●見敵逃走モンスター
俺「現在位置、進行方向、到着までの時間は!?」
源十郎「5時の方向3キロメートル先から、ここ…儂等の居る母屋に向けて、時速50キロメートルの速度で進行中」
俺「到着まであんまり時間が無いな…他に情報は?」
源十郎「白衣を着た男の名前は、チャールズ・ブラウン…通称チャーリー。女性との交友が広く、二つ名は百人斬りのチャーリー」
俺「他には?」
源十郎「キングダム所属で、非人道的な研究を行うマッドサイエンティスト………理央の両親も、この男の手により殺された」
俺「…………―――はっ!?」
余りに唐突に飛び出した、聞き流す事の出来ない言葉
思わず源十郎氏の方を振り向いたその瞬間………木々の合間から中庭へ飛び出す、二人の男。
片方は、先の大男よりも更に大きな体を持った…怪物。
もう片方は、怪物の肩に乗った白衣の男。
特徴から見て、恐らくこちらが………理央の両親の仇。
白衣の男を乗せた怪物は、中庭の砂利の上へと降り立ち…その肩から降りた白衣の男…チャーリーが、こちらに向けて会釈する。
チャーリー「夜分遅くに失礼します、ミスター・ゲンジュウロウ。今宵は………」
源十郎「判っておる…儂の力が目的であろう?息子と娘同様…この頭をくびり千切って実験に使う腹積もり…と」
チャーリー「さすが、話が早い。ではこの、ヴィ―――」
俺「リア充………爆散しろ!!」
チャーリー「は―――?」
最後まで言葉を紡ぎ切る事無く、爆散して肉片と血飛沫へと変わり果てるチャーリー。
何が起こったのか判らないのだろう…怪物はチャーリーが居た位置を一瞥した後、俺に視線を向け…
一瞬で…野生動物を思わせるような俊敏さで屋敷の外へと逃げて行った。
俺「……………」
事を終え…バクバクと忙しなく脈動する心臓を落ち着かせるべく、深呼吸をする。
理央の両親の仇…余りに唐突に告げられた事実に、突然の対峙…
つい反射的にリア充爆散の能力で爆殺してしまったが、その行動に対する疑念が次々に浮かんでくる。
俺「現在位置、進行方向、到着までの時間は!?」
源十郎「5時の方向3キロメートル先から、ここ…儂等の居る母屋に向けて、時速50キロメートルの速度で進行中」
俺「到着まであんまり時間が無いな…他に情報は?」
源十郎「白衣を着た男の名前は、チャールズ・ブラウン…通称チャーリー。女性との交友が広く、二つ名は百人斬りのチャーリー」
俺「他には?」
源十郎「キングダム所属で、非人道的な研究を行うマッドサイエンティスト………理央の両親も、この男の手により殺された」
俺「…………―――はっ!?」
余りに唐突に飛び出した、聞き流す事の出来ない言葉
思わず源十郎氏の方を振り向いたその瞬間………木々の合間から中庭へ飛び出す、二人の男。
片方は、先の大男よりも更に大きな体を持った…怪物。
もう片方は、怪物の肩に乗った白衣の男。
特徴から見て、恐らくこちらが………理央の両親の仇。
白衣の男を乗せた怪物は、中庭の砂利の上へと降り立ち…その肩から降りた白衣の男…チャーリーが、こちらに向けて会釈する。
チャーリー「夜分遅くに失礼します、ミスター・ゲンジュウロウ。今宵は………」
源十郎「判っておる…儂の力が目的であろう?息子と娘同様…この頭をくびり千切って実験に使う腹積もり…と」
チャーリー「さすが、話が早い。ではこの、ヴィ―――」
俺「リア充………爆散しろ!!」
チャーリー「は―――?」
最後まで言葉を紡ぎ切る事無く、爆散して肉片と血飛沫へと変わり果てるチャーリー。
何が起こったのか判らないのだろう…怪物はチャーリーが居た位置を一瞥した後、俺に視線を向け…
一瞬で…野生動物を思わせるような俊敏さで屋敷の外へと逃げて行った。
俺「……………」
事を終え…バクバクと忙しなく脈動する心臓を落ち着かせるべく、深呼吸をする。
理央の両親の仇…余りに唐突に告げられた事実に、突然の対峙…
つい反射的にリア充爆散の能力で爆殺してしまったが、その行動に対する疑念が次々に浮かんでくる。
434: ◆TPk5R1h7Ng 2015/10/14(水) 10:48:29.43 ID:ici1O/Ijo
●必要不可欠フェイク
源十郎「心配は要らん。お主は間違っておらぬ…むしろ、あの一瞬での適切な判断は賞賛に値すると言えるだろう」
まだ落ち着きを取り戻すには遠い…が、源十郎氏の言葉で幾分か気が楽になる。
源十郎「ただ…お主には謝らねばならぬ事がある。一つだけ、嘘を吐いた」
俺「………え?」
源十郎「奴の本当の名前は、ティム・フランケンシュタイン…愛称はヴィクターで、女性との交友など欠片も無し」
俺「は?何でそんな嘘を?」
源十郎「偽りの情報であっても、その能力を行使できるのか…それを知っておきたくてな」
俺「偽りって……だったら、理央の両親の仇ってのは!?」
源十郎「それは本当だ。儂や理央に代わってその仇を討って貰えた事…深く感謝する」
俺「……え?ちょっと待ってくれ?え?……え?」
二転三転する言葉に翻弄され、理解している筈にも関わらず混乱してしまう俺。
そんな俺の様子を見るに見かねてか、源十郎氏は縁側に腰を下ろし…その隣を叩いて、着席を促して来た
源十郎「すまなんだな………お主を騙してでも、あの男はあの場ですぐにでも始末して起きたかったのだ」
俺「その理由は、理央の両親の……えっと、爺さんにとって息子さん?娘さん?どっちかの仇だからだよな」
源十郎「両方だ」
俺「あぁ、言い方が悪かった。義理の息子か娘がどっちが判らなかったんだ。爺さんは、理央の父方母方どっちの祖父なんだ?」
源十郎「だから両方だ。理央の両親は、二人とも儂の子供…血を分けた実の息子と娘だった」
俺「………は?」
源十郎「驚くな…とは言わん。外の世間の常識とはかけ離れた行いと言う事くらいは判っておる」
俺「………聞かせて貰っても…良いか?」
縁側…源十郎氏の隣に腰を下ろし、俺はその続きに聞き入った
源十郎「心配は要らん。お主は間違っておらぬ…むしろ、あの一瞬での適切な判断は賞賛に値すると言えるだろう」
まだ落ち着きを取り戻すには遠い…が、源十郎氏の言葉で幾分か気が楽になる。
源十郎「ただ…お主には謝らねばならぬ事がある。一つだけ、嘘を吐いた」
俺「………え?」
源十郎「奴の本当の名前は、ティム・フランケンシュタイン…愛称はヴィクターで、女性との交友など欠片も無し」
俺「は?何でそんな嘘を?」
源十郎「偽りの情報であっても、その能力を行使できるのか…それを知っておきたくてな」
俺「偽りって……だったら、理央の両親の仇ってのは!?」
源十郎「それは本当だ。儂や理央に代わってその仇を討って貰えた事…深く感謝する」
俺「……え?ちょっと待ってくれ?え?……え?」
二転三転する言葉に翻弄され、理解している筈にも関わらず混乱してしまう俺。
そんな俺の様子を見るに見かねてか、源十郎氏は縁側に腰を下ろし…その隣を叩いて、着席を促して来た
源十郎「すまなんだな………お主を騙してでも、あの男はあの場ですぐにでも始末して起きたかったのだ」
俺「その理由は、理央の両親の……えっと、爺さんにとって息子さん?娘さん?どっちかの仇だからだよな」
源十郎「両方だ」
俺「あぁ、言い方が悪かった。義理の息子か娘がどっちが判らなかったんだ。爺さんは、理央の父方母方どっちの祖父なんだ?」
源十郎「だから両方だ。理央の両親は、二人とも儂の子供…血を分けた実の息子と娘だった」
俺「………は?」
源十郎「驚くな…とは言わん。外の世間の常識とはかけ離れた行いと言う事くらいは判っておる」
俺「………聞かせて貰っても…良いか?」
縁側…源十郎氏の隣に腰を下ろし、俺はその続きに聞き入った
435: ◆TPk5R1h7Ng 2015/10/14(水) 11:05:27.37 ID:ici1O/Ijo
●血縁ディープブロー
源十郎「儂等の家系は、代々異能を色濃く受け継ぐ家系でな…その血をより濃く受け継ぐため、近親婚を課されて来た」
俺「まぁ…無くは無い話…だよな」
源十郎「と言っても、兄妹での婚姻は稀な事。現に儂の代では従姉妹との婚姻だったのだが、不測にもその次の世代で…多くの外の血が混ざる事となってしまってな」
俺「それで…濃い血を残すため、理央の両親に白羽の矢が立ったって事か」
源十郎「左様。唯一の救いだったのは、二人が互いに愛し合って居た事くらいの物か。そして、二人の間には男と女…二人の子が生まれ…」
俺「って、ちょっと待ってくれ!今何て言った?二人の子供!?」
源十郎「そう、理央には兄が居る。いや…居たと言うべきかな」
俺「過去形って事は………」
源十郎「だが、この事は儂が語るよりも理央の口から聞くのが良かろう」
俺「いや、そんな重要な所を投げんのかよ…」
源十郎「聞けば判る…」
と言って一方的に話を切り上げ、それ以上の追求を憚る源十郎氏。
だが…それならそれで、この場で聞いて置きたい事は他にある。
俺「じゃぁ話は変わるが…一つ、爺さんに聞いておきたい事がある」
源十郎「…何だ?」
俺「理央の事…実際の所はどう思ってるんだ?
源十郎「………」
俺「爺さんの話を聞いてる限りじゃ、決して理央を無碍にはしてない。んでも理央に直接向けてた態度…あれは何なんだ?」
源十郎「先にも話した通り…理央は家族を失っている。加えて、儂も老い先長くは無い」
俺「長くは無いって…俺にはまだ50後半くらいに見えるけどな」
源十郎「それでも一族の中では長寿な方でな…理由は推して察してくれ。そんな境遇だからこそ、理央の将来の事を案じずには居られないのだ」
俺「将来か、成る程な…爺さん亡き後、それが重荷にならにように…って事か」
源十郎「加えて、血筋の重荷。外の者は異質をよしとせず…内の者も多くが掟を破り、戻る事叶わぬ始末」
俺「………」
源十郎「犬神と交わるべからず…竜と交わるべからず…翼持つ者と交わるべからず。違えればそこに災厄が生まれ出ずる」
源十郎「儂等の家系は、代々異能を色濃く受け継ぐ家系でな…その血をより濃く受け継ぐため、近親婚を課されて来た」
俺「まぁ…無くは無い話…だよな」
源十郎「と言っても、兄妹での婚姻は稀な事。現に儂の代では従姉妹との婚姻だったのだが、不測にもその次の世代で…多くの外の血が混ざる事となってしまってな」
俺「それで…濃い血を残すため、理央の両親に白羽の矢が立ったって事か」
源十郎「左様。唯一の救いだったのは、二人が互いに愛し合って居た事くらいの物か。そして、二人の間には男と女…二人の子が生まれ…」
俺「って、ちょっと待ってくれ!今何て言った?二人の子供!?」
源十郎「そう、理央には兄が居る。いや…居たと言うべきかな」
俺「過去形って事は………」
源十郎「だが、この事は儂が語るよりも理央の口から聞くのが良かろう」
俺「いや、そんな重要な所を投げんのかよ…」
源十郎「聞けば判る…」
と言って一方的に話を切り上げ、それ以上の追求を憚る源十郎氏。
だが…それならそれで、この場で聞いて置きたい事は他にある。
俺「じゃぁ話は変わるが…一つ、爺さんに聞いておきたい事がある」
源十郎「…何だ?」
俺「理央の事…実際の所はどう思ってるんだ?
源十郎「………」
俺「爺さんの話を聞いてる限りじゃ、決して理央を無碍にはしてない。んでも理央に直接向けてた態度…あれは何なんだ?」
源十郎「先にも話した通り…理央は家族を失っている。加えて、儂も老い先長くは無い」
俺「長くは無いって…俺にはまだ50後半くらいに見えるけどな」
源十郎「それでも一族の中では長寿な方でな…理由は推して察してくれ。そんな境遇だからこそ、理央の将来の事を案じずには居られないのだ」
俺「将来か、成る程な…爺さん亡き後、それが重荷にならにように…って事か」
源十郎「加えて、血筋の重荷。外の者は異質をよしとせず…内の者も多くが掟を破り、戻る事叶わぬ始末」
俺「………」
源十郎「犬神と交わるべからず…竜と交わるべからず…翼持つ者と交わるべからず。違えればそこに災厄が生まれ出ずる」
436: ◆TPk5R1h7Ng 2015/10/14(水) 11:18:59.56 ID:ici1O/Ijo
●心配症へのサプライズ
俺「後半のは良く解らなかったんだが…要は、理央が独り身になる事を心配してる…って事だよな?」
源十郎「…左様」
俺「んじゃついでに、もう一つ質問…爺さんの能力って、遠くを警戒してると近くはよく見えなくなる感じか?」
源十郎「ぬ…?うむ、確かに。若い頃はそうでも無かったのだが、寄る年波には勝てなんでな…」
俺「理央みたいに無差別に読み込んでる様子じゃ無かったし……やっぱりな。よし、事情は解った」
源十郎氏の返答を聞き、それを確かめた所で…俺は携帯を取り出す。
そして………
俺「あ、理央か?起き抜けの所悪いんだがちょっと聞いてくれ。お前の爺さんな?ツンデレだわ」
源十郎「…………なっ!?」
俺「ぁー…詳しい事は後で話す。あと、理央が寝てる間に色々あったから、その辺りはシヴィトから聞いといてくれ」
源十郎「なっ……なっ…何を…お主、何を言って居る!?理央の事情を理解したのでは無いのか!?」
俺「いや、理解した上で言ってるに決まってるだろ?」
源十郎「なっ………」
俺「あの時の理央と爺さんの会話…何でイライラしたのか、やっと判ったぜ」
源十郎「お主…何が言いたい」
俺「理央のため…それは嘘じゃぁ無いって判るが……心配性が末期な上に、やり方が屈折し過ぎてんだよ」
源十郎「………心配性で何が悪い。甘やかして…その結果、駄目にしてしまうよりは…」
俺「だから、そこが間違ってるつってんだよ!拾って来た犬や猫とは訳が違うんだ、家族なんだぞ?甘やかして何が悪い!」
源十郎「っ……無責任な事を言うな!甘やかした結果理央が自立も出来ないような子供に育ったらどうする!」
俺「そうならないように、爺さんは十分過ぎるくらい厳しくして来たんだろうが!!」
源十郎「…………」
俺「そんなに責任が大事なら、俺が責任持って断言してやるよ」
源十郎「………何?」
俺「理央はもう立派に成長してる…爺さん、あんたは理央を甘やかして良いんだよ!!ってかむしろ甘やかせ!理央のためにも甘やかせ!!」
俺「後半のは良く解らなかったんだが…要は、理央が独り身になる事を心配してる…って事だよな?」
源十郎「…左様」
俺「んじゃついでに、もう一つ質問…爺さんの能力って、遠くを警戒してると近くはよく見えなくなる感じか?」
源十郎「ぬ…?うむ、確かに。若い頃はそうでも無かったのだが、寄る年波には勝てなんでな…」
俺「理央みたいに無差別に読み込んでる様子じゃ無かったし……やっぱりな。よし、事情は解った」
源十郎氏の返答を聞き、それを確かめた所で…俺は携帯を取り出す。
そして………
俺「あ、理央か?起き抜けの所悪いんだがちょっと聞いてくれ。お前の爺さんな?ツンデレだわ」
源十郎「…………なっ!?」
俺「ぁー…詳しい事は後で話す。あと、理央が寝てる間に色々あったから、その辺りはシヴィトから聞いといてくれ」
源十郎「なっ……なっ…何を…お主、何を言って居る!?理央の事情を理解したのでは無いのか!?」
俺「いや、理解した上で言ってるに決まってるだろ?」
源十郎「なっ………」
俺「あの時の理央と爺さんの会話…何でイライラしたのか、やっと判ったぜ」
源十郎「お主…何が言いたい」
俺「理央のため…それは嘘じゃぁ無いって判るが……心配性が末期な上に、やり方が屈折し過ぎてんだよ」
源十郎「………心配性で何が悪い。甘やかして…その結果、駄目にしてしまうよりは…」
俺「だから、そこが間違ってるつってんだよ!拾って来た犬や猫とは訳が違うんだ、家族なんだぞ?甘やかして何が悪い!」
源十郎「っ……無責任な事を言うな!甘やかした結果理央が自立も出来ないような子供に育ったらどうする!」
俺「そうならないように、爺さんは十分過ぎるくらい厳しくして来たんだろうが!!」
源十郎「…………」
俺「そんなに責任が大事なら、俺が責任持って断言してやるよ」
源十郎「………何?」
俺「理央はもう立派に成長してる…爺さん、あんたは理央を甘やかして良いんだよ!!ってかむしろ甘やかせ!理央のためにも甘やかせ!!」
437: ◆TPk5R1h7Ng 2015/10/14(水) 11:33:14.47 ID:ici1O/Ijo
●仲直りのエンチャント
源十郎「……………」
俺「…………」
源十郎「クッ………ククク………ハッハッハッハ!!ただの小僧かと思えば…言ってくれよるわ!!」
俺「ただの小僧で間違って無ぇよ。ただ…あんたがそのただの小僧でも判る事を、判って無かったってだけだ」
源十郎「ククッ…一本取られたわ。だが…お主のその言葉、吐き出した以上飲み込む事は出来ぬと知れ」
俺「元からそんなつもりは無ぇよ。そこまで無責任な人間のつもりは無ぇ」
源十郎「そうか…そうかそうか………ならば儂ももう憂いは無い。いつ冥土からの迎えが来ようと悔いは無いわ」
俺「いや、縁起でも無い事言ってんじゃ無ぇよ。爺さんにはまだまだ生きて理央を甘やかして貰わなきゃならねぇんだからな?」
源十郎「あぁそうだったな…そう言う事だ、理央。また明日…一緒に朝食でも作りながら話をしよう」
と源十郎氏が言った所で、俺は携帯が通話中になっていた事に気付く。
俺「明日まで待たなくても、別に今からだって良いだろうに。下手に間を空けると、死亡フラグになっちまうぞ」
携帯を手にして、通話を終えてからぼやく俺。それに対して源十郎氏は向き直り…
源十郎「何…理央は逃げぬし、怪物も今は山奥に身を潜めておる。それに……」
言葉を連ねて、俺を指差す。
源十郎「そのようななりでは、落ち着いて話をする事も出来まい?」
そして、指摘されてやっと思い出す今の格好。チャーリー…もといヴィクターの返り血を浴び、軽くスプラッタな今の姿。
俺「………確かに、これはどうにかしないとダメだな」
源十郎「離れの風呂ならば湯沸し機が付いておる。一っ風呂浴びて来るが良い」
俺「んでも、その間の護衛は………」
源十郎「もう一人のお嬢さんに代わって貰えばよかろう?」
…………と言う事で…改めて携帯で話を通してから、俺とシヴィトが交代する流れとなった訳だが…
源十郎「一度目の襲撃の後から潜んでおる竜牙兵…型は大分違うようだが、あれはお主の物だな」
シヴィト「やっぱり……気付いていたのね…」
源十郎「先の襲撃で姿を現さなかったのは…何か腹中にあっての事か?」
シヴィト「別に…怪物が向かってくるようなら応戦したけれど、その必要が無かっただけ」
源十郎「そうか……儂にはあれが殺気を放って怪物を退かせたように見えたが、そうか…気のせいだったか」
シヴィト「………判っているなら…聞かないで。あ………そうだ、交代の時…言い忘れてた事があった」
源十郎「お主こそ何を白々しい。あの小僧が向かうと知っていたからこそ、わざと仕込んだであろうに」
源十郎「……………」
俺「…………」
源十郎「クッ………ククク………ハッハッハッハ!!ただの小僧かと思えば…言ってくれよるわ!!」
俺「ただの小僧で間違って無ぇよ。ただ…あんたがそのただの小僧でも判る事を、判って無かったってだけだ」
源十郎「ククッ…一本取られたわ。だが…お主のその言葉、吐き出した以上飲み込む事は出来ぬと知れ」
俺「元からそんなつもりは無ぇよ。そこまで無責任な人間のつもりは無ぇ」
源十郎「そうか…そうかそうか………ならば儂ももう憂いは無い。いつ冥土からの迎えが来ようと悔いは無いわ」
俺「いや、縁起でも無い事言ってんじゃ無ぇよ。爺さんにはまだまだ生きて理央を甘やかして貰わなきゃならねぇんだからな?」
源十郎「あぁそうだったな…そう言う事だ、理央。また明日…一緒に朝食でも作りながら話をしよう」
と源十郎氏が言った所で、俺は携帯が通話中になっていた事に気付く。
俺「明日まで待たなくても、別に今からだって良いだろうに。下手に間を空けると、死亡フラグになっちまうぞ」
携帯を手にして、通話を終えてからぼやく俺。それに対して源十郎氏は向き直り…
源十郎「何…理央は逃げぬし、怪物も今は山奥に身を潜めておる。それに……」
言葉を連ねて、俺を指差す。
源十郎「そのようななりでは、落ち着いて話をする事も出来まい?」
そして、指摘されてやっと思い出す今の格好。チャーリー…もといヴィクターの返り血を浴び、軽くスプラッタな今の姿。
俺「………確かに、これはどうにかしないとダメだな」
源十郎「離れの風呂ならば湯沸し機が付いておる。一っ風呂浴びて来るが良い」
俺「んでも、その間の護衛は………」
源十郎「もう一人のお嬢さんに代わって貰えばよかろう?」
…………と言う事で…改めて携帯で話を通してから、俺とシヴィトが交代する流れとなった訳だが…
源十郎「一度目の襲撃の後から潜んでおる竜牙兵…型は大分違うようだが、あれはお主の物だな」
シヴィト「やっぱり……気付いていたのね…」
源十郎「先の襲撃で姿を現さなかったのは…何か腹中にあっての事か?」
シヴィト「別に…怪物が向かってくるようなら応戦したけれど、その必要が無かっただけ」
源十郎「そうか……儂にはあれが殺気を放って怪物を退かせたように見えたが、そうか…気のせいだったか」
シヴィト「………判っているなら…聞かないで。あ………そうだ、交代の時…言い忘れてた事があった」
源十郎「お主こそ何を白々しい。あの小僧が向かうと知っていたからこそ、わざと仕込んだであろうに」
439: ◆TPk5R1h7Ng 2015/10/19(月) 01:57:40.68 ID:dr4S6DGso
●伝達不備のトラップ
シヴィト「ゆうべは…お楽しみ?」
俺「ギリギリセェェェーーーーフ!!」
シヴィト「そう…残念」
俺「はいそこ残念がらない!限りなくアウトに近いギリギリセーフで、こっちはどれだけ大変だったと…!!」
シヴィト「別に…我慢せずにまぐわってしまえば良かったのに」
俺「まぐわうとか言うな!!はしたない!」
詳細はあえて省略するが………シヴィトの策略により理央と風呂場で鉢合わせ、大変な夜を過ごした次の日の朝。
理央と源十郎氏は台所で水入らず…俺達は食堂で暇を潰しながら、二人と朝食を待っている最中である。
シヴィト「据え膳食わぬは男の恥…つまり、恥を晒している君の方がはしたない」
俺「何でそんな日本語知ってるんだよ!」
シヴィト「彼から教わった…勿論―――」
俺「はいストップ!」
そこから先の言葉は判っている。どうせ、勿論実践付きでとか言うに決まってる。
黄色先輩の影響なのか、元からこう言う性格なのか…おかげ精神的疲労が半端では無い。
早く来てくれ、理央ーーー!!
思わず心の中で叫ぶ俺。そしてその叫びが届いたのか、精神的過労で倒れかける寸前で…
理央「皆さん、お待たせしました」
朝食を作り終えた理央が、お盆を片手に現れた。
俺「理央…マジ天使」
理央「はひっ!?」
おっと、思わず口に出てしまった。
落としそうになったお盆を抑えながら、理央の顔がみるみる内に真っ赤になって行く
が………発言の訂正はしない。
いや…決してからかいの矛先を俺から理央に逸らすためじゃ無いからな?
シヴィト「ゆうべは…お楽しみ?」
俺「ギリギリセェェェーーーーフ!!」
シヴィト「そう…残念」
俺「はいそこ残念がらない!限りなくアウトに近いギリギリセーフで、こっちはどれだけ大変だったと…!!」
シヴィト「別に…我慢せずにまぐわってしまえば良かったのに」
俺「まぐわうとか言うな!!はしたない!」
詳細はあえて省略するが………シヴィトの策略により理央と風呂場で鉢合わせ、大変な夜を過ごした次の日の朝。
理央と源十郎氏は台所で水入らず…俺達は食堂で暇を潰しながら、二人と朝食を待っている最中である。
シヴィト「据え膳食わぬは男の恥…つまり、恥を晒している君の方がはしたない」
俺「何でそんな日本語知ってるんだよ!」
シヴィト「彼から教わった…勿論―――」
俺「はいストップ!」
そこから先の言葉は判っている。どうせ、勿論実践付きでとか言うに決まってる。
黄色先輩の影響なのか、元からこう言う性格なのか…おかげ精神的疲労が半端では無い。
早く来てくれ、理央ーーー!!
思わず心の中で叫ぶ俺。そしてその叫びが届いたのか、精神的過労で倒れかける寸前で…
理央「皆さん、お待たせしました」
朝食を作り終えた理央が、お盆を片手に現れた。
俺「理央…マジ天使」
理央「はひっ!?」
おっと、思わず口に出てしまった。
落としそうになったお盆を抑えながら、理央の顔がみるみる内に真っ赤になって行く
が………発言の訂正はしない。
いや…決してからかいの矛先を俺から理央に逸らすためじゃ無いからな?
440: ◆TPk5R1h7Ng 2015/10/19(月) 02:03:18.13 ID:dr4S6DGso
●逆転ターンエンド
そうとも…矛先が逸れて居たのならば、こんな事にはなって居ない
源十郎「しかし…責任持を持つだのとのたまって置きながら、あれだけの状況で手を出さぬとはのう…」
俺「うるせぇ!ってかそのネタは、昨日理央本人からも振られたネタだっての!」
理央と源十郎氏お手製の朝食を平らげた後…食後の団欒タイムにまで、俺は昨日の件でからかわれ続けて居る。
シヴィト「ところで…抑制剤の方は飲まなくても良いの?そろそろ時間だと思うけど…」
含みを持たせてか、そのままの意味か…思い出したように呟くシヴィト。
俺と理央は、抑制剤と言う単語によって半ば強制的に昨夜の記憶を引き出され…二人同時に耳まで真っ赤になってしまう。
理央「そ…そう言えば、本物の抑制剤はどこにあるんですか!?」
シヴィト「ベッドの裏側に貼り付けておいた。能力ですぐ判ると思っていたのだけど…じゃぁ今はどうして?」
理央「予備で小分けにしておいた分を飲んだんです!そもそも、能力で探してる余裕すら無かったんですよ!?」
シヴィト「あぁ…成る程。そんなに激しかったんだ…」
理央「っ……と、とにかく!ベッドの裏ですね!?取って来ます!」
シヴィトの意地悪に耐えられなくなったのか、離れの部屋に向かおうとする理央。
だが俺は手を伸ばし、理央の行く手を遮る。
俺「あー…その件なんだがな。多分抑制剤は必要無いぞ」
理央「………え?どうしてですか?」
俺「能力の相互干渉の事…多分ありゃ爺さんの嘘だ」
理央「え?え?どう言う事ですか!?」
俺と源十郎氏を交互に移動する理央の視線。
その視線を受けた源十郎氏は、顔を逸らしながらポリポリと鼻の頭を掻き始める。
俺「理央に爺さんの本心を知られないため…わざと辛く当たるために、そう言う設定にしといたんだろ」
源十郎「人聞きの悪い事を言うでは無い。認識範囲が重複すれば相互干渉を引き起こしてしまうのは、本当の事だ。ただ……」
俺「ただ………?」
源十郎「儂の方で意図的に範囲をずらすなり、認識を止めるなりすれば………防ぎ様があると言うだけだ」
この…ツンデレジジイ………
俺「ってー事は……これからは時間も場所も気にせず、理央を甘やかせるってぇ訳だよなぁ?良かったなぁ、理央」
いじられた分はいじり返す…そう、今度は俺のターンが始まった!
