2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 01:28:50.43 ID:XmUIXuQ10
4月。

始まりの季節と言われるこの月が、私は嫌いだ。

私は一人、ライブ会場へと向かっていた。

ふと空を見上げると、どんよりとした雲が広がっていた。

律「雨・・・降りそうだな・・・」

会場に行く前に、傘を買ったほうがいいだろうか。

律「・・・いいや、荷物になるし、めんどくさい」

私は少し歩みを早めて、会場へと急いだ。




4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 01:30:37.28 ID:XmUIXuQ10
律「梓のやつ・・・立派になったな・・・」

ライブ会場に着き、ポスターを見て、私は独り言をつぶやいた。

律「放課後ティーパーティーねぇ・・・変な名前だこと」

名前の由来をよく知ってる私には、どうも馴染めないバンド名。

それが、梓がリーダーを務めるバンドだ。

梓は今、音楽でメシを食っている。

ライブを何度も開催しているところから見ると、そこそこ人気のあるバンドのようだ。

私はもう、放課後ティーパーティーのライブの常連だ。

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 01:31:52.34 ID:XmUIXuQ10
梓には悪いが、別に放課後ティーパーティーの音楽が特別好きってわけじゃない。

ただ、何となく暇で、梓が組んでるバンドだからって理由で何度もライブに足を運んでいる。

律「えっと・・・私の席は・・・ってまた最前列かよ・・・」

梓からの好意で、いつも最前列のチケットを貰っている。

そんなに私に見て欲しいのか。

でも、歌っているときに梓が私のほうをこっそり見るのは、嬉しい気もする。

律「複雑だな・・・」

セッティングされた機材を間近で見ながら、私は開演を待った。

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 01:32:48.52 ID:XmUIXuQ10
・・・・・・
・・・・
・・


梓「今日はありがとー!また会おー!!」

ワアァァァァ・・・

なんだかんだでライブは楽しい。

楽しい時間はあっという間に過ぎて、ライブは終演時間を迎えた。

会場の熱気が冷めやらぬ中、みんな思い思いに感想を口にしながら帰る支度を始める。

律「ふぅ・・・さて、今日も行くか」

そんな中私は、いつものように楽屋へと向かう。

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 01:34:20.51 ID:XmUIXuQ10
コンコン

梓「はーい」

ガチャ

律「おーっす、みんなお疲れー」

メンバー「律さん、こんにちわー」

梓「律先輩、お疲れ様です」

もう何度も楽屋を訪問していたから、メンバーのみんなとも顔見知りだ。

律「ほれ、これ差し入れ」

梓「ありがとうございます。今日も律先輩来てるの知ってましたよ。ステージから見えました」

律「だから私は後ろのほうでいいって言ってるだろ。いつも最前列ばっかりよこしやがって」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 01:36:48.53 ID:XmUIXuQ10
梓と他愛もない雑談をする。

この時間が、私は好きだ。

梓「でも、今日3曲目でこっそり失敗しちゃいましたからねー」

律「あー、あそこな。私は気づいたぜー。あれはドラムが焦ったせいだな」

梓「仕方ないじゃないですか。ウチのドラマーは元々キーボードだったのを代わってもらったんです。ドラムはいつも売り手市場なんですよ」

律「ははは、そうか」

私はまるで他人事のように返事をした。

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 01:38:46.78 ID:XmUIXuQ10
律「じゃー私はそろそろ帰るわ。邪魔したな」

梓「いえいえ、いつもありがとうございます。また来てください」

メンバー「律さん、お疲れ様です」

律「おうお疲れ、じゃーな」

私は別れの挨拶を済ませると、足早に外へと向かった。

律「う・・・雨か・・・」

外は雨が降り出していた。傘がないと駄目そうだ。

律「・・・買うか」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 01:42:06.71 ID:XmUIXuQ10
高校時代に比べると、梓は変わった。多分、良い方向で。

変わってないのは、私だけなのかもしれない。


大学を卒業後、それぞれがそれぞれの進路を歩みだした。

澪は今、大手企業の営業として働いている。

あの澪が営業なんて、昔から考えると未だに信じられない。

でも、大学に入ってから澪は、恥ずかしがり屋を克服し、積極的に頑張るようになった。

大学に入ってからの澪の変化は、記憶に新しい。

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 01:44:36.29 ID:XmUIXuQ10
ムギは社長である父親の秘書を務めている。

