・本SSは4スレ目より作者が変更しています

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1600443760 




2: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:43:44.26 ID:Nxbdv+tR0

≪あらすじ≫
新たな冒険を求めてガラル地方へ降り立った凛は、ひょんなことから新人トレーナー、藍子と出会う
そして彼女のコーチになり、共にガラルのジムチャレンジに挑戦することになった
時に挫折こそすれど、充実した旅を送っていた二人。しかし時期を同じくして、ガラル各地ではポケモンが突然暴れだすという奇怪な事件も発生していた
やがて元シンデレラ団員と再会した凛は、この事件の裏にもシンデレラ団のような犯罪集団が暗躍していると推測する
不穏な空気は消えないまま、一行は6つ目のジムがあるキルクスタウンへ向かっていた

3: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:44:13.47 ID:Nxbdv+tR0

凛 手持ちポケモン

・ゲッコウガ ♂ Lv.70 げきりゅう
みずしゅりけん/ハイドロカノン/つばめがえし/みがわり
やんちゃなせいかく まけずぎらい

・ムクホーク ♂ Lv.68 いかく
ブレイブバード/インファイト/とんぼがえり/おいかぜ
いじっぱりなせいかく うたれづよい

・ドリュウズ ♀ Lv.67 すなかき
ドリルライナー/アイアンヘッド/じわれ/じしん
せっかちなせいかく ものおとにびんかん

・サンダース ♀ Lv.67 はやあし
シャドーボール/かみなり/じゅうでん/でんじは
おくびょうなせいかく ひるねをよくする

・サザンドラ ♂ Lv.69 ふゆう
りゅうせいぐん/あくのはどう/かえんほうしゃ/きあいだま
なまいきなせいかく ちのけがおおい

・チャーレム ♂ Lv67 ヨガパワー
とびひざげり/しねんのずつき/ほのおのパンチ/ビルドアップ
おだやかなせいかく しんぼうづよい


藍子 手持ちポケモン

ゴリランダー (しんりょく) Lv39
むじゃきな性格 血の気が多い
ドラムアタック/アクロバット/ちょうはつ/いやなおと

マホイップ (スイートベール) Lv38
おだやかな性格 のんびりするのが好き
マジカルシャイン/てんしのキッス/デコレーション/あまいかおり

サニーゴ (はりきり) Lv37
わんぱくな性格 うたれづよい
アクアブレイク/げんしのちから/いのちのしずく/こらえる

ドラメシヤ (すりぬけ) Lv34
さみしがりな性格 すこしおちょうしもの
おどろかす/でんこうせっか/かみつく/みがわり

4: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:46:06.12 ID:Nxbdv+tR0


キルクスタウン
古い建物が立ち並ぶ温泉町

ザッザッザッ

都「……」

藍子「……」

凛「……」

一同「寒いっ……!」

5: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:46:40.99 ID:Nxbdv+tR0

藍子「ガ、ガラルにこんな寒い場所があったなんて……」ブルブル

凛「……都、その、助手との待ち合わせ場所は……?」

都「は、はい……ええと、町の北側にあるステーキ屋さんとのことですが――」

都「い、いえ、それよりポケモンセンターです! とにかく室内にーっ」


テンテンテレテン♪

6: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:47:33.98 ID:Nxbdv+tR0

都「……あの、凛さん、藍子さん」

凛「どうしたの、都。そんなに落ち込んで」

都「……も、申し訳ありません。実はさくらさんから先ほどメールが来まして……」

サッ

さくら『ふえぇ……都さん、ごめんなさい……道に迷っちゃいましたあ……』

さくら『到着するの、何時になるかわからないですぅ……ごめんなさい……』

都「……とのことです」

7: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:48:51.46 ID:Nxbdv+tR0

凛「……道に迷ったって、この雪道で迷ったってこと?」

藍子「そ、それってけっこう危なくないですか?」

都「むむ……たしかにそうですね」

都「私、ちょっと電話をかけてきます。お二人はもう少しここで休んでいてください」

ウィーン

藍子「そうだ、凛さん」

凛「ん?」

8: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:49:31.79 ID:Nxbdv+tR0

藍子「さっき、ポケモンセンターの隅からちらっと見えたんですが、この町にもブティックがあるみたいです。都ちゃんが戻ってきたら、まず暖かい服を買いませんか?」

凛「そうだね。……さすがに今の服装じゃまともに歩き回れないよ」

凛「こんな雪の町を薄着で歩ける人なんて――」

ウィーン

凛「……いた」

藍子「しかもホットパンツ……!」ドキリ

藍子「……あれ? もしかして……聖來さん!?」

9: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:50:05.36 ID:Nxbdv+tR0

聖來「……あらっ。凛ちゃん! 藍子ちゃん!」

タタタッ

聖來「久しぶりだね! 私のこと、覚えてる?」

藍子「はい、もちろん! ワイルドエリアで会った時以来ですね!」

凛「聖來さん、久しぶりだね」

ワンパチ「イヌヌワンッ」ブルブル

藍子「ふふっ、ワンパチも久しぶりだね!」

10: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:51:13.46 ID:Nxbdv+tR0

凛「……って聖來さん、そんな格好で寒くないの……?」

聖來「全然! 動き回ってたら案外寒くならないものだよ」

凛「そ、そうなんだ……」

聖來「そうだ。二人とも、この前は本当にありがとう。ちゃんと女の子を連れて帰ることができたよ」ペコリ

聖來「ささやかだけど……お礼、受け取ってほしいな」

凛と藍子はステーキ屋のクーポンを手に入れた!

聖來「キルクスタウンの北側にあるお店、『おいしんボブ』のクーポンだよ。そこのステーキ、すごく美味しいんだって!」

11: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:51:54.31 ID:Nxbdv+tR0

凛「ありがとう。私たちも今から向かうところだったんだ」

藍子「ありがとうございますっ!」

聖來「いえいえ! あ、それからもう一つ」

凛・藍子「?」

聖來「ねえ藍子ちゃん、今から私とバトルしない?」

藍子「え、ええっ?」

聖來「実は私もジムチャレンジ真っ只中でさ、バッジはまだ3つしか集めれてないんだけど……自分のバトルを、誰かに見てもらいたいなって思って」

12: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:52:55.45 ID:Nxbdv+tR0

聖來「私、ずっと一人で旅してたからさ。バトルを見てもらって、誰かに批評してもらうっていうの? ほとんど経験がないんだ」

聖來「だから、そういうのも含めて、お願いできないかな?」

藍子「そういうことでしたら! 私でよければ、ぜひバトルしましょう!」

聖來「藍子ちゃん……ありがとう! 恩に着るよ!」

凛「じゃあ私はここで都を待ってるよ。えっと、ポケモンセンターの隣にバトルフィールドがあったはず」

聖來「よし、じゃあそこで!」

13: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:55:04.34 ID:Nxbdv+tR0

バトルフィールド

聖來「そういえば藍子ちゃんもジムチャレンジ、やってるんだっけ?」

藍子「はい! 今から6つ目のバッジに挑戦しようと思っていたんです」

聖來「ってことはもう5つも集めたんだ! すごいなあ。それじゃ……センパイ、胸、借りますっ!」

藍子「や、やめて下さいよ~」

聖來「あははっ! いけー、デルビル!」ポンッ

デルビル「デルッ!」

藍子「いくよ、サニーゴ!」ポンッ

サニーゴ「サニッ!」

デルビル ダークポケモン あく・ほのおタイプ
様々な鳴き声を使い分け、仲間とコミュニケーションしながら狩りをおこなう
チームワークの見事さはポケモン随一だ

14: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:55:38.01 ID:Nxbdv+tR0

聖來「あちゃー、相性が悪いなあ……でも頑張ろうね、デルビル!」

聖來「まずはかみなりのキバ!」

デルビル「デルッ!」

サニーゴ「サニ!」ガキンッ

聖來「避けないなんて度胸あるね! さすがですセンパイ!」

藍子「だ、だからセンパイ呼びはやめてくださいってば~」

15: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:56:03.59 ID:Nxbdv+tR0

ゴゴゴ……

聖來「!」

藍子「お返しです! げんしのちから!」

サニーゴ「サニ!」ビュン

デルビル「デルッ……!」ドドドド

聖來「あはは! やるなあ藍子ちゃん!」

16: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:56:33.96 ID:Nxbdv+tR0

藍子「追撃です! アクアブレイク!」

サニーゴ「サニッ!」バシュゥ

聖來「躱して!」

デルビル「デルッ!」ヒョイ

聖來「いい感じに体力を減らしてくれてありがとね! デルビル、きしかいせい!」

デルビル「デルッ!!」バッ

サニーゴ「!!」ズドンッ

17: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:57:22.23 ID:Nxbdv+tR0

藍子「サニーゴっ!」

聖來「もらった! かみなりのキバ!」

デルビル「デルッ!」ガキンッ

サニーゴ「ッ……」

サニーゴ「サニッ……!」ズザァ

聖來「……そんな!」

藍子「『こらえる』です。私のサニーゴは簡単には倒れませんよ!」

18: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:57:51.57 ID:Nxbdv+tR0

藍子「アクアブレイク!」

サニーゴ「サニッ!!」バシュゥ

ズドォンッ

デルビル「デルッ……」

バタンキュー

聖來「ああっ、デルビルっ!」

19: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:58:20.64 ID:Nxbdv+tR0

藍子「よし……サニーゴ、頑張ったね!」

サニーゴ「サニッ!」

聖來「やるなあ藍子ちゃん! でも私もここからだよ!」

聖來「ワンパチ、ゴー!」ポンッ

ワンパチ「ワパッワパッ!」

藍子「ワンパチ……だったら交代ですね」シュゥゥ

20: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:58:54.07 ID:Nxbdv+tR0

藍子「マホイップ、いくよ!」ポンッ

マホイップ「マホ~」

聖來「おお、マホイップ! 可愛いなあ!」

聖來「よし、行くよワンパチ!」

ワンパチ「ワパッ――」

21: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 00:59:31.20 ID:Nxbdv+tR0

キャァァァァァァ

藍子「えっ!?」

聖來「な、なに? 今、向こうから悲鳴が……」

ガラッ

都「何事っ!?」

凛「今の悲鳴は!?」

22: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 01:00:13.11 ID:Nxbdv+tR0

藍子「凛さん! 都ちゃん! 私の後ろの方から聞こえてきたみたいなんですけど……」バッ

都「あっちは……ジムがある方角です!」

都「これは事件の予感……!」ダッ

藍子「あっ、都ちゃん! 待ってください!」

凛「藍子、追いかけよう!」ダッ

聖來「私も行くよ!」ダッ

23: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 01:01:29.80 ID:Nxbdv+tR0
次回は20時間後くらいに投下します。ここまでありがとうございました

27: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:09:14.42 ID:Nxbdv+tR0
失礼、ちゃんとしぶりんも成長してますよ
以下訂正版↓

・ゲッコウガ ♂ Lv.75 げきりゅう
みずしゅりけん/ハイドロカノン/つばめがえし/みがわり
やんちゃなせいかく まけずぎらい
・ムクホーク ♂ Lv.74 いかく
ブレイブバード/インファイト/とんぼがえり/がむしゃら
いじっぱりなせいかく うたれづよい
・ドリュウズ ♀ Lv.74 すなかき
ドリルライナー/アイアンヘッド/じわれ/みがわり
せっかちなせいかく ものおとにびんかん
・サンダース ♀ Lv.73 はやあし
かみなり/シャドーボール/じゅうでん/でんじは
おくびょうなせいかく ひるねをよくする
・サザンドラ ♂ Lv.74 ふゆう
りゅうせいぐん/あくのはどう/かえんほうしゃ/きあいだま
なまいきなせいかく ちのけがおおい
・チャーレム ♂ Lv73 ヨガパワー
とびひざげり/しねんのずつき/れいとうパンチ/ビルドアップ
おだやかなせいかく しんぼうづよい

続き投下します


28: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:10:27.33 ID:Nxbdv+tR0


キルクスタウン ジム前


マケンカニA「マケーン!」ブゥン

ジグザグマ「ジグッ……」ドサッ

男性「あ、ああ……! オラの可愛いぐぅちゃんがっ!」

マケンカニB「マケマケー!」ドドドド

女性「ちょ、ちょっと……! 勝手に家に入ってこないでー!」

藍子「こ、これは……」

*マケンカニ けんとうポケモン かくとうタイプ
ハサミで弱点をガードしつつ隙をうかがい、パンチを放つ
マケンカニ同士の戦いはボクシングのようだ

29: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:11:17.11 ID:Nxbdv+tR0

聖來「マケンカニの群れ……!?」

都「そんな……マケンカニは暖かいアローラ地方にしか生息していないはずのポケモンです」

都「こんなに大量のマケンカニがなぜ町中に……」

凛「みんな、とにかくあのポケモンを止めよう!」チャキッ

藍子「そうですね。これ以上被害が出る前に抑えないと……!」

聖來「何がどうなってるのかわからないけど……わかった!」

30: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:11:48.65 ID:Nxbdv+tR0

凛「都、怪我人やポケモンをポケモンセンターに!」

都「はいっ!」タタタッ

凛「ムクホーク!」

藍子「マホイップ!」

聖來「ワンパチ!」

31: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:12:23.32 ID:Nxbdv+tR0

マケンカニC「マケーン!」ブウンッ

ムクホーク「ムクホー」ヒョイ

凛「後ろの分も一気に蹴散らすよ、ムクホーク!」

凛「ブレイブバード!!」

ムクホーク「ムクホー!!」ギュン

マケンカニC「!!」

ズドォンッ

32: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:13:04.16 ID:Nxbdv+tR0

聖來「ワンパチ、エレキフィールド!」

ワンパチ「イヌヌワンッ!」バリリリリ

マケンカニD「マケ……」ビリリ

マケンカニE「ケケケ……!」ビリリ

聖來「藍子ちゃん!」

藍子「はい! マホイップ、デコレーション!」

マホイップ「マホ~」シャキーン

33: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:13:42.21 ID:Nxbdv+tR0

藍子「そしてマジカルシャイン!」

マホイップ「マホ~!」パァァァ

ドッカァァァン

聖來「……! すごい威力……さすがだね、藍子ちゃん!」

聖來「! 藍子ちゃん、後ろ!!」

藍子「っ……!」バッ

マケンカニF「マッケー!」ブウンッ

藍子「しまっ――」

34: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:14:13.78 ID:Nxbdv+tR0

ワンパチ「イヌヌワンッ!」

ドンッ

聖來「! 藍子ちゃん! ワンパチ!」

藍子「ううっ……ワンパチ、庇ってくれんたんだね。ありがとう!」

ワンパチ「ワパッワパッ」

マホイップ「マホ!」パァァァ

マケンカニF「!!」ズドンッ

聖來「ワンパチ、ナイスプレー!」

35: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:14:48.03 ID:Nxbdv+tR0

聖來「……それにしても、わざわざ死角から襲ってくるなんて、かなり賢いポケモンだね」

藍子「そうですね。……」

凛「……」

ムクホーク「ムクホー!」ズドンッ

マケンカニG「マケンッ」

マケンカニH「マケ」ガシッ

凛(! 吹っ飛ばしたマケンカニを、別のマケンカニがキャッチした……?)

36: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:15:36.02 ID:Nxbdv+tR0

マケンカニH「マケ!」ブウンッ

凛「!」

凛「ムクホーク!」

ムクホーク「ムクホー!」ドガガガ

マケンカニH「マケン……!」ドサッ

凛(……やっぱり。違和感の正体がやっとわかった)

凛(このマケンカニの集団は……ただ暴れていただけのタマゲタケやベロバーの群れとは違う)

凛(明らかに、統率された動きをしている……!)

37: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:16:10.69 ID:Nxbdv+tR0

凛(……前に森で麗奈と会ったとき。アイツはギルガルドを使って操っていたと言っていた。でもあの時のベロバー達はこんなにまとまった動きはしていなかった)

凛(なら、原因は一つ)

凛「藍子! 聖來さん!」

藍子「は、はい!」

聖來「凛ちゃん、そっちは大丈夫!?」

凛「なんとかね。それよりも……」

38: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:16:55.80 ID:Nxbdv+tR0

凛「このまま群れの相手をしていてもキリがない。どこかにいる、群れのリーダーを叩かないと!」

藍子「リ、リーダー?」

聖來「そんなのどこに――」

ズズッ

凛「! あそこだ!」

ドンッ

ケケンカニ「ケケーン」

*ケケンカニ けがにポケモン かくとう・こおりタイプ
アローラの頂点を目指し、雪山に迷いこんだマケンカニが進化した
ハサミの中に冷気を溜めてぶん殴る

39: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:17:24.80 ID:Nxbdv+tR0

藍子「す、すごい大きさ……!」

凛「協力して叩くよ!」

聖來「オーケー!」

凛「ムクホーク!」

ムクホーク「ムクホー!」ギュンッ

ケケンカニ「ケケーン!」ブウン

ムクホーク「ムクホー」ヒョイ

40: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:17:50.45 ID:Nxbdv+tR0

凛「よし……スキができた! 聖來さん!」

聖來「了解! ワンパチ、エレキフィールド!」

ワンパチ「イヌヌワンッ!!」バリリリリ

ケケンカニ「ケケーン!」ビリリ

藍子「マホイップ、マジカルシャイン!」

マホイップ「マホ~!」パァァァ

ズドォンッ

41: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:18:23.19 ID:Nxbdv+tR0

凛「よし……効いてる!」

凛「リーダーを無力化すれば、自然にチームワークも乱れるはず……」

聖來「! そうだ、後ろのマケンカニ達は――」

マケンカニI「ケンカ!」ブウンッ

聖來「ワンパチ!」

ワンパチ「ワパッ!」ドンッ

マケンカニI「ケンカ――」

42: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:18:54.23 ID:Nxbdv+tR0

マケンカニJ「カニー!」バッ

聖來「!? 仲間を盾にして……!?」

マケンカニJ「カニー!!」ブンッ

ワンパチ「ワパッ!?」

ドゴオッ

藍子「……! ワンパチ!」

ドサッ

43: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:19:31.68 ID:Nxbdv+tR0

ワンパチ「ワパッ……」

聖來「ワンパチッ!!」ダッ

凛「……!?」

凛「聖來さん、危ないッ!」

聖來「えっ――」

ワンパチ「ワパパパパ」ピヨピヨピヨ

ワンパチ「……」

44: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:20:21.72 ID:Nxbdv+tR0

ワンパチ「イヌヌワーーンッ!!」バリリリリ

聖來「うあっ……」ビリリ

凛「……!」ビリリ

藍子「エレキフィールド……!? か、身体が……!」ビリリ

凛(しまった……さっきワンパチが喰らったのは相手を混乱させる『ばくれつパンチ』だ)

凛(あのパンチを当てるために、わざと味方の後ろに隠れていたのか……!)

45: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:20:47.75 ID:Nxbdv+tR0

マホイップ「マホ……」ビリリ

藍子「マホイップっ……」

ムクホーク「ムクホー!!」バサッバサッ

凛(……そうだ、ムクホークだけは飛んでいたから痺れていない)

凛「ムクホーク……とにかくケケンカニを抑えて!」

ムクホーク「ムクホー!」バサッ

凛「イン……ファイト!!」

46: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:21:19.03 ID:Nxbdv+tR0

ムクホーク「ムクホー!!」

ガキンッ

凛「!?」

ケケンカニ「ケケーン」キィン

凛「しまった、『まもる』……!」

ケケンカニ「ケケーン!!」

ブウンッ

47: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:21:54.65 ID:Nxbdv+tR0

ムクホーク「!!」

ズドォォォォン

ムクホーク「ムクホッ……」

凛「ムクホーク!!」

藍子「ああっ……!」

聖來「うっ……お願い、ワンパチ……目を覚まして!」

ワンパチ「ワパパパパ」ピヨピヨ

48: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:22:36.34 ID:Nxbdv+tR0

マケンカニK「マケマケ!」

マケンカニL「マケーン!」

ドドドドド

凛(しまった、挟み撃ちにされてしまった……)

ケケンカニ「ケケーン」ズゥン

凛(……! ケケンカニが、目の前に……)

聖來「いけない……凛ちゃん、逃げて!!」

凛「……うっ……」ビリリ

49: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:23:19.65 ID:Nxbdv+tR0

ケケンカニ「ケケーン」ググッ

藍子「……!!」

藍子(だ、だめだ……このままだと、凛さんが……)

藍子(でも私も……痺れて動けない……)

藍子(他のポケモンを出せば……いや、凛さんのポケモンが倒されたばかりなのに、私に止められるかどうか――)

ケケンカニ「ケケーン!!」ブウンッ

聖來「いやああっ!!」

50: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:23:52.10 ID:Nxbdv+tR0

藍子「!!」

藍子(……なんとか……しないと……)

藍子(なんとかしないとなんとかしないとなんとかしないとなんとかしないとなんとかしないとなんとかしないと――)

藍子(……でも、どうすれば――)

51: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:24:19.96 ID:Nxbdv+tR0

カタカタカタ

藍子(……?)

藍子(……サニーゴ……?)

藍子(……!)

藍子(……そうだ。もう、こうするしか……)

チャキッ

藍子(……これだ!!)

52: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:24:47.98 ID:Nxbdv+tR0

藍子「聖來さん、伏せてください!」

聖來「えっ……!?」バッ

藍子「お願い……凛さんを助けて!」

藍子「タイマーボール!!」

53: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:25:15.42 ID:Nxbdv+tR0

ブンッ

ケケンカニ「!!」ボムッ

凛「……!?」

ボサッ

コロン……コロン……コロン……


カチッ

54: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:25:43.81 ID:Nxbdv+tR0

マケンカニ達「……!?」ハッ

マケンカニM「マケンカ……?」

マケンカニN「マケ……」

マケンカニO「マ、マケーッ」

ザザザザ

聖來「……マケンカニ達が散り散りに……」

55: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:26:57.34 ID:Nxbdv+tR0

ワンパチ「……ワパッ?」ケロッ

聖來「!! ワンパチ、混乱が解けたんだね!」

藍子「あ……」

藍子「……っ」ドサッ

聖來「あ、藍子ちゃんっ!」

凛「藍子っ!」

ガバッ

56: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:27:51.86 ID:Nxbdv+tR0

藍子「あ……凛さん……ごめんなさい、震えが……止まらなくて……」ガタガタ

凛「藍子……」

藍子「わ、私……凛さんが、凛さんがいなくなっちゃうと、いなくなっちゃうと思って……!」

藍子「……こ、怖かった……!!」ブワッ

凛「ううん……もうしゃべらなくていい」

凛「藍子……助けてくれて、ありがとう」ギュッ

藍子「うっ……うっ……!」


ケケンカニが手持ちに加わった!

57: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/19(土) 21:30:01.75 ID:Nxbdv+tR0
騒動の末、ケケンカニを沈めたことで難を逃れた一行
はたしてこのポケモン達はどこからやって来たのか――まさかジムから――?

藍子を咄嗟の閃きに導いたのはあの時ゲットしたサニーゴでした、ということですね
そしてまさかのケケンカニゲット。しかし凛のポケモンを屠るほどの実力、藍子に使いこなせるか
それとも……?

次回からは毎週週末に更新します。早ければ金曜の夜には更新できるかも
ここまでありがとうございました

62: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:31:07.28 ID:uTWeRgtP0

ポケモンセンター

藍子「ふうっ……」ストン

都「藍子さん、検査は大丈夫でしたか?」

藍子「……はい。異常なしって言われました。ありがとうございます」

藍子「凛さんと聖來さんは?」

都「先ほど治療室に呼ばれました。ポケモンの技……しかもでんき技を受けたのですし、あちらも慎重な検査が行われるのでしょう」

都「まさか私が離脱している間にこんな事態になっていたとは……とにかく、藍子さんは無事で何よりでした」

63: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:31:48.33 ID:uTWeRgtP0

藍子「……」

都「……町の人たちから聞き込みを行った結果、いくつかの事実が判明しました」

都「やはりあのマケンカニの群れは、ジムの目の前から急に現れたそうです」

都「ただ……現れたといっても、トレーナーが放ったのか、どこかに隠れていて飛び出してきたのか、そこまではわかりませんでした」

都「はっきりとしていることは、マケンカニはガラル地方には生息していないということです。どう考えても、野生のポケモンである可能性はゼロに近いでしょう」

64: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:32:43.30 ID:uTWeRgtP0

都「そしてもう一つ。ジムリーダーの泉さんについて、です」

都「どうやら今日はジムの公休日だったらしいのですが、そんな時でも泉さんはあまり町で見かけることはないそうです。ジムに篭って、ポケモンの訓練をしたり趣味に没頭しているとのことでした」

都「つまり、あの時泉さんはジムの中にいた可能性が高いです」

藍子「ジムの、中に……」

都「……藍子さんが仰りたいことはわかります。ならどうして、ジムの外での事態に気づかなかったのか……」

都「そしてこんな騒ぎが起きてもなお、なぜ町の人の前に出てこないのか……ですよね?」

藍子「……はい」

65: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:33:22.51 ID:uTWeRgtP0

都「……たしかにそれは気になるところです」

都「ただ……藍子さん。これだけは断言させて下さい。泉さんは、決して困っている人を放っておくような人ではありません。何か事情があったはずなんです」

藍子「……」

藍子「……都ちゃん」

都「は、はい」

藍子「私、今からジムに行ってきます」

都「!? ちょ、ちょっと待ってください……!」

66: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:34:26.13 ID:uTWeRgtP0

都「泉さんは、以前もこの町でポケモンが暴れたとき、すぐに駆けつけてくれたと聞いています。今回だってそうしたはずなんです!」

藍子「……都ちゃんの言うことはわかります。私だって、簡単に誰かを疑いたくない」

藍子「でも……頭でわかっていても、抑えられないことだって……私にはあるんです」グッ

都「藍子さん――」

藍子「だって……凛さんが、私たちの目の前から……いなくなっていたかもしれないんですよ……!?」キッ

67: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:34:55.17 ID:uTWeRgtP0

都「……!!」

ダッ

都「……藍子さんっ……!」

都(……止められなかった)

都(いや、あの目は……止めても無駄だったのかもしれない)

都(……)

68: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:35:38.10 ID:uTWeRgtP0

キルクスジム

藍子(……)チャキッ

藍子(ケケンカニ……あなたは、いったいどこから来たの……?)

藍子(本当に、ジムリーダーの元にいたポケモンだったの……?)

ガラッ

藍子「やっぱり無人だ……灯りもついていない」

藍子「人がいないジムって、こんなに寂しいんだ……」

69: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:36:16.38 ID:uTWeRgtP0

藍子「……?」

藍子「奥から……灯りが漏れてる?」

藍子「あの扉の奥って……」

ガラッ

藍子「!」

コンピューター『……ヨウコソ、チャレンジャー。ココハキルクスジムデス』

70: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:37:39.10 ID:uTWeRgtP0

コンピューター『当ジムデノチャレンジ内容ヲ、簡潔ニ説明イタシマス』

ピピッ

コンピューター『タダ今ヨリコノ画面ニ、様々ナ図形ガ表示サレマス。その図形ヲ素早ク正確ニ――『ヒトフデガキ』シテクダサイ』

藍子「ヒトフデガキ……?」

コンピューター『問題ハ全40問デス。ナオ、開始カラ5分ゴトニポケモントノバトルモゴザイマス』

コンピューター『ソレデハ……用意、スタートッ』ピピッ

藍子「え、ええっ?」

藍子(そもそもどうしてジムが開いていないのに課題に挑めるの……?)

藍子(……でもこれをクリアしないとジムリーダーの所へは行けない……)

藍子「よしっ……!」グッ

71: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:38:29.76 ID:uTWeRgtP0

スタジアム

藍子(……)ザッザッ

パッ

藍子(! スタジアムに灯りが……)

ザッザッ

泉「……誰?」

72: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:40:11.03 ID:uTWeRgtP0

泉「今日はジムは休みなのよ。それなのに課題もクリアして、ここまで来るなんて……」

藍子「……あなたが、キルクスタウンのジムリーダーですか」

泉「ええ、そうよ。私はキルクスのジムリーダー、泉。……あなたは?」

藍子「私は藍子です。ジムチャレンジャーです」

泉「……はあ。さっきも言ったけど、今日は休日なの。ロビーだって誰もいなかったでしょ?」

泉「コンピューターはこの後点検する予定だったから、電源は点けていたんだけど……それにしても、どうして引き返さなかったの?」

藍子「聞きたいことがあるからです」

73: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:40:59.96 ID:uTWeRgtP0

泉「聞きたいこと?」

藍子「さっき、ジムの前でマケンカニの群れが暴れていました。ケガをした人やポケモンもいましたし……私の大切な人も、危険な目に遭いました」

泉「……」

藍子「答えてください。あれは、あなたの仕業ですか?」

泉「……」

泉「違うわ」

藍子「!」

74: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:41:36.42 ID:uTWeRgtP0

泉「……だけど、なぜ違うと言えるのか証明できるものを、今の私は持っていない。だからあなたが私を疑うことは、何もおかしくないわ」

藍子「……それなら……」

藍子「なぜジムの中から出てこなかったんですか……? なぜ街の人を助けようとしなかったんですか……!?」

泉「……」

泉「ところであなた、ジムチャレンジャーだったよね?」

藍子「え……?」

75: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:42:50.14 ID:uTWeRgtP0

泉「そうね……私に勝てたら、その理由、教えてあげるよ」チャキッ

藍子「……!!」

藍子「どうして……どうして戦わなきゃいけないんですか! 私はただ真実を知りたいだけで――」

泉「あなた、チャレンジャーなんでしょ?」

泉「どんな事情があったにせよ、今のあなたと私の関係はチャレンジャー対ジムリーダー……このスタジアムに立っている限りは、そうなのよ」

藍子「……!」

泉「さあ、いくよ」


ジムリーダーの泉が勝負をしかけてきた!

