1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 15:19:35.21 ID:irezCfEp0
俺ツイとまどまぎのクロスです。
ループほむらがイレギュラーな並行世界に流れ着いて、まどか達がツインテイルズになる話。
ソウルジェムの代わりにテイルギア、魔女の代わりにエレメリアンなお話です。
ダメな要素があったら、そっ閉じ推奨。
それではよろしくお願いします。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1420006774
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 15:22:02.90 ID:irezCfEp0
QB「そうだよ、まどか! この世界で最強のツインテール属性の持ち主である君なら、最強の戦士になれるよ」
さやか「……まどか? これなに? ぬいぐるみ……じゃないよね。まどかの部屋にこんなぬいぐるみなかったし。ていうか、しゃべってるし。生きてるの、こいつ」
まどか「う、うん。わたしもよくわからないんだけど……さっき、頭の中でこの子の声が聞こえたの」
さやか「なんだそりゃ。それに、さっきのツインなんとかって何のこと?」
まどか「さ、さあ?」
QB「ツインテールのことだよ。二つ結びにした髪型を示す単語さ」
さやか「なるほど。つまり、まどかみたいな髪型のことだね」
QB「そうさ」
まどか「えっと、それで、あなた誰? わたしたちに何か用なの?」
QB「僕の名前はキュゥべえ。君に大切な用があるんだ」
まどか「え? わたしに?」
QB「そうだよ、鹿目まどか。美樹さやかには特に用はないよ。君からはこれっぽっちもツインテール属性を感じないからね」
さやか「あ゛?」
QB「鹿目まどか。この腕輪をつけて、ツインテールの戦士になってよ!」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 15:28:00.27 ID:irezCfEp0
まどか「え? 腕輪って、あなたの耳についてるわっかのこと? これが腕輪なの?」
QB「そうだよ、まどか。さあ、早くこの腕輪をつけるんだ!」
さやか「ねえ、まどか。帰ろう。ツインテールの戦士とかわけわかんないし、こいつ明らかに変だよ。関わり合いにならないほうがいいって、あたしの勘が告げてる」
まどか「でも、このまま無視しちゃうのはちょっとかわいそうだよ」
QB「さすがまどか。それじゃあこの腕輪をつけておくれよ」ニュ
さやか「ちょ、なにこいつ! 毛が伸びた!? まどかから離れなさいよ!」
QB「まどか。この世界で最強のツインテール属性を持つ君がこの腕輪をつけてくれないと、世界が危ないんだよ!」
さやか「ええい、わけのわかんないことを――」
まどか「えっと、この腕輪をつければいいの?」
さやか「――まどか!? ダメだよ、そんなの付けちゃ! そいつ絶対詐欺師の一種かなんかだよ!」
まどか「で、でも、世界が危ないって。それに。、これで誰かの役に立てるなら、それはとっても嬉しいなって……」
ほむら「その必要はないわ」ファサ
まどか「!?」
さやか「!?」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 15:34:41.81 ID:irezCfEp0
まどか「ほ、ほむらちゃん!?」
さやか「転校生!? あんたどっから……って、なにそれ。コスプレ?」
ほむら「気にしないで、美樹さやか。それよりも」ギロリ
QB「君は、一体……?」
ほむら「……インキュベーター。やはり現れたわね」
ほむら(やっと見つけたわ。今回のループはキュゥべえがいままで影も形も見えなかったり、使い魔も魔女がいなくてグリーフシードどうしようって結構深刻な状況だったり、巴マミが何故だかアイドル活動していたりとわけがわからない状況だけど、それでも私のやることは変わらないわ。インキュベーターに、まどかは触らせない!)
ほむら「こんな腕輪を押し付けようなんて何をたくらんでいるか知らないけど、あなたの企みもここまでよ」
まどか「あ!」
さやか「いつの間にか転校生があいつの腕輪を!?」
QB「……いつの間に、僕の作ったテイルギアを奪ったんだい?」
ほむら「あなたに教えるはずないでしょう」
ほむら(テイルギア……? この腕輪の名前かしら)
QB「そうかい。いや、でも君は……」ジー
ほむら「……?」
QB「やっぱり……しかし、何故ツインテールですらない彼女が、ここまで強大なツインテール属性を……それに彼女が身に宿す属性力(エレメーラ)の数々は一体……」
ほむら(何かしら、こっちをじっと見てぶつぶつと。気味が悪いわ……)
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 15:48:48.55 ID:irezCfEp0
ほむら「まあ、いいわ。とにかくもこれを壊してしまえばあなたの目論見も潰え――きゃっ」
さやか「なっ。キュゥべえ! あんた、なに転校生に飛びかかってんのよ! 離れなさい!」
まどか「ほむらちゃん、大丈夫?」
ほむら「ええ、大丈夫。ちょっと驚いただけだから……あ」
まどか「ぁ。ほむらちゃんの腕にハマっちゃってるのって……」
さやか「さっきキュゥべえがやたら強引に勧めてた、やたら怪しいやつじゃん。飛びつかれた時に、ハマっちゃったの?」
ほむら「くっ、こんなもの……外れない!?」
さやか「なにこれ。手首にぴったりはまってるのに、継ぎ目がないよ」
まどか「どうやって外すすんだろう……」
ほむら「インキュベーター! これをいますぐ外しなさい!」
QB「残念ながらそれは無理だ。もう説明する時間もおしいから、いま直ぐ君たちを空間転移をさせてもらうよ」
ほむら「なっ!」
まどか「えぇ!?」
さやか「ちょ!?」
パアアア ヒュン
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 15:58:42.78 ID:irezCfEp0
ほむら「ここは……」
QB「突然で悪いけど、こっちのほうが説明するより早いと思ってね」
まどか「え? え?」
さやか「何であたし達、外にいるわけ!? あんた、あたし達に何をしたの!」
QB「とりあえず、あれを見てほしい」
ほむら「いったい何が……なっ!?」
リザドギルティ「大人に用はないっ。つまみ出せ! 多少手荒になっても構わん!」
戦闘員「モケ―――!」
まどか「ひっ。か、怪物……?」
さやか「な、なによアレ!」
QB「彼らはエレメリアン。この世界は今、彼らの侵攻に見舞われているんだ」
ほむら「エレメリアン? それに、侵攻ですって?」
QB「ああ、そうだよ」
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 16:07:08.78 ID:irezCfEp0
まどか「あ、あんな怖い人たちに攻められてるの……? そんなのってないよ。あんまりだよ!」
QB「残念ながら事実だよ。彼らは非常に高度な精神生命体だ。いままでも幾多の平衡世界を横断し、あらゆる文明からエネルギーを狩りつくしていった。地球程度の文明では、ただ蹂躙されるしかないだろう」
さやか「そんな……」
ほむら「……なぜ? なぜ、そんなものが急にこの世界に来たのよ!」
QB「その答えは簡単だ。彼らがこの星にやって来た目的はただひとつ」
さやか「……」ゴクリ
まどか「……」ゴクリ
ほむら「……」ゴクリ
QB「彼らは――」
リザドギルティ「ふははは! この世界の生きとし生けるすべてのツインテールを我らの手中に収めるのだぁ!」
戦闘員「モケェ―――!」
ほむら「……」
まどか「……」
さやか「……」
QB「彼らはこの世界に、ツインテールを奪いにやってきたんだ!」
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 16:15:09.03 ID:irezCfEp0
リザドギルティ「それにしてもツインテールの少ない世界よ。嘆かわしい! 鉄と電気でおおわれているように見えて、石器時代で文明が止まっていると見える!」
ほむら「……」
リザドギルティ「まあ良い。その分純度の高いツインテールが見つかるというもの! 者ども。隊長のお言葉を忘れるなっ。極上のツインテール属性はこの周辺で感知されたのだ。草の根をわけでも探しだせい! ……猫のぬいぐるみを持って泣きじゃくる幼女は、あくまでついでぞ!」
戦闘員「……モケ? モケェ!」
さやか「……」
リザドギルティ「究極のツインテール属性の奪取は我らの悲願……だがしかし! この俺も武人である前に一人の男! やはり、ぬいぐるみを持った幼女も見たいのだ!」
戦闘員「モケェ!」
まどか「……えっと」
戦闘員「モケケェ……」
リザドギルティ「なに? ぬいぐるみを持った幼女がいない!? ふむ。女がぬいぐるみを持たぬなら、持たせるのが男の甲斐性よ! 構わぬ。連れて参れ!」
戦闘員「モケ!」
QB「さあ! もう彼らの恐ろしさは分かっただろう。暁美ほむら。君が今つけてる腕輪、テイルギアには彼らと対抗するための力が秘められている! 今すぐ変身して戦うんだ!」
さやか「……あたし、帰るわ。まどかも一緒に帰ろ。転校生――ほむらはどうする?」
まどか「あ、さやかちゃん、その……」
ほむら「そうね。私も今すぐ帰るわ」
QB「なぜ君たちは帰ろうとしているんだい!? わけがわからないよ!」
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 16:43:10.08 ID:irezCfEp0
QB「さやかにまどか。いま僕の傍を離れるのは得策ではないよ。僕の周囲に張ってある認識遮断フィールドから出てしまったら、あの怪物たちに容易に見つかってしまうだろう」
さやか「!?」
まどか「そ、そうなの?」
QB「そうさ。ましてやまどかのツインテールは強大だ。一瞬にして彼らにかぎつけられてしまうだろう」
ほむら「人質っていうことかしら? ……そういえば、あなたに付けられた意味の分からない腕輪があったわね。外しなさい、今すぐに」
QB「テイルギアはエレメリアンに対抗する唯一の手段だ。外さないほうが賢明だよ」
ほむら「い・い・か・ら! 外しなさ――」
ゆま「たすけてー!」
ほむら「!」
さやか「あいつらっ! あんな子供になにするつもりだ!」
まどか「あの怪物の人たち! あんな小さな子供をっ、ものすごく丁寧に運んで、気持ちよさそうなソファーにそっと座らせて……」
ほむら「……写真撮影の準備を始めてるわね」
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 16:49:45.82 ID:irezCfEp0
リザドギルティ「ほほうっ、なかなかの幼子よ。そのシンプルなツインテールを際立たせる黄色の髪留め。まだまだ未熟であれ、なかなか侮れんツインテールよ!」
ゆま「……? お、おじちゃん、ゆまをいじめるの……?」ウルウル
リザドギルティ「ふっ。幼子に暴力を与えるなど、愚か者の所業よ。そなたのような幼女に与えられるべきは、このような子猫のヌイグルミだ!」
ゆま「え? このかわいいヌイグルミ、ゆまにくれるの?」
リザドギルティ「おうともさ! そのぬいぐるみを抱くがよい。臆病さの中にきらりと光る勇気を持つ幼女……おぬしには、子猫のぬいぐるみが良く似合う!」
ゆま「わぁい!」ニコニコ
リザドギルティ「お前達、よこの光景を目に焼き付けよ! ツインテール、ぬいぐるみ、そしてソファーに座る笑顔の幼女! これこそが、俺が長年の修業の末導き出した黄金比よ!」
戦闘員「「「モケケェエ!」」」
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 17:08:35.18 ID:irezCfEp0
まどか「あの人たち、実はけっこういい人たちなんじゃ……」
さやか「まどか!? 騙されちゃダメだよっ。あいつらどう考えてもただの変 だよ!」
ほむら「……ちっ。インキュベーター。さっきこの腕輪がどうとか言ってたわね。使い方を教えなさい」
QB「いいのかい? さっきは外せと言っていたけれども……」
ほむら「あんな奴らがうろうろしているのにまどかを帰せるわけないでしょう? まどかとあんな変 を対面させるくらいなら、私が退治してやるわ」ファサ
まどか「ほむらちゃん……」キュン
さやか(……ん? いまあたしが含まれてなかった気が――)
QB「起動方法は簡単だよ。強く願いながら『テイル・オン!』と叫ぶだけだ。それだけで変身できる」
ほむら(グリーフシードの確保がままならない以上、魔法少女への変身は控えておくべきだからこそ、これを使おうと思ったけれども……)
ほむら「そう……。確認しておくけれども、これを使う際のエネルギーは何かしら。消費されるものは? 使いすぎたら、あいつらみたいなエレメリアンとかいうのになったりはしないわよね」
さやか「いや、ほむら。あんた、わざわざそんな契約の確認みたいなことしなくても……」
ほむら「大事なことなのよ。ロクに内容を確認しないで頷いたらひどい目に合うの。それで、どうなの?」
QB「テイルギアは装着車の属性力(エレメーラ)を使って起動する。最強の属性力たるツインテール属性で起動、変身を行い、その他の属性力を解放し武器に変えるものだ。体力が多少消費されるけれども、命にはかかわらない。もちろん、変身時間が長かったからってエレメリアンになったりはしないよ」
ほむら「本当に装着者、もしくはその周囲の人物にいかなる悪影響を与えるものではないのね」
QB「もちろんさ。戦闘による危険はあっても、変身そのものによって人体に悪影響を与えることは、一切ないよ」
ほむら「そう」
ほむら(こいつらは嘘をつかないし、ここまで念押しした以上本当のことでしょう)
ほむら「ならいいわ。それじゃあ、て、てて」カァアア
さやか(照れてる。そりゃ恥ずかしいわな)
まどか(照れて真っ赤になってるほむらちゃんかわいい♪)
ほむら「テイル・オン!」ピカア
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 17:33:37.40 ID:irezCfEp0
ほむら「……これが、テイルギアの変身」
ほむら(魔力で身体を強化した時以上のものを感じるわね。……命の危険もなく変身できるものを作れるなら、最初からそうすればいいのに)
まどか「わぁっ、ほむらちゃん! その黒い装甲、すごくカッコいいよ!」
ほむら「あ、あら、そうかしら」テレ
まどか「それにツインテールの戦士って言うだけあって、変身するとツインテールになるんだね……って、あれ」ハラリ
さやか「まどか? あんた、ツインテールがほどけてるよ?」
まどか「ほ、ほんとだ。どうしたんだろう。あ、あれ、なんでか結び直せないよ」
QB「……不可解な現象だけど、変身と同時にまどかのツインテール属性がほむらに受け継がれたんだ」
まどか「え?」
さやか「どういうこと?」
QB「暁美ほむらの変身と同時にまどかの中にあったツインテール属性がほむらへと譲渡された。いまのまどかにツインテール属性はほむらの中にあるから、まどかツインテールを結ぶことは不可能だよ」
ほむら「まどかのツインテールが、私の中に……?」
QB「ああ、そうだよ。なぜそんな現象が起こったかは僕にもわからないけど……元からあった君のツインテール属性と、この世界で最強のツインテール属性を持っていたまどかのツインテールがたし合わされたことによって、今の君は並ぶもののないツインテールを手に入れた。喜ぶべきことだよ」
まどか「そっか。わたしのツインテールが、ほむらちゃんに……」
ほむら「ご、ごめんなさい、まどか。わたし、あなたのツインテールを奪うつもりなんてなかったのに……」
まどか「ううん。いいんだよ、ほむらちゃん。わたしのツインテールがほむらちゃんの力になってくれれば、それはとっても嬉しいなって思うから」ニコリ
ほむら「まどか……!」
さやか(……なんだこの会話)
ほむら「ありがとう、まどか。それじゃあ私、行ってくるわ」
まどか「うん。ほむらちゃん、ガンバッテ!」
ほむら「ええ!」ヒュ
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 17:35:25.88 ID:irezCfEp0
ちょっと休憩。
今日中までにリザドさん撃破までは書きます。
今日中までにリザドさん撃破までは書きます。
34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 19:20:08.56 ID:irezCfEp0
ほむら(私はまどかのツインテールを受け継いで変身した。だからこそ、もし私が敗北したらまどかのツインテールまで変 共の手に渡ってしまう)
ほむら「なら、負けるわけにはいかないわね。――いい加減にしなさい、そこ変 共!」
リザド ギルティ「むう!? なにやつ!」
ほむら「言葉は通じるわね、化け物。今すぐこの場を立ち退くなら、見逃さないこともないわよ」
リザドギルティ「ほう。これは先ほどの娘では及びもつかない、強大なツインテールの持ち主よな。究極にはいま一歩及ばぬが、素晴らしい!」
ほむら「……まどかのツインテールを受け継いだこのツインテールが素晴らしいのは当然のことよ。それよりも、退くのか向かってくるのか。答えなさい!」
リザドギルティ「おぬしのような見事なツインテールを前にして退くもののふはおらぬ! やはりこの地を起点に選んだ隊長は正しかった。この娘こそ、この世界で最強のツインテールの持ち主に違いない!」
ほむら「……そう」
リザドギルティ「者ども! その娘を丁重に案内せよ!」
戦闘員「「モケー!」」
ほむら「失せなさい!」バコオン!
戦闘員「「モケエエエエエエ!?」」ボオン!
ドラグギルティ「ぬうう……戦闘員を一撃で! ツインテールが素晴らしいだけではない。そのすさまじい力は一体……貴様、何者だ!」
ほむら「私? 私は……」
35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 19:25:53.09 ID:irezCfEp0
ほむら(どうしましょう。まさか本名名乗るわけにもいかないし……無視しようかし――)
まどか『ほむらちゃん! ここはカッコ良く名乗るチャンスだよ!』
ほむら『!?』
ほむら(て、テレパシー!? どうしていきなり!?)
さやか『あー。いまさっき、キュゥべえがあたし達の間で念話ができるようにしておいてくれたんだって』
QB『何かの役に立つかと思ってね』
ほむら(インキュベーターぁ……! 余計なことをしてくれたわねっ)
まどか『ほむらちゃんも、本名も変身した格好もカッコいいんだから、びしっとカッコよく名乗ろうよ! 燃え上れーって感じで!』
ほむら『そ、そうね。それじゃあ……ええっと、ちょっと待って。いま考えるから……』
まどか『ええー』
リザドギルティ「……どうした? まさか敵に名乗る名前などないと申すか?」
ほむら「いいえ。わたしの名乗りを聞きたいのなら、まずそちらから名乗りなさい」
ほむら(とりあえず時間稼ぎを……ええっと、まどかが好きそうな、巴マミっぽい名前を……)
リザドギルディ「ふっ、これは失礼した。我はアルティメギルの切り込み隊長、リザドギルディ! 少女が人形を抱く姿こそ、男子は心ときめくべきという信念のもとに戦うものよ」
ほむら(巴マミの……ああ、でもイタリア語とか詳しくないし、ここはシンプルに英語で……)
36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 19:52:49.76 ID:irezCfEp0
リザドギルディ「改めて聞こう、ツインテールの戦士よっ。貴様の名は!」
ほむら「――ホーリーブラック!」
まどか『カッコいい! カッコいいよ、ほむらちゃん!』
ほむら(よし!)グッ
さやか『まどかのテンションがいつになく高いんですけど……』
QB『もしかしたら、ツインテール属性がほむらの中に譲渡されている影響かもしれないね。自分の一部が暁美ほむらの中にあるせいで、親密度が増しているのかもしれない』
さやか『そうなの? 言われてみれば、ほむらが変身してから一気に距離が縮んだ気はするけど……』
QB『あくまで仮説だよ』
リザドギルディ「ホーリーブラック……しかと聞いたぞ!」
ほむら「いいえ。薄気味悪い信念を声高に叫ぶような奴には、覚えてもらわなくてもいいわ」
ほむら『キュゥべえ。武器の出し方を教えなさい。素手で戦ってこいつに触れたくないわ』
さやか『その気持ちは分かるわ……』
QB『最初の説明の時に行ったけれども、君の中に眠る属性力を解放することによって武器は生まれるんだ。特に君は、多種多様な属性力をその身に秘めている。そのどれか一つでもいい! 強く願い、君の属性力を叫んで解放すればそれが武器となるんだ!』
ほむら『わけがわからないわよ!』
QB『これ以上の説明は無理だよ。変身したことによって属性力の解放はおこないやすくになってるんだよ?』
ほむら『だからわけがわからないっていてるでしょう!?』
ほむら「――ホーリーブラック!」
まどか『カッコいい! カッコいいよ、ほむらちゃん!』
ほむら(よし!)グッ
さやか『まどかのテンションがいつになく高いんですけど……』
QB『もしかしたら、ツインテール属性がほむらの中に譲渡されている影響かもしれないね。自分の一部が暁美ほむらの中にあるせいで、親密度が増しているのかもしれない』
さやか『そうなの? 言われてみれば、ほむらが変身してから一気に距離が縮んだ気はするけど……』
QB『あくまで仮説だよ』
リザドギルディ「ホーリーブラック……しかと聞いたぞ!」
ほむら「いいえ。薄気味悪い信念を声高に叫ぶような奴には、覚えてもらわなくてもいいわ」
ほむら『キュゥべえ。武器の出し方を教えなさい。素手で戦ってこいつに触れたくないわ』
さやか『その気持ちは分かるわ……』
QB『最初の説明の時に行ったけれども、君の中に眠る属性力を解放することによって武器は生まれるんだ。特に君は、多種多様な属性力をその身に秘めている。そのどれか一つでもいい! 強く願い、君の属性力を叫んで解放すればそれが武器となるんだ!』
ほむら『わけがわからないわよ!』
QB『これ以上の説明は無理だよ。変身したことによって属性力の解放はおこないやすくになってるんだよ?』
ほむら『だからわけがわからないっていてるでしょう!?』
37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 20:30:32.55 ID:irezCfEp0
リザドギルディ「……しかし惜しいな、ホーリーブラックよ」
ほむら「……? 何がよ」
リザドギルディ「貴様の資質よ。そのツインテールは素晴らしい。後は貴様が今少し幼ければ……さぞヌイグルミを抱く姿が似合ったというのに!」
さやか『うわぁ、気持ち悪い……! 鳥肌立ってきた』
まどか『大丈夫かな、ほむらちゃん』
ほむら「……気持ち悪い事を言わないでくれないかしら」
リザドギルディ「ふっ。我が信念に恥じるところなどない。人形が最も似合うのは、幼年期の間。もはや貴様の年の頃は、人形から脱却する頃合いよ。残念ながら人形を抱く姿が愛らしいのは小学生までなのだ!」
まどか『え』
さやか(うわ。まどかに飛び火した……)
まどか『ね、ねえ、さやかちゃん。やっぱり中学生になってもヌイグルミを集めてるのって、子供っぽいのかな……?』
さやか『え? いや、あたしは全然ありだと思うよ? ほら、そういうのって人によると思うし――』
まどか『……さやかちゃん? どうして視線を合わせてくれないの!? ねえ、さやちゃん!』
リザドギルディ「ソファーに座りしツインテールの幼女がヌイグルミを抱き、こてんと首を傾ける様こそが我が信念の源。ゆえに貴様ともう少し早く出会っていたのならばと思うと……それが惜しいのだ!」
38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 20:46:38.96 ID:irezCfEp0
ほむら「……違うわ」
リザドギルディ「なに? 何が違うというのだ」
ほむら「あなたの言葉が、よ。人形好きを自負する割には、至高のヌイグルミのあり方を知らないのね。それで人形を信念と語るなんて、片腹痛いわ」
リザドギルディ「……その暴言は聞き捨てならんぞ、ホーリーブラックよ」
ほむら「私の言葉が暴言に聞こえるのは、あなたの信念とやらが薄っぺらいからよ」
リザドギルディ「言ったなホーリーブラック! ならば貴様に信念はあるのか? 我が人生をかけて積み上げた人形(ドール)属性を上回るほどの思いが、貴様にあるというのか!?」
ほむら「ええ、当然よ!」
リザドギルディ「ならば述べてみよ! その信念、我を上回るものかどうか見定めてくれる!」
39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 21:02:35.71 ID:irezCfEp0
ほむら「受けて立つわ、リザドギルディ! 少女が人形を抱いているという大前提は間違ってはいないけれども……その子がいる場所は、ソファーではなくベッドであるべきだわ!」
リザドギルディ「ベッド、だと……? それがソファーに勝ると申すか」
ほむら「ええ。いくつものヌイグルミが置かれているベッド。そこに眠る少女。その場所こそが、ヌイグルミにとって一番よりよい居場所だわ!」
リザドギルディ「ぐうっ。この俺が、長年をドールに捧げて来た俺が、反論できぬ、だと……!」
ほむら「そして幼年期の少女こそがヌイグルミと言っていたけれども、なんて浅い考えかしら。愛を知らない浅慮な思想……憐れみすら覚えるわ」
リザドギルディ「バカな! そこは決して、決して譲れぬ一線だ!」
ほむら「否っ!」
リザドギルディ「!?」
ほむら「この世でヌイグルミが最も似合うのは、ま――中学二年生の少女よ!」
リザドギルディ「そのようなっ、そのようなことはありえぬ! ヌイグルミが似合うのは幼女! そこに異論をはさむなど――」
ほむら「いいえ! そんなものは不特定多数へのあいまいな妄想しか持てない、愛の知らない人間の持つ愚昧な考えでしかないわ!」
リザドギルディ「ぐっ」
ほむら「想像してみなさい。映像が思い浮かぶほどイメージしなさい。起き抜けのまど――中学二年生の少女が、朝、ヌイグルミにまみれたベッドで起き上がり『ふわぁ……夢オチ?』とあくびをしながらヌイグルミをぎゅっと抱く――そのシチュエーションこそが至高っ。そこにこそドールの真・善・美が揃っているのよ!」
リザドギルディ「!!」
40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 21:08:03.83 ID:irezCfEp0
さやか『何かほむらが血迷ってるんだけど……』
QB『属性力が解放されやすくなっているって説明したはずだよ? 今のほむらはテイルギアで変身したことで、自分の嗜好を表にさらけ出しやすくなってるんだよ』
さやか『何ソレ。 癖暴露とか恐ろしすぎない?』
まどか『で、でもわたし、ほむらちゃんの理想だっていうシチュエーションにけっこう当てはまってるなぁ。ちょっと嬉しいかも』テレテレ
さやか(けっこうっていうか、かなりまんまな気が……。それにほむらがさっきからまどかの名前を口走りかけていたような……いや、でもあいつ今日転校してきたばっかりだぞ? まさかねー)
41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 21:14:29.37 ID:irezCfEp0
リザドギルディ「……貴様の信念はよくわかった」
ほむら「この信念は私だけのもの。他の誰に理解してもらう必要もないわ」
リザドギルディ「そうか、ホーリーブラックよ。しかし、俺の信念も決して譲れないっ。かくなる上は、互いの人形(ドール)属性のぶつけ合いと行こうではないか!」
ほむら「上等だわ!」
リザドギルディ「ならば俺の究極の技を受けてみよ! 秘儀・少女の手の中に抱かれたドールが、その持ち主の少女と交わりし時がごとき――イナズマ・スパァーク!」
QB『周囲の人形から高エネルギー反応! それがリザドギルディの両手に集まっている!』
まどか『ほむらちゃん、危ない!』
さやか『いや、なんで人形が発光してるわけ? あれただの人形だよね。そっから高エネルギー反応てって何? おかしいよね。こんなの絶対おかしいよね!?』
ほむら「それがあなたの属性力の力……やるわね、リザドギルディ」
リザドギルディ「ふふふ。貴様ほどの戦士からその言葉がいただけるとはな。ホーリーブラッグよ! 貴様の人形属性も見せてみよ!」
QB『ほむら! 君はもう十分に自分の属性力を解放した。叫ぶんだっ。君の信じる属性力(エレメーラ)を!』
ほむら『ええ、わかったわ!』
ほむら「ドール・オン!」
偽街の子供達「Fort Da!」
42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 21:26:17.26 ID:irezCfEp0
リザドギルディ「ぬ!? 幼女の、人形だと!?」
ほむら「これが私の求めるドールよ!まどかに愛される人形ではなくて、まどかを守るための人形。それこそが究極!」
さやか『とうとうまどかって言っちゃったよ、こいつ……』
まどか『ほ、ほむらちゃん……』テレテレ
リザドギルディ「このクオリティ、今にも命を持って動き出しそうではないかっ。な、なんと素晴らしい人形か……!」
ほむら「さあ、属性比べと行きましょうか。真正面からぶつかり合いましょう、リザドギルディ」
リザドギルディ「……ふ、ふははは」
ほむら「……? 何を笑っているのかしら」
リザドギルディ「……俺の負けだ、ホーリーブラックよ。この俺が、ドールに人生を捧げた俺が、幼女の人形に攻撃できるものか!」
ほむら「そう、天晴ね。……やりなさい、ドールズ」
偽街の子供達「Gott ist tot!」グサグサグサ!
リザドギルディ「ぐうぅう……ふ、ふはは。か、感謝するぞ、ホーリーブラックよっ」
ほむら「……」
リザドギルディ「人形の幼女にやられる。ドール愛するものとして、それもまた本懐よ! はぁーっはっはっはぁ!」
チュドオオオオオオオオン!