高校時代はどこか抜けていてぽわぽわした印象のムギだったが、きっちり仕事をこなしているようだ。

いずれは父親の後を継ぐなんて話も小耳に挟んだ。

あのムギが社長ねぇ・・・。

昔のムギを知っている私は、ムギが社長としてキビキビ働く姿が想像できなかった。

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 01:46:27.82 ID:XmUIXuQ10
私の横を、相合傘のカップルが通り過ぎた。

私はふとそのカップルを眺めて、唯のことを思った。

律「・・・唯・・・」

一番変わったのは、唯かもしれない。

唯は大学に入ってから、天然が若干落ち着いた気がした。

でもやっぱり唯は唯で、いつまでも高校時代のノリでいると思っていた。


でも・・・そんな唯が、もうすぐ結婚するんだ。

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 01:49:01.10 ID:XmUIXuQ10
相手はどういう経緯かは知らないが、大学時代に知り合った男だ。

私も何度か会ったことがあるが、一目見て、お似合いだと思った。

変なチャラ男ならぶん殴ってやろうと思っていたが、

そんなことはない、誠実をそのまま人にしたようなイメージだった。

この人なら、唯を支えていける、唯と幸せになってくれる、と思える人だった。


律「唯が・・・結婚かぁ・・・」

私たちの中で、一番結婚とかそういうのとは縁遠そうなイメージだったんだがなぁ。

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 01:51:06.47 ID:XmUIXuQ10
時間が経てば、みんな変わっていく。

唯だって、澪だって、ムギだって、梓だって、大人になっていく。

私も・・・大人になったのだろうか。

自分じゃよく分からない。

律「あー、くそっ」

楽しいライブの帰りに、何でこんな気分になんなきゃいけないんだ。

律「カラオケでも行こう。一人でもいいや」

気を紛らわすために、私は一人カラオケへと向かった。

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 01:54:21.39 ID:XmUIXuQ10
家に帰り携帯を開くと、澪からメールが来ていた。

『唯の結婚式のことで、いろいろ話し合わないか?日にちはいつ空いて――』

唯の結婚式は、二ヵ月後の6月に開かれることになっていた。

私たち元けいおん部は、光栄にも友人代表としてお呼ばれされている。

呼ばれたからには、何かをしないといけない。

私は澪に『いつでもいいよ』と軽く返事をし、バスルームへ向かった。

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 01:58:13.33 ID:XmUIXuQ10
数日後


久しぶりにみんなが集まった。

とは言っても、唯を除いた4人だが。

挨拶も済ませ、近くの喫茶店で会議をすることになった。

澪「さっそくだけど、友人代表として、どんなことをしよう・・・」

律「んー、ありきたりにビデオレターとかか?」

紬「学園祭のライブの映像を流すのも、盛り上がりそうね」

律「お、いいなそれ。私たちもちょっと恥ずかしいけど」


梓「・・・あの、それだったら・・・・・・直に演奏しちゃいませんか・・・?」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:01:51.04 ID:XmUIXuQ10
おーおー、さすがミュージシャン、考えることが違うな。

澪「え、直に・・・?私もう長いことベース触ってないかも・・・」

直に演奏か・・・。

紬「うーん、出来るかしら・・・」

懐かしいな・・・。みんなと合わせるあの感じ・・・。

梓「やっぱり・・・難しいですよね。楽器運ぶのも大変だし」

律「・・・・・・・・・いや、良いんじゃ・・・ないか・・・?」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:03:42.95 ID:XmUIXuQ10
律「・・・やろうぜ、演奏。私たちで。私たち、けいおん部だろ?」

澪「でも・・・」

律「大丈夫。まだ二ヶ月もあるんだ。休日みんなで練習してさ、唯の奴を驚かそうぜ!」

梓「律先輩・・・」

澪「・・・そうだな、やってみるか。私たち、けいおん部だしな!」

紬「これからしばらくは、休日返上ね」

こうして私たちは臨時で再びバンドを組むことになった。

なんだか無性に、嬉しかった。

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:06:17.84 ID:XmUIXuQ10
夜、梓からメールが来た。