76: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:43:44.34 ID:uTWeRgtP0

泉「ルールはシンプルに、使用ポケモン3匹。全滅したら終了だよ」

泉「そうそう、ダイマックスも使っていいよ。まあ、私は使う予定はないけど」

泉「それじゃ……いくよ、デリバード!」ポンッ

デリバード「デリ!」

デリバード はこびやポケモン こおり・ひこうタイプ
巣で待つヒナたちのため、1日中エサを運んでいる
ジョウト地方では伝説のポケモンと対峙したデリバードが語り継がれている

藍子「っ……マホイップ!」ポンッ

マホイップ「マホ~」

77: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:44:18.38 ID:uTWeRgtP0

藍子(……どうやらここのジムリーダーはこおりタイプ専門みたいだ)

藍子(デリバード……いったい何をしてくるんだろう。まずは様子見……かな)

藍子「マホイップ、デコレーション!」

マホイップ「マホ」シュシュシュシュ

マホイップ「マホ~♪」シャキーン

泉「へえ……自分自身をデコレーションするんだ。面白い戦い方だね」

78: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:44:46.93 ID:uTWeRgtP0

泉「デリバード、あられ!」

デリバード「デリ!」パァァ

ヒュォォォォォ

藍子(……相手も様子見をしてきてるのかな)

藍子「よし、マホイップ! 攻めるよ!」

藍子「マジカルシャイン!」

79: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:45:35.77 ID:uTWeRgtP0

マホイップ「マホ~」ピッカーン

泉「デリバード、オーロラベール!」

デリバード「デリ!」

バシィィィ

藍子「!? 攻撃が止められてる……!」

泉「オーロラベールはあられが降っているときにしか出せない……その代わり、強力なファイアウォールを生み出せる技だよ」

泉「これで最初の役目は終わりだね。デリバード、戻って」シュゥゥゥ

80: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:46:21.46 ID:uTWeRgtP0

藍子「……交代……?」

泉「ありがとう。そっちが攻めてこなかったおかげで、私の理想のフィールドが完成したよ」

泉「……次、いくよ! ウオチルドン!」ポンッ

ウオチルドン「ウオオー」

ウオチルドン かせきポケモン みず・こおりタイプ
頭が上下逆さで口が頭の上にあり、獲物を食べづらい
この姿が本来の姿であったかどうかは未だ疑わしい

藍子(あ、頭が上下逆さ……!? なんでそうなっちゃったんだろ……)

藍子(……って考えてる場合じゃない!)

81: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:47:33.21 ID:uTWeRgtP0

藍子「マホイップ、マジカルシャイン!」

マホイップ「マホ~!」パァァ

バシィィィ

藍子「……! またオーロラベールに弾かれた……!」

ウオチルドン「ウオオー」ケロッ

泉「どうしたの? 攻撃、届いてないみたいだね」

藍子「くっ……」

82: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:48:10.42 ID:uTWeRgtP0

藍子(さっきの反応からして相手はマホイップの戦法を見るのは初めてだったはず)

藍子(なのに全く動揺せず対策を仕掛けてくるなんて……さすがジムリーダーだ)

藍子(……だけど、私は諦めない!)

藍子「マホイップ、もう一度デコレーション!」

マホイップ「マホ!」シュシュシュシュ

泉「懐ががら空きだよ! ウオチルドン!」

ウオチルドン「ウオオー」バッ

83: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:48:45.01 ID:uTWeRgtP0

藍子「!」

泉「つららおとし!」

ウオチルドン「ウオオー!」ヒュォォォォォ

ガチンッ

藍子「! あんな巨大な氷柱を一瞬で……!」

ウオチルドン「ウオオー!」ブンッ

ドゴオッ

84: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:49:19.97 ID:uTWeRgtP0

マホイップ「マホ……!」ドサッ

藍子「マホイップ!」

泉「驚いた? ウオチルドンは周囲の空気を凍らせることで、すぐに巨大な氷柱を作り出せる。たとえあられが降っていなくてもね」

マホイップ「マホ……!」バシバシ

藍子「っ……そうだ、あられのダメージも……」

藍子(でもこれで……攻撃が通るはず!)

85: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:49:48.77 ID:uTWeRgtP0

藍子「マジカルシャイン!」

マホイップ「マホ!」ピッカーン

泉「受け止めて!」

ウオチルドン「ウオオー」

藍子「!」

バシィィッ

ウオチルドン「ウオオー」ケロッ

86: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:50:35.82 ID:uTWeRgtP0

藍子「そんな……顔に直撃したのに!」

泉「逆ね。この頑丈な顔面だからこそ攻撃を受けることができた。正面からの攻撃は、ウオチルドンには通用しないよ」

ウオチルドン「ウオオー」パァァ

泉「それに『アイスボディ』の特性もあるから、ウオチルドンは実質無傷に近いわ。マホイップにはもう手出しはできない」

泉「……さあ、この状況、あなたならどうする?」

藍子「っ……」

87: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:52:18.93 ID:uTWeRgtP0

藍子(頑丈な顔、オーロラベールの守り、それにアイスボディ)

藍子(泉さんの言うとおり、あのウオチルドンを攻略するには、何とかして正面以外から攻撃を当てていかないと……)

藍子(……)

藍子「……泉さん、マホイップには手出しはできないって言いましたよね」

藍子「その言葉……今からひっくり返してみせます!」

88: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:52:58.30 ID:uTWeRgtP0

泉「へえ、そう。なら……やってみせてよ」

泉「ウオチルドン!」

ウオチルドン「ウオオー!」

藍子「あれは……またつららおとしだ!」

藍子「マホイップ、マジカルシャインで氷柱を砕いて!」

マホイップ「マホ!」ピッカーン

バシィィィ

89: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:54:13.49 ID:uTWeRgtP0

ウオチルドン「ウオッ……」

バキィッ!!

ウオチルドン「!!」

藍子「よし、スキができた!」

藍子「マホイップ、横に回り込んで!」

マホイップ「マホ!」バッ

泉「向き直ってアクアブレイク!」

ウオチルドン「ウオッ」クルッ

90: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:54:45.58 ID:uTWeRgtP0

ウオチルドン「ウオオー!!」バシュゥ

マホイップ「!!」ドゴオッ

藍子「マホイップッ!」

マホイップ「マホ……!」ズザァ

泉「追撃よ! つららおとし!」

藍子「マホイップ、避けて!」

91: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:55:32.52 ID:uTWeRgtP0

マホイップ「マホッ……!」サッ

バシバシ

泉「逃げ続けてもいずれはあられのダメージで力尽きるだけだよ!」

藍子「っ……」

藍子「私たちは逃げてなんかいません……そうだよね、マホイップ!」

マホイップ「マホッ!」

92: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:56:10.09 ID:uTWeRgtP0

泉「……虚勢を張るのは得意なんだね。ウオチルドン!」

ウオチルドン「ウオオー!」バシュゥ

藍子「マホイップ、マジカルシャイン!」

マホイップ「マホ!」ピッカーン

ズドンッッ

ウオチルドン「ウオッ……」ズザァ

93: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:56:38.76 ID:uTWeRgtP0

泉「……さすがに2回もデコレーションをかけているだけあって、相当なパワーね」

泉「でもこれで終わり。ウオチルドン!」

ウオチルドン「ウオオー!」ヒュォォォォ

泉「つららおとし――」

泉「!?」

ヒュォォォ……ォォ……

94: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:57:29.52 ID:uTWeRgtP0

泉「うそ……!? 氷柱ができるまで、こんなに時間がかかるなんて……!」

藍子「マホイップ!」

マホイップ「マホッ!」

泉「しまっ……」

藍子「懐ががら空きですよ! マホイップ!」

藍子「マジカルシャイン!!」

95: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:58:33.20 ID:uTWeRgtP0

マホイップ「マホ~」ピッカーン

ズドンッッ

泉「この香り……そうか。攻撃を避けている間にも『あまいかおり』をたっぷり嗅がせて、ウオチルドンの集中力をすり減らしていたんだ」

ウオチルドン「ウオオー……」バタンキュー

泉「……なるほど、逃げていなかったのは本当のことだったんだね」

藍子「はいっ!」

96: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 22:59:30.53 ID:uTWeRgtP0

泉「……一本取られたよ。ちょっとあなたのこと、甘く見すぎていたみたいだね」

キッ

泉「……デリバード!」ポンッ

デリバード「デリ!」

フッ

藍子(……オーロラベールが消えた!)

藍子(そしてこのタイミングでデリバード……またオーロラベールを張ってくるんだろう)

藍子(なら、その前に……倒す!)

藍子「マホイップ、マジカルシャイ――」

97: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 23:00:07.39 ID:uTWeRgtP0

泉「おきみやげ!」

藍子「……!?」

デリバード「デリ」ポーイ

マホイップ「!!」シュゥゥゥゥ

デリバード「デリ」バタンキュー

藍子「そんな、おきみやげって……!」

泉「さすがに今度のは耐えられなかっただろうしね……いい活躍だったよ、デリバード」

98: ◆7P/ioTJZG. 2020/09/25(金) 23:00:45.17 ID:uTWeRgtP0

泉「これで私は最後の一匹……でも関係ないね。勝機は見えてる」

泉「さあバリコオル、出番だよ!」ポンッ

バリコオル「バリヴァーリッ」

バリコオル コメディアンポケモン こおり・エスパータイプ
氷でできたステッキを振り軽やかなステップを披露する
お腹の模様からサイコパワーを放出する

105: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:12:36.75 ID:rhbLUZGX0

藍子(バリコオル……あれが最後の一匹……!)

藍子(とにかくまずは、おきみやげで下げられた能力を戻さないと)

藍子「マホイップ、デコレーション!」

マホイップ「マホッ――」

106: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:13:05.40 ID:rhbLUZGX0

泉「計算通り! バリコオル、まねっこ!」

バリコオル「バリヴァーリッ!」

シュシュシュシュ

マホイップ「マホ!?」

藍子「!?」

藍子(デ、デコレーションをまねっこ……!?)

107: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:13:50.21 ID:rhbLUZGX0

バリコオル「バリヴァーリ」シャキーン

藍子「……! 雪の結晶で自分を着飾った……!」

泉「ふふっ。まねっこは直前に相手が出した技をコピーする技」

泉「あなたのことだから、次のターンはおきみやげで崩れた体勢を必ず立て直そうとする……そう思ったわ」

藍子「……!」

108: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:14:19.31 ID:rhbLUZGX0

泉「おかげでバリコオルも能力を上げられたよ、ありがとう」

泉「……せめて最後は、派手に打ちのめしてあげるわ。バリコオル、ふぶき!」

バリコオル「バリヴァーリッ!!」

ビュォォォォォ

藍子「っ……! マホイップ、マジカルシャイン!」

マホイップ「マホ――」

ビュォォォォォ

藍子「! マホイップ……!!」

109: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:14:50.13 ID:rhbLUZGX0

マホイップ「」カチーン

泉「アイスクリームの出来上がり、ね」

藍子「マ、マホイップ、戻って下さい!」シュゥゥ

藍子「……サニーゴ!」ポンッ

サニーゴ「サニー!」

藍子(……サニーゴは受けてから攻める戦い方だけど、今はそんな悠長なことをしている暇はない……!)

110: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:15:22.31 ID:rhbLUZGX0

藍子「サニーゴ、アクアブレイク!」

サニーゴ「サニ!!」バシュゥ

泉「……単調な攻撃ね。バリコオル!」

バリコオル「バリヴァーリ!」

タンッ

サニーゴ「サニ!?」

藍子(! ステップで躱された……!)

111: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:16:36.18 ID:rhbLUZGX0

藍子「サニーゴ、もう一度!」

泉「何度やっても無駄よ」

バリコオル「バリヴァーリ!」タンッ

サニーゴ「!!」スカッ

藍子「……攻撃が当たらない……!?」

泉「……バリコオルは常に独特のステップを踏んでいるポケモンよ。今立っている場所に、1秒後も立っているとは限らない」

泉「バリコオル、さっさと終わらせるわよ」

藍子「それならこれはどうですか……サニーゴ、げんしのちから!」

サニーゴ「サニ!」ゴゴゴゴ

サニーゴ「サニー!」バッ

112: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:17:11.61 ID:rhbLUZGX0

泉「……そんなの、目を閉じていても躱せるわ」

バリコオル「バリヴァーリッ」ヒョイッ

ズガンッ

藍子「サニーゴ、そこです!」

サニーゴ「サニー!」バシュゥ

ガンッ

グイッ

泉「!」

藍子「今度こそ! アクアブレ――」

113: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:17:53.26 ID:rhbLUZGX0

泉「サイコキネシス!」

バリコオル「バリヴァーリ!」グワンッ

サニーゴ「サ……サニ!?」グググッ

藍子「!!」

泉「反射を利用して速度を上げる……咄嗟にしてはいい作戦だったと思うよ」

泉「……バリコオル!」

バリコオル「バリヴァーリ!」ブゥン

サニーゴ「!!」

ドゴオッ

サニーゴ「サ、サニ……」

泉「……ふぶき!」

バリコオル「バリヴァーリッ!!」

ビュォォォォォォォ

114: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:18:41.46 ID:rhbLUZGX0

藍子「っ……!」

サニーゴ「サ、サニ……!」

サニーゴ「」カチーン

藍子「そ、そんな……!」

藍子「サニーゴ、戻って!」シュゥゥ

藍子(……あっという間に追いつかれた……!)

藍子(……強い。しかも今までのジムリーダーとは違う。ただ強いだけじゃなくて、相手の戦法すらも取り込む強さがある……)

藍子(……)

115: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:19:48.17 ID:rhbLUZGX0

泉「……どこを見ているの? まだ勝負は終わっていないよ」

藍子「……」

藍子(……いつも、ピンチの時にこうしてスタジアムの客席に目を向けたら)

藍子(そこには凛さんが座っていて……大丈夫、ってサインを送ってくれていた)

藍子(思えば凛さんは、いつも私の正面の席に座ってくれていた。私がキョロキョロしなくても見つけられるように。私が迷ったときの、道標になるように)

藍子(……今日は、凛さんはいない。だから……私だけの力で、乗り越えないと)

チャキッ

藍子「……最後の一匹、相性は悪いですけど……まだ諦めません! ゴリランダー!」ポンッ

116: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:20:40.95 ID:rhbLUZGX0

凛「……クシュンッ」

聖來「凛ちゃん、大丈夫?」

凛「……う、うん。誰かが噂してるのかな……なんて」

凛「……だいぶ長いこと検査されたけど、たいしたことはなかったね。今も腕は少し痺れてるけど」

聖來「凛ちゃん……ごめんね。私がもっと周りを見ていればよかったんだけど」

凛「ううん、もういいよ。それより……藍子は?」

117: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:21:32.61 ID:rhbLUZGX0

都「藍子さんなら、ジムに向かわれました」

凛「ジム?」

凛(まさかジムチャレンジに? いや、でもこの状況でチャレンジに挑むなんて……あり得ないか)

凛(それに私の記憶が正しければ、今日はジムは開いていなかったはず)

凛「……そうだ、この町のジムリーダーは? 今どこで何をしているの?」

聖來「……! たしか、マケンカニ達はジムの前を陣取っていたんだよね」

都「ええ、実は――」

カクカクシカジカ

118: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:22:07.10 ID:rhbLUZGX0

凛「……じゃあ藍子は、ジムリーダーに直接問い質しに行ったってこと?」

都「はい。私は止めたのですが……」

凛(……藍子がそんな感情的な行動をとるなんて)

凛「でも、確かに妙だね。どうしてジムリーダー……泉は、どうしてまだ姿を見せていないんだろう」

聖來「町の人たちから不審に思われるかもしれないのにね……」

凛「ただ……都。さっきマケンカニ達は野生のポケモンじゃないって言ったけど、それは違うと思う」

都「どうしてですか?」

119: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:22:59.35 ID:rhbLUZGX0

凛「藍子はリーダー格だったケケンカニをゲットしたんだ」

都「!! では、やっぱり野生のポケモンだということですか……!?」

凛「かもね……とにかく、私たちもジムに行ってみよう。泉を疑っているわけではないけど、このままじゃ釈然としない」

聖來「うんっ」

都「は、はい……」

??「……あ、いたいたっ! 都さあーーんっ!!」

都「!? あ、あなた……!」

120: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:23:30.48 ID:rhbLUZGX0

藍子「ゴリランダー、力を貸して!」シュゥゥ

グンッ

藍子「っ……キョダイ、マックス……!!」

ブゥンッ

カッ

ズドォォォォォォン

ゴリランダー「ゴリィィィィィィィ」

121: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:24:30.06 ID:rhbLUZGX0

泉「……へぇ、キョダイマックスするゴリランダーなんて初めて見たよ」

泉「怖気ないで、バリコオル。これはむしろ私たちには好都合なんだから」

バリコオル「バリヴァーリッ」

藍子「……?」

フッ

泉「ちょうどあられが止んだね。普通ならふぶきの命中精度が落ちてしまうけど」

泉「的が大きくなったんだから、外す方が難しいわ。……バリコオル、フルパワーでいくよ」

122: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:25:35.16 ID:rhbLUZGX0

バリコオル「バリヴァーリッ」

藍子「! ゴリランダー、気をつけて!」

ゴリランダー「ゴリィィィィィ!!」ドンドコドンッ

ボコッ

泉「遅い! ふぶき!」

バリコオル「バリヴァーリ!!」

ビュォォォォォォォ

ゴリランダー「ゴリィィィィ……!!」

藍子「ゴ、ゴリランダー!」

藍子「負けないで、ゴリランダー! キョダイコランダ!」

ゴリランダー「ゴリィィィィィ!!」ドンドコドンッ

グワッ

123: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:26:36.95 ID:rhbLUZGX0

泉「……これは避けられそうにないか」

泉「バリコオル、サイコキネシスで浮上して!」

バリコオル「バリヴァーリ!」フワワッ

泉「足元にふぶき!」

バリコオル「バリヴァーリ!!」ビュォォォォ

ゴゴゴゴゴゴ

藍子「!! そんな……根っこが!」

ゴゴ……ゴゴ……

ガチンッ

藍子(そんな……キョダイマックス技が止められた!?)

バリコオル「バリヴァーリ」ズンッ

泉「……これで勝負あった、かな。攻撃は最大の防御……もうあなたはバリコオルを攻撃することはできない」

124: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:27:47.08 ID:rhbLUZGX0

藍子「……まだ、まだ……諦めません!」キッ

泉「! ……あなた、どうしてそこまで……」

藍子「ゴリランダー!」

ゴリランダー「ゴリィィィィィ!!」ドンドコドンッ

グワッ

泉「無駄よ、バリコオル! ふぶき!」

バリコオル「バリヴァーリッ!」ビュォォォォォ

藍子「ゴリランダー、根っこで壁を作って!」

ゴリランダー「ゴリィィィィィ!!」ゴゴゴゴゴゴ

バチィィィィ

泉「なるほど、その根っこ、守りにも使うんだね」

泉「でも……」

カチーン

125: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:28:22.02 ID:rhbLUZGX0

泉「あらかた凍りついてしまったようね。これじゃ――」

藍子「ゴリランダー、叩き割って!」

ゴリランダー「ゴリィィィィィィ!!」ズガンッ

……ビキッ

ビキビキビキビキ

泉「……!」

ズガァァァァァン

126: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:29:06.02 ID:rhbLUZGX0

バリコオル「バリ……!?」

泉「! 砕けた氷の破片が降り注いでくる……!」

バリコオル「バリッ……!!」ドドドドド

泉「バリコオルっ!」

藍子「今です……ゴリランダー!」

藍子「キョダイコランダ!!」

ゴリランダー「ゴリィィィィィィィ!!」

グワッ

バリコオル「……!!」

ズガァァァァァン

泉「っ……」

バリコオル「バリヴァーリ……」バタンキュー

127: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:29:47.70 ID:rhbLUZGX0

泉「……負けたわ」

藍子「……なら」

藍子「泉さん……教えてください。あなたはここで、一体何をしていたんですか……?」

泉「……それは」


「いずみちゃあああーーーんっっ!!」

128: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:30:45.48 ID:rhbLUZGX0

藍子「!?」バッ

泉「……さ、さくらっ!」

さくら「いずみちゃあああーーんっ!!」ダダダダダ

ガバッ

泉「わっ……」

さくら「わ、わたし、あのまま雪だるまになっちゃうと思って……」

さくら「こ、怖かったよおおーー!!」ビエエエン

129: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:31:14.75 ID:rhbLUZGX0

泉「……よかった、ちゃんと町に着いたんだね。ていうか痛いよ、さくら」

泉「……よかった……」ギュッ

藍子「え……え……?」

凛「藍子!」

聖來「藍子ちゃんっ!」

都「藍子さん!」

藍子「あ……皆さん」

藍子「あの、これは一体どういう……」

130: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:31:59.37 ID:rhbLUZGX0

さくら「……藍子さん」

藍子「は、はいっ」

さくら「全部……わたしが悪かったんです。ごめんなさいっ!」ペコッ

藍子「……?」

泉「……ごめん、混乱してるよね。順を追って説明するね」

泉「その前に、この子はさくら。今は都ちゃんの助手をやっている、私の親友」

泉「この子がちょっと訳ありでこの町に向かってて……って、都ちゃんがいるなら事情はだいたい知ってるか」

藍子「……はい。例の事件のことですよね」

131: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:33:35.65 ID:rhbLUZGX0

泉「うん。……ただ、町に来る途中に迷ってしまったみたいで。さくらは方向音痴だし、雪の中を長時間歩くのは危険だから、私がずっとビデオ通話で道案内をしていたの」

都「おそらく、私が電話をかけた直後だったのでしょう。私は『道が分かりそう』と言われたので、一度通話を切っていたんです」

さくら「ぜ、全然わかっていなかったですぅ……」

泉「……正直、外が騒がしくなっていることは気づいていた。どういう状況だったのかすごく気がかりだったし、出ていかなきゃって思っていた」

泉「でもあそこで通話を切ってしまったら、さくらは取り残されてしまっていた。独りにするわけにはいかなかったんだ」

聖來「……さくらちゃんのことを、優先していたんだね」

132: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:34:20.30 ID:rhbLUZGX0

泉「……うん。さくらが無事と分かった時には、もう外の騒動は収まっていた」

泉「ニュース速報で町の様子が流れたとき、私は取り返しのつかないことをしてしまったと気づいたんだ。……正直、外に出て誰かと会うのも怖かった」

泉「それで、とにかく何があったかを他のジムリーダーに報告しようと準備していたら、あなたがスタジアムに来たってわけ」

凛「私と聖來さんと都は検査が終わった時にさくらと合流したんだ。そこでさくらが泉に道を聞いていたこと、藍子がジムに行ったことを聞いて、もしかしたら藍子は勘違いをしているんじゃないかって、追いかけてきたんだ」

藍子「……そうだったんですか」

133: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:34:55.36 ID:rhbLUZGX0

泉「仕方がなかった……なんて、無責任な言い訳だよね」

泉「誤解が生まれるのは当然のことだったと思う。……本当に、ごめんなさい」

藍子「……ちょっと待ってください。それじゃあ」チャキッ

藍子「このケケンカニは、さっきジムの前で暴れていたポケモンです。このポケモンは……あなたのジムのポケモンではないんですか?」

泉「ケケンカニ……? いいえ、違うわ。そのポケモンは、私のもとにはいない」

藍子「じゃあ、いったい――」

134: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:35:40.20 ID:rhbLUZGX0

泉「暴れていたポケモンは私とは無関係だよ。……だけど、そのポケモン達が一体どこから来たのかは説明できない」

泉「ジムの前から現れたんだから関係あるんじゃないかって思うかもしれないけど、本当に私は何も知らないんだ。『ジムの前にいたけどジムのポケモンじゃない』なんて言っても、皆をさらに混乱させるだけだと思った」

泉「さっき、『私はやってないって証明できない』って言ったのはそういうこと。それもジムから出られなかった理由の一つ、かな」

藍子「……」

凛「泉なら、信用してもらえるよ」

泉「!」

135: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:36:24.34 ID:rhbLUZGX0

凛「たしかに証拠はないかもしれないけど、前に一度、同じことがあったときにみんなを助けていたんでしょ?」

凛「それに、優先順位がどうだったかはわからないけど……こうして親友のピンチを救ったんだ。誠実に話せば、きっとみんなわかってくれる」

泉「……そうね。私は逃げていたのかもしれない」

泉「勇気を出して、町の皆に真実を打ち明けることにするわ」

凛「うん、きっとそうした方がいいよ」

聖來「……ふう、よかったっ」

都「? 聖來さんどうかしました?」

136: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:37:59.66 ID:rhbLUZGX0

聖來「だって、都ちゃん言ってたじゃない。泉ちゃんは困っている人を放っておくような人じゃないって。その言葉、本当だったんだもの」

都「……それもそうですね!」

都「そうだ、本題がまだありました。泉さん」

泉「うん、わかった。今回の事件について、私の知っている範囲でよければ話すよ」

泉「その前に……さっきは試すような真似をして、ごめんなさい」

藍子「……そうだ、泉さん。自分が犯人じゃないと確信していたのなら、どうしてあんなことを言ったんですか?」

泉「……」

137: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/02(金) 22:39:02.62 ID:rhbLUZGX0

泉「これは私の直感だけど……もし私が先に全てを話していたら、優しいあなたは踵を返して立ち去るだろうと思ったから」

藍子「!」

泉「このジムの仕掛け、厳しかったでしょ?」

藍子「え、あ……はい。一筆書き、でしたよね」

泉「あれをもう一度やるくらいなら、ジムへ来た理由は何にせよここで勝負を引き受けなきゃならないと思ったんだ」

泉「さっきも言ったけど、このスタジアムに立っている限りは、あなたと私はチャレンジャーとジムリーダーの関係だから、ね」

藍子「……」

泉「でもおかげで、あなたの人柄や信念を知ることができた。あなたはこのバッジを受け取るのに相応しいトレーナーだったよ」



藍子はチルバッジを手に入れた!

藍子は技マシン「フリーズドライ」を手に入れた!

142: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:27:03.33 ID:gLsUExtW0

ステーキ専門店 おいしんボブ


泉「……さてと」

泉「あの事件のことだっけ。本当は一般人、ましてやチャレンジャーには話しちゃいけないってジムリーダー同士でも言ってたはずなんだけどな……」

凛「李衣菜もそんなことを言ってた。やっぱり、皆を必要以上に混乱させたくなかったんだね」

泉「李衣菜さんにも話を聞いたんだ。うん、その通り」

都「……ですが、私たちは真実を知りたいんです。いや、知るだけじゃなく、知ってからどうすべきか、力を合わせていきたい」

143: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:27:53.37 ID:gLsUExtW0

泉「真実、ね……でも先に断っておくと、私にもわからない事象が多すぎるわ。むしろ、私が解消できていない疑問をぶつけるだけになるかもしれない」

都「構いません。それをこれから考えて、一緒に乗り越えていきましょうよ!」

さくら「ひょうですひょぉ……わひゃしひゃひは泉ひゃんの味方でひゅから~」モグモグ

泉「さくら、飲み込んでから話してよ……それで、まずは何か質問はある?」

都「はい。今回町に現れたポケモンですが……マケンカニも、その進化系であるケケンカニも、本来ガラルには生息していないはずのポケモンです」

泉「……」

144: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:28:55.07 ID:gLsUExtW0

都「町の人の目撃証言によれば――はっきりとどこから出てきたかを見ていない人はいないのですが――やはり全員が、ジムの前から出現したと語っていました」

都「当初はトレーナーが放ったという線も考えましたが、藍子さんはリーダーだったポケモンをボールに収めることができたそうです。つまり、あの軍団は野生のポケモンであった、と考えるのが妥当でしょう」

聖來「ジムの近くには草むらなんてなかったよね……そしたら、何もないところからいきなりパッとポケモンが出てきたっていうの?」

都「はい。そう信じられる話ではありませんが……一つの可能性としては、エスパーポケモンのテレポートで一気に移動してきた、とも考えられます」

聖來「そんなこと、できるの?」

都「いえ、そこまでは……あれだけの数のポケモンを一挙にテレポートさせるほどのポケモンなんているのでしょうか……」

145: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:29:39.47 ID:gLsUExtW0

凛「……どうだろう。私たちが知らないだけで、そういう強力な能力を持つポケモンが相手側にいるという可能性もあるかも……」

泉「あるいは、ポケモンじゃなくマシンである可能性もあるね。ポケモンを一気に一か所へ転送する……いうなれば、ボックスシステムの応用、みたいな」

凛「ボックスシステム……」

凛(……まさか、ね)

泉「って、仮定の話ばかりしても意味がないね。都ちゃん、それで?」

都「……もう一度確認しておきたいのですが、あのマケンカニ達は泉さんのポケモンでは――」

146: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:30:51.73 ID:gLsUExtW0

泉「ないわ。たしかに私のジムはジムトレーナーの代わりに特訓用のポケモンを住まわせているし、ゲットしようと思えばできるけど」

泉「まあもちろん、チャレンジャーがそんなことをしたら失格だけどね」

都「……うーん、ジムから飛び出してきて町を襲った、というのなら事件の展開は噛み合うのですが……」

聖來「そうだね……町の人たちも、そう思っているだろうし」

泉「言い逃れはできないし、私にも落ち度があったのは認めるけど、このことに関しては私は潔白だよ」

147: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:31:40.65 ID:gLsUExtW0

泉「そうだ。マケンカニ達は本来ガラルには生息していない、って言ったよね」

都「ええ、はい」

泉「実は、前に町に現れたクリムガンってポケモンも、ガラルには生息していないポケモンだったんだ」

一同「……!!」

泉「……改めて説明すると、事件が起きたのは二か月前くらい、かな。本当に何の変哲もない日だった。ジムに町の人が飛び込んできて、ポケモンが暴れているって報せに来たんだ」

泉「どうやって町に現れたのかはわからなかったけど、クリムガンは寒さに弱いポケモンだから、そもそもキルクスにいること自体がおかしな話でさ。だから私は何かあると踏んで、クリムガンを無力化させて捕獲した」

148: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:32:22.25 ID:gLsUExtW0

泉「で、傷を癒して精神を落ち着かせた状態で、どこから来たのか調べてもらうことにしたんだ。ポケモン専門の鑑識の人に依頼してね」

都「……それで?」

泉「クリムガンの皮膚に、イッシュ地方のものと同じ土が付着していた」

さくら「土が……?」

泉「ええ。皮膚だけじゃなく、全身にイッシュ地方で住んでいた形跡を刻んでいたわ。鑑識の人が言うには――『まるでイッシュから直接やって来たみたいだ』、って」

149: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:33:36.50 ID:gLsUExtW0

藍子「……!?」

凛「ということは……そのクリムガンも、野生のポケモンだったってこと?」

泉「うん。明らかに野生の環境下で生きていた個体だって言っていた」

都「それも直接って……別地方のポケモンが、どうして……」

聖來「じゃあ、今回の事件はイッシュ地方の人が起こしたものなの……?」

泉「ううん、私は違うと思う。……その次に暴走したポケモンが現れたのは、シュートシティだった」

藍子(! もしかしてあの時の……!)

