1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:01:06.12 ID:/3TUL6vV0

紬「もし、世界があと10日で滅びるとしたら、梓ちゃんは何がしたい?」

梓「そうですね…」

梓「美味しい物も食べたいですし」

梓「遊びにも行きたいです」

紬「何か一つしかできないとしたら?」

梓「…結婚、してみたいですね」

紬「そう」

紬「それじゃあ」

紬「しよっか」

梓「…?」

紬「結婚」

紬「私と梓ちゃんの結婚」




 

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:02:31.10 ID:/3TUL6vV0

梓「世界、滅びるんですか?」

紬「うん」

梓「どうして?」

紬「星が落ちてくるの」

梓「本当に?」

紬「嘘をつく理由がないわ」

梓「そんなことニュースでは…」

紬「36時間後にはどこの局でもやるでしょうね。確実に民間でも観測できるようになるから」

梓「…私達死ぬんですか?」

紬「ええ」

梓「シェルターとか…」

紬「地球二倍以上の質量をもった星が降ってくるの」

梓「地球、割れちゃいますね」

紬「たぶんね」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:06:45.63 ID:/3TUL6vV0

紬「じゃあ結婚の段取りしましょうか」

梓「本当にするんですか? 結婚」

紬「梓ちゃんはしたくない?」

梓「…したいです」

紬「はやくオランダ国籍をとらないと」

梓「えっ」

紬「日本国籍のままじゃ籍を入れられないもの」

梓「…わかりましたとことんお付き合いします」

紬「ええ。琴吹のバックアップがあるから」

梓「ムギ先輩のお父さんとお母さんは?」

紬「まだ国内にいるわ。最後はフィンランドで迎えるそうよ」

梓「そうなんですか」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:07:34.46 ID:/3TUL6vV0

紬「ニュースで発表されたら大騒ぎになるから早く行くわよ」

梓「役所が機能しなくなって、国籍や入籍どころじゃなくなりますからね」

紬「ええ」

梓「何を使って行くんですか」

紬「プライベートジェット。空港まではヘリで」

梓「ヘリ…ムギ先輩の家は本当になんでもありますね」

紬「ええ。琴吹に生まれたのをこれほど感謝したのは初めて」

梓「そうですか」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:08:50.36 ID:/3TUL6vV0

紬「着いたね」

梓「はい」

紬「もうオランダ国籍はとれてるわ」

梓「えっ?」

紬「飛行機に乗ってる間に斎藤が根回しをしてくれたの。暇を出したのに…」

梓「…いい執事さんですね」

紬「ええ、本当に…」

梓「じゃあ婚姻届を役所に持っていくだけですね」

紬「ええ。じゃあこれに判子を押して」

梓「はい」

紬「私も…」

梓「じゃあ役所に持っていきましょう」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:12:59.98 ID:/3TUL6vV0

紬「これで私達お嫁さん同士だね」

梓「琴吹梓ですね」

紬「実感ある?」

梓「まだありません」

紬「私もないわ」

梓「そうですよね」

紬「梓ちゃんのお父さんとお母さんに報告しに行かないと」

梓「事後報告になっちゃいますね」

紬「ええ、とりあえず帰国しましょ」

梓「はい」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:14:42.59 ID:/3TUL6vV0

紬「帰ってきたわね」

梓「はい」

紬「すごい騒ぎね」

梓「ええ。どうやら発表されたみたいですね、隕石」

紬「大人が何人も泣いてる…」

梓「泣くんですね、大人も」

紬「どうしようもなくなったら、人は泣くしかないんだね」

梓「そうですね」

紬「梓ちゃんのお父さんとお母さんはどうかしら」

梓「泣いていると思いますか?」

紬「そしたら、慰めてあげて、それからもう一度泣いてもらわないとね」

梓「いろんな意味で泣かれてしまいそうです」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:17:07.14 ID:/3TUL6vV0

紬「着いたね」

梓「ええ、ここが私の家です」

紬「お邪魔します」

梓「ただいまー」

梓母「梓! 良かった…無事だったのね」

梓「お母さん…」

梓父「あぁ、心配したんだぞ。…そのかたは?」

紬「琴吹紬と申します。本日は挨拶に参りました」

梓父「挨拶? 君の御両親も心配しているだろう。早く帰ってあげたほうがいいと思うが」

紬「…とても大切な挨拶ですから」

梓母「とりあえずあがってもらったら?」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:19:33.48 ID:/3TUL6vV0