ほむら「……さようなら。ドールを愛した戦士」
43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 21:47:06.41 ID:irezCfEp0
まどか「か、勝ったの……?」
ほむら「ええ。敵ながら天晴なやつだったわ……ん?」コツン
ほむら(これはグリーフシード、のわけないわよね)
さやか「変身解いたら、テンション戻るんだろうなぁ……大丈夫かな、ほむら。学校じゃクールキャラだったし、反動が怖い……」
QB「それは属性玉(エレメーラオーブ)だよ。ドラグギルディが持っていた人形属性が結晶化したものだね」
ほむら「ふうん……」
ほむら(……ちょっと試してみましょう)コツン
ほむら「……あ、穢れを吸ったわ」
QB『……? 何をしてるんだい、ほむら』
ほむら「いいえ、何でもないわ」
ほむら(よくわからないけどグリーフシードの代わりになるなら安心だわ。変身をしなければそんなに魔力も使わないし)
ほむら「それじゃぁ――変身解除」
パアアアア
44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/31(水) 21:47:41.22 ID:irezCfEp0
ほむら「……ふう」ハラリ
まどか「ほむらちゃん、ものストレートになってる。っていうことは……やっぱり、わたしのツインテールも戻ってるね」
さやか「やっぱり属性力の譲渡ってやつは、変身してる間だけなんだね」
まどか「うん。そうみたい」
さやか(ってことは、きっと……)チラッ
ほむら「…………」ズーン
まどか「ほ、ほむらちゃん……?」
ほむら「……私、なんであんなことを恥ずかしいことを恥ずかしげもなく叫んで……死にたい……」ズモモモモ
さやか「あー……どんまい」
まどか「ほ、ほむらちゃん、大丈夫だよっ。元気出して! ね?」
ほむら「……」チャキ
まどか「!?」
さやか「ちょ、あんたその拳銃どこから!?」
ほむら「あんな恥をさらしてしまったなら、いっそ自分を、この手で……!」
まどか「ほむらちゃん、大丈夫だよ! すっごくかっこよかったから!! 全然恥ずかしくなんてないから! だからその鉄砲はしまって!?」
ほむら「とめないで、まどか!」
QB「やれやれ。エレメリアンを倒すために必要なことだっていうのにそれを恥ずかしがるなんて……」
さやか「いや止めるに決まってるでしょう! まどか、そっちを抑えて!」
まどか「う、うん!」
ほむら「ぬうぅうううう!」
QB「まったく。人間の感情は、わけがわからないよ」
60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/01(木) 23:51:47.42 ID:vzLXqGLC0
~ほむホーム~
さやか「お邪魔しまーす……って、うわぁ」
まどか「か、変わったお部屋だね」
ほむら「一人暮らしだから、好きにしてるのよ。ロクにおもてなしの準備もできないのだけど……」
まどか「ううん、気にしないで」
さやか「急に来ることになったんだから、お茶とケーキを振舞えー、みたいな贅沢は言わないよ」
ほむら「そう。じゃあ、遠慮はしないでいいわ」
ほむら(考えてみれば、毎度のごとくお菓子とお茶が用意してあった巴マミは準備が良い人だったのね)
QB「準備はいいかな? それじゃあ説明を始めようか」
さやか「お邪魔しまーす……って、うわぁ」
まどか「か、変わったお部屋だね」
ほむら「一人暮らしだから、好きにしてるのよ。ロクにおもてなしの準備もできないのだけど……」
まどか「ううん、気にしないで」
さやか「急に来ることになったんだから、お茶とケーキを振舞えー、みたいな贅沢は言わないよ」
ほむら「そう。じゃあ、遠慮はしないでいいわ」
ほむら(考えてみれば、毎度のごとくお菓子とお茶が用意してあった巴マミは準備が良い人だったのね)
QB「準備はいいかな? それじゃあ説明を始めようか」
61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/01(木) 23:57:48.82 ID:vzLXqGLC0
QB「僕から説明してもいいんだけど、まず君たちは何を聞きたいのかな?」
まどか「何をって言われても、いろいろありすぎて……」
さやか「だよね。今日は非常識な場面に遭遇しすぎて、容量オーバーな感じだよ」
QB「そうかい。暁美ほむら。君はどうだい」
ほむら「イレギュラーな事態を受け止めきれていないのは私も同じだけれども、そうね。インキュベーター。あなたの目的は何なの?」
QB「……おや? 侵略してきたエレメリアンの集団ではなく、まずは僕たちのことを聞くのかい?」
ほむら「ええ。侵略者がいるのは分かった。彼らがなぜかツインテールを求めているのも、見てれば理解できたわ。そしてそれに対抗するために、あなた達が作ったというテイルギア。それを使って、人類のために戦えという」
さやか「こう並び立てると、王道ヒーローっぽいよね。異世界からの侵略者から戦う変身ヒーロー! って感じでさ。……敵が変 だけど」
まどか「あはは……。で、でも、変身したほむらちゃんは戦隊ヒーローっぽくってカッコいいと思うよ!」
ほむら「ありがとう、まどか。でも、だからこそね、インキュベーター。あなた達の行動に疑問を抱くのよ。あなた達は、なぜ私にテイルギアを授けたの? 無償の好意で? 人類を救うために? いいや。そんなわけないわ。あなた達は、そういうやつらじゃないもの」
まどか「ほむらちゃん……?」
62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/01(木) 23:59:09.42 ID:vzLXqGLC0
さやか「ちょっとほむら。それは言いすぎじゃない? そりゃ、キュゥべえのやつが胡散臭いってのはあたしも同感だけど、何も悪意があるってわけじゃないと思うよ?」
ほむら「そうね。悪意なんてもの、きっとこいつは持ち合わせていないわ。……好意という感情を持っていないようにね」
QB「暁美ほむら……君は一体?」
まどか「えっと、ほむらちゃん? どういうこと? さっきからキュゥべえのこと、インキュベーターって呼んでるし……何か知ってるの?」
ほむら「……そうね。この際、明かしてしまいましょう。こいつの真の名はインキュベーター。宇宙から来た、感情を持たない生命体よ」
QB「……どこでその知識を仕入れたのか、とても興味深いね。ほむら、君は――」
ほむら「あなたに教えるはずもないでしょう」
QB「――そうかい」
まどか「……ほむらちゃんが言ってたこと、本当なの?」
QB「訂正するほど間違ってはいないね」
さやか「うげっ。マジで? しゃべる猫が、まさかの宇宙人だったとは……」
ほむら「それで? あなたの目的は何?」
QB「……すべてはこの宇宙の寿命を延ばすためなんだ。まどか、君はエントロピーっていう言葉を知っているかい?」
まどか「聞いたことはあるけど、詳しくは……」
QB「簡単にたとえると、たき火で得られるエネルギーは木を育てる労力に釣り合わない、ってことさ。エネルギーは変換するごとにロスが生じる。宇宙全体のエネルギーは目減りしていく一方だ」
ほむら(この辺りは、他のループの説明と変わらないわね……)
QB「だから僕たちは、熱力学の法則に縛られないエネルギーを探し求めて来た。そうして見つけたのが――ツインテールなんだよ」
さやか「いや何故そこでツインテール!?」
63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 00:11:21.88 ID:0a/M86Cn0
QB「僕たち文明は知的生命体の感情をエネルギーに変換するテクノロジーを発見した。それが属性力(エレメーラ)だ。精神力の変換効率を高め物質化が可能となった時、それは現する発電機関などお呼びもつかないほどのエネルギー精製源となりうる。特にツインテールのエレメーラは最強だ。テイルギアが、最強の武装となりうる所以だね」
さやか「やばい、めまいしてきた……」
ほむら「具合が悪くなったらベッドくらい貸すわよ」
さやか「ありがと……ベッド、ヌイグルミまみれだったりする?」
ほむら「やっぱり床で寝なさい。いえ、今すぐ気絶させてその記憶を吹っ飛ばしてあげるわ、美樹さやかぁ!」
まどか「け、ケンカはダメだよ!?」
QB「エントロピーを凌駕しうるテクノロジーを発明はしたはいいけど、あいにく当の僕らが感情というものを持ち合わせていなかったんだ。そこで見つけたのが君達人類だよ」
さやか「ていうかさぁ。戦ってる時の熱演説聞いた時に思ったんだけど、あんたまどかのことを前から知ってたりするの?」
まどか「ふぇ!?」
ほむら「そ、それは……いいえ! まどかは関係ないでしょう!」
さやか「ホントにぃ? てかまどかもさ『夢の中で、会ったような……?』とか言ってたし、もしかしてーと思ったんだけど。なに? もしかしてホントに前世の因果だったりするの?」
まどか「さ、さやかちゃんっ。それは言わないでよぉ!」
QB「……飽きてきたならもう説明やめていいかな」
64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 00:28:16.05 ID:0a/M86Cn0
さやか「ああ、ごめんごめん。それで、攻めてるやつら……エレメリアンだっけ? そいつらは、ツインテールのエレメーラを狙ってるの?」
QB「まあ彼らが狙ってるのはツインテールの属性力だけではないけどね」
まどか「そういえば、さっきの人もドールがどうとか言ってたもんね」
さやか「ほむらもね」
ほむら「……本気で痛い目に合いたいのかしら?」ギロリ
まどか「ま、まあまあ、ほむらちゃん。ヌイグルミが好きでも、全然おかしい事なんかないよ!」
QB「彼らはエレメーラを取り込んで生きる精神生命体だよ。いくつもの並行世界を侵略して攻め滅ぼした、邪悪な存在だ」
まどか「そんなすごい人たちだったんだ……」
さやか「ただの変 にしか見えなかったんだけど」
ほむら「変 なのに間違いはないけれども、強大な力を持っていたのは確かよ」
QB「そうだね。精神生命体である彼らには、通常の兵器なんて通用しない。だからこそツインテール属性を持つ人間が変身できる兵器、テイルギアを用意したんだ」
さやか「そこが納得できないのよね。精神力が強いエネルギーになるのは分かったけど、何でツインテールのなのよ」
まどか「そうだよ。それこそ家族愛とか友情とか、いろいろあるよね」
QB「エレメリアンの生まれるもとになっているのは君達から生まれた感情だ。そんな分類を感情のない僕に聞かれても困るよ。それは君達人類の問題だ」
さやか「こいつ、全部こっちに押し付けてきたよ……!」
QB「けれども、そういった普遍的な友愛などでエレメリアンが生まれることはないようだ。おそらく、感情の土壌となるような基本的な部分からは生まれないんだろう」
さやか「へぇ」
ほむら「そういうものなのね」
65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 00:48:26.55 ID:0a/M86Cn0
QB「それで、説明はこれぐらいでいいかな?」
ほむら「私は特にないわね」
まどか「わたしも、ないかな」
さやか「うーん……あ、そだ。一個聞いてもいい?」
QB「何だい?」
さやか「テイルギアってツインテール属性を核にして変身してるんだよね」
QB「そうだよ。強大なツインテール属性の持ち主でないとテイルギアを起動することはできない。だからこそ僕は、この世界で最強のツインテール属性を持つまどかに愛に来たんだ。それがどうかしたのかい?」
さやか「いや最強かどうかはともかくさ、まどかがツインテール属性を持ってるのは分かるんだよ。小学生のころからずっとあの髪型だしさ。でもさ、ほむらはなんで? ツインテールですらないじゃん」
QB「……ふむ。それは僕も疑問に思っていたことだ。とはいえ、属性力を得るのはツインテールを愛していることが条件だ。必ずしもその人自身がツインテールである必要はない」
まどか「そうなの?」
QB「ああ。理論上はツインテールでない人間でも、それこそ男が強大なツインテール属性を持つことも可能なんだ。でも、やはり不可解なのは間違いない。それにほむらが宿している属性力は、ツインテール属性だけではない」
ほむら「……」
QB「ツインテール属性をはじめとして、さっきの戦いでも使っていた人形属性、そして眼鏡属性に三つ編み属性、貧 属性、リボン属性、ブルマ属性、スク水属性、その他さまざまな属性力に満ち溢れている。これは規格外だ」
まどか「そんなに? すごい、ほむらちゃん!」
ほむら「…………」
66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 00:52:45.69 ID:0a/M86Cn0
さやか「で、ほむら。あんたは何か心当たりがあったりする?」
ほむら「……そうね。ツインテールに関しては、一応、二つに髪を分けていた時期はあったから、それじゃないかしら」
ほむら(……属性力が多い理由の予想はつくけれども、まさか言えるわけがないわね。ごまかしましょう)
まどか「そうなの? なんで髪型変えちゃったの?」
ほむら「転校前のイメチェンよ」
さやか「へー、ほー、ふーん」
ほむら「……何かしら、美樹さやか」
さやか「いやー、別にぃ? 嘘はついてないみたいだしさ」
ほむら(あからさまに怪しまれてるけど、ぼくろするわけにはいかないわ。何回も繰り返してきたループで、まどかのツインテールを見ていたからツインテール属性がはぐくまれたなんて、言えるはずないじゃない……!)
ほむら(まどかトレードマークのツインテールだからこそツインテール属性がより強く育まれたのだろうけども、おそらく他の属性も同じこと。ループの中で見たまどかの姿を見てときめいたことで生まれたに違いないわ。私の自前の属性力は、おそらく眼鏡属性と三つ編み属性ぐらいなものね……)
69: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 01:00:55.17 ID:0a/M86Cn0
QB「今度こそ終わりでいいかな。僕は失礼するよ」
さやか「そうだね。長居するのもほむらに迷惑だし、そろそろ帰ろっか」
まどか「うん。それじゃ、お邪魔しました、ほむらちゃん」
ほむら「いいえ。邪魔なんじゃなかったわ」
さやか「それじゃーね、ほむら」
まどか「ほむらちゃん、また明日!」
ほむら「ええ。また、明日」
バタン
ほむら「……ふう。エレメリアン、ね」
ほむら(あまりもイレギュラー過ぎたけれども、今回の敵は彼らというわけかしら)
ほむら「でも、幸運なのかもしれないわね。この世界なら、まどかの命が脅かされることはないようだし」
ほむら(たとえ戦いに敗れても、属性力が奪われるだけ。戦い続けても絶望が待ち受けているわけではない)
ほむら「考えようによっては、なんて優しい世界なのかしら」フフッ
ほむら(でも、そうね。こんな世界だからこそ、かしら)
ほむら「エレメリアン。あなた達にまどかのツインテールを、まどかの属性を何一つ奪わせたりなんて、しないわ!」
71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 01:19:36.80 ID:0a/M86Cn0
~アルティメギル秘密基地~
エレメリアンA「リザドギルディがやられただと!? 人間にか?」
エレメリアンB「バカな、あり得ぬ!」
エレメリアンC「油断したというだけでは説明がつかんぞ。どういうことだ!」
エレメリアンD「むううっ、どういうことだ! この世界のこの星は、事前調査では文明レベルは低いが属性レベルは高数値だったはず。だというのに、敗北するなど――」
ドラグギルディ「静まれい!」
エレメリアンズ「「「!?」」」
エレメリアンE「ど、ドラグギルディ隊長……」
ドラグギルディ「リザドギルディの力は師である我が良く知っておる。それを正面から打ち負かすほどの戦士がいたというだけのことよ」
エレメリアンF「戦士……」
ドラグギルディ「この映像を見よ、皆の衆。リザドギルディの最後を映したものだ。映像を撮影した戦闘員が転送してきたものだ」
エレメリアンG「おぉ! リザドギルディ殿は、この者に……。ううむ、なるほど確かに見事なツインテール」
エレメリアンH「いや、ツインテールも素晴らしいが、真に注目すべきはそこではない。この者……あのリザドギルディに、ドールの競い合いで勝利しているぞ!」
ドラグギルディ「ふっ、よくぞそこに気が付いた。さらにこの者、まだまだその身に幾多のエレメーラを見に宿しておる」
エレメリアンI「なんとっ。あの強大なツインテール、リザドギルディ殿を打ち倒すほどのドールの他に、まだエレメーラを宿すというのですかっ?」
ドラグギルディ「その通り! さてどうする。おびえて尻尾を巻き、他の世界へと旅立つか?」
エレメリアンJ「何をおっしゃいます。なかなか見事なツインテールの持ち主と、エレメーラの競い合いができるかもしれない……そのような機会、逃すはずがございません」
エレメリアンK「ふっ。俺の死に場所が決まったようです」
ドラグギルディ「ならば何も変わらぬな。あのツインテールの戦士のエレメーラのことごとくを奪いつくし、この世界のエレメーラもいただくとしようではないか!」
エレメリアンズ「「「オオオオオオオオオオオオオオ!」」」
73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 01:31:41.61 ID:0a/M86Cn0
――翌朝・通学路――
ほむら「……」テクテク
ほむら(これから学校……考えてみれば、今回はループの経験がほとんど生かせないのよね。少し、不安だわ)
ほむら「……ふう」
さやか「なーに朝からため息なんて吐いてんだ、この美人さんは」
ほむら「!?」
まどか「うぇひひ、おはよう、ほむらちゃん!」
ほむら「お、、おはよう、まどか。……それに、美樹さやかと、志筑仁美も」
ほむら(び、びっくりしたわ。いつもはここで声をかけられたことなんてないのに……やっぱり、何もかもイレギュラーな世界なのね)
さやか「おうっ、おはよ!」
仁美「おはようございます、暁美さん。お名前を覚えておいていただけていたなんて、光栄ですわ」ニコリ
さやか「そういえば自己紹介もまだだったよね。なんでほむら、仁美の名前知ってるの?」
ほむら「……クラスメイトの名前ぐらい、事前に把握してるわ」
仁美「あら、素晴らしい心掛けですわ」
まどか「そっか。それで昨日も、わたしとさやかちゃんの名前を知ってたんだね!」
ほむら「え、ええ。そうなの」アセッ
さやか「……」ジー
ほむら「……なにかしら、美樹さやか」
さやか「えー? なんでもないですよー?」
ほむら「……ちっ」
74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 01:38:01.18 ID:0a/M86Cn0
仁美「……? なんだかまどかさんもさやかさんも、暁美さんとずいぶん親しげですわね。何かありましたの?」
まどか「うんっ。昨日、ちょっとね」
ほむら「そうね。説明しづらいけれども、少しね」
仁美「ちょっと……? 説明しづらい……はっ。たった一日でここまで急接近だなんて! 昨日、あの後にいったい何が!?」
さやか「いや、そりゃねえはさすがに」
さやか(あ、いや、でもほむらは何か怪しんだよねぇ。まどかに対して)
まどか「確かにいろいろあったんだけど……」
仁美「でもいけませんわ。お二方、女同士で……それは禁断の恋の形ですのよ!」タタタッ
ほむら「!?」
まどか「ひ、仁美ちゃん!?」
さやか「あー。仁美のやつ、一人で盛り上がって行っちゃったよ……」
77: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 01:59:39.95 ID:0a/M86Cn0
ほむら「志筑さん、あんな性格だったかしら……?」
まどか「ううん、いつもはもっとお嬢様って感じなんだけど」
さやか「ま、変な勘違いは教室で解こうっか。それでほむら。あんた部活とかどうするの?」
ほむら「部活……? そうね。考えたこともなかったわ」
さやか「ツインテールの戦士になったって言っても毎日戦うわけじゃないんだし、部活ぐらい普通に選べば?」
まどか「そうだよ、ほむらちゃん。ちなみにわたしは、園芸部と裁縫部に入ってるよ。どっちかなら案内ぐらいならできるけど……」
ほむら「……そう、ね。そういう選択肢もあるのね。じゃあ、せっかくだからまどかに案内を――」
ドラグギルディ『この世界に住まうすべての人類に告ぐ! 我らは異世界より参った神に選ばれし従、アルティメギル!』
ほむら「!?」
まどか「そ、空に、おっきな映像が……!?」
さやか「アレって、昨日のやつらの一味だよね!?」
ドラグギルディ『我らは諸君らに危害を加えるつもりはない。ただ各々の持つ心の輝きを欲しているだけなのだ! 抵抗しなければ、身の安全は保障する!』
さやか「こ、これって、もしかして全世界でやってるのかな?」
まどか「た、たぶん、そのまさかじゃないかな……」
ドラグギルディ『だが、どうやら我らに弓引くものがいるようだ。その挑戦、思う様に受けて立つ! 存分に挑んでくるがいい!!』
QB「まどかの予想通りだよ。空のスクリーンだけではなく、公共の電波などもジャックして全世界の人類に告げているようだね」ヒョコ
まどか「ふぇっ? キュゥべえ!?」
ほむら「……いたのね、インキュベーター」
さやか「あいつら、マジで地球まるごと侵略するつもりなの!?」
QB「だからそうだって昨日説明したじゃないか」
タルトギルディ『ふはは! わが名はタルトギルディ! ドラグギルディ様のおっしゃる通り、抵抗は無駄である! まずは綺羅星と光る青春の輝き――ブルマの属性力をいただく!』
戦闘員『……モ、モケケェ』ヒソヒソ
タルトギルディ『む……な、なにぃ! この世界にはほとんど存在せぬだとぉ!? おのれ愚かなる人類よ、自ら滅びの道を歩むのかぁあああああああ!』
78: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/02(金) 02:02:48.20 ID:0a/M86Cn0
ほむら「……」
さやか「……」
まどか「……えっと、そういえば、見滝原中学の体操服って――」
さやか「まどか、それ以上はダメ」
まどか「で、でも――」
ほむら「こればかりさやかの言う通りだわ。フラグや言霊というもの概念があるの。思いつくだけならまだしも、言葉にしたら――」
QB「む! エレメリアンの反応が! 出現位置は……見滝原中学だね!」
さやか「うぁあああああ、やっぱりぃ!」
まどか「たぶんさっきの人だよね。でも、まだ始業前のなのになんでだろう。ブルマを履いてる人ってこの時間だと学校にいるのかな」
ほむら「きっと運動部の朝練とかじゃないかしら」
まどか「あ、そっか。ほむらちゃん、頭いいね!」
ほむら「ふふっ、大した推理でもないわ。……さて、それじゃあ、私は一足早く登校することになるわね」
QB「転送もできるけど、いいのかい」
ほむら「いいわよ。もうすぐそこだもの」
さやか「だね」
まどか「うん。それじゃあほむらちゃん、ガンバッテ!」
ほむら「ええ。――テイル・オン!」
99: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/03(土) 13:04:21.08 ID:PlzWLx1C0
~ほむホーム~
ニュースキャスター『一週間前に全世界に向けて侵略を明言した組織、アルティメギルの一味が今日も出現したようです。しかし混乱する現場に颯爽と黒い装甲の少女、ホーリーブラック。彼女は瞬く間にアルティメギルの怪物を退治していきました。まるでヒーローのようなこの少女の正体は一体何なのでしょう。今日は専門家を呼んでご意見をうかがってみました』
専門家『今の段階では何とも判断できませんね。情報が足りなすぎます。……しかしこの少女、何というか絶妙にツインテールが似合っていませんね。正直、黒髪ロングとかいっそ眼鏡に三つ編みとかにしてしまったほうがいいと私は思うんですが……』
ニュースキャスター『はい、誰もそんな意見は求めてませんね。テロップに映る仰々しい自分の立場をわきまえた発言をしてください。……警視庁はアルティメギルの調査とともに、この少女についても情報を引き続き求めていく方針です。さて、続いては芸能関係のニュースです。なんと、大人気国民的アイドル巴マミが新曲を発表すると――』
まどか「何だかずいぶん大事になってるね」
さやか「一週間前に宣戦布告してから、毎日律儀に一体ずつ現れてるもんね。そりゃ話題も途切れないか」
ほむら「NASAが矢面に立っているらしいけれども、宇宙人と勘違いされてるのかしら。……ここに本物の宇宙人がいるというのに」ギロリ
QB「どうして睨んでくるんだい? 僕は彼らと違って目立つような行動は控えてるから、ニュースにならないのは当然だよ」
ほむら「……ふんっ」
100: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/03(土) 13:06:29.83 ID:PlzWLx1C0
さやか「というか、いまさらながらの質問だけど、あの装甲って顔が丸出しだけど大丈夫なの?」
QB「大丈夫だよ。テイルギアの起動に合わせて周囲に認識遮断フィールドが構築されるようになっている。ホーリーブラックに変身している時の顔と暁美ほむらの顔は、認識がつながらないように遮断されているんだ」
まどか「難しい仕組みとかはよくわからないけど、正体がばれないってことだね」
ほむら「そうね。ならいいわ」
まどか「うんっ。でも、ほむらちゃんがホーリーブラックだって知ってるのがわたし達だけっていうの、なんだか嬉しいな」
ほむら「そうかしら? まあ、私も簡単に誰かに正体をばらそうとは思わないけど……」
まどか「そうだよ! それに世間でこんなに騒がれてるのって、アルティメギルだけが原因じゃないと思うんだ」
ほむら「え? それは、どういうこと?」
まどか「もちろん、侵略者が突然やってきたーなんて、すっごく話題性があることだとは思うよ? でもね。ここまでニュースになってみんなが興味を惹かれてるのって、アルティメギルと戦うほむらちゃんがとってもカッコいいっていうのもあるって、そう思っちゃうの!」ニコリ
ほむら「!」キュン
QB「大丈夫だよ。テイルギアの起動に合わせて周囲に認識遮断フィールドが構築されるようになっている。ホーリーブラックに変身している時の顔と暁美ほむらの顔は、認識がつながらないように遮断されているんだ」
まどか「難しい仕組みとかはよくわからないけど、正体がばれないってことだね」
ほむら「そうね。ならいいわ」
まどか「うんっ。でも、ほむらちゃんがホーリーブラックだって知ってるのがわたし達だけっていうの、なんだか嬉しいな」
ほむら「そうかしら? まあ、私も簡単に誰かに正体をばらそうとは思わないけど……」
まどか「そうだよ! それに世間でこんなに騒がれてるのって、アルティメギルだけが原因じゃないと思うんだ」
ほむら「え? それは、どういうこと?」
まどか「もちろん、侵略者が突然やってきたーなんて、すっごく話題性があることだとは思うよ? でもね。ここまでニュースになってみんなが興味を惹かれてるのって、アルティメギルと戦うほむらちゃんがとってもカッコいいっていうのもあるって、そう思っちゃうの!」ニコリ
ほむら「!」キュン
101: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/03(土) 13:26:26.03 ID:PlzWLx1C0
まどか「そんなカッコいいヒーローが一緒の学校に通ってる友達だ何て、それはとっても嬉しいなって」
さやか(……ほむらがまどかに対して怪しいなぁとは思ってたけど、最近、まどかはまどかで結構グイグイいってるんだよなぁ)
ほむら「ま、まどか。……その、そういってもらえると、私もうれし――」
QB「むっ。エレメリアンの反応だ」
ほむら「――ちっ!」
さやか(すっごい忌々しそうな舌打ち……)
ほむら「本当に空気が読めない連中ね。仕方ないわね。出撃するわ」
さやか「あたし達もモニター越しで応援してるよー!」
まどか「うぇひひ。ほむらちゃんの部屋、この一週間ですっかり秘密基地っぽくなっちゃったよね。遠くでほむらちゃんが戦っている姿を見れるモニターとか、他にもなんだかいろいろすごい機能がいっぱいだもん!」
QB「僕が手を加えたからね。ほむらはだいぶ渋ったけれども、拠点の質は重要だよ」
ほむら「うるさいわね。自室をあなたにいじられるのが嫌だっただけよ。もう行くから転送しなさい、インキュベーター」
QB「分かったよ、ほむら。それじゃあ、変身しておいてくれ」
ほむら「ええ。――テイル・オン!」ピカッ!
QB「よし。転送開始!」
パアアアアア――ヒュンッ
さやか(……ほむらがまどかに対して怪しいなぁとは思ってたけど、最近、まどかはまどかで結構グイグイいってるんだよなぁ)
ほむら「ま、まどか。……その、そういってもらえると、私もうれし――」
QB「むっ。エレメリアンの反応だ」
ほむら「――ちっ!」
さやか(すっごい忌々しそうな舌打ち……)
ほむら「本当に空気が読めない連中ね。仕方ないわね。出撃するわ」
さやか「あたし達もモニター越しで応援してるよー!」
まどか「うぇひひ。ほむらちゃんの部屋、この一週間ですっかり秘密基地っぽくなっちゃったよね。遠くでほむらちゃんが戦っている姿を見れるモニターとか、他にもなんだかいろいろすごい機能がいっぱいだもん!」
QB「僕が手を加えたからね。ほむらはだいぶ渋ったけれども、拠点の質は重要だよ」
ほむら「うるさいわね。自室をあなたにいじられるのが嫌だっただけよ。もう行くから転送しなさい、インキュベーター」
QB「分かったよ、ほむら。それじゃあ、変身しておいてくれ」
ほむら「ええ。――テイル・オン!」ピカッ!
QB「よし。転送開始!」
パアアアアア――ヒュンッ
102: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/03(土) 13:53:37.98 ID:PlzWLx1C0
ほむら「……ん」
ほむら(転送されたみたいね。ここは……人気のないところね。騒ぎにならないなら好都合だわ)
ほむら「さて、今日の敵は――」
フォクスギルディ「今日は私がお相手させていただきますよ、ホーリーブラック」
まどか『今日はキツネみたいな人だね。ガッシリしてた今までの人たちと違ってスラッとしてるし……なんだかちょっと珍しい感じがする』
さやか『うん。てかあいつのポーズ、気障っぽくてイラッとする。声が無駄にいいのも何か嫌だ』
まどか『いや、さやかちゃん、そんな感想ってないよ……』
フォクスギルディ「私はリボンに魅せられしもの、フォクスギルディ。どうかお見知りおきを」
ほむら「誰が覚えるものですか。すぐに退治してやるわ!」
フォクスギルディ「ふっ、そう猛るものではありませんよ、ホーリーブラックよ。しかしツインテールもそうですが、あなたのそのリボンは素晴らしい! 可憐でありながら芯のある力強さを感じる……見ているだけで心がとろけそうですよ!」
ほむら「……なるほど。髪紐(リボン)属性を自負するだけあって、リボンを見る目はあるのね」
フォクスギルディ「もちろんです。しかし、やはりあなたも髪紐(リボン)属性の持ち主だったのですね!」
ほむら「当然のこと。まどかのツインテールとともに受け継いだリボンは、世界を超えてなお失われないしなやかさと美しさを秘めているのよ。それに魅せられないはずがないでしょう!」
さやか『お、今日のほむらスイッチが入り始めましたぞ。さてどんな名演説をするのか、楽しみですなぁ!』ワクワク
まどか『さやかちゃん、そういうのは良くないよ? 後でまたほむらちゃんに怒られるよ?』
103: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/03(土) 14:11:39.09 ID:PlzWLx1C0
フォクスギルディ「くくく。多くの同胞を真正面から打ち破ったあなたの属性力(エレメーラ)の数と質は本当に侮れませんね。しかしあなたに私のリボン技が打ち破れますでしょうかね。――ハアッ!」
ほむら「……?」
ほむら(フォクスギルディから放たれたリボンが私の周りに? でも、巴マミのような拘束技というわけでもなさそうだし、一体……あら。結局フォクスギルディの手に戻ったわね、さっきのリボン)
まどか『ほむらちゃん、大丈夫!? 身体、何ともない?』
ほむら『ええ、特に異常はないわ』
ほむら「フォクスギルディ。いまのがあなたの技なのかしら。あなたのリボンへの思いは、今のよくわからないもので終わるような浅いものだというの?」
フォクスギルディ「ふふっ、慌てないでください。リボンとは、結ぶもの。あなたのツインテール属性、私のエレメーラによって結ばせてもらいましょう」シュルル
ほむら「結ぶ? それはどういう――なっ!?」
さやか『さ、さっきのリボンが、人の形に……!? ていうか、あの人形って、まさか――』
まどか『――わたしの人形!?』
104: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/03(土) 14:17:50.96 ID:PlzWLx1C0
フォクスギルディ「……おや? これは奇妙な。確かにあなたのツインテール属性を結んだはずなのですが、なぜこのような少女の形に……?」
まどか『なんで!? なんでわたしの人形が!? こんな絶対おかしいよ!』
QB『おそらくだけれどもあのエレメリアン、髪紐(リボン)属性の他に人形(ドール)属性も持っているんだろう。ほむらのツインテールをリボン属性でシミュレートしてドール属性を使い人形にしたのだろう』
さやか『でも、それでなんでまどかの人形になるの? ほむらのツインテールを写しとってことは、普通に考えてほむらの人形になるんじゃないの?』
QB『それは当然のことだよ。ほむらのツインテールが、本質的にはまどかのツインテールだということなのだろう』
ほむら「ま、まどかの人形……! あ、ああああなた、それ、動かせたりするの!?」
フォクスギルディ「まさか。リザドギルディほど強固なドール属性の持ち合わせはありませぬゆえ、自ら動かすことなどできません。このような少女の形になったのは不可解ですが」
まどか『ひぃっ! わ、わわわ、わたしの人形に、あああの人が手を伸ばして……!』
フォクスギルディ「……ふむ、この少女もまた見事なツインテールをしていますね。どれ、少しばかりお手を拝借しましょう」
ほむら「…………まどかに」プッツン
さやか『まどか。同情する。心の底から』
まどか『さやかちゃん!? ほ、ほむらちゃん! あの人を止めて! お願いだから! ほむら……ちゃん?』
ほむら「…………まどかに、その薄汚い手で、まどかに触るなぁあああああ!」
カチリ
フォクスギルディ「む!? 私の人形が」
さやか『い、いつの間にかほむらがまどかの人形を抱きかかえてる!? あの一瞬で、どうやって!? ていうか人形相手なのにキレすぎじゃないほむら!?』
QB『ぼ、僕にもわからない。まさか目にも止まらないほどの高速移動を? いや、いくらテイルギアとはいえ、そこまで出力はないはずだ! 暁美ほむら、君は一体……!?』
まどか『ほむらちゃんありがとう! やっぱりカッコいいよ! ほむらちゃんはヒーローだよ!』ウルウル
105: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/03(土) 14:44:10.12 ID:PlzWLx1C0
ほむら「……さて、フォクスギルディ。あなたは許されざる罪を犯そうとしたわ」ドットッ゙ドッドッ
フォクスギルディ「な、なんというプレッシャー……! その小さな体のどこからそこまで気迫が出るというのです!」
ほむら「女神のように崇高なまどかの姿を無断でかたどり、なおかつその偶像に触れようなど――万死に値するわ!」
フォクスギルディ「美しいものを形にすることの、なにがいけないというのです! この世のすべてを飾りたて、結び、輝かせるのがリボンの本質。私はそれを体現しているだけのです!」
ほむら「美しいからこそ、この世には触れてはいけないものもあると知るべきね! なによりリボンの本質は、飾り結ぶものではないわ。人と人を結び、絆をつなげて輝かせるものっ。そこにこそリボンの美しさが詰まっているの。それに気が付けなかったあなたに、リボンの使途たる資格なんてないわ!」
フォクスギルディ「な、なななななぁ!? この私に、資格がない――!?」
ほむら「そうよ、フォクスギルディ! あなたの愛は、リボンのすべてを覆うには細すぎる!」
QB『ほむら。属性力の解放はもう十分だ。さあ、君の信じるエレメーラを叫ぶんだ!』
ほむら『ええ!』
ほむら「リボン・オン! ――レガーレ・ヴァスタリア!」
フォクスギルディ「なっ……ぐぅ!」
さやか『地面から、リボンが伸びて来た!?』
QB『あれはリボンの拘束だね。中心に鍵を置くことで、単純に縛るだけではない強固さを見せている』
まどか『やっちゃえっ、ほむらちゃん!』
さやか『まどかがいつになく好戦的だけど……そんなにあの人形に触られそうになったのが嫌だったのか』
106: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/03(土) 15:00:09.33 ID:PlzWLx1C0
フォクスギルディ「り、リボンに全身を包まれて……くうっ、何という多幸感! こんなもの、抵抗できるはずがないでしょう!」
ほむら「そう。あなたにはご褒美だったわね。それじゃあ、このとどめの一発も幸福とともに受け取りなさい」シュルル
さやか『あれは、真っ赤なでっかい銃……?』
QB『マスケット銃だね。比較的単純な構造をしているから、今みたいにリボンで作ることも可能なんだと思うよ。色は、ほむらのリボンが赤だからだろうね』
まどか『わぁっ。ほむらちゃん、その技とってもおしゃれでカッコいいよ!』
フォクスギルディ「り、リボンで銃を作る……? ホーリーブラック! あなたのその発想は、一体どこからきたというのです!? なぜ、リボンを銃器に仕立てようなどということを思いついたのですか!?」
ほむら「縛り、結び、飾るだけがリボンの能ではないわ。人の絆から得られる発想は無限大。それをつなげて結ぶリボンの強さもまた、世界を超える。ただ美しさを模倣し、飾ることしかできないあなたの限界がそこだったのよ。……さよならの時間ね、フォクスギルディ」カチャリ
フォクスギルディ「……やりなさい、ホーリーブラック。あなたのリボンは、私のリボンを確かに上回った」
ほむら「ええ。――ティロ・フィナーレ!」ドオオオン!