泉「同じように、どこから飛び出してきたのかは不明だったんだけど――駅で暴れて、取り押さえられたザングースの身体からは、アイマス地方の草や土が見つかった」

150: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:34:51.67 ID:gLsUExtW0

凛「……アイマス地方……!?」

凛(じゃあ私が戦ったザングースは……私と同じアイマスからガラルに来ていたんだ……)

都「じゃあそのザングースも、やはり――」

泉「そう。アイマス地方の自然の名残を残したままだった」

聖來「イッシュ、アイマス、アローラ……全部、ガラルとはかけ離れた地方だね」

さくら「いったい誰がそんなこと……」

泉「そうね。ポケモン単体の力で別の地方にいきなり現れるなんて不可能。確実に裏で誰かが動いていて、ガラルを混乱させようとしている――そう考えるのが妥当だけど」

さくら「けど?」

151: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:35:43.02 ID:gLsUExtW0

泉「肝心なことがわからないんだ。そもそも暴走したポケモン達は、誰かの指示で動いていたわけじゃなかった。クリムガンだってそうだったし、実際にどの現場でも怪しい動きをしていた人は目撃されていない」

聖來「手段がわからないってことか……」

聖來「ねえ、野生で捕まえたポケモンを一度もボールから出さずにガラルまで持ってきて、逃がしたっていうのは考えられないの?」

泉「それも考えたけど、そもそもイッシュで捕まえたポケモンをガラルで逃がす、みたいな行為は法外だわ」

泉「それに、その場で逃がしたのだとしたら誰かが必ず目撃して通報しているはず。隠れて逃がしてから時間が経っている場合でも、たいていは姿を見た時点で自治体に保護されているはずなんだよ」

聖來「うっ、そっか……」

152: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:36:16.80 ID:gLsUExtW0

凛(……思い返せばそうだ。マケンカニの群れを指揮していたのは、トレーナーでも変な電波を出す機械とかでもなくて、ケケンカニだった)

凛(……そうだ。前に戦ったベロバーの群れはただ暴れさせられていただけだった。でも今回は違う……自分の意思で暴れていた)

凛(じゃあ麗奈たちは関係なくて、あのマケンカニ達は自分たちの意思でガラルまで来て、ガラルを荒らそうとしていたっていうの……?)

凛(もしそうだとして……何がポケモン達をそう動機づけたの……?)

凛(……いや)

153: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:36:51.43 ID:gLsUExtW0

都「……暴走ポケモンはいずれも別地方からそのままやって来たみたいだった。でもポケモン自身の力で別地方からいきなりやって来るなんて無理だから、やっぱり誰かが持ち込んできた……でもどうやって野生のままの個体を――」

都「……ああ! 頭がパンクしそうですっ」

泉「同感ね。ジムリーダーたちも毎日頭を悩ませているわ」

凛「……あのさ」

泉「ん?」

凛「さっき、怪しい動きをしていた人は目撃されていないって言ったけどさ」

154: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:37:30.71 ID:gLsUExtW0

凛「私たち、実際に会ったことがあるんだ。ポケモンを操っていた張本人に」

泉「ポケモンを操っていた……?」

凛「うん。ルミナスメイズの森でベロバー達が暴れていた事件……あの現場に、私と藍子と都は鉢合わせていたんだ」

聖來「えっ……!?」

藍子「……」コクッ

凛「ベロバーの群れを操っていたのは、麗奈というトレーナーだった。ギルガルドを使って一斉にポケモンを操って、森に入り込んだ人を襲っていたんだ」

155: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:38:19.14 ID:gLsUExtW0

凛「私は、麗奈とはあそこで会うのが初めてじゃなかった。アイマス地方でも会っていたんだ」

凛「アイマスでは、彼女はシンデレラ団という犯罪集団の一員だった。シンデレラ団は色々あって空中分解したって思っていたんだけど……残党が残っていて、さらに新しい企みを進めているってことも知った」

泉「その新しい企みが、この事件ってこと?」

凛「うん。だから手段はどうあれ、よくないことを考えている連中がいることは確実だと思う」

凛「ただ……今回に関しては、麗奈は関わっていないかもしれない。ポケモンの暴れ方が、以前とは全然違っていたから」

凛「なんで関わっていなかったのかは説明できないけどね」

泉「……」

156: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:39:23.67 ID:gLsUExtW0

泉「貴重な意見をありがとう。もう一度、ジムリーダー同士で検討してみる」

泉「本当に誰かの所為だというなら、どこかに証拠が残っているはずだから」

凛「うん。それと……麗奈たちの集団は、涼が襲われた事件とも関連していると私は思ってる。今回もそうだったけど、暴走ポケモンはいずれもパワースポットの近くに出現していたみたいなんだ」

泉「そういえばそうだね」

凛「……きっと、連中の狙いはジムリーダーか、もしくはパワースポットそのものかもしれない」

凛「だから泉には、今まで通り町を守り続けてほしい。この町を一番に思いやれて、守ることができるのはジムリーダーだと思うから」

泉「……李衣菜さんが言ってたことってそういう意味だったんだね。わかった、任せて」

157: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:39:57.59 ID:gLsUExtW0

都「……」

聖來「……」

さくら「……」

藍子「あ、あのー、皆さんっ」

一同「……?」

藍子「あの、こんなこと言うのは場違いかもしれませんけど……せっかくおいしそうな料理があるのに、暗い話ばかりだったらもったいないなあ……って思うんです」

158: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:40:48.43 ID:gLsUExtW0

藍子「ええっと、その、そろそろ楽しいお話をしませんか? 私、ずっと気になってたんです。さくらちゃんと泉さんがどうやって仲良くなったのか、とか」

泉「そ、それは話そうと思えば話せるけど……長くなるよ?」

藍子「いいんですいいんです! すいませーん、このステーキ盛り合わせ、くださいっ!」

聖來「えっ……それってこの店で一番高いやつじゃ……」

藍子「えっ? だって今日のお支払いは聖來さんがしてくれるって話だったはずじゃ……」

聖來「は、はぁっ!? いつそんなこと言ったっけ!?」

藍子「あ、じゃあこうしましょう! 皆が一斉に年齢を言っていって、一番年上だった人が支払うってことで!」

159: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:41:31.73 ID:gLsUExtW0

泉「そんなムチャクチャな……」

藍子「じゃあ私からいきますね。えっと、私は今年で16歳です!」

聖來「じゅ、16!?」

都「あ、私も同じです!」ビシッ

凛「私は……15歳、かな」

160: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:42:17.80 ID:gLsUExtW0

さくら「わあ、凛さんって同い年だったんだぁ!」

さくら「泉ちゃんも私と同級生なんだよ!」

泉「……!」

泉「藍子……さん、年上だったんだ。もしかしたら私、どこかで失礼なこと言ってしまっていたかも……ごめんなさい」

藍子「あ、いえいえ、気にしないで下さい! 聖來さんは?」

聖來「……」

聖來「……に、23……」

一同「ええ~~!?」

161: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:43:31.54 ID:gLsUExtW0

藍子「わ、私、てっきり10代かと思ってました……!」

凛「私も……年上だろうとは思ってたけど、せいぜい2、3歳くらいしか変わらないと……」

聖來「そ、そういうフォローはいらないってば……」

聖來「……ああ、もう! わかったよ! 私が払えばいいんでしょっ! クーポンもあるんだし、痛くも痒くもないもんね!」

聖來「……ぷっ」

アハハハハ・・・・・・

162: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:44:09.89 ID:gLsUExtW0

翌朝

聖來「二人はまだこの町に居座るんだよね」

凛「うん。今日はちゃんとジム戦をしてくれるって約束してくれてたから」

聖來「そか。じゃ、ここでお別れだね。私はこの先の9番道路に行って、もっとポケモンと自分を鍛えることにするよ」

聖來「藍子ちゃん! 次に会ったときは、絶対負けないからね!」

藍子「はいっ! 私も負けるつもりはありませんから!」

聖來「ふふっ。じゃあね、若者たち!」

163: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:45:08.31 ID:gLsUExtW0

さくら「さよーならー!」

タタタッ

都(……聖來さんも若いはずなんだけどなあ)

都「……さて、では私たちも戻りましょうか」

さくら「そうですねっ。わたし、もう寒いのはイヤですぅ……」

都「では、凛さん、藍子さん。私たちは一度情報を整理するために、事務所へ戻ります」

都「短い間でしたが、三人での旅、とても楽しかったです。ありがとうございました!」ペコッ

164: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:45:41.57 ID:gLsUExtW0

藍子「私こそ、すごく楽しかったです!」

凛「元気でね、都」

都「はい。お二人も、どうかお気をつけて! ではそろそろ電車の時間ですので……」

タッタッタッタッ

凛「……」

藍子「……寂しくなっちゃいますね。昨日は夜遅くまでみんなと一緒だったから、余計にそう感じます」

165: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:46:51.98 ID:gLsUExtW0

藍子「では凛さん、ジムに行きましょう!」

凛「……藍子」

藍子「はい?」

凛「昨日はありがとう。藍子がいなかったら、せっかくおいしいステーキも充分味わえなかったと思う」

凛「藍子は場違いかもって言ってたけど、藍子が明るく振る舞ってくれたから、こうして楽しく過ごすことができたんだよ」

藍子「い、いえ、そんな……」

凛「藍子には、きっと不思議な力がある。周りにいるみんなを幸せにする魔法をかけられる……そんな力があると思うな」

藍子「みんなを……幸せに……」

166: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:48:07.08 ID:gLsUExtW0

藍子「……そんなこと、気づきもしませんでした。今まではあんなこと、絶対に言えなかったです。横槍を入れるようなこと……言う勇気がなかったです」

藍子「だけど、なぜでしょう……あの場では、自然と言葉が出てきたっていうか……」

凛「……前にも言ったけど、藍子はもうとっくに強くて優しいよ。自分が知らないうちに、藍子は藍子が思うよりずっと成長してるんだ」

凛(……そう。たった一人でジムに挑んだことだって、私を助けようとしてくれたことだってそう。藍子は、もう十分に立派なトレーナーだ)

凛(……それはつまり……)

167: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:48:45.40 ID:gLsUExtW0

??「おおーい!」

藍子「?」

??「アンタだよアンタ。やーっと見つかったよ」

藍子「わ、私に何か用でしょうか?」

ヤナセ「やあ。オレはヤナセ。トレーナーだ。アンタ……ケケンカニ、持ってるだろ」

藍子「……え?」

168: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:50:02.63 ID:gLsUExtW0

ヤナセ「見てたのさ、バッチリ。アンタがケケンカニをゲットするところをさ」

ヤナセ「実は……うちの娘が大のカニ好きでな。ガラルに住んでいないケケンカニを見せたら、きっと喜んでくれると思うんだ」

ヤナセ「もしよければ、アンタのケケンカニ、俺のポケモンと交換しないか?」

藍子「交換……ですか」

藍子「……」チャキッ

藍子(……いいのかな。でも、悪い人じゃなさそうだし……)

藍子「……私でよければ、ぜひ! ケケンカニも、きっとその娘さんが可愛がってくれると思いますので!」

ヤナセ「おお! 恩に着るよ! そんじゃあさっそく……」

169: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/09(金) 21:51:47.09 ID:gLsUExtW0

ケケンカニをヤナセに送ります! バイバイ、ケケンカニ!

ヒュンッ

コォォォォォォ……

パッ

藍子「!」パシッ
 
173: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/10(土) 00:47:11.42 ID:kFHMjzsn0

ヤナセからヤドンを受け取った!

ヤドンを可愛がってあげてね!

ヤドン まぬけポケモン エスパータイプ
ガラルのすがた
ガラナツというスパイスを食べ続けたことで独自の姿や能力を持つようになった
とても間抜けで動きも鈍いが、たまにものすごいことを思いつくらしい

ヤナセ「あとこれもやるよ。ガラナツブレスっていってな、これを使えばヤドランに進化させられるんだ」

藍子はガラナツブレスを手に入れた!

藍子「ええっ、いいんですか?」

ヤナセ「アンタは町を守ってくれたんだ、これぐらいのお礼はさせてくれ」

174: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/10(土) 00:48:05.83 ID:kFHMjzsn0

ヤナセ「ただ、別の道具を使えばヤドキングに進化させることもできる。どっちも強力なポケモンだから、よく考えて使った方がいいかもな」

ヤナセ「ともかく、ヤドンのこと、大事にしてくれよな!」

藍子「はいっ! ありがとうございます!」


ヤドンが手持ちに加わった!

ヤドン(マイペース) Lv36
おっとりした性格 抜け目がない
サイコキネシス/なみのり/なまける/かなしばり

175: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/10(土) 00:49:30.81 ID:kFHMjzsn0

凛「へえ、リージョンフォームのヤドンか……」

凛「ところで藍子、ちょっと迷ってたみたいだけど……本当によかったの?」

藍子「はい。ケケンカニも、その方が幸せだと思いますし」

藍子「……やっぱり、どうしても思い出しちゃうんです。ケケンカニが悪くないってことはわかっていますけど」

凛「……そっか」

藍子「私、もっと強くなります。強くなって、凛さんや聖來さんや都ちゃんたちを守れるくらい強くなりたいんです」

凛「いい心意気だけど……私はまだ守られるようなお姫様になるつもりはないよ」

藍子「ふふっ。ヤドン……これからよろしくね!」

180: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 20:09:55.08 ID:SchLONZR0

凛「サザンドラ、あくのはどう!」

サザンドラ「サザ!!」バッ

バリコオル「バリ――」

ズドォンッ

バリコオル「バリ……」バタンキュー

泉「……!」

ドローンロトム『勝者、チャレンジャー・凛!!』

ドワァァァァァ

泉「……完敗だわ。ポケモンの能力、トレーナーの的確な指示、戦術……苦手なタイプでも物怖じせず挑んでくる大胆さ。これまで戦ってきたチャレンジャーの中でもナンバーワンかも」

泉「いい刺激をもらったよ、ありがとう。これ、受け取って」

凛はチルバッジを手に入れた!

181: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 20:10:44.35 ID:SchLONZR0

凛「……さて」

凛「あと挑んでいないのは……珠美がいるナックルシティと」

藍子「バウタウンですね。エンジンシティの東にある町です」

凛「エンジンシティか……それじゃあ一度ナックルシティまで戻って、電車を使うかワイルドエリアを通って南下しないといけないね」

藍子「そうですね。それにしても遠いなあ……」

凛「……そうだね。電車に乗ればそうでもないんだろうけど」

??「あら、お二人さん。久しぶりね」

藍子「?」

182: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 20:11:26.73 ID:SchLONZR0

凛「……! 奏……」

奏「覚えててくれたのね、凛。会えて嬉しいわ」

奏「この町には何か用があったの?」

藍子「ジムチャレンジです。奏さんもですか?」

奏「いいえ。私、ジムチャレンジには興味がないの。なんだかステレオタイプを押し付けられているみたいで窮屈なのよね」

奏「そう、私はただ偶然ここに来ただけ……それなのにこうして出会えたなんて、なにかの巡り合わせかしらね」

凛「……それで、アンタは私たちに何の用?」スッ

奏「そんなの一つだけよ。前にも言ったでしょ、次こそはあなたを倒すって」

183: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 20:12:08.19 ID:SchLONZR0

藍子「……サニーゴが目当てなんですか?」

奏「それはもうどうでもいいわ。今の私はただ貴方を上から見下したい。それだけなのよ」

凛「……」

奏「ふふ、そんな怖い顔しなくてもいいじゃない。前はキスしかあげられなかったけど、今回はちゃんと有意義なプレゼントを用意しているわ」

凛「……プレゼント?」

奏「そう。貴方たち、そらとぶタクシーは使ったこと、ある?」

藍子「い、いえ」

奏「なら一度乗ってみることを薦めるわ。空から見下ろすガラル地方というのも、なかなか粋なものよ」

184: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 20:13:39.60 ID:SchLONZR0

奏「……で、実は今、そらとぶタクシーがあるキャンペーンを開催しているの」

奏「あれは基本的には行ったことのある場所にしか連れて行ってくれないシステムなんだけど、今回は一度だけ、行ったことのない町にも行くことができる。そういうキャンペーン。あなたたち、バウタウンへ行きたいんでしょう?」

凛「……」

奏「ただ残念なことに、そのキャンペーンは先着順でね。あと1組しか乗せることができないみたいなのよ」

奏「本当は私も行ってみたい場所があるんだけど、せっかくだし貴方たちにその権利を譲るのも悪くないかなって」

凛「じゃあアンタが乗ればいいじゃない。私たちは歩いて向かうからさ」

奏「ふふっ、強がりね。一度味わえばやみつきになるかもしれないのに。食わず嫌いは価値観を狭めるわよ」

凛「……そうまでして、私と戦いたいわけ?」

奏「ええ。でもただ戦うだけじゃないわ。私の目的は貴方を倒すこと」

奏「その気じゃないなら別にいいわよ。私に背中を向けたって」

凛「……いいよ。なら受けて立とうじゃない」

奏「ふふっ、そうこなくちゃ。今度こそあなたの悔しがる顔を見られるのが楽しみだわ」

185: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 20:14:14.43 ID:SchLONZR0

藍子「り、凛さん……」

凛「……すぐに終わらせる。下がってて、藍子」

奏「いくわよ、ルージュラ」ポンッ

ルージュラ「ルージュ」

ルージュラ ひとがたポケモン こおり・エスパータイプ
踊るような腰つきでリズミカルに歩く
鳴き声は人間の言葉のように聞こえるが、意味はまったく理解できない

凛「いくよ、ゲッコウガ!」ポンッ

ゲッコウガ「ゲコ」

凛「ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

ゲッコウガ「ゲコ!」シュバババ

186: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 20:14:56.03 ID:SchLONZR0

奏「かげぶんしん!」

ルージュラ「ルージュ!」フッ

シャッシャッシャッシャッ

凛「囲まれたか……ゲッコウガ、つばめがえし――」

奏「させないわ。くろいまなざし!」

ルージュラ「ルージュ!」カッッ

ゲッコウガ「!!」ビタッ

藍子「ゲ、ゲッコウガ!」

奏「優しくいたぶってあげるわ。ドレインキッス!」

ルージュラ「ルージュ!」バッ

チュゥゥゥ

ゲッコウガ「ゲコォォ……!」

187: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 20:15:31.59 ID:SchLONZR0

凛「くっ……」

奏「ふふ、ファーストキスは私のもの、ね」

凛「……やるじゃん。実力は口先だけじゃないんだね」

奏「あら、私は貴方と違ってそんな安っぽい挑発には乗らないわよ?」

凛「だったら乗せてあげるよ……ゲッコウガ! かげぶんしん!」

ゲッコウガ「ゲコ!」ヒュンヒュンヒュン

奏「……今度は逆に囲まれちゃったわね」

凛「一斉にみずしゅりけん!」

奏「でも、ルージュラには当てられないわ」

188: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 20:16:13.98 ID:SchLONZR0

ルージュラ「ルージュ」ユラッ

ヒョイ ヒョイ ヒョイッ

藍子「!? そんな、みずしゅりけんを全部避けたんですか!?」

奏「そうよ。ルージュラには攻撃の軌道が見えていたんだもの。『よちむ』でね」

奏「そして行き場を失った攻撃は……」

ゲッコウガ「……!」

フッ フッ フッ

藍子「! 分身がかき消されて……!」

奏「そこよ! ルージュラ、ドレインキッス!」

ルージュラ「ルージュ!」チュゥゥゥ

ゲッコウガ「ゲコ……!」

奏「どう? 激しいキスも悪くないでしょ」

凛「っ……」

189: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 20:17:03.35 ID:SchLONZR0

奏「これでフィニッシュね……ルージュラ、かげぶんしん!」

ルージュラ「ルージュ」ヒュンヒュンヒュン

凛「かかったね! ゲッコウガ、つばめがえし!」

奏「何のつもりかしら? ルージュラ、くろいまなざし――」

ズバッ

奏「……!」

奏「な、なぜ……ゲッコウガは動けなかったはずじゃ――」

奏「!!」

藍子(ゲ、ゲッコウガが……目を瞑りながらルージュラを攻撃した……!?)

凛「目を合わせちゃいけないなら、見なければいい。簡単なことだよ」

190: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 20:18:30.78 ID:SchLONZR0

奏「っ……」

藍子(そんな……すごすぎる。目を閉じたまま分身の本体を見抜くなんて、どうやったらそんなことが……)

ルージュラ「ルージュ……」グラッ

凛「つじぎり!」

ゲッコウガ「ゲコ!」

スパッ

ルージュラ「……!」ドサッ

凛「まずは先制だね」

奏「……この程度でいい気にならないで」ギリ

奏「次はこうはいかないわ。ブリムオン!」

ブリムオン「ブリム」

191: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 20:19:03.58 ID:SchLONZR0

奏「パワーウィップ!」

凛「躱して!」

ブリムオン「ブリム!」ブゥン

ゲッコウガ「ゲコ」フッ

凛「背後に回り込むよ!」

ゲッコウガ「ゲコ!」グルッ

凛「つじぎり!」

奏「パワーウィップ!」

ゲッコウガ「ゲコ!」

ブリムオン「ブリム!」

ガキインッ

192: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 20:20:03.98 ID:SchLONZR0

凛「もう一発!」

奏「今度のは耐えられるかしら?」

ブリムオン「ブリム!」グワッ

凛「……二発同時のパワーウィップ!」

ゲッコウガ「ゲコ……!」バシイッ

グググ……

奏「押し切るわよ、ブリムオン!」

凛「くっ……ゲッコウガ、後ろに飛び退いて!」

ゲッコウガ「ゲコ!」バッ

ゲッコウガ「ゲコ」シュタッ

奏「そこよ! じゃれつく!」

凛「つばめがえし!」

ドガッ ドガッ ドガッ

193: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 20:20:43.01 ID:SchLONZR0

藍子(す、すごい……パワーとパワーの押収だ)

ゲッコウガ「ゲコ!」ズバッ

ブリムオン「ブリムッ……」

凛「そこだ! つじぎり!」

ゲッコウガ「ゲコ!」ズバッ

ブリムオン「ブリムッ……」

奏「……!」

凛「みずしゅりけん!!」

ゲッコウガ「ゲコ!!」シュババババ

ブリムオン「ブリムッ……!」

ドサッ

194: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 20:23:08.31 ID:SchLONZR0

奏「……負けたわ」

凛「これで満足した?」

奏「……ええ、今日のところはね」

奏「意気揚々と自分から挑んでおいてこの結果、本当に滑稽ね……次こそこうはいかないから」

奏「……早くタクシーの発着所に行ってきなさい。誰かに先を越されるわよ」

スタスタスタ……

藍子「……行っちゃいましたね」

凛(……行ったことのない町にも行ける、か。たしかに便利そうだけど……)

凛「藍子、どうする? せっかくだし、そらとぶタクシー、乗ってみる?」

藍子「うーん……」

195: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 20:26:31.57 ID:SchLONZR0

乗らない→9番道路を経由してナックルシティに戻り、ワイルドエリアを通過します。その分手持ちのポケモンを大いに鍛えられるでしょう。
また、道中にはシャッターで閉ざされた怪しげな町があるようですが……?

乗る→そらとぶタクシーに乗り込み、バウタウンへひとっ飛びします。
レベルアップは見込めませんが、どうやらタクシーの運転手は物知りのようで、ガラル地方の伝説にも詳しいそうです。



197: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 22:50:28.69 ID:SchLONZR0

藍子「いえ、この先はバトルも厳しくなると思いますし、やっぱりワイルドエリアで手持ちを鍛えていきたいです」

藍子「それに、凛さんの調査も一緒にできますし!」

凛「わかった。藍子がそう言うなら、私もいいよ」

凛「じゃあまずはナックルシティに戻らないとだね」

藍子「はい! ではさっそく――」

藍子「――へくちっ!」

凛「……」

凛「まずは服、買おうか……」

藍子「は、はい……ふふっ」

アハハハ……

198: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 22:51:16.61 ID:SchLONZR0

9番道路

ザパアッ

凛「ありがとう、ゲッコウガ」

藍子「サニーゴ、寒い中お疲れさま!」

凛「……海は抜けたみたいだね。あの先は雪が積もっていないし、少しは寒さも和らぐかな」

藍子「そうですね。えっと、もう少し歩いたらルートナイントンネルがあって……7番道路を抜けた先がナックルシティですね!」

凛「よし、日が暮れるまでにはナックルシティに着けそうだね」

凛「……ん? あれは……」

凛(目の前に物々しいシャッターがある。あの先は……なにかの施設だろうか)

199: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 22:52:12.92 ID:SchLONZR0

藍子「凛さん、どうかしました?」

凛「あ、いや。あのシャッター、なんだろうと思って」

藍子「……あっ、私、聞いたことがあります」

藍子「たしかこの辺りにはスパイクタウンっていう町があるみたいです。……ただ、もう人は住んでいなくて、近づく人もあまりいないそうですけど」

藍子「町の中には恐ろしい怪物がうろついているとか……」

凛「怪物って……ポケモンのこと?」

藍子「うーん、そこまでは……」

凛「……つまりゴーストタウンってことか」

凛(たしかにこのシャッター……どんな立ち入り禁止の看板よりも効果がありそうな、異様な雰囲気がある。見た人を遠ざけるというか、あの先に何があるのかって好奇心すら削ぐような――)

藍子「? あれ、あそこにいるのは……」

200: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 22:53:08.64 ID:SchLONZR0

藍子「あっ、つかささん!」

つかさ「!!」

凛「つかさ。久しぶりだね」

つかさ「……おう、久しぶりだな。こんなトコで何してるんだ?」

凛「今ナックルシティに向かっている途中なんだけど、このシャッターを見つけて立ち止まっていたところだよ」

つかさ「へえ。って、わざわざあの海を渡ってきたのか。そりゃお疲れさんだな」

藍子「あ、あはは……つかささんは?」

つかさ「アタシはこの町に用があるのさ」

藍子「!」

凛「……ここってスパイクタウン、だよね。誰も住んでいないんじゃないの?」

201: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 22:53:51.44 ID:SchLONZR0

つかさ「そうさ。ここには誰もいない。だが、アタシが求めている情報はあるかもしれない」

凛「情報……?」

つかさ「もしかしてアタシのこと、怪しんでる?」

凛「……正直ね」

つかさ「……まぁそうか。確かにそうかもな。ま、見られてちゃしょうがないか」

つかさ「わかった、洗いざらい話すよ。でもこの話は絶対に口外するなよ。ホントはアタシ一人で秘密裏にやる予定だったんだからな」

藍子「……」ゴクリ

つかさ「最近各地で頻繁に発生している事件――アタシ達は便宜的にポケモン凶化事件と呼称しているんだが、それはもう知っているよな?」

凛「うん。ポケモン凶化事件――そんな呼び方だったんだ」

つかさ「どの現場でもポケモン達は理性を失って暴れていたからな。そう名付けさせてもらった」

202: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 22:54:51.23 ID:SchLONZR0

つかさ「で、この件の裏にはでかい陰謀が絡んでいるとアタシは推測している。ガラルを根本からひっくり返そうとしている、凶悪な思想を持った奴らがな」

凛「……うん、間違っていないと思う。私たちも、ポケモンを操っているトレーナーと出会ったことがあるから」

つかさ「……へえ。じゃあアタシの推測は、ほぼ確信の域に達しているんだな」

つかさ「で、やっぱマクロコスモスとしてはこの事態は放って置けないわけ。下手すりゃ自分らのビジネスの基盤すら奪われかねない状況だからな」

つかさ「だからいついかなる時も、あらゆる状況に対応するために、アタシはある対抗手段を手に入れようと考えた」

藍子「対抗手段……?」

つかさ「前にダイマックスの話をしただろ、覚えてるか? あの時、ダイマックスバンドにはガラル粒子の凝縮体であるねがいぼしの力が蓄えられてるって説明したよな」

藍子「は、はい」

つかさ「実はそのねがいぼしっつーのは――あるポケモンの身体の一部だったんだ」

203: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 22:55:37.18 ID:SchLONZR0