そうとも…矛先が逸れて居たのならば、こんな事にはなって居ない
源十郎「しかし…責任持を持つだのとのたまって置きながら、あれだけの状況で手を出さぬとはのう…」
俺「うるせぇ!ってかそのネタは、昨日理央本人からも振られたネタだっての!」
理央と源十郎氏お手製の朝食を平らげた後…食後の団欒タイムにまで、俺は昨日の件でからかわれ続けて居る。
シヴィト「ところで…抑制剤の方は飲まなくても良いの?そろそろ時間だと思うけど…」
含みを持たせてか、そのままの意味か…思い出したように呟くシヴィト。
俺と理央は、抑制剤と言う単語によって半ば強制的に昨夜の記憶を引き出され…二人同時に耳まで真っ赤になってしまう。
理央「そ…そう言えば、本物の抑制剤はどこにあるんですか!?」
シヴィト「ベッドの裏側に貼り付けておいた。能力ですぐ判ると思っていたのだけど…じゃぁ今はどうして?」
理央「予備で小分けにしておいた分を飲んだんです!そもそも、能力で探してる余裕すら無かったんですよ!?」
シヴィト「あぁ…成る程。そんなに激しかったんだ…」
理央「っ……と、とにかく!ベッドの裏ですね!?取って来ます!」
シヴィトの意地悪に耐えられなくなったのか、離れの部屋に向かおうとする理央。
だが俺は手を伸ばし、理央の行く手を遮る。
俺「あー…その件なんだがな。多分抑制剤は必要無いぞ」
理央「………え?どうしてですか?」
俺「能力の相互干渉の事…多分ありゃ爺さんの嘘だ」
理央「え?え?どう言う事ですか!?」
俺と源十郎氏を交互に移動する理央の視線。
その視線を受けた源十郎氏は、顔を逸らしながらポリポリと鼻の頭を掻き始める。
俺「理央に爺さんの本心を知られないため…わざと辛く当たるために、そう言う設定にしといたんだろ」
源十郎「人聞きの悪い事を言うでは無い。認識範囲が重複すれば相互干渉を引き起こしてしまうのは、本当の事だ。ただ……」
俺「ただ………?」
源十郎「儂の方で意図的に範囲をずらすなり、認識を止めるなりすれば………防ぎ様があると言うだけだ」
この…ツンデレジジイ………
俺「ってー事は……これからは時間も場所も気にせず、理央を甘やかせるってぇ訳だよなぁ?良かったなぁ、理央」
いじられた分はいじり返す…そう、今度は俺のターンが始まった!
443: ◆TPk5R1h7Ng 2015/10/22(木) 06:57:24.00 ID:nVUBRNGFo
●戦局のリバース
シヴィト「それで…ホームコメディが終わった所で相談しておきたいのだけど。例の怪物はどうするの?」
俺「っと、そう言えばそうだった…結局あの怪物は、今どうなってるんだ?」
源十郎「今は山奥の洞穴に身を潜めて居るが、再び儂等を襲う機会を虎視眈々と狙っておる」
俺「となると…相手の出方を待っていたら、何時まで経っても埒が空かないな」
シヴィト「それなら、一番有効な策は…」
俺「こちらから打って出る……か。爺さんが居る以上、地の利はこちらにある訳だし…勝算は十分だよな」
源十郎「いや、地の利に関しては儂と奴で五分と五分…単純に戦力差が勝率と考えた方が良いだろう」
俺「そうなのか?だったら、主戦力になるシヴィトの能力を把握しときたいんだが…」
シヴィト「戦力は………手持ちの分だけだと騎兵百体分程度。日中は個体レベルで戦力が低下する」
俺「低下?日中だと何か不味いのか?」
シヴィト「日光…私のドラゴントゥースウォーリーアーは光や聖属性に弱いから、長時間は維持できない」
いや…属性とか、ここに来て新しい概念を持ち出さないでくれ
俺「と言うか…騎兵百体とか言われてもピンと来ないんだが」
源十郎「誤差はあるが、三十体前後であの怪物と考えて問題無かろう」
俺「三十体で同等…約三倍の戦力か。正面から戦う分には申し分無いんだが………」
理央「正面からの戦闘に…なるんでしょうか?」
そう、そこが最大の問題だ
俺「正面から仕掛けるのは簡単だが、怪物が乗って来るとは限らない。それどころか、逃げられてしまう可能性も大いにある」
シヴィト「こちらの手の内を知られて居ない内は良いけど…戦力差を目の当たりにしたら」
俺「撤退して、また期間を空けてからの襲撃…なんて事になったら面倒だよな。そうなると…」
シヴィト「戦力を分散させてでも包囲網を敷いて…追い詰めた上で決着を付けるのが得策」
俺「ただその場合…逆に今度はこっちの戦力不足が問題になって来るんだよなぁ」
理央「あの…その事なんですけど……先輩に、話しておかなければいけない事があるんです」
シヴィト「それで…ホームコメディが終わった所で相談しておきたいのだけど。例の怪物はどうするの?」
俺「っと、そう言えばそうだった…結局あの怪物は、今どうなってるんだ?」
源十郎「今は山奥の洞穴に身を潜めて居るが、再び儂等を襲う機会を虎視眈々と狙っておる」
俺「となると…相手の出方を待っていたら、何時まで経っても埒が空かないな」
シヴィト「それなら、一番有効な策は…」
俺「こちらから打って出る……か。爺さんが居る以上、地の利はこちらにある訳だし…勝算は十分だよな」
源十郎「いや、地の利に関しては儂と奴で五分と五分…単純に戦力差が勝率と考えた方が良いだろう」
俺「そうなのか?だったら、主戦力になるシヴィトの能力を把握しときたいんだが…」
シヴィト「戦力は………手持ちの分だけだと騎兵百体分程度。日中は個体レベルで戦力が低下する」
俺「低下?日中だと何か不味いのか?」
シヴィト「日光…私のドラゴントゥースウォーリーアーは光や聖属性に弱いから、長時間は維持できない」
いや…属性とか、ここに来て新しい概念を持ち出さないでくれ
俺「と言うか…騎兵百体とか言われてもピンと来ないんだが」
源十郎「誤差はあるが、三十体前後であの怪物と考えて問題無かろう」
俺「三十体で同等…約三倍の戦力か。正面から戦う分には申し分無いんだが………」
理央「正面からの戦闘に…なるんでしょうか?」
そう、そこが最大の問題だ
俺「正面から仕掛けるのは簡単だが、怪物が乗って来るとは限らない。それどころか、逃げられてしまう可能性も大いにある」
シヴィト「こちらの手の内を知られて居ない内は良いけど…戦力差を目の当たりにしたら」
俺「撤退して、また期間を空けてからの襲撃…なんて事になったら面倒だよな。そうなると…」
シヴィト「戦力を分散させてでも包囲網を敷いて…追い詰めた上で決着を付けるのが得策」
俺「ただその場合…逆に今度はこっちの戦力不足が問題になって来るんだよなぁ」
理央「あの…その事なんですけど……先輩に、話しておかなければいけない事があるんです」
444: ◆TPk5R1h7Ng 2015/10/22(木) 07:00:33.76 ID:nVUBRNGFo
●突撃疾走アスリート
源十郎『目標、3時方向に移動を開始。現状の速度を維持したまま、進行方向を6時に変更せよ』
源十郎氏から送られてくるテレパシーの指示に従い、目標への進路を取る俺達…討伐隊遊撃班
構成は、まず俺と理央……シヴィトが創り出した、動物の骸骨のドラゴントゥースウォーリアーが5体
そして………フルプレートアーマーに身を包み、理央を背負った大男…マリオ。
立ちはだかる木々の合間を練りながら、坂道を滑るように下降して行く俺達。
一旦森を抜けて、川原を突き進み…犬型ドラゴントゥースウォーリアーの背中を借りて川を越え…
再び山道を突き進む。
源十郎『もうじき200メートル圏内に入る。理央の複合リーディングに切り替えだ、伝達を頼む』
俺「理央、爺さんからだ。圏内に入るから、こっから先は理央の方でサポートを頼む」
理央「判りました」
理央に伝え、それを確認した所で…源十郎氏からのテレパシーが途切れた事を感じる。
俺「遂に…あの怪物との決戦なんだよな」
理央「はい…この先の平地での交戦になると思われます。右方から来るので注意して下さい」
理央に促されるまま右に視線を向ける…と、その先には揺れる木々が見える。
怪物…名前を持たない怪物との決戦が迫っている。
しかし、俺は迷いを捨て切る事が出来ない。
恐らく理央も同じ…いや、理央だからこそ俺とは非にならない程の苦悩を抱えているに違いない。
何故なら―――
源十郎『目標、3時方向に移動を開始。現状の速度を維持したまま、進行方向を6時に変更せよ』
源十郎氏から送られてくるテレパシーの指示に従い、目標への進路を取る俺達…討伐隊遊撃班
構成は、まず俺と理央……シヴィトが創り出した、動物の骸骨のドラゴントゥースウォーリアーが5体
そして………フルプレートアーマーに身を包み、理央を背負った大男…マリオ。
立ちはだかる木々の合間を練りながら、坂道を滑るように下降して行く俺達。
一旦森を抜けて、川原を突き進み…犬型ドラゴントゥースウォーリアーの背中を借りて川を越え…
再び山道を突き進む。
源十郎『もうじき200メートル圏内に入る。理央の複合リーディングに切り替えだ、伝達を頼む』
俺「理央、爺さんからだ。圏内に入るから、こっから先は理央の方でサポートを頼む」
理央「判りました」
理央に伝え、それを確認した所で…源十郎氏からのテレパシーが途切れた事を感じる。
俺「遂に…あの怪物との決戦なんだよな」
理央「はい…この先の平地での交戦になると思われます。右方から来るので注意して下さい」
理央に促されるまま右に視線を向ける…と、その先には揺れる木々が見える。
怪物…名前を持たない怪物との決戦が迫っている。
しかし、俺は迷いを捨て切る事が出来ない。
恐らく理央も同じ…いや、理央だからこそ俺とは非にならない程の苦悩を抱えているに違いない。
何故なら―――
445: ◆TPk5R1h7Ng 2015/10/22(木) 07:07:20.62 ID:nVUBRNGFo
●驚愕のパンデモニウム
―――
理央「マリオと言う名前でキングダムに潜入している………兄…いえ、兄だった物です」
作戦打ち合わせの最中…縁側の陰から現れる、フルプレートアーマーの大男。
一見すると、先の襲撃者達の仲間かと見間違うその容姿に、俺は反射的に警戒態勢を取る。
が…先の理央の言葉を思い出す。
俺「え?兄ってもしかしてこの……いや、それ以前に…兄だった物って……」
理央「言葉通りの意味です。かつては私の兄だった人物を、ヴィクター…ティム・フランケンシュタインが改造して作り上げた存在…それがマリオです」
俺「は?改造?そんな事…」
理央「して居たんです。そしてその研究に、私も…参加させられていました」
俺「………」
突然明かされる事実…俺はそれに返すべき適切な事を見付ける事が出来なかった。
…が、同時にそのせいで訪れるであろう重苦しい沈黙にも耐えられる気がしない。
俺は無理矢理に言葉を探し、それを搾り出す。
俺「えっと、じゃぁ…過去形って事は今、マリオの状態って…いわゆる記憶喪失みたいな物か?だったら何かしらのきっかけがあれば…」
理央「ありえません。記憶喪失とは真逆…記憶は存在していても、自我や人格と言う物を外科的に排除されて居ますから」
俺「は?いや、さすがにそれはおかしいだろ。今だってこうやって自分で歩いてる訳だし…」
理央「違います…」
俺「違うって?」
理央「マリオは、自分で歩くどころか指一本動かす事も出来ません。自律神経以外は全て私の操作で動いているんです」
俺「操作って…それじゃぁまるで…」
理央「はい…ただの操り人形です」
俺が口から吐き出しかけた失言の続きを、臆する事無く言い放つ理央。
マリオ…理央の兄がこんな状態になってしまったと言うだけでも、充分過ぎる程に残酷な現実
…にも関わらず、その残酷は更に追い討ちをかけてくる。
源十郎「そして…ここから儂が話すは、理央も知らぬ事。理央には辛い現実だが、目を逸らさず聞いて貰わねばならぬ」
理央「………え?」
源十郎「兄のみならず…理央の両親もまた、ヴィクターの研究の材料とされ……命を落とした」
そこまでは俺も聞いた事。だが……そこから先は…
源十郎「そして…二人のP器官と脳の一部は摘出され、あ奴…名前を持たない怪物に組み込まれておる」
理央にとって…余りにも非常で残酷な内容だった。
446: ◆TPk5R1h7Ng 2015/10/22(木) 07:10:04.49 ID:nVUBRNGFo
●復讐決断リバーサル
理央「…………」
青ざめる理央の顔…震える足。視線は定まらないまま下がり、膝が力を失って崩れ落ちかける
俺「―――……」
が、理央はそこで踏み留まり、辛うじて持ち直す。いや………違う
手放しそうな意識を必死に掴み、目の前に突き付けられた現実から逃げる事無く…立ち向かっている。
理央「お父さんと、お母さんの…意識は?」
祖父「他者の脳同様…ツギハギの一部にされて、個人の意思などと言う物は残っておらぬ」
理央「そう…ですか。だったら………躊躇する理由は、ありませんよね」
理央の口から搾り出された結論。
幾多の葛藤を繰り返しながらも、自分が成すべき事を見据えて…導き出した理央の答え。
にも関わらず俺は………
俺は………その姿を見て、何故か頭の中に黒い靄がかかるような感覚に陥った。
シヴィト「なら…決行時間はどうする?」
源十郎「万全を期すならば、日が暮れるのを待って夜襲…包囲網を敷くならば、早ければ早い方が良いが…」
理央「出来るなら、今すぐにでも………」
決断を口にするも…途中で言い淀み、言葉を濁す理央。皆、理央の挙動を追求しようとしないが…その理由は判っている。
決着を逸る気持ちもあろうだろうが…それ以上に、自らの決意に揺らぐ暇を与えないため
そして………自らの判断が感情に伴った事を、下手に自覚しているが故に…その主張を押し切る事が出来ないで居るのだと。
俺「俺も理央に賛成だ。厳しい戦いにはなるかも知れないが、それを避けて取り逃がすようじゃ本末転倒だしな」
理央「先輩………」
頭の中の靄を振り払うように、俺は声を上げる。
今の俺に出来るのはこのくらいの事、だからこそ…その出来る事に全力を注ぐ。
シヴィト「それじゃぁ…始めよう」
理央「…………」
青ざめる理央の顔…震える足。視線は定まらないまま下がり、膝が力を失って崩れ落ちかける
俺「―――……」
が、理央はそこで踏み留まり、辛うじて持ち直す。いや………違う
手放しそうな意識を必死に掴み、目の前に突き付けられた現実から逃げる事無く…立ち向かっている。
理央「お父さんと、お母さんの…意識は?」
祖父「他者の脳同様…ツギハギの一部にされて、個人の意思などと言う物は残っておらぬ」
理央「そう…ですか。だったら………躊躇する理由は、ありませんよね」
理央の口から搾り出された結論。
幾多の葛藤を繰り返しながらも、自分が成すべき事を見据えて…導き出した理央の答え。
にも関わらず俺は………
俺は………その姿を見て、何故か頭の中に黒い靄がかかるような感覚に陥った。
シヴィト「なら…決行時間はどうする?」
源十郎「万全を期すならば、日が暮れるのを待って夜襲…包囲網を敷くならば、早ければ早い方が良いが…」
理央「出来るなら、今すぐにでも………」
決断を口にするも…途中で言い淀み、言葉を濁す理央。皆、理央の挙動を追求しようとしないが…その理由は判っている。
決着を逸る気持ちもあろうだろうが…それ以上に、自らの決意に揺らぐ暇を与えないため
そして………自らの判断が感情に伴った事を、下手に自覚しているが故に…その主張を押し切る事が出来ないで居るのだと。
俺「俺も理央に賛成だ。厳しい戦いにはなるかも知れないが、それを避けて取り逃がすようじゃ本末転倒だしな」
理央「先輩………」
頭の中の靄を振り払うように、俺は声を上げる。
今の俺に出来るのはこのくらいの事、だからこそ…その出来る事に全力を注ぐ。
シヴィト「それじゃぁ…始めよう」
447: ◆TPk5R1h7Ng 2015/10/22(木) 07:22:54.58 ID:nVUBRNGFo
●追跡のレギオン
シヴィト「アルテリック皇国、第五皇女…シヴィト・アルテリックの名の下に命ずる」
シヴィト「我に仇為す彼の者に…我が領域より逃げる事叶わぬと、思い知らせよ!!」
白い小石のような物…恐らくは自身の歯を砕いた物を山へと向けて振り撒き、高らかに声を上げるシヴィト。
その声が山中に響き渡ったかと思えば…続いて引き起こるのは、足元を揺るがす程の山鳴り。
そして…いつか見たような光景。
歯が振り撒かれた辺りを中心に、枯れ行く木々。
枯れ細った木々は自重さえ支え切れなくなり、幹を折ってそこに現れた存在を示す。
牙より生まれ出でし、それ……目視した限りでも、約八十体。未確認の者を数えれば、恐らくその数は…
シヴィト「この山には人の死体が少なかった…だから、動物の死体を使わせて貰った。スケルトン級計百体…完成」
シヴィトの言葉通り、百体。
数多の獣の中、僅かな数だが人のそれが混ざった…有角の骸骨、ドラゴントゥースウォーリアー。
それらの全てがシヴィトを向いて傅き…次の刹那には、俺達の前から姿を消して居た。
シヴィト「………情報を。怪物の位置と状態に伴い、包囲網を展開する」
瞬く間に移り変わる展開を目の当たりにして、俺はほんの数秒ながらも放心してしまったらしい
改めて気を引き締め…源十郎氏からテレパシーで送られて来る情報を頼りに、次に取るべき行動を考える。
俺「理央………準備と覚悟は出来てるか?」
理央「…はい」
俺「なら行くぞ………決戦だ!」
マリオの背に理央が乗るのを確認し、屋敷を背にして俺は走り出す。
怪物との…決戦が始まった
―――
シヴィト「アルテリック皇国、第五皇女…シヴィト・アルテリックの名の下に命ずる」
シヴィト「我に仇為す彼の者に…我が領域より逃げる事叶わぬと、思い知らせよ!!」
白い小石のような物…恐らくは自身の歯を砕いた物を山へと向けて振り撒き、高らかに声を上げるシヴィト。
その声が山中に響き渡ったかと思えば…続いて引き起こるのは、足元を揺るがす程の山鳴り。
そして…いつか見たような光景。
歯が振り撒かれた辺りを中心に、枯れ行く木々。
枯れ細った木々は自重さえ支え切れなくなり、幹を折ってそこに現れた存在を示す。
牙より生まれ出でし、それ……目視した限りでも、約八十体。未確認の者を数えれば、恐らくその数は…
シヴィト「この山には人の死体が少なかった…だから、動物の死体を使わせて貰った。スケルトン級計百体…完成」
シヴィトの言葉通り、百体。
数多の獣の中、僅かな数だが人のそれが混ざった…有角の骸骨、ドラゴントゥースウォーリアー。
それらの全てがシヴィトを向いて傅き…次の刹那には、俺達の前から姿を消して居た。
シヴィト「………情報を。怪物の位置と状態に伴い、包囲網を展開する」
瞬く間に移り変わる展開を目の当たりにして、俺はほんの数秒ながらも放心してしまったらしい
改めて気を引き締め…源十郎氏からテレパシーで送られて来る情報を頼りに、次に取るべき行動を考える。
俺「理央………準備と覚悟は出来てるか?」
理央「…はい」
俺「なら行くぞ………決戦だ!」
マリオの背に理央が乗るのを確認し、屋敷を背にして俺は走り出す。
怪物との…決戦が始まった
―――
448: ◆TPk5R1h7Ng 2015/10/22(木) 07:26:17.27 ID:nVUBRNGFo
●不可逆エントロピー
―――そう…この経緯があったから…両親の事が理央を苛んでいるからだ。
怪物を倒さなければ決して解決する事の無い問題…
にも関わらず、その怪物を倒すために乗り越えなければいけない壁。
しかし…そんな悩みにさえ折り合いを付ける暇も無く、邂逅は訪れてしまう。
平地に躍り出た俺達の目の前に現れる…怪物。
その行く手を阻むように、犬型のドラゴントゥースウォーリアー6体が回り込み…
俺と理央、マリオ…怪物を追い立てて居た10体…回り込んだ6体。計19の数で怪物を取り囲む。
ある者は角を…
ある者は爪を…
ある者は牙を用いて
ある時は別々に…
ある時は同時に怪物に襲いかかり、着実にダメージを蓄積させて行く。
が……そのダメージの代償として、一体…また一体と倒されて行くドラゴントゥースウォーリアー達。
交戦中に包囲網を狭め、それを形成していた者達が次々と増援に駆けつけるが…正直な所、一進一退
三十体で怪物と同等と言われては居たが、それは同時に戦った場合の事。
現在の形式で戦力を削がれ続けるようならば、こちらが圧し負ける事態も充分に考えられる。
となれば…戦法を変えるしか無い。
俺「理央………」
理央「はい…判って居ます」
ここから先は、俺と理央…そしてマリオが中心となった、直接対決だ。
―――そう…この経緯があったから…両親の事が理央を苛んでいるからだ。
怪物を倒さなければ決して解決する事の無い問題…
にも関わらず、その怪物を倒すために乗り越えなければいけない壁。
しかし…そんな悩みにさえ折り合いを付ける暇も無く、邂逅は訪れてしまう。
平地に躍り出た俺達の目の前に現れる…怪物。
その行く手を阻むように、犬型のドラゴントゥースウォーリアー6体が回り込み…
俺と理央、マリオ…怪物を追い立てて居た10体…回り込んだ6体。計19の数で怪物を取り囲む。
ある者は角を…
ある者は爪を…
ある者は牙を用いて
ある時は別々に…
ある時は同時に怪物に襲いかかり、着実にダメージを蓄積させて行く。
が……そのダメージの代償として、一体…また一体と倒されて行くドラゴントゥースウォーリアー達。
交戦中に包囲網を狭め、それを形成していた者達が次々と増援に駆けつけるが…正直な所、一進一退
三十体で怪物と同等と言われては居たが、それは同時に戦った場合の事。
現在の形式で戦力を削がれ続けるようならば、こちらが圧し負ける事態も充分に考えられる。
となれば…戦法を変えるしか無い。
俺「理央………」
理央「はい…判って居ます」
ここから先は、俺と理央…そしてマリオが中心となった、直接対決だ。
449: ◆TPk5R1h7Ng 2015/10/27(火) 15:56:09.33 ID:uuSmIEnyo
●戯言ループ
…と言っても、実際に行う事は至ってシンプル
マリオがメインになって怪物と正面から戦い、俺が後ろからパトリオットを撃ち込み続けるだけ。
ドラゴントゥースウォーリアーを消耗し続けるよりは幾分かマシだが…それでも決定打に欠けていると言わざるを得ない。
どうした物か…この状態からの打開策は………そうだな、少々危険だが…ある。
俺「おい、怪物!こっちを見やがれ!」
マリオと代わり、俺が怪物の注意を引き付ける…という戦法だ。
だが、怪物の手が届かない範囲からでは食いついてはくれない。
怪物の攻撃の射程範囲ギリギリ…避けても尚、爪の先が皮膚を掠める程まで距離を詰め…そこで初めて注意が俺に向く。
俺に向けて爪を突き付ける怪物…その隙を付いて、頭部を揺るがす程の一撃をマリオが放つ。
戦闘が開始してから、初めてのクリーンヒット。
怪物はよろめき、おぼつかない足取りで体勢を立て直すが…反撃に移るまでには至らない。
追撃…いや、トドメを刺す絶好のチャンス。
開いた間合いを一気に詰め、マリオが怪物に迫り行く。
そして大きく振りかぶり、怪物の頭部にその拳を撃ち込んだ……ように見えたのだが…
俺「なっ……あの状態で避けた!?」
いや、違う。マリオが…理央が外した。
俺は焦りを押し殺しきれず、振り返って理央を見る。
ガタガタと歯を鳴らし、青ざめた顔のまま汗を零す理央
戦闘中、自分の事で手一杯だったため気付く事が出来なかったが…理央の精神は、限界寸前に張り詰めて居た。
しかも、不味い事にその原因は…
理央「おとう…さん………おか…あ…さん……」
押し殺したような声で呟かれた、理央の両親。
本人に聞くまでも無く判る。理央は…怪物を殺す事、その中の両親を殺す事に抵抗を…いや、拒絶反応を示している。
俺「しっかりしろ!理央!!ここでお前が折れてどうするんだよ!!」
そして、理央を鼓舞するべく俺の口から飛び出したのは………陳腐で矮小で滑稽で…戯言にすらならないような、詭弁だった。
…と言っても、実際に行う事は至ってシンプル
マリオがメインになって怪物と正面から戦い、俺が後ろからパトリオットを撃ち込み続けるだけ。
ドラゴントゥースウォーリアーを消耗し続けるよりは幾分かマシだが…それでも決定打に欠けていると言わざるを得ない。
どうした物か…この状態からの打開策は………そうだな、少々危険だが…ある。
俺「おい、怪物!こっちを見やがれ!」
マリオと代わり、俺が怪物の注意を引き付ける…という戦法だ。
だが、怪物の手が届かない範囲からでは食いついてはくれない。
怪物の攻撃の射程範囲ギリギリ…避けても尚、爪の先が皮膚を掠める程まで距離を詰め…そこで初めて注意が俺に向く。
俺に向けて爪を突き付ける怪物…その隙を付いて、頭部を揺るがす程の一撃をマリオが放つ。
戦闘が開始してから、初めてのクリーンヒット。
怪物はよろめき、おぼつかない足取りで体勢を立て直すが…反撃に移るまでには至らない。
追撃…いや、トドメを刺す絶好のチャンス。
開いた間合いを一気に詰め、マリオが怪物に迫り行く。
そして大きく振りかぶり、怪物の頭部にその拳を撃ち込んだ……ように見えたのだが…
俺「なっ……あの状態で避けた!?」
いや、違う。マリオが…理央が外した。
俺は焦りを押し殺しきれず、振り返って理央を見る。
ガタガタと歯を鳴らし、青ざめた顔のまま汗を零す理央
戦闘中、自分の事で手一杯だったため気付く事が出来なかったが…理央の精神は、限界寸前に張り詰めて居た。
しかも、不味い事にその原因は…
理央「おとう…さん………おか…あ…さん……」
押し殺したような声で呟かれた、理央の両親。
本人に聞くまでも無く判る。理央は…怪物を殺す事、その中の両親を殺す事に抵抗を…いや、拒絶反応を示している。
俺「しっかりしろ!理央!!ここでお前が折れてどうするんだよ!!」
そして、理央を鼓舞するべく俺の口から飛び出したのは………陳腐で矮小で滑稽で…戯言にすらならないような、詭弁だった。
450: ◆TPk5R1h7Ng 2015/10/27(火) 15:56:49.68 ID:uuSmIEnyo
●絶望リフレイン
俺「親父さんとお袋さんの仇を討つんだろ!?」
闇夜の中…見上げた向こう側に横たわる死体
何だ?俺は何を言っている?
俺「親父さんもお袋さんも…もう死んだんだ!居ないんだよ!!」
血で真っ赤に染まった両手…真っ赤な穴の向こうに見える石畳
止めろ…これ以上………したく…無い
俺「アイツは、理央の親父さんとお袋さんの力を奪って取り込んでるんだぞ!?」
ソーサー=ソーサ
止めろ…止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ!!
俺「あんな…死体を弄ぶような奴の思惑に負けて良いのか!?」
バスルーム…バスタブ…
…一体どの口がのたまっている?
俺「自分に負けるな!理央!!」
…………空
あぁ………そう言えば、今回の任務って…本当は日帰りの筈だったんだよな…
空には何も言わずに、何日も戻って無いんだった…
何を言っている?止めろ…どの口がのたまっている?
何日も放ったらかしにして…多分空の奴、腐ってるだろうな…
帰ったら愚痴の一つも………
俺「言われる訳…無いだろ?だって、空は俺が殺して……見付からないように…」
黙れ!喋るな!無駄口を叩くな、俺の口!
俺「あぁ…ぁぁぁあああああああ!!!!!!」
そうだ……空は―――
俺「親父さんとお袋さんの仇を討つんだろ!?」
闇夜の中…見上げた向こう側に横たわる死体
何だ?俺は何を言っている?
俺「親父さんもお袋さんも…もう死んだんだ!居ないんだよ!!」
血で真っ赤に染まった両手…真っ赤な穴の向こうに見える石畳
止めろ…これ以上………したく…無い
俺「アイツは、理央の親父さんとお袋さんの力を奪って取り込んでるんだぞ!?」
ソーサー=ソーサ
止めろ…止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ!!
俺「あんな…死体を弄ぶような奴の思惑に負けて良いのか!?」
バスルーム…バスタブ…
…一体どの口がのたまっている?
俺「自分に負けるな!理央!!」
…………空
あぁ………そう言えば、今回の任務って…本当は日帰りの筈だったんだよな…
空には何も言わずに、何日も戻って無いんだった…
何を言っている?止めろ…どの口がのたまっている?
何日も放ったらかしにして…多分空の奴、腐ってるだろうな…
帰ったら愚痴の一つも………
俺「言われる訳…無いだろ?だって、空は俺が殺して……見付からないように…」
黙れ!喋るな!無駄口を叩くな、俺の口!
