1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 02:34:29.89 ID:3vq2uStC0
(某所のパソコン、ボックス2)

トゲキッス「たっだいま~」

クチート「おかえり」

トゲキッス「いや~参った参った!今日も…」

クチート「負けたんでしょ。聞こえてたから」

トゲキッス「あ、そう?いや~相手がちょこまかと動き回りやがってさ!攻撃が当たらない当たらない!」

クチート「残念だったわね。で、相手は誰だったの?」

トゲキッス「カビゴン」

クチート「ちょこまか動くようなポケモンじゃないわよ!」




3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 02:36:04.55 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「えっ?えっ?」

クチート「何!?カビゴンがあの図体と短足で、音もなく滑るように高速移動しながら、あんたの攻撃を華麗なステップでかわしたっての!?そんなわけないでしょ!」

トゲキッス「でも…」

クチート「でもじゃないわよ!この前はカバルドン!その前はドダイトス!的の大きい鈍足のポケモンばっかじゃない!」

トゲキッス「そんなに怒らなくても…」

クチート「怒ってるんじゃないわよ呆れてるのよ!この期に及んで、まだ相手が悪かったとか思えるそのおめでたいオツムにね!」

トゲキッス「だって当たらないんだし…」

クチート「あんたバカでしょ!?いい加減気付きなさいよ!相手じゃなくて、自分の攻撃に問題があるって!」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 02:37:29.60 ID:3vq2uStC0
クチート「この間言ったでしょ!自分と同じ技を得意にしてるポケモンを参考にしろって!ルカリオの試合とか見たの!?」

トゲキッス「ちゃんと見たよ。とても同じ技を使ってるように見えなかった」

クチート「そうでしょ!?」

トゲキッス「だからあんまり参考にならなかったよ。向こうは自己流にフォームとかを崩してるんじゃないかなあ」

クチート「どうしてそういう結論になるのよ!?ルカリオはちゃんと命中させてて、あんたは外しまくってるんだから、あんたの方がおかしいって考えるのが普通でしょ!?」

トゲキッス「そうなのかなあ…」

クチート「そうに決まってるでしょ!あんたはねえ、力み過ぎなの!やたらとはりきればいいってもんじゃないわよ!」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 02:39:06.30 ID:3vq2uStC0
クチート「あんたの攻撃なんてねえ、もっの凄い大振りの上に、どこ狙ってるかが丸わかりだから、ちょっと場慣れしたポケモンならかわすのなんて簡単なのよ!」

トゲキッス「う…」

クチート「そりゃ当たれば大きいわよ!でもそんなのただのラッキーパンチじゃない!」

トゲキッス「うう…」

クチート「あんたに一撃で倒されたサンダースなんて、今頃引退してるんじゃないの!?まともな神経してたら、みっともなくてもう出て来れないわよ!」

トゲキッス「あう…」

クチート「へぇ~あれ食らっちゃうんだ~って感じよ!末代までの恥よ!はっきり言ってあれに当たるとか、道を歩いてたら隕石直撃くらいの確率じゃないの!?」

トゲキッス「………」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 02:41:56.73 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「でも…」

クチート「何!?」

トゲキッス「やっぱり僕、攻撃はいつも、一撃必殺のつもりで打つべきだと思うんだ」

クチート「………」

トゲキッス「僕、不器用だから、ルカリオみたいにきれいな技は無理かも知れない」

クチート「………」

トゲキッス「でも、みっともなくても、そういう気合いと覚悟をこめるのが、生きた技を打つって事なんだと思うんだ」

クチート「僕、僕って、あんた一応女でしょ」

トゲキッス「そのつもりだけど」

クチート「口調はどうでもいいけど、その無駄に男前な思考を改めなさいよ。究極神拳だろうがEX必殺技だろうが、かすりもしないんじゃ意味がないでしょ」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 02:43:49.87 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「でも…」

