1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:05:53.62 ID:y3UiIwn50
幼女「それは甘えだ」


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:07:06.88 ID:y3UiIwn50
男「は?」

幼女「君は優しすぎるんだよ。いや、むしろ甘すぎると言うべきか」

男「愚痴を聞いてくれたのはありがたいが、それは……どうなんだ?」

幼女「君は他人と関わるとき、『誰にも嫌われたくない』といつも思っているだろう」

男「いやそんなことは」

幼女「それでは駄目だ。誰にも嫌われないということは、誰にも好かれないということと同義なんだよ」

幼女「向こうを見てご覧。子供たちが遊んでいるだろう」

男「……君も十分子供だけどね」



7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:08:26.59 ID:y3UiIwn50
幼女「くだらん御託はいい。……輪から少し離れたところに少女がいるだろう。母親らしき女性といっしょの」

男「ああ」

幼女「アレは、君だ」

男「何を唐突に。あんな無邪気そうな女の子が、俺と同じなわけがないだろ?」」

幼女「いや、あれは君だよ」

幼女「彼女はね。いつも、仲良しの輪を遠巻きに眺めているんだ。なぜだと思う?」

男「なぜって……内向的な子なんだろう?」

幼女「うむ、それは間違いではない。しかし、わたしが訊いたのはもっと穿った解答だ」


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:08:59.00 ID:y3UiIwn50
男「穿った?」

幼女「そう。具体的にはね、彼女が何を思ってここに来、何を思ってあそこに立っているのか、ということだ」

男「……君が何を言いたいのか、わからないな」

幼女「ふむ……。ではヒントをあげよう。彼女は今日こそ母親と共にいるが、いつもは一人なのだよ。
   一人で、楽しげな輪をただ眺めているんだ」

幼女「加えて言うと、彼女と彼らは決して仲が悪いというわけではない。
   ボールが飛んでくれば投げ返すし、そういう時は軽い会話を交わすこともある」

幼女「それから、あそこの輪のだれかが積極的に彼女を誘うことは終ぞなかった。
   彼女は一人でいるのがいちばん好きなんだと認識されているんだろう」

幼女「さぁ、彼女は何を思っているのかな?」

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:09:59.46 ID:y3UiIwn50
男「『私もあの輪に入れたらなぁ』とか、そんなところじゃないか?」

幼女「あぁ、それも誤りではない」

幼女「埒があかないから答えを言ってしまおう。
   彼女が抱いているのは、『嫌われるのが怖い』という危惧さ」

男「それ、ちょっと飛躍してないか? 第一、直接確認を取ったわけでもないんだろう」

幼女「いいや、間違いないね。彼女はあの輪に入りたい。
   だが勇気を出して『私も混ぜて』なんて言ったとして、もし断られてしまったら?」

男「……考えすぎだよ。彼らは初対面みたいなもんじゃないか。
  受け入れてもらえるに決まってる。別段嫌われているわけじゃない」

幼女「現実に彼女がそう言ったなら、断られることはまずあるまい。それくらいは私もわかっているさ」

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:10:54.95 ID:y3UiIwn50
男「ますます、君が何を言わんとしているのか判らない」

幼女「大事なのは彼女がそう思っているという点だ。ここに関して、君と彼女は非常によく似ている」

男「待て、俺は別にぼっちというわけではないぞ。コミュ障でもないつもりだ。
  というか、それがどうしてモテるモテないの問題につながる?」

幼女「本当にそうかね? 今の君に、心から笑いあえるような友人はいるのかい?
    恋仲の女性がいないのは火を見るより明らかと言う他無いが、友人だって満足にいるわけではないだろう?」

男「おいおい、俺を過小評価してないか? 友人くらいいるさ。
  大学の授業を一緒に受けたり、酒を飲んだりするような」

幼女「では、君は自分から彼らに何らかの誘いを持ちかけることはあるのかな?
    あるいは二人、三人といった少人数で長く行動を共にすることは?」

男「うっ……。確かに、俺から話を出したり、サシで飲んだり遊んだりといったことはないが……」

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:11:43.10 ID:y3UiIwn50
幼女「ほら見たまえ。残念ながら、君に『友人』と呼べる人間はいないよ。
   彼らの君に対する認識は『同じコミュニティに属する者』という、ただそれだけだろう。否定できるかい?」

