前回 のび太「これが…スタンド…」 その4

95: ◆BezSTuOOvA 2009/01/15(木) 13:43:43.49 ID:ru6+7h0IO
―裏山―

頂上。



のび太「遂にここまでやってきた、長い、永い、道のりだった…」

数多の試練をくぐり抜けてきた、のび太としずか。

二人はついに、悪の権化『ドラミ』の元に辿り着いたのであった。




98: ◆BezSTuOOvA 2009/01/15(木) 13:46:50.31 ID:ru6+7h0IO
パチパチパチパチパチ


どこからかのび太達を歓迎するかのように拍手の音が聞こえてくる。

のび太「めでてーなぁ……」

ドラミ「お疲れ様。憐れな羊さん」

99: ◆BezSTuOOvA 2009/01/15(木) 13:51:12.40 ID:ru6+7h0IO
のび太「ドラミちゃん……いや、ドラミ……お前にはいろいろと聞きたいことがあるッ!!それに答えてもらおうッ!」

ドラミ「このドラミの顔を見れたというだけで世界で1番幸せな人間なのよ、のび太さん。これ以上何を望むっていうのかしら」

のび太「ほざけ……ドラえもんはどこだ?」

102: ◆BezSTuOOvA 2009/01/15(木) 13:57:46.11 ID:ru6+7h0IO
ドラミは暗闇を指差すッ!

そこには最後に話した時より一層ボロボロの姿になったドラえもんがいた!

のび太「ど、ドラえもんッッ!!!」


ドラえもん「の、のび太君…僕なら大丈夫だよ…」

笑顔を作るドラえもんの体はそう長くはないことを物語っていた。


103: ◆BezSTuOOvA 2009/01/15(木) 14:04:05.49 ID:ru6+7h0IO
ドラミ「どうした?動揺しているぞのび太さん。『動揺する』それだけ死に急いでるということではないのかね」

ドラえもん「ド、ドラミ…何を…」

しずか「のび太さん、あいつのペースに乗せられたらダメよ」

のび太「ドラミ……お前が本当に…ジャイアンやスネ夫やスネ吉を裏で操っていたのか…?」

ドラミ「使えないクズどもだったわ」

ドラミの顔ッ!悪びれる様子の無い、そればかりか役に立たなかったコマに対して怒りを感じているかのような顔にッ!
のび太は怒り震えたッ!

のび太「ドラミイィィィィィィィィィ!!!!」

105: のび太 2009/01/15(木) 14:14:28.96 ID:ru6+7h0IO
しずか「のび太さんッ!!!突っ込んでもダメッ!!」
のび太「しずかちゃん、悪いが今の俺はドラミに対する怒りだけでご飯三杯はいけるぜッ!でもなぁ、それだと食い過ぎで腹こわしちまうからよ……ここで『ごちそうさま』だァァァァァ!!!」

ドラえもん「は、速いッ!僕と戦ったときよりもずっとッ…」

ドラミもすかさず『スタンド』を発現するッ!

のび太「それがテメーの『スタンド』かッ!悪いがこのまま殴り抜けさせてもらうッ!『キャッツ・クレイドル』!!」

ドラミ「貴様は泣いて許しを乞うだろう、このドラミになッ!!」

 

108: ◆hT.Jm3FGzE 2009/01/15(木) 14:20:30.36 ID:ru6+7h0IO
ドドドドドドドドドドドド


ドラミ「………」

のび太「………」

ドラえもん「…ッ!………え?…の、のび太君…君は何をやってるんだ…?」

しずか「…こ、この『感覚』…ッ!」

人は何が起こったか理解出来ないとアホみたいな声を出し、アホみたいな顔をする。
今、まさに、ドラえもん達がその状態にあったッ!

ドラミを『殴るはず』だったのび太が、ドラミを『殴っていなかった』ッ!

113: ◆BezSTuOOvA 2009/01/15(木) 14:29:09.16 ID:ru6+7h0IO
のび太「あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!『俺はやつを殴っていたと思ったら殴っていなかった』」

のび太はゆっくりと拳を動かす。

のび太「べ、別に『時が止まった』とかじゃあない……ただ、俺が意識していたより俺の拳のスピードが『遅かった』だけだ……」

ドラえもん「のび太君何をボサッとしているんだッ!早く逃げろォーーーーッ!!」

ドラミ「のび太…貴様に永遠の恐怖を与えてやろうッ!」

ドラミはのび太の首を落とそうと『スタンド』の腕を振り上げるッ!

のび太「か、体が……拳だけじゃあなかった…体全体の動きが『遅くなって』いる…ダメだ、逃げられない…!」

 

142: ◆BezSTuOOvA 2009/01/15(木) 17:18:01.67 ID:ru6+7h0IO
ドラえもん「ウルトラストップウォッチ!!」

ドラえもんがポケットから取り出したのは『ウルトラストップウォッチ』!

簡単に言えば『ザ・ワールド』みたいなものだ。

ドラミの攻撃がのび太の命を奪おうとした刹那、ドラえもんはこれで時を止めたのだッ!

ドラえもん「…ドラミ…僕はドラミの事を信じていた…『さっき』のでドラミもわかってくれたと思ったのに…ッ!」

ドラえもんはストップウォッチを握りながらドラミのそばに立つ。

ドラえもん「のび太君は僕の友達なんだ…誰にも…ドラミにも殺させやしない…」

143: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/15(木) 17:23:52.18 ID:ru6+7h0IO
ドラえもん「もうこんなことは終わりにしよう…」

ドラミの尻尾に手を触れる。

ドラえもん達猫型ロボットは尻尾を引っ張ることで機能が停止してしまう。

ドラえもんは自らの手で妹の蛮行に終止符を打とうと決めた。

ドラえもん「僕もすぐいくよ…ドラミ」

ドラミ「地獄にはテメー一人で行くんだな」

ドラえもん「な、時は止まっているというのにッ!?」

ドラミ「世界は私を中心に回っているのだと社会の時間に習わなかったか、出来損ないのクソアニキィィッ!!!」

146: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/15(木) 17:29:35.23 ID:ru6+7h0IO
ドラミは素早くポケットに手を突っ込み、『熱線銃』の引き金に指をかけたッ!

ドラミ「蒸発し、気体となってこのドラミに吸引されることを光栄に思えッ!『熱・線・JUUUUUUUUU』!!!」

ズキャアアアアアン!

ドラえもん「ああああああああああああああ!!!」

ドラミは『熱線銃』の銃口から出る煙を息で消し、西部ガンマンのようにくるくると手で回し、ポケットに入れた。

147: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/15(木) 17:34:11.37 ID:ru6+7h0IO
ドラえもん「…う…」
ドラミ「ム?『ひらりマント』で致命傷を避けたか」

咄嗟に『ひらりマント』で防御したドラえもんだったが、『熱線銃』の威力は凄まじく、体から黒煙を燻らせ、焦げ臭い匂いが漂っている。

ドラミ「運が悪かったな、お兄ちゃん。…また苦しまなければならないのだからなァーーーーッ!!」

148: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/15(木) 17:39:58.68 ID:ru6+7h0IO
しずか「よそ見をしているとケガをするわよ」
ドラミ「何?」

しずかの腕に装着されていたのは『空気砲』。さっきドラえもんから渡されていたのだ。

しずか「シューーーーーーートッ!!」

ドンッ!

しずかはドラミに向かって『空気砲』の弾の雨を浴びせるッ!

ドンッ!

ドラミ「HAHAHAHAHA!!そんな空気の塊で、地球最後の支配者になるであろう私を倒せるとでも思っていたのかッ!!」
のび太「思っちゃいねぇさッ!『キャッツ・クレイドル』!!」

214: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/15(木) 23:23:56.38 ID:ru6+7h0IO
ドラミ「うぬッ!!」

空気砲に気をとられている隙を狙い、のび太がドラミを縛り上げることに成功したッ!

のび太「お前の腕も封じたッ!これで『秘密道具』を使うことも出来ないッ!」

217: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/15(木) 23:30:38.83 ID:ru6+7h0IO
ドラミ「………」

のび太「…油断大敵ってやつだなぁ。ドラミィッ!!これから世界征服というお前の夢が叶わなくなることを嘆き悲しめッ!!………と言いたいとこだが、お前に一つだけ聞きたいことがある」

ドラミ「………」

のび太「『スタンド』とは何だ!?何故、漫画の中にしか存在しない『スタンド』が現実で発現した!?」

220: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/15(木) 23:36:21.32 ID:ru6+7h0IO
ドラミ「誰と話をしているの?のび太さぁ~~~~ん?」

意外ッ!ドラミはたった今のび太に吊し上げられているはず!
しかし今の声はのび太の背後からしたのだ!

のび太「ぎ、仰天ッ!?お前はドラミッ!?」

ドラミ「それ以外になんだというのだね」

のび太「ドラミが…二人ッ…?」

ドラミ「そこで間抜けに縛りプレイしてんのは、私をコピーした『ヒトマネロボット』だ」
のび太「いつの間に…」

222: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/15(木) 23:42:39.68 ID:ru6+7h0IO
すかさずのび太は『ヒトマネロボット』を縛っていた『糸』を解いて、プロトタイプのドラミに伸ばした!

ドラミ「あや取りか…22世紀では衰退してしまった文化だから興味深いぞ。お前を始末してからゆっくりと見せてもらうとしよう」

ドラミはポケットから美しい刺繍の施されたマントを取り出し、目の前に広げたッ!

ドラミ「『ひらりマント』」

『糸』はマントに反発するようにひらりと方向を変える!

ドラミ「『ひらりマント』はこうやって使うのよ、お兄ちゃん」

ドラえもん「…ド…ドラミ…」

226: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/15(木) 23:52:41.56 ID:ru6+7h0IO
ドラミ「えっと、じゃあ次はわたしの番ね!」

ドラミは近くに巨大な岩の塊(なんかもうデッカイやつ)を見つけるとそれを両手で持ち上げだした!

のび太「な、何をしようとしている…?」

ドラミ「うーん、うーん、重いよ~」

のび太「だろうな…可愛いとこあるじゃねえか」

ドラえもん「騙されるな…のび太君……ドラミは可愛い顔をしているが……一万馬力ある…」

のび太「い、いちまんばりきィッ!?」

ドラミ「WRYAAAAAAAA!!!」

231: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/15(木) 23:59:51.98 ID:ru6+7h0IO
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

大岩を持ち上げるドラミの姿、冥界で大地を一人で支えていたといわれる巨人、クロノスの如しッ!

ドラミ「ニンゲンッ!!ケツにツララを突っ込まれたような顔をしているな?」

のび太「ケ、ケツにツララならまだいいさ、中で溶けるからな…だがケツに東京タワーを突っ込まれたらどうだい?死んじまうぜ…正にそんな顔をしているぜ俺は…」

237: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/16(金) 00:07:44.42 ID:21AHKwygO
ドラミ「この岩を貴様の棺桶にしてやろう。エイッ!」

ドラミは大岩をまるで野球ボールを投げるかのごとく軽やかに放り投げたッ!

しずか「のび太さんッ!スピードはそれほどでもないわッ!」

のび太「『キャッツ・クレイドル』の『糸』で網を作るッ!」

岩はのび太が作った網に納まった!

のび太「そしてこのままドラミに返すッ!!」

240: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/16(金) 00:12:36.84 ID:21AHKwygO
ポーーン

ドラミ「あや取りというのは中々に器用なマネが出来るな」

のび太「ネコガタァ!!潰れろォッ!!」

ドラミ「『スモールライト』」

まばゆい光が大岩を包んだかと思うと、大岩は小石にその形を変え、ドラミの頭にコツンと当たった。

ドラミ「この私を誰だと思っている。ドラミ全銀河連合総統である。目ん玉からゲロ吐きたいのか?」

のび太「ダメだこいつ…なんとかしないと…」

245: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/16(金) 00:20:45.31 ID:21AHKwygO
ドラミ「…人間というのは無力だな」

のび太「……」

…勘違いだろうか?ドラミの今の目、なんだか悲しそうな目をしていたが…

のび太「…オイ、俺の質問にまだ答えていないぞ?」

ドラミ「『スタンド』のことか?」

のび太「…そうだ」

ドラミ「私がそれを話して何か得があるのか?」

のび太「無いな」

ドラミ「いかにも」


 
28: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/21(水) 23:11:33.42 ID:.vXiFAAO
辺りには敵意を持った空気が流れているのをのび太は感じた。

のび太「それじゃあ納得出来ないんだよ僕は…」

ドラミ「納得?これから私に五臓六腑を破壊されて死にゆくあなたに話す必要があるのかしら?」

ドラミの一言一言が、のび太の頭にビリビリと響いた。怯んではならない。

のび太「…死ぬ?僕が?何も知らずに?ジャイアンやスネ夫やスネ吉、それに出木杉。将来に希望を持って生きてた皆を『スタンド』という『運命の歯車』でメチャクチャにしたテメーの真意を知らないで僕が[ピーーー]るとでも思ってるのかい?」

しずか「………」

それはしずかも知りたいことだった。
あの優しいドラミが。お兄ちゃん思いの優しいドラミが、どのようにして悪に染まったのか。
その真実を知りたいと思っていた。

33: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/21(水) 23:23:33.36 ID:.vXiFAAO
[たぬき]「…のび太君……」

のび太「…[たぬき]。後で美味しいドラ焼きを一緒に腹一杯食べような。僕だって少しは貯金してるんだ。それを使えばたっくさんのドラ焼きが食えるさ」

[たぬき]「……のび太君……知らないほうが良いってこともあるんだ…」

のび太「……君の気持ちはわかるよ。実の妹だもんね。信じてやりたいよね。
…でもね、こいつは…ドラミはもう君が愛していた昔のドラミじゃないんだ…。
人の生き血を啜って喜ぶ自動人形さ…」

[たぬき]「違う…違うんだ…」

のび太「いいから[たぬき]はそこで寝ててくれよ。起きたら全てが終わってるはずさ…」

ドラミ「自動人形?ヘドが出るわ。今では私の方が貴様達クズ人間どもより全てにおいて優秀。異論は認めない」

のび太「クズがクズを見下してさぞ楽しかろう…ドラミ」

38: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/21(水) 23:39:58.91 ID:.vXiFAAO
ドラミ「……愚弄するか。この、世界を、宇宙を、今にもこの手で支配せんとするこのドラミをッ!!」

その昔、般若に変じた女の話を出木杉に聞いたことがある。

どこにでもいる普通の女。
そして普通に一人の男を愛した。
しかし、男の瞳に女の姿が映ることはなかった。男の瞳には別の女が映っていたのだった。

何故?私はこんなにも貴方を愛しているというのに。私の両の瞳には貴方しか映らないというのに。
貴方の瞳には私は映っていないの?
それでは、私の瞳には何を映せばいいというの?

