1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/30(日) 22:29:21.77 ID:aZ+GOtHL0
春香☆Diary

9月30日(日)

今日は午前中営業、午後からレッスンを行った。
台風が近づいているってことで、早く終わらせるつもりだったんだけど……。
思いの外レッスンが上手くいってて、ここで終わらせるのは勿体無い!って私もトレーナーさんも思っていて。
すっかり長引いてしまいました。
家までの電車は運転見合わせ中で、計算したら地元の最終電車には間に合わない感じで。
今日は東京都内でお泊りすることになりました。

そのお泊りする先とは……。続きは、また後で!





3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/30(日) 22:36:21.68 ID:aZ+GOtHL0
「風強いですね」

私はプロデューサーさんの家に来ていた。
日記に書いた通り、家に帰ることが出来なくなってしまったので、プロデューサーさんの家に泊まることにした。
プロデューサーさんとしては、最終手段にしたかったらしいんだけども、東京都内に住んでいる千早ちゃんや、響ちゃんはロケで遠出している。
小鳥さんにも聞いたんだけど、断固拒否……何故だかは分からなかったけど……。

「そうだな……ほら、珈琲だ」

私の独り言を拾ったのは、キッチンで珈琲を淹れていたプロデューサーさん。
マグカップには私と美希、小鳥さんがデフォルメ化された絵が描かれていた。

「ミルクとかはどうする?」

「それじゃあ、ミルク2つでお砂糖は……無しで!」

絶賛ダイエット中。
レッスンしているから、多少のお肉は消費されるんだけども、やっぱり脂肪になるようなものは控えたいというのが乙女心。
少しでも見た目が良くなるようにアイドルは必死なのだ。

「さて、どうするか……」

プロデューサーさんが座りながらテレビをつけた。
テレビをつけると、先日収録を行った番組がOAされている。

「この前のやつだよな、結構前に収録したから懐かしいな」

「はい!この時も確か雨でしたよね」

他愛のない会話が繋がる。

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/30(日) 22:42:10.40 ID:aZ+GOtHL0
「そうだったな、今回ほどの豪雨じゃなかったけど、あの時はあの時で傘が無くて大変だったよな」

「それでやむ無くタクシー読んだんですけど、お金も無くて」

「結局一人分の傘代しかなかったんだよな……懐かしいな、もうあれ数ヶ月も前のことなんだな。昨日のように思えるよ」

「ふふ、そうですね!」

流れるOAを眺めながら、珈琲を飲む。
熱々で、心まで温まるような味。
だけど、やっぱりお砂糖が入ってなくて少し苦い。ミルク2つも入れたのに……。

「砂糖控えるのはいいけど、ミルク2つ入れたらあんまり変わらないと思うぞ?」

「え!?そ、そういえば……」

なんでもっと早く言ってくれなかったんですか!とは言えなかった。淹れてくれたのはプロデューサーさんだったから。
仕方なく、プロデューサーさんに勧められて砂糖を入れる。
飲むと、甘いカフェオレみたいで、とても美味しかった。

「春香は甘党だもんな」

「えへへ、そうですね。お菓子とか大好きですから!」

「あ、ごめん、お菓子出すの忘れてた」

そう言うと、プロデューサーさんは急いで立ち上がり、戸棚を開けた。
気を使わせてしまっただろうかと思ったけど、いつものプロデューサーさんなのであんまり気にしない用にした。
きっと指摘しても「大丈夫だよ、プロデューサーなんだから」の一点張り……そこが良い所なんだけども。

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/30(日) 22:51:36.52 ID:aZ+GOtHL0
プロデューサーさんが出してきたお菓子は、クッキーだった。
きっと貰い物であろう、いろんな種類のクッキーが入った缶。
チョコに、プレーン、苺ジャムみたいなのがのってるクッキーもある。

「貰ったんだけどな、これ。俺一人じゃ食べられなくて……本当は事務所に持って行こうと思ったんだけど、結構大きくてさ。春香は好きだろ?クッキー」

「はい!自分で作るのも好きなんですけど、こういう高そうなクッキー食べるのが夢だったっていうのもあるんですよー!」

「そうか!なら調度良かったな!」

一つつまみ上げて、食べる。
珈琲の苦味とクッキーの甘味がベストマッチして、美味しい!
正直に言うと、珈琲は苦手な部類だったけど、こうやってクッキーと食べれば美味しさが増すんだ、と一つ学習をした。
これから珈琲を飲む時はクッキーを食べようと決心。

