2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/31(月) 23:34:37.44 ID:PGPcD4pO0
「みんな、杏奈のこと……嫌いになっちゃったのかな?」

シアターの控室。杏奈は一人でゲームをしていた。

いつもならだれかいっしょにやってくれる人がいるのに誕生日の今日に限って独りぼっち。

たまたま今日は仕事の人が多いのもあるけど残っている人も誰も遊んでくれない。

「シアターに来て……友達……たくさんできたと思ったのに」

思わずため息が漏れる。独りぼっちの誕生日なんて普段より悲しい日だ。

そんなところに誰かが来た。

「杏奈? 見ないと思ったらこんなところにいたのか元気ないけどどうかしたの」

「歩さん? 実は」




3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/31(月) 23:38:23.51 ID:PGPcD4pO0
「ロコ……。何してるの?」

「アンナ!? ドントカムヒアです! 今ロコはベリービジィなんです!」



「可奈……ゲームしよ? 今度は高難易度クエ……行こう?」

「はれっ? 杏奈ちゃん!? えっとその高難度~♪なんどやっても~むずかしい~♪ また今度~♪」



「莉緒さんお化粧……」

「えっと今はちょっとセクシーの研究が忙しいの。ごめんなさい」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/31(月) 23:43:26.26 ID:PGPcD4pO0
「まあみんな忙しいときはあるだろ。アタシなら何か付き合うぜ」

「じゃあ……いっしょにゲーム……してくれる?」

「ゲームかー。アタシあんまり得意じゃないんだよな」

「そう……」

やっぱり誰も遊んでくれないのかな。みんな無理に誘いすぎて嫌になっちゃったんだろうか。

意見の違いでロコと喧嘩したり、視野を広げるって名目で可奈がフラフラになるまでゲームをやらせたりしたし。

「あ、そうだダンスゲームとかどうだ。あれならアタシも得意だぜ」

「ん。やりたい……です」

「そういうことならゲームセンターに行こうぜ」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/31(月) 23:47:58.44 ID:PGPcD4pO0
「歩さん……すごい!」

昔は自分の身体を動かすゲームはそこまで得意じゃなかった。でも今はアイドルのレッスンのおかげで大分上達した。

けれど、歩さんは全然違った。杏奈が脱落した後もノーミスで何曲も踊り続けている。

「歩さん! この曲クリアすれば……新記録!」

「よっしいっちょあれ借りるよ。アタシも言ってみたかったんだ。応援ください!」

「応援するよ!」

「よっしゃ。ほらよっと」

タッタラッタラッター♪

新記録の更新を祝うファンファーレが鳴った。本当に一度も失敗することなくここまで到達してしまった。

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/31(月) 23:50:38.75 ID:PGPcD4pO0
「ま、こんなもんだ。ダンスならだれにも負けないよ」

ガッツポーズをする歩さん。こっちに向かってニコリとほほ笑む。

だけど

「あ、歩さん! 次……始まってる!」

「え、あ、うわあ」

次の曲の開始に気がついて慌てて戻ろうとした歩さんは転んでしまった。

慌てて立ち上がるもその少しの間でライフが0になってゲームオーバーになっていた。

「あっちゃあ。やりきったつもりになってたよ」

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/31(月) 23:53:11.22 ID:PGPcD4pO0
ゲームセンターを出て歩さんがおごってくれたジュースを飲みながら歩く。

「はあ」

ダンスゲームは楽しかったけれどその前のことを思い出すとどうにも気持ちが沈んでしまう。

「ん? まだ暗い顔してるけど。どうかしたか?」

「みんな杏奈のこと……嫌いになっちゃったのかなって」

「はあ?! そんなわけわけないだろ」

「だってみんな杏奈の誕生日なのにお祝いどころかろくに話してくれない。杏奈が好き勝手してるから……なのかも。歩さんも、迷惑……じゃない?」

「みんな杏奈のこと大好きだって。別にアタシだって無理に付き合ったわけじゃないさ。楽しかったよ」

そうは言ってくれているけど

「だって、みんな杏奈を……避けてた」

同じものを好きになった可奈、違っていても平気だったロコ、お姉さんのように気遣ってくれた莉緒さん。

当たり前に一緒にいてくれるからって甘えすぎてわがままにしていたのかもしれない。

「あー……。まあ、そろそろ大丈夫だよな。シアターに戻ろうぜ」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/31(月) 23:56:10.67 ID:PGPcD4pO0
「「「「ハッピーバースデー! 杏奈(アンナ)(ちゃん)!」」」」

「え? え?????」

入った部屋には一面のロコアートとカレーをはじめとしたたくさんのご馳走。


「アンナバースデーのスペシャルヴェニューです!」

「誕生日は~華麗に~♪ カレーで~お祝いさ~♪」

「デザートにはレモンのケーキも召し上がれ♪」

「私が味見を担当させていただきました。とてもよくできていますよ」

「みんな? え?」

「サプライズでカレー作りと会場準備をしたいから時間稼いでくれって言われててさ。いやあ慌てたよ」

歩さんが説明してくれる。そっか。だからみんな……

でもそうだとしたら歩さんには無理に付き合わせしまったのかな?

「でも楽しかったぜ。また遊ぼうよ。今度は出ていく必要もないからダンスゲーム以外も付き合うぜ!」

「歩……さん。はい!」

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/05/31(月) 23:58:10.38 ID:PGPcD4pO0

「杏奈ちゃんおめでとう! ゲームで特別なアイテム用意してあるからね!」

「杏奈! ハッピーバースデー!」

「ふおおおおおおお! 杏奈ちゃん! おめでとう! ございます!」

「亜利沙……うるさい」

お仕事を終えて戻ってきたみんなも祝ってくれる。

「杏奈! 野球ゲームしようぜ!」

「あー! 私もやる!」

「お? そのゲームなら私も負けへんで~」

こっちから誘わなくてもどんどんみんながやってくる。

「もう一回! 今のはちょっと操作間違えただけだから!」

「負け惜しみはやめなさい。完全な実力負けよ」

「望月さん……流石です!」

「イェーイ! 次も杏奈が勝つよ!」

独りぼっちのバースデーなんてもうないんだ。

『このシアターでみんなと一緒にいれたら最高!』

END


引用元: 【ミリマス】独りぼっちのバースデーなんて