男「……」

幼女「沈黙は肯定と受け取らせてもらおう。なぜ、君は自分から行動を起こさない?他人を誘わない?」

男「それは……。向こうが俺のことをどう思っているかわからないからだ。
  好意を持っていない人間から誘いを受けても、煩わしいだけだろうから」

幼女「ふむ。では訊こう。君と先ほどの彼女に、どれほどの違いがある?」

男「!!」

幼女「君だって、自分から声をかけるのを躊躇っているだけさ。さっき君は言ったな。
   『受け入れてもらえるに決まってる。別段嫌われているわけじゃない』と」

男「……ああ」

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:12:31.30 ID:y3UiIwn50
幼女「君の同輩諸君は君のことを嫌っているのかい?」

男「いや、嫌われていることはない、と思う」

幼女「もっと訊こう、君は、もし彼らからなにか個人的な相談や、少人数の遊びに誘われたならどうする?
   好意を持っていない人間からの誘いだからと断るか?」

男「まさか!むしろ渡りに船だ、喜んでついていくさ!相談だって真摯に聞くよ」

幼女「思うに、君は勘違いしているのさ。人は『好き』と『嫌い』だけじゃない。
   『普通』『なんとなく好き』の領域も広く持っているものなんだよ」

幼女「そして君は、君が思っているより遙かに多くの人にとって、今新しく上げた二つの分類に入っているはずだ」

男「それは、そうかもしれないが……」

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:13:29.46 ID:y3UiIwn50
幼女「もしかしたら断られるかもしれない。その可能性はゼロではないだろう。
   しかし、出会う者全員に好かれている必要がどこにある?」

男「……」

幼女「リスクを踏み越えることができなければ何も生み出せはしない。
   これだけは絶対に間違いじゃない。云わば人類にとっての普遍的真理だ」

幼女「そして、だ。ここからが本題だが、モテるだのモテないだのといった話は、
   そこを踏み越えた人間にしか許されていないんだよ」

幼女「君はまだ土俵……いやこの表現は古いな。そう、ステージだ。君はまだリングに上がってすらいないんだ」

幼女「世の女性達だって、通りすがっただけの他人に恋をするわけがない。
   一定のラインを超えなければ、文字通り誰も射程距離には届かないんだ」

幼女「おや……見たまえ、件の少女は勇希を見せたぞ? 母親に後押しされた形とはいえ、立派なものじゃないか」

幼女「さぁ、君はどうする?言う資格もない泣き言を垂れ続けるか?」

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:14:14.47 ID:y3UiIwn50
幼女「『わずかな勇希が本当の魔法』と、有名な先生も言っているだろう?
   今はまだ大学の夏休みで機会は無いかもしれないが、即ちそれは、
   君に自省のための時間が与えられているということでもある」

幼女「秋口にでもまた会おう。もし、そのとき君が依然として『モテない』と嘆くのなら、そうだな……」

男「?」

幼女「そのときは、私が貰い手になってやろうじゃないか」

END


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:19:16.76 ID:y3UiIwn50
三ヶ月後

幼女「やあ、久しぶりじゃないか」

男「ああ……」

幼女「ふぇぇ」

男「……えっ!?」

幼女「……いや、すまない。その顔を見るに、首尾は上々とは言いがたいようだな」


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:25:52.85 ID:y3UiIwn50
幼女「さて、君の話を聞こうじゃないか。この三ヶ月、よもや何もしなかったとは言うまい?」

男「結論から言うと、だ。友人はできた」

幼女「ほう、それはおめでとう」

男「だが、肝心の浮いた話は一向に出てこない」

幼女「あー……」

男「君が言っていたことは間違いではなかったよ。
  俺が声をかけて、好意的な反応を返してくれる奴はおもいのほか多かった」

幼女「ふふん、そうだろう。君はあの少女なのだから」

男「もちろん、俺のほうが空回りして、怪訝な目を向けられたこともあった。
  でもそういうのは気にしないことにしたんだ」



28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:32:09.28 ID:y3UiIwn50
幼女「いい傾向だ。そのとおりさ、人は極が無限に存在する磁石のようなものだ。
   引き合うばかりが人間ではないし、NとSしかない磁石のように、単純には行くまい」

