海未「紙芝居屋さんです」2 前編

509: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/15(火) 21:49:12.48 ID:kxl2mSPs
───



『……フンッ』


真姫『(やっと一人になれたわ。)』

真姫『(それにしてもなによ、あのチンチクリン。なんであんな奴と一緒に居なくちゃならないの)』

真姫『(大体、私は城下町で医者になる為に勉強して来たってのに、パパもママも何考えてるのよ)』

真姫『(いきなり二人揃って来たと思ったら、数年間あのオバさんと行動しろ。だなんて突然言ってきて……)』

510: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/15(火) 21:57:33.74 ID:kxl2mSPs
真姫『(ホント、意味わかんn)』

ドンッ

真姫『ぶっ!?』

『いたっ!』

真姫『~っ』ググッ

真姫『ち、ちょっと!どこに目ェ付けてんのよ!!』

『……ハァ?』

あんじゅ『アンタがぶつかって来たんでしょ?頭おかしいんじゃないの?』

511: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/15(火) 21:58:43.64 ID:kxl2mSPs
真姫『ぶつかって来たって言うことは見えてたって事でしょ!避けなさいよ!』

あんじゅ『見てわからないかしら?私は廊下の端を歩いてたの。で、アンタは愚かにもど真ん中を歩いてたのよ』

真姫『だったらもっと壁に寄りなさいよ。それとも寝っ転がったら?踏んづけてってあげるから』

あんじゅ『どうしようもないバカね。どこのど田舎出身か知らないけど、普通は左右に分かれて往来するものよ。お分かり?』

真姫『…………バカ?』

512: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/15(火) 22:01:35.34 ID:kxl2mSPs
真姫『あなた今、私のことバカって言った?』

あんじゅ『いえ、間違ったわ』

真姫『……』

あんじゅ『救いようのない大バカって言ったのよ』

真姫『──ッ!』カッ


真姫『情熱スカーレットファイヤッ!!!』ビシィッ!!!

あんじゅ『うわぁ!!?』バッ

513: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/15(火) 22:11:24.31 ID:kxl2mSPs
真姫『チッ』

あんじゅ『ちょっ、なんなの!?』

真姫『…………避けたわね?』

あんじゅ『避けるに決まってるでしょ!?』

真姫『私のムチは避けたらいけないのに』

あんじゅ『てゆーか!なんでムチなんか携帯してるのよ!?』

真姫『ムチはお医者の必携道具なの』

あんじゅ『意味わかんないっ!!』

514: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/15(火) 22:12:42.35 ID:kxl2mSPs
ビチィッ!!!

あんじゅ『ぃいっっったぁあああああっ!!?!?』

真姫『トラナイデ。』

あんじゅ『っ……あっそぉ~、そう来るのね……分かった。』

あんじゅ『……』スッ

『аплодисменты. ходить. старается』キィイイインッ

真姫『!』


あんじゅ『聖天術・あんよはじょうず』

……インッシュインッシュインッ!

515: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/15(火) 22:14:34.01 ID:kxl2mSPs
真姫『そ、それが聖天術ってやつなの?』

あんじゅ『さぁね。もう一回打ってみれば分かるんじゃない?』

あんじゅ『──ド馬鹿。』

真姫『』プツン

真姫『灼熱マグネティックフレイムッ!!!』バチィッ!!!

あんじゅ『……』ザッ

真姫『キライキライよやんなっちゃうっ!!!』ビシュシュシュッ!!!

あんじゅ『あったんなぁ~い♪』ヒュンヒュンッ

516: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/15(火) 22:19:50.87 ID:kxl2mSPs
真姫『~ッッッ』イライラッ

真姫『卑怯よっ!!なにその動きはっ!!』

あんじゅ『足が速くなるヤツよぉ♪羨ましい~?』

真姫『……ふんっ!』ガチャ

あんじゅ『?』

真姫『だったら、コッチだって奥の手を使わせて貰うんだから。』ゴソゴソッ

あんじゅ『な、なによっ。……まさか、そのキャリーケースから包丁でも出すんじゃないでしょうねっ』

真姫『お医者兼中立者の私が、そんな物騒な物持ち歩くわけないでしょ』

あんじゅ『(どの口がっ)』

真姫『まだ開発段階だから出したくなかったけど、こんな不届き者がいたんじゃしょうがないわよね』ガチッ

517: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/15(火) 22:22:49.08 ID:kxl2mSPs
~♪♪

あんじゅ『……は?』

真姫『……』♫♩♩

あんじゅ『……アナタ、何してるの?』

真姫『演奏。』♬♪♩

あんじゅ『いや、それは見れば分かるけど……』

真姫『そう。』♪♫♪♪

あんじゅ『……』

ジャ-ン♪

518: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/15(火) 22:24:02.21 ID:kxl2mSPs
真姫『……ふぅ。』

ガシャンッ!

あんじゅ『え"っ』

ガキンッ!ガキガキンッ!

あんじゅ『はぁあああっ!!?』

ガショ-ンッ!!!

真姫『……天才真姫ちゃん、第一の発明品。』


真姫『"フレキシブル・ケース"よ。』

519: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/15(火) 22:25:31.96 ID:kxl2mSPs
あんじゅ『た、大砲……っ!?』

真姫『避けれるものなら避けてみなさい。』

真姫『秒速1200mで発射される隕鉄のカケラ、その目にも留まらn──』


『二人ともー。お話終わったわよー!』


真姫『っ』

あんじゅ『!』

『真姫ちゃーん!にこー!』

520: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/15(火) 22:26:58.81 ID:kxl2mSPs
真姫『……勝負はお預けよ。』

あんじゅ『……』

真姫『あなた、名前は?』

あんじゅ『……』

あんじゅ『……のぞみ。』

真姫『そう。覚えてなさいよ?のぞみ』

真姫『次はコレ、食らわせてあげるから』スッ

スタッスタッスタ……。

あんじゅ『……』


あんじゅ『ごめんね?の~んたん♪』

521: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/15(火) 22:28:14.87 ID:kxl2mSPs
希「うぁあああぁあああぁぁあぁぁぁっ!!!!こぉの縦巻きいぃぃぃっっ!!!!」グワッ

ことり「ダメぇ!」バッ

穂乃果「天界道具だからっ!貴重なヤツだからぁ!!」ガシッ

希「このぉっ……っ!  ませろやっ!!」グッグッ

こころ「……私もこんなんだった?」

亜里沙「うん。」

ことり「つ、次行くからね!?」グイッ

穂乃果「早くぅーっ!」グッ

希「ガルルルルルッ!!!」

シュルルルル……。

527: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/16(水) 23:40:12.19 ID:0wmMEGTS
天界学校の廊下にて行われた、
突然のキャットファイト。

横槍が入った事によって中断した、
このしょうもない喧嘩が

まさか、数年後まで続くプチ因縁になるとは
お互いカケラも知らずにいるのでした。

528: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/16(水) 23:42:43.38 ID:0wmMEGTS
一方、

良い子が一番の売りであるはずの天使から、
聖天術の不意打ちを喰らわせられた挙句

自慢の黒髪にシャギーを入れられてしまった

陸号第二の実験台、にこ。


───



にこ『…………ん、』パチッ

529: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/16(水) 23:53:50.11 ID:0wmMEGTS
にこ『…………』

にこ『……どこ?ここ』

にこ『おうちじゃない……?……んん、』

にこ『ママァ……ねぇー、ママァ。』

にこ『……』

にこ『……そうだ。わたし天界に来てたんだ』

にこ『ママとあの巻き毛と一緒に天界学校に来て、ママは天使長とお話に行って……それから……』

530: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/16(水) 23:55:19.54 ID:0wmMEGTS
にこ『……んん?』

にこ『てゆーか、なんで私こんなとこに居るのよ?』

にこ『???』

『にこ!』

にこ『へ?』

にこママ『貴方、なんでこんな所にいるのよ?』

にこ『あ、ママ。』

真姫『……』

531: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 00:03:41.29 ID:dbQCjZ/4
にこ『(うげっ、コイツも居るのね)』

にこママ『一応話は終わったけどどうする?もう少し見て回る?』

真姫『……』

にこ『あー、私はもういいかn』

『ごめんなさい。』

にこ『?』

真姫『もう少しだけ、見てまわってもいいかしら?』

532: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 00:04:22.60 ID:dbQCjZ/4
にこママ『えぇ、いいわよ。』

にこママ『それじゃあ、私は雲庭にいるから終わったらそこに来てね?』

にこ『え?ちょ、ちょっと!?』

真姫『……来て、』ガシッ

にこ『はぁ?待ちなさいよ!』

タッタッタッタッ……。


にこママ『……ふふ。ようやく仲良くなってくれたみたいね』

533: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 00:11:40.58 ID:dbQCjZ/4
こころ「おっ、お姉さま……っ!」ググッ

亜里沙「こ、こころちゃん?お願いだから落ち着いてね?」

希「あの○○女……帰ったら絶対○○○したるわ……っ」ブツブツ

穂乃果「希ちゃん!めっ!」

ことり「の、希ちゃん?集中切らしたら駄目だよ?」

希「○○○○○○○○……」ボソボソッ

こころ「ぐぎぎ……っ!」ギリギリッ

ことり(手に負えないよぉ~っ)

534: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 00:17:14.28 ID:dbQCjZ/4
───



真姫『……』スタッスタッ

にこ『……ねぇ、どこ行くのよ。』

真姫『……』スタッスタッ

にこ『(なによコイツ、むっすりしちゃってさぁ)』

にこ『(あぁもう、早く帰りたいのにっ)』

真姫『……ねぇ、』

にこ『な、なによ。』

真姫『あなた、さ』

535: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 00:18:03.47 ID:dbQCjZ/4
真姫『いつの間に髪切ったの?』

にこ『……は?』スッ


にこ『はぁああああっ!!?!?』

真姫『……』

にこ『えっ!?……はぁ!?い、いつの間にっ!!?』バッバッ

にこ『こ、この手触り……っ、なんかシャギーみたいなのかかってない!!?ねぇ!?』

真姫『……』

にこ『ちょ、ちょっと鏡見てくるr』ザッ

にこ『──ッ!?』ガクンッ

536: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 00:36:55.45 ID:dbQCjZ/4
真姫『……』グッ

にこ『な、なによ!?離しなさいっ!!』

真姫『……』

真姫『にこ、ちゃん。』

にこ『……へ?』

にこ『あ、あんた……いま、わたしの名前……』

真姫『そ、その髪型……素敵だから……』

にこ『は?』

真姫『そのまんまでいいからっ///』

537: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 00:38:18.64 ID:dbQCjZ/4
にこ『はぁ???』

真姫『~っ///』

にこ『えっ、なに……?』

真姫『あ、あのね?今まで冷たく当たって……ご、ごめん。』

にこ『……』

真姫『にこちゃんって、ホントはこんなにイカしてたのね。……私、気付けなかったわ』

にこ『……あんた、熱でも出たの?』

真姫『いえ。判断力は正常よ』

にこ『とてもそうは思えないんだけど』

538: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 00:45:07.47 ID:dbQCjZ/4
真姫『え、えっとね?それでね……?』

真姫『この真姫ちゃんと……お、おっ、』

にこ『お?おってなに?』

真姫『お──ッ』

真姫『お友達になって……っ///」

にこ『……』

真姫『だ、だめ?』

にこ『……ハァ、』

にこ『あのねぇ、私は天下のスーパーアイドルなのよ?みんなのにこにーなの』

539: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 00:47:24.81 ID:dbQCjZ/4
真姫『……』

にこ『つまり、私はみんなのものなのよ。どこに居ても引っ張りだこの人気者なの』

にこ『……だから、私と仲良く出来ない奴なんてこの世にいやしないのよ。』

真姫『!』

にこ『分かった?』

真姫『に、にこちゃんっ!』

にこ『よろしくね?真姫。』スッ

真姫『……よ、よろしく。』ギュッ

にこ『ん。素直で宜しい!』ブンブンッ

真姫『っ///』

540: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 00:51:30.40 ID:dbQCjZ/4
真姫『あ!そ、それからっ』

にこ『なによ?』

真姫『お友達になったばかりで悪いんだけど、一つお願いがあるの』

にこ『なんでもいいなさい?一つだけなら、このにこにーが叶えてあげちゃうんだから♪』

真姫『えへへ。そ、それじゃあね?』

にこ『なぁに?』


真姫『お尻叩かせてっ///』スッ

にこ『…………は?』

ピシィッ!!!

『ニコーーーッス!!!』

541: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 00:53:16.05 ID:dbQCjZ/4
この時より始まった
二人の目眩く被加虐アブノーマルライフ。

これが、6年後に一騒動を起こす原因となるとは

露も知らないお医者と助手のたまご。

542: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 00:54:57.80 ID:dbQCjZ/4
そして、陰からその様子を覗き見て
陸号の効果にご満悦の表情を浮かべている

今やダークサイドの住人、ツバサ。


ツバサ『アッハッハッハッ!な、なんでそーなるのよぉwww』

ツバサ『お尻って……っw クックッww』

ツバサ『……はあぁぁぁ、よし。これだけ確かめられれば十分ね。』

ツバサ『あとは、じっくりとコレからの計画を練りましょうか。……ふっふっふっ。』

548: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 22:28:30.16 ID:dbQCjZ/4
こころ「お……お姉さ……っ」ヨロッ

穂乃果「こころちゃん!」ガシッ

亜里沙「あ、あの!この二人を映すのはもうやめましょう!」

ことり「うっ……そ、そうだね。」

希(あぁ、こん時からSMコンビが始まったんやねぇ。お屋敷行ったのが懐かしいわ)

ことり「希ちゃん、どのくらい進める?」

希「んぇ?そうやねぇ。そんじゃ一気に投票日まで行こっか。」

ことり「りょ~か~い」


シュルルルル……。

549: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 22:30:37.88 ID:dbQCjZ/4
───



『皆さーん、ちゃんと順番を守って並んでくださーい!』


ミカ『下天のみんなは私の所に並んでねー?』

ヒデコ『中天の人はコッチにお願いしまぁーす!』

フミコ『上天の方々は此方へ、』

フミコ『名簿にあるご自分の名前にチェックを入れた後、お渡しする投票用紙に記入して、受付の横にある投票箱へ入れて下さい。』


ガヤガヤガヤガヤッ

550: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 22:33:54.52 ID:dbQCjZ/4
絵里『~っ』

ツバサ『……』

英玲奈『zzZ』


絵里『あぁ……ダメッ。緊張して戻しそう……っ』

あんじゅ『だから見に来なきゃ良かったのよ』

絵里『ひ、控室で待ってろって?そんなの処刑されるより地獄だわっ』

あんじゅ『やる事はやったんだから、後はドッシリ構えてれば良いのよ。』

絵里『……女の子にドッシリとか言わないで、』

551: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 22:37:15.94 ID:dbQCjZ/4
希『えりち』

絵里『……なぁにぃ、』

希『えれ姉を見てみぃ?』

絵里『……』

英玲奈『zzZ』

絵里『……幸せそうね。』

希『な?』

絵里『……』

552: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 22:39:12.77 ID:dbQCjZ/4
あんじゅ『聖天術さえ使えれば、少しはリラックスさせてあげる事も出来たんだけどねぇ』

希『そうやんねぇ。この可愛いリストバンドのお陰で、ぜ~んぜん力が集中出来んからねぇ』

希『……てゆーかコレ、外すとどうなるん?」

あんじゅ『なんかぁ、何処からともなくリスの軍隊が現れてぇ、ソイツらに虐められるそうよぉ?』

希『…………なんやそれ。』

絵里『あ~、なんかそう言う話いいわ。』

553: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 22:40:42.19 ID:dbQCjZ/4
あんじゅ『は?』

絵里『お願い、もっとそんな感じのバカ話して』

あんじゅ『な、なんで?』

絵里『余計なこと考えなければ緊張しないのよ、他にもっとない?』

希『……そういやこの間、寝てるあんじゅの鼻にピーナッツ突っ込んだんだけどさ』

あんじゅ『ちょっとぉ!!?』

希『片っぽはすぐ取れたんやけど、もう片っぽが奥まで行っちゃってね?』

希『あんじゅは起きて騒ぎ出すし、ウチは大笑いだしで中々カオスな空間になったんよ』

554: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 22:45:37.95 ID:dbQCjZ/4
あんじゅ『ッッッ』ワナワナッ

希『まぁ、結局ウチとえれ姉で取り出したんやけど』

絵里『あ~、いい感じでおバカになって来たぁ~』ポケ-

希『あとね、中天の最初に上呂の授業やるやん?』

希『その時ウチ、あんじゅと同じ班やったんやけど、上呂に貯めたヤツを間違ってあんじゅの頭にぶっ掛けちゃってさ』

希『そっからがもう酷いのなんの。あんじゅの髪やら眉毛やらなにやら、もうありとあらゆる物が急成長しちゃってさ?』

555: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 22:50:01.57 ID:dbQCjZ/4
希『極めつけはふk──』

あんじゅ『ハイッ!!!』ゴッ

希『ほいっ!!?』ガクッ

ドサッ

あんじゅ『……喋り過ぎよ。』

希『』

絵里『わたしバカでぇ~す。』ボ-


『──うるさいなぁ。』


絵里『!?』

あんじゅ『……』

556: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 22:59:20.57 ID:dbQCjZ/4
ツバサ『少しは大人しくしてられないの?入学したての下天生じゃあるまいし』

絵里『ご、ごめん……』

ツバサ『それとも、それも作戦の内なのかしら?』

あんじゅ『……投票中に作戦もなにも無いと思うけど?』

ツバサ『あらそう。分かってるみたいで安心したわ』

あんじゅ『ふんっ』

絵里『……あ、あの、緊張しないの?』

557: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 23:03:04.47 ID:dbQCjZ/4
ツバサ『緊張?するワケないでしょ。して欲しいの?』

絵里『ぁ、いえ……そんな事はないんだけど、』

ツバサ『なら、黙って大人しくしてなさい。』

絵里『うぅ……』

ポンッ

絵里『!』

あんじゅ『大丈夫よ。心配する事なんかないわ』

絵里『……ありがとう。』

ツバサ『……』

558: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 23:05:13.90 ID:dbQCjZ/4
ツバサ『(変だな。昨日の晩にちゃんとカットした筈なんだけど、コイツらには効果が見られない)』

ツバサ『(コッソリ絵里の部屋に忍び込んで、"人に不快感を与えるカット"に仕立てて、今日を迎えたけど)』

ツバサ『(まぁ、朝の立候補者の挨拶では、結構それっぽい効果が見られたし、大丈夫かな。)』

ツバサ『(それに、あんまりあからさまに効果が出られても、それはそれで困るし、)』

559: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 23:15:53.53 ID:dbQCjZ/4
『──以上で、投票を締め切ります。』


ツバサ『!』

絵里『うわっ』

あんじゅ『っ』

英玲奈『zz……ん、』

希『』


『立候補者の方々は控室へ。生徒の皆さんは各教室に戻り、開票発表があるまで待機していてください。』

560: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 23:17:46.60 ID:dbQCjZ/4
あんじゅ『さて、それじゃあ控室に戻ってましょ?』

絵里『う、うぅん……っ、そそ、そうねっ……っ』ガチガチッ

あんじゅ『大丈夫?手ェ繋いで行きましょうか?』

絵里『ぉ、おっ、おねがいぃっ……』ガクガクッ

英玲奈『んぉ、終わったかぁ?』

あんじゅ『えぇ、控室で待ってなさいって。アナタは希を持って来てくれない?』

英玲奈『んん?』

希『』

英玲奈『……あぁ、敷物かと思った。』

561: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 23:29:13.45 ID:dbQCjZ/4
ツバサ『……』

ツバサ『(ふふ、結果が楽しみだわ)』


ガチャ……バタンッ


なんと、昨夜の内に絵里の部屋へ侵入し

勝手に髪型を変えてしまっていた

堕天使予備軍のツバサ。

562: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 23:30:50.11 ID:dbQCjZ/4
ツバサ『陸号のマイナス効果、果たしてどんな物なのやら』

ツバサ『加減して切り……もとい、剃りはしたけど、あんまり露骨な結果にならないといいなぁ』

ツバサ『それにしても、カット方法が額に剃り込みって……まるで昭和のヤンキーみたいね。確かに不快感は与えそうだけど』

ツバサ『……ふふ。本気出させといて悪いけど、今回は貴方に大泣きして貰う番よ。』

ツバサ『その後は……そうね。泣いてこれまでの事を謝って来たら、許してあげてもいいかな?』

ツバサ『──ふふふ。』


理事長『……』

563: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 23:33:46.09 ID:dbQCjZ/4
───


絵里『ハッ……は、はぁ……っ!』バックン!バックン!