フォクスギルディ「ぐはぁっ!! こ、これが世界を超えるリボンの強さ……ふ、ふふふふ。最後にこの未熟ものにご教授いただけるなど――感謝します、ホーリーブラック!」
ほむら「……」
フォクスギルディ「いまの私には、幾億通りものリボンの可能性が見えます……。ああ、ほら、また服を着ないで、風邪をひいてしまいま――な、なるほど、リボンにそんな使い方がぁあああああああ!!」
チュドオオオオオオオオ!
ほむら「……ふっ。感謝はお互い様ね、フォクスギルディ」
ほむら( リボン。その発想はなかったわね)
ほむら「私も最後に、素晴らしいリボンの使い方を教わったわ。これこそ、人と人を結ぶリボンの縁、かしら」フフッ
QB『さて、それじゃあ帰還しようか』
まどか『お疲れ様、ほむらちゃん』
さやか『……最後さえなきゃ、今日は比較的まともだったというのに』
115: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/03(土) 22:20:04.31 ID:PlzWLx1C0
~ほむホーム~
ほむら「……」ズーン
さやか「あーあ。変身解除してまーた落ち込んでるよほむらのやつ。……いい加減慣れれば? 毎度毎度落ち込んでたらきりないでしょう」
ほむら「うるさいわね、美樹さやか。あなたに私の気持ちなんてわかるはずもないわ。変身して妙なテンションで恥ずかしい言葉を叫んでしまうんていう気持ち、わかるはずもないわ」ズモモモ
さやか「確かにそりゃ分らんけどさ……」
まどか「そんなに落ち込むことないよ、ほむらちゃん! 変身したほむらちゃんはいつだってカッコいいよ」
ほむら「……そ、そうかしら?」パアア
さやか(こいつ、対まどかだとほんとにチョロイなぁ……)
まどか「ウソなわけないよ! ね、ほむらちゃん。せっかくだから今日は一緒にお買い物に行かない?」
ほむら「お買い物?」
まどか「うんっ。今日は土曜日だから、まだお昼すぎたくらいだし。アルティメギルの人も、もうきっと来ないでしょう? だから、ほむらちゃんと一緒にリボンを選びたいなって思ったんだ」
ほむら「……そうね。もちろんいいわ」
まどか「やった♪ それで、さやかちゃんは……」
116: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/03(土) 22:45:18.39 ID:PlzWLx1C0
さやか「あー。あたしはいいや。ほら。恭介のお見舞いがあるからさ」
まどか「あ……そっか」
ほむら(……この世界でも上条恭介は入院してるのね)
さやか「おうっ。だから二人で楽しんできなよ!」
まどか「……うんっ。さやかちゃん、ありがとう!」
QB「それなら、僕はほむら達と一緒に――」
さやか「あんたはこっちだよ」ヒョイ
QB「おや?」
さやか「じゃ、あたしは先に失礼するわ」
ほむら「さようなら、美樹さやか」
まどか「バイバイ! ……ホントにありがとね、さやかちゃん!」
さやか「あはは。気にすんなって、まどか」
117: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/03(土) 23:07:28.90 ID:PlzWLx1C0
さやか「……さて、と。あいつらを二人きりにしたはいいけど、今日はどうしよっかな」テクテク
QB「お見舞いに行くんじゃなかったのかい?」
さやか「何が悲しくてあんたを引き連れて恭介のお見舞いに行かなきゃいけないのよ」
QB「どういうことだい? それに、なぜわざわざ僕を連れて来たんだい?」
さやか「空気読めってことだよ。にして放課後に一人きりって久しぶりだなー。久々に遠出して隣町にでも行ってみるかな」
QB「僕もいるよ?」
さやか「はいはい。そうでしたね。じゃキュゥべえ。どっかおすすめのとことかある?」
QB「そう言われてもね……何を持ってお勧めといううんだい?」
さやか「そういうこと聞くかね、こいつは。エスコートの才能ないね、キュゥべえは」
QB「……わけがわからないよ」
さやか「あははっ。そっか。んじゃ、適当に……このバスにでも乗ろうかな」
QB「これは風見野行のバスだね」
さやか「お、役に立った」
QB「……」
118: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/03(土) 23:16:28.65 ID:PlzWLx1C0
~風見野~
ブロロロロー―
さやか「とーちゃく!」
QB「ここからどうするんだい?」
さやか「どうしよっか。あたし、風見野なんて初めてだし」
QB「……僕に聞かれても知らないよ」
さやか「そう? なら適当にぶらぶらしよっか」テクテク
QB「まったく。君の行動には合理性というものがないね」
さやか「……ねえ、キュゥべえ」
QB「何だいさやか」
さやか「あのさ……テイルギアって、やっぱりあたしには使えないのかな」
QB「不可能だね。君からツインテール属性は全くと言っていいほど感じられない。一番強く感じられるのは幼馴染属性だ。少なくとも今の君に、テイルギアを使うことはできない」
さやか「あー……やっぱり、そっか」
119: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/03(土) 23:26:37.00 ID:PlzWLx1C0
QB「もちろんいまツインテール属性がないとはいっても、それは将来の可能性を否定するものではないよ。これからの君次第では、あるいはテイルギアを起動させられるほどのツインテール属性を芽吹かせる可能性だってある。前例がないわけでもないしね」
さやか「それって、ほむらのこと?」
QB「そうだよ。僕にも原因は分からないけれども、彼女はある日突然数多くのエレメーラを得た。きわめつけのイレギュラーだよ」
さやか「そっか……」
QB「それにしてもどうしてテイルギアが使えるかどうかなんて聞いたんだい? もしかして君は戦いたいのかい?」
さやか「いやだってさ。アルティメギルとの戦いって、あたしだけなんにもしてないじゃん」
QB「それは……」
さやか「ほむらは言わずもがな、真正面からあいつらと戦ってる。まどかだって、ほむらが変身した時にツインテール属性を譲渡してるんでしょう? それは戦うほむらの力になってるじゃん。……でも、あたしには何にもないんだ」
QB「それは君が責任を感じることではないよ。君が戦えないことに関してまどかやほむらが君を責めたりしたことなんてないだろう?」
さやか「あはは……わかってるよ、そんなこと。でもさ、やっぱりほむらだって一人であんな変 たちと戦うのはつらいと思うんだ。あたしだって友達の力になりたいんだよ。だから――ん?」コツン
さやか(いま、足に何か当たった。ってこれは……)ヒョイ
さやか「……リンゴ? なんでこんなところに?」
杏子「――ああ、悪い。それ、あたしがさっき落としたやつだよ」
120: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/03(土) 23:39:48.40 ID:PlzWLx1C0
杏子「拾ってくれてありがとな。紙袋からぽろっと一個だけ落ちちまってさ」
さやか「あ、いや、気にしないでよ」
さやか(修道服着てる……シスターさんかな? 歳は一緒くらいだと思うけど)
さやか「これ、さっきちょっと蹴っ飛ばしちゃったけど大丈夫?」
杏子「そんくらい平気さ。食べ物を粗末にするなんて、神様から怒られちまうしさ」
さやか「そっか。んじゃ、はい」
杏子「おう、ありがとさん。……ところで、さっきあんた暗い表情して一人ごと呟いてたけど大丈夫か?」
さやか「え!?」
さやか(し、しまった……! キュゥべえのやつ、認識遮断なんちゃらとかいうので、あたし達以外には見えないんだった!)
QB『そうだね。その僕と会話をしていたのだから、傍から見たら怪しいね』
さやか『いまさらテレパシーを送ってくんな!』
QB『そもそもさっきまでの会話は君から始めたものだろう? その反応は理不尽だ』
さやか『あんたってホントに……!』
杏子「どうしたんだよ、黙り込んで? 何か気に障っちまったか?」
さやか「あ、いや、なんでもないよっ。気にしないで? あ、あはは……」
122: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/03(土) 23:56:01.97 ID:PlzWLx1C0
杏子「……そう言われても、あからさまに悩んでますってやつを放っておくのもなぁ。ほら、見ての通りあたし教会の娘なんだよ。解決できるかは別にして、悩み事を聞くだけならできるぞ?」
さやか「いや、でも、そう簡単に他人に話せるようなことじゃないしさ」
杏子「なんだよ。やっぱり悩み事があるんじゃねーか。プライバシーに触れるような具体的なとこはぼかしなよ。話すだけでも結構楽になるんだぜ?」
さやか(うーん、懺悔ってやつ? 話した感じいい人そうだけど、さすがに初対面の人に話すのはなぁ)
さやか「ごめん。やっぱり――ぁ」グウウウー
さやか(お、お腹の音が……!)カアア
杏子「……ぶっ」
さやか「!?」
杏子「ぶふ、ふふふふ、ぁ、あはははは! あー、なんだ。腹減ってたのか? そりゃ顔も暗くなるわな」
さやか「ち、ちが……! そりゃ、もうそろそろ三時だし、おやつの時間だしでちょっとお腹はすいてたけど、それで暗い表情したわけじゃ……!」
杏子「くくくっ。それじゃ、あれだ。おやつぐらい振舞うよ。このリンゴを使ってアップルパイを作る予定だったんだ。食うかい? ……あ、ちなみに今更意地を張る必要なんてねーぞ?」
さやか「……はぁ。それもそっか。何かいろいろバカらしくなっちゃったし、もう遠慮なくご相伴いたしましょうじゃないですかい! あたしは美樹さやか。そっちは?」
杏子「あたしは佐倉杏子っていうんだ。よろしくな」ニコリ
124: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:17:56.15 ID:f9tQMWbR0
~教会~
杏子「さ、ここだよ。ちょっとそこに座って待っててくれよ」
さやか「うん。……教会っていままで入ったことなかったけど……きれいなとこなんだね」
杏子「何だよ。褒めてもリンゴぐらいしか出ねーぞ?」
さやか「なんだ。十分じゃん」
杏子「ははっ、そうだな。……アップルパイができるまで三十分くらいかかるだろうから、その間にあんたの悩み事も聞いてやるさ」
さやか「む。なんだよ、偉そうに」
杏子「ははっ。ちょっと待ってな。母さんにリンゴ渡してくるからさ」テクテク
さやか(杏子のやつ、奥のほうに行っちゃった。奥のほうに家があるのかな)
QB「ここが教会か。君たちが神に祈りを捧げる場所はどこもあまり変わらないね」
さやか「あんたは引っ込んでなさい――って、誰か入って来た」
さやか(信者の人かな。お邪魔してる身としては何か申し訳ない……って、なんでこっちに近づいてくるだろう、あの人)
モブ女「ねえ、そこのあなた。ちょっといいかしら」
さやか(げっ。話しかけられた)
さやか「な、なんですか?」
モブ女「実はさっきあなたがここの娘さんに連れられて教会に入ったのを見たんだけど間違いないかしら」
さやか「はぁ。そうですけど……」
125: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:34:49.88 ID:f9tQMWbR0
さやか(なんだろう、このおばさん。何か嫌な感じがするんだけど……)
モブ女「なら忠告しておくけど、ここの教会の家族には気を付けたほうがいいわよ。父親の神父が教義にないような説教をしているから。新興宗教みたいなものよ、ここは!」
さやか「え?」
さやか(新興、宗教……?)
モブ女「あなたを連れてきたのも、きっと勧誘のためかなにかよ、絶対! まったく、親が親なら娘もむす――……!」
杏子「おーい、さやか。アップルパイは時間がかかるから、余ったリンゴでもつまんでろって……あ」
モブ女「わ、わたしはもう失礼するわね。あなた、忠告はしたわよっ」タタタッ
さやか「あ……」
杏子「…………さやか。いまのやつに、何か言われたか?」
さやか「あ、えっと……その、教義にないことがどうとか、新興宗教みたいだとか……あははっ。な、何だったんだろうね、あのおばさん。いきなり来てさ! わけわかんないよね」
杏子「……気を使わなくてもいいよ。それに、全部ホントのことだしさ」
さやか「あー……そうなの?」
杏子「まあね。……とりあえずリンゴ、食うかい?」
さやか「うん。ありがと。……てか、あんたのほうがそんなに落ち込まないでよ。あたし、別にそんなに気にしてないよ? なんならあたしに話して楽になってみる?」
杏子「……ははっ。でも、そっか。それなら……話す見本を披露してもいいかい?」
さやか「うん、いいよ」
126: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:51:25.74 ID:f9tQMWbR0
杏子「あたしの親父はここの神父をやってるんだけどさ、なんていうか、正直すぎて優しすぎる人なんだ。毎朝、新聞を読むたびに涙を浮かべて、どうして世の中が良くならないのかって真剣に悩んでる人でさ」
さやか「……うん」
杏子「新しい時代を救うには新しい信仰が必要だっていうのが親父の言い分なんだ。だからある時、教義にないようなことも説教するようになった。もちろん信者の足はぱったり途絶えたよ。いまじゃ本部からも破門されてる」
さやか「……」
杏子「誰も親父の話を聞こうとしなかった。当然だよね。傍から見れば胡散臭い新興宗教だ。どんな正しいことを、当たり前のことを話そうとしても世間じゃただの鼻つまみものさ。……あたしら一家は食うものにも事欠くありさまだった」
さやか「……そんなに追い詰められたの?」
杏子「ああ、そうだよ。納得できなかったよ。親父は間違ったことなんて言ってない。ただ人と違うことを話してるだけだ。五分でいい。ちゃんと耳を傾けてくれれば正しいことを言ってるって、誰にだって分かってくれるはず何だ。なのに、誰も真面目にとりあってくれなかった」
さやか「……」
さやか(……そっか)
杏子「悔しかった。許せなかった。誰も父さんのことを分かってくれないのが、あたしには我慢できなかった。……でも、あたしはタダの子供だ。親父の力になれるような何かができるはず、なかったんだ」
さやか(こいつ……杏子は、お父さんのことが大好きなんだなぁ)
127: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 00:59:48.62 ID:f9tQMWbR0
杏子「だから、せめてもってことで、妹と一緒にシスターをやって親父の手伝いをしてるんだ。今じゃ、ほんの少しずつだけど信者の人も増えてくれてさ。食いつないでいくぐらいはなんとかなってるんだよ」
さやか「そっか……。ごめんね。何にも言えないや」
杏子「おいおい。いいって。話すだけでも楽になるもんだって言っただろう? 聞いてくれただけで十分さ」
さやか「あはは……それも、そうだね」
杏子「おう。だから、今度はさやかが話すば――」
モモ「おねーちゃぁーん! アップルパイできたってー!」
杏子「げっ、もうそんな時間か……? てかモモのやつ、横着しやがって。教会の中にまで叫ぶなよ……」
さやか「いまの、妹さん?」
杏子「そうだよ。悪いな、しつけがなってなくてさ」
さやか「いやいや、元気でいいことじゃん」
杏子「ははっ。そう言ってもらえると助かる。ちょっくらアップルパイ持ってくるから待っててくれよ。さやかの話は、食いながら聞くとするよ」
さやか「ここ教会の中だけど、いいの?」
杏子「気にすんな。どうせガラガラでさやかしかいねーし。神様もそんな些細なことで目くじら立てねーよ」テクテク
130: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 01:10:19.85 ID:f9tQMWbR0
さやか「……ふぅ。何かすごい話だったなぁ。あたしの悩みがすっごいくだらないものに思えて来たよ」
QB「そうかい? 今みたいな話は別段珍しいことでもないと思うけどね」
さやか「そりゃそうかもしれないけど……でもさ。なんていうの? あたしみたいに、強い願いとかそういうものが思いつかないような平穏な日常を送ってる幸せバカなやつには、ちょっと強烈だったんだよ」
QB「ふーん、そういうものなんだね」
さやか「そーなの。……って、まあ、最近の日常が平穏かっていえばそうでもないんだけどさ」
QB「アルティメギルに日々責められているからね――む! エレメリアンの反応だ!」
さやか「はぁ!? ウソ、なんで!?」
QB「なんでと言われても、彼らの事情なんて知らないよ。僕は事実を報告しただけだ」
さやか「あぁっ、もう! そりゃそうなんだろうけど、なんで今日に限って二回も……! キュゥべえっ。今日はあいつら、どこら辺に出たの! ほむらに連絡しなきゃ!」
QB「出現座標は、ここだよ」
さやか「……は? いまなんて言った?」
QB「だから、ここだよ。エレメリアンは、この教会に現れたんだ」
さやか「…………え」
スネクギルディ「わっはっはぁ! 感じる、感じるぞ! ここに真摯な祈りを捧げる少女の気配を感じる! 者ども、我が最愛なる修道女(シスター)属性の持ち主を連れて参れ!」
戦闘員「「モケケェ!」」
さやか「えぇえええええええ!?」
136: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 00:53:47.59 ID:fw5Oi64p0
スネクギルディ「ふむ。清廉なる祈りの気配は、この奥だな。ゆくぞ」
戦闘員「モケ!」
さやか(あっちには杏子が……! あいつら、私には目もくれないで奥へ行ったわね。ムカつくけど、好都合!)
さやか「キュゥべえ! ほむらをすぐに呼んで!」
QB「無理だ。いまほむらがどこにいるのかもわからないのにテレパシーをつなげることはできない」
さやか「ああっ、もう微妙に役に立たないなぁ、ほんとに!」
QB「無理なことを無理と言ってるだけだよ?」
さやか「うっさい! そうだっ、携帯!」
プルルル プルル
さやか(ほむら、はやく出て。じゃないと、杏子が……!)
ほむら『さやか。ちょうど良かったわ。実はいままどかと一緒にリボンを選んでいるんだけれども、どんなリボンがまどかに一番似合うかしら。私は赤いリボンの他には、やっぱり無垢な白いリボンが一番だと――』
さやか「知らねーよ! 変身してないのに変なスイッチ入れてんじゃないわよっ。こっちはそれどころじゃないの! 何かエレメリアンが出てきたんだよ!」
137: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 01:12:35.77 ID:fw5Oi64p0
ほむら『――何ですって? 一日に二回も出てくることなんてなかったのに……わかったわ。確か上条恭介のお見舞いに行ってるのよね。なら、病院ね。すぐに向かうわ』
さやか「あ、ご、ごめん。実はいま風見野の方にまで来てて……」
ほむら『はぁ!? どうしてよ!?』
さやか「べ、別になんでもいいでしょ! それで、いま風見野にある教会にいるの」
ほむら『風見野の教会……まさか、佐倉杏子のところ?』
さやか「そう! ……って、なにほむら。杏子と知り合いなの?」
ほむら『……別になんでもいいでしょう。それにしてもあなた達は本当に……まあ、いいわ。キュゥべえに転送を――って、いないわね。さやか。キュゥべえにそっちへ転送できるかどうか聞いておいてくれないかしら』
さやか「わかった。……キュゥべえ。ほむらをこっちに転送できる?」
QB「無理だね。僕の傍にいない人間を転送するのは不可能だ」
さやか「本当に肝心な時に役に立たないんだから……! ほむらっ、ごめん。無理だって」
ほむら『そう。なら今から変身して行くわ。テイルギアの出力なら十分もかからないはずよ』
さやか「分かった! ありがとうねっ」
さやか「あ、ご、ごめん。実はいま風見野の方にまで来てて……」
ほむら『はぁ!? どうしてよ!?』
さやか「べ、別になんでもいいでしょ! それで、いま風見野にある教会にいるの」
ほむら『風見野の教会……まさか、佐倉杏子のところ?』
さやか「そう! ……って、なにほむら。杏子と知り合いなの?」
ほむら『……別になんでもいいでしょう。それにしてもあなた達は本当に……まあ、いいわ。キュゥべえに転送を――って、いないわね。さやか。キュゥべえにそっちへ転送できるかどうか聞いておいてくれないかしら』
さやか「わかった。……キュゥべえ。ほむらをこっちに転送できる?」
QB「無理だね。僕の傍にいない人間を転送するのは不可能だ」
さやか「本当に肝心な時に役に立たないんだから……! ほむらっ、ごめん。無理だって」
ほむら『そう。なら今から変身して行くわ。テイルギアの出力なら十分もかからないはずよ』
さやか「分かった! ありがとうねっ」
138: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 01:25:18.46 ID:fw5Oi64p0
さやか「さて、後は待っていればほむらがいつも通り……」
モモ「きゃぁああ! 」
さやか「!」
杏子「な、なんだお前ら……! ニュースでやってたアルティメギルとか言うやつらか!」
さやか(杏子の声――!)
QB「さやか? いまはそちらに行かないでほむらを待つのが賢明だよ。君があそこに向かったところで、戦闘員の一匹にだって敵わないだろう」
さやか「うっさい! 役立たずは黙ってなさい!」タタタッ
QB「……やれやれ」テクテク
モモ「きゃぁああ! 」
さやか「!」
杏子「な、なんだお前ら……! ニュースでやってたアルティメギルとか言うやつらか!」
さやか(杏子の声――!)
QB「さやか? いまはそちらに行かないでほむらを待つのが賢明だよ。君があそこに向かったところで、戦闘員の一匹にだって敵わないだろう」
さやか「うっさい! 役立たずは黙ってなさい!」タタタッ
QB「……やれやれ」テクテク
139: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 01:40:27.98 ID:fw5Oi64p0
スネクギルディ「ほう。ツインテールでないとはいえ、まさか極上のシスター属性の持ち主が二人もいるとは僥倖よ」
モモ「お、お姉ちゃん……」プルプル
杏子「モモ! くそっ、お前らモモを離せ!」
スネクギルディ「わははっ、我が愛しの修道女をやすやすと手放すはずがなかろう。しかし……貴様ら、もしや姉妹か?」
杏子「それがどうした! モモが生まれた時からあたし達は姉妹だ!」
スネクギルディ「どうしたもこうしたもあるものか。姉妹(シスター)で修道女(シスター)とは……なんという組み合わせよっ。よいぞ! たぎる! その二つを手に入れられるとは、今日はなんというよき日か!」
杏子「な、なにわけのわかんねーこと言ってんだ!?」
スネクギルディ「この素晴らしい組み合わせがわからぬとは――む!?」
さやか「杏子! 大丈夫!?」
杏子「さやか!? なんで来たっ?」
さやか「友達が狙われてるのに、あたしだけ逃げるわけないでしょうっ」
さやか(くそっ、杏子も妹さんもあいつらに捕まってる……!)
さやか「……そこの変 共! あんたらなんて、ほむ――ホーリーブラックが来ればいちころ何だからね!」
スネクギルディ「ふんっ、虎の威を借りるか少女よ。それで俺が恐れると思ったら大間違いよっ。ホーリーブラックとの対面は、むしろ望むところ! ……しかし、ちと遅いな」
さやか「くっ。いいから杏子たちを放しなさいよ!」ジタバタ
スネクギルディ「抵抗はやめよ。人間に怪我をさせるつもりはない。ホーリーブラックが現れぬのは気になるが……まあいい。かの戦士が遅いからと言って、エレメーラの奪取を遅らせる道理はない。者ども、やれい!」
戦闘員「モケェ!」
140: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 01:55:40.24 ID:fw5Oi64p0
さやか(こいつら、すごい力……! ほむらはいつもあんな軽々吹っ飛ばしてたのに)
スネクギルディ「さて、邪魔ははいったが貴様らの修道女(シスター)属性をいただくぞ。修道女の姉妹よ。まずは……妹の方からいただこう」
モモ「お姉ちゃん、助け――ぁ」
杏子「モモッ、モモぉおおお!」
さやか(銀色の輪っかが、モモちゃんの身体を通り抜けていった。あれが、エレメーラの奪取……?)
QB「そうだよ、さやか。いまのであの少女の修道女属性は奪われた。ほら、見てごらん」
さやか「見てごらんって……」
杏子「モモッ、大丈夫か! 何ともないか!」
モモ「ううん……あ、お姉ちゃん。うん。大丈夫だよ」
さやか「見たところ、特に変わったところはないみたいだけど……?」
QB「いいや。確かに彼女から失われたものがあるはずだよ」
杏子「そっか。よかった……」ホッ
モモ「うん。それよりお姉ちゃん。モモ、気が付いたことがあるの」
杏子「……?」
モモ「変な教義を説教するのをやめようって、二人でお父さんを説得しようよ!」
杏子「……は?」
144: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 02:10:24.52 ID:fw5Oi64p0
モモ「ううん。信者さんが途絶える原因になった教義だけじゃないよ。いっそ宗教なんてやめちゃおうよ。それで土地を売って元手を手に入れて、リンゴ農家とかをやろうよ。うん、それが良いよ! きっとウハウハだよ!」
杏子「モモ……? お前、なに言って……だって、最近やっと父さんの話を聞いてくれる人も増えてきて、これからだって、二人で一緒に父さんを支えて教会のシスターをやろうって言って――」
モモ「だってお姉ちゃん。信じる心じゃお腹は膨れないんだよ。大丈夫。佐倉印のリンゴとかで売り出してパッケージにお姉ちゃんの写真をつければバカ売れ間違いなしだよ!」
杏子「……それは、本気で言ってるのか?」
モモ「当たり前だよ! やっぱり生きるためにはお金が必要だもん!」
杏子「……!」
さやか「…………」
QB「これがエレメーラの奪取だよ、さやか。あの少女は属性を奪われると同時に、信仰心も失くしてしまった。その結果があれだ」
さやか「そんな……」
スネクギルディ「ふむ。やはり良質なシスター属性よな。姉の修道女よ。今度は貴様の番だ」
杏子「……お前らか」
スネクギルディ「……む?」
杏子「お前らがモモの信仰を奪ったんだなっ、この悪魔どもぉ!」
さやか「杏子……」
スネクギルディ「……生まれいでし時より人の心を食らうのが我らの運命。そのような責め言葉、受ける覚悟はとうにできておる。いくらでも責めるがよかろう」
杏子「うるさいっ。返せ、モモの心を……返せぇ!」
スネクギルディ「それはできん! どちらが上とは言わんが、食い食われるのが我らの連鎖。それが全てなのだ!」
杏子「くそっ、くそぉおおおお!」
モモ「お姉ちゃん? とりあえず今夜お父さんと話し合おうよ。それでもっと地に足ついた人生計画を――」
145: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 02:24:41.28 ID:fw5Oi64p0
さやか「――キュゥべえ。ほむらは?」
QB「ほむらを呼んでから、まだ五分しか経っていない。彼女が到着するにはあと数分かかるだろうね」
さやか「それじゃあ遅いんだ。……あんたの耳についてるテイルギアを貸して。ほむらに渡したやつじゃないほう、残ってるでしょ」
QB「……さやか。残念だけど、君には――」
さやか「いいから!」
QB「……やれやれ。それなら好きにすればいいさ。受け取るがいい、美樹さやか」ニュ
さやか「ありがと」パシ
さやか(この腕輪をはめて、後は叫べば変身できるはず……!)
さやか「テイル・オン! テイル・オンっ。テイル・オン。ている、おんっ。てい、る、おん……!」
さやか(くそっ、くそう! なんで、どうして……!)
QB「気はすんだかい? だから無理だって言っただろう」
さやか「うるさい……それでもあたしは……!」
スネクギルディ「姉の修道女よ。先ほどから黙り込んでいるが、己の信仰との決別はすんだか?」
杏子「……うっせぇ」
スネクギルディ「……そうか。だが、容赦はせんぞ」
さやか「……ぁ」
さやか(さっきの銀の輪っかが、今度は杏子に……)
さやか「やめ、やめろぉおおおお!」
スネクギルディ「さあ、最後に祈るがいい少女よ。その姿こそが修道女にあるべき姿よ!」
杏子「…………」
146: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 02:33:21.99 ID:fw5Oi64p0
ほむら「……もう少しね」
ほむら(けれど、なんでさやかが杏子の教会に……あの二人、本当に腐れ縁なのね)
ほむら「まあ、それはどうでもいいわ。きっと巡り合う運命なんでしょう、あの二人は。それよりもエレメリアンよ」
ほむら(よりにもよってまどかとのお出かけを邪魔するなんて……絶対に許せない!)
ほむら「今日は念入りにぎったぎたにしてやるわっ」
ほむら(よし、着いたわ。……あら? 廃墟じゃない……? とりあえず中に――)
「――テイル・オン!」ピカアアアア!
ほむら「――!?」
ほむら(今の光、テイルギアの変身の時に出る発光!? それに聞こえた変身の掛け声……なぜ彼女がテイルギアで変身を!?)
ほむら「……くっ。ここで悩んでも仕方ないわね。突入しましょうっ」ヒュン
154: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:26:13.13 ID:lsgTiFWQ0
モモ「お姉ちゃん? とりあえず今夜お父さんと話し合おう? それでもっと地に足ついた人生計画を――」
杏子(なんで、こんなことになったんだろうな……)
スネクギルディ「姉の修道女よ。先ほどから黙り込んでいるが、己の信仰との決別はすんだか?」
杏子「……うっせぇ」
スネクギルディ「……そうか。だが、容赦はせんぞ」
杏子(ああ、さっきモモの信仰を奪った輪っかが、あたしに……)
さやか「……ぁ。やめ、やめろぉおおおお!」
スネクギルディ「さあ、最後に祈るがいい少女よ。その姿こそが修道女にあるべき姿よ!」
杏子「…………」
杏子(あれにくぐらせられたら、あたしも信仰を失っちまうのかな。……父さん、なんて言うだろ)
杏子「ちきしょう……」
『――はっ。自分の信念を諦めるなんて、ポニーテイルが泣くぜ!』ボウッ
杏子「……え?」
杏子(なんで、こんなことになったんだろうな……)
スネクギルディ「姉の修道女よ。先ほどから黙り込んでいるが、己の信仰との決別はすんだか?」
杏子「……うっせぇ」
スネクギルディ「……そうか。だが、容赦はせんぞ」
杏子(ああ、さっきモモの信仰を奪った輪っかが、あたしに……)
さやか「……ぁ。やめ、やめろぉおおおお!」
スネクギルディ「さあ、最後に祈るがいい少女よ。その姿こそが修道女にあるべき姿よ!」
杏子「…………」
杏子(あれにくぐらせられたら、あたしも信仰を失っちまうのかな。……父さん、なんて言うだろ)
杏子「ちきしょう……」
『――はっ。自分の信念を諦めるなんて、ポニーテイルが泣くぜ!』ボウッ
杏子「……え?」
155: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:56:29.50 ID:lsgTiFWQ0
スネクギルディ「むう!? なんだ、この炎の壁は!」
杏子「……?」
杏子(いきなり虚空から火の壁が? いや、それよりもいま、この炎から声が聞こえた気が……)
『おい、聞こえてるだろ。世界を隔ててたってビンビン感じるくれぇかっけぇポニーテイルをしてるんだっ。そのあんたに聞こえてねぇはずがねえぞ!?』
杏子「……!」
杏子(やっぱり……!)
杏子「だ、誰だ、あんた?」
『俺様の名前はフェニックスギルディ! 炎のように燃え上る正義の味方だ!!』
杏子「フェニックス、ギルディ?」
さやか「な、なにこれ……? なにが起こってんの、キュゥべえ!?」
QB「これは……エレメリアンの反応? けれども反応が遠い……まるで次元の壁をはさんでいるような……」
フェニックスギルディ『まあ難しい話は後だ! いまの俺様は首領のクソ野郎に封印されちまってるから自由がきかねえんだ! あんたのポニーテイルを目印にして、しょぼい炎を送るのが精いっぱいだ! それも長くは続かねぇ!!』
杏子「……あんたもエレメリアンなんだろう? 人の心を食う悪魔の一味だ。なんであたしを助けてくれたんだ?」
フェニクスギルディ『はっ、くだらないこと聞くんじゃねーよ! 俺様は正義の味方だぜ? 襲われているやつを見たら助けるに決まってんだろうがよ!!』
杏子「!」
156: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 01:17:31.66 ID:lsgTiFWQ0
杏子(こいつ……言ってることはめちゃくちゃだけど、まったく迷いがない。なんて熱い信念なんだ……!)