梓「……私達結婚しました」

紬「はい。娘さんを私のお嫁さんにさせて頂きました」

紬「報告が遅れてしまい、申し訳ありません」

梓母「冗談よね?」

紬「冗談では御座いません」

紬「つい先程オランダ国籍を取得し、現地にて籍を入れさせて頂きました」

梓父「本当なのか?」

梓「うん」

梓母「でも、どうして」

紬「愛しあっているからです」

梓父「これは喜ぶべきなのかね、母さん」

梓母「地球が壊れる前に娘が結婚できるんだから、喜んでおくべきじゃないかしら」

梓父「しかし女の子同士だよ」

梓母「10日じゃ子供は生まれないんだから男でも女でも一緒よ」

梓父「それもそうか」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:21:55.17 ID:/3TUL6vV0

梓父「紬さんと言ったかね」

紬「はい」

梓父「梓は私達の大切な娘なんだ」

梓父「至らないところもあると思うし」

梓父「あと、一週間ちょっとの短い結婚生活でしかないだろうけど」

梓父「どうか、幸せにしてやって欲しい」

紬「はい。必ず」

梓母「私からもお願いします」

紬「はい。御母様」

梓父「…私のことも呼んでくれないか」

紬「御父様…」

梓父「ありがとう」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:25:38.66 ID:/3TUL6vV0
紬「それで、私達結婚式を挙げようと思ってるんです」

梓父「できるのかい? この混乱の中」

紬「家に教会があります。簡式なら準備もなんとかなります」

梓母「そう…私達も参加していいのかしら?」

紬「是非ともお願い致します」

梓父「それは楽しみだな」

紬「結婚式は明日。梓ちゃんは今日はこの家に泊まって」

梓「えっ……私も…」

梓父「そうだ。残り少ない時間なんだから二人は一緒にいるべきじゃないかい」

紬「結婚式の前日、新婦が実家で家族と過ごすのはしきたりです」

梓母「…そうね」

紬「式が終わったら、それから最後までの時間を全部頂きます。だから今は家族で過ごしてください」

梓「…それでは、また」

紬「ええ、また明日」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:29:30.45 ID:/3TUL6vV0
紬「もしもしりっちゃん?」

律「あぁ、ムギか」

紬「ええ、届いたみたいね」

律「いきなりケータイ送ってくるから驚いたよ」

紬「普通のケータイは使えなくなるってわかってたから」

律「用意周到だな」

紬「ええ、それでね。連絡をしておこうと思って」

律「なんの?」

紬「私と梓ちゃん、明日結婚式をするの?」

律「結婚式?」

紬「ええ、もう入籍もしたわ」

律「…ありといえばありか」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:32:23.36 ID:/3TUL6vV0
紬「りっちゃんもくる? 残り少ない時間だから、無理にとは言わないけど」

律「なぁ、ムギ」

紬「なぁに? りっちゃん」

律「友だちとしての最後のお願い、してもいいか?」

紬「いいよ」

律「一緒に私達の式もあげてくれないか?」

紬「澪ちゃんと?」

律「あぁ」

紬「でも、まだ付き合えてないんでしょ」

律「今から告白する」

紬「準備はしておくから…吉報を待ってる」

律「…ありがとう」

紬「友達の最後のお願いだもの」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:36:22.25 ID:/3TUL6vV0

紬「もしもし澪ちゃん?」

澪「む、ムギか?」

紬「ええ」

澪「私達、死ぬんだな」

紬「ええ」

澪「ムギの力でもどうしようもないんだな」

紬「ええ。人類は一人も生き残れないでしょうね」

澪「……私も」

澪「パパもママも聡も」

澪「唯もムギも梓も和も」

澪「律も」

澪「みんな死んじゃうんだな」

紬「ええ」

澪「仕方ないことなんだよな」

紬「ええ」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:38:29.81 ID:/3TUL6vV0

澪「体の震えが止まらないんだ止まらないんだ」

紬「そう」

澪「ムギ、私を助けてくれよ…」

紬「それは私の仕事じゃないわ」

澪「えっ」

紬「今お姫様がそっちに向かってから、しばらく待ってて」

澪「お姫様?」

紬「泣き虫ロミオを救うジュリエットのことよ」

澪「なんのことだ?」

紬「じゃあ切るね」

澪「ムギ! おいムギ! まだ切――」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:44:22.13 ID:/3TUL6vV0
紬「もしもし唯ちゃん?」