あんじゅ『絵里、少し落ち着きなさい。いつまで震えれば気が済むの?』

絵里『お、おちっ、おち……っ、おちぃ……っ!』ガチガチッ

英玲奈『んん、もう間も無くで集計も終わるんじゃないか?』

絵里『ひっ、ひいぃぃ……っ』ビクビクッ

あんじゅ『そうして貰いたいわ。このままだとこの子、あと数分で発狂し兼ねないから』

希『……ん、』

564: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/17(木) 23:43:05.88 ID:dbQCjZ/4
あんじゅ『あら、起きたの?』

希『……なんや、ここどこ?』

英玲奈『控室だ。空き部屋とも言うな』

あんじゅ『でも、確かにこの待ち時間はちょっとしんどいわね』

絵里『なっ、なんで英玲奈はそんな余裕なの……っ!?』

英玲奈『んん?さぁ、なんでたろうな』

英玲奈『多分だが、着地点がお前やツバサとは違うからじゃないか?』

絵里『え?そ、それってどう言うk』

565: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/18(金) 00:02:14.22 ID:S5fKTxqk
『票の集計が終了しました。これから管理者より、当選人を校内放送にて告示します。』


絵里『ひいぃっっ!!?!?』ズザッ


『投票者数351。内、無効票5。』


絵里『し、しぬ……っ!』ギュッ

あんじゅ『大丈夫。』スッ

希『さてさて』

英玲奈『……』


ツバサ『……』


『管理委員会による、厳正な開票作業の結果──』

566: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/18(金) 00:03:22.59 ID:S5fKTxqk
『上天3組の絵里さんが当選されました』

567: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/18(金) 00:04:40.66 ID:S5fKTxqk
あんじゅ『!!?』

絵里『あーあー!聞こえなーい!』


『以上で、告示を終了致します。』


あんじゅ『え、絵里っ!!』

絵里『ひいぃぃぃぃぃっ!!!』

あんじゅ『やった!やったわよっ!!?』ポンッ

絵里『ご、ごめんなさいごめんなさいぃっ!!』ガバッ

568: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/18(金) 00:05:59.07 ID:S5fKTxqk
希『あらぁ、ウチら負けてしもーたかぁ』

英玲奈『ハハハッ。』

あんじゅ『絵里っ!!』ガシッ

絵里『ひっ!!』ビクッ

あんじゅ『勝ったの!アナタ勝ったのよっ!!?』

絵里『…………へ?』

あんじゅ『~っ』

絵里『か……勝った……の?』

569: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/18(金) 00:07:46.72 ID:S5fKTxqk
あんじゅ『そうよ。勝ったの』

絵里『…………』フラッ

バタンッ

英玲奈『お?』

あんじゅ『え!?』

希『え、えりち!?』

絵里『』

希『……し、失神しとるっ。』

あんじゅ『はぁ、しょうがないわねぇ』

570: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/18(金) 00:09:11.34 ID:S5fKTxqk
『立候補者の方々の絶え間ない努力。そして、皆さんの暖かい応援のお陰で、今年度の生徒長選挙は無事終える事が出来ました。』


『生徒の皆さん、本当にお疲れ様でした。』


『尚、後日当選証書が選挙管理委員会より授与されますので、当選された上天生の絵里さんは終業後、控室へ来て下さい。』





ツバサ『』

580: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 00:08:38.44 ID:QOX/invY
亜里沙「お、お姉ちゃん……っ!」

こころ「良かったね、亜里沙ちゃん。」

亜里沙「うん!」

穂乃果「……」

ことり「ツバサちゃん……」

希「……」

こころ「それにしても、ツバサさんはホントに酷いよ!」

亜里沙「うんうん!お姉ちゃんにはあんな態度ばっかりだし、こころちゃんのお姉さんにもイジワルな事したしさ!」

581: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 00:10:32.00 ID:QOX/invY
亜里沙「大体、前に勉強で負けたからってだけで、普通あんな事までするかな?信じられないよ」

こころ「うん。私も、いくらなんでもやり過ぎだと思う。あんなの友達に対してやる事じゃないもん」

こころ「──なんだか、ツバサさんのこと」

「こころちゃん」

こころ「は、はい。」

穂乃果「ちゃんと最後まで見よう?」

こころ「え?」

582: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 00:13:02.62 ID:QOX/invY
ことり「そうだね。私もそれがいいと思う」

ことり「それに、今のツバサちゃんは間違いなく良い人だもん」

亜里沙「う~ん……それは、そうかも知れませんけど」

こころ「……正直なところ、お姉さまに対してあんな事をした人を、あまり快くは思えないんです」

希「まぁ、こんなん見せられたら、誰だって良くは思えないかも知れんけど」

希「穂乃果ちゃんの言う通り、先ずはこの出来事の終わりまで見届けよ?」

こころ「……」

亜里沙「……分かりました。」

583: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 00:16:11.26 ID:QOX/invY
生徒長選挙にて、
ツバサによる様々な妨害に遭うも

それら全てを打ち負かし
見事、生徒長の座を手にする事が出来た

新、生徒長の絵里。

584: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 00:22:29.47 ID:QOX/invY
───



『おめでとー!』


絵里『あはは……あ、ありがとう。』

あんじゅ『なぁに?もしかして、まだ選挙の緊張が解けてないの?』

希『顔が硬いよぉ?ほらほら!笑って笑って!』

絵里『ぇえ?十分笑ってると思うんだけど』

希『ん~、足りんなぁ~』

585: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 00:55:01.21 ID:QOX/invY
希『……コレならどう?』ワシワシ

絵里『ひぇ!?ど、どこ触ってんのよっ!!』シュッ

希『ぷん!?』ガクッ

絵里『まったくもう!』

希『あぁ、平手で軽く叩くあたりにえりちの優しさを感じる……』

絵里『次やったらグーだからね!』

あんじゅ『最初からグーでいいのに』

586: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 01:05:16.10 ID:QOX/invY
絵里『そう言えば、英玲奈はどこに行ったの?』

希『あれ?確かにおらんね』

あんじゅ『トイレかしら?』

希『あ~、便座に座って寝てる可能性もあるなぁ』

絵里『私としては、あんまりあって欲しくない可能性だけどね』

あんじゅ『大丈夫よ。あの子、10時間寝たら絶対6時間は起きてるから』

587: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 01:22:55.18 ID:QOX/invY
絵里『思ってたんだけど、最近の英玲奈って活動時間短すぎない?』

希『起きてる時も大体ボーッとしてるしなぁ』

あんじゅ『あの子ね?実は理事長に影響受けてるらしいのよ』

希『どーゆーこと?』

あんじゅ『私もよくは知らないんだけど、英玲奈的には理事長みたいな人になりたいんだって』

絵里『……それと寝ることと、何が関係してるの?』

あんじゅ『さぁ?理事長も結構ボーッとしてるし、真似してるんじゃない?』

588: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 01:24:58.26 ID:QOX/invY
『……』


コンコンッ


ツバサ『……』


『ツバサ。いるか?』


ツバサ『……』


ガチャ


英玲奈『おぉ、やっぱり居たか』

589: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 01:28:49.10 ID:QOX/invY
ツバサ『……』

英玲奈『やぁ、お疲れ様。』

ツバサ『……なんの用?』

英玲奈『いやなに、ちょうど空室の前を通ったから、ついでに声を掛けただけの話だ』

ツバサ『……』

英玲奈『……しかしまぁ、お互い見事に負けたもんだなぁ』

英玲奈『選挙活動自体は、お前が断トツに実績を上げていたみたいだが』

590: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 01:37:27.31 ID:QOX/invY
英玲奈『なんと言うか……絵里が持つ、あのよく分からない求心力の様なものに、きっと私達は負けたのだろうな』

ツバサ『……』

英玲奈『私も私なりに頑張ってはみたのだが、如何せん、相方があのザマだったからな。』

ツバサ『……アンタも殆ど寝てたじゃない。』

英玲奈『ん?あぁ。言われてみればそうだな』

ツバサ『……』

591: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 01:38:32.37 ID:QOX/invY
英玲奈『まぁとにかく、良くも悪くも生徒長選挙は終わった。コレでもう、何も思い悩む事はないだろう?』

ツバサ『……そうね。』

英玲奈『どうだ?この後みんなで反省会でもしないか?』

ツバサ『…………何を反省するのよ。』

英玲奈『ん、それは……なんだ、』

英玲奈『人生について?』

ツバサ『……』

592: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 01:40:36.23 ID:QOX/invY
英玲奈『まぁ、無理にとは言わんが』

ツバサ『……』

ツバサ『……フフ。』

ツバサ『人生について、ね。』

英玲奈『……』


ツバサ『考えとくわ』

英玲奈『!』

593: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 01:41:43.52 ID:QOX/invY
英玲奈『お、おおっ!そうか。それは良かった!』

英玲奈『ふふ。きっとアイツらも喜ぶぞ』

ツバサ『……宜しく言っといて。』

英玲奈『あぁ、任せろ。』

英玲奈『それじゃあ、詳しくは後でまた伝えるからな。』

ツバサ『えぇ。』

英玲奈『…………私も、嬉しいよ。』

ツバサ『……』

ガチャ……バタンッ。

594: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 01:58:23.69 ID:QOX/invY
ツバサ『……』


ツバサ『考えとく、か。』


ツバサ『……ふふ。』


ツバサ『ふふふ、』



ツバサ『アッハッハッハッ、』



ツバサ『アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!』

595: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 01:59:43.93 ID:QOX/invY
ツバサ『ああぁああああぁあああああぁああああああっ!!!!!』

ドンッ!

ツバサ『なんでよっ!!!なんで陸号の効果が出ないのっ!!?!?』

ツバサ『お陰であのバカが生徒長になっちゃったじゃんっ!!!』

ツバサ『勝ってたのにっ!!途中まで私が勝ってたのにっ!!!』

ツバサ『なんでよっ、おかしいでしょ……っ』

ツバサ『~ッッッ』


『ツバサちゃ~ん、いる~?』


ツバサ『!』

596: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 02:03:41.91 ID:QOX/invY
ガチャ

理事長『あ、いた~♪』

ツバサ『り、理事長!?』

理事長『ツバサちゃん、お疲れ様~』

理事長『大変だったねぇ~、えらいえらい♪』

ツバサ『……なんの用ですか、』

理事長『うふふ~。労いに来たのよ~?』

ツバサ『……ありがとうございます。』

597: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 02:05:35.90 ID:QOX/invY
ツバサ『あの、用はそれだけですか?』

理事長『ん~、』

ツバサ『わたし、今は一人で居たいんですけど』

理事長『ごめんねぇ~』

理事長『私もぉ~、ツバサちゃんにはゆっくり休んで欲しいから~、だからね~?』


理事長『陸号を返して貰ったら帰るわ~』

ツバサ『──ッ!!?』

598: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 02:13:46.60 ID:QOX/invY
ツバサ『なっ、なんで……っ!?』

理事長『アレはねぇ~、使い方次第では~伍号よりも危ない物なのよ~』

理事長『あんな所にしまっちゃってた私も悪いんだけどぉ~、ツバサちゃんも~、メ~、だよぉ~?』

ツバサ『ッッッ』

理事長『あと~、"ドウリキさん"もちゃんと返しといてねぇ~?』

ツバサ『……そ、そこまで知ってたんですねっ』

599: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 02:25:55.67 ID:QOX/invY
理事長『うふふふ~。』

理事長『だってぇ~、あの手袋がないと~、選挙期間中に聖天術は使えないもの~』

ツバサ『……クソッ』

理事長『女の子がそんな事言ったらダメよぉ~?』

ツバサ『ふんっ』

理事長『それにしてもぉ~、ホントによく考えたわね~』

理事長『天界屋のおじさんも~、作ってからそれに気付いたらしいんだけどね~』

600: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 02:27:32.50 ID:QOX/invY
理事長『あのリストバンドは~、内側から外側に出る力は止められるんだけど~』

理事長『ドウリキさんみたいな~、内側から直接力を取り出す様な道具には~、効果が出ないって言ってたのよ~』

ツバサ『……知ってる。』

理事長『そこに気付けるなんて~、やっぱりツバサちゃんはさすがねぇ~』

理事長『そう言うところは~、多分絵里ちゃんよりも上だと思うなぁ~』

ツバサ『……』

601: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 02:34:23.41 ID:QOX/invY
ツバサ『理事長。』

理事長『なぁに~?』

ツバサ『陸号の力を制御したのも、やっぱり貴方なんですか』

理事長『うふふふ~♪どうだろうね~』

ツバサ『っ』

理事長『でもね~?もし~、あそこで陸号の力を借りて~ツバサちゃんが勝ってたとしても~』

理事長『その後~、きっと酷く後悔する事になってたと思うな~』

602: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 02:38:21.19 ID:QOX/invY
ツバサ『……もう後悔してる。』

理事長『今はきっと~、ツバサちゃんに余裕がないから~、理解するのは難しいかも知れないけど~』

理事長『全部が全部~、悪い方向に進むとは限らないから~』

理事長『それだけは~絶対に忘れないで欲しいな~』

ツバサ『……』

理事長『ごめんねぇ~、お話長くなっちゃったね~』

理事長『それじゃあねぇ~』ガチャ

バタンッ

603: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 02:50:36.63 ID:QOX/invY
勝ちを拾うだけの筈だった

選挙戦の敗退。

英玲奈の友情と慰め。

理事長による、悪事の暴露と導き。

ツバサの胸中は、もはや感情の坩堝と化し

出口を求めて、グルグルと回り続けています

それは、これから起こる惨状を作り上げる為

力を溜めているかの様に。

609: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 23:48:38.81 ID:QOX/invY
あんじゅ『ほら、急ぎなさい。全校集会始まっちゃうわよ?』

絵里『ま、待って待って!あと2回……いや、あと5回読み返させて!』ジィ-ッ

あんじゅ『挨拶文なんて適当でいいのよ。どうせ半分以上は聞いてないんだから』

絵里『泣きたくなること言わないでよっ!!一生懸命考えたの馬鹿みたいじゃない!!』

英玲奈『……ん?ここの漢字、送り仮名間違ってるぞ?』

絵里『え!?あ、ホントだ!ありがとう!』

611: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 23:51:56.12 ID:QOX/invY
あんじゅ『……絵里しか読まないんだから、送り仮名なんてどうでもいいでしょ』

希『えりち。目の前で熱視線を送り続けるからね?ウチだけ見て、ウチに向かって喋るんやで?ウチも見てるから』

絵里『そ、そうね。その方が緊張しないのかも……っ』

あんじゅ『……』スパンッ

希『のすっ!!』ガクッ

絵里『あぁ、もぅダメっ。戻しそう……』

あんじゅ『また?アナタ、選挙戦の時も言ってたわよ?』

612: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/20(日) 23:57:33.95 ID:QOX/invY
希『いててっ』

英玲奈『はははっ』

絵里『はあぁあぁぁ……この緊張さえどうにかなればなぁ、』

英玲奈『──ん?』

希『あ、』

あんじゅ『そっか。』

絵里『え?なに?』

スッ

『……Регулировка.』

絵里『!』


あんじゅ・希・英玲奈『聖天術・ぽんぽん』

614: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 00:00:28.46 ID:9UNyxEft
ポワワワァ~ン


絵里『──ッ!?』スウゥゥッ


あんじゅ『アナタたち……』

英玲奈『はは、術まで同じとはな』

希『さすがやんね♪』

絵里『お、ぉおおおっ!!?』

あんじゅ『どぉ?問題なさそう?』

615: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 00:01:15.64 ID:9UNyxEft
絵里『うんっ!これならもう大丈夫っ!!』シャキッ

あんじゅ『ふふっ。』

英玲奈『よし、頑張ってこい。』

希『緊張したらウチを見るんやでー?』

絵里『……みんな、ありがとう。』


絵里『わたし、頑張るから!』


───

616: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 00:03:23.05 ID:9UNyxEft
こころ「良かったね、亜里沙ちゃん!新生徒長だよ!」

亜里沙「あ、えへへ」

穂乃果「なんやかんやあったけど、上手く行って安心したよ!」

ことり「うん。亜里沙ちゃんのお姉さん、凄く合ってると思うよぉ」

亜里沙「でもなぁ。お姉ちゃん、緊張するとたまに訳わかんない事言うから心配だよぉ」

こころ「読みながら喋れば大丈夫だと思うよ?それに、みんなから聖天術も掛けて貰ってるし」

617: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 00:07:54.52 ID:9UNyxEft
穂乃果「アレってさ、下天で習ったヤツだよね?どんなのだっけ?」

こころ「……穂乃果さん、もしかして忘れたんですか?」

穂乃果「え!?い、いやいや!ただの確認だよ!?ホントだよ!?」

亜里沙(呪文ど忘れした時の希さんとそっくり……)

ことり「アレはねぇ?体調とか、心の調子を元に戻してくれるものだよぉ」

穂乃果「だ、だよねぇ!?さっすがことりちゃん!」

ことり「えへへ~♪」

こころ「ハァ……」

618: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 00:09:28.92 ID:9UNyxEft
「──君たち。」

穂乃果「へ?」

こころ「な、なんですか?」

希「……」

亜里沙「希さん?」

ことり「どうしたの?」

希「……これから、また続きを観るんだよね?」

こころ「は、はい。そのつもりでしたけど」

亜里沙「あ!もしかして、そろそろ帰らないといけない時間ですか?」

619: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 00:11:19.00 ID:9UNyxEft
穂乃果「え~っ!まだ全部終わってないよ~」

希「そうやなくて、」

ことり「のぞみちゃん?」

希「……あのね、みんなに約束して欲しい事があるんよ」

亜里沙「や、約束?」

こころ「なんですか?」

希「……」

希「たとえ、これから何が肆号に映ろうとも──」


希「ツバサを、嫌わないであげて欲しいの」

620: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 00:18:57.32 ID:9UNyxEft
こころ「えっ」

穂乃果「……」

ことり「っ」

亜里沙「ど、どう言う事ですか?」

希「……」

ことり「……生徒長の挨拶で、何かがあったの?」

希「……うん。」

穂乃果「……」


穂乃果「穂乃果は嫌わない!」

希「!」

621: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 00:21:55.47 ID:9UNyxEft
穂乃果「だってさ、たとえ過去に何があったとしても、ツバきゅんは良い人だもん!」

穂乃果「それに、今のツバきゅんがちゃんと反省してて、そこから少しでも良くなろうって頑張ってるのなら、」

穂乃果「それはもう、責めちゃいけない事なんだと思う。」

希「穂乃果ちゃん……」

ことり「ことりも、そう思うかな。」

ことり「悪いことをしたら、やっぱり罰は受けなくちゃいけないんだろうけど」

ことり「それでも、その罰をツバサちゃんは受け入れてるんだから、やっぱりツバサちゃんはお友達だよ。」

622: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 00:29:28.22 ID:9UNyxEft
希「……ありがとう。」

希「二人はどう?」

こころ「……わ、私は、」

こころ「私は、お姉さまの事があるので、正直なんとも言えませんが」

こころ「もし、お姉さまが赦すと言うのでしたら、私も赦します」

こころ「……その時こそ、本当のお友達として、一緒に遊びたいです。」

亜里沙「……」

希「亜里沙ちゃんは?」

623: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 00:32:55.20 ID:9UNyxEft
亜里沙「……私は、お姉ちゃんにやってきた事がまだ赦せないけど、でも」

亜里沙「……」

希「……やっぱり、やめておく?」

亜里沙「……っ」

亜里沙「いえ、お願いします。」

希「…………分かった。」

希「ことりちゃん。」

ことり「うん。」


シュルルルル……。

624: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 00:35:05.72 ID:9UNyxEft
覆水盆に返らず。

一度起こってしまった出来事は

もう、何があろうと変わることはありません


希が語る、生徒長の挨拶で起きた惨劇も

すでに終わっている事と知りつつ

しかし皆、
映る情景を待つ顔は戦々恐々としています。


ですが、それは致し方ないこと

人は、その待つ時間をこそ

恐るものですから。

631: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 22:46:13.04 ID:9UNyxEft
───



『──第2007周期、音ノ木第二天界学校生徒長に就任しました、上天三組の絵里です。』


絵里『この度、生徒長に就任して……あの、とても緊張していますっ』

絵里『えっと、非力ではありますが、これから学校の為に尽力させて頂いたいと思いますので、』

絵里『どうか皆さん、ご協力の程お願いしまちゅ』

絵里『ぁ、か、噛んじゃった……っ///』

632: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 22:48:51.59 ID:9UNyxEft
<いいよいいよー!