クチート「まあいいわ」

トゲキッス「えっ」

クチート「私は、同じマスターの下にいるポケモン同士のよしみで、助言できる事はしたから。それを受け入れようが、無視しようがあんたの自由よ」

トゲキッス「………」

クチート「別にいいんじゃないの?エア神速が趣味なら、どうぞ好きなだけやってればいいわ」

トゲキッス「………」

クチート「じゃ、おやすみ。500回くらい攻撃を外したら、ペアで海外旅行に行けるキャンペーンとかあるといいわね」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 02:47:29.70 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「ねえ、あのさあ」

クチート「まだ何か用?戦闘のアドバイスなら無理よ。私は空気に効率的にダメージを与える方法は知らないから」

トゲキッス「クチートはきついなあ」

クチート「よく言われるわ。だったらもっと優しいポケモンに泣きつきなさいよ。きっと、技が当たらないのはあんたのせいじゃなくて、マスターの部屋の風水の関係だとか言って慰めてくれるわよ」

トゲキッス「そうじゃなくてさ。前から思ってたんだけど」

クチート「?」

トゲキッス「僕たち、友達になれないかなって」

クチート「お断りよ」

トゲキッス「そんなあっさりと」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 02:49:56.81 ID:3vq2uStC0
クチート「あのねえ、さっきからの会話の流れの、どこに友達になったらお互いハッピーでWin-Winだろうって要素があるのよ」

トゲキッス「ないかなあ」

クチート「全くないわよ。皆無よ。あんたの頭に3本はえてるそれって、ありもしない偽情報を受信するアンテナか何かなわけ?」

トゲキッス「えっとこれは…何だろう?」

クチート「私に聞かれても困るわよ。家庭の医学でも読みなさいよ。攻撃を外し続ける事が、肉体と精神に与える影響も同時に調べられてお得よ」

トゲキッス「わかった。読んでみるよ」

クチート「技をかわされて壁にでも突っ込んだら、多分そこらへんにあると思うわ。隠しアイテムだから頑張って探してね。じゃ、おやすみ」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 02:51:18.42 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「あっ、ちょっと待ってよ」

クチート「うるさいわねえ。何なのよこの白いガウ攻撃空母は。私に3回おやすみと言わせたら大変な事になるわよ」

トゲキッス「ど、どうなるの?」

クチート「知らない方がいいわよ。それで何の用なのよ?一応聞いてあげるけど、『友達』と『命中』はNGワードだから」

トゲキッス「友…」

クチート「はい終了」

トゲキッス「えー」

クチート「じゃ、おや…」

トゲキッス「わーわーわー!」

クチート「あったま悪いポケモンもいたもんね…」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 02:53:15.24 ID:3vq2uStC0
クチート「いい加減、友達は諦めなさいよ。もう、これでもかってくらい気が合わないのは明白でしょ」

トゲキッス「そんなに合わないかなあ」

クチート「ザングースとハブネーク並に合わないわよ」

トゲキッス「あ、でもそれなら、戦いの中でお互いを認め合って、芽生える友情とかあるかも!」

クチート「そもそも攻撃が当たってない職場放棄ポケの何を認めるってのよ。それとも、罵倒されて喜ぶ特殊な 癖でもあるわけ?」

トゲキッス「僕はクチートと話するの楽しいよ!」

クチート「マジで家庭の医学物件じゃない。あれだけボロカスに言われて楽しいとか、ドン引きもいいところよ」

トゲキッス「確かに耳は痛いけど、間違った事は言ってないと思うし」

クチート「家庭の医学とか、隠しアイテムとかも間違ってないと思ってるなら、別の意味でもドン引きよ」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 02:54:53.82 ID:3vq2uStC0
クチート「あんたは私のトークがお気に召したようだけど、私の方は、別にあんたの事は気に入ってないから」

