1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 20:04:27.81 ID:muETfULG0

朝倉「というわけで好きな食べ物を教えてもらえるかしら?」

キョン「鳥の唐揚だが……いやいや、そうじゃなくて!」

キョン「俺に弁当を作るってどういうことだよ!?」

朝倉「どういうことってそのままの意味よ。あなたにお弁当を作って涼宮ハルヒを観察するの」

朝倉「まっ、それは口実でほんとはキョンくんと仲良しになりたんだけどね…ボソッ」

キョン「えっ?なんだって?」

朝倉「ううん、なんでもないわ。そ、それよりも迷惑かしら?」

キョン「いや、べつに迷惑ってわけじゃないが…」

朝倉「なら決まりね。明日、唐揚が入ったお弁当を作ってくるから楽しみにしててね」

キョン「おっおい!朝倉!」

キョン「……帰っちまった。本当に弁当なんて作ってくるのか?」



2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 20:10:41.34 ID:muETfULG0

―次の日―

谷口「ふぅ~ようやく昼飯の時間だぜ!」

国木田「谷口はこの時間になると俄然元気が出るよね」

谷口「当然だ!なんたって弁当タイムが俺の一番の楽しみだからな!」

キョン「それもどうかと思うがな」

谷口「そんなことより早く昼飯を食おうぜ!」

国木田「そうだね。…あれっ?キョン、お弁当は?」

キョン「ん、ああ、俺は購買で買ってく…」

朝倉「はい、キョンくん、これ」

キョン「朝倉?」

朝倉「昨日、約束したとおり唐揚入りのお弁当よ」

キョン「マジで作ってきたのか?」

朝倉「そうよ、昨日ちゃんと言ったじゃない。キョンくんのためにお弁当を作るって」



15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 20:22:14.45 ID:muETfULG0

朝倉「あれっなに、もしかして忘れてたの?」

キョン「いや、まさか本当に作ってくるとは思ってもみなかったから」

朝倉「もう、失礼しちゃうわね。はい、ちゃんと作ってきたから残さず食べてね!」

キョン「す、すまん…」

朝倉「それとね、もしよかったら…後で感想を聞かせてね」

キョン「ああ、分かったよ…」

谷口「おいっ!キョン!これはどういうことだよ!」

国木田「ほんとビックリしたよ。キョン、君と朝倉さんはそういう関係なのかい?」

キョン「そういう関係とは?」

国木田「だからお弁当を作ってもらう仲だってことだよ」

キョン「弁当を作ってもらう仲ってどんな関係だ?」

谷口「だから付き合ってるのかってことだよ!こんちくしょー!」

キョン「なっ!?」



19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 20:35:45.03 ID:muETfULG0

国木田「やっぱり朝倉さんと付き合ってるのかい?」

キョン「違う!断じて違うぞ!」

谷口「じゃあなんでお前は朝倉涼子に弁当を作ってもらってんだよ!」

キョン「そ、それは…(さてなんと説明したものか)」

谷口「あ~ん?いつからだ?いつから付き合ってんだ?この薄情者!」

国木田「もうその辺にしてあげなよ谷口。それよりもキョン、朝倉さんのお弁当を早く食べてあげなよ」

国木田「きっとキョンに早くお弁当の感想を言ってもらいたいはずだよ」

キョン「そ、そうだな…食べてみるか」パカッ

キョン「こ、これは!?」

谷口「おいおい、なんだよ、これ!すげー美味そうじゃねーか!」

国木田「ほんとだ、すごい美味しそうだね」



27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 20:47:47.24 ID:muETfULG0

キョン「俺の大好物の唐揚はもちろん。他にも卵焼きにポテトサラダ…」

国木田「へぇ~それにきんぴらごぼうまで入ってるじゃないか」

谷口「ちくしょー!俺もうさぎの形したリンゴ食いてぇぇぇ!!」

キョン「こんな手の込んだ物を作ってくるなんて…なんだか悪いな」

国木田「ふふっ、そう思うんだったら早く食べてあげなよ」

キョン「そうだな。じゃあまずは俺の大好物の唐揚から……パクッ」

キョン「……モグモゴ……」

国木田「どうなのさ?」

谷口「けっ、どうせ美味いんだろ!」

キョン「唐揚にレモン汁がかかってた…」


国木田・谷口「………」



35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 21:00:00.32 ID:muETfULG0

キョン「んっ?どうしたんだ?」

国木田「どう思う、谷口?」

谷口「ないな」

国木田「ないね」

キョン「やっぱりお前らもそう思うか。唐揚にレモン汁はないよな」

国木田「違うよキョン。僕たちがありえないって言ってるのは君に対してだよ」

キョン「えっ?おれっ?」

谷口「当たり前だ!おまえ、どこの世界に彼女に弁当作ってもらってそんな言い草ができるんだよ!」

キョン「だから朝倉は彼女じゃないと――」

国木田「それはこの際どうでもいいんだよ、キョン」

国木田「僕たちが怒ってるのは、君のために一生懸命作ってくれた朝倉さんの料理をけなしたことなんだ」

国木田「キョン、君は自分でお弁当を作ったことあるかい?」

キョン「いや、一度もない」



49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 21:11:17.39 ID:muETfULG0

谷口「ふっ、やっぱりな」

キョン「なんだよ、そういう谷口は自分で弁当作ったことあるのか?」

谷口「いや、俺もない」

国木田「…悪いけど谷口、君は少し黙っててもらえないかな?」

谷口「すいませんでした…」

国木田「えっと、話を戻すけども…お弁当を作るってことは大変なことなんだよ、キョン」

国木田「分かるだろ?前日のうちに買物をして、次の朝には早起きして学校に行くまでに作らなきゃいけないんだ」

キョン「そうだな…」

国木田「それに朝倉さんは君の分も作ってるわけだから、いつもよりも手間がかかることになるね」

キョン「!!」

国木田「しかも女の子は僕たち男子と違って朝の身支度にもたくさん時間を割くんだよ」

国木田「朝倉さんはそういう時間を削ってまで君のためにお弁当を作ってるわけだ」

国木田「キョン、これがどういうことか分かるかい?」

キョン「………」



59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 21:24:45.41 ID:muETfULG0

谷口「つまり朝倉はこのバカの喜ぶ顔を見たいから苦労を厭わず作るってわけか」

国木田「うん、そういうことだね」

キョン「そうか、俺はじゃあ無神経なことを言っちまったんだな…」

国木田「やれやれ、君は谷口でも分かる事をようやく理解したようだね」

谷口「国木田、お前さらっと俺をバカにしただろ?」

国木田「と、兎も角、朝倉さんにちゃんとお弁当を作ってくれたことを感謝するんだよ」

キョン「ああ、俺が間違ってたよ……こんなに美味いのにな」

国木田「ふふっ、それをぜひ朝倉さんに言ってあげるべきだね」

谷口「けっ、なんだって朝倉はこんな鈍感バカがいいんだが…」

キョン「悪かったな!鈍感バカで!」

谷口「悪いと思うならその唐揚一つ寄こせよ」

キョン「だが断わる」



63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 21:37:21.35 ID:muETfULG0

キョン「ふぅ…ごちそうさま」

朝倉「あらっ?どうやら残さずきれいに食べてくれたみたいね」ヒョイッ

キョン「わっ!あ、朝倉か…いきなり後ろから覗き込むなよ」

朝倉「ごめんね。私が作ったお弁当美味しかったかどうか気になっちゃって」

キョン「そ、そのことなんだがな…朝倉、お前の作った弁当とてもお――」

国木田「ニヤニヤ」

谷口「ニヤニヤ」

キョン「おっ……」

朝倉「どうしたの?キョンくん?」

キョン「すまん、ちょっと来てくれ」

朝倉「キョンくん!?どこに連れて行くのよ!」


谷口「キョンの奴、顔が真っ赤だったな」ニヤニヤ

国木田「僕たちのことは気にしなくてもいいのね」ニヤニヤ



71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 21:54:15.88 ID:muETfULG0

―屋上―

朝倉「ねぇキョンくん、どうして屋上なんかに連れてきたの?」

キョン「いや、なんとなく人に聞かれたくなかったというか…」

朝倉「えっ!?(そ、それってもしかしてこここっ告白!?)」

キョン「(ってか俺はなんで屋上なんかに…別に人がいなきゃどこだって良かったのに)」

キョン「(この状況だとまるで俺が朝倉に告白するみたいじゃないか…告白!?)」

キョン「(な、なんだって俺はこんなに動揺してんだよ!)」ドキドキ

朝倉「(まさか告白のわけないわよね。そんなのいきなりすぎるもん…で、でも)」ドキドキ

キョン「……チラッ」

朝倉「……(ど、どうしよう!キョンくんと目が合っちゃった…恥かしいよ…)」

キョン「(あぁぁっ!なんだってこいつこんな可愛い顔してやがんだよ)」

キョン「(これじゃあマジで告白する雰囲気じゃないか。お、落ち着け…落ち着くんだ)」



82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 22:11:05.06 ID:muETfULG0

キョン「あ、あのさ…朝倉」

朝倉「は、はい…」

キョン「お前の作った弁当、すごい美味かったぞ」

朝倉「キョンくん、ありがとう…」

キョン「信じてもらないかもしれないが、あんな美味い弁当を食べたのは初めてだ」

朝倉「そう言ってもらえるとすごいうれしいわ。…キョンくんの大好物の唐揚はどうだった?」

キョン「ああ、それなんだがな、じつは俺、唐揚にレモン汁って苦手なんだ」

朝倉「そうだったの!?ご、ごめんなさい。私、レモンをかけるとアクセントになると思って…」

キョン「いや、朝倉の作る料理が美味いから、俺レモンがかかってる唐揚が好きになったよ」

キョン「これも朝倉のおかげだ。サンキューな」

朝倉「キョンくん…」



99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 22:25:20.77 ID:muETfULG0

朝倉「えへへ、なんだか褒められてやる気が湧いてきたわ」

朝倉「よーし!明日もはりきって美味しいお弁当を作ってきてあげるわね!」

キョン「そのことなんだがな、朝倉。…もう俺のために弁当を作ってこなくてもいいぞ」

朝倉「えっ…?ど、どうして…やっぱり迷惑だった!?それとも本当は美味しくなかったの!?」

キョン「いや、俺は全然迷惑じゃないし、お前の弁当は美味しかったさ」

朝倉「じゃあどうして作ってこなくていいとか言うの?」

キョン「弁当を作るのって大変なんだろ?毎朝、二人分の弁当を準備させるなんてお前にとって苦痛だろ」

朝倉「大変でも苦痛でもないわ。私はキョンくんの分を勝手に作ってるだけだし…全然そんな」

キョン「でも毎日はさすがにな…」

朝倉「そんなことないわ。私はね、キョンくんが私の作るお弁当を食べて喜んでくれたらそれで満足なの」

朝倉「あなたに美味しいって言ってもらえたら、私はそれでもう十分なの」

キョン「朝倉…」



106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 22:35:17.59 ID:muETfULG0