……だけど、少なめで。

「クッキーも良いけど、晩御飯どうしようか」

「んー……あ、じゃあ冷蔵庫の中身見せて貰っていいですか?」

「別に良いけど、なんだ春香が作ってくれるのか?」

「ある材料で、パパッと作りますよ!」

ここは腕の見せ所!
普段お世話になっている、むしろ現在進行形でお世話になっているプロデューサーさんへの恩返し!
クッキーとかは作ってプレゼントはしているけど、こういう形でご飯を作ったことは一度も無かった。
家ではお菓子とかも作るけど、もちろんお母さんと一緒に料理をしたりもするので、それなりに自信はあった。

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/30(日) 22:59:43.67 ID:aZ+GOtHL0
冷蔵庫を開けると、あるものは。
豚肉、キュウリ、キャベツ、トマト、もやし、チーズ、ベーコン、卵、牛乳、あとビール。
戸棚を開けると、塩、醤油、塩コショウ、コンソメ、パン粉があった。
あんまり種類はないけども調味料が揃っている辺り、案外プロデューサーさんは自炊するタイプなんだなと思った。
十分すぎる材料だった。

「なるほど!何作ろうかな~……これだといろいろ作れちゃうかもです!」

「おお……春香は料理上手いもんな」

え?と声をあげてしまう。
プロデューサーさんにお菓子以外に料理を出したことはあっただろうか?

「ああ、ほら。ゲロゲロキッチンで、料理の腕をふるったじゃないか」

「そういえばそうでした!えへへ」

自分でもすっかり忘れていた。
あの頃はアイドル生活がきちんと始まった頃だった気がする……さっきのプロデューサーさんじゃないけど、ここ最近の数カ月は本当にあっという間だった。

再度何のレシピにするか考える。
キャベツは使いたい、お肉もあるので野菜炒めも考える。でも、野菜炒めって誰でも簡単に出来るし、プロデューサーさん自身も簡単に作ってしまえるほどだと思う。
普段食べないようなものを食べさせてあげたいって思ってしまう。
キャベツ、ベーコン……そこで……閃いた!

「ロールキャベツ作りましょう!」

「ほー……ロールキャベツかぁー作れるのか?」

「作れないものを宣言しません!」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/30(日) 23:07:23.32 ID:aZ+GOtHL0
「そうだよな……」

「じゃあ、今から作りますね。プロデューサーさんはビールでも飲んでリラックスしててください!」

「いやいや、俺も手伝うよ。ほら、どこに何があるか分からないだろ?」

「さーがーしーまーす!良いから座っててください!」

「わ、分かった……」

プロデューサーさんをキッチンから追い出す。
横目に、プロデューサーさんが座りながらテレビを見ているのが見えた。
なんだか新婚さん気分である。
そう考えると顔が熱くなってきた……わ、私何考えてるんだろう。
キャベツの葉っぱを取りながら顔真っ赤にする私……ダメダメ、美味しいもの作るには集中して料理しないと!

キャベツを茹でている間にパン粉と牛乳を混ぜて、ボールに挽肉を淹れて、しっかりと混ぜる。
本当は玉ねぎがあったら良かったんだけど、と思うが無いものは仕方ない。この豪雨の中、買いに行くのは危険だし、お店も開いてないと思う。
冷蔵庫の横にダンボールがあるのに気づいた。
あんまりそういうのを漁るのは良くないと分かっていても、もしかしたらと思って、中を見ると……。

「あ、玉ねぎ!それにじゃがいもも……そうだよね、常温保存出来るから。って、これは……仕送りかなぁ」

ダンボールにプロデューサーさんの家宛が書いてある伝票が貼ってあった。
送り主はプロデューサーさんと同じ苗字であることから、プロデューサーさんのお父さんと考えられる。
となると、この材料の豊富さは頷けた。
きっと親御さんからも、自炊しなさい!と言われているのかもしれない。言われているプロデューサーさんを想像したら、少し笑えてしまった。

何がともあれ、玉ねぎがあったのなら問題はない。
玉ねぎを急いで刻んで、挽肉と一緒に混ぜる。

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/30(日) 23:12:56.11 ID:aZ+GOtHL0
そういえばさっき冷蔵庫の中にチーズがあったことを思い出す。
多分おつまみに使っているチーズだけど、この挽肉の中に入れればとろけて、美味しくなるに違いないと思い、刻んでから一緒に入れる。
キャベツがしんなりしてきたので、芯を切って、二枚重ねにして丸めた挽肉を包み込む。
一段落ついた。