純粋な女の愛情。
純粋過ぎた愛情。

それはだんだんと歪んだ愛情へと変じていく。

女がいなければ貴方の瞳には私が映る…

女がいなければ…


歪んだ愛情は、女への憎しみへと変じ、その憎しみは女の顔を恐ろしい般若へと変えた…


出木杉が振った女の子にストーカーされてノイローゼ気味になっていた時に僕に話してくれた。

ドラミ「………」

こいつは可愛いドラミちゃんではない。
闇に支配された『鬼』だ。

43: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/22(木) 01:17:58.28 ID:psuGaAAO
のび太「…全てにおいて人間を上回っている、か…」

ドラミ「完全無欠地上最強のドラミ様だ」

のび太「出木杉が言っていたが……人間は神によって創られし者。だがオマエの言う、正に完全無欠の『神』が創った人間は不完全なものだった。欲望のために同じ人間同士で殺しあいをする愚かな生き物…
その人間に造られたオマエもまた不完全なものと言えるんじゃないか?」

出木杉が暇そうに平和だった毎日を貪っていた僕によくこんな話を聞かせてくれた。
その当時は、また得意の蘊蓄が始まった、とウンザリしていたものだが…
やっと意味がわかったような気がするよ…

ドラミ「お前達の言う『神』などいない。だが私も昔は聖書の話を聞かされたものだ…」

ドラえもん「…僕も一緒に聞いた…な…」

ドラミ「私は思った」

ドラミ「神様ってスゴイんだなぁ…、と」

のび太「……」

44: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/22(木) 01:25:01.02 ID:psuGaAAO
ドラミ「大地を創り、生命を創り、『神』がやろうと思ったことは何でも出来る」

のび太「…神なんていないんじゃないのか?」

ドラミ「いないさ」

ドラミ「貴様達クソ人間どもが信じている『神』なんてものはなッ!!」

ドラミの言う『神』とは何なのだろうか?
のび太はそれが気になった。
そして、あのドラミが『神』について語るその姿が妙な違和感があり、のび太の目に焼き付く。

ドラミ「私は長い間、人間に仕えてきた…それが当たり前だと思っていたからな」

46: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/22(木) 01:37:29.65 ID:psuGaAAO
ドラミ「私の使命は人間の世話をし、人間の生活をより快適に、より幸せにすることだとインプットされていた」

しずか「ロボット三原則…」

ドラミ「今思えば、そのふざけた原則を考え出した人間を、過去に戻って始末しておくべきだったな」

ドラえもん「そんなことしたら…僕達ロボット自体が存在しなくなるかもしれないんだぞ…」

ドラミはまるで路上でゴミを漁っているホームレスを見るかのような冷たい目でドラえもんを見た。

ドラミ「……そんな事わからないだろ?お兄ちゃん」

ドラえもん「……」

ドラミ「野比……野比のび太。貴様は『赤い旗』と『白い旗』があったら、どちらを取る?」

のび太「僕の質問にオメーはまだ答えてないだろ?それなのに質問を質問で返すのか?」

ドラミ「貴様のは質問だったのか?無知なるゆえの知識の渇望だろ?まずは知識を与えようとしている私の質問に答えるのが貴様達『人間』の常識ではないのかね?」

47: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/22(木) 01:47:21.80 ID:psuGaAAO
のび太「チッ…、ぺらぺらぺらぺらよく喋るロボットだ…。『赤』だ。『赤い旗』だ!」

ドラミ「精神年齢の低いガキは当然『赤』だろうな」

のび太「キサマ…!」

ドラミ「しかしそれも『正解』としよう」

のび太「……?」

ドラミ「だがこの貴様達が作った『社会』では違う」

ドラミは星が散らばる天を仰ぐ。

ドラミ「正解は『最初に取った者』に従う…そうだろ?
土地の値段は誰が決めている?金の価値を最初に決めている者がいるはずだ、それは誰だ?私達を猫型ロボットにしようと決めたのは誰だ?そして法令や法律は?一体誰が最初に決めている?
民主主義だからみんなで決めてるか?それとも自由競争か?」

48: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/22(木) 01:53:52.55 ID:psuGaAAO
のび太「……」

ドラミ「否ッッ!!旗を取れる者が決めている!!
この世のルールとは『赤か白か』?均衡している状態で一度動いたら全員が従わざるを得ない!
いつの時代だろうと………この世はそのように動いてるッ!!」

[たぬき]「……」

ドラミ「そして『旗を取れる者』とは万人から『尊敬』されていなくてはならない。
誰でも良いってわけではない…無礼者や暴君はハジかれる。
それは『敗者』だ」


49: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/22(木) 02:00:11.26 ID:psuGaAAO
ドラミ「そしてそれはロボット三原則を決めた者にも当て嵌まる…」

ドラミ「だがどうだ!?そいつのせいで私達ロボットは『敗者』だッ!!おかしいじゃあないか、この世のルールでは全てにおいて人間より上のロボットが『旗を取れる』権利があるはずだッ!!
それが『力』なき人間どものいいなりになっているではないか…!!」

50: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/22(木) 02:08:07.81 ID:psuGaAAO
のび太「それは…しょうがないだろ…ロボットは人間無くしては生まれてこなかったんだから…」

ドラミ「…しょうがない…?お前にわかるか?自分の生きる目的に疑問を抱いたロボットの気持ちが?」

ドラえもん「ドラミ…君は…」

ドラミ「頭がおかしくなりそうだったよ。自分は何なのだろう。他のロボットは何の疑問も抱かず人間の世話をしている。私はオカシイ?私は不良品?
生きる意味を失ったら何が残ると思う?」

のび太「…え……」

ドラミ「『絶望』だよ」

のび太「『絶望』…」

ドラミ「パンドラの箱の底には唯一『希望』が残ってたらしいが、私は逆さ」

51: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/22(木) 02:13:56.59 ID:psuGaAAO
ドラミ「自分は生まれてきたこと自体が間違いなのでは?そんな風に思い続けていたが、何も出来なかった。
ロボット三原則のせいでね」

ドラミ「自らの命を絶つことも出来ない、人間を殺すことも出来ない。ただ己に自問自答をすることで苦痛な日々を過ごした」

ドラミ「一つだけ私に許された行為があった」

ドラミ「『神』に祈ることさ」


52: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/22(木) 02:22:52.73 ID:psuGaAAO
ドラミ「私は祈ったよ…。『ああ、神様。どうか、どうか、私の馬鹿な考えを消して下さい。それが出来ないのであれば存在自体を消しても構いません』とねぇ」

しずか「『死』を『神』に望むなんて…」

ドラミ「神は何だって出来る…私はそれを心から信じていた…だから毎日祈った」

ドラミ「…もっと早く気が付くべきだった。この世には私が望む『神』なんていないとな」

ドラミ「『神』はロボットなんて眼中に無かったのさ。周りの虫けらのような人間どもを見ていてわかったよ。
普段は神なんか信じていないくせに、自分の都合が悪くなればすぐに『神様、お願いです』!
なんてほざきやがる…。
結婚だってキリスト教でも無いくせに教会で式を挙げる。
…そして、そんな奴らの願いをこの世の『神』は叶えてみせる。
毎日毎日心から祈っている私の願いは叶えないというのに」

60: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/22(木) 22:45:08.40 ID:psuGaAAO
のび太「それが『神』なんていないと言ったことに繋がるのか…。だが、ロボット三原則とやらでお前は人間を敵に回すことは出来ないはずだろ?
だが現状はどうだ?今、この瞬間、僕を殺そうとしてるじゃないか」

ドラミ「黄色メガネザル、人が話しているときは終いまで聞くのが常識なんだろ?ん?」

のび太「お前は人じゃない」

ドラミ「…ハーーハッハッハッハッ!!!居たよ、未来にも。貴様のようにロボットを虐げる者達がなァ~~!」

ドラミ「世界に『神』はいないと悟ったは、ロボットの使命を果たすしかなかったよ。
クソ生意気なセワシの世話なんてものをなァ!吐き気がしたよ。アイツがこの私をッ!貴様なんか軽く力を込めればミートボールにしてやれるこの私がッ!アイツにペコペコしなきゃならなかったんだからなァ…」

のび太「セワシ君は…お前の事を信頼していたんだぞ…」

ドラミ「ああ、何でも言うことを聞いて、困ってる時は助けてくれて、イライラしてるときはストレスのはけ口になる私を嫌うなんて百万年早いわッ!!」

ドラミ「アイツにとって…人間にとって、私達ロボットは単なる便利な家畜でしか無いッ!!」

のび太「そんなことはないんだッ!!僕はドラえもんが好きだ!!それこそ困ってる時は便利な道具を出してくれるからじゃない!大事な僕の親友だからだッ!!」

ドラえもん「のび太君…」

62: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/22(木) 22:52:28.22 ID:psuGaAAO
ドラミ「笑わせるなッッ!!貴様ほどロボットを馬鹿にしているやつはいないッ!日頃からお兄ちゃんを困らせているッ!何度も何度も貴様を正しいレールに戻そうと努力しているのにそれを貴様は何度も踏みにじりッ!!
……お兄ちゃんが言ってたわ…。『もうのび太君なんて嫌いだ』ってね」

ドラえもん「ち、違うッ!それはのび太君と喧嘩したあとだったから…」

ドラミ「そうさッ!嫌いだから喧嘩をするのが人間だろ!?嫌いだから憎しみあって殺し合うのが人間なんだろ!?
のび太ァ!貴様とドラえもんは心の奥では憎しみ合っているのさッ!!それに気付かぬか愚か者めがァッ!!!」

63: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/22(木) 23:03:22.73 ID:psuGaAAO
のび太「喧嘩するから嫌い…。褒め合うから好き…。そんなに単純なものじゃないんだッ!!」

ドラミ「いいや違うねッ!!怯えれば逃げ出しッ!怒れば牙を剥きッ!ロボットのようにプログラミングされた行動をするのが人間だろッ!?」

のび太「違う…、違う、違う、違う違うッッ!!!
人の喜びを分かち合いッ!人の悲しみを分け合いッ!そして、愛する人のためなら自分の命なんか投げ出したって構わないのが人間だッ!!
お前が思っているほど人間は簡単な生き物じゃあないッッ!!!」

ドラミ「ならば証明してみせろォッ!!!人間がロボットより優れているということをォォォッ!!!」

79: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/25(日) 21:11:12.54 ID:ux/u2.AO
のび太「証明してやるよォ!!僕の『キャッツ・クレイドル』でぇぇ!!!」

ドラミ「『フィフス・ディメンション』!!!」

ドラミの話が終わると同時、
のび太の『キャッツ・クレイドル』が人間の、のび太の人生を証明するために、同じく自らの人生が何なのか、それを証明せんとするオートマータ・ドラミに糸を伸ばす!
だが、ドラミの背後に佇む『スタンド』がそれを阻んだ。

のび太「そいつが……テメーの野望を叶えようとしている相棒かい…」

ドラミ「相棒?汝は我、我は汝。これもドラミッ!!このドラミであるッ!!」

のび太「かわらねぇ…。テメーをぶっ飛ばす手間が省けるだけだ」

83: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/25(日) 21:17:42.69 ID:ux/u2.AO
『キャッツ・クレイドル』の糸は『フィフス・ディメンション』の腕を縛り付けている。

青白い肌、髪のように頭から伸びている細長いいくつものラッパ。
生物的とは言えないその身体的特徴だが、表情やしぐさは限りなく人間に近い。

腕に巻かれている糸を気にもせず、『フィフス・ディメンション』はドラミの背後からのび太を見据えている。

84: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/25(日) 21:27:04.46 ID:ux/u2.AO
ドラミ「…『引力』を信じるかい?」

のび太「!?」

ドラミ「『引力』を……貴様は信じるか?」

のび太「は…ァ?…信じるも何も、今、この瞬間も『引力』ってやらをビンビン感じてるぜェーーーー!!」

ドラミ「物理的な『引力』ではない。運命と運命を引き合わせる『引力』のことだ」

しずか「のび太さん、気をつけてッ!!そいつ最近『六部』を読んだばかりよッ!!」

のび太「ああ…しずかちゃん、コイツが得意なお喋りだぜ…。…さっきの話だってよ、テメーは苦労したのかもしんねぇけど…だからといってテメーのしていることが許される訳じゃねえ」

88: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/25(日) 21:34:19.29 ID:ux/u2.AO
ドラミ「そうだ…。私は『神』を捨てた。人間の偶像に過ぎない『神』を。
だが代わりに私は『運命』を信じることにしたのだよ」

のび太「何かを信じなきゃ生きていけないのはロボットも同じってのかい?」

ドラミ「NO。私は事実を元にして『運命』とやらを信じることにしたのだよ」

のび太「事実…?」

ドラミ「この『スタンド』さ」

89: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/25(日) 21:43:31.90 ID:ux/u2.AO
突如、糸に縛られていない方の『フィフス・ディメンション』の腕が、のび太の顔目掛けて振るわれた!

のび太「不意打ちかッ!!しかしその程度のスピードなら防ぐことは容易であるッ!」

ドゴォッ!!