凛「ねがいぼしが、ポケモンの一部……?」

つかさ「ああ。この地でダイマックスができるのは地方特有の何とかのおかげじゃない。全ては、かつてこの地方に降り立った一匹のポケモンが発端だったんだ」

つかさ「ポケモンの名は、ムゲンダイナ」

藍子「ムゲン……ダイナ」

凛「そのポケモンが、ダイマックスの力の源ってこと?」

つかさ「そうだ。ムゲンダイナはガラルの大地から湧き出てきたエネルギーを糧に活動していたみたいなんだが、それと同時に吸収したエネルギーをガラル粒子に変換し、この地に送り込んでいたらしい」

つかさ「つまりムゲンダイナこそが、この地に宿るエネルギーを明確化させた直接的なファクターであるというわけだ」

凛「……そんなポケモンがいたんだ」

204: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 22:57:01.29 ID:SchLONZR0

つかさ「だけど今やムゲンダイナは伝承にのみ語り継がれる存在だ。実際にその目で見たことのあるヤツはもう生きていないだろうし、ムゲンダイナ自身すら現世に生きているのかわからない。もちろん図鑑にも登録されていない」

つかさ「わからないからこそ、アタシは今、それを確かめようと動いてる。ヤツを見つけた暁には、共にこの地方を守るためにアライアンスする。力を貸してもらうってことだな」

つかさ「で、このスパイクタウンにヤツの手がかりがあるんじゃないか、そう思って立っているわけ。以上」

凛「……なるほど。事情は分かったよ」

藍子「そんな強大なポケモン……私たちの手に負えるんでしょうか」

つかさ「はは、その言葉はもう聞き飽きたわ。アタシは何度でもこう返す。そんなのやってみなきゃわからねえってな」

つかさ「どっちにしろ、このまま指を咥えて誰かが解決するのを待っていたら、アタシたちに待ち受けるのは破滅だ」

凛「……」

つかさ「……というわけで。よかったらアンタたち、アタシの手伝いしてくんない?」

205: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 22:58:02.38 ID:SchLONZR0

藍子「……え!?」

凛「手伝い……それって、スパイクタウンに入れってこと……?」

つかさ「ああ。今から行う調査の手伝い。アウトソーシングだ」

藍子「その、中は危険なんじゃ――」

つかさ「なんだよビビッてんのか? 何かあっても自分の身は自分で守れるだろ。なんたってアタシが直々にダイマックスバンドを授けたトレーナーなんだからな」

つかさ「アタシはアンタたちを信じてマクロコスモスの重要機密を話した。もう後戻りはできない。もはやアタシたちはガラルを守る共犯関係だ」

藍子「共犯関係だなんて、そんな……」

藍子「……どうしますか、凛さん?」

凛(……)

206: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 22:58:49.87 ID:SchLONZR0

凛(さっきの話……ダイマックスの源であるポケモンがいるって話はまだ信じがたいけど)

凛(つかさは元々一人でこの町に入る予定だった。そんな危険を冒してまでそうしたのは、ガラルのみんなを守るため……)

凛(そのためにつかさは私たちを信じてくれた。なら、きっと私たちも協力すべきなのだろう)

凛(……やってみなきゃわからない、か)

凛「わかった。私も同行するよ。藍子はどうする?」

藍子「り、凛さんが行くなら、私もついていきます!」

つかさ「……ありがとな、お二人さん。いつかこの礼は必ずさせてもらう」

つかさ「じゃ、さっそく乗り込んでみようか」

207: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 23:00:08.27 ID:SchLONZR0

スパイクタウン
かつて栄えたアーケード街は今や誰も住んでおらず、廃墟と化している

凛(……へえ。町全体がアーケード街になっているんだ)

凛(だけどどこを見渡しても人が住んでいる気配がない。窓ガラスも所々割られていて不穏だ……)

凛(アーケードの奥にはこぢんまりとしたバトルフィールドがある。昔はあの場所でたくさんのバトルが繰り広げられていたんだろうか)

つかさ「……スパイクタウンはこの通り、大きなスタジアムもなければ娯楽施設もない。そもそもここはパワースポットじゃないからな」

つかさ「それに9番道路が近いから町はかなり寒い。対策として町をアーケード化したんだが、するとガラル交通が町中には着陸できなくなり、交通の便が悪くなった。結果、町を訪れる足も遠のいていって、町はみるみる寂びていった」

つかさ「マクロコスモスも何とかこの町の活気を取り戻せないかと奮闘したんだが、アタシが目を付けた頃にはもう遅すぎた。結局何もできず後回し後回しにされて、今じゃこうして町だけ置いてけぼりにされている――ってわけだ」

208: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 23:00:47.26 ID:SchLONZR0

藍子「……そうだったんですね。だからゴーストタウンに……」

凛「町に怪物がいるっていう噂も、そういう治安の悪さが尾ひれをつけたんだろうね」

つかさ「かもな。まあ実際は怪物どころかポケモンの一匹も見かけてないわけだけど」

凛「本当だ……どうしてポケモンすらもいないんだろう」

つかさ「……」

凛「……つかさ?」

つかさ「……変だ」

藍子「えっ?」

つかさ「実はここに来る前に、部下の一人に予め町を調査させていたんだ。報告書には……『人影は見当たらなかった』って書かれていたはず」

つかさ「けど……感じないか? 誰かの視線を……」

藍子「視線……ですか?」

凛「別に感じないけど――」

209: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 23:01:19.21 ID:SchLONZR0

凛「……!!」ビクッ

凛(な、なに、この背筋が凍るような感覚……!?)

藍子「凛さん!?」

つかさ「……やっぱり。この町、誰かが居座っている……ゴーストタウンなんかじゃねえ」

凛(……誰かが私を見ている。それも3人全員じゃなく、私だけ……)

凛(でもどうして私だけ……?)

凛(……いや、この感覚……覚えがある。このまとわりつくような、そんな感じの不気味な気配っていうか……)

凛(殺気。……そうだ。この視線の主は、私に殺気を向けている……)

凛(こんな殺気の持ち主は、一人しかいない……!)

210: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/17(土) 23:02:44.58 ID:SchLONZR0

つかさ「アイツ……なんで報告書を偽装しようとしたんだ? 何を隠そうとしていたんだ?」

つかさ「っておい、凛! どうしたんだ、顔が真っ青だぞ!?」

藍子「凛さん、しっかりしてくださいっ!」

凛「あ……うん、大丈夫……」

つかさ「ったく……本当に大丈夫ならそんな顔しねえよ。言動が矛盾してるっつーの」

つかさ「とにかくヤバい気配がする。一度町を出よう」

凛「う、うん……」

凛「!?」ハッ

凛(藍子の後ろに落ちている、あれは……)

藍子「? 凛さん、どうかしました? 私の後ろに、なにか……」

ヒョイ

藍子「これは……赤い、リボン?」

215: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/22(木) 23:05:20.67 ID:yfIz8WXJ0

スパイクタウン>>エンジンシティ>>ワイルドエリア>>バウタウン←イマココ


バウタウン

市場やレストランに多くの人が集まる港町

凛「着いたね……バウタウン」

藍子「うーん、潮風が心地いいです!」

凛「そうだね。海を見たのも久しぶりな気がするよ」

ブォォォォォン

藍子「な、なんの音でしょうか……あっちの方から聞こえてきます」

藍子「! あれは……」

そら「イヤッハー!!」ブォォォォォン

216: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/22(木) 23:06:49.64 ID:yfIz8WXJ0

ナックルシティが抜けてましたね、エンジンシティとワイルドエリアも逆でしたね


凛「ひ、人が浮いてる……?」

??「あれはフライボードだね! 足につけたジェットエンジンから水を噴射して、その勢いで浮きあがってるのさ。楽しそうだろ?」

凛「へえ、そうなんだ……ところで、誰?」

海「おっと、失礼。この町でマリンスポーツクラブを運営している海だ。よろしくね」

藍子「藍子です! よろしくお願いします!」

凛「凛です。ところでマリンスポーツっていうのは……」

海「その名の通り、海で行うスポーツのことさ。有名なところだと、あの辺かな」

藍子「わあ……ヨットに乗っていたりサーフィンをしていたり、みんな楽しそうですね!」

217: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/22(木) 23:07:51.70 ID:yfIz8WXJ0

海「いつもならあの辺は漁船とかが停泊してるんだけどね、ジムチャレンジ期間だけはマリンスポーツ用に場所を開放してもらっているんだ」

海「地元の人だけじゃなく、みんなで色んなマリンスポーツをやってもらって、町を活性化していきたいからね」

海「せっかくこの町に来たなら、是非なにか体験していかないかい? きっと楽しいよ!」

藍子「あ、その、興味はあるんですけど……私、いち早くジムに挑戦したいんです。今はごめんなさい」

海「ジムか……」

ニヤリ

海「ふふ、そっか。じゃあジムバトル、頑張ってきてね! 藍子ちゃん!」

藍子「はいっ!」

凛(? ……今一瞬、海の顔がニヤけたような……)

218: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/22(木) 23:08:53.49 ID:yfIz8WXJ0


バウジム

凛「藍子のパーティ、かなり強くなったね。うん、自身を持っていいレベルなんじゃないかな」

藍子「いえ、これも凛さんのおかげです。わざわざ遠回りを選んでくれた私に付き合っていただいて、ありがとうございます!」


※ワイルドエリアを通過したため、藍子の手持ちが大きくレベルアップしました!

ゴリランダー Lv42→53
マホイップLv41→52
サニーゴ Lv40→52
ドラメシヤ Lv34→45
ヤドン Lv36→49

219: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/22(木) 23:09:54.73 ID:yfIz8WXJ0

藍子「じゃあ、行ってきます!」

凛「頑張ってね、藍子」

藍子(……そうだ、そういえば誰かが言っていたな……バウタウンは、かつて最強のジムだった、って)

藍子(いったいどんな強さなんだろう)

ガラッ

ジムトレーナー「ようこそ、チャレンジャー!」

藍子「よろしくお願いしますっ。……ってあれ?」

藍子「この部屋、何もない……?」

ジムトレーナー「ああ。このジムでの課題は、ここでは行わないよ」

ジムトレーナー「早速だがチャレンジャー、これを着て外へ出ようか!」

藍子「え、ええっ!?」

220: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/22(木) 23:10:42.99 ID:yfIz8WXJ0

スタジアム内

ザワザワザワ

凛「……」

パッ

『レディース・アーンド・ジェントルメーン!』

ワァァァァァ

凛(……ん? スタジアムのオーロラビジョンから声が……)

凛(……これは屋外の映像……?)

ジムトレーナー『スタジアムにお集まりの皆様、お待たせしました! これよりチャレンジャー・藍子には、こちらのマリンスポーツに挑戦してもらいまーす!』ドドンッ

ワァァァァァァァァ

凛「ウェイクボード……?」

凛(藍子が小さなボードの上に乗って、ロープを握っている。ロープの先はモーターボードに繋がっているみたいだ)

221: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/22(木) 23:11:50.36 ID:yfIz8WXJ0

ジムトレーナー『ではルールを説明しよう! ズバリ、チャレンジャーは今からモーターボードが引き起こす波に乗りながら、導線上に現れる5匹のポケモンを捕獲していってもらいます!』

ジムトレーナー『もちろんウェイクボードだから、余裕があるなら華麗なアクションを決めてくれても全然OKだよー!』

ウォォォォォォォ

『あの女の子がウェイクボードなんてギャップがすごいぜー!』

『がんばれー!』

凛(……まさか海がニヤッとしていたのは、こういうこと?)

ジムトレーナー『ではチャレンジャー、準備はいいかな!?』

藍子「い……いや準備って! これってポケモンバトルに関係ないですよね!? それに私、ウェイクボードなんて――」

ブロロロロロ

ジムトレーナー『それではよーい、スタートォ!!』

藍子「ちょ、ちょっと待って下さあああぁぁぁぁぁ!!」

ブォォォォォォォン

222: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/22(木) 23:13:08.66 ID:yfIz8WXJ0

藍子「は、速いです……速いですってば! ちょっと待って凛さあああぁぁぁぁぁん」

ワハハハハハハハハハ

『なんだあの娘めちゃくちゃ面白いじゃねーか!』

『おーい嬢ちゃーん! ビビってないでちゃんとポケモンも捕まえるんだぞー!』

凛「……」ポカーン

ジムトレーナー『ほらチャレンジャー! 早速最初のポケモンがお出ましだぜ!』

バチャッ

タマンタ「タマンター」

藍子「こ、これって片手で投げないといけないんですか……?」

ジムトレーナー「もちろんさ。でないとチャレンジャーが海にドボン、だぜ」

藍子「う、うう……!」

藍子「怖いけど、やるしかない……藍子、いきます!」バッ

223: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/22(木) 23:14:05.83 ID:yfIz8WXJ0

藍子「いけー、ダイブボール!」ブゥン

タマンタ「……」スカッ

藍子「あ、あれ……」

グラッ

藍子「!?」

藍子(しまった、前に傾きすぎた――)

ボチャーン

『あちゃー、派手にいったなー!』

ワハハハハハハ

凛「……」

凛「……ぷっ」

…………………………………

224: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/22(木) 23:16:08.16 ID:yfIz8WXJ0

ジムトレーナー「捕まえたポケモンは……3匹か! 初めてにしてはいい成績じゃないか」

藍子「あ、ありがとうございます……普通にバトルするよりも疲れました……」

ジムトレーナー「さて、じゃあ次の競技は――」

藍子「ま、まだあるんですか!?」

ジムトレーナー「なんて冗談だよ冗談。もう充分にお客さんも楽しませてくれたみたいだし、スタジアムに進んでいいよ」

ジムトレーナー「実はさっきの課題にはノルマなんてなかったんだ。純粋にマリンスポーツを楽しんでほしい、ってジムリーダーの要望だからね」

藍子「そ、そうだったんですか……」

ジムトレーナー「あ、そうそう。うちのジムリーダーはZワザっていう珍しい技を使うトレーナーなんだ。くれぐれも気をつけろよな」

藍子「えっ……Z、ワザ……?」

ジムトレーナー「おっと、この先は戦ってみてのお楽しみ、ってことで。じゃ、ウェイクボード、またやってくれよな!」

藍子「は、はい……気が向いたら」

ザッザッ


225: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/22(木) 23:17:30.37 ID:yfIz8WXJ0

??「こんにちは、チャレンジャーさん!」ザッ

美波「バウタウンジムリーダーの美波です。対戦、よろしくお願いします!」

藍子「よ、よろしくお願いします!」

美波「ウェイクボード、どうでしたか? ちょっと難しかったかな?」

藍子「はい、すごく大変でした……あんなに激しい波を乗りこなす人ってすごいなあって思います!」

美波「ふふ、そうですね。……水は色んな表情を持っているんです。時には清らかで優しく私たちを癒してくれますが、激流となって襲いかかってくることもあります」

美波「私はそんなみずタイプのエキスパートです。時に優しく、時に激しい波のように……あなたを呑み込んであげますね!」キッ

藍子(! 目つきが変わった……!)

美波「使用ポケモンは4匹、全員が戦闘不能になれば終了です。ダイマックスも使用可能です。では……美波、行きます!」

ジムリーダーの美波が勝負をしかけてきた!

226: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/22(木) 23:19:27.08 ID:yfIz8WXJ0

藍子 手持ちポケモン

ゴリランダー (しんりょく) Lv53
むじゃきな性格 血の気が多い
ドラムアタック/アクロバット/ウッドハンマー/いやなおと

マホイップ (スイートベール) Lv52
おだやかな性格 のんびりするのが好き
マジカルシャイン/マジカルフレイム/デコレーション/あまいかおり

サニーゴ (はりきり) Lv52
わんぱくな性格 うたれづよい
アクアブレイク/パワージェム/じたばた/いのちのしずく

ドラメシヤ (すりぬけ) Lv45
さみしがりな性格 すこしおちょうしもの
おどろかす/でんこうせっか/かみつく/みがわり

ヤドン (マイペース) Lv49
おっとりした性格 抜け目がない
サイコキネシス/なみのり/しねんのずつき/かなしばり

232: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:22:27.98 ID:wB/wputz0

藍子「ゴリランダー、お願い!」ポンッ

ゴリランダー「ゴリ!」

美波「いくよ、シャワーズ!」ポンッ

シャワーズ「シャワ!」

シャワーズ あわはきポケモン みずタイプ
突然変異によりヒレとエラが生え、水中で生活できるようになった
細胞が水の分子に似ているため、水に溶けると見えなくなる

藍子(相手はみずタイプ……ゴリランダーなら序盤は有利に戦えるはず)

藍子(でも相手はジムリーダーだし、きっと対策もしてきている。気を付けていこう)

藍子「ゴリランダー、ドラムアタック!」

ゴリランダー「ゴリ!」ゴゴゴゴゴ

シャワーズ「シャワ……!」ズバァン

233: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:23:56.52 ID:wB/wputz0

美波「いい攻撃ですね! シャワーズ、あまごい!」

シャワーズ「シャワ」パァァ

ザァァァァァァ

藍子「もう一度ドラムアタック!」

ゴリランダー「ゴリ!」

シャワーズ「シャワ……!!」ズバァン

藍子「よし、これで――」

シャワーズ「シャワ……!」グググ

藍子「――倒しきれなかった……!」

美波「シャワーズは体力が自慢ですから! クイックターン!」

シャワーズ「シャワ!」バシュゥ

ゴリランダー「ゴリ!」バシィ

234: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:24:45.25 ID:wB/wputz0

美波「クイックターンは威力こそそれなりだけど……」

シュゥゥ

美波「攻撃しながら控えのポケモンと入れ替われる! 次いくよ、ランターン!」ポンッ

ランターン「ランター」

ランターン ライトポケモン みず・でんきタイプ
深海を泳ぐランターンの明かりは水面まで届く
光で獲物の目を眩ませ、ひるんだ隙に丸呑みにする

美波「ランターン、でんじは!」

ランターン「ランター!」バリリ

ゴリランダー「ゴリ!?」ビリリ

藍子「ゴリランダー!」

ゴリランダー「ゴリ……!」

235: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:25:34.63 ID:wB/wputz0

凛(マヒか……これは後半に響いてきそうだね)

凛(ここで状態異常にしたということは、この後の相手の出方としては……やっぱりくさタイプへの対策としてこおり技を覚えているはず)

凛(それを着実に当てるためのでんじは、かな――)

美波「ランターン、ハイドロポンプ!」

ランターン「ランター!」ドバァァァァ

ゴリランダー「ゴリ……!」

藍子「……? みす技……?」

美波「ふふっ、侮っていたら痛い目を見ますよ。そのうち……ね」ニッ

凛(そのうち……)

凛(! 今の天気は雨……まさか)

236: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:26:29.45 ID:wB/wputz0

藍子(……なんだか嫌な予感がする。とにかく早く倒さないと)

藍子「ゴリランダー、いやなおと!」

ゴリランダー「ゴリ!」ォォォン

ランターン「ランタ……!」

藍子「よし……ドラムアタック!」

ゴリランダー「ゴリ! ……ッ!!」ビリリ

美波「今よ! ランターン!」

ランターン「ランター!」ゴロロロロ

凛(! あれは……!)

美波「かみなり!!」

ランターン「ランター!!」バリリリリリ

ゴリランダー「ゴリ……!」

ドゴォォォォン

237: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:28:53.34 ID:wB/wputz0

ゴリランダー「ゴリ……」グラッ

藍子「!! そんな、効果はいまひとつのはずなのに!」

美波「相性だけの結果じゃないですよ。水は電気をよく通す……そうでしょ?」

藍子「! さっきのハイドロポンプはそのための……!」

美波「たしかにみずタイプはくさタイプやでんきタイプには弱い。でもそんな相性の差をひっくり返すくらいの技量がなきゃ、伊達にジムリーダーはやれていませんよ!」

藍子「……さすがジムリーダーです。やっぱり、そう簡単にはいかないですよね……!」

藍子(雨の中ではかみなりは避けられない……一撃で勝負をつけないと)

藍子(まだ未完成だけど……あれを試すしかない!)

238: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:29:54.10 ID:wB/wputz0


………………………………………………

朝練中

凛「ねえ、藍子」

藍子「? どうかしましたか?」

凛「前に私さ、ゴリランダーはバチンキーの時みたいに素早く攻撃を躱すのは厳しいって言ったよね」

凛「でも、一つ思いついたんだ。ゴリランダーに機動力を持たせられるかもしれない戦法」

藍子「! 本当ですかっ?」

凛「うん。といってもまだイメージの段階なんだけどね。ゴリランダーが必ずしもその通りに動けるかどうかはわからない」

凛「ただ、このイメージを形にできたら、すごく心強いと思うんだ。よかったら、試してみない?」

藍子「ぜひ! お願いします!」


………………………………………………

239: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:30:56.66 ID:wB/wputz0

藍子「ゴリランダー、ドラムアタック!」

ゴリランダー「ゴリ!」ドンドコドンッ

凛(! 藍子、あれを試すんだ……!)

美波「ランターン、来るよ!」

ランターン「ランター」ググッ

美波(ドラムアタックは地面から攻撃する技……どこからでもダメージを抑えられるようにしなきゃ)

ボコッ

美波「!? 自分の足元っ!?」

藍子「ゴリランダー、ドラムと一緒に跳び上がって!」

ゴリランダー「ゴリ!」ギュンッ

美波「なっ!?」

藍子「これで一気に決めます!」

240: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:31:49.43 ID:wB/wputz0

藍子「ウッドハンマーとドラムアタックの……連続攻撃です!!」

ゴリランダー「ゴリ!!」バシィ

ランターン「ランタッ……」

グワッ

ランターン「!!」

ドゴォォォォン

美波「!!」

ランターン「ランター」バタンキュー

ドローンロトム『ランターン戦闘不能! ランターン戦闘不能!』

ワァァァァァァァ

241: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:32:56.25 ID:wB/wputz0

凛(よし……完璧だ)

藍子「よし……うまくいきました!」

美波(ウッドハンマーで体勢を崩してすかさずツタで追撃……ゴリランダーがこんな素早い連続攻撃をしてくるなんて)

美波「お疲れ様、ランターン。……やっぱり、あのゴリランダーは真っ先に倒しておきたいな」

美波「お願い、アシレーヌ!」ポンッ

アシレーヌ「アシレー!」

アシレーヌ ソリストポケモン みず・フェアリータイプ
群れの仲間に学び、代々受け継がれてきた歌で戦う
毎日の喉のメンテナンスは、トレーナーの大切な役目だ

『出たァー! 美波のエースポケモンだァー!』

『ということはアレが来ちゃうのかー!?』

藍子(アレ……? それにもうエースが出てくるって……)

美波「よし……いくよ、アシレーヌ!」

バッ

242: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:33:47.15 ID:wB/wputz0

凛(あれは……)

凛(美波が腕につけているリング……よく見たらダイマックスバンドじゃない……? なら一体……)

キランッ

美波「母なる海に抱かれて……響け、波の彼方まで!」

アシレーヌ「アシ!」コォォォォォォォォ

藍子「! 何か来る……気をつけて、ゴリランダー!」

美波「私たちのゼンリョク、お見舞いします! わだつみのシンフォニア!!」

アシレーヌ「アシレー!!」

シュゥゥゥゥゥゥゥ

243: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:34:20.65 ID:wB/wputz0

藍子「!? み、水が……降ってくる……!?」

藍子「ゴリランダー、ドラムアタック!」

ゴリランダー「ゴ、ゴリ!」ドンドコドンッ

パシィ

藍子「そんなっ!」

アシレーヌ「アシレェェェ!!」

ズドォォォォォォォン

藍子「わあっ!!」

凛(! 客席まで水しぶきが……)

凛(今のは、一体……)

244: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:34:55.09 ID:wB/wputz0

ゴリランダー「ゴリ……」バタンキュー

ドローンロトム『ゴリランダー戦闘不能! ゴリランダー戦闘不能!』

アシレーヌ「アシレー」ペコリ

藍子「そんな……ゴリランダー!」

藍子「みずタイプの技なのに、なんて威力……!」

美波「っ……」ガクッ

藍子「! 美波さん、大丈夫ですか!?」

美波「……大丈夫、ちょっとふらついただけです」

美波「前触れもなく出しちゃってごめんなさい。藍子ちゃんは初めて見たかもしれないけど、これが私たちの武器、Zワザなんです」

藍子「Zワザ……」

245: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:35:44.52 ID:wB/wputz0

美波「はい、今回はダイマックスの代わりに使わせてもらいました。おかげで厄介なくさタイプを突破することができましたよ」

藍子(! そうだ、美波さんはまだ3匹も残されているのに、もうゴリランダーが倒されてしまった……)

藍子(もうみずタイプに有利なポケモンはいない……気を引き締めないと)

藍子「まだまだこれからです……ヤドン!」ポンッ

ヤドン「……やどーん」

美波「アシレーヌ、戻って。いくよ、ジュゴン!」ポンッ

ジュゴン「ジュゴーン!」

ジュゴン あしかポケモン みず・こおりタイプ
全身が雪のように真っ白で寒さに強く、むしろ寒いほど元気になる
8ノットのスピードで冷たい海を泳ぐ

246: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:36:21.86 ID:wB/wputz0

美波「ジュゴン、れいとうビーム!」

ジュゴン「ジュゴーン!」コァァァァァ

藍子「サイコキネシス!」

ヤドン「……」

藍子「……ヤ、ヤドン……?」

ヤドン「……! やど――」

ピキーン

ヤドン「」

『おいおい遅すぎだろー!』ワハハハハハ

『そんなノロマなポケモンでどう戦うんだよー!』ワハハハハハ

藍子「っ……」

247: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:37:12.00 ID:wB/wputz0

美波「アクアテールで吹っ飛ばして!」

ジュゴン「ジュゴーン!」

バシィィッ

ヤドン「……!」ズガァン

藍子「ヤドン!」

藍子(やっぱり正攻法じゃダメだ……相手のペースについていけない)

藍子(でも、どうすれば……)

凛(……やっぱり問題はあのヤドンだね)

凛(サニーゴのように耐えて反撃するような頑丈なポケモンでもないし、そもそも先回りして指示を出さないと防御もまともにできない)

凛(なんとか攻撃を当てられたらいいんだけど……守ることも躱すこともできないなら、ただ相手のサンドバッグになってるだけだ)

凛(藍子……)

248: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:38:38.84 ID:wB/wputz0

美波「私は待つ気はありませんよ! もう一度れいとうビーム!」

藍子「サイコキネシスで迎え撃って!」

ヤドン「やどーん」パァァ

ズバンッ

美波「……攻撃を防ぐので精一杯みたいですね」

美波「もしかして、ゴリランダーだけを頼りに私を倒すつもりだった……わけではありませんよね?」

藍子「! そんなことは……」

藍子「……いえ、たしかに私はゴリランダーを頼りすぎていたのかもしれません。かな子ちゃんも泉ちゃんも、ゴリランダーがいなかったら倒せなかったです」

藍子「……だからこそ、ゴリランダーがいなくても勝ってみせます!」キッ

美波「そう、その調子だよ、藍子ちゃん!」

藍子「!」

美波「もっとヤドンの能力を引き出してみせて! いくよ、ジュゴン!」

ジュゴン「ジュゴーン!」バッ

249: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:39:25.73 ID:wB/wputz0

藍子「ヤドンの能力を……引き出す……」

藍子「!」ハッ

美波「アクアテール!」

藍子「ヤドン、かなしばり!」

ヤドン「やどーん」キッ

ジュゴン「ジュゴ!?」ピタッ

藍子「よし、動きを止められた……チャンスは今しかない!」

藍子「ヤドン、自分にサイコキネシス!」

ヤドン「……」

美波「自分に……? させない! れいとうビーム!」

藍子「お願い、届いて……!」

ヤドン「……!」

フワッ

250: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:40:20.76 ID:wB/wputz0

ヤドン「やどーん」ギュンッ

美波「!」

『なにっ、ヤドンが飛んだぁ!?』

『いや、飛んでるんじゃない! 浮き上がってるんだ!』

凛(……!)

凛(そうか、ヤドン自身は鈍足だけど、ヤドンが操るサイコパワーなら……!)

ヤドン「やどーん」ギュンギュンギュン

美波「ヤドンがすごい速さで空中を駆け回ってる……」

美波「あれは……本当にヤドンなの……?」

藍子(できた……けどまだ制御が効いてないんだ!)

藍子「ヤドン、狙いはジュゴンだよ!」

ヤドン「やどーん」ギュン

藍子(速い……でもこのスピードでなら!)

251: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:41:01.36 ID:wB/wputz0

藍子「ヤドン、そのまま突っ込むよ! しねんのずつき!!」

ヤドン「やどーん」パァァ

美波「っ、ジュゴン、れいとうビーム!」

ジュゴン「ジュゴ!」コァァァァァ

ヤドン「やどーん」ヒョイッ

美波「そ、そのスピードで躱すの!?」

ドカァァン

ジュゴン「ジュゴ……」グラッ

藍子「よし……」

藍子(ヤドンは鈍感すぎて痛みを感じるまでに時間がかかる。なら痛みを感じる前に、次の攻撃を繰り出せば……!)

藍子「もう一度しねんのずつき!!」

ヤドン「やどーん」ギュンッ

ズガァァァン

252: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:41:48.81 ID:wB/wputz0

『決まった……のか?』

『……いや、でもあの勢いならヤドン自身も……』

ジュゴン「ジュゴーン」バタンキュー

ヤドン「やどーん」バタンキュー

ドローンロトム『ジュゴン、ヤドン、共に戦闘不能! 戦闘不能!』

藍子「相討ち……でもよく頑張ったね、ヤドン」シュゥゥ

美波「……そっか、今の、どこかで見たことあると思ったら」

美波「泉ちゃんのバリコオルが使う戦法……あれを真似たんだ」

美波(初めてあの場で閃いたような仕草だったのに、見る間に成功させるなんて……)

美波(……いや、偶然じゃない。きっとゴリランダーの連続攻撃、あれの応用として閃いたんだ)

美波(こんなにセンスのあるトレーナー、久しぶりに戦ったかも……!)