またプロデューサーさんの居るほうを見る。

~追いかけて♪逃げるフリをして♪

と歌が聞こえる。これは私のデビュー曲『太陽のジェラシー』だ……。
ついつられて私も歌う。
聞こえる歌声は、やっぱりまだまだ下手っぴな歌声だった。
今の私は成長しているのだろうかと少し不安になるけど、今日意気のあったトレーナーさんからして、きっと大丈夫!と自信をつける。

そうして、私はプロデューサーさんがライブ映像を見ていることに気づく。
どうしてライブ映像を?と思ったけど、机にノートを並べて、メモを取っている。
きっとライブ映像を見直して、次に活かせるようにしてるんだ、と推測。
……家でもお仕事してるんだなぁ。

手が止まってしまっていた。
水の入ったお鍋に包んだキャベツを詰め込んで、火をかける。
トマトを少し切って、水の中に入れる。
しばらく放置しておけば完成!
チーズ入りロールキャベツ!

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/30(日) 23:26:30.95 ID:aZ+GOtHL0
真っ白なお皿に盛ると完成した。
うん、カットすると良い感じ……とっても美味しそう!
ご飯は冷ご飯があったので、レンジで温めて、お椀に入れる。
私が使うお椀は普段プロデューサーさんが使っているお椀なので、少し大きい……。

「出来ましたー!」

高らかに宣言!
声を聞きつけたプロデューサーさんはペンを机の上に置いて、キッチンへやってきた。

「滅茶苦茶良い匂いだな!運ぶのは流石に手伝うよ」

「はーい、お願いします!」

机の上に置いて、箸を忘れていたことを思い出して箸を持ってくる。
……普段、プロデューサーさんが使っている箸。
って私はまた何を考えてるんだろう!

「いただきます!」

「いただきます」

ほぼ同時に言う。
けど、私はプロデューサーさんが食べ始めるのを待っていた。
プロデューサーさんは、真っ先にロールキャベツに手をつけて、箸に乗せ口へと運んだ。
暫く噛み締めて……。

「美味しいな……春香、すごいな……料理も出来るアイドルだな!」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/30(日) 23:35:33.49 ID:aZ+GOtHL0
その一言が聞きたくて作りました!とは恥ずかしくて言えなかったけど、確実に私はニヤニヤしていた。
やっぱり嬉しい。
物凄くお世話になっているプロデューサーさんに、喜んで貰えるのは。
オーディションで受かった時のことを思い出すくらいに。

「私も食べようかな」

私もロールキャベツに手を付ける。
食べると、以前お母さんが作ってくれたロールキャベツを思い出した。
レシピを教えてくれたのはお母さんだし、しっかりお母さんの味を受け継いだな、とちょっと感動。

二人でライブ映像を見ながら、ご飯を食べて、この時あった出来事を話した。

「この時はアイドル活動してまだ10周目くらいだったよな?」

「そうですね……右も左も分からない頃でした。オーディション前に審査員さんから意気込みを!って言われた時のことトラウマになってますよ!」

「はっは!でもあの時は初オーディションだったし仕方ないだろ?」

「そうですけど!でも『転ばないように頑張ります!』はないですよー!!結局オーディションの時転んだし……」

実際に転んでしまった時は審査員の人が少し笑っていたのも軽いトラウマ……。

「でも、春香最近はあんまり転ばないんだろ?」

「はい!と言っても、お仕事中はなんですけど。普段の生活はまだまだで……気を抜くとすぐ転ぶんです」

「じゃあ常にお仕事スイッチ入れとけば良いんじゃないか?」

「そんなことしたら潰れちゃいます~……」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/30(日) 23:49:05.46 ID:aZ+GOtHL0
暫くして、皿の上にもあったロールキャベツも綺麗になくなっていた。
お腹も膨れてて、もう食べられない……。

「ごちそうさま」

プロデューサーさんが言うと私もつられて「ごちそうさま」と言った。
私が後ろに手をついて座って、一息ついていると、プロデューサーさんは立ち上がって、片付けを初めた。

