1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 21:17:36.11 ID:MIG9Aj3o0
 
凛「……ねぇ卯月、今」

卯月「か、噛んでないよ? ぜんぜん噛んでないよ?」

凛「そう?」

卯月「うん! ぜんぜん!」

凛「……まぁいいんだけど。急にどうしたの?」

卯月「私、トップアイドルになりたいの!」




2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 21:20:49.83 ID:MIG9Aj3o0
凛「……はぁ」

卯月「えっ、ためいき!?」

凛「いや、ついてないよ。ぜんぜんついてない」

卯月「そ、そう?」

凛「うん。まったくもってついてないと思う」

卯月「運勢の方の話なんだ……」

凛「……だって。当たり前のことじゃないの?」

卯月「まぁ、そりゃあアイドルだったらトップを目指すのは当たり前だよ?」

凛「そうだよね? じゃあなんで急に言い出したの?」

卯月「私達……個性が足りないんだと思うの!」

凛「……はぁ」

卯月「またためいき!」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 21:27:25.00 ID:MIG9Aj3o0
凛「……美味しいスイーツのお店、かな子に教えてもらったけどいく?」

卯月「つ、疲れてるわけじゃないよ? 私はまじめに……」

凛「じゃあいかなくてもいい?」

卯月「いくけど……」

凛「うん。じゃあ……」

卯月「楽しみー♪ ……じゃなくて!」

凛「……わかった、話は聞いてあげるから」

卯月「さっすが凛ちゃんは話がわかるなぁ!」

凛「できればわかるように言ってくれると嬉しいかな」

卯月「凛ちゃん冷たい……」

凛「ごめんね、私無愛想だから」

卯月「ぜったい関係ないよ!」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 21:34:16.94 ID:MIG9Aj3o0
凛「……それで、どうしたの?」

卯月「うん、あのね? 最近は個性豊かな後輩ちゃんもいっぱい入ってきたよね?」

凛「まぁ、そうだね」

卯月「だから私達も負けてられないと思うんだ! ね?」

凛「……そう?」

卯月「だってほら、先輩の意地とか見せるためにもがんばらなきゃ」

凛「はぁ……」

卯月「またためいき……幸せが逃げちゃうよ?」

凛「今日の卯月はやっぱり疲れてるんじゃないの?」

卯月「元気いっぱいだよ? まじめに考えてるんだから」

凛「元気が有り余ってるんじゃないかな……たぶん」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 21:40:20.14 ID:MIG9Aj3o0
卯月「もー、今日の凛ちゃんこそ元気が無さ過ぎるんだよ」

凛「私はいつもこうだけど……」

卯月「そうかな? どうかな?」

凛「……」

卯月「ねぇねぇ凛ちゃん?」

凛「ごめん、うまい返しが浮かばなくて」

卯月「いや、今のは私もどう返してほしいのかわかんなかったから大丈夫だよ」

凛「……やっぱり疲れてるんだよ。帰って休んだら?」

卯月「ううん。私の話はここからだもん」

凛「えっ……」

卯月「そんな露骨に嫌そうな顔しなくても……」

凛「ごめん、ちょっとびっくりしただけ。次からはごまかすから」

卯月「できれば嫌じゃないと思ってほしいかな?」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 21:47:35.82 ID:MIG9Aj3o0
凛「……それで、話って?」

卯月「私達に足りない個性を……考えてみました! いえい!」

凛「うわぁ」

卯月「ちょっと、凛ちゃん?」

凛「……ごめん、ごまかせなかった」

卯月「いやいや、そんな無茶な話はふらないから大丈夫だよ?」

凛「ごめん、信用できないかも」

卯月「いやいや、大丈夫だから! がんばろう?」

凛「……本気で考えてくれたんだよね?」

卯月「うん。私達がトップアイドルになるのに足りないものをいろいろ考えてきたんだよ」

凛「……わかった。そこまでいうならちょっとだけつきあってあげる」

卯月「さっすが凛ちゃん! ありがとう!」

凛「まぁ……卯月なりにまじめに考えてくれたんだろうし。聞かせて?」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 21:52:29.25 ID:MIG9Aj3o0
卯月「うん、まず最初の案なんだけど……」