<大丈夫ー!

<落ち着いてー!


絵里『はわっ、す、すみませんっ///』ボゴッ

絵里『いったぁ!?』


<アッハッハッハッ!


希『あっはは!マイクに頭突きかましたでぇ~っ!』

あんじゅ『もぅ……あの子、ホント本番に弱いんだから』

英玲奈『zzZ』

理事長『うふふふ~♪』

633: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 22:59:10.06 ID:9UNyxEft
絵里『うぅっ///』

絵里『(あぁもうっ、やっぱり本番だとこうなるんだわ……っ!)』

絵里『(ど、どうしよう……っ、なんかまた緊張してきたかもっ)』

絵里『(……ん?)』


希『(え~りちっ)』パチッパチッ


絵里『(の、のぞみ?)』


あんじゅ『(ほら、頑張りなさ~い)』ヒラヒラ


絵里『(あんじゅ……)』

634: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:00:08.51 ID:9UNyxEft
あんじゅ『(英玲奈も応援してるわよ~)』グイッ

英玲奈『zzZ』ヒラヒラ


絵里『(……みんな、)』

絵里『~っ』グッ


絵里『──コホンッ、』


絵里『失礼しました。』

635: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:02:51.75 ID:9UNyxEft
絵里『今回、皆さんが任せてくれた、この生徒長と言う立場。』

絵里『その責任を胸に刻み、これからの活動に従事して行きたいと思います』

絵里『そして、選挙戦でも掲げていた、中立者との連携による三界の融和。』

絵里『コレを実現する為にも、生徒の皆さんに先ずは関心を向けて頂ける様、中立者の方との交流の場や、天界だけではなく、下界や辺境の歴史なども深く理解して貰える為に』

絵里『中立者、学校側とで計画を立て、それらの催し物などをこれから企画して行く予定です。』


希『お~。』

あんじゅ『うんうん、いい調子ね。』

理事長『かっこい~わよ~♪』

636: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:05:27.92 ID:9UNyxEft
絵里『また、学校側と生徒達との触れ合い等の機会も増やす事で、更に学校生活を豊かにして行ける様──』

絵里『ん?』


希『?』

あんじゅ『ハァ……』

あんじゅ『今度はなに?もしかして、読めない漢字でも書いたのかしら?』

希『あはは、あり得るなぁ』

英玲奈『zzZ』

理事長『あらあら~♪』

637: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:06:51.66 ID:9UNyxEft
絵里『……』

絵里『(あれ……わたし、)』

絵里『(こんなの書いたっけ?)』

絵里『(いやでも、最後にルビ振ってあるし……きっと書いたのよね……?)』


<頑張れー!


絵里『!?』


<絵里ちゃん可愛いよー!

<新生徒長ー!

638: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:08:36.20 ID:9UNyxEft
絵里『あっ、あはは、ごめんなさい。』

絵里『(悩んでてもしょうがないっ、最後までちゃんと読まなきゃ!)』

絵里『え、えーっと、続けますね?』


絵里『──コホンッ、』



絵里『"此処に炎の体現を識(シル)す"』


理事長『!!?』

639: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:12:41.55 ID:9UNyxEft
あんじゅ『は?』

希『???』


絵里『(あ、あれ?なんかコレ、)』

絵里『(聖天術使う時みたいな感じが……)』キュィイイイッ!


絵里『略式、呪禁術……?』


理事長『絵里ちゃんっ!!ダメよッッ!!!!!』

英玲奈『!?』



『──火ノ陰。』



…………ヒィィイイイイイイイイイイイイッッッ

640: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:15:19.55 ID:9UNyxEft
ズボゥッッッ!!!!!

絵里『!!?!?』


メラメラメラメラッッッ


<きゃぁあああああっっっ!!!!

<火だぁあああっ!!!

<あついっ!!熱いよぉおおおっ!!!!


あんじゅ『ぇ……はぁ!!?』

希『なっ、なんやなんやぁ!!?』

英玲奈『お、おいっ!なんなんだコレはっ!?』

『離れなさいっ!!!』

641: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:21:46.78 ID:9UNyxEft
理事長『──ッ!』ガチャッ


ズォォオオオォオオオオオアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!


あんじゅ『なになに!!?今度はドアぁ!!?』

理事長『みんなっ!!このドアの後ろにまわってっ!!!』

理事長『三人ともっ!火に囲まれてる子を助けられる!!?』

あんじゅ『え!?は、はい!』

希『なにがなにやら……っ!』

英玲奈『文句を言ってる場合か!やるぞっ!!』

642: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:23:27.45 ID:9UNyxEft
メラメラメラメラッッッ

<助けてっ!!助けてぇええええっ!!

あんじゅ『大丈夫!今そっちに行くからっ!!』

<あついよおぉぉぉっ!

希『すぐ治すからなっ!安心して!』

<ねぇ!友達が居ないの!

英玲奈『任せろ!必ず見つけ出す!』

理事長『火が収まるまで、絶対にドアの前に出たらダメよっ!!』

643: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:26:04.47 ID:9UNyxEft
メラメラメラメラッッッ

英玲奈『あんじゅっ!漆号を使えっ!!あの三人なら消火と治療を同時に出来るっ!』

あんじゅ『う、うん!』

希『それと上呂やっ!!怪我人が結構いるから、少しでも広範囲に治療せんと!』

あんじゅ『分かった!ここはお願いっ!』

理事長『火の回りが早いから気を付けてっ!!』

理事長『みんな!とにかく早く外に出て!!早くっ!!』

644: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:27:17.25 ID:9UNyxEft
ワァアアアァアアアアアッッッ

コワイヨオォォォッ

タスケテエェェ……

………………


………








絵里『』

645: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:28:25.05 ID:9UNyxEft
生徒長就任の挨拶

その最中、突如巻き起こった惨劇の炎

燃える校舎、火に囲まれる子供たち

阿鼻叫喚の地獄で、懸命に救助を試みる
理事長と上天三人組。

そして、この現実を受け止められず

ただ茫然と、一人壇上に立ち尽くす


心優しき、天使の絵里。

646: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:35:08.79 ID:9UNyxEft
───



こころ「…………ぇ」

ことり「ひ、ひどい……っ」

穂乃果「こんなっ……こんなのって……っ」

こころ「の、のぞみ……さん、」

希「……」

こころ「どうして……なんで……?」

こころ「こ、これ……あの人がやったんですか……っ」

希「……そうとも言えるし、そうじゃないとも言える。」

647: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:37:56.38 ID:9UNyxEft
こころ「ッッッ」

穂乃果「……絶対に違う。」

穂乃果「あの人は、無闇に誰かを傷つける様な人に見えなかったもん」

ことり「……あの挨拶文を読む時、二回詰まったよね」

こころ「は、はい」

ことり「一回目はただ緊張して噛んだだけだったけど、二回目は違った」

ことり「なんて言うか……予期してない事が起こった様な、そんな顔してたもん」

648: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:42:12.92 ID:9UNyxEft
「……続きを」


ことり「!」

亜里沙「…………早く続きを、」

こころ「あ、亜里沙ちゃんっ」

穂乃果「ッッッ」

希「……分かった。」

ことり「……」


シュルルルル……。

649: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:43:26.12 ID:9UNyxEft
───



『──なぜ、貴方の挨拶文に簡易呪文の文言が組み込まれていたのか、それは分かりません』


理事長『ですが、起こってしまった事は受け止めなければならないんです』

理事長『それが、故意的だろうと恣意的だろうと。若しくは、偶発的なものであったとしても』

理事長『……絵里さん。』


絵里『……』

650: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:45:34.84 ID:9UNyxEft
理事長『学校側。そして、親御さん達"天親会"の役員と協議した結果──』

理事長『貴方を、最長一年間の停学処分とします。』

絵里『……はい』

理事長『ですが、コレはあくまでも仮処分です。これからの素行を視野に入れて、その上で最終的な決定を下す事になります』

絵里『……はい』

理事長『……』

651: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:46:58.98 ID:9UNyxEft
理事長『……心配しないで、生徒のご両親方の誤解は必ず解くから』

理事長『それまでの間、どうか頑張って堪えて欲しいの』

絵里『……』

理事長『貴方がこんな事をする筈がないのは、私はもちろん、お友達のみんなも分かってる事だから。ね?』

絵里『……はい』

理事長『っ』

652: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:48:02.00 ID:9UNyxEft
ギュッ

絵里『……』

理事長『絵里ちゃんっ、大丈夫。大丈夫よ。』ギュッ

絵里『……』

絵里『……はい』

スッ

理事長『あっ』

絵里『……失礼します』ガチャ

バタンッ


理事長『…………絵里ちゃん。』

653: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/21(月) 23:49:19.03 ID:9UNyxEft
『絵里。』


絵里『……』


あんじゅ『……』


絵里『……なに、』

あんじゅ『あのね、こんなこと言うの柄じゃないけど』

あんじゅ『何があっても、私は、私たちはアナタの味方だから』

654: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/22(火) 00:08:01.95 ID:NxmKydbj
絵里『……』

あんじゅ『だから、それだけは忘れないで欲しいの』

絵里『……うん、ありがとう』

あんじゅ『絵里、』

絵里『わたし、もう行くね……』

あんじゅ『え?』

絵里『……』スッ

あんじゅ『あ、え、絵里っ』


あんじゅ『……』

655: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/22(火) 00:10:04.31 ID:NxmKydbj
訳もわからぬまま、

全てを失ったかの様に感じている

天使の絵里。



絵里『……』



あの日から動かない心に、ただ寄り添う様

一人、雲の彼方を見つめています。

665: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 22:41:13.46 ID:F5ACBOXG
絵里『……』



絵里『……』



絵里『…………下界、』



絵里『下界に……帰ろう。』



絵里『もう、居場所なんて何処にもないけど……』

666: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 22:42:00.10 ID:F5ACBOXG
絵里『……』


絵里『…………亜里沙は、』


絵里『亜里沙は……きっと失望するだろうなぁ……』


絵里『こんなお姉ちゃんじゃ……嫌だよね……』



絵里『…………ごめんね……』

667: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 22:43:42.91 ID:F5ACBOXG
ポタッ


「……うっ、くぅ……っ」


亜里沙「そんな事ないっ……そんなことない……っ」ポロポロ

亜里沙「おねえちゃんっ、おねえちゃぁん……っ!」

こころ「亜里沙ちゃん……っ」ギュッ

亜里沙「ぅっ……うぅ……っ、」

穂乃果「……」

ことり「……っ」

希「……続けるよ。」

668: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 22:46:11.20 ID:F5ACBOXG
───



『い、一年間の停学っ!!?』


あんじゅ『それってどう言うことよっ!!?』

希『……』

あんじゅ『おかしいでしょ!!天親会の人達はともかく、どうして理事長までそれを承認してるの!!?』

希『……立場上しょうがないんよ。』

669: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 22:47:33.83 ID:F5ACBOXG
あんじゅ『しょうがない!!?しょうがないで絵里の未来を潰すのっ!!?それもしょうがないとでも言うつもり!!?」

希『……っ』

あんじゅ『私はそんなの許さないっ!!絵里が停学になるんだったら、私もそうして貰うわっ!!』

希『~ッッッ』

希『そんなん、なんの意味もないって事くらい分かるやろ!?ちょっとは落ち着きっ!!』

あんじゅ『ッ』

670: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 22:56:16.28 ID:F5ACBOXG
希『あんじゅにしてもえりちにしても、少し落ち着く時間が必要なんや』

あんじゅ『……』

あんじゅ『……その、落ち着くまでって、一体いつまで?』

希『え?』

あんじゅ『絵里が……あの子がそれっぽく見えた頃には、もう手遅れかも知れないのに?』

あんじゅ『もしかしたら本当は、誰かに傍にいて欲しいのかも知れないのに?』

671: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 22:58:01.61 ID:F5ACBOXG
希『……』

あんじゅ『……私は行く。絵里を一人になんてさせない。』

希『……』

あんじゅ『……』

あんじゅ『……じゃあ』スッ

『ちょっと待て。』

あんじゅ『!?』

希『あっ』


英玲奈『……』

673: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:05:17.93 ID:F5ACBOXG
あんじゅ『あ、アンタっ、今まで何処に行ってたのよ!?』

英玲奈『あぁ、すまなかったな』

希『みんなの治療が終わってから全然見なかったけど、一体何してたん?』

英玲奈『……それはコイツから聞け。』グイッ

あんじゅ『!』

希『!?』


ツバサ『……っ』

676: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:13:33.51 ID:F5ACBOXG
あんじゅ『つ、ツバサっ!?』

ツバサ『っ』

英玲奈『おい。』

ツバサ『!』

あんじゅ『……アナタ、泣いてたの?』

希『よく見たら目ぇ真っ赤っかだけど、どうしたん?』

ツバサ『……あ、あの、』

ツバサ『ご、ごめん……なさぃ……』

677: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:16:36.88 ID:F5ACBOXG
あんじゅ『え?』

希『!』

英玲奈『……』

ツバサ『ッッッ』

あんじゅ『ど、どうしたの?一体何に対して謝って……あ、』

あんじゅ『もしかして、今までの事で?』

ツバサ『~っ』

あんじゅ『……ふふ、もういいのよ。』

678: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:18:58.46 ID:F5ACBOXG
あんじゅ『確かにケンカはしちゃったけど、また5人で仲良く出来るのなら、私はなにも』

ツバサ『ち、ちがうっ』

あんじゅ『へ?』

英玲奈『……』

希『ツバサ?なにが違うん?』

ツバサ『ぅ……え、えっと……』

あんじゅ『もぅ、どうしたのよ。こんなのアナタらしくないわ。もっとハッキリ言って良いのよ?』

英玲奈『だ、そうだが?』

ツバサ『うぅっ』

679: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:21:44.66 ID:F5ACBOXG
ツバサ『……せ、生徒長挨拶のっ……あ、あれ……っ』

あんじゅ『生徒長挨拶の……あれ?』

希『……?』

ツバサ『じ、じつはっ……っ』

希『……』

希『──ッ!!?』ザワッ

ガタンッ!!!

ツバサ『ひっ!?』

あんじゅ『!?』

680: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:27:27.93 ID:F5ACBOXG
希『……』

ツバサ『~ッッッ』

希『……英玲奈。』

英玲奈『……』

希『私、今すっごく嫌な想像してるんだけど、もしかしてコレ……』

英玲奈『あぁ、恐らくな。』

希『コイツ……っ!』ザッ

ツバサ『ひいぃぃぃっっ』

あんじゅ『ちょ、ちょっと!』ガシッ

681: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:29:30.00 ID:F5ACBOXG
希『ッッッ』

ツバサ『ぅっ……っ』

あんじゅ『落ち着きなさいよ!それになんなの!?生徒長挨拶の"アレ"ってなに!?』

英玲奈『……』

英玲奈『……あの、謎の火災が起きる寸前、最後に絵里が読み上げた言葉を覚えているか?』

あんじゅ『さ、最後?』

英玲奈『それまでの文とは全く整合性の取れていない、文脈の繋がらない言葉が最後に合った』

あんじゅ『……あっ、』

682: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:31:30.33 ID:F5ACBOXG
英玲奈『火災のあと、私は絵里が書いた挨拶文を回収していたんだ。そこに有る文面を知るために』

希『……』

英玲奈『そして調べた。例の言葉が何を意味しているのか、本当に絵里がそれを書いたのか、を』

あんじゅ『そ、それで?』

ツバサ『ッ、ぅっ……っ』

英玲奈『……』

英玲奈『まず、絵里が読み上げたものだが』

683: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:40:23.49 ID:F5ACBOXG
英玲奈『アレは力を持った者が、その文言を読み上げるだけで発動してしまう、"略式呪禁術"と言うものだ。』

あんじゅ『りゃ、りゃくしき?それに……呪禁術って確か……』

希『そうやな。呪禁術は、辺境の魔女たちが呪文によって繰り出す術の事や』

希『略式って言うのは、ソレの簡易版って事やろ』

あんじゅ『なっ、なんでそんな物が絵里の挨拶文にっ!?』

英玲奈『二つ目。あの略式呪禁術は、絵里の意思で書かれたものなのか』

684: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:42:40.77 ID:F5ACBOXG
英玲奈『……その答えは、この大馬鹿者から聞くといい。』

ツバサ『っ』

あんじゅ『……ぇ』

ツバサ『ぁ、あのっ……』

あんじゅ『…………まさか、アンタが……?』

希『……』

ツバサ『ッ……ッッ!』


ツバサ『ご、ごめん……なさぃ……っ』

バチイィィィッッッ!!!

685: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:43:59.67 ID:F5ACBOXG
ツバサ『うぐっ!』

希『……』

英玲奈『……』

ツバサ『ぅ……うぅ……っ』

あんじゅ『……』

あんじゅ『──アナタ、』



あんじゅ『もう、友達じゃないわ。』

686: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:50:15.48 ID:F5ACBOXG
ツバサ『ひっ……ウゥ……ッ』

あんじゅ『大方、選挙戦に負けた腹いせにでもやったんでしょうけど、』

あんじゅ『アレで一体、何人が怪我したと思ってるの?何人が、未だに怯えてると思ってるの?』

あんじゅ『……絵里がいま、どんな気持ちだと思ってるのよっ』

ツバサ『うぅぅっ……ひぅぅ……っ』

あんじゅ『アナタのその、本当にくだらないプライドのせいで……みんなが不幸になったわ』

ツバサ『ごめんなさいっ……ごめんなさいっ……っ!』

687: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:51:50.51 ID:F5ACBOXG
あんじゅ『…………まずは、絵里にソレを言うのね。』

あんじゅ『どうなるかは知らないけど、何されたって文句なんか言えないから』

ツバサ『はいっ、はいっ……っ!』

あんじゅ『……っ』

希『……えりちはな、本当に君と仲良くしたいって、そう思ってたんだよ』

希『君との勝負より、仲直りして……また5人一緒に遊びたいねって……』

希『そう言ってたんだよ?』

688: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:53:12.24 ID:F5ACBOXG
ツバサ『ウッ……うぅぅ……っ』

英玲奈『……』

英玲奈『本当は、お前たちのどちらが勝とうとも、それを祝福してやりたかった……』

英玲奈『その上で、お前たち二人のわだかまりを解いてやれればと……』

英玲奈『……そう、思っていたんだ。』

希『ッ』

ツバサ『ごめんなさいぃぃっ……ごめんなさいぃぃっ!』

689: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:53:47.54 ID:F5ACBOXG
あんじゅ『……』

あんじゅ『……早く行きなさい。』

あんじゅ『そして、どんな結果になろうとも、必ず真実を打ち明けなさい』

あんじゅ『今アナタに出来ることは、たった一つ、それだけよ。』

希『……』

英玲奈『……』


ツバサ『うっ……ウゥゥゥッ……ッ』


───

690: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:55:12.28 ID:F5ACBOXG
ザッ


亜里沙「……」


こころ「あ、亜里沙ちゃん……っ?」

穂乃果「っ」

ことり「~っ」

こころ「あの……」


亜里沙「…………ねぇ、」




亜里沙「天使監督官は、どこにいるの」

691: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/23(水) 23:56:44.48 ID:F5ACBOXG
こころ「ッ」ゾッ

希「……亜里沙ちゃん。ツバサは」

亜里沙「うるさい」

希「っ」

ことり「あ、亜里沙ちゃん……変なこと考えたらダメだよ?」

亜里沙「……」

穂乃果「ツバっ……か、監督さんはね?ちょっとおっちょこちょいだけど、いっつもみんなの事考えてて、優しk」


『寒々しき枯れ地。永久に咲く沈丁花』ヒョォオオオッ

692: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 00:03:48.82 ID:L05OkoqD
穂乃果「!?」

希「やめなさいっ!!」

亜里沙「それはコッチの台詞です。」

亜里沙「……私は、私の姉を貶めた天使監督官を許さない」

こころ「あ、亜里沙ちゃん……っ」

ことり「っ」

亜里沙「希さんなら分かりますよね。こんな狭い部屋で、氷の中級二句なんて使ったらどうなるか……」

希「~ッッッ」

693: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 00:17:53.21 ID:L05OkoqD
亜里沙「炎で相殺しても良いですよ?ただ、相関的に炎が打ち勝つので、結局この部屋は、極寒地獄から炎熱地獄に変わるだけですが」

穂乃果「あ、亜里沙ちゃん!!」

バッ!