唯「あっ、ムギちゃんだ~」

紬「唯ちゃんは完全に平常運転なのね」

唯「うんうん。こういう時こそ落ち着かなくっちゃねー」

紬「実は梓ちゃんと結婚式をあげることになったの」

唯「あずにゃんと!? ムギちゃん、おめでと~」

紬「ええ、ありがとう。でねっ、式に参加してくれるかな?」

唯「もちろんだよ~」

唯「あっ、私からもお願いがあるんだけどいいかな?」

紬「なぁに?」

唯「私と憂の結婚式も一緒にあげてくれない」

紬「もちろんよ!」

唯「やった~。ムギちゃん大好き」

紬「うふふふ。その言葉は憂ちゃんに向けてあげなさい」

唯「は~い」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:48:01.95 ID:/3TUL6vV0
紬「それじゃあ電話切るね」

唯「ねぇ、ムギちゃん」

紬「どうかした?」

唯「死んだら人の魂はどこに行くのかな?」

紬「きっとどこにもいかないわ。灰に還るだけ」

唯「ムギちゃんはリアリストさんだね」

紬「そうかしら?」

唯「そうだよ」

紬「じゃあ、こんどこそバイバイ。明日迎えの車が行くから」

唯「楽しみに待ってるよ~」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:49:52.18 ID:/3TUL6vV0

紬「もしもし和ちゃん?」

和「ムギ?」

紬「うん。和ちゃんは今何してる?」

和「妹と弟を慰めてる」

紬「そう…それは大変ね」

和「ううん。だいぶ落ち着いたから大丈夫よ。何のようかしら」

紬「実は明日私達の結婚式をやるの」

和「ムギと梓ちゃんの?」

紬「唯ちゃんと憂ちゃんの結婚式もやるわ。りっちゃんと澪ちゃんのもやるかも」

和「そうなんだ」

紬「驚かないのね」

和「ムギならそれくらいやりそうだもの」

紬「和ちゃんも誘おうと思ってたんだけど、忙しいなら別に‥」

和「私も行かせてもらうわ。唯と憂の晴れ姿を見ておかなきゃ死に切れないもの」

紬「そう? じゃあ明日、楽しみにしているわ」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:52:46.68 ID:/3TUL6vV0
紬「もしもし、純ちゃん?」

純「…琴吹先輩ですか?」

紬「ええ、突然電話を送ったりしてびっくりしたかしら」

純「はい、驚きました。私と先輩ってほとんど接点ないのに」

紬「実はね、私と梓ちゃんが結婚式をあげることになったの」

純「えっ! 先輩と梓が?」

紬「ええ」

純「本当ですか?」

紬「ええ」

純「梓のやつ…親友に相談もせず…」

紬「時間がなかったのよ」

純「それはわかってます。それで日時は」

紬「明日だけど、いいの? 残り少ない時間なのに」

純「親友の結婚式ですから。それに憂もくるんでしょ?」

紬「えぇ、憂ちゃんは唯ちゃんと結婚式をあげるわ」

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:55:30.53 ID:/3TUL6vV0
純「げっ…結婚しないの私だけ?」

紬「純ちゃんはそういう相手いないの?」

純「いませんねー。こんなことなら作っておけば良かった」

紬「そう。それは残念」

純「でも、こんな状況で結婚するほうが変わり者だと思います」

紬「そうね。ねぇ、純ちゃん」

純「なんでしょうか?」

紬「結婚相手は用意できないけど、明日は沢山ドーナツを用意するから」

純「いいんですか?」

紬「ええ、それくらいしかできないもの。だから純ちゃんも楽しんで」

純「ありがとうございます」

紬「どういたしまして」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:56:41.89 ID:/3TUL6vV0

紬「もしもし、さわ子先生ですか?」

紬「…」

紬「繋がらない」

紬「そういえば先生、最近パートナーが出来たって言ってたような…」

紬「…お幸せに」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:57:55.95 ID:/3TUL6vV0
紬「ただいま、菫」

菫「おかえり、お姉ちゃん」

紬「菫、ごめんね。突然いろいろ決めちゃって」

菫「いいよ。お姉ちゃんの幸せのためなら」

紬「だけど…」

菫「ねぇ、お姉ちゃん。私はお姉ちゃんが幸せになってくれるのが一番うれしいんだ」

菫「だって私はお姉ちゃんの侍女だから」

紬「菫…」

菫「だからね。明日の結婚式はめいいっぱいお祝いするから」

菫「お姉ちゃんが幸せになれますようにって」

紬「すみれっ…」

菫「もう…泣かないで」

紬「だって…」

菫「ふふ。お姉ちゃんが妹になっちゃったみたい」

紬「もう…」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:58:34.31 ID:/3TUL6vV0