トゲキッス「あう…」

クチート「友達が欲しいなら、ラティアスかサーナイトのところにでも行きなさいよ。あの2人は無駄に性格がいいから、あんたでも多分仲良くなれるわよ」

トゲキッス「………」

クチート「漢っぽい友情がお望みなら、ムクホークやフローゼルなんかもお薦めよ」

トゲキッス「よし!じゃあこうしよう!」

クチート「…人の話聞いてるの?どうせろくでもないひらめきだろうから、ノーサンキューな気分なんだけど」

トゲキッス「僕の事、好きな時に好きなだけモフモフしていいから、友達になろう!」

クチート「………」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 02:56:44.44 ID:3vq2uStC0
クチート「…ばっかじゃないの?」

トゲキッス「あれ?」

クチート「いえ、そんなレベルじゃないわ。あんたがバカなのは小学生の教科書にも載ってるくらいの確定事項だわ」

トゲキッス「あれれ?」

クチート「何?あんたのパパが3万円ケチって、オプションの脳味噌を実装しなかったせいでそんな残念スペックになっちゃったわけ?」

トゲキッス「モフモフは嫌いだった?」

クチート「逆に聞きたいけど、何で無条件に、万人に愛されてると信じてるのよ!?」

トゲキッス「違うの?」

クチート「こっこれだから、羽毛や毛皮のある連中は嫌いなのよ!」

トゲキッス「えー」

クチート「ふっふざけるんじゃないわよ!ちょっとモフモフだからっていい気にならないでくれる!?誰もがモフモフなんかを有り難がると思ったら大間違いよ!」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 02:58:16.23 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「でも、マスターは喜んでくれたんだけどなあ」

クチート「!」

トゲキッス「マスターがね、僕の羽毛はきめ細かくて、飛行タイプの中では最高の逸品だって」

クチート「………」

トゲキッス「特に首回りの羽毛の感触がお気に入りでね、いつもこうやって、前から両手でギュっと…」

クチート「………」

トゲキッス「あれ?どうかした?」

クチート「…気が合わないとは思ってたけど、たった今、あんたが大っ嫌いになったわ…。もういいから話しかけないでくれる…?」

………

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:05:56.65 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「ねーねー」

クチート「………」

トゲキッス「ねーったらねー」

クチート「うっさいわね!眠れないでしょ!」

トゲキッス「あ!やっと口きいてくれた!」

クチート「…何なのよまったくこの空飛ぶポンポン玉は…。何の因果で私が粘着されなきゃならないのよ…」

トゲキッス「ねえ、仲良くしてとは言わないからさあ、話くらいはしようよ」

クチート「トリコロールカラーの毛玉に話なんかないわよ!」

トゲキッス「そんな事言わないでさあ」

クチート「あのねえ、人の助言を全部デモデモダッテで却下しといて、今さら何を話せってのよ」

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:07:43.00 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「じゃあねえ、僕の、ここは直した方がいいってところ」

クチート「うざいモフモフ頭悪いしつこいモフモフうるさい頑固モフモフ…」

トゲキッス「あう…」

クチート「まだ聞きたい?15分くらいなら続けられる自信があるけど」

トゲキッス「えっと、もっと絞ってもらえると助かるかなあ」

クチート「絞りきれないわよ。高密度な欠点の集合体があんたの正体でしょ。欠点を改善したら存在自体が消滅するレベルよ」

トゲキッス「うう…」

クチート「まったく、落ち込むくらいなら、最初から聞かなきゃいいでしょ。何で今さら、そんな事知りたいんだか」

トゲキッス「…少しでも悪いところを直せば、まだ友達になれるかも知れないかもって…」

クチート「………」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:09:18.74 ID:3vq2uStC0
クチート「………」

