翌日 闇の魔術に対する防衛術 授業


ハーマイオニー「昨日はありがとうね、マミ。クルックシャンクスを見つけてくれて……」

マミ「ううん。いいのよ、そんな。大したことはしてないもの」

ハーマイオニー「でも、キュゥべえが……」チラッ

QB「きゅぷっ?」

マミ「……大丈夫よ。たぶんその内治るから」

ロン「キュゥべえの奴、可哀想に。言葉が喋れなくなっちまって……
   おいハーマイオニー。猫の躾くらいちゃんとやれよ。猫のキュゥべえでさえこれなら、僕のネズミはどうなる?」

ハーマイオニー「なによ。あれ以来、追いかけてないでしょ?」

ロン「追いかけられないようにしてるんだよ! ずっと寝室で休ませてるんだ!」

マミ「あ、あの、二人とも、喧嘩は……もうすぐ授業も始まるし……」

ハーマイオニー「……そういや、ルーピン先生遅いわね。いつもはベルが鳴る前に準備してるのに……」

ロン「ハリーがクィディッチの練習で遅れてるから、ありがたいっちゃありがたいけどね。
   でも心配だな。とうとうスネイプに毒殺されたちゃってたり――」

スネイプ「――我が輩が、なんだと? ウィーズリー」




614: 2013/04/05(金) 22:41:51.21 ID:CiavE3VX0

スネイプ「ポッター、遅刻だ。グリフィンドール5点減点。座って教科書を出せ」

ハリー「……なんでスネイプが?」ガタッ

ロン「ルーピン先生、体調不良だってさ。でもよりによってスネイプに後釜を頼むことないよなぁ」

スネイプ「私語を慎めウィーズリー。さらに5点減点」

ロン「……これだもん」

スネイプ「さてさて……授業の記録もつけていないとは、ルーピン教授殿のだらしないことよ。
      まあ、いい。本日、諸君らに学んで頂くのは――人狼だ。教科書の394ページを開きたまえ」

ハーマイオニー「でも、先生。まだ人狼はやる予定じゃなくて……」

スネイプ「黙りたまえ、グレンジャー。我が輩がいつ君に意見を求めた。
      この授業を預かったのは我が輩であり、君ではない。
      さて、人狼の授業に移るが、人狼と狼の見分け方が分かる者は?」


しーん



スネイプ「ふむ、誰も分からない、と。やれやれ、ルーピン先生は何を教えていたのか……」

ハリー(仮に分かってても手を挙げたくないね)

ロン(同感。まああそこに一人、例外がいる見たいだけど)

ハーマイオニー「……」スッ

スネイプ「全く、呆れたものだ。三年生にもなって、人狼の見分け方も知らんとは」

ハーマイオニー「……っ! っ!」ブンブン

マミ「あのぅ、スネイプ先生。ハーマイオニーさんが手を挙げてますけど……」

スネイプ「黙れ、トモエ。他人のことをとやかく言えるのなら、君は見分け方がわかるのだろうな?」

マミ「え、あの、いいえ……」

スネイプ「ふむ、他人任せ、か。まったく、根性が悪いことよ」

マミ「……っ」

615: 2013/04/05(金) 22:42:24.63 ID:CiavE3VX0

パーバティ「……先生。さっきもハーマイオニーが言いましたけど、私達、まだ狼人間までいっていません」

ラベンダー「そうです。そもそも今日やる予定だったのはヒンキーパンクで――」

スネイプ「自らの不勉強を棚に上げての発言に、グリフィンドールから10点減点。
      我が輩は"これから人狼をやる"と申し上げたはずだが?」

ラベンダー「……」

パーバティ「……」

スネイプ「さてさて、酷いものだ……我が輩の予想より、ルーピン先生の教え方は遥かに程度が低い。
      このクラスの学習の遅れに関しては、我が輩からしっかりと校長にお伝えして――」

ハーマイオニー「先生、狼人間は普通の狼と違って鼻面が――」

スネイプ「勝手にしゃしゃり出てきたのはこれで二度目だな。
      その鼻持ちならない知ったかぶりな態度で、さらに五点減点する」

ハーマイオニー「……っ」ジワッ

ロン「糞野郎」ボソッ

ハリー(ロン!)

スネイプ「……何か言ったか、ウィーズリー?」

ロン「いえ――ただ、答えて欲しくないのに質問するのって先生としてどうかな、って思っただけです」

ハーマイオニー「ロン……」

ネビル(凄い、ロン。とても僕には真似できない……)

シェーマス(ああ。凄いけど、言い過ぎだよなぁ。見ろよ、スネイプの顔……)

スネイプ「――処罰だ、ウィーズリー。その無礼な口のきき方を直さねば、今に後悔することになるだろうな」

616: 2013/04/05(金) 22:43:00.73 ID:CiavE3VX0

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スネイプ「さて、授業は終了だ。各自、今日の授業内容のレポートを書いてくること。
      月曜までに羊皮紙二巻。忘れた者の数だけ5点減点する。以上」


バタン


ラベンダー「……最っ低! なによあの態度! なんであんなのが先生やってられるわけ?」

パーバティ「本当よね。ブラックにやられちゃえばいいのよ」

ロン「ああ。あいつの部屋に隠れてたらいいのに。こんどフレッド達に頼んで
   スネイプの部屋に"シリウス・ブラック様歓迎"ってプレートくっつけて貰おうか……」

ハリー「でも、何だか今日はいつも以上に荒れてたよね、スネイプの奴。
     ことあるごとにルーピン先生の悪口言ってたし……」

ハーマイオニー「何か恨みでもあるのかしら……」

マミ「さあ、それは分からないけど……でも、ロンくん凄かったわね。
   スネイプ先生に、あんなにはっきりと文句を言えるなんて」

ロン「お陰で僕はおまるの掃除だけどね……」

ハーマイオニー「……がとう」

ロン「うん? なんか言ったかい、ハーマイオニー?」

ハーマイオニー「……別に? 空耳じゃないかしら?」

QB「きゅっぷいぷい!」

マミ「え、照れてる? 誰が?」

ハーマイオニー「クルックシャーンクス!」

QB「ぴぃっ!?」

ロン「それにしてもケチがついたよなぁ。明日はクィディッチの試合だって言うのに。
   ハリー、気にせずに飛べよ。まあ、ハッフルパフなんて一捻りだろうけど」

ハリー「そうでもないらしいんだ。ディゴリーって新しいキャプテンがチームを編成し直して……」

617: 2013/04/05(金) 22:43:56.57 ID:CiavE3VX0

翌日 クィディッチ競技場



ざああああああああああ!


マミ「ねえ――なんで――観客席に――屋根がついてないの――!?」

ロン「そんなの――ついてたら――試合が――見えないだろ――!」

マミ「こんな大嵐じゃ――どっちみち――なんにも――みえないわよ――!」

ロン「グリフィンドールが――50点くらい勝ってる――で、いまタイムアウト――
   ハーマイオニーが――ハリーの眼鏡を――」

マミ「なーにー!? ――聞こえない――!」


ざあああああああああああああああ!


ロン「――、――」

マミ「だから聞こえないって――っ、ごほ、ごほっ! あ、雨粒が喉に……!」

QB『無理に喋らないほうがいいよ、マミ。大人しくしていよう?』

マミ『ああ、キュゥべえ……テレパシーね。はあ、全く。こんな大嵐の日でも試合は中止にならないって……
   ハリーくん達、こんな中でよく飛べるわね……私は普通の時でも上手く飛べないのに……』

618: 2013/04/05(金) 22:44:30.29 ID:CiavE3VX0


ざあああああああああ!


QB『箒に逃げられる方が多いもんね、君』

マミ『言わないで……それにしても、本当に酷い雨……びしょ濡れよ、もう。
   帰ったらマダム・ポンフリーの元気爆発薬飲まないと……』


ざあああああ……


QB『……確かに、寒い……というより、寒ぎないかい、これ?』ブルッ

マミ『……ねえ、キュゥべえ。変よ。雨の音が、急に、遠く……』

ロン「ハリーが――落ち――吸魂鬼――!」

マミ「……え? ロンくん、いま、なんて……あ、れは……」


吸魂鬼「………」


マミ「なんっ、で、学校の中、に……」フラッ

ロン「――ミ!? ――誰か――ダム・ポンフ――倒れ――!」


ざあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!


619: 2013/04/05(金) 22:45:07.87 ID:CiavE3VX0

◇◇◇



 今よりもだいぶ小さな体躯の自分/アスファルトの上/周囲には鉄くず/炎に撒かれ/

 視界にはっきりとした白色の猫/紅玉の双眸/×ュゥ×え/話しかけてくる/

Q×「×と×約して××少×にな×て――」

 遠い声/掠れた×/聞き取×ない声/

 背後には/両×の/死×が/散乱/


QB「――君が望めば、この運命だって変えられる」


 暗転。



◇◇◇

620: 2013/04/05(金) 22:46:09.07 ID:CiavE3VX0

医務室


マミ「ここ、は……?」

ハーマイオニー「ああ、マミ! 起きたのね、良かった……私、私、あなたが倒れたって気づかなくて――」

ロン「しょうがないだろ。僕は隣だったから気づいただけ。誰だってハリーのほうに目が行ったさ。
   数十メートルも落ちたんだから……」

マミ「何が、起きたの……?」

QB「……吸魂鬼だよ。あいつらが来たんだ。それでハリーが箒から落ちて……」

マミ「……私も気絶しちゃったのね。ハリーくんは、平気なの……?」

ロン「あっちで寝てる……落ちたせいか、まだ起きないんだ。
   今はフレッドとかジョージとか、チームメイトが様子を見てるけど……」

ハーマイオニー「ハリー、大丈夫かしら……試合に負けたこと、気にしなければいいけど」

ロン「無理だろうな、それは……ほら、ハリーの箒も粉々だ。暴れ柳にぶつかって……」

QB「酷いね、柄まで真っ二つだ……もう直らないのかい?」

ロン「ああ。こうまで粉々だとな……仮に直ってもまっすぐ飛ばないよ。
   箒はクィディッチ選手の魂だぜ? ハリーは絶対落ち込むと思うな……」

マミ「……ありがとう、二人とも。私はもう大丈夫だから、ハリーくんについていてあげて」

ハーマイオニー「……分かったわ。でも、なにか必要なものとかあったら、遠慮なく声を掛けてね」

ロン「ああ、そうだ。マダム・ポンフリーが君が起きたら枕元のチョコを食べさせるようにって……
   はい、これ。じゃあ、ちゃんと食べとくんだよ……」

マミ「……」

QB「災難だったね、マミ。まさか吸魂鬼が入りこんでくるなんて……ダンブルドアが凄い怒ってたよ。
   それで、吸魂鬼はぜーんぶ吹っ飛んじゃった。あの時の迫力といったら、もう――」

マミ「ねえ、キュゥべえ」

QB「……うん、なんだい?」

マミ「……私とあなたが会ったのって、ペットショップの時が最初よね?」

QB「その筈だけど、急にどうしたの?」

マミ「……ううん。別に、なんでも……」

マミ(……夢の中で、キュゥべえに会ったような……それに、きっとあの夢は……)


621: 2013/04/05(金) 22:46:50.86 ID:CiavE3VX0

翌日 夜 医務室


QB「Zzzzz....」

マミ(ふふっ。病人よりもよく寝ちゃって……ずっと、私に付き添ってくれてたものね。
   ありがとう、キュゥべえ……さて、私も寝ないと。明日には退院して、また授業だし……)

ハリー「……マミ、まだ起きてる?」

マミ「ハリーくん? ええ、起きてるけど……どうしたの? どこか痛む?」

ハリー「いや、そうじゃなくて……少し、話をしてもいいかな」

マミ「? ええ、いいけど……それじゃ仕切りのカーテンを開けるわね。えーと、杖は……」

ハリー「いや、僕がやるよ。マミがやるといつかみたいに燃えるかもしれないし……」


シャッ


マミ「もうっ、ハリーくんの意地悪……でも、まあそうね。私はあんまり魔法が得意じゃないし……
   それで? 勉強の相談なら、こんな私じゃなくてハーマイオニーさんに頼んだら?」

ハリー「はは、悪かったよ。でも、これはマミにしか聞けないことだから……
     マミなら、皆よりは分かってくれるかもしれない」

マミ「……冗談交じりで聴いていい話じゃないみたいね。分かったわ、話して。
   上手く答えられるかは分からないけど……それでも、私にできることがあるなら」

622: 2013/04/05(金) 22:47:35.42 ID:CiavE3VX0

ハリー「ありがとう……その、聞きたいのは吸魂鬼のことなんだけど……」

マミ「……気絶するのが、私とハリーくんだけっていうことについて?」

ハリー「うん。前にルーピン先生が言ってたよね。僕とマミが気絶するのは、昔最悪の経験をしたからだって」

マミ「ええ。ハリーくんは、例のあの人に、その……」

ハリー「うん。父さんと母さんを……殺された。それも、僕の目の前で」

マミ「目の前で? 確かその時、ハリーくんは一歳だったって……覚えてるの?」

ハリー「いいや。でも、思い出したんだ。吸魂鬼は、最悪の経験だけを残すから……
     気絶するとき、僕を守ろうとする、母さんの声が聞こえるんだ――」

マミ「……」

ハリー「……その、辛かったから答えなくてもいいんだけど、マミも両親が……」

マミ「……ええ。亡くなってるわ。自動車事故でだけど。話したことあったかしら?」

ハリー「トロール事件の時……マクゴナガル先生が言ったのを覚えてたんだ。僕と一緒だ、と思って……」

マミ「……そう。あの時……」

ハリー「……マミは吸魂鬼が近くに来た時、何か聞こえる?」

マミ「私は――夢みたいなものを見るわ。たぶん、事故の時の。
   周りが自動車の残骸と炎に包まれていて……でも、あんまり思い出せなくて……」

ハリー「そっか……思い出さない方がいいと思う?」

623: 2013/04/05(金) 22:48:37.77 ID:CiavE3VX0

マミ「……私は……きっと、思い出しくない。何か、とても嫌な予感がするの……
   あの夢をはっきりと最後まで見たら、私、とっても酷いことになるって……」

ハリー「……僕は、父さんと母さんの声を聞いたことがない。
     それで、吸魂鬼が近づいて来た時、嫌な気持ちになるけど……声を聞きたいって気持ちも、確かにあるんだ」

マミ「そう……ハリーくん、小っちゃい頃に御両親と死に別れてしまったんだものね。
   そういう点では、私の方が恵まれているのかも……」

ハリー「……」

マミ「……私は、ハリーくんと違って両親のことを覚えてるし、思い出もある……
   だから、完全にあなたの気持ちを理解できるわけじゃないけれど――」

ハリー「……けれど?」

マミ「……覚えているからこそ、思い出があるからこそ、辛くなる時もあるわ。
   だって、もう二人とも死んじゃっているんですもの……」

マミ「――二度と手に入らない幸福を知らされるのって、とても残酷じゃない?」

ハリー「……そうだね。きっと、そうだ。声を聞いたって、父さんも母さんも帰ってくるわけじゃない。
     ありがとう、マミ。少し楽になった」

マミ「ううん。私、偉そうなこと言っちゃって……もう寝ましょうか? 明日は授業だし」

ハリー「うん……お休み、マミ……」

624: 2013/04/05(金) 22:49:10.22 ID:CiavE3VX0

数日後 闇の魔術に対する防衛術



ルーピン「さて、これで今日の授業はお終いだ! みんな、休んでしまってすまなかったね。
      スネイプ先生の出した宿題は、私のほうから話をつけておこう――」

ラベンダー「マミ、早く戻りましょう! 私達、紅茶占いはもう完璧なの!」

パーバティ「そうよ! マミの数占いと比べてみましょう!」

マミ「分かったわ。それじゃ、寮に戻って準備しないと――」


ロン「やれやれ。相変わらずあの二人はトレローニー先生の虜ーにーなってるな……
   紅茶占いなんて、茶色いふやけたものしか見えたことないよ」

ハーマイオニー「ほら、やっぱり占い学なんてそんなものでしょ?」

ロン「……いや、でも、僕がまだ未熟なだけかも……」

ハーマイオニー「それならきっと、ずっと未熟のままよ。さ、戻って宿題をすませないと。
          ハリー、私達も戻りましょう?」

ハリー「ごめん、僕ちょっと、ルーピン先生に用事があるから――」

625: 2013/04/05(金) 22:49:40.12 ID:CiavE3VX0

ルーピンの部屋


ルーピン「吸魂鬼の追い払い方、か」

ハリー「ええ……先生が前に、汽車の中であいつを追い払ったって聞いて……」

ルーピン「ああ、確かにね。吸魂鬼に対する防衛法が無いわけじゃない……だが、非常に高度な魔法だ。
      習得も難しいし、仮に習得できたとしても、敵の数が増えれば防衛自体が難しい――」

ハリー「……」

ルーピン「――が、なるほど。もう覚悟をしてる、って顔だね」

ハリー「あいつらに近寄られるのはもう二度と御免です。だから、戦い方を知りたいんです」

ルーピン「……いいだろう。ただ、次の学期になってからになってしまうが。
      やれやれ、私も病気がなければな……」

626: 2013/04/05(金) 22:50:12.41 ID:CiavE3VX0

学期末 ホグズミード週末


ロン「ハリー、またお土産いっぱい持ってくるからさ! 期待しててくれよ」

ハーマイオニー「ええ。あなたが好きだって言ってたムースチョコ、買えるだけ買ってくるわ!」

ハリー「うん、楽しみにしてるよ……はぁ、行っちゃった。今回はどうしようかなぁ……
     そういえば、マミはどこだろう? 朝から姿が見えないし」

フレッド「よう、ハリー! きょろきょろしちまって、何か探し物か?」

ジョージ「そんでもって、探してるのはホグズミード行きのチケットを持ったサンタクロースだったりしないか?」

ハリー「ああ、フレッドにジョージ……そんなサンタクロースがいるんなら、僕、頑張って仕留めるけど……」

フレッド「穏やかじゃないねえ。まあ、一人だけ置いてけぼりにされたら腐りたくなるのも分かるけどさ」

ジョージ「ハリー、そのサンタクロースは君の目の前にいるんだぜ? おっと、仕留めないでくれよ」

ハリー「? どういうこと?」

フレッド「ちょいと早いが、クリスマスプレゼントさ。それもとびっきりのな」

ジョージ「ああ。人にやっちまうのは惜しいが、"これ"を一番必要としてるのは君だろうからな」ガサッ


羊皮紙「」


ハリー「……なにこれ。古い羊皮紙? これがチケットなの?」

フレッド「ああ、どこへでもフリーパスさ!」

ジョージ「見てろよハリー――"我、ここに誓う。我、よからぬことを企む者なり"」トン


羊皮紙「」ムズムズ



『ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ。
 我ら悪戯坊主の味方が送る最高の品、"忍びの地図"』



ハリー「地図? 文字が浮かびあって……わーお、これ、ホグワーツの地図かい?
     知らない隠し通路がいくつも……しかも、この地図の上を動いてる名前って」

フレッド「その通り。誰がどこに居るかぜーんぶ表示されるってわけさ」

ジョージ「な? これを使えばホグズミードまでひとっ跳びでございってね。まあ、実際は少し歩くけどな。
     ほら、ここ。この通路を使え。他はフィルチが知ってたり、暴れ柳の真下だったりして駄目だ」

ハリー「凄い地図だね……」

フレッド「全くだ。ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ。彼らは天才だよ」

ジョージ「是非ともお会いしたいものだな。それじゃ、ハリー。楽しい週末を過ごしてくれたまえ」

フレッド「ああ、それと使ったら消しとけよ。杖で叩いて"いたずら完了"って言えば消えるからな。
     それではホグズミードで会おう」

ハリー「……よし、それじゃあ透明マントを取ってきて……マミも呼ぼうかな。行きたがってたし。
     マミは……へえ、こんなところに隠し部屋があったんだ……ん? 一緒にいるインキュベーターって誰だ?
     まあいいや、とりあえずいってみよう。"いたずら完了"っと」

627: 2013/04/05(金) 22:50:48.59 ID:CiavE3VX0

透明の部屋


マミ「はぁ……はぁ……」

QB「マミ、少し休んだらどうだい? もう朝からずっとじゃないか。根を詰め過ぎると毒だよ」

マミ「分かってるけど……でも、一回も成功してないし……大丈夫。まだ、出来るわよ……」

QB「……」

QB(確かに体力はそれほど消耗してない……それよりも精神的な疲労が大きいのか。
   やっぱり、この魔法のシステムって……)

マミ「ほら、キュゥべえ。カエル。次の。早く並べて……」

QB「……分かったよ。でも、本当に無理はしないでおくれよ?」ヒョイッ

マミ「大丈夫……さあ、行くわよ……集中して……」


蛙「ゲコッ」


マミ「すぅー……はぁー……エンゴージオ!(肥大せよ)」ピカッ


蛙「……ゲコッ」ムクムク


マミ「……っ、やった! やったわ! 蛙がどんどん大きくなってる! 成功よ、キュゥべえ!」

QB「おめでとう、マミ! ほら、やっぱり練習すればできるようになるんだよ!」

マミ「ええ、そうね……本当に、良かった……」


蛙「ゲコ」ムクムクムクムクムクムク


QB「……あー、マミ? ちょっと力が入りすぎたかな? どこまで大きくしようとしたの?」

マミ「え? そんな、一回りくらい大きくなればと思って……」


蛙「ゲ コ ゲ コ」ムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムク


628: 2013/04/05(金) 22:51:28.97 ID:CiavE3VX0

透明の部屋前 廊下


ハリー「えーと、地図だとこの辺だったんだけど……ドアが見えないのか。参ったな……」


バタン!


ハリー「うわ、急に壁が消えて……あ、マミ! ちょうど良かった。あのさ、ホグズミードに――」

マミ「し、閉めて! キュゥべえ、閉めて! ドア閉めて!」

QB「無茶言わないでくれよ! こんなの、もう――」

ハリー「え、どうしたの……うわ、なんだこれ! 部屋の入り口から、でっかい緑色の風船みたいなのが――」


蛙「ゲ コ ゲ コ ゲ コ ! 」


パァーーーーーーーーン! びちゃっ、びちゃびちゃびちゃっ



ハリー「あーあ、廊下が内臓塗れ……マミ、何をしてたの?」

マミ「魔法の練習……肥らせ呪文をカエルにかけたんだけど……はぁ、結局失敗ね。掃除しないと……」

ハリー「あー、いや。マミ。その前にちょっと聞いてよ。フレッドとジョージからさ、良いものを貰って――」

フィルチ「ああ! 貴様ら、何をやっている!」

ハリー「うわ、フィルチ……なんてタイミングで……」

マミ「ああ、フィルチさん。ごめんなさい……部屋の中で魔法の練習してたら、こんな風に……」

フィルチ「どんな失敗をしたらこうなるというんだ! まったく貴様は! 私を過労死させるつもりか!?」

マミ「ごめんなさい。ちゃんと掃除はしますから――スコージファイ!(清めよ)」


パァン!


QB「わぷっ! ぺっ、ぺっ、口の中に入った……」ショボン

フィルチ「やめろやめろ! 貴様がやっても肉片が飛び散るだけだ! モップを持ってきてやるから大人しく待ってろ!」

マミ「すみません……それで、ハリーくん、なにか用事だった?」

ハリー「あーいや、その……何でもないんだ。掃除、頑張ってね」

マミ「? うん、それじゃ、またね」

ハリー(……マミは来れそうにないな。悪いけど、誘うのは次の機会にしよう……)


629: 2013/04/05(金) 22:53:09.21 ID:CiavE3VX0

ホグズミード パブ "三本の箒"


ハーマイオニー「呆れた! それでマミをほったらかしにして来ちゃったの?」

ロン「おいハーマイオニー、仕方ないだろ。マミは掃除で来れなかったんだから」

ハリー「フィルチの前で、地図のことを言うわけにもいかなかったし……」

ハーマイオニー「大体、許可証がないのに……ブラックがここに現れたらどうするつもり?」

ロン「毎晩吸魂鬼がパトロールしてるホグズミードに? 考えすぎさ。
   それに、せっかくのクリスマスなんだ。ハリーにも楽しむ権利はある筈だろ」

ハーマイオニー「それは……そうだけど、でも……」

ロン「マミにはハニーデュークスのお菓子をありったけ買ったしさ。それでいいじゃないか。
   ほら、バタービールで乾杯だ。メリークリスマス!」

ハリー「メリークリスマス!」

ハーマイオニー「もう……メリークリスマス」


チン!