『律先輩、今日はありがとうございます。私、みんなとの演奏、楽しみにしてますよ』

律儀な奴だ。私は何も考えずに梓の言うことに賛同しただけなのに。

澪もムギも梓も、自分の仕事の合間を縫って練習することになるんだから、大変だろう。

楽器店で気楽にバイトするフリーターの私とは立場が違う。

そういや、最近澪は私の職について、あまり文句を言わなくなったな・・・。

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:08:50.08 ID:XmUIXuQ10
私は大学時代に就活に失敗したわけじゃない。

就活をしなかったのだ。

澪は何度も私に就活をしろって口うるさく言ってきた。

それでも私は、動く気になれなかった。

社会に出て、大人になるのが怖かったのかもしれない。

大人になって、夢を失うのが怖かったのかもしれない。

結局そのまま、私は、変わることを拒否した。

律「澪の奴も・・・私に構うほど余裕もなくなってきてるのかな・・・」

身近な人が、大人になっていくのは、寂しいと思った。

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:12:03.30 ID:XmUIXuQ10
数日後


休日、私たちは再び集まっていた。

もちろん練習をするためだ。

貸しスタジオにそれぞれの楽器を持ち込み、セッティングをする。

律「ははっ、何だか久しぶりだな」

澪「そうだな、懐かしいな」

紬「楽しかったわね、高校時代」

梓「そうですね・・・」

律「・・・っえーい!感傷に浸るのはまだ早い!みんなの息が合ってからだ!」

澪「それもそうだ。よしっ、やるか」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:14:21.51 ID:XmUIXuQ10
・・・・・・
・・・・
・・


梓「ちょっと休憩しましょうか」

澪「そうだな、しかし案外覚えてるもんだなぁ」

紬「自然と指が動いちゃうわ」

律「にしても疲れたー、やっぱ体力落ちてるなー」

久々に演奏したにもかかわらず、私たちは比較的まともに演奏することが出来た。

まだ所々つたないが、基本的なことは体が覚えていた。


それでも、やっぱり私はどこか違和感を拭えなかった。

それは、リードギターが唯ではなく梓だからだろうか。

そんなことはわからない。

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:17:56.64 ID:XmUIXuQ10
梓「律先輩、まだドラム出来るじゃないですか」

律「ん?そうだなー、しょせん子供のお遊びレベルだけどな」

私は梓とは違う。

梓のような、大人の本気の演奏は出来ていない。

澪「梓はやっぱりダントツで上手いな。さすがプロってとこだな」

梓「えっ、そ、そんなことないですよ」

お、動揺した。

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:20:07.02 ID:XmUIXuQ10
律「あの放課後ティーパーティーのリーダーとセッション出来るなんて、私たちは幸せですなぁ」

梓「ちょっと、律先輩まで!」

紬「うふふっ、みんな変わってないのね」

いや、変わったよ。みんな成長した。

未だに変わることを怖がっているのは、私だけだ。

だから私は、昔みたいに梓をいじったりすることに、酷く安堵感を覚えた。

それでも、それとは別の、この違和感が消えることは、なかった。

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:23:44.98 ID:XmUIXuQ10
・・・・・・
・・・・
・・


澪「今日は楽しかったよ。じゃあまたな」

紬「みんな、またね」

律「おう、またな」

梓「お疲れ様です。では」

それぞれがそれぞれの帰路につく。

私は自分の車に楽器を積み込むと、エンジンキーを回した。

今日の練習の感じだと、きっと本番までには十分間に合うだろう。

一時は本当に出来るのか疑問にも思ったが、杞憂で済みそうだ。

本番で唯はどんな表情を見せるだろうか。

私たちで、唯の結婚式を、絶対に成功させてやろう。

そんなことを考えながら、車を走らせた。

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:26:51.64 ID:XmUIXuQ10
それから月日は流れ、結婚式まで一ヶ月を切った。

澪「今日もいい感じだな」

紬「ほぼ完成って感じね♪」

律「まだ一ヶ月近くあるのに、人間やれば出来るもんだな」

梓「皆さん、すごいです。まるで高校時代に戻ったみたいです」

私の中の違和感は相変わらず消えていない。

でも、演奏はもう人前に出ても恥ずかしくないレベルまで達していた。

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:28:38.71 ID:XmUIXuQ10
梓「でも早めにこのレベルまで到達できて良かったです。私、来週からしばらくここを離れるので・・・」

