前回 小鳥「ピヨヘヘヘヘヘ」ウヘヘ

184: ◆7tvOaNGIN2 2014/10/31(金) 22:39:39.57 ID:Fxr4ESqno


 響の足が諤々としていた。


響(震えてる? 自分が? 真に?)


 いや、しかし考えてみれば。かつて此処まで自分と渡り合ったものはいない。
 かつて、お師匠様の指導を受けていた時期もあったが。

 お師匠様は若くなく、初めてほどなくして超えてしまった。
 他の道場の空手は、お師匠様の劣化コピーと言わんばかり。

 突きを当てない寸撃ち、あくびが出た。
 当てないうえに遅いのは、空手家として如何なものなのか。
 
 だから、これまで自分は満足のいくような戦いにはめぐり合えなかった。



 なら、この足の震えは……真が怖いんじゃなくて。
 真が自分と同格なことを、喜んでるんじゃないか!

 なら、自分はまだ、この喜びを、


 ガシッ!!


真「くうっ!!」

真「でりゃあっ!!」ブンッ!!


 技で返す。


響「(攻撃を受ける)まだまだ!」ガシッ



 右拳左拳左脚右脚右拳左拳右脚右拳右脚左拳右拳左脚


 左拳左脚左拳右拳右脚左拳左脚左脚左拳右拳右脚左脚



 ピトッ

 
 真の体と響の体が密着した。


.



185: ◆7tvOaNGIN2 2014/10/31(金) 22:41:07.79 ID:Fxr4ESqno

響「密着……だね。」

真「じゃあ、ガンマンみたいに……勝負だ。」

真「『抜きな…どっちが早いか勝負だ』ってね。」

響「1.2の3だね……。」



響(この密着してる状態で、腰打ちで体制崩した所からの上段蹴り)

響(この連携で真に勝つ!)

真「最後にさ……一ついいかな。」

響「なに?」

真「響って空手して何年?」

響「……沖縄にいる間ずっとお師匠様に教わってた。多分中学生になってからだった筈だぞ。」

真「凄いね……やっぱり、響は凄いよ。」

響「真も、すごいさ!」



響「それじゃあ、行くよ。1」

真「2」

二人「3!!」


ゴッ!!

186: ◆7tvOaNGIN2 2014/10/31(金) 22:43:39.00 ID:Fxr4ESqno














 重い一撃が響を貫いた。













.

187: ◆7tvOaNGIN2 2014/10/31(金) 22:44:14.02 ID:Fxr4ESqno

響「ぐはあぁっ!!」

真「………。」

響「なん……で……。」


真「寸勁(すんけい)......。」

響「寸……けい……。」




 ああ、自分知ってるさ…

 でも、出てこなかったなぁ…



 これが、経験。積み重ねの差ってやつかな…


ドサッ


響「……しぃなぁ。」

真「?」

響「くやしいなぁ。でも、」パキッ

響「次はまけないよ!」



真「そうだね、また今度一緒に練習しようか。」ジャラッ

真「今度は……ちゃん……とした……」


真「組…………手………d……」


ドサッ




我那覇響:敗北(脱落)
菊地真:勝利(気絶)

188: ◆7tvOaNGIN2 2014/10/31(金) 22:44:43.00 ID:Fxr4ESqno

######################### 小鳥 #########################



小鳥「ピヨォ……」

小鳥「響ちゃん…空手やってたんだぁ」←今更

小鳥「でも、チャンピョンでやってる格闘漫画みたいだったピヨ……」

小鳥「さてさて……他のみんなは一体どうしているピヨですかなー?」
















..

203: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:01:18.46 ID:s3LREvnuo

######################### 秋月律子 #########################


 辺り一帯は霧に包まれていた。
 真美の創りだしたものだ。

 ただ、こんなものは目暗ましにならない。
 それは先ほどのやり取りで、真美は悟っている事だろう。

 ただ、この霧に対して私が能力を用いる事が出来ない。
 今霧に対して使えば、この霧は雹となって私に襲いかかるだろう。

 「流石ね悪戯娘」と私は感嘆せざるを得なかった。


真美「行くよ!りっちゃん!」


 

204: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:02:13.10 ID:s3LREvnuo

 足音が聞こえなかった。それはそうだ。
 いま、真美は土の上ではなく自身の作ったものの上に立っているのだから。


 だから、私はタイミングを掴んで回避をしないといけない。

 ブンッ!

 真美の手が伸び始めた。そう、今だ。


 真美の手を掴む。そして、私も真美のネックレスへ手を伸ばす。

真美「!?」

 ネックレスを掴んだ。

律子「やったッ!!」

真美「……」ニヤリ


 真美が不敵な笑みをこぼしたような気がした。だが、これで終わらせる。
 ネックレスを引きちぎらんと引っ張った時であった。

205: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:03:04.35 ID:s3LREvnuo

 ズルリ.....

 真美が脱皮をした。
 この表現は最早脱皮と言った方が正しいだろう。

真美「んっふっふ。脱皮の術!」

 真美が私を突き放す。

真美「そして……分身の術!」


 そして、私を囲むように新たな真美が二人現れたのであった。


律子「……。」

真美「さて、このまま律ちゃんのペンダントを頂いちゃおうかな♪」


 ガシッ!


 そして真美の分身達が私の身動きを止める。


真美「じゃあ、律ちゃん。」


 真美が一歩、一歩と歩を進め……。






 られなかった。

206: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:03:36.56 ID:s3LREvnuo

######################### 双海真美 #########################

真美「えっ、なんで。どうして……」


 真美の分身が律ちゃんを解放した。
 それだけに留まらずに、今真美に立ちはだかっている。


真美「なんで!どうして! 律ちゃんはあっちだよ!」

律子「無駄よ、そいつは。アンタの分身じゃあない。」


律子「私の…『駒』だから。」

真美「どういう事。」

律子「アンタはもう、私の能力悟ったようだから教えてあげる。」

律子「お察しの通り、私は『仮定による結果を捻じ曲げる』事が出来る。」

律子「だけどその範囲は、距離のみに非ず物体の個数にあるの。」


207: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:04:30.60 ID:s3LREvnuo

律子「例えば、他の人がそうだったように。地面が滑るでしょう?」

律子「普通は、地面に摩擦力がある。だから歩ける。」

律子「私はそれに干渉して。『地面に摩擦力がある→だから滑る』と言う風に結果を変えられる。」

律子「だけど、その結果について連続して干渉できる対象は限られてる様ね。」



真美「もしかして!」

真美「地面の場合は律ちゃんの体からスタートして」

真美「靴を通って…」

真美「地面」

真美「干渉できる物体は連続して二つまでってこと!?」



律子「そう言う事。」

208: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:05:38.65 ID:s3LREvnuo

律子「空気は物体の規模が大きすぎて干渉できない。」

真美「だけど、木の根っこが多くはえてるこの森の中なら」

真美「範囲を限定して能力が使えるってことだね。」

律子「さて、それでは本題に戻りましょうか。」



律子「どうして、真美の分身は真美を裏切ったのか。」



律子「私は一体どんな結果を捻じ曲げたのか。」

真美「………。」



真美「まさか!」

.