ロン「ぷはっ! やっぱり美味いなぁ、これ。なあハリー、そう思うだろ?」

ハリー「うん、美味しい。それに、凄く温まる……いいなあ、これ。ホグワーツでも出ればいいのに……」

ロン「分かってないな、ハリー。ここで飲むから美味いんじゃないか」

ハーマイオニー「そんなこといって、ロンはマダム・ロスメルタが気になってるだけでしょ?」

ロン「ぶはっ、げほっげほっ! 違う! 確かにマダム・ロスメルタは綺麗だけど――」

ハリー「はは、ロン。顔が赤くなってるよ――」グビッ


ガチャッ


ハリー「ぶーーーーーーっ!」

ロン「……よーし、ハリー。僕の顔を冷ます為にやったんだっていうなら、表に出ろよ。
   口の中にいっぱい雪を詰めてやるから」ポタポタ

ハリー「げほっ、ち、違うってば。あれ、あれ!」

630: 2013/04/05(金) 22:53:50.59 ID:CiavE3VX0

マクゴナガル「ギリーウォーター。シングルで」

ハグリッド「蜂蜜酒を暖めてくれ。そうさな、とりあえず4杯分くれや」

フリットウィック「私はいつもの奴を――大臣は何にしますか?」

ファッジ「ラム酒を貰おうかな……ホットバタードで」



ロン「げー! 先生たちがなんで……ああそうか、最後の週末だもんな、クソッ!」

ハーマイオニー「不味いわね。ハリー、透明マントをしっかり被って……」

ハリー「うん……持ってきて良かったよ、これ……」バサッ

ロン「机の下に入っとけ。ジョッキも、ほら……三人分あると不味い」

ハーマイオニー「一応、私達も隠れておきましょう……モビリアーブス(木よ動け)」


ガサッ


ハーマイオニー「これでクリスマスツリーの陰になったから、先生方からはこっちが見えない筈……
          でも、どれくらい居るつもりかしら? 夜になったら吸魂鬼が……」

ロン「いざとなったら透明マントで強行突破するしかないだろ。まあ、多分ばれないさ。
   にしても、魔法省大臣がわざわざ何の用だ?」

631: 2013/04/05(金) 22:54:31.61 ID:CiavE3VX0

ロスメルタ「はい、ご注文の品ですわ」

ファッジ「やあ、ママさん。久しぶりだね、こっちにきて一緒に飲まないか?」

ロスメルタ「よろしいんですの? 光栄ですわ」

ファッジ「さ、ここにどうぞ――やれやれ、それにしてもようやく一息着けるな。
     あの吸魂鬼どもの相手は、酷く億劫になる……」

ロスメルタ「そんなものを私のパブに寄越したんですの? それも二回も」

マクゴナガル「この前は学校にまで入りこんで――」

フリットウィック「ハリー・ポッターは危うく墜落死するところでした!」

ファッジ「そう皆して私を責めんでくれ……仕方がない、用心のためだよ。シリウス・ブラックを捕まえる為にはね」

ロスメルタ「シリウス・ブラック……いまでも信じられませんわ。あのシリウスが、まさか闇の陣営になんて……」

ファッジ「ではこの話も知らんのだろうな。奴の犯した最悪の所業は」

ロスメルタ「最悪の……? 捕まった時の、あの事件よりも?」

マクゴナガル「ええ、その通りです……ホグワーツ時代、ブラックの一番の親友が誰だったか、覚えていますか?」

ロスメルタ「ええ、もちろんですわ! あの二人ときたら、いつも一緒で……愉快なことをたくさんしでかしましたわ。
       あのシリウス・ブラックと――ジェームズ・ポッターは!」



ハリー「……!」ガタッ

ロン「わ、馬鹿! 座ってろって!」

ハーマイオニー「ハリー、ばれちゃう、駄目!」



ハグリッド「ああ、あんの二人には手を焼かされたなぁ……禁じられた森に近づけないことに、俺ぁ半生を費やしたよ」

ファッジ「ブラックの最悪の所業とはね、ロスメルタ。そのジェームズ絡みなんだ。
     ブラックはジェームズが結婚するとき付添人を務めて、さらにはハリーの名付け親にまでなった!
     だというのに、ブラックはそのジェームズを裏切ったのさ……」


ハリー「……ブラックが、父さんを……」

632: 2013/04/05(金) 22:57:58.81 ID:CiavE3VX0

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ロスメルタ「"忠誠の術"? その魔法をブラックが破ったから、ポッター夫妻はヴォルデモートに?」

ファッジ「ああ。それが一番助かる確率が高いとダンブルドアが判断したんだ。複雑な魔法なんだがね」

フリットウィック「情報を人間の中に封じ込める魔法です。その人間が自ら情報を漏らさない限り、
          どうやっても封じられた情報は――リリーとジェームズの居場所は見つからない」

ファッジ「だがブラックは"秘密の守人"――情報を自分の中に封じ込める役になってすぐ、
     ヴォルデモートに密告をした。一週間と経たないうちにね」

ハグリッド「それをあのくそったれの裏切り者が! ああ、俺が"秘密の守人"だったら!」

マクゴナガル「ハグリッド、声を落として!」

ロスメルタ「そうですわ、ハグリッド。それに、次の日には魔法省が追いつめて……」

ファッジ「……だったら良かったのだが、最初に奴を見つけたのはピーター・ペティグリューだった」

ロスメルタ「ペティグリュー……ジェームズとシリウスの後にくっついていたあの子が……?」

マクゴナガル「ええ、そうです……優等生とは言えませんでしたが、ジェームズ達と仲が良くて……」

ファッジ「その彼がブラックを追い、見つけ、そして……あの事件だ。返り討ちにあったんだよ。
     彼の死体は残らなかった。指一本以外はね」

ファッジ「ジェームズを裏切り、その親友までもを殺した。それがブラックの最悪の所業、という訳さ」


ハリー「……」

ロン「……」

ハーマイオニー「……」

708: ◆jiLJfMMcjk 2013/05/25(土) 23:46:26.97 ID:mIQJy+4r0

クリスマス休暇 朝食


マミ「うう疲れた……結局昨日は一日中カエルの掃除……全身筋肉痛だわ……」モグモグ

QB「それでも朝からケチャップをたっぷり絞った卵を食べられるんだから、君もだいぶ図太くなったよね」

マミ「だから、慣れちゃったっていったじゃない……そういえば、朝食なのにハリーくん達がいないわね。
   あの三人も、クリスマス休暇はこっちに残る筈だけど」

QB「昨日から様子が変だったよねぇ。ロンとハーマイオニーがホグズミードから帰ってきてから、心ここにあらず、って感じで」

マミ「……風邪でも引いたのかしら? 心配だけど、私は魔法の練習しなきゃいけないし……
   この休み中に、呪文をひとつでも成功させないと……冗談抜きで進級が危ういわ」

QB「大丈夫だよ。一応、進歩の跡は……」

マミ「あなたはそういうけどね、キュゥべえ。私が今練習してる魔法って、10月に習ったやつよ?
   はぁ。結局、授業で先生にコツを聞いても上手くいかないし……ハーマイオニーさんに頼れたらなぁ……」

QB「ラベンダーやパーバティもいないしね。というか、今年のクリスマス休暇は残ってる子少ないなぁ。
   僕らとハリー達を除けば、えーと……全寮合わせて三人しか残ってないよ」

マミ「シリウス・ブラックのせいでしょ。ホグワーツの中に出たんだし……
   にしても確かに静か過ぎね、これは。傍から見ると、だだっ広い大広間でこの人数はシュールだわ」

QB「なんなら、お昼ご飯はサンドイッチでも詰めて、外で食べるのもいいんじゃない?」

マミ「嫌よ、寒いもの……でも、お散歩くらいだったらいいかもね。籠りっぱなしだと病気になりそうだし。
   午後になったら、少し外を歩きましょうか?」

QB「うん。それがいいよ。息抜きは大事さ」

709: ◆jiLJfMMcjk 2013/05/25(土) 23:48:12.32 ID:mIQJy+4r0

図書室


ハリー「……」ペラッ

ロン(手放しじゃ喜べないけどさ。なんだっけ? マルフォイの腕を掻っ捌いたあのヒッポグリフの名前)ヒソヒソ

ハーマイオニー(バックビーク、でしょ。名前くらい覚えなさいよ。彼の為の弁護資料を探してるんだから。
          裁判で負けたら、殺されちゃうのよ。ハグリッドが大泣きしてたじゃない)ヒソヒソ

ロン(ああ、そいつだ。とにかくさ、そいつのお陰でハリーがブラックのこと忘れてくれたのは良かったよな。
    昨日の荒れっぷりったら、今すぐブラックを探しに行きかねないほどだったじゃないか)

ハーマイオニー(忘れたわけじゃないと思うわ……ハリーのお父様の仇みたいなものだもの。
          ハリーは優しいから、今は資料探しに没頭してるけど……)

ロン(なんだっていいよ、ハリーが無茶をしなければ……)

ハリー「……二人とも、どうかした?」

ロン「え? あーいや、別になんでも。ただこの挿絵が酷くてさ。ほら、見てみろよ。
    この事件で有罪になったヒッポグリフに、連中がなにをしたのか……」

ハリー「……うぇー。朝ご飯食べてなくて良かった……絶対に、バックビークは助けないと……」

ハーマイオニー(ナイスフォローよ、ロン。つまりまあ、あなたにしては)

ロン(一言多いんだよ、君は。でも、やっぱりハリー、元気ないな……。
    もうすぐクリスマスだし、なにかすっごいサプライズでもあればいいんだけど)

710: ◆jiLJfMMcjk 2013/05/26(日) 00:09:15.49 ID:R+WWRmC50

午後 校庭


マミ「はぁ……一面雪景色ね。改めて見てみると、凄くいいとこだわ、ホグワーツって。
   昔の貴族が避暑地にしてるようなお城を、丸々学校にしちゃってるんですもの」

QB「創立された時代が時代だしねえ。
   大勢を収容する建物を造ろうとしたら自然とこういう風になったんじゃないかな?
   それに、授業に使う魔法生物のことを考えると、ある程度自然環境は整ってないといけないしね」

マミ「そっか。それもそうよね……はぁ。それにしても、やんなっちゃう。
   こーんな素敵な学習環境の中に居るっていうのに、結局、午前は一回も魔法が成功しなかったし……
   何か、だんだん魔法が下手になってる気がするわ」

QB「そんなことないさ。だって一、二年生の呪文は普通に使えるようになったし、今も使えるだろう?」

マミ「じゃ、才能の頭打ちってところかしらね……正直、来年以降は本当にどうなるか分からないわ、これじゃ」

QB「才能か……マミには才能、あると思うけどな」

マミ「……キュゥべえはなんでそう思うの?」

QB「あー、いや。なんていうか、勘、かな?」

マミ「……」

QB「あ、あ! でも、ほら! ルーピン先生だって言ってたじゃないか!
   ホグワーツに入学できるのは、一部の才能ある子だけだって!」

マミ「励ましてくれるのは嬉しいけど……ごめんね。いまはちょっと素直に喜べないわ」

QB「……」

QB(……確かに、マミは三年生の魔法をほとんど習得できてない。
   前年度までも実技に関しては決して好成績じゃなかったけど、今年はさらに輪を掛けて酷い)

QB(人並み以上に努力はしている筈なのにこれじゃ、心配しだすのも当然か)

QB(……でも、僕の予想が正しければ、マミは――)

711: ◆jiLJfMMcjk 2013/05/26(日) 00:15:00.79 ID:R+WWRmC50

マミ「……って、やめやめ! 気分転換しに来たのに、これじゃ駄目よね。
   さ、散歩の続きをしましょ。今日は湖の方に行ってみましょうか」

QB「――うん、そうだね。でもマミ、気分転換って言うんなら、もうちょっと薄着になった方がしゃんとすると思うよ?」

マミ「薄着って。この寒いのに、そんなのするわけないじゃない」

QB「いや、だって、マミはちょっと着込み過ぎだよ。アンダーウェア重ね着しすぎてコートがパンパンになってるし、
   ニット帽とマフラーで顔は見えないし……なんかもう黒い雪だるまみたいだよ? ちょっと脱ぎなよ」

マミ「や。さむい」ガチガチ

QB「軟弱だなぁ」

マミ「……キュゥべえは素足で雪を踏んでてよく平気ね。寒くないの?」

QB「僕は全環境対応型だからね。まあ大体のところは平気だよ」

マミ「ふぅん……でも、風邪はひかないでね? あ、ホッカイロ使う? なんなら背中に括り付けてあげるけど」スッ

QB「いや火傷しちゃうし。というか、持ってきたのかい、それ?」

マミ「外で授業する時、寒いから……意外とラベンダーさんとかにも好評なのよ、これ」

QB「へえ。まあともかく、僕の心配はしないでいいよ。大抵のウィルスに対する免疫は持ってるし――ぴゃあ!?」ピョイッ

マミ「わっ、わっ。ちょっとキュゥべえ! 急に肩に飛び乗らないでって前にも言ったでしょ!? もう。やっぱり寒いの?
   しょうがないわねえ。はい、マフラー半分分けてあげるから、そんなに引っ付かないで――」

QB「違う! あれ、あれ!」


クルシャン「……」トコトコ


マミ「あら、クルックシャンクスじゃない。こんな寒い日にお散歩……? あら、何か咥えてるわね。手紙……かしら?
   お使い? でも、ハーマイオニーさんならふくろう小屋から学校のふくろうを使えるのに……」

QB「い、いいから! 早く逃げようマミ! またあいつが僕の尻尾を狙う前に!」

マミ「何か面白そうじゃない。ついてってみましょ」ザクザク

QB「えっ、えっ? 冗談だろうマミ!? やめろ、馬鹿な考えはやめるんだ! 早まるんじゃない!」

マミ「だったら降りて、そして一人で帰りなさい」

QB「ヤダよ! 怖いし! 分かってて言ってるだろう!?」

721:  ◆jiLJfMMcjk 2013/05/26(日) 05:08:06.83 ID:R+WWRmC50

ホグワーツ敷地内 暴れ柳付近


クルシャン「……」テコテコ


マミ「こんなとこまで来ちゃったけど……どこに行くつもりかしら?
   てっきり、ハーマイオニーさんが誰か別の寮の子とかと文通でもしてるのかと思ったけど。ねえキュゥべえ?」

QB「猫は嫌だ猫は嫌だ」ガタガタ

マミ「んもうっ! しっかりしなさいってば。あなたも猫でしょう?」

QB「仮に猫だとしても、僕は猫という名の紳士だよ。あの猫は猛獣じゃないか!」

マミ「そんなこと――って、クルックシャンクスが近づいて行く、あの木って……」


暴れ柳「」ザワザワザワ


マミ「あれ、暴れ柳じゃない! 近づく生き物を無差別に殴るから近づいちゃいけないって!」

QB「え、それは本当かい!? よし、きゅっぷいされてしまえ!」

マミ「なに言ってるの! 早く助けないと――」


暴れ柳「……っ」ぶおんっ!


マミ(あ――駄目、間に合わない……)


クルシャン「ニャー」 ひょい、ぱしっ

暴れ柳「……」ピタッ


マミ「へ? 嘘、暴れ柳が大人しくなった……?」

QB「ああっ! 何をやってるんだ! 諦めるな! そこだ! 叩き潰せ――きゅっ!?」ギュッ

マミ「どうなってるのかしら。クルックシャンクスが何かしたみたいだけど……」


クルシャン「……」トテテテ


マミ「あ、木の根っこの下に入って行った……あそこに通路があるのね」スタスタ

QB「……マ、マミ。まさかついて行く気かい? また前みたいに待ち伏せされてたらどうするのさ」

マミ「でも、心配じゃない。危ないところに行ったりしたら……今なら暴れ柳も大人しいから、ついていけるわ」

QB「ねえ、帰ろうよ。マミがそこまで世話を焼く義理なんてないじゃないか」

マミ「お友達のペットの危機だもの。見過ごせないわ」

722:  ◆jiLJfMMcjk 2013/05/26(日) 05:08:34.81 ID:R+WWRmC50

叫びの屋敷 内部


マミ「……けほっけほっ。凄い埃っぽい! ここ、一体どこかしら? 古いお屋敷の中みたいだけど……」

QB「長い間使われてないみたいだね。そこら中ボロボロだ。何かが暴れたみたい……」

マミ「な、なんか不気味な感じね。窓も、全部塞がれてるし……これじゃ外の様子も見えないわ。
   なんでホグワーツからこんなところに通路が繋がってるのかしら……?」

QB「暴れ柳を植える時に、気が付きそうなもんだけどね。それとも植えた後にできたのかな、この通路」

マミ「さあ……? それより、クルックシャンクスはどこに行ったのかしら。出口を探してみましょう」

QB「ねえ、マミ。もう戻ろうよ。あの通路、かなり長かったじゃないか。
   もしも校外にまできちゃってたら、罰則ものだよ」

マミ「うーん、そうね……でも、クルックシャンクスが心配だし。とりあえず外の様子を見て、それから考えましょう」

QB「お気楽だね……ばれたら困るのは君だよ? そこまでいうなら、僕は何も言わないけどさ」

マミ「もちろん、ばれないように気を付けはするわよ。さあ、出口をさがしましょ?」


ぎしっ


マミ「? キュゥべえ、いま何か変な音しなかった?」

QB「君が歩いた音じゃないのかい? そもそも僕、マフラーにくるまってるから外の音が聞こえ辛いんだよ。
   あとだんだん暑くなってきた」

マミ「じゃあ肩の上から降りればいいのに……まあいいわ。さ、行くわよ」

723: ◆jiLJfMMcjk 2013/05/26(日) 05:09:55.30 ID:R+WWRmC50

叫びの屋敷 出口


マミ「ここね。扉は……まあ内側からなら鍵も開くわね。よし、っと。それじゃあ少しだけ開けて、外の様子を……」ギィィィ


わいわいがやがや


マミ「……このお屋敷、村の外れに建ってるみたいね。
   あの村、賑やかでみんな楽しそう……いるのは魔法使いだけみたい」

QB「ってことはここ、ホグズミードじゃないか。
  イギリスで完全にマグルがいない村はホグズミードだけだって聞いたよ」

マミ「じゃあここは例の"叫びの屋敷"ね。パーシーさんがくれたあの紙に書いてあったわ」

QB「誰もいない筈なのに不気味な声が聞こえてくるとかいうあれか……」

マミ(……あれ? ということは、この通路を使えばいつでもホグズミードに来れる……?)

QB「……」ジーッ

マミ「あ、あはは。いやね、キュゥべえ。校則を破る気なんてないわよ」

QB「僕は何も言ってないし、既にここに居る時点で校則違反だけどね」

マミ「だ、だって知らなかったんだもの……あ、クルックシャンクス!」


クルシャン「……」タタタ


マミ「ホグズミードに向かうみたいね……届け物かしら? でもそれならやっぱりフクロウを使えばいいし……」

QB「ねえ、もう引き返したら? 危なくないってことはもう分かっただろう?」

マミ「うーんでも、やっぱり気になるし……それに、ホグズミードもちょっとだけ見てみたいし……」

QB「……はぁ。分かったよ。でもここ、本来は立ち入り禁止みたいだよ? 誰かに見られたら不味いんじゃない?
   ここから村までは距離があるし、黒いコートは目立つよ」

マミ「うーん……あっ、それじゃ、魔法で色を白く変えるわ。それくらいなら、私にもできるし」

QB「なるほど、雪上迷彩か。よし、それで行こう。幸い、今のマミの恰好なら先生方に合っても一目じゃばれない。
   僕もこうして……マフラーに完全にくるまってれば、外からは分からないしね」

マミ「え、ええ……キュゥべえ、急に乗り気ね? どうしたの?」

QB「この前ロン達が持ってきてくれたお菓子、美味しかったからね。ねえマミ、僕、  ぺろ酸飴が欲しいなぁ」

マミ「もう、キュゥべえったら……分かったわよ。買ってあげる。でも、クルックシャンクスを追うのが先よ?」

724: ◆jiLJfMMcjk 2013/05/26(日) 05:26:03.73 ID:R+WWRmC50

ホグズミード


クルシャン「……」スタスタ


からんからーん


マミ「……この建物に入って行ったわ。フクロウ事務所……つまり、郵便屋さんね。
   でもなんでわざわざホグズミードまで?」

QB「速達とかが必要だったんじゃないのかな。学校のフクロウって、そこまではやってくれないだろう?」

マミ「……確かにそうだけど……ハーマイオニーさんなら、きちんと余裕を持って行動するような……」

QB「緊急だったんじゃないかな? まあ、ここで考えてても分からないよ。なんならハーマイオニーに聞くかい?」

マミ「うーん……気にはなるけど、それだとホグズミードに来ちゃったことも言わないといけないし。
   ハーマイオニーさん、きっと怒るわよね? 前に街中で魔法を使っちゃったときも怒られたし……私が悪いんだけど」

QB「確かに今の彼女は何か抱え込んでるみたいだし、これ以上心配事を増やすのはよくないかな。
   それじゃあ、マミ」

マミ「ええ。どうせここまで来ちゃったんだし、ホグズミードを回ってみましょう!」




マミ「ハニーデュークス! 前に話を聞いた時から、一度来てみたかったの!」

QB「ほんとにお菓子だらけだね……へえ、こっちの棚は魔法のお菓子だ。
   食べると火を噴いたり、宙に浮かんだりするらしいよ」

マミ「面白そう……だけど、ちょっと怖いわね。キュゥべえ、食べてみてくれる?」

QB「嫌だよ。それより、百味ビーンズを買っていこう。ほら、量り売りしてくれるみたいだよ」





マミ「んぐっ、んぐっ……ふぅ! 三本の箒のバタービール、とっても美味しいわね。
   アツアツを呑まなきゃ駄目って言うから、今年度は飲めないかと思ってたけど……」

QB「僕にも、僕にも頂戴!」モゾモゾ

マミ「そんなに慌てなくても……はい、どうぞ」ズポッ

通行人(なんだあの布の雪だるま、バタービールの瓶を……ええええええ! 飲み口をマフラーに突っ込んだ!
     どう見てもそこは肩だろ! 酔っぱらいか?)

QB「ありがとう。んぐっ、んぐっ」

通行人(う、うわあああ! 肩から飲んでる! あれ絶対に人じゃないよ! なんかの魔法生物だよ!)