「あ、私がやります!」

最初から最後まで私がやりたかった。
プロデューサーさんへの恩返しなのだから……だけど、やっぱりいつものプロデューサーさんは。

「いいよいいよ、美味しいもの食べたから元気が有り余ってるんだ。だから消化しないとな!片付けくらいは俺がやるから、今度は春香がリラックスしててくれ」

……やっぱりプロデューサーさんはいつものプロデューサーさんでした。
こうなったプロデューサーさんは頑固で、どれだけ私がやると言っても聞きません、だから私は早々に諦めてリラックスすることにする。
キッチンに行って洗い物を始めたので、一人になった私はさっきプロデューサーさんが書いていたノートが気になったので、少しあけてみることにした。
プロデューサーさんにバレないように……。

見ると、そこには細かい点が書かれていた。
表情、ステップ、歌がどうか、会場の盛り上がり度……数秒単位で書かれていたノートを見て私は心臓がドキドキし始めた。
ここまでプロデューサーさんは勉強をして、今の私が居ると考えると……。
ついつい、長い間見てしまいそうになったけど、そろそろプロデューサーさんが洗い終わる頃だと思って、私はノートを元にあった場所に戻した。

予想通りプロデューサーさんは洗い物を終えて、戻ってきた。
外はまだ風が強く、家の中は軽く揺れていた。

「本格的に台風がやってきたな……」
 

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/30(日) 23:55:53.09 ID:aZ+GOtHL0
「そうですね……少し怖いかもしれないです」

「まぁまぁ、家も出来てそんなにたってないから、大丈夫だと思うぞ」

そういうことじゃなくて!なんでプロデューサーさんって時々疎いんだろう。
……怖いって言ったけど、実際はプロデューサーさんと一緒に居るから怖くなかったりして。

「もう0時前なのか……明日も早いし、そろそろお風呂入って寝ないとな」

お風呂……。
そういえば忘れていた。

「私着替えが無いんです……」

「あ……」

プロデューサーさんも忘れていたみたいだった。
今着ている服で寝るのは流石に抵抗がある。
レッスンでかいた汗が染み込んでいる気がするし、せめて干しておいて、明日の朝また着るという形にしたい。

「今から買いに行けないしなぁ……お店も閉まってるし、コンビニもなぁ、危ないしな……しょうがない、俺ので我慢出来るか?」

俺の……?
ぷ、プロデューサーさん、の……服?

「……」

「や、やっぱりダメだよな」

「だ、だ……だい……」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 00:01:58.32 ID:kZn+o92M0
だい。

「大丈夫、です……」

大丈夫。と言うか、むしろ……じゃなくて!
私そんな変 さんみたいなことばっかり考えてる……。

「そ、そうか。えっと……Tシャツで良い……か?」

「はい、とりあえず着てみますね」

「ああ、分かった。そっち脱衣所な」

ドアをあけて、脱衣所に入る。
隣にお風呂場があって、洗濯機もここにあった。
手にはプロデューサーさんのTシャツ……いや、もちろん着た後のじゃない為に、匂いとかついているわけもなく。
しっかり洗ってあるし、汚くないし……。

服を脱いで、Tシャツを着てみるととても大きかった。
首の所が凄いブカブカで、ずんだれそうになる……。

「うーん……」

仕方ないから、これを着て寝ることにするしかない……。
脱衣所を出ると、プロデューサーさんはまだ探していてくれてた。

「すまん、春香……ズボンはどうしても無理だ……でも、スカートなんだよな……」

プロデューサーさんは青ざめていた。
私はと言うと……そんなプロデューサーさんを見て笑っていたのでした。

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 00:04:28.39 ID:kZn+o92M0
「ふふ……」

「は、春香も笑ってないで……って、Tシャツ着たのか」

「はい!でも、やっぱりスカートはー……ですよね」

「だよな……俺ジーンズとスーツのズボンしか持ってないんだよ」

プロデューサーさんのファッションセンス……B……。
でも、男の人はそれが普通なのかな、と思ってしまう。

「うーん、どうしたものか……」

「あ、そうだ」

「ん?」

すぐそこにあったソレを指さした。

「これで良いです」








40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 00:10:03.04 ID:kZn+o92M0
脱衣所から出ると、やっぱりプロデューサーさんは直視してこなかった。
……仮にも私は女子高生な訳で。
女子高生を成人男性が泊める、となると凄い危ない感じもして、さらに……。