律「そっか、ライブの日程が入ってるんだっけ」

梓「はい。でも、これなら結婚式には十分間に合う出来ですね」

澪「ああ、でも練習しないとすぐ下手になっちゃいそうだけどな」

紬「そうね。梓ちゃんがいない間、私たちだけでもっと練習しないとね」

たった一度きりの本番。ミスは許されない。

私たちはもっともっと、一つにならないといけない。

かつて、体育館のステージで、そうなったように。

律「よし、もういっちょやってくか!まだ時間はあるしな!」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:31:52.12 ID:XmUIXuQ10
・・・・・・
・・・・
・・


律「ふぅ・・・」

家に帰り一息つく。

練習を始めた頃は、家に帰るとヘトヘトでぶっ倒れてたのに、今ではそこまで疲れはない。

この一ヶ月はあっという間だった。

みんながまた集まって、演奏を始めて、噛み合ってきて。

大人になっても、またみんなと息を合わせることが出来ると分かって、嬉しかった。

律「けいおん部・・・か・・・」

私たちの根底にあるのは、けいおん部のメンバーだということ。

大人になっても、その事実は変わらない。

それでも私は、一人だけ置いていかれている気がしているのも、また事実だった。

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:34:52.47 ID:XmUIXuQ10
数週間後


私はバイト先の楽器店で、商品整理をしていた。

律「お、これは・・・」

ふと、ドラマー用のツインペダルを見つけた。

律「いいなぁ、これ・・・値段は・・・・・・・・・げっ、高ぇ・・・」

とてもじゃないが、私に手が出せる値段じゃなかった。

律「・・・どちらにしろ、もう必要ない物か・・・」

唯の結婚式まであと一週間。

それが終われば、私がドラムセットを必要とすることはない。

なら私は、何故これを欲しいと思ってしまったのだろう。

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:37:52.00 ID:XmUIXuQ10
店長「田井中さん、それ終わったら、CD売場とポップ作っといて」

律「あ、はい。分かりました」

相変わらず人使いが荒い。

私はさっさと商品を片付け、売場作成へと取り掛かった。


律「えーっと、まずは・・・」

しかし、商品ポップまでバイトが勝手に作っていいのか・・・?

・・・適当に有名バンドのでも作っておくか。

陳列する商品を眺めると、ふと目に留まるCDがあった。

律「これは・・・」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:40:35.79 ID:XmUIXuQ10
律「放課後ティーパーティーのシングル・・・」

それは、梓たちのバンドの新曲だった。

律「ふぅん・・・」

今までも、店で放課後ティーパーティーのCDを見つけたことは何度かあった。

でも、私がここまで意識したのは初めてだった。

律「よしっ、じゃあこう並べて・・・」

身内だから、少しだけえこひいき。

私は梓たちのCDを、ジャケットが見えるように面陳列にした。

律「ポップも作らないとな・・・・・・・・・・・・これでよしっと」


『ただ今人気急上昇中!当店お勧めです!!』


律「・・・店長に怒られなきゃいいけど」

しかし、怒られてもポップを外すつもりは毛頭無かった。

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:43:19.85 ID:XmUIXuQ10
数日後


ジャガジャーン

律「よしっ!完璧だ!」

いよいよ明日は唯の結婚式。

今日は、最後の練習の日だった。

紬「明日が本番ね・・・」

澪「これだけ合ってるんだ、きっと成功するさ」

梓「そうですね。明日は絶対良い式にしましょう」

相変わらず私の中の違和感は消えてない。

しかし、いくら練習しても、この違和感は消えるものではないことは、なんとなく分かっていた。

律「・・・じゃあ明日に備えて、今日は早めに解散にするか」

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:45:15.97 ID:XmUIXuQ10
・・・・・・
・・・・
・・


いつものように車に荷物を積んでいると、後ろから声をかけられた。

澪「律、ちょっと・・・」

律「ん?なんだ澪か。どうした?」

澪「いや・・・まぁ・・・明日、いよいよだな」

律「ん、あぁ」

澪「・・・唯が結婚なんてさ、可笑しいよな。私たちの中で最初はてっきりムギあたりだと・・・」


律「・・・何か、言いたいことあるんだろ。遠慮せずに言えよ」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:46:52.20 ID:XmUIXuQ10
澪「・・・」

澪とは長い付き合いだ。澪の考えてることくらい分かる。

律「・・・居酒屋でも行くか?明日もあるから軽くな」

澪「・・・うん」

律「あー、いったん車置いてきてからな。結婚式前日に捕まるのは御免だよ」

私は澪を乗せ、いつもの駐車場へと車を走らせた。

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:49:36.88 ID:XmUIXuQ10
・・・・・・
・・・・
・・