フェニックスギルディ『……っ。ちっ、やっぱり無茶しすぎたか。もうすぐ炎が途切れる。その前にこれを受け取れ!』ボウッ!
杏子(炎の中から、赤い腕輪が……熱く、はないな)
杏子「これは……?」
フェニックスギルディ『テイルギア・TYPE-Pだ! ポニーテイル属性を核にして正義のヒーローに変身できるっていう、俺様の親友が作ったイカしたアイテムだぜ!』
杏子「テイルギア……」
フェニックスギルディ『あんたはその世界で一番のポニーテイル属性の持ち主。見なくてもわかるほど、あんたの燃えるように真っ赤に躍動するポニーテイルはかっけえぜ! そんなポニーテイルの持ち主が、そのテイルブレスを使えねぇはずがない!』
杏子「……わかった。あんたを信じる。これはどう使えばいいんだ?」
フェニックスギルディ『簡単だ。手首にはめて『テイル・オン』って叫べばいい。そうすれば、あんたも正義のヒーローだ!』
杏子「オッケーだ。……ありがとうな、フェニックスギルディ」
フェニックスギルディ『俺様は俺様の信念に従っただけだ。礼なんていらねぇ。……ああ、いや。最後に一個だけいいか?』
杏子「何だ?」
フェニックスギルディ『ポニーテイルは世界をつなぐ架け橋だ! あんたのポニーテイルで、あんたの世界を救ってくれ!』
杏子「……!」
杏子(こいつは、ほんとうに……!)
杏子「わかった。その頼み、あんたの大好きなポニーテイルに誓って果たしてやる!」
フェニックスギルディ『ははっ、嬉しいねぇ! ……ちっ。俺様の気合をもってしても、限界だな。じゃあな! あんたのポニーテイルは世界の宝だ。大切にしろよ!』シュウウ
杏子「……ああ。さようなら、フェニックスギルディ」
157: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 01:37:06.43 ID:lsgTiFWQ0
スネクギルディ「炎が消えた……いまのは一体?」
さやか「な、何だったんだろう、いまの炎。助かったけど……あ! 杏子。大丈夫!? 火傷とかしてない?」
杏子「……ああ。身体は、火傷の一つもないぜ」
さやか「そっか。よかった!」
杏子「でも、あたしの心には火がついた……! 真っ赤に燃える、正義の炎がな!」
さやか「……ん?」
さやか(いまの杏子のテンション、何か覚えが――はっ! スイッチ入ったほむらと一緒のやつだこれ!)
スネクギルディ「ほう。姉の修道女よ。先ほどまでとはまるで目の色が違うな。今の間になにがあった」
杏子「はっ。ちょっくら暑苦しい正義の味方と話しててな。そいつの熱気に当てられちまったんだよ。だからあたしは、あんたを倒す!」
スネクギルディ「わははっ! 良いぞ……良いその眼だ! 消沈した先ほどよりかはよほどいいっ。だがしかし、脆弱な人間のままで俺を倒すなど、妄言でしかないぞ!?」
杏子「……違う。いまのあたしは、モモを救えなかったさっきのあたしとは違う! モモを、信仰を――世界を救えるポニーテイルの力があるんだ!」
QB「あれは……テイルギア!? なぜ彼女が!?」
さやか「えぇえええ!? 杏子が!? なんで!?」
スネクギルディ「ほう。言うな、姉の修道女よ。そこまで大言を吐くならば、その力を見せてみろ!」
杏子「ああ。いくぜ、スネクギルディ」
スネクギルディ「来い、姉の修道女よ!!」
杏子「――テイル・オン!」ピカアア!
158: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 02:00:14.50 ID:lsgTiFWQ0
スネクギルディ「……バカな。これは、ホーリーブラックと同じ戦士、だと。なぜ、なぜツインテールではなく、よりにもよってポニーテイルの貴様が!」
杏子「はんっ、知らねえのか? ポニーテイルにはなぁっ、世界を救う力があるんだよ!!」
スネクギルディ「!」
さやか「ねえっ! ちょっとキュゥべえ!? なんで杏子が!? どうして!? あいつだってツインテールじゃないのになんで変身できてんの!?」
QB「おそらくあのテイルギアの核になってるのはツインテール属性ではなくポニーテイル属性だからだ。けれども、最強のツインテール属性ではなくポニーテイル属性でテイルギアを作るなんて、一体どうやって……」
さやか「詳しい事はいいから! ツインテールじゃない杏子が変身できたってことは、つまりあたしもテイルギアで変身できる可能性があるってことだよね!?」
QB「そんなの不可能に決まってるじゃないか」
さやか「んだとぉ! ほむらも来てないんだし、あたしも変身して――」
ほむら「――それには及ばないわ」スタッ
さやか「ぁ」
スネクギルディ「むう!? 貴様は!」
ほむら「やっぱり、さっきの変身は佐倉杏子のものだったのね」
杏子「あんたが噂のホーリーブラックか。――どこかで会ったか?」
ほむら「さあ、どうかしら」
杏子「……まあ、いいさ。今日のあんたは出遅れだ。この場はあたしに預からせろ」
ほむら「……あなたがそういうなら、いいわ」
杏子「話が分かるじゃねーか。……待たせたな、スネクギルディ。余計な邪魔が入ったけど、茶々はなしだ。尋常に勝負しろ!」
スネクギルディ「……わははっ! 数の利を捨て正道を進むか! それもまた良いだろうっ。むろん受けて立つ。改めて名乗ろう! 我が名はスネクギルディ。敬遠なる祈りを捧げる清き修道女を愛する者よ! さあ、姉の修道女――いや、赤の装甲をまとう戦士よっ。おぬしの名は!」
杏子「――ホーリーレッド!」
176: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 06:28:38.85 ID:dV6pen1C0
スネクギルディ「ホーリーレッド……良い名だ! 貴様の燃える心をよく表しておるな」
杏子「褒めてもらっても、お前に出せるものはこの拳だけだぜ?」グッ
スネクギルディ「わははっ、それは恐ろしいな。しかしそれがどんなものであれ、最愛の修道女からの贈り物に立ち向かわぬわけにもいかぬなぁ!」
杏子「なら、来い! てめえは神の身許に送ってやるよ!」
スネクギルディ「できるものならばやってみろっ、ホーリーレッド!」
ガッキィイイイン!
ほむら「……おかしいわね。杏子はあんな暑苦しいキャラだったかしら……?」
さやか「あたしは今日会ったばっかだけど、違う気がする。やっぱりテイルギアのせいじゃん?」
QB「見たところ、あのテイルギアにそういった機能はないね。というよりも、見たところあのテイルギア自体、万全とは言い難い状態だ。佐倉杏子の精神の高ぶりは、何か別の要素によるものだろう」
さやか「え、マジで? ていうか、完全じゃないって……杏子はそんなので変身して大丈夫なの?」
QB「いくつかの機能が起動できていないだけで、変身と基本的な戦闘は可能なようだね。……それにしても、ポニーテイル属性も、すさまじいエレメーラだね。あるいは、ツインテール属性に比肩するかもしれないポテンシャルを秘めている」
さやか「へぇー。で、あたしに秘められてるらしい幼馴染属性のエレメーラは? テイルギアで変身できそう?」
QB「その可能性はゼロに等しいと言わざるを得ないね」
さやか「なんでだよ!」
ほむら(そんな説明はどうでもいから、一体全体、杏子に何があればああなるのか知りたいのだけれども……)
177: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 06:41:00.19 ID:dV6pen1C0
杏子「神に祈れ、スネクギルディ。お前の大好きな修道女を見習って、頭を垂れてお前の罪を懺悔しろ!」
スネクギルディ「ぬかせ! 我が愛するのはあくまで修道女。おぬしらが作り上げた神など知ったことか!! 我らが神はすべての頂に立つ首領様っ。それ以外にない!」
杏子「お前らが崇めてんなら、その首領とやらはさぞかしぶっ飛んだやつなんだろうな! 自分の子供に命天男(めてお)とか有帝滅人(あるてぃめっと)とか意味不明な名前をカッコいいと勘違いしてつけようとする野郎だな、きっと!」ガキィン!
スネクギルディ「首領様を愚弄するか! 我らが首領は、全てを超越した完全体。何かにつけて『チェックメイト』とかいいたがる思春期の少年少女とは違うぞ!」バキイ!
杏子「はっ、怒ってんのかよ? でもな、それが信仰を否定されるってことだ。……モモが失ったものは、いまあんたが感じているそれよりもずっとずっと重くて尊いものだったんだよぉ!」ボコオッ!
スネクギルディ「ぐ、ぬぅ……!」
さやか「杏子のやつ、エレメリアンと素手で殴り合ってる……」
ほむら(……暑苦しい戦いね)
モモ「あ、ホーリーブラックだ! テレビで見たことあるけど、実物もカッコいい! サインください!」
ほむら「さ、サイン……? ごめんなさい、そういうのはしてないの」
モモ「あ、そうなんだ……」
さやか「杏子の妹さん。変身してるそいつは何かいろいろ危ないから、こっちにおいで」
ほむら「美樹さやか、あなた好き勝手に――って、杏子の妹!? その子が!?」
さやか「……? なんでそこで驚いてんの?」
ほむら「い、いえ、何でもないわ!」
ほむら(生きてたのね……。この世界の杏子の家族は生存しているのね。教会が廃墟でないところで気が付くべきだったかしら)
179: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 06:58:34.91 ID:dV6pen1C0
スネクギルディ「くは、ははっ、わはは! 貴様の強さは身をもって知ったぞっ、ホーリーレッド! しかし修道女を愛する前に、俺もツインテールを愛する者の末端としてポニーテイルの戦士などに敗北するわけにはゆかぬ!」
杏子「負けるわけにいかねえのはあたしの方だっ。モモの信仰、返してもらうぞ!」ボウッ!
スネクギルディ「ぬう!? この炎はさっきの……いや、先ほどのよりなおも熱く燃え盛って――!」
杏子「終わりだ、スネクギルディ。正義の炎、その身で受けてみろ! バーニングフォースフィニッシャァアアアアアア!」
スネクギルディ「ぐっ、がぁ……ぐわぁああああああ!」
杏子「――どうだっ。これが信仰を躍動させて燃え盛るポニーテイルの力だ!」
スネクギルディ「ぐふうっ……くは、は、わはは! まさか俺の最期が、ポニーテイルの戦士によるものとはな! ――最後にひとつ頼んでよいか、ホーリーレッド」
杏子「……なんだ?」
スネクギルディ「俺の最期を看取り、祈ってくれ。頼む、ホーリーレッド……いや、姉の修道女よ。おぬしのその拳を、打撃の形ではなく祈りの形にして俺に向けてくれ……!」
杏子「…………」スッ
スネクギルディ「……おぉ! やはり、修道女の祈る姿は美しい! 最愛の修道女に見送られる――我が最期に、これ以上のものはないっ。わーっはっはっはははは!」
チュドオオオオオオオオン!
杏子「……じゃあな、スネクギルディ」
180: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 07:09:24.06 ID:dV6pen1C0
杏子「フェニックスギルディ……。あたし、やったぜ」
さやか「勝ったの……?」
杏子「ああ。悪かったな、さやか。巻き込んじまってさ」
さやか「そんなっ。気にしないでよ。それにあたし、慣れてるしさ」
杏子「慣れてるってお前……まあ、いっか。それより、モモは――」
ほむら「妹さんは、奥のほうに避難させてもらったわ。それと、あのエレメーラを奪う輪っかならさっき壊して置いたから。エレメーラを奪取された二十四時間以内だったら、属性力は取り戻せるらしいわ」
杏子「……そっか。ありがとうな、ホーリーレッド」
ほむら「気にしないで。それよりも、佐倉杏子。何故あなたが変身を――」
マスコミA「戦闘は終わったか……?」
マスコミB「ああっ。ようし、取材だ! 今日こそホーリーブラックに直接取材……いや、もう一人いる!?」
ほむら(――ちっ。マスメディアの連中ね。認識遮断なんちゃらで正体がバレる心配はないとはいえ、これじゃあゆっくり話す時間も取れないわね)
マスコミC「おいカメラ! あっちの赤い装甲の少女の方を映せ!」
杏子「げっ、マスコミ!? や、やべえ!」
ほむら「……キュゥべえ。佐倉杏子も含めて、今すぐ私たちを転送しなさい」
QB「分かったよ、ほむら」
パアアアアア――ヒュンッ
181: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/07(水) 07:27:19.80 ID:dV6pen1C0
~ほむホーム~
まどか「……あ! みんな、お帰りなさい! 心配してたんだよ。今日はキュゥべえがいなかったから、モニターで様子も見れなかった、し……あ、あれ? あなた、誰?」
杏子「いやあんたこそ誰だ? てかここどこだよ!?」
まどか「わ、わたしは鹿目まどか、だけど……ええと、そのっ」ワタワタ
さやか「いきなり転送されたら、そりゃ驚くわな……」
ほむら「ただいま、まどか。待っててくれてありがとう。……それと、佐倉杏子。落ち着きなさい。いまから説明するから、まどかを困らせるふるまいはやめなさい」
・
・
・
杏子「――なるほど。事情は大体わかった。あんたらは、そこのキュゥべえとかいう宇宙人からテイルギアを受け取って戦っているわけだ」
ほむら「そうよ。そしてあなたの方は、フェニックスギルディとかいうエレメリアンからテイルギアを受け取ったのね」
杏子「ああ。それで間違いない」
さやか「そいつ、何者なんだろう。同じエレメリアンなのに、アルティメギルに対立するような行動をとるなんて」
杏子「詳しくはあたしにもわかんねぇけど……正義の味方だよ、あいつは」
まどか「……そっか。うん、そうだよね。エレメリアンの人たちの中にも、いい人だっているんだよね!」
ほむら「そうね。まどかの言う通りよ。……それで、佐倉杏子。お互いの状況も理解したうえで、あなたはどうするの?」
杏子「アルティメギルの連中は、人の心を食らう悪魔だ。あたしはその横暴が絶対に許せない。できるなら、あんた達と一緒に戦いたい。さっきの戦いで『ホーリーレッド』って名乗ったのだって、前から戦っているあんたにあやかりたかったからだ。……ダメか?」
ほむら「それは――」
まどか「ダメなわけないよ、杏子ちゃん!」
ほむら「――もちろんオッケーよ。大いに歓迎するわ。一緒に戦いましょう」
さやか(……ほむらのやつは、ほんとになんかもう、あれだなぁ)
187: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/08(木) 20:49:24.97 ID:kT6gptBK0
杏子「そっか。よかった。……あ。それと、正体がばれないってのは本当なのか? あの装甲、顔がむき出しだけど……」
ほむら「本当よ。私だって身元割れはしていないでしょう? 変身している間は認識遮断なんちゃらが展開されるから、正体がバレることはないらしいわ」
さやか「そうだよ。心配ならテレビで確認する? マスコミの人いたし、さっきの戦闘、速報でニュースに流れてると思うよ」
まどか「杏子ちゃんのこと、どんな感じで紹介されるかな。謎のヒーローさらに登場、みたいな?」
杏子「や、やめてくれよ。改めて言われると、ちょっと恥ずかしいな……」
ほむら「そのうち慣れるわ。じゃあ、テレビをつけるわね」
ニュースキャスター『――であり、とうとう国民的アイドル巴マミのファーストアルバムがミリオンを突破しました。それを記念して各種イベントの計画が……芸能ニュースの途中ですが、ただいま速報が入りました。本日もまたエレメリアンの襲来があったようです』
さやか「お、ちょうどいいタイミングだね」
ほむら「そうね」
ニュースキャスター『本日のアルティメギルの一味は風見野市の教会に現れた模様。しかしながらそれを撃退したのはホーリーブラックではなく、赤い装甲をまとう新たなる戦士だということです!』
まどか「やっぱり杏子ちゃんのこともニュースになってるね!」
杏子「や、やっぱりこういうのって照れるな……」
ニュースキャスター『しかもこの少女、いまでも正体不明なホーリーブラックと違い、襲われた教会の娘さんだということが判明しており――』
さやか「!?」
杏子「!?」
ニュースキャスター『――というわけで……え? 本人の許可もとってないのに身元を特定できるような情報はまずいって……許可とってないんですか!? じゃあなんで原稿にそれ書いてんですか!? しかもさっき顔がもろに出てる映像まで……こ、これ私の責任じゃ――』
188: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/08(木) 21:10:22.67 ID:kT6gptBK0
ほむら「……」
まどか「……」
さやか「こ、これって……」
杏子「どういうことだ、おい……!」
QB「おや、説明しなかったかな」
さやか「キュゥべえ!? どういうこと!? なんで杏子の正体がばれてんの!?」
QB「彼女のテイルギアは作動が不完全だって言っただろう? 杏子のテイルギアは、人間の認識をかく乱させる機能が作動してないんだよ。そんな状態で素顔をさらしたんだ。あっという間に正体はばれるだろうね」
杏子「……マジで?」
さやか「なんで先に教えてくれなかったのよ!?」
QB「杏子のテイルギアが不完全だという説明はしたじゃないか。それに、あの時点で具体的な損傷個所を教えたところで事態が変わったとは思えないけどね」
杏子「……」
まどか「えっと、その、杏子ちゃん……」
さやか「……どんまい、杏子」
ほむら「私の正体は間違えても話さないでね。仲間でしょう?」
杏子「ちょっと待てよぉおおおお!?」
189: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/08(木) 21:23:49.37 ID:kT6gptBK0
――翌日――
ニュースキャスター「お昼のニュースです。先日現れたホーリーレッドについてですが、風見野市在住の佐倉杏子さんだと正式に判明しました。取材に向かった我々に対し、親子ともども先日の個人情報の件も気にしていないとおおらかな笑顔で対応してくださり――」
さやか「……このニュースキャスターの人、ちょっと面の皮厚すぎない?」
まどか「ま、まあまあ、さやかちゃん。この人のせいじゃないんだし、そこは許してあげよう?」
ほむら「そうね。主にテレビ局の責任よ」
杏子「あたしも思うとこはあるけど、バレちまったもんは仕方ないしな。いっそ公表したほうが面倒が少ないだろ?」
QB「賢明な判断だと思うよ。下手に否定するより好意的に受け止められるだろう」
ほむら「あなたの事情はどうでもいいけど、わたしの正体は話していないでしょうね」
杏子「そこは安心しろ。今もあんたの部屋に避難させてもらってるしな。ここはあたしにとっても最後の牙城なんだ……!」
まどか「杏子ちゃん、苦労してるんだね……たった一日なのに」
さやか「……マスコミってめんどくさいって言うしね」
190: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/08(木) 21:28:41.91 ID:kT6gptBK0
ニュースキャスター『佐倉さんの教会はとある事情で破門を受けていましたが、今回の一件で本部の方から破門が解かれることが決定しているそうです。各国も支援を惜しまないと――』
さやか「へー。杏子のとこの教会、破門解かれるの? よかったじゃん」
杏子「まあな。モモのやつは『絶対に寄付金目当てだよっ! ホーリーレッドの活躍で増える信者からむしりとろうとしてるんだよ! いっそ独立宗教法人で杏子教を設立したほうが儲かるよ! 税金もかからないし!!』って言って反対してたけど、親父がな。やっぱり教義のほうも見直してくれるっていうのがデカかったんだな」
ほむら「あなたの妹さん、たくましいわね」
杏子「そこに反応すんなよ。あたしだってモモについてはどうしてああなったって――」
ニュースキャスター『さらに教会本部の方では、不思議な声を聞いてホーリーレッドに変身する力を得たという佐倉杏子さんを、神託を受けた奇跡の少女として聖人認定するかどうかの協議を行っているという情報もあり――』
杏子「――ぶふうっ!?」
さやか「うわっ!? きたな! ちょっとやめてよ!」
杏子「ごほっ、ごほごほ……ちょ、いま、こいつなんて言った!?」
まどか「聖人認定がどうとか……詳しくは知らないけど、すごい事なの?」
ほむら「歴史に残るかもしれないほどものすごいことよ、まどか。良かったわね、杏子。聖女様じゃない」
杏子「おま、お前なぁっ……ああ、もう知ったことか! どうにでもなれよ!」
191: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/08(木) 21:37:36.91 ID:kT6gptBK0
ほむら(それにしても……)
QB「杏子。君のテイルギアをいったん僕に預けてくれないかい? 認識遮断フィールドはいまさら遅いけれども、武器が出せない不具合や通信機能、転送機能の同期などを調整したいんだ。出撃するとき便利だろう?」
杏子「ああ、そうだな。いまのままじゃ、エレメリアンが出てもどうやって戦いに行けばいいかわかんねぇしな。ほい、これだよ」
QB「ありがとう。今日、君が帰るまでには調整を終わらせるよ」
杏子「おう」
さやか「にしても杏子が聖女様かぁー。なに? ジャンヌ・ダルクみたいに歴史に残っちゃうのかぁ?」
まどか「うぇひひ。そんなすごい人が友達だなんて、クラスのみんなに話したら驚くだろうなぁ」
杏子「うっせー!」
ほむら(……これが、あの佐倉杏子なのね。私の知っている彼女とはまるで違って、こんな子じゃなかったっていう違和感があるのは否定しないけれども、そうね……)
まどか「てぃひひ! 大丈夫だよ。クラスのみんなには、内緒だよ!」
杏子「あたりめーだ! ……そういやほむら。あんたなんであたしの名前知ってたんだ? もしかしてどっかで知り合ってたか?」
ほむら「……いいえ」クスリ
杏子「……?」
ほむら「あなたみたいな幸せそうな子なんて、知っていたわけないじゃない」
197: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/09(金) 14:48:34.59 ID:O+jcRkC30
~アルティメギル秘密基地~
スパロウギルディ「……以上、この十日あまりで撃破された同胞は隊員八名、戦闘員七十三名に及びます」
ドラグギルディ「そうか。未熟者だったのが敗因とはいえ――口惜しい」
スパロウギルディ「一方この世界に降り立ってより我らが手に入れたエレメーラは皆無。一時捕獲したエレメーラも、全てホーリーブラック、レッドによって奪還されております。あるいは、エレメーラの持ち主もろとも捕獲し、一時的に撤退するという手段も――」
ドラグギルディ「ならん。我らはあくまで攻める側よ。そのような逃げ腰な真似が、我らに許されるはずもなかろう!」
スパロウギルディ「しかしいつまでも手をこまねいているわけにもいきませぬぞ。もはやなまはかな戦士をぶつけてもいたずらに戦力を削いでいくだけの消耗戦にしかなりませぬ。なによりこの世界――例の作戦が、はかどりませぬ」
ドラグギルディ「ツインテールの戦士による『無敵の守護者』の偶像の定着。それにより、世界にツインテール属性のエレメーラを芽吹かせる作戦、か」
スパロウギルディ「はい。おそらく、ポニーテイルの戦士の登場が大きいのでしょう。彼奴はホーリーブラックの皇族だというのに、メディアをうまく使い話題を大きく広げています。そのせいか、この世界はツインテールで寡占されるどころかポニーテイルが流行し始める始末……!」
ドラグギルディ「……ふむ。確かにホーリーレッドも原因のひとつであろう。しかし一番の原因は、ホーリーブラックのツインテールにこそある」
スパロウギルディ「……と、申しますと?」
ドラグギルディ「ホーリーブラックのツインテールは確かに強大であるが、それだけだ。彼女のツインテールでは、この星にツインテールのエレメーラを芽吹かせることは決してできないだろう」
スパロウギルディ「……?」
ドラグギルディ「分からぬか。いや、良い。――我が行く」
スパロウギルディ「ドラグギルディ様が!? まだ作戦も途中ですのに、あなた様が自ら行かれるなど!」
ドラグギルディ「くどい!」
スパロウギルディ「!」
ドラグギルディ「それでは参るとしよう。……部下どもには、副官のおぬしが我の出陣を伝えておくのだぞ」
スパロウギルディ「……はっ! かしこまりました、ドラグギルディ様!」
198: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/09(金) 14:49:22.69 ID:O+jcRkC30
ラビットギルディ「何故だ、何故わからぬ!? 寂しいと死んでしまうという儚さをその身に宿した天使の――」
ほむら「その理解が浅いと、わたしはそう言ってるのよ! ただただ兎耳の外見だけに囚われず、内面に美を見出すまでは良いわっ。けれども兎耳、ひいては兎の素晴らしさはその献身にこそあるのよ!!」
ラビットギルディ「け、献身――!?」
ほむら「そうよ! かつて伝説にまで召し上げられた月の兎のように、己の身を顧みず人を助ける献身、健気さはまどかに通じるものがあるわ。どこか愚かで、それでも振り払いきれない尊さと高潔さがある――だからこそ、まどかには兎耳が似合うのよ!」
さやか『そこでまどかにつなげるのかー。すごいなほむらは。何でもありだよ』
まどか『えへへ』
さやか『まどかはまどかで嬉しそうだし……はあ。なんなんだよ、もう』
QB『ほむらっ。もう属性力の解放は十分だ!』
ほむら『ええ!』
ほむら「ラビット・オン」
ラビットギルディ「なに!? こ、この桃色の炎は――」
ほむら「これは、かつてのあの子の弓の先に宿っていた揺らめき。幾度もその身を犠牲にして世界を救った、献身の象徴よ!」
まどか(……かつてのあの子?)
さやか『ん? まどか、どうしたの? 何か顔が怖いんですけど……』
まどか『へ!? な、何でもないよ!?』
ラビットギルディ「こ、これが献身の輝き……兎耳の宿る奇跡の光だというのか!? ぐ、ぐぁああああああ!」
チュドオオオオオオオオン!
ほむら「献身の象徴で競い合おうなんて、愚かなことをしたわね、ラビットギルディ。幾千万の平行世界があろうとも――まどかに勝る献身があるはずがないのよ」
199: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/09(金) 14:53:56.78 ID:O+jcRkC30
さやか『いやー、今日も快勝だったね』
まどか『お疲れ様、ほむらちゃん!』
ほむら「ありがとう、まどか。でも正直、敵が弱すぎるのよね。代わり映えしない相手ばかりで、ちょっと作業みたいになってるところはあるわ」
さやか『ほう。てか、こんな山奥に現れるなんて、さっきのやつ野生の兎まで守備範囲だったんじゃ――ほむら並に守備範囲広いな』
ほむら「……美樹さやか。戻ったら覚えてなさいよ」
さやか『ぬえ!?』
まどか『あははっ……ところで、ほむらちゃん。さっき言ってた『かつてのあの子』って、だぁれ?』
ほむら「ぇ!?」
ほむら(もちろん他の時間軸のまどかのことだけど、それを話すわけには――)
まどか『ほむらちゃんが戻ってきたら、その話をゆっくり聞きたいなって――』
杏子『あー、なんだよ! あたしがマスコミ相手にしてる間に、もう終わっちまったのかよー』
205: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/09(金) 23:40:36.72 ID:O+jcRkC30
ほむら「――! 杏子! どうしたのいったい? なにか緊急な用なのね!」
ほむら(た、助かったわ! このまま話をごまかしましょうっ。とりあえずは、杏子を何とか家に入れないと……!)
さやか(必死すぎだろ……。いや、わからなくもないけどさ)
杏子『え? いや、さっき言った通り、もう戦い終わっちまったのか、ってこと聞きたかっただけだよ』
ほむら「ええ、いまから帰るからよかったらあなたも――……っ!」
ほむら(――上ッ!)ヒュッ
ドゴオオオオオオオン!
ドラグギルディ「……ふむ。さすがにこの程度は避けるか」
ほむら(こいつは……!)
杏子『なんだ!? ほむら、なんかあったのか!?』
ほむら『増援よ。しかも、明らかにいままでのやつらとは格が違うわ。杏子。あなたも早く来なさい』
杏子『おう!』
まどか『……ほむらちゃん、大丈夫?』
ほむら『心配いらないわ、まどか』
206: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/10(土) 00:02:45.97 ID:x5N1/4AB0
ほむら(さっきのことをごまかせそうな雰囲気になったことには感謝したいくらいだけど……こいつ相手に一人だと正直不安ね。杏子来るまで時間稼ぎをしないと)
ほむら「……不意打ちなんて、あなた達らしくないわね」
ドラグギルディ「不意打ち……? あれが不意打ちとは――それはすまぬな。あの程度、軽々さばくものでなければ尋常に立ち会うまでもないものでな!」
ほむら「くっ! 大した自信ね……!」
ドラグギルディ「自負と言って欲しいな、ホーリーブラックよ。――む」
杏子「遅れたな、ほむら! ……そいつが今日の敵か」
ほむら「ええ。見ての通り、今までの奴らとは格が違うわ」
杏子「へえ! 確かにこのびりびり来るプレッシャーは……並じゃねえな」
ドラグギルディ「ふむ。ホーリーレッドも来たか。それでは名乗ろう。わが名はドラグギルディ! 全世界全宇宙すべてを並べ、ツインテールを愛するにかけて我の右に出る者はいないと自負している!!」
さやか『ほむら達はいつになく緊迫感にあふれてるのに、敵のノリがいつも通り過ぎる……!』
ドラグギルディ「ふがいない部下たちが退屈させた。だが、大事な同胞であったことには変わりない。仇は討たせてもらう!」
杏子「……ほむら。こいつはあたし一人に任せろ」
207: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/10(土) 00:20:43.04 ID:x5N1/4AB0
ほむら「何ですって? あなた――」
杏子「つべこべ言うなよ。あんたは連戦だろ? そこで少し休んでな。――ドラグギルディ。あんたの相手はこのあたしだ!」
ほむら「ッ!」
ドラグギルディ「ほう……。このドラグギルディに一人で挑むか、ホーリーレッドよ」
杏子「当たり前だろ? 一対一で相手を制してこその正義の味方だ!」
ドラグギルディ「その意気や良し! ――参る!」ヒュン!
杏子「……なっ!?」
ほむら(疾いっ!)
ドラグギルディ「ふんっ!」
バッキイン!
杏子「う、ぐぐぐぐ……!」
ドラグギルディ「なに? 槍、とな。映像データにはなかったが……それにしても、そのような力任せの受けでも折れぬとは、頑丈だな。人間の作ったものだとは思えぬ!」
QB『僕が調整して出せるようにした武器だからね』
さやか『そんなのんきなこと言ってる場合じゃないでしょう!?』
杏子「こ、の……野郎がぁ!」ヒュッ!
ドラグギルディ「こそばゆいな! 我にじゃれついているのか?」
ほむら(あいつ……やっぱりケタ違いだわ!)
杏子「つべこべ言うなよ。あんたは連戦だろ? そこで少し休んでな。――ドラグギルディ。あんたの相手はこのあたしだ!」
ほむら「ッ!」
ドラグギルディ「ほう……。このドラグギルディに一人で挑むか、ホーリーレッドよ」
杏子「当たり前だろ? 一対一で相手を制してこその正義の味方だ!」
ドラグギルディ「その意気や良し! ――参る!」ヒュン!
杏子「……なっ!?」
ほむら(疾いっ!)
ドラグギルディ「ふんっ!」
バッキイン!
杏子「う、ぐぐぐぐ……!」
ドラグギルディ「なに? 槍、とな。映像データにはなかったが……それにしても、そのような力任せの受けでも折れぬとは、頑丈だな。人間の作ったものだとは思えぬ!」
QB『僕が調整して出せるようにした武器だからね』
さやか『そんなのんきなこと言ってる場合じゃないでしょう!?』
杏子「こ、の……野郎がぁ!」ヒュッ!
ドラグギルディ「こそばゆいな! 我にじゃれついているのか?」
ほむら(あいつ……やっぱりケタ違いだわ!)
208: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/10(土) 00:23:33.73 ID:x5N1/4AB0
ドラグギルディ「そうら、少し速くするぞ!」ヒュヒュヒュッ!
杏子「うわぁ!?」ガガガガ!
ほむら(なんていう太刀筋……まるで一太刀が数十本の剣で斬っているようにすら見える!)