253: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:42:43.51 ID:wB/wputz0

フッ

美波「雨が上がった……ならもう一度、シャワーズ!」ポンッ

シャワーズ「シャワ……」

藍子「マホイップ!」ポンッ

マホイップ「マホ~!」

美波「あまごい!」

シャワーズ「シャワ!」

ザァァァァァァ

藍子「またあまごい……でも今はシャワーズを確実に倒さないと」

藍子「マジカルシャイン!」

マホイップ「マホ〜」ピッカァ

シャワーズ「……!」ズバンッ

ドローンロトム『シャワーズ戦闘不能! シャワーズ戦闘不能!』

254: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:43:40.19 ID:wB/wputz0

美波「……仕方ないね。シャワーズ、ありがとう」

藍子(これで、あとはアシレーヌだけ……!)

美波「藍子ちゃん、強いね。藍子ちゃんならではの技の組み合わせ方、すごく魅力的だと思うな」

美波「私も、もう少し意地を張らせてもらうね……! アシレーヌ、いくよ!」ポンッ

アシレーヌ「アシレー!」

藍子(アシレーヌ……またZワザがくるかもしれないし、チャンスは今しかない……!)

藍子「マホイップ!」シュゥゥ

美波「! ダイマックス……そうこなくっちゃ!」

グンッ

藍子「マホイップ……お願いっ!」ブウンッ

カッ

マホイップ「マホォォォォォォォォ」ズドォォォン

255: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:44:16.80 ID:wB/wputz0

『おおっ、ダイマックスかッ!!』

『くーっ、ダイマックス対Zワザの対決も見てみたかったんだがなぁー!』

凛「……? どういうこと……?」

凛「まるでもうZワザが使えないみたいな言い方だけど……」

美波「マホイップは特殊攻撃に強いけど、雨で増した攻撃なら押し切れるはず!」

美波「アシレーヌ、うたかたのアリア!」

アシレーヌ「アシレー!」ォォォォ

藍子「マホイップ、ダイフェアリー!」

マホイップ「マホォォォォォォォォ」キラリーン

ブンッ

ズドォォォォォン

美波「さすがダイマックス技だね。でも……」

256: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:45:05.59 ID:wB/wputz0

藍子「……? これは……」

藍子「! アシレーヌの姿が見えない……!?」

美波「そう、ダイフェアリーは場をミストフィールドに変える技。そして今は雨も降っているわ」

美波「だからいつもより霧が濃い状態なの。この霧はダイマックスポケモン同士ならあまり関係のない要素だけど……」

美波「今のアシレーヌなら、簡単に姿を隠すことができる!」

藍子「!」

美波「うたかたのアリア!」

アシレーヌ「アシレー!」ォォォォ

マホイップ「マホォォ……!」

藍子「くっ……ダイフェアリー!」

マホイップ「マホォォォォ」キラリーン

美波「アシレーヌ、落ち着いて躱すよ!」

アシレーヌ「アシレー」バッ

ズドォォォン

257: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:45:46.39 ID:wB/wputz0

藍子(だめだ、このままじゃ攻撃を当てられない……!)

藍子(だけど攻撃手段もダイフェアリーしかない。でもそれも躱される……)

藍子(……せめてダイマックスしなければ……)

藍子「……いや、それは言い訳ですよね」

藍子「どこかにあるはずなんです……この状況を破るチャンスが!」

美波「まだまだ、うたかたのアリア!」

アシレーヌ「アシレー!」ォォォォ

藍子「マホイップ、耐えて……!」

藍子(……ダイフェアリーは霧を発生させる技。今はそのせいでアシレーヌの姿が見えなくなっている)

藍子(たぶんあの霧は時間が経てば消えていくんだろうけど、それを待っている余裕はない。その前にアシレーヌに倒されてしまう)

藍子(……消えていく……)

藍子(! 霧を生み出せるなら、その逆も……!?)

藍子(でもどうやって……それを考えるんだ……)

258: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:46:44.17 ID:wB/wputz0

アシレーヌ「アシレー!」ォォォォ

藍子「! マホイップ、ダイウォール!」

マホイップ「マホォォォォォ」ガキンッ

美波「っ……さすがにダイウォールは固いね……!」

藍子「……!!」ハッ

藍子(ダイウォール……そうだ、この手があった!)

藍子「マホイップ、ダイフェアリー!」

マホイップ「マホォォォォォォ」キラリーン

美波「アシレーヌ、懐に潜り込んで!」

アシレーヌ「アシレー」グンッ

『いいぞ、これでダイフェアリーをマホイップに当てさせるんだな!』

『いやあ、ジャイアントキリングはいつ見ても爽快だね!』

『マホイップがんばえー!』

259: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:47:21.26 ID:wB/wputz0

凛「藍子……!」

凛「……? 藍子のあの表情……」

藍子(お願い……間に合って!)

ブンッ

藍子「ダイウォール!!」

マホイップ「マホォォォォォォォォ」

ガキンッ

美波「!?」

ブォォォォォォォォン

アシレーヌ「アシ……!」

美波「うっ……すごい衝撃……」

美波「……!!」

美波「霧が……晴れてる!?」

260: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:47:57.58 ID:wB/wputz0

藍子「見つけましたよ、アシレーヌ!」

藍子「今度こそ決めます……ダイフェアリー!!」

マホイップ「マホォォォォォォォォ!!」

ブンッ

アシレーヌ「アシ――」

ズドォォォォォン

美波「アシレーヌ!!」

アシレーヌ「アシッ……」

ドサッ

ドローンロトム『アシレーヌ戦闘不能! アシレーヌ戦闘不能!』

ドローンロトム『勝者、チャレンジャー・藍子!!』

ウォォォォォォォ

藍子「……やった、やったね、マホイップ!」

シュゥゥ

マホイップ「マホ~♪」

261: ◆7P/ioTJZG. 2020/10/31(土) 00:49:07.52 ID:wB/wputz0

凛(……なるほど。ダイフェアリーとダイウォールをあえてぶつけることで、自分で起こした霧を吹き飛ばしたんだ)

凛(サイコキネシスとしねんのずつき、それにダイフェアリーとダイウォール……)

凛(両方ともゴリランダーの戦法を応用した藍子自身の作戦だ。この短い間に、さらに2つも編み出すなんて……)

美波「……また負けちゃったね、アシレーヌ。ごめんね」

美波「まさかダイマックス技同士の組み合わせであんなことをしちゃうなんて。完全に油断しちゃってたな」

美波「悔しいけど、完敗だね。藍子ちゃん、はい、これ!」

藍子はマーメイドバッジを手に入れた!

藍子は技マシン「クイックターン」を手に入れた!

藍子「やった……これで7つ目のバッジ……!」

268: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:38:34.48 ID:qzQj1JRV0

数時間後 再びバウスタジアム

ランターン「ランター……!」バタンキュー

ゲッコウガ「ゲコ……」ガクッ

ドローンロトム『ランターン、ゲッコウガ、共に戦闘不能!』

凛「お疲れ、ゲッコウガ」

美波「よく頑張ったね、ランターン」

凛(……ここまで3対1。かなり余裕を持って戦えている)

凛(だけど美波の最後の1匹はアシレーヌ……おそらくZワザっていうのも使ってくるだろう)

凛(あれがどのタイミングで、どのくらいの頻度で使われるかわからない以上、まだ気は抜けないな)

凛「サンダース、いくよ!」ポンッ

サンダース「ダース!」

269: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:39:15.26 ID:qzQj1JRV0

美波「最後までゼンリョクでいきますよ、アシレーヌ!」ポンッ

アシレーヌ「アシ!」

凛「やっぱり来たか、アシレーヌ……」

凛「できれば一撃で仕留めたい……サンダース、じゅうでん!」

サンダース「ダース!」バチバチバチ

美波「阻止します! うたう!」

アシレーヌ「アシレー」ラララ

サンダース「ダース!」ヒョイッ

美波「外しましたか……」

凛「よし、サンダース、戻って!」シュゥゥ

凛「いくよ……ダイマックス!!」ブンッ

サンダース「ダァァァァァァス」ドンッ

270: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:40:14.24 ID:qzQj1JRV0

美波「! さすがにこの状態でダイサンダーを受けたら、ひとたまりもないですね……!」

美波「アシレーヌ、こちらもゼンリョクで迎え撃ちますよ!」

アシレーヌ「アシレー!」

キランッ

凛(! 来る……あの構え、Zワザだ!)

美波「母なる海に抱かれて…響け、波の彼方まで!」

アシレーヌ「アシ!」コォォォォォォォォ

美波「この磨き抜いたZワザで……ダイマックスを超えてみせます! わだつみのシンフォニア!!」

アシレーヌ「アシレー!!」

シュゥゥゥゥゥゥ

271: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:41:15.54 ID:qzQj1JRV0

凛「ダイサンダー!!」

サンダース「ダァァァァァァス!!」ゴロゴロゴロ

カッ

ズドォォォォォン

『おおっ!!』

藍子「! 威力は互角……!」

凛「くっ……」

凛「有利なでんき技でも押し切れないなんて、すごいパワーだね、Zワザ……!」

美波「はい。何せトレーナーとポケモンが力を合わせて繰り出す技ですから」

美波「私は……もう負けるわけにはいかないんです! アシレーヌ!!」

アシレーヌ「アシレェェェェェ!!」

凛「!! すごい気迫だ……こっちまで呑み込みそうなくらい」

凛「でもね美波、私だって負けるわけにはいかない。後輩が見ててくれてるからね……!」

272: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:42:01.92 ID:qzQj1JRV0

凛「サンダース!!」

サンダース「ダァァァァァァス!!」

グンッ

美波「……!」

ドゴォォォォン

アシレーヌ「アシレー……」パタリ

美波「……また、負けた……」

ドローンロトム『勝者、チャレンジャー・凛!!』

ワァァァァァァァ

藍子「すごい……さすが凛さん。Zワザにも打ち勝つなんて……!」

美波「……」

美波(うん、決めた)

273: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:42:54.60 ID:qzQj1JRV0

美波「お疲れ様です。すごく強かった……完敗です。約束通り、これを差し上げますね」

凛はマーメイドバッジを手に入れた!

凛は技マシン「クイックターン」を手に入れた!

美波「それと、凛ちゃん。私、凛ちゃんを見込んでお願いしたいことがあるんです」

凛「お願い?」

美波「うん。今夜19時に、町の南にあるレストラン『防波堤』に来てくれませんか?」

美波「事情はそこで話します。……大丈夫かな?」

凛「わかった、『防波堤』だね。もう一日この町に留まる予定だったから、大丈夫だよ」

凛「そうだ、藍子も一緒に来ていいかな。私の連れなんだ」

美波「藍子ちゃん……あ、さっきのチャレンジャー? そっか、二人は知り合いだったんだ」

美波「はい、もちろん。それじゃ、また後でよろしくお願いしますね!」

274: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:43:35.59 ID:qzQj1JRV0

ガラッ

藍子「今回も絶好調でしたね、凛さん!」

凛「ありがとう。……まあ正直、相手の調子が悪かったっていうのもあるけどね」

ガヤガヤ

観客A「……美波ちゃん、また負けちまったなあ」

観客B「珠美ちゃんに連敗してからもうずっとあの調子だよ。どうしちゃったのかな」

観客C「ガラル最強ジムリーダーも落ちぶれたモンだな。そろそろ世代交代かね」

凛「……」

藍子「……やっぱり今日の美波さん、本調子じゃなかったんでしょうか。それでも十分強かったですけど」

275: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:44:18.71 ID:qzQj1JRV0

凛「かもね。なにか悩み事でもあるのかも」

藍子「悩み事、ですか?」

凛「うん。藍子、今夜の予定なんだけど」

凛「実は美波に食事に誘われたんだ。19時に『防波堤』ってレストランで待ち合わせをしてる」

藍子「え、美波さんとですか? 初対面でお食事に誘われるなんて、いつの間にそんなに仲良く……」

凛「いや、仲良くなったとかじゃないんだけど、バトルが終わったらいきなり向こうから誘われたんだ。なにかお願いしたいことがあるって言っていた」

凛「だから今から19時までは自由時間ってことにしよう。レストラン前でまた再集合ってことで」

藍子「わかりました!」

276: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:45:01.78 ID:qzQj1JRV0

19時 レストラン『防波堤』

ガラッ

店員「いらっしゃいませ。シーフードレストラン、『防波堤』へようこそ――」

美波「あ、凛ちゃん! こっちこっち!」

店員「……美波様のお連れの方ですね。あちらへどうぞ」

藍子「は、はい」

凛「……へえ。お洒落なレストランだね」

凛(美波は一番奥の席で待っていたようだ)

凛(そしてその隣には……黒髪を後ろで束ねた少女が座っている)

277: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:46:02.09 ID:qzQj1JRV0

美波「ここは私の行きつけのお店なんだけど、近くの海で採れた魚介を使っているからすごくおいしいの」

美波「せっかくバウタウンに来たんだから、海鮮料理は味わわないとねっ。今日は私のおごりだから、たくさん食べていってね!」

藍子「本当ですか、ありがとうございます!」

凛「ありがとう。それじゃ私は……シーフードチャーハンにしようかな」

藍子「じゃあ私は……お造りで!」

店員「かしこまりました。コック、オーダー入ります」

フェイフェイ「はーい! 美波サンのお客サン、いっぱいおもてなしするネー!」

美波「凛ちゃん、急なお誘いだったのに来てくれてありがとう。さ、挨拶して」

??「は、はじめまして」

278: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:47:27.85 ID:qzQj1JRV0

灯織「美波さんのもとで修行している、ジムリーダー見習いの灯織です。よろしくお願いします」ペコリ

藍子「藍子です。よろしくお願いします!」

凛「ジムリーダー見習い……?」

美波「うん。彼女は私の後任候補なの。ゆくゆくはジムリーダーになってもらうつもりで指導しているんだ」

凛(へえ、弟子か……そういえば真奈美さんも弟子を作っていたな)

藍子「そうなんですか、じゃあ私たちと同じですね、凛さん!」

凛「そうだね。私は藍子のコーチをやっているんだ」

美波「コーチ? 二人はそういう関係だったんだ……どうりでバトルのクセが似てると思った!」

藍子「あはは……じゃあ灯織ちゃんと私は同じ弟子繋がりだね!」

灯織「は、はあ……」

美波「じゃあそんな藍子ちゃんを育て上げた名コーチの凛ちゃんなら、安心してお願いできそうだね!」

凛「やめてよ、私は大したことはしてないよ……で、お願いって?」

279: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:48:38.82 ID:qzQj1JRV0

美波「凛ちゃんには、灯織ちゃんのコーチになってもらいたいの」

凛「灯織の……?」

美波「うん。さっきも言った通り、灯織ちゃんは次期ジムリーダーとして相応しいトレーナーになるために、今はジムに住み込みで特訓してもらっているんだ」

美波「でも最近の彼女、どうも伸び悩んでるみたいで……」

灯織「……はい。最近、特訓に気が乗らないというか、どうしても打ち込めない自分がいるんです。やる気はあるんですが……」

美波「それで今日、凛ちゃんと対戦した後に、一度環境を変えてみるのはどうかなって提案したんだ。新しい刺激を得られたら、きっと気分もリフレッシュできるんじゃないかなって思って」

280: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:49:26.89 ID:qzQj1JRV0

美波「それに凛ちゃんほど強いトレーナーなら、バトルの戦術やポケモンの動き一つ取っても、私が持っていない着眼点や技術があると思う。それを灯織ちゃんには学んできてほしいんだ」

美波「もちろんずっと、とは言わないよ。この町に滞在している期間だけでいいの」

凛「……」

灯織「凛さん。どうかよろしくお願いします」ペコリ

美波「私からも、お願い」ペコリ

凛「そ、そんな……二人とも、頭を上げてよ」

凛「うーん、私を頼ってくれる気持ちはありがたいんだけど……私は藍子のコーチなんだ。一度に二人も面倒を見るのは、どう、かな……」

281: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:50:14.07 ID:qzQj1JRV0

藍子「……」

凛「うーん……」

チラッ

凛「あ。それなら……」

美波「……それなら?」

凛「わかった。引き受けるよ」

凛「その代わり、美波には、藍子のコーチをしてもらいたいんだ」

藍子「……え、ええっ!?」

282: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:51:17.04 ID:qzQj1JRV0

美波「藍子ちゃんの……?」

凛「藍子。美波も私が持っていない視点をたくさん持っているトレーナーだと思う。それに現役のジムリーダーだし、バトルの経験はきっと私以上にあるかもしれない」

凛「いい機会だし、明日は美波から稽古をつけてもらったらどうかな。私以外のトレーナーから教わるのも、時には大事だと思うし」

藍子「凛さん……」

美波「私は大丈夫だよ。明日はジムは休みだし。藍子ちゃん、本当にそれでいい?」

藍子(……たしかに、凛さんの言うことはごもっともだ。離れることになるのは寂しいけど……)

藍子「凛さんがそう言うなら、わかりました。美波さん、明日はよろしくお願いします!」

283: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:51:56.63 ID:qzQj1JRV0

美波「うん、こちらこそ!」

灯織「凛さん、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いします」

凛「そんなに堅苦しくならないでいいよ。じゃあ美波、藍子のこと、よろしくね」

美波「私こそ、灯織ちゃんをよろしくね! それじゃ……」

コトン

フェイフェイ「お待ちどうさまデース! いっぱい食べてネー!」

凛・藍子・美波・灯織「いただきます!」

284: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/07(土) 00:57:15.28 ID:qzQj1JRV0
ひょんなことからお互いの弟子とコーチを入れ替えることになった凛、藍子
藍子は現役ジムリーダーの特訓についていけるのか
そして凛は灯織相手にパーフェクトコミュニケーションをとれるのか

今回は以上です
というわけで283から灯織登場です。書き始めたころからどこかで出したいと思っていたのでついに叶いました
ちなみに主はあさひ担当
シャニからはこれ以上は出てきません

ではまた来週。お疲れさまでした

289: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/13(金) 21:00:29.89 ID:BpcqB9Hd0


翌朝

藍子「あっ、美波さん! おはようございます」

美波「おはよう、藍子ちゃん! 朝、強いんだね」

藍子「はいっ。毎日、凛さんと朝練しているんで!」

美波「そうなんだ、偉いなあ」

美波「さて、凛ちゃんたちは5番道路を使うみたいだから、私たちはこっちに行こっか」

藍子「は、はい。一日、よろしくお願いします!」

第二鉱山

美波「ここは色んなポケモンが住み着いてるから、ポケモンを鍛えるのにちょうどいい場所なんだ」

藍子「本当だ、特訓してるトレーナーもたくさんいますね」

美波「実際に相手してもらうのは野生のポケモンだけどね。じゃ、始めよっか!」

290: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/13(金) 21:01:34.23 ID:BpcqB9Hd0


5番道路

灯織「凛さん、おはようございます。今日は一日、よろしくお願いします」

凛「うん。よろしくね、灯織」

凛「……さて、まずは灯織の今の実力を知っておかないとね。とりあえず、ポケモンを出してみて」

灯織「は、はい……」

凛「……ん? どうかした?」

灯織「い、いえ……おいで、ヨワシ」ポンッ

ヨワシ「ヨ、ヨワ……」

*ヨワシ こざかなポケモン みずタイプ
たんどくのすがた
とても弱くとても美味しいので、常に誰からも狙われている
ピンチになると目が潤み、その涙に仲間が集まっていく

凛「とても弱いって、散々な言われようだね……」

灯織「……実はこのポケモン、私のポケモンではないんです。美波さんから修行用に譲ってもらったんですけど」

灯織「美波さん曰く、『そのポケモンをうまく扱えるようになったら一人前』らしいです。ただ……私はどうもうまく扱えなくて」

凛「なるほど。とにかく、一度バトルをしてみようか」

291: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/13(金) 21:02:20.59 ID:BpcqB9Hd0


第二鉱山

藍子「ゴリランダー、攻撃を防いで!」

ゴリランダー「ゴリ!」

カマスジョー「カマース!」

ドガッ ドガッ

カマスジョー「カマース!!」ズバッ

ゴリランダー「ゴリッ……!」

藍子「ゴリランダー!」

美波「藍子ちゃん、怯まないで攻めて!」

藍子「は、はい! ゴリランダー、ドラムアタッ――」

美波「今からドラムを叩いていたら追撃をもろに受けちゃうよ!」

カマスジョー「カマース!」バッ

藍子「わわ、ゴリランダー!」

292: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/13(金) 21:03:17.97 ID:BpcqB9Hd0

ゴリランダー「ゴリ!」ガキンッ

藍子「っ……アクロバットで――」

美波「アシレーヌ、ムーンフォース!」

藍子「!」

ドゴオッ

カマスジョー「カ、カマー!」ピューン

美波「そこまで。藍子ちゃん、相手のスピードに呑まれすぎだよ」

美波「さっきも言ったけど、カマスジョーのような素早い相手にはウッドハンマーやアクロバットで対応しなきゃ。ドラムアタックはたしかに使い勝手がいいけど、頼りすぎはよくないよ」

藍子「は、はい……」

美波「それから、全部の攻撃をガードして躱そうとしていなかったみたいだけど……あまり得策とは言えないかな」

美波「カマスジョーは見た目以上に様々なタイプの技を覚えるの。さっきみたいに、『どくづき』を覚えている個体も中にはいる」チラッ

ゴリランダー「ゴリッ……」ドクドク

293: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/13(金) 21:04:07.25 ID:BpcqB9Hd0

藍子「! 毒が……」

美波「稽古だからまだいいけれど、実戦で今のどく状態に気づけないのは致命的だね。はい、モモンのみ」

藍子「ありがとうございます……」

藍子(……さすがジムリーダーだ。私以上に、色んなところに目をつけている)

藍子(それに美波さん、昨日レストランで話した時はあんなに優しそうだったのに、すごく厳しい……バトルのことになると、人が変わっちゃうのかな)

藍子「あの美波さん、そろそろ休憩を――」

美波「まだ正午にもなっていないよ。休憩はそれまでお預けです」

藍子「ひ、ひええ……」

…………………………………………………

美波「よし、そこまで!」

ゴリランダー「ゴ、ゴリ……」ゼーゼー

藍子「お、終わった……」

美波「お疲れ様。さ、休憩にしましょう♪」

294: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/13(金) 21:05:08.03 ID:BpcqB9Hd0


5番道路

ヨワシ「ヨ、ヨワ……」バタンキュー

灯織「っ、ヨワシ……!」

ドリュウズ「ドリュ」シュタッ

凛「……どうだった? 私はヨワシのことはあまり詳しくないけど、使いこなせていた実感はある?」

灯織「……いえ」

灯織「ヨワシは『ぎょぐん』という特性を持っていて、体力が減ると仲間を呼び寄せる習性があるんですけど……なぜかこのヨワシは、うまく仲間を集められないんです」

凛「……それは仲間が近くにいないからじゃない?」

灯織「いえ、どこからでも仲間は駆けつけてくれるはずなんです」

凛「どういう仕組みなの……?」


※本来『ぎょぐん』は体力が1/4以上だと発動する特性ですが、本SSでは1/4以下になるとフォルムチェンジするというシステムです。ダルマモードみたいな感じ。ちなみに灯織のヨワシはレベル20を超えています

295: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/13(金) 21:06:25.14 ID:BpcqB9Hd0

凛「でも、だいたい事情はわかったよ。その特性をうまく発動することが、美波のいう『うまく扱える』に当てはまることなんだね」

灯織「おそらくは……でも原因が何なのか、私にも美波さんにもわからないんです」

灯織「なぜなんでしょうか……」

凛「……悩んでいても仕方ない。ヨワシを回復させて、もう一度バトルしてみよう」

灯織「……はい」

………………………………………………

ヨワシ「ヨ、ヨワ……」バタンキュー

灯織「ま、また……」

凛「……結局ここまでうまくいかなかったね」

凛「よし、そろそろお昼だし、休んで気分転換しよう」

灯織「……はい」

296: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/13(金) 21:07:29.08 ID:BpcqB9Hd0



第二鉱山

藍子「……おいしい! これ、美波さんが作ったんですか!?」

美波「そうだよ。料理は子供の頃からパパやママの手伝いをしていたから、多少はできるんだ」

藍子「そうなんですか。料理できるっていいなあ、私はカレーとかパンケーキくらいしか作ったことがないです」

美波「今度、凛ちゃんに作ってみたらどうかな? 心をこめて作ったなら、きっと喜んでくれると思うよ」

藍子「そうですねっ。……ところで美波さん」

藍子「昨日も使っていたZワザって、何なんですか?」

美波「ああ、たしかにガラルではZワザを見るのは珍しいかもね。あれはね、アローラ地方伝統の技なの」

藍子「アローラ地方の?」

美波「うん。トレーナーとポケモンのゼンリョクを解き放って、一度だけ強力な技を打つことができるんだ」チャキッ

297: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/13(金) 21:09:02.00 ID:BpcqB9Hd0

美波「これがZリングっていうものなんだけど、この中にZクリスタルっていう結晶があるの」

美波「ポケモンにもこれと同じZクリスタルを持たせることで、その二つを共鳴させて技を繰り出すんだ。トレーナーの負担が大きいから、そう何度も出せはしないけれど」

藍子「へえ……ガラルにはダイマックスがあるみたいに、アローラにもそんな文化があるんですね」

美波「私が持っているZクリスタルはアシレーヌZっていうんだけど、これ、元々はパパが持っていたものなんだ」

美波「パパは海洋学者なんだけど、私と歳が近かった頃はアローラでしまめぐりをしていたんだって。――あ、しまめぐりっていうのは、若いトレーナーがZクリスタルを手に入れるためにアローラ中を巡るっていう風習なんだけど」

藍子「ジムチャレンジのようなものですか?」

美波「そうそう! それで私がジムリーダーを目指すって決めた時に、しまめぐりで手に入れたZクリスタルを譲ってくれたんだ」

298: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/13(金) 21:10:26.61 ID:BpcqB9Hd0

美波「ただ、本来はガラルでZワザを使うことはできないみたいで。最初はお守りとして大事に持っていたんだけど……ある日突然、私も使うことができるようになったんだ」

美波「『もしかしたら『かがやきさま』がガラルを訪ねて来られたのかも』ってパパは言っていたんだけど」

藍子「かがやきさま……?」

美波「あ、気にしないで。でもこの力を使えるようになってから、ジムリーダーとしてどんどんいろんな人から認められていった気がするなあ」

美波「アローラではメジャーな存在だけど、どうやらガラル地方でZワザを使えるのは私以外には誰もいないみたい。だからいろんな人に珍しがられるんだ」

藍子「美波さんだけが……ということは、美波さんはアローラ地方からやって来られたんですか?」

美波「ううん。私、生まれも育ちもガラル地方なの。アローラにはまだ行ったことがないんだ」

299: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/13(金) 21:11:16.36 ID:BpcqB9Hd0

美波「……憧れだったジムリーダーになれた。唯一のZワザ使いとして持て囃されて、最強だなんて持ち上げられるようになった。そんな時に、珠美ちゃんが現れたんだ」

藍子「……! 私も一度、バトルを見たことがあります。最強のジムリーダー、なんですよね」

美波「うん。……私は珠美ちゃんに二度も負けたの。それまで慢心していたわけではなかったんだけどね、改めて自分の実力を思い知った。どう足掻いても越えられない壁を感じたんだ」

藍子「……美波さんも充分強かったのに、そんなに力の差があったんですね」

美波「ちょうど珠美ちゃんに負けて落ち込んでいた時だったかな、灯織ちゃんが道場破りに来たのは」

300: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/13(金) 21:12:06.88 ID:BpcqB9Hd0

藍子「そうなんですか……ど、道場破り!?」

美波「ふふ、嘘だと思うでしょ? あの子、最初は本気で私を倒してジムを乗っ取ろうとして押しかけてきたんだよ」

藍子「全然想像がつかないです……すごく大人しそうな子だったのに」

美波「……だけど、灯織ちゃんのギラギラした目を見た時に、私には一つの目標ができたんだ」

藍子「目標、ですか?」

美波「うん。灯織ちゃんを次期ジムリーダーに育てて、立派に自立させられたら――私、アローラに行ってみたいんだ」

藍子「!」

301: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/13(金) 21:12:34.78 ID:BpcqB9Hd0


5番道路

凛「はい、灯織」

灯織「ありがとうございます。これは……凛さんの手作りですか?」

凛「うん。今日はシーフードピラフを作ってみたんだ。灯織、好きかなって思って」

灯織「ありがとうございます。もちろん海の幸は大好物です。いただきます」

灯織「! すごくおいしいです……!」

凛「口に合ってくれたなら嬉しいよ」

302: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/13(金) 21:13:28.82 ID:BpcqB9Hd0

凛「そういえば、美波が使っていた技……Zワザだっけ。あれってどういうものなの?」

灯織「あれはガラル地方では美波さんだけが使えると言われている、アローラ地方に伝わる技のことです。……・私も詳しくは知らないのですが」

凛「アローラ地方……」

灯織「なんでもトレーナーとポケモンのゼンリョクをぶつけて繰り出すんだそうです。美波さんが持っているZリングというアクセサリーの中に、そういうポケモンの力を引き出す何かがあるみたいですね」