俺「あぁ…ぁぁぁあああああああ!!!!!!」
そうだ……空は―――
451: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/02(月) 14:40:46.53 ID:fxfKB2VYo
●真実虚像クライシス
頭の中に霞がかかったように、ぼやけた視界の中…。
いつの間にか雲がかかった空の下で…理性の欠片も無く、互いの拳をぶつけ合う怪物とマリオ。
怪物の四肢には、何体ものドラゴントゥースウォーリアーが食らい付いているのが見て取れる。
あぁ……そうだった、俺はこの怪物を倒すためにここに居たんだった。
でも………
正直、もうどうでも良い。
今の俺は、自分さえも偽って形作られた偽者だ…
他人には偉そうな事を言って起きながら、その実…自分の事さえ受け止められないような弱い奴だったんだ。
逃げたい…逃げる場所なんてどこにも無いけれども、逃げて逃げて消え去りたい。
そうだ、いっその事怪物の手にかかって――――
俺「………え?」
怪物に向けて歩き出した俺…だが、目の前に見据えて居た筈の景色が不意にぶれる。
そして………頬を打たれた事に気付いた。
理央「止めて…下さい………」
俺「何を…言ってるんだ?」
理央「判ってます………先輩の考えてる事、全部判ってるんですから!!」
そうだ…すっかり失念してが、理央には複合リーディングがあるんだった。
だが…
俺「だから…俺の事が判ったからって何だって言うんだ?理央は黙って、自分の問題で悩んでろよ!!」
理央「黙りません…自分の気持ちにすら、けじめを付ける事が出来ないけど……黙りません!!」
俺「訳判んねぇよ!!何で理央が俺の事情に首突っ込んで来るんだよ!!」
理央「私だって判りませんよ!でも、先輩だって私の事情に首を突っ込んだじゃないですか!どうしてですか!?」
俺「っ……成り行きだよ、成り行き!気の迷いだ!理央が妄想してるような立派な理由なんか無ぇんだよ!」
理央「だったら私も成り行きです!それに…先輩は先輩です!!例え先輩が否定しても、先輩です!」
俺「んのっ……何でも判るくせに、何で判んないんだよ!!さっきまで理央が見てた俺は………」
理央「偽者でも虚飾でも…全部ひっくるめて先輩です!お願いです…自分を否定…しないで下さい!」
俺「くっ………」
頭の中に霞がかかったように、ぼやけた視界の中…。
いつの間にか雲がかかった空の下で…理性の欠片も無く、互いの拳をぶつけ合う怪物とマリオ。
怪物の四肢には、何体ものドラゴントゥースウォーリアーが食らい付いているのが見て取れる。
あぁ……そうだった、俺はこの怪物を倒すためにここに居たんだった。
でも………
正直、もうどうでも良い。
今の俺は、自分さえも偽って形作られた偽者だ…
他人には偉そうな事を言って起きながら、その実…自分の事さえ受け止められないような弱い奴だったんだ。
逃げたい…逃げる場所なんてどこにも無いけれども、逃げて逃げて消え去りたい。
そうだ、いっその事怪物の手にかかって――――
俺「………え?」
怪物に向けて歩き出した俺…だが、目の前に見据えて居た筈の景色が不意にぶれる。
そして………頬を打たれた事に気付いた。
理央「止めて…下さい………」
俺「何を…言ってるんだ?」
理央「判ってます………先輩の考えてる事、全部判ってるんですから!!」
そうだ…すっかり失念してが、理央には複合リーディングがあるんだった。
だが…
俺「だから…俺の事が判ったからって何だって言うんだ?理央は黙って、自分の問題で悩んでろよ!!」
理央「黙りません…自分の気持ちにすら、けじめを付ける事が出来ないけど……黙りません!!」
俺「訳判んねぇよ!!何で理央が俺の事情に首突っ込んで来るんだよ!!」
理央「私だって判りませんよ!でも、先輩だって私の事情に首を突っ込んだじゃないですか!どうしてですか!?」
俺「っ……成り行きだよ、成り行き!気の迷いだ!理央が妄想してるような立派な理由なんか無ぇんだよ!」
理央「だったら私も成り行きです!それに…先輩は先輩です!!例え先輩が否定しても、先輩です!」
俺「んのっ……何でも判るくせに、何で判んないんだよ!!さっきまで理央が見てた俺は………」
理央「偽者でも虚飾でも…全部ひっくるめて先輩です!お願いです…自分を否定…しないで下さい!」
俺「くっ………」
452: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/02(月) 14:45:33.28 ID:fxfKB2VYo
●救済とエクソダス
俺「一体、どうしろって言うんだよ……こんな俺に何が出来るって言うんだよ……」
理央「向き合って下さい…直視して下さい……現実を、自分自身を」
俺「………」
理央「私も…一緒に向き合います。だから……」
………俺は一体何を考えているんだ。
このままだと、理央の言葉に…
理央「甘えて良いんですよ!寄りかかって良いんですよ!!」
俺「何で…何で理央は、俺にそこまで………」
理央「違います…尽くしてるんじゃありません。私が先輩と一緒に居たいんです、私の我侭なんです」
俺「そんなの…ただの詭弁じゃ…」
理央「だったら、先輩も我侭を言って下さい!お互いに我侭を言い合って、それでおあいこです!」
俺「理央……お前ずるいよ。こっちの心を読まれてるのに、口論で勝てる筈無いじゃないか」
理央「悔しかったら、先輩も私の心が判るようになって下さい」
そう言って、俺に笑顔を作って見せる理央。
説き伏せられた…と言うよりも、強引に押し切られて言い包められたと言った方が近いかも知れない。
にも関わらず…気分は悪くない。
そうか…
俺は理央に救われ―――
理央「―――」
理央の背後に走る影…赤い雫。俺に向かって倒れ込む前に、理央の体を怪物の巨大な手が掴む。
持ち上げられた理央の陰から覗くのは………頭部を失ったマリオの姿。
そして…衝撃と共に俺の胸から溢れ出す、熱く赤い血液の奔流。
一体何が起きたのか……それを理解した時には既に手遅れで、怪物は山奥へと向けて駆け出して居た。
俺「一体、どうしろって言うんだよ……こんな俺に何が出来るって言うんだよ……」
理央「向き合って下さい…直視して下さい……現実を、自分自身を」
俺「………」
理央「私も…一緒に向き合います。だから……」
………俺は一体何を考えているんだ。
このままだと、理央の言葉に…
理央「甘えて良いんですよ!寄りかかって良いんですよ!!」
俺「何で…何で理央は、俺にそこまで………」
理央「違います…尽くしてるんじゃありません。私が先輩と一緒に居たいんです、私の我侭なんです」
俺「そんなの…ただの詭弁じゃ…」
理央「だったら、先輩も我侭を言って下さい!お互いに我侭を言い合って、それでおあいこです!」
俺「理央……お前ずるいよ。こっちの心を読まれてるのに、口論で勝てる筈無いじゃないか」
理央「悔しかったら、先輩も私の心が判るようになって下さい」
そう言って、俺に笑顔を作って見せる理央。
説き伏せられた…と言うよりも、強引に押し切られて言い包められたと言った方が近いかも知れない。
にも関わらず…気分は悪くない。
そうか…
俺は理央に救われ―――
理央「―――」
理央の背後に走る影…赤い雫。俺に向かって倒れ込む前に、理央の体を怪物の巨大な手が掴む。
持ち上げられた理央の陰から覗くのは………頭部を失ったマリオの姿。
そして…衝撃と共に俺の胸から溢れ出す、熱く赤い血液の奔流。
一体何が起きたのか……それを理解した時には既に手遅れで、怪物は山奥へと向けて駆け出して居た。
453: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/02(月) 14:51:27.05 ID:fxfKB2VYo
●綱渡りラビリンス
不味い…理央を連れ去られた
しかもご丁寧に、追撃の足を止めるために、俺を瀕死の状態で放置して行ってくれる始末。
俺「俺の事は良い…!怪物を追ってくれ!!」
俺が叫び、それに応えるドラゴントゥースウォーリアー達。
だが、そんなやりとりをしている間にも怪物は逃走を続け…俺達との距離を稼いでいる。
このままでは理央を取り戻せない
連れ去られた先で理央はどうなる?
いや…連れ去られた時点で、碌な目に遭わない事なんて判り切っている。
だったらどうすれば良い?
パトリオットは…もうとっくに射程範囲外だ
リア充爆散は…裏技で使えるようになったとしても、木々に遮られて目視出来ない以上…発動出来ない。
………ソーサー=ソーサ…
辛うじて使えそうな物なら周囲に幾つもあるが、怪物との間の遮蔽物が多過ぎる。
いや、それ以前に…届くかどうかも怪しい所。
例え届いたとしても、理央に当たってしまう可能性を考えれると下手な手は打てない。
駄目だ…俺には何も出来ない
『諦めるの?それも一つの手だけど…それで良いの?』
ふと…どこかのお節介焼きの声が聞こえた気がした。
でも、どうすれば良い?俺に何が出来る?
切羽詰り、思考停止に陥りかけたその時…俺の脳裏に、お節介焼きの声が浮かんできた。
シヴィト『君…一体幾つの能力を持ってるの?』
これはいつ聞いた言葉だったか…そうだ、大男が襲撃して来た時だ。
結果的にドラゴントゥースウォーリアーが止めを刺す事にはなったが、その間に俺は何をした?
そうだ…覚えて居なかったのは、俺が空の死を否定して居たから…と言う事は
俺は要素と条件を当て嵌め、結果に向けてのプロセスを頭で組み立てる
必然と言う名の道標に従い…遂に俺の思考は、結論と言う閉ざされて居た領域へと辿り着く。
不味い…理央を連れ去られた
しかもご丁寧に、追撃の足を止めるために、俺を瀕死の状態で放置して行ってくれる始末。
俺「俺の事は良い…!怪物を追ってくれ!!」
俺が叫び、それに応えるドラゴントゥースウォーリアー達。
だが、そんなやりとりをしている間にも怪物は逃走を続け…俺達との距離を稼いでいる。
このままでは理央を取り戻せない
連れ去られた先で理央はどうなる?
いや…連れ去られた時点で、碌な目に遭わない事なんて判り切っている。
だったらどうすれば良い?
パトリオットは…もうとっくに射程範囲外だ
リア充爆散は…裏技で使えるようになったとしても、木々に遮られて目視出来ない以上…発動出来ない。
………ソーサー=ソーサ…
辛うじて使えそうな物なら周囲に幾つもあるが、怪物との間の遮蔽物が多過ぎる。
いや、それ以前に…届くかどうかも怪しい所。
例え届いたとしても、理央に当たってしまう可能性を考えれると下手な手は打てない。
駄目だ…俺には何も出来ない
『諦めるの?それも一つの手だけど…それで良いの?』
ふと…どこかのお節介焼きの声が聞こえた気がした。
でも、どうすれば良い?俺に何が出来る?
切羽詰り、思考停止に陥りかけたその時…俺の脳裏に、お節介焼きの声が浮かんできた。
シヴィト『君…一体幾つの能力を持ってるの?』
これはいつ聞いた言葉だったか…そうだ、大男が襲撃して来た時だ。
結果的にドラゴントゥースウォーリアーが止めを刺す事にはなったが、その間に俺は何をした?
そうだ…覚えて居なかったのは、俺が空の死を否定して居たから…と言う事は
俺は要素と条件を当て嵌め、結果に向けてのプロセスを頭で組み立てる
必然と言う名の道標に従い…遂に俺の思考は、結論と言う閉ざされて居た領域へと辿り着く。
454: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/02(月) 14:52:33.24 ID:fxfKB2VYo
●虚構破壊のフィナーレ
俺「発破をかけられても…この様じゃぁ、あの怪物を倒すのが精一杯だ。理央の事は任せたぞ」
俺は愚痴るように呟き、マリオの砕けたヘルムの破片を拾い上げた。
まずは破片を目の前に浮かせ…次に、逃走を続ける怪物の方へと手を向ける。
……必要な能力は揃っている、後は実行に移すのみ。
そんな時だと言うのに…不意に今までの思い出が頭の奥に浮かんで来る。
パーティー会場…カレンと初めて会って、リア充爆散の超能力に目覚めた日。
いや、違うか…それだけじゃ無い。
思えば、理央に初めて出会ったのもあの時だったんだよな。
あの時は、髪を下ろして…紫色のドレスを着てて…
今の理央とはまた違った一面を持ってて、可愛かったよな。
そう言えば再会した時も…思い出すのに少し時間はかかったけど、すぐに理央だって判ったんだっけか。
………あぁ、そうか。こんな所でも、俺は自分を騙してたんだな。
カレンの事が好きで…カレンの力になりたくて…それは勿論嘘じゃない。
でも、それと一緒に…
理央の事も気になってたんだ。
俺「やべ………これって…走馬灯じゃねぇか」
時間をかけ過ぎたせいか、出血のせいで意識が朦朧とし始めている事に気付く。
このまま意識を…いや、命を失う前に決着を付けなければいけない。
俺「理央………今までありがとな」
俺は、誰に見せる訳でも無い笑みを浮かべ………目の前に浮かべた金属片を解き放つ。
加速を続けながら、木々の合間を縫って突き進む金属片…途中で怪物がその存在に気付くが、もう遅い。
回避不能なまでに加速した金属片は、弾丸となり………怪物の頭を吹き飛ばした。
理央は……背中に傷を負っては居るが、幸いな事に命に別状は無し。
早急にドラゴントゥースウォーリアーの背に乗せられ…後は屋敷へと連れ帰られる事だろう。
………これでもう、心残りは無い
「せ…ん………ぱ…い」
そして最後に…薄れ行く意識の中で、理央の声が聞こえた気がした。
―理央ルート END―
俺「発破をかけられても…この様じゃぁ、あの怪物を倒すのが精一杯だ。理央の事は任せたぞ」
俺は愚痴るように呟き、マリオの砕けたヘルムの破片を拾い上げた。
まずは破片を目の前に浮かせ…次に、逃走を続ける怪物の方へと手を向ける。
……必要な能力は揃っている、後は実行に移すのみ。
そんな時だと言うのに…不意に今までの思い出が頭の奥に浮かんで来る。
パーティー会場…カレンと初めて会って、リア充爆散の超能力に目覚めた日。
いや、違うか…それだけじゃ無い。
思えば、理央に初めて出会ったのもあの時だったんだよな。
あの時は、髪を下ろして…紫色のドレスを着てて…
今の理央とはまた違った一面を持ってて、可愛かったよな。
そう言えば再会した時も…思い出すのに少し時間はかかったけど、すぐに理央だって判ったんだっけか。
………あぁ、そうか。こんな所でも、俺は自分を騙してたんだな。
カレンの事が好きで…カレンの力になりたくて…それは勿論嘘じゃない。
でも、それと一緒に…
理央の事も気になってたんだ。
俺「やべ………これって…走馬灯じゃねぇか」
時間をかけ過ぎたせいか、出血のせいで意識が朦朧とし始めている事に気付く。
このまま意識を…いや、命を失う前に決着を付けなければいけない。
俺「理央………今までありがとな」
俺は、誰に見せる訳でも無い笑みを浮かべ………目の前に浮かべた金属片を解き放つ。
加速を続けながら、木々の合間を縫って突き進む金属片…途中で怪物がその存在に気付くが、もう遅い。
回避不能なまでに加速した金属片は、弾丸となり………怪物の頭を吹き飛ばした。
理央は……背中に傷を負っては居るが、幸いな事に命に別状は無し。
早急にドラゴントゥースウォーリアーの背に乗せられ…後は屋敷へと連れ帰られる事だろう。
………これでもう、心残りは無い
「せ…ん………ぱ…い」
そして最後に…薄れ行く意識の中で、理央の声が聞こえた気がした。
―理央ルート END―
456: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/02(月) 15:23:05.15 ID:fxfKB2VYo
―折り返し地点が近い件について―
●★★★
ショウ「二つ目の理央ルートENDおつかれさまーぁ☆」
ショウ「何だか他のルートのネタバレもあったみたいだけど、気にしないで行こう」
ショウ「さて、それじゃぁ五週目のルート選択をお願いしちゃおうかな?」
ショウ「今回で理央ルートは両方終わったから…」
ショウ「C…空ルート」
ショウ「D…黄色ルート」
ショウ「Σ…シグマルート」
ショウ「選択肢はこの三つ。ルート選択は >>461 くんにお願いしちゃおう!」
●★★★
ショウ「二つ目の理央ルートENDおつかれさまーぁ☆」
ショウ「何だか他のルートのネタバレもあったみたいだけど、気にしないで行こう」
ショウ「さて、それじゃぁ五週目のルート選択をお願いしちゃおうかな?」
ショウ「今回で理央ルートは両方終わったから…」
ショウ「C…空ルート」
ショウ「D…黄色ルート」
ショウ「Σ…シグマルート」
ショウ「選択肢はこの三つ。ルート選択は >>461 くんにお願いしちゃおう!」
461: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/03(火) 18:09:33.73 ID:dqryepCZ0
順当にCで
462: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/03(火) 22:56:52.78 ID:3+MjyHxlo
ショウ「空ル-トだね?」
ショウ「じゃぁ次に、本物の世界か偽者の世界か………あれ?おかしいな…二つが混ざり合ってる?」
ショウ「彼女の悪戯か…じゃぁ、今回はこのまま空ルートに突入してみようか☆」
ショウ「じゃぁ次に、本物の世界か偽者の世界か………あれ?おかしいな…二つが混ざり合ってる?」
ショウ「彼女の悪戯か…じゃぁ、今回はこのまま空ルートに突入してみようか☆」
463: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/15(日) 23:32:40.13 ID:M6X9z003o
―ソ・ラ・ノ・ム・コ・ウ・ガ・ワ―
○ワカイミソラ
俺の名前は…未来 空。
突然こんな話をするのも何だが…俺の両親は、飛行機事故で死んだ。
『あ、これ生きてるフラグだ』とか思っただろ?そりゃそうだ、俺も最初はそう思った。
だってそうだろ?飛行機事故だぜ?冗談みたいな話じゃないか
親父もお袋も、本当は生きている…当然のように、そんな幻想を抱いていた。
まぁそれも…実際に両親の死体を見るまでの話だったけどな。
………両親を失った俺
色々あって………俺はそこから、叔父貴…お袋の弟にあたる人物に引き取られた。
マンションでの二人暮らしではあったが…叔父貴は仕事が急がしくて、実質上は俺の一人暮らし。
学校なんかに行く気にもならず…加えて出不精なのも手伝って、瞬く間に引き篭もりが一丁上がり。
だが……ずっと一人で居ると、どうしようも無い孤独感が襲って来る時がある。
かと言って、今の学校に行ったとしてもダチなんか居る筈も無く…町へ繰り出すような気力も無し。
必然的にその手段は絞られ…最後に残ったそれを行うべく、俺はパソコンデスクへと向かう。
ヴァルハラオンライン…登録ユーザー数200万人の、国内でも大手のMMORPG。
前々から広告バナーでタイトルだけは知っていたそのゲームの…まずはインストーラーをダウンロードして…
後はアカウント登録をしながら、インストール待機。
次々と移り変わるゲームガイド画面を他所に、俺は少し目を閉じた。
俺は何をしているんだろうか…何をしたいんだろう…
考えても仕方の無い事ばかりが俺の心を掻き乱していると…インストール完了の音が鳴り響いて、俺を現実に引き戻した。
呼ばれるように目を開き、ディスプレイに視線を戻す俺。
タイトル画面からログイン画面に進み、チュートリアル開始…キャラクターメイキングに入る。
俺「性別は…女の方が最初はPLして貰い易いけど後々がウザいし、男で良いか。種族は…フォールリング、これにしとこう」
最初はそれほど入れ込んで居た訳でも無いのに、いざ起動してみればゲームを始める前から効率の事を考える始末…
身に染み込んだ効率厨っぷりに、思わず苦笑が毀れた。
俺「名前は………あぁ、あれにしよう。昔見たアニメで、俺と同じ名前だったヤツ」
○ワカイミソラ
俺の名前は…未来 空。
突然こんな話をするのも何だが…俺の両親は、飛行機事故で死んだ。
『あ、これ生きてるフラグだ』とか思っただろ?そりゃそうだ、俺も最初はそう思った。
だってそうだろ?飛行機事故だぜ?冗談みたいな話じゃないか
親父もお袋も、本当は生きている…当然のように、そんな幻想を抱いていた。
まぁそれも…実際に両親の死体を見るまでの話だったけどな。
………両親を失った俺
色々あって………俺はそこから、叔父貴…お袋の弟にあたる人物に引き取られた。
マンションでの二人暮らしではあったが…叔父貴は仕事が急がしくて、実質上は俺の一人暮らし。
学校なんかに行く気にもならず…加えて出不精なのも手伝って、瞬く間に引き篭もりが一丁上がり。
だが……ずっと一人で居ると、どうしようも無い孤独感が襲って来る時がある。
かと言って、今の学校に行ったとしてもダチなんか居る筈も無く…町へ繰り出すような気力も無し。
必然的にその手段は絞られ…最後に残ったそれを行うべく、俺はパソコンデスクへと向かう。
ヴァルハラオンライン…登録ユーザー数200万人の、国内でも大手のMMORPG。
前々から広告バナーでタイトルだけは知っていたそのゲームの…まずはインストーラーをダウンロードして…
後はアカウント登録をしながら、インストール待機。
次々と移り変わるゲームガイド画面を他所に、俺は少し目を閉じた。
俺は何をしているんだろうか…何をしたいんだろう…
考えても仕方の無い事ばかりが俺の心を掻き乱していると…インストール完了の音が鳴り響いて、俺を現実に引き戻した。
呼ばれるように目を開き、ディスプレイに視線を戻す俺。
タイトル画面からログイン画面に進み、チュートリアル開始…キャラクターメイキングに入る。
俺「性別は…女の方が最初はPLして貰い易いけど後々がウザいし、男で良いか。種族は…フォールリング、これにしとこう」
最初はそれほど入れ込んで居た訳でも無いのに、いざ起動してみればゲームを始める前から効率の事を考える始末…
身に染み込んだ効率厨っぷりに、思わず苦笑が毀れた。
俺「名前は………あぁ、あれにしよう。昔見たアニメで、俺と同じ名前だったヤツ」
464: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/15(日) 23:50:51.31 ID:M6X9z003o
●ソラカラオチテ
ヴァルハラオンライン…通称WO。登録ID数が200万人(但しその半数がBOTユーザーによる不正アカウント)を突破した、大手MMORPG。
タイトルにも在る『ヴァルハラ』と言う世界で、プレイヤーは『エインヘリアル』と言う戦士になり…
神々の黄昏…ラグナロクの訪れるその日まで、潰える事の無い命で戦い続ける…という設定のゲームだ。
俺は先月このゲームを始め、ゲームのシステムもそこそこ把握して来た所だった…が、しかし………
1stキャラの育成に失敗して居た事に気付き、2ndキャラのチュートリアルをしている真っ最中だった。
チュートリアルの内容は、採掘。ツルハシを装備して、敵の攻撃をやり過ごしながら規定数の鉱石を集める……と言う物なのだが…
これまたひたすらに運ゲーで、出ない時はとことん出ない。たまに入場ゲートから現れる新規プレイヤーが、サッサと採掘を終える中
…俺はかれこれ一時間近くもこの作業を続けている。
トンテンカン…トンテンカン…と鳴り響くツルハシの音。
一人…そしてまた一人…採掘を終えてプレイヤーが退場ゲートに向かった辺りで、この場所では聞き慣れない音を耳にした。
エンヘリアルがバルハラの大地に降り立つ音……つまりは、ログイン音だ。
ログインしてきた、そいつの名前は『hasewo』多分だが、版権キャラの名前を付けている事から……いわゆる『なりきり系』だと察する事ができた。
ここでログインしたって事は、ここでログアウトしたと言う事。
こんなスルー前提の場所でログアウトするなんて、珍しいヤツも居た物だ…と一瞬過ぎるも、今の自分を見てそれが人事では無い事を思い出す。
が…どうも俺とは事情が違うらしい。
見ている限りだが…そのhasewoはチュートリアルの肝である筈の採掘を一切行わず、延々とお邪魔モンスターを殴り続けている。
お邪魔モンスターには経験値もドロップアイテムも無く、文字通り倒すだけ時間の無駄。にも関わらず、それを相手にしていると言う事は…
俺「そいつは鉱石を落とさないぞ?」
hasewo「え?マジか?」
案の定…採掘クエストその物を勘違いして居たようだ。
俺「ってか、ちゃんとチュートリアルの説明を読んでれば判るだろ…」
hasewo「連打で読み飛ばしてた」
俺「インストール画面でもウザいくらい説明出無かったか?」
hasewo「そもそもその画面をマトモに見てない」
あ、ダメだこいつ。
ヴァルハラオンライン…通称WO。登録ID数が200万人(但しその半数がBOTユーザーによる不正アカウント)を突破した、大手MMORPG。
タイトルにも在る『ヴァルハラ』と言う世界で、プレイヤーは『エインヘリアル』と言う戦士になり…
神々の黄昏…ラグナロクの訪れるその日まで、潰える事の無い命で戦い続ける…という設定のゲームだ。
俺は先月このゲームを始め、ゲームのシステムもそこそこ把握して来た所だった…が、しかし………
1stキャラの育成に失敗して居た事に気付き、2ndキャラのチュートリアルをしている真っ最中だった。
チュートリアルの内容は、採掘。ツルハシを装備して、敵の攻撃をやり過ごしながら規定数の鉱石を集める……と言う物なのだが…
これまたひたすらに運ゲーで、出ない時はとことん出ない。たまに入場ゲートから現れる新規プレイヤーが、サッサと採掘を終える中
…俺はかれこれ一時間近くもこの作業を続けている。
トンテンカン…トンテンカン…と鳴り響くツルハシの音。
一人…そしてまた一人…採掘を終えてプレイヤーが退場ゲートに向かった辺りで、この場所では聞き慣れない音を耳にした。
エンヘリアルがバルハラの大地に降り立つ音……つまりは、ログイン音だ。
ログインしてきた、そいつの名前は『hasewo』多分だが、版権キャラの名前を付けている事から……いわゆる『なりきり系』だと察する事ができた。
ここでログインしたって事は、ここでログアウトしたと言う事。
こんなスルー前提の場所でログアウトするなんて、珍しいヤツも居た物だ…と一瞬過ぎるも、今の自分を見てそれが人事では無い事を思い出す。
が…どうも俺とは事情が違うらしい。
見ている限りだが…そのhasewoはチュートリアルの肝である筈の採掘を一切行わず、延々とお邪魔モンスターを殴り続けている。
お邪魔モンスターには経験値もドロップアイテムも無く、文字通り倒すだけ時間の無駄。にも関わらず、それを相手にしていると言う事は…
俺「そいつは鉱石を落とさないぞ?」
hasewo「え?マジか?」
案の定…採掘クエストその物を勘違いして居たようだ。
俺「ってか、ちゃんとチュートリアルの説明を読んでれば判るだろ…」
hasewo「連打で読み飛ばしてた」
俺「インストール画面でもウザいくらい説明出無かったか?」
hasewo「そもそもその画面をマトモに見てない」
あ、ダメだこいつ。
465: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/16(月) 00:19:38.10 ID:yaivpRkco
●タニンノソラニ
俺「………とりあえず、アイテムストレージ開いてツルハシを装備してみろ」
hasewo「アイテムストレージって…」
俺「Alt+Eだ」
hasewo「お、マジで出来た」
俺「んで…画面右上に表示されてる個数が揃ったら、退場ゲートに行けばここは終了。次の部屋で首都機能の説明だけ受けたら、外に出られるぞ」
hasewo「ほほぅ、サンキュ!…って言ってたら揃ったみたいだ。ちょっと先に行ってるぜ」
俺「マジか……」
…と言う訳で、hasewoが先に目標数を達成して退場した後
俺は更にそこから20分程粘る事で、やっとの事で鉱石を集め終え…晴れてチュートリアル終了。
首都の中央通りに転送される事となったのだが………
転送先で、極々最近見たような名前を目にする事になった。
hasewo「お、やっと来たか。随分と時間かかったじゃねぇか」
再会早々、オープンチャットで話しかけて来るhasewo。
俺はリアルで溜息を吐きながら、ウィスパーチャットの先をhasewoに指定する。
俺「(オープンだと周りに迷惑だから、話すならこっちで話そうぜ。ってか、MMOは初めてか?)」
hasewo「(てすてす)」
hasewo「(お、出来たっぽいな。いやぁ、FPSならやってたんだが…Wisのやり方とか色んな勝手が判らなくてな)」
俺「(いや、そこはマニュアル読んどけよ!)」
hasewo「(マニュアルは困ってから読むタイプだからな!)」
俺「(威張るな!ってか、困っても読んでないだろ!)」
hasewo「(細かい事は気にすんなって。とりあえず初心者同士、クラン組んで狩り行かねぇか?)」
俺「(WOではクランじゃなくてギルドな。あと、狩りに行く規模なら組むのはパーティーだ)」
hasewo「(お前、良く調べてんな…)」
俺「(いや、この場合はお前の方が調べて無さ過ぎなんだよ!とりあえずPT要請出すから、それ承認しろ)」
hasewo「(OK…って打ってたらキャンセルしちまったから、もう一回よろ)」