男「そうだな。他人から返される反応に怯えないことは重要だ。
  以前の俺にはそれが欠けていた」

幼女「ほうほう!なかなかわかってきたじゃないか!君は強くなったな」

男「はじめは趣味の合う人間や同じサークルの人たちに、積極的に声をかけることにしたんだ。
  『同じコミュニティに属する人間』から一歩進んだ関係になりたくてね」

幼女「……」(コクリ)

男「話してみると、俺の印象はなかなか悪くないようだった。
  俺が音楽系のサークルに入っていることは話したっけ?」

幼女「いや、まだだ。なんと、君はバンドマンだったわけか!それにしては随分引っ込み思案だったな」

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:36:40.80 ID:y3UiIwn50
男「うるさいな……ベーシストってのは割りとそういう生き物なんだよ。
  まぁベース専任ってわけでもないんだが、そのへんは君に説明してもしょうがないな」

幼女「参考までに訊いておこう。君の好きなバンドは?」

男「人間椅子とBlach Sabbathだけど……どうせ言ってもわからないだろ?」

幼女「ああ……。いや、何も言うまい」

男「でだ。多少積極的に立ちまわるうちに友人はできた」

幼女「おめでとう。それだけでも十分な収穫だろう?」

男「……やっぱり君は俺のことを過小評価してるだろ」

幼女「で?そこからだよ、わたしが聞きたいのは」

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:40:42.42 ID:y3UiIwn50
男「もちろん音楽サークルなわけだから――と言っては偏見が入っているかもしれないが――ノリは軽いし、
  飲み会なんかのイベントもないわけじゃない」

幼女「わたしは大学のアレコレには詳しくないが、まぁそういうものなんだろう」

男「そういうものなんだ。で、さっき話した友人の中には、喜ばしいことに女性も一定数いる」

幼女「ふふふ……。君が女性とマトモに関われているとは」

男「茶化さないでくれよ。……しかしだ。浮いた話は一向に出てこない」

幼女「なんだそれは? で、続きは」

男「終わりだ」

幼女「は?」



34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:47:44.19 ID:y3UiIwn50
幼女「終わりって……その女性たちと君がどんなふうに接しているかくらい、話してくれてもいいだろう」

男「いや、これがまた普通なんだよ。極めて普通の友人」

幼女「おやおや、君は実のところ全く変わっていないんじゃないか?
   『同じコミュニティに属する人間』から『同じ仲良しグループの中の一人』に一階層シフトしただけじゃないか」

男「人がそんな簡単に変われてたまるかよ。とにかく、俺の話せることはこれだけだ」

幼女「なんとまぁ……。予想通りの展開といえば、それだけなのだが、どうにも……」

男「おい待て。君は俺がこういう結末に落ち着くことを予想してたってのか?」

幼女「それはそうだろう。君の言うとおり、『人がそんな簡単に変われてたまるかよ』。
   実のところ、三ヶ月前からこうなることは予見済みだ」

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:54:20.65 ID:y3UiIwn50
男「……」

幼女「ああこら、落ち込むことはないよ。君には真に友人と呼べる人たちができたんだろう?
   それだけでも十分な収穫だ。さっきも言ったがね」

男「とはいえ、なぁ……。そもそも俺の目的は、恋愛相談を聞く側じゃなくてする側に回ることだっただろう」

幼女「それだって、まだわからないさ。三ヶ月だぞ?こんなに短い期間で恋人を作るというのは、君には過ぎた課題だったと思うがね」

男「返す言葉もありません」

幼女「まだまだ、君の未来はわからない。
   第一、恋というのは些細なきっかけから始まると、星の数ほど存在する物語が教えてくれているじゃないか」

幼女「先ほどの言葉は悪かった。君は確かに変わったよ」

男「そうかねぇ……」

幼女「あとはそう、『神のみぞ知る』ってヤツだろう」





36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:57:52.49 ID:y3UiIwn50
幼女「しかしまぁ、君は多少焦ったほうがいいかもしれないね」