杏子「く、そぉっ……!」
ドラグギルディ「ほう! しのいだか、我がツインテールの剣技を!」
杏子「ツインテールの剣技……!? お前の二刀は、ツインテールをなぞってるっていうのか!」
ドラグギルディ「当然よ! ツインテールを心に写し、その心の形をなぞれば太刀筋がツインテールになるのは必然! とくと味わえっ。極めに極めた我が刃を!」
杏子「ぐ、ぅう……うぉおおおおお!」
ドラグギルディ「――なに!?」
ほむら(あの神速の剣技を受けきった!)
ドラグギルディ「……見事だ。いまのをしのげるとは思わなかったぞ」
杏子「ぜぇ、はあ……このくらいは、当然だ、ドラグギルディ! お前の二本の剣がツインテールだっていうならなぁっ――あたしの槍はポニーテイルなんだ!」ダッ!
ドラグギルディ「ふっ。そのように真っ直ぐなだけでは、揺れる髪の軌跡をなぞることは到底――なにぃ!?」
さやか『槍がバラバラに分かれた!?』
QB『多節坤の一種だよ。杏子にはあれがふさわしいと思ってね』
杏子「どうだ! これが、あたしの――ポニーテイルの槍技だ!」
209: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/10(土) 00:55:27.08 ID:x5N1/4AB0
ドラグギルディ「ふ、ふふ……うわーっはっはっはっは!!」
杏子(くそっ。槍でぐるぐる巻きにしているってのに、こいつは……!)
ほむら「この状況で、笑っている……!」
ドラグギルディ「なかなかどうして……そのポニーテイル属性に、燃えるような熱い心。ふっ。あの熱血の大馬鹿者を思い出すな」
杏子「! お前っ、フェニックスギルディのことを知ってるのか!?」
ドラグギルディ「なに? ……なるほど。貴様のその力、あやつの差し金か。なるほど。ホーリーレッドよ。貴様はあやつの魂の炎を受け取ったというわけか。――しかし、だ!」バキイン!
杏子「!?」
さやか『うそ……!?』
まどか『槍の鎖を、砕いた!?』
QB『そんなバカな!? あの耐久値の物体を壊すなんて、あのエレメリアンは一体どれだけの力を宿しているというんだ……!』
ドラグギルディ「ホーリーレッドよ! あやつが幾度も蘇る不屈の不死鳥だとしたら、貴様はまだ殻をかぶったヒナ鳥同然よぉ!!」
バキイイイイ!
杏子「ぐ、ぁ、あああっ――うわぁああああああああ!」
210: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/10(土) 01:05:03.68 ID:x5N1/4AB0
ほむら「杏子!」
杏子「……」シュウウ……
まどか『杏子ちゃんの変身が……』
QB『彼女のテイルギアの限界を超えてしまったんだ。しばらくは杏子が変身することは不可能だよ』
さやか『そんな、杏子……』
ドラグギルディ「ここまでだな、ホーリーレッドよ。あやつとも語り合ったことがあり、その時は終始平行線だったが……一本のポニーテイルが二本のツインテールに勝る道理はないのだ」
杏子「なんだと……!? 数の問題じゃねぇだろ! ポニーテイルには、たった一本きりだからこその信念と情熱がこもってるんだ!」
ドラグギルディ「本数の問題ではないというのには、一理ある。だがなホーリーレッドよ。――一本きりでは、淋しいではないか!」
杏子「!!」
ドラグギルディ「寝ていろ、少女よ。貴様の出番はここまでだ。そのエレメーラ、起きた時には情熱とともに消えておろう」
杏子「くそ、が……」ガクリ
さやか『……ぁ、きょ、杏子! ねえ、杏子! 返事をして! ねえ!』
まどか『杏子ちゃん……』
QB『ダメだ。完全に意識が途絶えてしまってる』
ドラグギルディ「さて、残るは貴様一人だ。ホーリーブラックよ」
ほむら「くっ……」
杏子「……」シュウウ……
まどか『杏子ちゃんの変身が……』
QB『彼女のテイルギアの限界を超えてしまったんだ。しばらくは杏子が変身することは不可能だよ』
さやか『そんな、杏子……』
ドラグギルディ「ここまでだな、ホーリーレッドよ。あやつとも語り合ったことがあり、その時は終始平行線だったが……一本のポニーテイルが二本のツインテールに勝る道理はないのだ」
杏子「なんだと……!? 数の問題じゃねぇだろ! ポニーテイルには、たった一本きりだからこその信念と情熱がこもってるんだ!」
ドラグギルディ「本数の問題ではないというのには、一理ある。だがなホーリーレッドよ。――一本きりでは、淋しいではないか!」
杏子「!!」
ドラグギルディ「寝ていろ、少女よ。貴様の出番はここまでだ。そのエレメーラ、起きた時には情熱とともに消えておろう」
杏子「くそ、が……」ガクリ
さやか『……ぁ、きょ、杏子! ねえ、杏子! 返事をして! ねえ!』
まどか『杏子ちゃん……』
QB『ダメだ。完全に意識が途絶えてしまってる』
ドラグギルディ「さて、残るは貴様一人だ。ホーリーブラックよ」
ほむら「くっ……」
215: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/10(土) 23:03:10.80 ID:x5N1/4AB0
ほむら(この理不尽までの強さ、そして杏子との戦いの時に口走っていた信念の数々……こいつの属性力は、あれしか考えられないわね)
ほむら「ドラグギルディ、あなたは……正真正銘、ツインテール属性を持つエレメリアンなのね!」
ドラグギルディ「然り。他のエレメーラを身に宿す他の者どもとは違い、我こそが純粋にツインテールを愛し、ツインテール属性ただ一つを極めしものよ! しかし……ふむ、ホーリーブラックよ。おぬしのツインテールを映像で見たときから引っかかっておったが、間近で見て確信したぞ」
ほむら「……?」
ドラグギルディ「ホーリーブラックよ。貴様のツインテール属性……貴様ものだけではないな!」
まどか『え!?』
ほむら「……なぜそれを?」
ドラグギルディ「ツインテールの審美眼磨けば、その程度見抜くことなど造作もない。貴様のツインテールは、貴様という人間に対してあまりにも強大なのだ。おぬしのその頭は、ツインテールをたなびかせているのではない。身の丈合わぬ強大なツインテールに振り回されておるだけよ」
ほむら「私がまどかのツインテールに振り回されて、いる……?」
ドラグギルディ「おうともさ! そのツインテールがもともと誰のものかは知らないが……他人のツインテールを抱えてなんになる。自らのツインテールを磨きぬいてこそのツインテールよ。貴様にその受け止めきれないツインテールは分不相応! はっきり言って――似合わぬのだ!」
ほむら「!」
217: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/10(土) 23:30:27.20 ID:x5N1/4AB0
ほむら「わ、私が――私じゃ、まどかのツインテールを、受け止めきれない……!?」
さやか『ほむらが戦う前から死にそうなくらい打ちのめされてるんだけど!?』
QB『エレメーラの競い合いは精神力の強さで決まる。たとえそれが論争でも……相手の信念に押し負けた時点で、ほむらは剣を合わせるまでもなく敗北するだろう』
まどか『……ほむらちゃん』
ドラグギルディ「貴様自身にも心当たりがあるのではないか? 貴様はツインテールを守っているのではない。そのツインテールに、守られているだけなのだと!」
ほむら「ぁ……」
ドラグギルディ「作戦がうまくゆかぬのも道理だ。そのようなツインテールの持ち主が、他人にツインテール属性を芽吹かせることなどできるはずもいかぬゆえな!」
ほむら「……私、は。私のツインテール、は……」
ドラグギルディ「……反論というには、あまりにも弱弱しい口調だな。立つ気力すらないと見える」
ほむら「……」
ドラグギルディ「ポニーテイルの戦士ともども、貴様には退場してもらおう。その後、この星の守護者にふさわしい新たな戦士を選定する。無敵の偶像を作る役目、貴様には荷が勝ちすぎた」
ほむら「…………」
218: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/10(土) 23:50:12.33 ID:x5N1/4AB0
ほむら(私は、まどかを守るためにテイルギアを手に取ったはずだった。ソウルジェムを握ったあの時と同じように。でも――)
ほむら「結局、私はまどかに守られるままだったのね……」ガクリ
さやか『ほむら!? どうしたの!? 立ちなよっ。まだあんたは、戦ってすらいないんだぞ!?』
ほむら「ごめんなさい、さやか……」
さやか『なっ!?』
ドラグギルディ「ホーリーブラック……貴様には分不相応なツインテール属性、貰い受けるぞ」
ほむら「…………」
さやか『誰が謝れなんて言ったよ、ほむらぁ! ふざけんなっ。あたしは立てって言ってるだろ!』
QB『無駄だよ、さやか。暁美ほむらは折れてしまった。先ほどの対話で敗北を受け入れてしまっている』
さやか『うっさい! まどか、あんたからも何か言ってやってよ!!』
まどか『……』
ほむら(ごめんなさい、さやか。……ごめんなさい、まどか。私は、あなたのツインテールを――守れなかった)
ドラグギルディ「さらばだ、ホーリーブラックよ。好敵手になりえなかった、弱き戦士――」
まどか『……違う』
ほむら「まどか……?」
ドラグギルディ「――む?」
まどか『ほむらちゃん、それは違うよ! ほむらちゃんがわたしのツインテールを受け止めきれないなんて、そんなことあるわけないよ!』
219: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 00:11:31.65 ID:qwVZWZgB0
ほむら「ち、違うって……で、でも私は……!」
まどか『ほむらちゃんが違うって言っても違うんだもん!』
ほむら「まどか……」
ドラグギルディ「ホーリーブラック……まさか貴様、ツインテールと対話をしているのか!?」
さやか『ツインテールと対話!? なに言ってんだあいつ!?』
QB『でも好都合だ。静観していてくれている』
ドラグギルディ「ツインテールとの対話は神聖な儀式……邪魔立てするわけにはいかぬな」
さやか『……え? なに? キュゥべえ。人間ってツインテールと対話できるの? 無理だよね?』
QB『不可能とは言わないよ。強大なツインテール属性を持つものなら、あるいは――』
さやか『そいつ人間じゃないから! ツインテールと会話し始めたら、そいつはもう人類の皮被ったツインテールだから!』
221: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 00:38:55.99 ID:qwVZWZgB0
まどか『ほむらちゃん。わたしのツインテールを受け止めきれるのは、世界のどこを探したってほむらちゃん以外にいないんだよ』
ほむら「まどか……。あなたは優しいからそう言ってくれるけど、やっぱり私には無理だったの。いくら強がって見せたって、私の本質は弱いまま。そんな私があなたのツインテールを受け止めきるなんてこと――」
まどか『ううん、ほむらちゃん。諦めるのはまだ早いよ。あなたの中にいるわたしを、ちゃんと感じて?』
ほむら「私の中にいる、まどか……?」
まどか『うん、そうだよ。ほむらちゃんが変身している間、わたしはいつもほむらちゃんの中にいたんだよ? それを、しっかり感じてみて?』
ほむら「まどかが、私の中に……」
まどか『わたし、ほむらちゃんが戦ってる時は、ずっとほむらちゃんのことを感じてた。ほむらちゃんがどんな気持ちで戦ってるのか、つながっている間はずっと伝わってきたの。だから、ほむらちゃんにだって感じれるはずだよ!』
ほむら「わたしの中にいるまどかを感じる……」
ほむら(――ぁ。もしかして、この温かくてどこまで広がる優しいぬくもりが――)
まどか『どう、ほむらちゃん?』
ほむら「うん……うん! 感じ取れた! 私の中に、まどかがいる!」
まどか『そっか……。なら、もう大丈夫だよ、ほむらちゃん。でも、忘れないでね』
ほむら「……うん」
まどか『ほむらちゃんは独りじゃないよ。いつだって、聞こえなくても見えなくても、わたしはほむらちゃんの傍にいるの』
ほむら「……ええ。わかったわ、まどか。憶えてる。決して忘れたりしない。だから私は――戦い続ける」
まどか『うんっ。ほむらちゃん――頑張って!』
ほむら「まどか……。あなたは優しいからそう言ってくれるけど、やっぱり私には無理だったの。いくら強がって見せたって、私の本質は弱いまま。そんな私があなたのツインテールを受け止めきるなんてこと――」
まどか『ううん、ほむらちゃん。諦めるのはまだ早いよ。あなたの中にいるわたしを、ちゃんと感じて?』
ほむら「私の中にいる、まどか……?」
まどか『うん、そうだよ。ほむらちゃんが変身している間、わたしはいつもほむらちゃんの中にいたんだよ? それを、しっかり感じてみて?』
ほむら「まどかが、私の中に……」
まどか『わたし、ほむらちゃんが戦ってる時は、ずっとほむらちゃんのことを感じてた。ほむらちゃんがどんな気持ちで戦ってるのか、つながっている間はずっと伝わってきたの。だから、ほむらちゃんにだって感じれるはずだよ!』
ほむら「わたしの中にいるまどかを感じる……」
ほむら(――ぁ。もしかして、この温かくてどこまで広がる優しいぬくもりが――)
まどか『どう、ほむらちゃん?』
ほむら「うん……うん! 感じ取れた! 私の中に、まどかがいる!」
まどか『そっか……。なら、もう大丈夫だよ、ほむらちゃん。でも、忘れないでね』
ほむら「……うん」
まどか『ほむらちゃんは独りじゃないよ。いつだって、聞こえなくても見えなくても、わたしはほむらちゃんの傍にいるの』
ほむら「……ええ。わかったわ、まどか。憶えてる。決して忘れたりしない。だから私は――戦い続ける」
まどか『うんっ。ほむらちゃん――頑張って!』
222: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 00:52:04.93 ID:qwVZWZgB0
ほむら「――待たせたわね、ドラグギルディ」
ドラグギルディ「対話は終わったが……そのツインテール、完全に己のものにしたようだな。まるで見違えたぞ」
ほむら「バカを言わないで、ドラグギルディ。もともとこのツインテールは、私とまどかのもの。自分のものにしたんじゃない。このツインテールは、二人で一つなのよ!」
まどか『ほむらちゃん、いまだよ!』
ほむら『ええ!』
ほむら「ツインテール・オン!」
ドラグギルディ「ほう! 弓か。それが貴様のツインテールの象徴だというわけだな。……素晴らしい輝きだ」
ほむら「ええ。この武器こそが、私たちにふさわしいわ。いくら世界が変わろうとも、まどかが傍にいる限り――私は戦い続けられる!」
ドラグギルディ「だが、いかなる輝きで照らそうとも、覆らぬ闇もあるのだぞ! 一人が二人になったところで、何も変わらぬ! 貴様のツインテールの寿命が今少し伸びただけだ!」
杏子「二人……? それは違うぜ、ドラグギルディ」ヨロリ
さやか『杏子!』
QB『そんな……無茶だ! 君の身体はまだ変身できるほど回復していない!』
ほむら「杏子。あなた、大丈夫なの?」
杏子「くだらねえこと聞くな。限界なんて、気合と根性があればどうとでもなんだ。気合と根性が、この世の全てを解決すんだよ! ――テイル・オン!」
まどか『杏子ちゃん、ほんとに変身を……』
さやか『あのバカッ、無茶して……!』
杏子「さあ、これで仕切り直しだ!」
ドラグギルディ「ふっ――ふはは、ふはははははははは!」
ドラグギルディ「対話は終わったが……そのツインテール、完全に己のものにしたようだな。まるで見違えたぞ」
ほむら「バカを言わないで、ドラグギルディ。もともとこのツインテールは、私とまどかのもの。自分のものにしたんじゃない。このツインテールは、二人で一つなのよ!」
まどか『ほむらちゃん、いまだよ!』
ほむら『ええ!』
ほむら「ツインテール・オン!」
ドラグギルディ「ほう! 弓か。それが貴様のツインテールの象徴だというわけだな。……素晴らしい輝きだ」
ほむら「ええ。この武器こそが、私たちにふさわしいわ。いくら世界が変わろうとも、まどかが傍にいる限り――私は戦い続けられる!」
ドラグギルディ「だが、いかなる輝きで照らそうとも、覆らぬ闇もあるのだぞ! 一人が二人になったところで、何も変わらぬ! 貴様のツインテールの寿命が今少し伸びただけだ!」
杏子「二人……? それは違うぜ、ドラグギルディ」ヨロリ
さやか『杏子!』
QB『そんな……無茶だ! 君の身体はまだ変身できるほど回復していない!』
ほむら「杏子。あなた、大丈夫なの?」
杏子「くだらねえこと聞くな。限界なんて、気合と根性があればどうとでもなんだ。気合と根性が、この世の全てを解決すんだよ! ――テイル・オン!」
まどか『杏子ちゃん、ほんとに変身を……』
さやか『あのバカッ、無茶して……!』
杏子「さあ、これで仕切り直しだ!」
ドラグギルディ「ふっ――ふはは、ふはははははははは!」
223: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:11:18.68 ID:qwVZWZgB0
ドラグギルディ「まだ幼子どもと思っていれば、瞬きの間にみるみる成長していく! 愉快っ、何たる愉快なことか!」
杏子「なめるなよ、ドラグギルディ」
ほむら「ここから先、あなたに楽しめるヒマがあると思わないことね!」
ドラグギルディ「むろん! 侮る気持ちなど毛頭ない。ここから先は――我も命を懸けよう!」
さやか『なぁ!?』
まどか『ドラグギルディさんが――ツインテールに!?』
ドラグギルディ「これこそが我が最終闘体、ツインテールの竜翼陣(はばたき)! ツインテールの属性を極限まで解放した、見敵必殺の技よ!」
QB『なんということだ……』
まどか『でも、あのツインテール……きれい』
さやか『うん。男がツインテールなんて変なはずなのに……』
杏子「羞恥心を捨てるとか、そういう開き直りとは格が違うな……!」
ほむら「あなたのその自信は、どこから来ているというの?」
ドラグギルディ「男子に許されしは、ツインテールを愛でることだけではない。自らツインテールになる。それがツインテール属性を持つ者の本分よっ。――ゆくぞ、ホーリーブラック、ホーリーレッド!」
ほむら「受けて立つわ!」
杏子「来い! 今度こそ、負けねぇ!」
224: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:31:10.23 ID:qwVZWZgB0
杏子「うぉおおおおおおおおおおおおおお!」
ドラグギルディ「ぬぁあああああああああ!」
ガッキィイイイイイン!
ドラグギルディ「ぬう! 先ほどよりもはるかに強さを増したな!」
杏子「ったりめーだ! 気合が違うんだよ!!」
ドラグギルディ「だが、それでも及ばぬな!」
杏子「……悔しいけど、あたし一人だけだったらそうかもな。――でもな!」
ドラグギルディ「……!」
ほむら「――受けてみなさい、ドラグギルディ」キリリッ
ドラグギルディ「その矢に込められたツインテールの輝き……! ここに来てさらに輝きを増すとは――貴様のツインテールは底なしか!?」
ほむら「終わりなきものの頂点である宇宙でさえ、まだ成長し続けているという矛盾。心とは、宇宙と同義よ」
まどか『形がないからこそ、そこには終わりも見えずに果てなく成長する』
まどほむ「『だから、わたし達のツインテールのつながりは、無限!』」
杏子「……ああ。そうだな」
さやか『やっちゃえ、ほむらとまどか!』
まどほむ「『必殺――フィニトラ・フレティア!』」
225: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:54:35.16 ID:qwVZWZgB0
ドラグギルディ「ぐぉおおおおおおお! この弓の軌跡、一本一本がツインテールをなぞって……!?」
ほむら「当然! たなびくまどかのツインテールのすべてを込めた技よ。幾千万のその軌跡、まどかのツインテールを受け止めた今の私に表現することはたやすいわ!」
さやか『けど……!』
ドラグギルディ「ぬ、ぅ、おおおおおおおおおおおおおお!」
杏子「あいつ、あの弓の雨をさばいてやがる!」
まどか『そんな!? わたしとほむらちゃんのツインテールを振り絞った全力なのに……!』
ほむら「……」
カチリ
ドラグギルディ「惜しかったな、ホーリーブラックよ。確かにすさまじい力――ぐはぁ!?」
ほむら「……前から見たあなたは全身傷だらけだったけれども」
まどか『え!?』
さやか『ほむらが、いつの間にかあいつの背後に!?』
ほむら「背中はきれいなものね。……背後から射抜いたのが申し訳ないほどだわ」
226: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 02:05:27.06 ID:qwVZWZgB0
杏子「ほむら、お前……どうやって?」
QB『……あの移動は、短距離ワープ? いや、しかし属性力の解放も行っていなのに、どうして……』
ドラグギルディ「この背中、いつか出会う至高の幼女にゴシゴシ流してもらうため、守り抜いていたが――ごふっ。初めから、あの弓の雨は囮であったか」
ほむら「いいえ。あれで決まればそれが一番よかった。――卑怯というかしら」
ドラグギルディ「く、くは、ははは! まさか! 一度目にすれば貴様の能力の検討も付く。フォクスギルディとの戦いには目を通しておったし、おぬしと同じような能力を持った知り合いもいる。警戒は怠っていなかったが、その札を切ったタイミングが秀逸……貴様が一枚上手だっただけだ!」
ほむら「……そう」
ドラグギルディ「唯一の疑問は、貴様にその能力に対応したエレメーラがないはずだということだが……貴様も、因果な運命にあるようだな」
ほむら「……」
まどか『……?』
ドラグギルディ「運命と因果の糸に巻き取られたそのツインテール、からまりをほどいて正しい形に結び直せればよいな」
ほむら「……ツインテールの形に、かしら?」
ドラグギルディ「無論だ! それでは来世でまた逢おうぞっ。わーっはっはっはっは!!」
チュドオオオオオオオオン!!
杏子「……最期までポジティブなやつ」
ほむら「さようなら。そして……ありがとう、ドラグギルディ」
234: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/13(火) 00:25:10.39 ID:SrqZmT6m0
――通学路――
さやか「ねえ、早乙女先生の属性力ってなんだと思う?」テクテク
まどか「え? いきなりどうしたの、さやかちゃん」テクテク
ほむら「そうね……わからないけど、眼鏡属性とかかしら? ぱっと見た感じ、それぐらいしか思いつかないわね」テクテク
さやか「いや、でもさ。早乙女先生が彼氏さんと長く続かないのって、実は特殊なエレメーラがあるからじゃ――」
ほむら「憶測でそういうこと言うのはやめて差し上げなさい」
まどか「そうだよぉ。そういうの、良くないよ?」
さやか「あはは、ごめんごめん。でも、ほむらがホーリーブラックになってから、けっこう思ったりするんだよね。この人はどんなエレメーラを持ってるんだろう、ってさ」
ほむら「……まあ、わからなくもないわね」
まどか「そういわれると……ママとか、どんなエレメーラを持ってるだろう……?」
さやか「バリキャリ属性……? いや、そんなのはないか。うーむ……」
さやか「ねえ、早乙女先生の属性力ってなんだと思う?」テクテク
まどか「え? いきなりどうしたの、さやかちゃん」テクテク
ほむら「そうね……わからないけど、眼鏡属性とかかしら? ぱっと見た感じ、それぐらいしか思いつかないわね」テクテク
さやか「いや、でもさ。早乙女先生が彼氏さんと長く続かないのって、実は特殊なエレメーラがあるからじゃ――」
ほむら「憶測でそういうこと言うのはやめて差し上げなさい」
まどか「そうだよぉ。そういうの、良くないよ?」
さやか「あはは、ごめんごめん。でも、ほむらがホーリーブラックになってから、けっこう思ったりするんだよね。この人はどんなエレメーラを持ってるんだろう、ってさ」
ほむら「……まあ、わからなくもないわね」
まどか「そういわれると……ママとか、どんなエレメーラを持ってるだろう……?」
さやか「バリキャリ属性……? いや、そんなのはないか。うーむ……」
235: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/13(火) 00:44:36.71 ID:SrqZmT6m0
ほむら「……エレメーラ、ね」
ほむら(……まだ十日と少ししか経っていない。いままでのループと同じ通学路なのに、何もかもが違ってる。いつもループだったら、この日、何をしていたかしら。巴マミは生きていたかしら? 美樹さやかは魔法少女になっていなかったかしら? ……ふふっ。なんだか、それすら遠い昔の出来事のようだわ)
さやか「そうそう。キュゥべえが言うには、あたしは幼馴染属性があるらしいんだよねぇ」
まどか「そうなの? わたしは、ツインテール属性の他には、リボン属性があるんだって!」
さやか「ほーう。リボンかぁ。仁美とかどうだろう。お嬢様属性?」
まどか「うぇひひ、ありそうだね」
ほむら(まどかとさやかと一緒に通学路を歩く。そんなささやかな、でも奇跡みたいな出来事が現実になってるのも、全部、元はと言えば属性力のおかげなのね。そう考えると、感慨深いわ)
さやか「ほむらは……もはや数えるのも難しいよね。あんた、自分で把握してる?」
ほむら「さあ? インキュベーターに一度すべて教えてもらったけど……あいつが言うには日増しに増えてるらしいわ」
さやか「マジかい」
まどか「ほむらちゃん、すごい!」
ほむら「ふふっ、まどかのおかげよ。……あと、杏子はポニーテイル属性と修道女属性の二つらしいわね」
さやか「杏子はそうだよねぇ。今や聖女様候補だし」
まどか「杏子ちゃん、この間、テレビに出てたよ。もう、日本の女の子の中でアイドルのマミさん以上に有名な人になっちゃってるよね」
ほむら「世界的な認識度だと、巴マミとは比べ物にならないわよ。いくら国民的とはいえ、しょせんはアイドルだもの」
さやか「あいつがねぇ。何か全然実感わかない」
236: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/13(火) 00:51:48.26 ID:SrqZmT6m0
ほむら(エレメーラ、エレメリアン、テイルギア。魔法少女も魔女もなく、だからこそ私達のそれぞれの立場も微妙に異なっている。何もかもがバカらしいほど新鮮で、けれどとても優しいこの世界にたどり着けた私は、とても幸運だわ。だから――)
『うわーっははは! ホーリーブラックにホーリーレッドよ! ドラグギルディ様を打ち倒し勢いづいてるだろうが、そうはいかんぞ! 我らにも頼もしき援軍が現れた!』
さやか「うわっ、またいつかみたいに空にスクリーンが!」
まどか「あはは……やっぱり、諦めないんだね」
ほむら「いまさら驚くようなことでもないわね」
タイガギルディ『スク水! 母なる星に身をゆだねる水の衣こそ、星の意思を継ぐエレメーラと言えよう! ドラグギルディの盟友、このタイガギルディがスク水のエレメーラをいただく!!』
ほむら「……予鈴まで、あとに二十分ね」
ほむら(間に合わせるには、十分で片づけないとね)
杏子『ほむら! さっきの見たか!?』
ほむら『ええ、もちろんよ。杏子、準備はいいかしら?』
杏子『おう! いつでもオッケーだ! エレメリアンとの戦いの出陣は、マスコミ連中から抜け出すチャンスだしな……! 絶対に逃がさねえ!!』
ほむら『……苦労、してるのね』
杏子『それを言うなよ……』
237: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/13(火) 00:58:28.74 ID:SrqZmT6m0
QB「さて、ほむら。杏子の準備もいいみたいだし、そろそろ転送するよ。変身してくれ」
ほむら「ええ。まどか、さやか。仁美には、今日の通学は合流できないって伝えておいてくれるかしら」
さやか「おう!」
まどか「うんっ!」
ほむら(さて、それじゃあ変身を――ぁ。そうだ。その前に……)
ほむら「……まどか」
まどか「どうしたの、ほむらちゃん?」
ほむら「いろいろごたごたしていて、私、結局部活を決めていなかったんだけど……」
さやか(……空気読んで黙っておくか)
ほむら「私、まどかと一緒の部活に入りたいわ。だから――今日の放課後、案内してくれるかしら」ニコリ
まどか「――うんっ、もちろん!」ニコリ
ほむら「ええ。まどか、さやか。仁美には、今日の通学は合流できないって伝えておいてくれるかしら」
さやか「おう!」
まどか「うんっ!」
ほむら(さて、それじゃあ変身を――ぁ。そうだ。その前に……)
ほむら「……まどか」
まどか「どうしたの、ほむらちゃん?」
ほむら「いろいろごたごたしていて、私、結局部活を決めていなかったんだけど……」
さやか(……空気読んで黙っておくか)
ほむら「私、まどかと一緒の部活に入りたいわ。だから――今日の放課後、案内してくれるかしら」ニコリ
まどか「――うんっ、もちろん!」ニコリ
238: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/13(火) 01:07:42.23 ID:SrqZmT6m0
ほむら「ありがとう、まどか。それじゃ、行ってくるわ」
まどか「いってらっしゃい!」
さやか「遅刻すんなよー」
ほむら(こんな、優しい世界だけれども、それでも私には戦う理由がある。バカらしく見えても、それでも切実な理由で襲ってくる敵から、最高の友達を守るために私は戦う力を手に入れた)
ほむら「インキュベーター。待たせたわね」
QB「早くしたほうがいいよ。杏子が焦れているようだ」
杏子『早くしろよ、ほむら! さっきの映像のことでマスコミの奴がうっせえんだ!』
さやか「……杏子のやつ、ほんと大変そうだなぁ」
まどか「ほむらちゃんの正体がバレなくて良かった。おかげでほむらちゃんを独り占め――じゃなくて、ほむらちゃんがヒーローだってことを知ってるの、わたし達だけの秘密にできるんだもんねっ」
ほむら「そうね。杏子の我慢もそろそろ限界だろうし、もう行くわ」
ほむら(だから、私は戦い続ける。まどかのツインテールを守るために、まどかと一緒に戦える幸福をかみしめて、声も高らかにこう叫ぶわ)
ほむら「――テイル・オン!」
239: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/13(火) 01:18:55.32 ID:SrqZmT6m0
原作:俺、ツインテールになります。& 魔法少女まどか☆マギカ
CAST
トゥアール役:キュゥべえ、鹿目まどか(ヒロイン要素のすべて)
観束総二及びテイルレッド役:暁美ほむら、佐倉杏子
蛮族さん役:美樹さやか(主にツッコミ)、佐倉杏子
・
・
・
・
・
・
とまあ、俺ツイの原作にならってゲーム風エンディングをやってみました。
正直このまま終わらしても良いくらい区切りが良いんですが、まだ続きます。
このままだと、マミさんアイドルやってるだけですし。仲間はずれいくない。
これで第一部完、というところです。
二部三部、蛇足にならないように努めていきます。
一応、第三部まである予定。とはいえ、アニメともまた違う方向に行きます。
また気が向いたら続きを投下します。
248: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 00:00:14.45 ID:saL5klBh0
ほむら「スクールスイム・オン!」
タイガギルディ「――ぐはぁっ。くっ、何故だ。邪道を信仰するおぬしに、なぜ俺が敗れる!?」
ほむら「簡単なことよ。旧態依然としたものにこだわるあなたに、勝機なんてあるはずない。それだけのことよ」
タイガギルディ「この俺を、旧スクを愚弄するか! 一つつなぎでは味気ないいま主流のスクール水着ではなく、昔ながらの旧スクこそが至高っ。女子の濡れる水着、決して露出面積が広いわけでもないというのに下腹部が開くという神秘……そこに桃源郷があるとなぜ理解できない!」
ほむら「否定するわけではないわ。旧スクール水着は素晴らしい。それは正しいわ。だからこそ、あと一歩踏み込めば良かった。だというのに、あなたは過去に満足しすがったままだった。……ただ止まっているだけのあなたが届かなかった場所を教えてあげるわ。それは――白スクよ!」
タイガギルディ「白、スク……だと!?」
ほむら「そうよ! 旧スクール水着にして、白スク。それこそが、無垢なるまどかをもっとも輝かせる水着なのよっ。それがわからないでスク水属性を語るなんて、万年早いわ!」
タイガギルディ「俺は、俺は停滞していたのか……? 旧スクが全ての水着の頂点と思い、それを布教してきたというのに……それは、思考の停止だったのか!?」
ほむら「そうね。一つだけの良さに執着するのは、ただの繰り返しにすぎないわ。その一つにいくつの美点を見出せるかこそが、愛するということなのよ」
タイガギルディ「そうか、ホーリーブラックよ……う、ぐぅっ。一度で、いい。俺の、腹の上で、ツインテールの幼女に――泳いで、欲しかった……!」
ほむら「……」
杏子「……」
タイガギルディ「スク水ぅううううう!」
チュドオオオオオオオオン!