とまぁ、こんな感じで空…もといhasewoとの腐れ縁が始まった。
俺「………とりあえず、アイテムストレージ開いてツルハシを装備してみろ」
hasewo「アイテムストレージって…」
俺「Alt+Eだ」
hasewo「お、マジで出来た」
俺「んで…画面右上に表示されてる個数が揃ったら、退場ゲートに行けばここは終了。次の部屋で首都機能の説明だけ受けたら、外に出られるぞ」
hasewo「ほほぅ、サンキュ!…って言ってたら揃ったみたいだ。ちょっと先に行ってるぜ」
俺「マジか……」
…と言う訳で、hasewoが先に目標数を達成して退場した後
俺は更にそこから20分程粘る事で、やっとの事で鉱石を集め終え…晴れてチュートリアル終了。
首都の中央通りに転送される事となったのだが………
転送先で、極々最近見たような名前を目にする事になった。
hasewo「お、やっと来たか。随分と時間かかったじゃねぇか」
再会早々、オープンチャットで話しかけて来るhasewo。
俺はリアルで溜息を吐きながら、ウィスパーチャットの先をhasewoに指定する。
俺「(オープンだと周りに迷惑だから、話すならこっちで話そうぜ。ってか、MMOは初めてか?)」
hasewo「(てすてす)」
hasewo「(お、出来たっぽいな。いやぁ、FPSならやってたんだが…Wisのやり方とか色んな勝手が判らなくてな)」
俺「(いや、そこはマニュアル読んどけよ!)」
hasewo「(マニュアルは困ってから読むタイプだからな!)」
俺「(威張るな!ってか、困っても読んでないだろ!)」
hasewo「(細かい事は気にすんなって。とりあえず初心者同士、クラン組んで狩り行かねぇか?)」
俺「(WOではクランじゃなくてギルドな。あと、狩りに行く規模なら組むのはパーティーだ)」
hasewo「(お前、良く調べてんな…)」
俺「(いや、この場合はお前の方が調べて無さ過ぎなんだよ!とりあえずPT要請出すから、それ承認しろ)」
hasewo「(OK…って打ってたらキャンセルしちまったから、もう一回よろ)」
とまぁ、こんな感じで空…もといhasewoとの腐れ縁が始まった。
466: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/16(月) 00:50:29.97 ID:yaivpRkco
●アカツキノソラ
このゲーム…ヴァルハラオンラインにはモンスターのサイズ補正と言う物が存在する。
まず同じモンスターであっても、個体毎にサイズが設定されていて…そのサイズに応じでステータスが変化する…と言うシステムだ。
具体的には、種族の最低保障値+増減パーセンテージの三乗という計算なのだが…これがまた、単純に見えて中々に奥深い。
多くのMMORPGにおいて最も効率的な戦闘スタイルは、一連の手順で確実にモンスターを倒す戦法…俗に言う確殺スタイルなのだが…
サイズが大きく、体力や攻撃力が高い相手の場合…確殺に必要とされる攻撃力と、モンスターの攻撃に耐えるだけの防御力がより多く必要とされ
サイズが小さく、回避力が高い相手の場合…逆に必要な攻撃力は下がるが、攻撃を当てるための命中力が必要になる…
と言ったランダム要素により、確殺狩りをするにしても相手に応じたスキルの使い分けや装備の変更など…より戦略的な立ち回りが要求されるのである。
またこれにより、複数のモンスターをかき集めて連れ回してから一網打尽にする…トレインと呼ばれる行為も制限されている。
別のMMOで悪意あるトレインに苦渋を味わわせられた身としては、何とも有難い話だ。
また例外として…廃人と呼ばれるヘビーユーザーになってくると、サイズ補正による変動値を全て補える程の攻撃力や命中力を持った装備で身を包んだりするのだが
まぁ…ライトユーザーである俺達には関係の無いお話だ。
さて、話を戻そう。
先は確殺狩りがメジャーだと話したが…メジャーだからと言って、必ずしも皆が皆その戦法で戦っている訳では無い。
例えば俺の場合。聖騎士の特性である、HPと防御力…加えて回復スキルと防御スキルに物を言わせたガチ殴りが主な戦闘方法で…
攻撃モーション値…攻撃速度が高いが、攻撃力が低い小型のモンスターをメインに、ダメージを1に抑えながら戦うのが基本的な立ち回り。
複数の敵に囲まれて、自動回復速度が追い付かなくなった場合は、範囲スキルの連発で削り切る…と言うのが主なスタイルだ。
続いてhasewoの場合…
回避力に物を言わせてモンスターの攻撃を回避し続け、敵のサイズや種族及び属性に合わせて武器やスキルを変えて戦う…
攻撃方法だけ見れば確殺狩りと同じように聞こえるが、実際には攻撃力が足りないので別物の…堅実かつ典型的なヒットアンドアウェイ
…と、口で言うのは簡単だが…実際は結構な技術が必要とされる戦い方だ。
まず武器の種類を揃えなければいけない分、重量の関係で回復アイテムの積載量が限られ…
モンスターに囲まれた状態では、優先順位の高い相手から仕留めていかなければ、回復が追い付かずに削り殺されてしまう。
そんな状態で敵の属性や種族とサイズを見分け、的確に攻撃と回避を行い続けなければけない。
正直、俺だったら途中で集中力が途切れて畳み込まれてしまうのが目に見えている。
このゲーム…ヴァルハラオンラインにはモンスターのサイズ補正と言う物が存在する。
まず同じモンスターであっても、個体毎にサイズが設定されていて…そのサイズに応じでステータスが変化する…と言うシステムだ。
具体的には、種族の最低保障値+増減パーセンテージの三乗という計算なのだが…これがまた、単純に見えて中々に奥深い。
多くのMMORPGにおいて最も効率的な戦闘スタイルは、一連の手順で確実にモンスターを倒す戦法…俗に言う確殺スタイルなのだが…
サイズが大きく、体力や攻撃力が高い相手の場合…確殺に必要とされる攻撃力と、モンスターの攻撃に耐えるだけの防御力がより多く必要とされ
サイズが小さく、回避力が高い相手の場合…逆に必要な攻撃力は下がるが、攻撃を当てるための命中力が必要になる…
と言ったランダム要素により、確殺狩りをするにしても相手に応じたスキルの使い分けや装備の変更など…より戦略的な立ち回りが要求されるのである。
またこれにより、複数のモンスターをかき集めて連れ回してから一網打尽にする…トレインと呼ばれる行為も制限されている。
別のMMOで悪意あるトレインに苦渋を味わわせられた身としては、何とも有難い話だ。
また例外として…廃人と呼ばれるヘビーユーザーになってくると、サイズ補正による変動値を全て補える程の攻撃力や命中力を持った装備で身を包んだりするのだが
まぁ…ライトユーザーである俺達には関係の無いお話だ。
さて、話を戻そう。
先は確殺狩りがメジャーだと話したが…メジャーだからと言って、必ずしも皆が皆その戦法で戦っている訳では無い。
例えば俺の場合。聖騎士の特性である、HPと防御力…加えて回復スキルと防御スキルに物を言わせたガチ殴りが主な戦闘方法で…
攻撃モーション値…攻撃速度が高いが、攻撃力が低い小型のモンスターをメインに、ダメージを1に抑えながら戦うのが基本的な立ち回り。
複数の敵に囲まれて、自動回復速度が追い付かなくなった場合は、範囲スキルの連発で削り切る…と言うのが主なスタイルだ。
続いてhasewoの場合…
回避力に物を言わせてモンスターの攻撃を回避し続け、敵のサイズや種族及び属性に合わせて武器やスキルを変えて戦う…
攻撃方法だけ見れば確殺狩りと同じように聞こえるが、実際には攻撃力が足りないので別物の…堅実かつ典型的なヒットアンドアウェイ
…と、口で言うのは簡単だが…実際は結構な技術が必要とされる戦い方だ。
まず武器の種類を揃えなければいけない分、重量の関係で回復アイテムの積載量が限られ…
モンスターに囲まれた状態では、優先順位の高い相手から仕留めていかなければ、回復が追い付かずに削り殺されてしまう。
そんな状態で敵の属性や種族とサイズを見分け、的確に攻撃と回避を行い続けなければけない。
正直、俺だったら途中で集中力が途切れて畳み込まれてしまうのが目に見えている。
467: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/16(月) 00:59:47.37 ID:yaivpRkco
●ヨアケノソラ
と言う訳で、俺とhasewoの戦闘スタイルを説明させて貰った訳だが…以上はあくまで、ソロでの戦闘スタイルのお話。
ペアで狩りをする時は、また少々勝手が違って来る。
俺「上から来るぞ!」
hasewo「そっちは任せとけ!プロテクション頼む!」
四体のモンスターからの攻撃を俺が受け持ち…新たに沸いたモンスターに向けて切り掛かるhasewo。
そして其方が片付いてからは、hasewoが武器を持ち換え…スキルのチャージに入るのだが…
チャージ完了まで動けなくなったhasewoに対して、新たに出現したモンスターが襲いかかる。
hasewo「こいつ、モーション値が高くてやべぇ!そっちでヘイト取れねぇか!?」
俺「やってるが無理だ!ヒーリングかけるから、そのまま耐えてくれ!」
チャージ中の無防備な状態でダメージを受けるhasewo…俺はそれに対して回復スキルを連発し、戦闘不能状態になる事を防ぐ
が…その状態では、当然ならが自分の回復が疎かになってしまう。数の暴力により削られて行くHP…更に追加で出現する新たなモンスター。
俺は秘蔵のポーションを取り出し…それを一気に飲み干す。
俺「まだか?!そろそろこっちも……」
hasewo「待たせたな………行くぜぇぇぇぇ!!!」
俺のHPが8割近く減り、回復が追い付かなくなってきたその瞬間…チャージを終えて、遂に発動するhasewoのスキル
『ジェノサイド』…使用者を中心にした円形範囲に大ダメージを与える、大技だ。
これにより、回避力が高くHPの低い小型モンスターは一掃され……
俺「これで終いだ!!!」
残ったモンスター…HPが高く回避力と攻撃モーション値が低い大型モンスターに対して、俺が範囲スキルを連発して止めを刺す。
ギリギリの所で、何とかしてモンスターを片付ける事が出来た。
………と言った感じで、お互いの短所を補いつつ役割分担を決めて
一人では倒し切れないような湧きの狩場で戦闘を行うのが、俺達のペア狩りのスタイルだ。
またこれとは別に、もっと大人数で戦う場合のスタイルもあるのだが…それはまた別の機会にしよう。
と言う訳で、俺とhasewoの戦闘スタイルを説明させて貰った訳だが…以上はあくまで、ソロでの戦闘スタイルのお話。
ペアで狩りをする時は、また少々勝手が違って来る。
俺「上から来るぞ!」
hasewo「そっちは任せとけ!プロテクション頼む!」
四体のモンスターからの攻撃を俺が受け持ち…新たに沸いたモンスターに向けて切り掛かるhasewo。
そして其方が片付いてからは、hasewoが武器を持ち換え…スキルのチャージに入るのだが…
チャージ完了まで動けなくなったhasewoに対して、新たに出現したモンスターが襲いかかる。
hasewo「こいつ、モーション値が高くてやべぇ!そっちでヘイト取れねぇか!?」
俺「やってるが無理だ!ヒーリングかけるから、そのまま耐えてくれ!」
チャージ中の無防備な状態でダメージを受けるhasewo…俺はそれに対して回復スキルを連発し、戦闘不能状態になる事を防ぐ
が…その状態では、当然ならが自分の回復が疎かになってしまう。数の暴力により削られて行くHP…更に追加で出現する新たなモンスター。
俺は秘蔵のポーションを取り出し…それを一気に飲み干す。
俺「まだか?!そろそろこっちも……」
hasewo「待たせたな………行くぜぇぇぇぇ!!!」
俺のHPが8割近く減り、回復が追い付かなくなってきたその瞬間…チャージを終えて、遂に発動するhasewoのスキル
『ジェノサイド』…使用者を中心にした円形範囲に大ダメージを与える、大技だ。
これにより、回避力が高くHPの低い小型モンスターは一掃され……
俺「これで終いだ!!!」
残ったモンスター…HPが高く回避力と攻撃モーション値が低い大型モンスターに対して、俺が範囲スキルを連発して止めを刺す。
ギリギリの所で、何とかしてモンスターを片付ける事が出来た。
………と言った感じで、お互いの短所を補いつつ役割分担を決めて
一人では倒し切れないような湧きの狩場で戦闘を行うのが、俺達のペア狩りのスタイルだ。
またこれとは別に、もっと大人数で戦う場合のスタイルもあるのだが…それはまた別の機会にしよう。
468: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/16(月) 01:17:59.26 ID:yaivpRkco
●ソラガウマレタヒ
ある日…いつものようにペア狩りを終えて首都に戻った時の事。
そう、いつものようにと言えばいつものような…日常と化した光景なのだが…
俺「どうした?大分調子悪そうだな」
狩りの最中…hasewoの様子で少し気になった事があったので、俺はそれを問い質して居た。
hasewo「今週は重すぎて死にそうだ………ってか、傍から見ても判る程酷いか?」
俺「あぁ、思いっきりな。それで…ネット回線は何使ってんだ?」
hasewo「回線?回線は…確か光だな」
俺「マジか!?俺よか良い回線使ってんじゃ無いかよ!あ、スパイウェアのチェックとかちゃんとしてるか?」
hasewo「ぁー…そう言やぁ最近やってねぇなぁ。後でやっとく」
俺「っと、そうそう……話しは変わるんだが、お前に渡しとく物があったんだ。お前、こう言う武器好きだだろ?」
hasewo「どれどれ?…って、デスサイズ!?サイズ補正無視、固有鎌モーションのレア武器じゃねぇか!マジか!?」
俺「俺は装備出来るキャラ居ないからな。知り合いの中でも、職と種族で条件満たしてるのお前くらいだし…」
hasewo「ってかこれ、高い武器だろ?………でもお高いんでしょう?」
俺「わざわざ言い直すな!」
hasewo「フヒヒ、サーセン」
俺「昨日野良PTで行った時に拾ったんだよ」
hasewo「ってかこれ売れば、前から欲しがってた鎧買えるんじゃ…」
俺「んー…防御力ちょっと上げるよか、火力を底上げした方が効率上がるしなぁ。それに…」
hasewo「それに?」
俺「ちょっと早めの誕生日プレゼントって事で良いだろ。受け取っとけ」
hasewo「………」
俺「何だ?」
hasewo「お前って…意外とそう言うのマメだな」
俺「素直に気が利くって言え」
ある日…いつものようにペア狩りを終えて首都に戻った時の事。
そう、いつものようにと言えばいつものような…日常と化した光景なのだが…
俺「どうした?大分調子悪そうだな」
狩りの最中…hasewoの様子で少し気になった事があったので、俺はそれを問い質して居た。
hasewo「今週は重すぎて死にそうだ………ってか、傍から見ても判る程酷いか?」
俺「あぁ、思いっきりな。それで…ネット回線は何使ってんだ?」
hasewo「回線?回線は…確か光だな」
俺「マジか!?俺よか良い回線使ってんじゃ無いかよ!あ、スパイウェアのチェックとかちゃんとしてるか?」
hasewo「ぁー…そう言やぁ最近やってねぇなぁ。後でやっとく」
俺「っと、そうそう……話しは変わるんだが、お前に渡しとく物があったんだ。お前、こう言う武器好きだだろ?」
hasewo「どれどれ?…って、デスサイズ!?サイズ補正無視、固有鎌モーションのレア武器じゃねぇか!マジか!?」
俺「俺は装備出来るキャラ居ないからな。知り合いの中でも、職と種族で条件満たしてるのお前くらいだし…」
hasewo「ってかこれ、高い武器だろ?………でもお高いんでしょう?」
俺「わざわざ言い直すな!」
hasewo「フヒヒ、サーセン」
俺「昨日野良PTで行った時に拾ったんだよ」
hasewo「ってかこれ売れば、前から欲しがってた鎧買えるんじゃ…」
俺「んー…防御力ちょっと上げるよか、火力を底上げした方が効率上がるしなぁ。それに…」
hasewo「それに?」
俺「ちょっと早めの誕生日プレゼントって事で良いだろ。受け取っとけ」
hasewo「………」
俺「何だ?」
hasewo「お前って…意外とそう言うのマメだな」
俺「素直に気が利くって言え」
469: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/16(月) 02:01:29.76 ID:yaivpRkco
●ソラモヨウ
hasewo「そう言えばこのゲーム、結婚機能なんてのもあるんだな」
俺「あぁ、倉庫が共有になったり専用スキルが使えるようになったり色々便利になるみたいだぞ」
hasewo「よし…じゃぁお前、女キャラ作れ!」
俺「残念ながら、俺のキャラスロは12thまで既に埋まっている!」
hasewo「んじゃぁ、俺が女キャラを作るか。種族は…よし、オークにしとこう」
俺「種族まで相手に合わせる必要は無いからな!?嫌だよオークの夫婦とか!そこは大人しく、人間かハイランダーの騎士で良いんじゃないか!?」
hasewo「それだと、くっ殺過ぎて意外性が無ぇじゃん」
俺「効率のための政略結婚のじゃありませんでしたか!?なぁ!?」
hasewo「まーた細かい事を……っと、そう言やぁ話は変わるんだが、お前ってギルド入ってるんだっけ?」
俺「また唐突に…まぁ良いか。あぁ入ってるぜ、ジオセントリックってギルドな」
hasewo「そっちの方に顔出さなくて良いのか?」
俺「心配しなくても、お前が居ない時はそっちに行ってるから心配すんなw…ってか、お前も入るか?」
hasewo「ギルドかー…んでも、初対面の奴が沢山居るんだよなぁ…」
俺「んな事言ったら、誰だって最初は初対面だろ。リアルで顔合わせるより、よっぽど簡単だぞ?」
hasewo「リアル…か。そうだな…お前がそう言うなら、とりあえず顔だけ合わせてみるか」
この後…hasewoはギルメンとも打ち解け、俺の所属するギルド『ジオセントリック』に所属する事になった。
俺「あ、そう言えば俺…明日の日直だ。そろそろ落ちないと」
hasewo「お前学生だったのか?!そっか、学校かー…懐かしいな」
俺「遠い目すんなwってか正直、学校とかだるいだけだしなぁ」
hasewo「そうやって無為に過ごしてると、後々後悔する事になるぞ。これ先駆者の知恵な」
俺「そう言う物か?」
hasewo「そう言う物だ」
俺「後悔と言えば…kuraudoはサラリーマンなんだっけか?社会人になってからそう言うの後悔してるのか?」
kuraudo「後悔と言うか…あの頃に戻りたいと思う事は多々あるね」
Ginrei「右に同じく…と行っても、学生時代に戻る事が出来たとしても、ほんの僅かの差しか無いけどね」
俺「皆、色々な事情を抱えてるんだなぁ……とか言ってたらもうこんな時間じゃないか!一足お先に寝る!乙!」
hasewo「あ、来週のクリスマスイベント忘れんなよ。今年こそは限定レア狙うんだからな!」
そしてこの一週間後の…クリスマス当日。俺は、あの事件に巻き込まれた。
hasewo「そう言えばこのゲーム、結婚機能なんてのもあるんだな」
俺「あぁ、倉庫が共有になったり専用スキルが使えるようになったり色々便利になるみたいだぞ」
hasewo「よし…じゃぁお前、女キャラ作れ!」
俺「残念ながら、俺のキャラスロは12thまで既に埋まっている!」
hasewo「んじゃぁ、俺が女キャラを作るか。種族は…よし、オークにしとこう」
俺「種族まで相手に合わせる必要は無いからな!?嫌だよオークの夫婦とか!そこは大人しく、人間かハイランダーの騎士で良いんじゃないか!?」
hasewo「それだと、くっ殺過ぎて意外性が無ぇじゃん」
俺「効率のための政略結婚のじゃありませんでしたか!?なぁ!?」
hasewo「まーた細かい事を……っと、そう言やぁ話は変わるんだが、お前ってギルド入ってるんだっけ?」
俺「また唐突に…まぁ良いか。あぁ入ってるぜ、ジオセントリックってギルドな」
hasewo「そっちの方に顔出さなくて良いのか?」
俺「心配しなくても、お前が居ない時はそっちに行ってるから心配すんなw…ってか、お前も入るか?」
hasewo「ギルドかー…んでも、初対面の奴が沢山居るんだよなぁ…」
俺「んな事言ったら、誰だって最初は初対面だろ。リアルで顔合わせるより、よっぽど簡単だぞ?」
hasewo「リアル…か。そうだな…お前がそう言うなら、とりあえず顔だけ合わせてみるか」
この後…hasewoはギルメンとも打ち解け、俺の所属するギルド『ジオセントリック』に所属する事になった。
俺「あ、そう言えば俺…明日の日直だ。そろそろ落ちないと」
hasewo「お前学生だったのか?!そっか、学校かー…懐かしいな」
俺「遠い目すんなwってか正直、学校とかだるいだけだしなぁ」
hasewo「そうやって無為に過ごしてると、後々後悔する事になるぞ。これ先駆者の知恵な」
俺「そう言う物か?」
hasewo「そう言う物だ」
俺「後悔と言えば…kuraudoはサラリーマンなんだっけか?社会人になってからそう言うの後悔してるのか?」
kuraudo「後悔と言うか…あの頃に戻りたいと思う事は多々あるね」
Ginrei「右に同じく…と行っても、学生時代に戻る事が出来たとしても、ほんの僅かの差しか無いけどね」
俺「皆、色々な事情を抱えてるんだなぁ……とか言ってたらもうこんな時間じゃないか!一足お先に寝る!乙!」
hasewo「あ、来週のクリスマスイベント忘れんなよ。今年こそは限定レア狙うんだからな!」
そしてこの一週間後の…クリスマス当日。俺は、あの事件に巻き込まれた。
470: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/16(月) 02:22:19.29 ID:yaivpRkco
●ソラノアジ
更にそこから、俺が組織に所属する事になって…色々あった後、オフ会で初めて空が女だと知って…キングダムに勧誘されて、戦いになって……
と、簡潔にまとめてみた訳だが…以上が、空との出会いから襲撃オフまでの簡単な経緯だ。
因みに、空は今どうしているかと言うと……
俺「なぁ…一つ聞いて良いか?」
空「ん?どした?」
俺「…何だ?その格好は」
空「 エプロン。こう言うの好きだろ?」
俺「それは否定しない…だが、問題はそこじゃぁ無い。お前がエプロン着といて、何で俺が飯作ってるのかって話だ!!」
空「作ってるっつっても、ただの麻婆豆腐じゃねぇか」
俺「難易度とか手間の問題じゃ無ぇ!ただ座ってるだけの エプロンなんか俺は認めねぇ!料理をしてこその エプロンだと何故判らない!?」
空「ったく…硬い事言うなよ。どーせなら、折角だからこっちを硬く……」
四つんばいのまま俺に近付き、獲物を狙い済ます肉食獣のような視線で俺を見上げる空。
俺はそんな空の仕草に、思わず生唾を飲み込むが…
俺「だからなぁ…お前はもうちょっと恥じらいって物を持て。そんなにガッついてたら、雰囲気も何も無いだろ」
辛うじて持ち直し、空の頭に軽くチョップを一発お見舞いする。
空「んな事言ってもよぉ…我慢出来ねぇ物は仕方無ぇだろ?第一、こんな身体にしたのは誰だと思ってんだ?」
俺「ぐっ………」
しかし、空にはあまり効果が無かった。
俺の身体に手を回し、上目遣いで見上げる空。
先程は持ち堪える事が出来た理性が、ガラガラと音を立てて崩れ去るのが分かる。
あぁ、そうそう…そう言えば一つ言い忘れた事があった。
襲撃オフのあの日…あの後から、空は俺の部屋に居候しているのだが…
家賃代わりと言って迫る空に押し切られ…その…何だ
一線を超えてしまいました。
更にそこから、俺が組織に所属する事になって…色々あった後、オフ会で初めて空が女だと知って…キングダムに勧誘されて、戦いになって……
と、簡潔にまとめてみた訳だが…以上が、空との出会いから襲撃オフまでの簡単な経緯だ。
因みに、空は今どうしているかと言うと……
俺「なぁ…一つ聞いて良いか?」
空「ん?どした?」
俺「…何だ?その格好は」
空「 エプロン。こう言うの好きだろ?」
俺「それは否定しない…だが、問題はそこじゃぁ無い。お前がエプロン着といて、何で俺が飯作ってるのかって話だ!!」
空「作ってるっつっても、ただの麻婆豆腐じゃねぇか」
俺「難易度とか手間の問題じゃ無ぇ!ただ座ってるだけの エプロンなんか俺は認めねぇ!料理をしてこその エプロンだと何故判らない!?」
空「ったく…硬い事言うなよ。どーせなら、折角だからこっちを硬く……」
四つんばいのまま俺に近付き、獲物を狙い済ます肉食獣のような視線で俺を見上げる空。
俺はそんな空の仕草に、思わず生唾を飲み込むが…
俺「だからなぁ…お前はもうちょっと恥じらいって物を持て。そんなにガッついてたら、雰囲気も何も無いだろ」
辛うじて持ち直し、空の頭に軽くチョップを一発お見舞いする。
空「んな事言ってもよぉ…我慢出来ねぇ物は仕方無ぇだろ?第一、こんな身体にしたのは誰だと思ってんだ?」
俺「ぐっ………」
しかし、空にはあまり効果が無かった。
俺の身体に手を回し、上目遣いで見上げる空。
先程は持ち堪える事が出来た理性が、ガラガラと音を立てて崩れ去るのが分かる。
あぁ、そうそう…そう言えば一つ言い忘れた事があった。
襲撃オフのあの日…あの後から、空は俺の部屋に居候しているのだが…
家賃代わりと言って迫る空に押し切られ…その…何だ
一線を超えてしまいました。
472: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/21(土) 00:36:44.47 ID:kL0UE7TIo
●ミソラーメン
空「ちょっとゆるゆりの3巻取ってくれねぇか?」
俺「ほらよ」
空「リモコンどこだ?」
俺「お前の座ってる座布団の下だ」
空「お前のイチオシの●●●ってどれだ?」
俺「雑多って名前のフォルダの……って、誰が言うか!!」
空「…ちっ」
空「ところでよぉ…」
俺「何だ?」
空「俺のソーサー跳ね返したアレ、ワッツのパトリオットだろ?」
俺「まぁ…そうみたいだな」
空「あれ…どうやってるんだ?迎撃対象の感知もだけどよぉ…どうやったらサイコキネシスであんな瞬発力出せるんだ?」
俺「感知の方はクレアボヤントで…サイコキネシスの方は、こう…両掌を合わせて、力一杯押し付け合う感じかな。んで、片方を離す」
空「ぁー…成る程な。ゼロから加速させるんじゃ無くて、力を溜めて開放してんのか」
俺「ま、そんな所だな。お前のソーサー=ソーサはどうなんだ?あれって、サイコキネシスで軸を作って独楽みたいに回転させてんのか?」
空「軸ってーか…輪だな、ドーナッツ状の。それを縦に伸ばして筒状にしたりもするぞ」
俺「力の向きはどうなんだ?」
空「俺が得意なのは輪を横方向に回す動きかねぇ。サイコキネシスをそのまんま金属盤に乗せれっし」
俺「輪の内側に向けて回したり、外側に向けて回したりは?」
空「出来っけど…あんまし威力は出無ぇなぁ。ってか、例えに使ったせいでドーナッツ食いたくなってきた」
俺「買出し行くからついでに買って来ても良いが…あんまし食うと太るぞ?お前、ただでさえも運動して無ぇんだから」
空「俺は太らねぇ体質だから良いんだよ。それに…運動不足は、解消する方法があるしな」
俺「何だよその方法って…」
嫌な予感がするが、とりあえず聞いておく。
空「言わせんなよ、●●●」
俺「●●●なのはどっちだ!!」
空「どっちも…じゃ無ぇか?」
あれ?何で俺が被害者から共犯者になってるんだ?
いけない…このままではまた空にペースを握られてしまう。
俺「っ………と、とにかく買い出し行って来る!!」
俺は逃げるように部屋を後にした
空「ちょっとゆるゆりの3巻取ってくれねぇか?」
俺「ほらよ」
空「リモコンどこだ?」
俺「お前の座ってる座布団の下だ」
空「お前のイチオシの●●●ってどれだ?」
俺「雑多って名前のフォルダの……って、誰が言うか!!」
空「…ちっ」
空「ところでよぉ…」
俺「何だ?」
空「俺のソーサー跳ね返したアレ、ワッツのパトリオットだろ?」
俺「まぁ…そうみたいだな」
空「あれ…どうやってるんだ?迎撃対象の感知もだけどよぉ…どうやったらサイコキネシスであんな瞬発力出せるんだ?」
俺「感知の方はクレアボヤントで…サイコキネシスの方は、こう…両掌を合わせて、力一杯押し付け合う感じかな。んで、片方を離す」
空「ぁー…成る程な。ゼロから加速させるんじゃ無くて、力を溜めて開放してんのか」
俺「ま、そんな所だな。お前のソーサー=ソーサはどうなんだ?あれって、サイコキネシスで軸を作って独楽みたいに回転させてんのか?」
空「軸ってーか…輪だな、ドーナッツ状の。それを縦に伸ばして筒状にしたりもするぞ」
俺「力の向きはどうなんだ?」
空「俺が得意なのは輪を横方向に回す動きかねぇ。サイコキネシスをそのまんま金属盤に乗せれっし」
俺「輪の内側に向けて回したり、外側に向けて回したりは?」
空「出来っけど…あんまし威力は出無ぇなぁ。ってか、例えに使ったせいでドーナッツ食いたくなってきた」
俺「買出し行くからついでに買って来ても良いが…あんまし食うと太るぞ?お前、ただでさえも運動して無ぇんだから」
空「俺は太らねぇ体質だから良いんだよ。それに…運動不足は、解消する方法があるしな」
俺「何だよその方法って…」
嫌な予感がするが、とりあえず聞いておく。
空「言わせんなよ、●●●」
俺「●●●なのはどっちだ!!」
空「どっちも…じゃ無ぇか?」
あれ?何で俺が被害者から共犯者になってるんだ?