男「なんでだ?」

幼女「あと一ヶ月もすれば……わかるだろう?12月24日……」

男「……クリスマス……」

幼女「そう、聖キリストの生誕祭。まぁ、それも多分に疑わしい話ではあるのだが」

男「そうだな……。だけど、モテない男たちでバカ騒ぎってのも、悪くないとは思わないか」

幼女「うむ。それも一興、だな。恋人と過ごすだけが充実したリアルじゃない」




37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:02:43.91 ID:bBQBfgiT0
男「ああ。リア充爆発しろ!ってな。それはそれで楽しそうだ」

幼女「……」

男「ん、どうした?」

幼女「いや、その『リア充』だが。これはなんら君に理のある話じゃないかもしれないが……」

男「なんだ、聞かせてくれよ」

幼女「ああ。この『リア充』という言葉だが、随分知名度が上がったとは思わないか?」

男「そうかもな。一昔前よりは耳にする機会が随分増えた」

幼女「私には『リア充』のハードルが下がっているように思えてならないんだ」

男「そうか?『恋人がいるヤツら』って意味だろう?」

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:07:43.45 ID:bBQBfgiT0
幼女「いや違う。この言葉はそんな生やさしい使い方をされるべきではない筈なんだ」

男「おいおい、たかが俗語ひとつ、そんなに深刻に受け止めなくても」

幼女「君は、この言葉がどういったコミュニティの中で生まれたんだと思う?」

男「……?そりゃ、非リアの中じゃないのか?」

幼女「ああもう!君はわからない奴だな!
   今問題にしている『リア充』という言葉を含むような答えではダメだろう!」

男「いやそんなこと言われても」

幼女「いいか?この言葉は本来、正真正銘の昏い人生を歩んでいる者のみが使用するべき表現のはずなんだ。
   君は『狭義のリア充』という言葉を知らないのか?」





39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:13:15.43 ID:bBQBfgiT0
幼女「狭義のリア充とはな、『友達が一人でもいる』人間のことだ。
   君もその範疇に入っているだろう?」

男「今はな……それがどうした」

幼女「世の人々には想像力が圧倒的に足りていないのだ!
   恋人はいないまでも、十分に楽しく日々を遅れているような人種!
   そういった手合いがこの言葉を使ってしまったなら、現実に絶望してやまない、
   ネットのみを生活圏とする人間はどうする!?」

男「落ち着けよ……」

幼女「かような恥知らずどもが、この世の悲劇を増加させるのだよ。
   今や奴らは語彙すら奪おうとしている!」



40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:20:30.11 ID:bBQBfgiT0
幼女「私は悲しい。自分の現実が充実していることに気づかず、軽率にかつての怨嗟を口にする者たちがいるということに」

男「……いったい君になにがあったんだ」(絶句)

幼女「いや、私の話をしているのではない。そもそも私は現実に絶望してなどいないし、狭義の非リアでもないのだから。
   だが、世にはこびる想像力の欠如した輩の無理解と不理解が許せないのだ」

男「まぁ言ってることはわからないでもない。人とは、あまり下には目を向けないモノだしな」

幼女「……君にしては随分と含蓄ありげな言葉を吐くじゃないか。そうとも。
   人は往々にして自分を悲観したがるものだ。三ヶ月前の君や少女の状態もそういったある種の謙虚さの結果でもある」

幼女「だが!自分を悲観するということは、自らより下に目を向けることを拒否することでもある。
   それが、ただただ私は悲しい」

男「泣くなよ……ほら、ハンカチ使うか?」

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:22:51.54 ID:bBQBfgiT0
幼女「すまない……柄にもなく熱くなってしまった」

男「珍しいこともあるもんだ。老獪な物言いに反して、歳相応なところもあるのかもな」

幼女「いいか?今後一切、キミは『リア充爆発しろ』なんて言うんじゃないぞ」

男「わかったよ。今のはまぁ、納得できる話だしな」

幼女「ならよし」





43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:25:59.59 ID:bBQBfgiT0
男「あ」

幼女「どうした」

男「三ヶ月前の別れ際に君が言ってたことを思い出したんだが」

幼女「!」

男「貰い手がどうのって話だけど」

幼女「わわわ、忘れていてもよかったんだぞ!」

男「いやいや。あれって本気?」

幼女「……本気だとしたらどうするんだね」

男「どうって……。俺は君のこと、嫌いじゃないからさ」

幼女「……」ムスッ

男「え、なんでそこで怒る」

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:28:03.82 ID:bBQBfgiT0
幼女「やり直し」