穂乃果「うっ!」

亜里沙「貴方が、最初に氷漬けになりますか?」

穂乃果「~っ!」

ことり「ッッッ」

希「亜里沙ちゃん……」

698: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 22:30:03.52 ID:L05OkoqD
/cVσ_VσV 皆さん、見て頂き有難う御座います
     これから少しだけ更新しますので、
     どうか宜しくお願いします。

699: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 22:39:51.19 ID:L05OkoqD
生徒長挨拶で起きた謎の火災

この事件が、実はツバサの犯行だったと知った

過去の上天三人と天魔混合組。

そして、姉が堕天するきっかけとなった

その張本人が、今近くにいる事を知り

復讐の炎に身を焦がしつつある

魔女見習いの亜里沙。

風の上級三句を操れる彼女の暴走、それは

この天界学校の消滅を意味しています。

700: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 22:45:08.95 ID:L05OkoqD
亜里沙「さぁ、嫌ならここで大人しくしていて下さい」

亜里沙「私はコレから、天使監督官に復讐しに行くんですから」

ギュッ

亜里沙「えっ!?」

こころ「~っ」

穂乃果「こ、こころちゃん!!?」

希「だめっ!!離れてっ!!」

ことり「ッッッ」

亜里沙「い、いいの?こころちゃんが最初に氷漬けになるよ?」

こころ「~ッ!」ギュッ

701: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 22:46:01.42 ID:L05OkoqD
亜里沙「……じゃあ」スッ

こころ「わ、私もね!」

亜里沙「!」

こころ「私もっ、お姉ちゃんがいるから……だからなんとなく分かるのっ」

こころ「もし、私と亜里沙ちゃんの立場が逆だったら、きっと私もそうしてた」

亜里沙「っ」

こころ「お姉さまの髪の毛を切られた時、本当にあの人の事、どうにかしてやろうって思っちゃったもん」

702: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 22:46:40.52 ID:L05OkoqD
こころ「だからっ!」

亜里沙「ッッッ」

『し、疾霜氷結!』ヒュオッ!!!

こころ「うぅっ!?」カチンッ

穂乃果「こころちゃんっ!!!」

ことり「うわっ!?」

希「──ッ!」バッ

亜里沙「っ」

希「今すぐその手を下ろしなさい。」

希「さもないと……」

703: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 22:53:47.68 ID:L05OkoqD
亜里沙「さもないと、なんですか。」

希「……ハッキリ言うよ。」

希「風以外の詠唱破棄が出来ない亜里沙ちゃんじゃ、ウチには絶対に勝てない」

亜里沙「の、希さんの手の内くらい知ってます!」

希「……本気でそう思ってるの?」

亜里沙「~ッッッ」

希「もう一度だけ言うね。」

希「その手を下ろしなさい」

704: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 22:55:34.14 ID:L05OkoqD
亜里沙「い、イヤですっ!!」

希「……」スッ

『荒れ狂う迅雷。紮止。永久に咲く沈丁花』バチバチッ!ヒュォオオオッ!

亜里沙「!?」

『呪禁術・疾霜大へk』


「ま、待って下さいっ!」


希「ッ」ビクッ

こころ「……ッッ」

705: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 22:56:59.65 ID:L05OkoqD
希「こ、こころちゃん!?」

穂乃果「動いちゃダメっ!!直ぐに治すからっ!!」

こころ「いいんですっ!亜里沙ちゃんと二人で話させて下さいっ!!」

ことり「で、でも、足が凍っちゃったんだよ!?早く治さないとっ」

こころ「……大丈夫。私は、大丈夫なんですっ」グッ

亜里沙「~っ」

706: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:00:39.51 ID:L05OkoqD
こころ「えへへ、み、右足……動かないや。」

こころ「……ここあも、こんな感じだったのかなぁ」

亜里沙「こ、ここあって……?」

こころ「うん……妹なんだけどね、」


こころ「"私のせい"で、右足が動かなくなっちゃったの」

穂乃果「──ッ!」

707: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:01:07.51 ID:L05OkoqD
亜里沙「えっ」

こころ「近所に城砦跡地があってね、そこでよく遊んでたんだけど」

こころ「瓦礫の山でかくれんぼしてる時、私が後ろから脅かしたの、そしたら……」

こころ「そのまま……上から落ちちゃって……」

亜里沙「……」


穂乃果「……こころちゃん、」

ことり「っ」

希「……」

708: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:23:11.28 ID:L05OkoqD
こころ「お母さんは、必死で天使長に懇願してくれたけど……下界で起きた事には基本的に干渉出来ないらしくて……」

こころ「そしたら、お姉さまが中立者になるのを諦めてまで……お医者さんの勉強を始めて……っ」

こころ「私がやらなくちゃいけなかったのにっ……お姉さまはっ……っ!」

亜里沙「……」

こころ「……そんなお姉さまを、天使監督官のツバサさんは、ただ私利私欲のためだけに貶めた。」

709: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:23:46.49 ID:L05OkoqD
こころ「最初に見たときは、私も亜里沙ちゃんとおんなじ様な気持ちになったよ」

こころ「もし、私も呪文が使えたなら……きっとあの人の事を……」

亜里沙「……じゃあ、一緒に行こうよ。」

こころ「……」

亜里沙「あんな人、天使になんてなっちゃダメなんだよ」

亜里沙「私、お姉ちゃんが堕天してから下界の人にお世話になるまでの話を、あんじゅさんから聞いたんだ」

希「……」

710: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:24:39.99 ID:L05OkoqD
亜里沙「……家にも、天界にも帰れずに、ずっと一人っきりで彷徨って」

亜里沙「お友達も誰もいなくてっ……下界の人にまで冷たくされて……っ!」

こころ「……」

亜里沙「1年前にあんじゅさんから見つけて貰えなかったら……もしかしたら……っ」

亜里沙「……そう考えると、もう収まりがつかなくなるの」

亜里沙「天使になって、また帰ってくる筈だったお姉ちゃんを、あの人が奪っていったって……そう考えたらっ」

711: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:25:25.50 ID:L05OkoqD
亜里沙「──あ、アイツをっ、こr」

ギュッ

亜里沙「!」

こころ「……」

『Доброта. печаль. Я и. Ты и. завтра』


こころ『聖天術・かわいそうにね』

亜里沙「──ッ!?」


ポワァ……

712: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:28:29.56 ID:L05OkoqD
亜里沙「な、なんなの?これ、」

こころ「っ」ヨロッ

こころ「……せ、聖天術ってね?力だけじゃなくて、心を分け与える為の術でもあるの」

こころ「亜里沙ちゃんの心の痛みを、少しでも分け合いたかったから……」

亜里沙「~っ」

こころ「……」

こころ「この術は、言葉ではどうしても伝えられない、自分と相手の本当の気持ちを共有する為のものなの」

713: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:29:26.81 ID:L05OkoqD
亜里沙「ッ……ッッ」

こころ「でもね?どちらか一方が拒めば、この術は成立しないから……だから、」

こころ「あとは、亜里沙ちゃんの心に任せるよ」ニコッ

亜里沙「うっ……うぅ……」フワァ

こころ「……大丈夫。私たちはまだ、何も失くしてなんてないんだから」


こころ「ここからまた、幸せになれるよ。」

714: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:30:49.43 ID:L05OkoqD
亜里沙「あぁ……あぁああぁぁぁ……っ」

パァァアアアアアアアッッッ


こころ「……ふふ。」

こころ「──っ」フラッ

ガシッ

穂乃果「……」

こころ「」

穂乃果「……こころちゃん。君はもう、立派な天使だよ。」スッ

ことり「ふふ。もう追い抜かれちゃったかなぁ」ナデナデ

715: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:35:25.20 ID:L05OkoqD
希「……」

亜里沙「ウッ……ウゥ……」

希「……亜里沙ちゃん。」

希「えりちも、今は結構幸せに生きてるんやし、こうしてまた亜里沙ちゃんとも会えたんやから」

希「ここからまた、みんなでやり直して行こうよ」

亜里沙「うぅっ……はいっ……はいっ。」

亜里沙「こころちゃんの気持ちが……私のことっ……本当に思ってくれてるって……伝わってきたからぁ……っ」

希「うん。いいお友達見つけたね♪」

716: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:36:38.85 ID:L05OkoqD
希「それに、ウチにとっても亜里沙ちゃんは大事な大事なメイドさんやもん♪一生面倒見るからね?」

亜里沙「……グスッ」

亜里沙「…………最初は抱き枕扱いしたクセに、」

希「あ~。抱き枕兼メイドさんってことで?」

亜里沙「……ば~か。」

希「うわっ、いつからそんなに口悪くなったん?」

亜里沙「全部希さんのせいです。」

希「え~っ、ウチ~?」

717: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:37:45.47 ID:L05OkoqD
ガチャンッ!!!

希「!?」

亜里沙「えっ!?」


「……お前ら、」

「あらまぁ、こんなとこでパーティーしてたのぉ?」


穂乃果「あ!」

ことり「あららぁ……」


英玲奈「まったく」

あんじゅ「遅いのよぉ、アナタたち」

718: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:39:33.57 ID:L05OkoqD
希「あ、あんじゅ!?」

亜里沙「あんじゅさん!」

穂乃果「おぉ!英玲奈先生!」

ことり「あはは……見つかっちゃったね。」

英玲奈「──ん?」チラッ

こころ「」

英玲奈「お、おい!?大丈夫か!?ちび助!」バッ

こころ「」

719: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:50:36.75 ID:L05OkoqD
英玲奈「待ってろ!今治してやるからな!」

穂乃果「あ、私も手伝う!」

ことり「わたしも!」

パァアアアアアッ

亜里沙「あ、あのぅ、」

あんじゅ「……ねぇ、あの氷って」

亜里沙「っ」

720: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:52:08.35 ID:L05OkoqD
希「あんじゅ、実はな。」

あんじゅ「亜里沙がやったの?」

亜里沙「うっ」

希「だから、コレには訳があっt」

「はいっ、」

希「!」

亜里沙「……わたしが、やりました」

あんじゅ「……」

希「……ハァ。あんじゅも分かってるやろ?亜里沙ちゃんは無闇やたらにこんな事する子じゃないって」

721: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:53:09.63 ID:L05OkoqD
あんじゅ「そんなの知ってるわよ。」

希「へ?」

亜里沙「っ」

あんじゅ「こう言う誤解とか、知りもしないで語る偏見なんてものは、6年前に嫌ってほど味わったじゃない。そうでしょ?」

希「ッ」

あんじゅ「だから、一度信じた人を私はもう絶対に疑わないわ。」

722: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/24(木) 23:55:57.08 ID:L05OkoqD
亜里沙「あ、あんじゅさn」

パチンッ

亜里沙「ッッッ」

あんじゅ「……誰も叱ってない様だから、コレは私の役目ね」

あんじゅ「そして、私のお叱りはコレでおしまい。」

亜里沙「っ……はいぃ……っ」

あんじゅ「ふふ。いい子いい子」ナデナデ

723: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/25(金) 00:05:54.37 ID:XuXOfBob
ツバサへの怒りを抑えきれなかった

魔女見習い亜里沙の暴走

しかし、同じく姉をもつ
上天生こころの優しさと慈しみ

その気持ちを、聖天術により共有することで

亜里沙に宿った復讐の炎は
温かい涙と共に、淡い光の粒を放ちながら

ゆっくりと消えて行きました。

730: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/25(金) 23:12:34.86 ID:XuXOfBob
「…………ぅ、ぅうん……」


英玲奈「お、気が付いたか」

こころ「……」

穂乃果「こころちゃん!」

ことり「良かったぁ」

こころ「…………あれ、お家?」

穂乃果「違うよぉ。さっきまで居た空き部屋だよ?」

こころ「……あぁ、そっか。」

731: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/25(金) 23:14:15.59 ID:XuXOfBob
「こ、こころちゃんっ」

こころ「!」

亜里沙「~っ」

こころ「亜里沙ちゃん……」

亜里沙「ぁ、あのっ、ごめんね……」

こころ「……」

亜里沙「わたし……とんでもないことしちゃった……っ」

732: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/25(金) 23:25:44.28 ID:XuXOfBob
亜里沙「もし、許してもらえるのなら……私なんでもするからっ」

こころ「……分かった。」

亜里沙「~っ」

ポスッ

亜里沙「!」

こころ「ちょっとね、このまま枕になっててくれる?」

亜里沙「へ?」

こころ「わたし専用の膝枕♪」

亜里沙「……うん。いいよ。」

733: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/25(金) 23:26:53.04 ID:XuXOfBob
「ハァ!?」

亜里沙「!」

希「亜里沙ちゃんはウチ専用の抱き枕なんですけどぉ!!?」

こころ「えっ」

希「ウチはぁ!毎晩亜里沙ちゃんを抱っこしないと夜も寝れない身体にn」

あんじゅ「……」ボッ

希「──ッ!!?!?」

「あっちッ!!!あっちいぃぃぃぃぃッッッ!!!!!」

734: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/25(金) 23:29:16.44 ID:XuXOfBob
希「や、ヤバいっ!!お尻ヤバいっ!!!」

あんじゅ「下劣で変 じゃあ目も当てられないわねぇ」

英玲奈「カチカチ山ののんたぬきだな」

希「うぉおおぉおおおおおっ!!!」パシッパシッ


穂乃果「おぉ、」

ことり「なんか……」

735: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/25(金) 23:31:17.80 ID:XuXOfBob
希「はひぃっ、はひいぃぃぃ……っ」

あんじゅ「お尻が熱くなって、頭が少し冷えたんじゃない?」

希「あ、あり得んからっ!!!こんなんお尻丸出しやんっ!!?」

英玲奈「落ち着け。下着は無事だ」


こころ「この光景って……」

亜里沙「うん、」

736: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/25(金) 23:34:37.21 ID:XuXOfBob
あんじゅ「後で、おっきなクマさんのパッチワーク貼ってあげるわねぇ♪」

英玲奈「はは、似合うんじゃないか?」

あんじゅ「そうねぇ」クスクスッ

希「氷魔法気持ちい~♪」ヒュォオオッ

穂乃果「……」

穂乃果「良かったね。」


希「え?」

あんじゅ「?」

英玲奈「ん?」

737: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/25(金) 23:36:23.74 ID:XuXOfBob
穂乃果「……」

あんじゅ「なにが良かったの?」

穂乃果「だってさ、今はまだ三人だけだけど……それでも、」

穂乃果「友達が揃うって、なんか良いなって!」

希「……あ~、」

あんじゅ「……」

英玲奈「……そうだな、その通りだ。」

738: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/25(金) 23:44:38.80 ID:XuXOfBob
ことり「なんかかっこいいねぇ~♪」

こころ「映像で見た光景とそっくりです」

あんじゅ「映像?」

希「……参号と肆号の片割れを使ったんよ」

英玲奈「連結作動か!?」

亜里沙「はい。それで過去の音ノ木 ポン・デ・リングを見てたんです。」

あんじゅ「あぁ。だからこんなカビ臭いとこでこそこそしてたのね」

739: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/25(金) 23:48:35.99 ID:XuXOfBob
穂乃果「……ねぇ、」

あんじゅ「ん?」

英玲奈「どうした、寝坊助」

穂乃果「あのね、」


穂乃果「絵里ちゃんが堕天した後の事、教えてくれないかな」


英玲奈「!」

あんじゅ「……その聞き方だと、凡その出来事は知ったみたいね。」

740: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/25(金) 23:50:06.94 ID:XuXOfBob
穂乃果「ごめんなさい、勝手に見ちゃって」

英玲奈「まぁいいんじゃないか?特に隠す様な事でもないんだからな」

あんじゅ「そうね。もう終わった話だし」

希「んーっと、あの続きからやとウチから話した方がええね。」

穂乃果「お願い。」

希「──コホンッ。」


希「えりちはね、あの出来事の後すぐに堕天したみたいなんよ。」

741: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/25(金) 23:54:55.37 ID:XuXOfBob
希「きっと、居た堪れなかったんやろうね……誰にも何も言わずに、天界を去ったみたいやから」

あんじゅ「……」

英玲奈「……」

亜里沙「っ」

ギュッ

亜里沙「!」

こころ「えへへ」

742: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/26(土) 00:08:27.72 ID:HNCD0Yjr
希「ウチらは散々あちこちを探し回ったんやけど、結局見つけられなくて」

希「それからは、積極的に探そうとしない理事長に、毎日あんじゅが猛抗議しに行ったり、天界中にビラ配ったり、そんな事を色々とやってたら」

希「気が付いたら、半年くらいが過ぎちゃってたなぁ」

あんじゅ「……そうね。」

英玲奈「はは、あっという間だったなぁ」

ことり「……」

穂乃果「つ、ツバきゅんはどうしてたの?」

743: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/26(土) 00:10:30.58 ID:HNCD0Yjr
あんじゅ「……あの子とはね、あれから疎遠になっちゃってたのよ。」

あんじゅ「結局、私たちが堕天するまで殆ど顔も合わせなかったわ」

英玲奈「……」

希「んで、ある日授業中に弐号を使ってたら、偶々えりちを見つけたんだけど」

あんじゅ「そうそう。突然の事だったから、何も出来ずにすぐ見失っちゃったんだけどねぇ」

希「んで、その後ウチとあんじゅは堕天する事に決めたんよ」


希「──二人で、えりちを探しに行こうって。」

744: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/26(土) 00:16:05.28 ID:HNCD0Yjr
亜里沙「は、初めて知りましたっ」

希「まぁ、結局変な勘違いであんじゅともバラバラになっちゃったけどね」

あんじゅ「……その話しないで。」

こころ(あ、)

ことり(そう言えば……)

希「あはは、ごめんごめん」

亜里沙「っ///」

ことり(コレは、言わない方がいいよね)

穂乃果「……ん?」

745: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/26(土) 00:17:37.80 ID:HNCD0Yjr
穂乃果「あ!あれかー!」

ことり「!!?」

穂乃果「あんじゅさん、校門前で泣いてもんね!!」

あんじゅ「!!?!?」

穂乃果「すっごく可愛かったy」ガッ

穂乃果「ムググッ!?」

ことり「ほ、穂乃果ちゃん!!しーっ!しーっ!」

穂乃果「???」

746: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/26(土) 00:18:30.84 ID:HNCD0Yjr
こころ「ん!ん!」グイッ

穂乃果「……?」クルッ


あんじゅ「……」


穂乃果「…………あ、」

ガシッ

穂乃果「!?」

あんじゅ「……アナタたち、」

穂乃果「は、はいっ!」

747: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/26(土) 00:29:28.27 ID:HNCD0Yjr
あんじゅ「どこまで知ってるの?」

穂乃果「な、なにを……ですかっ」ガッ

穂乃果「うぃ!?」

あんじゅ「分かるでしょ?」グイッ

あんじゅ「私ね?まどろっこいしの大っ嫌いなのぉ♪」ギギッ

穂乃果「しっ、知ってるけど知らないっ!!」

あんじゅ「はぁ?」

穂乃果「ほ、穂乃果が見たのはっ……ただ校門前であんじゅさんが泣いてるとこだけから!」

752: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/26(土) 20:24:53.93 ID:69Y4SZ59
【下級一句】



『揺らめきは陽炎の汝(ナレ)を示す』

『呪禁術・焦熱火生』



『静けさは水琴の調べを熾(オコ)す』

『呪禁術・留水仙渦』



『厳かさは雪魄(セッパク)の様相を成す』

『呪禁術・疾霜氷結』




『荒びは風落ちの報せを聴く』

『呪禁術・烈風空破』




『姦(カシマ)しきは怪雲の兆しを呼ぶ』

『呪禁術・雷光蒼檄』




『聳(ソビ)え立つ城壁は汝を阻む』

『呪禁術・断崖障壁』


精神

『さざめく様相は春風の如し』

『呪禁術・慈愛ノ飄(ツムジカゼ)』

753: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/26(土) 20:25:57.00 ID:69Y4SZ59
【中級二句】