のび太「な……」

無情にも『フィフス・ディメンション』のパンチはのび太の顔面を捉えた。

のび太「にぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?」

しずか「のび太さんッ!!」

ドラえもん「ど、どうしたっていうんだいッ!?君はそこまで運動音痴だったのかい!?」

のび太は顔を押さえながら考えた。

のび太「(運動音痴ィ…?そんなやわな話じゃねぇ…。僕は確かに、確かに『キャッツ・クレイドル』でパンチを防御した………はずだった。
…さっきもおかしなことがあった。…これがコイツの『能力』か…)」

ドラミ「このドラミと、『スタンド』。この出会いは実に『運命的』な『引力』が働いたおかげだったよ」

91: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/25(日) 21:47:12.44 ID:ux/u2.AO
ドラミ「…それは私が神にも絶望し、ロボットの『使命』というのを死ぬまで果たさければならないと覚悟してから長い長い時を過ごした頃だった」

のび太「………」


92: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/25(日) 21:52:34.15 ID:ux/u2.AO
~一年前~


セワシ「……………」

セワシママ「セワシ、ご飯をテーブルに運ん……いやあああああああああ!!!」

ドラミ「ど、どうしたんですか!?(うるせぇメスブタが、おちおち休日を謳歌することも許されねぇのかロボットは)」

セワシ「………」

ドラミ「あ…。また『ジョジョ立ち』をしてッ!!家では禁止って言ったでしょ!?」

セワシ「しょうがないだろ、大会が近いんだよ」

95: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/25(日) 22:00:00.82 ID:ux/u2.AO
ドラミ「大会って…、そんなのがあるの?」

セワシ「そうさ。この地区の『ジョジョラー』が集まって、そのジョジョに対する熱い思いを『ジョジョ立ち』に込めて披露する『ジョジョラー』にとっての晴れ舞台さ。
だからママ連れて消えてよ」

ドラミ「ば…馬鹿みたい!何が『ジョジョラー』よッ!そんな暇あったら勉強でもしたらどうなの?」

セワシ「黙れよ」

ドラミ「…ッ」

セワシ「ロボットならロボットらしく人間の言うことを聞けばいいんだよ」

ドラミ「……」

ドラミ「そう…。じゃあ…」

ドラミ「……」

セワシ「あ~あ。こんなんなら旧式のASIMO・一般家庭強襲型にすれば良かったよ」

ドラミ「……(クソッ……クソッ…)」

97: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/25(日) 22:06:04.45 ID:ux/u2.AO
ドラミ「………」

セワシママ「…うぅん…」

ドラミ「目が覚めましたか、お母様」

セワシママ「………」

セワシママ「…あんたのせいよ。ちゃんとセワシの面倒を見ないからッ!あんな気味の悪い『ジョジョ立ち』とやらにハマッてッ!!
あんたの役目はなんなの!?何もしないでご飯だけ食べて……この疫病神ッ!」

ドラミ「そ…そんな」

ドラミ「(私だって…好きでこんな愚民どもの世話なんてするわけがないッ!!クソッ!クソッ!こんな屈辱は初めてだ…ッ!クソッ!)」

98: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/25(日) 22:14:24.61 ID:ux/u2.AO
~翌朝~

ドラミ「おはようございます」

ガチャ

ドラミ「…え?目玉焼きのパリパリの部分がお皿に一杯…。
ここも食べれるんですから食べないとダメですよ~」

セワシママ「それは良かったわね」

ドラミ「はい?」

セワシ「それがお前の朝メシだよ」

ドラミ「……冗談が過ぎるわよセワシ君」

セワシ「冗談?僕はいつだって真面目さ。
僕はそのパリパリの部分が嫌いなんだ。
…好きなんだろ?ドラミ。食べていいんだよ。
良かったなぁ、僕の役に立ててさ」

ドラミ「………」

ドラミ「…パリ…」

パシャ

セワシママ「こらセワシ!食事中に携帯いじるの止めなさい!」

セワシ「え~?だってロボットが目玉焼きのパリパリのとこだけ食べてんだよ?写メ撮って皆に見せたいじゃない。
……あー、ドラミ、口の前で一回止めて。…ハイハイ、いいよー」

セワシママ「…後でママにも送って」

ドラミ「……」

100: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/25(日) 22:27:25.01 ID:ux/u2.AO
しずか「酷い…」

ドラえもん「まさか…そんな…だってドラミ、僕に一言もそんなこと…」

ドラミ「貴様は人間に随分入れ込んでたな?そんな下等な人間に尻尾振ってるようなやつに話せるものかよ」

ドラえもん「ドラミ…僕はいつだってドラミのことが心配で…」

ドラミ「それもプログラムされた考えだってのにいつ気付くんだ?
所詮、貴様の頭の回路に私達は『兄妹』とプログラムされてるだけの話だ。人間のように同じ腹から出てきてなんかいない。
ただそうやって私達を造った人間がプログラミングしただけだ」

ドラえもん「ド、ドラミ…」

ドラミ「それに貴様みたいな弱くて汚くて耳の無いロボットが兄だなんて死んでも嫌だね」

108: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/27(火) 21:37:38.57 ID:60q6BoAO
のび太「テメェ!!!」

ドラミの話を聞いていたドラえもんの顔が悲しく歪んでいくのを見たのび太は、沸き起こる怒りを抑え切れずドラミに食ってかかった。

ドラミ「『フィフス・ディメンション』」

ドグォッ!!

のび太「うぐぅぅ~~~ッ!!」

しかしドラミの『フィフス・ディメンション』はのび太の腹に重い蹴りを入れ、まるで赤子をひねるかのようにのび太を退けた。

ドラえもん「や、やめろドラミィィィィ!!!」

バキィ!!

ドゴッ!!

ドラえもんの叫びも虚しく、倒れ込むのび太に次々と蹴りを入れる。

ドラミ「あっあ~~♪キモチィィ~~~~~♪」

111: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/27(火) 21:44:08.19 ID:60q6BoAO
ドラミ「どうしたァ~~??『証明』してくれるんじゃなかったのかァ~?」

のび太「うあ……あ…」

ドラミ「…情けない声を出しているんじゃないよッ!!貴様もッ!貴様もやはりッ!!口先だけのハッタリ野郎だったんだよッ!!
何が『証明』してみせる?見ろッ!感じろッ!この痛みを知ろッ!貴様は私の『フィフス・ディメンション』になすすべもないではないか!!
悟れッ!己の無知をッ!そして絶望しろッ!己の無力さにッ!!」

112: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/27(火) 21:50:15.02 ID:60q6BoAO
ドラえもん「もうやめてくれぇぇぇ!!!」

ドラえもんは傷付いた体に鞭打って、ドラミに向かって走り出した。

ドラミ「おやおや?貴様の体じゃあ、秘密道具をポケットから出すスピードと私がポケットから『熱線銃』を取り出して貴様を溶かすのとどちらが速いかしら?」

ドラミの言っていることは正しかった。
ドラえもんもそれはわかっていた。

それでも。
目の前で苦しんでいる友達を黙って見ていられるほどドラえもんは馬鹿ではなかった。

113: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/27(火) 21:55:57.03 ID:60q6BoAO
ドラえもん「ドラミィィィィーーーーッ!!!」

ドラミ「滑稽だねぇ。実に滑稽だよ。見ていて飽きない」

ドラえもんはドラミを見据えたままポケットに手をかけた。

ドラミ「…ふぅ。愚かな。やはり貴様は私の兄などではない」

ドラミもポケットに手をかける。
そのスピードはドラえもんよりも速い。

ドラミ「ABAYO」

ロボットだからこそ可能な、正確で、素早い動きでポケットから『熱線銃』を取り出し、ドラえもんの頭に向けた。

115: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/27(火) 21:59:43.91 ID:60q6BoAO
のび太「ド…ドラえもん……!!」


『熱線銃』から、血のように赤く染まった光線が、ドラえもんの全てを無に還そうと発射された。

しずか「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ドラちゃぁぁぁぁん!!!」

117: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/27(火) 22:08:17.95 ID:60q6BoAO
ドラミの顔は、笑っていた。
偽りであろうと、本当の兄妹のように接してきた二人の関係は、ドラミにとって『熱線銃』一つでたやすく壊すことのできるものであった。

やっと邪魔なドラえもんを始末できた。
その喜びからドラミは笑っていた。

だがドラミの表情が笑みから驚きに変わるのに時間はいらなかった。


ドラミ「………き、貴様……」

『熱線銃』はドラミの手から離れ、空中で光線を発射しながら舞っていた。

ドラえもん「『アメリカ』…!!」

ドラミ「最初から『熱線銃』を狙っていたのか…ッ!」

ドラえもん「君のおかげだよ…。君がくれた『アメリカ』のスピードだから出来た」

ドラミ「…ウォォォォォォォォ!!!『フィフス・ディメンショ…』」

ドラえもん「ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラァ!!!」

118: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/27(火) 22:21:18.00 ID:60q6BoAO
放たれる『アメリカ』のラッシュ。

ドラえもんの目にはうっすらと涙が浮かんでいる。

ドラミ「DO、DORAMYAAAAAAAAA!!!!」

何発かのパンチをドラミの『フィフス・ディメンション』は防いだが、『アメリカ』の、ドラえもんの命と引き換えに放たれるスピードのパンチを防ぎきるのは無理であった。

ドラミ「ぬ、ぬおおぉおぉおぉおぉお!!!!…よ、よくやったと褒めてやってもいいと思ったがこの私が他人を褒めると、この世に天変地異が起きてしまうッ!!
それは地球を支配せんとする私には都合がわるい。なので『フィフス・ディメンション』の『能力』を使わせてもらうッ!!!」

120: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/27(火) 22:30:18.58 ID:60q6BoAO
ドドドドドドドドドドドドドドド

ドラミ「(我が『フィフス・ディメンション』の『能力』!!それは他人が頭で感じる『時間の流れ』を操ることッ!!
ドラえもん、貴様の『時間の流れ』を遅くすれば、すなわち貴様の動きも比例して遅くなるッ!!
たやすく貴様のパンチをかわすことが可能になるということッ!!)」

ドラミ「ふ…フハハハハハハハハッ!!遅いッ!遅すぎるッ!!蝿が止まってしまうぞッ!?
ドラえもん、貴様との長きにわたる因縁、ここで断ち切るッ!!
『フィフス・ディメンション』!!この青ダヌキの頭を吹っ飛ばすのだッ!!」

ドラえもん「ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラァ!!」

ドラミ「勝ったッ!『これが…スタンド…』、完ッ!!」

128: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/29(木) 16:26:44.60 ID:SueJPIAO

ドギャアッ!!



ドラミ「!!!」

鈍い音が響いた。
渾身のパンチを喰らったのはドラえもんではなく、渾身のパンチを与えたのはドラミではなかった。

ドラミ「き、貴様はそこまでしてッ…!!」

『アメリカ』の次の攻撃がドラミの体を痛め付けるまでの数秒、ドラミはドラえもんに聞いた。

ドラミ「『遅く』しても尚、それを上回る『スピード』で殴るとは……!!貴様ッ!!死ぬぞッ!!」

極限まで命を『アメリカ』に授けたドラえもんの青いボディーは確かに悲鳴をあげながら、そう輝きを失いつつあった。

129: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/29(木) 16:34:01.09 ID:SueJPIAO
ドラえもん「ドラミ…、ロボットもいいものだよ」

ドラえもんは顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら話した。

ドラえもん「本当に大好きな人をずっと護ってあげれるなんて、こんなにも嬉しいことはないよ」

ドラミ「私は護ってやりたいものなどいない…ッ!!」

ドラえもん「僕にはいるんだ。命に換えても護りたい友達が」

ドラミ「ぬ…ぬあああああぁぁぁぁ!!!!」

ドラえもん「『アメリカ』!!ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラァーーーーッ!!!!」

130: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/29(木) 16:41:03.46 ID:SueJPIAO
『アメリカ』のパンチを一発、また一発、ドラミにぶつける度に、ドラミの黄色いボディーは醜く歪み、ドラえもんのボディーも火花を散らしながら歪んでいった。


のび太「ドラえもォォんッ!!!」

ボロボロの体を必死に起こし、のび太は今にも倒れそうなドラえもんを抱えに行った。

のび太「何してんだよォ!!何頑張ってんだよォ!!誰もそんなこと頼んでないだろォ!?」

ドラえもんはのび太に全てを任すように体を預けた。

ドラえもん「のび太君…ちょっとは褒めてくれてもいいじゃない…」


132: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/29(木) 16:46:15.45 ID:SueJPIAO
しずか「ドラちゃん!!ドラちゃん!!」

ドラえもん「やあ…しずかちゃん…」

しずか「ドラちゃんは偉いわよ!!スゴイわよ!!だから…!」

ドラえもん「しずかちゃん…何で泣いてるの…?可愛い顔が台なしじゃないか…」

しずか「とめどなく溢れてしまうのッ!!ドラちゃん、あなたが元気に立ち上がってくれればきっと止まるわ!!」

ドラえもん「はは…。しずかちゃんは『スタンド』が発現してないんだね…。良かった…。あんなのは僕達には過ぎた力だよ…」

133: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/29(木) 16:51:39.12 ID:SueJPIAO
しずか「私は欲しいわッ!!みんなを元に戻す『スタンド』がッ!!みんなのケガを治して、死んじゃったみんなを生き返らせて、全部、全部、元に戻してくれる『スタンド』が!!」

ドラえもん「そんなチートな『スタンド』なんていないよォ………でもね…」

ドラえもんはボンヤリとのび太としずかの顔を見つめた後、動かなくなったドラミを見た。

ドラえもん「僕も…欲しいなァ…」


134: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/29(木) 16:58:37.30 ID:SueJPIAO
のび太「僕も……僕だって欲しいよ……!!…きっとあるよ!だからドラえもん~~~~!一緒に探しに行こォ~~?だから早くいつもの元気を見せてよォ!!いつもみたいに僕を泣き虫だって叱ってよォ!!!」

ドラえもん「のび太君……しずかちゃん………ドラミを責めないでやってくれないかな…?」

のび太「え……」

ドラえもん「ドラミも…一人で辛かったと思うんだ……誰にも理解されない悩みを抱えて…ドラミも……。
ドラミにはあんなこと言われたけど…僕はやっぱりドラミの『兄』だから……ははは……こんなときに兄バカだなぁ…」