朝倉「でもキョンくんが私のことを気にかけて美味しく食べてもらえないなら…もう作らないことにするね」

キョン「朝倉…?」

朝倉「えへへ…だってせっかく食べてもらうなら心から喜んで食べてもらいたいし」

朝倉「だから…ごめんね…グスン…もう、お弁当作らないわ…」

キョン「………」

朝倉「今日だけでもあなたに喜んでもらえて良かったわ。ありがとう、キョンくん」

キョン「ハンバーグ!」

朝倉「えっ?」

キョン「ハンバーグも大好物だ……あ、明日はそれで頼む」

朝倉「いいの…?明日もまたキョンくんにお弁当を作ってきてもいいの?」

キョン「ああ、朝倉の作るハンバーグを是非とも食べたいんだ。お願いできるか?」

朝倉「うん!」





123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 22:50:11.46 ID:muETfULG0

キョン「そうか、じゃあ明日まで朝倉のハンバーグを心待ちにしてるか」

朝倉「あっ」

キョン「どうしたんだ?」

朝倉「ううん、ひき肉を切らしてたから帰りにお買物しなきゃと思って」

キョン「俺が無理な注文をしたばかりに余計な面倒をかけることになってしまったな…」

朝倉「面倒だなんてそんな…ちょうど近所のスーパーで安売りをしているから逆に良かったわ」

キョン「……なんだったら買物に付き合ってやるぞ」

朝倉「えっ?」

キョン「いや、弁当を作ってもらうわけだし…せめて荷物持ちくらいはやらせてくれよ」

朝倉「(まさかのキョンくんと一緒にお買物~!どうしよう!)」

朝倉「……でもキョンくんSOS団があるんじゃないの?」

キョン「しまった!そうだった…うっかり失念してたぜ」



132:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:02:03.19 ID:muETfULG0

キョン「くそっ…結局、俺は朝倉のために何もしてやれないわけか…」

朝倉「いいのよ。その気持ちだけでももらっておくわ」

キョン「すまん」

朝倉「それともSOS団が終わるまで待っててあげようか?」

キョン「えっ?それこそ面倒じゃないか?その間、お前はどう時間を潰すつもりだよ」

朝倉「あらっ私なら図書室で有意義に勉強でもしてるわよ。せっかくだから一緒にお買物しましょう?」

キョン「ほんとにそれでいいのか?」

朝倉「ええ、SOS団が終わったらすぐに向かいに来てね」

キョン「分かった。なるべく早く終わらせるようにする。そして一緒に買物しよう。約束だ」

朝倉「うん、約束よ、キョンくん」



143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:11:28.81 ID:muETfULG0

―放課後―

ハルヒ「ちょっとキョン!あんた何さっきからキョロキョロしてるのよ!」

キョン「あっいや、すまん。(くそっ…もうこんな時間か)」

キョン「なぁハルヒ、まだ今日の活動を続ける気なのか?」

ハルヒ「当然でしょ!SOS団の今後の方針活動について会議をしているんだから!」

キョン「そうだったな…(くそっ、なんだってこんな日に会議なんぞやるんだよ、こいつは)」

ハルヒ「それともなに?キョン!あんた会議をすっぽかして早く帰りたい理由でもあるの!」

キョン「いや、ないです。(あるんだよ!こんちくしょー!)」

ハルヒ「そう。じゃあ、今日は下校時間ぎりぎりまで会議を続けるわよ!」

キョン「なんだと…」





152:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:28:37.00 ID:muETfULG0

ハルヒ「――てな感じで今後は活動していくわよ!」

キョン「(やれやれ、ようやく結論に達したか…)」

ハルヒ「あらっ?もうすっかり外が真っ暗ね。皆!さっさと帰るわよ!」

キョン「そんじゃ、俺は先に帰らせてもらうぞ」

ハルヒ「ちょっと待ちなさい!キョン!」

キョン「今度はなんだ?会議はもう終わったんだろ?」

ハルヒ「外は真っ暗なんだから、キョン、私を送っていきなさい」

キョン「すまんがそれは…」

ハルヒ「なによ!あんたか弱い女の子を一人で帰らせるつもりなの!」

キョン「本当にすまん!送ってやりたいんだが急いでるんだ!本当にすまん!」

ハルヒ「ちょっと待ちなさい!こらっ!」


ハルヒ「キョンの奴、なにか怪しいわね…」



170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:43:14.38 ID:muETfULG0

キョン「くそっ誰かさんのせいですっかり遅くなっちまったじゃないか」

キョン「朝倉…もうさすがに帰ってるだろうな」ガラッ

朝倉「zzz」

キョン「朝倉!?」

キョン「こいつ、ずっと図書室で待っていてくれたのか…みんな下校したというのに」

朝倉「スヤスヤ…」

キョン「何から何までお前には迷惑をかけっぱなしだな…すまんな、朝倉」ナデナデ

朝倉「う~ん……あれっ?キョンくん?」

キョン「おはよう」

朝倉「やだっ!私、もしかして寝てた!?」

キョン「気持ちよさそうに寝てたぞ」

朝倉「どうしよう、キョンくんに寝顔見られちゃった…」



265:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 07:55:25.25 ID:BNTR4gX00

キョン「ほぉ~そいつはけっこうなものを見ちまったな」

朝倉「ううっ…一生の不覚だわ」

キョン「そう落ち込むなって。お前の寝顔、可愛かったぞ(思わず頭をなでたのは秘密な)」

朝倉「えっ?ほんと?」

キョン「ああ、ほんとだ。口からよだれが出てて可愛かったぞ」

朝倉「もう!キョンくんのいじわる!」

キョン「ハハッ、すまんすまん。そんなに怒るな」

朝倉「だってキョンくんがいじわるするんだもん。酷い話だわ!」

キョン「………」

朝倉「キョンくん?」

キョン「朝倉、こんな遅い時間まで待っていてくれてありがとう」



270:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 08:09:00.95 ID:BNTR4gX00

朝倉「どうしたのよ、改まっちゃって…なんだか照れくさいわ」

キョン「いや、なんというかすごい感謝してるんだよ。本当ならもっと早い時間に買物にいけるはずだったのに」

朝倉「しょうがないわよ。SOS団の活動が長引いたんでしょ?」

キョン「ああ」

朝倉「ならキョンくんが責任を感じる必要はないわ。それにこの時間って安売りになってるからかえって好都合なのよ」

キョン「そっか、そう言ってもらえると助かる」

朝倉「それよりも早く買物を済ませましょう、キョンくん」

キョン「そうだな、そろそろ学校が閉まるし行くか」

朝倉「うん。荷物持ち期待してるわね」

キョン「ま、まかせておけ」



271:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 08:24:09.24 ID:BNTR4gX00

―スーパー―

キョン「スーパーに久しぶりに来たな…」

朝倉「あらっキョンくんは普段お買物とかしないの?」

キョン「まあな。ウチはもっぱら母親が買物を済ませるしな」

朝倉「へぇ~そうなんだ。……はっ!」

キョン「どうした?」

朝倉「見てキョンくん!この卵、お一人様ワンパックで110円よ!」

キョン「はぁ、それで?」

朝倉「それでって…安いから買うのよ!お一人様限りだけどキョンくんもいるから二つ買えるわ」

キョン「えっと…それってありなのか?」

朝倉「細かいことはいいのよ。あっ、お豆腐も安いわ!キャー!お魚もタイムセールでこんなに安くなってる!」

キョン「おいっハンバーグの材料を買うじゃなかったのかよ…」



275:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 08:39:39.84 ID:BNTR4gX00

朝倉「も、もちろん分かってるわよ。ハンバーグの材料ね」

朝倉「え~と、ひき肉ひき肉…うそっ!豚ロースがこんなに安いわ!」

朝倉「ねぇキョンくん……明日のお弁当、トンカツなんてどうかしら?」

キョン「いや、いいけどね。べつになんだっていいけどね」

朝倉「じょ、冗談よ。ちゃんとキョンくんの好きなハンバーグを作ってあげるから心配しないで」

キョン「へいへい(…朝倉の奴、完全に主婦だな)」

朝倉「きゃー!トイレットペーバーも大安売りをやってるわ!キョンくん!二つ持ってきて!」

キョン「くそっ、これじゃあ母親の買物に付き合わされる子供じゃないか…」

朝倉「ちょっと!早く持ってきてよ!急がないとなくなっちゃうわよ!」

キョン「やれやれだ…」





281:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 08:59:27.04 ID:BNTR4gX00

朝倉「ふぅ、あなたのおかげで安い物をたくさん買うことができたわ」

キョン「まさかこんな大量に買い込むとはな…正直、腕が辛いです」

朝倉「ごめんね。でもその分、明日のお弁当を期待しててね」

朝倉「キョンくんのために頑張ってうんと美味しいお弁当を作ってあげるから」

キョン「あっあ…」

朝倉「キョンくん、ちゃんと聞いてる?」

キョン「もちろん聞いてたぞ。明日も楽しみにしてるよ(やばい、今の朝倉、すごい可愛かったぞ…)」

朝倉「うん、期待しててね。あらっ家に着いたわ」

キョン「(まじ重かったぜ…)」

朝倉「……ねぇ、良かったら少し上がっていかない?」ドキドキ

キョン「えっ?」



284:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 09:12:45.62 ID:BNTR4gX00