紬「ところで、斎藤はどこかしら」

菫「お爺ちゃんなら教会で準備してるよ」

紬「そう。それにしても家の使用人が全然減ってないみたいだけど」

菫「みんなお姉ちゃんの晴れ姿を見るまでは帰れないって言ってるよ」

紬「みんな…」

菫「私は最後まで屋敷に残るよ。お父さんとお母さんはフィンランドへ行くけど、お爺ちゃんも残るって」

紬「いいの?」

菫「いいよ。帰るところのない人達も最後まで屋敷に残るし」

紬「菫、ほんとうに助かるわ」

菫「そう言ってくれると私も嬉しいよ」

紬「あっ、そうだ、菫、ドーナツって作れる?」

菫「作れるよ」

紬「明日、ドーナツ好きの子がくるの。もし暇だったらでいいんだけど…」

菫「任せてよ。やることなくて暇だったんだ」

紬「じゃあお願い」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 21:59:34.72 ID:/3TUL6vV0
紬父「紬、帰っていたのか」

紬母「おかえりなさい。どうだった?」

紬「御父様、御母様、紬は無事伴侶を得ました」

紬父「そうか……よかったな。紬が女の子と結婚したいと言い出したときはどうかと思ったが」

紬「御父様…」

紬母「たとえ女の子同士だったとしても、娘の晴れ姿を見られるんですもの」

紬「御母様…ありがとうございます」

紬父「それで、その…その子は来ていないのか」

紬「はい、今日は実家に帰ってもらいました。親子水入らずの時間が必要だと思いますし…それに」

紬父「それに?」

紬「はい。私も御父様、御母様、そして菫達と一緒の時間が欲しかったから…」

紬母「そう。親想いな娘をもって私は幸せだわ」

紬「そんな…私なんて」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:00:18.91 ID:/3TUL6vV0
紬父「紬にはいろいろ不自由をさせてしまったな」

紬「その代りいろいろ便宜もはかって頂きました」

紬父「そう言ってくれると助かる。他に頼みはないのか?」

紬「ありません」

紬母「ほんとうに?」

紬「ええ、伴侶とともに私は最後を迎えます。これ以上の贅沢なんてありなませんから」

紬父「そうか…私たちは紬の晴れ姿を見た後、フィンランドへ飛ぶ」

紬母「ええ、琴吹発祥の地で私達は最後を迎えるわ。紬はどうする?」

紬「私達は最後までこの地に残ろうと思います」

紬父「そうか、寂しくなるが仕方ないな」

紬母「若い二人に私達がいても邪魔なだけでしょうからね」

紬「そうですね。邪魔なだけです」

紬父「こらっ!」

紬「うふふふ。御父様に叱った頂くのもこれが最後ですね」

紬母「ふふふ。紬ったら…」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:01:59.12 ID:/3TUL6vV0
紬「斎藤!」

斎藤「御嬢様! 帰っていらっしゃいましたか」

紬「ええ、斎藤のおかげで色々助かったわ。本当にありがとう」

斎藤「御嬢様の晴れ姿を見るのはわたくしの夢でございます」

斎藤「…星が落ちてくると聞いた時、その夢の実現はもう無理だと思っておりました」

斎藤「その夢が叶うのです。この斎藤、全身全霊をかけてお助けする所存」

紬「本当に助かるわ、斎藤」

紬「それでね、頼みが少し増えたんだけど、いいかしら」

斎藤「なんなりとお申し付けください」

紬「二組ほど一緒に結婚式を行いたいのだけど、可能かしら?」

斎藤「ご学友様でしょうか?」

紬「ええ」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:04:04.78 ID:/3TUL6vV0
斎藤「ふむ。ドレスの用意は簡単にできます。スリーサイズは御存知ですか?」

紬「ええ、このメモに書いてあるわ」

斎藤「ふむ。なんとかなりそうです。お二組から何か要望等は?」

紬「特になかったと思うわ」

斎藤「そうですか。畏まりました。最高の式…とまでいきませんが、最善を尽くしてみせます」

紬「…斎藤」

斎藤「なんでございますか、御嬢様」

紬「…」

斎藤「涙をお拭きになってください」

紬「本当にあなたにはいつもいつも助けられるわ」

斎藤「執事ですから」

紬「…御父様には失礼かもしれないけど、斎藤のことはもう一人の御父様だと思っています」

斎藤「…………もったいないお言葉、誠にありがとうございます」

紬「…ありがとう」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:09:25.34 ID:/3TUL6vV0