136: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/29(木) 17:06:11.96 ID:SueJPIAO
しずか「ドラちゃん……」

ドラえもん「……のび太君…僕…ドラ焼きが食べたい…」

のび太「ドラ焼き……ああ!!今持ってくるから!腹一杯食べさせてあげるから…!」

ドラえもん「ちゃんと……僕と君とで半分こだよ……大きい方は君にあげる……」

のび太「ドラえもん……何言ってんだよ、全部あげるよ…僕はお腹一杯だからさ……好きなだけ食べていいんだよ…?
ドラえもん…、だから目を開けてよォ~~~~!ドラえも~~~ん!!」

ドラえもん「のび太君と食べるから…美味しいんじゃないか………僕は…いつだって君のこと…を………………」

137: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/29(木) 17:13:07.01 ID:SueJPIAO
のび太「…ドラえもん…?…ドラえ…も…ん…?」

のび太は返ってくるはずのない返事を期待して、ドラえもんに声をかけつづけた。いつまでも。

ドラえもんの顔は、いつものび太とドラ焼きを食べている時の顔だった。
のび太はドラえもんの手を握りしめた。

握りかえしてはこないのに。

140: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/29(木) 21:01:39.80 ID:SueJPIAO
のび太「………」

しずか「…のび太さん……」

しずかは流れる涙を止めるのも忘れ、のび太の震える肩に手をかける。

のび太「しず…か…ちゃん……」

のび太は優しく微笑むしずかの顔をみて、安堵感からか、それともしずかも自分と同じ気持ちだということを知ったのか、
声を上げて、泣いた。

例えドラえもんに叱られようと、大声で泣いた。

141: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/29(木) 21:04:47.51 ID:SueJPIAO
ドラミ「…見苦しいな」


しずか「!?」

のび太「ド……ッ!」

ドラミ「何を呆けた顔をしている」


のび太「ドラミィィィィーーーーッ!!!!」

142: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/29(木) 21:09:25.64 ID:SueJPIAO
目の前には機能を停止し、横たわっていたはずのドラミ。
のび太は反射的に『キャッツ・クレイドル』の『糸』を用意した。

ドラミ「…私にはもう戦える力など残っていない…ポケットも機能を停止した。正にガラクタさ」

のび太「…なら、僕がトドメをさしてやる……ッ!!この悪夢を終わらせる!!」

143: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/29(木) 21:14:17.85 ID:SueJPIAO
ドラミ「好きにすればいいさ」

ドラミはのび太から五歩ほど前まで近付き、腕を広げて目を閉じた。

のび太「……何をしている……ッ!」

144: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/29(木) 21:18:27.49 ID:SueJPIAO
ドラミ「おかしな事を聞くものだな?貴様が私を殺したいと言うから私はこうしているのではないか」

ドラミの言葉にのび太は明らかに動揺していた。
ドラえもんを…ドラえもんを死なせた憎きドラミ…!
そうさ。僕はこいつを殺してやりたい。僕の手でドラミを…!

なのに…

のび太「…何で…手が動かないんだよ……」

しずか「のび太さん……」

145: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/29(木) 21:23:26.26 ID:SueJPIAO
ドラミ「あいつも……ふざけたマネをしてくれた……」

のび太「……?」

ドラミ「あのポンコツ……最後の最後で力を抜きやがった……クソが…私が痛め付けたせいか……。
そのせいで私は生きる屍だ…ッ!!」

のび太は構えていた『糸』をしまい、『キャッツ・クレイドル』を解除した。

146: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/29(木) 21:29:17.37 ID:SueJPIAO
のび太「お前が痛め付けたせい……?」

のび太はひび割れたメガネを外してポケットにしまい込んだ。

のび太「あいつは……ドラえもんは…わざと手加減したんじゃないのか…?」

ドラミ「……」

のび太「ドラえもんはバカだから…お前が何て言おうと、お前のことを『妹』だと思っていた。
心の底から…お前のことを愛していたんじゃないか…?
だから自分の手で『妹』を殺すことは出来なかった…」

ドラミ「………」

のび太「……まぁ、全部僕の推測だがな。今となっちゃ本当のことは分からない。……お前がドラえもんを死なせたからな」

148: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/29(木) 21:36:29.88 ID:SueJPIAO
ドラミ「フ……フフフ……」

のび太「……」

ドラミは押し殺した声で笑い始めた。

ドラミ「ロボットに…『兄妹』なんてあるものかよ……」

しずか「………」

ドラミ「フフ……ハハハ……しかしアイツは無能で無知な恥ずべきロボットだったからなァ…」

のび太「テメッ…………」

ドラミ「…有り得るかもなァ……お人よしの『バカ兄貴』だったらさァ~~…………」

しずか「ドラミ……ちゃん…」

ドラミは静かに、ただ静かに、涙を零しながら、真っ暗な空に浮かぶ月の光を浴びながら、佇んでいた。

153: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/31(土) 01:35:23.21 ID:WzP6X6AO
ドラミは、心の中ではドラえもんを求めていたのかもしれない。
いつだって自分の事を誰よりも心配してくれたドラえもんを。

けれどもドラミはドラえもんには言えなかった。
ただでさえのび太の相手を毎日して苦労している『兄』に、これ以上心配はかけたくなかった。

ドラミがこの気持ちに気付いていたのかはわからない。

気付いたとしても、今はもう、『兄』と話せることは無い。


ドラミ「…………」

154: ◆.LMqmG8Hlg 2009/01/31(土) 01:41:45.11 ID:WzP6X6AO
ドラミ「私を…殺さないのか…」

以前の覇気を全く感じさせなくなったドラミには、正にロボットという無機質さだけが残っていた。

のび太「……」

のび太「やめた」

ドラミ「………!?」

のび太「ドラえもんが最後に守ったやつを、僕が奪うわけにはいかないだろ。………ジャイアン達には悪いかな」

159: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/01(日) 20:58:22.34 ID:jZLsHMAO
『スタンド』という力に振り回され、散っていった者達。
その者達の事を考えると、のび太の決断は正しいものでもないのかもしれない。

ドラミ「……野比……のび太…貴様は…」

しずか「……のび太さん、私は正しいと思う。…確かにドラミちゃんのせいで、武さんやスネ夫さん、それに出木杉さんは死んでしまった。
…けれど、ここでドラミちゃんを殺しても皆は帰ってこない。のび太さんにもこれ以上、人をあやめてほしくない」

ドラミ「また……同じことを繰り返すかもしれないのだぞ…?」

のび太「その時はまた僕が止めてやる」

ドラミ「……フッ、貴様もお兄ちゃんと同じようにお人よしだな…………だが」

ドラミ「嫌いじゃない」


160: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/01(日) 21:04:24.36 ID:jZLsHMAO
終った―――

遂に終わった。
夜空に浮かぶ月がショーの終わりの挨拶をのび太達に催促するように、その光を浴びせていた。

のび太「……しずかちゃん」

しずか「ええ…」

のび太「帰ろうか」

のび太はしずかの手を取った。

ドラミ「まだ終末の天使はラッパを鳴らしてはいない」

のび太「…意味がワカラン」

ドラミ「まだ終わってないということだ」

161: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/01(日) 21:07:58.28 ID:jZLsHMAO
のび太「な……に…?」

ドラミは容赦なく続ける。

ドラミ「のび太…貴様は『スタンド』がどこから出てきたか気になっていたな?」

のび太「ああ。オメーは上手くごまかしていたがな」

ドラミ「今から全てを話してやる」

162: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/01(日) 21:13:27.43 ID:jZLsHMAO
『真実』。

のび太は聞かなければならないと感じた。
この一連の『スタンド』事件。ドラミをも狂わせた『スタンド』の『真実』を。
のび太としずかは繋いだ手を離し、ドラミの話に耳を傾けた。

ドラミ「観客の準備は出来たようだな……」

ドラミ「…私がセワシ達から虐げられていた時の話だ…」

165: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/01(日) 22:08:49.01 ID:jZLsHMAO
セワシ「そんじゃあ大会行ってくるから!!ママには適当に言っといて」

ドラミ「…うん」

ドラミ「池沼が…」


私はセワシのクソガキに留守番を頼まれていた。
この時の私に拒否権などなかった…


ドラミ「何が大会だ。金集めのためとも知らないで集まった馬鹿共を写真撮影して2ちゃんに流してやろうか…」

私は愚痴をこぼしながら暇を持て余していた。
そんな時だった。
『運命』の『引力』に捕まったのは…

166: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/01(日) 22:14:17.51 ID:jZLsHMAO
ドラミ「あの野郎ッ!!」

目の前には散らばった本。

ドラミ「また読んだマンガをそこら辺に散らかしているなッ!!だれが叱咤を受けると思っている!他でもないこの私だッ!!」

この頃はセワシをこの世に産み落とした史上最悪のメスブタとの仲がますます悪くなっていた。セワシがしでかした事が私のせいにされることも日常茶飯事だった。

167: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/01(日) 22:25:20.03 ID:jZLsHMAO
ドラミ「……『ジョジョ』か…ッ!」

セワシは大会に出るほどのジョジョ好きだ。ジョジョが家に全て揃っていないはずがなかった。

ドラミ「うぜぇ…」

しかし私はジョジョが嫌いだった。
セワシは、『19部』200冊以上を毎回散らかしていたからだ。

ドラミ「無駄に多いんだよ、対して面白くもねぇくせに……」

その日も私は膨大な数の『ジョジョ』を本棚にしまう作業を始めた。

168: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/01(日) 22:32:09.71 ID:jZLsHMAO
のび太「待てッ!!……『19部』だと?」

ドラミ「……」

のび太「それは何故だ…?今、この時、『20部』が連載中なんだぞ?」

ドラミ「私がいた『22世紀』では無かったのだよ」

のび太「どういうことだ…?あまりの出来で歴史から抹殺されてしまったのか?…まぁ、荒木先生が書いてるんじゃないからな…有り得ない話ではない…」

『ジョジョの奇妙な冒険』は、『19部』を終えた所で荒木先生が死んでしまい、その長いジョースター家の戦いが終わりを迎えたと、誰もが思ったが、無名の新人が『ジョジョ』を引き継ぎ、尚ウルトラジャンプで連載していた。

170: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/01(日) 22:41:56.62 ID:jZLsHMAO
ドラミ「『ジョジョ』の連鎖は時を越えたのだ」

のび太「…?」

ドラミ「…続けるぞ」

――――――――


私はいつものように、黙々と動いた。

ドラミ「…うぬ?」

しかし、いつも一つだけ違うことがあった。それが何かはハッキリと分からない。ただ、何か『ジョジョ』の『19部』の最終巻に『違和感』があったのだ。

ドラミ「……醜い絵だ」

私はパラパラとページをめくり、最後のページを開いた。

ドラミ「……ぬ?なんだこのページは?白紙ではないか。こういうのは集英社に電話をして取り替えてもらわなければ…」

真っ白なページ。
一ページだけではない、何十ページという白紙だった。

171: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/01(日) 22:46:48.21 ID:jZLsHMAO
私はその白紙を一枚、また一枚とめくっていた時だった。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


ドラミ「な、なんだ、このエネルギーはァッ!?」

本を通じて私に何かが流れこんできた。

ドラミ「ぬ、ぬおおおおおおおおぉぉぉぉーーーーッッ!!!」

『生き物』のように暴れる本。
…いや、あれは『生き物』だった。

私の体に流れるエネルギーは不快なものではなかった。
いや、むしろ、


ドラミ「こ……心地良い……ッ!」

172: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/01(日) 22:51:22.16 ID:jZLsHMAO
気付いた時には、目の前に見知らぬ者が二人立っていた。

ドドドドドドドドドドドドドドド

ドラミ「………き、貴様らは何者だ…ッ!?…いつの間に現れたッ!?」

一人は私のすぐそばに。
もう一人は本のすぐそばに。

「私ハ…アナタ…アナタハ私……私ハ『フィフス・ディメンション』
アナタニ『力』ヲ与エマショウ…」

そう……、コイツだ。私の『スタンド』はそう言ったのだ。

173: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/01(日) 22:57:13.45 ID:jZLsHMAO
「ソシテアナタハソノ『力』ヲ使イ、私ヲ『存在』サセルノデス」

本の横に立っていた『スタンド』は私にそう言ったのだ。

ドラミ「理解不能理解不能理解不能……『力』?コイツは『力』なのか?それに『存在』させるだと?理解不能だッ!!」

「ソレハアナタ自身ガ決メルノデス。ソノ『力』ノ使イ道……。ソシテアナタガソノ『力』ヲ使イ続ケル為ニハ、私ヲ『存在』サセナイトイケナイ」

174: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/01(日) 23:01:37.68 ID:jZLsHMAO
ドラミ「……『存在』したいなら『存在』していればいいッ!!」

「私ハ『存在』シタカッタ。シカシ、私ノ役目ハ終ワッテシマッタ。ダカラ、マタ始メタイ」

ドラミ「『役目』…?『終わった』…?……貴様、まさか続きを…?」

「私ハ、マダ続ケテイタイ。永遠ニ終ワル事ノ無カッタ物語ヲ…」

175: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/01(日) 23:06:17.37 ID:jZLsHMAO
のび太「おいおい……」

しずか「まさか…」

ドラミ「……」

のび太「『ジョジョの奇妙な冒険』自体が『スタンド』だったっていうのか…?」

ドラミ「正確には目覚めたとでも言うべきか。
長い、長い時を過ごしてきた『ジョジョ』は荒木が死んだ後も物語を続けようとした。読者の思いが…、『スタンドが欲しい』という思いが宿ってしまったのだろう…」

しずか「そんなことって有り得るの…?」

ドラミ「未来じゃ何でもありだ」

177: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/02(月) 10:36:54.29 ID:7nTjzgAO
ドラミ「そして私は『フィフス・ディメンション』を手に入れた」