朝倉「ほらっ荷物持ちをしてくれたし、お礼にお茶くらい出してあげるわ」

キョン「でももう時間的に遅いしな…」

朝倉「だったらご飯を食べてい――」

ブーブー

キョン「おっ悪い携帯が鳴った。……ハルヒから着信?」

朝倉「えっ?涼宮さん?」

キョン「もしもし、ハルヒか?どうしたんだ?」

ハルヒ「ちょっとキョン!あんた今どこにいるのよ!あんたまだ家に帰ってないの!?」

キョン「別にどこだっていいだろ…それよりも何で俺が家にいないって分かるんだ」

ハルヒ「だって私いまあんたの家にお邪魔してるのよ」

キョン「はぁ?なんでお前が俺の家にいるんだよ?」

ハルヒ「なによ!あんたが学校で忘れ物をしたから親切に届けに来てやったんじゃない!このバカ!」

キョン「(俺、何か忘れ物したか…?)」



294:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 09:37:41.11 ID:BNTR4gX00

キョン「え~と、すまん。忘れ物をした覚えがないんだが…」

ハルヒ「今日使った会議の資料よ!私が作成した資料を置いて帰るなんていい度胸してるじゃない!」

キョン「わざわざ、そんなものを届けるために家におしかけたのかよ…」

ハルヒ「そんなものってどういう意味よ!いいからさっさと帰ってきなさい!妹ちゃんも心配してるわよ」

キョン「分かった、分かった。だからそうカッカするな」

キョン「そういうことだから朝倉、俺はもう帰るな」

朝倉「ううん、家族の人も心配してると思うから早く帰ってあげて」

キョン「朝倉の煎れるお茶を飲めないのが残念だよ。そんじゃまた明日な」

朝倉「うん、お弁当期待しててね。バイバイ」


朝倉「もう、キョンくんったらおせじなんか言っちゃってさ…ふふっ」

朝倉「よーし!頑張って明日の下ごしらえをするわよ」



302:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 09:55:53.61 ID:BNTR4gX00

キョン「ただいま」

妹「キョンくんおかえり~」

ハルヒ「ちょっと!遅かったじゃない!キョン!」

キョン「おわっ!お前まだ居たのかよ?」

ハルヒ「そうよ。資料を忘れてほっつき歩いてたあんたに説教するために待ってたのよ」

キョン「やれやれ…」

ハルヒ「それで、キョン。あんたこんな時間までどこに行ってたのよ」

キョン「お前に答える義務はないはずだが?」

ハルヒ「キョン、あんた何か隠してるでしょ?」

キョン「な、なんでそう思うんだよ」

ハルヒ「やましいことがないなら、どこに行ってたか言えるはずよ」

キョン「やましいことはないが…別にどうだっていいだろ」

ハルヒ「はぁ!?なによそれ!」



314:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 10:07:36.18 ID:BNTR4gX00

妹「けんかはだめだよ……」

キョン「べつにケンカしてるわけじゃないぞ」

ハルヒ「そ、そうよ。安心して、妹ちゃん」

妹「そうなの?」

キョン「ああ、ほんとだ」

妹「良かった~。ねぇキョンくん、早くご飯にしようよ。私おなかすいたよ~」

キョン「あれっ?そういえば親父たちは?」

ハルヒ「あんたの両親なら親戚に不幸があったって言ってでかけたわよ」

キョン「マジか。……んっ?じゃあ今日の晩飯はどうなるんだよ」

妹「キョンくん、ハルにゃんがお母さんの代わりにご飯作ってくれたんだよ」

キョン「えっ?」

ハルヒ「べ、べつにあんたのためじゃないわ。妹ちゃんが可哀相だったからよ」



367:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 13:38:51.98 ID:BNTR4gX00

キョン「そうか、なんだかすまないな」

ハルヒ「そう思うんだったら残さず食べることね!まっ、大したものは作れなかったけどね」

キョン「いやいや、こいつはなかなか美味そうじゃないか。エビフライまであるぞ」

ハルヒ「それは妹ちゃんの大好物なのよ」

妹「えへへ、エビフライ大好き~!ハルにゃんも好き!」

ハルヒ「どうもありがとう。…なにやってるのよ、さっさと食べなさいよバカキョン」

キョン「あっおう、そうだな。いただくよ……」

キョン「……モグモゴ…」

ハルヒ「ど、どうなのよ?」

キョン「美味いよ」

ハルヒ「ほんと!?」

キョン「ああ、マジで美味いよ。なっ?」

妹「うん、ハルにゃんお料理上手~」



369:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 13:49:34.62 ID:BNTR4gX00

ハルヒ「そ、そう、ありがとう」

妹「本当に美味しいよ。私毎日食べたいくらいだもん」

ハルヒ「あんまりおだてないでよ、妹ちゃん」

妹「だって本当のことだもん~。キョンくんもそう思うよね?」

キョン「んっ?ああ、まぁ…悪くはないかな」

ハルヒ「!!」

キョン「どうしたんだハルヒ?急に黙り込んでしまって。腹でも痛いのか?」

ハルヒ「う、うっさい!バカキョン!」

ハルヒ「妹ちゃんが可哀想だったから作ってあげただけよ。あんたは別に餓死してもいいの!」

ハルヒ「(まったく、なんで私がこいつのために毎日ご飯を作らなきゃいけないのよ…キョンのために毎日…)」

キョン「こいつは何をそう怒ってるんだ?」

妹「にひひ、キョンくんの鈍感~」



375:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 14:00:20.08 ID:BNTR4gX00

ハルヒ「じゃあ私はこれで帰るね」

キョン「ああ、わざわざすまなかったな」

ハルヒ「そう思うんだったら明日からもっと積極的にSOS団に打ち込んでほしいものね!」

キョン「へいへい、分かったよ」

ハルヒ「まったく、あんたはほんとにぐうたらなんだから……」

キョン「?」

ハルヒ「あ、あのさ…キョンっていつもお弁当持ってきてるじゃない」

キョン「無駄な金を使いたくないからな。親に作ってもらってるよ」

ハルヒ「でも今日はもう家族の人帰ってこないんでしょ。どうするのよ?」

キョン「どうするって明日はあさk――」

ハルヒ「代わりに私が作ってあげるわ!」

キョン「へっ?」

ハルヒ「だからあんたのお母さんの代わりに私が作ってあげるって言ってるのよ!」






382:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 14:10:38.55 ID:BNTR4gX00

ハルヒ「じゃあそういうことだから首を長くして待ってることね!」

キョン「おいっ!待てハルヒ!俺には先約が――」

―バタン―

キョン「くそっ、人の話も聞かずに行っちまった」

キョン「まずいな…明日は朝倉と約束してるって言うのに」

妹「キョンくんどうしたの~?」

キョン「………」

妹「キョンくん~?」

キョン「やっぱハルヒに電話して断わるべきだよな。うん、そうしよう」

妹「変なキョンくん」



398:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 14:23:12.87 ID:BNTR4gX00

キョン「とはいったものの、どう断わったものか…」ウロウロ

妹「私も一緒にキョンくんとグルグルする~」

キョン「こ、こらっ、遊んでるわけじゃないんだぞ!」

妹「アハハッ~、キョンくんと一緒にグ~ルグ~ル」

キョン「ったく…こっちは必死だというのに」

ブーブー

キョン「おっ!ハルヒから着信だ。これは断わるチャンスだ!」

キョン「もしもし、ハルヒか。じつは明日のことでお前に――」

ハルヒ「キョン!さっき妹ちゃんから聞いたんだけどあんたハンバーグ好きでしょ?」

キョン「ああ、好きだが…それよりも明日は――」

ハルヒ「あっそ。じゃあ、明日はハンバーグを作ってくるわ。楽しみにしてなさいよ!」

―ガチャッ―

キョン「くそっー!なんだってあいつは人の話を聞かないんだよ!」

キョン「もういいっ!俺は知らん!どうにでもなれ!」



408:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 14:33:41.86 ID:BNTR4gX00

―次の日―

朝倉「うふふ、キョンくんのために今朝ははりきっちゃった」

国木田「おはよう、朝倉さん。おやっ?それはお弁当だね」

朝倉「うん、またキョンくんに渡そうと思って」

国木田「へぇ~キョンは幸せ者だね。毎日、美味しいお弁当を食べれて」

朝倉「や、やめてよ国木田くん。恥かしいわ」

国木田「ううん、そんなことないよ。昨日だってキョンすごい美味しそうに食べてたよ」

朝倉「そうなの?」

国木田「うん。あんなキョンの喜んだ顔久しぶりに見たよ。朝倉のおかげだね」

朝倉「そ、そうなんだ。キョンくん喜んで食べてくれたんだ。えへへ」

国木田「ほらっ、キョンが来たみたいだよ。渡してきなよ」

朝倉「うん、ありがとう、国木田君」



416:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 14:51:08.53 ID:BNTR4gX00

朝倉「キョンくん、お弁当――」

ハルヒ「キョン!昨日、約束したお弁当よ!」

キョン「ああ…」

朝倉「えっ…?」

ハルヒ「わざわざあんたの好きなハンバーグを入れてあげたんだからね。感謝しなさいよ!」

朝倉「!!」

キョン「じつはハルヒ…そのことなんだが――」

朝倉「へぇ~涼宮さん、キョンくんにお弁当作ってきたんだ」

キョン「朝倉!?」

ハルヒ「別にこいつのためなんかじゃないのよ。成り行き上作るはめになったのよ」

朝倉「いいわね、手作りのお弁当。私なんか今日寝坊しちゃったから学食なのよ」

朝倉「だからごめんね、キョンくん…ボソッ」

キョン「そ、そうか…(正直、助かった…)」




434:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 15:01:18.41 ID:BNTR4gX00

国木田「どうだった、朝倉さん?キョンの奴喜んでた?」

朝倉「国木田くん…良かったらこのお弁当食べてもらえないかしら」

国木田「えっ?だ、だってこれはキョンのために作ったんだろ?」

朝倉「もういいのよ…」

国木田「もういいって、どういうことなのさ?これはキョンに渡すものだろ?」

朝倉「もういいのよ!私が浅はかだったのよ…彼には涼宮さんがいるのに」

国木田「朝倉さん…?」

国木田「……良かったら僕に話してもらえないかな。自惚れかもしないけど朝倉さんの力になれると思うよ」

朝倉「国木田くん…」




451:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 15:14:14.95 ID:BNTR4gX00