男「は?」

幼女「やり直しだと言っている」

男「だから何を」

幼女「さっきの君の言葉を、だ」

男「『嫌いじゃない』?」

幼女「それ」

男「えーと……なんか照れるな」

幼女「つべこべ言わずにさっさとやれ」

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:29:38.08 ID:bBQBfgiT0
男「しょうがないな……」

幼女「……」

男「俺、君のことは割りと好きだよ」

幼女「……59点。やり直し」

男「……」

幼女「……」

男「俺、君のこと好きだからさ」

幼女「!!」





48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:37:07.25 ID:bBQBfgiT0
幼女「ふ、ふふん?十以上も年の離れた子供相手に『好き』とは、き、君もよくよく物好きとみえる」

男「いや、君が言わせたんじゃない」

幼女「やかましい」

男「ああでも、好きなのはホントだよ。俺が今楽しく日々を過ごせているのは、間違いなく君の言葉のおかげだ」

幼女「ほ、ほう。続けたまえ」

男「だから、『貰い手』ってのは大げさだけど、これからも仲良くしてくれると嬉しいな、って」

幼女「はっはっは!そうだな!あまりやり過ぎるとの手に縄がかかってしまうからな!」

男「それは笑えない冗談だぞ……」

幼女「よし、決めた!ふふ、あまり君がモテないようなら私がもらってやる!」

男「ありがたきしあわせー」

幼女「どれ、では早速アレだな。『お近づきのしるし』として、君に何か奢ってもらうとしよう!」

男(随分嬉しそうだな……まぁ、こういうのも悪くないね)

幼女「大体だなぁ!私は『秋口にでも会おう』と言った筈だろう!もうすぐ冬だぞ」



50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:41:44.23 ID:bBQBfgiT0
男「それは……いろいろと忙しくてさ、ゴメン」

幼女「私がどんな気持ちでこの寂れた公園に日参していたと思っているんだ」

男「まさか、毎日来てたのか?」

幼女「……まぁ、いろいろと偉そうなことを言ってしまった手前、君の首尾を見届ける必要があったからな」

男「それは……すまないことをした。お詫びにアイスクリームは三段まで許そう」

幼女「わーい!って、私はそんな軽い女ではない!」

男「じゃあどうすれば」

幼女「ふふっ、まぁ、それはおいおい考えるさ」

男「お手柔らかに頼むよ」



52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:49:16.19 ID:bBQBfgiT0
幼女「おや、ほら、向こうを見たまえ」

男「うん?」

幼女「いつかの少女だ。もうすっかり打ち解けて、いい笑顔を見せているじゃないか」

男「本当だ。よかった、もう『一人の俺』もうまくやってるみたいだな」

幼女「ああ、『毎日』来ていたせいで彼らの経過はよく観察できたが、彼女もなかなか変わろうと努力していたみたいだよ」

男「毎日来させてしまって悪かったですね!」

幼女「申し訳ないと思っているなら行動で示してほしいものだがね」


53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:51:48.85 ID:bBQBfgiT0

男「それはそうと、君はあの輪に入ろうとは思わないのか?」

幼女「ハ、冗談じゃない。私があの輪に馴染めると君は思うのか?」

男「それは……難しいだろうな」

幼女「だろう。なに、私は君という絶好の玩具を手に入れたんだ。
   暇つぶしには事欠かないさ」

男「俺はオモチャ扱いですか……ああ!アレか?オトナのオモチャ的な」

幼女「なっ……!君は手に錠をかけられるのが好みなのか……」

男「!!」

幼女「冗談だよ。……しかし二度とは看過しない。この意味がわかるかい?お嬢さん?」

男「スイマセンでした」(お嬢さんってなんだ?)