209: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:07:46.37 ID:s3LREvnuo

真美「真美の分身が律ちゃんの動きを止めていた時に!!」


律子「『真美の分身である→だから私を妨害する』に干渉し」

律子「『真美の分身が妨害する→私が動きを止められる』にも干渉した。」


真美「くっ!!律ちゃんの体に触れてるから直接干渉できるってことだね……。」

律子「説明有難う…。」



 真美は能力を解除した。
 動けるようにはなったが、律ちゃんのペンダントを手に入れる算段は振り出しに戻った。






######################### 高槻やよい #########################


やよい「ハァ……ハァ……」

 確実に近くにいる千早さんが見えなかった。
 『透明人間』彼女の能力は恐らくそれなんだろう。

 わたしは兎に角逃げるしか手がなかった。
 当然のことで、わたしには千早さんが何処にいるか知る手だてがない。

 貴音さんならあるいは、能力を打ち消して見つけ出せるかもしれないけれど…。

 わたしの能力は……わたし一人では全く効果を発揮しない。

 このまま大人しくペンダントを渡せばいいのだろうか……。


 いや、それじゃあ伊織ちゃんに顔向けができない。

 戦って勝つ事がドリンクの条件じゃない。

 誰よりも早く小鳥さんに会うことが条件だったはずだ。



210: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:09:14.40 ID:s3LREvnuo

 ガサガサガサッ!!



 足音がより大きくなった。近づいてきてる。

 わたしは、走るスピードをあげた。

 日ごろから体力を付けているおかげでまだ走れる気がする。
 でも、体力は無限じゃない。早く小鳥さん見つけないといけない。



 クッ!!

やよい「!?」



 何かに足が引っ掛かった。

 わたしは体制を持ち直す事が出来ずにそのまま倒れ込んだ。

211: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:09:57.89 ID:s3LREvnuo

やよい「どうしてっ!」


 何もない所でこけている。春香さんじゃあるまいのに。

 でもその答えはすぐに分かった。
 千早さんの姿とともに大きい木の根っこが姿を現したのだ。

 そう、先回りをされていた。


千早「何時までも逃げ遂せると思ったら大間違いよ。高槻さん。」

やよい「……。」

千早「戴くわ。高槻さんのペンダント。」

千早「邪魔者は……排除する。」スウッ


 千早さんは再び透明人間となった。


やよい「………。」

?「あっ!やよいなの!」


212: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:12:18.09 ID:s3LREvnuo

######################### 星井美希 #########################

美希「やよいなの!」

やよい「美希……さん。」

やよい「だめです、今近づいたら……。」

美希「だーめ!ドリンク確保のためにやよいのペンダント奪うの!」

やよい「……!」

 ふと、やよいが笑ったように見えた。

やよい「わかりました。じゃあ、近くに来てください。」

############### 如月千早 #################

 美希……高槻さんに近づいてどうするつもりなのかしら。

 いや、そんな事は関係ない。近づいてくるなら……。


 美希のペンダントも一緒に手に入れるまでよ!

############### 星井美希 #################


 やよいのペンダントに手を伸ばそうとした時だった。

 ガシッ!

 やよいがミキの手を両手でつかんだ。

美希「どっ、どういうつもりなの!」

やよい「美希さんに賭けます。これは、わたしからの攻撃です!」

美希「!?」


 左から謎の気配がやってきた。
 気配が徐々に形をなしてきている。


 千早さんだ。


 真っ白な千早さんが美希の首に手を伸ばしている。


 真っ白な千早さんが徐々に色を付き始めてきている。
 色がだんだん濃くなってきている。

 そう、気配が……実体になっているかのように……



美希(避けないと!!)



 と脳がミキに伝える。ミキはしゃがんだ。


213: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:13:12.45 ID:s3LREvnuo

######################### 如月千早 #########################


 美希が寸での所で確かに回避していた。いや、それ以前に。
 私が、ネックレスを獲る事を予め察知していたかのような身の振りだった。

やよい「美希さん。罠に引っ掛からなかったのは残念です。」

やよい「私の能力は『幻覚を見せる能力』。」

やよい「いま美希さんには千早さんが見えた筈です」


 高槻さんは何を言ってるの。私は幻覚なんかじゃない。


美希「へぇ……やるね。でも、ミキは負けないよ。」

美希「だってミキは奇跡の子なんだから。」



 まさか……高槻さん。貴女。

214: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:13:59.51 ID:s3LREvnuo












 美希を利用して三つ巴の戦いにさせる気なの!












.

215: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:16:33.80 ID:s3LREvnuo


高槻やよい 能力:【不明】

            Vs

如月千早 能力:【透明人間】

            Vs

星井美希 能力:【奇跡】


######################### 四条貴音 #########################


 やはり、実戦は身の毛がよだつ程に
 身が裂ける程に恐ろしいものでございます。


 亜美が杖を用いてペンダントを攻撃してきますが。
 喰らえばペンダントはおろか私も致命的な痛みをうけることになるでしょう。


 体がまるで電撃を喰ろうたが如く、痺れておりまする。
 ですが……面白い。






 私の體(体)は、久しく歡喜しておりまする。

216: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:17:28.47 ID:s3LREvnuo

亜美「お姫ちん……口調変わってるよ。」

貴音「それは真です哉? ですが、この緊張感私は至高を體驗(体験)しているのです」

亜美「うあうあ、よく分からないけどなんだかヤバイ事だけは分かるよ!」


 亞美が杖を私に向けて怯えた表情で見ます。

 それでは、何時までも怖い思いをさせる譯(訳)にも行きますまい。
 四條(条)の恐ろしさというものの片鱗をお見せしましょうか。


 摺足……劍(剣)の道を志すものであれば誰もが習得する技。
 しかし、この技は大變(変)奥深く御座います

 この摺足一つでも、間合いの測り合い。

 劍(剣)の道を志ぬものに用いた日には……。

 スッ

亜美「!?」

亜美(そんな! 何時の間に間合いを!!)


217: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:18:25.44 ID:s3LREvnuo

 と云った具合に御座います。

 私は杖を掴み、梃子の原理を用いて亞美を浮かし。

 廻し。

 落とします。
 
 バタッという音が聞こえますが悲鳴が聞こえない辺りしっかり手加減が出來たのと
 亞美が確りした受け身をとったと言う事に相違ございません。


亜美「あーダメだ!」

貴音「まだまだですね、亞美。」

亜美「お姫ちん。」

亜美「この勝負は負けだけど、まだ亜美の課題は残ってるからね。」

亜美「次は負けないよん!」


貴音「……ええ。」

貴音「お待ち致しております。」










双海亜美:脱落


 

221: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:25:37.84 ID:s3LREvnuo
 






######################### ??? #########################


??「い……急がないと。」

??「早く上面公園いかないと……」

??「みんな……」

??「そう、みんなみんな騙されているんだ……!」


219: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/07(金) 21:22:13.31 ID:s3LREvnuo

ドリンク争奪戦


資格保有者

如月千早   能力【透明人間】  詳細『透明人間になる』
高槻やよい   能力【??】       詳細『不明』
水瀬伊織   能力【太陽拳】     詳細『おでこサンシャイン!』
菊地真     能力【??】       詳細『不明』
萩原雪歩   能力【嘘発見器】   詳細『ライ・トゥー・ミー』
双海真美   能力【創造者】     詳細『正にクリエイター』
星井美希   能力【奇跡】       詳細『偶然ってすごいねー(棒)』
四条貴音   能力【能力無効化】 詳細『能力を打ち消す』
秋月律子   能力【逆転能力】  詳細『仮定による結果を捻じ曲げる』

脱落

天海春香   能力【人心誘導】  詳細『他人に命令する』
我那覇響   能力【交信能力】   詳細『動物の五感の共有及び遠方からの情報交換』
双海亜美   能力【物体変換】   詳細『物体を全く別の物に換えられる』

不参加

三浦あずさ  能力【変身】      詳細『メタモルフォーゼ!!』


230: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/29(土) 21:02:03.95 ID:hOKkZkjno

######################### 如月千早 #########################


美希「でも、やよい厄介だね。【幻覚】かぁ。」

美希「流石のミキが奇跡の子とはいっても……。」

美希「幻覚は奇跡で同行と言う問題じゃないの……。」

やよい「……。」


 高槻さんの能力を考察する必要がある。

 そう、私の立場だから言える事は高槻さんが今嘘をついている所である。
 そうとするなら、今の時点で考えられる事と言えば何がある?