灯織「きっとダイマックスのようなものなんでしょう。ただ、ガラル地方ではあまり使っているトレーナーは見かけないですね。美波さんくらいなのではないでしょうか」

凛(……もしかしたら、モバPもこうしてZワザに触れたりしているのかな)

凛「ってことは、美波はアローラ地方出身なの?」

灯織「いえ、両親はアローラ地方出身だそうですが、美波さん自身はガラルで生まれ育ったんだそうです」

凛「そうなんだ」

303: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/13(金) 21:14:53.49 ID:BpcqB9Hd0

凛「ねえ、灯織ってどういうきっかけで美波に弟子入りしたの?」

灯織「……」

凛「? もしかして私、変なこと聞いちゃった?」

灯織「い、いえ。……その……」

灯織「今となっては恥ずかしい話なんですが……もともとバウタウンには、道場破りのつもりで来たんです」

凛「道場破り?」

灯織「私はツバサ諸島というガラルから少し離れた島の出身なんですが、そこでは皆、バトルで強くなることにあまりこだわりがないみたいで……気づいたら私は、島の中で最強のトレーナーになっていたんです」

灯織「なので正直、島での暮らしには飽き飽きしていました。それで刺激を求めて島を出て、ガラルにやって来たんです」

灯織「そして手始めに、バウタウンにあるジムで自分の実力を示すことにしたんです。その時は、美波さんがガラル最強のジムリーダーだということも知らずに……」

凛「……」

304: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/13(金) 21:15:38.05 ID:BpcqB9Hd0

灯織「あっけなく返り討ちにされて、私は自分の世間知らずを恥じました。自分が見ていた世界はちっぽけだったんだと実感して」

灯織「そして一から自分を鍛え直すつもりで島に帰ろうとしたのですが、美波さんに呼び止められてしまいまして……」

灯織「それからは、流れのままにと言いましょうか。どのみち寄る辺のなかった私は、美波さんのお世話になることになりました」

凛「……そんなことがあったんだ。思い出したくないこと、引っ張り出しちゃってたらごめんね」

灯織「いえ、いいんです。ただ……一つ、わからないことがあって」

凛「わからないこと?」

307: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/14(土) 19:35:50.51 ID:rDoczpC70

美波「私はガラルから出たことはないし、ジムリーダーになってからはバウタウンの外に出ることもほとんどなくなった。そんな縮こまった生き方をしていても、珠美ちゃんには勝てないって気づいていたけど、知らないふりをしていたんだ」

美波「今までは、ジムリーダーという立場が言い訳になっていた。でも灯織ちゃんと出会ったことで、やっと自分の心に素直になれたの」

美波「アローラに行って、自分を磨き直したい。アシレーヌZが生まれたいきさつも学んで、Zワザにももっと詳しくなりたい。それで、いつか珠美ちゃんにリベンジしたい」

美波「それが、今の私の目標。ふふっ、こうして言葉にしてみると、ちょっと恥ずかしいな」

藍子「……素敵ですね。美波さんの考え方、すごく尊敬できます」

美波「そ、そう?」

308: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/14(土) 19:36:37.30 ID:rDoczpC70

藍子「はい。たくさん努力して、憧れだったジムリーダーになれたのに、それでもゼロから新しいことに挑戦しようとする……それって、すごく素敵なことだと思います」

美波「ふふっ、ありがとう。面と向かって言われると照れちゃうね」

美波「……ただね。気持ち的にはすぐにでもアローラに行きたいんだけど……やっぱり灯織ちゃんのことが気がかりなの」

藍子「気がかり……昨日も話されてましたけど、それは灯織ちゃんが伸び悩んでいるからですか?」

美波「それもあるけど……私は一人前になったと思っていても、灯織ちゃんはどう思っているのか、とか、私がいなくなっても本当に一人でうまくやっていけるのか、とか、本当に考え出したらキリがなくて」

309: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/14(土) 19:37:21.54 ID:rDoczpC70

美波「うまく言葉にできないけど、とにかく不安なんだ。灯織ちゃんを置いていけないって気持ちが、日に日にどんどん強くなってきていて。私の決意、押しつぶされちゃいそうなんだ」

藍子「……」

藍子「それはきっと、美波さんが灯織ちゃんとずっと一緒にいたいと思っているから……じゃないでしょうか」

美波「え……?」

藍子「美波さん、昨日も灯織ちゃんのお話をするとき、すごく楽しそうにしていましたよね。きっと、自分が思っている以上に、美波さんにとって灯織ちゃんの存在は大きいんだと思うんです」

美波「……」

美波「……そうなのかも。私ね、あの子の目を見たら色んなことを思い出すんだ。ジムリーダーになるために必死でバトルに励んだことや、ジムリーダーになってから負けが続いて、悔しくて寝る間も惜しんで猛特訓したこと――」

美波「昔の自分を思い出して、原点に戻してくれるっていうのかな。……うん、灯織ちゃんは、私にとってそういう存在」

美波「灯織ちゃんとずっと一緒にいたい自分と、それでもアローラに行きたいって自分が両方いて……」

美波「やっぱり私、まだ迷っているのかな」

藍子「……」

スッ

310: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/14(土) 19:38:03.82 ID:rDoczpC70

美波「……ありがとう、藍子ちゃん」

藍子「え、いや、私はそんな大したことは……」

美波「ううん、藍子ちゃんに言い当てられたことで、なんだかモヤモヤが晴れた気がする!」

美波「今はまだ答えを出せないけど……いつか、ちゃんと納得できる道を選べたらいいな」

美波「ねえ、藍子ちゃん。藍子ちゃんにとって、凛ちゃんはどういう存在なの?」

藍子「り、凛さんですか?」

藍子「……私にとっても、凛さんはかけがえのない人です。私を変えてくれた、憧れの存在。ずっと一緒にいたいし、凛さんもそう思っていてほしいです」

藍子「思っていてほしい、ですけど……」

藍子「……美波さん。今からする話は、凛さんにはしないで下さいね?」

美波「え? う、うん」

311: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/14(土) 19:38:39.58 ID:rDoczpC70

藍子「私、ずっと凛さんに聞きたくて、聞けないことがあるんです。『ジムチャレンジが終わって、トーナメントも終わったら、凛さんはどうするんですか』って」

美波「……どういうこと?」

藍子「凛さんは、アイマス地方からガラルに来られたんです。それも、本当はポケモンの調査のために。なのに私が勝手にコーチになってほしい、ってお願いして……それでずっと一緒に旅をしてきたんです」

藍子「もちろん、凛さんは凛さんの意思で私と過ごしてくれていると思うんですけど……調査のために、ということは、ゆくゆくはアイマスへ帰られるんだと思うんです」

藍子「でも凛さんと別れることになるなんて想像もしたくなくて、もし聞いちゃったら、明日にでも凛さんが私の前からいなくなってしまう気がして……」

美波「そうだったんだ……私も藍子ちゃんの立場だったら、怖くてとても聞き出せないと思う」

312: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/14(土) 19:39:33.39 ID:rDoczpC70

藍子「……いつかは凛さんの元を離れなくちゃいけないってわかっていても、ずっと一緒にいたくて。ふとした瞬間に、すごく不安になるんです」

藍子「トレーナーとしては、ちょっと自信がついてきたと思っていたんですけど。やっぱり私、まだまだ弱いなあって……・」

美波「そっか……」

美波「でも、藍子ちゃんの思い、伝わったよ。凛ちゃんは幸せ者だね」

美波「それに、藍子ちゃんは弱くないよ。一人で生きていける人なんて、世界中のどこにもいないんだから」

藍子「ありがとうございます。……ごめんなさい、なんだか湿っぽくなっちゃいましたね」

美波「ううん、気にしないで。さ、そろそろ再開しよっか!」

313: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/14(土) 19:40:13.64 ID:rDoczpC70


灯織「どうして美波さんは、私なんかを後任候補に選んだのか、ということです。何の取り柄もない、世間知らずで意地っ張りな私を」

凛「美波は教えてくれないの?」

灯織「はい。何度か聞いてみたのですが、それっぽい言葉ではぐらかされてしましました」

灯織「……正直、私は自分のことがあまり好きではありません。何もするにも自分がやっていることは正しいことなのか迷ってしまって、結局中途半端になってしまう。そんな自分が嫌なんです」

灯織「それに、バウジムはガラルでもトップクラスのジムです。もちろん求められるレベルも高いので、すごくプレッシャーを感じていたりもします」

凛「理想と現実のギャップが苦しいんだね」

灯織「……はい」

314: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/14(土) 19:40:41.80 ID:rDoczpC70

灯織「本当は美波さんのように、誰に対しても物怖じせずに堂々と振る舞えるトレーナーになりたいんです。きっと美波さんが求める次期ジムリーダーって、そういう人のことだと思うから」

凛「……灯織、それは違うんじゃないかな」

灯織「えっ?」

凛「美波のようになる必要なんてないと思うな。灯織は灯織らしくあるべきだし、美波もきっとそう望んでいるよ」

凛「たしかに美波の後を継ぐことには責任を感じるかもしれない。私にはそれがどれだけの大きさなのかは想像もつかないけど……」

凛「何があっても、灯織らしさは失くしたらダメだと思う。美波はきっと、灯織自身がまだ気づいていない自分らしさを見出して、灯織を選んだんだよ」

315: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/14(土) 19:41:40.94 ID:rDoczpC70

灯織「……私らしさ……」

灯織「私らしさって、何なんでしょうか」

灯織「今はわからないですけど……もし見つかるのなら、見つけてみたいです」

凛「そうだね……私から言えるのは、とにかく歩き続けていないと見つからないってことぐらいかな」

凛「でも、それで見つけたものがどれだけ美波とかけ離れていても、きっとみんな受け入れてくれるよ」

灯織「……」

灯織「ありがとうございます。少し、心が軽くなった気がします。いつか私らしさを見つけられるまで、腐らずに前を向いていこうと思います」

凛「うん。灯織なら、きっと見つけられるよ」

316: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/14(土) 19:42:25.73 ID:rDoczpC70

凛(……口に出してから気づいた。こんなこと、藍子には言ったことはなかった、って)

凛(藍子は私を慕ってくれている。私のようになりたいと、何度も私の前で夢を語ってくれている)

凛(今まではそれを否定しなかった。憧れられるのも悪い気はしなかったし、藍子がそうしたいならそうすべきだと思っていたから)

凛(……でも、それで本当にいいんだろうか。このまま私のようなトレーナーになることが、藍子らしさに繋がるのだろうか)

凛(それは、藍子にとって幸せなことなんだろうか)

317: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/14(土) 19:43:01.97 ID:rDoczpC70

…………………………

凛「もう夕方か。じゃあ、今日はここまでにしようか」

灯織「はい。今日は本当にありがとうございました。……なんだか、いろいろと吹っ切れた気がします」

凛「私の力じゃないよ。灯織自身が変わりたいと思ったから、そう思えたんだ」

凛「次に会う時は、もっと自分のことを好きになれていたらいいね」

灯織「……はい。ありがとう、ございます」

灯織「お礼と言ってはなんですが、凛さんに見せたい景色があるんです。一緒に見に行きませんか?」

凛「へえ、どんな景色?」

灯織「バウタウンの景色です。一度、町に戻りましょうか」

318: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/14(土) 19:44:03.13 ID:rDoczpC70

バウタウン

灯織「……ちょうといい時間帯ですね」

凛「……!」

凛「夕焼け……太陽が水面に反射して、すごくきれいだ」

灯織「……私、この港から見える夕焼けが大好きなんです。いつも一日の終わりに見に来ているんですけど、その度に心が洗われるというか……」

凛「うん、言いたいこと、わかるよ」

灯織「……凛さん。私は、町の皆が誇れるようなジムリーダーになれるでしょうか」

凛「きっとなれるよ。灯織なら」

319: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/14(土) 19:44:42.58 ID:rDoczpC70

美波「ふふっ、仲良く黄昏ているみたいだね」

凛「あ、美波、藍子」

藍子「わあ、きれいな夕日ですね!」

凛「灯織に教えてもらったんだ。本当にきれいだよね、いつまでも見ていたくなる」

灯織「この景色が、お二人の心にずっと残っていてくれたら嬉しいです」

美波(……でも、夕焼けは永遠じゃない。いつかは日が落ちて、夜が来る……)

美波(……)

美波「灯織ちゃん、そろそろ晩御飯にしよっか」

320: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/14(土) 19:45:16.96 ID:rDoczpC70

灯織「はい。凛さん、お世話になりました」

藍子「美波さん、ありがとうございました!」

美波「こちらこそ、ありがとう! 藍子ちゃんのおかげで、自分がどうしたいのかわかったよ」

灯織「……なんの話ですか?」

美波「ふふっ、なんでも。じゃ、またね!」

凛「元気でね」

藍子「また会いましょうね!」

ザッザッザッ……

321: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/14(土) 19:45:45.80 ID:rDoczpC70

凛「どうだった? 美波との特訓は」

藍子「美波さん、すごく厳しかったです……でも、本当に勉強になりました」

藍子「いろんなことを学んで、結局うまくいかずじまいで終わっちゃったこともあるんですけど……それも含めて、私はまだまだ強くなれるんだって実感しました!」

凛「それはよかった。ところで美波、なんだかすごく晴れやかな顔してたけど」

藍子「ああ。実は、美波さんのお悩みを聞いていたんです」

藍子「凛さんも、灯織ちゃんと仲良くなれたみたいですね!」

凛「そうだね。私もバトルだけじゃなくて、お互いのこととか、いろんな話をしたよ」

凛(……)

322: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/14(土) 19:46:36.12 ID:rDoczpC70

凛(藍子が美波の悩みを解決した、そのことを聞いて、私はとても嬉しくなった)

凛(最初は右も左もわからなかった藍子が、誰かの助けになったなんて。私が思っている以上に、藍子はもう自己を確立しているんだ。バトルの腕前も、精神的にも)

凛(つまりそれは……)

凛(私の役目も、いよいよ終わりに近づいているということなのかもしれない)


※美波との特訓により、藍子の手持ちがさらに強くなりました!

327: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:18:28.17 ID:LD075bso0


「カメラ、ピンボケしてないかな? 音声も……うん、大丈夫そう!」

未央「……というわけで! しまむーとちゃんみおがお送りするドキュメンタリー番組、『卯月と未央の』……せーの!」

未央「グレートジャーニー!」

卯月「グ、グレートジャーニー……」


サブストーリー『卯月と未央のグレートジャーニー!』


328: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:19:17.96 ID:LD075bso0

未央「やー、いよいよ始まったねー。あ、どうもどうも! メインMCの未央ちゃんだよ!」

未央「ほらしまむーも挨拶して! もうカメラ回ってるよ!」

卯月「は、はい~。皆さんこんにちは、卯月です!」

卯月「あの未央ちゃん、本当にここから全部自撮りで録画していくの……?」

未央「もっちろん! さすがにバトル中は他の人に預けるけど、今日の模様は全部ライブ配信するよ! なんてったって密着ドキュメンタリーなんだもん!」

卯月「これってドキュメンタリーと呼べるのかな……」

未央「そりゃあもう、私としまむーの息の合ったコンビネーションに熱い絆、そしてバトルの強さ……全部を余すところなく見せるなんて、これぞ正真正銘ドキュメンタリーでしょ!」

329: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:20:34.61 ID:LD075bso0

未央「そう、この動画は私たち二人が色んな場所に旅立って、すっごい冒険をしちゃおう! という内容の動画なのだ!」

未央「というわけで、私たちは今、この場所の前に立っていまーす! どどん!」

卯月「アイマス地方、シジョウシティにあるバトルライブの会場ですね。今日もたくさんの人で賑わっています!」

未央「お、しまむーもノッてきたねー。じゃあ改めて、企画説明をしちゃおうかな!」

未央「コホン。しまむー、前に私たち、この施設のマルチバトルに一緒に挑んだよね?」

卯月「う、うん」

未央「そして幾多の困難を潜り抜け、バトルライブが誇る最強のトレーナー、ライブアイドルの二人に辛くも勝利した――あ、これ、その時にもらったコインね!」キラキラ

330: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:21:12.95 ID:LD075bso0

未央「だがしかぁし! あの時二人が言った衝撃の言葉、しまむーは覚えているかい?」

卯月「うん。たしか……」


莉嘉『良かったら、また挑戦してねっ! 『金』のコインもあるから!』


卯月「って言ってたよね」

未央「そうだよね。……というわけで!」

未央「私たち、これからゴールドコイン目指して、再びバトルライブに挑戦していきまーすっ!」

331: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:23:41.82 ID:LD075bso0


少し前

未央「しまむー、久しぶりだね!」

卯月「未央ちゃん! こちらこそ、久しぶり!」

未央「いやー、キミのウワサはかねがね聞いてるよー。P.C.S、テレビにコンテストに出ずっぱりじゃん!」

卯月「い、いやいや……」

未央「前にコメンテーターの人が言ってたんだけどね、もはやP.C.Sはチャンピオンに次ぐくらいの知名度と人気があるんじゃないかってさ!」

卯月「そんな、大袈裟だよ~、チャンピオンなんて……」


※補足…現在のアイマス地方の正式なチャンピオンは不在。凛は期間を設けずにアイマスを旅立ってしまい、蘭子も繰り上げでの昇格を拒否したため

332: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:24:47.96 ID:LD075bso0

卯月「未央ちゃんは、今もチャンピオンを目指して特訓を続けているの?」

未央「うん! 今年こそはアイマスのテッペン、獲りたいからね!」

卯月「そっかあ、すごいなあ」

卯月「……チャンピオン、か。そういえば、凛ちゃんは元気にしてるかなあ」

未央「……」コホンッ

未央「ねえしまむー、実はちょっと聞いてほしい話があって……」

卯月「? どうしたの、急に改まって」

卯月「もしかしてヘレンさんのこと?」

未央「いや……ていうかアイツ最近私の前に現れないんだよなあ……ってそうじゃなくて」

未央「しまむー。もう一回、一緒にバトルライブ、出ないかな?」

333: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:25:39.80 ID:LD075bso0

卯月「え、バトルライブ? ポケモンリーグの前に挑戦した施設だよね」

卯月「私は構わないけど……突然どうしたの?」

未央「いやあ……前にライブアイドルを倒したときにさ、こんなこと言ってたじゃん」


莉嘉『良かったら、また挑戦してねっ! 『金』のコインもあるから!』


未央「あんなこと言われたら、俄然やる気になっちゃうじゃん! だから私、ずっと再挑戦したいなって思ってたんだ」

卯月「……そっか。たしかに私もあの言葉は気になっていたし」

卯月「私も、未央ちゃんがいれば百人力だよ。こちらこそ、また一緒に頑張ろう!」

未央「しまむーならそう言ってくれると思ったよ! でさ、ライブって言葉でひとつ提案があるんだけど」

334: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:26:57.46 ID:LD075bso0

未央「今度は私たちがバトルライブに挑んでいるところを、動画サイトでライブ配信しようと思うんだ」

卯月「ライブ配信……?」

未央「うん。ほら、動画サイトを使ったらさ、世界中のどこからでも私たちを見れちゃうわけじゃん。つまり私たちの名コンビっぷりを、全世界にアピールできるってわけ!」

卯月「あ、あはは……」

未央「――っていうのは建前でさ」

335: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:27:51.65 ID:LD075bso0

未央「しぶりんに見せてあげたいんだ。私たちも頑張ってるんだよって所を」

卯月「!」

未央「しぶりん、あの時勇気を出して一歩踏み出して、新しい世界で頑張ってるはずだよね。だから私たちもさ、負けてられないじゃん?」

未央「気軽に写真やメールを送ったりはできないけど、インターネットを使えばしぶりんにも私たちの姿を届けられるはず」

未央「だから……なんていうのかな。今回の挑戦は、しぶりんに向けたプレゼントにしたいと思うんだ」

卯月「未央ちゃん……」

336: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:28:29.80 ID:LD075bso0

未央「そういうわけで、協力してくれないかな?」

卯月「……もちろん。私も頑張って……凛ちゃんに届くように、精一杯頑張るっ!」

未央「あはは、頑張るって二回言っちゃってるよ」

卯月「あっ……」カァッ

未央「……ありがと、しまむー。それじゃ、よろしくね!」

337: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:29:15.90 ID:LD075bso0

バトルライブ会場

ワァァァァァァァァ……

卯月「わあ……相変わらずすごい盛り上がりだね!」

未央「……」

卯月「未央ちゃん、どうかした?」

未央「へ? い、いや……しまむー、成長したなあって」

未央「初めて挑んだときはあんなにキンチョーしてたのに」

卯月「そ、そうだった……たしかにあの時はすごく緊張したけど、でもコンテスト会場だと思えば全然へっちゃらだよ!」

338: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:29:51.81 ID:LD075bso0

卯月「それに今日は美穂ちゃんや響子ちゃんの代わりに……未央ちゃんが隣にいてくれてるから!」

未央「……へへ、そっか」

未央「でもねしまむー、私はしまむーだけが隣にいるんじゃないと思うんだ」

卯月「?」

未央「なんでかはよくわからないけど……感じるんだ。しぶりんが、そばにいてくれてるって」

卯月「凛ちゃんが……」

卯月「……私も、凛ちゃんが応援してくれているって思いながら、頑張るね!」

339: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:30:48.59 ID:LD075bso0

美穂・響子「卯月ちゃーん、頑張れー!」

ザワザワザワ

『あれってもしかしてP.C.Sの美穂ちゃんと響子ちゃんじゃね……?』

ザワザワザワ

??(……変装もせず白昼堂々と人前に現れるなんて、あの娘たち、なかなか肝が据わっているわね)

??(さあ未央、私の好敵手(リバル)として恥ずかしくないバトルを見せて頂戴)

茜「卯月ちゃーん! 未央ちゃーん! カメラはバッチリ任せてくださーい!!」

340: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:31:53.53 ID:LD075bso0

『さあ始まりました! バトルライブマルチコース!』

恵磨『実況は恵磨が!』

瑞樹『解説は私、瑞樹がお送りするわ。久しぶりね、みんな』

恵磨『今回挑戦するのは……なんと! ポケモンリーグ出場経験もありながら、いまやP.C.Sとして不動の人気を誇る卯月選手と!』

瑞樹『四天王の一角であるアイマス最強格のトレーナー、未央ちゃんのコンビね。二人とも、前回の挑戦からすごく顔つきが凛々しくなったわね』

恵磨『まさに黄金コンビですね! さぁ、そんな二人の相手をするのはー!?』

未央「よし……いくよ、しまむー!」

卯月「うんっ!」

341: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:32:59.05 ID:LD075bso0


………………………………………………

ファイアロー「アロー」バタンキュー

颯「ああっ、ファイアロー!」

チルタリス「チル……」バタンキュー

凪「ミロワール、力及ばず。残念でしたね」

恵磨『勝負ありィィ!! 卯月・未央ペア、新進気鋭の凪・颯ペアを見事撃破ー!!』

ワァァァァァァァァ

未央「ふうっ……」

恵磨『……おおっとぉ!? これで卯月・未央ペアは現在46連勝!』

恵磨『次のバトルに勝利すれば、いよいよライブアイドルへの挑戦権が得られるぞ!』

恵磨『さあ、47戦目の相手はぁー!?』

342: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:33:40.45 ID:LD075bso0

ドンッ

ちとせ「フフン。ま、せいぜい楽しもーよ」

千夜「……悪気はありませんが、これもお嬢様のためです。お前たちにはこの場でご退場いただきます」

瑞樹『こちらも今絶好調のちとせちゃん&千夜ちゃんペア――通称ヴェルベット・ローズね』

卯月「未央ちゃん、あと一息だよ!」

未央「よーしっ! ちゃんみお、頑張りまーすっ!」

343: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:34:16.37 ID:LD075bso0


……………………………………………

クロバット「クロ……」

サーナイト「サナ……」

恵磨『決まったぁぁーー!! クロバット、サーナイト同時ダウーン!!』

恵磨『卯月・未央ペア、これで前人未到の47連勝だぁぁー!!』

ウワァァァァァァァァァァ

瑞樹『……ということは、とうとう彼女たちの出番ね』

恵磨『そう! 次の48戦目に待ち構えるのは……バトルライブ最強トレーナーであるライブアイドル!』

344: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:35:06.07 ID:LD075bso0

恵磨『今までとは比較にならないほどの強さを誇る相手ですが、チャレンジャーの2人!  ここで一度出場ポケモンの再選定を行えますが大丈夫でしょうかっ!?』

未央「私は大丈夫!」

卯月「私は……」チャキッ

卯月「……はい、大丈夫です!」

恵磨『いい返事だね! それじゃあ登場してもらおう! ライブアイドルの2人だァァァ!!』

ウォォォォオオオオオオオオ

未央「いよいよだね、しまむー……!」

卯月「うん……!」

345: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:35:33.35 ID:LD075bso0

ボッ

ワァァァァァァァァァァァァァァ

「みんなーっ! ポケモンバトル、楽しんでるー!?」

イェェェェェェェェェェェェ

「いいねっ! それじゃ、今度はアタシ達のバトル、思いっきり楽しんでいってねー!!」

ドンッ

美嘉「美嘉だよーっ!」

莉嘉「莉嘉だよーっ!」

346: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/20(金) 20:36:07.67 ID:LD075bso0

ウオオオオオオオオオオ

莉嘉「二人とも……ついにここまでたどり着いたんだね!」

美嘉「私たちを倒せば晴れてバトルライブ完全制覇、ゴールドコインもあげちゃうよ。だけど……」

バッ

美嘉「本気で挑ませてもらうから……カクゴしててね」

未央「……いくよ、しまむー!」

卯月「うんっ!」

351: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:40:33.38 ID:jbUvCAmo0

恵磨『いよーし、それじゃいってみよー! バトル・スタァートォ!!』

卯月「行きます! バシャーモ!」ポンッ

バシャーモ「バシャ!」

未央「行っくよー、ゲンガー!」ポンッ

ゲンガー「ゲンガー!」

352: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:41:04.91 ID:jbUvCAmo0

莉嘉「行っけー! カエンジシ!」ポンッ

カエンジシ「カエン!」

美嘉「ラプラス、GO!」ポンッ

ラプラス「ラプ」

カエンジシ おうじゃポケモン ほのお・ノーマルタイプ
群れの中で一番大きなたてがみを持つオスが、リーダーとして仲間を率いる
摂氏6000度の息を吐き出し相手を威嚇する

ラプラス のりものポケモン みず・こおりタイプ
海の上を人を乗せて進むのが好き
機嫌がいいときれいな鳴き声で歌うこともあるらしい

353: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:41:36.76 ID:jbUvCAmo0

未央「カエンジシとラプラス……どっちにも弱点をつけるしまむーが先制のカギだね」

卯月「未央ちゃん、まずはどっちから攻める!?」

未央「うーん、じゃあラプラスかな!」

卯月「わかった! バシャーモ、スカイアッパー!」

バシャーモ「バシャ!」

恵磨『おおっと、まず動き出したのは卯月選手!』

美嘉「そうはさせないよ、ラプラス!」

ラプラス「ラプ!」

354: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:42:09.06 ID:jbUvCAmo0

美嘉「うたかたのアリ――」

未央「後ろががら空きだよっ!」

ゲンガー「ゲゲーン」ヌッ

美嘉「!?」

恵磨『なんと、ゲンガーが突然ラプラスの背後に現れたぁっ!?』

瑞樹『ゲンガーは影の中を自在に移動できるポケモンよ。バシャーモに気を取られて気づかなかったのね』

未央「あやしいひかり!」

355: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:42:43.42 ID:jbUvCAmo0

ゲンガー「ゲゲーン」ピカッ

ラプラス「ラプッ……」

恵磨『超至近距離からのあやしいひかりで混乱と同時にラプラスの目を眩ませたぞ!』

恵磨『そしてそこへ……』

バシャーモ「バシャ!」ドガァッ

恵磨『スカイアッパーが命中だぁぁ!!』

ウワァァァァァァ

未央「へへん、どんなもんだい!」

356: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:43:48.17 ID:jbUvCAmo0

卯月「――はっ、未央ちゃんっ!」

未央「え?」

ボッ

ゲンガー「!?」ボォォォォォ

未央「ええっ!? ゲンガーが燃えてる!?」

莉嘉「アタシのことも忘れないでよねー!」

恵磨『ゲンガーが突然現れた青白い炎に包まれています! これはいったい……』

瑞樹『『おにび』ね。あやしいひかりが点滅している間にゲンガーに近づいていたんだわ』

恵磨『ということは……』バッ

357: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:44:30.55 ID:jbUvCAmo0

カエンジシ「カエン!」

卯月「カエンジシが空中に!?」

莉嘉「へへ、ここからじゃ攻撃は避けれないでしょ!」

莉嘉、「カエンジシ、ハイパーボイス!」

カエンジシ「カエーン!」オォォン

バシャーモ「バシャ……!」ドドド

卯月「バシャーモ!」

ゲンガー「ゲゲーン……」ドサッ

未央「ゲンガー!」

358: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:45:22.01 ID:jbUvCAmo0

恵磨『ゲンガーもようやくおにびから解放されましたが、やけどを負ってしまったようです!』

瑞樹『一匹が大ダメージを与えられた上に混乱させられたライブアイドル達と、二匹が等しくダメージを受けた卯月ちゃん、未央ちゃんペア……一進一退の攻防ね』

未央「うーん……さすがライブアイドル、簡単には勝たせてくれないか」

未央「しまむー、引き続きラプラス狙いで行くよ! ゲンガー、シャドーボール!」

卯月「バシャーモ、スカイアッパー!」

ゲンガー「ゲゲーン!」ボッ

バシャーモ「バシャ!」バッ

359: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:46:09.23 ID:jbUvCAmo0

莉嘉「お姉ちゃん!」

美嘉「わかってる! ラプラス、いのちのしずく!」

ラプラス「ラプ」パァァァ

ドンッ ドゴォッ

恵磨『ラプラス、攻撃を受けると同時に体力を回復させました!』

未央「そんなっ、与えたダメージと同じくらい回復してる!?」

莉嘉「よーし、お姉ちゃん、伏せて!」

莉嘉「カエンジシ、ねっぷう!」

カエンジシ「カエーン!!」ブォォォォォ

360: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:47:05.83 ID:jbUvCAmo0

バシャーモ「バシャ……!」

ゲンガー「ゲゲーン……!」

恵磨『ラプラスの後ろに隠れていたカエンジシがすかさず攻撃! 二体同時ヒットだー!!』

瑞樹『……ライブアイドルの戦法が徐々に明らかになってきたわね』

瑞樹『耐久力の高いラプラスに攻撃を受けてもらって、カエンジシで遊撃する。簡単に言えばそんなところかしら。シンプルだけど強力なコンビね』

卯月「っ……」

未央「くーっ、あのラプラス、固すぎるよ!」

未央(最初にラプラスを狙ったのは間違いだったかなあ……でもカエンジシ狙いでもどっちみちラプラスの後ろに逃げ込まれていたかも)