『猛る様は情炎。彼の地を黒炭の森と化す』

『呪禁術・焦熱大炎送』




『大岩を穿つ垂水。押し寄せる歳月の波涛(ハトウ)』

『呪禁術・留水大浸檄』




『寒々しき枯れ地。永久に咲く沈丁花(ジンチョウゲ)』

『呪禁術・疾霜(シッソウ)大寒把』




『吹き荒ぶ夜嵐(ヨアラシ)。逸る韋駄天の如き疾走』

『呪禁術・烈風大爪迅』




『荒れ狂う迅雷。夜半(ヨワ)の静寂を破る咆哮』

『呪禁術・雷光大霹鱗(ヘキリン)』




『聳え立つ萬霊峰(ヨロズレイホウ)。其れら大敵の強襲を阻む』


『呪禁術・断崖大絶壁』


精神

『彼の地へ降り注ぐ怪雨。それは堕落の先触れ』

『呪禁術・休怠(キュウタイ)へノ歩』

754: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/26(土) 20:27:22.60 ID:69Y4SZ59
【中級二句・混唱】

炎・風

『猛る様は情炎。紮止(サッシ)。逸る韋駄天の如き疾走』

『呪禁術・焦熱大爪塵(ソウジン)』


水・土

『聳え立つ萬霊峰。紮止。押し寄せる歳月の波涛』

『呪禁術・断崖大侵覡(シンゲキ)』


氷・雷

『荒れ狂う迅雷。紮止。永久に咲く沈丁花』

『呪禁術・疾霜大霹稟(ヘキリン)』

755: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/26(土) 20:29:35.39 ID:69Y4SZ59
【上級三句】



『来たれ。赤熱の業魔を宿し。灰塵へと帰す焔の苗床よ。』

『呪禁術・混沌ノ大樹』




『響け。氷結の囀りよ。その姿たるや千の枸橘蔓』

『呪禁術・凍星ノ怪鳥』




『唸れ。雷鳴の産声と共に。天焦がす蒼奔の霹靂よ』

『呪禁術・紫彗ノ黒獣』




『攫え。激浪の坩堝へと。遥か澱みより来る闇の奔流よ』

『呪禁術・悲哀ノ海域』




『荒べ。いと高き絶頂の彼方へ。切り裂くは姿なき刃雨』

『呪禁術・無名ノ地嵐』




『慄け。地を這いずる者よ。崩れ逝くは秩序と安寧の礎』

『呪禁術・黄泉ノ溝帯』

761: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/27(日) 23:32:22.96 ID:C6SXjtcR
あんじゅ「……」

あんじゅ「ッ」ギロッ

希「!」

ガシッ

希「うぉっ!?」

あんじゅ「この……っ!」

希「なっ、なになに!?ウチなんもしてないよ!?」

あんじゅ「ッッッ」

762: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/27(日) 23:33:17.49 ID:C6SXjtcR
あんじゅ「……っ///」

希「へ?」


亜里沙(こ、コレは……っ///)グッ

こころ(うわうわっ///」

ことり(チューっ!?チューっ!!?)ガタッ

穂乃果「???」

763: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/27(日) 23:35:58.17 ID:C6SXjtcR
「……なぁ、」

あんじゅ「!?」

英玲奈「なんだか知らんが、希は別に悪くないんじゃないか?」

亜里沙「……はあぁぁぁっ、」

ことり「……」

あんじゅ「う、やかましいわねっ///このど変 は消さなくちゃならないのよっ!」

希「ぇえ!?ウチは悪くないのに!?そんなん横暴やっ!!」

あんじゅ「うるさぁああい!!」

764: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/27(日) 23:37:06.95 ID:C6SXjtcR
「この甲斐性なしっ!!」

「はぁあああっ!!?それウチに言ってるん!!?」

亜里沙「ちょっ!?あ、あんじゅさんっ!!」


英玲奈「……」


「なんでそんなシーン見てんのよぉおおおっ!!」

「そんなんたまたまやんっ!!!」

ことり「希ちゃんもぉ~っ、ケンカはダメだよぉ!」


英玲奈「……はは、コイツらは変わらんな。」

765: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/27(日) 23:46:21.78 ID:C6SXjtcR
「英玲奈先生、」

英玲奈「ん?」

穂乃果「先生はどうして、二人と一緒に行かなかったの?」

こころ「あ、そう言えばそうですね」

英玲奈「……あぁ、」

英玲奈「私は、ツバサの事がどうしても放って置けなくてな。」

英玲奈「薄情だとは分かっていたが、絵里の事は二人に任せて私だけ残ったんだ」

766: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/27(日) 23:47:10.28 ID:C6SXjtcR
穂乃果「……」

英玲奈「絵里が堕天してからのツバサは……何というか、見るに耐えなくてな」

英玲奈「聖天術も掛け続けていたんだが、それも大して効果がない程に自分を責め続けていたんだ」

こころ「……そ、そんなにですかっ、」

英玲奈「あぁ。理事長からのアフターケアもあって、徐々に元の性格に戻ってはきたんだが」

英玲奈「……まぁ、本当によく立ち直ってくれたと思うよ」

767: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/27(日) 23:48:00.22 ID:C6SXjtcR
こころ「……」

穂乃果「……先生は薄情なんかじゃない。」

英玲奈「はは。そう言えば、あんじゅと希もそう言ってくれてたな」

こころ「そうです。英玲奈先生は、私たちの優しい先生ですから!」

英玲奈「ははは、そうか」

英玲奈「……」

こころ「?」

英玲奈「……私は、」


英玲奈「本当に、コレで良かったのだろうか」

768: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/27(日) 23:59:07.65 ID:C6SXjtcR
こころ「え?」

英玲奈「もし、私じゃない奴がこの役目を務めていれば」

英玲奈「私なんかより、優秀な奴がアイツらの傍にいれば……」

英玲奈「もしかしたら、あんな事にはならなかったんじゃ──」

穂乃果「違うっ!」

英玲奈「!」

穂乃果「絶対に英玲奈先生でいい!それで良かったの!」

穂乃果「大丈夫!私が保証するもん!」

769: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/27(日) 23:59:48.19 ID:C6SXjtcR
英玲奈「……」

こころ「わ、私も保証します!」

英玲奈「…………ねぼ助に、ちび助め。」

ポフッ

穂乃果「!」

こころ「あぅ、」

英玲奈「いつの間にか、上天なんて立派なものになって……」

英玲奈「オマケに、教師のアフターフォローまで出来る様になるとはな。」

770: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/28(月) 00:02:20.01 ID:xctA8aKv
穂乃果「頑張ったもんねー!」

こころ「はい。頑張りました!」

英玲奈「ふふっ」

英玲奈「……分かった、お前たちを信じるよ。」ナデナデ

穂乃果「うん!」

こころ「えへへ」

英玲奈(ツバサ。お前に聞いた通り、希もあんじゅも変わらないな。)

英玲奈(……絵里。お前もそうなのか?あの頃と変わらないままで居てくれているか?)

771: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/28(月) 00:08:38.27 ID:xctA8aKv
あんじゅ「──あーもぅ!キリがないわっ!!!」

希「え、えれ姉っ!!このドS魔女黙らしてぇやっ!!」

あんじゅ「アンタが黙りなさいよっ!!!このデ○ッ!!!」

希「むっきいぃぃぃっ!!!」

希「もうアッタマ来た!!ここでクロやん出したるわっ!!!」

亜里沙「ハァ!!?なに馬鹿なこと言ってr」

あんじゅ「上等よっ!!!その前に!私の大樹の肥料にしてあげるからっ!!!」

772: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/28(月) 00:09:17.35 ID:xctA8aKv
亜里沙「ちょっと!?二人ともっ」

英玲奈「よし。お前ら、そろそろやめとけ。」

希「いやいや!一発だけっ!一発だけこのドSにぶち込んでからっ!!な!?」

あんじゅ「ドSドSうっさいのよっ!!このデ○っ!!!」

英玲奈「──フンッ!」バッ

希「こにっしゅ!!」ゴツンッ

あんじゅ「いぃっ!!」ゴツンッ

773: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/28(月) 00:10:37.14 ID:xctA8aKv
希「ぐぎっ……っ」

あんじゅ「いっ……たぁぁ……っ」

英玲奈「お前ら、あんまり弟子の前で恥ずかしい真似するな」

亜里沙「す、凄い……二人とも大人しくさせちゃった。」

穂乃果「うわぁ、痛そう」

こころ(英玲奈先生……今までで一番先生っぽい……)

「あのぅ、」

英玲奈「ん?」

774: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/28(月) 00:24:47.91 ID:xctA8aKv
ことり「先生の前でこんな事言うの、ちょっと気不味いんですけど……」

ことり「あと一回だけ、七つ道具を使ってもいいですか?」

英玲奈「ん。基本的には、天界七つ道具を許可なく一般生徒に使わせる事は禁止されているんだがなぁ」

あんじゅ「なによ。そんなの今さらでしょ?」

英玲奈「どう言う事だ?」

あんじゅ「だって、この5年間ずぅーっと、この変 が参号を持ってたじゃない」

775: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/28(月) 00:26:01.22 ID:xctA8aKv
希「いやいや、ラブたんは元々ウチのやし?」

亜里沙「違います」

希「違いません」

亜里沙「違うから」

希「ん?口答えするんはこの口?ん?ん~?」

亜里沙「……」

希「んー」ムチュ-

亜里沙「ハイッ!!」ビュォオオッ!

希「ぶるるるるるるっ!!!」バヒュウゥゥッ

あんじゅ「お見事♪」パチパチッ

776: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/28(月) 00:27:04.39 ID:xctA8aKv
英玲奈「……あ~、」

英玲奈「まぁ、今回だけだぞ?」

ことり「あ、ありがとうございます!」

穂乃果「良かったねぇ!」

ことり「うん♪」

あんじゅ「因みに、アナタはそれで何を見たいの?」

ことり「えっと、来月のコンサートが上手くいくか知りたくて……」

あんじゅ「は?アナタ、まだミナなんとかやってるの?」

777: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/28(月) 00:28:11.93 ID:xctA8aKv
こころ「あんじゅさん!!」

あんじゅ「えっ!?は、はい!」

こころ「ミナリンスキーです!ちゃんと覚えてくださいっ!」

あんじゅ「うっ……ご、ごめんなさいね?」

ことり「あはは……いえいえ、」

希「うはぁ、前髪メチャメチャやんっ」

ことり「うわわっ、今櫛で整えるからね?」

希「ん~、ありがとぉ~」

778: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/28(月) 00:38:44.86 ID:xctA8aKv
希「……んで、誰と誰が連結作動するん?」

あんじゅ「私はやんない。」

英玲奈「私もだ。疲れるのはごめん被るな」

ことり「んっと、じゃあ他にことりと使ってくれる人は」

希「ことりちゃんはええんよぉ?ゆぅ~っくりウチの髪とかしておくれぇ~♪」

ことり「え?で、でもぉ」

穂乃果「じゃあ穂乃果がやる!」

希「お、先ずは穂乃果ちゃんやね。」

779: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/28(月) 00:40:29.02 ID:xctA8aKv
ことり「えっと、ならことりも……」

希「ダ~メ~♪」ゴロンッ

ことり「えぇぇっ、」

こころ「……」

こころ「……なら、」

亜里沙「やめた方がいいよ。」

こころ「へ?」

亜里沙「こころちゃん、さっきいっぱい無理してたもん」

780: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/28(月) 00:41:13.79 ID:xctA8aKv
亜里沙「だから、今はゆっくり休んで?」

こころ「ううん。身体はもう全然何ともないんだ」

こころ「てゆーか、あの三人が気を遣ってくれたお陰で、寧ろ元気が有り余ってるってゆーか……」

亜里沙「そ、そうなの?」

穂乃果「よし、じゃあこころちゃんやろうよ!」

こころ「いいでしょう。望むところです!」

781: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/28(月) 00:53:41.49 ID:xctA8aKv
穂乃果「じゃあ、時間は1ヶ月後だね。場所は?」

ことり「うん。実はここなんだ」

穂乃果「えっ!?この部屋でやるの!!?」

あんじゅ「おバカね。こんな狭い部屋でコンサートなんてあり得ないでしょ」

穂乃果「あ、あはは、そうだよねぇ」

こころ「で?どこでやるんですか!?」キラキラッ

ことり「う、うん。お母さんが校庭使っていいって言ってくれたから、そこでね?」

782: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/28(月) 00:54:34.88 ID:xctA8aKv
穂乃果「よし!行くよ?こころちゃん!」

こころ「どんとこいです!」

穂乃果「穂乃果は肆号使うからね。」

こころ「はい。私は参号で行きます」

希「よぉし。そんじゃ先ずは、二人の出会いから行ってみよっか~」

あんじゅ「アンタ、なんでそんな偉そうなのよ」

ことり「頑張れぇ~♪」

英玲奈「無理はするなよ~」

789: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 05:59:26.57 ID:G7/ABv4f
希「一度やってるから分かると思うけど、あんまり考え込み過ぎないで、ゆ~っくり思い出すとええよぉ~」

穂乃果「おっけぇー!」

こころ「はい、分かりました」

希「あ、なんだったらみんなも目ぇ閉じてくんない?」

亜里沙「は?」

あんじゅ「なんで?」

希「ウチは……グヘッ、その隙にぃ、二人をリラックスさせる為n」

790: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 05:59:52.69 ID:G7/ABv4f
亜里沙「ハラショーキックっ!!」バッ

あんじゅ「ふんっ!!」ブンッ

希「にひひんっ!!!」ゴゴッ!

希「っ……っ、こ、この……ドSどもが……っ」ヨロッ

あんじゅ「だから、ドSじゃないってなんべんも言ってんでしょうが」

亜里沙「私も違います。」

あんじゅ・亜里沙『サンドバッグを殴っただけよ(です)』

791: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 06:20:32.47 ID:G7/ABv4f
希「ど、ドSやわ……っ」ドテッ

ことり「の、希ちゃ~んっ」バッ

穂乃果「……」

こころ「……」

あんじゅ「さぁ二人とも、私もその連結作動って言うのを見てみたいの。だからお願いね?」

英玲奈「あぁ。立場上は不味いんだが、正直私も見てみたい。頼む」

穂乃果「お、おーっ!」

こころ「えいえいー!」

亜里沙「……逆だってば、」

792: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 06:21:40.13 ID:G7/ABv4f
穂乃果「こころちゃん!」

こころ「はい!」

穂乃果「っ」スッ

こころ「……」スッ


こころ(…………穂乃果さんとの出会い……か。)

793: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 06:26:03.40 ID:G7/ABv4f
『あ、初めまして!』


こころ『……』


穂乃果『私の名前は穂乃果。穂乃果だよ!』

こころ『……どうも、』

穂乃果『君も下界から来たの?』

こころ『えぇ、まぁ。』

穂乃果『おぉ!それじゃあ穂乃果とおんなじだね!』

こころ『……』

穂乃果『君さ、お名前は?』

794: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 06:27:08.55 ID:G7/ABv4f
こころ『……』

穂乃果『ねぇ教えてよー、穂乃果も教えたじゃーん。』

こころ『……こころです。』

穂乃果『おーっ、こころちゃん!名前も可愛いねぇ!』

こころ『……』

穂乃果『こころちゃん、これからよろしくね!』



こころ(……そうだ。最初は全然仲良くなんてなかったんだ)

こころ(それどころか)

こころ「……」

795: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 06:44:36.11 ID:G7/ABv4f
『こころちゃーん!試験どうだったー?』


こころ『……まぁ、ボチボチです。』92

穂乃果『おーっ!』

こころ『そーゆー貴方こそ、どうだったんですか?』

こころ『どーせ、いっつも寝てばかりで酷い点数だったんじゃ』

穂乃果『いぇい!』90

こころ『!!?』

穂乃果『あはは、なんでか知らないけど今回は山が当たったんだよねぇ』

こころ『……っ』

796: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 06:48:35.19 ID:G7/ABv4f
ザッ

穂乃果『あれ?こころちゃん?こころちゃーん!』

こころ『……』


こころ(そうだ……そうだった。)

こころ(最初の頃は、穂乃果さんの事が嫌いでしょうがなかった)

こころ(いっつも私にまとわり付いて来て、ギャーギャー騒いでばっかりで……)

こころ(正直、邪魔だとさえ思ってた。)

こころ(だから、テストの話を聞くたびにイライラしてて──)

797: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 06:56:58.93 ID:G7/ABv4f
こころ『なんで……っ、私は家族のために頑張ってるのに……』

こころ『あの人なんか、いつもぐうたらしてるだけのダメ天使のクセに……っ!』

こころ『あんな人っ、嫌いっ……大っ嫌いっ!』

こころ『……なんでっ、なんでなのっ!』

こころ『~ッッッ』

798: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 06:58:01.07 ID:G7/ABv4f
こころ(……今考えたら、なんであんな事に拘ってたんだろう)

こころ(穂乃果さんは穂乃果さんなし、私は私。それぞれ理由があってここに来たんだもん。それでいいじゃん)

こころ(たかがテストの点数なんかで、コレからの全てが決まる訳じゃないんだし……ん?)

こころ(あれ?これって、)

こころ「……」


こころ(……そっか、私がなんとなくツバサさんに共感出来たのって)



こころ(少しだけ、似てたからなんだ)


……ホワァアアアアアアアアッ

800: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 07:01:29.90 ID:G7/ABv4f
こころ(私は、穂乃果さんの元気で大雑把で考えなしで、)

こころ(けど、いつだって私の事を考えてくれている。そんな優しさのお陰で救われた)

こころ(今になって思えば、穂乃果さんはいつだって、私の傍にいてくれた)

こころ(中天になってからも、あんじゅさんがやって来た時も、上天の試験を頑張ってる時も……)


こころ「……いつだって、」


「傍に居たかった」


こころ「!」

穂乃果「ね?こころちゃん。」

801: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 07:13:03.73 ID:G7/ABv4f
アアアアアアアアアアッッッ!!!!


こころ「……」

穂乃果「?」

こころ「ま、ここまで来たらもう腐れ縁ってヤツですね」

穂乃果「腐れてなんかないよ!いつだって気持ちは新鮮なんだよ?」

こころ「……ふふっ、それもそうですね。」

こころ「いつでも何かに挑戦して、その新鮮な気持ちを味わって来ましたもんね」

802: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 07:13:54.09 ID:G7/ABv4f
穂乃果「うん、だって人生は冒険だもん!」

こころ「あははは。一番穂乃果さんらしい言葉ですね」

穂乃果「えへへ」

こころ「──でも、だからこそ」



穂乃果・こころ『今の私達があるんだ』



──カッ!


コオオオオォォォォォ……。

803: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 07:20:06.87 ID:G7/ABv4f
穂乃果「ぉおっ!大成功だ!」

こころ「まぁ、お互い一度は成功してますからねぇ」

あんじゅ「こ、コレが……」

英玲奈「……あぁ、そうみたいだな。」

亜里沙「でも、今までで一番綺麗に光ってませんか?」

ことり「そうだねぇ。凄くピカピカかもぉ♪」

希「いやいや、二人ともさすがやんねぇ」

 

805: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 07:30:52.62 ID:G7/ABv4f
穂乃果「よし、それじゃあ1ヶ月後の校庭だよね!?」

ことり「うん、お願いねぇ」

こころ「初めての未来ですね。なんだかちょっと緊張します」

穂乃果「1ヶ月後かぁ……、穂乃果なにしてるのかなぁ?」

こころ「多分ですけど、なんにも変わってないと思いますよ?」

穂乃果「ぅえ~。せめてもうちょっと大人っぽくなってないかなぁ?」

亜里沙「1ヶ月じゃそんなに変わんないですって」

806: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 07:36:26.13 ID:G7/ABv4f
こころ「ほら、そろそろ始めますよ?」

穂乃果「はいはーい!」


コオオオオォォォォォ……。


穂乃果「じゃあ、せーの!で言うよ?」

こころ「の、の後に一拍ですからね?」

穂乃果「大丈夫大丈夫!」

こころ「……せー、」

穂乃果「のっ!」


『1ヶ月後の音ノ木 ポン・デ・リング校庭!!』

807: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 07:38:59.29 ID:G7/ABv4f
キュインッ!!!


ズァァアアアアァアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ…………



ポスンッ!