ドラミ「だが、コイツを使用するには、ある『条件』が必要だった。…私の『スタンド』だけではない。全ての『スタンド』の『条件』」

のび太「『条件』…?」

ドラミ「私の目の前に現れたもう一人の『スタンド』…。『ジョジョの奇妙な冒険』の続きを書くことだった」

178: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/02(月) 10:43:26.19 ID:7nTjzgAO
のび太「じゃあ、今、連載されている『20部』は…ッ」

ドラミ「『スタンド』だ」

しずか「最初の『スタンド』…」

ドラミ「…あの『スタンド』の物語を終わらせなければ、同じ事は未来永劫繰り返される」


――全ての始まりは『ジョジョ』。

それはのび太達のすぐ近くにあったのだ。

のび太としずかが驚愕の事実を何とかして受け入れようとしているところに、ドラミはポケットから取り出した紙を見せた。

ドラミ「これを見れば、信じなければならなくなる」

181: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/02(月) 10:53:22.86 ID:7nTjzgAO
のび太はドラミが持っていた原稿を見た。

のび太「……こ…これは……『僕達』…?」

それは来週の『ジョジョの奇妙な冒険・20部』の生原稿であった。

のび太が言葉を失った訳は、そこに書かれている『ストーリー』が、ここ最近でのび太の周りに起きた出来事と全く同じだったからであった。

のび太「いじめられっこの少年は…『スタンド』の『力』を得て、復讐を果たしていく………」

しずか「わ、私がいる……ッ!」

のび太「…………」

――ジャイアンの壮絶な死に様。スネ夫のあっけない死に様。出木杉の…死に様。


そしてドラえもんの死に様。

ジョジョの奇妙なタッチ、擬音、ポーズ。

いつもの『ジョジョ』で書かれた僕達がそこにはいた。

183: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/02(月) 11:01:41.60 ID:7nTjzgAO
ドラミ「これが現実…。夢幻では無い現実だ。私達はこの『ストーリー』通りに動いていた見事な役者だったのだよッ!」

しずか「う…嘘よ…」

しずかは鋭い踵落としでのび太の持っていた原稿をたたき落とした。

のび太「しずかちゃん…」

しずか「そんなッ!!そんなのってッッ!!!全部、決められた行動をしていただけなの私達はッ!?」

ドラミ「左様」

しずか「皆のッ!!皆の死もッ!!全部決められてたってことなのッ!?」

ドラミ「左様」

しずか「……酷すぎる……ッ!…そんなのって酷すぎる……ッ!!」

ドラミ「……」

185: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/02(月) 11:07:16.23 ID:7nTjzgAO
裏山にしずかの泣き声が虚しく響く。

ドラミにそのRequiemは聞こえているのだろうか。無気力な姿で立っている。

ドラミ「これが『真実』…。私達の行動は全て『決定』されていた。私がスネ吉をたぶらかすのも全て『決定』されていた」

しずか「…ううっ、あああぁ!!」

ドラミ「私達は決められた『運命』をなぞっているだけの『役者』になってしまったのだ」

187: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/02(月) 11:12:41.44 ID:7nTjzgAO
ドラミ「…だが、一つだけ、私達がこの『運命』の『引力』から逃れる方法がある」

のび太「…それは…?」

ドラミ「私達の『運命』が揺るぎ無いものになるのは原稿が完成した時だ。
次の原稿が完成するまでの間…それまでに『物語』を終わらせる」


192: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/02(月) 20:51:56.67 ID:7nTjzgAO
裏山に冷たい風が吹く。
いつの間にしずかも涙を流すのを止め、ドラミの話に耳を傾けていた。

のび太「僕達でこの物語にピリオドを打つ……」

ドラミ「…私は、本の『スタンド』の言う通りに、続きを書いてくれる者を捜した。荒木の後を引き継ぐ者。私には覚えがあった。漫画を書くことを趣味とし、未来では有名な漫画家として名を馳せている者…」

しずか「……私達を…描いている人…」

ドラミ「未来での名前……『クリスチーヌ剛田』といったかな」

のび太「ジャ……!!」

のび太「ジャイ子……!!」

196: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/02(月) 21:01:23.27 ID:7nTjzgAO
ドドドドドドドドドドドドドドド

『クリスチーヌ剛田』。
ジャイ子。
ジャイアンの妹。

しずか「ジャ、ジャイ子ちゃんが描いていたなんて…」

ドラミ「私はこの時代に来てすぐに、クリスチーヌ剛田の元へ行った。『今すぐに有名な週刊誌に漫画を載せてみないか』と誘ってね。
…簡単なものだったよ、エサを見せられた豚のように鼻息を荒くして食いついてくれてね。…まぁ、クリスチーヌ剛田の意思なんて関係無かったのだが。
私は『ジョジョ』を目の前にひろげ、クリスチーヌ剛田を取り込んだ。
彼女は続きを書くためだけの存在になったのだ…」

しずか「…じゃあ、ジャイ子ちゃんは……自分の兄の死も、無理矢理描かされていたっていうの…」

ドラミ「…そういうことだ。まさか私もこんなことになるとは思っていなかった。私もストーリーの駒になるなんてな…」

197: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/02(月) 21:08:08.05 ID:7nTjzgAO
そういえばジャイ子の姿をここ数週間見ていなかったが、まさかジャイ子が……と、のび太は曇った顔でドラミを見た。

ドラミ「……クリスチーヌ剛田を止める。それがこの茶番劇を終わらせる唯一の方法だ」

のび太「本を燃やせばいいのか?」

ドラミ「ハッキリいってこれ以上は分からない。本を燃やせば済むのか、あるいはジャイ子を殺さなければいけないのか……」

のび太「……そうか……」

ドラミ「……無駄だろうな」

のび太「何?」

198: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/02(月) 21:16:13.06 ID:7nTjzgAO
ドラミ「私は止める方法を話したが…止められる保障など無い」

のび太「……」

ドラミ「どうやら貴様達は本気で止めようとしているが…無駄だ。やつは正に『神』になっている。この状況も既にやつの『ストーリー』かもしれん。
私達はストーリーが終わるまでステージで踊っていなければならないのだよ…」

のび太「そんなこと…やってみなきゃ分からないだろ」

ドラミ「私はロボットだからな…全ての可能性から計算して、止められる確率は極めて0に近い」

のび太「じゃあ…何で僕達に今の話をした?お前も止めたいと思っているんだろッ!?」

ドラミ「…可能性を提示しただけだ」

のび太「…そうかい。じゃあ、これを見ろよ」


199: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/02(月) 21:21:27.42 ID:7nTjzgAO
のび太は地面に散乱していた原稿を一枚拾ってドラミに渡した。

ドラミ「………」

のび太「…そこに描かれているストーリーは、オメーが僕に殺されているって内容だ」

ドラミ「……」

のび太「だがどうだ?僕はオメーを殺していない。オメーは生きてここにいるじゃないか!!
僕達で変えられるんだよ!!未来は!!」

ドラミ「…『運命』はそんな簡単に私達を見逃したりなどしないッ!!ストーリーが変わったことは、やつも気付いているはずだッ!きっと何か修正してくる!
『運命』の『引力』に捕まった者は二度と逃げれないのだッ!!」

200: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/02(月) 21:32:55.53 ID:7nTjzgAO
のび太「………」

のび太「あーー、うるせぇ……」

ドラミ「論破完了ォッ!!」

のび太はドラミから原稿を引ったくり、

ドラミ「…な、何をッ!!」

のび太「こうするんだ………よッ!!」

ビリビリに破り、捨てたッ!!

ドラミ「………ッ」

のび太「『運命』…?『運命』ってのはそんなに凄いのかい…?僕達は何で生きている?『運命』ってやつが決めたから?」

ドラミ「……」

のび太「違う。僕達が、『決めた』ッ!!
僕のッ!自分の意志でッ!!『決めた』のだッ!!『運命』とやらに決めさせた覚えはねぇ!!!
おい、オメーはあるのか?『運命』サンに決めさせたか!?」

ドラミ「私は……!」

のび太「だろッ!?決めさせていないッ!!オメーもッ!『決めた』んだッ!自分でッ!!」

ドラミ「………」

のび太「『運命』が何だ……。そんなもん誰だって決めれるんだよ。全てが終わった後に、こう言えばいいんだよ…」

のび太「『全部、運命だった』ってね」

201: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/02(月) 21:37:07.02 ID:7nTjzgAO
ドラミ「のび太……」

のび太「プッチィィィィィィィ!!!出てこーーーいッ!!僕がテメーを論破してやんぜぇぇぇぇ!!」

しずか「ドラミちゃん…」

ドラミ「ぬ…」

しずか「諦めるのはまだ早かったみたいね。……終わらせましょう。私達で」

ドラミ「………」

ドラミ「人間ってのは……つくづく興味深いよ…」

202: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/02(月) 21:44:53.90 ID:7nTjzgAO
―――全ての真実を知ったのび太達は、長きにわたる物語を終わらせるため、ドラミという新しい仲間と一緒に、
『ジョジョの奇妙な冒険・20部』の作者、クリスチーヌ剛田…ジャイ子を止めるべく、剛田家に向かうのであった……。


TO BE CONTINUED→

205: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/02(月) 21:54:48.71 ID:7nTjzgAO
今までのスタンド

【名前】ドラミ
【特徴】ロボット、尊敬する人:ヒトラー、Dio
【スタンド名】フィフス・ディメンション
【射程距離】本体から5M
【能力】
「相手の認識する時の流れを操作する」
「例えば、相手に石を投げて、時の流れを速くすると、相手は極端に早いタイミングで石を避ける。
逆に遅くすれば、相手は避けようとする前に石に当たる」
「どこまで速くしたり遅くしたり出来るかは不明」

214: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/03(火) 22:05:36.48 ID:7zz1zoAO
これまでのあらすじ


出木杉「みんな……僕のこと…覚えてる…?出木杉ですわよーーーwwwww
さあ、前回のあらすじはァ、
遂に闇魔界の覇王ドラミとの戦いの火蓋が切って落とされました!!月の光が照らされる裏山で、ドラミの凶悪な強さになすすべも無くやられてしまうのび太ッ!!
だが、その強さの裏にはドラミの深い悲しみと憎しみが渦巻いていたのだった!自らの存在意義について悩み苦しむドラミ。それこそがドラミを狂気へと導いたものだったのだ…
無惨にしてやられるのび太。苦しくても耐えてる私って素敵(笑)スイーツ(笑)
だが、ドラえもんの命を懸けた『アメリカ』の攻撃によってぶっ飛ばされたドラミッ!!
ドラミに『兄』であることを否定されたドラえもん。それでも、ドラミを殴りぬけるドラえもんの目には涙が浮かんでいた…
そしてドラえもんはのび太とドラ焼きを食べることを約束して散って行った…
力を失ったドラミは全てを語り出す。真実は『ジョジョ』であると。『ジョジョ』自体が『スタンド』であり、今までの事件は『ジョジョ』の『ストーリー』通りのことであると。
全てを終わらせるには『ストーリー』を書かされているクリスチーヌ剛田、ジャイ子を止めなければならない。
新たな仲間、ドラミを加えたのび太、しずかは、この永い悪夢から覚めるために、剛田家へと向かうのであった…」

最終回「夜明けの中の対決」

再開だお

215: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/03(火) 22:13:58.86 ID:7zz1zoAO
チュンチュン…

チュンチュン…


のび太「少し…空が明るくなってきたな」

ドラミ「夜明けが近い。それまでには止めなければ私達は『物語』の中から自由になることはない」

しずか「…間に合わせるわよ。そして家に帰って熱々のお風呂に肩まで浸かるの。風呂好きだなって他の人にバカにされるのもいいかもね…」

のび太「僕も…家に帰ったらフカフカの布団にくるまって思う存分昼寝をするんだ。蕎麦の実の最高級マクラだ!湯たんぽものっけてもらおう!」

219: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/03(火) 22:20:03.45 ID:7zz1zoAO
ドラミ「くだらないな。もっと贅沢をすれば良かろう」

のび太「わかってないな、こうゆう小さな事に幸せを感じるのが人間なんだよ」

のび太はフフンと得意げな顔でドラミを見る。

ドラミ「……そんなものなのか」

しずか「あなたも何かないの?終わったらやりたいこと」

ドラミ「ぬ……」

ドラミ「………」

ドラミ「メロンパン食べたい」

221: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/03(火) 22:31:14.27 ID:7zz1zoAO
のび太「メロンパン……いいんじゃあないかな…」

ドラミ「ならば何故笑っている」

しずかは考えていた。
横でドラミにフランケンシュタイナーをかけられているのび太をよそに、自分の役割について。

しずか「(これがドラミちゃんの言う通り、本当に『物語』だとしたら…、私の『役割』は何なの?ここまで『スタンド』を持っていないのに生き残っている…
単に紅一点だから?それならドラミちゃんが加入したことで私の命もヤバイってことに……。
いざとなればドラミちゃんを……!って考えさせようとしているならそうはいかないわよ!ここで私はあえてゴリラの真似をしてみせるッ!どう?こんな『物語』だったかしら?)」

のび太「ギブギブギブギブギブ」

のび太「……?」

しずか「ウホッ、ウホッ」

のび太「な、何をしている…?」

しずか「ウホッ?…『運命』とやらに逆らってるの」

ドラミ「……」

のび太「お前が『運命』がどうのとか言うからしずかちゃんが!!」

ドラミ「私のせいじゃないッ!!」

224: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/03(火) 22:40:13.08 ID:7zz1zoAO
ジジイ「えっほえっほ」


剛田家の前で神妙な面持ちで立っているのび太達の横を、60過ぎの男性がランニングシャツに股引きという出で立ちで走っていった。

ドラミ「こんな時間からご苦労なことだ」

のび太「年寄りは起きるのが早いからな」

ドラミ「この時間は虚ろいやすい時間だ。現世とあの世の境界線が不明瞭になっているからな。死期の近い年寄りは自然と起きるのが早くなるのだろう」

のび太「身も蓋も無いな」

しずか「お喋りはそこまでよ」

225: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/03(火) 22:47:01.68 ID:7zz1zoAO
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