マミ「これがあの悪名高いゾンコの店ね……なんか入るのが怖いわ」

QB「まあ、ちょっと入って中を見るくらいなら大丈夫だよ。というか仮にもお店なんだし、危なくはないさ」

マミ「そ、そうよね! よーし、それじゃあ行くわよ……」


からんからーん ばくっ


ぎゃー



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725: ◆jiLJfMMcjk 2013/05/26(日) 06:24:59.15 ID:R+WWRmC50

数時間後 叫びの屋敷


マミ「……ふぅ! 楽しかった! ゾンコのお店はびっくりしたけど」

QB「あれは驚いたよねえ。まさか作り物のおっきなカエルが襲いかかってくるなんて……」

マミ「頭を甘噛みされる程度で済んだけどね……さ、お土産も持ったし、帰りましょ」

QB「マミ、部屋に着くまで、お菓子の類はポケットから出しちゃ駄目だよ?」

マミ「分かってるわよ。ばれたら不味いものね……じゃ、帰りましょ。えーと、確かこっちに隠し通路が……」

QB「……あ」

マミ「? どうしたの、キュゥべえ?」

QB「……忘れてた。マミ、暴れ柳だ。あれからかなり時間が経ってる」

マミ「……あ」

QB「……とりあえず、根元まで行ってみよう。慎重にね」

749: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 21:04:52.40 ID:h/X7SGhL0

隠し通路 ホグワーツ側出口


暴れ柳「……」ブォンブォン


QB「……やっぱりだ。動き出してる。あの時は遠目だったから、詳しい止め方も分からない」

マミ「ど、どうしましょう、キュゥべえ。これじゃホグワーツに戻れないわ」

QB「この辺は滅多に人も近づかないしね……別の手を考えないと。
   ホグズミードから、普通にホグワーツに戻るのは? この際、校則違反を気にしてる場合じゃないだろう」

マミ「でも、ホグワーツとの境は吸魂鬼が警備してるって……」

QB「……話が通じる相手じゃないね。それじゃ、フクロウを飛ばすのは? あのフクロウ事務所から」

マミ「お金、全部使っちゃった……もともと、そんなに持ってなかったし……」

QB「最初はホグズミードに行くつもりじゃなかったしね……ごめんよ、マミ。僕が止めていれば……」

マミ「ううん。行くって言いだしたのは私だし……校則を破った罰ね、きっと」

マミ(……でも、本当にどうしよう。このままじゃ帰れない……皆に心配もかけちゃうし……)

???「……バウッ!」

750: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 21:09:04.10 ID:h/X7SGhL0

マミ「きゃっ、わっ! な、なに!?」

QB「マミ、後ろだ。こいつは……」

黒犬「……」

マミ「ま、前に会ったあの黒い犬? どうしてここに……叫びの屋敷から来たの?」

黒犬「……」ダッ

マミ「あ、ま、待って! そっちは危ないの! 暴れ柳が――」


黒犬「……」ピトッ

暴れ柳「っ……」ビクッ シーン


マミ「ふぇ……? 暴れ柳が、大人しく……?」

QB「……あの時と同じだ。クルックシャンクスが止めた時と……マミ、とりあえずこの隙に」

マミ「え、ええ。そうね、外に出ましょう」

751: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 21:11:44.90 ID:h/X7SGhL0

ホグワーツ敷地内


QB「はぁ。なんとか帰ってこれたね。一時はどうなることかと思ったけど……」

マミ「そ、そうね……うっ、ぐすっ、ひっく」

QB「ま、マミ? どうしたの。怪我でもしたかい?」

マミ「う、ううん、ちが、違うの。安心したら、急に、グスッ、涙が、止まらなくて」


黒犬「……」ペロッ


マミ「きゃっ……犬さん、慰めてくれてるの?」

黒犬「バウ」

マミ「そう……ありがとう。あなたのお陰で助かったわ。なにかお礼ができるといいんだけど……」ゴソゴソ

QB「僕もこの前あの猫をけしかけられた恨みはあるけど、水に流すことにするよ。
   マミ、お菓子、全部あげちゃったら? 相変わらずやせ細ってるみたいだし」

マミ「そうね。ガムとか、あんまりお腹に貯まらないものもあるけど……はい、どうぞ」

黒犬「! バウ!」ムシャムシャ

マミ「ふふ、凄い食べっぷりね……って、そうだ。私達もそろそろ行かないと、夕ご飯に間に合わないわ。
   それじゃ、バイバイ、犬さん。また機会があったら会いましょうね?」

黒犬「バウ!」

753: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 21:17:30.04 ID:h/X7SGhL0

クリスマス 朝 グリフィンドール談話室 


ハーマイオニー「うーん、そうね。確かにマミは実技が上手じゃないけど、それイコール才能がないってことじゃないと思うわ」

マミ「そうかしら? でも、全然魔法が上手くいかなくて……」

ハーマイオニー「上級生になって急に伸びたって人もいるし……魔法習得の適齢期に関しては、個人差があるのかもね。
          それに、才能がなかったらホグワーツには入れないわよ」

マミ「ルーピン先生やキュゥべえも同じことを言ってたけど……ねえ、本当に私に魔法使いとしての才能があると思う?」

ハーマイオニー「一定以上の魔法力を示さないと、ホグワーツからの入学推薦書はこないわ。
          私も昔から身の回りでおかしなことがたくさん起こってて、ホグワーツからの手紙が来て逆に納得したくらいよ。
          マミだってそうでしょ?」

マミ「そうね……私の場合、来たのは手紙じゃなくてマクゴナガル先生が直接だったけど。それも、入学の一ヶ月前に」

ハーマイオニー「? 随分急だったのね。先生が直接いらしたのはフクロウ便がまだ整備されてなかったからでしょうけど」

マミ「私、魔法使いの資質に目覚めたのが遅かったから……」

ハーマイオニー「まあ、何にしても才能がないなんて悲観する必要はないと思うわ。
          諦めず勉強を続けてれば、いずれ結果は出るわよ。それに、向き不向きは誰にでもあるしね。
          マミは座学で好成績を取ってるんだから、それでカバーできてるじゃない。総合成績で言えば、ロンよりよほど――」

ロン「僕がどうしたって? なんだってクリスマスの朝っぱらから成績の話なんかしてるんだよ、君らは」

ハーマイオニー「あら、おはよう、ロン。それにハリーも。メリークリスマス」

ハリー「メリークリスマス、ハーマイオニー、マミ!」

マミ「おはよう、二人とも……ハリーくん、何だか随分嬉しそうね。何かあったの?」

ロン「お、よくぞ聞いてくれたね、マミ! どっかの頭でっかちとは違ってみる目があるよ、ほんと」

ハーマイオニー「はいはい、悪うございました。それで、何があったの?」

ハリー「これだよ、この箒が届いたんだ」スッ

754: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 21:20:21.60 ID:h/X7SGhL0

マミ「わあ、新しい箒ね? なんだかピカピカで綺麗……」

ロン「当り前さ! ファイアボルトだぜ。世界最高の箒さ。ワールドカップでプロが使うような箒さ!」

マミ「へえ……そう言われると、確かに何だか凄そうな……」

ハーマイオニー「ハリー、そんな高い箒を買ったの?」

ハリー「まさか。プレゼントだよ。今朝、枕元に置いてあったんだ」

ハーマイオニー「プレゼントって……あなたのおじさんから?」

ハリー「バーノンおじさんが? まさか! あの連中が僕に1ポンド以上の値段がするものを送ってくるもんか」

ロン「カードもついてないし、差出人不明なんだよなぁ。まあでも多分、ハリーのファンとかだろ、きっと」

ハーマイオニー「差出人不明の、超高級箒ね……」ブツブツ

ハリー「ああ、そうだ。これから試運転するんだけど、よかったら二人もくるかい?」

マミ「ほんと? そうね、確かにそんな放棄なら、一度くらい飛んでるところを見てみたいかも……」

ロン「僕は乗ってみたいなぁ。なあハリー、ちょっとだけ乗せてくれよ? な?」

ハーマイオニー「駄目よ! まだ駄目! その箒に乗るのはちょっと待って!」

ロン「は? なんでさ。いいだろ、ちょっとくらい。あ、もしかして君も乗りたいのかい?
   でもハリーが一番で、二番目は僕だ。予約済みだからな、ウン。君はその次だよ」

ハーマイオニー「そうじゃなくて、その箒の送り主が――」

クルシャン「ふぎゃーお!」バッ

ロン「うわっ、このクソ猫! どっから出てきやがった!」

ハーマイオニー「クルックシャンクス!? 部屋でキュゥべえと仲良く遊んでた筈なのに」

ロン「放せ! 放せったら! あっ、こら! 爪をたてるな! パジャマが破れちゃうだろ!」


びりびりびり!


スキャバーズ「チチチッ!」

ハリー「あ、ロンのポケットが破れて、中に居たスキャバーズが!」

クルシャン「フシャー!」ダッ

ロン「この猫畜生、またスキャバーズを! この、食らえ!」ブンッ

ハーマイオニー「ちょっとロン! クルックシャンクスを蹴ろうとしないで!」ガタッ

マミ「お、落ち着いて! とりあえず二匹とも捕まえないと!」

スキャバーズ「チチチチッ!」

クルシャン「シャァァアアアアー!」

755: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 21:23:37.71 ID:h/X7SGhL0

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マミ「はあ、なんとかクルックシャンクスは部屋に連れて行ったけど……
   もう、キュゥべえ。あなたペットとしては先輩なんだから、きちんと見てあげてなきゃ駄目じゃない」

QB「む、無茶言わないでよ! あの猫と二人っきりにされて生きた心地がしなかったんだから!
   それに、あいつはロンの声が聞こえたらすぐに飛び出していったよ。止める暇もなかったさ」

マミ「そうなの……うーん、ハーマイオニーさんには悪いけど、
   どう見てもクルックシャンクスはロンくんのネズミを狙ってるわよね」

QB「忘れないでね。君の可愛いペットも狙われてるよ」

ハリー「でも、どう見てもスキャバーズの方が重傷だけどね」

マミ「ああ、ハリーくん……そっちはどう?」

ハリー「スキャバーズは部屋で休んでる。だいぶ弱ってるみたいだ。で、あの二人は……」


ロン「……ふんっ」


ハーマイオニー「……」プイッ


ハリー「あの調子。会話をするのも嫌って感じだ。ま、ああなったら放っとくのが一番だよ。
     二人とも、結局その内仲直りするさ」

マミ「慣れてるのね、ハリーくん……」

ハリー「あの二人の喧嘩癖はねぇ。一年生の頃からずっとだし。
     それより、はあ、ロンがあの調子じゃファイアボルトの試し乗りはおあずけかな」

QB「雪も降り始めたし、その方がいいかもね。でも、これからどうするの?」

マミ「あ、それじゃあハリーくん。私、これからまた魔法の練習するつもりなんだけど、付き合ってもらっていいかしら?」

ハリー「僕が? いいけど、ハーマイオニーみたいにアドバイスはできないよ?」

マミ「お手本を見せてくれるだけでいいのよ。簡単な奴を、少しだけ。ね? どうかしら」

ハリー「うーん。それじゃあ、ちょっとだけ。でもあんまり期待しないでよ?」

756: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 21:26:45.49 ID:h/X7SGhL0

夜 夕食時 大広間前


マミ「ありがとう、ハリーくん。うん、肥らせ呪文、ちょっとだけコツを掴めた感じがするわ」

ハリー「僕はなーんにもしてないよ。マミが頑張っただけさ」

マミ「ふふ、ありがと。でも、これでようやくひとつ……はぁ、本当にテストが心配だわ……」

ハリー「マミって、確かに呪文は苦手みたいだね。でもまあ、得意不得意は誰にもあるしさ。
     僕だって箒に乗るのは好きだけど、変身呪文はからっきりだし」

マミ「うーん。撃ったり壊したりする呪文はそこそこ得意だけど……でも、それも大得意、ってほどじゃないのよね。
   あくまで他の魔法よりは使えるって程度で。私の得意な魔法ってあるのかしら?」

QB「……まあ、先のことを悩んでても仕方ないさ。それよりご飯だ。今日はクリスマスだから、御馳走が出るだろう?」

マミ「そういえばそうね。今日はどんなメニューかしら?」

ハリー「毎年、これが楽しみだもんなぁ。でも今年は居残りが少ないから、あんまり賑やかじゃなさそうだけど」


ガチャッ


ハリー「ああやっぱり、でもあの長テーブルにぽつぽつ座るよりはましかな」

マミ「今日は部屋の真ん中にテーブルがあるだけね。あ、先生方も今日は同じ席で食べるのかしら……?」

ロン「よう、遅かったじゃないか。どこ行ってたんだよ」

ハーマイオニー「まさかあの箒に乗ろうとしたんじゃないでしょうね?」

ハリー「違うよ。マミと魔法の練習してただけ」

マミ「私達が最後? すみません、遅くなってしまって」

ダンブルドア「メリー・クリスマス、ハリー、マミ。さ、お座り。なに、さほど待ってはおらんよ。さ、それでは頂こうかの」


バタン


シビル「こんばんわ、みなさん。メリークリスマス」

ダンブルドア「おお、シビル! これはお珍しい!」

マミ「……? ねえ、あの人誰? 見たことない先生だけど」コソコソ

ロン「ああ、そっか。ずっと自分の部屋に引きこもってるからね。占い学の先生だよ。シビル・トレローニー先生」

マミ「それって、確かハリーくんに死の予言をしたっていう……?」

ハーマイオニー「あんなの出鱈目よ。インチキ教師だわ」ボソボソ

シビル「ええ。いつも食事は一人で取りますが、今日は水晶玉を見ていたら……」ジーッ

マミ(……? 何かしら、テーブルを見渡して……?)

シビル「……こほん。ええ、水晶玉に、死の予兆が現れましたの! ここに来て得心いたしました。
    13人が同じ食卓を囲むなど、あまりに危険というものですわ。最初に席を立つ者には死が訪れましょう」

マクゴナガル「はぁ、それはどうも、シビル。ではどうぞ、お坐りください。料理が冷え切ってしまいますから」

ハーマイオニー「な~にが"死の予兆"よ! テーブルの人数、ここにきて数えてたじゃないの!」ブツブツ

マミ「ねえ、本当に未来って見えるのかしら?
   ラベンダーさん達が言ってたけど、修行すれば水晶玉の中に未来が見えるって――」

ハーマイオニー「歴史上、予見者っていわれるような人物がいたことは確かだけど、あの先生がそうじゃないってことは確実よ!」

ダンブルドア「ほっほ。さ、それでは宴を始めようかの――うむ、このソーセージは絶品じゃな。どうかね、セブルス」

757: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 21:30:40.19 ID:h/X7SGhL0

グリフィンドール 談話室


ロン「はー、食べた食べた。全く、クリスマスはこれの為に学校に残ってると言ってもいいね」

マミ「確かに、ちょっと食べ過ぎたかも……ふぅ、ソファに座ると楽だわ。このまま寝ちゃいそう」

QB「ちょっとマミ。僕をクッション代わりにするのはやめて欲しいんだけど」

マミ「だってキュゥべえの体って柔らかくて暖かくて、枕に最適なんだもの。ちょっとくらいいいでしょ?」

ハリー「ふー、やれやれ。箒磨きセット、やっと引っ張り出せたよ……あれ、ハーマイオニーは?」

ロン「さあ? なんか残ってマクゴナガル先生と話してたけど。それより、ファイアボルト持って来たのかい?」

ハリー「うん、手入れしようと思って……でもどこもピカピカで磨くところがないや」

ロン「今日はあいつのせいで乗れなかったからなぁ。なあハリー。明日こそ乗りに行こうな」


バタン


ロン「と、噂をすればか。やあハーマイオニー、なんだい、授業をもっと増やす相談でもしてたのかい?」クルッ

マクゴナガル「残念ですが、もっと現実的な心配ですよ、ウィーズリー」

ハリー「マクゴナガル先生? どうしてここに?」

マミ「む、むにゃ!? マクゴナガルせんせい!? 寝てません! ちゃんと聞いてました!」

QB「マミ、そういうなら涎を拭いて、ついでに僕を羽ペンみたいにこすり付けるのやめて」

マクゴナガル「……こほん。さて、ポッター。グレンジャーから聞いたのですが、なんでも貴方に箒が送られてきたとか」

ハリー「え、あ、はい。そうです。これ……」

マクゴナガル「ふーむ。本物のファイアボルト……カードも手紙もなし、と」

ロン「先生も箒を見に来たんですか?」

マクゴナガル「いいえ。さて、残念なお知らせですが、この箒は一時預からせてもらいます」

ハリー「へ?」

ロン「は?」

マクゴナガル「呪いが掛かっていないかどうか、分解して調べなくてはなりません。それまで飛ぶことは論外です。
         状況は追って知らせます。それでは」


バタン


ハリー「……」

ロン「……」

ハリー「……え、なに? なにが、どうなって」

ロン「ぶ、分解!? 分解するだって!? 世界最高の箒をばらばらに引きちぎるっていうのか!?
   どういうことだよ、おい。正気とは思えないぜ!」

ハーマイオニー「別に、引きちぎるわけじゃないでしょ。ただ調べるだけじゃない」

ロン「あっ、ハーマイオニー! どういうつもりだ! 一体全体、なんのつもりでマクゴナガルになんか言いつけた!」

ハーマイオニー「ねえ、ロン。考えてみて。
          この時期に、差出人不明の、それもとてつもない高級なプレゼントがハリーに届けられたのよ?」

ロン「だから、それがなんだっていうのさ! あれはね、君が想像もできないほど価値のある――」

ハーマイオニー「聞いてったら! 私、思ったの。マクゴナガル先生も同意見だった!
          あの箒は、シリウス・ブラックが送ったものかもしれないって!」

マミ「……え? なに、にゃにごとなの? 起きたばっかりで、状況が分からないんだけど」

QB「マミ。ここは少しだけ黙ってた方がいいよ」

758: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 21:33:56.10 ID:h/X7SGhL0


新学期 闇の魔術に対する防衛術 授業後


ルーピン「ふーむ。それじゃ、木曜の夜、八時から魔法史の教室でだ。そこで対吸魂鬼向けの訓練をしよう」

ハリー「はい、分かりました。よろしくお願いします」

ロン「やったな。ハリー。これで次の試合は安心だ」


ハーマイオニー「……」スタスタ


マミ「あれ以来、三人の仲は険悪ね……冬休みの間も、新学期が始まってからも、ずーっと口をきいてないみたい」

QB「ハリーとロンはかなりのクィディッチ好きだし、ハーマイオニーも基本的に意地っ張りだからね。
   自分が正しいと思ってる内は絶対に頭を下げないし。緩衝剤になるハリーもあの調子じゃ、もうしばらくは続くんじゃないかな」

マミ「……とりあえず、ハーマイオニーさんを追いかけましょうか。ハリーくん達は二人だし、大丈夫でしょ」

759: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 21:38:31.54 ID:h/X7SGhL0


ホグワーツ 廊下


マミ「ハーマイオニーさん!」

ハーマイオニー「あら、マミ。なにか用? 悪いけど、私次の授業の準備をしないといけないから、勉強の相談は――」

マミ「あーうん。えーと、用って程の用はないんだけど……でもハーマイオニーさん、本当にどうやってそんなたくさんの授業を受けてるの?
   全部の授業、皆勤だって聞いたけど」

ハーマイオニー「あー、まあ。それはいろいろとね。それより、ルーピン先生の顔色を見た? さらに具合が悪くなってるみたいじゃない?」

マミ「え、ええ、そうね。まだ調子が悪いのかしら……」

ハーマイオニー「うーん。どうかしら。もしかしたら、病気とかじゃなくて、別の理由かもしれないわよ?」

マミ「? それってどういう――?」

ハーマイオニー「あ、いけない! そろそろ行かなきゃ間に合わないわ。ごめんね、マミ。また後で」ダッ

マミ「ああ、ハーマイオニーさん……行っちゃった。大丈夫かしら。顔色の悪さで言ったら、ハーマイオニーさんもどっこいだったけど」

QB「確かに。彼女、どんな無茶をやってるんだろう。本当に分身でもしてるんじゃないだろうね」

マミ「流石にそれは……無いとも言い切れないのが怖いけど。でも、本当に大丈夫かしら……?」


760: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 21:40:50.09 ID:h/X7SGhL0

木曜 夜 魔法史の教室


ハリー「エクスペクト・パトローナム!(守護霊よ来たれ)」シュウウウウ....

吸魂鬼「オオオオオオオオ……」

ハリー「っ、ぅ、意識が……」


『リリー! ハリーを連れて逃げろ! ここは僕が――』


吸魂鬼「シュゥゥゥウウウ――」

ルーピン「リディクラス!(馬鹿馬鹿しい)」パチン!

吸魂鬼ボガート「!?」ポンッ

ハリー「っ、はあ、はあ……」

ルーピン「よし、ハリー。上々だ。まね妖怪が化けた吸魂鬼相手に、
       たった一晩で、完璧じゃないにしてもパトロナースで対抗できるようになるなんて……」

ハリー「……父さんの声が聞こえた。ヴォルデモートに、ひとりで立ち向かおうとした父さんの声が……」

ルーピン「ジェームズの?」

ハリー「はい――え、あれ? 先生、僕の父さんのことを――?」

ルーピン「あ、ああ……そうだ。昔ね、同級生で友達だった」

ハリー「そうですか、父さんと……じゃあ、シリウス・ブラックのことも?」

ルーピン「……ああ、そうか。君も奴のことを知っているのだね。そうだな、私は知っていた。
      あるいは、知っていると思ってただけかもしれないが……」

ハリー「……先生、続きをやっても?」

ルーピン「いや、これくらいにしておこう。始める前にも行ったが、パトロナース・チャームは非常に高度な呪文だ。
      本来なら、三年生に教えるべき呪文ではないんだ。さあ、チョコをお食べ。そしてぐっすりお休み……」

761: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 21:41:59.01 ID:h/X7SGhL0

二月 放課後 ホグワーツ 廊下


マミ「よっとっと……うー、さすがにこれだけの量を運ぶのは大変ね。ねえキュゥべえ、半分持ってくれないかしら」

QB「僕の積載量に期待し過ぎると、悲惨なことになると思うよ」

マミ「意地悪……と、わ、わ、わ! もう! 鞄を持ってくるべきだったわ!」


ロン「あれ、マミじゃないか。そんな大量の本を抱え込んで、書店でも開く気かい?」

ハリー「少し手伝おうか?」

マミ「ああ、二人とも。ありがとう……ふぅ。助かったわ。腕が引っこ抜けるかと思っちゃった」

ハリー「……ん? 君、ルーン文字なんか取ってたっけ?」

マミ「ああ、これ。ハーマイオニーさんのお手伝いよ。とんでもない量の宿題をやってるから、せめて本を運ぶくらいね」

ロン「ふーん。それにしても彼女、本当にどうやってこんだけの授業を受けてるんだろうなぁ」

マミ「そうよねぇ……って、あら。ハリーくん。その箒って……」

ハリー「ああ。調べ終わったって、さっき返してもらったんだ! 
     ねえ、マミ。僕たちこれからハーマイオニーと仲直りしなくちゃと思うんだけど、間に入ってくれる?」

マミ「ほんと!? もちろんOKよ! ハーマイオニーさん、最近ほんとに余裕無さそうで……
   って、あら? 談話室の入り口の前に、誰か……ロングボトムくん?」

カドガン卿「下がれ下がれ! 押し入ろうとする不逞の輩め! このカドガン卿がいる限り通さんぞ!」

ロン「おい、どうしたんだよネビル。君、合言葉をまた忘れちゃったのかい?」

ネビル「ああ、ロン。いや、今週分のはメモしておいたんだけど、いつのまにかなくなってて……」

マミ「それは大変ね……えーとキュゥべえ、今日のは何だっけ」

QB「"オヅボディキンズ"だよ。君もネビルのことを言えないね、マミ」

762: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 21:45:30.07 ID:h/X7SGhL0

グリフィンドール談話室


シェーマス「うわ凄いや! 本物のファイアボルト!?」

ディーン「これアレだろ? 最新の、最高の箒って――」

ウッド「よしよしよしハリー! よくやった! これでグリフィンドールの優勝は決まったようなものだな!」


わいわいがやがや


ハリー「……ファイアボルトがここにある限り、ハーマイオニーとは話せそうにないね」

QB「凄い人気だ。まるで飴に群がる蟻だね」

マミ「ねえハリーくん。一度、部屋に置いてきたらどうかしら?」

ロン「あ、それなら僕が行くよ。ついでにスキャバーズの様子も見てこなきゃ。
   ほらほらどいたどいた! ファイアボルトのお通りだぞ! 傷一つ付けてみろ、弁償なんて出来やしないぞ!」ダッ

マミ「ふふ、あんなにはしゃいじゃって……それじゃ、私達は先に……ハーマイオニーさん、本、持って来たわよ」

ハーマイオニー「ああ、マミ。ありがとう。そこに積んでおいてくれる?」カリカリ

マミ「うん……あ、ハリーくん。そっちの本もお願い」

ハリー「うん、分かった……やあ、ハーマイオニー。僕もここ、座っていいかい?」

ハーマイオニー「……! ええ、別に構わないわ。ところで箒、返してもらえたみたいね」

ハリー「ああうん、危ないところはなかったってさ。安全だったって」

ハーマイオニー「まあ、それは良かったわね。でも、何かあるといけないと思ったから――」

マミ「ハーマイオニーさんは、ハリーくんのことを思って行動したんだものね」

ハリー「うん。分かってる。ありがとう、ハーマイオニー」

ハーマイオニー「お分かり頂けたなら幸いだわ。――その、私も、事前にハリー達に相談すれば良かったかもね」

ハリー「あはは、今度からそうしてくれると助かるよ」

マミ(よかった……これなら仲直りできそうね)

QB「……ところで、ロン遅いね。箒を置きに行っただけなのに……」


バタン!