 ……ダメだ。もう少し漁ってみよう。もう一度彼女に攻撃を仕掛けよう!


ザザッザッ!


やよい「!?」



231: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/29(土) 21:04:35.02 ID:hOKkZkjno

やよい(ううっ、千早さんが近づいてきて……。)

やよい(美希さんは私を警戒して近づこうとしない…これでは千早さんの位置を測れない。)

やよい(警戒してるなら……あっ!!)


やよい「美希さん……仕掛けてこないんですね。」

やよい「なら、もう一度しかけますよ!」


 高槻さんの能力。

 それを確かめたい、そのためにもう少し彼女に近づく事にする。


クルッ

やよい「」ニコッ


 ふと、高槻さんが私の方に向かい笑顔で走ってきた。

 ドン!

 高槻さんと私がぶつかる音がした。


美希「えっ!」

232: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/29(土) 21:06:58.81 ID:hOKkZkjno


美希「やよいが……消えた。」

千早「!?」


 私にぶつかった瞬間に彼女が消えた。
 
 そう、まるで私から能力をコピーしたかのように。


千早(なら、高槻さんは【能力をコピーする能力】ってこと)

千早「なら、【幻覚】の能力って言うのはフェイクの入った能力説明だったわけね。」

やよい「いいえ、違いますよ。」

千早「!?」クルッ

 後ろを見ると高槻さんは私の背後に回っていて、私の服を掴んでいた。

やよい「千早さんの能力を利用さしてもらってるだけです!」

やよい「【透明人間】ですよね、千早さん。しかも、触れたものも巻き添えにする。」


美希「何処に消えたの! 出てくるの!」

やよい「……。」


 ・

 ・

 ・

233: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/29(土) 21:09:19.63 ID:hOKkZkjno




######################### 秋月律子 #########################


 周囲をハイパーボールが跳び交っていた。

 本来なら物体は跳ね返りの時にエネルギーを失うため延々と物体が動き回る事は無いのだが、
 どういうわけだろうか今現在、真美の放っているボールは元気に動きまわっている。

 しかも、永久機関かと戸惑う程止まる事を知らない勢いだ。
 跳ね返る度に勢いを増しているんじゃないかと思うほどだ。


律子「成程ね、私の射程範囲外を跳ね返ってるから」

律子「私は能力で干渉が出来ないわけね……。」

真美「そう。そして……。」

真美「そろそろ律ちゃんに牙をむき始めるころだよ。」


ビシイッ!


 背後から強烈な痛みが襲った。


律子「!?」


234: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/29(土) 21:12:12.02 ID:hOKkZkjno

 ハイパーボールだった。

律子「くっ……成程。これは……痛いわ。」

真美「余裕だね……。」

真美「なら」パッ!


 能力で更にハイパーボールを精製し始めた。


律子(これ以上は捌けなくなる!)

律子(どうするか……。)


律子「……場所を変えるしかいわ。」ダッ!!

律子「場所を変えて仕切り直し…」




真美「できたらいいのにね。」

ズボォッ!!

律子「!?」

235: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/29(土) 21:14:23.27 ID:hOKkZkjno

 落とし穴であった。

 そう、真美はハイパーボールに意識を逸らしている間に、私が逃げる時のために仕込んでいたのだ。
 しかも落とし穴は少し深い。真美の攻撃から逃れて脱出するのは少し困難だ。


真美「クラスメイトだよ。」

律子「……それを言うならチェックメイトね。」

真美「まだ無駄口が叩ける余裕が有るんだね。」パッ!


 両手にハイパーボールを真美は精製した。


真美「りっちゃん動かないでね。動いたらネックレスだけじゃ済まないよ。」

律子「……。」


236: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/29(土) 21:17:45.65 ID:hOKkZkjno


律子「雪歩から聞いたんだけどね。」

真美「?」

律子「土によったら、やよいの背丈くらいの土を掘るだけも安全対策しないといけないらしいの。」

真美「……りっちゃん何が言いたいの?」

律子「そう言う事を聞くとこの土って凄いのね。」

律子「プロデューサーでもこの落とし穴から這い上がるのは大変だと思う深さね。」

律子「……だからこそ。」

真美「………。」

真美「!?」


 真美はここで何かを悟ったようだ。ハイパーボールを思い切り穴に投げ込みその場を離れようとした。


律子「遅いわ。」

 
 私は壁に触れ、真美の立っている地面を崩した。いや、崩したと言うのは語弊があるか。

 真美の立っている地面は固い『だから立っていられない』のだ。

 真美がバランスを崩し、落とし穴に落ちようとしている。


律子「これで、イーブンね。」

真美「逃げ場のない戦いってことだね! りっちゃん!」


 真美が落下を始めた。
 真美は両手から溢れんばかりのハイパーボールを作りだした。



 ・

 ・
 
 ・



237: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/29(土) 21:20:30.09 ID:hOKkZkjno

 辺りを静寂が包んでいた。

 いま、落とし穴の中では女同士の醜い争いが行われている。
 そう、一人の男からの褒美を廻った醜い争いのほんの一部である。

 その争いの最中であるためか、辺りはしんとして不気味な雰囲気を漂わしている。

 それを察知してか生き物もなりを潜めているようだ。

 いま、土から這い上がる音がする。
 先刻の戦いに集結が来たのである。

 一番最初に上がってきたのは……律子であった。

 

 艶のある髪に所々乾いた粘土が付いている。
 彼女の私服も土に塗(マミ)れ少し痛々しさも感じられる。


 その首にネックレスが無かった。


真美「じゃあ、真美行ってくるね。」

律子「……待って。」

238: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/29(土) 21:22:40.31 ID:hOKkZkjno

真美「何?りっちゃん。」

 律子が真美の服を払う。
 真美の服も律子と同じく泥や粘土に塗れ、その上乾いていたために手のみで服の汚れを払うのは無理な事であった。

 しかし、律子は結果に干渉する力があるため、見る見るうちに服は美しさを取り戻したのであった。


律子「……行ってらっしゃい。真美。」

真美「アイアイサー!」







 秋月律子 脱落

239: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/29(土) 21:25:52.26 ID:hOKkZkjno



######################### 如月千早 #########################


 時が止まっている。

 勿論、言葉の綾ではあるが。時が止まっている。

 高槻さんに後ろをとられていて、生殺与奪が彼女にかかっているからだ。


美希「あっ! いいものみつけたの!」

 
 ふと、美希の方から不吉なセリフが聞こえた。
 先日のことであった。私と春香は彼女が『偶然』近くにあったという道具で撃退されている。

 常識ではありえないタイミングで、
 偶然と言うよりかは寧ろ奇跡と言うレベルであった。

 そんな彼女が今、「いいものを見つけた」と言った。
 
 その手にはハイパーボールが有った。


千早「何でこんな所にハイパーボールなんてあるのかしら…。」

240: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/29(土) 21:27:35.97 ID:hOKkZkjno


 成程…彼女は【創造】の能力である可能性が出てきた。

 それを只単に『奇跡』と仰々しく言っているのに過ぎないのではないかと。


美希「これを! 思いっきりなげるの!!」ヒュン!!