いけない…このままではまた空にペースを握られてしまう。
俺「っ………と、とにかく買い出し行って来る!!」
俺は逃げるように部屋を後にした
473: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/21(土) 00:45:06.44 ID:kL0UE7TIo
●エソラゴト
空「あ゛ー………腹一杯になったら眠ぃ……」
俺「寝るならちゃんと布団敷いてから寝ろ。ってーか、寝る前にはちゃんと風呂入れよ?」
空「…めんどい。両方やっといてくれよ」
俺「布団はともかく、風呂は出来ねぇよ!」
夕飯を終え、ダラダラと食後の一時を過ごす俺と空。
傍から見ても末期と判る程に眠たそうな空が、俺の背中に倒れ込んで肩に顎を乗せる。
空「んじゃぁ便所」
俺「もっと出来無ぇよ!!」
空「んー?俺一人の体重くらい支えられんだろ?んで、両足持って…」
俺「何俺にxxxxxxなxxxさせようとしてんだよ!?ってか。人の下半身に手を伸ばすな!」
俺の下半身に伸びる空の手…それを振り解き、今度は俺が空の臀部に手を伸ばし…
空「お?何だよぉ…お前もその気………おわっ!?」
そのまま立ち上がって、空を背負う。
そして風呂場に直行して……
俺「横着してないで、まずはちゃんと風呂に入れ」
空「んじゃぁ妥協してやっから、手伝ってくれよ」
俺「またお前は……」
空「良いのかー?風呂ん中で眠っちまって、そのまま…なんて事になっちまってもよぉ?この薄情者ー」
俺「あぁ………ああ言えばこう言う!やってやるよ!やってやりゃぁ良いんだろ!!?」
半ば強引にでも風呂に入れさせようとしたが、失敗…と言うよりも、逆手に取られてしまった。
まぁ、その後の事は………お察し下さい。
空「あ゛ー………腹一杯になったら眠ぃ……」
俺「寝るならちゃんと布団敷いてから寝ろ。ってーか、寝る前にはちゃんと風呂入れよ?」
空「…めんどい。両方やっといてくれよ」
俺「布団はともかく、風呂は出来ねぇよ!」
夕飯を終え、ダラダラと食後の一時を過ごす俺と空。
傍から見ても末期と判る程に眠たそうな空が、俺の背中に倒れ込んで肩に顎を乗せる。
空「んじゃぁ便所」
俺「もっと出来無ぇよ!!」
空「んー?俺一人の体重くらい支えられんだろ?んで、両足持って…」
俺「何俺にxxxxxxなxxxさせようとしてんだよ!?ってか。人の下半身に手を伸ばすな!」
俺の下半身に伸びる空の手…それを振り解き、今度は俺が空の臀部に手を伸ばし…
空「お?何だよぉ…お前もその気………おわっ!?」
そのまま立ち上がって、空を背負う。
そして風呂場に直行して……
俺「横着してないで、まずはちゃんと風呂に入れ」
空「んじゃぁ妥協してやっから、手伝ってくれよ」
俺「またお前は……」
空「良いのかー?風呂ん中で眠っちまって、そのまま…なんて事になっちまってもよぉ?この薄情者ー」
俺「あぁ………ああ言えばこう言う!やってやるよ!やってやりゃぁ良いんだろ!!?」
半ば強引にでも風呂に入れさせようとしたが、失敗…と言うよりも、逆手に取られてしまった。
まぁ、その後の事は………お察し下さい。
474: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/21(土) 01:01:17.11 ID:kL0UE7TIo
●ウワノソラ
ジョージ『それで、次回の定期報告の日時は?』
俺「三日後だ。今日の報告に休暇を捻じ込んだ以上、流石にこれ以上は引き伸ばして誤魔化せそうに無い」
アパートからすぐ近くにある公園。俺はそこのベンチに座り、携帯を片手に通話をしている。
ジョージ『だったら当初の予定通り、報告前に空くんに関する記憶を改竄して…報告後に元に戻すって事で良いかな?』
俺「他に方法が無いとは言え…本当に信用して良いのか?元に戻すって保障はあるのか?」
ジョージ『保障は無いけれど…されると判っている事なら、いくらでも保険はかけれるんじゃ無いかな?』
俺「………良いだろう、なら次だ。俺達を助ける代わりに、お前が求める見返りは何だ?」
数日前…襲撃オフのあの日。空の放った金属盤を俺がパトリオットで跳ね返し、空が瀕死になった時の事なんだが……
あの時、俺と瀕死の空の前に……ジョージ…いや、俺の知って居るジョージとは異なる姿の、ジョージと名乗る人物が現れた。
俺が殺した筈の…ジョージと言う存在が生きていた事にも驚いたが、それ以上に驚いたのは…そのジョージが協力を申し出て来た事だった。
後々俺がジョージに協力すると言う条件で、瀕死の空を治療する事になり…
一体どんな方法を使ったのか判らないが、瀕死の重傷だった筈の空は、傷痕すら残す事無く完治。
後は、その条件を追って知らされる事になったのだが……
ジョージ『あぁ、そうだったね。うん…僕としては君の立場で出来る色んな事をお願いしたい所だけど…』
俺「………」
ジョージ『仲間のためとは言え、仲間を売るような人間じゃないよね?判ってる。だから…だた手を引いて欲しいんだ』
俺「手を引くって…何からだ?」
ジョージ『この先、組織内で起こる事から…かな』
俺「漠然とし過ぎててんな…」
ジョージ『まぁ、時期が来ればきっと判るさ。それに…手を出さない方が君のためでもあるからね』
俺「…どう言う事だよ」
ジョージ『どんな風に君のためになるのか…それも、時期がくれば判る事さ』
俺「結局それかよ………」
やっぱりと言えばやっぱりだが………ジョージの言葉を信用し切る事は出来ない。
最低限の打ち合わせだけ終わらせた俺は通話を切り、煮え切らない気持ちのまま帰路へと着いたのだが…
この日の出来事は、ここで終わらなかった。
ジョージとの通話を終えて自室に戻った俺。バスルームから響く水音からして………空はまだシャワーを浴びているらしい。
慣れない相手との会話のせいか、緊張のせいか…喉の渇きを覚えた俺は冷蔵庫へと向い、コーラのキャップを開けようとしたその時…
狙い済ましたかのようなタイミングで、インターホンの音が室内に鳴り響く。
俺「こんな時間に、一体誰だ……」
俺は徒労感に苛まれながらも、その音に呼ばれるまま玄関へと向かい…目の前のドアを開けると………
そこには、仁王立ちのカレンが居た。
ジョージ『それで、次回の定期報告の日時は?』
俺「三日後だ。今日の報告に休暇を捻じ込んだ以上、流石にこれ以上は引き伸ばして誤魔化せそうに無い」
アパートからすぐ近くにある公園。俺はそこのベンチに座り、携帯を片手に通話をしている。
ジョージ『だったら当初の予定通り、報告前に空くんに関する記憶を改竄して…報告後に元に戻すって事で良いかな?』
俺「他に方法が無いとは言え…本当に信用して良いのか?元に戻すって保障はあるのか?」
ジョージ『保障は無いけれど…されると判っている事なら、いくらでも保険はかけれるんじゃ無いかな?』
俺「………良いだろう、なら次だ。俺達を助ける代わりに、お前が求める見返りは何だ?」
数日前…襲撃オフのあの日。空の放った金属盤を俺がパトリオットで跳ね返し、空が瀕死になった時の事なんだが……
あの時、俺と瀕死の空の前に……ジョージ…いや、俺の知って居るジョージとは異なる姿の、ジョージと名乗る人物が現れた。
俺が殺した筈の…ジョージと言う存在が生きていた事にも驚いたが、それ以上に驚いたのは…そのジョージが協力を申し出て来た事だった。
後々俺がジョージに協力すると言う条件で、瀕死の空を治療する事になり…
一体どんな方法を使ったのか判らないが、瀕死の重傷だった筈の空は、傷痕すら残す事無く完治。
後は、その条件を追って知らされる事になったのだが……
ジョージ『あぁ、そうだったね。うん…僕としては君の立場で出来る色んな事をお願いしたい所だけど…』
俺「………」
ジョージ『仲間のためとは言え、仲間を売るような人間じゃないよね?判ってる。だから…だた手を引いて欲しいんだ』
俺「手を引くって…何からだ?」
ジョージ『この先、組織内で起こる事から…かな』
俺「漠然とし過ぎててんな…」
ジョージ『まぁ、時期が来ればきっと判るさ。それに…手を出さない方が君のためでもあるからね』
俺「…どう言う事だよ」
ジョージ『どんな風に君のためになるのか…それも、時期がくれば判る事さ』
俺「結局それかよ………」
やっぱりと言えばやっぱりだが………ジョージの言葉を信用し切る事は出来ない。
最低限の打ち合わせだけ終わらせた俺は通話を切り、煮え切らない気持ちのまま帰路へと着いたのだが…
この日の出来事は、ここで終わらなかった。
ジョージとの通話を終えて自室に戻った俺。バスルームから響く水音からして………空はまだシャワーを浴びているらしい。
慣れない相手との会話のせいか、緊張のせいか…喉の渇きを覚えた俺は冷蔵庫へと向い、コーラのキャップを開けようとしたその時…
狙い済ましたかのようなタイミングで、インターホンの音が室内に鳴り響く。
俺「こんな時間に、一体誰だ……」
俺は徒労感に苛まれながらも、その音に呼ばれるまま玄関へと向かい…目の前のドアを開けると………
そこには、仁王立ちのカレンが居た。
475: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/21(土) 01:12:44.38 ID:kL0UE7TIo
●ミオロスヨゾラ
俺「…え?何で?カレン?………何で?」
カレン「べ…別に…貴方の事を心配して、様子を見に来た訳じゃ無いわよ?!」
思わず二回聞いてしまう俺も相当にアレだが、ツンデレのテンプレで返すカレンも相当アレだろう。
俺は予想外の事態に直面して、軽く混乱し………何故かカレンの方も落ち着いていない様子が見て取れる。
俺「えっと……あー………その、何だ。立ち話も何だし、上がってくか?」
カレン「え!?そ…そうね。折角だから、お邪魔する…わね?」
至極当然の流れのように、カレンを招き入れる俺。だが………この時点で致命的な失敗をしてしまった事に気付かなかった。
カレンが俺を心配して訪ねて来た事に舞い上がって居た…と言えば言い訳に聞こえるかも知れないが、実際にそれが原因に違いない。
俺が部屋に戻る最中にも…玄関に入ったカレンは、何故かそこから微動だにせず、ある一方を向いて居た。
一体何を見ているのだろうか…カレンの視線を追って顔を向けた所で、俺はその正体に気付き……
全身から血の気が引くのを感じた
カレン「…………」
丁寧に靴を脱ぎつつも、ドアを閉めるのも忘れて…無言のまま歩き出すカレン。そしてその手が伸びた先は…
馴れて日常と化してしまった事で、その異常性に気付く事が出来なかった音…その大元。今まさにこの瞬間にも、水音を響かせている
…………バスルーム。
カレンの意図に気付いた俺は、それを制止しようと手を伸ばす
が…次の瞬間には視界が一回転して、背中に衝撃を受ける。視線の先には、見慣れた天井…そして、恐ろしく冷たい目をしたカレンの姿。
これ以上の抵抗は無意味…それを悟った俺は、一切の抵抗を止め…事の成り行きに身を任せるしか無かった。
カレンは改めてドアノブを掴み、それを捻る。そして、引き開かれたドアの向こうに視線を向け………
カレン「………」
無言のまま顔を抑え、よろめきながら後ろの壁に背中を預けた。
俺「あのな、カレン。これには事情が……」
俺は辛うじて弁明の言葉を向けるが、この様子では取り付く島も見付からない。
カレンはおぼつかない足取りで後退り…俺の制止も聞かないまま、部屋の外へと出て行ってしまった。
あぁ………これは物凄く不味い。
俺「…え?何で?カレン?………何で?」
カレン「べ…別に…貴方の事を心配して、様子を見に来た訳じゃ無いわよ?!」
思わず二回聞いてしまう俺も相当にアレだが、ツンデレのテンプレで返すカレンも相当アレだろう。
俺は予想外の事態に直面して、軽く混乱し………何故かカレンの方も落ち着いていない様子が見て取れる。
俺「えっと……あー………その、何だ。立ち話も何だし、上がってくか?」
カレン「え!?そ…そうね。折角だから、お邪魔する…わね?」
至極当然の流れのように、カレンを招き入れる俺。だが………この時点で致命的な失敗をしてしまった事に気付かなかった。
カレンが俺を心配して訪ねて来た事に舞い上がって居た…と言えば言い訳に聞こえるかも知れないが、実際にそれが原因に違いない。
俺が部屋に戻る最中にも…玄関に入ったカレンは、何故かそこから微動だにせず、ある一方を向いて居た。
一体何を見ているのだろうか…カレンの視線を追って顔を向けた所で、俺はその正体に気付き……
全身から血の気が引くのを感じた
カレン「…………」
丁寧に靴を脱ぎつつも、ドアを閉めるのも忘れて…無言のまま歩き出すカレン。そしてその手が伸びた先は…
馴れて日常と化してしまった事で、その異常性に気付く事が出来なかった音…その大元。今まさにこの瞬間にも、水音を響かせている
…………バスルーム。
カレンの意図に気付いた俺は、それを制止しようと手を伸ばす
が…次の瞬間には視界が一回転して、背中に衝撃を受ける。視線の先には、見慣れた天井…そして、恐ろしく冷たい目をしたカレンの姿。
これ以上の抵抗は無意味…それを悟った俺は、一切の抵抗を止め…事の成り行きに身を任せるしか無かった。
カレンは改めてドアノブを掴み、それを捻る。そして、引き開かれたドアの向こうに視線を向け………
カレン「………」
無言のまま顔を抑え、よろめきながら後ろの壁に背中を預けた。
俺「あのな、カレン。これには事情が……」
俺は辛うじて弁明の言葉を向けるが、この様子では取り付く島も見付からない。
カレンはおぼつかない足取りで後退り…俺の制止も聞かないまま、部屋の外へと出て行ってしまった。
あぁ………これは物凄く不味い。
476: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/21(土) 01:30:24.64 ID:kL0UE7TIo
●ミアゲルソラ
空「それで……え?何だこの状況?」
仁王立ちのカレンの前で正座をしている…いや、させられている俺と空。
唯一状況を飲み込めない空が、カレンを見上げて至極当然の質問を投げかける。
が…それは正直薮蛇だ。
カレン「何だも何も無いわよ!それはこっちが聞きたいくらいよ!」
空「何だよそれ…ってか、何でキレてんだ?」
だからこれ以上の薮蛇は止めてくれ…
カレン「そ、それは…貴方達が一緒に居るからよ!しかも、洗濯物とか見た感じだと…ど…同棲してるみたいじゃない!貴女、一体何なの!?」
空「あぁ…ははぁん…そー言う事か」
何か察したように笑みを浮かべ、俺とカレンに交互に視線を向ける空。
俺はこれ以上薮蛇を突かれないよう、心の中でひたすらに祈り続けるのだが…どうやら、それも無駄な足掻きだったらしい。
空「俺の名前は空…未来 空だ。訳あって、コイツの部屋に居候させて貰ってる。まぁ、同棲って言っても間違いは無いな」
案の定…余分な一言を付け加えてくれやがった。
カレン「そう………自供してくれたなら話は早いわね。問題が起きる前に、すぐにでも彼の部屋から出て行きなさい」
すみません、もう既に問題は起こしてしまいました…って、今はそんな事を言って要る場合じゃないか。
俺「いや、それはちょっと待ってくれ。空は行く所が無いんだ」
カレン「でしょうね…でもその位なら私の方で何とか出来るわ。代わりの部屋くらい用意してあげられるもの」
当然と言えば当然の返答と打開策を、カレン提示する。だが…
俺「いや………それも出来ない理由があるんだ」
断らざるを得ない理由がある。
今の空の状況…この場所が安全地帯である事…
その辺りの掻い摘んだ事情と状況をカレンに説明した。
当然、カレンにとって鬼門であるジョージの事は伏せた上で…だが。
空「それで……え?何だこの状況?」
仁王立ちのカレンの前で正座をしている…いや、させられている俺と空。
唯一状況を飲み込めない空が、カレンを見上げて至極当然の質問を投げかける。
が…それは正直薮蛇だ。
カレン「何だも何も無いわよ!それはこっちが聞きたいくらいよ!」
空「何だよそれ…ってか、何でキレてんだ?」
だからこれ以上の薮蛇は止めてくれ…
カレン「そ、それは…貴方達が一緒に居るからよ!しかも、洗濯物とか見た感じだと…ど…同棲してるみたいじゃない!貴女、一体何なの!?」
空「あぁ…ははぁん…そー言う事か」
何か察したように笑みを浮かべ、俺とカレンに交互に視線を向ける空。
俺はこれ以上薮蛇を突かれないよう、心の中でひたすらに祈り続けるのだが…どうやら、それも無駄な足掻きだったらしい。
空「俺の名前は空…未来 空だ。訳あって、コイツの部屋に居候させて貰ってる。まぁ、同棲って言っても間違いは無いな」
案の定…余分な一言を付け加えてくれやがった。
カレン「そう………自供してくれたなら話は早いわね。問題が起きる前に、すぐにでも彼の部屋から出て行きなさい」
すみません、もう既に問題は起こしてしまいました…って、今はそんな事を言って要る場合じゃないか。
俺「いや、それはちょっと待ってくれ。空は行く所が無いんだ」
カレン「でしょうね…でもその位なら私の方で何とか出来るわ。代わりの部屋くらい用意してあげられるもの」
当然と言えば当然の返答と打開策を、カレン提示する。だが…
俺「いや………それも出来ない理由があるんだ」
断らざるを得ない理由がある。
今の空の状況…この場所が安全地帯である事…
その辺りの掻い摘んだ事情と状況をカレンに説明した。
当然、カレンにとって鬼門であるジョージの事は伏せた上で…だが。
477: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/21(土) 01:39:37.76 ID:kL0UE7TIo
●ソラモヨウ
カレン「つまり………そこの彼女は、キングダムのメンバーで…」
空「元メンバーな。あと、呼び捨てで空でも良いぜ」
カレン「じゃぁ空。空を匿うためにこの部屋に居させて居るのよね?それで、その理由が…」
俺「このアパート周辺には、能力による盗み見全般を阻害する力が働いてるから」
カレン「その辺りは…まぁ、現にこうして阻害されてる以上、信じない訳には行かないんだけど…」
空「けど?」
カレン「だからと言って、同じ部屋に住む必要は無いじゃない。他の部屋を借りましょう」
俺「いや、それは俺も考えたんだが…このアパート、もう満室なんだ」
本当はそれだけが理由では無いんだが…とりあえず、カレンを説得するために一番有力な理由を持ち出す。
カレン「………」
俺「………」
そして…その甲斐あってか、カレンは言葉を失い黙り込むのだが…
カレン「………判ったわ、私も一緒にここに住む」
俺「…………は?」
長い沈黙の後、無茶苦茶な代案を持ち出して来た。
カレン「だって、貴方達が問題を起こさないように見張る必要があるじゃない」
いや、だからもう問題は起きてるから手遅れ……いや、それを言っても逆に火に油を注ぐような物か。
俺は反論どころかぐうの音も出せないまま、カレンに一方的に押し切られてしまい………
結果…奇妙な三人暮らしが始まる事になってしまったのだった。
カレン「つまり………そこの彼女は、キングダムのメンバーで…」
空「元メンバーな。あと、呼び捨てで空でも良いぜ」
カレン「じゃぁ空。空を匿うためにこの部屋に居させて居るのよね?それで、その理由が…」
俺「このアパート周辺には、能力による盗み見全般を阻害する力が働いてるから」
カレン「その辺りは…まぁ、現にこうして阻害されてる以上、信じない訳には行かないんだけど…」
空「けど?」
カレン「だからと言って、同じ部屋に住む必要は無いじゃない。他の部屋を借りましょう」
俺「いや、それは俺も考えたんだが…このアパート、もう満室なんだ」
本当はそれだけが理由では無いんだが…とりあえず、カレンを説得するために一番有力な理由を持ち出す。
カレン「………」
俺「………」
そして…その甲斐あってか、カレンは言葉を失い黙り込むのだが…
カレン「………判ったわ、私も一緒にここに住む」
俺「…………は?」
長い沈黙の後、無茶苦茶な代案を持ち出して来た。
カレン「だって、貴方達が問題を起こさないように見張る必要があるじゃない」
いや、だからもう問題は起きてるから手遅れ……いや、それを言っても逆に火に油を注ぐような物か。
俺は反論どころかぐうの音も出せないまま、カレンに一方的に押し切られてしまい………
結果…奇妙な三人暮らしが始まる事になってしまったのだった。
478: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/21(土) 01:56:41.87 ID:kL0UE7TIo
●クモリゾラ
俺「…と言う訳で、カレンまで一緒に同居する事になって…このままだと、当日に落ち合う隙が無さそうなんだが…」
ジョージ『成る程ね…カレンお嬢様の様子はどうだった?』
俺「どうって…物凄く怒ってた事以外は、普通だったが…」
ジョージ『何か隠してる感じとか…演技をしてる感じは無かったかい?』
俺「いや、そう言うのは全然」
ジョージ『そっか………うん、そう言う事か…………はぁ…』
俺「何なんだよ。言いたい事があるならハッキリ言え」
ジョージ『いやね…この前言った交換条件だけど、事情が変わったから、あれは無しで良いよ』
俺「………はぁっ!?」
ジョージ『あ、でも。君のためにも、組織の方に顔は出さない方が良いと思う』
俺「いや、だから訳が判んねぇよ!結局どうすれば良いんだよ!」
ジョージ『僕が推奨したのは、ほんの一つの道に過ぎない。この先どうするかは君の自由さ。それじゃ、今日の所はこれで失礼するよ』
そう言ってジョージは一方的に通話を切り…俺の中に残されたのは、煮え切らない不信感だけ。
渋々ながらも携帯をポケットに仕舞い、俺は帰路に着く。
そして、部屋に戻った俺を待ち受けていたのは………
一体どんな経緯があったと言うのだろうか…組み敷かれた白い下着姿のカレンと、組み敷く側の赤い下着姿の空。
二人の…下着姿の少女の姿だった。
俺「って…そんな格好で何やってんだよ!!」
空「何って…………あぁ、そうだ。キャットファイト?」
俺「明らかに今思い付いて言っただろそれ!!?」
カレン「っ……馬鹿な事言ってないで、助けなさいよ!」
空との漫才を切り上げ、俺は呼ばれるままにカレンの方を向く…が、その姿故に直視する事が出来ない。
女性の裸自体はネットでも空でも見た事があって、とても今更な事なんだが…それでも、想い人だった少女の物となれば話が違う。
俺は思わず、喉を鳴らしながら唾を飲み込み……それに気付いた二人が、各々の反応をこちらに向けて来た。
カレン「……………」
カレンは、みるみる内に顔を赤らめて行き…
空「…………」
空は空で、俺達二人の様子を見て………悪巧みをしている時のあの笑みを浮かべるのだった。
俺「…と言う訳で、カレンまで一緒に同居する事になって…このままだと、当日に落ち合う隙が無さそうなんだが…」
ジョージ『成る程ね…カレンお嬢様の様子はどうだった?』
俺「どうって…物凄く怒ってた事以外は、普通だったが…」
ジョージ『何か隠してる感じとか…演技をしてる感じは無かったかい?』
俺「いや、そう言うのは全然」
ジョージ『そっか………うん、そう言う事か…………はぁ…』
俺「何なんだよ。言いたい事があるならハッキリ言え」
ジョージ『いやね…この前言った交換条件だけど、事情が変わったから、あれは無しで良いよ』
俺「………はぁっ!?」
ジョージ『あ、でも。君のためにも、組織の方に顔は出さない方が良いと思う』
俺「いや、だから訳が判んねぇよ!結局どうすれば良いんだよ!」
ジョージ『僕が推奨したのは、ほんの一つの道に過ぎない。この先どうするかは君の自由さ。それじゃ、今日の所はこれで失礼するよ』
そう言ってジョージは一方的に通話を切り…俺の中に残されたのは、煮え切らない不信感だけ。
渋々ながらも携帯をポケットに仕舞い、俺は帰路に着く。
そして、部屋に戻った俺を待ち受けていたのは………
一体どんな経緯があったと言うのだろうか…組み敷かれた白い下着姿のカレンと、組み敷く側の赤い下着姿の空。
二人の…下着姿の少女の姿だった。
俺「って…そんな格好で何やってんだよ!!」
空「何って…………あぁ、そうだ。キャットファイト?」
俺「明らかに今思い付いて言っただろそれ!!?」
カレン「っ……馬鹿な事言ってないで、助けなさいよ!」
空との漫才を切り上げ、俺は呼ばれるままにカレンの方を向く…が、その姿故に直視する事が出来ない。
女性の裸自体はネットでも空でも見た事があって、とても今更な事なんだが…それでも、想い人だった少女の物となれば話が違う。
俺は思わず、喉を鳴らしながら唾を飲み込み……それに気付いた二人が、各々の反応をこちらに向けて来た。
カレン「……………」
カレンは、みるみる内に顔を赤らめて行き…
空「…………」
空は空で、俺達二人の様子を見て………悪巧みをしている時のあの笑みを浮かべるのだった。
480: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/25(水) 16:50:05.84 ID:L5q0WRTro
●ソラノイタズラ
空「そー言やぁ…カレンもこの部屋に厄介になるんだよなぁ?」
カレン「そ、そうよ…何を今更…って言うか、そんな事良いから離しなさいよ!」
後ろからカレンを羽交い絞めにして、その耳元で囁く空。かと思えば今度は身体を捻り、カレンを仰向けに持ち上げて……
カレン「―――っ!!?」
下着姿のカレンを、俺と対面になる向きに傾けて来た。
細い首筋…窪みの浅い鎖骨。やや控えめながらも、僅かに空より膨らんだ…下着に覆われた胸。
細く括れた腹部に、小ぶりな腰。細くしなやかな脚………その全てが俺の視界に晒される事になり…羞恥心からか、カレンは顔を伏せた。
が………その行為が俺の加虐心を煽ってしまい、理性を削ぎ落として行く。
空「だったら………ちゃぁんと家賃を納めなけりゃぁダメだよな?」
カレン「はぁっ!?何で今そんな事…………え?嘘…まさかっ…」
真っ赤になりながら振り向き、空に向けて叫ぶカレン。そして声が途切れると、今度は音を発さない口がパクパクと動き…
空「そ、勿論身体で………な?」
カレン「な…………なななななな!何馬鹿な事言ってるの!?ちょっ…ふざけないで!って言うか離しなさいよ!」
話が妙な方向に転がり始めた。
そう………こんな話はおかしい、こんな話は馬鹿げている。判っている…判っている筈なのに、俺の血液は俺の理性を振り切って動き出す。
カレン「ぁ………………」
空「そらそら、あちらさんもヤる気満々みてぇだぜ?ってーか…払わねぇんなら、俺一人が世話んなって家賃を払い続ける事になるけど…良いのか?」
カレン「…………っ」
空の言葉のせいか…唇を噛み絞め、抵抗を止めるカレン。
そして…白く細いその指先で、自らのブラを捲くり上げ………白い膨らみと、その先端を俺へと晒して来た。
俺「……………」
俺の理性なんてちっぽけな物は、カレンの行為と姿により容易く吹き飛ばされ…気が付けば、カレンのすぐ前に座り込んでいた。
少し手を伸ばしただけで触れる事が出来る、少し汗ばんだ肌。それらの全てが俺の欲 を掻き立て、俺の指先が動いたその時………
カレン「お願い………せめて布団で……ちゃんと…………して」
カレンの小さな口から毀れた言葉が、俺の色んな感情を爆発させて……その中の僅かな理性を引きずり出した。
空「そー言やぁ…カレンもこの部屋に厄介になるんだよなぁ?」
カレン「そ、そうよ…何を今更…って言うか、そんな事良いから離しなさいよ!」
後ろからカレンを羽交い絞めにして、その耳元で囁く空。かと思えば今度は身体を捻り、カレンを仰向けに持ち上げて……
カレン「―――っ!!?」
下着姿のカレンを、俺と対面になる向きに傾けて来た。
細い首筋…窪みの浅い鎖骨。やや控えめながらも、僅かに空より膨らんだ…下着に覆われた胸。
細く括れた腹部に、小ぶりな腰。細くしなやかな脚………その全てが俺の視界に晒される事になり…羞恥心からか、カレンは顔を伏せた。
が………その行為が俺の加虐心を煽ってしまい、理性を削ぎ落として行く。
空「だったら………ちゃぁんと家賃を納めなけりゃぁダメだよな?」
カレン「はぁっ!?何で今そんな事…………え?嘘…まさかっ…」
真っ赤になりながら振り向き、空に向けて叫ぶカレン。そして声が途切れると、今度は音を発さない口がパクパクと動き…
空「そ、勿論身体で………な?」
カレン「な…………なななななな!何馬鹿な事言ってるの!?ちょっ…ふざけないで!って言うか離しなさいよ!」
話が妙な方向に転がり始めた。
そう………こんな話はおかしい、こんな話は馬鹿げている。判っている…判っている筈なのに、俺の血液は俺の理性を振り切って動き出す。
カレン「ぁ………………」