ロン「おい! おい! あのクソ猫野郎はどこだ!?」

ハリー「ろ、ロン? どうしたのさ、一体? ……そのシーツは何?」

ロン「僕のシーツだ! そして見ろよ、ハーマイオニー! これ、なんに見える? ええ!?」

ハーマイオニー「え、えーと。何か、赤いシミが――」

ロン「血だよ! 僕のネズミの血だ! スキャバーズが部屋に居ない! それであいつの寝床の上に、これがあった!」ポイッ

マミ「これって……オレンジ色の毛……クルックシャンクスの?」

ハーマイオニー「ね、ねえ、ロン。頼むから落ち着いて――」

ロン「これが落ち着いてられるかよ! あの、あの猫公が、スキャバーズを食っちまったんだぞ!」

764: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 21:48:19.55 ID:h/X7SGhL0

翌日 グリフィンドール談話室


マミ「そっちはどう……?」

ハリー「駄目だね。すっかり頭に血が上ってるし、落ち込んでる。なんだかんだ言って、ロンはスキャバーズを可愛がってたし……
     ハーマイオニーの方は?」

マミ「似たようなものね。クルックシャンクスはスキャバーズを食べてないって言い張って、部屋に閉じこもってるわ」

ハリー「……マミ、正直、君はどう思う?」

マミ「……えーと、それは」

QB「あの凶悪な猫がスキャバーズを捕食したに違いないよ。いつかやると思ってたんだ」

マミ「キュゥべえったら! ……でも正直、そうね、あまりにも証拠が揃い過ぎてるし……」

ハリー「僕も同意見だけど……はぁ。せっかく仲直りできると思ったのに。さすがに今回のはね。
     いつもの喧嘩みたいに、その内元通りってわけにもいかないだろうなぁ……」

マミ「仲直りさせるにはどうしたらいいかしら……」

ハリー「ハーマイオニーが謝れば、ロンだってずっと意地張ってないだろうけど……難しいね」

マミ「うーん……とりあえず、ハーマイオニーさんには私が付いてるから、あなたはロンくんを見ててあげてくれる?」

ハリー「そうするよ。もうすぐレイブンクローとの試合だし、それでロンも元気が戻ればいいんだけど……」

マミ「……そういえば、前の試合は吸魂鬼のせいで負けちゃったのよね。まだ優勝って狙えるの?」

ハリー「なんとかね。残りの試合で、相応の点差をつけて勝てば」

マミ「そうなの! 良かった……ハリーくんならやれるわ。箒で飛ぶのすごい上手いもの」

ハリー「ファイアボルトもあるしね。あとは吸魂鬼がこなければ……でもそれもルーピン先生に対策を習ってるし、きっと大丈夫さ」

マミ「対策?」

ハリー「うん。パトロナース・チャームっていうんだけど……そうだ、マミも習いに来る? もう気絶しなくて済むようになるかもしれないよ」

マミ「ありがとう。でも、そこまで手が回らないわ。試験に向けて、一つでも呪文を覚えないと……」

ハリー「そっか……そうだね。それじゃあ、僕は行くよ。ハーマイオニーのこと、頼んだよ」

マミ「ええ。ハリーくんも頑張ってね」

765: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 21:52:25.51 ID:h/X7SGhL0

数日後 クィディッチ競技場 グリフィンドール対レイブンクロー戦


リー『さあグリフィンドールが80点のリード! 圧倒的ですが、まだ油断は出来ません。
   レイブンクローのシーカー、チョウ・チャンは優秀な選手です。ですが、到底ファイアボルトの動きにはついていけないでしょう!
   彼女のコメット260とは、まさに月とすっぽんと言えるほどの開きがあります。ファイアボルトの加速度は――』

マクゴナガル『ジョーダン。ファイアボルトの解説はあとになさい!』


マミ「うーん。何度見ても凄いわね。どうやったらあんな風に飛べるのかしら? ねえ、ハーマイオニーさん」

ハーマイオニー「箒は持って生まれた才能が大部分みたいね。ハリーは最初から凄い飛べてたし。
          もちろんそこから練習しなきゃあんなに上手くは飛べないでしょうけど」ペラッ

マミ「……あの、ハーマイオニーさん? 試合見てる?」

ハーマイオニー「もちろんよ。えーと、いまグリフィンドールが80対0で勝ってるわね」ペラッ

マミ「だったら本は置いといたほうが……だいぶ周りから、その、見られてるっていうか」

ハーマイオニー「放っておいて。この本を週明けまでに読んでおかなきゃいけないの。あと500ページはあるのに!
          大丈夫、応援はしてるから。心の中で」

グリフィンドール生「……」ジトーッ

QB『マミ、どうして周りの生徒は僕らのことを睨んでるんだい? 同じ寮で、仲間みたいなもんだろう?』

マミ『そりゃあ応援席で本なんか読んでたら、水を差された気持ちになるでしょうし……』

QB『はあ。やっぱり感情って難しいなぁ。別に声を張り上げたところで能率が上がるわけでもないだろうに』

マミ『それこそ、気持ちの問題よ――あ、ハリーくんが急上昇した!』


リー『おおっと、ここでポッター選手が動きました! どうやらスニッチを見つけたようです!
   チョウ選手もそれを追って――あ! あれは何だ!?』


マミ「え、え? 何? 何か起きたの?」

QB「マミ、あそこだ! 競技場の入り口!」


吸魂鬼「………」


マミ「っ……吸、魂鬼! また出たの……!?」

QB「……? 変だな。感情エネルギーの流動が見られない。あれは――」

マミ「何度もやられっぱなしでたまるもんですか。インセンディオ!(燃えよ)」ブンッ


ハリー「エクスペクト・パトローナム!(守護霊よ来たれ)」シュゴウッ



吸魂鬼?「え、ちょ、ま。うわああああああああああ!」




めこっ……

766: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 21:56:32.99 ID:h/X7SGhL0

試合後 グリフィンドール談話室


フレッド「やあ、凄いキャッチだったなハリー! ファイアボルトでの初陣は最高の勝利で決まったな!」

ハリー「ありがとうフレッド。でも、皆のお陰だよ」

ジョージ「謙遜すんなって! そら、お祝いだ! なんでもあるぞ、バタービールに、ハニーデュークスの菓子に……」

ケイティ「前から思ってたんだけど、あなた達ってどこからこういうの調達してくるわけ?」

フレッド「なに、ちょいと力を借りてるのさ。偉大なるいたずら小僧の先輩方のね」

ディーン「にしても、最後のあれは爽快だったなぁ!
      吸魂鬼の恰好したマルフォイ達が、火達磨になりながらハリーの呪文で蹴散らされたアレ!」

シェーマス「ああ、スリザリンから50点も引かれたしな! でもそういえば、最初にあいつら燃やしたのは誰なんだ?」


マミ「……こほん。ハリーくん、大人気ね。人だかりで声を掛けるのも難しそう」

QB「まあ、元よりシーカーは花形ポジションだしね。今回は箒のこともあるから、なおさらさ」

マミ「最後のキャッチ、ほとんど目で追えなかったものね……凄い箒だわ。私が乗ったら地面に墜落しそうだけど。
   ……ところで、ハーマイオニーさん。少し休憩しない?」

ハーマイオニー「悪いけど、本がまだ残ってるの。あと300ページ。これを今日明日で読まないと」

マミ「うーん。でも、お菓子くらい食べたら? 糖分を取った方が頭が働くって、前にテレビでやってたわよ?
   キャンディとかなら読みながら食べられるし、ね?」

ハーマイオニー「……そうね。それじゃあ少しだけ……」

マミ「ええ。あ、取ってきてあげるから待ってて」

ハーマイオニー「ごめんね、マミ。……その、ありがとう」

767: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:01:34.99 ID:h/X7SGhL0

マミ「さて、と。お菓子は談話室中に飛び交ってるけど、どれにしましょうか」

QB「そういえば、結局ぺろぺろ酸飴は食べ損ねたんだよね。マミ、どっかに落ちてない?」

ロン「やめとけよ、キュゥべえ。僕、昔あれ食べて、舌に穴が開いたんだぞ」

マミ「あ、ロンくん……え、あれってそんな危険な食べ物だったの?」

ロン「まあ酸っぱくて美味いっちゃあ美味いんだけどさ。
   初心者には危険すぎるから、こっちのヌガーにしておきなよ」スッ

マミ「あ、ありがとう。じゃ、少し貰っていい?」

ロン「うん。どうせ買ってきたのはフレッド達だし……うん? ここで食べないのかい?」

マミ「ハーマイオニーさんに持って行ってあげようと思って」

ロン「……ふーん。ハーマイオニーにね。
   そういえばこのヌガー! 誰かさんの猫に食われたスキャバーズの大好物だったなぁ!」

マミ「ちょっと、ロンくん!?」


ハーマイオニー「……っ」ダッ


マミ「あ、ああ、ハーマイオニーさん……ちょっと、酷いわよ。なんであんな聞こえよがしにいうの?」

ロン「僕はペットを食われたんだぞ。それでいて、あいつは謝ろうともしないし。
    まさかマミもあの猫は僕のネズミを食ってなんかいないって言い張るんじゃないだろうね?」

マミ「それは……」

ロン「とにかく、向こうが謝るまで許すもんか。ふんっ」


マミ「……これは本格的に不味いわね。なんとか仲直りして貰わないと……
   ずっとこのままじゃ気まずいにも程があるわ」

QB「ハーマイオニーが謝ればそれで解決だろう?」

マミ「もう意地になってるし……いま下手に謝らせようとしても逆効果よ。しばらく様子見ね。
   今日はもうそっとしておいてあげましょう」

768: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:04:41.10 ID:h/X7SGhL0

深夜 グリフィンドール女子寮


ラベンダー「……ょっと、ねえ、マミ! マミったら! 起きて!」

マミ「……ん、むにゃ? なあに、ラベンダーさん……まだ夜中じゃない」

ラベンダー「叫び声が聞こえたのよ。男子寮から……たぶん、ロンの声じゃないかと思うんだけど」

マミ「ロンくんが? 足でも攣ったんじゃないの?」

ラベンダー「いや、ほんと尋常じゃない声だったわよ。パーバティとハーマイオニーはもう起きて様子を見に行ったわ。
       私達も行ってみない?」

マミ「むぅ……もうちょっと寝てたいけど……でも気になるわね。談話室の方もざわついてるし……行ってみましょうか。
   よいしょっと」ギュムッ

QB「きゅぶ!?」

マミ「あ、キュゥべえ踏んだ」

769: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:05:31.25 ID:h/X7SGhL0

グリフィンドール談話室


ざわざわ ざわざわ


マミ「ふぁ……ああ、もうみんな集まってるわね。そんなに大声だったの?」

ラベンダー「凄かったわよ。それで叩き起こされたんだから。というか、マミは良く寝てられたわね。
        寝る子は育つってほんとなのかしら……?」ブツブツ

マミ「? 何か言った? ……あ、真ん中にロンくんとマクゴナガル先生がいる」


ロン「本当なんです先生! ブラックが! シリウス・ブラックが僕の枕元に立ってたんです!」


「ブラック!?」「ブラックが寮の中に?」「マジかよ超やべえじゃん」


マクゴナガル「有り得ません、ウィーズリー。合言葉を知らなければ、肖像画は通れないのですから。
         カドガン卿、怪しい人物は誰も通してないでしょう?」

カドガン卿「然り! 我が輩がいる限り、不逞の輩は通さぬと約束しよう!
       今宵とてご婦人と、その少し前にヒゲだらけでナイフを持った身形の汚い男しか通しておりませぬ!」

マクゴナガル「ほら見たこ――待ってください。カドガン卿、誰を通したと言いました?」

カドガン卿「ナイフを振り回しながら口角泡を飛ばしつつ、まるでいましがた脱獄してきたかのような恰好の男なら通しましたぞ。
       きちんと合言葉のメモを持っていたので」

マミ「合言葉のメモ……? それって確かこの前、ロングボトムくんが……」

マクゴナガル「……ロングボトム、貴方ですか? 合言葉のメモを脱獄犯の手の届く場所に置いておいた馬鹿者は」

ネビル「」

770: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:09:31.67 ID:h/X7SGhL0

数日後 夜 グリフィンドール談話室


マミ「結局、シリウス・ブラックはまた見つからなかったみたいね。
   でも、隠し通路に詳しいフィルチさんが探しても見つからないなんて……」

ハーマイオニー「透明マントでも持ってるのかもね……にしても、ロンが刺されなくて良かったわ。
          本人は呑気に英雄気取りしてるみたいだけど」カリカリ

マミ「……それはそうと、はい、これ。魔法史のレポートに使えそうな本、ここに纏めとくわね」

ハーマイオニー「助かるわ、マミ。でも、あなたは大丈夫なの? 魔法の練習は?」

マミ「大丈夫よ。練習もちゃんとしてるわ。それにどっちみち、レポートはやらなきゃいけないんだし」

ハーマイオニー「そう? でも、本当に感謝してるわ。
          魔法生物飼育学の資料探しも、マミは取ってないのに手伝ってもらっちゃったし……」

マミ「別にいいわよ。人に危害を加えた魔法生物が無罪になった判例を探すだけだったし。
    ……でも、魔法生物飼育学ってそういう法律関係のことも勉強するのね?」

ハーマイオニー「正確に言うと、あれは授業そのものには関係ないの。
          でも気にしないで。あんまり気持ちのいい話でもないし。手伝ってくれてありがとう」

マミ「私もハーマイオニーさんにはずっと助けられてきたから……にしても、今日は談話室に人が多いわね」

QB「あれのせいだよ。次のホグズミード週末のお知らせが掲示されてるから」

マミ「ああ、そういうこと……はあ。どうせ私には関係ないんだけど」

QB「ねえマミ、僕はどうしてもぺろぺろ酸飴が気になるんだけど」

マミ「そんなに? でもねえ……来年か、もしくはダイアゴン横丁で売ってれば買ってあげるわ」

QB「ハーマイオニー、今度行ったとき買ってきてくれないかい? お金はマミが出すよ」

マミ「こら! 人を使い走りみたいにするんじゃありません! ごめんね、ハーマイオニーさん。気にしないで」

ハーマイオニー「どの道、私は行かないわよ。レポートが押してるし」

マミ「そう。それじゃあ週末も一緒に宿題やりましょうか……あ、この辺の本返してきちゃうわね」ヒョイッ

ハーマイオニー「そんな、いいわよ。次に借りる時に一緒に返せば」

マミ「駄目よ。ハーマイオニーさんのベッドの周り、もう本だらけで足の踏み場もないじゃない。
   こういうのはマメに片付けなきゃいけません」

ハーマイオニー「はいはい、分かりましたよお母さん。それじゃあお願いするわ……ありがとうね、本当に」

マミ「ふふ、どういたしまして。ほら、キュゥべえ行くわよ。一冊くらい背中に乗っけなさい」ポン

QB「あっ、あっ、よりによって一番重い辞典を!」フラフラ


ガチャ バタン


ハーマイオニー「……マミったら、お節介焼きなんだから。一年生の頃から見ると、本当に自立したわよね、彼女。
          はあ。それに引き替え、私は相変わらずロンと喧嘩ばっかりだし……うん? あれって……」


ロン「ハリー、どうする? 次のホグズミード。ゾンコの店にはまだ行ってなかったろう?」

ハリー「うーん。そうだな。隠し通路はまだ使えるし……そうだマミはどうしよう? この前は誘えなかったけど……」

ロン「やめとこう。最近ハーマイオニーとよく一緒に居るし、ばれたら面倒だ――」

ハーマイオニー「……誰にばれたら面倒ですって?」

ロン「げっ」

771: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:14:36.96 ID:h/X7SGhL0

ホグズミード週末 図書室


マミ「だからね、ロングボトムくん。生のニンニクなんか齧ったらお腹壊すわよ?
   やっぱり数珠にして首に巻くのが正解なんじゃないかしら」

ネビル「でも、僕のおじさんはニンニクを食べまくって吸血鬼から逃げ切ったって……」

マミ「スタミナ的な話なんじゃないの? とにかく、生のニンニクなんか食べちゃダメ。絶対胃を痛めるもの」

ネビル「うーん。それじゃあそういう方向でレポートを書くよ……マミとハーマイオニーがいて助かった。
     僕一人じゃ夜まで頑張っても完成しなかっただろうし」

マミ「こっちも薬草学の宿題を手伝ってもらったから、お相子よ。
   それにしても、ネビルくんもついてないわね。合言葉のメモを落とした罰で、ホグズミード行きを取り消されちゃうなんて」

ネビル「うーん。でも確かにあのメモはベッドの脇に置いておいたはずなんだけどなぁ……」

ハーマイオニー「きっとポケットに入れたのを忘れたとかでしょ。あなた、いつも忘れ物してるじゃない」

ネビル「そうかなぁ……」

マミ「……っとお終い! やっぱり三人でやると捗るわね。ハリーくんも誘おうと思ったんだけど……見つからないし」

ネビル「さっき会ったよ。スネイプ先生が来て、すぐにばらばらに逃げたけど」

ハーマイオニー「……大方、秘密の通路でも使って逃げ回ってるんでしょうよ。ふんっ」


バサバサバサッ


マミ「きゃあっ! な、なに!? ふくろう? 何でこんなところまで……」

ネビル「たぶん、速達だ。でも誰宛だろう。も、もしかして、婆ちゃんから吼えメールが……」

ハーマイオニー「違うわ。私宛ね……ハグリッドから? ……! ごめん、マミ、ネビル! ここを頼むわ!
          私、行かなきゃ!」ダッ

マミ「え、ハーマイオニーさん? ……凄い勢いで走って行っちゃった」

ネビル「どうしたんだろう。なんだか険しい顔をしてたけど」

マミ「あのハーマイオニーさんがレポートを放り出していくんですもの……何かよっぽどのことがあったに違いないわ。
   大丈夫かしら……」

772: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:19:40.58 ID:h/X7SGhL0

夜 スネイプの部屋


スネイプ「さてさて、ポッター。とある善意の通報によると、なんでも君をホグズミードで見かけたとか」

ハリー(マルフォイだな。くそっ、あの時透明マントがずり落ちさえしなければ……)

スネイプ「無論、君のような"優良な"生徒がそんな退学相当の違反をするとも思えないが……いや、出るわ出るわ。
      君のポケットからやれゾンコの悪戯グッズだの、ハニーデュークスの菓子だの……」

ハリー「前に、友達に貰ったんです」

スネイプ「それでずっとポケットをパンパンにしてたといいうわけかね、ポッター?
      もっと詰め込むべきものがあると思うが……たとえば、常識など」

ハリー「……」

スネイプ「……うん? この羊皮紙の切れっぱしはなんだ?」


忍びの地図「」


ハリー「先生の言った通り、ただの羊皮紙の余りです」

スネイプ「なるほど、なるほど……ならば我が輩がどうしようと構わんな?
      リビア・ユア・シークレット!(汝の秘密を顕せ)」


忍びの地図「」スゥゥ....


スネイプ「おやおや、ただの羊皮紙のきれっぱしに、文字が現れ始めましたぞ、ポッター。
      さて、出てくるのは手紙か、それとも秘密の地図か……?」

ハリー「……!」ゴクリ


忍びの地図『私、ミスター・ムーニーと』『同じく、ミスター・プロングズ』『同様に、ミスター・パッドフット』『ミスター・ワームテール』

忍びの地図『我ら四名より、貴殿に御忠告申し上げる。
        今すぐ自分の足首を縄で縛って天井からぶら下がるのが、貴殿の人生において最良の選択である』

忍びの地図『パンツ丸出しでキーキー喚くと吉。さすればその脂っこいドロドロ頭も改善され』


スネイプ「」パシッ

ハリー(うわぁ。ざまあ見ろって言いたいけど、凄い殺気放ってる……)

スネイプ「よし……よし……ルゥウウウウウウウウウウピイイイイイイイイン! ルーピン! 出てこい、話がある!」

773: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:24:57.77 ID:h/X7SGhL0

ポンッ


ルーピン「なんだい、セブルス。暖炉まで使って呼ぶなんて……やあハリー、こんばんわ」

スネイプ「呼んだのは我が輩だ。これを見ろ、ルーピン。ポッターが隠し持っていたものだ。
      闇の魔術に関わる代物のように見えるが、君の考えを聞きたい」

ルーピン「うん? これが、かい? ただの羊皮紙……にしては愉快な文言が浮かんでるな。
      まあ、ゾンコの悪戯グッズだろう。相手を罵倒する類の」

スネイプ「本気で言ってるのか? 我が輩はそうは思わん。
      むしろ、これは製作者から直接ポッターに渡されたものだと――」

ルーピン「まさか。ハリー、ここにある名前の内、どれでもいいから知ってるかい?」

ハリー「知りません。ひとりも」

スネイプ「では、誰から手に入れたと――」


バタン!