こんなYシャツ一枚になってしまった訳で、もっと危ない感じがして……。

「は、春香はそれでいいのか……」

「んーはい、大きいワンピースみたいな感じですね!大丈夫ですよ、胸元も隠れますから!」

さっきのTシャツは胸元があんまり隠れないのが嫌だった。
だけど、Yシャツはボタンなので、しっかり上まで止めれば大丈夫。
Yシャツで寝るのは初めてだけど、なんだかとっても楽しくなってきた。

「……そうだ、春香の服はどうした?干しておいたほうが良いよな」

「ありがとうございます!えっと……じゃあ、お風呂入ってこようかな」

もう時刻は0時を過ぎていた。

「そ、そうだよな!よし、入ってきてくれ。その間に干しておくよ」

……私じゃなかったら疑われる気がするけど、私はそれなりにというか、かなりプロデューサーさんを信用しているから、服を預けて、また脱衣所へと戻ってきた。
Yシャツを脱いで、下着も脱いで、お風呂場に入ると、湯船にはお湯がはってあり、湯気がたっていた。
プロデューサーさんは熱々のお風呂が好みらしい。

お風呂に入ると、今日の疲れがどっと抜けた。
レッスンでそれなりに疲れていたらしい……。
やっぱりアイドルとしてのお仕事というのは、とても大変だ。

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 00:17:59.30 ID:kZn+o92M0
あんまり長湯したら、プロデューサーさんが寝る時間が無くなってしまうと思って、10分くらいつかった後に、シャワーを浴びて出る。
シャンプーは髪質が合わないかもしれないから、流すだけにした。

一度脱いだ下着を履くのはとても気持ちが悪かったけど、仕方がない……。
ブラジャーをつけようと思ったけども……。

「あ、そうか……Tシャツ着て、Yシャツ着れば良いのかな……と言うか、ブラジャーつけたまま寝るのあんまりしたくないよー……」

私はノー  睡眠派。千早ちゃんはつける派で、美希もノー  派らしい。
そんな会話をこの前生っすかの後でしたのを思い出した。
男性の部屋で寝るのだから、つけないと、と思うが、相手はプロデューサーさんだし、良いかと思い、私はブラジャーを手に持って、脱衣所を出た。プロデューサーさんの見えないように鞄の中に入れる。

「早かったな、もうちょっとゆっくりつかってても良かったんだけどもな」

「えへへ、それだとプロデューサーさんの寝る時間が遅くなりますよ!」

「俺は良いんだけどもな!それじゃあ俺も入るから、まぁ座っててくれ。先に寝てても良いぞ」

「はーい!」

先に寝れる訳もなく……プロデューサーさんのベッドにダイブした。
ふと考える……。
もし、プロデューサーさんが私に発 して襲ってきたとしたら、とか、そんな想像で頭がいっぱいになる。
多分耳まで真っ赤だ……ダメだなぁ、私。
プロデューサーさんのベッドはふかふかで、気を抜いたら寝てしまいそうだった。
今日の疲れがお風呂で抜けたといっても、全部抜けたわけではなく、やはり残ってはいた。

眼をつぶれば夢のなかに行きそうな感じでうとうとと……。

…………

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 00:21:52.73 ID:kZn+o92M0
か……るか……はるか……春香!

「!?」

ビクッと身体が震えた。
ここはどこだろうと自分のまわりを見ると、目の前にプロデューサーさんが居た。

「ちゃんと寝ないとダメだ、ただでさえ薄着なんだし、風邪ひいたら大変だぞ」

シャンプーの匂いがするプロデューサーさんでした。
パジャマを着ていて、いつものシャキっとしたプロデューサーさんとは違い、新鮮だった。
眼をこすって、再度布団に入ろうとする。
そこで私は考えた、プロデューサーさんはどこで寝るのか、と。

「プロデューサーさん」

「ん?」

「プロデューサーさんはどこで寝るんですか?」

「床だけども」

「え……」

それはなんか違う気がした。
ここはプロデューサーさんの家だし、私がお世話になっているんだから、私が床で寝るべき。
でもやっぱり、プロデューサーさんはいつものプロデューサーさんで、断固反対。
しかし、これには私も断固反対。

言い争いになりました。

 

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 00:25:36.64 ID:kZn+o92M0
「プロデューサーさんがベッドで寝てください!!」