空「そらそら、あちらさんもヤる気満々みてぇだぜ?ってーか…払わねぇんなら、俺一人が世話んなって家賃を払い続ける事になるけど…良いのか?」
カレン「…………っ」
空の言葉のせいか…唇を噛み絞め、抵抗を止めるカレン。
そして…白く細いその指先で、自らのブラを捲くり上げ………白い膨らみと、その先端を俺へと晒して来た。
俺「……………」
俺の理性なんてちっぽけな物は、カレンの行為と姿により容易く吹き飛ばされ…気が付けば、カレンのすぐ前に座り込んでいた。
少し手を伸ばしただけで触れる事が出来る、少し汗ばんだ肌。それらの全てが俺の欲 を掻き立て、俺の指先が動いたその時………
カレン「お願い………せめて布団で……ちゃんと…………して」
カレンの小さな口から毀れた言葉が、俺の色んな感情を爆発させて……その中の僅かな理性を引きずり出した。
481: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/25(水) 17:05:11.08 ID:L5q0WRTro
●オトメゴコロトアキノソラ
俺「悪い…そう………だよな。何で俺、こんな事してるんだ。嫌がってるカレンにこんな事……」
俺は身体を起こし、カレンから離れようとした……所で、それを遮るかのようにカレンの手が俺の首の後ろに回る。
カレン「そうじゃ無いわよ………嫌なんじゃ無くて…初めてだから……ちゃんと…して欲しいの」
俺「―――――」
俺は言葉を失った。
空「ぁー………んじゃぁ俺は、邪魔しねぇようにシャワーでも浴びて来るわ」
事を起こした当事者にも関わらず、その場を放り出してバスルームへと逃げる空。
一体どうすれば良いのか…どうするべきか…
頭の中が掻き乱される中、俺はとりあえず立ち上がり………
普段の習慣の為せる業か…気が付けば、布団を敷いていた。
布団の上で横になるカレン…それに見入り、思い出したように服を脱ぐ俺。
カレンは一糸纏わぬ姿で、要所のみを掌で隠して仰向けになり…俺はカレンに覆い被さるように両手を付く。
呼吸をする度、鼻に届くカレンの香り。そして……そんな俺の様子に気付いたのか、カレンは顔を背け
カレン「そんなに…嗅がないで。汗…かいてるから…」
俺「あぁ…バスルームは今使用中だから……いや、でも……良い匂いだと思うぞ?」
カレン「………………馬鹿」
鼓動は一向に落ち着く気配を見せず、高鳴るばかり。更には、それに比例して俺自身が昂ぶり続け…
カレン「…………」
視線を下ろし…それを直視したカレンが、目を丸くする。
俺「なぁ………本当、無理してるんだったら…」
カレン「む…無理なんてして無いわよ!ちょ…ちょっと驚いただけだからっ」
俺「だったら…このまま………良いんだよな?」
カレン「うん………あ、で、でも!」
俺「どうした?」
カレン「少しだけ怖いから………優しくして…よね?」
カレンのその言葉で………俺の理性は完全に吹き飛んだ。
俺「悪い…そう………だよな。何で俺、こんな事してるんだ。嫌がってるカレンにこんな事……」
俺は身体を起こし、カレンから離れようとした……所で、それを遮るかのようにカレンの手が俺の首の後ろに回る。
カレン「そうじゃ無いわよ………嫌なんじゃ無くて…初めてだから……ちゃんと…して欲しいの」
俺「―――――」
俺は言葉を失った。
空「ぁー………んじゃぁ俺は、邪魔しねぇようにシャワーでも浴びて来るわ」
事を起こした当事者にも関わらず、その場を放り出してバスルームへと逃げる空。
一体どうすれば良いのか…どうするべきか…
頭の中が掻き乱される中、俺はとりあえず立ち上がり………
普段の習慣の為せる業か…気が付けば、布団を敷いていた。
布団の上で横になるカレン…それに見入り、思い出したように服を脱ぐ俺。
カレンは一糸纏わぬ姿で、要所のみを掌で隠して仰向けになり…俺はカレンに覆い被さるように両手を付く。
呼吸をする度、鼻に届くカレンの香り。そして……そんな俺の様子に気付いたのか、カレンは顔を背け
カレン「そんなに…嗅がないで。汗…かいてるから…」
俺「あぁ…バスルームは今使用中だから……いや、でも……良い匂いだと思うぞ?」
カレン「………………馬鹿」
鼓動は一向に落ち着く気配を見せず、高鳴るばかり。更には、それに比例して俺自身が昂ぶり続け…
カレン「…………」
視線を下ろし…それを直視したカレンが、目を丸くする。
俺「なぁ………本当、無理してるんだったら…」
カレン「む…無理なんてして無いわよ!ちょ…ちょっと驚いただけだからっ」
俺「だったら…このまま………良いんだよな?」
カレン「うん………あ、で、でも!」
俺「どうした?」
カレン「少しだけ怖いから………優しくして…よね?」
カレンのその言葉で………俺の理性は完全に吹き飛んだ。
482: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/25(水) 17:13:44.10 ID:L5q0WRTro
●ホシノソラ
俺「あれがデネブ…あれがアルタイル………あれがベガ」
ベランダで火照った身体を冷ましつつ、夏の大三角形を構成する三つの星を探す俺。
つい先程までの出来事に実感をもてないまま、言葉に出来ない感情に浸っている
空「君の知らない物語…か?」
と…不意に背後に空が現れる。
俺「ちげーよ。普通に夏の大三角形を探してただけだ」
空「そりゃまた何で……あー…そー言やぁ今日は七夕だったな」
意図して居た事では無い…が、空に言われてそれに気付く。
俺「短冊とか…何にも書いて無かったな」
空「別に良いじゃねぇか。短冊なんて無くても、願いは叶っただろ?」
俺「それはそうだが……って、何でお前が俺の願いを知ってんだ?!」
不意打ち気味に投げられたその言葉により、俺の心臓はドクンと大きく跳ね……空の真意を確かめるべく問いを向ける
空「にしても…三角形か。3って辺りが今の俺達みてぇだよな」
が…その問いに対する返答は無く、話題を逸らされる。
俺「いや、合ってるのは頭数だけじゃねぇか!大体誰がどれだよ!」
そしてその言葉に、脊髄反射の如くツッコミを入れるのだが……
俺「お前がアルタイルで、カレンがベガ………俺がデネブに決まってんだろ。言わせんなよ、恥ずかしい」
覗き込んだその瞳から…空の言葉の本当の意味に気付いた。
俺「…………え?…お前、もしかして………」
空「………だから言わせんなって言ってんだろ。心配すんな、俺とヤった事はカレンに黙っててやっからよ」
問いには答えず、はぐらかしたままニカッと笑って見せる空。
あれもこれも、空が俺の事を気遣っての行動…考えなくてもそれは判る。
にも関わらず………何故か
その笑顔を見て、胸がズキンと痛んだ。
俺「あれがデネブ…あれがアルタイル………あれがベガ」
ベランダで火照った身体を冷ましつつ、夏の大三角形を構成する三つの星を探す俺。
つい先程までの出来事に実感をもてないまま、言葉に出来ない感情に浸っている
空「君の知らない物語…か?」
と…不意に背後に空が現れる。
俺「ちげーよ。普通に夏の大三角形を探してただけだ」
空「そりゃまた何で……あー…そー言やぁ今日は七夕だったな」
意図して居た事では無い…が、空に言われてそれに気付く。
俺「短冊とか…何にも書いて無かったな」
空「別に良いじゃねぇか。短冊なんて無くても、願いは叶っただろ?」
俺「それはそうだが……って、何でお前が俺の願いを知ってんだ?!」
不意打ち気味に投げられたその言葉により、俺の心臓はドクンと大きく跳ね……空の真意を確かめるべく問いを向ける
空「にしても…三角形か。3って辺りが今の俺達みてぇだよな」
が…その問いに対する返答は無く、話題を逸らされる。
俺「いや、合ってるのは頭数だけじゃねぇか!大体誰がどれだよ!」
そしてその言葉に、脊髄反射の如くツッコミを入れるのだが……
俺「お前がアルタイルで、カレンがベガ………俺がデネブに決まってんだろ。言わせんなよ、恥ずかしい」
覗き込んだその瞳から…空の言葉の本当の意味に気付いた。
俺「…………え?…お前、もしかして………」
空「………だから言わせんなって言ってんだろ。心配すんな、俺とヤった事はカレンに黙っててやっからよ」
問いには答えず、はぐらかしたままニカッと笑って見せる空。
あれもこれも、空が俺の事を気遣っての行動…考えなくてもそれは判る。
にも関わらず………何故か
その笑顔を見て、胸がズキンと痛んだ。
483: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/26(木) 11:56:14.28 ID:rks7G0axo
●アラシノマエノソラ
そして、次の日の朝…………
溜まりに溜まったゴミを出しに、ゴミ捨て場に来た所で…携帯から着信音が鳴り響いた。
……………理央からだ。
俺「どうした?こんな朝っぱらから」
理央『あ、おはようございます。えっと…その…カレン先輩、知りませんか?昨日約束があったんですけど、帰って来なくて…』
俺「ぁー………昨日はあんだけのドタバタがあったからなぁ…悪い、俺のせいだ」
理央「あ、いえ…何事も無かったなら別に良いんです。あ…今はカレン先輩と一緒ですか?」
正確には、何事も無かった…と言う訳では無いのだが……あえて自分から切り出す事でも無いので、それは言わないでおく。
俺「いや、今はゴミ捨てに来てる所だからカレンは居ない。カレンに話があるんなら、部屋に戻ってから…」
理央「いえ、丁度先輩に話があったので……もしこの後お時間があったら、お会い出来ますか?」
俺「ぁー……ちょっと片付けとかあるから午後になると思うんだが、それでも良いか?」
理央「はい、構いません。場所は…猫カフェで良いですか?」
俺「んじゃ、猫カフェで1時くらいで良いか?」
理央「はい、宜しくお願いします。それではまた後で」
俺「あぁ、また後でな」
そう告げてから通話を終え、俺は携帯をポケットに仕舞う。
俺「理央からの話………か。一体何なんだろうな」
そして…改めてそれを口にした。
そして、次の日の朝…………
溜まりに溜まったゴミを出しに、ゴミ捨て場に来た所で…携帯から着信音が鳴り響いた。
……………理央からだ。
俺「どうした?こんな朝っぱらから」
理央『あ、おはようございます。えっと…その…カレン先輩、知りませんか?昨日約束があったんですけど、帰って来なくて…』
俺「ぁー………昨日はあんだけのドタバタがあったからなぁ…悪い、俺のせいだ」
理央「あ、いえ…何事も無かったなら別に良いんです。あ…今はカレン先輩と一緒ですか?」
正確には、何事も無かった…と言う訳では無いのだが……あえて自分から切り出す事でも無いので、それは言わないでおく。
俺「いや、今はゴミ捨てに来てる所だからカレンは居ない。カレンに話があるんなら、部屋に戻ってから…」
理央「いえ、丁度先輩に話があったので……もしこの後お時間があったら、お会い出来ますか?」
俺「ぁー……ちょっと片付けとかあるから午後になると思うんだが、それでも良いか?」
理央「はい、構いません。場所は…猫カフェで良いですか?」
俺「んじゃ、猫カフェで1時くらいで良いか?」
理央「はい、宜しくお願いします。それではまた後で」
俺「あぁ、また後でな」
そう告げてから通話を終え、俺は携帯をポケットに仕舞う。
俺「理央からの話………か。一体何なんだろうな」
そして…改めてそれを口にした。
484: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/26(木) 12:05:50.33 ID:rks7G0axo
●サエギラレタソラ
俺「で…話って何だ?」
猫カフェで落ち合い、二人用の席で向き合いながら座る俺と理央。
とりあえず昼飯になる物を幾つかオーダーして…料理が届くまでの間に、要点である会話の内容を訪ねる。
理央「あ…はい。その…先輩、最近組織に出勤してません…よね?それで…様子を見て来るように言われたんです」
俺「ぁー……それはそうだよなぁ。何て言ったら良いのか…」
理央「あ、言い難い事情があるなら良いんです。でも…出来たら私も、その辺りを知っておかないと、先輩の力になれませんし…」
理央のその様子から、本当に俺の心配をしてくれているのは見て取れる。しかし…俺の中では、葛藤が繰り広げられていた。
安心させるためにも、理央には話すべきだろうか…逆に、理央に話してしまう事で巻き込んでしまうのでは無いだろうか…
せめぎ合う、真逆の二つの選択。答えの出ない迷走の中、理央の瞳が俺の瞳を見据えている事に気付く。
理央「私は、巻き込まれるつもりで今日ここに来ました。ですから…それが理由迷っているなら、話して下さい」
俺「あぁ………そうだったな。理央には全部見透かされてるんだったな」
理央「全部じゃありません。私の能力でも見えない部分で問題を抱えてるみたいだから、こうやって聞いてるんです」
幸か不幸か、問題の核心…空の件に関しては、能力が阻害される範囲内での出来事。理央の能力を持ってしても、知られる事の無い出来事だった。
だが…今となっては、それがあまり意味の無い事だと悟る。
俺「チームだから…このまま俺が黙ったら、そう言って食い下がって来るんだろうな」
理央「はい」
俺「じゃぁ俺の負けだ…話すよ」
そうして俺は…カレンに話した時のように、空とそれに関わる経緯を理央に明かした。
理央「さすがに全容までは見えませんが…大体の事情は判りました。組織の方には、私の方から上手く言っておきます」
俺「いや、上手く言うって………ニヤ先輩の能力で記憶を読まれたら…」
理央「その点は心配ありません。カレン先輩が私の記憶を無理に読んだ時の事を覚えて居ますか?」
俺「あぁ…そう言えば、酷い事になったんだった。確か、他人に記憶を伝える時は厳選してから見せてるんだよな」
理央「はい…そうです。それに…テレパシーによる情報収集を欺く方法なら、他にも色々ありますから」
俺「そうなのか?」
眉唾なその言葉を耳にして、俺は思わず聞き返した。
俺「で…話って何だ?」
猫カフェで落ち合い、二人用の席で向き合いながら座る俺と理央。
とりあえず昼飯になる物を幾つかオーダーして…料理が届くまでの間に、要点である会話の内容を訪ねる。
理央「あ…はい。その…先輩、最近組織に出勤してません…よね?それで…様子を見て来るように言われたんです」
俺「ぁー……それはそうだよなぁ。何て言ったら良いのか…」
理央「あ、言い難い事情があるなら良いんです。でも…出来たら私も、その辺りを知っておかないと、先輩の力になれませんし…」
理央のその様子から、本当に俺の心配をしてくれているのは見て取れる。しかし…俺の中では、葛藤が繰り広げられていた。
安心させるためにも、理央には話すべきだろうか…逆に、理央に話してしまう事で巻き込んでしまうのでは無いだろうか…
せめぎ合う、真逆の二つの選択。答えの出ない迷走の中、理央の瞳が俺の瞳を見据えている事に気付く。
理央「私は、巻き込まれるつもりで今日ここに来ました。ですから…それが理由迷っているなら、話して下さい」
俺「あぁ………そうだったな。理央には全部見透かされてるんだったな」
理央「全部じゃありません。私の能力でも見えない部分で問題を抱えてるみたいだから、こうやって聞いてるんです」
幸か不幸か、問題の核心…空の件に関しては、能力が阻害される範囲内での出来事。理央の能力を持ってしても、知られる事の無い出来事だった。
だが…今となっては、それがあまり意味の無い事だと悟る。
俺「チームだから…このまま俺が黙ったら、そう言って食い下がって来るんだろうな」
理央「はい」
俺「じゃぁ俺の負けだ…話すよ」
そうして俺は…カレンに話した時のように、空とそれに関わる経緯を理央に明かした。
理央「さすがに全容までは見えませんが…大体の事情は判りました。組織の方には、私の方から上手く言っておきます」
俺「いや、上手く言うって………ニヤ先輩の能力で記憶を読まれたら…」
理央「その点は心配ありません。カレン先輩が私の記憶を無理に読んだ時の事を覚えて居ますか?」
俺「あぁ…そう言えば、酷い事になったんだった。確か、他人に記憶を伝える時は厳選してから見せてるんだよな」
理央「はい…そうです。それに…テレパシーによる情報収集を欺く方法なら、他にも色々ありますから」
俺「そうなのか?」
眉唾なその言葉を耳にして、俺は思わず聞き返した。
485: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/26(木) 12:20:17.67 ID:rks7G0axo
●カクサレタソラ
理央「まずテレパシーの大前提ですが…テレパシーで読み取る事が出来るのは対象の脳内に刻まれた電気信号だけです」
俺「まぁ、そうだよなぁ。物体に刻まれた記憶はサイコメトリー…物質を透過して見るのがクレアボヤント…人の電気信号はテレパシーな訳だし」
理央「そしてニヤ先輩の能力は、サイコメトリーに限り無く近い特性を持ったテレパシーな訳ですが…」
俺「カレンのテレパシーと違って、その時考えてない事まで読めるんだよな?」
理央「それでも…読めるのはあくまで記憶に限定されている訳です。ならどうすれば欺けるのか…判りませんか?」
俺「記憶に限定………そうか、読まれる記憶その物を改竄してしまえば…」
理央「そうです。他にも…記憶する時点で誤った情報を植え付ける事で欺く事だって出来ます」
俺「しかしそれを考えると…結構前の話だが、理央がジョージから開放された後…理央は偽物の記憶を、どうやって偽者と見破ったんだ?」
当時の理央からすれば…組織の人間は、仲間を殺した仇の筈。
組織が説得を試みたとしても、理央を欺いて引き込もうとしているようにしか見えなかっただろう。
にも関わらず…何故そんな相手の言葉を信じる事が出来て、本当の自分を取り戻すまでに至ったのか…それが判らない。
理央「お忘れですか?私の超能力は複合リーディング…テレパシーだけで無くサイコメトリーも出来るんですよ?」
俺「あぁ、そうか…人じゃなくて物質としての自分の記憶を読んで真実を知ったのか。でも…だったら、操られてる間もその方法で気付けたんじゃ…」
理央「私の超能力その物に関する記憶も書き換えられて居たんです。記憶…人格が変われば、超能力にも変化がありますから」
俺「サイコメトリーが使える事さえ忘れさせられて居た…って訳か」
理央「そう言う事です」
俺「ん?じゃぁ…そもそもサイコメトリーで自分の記録を読もうとしたきっかけは?それだと、自分に無い筈の能力を使おうとしたって事になるよな?」
理央「それは…あの時は、祖父の力を借りました。私が相手に情報を送り込むのと同じ方法で」
俺「成る程なぁ……そう言う事か。能力名前だけ聞いてる限りじゃ簡単そうなのに、リーディング系超能力ってのは結構複雑だな」
理央「私から言わせて貰えば、物理干渉…サイコキネシス系の方がよっぽど複雑なんですけどね」
と、会話を交わしている間に運ばれてくる料理の数々。
俺はまずメロンソーダを手にして、ストローでそれを少し飲んでから会話に戻る。
俺「って言われても…自分が出せる力の量とその方向性なんかの、特性に則って適当に使ってるだけなんだがなぁ」
理央「…そこも問題なんですよね。先輩…最近使えるようになったパトリオットの特性は理解していますけど…爆散能力の方、原理を理解していますか?」
俺「そりゃぁ…………………」
良い淀み…俺は途中で言葉に詰まった。
理央「それに…さっきは複雑だって言ってたクレアボヤントまで使いこなしていますよね?」
俺「…………」
そして…追い討ちのような理央の言葉により、本格的に言葉が出なくなってしまった。
理央「まずテレパシーの大前提ですが…テレパシーで読み取る事が出来るのは対象の脳内に刻まれた電気信号だけです」
俺「まぁ、そうだよなぁ。物体に刻まれた記憶はサイコメトリー…物質を透過して見るのがクレアボヤント…人の電気信号はテレパシーな訳だし」
理央「そしてニヤ先輩の能力は、サイコメトリーに限り無く近い特性を持ったテレパシーな訳ですが…」
俺「カレンのテレパシーと違って、その時考えてない事まで読めるんだよな?」
理央「それでも…読めるのはあくまで記憶に限定されている訳です。ならどうすれば欺けるのか…判りませんか?」
俺「記憶に限定………そうか、読まれる記憶その物を改竄してしまえば…」
理央「そうです。他にも…記憶する時点で誤った情報を植え付ける事で欺く事だって出来ます」
俺「しかしそれを考えると…結構前の話だが、理央がジョージから開放された後…理央は偽物の記憶を、どうやって偽者と見破ったんだ?」
当時の理央からすれば…組織の人間は、仲間を殺した仇の筈。
組織が説得を試みたとしても、理央を欺いて引き込もうとしているようにしか見えなかっただろう。
にも関わらず…何故そんな相手の言葉を信じる事が出来て、本当の自分を取り戻すまでに至ったのか…それが判らない。
理央「お忘れですか?私の超能力は複合リーディング…テレパシーだけで無くサイコメトリーも出来るんですよ?」
俺「あぁ、そうか…人じゃなくて物質としての自分の記憶を読んで真実を知ったのか。でも…だったら、操られてる間もその方法で気付けたんじゃ…」
理央「私の超能力その物に関する記憶も書き換えられて居たんです。記憶…人格が変われば、超能力にも変化がありますから」
俺「サイコメトリーが使える事さえ忘れさせられて居た…って訳か」
理央「そう言う事です」
俺「ん?じゃぁ…そもそもサイコメトリーで自分の記録を読もうとしたきっかけは?それだと、自分に無い筈の能力を使おうとしたって事になるよな?」
理央「それは…あの時は、祖父の力を借りました。私が相手に情報を送り込むのと同じ方法で」
俺「成る程なぁ……そう言う事か。能力名前だけ聞いてる限りじゃ簡単そうなのに、リーディング系超能力ってのは結構複雑だな」
理央「私から言わせて貰えば、物理干渉…サイコキネシス系の方がよっぽど複雑なんですけどね」
と、会話を交わしている間に運ばれてくる料理の数々。
俺はまずメロンソーダを手にして、ストローでそれを少し飲んでから会話に戻る。
俺「って言われても…自分が出せる力の量とその方向性なんかの、特性に則って適当に使ってるだけなんだがなぁ」
理央「…そこも問題なんですよね。先輩…最近使えるようになったパトリオットの特性は理解していますけど…爆散能力の方、原理を理解していますか?」
俺「そりゃぁ…………………」
良い淀み…俺は途中で言葉に詰まった。
理央「それに…さっきは複雑だって言ってたクレアボヤントまで使いこなしていますよね?」
俺「…………」
そして…追い討ちのような理央の言葉により、本格的に言葉が出なくなってしまった。
486: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/26(木) 12:26:52.59 ID:rks7G0axo
●ソラカラコボレテ
理央「先程、先輩自身がカテゴライズしたように…本来、リーディング系とサイコキネシス系は別系統の能力です」
俺「あぁ…そうだよな」
理央「にも関わらず、その両方…しかもあんな極端な二つの能力を同時に持つと言う事は、とてもレアなケースです。判りますよね?」
俺「実感は無いけど、理屈は…な」
理央「なので…先輩の場合は、原理が不明な爆散能力の件もありますし、パトリオットを使える事は可能な限り伏せて置いた方が良いと思います」
と…ここまで来た所で、やっと理央の真意に気付く。
俺「あぁ…理央は俺の身を案じてくれてたのか。んじゃ、組織には…」
理央「組織内での公言は避けた方が良いとは思いますが…逆に、総統やニヤ先輩には相談しておいた方が良いです」
俺「ぁー……んでも、相談しようにも空の件があるから…」
理央「だから、その辺りは私の方で上手く言っておきます。信用して下さい」
俺「あぁ………そこでその話に戻るのか」
と言う事で…理央のお陰で、当面の問題に対する糸口を見つける事が出来た訳だが…
同時に、組織が絡んで来るのならば…それはそれで懸念しなければいけない事態がある事を思い出す。
俺「そう言えば…近々組織に何か仕掛けるみたいな事を、ジョージが言ってたんだが………何か思い当たる節は無いか?」
と、思い出した内容を理央に告げるのだが………そんな俺の言葉のせいか、理央は固まって動かなくなってしまった。
理央「………………え?ちょっと待って下さい…先輩…今…何て?………ジョージ……?ジョージが…生きて…?え?カレン先輩には……」
俺「あぁ………悪い、そうだった…理央には言って無かったな。実は空を助けてくれたのがジョージなんだ」
と言ってはみた物の、口頭での説明やはり限界がある。俺は空を助けた当時のジョージ…加えて電話での会話を思い出し、それを理央に見せる。
理央「…………………」
そして案の定…理央は絶句。額に汗しながら頭を抱えた後…グレープジュースを喉に通して、辛うじて平静を取り戻す。
理央「私の知るジョージの姿と先輩の会ったそれが違う事から…先輩が遭遇したのは、多分ジョージのバックアップなんだと思います」
俺「バックアップ…そうか、記憶改竄で自分の記憶を書き込んでバックアップを作ったって事か」
人格と同じく、P器官の形状が変われば発現する超能力も変化する。俺が会ったジョージが、記憶改竄では無く治癒能力を使えたのもこのためだろう。
理央との会話で、今まで腑に落ちなかった物が次から次へと落下し行くのを感じた。
が…そんな俺とは逆に、理央には幾つもの新たな問題を押し付けてしまったらしい。
理央「先程、先輩自身がカテゴライズしたように…本来、リーディング系とサイコキネシス系は別系統の能力です」
俺「あぁ…そうだよな」
理央「にも関わらず、その両方…しかもあんな極端な二つの能力を同時に持つと言う事は、とてもレアなケースです。判りますよね?」
俺「実感は無いけど、理屈は…な」
理央「なので…先輩の場合は、原理が不明な爆散能力の件もありますし、パトリオットを使える事は可能な限り伏せて置いた方が良いと思います」
と…ここまで来た所で、やっと理央の真意に気付く。
俺「あぁ…理央は俺の身を案じてくれてたのか。んじゃ、組織には…」
理央「組織内での公言は避けた方が良いとは思いますが…逆に、総統やニヤ先輩には相談しておいた方が良いです」
俺「ぁー……んでも、相談しようにも空の件があるから…」
理央「だから、その辺りは私の方で上手く言っておきます。信用して下さい」
俺「あぁ………そこでその話に戻るのか」
と言う事で…理央のお陰で、当面の問題に対する糸口を見つける事が出来た訳だが…
同時に、組織が絡んで来るのならば…それはそれで懸念しなければいけない事態がある事を思い出す。
俺「そう言えば…近々組織に何か仕掛けるみたいな事を、ジョージが言ってたんだが………何か思い当たる節は無いか?」
と、思い出した内容を理央に告げるのだが………そんな俺の言葉のせいか、理央は固まって動かなくなってしまった。
理央「………………え?ちょっと待って下さい…先輩…今…何て?………ジョージ……?ジョージが…生きて…?え?カレン先輩には……」
俺「あぁ………悪い、そうだった…理央には言って無かったな。実は空を助けてくれたのがジョージなんだ」
と言ってはみた物の、口頭での説明やはり限界がある。俺は空を助けた当時のジョージ…加えて電話での会話を思い出し、それを理央に見せる。
理央「…………………」
そして案の定…理央は絶句。額に汗しながら頭を抱えた後…グレープジュースを喉に通して、辛うじて平静を取り戻す。
理央「私の知るジョージの姿と先輩の会ったそれが違う事から…先輩が遭遇したのは、多分ジョージのバックアップなんだと思います」
俺「バックアップ…そうか、記憶改竄で自分の記憶を書き込んでバックアップを作ったって事か」
人格と同じく、P器官の形状が変われば発現する超能力も変化する。俺が会ったジョージが、記憶改竄では無く治癒能力を使えたのもこのためだろう。
理央との会話で、今まで腑に落ちなかった物が次から次へと落下し行くのを感じた。
が…そんな俺とは逆に、理央には幾つもの新たな問題を押し付けてしまったらしい。
487: ◆TPk5R1h7Ng 2015/11/26(木) 12:32:59.11 ID:rks7G0axo
●ソラカラフリユク
俺「本当に悪い…本当ならもっと早くに言っとくべきだったのに、自分の事ばっかり優先しちまってて…」
理央「いえ…良いんです。正直ショックではありましたが。身を潜めて居た諸悪の根源が、明らかになったんですから」
理央は決意を込めた目で俺を見据え、拙いながらも淀みの無い声でそれを告げる。
多分、これ以上俺からかけられる言葉は無い。
俺が出来るのは…いざ事が起きた時、理央の力になる事くらいだろう。
俺「んじゃ、今日の所は…実入りのありそうな話はここまでか」
話すべき話は終え…仕切り直した所で、俺は目の前のパスタにフォークを付ける…と、不意に理央がこちらに視線を向けて来る