ロン「ぜぇー……はぁー……僕です! それは僕がハリーにあげたんです。だいぶ前に……」

ハリー「ロン!」

スネイプ「ウィーズリー、誰が入室を許可した――」

ルーピン「まあまあセブルス! これで一件落着というわけだ。
      それでも心配なら、これは私が預かるよ。それでいいだろう?」

スネイプ「……」

ルーピン「さあ、ハリー、ロン。おいで。もう夜も遅い。寮まで送ろう。最近は物騒だからね」

774: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:28:19.26 ID:h/X7SGhL0

ホグワーツ 廊下


ルーピン「さて、二人とも。この地図だが、まともな方法で入手したものじゃないね?
      何年も前に、フィルチさんが没収したはずのものだ」

ハリー「先生、これが地図だって――?」

ルーピン「ああ、知ってる。どんな力を秘めているかもね。君達がこれを提出しなかったのは残念だ。
      これがどんなに危険なものか、分からないわけでもないだろう?」

ハリー「はい……」

ロン「すみません……僕が悪いんです。ハリーに行けって勧めて」

ハリー「いや、僕が行きたがったから――」

ルーピン「ストップ。そういうのは後にしなさい。とにかく、この地図は預からせてもらう。
      それと、外へ通じる隠し通路を使うのも禁止だ。いいね?」

ハリー「はい……あの、先生はこの地図のことをご存じだったみたいですけど、作った人のことも……?」

ルーピン「昔ね、会ったことがある。さあ、もう行きなさい。
      ハリー、御両親が自らを犠牲にして守った君自身と悪戯グッズ、どちらに価値があるのかよく考えてみることだ」

775: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:28:52.95 ID:h/X7SGhL0

ロン「……寮に帰ろうか。ルーピン先生の言った通り、学校の中も安全じゃないし」

ハリー「うん……」

ロン「もう二度と危ないことはしちゃいけない。僕ら馬鹿だったよな……ん? あそこにいるのって……」

ハーマイオニー「……」

ハリー「ハーマイオニー……どうしたの? こんなところで」

ロン「僕らのことを、マクゴナガル先生に告げ口でもしてきたかい?」

ハーマイオニー「……これ。今日の昼に届いたの」

ハリー「手紙……ハグリッドから? 一体何が」ガサッ


『すまねえ、負けた。敗訴だ。ビーキーの処刑日はこれから決まる。いままでありがとうな』


ハリー「そんな……バックビークが処刑!? もう、どうしようもないのかい?」

ハーマイオニー「控訴はあるけど、意味はないと思う……マルフォイのお父さんが、圧力を掛けてて」

ロン「いいや、諦めないぞ」

ハーマイオニー「……ロン?」

ロン「ちょっと前、ハグリッドにも言われたんだ。僕ら、君にバックビークのことを任せきりで……
   でも今度はちゃんと僕らも手伝う。僕たちでバックビークを助けよう」

ハーマイオニー「……ああ、ロン! ありがとう!」

ロン「わっ、と! だ、抱き着くなよ! 君の悪い癖だぞ!」

ハーマイオニー「ロン、私、あなたに謝らなきゃって……スキャバーズのこと、本当に……」

ロン「あー、まあいいさ。うん。もう寿命だってペットショップの人も言ってたし。
   それに、今度はもっと役立つペットが手に入るかもしれないしさ」

776: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:29:31.14 ID:h/X7SGhL0

翌日 呪文学


フリットウィック「今日はチーリング・チャーム(元気呪文)の練習をしますよ! さあ、ペアになって――」

マミ「……? ハリーくんたちが居ないわね。ハーマイオニーさんも……前の時間は魔法生物飼育学の筈だけど。
   ねえ、ロングボトムくん。あの三人、なにか当番でもやってるの?」

ネビル「さあ、特に無かったと思うけど……それより、マミ。ペア組んで貰っていいかい?」

マミ「ええ、こっちこそよろしくお願いね……うーん。また喧嘩してなければいいけど」

QB「うわあ、ネビル。お互い魔法を掛けあう授業でマミとペアを組むなんて、君は命知らずだね――きゅっ!?」

フリットウィック「トモエとロングボトムが組むのですか? なら一番前で――私の近くでお願いします」

QB「けほけほ……ほら! 先生も言ってるじゃないか。
   だいたい元気呪文ってあれだろう? 君が前カエルにかけて破裂させちゃった奴」

マミ「違うわよ。ほら、カエルがわけのわからないこと言いながらそこら中ぶんぶん飛び回った方の」

ネビル「ねえ、呪文掛けるの僕が先でいい?」


ガラッ


ハリー「すみません、遅れました」

ロン「ちょっと途中でトラブルがあって――」

フリットウィック「いいから、早く杖を出してペアになりなさい。二人いるし、丁度いいでしょう――
          ああ、ロングボトム! そんな杖の振り方でははじけ飛びますよ!」

マミ(二人だけ? うーん。ハーマイオニーさんとまだ仲直りできてないのかしら……)


ハリー「あれ、ハーマイオニーはどこ? さっきまで僕らの後ろを歩いてたよね?」

ロン「ああ、そう思ったけど……トイレかなんかじゃない?」

777: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:37:40.30 ID:h/X7SGhL0

昼食 大広間


マミ「むぐむぐ……ん。ハーマイオニーさん、結局呪文学に来なかったわね。体調不良かしら?」

QB「まあ本来なら一度に複数の授業を履修できるわけないんだから、これが自然って言えば自然だけどね」

マミ「でも、いままでは一回も休まなかったし……ここにきて無理が祟ってなければいいけど」

QB「そんなに気になるなら、あの二人に聞いてみたらどうだい?」


ハリー「――、――」

ロン「……! ……」


マミ「ハリーくん達か……でも、さっきも一緒じゃなかったし、どうも仲直りしたって雰囲気でもないわね。
   藪を突いて蛇を出したくはないし……」

QB「じゃあ、明日にでもハーマイオニーに聞く?」

マミ「それもねえ……明日からイースター休暇でしょ? 試験前のお休みだから、たぶん余裕が……」


ハリー「ハーマイオニーはどこいったんだろう? 心配だな」

ロン「午後の授業の前に探してみよう。案外談話室で眠りこけてるかも……」

778: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:38:54.14 ID:h/X7SGhL0


イースター休暇


シェーマス「勘弁してくれ! これが休暇!? まだ普通に授業があったほうがましさ! なんだいこの宿題の量は!」

ディーン「でもまあ、あれを見てたらまだましだって思えるよな……」チラッ


ハーマイオニー「……!」ガリガリガリガリガリ


マミ「……ハーマイオニーさん、鬼気迫る感じで勉強してるわね。見て、積み上げた本の高さ。崩れたら命に係わるレベルよ」

QB「殺気立ってるね。さすがに話しかけちゃ不味いってことは分かるよ……ロンとハリーは?」

マミ「ハリーくんはまたクィディッチの練習で忙しいみたい。決勝が近いから、猛特訓ですって。
   それプラス宿題だから、時間ないみたい」

ロン「ああ、そういえば次の試合で勝てば優勝なんだっけ?」

マミ「ええ。楽しみよね、数年ぶりの優勝になるかもって。
   で、ロンくんは……珍しく、って言ったら悪いけど、図書室に籠って勉強してるわ」

QB「へえ、ロンが? どうしたんだろう。箒から落ちて頭でも打ったのかな」

マミ「そういうこと言わないの……っていうか、私だって余裕なんかないわよ。座学はともかく、実技の練習しないと……
   ほら、いくわよキュゥべえ。まずはいつも通りカエル集めね。湖の水は冷たいけど、我慢するのよ」

QB「僕をルアー代わりにするの、やめて欲しいなぁ」

マミ「だって、何でか知らないけどカエルがあなたにやたら食いつくんだもの。美味しそうな臭いでも出してるんじゃないの?」



図書室


ロン「うーん。"ヒッポグリフの心理"……"ヒッポグリフの残忍性に関する研究"……
   はあ、まさか僕が図書室でひとり本を読むことになるなんてな。
   フレッドとジョージがいたらウィーズリーの恥さらしって言うだろうね、きっと」

ロン「……まあ、ハーマイオニーはひとりでやってたんだしな。さ、続き続きっと。えーと、この判例は……」


779: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:39:54.85 ID:h/X7SGhL0


数週間後 クィディッチ競技場 グリフィンドール対スリザリン


リー『あ、あー! マルフォイの野郎、ハリーの箒を掴みやがった! この屑野郎が!』

マクゴナガル『このカス! 卑怯者、×××、(ピーー)!』


マミ「……ねえ、キュゥべえ。幻聴よね。マクゴナガル先生が、あんなこと仰るわけが……」

QB「現実をみなよ、マミ。それにマクゴナガル先生って、たまにアレなとこがあるよ」

マミ「……それにしても、ラフプレーの応酬ね。
   ぶつけちゃいけない人にブラッジャーをぶつけるわ、こん棒で殴りつけるわ……」

QB「それだけ必死なんだろう。この試合が校内ヒエラルキーの変化に大きな割合を占めて――」

マミ「……あ! ハリーくんがスニッチを見つけたみたい! で、でも相手の方が凄い近い! 間に合うかしら?」


ドラコ「はははっ! 貰ったぞポッター!」

ハリー(……まだだ。間に合う! 行け!)


リー『おおっと! ハリーが物凄い追い上げ! さすがファイアボルト! ですが――あー、くそ!
   僅かにマルフォイの野郎の方が早いか!?』


ハリー「負けてたまるか……こ、のっ!」バッ

ドラコ「へ? は、はあ!? 馬鹿かポッター! そんな無茶な姿勢で飛べると……」


リー『あーっと! ハリーが身を乗り出して……手を伸ばし……取った! 取りました!
   ハリーがスニッチを掴んだ! 最後はプレイヤースキルが勝敗を分けた! グリフィンドール、優勝です!』


わあああああああああああ!


マミ「……! やった! ハリーくんが勝ったわ! ねえキュゥべえ、見てる!?
   グリフィンドールが優勝ですって!」

QB「うん、見てたよ。良かったね、おめでとう」

マミ「……あんまり嬉しそうじゃないわね? もう。少しは喜びなさいよ」

QB「うーん。確かにお腹の底でむずむずするものはあるんだけど、まだよく分からないな。
   スポーツ観戦で興奮する感情は、もうちょっと学習してからじゃないと」

マミ「そうなの? 確かに猫の世界にスポーツはなさそうだけど……
   いつか一緒にテレビでオリンピックとか甲子園とか見て、盛り上がれたらいいわね」

QB(……まあでも、一時でもマミがあれのことを忘れられたのは良かったかな。
   でもすぐに思い出すことになるだろうけど、なんてったって、もうすぐ六月だし――)

780: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:41:13.68 ID:h/X7SGhL0

五月下旬 試験間近 透明の部屋


マミ「うわああああん! チーリングチャーム!(元気呪文) テストゥードゥチャーム!(亀に変われ)
   スコージファイ(清めよ) あばだけだぶらああああああああああ!(死ね)」


バッシュン バッシュン


蛙1「最後まで気をぬくな。勝利によいしれた時こそスキが生じる」

蛙2「カメェェェッー!」

蛙3「おれは しょうきに もどった!」

蛙4「……」ペコリ


マミ「あああああ! まともに成功する呪文がひとつも成功しない呪文だわ!
   仰天セペデトの輝く七の月、上流での氾濫は下流に豊かな沃土を堆積させた――」ガルルル

QB「落ち着いて、マミ。なんかもう訳が分からないよ。あと唱えちゃいけない呪文唱えてなかった?」

マミ「これが落ち着けるわけないでしょ!? もう試験まで一週間もないのに!
    ああ呪文学と変身呪文が絶望的だわ!」

QB「まあ、何とかなるんじゃない? 一年生の頃のテストだって、わりと酷かったけど何とかパス出来たじゃないか」

マミ「今年は無理よぉおおおおおお……どうしましょうどうしましょう。落第の二文字が迫って来てるぅぅううううううううううううう!」

QB「んー、駄目だこりゃ。何言っても無駄だね。なるようにしかならないか」

781: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:45:35.62 ID:h/X7SGhL0

グリフィンドール談話室


ハーマイオニー「そういえば、マミがどこにいるか知らない?
          最近話す機会がないし、私たちが仲直りしたって知らせてあげないと」

ハリー「いや、知らないよ。というか、君と同室だろう?」

ハーマイオニー「このところ朝早くからどっかに出かけてるみたいで……私も自分の勉強があるから、そうそう探し回れないし。
          夜も部屋に入ってくるなりベッドにばったりで……」

ロン「うーん。たぶんマミも魔法の練習してるんじゃない? 彼女、実技はネビルとどっこいだし。試験が終わったら話せばいいよ」

ハーマイオニー「ええ、そうね……そういえば、聞いた? バックビークの控訴、試験の最終日よ」

ハリー「聞いたよ。おまけに死刑執行人までついてくるって」

ロン「ふっざけてるよな! バックビークの為に僕らがどれだけ資料を探したと思ってるんだ! 絶対まともに審議させてやるぞ……」

782: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:49:48.11 ID:h/X7SGhL0

6月 試験期間 グリフィンドール女子寮


がちゃ


QB「あ、おかえり。実技はどうだった?」

マミ「ううう、キュゥべえ~。あうあうあうあうあうぅぅぅうう」

QB「あー、分かったよ。ほら、泣かないで。あと鼻水こすり付けるのやめて」

マミ「どうしよう……落第よぉ。亀に変える筈だったティーポットは注ぎ口と取っ手が引っ込むだけだったし、
   元気の出る呪文は掛けたダンゴムシが泣きながら辺りを転げまわって……」

QB「いまいちここのテストの採点基準が分からないんだよなぁ。それで、防衛術の方は?」

マミ「まだよ。私、順番最後だって。今まで習った魔法生物を使った障害物走みたいな感じのテストなの。
   それまで少しでも教科書とノートみて復習しようと思って……」

QB(ああ、障害を全部吹っ飛ばしちゃうだろうから……)

マミ「……なによ、その悟ったような顔。言っておくけど、授業と同じ失敗は繰り返さないわよ!
   ちゃーんと習った通りに障害を潜りぬけて見せるんですからね!」


783: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:50:30.10 ID:h/X7SGhL0

闇の魔術に対する防衛術 試験場


グリンデロー「」

レッドキャップ「」

ヒンキーパンク「」


マミ「……う、うん! まあ突破出来たって事実が大切よ! 防衛術だもの。しっかり防衛しているわ!」

ルーピン(やっぱりこうなったか……本来は泥沼に誘い込むヒンキーパンクが出鱈目に逃げ回ってたからなぁ)


まね妖怪入りトランク「」ガタガタ


マミ「さて、最後はまね妖怪――ボガートね。そういえば結局、授業の時は私の一番怖いものに化けてないのよね、これ。
   えーと、イメージ、イメージ……ゲルゲルムントゾウムシ……大きな槍が刺さる……よし!」

トランク「」パカッ


ぽん!


マミ「さあ、現れたわね! だけどあの頃の私とは一味も二味も、って……あら? これって……?」


QB「やあ! 僕の名前はキュゥべえ! 僕と契約して、魔法少女になってよ!」


マミ「キュゥべえ? なんでボガートがキュゥべえに……?」

QB「願い事をひとつだけ叶えてあげるよ! さあ、言ってごらん!」

マミ「懐かしいわね。最近は言わなくなったけど、昔は口癖みたいに契約契約って……ま、いいわ。
   ボガートもたまには間違いをするってことよね……リディクラス!(馬鹿馬鹿しい)」

QB「君の素質なら、し」ポン!


白猫「にゃんにゃんにゃん!」

ルーピン「よし、オーケイ! 最後は上手く決められたぞ、マミ」

マミ「ふぅ。これで少しは実技もカバーできたかしら……?」


784: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:55:09.14 ID:h/X7SGhL0

占い学 試験場前


ガタン


ハリー「おかえり、ロン。テストどうだった?」

ロン「いつも通りさ。いつも通りなーんも見えないから、いつも通りの不幸な予言をしてきたよ。
    そういうわけで来年あたり、世界規模の台風が地球を襲うことになったからよろしく」

ハリー「こんな試験で世界の命運を決められるのは嫌だなぁ」

ロン「まあ、君も適当にやればいいさ。これが最後の試験だし。
   不吉な予言なら何でも――マルフォイが慈善事業を始めるなんてどうだい?」

ハリー「確かにそれはぞっとしないね。黒猫に横切られるよりも最悪だ」

シビル「――次の方、どうぞ。ハリー・ポッター、そこにいるのでしょう?」

ロン「そりゃいるさ。順番決めたの先生じゃないか……じゃあ、ハリー」

ハリー「うん。終わったらハグリッドのところへ。玄関前で待っててくれ」


785: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 22:56:40.51 ID:h/X7SGhL0

占い学 試験場


ハリー「あー――うーん――ヒッポグリフ――えーと、ヒッポグリフが」

シビル「死ぬところ? 首を切断され損ねて苦しみもがいてる? ハグリッドは泣いてるかしら?」

ハリー「いいえ! ――元気そうに飛び去るところです。自由に空を飛んでいます……」

シビル「……ふむ。まあいいでしょう。これがあなたのベストなのでしょうね。行ってよろしい」

ハリー(はぁ、終わった。分かっちゃいるけど悪趣味だよな、この先生)ガタッ


シビル【――ことは今夜起こる】


ハリー「……へ? 先生、なんです、その変な声……」


シビル【ことは今夜起こる。闇の帝王、その召使いは12年も自らを縛っていた鎖を今夜断ち切り、自由の身となるだろう】


ハリー「闇の、帝王? ヴォルデモート? それに、その召使いって……ブラックのことですか、先生?」


シビル【今夜だ。今夜その召使は、かつての主人の下に馳せ参ぜようとするだろう――】ガクン


シビル「……あらっ? ごめんあそばせ。ついウトウトと……うん? どうしました、そんな奇妙な顔をして」

786: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 23:01:26.58 ID:h/X7SGhL0


ホグワーツ 玄関前


ロン「……」

ハーマイオニー「……」

ハリー「ごめん。おまたせ。聞いてよ、トレローニー先生が変に――いや、いつも以上に変になって」

ロン「……」

ハリー「どうしたの? そんな暗い顔で……っ! もしかして――」

ロン「ああ、控訴でも負けた。バックビークの処刑が決まったんだ。日没に処刑される……」

ハーマイオニー「ひどい裁判だったわ。やつら、最初から死刑見届け人としてファッジを呼んであるし……」

ロン「ああ、腐っても魔法省大臣を呼んでるんだ。最初から死刑にするつもりだったに違いないよ」

ハリー「そんな……なんとかしなきゃ。とにかくハグリッドのところにいこう。透明マントがあればなんとかなるよ」

787: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 23:04:27.24 ID:h/X7SGhL0

グリフィンドール女子寮


QB「マミ、お腹減ったよ。夕ご飯食べに行こうよ」ユサユサ

マミ「ひとりで食べてきて……食欲がないわ。うう、変身術と呪文学……」

QB「もう過ぎたことじゃないか。そんな枕に顔を埋めてても事態は何も好転しないよ?」

マミ「……それは、そうだけど……」

QB「もっと建設的なこと考えようよ。その為には栄養が必要だ。さ、大広間に行こう?」

マミ「……建設的なことっていっても……もう学校も終わりだし……」ムクリ

QB「なんかやっておくこととかないのかい? 例えばマクゴナガル先生とフリットウィック先生に贈賄するとか」

マミ「ぞ、贈賄!? そんなこと出来るわけないでしょ! 全くもう……えーと、できることね……」

QB「別に気晴らしになれば何でもいいんじゃないかな。あの黒犬に餌でもあげにいく?」

マミ「まだホグワーツにいるのかしら……会おうと思って会える子じゃないしね。
   うー……あ! そうだわ、ハーマイオニーさんとロンくん、仲直りさせなきゃ!」

QB「ああ、そういえば。テストですっかり忘れてたね。でも時間も経ってるし、勝手に仲直りしてるかもよ?」

マミ「それならそれでいいじゃない。兎に角行ってみましょう。ここ最近は話す機会もなかったし、丁度いいわ」

QB「まあ確かにね。またハリーと組んでロンとチェスをやるのも悪くないかな。
   でも、どうやって仲直りさせるつもり?」

マミ「そこよねえ……二人のわだかまりを解くのに、私ができることって何かしら?」


 コトン


マミ「……あら? ブックスタンドから本が……」

788: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 23:14:24.85 ID:h/X7SGhL0

夕方 ハグリッドの小屋 


ガチャーン!


ハグリッド「あ、ああ。またやっちまった。済まねえな、どうにも目が霞んじまって」

ロン「去年もこんなことやってた気がするなぁ。いいよ、ハグリッド。お茶なら僕たちが淹れるから、座ってなよ」

ハーマイオニー「私がやるわ。ハグリッド、お湯貰うわね」

ハグリッド「すまん……」

ハリー「ねえ、ハグリッド。何かできることはないかな。今からでも……例えば、ダンブルドアに頼むとか」

ハグリッド「ダンブルドアはもう十分やってくださった……だが委員会の連中がルシウス・マルフォイに脅されてな。
       あの方だって、なんでも思い通りにできるってわけじゃねえ」

ハーマイオニー「そうね。ダンブルドアは決して権力を振りかざすタイプじゃないわ」

ロン「そりゃそうだけどさ。それじゃあ八方ふさがりじゃないか。
   それとも今のうちに、外に繋いであるバックビークを逃がしちまうかい?」

ハーマイオニー「それをやったら、一番に疑われるのはハグリッドでしょ」

ハリー「……ハグリッド。せめて僕たちも最後まで一緒に――」

ハグリッド「ならん! それはならねえ。お前さんはこの時間外にいちゃいけねえし、ビーキーの最期を見せたくねえ……」

ロン「ううーん。どうにかならないかな。ねえ、ハーマイオニー。なんかいい考えは――」

ハーマイオニー「……スキャバーズ?」

ロン「は? 何を言ってるんだい。スキャバーズは消化されちまっただろ。仮に居てもあいつが何の役に立つって言うのさ」

ハーマイオニー「違うわ! ロン! 信じられない! スキャバーズがミルクの入れ物の中に! ほら!」ムンズ

スキャバーズ「ヂヂイイイイイイ!」ジタバタ

ロン「へぁ!? おいスキャバーズ。嘘だろ、本当にお前かい!? なんでハグリッドの小屋に――あいたっ! こら、暴れるなって!」

スキャバーズ「キィーーーー!」

ハリー「クルックシャンクスから逃げてここまで来たのかな?」

ハーマイオニー「良かった。生きてたのね、スキャバーズ……」

ロン「ああ、うん。どうやらあの猫公に食われたわけじゃなさそうだ……えーと、その、ごめん。僕の早とちりだった」

ハーマイオニー「いいのわよ。私だってクルックシャンクスが食べちゃったって思ってたし……」

ハグリッド「良かったなぁ……だけどもよ、そろそろ行かねえと不味いぞ」チラッ


ファッジ『――れが問題のヒッポグリフかね? ふむ。確かに目つきが恐ろしげだね』

ダンブルドア『ヒッポグリフとは総じて気高い生き物じゃよ、コーネリウス』

執行人『……』


ハーマイオニー「ダンブルドアとファッジ! それに死刑執行人も!」

ハリー「ねえハグリッド、やっぱり僕たちここにいて、ファッジにあの時のことをきちんと――」

ハグリッド「駄目だ、駄目だ! 行け、行ってくれ!
       それがビーキーの為だと思って……ほれ、裏口から、マントをしっかり被って……」

ハリー「ハグリッド……」

789: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 23:20:03.63 ID:h/X7SGhL0

ホグワーツ敷地内 


 ザシュッ ドカッ


ハーマイオニー「……ッ!」ギュッ

ロン「……振り向いちゃ駄目だ。見える距離でもないけど、それでも」


ハグリッド『――、――!』


ハリー「ハグリッド……何を言ってるかは分からないけど、滅茶苦茶に叫んでる……」

ハーマイオニー「……酷い。本当に、酷いわ。なんでこんなこと……」

ロン「……行こう。とにかく、寮に戻らないと――」

スキャバーズ「……ぢぃ!」ガブッ

ロン「あいたっ! この馬鹿、噛みやがった! おいこら! ご主人様の顔を忘れたのか!?」

ハーマイオニー「ロン! 静かにして! ファッジ達が聞きつけてきたらどうするの!?」

ロン「んなこといったって、スキャバーズが暴れて――おいお前本当にスキャバーズなんだろうな!?
    実はそっくりなだけのネズミだったりしないか!? 大人しいのだけが取り柄だったのに――」

スキャバーズ「チチチ!」ピョン! ダッ

ハリー「あ、逃げた!」

ロン「おいどうしたんだよスキャバーズ! なんでそんなに――」


クルシャン「――フギャーオ!」ダッ


ロン「うわっ、あのクソ猫! そうか、やっぱりスキャバーズはあいつから逃げようと……おい待てよ!」ダッ

ハーマイオニー「ちょっと、クルックシャンクス! やめなさい! 駄目! スキャバーズを食べないで!」

ハリー「ああちょっと二人とも! マントから出ちゃ――って、もう遅いか。僕も追いかけないと」


790: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 23:21:41.61 ID:h/X7SGhL0


ホグワーツ敷地内 暴れ柳付近


ロン「っとぉ! セーフ! 捕まえたぞ! 全く、わざわざ暴れ柳の方に逃げるこたないだろう?」

スキャバーズ「チチ! ヂィーーーー!」 ジタバタジタバタ

ハーマイオニー「はー……はー……や、やっと追いついた。スキャバーズは無事みたいね。
          クルックシャンクスは……?」

ロン「あれ? そういやどこいったあの猫。まあいいや、とにかくこれで帰れるぞ。
    ほら、もう二度と逃げられないようにファスナーの付いてるポケットにいれてやる……」

 ざっざっざ

ハリー「ああ、捕まったんだね。良かった。ほら、早くマントに入るんだ。
     もう日も落ちたし、ここに居るのを見られると――……」

ロン「ん? なんだよ、ハリー。そんな固まっちゃって。死神犬でも見たって面だぞ、縁起でもない」

ハリー「ロン、う、後ろ……」

ロン「うん? 後ろがどうかして――」クルリ


黒犬「……」


ロン「……あー、……ハロー?」

黒犬「……ヴヴゥゥウウ! バウッ!」ガブッ

ロン「ああああああああああああ! 何だこの馬鹿でかい犬! やめろ、離せよおい!」


黒犬「……」ダッ


 ズザザザザーーー!


ロン「わ、わわ! 待てよ! 僕をどこに連れて行くつもりだ! やめて、放して――!」


 ズルンッ


ハーマイオニー「ろ、ロンが大きな黒い犬に連れて行かれた!?」

ハリー「あの犬だ! 僕が前に見たグリム……どこへ行った? ルーモス!(光よ)」パァッ


暴れ柳「……」ブンブン!