「いいんだよ、俺は!春香は明日もレッスン控えているんだから、しっかり休め!」

「寝れません!!プロデューサーさんを床で寝かせておきながら、私がベッドでなんて寝れません!!」

「良いんだよ!俺はプロデューサーだ!!」

「違います!違います!!それとこれは関係無いんです!」

ついつい感情的になってしまって……。

「……もう!!!プロデューサーさんもベッドで寝れば良いじゃないですか!!!!」

と口走ってしまった。

「……」

「……」

シーンとする。
プロデューサーさんの眼を見ると、眼が泳いでいた。
私はというとまた真っ赤になっていた。

「……春香、それは流石にマズイぞ」

「……」

別にまずくなんかない、と心から思う。
プロデューサーさんはかなり信用しているし………それに……。

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 00:28:56.50 ID:kZn+o92M0
それに……?
なんだろう。

「私、あっち向いてますから、大丈夫です」

と言って、私は壁際のほうに身体を向けた。
プロデューサーさんの声が後ろでする。

「あのなぁ、春香……」

「……ベッドで寝ないと、明日私レッスン行きません!」

本当は物凄く行きたいけど、交渉の為にプロデューサーさんを困らせてしまう。

「……良いのか?」

「え」

急に真面目な声になるプロデューサーさん。
ふと横目で見てみると、プロデューサーさんは頭をかきながら、下を向いていた。

「……良い、ですよ?プロデューサーさん、信じてますから」

「……分かった」

分かった、の一言で私の心臓ははち切れそうだった。
ドキドキしている。プロデューサーさんと同じベッドで横になる……。
さっきプロデューサーさんがお風呂に入っている間のことを思い出す。
余計に混乱する、ダメだ、ダメだ。
春香、ダメよ、貴女はまだ女子高生アイドル……。

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 00:32:48.43 ID:kZn+o92M0
またプロデューサーさんのほうを見る。
大きな背中が、そこにはあった。

「プロデューサーさん……」

「なんだ」

「ごめんなさい、困らせてしまって……」

「…………」

暫くの沈黙の後に。

「良いんだよ、俺は春香のプロデューサーなんだからな」

いつもの一言。
その時……ごー!っと風が強く吹く。
思わず身体が震える、音に驚いたのもあるが、何より揺れたからだ。

「……」

「……春香?」

「は、はい」

「家は簡単に飛ばされないから安心しろ」

だから、そうじゃなくて!!
もう本当にプロデューサーさんは!本当に!!本当に!!!

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 00:35:29.14 ID:kZn+o92M0
「……」

また暫く沈黙。音がするのは風の音だけ。
心臓はまだドキドキしている。
振り向けばプロデューサーさんが居る、けど……。
私はアイドルで、プロデューサーさんはプロデューサー……。





恋なんか、しちゃいけないことくらい。重々承知だった。







62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 00:42:23.00 ID:kZn+o92M0
でも、でも少しだけ、ちょっとで良いから。
手、だけでも……。

「プロデューサーさん、寝ちゃいました?」

「はは……春香も寝れないのか」

「はい……」

「そうか、風強くて五月蝿いもんな……」

それもあるけど、そうじゃなくて……。
でもこれがプロデューサーさんだし、だからこそ信用出来るのであって……。

私はプロデューサーさんの居るほうを向く。
ごそごそと音をなるべくたてないように、そーっと……。

「プロデューサーさん」

「ん?」

「手貸してください」

「……」

プロデューサーさんがあっちを向いてる状態で、手を貸すのは難しいし、腕をつってしまうから危ない。
となると……プロデューサーさんはこちらを向かないといけないわけで。
仕方なくプロデューサーは、仰向けになって、こっちを見ると驚いていた。

「おいおい、さっき壁際向くとか言ってただろ……」

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 00:45:56.79 ID:kZn+o92M0
「えへ、嘘ついちゃいました」

「まったく……ほら」

手を出す。
手を取る、ぎゅって握る。
プロデューサーさんの手は大きくて、暖かくて……安心出来て……。

やっぱり眠ってしまいそうになってしまった……安心したからかもだけど。
手を握りながら、プロデューサーさんを見る。
プロデューサーさんの横顔。また安心する。



ああ……。














やっぱり、私この人のこと好きなんだな……。

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 00:50:37.17 ID:kZn+o92M0
でも




恋は出来ない





さっきも思ったけど


そんなことは無理な訳で

私はアイドルだから……


でも、きっと……神様、は。

今夜だけ普通の女の子に戻してくれる、魔法を。


かけてくれるかもしれない?