 結果から述べよう。全く違う方にとんでいった。
 いや、確かに私たちに向けて投げたという意味では物凄い勘のいいと言うべきか。

 記憶力がいいと言うのも正解であろう。

 だが、投げたボールが向かったのは明後日であった。


千早「……。」

やよい「!? だめっ!!」

 高槻さんが声をあげた。
 どうしたのかと、彼女が向いている方に顔を向けてみる。

 信じられない光景が待っていた。

 ハイパーボールが何故かこっちに向かって跳んでいるのだ。

 私は身をかわそうと動いた所、高槻さんと丁度同じ所に進んでいたようだ。

 ドンッ!!

二人「キャッ!!」


 私の能力が会場されてしまった。


美希「アハッ! 見つけた!」

241: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/29(土) 21:28:47.17 ID:hOKkZkjno


 しかし、高槻さんが私から離れてしまっている。

美希「って、あれ! 千早さんもいるの!」

美希「どう見ても本物だし……。」

美希「やよいはミキに嘘ついたんだね。」



千早「」フッ!!

美希「!? 逃さないの!!」ブンッ!!



 しかし、私は既に透明になっており。
 美希の投げたハイパーボールは虚しく周囲を跳ねまわっていた。


 ・

 ・

 ・


 

242: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/29(土) 21:31:11.40 ID:hOKkZkjno

 ######################### 萩原雪歩 #########################


真「」

雪歩「真ちゃん!」

雪歩「響ちゃんも…。」

雪歩「一体どんな戦いだったの……。」



真「」キラッ(ペンダント)


雪歩「……。」


雪歩「ね……寝てる間に……。」ソーッ!!



ガシッ!



雪歩「!?」

真「」パチッ

真「雪歩……」

雪歩「ひうっ!!」

真「」ヒュウッ!!



雪歩「!?」パキッ!!


 雪歩ネックレスはいつの間にか真に壊されていた。


─萩原雪歩 脱落


真「ゴメンね雪歩。」

雪歩「ううっ、一瞬だったよ…」

真「じゃあ、行こうか。」


─菊地真 復活



 ・

 ・

 ・

243: ◆7tvOaNGIN2 2014/11/29(土) 21:33:27.17 ID:hOKkZkjno


ドリンク争奪戦


資格保有者

如月千早   能力【透明人間】  詳細『透明人間になる』
高槻やよい   能力【??】       詳細『不明』
水瀬伊織   能力【太陽拳】     詳細『おでこサンシャイン!』
菊地真     能力【??】       詳細『不明』
双海真美   能力【創造者】     詳細『物体を創造する』
星井美希   能力【奇跡】       詳細『奇跡を起こす』
四条貴音   能力【能力無効化】 詳細『能力を打ち消す』


脱落

天海春香   能力【人心誘導】  詳細『他人に命令する』
萩原雪歩   能力【嘘発見器】   詳細『相手の嘘を見破る』
我那覇響   能力【交信能力】   詳細『動物の五感の共有及び遠方からの情報交換』
双海亜美   能力【物体変換】   詳細『物体を全く別の物に換えられる』
秋月律子   能力【逆転能力】  詳細『仮定による結果を捻じ曲げる』

不参加

三浦あずさ  能力【変身】      詳細『メタモルフォーゼ!!』


275: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:00:30.27 ID:EOr49xXUo

######################### 如月千早 #########################


美希「でも、やよい厄介だね。【幻覚】かぁ。」

美希「流石のミキが奇跡の子とはいっても」

美希「奇跡では幻覚にとても勝てないの…。」


 美希はそう言いつつ辺りをうろうろ歩いていた。
 そんな美希の表情に未だ焦りはない。むしろ今から笑顔でも綻びそうな様子である。

 「自分が奇跡の子」というのに未だ何の疑いを持っていないようだ。

 こんな森の中でも、こんな状況の中でも、彼女の歩く姿は百合の花だった。


やよい「……。」

千早「」


 ところで高槻さんの能力を考察する必要がある。
 私の立場だから言えるが、高槻さんが明らかに嘘をついている。
 私は当然ながら幻覚ではなく実在しているからである。
  
 しかし幻覚の能力ではないとするなら、どうして美希は私の攻撃を躱す事が出来たのだろうか。
 アレは偶然の産物というものでは断じてなかった。明かなる必然─

 能力で隠れていた私の存在に気づき、私の方を向いたのだ。
 そして、私の攻撃を確実に避けた。それはもう明らかに偶然・奇跡の為せる範疇ではない。

 …もう少し漁ってみよう。もう一度彼女に攻撃を仕掛ける。
 私は大きな足音を立てながら、高槻さんに向かって歩いた。


 ザッ!! ザッ!!


やよい「!?」



276: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:01:20.93 ID:EOr49xXUo

やよい(ううっ、千早さんが近づいてきてる。)

やよい(美希さんもわたしわ警戒して近づこうとしないからアレで千早さんの位置を測れない。)

やよい(警戒してるなら…あっ!!)

やよい「美希さん、仕掛けてこないんですか。」

やよい「なら、もう一度しかけますよ!」

 高槻さんの能力。
 幻覚なのか、それ以外なのか。
 それを確かめたい。

 体の中にある好奇心が牙を表わし、私の表情となって出てくる…

やよい「」ニコッ

 高槻さんが私の方に向かい笑顔で走ってきた。

千早(不味いっ!!)

 気付いた時には既に遅かった。
 胸から、高槻さんと私がぶつかる音がした。

美希「えっ!」

277: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:02:37.59 ID:EOr49xXUo

美希「やよいが……消えた。」

千早「!?」


 私にぶつかった瞬間に彼女が消えたと言う。
 そう、まるで私から能力をコピーしたかのように。

 彼女はいま、私の服を掴んでいる。ぶつかったと同時に行ったのであろう
 その瞬間にコピーをされたと言う事なのか。


千早(なら、高槻さんは【能力をコピーする能力】ってこと?)

千早(【幻覚】の能力って言うのはフェイクだったわけね。)

やよい「いいえ、違いますよ。」

千早「!?」

やよい「千早さんの能力を利用さしてもらってるだけです!」

やよい「【透明人間】ですね、千早さん。しかも、触れた物をも巻き添えにする。」

やよい「触れたものも透明にするなら、触れられても透明にできますよね。」

千早「くっ」

美希「何処に消えたの! 出てくるの!」

やよい「……。」

278: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:03:19.72 ID:EOr49xXUo

######################### 秋月律子 #########################

 周囲をスーパーボールが跳び交っていた。

 本来なら物体は跳ね返りの時に起こるエネルギーロスのために延々と物体が動き回る事は無い。
 しかし、今現在どういうわけか真美の放っているボールは元気に動きまわっている。

 しかも、永久機関かと惑う程止まる事を知らない勢いだ。
 いや、寧ろ勢いが増しているのではないか……

律子「成程ね、私の射程範囲外を跳ね返ってるから」

律子「私は能力で干渉が出来ないわけね……。」

真美「そう。そして……。」

真美「そろそろ律ちゃんに牙をむき始めるころだよ。」

ビシイッ!