梓「お父さん、お母さん…」

梓父「それにしてもあの梓が結婚するとはなぁ」

梓母「お父さんいつも言ってたもんね。梓が結婚相手を連れてきたら一発殴ってやるって」

梓父「相手が女の子じゃそういうわけにもいかないよ」

梓「もう、お父さん…」

梓父「そにれしても出来た子みたいだね、紬さん」

梓母「ええ、とっても礼儀正しい子で、お母さんびっくりしちゃった」

梓「ムギ先輩は御嬢様だから」

梓父「先輩なのかい?」

梓「うん」

梓母「でも結婚相手にその呼び方は余所余所しいんじゃないかしら?」

梓「確かに…」

梓父「それは紬さんとおいおい相談していけばいいんじゃないか?」

梓「うん」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:13:27.29 ID:/3TUL6vV0
梓母「お母さん、梓と紬さんの馴れ初めの話を聞きたいなぁ」

梓父「ああ、私もその話には興味あるかな」

梓「えっ…話すの」

梓母「お願いっ!」

梓「まぁ、いいか…」

梓「最初はムギ先輩にデートに誘われたの」

梓父「梓が誘われたのかい?」

梓「デートの誘いといっても、自転車に乗る練習をしたいって話だけど…」

梓「最初は補助輪付きの自転車に乗ってもらって」

梓「次は補助輪なしの自転車に乗ってもらったんだけど」

梓「意外とムギ先輩不器用で」

梓「何度も何度も転けて」

梓「擦り傷だらけになっちゃって」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:17:08.24 ID:/3TUL6vV0

梓「膝には大きなキズもできちゃっ手」

梓母「あの紬さんが…」

梓「うん。あのムギ先輩が」

梓「でもムギ先輩は全然やめようとしなくて」

梓「最後は乗れるようになっちゃった」

梓「その時ムギ先輩が、私に言ってくれたの」

梓「ありがとう、って」

梓「梓ちゃんのおかげで乗れるようになったよ、って」

梓「私、ほとんど見てただけなのに…」

梓「そしたら私、急にムギ先輩のことが愛おしくなっちゃって」

梓「自分がムギ先輩のために何できるんだろうって思ったら」

梓「自然と告白してたの」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:20:29.67 ID:/3TUL6vV0

梓父「なるほどね」

梓母「いつ頃の話なのかしら?」

梓「一ヶ月ぐらい前の話」

梓父「まだ付き合って一ヶ月なのかい?」

梓「うん。でもそれからデートには結構行ったよ」

梓母「その話も聞きたいな」

梓父「ああ、全部聞かせて欲しいな」

梓「何から話そうかな――――」

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:24:14.80 ID:/3TUL6vV0

紬「……朝ね……あら甘い匂い」

紬「調理場からだわ」

紬「菫…と純ちゃん?」

菫「お姉ちゃんおはよー」

純「おはようございます琴吹先輩。お邪魔してます」

紬「純ちゃんどうしたの、こんな朝から」

純「実はドーナツの匂いが漂ってたから来ちゃったんです」

紬「えっ?」

純「あっ、もちろん嘘です」

純「さっきケータイに登録されてた執事さんに電話かけたら」

純「ドーナツ作ってるから来るか、って言われたんです」

紬「斎藤…相変わらずいい仕事をしてくれるわ」

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:31:25.26 ID:/3TUL6vV0
紬「それで菫とドーナツ作ってたんだ」

純「ええ、スミーレってお菓子作りのセンスいいですね」

菫「…そんなことないよ」

紬「スミーレ?」

純「あぁ、渾名をつけさせてもらったんです」

紬「スミーレ…」

菫「…お姉ちゃんにはいつもどおり菫って呼んで欲しいな」

紬「そうね、菫」

菫「うんうん」

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:35:08.62 ID:/3TUL6vV0
紬「でもこんな朝早くから…純ちゃんの御両親は心配してないかしら」

純「実はうちの両親、今南極にいるんです」

紬「えっ?」

純「星の観測が仕事でして…たぶん今も落ちてくる星を観測してるんじゃないかな」

紬「じゃあ帰ってこれないの?」

純「帰ってこないと思います」

菫「そんなことって…純さん…」

紬「…………」

純「あっ、あっ、私なら大丈夫です」

純「一人には慣れてますから……」

紬「…よかったら今日から家に泊まらない?」

純「えっ」

紬「使用人に暇を出したから、部屋が余ってるの」

純「いいんですか」

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:40:46.62 ID:/3TUL6vV0

菫「私からもお願いします」

純「スミーレ?」

菫「お姉ちゃんが梓さんといちゃついてる間の話し相手が欲しかったから」

純「そう? ならお願いしちゃおうかな」

紬「ええ。歓迎するわ」

純「これからよろしく。ふたりとも」


菫「…あれ、玄関のほうが騒がしいね」

紬「みんながきたみたいね」

純「唯先輩、律先輩、澪先輩…後は憂?」

紬「そのご家族も来てるはずよ、和ちゃんも」

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:43:15.02 ID:/3TUL6vV0
唯「ムギちゃん、きたよー」