律「じゃ、唯の結婚と、明日の成功を祈って、乾杯」

カチン

二人でジョッキを軽くぶつける。

律「・・・・・・・・・っはぁー、こうして澪と飲むのも久しぶりだなぁ」

澪「・・・そうだな、最近は忙しい上に、練習もあったからな」

律「どうせ飲むなら、ムギと梓も誘えば良かったかなぁ」

澪「いや、いいよ。明日はめでたい席なんだし。それに・・・」

そうだった。元はといえば澪が話があるからこうして居酒屋にやってきたんだったっけ。

律「そかそか。あ、すいません、ビールもう一杯」

澪「おいおい、ペース早いな。明日もあるんだから控えめにしろよ」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 02:52:34.94 ID:XmUIXuQ10
律「はいはい、んで話ってなんだ?良い感じに酒も回ってきただろ?」

澪「回ってるのは律だけだけどな・・・まあいいや」

澪は真剣な口調で、こう切り出した。


澪「律・・・お前さ、唯が結婚するの・・・嬉しく・・・ないのか?」

律「えっ・・・?」

店員「こちらビールになりまーす」

注文したビールが来たが、私にそんなことを気にしている余裕はなかった。

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:00:09.74 ID:XmUIXuQ10
澪「いや、少し言い方が悪かったな。・・・唯が結婚して、寂しいんじゃ・・・ないのか?」

澪とは長い付き合いだ。私の考えてることくらい分かるのかもしれない。

律「・・・そうかもな」

澪「律・・・人は、誰だって変わるんだ。唯だっていつまでも昔のままじゃない」

律「・・・そう・・・かもな」

澪「律も・・・変わったんだぞ」

律「澪・・・」

そうか、私も変わったのか・・・。

澪は、変わってしまった私にも、いつもの説教をしてくれるのか。

みんなは、変わってしまった私と、仲間でいてくれてたのか。

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:02:52.29 ID:XmUIXuQ10
律「・・・・・・ふふっ、ははははっ、あははははははは!」

澪「うわっ、律、どうした?」

律「はははっ、いや、嬉しくてさ、あはははは!」

澪「嬉しい?・・・酔っ払ってるのか?」

律「はははっ、そうかもな!ははは!」

久しぶりに澪の説教を食らって、私は清々しい気持ちになった。

律「なぁ澪、私たち、大人になった今でも、親友だよな!」

澪「えっ・・・ま、まぁ・・・そう・・・だな・・・」

律「何照れてんだよ!私たちも、ムギも、梓も、唯も、みーんな親友だ!」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:05:13.50 ID:XmUIXuQ10
澪「あ、あぁ・・・そうだ・・・親友・・・だよ」

律「私たちは、どんなに変わっても、いつまでも親友だ!」

律「その親友の結婚式なんだ!嬉しくないわけないだろ!」

澪「律・・・」

律「明日は最高の式にしてやる!最高の笑顔で唯を祝福してやるよ!」

澪「そうか・・・その言葉が聞けて、良かったよ。安心した」

律「澪、心配かけてすまんな。いつも、ありがとうな」

結婚式前日、久々に、美味い酒が飲めた。

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:08:33.42 ID:XmUIXuQ10
・・・・・・
・・・・
・・


久しぶりにけいおん部の5人が集まって、お茶をしていた。

そこで、唯はこう切り出した。

唯『あのね、実はね、私・・・・・・け、け、結婚・・・する・・・んだ』

律『・・・っ!?』

ケッコン?

ケッコンって、あの、殺人現場とかにある、ってそれは血痕か、なんでやねん。

唯が、結婚?

相手は?

付き合ってるとかいう、アイツか?