 背後から強烈な痛みが襲った。

律子「!?」


279: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:06:15.68 ID:EOr49xXUo

 固くて小さい物質が私の背中を襲った。何か、鋼鉄のような物で叩かれた様な気分になった。
 余りにも突然であったため、能力でこの痛みの結果を捻じ曲げる事は叶わなかった。

 この激しい痛みの因(オオモト)はなんなのか。
 この逃し様のない痛みは何によって齎(モタラ)されたのであろうか

 私は右足を軸に半回転をし、地面に落ちている異物を拾う。
 それは、ゴム質の物であった。 ---スーパーボールである。

 親指と人差し指で作るオーケーサイン程の大きさのボールだ。
 人差し指を親指の第一関節にくっつければ、ボールが丁度で収まる。
 

律子「くっ、成程。これは痛いわね。」グニグニ


 弾力は確かにあるが多少固めである。昔学校の授業で習った物理を少し思い出してしまった。
 どう見ても市販に売ってありそうなスーパーボールなのにもかかわらず、物理法則歪ましていそうな
 挙動をしているのが不思議で不思議で仕方ない。


真美「律ちゃん余裕だね…。」

真美「なら」パッ!


 能力で更にスーパーボールを精製し始めた。

 左手に一つ、右手に一つ。計二個だ。

 更にそれを近くの木に投げつけた。
 木と衝突したボールは更に勢いを増し跳ね返る。

 反対側へと跳ね返ったボールは、更に他の木と衝突し勢いを残したまま再び跳ね返る。


律子(これ以上は捌けなくなる!)

律子(どうするか……。)

律子「……場所を変えるしかいわ。」ダッ!!

真美「場所を変えて仕切り直し?」




真美「……できたらいいのにね。」

ズボォッ!!

律子「!?」

280: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:07:24.65 ID:EOr49xXUo

 落とし穴であった。

 そう、真美はスーパーボールに意識を持ってきておいてから、私が逃げる時のために仕込んでいたのだ。
 しかも少し深い。真美の攻撃から逃れて脱出するのは少し困難だ。


真美「クラスメイトだよ。」

律子「……それを言うならチェックメイトね。」

真美「まだ無駄口が叩ける余裕が有るんだね。」パッ!


 真美は再び両手にスーパーボールを精製した。


真美「りっちゃん動かないでね。動いたら……ネックレスだけじゃ済まないよ。」

律子「……。」

律子「雪歩から聞いたんだけどね。」

真美「?」

律子「土によったら、やよいの身長位の深さを掘るだけも安全対策しないといけないらしいの。」

真美「…りっちゃん何が言いたいの?」

律子「そう言う事を聞くとこの土って凄いのね。」

律子「プロデューサーでもこの落とし穴から這い上がるのは大変だと思う。」

律子「それ位深い。」

律子「……だからこそ。」


 真美は此処で何かを悟ったようだ。
 スーパーボールを思い切り穴に投げ込みその場を離れようとした。


律子「遅いわ。」

 
 真美がボールを投げ込んだと同時に土に向かって能力を使った。
 私は壁に触れ、真美の立っている地面に干渉する。

 真美の立っている地面は固い『だから立っていられない』様に…。


281: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:08:14.96 ID:EOr49xXUo


######################### 回想 #########################

 嘗(カツ)て私は雪歩に何気ない建設関係の疑問を聞いた事がある。
 事務所には小鳥さんと私、雪歩しかいなかった時であった。

 彼女はお茶の話をする時と同じ目をして私にいった。
 顔が真っ赤になり、瞳孔が開いている。

雪歩「土って、どこも同じように考えてしまうかもしれませんが」

雪歩「実は私と律子さん程の距離でも全然土の質が違うんですよ!」

律子「ゆ、雪歩もう少し落ち着きなさい。」

雪歩「あっ、ごめんなさい…。」

 いつもの顔になった。

雪歩「…フゥ。話を戻しますよ。」

雪歩「例えば、ある日大雨が降ったとします。」

雪歩「どうなると思いますか?」

律子「どうなりますか……って。」

282: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:10:32.98 ID:EOr49xXUo

律子「そう言われても、水浸しになって所々水たまりが出来るわね。」

雪歩「その上を歩けますか?」

律子「…当然じゃない。地面の上なんだもん。」

雪歩「………。」

雪歩「まぁ、普通はそうなんですけどね。中にはあるんですよ。」

雪歩「歩く事はおろか『立つことすら儘ならない』ような地面というのが…。」


 そして、彼女は建設用語の『トラフィカビリティー』について語った。

 工事現場の地面の様子によっては、作業機械の走行に影響が起きて能率に関係するため
 機械が走行しうる地面の度合いをそう定義しているそうだ。

 水分を多く含み流動をしてしまうような性質を持ってしまうと機械によっては走行できない。
 一般的言えば泥濘(ヌカルミ)に車のタイヤがハマり抜け出せなく事例がある。
 これは、その地面の持つトラフィカビリティーに車が対応出来なかった為だ。


雪歩「この、『水分含めば…』と、いうので極端な例で『クイッククレイ』というものが有るんです。」

雪歩「これがどれほど恐ろしいかといいますと。」

雪歩「先ほど言った水分をこの土が含んだ状態で、ほんの一寸(チョット)した衝撃で…」


雪歩「水 の 様 に な り ま す 。」


律子「!?」

律子「ハァ!? 何それ!!」

雪歩「更にその衝撃と言うのも恐ろしく。」

雪歩「雨粒が落ちた程度の衝撃でも液状化する例も見られている様です!」

律子「ヒエエエエエ!!」


283: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:11:45.87 ID:EOr49xXUo


雪歩「ハァ…ハァ…」


 上気した顔で満足げにこっちを見ている。
 いま、事務所には私達と小鳥さんしかいないとはいえこんな所を他人が見たら─


P「……お前らアツいな。」

雪歩「!?」

雪歩「プ・・・ププププロデューサー!!」

P「面白そうじゃねえかよ。続きを聞かせてくれ!」


 近くのソファーにドカッと座った。
 相変わらずに豪快というか、苛烈と言うか。

 そう、一挙一動が激しい人間であった。
 しかし別にその姿が不快というわけではない。

 その姿は意図せず人を引き寄せる様な魅力と言うものが有った。


雪歩「は、はいっ!それで。」

雪歩「つまり、『地面=強い』の等式というのは実はそんなに成り立たないものってことです。」

雪歩「日本でもそう…。」


 「普段私達が歩いてる地面がアスファルトの上だから大凡(オオヨソ)及びもつかないような
 建設現場で働いておられる方々の苦労」とやらを彼女は熱く語っていた。

 ここ等辺りで私は軽く後悔をした。
 藪をつついて蛇を出してしまったからである。

 いや、藪を突いたら蛇が大量発生して仕舞ったのか。

 熱くなった彼女はもう私では止められようのないものであった。

284: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:12:12.96 ID:EOr49xXUo

律子「ハァ、プロデューサーが背中押すからですよ。」

P「まぁ、いいじゃねぇか。あんな雪歩は一年に一度見られるか否かだぜ。」

律子「全く──。」









P「有難うな、雪歩。なかなか楽しかったぜ」ナデナデ

雪歩「あ、ありがとうございます///」

律子「」ムムムッ!!