国木田「そうか…お弁当を渡そうと思ったら涼宮さんが」

朝倉「そうなの。だから私、思わず彼に嘘ついちゃって…」

朝倉「でもそれで良かったのよ。彼女でもないのにお弁当なんか渡されて迷惑なだけよね」

国木田「そんなことないよ。朝倉さんのお弁当を食べてる時のキョンはすごいうれしそうだったよ」

朝倉「そう…でもこれからは違うわ。キョンくんに喜んでもらえるのは涼宮さんよ」

朝倉「だから…もう私はいいわ。これ以上キョンくんを困らせたくないし…」

国木田「ちょっと待ってよ!そんなのダメだよ!」

朝倉「ううん、もう決めたの。だからごめんね」

国木田「そんな…」

朝倉「国木田くん、これ、私の話を聞いてくれたお礼よ。彼に渡そうとしたお弁当だけど良かったら食べて」

朝倉「とっても美味しいんですから。…どうもありがとうね」

国木田「待ってよ!朝倉さん!」


国木田「まったく…女の子を悲しませるなんて最低だよ、キョン」



456:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 15:23:55.83 ID:BNTR4gX00

―昼食タイム―

谷口「ひゃっはー!昼飯の時間だぜ!」

キョン「お前はどんだけ生きがいにしてるんだよ…」

国木田「ねぇ、キョン、お弁当を食べたら話したいことがあるんだけどいいかな?」

キョン「えっ?俺に?」

国木田「うん、悪いけど屋上に来てもらえないかい。どうして君に大切な話があるんだよ」

キョン「ああ、別に構わんが…」

国木田「そう、どうもありがとう。じゃあ僕は屋上で待ってるから」

キョン「……国木田の奴、一体話って何なんだ?」

谷口「お前、国木田に掘られるな」

キョン「や、やめろ、バカ!」

谷口「ウッホ」



464:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 15:32:56.19 ID:BNTR4gX00

キョン「お前に言われたとおり屋上に来たけど…なんだよ、俺に話って?」

国木田「これ、なんだか分かるかい?」

キョン「んっ?その包みは…弁当箱か?」

国木田「そうだよ。朝倉さんが君に渡そうとしたお弁当だよ」

キョン「おっおい、冗談はよせよ。朝倉は今日寝坊して弁当は持ってきてないはずだぞ」

国木田「キョンはそれを本心から言ってるのかい?だとしたら寛容な僕でも怒るよ」

キョン「…??」

国木田「ふぅ…あのね、どこの世界にお弁当の二股をかけるバカがいるのさ?」

国木田「君は朝倉さんにお弁当を頼んだばかりか涼宮さんにまでお願いしてたのかい?」

キョン「いや、それはハルヒが勝手に…」

国木田「言い訳はやめなよ。男の言い訳は見苦しいよ、キョン」

キョン「………」



479:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 15:49:07.75 ID:BNTR4gX00

国木田「まぁ君にどういう事情があったかは僕には分からないよ…でもね」

国木田「君は結果的に涼宮さんまで傷つけてしまったんだよ」

キョン「………」

国木田「でも一番可哀想なのは朝倉さんだよ。このお弁当ね、キョンの代わりに僕がもらったんだ」

キョン「そうか…」

国木田「でも僕には食べることができなかったよ。だってこんなのが添えられてたんだよ?」スッ

キョン「これは…」



キョンくんへ

ごめんね、ハンバーグの表面がちょっと焦げちゃったの(T T)
でもちゃんと食べれるから安心してね♪
良かったらまた後で感想聞かせてね。喜んでもらえるといいな~



484:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 15:58:13.75 ID:BNTR4gX00

キョン「朝倉…」

国木田「兎に角、このお弁当はキョンに渡すよ。これは本来君が貰うべきものだからね」

キョン「なぁ国木田、俺、どうしたらいいと思う。朝倉になんて謝ればいいんだ…」

国木田「……悪いけどそこまで僕はお人よしじゃないんだ。」

国木田「親友が困っているのは見過ごせないけど、これは君が招いたことだからね」

キョン「そうだったな」

国木田「いっぱい悩んで自分なりの解決を見つけるんだ。僕にはそれしか言えないよ、ごめんね」

キョン「いや、俺の方こそ色々とすまん。迷惑かけたな」

国木田「そう思うんだったら早く朝倉さんに謝るべきだね。僕じゃなくてさ」

キョン「ああ、分かったよ」



493:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 16:13:36.58 ID:BNTR4gX00

―放課後―

キョン「おいっ朝倉!話があるんだがちょっといいか?」

朝倉「なに…」

キョン「その、国木田からお前の作った弁当を貰ったぞ」

朝倉「そうなんだ。それで?」

キョン「えっと、だからそのとても美味かった。ちゃんと全部食べたぞ」

朝倉「話はそれだけ?ならもう帰ってもいいかしら?」

キョン「それとすまん!お前と約束していたのにハルヒにまで作らせてすまんなかった!」

朝倉「酷いよ、キョンくん酷すぎるわよ!…私がどんな気持ちで作ったかあなたには分からないんでしょ!」

キョン「……」

朝倉「ごめんなさい、これ以上、あなたと話したくないわ」

キョン「おっおい!朝倉!待ってくれ――」


キョン「ははっ、当然の報いってやつか…」



506:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 16:22:19.15 ID:BNTR4gX00

キョン「ただいま…」

妹「おかえりなさい~…あれっ?キョンくんなんだか元気ないよ~」

キョン「ああ、ちょっとな…」

キョン「(はぁ、どうしたら朝倉に許してもらえるんだろうか…)」

―「いっぱい悩んで自分なりの解決を見つけるしかないね」―

キョン「(やっぱり自分で考えるしかないか…)」

キョン「(それにしても俺は、朝倉に最低なことをしてしまったんだな)」

―「私がどんな気持ちで作ったかあなたには分からないんでしょ!」―

キョン「どんな気持ちで作ったか…」

妹「キョンくん?」

キョン「朝倉の気持ち…か…」



517:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 16:30:31.94 ID:BNTR4gX00

―次の日―

谷口「ひゃっはー!俺様のお楽しみタイム、昼飯の時間だぜ!」

国木田「分かったからもう少し静かにしたらどうなんだい?」

キョン「すまんが、俺はちょっと外すぞ」

谷口「あっ?どこ行くんだよキョン?」

キョン「ちょっとな…」

国木田「僕たちは気にせず行ってきなよ。今日は谷口と二人で食べるからさ」

キョン「悪いな…」

国木田「いいって。それよりも答えは見つかったのかい?」

キョン「正解かどうかは分からないがな…」

国木田「そうか、うまくいくといいね」

キョン「ああ…それじゃあ席を外すよ」

谷口「なぁ国木田、一体何の話をしてるんだ?」

国木田「ある朴念仁が漢をみせようとする話かな…」



526:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 16:38:51.97 ID:BNTR4gX00

朝倉「屋上なんかに呼び出して何のよう?あなたとは話したくないんだけど」

キョン「突然呼び出してすまん…けどどうしても渡したい物があるんだ」

朝倉「渡したい物?…私に?」

キョン「ああ、昨日、朝倉が俺に言っただろ。自分がどんな気持ちで弁当を作ったか分かっているのかって」

朝倉「ええ、言ったわね…」

キョン「だから、お前がどんな気持ちで俺に弁当を作ってくれたのか…それを知りたくて…その」

キョン「お、俺も自分で朝倉のために弁当を作ってみたんだ」

朝倉「ええっ!?キョンくんが私のために?」

キョン「ああ、正直料理なんて生まれて初めてやったよ。でも頼む、食べてみてくれ」スッ

朝倉「キョンくん…」



540:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 16:47:10.29 ID:BNTR4gX00

朝倉「バ、バカね…そんなことにためにわざわざ作ってくるなんて…」

キョン「頼む、一口だけでもいいから食べてみてくれ」

朝倉「……分かったわ」

キョン「ど、どうだ?」

朝倉「……モグモグ…なによ、このお弁当、全然なってないじゃない」

朝倉「卵焼きは真っ黒だし…ウィンナーはちゃんと火が通ってないし」

朝倉「おまけに彩りが最悪だわ。それになにより美味しくない」

キョン「そ、そうか…そうだよな、無理させてすまなかった」

朝倉「でも…作った人の温かさが感じられるわ」

キョン「えっ?」

朝倉「一生懸命、作ったんだろうなってことがこのお弁当には感じられるの」



548:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 16:54:33.40 ID:BNTR4gX00

朝倉「料理もろくにしたことがないのに、手に絆創膏なんて付けちゃって…」

朝倉「きっとそれほどお弁当を渡す相手に許してもらいたかったのね」

キョン「朝倉!俺、自分で初めて弁当を作ってみて分かったんだ。お前の言ってた意味が」

キョン「俺、この弁当を作ってる時、お前のことばかり考えてた!」

キョン「少しでもお前に喜んでもらえたらいいなって、ずっと朝倉のことを考えた」

キョン「お前もそうだったんだろ?俺に弁当を作ってた時、ずっと渡す相手―俺のことを考えてたんだろ」

朝倉「………」

キョン「それなのに俺、あんな酷い無神経なことをしちまって…」

キョン「ほんとうにごめん!朝倉、ごめんなさい!」



564:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 17:06:38.43 ID:BNTR4gX00