ハーマイオニー「ハリー! 暴れ柳の下だわ! あそこある穴に入って行ったみたい!」

ハリー「よりにもよって、あの木の真下だって!? くそ、それでもどうにかして入らないと――」


クルシャン「……」タタタッ パシッ

暴れ柳「……」ピタッ


ハーマイオニー「クルックシャンクス!? 暴れ柳を止めた……? どうやって」

ハリー「……何なんだろう。スキャバーズをここに追い立てて、暴れ柳を静めて……なにか考えてるみたいだ。
     とにかく行こう。この隠し通路は、前に忍びの地図で見た。ホグズミードのどこかに繋がっている筈なんだ――」

791: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 23:24:48.74 ID:h/X7SGhL0

叫びの屋敷 内部


ハリー「ロン! 無事かい、ロン!」

ハーマイオニー「ああ、ロン……酷い、足が折れてる。すぐに出ましょう。マダム・ポンフリーに見て貰わないと――」

ロン「っ、駄目だ。ハリー、逃げろ。罠だ、あの犬は、あいつは……"動物もどき"の」


シリウス「私というわけだ」

ハーマイオニー「……! ハリー、後ろ!」

ハリー「エクスペリ――」

シリウス「いいセンスだが、まだ遅いな。エクスペリアームス!(武器よ去れ)」


 ヒュン パシッ


シリウス「さて、これで君たちの杖は全て私の手の中……これでようやく落ち着いて話ができるというものだ」

ハーマイオニー「シリウス・ブラック……!」

ハリー「話? 話だって!? お前と話すことなんか何一つない! 僕の父さんを裏切って、殺した奴となんか!」

シリウス「否定はしないさ。君の両親を殺したのは、ヴォルデモートを除けば私と、そしてもう一人の……」


 バタン


ルーピン「シリウス。話が遠回しすぎて分かりにくいよ。昔から君は頭に血が上ると見境つかなくなる悪癖があるが」

ハリー「ルーピン先生……? どうしてここに。なんでブラックとそんな親しげに……?」

ハーマイオニー「……嘘、そんな……でも、やっぱりそういうことなの……?」

ロン「何だよ、痛みで頭が回らないんだ。さっさと言ってくれ」

ハーマイオニー「ルーピン先生が、ブラックの手引きをしてたんだわ……ルーピン先生は人狼なの!」

ロン「え。先生が、狼人間だって……? 嘘だろ、そんな危ないのを雇う筈……」

ルーピン「……ああ、ダンブルドアは私が教鞭をとるのを認めさせるために、多大な苦労をしてくださった。
      しかしよく気づいたね、ハーマイオニー」

ハーマイオニー「スネイプ先生の出したレポートで……先生が休むのが、満月の日に一致するって気づいて」

ルーピン「ふむ。君のレポートは読んだよ。素晴らしい出来だった……が、今回は百点をあげられないね。
      確かに私は狼人間だが、シリウスの手引きはしていない。会うのも十二年ぶりさ」

ハーマイオニー「……信じられないわ」

ルーピン「ハリー、君はどうだい? 私がシリウスの味方なら、君をどうこうする機会はいくらでもあっただろう?
      毎週のように、パトロナースチャームの練習をふたりでしていたんだから」

ハリー「……」

ロン「じゃあ、なんでここに……」

ルーピン「そうだな。全てを話すのは長くかかる……私もシリウスの事情を全て知っているわけではないしね」

シリウス「リーマス……私はもう我慢できそうにない。話すなら、早くしてくれ」

ルーピン「そうだな。ではてっとり早く、要点だけを話そう。
      私たちはジェームズを、ハリーの父親を裏切った魔法使いを始末するためにここにいる」

ハリー「だから、それはブラックが」

ルーピン「いいや、違うんだ。シリウスは自分にも責任があると思っているようだが。
      真の裏切り者の名はピーター・ペティグリュー――十二年間、ロンのネズミに化けていた"動物もどき"だ」

792: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 23:27:34.00 ID:h/X7SGhL0

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ハリー「秘密の守り人は、ブラックじゃなくてペティグリューだった……それで、ペティグリューがヴォルデモートに密告を?」

シリウス「ああそうだ。私の判断ミスだ。ヴォルデモートをかく乱しようとしたのが、裏目にでた……すまない、ハリー。
      君の御両親の死の責任は、私にもある」

ハリー「……もしもその話が本当なら、悪いのはあなたじゃなくてペティグリューだ」

ハーマイオニー「そしてペティグリューはその罪をシリウスに擦り付けるために、あの事件を……
          呪いを掛けてマグルを吹き飛ばしたのはペティグリューの方だったのね。
          自分の指を切り落として、死んだふりまでして……」

ロン「そこから回りまわって、僕のペットになったってわけか。ハリーの傍に居て、いざとなったら例のあの人に差し出せるように。
   それをブラックは新聞の切り抜き――僕がエジプトに行った時の写真で知って、ルーピン先生は……」

ルーピン「ああ、そうだ。ジェームズとピーター、そして私たち四人で作った"忍びの地図"を使った。
      あれには名前が表示されるからね。犬に化けたブラックのも、ネズミに化けたあいつのも」

シリウス「だがリーマス。君が不用心にもその地図を部屋に置きっぱなしにしてきたせいで、予期せぬ珍客を招いてしまったな」ゲシッ


スネイプ「」


ルーピン「ふむ。そういえば脱狼薬を届けにきてくれるという話だったな。ころっと忘れていた」

ハリー「スネイプ……僕らの話を聞こうとしなかったから、咄嗟に呪文で昏倒させたけど……」

ハーマイオニー「あああ、先生を攻撃しちゃった……どうしよう。退学になるかしら」

ロン「今気にすることじゃないと思うけどなぁ……じゃあ寮の中に入ったのも、スキャバーズを探すために?」

シリウス「ああ。合言葉のメモは、この猫が盗ってきてくれた」

クルシャン「なー」ゴロゴロ

ハーマイオニー「クルックシャンクスが?」

シリウス「そうだ。この猫は非常に賢い。おそらく、何らかの魔法生物の血が混じっているのだろうが――
      ピーターの正体をすぐに見破り、私に協力もしてくれた。代償は払うことになったがね」

ハリー「代償?」

シリウス「うむ。その猫は、何と言ったか……白い奇妙な猫に求愛しているようでね。その手伝いをさせられた。
      無害で愉快な愛玩犬を装うのに、非常に苦労した……」

ロン「白い猫? ……ああ、キュゥべえか。なるほど、それで追いかけまわしてたんだな、あいつ」

ハーマイオニー「……でもクルックシャンクスって、オスなのだけど」

ハリー「え」

793: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 23:31:07.47 ID:h/X7SGhL0


シリウス「……まあ、愛の形は人それぞれさ。話が逸れたな。そういうわけで、そのネズミを渡して欲しい」

ロン「……まだ、完全に信じたわけじゃない。スキャバーズがペティグリューじゃなかったらどうする?」

ルーピン「普通のネズミなら、傷つかない魔法を使うさ。さあ、貸して」

ロン「……」スッ

スキャバーズ「チチッ!? チチチ、チ――」


ルーピン「やるぞ、シリウス」

シリウス「ああ。3……2……1!」


 バーン!


スキャバーズ「ヂッ、ぎ、ぎぎぎぎ!」ムクムク

ハリー「……スキャバーズが、人の形に」

ルーピン「……やあ、ピーター。懐かしいね」

ピーター「あ、あの、その……な、懐かしき、わが友ら……」

シリウス「ああ。本当に、久しぶりで――そしてさようならだ、ピーター」

ハリー「……」

795: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 23:33:06.46 ID:h/X7SGhL0

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ホグワーツ敷地内 暴れ柳付近


ルーピン「この暴れ柳もね、私が入学する際に植えられたんだ。
      昔は脱狼薬がなかったから、満月の晩はここを通って叫びの屋敷で過ごしたのさ」

ハーマイオニー「なるほど。それで叫びの屋敷の逸話が……」

ルーピン「ああ。ジェームズ達は、狼になった私と一緒に居る為に非合法な動物もどきにまでなってくれた……
      それが今回の事件に繋がるというのは、皮肉な話だが」

ロン「スキャバーズはただのネズミだってずっと思ってたよ。まさかあんな人間だったなんて……」

シリウス「……ところで、ハリー。本当にこいつを殺さなくて良かったのかね?」


ピーター「……」ブルブル


シリウス「こいつはリリーとジェームズを裏切った。そんな奴を前にして、君は殺意を抑えられるのか?」

ハリー「……憎いです。でも、それで父さんの親友だった人たちが殺人者になるのは、もっと嫌な気分になる……」

シリウス「ハリー……私を、まだジェームズの親友だと認めてくれるのかい?」

ハリー「だって、あなたは父さんを裏切ってないんでしょう?」

シリウス「……そうだ。友を裏切るくらいなら、死を選ぶさ。ピーターの奴も、そうだと思っていたんだがな……」

ピーター「……」

796: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 23:35:36.05 ID:h/X7SGhL0


シリウス「……時に、ハリー。これからペティグリューを引き渡すわけだが、そうなると私に掛かった冤罪は無事晴れるわけだ」

ハリー「自由の身になるってことですよね」

シリウス「ああ、そうだ。もう味のしなくなったガムで食いつなぐなんて真似しないで済む――こほん。
      あー、それで、だ。君が私をジェームズの親友と認めてくれるなら……その、ジェームズとの約束を果たしたいと……」

ハリー「約束……ですか?」

シリウス「知ってるかもしれないが、私は君の後見人にあたる――ジェームズとリリーが決めたんだ。君の名も私が付けさせて貰った。
      もしも自分たちの身に何かあった時、ハリーの助けになって欲しいと――」

ハリー「……?」


シリウス「だから、つまりだ。うむ……君がもし……いや、もちろんそんなことないと思ってる。思ってるが……
      その、今の家族と、本当に君が良ければの話だが、今の家族とは別の、つまりは私と一緒に……」

ハリー「あなたと一緒に暮らすんですか? ダーズリー一家と別れて!?」

シリウス「あー! もちろんそんなことは有り得ないと思ってた! 思ってたさ!
      うん、だが、もしかしたらと、一応の可能性をね……」

ハリー「いや、違います! 僕、ダーズリーのとこなんかすぐ出たいです! 住む家はどこに!?
     いつくらいに引っ越せますか!?」

シリウス「は、ハリー。本当かい? 本当に、一緒に暮らしてくれるのかい?」

ハリー「もちろんです!」

シリウス「……そう、か。そうか! ははは! よし、それなら一刻も早くこいつを引き渡そう!
      ムーニー・リーマス! さあ行くぞ。どうした、そんなところで止まって。君が歩かないと……」

ルーピン「……あ、う。、が」

シリウス「……リーマス?」

797: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 23:37:26.00 ID:h/X7SGhL0

ハーマイオニー「……! 大変! スネイプ先生が私達を追ってきたのって……」

ロン「なんだよ。ルーピン先生の部屋に忍びの地図があって、それを読んだからだろ?」

ハーマイオニー「その前! そもそもスネイプ先生がルーピン先生の部屋に行ったのは、人狼抑制の薬を届ける為でしょ!?」

ロン「じゃあ今夜はまだ薬を飲んでないってのか!? そうするとどうなる!?」

ハーマイオニー「狼人間は、満月の晩に変身して、近くにいる人間を無差別に襲うわ!」


ルーピン「がう、が、ああああああああああああああああああああああああ!」メキッメキッ


ハリー「ルーピン先生!」

シリウス「逃げろ! ここは私が抑える! 安心してくれ、学生時代に何度もやっていたことだ――」シュルシュル


人狼「――アォォオオオオオオオオオン!」

黒犬「ガァァァアアアアアアアアアアッ!」


ハーマイオニー「ああ、二人とも、戦いながら森の中へ……」

ハリー「ブラック……いや、シリウス……」



ロン「おい、呆けてる場合じゃないぞ! 奴が逃げる! ペティグリューが――うわっ!?」

ハーマイオニー「ロン!? あ、あ、そういえば、ルーピン先生がペティグリューの見張り役で……」

ハリー「っ、待て! 逃げるな! お前が逃げたら、シリウスは――」

ピーター「……さようなら。また会おうハリー」ニィ


 シュルルッ


スキャバーズ「チチチチッ!」ダッ

ハリー「くそ、待て! 逃がさないぞ!」

ハーマイオニー「駄目よハリー! いま森の中に行くのは危ないわ! それに、この暗さじゃネズミを見つけるのは……」

ハリー「でも! あいつを捕まえないと、シリウスが冤罪だって証明できない!」


 『ヴウウウウウ……! ォォオオオオオオン!』


ハリー「……っ、シリウスの声だ。苦しんでる……助けに行かなきゃ」フラッ

ハーマイオニー「ハリー! 駄目だったら! 危ないし――それに、シリウスも慣れてるから大丈夫だって言ってたでしょ!?」

ハリー「昔は、父さんやペティグリューもいた……だけど、いまはひとりなんだ! 助けが要る!」ダッ

ハーマイオニー「あ、ハリー! 駄目よ、戻って――!」

ハリー「君はそこでロンを見てやっててくれ! ペティグリューに何かされたみたいだ!」

798: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 23:46:35.89 ID:h/X7SGhL0

ホグワーツ敷地内 湖畔


ハリー「……いた! シリウス!」

シリウス「……っ、あ、ハリー、か」

ハリー「大丈夫ですか? 怪我は!? 噛まれたんですか?」

シリウス「いいや、リーマスは、大丈夫。大丈夫、だが……逃げろ。あいつらがくる。あの、冷たい、氷のような……」

ハリー「シリウス? あいつらって――」


吸魂鬼「コォォオオオオオオオオオ――」


ハリー「吸魂鬼!? こんな時に……! でも、一匹くらいなら……っ」



吸魂鬼「――」

吸魂鬼「――」

吸魂鬼「――」



ハリー「そんな……空いっぱいに、飛びかって……」


吸魂鬼「……ずぉおおおおおおお」スゥ


ハリー「っ、あいつ、フードを……」


ルーピン『"吸魂鬼の口づけ"。奴らが頭巾を下ろす時は、それを執行するときだ。
      魂を奪い、人を人でなくしてしまう、最悪の――』


シリウス「ぅ……ぁ……」

ハリー「――嫌だ。僕は、シリウスと、暮らすんだ!」


ハリー「エクスペクト・パトローナム!(守護霊よ、来たれ)」シュゥウウウウ!

799: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 23:52:27.39 ID:h/X7SGhL0


吸魂鬼「――」


ハリー「っ、エクスペクト・パトローナム!」


吸魂鬼「――」

吸魂鬼「――」


ハリー「……エクスペクト・パトローナム!」


吸魂鬼「――」

吸魂鬼「――」

吸魂鬼「――」




ハリー「エクスペクト、パトロー……!」




吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」

800: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 23:56:41.55 ID:h/X7SGhL0
 









                   ???『――エクスペクト・パトローナム!(守護霊よ、来たれ)』









.

801: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/02(日) 23:58:26.14 ID:h/X7SGhL0

医務室


ロン「Zzzzz.....」

ハーマイオニー「……」

ハリー「……う、うん? ここは……」

ファッジ「目が覚めたか! ハリー! 良かった、危ないところだったんだよ。
      まさか吸魂鬼の連中、罪もない未成年の魔法使いにまで"キス"を執行しようとするとは……」

ハリー「……大臣!? 一体、なんでここに……いや、それよりもシリウスは……!?」

ファッジ「うん? ああ、安心したまえ。ブラックならスネイプ先生が捕まえてくれたよ。
     西塔の最上階にに閉じ込めたから、逃げることもできんさ。
     うむ。やはりスネイプ教授にはマーリン勲章を授与しなければ。ブラックにはもうじき、吸魂鬼が"キス"を施すだろう」

ハリー「……! 違うんです、大臣! ブラックは無実で、本当はピーター・ペティグリューが――」

ファッジ「……ううむ。やはり君の言う通りらしいなスネイプ。混乱しておる……ブラックめ、錯乱呪文をかけたな」

スネイプ「そうでしょうな、閣下。しかし、ポッターら三人にも落ち度は――」

ハリー「大臣、僕、混乱してなんか――」

ファッジ「まあまあ。ハリー、大丈夫。君には休養が必要なんだ。ゆっくりお休み。
     そしてスネイプ、今回は助かっただけでよしとしようじゃないか……それにしても、吸魂鬼はなぜ撤退したんだ?」

スネイプ「さあ、それに関しては我が輩も皆目見当が……」

ファッジ「まあ、連中の考えなんぞ分かりたくもないがね。さて、そろそろ病人を休ませてやろうじゃないか」

ハリー「待って、待ってください! 僕、本当に――」

ファッジ「なに、ハリー。ひと眠りすれば、気分も落ち着くさ」


 バタン


ハリー「ああ、そんな……どうしよう。このままじゃ、シリウスが……」

ダンブルドア「……さて、ハリー。二つの罪なき命を救うのに必要なのものは、なんだと思うかね?」

ハリー「……先生!? いつの間に」

ダンブルドア「時間がないからよくお聞き、ハリー。必要なのは……時間じゃ。グレンジャーの助けを借りるが良い」

ハリー「ハーマイオニーの……?」

ハーマイオニー「……」

802: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/03(月) 00:02:01.97 ID:dacbDBte0


夕刻 ハグリッドの小屋前 逆転時計使用後


ぐにゃあ


ハーマイオニー「……成功ね。きっかり三時間。時間が巻き戻ってるわ」

ハリー「逆転時計(タイム・ターナー)? 時間を巻き戻す時計? それが、君がたくさんの授業を受けられてた秘密なの?」

ハーマイオニー「ええ。かなり貴重なもので、マクゴナガル先生が魔法省にかけあってくださったの。
          ダンブルドアが言ってた"罪なき命を救うのには時間が必要"っていうのは、これのことだと思うわ」

ハリー「時間が必要……過去に戻って、何かを変えろってこと?」

ハーマイオニー「多分、そうね。でも誰にも見られちゃいけないし、凄く難しいことよ、これ。
          時間を変えようとした魔法使いが、何人もとんでもないことになってるの」

ハリー「つまり、いますぐハグリッドの家に飛び込んでペティグリューを思いっきり握り絞めるのはダメってこと?」

ハーマイオニー「そうね。誰にも見られちゃいけないんだから。でも、そうすると何をどうすればいいのかしら……?」

ハリー「……! 分かったぞ、ハーマイオニー! ダンブルドアが言ってたじゃないか、二つの罪なき者の命を救え、って!」

803: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/03(月) 00:03:08.90 ID:dacbDBte0

夜 ホグワーツ敷地内 森の中


バックビーク「ぐぎゃ?」

ハーマイオニー「なんとか成功したわね。繋がれてるところをファッジや執行人に見せた後助けたから、
          ハグリッドに疑いが掛かることはないと思うわ
          それにしても、ここからは上手くいくかしら?」

ハリー「大丈夫さ。シリウスが閉じ込められてるのは西塔の最上階だってファッジが言ってた。
     助けたバックビークに、シリウスを乗せて逃がせばいいんだ!」

ハーマイオニー「でも、そうすると後2時間は待たなくちゃ。シリウスが塔に入れられるのはその位の時間だし」

ハリー「うん……僕らが叫びの屋敷から戻ってきて、その後だ……」

ハーマイオニー「……ハリー。ひとつ聞いてもいい? あなた、シリウスを助けに行った後、大勢の吸魂鬼に囲まれたんでしょう?
          どうしてあなたとシリウスは助かったのかしら……?」

ハリー「……僕もよく覚えてない。だけど気を失う前、湖の向こうから白い光が飛んできて……」

ハーマイオニー「白い、光?」

ハリー「たぶん守護霊(パトロナース)だ。それも、本当に強力な。それしか吸魂鬼を追い払えるものはない。
     ……僕には、それを父さんが出したように見えた。もちろん気のせいだと思うけど……」

ハーマイオニー「……」

ハリー「……うん? ハーマイオニー、あれ……」


マミ「――、――」

QB「……。~~~」


ハーマイオニー「え? ……あれって、マミ? こんな時間に何を……」

ハリー「手に何か持ってる……なんだろう。本みたいだけど」

ハーマイオニー「なんで? 夜中に外で読書なんて……本当にどうして……」

ハリー「……不味い。こっちにくるよ」

ハーマイオニー「下手に動くと見つかりそうね……息をひそめてやり過ごしましょう。幸い、時間はまだあるし……」

804: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/03(月) 00:04:30.80 ID:dacbDBte0

マミ「えーと……この辺でいいのかしら? ルーモス(光よ)……うん、やっぱりこの辺って書いてあるわね」

QB「ねえマミ。本当にそれ信用するわけ? 絶対怪しいと思うんだけど」

マミ「うーん。私もそう思うんだけど……だけど、何でか信用できるのよね。理屈じゃないけど……
   なんていうのかしら。凄い馴染みのある気配というか、長い間ずっと一緒にいるような……
   ……? あら、なんだか前にもこんなこと言った気が……」

QB「僕は聞いたことないけど。まあいいや。じゃあ手早く済ませようよ。先生に見つかったら不味いし。
   というか、誰に見られても社会的に不味いと思うけど」

マミ「そう? ちょっと格好よくない?」

QB「これを考えた人は、きっと趣味嗜好が君と同レベルなんだろうなぁ。んじゃ、やりなよ」

マミ「……オーケイ! それじゃあ速攻で片付けるわよ! ルーモス・マキシマ!(強き光よ)」

 

 そして 少女は踊りだす。



.

805: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/03(月) 00:05:25.02 ID:dacbDBte0

salti reali ≪真実へ踏み出そう≫


 魔法で作り出した即興の舞台照明の下で、少女はステップを踏む。


amari ce fati a la asta e stia ≪例え辛い運命が待っていようとも≫


 くるりと回って一回転。右の踵を対のそれに打ち付けてから一度、跳ねる。謎のエフェクトが闇夜を彩った。


salti reali ≪真実へ踏み出そう≫


 着地は軽やかに。そしてしめやかに。しかしそれは次の跳躍への布石。


vela li da fati a rea aria ≪運命を乗り越えるんだ≫


 二回目の跳躍。こんどは両膝を折り曲げてぴょこんとジャンプ。ふわりとあざとく制服のスカートが舞う。


fati reali a fati tuo settaria via, sol via≪本当の運命からあなたを遠ざけていた事に≫


 首を異様な角度に曲げながら、少女はその場でくるくると回る。無駄に回る。


vi se so-la (salti reale) salti reale ≪気付いたなら(真実へ踏み出そう)真実へ踏み出そう≫


 その角度はほんと、骨格的に不味いんじゃないか。そんなレベルで首を傾げながら、少女は回転の数を重ねる。 


salti reali ≪真実へ踏み出そう≫


 そうこうしている内に、回転の勢いが最高潮に達したらしい。首の角度も、遠心力が手伝ってさらにヤバイことになっている。


amari ce fati a rea aria ≪辛い運命を蹴散らして進もう≫


マミ「……ふっ!」

 そして、最後に。少女は回転を止め、スカートの裾を軽く摘まんで観客席に――まあつまりは彼女がそう想定している方向に――軽く一礼した。



ハリー「……」

ハーマイオニー「……」


ハリー・ハー子(なにこれ)

806: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/03(月) 00:06:32.25 ID:dacbDBte0

マミ「……ふぅ。なかなかいい運動になるわね、これ。これから毎日やってもいいかも」

QB「やめてよ。なんか呪われそうだし」

マミ「むっ。失礼ね! どこが呪われそうだっていうのよ。まるで白鳥のように優雅な舞だったじゃない!」

QB「僕にはトランス状態に入った未開部族のシャーマンにしかみえなかったけど……
   良かったね、ホグワーツにビデオカメラがなくて」

マミ「もう! いいですよーだ。所詮猫に人間の芸術は理解できないものね」

ハリー(僕猫だったんだ)

ハーマイオニー(その理屈で言うと、私は人間じゃないわね)

QB「はぁ、なんか無駄に疲れたけど……まだ終わりじゃないんだよね。えーと、あと何か所だっけ?」

マミ「5、6箇所だった筈よ。さ、あと1時間以内に終わらせなきゃいけないし、次のポイントに向かいましょ」

QB「帰りたいなあ、心底」


 ざっざっざ……


ハリー「……行ったね。あと五回も繰り返すつもりなのか……何だったの、今の?」

ハーマイオニー「えっ、そんな、私に聞かれても困るわ……というより、今のは現実の光景だったの……?」

ハリー「……見なかったことにしようか。うん、それがいいよ」

ハーマイオニー「そうね。ある春の日の幻影ということにしておきましょう」


 その後、ハリーは過去の自分を救うため、完全なパトロナースを造りだし、無事にブラックを助け出すことができた。

807: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/03(月) 00:08:01.41 ID:dacbDBte0

医務室


ダンブルドア「二人ともようやった。さ、鍵を閉めるから、中にお入り――」


 バタン ガチャ


ハリー「……っ、ぎりぎり、セーフ! なんとか間に合ったね」

ハーマイオニー「ええ……それにしても信じられないわ。あの守護霊を造り出したのがハリーだなんて……
          あれはとっても高度な魔法なのよ? それを……」

ハリー「未来の僕ができたんだから、今の僕にも出来るってことさ」

ハーマイオニー「……うー。時間のパラドックスについて考えると、頭が痛くなりそうね。とにかく疲れたわ。
          いまはゆっくり休んで……」


スネイプ『奴だ! ポッターがやったんだ! 私には分かるのです大臣!』

ファッジ『スネイプ、そんな世迷いごとを……ああ、ダンブルドア。彼らは医務室に?』

ダンブルドア『当然じゃろう。彼らには休息が必要なんじゃから。どうしたというんじゃ、セブルス?』


ハリー「……そういうわけにはいかないみたいだね」


 ガチャガチャガチャ! バタン!