ほむら「……さて、学校に行くとしましょう。遅刻しないで行けそうね」
杏子「……あーあ。ほとんど一人でやっちまってさ。あたしの分も残しとけよ」
ほむら「あら、ごめんなさい。それなら次は、あなたが頑張りなさい」
杏子「はいはいっと」
252: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 00:31:50.02 ID:saL5klBh0
――アルティメギル秘密基地――
エレメリアンA「報告します! タイガギルディ殿、ホーリーブラックに敗れました!」
スパロウギルディ「くっ、やはりか……」
スパロウギルディ(タイガギルディ様はドラグギルディ様と同期であったが、その実力はドラグギルディ様から大きく水をあけられていた。これも当然の結果か……)
エレメリアンA「ツインテールに見とれ、実力を発揮できなかったものと」
エレメリアンB「それと、スクール水着論争で心を揺さぶられたのが敗因かと……」
スパロウギルディ「……そうか。他の部隊からの応援はどうなっておる」
エレメリアンC「はっ、リヴァイアギルディ様、クラーケギルディ様の部隊が応援に来てくれていますが――」
スパロウギルディ「なに!? あのお二人が!」
エレメリアンC「いえ。部隊長ご本人は、いまご自分たちの侵攻している世界から離れるわけにはいかないらしく、隊員を派遣してくださっただけです」
スパロウギルディ「そう、か……。あのお二人が揃えばとあるいはと思ったが……そう都合よくはいかぬな」
スパロウギルディ(どうするか。ドラグギルディ様が倒された以上、この部隊は倒されたも同然。部下たちは弔い合戦だと息巻いておるが、このままでは本当の意味で無駄死にだ)
スパロウギルディ「ツケが、回って来たのか……」
スパロウギルディ(無敵の守護者の偶像を作り上げるため、部下の育成をロクにしてこなかった。ドラグギルディ様亡きいま、応援の隊員がいくら来てもこの部隊を率いる器のエレメリアンはいない)
スパロウギルディ「もはや、ここまで――」
エレメリアンD「スパロウギルディ様!」
スパロウギルディ「――どうした。そのように慌てて、何があった?」
エレメリアンD「念のためアルティメギルからこの世界への渡航者の記録を調べていたのですが……この世界には、あの方がいらっしゃいます!」
スパロウギルディ「あの方……? 誰のことだ」
エレメリアンD「はい。この世界には――」
253: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 00:35:23.92 ID:saL5klBh0
――教室――
さやか「――が来てるんだって!」
仁美「あら、珍しいですね」
まどか「偶然会えたりしないかなぁ――あ。ほむらちゃん、おはよう!」
さやか「おはよう。遅れなかったね」
仁美「おはようございます、ほむらさん」
ほむら「おはよう、まどか、仁美。ついでに、さやかも」
さやか「なんであたしがついでなんだよ……あ、いや、説明しなくていい。朝から落ち込みたくないし」
ほむら「賢明ね」
さやか「こいつは……って、ほむら。それより今日はニュースがあるんだよ!」
ほむら「なにかしら。そういえば、来る途中も学校全体が騒がしかったけれども、それが原因かしら」
まどか「あ。それじゃあ、さやかちゃんの言っていたことほんとなんだ」
さやか「親友に疑われてたとは心外だわー」
仁美「ふふっ。実は、珍しい方が登校してらっしゃるそうなんです」
さやか「あー! 仁美、人のセリフとらないでよ!」
ほむら「珍しい人って、誰かしら。そんな人、この学校にいたの?」
まどか「そっか。ほむらちゃん、転校してきて間が二週間もたってないもんね」
仁美「それなら、ご存じなくてもしかたありませんわ」
ほむら「……?」
さやか「実はね。あの巴マミさんが学校に来てるんだって!」
254: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 00:46:02.82 ID:saL5klBh0
ほむら「ふーん」
さやか「……あれ? あんまり驚いてないね」
ほむら「そんなこと言われても……巴マミが登校していたからって、何を驚けっていうの?」
さやか「えー、でもあの巴マミさんだよ? 国民的アイドルなんだよ? いつもアイドル活動で忙しくて、ほとんど登校してこないんだよ? それが今日は一緒の学校に来てるんだよっ? もっとテンション上がらない!?」
ほむら「ああ、そういうこと……」
ほむら(そういえばこの世界だと、巴マミはアイドルやってたわね)
ほむら「特に興味ないもの」
さやか「ちぇー、クールだね」
仁美「でも、ほむらさんらしいですわ」
まどか「うぇひひ。そうだね」
ほむら「そうかしら?」
まどか「うんっ」
和子先生「はぁーい、みなさん。朝のHRを始めますよ。着席してください」
さやか「早乙女先生も来たね」
仁美「ですわね」
ほむら「それじゃ、また後で」
まどか「うんっ」
255: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 01:00:01.85 ID:saL5klBh0
~下校時間~
キーンコーンカーンコーン
さやか「んー、終わったぁー……けど、あーあ。結局生マミさん、見れなかったなぁ」
まどか「教室、人でいっぱいだったもんね。遠目からでも無理だったよ……」
ほむら「というか、あれじゃ廊下を通るのも一苦労よ。人の迷惑も考えて欲しいわ」
仁美「ふふ。人気者も大変だということだけは、見てわかりますしたわね」
さやか「あー……言われてみると、一人似たような状況のやつ知ってた」
仁美「あら、そうですの?」
ほむら(杏子のことね)
まどか(杏子ちゃんのことかぁ)
さやか「うん。そいつも、いっつも――」
QB『エレメリアンの反応だ。近い……おそらく、見滝原中学の校門に現れた!』
さやか「――うえ!?」
ほむら「!」
まどか「!」
256: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 01:04:32.37 ID:saL5klBh0
仁美「あら? さやかさん、どうしましたの?」
さやか「へ!? い、いや、なんでもないよ、うん!」
ほむら『インキュベーター。状況を説明しないさい』
QB『説明も何も、窓から外を見てみればいいよ』
まどか『えっと、校門はあっちだよね……あ! あのカニみたいな人かな?』
クラブギルディ「わが名はクラブギルディ! ツインテール属性と常にともにある麗しいエレメーラ、ネーブ属性を後世に伝えるべく日夜邁進する探究者!」
さやか「ネーブ……って、うなじ!?」
仁美「あれは、アルティメギルの怪物……またこの学校に来たのですんわね」
まどか『……そういえば、ブルマ属性の人が来たことがあったね』
ほむら『ええ。でも、どうしてアルティメギルがここに……? インキュベーター。私とまどかのツインテール属性は、認識遮断なんちゃらでエレメリアンには探知できないようになってるのよね』
QB『認識遮断フィールドだよ。それによって、君達のツインテール属性は彼らに認識できなくなっている』
さやか『じゃあ、どうしてあいつはここに?』
QB『それは簡単なことだよ。君達以外にも強大なツインテール属性の持ち主が、この学校に所属していたというだけのことさ』
まどか『え? それって……』
クラブギルディ「ほほう。強大なツインテール属性を感じて参ったが、なかなかどうして……。これだけのツインテールならば、さぞかし素晴らしいうなじの持ち主なのだろうな!」
マミ「……!」
仁美「あら? 校門のところで怪物に襲われている人は……」
さやか「えぇ!? あれってもしかして――」
ほむら「巴、マミ……!?」
262: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 23:42:11.51 ID:saL5klBh0
さやか『ほむら、どうする? 学校の人前で変身するわけにも行かないし……』
まどか『だよね。……あ! トイレに行く?』
ほむら『……今回は杏子に任せるわ。いいわね、杏子』
杏子『おー、いいぞ。こっちはいつでも大丈夫だ。転送してくれ』
QB『わかったよ。今回は杏子だけ転送すればいいんだね』
ほむら『じゃあ、わたし達は見物してるわ』
まどか『うん。ごめんね、杏子ちゃん』
さやか『頑張れよ、杏子』
杏子『平気だよ。――テイル・オン!』
263: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/16(金) 23:52:34.75 ID:saL5klBh0
マミ「くっ、この……!」
クラブギルディ「ようし、捕まえたな。後ろを振り向かせい!!」
戦闘員「モケケ―!」
マミ「な、何を見ているのっ?」
クラブギルディ「うなじだ! よいか、ツインテールにする以上、うなじが見えるのは必然! 美は相乗され、輝きを増す! この素晴らしき関係を俺はもっと多くのものに分かってほしいのだ!」
マミ「あなたに教わることなんて何もないわ!」
クラブギルディ「たわけ! 男は背中で語り、女はうなじで語る! 世界の理を知らぬとは見た目とは裏腹に知性が低いか!」
マミ「なっ……!?」
クラブギルディ「さて。それではお主のツインテール属性をいただくとし――」
杏子「そこまでだぜ、エレメリアン!」
クラブギルディ「ぬっ、貴様は!」
マミ「あ、あなたは……」
杏子「ポニーテイルは愛と正義の架け橋! ホーリーレッドだ!」
264: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/17(土) 00:03:42.23 ID:TPiAUOYL0
クラブギルディ「来たか、ホーリーレッド! ホーリーブラックはどうした? よもや不意打ちを狙っているわけではあるまい!」
杏子「あいつはちょっと今日これねえからな。あたしが相手だ!」
クラブギルディ「なに!? タイガギルディ様の仇を討とうと参ったというのに……!」
杏子「今朝の奴か? 悪いな。今回はあたしの番って決まっててな。――食らえ!」
マミ「あ! 怪人が槍で真っ二つに!」
杏子(いや――手ごたえが、ない!)
クラブギルディ「ふっ、残像だ」
杏子「!」
マミ「えぇ!? いつの間に後ろに!?」
杏子(こいつ、速い!)
クラブギルディ「当然よ。俺は相手の後ろをとるスピードにかけては隊長たちをも上回ると自負している! ……そして、やはり素晴らしいうなじだ! 母なる大地に生命をはぐくむ海! この巻いたツインテールは、さながらそこに渦巻く渦潮か!」
マミ「きゃあっ!」
杏子「超スピードの変 じゃねーか!」
クラブギルディ「ふっ、残像だ。……しかし、ホーリーレッドよ。貴様のうなじを鑑賞するのに、そのポニーテイルは邪魔だな」
杏子「……なんだと?」
265: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/17(土) 00:19:07.27 ID:TPiAUOYL0
クラブギルディ「左右に分けられたツインテールと違い、ポニーテイルは後ろから見るうなじを隠している。……やはり、髪型はツインテールが至高よな」
杏子「……言ったな。なら、あたしのポニーテイルを味わってみろよ」ダッ
クラブギルディ「ふっ、それも残像だと――なにぃ!?」
マミ「や、槍がバラバラになって、カニの怪人をがんじらめに……」
クラブギルディ「この俺の動きを見切ったというのか!」
杏子「はっ。そもそもポニーテイルの後ろをとろうなんて、ちゃんちゃらおかしいぜ。あたしの真後ろは――ポニーテイルが伸びる正面だろう!?」
クラブギルディ「なにぃ……!」
杏子「ポニーテイルを見くびったな、クラブギルディ。とどめだっ。――グランドランサぁあああああああ!」
クラブギルディ「うぉおおおおお! うなじがっ、うなじが見えぬぅうううううう!」
チュドオオオオオオオオン!
杏子「……別にうなじが隠れていたっていいだろうがよ。髪型は他人に左右されないで、自分の好きなようにするのが一番だ」
266: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/17(土) 00:24:51.56 ID:TPiAUOYL0
ほむら「……終わったわね」
まどか「きょ――ほ、ホーリーレッド、カッコよかったね!」
仁美「ええ。さすがは、世界に名を知られているヒーローですわ」
さやか「やっぱ有名なんだよねぇ――あ、マスコミが来た」
まどか「うわぁ……なんだかわちゃわちゃしてる」
さやか「きょ……ホーリーレッドもそうだけど、襲われてたのが巴マミさんだからね。話題性はあるんだろうなぁ」
ほむら(……正体ばれないようになっていて、本当によかったわ)
仁美「でも、あれですと正門から帰れませんわね」
ほむら「裏門から行きましょう」
まどか「そうだね!」
さやか「賛成」
ほむら「それじゃ行きましょう。……ん?」
QB「……」
ほむら「……?」
267: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/17(土) 00:34:38.55 ID:TPiAUOYL0
ほむら『インキュベーター。外を見て、どうしたの? 戦闘はもうおわったわよ』
QB『さっきエレメリアンに狙われていた少女……巴マミ、と言ったかい』
ほむら『ええ。それがどうしたの?』
QB『彼女のツインテール属性はかなりのものだ。あるいは、テイルギアで変身が行えるほどかもしれない』
まどか『ええ!?』
さやか『ちょ、それ本当!?』
QB『ウソなんて吐かないよ』
さやか『ま、まじかぁ……大人気アイドルが、仲間に……!?』
まどか『キュゥべえの耳についてるテイルギアも、一個余ってるもんね』
ほむら『……いえ。別にわざわざ勧誘しなくてもいいんじゃないかしら』
QB『どういうことだい?』
ほむら『そのままの意味よ。いくら変身できるかもしれないと言っても、私たちは別に戦力不足にあえいでいるわけでもない。現時点で巴マミを仲間に引き入れる理由はないわ』
さやか『ええー。でもさぁ、アイドルとお近づきになれるせっかくのチャンスかもしれないじゃん!』
ほむら『アイドルなんてしてるくらいなんだから、巴マミだって忙しいでしょう。テイルギアの変身ありきで有名になった杏子とは違うのよ。彼女には自分で積み上げて来たものがあるの。そんな中にエレメリアン退治をしろなんて、無茶ぶりにもほどがあるわ』
まどか『……そっか。そうだよね。マミさんにだって、事情はあるもんね』
さやか『うん。確かに、そこんとこ考えてなかった』
QB『まあ、君達がそういうならそれでいいよ』
ほむら『分かってくれればそれでいいわ。もう帰りましょう。仁美が不審そうにしてるわ』
さやか『あ』
仁美「……? みなさん、先ほどからしきりに目配せして、何を……?」
さやか「あ、いや、その……」
仁美「……はっ。もしや、お三方、もう目と目で語り合うような関係に――」
さやか「またそのパターンかよ!」
まどか「うぇひひ。それじゃ、帰ろっか」
ほむら「ええ」クスリ
ほむら(巴マミ、ね。思うところがないわけでもないけれども……エレメリアンなんかには関わり合いにならないほうが幸せよね)
269: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/17(土) 00:47:29.41 ID:TPiAUOYL0
――マミルーム――
マミ「ただいまー」
マミ(ふうっ。今日はびっくりしたわ。まさか私がエレメリアンに襲われるなんて……)
マミ「エレメリアンには見慣れてるけど、今日の人は怖かったわ。……なんだか、ちょっと気味悪いことをしゃべってたし」
マミ(やっぱり優しいエレメリアンばっかりじゃないのね。あの侵攻宣言の時は、びっくりしたもの)
マミ「エレメリアンもいろいろらしいものね。……さて、今日はお休みだし、髪のお手入れをしないと。あの人は――」
マミ(さっきのただいまの時に返事がなかったってことは、もしかしてどこかに出かけて――)
ケルベロスギルディ「あらん。お帰りなさい、マミ。ごめんなさいね。編み物をしてて、ちょっと気が付くのが遅れたわ」
マミ「あ……ただいま」ニコリ
274: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:10:38.79 ID:UfCEYcpy0
マミ(三つある顔、地獄の番犬の名前を通りの容貌なのに、邪気のない穏やかな表情……同じエレメリアンでも、こんなに差があるのね)
ケルベロスギルディ「さて、それじゃあ髪のお手入れをしちゃいましょうか」
マミ「うん。お願い」クスリ
マミ(それに、このおかまさんみたいな口調も、安心できる要因の一つなのよね)ニコニコ
ケルベロスギルディ「て言っても、あなたは自分できちんと手入れしてるもよねぇ。素材もいいのに手も抜かない、まさにアイドルの鑑だわ。ほれぼれしちゃう!」
マミ「それは……あの事故の時、あなたに助けられて見出された才能だから。おろそかにすることなんてできないわ」
ケルベロスギルディ「あらん、それはもともとあなたが持っていたものよ。それに、あの事故のことは悔やんでも悔やみきれないわ。滅びゆくアタシの属性の未来に絶望して、もう戦いに疲れた時にふらりと訪れた世界。そこで、あの事故現場を目撃したけれども……結局、あなた一人しか助け出すことしかできなかった。他の人間、あなたの両親は――」
マミ「それはっ、あなたの責任じゃないわ、ケルベロスギルディ!」
ケルベロスギルディ「そう言ってくれるのは嬉しいけれどもね、人間の命はそんなに軽いものじゃないの。それが戦いのさなかでも、敵に背中を見せてでも救わなければないらないのよ。アタシが、あと少し早く現場に来れていれば。そう思わずにはいられないのよ」
マミ「あなたは……優しすぎるわ」
ケルベロスギルディ「いいえ。それが当然のことなの。せめてもの償いにと、抑えきれないほどアイドルとしての輝きを発揮していたあなたをプロデュースして、ヒットさせただけよ」
マミ「そんな……。アイドルとしてのプロデュースも、曲の作詞作曲も、全部あなたが考えてくれたものだわ。私の才能なんて――」
ケルベロスギルディ「すべてはあなたのアイドルとしての才能があったからこそよ。――はい、お手入れ終わり。やっぱりあなたには、くるりと巻いた華やかなツインテールが似合うわね」
マミ「あ……」
275: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:19:48.35 ID:UfCEYcpy0
マミ(いつも通りの髪型、ね。女性のように繊細でいて、男らしい大胆さも備えてる手つきは心地よいくらい熟練されたものだけれども……)
マミ「……ねえ、ケルベロスギルディ」
ケルベロスギルディ「どうしたのかしらん?」
マミ「実は今日の帰り道ね。実は私、アルティメギルのエレメリアンに襲われたの」
ケルベロスギルディ「! ……そうね。この世界も、侵攻が開始されていたわね。あなたほどのツインテールが今まで狙われなかったのが、不思議なくらいだわ。……あらん? でも、ツインテールは無事よね?」
マミ「うん。エレメリアン自体はホーリーレッドが退治してくれたから無事だったんだけど……あの人たち、ツインテールを狙っているのよね」
ケルベロスギルディ「そうよ。戦いから引退したアタシはともかく、部隊に所属したエレメリアンだったら、あなたほどのツインテールを見逃すことはないわね」
マミ「そうよね。えっと、これからもアルティメギルに狙われたりしたら大変だし、この機会に髪型を変える、なんてどうかしら? ほら、たとえば三つ編みとかに」
ケルベロスギルディ「……!」ピクリ
マミ「今日のエレメリアンの人、なんだかネーブ……うなじ? が好きな人だったみたいだけれども、確かあなたの属性って三つ編みだったでしょう? だから――」
ケルベロスギルディ「それはダメよ、マミ」
マミ「え? で、でも――」
ケルベロスギルディ「あなたをプロデュースする身として、許せないわ。あなたのアイドル性にもっとも似合う髪型が、そのクルクルの豪奢なツインテールなのよ」
マミ「そ、そう……」シュン
ケルベロスギルディ「……」
マミ「でも、それだったら、せめて家にいるときくらいは――ぁ」
マミ(電話? 事務所から……)
マミ「はい、もしもし。え? あ、はい。確かに会いました。それが――ええ!? 今からですか? でも……」チラッ
ケルベロスギルディ「どうしたの?」
マミ「えっと、事務所からで……今日、エレメリアンと会った時にホーリーレッドに助けてもらったんだけど、そのことについて特集を組みたいからって」
ケルベロスギルディ「なら行きなさい。あなたにとっても話題が広がるいいチャンスよ」
マミ「……うん。――すいません、すぐ向かいます。え? もう迎えを……はい。それじゃあ、マンションのエントランスで。はい、ありがとうございます」
マミ(……もう。せっかく今日は休みだったのに)
ケルベロスギルディ「それじゃいってらっしゃい、マミ」
マミ「……うんっ、行ってきます!」
276: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:29:31.60 ID:UfCEYcpy0
ケルベロスギルディ「……ごめんなさいね、マミ」
ケルベロスギルディ(突き放すような言い方になってしまったけれども、あなたが三つ編みにしちゃったら、アタシが耐えられるとも思えないわ)
ケルベロスギルディ「あの事故で大切なものを奪われたあなたから、これ以上何かを取り上げる何てこと――」
スパロウギルディ「……さきほどの少女が、この世界であなた様がプロデュースされているものですか」
ケルベロスギルディ「――貴様。まだ、帰ってなかったのか」
スパロウギルディ「まだ先ほどの話の了承をいただいておりませんゆえに」
ケルベロスギルディ「受けんと言っておろう。私はもう、戦いに疲れたのだ。首領様のお許しもいただいている。もはや、我が属性の滅びは何人にも止められぬ」
スパロウギルディ「それでも、なにとぞお力添えをいただきたいのですっ。アルティメギル一の演出家、ケルベロスギルディ様!」
ケルベロスギルディ「……くどいぞ。いくら貴様が言葉を尽くしたとて――」
スパロウギルディ「……先ほどの少女、素晴らしいツインテールでしたね」
ケルベロスギルディ「――!」
スパロウギルディ「アイドルのことは私では詳しくは分かりませんが、あのようなツインテールの持ち主がブレイクするのはこの世の道理というものです。しかし、このまま侵攻が続けば、いつかはあのツインテールは我らによって摘み取られることになりましょう。後続の補充部隊は、おそらく我ら以上に苛烈な方々になります」
ケルベロスギルディ「……何をいまさら。そのようなことは、あの侵攻宣言の時から重々承知している」
スパロウギルディ「しかし、ドラグギルディ様が失敗した世界の侵攻を完遂させた指揮官ならば、あるいは一人の人間のエレメーラを見逃すことぐらいならば許されるかもしれません」
ケルベロスギルディ「……貴様!」
スパロウギルディ「無礼は重々承知ですっ。ですがどうか、どうか部隊の指揮官――お受けいただけないでしょう!」
ケルベロスギルディ「……」
スパロウギルディ「ホーリーレッドの影響でポニーテールが流行の兆しを見せている今、この世界をツインテールで寡占させるには、アルティメギル一の演出家とうたわれるあなたのお力がどうしても必要なのです!」
277: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:37:02.80 ID:UfCEYcpy0
ケルベロスギルディ「……わかった。面を上げろ」
スパロウギルディ「――! お受けいただけますか!」
ケルベロスギルディ「ああ。……一つ、条件がある。先ほどまでの私の呪われた本性、部隊の皆には黙っておいてもらおう。肩書きあるものの本性があのようなざまだということなど、士気にかかわることだからな」
スパロウギルディ「はっ、かしこまりました!」
ケルベロスギルディ「ならばすぐにでも始めよう。いま、素敵な三つ編み(インスピレーション)がおりてきたからな。まずはこの国、日本をツインテールにて支配する」
スパロウギルディ「作戦は、どのように?」
ケルベロスギルディ「……巴マミ。あの国民的アイドルとして圧倒的な認知度を誇る彼女には、ツインテールの礎となるべく悲劇のヒロインとなってもらおう」
スパロウギルディ「と、いいますと……?」
ケルベロスギルディ「部下の者どもに、彼女を集中的に襲うようにしろ。ただし、決してエレメーラは奪わぬようにな」
スパロウギルディ「なぜ、そのようなことを?」
ケルベロスギルディ「エレメリアンに襲われ、助けられることによって彼女にも注目が集まろう。そして巴マミは強大なツインテール属性の持ち主。いままでツインテールを強調するアプローチを行ってこなかったが……エレメリアンに襲われることによって、自然とツインテールにも注目が集まろう。その後は――わかるな?」
スパロウギルディ「おお! すぐに部隊のものに伝えてます!」
ケルベロスギルディ「そうしろ。私は、少し作戦の詰めを練る」
スパロウギルディ「はっ。それでは、失礼したします!」
スパロウギルディ「……行ったか」
ケルベロスギルディ(……マミ。あなたと過ごした時間は穏やかで、とても楽しい日々だったわ。戦いに疲れて緩慢に死に向かうアタシを、あなたのツインテールはいつだって癒してくれた。でも――)
ケルベロスギルディ「結局、あなたは人間で――アタシは、エレメリアンだったということなのかしら」
ケルベロスギルディ(……ごめんなさいね、マミ)
278: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:38:17.93 ID:UfCEYcpy0
・
・
・
マミ「ただいまー。打ち合わせに思った以上の時間がかかって、結構遅く……あら?」
マミ(誰も、いない?)
マミ「ケルベロスギルディ? お風呂? 台所……じゃないわよね。編み物? ……も、してないわね」
マミ(やっぱり、いない……。でも、それならどこに……?)
マミ「ケルベロス、ギルディ……?」
289: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 23:40:40.04 ID:UfCEYcpy0
――ほむホーム――
ニュースキャスター『昨日エレメリアンに襲われた国民的アイドル巴マミさんですが、ホーリーレッドにより無事救われたようです。彼女の特徴的なツインテールも守られたと――』
さやか「やー。昨日は焦ったよねぇ」
まどか「うん。学校にマスコミの人がたくさん来たしね」
ほむら「そうね。それにしても、この部屋もすっかりたまり場みたいになってしまったわね」
杏子「いいだろ、別に。あたし達の秘密基地みたいなもんだし。ありがたく使わせもらってるよ」
さやか「だね。それ兼、杏子の避難所だね。昨日、この場所の重要性をしみじみ思い知ったよ」
ほむら「はいはい。もう好きにしなさい」
まどか「うぇひひ。……ほむらちゃん。さっきからパソコンで何か調べものしてるみたいだけど、どうしたの?」
ほむら「ああ、ちょっと巴マミの経歴について調べてみているのよ」
まどか「え? …………なんで?」
ほむら「ちょっとね」
291: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/19(月) 00:00:43.45 ID:6xl58kqQ0
ほむら(まどかとさやかはいつもとほとんど変わりなかった。杏子の変化も、家族が生きているからこそのもの。そこから考えてみれば、巴マミだけアイドルなんて突飛なポジションにいるのはあからさまにおかしいわ。何か原因がわかればと思ったのだけれども――)
まどか「…………………………」
杏子「おい、さやか。ほむらのやつ、パソコンの画面から目を放してないから気が付いてないけど、まどかの雰囲気がちょっと……」ヒソヒソ
さやか「杏子。ここは見なかったふりをしよう。間違いなくそれがいい」ヒソヒソ
杏子「お、おう……」ヒソヒソ
ほむら「――ふう。何もわからなかったわね」
まどか「………………………………なにが?」
ほむら「いえ、何でもないのよ」
杏子「な、なあ、せめて一言だけ忠告でも……」ヒソヒソ
さやか「間に入る勇気があればやってもいいよ」ヒソヒソ
杏子「……ああ、そうだな。うん、無理だわ」ヒソヒソ
ほむら(まあ、ネットじゃ限度があるわよね。せいぜい今日がグラビアアイドルのコンテスト会場に招待されてるなんて言う無駄な情報を知ってしまっただけだわ)
まどか「………………ね、ほむらちゃん。お話をするときは、ちゃんとこっち向いて?」
ほむら「ああ。ごめんなさい、まど……か?」ビクッ
292: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/19(月) 00:14:46.57 ID:6xl58kqQ0
まどか「ほむらちゃん。どうしていきなりマミさんのことを調べようなんて思ったの? 昨日まではあんまり興味がなさそうだったのに」
ほむら「そ、それは、ほら。昨日エレメリアンに襲われていたじゃない。そこでちょっと調べておこうかなと思ったのよ」
まどか「……ふーん」
ほむら(ま、まどかから発せられるこのプレッシャーは一体……だ、誰かに助けを!)
まどか「…………わたしね、ほむらちゃん。友達に隠し事は良くないなって思うんだ」
ほむら「えっ? い、いえ、その、それは、確かにそうね、まどかの言う通りよ」
ほむら(さやか、はダメね。ここは杏子に話を振って、適当にごまかして――)
杏子「……」フイ
ほむら(視線をそらされた!? ならこの際、さやかでも――)
さやか「……」グッ
ほむら(さやかに至っては親指上げてきた!? グッドラックって――なに!? 私はどうなるというの!?)
まどか「うん。ほむらちゃんも同じ意見で嬉しいな。そういえば『かつてのあの子』って誰だかも聞いてなかったし、せっかくだから今日はゆっくりほむらちゃんの話を――」
QB「――む! エレメリアンの反応だ!」
ほむら「わかったわ! 今すぐ即刻早急に向かう必要があるわね! 変身するわねっ。――テイル・オン!」
さやか(変身へのペースが最速だったな……)
まどか「むぅー」
ほむら「ほら、杏子! あなたも早く変身しなさいっ」
杏子「お、おう。――テイル・オン!」
QB「準備が整ったようだね。それじゃあ、転送するよ」
パアアア――ヒュン
293: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/19(月) 00:33:29.47 ID:6xl58kqQ0
――グラビアアイドルのオープンコンテスト会場――
司会者「はい、それでは今から審査にはいります。審査の時間の間に、ゲストの巴マミさんにお話を――」
マミ「……」
マミ(ケルベロスギルディ……結局、昨日帰ってこなかったわ)
司会者「――みさん? 巴マミさん? どうしました?」
マミ「……へ? あっ、す、すいません!」
マミ(しまった。仕事は仕事でちゃんとしないと、ケルベロスギルディに呆れられちゃうわ)
マミ「ええっとですね。それは――」
ズドン!
マミ「きゃぁ!」
バッフォローギルディ「ほぉ……! なんと素晴らしき巨 かっ。張りぼてばかりで見かけ倒しのものばかりかと思えば、ここに真なる巨 がいたとは!」
マミ「え、エレメリアン……!?」
295: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/19(月) 00:58:19.07 ID:6xl58kqQ0
バッフォローギルディ「わが名はバッフォローギルディ! 貴様のように素晴らしき巨 を啓蒙する使命を授かっている者よ!」
マミ「ね、ねえ、あなた。三つ首のエレメリアンを――え? きょ、巨 ……?」
バッフォローギルディ「そうだ! 貴様のミルキーウェイを飾る輝星のような巨 を見て、いま俺の心は揺さぶられている。そうっ、貴様の揺れる胸のようにな!」
マミ「え、えっと……」
マミ(ど、どしましょう。同じエレメリアンだし、ケルベロスギルディのことを聞こうと思ったけど――この人と、話したくないわ……)
ほむら「巨 属性……そんな俗な属性、本当にあるのね」
杏子「何かやる気ねえな。どうした?」
ほむら「うるさいわね……。どうしてこのタイミングでまた巴マミなのかって自分の運命を恨んでいるだけよ」
杏子「ああ……ご愁傷様」
マミ「ほ、ホーリーレッドにブラック!」
バッフォローギルディ「俗な属性とは言ってくれるな……。しかし、邪魔立てするなホーリーブラック、ホーリーレッドよ。隊長よりこの世界への応援を任された身。巨 属性を広めるという大義を掲げる隊長のためならば、この命惜しくはない!」
ほむら「あっそう」
杏子(ほんとにやる気ねえみたいだな。……今日はあたしがやっちまうか?)
マミ「ね、ねえ、あなた。三つ首のエレメリアンを――え? きょ、巨 ……?」
バッフォローギルディ「そうだ! 貴様のミルキーウェイを飾る輝星のような巨 を見て、いま俺の心は揺さぶられている。そうっ、貴様の揺れる胸のようにな!」
マミ「え、えっと……」
マミ(ど、どしましょう。同じエレメリアンだし、ケルベロスギルディのことを聞こうと思ったけど――この人と、話したくないわ……)
ほむら「巨 属性……そんな俗な属性、本当にあるのね」
杏子「何かやる気ねえな。どうした?」
ほむら「うるさいわね……。どうしてこのタイミングでまた巴マミなのかって自分の運命を恨んでいるだけよ」
杏子「ああ……ご愁傷様」
マミ「ほ、ホーリーレッドにブラック!」
バッフォローギルディ「俗な属性とは言ってくれるな……。しかし、邪魔立てするなホーリーブラック、ホーリーレッドよ。隊長よりこの世界への応援を任された身。巨 属性を広めるという大義を掲げる隊長のためならば、この命惜しくはない!」
ほむら「あっそう」
杏子(ほんとにやる気ねえみたいだな。……今日はあたしがやっちまうか?)