幼女「さぁ! ええと、アイスクリームだったか?はやく行かないと店が閉まってしまう」

男「はいはい。では参りましょうか、姫?」

幼女「ははっ!よきにはからえ!」

END


63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:11:41.95 ID:bBQBfgiT0
さらに一ヶ月後

幼女「しかしアレだな。まさか本当に君がクリスマスを独り身で過ごすことになるとはな」

男「『まさか』?どうせ君はこうなることも予見していたんだろ?」

幼女「わかってきたじゃないか。まぁ、君はそういう星の下に生まれているんだよ、きっと」

男「生来の性格じゃあどうしようもないな……」




66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:18:34.92 ID:bBQBfgiT0
これ蛇足になるかも

幼女「またそういう後ろ向きなことを言う。君は変わったじゃないか。
   変えようがないなんて言うものではないよ」

男「そうだけど……スマートに女性と付き合う術を心得た俺って……『俺』って言えるのか?」

幼女「なんと……君はその不器用さにアイデンティティを見出しているのか!?」

男「それは語弊があるが……。なんかイメージできないんだよな……」

幼女「ふむ。まぁわからんでもない」

男「ほら、それに彼女なんてできたら、君に貰ってもらえなくなるだろ?」

幼女「……これはいよいよ手が後ろに回るかもしれないな」

男「いや別に手を出すことはしないが」




68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:23:32.04 ID:bBQBfgiT0
幼女「しかし本当に良かったのか? モテない同盟の友人から誘われていたんだろう?」

男「そんな同盟組んだ覚えはない」

幼女「男同士でバカ騒ぎも悪くないと言っていたじゃないか」

男「まぁそれもそうなんだが……ただ」

幼女「ただ?」

男「今の俺には君の方が大事に思えたんだ」

幼女「ぷっ……あっはっは!語尾に『(キリッ』を忘れているぞ」

男「笑わないでくれよ……。割りと本気なんだ」

幼女「もしもしケーサツですかー」

男「おーい!」

幼女「ふ、冗談だ」

男「だから笑えないって」

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:27:45.56 ID:bBQBfgiT0
幼女「そうかそうか、君も貰われてくれる気になったか」

男「なっ……たの、かな?」

幼女「!!」ズキューン

男「それより、君こそ大丈夫なのか?
   あまり遅くまで連れ回するつもりはないけど、お母さんが心配しない?」

幼女「まぁ、大丈夫だろう。母上は君のことを大層気に入っていたようだから」

男「そうか、それならいいんだが」





70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:34:01.89 ID:bBQBfgiT0
幼女「今日はどうするんだね?もちろん、デートプランは練ってあるのだろう?」

男「ああ、今日はサンタに会いに行こうと思ってな」

幼女「なに、サンタ?」(『デートプラン』に突っ込みが無い……ついに陥落したか、男よ)

男「ああ、駅前広場のイベントで、サンタがいるらしい。しかも大量に」

幼女「おいおい、サンタさんは今日忙しいんだぞ?邪魔をしてはいかんだろう」

男「やば……」

幼女「なんだ、その『いたいけな子供の夢を壊しちゃったかも』みたいな顔は」

男「いや……だって……え?」





72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:37:56.31 ID:bBQBfgiT0
幼女「私がサンタクロースなぞ信じていると思うか?前にクリスマスの起源に言及しただろう」

男「……よかった。いや、驚いたよ。
  君がサンタクロースを信じているなんて、それこそ俄には信じがたい」

幼女「ひどい言われようだな。これでも、歳相応に無邪気な部分はあると思っているのだが」

男「いやいや、ご冗談を」

幼女「まぁいい。ではサンタに会いにいこうではないか」

男「よし行こう」

幼女「待て」

男「うん?」

幼女「手がお留守だぞ」

73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:40:12.30 ID:bBQBfgiT0
男「これは失礼を、姫」

幼女「その含意のありげな微笑みをやめないか」

男「じゃ、こんどこそ行こうか」

幼女「大した距離ではないがな」







75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:45:11.46 ID:bBQBfgiT0
男「おや、この曲は」

幼女「知っているのか?」

男「"Failytale of NewYork"だね。邦題は『ニューヨークの夢』」

幼女「ほう。有名な曲なのか」

男「パンク・ロック界では珍しい、クリスマス・ソングだよ。
  あの界隈だといちばん有名なんじゃないかな。80年代くらいの曲だね」

幼女「君は音楽に関してはなかなかに博識だな。前に言っていた、なんだったか」

男「ドゥームメタル?」

幼女「そう、それだ。メタル以外にも詳しいようだし」


76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:50:18.59 ID:bBQBfgiT0
男「まぁさすがにメタルしか聴かないってことはないよ」