穂乃果「……ん?」

こころ「あれ?」

亜里沙「!」

希「お?」

ことり「へぇ?」

808: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 07:52:05.86 ID:G7/ABv4f
あんじゅ「……変ね。なんにも映らないみたいだけど」

英玲奈「おかしいな、どちらも正常に起動しているんじゃないのか?」

こころ「そ、その筈なんですけど……」

希「んん?なんやろ、出てる力は今までで一番安定してるんやけどなぁ」

ことり「ご、ごめんねぇ。私が変なお願いしちゃったから」

亜里沙「いやいや、全然変なんかじゃないですよ?」

809: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 08:07:46.47 ID:G7/ABv4f
穂乃果「う~ん……」

穂乃果「じゃあさ!他の日にしてみよっか!」

こころ「は?」

亜里沙「それだと、ことりさんのコンサートが見れません」

穂乃果「あっ」

ことり「わ、私は別に大丈夫だよ?」

希「ことりちゃ~ん」スリッ

ことり「ひゃ!?」

810: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 08:16:13.80 ID:G7/ABv4f
希「遠慮したらだめぇ~ん♪もっと自分に正直に生きなきゃ~ん♪」スリスリ

ことり「しょ、正直ってっ///」

あんじゅ「ハイハイ、もういいから」グイッ

希「いややぁー!ウチことりちゃんとこがいいー!」バタバタッ

ことり「あはは……で、でもね?」

ことり「コンサートはやっぱり気になるけど、それより今は、どうして連結作動が出来なかったのかが重要だから」

811: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 08:23:51.41 ID:G7/ABv4f
ことり「それが解決してからの方が良いって、ことりは思うよ?」

穂乃果「さっすがことりちゃーん!」モギュ

ことり「えへへ♪」

こころ「仕方ありませんね。それじゃあ、次はどのくらい先の未来で試しますか?」

英玲奈「……ふむ。1ヶ月後で動作不良を起こしたのだとすると」

あんじゅ「そうねぇ、もう少し近い未来の方がいいんじゃない?」

ことり「1週間後とか?」

812: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 08:33:45.21 ID:G7/ABv4f
希「ことりちゃ~ん♡」

ことり「希ちゃん、めっ」

希「──うっ!」

あんじゅ「……」イラッ

穂乃果「うん。それじゃあ、次は1週間後の学校にしよっか!」

こころ「分かりました。それで行きましょう」

穂乃果「せー、」

こころ「の!」


『1週間後の音ノ木 ポン・デ・リング』


キュインッ!!!

813: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 08:36:32.20 ID:G7/ABv4f
ズァァアアアアァアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ…………


ポスンッ!


穂乃果「!」

こころ「……う、映らないっ、」

希「なんでや?もしかして壊れたん?」

亜里沙「希さん、弁償ですよ?」

希「な、なんでウチ!?」

あんじゅ「まだ分かんないでしょ」

814: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 08:44:09.53 ID:G7/ABv4f
英玲奈「それなら、逆に1年後はどうだ?」

あんじゅ「そう言う問題なのかしら……」

こころ「と、取り敢えずやってみます!」

こころ「穂乃果さん!」

穂乃果「むむん!」


『1年後の音ノ木 ポン・デ・リング!』


キュインッ!!!


ズァァアアアアァアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ…………

815: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 08:45:11.89 ID:G7/ABv4f
ポスンッ!


ことり「……映らない。」

あんじゅ「やっぱり希が」

希「デカ尻!」

あんじゅ「ハッ!」シュッ

希「ぽにっ!!」ガクッ

ドテッ

あんじゅ「あーあ。」ガッ

あんじゅ「アンタどうすんのよ?天界七つ道具を壊しただなんて、理事長になんて説明するつもりなワケ?」

816: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 09:03:49.17 ID:G7/ABv4f
希「ウチじゃない……ウチじゃないぃ……っ」

亜里沙「もぅ、こんなんで泣かないで下さい!」

英玲奈「……コレはもうあれだな。」

ことり「へ?」

英玲奈「理事長の娘である君に任せるしかないだろう」ポンッ

ことり「ぇええっ!!?な、なんでぇ!?」

英玲奈「君から言えば、理事長の怒りも半分くらいは相殺されるだろう」

ことり「ことりは割引券かなにかですか!?そんな事絶対にしません!」

817: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 09:05:21.54 ID:G7/ABv4f
英玲奈「はは、冗談だ」

ことり「むぅ、」

穂乃果「う~ん……」

穂乃果「よし、こうなったら!」ポンッ

こころ「はい?」

穂乃果「明日を見よう!」

こころ「いや、だから壊れちゃったってさっきから何度も」

穂乃果「やってみようよ!」

こころ「……ハァ、言い出したらこれだもん」

818: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 09:06:03.77 ID:G7/ABv4f
穂乃果「行くよー!」

こころ「はいはい」

穂乃果「せー!」

こころ「のっ!」


『明日の音ノ木 ポン・デ・リング!!』


キュインッ!!!


ズァァアアアアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!

819: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 09:07:28.20 ID:G7/ABv4f
穂乃果「お……ぉおおっ!!?」

こころ「えっ!?」

亜里沙「う、上手くいった!?」

希「ほら!ほらほら!ウチ壊してないやろ!?そうやろ!?」

あんじゅ「ハイハイゴメンネー」

希「なんっや!その謝り方ぁ!!もっと誠意込めて服脱いで!尻を天に向けて突き出しながら土下座しいy」

あんじゅ「シュッ!」シュッ

希「ヒップ!!!」ガクッ

820: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 09:15:15.63 ID:G7/ABv4f
英玲奈「どう言う事だ?なぜ、明日の映像には反応したんだ?」

「……もしかして、」

英玲奈「ん?」

亜里沙「え?」

ことり「っ」

亜里沙「ど、どうかしたんですか?」

ことり「……」

ことり「もしかしたら、もしかしたらだけど……」



ことり「明日より先が無い……とか、」

821: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 09:19:51.70 ID:G7/ABv4f
英玲奈「……」

亜里沙「……」

ことり「……ぃ、いやっ、あくまでもっ、あくまでも可能性の一つだから……ね?」

「……はは、」

亜里沙「あは、あはは。」

ことり「ぁ……えへへ、そ、そんなことあるわけないよねぇ?」

亜里沙「ないない。ないですよー」

\\『アッハッハッハッ!』/


英玲奈「ッッッ」

827: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 23:41:53.62 ID:Vi15tCOd
穂乃果「……んー、一応映りはしたんだけど、」

こころ「あー。まぁ、普通に授業受けてますねぇ」

穂乃果「だよねぇ、明日の学校じゃ何も変わりなんてないよねぇ」

希「うぅぅっ、ストマックエイク……っ」

穂乃果「う~ん……でも、なんで明日の映像だけ見れたんだろ?」

あんじゅ「だから、この変 が余計な事でもしたんでしょ」

希「だからぁ!ウチなんもしてないんy」

「お、おいっ」

828: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 23:44:45.70 ID:Vi15tCOd
英玲奈「お前たち、明後日から1週間後までを映してみてくれないか?」

穂乃果「へ?」

こころ「え、英玲奈先生?」

あんじゅ「アナタ、一体どうしたのよ?」

英玲奈「いいから、頼む。」

亜里沙「~っ」

ことり「ッッッ」

希「……」

829: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 23:46:11.91 ID:Vi15tCOd
希「……穂乃果ちゃん。こころちゃん。取り敢えず映してみてくれない?」

穂乃果「え?が、がってん!」

こころ「えっと……じゃあ、さっきやった様に、早送りする感じで行きますね?」


シュルルルルルル……


ポスンッ!


英玲奈「!!?」

穂乃果「ありゃ、」

830: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 23:47:29.65 ID:Vi15tCOd
こころ「あー、やっぱり明日以降はダメみたいですね」

あんじゅ「ホントになんなのかしら?やっぱり希が壊したんじゃないの?」

希「……」

あんじゅ「?」

穂乃果「やっぱ映んないなぁ~」

こころ「ですね~」

英玲奈「おい、ねぼ助っ!」

穂乃果「!」

831: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 23:48:41.91 ID:Vi15tCOd
英玲奈「お前は今すぐ理事長を連れてこいっ!此処へだぞ!?」

穂乃果「えっ、な、なんで」

英玲奈「なんでもだっ!!」

穂乃果「わ、分りました!」

英玲奈「ちび助っ!」

こころ「は、はい!」

英玲奈「お前は、大書庫へ行って弐号を持ってこい!」

こころ「よ、よく分かりませんけど……分かりましたっ!」

832: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 23:50:25.50 ID:Vi15tCOd
英玲奈「それからあんじゅ!」

あんじゅ「な、なに!?なんなのよ!」

英玲奈「お前は中立者だ!あの巻き毛を連れて来い!」

あんじゅ「急になんなの!?それに、今すぐになんて無理に決まってるでしょ!?」

英玲奈「出来る出来ないじゃないっ!!いいから連れて来るんだっ!!」

あんじゅ「だからぁ!!先ずは理由を言いなさいって言ってんのよっ!!」

英玲奈「このやり取りすらが時間の無駄なんだっ!!さっさと行ってk」

「落ち着くんやっ!!!」

833: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 23:53:10.92 ID:Vi15tCOd
英玲奈「──ッ!」

あんじゅ「!?」

希「……」

亜里沙「の、のぞみさんっ?」

ことり「~っ」

希「……理由は分からん。分からんけど、この映像に何かヤバい事があると思った。」

希「そうなんやろ?えれ姉。」

英玲奈「っ」

希「みんな。取り敢えず、えれ姉の言う通りにしよう」

834: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/29(火) 23:56:09.04 ID:Vi15tCOd
希「穂乃果ちゃんは理事長んとこ。こころちゃんは弐号を。」

希「んで、あんじゅは真姫ちゃんをここに連れて来てくれない?」

穂乃果「行こう!二人とも!」

こころ「は、はい!」

あんじゅ「……」

希「……あんじゅ。」

あんじゅ「ふん、分かったわよ。」

あんじゅ「──いい?貸しだからね。」ガチャッ

バタンッ

835: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/30(水) 00:20:06.17 ID:Sb+3oRli
英玲奈「……貸しもクソもあるか。」

希「んで、ウチらはどうするといい?」

英玲奈「お前はまず、辺境の長と話を付けて来てくれ。」

英玲奈「三界約款の特記事項第三と言えば、大体分かって貰えるだろう」

希「……分かった。」

英玲奈「それから、」

亜里沙「~っ」

英玲奈「……」

英玲奈「…………ヒョロ助。」

836: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/30(水) 00:31:19.54 ID:Sb+3oRli
亜里沙「はっ!?ひ、ひょろっ」

英玲奈「お前はここで留守番だ。」

亜里沙「留守番!?」

英玲奈「あぁ。ここで参号と肆号の監視をしていてくれ」

英玲奈「もしも何か変化があれば、コレで私に連絡を入れるんだ」

亜里沙「あ、コレって」

英玲奈「城下町工房で作ってる、遠方伝達装置【伝伝電】だ。」

英玲奈「使い方は分かるな?」

亜里沙「は、はい。大丈夫です。」

837: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/30(水) 00:33:26.79 ID:Sb+3oRli
希「んじゃ亜里沙ちゃん。ウチ行ってくるな」

亜里沙「希さん……気を付けて。」

希「ただ辺境に帰るだけやもん。なんも無いって」

亜里沙「……"可愛い子"に気を付けて下さいね?」

希「……」スッ

ガチャ

亜里沙「あっ!」

バタンッ

亜里沙「…………あの変 、」

838: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/30(水) 00:37:00.55 ID:Sb+3oRli
英玲奈「トサカ。最後はお前だ。」

ことり(トサカって……)

英玲奈「お前には、天界屋のオヤジを連れて来て欲しいんだ」

英玲奈「この七つ道具の点検と、それからありったけのタイリキくん、カイリキくんを持ってきて欲しい」

ことり「あ、あの。天界屋さんって、たまに学校へ来るあの職人さん?」

英玲奈「そうだ。住まいは音ノ木村の外れだ。分かるな?」

ことり「は、はい。」

839: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/30(水) 00:38:40.08 ID:Sb+3oRli
英玲奈「本当は、あのねぼ助に行って貰うつもりだったんだが、アイツはまだ移動の聖天術を使えない」

ことり「で、でもぉ……英玲奈先生が行った方が間違いないんじゃ……」

英玲奈「前年度の卒業を自ら放棄する程のお前なら、私と出来る事はそう変わらない。そうだろう?」

ことり「なっ、なんでそれを」

英玲奈「お前の担任にはなれなかったが、お前の事は前から知っていたぞ」

ことり「……まぁ、理事長の娘ですからね」

840: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/30(水) 00:40:24.59 ID:Sb+3oRli
英玲奈「違う。」ポンッ

ことり「!」

英玲奈「力も、知識も、その優しさも、確かに理事長譲りの所があるだろう」

英玲奈「だが、それはお前自身が築き上げてきた強さでもあるんだ」

ことり「……」

英玲奈「なにより私は、他の誰でもない天使見習い上天生の"ことり"と言う、一人の存在を信じている」

ことり「──ッ!」

841: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/30(水) 00:41:50.56 ID:Sb+3oRli
英玲奈「伍号の使い手としてでも、ましてや天使長の娘としてでもなく、な。」

ことり「~っ」

英玲奈「だから、自分の考えに自信を持て。いいな?」

ことり「……」

ことり「はい!」

英玲奈「──よし。頼んだぞ。」

ことり「ッ」

ガチャ……

バタンッ

842: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/30(水) 00:51:39.77 ID:Sb+3oRli
亜里沙(6年前の上天エリート組……)

亜里沙(あの映像を見ても、イマイチ希さんと英玲奈さんの凄さが分からなかったけど)

亜里沙(こうして一緒に居てみると、ハッキリ分かる。)

亜里沙(二人とも、物凄く頼もしい)

英玲奈「──さて、」

英玲奈「では、私はツバサを連れて来る」

英玲奈「何かあったら、直ぐに伝伝電を使って報せるんだぞ?」スッ

亜里沙「わ、分かりましたっ」

848: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 00:55:15.76 ID:G/MffMlo
穂乃果と希の邂逅から始まった

この、連結作動による一連の出来事。

過去の一部始終を垣間見た天魔混合組は

それぞれが、万感の思いを胸に宿し

また、先へ進む為の糧とする為に

全てを受け入れ、力強い一歩を進めました。

849: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 00:57:46.38 ID:G/MffMlo
そして、新たにあんじゅと英玲奈を加えた

天使と魔女の面々。

次なる連結作動で未来を映すため

互いに出逢いを振り返り合う、穂乃果とこころ

しかし、その試みはなぜか上手く行かず

当初、参号と肆号の不具合かと思われた

謎の動作不良

850: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 00:59:57.20 ID:G/MffMlo
そんな最中、不意にことりが呟いた

あまりにも不穏な一言。

それを聞いた天使教育士の英玲奈は

二度と仲間を、明日を失くすまいと

仲間たちへ鶴の一声を発しました。


今ここに、
三界の勇士たちが集わんとしています。

851: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:03:14.37 ID:G/MffMlo
「……」


「……みんな遅いなぁ、」


亜里沙「……」


亜里沙「……七つ道具を見張ってろって言ったけど、起動してないのに動くワケないじゃん」

亜里沙「……」

ガチャ

亜里沙「!」


「ごめんなさい!遅くなりましたぁ!」

852: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:07:28.41 ID:G/MffMlo
こころ「ハァッ、ハァ……っ」

こころ「あ、あれ?」

亜里沙「こころちゃん!」

こころ「え?亜里沙ちゃんだけ?英玲奈先生たちは?」

亜里沙「英玲奈さんはツバサさんを探しに行ったよ」

亜里沙「で、希さんは中立者の方を、ことりさんは天界屋さん?を連れて来るって」

こころ「……天界屋さんってだれ?」

亜里沙「さぁ」

853: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:08:22.53 ID:G/MffMlo
「あ、参号と肆号じゃん!」


亜里沙「!」


「連結してるの久しぶりに見たなぁ」

「数十年ぶりくらい?」


亜里沙「えっ」

ヒデコ「お?新入生?」

フミコ「初めまして。」

亜里沙「あ、ど、どうも」

ミカ「……ん?」

854: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:10:27.87 ID:G/MffMlo
ミカ「この子中天生だよ。赤リボンだもん」

ヒデコ「あらほんと」

亜里沙「こ、こころちゃんっ、この方達は……」

こころ「あぁ、ごめんね。」

こころ「こちら、参号や肆号と同じ七つ道具の一つ、天界大使式漆号の三人です。」

亜里沙「天界たいし……?」

ヒデコ「どうもどうも」

フミコ「漆号ズです。」

855: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:12:46.92 ID:G/MffMlo
亜里沙「え、人間だよね……?」

ミカ「やっぱり、そう言う反応になるよねぇ」

ヒデコ「まぁまぁ、細かい事は気にしないで~♪」

亜里沙「は、はぁ。」

フミコ「ちょうど書庫で休憩してる時に、こころちゃんとバッタリ出会ったんだけど」

フミコ「なんだか、七つ道具の事で困ってるらしいね」

亜里沙「そ、そうなんです!連結作動で未来を見てたんですけど」

856: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:16:29.77 ID:G/MffMlo
ヒデコ「その年で連結作動が出来るなんて天才だよぉ~」

ミカ「ねぇ~?本当に凄いと思うよ?」

亜里沙「あ、い、いえ……」

フミコ「で?未来を見てたら?」

亜里沙「は、はい。1ヶ月後の未来を見ようとしたら」


亜里沙「何故か、明日より先が映らなくて……」

フミコ「!?」

857: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:19:03.86 ID:G/MffMlo
フミコ「……それ、ほんと?」

亜里沙「は、はい。」

ヒデコ「……」

ミカ「そ、それって……」

こころ「や、やっぱり壊れちゃったんでしょうか?」

ミカ「う、うぅん。それは無いと思う。」

こころ「え?」

亜里沙(……やっぱり、ことりさんが言ったとおりなのかも知れない)

858: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:20:53.90 ID:G/MffMlo
ヒデコ「起動までは上手くいったんだよね?過去とかは見れた?」

亜里沙「はい。どちらも問題なかったんです」

フミコ「……だとすると、」

ミカ「はわわわっ、」

ヒデコ「コレはっ、もしかしたら覚悟しないといけないかも……」

こころ「え?か、覚悟って……」

亜里沙「~っ」

ガチャ

「ごめんごめん。時間かかっちゃった」

859: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:25:14.25 ID:G/MffMlo
こころ「あっ」

希「いやぁ~、ただいまぁ。」

亜里沙「の、のぞ──」

ヒデコ「希ちゃん!?」

亜里沙「!」

フミコ「な、なんで!?」

希「おや?」

ミカ「わぁ♪久しぶりだねぇ」

希「おぉ!漆号ちゃんたちやん!久しぶりやんねぇ♪」

860: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:28:32.22 ID:G/MffMlo
ヒデコ「本当だねぇ。5年ぶり!」スッ

希「イェ~♪」パチンッ

フミコ「心配してたんだよ!?5年間も何してたの!?」

希「いやいや。実はウチ、魔女に転職したんよ」

ヒデコ「へ?ま、魔女?」

フミコ「……あぁ。堕天使の名称って変わったんだっけ?」

希「理事長が嫌がったみたいだからねぇ」

ミカ「あはは、言ってたねぇ」

861: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:30:37.81 ID:G/MffMlo
亜里沙「あれ?長はどうしたんですか?」

希「うん。今来ると思うんだけど……」


「天界学校なんて久しぶりだわぁ~♪」

「大っきい学校だねぇ!」


希「お、来た来た。」

ガチャッ

希「──遅かったやん。」

希「今まで一体なにしてたの?」

「ごめんなさいね。」

862: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:33:08.80 ID:G/MffMlo
真姫ママ「この子がどうしても来たいって言うから」

凛「だって来てみたかったんだもん」


亜里沙「り、凛さんまで来たんですか!?」

凛「亜里沙ちゃんだけズルいにゃ~!凛にも声掛けてよぉ」

真姫ママ「ふふっ。」

こころ(わぁ……この人も魔女なんだ。可愛い感じの人だけど、)

希「ごめんなぁ。なんか大所帯になってしまったわぁ」

863: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:36:38.07 ID:G/MffMlo
亜里沙「……そう言えば、お姉ちゃんは居なかったんですか?」

希「あぁ。なんか出かけてたっぽい」

凛「ド○ーム○ャストとシー○ン買いに行くって言ってた。」

亜里沙「……」

ヒデコ「おぉ、辺境の長じゃないですかぁ」

真姫ママ「あら、漆号ちゃんたちじゃない。元気だった?」

ヒデコ「元気元気ー!」

ミカ「私達は存在する限り元気ですよ」

864: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:38:23.74 ID:G/MffMlo
真姫ママ「ふふふっ♪」