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:10:57.31 ID:XmUIXuQ10
いや、お似合い、だけど、唯が、結婚なんて。

卒業しても、いつものノリで、馬鹿やってた唯が、結婚。

あわててコーヒーを飲もうとするが、手が震えて上手く飲めない。

そんな私の様子を意に介さず、みんなは祝福の言葉を並べた。

澪『唯、おめでとう!け、結婚かぁ』

紬『唯ちゃん!おめでとう!羨ましいわぁ』

梓『お、おめでとうございます唯先輩!!』

なんとかコーヒーを飲み、落ち着いた気がした私も、遅れて祝福した。

律『・・・お、お、おめで・・・と・・・ゆ、唯』

唯『えへへ、みんな、ありがとね』

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:13:40.76 ID:XmUIXuQ10
唯が結婚するのが嫌だったわけじゃない。そんなわけない。

親友が幸せになるんだ。嬉しいに決まってる。

でも私は、あの時笑うことが出来なかった。

あの唯が、唯までもが、昔とは変わってしまったことが、ショックだったのかもしれない。


唯、ごめんな、あの時は。

あの時、唯に言えなかった言葉。

結婚式で言う前に、ここで練習させてくれ。



『唯・・・幸せになれよ・・・』




59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:15:36.41 ID:XmUIXuQ10
・・・・・・
・・・・
・・


ピピピピピピピピ

律「うぅ~ん・・・」

目覚まし時計のアラームを止め、時間を確認する。

何で私はこんな朝早く・・・ってそうだ、今日は唯の結婚式じゃないか。

何だか夢を見ていた気がするが、よく思い出せない。

律「・・・よしっ、今日はやるぞー!」

頭を現実に切り替え、唯の結婚式を、絶対に成功させてやると心に決めた。

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:17:14.68 ID:XmUIXuQ10
会場に着くと、懐かしい顔が見えた。

律「もしかして・・・和!?久しぶりだなー」

和「あら、律じゃない。久しぶり。それが今日使う機材?」

律「ああそうだ。楽しみにしてろよー」

和「そう。確か貴方たちの演奏は・・・この時間だったわね。頑張ってね」

和は披露宴の台本を開きながら、そう答えた。

律「あれ、何で和が台本を?」

和「だって私、司会だもの。大丈夫よ、唯達には何をするかは秘密にしておいてあるから」

律「おぉ、そうか。サンキュー。じゃあ和も頑張ってな」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:20:15.87 ID:XmUIXuQ10
披露宴の受付を済まし、控え室へと入る。

律「おーっす、みんなー」

梓「あっ、律先輩、ドレスだ・・・」

紬「あ、りっちゃん、そのドレス、すごく似合ってるわ~」

いや、自分でも変だと思ってるからやめて・・・

私はとっさに話題を変えることにした。

律「・・・みんなはもう唯に挨拶すませたのか?」

澪「ああ。ほら、あそこにいるよ。ちゃんとご両親にも挨拶しろよ」

律「わーってるって、じゃ、ちょっと行ってくるわ」

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:22:43.29 ID:XmUIXuQ10
それぞれに挨拶を済ませた後、私は隙を見て唯に声をかけた。

律「唯、久しぶりだな。おめでとう」

唯「あ、りっちゃん!」

唯がウェディングドレス姿で振り返った。

律「・・・」

不覚にもときめいてしまった。唯の奴、綺麗すぎるだろ。

唯「りっちゃ~ん、ありがとね~!」

あくまでいつもの口調で話しかける唯。

でも、その姿はもはや別人だった。

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:24:20.40 ID:XmUIXuQ10
律「あぁ、唯のその姿・・・すごく似合ってるぞ」

結婚とは、こうも人を輝かせるものなのか。

くそ、私も結婚・・・したいなぁ。

唯のことを見てたら、素直にそう思ってしまった。

律「じゃ、また後でな」

唯「うん、またね、りっちゃん」

私はそそくさと唯の前から退散した。

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:25:35.39 ID:XmUIXuQ10
・・・・・・
・・・・
・・


披露宴も始まり、和の司会の下、円滑に進んでいった。

私は途中、何度も唯に目を奪われた。

本当に、綺麗で、輝いていて、あの唯とは、思えなかった。

私はますます、唯のために演奏を成功させようという気持ちが高まった。


そしていよいよ、私たちの出番が近づいてきた。

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:27:36.28 ID:XmUIXuQ10
澪「もうすぐだぞ・・・」

律「もう機材は裏にセット済みだから・・・表に持ち運ぶだけだな」

梓「急いでやりましょう」

紬「緊張するわぁ・・・」


和「それでは、次は新婦友人の田井中様、秋山様、琴吹様、中野様にお祝いのお言葉を頂戴致します」


ついに来た。

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:29:32.41 ID:XmUIXuQ10
律「えーっと、ただいまご紹介にあがりました、田井中と申します」

私が短い祝辞を述べている間に、みんなはステージ裏に回り、機材を出す準備をする。

律「私たちは高校時代、軽音部で放課後ティータイムというバンドを組んでおり、唯も・・・・・・」

みんな準備が出来たみたいだ。よし、やるぞ。


律「・・・・・・というわけでして、実は今日は、お二人にサプライズがあります!」

私の言葉と同時に、みんなが慌しく楽器やらアンプやらを並べていく。

唯の奴、私たちがやろうとしてること、もう気づいたかな?