幼女「……しかし、この曲、随分現代的な音色とテンポではないか?
   とても80年代のクラシックとは思えないが」

男「あぁ、端的に言うとカバー版なんあ。2000年代に入る直前くらいかな?
  No Use For A Nameというポップ・パンクのバンドがカバーしてね。
  俺もこっちを最初に知ったんだけど」

幼女「その話、長くなりそうか?」

男「あっと、ゴメン」

幼女「いや音楽もいいのだが、目的地が見えてきたのでね」

男「おお、ホントだ。ってサンタ多ッ!」



79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:54:09.97 ID:bBQBfgiT0
幼女「これは……目を見張る数のサンタクロースだな。バイト代もバカにならんだろうに」

男「そこは気にしないほうがいいと思うけど」

幼女「で、彼らは何をしているんだ?」

男「さぁ……。実はあまり詳しいことを知らないんだ」

幼女「近づいてみればわかるだろう。ほら!行くぞ供よ!」

男「ちょっ!走ることないだろー!」

幼女「おとなしくついて来ないか!」

男「御ー意ーにー」

80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:58:36.67 ID:bBQBfgiT0
幼女「どうやら彼らはダンス・ユニットであるらしいな。それも大層大所帯の」

男「てことはバイト代の心配はないね」

幼女「……そうだな。しかし、この数で踊るのか」

男「お、そろそろ始まるみたいだよ」

幼女「これは来て正解だったな」

男「この規模のダンスなんてそう見られるものじゃないからね」

幼女「うむ」

男「ってこの曲は……! ははは、これは痛快だ!」

81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 02:03:25.24 ID:bBQBfgiT0
幼女「なんだ、また音楽の話題か。……何をそんなに笑っている?」

男「いや、随分と洒落が利いてると思ってさ」

幼女「わたしには全く理解できん洒落のようだが」

男「よし、解説をしよう」

幼女「任せた」

男「まず、この曲の題名は"Making Christmas"」

幼女「良いじゃないか。クリスマスらしい。
   ……ん?そのわりには明るさを感じない曲調のようだが」

Making Christmas / Rise Against


82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 02:10:50.91 ID:bBQBfgiT0
男「この曲はナイトメア・ビフォア・クリスマスという映画の劇中歌でね。
  君も見たことがあるんじゃないかな。
  ドクロを模したキャラクター、ジャック・スケリントンが主人公の人形劇だよ。」

幼女「ああ、あの『ジャック』か。しかしあれはクリスマスには似つかわしくない映画のようだが」

男「まぁ、主題は間違いなくクリスマスなんだけど、ちょっと変わり種ではあるかな。
  で、この曲が流れる場面ってのが、ハロウィーン・タウンの住人たちが、独自の解釈に基づいて、
  彼らの思う『クリスマス』を製作するところなんだ」

幼女「それは……笑えないことになりそうだな」

男「まぁね。実際、彼らのクリスマスは破綻する。
こんな曲をクリスマスイベントの冒頭に持ってくるなんて、主催サイドはどうかしているよ」

幼女「なんとまぁ……。だが、周りの人々はそれに気づいていないようだが」

男「これもカバー・バージョンだしね。さすがに原曲はちょっとおどろおどろしすぎると判断したんだろう」


83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 02:16:19.89 ID:bBQBfgiT0
幼女「だが、ダンスは素晴らしいな。選曲のミスマッチさを全くきにさせない」

男「ああ、確かに凄い。おっと、一曲目が終わったみたいだ」

幼女「次の曲は赤鼻のトナカイのトナカイか」

男「さっきのはブラックジョークか何かだったのかな」

幼女「通じる人間がそういるとは思えないがな」

男「さて、ここからが『楽しいクリスマス』ってトコかね」

幼女「せっかくだから最後まで見ていこうじゃないか。
   ちょうど座れるところもあるようだし」

男「それがいいね」



88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 02:35:24.74 ID:bBQBfgiT0
幼女「……寒い。なにか温かいものが飲みたいのだが……って。
    君が手に持っているソレはなんだ」

男「あぁさっき向こうで配ってたんだ。差し出されたからつい受け取っちゃって」

幼女「よし、もらおう」

男「あ、でもこれは」

幼女「う!何だこれは!?」

男「あー言わんこっちゃない」

幼女「……名状しがたい味だ。美味くは、ない」

男「これはグリューワインというドイツの飲み物だ」



90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 02:41:17.69 ID:bBQBfgiT0
男「ワインに香辛料などを加えて温めたものなんだけど……大丈夫か?」