フミコ「本当にお久しぶりです。前に会ったのは、たしか20年くらい前でしたね」

真姫ママ「そうねぇ。あの撮影の時以来だから、私もオバさんになるワケよねぇ」

フミコ「何言ってるんですか、20年前と全然変わってないですよ」

真姫ママ「ふふ。ありがと♪」

ヒデコ「ははは。」

ヒデコ「──って、そんな話してる場合じゃないんですよっ!!」

真姫ママ「え?」

865: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:41:31.57 ID:G/MffMlo
フミコ「あ、そうそう!実は大変な事になってるかも知れないんです!」

真姫ママ「もしかして、希ちゃんから聞いた特記事項と関係ある話?」

希「うん。多分ね」

ガチャ

「お、お待たせしましたぁ~っ」

希「おや?」

ことり「ひひぃ~っ、つ、疲れたぁ~」

ヒデコ「おぉ、ミナリンお疲れ」

ことり「ひ、ヒデコちゃんお疲れ~っ」

866: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:44:35.76 ID:G/MffMlo
ミカ「ミナリンはどうしてここに?」

ことり「あ、実はねぇ」

希「ストップ。」

ことり「え?」

希「多分コレ、みんな揃ってから説明した方がいいかも。まだ増えるワケやし」

ことり「そ、そっかぁ。」

希「みんなもそれでええ?」

フミコ「うん。私達は大丈夫」

真姫ママ「私もよ」

凛「凛も異議なし!」

867: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:45:50.70 ID:G/MffMlo
「ちょっとアナタ!それ置いて来なかったの!?」


凛「!」

真姫ママ「あら、噂をすれば?」


「お父さん、粉舞ってるんだけど!」

「~っ」


ことり「あ、この部屋ですよぉ!」


「あ、やっぱこの部屋らしいよ?」

「えぇ、入りましょ!」

ガチャ

868: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:48:45.04 ID:G/MffMlo
ほのママ「やっと着いたわ~」

雪穂「いい加減さ、そのうどん捨てなって」

ほのパパ「ッ」ギュッ


亜里沙(あ、おまんじゅう屋さんだ。)

ことり「皆さんお疲れさまぁ~」

こころ「こ、ことりさん。天界屋さんって、この方たちなんですか?」

ことり「ううん。天界屋さんはこの方だよ?」スッ

ほのパパ「……」

こころ「へ?じゃあ、このお二人は……」

869: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:54:21.39 ID:G/MffMlo
ことり「あ、紹介するね?この方が天界屋さんの奥さんで、元お城の騎士団長さんですぅ」

ほのママ「どうも~」

真姫ママ「あら、久しぶりね」

ほのママ「えっ!?……な、なんで貴方が天界にいるの!?」

真姫ママ「お呼ばれされたからよ。貴方もそうなんでしょ?」

ほのママ「ま、まぁ、私は違うんだけどね?」

真姫ママ「そう。」クスクス

ほのママ(……相変わらず不敵な笑い方。)

870: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 01:56:29.80 ID:G/MffMlo
ことり「でぇ、こちらがこのお二人の娘さんの雪穂ちゃんですぅ」

雪穂「ど、どうも。雪穂です。」

亜里沙「……」

亜里沙「貴方も天界道具を作れるの?」

雪穂「え?わ、私は別に……」

ほのパパ「──ッ!」ジワッ

雪穂「な、泣かないでよっ!!継がないとは言ってないじゃん!!」

ほのパパ「っ……っっ」

雪穂「もうっ」

871: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 02:00:02.85 ID:G/MffMlo
亜里沙「……普通の人連れて来てもしょうがないんじゃ」ボソッ

雪穂「っ」カチンッ

雪穂「……普通ではないけど?」

亜里沙「へぇ。じゃあ何か出来るの?」

雪穂「……」スッ

「──ハァッ!!!」

ゴガァアアアンッッッ!!!!!!

亜里沙「!!?!?」

パラパラ……ッ

872: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 02:32:55.03 ID:G/MffMlo
亜里沙「ッ!──ッ!!?」

雪穂「……元騎士団長のお母さんから、一通りの技は叩き込まれてるからね。格闘なら誰にも負けないよ?」

亜里沙「っ……そ、そうなんだっ」

真姫ママ「なんか、昔の貴方見てるみたい。」

ほのママ「でしょ~?かなり筋がいいのよねぇ~♪」

クイッ

ほのママ「え?」

873: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2020/12/31(木) 02:53:08.11 ID:G/MffMlo
ほのパパ「……」

ほのママ「あーはいはい。」

真姫ママ「天界屋のお兄さんも相変わらずね。可愛らしいわ」

ほのパパ「っ///」

ほのママ「……」

雪穂(うわ……)

雪穂「あ、あの!どうしていきなりお父さんを呼んだんですか?」

希「あぁ。それは、みんなが揃ってから説明しよっかなぁってね」

こころ(と言うか、なんで一家全員を連れて来たんだろう)

882: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 05:40:25.46 ID:T3/8IBot
シュンッ

あんじゅ「──ふぅ。」

真姫「……」

にこ「……」

花陽「~っ」


こころ「──ッ!!?」

亜里沙「あっ」

希「お、やっと来た」

883: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 05:42:18.59 ID:T3/8IBot
真姫「……なによここ、埃っぽいんだけど」

にこ「てゆーか暗!」

花陽「うぅっ……なんで私まで……」

真姫「文句なら、問診中に来たそこの大バカに言うのね」

あんじゅ「……は?」

真姫「……なにかしら?」

にこ「ちょっ!」

花陽「ひぃ!」

884: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 05:43:56.46 ID:T3/8IBot
ザッ

あんじゅ「……人が下手に出てお願いしてみれば……調子に乗ってんじゃないわよ。」ボウッ!

真姫「私に何かお願いしたいのなら、ドブに頭突っ込んで泣きながら乞うのね」ピシィッ!

あんじゅ「……」メラメラッ

真姫「……」ギュリッ

にこ「アンタら!ホントいい加減にしなさいっての!」

にこ「真姫!アンタが魔女とやり合うとかシャレにもならないでしょ!?」

真姫「……私はね、一度売られたケンカは絶対に忘れないのよ。」

あんじゅ「あら奇遇ね。私も売られたケンカは、相手をボッコボコにするまで絶対に忘れないから」

885: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 05:46:26.44 ID:T3/8IBot
あんじゅ「それに、あの時よりもアナタをやっつける方法はいっぱい増えたのよ?」

真姫「それはコッチの台詞だわ。フレキシブル・ケースの完成形をご披露するから」ガチャッ

にこ「……」

あんじゅ「……ふふっ、お尻に火を付けてあげる。元気よく走り回りなさい?」ゴオォォォッ

真姫「……アンタのお尻、貧相で叩き甲斐がなさそうね」~♪♬♩

「──フンッ!」

あんじゅ「ふぎゅん!?」ゴンッ

真姫「いぃっ!?」ゴツッ

886: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 05:52:42.83 ID:T3/8IBot
にこ「いい加減にしなさいって言ってんでしょ!!みっともないっ!!」

真姫「あぅ……っ!」

あんじゅ「つむっ……つむじ……っ!!」

にこ「もし次に暴れたら、この伝家の包丁で頭丸刈りにしてやるからねっ!!」シャキッ!

花陽「はわわわっ……っ」

「かーよちんっ!」

花陽「へ?」

887: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 05:56:34.84 ID:T3/8IBot
凛「えへへ~」

花陽「り、凛ちゃん!?」

凛「やっぱりかよちんだにゃー!」モギュ

花陽「わふっ!?ど、どうして凛がいるの?」

凛「かよちんに会いに来たんだよ!?最近あんまり会えなかったから!」

花陽「……ふふっ。一昨日会ったばっかりだよ?」

凛「昨日は会えなかったもん!」

888: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 05:58:00.10 ID:T3/8IBot
にこ「ちょっと、凛。」

凛「お?」

にこ「アンタも少し大人しくしてなさい」

凛「にこちゃんはお呼びじゃないにゃ!」

にこ「ぬわぁんですってぇええ!!?」

花屋「ふ、二人とも落ち着いてっ」

真姫「……はぁ、」


「真姫ちゃん。」

真姫「!」

889: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 05:59:49.19 ID:T3/8IBot
真姫ママ「……」

真姫「……」


真姫ママ「久しぶり、ね。」

真姫「……」

真姫ママ「……元気にしてた?」

真姫「……そっちこそ、」

真姫ママ「うん、私は大丈夫。それより、病気したりしてない?」

890: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 06:01:18.08 ID:T3/8IBot
真姫「ま、町医者に感染する病気なんて、飛んで火にいる夏の虫よっ///」

真姫ママ「…………そう。良かった。」

真姫「……っ」

真姫「ぱ、パパは?」

真姫ママ「パパはね、今もお城の専属医として立派に勤めているわ」

真姫「……そう。」

真姫ママ「毎日ちゃんと食べてる?顔色が少し悪いわよ?」

真姫「も、もうっ!にこちゃんが作ってくれてるから大丈夫よっ///」

891: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 06:03:14.40 ID:T3/8IBot
真姫ママ「そう……良かったわ。」

真姫「……それ、さっきも言った」

真姫ママ「ふふっ、そうね。」

真姫「…………ママも、」

真姫ママ「え?」

真姫「ママも元気そうで……良かった、」

真姫ママ「……」

ギュッ

真姫「!」

真姫ママ「……そうね。」ナデナデ

892: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 06:20:22.71 ID:T3/8IBot
あんじゅ「……」

亜里沙「あ、あの、」

あんじゅ「なぁに?」

亜里沙「長と、あの人って……」

あんじゅ「親子。」

亜里沙「っ」

あんじゅ「まぁ、人生いろいろ。女もいろいろって奴よ。あんまり聞いたらダメよ?」

亜里沙「は、はい。」

893: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 06:23:19.12 ID:T3/8IBot
にこ「……」

「やぁやぁ、ちびっ子」

にこ「!」

希「久しぶりやんね。」

にこ「……アンタ、よっぽど引っ叩かれたいのね。」

希「いやいや。ウチら怪音事件以来の仲やん?そんな冷たくせんといてよ~」

にこ「う、うっさい!もうその話しないで!」

希「はっはっはっ、まだ麓に向かって雄叫びあげとるん?にこーっす!って。」

にこ「きいぃぃぃっ!!!やっぱ一発ぶん殴ってやるわっ!!」

894: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 06:27:21.30 ID:T3/8IBot
「お、お姉さま、」


にこ「えっ」


にこ「──ッ!!」


こころ「……」

にこ「…………こころ……?こころなの?」

こころ「はいっ、」

こころ「こころです……お姉さま。」

にこ「──ッ」バッ

ギュッ

895: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 06:29:22.75 ID:T3/8IBot
ギュッ

こころ「!」

にこ「こころ……っ!」ギュウッ

こころ「~ッ」

にこ「会いたかったっ……会いたかったわっ……っ」

こころ「…………お姉さま。」

にこ「元気だった?辛くなかった?ごめんね。お姉ちゃんが頼りないばっかりに……」

こころ「……」


こころ「……こころは……こころは頑張りました」

896: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 06:30:36.51 ID:T3/8IBot
こころ「入学した日の、不安だった朝も……。勉強も、お友達も出来なかった寂しいお昼も……」

こころ「お母さんやお姉さま達に会えなくて、泣いてばかりだった夜も……っ」

にこ「ッ」

こころ「頑張って……ようやく上天にまでなれて……お姉さまの役に立てますっ……ここあの足も治してあげられます……っ」

にこ「ッッッ」

こころ「やっと……やっとっ……もうすぐお家に帰れますっ」

897: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 06:31:47.51 ID:T3/8IBot
にこ「うんっ……うん……っ!」

にこ「アンタは偉いわ……っ、本当に……本当によく頑張った……っ」

こころ「~っ」

にこ「こころは私の……自慢の家族よ。」

こころ「ぁ……えへへっ」

こころ「……嬉しいなぁ。」


「…………嬉しいなぁ……」

898: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 06:32:32.97 ID:T3/8IBot
希「……」

亜里沙「こころちゃん……っ」

あんじゅ「……」

あんじゅ「……なんだかさ、」

希「え?」

あんじゅ「なんだか私も、家族に逢いたくなって来たわ」

亜里沙「~ッッッ」

希「……はは、そうだねぇ」

899: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 06:33:23.47 ID:T3/8IBot
真姫ママ「ふふふっ。」

真姫「っ///」


にこ「よしよし」

こころ「お姉さま……っ」


あんじゅ「……フフッ。」

希「いいねぇ」

亜里沙「……はい。本当に、」

900: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 06:34:19.46 ID:T3/8IBot
「うぅぅっ……っ」

亜里沙「!」

ヒデコ「うぇ……っ、うぅ……」

希「え?」

フミコ「ヒッ……ヒィッ……」

あんじゅ「あ、アナタ達、」

ミカ「ダメ……ッ、こういうのダメなんですぅ……っ」

ヒデコ「良かったねぇ……良かったねぇ……っ」

あんじゅ「……久しぶりに会っておいてなんだけど、こんなに涙脆い子たちだったのね」

901: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/01(金) 06:35:18.86 ID:T3/8IBot
「ウゥゥゥッ!」

あんじゅ「!?」

ほのママ「そうだよねぇ……っ、会いたかったよねぇ……っ!」

ほのパパ「っ……っっ」

雪穂「もうっ、二人とも泣かないでよ!」

あんじゅ「…………ハハ……」

ガチャッ

「ただいまっ!!!」

906: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:12:21.36 ID:zrhxTMPR
穂乃果「いやぁー!遅くなっちゃった!」

理事長「ごめんねぇ~。外ハネがぜぇ~んぜん直らなくて~」

穂乃果「可愛いからいいのっ!」

理事長「ホントにぃ~?」

穂乃果「ホントホント!可愛さ二倍増しだもん!」

理事長「わ~い♪」

穂乃果「いい感じだよ~♪」

「あ、あなたっ」

穂乃果「──え?」

907: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:13:08.03 ID:zrhxTMPR
ほのママ「~っ」

雪穂「……お姉ちゃんっ」

ほのパパ「……」


穂乃果「!!?!?」

理事長「わぁ~♪」

穂乃果「お、お母さんっ!!?」

穂乃果「そ、それに、お父さんと雪穂まで……っ!」

908: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:14:19.37 ID:zrhxTMPR
希「あらら」

あんじゅ「なに?また家族のご対面なの?」

亜里沙「やぁ~。なんかそうらしいですぇ」

ヒデコ「ほ、穂乃果も良かったぁ~っ」

フミコ「っ……ミカ、ティッシュちょうだい」ズズッ

ミカ「もうない……っ」ズズッ


ほのママ「穂乃果。」

穂乃果「お、お母さん……っ」

909: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:16:16.57 ID:zrhxTMPR
穂乃果「お母さぁあああんっ!!!!!」

「フンッ!!!」ゴッ

穂乃果「のほっ!!?」ガクッ

ドサッ

希「!?」

亜里沙「うわっ!」

あんじゅ「えっ!?」

ザッ

穂乃果「うぐぐっ……」

ほのママ「貴方っ!!」ダンッ

910: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:17:29.56 ID:zrhxTMPR
ほのママ「天界学校に行く前、お店のおまんじゅう大量に持ってったでしょ!!?」

穂乃果「ひゅっ!!?……ほ、穂乃果知りまてん……っ」

ほのママ「ウソおっしゃいっ!!!前の日にお母さんが数えてたんだからねっ!!」

穂乃果「そ、それたぶん……雪穂が食べたんじゃ」

「お姉ちゃん」

穂乃果「!?」

雪穂「……」

911: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:18:49.20 ID:zrhxTMPR
穂乃果「あ、ゆ、ゆっき~。久しぶりだねぇ……な~んて、」

雪穂「……天使ってさ、すぐに傷とか治せる技が使えるんだよね?」

穂乃果「へ?そ、そうだよ!もちろんお姉ちゃんも使えるよ!?」

雪穂「良かったね」

穂乃果「な、なにが?」


雪穂「これでケンカし放題だよ」グッ

穂乃果「」

912: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:21:59.83 ID:zrhxTMPR
「お、お父さん助けてぇーっ!!」

ほのパパ「!」

穂乃果「お父さんは……お父さんは穂乃果の味方だよね?ね?」

ほのパパ「~っ」

穂乃果「え?"……私はしがないうどん職人ですので関係ありません"?」

ほのパパ「……」コクッ

穂乃果「そんなぁーっ!!助けてよぉ!!」

913: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:24:32.20 ID:zrhxTMPR
ほのママ「穂乃果っ!!ごめんなさいはっ!?」

穂乃果「!?」

雪穂「さん、はいっ!」

穂乃果「うぅっ……」

ほのママ「~っ」

穂乃果「──ごっ、」


穂乃果「ごめんなさぁあああああいっ!!!!!」

914: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:26:47.03 ID:zrhxTMPR
亜里沙「……」

あんじゅ「なっ、なんなのよ、このコメディアンみたいな家族は……っ」

希「いやいや、賑やかでいいねぇ~」

こころ「まったくもうっ、」

にこ「なぁに?あの子がこころの相方なの?」

こころ「は、はい。一応ですけど……」

にこ「ふ~ん」

915: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:27:53.02 ID:zrhxTMPR
ことり「ベストコンビだよぉ♪」

にこ「そ、そうなの?」

理事長「そうよぉ~。この学校始まって以来の仲良しさんだもの~」

こころ「ち、違いますっ!!しょうがないから私が面倒見てるんですっ!!」

にこ「……」

こころ「っ///」

にこ「……ふふっ、そっか。」

「ひいぃぃぃ……」

916: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:28:36.88 ID:zrhxTMPR
穂乃果「酷い目に遭ったよぉ……っ」

スパンッ!