285: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:14:02.80 ID:EOr49xXUo


######################### 回想終了 #########################


 固い地盤を持つ地面の上に立っている。
 そこに律子が能力によって結果の介入をしたため、いま真美にとってはまるで泥濘以上に立っていられない土の上に
 立っている様に感じている筈だ

 さらに穴に向かいボールを投げた瞬間に律子に能力を使われたので
 重心が前にある真美がバランスを崩し、落とし穴に落ちようとしている。


律子「これで、イーブンね。」

真美「逃げ場のない戦いってことだね! りっちゃん!」


 真美が落下を始めた。
 真美は両手から溢れんばかりのスーパーボールを作りだした。


 ・

 ・
 
 ・


 辺りを静寂が包んでいた。

 いま、落とし穴の中では女同士の醜い争いが行われている。
 そう、一人の男からの褒美を廻った醜い争いである。

 その争いの最中であるためか、辺りはしんとして不気味な雰囲気を漂わしている。

 それを察知してか生き物もなりを潜めているようだ。

 いま、土から這い上がる音がする。
 先刻の戦いに集結が来たのである。

 一番最初に上がってきたのは…律子であった。

 艶のある髪に所々乾いた粘土が付いている。
 彼女の私服も土に塗(マミ)れ少し痛々しさも感じられる。



 その首にネックレスが無かった。



真美「じゃあ、真美行ってくるね。」

律子「……待って。」

286: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:15:00.20 ID:EOr49xXUo

真美「何?りっちゃん。」


 律子が真美の服を払う。
 真美の服も律子と同じく泥や粘土に塗れ、手のみで服の汚れを払うのは無理な事であった。

 しかし、律子は結果に干渉する力があるため、見る見るうちに服は美しさを取り戻したのであった。
 『泥に塗れて服が汚れている→手で払っても汚れが落ちない』に干渉したのだ。


律子「……行ってらっしゃい。真美。」

真美「アイアイサー!」







 秋月律子 脱落

287: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:16:34.63 ID:EOr49xXUo

######################### 如月千早 #########################


 少女、星井美希は困惑していた。

 先程まで見えていたやよいの姿はおろか
 先ほどまで聞こえていた足音なども聞こえなくなっていたからである。

 やよいの能力は自身で【幻覚をみせる】能力だと言った。
 ならば、いま彼女の能力下に身を置いていると言う事になっているのであろう。

 なにか、いい方法はないであろうか。そう彼女は考えた。
 そう、例えば『自分が幻覚を見ていようが、見ていまいが』関係なくダメージが与えられそうなものを。


 ──。


 ──コツン。


 足元に何かが当たる音がした。









美希「あっ! いいものみつけた!」

 
 美希の方から不吉なセリフが聞こえた。
 先日のことであった。美希は私と春香を『偶然』近くにあった道具で撃退している。

 常識ではありえないタイミングで、
 偶然と言うよりかは寧ろ奇跡と言うレベルであった。

 そんな彼女が今、「いいものを見つけた」と言った。
 
 その手にはスーパーボールが有った。


千早「何でこんな所にスーパーボールなんてあるのよ…。」


288: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:17:14.62 ID:EOr49xXUo


 成程…彼女は【創造】の能力である可能性が出てきた。

 それを只単に『奇跡』と仰々しく言っているのに過ぎないのではないかと。


美希「これを! 思いっきりなげるの!!」ヒュン!!


 結果から述べよう。明後日─全く違う方にとんでいった。
 いや、確かに私たちに向けて投げたという意味では物凄い勘のいいと言うべきか。

 記憶力がいいと言うのも正解であろう。

 だが、投げたボールが向かったのは明後日であった。


千早「……。」

やよい「!? だめっ!!」


 高槻さんが声をあげた。
 どうしたのかと、彼女が向いている方に顔を向けてみる。

 信じられない光景が待っていた。
 スーパーボールが何故かこっちに向かって跳んでいるのだ。

 私は身をかわそうと動こうとした所、高槻さんと丁度同じ所に動こうとしていたようだ。

 ドンという音とともに私たちは衝突した。


二人「キャッ!!」


 私は大きく転び、能力も知らずのうちに解除して仕舞った。


美希「アハッ! 見つけた!」

289: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:17:42.21 ID:EOr49xXUo


 だが、高槻さんが私から離れた。


美希「って、あれ! 千早さんもいるの!」

美希「どう見ても本物だし……。」

美希「やよいはミキに嘘ついた─ってこと?」

千早「」フッ!!

美希「!? 逃さないの!!」ブンッ!!


 しかし、私は既に透明になっており
 美希の投げたスーパーボールは虚しく木の間を跳ねまわっていた。


 ・

 ・

 ・


290: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:18:41.23 ID:EOr49xXUo

 ######################### 萩原雪歩 #########################


真「」

雪歩「真ちゃん!」

雪歩「響ちゃんも…。」

雪歩「一体どんな戦いだったんだろう……。」


真「」キラッ(ペンダント)

雪歩「……。」

雪歩「ね……寝てる間に……。」ソーッ!!



ガシッ!

雪歩「!?」

真「」パチッ

真「雪歩……」

雪歩「ひうっ!!」

真「」ヒュウッ!!



雪歩「!?」パキッ!!


 雪歩はいつの間にか自分のネックレスが真に壊されている事に気が付いた。


萩原雪歩 脱落


真「さぁ、行こうか。」



菊地真 復活


291: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:22:21.91 ID:EOr49xXUo

######################### 星井美希 #########################


 千早さんが【透明人間】の能力を持っていたようだ。
 ならやよいの能力は一体何なのであろうか。

 いまは、やはり【幻覚の能力】である事を前提に考えていこう。
 そう、それだと疑問がやってくるからだ。

 『どうしてやよいは二度目に仕掛ける時「千早さん」を使ったのか』である。
 姿を消すなら、能力で自身が消えたと錯覚させればいい。それだけの事である。

 そして、最初の時点でもそうだ。本人が居たのならアレは幻覚ではない。
 
 どうして、あの時姿を確認する事が出来たのか。
 あの、真白な気配の塊のようなものが、徐々に色付き本体と化した。


 ザッ ザッ

 
 遠くで足音も聞こえる。具体的な位置は分からないが。いまミキややよいからは遠い。
 【透明人間】ならば、今この一瞬気を抜いた所で先手は取られないだろう。


 ん? 位置?


美希「まって!」

やよい「??」

292: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:22:58.67 ID:EOr49xXUo

















『 何 で ミ キ は 、 い ま 千 早 さ ん の 足 音 が 聞 こ え る の ? 』















.

293: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:23:43.16 ID:EOr49xXUo


 やよいが千早さんと一緒に消えている間は明らかに一切の気配が消えていた。
 しかし、今は息をする音と歩行の音が微かに聞こえるのだ。

 そういえば、ミキが千早さんの気配を察する事が出来た時。
 やよいはミキの手首を掴んでいた気がする。

 
 ……とするなら。


美希「」フッ!!