朝倉「……あなたの作るお弁当、壊滅的に美味しくなかったわ」

キョン「すまん…」

朝倉「だからこれからは私が毎日お弁当を作ってあなたに料理を教えてあげるわ」

キョン「朝倉…?」

朝倉「私に許してもらいたいなら、これからも毎日私のお弁当を食べること!いいわね?」

キョン「ああ、分かったよ!お前の作る弁当を毎日食べるよ!朝倉、ありがとう!」

朝倉「そ、それとね…もう一つだけ条件があるんだけど、いいかな?」

キョン「なんだ、なんでも言ってくれ。俺にできることならなんでもするぞ!」

朝倉「た、たまにはキョンくんの作ったお弁当も食べたいかな…」

キョン「それはちょっと……いや、頑張ってみるか」

朝倉「えへへ、ありがとう、キョンくん♪」



一方、その頃、>>1は今日も大学で便所飯を食っていたとさ。

めでたしめでたし






666:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 01:43:44.01 ID:u3DKqDWBO

キョン「お前の寝顔…そ、その…か、可愛いかった、ぞ…」

朝倉「!(や、ヤバいよ~…キュンってきちゃった…)」

キョン「あ、あ~、その~、なんだ…遅くなったし、さっさと買い物行こうぜ」

朝倉「あ、ちょ、ちょっと待ってよ~」

タッタッタッ…

コソッ

ハルヒ「…あのバカキョンに彼女?よりによって朝倉?」

ハルヒ「…違う。認めたくない…」

ハルヒ「真実を…確かめなきゃ!」
タッタッタッ…

…スッ

古泉「…やれやれ。困ったものです」



669:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 02:14:21.97 ID:u3DKqDWBO

―商店街―
ざわざわ…

キョン「やっぱり夕方は混んでて…おっと」

朝倉「きゃっ!…危なかったわぁ」

キョン「はぐれる原因にもなりかねん…しょうがない。あ、朝倉」
朝倉「? なぁに、キョンくん」

キョン「そ、その…手、つながないか」

朝倉「!」

キョン「ほ、ほら、あれだ…これだけ人が多いとはぐれる原因にもなりかねんし…」
キョン「な、何より一緒に買い物に来たわけだし…(は、恥ずかしい!我ながら何を言ってるんだ!)」

朝倉「…(幸せだわ…何も考えられない…)」

キョン「その…嫌ならかまわんが…」

朝倉「嫌なわけないわ!ぜひ!ぜひつなぎましょ!」

キョン「あ、ああ。(朝倉の顔…真っ赤だ…俺も真っ赤だろうな)」

ハルヒ(何…あの二人?急に真っ赤になってうつむいてるわ)

ハルヒ(もう少し、様子を見るべきね)

古泉「ご利用の皆様、夕方のタイムサービスですよ~(やれやれ、どうなるのでしょうか)」



701:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 11:51:55.96 ID:u3DKqDWBO

キョン「とりあえず、手始めはどこに行くんだ?」

朝倉「野菜から買いましょ。」

キョン「一気に買えばいいじゃないか。ほれ、あそこにスーパーがあるぞ」

朝倉「はぁ…何もわかってないわ。いいから私についてきて」

てくてく…

朝倉「ここよ」

キョン「…八百屋だな」

八百屋のオヤジ「おっ、涼子ちゃん、らっしゃい!!」

キョン「…どこかで見たことある気が…」



703:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 12:02:12.88 ID:u3DKqDWBO

朝倉「いつも買いに来てるの。安くておいしいのよ」

オヤジ「いつもご贔屓に。涼子ちゃん、男なんて連れちゃって…恋人かい?」

朝倉「(カアッ)もう!おじさんたら!玉ねぎとジャガイモちょうだい!」

オヤジ「おお~怖い怖い…あいよっ!」

朝倉「もうっ…」

キョン(気まずいというか恥ずかしいというか…)

オヤジ「今日もサービスしとくよ!彼氏さんと仲良く食べとくれ!」

朝倉「スイカ半玉なんてもらえないわよ。お代払うわ」

オヤジ「いいからいいから!毎度あり!」

朝倉「おじさん…ありがとうっ!」

キョン「あ、ありがとうございますっ!」



704:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 12:12:00.21 ID:u3DKqDWBO

キョン「いい人だったな」

朝倉「だからいつも買いに行ってるの。この前のポテトサラダもジャガイモくれたから作ってみたの」

キョン「またジャガイモ買ってたようだが…?」

朝倉「おいしくなかった…?ダメ…かな?」

キョン「(ドキッ)いやいや!断じてそれはない!ぜひ頼む!」

朝倉「よかった…この前よりもっとおいしく作るからね!」

キョン「楽しみにしてるぞ。よし、次は肉屋だな!」

朝倉「ふふっ、これも任せといて♪」

キョン「よし、行こう(ギュッ)」
朝倉「!…うん!(ギュッ)」

てくてく…

ジーッ…

ハルヒ(手、つないでる…恋人…なのかしら…)

古泉「押さないでください!列に並んでください!(ちょっとマズイかもしれません…僕自身が)」



739:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 20:41:58.96 ID:u3DKqDWBO

キョン「ここか…おい、列ができてるぞ」

朝倉「早く並びましょ。…ちょっと遅かったかしら」

古泉「ひき肉がお買い得…(! 誘導をしていたら二人が並んでしまった…)」
古泉(うまくごまかすしかないようですね)

キョン「・・・?あれ?古泉か?」

古泉「これはこれは。お二方揃ってお買い物ですか?」

キョン「まぁな。さっき偶然出くわしたんだ」

朝倉「そ、そうなのよ!…いい?ほんと偶然なのよ!」

古泉「では、そういうことで。私はバイトです」

キョン「見ればわかる。ご苦労なこった」

古泉「別のバイトも増えなければいいですが…(チラッ)」



740:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 20:43:11.09 ID:u3DKqDWBO

キョン「よくはわからんが、働きすぎるなよ」

古泉(気づいてない…)

朝倉「あ、買えそうだわ!行きましょ♪(ぐいっ)」

キョン「おっと、わかったわかった。じゃあな、古泉」

古泉「ええ、ではまた学校で。」

ハルヒ(あれは古泉君よね?…あの二人、腕…組んでる。)
ハルヒ(やっぱり付き合ってたのね…)
ハルヒ(…)

ハルヒ(帰ろ…)

肉屋「あら、涼子ちゃん!いらっしゃい!」

朝倉「いつもお世話になってます。」

肉屋「あらあらとんでもない。ところで…となりのナイスガイは?(ニヤニヤ)」

朝倉「く、クラスメイトでしゅ…(噛んじゃった…)」



743:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 20:48:02.48 ID:u3DKqDWBO

肉屋「ふーん…へぇー…ところで今日はどうするの?」

朝倉「ひき肉300gと豚バラ200gください♪」

肉屋「はい、ちょっと待っててね」

キョン「お前、知り合いが多くないか?(ボソッ)」

朝倉「いつも利用してるからね。キョンくんが最初に見つけたスーパー、高いのよ
。」

朝倉「それに、人の温かさみたいなものが心地よくて…変かしら?」

キョン「そんなことないぞ。それが人情ってやつだ」

朝倉「そうね…私にも少しわかる気がするわ」

キョン「? 人間だから人情がわかって当たり前だろ?」

朝倉「・・・いいのよ。ふふっ」

肉屋「おまちどうさま。少ないけどオマケつけといたからね」

朝倉「いつもありがとうございます、おいしくいただきますね」

キョン「ありがとうございます」

肉屋「あらあら…二人とも仲良くね。いつもありがとね~」



744:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 20:49:07.59 ID:u3DKqDWBO

てくてく

キョン「今度からはお袋に商店街を勧めてみようかな」

朝倉「ばったり会っちゃうかもね」

朝倉「さ、うちまで帰りましょ♪(ぎゅっ)」

キョン「…うん。帰ろうか」

古泉(初々しいですね…案の定もうひとつのバイトですか…)

古泉(まったく、困ったものです)



748:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 21:00:54.14 ID:u3DKqDWBO

てくてく

キョン「マンションか」

朝倉「うん。事情があって一人暮らしなの」

キョン「なんと!さぞかし裕福な家庭なんだろうな…」

朝倉「…まぁ、ね。とりあえず行きましょ」

ういーん…

キョン「5階か」

朝倉「階段だとちょっと大変かな。まぁめったに使わないけど」

キョン「いい運動にはなるだろ」



749:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 21:02:17.84 ID:u3DKqDWBO

チーン…

朝倉「えっと、鍵鍵…あ、帰ってるのか」

キョン「? !…両親か!?」

朝倉「いいのいいの、上がってって」

キョン「いやいやいやいや…さすがにマズイだろ」

朝倉「一人暮らしって言ったじゃない…とにかく上がってって」

キョン「あ、あぁ…おじゃまします…」

長門「…」

朝倉「遅くなっちゃったわ。すぐ準備するわね」

キョン「…」

長門&キョン「…」



751:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 21:13:38.14 ID:u3DKqDWBO

キョン「…長門?」

長門「何?」

キョン「どうして朝倉の部屋にいるんだ?」

長門「同居している」

キョン「あれ、一人暮らしじゃなかったっけ?お前も朝倉も」

長門「同じマンションの同じ部屋とは言っていない」

キョン「それはそうだが…」

パタパタ…

朝倉「ねぇ、二人とも。今日は豚肉のしょうが焼きよ♪」

キョン(俺はその瞬間、雷が落ちたような衝撃を受けた)

キョン(そう、朝倉の姿を見た瞬間だ)

キョン(この世に舞い降りた女神…そうとしか言い表せなかった)

キョン(鮮やかな青色に、ワンポイントで大きな朝顔の花が描かれているエプロン…)

キョン(制服にエプロン…これに勝るエプロンと言えば エプロンしか思いつかない…)

キョン(そう。ただ、ただ完璧だった)



756:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 21:41:21.52 ID:u3DKqDWBO

朝倉「? キョンくん?どうしたの?口開けてよだれ垂らしながら涙なんか流して…」

キョン「幸せだ…自分という存在が小さく感じるぜ…」

長門「彼は私に任せて。あなたは調理に集中して」

キョン「あー…もう気持ちよくなってきた…」

朝倉「任せたわよ。冷蔵庫のキャベツを刻んで…ブツブツ」

長門「ああなった彼女は止められない。まずはあなたを元に戻す」

キョン「あばば~…痛い痛い!はっ!何があった!?」

長門「頬をつねっただけ」

キョン「朝倉はきれいだよな…谷口が高評価していた理由がよくわかるな」



757:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 21:47:59.97 ID:u3DKqDWBO