スネイプ「ハルゥィイイイイイイイイイポッタアアアアアアア! 貴様が! 貴様がブラックを!」

ハリー「な、なんです、スネイプ先生? どうして急にそんな――」

スネイプ「黙れ! そのような演技で騙される我が輩ではない!
      貴様がブラックを逃がしたのだろう! さあ! 吐け! 奴はどこだ!」

ハリー「ええ! ブラックが、逃げた? 本当にですか?」

スネイプ「白々しい! ええい埒が明かん! 大臣! 真実薬の使用許可を!」

ファッジ「出せるわけないだろう! 罪人相手でもないのに!」

スネイプ「いーやこやつは大罪人です我が輩には分かるのです! こいつは! もうほんとにこいつは!」

ダンブルドア「まあまあ、セブルス。もういいじゃろう。
         この子たちはずっとこの部屋にいたのだし、ドアには外からカギがかかる。
         のう? どうやったらここから動かずにブラックを逃がすことができるというのじゃ? ご説明願いたいの?」


スネイプ「っ! っ! っ! ……これにて失礼します!」


 バタン!


ファッジ「何だね、あの男は。左巻きの一言だ。ダンブルドア、不祥事には気を付けてくれよ」

ダンブルドア「そうじゃのう。お互いに気をつけねばの」

ファッジ「ああ、言わんでくれ……またブラックを取り逃がしたのだぞ! しかも私がいるこの日に!
     新聞はお祭り騒ぎだろう……ダンブルドア、なにかいい知恵は無いものかね?」

ダンブルドア「そうじゃのう。とりあえず、あの吸魂鬼どもを早いとこアズカバンに引き上げてじゃな」

808: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/03(月) 00:09:44.13 ID:dacbDBte0


 バタン


マミ「失礼します、ロンくんとハーマイオニーさんがここにいるって聞いて……
   あら、校長先生……と、お客様? すみません、お邪魔でしたか?」

ファッジ「うん? なんだね、ハリーの友達かね? 
     初めまして、御嬢さん。私はコーネリウス・ファッジ。一応魔法省の大臣をやっているんだが」

マミ「ええ!? ま、魔法省大臣!? し、失礼しました。ええと、本日はお日柄もよく――」

QB「いや、別によくないし。なんだい、君はスピーチでもする気かい?」

ダンブルドア「マミ。お見舞いかね? じゃがきっと、マダム・ポンフリーが許してくれんじゃろう。
        一言かけるくらいにして、続きは明日にするが良い」

マミ「あ、はい。すみません……えーと、でもロンくんはまだ寝てるから……あ、ハーマイオニーさん!」

ハーマイオニー「な、何かしら?」ビクッ

ハーマイオニー(例の踊りがちらついて仕方ないわ……)

マミ「えーと、あのね。もう心配しないでいいわよ! クルックシャンクスは、スキャバーズを食べてなんかいなかったの!」

ハーマイオニー「え、あ、そうね。あいつはハグリッドの小屋に隠れてたんだし――」

ハーマイオニー(……って、あれ? なんでマミがそのことを知って……?)

マミ「それでね、さっききっちり捕まえておいたから! これでロンくんとも仲直りできるはずよ! ほら!」


スキャバーズ in ガラス瓶「チチチチチチ!?」ジタバタジタバタ


ハーマイオニー「……へ?」

ハリー「は?」

ダンブルドア「……ほう?」



マミ「うん、言いたかったのはそれだけ。ほんとは、なんでそんな怪我してるのかとかも聞きたかったんだけど……
   まあ、それは明日でもいいわよね。それじゃ、おやすみなさい」クルッ

ハリー「……ま、待って! ちょっと待ってくれマミ!」

809: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/03(月) 00:13:11.48 ID:dacbDBte0

ファッジ「信じられん……それでは、さっきまでハリーが言っていたことが本当だというのか。
     ペティグリューが真の犯人で、ブラックが冤罪? 馬鹿な……」

ダンブルドア「じゃが、どうもそれが事実のようじゃのう。セブルスの"真実薬"の効果はわしが保障しよう」


ピーター「怖かった。仕方なかったんだ。闇の帝王の前に、逆らえる筈なんて」ブツブツブツ


ファッジ「……これはもう、私の理解の範疇を超えているよ、ダンブルドア。どうすればいいんだ。
     これでは魔法省はまんまと欺かれ続けた笑いものだ!」

ダンブルドア「ふむ。コーネリウスや、確かに魔法省は欺かれていたが、しかしじゃ。
        その冤罪を晴らしたのがお前さんということになれば、冤罪の責任は当時の魔法大臣に求められるじゃろう」

ファッジ「な、なるほど! 確かに……うむ。ではそのように手筈を整えなくては……」

ダンブルドア「すぐに会見を開き、真実を伝え、逃亡したブラックを呼び戻すがいい。
        早ければ早いほどいいじゃろう」

ファッジ「ああ。そうさせてもらうよ。急がねば……フクロウを少し借りさせてくれ」

ダンブルドア「好きなだけ使うが良い」


バタン


QB「……」

マミ「えーと、あのう。これは一体どういう……」

ダンブルドア「ふむ。説明してやりたいが、もう今宵は遅い。ハリー達も休まねばならんしのぅ。
         とりあえず、今日のところは寮にお戻り」

マミ「は、はい……失礼します。それじゃハリーくん、ハーマイオニーさん、また明日ね」

ハリー「え、あ、うん……その、また明日」

ハーマイオニー「正直、分からないことだらけだわ。明日、話を聞かせてね、マミ」


バタン


マミ「……何が起こったの? 私、ただ二人を仲直りさせようとしただけなのよ?
   それが大臣は出てくるし、スキャバーズは人間になるし……」

QB「僕だって予想外だよ。しかし、あれが魔法省大臣、魔法界のトップか……」

マミ「なんだか、その……こういうのは何だけど、大臣って感じじゃないわよね?
   ちょっと気弱そうって言うか……」

QB「そうかい? 彼は為政者として、極めて理想的な素質を持ってると思うよ」

マミ「? そうなの?」

QB「ああ。ま、それもあと2、3年も保てば御の字だろうけどね。
   さ、マミ。寮に戻ろう。僕はもう疲れたよ」

マミ「私だって疲れたわよ。たくさん踊ったし、罠も仕掛けたんだもの」

810: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/03(月) 00:16:10.20 ID:dacbDBte0

翌日 ホグワーツ 透明の部屋


マミ「えーと、とりあえずここなら誰かに聞かれる心配はないと思うけど……
   何から話せばいいのかしら。そっちの事情は、大体ハーマイオニーさんに聞いたけど」

ハーマイオニー「とりあえず、どうやってペティグリューを捕まえたのか知りたいわ。
          あの日、マミはどこで何をしてたの?」

マミ「えーっと……どこから話せばいいかしら。あのね、ロンくんとハーマイオニーさん、喧嘩してたでしょ?
   だから、どうにかして仲直りしてもらいたくて……それで、その方法を考えてたらこの本が落ちてきたの」

ロン「落ちてきた? 空からかい?」

マミ「ううん。ベッドのわきにあるブックスタンドから……でも、この本に見覚えはなくて……」

ハリー「何て書いてあるの? 見せて――」ペラッ


『スキャバーズは生きている。捕まえたいなら、この位置に罠を張り、さらにこの六つの位置で踊ること』


ロン「ご丁寧に図解付きか……にしても、踊る? なんで踊らなきゃいけないのさ? 呪いの儀式か何か?」

ハリー(ロン。あれを実際見た立場からすると、その発言は笑えないよ)

ハーマイオニー「貸して……うーん。ペティグリューが逃げた位置がここで、こっちに向かって走って行ったから……
          多分、踊れっていうのは足跡をつけるのが目的なんだと思う」

ハリー「足跡?」

ハーマイオニー「そう。逃げる側の立場からすれば、新しい足跡がたくさんある場所は避けるでしょ?
          ネズミならなおさらね。 この配置を見ると、ペティグリューを罠のところまで追い込むようになってるわ」

マミ「ああ、言われてみれば……その時は考えもしなかったけど」

QB「マミ、楽しそうに踊ってたもんね」

ロン「いや、でもおかしいだろ。こんなの、ペティグリューがどこからどうやって逃げるか、
   最初から分かってでもいなきゃ考えられないじゃないか」

QB「確かに。罠だって底の深い瓶を埋めただけだし、例え誘導されてもそこに上手く落ちる保証なんてないからね」

ロン「な? その現場を見ていて、時間を巻き戻せるっていうなら別だけどさ。ああいや、馬鹿な考えってのは分かってるけど」

ハリー「……」

ロン「うん? どうしたんだよハリー?」

ハーマイオニー「……詳しくは話せないんだけど、時間を巻き戻す手段が無いわけじゃないわ」

ロン「うぇ!? マジかよ、適当に言ってみただけなのに」

マミ「本当なの? そんな凄い魔法があるなんて……」

ハーマイオニー「でも、そんなに便利なものじゃないの。
          自在に過去を変えられるわけでもないし、今回の本みたいなことには使えないわ」

QB「そもそも、本当に時間操作なんて途方もない魔法が関わっているのかな?
   この本も、可能性は低いけどただの偶然ってことは……」

ハーマイオニー「考えにくいけど……でも、そうね。判断するための材料が少なすぎるわ。
          せめてもうひとつくらい、何かあるといいんだけど……」

ハリー「マミ、何か無いかい?」

マミ「え、急に言われても……うーん……あ! もしかしたら、あれも……ちょっと待ってて!」

811: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/03(月) 00:20:07.49 ID:dacbDBte0

マミ「これ。私には意味が分からなかったんだけど……」

ロン「なんだいそれ? カードみたいに見えるけど」

マミ「一年生のクリスマスに送られてきたの。誤配かもと思ったから、捨てずにとっておいたんだけど……」

ハリー「見せて……ねえ、二人とも、これの一番初めって!」


『一つ目はケルベロス。音楽を聞かせること。
 二つ目は悪魔の罠。火をつけること。
 三つ目は空飛ぶ鍵。箒で飛んで掴むこと。
 四つ目はチェス。よく練習しておくこと。
 五つ目はトロール。対策を練っておくこと。
 六つ目は論理。前へ進みたいなら一番小さな瓶。戻りたいなら右端の瓶を』


ロン「ケルベロス……フラッフィーだ! あの三頭犬!」

ハーマイオニー「音楽を聞かせること……フラッフィーへの対策ね。じゃあ、残りも……?」

マミ「あの、どういうこと?」

ハリー「ほら、僕ら一年生の頃、賢者の石を守りに行こうとしてたろ?
     たぶんこれに書いてあるのは、賢者の石を守る仕掛けのリストなんだ」

マミ「ええ!? そんな、とっても大事なものじゃない!」

ハーマイオニー「そうね。だからきっと誤配じゃないわ。これはマミ宛に届けられたのよ」

マミ「でも、なんのために……」

ロン「……そういや、カードで思い出したけど……」ゴソゴソ

ハリー「どうしたんだい、ロン? それは……蛙チョコのカード?」

ロン「ほら、ホグワーツ特急の中で、マミに蛙チョコもらったろ。あの印刷ミスのカードさ。
    結局ホグズミードでも交換してもらえなかったから、ポケットにいれっぱなしだったんだけど……
    見てみろよ、その文面。今読むと意味が分からないか?」

ハリー「……"逃げる時に自分で切り落とした"……これ、ペティグリューのことじゃないか!」

マミ「じゃああの時から、このメッセージを送ってくる人はペティグリューのことを知ってた……?」

ハーマイオニー「……これで、ほとんど確定ね。どこの誰かは知らないけど、マミに対してメッセージを送ってる人物がいる。
          そして十中八九、その人はまるで"未来を見てきたかのような"情報を持ってるのよ」

マミ「でも……何のために? 何が目的で?」

QB「一連のメッセージを見る限り、マミに敵意は持っていないみたいだけど……」

ハーマイオニー「そうね。共通してるのは、その年に起こる大きな事件についての情報を送ってくる、ということかしら。
          その人物は、事件をなるべく穏便な形で解決させたいのかもしれないわ」

ロン「でも、それにしちゃあやり方が雑じゃないかい? 賢者の石の時はクィレルが黒幕だって一言書きゃ良いし、
   今回だってペティグリューのことを書けばよかっただろ?」

ハリー「それに、去年の"秘密の部屋"に関するメッセージは送られてきてないよ?」

ハーマイオニー「去年の事件は、ほら。ロックハート先生がひとりで全部解決したでしょ? 
          "送り主"が未来の情報を持っているなら、そのことを知ってたんじゃないかしら」

ハーマイオニー「それとロンの意見だけど、確かに解決させるのが目的なら、やり方が雑ではあるわね……
          これは推測に過ぎないけど、もしかしたら何か制限があるのかもしれないわ」

マミ「制限?」

ハーマイオニー「あんまり正解に近すぎる情報は送れないとか、送れるタイミングが決まってるとか……」

QB「……これ以上は考えても仕方ないね。とにかく、今すぐに害がでるわけでもないんだ。
   今後、もしもメッセージがきたらその時にまた考えよう」

812: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/03(月) 00:21:38.83 ID:dacbDBte0

数日後 年度最終日 ルーピンの部屋


ルーピン「やあ、ハリー。丁度君が来るのが見えていたよ。忍びの地図でね。
      これは君に渡しておこう。私はもう先生じゃないから、良心が咎めることもない」

ハリー「……やっぱり、お辞めになるっていう話は本当なんですか?」

ルーピン「ああ。誰かが、私が狼人間だということについて口を滑らしたというのもあるが……
      それが無くても、多分やめていたよ。薬を飲み忘れて、君たちを襲おうとしたのは事実だ」

ハリー「そんなこと……」

ルーピン「……なに、そんな暗い顔をすることはないさ! 転職は慣れているし……それに、私は君という生徒を持てて誇らしいよ。
      シリウスの冤罪も、きちんと晴らすことができたしね」

ハリー「それは……でも、僕の力じゃ……」

ルーピン「今回のことは誰一人欠けても成功しなかっただろう。もちろん、君もね。
      とにかく、君は無実の者を救ったんだ。それは誇ってあげなさい。じゃないとシリウスが泣くだろうから」

ハリー「……はい!」

813: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/03(月) 00:23:14.78 ID:dacbDBte0

マクゴナガルの部屋


マクゴナガル「さて、呼ばれた理由は何となく分かっていると思いますが、今回の試験のことです」

マミ「は、はい……」

マクゴナガル「……単刀直入に言えば、変身術と呪文学に関しては落第点ですね。
         今期ではほぼ最低といっていいでしょう」

マミ「……」

マクゴナガル「この点数では、4年生への昇級も不可扱いです。いくら座学が好成績とはいえ、実技がそれに追いついていないのでは」

マミ「そ、そんな――」

マクゴナガル「……ですが。この成績が、怠慢によるものでないということは知っています」

マミ「え? あ、あのぅ……?」

マクゴナガル「管理人のフィルチさんから、会う度に貴女に関する苦情を告げられていますので。
         やれ、門限ぎりぎりまで練習しているだの、潰したカエルの破片で部屋が汚れて敵わんだの……」

マミ「え、そ、そんな。ちゃんと掃除はして――」

マクゴナガル「まあ、それはともかく。貴女の努力を認めるという形で、今回はぎりぎりの"可"扱いとします。
         フリットウィック先生ともすでに相談済みですので、心配はいりません」

マミ「じゃ、じゃあ、4年生にはなれるってことですか? ありがとうございます、マクゴナガル先生!」

マクゴナガル「お礼を言われることではありません。貴女がきちんと努力をしていたから、その分を加味しただけです。
         あくまで公正に、です。
         ……ですからこの調子だと、さすがに5年生への進級は難しいと言わざるを得ません」

マミ「あ、ぅ……」

マクゴナガル「……そんな情けない顔しないでよろしい。マミ、貴女が努力家であることはきちんと知っています。
         まだ芽は出ていないかもしれませんが、いずれそれも報われるでしょう。
         マミ、貴女は素晴らしい魔女になる。私が保証しますよ」

マミ「……ありがとう、っございます」ジワッ

マクゴナガル「……こほん。さ、お行きなさい。そろそろホグワーツ特急がでる時間です」

814: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/03(月) 00:25:09.15 ID:dacbDBte0

ホグワーツ特急 ホーム


ハリー「……あ、ロン! こっち、こっちだよ!」

ロン「ハリー、お待たせ! いや、参ったよ。途中でトランクをぶちまけちゃってさ」

ハーマイオニー「もう! ぎりぎりになって支度するからそういうことになるのよ?」

ロン「はいはい、申し訳ございません。さ、乗ろうぜ――って、うん? ハリー、その犬って……」

黒犬「ハッハッハ」

ロン「こいつ、シリウsむごっ」

ハリー「しーっ! 新聞に冤罪だって載ったとはいえ、さすがにまだ不味い!
     うん、そうなんだ。これから魔法省に行って冤罪だったっていう補償の手続きをするんだけど……」

ハーマイオニー「わざわざ姿現しできないホグワーツまで戻ってきて、ハリーと同じ特急で行くってこと?
          はあ。なんていうか……子煩悩って、後見人にも当てはまる言葉だったかしら?」

ハリー「ちなみに、バックビークはシリウスの家で飼うんだって」

ロン「ふぅん……そういやハリー。君、今年からシリウスの家に引っ越すのかい」

黒犬「……!」ブンブン

ハリー「そのつもりだけど……結局、手続きが終わってからの話だからね。
     シリウスが話したら、ダンブルドアは何でか良い顔をしなかったらしいし……」

ロン「そうなの? あのマグルの家にいるより100倍は幸福だってわかりそうなもんだけどなぁ。
    それじゃ、さっさとコンパートメントを取りに行こうよ」

ハリー「うん、そうだね――って、あれ? あっちから来るのは……」

マミ「あら、ハリーくん。その犬……」

ハリー「マミ! 先に出たとばっかり思ってたけど……」

マミ「ちょっとマクゴナガル先生に呼び出されてて……それよりもその犬、ハリーくんのなの?」

黒犬「……」

ハーマイオニー(……そういえば、シリウスが動物もどきだってことは話したけど、何に変身するかは言ってなかったわね)

ハリー「いや、違うよ。これはね――」

マミ「もう、きちんと躾けないと駄目よ? その子、やたらと私のこと舐めてきてくすぐったかったんだから」

ハリー「――え」

黒犬「……!?」

ロン「……」

ハーマイオニー「……」

マミ「スカートは脱げる寸前まで引っ張られるし……顔も舐められたわね、そういえば。その時は慰めてくれたんでしょうけど……。
   まあとにかく、気を付けなきゃ。その犬大きいから、怖がる子もいるでしょうし――と、そろそろ時間ね。
   キュゥべえが席を取ってる筈だから、私行くわ。それじゃあね」スタスタスタ

ハリー「……」

黒犬「……」


 ポンッ


シリウス「違うんだ。ハリー、聞いてくれ。ほら、動物の姿になると思考が人間的ではなくなってだね。
      あまりに空腹の時に餌を貰ったものだから、つい犬っぽいお礼の仕方を……
      や、やめろ……やめてくれ……! そんな目で私を見ないでくれ……!」

ハリー「…………」

815: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/03(月) 00:27:35.68 ID:dacbDBte0

ホグワーツ特急 コンパートメント


QB「今年も色々あったね」

マミ「そうね……っていうか、ホグワーツって毎年事件が起こってる気がするわ」

QB「まあ魔法界全体の治安が不安定ってこともあるんだろう。ヴォルデモートがいなくなったのはたかだか十数年前だし、
   ホグワーツで起きた事件は全部ヴォルデモート絡みだしね」

マミ「来年は穏便に過ごせるかしら……」

QB「さあ、どうだろう。例の"送り主"の件もある。何事もないっていうのは、あまり考えられないかな」

マミ「やっぱりそうかしら……」

マミ(未来の情報を送ってくる"送り主"……か。もし、もしも本当にそんな人がいて、時間を移動して情報を集められるなら――)

QB「……ところでマミ、さすがに初夏だし暑いよ。少し窓を開けてくれないかい?」

マミ「え? あ、うん。分かったわ……でも、落ちたりしないでよ?」


ガラッ


マミ「んっ――気持ちいわね。イギリスの風は、何となく日本のよりさらさらしてる感じがするわ」

QB「君、本当にそんな風に感じてるの? 格好つけてるだけじゃなくて?」

マミ「う、うるさいわね! なによ、いいじゃないちょっとくらい――」


 ヒュウウ――パサッ


マミ「わ、わぷっ! な、なに。窓から紙屑が入ってきたの?」

QB「あはは。やっぱりかっこつかない――うん? マミ、その紙、何か書いてあるよ」

マミ「……もう、前の車両の誰かが捨てたのかしら? 嫌ね。えーと、何々……」ガサッ



『佐倉杏子は生きている』



マミ「……え?」



                                                          アズカバンの囚人編・了

856: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/10(月) 23:11:40.84 ID:s4cEiWrY0
 


『佐倉杏子は生きている』



『会いたいのなら、夏休み初日に行動すべし』



『まず、見滝原の駅から○○時にでる一番線の電車に乗ること』





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857: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/10(月) 23:12:12.65 ID:s4cEiWrY0

7月 夏休み初日 見滝原市 駅


マミ「……」

QB「……マミ、本当に行くのかい? 考え直した方がいい。
   彼女が亡くなったっていうのは、もう一年前に新聞やインターネットで散々確認しただろう?」

マミ「……でも、私の目で見たわけじゃないわ。それに、佐倉さんは魔法使いだもの。
   もしかしたら……」

QB「誰かもわからない"送り主"のことを信じ過ぎていやしないかい?
   もしかしたら、闇の魔法使いかもしれないよ? マミを罠に嵌めようとしているのかも――」

マミ「私に対して敵意を持っていないようだ、っていったのはキュゥべえじゃない」

QB「……それは、でも……あくまでも推測にすぎないんだよ。こうして油断させるのが目的だったのかもしれない。
   とにかく、一度家に帰って考え直してみないかい?」

マミ「碌に魔法が使えない私を油断させるためだけにあんなメッセージを送る? そんなわけないでしょう。
   ねえ、キュゥべえ。あなたちょっと変じゃない? まるで、私と佐倉さんを会わせたくないみたいな……」

QB「そ――そんなことは、ない、けど。ただ、僕は、君が心配で……」


『一番線、電車が参ります。白線の内側までお下がりください――』


マミ「……来たわ。この電車ね。乗るわよ、キュゥべえ」

QB「……」

858: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/10(月) 23:12:41.42 ID:s4cEiWrY0

電車内


マミ「さて、電車には乗れたけど……あの紙には、電車に乗るところまでしか書いてなかったわね。
   佐倉さんは、この電車に乗ってるのかしら……? 先頭車両から順番に見ていきましょう」