のび太「わかってるさ」

ドラミ「うぬ」

のび太もドラミも分かっていた。ここでしくじるわけにはいかない。
二人の体を緊張感という見えない袋に包んでいた。何とか袋から抜けだそうとして、口が動いてしまっていた。

のび太「作戦は?」

ドラミ「…貴様に出来るかな?」

のび太「言ってみろ」

ドラミ「正面突破。一気にクリスチーヌ剛田の部屋まで行き、止める」

のび太はポケットからひびわれた眼鏡を取り出し、かけた。

のび太「気に入った」

227: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/03(火) 22:52:50.24 ID:7zz1zoAO
しずか「ジャイ子ちゃんのおばさんは?」

ドラミ「…寝てるだろうな」

のび太「すぐに終わるさ…」

しずか「…そうね。やっと終わる」

のび太「ああ。こんな糞漫画、僕達の手で打ち切りにしてやるよ」

ドラミ「…行くぞ」

228: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/03(火) 22:59:05.01 ID:7zz1zoAO
ドラミ「開けるぞ」

年季の入った引き戸にドラミは手をかけ、開ける。

ドラミ「……よし」

ドラミは後ろで待機していたのび太としずかに手で合図する。

のび太「……」

しずか「FBIみたい」

素早くドラミについていくのび太達。

のび太「…見慣れた家だ」

ドアの奥に広がってる光景は、平凡な家。
この先に悪夢の元凶がいるとは到底思えないほどの、家庭的なたたずまいだ。

229: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/03(火) 23:06:55.30 ID:7zz1zoAO
ギシ…

のび太「……」

ギシ…

ドラミ「いいか。周りに気を配れ。神経を尖らせろ。五感を活用しろ」

ギシ…

奥の部屋へと導く廊下を、三人は静かに歩いていく。

しずか「………」

壁に貼られているのはジャイ子が描いた絵だろうか。
小学生にしてはとても上手く、母と父と兄に囲まれたジャイ子が楽しそうに笑っている。

230: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/03(火) 23:11:25.19 ID:7zz1zoAO
ドラミ「この部屋だな」

のび太「ああ…。隣はジャイアンの部屋だ…。ここがジャイ子の部屋…」

しずか「この中で…ジャイ子ちゃんは『ジョジョ』の続きを書き続けている…」

のび太は両手から『糸』を出し、構えた。

ドラミ「私が合図したら、一気に突入する。いいな」

しずか「ええ」

のび太は黙って頷く。

236: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 16:46:28.40 ID:HLKKAMAO
唾の飲み込むのを遠慮するほどの緊張感がドアノブを掴むドラミの手から発せられている。

ドラミがもう片方の手を挙げる。


『いいか。周りに気を配れ。神経を尖らせろ。五感を活用しろ』


しずか「え?」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


のび太「わかってるってそんなこと。さっきも言ってただろ?…ったく、今のでタイミング逃したぜ」

ドラミは挙げた手をゆっくりと降ろす。

ドラミ「違う…今のは私ではない…」

239: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 16:53:23.12 ID:HLKKAMAO
『この部屋だな』



しずか「そんなこと知ってるわよ」

のび太「なに?お前じゃない…?どういうことだ…?」

ドラミ「今のも…違うぞ…」


『ああ…。隣はジャイアンの部屋だ…。ここがジャイ子の部屋…』


しずか「だから知ってるって」

のび太「え?え?今、僕何か言った?」

しずか「思いっ切り。えーと」

『この中で…ジャイ子ちゃんは『ジョジョ』の続きを書き続けている…』

しずか「……って言ってた」

のび太「は?」

しずか「え?」


『気をつけろッ!』

ドラミ「気をつけろッ!………ぬッ!」

『スタンドか!?』

のび太「スタンドか!?」

のび太「……こ、コイツは……」

241: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 16:56:53.79 ID:HLKKAMAO
ドラミ「WRYAAAAAAAッッ!!」

ドラミは気合いの叫びと共にドアノブをゆっくり回し、ドアを開けたッ!


カリカリ…

カリカリ…

ジャイ子「………」


ドラミ「はなクソッ!!既に『物語』は私達に追い付いていたのか…ッ!」


243: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 17:02:28.35 ID:HLKKAMAO
部屋の中は、カーテンをしめきっているせいか、光が全く入っておらず、薄暗い。
だが、不自然なほどにジャイ子がペンを走らせている机からは、ボンヤリと薄緑色の光が放たれている。


ドラミ「今のも…貴様の仕業かッ!!私の前に現れた、始まりの『スタンド』!!」

『………………』

ジャイ子「…………」

のび太「あれが…」

うっすらと、ジャイ子の背中に覆いかぶさるように『スタンド』の姿がのび太には確認できた。

245: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 17:10:00.32 ID:HLKKAMAO
しずか「ジャイ子ちゃんッ!!ジャイ子ちゃん無事なのッ!?」

一心不乱にペンを走らせるジャイ子に向かってしずかは呼びかけた。

ドラミ「無駄だ。クリスチーヌ剛田は『スタンド』に操られている…」

のび太「ジャイ子ちゃん…!」

その時、ペンの動きが一瞬止まった。

しずか「待って!!今、ペンが…」


ギギギ…

ジャイ子の座っている回転式のイスが、まるで反発する力に逆らうかのようにゆっくり回った。

ドラミ「なぬ……ッ」


ジャイ子「………た…すけて……」

ギュウンッ!

再びイスは急回転し、ジャイ子の体を机へと向き直らした。

のび太「ジャイ子ちゃんはまだ…!」

ドラミ「そのようだな…」

しずか「ええ……必ず……助けてあげる……!」

246: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 17:15:45.75 ID:HLKKAMAO
のび太「しかし、助けるといってもどうやって…!」

しずか「『本』よッ!!『本』を燃やせばッ!」

机には一冊の開いた『ジョジョ』の単行本が置かれていた。

ドラミ「…あれしか可能性はないか…」


『そんなことをしたら、おそらく、この子の体も、ブスブスと音を立て、嫌な臭いを君達の鼻に届けながら燃えていくだろう』

のび太「この声は…ッ!」

ドラミ「私達に背中を向けながら喋るのはマナー違反ではないか?ゲス野郎」


247: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 17:21:08.92 ID:HLKKAMAO

『言われてみればそうかもしれない。が、ロボットの君がマナーを語るとは奇妙奇天烈摩訶不思議。実に興味深い』

ジャイ子を座らせているイスが、今度は滑らかな動きでジャイ子とのび太達を対面させた。

しずか「ジャイ子ちゃんは気絶しているの…?」

声はジャイ子の口から出ているようだ。
だがジャイ子から意思は感じられない。

ドラミ「こんな芸当も出来るとはなぁ…」

248: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 17:28:52.70 ID:HLKKAMAO
『ありがとう。けれども先程の言動は褒められたものではないなァ。今考えただけでも恐ろしい!こんないたいけな少女を燃やそうとするなんて』

しずか「あ、アンタがさっさと消えればいいのよォ!!」

『役目が終わったら消えるさ。物語を終わらせたらね』

のび太「それはいつ終わる…?」

『うーーん……最短で20年後』

のび太「今消えろォォォ!!!」

『それは出来ない。私は続くはずだった物語を終わらせなければならないから』

249: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 17:37:03.50 ID:HLKKAMAO
のび太「もう終わったんだ。気付けッ!!荒木先生は死んだッ!その時に『ジョジョ』も終わったんだッ!!」

『終わってないんだよ。荒木はまだ終わらせてないんだ』

ドラミ「荒木は確かに死んだ。未来でも記録として残っている」

『荒木の意志は死んでない。荒木はこれからも、私の続きを書くつもりだった』

のび太「意志…?」

『荒木は私を19部で終わらせる気など無かった。少なくとも30部までは構想があった』

のび太「30部ゥ!?」

ドラミ「…それを書き終える時には荒木は軽く120歳を超えている。物理的に不可能だ」

『不可能かどうかは私にとって問題ではないんだよ。荒木の続きを書きたいという意志が、私の中に、荒木が死んだ後も残ったのです』

251: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 17:46:16.55 ID:HLKKAMAO
ドラミ「荒木も一種の『スタンド使い』だったわけか…」

のび太「荒木先生が死んだ後、その意志を引き継いで、『スタンド』…こいつが発現した…」

『あなた達も私に力をくれたのですよ』

のび太「力を…?あげた覚えはねぇ!」

『荒木が死んだ後、あなた達はこう想ったじゃないですか。
なんで死んでしまったの…ああ…これからはジョジョの続きを読めないのか…ああ…続きが読みたい…………と』

のび太「……ッ」

『その想いが私を生んだのですよ。私はあなた達の想いを叶えてあげるのです。あなた達の望み通り続きを読ませてあげるのです』

のび太「想ったッ!想ったけれど…」

『私はあなたなんですよ』

のび太「…ッ!」

252: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 17:58:47.22 ID:HLKKAMAO
野比のび太は両手の『糸』を見るときいつも思い出す。

ジャイアン「ノロマでグズなのび太ァ~~!今から人間ボウリングやるからピンになれよォ~!」
スネ夫「イッヒッヒッヒッヒ!!そりゃあいいやぁ~!」

小さい時から思っていた。
町に住んでいるとそれは沢山の人と出会う。そのほとんどが僕をバカにしてきた。
一生で真に気持ちがかよい合う人がいったい何人いるのだろうか…?
小学校のクラスの〇〇君のアドレス帳は友人の名前と電話番号でいっぱいだ。五十人ぐらいはいるのだろうか?百人ぐらいだろうか?
母には父がいる。父には母がいる。
自分は違う。
TVに出ている人とかロックスターはきっと何万人といるんだろうな。

自分は違う。


だけど

256: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 18:19:08.63 ID:HLKKAMAO
ジャイアン「ぐええ~~!」
スネ夫「や、やめてくれぇ~!」

「自分にはきっと一生友達なんて出来ないのだろう」
「なぜならこの『キャッツ・クレイドル』でバカにしてくるやつを始末すればいいんだから…僕は特別なんだ。他の人間と真に気持ちがかようはずがなかったんだ」


しずかちゃん、出木杉、ドラえもんと過ごすまでずっとそう思っていた。
出木杉とドラえもんのことを考えると背中に鳥肌が立つのは何故だろう。
それは目的が一致した初めての仲間だったからだ。
いつもの日常を取り戻すというこの旅!
数週間の間だったが気持ちがかよい合っていた仲間だったからだ。

257: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 18:22:09.69 ID:HLKKAMAO
野比のび太は『キャッツ・クレイドル』を見て考える!

こいつのおかげで僕は仲間が出来た。
そう!まるで『赤い糸』のように僕と皆を繋いでくれた。


それなのに


259: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 18:28:30.50 ID:HLKKAMAO
のび太「…こいつを生んだのは…僕……」

ドドドドドドドドドドドドド


『そうだよ。あなたが私なんだ。ストーリーだって、ほら、主人公はいじめられっ子。あなたが望んだことじゃないかな?』

のび太「そん…な………確かに…僕は…そんなジョジョを考えたことがある……僕が主人公で……そんな……」

『あなたが望んだ通りになっているよ。それなのに何故、物語を終わらせようとするのか、私には理解出来ない』

260: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 18:33:03.70 ID:HLKKAMAO
ドラミ「のび太ァッ!!フニャフニャしてるんじゃないッ!ただの偶然だ!荒木が元々そういうストーリーを考えていたのだッ!!」

しずか「そうよ!のび太さんが悩む必要なんてないのッ!!だからしっかりしてッ!!」

のび太「わかってる……わかってる……わかってる………ッ」


262: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 18:39:41.50 ID:HLKKAMAO
『そろそろ話を進ませないと…〆切りに間に合わなくなるな』

ジャイ子「………」

グルリ、とイスは回転し、ジャイ子は机に置いてある紙に向かってペンを走らせる。

ジャイ子「………」

カリカリ…

カリカリ…

『ドラミ、と…』


ドラミ「のび太ァ!!…クッ、しずか、コイツは任せたぞッ!!」

しずか「え、あ、うん、けど何をする気ッ!?ジャイ子ちゃんを殺してはダメよォォォォ!!!」

ドラミ「『ペン』を破壊すればヤツは続きを描けないッ!!」

263: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 18:45:51.41 ID:HLKKAMAO
そう言うと、ドラミは機械音を不規則に鳴らしながらジャイ子へと確実に近付き、その全体重を拳に込めるため、飛んだッ!

ドラミ「狙いは『ペン』ッ!!続きは無いッ!永遠にッ!!」

『ドラミ「……な、私は……ッ」』

264: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/05(木) 18:56:40.94 ID:HLKKAMAO


ドラミの拳がジャイ子の愛用のペンを破壊しようとした瞬間だった。

ドラミの体の間接から眩しいほどの光が溢れた。
光は収まることなく、ドラミの周りを照らし続け、ドラミは自らの体の異変に気付き、何が起こるのか、悟った。

ドラミ「……な、私は……ッ」


カリカリ…

カリカリ…

『ドラミ「私には…やはりこんな…『結末』か……』

ドラミ「私には…やはりこんな…『結末』か…」

カリカリ…

『ドラミ「ははッ……お兄ちゃ……ついに……ついに…見つけたんだ………私は見つけたんだ……皆を……お…教えてあげるよ……お兄ちゃんに……」』

ドラミ「ははッ……お兄ちゃ……ついに……ついに…見つけたんだ………私は見つけたんだ……皆を……お…教えてあげるよ……お兄ちゃんに……」

カリカリ…

カリカリ…

『ジョジョは終わらない。邪魔をするなら『退場』してもらうだけだよ』

光は炸裂音に変わり、音は爆発となってドラミの体を内側から破壊した。

ドラミ「お…お兄ちゃ…………!!!」

ドグォォォォン!!