律「今日は、放課後ティータイム、再結成の日です!」

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:31:46.84 ID:XmUIXuQ10
唯「みん・・・な・・・・・・」

おいおい、もう唯の奴、泣きそうになってるよ。

梓「ご挨拶が遅れました。私、中野梓といいます。今、放課後ティーパーティーというバンドで活動していて・・・」

会場がざわめく。梓、結構知名度あんじゃん。

それぞれの紹介を終えたところで、私は叫んだ。

律「唯ー!見てろよ!聞いてろよ!私たちの演奏!そして、幸せになれよー!!」

大切な親友に、やっと言えた。

唯、結婚おめでとう。



律「・・・・・・ワンツースリーフォーワンツースリー!!」

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:34:57.04 ID:XmUIXuQ10
私たちは楽器を鳴らし始める。

息はピッタリ。今までで最高かもしれない。

歌うのは梓と澪。唯だけ仲間はずれにしてごめんな。

でも唯、見てろよ。

これが、放課後ティータイムだ。



「「「キミを見てると いつもハートドキドキ」」」

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:36:54.16 ID:XmUIXuQ10
律「ッ!!」

梓と澪の声の他に、酷く懐かしい声が重なった。

思わず私は演奏を止めてしまった。

ムギも、澪も、梓も、立ち尽くしている。

唯「・・・あれ、何で演奏止めちゃうの・・・・・・みんな、ずるい・・・よ」

嗚咽交じりに、唯は私たちのほうを見ていた。・・・マイクを持って。

唯「みんな、ありが・・・とう。でも・・・私だって・・・放課後ティータイム・・・なんだ・・・から」

唯が近づいてくる。

唯「私も・・・仲間に・・・入れてよ」

私は、溢れる涙をとめられそうに無かった。

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:39:14.19 ID:XmUIXuQ10
唯「みんな、行ぐよ!ふわふわ時間!!」

おいおい、そんな酷い声で歌うのかよ。仕方ないな。後悔しても知らないぞ。

私は泣きながら叫んだ。

律「ワンツースリーフォー!」

演奏が再び始まる。でも、泣きながら楽器なんてろくに弾けるわけがない。

私も、澪も、ムギも、梓も、ボロボロになりながら演奏をした。


・・・今までで一番下手な、ふわふわ時間だった。

それでも、今まで感じていた違和感は、嘘のように消えていた。

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:41:55.94 ID:XmUIXuQ10
・・・・・・
・・・・
・・


全員目を真っ赤にしながら、元の席に戻った。

澪「・・・失敗、しちゃったな」

梓「・・・はい」

意気消沈ムード。当然か。

そんな中、ムギがつぶやいた。

紬「・・・ううん、私は、大成功だったと思うな」

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:43:19.05 ID:XmUIXuQ10
律「えっ・・・」

紬「私、今までのどんな練習よりも・・・息が合ってたと思う。最高の演奏だったわ」

ムギ・・・、ムギもやっぱり、今までの演奏で、足りないものを感じていたのか。

律「・・・そうだよな。私たち、今までで一番の名演奏だったな!」

澪「・・・ははっ、調子に乗るなよ、律」

梓「でも、ムギ先輩の言うとおりです。・・・きっと、大成功ですよ」

澪「そうだな・・・唯にも、私たちの気持ち、伝わったかな・・・」

律「伝わったさ。なんせ私たち、けいおん部だからな」

梓「・・・ふふっ、なんですか、それ」

律「そのままの意味さ。・・・音楽って、最高だな」



こうして、私の親友の、最低で最高な披露宴は、幕を閉じた。

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:46:19.28 ID:XmUIXuQ10
数週間後


あの披露宴での演奏の感覚を残したまま、私はライブ会場に向かっていた。

空を見上げると、雲一つ無い快晴。

絶好のお出かけ日和だ。

律「しっかし暑いな・・・もう夏か」

太陽がジリジリとアスファルトを容赦なく照らしている。

律「晴れすぎるのも、考え物だな・・・」

私は少し緊張しながら、会場へと急いだ。

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:48:29.53 ID:XmUIXuQ10
いつものように最前列に座り、開演を待つ。