俺「…ん?どうした?俺の顔に何か付いてるか?」
理央「あ、いえ…顔じゃなくて、肩………あ、いえ。動かないで下さい」
と言って理央は立ち上がり、俺の後ろに回り込んで……何やら、背中やら肩やらに触れている。
理央「もう大丈夫です、取れました」
そして…その言葉と共に差し出された手の上に乗っているのは、大量の…赤い短髪と金色の長髪。
考えるまでも無く、空とカレンの髪…それが気付かない内に上着に付いてしまっていたらしい。
理央「ゴミ箱は…無いみたいなので、化粧室で捨てて来ますね」
俺「あぁ、悪いな…そんな事までさせて」
理央「気にしないで下さい、物のついでですから」
と告げるなり、化粧室へと向かう理央。
そして、それから数分経った所で………俺は、物のついでの意味を理解した。
ので…戻った理央には、その事に触れないように心がけて居たのだが…
理央「………」
青ざめた理央の顔を見て、触れずには居られなかった。
理央「………大丈夫です。何でもありませんから」
理央本人はそう言っては居るが、明らかに異様…にも関わらず、先手を打たれた以上言及する事も出来ず…
俺達は…味わう余裕の無いまま無言で料理を平らげて
その日はお開きとなった。
俺「本当に悪い…本当ならもっと早くに言っとくべきだったのに、自分の事ばっかり優先しちまってて…」
理央「いえ…良いんです。正直ショックではありましたが。身を潜めて居た諸悪の根源が、明らかになったんですから」
理央は決意を込めた目で俺を見据え、拙いながらも淀みの無い声でそれを告げる。
多分、これ以上俺からかけられる言葉は無い。
俺が出来るのは…いざ事が起きた時、理央の力になる事くらいだろう。
俺「んじゃ、今日の所は…実入りのありそうな話はここまでか」
話すべき話は終え…仕切り直した所で、俺は目の前のパスタにフォークを付ける…と、不意に理央がこちらに視線を向けて来る
俺「…ん?どうした?俺の顔に何か付いてるか?」
理央「あ、いえ…顔じゃなくて、肩………あ、いえ。動かないで下さい」
と言って理央は立ち上がり、俺の後ろに回り込んで……何やら、背中やら肩やらに触れている。
理央「もう大丈夫です、取れました」
そして…その言葉と共に差し出された手の上に乗っているのは、大量の…赤い短髪と金色の長髪。
考えるまでも無く、空とカレンの髪…それが気付かない内に上着に付いてしまっていたらしい。
理央「ゴミ箱は…無いみたいなので、化粧室で捨てて来ますね」
俺「あぁ、悪いな…そんな事までさせて」
理央「気にしないで下さい、物のついでですから」
と告げるなり、化粧室へと向かう理央。
そして、それから数分経った所で………俺は、物のついでの意味を理解した。
ので…戻った理央には、その事に触れないように心がけて居たのだが…
理央「………」
青ざめた理央の顔を見て、触れずには居られなかった。
理央「………大丈夫です。何でもありませんから」
理央本人はそう言っては居るが、明らかに異様…にも関わらず、先手を打たれた以上言及する事も出来ず…
俺達は…味わう余裕の無いまま無言で料理を平らげて
その日はお開きとなった。
489: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/04(金) 12:14:12.24 ID:a0730aZLo
●ソラヲミアゲタヒ
空「いや、お前…それ、絶対理央って子も好意持ってるじゃ無ぇか」
俺「…何を言っているんだお前は?」
空「いやだから、それはこっちのセリフだかんな!?あぁくそっ、何だこの天然ハーレム主人公気質野郎」
俺「ハーレムって…それは褒められてるのか?」
空「褒めて無ぇに決まってんだろ!?今の手前ぇは、本誌のヤクザの跡取り主人公みてぇな物だ!!好感持てっか?褒められてると思うか?!」
俺「…………あぁうん、無いな」
カレンが長風呂に入っている間に…俺は、今日の事を空に報告を行った。
そして、その結果返って来たのが………以上の言葉である。
空「あぁ…くそっ、何なんだよコイツは…三角どころか四角関係かよ」
俺の性格のせいで、空を苛立たせている事は判ったんだが……それを理解した所で、空の愚痴はそこでは終わらない。
空「ったく…理央って子との間はどうやって取り持つか…」
続いて毀れる空の小言。
本来ならば俺は、口答え出来るような立場では無い筈なんだが…その言葉はどうしても解せないかった。
俺「…は?いや、何だそれ。もし百歩譲って、お前が言うように理央が俺に好意を持ってたとしてもだ…それはおかしいんじゃないか?」
空「ん?どこがだ」
俺「お前が…カレンだけじゃなくて、理央との仲も取り持とうとしてるって所に決まってんだろ」
空「………は?何言ってんだ?お前、その理央って子とも良い感じになれた方が良いだろ?」
俺「そりゃぁ、どっちかって言えばなれた方が良いに決まってるけどよ…でも、何かそれ違うだろ」
空「だから何言ってんだ。お前が良いならそれで良いじゃねぇか」
空の言葉に覚える違和感………反論出来ない筈の正論を吐かれているに関わらず、それを納得出来ない。
俺「俺が良いとか悪いとかの問題じゃ無ぇよ!理央の気持ちの問題だし、お前の………」
が…すぐにその正体は判った。
俺「お前………無理して無いか?」
空「は?何言ってんだ?自惚れてんじゃ無ぇよ!!」
俺「自惚れてるって何だ?俺は…お前が無理してるって言っただけで、何に対して無理してるか言ってないよな?」
空「っ………減らず口を叩くんじゃ無ぇよ!」
俺は空の反応から確信を得て…そこから更に切り込んで行く。
空「いや、お前…それ、絶対理央って子も好意持ってるじゃ無ぇか」
俺「…何を言っているんだお前は?」
空「いやだから、それはこっちのセリフだかんな!?あぁくそっ、何だこの天然ハーレム主人公気質野郎」
俺「ハーレムって…それは褒められてるのか?」
空「褒めて無ぇに決まってんだろ!?今の手前ぇは、本誌のヤクザの跡取り主人公みてぇな物だ!!好感持てっか?褒められてると思うか?!」
俺「…………あぁうん、無いな」
カレンが長風呂に入っている間に…俺は、今日の事を空に報告を行った。
そして、その結果返って来たのが………以上の言葉である。
空「あぁ…くそっ、何なんだよコイツは…三角どころか四角関係かよ」
俺の性格のせいで、空を苛立たせている事は判ったんだが……それを理解した所で、空の愚痴はそこでは終わらない。
空「ったく…理央って子との間はどうやって取り持つか…」
続いて毀れる空の小言。
本来ならば俺は、口答え出来るような立場では無い筈なんだが…その言葉はどうしても解せないかった。
俺「…は?いや、何だそれ。もし百歩譲って、お前が言うように理央が俺に好意を持ってたとしてもだ…それはおかしいんじゃないか?」
空「ん?どこがだ」
俺「お前が…カレンだけじゃなくて、理央との仲も取り持とうとしてるって所に決まってんだろ」
空「………は?何言ってんだ?お前、その理央って子とも良い感じになれた方が良いだろ?」
俺「そりゃぁ、どっちかって言えばなれた方が良いに決まってるけどよ…でも、何かそれ違うだろ」
空「だから何言ってんだ。お前が良いならそれで良いじゃねぇか」
空の言葉に覚える違和感………反論出来ない筈の正論を吐かれているに関わらず、それを納得出来ない。
俺「俺が良いとか悪いとかの問題じゃ無ぇよ!理央の気持ちの問題だし、お前の………」
が…すぐにその正体は判った。
俺「お前………無理して無いか?」
空「は?何言ってんだ?自惚れてんじゃ無ぇよ!!」
俺「自惚れてるって何だ?俺は…お前が無理してるって言っただけで、何に対して無理してるか言ってないよな?」
空「っ………減らず口を叩くんじゃ無ぇよ!」
俺は空の反応から確信を得て…そこから更に切り込んで行く。
490: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/04(金) 12:35:14.72 ID:a0730aZLo
●ソラヲダキシメテ
俺「やっぱり…そう言う事なのか?俺に嫌われたくなくて……本当は、カレンの時だって辛かったのに…」
空「……は?…はぁっ!?ば……馬っ鹿じゃねぇのか!?んな訳あるか!自意識過剰にも程があんだろ!!」
………やっぱりそうだ。
俺「的外れな事を言ってるんだとしたら…いつもの空なら笑い飛ばして終わってる筈だろ?」
空「手前ぇが変な事言うから、いつもの俺で居られねぇんだろうが!」
俺「変な事じゃ無ぇよ!図星だからうろたえてんのがモロバレなんだよ!」
空「んな訳無ぇよ!俺はあくまでお前のダチだぜ!?好きだのどうだの、そんな感情あるわけ…」
俺「いや、お前は絶対………いや、そうか…それ以上に………怖いのか?」
空「―――――っ!?」
俺「お前、もしかして…俺が他の女の子と仲良くなるのを邪魔したら、嫌われると思ってるんじゃ無いのか?」
空「馬っ鹿じゃねぇのか!!?あぁそうさ、邪魔しちゃ悪いと思ってるさ!んでも当たり前だろ!?」
俺「空……お前…」
空「わざわざ自分の恋路を邪魔する奴と仲良くなろうとする奴なんか居るか!?」
空「そうさ、ダチだから仲良くやりてぇんだよ!それだけだ!お前の事が好きだとか…そんなの、ある筈無ぇだろ!!」
俺「いい加減にしろよ!」
空「なっ…!?」
俺「だったら何で…何でお前は泣いてんだよ」
俺は叫び…空の肩を掴む。
そして強引にその身体を引き寄せ…抱き絞める。
空「何………してんだよ。手前ぇにはカレンが居んだろうが……」
俺「理央ともくっつけようとしてた奴が、どの口で言ってんだよ」
空「そりゃぁ………」
俺「いや………やっぱもう良い、何も言うな。俺はお前を抱く…例え犯してでもお前を抱く」
俺はそのまま空を押し倒し……告げる。
空「カレンが居んだぞ…」
俺「まだ当分出て来ねぇよ…」
空「馬鹿野郎……」
俺「俺が馬鹿なのは百も承知だ」
そして………俺は空を抱いた。
俺「やっぱり…そう言う事なのか?俺に嫌われたくなくて……本当は、カレンの時だって辛かったのに…」
空「……は?…はぁっ!?ば……馬っ鹿じゃねぇのか!?んな訳あるか!自意識過剰にも程があんだろ!!」
………やっぱりそうだ。
俺「的外れな事を言ってるんだとしたら…いつもの空なら笑い飛ばして終わってる筈だろ?」
空「手前ぇが変な事言うから、いつもの俺で居られねぇんだろうが!」
俺「変な事じゃ無ぇよ!図星だからうろたえてんのがモロバレなんだよ!」
空「んな訳無ぇよ!俺はあくまでお前のダチだぜ!?好きだのどうだの、そんな感情あるわけ…」
俺「いや、お前は絶対………いや、そうか…それ以上に………怖いのか?」
空「―――――っ!?」
俺「お前、もしかして…俺が他の女の子と仲良くなるのを邪魔したら、嫌われると思ってるんじゃ無いのか?」
空「馬っ鹿じゃねぇのか!!?あぁそうさ、邪魔しちゃ悪いと思ってるさ!んでも当たり前だろ!?」
俺「空……お前…」
空「わざわざ自分の恋路を邪魔する奴と仲良くなろうとする奴なんか居るか!?」
空「そうさ、ダチだから仲良くやりてぇんだよ!それだけだ!お前の事が好きだとか…そんなの、ある筈無ぇだろ!!」
俺「いい加減にしろよ!」
空「なっ…!?」
俺「だったら何で…何でお前は泣いてんだよ」
俺は叫び…空の肩を掴む。
そして強引にその身体を引き寄せ…抱き絞める。
空「何………してんだよ。手前ぇにはカレンが居んだろうが……」
俺「理央ともくっつけようとしてた奴が、どの口で言ってんだよ」
空「そりゃぁ………」
俺「いや………やっぱもう良い、何も言うな。俺はお前を抱く…例え犯してでもお前を抱く」
俺はそのまま空を押し倒し……告げる。
空「カレンが居んだぞ…」
俺「まだ当分出て来ねぇよ…」
空「馬鹿野郎……」
俺「俺が馬鹿なのは百も承知だ」
そして………俺は空を抱いた。
491: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/04(金) 12:48:07.77 ID:a0730aZLo
●ソラヘタドリツク
インターホンの音に促される目覚め………
上着を羽織って、最低限の身なりを整え…俺は玄関へと向かう。
時計を見ると、まだ朝の5時。こんな時間に来客とは珍しい…そんな事を考えながら玄関のドアを開けると…
そこには、理央が居た。
予想外の来客に、俺は一瞬たじろぐ…が、すぐに持ち直して、言葉を向ける。
俺「こんな時間に…いきなりどうしたんだ?何かあったのか?」
理央「そう言う訳では無いんですが…その、上がらせて貰っても良いですか?」
俺「ん?あ…あぁ、んでも……空もカレンも寝てるから、静かにな」
問う…と言うよりは有無を言わせぬ勢いに圧され、俺は理央を招き入れる。
寝ている空とカレンを一瞥して…テーブルを挟んだ向こう側に座る理央。
そして理央は、軽く咳払いをしてから俺を見据え…
理央「まず、ジョージの仕掛けの件ですが…構成員の何人かの記憶が、組織に対して悪意を持つように改竄されて居て…」
俺「おい、理央。ジョージの名前は―――」
まだ寝ているとは言え、カレンが居るにも関わらずジョージの名前を出した。俺はその事に慌て、制止しようとするのだが………
理央「何らかの行動を起こすつもりだったのが判りましたが…先輩の事前情報のお陰で、未然に防ぐ事ができました」
俺の制止に従う事無く、何事も無かったかのようにその言葉を続けた。
そして、俺達の声が騒がしかったためか…空とカレンが目を覚まし…寝ぼけ眼を擦りながら、俺達の方を見てくるのだが…
二人の様子を見る限りでは、辛うじてジョージの件は聞かれていなかったようで…俺は内心胸を撫で下ろしていた。
俺「悪い、起こしちまったか?」
カレン「どうしたの?……って、理央!?あ、えっと…これはその…」
空「ん?へぇ…この嬢ちゃんが理央か」
予期せぬ来訪者に騒ぎ立てる二人。しかし、依然として理央は自らのペースを貫き…
理央「あ、すみません。情報交換の時間が惜しいので…皆さん、ここでのリーディングを許可してくれませんか?」
盗み見はジャミングされているが、許可を得た場合には範囲内でも読み取る事が出来る…その仕組みを把握した上での提案を持ちかけて来た。
まぁ…俺としても、口頭で伝えて下手に口を滑らせるよりは理央に直接読み取って貰った方が良いし…
何より、情報を統合して現状を把握するためにはこの上無い方法なので、それを断る理由は無い。
そうして俺達はその言葉に従い、理央からのリーディングを許可する事になったのだが………
何故か…いつぞやの猫カフェの時のように、理央の顔色が悪くなって行くのが見て取れた。
インターホンの音に促される目覚め………
上着を羽織って、最低限の身なりを整え…俺は玄関へと向かう。
時計を見ると、まだ朝の5時。こんな時間に来客とは珍しい…そんな事を考えながら玄関のドアを開けると…
そこには、理央が居た。
予想外の来客に、俺は一瞬たじろぐ…が、すぐに持ち直して、言葉を向ける。
俺「こんな時間に…いきなりどうしたんだ?何かあったのか?」
理央「そう言う訳では無いんですが…その、上がらせて貰っても良いですか?」
俺「ん?あ…あぁ、んでも……空もカレンも寝てるから、静かにな」
問う…と言うよりは有無を言わせぬ勢いに圧され、俺は理央を招き入れる。
寝ている空とカレンを一瞥して…テーブルを挟んだ向こう側に座る理央。
そして理央は、軽く咳払いをしてから俺を見据え…
理央「まず、ジョージの仕掛けの件ですが…構成員の何人かの記憶が、組織に対して悪意を持つように改竄されて居て…」
俺「おい、理央。ジョージの名前は―――」
まだ寝ているとは言え、カレンが居るにも関わらずジョージの名前を出した。俺はその事に慌て、制止しようとするのだが………
理央「何らかの行動を起こすつもりだったのが判りましたが…先輩の事前情報のお陰で、未然に防ぐ事ができました」
俺の制止に従う事無く、何事も無かったかのようにその言葉を続けた。
そして、俺達の声が騒がしかったためか…空とカレンが目を覚まし…寝ぼけ眼を擦りながら、俺達の方を見てくるのだが…
二人の様子を見る限りでは、辛うじてジョージの件は聞かれていなかったようで…俺は内心胸を撫で下ろしていた。
俺「悪い、起こしちまったか?」
カレン「どうしたの?……って、理央!?あ、えっと…これはその…」
空「ん?へぇ…この嬢ちゃんが理央か」
予期せぬ来訪者に騒ぎ立てる二人。しかし、依然として理央は自らのペースを貫き…
理央「あ、すみません。情報交換の時間が惜しいので…皆さん、ここでのリーディングを許可してくれませんか?」
盗み見はジャミングされているが、許可を得た場合には範囲内でも読み取る事が出来る…その仕組みを把握した上での提案を持ちかけて来た。
まぁ…俺としても、口頭で伝えて下手に口を滑らせるよりは理央に直接読み取って貰った方が良いし…
何より、情報を統合して現状を把握するためにはこの上無い方法なので、それを断る理由は無い。
そうして俺達はその言葉に従い、理央からのリーディングを許可する事になったのだが………
何故か…いつぞやの猫カフェの時のように、理央の顔色が悪くなって行くのが見て取れた。
492: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/04(金) 13:02:39.44 ID:a0730aZLo
●ソラニカエルトキ
理央「ところで……先輩」
顔を伏せ…俯きながら呟く理央
俺「ん?何だ?」
理央「現実は……とても残酷です」
俯いた姿勢のまま立ち上がり、更にその言葉を続ける。
ゆっくりと………おぼつかない足取りで台所に向かう理央。
水切り籠の辺りから、カチャカチャと固い音が鳴り…それが止まる。
理央「そして………嘘はとても優しくて…それを現実と取り違えてしまいもするんですよ」
俺「ん?どう言う事だ?何を言っているんだ?」
理央の言葉の意図がいまいち掴めず、俺は更に問い返す。
理央「先輩には…現実を直視する勇気はありますか?私には…とてもありません。だから…方法が、これくらいしか無いんです」
そして更に、理央の方から返されるその質問。
意図は判らないが、言わんとしている事は判らない訳でも無い。
俺「俺は……俺には………」
理央に問われた、それ…その答えは既に俺の中にあった。
あえて言葉にする事は無かったが、理央にしてみれば俺が思い浮かべただけで充分な事だろう。
理央「そう……ですよね」
ポタリ…ポタリと、床に落ちる小さな水滴。
理央は肩を震わせながら、俺へと向き直る。
俺「…………え?」
まず最初に目が行ったのは、理央の瞳から毀れる涙。
そして………次に俺が見た物は………
右手と左手……それぞれに握られた、大小二本の……
包丁だった。
理央「ところで……先輩」
顔を伏せ…俯きながら呟く理央
俺「ん?何だ?」
理央「現実は……とても残酷です」
俯いた姿勢のまま立ち上がり、更にその言葉を続ける。
ゆっくりと………おぼつかない足取りで台所に向かう理央。
水切り籠の辺りから、カチャカチャと固い音が鳴り…それが止まる。
理央「そして………嘘はとても優しくて…それを現実と取り違えてしまいもするんですよ」
俺「ん?どう言う事だ?何を言っているんだ?」
理央の言葉の意図がいまいち掴めず、俺は更に問い返す。
理央「先輩には…現実を直視する勇気はありますか?私には…とてもありません。だから…方法が、これくらいしか無いんです」
そして更に、理央の方から返されるその質問。
意図は判らないが、言わんとしている事は判らない訳でも無い。
俺「俺は……俺には………」
理央に問われた、それ…その答えは既に俺の中にあった。
あえて言葉にする事は無かったが、理央にしてみれば俺が思い浮かべただけで充分な事だろう。
理央「そう……ですよね」
ポタリ…ポタリと、床に落ちる小さな水滴。
理央は肩を震わせながら、俺へと向き直る。
俺「…………え?」
まず最初に目が行ったのは、理央の瞳から毀れる涙。
そして………次に俺が見た物は………
右手と左手……それぞれに握られた、大小二本の……
包丁だった。
496: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/14(月) 12:37:09.02 ID:XAiKvea+o
●ソラヲツラヌイテ
俺「え?………理央…お前、何してんだ?いや…何を………しようとしてるんだ?」
理央「………」
俺の問いに答える事無く…歩みを進め、台所から居間へと戻る理央。
顔を伏せたままのため、その表情を伺い知る事は出来ないが…とても正気の上での行動には見えない。
理央「私………先輩の事が好きでした。いえ…今でも好きです」
理央の口から紡がれる言葉。以前…空が茶化し気味に言って居た事の、まさにその物。
理央「だから…どうしても………やっぱり、この状況…二人の事は、どうにかしないと…って、思うんです」
カレン「…え?何なの理央……どうしたって言うの?」
理央「駄目なんですよ…このままだと………」
空「何だ何だ…穏やかじゃぁ無ぇなぁ…」
どう贔屓目に見ても正常とは言い難い、理央の様子と言葉。
そして…理央は不意に二人の方を向き……駆け出した。
理央「このままだと………このままだと先輩は!!」
残光と共に走り、空の胸へと突き刺さる……刃。理央が手にした包丁。
空は、突然の襲撃を避ける事も出来ず…為す術も無いまま刃を受ける。
カレン「な…………何してるのよ!理央!貴方、何をしたか判っているの!?」
当然…いや、必然と言うべきか…理央の凶行を前にして声を張り上げ、それを咎めるカレン。
だが理央は、それを意に止める様子も無く……
そう…ただ淡々と…それが当たり前の行動であるかのように………
もう一本の包丁を、カレンの胸に突き刺した。
理央「先輩……これで……判って貰えましたか?」
そして…事を終えて紡がれる理央の声は……嗚咽で震えていた。
俺「え?………理央…お前、何してんだ?いや…何を………しようとしてるんだ?」
理央「………」
俺の問いに答える事無く…歩みを進め、台所から居間へと戻る理央。
顔を伏せたままのため、その表情を伺い知る事は出来ないが…とても正気の上での行動には見えない。
理央「私………先輩の事が好きでした。いえ…今でも好きです」
理央の口から紡がれる言葉。以前…空が茶化し気味に言って居た事の、まさにその物。
理央「だから…どうしても………やっぱり、この状況…二人の事は、どうにかしないと…って、思うんです」
カレン「…え?何なの理央……どうしたって言うの?」
理央「駄目なんですよ…このままだと………」
空「何だ何だ…穏やかじゃぁ無ぇなぁ…」
どう贔屓目に見ても正常とは言い難い、理央の様子と言葉。
そして…理央は不意に二人の方を向き……駆け出した。
理央「このままだと………このままだと先輩は!!」
残光と共に走り、空の胸へと突き刺さる……刃。理央が手にした包丁。
空は、突然の襲撃を避ける事も出来ず…為す術も無いまま刃を受ける。
カレン「な…………何してるのよ!理央!貴方、何をしたか判っているの!?」
当然…いや、必然と言うべきか…理央の凶行を前にして声を張り上げ、それを咎めるカレン。
だが理央は、それを意に止める様子も無く……
そう…ただ淡々と…それが当たり前の行動であるかのように………
もう一本の包丁を、カレンの胸に突き刺した。
理央「先輩……これで……判って貰えましたか?」
そして…事を終えて紡がれる理央の声は……嗚咽で震えていた。
497: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/14(月) 12:42:07.26 ID:XAiKvea+o
●ソラノカナタ
………理央は一体何をした?
刺した………空を…そしてカレンを刺した。何故…何故そんな事をした?何故二人を殺した?訳が判らない…理央の行動の意味が判らない。
それが未知なる物に対してなのか、単に行為その物に対してなのかは判らないが…
俺は……理央に対して恐怖を覚えた。
俺は震える足に無理矢理力を込め、死に物狂いで立ち上がる。
そして…未だ蹲うずくまったままの理央の隣を抜けて、部屋の外への脱出を試みるが……
理央に、その脚を掴まれてしまう。
理央「先輩!!目を逸らさず見て下さい!直視して下さい!これが真実なんです!!あの二人はここに居ちゃいけないんです!」
大きく目を見開き…お世辞にも冷静とは言えない表情と声で告げる理央。俺はその一挙一動に恐怖を覚え、声にならない息を肺の奥から搾り出す。
理央「お願いです、先輩!私を見て下さい!!私を信じて下さい!」
更に連なる理央の声……それが何を求め、何を意味しているのか皆目見当が付かない。
俺はただひたすらに、理央の手から逃れるべく暴れ回る…そんな中、俺の足からスリッパと靴下が引き剥がされてしまう。
更に…そうして晒された素足に、理央の手が触れた瞬間……
空とカレンの………つい今さっき理央に命を奪われた二人の死体が
とてつもなく凄惨で…おぞましい物へと姿を変えた。
空「 」
カレン「 」
理央「―――――――」
二人が何かを言っている…何も喋る事など出来ない筈なのに、何かを言っている。
更に…加えて理央も何かを言っているが、これも何を言っているのか判らない。
おかしくなってしまいそうな……壊れてしまいそうな頭を抱えながら、俺はひたすらに抵抗を続ける。
そして遂に……俺の踵が理央の顔面を捉えた事で、脚を掴む力が緩み…その隙を突いて、理央を振り払うに至る。
辛うじて理央の手から逃れる事が出来た……だが、このまま理央に背を向けて逃げ出すなんて無謀な事は出来ない。
蹲り…咽び泣く理央を見据えたまま……後ろ向きに後退りながら玄関へと向かう俺。
そうして行き当たったドアのノブに手を伸ばし、後はそれを押し開く。
外への繋がりは出来た…後はこのまま逃げ出せば良い。逃げ出した後に何をするべきかは、無事に逃げおおせてから考えれば良い。
理央が追いつく前に、改めてドアを閉めるだけの距離を取るため……俺は通路の手すりにぶつかる所まで後退ろうとして――――
何故か………目の前には青い空が広がっていた。
………理央は一体何をした?
刺した………空を…そしてカレンを刺した。何故…何故そんな事をした?何故二人を殺した?訳が判らない…理央の行動の意味が判らない。
それが未知なる物に対してなのか、単に行為その物に対してなのかは判らないが…
俺は……理央に対して恐怖を覚えた。
俺は震える足に無理矢理力を込め、死に物狂いで立ち上がる。
そして…未だ蹲うずくまったままの理央の隣を抜けて、部屋の外への脱出を試みるが……
理央に、その脚を掴まれてしまう。
理央「先輩!!目を逸らさず見て下さい!直視して下さい!これが真実なんです!!あの二人はここに居ちゃいけないんです!」
大きく目を見開き…お世辞にも冷静とは言えない表情と声で告げる理央。俺はその一挙一動に恐怖を覚え、声にならない息を肺の奥から搾り出す。
理央「お願いです、先輩!私を見て下さい!!私を信じて下さい!」
更に連なる理央の声……それが何を求め、何を意味しているのか皆目見当が付かない。
俺はただひたすらに、理央の手から逃れるべく暴れ回る…そんな中、俺の足からスリッパと靴下が引き剥がされてしまう。
更に…そうして晒された素足に、理央の手が触れた瞬間……
空とカレンの………つい今さっき理央に命を奪われた二人の死体が
とてつもなく凄惨で…おぞましい物へと姿を変えた。
空「 」
カレン「 」
理央「―――――――」
二人が何かを言っている…何も喋る事など出来ない筈なのに、何かを言っている。
更に…加えて理央も何かを言っているが、これも何を言っているのか判らない。
おかしくなってしまいそうな……壊れてしまいそうな頭を抱えながら、俺はひたすらに抵抗を続ける。
そして遂に……俺の踵が理央の顔面を捉えた事で、脚を掴む力が緩み…その隙を突いて、理央を振り払うに至る。
辛うじて理央の手から逃れる事が出来た……だが、このまま理央に背を向けて逃げ出すなんて無謀な事は出来ない。
蹲り…咽び泣く理央を見据えたまま……後ろ向きに後退りながら玄関へと向かう俺。
そうして行き当たったドアのノブに手を伸ばし、後はそれを押し開く。
外への繋がりは出来た…後はこのまま逃げ出せば良い。逃げ出した後に何をするべきかは、無事に逃げおおせてから考えれば良い。
理央が追いつく前に、改めてドアを閉めるだけの距離を取るため……俺は通路の手すりにぶつかる所まで後退ろうとして――――
何故か………目の前には青い空が広がっていた。
498: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/14(月) 12:45:53.84 ID:XAiKvea+o
●ソラノムコウガワ
―――――あれ?俺は一体どなってるんだ?空に浮いているのか?