凛「待って」

卯月「うん?」

凛「……最初の?」

卯月「うん」

凛「……いくつ考えてきたの?」

卯月「えーっと、ボツも合わせると200種類ぐらい……」

凛「卯月……がんばり方間違えてるよ」

卯月「そうかなぁ……夢中になると時間忘れちゃうよね? 長電話とか……」

凛「それを同系列に並べるのはどうかと思うな」

卯月「うーん……そうかなぁ」

凛「……はぁ」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 21:58:41.89 ID:MIG9Aj3o0
凛「もういいや……一応しぼってあるんだよね?」

卯月「うん、我ながら傑作だと思う作戦だけにしておいたよ!」

凛「じゃあ早めに終わらせちゃおう。話、続けて」

卯月「よーし、まかせて! まず最初の案ね」

凛「うん」

卯月「じゃじゃーん! これ見て?」

凛「……うん? なにそれ」

卯月「猫耳だよ?」

凛「……えっ?」

卯月「猫耳だよ?」

凛「いや、二回言わなくてもわかってるから……なんで?」

卯月「猫耳だよ?」

凛「……いやいや、卯月?」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 22:04:42.90 ID:MIG9Aj3o0
卯月「どう、凛ちゃん! みくちゃん直伝の猫耳だよ!」

凛「いや、うん……うん?」

卯月「これで個性ゲットだよ!」

凛「……卯月?」

卯月「どうしたの、凛ちゃん?」

凛「それ、みくに被るよね」

卯月「あっ」

凛「気付いてなかったの? っていうかみくに止められなかったの?」

卯月「てへへ、失敗しちゃった」

凛「卯月……」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 22:09:57.88 ID:MIG9Aj3o0
卯月「だが隙あり!」シャッ

凛「きゃっ!?」

卯月「……よし! さらに固定バンド装着ぅ!」ペタッ

凛「ちょっ、卯月やめっ……」

卯月「猫耳凛ちゃん完成!」

凛「なっ……ななっ……」

卯月「うーん、普段の凛ちゃんとはイメージが変わってかわいいよ! 素敵だよ凛ちゃん!」

凛「こ、こんなの……あれ? はがれない……!?」カリカリ

卯月「ふっふっふ、秋葉ちゃん特性の固定バンド付きだからね、どうだい凛ちゃん!」

凛「卯月……今ならまだ許してあげるよ……?」ギロッ

卯月「お、おっと……暴力は無しにしようよ、凛ちゃん?」

凛「だったら外して。怒るよ?」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 22:19:23.86 ID:MIG9Aj3o0
卯月「うーん……ダメ?」

凛「ダメ。だいたい個性を手に入れるためなのにキャラかぶせてどうするの?」

卯月「でも、凛ちゃんなら隙間需要を狙えると思うんだよね」

凛「……なに?」

卯月「ほら、動物耳でもみくちゃんはキュートなイメージだし。莉嘉ちゃんは情熱あふれる元気なイメージだよね?」

凛「まぁ、そうだね」

卯月「ならクールな動物キャラ! これは今までいないよ!」

凛「……卯月はどうするの?」

卯月「あっ」

凛「いっしょに目指すのがそもそもの目的なんだから、こじつけにしたってそれはダメでしょ」

卯月「凛ちゃん……」


 

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 22:23:22.90 ID:MIG9Aj3o0
凛「だから……早く外して」

卯月「うん、わかったよ凛ちゃん……私が間違ってた」

凛「うん。着眼点から間違ってたと思う」

卯月「だから……1回だけ……」

凛「……?」

卯月「にゃあ、っていってみて? にゃあ、って!」

凛「ちょっ……なにいってるの?」

卯月「お願い! 一生のおねがい! このままじゃ死んでも死にきれないの! ね?」

凛「あのね、卯月……」

卯月「言ってくれたらちゃんと外すから、お願い!」

凛「……だ、誰かに言いふらしたりとかしない?」

卯月「しないしない!」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 22:26:36.10 ID:MIG9Aj3o0
凛「……じゃあ、1回だけね」