「プロデューサーさん……」

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 00:54:22.32 ID:kZn+o92M0
「うおわ!?」

私はそっと、プロデューサーさんのほうへ行った。
プロデューサーさんは、びっくりしていたけど……私はドキドキしていた。
同じようにドキドキしているのかな。
分からない、けど……。
今は精一杯腕を抱きしめた。

「は、春香……あのな、その、な!?」

「ぷ、プロデューサーさん!こ、今夜だけは、私!私……アイドルじゃなくて……」

「春香……」

「普通の、女の子なんですよ、えへへ」

普通の女の子でも女子高生はダメなんて、そんなこと考えないでくださいね。

「……春香」

「プロデューサーさん」

ただただ腕を抱きしめているだけで幸せで。
安心出来て、側に居る人が大好きな人だし……。

すると、プロデューサーさんは静かにもう片方の手で私の頭を撫でてくれた。
少し擽ったかったけど……嬉しかった。

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 00:57:44.91 ID:kZn+o92M0
時計を見ると1時前。
もう寝ないといけないのに、ドキドキしていて眠れなかった。
きっと、胸から腕へ伝わっている……かもしれない。
このドキドキが……プロデューサーさんはドキドキしているのかな?

と、思ってプロデューサーさんの顔を見ると……。

少し焦っていました。

撫でていた手で、抱きしめようとしているように見えたけど、それを阻止しようとしていて……。
多分プロデューサーさんはプロデューサーさんの中で葛藤しているんだ……。

だから、私は、ドキドキしている私は止められなくて。

「プロデューサーさん……ぎゅってしてください」

と言ってしまったのでした。

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 01:05:27.26 ID:kZn+o92M0
「いいのか?」

「……してくれないと風が強くて、怖くて眠れません」

「……そうか、なら仕方ない」

そう言って、体制を整えて、抱きしめてくれました。
プロデューサーさんの胸の中は暖かくて、ホッとして……とっても良い匂いで……。
幸せすぎて、私はというと涙が出てしまったのです。

「プロデューサーさん……ぐすっ……」

「お、おおお!?!?春香!?な、泣いてるのか!?ごめん、抱き方悪かったか!?」

慌てふためくプロデューサーさんを見て、私は泣きながら笑った。

「うぅ、ぐすっ……だ、大丈夫でふよ!プロデューサーさんに抱きしめて、もらったら、えっと……な、なんだか、幸せで、その……よ、よく分からなくて……ぐすっ」

自分でも分からないのは事実だった。
私はプロデューサーさんにどうして欲しいのか、私はプロデューサーさんに何をしたいのか。
それがさっぱりで、頭が真っ白で……そう思っているとプロデューサーさんはまた強く抱きしめてくれて……。

「大丈夫だよ、春香。大丈夫だ」

大丈夫。きっと何の根拠も無いんだろうけど、それを聞くだけで安心して。
涙もいつの間にか止まって……。



私はいつの間にか眠ってしまいました……。

84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 01:12:13.78 ID:kZn+o92M0
翌朝。

起きると、まだプロデューサーさんは私を抱きしめていて。プロデューサーさんがまだ眠っているのを良いことに、私からぎゅーってしてしまったのです!
ついでに……

「ど、どうしようかなー……」

思い切って!乙女よ大志を抱け!!

「……っ!」

ちゅっと、頬にキスをしたのでした。



とりあえず、起き上がって。プロデューサーさんに掛け布団をかけて、私は朝ごはんを作ろうと思い、また冷蔵庫を開ける。
卵とベーコンで、目玉焼きを作ろう!って案が頭の中の会議で決まったので、フライパン取り出して、ベーコンをしいて、卵を割って、ベーコンの上にのせる。
徐々にじゅーという音になり、白身が白くなってきた所で、塩コショウを適量かけて、お皿にもる。
昨日のキャベツが少し残っていたので、葉っぱを食べやすいサイズに切って、マヨネーズをかけて、残っていたトマトものせる。

食パンがあったので、トースターに入れた所でプロデューサーさんが起きてくる。

「おはよう春香……って、朝ごはんか!」

「はい!目玉焼きとー、サラダとトーストです!あ、マーガリン出して貰っていいですか?」

「了解了解、ふぁぁあ……眠いな」

プロデューサーさんは朝が苦手っていうことは知っていた。
いつも朝来る時は寝ぐせがついたままだったからだ。

87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 01:16:19.65 ID:kZn+o92M0
「いただきます」