296: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/19(月) 01:10:12.38 ID:6xl58kqQ0
さやか『あれ……? 今日はほむらスイッチが入らないね』
まどか『うん。どうしたんだろう』
QB『属性力の解放が行われないと、ほむらは武器が出せないんだけども……』
バッフォローギルディ「……む? ホーリーブラックよ。貴様は多様な属性力によって真正面から我らに立ち向かっていると聞いたが、その気だるげな雰囲気はどうした?」
ほむら「うるさいわね。どうでもいいでしょう」
バッフォローギルディ「不可解な……いや、違うか。おぬし――巨 属性の持ち合わせがないのだな!」
ほむら「……」ピクリ
杏子「……」チラッ
杏子(……ああ、なるほど)
さやか『……ああ、なるほど。確かに』
まどか『さ、さやかちゃん? なんでわたしのほうを見てる? ね、ねえさやかちゃん? どうして?』
さやか『いや、なんでもないなんでもない。気のせいキノセイ』
まどか『言葉を濁さないでよぉ!?』
297: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/19(月) 01:18:58.47 ID:6xl58kqQ0
バッフォローギルディ「……なるほどな。装甲に隠れて目立たなかったが、こうして目の当たりにしたのならば気が付くべきだった。そのようにきわめて残念な胸の持ち主では、巨 属性が生まれるはずもなかったな……」
ほむら「……は?」
バッフォローギルディ「しかしおぬしはまだまだ発展途上だ。願わくば成長とともに胸も大きくなると信じる純粋さを忘れるでないぞ。そしてたゆまぬ錬磨も忘れてはならぬ。そうすれば、ここにいるような素晴らしき●を得ることもできるやもしれん」
マミ「え? いや、これは特に何をしてたというわけでもないんだけど……」
ほむら「…………」
杏子(……ほむらの表情がだんだん死んでいってるんだけど)
さやか『今日の敵は案外いいこと言ってるような気がしなくもないけど……』
まどか『それはないよさやかちゃん。エレメリアンっていうのは絶対に分かり合えない侵略者で、敵なんだっていま再確認したもん』
さやか『アッ、はい』
バッフォローギルディ「わかるかホーリーブラックよ。努力を放棄したなれの果てが、この世界にあふれてしまっている人工的な手段に頼って――」
ほむら「……ゅうの何が悪いというの」
バッフォローギルディ「――む? 何を呟いた、ホーリーブラックよ。おぬしの胸のような大きさの声ではこちらまで聞こえんのだ」
杏子(なんで煽るんだよ……)
ほむら「――貧 の何が悪いのよって言ったのよぉ!」
299: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/19(月) 01:26:00.43 ID:6xl58kqQ0
ほむら「貧 だからなんだというのっ。小さいからこその誇りが生まれるっ。小さいこその愛が生まれるの! その愛の強大さは胸の大きさとは一切関係ないわ! だってまどかもちっちゃいもの!!」
まどか『え』
さやか『……あーあ。まぁーた、まどかに飛び火したよ』
ほむら「世の巨 なんて大体偽物じゃない! それは、まあ、その……巴マミみたいな本物もいるけれども、そんなの一握りでしょう? そんな偽物がはびこる属性の何がいいというの!?」
バッファローギルディ「贋作がほびこるからこそ、荒れ地に咲いた一輪の花のような可憐さが巨 属性にはあるのだ! 貧 で永劫の時を生きたとて、それは彫刻と何も変わらぬだ、ホーリーブラックよ!」
ほむら「……」ブチィ!
ほむら『……属性力の解放を行うわ、インキュベーター』
QB『……属性力は十分に解放されたけれども、いいのかい? いつもは相手の属性に合わせていたのに、今回解放されているエレメーラは敵のとは真逆のものだよ』
ほむら『構わないわ。いえ、むしろそれこそがふさわしいの』
QB『……そうかい。なら、君の信じる属性力を叫ぶんだ!』
ほむら『ええ!』
ほむら「スモールバスト・オン!」
303: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/19(月) 01:53:20.69 ID:6xl58kqQ0
バッファローギルディ「ぬう! よりによってこの俺に、貧 属性で立ち向かうと、は……む?」
ほむら「ぅ……!?」
ほむら(なに、この感覚……! いままでのエレメーラの解放とはまるで感覚が違うっ)
さやか『……ん? 何か、ほむらの様子が……というか、装甲の色が、変わってる……?』
まどか『それどころか、ツインテールの色まで……ど、どういうこと?』
QB『おそらく、今までほむらが使っていたエレメーラとは質の異なる属性力を使ったことが原因だね』
杏子『どういうことだ?』
QB『ほむらがいままで使っていた属性力は、ほぼすべてまどかが起因して生まれたエレメーラだった。けれども、いま使用しているエレメーラは違う。貧 属性は、ほむら自身から生まれた、ある意味で本当に彼女自身の属性だと言っていい』
さやか『ああ、うん。なんか納得』
まどか『でも、それが何か関係あるの?』
QB『エレメーラは心の力だ。生まれの基が違えば能力の発言も当然異なる』
ほむら「ぐ、ぐぐぅ……!」
杏子『……止めなくても平気か? 少し苦しそうなんけど』
QB『あくまで質の違いの差であって、能力の発動に問題はないはずだよ。あの色の変化は能力の発言に即したもののはずだ』
さやか『そっか。……でも、どんな能力なんだろう。見た感じ、装甲と髪の色が変わって言ってるだけで、武器とかは出てこないよね』
まどか『うん。……あ。もう、色が変わり終わったね。ほむらちゃんの黒から――青色に!』
ほむら「ぁ、ぐ、ぅう」
バッファローギルディ「……苦しそうだな、ホーリーブラックよ。いかなる能力は知らぬが、しょせんは貧 から生まれたもの! そのような貧しきとこから生まれた力に巨 を信じる俺が負けるはずがな――」
ほむら「ぁ、ぁあ――貧 貧 うるさわいねぇええええええええええええ!」
306: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/19(月) 02:12:46.07 ID:6xl58kqQ0
バッファローギルディ「――! な、何だ、この二足歩行をする獣ののような気迫は! いや、それよりも――この天敵を目の当たりにしたような感覚……抑えつけようにも胸から湧き上がるこの感情……この俺が、恐怖を覚えるなど……!」
ほむら「さっきから巨 巨 巨 ……胸がなければ人間でないとでも言うつもりなのかしら!」
バッファローギルディ「あ、いえ、そこまでは言っておりませんがぶふぅ!?」
ほむら「いいわけ、なんてっ、聞きたくっ、ないっ、のよぉ!」ボコバコガキボコォ!
まどか『……』
さやか『……あの。あれ、どうなってんの? ほむらがバーサーカーというかエレメリアンキリングマシーンみたいになってるんですけど……』
QB『さあ? あのバーサーカー状態がほむらの貧 属性の能力だとしか言いようがないね。とはいえ、まどかに対してもそうだけれども、ほむらのエレメーラは受け取るということが能力の基本のようだから、案外ツインテールと貧 属性を通して、異なる世界から何かの力を受け取っているのかもしれないよ』
杏子『いや、いくら異世界っつったってこんな怖え力はないほうがいいだろう……ほむら、素手でエレメリアンを血祭り上げてるぞ? 近くで見てると、ちょっとしたスプラッタだよ』
さやか『映像で見てても破壊神の降臨みたいな感じだよ……そのうち口からビームだしたりしないよね?』
まどか『さやかちゃんそれはいくらなんでも……』
ほむら「うっがぁああああああああ!」ガスボコバボベキ!
バッファローギルディ「だ、大は小を兼ねるが、小は大を兼ねられぬのだ……貧は巨の代わりにならぬ……だから、悲劇が……」
マミ(ほ、ホーリーブラックってこんなに怖い戦いする人だったかしら? エレメリアンの人が一方的に殴られて――あ!)
マミ「ちょ、ちょっと待って、ホーリーブラックさん! その人には、聞きたいことが――」
杏子「バカ! 今のあいつに近づくな! どう見たって完全に理性が飛んでるだろっ。巨 のあんたが近づいたらもぎ取られるぞ!?」
マミ「もぎっ……!? い、いえ、でも、あの人のことを知ってるかどうかだけでも――」
ほむら「あああああああ!」ガスッ!
バッフォローギルディ「ぐはぁっ! ……よ、よりにも、よって、貧 、にぃ……!」
チュドオオオオオオオオン!
ほむら「ふーっ、ふー……ぅ、あぅ……」パタン
310: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/19(月) 02:29:34.27 ID:6xl58kqQ0
杏子「あ。気絶しやがった」
QB『能力の反動だろうね。あの能力は、テイルギアを装備したほむらからすら明らかに逸脱した力だった』
さやか『強力な能力の枷ってやつかな。あんまり使わないほうがいいね。……あたし達の精神面から考えても』
まどか『うん。さすがに、ちょっと相手がかわいそうだもんね』
杏子「ま、とりあえず帰――」
マミ「あ、あのっ、ホーリーレッドさん!」
杏子「――お?」
マミ「また助けてくれて、ありがとうございます」
杏子「いいって。それに今回あんたを助けたのはこいつだしな」
ほむら「……」グッタリ
マミ「それでもお礼は言いたくて……あの、それと一つ聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
杏子「別にいいよ。……あ。ホーリーブラックの個人情報はなしな」
マミ「いえ、その……三つ首のエレメリアンと戦ったことって、ありますか?」
杏子「三つ首……?」
杏子『あたしはないけど……ほむらは戦ったことあったりするか?』
QB『いいや。その特徴に該当するエレメリアンはいないね』
杏子『そっか』
杏子「ないな。ホーリーブラックもそんなやつとは会ったことないぞ」
マミ「そう、ですか……」シュン
杏子「……?」
QB『杏子。こっちの準備は完了した。もう帰還させていいかい?』
杏子『おう』
杏子「それじゃ、力になれなくて悪いけどあたしらは帰るよ」
マミ「あ、はい……。改めて――ありがとうございました」
杏子「おう、それじゃあ。もう襲われないと」ヒュン
マミ「……あ」
マミ(ホーリーレッドにホーリーブラック……消えちゃった。帰ったのかな。でも……)
マミ「……ケルベロスギルディ」
マミ(あなたは今、どこにいるの……?)
324: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/20(火) 00:08:05.07 ID:Pi6SjM/m0
――ほむホーム――
まどか「はい、ほむらちゃん。おかゆ、できたよ」
ほむら「うぅ……あ、ありがとう、まどか。でも、ごめんなさい。わざわざこんな面倒を懸けさせてしまって……」
まどか「うぇひひ。気にしないで? ほむらちゃんのお世話ができて、わたしも嬉しいから」
ほむら「まどか……!」
さやか「いや、あたしらもいるからね? そこんとこ忘れないでね」
ほむら「……ああ、ごめんなさい。うっかりしてたわ」
さやか「ずいぶん都合のよいうっかりなことで」
杏子「それにしても、まさか全身筋肉痛で動けねえとはな。やっぱり、昨日の戦いのときのあれか?」
ほむら「ええ、おそらく間違いないわね。全身がきしむように痛むし、手に至ってはお箸も持てないくらいだもの……」
さやか「うわぁ……」
まどか「だから学校が終わった後に、看病しに来たんだよね。はい、ほむらちゃん。あーん」
ほむら「あ、あーん」テレテレ
さやか「……うわぁ」
杏子「看病云々はまどかが全部引き受けるからあれだけど……昨日は素手でエレメリアンをブッ飛ばしたんだから、そんくらいは当然なのかもな」
ほむら「私が素手でそんなことを……? 実は昨日の戦闘の記憶があいまいなのだけれども」
杏子「記憶飛んでるって、マジかよおい……。一種のトランス状態だっただろうな」
さやか「てか明らかにアレ、人間業じゃなかったよ。異世界に君臨する破壊の権化が憑依してたって、絶対」
まどか「ほむらちゃん……大丈夫?」
ほむら「ええ。そんなに心配しないで。明日までには治して見せるけれども――」
QB「む! エレメリアンの反応だ!」
ほむら「――今日のところは、あなたに任せてもいいかしら、杏子」
杏子「おう! ――テイル・オン!」
325: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/20(火) 00:18:16.69 ID:Pi6SjM/m0
・
・
・
ブルギルディ「うむ、やはり女子中学生こそ至高。走って揺れる醜い●などに存在価値はない。貧 こそ、始まりにして終わりの礼なのだ!」
戦闘員「モケケー!」
マミ「えっと……」
マミ(今度は仕事の帰りに襲われたのだけれども、貧 好きのエレメリアンがなんでわたしを……? ま、まあ、それでも昨日のエレメリアンよりは話しやすそうだし、この人にケルベロスギルディのことを聞いてみましょう)
マミ「あの、あなた――」
杏子「今日は昨日と真逆のこといってる奴かよ……」スタッ
マミ「――ぁ」
ブルギルディ「現れたかホーリーレッド! 我が名はブルギルディ! 首領様、そして貧 にその身を捧げるクラーケギルディ隊長の栄光のため、この命燃え尽きるまで戦おう!」
杏子「……昨日のほむらじゃねーけど、胸関連のエレメーラの奴らってくだらなすぎて気がそがれる属性だな。あたし達みたいな年齢の女子の胸が小さいのは普通のことだろう。なんで子供を狙うんだよ? てか、そこの巴マミは巨 だろ?」
ブルギルディ「愚問よなっ。私がこの年頃の少女が大好きだからに決まっておろう!」
杏子「まったく統率取れてねーよなお前ら!?」
ブルギルディ「なんとでも言うがいい! しかし……ホーリーブラックはどうしたのだ? 彼女は遥か彼方まで伸びる地平線のような胸をした、素晴らしい貧 の持ち主だ。さぞかし実のある貧 論議ができるものと楽しみにしていたのだが……」
ほむら『……テイル・お――』
さやか『ちょっ、ほむら!? あんた何いきなり起き上がろうとしてんのっ。寝てなって! まだ筋肉痛がひどんいでしょ!?』
ほむら『止めないで、美樹さやか。スモールバストを解放しろと私の胸の中で何かが暴れているのっ。痛みなんて、その気になれば完全に消せてしまうのよ……!』
まどか『そんなのダメだよ、ほむらちゃん! いたくないなんてウソだよっ。あんな見てるだけで痛くなるような戦い方しちゃダメ! あんなやり方で戦ってたら、勝てたとしてもほむらちゃんのためにならないよ!』
327: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/20(火) 00:59:34.25 ID:Pi6SjM/m0
杏子「……あいにくだが、あいつは昨日の激戦により一回休みだ。それにあんたが胸にこだわるエレメリアンである以上、あいつと対面させるわけにはいかねえな。……また、スモールバストのエレメーラを発動させるわけにはいかねえんだ!」
ブルギルディ「なるほど。確かにあの狂獣がごとき破壊の権化を降臨させるのは私も気が進まない。何より、貴様とてなかなかの貧 の持ち主……相手にとって不足はないっ。尋常に勝負だ!」
杏子「おうっ。来い、ブルギルディ!」
ブルギルディ「ぬぅおお!」
杏子「おっりゃぁああああ」
ガッキィイイイイイン!
マミ「ど、どうしましょう……」
マミ(すごく熱血な戦いが始まっちゃったわ。また、ケルベロスギルディのことを聞く機会が――)
杏子「――はっ! なかなか熱いやつだな、お前もっ。さすが、人のために命を燃やすって言っただけはあるよ!」
ブルギルディ「当然よ! この世のすべての貧 のためにも、巨 の者どもに貧 が先んじるためにも――私は、負けられんのだぁ!」
杏子「……あたしは胸のこととか正直どうでもいいだけどさ、結局のところ同じ胸だろ? 大きいのが好き、小さいのが好きでそれぞれ認め合えばいいだろうがッ!」
ブルギルディ「巨 と貧 ――それは同一の場所にありながら、決して分かり合えぬ別の存在なのだ!」
328: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/20(火) 01:07:55.15 ID:Pi6SjM/m0
ほむら『くっ、放しなさい美樹さやかっ。いい加減にしないと杏子が真っ当にあのエレメリアンを倒してしまうわ……!』
さやか『別にいいじゃんそれで! 真っ当に倒して何がダメなんだよ!?』
ほむら『……くっ。わからないわ。自分でもわからないけれども……いまの私は貧 巨 を主張するエレメリアンのすべてを殺す――ただそれだけしか能がない石ころなの』
さやか『なに言ってんのほむら!? ねえっ、頭大丈夫!?』
まどか『ね、ねえ、キュゥべえ。ほむらちゃん、どうしちゃったの? ほむらちゃんを助けてよっ』
QB『僕にも今のほむらの状態を診断することはできないけど……状況から察するに、前回スモールバストを解放した時に受信した何かの残滓に突き動かされているんじゃないのかな?』
まどか『そ、そんな……どうすれば元のほむらちゃんに戻るの!?』
QB『君が言うほど元のほむらから変化したとも思えないけど……まあ、しょせんは残滓だ。放っておけば消えるだろう。ただ、スモールバストを解放するのはよしたほうがいいだろうね』
まどか『そ、そっか。そうだよね、うんっ。ええっと、それじゃあ……』
さやか『ええいっ、ほむら。もういい加減にしなよ! 病人は大人しく寝てるもんでしょっ。これはあんたのために言ってるの!』
ほむら『私のためになにかしようって言うなら、まず私やまどかと同じ立場になってみなさいよっ! 無理でしょう? ただの同情で胸を減らせるわけないものね!』
さやか『あたりめーだろボケ!』
まどか『ほむらちゃんっ! もういい加減にしてよ!! わたしも怒るよ!?』
330: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/20(火) 01:26:39.23 ID:Pi6SjM/m0
杏子「……なんでだ。大きい小さいなんて、それこそ些細なことじゃねぇか。それなのに、どうしてお前らは胸のことでそんなにも争うんだ!」
ブルギルディ「……貧 属性も巨 属性もない貴様にはわかるまい。余人には理解できぬかもしれんが、私たちはその違いに生のすべてをかけているのだっ。その主張で相手に譲っていかにする!?」
杏子「そんなことで争うほうが下らねーだろ!?」
ブルギルディ「その反論そのものが我らのことを理解しておらん証拠だっ、ホーリーレッドよ! ……それに、貴様の身に宿る修道女属性とて似たような争いはあろう」
杏子「……なに?」
ブルギルディ「似たような解釈を並び立て、あれが正しいこれが正しいなどという争いを幾百年も続け、血を流し続ける……。わかるか? 人はみな、全てを受け入れるような高みの心を輝かせることができる者ばかりではない。たとえ愚かと言われようと――巨 貧 の争いとはっ、互いに決して譲り合うことのできぬ宗教戦争なのだ!」
杏子「!!」
さやか『どうしてわかんないのよっ。ただでさえ余裕がないんだから、休んでなきゃダメなの!』
ほむら『うるさいっ、大きなお世話よ! その胸もいでまどかのサイズにするわよ!?』
まどか『ほむらちゃんのバカぁ! さすがのわたしでも、もう怒ったよ!!』
杏子「……ブルギルディ。確かに、お前の言う通りなのかもしれない。人間は愚かだ。くだらねえことで簡単に争いが始まる」
ブルギルディ「……」
杏子「けどなっ、たとえ愚かだったとしても、あたしはそれでも他人を信じるっ。きっと、争いがひと段落した後にはまた手をつなげるって信じてる! あたしは愛と平和の架け橋。燃えるポニーテイルの――正義の味方なんだ!」
333: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/20(火) 01:46:51.75 ID:Pi6SjM/m0
杏子「ブルギルディ……悪いが、そろそろこの戦いも終わらせるぞ。あたしが橋渡しをやんなきゃいけない争いが待っているんだ」
ブルギルディ「そうか。貴様ほどのものが向かわねばなぬとは、それはさぞかし大きな亀裂なのだろう。だが――行かせるわけにはいかん!」
杏子「そうかよっ。なら――」
マミ「た、戦いの最中ごめんなさい!」
杏子「!」
ブルギルディ「!」
マミ「エレメリアンの人に聞きたいことがあるのっ。その……いいかしら?」
マミ(ものすごく空気が読めてない感じだけど、この機会に聞かないと……!)
ブルギルディ「巨 の娘か……。まあ、よい。なんだ?」
マミ「あの、ケルベロスギルディのことを知っている? 三つ首で、あなた達と同じエレメリアン何だけど……」
杏子(三つ首……そういや、昨日あたしも聞かれたな。でも、なんでエレメリアンの所在なんか巴マミが聞くんだ……?)
ブルギルディ「……巨 の娘よ。なぜ貴様がこの星の部隊長殿のことを知っておる」
マミ「え!?」
マミ(部、隊長……?)
ブルギルディ「……いや、なるほど。むしろ合点がいった。巨 の貴様のエレメーラ奪取が、よりによって貧 を信ずる私に下された理由はそれか。貴様が、この星でケルベロスギルディ様がプロデュースしている娘というわけだ」
マミ「!!」
334: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/20(火) 02:06:50.11 ID:Pi6SjM/m0
杏子「……?」
ブルギルディ「その表情で確信したぞ、巨 の娘よ。なるほど、部隊長殿の手の平で操られるのは心地よくないが……所詮、一兵卒の身よ。致し方あるまい。それを知ったとて、私は戦わねばならん。……待たせたな、ホーリーレッドよ!」
マミ「ま、待って! もっと詳しい話を――」
ブルギルディ「……――巨 の娘に聞かせる話などもうない! 貧 になって出直して参れ!」
マミ「そ、そんな! もう少しでいいから、せめていま、ケルベロスギルディがどこにいるかだけでも教えて」
ブルギルディ「…………くどいっ。さあ、かかって来い、ホーリーレッドよ!」
杏子「……まあ、そうだな。あたしにはお前らの事情もそこのアイドルさんの事情もよく分かんねーけど、お前らが倒さなきゃいけない敵だってことだけは分かってるさ!」
ブルギルディ「そうだ。それこそが我らと人間の関係。それ以外にはぐくまれるものなど、ない!」
マミ「!」
杏子「ちっと邪魔は入ったが――最後だ、ブルギルディ。この技を受けてみろ!」ユラリ
ブルギルディ「この蜃気楼のような揺らめき――む!? ホーリーレッドが増えた、だと……!」
杏子「ちゃちゃな幻術とかと一緒にしてくれんなよ。それぞれにあたしの燃える心が分け火してあるんだ! 必殺――ロッソ・ファンタズマ!」
ブルギルディ「ぐ、ぬゥううううううう! 巨大を捨て進化していくのが生物の進化の系譜……! 貧 とは、進化の最終形態……●とは貧 に始まり貧 におわるのだぁああああああ!」
チュドオオオオオオオオン!
杏子「じゃあな、ブルギルディ。あたしにはわかんねーけど、あんたには大切なことだったんだろう?」
杏子(さて、と。それじゃ……)
ほむら『ねえ、どうして? 巨 貧 叫んでるエレメリアンを殲滅したいだけなのに、どうして――ああっ、終わってしまった……』
さやか『ほっ。よかった……これでほむらもちょっと落ち着く――』
ほむら『さやか……さやかに、邪魔をされたせいで……あなたがいつのループも邪魔を……いつもいつも何度も何度も邪魔を……美樹さやかがいつも邪魔ばかりして……』ブツブツ
さやか『……? どしたの、ほむら?』
ほむら『……美樹さやか。そうやって、あなたはますますまどかを苦しめるのね?』
まどか『わたしは関係ないよねっ? ねえ、ほむらちゃん!!』
ほむら『いいえ、なにもかもまどかのため…………――ハッ。あ、あら? 私、いままで一体なにを……え? ま、まどか? どうしてそんな怒った顔をして――』
杏子「……あたしは帰ってあいつらの橋渡しをしてやんねーとな」
341: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/20(火) 23:47:18.22 ID:Pi6SjM/m0
まどか『ほむらちゃん。何もかもわたしのためってどういうこと? 貧 巨 を滅ぼすことの何がわたしのためになるの? わけわかんないよ。わたし胸のことに関してそんなに思いつめてないよ?』
ほむら『え、あの、えっと……ご、ごめんなさい。わたしそんなこと言ってたの……?』
さやか『今度はまどかかよ……』
杏子(あいつらまだやってんな……。どうしよっかね。仲裁の仕方を考えるのも面倒――)
QB「ちょっといいかい、杏子」ヒョイ
杏子「――お? どうした、キュゥべえ。わざわざこっちに来るなんて珍しいな。……もしかして逃げて来たのか? お前が逃げ出してくるとか、あっちどんだけだよ」
QB「あちらの状況が錯綜してるのは確かだけど、別に逃げ出してきたわけではないよ。少し相談したいことがあるんだ。――そこの、巴マミについてね」
マミ「……え?」
342: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/21(水) 00:09:43.90 ID:lhjibB8k0
マミ(何かしら、あの白い猫みたいな生き物……)
杏子「巴マミに話って……いや。そもそもあんた、こいつが見えてんのか?」
マミ「え? え、ええっと、そのヌイグルミみたいな子ですか?」
杏子「ああ、そうだよ。ってことは、ほんとに見えてるんだな」
QB「僕が意図的に正体を現すか、それでなくてもテイルギアで変身できるほどのツインテール属性の持ち主ならば僕の姿は見ることができるからね」
杏子「ふーん。じゃあ、巴マミはテイルギアで変身できるわけだな」
QB「そうだよ」
マミ「て、テイルギア、ですか……?」
杏子「ああ、えっと――てか、敬語がまどろっこしいな。いいよ、ため口で。あんたのほうが年上だろ?」
マミ「それなら……その子、なんでしゃべっているの?」
QB「僕が話せるのがそんなに不思議かい?」
杏子「そりゃ不思議だろ。まあ、こいつがしゃべれるのは置いておくとして……何が言いたいんだよ、キュゥべえ」
QB「実は、巴マミにテイルギアを渡そうかと思ってね」
343: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/21(水) 00:43:28.49 ID:lhjibB8k0
杏子「……何でだ? こいつは一般人だろう。なんでわざわざ巻き込むような真似をすんだよ」
QB「君だって元は巻き込まれただけの一般人だったじゃないか。それにきちんとした理由もある。――自衛のためだよ」
マミ「……自衛?」
QB「ここ最近、巴マミが集中的に襲われている節がある。その対策のためにも、彼女にテイルギアを渡すのは悪い話じゃないはずだ」
杏子「確かにそうだけどさ、あたし達だって助けに来れるだろ。わざわざテイルギアを渡さなくてもいいんねーの?」
QB「いつかの君の時のように、何かあって助けるのが間に合わなくなることもあるかもしれない。巴マミにテイルギアを渡すかどうかの相談自体はほむら達にもしてあるよ」
杏子「言われてみれば、それもそうだな……」
杏子(確かにこいつの言う通り、あの時フェニックスギルディがいなきゃあたしとモモの属性力は奪われていた。それなら、自衛のために渡しておくのも悪くはないな。……一応ほむら達にも連絡しておくか)
杏子『なあ。キュゥべえがこっちに来て――』
ほむら『はい……はい。まどかの言う通りです。よく覚えてないけど、ごめんなさい……』
まどか『そうだよ。ほむらちゃんは意外と頑固なところが――あ、杏子ちゃん。ごめんね、後にしてもらっていいかな?』
杏子『……お、おう』
344: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/21(水) 01:01:40.53 ID:lhjibB8k0
マミ「話が良くわからないのだけれども……その、テイルギアっていうのは、何ができるものなのかしら」
QB「変身ができるようになる。具体的にいえば、ホーリーブラックやホーリーレッドと同等の力を手に入れられるだろうね」
マミ「え? そんなすごいものを、私に……?」
QB「僕はそうしたいと考えている。杏子。君はどうだい?」
杏子「……ま、いいだろ」
杏子(……どうせこっちで持ってても仕方ないし、そもそもキュゥべえが作ったもんだしな)
杏子「でも勘違いするなよ。あたしはあんたに戦いに参加してほしいなんて思っちゃいない。それはあくまで、これからも狙われ続けるだろうあんたための保険だ。エレメリアンを倒すのは、あくまであたし達の仕事だよ」
マミ「……」
杏子「それに、戦うくらいならツインテールを大人しく受け渡したいっていうならテイルギアは受け取るな。何より、身の安全が一番だ」
マミ「……いいえ。このツインテールは大切な人に巻いてもらったもの。どこぞのエレメリアンにあげるくらいなら――私も、戦うわ」
杏子「そっか。……なら、受け取りなよ」
QB「巴マミ。これが君のテイルギアだ」ニュ
マミ「これが、私の……」
杏子「いざという時は『テイル・オン』って叫べばいい。そうすれば、最低でも逃げるくらいの力は得られるはずだ。――キュゥべえ。いい加減帰るぞ。あっちがいよいよやべえ」
QB「そうだね。じゃあ、転送を開始するよ」
パアアア――ヒュン
マミ「……ごめんなさい、ホーリーレッド」
マミ(テイルギア。エレメリアンと戦うための力。変身することによって、彼らと同等以上の力を得られる腕輪)
マミ「この力があれば、きっと……!」
345: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/21(水) 01:06:58.33 ID:lhjibB8k0
――アルティメギル秘密基地――
ケルベロスギルディ「――作戦の経過は順調のようだな」
スパロウギルディ「はい。巴マミのもともと認知度が高いだけあって、被害者として彼女のことが広まっていくのはかなりうまくいっております。メディアが煽っていることもあり、彼女は今やこの国一の悲劇のヒロインです」
ケルベロスギルディ「……そうか。協力者の件はどうなっている?」
スパロウギルディ「そちらのほうも、滞りなく」
ケルベロスギルディ「ならばよし。計画の仕上げに入るとしようか。明日に、巴マミのファーストアルバムミリオン突破を記念したイベントでライブが行われる。このプロデュースの仕上げは、私がじきじきに向かおう」
スパロウギルディ「あ、明日でございますか? いささか性急すぎる気も……」
ケルベロスギルディ「これ以上は時間をかける意味もない。このプロデュースが成功した暁には、巴マミは悲劇のヒロインから奇跡のヒーローへと駆けあがる。その熱狂により、この国はツインテールによって満ちることを約束しよう!」
スパロウギルディ「……! はっ。かしこまりました!」
353: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/21(水) 23:31:06.06 ID:lhjibB8k0
――ほむホーム――
ニュースキャスター『――ということであり、国民的アイドルの巴マミさんは先日もまた襲われたエレメリアンからホーリーレッドに救出されました。また本日、彼女のファーストアルバムがミリオンを突破した記念して、コンサートライブが行われています。野外のライブ会場ではご覧のように開場前から多くのファンが詰めかけ――』
まどか「スモールバストの解放は、今後一切禁止です」
さやか「うん。それがいいよ。いくら強力って言っても、反動があれじゃね……」
杏子「妥当だな。昨日の二の舞はごめんだよ」
ほむら「……」
ほむら(スモールバストの解放……。正直、能力の強力さは捨てがたいんだけど――)チラッ
まどか「なぁに、ほむらちゃん?」ニコ
ほむら「は、はいっ。なんでもないです、鹿目さん……!」
さやか(……鹿目さん?)
杏子(びびりすぎだろ……)
まどか「……? どうしたの、ほむらちゃん。いつも通りまどかって呼んでよ」
ほむら「……あ。え、ええ。そうね、まどか」ファサ
355: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/21(水) 23:53:12.95 ID:lhjibB8k0
ほむら「スモールバストの件はそれでいいとして……巴マミのことを話しましょう。杏子。どうして彼女にテイルギアを渡してしまったの?」
杏子「どうしてって言われてもなぁ。QBがお前らに話は通してあるって言うから、てっきりいいもんだとばっかり思ったんだよ」
さやか「それがそもそもおかしいんだよね。あの時は渡さないほうがいいっていう結論で終わったじゃん」
QB「あの時とは巴マミを取り巻く状況は違うじゃないか。それに君たちに話をしたという意味では誤りを伝えた覚えはないよ?」
まどか「その伝え方じゃ、杏子ちゃんも誤解するよ……」
ほむら「インキュベーター。あなたのそういうところは変わらないわね」
QB「そうかい?」
杏子「今更だけどか、なんかこいつに乗せられたというか騙された感じがして面白くないな……」
ほむら(……別に渡してしまったからと言って問題はないわよね。アイドルをやっていると言って性格に大きな変わりはないようだし、テイルギアを悪用するような人ではないわ)
ほむら「まあ、これ以上は言わないわよ。別に予備のテイルギアが必要というわけでもないし」
QB「そうかい……む! エレメリアンの反応だ。しかも反応が大きい。あのドラグギルディ並だ!」
さやか「えぇ!?」
まどか「あの時のすごく強かったエレメリアン並って……もしかして、幹部の人なのかな?」
QB「おそらくね。場所は――」
ニュースキャスター『さて、それでは巴マミさんのライブ会場にご来場の方々にインタビューを――え? あ、あれは、エレメリアン……? エレメリアンです! 会場にエレメリアンが現れました!』
ほむら「――聞くまでもないわね。インキュベーター、転送の用意を。杏子行くわよ」
杏子「おう!」
ほむら「それじゃぁ――テイル・オン!」
356: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/22(木) 00:10:28.53 ID:cIwPwMPz0
――ライブ会場――
マミ「みんな、来てくれてありがとう! それじゃあ、次は私のデビュー曲『恋のティロ・フィナーレ』を――」
ズトオオオオオオオン!