未央(とにかく、あのラプラスを攻略しないと始まらないね……)

361: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:47:50.17 ID:jbUvCAmo0

ラプラス「ラプー」ピヨピヨ

未央「幸いラプラスはまだ混乱している……今のうちに突破するよ、しまむー!」

卯月「うん! でもどうやって……」

未央「まずはねっぷうを誘き出すね! ゲンガー、シャドーボール!」

ゲンガー「ゲゲーン!」ボッ

莉嘉「効かないよー、カエンジシ!」

カエンジシ「カエン!」ドガッ

362: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:48:28.73 ID:jbUvCAmo0

カエンジシ「カエン」ケロッ

莉嘉「焦ってタイプ相性のこと、考えてなかったのかなっ?」

莉嘉「カエンジシ、ねっぷう!」

カエンジシ「カエーン!!」ボォォォ

未央(やっぱり……さっき一度だけハイパーボイスを使ったけど、あれはゲンガーには効かないから撃ってこないと思ってた)

未央「ゲンガー、影に逃げて!」

ゲンガー「ゲーン」ヌッ

未央「しまむー、押し切れる!?」

卯月「えっ、押し切るってどういう――」

未央「」ニコッ

卯月「……! わかった、やってみる!」

363: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:49:02.95 ID:jbUvCAmo0

卯月「バシャーモ!」

バシャーモ「バシャ!」

ボォォォォォォ

恵磨『ねっぷうがバシャーモを襲います!』

卯月「バシャーモ、ねっぷうを振り切って!」

バシャーモ「バ……バシャ……」

ググッ

バシャーモ「バシャ……!!」

ダッ

364: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:49:58.22 ID:jbUvCAmo0

莉嘉「ええっ!?」

恵磨『な、なんとっ!? バシャーモがねっぷうの中を突っ切ってきている!?』

瑞樹『同じほのおタイプのバシャーモだからこそなせる技……いわば疑似『フレアドライブ』といったところかしら』

美嘉「ヤバイ、ラプラス! うたかたのアリア!」

ラプラス「ラプー」ピヨピヨ

バシィ

恵磨『ああっと、ラプラス混乱して自分を攻撃してしまっている!』

365: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:50:46.93 ID:jbUvCAmo0

恵磨『その間にもバシャーモはどんどんカエンジシに近づいていきます!』

莉嘉「くっ……!」

卯月「そのままスカイアッパー!!」

バシャーモ「バシャ!!」

ドゴォッ

恵磨『こ、これは……』

恵磨『炎を纏ったバシャーモが、天高くカエンジシを突き上げたァァ!!』

366: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:51:57.22 ID:jbUvCAmo0

美穂「! あれは……コンテストでも使ってる卯月ちゃんの得意技!」

響子「フレアドライブとスカイアッパーのコンボ技……それを相手を利用して発動するなんて!」

莉嘉「カエンジシ!」

美嘉「ラプラス、援護するよ! カエンジシにいのちのしずく!」

未央「させるかー! ゲンガー、サイコキネシス!」

ゲンガー「ゲーン」ヌンッ

ゲンガー「ゲゲーン!」グワッ

367: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:52:31.50 ID:jbUvCAmo0

ラプラス「ラプッ……」

恵磨『ラプラス、ゲンガーのサイコキネシスに捕まってしまった!』

ゲンガー「ゲゲーン!」ブゥンッ

ラプラス「ラプッ……!」

恵磨『続けざまにラプラスも空中に放り出されました!』

未央「よーし、決めるよしまむー!」

卯月「うんっ!」

368: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:53:04.02 ID:jbUvCAmo0

卯月「バシャーモ、ブラストバーン!!」

未央「ゲンガー、ヘドロばくだん!!」

バシャーモ「バシャ!!」

ゲンガー「ゲゲーン!!」

ドガァァァン

莉嘉「ああっ、カエンジシー!」

美嘉「ラプラスッ!」

ドサッ

カエンジシ「カエン」バタンキュー

ラプラス「ラプ……」バタンキュー

恵磨『なんとなんと! ライブアイドル、まさかの二体同時ダウーン!!』

ウワァァァァァァァァ

369: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:54:06.42 ID:jbUvCAmo0

瑞樹『やるわね。本気のライブアイドルを相手に鮮やかすぎる立ち回りだわ』

瑞樹『それに、ただ勝っただけじゃない』

ワァァァァァァァ

『卯月ちゃんのポケモン、ただ戦ってるだけでもすげえキマッてるぜ……』

『ああ、バトルライブなのにコンテストを見てるみたいだ!』

瑞樹『コンテスト譲りの卯月ちゃんのポケモンの魅力も、観客にバッチリ伝わっているみたいね』

卯月「やった!」

未央「へへん、どーよ! 今の私たちに死角はないっ!」

莉嘉・美嘉「……」

未央「……あれ?」

370: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:54:58.31 ID:jbUvCAmo0

莉嘉「お姉ちゃん」

美嘉「うん。わかってる、莉嘉」

チャキッ

美嘉「……アンタ達、よくアタシたちを本気にしてくれたね」

未央「えっ……今まで本気じゃなかったの?」

莉嘉「違うよ、本気中の本気って意味ー!」

卯月「ほ、本気中の本気……?」

美嘉「みんな、よく見ててね!」グルッ

美嘉「ここからアタシたちのカレイな逆転劇……見せてあげるから★」

莉嘉「えへへ、やっぱりアタシたちが一番って思わせちゃうもんねー!」

ウオオオォォォォォォォ


371: ◆7P/ioTJZG. 2020/11/27(金) 20:56:10.33 ID:jbUvCAmo0

莉嘉「いっけー、ラティアス!」

美嘉「いくよ、ラティオス!」

ポンッ ポンッ

ラティアス「ティア」

ラティオス「ティオ」

卯月・未央「!?」

恵磨『で、出たァァァ!! ライブアイドル、ここでエースである夢幻ポケモンを送り出しました!!』

376: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:42:07.39 ID:Q/K2NaoQ0

卯月「あ、あの二匹は……」

ラティアス むげんポケモン ドラゴン・エスパータイプ
ガラスのような羽毛で体を包み込み、光を屈折させて姿を変える
テレパシーで人間と気持ちを通わせることもできる

ラティオス むげんポケモン ドラゴン・エスパータイプ
見たものや考えたイメージを相手に映像として見せる能力を持つ
腕を折りたたんで飛べばジェット機を追い越すスピードだ

美嘉「アタシたちの本気……見せてあげるよ」

ラティオス「ティオ!」ギュンッ

未央「は、速い!?」

377: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:43:05.46 ID:Q/K2NaoQ0

ガシッ

バシャーモ「バシャ……!?」

恵磨『目にもとまらぬ速さでバシャーモを捕まえた!?』

ラティオス「ティオ」ブゥン

瑞樹『バトルステージ中央に放り出したわね』

美嘉「さっきのお返しだよ……ラティオス! はがねのつばさ!」

ラティオス「ティオ!」シャキンッ

バシャーモ「バシャ――」

ズバババババババ

バシャーモ「バシャァ……!!」

恵磨『な……なんとラティオス、空中を縦横無尽に飛び回ってバシャーモを切りつけています!』

恵磨『速すぎて……目視できません!!』

378: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:43:54.90 ID:Q/K2NaoQ0

卯月「バシャーモ!」

未央「ダメだ、一発一発のダメージは小さいけど、あれじゃやられっぱなし……!」

未央「ゲンガー、バシャーモを助けにいくよ!」

ゲンガー「ゲゲーン――」

ゲンガー「!?」ピタッ

未央「ゲンガーどうしたの――」

未央「ってええっ!? 女の子!?」

恵磨『どういうことだ、ステージ上に謎の少女が現れたぞ!? まさか乱入者か!?』

未央「ちょっと、近くでバトルを見たい気持ちはわかるけどこんなところにまで……!」

379: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:44:27.18 ID:Q/K2NaoQ0

ボッ

ゲンガー「!?」ドゴォッ

未央「お、女の子が攻撃してきたあ!?」

卯月「未央ちゃん! あれはラティアスの能力だよ!」

莉嘉「そーいうこと! じゃ、ゲンガーちゃんバイバーイ☆」

ゲンガー「ゲゲーン」バタンキュー

恵磨『ここでゲンガーがダウーン!!』

ワァァァァァァ

380: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:45:16.14 ID:Q/K2NaoQ0

バシャーモ「バシャ……」ドサッ

瑞樹『バシャーモはラティオスの連続攻撃を耐えきったみたいね』

美嘉「トドメだよ、ラスターパージ!」

ラティオス「ティオ!」

卯月「躱して!」

バシャーモ「バシャ……!」バッ

恵磨『なんとか攻撃を躱しましたが……』

瑞樹『でももう体力も残りわずかね。この先の展開は未央ちゃんの二匹目次第かしら』

未央「くっそー、相性は悪いけど……やるしかない!」

未央「お願い、ジュカイン!」ポン

ジュカイン「ジュカ!」

381: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:45:54.54 ID:Q/K2NaoQ0

茜「むむむ……未央ちゃんの二匹目はジュカインですか……!」

未央(まだ戦い始めて少ししか経ってないけど、印象としては……)

未央(ラティオスがしぶりんみたいに豪快に攻めてくるタイプで、ラティアスはおそらくトリッキーな攻め方をしてくるか、あるいはさっきのラプラスみたいなサポート型……)

未央(となると、まずはラティアス狙いかな)

未央「しまむー、まずはラティアスから攻撃していくよ!」

莉嘉「そう簡単にいくかなー?」

未央「いけばわかるさ! ジュカイン、リーフブレード!」

382: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:46:38.33 ID:Q/K2NaoQ0

ジュカイン「ジュカ!」バッ

ラティアス「ティア」ヒョイ

恵磨『ラティアス、ジュカインの攻撃をするりと回避!』

未央「やっぱ正面からじゃダメか……!」

卯月「こっちもいくよ! バシャーモ、ブレイブバード!」

バシャーモ「バシャ!」ゴォォ

ラティアス「ティア」ユラリ

恵磨『これも余裕のある動きで躱したー!』

383: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:47:19.22 ID:Q/K2NaoQ0

卯月「く……」

未央「……! しまむー、上!」

卯月「えっ」

ヒュルルルル……

恵磨『こ……これは』

恵磨『りゅうせいぐんだァァァァ!!』

未央「わわっ、ジュカイン避けてー!」

卯月「バシャーモ!」

384: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:48:01.80 ID:Q/K2NaoQ0

ジュカイン「ジュカッ……!」ヒョイヒョイ

バシャーモ「バシャッ……!」ドゴォォォォ

瑞樹『ジュカインは何とか躱せたけど、バシャーモはそうもいかなかったみたいね』

卯月「い、いつの間にあんな大技を……」

未央「ラティアスに気を取られてる間に準備していたんだ……!」

美嘉「どーしたの。死角はなかったんじゃないの?」

未央「うぐっ……」

莉嘉「今度はアタシの番だよ☆ ラティアス、バシャーモにりゅうのはどう!」

ラティアス「ティア!」ボッ

385: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:48:58.91 ID:Q/K2NaoQ0

未央「ジュカイン、庇って!」

ジュカイン「ジュカ!」

ドゴォッ

恵磨『卯月・未央ペア、防戦一方です! まともにダメージを与えられません!』

瑞樹『これがライブアイドルの本気……ね』

未央「つ、強い……!」

卯月「これじゃ……勝てない……!」

莉嘉「ま、アタシとお姉ちゃんにかかればこんなところかなー♪」

美嘉「莉嘉、まだ油断しないで。確実にバシャーモから倒していくよ」

莉嘉「オッケー! ラティアス、ミストボール!」

ラティアス「ティア!」ボッ

386: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:49:37.19 ID:Q/K2NaoQ0

卯月「まだ……倒れるわけにはいきません! バシャーモ!」

バシャーモ「バシャ……!」メラメラ

恵磨『おお、あれはバシャーモの『もうか』ですね!』

卯月「ブレイズキック!!」

バシャーモ「バシャ!!」ゴォォォ

バシィッ

莉嘉「お、なかなかやるじゃーん」

未央「……」

387: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:50:15.82 ID:Q/K2NaoQ0

未央(バシャーモはもう限界が近い……あれを出すチャンスは、今しかない!)

未央「しまむー、次にラティオスの攻撃が来る! それもバシャーモで対処してほしいんだ!」

未央「その後は……たぶん見てたらわかる!」

卯月「未央ちゃん……わかった!」

美嘉「ラティオス、ラスターパージ!」

ラティオス「ティオ!」バッ

卯月「後ろに向かってブレイブバード!」

バシャーモ「バシャ!」ダッッ

388: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:51:55.14 ID:Q/K2NaoQ0

恵磨『おっと、ブレイブバードの勢いを利用したバックステップだ!』

瑞樹『あの大技を回避に使うなんて、ナイスアイデアね』

未央「ありがと、しまむー! これで準備ができた!」

未央「ジュカイン……最大パワーで決めるよ!」

未央「ハードプラント!!」

389: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:52:36.71 ID:Q/K2NaoQ0

ジュカイン「ジュカ!!」ドドドドド

ラティアス・ラティオス「!?」

恵磨『ジュカインの必殺技、ハードプラントが炸裂ゥ! 巨大なツタがラティアスたちを絡め捕ったぞ!!』

莉嘉「ま、またこの技……!」

ラティアス「ティ、ティア……!」

美嘉「ラティオス! 振り切って!」

ラティオス「ティ、ティオ!」グググ

ミシミシ

390: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:53:24.34 ID:Q/K2NaoQ0

未央「まずい、早くしないとラティオスに脱出されちゃう!」

未央「しまむー!」

卯月「こっちも準備完了だよ! バシャーモ!」

卯月「ブラストバーン!!」

バシャーモ「バシャ……!!」ゴゴゴゴゴゴゴ

卯月・未央「いっ――けえええええ!!」

391: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:54:42.21 ID:Q/K2NaoQ0

ドォォォォォォォォォォォォォォン

恵磨『決まったァァァーー!! 前回のライブアイドルも下した、ハードプラントとブラストバーンのコンビネーションだーー!!』

美穂「うわっ……!」

響子「す、すごい……客席まで熱が……!」

??(……なるほど)

??(ただでさえ強力な、しかも『もうか』で上乗せされたブラストバーンでハードプラントごと燃やすことで、さらに威力を増したのね)

??(やるじゃない。さすが私の好敵手(リヴァーレ)だわ、未央)

392: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:55:41.87 ID:Q/K2NaoQ0

バシャーモ「バシャ……」ガクッ

恵磨『全精力を使い果たしたバシャーモ、ここでダウンです!』

瑞樹『ラティアスとラティオスはどうなったかしら……?』

シュゥゥゥゥゥ

未央「……!」

未央「……うそ……」

美嘉「ラスターパージ!」

バッ

ドゴォッ

ジュカイン「ジュカ……」バタッ

393: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/04(金) 21:56:31.38 ID:Q/K2NaoQ0

恵磨『!! なんと……バシャーモだけでなく、ジュカインも倒されてしまったァァ!!』

恵磨『し、しかも……』

莉嘉「ラティアス、いやしのはどう!」

ラティアス「ティア」ポワワー

美嘉「莉嘉、回復ありがと」

莉嘉「へへ、これで二体同時ダウンのお返しもできたね!」

恵磨『に……二体とも、耐えているーー!?』

396: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:12:52.19 ID:mFTTOmlO0
続きです


瑞樹『あの大技を受けても倒れないなんて、凄まじい耐久力ね……!』

未央「……!」

未央(倒しきれなかった……それだけじゃない。ジュカインも倒された)

未央(あと残っているのはしまむーの一匹だけ。でも相手は回復手段まで持ってる……)

未央(……)

未央「……ごめん、しまむー。私がもっとちゃんとしてれば」

未央「今回はダメだったけど、また次、気を取り直して――」

397: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:15:02.09 ID:mFTTOmlO0

卯月「未央ちゃん」

卯月「まだ……私には戦えるポケモンがいる。最後まで、私は諦めないよ」

未央「しまむー……?」

卯月「このバトル、凛ちゃんに届けるんだよね? 未央ちゃんがそんな弱気だったら、凛ちゃんもきっと嬉しくないよ」

卯月「それに私……勝てる気がするんだ」

未央「……え?」

卯月「未央ちゃん。私、実は少し前に、あるポケモンをゲットしたの」

卯月「でも、もし私がこのポケモンを使っているのを知ったらイヤな思いをする人がいるかもしれないって思って、コンテストには一緒に出られてないんだ」

398: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:15:29.32 ID:mFTTOmlO0

卯月「だから今までずっと周りには隠していたんだけど……」

卯月「……でも、きっと今日、この日のために私はこの子をゲットしたのかなって、今は思う」

卯月「私も今日、一歩を踏み出すよ……!」


卯月「お願い、力を貸して! ディアンシー!」

399: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:16:16.18 ID:mFTTOmlO0

ポンッ

ディアンシー「ディア」

恵磨『な……』

恵磨『卯月選手、二体目を繰り出しましたが……このポケモンはいったい……!?』

未央「ディ、ディアンシー……?」スチャッ

???
データ不明

未央(! ポケモン図鑑にもデータがないポケモン……!)

瑞樹『……聞いたことがあるわ。あれはメレシーというポケモンの突然変異種、ディアンシーよ』

瑞樹『だけど野生個体は世界でも数えるほどしかいないはず。卯月ちゃん、どうやってゲットしたのかしら……』

400: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:16:49.90 ID:mFTTOmlO0

美穂「卯月ちゃん、いつの間にあんなポケモンを……」

響子「私も初めて見た……きれいなポケモン」

莉嘉「……珍しいポケモンだか何だか知らないけど!」

美嘉「たった一匹でアタシたちを倒せる?」

卯月「倒せます……こうすれば!」チャキッ

卯月「メガシンカ!」


401: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:17:21.49 ID:mFTTOmlO0

カッ

恵磨『!? あれは……まさか!』

恵磨『前回のポケモンリーグチャンピオン決定戦で起きた未知の現象、メガシンカ!?』

未央「……!!」

ズドンッ

メガディアンシー「ディアッ」

美嘉「メ、メガシンカ!?」

莉嘉「なにあれ、ポケモンが光って……!」

パァァァァ

402: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:18:02.47 ID:mFTTOmlO0

恵磨『うっ……あのポケモンから、直視できないほどまばゆい輝きが放たれています……!』

茜「ま、まぶしい……!!」

卯月「ディアンシー、ダイヤストーム!」

メガディアンシー「ディア!!」ゴォォォォォ

ラティアス「ティアッ……!」

ラティオス「ティオッ……!」

莉嘉「もう、何なのよー!」

美嘉「うろたえないで、莉嘉! 冷静に攻めればきっと勝てる!」

美嘉「ラティオス、はがねのつばさ!」

ラティオス「ティオ!」グンッ

ガキンッ

403: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:18:47.48 ID:mFTTOmlO0

メガディアンシー「ディア」

美嘉「そんな、効いてない!?」

美嘉「なら……ラスターパージ!」

莉嘉「ミストボール!」

バッ ボッ

恵磨『同時に放たれた攻撃がディアンシーに襲い掛かります!』

卯月「ムーンフォース!」

メガディアンシー「ディア!」パァァ

バシィッ!!

瑞樹『……すごいわ。完全に防げなかったとはいえ、二匹の攻撃をあそこまで抑え込むなんて』

404: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:19:27.50 ID:mFTTOmlO0

未央「……」

卯月「未央ちゃん、手を貸して」

未央「……え?」

卯月「凛ちゃんに届けよう。私たちの輝きを……!」

未央「……うん!」

未央(不思議……手を繋いでるのはしまむーだけなのに、しぶりんの存在も感じる)

卯月「これで……終わりです!」


卯月・未央・凛「「「ダイヤストーム!!!」」」

405: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:20:10.25 ID:mFTTOmlO0

メガディアンシー「ディア!!」

ゴォォォォォッ!!

莉嘉「うわあ……!」

美嘉「くっ……!」

恵磨『……!!』

ラティアス「ティアッ……」

ラティオス「ティオッ……」

バタッ

恵磨『しょ……勝負アリィィィィ!!』

恵磨『なんと、卯月・未央ペア……本気のライブアイドルを下しましたァァァァ!!!』

ドワァァァァァァァァァ

406: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:21:14.49 ID:mFTTOmlO0

未央「……か、勝った……」

未央「いやったーーー!! 勝ったよしまむーー!!」

卯月「未央ちゃんっ! やったねっ!!」

メガディアンシー「ディアッ♪」

莉嘉「うう、ラティアスとラティオスが倒されちゃうなんて……」

美嘉「……悔しいけど、負けは負けだね。二人とも、おめでとう」

美嘉「これ、ゴールドコインね。受け取って」

未央「ありがとう!」

卯月「ありがとうございます!」

莉嘉「いやー、すごいバトルだったね! 負けたの久々だから、アタシもすっごい悔しいよ」

407: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:21:56.40 ID:mFTTOmlO0

美嘉「そうだね、だからまた挑戦しに来てよ。次は『プラチナ』のメダル、用意しとくからさ」

「……」

未央「え?」

卯月「え?」

莉嘉「え?」

莉嘉「お、お姉ちゃん、バトルライブの最高ランクはゴールドメダルだよ。プラチナなんてあったっけ……?」

美嘉「うん。だって今アタシが作ったもん」

莉嘉「は、はあっ!?」

408: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:22:34.22 ID:mFTTOmlO0

美嘉「アンタもこのまま負けっぱなしじゃ終われないでしょ。そうだね……次は71連勝してきたら、また相手してあげるよ」

卯月・未央「な、71連勝!?」

莉嘉「ちょっとお姉ちゃん! そんな勝手に……!」

美嘉「……アタシね、本当はすごく負けず嫌いなんだ。アンタたちに勝つまで、どこまでだって強くなってみせる。さっきのメガシンカだって、いつか使いこなしてみせる」

美嘉「次こそは、負けないよ」

未央「……!」

卯月「……!」

409: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:23:13.16 ID:mFTTOmlO0

…………………………

未央「茜ちん、撮影ありがと!」

未央「――というわけで! 私たち、宣言通りゴールドメダルをゲットしちゃいましたぁ!」

卯月「ふふっ、すごくキラキラしていますね!」

未央「だがしかし! 私たちがあまりにも強すぎたせいでゴールドメダルより上のランクが作られちゃった! ということは、私たちはこれにもチャレンジしなきゃならないのかっ!?」

未央「私たち二人のさらなる活躍にご期待を……ってことで! これにて『卯月と未央のグレートジャーニー!』、無事終了! お相手は……」

未央「未央ちゃんでしたっ!」

卯月「卯月でした~!」

410: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:23:51.74 ID:mFTTOmlO0

未央「……ふう、これで撮影完了!」

茜「未央ちゃん、卯月ちゃん、お疲れ様でした!」

美穂「二人とも、ゴールドメダルゲットおめでとう!」

響子「卯月ちゃん、すっごくかっこよかったよ!」

未央「おお、P.C.Sの二人まで! サインもらっちゃおうかな~」

未央「ってそうじゃない! ねえしまむー! あれは何だったの!?」

卯月「あれって……ディアンシーとメガシンカのこと?」

未央「それ以外に何があるの! あんなにすごいポケモンを持ってたなんて……それにメガシンカまで」

411: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:25:04.01 ID:mFTTOmlO0

未央「しかも隠してたってことは、二人も知らなかったってことでしょ?」

美穂「う、うん……」

響子「私も初めて知ったよ。卯月ちゃんがあんなポケモンを持っていたなんて」

卯月「……」

卯月「ディアンシーは、さっきも言ったとおり、少し前――凛ちゃんが旅立った直後くらいにゲットしたの。その時、不思議な石を持っていたんだけど、真奈美さんに見せたら、メガストーンだって言われたんだ」

卯月「そのことを昔ガナハでお世話になった師匠に相談したら、『いつか卯月に渡そうと思っていた』ってキーストーンももらっちゃって……」

412: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:26:29.91 ID:mFTTOmlO0

卯月「でも師匠によると、ディアンシーは世界一美しいポケモンと言われているんだって。だから正直、この子をコンテストに出場させることは、ズルになるんじゃないかって思って」

卯月「それで美穂ちゃんや響子ちゃんには隠していたの。二人とも、黙っててごめんなさい」

美穂「そうだったんだ……」

卯月「それにメガシンカのことも、未央ちゃんが知ったらどう思うんだろうって考えたら、不用意に使おうとは思えなかった。私が未央ちゃんの立場だったら、なんで私だけ使えないんだろうって悩むかもしれないって……」

未央「……」

413: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:27:14.69 ID:mFTTOmlO0

卯月「もちろんライブバトルにもエントリーさせるつもりじゃなかったんだけど、未央ちゃんが頑張ってゴールドメダルを獲ろうとしているなら、力を借りなきゃいけないかもしれない……そう思って、ライブアイドル戦の前に手持ちに加えたんだ」

卯月「……隠していたことは、これで全部です」

卯月「……ずっと、どうしてこの子が私のポケモンになってくれたんだろうってもやもやしていたんだけど、でも今日、答えが見えた気がしたよ」

卯月「きっとこれは、凛ちゃんからのプレゼントなのかも、って」

未央「……きっとそうだよ。しまむーはもうずっと前に、しぶりんからのプレゼントを受け取っていたんだね」

未央「ってことは……次は当然、私の番だよね!」

卯月「未央ちゃん……」

414: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:28:05.92 ID:mFTTOmlO0

未央「しまむー、全部話してくれてありがとう。でももう後ろめたく思わないでよ。だって私たち、親友じゃん?」

未央「それに、ディアンシーを見て思ったんだ。世界はまだまだ広い……今はまだ知らなかったり、手に入らなかったりするけど、いつか自分のものになるかもしれない宝物がたくさんあるって!」

未央「だから……これからも、一緒に冒険しようね!」

卯月「……うんっ! 私も、まだまだ知らない世界、未央ちゃんたちとたくさん見ていきたいっ!」

茜「うう、美しき友愛……! 私、猛烈に感動していますっ!」

未央「ちょっと、なんで茜ちんが泣くのさー」

アハハハハ……

415: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/05(土) 13:30:04.23 ID:mFTTOmlO0

…………………………

未央『……ってことで! これにて『卯月と未央のグレートジャーニー!』、無事終了! お相手は……』

未央『未央ちゃんでしたっ!』

卯月『卯月でした~!』

「……」

未央『この動画が、しぶりんのもとまで届きますようにっ!』

「……ちゃんと届いたよ。卯月、未央」



Our Journey will Continue!

サブストーリー『卯月と未央のグレートジャーニー!』Fin.