 ミキはやよいの方を向いた。
 やよいは不思議そうに私の方を見ている。

 しかし、徐々にミキが何かを悟った事に考えが向かってきたようだ。


美希「」ニコッ


 やよいに微笑を見せると、完全に見破られたと思ったようだ。
 顔が青ざめ足元が震え始めた。

 まだ、仮定の域を抜け出せてないが。これが仮定が真ならばやよいの能力は…。


294: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:24:51.78 ID:EOr49xXUo

美希「やよい?」


 笑みを絶やさずやよいに近づく。
 あくまで対話の姿勢を崩さないようにする。

 しかし、生殺与奪はこちらにあると言う雰囲気を残しておく。
 主導権はこちらにある。もともと、やよいはバレずに千早さんとミキを相討ちさせるつもりだったのであろう。

 だが、冷静に考えれば、余りにもこれはハイリスク過ぎる話である。
 しかし、彼女はそれに賭けたのだ。なら、ミキもそれに応えないといけない。

 他人を利用するって事は、利用されるって事も考えるべきなのだから。

 ミキは利用された。
 だから利用していいのだ。


美希「今すぐ美希に触れるの」

やよい「!?」


 観念した顔をしていた。
 やよいはミキに近づきそして手首を握った。










 

295: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:25:53.80 ID:EOr49xXUo

######################### 菊地真 ########################


 体が所々痛む。変色もみられる。
 おそらく明日辺り痣になるだろう。

 しかし、骨折などの類がないからまだいける。
 
 此処まで来ると、己の限界を試してみたくもなってきた。
 どれ程の強敵に、何処までの狂気がでるのだろうか。

 いまなら、美希が来ても勝てそうな気すらしてしまう。
 このまま、全員倒してゆっくりと小鳥さんに会おうと思う。
 

貴音「成程…それが貴女の行かんとする道ですか。」

真「…そうですね。そして神様はまた最大の難関を与えるようで。」

真「貴音さん。」

貴音「……。」

貴音「響を倒しましたか。」

貴音「血が滾りますね……」ゾワッ

真「!?」スッ

 
 気が付けばボクは構えをしていた。
 今の貴音さんからは、いつものミステリアスな雰囲気に加えて殺気のような物が感じられる。

 つぅと、ボクの額から汗が流れていた。拳を握っている手も湿っていた。
 成程─。前途多難というわけか。
 

296: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:27:21.40 ID:EOr49xXUo


真「いつ──始めますか。」

貴音「いつ─とは。中々異(イ)な事を言いますね。」


 「もう始まってますよ」と言い、彼女は知らぬ間に足を肩幅開かせ
 効き足を半歩後ろに下げて軽く腰を落としていた。

 拳を握っていない。
 と言う事は、掌底─もしくは合気の類であろうか。

 掌底ならば対処のしようがあるが。合気道ならば迂闊に手が出せない。
 じりじり、と数寸の間合いの取り合いを繰り広げていた。

 いま、上面公園の森の一部分では二つの呼吸音と足が地を滑る音。
 そして、遠くから聞こえる子供の声のみであった。

 風がごうと吹き、髪型を崩す。
 貴音さんの髪が彼女の視界を遮った瞬間であった。


真(今だッ!!)


 ボクは大きく間合いを詰め、左拳を繰り出した。
 我が攻撃ながら閃光のような一撃であったと思う。

 左拳に物体がぶつかる瞬間。パキと乾いた音が静かな森に響いた、
 音が聞こえた数秒後、左拳を刃物で刺したような痛みが訪れた。


真「うわああああああっ!!」

貴音「……。」


 この感覚は知っている。あの感触をしっている。
 自分が突いたものの正体と、いま体を貫いた痛みの正体だ。そして、同時に驚愕した。

 貴音さんは自身の髪に目隠しをされたにも拘らず、ボクの突きを頭突いたのだ。
 額の少し上、人体で上から数えて数番目に固い骨である。

 脳を守るための堅牢な骨をボクは突いたのだ。
 

297: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:29:12.49 ID:EOr49xXUo


 それに比べて、人間の手は──。
 端的にいえば小さな骨の集まりである。関節とは骨と骨を繋ぐものである。

 手にある無数の骨の集まりが、頭蓋骨を叩くと言う暴挙。
 結果は火を見るよりも明らかであった。

 一撃で、ボクの左拳が真っ赤に染まった。骨のいくらかが砕けていても可笑しくは無い。
 つぎ左拳の当て所がわるければ確実に今度は血に染まるであろう。

 ボクは痛みに耐えきれず、口からこれまで余り出したことのない呻き声を挙げた。
 この一瞬がダメだった。
 左手首に柔らかく暖かい感触がした。

 女性の手である。若い女性の手があった。日焼けの無い真白な肌色だった。
 滑らかな絹のような触られ心地であったが、この時ばかりはこの感触さえも恐怖であった。


 そう、四条貴音という女性がボクの左手首を掴んでいたのだ。


 それに気付いた瞬間と同時に、重力が逆さになったような感覚を味わった。
 ちょうど、遊園地のジェットコースターに乗っているようなあの感覚であった。

 次に自分が感じたのは、自分を上から見下ろす銀髪の美女の姿と
 大地の雄大さであった。







298: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:29:42.33 ID:EOr49xXUo

######################### 星井美希 #########################

美希「有難うなの、やよい。」

美希「お陰で…ミキは勝利を飾った」ジャラジャラッ!!


 美希の手には二つのペンダントが有った。

 そして、その奥には立ち呆けているやよいと。
 仰向けに倒れている千早の姿が有った。


美希「やっぱりミキは奇跡の子なの。」







高槻やよい・如月千早:脱落

299: ◆7tvOaNGIN2 2014/12/18(木) 20:30:14.69 ID:EOr49xXUo


ドリンク争奪戦


資格保有者

水瀬伊織   能力【太陽拳】     詳細『おでこから光を発する』
菊地真     能力【??】       詳細『不明』
双海真美   能力【創造者】     詳細『物体を創造する』
星井美希   能力【奇跡】       詳細『奇跡を起こす』
四条貴音   能力【能力無効化】 詳細『能力を打ち消す』


脱落

天海春香   能力【人心誘導】  詳細『他人に命令する』
如月千早   能力【透明人間】  詳細『透明人間になる』
高槻やよい   能力【??】       詳細『不明』
萩原雪歩   能力【嘘発見器】   詳細『相手の嘘を見破る』
我那覇響   能力【交信能力】   詳細『動物の五感の共有及び遠方からの情報交換』
双海亜美   能力【物体変換】   詳細『物体を全く別の物に換えられる』
秋月律子   能力【逆転能力】  詳細『仮定による結果を捻じ曲げる』

不参加

三浦あずさ  能力【変身】      詳細『メタモルフォーゼ!!』


306: ◆7tvOaNGIN2 2015/01/23(金) 16:54:51.62 ID:DLcoODUYo
######################### 菊地真 #########################

 肺が押しつぶされ、ごうと息を吐きつくし。
 全身を痛みが包み込む。

 地面が土でよかった。柔らかい土でよかった。
 これが、岩盤であったりアスファルトであったりコンクリートであれば、ボクは確実に立てなくなっていた。

 ──左手も痛い。骨折をしたのだろうか。
 ヒリヒリと言うよりかは、チクチクとした痛みがある。

 貴音さんは未だボクの左手首を掴んでいる。
 
 ──何が来る。

 踵落としか
 下段の正拳突きか
 それともこのままネックレスだけ奪いに来るか。

 ごくりとボクの喉が鳴った。


307: ◆7tvOaNGIN2 2015/01/23(金) 16:56:14.20 ID:DLcoODUYo

貴音「……真。」

 貴音さんがぼそりと呟いた。

貴音「降参する事をお勧めします。真の場合ならば……。」

貴音「再起不能になってもらいますよ……とはいっても脱臼程度ですが。」

真「……随分と嘗めた事を言いますね。」

貴音「違いますよ。」

貴音「真ほどの実力になると、小手先の技ではやっていけない。」

貴音「殺人術と同様を行わなければならない程、苛烈。」

真「……。」




真「随分長時間ボクの手首を持ってますね。」

貴音「!?」

 手首を中心に肘、肩の力を目一杯使い、手首を貴音さんの手から解放させる。
 それだけに留まらせず、逆に貴音さんの手首を僕が掴んだ。

 勢いとつけ、思いっきり立ちあがった。

貴音「なんと!」

真「喋り過ぎですよ。」


 グルッ!!