卯月「うん!」

凛「……ゃあ」

卯月「……んんん? ごめんね凛ちゃん、聞こえなかったからもう少し大きめの声でお願い」

凛「……」

卯月「ね、お願いだよ……このとおり!」

凛「……にゃあ」

卯月「ごめん、もう少し!」

凛「……にゃあ! にゃあにゃあ!」

卯月「ふっ……ふへへ……」

凛「う、卯月。もういいでしょ? 早く外して……」

卯月「凛ちゃんかわいいー! 最高だよー!」ギュッ

凛「きゃっ!?」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 22:30:10.61 ID:MIG9Aj3o0
凛「はぁ……まったく。いい加減にしてよね」シュゥゥ…

卯月「め、めんぼくない……ごめんね凛ちゃん。想像してたより破壊力が大きくて……」

凛「まぁちゃんと外してくれたから許すけど……もう二度とやらないから」

卯月「うーん、意外といけた気がするんだけどなぁ……」

凛「もう二度とやらないから」

卯月「う、うん。わかった、わかったよ……」

凛「絶対だからね。もう……」

卯月「……よし、それじゃあ気を取り直して第二弾いってみよう!」

凛「えっ」

卯月「え? どうしたの凛ちゃん」

凛「終わり……じゃないの?」

卯月「やだなぁ、いっぱい考えてきたっていったでしょ?」

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 22:41:25.58 ID:MIG9Aj3o0
卯月「第二弾は……しゃべりかた!」

凛「……しゃべりかた?」

卯月「うん。やっぱり見た目だけじゃダメだと思うんだ……強烈なインパクトのあるしゃべりかたを探してみよう!」

凛「……そこも結構供給過多な気がするんだけど」

卯月「まずは蘭子ちゃんをイメージして!」

凛「あっ、聞く気ないんだ」

卯月「さぁ凛ちゃん……もとい、我が友よ。漆黒のサバトの幕は開けた。ともに詠おうではないか(一緒にやってみようよ、ね?)」

凛「ごめん、今すっごく友達やめたくなった」

卯月「共の道をいけるのだけが友ではない……ならばこちらの真言を唱えるがよい(このしゃべりかたが恥ずかしいなら他に候補いくつかあるよ?)」

凛「いや……うん。ちょっと見てみようかな」


 

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 22:51:47.70 ID:MIG9Aj3o0
凛「……きらり風、菜々風、猫風、ロボ風、アンドロイド風、飴舐めたい……」

凛「ねぇ卯月。これどうやって候補集めたの?」

卯月「己が心のままに呼び覚まされし本能を我が友たちより集めたのよ(みんなに『個性的なしゃべりかたってどんなのかな?』って聞いて書いてもらったの)」

凛「……最後とかもう関係ないこと書いてあるし。どうなの? これ」

卯月「ふん……縛られぬ者の力ということか(あー、杏ちゃんらしくていいんじゃないかな?)」

凛「いや……っていうかこれ既出のばっかりだよね? 個性にならないんじゃないかな」

卯月「決めつけは身を滅ぼすぞ、我が友よ(それはどうかな? やってみなきゃわかんないよ、凛ちゃん!)」

凛「今、友達辞めるかどうか悩んでるところだよ」

卯月「ふっ、一度唱えてみれば理解できるはずよ……この深淵のカケラをね!(やってみると楽しいよ、一緒にやらない?)」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 22:58:52.05 ID:MIG9Aj3o0
凛「あのね、卯月……」

卯月「それとも、臆しているのか? 我が友よ……(それとも、やってみてハマるのが怖いとか?)」

凛「……」

卯月「どうした。もはや気にせぬというのならばよい、次の策をだそう(やめておくっていうならいいよ? 別の案もあるし)」

卯月「だが。真の王者たるものは如何なる時も孤高たるものよ(でも、トップアイドルになるなら最初から決めつけて拒絶するのはどうかな?)」

凛「……いい。そこまでいうならやってあげる」

卯月「ほう、面白い……興じさせてみよ(本当!? やってやって!)」

凛「すぅ……はぁ……」

凛「やっほー☆ りんだよー!」

卯月「!?」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 23:05:24.05 ID:MIG9Aj3o0
凛「あのねー、卯月ちゃん!」