マミ「――!?」
観客A「うわっ。ステージに何か落ちて来た!」
観客B「マミさん大丈夫かな――って、え!? あれって……!」
観客C「え、エレメリアン!?」
ケルベロスギルディ「我が名はドラグギルディ! アルティメギルの一員として、ここにいる巴マミのツインテール属性、貰い受けるぞっ。止められるものならば止めてみよ、人間どもよ!」
マミ「……け、ケルベロスギルディ!」
ケルベロスギルディ「……。――ホーリーブラックにホーリーレッドよ! 聞こえているか? この無力な少女を救いたくば、早く姿を現し私と尋常に勝負をしろ! よもや臆して逃げるような真似はすまい!!」
マミ「ケルベロスギルディ……? ど、どうして返事をしてくれないのっ。ねえ! 私――」
ほむら「……今日はずいぶんと挑発的な敵ね」スタッ
杏子「テレビ中継してるような場所にわざわざ来てるんだ。目立ちたがり屋なのかもしんねーぞ?」スタッ
マミ「――ぁ」
ケルベロスギルディ「……来たか」
ほむら「ええ。お呼びに応じて参上したわ。ホーリーブラックと――」
杏子「ポニーテイルは愛と平和の架け橋! ホーリーレッドだ!」
マミ「………………」
マミ「みんな、来てくれてありがとう! それじゃあ、次は私のデビュー曲『恋のティロ・フィナーレ』を――」
ズトオオオオオオオン!
マミ「――!?」
観客A「うわっ。ステージに何か落ちて来た!」
観客B「マミさん大丈夫かな――って、え!? あれって……!」
観客C「え、エレメリアン!?」
ケルベロスギルディ「我が名はドラグギルディ! アルティメギルの一員として、ここにいる巴マミのツインテール属性、貰い受けるぞっ。止められるものならば止めてみよ、人間どもよ!」
マミ「……け、ケルベロスギルディ!」
ケルベロスギルディ「……。――ホーリーブラックにホーリーレッドよ! 聞こえているか? この無力な少女を救いたくば、早く姿を現し私と尋常に勝負をしろ! よもや臆して逃げるような真似はすまい!!」
マミ「ケルベロスギルディ……? ど、どうして返事をしてくれないのっ。ねえ! 私――」
ほむら「……今日はずいぶんと挑発的な敵ね」スタッ
杏子「テレビ中継してるような場所にわざわざ来てるんだ。目立ちたがり屋なのかもしんねーぞ?」スタッ
マミ「――ぁ」
ケルベロスギルディ「……来たか」
ほむら「ええ。お呼びに応じて参上したわ。ホーリーブラックと――」
杏子「ポニーテイルは愛と平和の架け橋! ホーリーレッドだ!」
マミ「………………」
358: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/22(木) 00:22:43.42 ID:cIwPwMPz0
ケルベロスギルディ「よく来た。素晴らしいタイミングだ。これが天然もののアイドル性か……演出家冥利に尽きるぞ!」
ほむら「……演出? 何をわけのわからないことを!」
杏子(三つ首のエレメリアン、か……。確かマミの奴が探していたな)チラッ
マミ「…………」ギュッ
杏子(テイルギアはちゃんとつけてるな。これなら、いざという時も大丈夫だろ)
ほむら「今日はドラグギルディ以来の強敵……最初から二人で行くわよ、杏子!」
杏子「……ああ、分かってる。あの時の徹は踏まねえよ。……マミ。あんたは避難してな」
マミ「…………ええ、わかったわ」
ケルベロスギルディ「ふっ。たった二人で、我が三つ編み(トライブライド)属性の神髄を受けきれるかな?」
杏子「言ってろ!」
ほむら「その余裕、すぐに打ち消してあげるわ」
359: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/22(木) 00:40:07.99 ID:cIwPwMPz0
ケルベロスギルディ「さて、まずは小手調べだ!」ゴウッ!
さやか『火ぃ吐いた!?』
まどか『三つある口から火球を吐いたよ!』
ほむら「くっ!」ヒュッ
杏子「……!」
まどか『――え?』
さやか『杏子!? 火の弾がぶつかるよ!?』
ほむら「杏子!? なぜ避けな――」
ズドオオオン!
ほむら「――!」
まどか『あ、当たっちゃった……!?』
さやか『杏子!? 大丈夫! ねえ、杏子!』
ケルベロスギルディ「……ぬう? 今の攻撃ごとき、かわせぬような戦士ではないと思っていたが……」
杏子「……ぬるいな」シュウウウ
ほむら「――え?」
ケルベロスギルディ「なんだと?」
杏子「ぬるい攻撃だぜ、ケルベロスギルディ。よりによって、あたしに火をぶつけるなんてなぁ……!」
360: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/22(木) 00:47:46.71 ID:cIwPwMPz0
ほむら「あ、ああ。わざと避けなかったのね、あなた」
まどか『よ、よかった……』
さやか『びっくりさせないでよ』
ケルベロスギルディ「……ほう。我が口内で練りこんだ、地獄の炎がぬるいとは言うではないか!」
杏子「なんと言われようと、あんなもん避けるまでもねえ。ケルベロスギルディっ。炎を使うなら――せめてこれくらいの熱さをぶつけろよ!」ゴオオオ!
ケルベロスギルディ「むう! その炎は――!」
杏子「エレメーラで生まれる炎は、そいつの燃える心の温度! あたしの燃える正義の心を受けてみろっ。バーニングフォースフィニッシャァアアアアアア!」
ケルベロスギルディ「……!!」
マミ「……ぁ」
さやか『やった!』
まどか『直撃だよ!』
ほむら「……いえ、喜ぶの早いわ」
まどか『――え?』
ケルベロスギルディ「……冷静だな、ホーリーブラックよ」
杏子「なっ! あれが直撃して、無傷だと!?」
マミ「……」ホッ
ケルベロスギルディ「恥じるな、大した威力だった。しかし私は三つ編みへの愛より生まれ、三つの命を編んだ存在。ゆえに、無敵なのだ!」
361: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/22(木) 01:05:17.43 ID:cIwPwMPz0
ほむら(あれほどの攻撃を受けて無傷でいられるはずがない……それに、攻撃を受ける直前のあの変化。そこから察するに――)
ほむら「あなたの変化する首の数……それが無敵性の秘密かしら」
ケルベロスギルディ「ふっ、気が付いたか」
さやか『ど、どいうこと……?』
QB『おそらく、あのエレメリアンは自信の身体を三つに分離できるんだね。さっきの杏子の攻撃を受ける直前、一瞬で三体に分離した。その結果、攻撃を受けたのは一体だけ。そしてまた融合して元に戻ったんだよ』
まどか『でも、三つ首に戻った後も無傷だったってことは……』
QB『君の推察通りだろうね、まどか。融合時に分離体のダメージは引き継がないようだ』
さやか『なにそれ!? そんなのどうやって倒せっていうのさっ!』
ほむら「一体の時では、どんなに素早く攻撃しても瞬間分離してダメージを拡散されてしまう。三体に分離している間に、間髪入れずすべてを攻撃して撃破するしかないわね」
杏子「ちっ。面倒な特性の敵だな」
ケルベロスギルディ「見事な分析だな。だがそれがわかったところでどうなる? 二人しかいない貴様たちでは、どんなに息を合わせたところで三体二。三つの命を宿す私を倒せるかな?」
ほむら「くっ……!」
杏子「……」チラッ
マミ「…………」
杏子(……マミの奴は――いいや。何を期待してるんだ、あたしは。あたしとほむらで倒すんだよ!)
365: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/22(木) 01:17:04.17 ID:cIwPwMPz0
ケルベロスギルディ「さあっ、三つ編み属性の真骨頂……受けてみろ!」
まどか『あっ、ケルベロスギルディさんが三体に分離した!』
さやか『あれじゃただのドッグギルディじゃ……』
QB『指摘するところはそこなのかい?』
ほむら「ちっ。……杏子! ロッソ・ファンタズマは!?」
杏子「わりぃ! さっき大技使っちまったから、もうちょっと待ってくれ!」
ほむら「……もうっ。勢いだけで戦うからそういうことになるのよ!」
杏子「いつもまどかまどか叫んで戦ってるお前にだけは言われたくねーよ!?」
ほむら「う、うるさいわね! 属性力の解放のために必要なんだから仕方ないでしょう!? 好きでやってるわけじゃないわよ!」
杏子「あーあー、言い訳なんて聞きたくないね! それに昨日だってあたしがいなきゃまどかの説教がいつ終わったか――」
まどか『……ほむらちゃんたち、ケンカはじめちゃってる』
さやか『まったく息合わせられてないじゃん。考えてみれば、あいつらがちゃんと共闘したことってないし……杏子があの分身みたいな技を使ってもちゃんと倒せるかな……?』
QB『正直、望み薄だね』
366: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/22(木) 01:27:45.12 ID:cIwPwMPz0
ケルベロスギルディ「仲間同士で争ってる場合かしらぁ? ほら! アタシの絶技、味わいなさい」ヒュッ
ほむら「な――って、あら?」
さやか『ほむらっ――て、あれ? 髪型、が変わっただけ……? 三つ編み?』
まどか『!!』
さやか『なんで攻撃しないで……ああ、そっか。あいつ三つ編み属性のエレメリアンだったっけ。だから――』
まどか『すごい! すっごく似合ってるよほむらちゃん!』
さやか『――え? どしたの、まどか?』
まどか『どうしたもこうしたもないよ! すごいよさやかちゃん!? ケルベロスギルディさん、すごくいい腕してるよ! いつもはクールでカッコいいほむらちゃんが、三つ編みにしただけですごくかわいくなるなんて……三つ編みって奥が深いね!』
さやか『……え? ホントにどうしたの、まどか? まどかぁー? おーい』
杏子(ていうか、いまケルベロスギルディの口調がぶれたような……)
ケルベロスギルディ「やっぱりアタシの目に狂いはなかったわ。ブラックちゃん。あなた、とっても三つ編みが似合うのね! いいわ、いいわぁん!」
ほむら「……なんのつもりかしら、ケルベロスギルディ。まどかに喜ばれるのは悪くないけれども……」
まどか『わたしが思うにね、さやかちゃん。三つ編みのほむらちゃんはそれだけでもかわいいけど、それに加えて眼鏡をかければもう最強のかわいさだと――あ、眼鏡はもちろん赤縁だよ? そこは絶対に譲れないところだからね。三つ編みを留めるリボンは……うーん。やっぱり紫かなぁ』
ほむら(まどかったらどうして昔の私の姿を正確に……?)
さやか『……なにこれ。まどかが属性力を解放するときのほむらみたいになってるよ。どういうこと、キュゥべえ?』
QB『ツインテールを通してほむらとつながっているせいかもね。属性力を解放するというテイルギアの影響をまどかまで受けているのかもしれない』
さやか『えー』
ケルベロスギルディ「アタシの手にかかれば、一瞬で三つ編みを編み上げるなんてこと造作もないことだわぁ。それに三つ編みが似合う少女を三つ編みにするのは当然のことでしょう? 三つ編みは、ツインテールと共存できる数少ない髪型だもの!」
杏子「いやお前、口調どうしたよ……」
ケルベロスギルディ「――はッ!」
367: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/22(木) 01:43:45.36 ID:cIwPwMPz0
ケルベロスギルディ「ち、チガウの……いや、違うのだ……! これは、本当の私ではない……」
杏子「いや、お前絶対そっちが地だろ」
ケルベロスギルディ「そ、そのようなことは――」
杏子「口調なんてそんなに気にすんなよ。無理に周りに合わせる必要もねえだろ?」
ケルベロスギルディ「……そうもいかないのよ。肩書きができると、ね」
杏子「そういうもんか? そういやツインテールツインテール言ってるお前らで髪型のエレメーラ持ちって珍しいけど……三つ編み属性のあんたがなんで部隊長なんてやってるんだよ。三つ編みはほっといていいのか?」
ケルベロスギルディ「……仕方ないのよ。三つ編みは、少女を少女足らしめる聖なる髪型だけど――だからこそ、大人になるにつれて卒業してしまう属性。いつか、世界から消えてしまう、滅びをまぬがれないエレメーラなの」
杏子「へー」
ほむら(……そういえば、私も卒業したわね)
ケルベロスギルディ「三つ編みは、このまま廃れてしまう……。それは悲しいけど、アタシには止められなかった。だから戦いをやめ、緩慢な死に身をゆだねようと思ったけれども――その前に、やることができちゃったの」
杏子(プレッシャーが、変わった!)
ケルベロスギルディ「だからこそ、あなた達にはここで倒れてもらうわよ! それじゃ――」
マミ「――テイル・オン!」
杏子「!」
ほむら「いまの声は……」
マミ「……遅くなってごめんなさい。戦う覚悟が、やっとできたわ」
ケルベロスギルディ「…………」
杏子「いや、お前絶対そっちが地だろ」
ケルベロスギルディ「そ、そのようなことは――」
杏子「口調なんてそんなに気にすんなよ。無理に周りに合わせる必要もねえだろ?」
ケルベロスギルディ「……そうもいかないのよ。肩書きができると、ね」
杏子「そういうもんか? そういやツインテールツインテール言ってるお前らで髪型のエレメーラ持ちって珍しいけど……三つ編み属性のあんたがなんで部隊長なんてやってるんだよ。三つ編みはほっといていいのか?」
ケルベロスギルディ「……仕方ないのよ。三つ編みは、少女を少女足らしめる聖なる髪型だけど――だからこそ、大人になるにつれて卒業してしまう属性。いつか、世界から消えてしまう、滅びをまぬがれないエレメーラなの」
杏子「へー」
ほむら(……そういえば、私も卒業したわね)
ケルベロスギルディ「三つ編みは、このまま廃れてしまう……。それは悲しいけど、アタシには止められなかった。だから戦いをやめ、緩慢な死に身をゆだねようと思ったけれども――その前に、やることができちゃったの」
杏子(プレッシャーが、変わった!)
ケルベロスギルディ「だからこそ、あなた達にはここで倒れてもらうわよ! それじゃ――」
マミ「――テイル・オン!」
杏子「!」
ほむら「いまの声は……」
マミ「……遅くなってごめんなさい。戦う覚悟が、やっとできたわ」
ケルベロスギルディ「…………」
368: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/22(木) 01:49:58.35 ID:cIwPwMPz0
まどか『マミさんが変身を――』
さやか『ってことは、とうとう現役アイドルが仲間に!?』
杏子「マミ。変身はするなって――」
マミ「ごめんなさい、ホーリーレッド。悪いとは思ってるの。……それでも、私はこちらを選ぶわ」テクテク
杏子「――え?」
ほむら「……巴マミ。あなた、もしかして……!」
マミ「一緒に戦いましょう。ね――」スッ
さやか『へ?』
まどか『あ、あれ……?』
QB『……』
ケルベロスギルディ「…………」
マミ「――ケルベロスギルディ。私は、あなたと一緒に戦うわ!」
394: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/22(木) 23:58:49.35 ID:cIwPwMPz0
まどか『ま、マミさんが敵側に……』
さやか『どうなってんのさ、これ……!?』
QB『……』
ほむら「……そう。こうなるのね」
ほむら(この世界だと、交通事故で巴マミを救ったのはインキュベーターではなく、ケルベロスギルディというわけなのね。だから巴マミは……)
杏子「正気かテメエ!」
マミ「私を救ってくれた人の味方をして何がおかしいの? 私は、私の大切な人のために戦うのっ。あなた達がケルベロスギルディと戦うなら、私はケルベロスギルディのために戦うわ!」
杏子「ふざけんな! そいつらは人の心を食う化け物だぞっ!?」
マミ「たとえそうだとしても! エレメリアンがエレメーラを糧にしていたとしても――私たち人間はエレメーラを失おうとも生きていけるじゃない! 」
杏子「なん、だとォ……!」
ほむら「……命が無事だから黙って奪われろっていうの? 冗談じゃないわ。私たちにとってエレメーラが生まれるほどまでに育てた感情は、かけがえのない大切なものなのよ。それを守るために戦って何が悪いの」
マミ「悪いとは言わないわ。でもエレメリアンだって生きていて、感情があるのよ。命とエレメーラの天秤。どっちが重いかなんて言うまでもないわ。なにより、私はあなた達にはエレメーラを何度か守ってもらったけれども――ケルベロスギルディは私の命を救ってくれた! アイドルとしての人生を用意してくれたっ。傍にいてずっと支えてくれた! その恩を、やっと返せるのよ!」
杏子「――ッ」
ほむら「……」
396: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/23(金) 00:26:18.87 ID:yX8JdJ2e0
ほむら(巴マミの意志は固いわね。おそらくインキュベーターと違って、ケルベロスギルディが巴マミを助けたのは純粋な善意によるもの。インキュベーターにすらあそこまで愛着を持っていた彼女のこと。エレメリアンの性質上より親身だったろうし……付け入る隙は、ないわね。それに――)
観客A「え? なに? いま変身したのって……巴マミ、だよな?」
観客B「ああ、たぶん……でも、ホーリーレッドとブラックと何か口論してるっぽいけど」
観客C「あたし聞こえたよ! 巴マミがエレメリアンの味方をするって言ってたっ」
観客D「ええっ、マジで!?」
マスコミ「おい! カメラ、あっちを映せ! スクープだぞ!」
ザワザワガヤガヤ
ほむら(さすがに衆目で変身したら、認識遮断なんちゃらの効果も薄いようね。逃げないで見物に残ってる客や、テレビ中継を続けているマスコミが騒ぎだしてきたわ。……腹をくくりましょう)
ほむら「最後に聞くわよ、巴マミ。あなたは自分を応援してくれているファンや、学校の友人知人を裏切ってでも、そこのエレメリアンの味方をするのね」
マミ「………………いままで私を応援してくれた人には、ごめんなさいの気持ちでいっぱいだわ。実際、ケルベロスギルディとあなた達が戦っているところを目の当たりにしても、なかなか踏ん切りが付かなかった。――でも、今の私があるのは、全部ケルベロスギルディのおかげだから。あなた達にも、申し訳ないとは思ってるの」
ほむら「そう。くだらない謝罪なんていらないわ。あなたは私の敵よ。……やるわよ、杏子」
杏子「……マジかよ」
ほむら「苦い顔しても仕方がないわ。こうなってしまったら、もう戦うしかないのよ」
杏子「……ちっ。わーったよ!」
ケルベロスギルディ「……」
397: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/23(金) 00:31:48.21 ID:yX8JdJ2e0
さやか『そんな……』
まどか『どうして……相手はエレメリアンじゃないのに、人間同士なのに、どうして戦わなきゃならないの!?』
QB『どうしようもないよ……お互いが譲れる状況にいないんだ』
さやか『杏子。どうにかなんないの? あんた正義の味方なんでしょう!?』
杏子『……仕方ねえんだよ。マミにとっての正義が、ケルベロスギルディなんだ。これは正義と正義のぶつかり合いなんだ』
まどか『そんな……お願い、ほむらちゃん。止めさせてよっ。こんなのってないよ!』
ほむら『……ごめんなさい、まどか』
まどか『……!』
マミ「向こうが構えた――来るわ、ケルベロスギルディ!」
ケルベロスギルディ「……ふ、ふふふふ」
マミ「……? ケルベロスギルディ? どうしたの?」
ケルベロスギルディ「ふはは、ふははははははっ」
ほむら「……?」
杏子「……なんだ? どうした?」
マミ「ねえ、どうして笑って――」
ケルベロスギルディ「ふはははははは! はーっはっはっはははは! 素晴らしいっ。すべてが私の思い通りではないか! 素晴らしい茶番を、喜劇を見せてくれてありがたい限りだ! そして――貴様はもう用済みだ、巴マミ」
マミ「――え?」
399: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/23(金) 00:44:38.78 ID:yX8JdJ2e0
マミ「な、何を言って――」
ケルベロスギルディ「くはは! 間抜けた顔だな。しかし、その顔が見たかった! 人類を裏切る覚悟を決めて、次の瞬間裏切られたと知った、呆然とした人間の顔がな!」
マミ「――!!」
ケルベロスギルディ「一緒に戦う? くははっ、何をバカなことを。戦闘経験もない子娘の貴様に何ができる。足並みをそろえるどころか、足を引っ張られるだけだ。アルティメギルの幹部たる私と一緒に戦おうなど、人間ごときが不遜もはなはだしい。利用されたことも知らずに情にほだされるとは滑稽な娘だな! 愚か者もここに極まりだ! ……まあ、そうなるように私が育てたのだがな」
マミ「ケルベロス、ギルディ……?」
ケルベロスギルディ「数年前に交通事故にあっていた貴様を助けたのも、それからアイドルとして育てたのも、全てはこのためだ! 貴様の信頼を得るために用意した演技の日々は窮屈であったが……くくくっ。先ほどの顔、今の貴様の悲痛な絶望で私は満腹だ。貴様はよくよく私の手のひらで踊ってくれたよ! はーっはっはっはっは!」
杏子「なんだ、あいつら。仲間割れ、って様子でもないけど……」
ほむら「…………」
観客A「……なに、あのエレメリアン。胸糞悪い」
観客B「マミさんかわいそう……」
観客「マジかよエレメリアン最低だな」
マスコミ「カメラっ、あのエレメリアンと巴マミをアップで映し続けろ!」
ザワザワガヤガヤ
ほむら(……これは。もしかしてあのエレメリアン、これを狙って……?)
401: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/23(金) 01:02:51.29 ID:yX8JdJ2e0
マミ「うそ……そんなのウソよ! あの日々が――あなたの心が、全部演技だったはずがないわ!」
ケルベロスギルディ「ここで嘘を吐く利点などなかろう? 私はただただ裏切られた貴様の絶望が見たかっただけだ。それが地獄の番犬たる私の本性。呪うならば、私の本性を見抜けなかった己の節穴さを呪え」
マミ「そ、そんな……」シュウウウ
まどか『……ぁ』
さやか『マミさんの変身が、とけた……』
QB『テイルギアの変身を保っていられるほどの心を持ち続けられなかったんだ。いまの巴マミは、折れてしまっている』
マミ「……ウソよ、ウソに決まって――」ブツブツ
ケルベロスギルディ「……ふんっ。もう心が折れたか。つまらん。――さあっ、前座は終わりだ! 愉快ながらも、下らん茶番であった。貴様らは退屈させてくれるなよ、ホーリーブラック、ホーリーレッド!」
杏子「……ほむら。ちょっと、いいか?」
ほむら「巴マミなら放っておきなさい。……自業自得だわ」
杏子「頼むよ。ちょっとだけでいいんだ」
さやか『杏子……』
ほむら「敵はまだ健在だわ。なにを言われようとも――」
まどか『……ほむらちゃん』
ほむら「――……しかたないわね。好きになさい」
杏子「ああ、そんなに時間は取らせねーよ。すぐ加勢に加わる」
ほむら「……ふんっ。私一人で十分だわ」ヒュン
402: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/23(金) 01:23:46.31 ID:yX8JdJ2e0
ケルベロスギルディ「……ホーリーブラック。貴様一人か?」
ほむら「私の仲間は聖女様候補だけあって優しいの。それより……あなた、演出より役者のほうが向いてるんじゃないの?」
ケルベロスギルディ「――あらん。見破るなんて、あなたもなかなかの策士ね」
ほむら「ふんっ。あなたの言う通り、くだらない茶番だわ。それと口調、いいのかしら」
ケルベロスギルディ「テレビカメラはレッドちゃんとマミに釘づけだもの。それに、この距離ならマミに会話が聞こえることもないわ」
ほむら「……本当に役者向きじゃないのかしら、あなたは」
ケルベロスギルディ「確かに役者も悪くないけど、やっぱりアタシは演出家よ。その証拠に、マミは無事に悲劇のヒロインとなった。そしてこれから、ヒーローへと奇跡の昇格を果たすのよ」
ほむら「……巴マミがヒーローへ? 妄想ね。あそこでうずくまっている彼女に、そんな力があると思うの? 巴マミは強がりで、いつだって無理をしすぎているけれども――そのくせ、誰よりも繊細な心の持ち主よ。あなたに踏みにじられた心が、そう簡単に修復するとは思えないわ」
ケルベロスギルディ「いいえ。マミを国民的アイドルに押し上げたアタシが断言するわ。マミは、立ち上がる。そうしてきっと立ち向かってくれる。だからこそアタシがあなた達二人を倒さなければならないの」
ほむら「……」
ケルベロスギルディ「そうしてヒーローの二人を打ち倒した怪物を、復活したマミが倒す。新生のヒーローの誕生として、これ以上劇的なものがあるかしら?」
ほむら「……やっぱり妄想ね。あなたは巴マミを過大評価しているし、なにより――私も杏子も、あなたなんかに倒されないわ!」
ほむら『インキュベーター。属性力の解放を行うわ』
QB『え? でも、君はまだ属性力を解放していないよ?』
ほむら『いいえ。もう十分にしているわ。さっき――まどかが、ね』
まどか『……え? わたし?』
さやか『あー、そういやまどか、さっき妙なテンションではしゃいじゃってたなぁ』
まどか『ええ!? あ、あれのことなの!?』
ほむら『ええ。まどかが心から褒めてくれた。私にとってそれ以上の属性力の解放はないわ。だから、いくわよ』
QB『わかったよ、ほむら。君の信じる属性力を叫ぶんだ』
ほむら『ええ!』
ほむら「グラス・オン!」
404: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/23(金) 01:57:46.53 ID:yX8JdJ2e0
ほむら「……っ!」
ほむら(この感覚は、スモールバストの時と同じ――! でも、あの時ほどじゃないわ。ちゃんと、抑え込めるっ)
さやか『今回は地味な変化というかなんというか……眼鏡つけただけだよね』
まどか『パーフェクトだよほむらちゃん! わたしの想像した通りのほむらちゃんだよ!』
さやか『眼鏡かけただけというのに、このはしゃぎっぷりは一体……』
ほむら「かつて三つ編みとともに打ち捨てた眼鏡だけれども――まどかが褒めてくるなら、もう一度付け直すくらいはいいでしょう」
ケルベロスギルディ「……眼鏡(グラス)属性。アタシの三つ編み属性と同じく、科学の発展によっていつかは滅びゆく属性。あなたは、その持ち主でもあったのね」
ほむら「ええ。いまなら三つ編みを愛したあなたの苦しみ、わかるかもしれないこともないわ。愛したものが消えてゆく無念さ……その絶望は、底知れない。だからこそ、あなたは諦めてしまった」
ケルベロスギルディ「…………」
ほむら「そうして失意に打ちのめされ流されるうちに、演出家として見つけてしまった希望に死に場所を望んだのかもしれないけれども……残念ね。いまの私は眼鏡装着者(グラスパー)にして支配者(グラスパー)。あなたの演出に踊らさるような小物でないわ!」
さやか『え? いまのダジャレ?』
まどか『さやかちゃんっ。そこはツッコミいれちゃダメだよ!』
ケルベロスギルディ「何ですって? 眼鏡をかけただけで舞台から降りれるほど、アタシの演出は甘くなくってよ!」
ほむら「ならば眼鏡の力を思い知りなさい! ――カオシックインフィニット!」
ケルベロスギルディ「なっ!? ブラックちゃんが消え……こ、これは、幻覚――いえ、結界!?」
ほむら『そうよ。ここは、かつての私が誘い込まれた結界。悪意の満ちる、出口のない迷路』
ケルベロスギルディ(ブラックちゃんの声……隔離した空間の外から呼びかけているのね)
ケルベロスギルディ「迷路に出口がないなんて、反則よ。そんなおいた子する子には、目には目をで、結界なんて壊して出口を――」
Izabel「……」ズズズズ
ケルベロスギルディ「――!」」
ほむら『もちろん、あなたにふさわしい敵も用意しておいたわ。その門と遊んでいないさい――地獄の番犬さん』
Izabel「……」
ケルベロスギルディ「……シャレが効いてるわ。いい趣味してるわねん、ブラックちゃん」
ほむら『これはかつての再演よ。とはいえ、いつかの私には救いの手が差し伸べられたけれども……あなたにはその門をくぐってもらうわよ、ケルベロスギルディ』
Michaela「……」ユラユラ
Michaela「……」ユラユラ
Izabel「…………」
ケルベロスギルディ「あらん。よりにもよって番犬が地獄の門をくぐっちゃうなんて――それは笑えない冗談ねっ、ブラックちゃん!」
411: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/24(土) 23:52:03.03 ID:ysG5aBfg0
・
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マミ「……私を笑いに来たの?」
杏子「……」
マミ「笑っちゃうでしょう……? 恩人に報いようと他の人たちを見捨てた結果がこれなの……。私のやってきたことって何だったの? 自分を応援した人を裏切るためだったの……?」
杏子「…………」
マミ「……なんてね。こんな愚痴、世界を救うヒーロー様からすれば、小さくてくだらない事よね」
杏子「……なあ、マミ。あたしはさ、世界を救うだとかみんなの幸せを守るだとか、そんな神様の真似事をしたかったわけじゃないんだ」
マミ「……え?」
杏子「なんだかんだあって持ち上げられて騒がれてるけど、あたしはそんなご立派な人間なんかじゃないんだよ。あたしはただ、目の前の家族と友達を救ってやれるような、そんな正義のヒーローみたいなやつになりたかったのさ」
マミ「私、も……」
杏子「そうだな。あんただって、きっとそのためにテイルギアで変身したはずだ。あんたにとってあのエレメリアンは――家族、だったんだろう?」
マミ「……」コクン
杏子「でも、そこでうずくまってて何になるよ。あたしだって恩人みたいなエレメリアンはいるけど――もしそいつの正義とぶつかりあうようなことになったとしても、あたしは引かない。きっと、戦うさ」
マミ「……あなたは、強いわね。私は気持ちが弱いからあなたのようになれそうもないわ」
マミ(やっぱり私、ダメだなぁ……。もっと強い意志があれば何だってできたはずなのに肝心なところで迷っちゃうからいつも失敗しちゃう。こんな私だから――ひとりぼっちで終わっちゃうんだ)
マミ「もういいわ……。何もかも、もうおしまいだもの。私のことなんか放っておいて」
412: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:35:23.88 ID:FHGnfWYt0
杏子「……そっか。ならいいよ」
マミ「……?」
杏子「あんたが辛いのなんて、分かってるんだ。今すぐ立ち上げれなんて言わないよ。もともと、あたし達が助けに来たんだ。そこで助けられてくれれば、あたし達にとってそれでいいんだよ」
マミ「……」
杏子「けどさ、これでお終いなんて言うなよ。さっきのケルベロスギルディの言葉、全部嘘だよ。あいつは自分のことを演出家って言ってた。それだけ聞けば、なんであいつがあんなこと言ったのかなんて、あたしでもわかるさ」
マミ「…………」
杏子「戦ってればわかるけどさ、エレメリアンの奴らは何だかんだでみんな真っ直ぐだ。だからケルベロスギルディだって、やり方はズレちまったかもしんねーけど、あんたの幸せを守りたかっただけなんだよ」
マミ「……分かってるの」
杏子「うん?」
マミ「ケルベロスギルディに言われた時はショックだったけど、ちょっと考えればすぐにわかったの。ずっと一緒にいたんだもの。彼女の考え方くらい、わかるのよ。……でも、わかったからってどうすればいいの?」
杏子「……」
マミ「今すぐ変身してケルベロスギルディと戦えっていうの? 戦って、倒して……彼女を殺すの? ねえ。エレメリアンと人間が共存する方法って、本当にないの?」
杏子「……わかんねーよ、そんなの。でも、わかんねーからやんなきゃいけないのさ」
マミ「……」
杏子「あんたには悪いけど、あたしとほむ――ブラックはあのエレメリアンを倒すよ。倒されるなんて絶対にごめんだ。邪魔をするってんならそれでもいいさ。あんたが決めろよ、マミ」
マミ「……私、は」
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