朝倉「い~ざ進め~や~キッチ~ン♪目~指すは~ジャ~ガイモ~♪」ザクザク…トントントン…

キョン「ノリノリだな…いつもああなのか?」

長門「いつも通り。昨日はクッキングパパのOPだった」

キョン「…チョイスがそっち方面だな」

長門「あれが鼻歌に変わると最高潮。プロの手つきになる」

キョン「ちょっと見てくるかな」
長門「ちょっと待っ…間に合わなかった」

キョン「さてさて、調子はいかがかなっと」



760:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 22:07:24.61 ID:u3DKqDWBO

朝倉「♪~♪♪~(鼻歌)」

キョン「朝倉、調子は」

ヒュッ…

ツーッ…

キョン「…え?」

朝倉「ここから先は女の戦場…踏み入ったら…命の保証はないわよ?たとえキョンくんでも」

キョン「…あぁ。よく理解した(目が…ヤバい…身体中で警告音が目一杯鳴り響いてるぜ…)」

朝倉「わかったら向こう行っててくれるかな?」

キョン「せめて飲み物取らせ」

朝倉「うん、それ無理♪」

キョン「(ゾクッ)あ、あぁ…じゃあ向こうで待ってることにする」
てくてく

朝倉「♪♪♪~♪~♪~(鼻歌)」



765:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/24(水) 22:39:05.59 ID:u3DKqDWBO

てくてく

キョン「長門、お前知ってたな?」

長門「あなたは私の忠告を聞かずに行ってしまった」

キョン「…ちょっと浮ついていた自分を恥じたよ。すまんな、長門」

長門「いい、それより私は読書を進めたい。許可を」

キョン「何で俺に聞くんだ?好きなだけ読んでくれ」

長門「…(コクッ)」

ペラ…ペラ…

♪~♪♪♪♪~♪~

トントントン…

しばらく、本の捲れる音ときれいな鼻歌、包丁の奏でるリズミカルな音が静かに流れていた。



794:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 07:50:09.55 ID:gR7nK7GeO

―閉鎖空間―
神人「…」

古泉「確かに涼宮さんの閉鎖空間なのですが…神人は動かず立ち尽くしているだけ…」

古泉「…とりあえずはいつも通り、倒させていただきましょう」

ヒュン…


ハルヒ「…キョンのことを考えるとモヤモヤする。でも…朝倉と付き合ってるのは間違いなさそうね」

ハルヒ「…」

ハルヒ「私は…どうすれば…」



795:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 08:02:23.84 ID:gR7nK7GeO

―朝倉&長門宅―
朝倉「すーなおに好きとー♪言ーえない君ーも♪」

キョン「(歌…上手いよな。顔も身体もレベル高いし…恋人ぐらいいてもおかしくないんだが…)」

長門「…(ペラッ)」

キョン「なぁ、長門。朝倉に恋人とかいたりしないのか?」

長門「いない」

キョン「そうか。なんかもったいない気がするな」

長門「…」

キョン「あ、あぁ…特に深い意味はないんだ。なんとなく気になってな…」

長門「朝倉涼子はあなたに好意をもっている」

キョン「…なぜわかるんだ?」

長門「…」

長門「なんとなく」



796:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 08:10:22.70 ID:gR7nK7GeO

キョン「…恥ずかしいな。」

長門「帰ってもあなたの話ばかり。聞いている私が恥ずかしくなる時もある」

キョン「…俺も今それを聞いて恥ずかしいぞ」

朝倉「長門さん、テーブル拭いておいてもらえる?」

長門「了解した」

てくてく

キョン「…(ドキドキが止まらん。)」

朝倉「あとはご飯待ちね。ねぇ、二人とも何話してたの?」

パタパタ…

キョン「いやまぁ…雑談というか(エプロンマジでヤバいって)」

長門「あなたが彼に好意をもっていることについて話していた」

キョン・朝倉「…」



799:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 08:21:06.44 ID:gR7nK7GeO

朝倉「やぁねぇ長門さん、何言ってるんだか」

長門「あなたは毎日、顔を赤くしながら彼のことばかり楽しそうに話している。」

朝倉「(カアッ)…な、何言ってるのよ!そんなこと…きょ、キョンくんからも何か言ってよ!」

キョン「お、俺?」

長門「顔が真っ赤」

朝倉「ち、違うわよ。その、あの…(チラッ)」

キョン「…(そんな真っ赤にしながら見られても…俺も恥ずかしいぞ)」

朝倉「も、もう知らない!調理に戻るわ!」

パタパタ…

キョン(やべぇ…めちゃくちゃ可愛い…)



802:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 08:34:09.32 ID:gR7nK7GeO

キョン「おい、長門。さすがに言い過ぎなんじゃ」

長門「いい。ひどい時は告白のシミュレーションまで私に話していた。仕返し。」

キョン「…ちなみにどんな告白だったんだ?」

長門「それは」

朝倉「な が と さ ん ?」

長門「…私は読書を再開する」

朝倉「…もう。キョンくん、包丁使わない簡単な作業するから手伝ってほしいんだけど…いいかな?(ドキドキ)」

キョン「あ、あぁ。喜んで。(おいおいおい…俺の自制心が暴走しちまうぞ)」



836:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 19:38:54.07 ID:gR7nK7GeO

朝倉「えっとね、盛り付けお願いできるかしら?」

キョン「あぁ。俺のセンス、見せてやるよ」

朝倉「ふふっ。期待してるわよ。私はその間洗い物してるから」

キョン(キャベツの千切り、水にさらした紫たまねぎ、しょうが焼きか…)

朝倉(キョンくんが真剣に考えてるときの横顔…かっこいいなぁ…)

朝倉(…はっ!見とれてないで洗い物しなきゃ)

キュッキュッ…ジャーッ…
カチャンカチャン…

キョン「よし!ここはキャベツでここにたまねぎ…できた!」

朝倉「あら、結構センスあるのね。見直しちゃったわ」

キョン「まぁな。ってか盛り付けにセンスなんて関係ないだろ」

朝倉「そうかな…キョンくんらしさが出てるわよ」(ポーッ)

キョン「何恥ずかしいこと言ってんだか…これ、持ってくぞ」

朝倉「うん。よろしくね」

キョン(何ポーッとした目で見てるんだよ…恥ずかしいぜ…)



837:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 19:40:56.99 ID:gR7nK7GeO

長門「おいしそう」(パクッ)

キョン「コラ!つまみ食いしちゃいけません!」

朝倉「もう、長門さんたら。はい、ご飯持っていってね」

長門「…」スッ…てくてく
キョン「飯になってやっと動くのかよ…」

朝倉「はい、みんな座ったわね。じゃあ…」

朝倉・キョン「いただきます」
長門「」パクッ

朝倉「長門さん!お行儀が悪いわよ!」

長門「問題ない」

キョン「まぁまぁ、いいじゃないか。俺たちもさっさと食べよう。長門に全部食われちまう。」

朝倉「ほんとにもう…」

キョン「うめぇ!!!何これうめぇ!!!うほっ!!!」

朝倉「キョンくんも落ち着いて食べなさい!」

キョン「からあげといい料理上手いな!お前いいお嫁さんになれるぞ!」

朝倉(キョンくんのお嫁さんがいいなぁ…)ドキドキ



839:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 19:42:15.72 ID:gR7nK7GeO

長門「おかわり」

朝倉「はいはい。ちょっと待っててね」

パタパタ…

キョン「おかわりぐらい自分で行ったらどうなんだ」

長門「朝倉涼子の顔を見て」

キョン「…!すごい嬉しそうな顔だな」

長門「私はあの顔を見たいから」

キョン「たしかに…ずっと見ていたくなるな…」(すごく…きれいだ)

長門「もっと食べなければという気持ちになる」パクッ

キョン「俺も負けてられん!食べまくるぞ!」パクパク

朝倉「あらあら・・・よっぽどお腹すいてたのね」

朝倉「! もう、キョンくん、おべんとつけてどこいくの♪」ひょいっ、ぱくっ

キョン「!!!!!!!」

朝倉「? …!!!!!!!」カアアッ

長門「」パクッパクパクッ



844:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 20:18:51.74 ID:gR7nK7GeO

長門「ごちそうさま」

朝倉「…!お、おそまつでした!」
キョン「! 俺もごちそうさま!」

朝倉「おそまつさまでした…。あの…おいしかった?」
キョン「もちろん!これから毎日でも食べたいぐらいだ。」

朝倉「お弁当作ってくって約束したじゃない…」

キョン「そうだったな…。その…ほんとにお願いしてもいいのか?」
朝倉「私が作ってくって言ってるんだからいいの!」

キョン「…じゃあ、これからよろしく頼む。」

朝倉「…!うん♪」



846:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 20:23:51.45 ID:gR7nK7GeO


キョン「ほんとにいいのか?洗い物ぐらいできるぞ?」

朝倉「いいのよ。帰るの遅くなっちゃうわよ」

キョン「俺はかまわないが」

朝倉「いいの!帰って宿題でもしたら?ふふっ」

キョン「…それもそうだな。悪いな。じゃ、また明日な。」

朝倉「うん、また明日ね。おやすみなさい♪」

長門「…」

キョン「長門もまた明日な。二人とも、おやすみ。」

長門「また明日」

バタン

キョン「飯うまかったな…明日から楽しみだっと」テクテク



847:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 20:26:29.89 ID:gR7nK7GeO


朝倉「♪~」
ガチャガチャ…キュッキュッ…

長門「いつになく機嫌がいい」
朝倉「キョンくんが来たのよ?嬉しいにきまってるじゃない♪」

朝倉「放課後デートに買い物よ?幸せだわ♪」
長門「そう。それはよかった」

てくてく

朝倉「…長門さんもずっとニコニコしてたくせに。とぼけちゃって♪」
朝倉「♪♪~」


キョン「ただいま~」

キョンの妹「あ~っ、キョンくんだ~」

キョン「まずはおかえりでしょ。母さんに食ってきたからご飯いらないって言っといてくれ」

キョンの妹「うん、わかった~」

キョン「さ~て、宿題でもしますか」
キョン「? 携帯が鳴ってる…」
キョン「誰だ……ハルヒから?」



857:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 21:23:50.18 ID:gR7nK7GeO