幼女「らいじょうぶらとも」

男「大丈夫には見えないが」

幼女「私が、大丈夫と、言っているのだ」

男「あー、まぁなんだ。一口程度ならさして悪影響もないだろう」

幼女「わたしはさっき思ったんだけどなぁ」

男「えーと、何を?」

幼女「キミはじぶんの得意な話題になるとすこし饒舌になりすぎるきらいがある」

男「あー、それはたぶん間違いじゃないな」



93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 02:46:56.45 ID:bBQBfgiT0
幼女「だろう!そうなのだぁ!」

男「はいはい、そうですね。いつも分からない話ししてゴメンね」

幼女「ちがう!そうではない!それはいいのだ、これからもじゃんじゃん節度をわきまえてやってくれ」

男「また難しい注文を……」

幼女「おもうに、だ!そんなことだから彼女ができないんじゃないのかぁ!」

男「あー」

幼女「どうせ友人たちと過ごしているときもそうなのだろう。ならば女性と話が合おうはずもない」

幼女「きっとむこうは引いている!」

男「うっ」グサッ



97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 02:54:15.65 ID:bBQBfgiT0
幼女「ほほう……図星か?」

男(コイツ……酒乱か)

幼女「まぁ、わたしとしてはそのほうが気がラクでいいな!
   大好きなキミをとられる心配なぞしたくはない!」

男「!!」(酔いデレとは新しい)

幼女「はっはっは!どうかキミはずっとそのままでいてくれたまえ!」

男「あぁ……変わらないさ、きっと」

幼女「うおぉなんだ、眠い……!キミ、あとは……頼んだ……!」

男「どんな就寝だ」

幼女「Zzz...Zzz...」

98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 02:56:29.85 ID:bBQBfgiT0
男「本当に寝てしまった……。仕方ない、おぶって帰るか」

男「しかし、さっきのは割りと刺さったな……」

男「……世の女ってのはなんであんなにダンス・ミュージックが好きなんだ?
  ロックを聴けよ!ハードロックを!」

男「だがまぁ、別にいいか。この背中の重みを感じられなくなるくらいなら……」

END

99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 03:03:07.82 ID:bBQBfgiT0
おまけ

幼女 宅

男「御免下さーい」

幼女母「おお、キミか!娘の相手、大儀であったぞ」

男(この人、幼女がそのまま大きくなったような人なんだよな……キャラが一緒だ)

幼女母「寒かったろう。さ、中で温まっていきなさい」

男「いつもご厄介になってすいませんね。お邪魔します」

幼女母「なに、気にすることはない。キミには期待を寄せているからね」ニヤリ

男(怖い…)

幼女「Zzzz... ... Zzzz... ...」

END


111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 03:52:36.03 ID:bBQBfgiT0
結婚後

男「あ・な・た」(はぁと)

元・幼女「どうした、とうとう気が触れたか」

男「いつにも増してつれないな」

元・幼女「私が君をそんな甘々な呼称で呼ぶとでも?」

男「思ってません」

元・幼女「そういえば君は  コンではなかったのか?」

男「唐突に何ですか」

元・幼女「いやその、だな。君と出会った当初、私は十にも満たぬ少女だったろう?」

男「それはそうだが」

元・幼女「こないだ私も成人を迎えてしまった訳だが……いいのか?」

男「何が」

元・幼女「だからその……まだ君の目には、私は魅力的に映っているのかと……」

男「何だ、そんなことか」


112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 04:01:04.15 ID:bBQBfgiT0
元・幼女「なんだとはなんだ。わたしは真面目に訊いているんだぞ」

男「俺からしてみれば取るに足らないことだからな。
キミはいつだって個性的で、魅力的だったよ。
それは今も変わらない」

元・幼女「そ……そうか」

男「あのクリスマスの日から、俺は変わらないよ。
変わらないと、あの寝顔に誓ったのさ。
キミにしたってそうだ。
『人は簡単には変われない』ってのが、
何度否定されても信じ続ける俺の持論でね」

元・幼女「そうか!では末長く変わらずにいてくれたまえよ、
あ・な・た!」