紬「いらっしゃい唯ちゃん」

憂「今日ははお招きいただきありがとうございます、ムギ先輩」

紬「憂ちゃんもいらっしゃい」

憂「あの…本当に迷惑じゃありませんか?」

憂「私達の結婚式まで一緒にだなんて」

紬「憂ちゃんは唯ちゃんと結婚したくないの?」

憂「…したいです」

紬「じゃあ遠慮は禁物よ」

紬「人間、最後くらい我儘を言うべきだと思うわ」

紬「特に、憂ちゃんのような出来た子の場合は」

唯「うーいっ、ムギちゃんもこう言ってるんだからさっ」

憂「…そうだね。ムギ先輩、本当にありがとうございます」

紬「どういたしまして」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:45:18.39 ID:/3TUL6vV0
紬「あら、りっちゃんと澪ちゃん、そんな端っこのほうでどうしたの?」

律「うわっ、ムギ!」

紬「ふたりとも顔を真赤にしちゃって…」

紬「…その様子だと上手くいったみたいね」

律「あぁ、今日はよろしく頼むよ」

澪「…ムギ」

紬「どうしたの? 澪ちゃん」

澪「実はさ。私、まだ死ぬのが怖いんだ」

紬「私も怖いわ」

澪「ムギも?」

紬「ええ」

澪「ムギは怖いものなんてないのかと思ってたよ」

紬「それは買いかぶりすぎ」

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:48:34.53 ID:/3TUL6vV0
澪「ちょっと話がそれたよ」

澪「私がいいたいのはさ」

澪「怖いことは怖いんだけど」

澪「これからの律との一週間を思うとさ」

澪「楽しみって感じもあるんだ」

紬「そう」

澪「あぁ、だからちょっとだけ前向きに考えてみようと思う」

紬「そう」

澪「なぁ、ムギ」

紬「どうしたの?」

澪「私に対してだけ、微妙に冷たくないか?」

紬「気のせいよ」

澪「そうか。ならいいんだ」

79: 兄貴はスルーだが、憂→紬呼称はミス。ごめん 2012/07/25(水) 22:51:54.86 ID:/3TUL6vV0

紬「和ちゃんもきてくれたのね」

唯「あっ、和ちゃんだ!」

憂「和ちゃん、元気だった?」

和「ええ、今日は二人の晴れ姿を目に焼付けさせてもらうわ」

和「唯、憂、おめでとう」

唯「和ちゃん!」

和「もう唯、抱き付かないの」

憂「和ちゃん!」

和「もう、憂まで…」

唯「和ちゃん、泣いてる?」

和「泣いてないわ…」

憂「……和ちゃん。私達のために泣いてくれてありがとう」


紬「…………ここは3人にしておきましょう」

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:54:12.40 ID:/3TUL6vV0
紬「梓ちゃん!」

梓母「ほら、紬さんが呼んでるわ」

梓「ムギ…先輩!」

紬「梓ちゃん!」

梓「えっ…どうしちゃったんですか。突然抱きついて」

紬「思ったより寂しかったの…」

梓「先輩?」

紬「一日ぐらいあわなくても平気だって思ってたけど」

紬「すっごく寂しかった」

梓「私もです」

梓「お父さんやお母さんと一緒の時間も楽しかったけど」

梓「やっぱりムギ先輩に会えなくて寂しかったです」

紬「これからはずっと一緒ね、梓ちゃん

梓「はい」

82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:57:37.18 ID:/3TUL6vV0
梓父「ふたりとも幸せそうだね、母さん」

梓母「ええ、とっても」

紬父「はじめまして。紬の父親です」

紬父「あなたがたが、梓さんの御両親でしょうか?」

梓父「これはどうもご丁寧に。梓の父親です」

紬父「やはりそうでしたか…」

梓父「娘同士が結婚とは…お互い変わった経験をすることになりましたね」

紬父「ですが、悪いことではないと思うませんか」

梓父「はい。あの二人を見ていれば…」

紬母「本当に」

梓母「ええ、本当に幸せそう」

梓父「若いころを思い出すね、母さん」

梓母「そうかしら?」

85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 22:59:54.31 ID:/3TUL6vV0
紬「みんな! そろそろ集まって!!」