キョン「もしもーし」

ハルヒ〈キョン?あたしよ!〉

キョン「携帯見ればそれぐらいわかる…で、どうしたんだ?」

ハルヒ〈…〉

キョン「? 何だ、黙ったりして。変なもんでも食ったのか?」

ハルヒ〈ねぇ…今日の夕方、何してた?〉

キョン「!! …夕方?部活後は普通に家に帰ったが…?」

ハルヒ〈…ほんと?〉

キョン「あ、あぁ…」

ハルヒ〈…そう。わかったわ。私の勘違いだったのかしら…〉

キョン「何がだ…?(まさか…見られてた!?)」



858:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 21:25:48.04 ID:gR7nK7GeO

ハルヒ〈あんたが朝倉と一緒にいたところを見たの。それも仲良くね〉

キョン「!!!(まずい!!!) あ…あぁ、あれはたまたま出くわしてな。あいつが悪ノリしてくっついてきたんだよ」

ハルヒ〈そうよね…あんたと朝倉じゃ釣り合わないし!やっぱあたしの勘違いだわ!〉

キョン「…ったく、早とちりしすぎなんだよ(いけるか…!?)」

ハルヒ〈…なんて言うと思った?真相は古泉君に聞くことにするわ〉

キョン「!!!!!(そこまで…!だが古泉には偶然出くわしたと言ってあるし、面倒起こしたくないからうまくかわすはず…)」
キョン「…あぁ、別に構わないぞ。あいつは朝倉と出会ってすぐに会ったからわかってるはずだ」



860:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 21:48:45.99 ID:gR7nK7GeO

ハルヒ〈そうするわ!じゃあね!おやすみ!〉

プツッ…ツーツーツー…

キョン「…念のため古泉には手回ししとくか」
キョン「めるめる(メール打ってる擬音)」

キョン「よし、送信」
キョン「まぁ、大丈夫だろう」

キョン「! もう返ってきた…なになに…」
古泉【よしなに】

キョン「よし、大丈夫だな。宿題でもするか」


キョン「! 寝てしまった!」

どうやら宿題していたら眠ってしまったようだ。
しかし、ある違和感に気付いた。過去、体験したことのある、もう二度とごめんだと思っていたんだがな…

キョン「…校庭」

そして、色のない…

キョン「…閉鎖、空間」



862:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 21:54:13.75 ID:gR7nK7GeO

経験上、次に行く場所はわかっている。
我らが部、SOS団の部室だ。

キョン「…ってことは」

ガチャ

やはりいるわけだ―。

ハルヒ「キョン!またあんたとね!」


―我らがSOS団の団長は。


キョン「よぉ。またお前とだな」



863:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 21:58:48.45 ID:gR7nK7GeO

まぁ、いざとなれば前回と同じ方法を使えば…。

使えるかは、また効果があるかはわからないが。

ハルヒ「またあんたとだけど、前回の二の舞は嫌よ。近くにこないで。」

…早くも道は閉ざされたようだ。
さて…白雪姫に嫌われてしまっては物語は進まない。

ヤツの言葉じゃないが、

キョン「やれやれ、困ったものだ」



887:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/25(木) 23:54:15.12 ID:gR7nK7GeO

そうだ、そのヒントをもらったのは…

キョン「なぁハルヒ、ちょっとそのPC使わせてくれ」

ハルヒ「嫌よ」

キョン「頼む、どうしても使いたいんだ」

ハルヒ「絶対嫌!」

キョン「何かヒントがあるかもしれん!頼む!」

ハルヒ「絶っ対嫌!!」


オーマイゴッド。こいつは手強いな。
もしかすると、ベリーハードなルートを選んでしまったのかもしれない。

…こいつはマズイ。長門にも頼れない。



889:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 00:01:45.86 ID:6EI9zBSwO

こうなるとヤツしか頼れない。

…不本意ではあるが。


キョン「ちょっと学校をうろついてみる。前回と違う所があるかもしれん」

ハルヒ「どうぞ。お好きなだけうろついてちょうだい」

ガチャ

少し不愉快な気持ちになりつつも俺は部室を出た。

電気もついておらず、足元もおぼつかぬまま外を目指した。

おっと、ちなみに神人はぼーっと突っ立ったまま動かない。危険がないのか赤い玉も見えない。

…嫌な予感がする。得てして、俺の嫌な予感はこういう時だけ当たるのだ。 

キョン「古泉!いるのか?いたらここまで来てくれ!」



893:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 00:10:08.53 ID:6EI9zBSwO

感覚でどのくらいだろう…少なくとも5分は呼んでは待つ、この動作を繰り返した。


―だが、ヤツは現れなかった。


脱出の糸口はなかった。

PCを触るチャンスはあっても、少なくとも古泉とは会えない。

神人は放置されたまま…あの状態を維持してもらうしかなさそうだ。

キョン「PC…いや長門に賭けるしかない」

俺はSOS団部室まで全速力で駆け抜けた。


しかし、思わぬ事態が待っていた。


キョン「ハルヒ、頼む開けてくれ」

ハルヒ「嫌よ。あんたがキョンだっていう証拠もないし」


我らが団長殿は部室にて籠城していた。



897:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 00:21:27.34 ID:6EI9zBSwO

キョン「俺は俺だ、さっきまで一緒にいたじゃないか」

ハルヒ「キョンは前回と違うかもと言ったわ。もしかしたらあんたは本物のキョンじゃないかもしれない」

キョン「そんな訳あるか。とりあえずとっとと開けてくれ」

ハルヒ「嫌!絶対開けない!」


…もうダメだ。只でさえ前回と状況が違いすぎて頭が回ってないというのに。

面倒だ。アレをやろう。男なら一度はやりたいと思うアレを。



899:ID変わっちゃったね(´・ω・`):2009/06/26(金) 00:28:27.34 ID:6EI9zBSwO

俺は覚悟を決め、とりあえず映画のワンシーンを想像した。

キョン「いっせーの…せっ!!!」

ドンッ!!

一発では開かないようだ。

ハルヒ「何やってるの!?やめなさい!」

キョン「じゃあ開けてくれ」

ハルヒ「だから本物かどうか…」
キョン「……。いっせーの…せっ!」

ドギャッ!!

おっ、いけそうな感じの音。

ハルヒ「やめなさい!壊れるでしょ!」

キョン「いっせーの…せっ!!!」

ハルヒ「やめ」

グシャッバキャッ!!!…バターン!!!

キョン「あたた…手間かけさせやがって」

ハルヒ「…い、いや。来ないで」



901:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 00:39:53.61 ID:6EI9zBSwO

キョン「? どこからどう見ても本物の俺だろ?何言ってんだ?」

泣きそうな目になりながら隅で怯えているハルヒ。一体どうしたんだ?

キョン「ハルヒ、一体どうした」
ハルヒ「来ないで!!!!!!」
…何だ、この豹変ぶりは。まるで駄々をこねる子どもだ。

キョン「…わかった。出来る限りお前に近づかないようにする。ただ、PCを使わせてくれ」

ハルヒ「…好きにしていいから近づかないで」

キョン「じゃあ移動するからな」
てくてく

ささっ…ささっ…

本当に何なんだ?全力で避けられている。どうせならここに巻き込むのを避けてほしかったが。

キョン「頼むぞ…」

祈るようにして電源ボタンを押した。



904:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 00:50:45.70 ID:6EI9zBSwO

カチッ…フイーン…カリカリ…

起動は成功したようだ。

あとは…つながるのを必死に祈るしかない。

見慣れたOSの起動画面…が大きく歪み、CUI画面が表示された。

いけるのか?これだけでも成功と言えるがまだわからない。

カタカタと打ち込んだ。今まで一番早かったんじゃないだろうか。

> 見えてるか?

頼む。どうか、どうか見えててくれ…!

YUKI.N > 見えている

> こちらはハルヒだけだ。前回と違い古泉はいない。

YUKI.N > 彼はいない。存在していない。

…! どういうことだ…?

> 存在していない?どういうことだ?

YUKI.N > 機関ごと現実世界から消えた。これは涼宮ハルヒの影響
…なんてこった。



908:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 01:02:54.42 ID:6EI9zBSwO

> 頼む。今回の鍵を教えてくれ。

YUKI.N > それはできない。

おいおい冗談だろ。こんな辛気臭い所に閉じ込められるのはまっぴらごめんだ。

> どういうことだ?

YUKI.N > 涼宮ハルヒは世界の改変を始めた

YUKI.N > 朝比奈みくるは未来がなくなり消えた

YUKI.N > 私も存在が消えつつある

YUKI.N > もちろん朝倉涼子も


!!!!!

…そんな。みんなが、消えている。

朝比奈さんも長門も古泉も…みんな大事な仲間だ。

しかし、俺個人の感情としては最後の人間が一番心にきた。


朝倉涼子…彼女も消えてしまう…。

一瞬、ほんの一瞬だが、頭が真っ白になった。



914:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 01:25:29.44 ID:6EI9zBSwO

> 頼む!どうにかしてくれ!

YUKI.N > 私個人としてももう一度あなたとしょくじdhnwtqgfxa

! 切れる!

キョン「長門!!!」

ガタン!

ハルヒ「!」ビクッ

YUKI.N > place of promise

ブツン…
文字は真っ黒な世界に吸い込まれていった。

ふと顔を上げるとハルヒがこちらを見ていた。

キョン「ハルヒ」

ハルヒ「!」ビクッ

キョン「どうして急に避け始めたんだ?」

ハルヒ「…」



916:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 01:31:11.13 ID:6EI9zBSwO

キョン「ハルヒ、答えてくれ」

ハルヒ「…」

キョン「ハルヒ!」

ハルヒ「…恐いのよ」

キョン「恐い?」

ハルヒ「また、ただの夢で終わるんじゃないかって」

キョン「…何がだ?」

ハルヒ「…キスよ」

キョン「…」

ハルヒ「ほんとは朝倉が恐いの。キョンを取られてしまうんじゃないかって」

ハルヒ「だから全部1からやり直したいと思った。…この夢が現実になればいいのに」



918:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 01:43:07.55 ID:6EI9zBSwO

バチン!!