トゲキッス「………」

クチート「…別にないわよ」

トゲキッス「えっ」

クチート「そりゃあんたは欠点だらけよ。でも、私から見る限り、ここを直さなきゃ終わってるってほどの欠点はないわよ」

トゲキッス「じゃあ…」

クチート「勘違いしないで。だからって、あんたと友達になる気はないから」

トゲキッス「そんなあ」

クチート「あんたは適当にごまかそうとしても、簡単には諦めそうにないから、はっきり言っておくわ」

トゲキッス「うん」

クチート「私はね、トゲキッスというポケモンが好きになれない。あんた個人がどうこうじゃなくね」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:11:00.50 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「そうなんだ…僕、今まで他のトゲキッスと会った事ないから分からないけど…」

クチート「でしょうね」

トゲキッス「何かあったの?」

クチート「そこまで言うつもりはないわ。でも、逆恨みみたいなもんだと思ってもらっていいわよ」

トゲキッス「そのトゲキッスって、どんな感じだった?」

クチート「女王様気取りの鼻持ちならない女だったわよ」

トゲキッス「女王様…」

クチート「あんたとはまるで違うけどね。だけど、狭量だと言われようがイヤなものはイヤ。私はトゲキッスとは付き合えないわ」

トゲキッス「………」

クチート「…まったく、本物のトゲキッスのいやらしさときたら…」

トゲキッス「本物のトゲキッス?」

クチート「あ…」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:12:41.39 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「本物ってどういう事?」

クチート「………」

トゲキッス「僕ずっと、自分がトゲキッスだと思ってたけど、本当は違うって事?実はペリッパーだとか?」

クチート「…そんなんじゃないわよ」

トゲキッス「じゃあどういう事?」

クチート「マスターや、あんたのパーティのポケモンは、そういう話はしないわけ?」

トゲキッス「うん…」

クチート「じゃあ、私が言う事じゃないわ」

トゲキッス「意地悪しないで教えてよ」

クチート「少しは考えなさいよ。マスターがまだ知る必要はないって判断してるのに、私が言えるわけないでしょ」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:14:07.20 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「教えて」

クチート「あんたがもっと強くなって、色々なポケモンと対戦するようになれば、イヤでも分かるわ」

トゲキッス「教えて」

クチート「ちょっと、人のスペースに入って来ないでよ」

トゲキッス「………」

クチート「羽毛布団なら間に合ってるわよ」

トゲキッス「はぐらかさないで。教えてくれるまで、ここから動かないからね」

クチート「………」

トゲキッス「………」

クチート「…まあいいわ。こういう悪役が、私にはお似合いよね…」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:16:02.18 ID:3vq2uStC0
クチート「天の恵み」

トゲキッス「?」

クチート「トゲキッスが持ってる、強力な特性よ。ポケモンが使う技には、ダメージを与えるのと同時に、特別な効果を相手に与えるのがあるでしょ」

トゲキッス「麻痺させたり、ヤケドさせられたりするあれ?」

クチート「そう。天の恵みを持つトゲキッスは、その確率が、通常よりはるかに高くなるのよ」

トゲキッス「………」

クチート「その天の恵みと、飛行技『エアスラッシュ』の相性は抜群で、技を受けた相手がひるんで動けなくなる確率は、軽く5割を越えると言われてるわ」

トゲキッス「5割…」

クチート「これがどういう事か分かるでしょ?トゲキッスは、敵より速く動ければ、高確率で、相手が倒れるまで一方的に技を叩き込み続ける事ができる」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:18:17.13 ID:3vq2uStC0
クチート「もちろん、トゲキッスより素早いポケモンはいくらでもいるわ。でも、だからと言って油断はできない。トゲキッスは電磁波も使ってくるから」

トゲキッス「………」

クチート「電磁波を受けて麻痺したポケモンは、素早さも低下する。こうなるともう置物同然よ。反撃どころか、麻痺とひるみで満足に動く事すらままならない」

トゲキッス「………」

クチート「あとはもうひどいもんよ。相手は、自分の無力を噛み締めつつ、試合が終わってくれるのを待つしかない」

トゲキッス「………」

クチート「勝ち誇ったあのバカ鳥の、ドヤ顔をアップで見ながらね」

トゲキッス「………」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:20:06.03 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「なんか…すごいね…」