QB「……せめて、ハーマイオニー達に連絡すべきじゃないかな? メッセージが来たら話し合おうって言ってただろ?」

マミ「佐倉さんに関しては私の問題。それに、どのみち指定された時間が急すぎて間に合わないわよ」

QB「それは……そうだけど……」

マミ「……それにしても"送り主"は私に何をさせたいのかしら? そもそも、何で私なの?
   事件を解決させたいなら、もっと適任者がいるじゃない。魔法の腕だったらハーマイオニーさんが一番だし……
   それに佐倉さんを助けるのは、ホグワーツに関係ないわよね?」

QB「……考えられるのは、ホグワーツで起こる事件の解決よりも、君自身の方に重要度を置いているってことだ」

マミ「私、自身?」

QB「つまり"送り主"の目的は事件の解決じゃなくて、君の保護――いや違うな。
   大雑把に言ってしまえば、君の役に立つことを目的にしているんだ。もちろん、ただの推測だけどね」

マミ「……確かに佐倉さんの場所を教えてくれたり、ハーマイオニーさん達の喧嘩を止める方法を伝えてくれているけど……
   でも、それこそ何で? "送り主"さんは、どうして私を助けようとしてくれてるの?」

QB「分からないよ。それに、あくまで可能性の話だ。
   今のところそう見えるってだけで、本当はもっと別の理由や法則で動いてるのかもしれない」

マミ「……とにかく、今は佐倉さんを探しましょう」

QB「……」

859: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/10(月) 23:13:07.54 ID:s4cEiWrY0

十数分後 電車内


マミ「一番後ろの車両まで見たけど……どこにもいないわね。混んでるわけでもないから、見逃すとも思えないし……」

QB「……もしかしたら、僕らが車両を移動している間に、すでに探した車両に乗り込んで、もう降りてしまったのかもしれないよ。
  一度、電車を降りてみたらどうだい?」

マミ「……でも……もしかしたらこれから乗ってくるのかも……」


『次はー、○○駅、○○駅に――』


QB「ほら、ちょうど駅に着くみたいだし。何か飲み物でも買って、頭を休めたほうがいい。
   外は夏の日差しで暑いし、駅まで来るのに汗もかいただろう?」

マミ「……でも、あの紙には途中で降りろなんてて書いてなかったし――」


『○○駅――ザザッ、子に会い、――ザザッ』


マミ「あら、電車のアナウンスが……故障かしら? ね、キュゥべえ」

QB「? 何を言っているんだい?」

マミ「え、だから、ほら。アナウンスに雑音が混じって……」

QB「……そうかな? 僕には正常に聞こえるけど……」

マミ「そんな、だってこんなはっきり――え?」


他の乗客「……」


マミ(他の人も、反応してない……? ざわめきもしないなんて……)

QB「マミ? いったいどうしたって言うんだい?」


『――佐倉杏子に会いたければ、次の駅で降りて、西口の改札からでること、ザッ』

『――○○駅に止まります。お出口は左側。降りる際は足元に気を付けて――』


マミ「……キュゥべえ、次の駅で降りるわよ」

QB「え、あ、うん! それがいいよ。やっぱり休憩は大事だし、その方がいい考えも浮かぶって……
   ……マミ? どうかしたのかい?」

860: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/10(月) 23:13:52.47 ID:s4cEiWrY0

○○駅 西口改札


QB「君にしか聞こえないアナウンス? 確かに、僕には全く聞こえなかったけど……
   でも、それはちょっと変だね」

マミ「変かしら? キュゥべえだってテレパシー使えるじゃない」

QB「僕が変だと思うのは、なんでわざわざ電車のアナウンスって形で君に知らせたかってところだよ。
   テレパシーが使えるならテレパシーでいいし、いつもみたいに紙の媒体で伝えてもいいじゃないか」

マミ「それは……伝わればなんでもよかったんじゃないの?」

QB「手間が多すぎるんだよ。わざわざ君以外の対象には聞こえないように細工までするなんて…… 
   いったい、何の目的で……?」

マミ「……考えてても仕方ないわ。それより、指示通りに改札を出たけど……佐倉さん、いないわね」

QB「なかなか栄えてる街みたいだ。人通りが多い。見滝原よりは劣るけど、大きな建物も多いし」

マミ「この街に佐倉さんがいるとして、どうやって探せばいいのかしら……?」

QB「君たちはこういう時、交番という施設を利用するんだろう? ちょうどそこにあるし、聞いてみたら?」

マミ「あのねぇキュゥべえ。いくら警察でも、なんでもやってくれるってわけじゃ……」

QB「そうなの? でもさっきからあそこにいる人がすっごいこっち見てるから……」

マミ「え?」

警官「あー、君。学生だろう? 学校はどうしたのかな?」

マミ「え、あの。いまは夏休みで――」

警官「今は七月の頭だよ? ずいぶん早い夏休みだねぇ?」

マミ(あ……そうか、こっちの夏休みはまだ半月も先で……)

警官「どこの学校かな? とりあえず、話はそこの交番で聞こうか?」



861: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/10(月) 23:14:30.27 ID:s4cEiWrY0

交番


警官「……あー、はい。確かにそちらに在籍していると。わかりました、それでは……」ガチャン

マミ(……昔、普通の人の世界で通学の証明とかが必要な時はここに掛けなさい、って教えてもらった電話番号だけど……
   どこに繋がったのかしら、あれ)

警官「いや、手間をかけて悪かったね。その歳で留学とは偉いもんだ。うちのバカ娘にも見習わせたいくらいだよ」

マミ「いえ、そんな……あの、もう行っても?」

警官「ん? ああ、悪かったね。しかし、ここらも最近は治安が悪くてね。暗くなる前に家に戻りなさい」

マミ「は、はい。それじゃあ……」

QB『マミ、終わったのかい?』

マミ『ええ、予想以上に長引いちゃった……職務質問って初めて受けたけど、面倒くさいのね。
   クーラーも効き過ぎて冷えちゃったし――』

マミ「は、は……くしゅんっ」ブルッ

警官「大丈夫かい? ……ポケットティッシュで良かったら使うといい、ほら」

マミ「ありがとうございます……」

警官「さっきそこで配ってたやつだけどね。まだ封は開けてないから、汚くはないよ」

マミ「はあ。それは――……! すみません! このティッシュを配ってたそこって、そこの駅前のことですか!?」

警官「あ、ああ。そうだが……なんだね、急に?」

マミ(このティッシュの裏に挟んである広告……)



『交番を出て、最初に目に入った路地を直感で進め』

『その先に、佐倉杏子は居る』

862: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/10(月) 23:14:58.35 ID:s4cEiWrY0

路地裏


マミ「……結局、駅前で配ってたティッシュの方は普通の広告しか入ってなかったわね。
   私がくしゃみをすることまで見越して、あの警察の人にだけメッセージ入りのティッシュを……?」

QB「ハーマイオニーの予想通り、未来の情報を入手できる力があるのなら、それも不可能じゃないだろう。
  ただ、やっぱり電車のアナウンスみたいにまどろっこしい手段だけど……」

マミ「それに、なんだかメッセージも曖昧じゃない? 私の直感って……この路地、分岐がいっぱいあるし。
   未来のことがわかるって言っても、私がどう思うかまではわからないでしょう?」

QB「? どういうことだい?」

マミ「……例えば"送り主"が未来に行ける魔法を使えて、私の行動を全部知ってるとするわよね?
   でも、送り主が見た未来の私は右の道を選んでいたとしても、もしかしたら今の私は左の道を選ぶかもしれないじゃない」

QB「ああ、そういう……でも、それはどうかな。そもそも"送り主"がメッセージを送ってきたから、君はここにいるんじゃないか」

マミ「え? それこそどういうこと?」

QB「今日この時間、君がこうしてこの路地を歩いているのは、送り主からのメッセージに従っているせいだろう?
   そのメッセージを作成するには、未来を覗く力で予めこういう行動をしている君を観測することが必要だよね?」

マミ「……そうね。私がこういう行動をしていない限り、メッセージは作ることも送ることもできないし……」

QB「でも、君が佐倉杏子を探してこの街に来たのはそもそもメッセージのせいだ。
   つまり送り主が"佐倉杏子を探して路地裏を歩く巴マミ"を事前に観測するためには、さらにその事前の君にメッセージを送る必要がある。
   でもそのメッセージを送るためには君がメッセージに従って行動したという事実が必要で、その為には更に前にメッセージを……」

マミ「え、えーと……」

QB「つまり、この時点でタイムパラドックスが生じているわけだ。最初に君にメッセージを送れる"送り主"というのがいないわけだから。
   このパラドックスを解消するためには、時間という概念の認識を変える必要がある。
   例えば、時間は線ではなく立体であり、上面を通って過去を改変できるものとするという考え方だ。
   これならタイムパラドックスは存在しなくなる。道筋が変化するだけで、辿り着く結果は変わらなくなるからね」

マミ「あ、あの、キュゥべえ、ちょっと待っ……」

QB「未来というのが過去を積み重ねた結果なのではなく、過去と未来は同時に存在するものだと考えればいい。
   その中で僕らの主観意識は常に現在を進んでいくわけだけど、仮にタイムトラベラーがいるとすれば、
   彼ないし彼女は、主観意識の時間軸を自由に選択できる、つまり都合のいい過去未来を選択できるというわけだ。
   ただこの考え方にも欠点はあって、トラベラー同士の主観意識が交差した場合に問題が起きる。
   つまりタイムトラベラーが同時に複数いた場合、主観未来の混合や制限、予期しない変化が発生して――」

マミ「……」プシュー

QB「――って、ああ、ごめんよ。つまり、考えてもあんまり意味はないってことさ。
   僕らは未来を見られないんだし、時間がどういう構造になっているかなんていうのは机上の空論でしかない。
   確実に言えることは、今のところそのメッセージの信頼度は低くない、ということだけかな」

マミ「……それって結局、"送り主"が私の思考までは読み取れないっていう疑問の答えになってないんじゃないかしら?」

QB「なってるよ。君のこの行動はある主観未来において、既に確定したものだっていうことになるから」

マミ「つまり?」

QB「簡単にいうなら――どう足掻こうがメッセージには逆らえない。メッセージの内容を覆すことは出来ない。そういうことになる」

マミ「……なんだか、その、凄い怖い方向に話が進んでない?」

QB「別に心配することじゃないさ。言っただろう? 机上の空論だって。そういう風に考えることもできるって話だよ」

マミ(……でも、もしかしたら、メッセージを受け取った時、私が覚える奇妙な信頼感と確信は……)

QB「……それにしても、ずいぶん歩いたね。駅からも離れて、段々寂れた感じになってきたし……」

マミ「あんまり、綺麗な道じゃないわね……あちこちにゴミが落ちてるし、人もほとんど通らないし……」


「……」タタッ


マミ「……! いま、路地の先に誰か……待って!」ダッ

QB「マミ? ちょっと、置いて行かないで――」


863: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/10(月) 23:15:51.99 ID:s4cEiWrY0

『おいおい。あんたも魔法少女なら、そこで諦めちゃ駄目でしょ――と!』


マミ(佐倉さん――)


『へー。それじゃあさ、良かったらまた会おうぜ。今度はうちに来てくれよ。晩御飯、御馳走するからさ』

『え……いいの?』

『ああ。ひとりで食べるより、たくさんで食べた方がいいだろ?』


マミ(佐倉さん)


『ああ、楽しみにしてるよ。それじゃあまた――来年な』


マミ(佐倉さん……!)


 過去の思い出が、次々と脳裏をよぎる。

 佐倉杏子。あの事故に遭ってから、見滝原で出来た最初のお友達。

 その彼女に、また会えるかもしれない。そんな期待を胸にして、私は走り、


???「……っらぁ!」ブンッ

マミ「――え?」


 ――そして次の瞬間、後頭部に走った衝撃によって視界が歪んだ。


864: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/10(月) 23:16:36.67 ID:s4cEiWrY0

マミ(あ、れ……変、ね。佐倉さんを、追いかけてた筈なのに……)


不良1「っひょー! えらく可愛い子じゃん!」

不良2「なぁんでまたこんなところに来てんだろうな……俺ら的には大歓迎だけどサ」

不良3「おい、もたもたしてんな! さっさと詰めちまえ!」ガバッ


マミ(体、動かない……どこに連れてくの……? 誰……?)


警官『ん? ああ、悪かったね。しかし、ここらも最近は治安が悪くてね。暗くなる前に見滝原に戻りなさい』


マミ(あ……そっか、あの警察の人の言ってた……)


不良1「お、すっげー体してんのな! たっのしみー!」

不良3「運べっつってんだろ! おい、車は回してあんだろな!?」

不良2「ん。この路地の出口にぴったし」


マミ(杖……魔法……声、出さなきゃ。でも……)


マミ「ぁ、ぁ、ぅ……」

不良1「んっだよ騒ぐなよ。まあ俺らのホームで好きなだけ騒がしてやっからさ――」


???「……だったら、さっさとアンタらのいう家とやらに帰んなよ」

865: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/10(月) 23:17:12.34 ID:s4cEiWrY0

不良2「……なんだ? 女の子? この子の友達かなんか?」

不良3「……ちっ。ひとりでうろちょろしてる鴨だと思ったんだけどな」

不良1「かまやしねえよ。ついでにぼこって、一緒に詰め込んじまえばよ――おらっ!」ブンッ


???「遅っせえ」ヒョイッ


 ゴリッ


不良1「んなっ――あ、あががぁ!?」

不良3「お、おい!? 急にうずくまって……な、何しやがった!」


???「顎を外しただけだよ。ほら、さっさと病院にでもなんでも連れってってやんな」


不良3「……く、糞が!」

不良2「ほら、立てよ……」

不良1「がぁっ! ぁ、あおあ……」


 タッタッタ……


マミ(……行った。助かった? 誰? 誰が……視界が、だんだん定まって……)


???「ったく、無駄なことに力使っちまった……もうあんま余裕ないってのに。
     ああああ! それもこんなところに一人で来るこの馬鹿の――」

マミ「……佐倉、さん?」

杏子「ああ? アンタ、なんであたしの……っ、もしかして、マミ、か?」


866: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/10(月) 23:17:43.15 ID:s4cEiWrY0


マミ「佐倉さん!」ガバッ

杏子「……寄んな!」

マミ「――え?」

杏子「あ、いや――その、ほら、あたし、服とかちょっと汚れちゃってるしさ……」

マミ(佐倉さん……そういえば、髪もぼさぼさで、服もあちこちほつれてる……それに、痩せた?
   ううん、やつれてるって言った方が……)

杏子「……にしても、こんなところで会うなんてね。もう会うこともないと思ってたのに。
    まあ、もう分かっただろ? ここは危ないよ。ほら、さっさと行った行った!」

マミ「――佐倉さん。私、あなたを探してたの」

杏子「……」

マミ「良かった……生きてたのね、佐倉さん……私、本当に心配して……」

杏子「っ、知って、るんだな……あたしの家族のこと」

マミ「……その、新聞に書いてあったことくらいだけど……私、その時はまだ向こうにいたから……
   ごめんなさい、何の助けにもなれなくて」

杏子「……別に、マミが謝ることじゃないだろ。それにどうせ、アンタがいても変わらなかったさ」

マミ「……」

杏子「だからそんな顔すんなって……悪いのはあたしなんだ。あたしが、もっと強ければ……」

マミ「そんな、それこそ佐倉さんのせいなんかじゃ――」

杏子「いいや、あたしのせいさ……親父はね、魔女にやられたんだ」





マミ「魔女? それって、闇の魔法使いってこと?」

杏子「……は?」

867: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/10(月) 23:18:37.98 ID:s4cEiWrY0

杏子「いや、魔女は魔女だよ。マミも向こうで狩ってるだろ?」

マミ「か、狩る? なんで狩るのよ。私、ただの学生だし……先生に魔女はいるけど、でも狩るなんて」

杏子「魔女の先生だぁ!? おい、どういうことだよ? さっきから話が全然――っ」フラッ

マミ「! 佐倉さんっ」ダキッ

杏子「……っ、は、だから行けって言ったんだ。情けない姿見せちまった……
    ここんとこ、まともな生活してねえし……はは、人って結構生きてられんのな」

マミ「笑い事じゃないわ。すぐに病院に――」

QB「……いや、病院に連れて行っても無駄だろう」

マミ「キュゥべえ!? ようやく追いついて――無駄って、どういうこと?」

杏子「よぉ、ここんとこご無沙汰だったじゃんかよ……ま、最近はまともに魔女も狩れないしな。
    グリーフシードもねえし、用無しってわけか」

マミ「ご無沙汰、って……? 佐倉さん、キュゥべえと会うのは初めての筈じゃ……」

杏子「ほんとに話が噛み合わないのな。最初に契約した時、会ってるに決まってるだろ?」

マミ「契約?」

杏子「……おい、マミ。あんた魔法少女、なんだよな?」

マミ「そうよ。魔女の卵。佐倉さんもでしょう?」

杏子「ああ!? あんなもんの卵になった覚えは――」

QB「言い争ってる場合かい? 佐倉杏子、ソウルジェムを見せてくれ」

杏子「……ほらよ。もう魔法は使えそうにねえけどな」ポイッ

マミ(ソウルジェム……? 魔法が使えなくなる? いえ、それよりも、キュゥべえ、佐倉さんと話が通じて……)

QB(……不味いな。濁りきってる。グリーフシードに変化するまでの猶予は、長く見積もっても一日かそこら……
   肉体の衰弱を魔力で補っていたのか。これじゃあ魔法を使わなくても濁りが早い。
   それにもう出会ってしまったのなら、マミと佐倉杏子を引き離すことも出来ない……)

マミ「ね、ねえ、キュゥべえ。なにがどうなってるの? そのソウルジェムって一体――」

QB「話は後だ。マミ、彼女を助けたいのなら、僕の言う通りに行動してくれ」

マミ「……あとで、話してくれるのね?」

QB「――ああ、必ず、ね」

マミ「……キュゥべえを信じるわ。どうすればいいの?」

QB「とりあえずは見滝原に戻ろう。あそこは魔女が生まれやすい」

マミ「分かったわ。ほら、佐倉さん。肩につかまって……」

杏子「いや、あたしは行くなんて一言も――」

マミ「いいから! ほら!」グイッ

杏子「……っ! 好きにしろよ、もう……」

杏子(……見滝原、か。もう、風見野の方へ帰ることはないと思ってたんだけどな……)

868: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/10(月) 23:19:04.60 ID:s4cEiWrY0

電車内


杏子「ふぅ……ああ、久しぶりに空調の効いてるところに入ったな……」

マミ「ほら、座って――平日の昼間だから、空いてて良かった……」

杏子「……ああ。じゃあ、ほら。あたしは大丈夫だから、マミはちょっとあっち行ってろよ」

マミ「そんな、いいじゃない。久しぶりに会ったんだから。つれなくしないでよ、もう」

杏子「いや、そういうんじゃなくてさ。あたしと一緒にいると、マミまで……」


「やだ、なにあれ。きたなーいwwww」

「ジョーシキないよねーwwwwあんなカッコで電車に乗るとかさーwwww」


マミ「あ……」

杏子「……ほら、な? 見滝原に着いたらちゃんと降りるから、別の車両にでも……」ジワ....

QB(不味い。ソウルジェムの濁りが加速してる。このままじゃ最悪、この電車の中で……)

QB『マミ、別の車両に移るなら、彼女も一緒に――』


マミ「ちょっと! なんなんですか、さっきからこっち見てひそひそひそひそ!」キッ

杏子「!?」


「え、あ、なんなの、こいつ?」

「べつにあたしら、悪いことなんてなんにも」


マミ「聞こえてないとでも思ったの!? 彼女は私の友達なの! なにか文句があるなら言ってみなさいよ!」


「……ちっ。なんだってのよ。いこ」スタスタ

「最悪ー。マジきもいよねー」スタスタ


マミ「……ふぅっ。さ、佐倉さん。疲れてるみたいだし、なんだったら寝ちゃってもいいわよ。
   ずっと隣に座って、見滝原に着いたら起こしてあげるから」

杏子「あ、うん……あの、ありがと……」

マミ「いいのよ、別に。あんな人達、気にすることないわ」

杏子(……しばらく見ない間に、マミの奴ずいぶん強くなったんだな……)



869: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/10(月) 23:19:45.14 ID:s4cEiWrY0

マミ「さて……キュゥべえ、見滝原に着いたら、私はどうすればいいの?」

QB「……まず、魔女の結界を探す必要がある」

マミ「魔女の……?」

QB「君が言うところの、なんたらかんたらゾウムシのことだよ。そいつを倒して、グリーフシードを手に入れないと」

マミ「……それがあれば、佐倉さんは助かるのね?」

杏子「助かるっちゃあ、まあ助かるかな。元手が無けりゃ魔女も狩れないしね。
    ……それにしても、何にも知らないんだな、マミ。あんた一体……?」

QB「話は後だ。とにかく、一刻も早く魔女の結界を見つけないと……
   ……でも、困ったな。僕の持ってるデータは数年前のものだ。とすると結界の位置は変わってるだろうし……」

マミ「その結界って、普通の方法じゃ探せないの?」

QB「難しいな。仮にマミがそういう魔法を使えたとしても、結界の位置を探るのは無理だろう。
   佐倉杏子の魔法もいまは当てにできないし、かといって、なにか良い方法があるかっていうと……」

杏子「……魔女の結界だったら、ひとつだけ心当たりがあるよ」

QB「本当かい? できれば、長い期間存在している魔女が好ましいんだ。
   統計上、その方がグリーフシードを孕んでいる確率が高いからね」

杏子「……十分だろうよ。一年以上も生きてるし、あたしが知ってるだけで三人も食いやがった奴だ」

マミ「それって……?」

杏子「さっきもちょっと言ったけどさ。世間では無理心中ってことになってるあれ、本当は違うんだよ。
    父さんも、母さんも、モモも――あの魔女に殺されたんだ」

870: ◆jiLJfMMcjk 2013/06/10(月) 23:20:24.92 ID:s4cEiWrY0

杏子「あたしの願いは、父さんの話をみんなに聞いて欲しいってことだった。
   上手く行ってると、そう思ってたよ。でも、今考えると実際はどうだったんだか……」

杏子「魔女の口づけを受けやすいのは、心にストレスやなんかを溜め込んでる奴だ。
    そういう意味じゃ、父さんも不自然に感じてたのかもな……急にみんなが話を聞きに来るようになったんだ。
    あたしの願いは、所詮子供の浅知恵だった」

杏子「気づいた時には、父さんは魔女に口づけを受けて、結界の中に母さんとモモを連れ込んでた。
    あたしは何とかその魔女を倒そうとしたんだけど……駄目だった。ずたぼろの返り討ちさ。
    それで――あたしの家族は"手遅れ"になった」

杏子「あたしは逃げた。その場にいることができなかった。だって、そうだろう? 全部あたしのせいだ。
   親父が魔女に魅入られたのも、魔女を倒してみんなを守れなかったのも!
   全部全部、あたしが馬鹿で弱くて何にもできなかったせいだ!」

杏子「……あとは言わなくてもわかるか。こんなナリになるような生活をして、魔女を我武者羅に狩って……
    でも、どうしてもあの魔女だけは倒すことができなかった……」



風見野 教会前


マミ「ここは……佐倉さんの」

杏子「笑える話だよね。神の家が、今や魔女の巣ってわけさ」

マミ「……なら、それも今日までよ」

杏子「……あの魔女は強いよ。デカくて馬鹿力、そのくせスピードもある。おまけに刺そうが斬ろうがすぐさま回復しやがる。
    グリーフシード一個じゃ、正直割に合わない相手さ。それでも手を貸してくれる?」

マミ「……その怪物が、モモちゃんや佐倉さんの御両親の仇なら、私にも怒る権利はあるわ」

杏子「……ありがとな、マミ」

QB「佐倉杏子、さっきも言ったけど、もう一度確認しておくよ。魔法少女の力を使っていいのは一度だけ。
   武器を生成して振るうにしても魔法を使うにしても、絶対にワンアクション以上はしないでくれ」

杏子「分かったよ。ったく、魔法が使えなくなるまでぶっ放してやろうと思ったのに……
    理由はあとでちゃんと説明してくれるんだろうね?」

QB「……ああ。絶対にね」