「いただきますっ」

またほぼ同時にいただきますをして、食べる。
プロデューサーさんはまだ半分寝ているみたいで、トーストをくわえながら、朝のニュースを眺めていた。
その様子を見ていると、なんだか本当に新婚さんみたいで……またドキドキしてしまうのでした。

『スクープ!人気アイドル○○が熱愛発覚!』

テレビのニュースから聞こえてくる。
それを聞いてプロデューサーさんは目覚めたらしく、昨日のことを思い出したようだった。

「は、春香、あの後なんもなかったよな……」

「え、は、はい。私いつ寝たか覚えてないんですけど……」

「春香もか!俺もなんだよ……なんか、あ、あれだな、あははは」

「ふふ、プロデューサーさん昨日はありがとうございました」

本当に嬉しかったから、心のそこから感謝をした。

「いいんだいいんだ、か、風も強かったからな!あははは……」

「プロデューサーさん?」

「こんな風に熱愛発覚したら大変だな……」

そんなことをプロデューサーさんが言うので、私はまた顔を真赤にしてしまったのです。

88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 01:21:58.53 ID:kZn+o92M0
朝食を終えて、片付けを二人でして。
借りていたYシャツも洗濯機に入れて、昨日の洋服に着替えて……。
私は、どうするか考えました。
すると、プロデューサーさんの電話が鳴って……。

「もしもし……ああ、小鳥さん。え?今日の午前中ですか?はい、今日は午後からレッスンですから……え?依頼が入った?本当ですか!!はい!春香は今一緒に居るんで!伝えておきます!ありがとうございます!」

「どうしたんですか?」

「春香!昨日の営業に、テレビ番組のお偉いさんが来てたらしくてな!今日の午前中打ち合わせに来ないかってことだ!!やったぞ!!しかも大手番組の監督だ!!」

「ほ、本当ですか!!や、やった……!」

なんだか、変な喜び方をしてしまった。
あまりに急だったからかもしれないけど。

「……あーでも昨日の服のままだよな」

「とりあえず洋服買って、着替えてからでも大丈夫ですか?」

「ああ、そうだな。そうしよう!それじゃあ、準備も出来たし、そろそろ行くか」

「はい!」

今日も始まる、私のアイドル生活。
昨日の夜は普通の女の子だったけど、一夜明ければまた……。
だけど……。

「プロデューサーさん、ちょっと目つぶっててください」

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 01:25:37.68 ID:kZn+o92M0
「え?こ、こうか?」

「あけちゃダメですよ!」

「あ、ああ……」

「……」

またプロデューサーさんの頬にキスをする。

「!?」

プロデューサーさんは私の唇の感触に驚いたみたいだった。
私は……

「プロデューサーさん!いってらっしゃいのキスですよ!いってらっしゃいのキス!」

と言って、靴を履いたのである。



これで、私の特別な一日は……おしまい。
またこんな日が来るかもしれないけど、その時はきちんと……気持ちを伝えられるほど、強くなっていたい。
だから、私はアイドルを続ける。プロデューサーさんと一緒に。





終わり。

95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/01(月) 01:28:26.15 ID:kZn+o92M0
春香☆Diary

9月30日(日) 天気:台風
今日は午前中営業、午後からレッスンを行った。
台風が近づいているってことで、早く終わらせるつもりだったんだけど……。
思いの外レッスンが上手くいってて、ここで終わらせるのは勿体無い!って私もトレーナーさんも思っていて。
すっかり長引いてしまいました。
家までの電車は運転見合わせ中で、計算したら地元の最終電車には間に合わない感じで。
今日は東京都内でお泊りすることになりました。

そのお泊りする先とは、なんとプロデューサーさんの家!
プロデューサーさんの家で、ロールキャベツ作って食べて貰ったんだ。
美味しいって言ってくれた!凄い嬉しくって……また作ってあげたいなって思った。
その後は、お風呂入ったり、洋服問題が起きたりしたけど……ぜーったいナイショなんだけど、一緒にプロデューサーさんとベッドに寝て、ぎゅってしてもらったのが凄い幸せだった。
こんな日記誰かに見られたら大変なことになるけど、今日って日を絶対に忘れたくないから書いちゃう!えへへ……

また台風が来たら、レッスン長引かせようかな?とか思っちゃいました!

終わり!

引用元: 春香「電車止まっちゃった……もう帰れない」