クチート「………」

トゲキッス「クチートが嫌うの、分かる気がするよ」

クチート「………」

トゲキッス「でもさ、もし僕がその、天の恵みを身につけたら」

クチート「………」

トゲキッス「今まで迷惑かけて来たマスターやパーティのみんなに、恩返しができるんじゃないかな」

クチート「無理よ」

トゲキッス「えっ」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:21:24.16 ID:3vq2uStC0
クチート「あんたには無理」

トゲキッス「そこは努力と根性で」

クチート「努力も根性も否定はしない。だけどね、努力や根性ではどうしようもないものもあるわ」

トゲキッス「でも…」

クチート「これは生まれつきのものよ。確かに進化で、特性の変わるポケモンもいるわ。でも、あんたは違う」

トゲキッス「でも…」

クチート「トゲピーのタマゴとして、この世に生まれてきた瞬間に決まってしまったの」

トゲキッス「………」

クチート「残念だけど、あんたに天の恵みはない」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:23:16.82 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「………」

クチート「………」

トゲキッス「…そっか」

クチート「………」

トゲキッス「要するにこういう事だよね」

クチート「………」

トゲキッス「トゲキッスには2種類いて」

クチート「………」

トゲキッス「僕は、ハズレの方のトゲキッスなんだね」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:26:18.36 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「何か色々と分かった気がする。最初の頃はね、僕が出て行くと、イヤな顔をするトレーナーがよくいたよ」

クチート「………」

トゲキッス「でもね、僕の攻撃を見た時から、ホッとしたような感じになるのが分かるんだ」

クチート「………」

トゲキッス「僕が技を外してばっかりいるせいだと思ってたけど、それだけじゃなかったんだね」

クチート「………」

トゲキッス「この前ね、対戦相手のトレーナーが話してるのが聞こえたんだ。『あいつのは、はりキッスだから怖くねえよ』って」

クチート「………」

トゲキッス「僕に天の恵みがないから、怖くないって言われてたんだね」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:29:37.70 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「参ったなあ…」

クチート「………」

トゲキッス「ただでさえ頑張らなきゃいけなかったのに、2倍も、3倍も頑張らなきゃいけなくなっちゃったよ」

クチート「えっ」

トゲキッス「でも、才能がない分は、努力と根性で押し切るしかないよね!あと気合!」

クチート「………」

トゲキッス「だからぁ~近くにいてぇ~色々とぉ~助言とかしてくれるぅ~友達がぁ~欲しいなぁ~」

クチート「チラチラとこっち見るんじゃないわよ。まったく…タフね、あんたは」

トゲキッス「それくらいしか取り柄がないしね~」

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:31:37.33 ID:3vq2uStC0
クチート「立ち直りが早いというか、そもそも落ち込んだのかどうかすらあやしいとかビックリよ」

トゲキッス「そりゃ、いくら僕でも落ち込んだよ。でもね、マスターはまだ僕を使ってくれてるから」

クチート「………」

トゲキッス「僕が生まれた時ね、天の恵みがなくて、きっとマスターはがっかりしたと思う」

クチート「………」

トゲキッス「でも、僕、ずっとマスターに仕えていて、そんなのを感じた事は1度もなかったよ。いつも良くしてくれたし、かわいがってくれたよ」

クチート「うん」

トゲキッス「僕はダメなトゲキッスだけど、きっと僕の何かを信じてくれてるんだと思う。だから、精一杯やるよ」

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:33:15.23 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「でもなあ、いくらなんでも、攻撃をスカスカ外してばっかじゃ、マスターに愛想つかされちゃうかもなあ。それは絶対にイヤだよ。やっぱり、クチートの助言通り…」