卯月「う、うん」

凛「いっしょにハピハピしたいんだよねー?」

卯月「そ、そうだよ。だから個性とか……」

凛「楽しいのはハピハピだけどー、あんまりしすぎると……」

凛「……怒るよ?」

卯月「……ご、ごめんなさい」

凛「うん。わかってくれればいいの……もう、やらないから」

卯月「り、凛ちゃん? なんで目あわせてくれないの?」

凛「なんでもないから……別に……」

卯月「……かわいかったよ!」

凛「違うの、あれはちょっと、その……」

卯月「かわいかったよ! うん! やってみたはいいけど思ってたより恥ずかしかったんだね? わかるよ!」

凛「……っ!」バシバシ

卯月「痛い、痛いよ凛ちゃん! でもかわいかったから大丈夫だよ! いけるよ!」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 23:12:56.56 ID:MIG9Aj3o0
凛「もう、帰る!」

卯月「待ってよ凛ちゃん! 話はまだ終わってないよ!」

凛「……」

卯月「大丈夫、さっきのは私の脳内にきっちり保存してあるか、いったぁっ!?」

凛「忘れて!」

卯月「前向きにがんばる!」

凛「がんばるとかじゃなくて……」

卯月「だってほら、私達には個性が必要だよ! ね?」

凛「そんなのいらない」

卯月「だって、トップアイドルになるには個性が必要じゃない? ね? 私だってやるから!」

凛「……いらないよ。私はともかく、卯月は」

卯月「えっ?」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 23:16:24.98 ID:MIG9Aj3o0
凛「私は無愛想だけど……卯月はがんばり屋で、そのままでも十分かわいいから」

卯月「へっ? ちょっ、ちょっと凛ちゃん?」

凛「もし無理に変わろうとしてるなら……しなくてもいいと思う」

卯月「そんな、無理になんて変わろうとしてないよ? ただ……」

凛「……って言おうと思ってたのにさっきからまともに話聞かないし」

卯月「えっ」

凛「だからもういい。帰る……」

卯月「……凛ちゃん!」ガシッ

凛「……なに?」

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 23:21:13.13 ID:MIG9Aj3o0
卯月「……私ね、自分だけの個性が、魅力が欲しかったの」

凛「……卯月は十分魅力的だと思うよ。この前の運動会でだって特別賞になってたでしょ?」

卯月「ううん。あれはただの偶然で……運が良かっただけで、一発屋で終わっちゃうんじゃないかって」

凛「それで、個性が欲しいって?」

卯月「うん……凛ちゃんなら真剣に考えてくれるって思って」

凛「……その割には楽しんでたよね?」

卯月「それはまぁ、凛ちゃんが思ってた以上にかわいくて……」

凛「からかってるなら帰るよ?」

卯月「わー、ストップ! 待ってよ凛ちゃん!」

凛「……なに?」

卯月「だから、私は凛ちゃんにアドバイスして欲しかったんだよ!」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/17(火) 23:29:16.05 ID:MIG9Aj3o0
凛「アドバイスって……私が? 私なんか愛想もないし……」

卯月「ううん。凛ちゃんは……私達の同期の誰よりも一番にアイドルとしての花が開いた人だよ」

凛「それは……ちょっとだけ運がよかったのもあるし、周りの人もいたから」

卯月「でも。私は凛ちゃんのこと尊敬してるから」

凛「尊敬ね……そんなことされるようなすごい人なんかじゃないよ」

卯月「ううん。かっこいいよ……凛ちゃんは私の憧れで、大切な人」

凛「卯月……」

卯月「だから、一緒にトップを目指すための個性をつけよう! ね?」

凛「……うん。あれ?」

卯月「よし! 話はまとまったね! 次の案なんだけど……」

凛「ちょっ、ちょっと卯月」

卯月「私の案は108式まであるぞ」

凛「あぁ、十分個性あるじゃんか! もうっ!」


おわり

引用元: 島村卯月「めざせ、とーっぷあいどりゅー!」