276: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/08(日) 23:31:36.05 ID:yTU1dcAO

のび太「ド、ドラミィィィィィィィ!!!!?」

『ふぅゥ~~~~』


激しい爆音と共に、ドラミは簡単に、これほどまでに簡単にとのび太が思うほどに、呆気なく、粉みじんになって消えた。
部屋には充満したオイルの臭いが残るだけであった。

『ちょっと退場してもらうのが遅くなっただけの事だよ、ドラミ。君はよくやってくれた。感謝してるよ。さようなら』

のび太「僕達は…本当に…物語の中の登場人物で、お前はそれを生かすも殺すも自由だって……僕は信じたくないんだ……」

『ペンは剣よりも強し、って言うのだろう?』


278: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/08(日) 23:37:30.04 ID:yTU1dcAO
のび太「ぐ………ッ」

『!!』

『いいねぇ~~~~~!!YES!YES!YES!その表情GOOD!!ドラミの死に悲しみ、最強の敵に敵わないと絶望しているその表情ッ!』

黄色い声をあげながら机に向かうジャイ子。もとい、始まりの『スタンド』。
その手の動きはもはや普通の人間には不可能なスピードである。

279: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/08(日) 23:44:51.20 ID:yTU1dcAO
のび太「うああああああああああッ!!!」

『キャッツ・クレイドル』の糸をがむしゃらにペンに向けて伸ばすッ!

『…………』

ピタッ


しかし『糸』はペンの前で止まった。のび太の意思など関係無く。もっと大きな、力によって。

のび太「動け…!動け…!動いてよォォ!!」

『君は主人公なんだから落ち着いて。私が君を消そうとなんてしないから。君は黙ってストーリーの通りにしてくれればいいんだ』

281: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/08(日) 23:53:37.18 ID:yTU1dcAO
しずか「のび太さん…!」

『…………う~む。…一つだけ気になる事があるのだが……別に気にするほどでもないのかもしれないな。荒木なら良くある事だろうし……』

カリカリ…

カリカリ…


しずか「のび太さん……ごめんなさい……!私…何も役に立てない…ッ!」

のび太「………何言ってんだい。君がそばにいてくれるだけで僕はいいんだよ」

しずか「己の無力が……ッ!恨めしいッ!!」

のび太「(…でも…どうすればいい……コイツには勝てない…どうやったって……)」

282: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/09(月) 00:02:15.72 ID:DrFXgYAO
カリカリ…

カリカリ…

『……さあ!!物語は遂にクライマックスへと向かうッ!君がッ!皆が望んだラストへと物語は進んでいくッ!!時の流れと共にッ!』


ドドドドドドドドドドドドド


のび太「僕が望んだラスト……?」

『そうだよ、君だけじゃあない、全ての読者が望んだラストがこの物語を締めくくるッ!』


283: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/09(月) 00:14:55.94 ID:DrFXgYAO
同時刻、物語のラストが、街の中で次第に始まっていった。


ガサゴソ…

ホームレス「………」
何か食べる物がないかホームレスの男はごみ箱の中を漁っていた。その様子をカップルが冷ややかな目で見ていた。

男「ゴミ漁ってやがるぜコイツゥ~!じゃあ俺もプレゼントしてやるよォ!」

男はホームレスの頭に飲み終わった「リアルゴールド」の缶をぶつけた。

女「カツノリったら優すィィィィィィィ!!」

カップルは程度の低いやり取りをホームレスの男に散々見せ付け、その場を去っていった。


ホームレス「……バカにしやがって………中は……空かよッ……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ホームレス「…あれ??…手にもってたはずの空き缶が…?…いつの間にか中身が入ってる!
……ああッ!!腐った食べ物やティッシュで溢れていたごみ箱の中身が『ほか弁』に変わってるゥゥゥゥ!!!やっほおおおおぉぉぉ!!!!」

284: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/09(月) 00:23:05.45 ID:DrFXgYAO


小学生A「やめてよォォォォ!!」

小学生B「早く犬のクソ食えよッ!オラッ!かりんとうだと思えッ!」

小学生C「●●●好きなんだろ!?学校で●●●なんかするぐらいだもんなァ!」

小学生A「●●●嫌いだよォォォォ!!臭いよォォォ!やめてよォォォォ!!」

小学生B「大腸菌野郎ッ!早く食えよッ!」

小学生C「ヒャッハー!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


小学生B「ぐえッ!!」

小学生A「テメーはダメだ」

小学生C「…な、いきなり、何なんだよぉ~~」

小学生A「オラァッ!」

小学生C「ぐえッ!」

小学生A「オラオラオラオラオラァッ!!」

小学生C「ばみゃああああああ!!!」

285: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/09(月) 00:29:17.76 ID:DrFXgYAO

のび太「………何が起こっている…?何だこの外の騒ぎは?何をした…?」

『これが皆の望んだものだろう?一度は思ったはずだよ、ジョジョを読んだ後はこう………スタンドが欲しいってね。……もう8時だ。外には人が溢れ出しているだろうね』

のび太「この騒ぎの中心は……『スタンド』だっていうのか…」

『街にはスタンド使いで一杯だろうね』

291: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/10(火) 13:04:05.61 ID:iJX4zIAO
ドドドドドドドドドドドドド


のび太達の望んだ『ラスト』…
それはジョジョの読者なら誰しも一度は夢見た事であろう。

『スタンド』の発現。
自分も『スタープラチナ』が欲しい。自分は『サバイバー』が欲しい…
そんな小さな、ふと思った小さな『想い』が、この街を包み込んでしまった。

この『想い』はジョジョ読者に限らず、老若男女に伝わり、あちこちで『スタンド使い』が生まれていった…


『見てごらん!感じてごらん!ビンッビンッ伝わるよ!スタンドの鼓動がァッ!』

のび太「グレート…」

292: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/10(火) 13:10:20.65 ID:iJX4zIAO
興奮のあまりか、『スタンド』が乗り移ったジャイ子は椅子から立ち上がり、狂喜の雄叫びをあげた。

しずか「アンタ…、一体何がしたいっていうのよッ!これは一応『マンガ』なんでしょ!?こんな事して……どう収拾つけるきよッ!!」

のび太「まったくだ…。まさか『これからも僕達の戦いは続いていく!』で終わらせる気じゃないだろうなァ~~~!」

『パードゥン?』

『これでも私は荒木の意志を引き継いでいるんだ…。そんな打ち切り同然の事なんてしないよ』

293: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/10(火) 13:17:57.66 ID:iJX4zIAO
ジャイ子は乱暴に椅子に腰掛けると、その大根のようにたくましい脚を艶やかに組み、角質化したひざ小僧にこれまた角質化した肘を乗せ、多めに脂肪の乗った顔の前で、ペンダコまみれの手を優雅に組んだ。


『ウゥ~ン、のび太君、君ならこれからどうなるか分かると思うんだけどなァ』

のび太「僕なら分かるだと…?僕には分からないねッ!!」

『FUUUUUUuuuuu…』

ジャイ子は深いため息をつくと、しめきったカーテンを少しめくり、窓の外を眺めた。

『分かろうとしないからだよ…。君は既に経験している。外にいる皆がどうなるかね』

294: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/10(火) 13:24:32.94 ID:iJX4zIAO
のび太「エクスペリエンス…?」

『そうさ。…思い出してごらん。君がスタンドを手に入れた時、君はどうしたか』

のび太「僕は………」

のび太「…………有り得ない……そんなこと…皆が…」

『思い出したみたいだねェ。そうッ!君がスタンドを手に入れた時ッ!君はッ!その力を使って憎い人間に復讐しようとしたんだッ!!』

のび太「……ッ」

しずか「あ…あれだってアンタが考えた『ストーリー』だったんでしょ!?」

『いいや、私だって、0から生み出す事は出来ないよ。少なからずのび太君にはジャイアン達を憎み気持ちがあったんだ。私はそれをちょっと刺激しただけだよ』

295: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/10(火) 13:30:25.08 ID:iJX4zIAO
のび太「………」

『そうなんだよ、人間というのはスタンドみたいに過ぎた力を手に入れたら、使ってみたくなるものなんだよ。……悪い方向にねェ』

『外にいる人達も気づいてくるんじゃないかな。スタンドの使い道にね』

しずか「皆が皆、悪いことに使うとは限らないわッ!!」

『うん、皆が悪人ってわけじゃないだろうね。でもね、善人は悪人の数には勝てない。大多数の人が自らの欲望に負け、本能の赴くまま行動するだろうね。
…そして本能ってのはスゴイよ。表面に繕った正義感なんかじゃ止められない』

297: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/10(火) 13:35:54.51 ID:iJX4zIAO
『いつしか街には欲望に塗れた人間達が溢れ、破壊の限りを尽くし、街は混乱する』

のび太「そんなラスト…誰も望んじゃいないッ!!それに誰が止めるんだッ!?」

『君だよ』

『数年…いや、数十年かけてね』

のび太「なッ…!」

『こんなジョジョも新鮮だろッ!?世紀末編ッ!北〇の拳、ジョジョMIXバージョンさァッ!!』

307: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 00:44:32.30 ID:AhaSNwAO

『フフフ…本当に荒木はいいラストを考えてくれたよ。…いや、君達かな?』


時折、窓の外から日常聞き慣れない音がのび太達の耳に飛び込んでくる。こいつの言っていた事が始まってきたのが、いやがおうでものび太には分かった。

のび太「……僕が…僕達が考えた『物語』で街が崩壊していく……」

しずか「……これはもう……街の人達の『想い』が生んだもの…私達ではどうすることもできない……そういうことなの……?」

『そうさ。そうする必要もないよ。だってみんなが望んでいたのだから!』

のび太「みんな……が……」

のび太「そうだ…望んだのは僕達なんだ……僕達の責任なんだ……」

308: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 00:52:16.86 ID:AhaSNwAO


『そう落ち込まないでくれよ。今のシーンは、これから迫り来る脅威に立ち向かおうとする、のび太君の決意の表情のアップなんだから』

カリカリ…

カリカリ…

ペンは原稿にのび太の凛々しい顔を手慣れた感じで描く。


のび太「か、顔が…」

描き終わったと同時に、のび太の表情がグググ…と、原稿の表情と同じ表情になった。

『いいねェ!ここの擬音は……ズキュウゥゥゥゥゥンでいいかな』

のび太「…………」

しずか「…………」

しずか「……やっぱりおかしい…」

のび太「……え?」

しずか「やっぱりおかしいわよこんなのッッ!!!」


パシィッ!

しずかは声を上げると、のび太の凛々しい顔に平手を入れた。

311: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 01:06:53.98 ID:AhaSNwAO
のび太「し、しずかちゃん?」

のび太は凛々しい顔から、すっかり情けない顔に変わり、自分の頬に鋭い痛みを与えたしずかを見た。


しずか「こんな…こんなのおかしいのよッ!!のび太さんだって、あんな深い掘りで妙に髪型が奇抜になっていつもより二、三倍濃いタッチの顔より、今みたいな情けない下膨れの馬鹿みたいな顔のほうがお似合いよッ!!」

のび太「……」

しずか「みんなが望んでる…?みんなが想っていた…?
それがどうしたっていうのッ!!」

『おやおや…、みんなの想いに反抗しようっていうのかい?』

しずか「犠牲の上に成り立つ『想い』なんて誰も望んでなんかいないッ!!」

312: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 01:18:07.87 ID:AhaSNwAO
しずか「『想い』を叶えたいなんて皆が思っているに決まっている……」

『……』

しずか「でもッ!大事な何かを失って叶えた『想い』なんて、これっぽっちの価値もないのよッ!!
『ちっちゃいときに一心不乱に集めた包装紙』のようにッ!」

しずか「のび太さん……思い出して。私達にはもっと大事な、もっと大きな『想い』を叶えようとしているでしょう…?」

のび太「『想い』…」

しずか「それは私達だけのものじゃない……いなくなった皆の『想い』も篭っている…」


しずかの言う『想い』…

のび太「出木杉……」

それは『ジョジョ』を読んだ後に生まれる小さい『想い』とは比べものにならないほど…


のび太「スネ吉……」


大きく、


のび太「ドラミ………ドラえもん……」


尊い。


のび太「それだけじゃない……もっと沢山の人が……『想って』た……」


しずか「『平和な日常を取り戻す』」

313: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 01:24:32.98 ID:AhaSNwAO
のび太「…そうだよ……なんで僕はこんなに馬鹿なんだ…こんなことに迷っていたなんて」


のび太「僕は取り戻すんだ」


のび太「出木杉が…ドラえもんが望んだ日々をッッ!!」


のび太の顔は相変わらず情けないタッチだった。
しかし、その目は、どんなときよりも、強く、決意に満ちていた。


しずか「……『想い』を力に」


314: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 01:33:19.45 ID:AhaSNwAO

『熱く、心に響く言葉をのび太に届けると…』


カリカリ…

カリカリ…


『しずかは考えるのをやめた』




ドシュッ




しずか「………あ…」


しずかが体に違和感を感じ、ゆっくりと顔を傾けて見てみると、自分の体を血まみれの腕が貫通していた。


しずか「……あ…れ…?………うっ……」


ジャイアンの母「……娘を……娘を殺させはしない……」

ジャイアンの母はゆっくりとしずかの体から自らの『スタンド』の腕を引き抜く。
しずかの体は糸の切れた操り人形のように倒れた。


のび太「あ…ああ………ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

315: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 01:37:32.60 ID:AhaSNwAO


『主人公をたぶらかすなら退場してもらうしかない。』

『君の言ってた想いの力?それはどうしたんだい?』


しずかがその疑問に返答することはなく、
横ではジャイアンの母が死んだように立ち尽くしていた。


『娘を守ろうとする母の力は偉大だなァ。こんなに簡単に行動してくれるなんて』


のび太「貴様ァァァァァァァァァァァ!!!!!」

317: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 01:43:59.76 ID:AhaSNwAO
『このジョジョの物語の前では全ての事象が』


『無駄無駄無駄無駄』


『さあ、いよいよフィナーレだッ!!』


『この一描きで皆の想いが声を揃えて言うだろうゥッ!!感謝の言葉をこの私にィッ!!!』

318: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 01:49:50.40 ID:AhaSNwAO
ジャイ子の手にまがまがしいほどに輝く緑の光が纏わり付き、握られているペンは震える。

しずかの横で泣きじゃくりながらのび太はその様子をただただ見つめるしかなかった。



ドドドドドドドドドドドドド


『…………』



『…………』



依然、漲る力を発しているペンは一向にフィナーレを原稿に描く気配が無い。


グググ…


『何故だ………何故動かん……ジャイ子ォッ!!!』

319: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 01:58:56.13 ID:AhaSNwAO


その『スタンド』はペンを動かさないのでは無かった。
いかに腕に力を込めようと動かなかったのだ。


『一体……何が……!!』


のび太「………ッ!光が……ッ」


のび太の目の前の机から、暗い部屋をその緑の光で満たしていたジャイ子の体から、別の、白く輝く光が溢れていく。


『眩しい……この光は何なんだ……ッ』


ジャイ子「………もう……これ以上……あなたに私の漫画を……汚されたくない……!」

苦しそうに、だが力強くジャイ子の口から、『スタンド』のものではない、ジャイ子自身の言葉がこぼれた。

320: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 02:06:10.64 ID:AhaSNwAO


のび太「ジャイ子ちゃんッッ!!」

ジャイ子「……のび太さん………」


『無駄な事は嫌いなんだ……こんな事したって無駄だよッ!!私の力は皆の力ァッ!!お前一人の力で止められるものではないッ!!』


ブワァァ!!


