…

……

兄「……」ｶﾁｬｶﾁｬ

兄（そろそろ休憩の時間か）

「一緒に飯食おうぜ」

兄「ん、あぁ」

「ふぅ、腹減った腹減った」

兄「……」ｶﾊﾟ

「おっ、愛妻弁当か。相変わらずラブラブだな」

兄「ま、まぁな」

「羨ましいぜ全く、毎日熱い夜が続いてそうだな」ｸﾞﾘｸﾞﾘ

兄「！？」

兄「だ、誰がいも……！」

「ん……」

「芋？」

兄「こ、この芋はうまいな！」

兄（あ、危ない……、誰が自分の妹と、って言うところだった……）

「それよりさ、写真見せてくれよ」

兄「え？」

「良いだろ、減るもんじゃあるまいし」

兄「……」

兄「も、持ってない」

「えー、本当かよ？」

兄「あ、あぁ、嫁が写真嫌いでな……」

兄「……」

妹『お兄ちゃん、一緒にプリクラとろう？』ﾆｺ

兄（……一応あるにはあるが、ちょっと妹が若すぎて……）

「あぁ、もうそろそろ戻る時間だ」

兄「そ、そうか」

「嫁さん家で待ってるだろうな。お前は感情あんまり出さない奴だけど、嫁さんはいっぱい愛してやれよ」

兄「……」

…

……

兄「……」

兄（今日も遅くなりそうだ）

兄「……」

『嫁さん家で待ってるだろうな』

兄「……」

兄「……」ｶﾁｬｶﾁｬ

…

……

兄（ああ、結局今日も日を跨いでしまった）

兄（さすがにもう寝てるよな……、静かに入ろう）ｶﾞﾁｬ

兄「……」ｿｰｯ

ﾃﾃﾃｯ

兄「？」

妹「お帰りなさい！」ｷﾞｭ

兄「……」

兄「あ、あぁ」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

妹「えへへ……」

妹「お帰りのちゅー」

兄「む……」

妹「……」ﾆｺﾆｺ

兄「……」

兄「ん」ﾁｭｯ

妹「……」ｷﾞｭｩ

妹「ご飯にする？お風呂？それとも……」

兄「ご飯でお願いします」

妹「了解しました！」ﾃﾃﾃｯ

兄「……」

兄（遅くなっても、文句一つ言わないんだな……）

妹「温めるから待っててね！」

兄「ああ」

妹「……」ﾄﾃﾄﾃ

兄（食べ物に全部ラップしてある）

兄（なかなか出来たてを食べてやることはできないな……）

妹「最近料理のお勉強してるの」

兄「へぇ、そうなのか」

妹「楽しみにしててね」ﾆｺ

兄（早く帰ってきてやれなくて、ごめんな）

妹「はいどうぞ」

兄「いただきます」

妹「うん！」

兄「……」ﾊﾟｸ

妹「……」ｿﾜｿﾜ

兄「！うま……」

妹「ほ、ほんと？」

兄「あぁ、こりゃうめえわ」

妹「よ、良かったぁ」

妹「えへへ……」ﾆｺﾆｺ

兄「……」

兄「ごちそうさま」

妹「頑張って良かったぁ」

兄「……」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

妹「ん……」

兄「……」

妹「……」

兄「……！」ﾊｯ

兄「ふ、風呂行ってくるわ！」

ﾁｬﾎﾟﾝ

兄「……」

兄（お、おいおい、何ださっきのあの目は……）

兄（あんな潤んだ目で見つめられたら、俺……）

兄「……」

兄（なんで逃げたんだ、俺……）

「お湯加減どうー？」

兄「！！」ｻﾞﾊﾞｯ

兄「い、いい、いいぞ、凄くいい！」

「えへへ、良かった」

兄「ふぅ……」ﾁｬﾌﾟ

兄「……」

兄（やっぱ、そういうことも考えてるのかな、あいつは）

兄「……」

兄（そうだよなぁ……）

兄（俺だって、そういう気持ちになったことないわけじゃ……）

「お兄ちゃん」

「入っていい？」

兄「！！！？ばっ……！」ﾊﾞｼｬｯ

「えへへー、じょーだんだよー！」

……ｶﾞﾁｬｯ

兄「……」ﾎｶﾎｶ

妹「良いお湯でしたか？」ﾆｺ

兄「あぁ、ちょっと驚かされたけどな」

妹「えへへ」

妹「じゃあ、寝る？」

兄「……ああ」

兄「……」

妹「……」

兄「じゃあ、電話消すぞ」

妹「うん」

ﾊﾟﾁｯ

兄「……」

妹「今日も、お疲れさま」

兄「あ、あぁ」

妹「……」ｷﾞｭ

兄（う……）

兄（柔らかくて、あったかくて）

妹「……」

兄（いい匂いで……）

兄（こんなに優しくて……）

妹「……」ｷﾞｭｩ

兄「……！」

兄（でも、俺は……）

妹「……」

妹「おやすみ、お兄ちゃん」

兄「！」

兄「あ、あぁ、お休み」

妹「…………」

妹「……」

妹「お兄ちゃん」

兄「ん？」

妹「明日、何の日か覚えてる？」

兄「え？えっと……」

妹「二人の結婚記念日だよ」

兄「……！」

兄「あ、あぁ、そうだったな」

妹「……」

妹「今日より、ずっとずっと美味しいご飯作るね」

兄「うん、頼むわ」

妹「……えへへ」ｷﾞｭ

兄「……」

兄（結婚記念日と言っても、二人で勝手に決めただけだが……）

兄（もう一年も経つんだな）

兄（……）

兄（明日だけは絶対早く帰ろう）

妹「……」ｷﾞｭｯ

…

……

兄「くぅ、くぅ……」

「お兄ちゃん、お兄ちゃん」ﾕｻﾕｻ

兄「ん……」

妹「おはよう」ﾆｺ

兄「……あぁ、おはよう」

妹「朝ご飯、できてるよ」

兄「……」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

兄（相変わらず、美味いメシだ）