穂乃果「うぃ!?」

にこ「……」

穂乃果「な、なに!?なんなn」

にこ「アンタっ!!」

穂乃果「!?」

にこ「名前はっ!!?」

穂乃果「え?ほ、穂乃果だけど……」

917: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:32:00.70 ID:zrhxTMPR
にこ「そう。それじゃあ穂乃果!」

穂乃果「!」

にこ「……」

にこ「妹のこと頼んだわよ。」

穂乃果「……へ?」

にこ「た・の・ん・だ・わ・よっ!!!」

穂乃果「は、はいぃ!!!」

にこ「よしっ!」

918: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:33:33.47 ID:zrhxTMPR
こころ「お姉さま……」

理事長「うふふふ~♪」

ことり「良かったねぇ♪」

あんじゅ「……ハァ。これじゃあ子供連れの天親会ね」

希「あはは、確かにそうやんなぁ」

亜里沙「……」

亜里沙「……お姉ちゃんも来ないかなぁ。」

シュンッ

919: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:35:24.34 ID:zrhxTMPR
「……」


あんじゅ「あら?」

穂乃果「あ、英玲奈先生!」

英玲奈「……」

こころ「お疲れ様です。」

英玲奈「……ん、あぁ。」

希「?」

ことり「先生、ツバサちゃんは?」

英玲奈「……」

英玲奈「……何処にも居なかったんだ。」

920: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:36:26.55 ID:zrhxTMPR
あんじゅ「え?」

希「んん?」

理事長「……」

ことり「ど、どこに行ったんだろぅ」

真姫「あのボンクラ天使、どこほっつき歩いてんのよ」

ミカ「こんなにいっぱい人が居るんだし、みんなで手分けして探す?」

穂乃果「あ、そうしよっか!」

英玲奈「ダメだ。」

穂乃果「!」

921: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:39:44.86 ID:zrhxTMPR
英玲奈「そんな時間はない。私達にはやらなければならない事がある」

あんじゅ「──あっ!」

あんじゅ「そ、そうよ!みんなを集めた理由を説明して!」

ほのママ「え?同窓会じゃなかったの?」

真姫ママ「……私たち同窓じゃないでしょ」

ほのママ「え~、似た様なもんでしょー?」

雪穂「お母さん!ちょっと静かにっ!」

ほのママ「は~い……」

922: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:41:54.21 ID:zrhxTMPR
真姫ママ「特記事項の第三。……つまり、天界。人界。辺境の三界に関わる事柄には、現行の業務全てを放棄して、此れに対処しなければならない。」

真姫ママ「……それ程の事なの?」

英玲奈「……」

ヒデコ「……英玲奈。」

フミコ「英玲奈さん、"そう言うこと"だと思っていいんですね?」

英玲奈「……」

英玲奈「……天界屋のオヤジ。」

ほのパパ「!」

英玲奈「七つ道具が故障するなんて事はあるのか?」

923: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:44:06.94 ID:zrhxTMPR
ほのパパ「……」

英玲奈「おい。」

雪穂「そ、それはあり得ないって言ってます」

英玲奈「あり得ない?」

フミコ「説明します。」

フミコ「私たちもそうですが、七つ道具には人と同じ様に、自己治癒……いえ、修復する力があるんですよ」

フミコ「それはつまり、人体が持つ恒常性と等しい機能の一環でして、道具本来のあるべき形を維持する為の──」チラッ

穂乃果「」プスップスッ

924: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:48:30.69 ID:zrhxTMPR
フミコ「……えっと、」

フミコ「じ、自分で治せちゃうんです!」

穂乃果「!」

穂乃果「なるほど!」

ほのママ「……ハァ、」

真姫「てゆーか、そう思った原因ってなんなのよ?先ずはそれを聞かせて」

英玲奈「そ、それは……」

亜里沙「……」

ことり「っ」

925: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:54:44.01 ID:zrhxTMPR
ミカ「英玲奈ちゃん、私たちから言うよ?」

英玲奈「……いや、大丈夫だ。」

理事長「……」

英玲奈「……」スッ


英玲奈「みんな、聞いてくれ」


穂乃果「?」

こころ「な、なんなんですか?」

926: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 00:56:50.74 ID:zrhxTMPR
英玲奈「私たちは、先ほど天界乙女式参号と劇場式肆号の片割れを使い、連結作動と言う特殊な能力を使った」


希「……」

亜里沙「……」

ことり「……っ」

あんじゅ「……」


英玲奈「そして、その特殊な力で1ヶ月後の未来を見ようとしたが、何故かその映像が映らなかったんだ」


ヒデコ「……」

フミコ「……」

ミカ「……」

927: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 01:08:48.05 ID:zrhxTMPR
英玲奈「故障と言う可能性も考えたのだが、同じ天界道具の三人からの説明で、その可能性も無くなった」


ほのママ「っ」

ほのパパ「……」

雪穂「えっ、なに?」

真姫「……」

にこ「~っ」


英玲奈「具体的に、どの時間まで映せるのかは、まだ分かってはいないが」

928: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 01:10:28.82 ID:zrhxTMPR
英玲奈「この、一連の出来事が意味すること、それは……」


理事長「……」

真姫ママ「……」


英玲奈「っ」

英玲奈「恐らく、恐らくだがっ……」


英玲奈「明日の、ある時刻をもって──」

929: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 01:11:38.99 ID:zrhxTMPR
「この世界はなくなる」

930: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/02(土) 01:14:05.56 ID:zrhxTMPR
平和を愛する、アンニュイな天使たちの住む
天の国、天界。


お気楽な魔女たち、天界のはぐれ者達が集う
辺境の地。


呑気な王様が統治する、様々な人達が住まう
地の国、人界。



これら三界に暮らす全ての人々と

愛すべき生まれ住んだ土地、

共に生きてきた、その思い出の数々




それは、あまりにも突然の出来事でした。

936: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 07:28:46.98 ID:jS0FFPay
穂乃果「──ッ!!?」

こころ「ぇ……えっ」

希「っ」

亜里沙「うぅ……っ」

ことり「~ッッッ」

英玲奈「……」

あんじゅ「……ぁ、あなた……っ、一体なにを言ってるの……?」

英玲奈「……言葉通りだ。」

937: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 07:32:31.36 ID:jS0FFPay
あんじゅ「~ッ」

にこ「言葉通りって……そんなの信じられるわけないでしょーがっ!!」

英玲奈「……」

ほのママ「そ、その原因は分かるの?」

英玲奈「……いや、まだ何も分からない」

理事長「……」

真姫「てゆーか、参号か肆号が破壊された場合はどうなの?それも映らない理由になるんじゃない?」

938: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 07:46:15.65 ID:jS0FFPay
ほのパパ「……」チョンチョン

真姫「え?なに?」

ほのパパ「……」クイッ

雪穂「え?」

ほのパパ「……」

雪穂「え、えっと……もし、道具が壊れたとしても、それは続く世界の一つの出来事でしかないから、」

雪穂「その先の未来が映らない理由にはならないって言ってます。」

939: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 07:46:59.68 ID:jS0FFPay
真姫「……そう。」

あんじゅ「どう言うこと?」

雪穂「ね、ねぇ、お父さん。」

ほのパパ「……」

雪穂「……えっと、」

雪穂「要するに、世界が終わらないのなら、例えどこかの時点で道具が壊れたとしても、それはただ、知る為の手段が無くなるだけで」

雪穂「でも、この星の未来そのものが無くなるのなら、どれだけ頑張ったってその先は見れっこないって、そう言ってます。」

940: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 08:04:25.08 ID:jS0FFPay
あんじゅ「~ッ」

真姫「……ろくでもない話ね。」

希「……」

にこ「……ダメ。ぜんっぜん実感が湧かない」

こころ「そ、そうですね。スケールが大き過ぎてとても……」

ほのパパ「……」

英玲奈「……絶望的な結果を目の当たりにしたのは事実だ。それは受け入れなければならない」

941: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 08:28:01.51 ID:jS0FFPay
英玲奈「だが、コレに対処し得る方法ならば、心当たりがある」

こころ「な、なんですか!?」

英玲奈「それは、肆号のもう一つの片割れ【セカンド・ストーリー】」

英玲奈「コレを使って、その未来を直接書き換える事だ」

こころ「!!?」

英玲奈「その為にも、先ずは所有者であるツバサが居なければならないのだが……」

ヒデコ「その、肝心の監督がどっこにも居ないって言うのよね」
 

944: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 09:22:21.81 ID:jS0FFPay
英玲奈「それともう一つ。そもそもこうなる原因が分からなければ、肆号を使ったとしても対処出来ない」

希「まぁ、先ずはツバサとセカンド・ストーリーの確保が先決やね」

英玲奈「あぁ。そちらを先行しつつ、原因の究明も並行して行かないとな」

あんじゅ「でも、あの子がどこに居るのかが分からないんじゃ、どうしようもないんじゃないの?」

英玲奈「一応、ちび助に弐号を持ってくる様頼んでいたのだが」

こころ「あ、はい。あります」

945: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 09:22:50.59 ID:jS0FFPay
希「まさか、弐号でツバサを探すん?」

英玲奈「他に方法がないんだ。しょうがないだろう」

真姫「それって、確か写る面に作用する道具よね?それだと時間がかかり過ぎない?」

英玲奈「……むぅ、」

「監督ちゃんなら見つけられるわよ~」

英玲奈「え?」

理事長「うふふ~」

946: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 09:29:43.85 ID:jS0FFPay
あんじゅ「ど、どうやるの?」

希「……あ、分かった。」

英玲奈「なに!?」

穂乃果「あ!穂乃果も分かった!」

あんじゅ「嘘でしょ!?どうやるの!?」

穂乃果「簡単だったんだよぉー!つまりね」

穂乃果「もう一回だけ、参号と肆号を使えばいいんだよ!」

あんじゅ「……あ、」

947: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 10:06:00.23 ID:jS0FFPay
亜里沙「ぉお!なるほど!」

ヒデコ「そっかそっか!忘れてたよ!」

ほのママ「……あの、」チョンチョン

こころ「はい?」

ほのママ「今の、教えてくれない?」

こころ「あ、はい。つまりですね」

こころ「参号と肆号の連結作動を使って、ツバサさんの直近にあたる未来を見れば、居場所が分かるって事ですよ」

ほのママ「……」

こころ「……あ、あの。」

948: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 10:35:58.25 ID:jS0FFPay
ギュッ

こころ「!?」

ほのママ「か、可愛いわぁ~♡」

こころ「ちょっ!?」

ほのママ「ほんっとに可愛い~♪うちの娘にしたいくらいよ~♪」

こころ(さ、さすが穂乃果さんのお母さんっ……やる事が一緒……っ!)


──カッ!


こころ「!?」

ほのママ「!」

949: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 11:07:47.71 ID:jS0FFPay
「やったぁー!出来たにゃー!」

「はわわわわわっ、す、凄いっ」


真姫「あ、アンタたちっ!」

凛「ねぇねぇ、コレでいいんだよねぇ?」

理事長「そうよ~♪」

花陽「は、花陽……天使でも魔女でもないのに……っ」

にこ「何処に行ったのかと思ってたら、ずっとそれの練習してたわけ?」

950: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 11:09:06.34 ID:jS0FFPay
真姫「ちょっと理事長!どうして花陽に使わせたのよ!?」

理事長「これからの為よぉ~」

真姫「……っ」

英玲奈「まぁいい。とにかくツバサの場所を確認するのが先決だ」

英玲奈「──では、1時間後のツバサを映してくれ。頼むぞ、ねこ助。はな助。」

凛「はーい!」

花陽(は、はな助……っ)

951: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 11:39:27.78 ID:jS0FFPay
凛「行くよ、かよちん!」

花陽「う、うんっ」

凛「せー、」

花陽「のっ!」


『1時間後のツバサちゃん!』


キュインッ!!!


ズァァアアアアァアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!


───

952: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 12:23:00.34 ID:jS0FFPay
ツバサ『……』



穂乃果「お、映ったよ!」

英玲奈「当然だ。そうでなければ困る」

英玲奈「おい。誰かここの場所は分かるか?因みに私はさっぱり分からん」

にこ「……ちょっと黙ってなさい。」

雪穂「あの、花陽さん」

花陽「へ?」

雪穂「この映像のアングルって、変えられます?」

953: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 12:31:32.18 ID:jS0FFPay
花陽「えっと……うぅ~ん……」

理事長「画面をねぇ~、指でス~ってすると~周りが見えるよ~」

花陽「す、す~?」

凛「ほっ、」スッ

グルンッ

凛「おー!動いた!」

花陽「あ、そう言う事か」



『……』

954: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 12:53:11.26 ID:jS0FFPay
こころ「おぉ。ツバサさんの顔が良く見える」

穂乃果「このままお話出来そうだね!」

雪穂「──ん?」

穂乃果「え?」

雪穂「……ねぇ、お姉ちゃん。ここって、」

穂乃果「んん?」

穂乃果「あっ!」

955: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 12:54:04.60 ID:jS0FFPay
英玲奈「ど、どこなんだ?」

穂乃果「ここマメイチ・ビーチだよ!!」

ほのパパ「……」

ほのママ「あらホントね。随分外れの方だと思うわ」

凛「わ~。懐かしいね、かよちん!」

花陽「そ、そうだねぇ」

英玲奈「……よし、場所は分かった。私が迎えに行ってk」

真姫「ちょっと待った。」

956: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 12:56:26.31 ID:jS0FFPay
英玲奈「な、なんだっ!!」

真姫「ツバサの正面を映してちょうだい」

凛「これじゃないの?」

花陽「えっと、ツバサちゃんの視点って事だと思うよ」

凛「あー、なるほどね。」

凛「ほい。」スッ

グルッ



絵里『……』

957: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 13:07:40.69 ID:jS0FFPay
英玲奈「!!?」

あんじゅ「ちょっ──ッ!!」

希「え、えりちっ!!?」

ことり「~ッッッ」

ミカ「え、絵里ちゃんっ」

真姫ママ「……これって、」

理事長「……」



絵里『……』




絵里『……』スッ

958: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 13:08:57.03 ID:jS0FFPay
『……響け。氷結の囀りよ。その姿たるや千の枸橘蔓』ヒョォオオオオッ!


真姫「ッッッ」

にこ「ちょっ!?」

こころ「えっ?えっ!?」

亜里沙「お姉ちゃんっ!!!」

穂乃果「──だっ、」


「だめぇええええええっ!!!!!」



絵里『……呪禁術。』









『凍星ノ怪鳥』

961: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 14:30:05.10 ID:jS0FFPay
──この世の終わりを防ぐ為に立ち上がった

天。人。魔。三界の勇士たち

対抗策の一つである、天界劇場式肆号の二冊目
セカンド・ストーリーの所有者、ツバサを捜すべく

今一度、参号と肆号の連結作動を行い
今から1時間後のツバサを映したところ

そこには、今まさに旧友の命を断たんと

最大級の呪禁術を放とうとする

心優しき、元天使の姿が有りました。

962: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 14:32:16.71 ID:jS0FFPay
そして、

次にお届けするお話が、この物語の最後となります

激動の萌芽が華開く瞬間は

とある辺境での出来事を挟んだのち、


しばしの休息を以って、またやって来るでしょう。

964: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 15:25:14.23 ID:jS0FFPay
………



海未「……おしまい。」


千歌「えっ!?」

ダイヤ「はっ!?」

鞠莉「what's!!?!?」

海未「あ、いえ、前編はここまで。と言う意味です。次回はまた少し違うお話で続きますよ」

千歌「なぁ~んだぁ~」

鞠莉「安心デェ~ス。」

ダイヤ「そ、そうですわよね。びっくりしましたわ」

965: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 15:38:36.81 ID:jS0FFPay
果南「いやぁ~。それにしても今回は長いお話だねぇ」

海未「すみません。最後と言うこともあって、それなりに長くなってしm」

ガシッ

海未「!?」

梨子「……待ってるから。」

海未「は、はいっ?」

梨子「私、待ってるから、」

梨子「──壁。又は百合を。」

967: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 16:36:10.21 ID:jS0FFPay
海未「うっ……わ、分かりました……っ」

「クックックッ。」

海未「!」

善子「最後の……最後の闘いが来るわ……」

善子「天使と魔女……そして、下賤なる人間どもによる、最後の聖戦……」

善子「──そうっ!!」


善子「ラグナロクがっ!!!」バッ


海未「あ、あはは……」

ルビィ「ピギィ……」

968: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 17:16:24.67 ID:jS0FFPay
ダイヤ「貴方!ウチの妹を怖がらせないで下さいましっ!!」

善子「だって最終決戦なのよ!?なんか燃え上がって来ないの!?」

ダイヤ「それはっ……まぁ、分かりますが……」

果南「最後の闘いかぁ、いいねぇ。なんかこう、グッと来るよ。」

善子「でしょ!?それが元親友同士だってゆーなら尚のことだわっ!!」

鞠莉「うんうん!愛するが故の決闘よね!」

善子「……フッフッ。金言よ、リトルデーモン」

969: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 17:30:23.59 ID:jS0FFPay
海未「……」

曜「ねぇねぇ、紙芝居屋さん。」

海未「あ、はい。」

曜「どうでもいい事なんだけどさぁ、」

海未「え?」

曜「この紙芝居の紙、多過ぎない?」

海未「うっ、ご、ごめんなさい。」

曜「いやぁ、その古い自転車に乗っけてくるの大変じゃないのかなぁって」

970: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 17:32:28.93 ID:jS0FFPay
海未「いえ、それは大丈夫です。」

海未「なんと言っても、この自転車は坂道、砂利道、その他全ての悪路に適応するハイテク自転車ですから」

曜「へぇ~。」

果南「赤いサドルって珍しいよね」

千歌「でもさ、紙芝居屋さんの服と合ってていいと思う!」

ダイヤ「そうですわね。古き良き日本の文化を体現なされていて、私、郷愁の様なものを感じますわ」

海未「あはは、ありがとうございます。」

971: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 18:00:33.75 ID:jS0FFPay
曜「最初に見た時はちょっと驚いたよ。紙芝居屋さんなんてホントに居るんだって」

千歌「確かに!私も初めて見たもん」

鞠莉「コレぞ japanese culture! って感じね!」

梨子「うん。優しそうな雰囲気だよね」

善子「我が追憶の語り部よ。次なる狂想に備えよ」

ダイヤ「今時分にこの様な方がいらして、私とても嬉しかったのを覚えていますわ」

果南「そうだねぇ。こんなにゆっくり人の話を聞いたのは久しぶりだったよ」

ルビィ「ぅゅ……か、可愛くて良いよねぇ」

花丸「ちょっとおじさんっぽいけどね」

\\『アッハッハッハッ!』/

972: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 18:07:34.69 ID:jS0FFPay
曜「──あ、そう言えばさぁ、」

千歌「なになに?」

曜「今度近くに、大っきい"遊園地"が出来るんだって」

海未「!」

千歌「わぁ♪ホントにぃー!?」

曜「ホントホント!」

鞠莉「オッオーゥ!とっても楽しみデース!」

梨子「私も聞いたことある。見たこともない様なアトラクションが沢山あるって」

973: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 18:11:49.20 ID:jS0FFPay
ルビィ「可愛いうさぎさんとかいるかなぁ」

ダイヤ「きっと居ますわよ。楽しみにしていましょう?」

善子「ゆ、遊園地!?ホントに!?」

果南「いいねぇ、ジェットコースターに乗りたいなぁ」

花丸「まるは観覧車がいいずら~♪」

千歌「楽しみだよねぇ♪」


「み、みなさん!」

974: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 18:13:59.44 ID:jS0FFPay
千歌「?」

鞠莉「what's happend?」

海未「……あの、何かリクエストはありませんか?」

果南「あら、珍しいね。紙芝居屋さんから聞くなんて」

ダイヤ「またご無理をなさらないで下さいね?」

海未「いえ、大丈夫ですよ」

975: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 18:27:54.20 ID:jS0FFPay
千歌「じゃあさ、いつもの恒例で新しく来た子に言って貰おうよ!」

鞠莉「そうね。──と言うわけでよろしく!」ポンッ

曜「え?わ、わたし!?」

果南「うん。ここに居る子は大体みんな言ってるからさ」

曜「んん、分かった。」

曜「それじゃあ……」

海未「……」


曜「ハッピーエンドが見たい!」

976: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 18:30:14.41 ID:jS0FFPay
千歌「おぉー♪」

鞠莉「イイですねー!」

果南「うんうん。それが一番だよね」

花丸「まるもハッピーエンドが好きずら~♪」

梨子「えっ、でも……お話的に大丈夫なんですか?」

ダイヤ「そうですわね。どうですの?」

曜「大丈夫そう?」

海未「……ふふっ。」


海未「それは、乞うご期待です。」

977: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 19:38:12.80 ID:jS0FFPay
………………
………



ストッ

海未「…………ふぅ。」


海未「……」

海未「ようやく、ここまで来ることが出来ましたね」

海未「全九話のお話。それも残すところ、あと一話ですか……」

海未「ふふふっ。最初にリクエストを貰った時は、どうなる事やらと思いましたが」

海未「案外、その場のノリと勢いと言うのも、もしかしたら大事なのかも知れませんね。」

978: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 19:39:50.56 ID:jS0FFPay
海未「……でも、」ギィッ

海未「考えたら、色んな公園に行ったなぁ。わたし。」

海未「もの凄く広かったり、薔薇がいっぱい咲いていたり」

海未「よく分からないオブジェが置いてあったり、コンサートが開そうなステージが……あ、確か二つありましたね」

海未「あとは、広大な海が見えたり、とても大きな時計があったり、」

海未「ホント、面白いところばっかりだったなぁ」

979: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 19:43:05.48 ID:jS0FFPay
海未「……」


海未「……そう言えば、」


海未「何もなかったけど、最初に行ったあの、丘の上の公園、」


海未「綺麗な青空が見えた、あの場所が──」




海未「一番、素敵だった気がする。」

980: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 19:44:32.90 ID:jS0FFPay
ギィッ

海未「……」

海未「……ハッピーエンド、ですか。」

海未「そうですね。それが一番です」

海未「可愛い天使たち。愉快な魔女たち。のんびりした下界の人たち」

海未「あの人達に、不幸なんて似合いませんから」

海未「だから──っ」ガタッ

981: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 19:45:34.95 ID:jS0FFPay
海未「彼女たちをハッピーエンドに導ける様に、私も全力で頑張らなければなりませんね!」

海未「よいしょっと」ガタッ

海未「待ってて下さい。今、最高のハッピーエンドをお送りしますからっ。」ガサッ


海未「……」カリカリッ

海未「……」カリカリッ


海未「……」

982: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 19:46:07.70 ID:jS0FFPay
海未「……急がなきゃ。」

983: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/03(日) 19:49:43.95 ID:jS0FFPay
/cVσ_VσV これにて、第八幕は終了です。
     次回からはいよいよ最後のお話
     第九幕となりますので、
     どうか、最後までお付き合い頂ければ
     是、幸いにございます。

引用元: 海未「紙芝居屋さんです」2