420: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 20:34:39.32 ID:dwIyoQkx0

ナックルシティ

凛「ついにたどり着いたね」

藍子「……ナックルシティ。ようやく挑めるんですね、このジムに……!」

藍子「しかも相手は美波さんですら手も足も出せない最強のジムリーダー……うう、私、すごく緊張してきました」

凛「大丈夫だよ。道中のワイルドエリアでもたくさん特訓してきたけど、藍子は今までより格段に強くなってる」

凛「やっぱり、美波にコーチを頼んで間違いなかったね」

藍子「はい。すごく厳しかったですけど……おかげですごく強くなれた気がします!」

凛「……よし、じゃあ今日はもう遅いから、宿に泊まってゆっくり休もうか」

藍子「はいっ!」

421: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 20:35:53.50 ID:dwIyoQkx0

凛「そうだ。今の藍子が相手なら、おそらく珠美はメガシンカを使ってくるはず」

藍子「メガシンカ……前に試合を見た時にも使っていましたよね。エルレイドの姿が変わった現象のことですか?」

凛「うん。私はあれについてそれなりの知識があるから、役に立ちそうな情報は教えておくよ」

藍子「ありがとうございます! 凛さん、メガシンカにも詳しかったんですね」

凛「ま、まあね」

凛(……そういえば、藍子にはまだ言っていなかったな。私がメガシンカを使えること)

凛(藍子にとっては知らなくてもいい情報だと思ったから今まで言わなかったんだけど)

凛(……話すべきだろうか)


423: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:01:31.72 ID:dwIyoQkx0

凛(せっかくの機会だし、話してみようかな)


その夜

凛「まず、メガシンカについてだけど」

凛「例えば藍子のゴリランダーは、もう最終進化形に達している。だからこれ以上進化のタイミングが訪れることはない。そうだよね?」

藍子「はい」

凛「ただ、一部のポケモンはさらにその上をいく進化――言うなれば、進化を超えた進化が発現することがあるんだ」

藍子「進化を超えた進化……あの時のジムトレーナーさんも、そう言っていましたね」

藍子「キョダイマックスと似たようなものなのでしょうか」

凛「厳密にはすごく違いがあるんだろうけど、そうなのかもね」

凛「キョダイマックスと同じなのは、パワーアップしてポケモンの姿は変わるけど、あくまでも一時的な変化ってこと。それから、ダイマックスバンドのように
道具が必要ってことかな」

424: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:02:34.65 ID:dwIyoQkx0

凛「……実は、私が持っているペンダントにも、メガシンカに必要な道具――キーストーンが埋め込まれているんだ」チャラ

藍子「へえ、これがキーストーン――」

藍子「ってええっ!? それじゃ凛さんも、メガシンカが使えるんですかっ!?」

凛「ま、まあ、ね」

藍子「そんな、もっと早く言ってくださいよ……!」

凛「ごめんね、黙ってて。ただ、この力はあまりにも強すぎるから、今までのジム戦ではあえて封印してたんだ」

凛「今後も使う予定はないかな……珠美が使ってきたら別だけど」

藍子「そ、そうだったんですね……」


425: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:03:14.79 ID:dwIyoQkx0

凛「ただ、メガシンカは誰でも使えるってわけじゃないみたい。発動するには、トレーナーとポケモンの絆が必要なんだって」

凛「だからこれを使えるトレーナーは、ただ強いだけじゃない。ポケモンを愛していて、絶対的な信頼関係を築いている……そんな、精神的にも強いトレーナーなんだ」

凛「私も何度か戦ったことがあるけど、メガシンカはとても強い。たった一匹で戦況をひっくり返す可能性を秘めている」

藍子「前に見たときは、キョダイマックスしたカジリガメが一撃で倒されていましたからね……」

凛「うん。小細工は一切ない。単純に、圧倒的なパワーを持つ存在なんだ」

426: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:03:45.21 ID:dwIyoQkx0

凛「対策としては……なるべく手持ちのポケモンを温存して戦っていく。それこそ全員がかりで倒していくぐらいの覚悟で挑まないと倒せないかもね」

藍子「メガシンカされる前に苦戦していたら、話にならないっていうことですよね……」

凛「そういうことだね」

藍子「わかりました。アドバイス、ありがとうございます」

藍子「どこまでやれるかわかりませんが……明日は精一杯やってみます!」

凛「その意気だよ。じゃ、そろそろ寝ようか」

藍子「はい、おやすみなさい!」

……………………………………

427: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:04:44.26 ID:dwIyoQkx0

凛(……)

凛(……?)

ムクッ

凛(藍子……?)

藍子(あ、凛さん……ごめんなさい。起こしちゃいましたね)

凛(……眠れないの?)

藍子(はい。これまでの旅のこと、思い出していたら……)

藍子(シュートシティを出てから、本当に初めてのことばかりだったのに……気づいたら、これが最後のジム戦で)

藍子(長いような、短いような……そんな旅だったなあって、思い返していたんです)

428: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:05:27.06 ID:dwIyoQkx0

凛(そうだね。私も藍子と旅を始めてから、時間が経つのがすごく早かった。それだけ充実した旅だったんだろうね)

藍子(ふふっ。凛さんもそう思ってくれていたら、すごく嬉しいです)

藍子(……あの、凛さん)

凛(……? どうしたの、真剣な目をして)

藍子(……)

藍子(いえ、やっぱり何でもないです。明日のバトル、しっかり見ていて下さいね)

藍子(……おやすみなさい)

凛(うん。おやすみ)

429: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:06:12.81 ID:dwIyoQkx0


翌日

藍子「行ってきます、凛さん!」

凛「頑張ってね」

ジムのスタッフ「ではチャレンジャー、こちらのエレベーターから地下に降りて下さい!」

藍子「はい!」

ウイィィィン

ガラッ

藍子「ここは――」

藍子「!!」

430: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:06:50.06 ID:dwIyoQkx0

ジムトレーナー「おっ、誰かと思えば! あの時一緒に珠美の試合を見たお嬢ちゃんだよな!?」

藍子「あっ、ジムトレーナーさん! お久しぶりです、藍子です!」

ジムトレーナー「久しぶりだなァ! そうかそうか、ついにジムバッジを7つ集めたのか! よく来たなあ!」ポンポン

藍子「あ、ありがとうございます……それより、この場所は?」

ジムトレーナー「おっとそうだった。今のお嬢ちゃんは観客じゃなく、立派なチャレンジャーだもんな」

ジムトレーナー「よし、じゃあこのジムでのミッションを説明するぜ」

431: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:07:28.99 ID:dwIyoQkx0

ジムトレーナー「ここは見ての通り地下だ。ナックルシティの地下には巨大なプラントが置かれていて、ガラル中にエネルギーを供給しているんだが」

ジムトレーナー「珠美はその一部を大胆に改造して、人口のダンジョンを作り上げちまったのさ!」

藍子「ダ、ダンジョン……!?」

ジムトレーナー「ああ、スゲェだろ? どうやら別の地方にある『チャンピオンロード』っつーのを意識したみてぇだな」

ジムトレーナー「お嬢ちゃんに課せられたミッションは、このダンジョンを踏破すること。それだけだ」

432: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:08:19.03 ID:dwIyoQkx0

藍子「踏破……どんどん先へ進んでいけばいいんですね」

ジムトレーナー「ああ。だが簡単に通すつもりはねえ。あちこちにジムトレーナーが待ち構えているから、そいつら全員をぶっ倒してくれ」

ジムトレーナー「これまでのジムトレーナーは小細工のついでに戦うようなヘナチョコばかりだったかもしれねぇが、今回は違う。どいつもこいつもガラルの外ではジムリーダーになれるレベルのエリート達だ」

藍子「……!」

ジムトレーナー「そしてオレもその一人ってわけよ。っつーわけで、さっそくお手並み拝見といくぜ!」

ジムトレーナー「もちろん派手に戦ってもプラントには影響しないから、その辺は遠慮しなくていい。さあ、お嬢ちゃんの本気を見せてくれ!」ポンッ

433: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:08:49.36 ID:dwIyoQkx0

ボスゴドラ「ボスッ!」

ボスゴドラ てつヨロイポケモン はがね・いわタイプ
山一つを自分の縄張りにしていて荒らした相手は容赦なくたたきのめす
鎧のキズは戦いの勲章だ

藍子「ボスゴドラ……ならこっちはゴリランダーです!」ポンッ


……………………

藍子「今です! ドラムアタック!」

ゴリランダー「ゴリ!!」

ドゴオッ

434: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:09:28.47 ID:dwIyoQkx0

藍子「よし、決まった……」

ジムトレーナー「まだだ! ボスゴドラ、メタルバースト!!」

ボスゴドラ「ボスッ!!」パァァ

ズバァン

ゴリランダー「ゴリ……」ドサッ

藍子「……!! ゴリランダー!」

ボスゴドラ「ボス……」ドシャン

435: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:10:25.13 ID:dwIyoQkx0

ジムトレーナー「どうやら相討ちみてえだが、手持ちの数ではお嬢ちゃんの勝利だったか。いいぜ、先に進みな」

ジムトレーナー「だが、この先も厳しい戦いが続くだろう。腹括っていきなよ」

藍子「……はい!」

藍子(さすが最後のジム……ジムトレーナーのレベルも今までとは桁違いだ)

藍子(温存なんて考えていられない。全部のバトルが総力戦と思っていかないと)


………………………………

藍子「これで……終わりです!」

ドゴオッ

436: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:11:34.31 ID:dwIyoQkx0

マルヤクデ「マルー……」バタンキュー

ジムトレーナー「あちゃー! 負けちゃったかあ」

藍子「はあ……はあ……」

ジムトレーナー「おめでとー。これでジムトレーナーは全員倒したね。次はジムリーダーだよー」

ジムトレーナー「でもキミ、なかなか疲れてるみたいだねー。先に進む前に、あれ、使いなよー」

藍子「あれ……?」

藍子「! あれはポケモンセンターに置いてある回復マシンですか!?」

ジムトレーナー「そだよー。このジムだけの特別サービス。自由に使っていいんだってー」

ジムトレーナー「じゃ、この後も頑張ってねー」

藍子「……ここはありがたく使わせてもらいましょう」

テンテンテレテン♪

437: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:12:05.96 ID:dwIyoQkx0

藍子「……このエレベーターを上がれば、スタジアム……」ゴクリ

藍子「よし……行こう!」

ウイィィィン

ガラッ

ウワァァァァァァ

珠美「ようこそ、チャレンジャー」ザッ

藍子「! あなたがジムリーダー……珠美さんですね」

438: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:13:40.62 ID:dwIyoQkx0

珠美「……ご存知でしたか。いかにも、ナックルシティジムリーダーの珠美と申します」

珠美「よくぞここまで辿り着きましたね。7人ものジムリーダーを下し、地下ダンジョンを抜け、こうして珠美の前に立っているだけでも、あなたは充分に素晴らしいトレーナーです」

珠美「そんなトレーナーと手合わせできること、光栄に思います」

珠美「下の回復マシンも使われたでしょうし、準備は万端と見ました……ではさっそく、いきましょうか」スチャッ

藍子「……はい1」チャキッ

珠美「使用ポケモンは無制限です。ただし先に4匹が戦闘不能になった時点で決着とします。ダイマックスも使用可能です」

439: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:15:14.91 ID:dwIyoQkx0

珠美「道中の戦闘でお察しかとは思いますが、ナックルジムに専門タイプはありません。敢えて言うなら……マルチタイプ、といったところでしょうか」

珠美「試されるのはあなたとポケモンとの絆、知略、勇気、そして意志です。意志なき攻撃は、珠美には届きません」

珠美「持てる力全てを存分に発揮し……共にこの瞬間を楽しみましょう。いざ尋常に、勝負っ!」

ジムリーダーの珠美が勝負をしかけてきた!


藍子 手持ちポケモン

ゴリランダー (しんりょく) Lv57
ドラムアタック/アクロバット/ちょうはつ/いやなおと

マホイップ (スイートベール) Lv56
マジカルシャイン/てんしのキッス/デコレーション/あまいかおり

サニーゴ (はりきり) Lv55
アクアブレイク/パワージェム/じたばた/いのちのしずく

ドラメシヤ (すりぬけ) Lv49
おどろかす/でんこうせっか/かみつく/みがわり

ヤドン (マイペース) Lv54
サイコキネシス/なみのり/しねんのずつき/かなしばり


440: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/11(金) 21:16:33.66 ID:dwIyoQkx0
今回はここまで。安価へご協力いただきありがとうございました。お疲れ様でした

444: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:26:15.96 ID:6kKIE8vR0

珠美「まずは先鋒、ネギガナイトがお相手します!」ポンッ

ネギガナイト「ネギガ」

ネギガナイト かるがもポケモン かくとうタイプ
ガラル地方に暮らすカモネギが歴戦を生き抜き、戦いの果てに進化した
愛用のネギが枯れるとき、静かに戦場を去るという

藍子「ヤドン、お願い!」ポンッ

ヤドン「……やどーん」

445: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:27:16.50 ID:6kKIE8vR0

ワァァァァァァァァ

珠美「ネギガナイト、つるぎのまい!」

ネギガナイト「ネギガ!」シャキンッ

凛(つるぎのまい……攻撃力を格段に上げる技だ)

凛(さっき珠美は専門タイプを持っていないと言った。ならエスパータイプに有利なポケモンも持っているはず)

凛(なのに能力を上げてきたということは……ネギガナイトで勝負するということか)

藍子「ヤドン、サイコキネシスです!」

ヤドン「……」

446: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:27:58.69 ID:6kKIE8vR0

ヤドン「……やどーん」

フワッ

珠美「なるほど、自分自身にサイコキネシスを……」

藍子「いきます! しねんのずつき!」

ヤドン「やどーん」ギュンッ

珠美「サイコパワーを推進力に変えての突進……面白い戦法ですね。ネギガナイト!」

ネギガナイト「ネギガ!」ガキンッ

447: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:28:54.94 ID:6kKIE8vR0

藍子(盾で防がれた……でも!)

藍子「ヤドン、押し切って!」

ヤドン「やどーん」グググ

珠美「そうはいきませんよ、ぶんまわす!」

ネギガナイト「ネギガ!」ブウンッ

ヤドン「!」ドゴオッ

藍子「ヤドン!」

藍子「……やっぱり、つるぎのまいの効果もあって、すごいパワーだ……!」

448: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:29:37.46 ID:6kKIE8vR0

藍子「ヤドン、もう一度いける!?」

ヤドン「……や、やどーん」フワッ

ギュンッ

ネギガナイト「ネギガ……!」ガキンッ

珠美「かなりの威力ですが、この程度なら盾で防ぎきれますね――」

珠美「!! いや、ネギガナイト、いなしてください!」

ネギガナイト「ネギガッ!」ガッ

『な、なんだ? 急にどうした?』

『……! 見て、あれ!』

449: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:30:42.92 ID:6kKIE8vR0

ピシッ

『あっ、ネギガナイトの盾にヒビが!』

珠美「ただ突撃してきただけでなく、漏れ出るサイコパワーで盾を蝕んでいたのですね」

藍子「これでもうガードはできません。次で決めます!」

珠美「ならば、こちらも守りを捨てて全力で対峙いたしましょう!」

ネギガナイト「ネギガ!」ポイッ

凛(! ネギガナイトが盾を捨てた……!)

ネギガナイト「ネギガ!」ググッ

藍子(ネギを両手で持った……大技が来る……!)

藍子「ヤドン、私たちもいきますよ!」

450: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:31:27.60 ID:6kKIE8vR0

珠美「紫電一閃! スターアサルト!!」

藍子「しねんのずつきです!」

ネギガナイト「ネギガァァ!!!」ズギュンッ

やどん「やどーん」ギュンッ

ズドォォォォォン

藍子・珠美「……!!」

ヒュルルルル

ヤドン「……やどーん」ドサッ

藍子「ヤドン!!」

ネギガナイト「ネ……ギ……ガ……」バタッ

ドローンロトム『ヤドン、ネギガナイト、共に戦闘不能!』

451: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:32:32.40 ID:6kKIE8vR0

珠美「まずは相討ちですか。ネギガナイト、ご苦労様でした」

藍子「ヤドン、頑張ったね」シュゥゥ

藍子(残りあと3体……メガシンカのことを考えると、これ以上は手持ちを減らすわけには……)

藍子(……いえ、今は目の前のバトルに集中しないと)

藍子「ドラメシヤ、お願い!」ポンッ

ドラメシヤ「ドララー!」

珠美「中堅、ガラガラ! 推して参る!」ポンッ

ガラガラ「ガラ」

凛(! あのガラガラ……骨の先に炎が灯っている。それに体色もなんだか禍々しい)

凛(もしかして、あれもリージョンフォーム?)

*ガラガラ ほねずきポケモン ほのお・ゴーストタイプ
アローラのすがた
仲間を弔う踊りを踊る習性がある
骨に灯った呪いの炎はいつまでも治らない痛みを体と心に残す

452: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:33:39.55 ID:6kKIE8vR0

珠美(あのドラメシヤ……なるほど、そういうことですか)

珠美「受けて立ちましょう! ガラガラ、つるぎのまい!」

ガラガラ「ガラ」シャキンッ

藍子「ドラメシヤ……こんなにたくさんの人の前でバトルするの、久しぶりだよね」

藍子「もしかしたら怖いかもしれないけど、大丈夫。私を信じて!」

ドラメシヤ「ドラッ」

藍子「かみつく!」

珠美「シャドーボーンです!」

ガラガラ「ガラッ!!」ブウン

藍子「! 避けて!」

ドラメシヤ「ドラッ!」ヒョイッ

453: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:34:14.71 ID:6kKIE8vR0

藍子「おどろかす!」

ドラメシヤ「ドララ!」バアッ

ガラガラ「ガラ!?」

ドラメシヤ「ドララwww」

藍子(……あと少し。あと少しで……!)

藍子「かみつく!」

珠美「させません!」

ガラガラ「ガラ」ブンッ

ドラメシヤ「ド、ドラッ!?」

454: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:34:53.04 ID:6kKIE8vR0

珠美「フレアドライブ!!」

ガラガラ「ガラ!!」ゴォォォォォ

藍子「ドラメシヤ!」

ドラメシヤ「ドラ――」

ズドォォォン

凛(喰らってしまった……)

凛(……いや!)

バッ

ドラメシヤ?「ドラッ!」バッ

ガラガラ「!」バシィ

珠美「む……あのフレアドライブを受けてなお無傷とは」

455: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:35:41.17 ID:6kKIE8vR0

シュゥゥ……

身代わり人形「」コテッ

珠美「みがわり……いや、それだけじゃない!」

藍子「今です!」

バッ

ドロンチ「ドローン!」ガブゥ

ガラガラ「ガラ!?」

珠美「やはり図っていたのですね、進化のタイミングを!」

ドロンチ せわやくポケモン ドラゴン・ゴーストタイプ
時速200キロで飛行し、ドラメシヤと共に戦う
世話をするドラメシヤを頭に乗せていないと落ち着かない

456: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:36:58.32 ID:6kKIE8vR0

『おおっ、ドロンチに進化したあ!!』

珠美「さきほど飛び出してきたドラメシヤはドロンチの連れ子でしたか!」

藍子「はい、ここからは一緒に戦います!」

藍子「ドロンチ、りゅうのはどう!」

ドロンチ「ドローン!」バババ

珠美「ガラガラ、防いで下さい!」

ガラガラ「ガラ!」バシィ

藍子「ドラメシヤ、横です!」

ドラメシヤ「ドラ!」ガブゥ

ガラガラ「ガラッ……!」

ドラメシヤ「ドララwww」

ドロンチ「ドローンwww」

457: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:38:02.52 ID:6kKIE8vR0

珠美「……これは少々厄介ですな。ですが珠美は退きませんよ!」

ガラガラ「ガラッ!」シャキンッ

藍子「! またつるぎのまい……!」

珠美「狙うは頭領! ガラガラ、シャドーボーン!」

ガラガラ「ガラ!」ブウンッ

ドロンチ「ドローン」サッ

珠美「もう一振り、いきますよ!」

ガラガラ「ガラッ!」ブウンッ

藍子「も、もう一回!? ダメ、躱せない……!」

458: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:39:14.40 ID:6kKIE8vR0

ドラメシヤ「ドラー!」ビュン

ドゴオッ

ドロンチ「ド、ドロン!?」

藍子「ドラメシヤ!?」

ドラメシヤ「ドラ……」バタンキュー

珠美「……これで一騎討ちができそうですね」

ドロンチ「……」ギリッ

ドロンチ「ドロォォォォン!!」

凛(! ドロンチの様子が……!?)

藍子「ド、ドロンチ!? どうしたの!?」

459: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:40:13.89 ID:6kKIE8vR0

ドロンチ「ドロォォン!!」バババ

ガラガラ「ガラッ……」バシィ

珠美「むむ……!」

ドロンチ「ドロン!!」ガブゥ

グワッ

ドロンチ「ドロォォォン!!」ブンッ

ズドンッ

藍子「! ガラガラに噛みついて、投げ飛ばした……?」

ガラガラ「ガラッ……」バタンキュー

ドローンロトム『ガラガラ戦闘不能! ガラガラ戦闘不能!』

460: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:40:54.83 ID:6kKIE8vR0

『な、なんだ? どうしたんだあのポケモン?』

『急にキレ出したな……トレーナーの言うことも聞いてなかったぞ』

藍子「ド、ドロンチ……」

ドロンチ「ドロォォォォン!!」

藍子「落ち着いて、ドロンチ! どうしたの!?」

珠美「……ドロンチはドラメシヤの世話をすることで知られていますが、そのドロンチは殊の他ドラメシヤへの愛情が強いようですね」

珠美「だからこそドラメシヤを傷つけられて逆上してしまったのでしょう」

461: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:42:21.38 ID:6kKIE8vR0

珠美「……しかし、藍子殿の指示も頭に入っていない様子。これではまともに戦えません」

珠美「一度ボールに戻すことを推奨します」

藍子「は、はい。ドロンチ、戻って!」シュゥゥ

珠美「進化のタイミングを合わせるという作戦は面白かったですが、今一つポケモンへの理解が足りていなかったようですね」

藍子「うう……」

462: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/19(土) 00:43:11.88 ID:6kKIE8vR0

珠美「まあいいでしょう。次は副将、ダイケンキがお相手します!」ポンッ

ダイケンキ「ダイ!」

ダイケンキ かんろくポケモン みずタイプ
ミジュマル時代から愛用のホタチはアシガタナという武器に変化した
前足のヨロイの一部に組み込まれ、目にもとまらぬ速さで使いこなすという

藍子「ゴリランダー、お願い!」ポンッ

ゴリランダー「ゴリ!」

藍子(あと、2匹……!)

467: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/26(土) 00:20:03.72 ID:2LnlWJ3c0

藍子「ゴリランダー、ドラムアタック!」

ゴリランダー「ゴリ!!」ドンドコドンッ

ダイケンキ「ダイ!」シャキン

スパッ スパッ スパッ

藍子「そんな、木の根が!」

珠美「そのまま斬りかかってください!」

ダイケンキ「ダイ!!」ズバッ

藍子「ゴリランダー!」

珠美「今のはただの斬撃にあらず。『れんぞくぎり』の効果によって更なるダメージを叩き込ませてもらいましたよ」

468: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/26(土) 00:21:18.10 ID:2LnlWJ3c0

凛(れんぞくぎり……技を出せば出すほど威力が上がる技だ)

凛(ただ攻撃を打ち消すためじゃなく、次の反撃に繋げるための攻撃か……)

藍子「っ……ドラムアタックは逆効果、ということですか……」

珠美「その通り。相性の有利不利など、珠美には些末な問題でしかありません」

珠美「ダイケンキ、れいとうビームです!」

ダイケンキ「ダイ!」バババ

ゴリランダー「ゴリッ」ヒョイッ

藍子「なら……これならどうですか! ゴリランダー!」

ゴリランダー「ゴリ!」ドンドコドンッ

グワッ

469: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/26(土) 00:24:31.98 ID:2LnlWJ3c0

珠美「ダイケンキ!」

藍子「そこです! ウッドハンマー!!」

ゴリランダー「ゴリ!!」

ドガッ

ダイケンキ「ダイッ……」グラッ

ダイケンキ「!!」

ズドドドド

藍子「やった!」

珠美「くぅ……体勢を崩されましたか」

珠美「ですがまだまだここから! ダイケンキ、れんぞくぎりの構え!」

470: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/26(土) 00:25:22.69 ID:2LnlWJ3c0

ダイケンキ「ダイ!」シャキン

藍子(次こそは……!)

藍子「ドラムアタックです!」

ゴリランダー「ゴリ!!」ドンドコドンッ

珠美「その技は既に攻略済みですぞ!」

ダイケンキ「ダイ!!」ズバッ

ドガッ

ダイケンキ「ダ、ダイッ……!」

珠美「……やや!?」

ズドドドド

ダイケンキ「ダイ……」バタンキュー

ドローンロトム『ダイケンキ戦闘不能! ダイケンキ戦闘不能!』

471: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/26(土) 00:26:18.70 ID:2LnlWJ3c0

珠美「なんと、反撃が間に合わなかった……!」

藍子「ドラムアタックは素早さを下げる効果のある技です」

藍子「最初の攻撃を見た時に、ダイケンキは余裕で木の根を切り裂いている様子ではありませんでした。だから一度素早さを下げられれば、次は確実にヒットさせられると思ったんです」

珠美「……なるほど。それを瞬時に見抜き、行動に移されたのですね」

珠美「実に見事な観察眼と腕っぷし。まさか、これを全て独学で身につけられたのですか?」

藍子「いえ……直接教わったわけではないんですが、私にはコーチがいるんです。強くて優しくてかっこよくて、いつも私を見守ってくれる……憧れの人です」

珠美「そうですか。互いに、よき師に恵まれてきたようですね」

472: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/26(土) 00:27:04.02 ID:2LnlWJ3c0

珠美「さて、残すは大将のみとなってしまいました。ですが大将とはチームの切り札。珠美も全幅の信頼を寄せる存在です」

珠美「さあ、藍子殿。珠美を下し、その先の道を切り拓いてください!」

珠美「エルレイド、よろしくお願いします!」ポンッ

エルレイド「エル」

ワァァァァァァ

『待ってたぜエルレイドォー!』

『ここから珠ちゃんの逆転劇が始まるぜー!』

凛(……)

藍子「ゴリランダー、戻ってください」シュゥゥ

藍子(エルレイド……きっとメガシンカも使ってくるはず。凛さんが言っていたように、総力戦で臨まないと……!)

473: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/26(土) 00:27:54.54 ID:2LnlWJ3c0

藍子「まずは……マホイップ、お願いします!」ポンッ

マホイップ「マホ~」

珠美「エルレイド、サイコカッター!」

エルレイド「エル」ズバッ

藍子「躱して!」

マホイップ「マ、マホッ」

藍子(……わかる。あの気迫……持てる全てを出し尽くさないと勝てない!)

藍子「てんしのキッス!」

マホイップ「マホ」チュッ

エルレイド「!!」

エルレイド「エル……」ピヨピヨ

474: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/26(土) 00:29:10.99 ID:2LnlWJ3c0

藍子「よし、今のうちに……デコレーション!」

マホイップ「マホ」シュシュシュ

珠美「む、能力を上げられてしまいましたか。エルレイド、サイコカッター!」

エルレイド「エルー」バシィ

藍子「行動不能になってる……今がチャンスです! マジカルシャイン!」

マホイップ「マホ~!」ピッカァ

エルレイド「……!」ズバァン

475: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/26(土) 00:29:42.51 ID:2LnlWJ3c0

珠美「たしかに強烈な一撃ですが、おかげで目が覚めたようですね!」

珠美「つるぎのまい!」

エルレイド「エル!」シャキンッ

藍子「もう一度てんしのキッス!」

珠美「二度目はありませんよ!」

エルレイド「エル!」バッ

珠美「サイコカッター!」

エルレイド「エル」ズバッ

藍子「マジカルシャイン!」

マホイップ「マ、マホッ!」

ズバァァァン

476: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/26(土) 00:30:17.90 ID:2LnlWJ3c0

エルレイド「……エルッ」ドサッ

珠美「どうやらマホイップがわずかに勝ったようですね」

藍子「……」

珠美「藍子殿、ありがとうございます。ここまで追い詰められたことが久々であるゆえ……珠美は今、猛烈に昂っています!」

珠美「もっともっと高みを目指していきたい。熱くなりたい。そのために、珠美も本気を出させてもらいます!」

チャキッ

凛(!! 来る……)

藍子(メガシンカ……!)

珠美「お見せしましょう、進化を超える進化を!」

477: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/26(土) 00:30:58.37 ID:2LnlWJ3c0

珠美「エルレイド、メガシンカッ!!」

シュウウウウ……

カッ

ズドォン

メガエルレイド「エルッ」スタッ

ドワァァァァァァァァ

『来たァァァァ!! メガシンカだァァァ!!』

マホイップ「マ、マホ……!?」

藍子「うっ……すごいオーラ……! これが、メガシンカ……」

478: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/26(土) 00:31:38.32 ID:2LnlWJ3c0

メガエルレイド「エルッ」ビュン

藍子「!? は、速い……!」

珠美「覚悟! リーフブレード!」

メガエルレイド「エルッ」ズバッ

マホイップ「マホッ……!」

藍子(!! 一瞬でマホイップが斬り上げられた……!?)

藍子「マ、マジカルシャ――」

珠美「サイコカッター!」

ズバンッ

マホイップ「マホ……」ドサッ

479: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/26(土) 00:32:29.02 ID:2LnlWJ3c0

藍子「マ、マホイップ!」

珠美「……詰めの一手です。エルレイド!」

メガエルレイド「エルッ」

藍子「な、なんとか動きを止めないと……」

藍子「マホイップ、がんばって! マジカルシャイン!」

マホイップ「マ……ホ……」

ズバァァァン

藍子「!! そんな……」

マホイップ「~~」バタンキュー

ドローンロトム『マホイップ戦闘不能! マホイップ戦闘不能!』

珠美「……まずは一体」

480: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/26(土) 00:33:00.73 ID:2LnlWJ3c0

藍子「マホイップ、無理をさせてごめんね」シュゥゥ

藍子「相手はエスパータイプ……ならドロンチ!」ポンッ

ドロンチ「ドローン!」

藍子「よかった、今は落ち着いてる……」

藍子「りゅうのはどう!」

ドロンチ「ドロ――」

ズバンッ

481: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/26(土) 00:35:23.67 ID:2LnlWJ3c0

ドロンチ「――!?」

ドサッ

藍子「……えっ?」

ドローンロトム『ドロンチ戦闘不能! ドロンチ戦闘不能!』

藍子「ド、ドロンチ、しっかりして!」

珠美「今のはつじぎりです。……これで二体」

珠美「追い詰めましたよ、藍子殿」

藍子(……そんな。強すぎる)

藍子(覚悟はしていたつもりだったけどこんなに強いなんて。どうやって、戦えばいいの……?)

藍子(……凛さん……!)

482: ◆7P/ioTJZG. 2020/12/26(土) 00:36:25.84 ID:2LnlWJ3c0

凛「藍子……」

凛(……っ)

凛(今までずっと、藍子が戦っている時は余計な応援はしなかった。柄じゃないし、そんなことしなくても、藍子なら大丈夫だって信じていたから)

凛(……けど、最後くらい。最後くらい、私らしくないこと、やってもいいよね。いい、かな)

凛「……藍子!」

藍子「!」

凛「諦めないで! あと一歩なんだから! 藍子なら勝てる!!」