 ─手鏡。
 空手の「柔法」の一つである。
 

308: ◆7tvOaNGIN2 2015/01/23(金) 16:58:06.92 ID:DLcoODUYo

 かつての、柔道に当て技が有るのと同様に
 空手にも投げ技が存在する。

 嘗て父さんが自慢げにボクに仕掛けてきたのを思い出した。

 まさか、その時に覚えた技が此処で役に立つとは……。

 貴音さんの体が倒れ……


 ない。バランスを崩しただけだ。
 なら、逆の手鏡をするだけ。

 コンっ

 軽く何かがボクの頭をたたいた。

 その後……。

 ごう、と音とともに強烈な掌底がボクを襲った。
 一瞬で目の前が真っ暗になった。


真「かはっ!!」

 
 痛みに耐えられず、貴音さんから距離をとる。

309: ◆7tvOaNGIN2 2015/01/23(金) 16:58:33.29 ID:DLcoODUYo

 なんと恐ろしい人なのだろうか。
 
 そして、自分は之までなんと高慢に満ちた日々を送ってきたのだろう。

 運動神経の良い。空手をやっている。
 みんなはボクが守る?


 ──笑わせる。


 こんなにも強い仲間がいたではないか。
 なにを、ボク一人の問題と悦に浸ってたのだろうか。

 ─ピエロでは無い。これは明らかなる自滅だ。


 だが、それでいい。
 これは反省だ。

 之を省みてこそボクは次のステージへ向かう。

 真摯に受け取れ。
 ボクは─。


真「貴音さん」

貴音「どうしましたか。」

310: ◆7tvOaNGIN2 2015/01/23(金) 17:00:55.50 ID:DLcoODUYo

真「有難うございます。お陰で目が覚めました。」

真「お礼にですが、未だ誰にも見せていない、この技を見てください。」

真「漫画で知ったんです……。」


 すうっ、と構えをとった。
 半身と言う方が正しいのであろうか。

 いや、お腹は正面を向いている気もする。

 兎も角、彼女は何をするかは分からないが、正拳突きの類である事は間違いない。


貴音「面白い……。」


 是は眞(真)に興味深い。
 どんな技なのか受けて立つ…。

 私は一気に眞(真)との間合いを詰めた。

 ・

 ・

 ・

311: ◆7tvOaNGIN2 2015/01/23(金) 17:01:25.45 ID:DLcoODUYo

 静かな森であった。
 ゲームが始まって二時間程経っていて、脱落者が殆どである。

 にもかかわらず、未だに公園らしい喧騒がない。
 にもかかわらず、未だに森林らしい喧騒がない。
 
 鳥の鳴く声も聞こえず
 虫の羽音も聞こえない。

 静かな森の中で一人の少女が立っていた。
 
 少女の右手にはネックレスが有る。
 
 少女は黒い髪をしていた。


貴音「お見事……と言わざるを得ませんね。」

貴音「その突きは神速が如く……。」

真「……。」

貴音「……真。」

真「はい。」

貴音「御武運を。」



四条貴音 脱落

312: ◆7tvOaNGIN2 2015/01/23(金) 17:01:54.64 ID:DLcoODUYo

真「ありがとうございます貴音さん。」

真「ボクは……」


キャアッ!!


 真の耳に悲鳴が聞こえた。

 この声は知っている。




 美希の声だ。

313: ◆7tvOaNGIN2 2015/01/23(金) 17:02:26.73 ID:DLcoODUYo

貴音「真聞こえましたか?」

真「ええ。はっきりと。」

真「……恐らく向こうで他の誰かが戦っているんだと思います。」

真「……。」

貴音「どうするおつもりですか?」

真「どう……って。」

貴音「戦う事がすべてではない筈です。」

貴音「しかし、美希の能力は……。」

真「ご存じなんですか?」

貴音「一度刃を交えました。」

貴音「しかし、彼女はお互い共の能力を知り、戦線から逃れました。」

貴音「【奇跡を起こす】能力をもつ彼女ならあるいは。小鳥嬢の居場所を勘で当ててしまうのではないでしょうか?」

真「………。」

真「いってきます。」

314: ◆7tvOaNGIN2 2015/01/23(金) 17:02:55.52 ID:DLcoODUYo



真は右足を一歩前に出す


真(次は美希か……。)


左足を一歩前に出す


真(でも、勝てば居場所を聞き出せる。)


右足を一歩


真(でも、一体勝てるのか?ボクが……。)


左足を一歩


真(使う時が来たんだろうか……。)


右足

真(ボクの……)




黄色の髪が見えた。

315: ◆7tvOaNGIN2 2015/01/23(金) 17:03:27.95 ID:DLcoODUYo


真「美!! ………希。」




真が次に目にしたのは。

地に伏した美希と……。




伊織「遅かったわね。」





水瀬伊織の姿であった。

320: ◆7tvOaNGIN2 2015/02/18(水) 22:57:25.60 ID:bNXPaJ8Wo

真「伊織……。」


伊織「悪いわね、真。ドリンクは私がいただく。」


 その言葉と同時に伊織は能力を使った。


真「くっ!まぶしいっ!」


 視力を取り戻した時にはすでに、伊織は姿を消していた。


真「くそっ!」


 すぐさま、みきの所へ駆け込む


真「伊織は!どこへっ!」

美希「えへへっ、ミキは伊織に小鳥はあっちにいるんじゃないって言ったよ。」


 そういって、ミキは左腕をもちあげた。
 左手の方向か……。


真「ありがとう……。」

美希「えへへ、がんばってね。」


 …まったく。
 負けたのに可愛い笑顔な事で。
.

321: ◆7tvOaNGIN2 2015/02/18(水) 23:08:14.72 ID:bNXPaJ8Wo


小屋



真「ハァ・・・ハァ」


 小屋の前に伊織がいた。
 ……もうだめか。そうおもっていたが、どうやら様子がおかしい。


伊織「……よ!」


 伊織の怒号にも似た叫びが聞こえる。
 すぐに彼女の許にむかった。


真「伊織! どうしたの!」


 そういいながら、ボクは伊織が向いている方を向いた。

 そこには……。











 小鳥さんを眠らして、ドリンクを持っているモバPさんの姿があった。

322: ◆7tvOaNGIN2 2015/02/18(水) 23:29:13.87 ID:bNXPaJ8Wo


モバP「……お疲れ様。」

伊織「私達をバカにしてたわけ? 事と次第では……。」

モバP「許さないか……。」






?「やっぱりか……」


 伊織・真後ろ向く

 なんとそこには



モバP「どうしてこんなまねを……」


 もう一人モバPがいた





つづく

引用元: 小鳥「知り合いの事務員からドリンク買ったピヨ」ウヘヘヘヘヘ