兄「……ふぅ」

兄「ごちそうさま」

兄「じゃあ、行ってくるわ」

妹「……」

兄「……分かってるよ」

兄「……」ﾁｭｯ

妹「んっ」

妹「行ってらっしゃい！」ﾆｺｯ

…

……

兄「……」ｶﾁｬｶﾁｬ

「おいどうした、今日はやけにやる気満々だな」

兄「まぁな」

「嫁さんと約束か何かか？いいなぁー」

兄「……！」

「あ、やべ、部長来たから戻る」

兄「……ふぅ」

兄（今日は仕事がグングン進むな）

兄（よし、この調子なら夕方には……）

「兄君、ちょっとこれも頼むよ」

兄「……え？」

「いいだろう？明日は休暇なんだし、ラストスパートだ」

兄「で、でも……」

『お兄ちゃん！』

「……何か不満があるのか？」

兄「……」

兄「あり、ません……」

兄「くっそ……！」ｶﾁｬｶﾁｬ

兄（だ、大丈夫だ、まだ大丈夫）

兄（これくらいなら、今日中に……！）

『お兄ちゃんと離れたくない』ｷﾞｭｩ

兄「……！」ｶﾁｬｶﾁｬ

…

……

兄「……！」ｶﾁｬｶﾁｬ

兄「よ、よし……！」ｶﾁｬ

兄「お、終わった……」

兄「……」

兄（何か買って帰ってやろうと思ったけど、この時間じゃ無理か……）

兄（でも、今からなら昨日と同じくらいの時間に……）

「兄君終わった？」

兄「はい！何とか……」

「じゃあ、これも頼むわ」ﾄﾞｻｯ

『これからも、ずっと一緒にいてくれるの……？』

…

……

兄「……」ｶﾁｬｶﾁｬ

『お兄ちゃんは、あ、赤ちゃんとか……欲しくないの？』

兄「……」

兄（くっそ、思い出すな、集中しろ……！）

『今日から俺が、お前のために働くから』

『えへへ……、うん……』

兄「くそっ……」

『今日から一緒に寝ようね』

『お、おいっ！？』

兄「……」

兄「くそ……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

ｶﾞﾀﾝｺﾞﾄﾝ……

兄「……」

兄（朝、か……）

兄「……」

『今日より、ずっと美味しいご飯作るね』

兄「……」

兄「ごめん……な……」

兄「……」

兄（着いた）

兄「……」

兄（どんな顔して会おう）

兄（結局、連絡もできなかった）

兄「……」

兄（妹が起きたら、土下座して謝ろう……）

兄「……」

兄「……」

兄「……」ｶﾞﾁｬｯ

兄「……」

兄「！！」

妹「お帰りなさい！」ｷﾞｭ

兄「い、妹……？」

妹「？　なーに？」

兄「……」

妹「えへへ……」ｷﾞｭｩ

兄「……」

妹「あ、そうだ！」

妹「似合うかな、似合うかな……？」

兄「……？」

妹「……」

ｼｭﾙｯ

兄「こ、これは……？」

妹「マフラーだよ」

妹「いつも夜遅くまでお疲れ様。夜さむいでしょ？」

妹「これで少しでもマシになったらいいなと思って……、編んでたの」

兄「……」

妹「えへへ……、間に合ってよかった」

兄「え？」

妹「？」

兄「さっきまで……、編んでたのか……？」

妹「うん」

兄「……」

兄「…………」

妹「お兄ちゃ……？」

兄「………………」

ｷﾞｭｯ!!

妹「ふぁっ……？」

兄「……」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

妹「お兄ちゃん……？」

兄「……ごめんな、ごめん……」

兄「ごめんな……」

妹「……？」

兄「こんなにお前は俺を……」

兄「でも、俺は……」

妹「……」

妹「……」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

妹「大丈夫だよ、お兄ちゃん」

妹「私、全然お兄ちゃんのこと怒ったりしてないよ」

兄「……」

妹「一緒にいれるだけで幸せだもん」

妹「……」

妹「そ、そりゃぁ……」

妹「ちょっと、寂しい気持ちになるときも、あるけど……」ﾓｼﾞﾓｼﾞ

兄「……」

妹「……？」




ﾁｭｯ

妹「んぅ……？」

妹「お、お兄ちゃ……？」ｶｧｧ

兄「……」

兄「作ろうか」

妹「……？」

兄「赤ちゃん作ろう」

妹「……」

妹「……！！！？」ﾎﾞﾜｯ

妹「ど、どしてっ、そそんな急にっ……！？」ｶｧｧｧｧｧ

兄「……」

兄「好きだ」ｷﾞｭｯ

妹「ぁ」

妹「お、お兄ちゃ……」

兄「……」

兄「ごめんな、今までずっと中途半端で」

兄「やっと自分の気持ちに気付けた」

兄「……」

妹「……」

兄「お前のことが好きだ、心から」

妹「…………」

妹「………………」

妹「ぅ、ぅぅ……」

妹「……」

妹「ば、ばか、恥ずかしいよぉ……」

兄「はは」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

妹「ぅぅ……」

妹「……」

妹「……や、優しく、して、ください……」

兄「……」

兄「……もちろん」

兄「……」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

妹「お、お兄ちゃ……」

妹「……」

妹「……えへへ」

兄「ん？」



ｷﾞｭｯ




「……あなた」




ﾁｭｯ





おわり。