クチート「やめときなさい」

トゲキッス「えっ」

クチート「自分で言うのも何だけど、あれは余計なアドバイスだったわ。マスターはあんたに、もっと命中重視で行けみたいな事は、言ってないんでしょ?」

トゲキッス「うん。いつも、思いっきり行けって」

クチート「マスターを信じてるんでしょ?」

トゲキッス「もちろん!」

クチート「じゃあ、それでいいのよ。マスターを信じて、思いっきり突っ込んで、思いっきり殴ればいいのよ」

トゲキッス「うん!」

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:34:42.20 ID:3vq2uStC0
クチート「後ね、さっきあんたが言ってた事」

トゲキッス「?」

クチート「あんたが生まれた時、天の恵みがなくて、マスターががっかりしたって話」

トゲキッス「うん」

クチート「それはないわよ。そんなつまらない男だったら、私がマスターだなんて呼んでないから」

トゲキッス「そっか」

クチート「それどころか腕の1本くらいはもらってるわね」

トゲキッス「怖っ!」

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:36:00.25 ID:3vq2uStC0
クチート「それとね、あんたに謝らなくちゃいけない事があるわ」

トゲキッス「クチートが謝る⁉」

クチート「何よそのリアクション。私だって謝るべき時には謝るわよ。大抵は」

トゲキッス「大抵は」

クチート「天の恵みのトゲキッスを、本物のトゲキッスって言ったけど、あれは間違ってたわ。偽物なんていないし、特性なんて関係ない。あんたもれっきとした本物のトゲキッスよ」

トゲキッス「………」

クチート「だから、悪かったわね」

トゲキッス「いいよ!そん…」

クチート「?」

トゲキッス「………」

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:37:37.17 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「やっぱり許さない!」

クチート「友達になったら許してあげる、とか言い出さないわよね」

トゲキッス「あうあうあう…」

クチート「何てベタなネタをかます子なの」

トゲキッス「いいでしょ!もういい加減諦めて友達になってよ!」

クチート「逆ギレしないでよ…分かったわよ…好きにしなさいよ…」

トゲキッス「よっしゃあ!友達兼ブレーン1人ゲット!」

クチート「ブレーンって何よ…まあ、生ぬるい関係は真っ平だからいいけど」

トゲキッス「一晩中、将来の夢を熱く語り合ったり、時には熱く拳で語り合ったりしようね!」

クチート「やっぱりそういう無駄に漢らしい付き合いになるわけね…」

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:39:15.35 ID:3vq2uStC0
トゲキッス「じゃあさ、クチートも、僕にこうして欲しいとか、ここを直して欲しいとか、そういうのがあったら言ってよ!」

クチート「別にいいわよ。さっきも言ったでしょ。あんたに終わってるレベルの欠点は…」

トゲキッス「?」

クチート「…そうね、じゃあ1つだけ、その、忠告させてもらうわよ」

トゲキッス「ばっちこーい!」

クチート「モフモフを自慢するのはやめなさい」

トゲキッス「えっ…ああ…うん」

クチート「ほら!そういうの、気にしてたり傷付いたりするポケモンもいるみたいだから!」

トゲキッス「例えば?」

クチート「ドータクンとか!ジバコイルとか!」

トゲキッス「分かった!気を付ける!」

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/07(日) 03:44:48.94 ID:3vq2uStC0
クチート「ああ、それからね」

トゲキッス「うん」

クチート「あんたのその言葉使い、直せとは言わないけど、他のトレーナーのポケモンと話す時は注意した方がいいわね」

トゲキッス「うん、そうする!」

クチート「じゃあちょっと、練習のつもりで自己紹介してみなさい。『僕』はなしでね」

トゲキッス「分かった!いくよ!」

クチート「………」

トゲキッス「わっわたくしトゲキッスでありますわよっ」

クチート「…初めてだし仕方ないか…じゃあ続けて何か言ってみて」

トゲキッス「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない!」

クチート「もっとマシな事言いなさいよ」



おわり

引用元: トゲキッス「いや~負けた負けた!今日も負けた!」