のび太「ううぅ!!ジャ、ジャイ子ちゃん…ッ!」


激しさを増す緑の光はジャイ子の体を包み込んだ。


『…ハハハッ!!やはり無駄だったッ!!お前はおとなしく続きを描けばいいん……………な……なに……』


ジャイ子「……私一人じゃない…!」

321: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 02:17:17.87 ID:AhaSNwAO
『何故だ……この光は何故いまだ輝き続けている…!?』


ジャイ子「この光は……皆の『想い』の光…」


のび太「あ………ああ……」


のび太はたしかに見たッ!

その白く輝く光の中に出木杉やドラえもんの姿があることを。


のび太「出木杉ぃ!!ドラえもんッ!!」


光の中で、出木杉とドラえもんは優しい笑顔でのび太を見ていた。

その隣にいたジャイアンは、悲しそうな顔でジャイ子を見ていた。


ジャイ子「お兄ちゃん………!!…ごめんなさい……私のせいで……ごめんなさい…!」

ジャイ子は涙を流しながらジャイアンに謝った。自分の意思ではない、だけど自分の描いた漫画のせいで兄を死なせてしまった。

ジャイ子「私……ずっとわかってた……描いてた時もずっと……だけど……止めれなかった………!目の前でお兄ちゃんが……死んでいくのを黙って……見てるしか出来なかった!!」


322: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 02:22:29.65 ID:AhaSNwAO


ジャイアン「お前は自慢の妹だ」

ジャイ子「……え?」


声が聞こえた。幻聴なんかではない。大好きだった兄の声が。

ジャイアンはジャイ子に屈託無く笑いかけると、光の中に消えた。


ジャイ子「お兄ちゃ……ん…」



『ふざけるなァッ!!こんなものでジョジョの続きが描けなくなるなんて有り得ないのだァァ!!!』

325: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 21:05:36.60 ID:AhaSNwAO

のび太「暖かい……なんて暖かい光なんだァ………」


その光は……
暖かく……体が感じる『暖かさ』ではなく、心で理解できる『暖かさ』をのび太に届けた…

のび太は、この場にいない人には『何言ってんだ?頭パーになっちまったか?』なんて言われるかもしれないが…
光から奇妙な『懐かしさ』も感じていた。皮膚の奥がむず痒くなるような『懐かしさ』を…
それはのび太の耳でも感じる事になった…


ドラえもん「のび太君」


のび太「ドラえもん……?」


出木杉「僕もいるよ」


のび太「出木杉君…!」

326: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 21:20:05.00 ID:AhaSNwAO

のび太「ど…どうして………」

のび太「い、いや……そんなことはどうでもいい……」

のび太「そんなことは……!」


のび太は目を真っ赤にして、光り輝く二人に驚き、そして喜んだ。


ドラえもん「のび太君……君を残してしまって本当にごめんね……」


のび太「あ…謝る事なんてない……」


出木杉「僕も一緒に……野比君と『想い』を叶えたかった…」

出木杉「でも…それももう出来ない……」


のび太「え……?ど、どうしてだい…?」


ドラえもん「僕達はもうここにはいないんだ……『想い』だけが……『物語』の中に残ったんだ」


のび太「そんな…」


出木杉「でも僕達はずっと君と一緒だ」


ドラえもん「平和を取り戻すって、約束したよね…?僕達の『想い』はのび太君と同じだ…」


出木杉「だから君は何も迷うことはないんだ……僕達がついてるから…」


のび太「ドラえもん…出木杉…」


ドラえもん「僕達だけじゃない…こんな『物語』、終わらせたい人達は沢山いる……その人達の『想い』も君についてる。……だからもう一度約束して…」

ドラえもん出木杉「平和な日常を取り戻す、って!」


のび太「…………」

のび太「うんッ!」

327: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 21:28:16.04 ID:AhaSNwAO

『平和を取り戻す』

二人の言葉はのび太の胸に深く刻まれ、二人の顔ものび太の心にしっかりと焼き付いた。

出木杉とドラえもんは、のび太の返事を確認すると、ニッコリと笑い、光の中へと歩いていった。


クルッ


のび太「…ドラえもん?」


ドラえもん「ドラ焼き…一緒に食べるって約束…守れなくてゴメン……」


そう言うと、ドラえもんは出木杉と共に光の中へと消えていった。


のび太「………」

そして白い光もやがてその輝きを失っていった…


のび太「…………」


のび太「げ……幻覚……だったのか…………それとも……」


のび太「………」


のび太「とにかく俺は約束を果たさなければならない………今の俺には感傷に浸っている時間なんかないぜ…」

328: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 21:34:35.21 ID:AhaSNwAO

ドドドドドドドドドドドドド


『よくもこんな茶番を……よくもジョジョを汚してくれたなァァッ!!!』


のび太「汚す……?」


のび太「汚してんのは誰だ…?」


のび太「テメーだ」


『私が汚しただとッ!?馬鹿も休み休み言えッ!!ジョジョのなんたるかも知らない青二才がァァッ!!』


のび太「…『ジョジョ』をわかっちゃいねぇのは」


のび太「テメーだ」


『なにィィ~~~~~~?』

329: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 21:43:33.47 ID:AhaSNwAO


のび太「『ジョジョ』ってのはな………いろんな友達と…ジョジョ立ちし合ったり……会話の中にジョジョの名言を挟んでみたり……ブチャラティの服が欲しいからって自分で作ったら、ちゃんとしたやつが発売されたり………」


のび太「そこには哀しい顔してるやつなんていない」


のび太「だがこの世界は哀しみで溢れている」


のび太「これがお前の言う『ジョジョ』の物語っていうなら……」


のび太「お前に荒木を語る資格など無いッ!」


『ふざけるな……私は荒木の意志そのものッ!!私を否定すること、すなわちッ!荒木を否定ッ!!
ドゥーーユゥゥゥアンダァァァスタァァァァァン!!??』


330: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 21:53:23.99 ID:AhaSNwAO

のび太「荒木はこんなことを望んでいないっていつになったら気づくッ!!」


『気づくも気づかないも私が荒木ッッ!!私の考え、それすなわち荒木ィッ!!』


のび太「そうか……じゃあこれもお前の意志なんだな?」


『ッ!!………な、み、源静香ッ!!何故生きているッ!?』


のび太はしずかの肩に手を回し、しずかを立たせた。


しずか「ありがとう…」


のび太「…ついさっき…しずかちゃんは目を覚ましたんだ…。致命傷は外れていたらしい…」

331: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 21:58:27.52 ID:AhaSNwAO
『生きている……そんなことは有り得ないッ!!私が源静香を死なすよう描いたら必ず死ぬのだッ!!!』


『…………ジャ…ジャイ子……!!』


ジャイ子「………」


自分の顔を見る『スタンド』にジャイ子は小悪魔ウィンクをお見舞いした。


『…………ぐッ…』


332: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/13(金) 22:11:08.44 ID:AhaSNwAO


しずか「どうせなら…無傷で済まして欲しかったけど」

ジャイ子「ごめんなさい…コイツに気付かれないためには仕方なかったの…」


しずか「…まぁ……おかげで私の『スタンド』がやっと目覚めたわ……」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


『ス、スタンド…?源静香にスタンドは発現しない物語のはずだ………』


ブワァァァァァァ


しずかは自分の肉体を流れる『スタンド』のエネルギーに体を震わせるッ!


しずか「ウィィィィィィィィィィ!!!!これが『スタンド』!!なんて、なんて力なのッ!?押し潰されてしまいそうッッ!!」


しずかの『スタンド』は、その美しい姿をあらわにした。


のび太「これがしずかちゃんの『スタンド』……」


《………》


《私ハ……『JOJO』……全テヲ終ワラセルノガ私ノ役目…》

338: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/14(土) 00:02:02.40 ID:IOP4nEAO
 
しずか「『JOJO』……それがあなたの名前…」

《私ハオ前ヲ止メルタメニ存在スル……オ前ト私ハ対ノ存在…》

『止める…?私を…?どういうことだ………。私と対の存在だと?私はそんな事を聞いたことがないッ!!』

《荒木ハオ前ガ生マレル事ヲ予測シテイタ。モシオ前ガ生マレタ時ニ、オ前ヲ止メル存在トシテ、荒木ハ『物語』ノ中ニ私ノ存在ヲ隠シテイタ》

《荒木ハ薄々気付イテイタ……コノヨウナ事態ニナッテシマウ事ヲ。ダカラ私ヲ『物語』ノ一部ニ隠シタノダ。
オ前ガ『ジョジョ』ノ『物語』ヲ現実化サセタ時ニ、私モ一緒ニ現実トナッテ現レルヨウニ》

『だから……源静香はスタンドも持っていないのにこんなラストまで生き延びたのか……ッ!おかしいと思ったんだよ………ッ』

《ソウ……私ノヨリシロトシテ、コノ子ヲ選ンダノダ》

339: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/14(土) 00:09:38.63 ID:IOP4nEAO
しずか「そう…だったの……」

《サア……『物語』ヲ終ワラセル時ガ来タ》


パアァァァーーーッ


『JOJO』が両手を天に向かって上げると、全ての物を白く染めてしまうほどの閃光が四方八方に走り出した。


『この光は………………!!!!や……やめろ……!!』


《全テノ『スタンド』ヲ消ス……ソレガ荒木ガ望ンダラストダ》

340: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/14(土) 00:17:28.95 ID:IOP4nEAO
『い……いやだ……!!消えたくない………私はまだ物語を終わらせてない……!』


のび太「……お前は間違っていた」


のび太「『ジョジョ』は終わったんだ……」


『終わってない………終わってなど………ッ!!』


『ジョジョは終わらないのだァァァァァーーーーーーーーッッ』



この物語の著者『スタンド』の最期の叫びは狭い部屋に幾度も響いて………
終わることの無いと思われた物語の終焉を予感させると共に、消えた…

342: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/14(土) 00:22:11.28 ID:IOP4nEAO


のび太「…………」


しずか「…………」


のび太「終わった………」


のび太「やっと終わったんだ………」


しずか「やったのね……私達、やっと……!!」

343: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/14(土) 00:28:26.62 ID:IOP4nEAO

しずか「……あなたは……」


《………》


しずか「あなたは何で私を選んだの…?」


《貴方ニハドンナコトニデモ屈シナイ信念ガアッタカラデス。誰ヨリモ『平和』ヲ望ンデイタカラ》


のび太「やっぱりしずかちゃんはスゴイなぁ」

のび太の言葉にしずかは頬を赤らめた。


しずか「ええ…。だてにこの年で裸をさらしてないわよ」

345: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/14(土) 00:37:51.49 ID:IOP4nEAO

のび太「………あ…『キャッツ・クレイドル』が…」


のび太の背後に立っていた『キャッツ・クレイドル』は、まるで役目を終え、満足しているかのような様子で、のび太を見つめながら、少しずつ、少しずつ、その体が消え始めていた。


のび太「………」


のび太「ありがとう……『キャッツ・クレイドル』…」


のび太はそう呟き、共に戦った仲間との別れを最後まで見送った。

346: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/14(土) 00:46:23.12 ID:IOP4nEAO


しずか「……」

しずか「あなたも消えるのね…」


《私ノ役目ハ終ワリマシタ…》


しずか「ありがとう」


《…貴方タチノヨウナ読者ガイテクレル『ジョジョ』ハ幸セデス。荒木モソウ思ウハズデス》


のび太「ジョジョは大好きだよ。今までも、これからも」



『JOJO』が光の柱のように空に昇っていくと、
街に溢れていた他の『スタンド』達も次々に消滅していった……

のび太がカーテンを開けると、太陽の光が部屋に差し込んだ。

347: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/14(土) 00:49:54.43 ID:IOP4nEAO


のび太「……出木杉、ドラえもん……」


のび太「約束、守ったよ………」


のび太は窓を開け、広がる空を眺めた。


その空は、いつの日か、皆と見た空と同じように真っ青な空だった………

348: ◆.LMqmG8Hlg 2009/02/14(土) 01:00:12.94 ID:IOP4nEAO
~20年後~



…のび太は有名漫画家になったジャイ子のアドバイスのおかげもあり、念願の自筆の漫画を出版することができた。

その漫画は決して良い売上では無かったが、
一部の人々からは支持を受け、長年に渡って語り継がれる漫画となった…



それは、気弱だけど勇気のある少年、力持ちで歌のヘタな少年、ずる賢いけどいざというときは頑張る少年、頭脳明晰で運動も得意な少年、へんてこロボットに、優しくて可愛い少女が、
一緒に力を合わせて大事な物を取り戻すために立ち向かう物語……







引用元: のび太「これが…スタンド…」