紬「ドレスに着替えるから」

唯「じゃあね、和ちゃん」

和「ええ。唯達の晴れ姿、楽しみにしてるわ」

律「私達も行くか」

澪「……うん」

菫「ちょっと待って、お姉ちゃん」

紬「どうしたの?」

菫「…幸せになってね」

紬「……ええ、もちろんよ」

菫「それ以上はないから」


唯「凄い豪華なドレス! これ着てもいいの!?」

紬「ええ」

澪「凄くきれいだ…」

律「うん」

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 23:01:38.66 ID:/3TUL6vV0
梓「ムギ先輩…これ」

紬「えぇ、梓ちゃんのドレスよ」

梓「…私達結婚できるんですね」

紬「もうしてるけどね」

梓「…そうでした」

梓「でもやっと実感がわいてきました」

梓「自分はムギ先輩のお嫁さんになるんだって」

梓「ムギ先輩が自分のお嫁さんになるんだって」

紬「そうね」

梓「ありがとうございます」

紬「なんでお礼を言うの?」

梓「私の願いを叶えてくれたから」

紬「じゃあ私もお礼を言わないとね」

紬「梓ちゃんと結婚できたことに、ありがとうって」

89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 23:05:41.78 ID:/3TUL6vV0

斎藤「それでは誓いの言葉を」



梓「わたくし琴吹梓は」

梓「この女琴吹紬を妻とし」

梓「良き時も悪しき時も」

梓「富める時も貧しき時も」

梓「辞めるときも健やかなる時も」

梓「共に歩み」

梓「他の者に依らず」

梓「死が二人を分かつまで」

梓「愛を誓い」

梓「妻を想い」

梓「妻のみに添うことを」

梓「神聖なる婚姻の契約のもとに誓います」

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 23:07:02.00 ID:/3TUL6vV0

紬「わたくし琴吹紬は」

紬「この女琴吹梓を妻とし」

紬「良き時も悪しき時も」

紬「富める時も貧しき時も」

紬「辞めるときも健やかなる時も」

紬「共に歩み」

紬「他の者に依らず」

紬「死が二人を分かつまで」

紬「愛を誓い」

紬「妻を想い」

紬「妻のみに添うことを」

紬「神聖なる婚姻の契約のもとに誓います」

斎藤「それでは誓のくちづけを」


紬(ねぇ、梓ちゃん)

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 23:08:06.01 ID:/3TUL6vV0
梓(こんなときにどうしたんですか、ムギ先輩)

紬(死が二人を分かつまで…ってあったよね)

梓(誓いの言葉ですね)

紬(二人一緒に死んでも、二人は分かれちゃうのかな)

梓(どうでしょう)

紬(私ね、人が死んだら、ただの灰になると思ってるの)

梓(…私もです)

紬(一緒のところで一緒に死ねば、二人の灰のほんの一粒ぐらいは一緒にいられるかもしれない)

紬(そんなことを考えてしまったの)

梓(ムギ先輩って意外とロマンチストですね)

紬(そうだよ)

梓(…誓いのキスにその願いを乗せましょうか)

紬(たとえ灰になろうとも、二人が一緒にいられますように)

梓「…」

紬「…」

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 23:09:05.49 ID:/3TUL6vV0

紬「結婚式終わっちゃったね」

梓「義父さんと義母さんもフィンランドに行ってしまいましたね」

紬「ええ」

梓「何かしたいことありますか、ムギ先輩」

紬「自転車…」

梓「そういえばお父さんが結婚祝いだって言ってくれましたね」

紬「ええ、乗ってみたいな」

梓「でも外に出るのはちょっと危ないそうです」

紬「じゃあ、敷地内を走りましょ」

梓「ええ」

95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 23:09:44.90 ID:/3TUL6vV0

紬「すごいね、この自転車、ぐんぐん加速する」

梓「ええ、お父さんの自慢の自転車でしたから」

紬「そんなものをもらってよかったのかしら?」

梓「いいと思います」

梓「どうせもう使わなかったでしょうから」

紬「そう」

紬「ねぇ」

梓「はい?」

紬「自転車、二人乗りやってみない?」

梓「はい」

97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 23:11:19.28 ID:/3TUL6vV0
紬「風がきもちいいね」