ハルヒ「!」

ハルヒ「キョンが…キョンが…ぶったぁ…ヒック…」

キョン「お前は…お前はみんなを消してまでそんなに俺といたいのか!」

ハルヒ「…!」ビクッ

キョン「そんなムチャクチャなことやって嬉しいのかよ!」

キョン「何で俺がそんなムチャクチャなことに付き合わなきゃならない!?一瞬たりとも付き合いたくない!」

ハルヒ「ヒック…グスッ…」

キョン「泣くなら泣け!勝手にしろ!」

ハルヒ「うっ…う、うわぁーん…」

place of promise…鍵を探さねば。
俺は部室を飛び出した。



920:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 01:52:51.28 ID:6EI9zBSwO

タッタッタッ…

place of promise
約束の場所…
誰と何を約束しただろう。
約束なんてあってないもの。

タッタッタッ…

覚えてないで忘れられるもの。
でも、これだけはしっかりと覚えていた。
一度忘れていた。でも、また約束した。

タッタッタッ…

あの笑顔に会いたい。
あの照れた顔をみたい。

タッタッタッ…

また一緒に買い物に行きたい。
また一緒に食卓を囲みたい。
またエプロンをつけて鼻歌を奏でてほしい。


キョン「ハァ…ハァ…遠いんだ…よ…ハァ…ハァ…」
ガラッ 

俺は勢いよく開けた。約束の場所への扉を。



921:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 02:00:12.30 ID:6EI9zBSwO

“約束の場所”
  教 室   とはね…

「ふふっ、遅かったわね」

キョン「ちょっと寄り道しちゃってな」

キョン「朝倉、お前が鍵だったとはな」

朝倉「ほんとはね、実体がないの。今は長門さんと二人で1つ。」
キョン「なぜ長門じゃないんだ?」

朝倉「…気をきかせてくれたみたい。最後かも、しれないから…」

キョン「最後なんかじゃない!まだお前のハンバーグを食べてない!」

朝倉「…」

キョン「長門とも約束した!お前の作った夕飯をまた一緒に食べるって!」

キョン「だから俺はこの改変を止める!」



922:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 02:07:24.31 ID:6EI9zBSwO

朝倉「そっか…嬉しいな」

キョン「だから、最後なんて言わないでくれ。俺がどうにかしてみせる!」

朝倉「キョンくん…。わかったわ。あなたに任せる」スーッ…

キョン「! おい!朝倉!身体が消えて…」

朝倉「そろそろ構成が持たなくなってきてるの…」

朝倉「…ねぇ、キョンくん」

朝倉「大好きだよ」スーッ…

キョン「!」

キョン「…俺もだ。俺もお前が好きだ」

朝倉「ふふっ…恥ずかしいな…また…会えると…」

キョン「…!」

朝倉「じゃあね…」スーッ……フッ…

キョン「!………」



923:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 02:21:57.11 ID:6EI9zBSwO

キョン「…ゆっくりしてられない。ハルヒをどうにかしなければ…!」

タッタッタッ…

ドーン!!!ドシーンドシーン…
キョン「クソっ…神人が動きだした…急がないと…」


ハルヒ「ヒック…ヒック…」
キョン「ハルヒ!」

ハルヒ「ヒック…キョ…ン…」

キョン「ぶって悪かった。本当にすまん。」

ハルヒ「私が間違ってたの…ヒック…キョンは悪くない…」

キョン「…そうか。なぁハルヒ、もう一度SOS団で非日常を探しに行こう」

ハルヒ「でも…ヒック…キョンは怒ってる…ヒック…」

キョン「……」

ギュッ

ハルヒ「!」



924:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 02:26:04.28 ID:6EI9zBSwO

キョン「もう怒ってない。怒ってたらこんなことしないだろ?」

ハルヒ「…じゃあ…キス…して…」

キョン「…どうしてもしなきゃダメか?」

ハルヒ「嫌なら…もう知らない」
キョン「わかった(朝倉…すまん)」


…そこからは覚えていない。
気が付いたら自分の机の上だった。

とりあえず、世界は戻ったのか?
携帯からメールを送ってみる。


キョン「! 帰ってきた!なになに…」



928:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 02:36:39.20 ID:6EI9zBSwO

助かりました。我々も出動したのですが…
今回の閉鎖空間は特殊で、涼宮さんが選んだ人物がうんたらかんたら…読む気になれん。

とりあえず世界は戻ったのだろう。

疲れた。寝てたはずなのに疲れたとは、ハルヒの問題の厄介さがよくわかる。

などと考えていたら深い眠りに落ちていた。


「…ん」

うるさいなぁ…静かにしてくれ…

「キ…ン…ん!」

気持ちいいんだからほっといてくれ…

「キョンくん!」



931:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 02:44:10.60 ID:6EI9zBSwO

キョン「うわぁっ!!」

「やっと目が覚めたの?妹さんの真似した方がいいかしら」

キョン「…?誰だよ…痛っ!」

「ほらほら、ほっぺたちぎれちゃうよ~クスクス」

キョン「痛い痛い!目、覚めたから離せ!…おー痛かった」

キョン「朝倉ー、少しは手加減しろよな」

朝倉「ふふっ、ごめんなさいね。朝ごはん出来てるわよ」

キョン「…お前が作ったのか?」
朝倉「妹さんが出来てるって言ってたわ。私はお弁当担当でしょ?」
朝倉「ほんとねぼすけさんなのね♪ふふっ」

キョン「…飯食ってこよ」

朝倉「あー!ごまかした!…もう。さっさと逃げちゃった」



932:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 02:50:02.74 ID:6EI9zBSwO

キョン「いってきまーす」
キョンの妹「いてきまーす」

キョンの妹「涼子ちゃんはキョンくんと結婚するの~?」

朝倉「う~ん…どうかな~?」

キョンの妹「私涼子ちゃんがお姉ちゃんにほしい~」

朝倉「ふふっ、ありがとう♪」

キョンの妹「あ、私こっちだから!またね~」

朝倉「気をつけてね~」

キョン「すっかり慣れてやがる…すまんな、うちの妹が迷惑かけて」

朝倉「とんでもない、可愛らしくていいじゃない♪」

キョン「可愛いんだが…よくわからん」

「キョンー、朝倉ー、おっはよー」



935:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 02:55:45.67 ID:6EI9zBSwO

キョン「おぉハルヒ、おはよう」

朝倉「おはよう、涼宮さん」

ハルヒ「今日も仲良しねぇ…ま、仲良きことはいいことだわ!」

ハルヒ「あ、あれは有希!有希~!おっはよー」ダダダダダ…

朝倉「ふふっ、涼宮さんは朝から元気ね」

キョン「あいつはあぁでなきゃな。しょんぼりは似合わんよ」

朝倉「それもそうね。私達も行きましょ♪」(ギュッ)

キョン「そうだな。よし、今日も元気に行きますか」(ギュッ)

タッタッタッ…



936:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 03:02:27.57 ID:6EI9zBSwO

あの騒動の後、俺と朝倉は付き合うことにした。

問題はハルヒだったが、ハルヒはあの騒動がかなり効いたらしく、かなり性格が変わってしまった。
変わったというよりも、負の部分がなくなった感じだ。確かに俺のことは気になっていたらしい。

しかし、自分が起こした事の重大さを恥じたのか、心の中に閉じ込めてしまったようだ。

ついでに朝倉をSOS団の公式部員とし、新たなスタートを切ったSOS団。

非日常的な何かを探して…今日も楽しく騒がしく過ぎていくのだろう。


fin




943:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 03:08:01.44 ID:6EI9zBSwO

キーンコーンカーンコーン…

キョン「よし、やっと昼飯だ」

谷口「飯を忘れ物…購買行ってくる…」

国木田「先に食べてるよ」

朝倉「はい、キョンくん今日のお弁当。」

キョン「お、ありがと」

国木田「今日のメインは何だい?」

キョン「ハンバーグなんだ。楽しみにしてたんだよ」

パカッ



945:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 03:13:53.14 ID:6EI9zBSwO

キョン「…ない。ハンバーグがない!!!!!」

キョン「というより弁当の中身がない!!!!!」

国木田「えっ!?…本当だ…」

朝倉「そんなはずは…本当みたいね…」

キョン「そんな…バカな…今日のために朝ごはん減らしたのに…」
朝倉「いいわ、私のお弁当あげる。私購買で買ってくるから」

キョン「朝倉…いや、ダメだ。半分ずつしよう」

朝倉「…!い、いいわ…ょ…」(カアッ)

国木田「キョンも見せ付けてくれるね~」

谷口「俺の席…ない…うわあぁぁん!!」



947:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 03:25:04.08 ID:6EI9zBSwO

―その頃SOS団部室

ハルヒ「あれ、有希来てたの。早いわね」

長門「…」ペラッ

ハルヒ「ま、いいか。あたしも食べよ!いっただきまーす」

長門(さすがに弁当2個はきつかった)

長門(しかし、彼の弁当のハンバーグの方が二倍は大きかった)

長門(非常に由々しき問題。問題提起せねば)

ハルヒ「…有希の顔付きがいつもと違うような…」



949:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/26(金) 03:28:46.23 ID:6EI9zBSwO

キョン「ハンバーグうまいなぁ…ソースがうまい…全部うまい…」
朝倉「ほら、ご飯粒付いてるわよ」ぱくっ

国木田「///…ごゆっくり…」ササッ

キョン「朝倉、口開けて」

朝倉「い、いいわよ!自分で食べれるから!」
キョン「いいからいいから。ほい、あーん」

朝倉「///…ぁ、あーん…」ぱくっ
キョン「ん?おいしいか?」

朝倉「…うん♪ふふっ、今度は私がしてあげる♪」
キョン「ん?いいのか?じゃあ…あーん」

朝倉「あーん…ふふっ♪おいしい?」
キョン「当たり前だろ…///」

朝倉「じゃあ、スレを見てるそこのあなたも。はい、あーん♪」


fin

マジに終わり!おまいら長い間お疲れ様!
朝倉愛してるぞ!!