すでにセッティング済みの機材を見て、私はあることに気づいた。

律「あのドラムセット・・・私のと同じじゃん」

梓のやつ・・・・・・いや、考えすぎか。


律「・・・今日、私は、動き出すんだ」

独り言をつぶやき、自分に気合を入れた。

82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:50:21.34 ID:XmUIXuQ10
・・・・・・
・・・・
・・


梓「どうもありがとぉー!!!」

ライブ会場が熱気に包まれ、ライブは終演を迎えた。

梓、悪い。あんまり内容覚えてないや。

私の勝負の時間はこれからだから。

私は、いつものように、楽屋へと足を運んだ。

84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:51:56.86 ID:XmUIXuQ10
コンコン

梓「どうぞ」

ガチャ

楽屋の扉を開ける。

律「梓、みんな、お疲れ」

メンバー「あ、律さん。お疲れ様でーす」

梓「律先輩、お疲れ様です」

律「梓、ちょっと、話があるんだ。いいか?」

梓「・・・はい」

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:53:22.89 ID:XmUIXuQ10
私は梓を廊下へと連れ出した。

梓「何ですか?」

私は深呼吸をしてから、ゆっくりと話し出した。

律「実はな、恥を忍んでのお願いがあるんだ」

私は頭を下げ、言った。


律「私を、ドラマーとして、放課後ティーパーティーに入れてくれないか」

88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:54:58.97 ID:XmUIXuQ10
梓「・・・」

律「私は、卒業してから何も変わってない。いや、悪い方向にしか、変わってない」

律「変わりたいんだ。梓みたいに・・・音楽で、自分を、変えたいんだ」

律「頼む・・・」

梓がどんな表情をしているかは分からない。

私を蔑んだ目で見ているかもしれない。

そういう目で見られるようなことをしているのは、私自身よく分かっていた。



梓「・・・律先輩、プロはそんなに、甘くないですよ」

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:56:33.78 ID:XmUIXuQ10
梓「律先輩の腕じゃ、まだまだプロとは程遠いです」

梓「練習だって、一日中しても、まだ足りないくらいです」

律「・・・そんなことは分かってる。実力不足なことくらい、分かってる」

律「放課後ティーパーティーの人気に乗っかろうとしてることだって分かってる。私がわがまま言ってるってことも分かってる!」

律「でも私は、音楽がやりたいんだ!音楽で、自分を変えたい!」


梓「・・・駄目なんて、一言も言ってませんよ。練習が必要って言っただけです」

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 03:58:41.72 ID:XmUIXuQ10
律「梓・・・」

梓「あ、たとえ先輩が入っても、このバンドのリーダーは私ですからね。・・・さ、楽屋に行きましょう。新メンバーの加入を伝えに」

律「梓、ありがとう・・・ありがとうな・・・」

梓「・・・・・・全く、遅いんですよ。ウチが何で正式なドラマーを加入させなかったか、気づかなかったんですか・・・」

梓が何かボソボソ言っている。

律「・・・何か言ったか?」

梓「いいえ、何も」

嘘だよ。全部、聞こえてたよ。

梓、本当にありがとうな。

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 04:00:26.48 ID:XmUIXuQ10
楽屋の前に立つ。

さっきとは全然風景が違う気がする。

梓「律先輩、一度やりだすからには、後には戻れませんからね」

律「分かってる。放課後ティーパーティーの名に恥じぬようなドラマーになってやるさ」

ガチャ

扉が開く。

梓「みんな、ちょっと聞いて。”やっと”新メンバーが加入することになったの」

私は変わる。

いつまでも子供じゃないんだ。


大人になっても、私には仲間がいるから。





終わり

124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/09/13(月) 17:03:13.38 ID:XmUIXuQ10
まだスレが残ってた・・・
憂は頭の中では色々構想はあったものの、尺やら流れやらの関係で出せませんでした。
「同じ窓」のSSは知らないので、後日見てみます。
続編は書く自信がないです。
とにかくありがとうございました。

引用元: 律「そんな唯が、もうすぐ結婚するんだ」