梓「はい」

紬「地球が終わっちゃうなんて信じられない」

梓「はい」

紬「結婚式よかったね」

紬「唯ちゃんに憂いちゃん」

紬「りっちゃんに澪ちゃん」

紬「みんなとっても幸せそうだった」

紬「菫や和ちゃんもいつの間にか貰い泣きしちゃって」

紬「幸せな涙にあふれた結婚式だったね」

梓「はい。純はドーナツ貪ってましたけど」

紬「ねぇ、梓ちゃん」

梓「どうしました?」

紬「きがちがうくらいきみがすき」

98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 23:12:14.54 ID:/3TUL6vV0

梓「突然どうしたんですか?」

紬「古い歌かな」

紬「突然思い出したの」

紬「でいじ」

紬「でいじ」

紬「はいといってよ」

紬「きがちがうくらいきみがすき」


紬「ちゃんとりっぱなはなよめみたいに」

紬「ばしゃのぱれーどはむりだけど」

紬「けれどかわりにきっとすてき」

紬「きみとじてんしゃふたりのり」

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 23:12:45.88 ID:/3TUL6vV0

梓「いい歌ですね」

紬「そうでしょ」

梓「けっこう立派な結婚式やってしまいましたが」

紬「そうね」

紬「馬車のパレードなんて普通やらないものね」

梓「でも、ちょっとやってみたい気もします」

紬「そう?」

梓「はい」

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 23:14:11.19 ID:/3TUL6vV0

紬「ねぇ、梓ちゃん」

紬「2次元3次元っていうけど」

紬「何次元まであると思う?」

梓「四次元じゃないんですか?」

紬「超弦理論では11次元ぐらいまで扱うそうなの」

梓「そんなに……線、平面、立体、時間くらいだと思ってました」

紬「ええ、私も詳しくはないわ」

紬「でも私達に想像もつかないような真実があってもおかしくないとは思わない?」

紬「並行世界のひとつやふたつあってもおかしくないと思わない?」

梓「パラレルワールドですか?」

紬「ええ」

梓「やっぱりムギ先輩って意外とロマンチストですね」

紬「ええ、そうなの」

102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 23:15:37.85 ID:/3TUL6vV0

紬「きっと並行世界でも私と梓ちゃんは出会うの」

紬「でも、いろんな困難にぶつかっちゃって」

紬「もうどうしようもないって所まで追い詰められちゃうんだけど」

紬「ご都合主義としかいいようのない展開で救われるの」

梓「私は…」

梓「私は、最初からハッピーエンドがいいです」

紬「そういう世界もあるかもしれないね

紬「私と梓ちゃんがいちゃいちゃしてるだけの」

梓「ずっといちゃいちゃですか」

紬「飽きそう?」

梓「ムギ先輩は見てて楽しいですから」

紬「もうっ…」

梓「でも、本当にあるといいですね。並行世界」

103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 23:16:19.65 ID:/3TUL6vV0

紬「もし、全く違う世界で、全く違う出会い方をしたとして」

梓「…」

紬「それでも梓ちゃんは私と付き合ってくれる?」

梓「はい」

梓「ムギ先輩はどうなんですか?」

梓「全く違う世界でも、ちゃんと私を見つけてくれますか?」

紬「はい」

梓「では、私達の夢を託しましょうか。別世界に」

紬「馬車のパレードで結婚式する夢」

梓「はい」

紬「うふふふ。素敵ね」

梓「はい。きっと素敵です」

104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 23:17:46.86 ID:/3TUL6vV0
梓「でも、仮に別のがあったとしても」

梓「今の私達も負けてないと思うんです」

紬「そう?」

梓「はい」

梓「私、思うんです」

梓「たとえ私達が灰に還ったとしても」

梓「誰からも忘れられ塵に還ったとしても」

梓「ムギ先輩と過ごした日々の価値はなくならないと思うんです」

梓「この恋には確かに価値があるんだって」

梓「私達の恋は確かにあったんだって」

梓「うまく言葉にはできませんが、そう思うんです」

紬「梓ちゃんは刹那主義ね」

梓「えっ」

紬「つまり、もっと恋したいってことでしょ」

紬「私も同じなの!」

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/25(水) 23:19:27.03 ID:/3TUL6vV0

紬「たとえもうすぐ灰に還るとしても」

紬「刹那でも多く、梓ちゃんと一緒にいたい」

紬「こうやって梓ちゃんの体温を感じていたい」

梓「私もです」

紬「ねぇ、梓ちゃん」

梓「なんですか?」

紬「きがちがうくらいきみがすき」

梓「私はもっと好きです」

紬「そうなの?」



The End !

引用元: 紬「きがちがうくらいきみがすき」