いや、違う…ついさっきまで俺が立っていた外廊下が見え……いや、遠ざかっている。
そうか…今俺は落ちているのか。
転落防止のための柵はどうしたんだ?
あぁ、壊れてる…何時の間に壊れたんだろうか…いや、そんな事は考えても仕方の無い事か。
どうすれば助かる?パトリオットで勢いを……いや、これだけの加速度が付いてたら、死因がパトリオットでの殴打に変わるだけだろう。
どうしようも無い…万事休すか
為す術無く、俺の身体は地面へと落下して行き……文字通り身体を突き抜けるような衝撃により、その事実を痛感させられた。
―――あぁ、俺の身体のあちこちが壊れているのが判る。手遅れのラインをゆうに超えて、あと少しで命の灯火が消えてしまう事も判る。
言葉を発する事も出来ないまま…指一本動かす事すら出来ないまま…
暗い闇に埋め尽くされる視界の中で………
空………
カレン………
理央………
三人の顔が……罪悪感と共に浮かんで来た。
何故罪悪感なのか…それは判らないし、考えるだけの余裕も無い。
そうして、後悔と罪悪感だけを遺したまま………
俺の命は、そこで潰えた。
―――――あれ?俺は一体どなってるんだ?空に浮いているのか?
いや、違う…ついさっきまで俺が立っていた外廊下が見え……いや、遠ざかっている。
そうか…今俺は落ちているのか。
転落防止のための柵はどうしたんだ?
あぁ、壊れてる…何時の間に壊れたんだろうか…いや、そんな事は考えても仕方の無い事か。
どうすれば助かる?パトリオットで勢いを……いや、これだけの加速度が付いてたら、死因がパトリオットでの殴打に変わるだけだろう。
どうしようも無い…万事休すか
為す術無く、俺の身体は地面へと落下して行き……文字通り身体を突き抜けるような衝撃により、その事実を痛感させられた。
―――あぁ、俺の身体のあちこちが壊れているのが判る。手遅れのラインをゆうに超えて、あと少しで命の灯火が消えてしまう事も判る。
言葉を発する事も出来ないまま…指一本動かす事すら出来ないまま…
暗い闇に埋め尽くされる視界の中で………
空………
カレン………
理央………
三人の顔が……罪悪感と共に浮かんで来た。
何故罪悪感なのか…それは判らないし、考えるだけの余裕も無い。
そうして、後悔と罪悪感だけを遺したまま………
俺の命は、そこで潰えた。
499: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/14(月) 13:00:44.62 ID:XAiKvea+o
●空とソラを繋ぐ場所
俺は死んだ………
そう、間違い無く死んだ。にも関わらず俺の意識はここに存在し…自我を保ちながら自己を認識している。
が…それと同時に、生きていると言う実感もそこには存在していない。
生きているのか死んでいるのか…曖昧な定義の上に成り立つ、俺と言う人格。
その存在に疑問を持ち、思考の袋小路に陥った所で…それは現れた。
「ようこそ、私の領域へ…」
何も無かった筈の、真っ白な世界に…突如、声と共に現れる一本の…茨の蔓。
更にその蔓の後を追うかのように何本もの茨が伸び、世界を覆って………その中心に、黄金の獅子をあしらった茨の玉座が形作られた。
そして、その玉座が半回転して………座する者、玉座…あるいはこの場その物の主であろう人物が、姿を見せた。
「魂の盟約に従いお招き差し上げましたけれど…ご気分は如何かしら?」
黒を基調としたドレスに身を包んだ、恐ろしいまでに妖艶な容姿の貴婦人。
…と言ってしまうと、まるで初対面の相手を形容しているようだが…その貴婦人の正体には、既に行き着いている。
俺「ベリル…だよな?その姿は…いや、それが本当の姿か」
ベリル「左様に御座いますわ。そう言う貴方も…以前お会いした時とは言葉遣いも御………いえ、これは失言ですわね」
俺「あぁ…あの時はまぁ、かしこまってたから……と言うか、魂の盟約って何だ?俺はまだあんたと契約してない筈だよな?」
ベリル「その辺りの前後は気になさらないで。ここから契約する事は確定事項ですもの……勿論、手続きは改めてして頂きますわよ?」
俺「………頼むから説明してくれ。って言うか、契約してどうするんだ?」
腑に落ちない所は多々ある…が、とりあえずはベリルの言葉を前提として話を続ける。
俺「確かあんたの分野は、遺伝子改造や呪いだろ?こんな状態………多分、魂だけになってる今の俺をどうするって言うんだよ」
ベリル「それはあくまで、挨拶代わりに披露する趣味に過ぎませんわ。私と契約なさるのでしたら、その際に行使する力は…貴方の、願いを叶える物」
俺「…俺の………願い?」
ベリル「そう…貴方が今の貴方になるよりも前から、幾度と無く渇望した願い。ただ愚直なまでに…やり直す事の、助けになる力」
余りにも…余りにも唐突に、自分とは別の他者から突き付けられたその願い。
本当ならば受け入れられる筈の無い、押し付けられた思想………その筈なのに、何故か否定する言葉も感情も浮かんで来ない。
ベリル「因みに…今までは干渉の制限のせいで、彼を追い掛けて僅かな邪魔をする程度の事しか出来なかったのですけれど…今回は少々違いますの」
俺「いや、その辺りの事情もさっぱりなんだが…まぁ良いか。とりあえず、何が違うのか聞かせてくれ」
俺は死んだ………
そう、間違い無く死んだ。にも関わらず俺の意識はここに存在し…自我を保ちながら自己を認識している。
が…それと同時に、生きていると言う実感もそこには存在していない。
生きているのか死んでいるのか…曖昧な定義の上に成り立つ、俺と言う人格。
その存在に疑問を持ち、思考の袋小路に陥った所で…それは現れた。
「ようこそ、私の領域へ…」
何も無かった筈の、真っ白な世界に…突如、声と共に現れる一本の…茨の蔓。
更にその蔓の後を追うかのように何本もの茨が伸び、世界を覆って………その中心に、黄金の獅子をあしらった茨の玉座が形作られた。
そして、その玉座が半回転して………座する者、玉座…あるいはこの場その物の主であろう人物が、姿を見せた。
「魂の盟約に従いお招き差し上げましたけれど…ご気分は如何かしら?」
黒を基調としたドレスに身を包んだ、恐ろしいまでに妖艶な容姿の貴婦人。
…と言ってしまうと、まるで初対面の相手を形容しているようだが…その貴婦人の正体には、既に行き着いている。
俺「ベリル…だよな?その姿は…いや、それが本当の姿か」
ベリル「左様に御座いますわ。そう言う貴方も…以前お会いした時とは言葉遣いも御………いえ、これは失言ですわね」
俺「あぁ…あの時はまぁ、かしこまってたから……と言うか、魂の盟約って何だ?俺はまだあんたと契約してない筈だよな?」
ベリル「その辺りの前後は気になさらないで。ここから契約する事は確定事項ですもの……勿論、手続きは改めてして頂きますわよ?」
俺「………頼むから説明してくれ。って言うか、契約してどうするんだ?」
腑に落ちない所は多々ある…が、とりあえずはベリルの言葉を前提として話を続ける。
俺「確かあんたの分野は、遺伝子改造や呪いだろ?こんな状態………多分、魂だけになってる今の俺をどうするって言うんだよ」
ベリル「それはあくまで、挨拶代わりに披露する趣味に過ぎませんわ。私と契約なさるのでしたら、その際に行使する力は…貴方の、願いを叶える物」
俺「…俺の………願い?」
ベリル「そう…貴方が今の貴方になるよりも前から、幾度と無く渇望した願い。ただ愚直なまでに…やり直す事の、助けになる力」
余りにも…余りにも唐突に、自分とは別の他者から突き付けられたその願い。
本当ならば受け入れられる筈の無い、押し付けられた思想………その筈なのに、何故か否定する言葉も感情も浮かんで来ない。
ベリル「因みに…今までは干渉の制限のせいで、彼を追い掛けて僅かな邪魔をする程度の事しか出来なかったのですけれど…今回は少々違いますの」
俺「いや、その辺りの事情もさっぱりなんだが…まぁ良いか。とりあえず、何が違うのか聞かせてくれ」
500: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/14(月) 13:03:29.05 ID:XAiKvea+o
ベリル「特例により、先回りが出来るようになったものですから………今回は、二つの世界線を絡めて一本にしちゃいましたの」
俺「……………」
語尾にハートマークが付きそうな語調で……何か、サラッと物凄い事を言っていた気がする。
俺「で…具体的には、一体どうなるんだ?」
ベリル「それは契約した後でのお楽しみ…ですわ」
俺「何だよそれ…いざ契約した後で、ロクな事ならなかったとかは勘弁してくれよ」
ベリル「その点に関してはご心配なく。『絶対に』損はさせないと…魔界の公爵の地位に誓ってお約束いたしますもの」
その宣誓のせいで、余計胡散臭くなった気がしないでも無いが……このままでは埒があかない。
俺「判った………そこまで言うんなら、あんたを信じて契約する。んでも、俺は一体何を支払えば良いんだ?」
ベリルの用意した流れに乗る…が、最も重要になりそうな、その点だけは確認しておくのだが…
ベリル「それは後々…貴方に支払えない物は要求致しませんから安心していただいて結構ですわ」
後払い…しかも、要求出来る範囲でどこまで要求されるのかすら教えられないまま…話を続けられる。
ベリル「それと…今回は対価とは別に、3つの課題を出させていただきますわね?」
俺「……課題って何だよ。それをこなして俺に何か得があるのか?」
ベリル「こなした課題の数によって、対価の割引きをさせて頂きますわ」
俺「割引って何だよ…寿命か何かから差し引くって事か?」
ベリル「それは秘密ですが…その場合でも、命を支払うよりは良いのではないかしら?」
俺「………何か騙されてる…って言うか、良いように使いっ走りにされてるような…」
と、俺は不満を零すが…ベリルはそんな物など意に介さず、言葉を続ける。
ベリル「1つ目……この世界線で無くても宜しいので…本来の貴方を取り戻す事」
ベリル「2つ目……私達をお舐めになった彼の、浅ましい目的を阻止する事。何でしたら、鬼籍に入れて頂いても構いませんわ」
ベリル「3つ目……ハーレムエンドにする事」
俺「いや…それ、ノーヒントで色んな核心に迫れって言ってないか、それ!?ってか、最後の何だ!?」
ベリル「生めよ育てよ地に満ちよ、ですわ」
俺「いやそれ、悪魔が言って良いセリフじゃ無ぇからな!?」
……と言っている間にも、俺の足元から茨の蔦が伸び…その蔦が俺の身体を包み込んで……
ベリル「そうそう…改めて自己紹介をしておりせんでしたわね。私の名前はベリル・ヒュー・ベリオン…秘匿と開示の悪魔ですわ」
そして……閉ざされた視界の向こう側から、ベリルの言葉が続く。
ベリル「つよくてにゅーげーっむ♪」
俺「……………」
語尾にハートマークが付きそうな語調で……何か、サラッと物凄い事を言っていた気がする。
俺「で…具体的には、一体どうなるんだ?」
ベリル「それは契約した後でのお楽しみ…ですわ」
俺「何だよそれ…いざ契約した後で、ロクな事ならなかったとかは勘弁してくれよ」
ベリル「その点に関してはご心配なく。『絶対に』損はさせないと…魔界の公爵の地位に誓ってお約束いたしますもの」
その宣誓のせいで、余計胡散臭くなった気がしないでも無いが……このままでは埒があかない。
俺「判った………そこまで言うんなら、あんたを信じて契約する。んでも、俺は一体何を支払えば良いんだ?」
ベリルの用意した流れに乗る…が、最も重要になりそうな、その点だけは確認しておくのだが…
ベリル「それは後々…貴方に支払えない物は要求致しませんから安心していただいて結構ですわ」
後払い…しかも、要求出来る範囲でどこまで要求されるのかすら教えられないまま…話を続けられる。
ベリル「それと…今回は対価とは別に、3つの課題を出させていただきますわね?」
俺「……課題って何だよ。それをこなして俺に何か得があるのか?」
ベリル「こなした課題の数によって、対価の割引きをさせて頂きますわ」
俺「割引って何だよ…寿命か何かから差し引くって事か?」
ベリル「それは秘密ですが…その場合でも、命を支払うよりは良いのではないかしら?」
俺「………何か騙されてる…って言うか、良いように使いっ走りにされてるような…」
と、俺は不満を零すが…ベリルはそんな物など意に介さず、言葉を続ける。
ベリル「1つ目……この世界線で無くても宜しいので…本来の貴方を取り戻す事」
ベリル「2つ目……私達をお舐めになった彼の、浅ましい目的を阻止する事。何でしたら、鬼籍に入れて頂いても構いませんわ」
ベリル「3つ目……ハーレムエンドにする事」
俺「いや…それ、ノーヒントで色んな核心に迫れって言ってないか、それ!?ってか、最後の何だ!?」
ベリル「生めよ育てよ地に満ちよ、ですわ」
俺「いやそれ、悪魔が言って良いセリフじゃ無ぇからな!?」
……と言っている間にも、俺の足元から茨の蔦が伸び…その蔦が俺の身体を包み込んで……
ベリル「そうそう…改めて自己紹介をしておりせんでしたわね。私の名前はベリル・ヒュー・ベリオン…秘匿と開示の悪魔ですわ」
そして……閉ざされた視界の向こう側から、ベリルの言葉が続く。
ベリル「つよくてにゅーげーっむ♪」
502: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/17(木) 14:59:53.40 ID:M4+sRbYxo
○もう一つの空
ユズ「ソラちゃん、そっちはどうッスか?」
俺「こっちはあらかた片付いたぜ。ユズ姐さんの方は?」
ユズ「こっちも終わり…今の所はッスけどね」
黒い瘴気が立ち昇る中…焼け焦げた野に佇む、俺とユズ姐さん。
俺「いつまで続くんだろうな…これ」
ユズ「申し訳無いッス。ソラちゃんには迷惑かけてばかりで…」
俺「いや、俺は別に。どっちかってーと、ユズ姐さんの方が辛そうだからよぉ…」
ユズ「ソラちゃんは良く見てるッスね…」
俺「確か…ユズ姐さんの昔馴染みなんだよな?」
ユズ「正確には、昔馴染みの偽者…複製品ッスけどね」
俺「その感じだと………やっぱその…あれか?…男関係か?」
ユズ「そんなのじゃ無いッスよ」
そう言ってユズ姐さんは笑い、俺の背後に視線を向ける。
俺「やれやれ…次から次へと………息つく暇もありゃしねぇなぁおい」
ユズ「でも…この辺りはこれで最後みたいッスね」
俺「そりゃぁありがてぇ…んじゃ、もう一踏ん張りすっかねぇ!」
ユズ「帰ったらドーナッツ奢るッスよ」
俺「そいつぁ楽しみだな…っとぉ!!」
昔の記憶…俺がまだ中学生になりたての………色んな事が起こる前の…いや、起こっている真っ最中
……その頃の記憶だ。
あれから………かれこれ4年も経ったんだな。
ユズ「ソラちゃん、そっちはどうッスか?」
俺「こっちはあらかた片付いたぜ。ユズ姐さんの方は?」
ユズ「こっちも終わり…今の所はッスけどね」
黒い瘴気が立ち昇る中…焼け焦げた野に佇む、俺とユズ姐さん。
俺「いつまで続くんだろうな…これ」
ユズ「申し訳無いッス。ソラちゃんには迷惑かけてばかりで…」
俺「いや、俺は別に。どっちかってーと、ユズ姐さんの方が辛そうだからよぉ…」
ユズ「ソラちゃんは良く見てるッスね…」
俺「確か…ユズ姐さんの昔馴染みなんだよな?」
ユズ「正確には、昔馴染みの偽者…複製品ッスけどね」
俺「その感じだと………やっぱその…あれか?…男関係か?」
ユズ「そんなのじゃ無いッスよ」
そう言ってユズ姐さんは笑い、俺の背後に視線を向ける。
俺「やれやれ…次から次へと………息つく暇もありゃしねぇなぁおい」
ユズ「でも…この辺りはこれで最後みたいッスね」
俺「そりゃぁありがてぇ…んじゃ、もう一踏ん張りすっかねぇ!」
ユズ「帰ったらドーナッツ奢るッスよ」
俺「そいつぁ楽しみだな…っとぉ!!」
昔の記憶…俺がまだ中学生になりたての………色んな事が起こる前の…いや、起こっている真っ最中
……その頃の記憶だ。
あれから………かれこれ4年も経ったんだな。
503: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/17(木) 15:01:50.67 ID:M4+sRbYxo
●過ぎ去りし空に還る
スローモーションになった景色の中、俺に向けて迫り来る金属盤
どこかで見たような景色に、俺は既視感を覚え………
いや、違う…既視感なんかじゃ無い。
俺はこの光景を以前にも見ている…あるいは、この光景を見た過去に俺の意識がある。
いや…厳密にはそれも違う。
俺自身が過去に………戻っている?
理解不能…説明の付けようの無い事象が繰り広げられているらしい。
どう言う事だろうか……俺は思考を巡らせる…が、そうしている間にも、金属盤が更に迫り…既に目前まで来ている。
もうこれ以上、余分な事を考えている時間は無い……
どうすれば良いのか…正しい選択を導き出さなければいけないと言うのに、パトリットで跳ね返す以外の方法が思い付かない。
やはり、パトリオットを使うしか無い。なら…ここで最低限避けなければいけない事態は、あの悲劇を繰り返してしまう事。
上手く行くかどうかは判らないが………打点を強引に傾け…俺は金属盤に向けて、パトリオットを放つ。
ガキンッ!! ―――と、周囲に響き渡る、鈍く硬い音。以前と同様に、金属盤を弾き返す音だ。
果たして上手く行ったのだろうか…俺は自身の試みの成否を確かめるべく、空の方へと視線を戻す。
空「なっ……おま、それ………マイケルの……」
聞き覚えのある言葉
だが…空の身体には、致命傷となる風穴どころか掠り傷すら見られない。
辛うじて…本当にギリギリの所で成功したらしい。
こう言うのは何と言うんだったか…そうだ……俺は過去の改変に成功した。
喉の奥で詰まっていた空気が、安堵と共に溢れ出し…張り詰めて狭まっていた視野が広がる。
そう言えば…跳ね返した金属盤はどこに行ったのだろうか?
俺は金属盤行方を捜すべく、周囲に視線を巡らせ……始めた所で、それを目にした。
石畳に転がる金属盤と
金髪の一部を…血で赤く染めて、うつ伏せに倒れた………黄色先輩の姿。
スローモーションになった景色の中、俺に向けて迫り来る金属盤
どこかで見たような景色に、俺は既視感を覚え………
いや、違う…既視感なんかじゃ無い。
俺はこの光景を以前にも見ている…あるいは、この光景を見た過去に俺の意識がある。
いや…厳密にはそれも違う。
俺自身が過去に………戻っている?
理解不能…説明の付けようの無い事象が繰り広げられているらしい。
どう言う事だろうか……俺は思考を巡らせる…が、そうしている間にも、金属盤が更に迫り…既に目前まで来ている。
もうこれ以上、余分な事を考えている時間は無い……
どうすれば良いのか…正しい選択を導き出さなければいけないと言うのに、パトリットで跳ね返す以外の方法が思い付かない。
やはり、パトリオットを使うしか無い。なら…ここで最低限避けなければいけない事態は、あの悲劇を繰り返してしまう事。
上手く行くかどうかは判らないが………打点を強引に傾け…俺は金属盤に向けて、パトリオットを放つ。
ガキンッ!! ―――と、周囲に響き渡る、鈍く硬い音。以前と同様に、金属盤を弾き返す音だ。
果たして上手く行ったのだろうか…俺は自身の試みの成否を確かめるべく、空の方へと視線を戻す。
空「なっ……おま、それ………マイケルの……」
聞き覚えのある言葉
だが…空の身体には、致命傷となる風穴どころか掠り傷すら見られない。
辛うじて…本当にギリギリの所で成功したらしい。
こう言うのは何と言うんだったか…そうだ……俺は過去の改変に成功した。
喉の奥で詰まっていた空気が、安堵と共に溢れ出し…張り詰めて狭まっていた視野が広がる。
そう言えば…跳ね返した金属盤はどこに行ったのだろうか?
俺は金属盤行方を捜すべく、周囲に視線を巡らせ……始めた所で、それを目にした。
石畳に転がる金属盤と
金髪の一部を…血で赤く染めて、うつ伏せに倒れた………黄色先輩の姿。
504: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/23(水) 07:59:59.46 ID:tFoa20L1o
●悪意無き空回り
俺「そ……そんな…――――」
空の死………俺が懸念していた、その事態は回避する事が出来た。しかし…その代償がこれだとでも言うのだろうか?
俺は全身から血の気が引くのを感じ、指先が震え始める。そして、ロクに回らない舌で落胆の言葉を零し………
黄色「っ……ってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
…た、所で…そこまでの感情が全て吹き飛んだ。
黄色「どっちだ!!どっちがやりやがった!?」
ドクドクと頭から血を流しながら、これでもかと言う程の大声で雄叫びを上げる黄色先輩。
その様子からして、大事無い事は判るんだが…
本来なら人一人を貫通する程の威力の流れ弾を受けて、この程度の怪我で済むとか……一体どれだけ頑丈なんだ。
黄色「手前ぇだったら後でシメる!女の方だったら犯す!!」
黄色先輩は完全に頭に血が上ってしまったようで、本性どころか本能が剥き出しになっている様子。
とてもじゃ無いが、マトモに話を出来そうに無い…ので、俺は空の方へと向き直る。
空「おい…お前、何でワッツのパトリオットを使えるんだよ!…そうか、ジョージをやったのも……だったら…」
俺「なぁ空、大丈夫か?どこか怪我は無いか?」
空「だったら何で俺との戦いの時に……って、おい!何でお前が俺の心配してんだよ!聞いてんのか!?」
俺「あぁ…その様子なら大丈夫そうだな。良かった……本当に、空が無事で良かった」
噛み合わない会話の中…俺の顔からは自然と笑みが毀れ、それを見た空は呆気に取られる。
空「………ったく、何だってんだよ。ついさっきまでやり合ってたってのに、いきなり心配し始めやがって…調子狂うったらありゃしねぇぞ」
黄色「ってか手前ぇ等!俺を放置して話をまとめようとしてんじゃねぇよ!!」
そして、ついに堪え切れなくなって割って入って来る黄色先輩。よくよく見ると、頭部からの出血はもう完全に止まっている様子。
………この人は本当に人間なんだろうか?そんな疑問が浮かんで来る。
空「んで…この訳判らねぇ事態をどうやって収拾付けようってんだ?」
俺「とりあえず…空、お前は俺ん所に来い」
空「……………はぁっ!?」
俺「そ……そんな…――――」
空の死………俺が懸念していた、その事態は回避する事が出来た。しかし…その代償がこれだとでも言うのだろうか?
俺は全身から血の気が引くのを感じ、指先が震え始める。そして、ロクに回らない舌で落胆の言葉を零し………
黄色「っ……ってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
…た、所で…そこまでの感情が全て吹き飛んだ。
黄色「どっちだ!!どっちがやりやがった!?」
ドクドクと頭から血を流しながら、これでもかと言う程の大声で雄叫びを上げる黄色先輩。
その様子からして、大事無い事は判るんだが…
本来なら人一人を貫通する程の威力の流れ弾を受けて、この程度の怪我で済むとか……一体どれだけ頑丈なんだ。
黄色「手前ぇだったら後でシメる!女の方だったら犯す!!」
黄色先輩は完全に頭に血が上ってしまったようで、本性どころか本能が剥き出しになっている様子。
とてもじゃ無いが、マトモに話を出来そうに無い…ので、俺は空の方へと向き直る。
空「おい…お前、何でワッツのパトリオットを使えるんだよ!…そうか、ジョージをやったのも……だったら…」
俺「なぁ空、大丈夫か?どこか怪我は無いか?」
空「だったら何で俺との戦いの時に……って、おい!何でお前が俺の心配してんだよ!聞いてんのか!?」
俺「あぁ…その様子なら大丈夫そうだな。良かった……本当に、空が無事で良かった」
噛み合わない会話の中…俺の顔からは自然と笑みが毀れ、それを見た空は呆気に取られる。
空「………ったく、何だってんだよ。ついさっきまでやり合ってたってのに、いきなり心配し始めやがって…調子狂うったらありゃしねぇぞ」
黄色「ってか手前ぇ等!俺を放置して話をまとめようとしてんじゃねぇよ!!」
そして、ついに堪え切れなくなって割って入って来る黄色先輩。よくよく見ると、頭部からの出血はもう完全に止まっている様子。
………この人は本当に人間なんだろうか?そんな疑問が浮かんで来る。
空「んで…この訳判らねぇ事態をどうやって収拾付けようってんだ?」
俺「とりあえず…空、お前は俺ん所に来い」
空「……………はぁっ!?」
505: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/23(水) 08:04:21.63 ID:tFoa20L1o
●空を包み込んで
俺「確認しとくが…空だって、この状態から勝てるとは思って無いだろ?だったら俺の提案に乗ってくれても良いんじゃないか?」
空「いや、そりゃぁそうなんだが……」
俺「黄色先輩も…そう言う事なんで諦めて貰えますか?」
空「………」
黄色「………」
俺「いや、何で二人ともそこで黙るかな!?」
黄色「いや…何ってーか………さっきまでのお前とは思えねぇくらい落ち着いてて…達観してるってーか…」
空「お前…本当に本物か?偽者じゃ無ぇよなぁ!?」
何故だろうか…物凄い失礼な事を言われた気がする。が…よくよく考えてみれば、それも仕方の無い事だと判る。
前回の記憶…それが俺の振る舞いや態度に変化をもたらし、それが二人にとっての違和感になっているのだろう。
そうだ…折角前回の記憶があるのだから、出来る限り活用するべきじゃないのか?
俺は前回に起きた事…得た情報を頭の中から搾り出す。
俺「その辺りの説明は後からするとして…黄色先輩!」
黄色「お、おう…何だ?」
俺「ジョージが生きていて、組織内の何人かが組織に対して悪意を持つように記憶を改竄されてます。報告して下さい」
黄色「お前…何でそんな事を知ってんだ?そこの嬢ちゃんから聞き出したのか?」
空「ちげーよ!ってか、ジョージはお前が殺したってさっき言ってたじゃ無ぇかよ!」
俺「まぁ、その辺りの説明は長くなるんで追々…」
黄色「またそれかよ!」
空「またそれかよ!」
といった感じで…何だかんだ不信がりながらも、二人とも俺の話を聞き入れてくれる形になり
黄色先輩は組織に…俺と空は、俺の部屋に戻る流れとなった。
黄色「なぁお前………その変わり様。ひょっとして、他ん所の面倒事に巻き込まれてんじゃ無ぇだろうな?」
俺「当たらずとも遠からず…ですね」
黄色「そっか…まぁ、何だ。選ぶんなら、とにかく後悔し無ぇ道を選ぶようにしとけよ」
俺「そうですね………善処します」
俺「確認しとくが…空だって、この状態から勝てるとは思って無いだろ?だったら俺の提案に乗ってくれても良いんじゃないか?」
空「いや、そりゃぁそうなんだが……」
俺「黄色先輩も…そう言う事なんで諦めて貰えますか?」
空「………」
黄色「………」
俺「いや、何で二人ともそこで黙るかな!?」
黄色「いや…何ってーか………さっきまでのお前とは思えねぇくらい落ち着いてて…達観してるってーか…」
空「お前…本当に本物か?偽者じゃ無ぇよなぁ!?」
何故だろうか…物凄い失礼な事を言われた気がする。が…よくよく考えてみれば、それも仕方の無い事だと判る。
前回の記憶…それが俺の振る舞いや態度に変化をもたらし、それが二人にとっての違和感になっているのだろう。
そうだ…折角前回の記憶があるのだから、出来る限り活用するべきじゃないのか?
俺は前回に起きた事…得た情報を頭の中から搾り出す。
俺「その辺りの説明は後からするとして…黄色先輩!」
黄色「お、おう…何だ?」
俺「ジョージが生きていて、組織内の何人かが組織に対して悪意を持つように記憶を改竄されてます。報告して下さい」
黄色「お前…何でそんな事を知ってんだ?そこの嬢ちゃんから聞き出したのか?」
空「ちげーよ!ってか、ジョージはお前が殺したってさっき言ってたじゃ無ぇかよ!」
俺「まぁ、その辺りの説明は長くなるんで追々…」
黄色「またそれかよ!」
空「またそれかよ!」
といった感じで…何だかんだ不信がりながらも、二人とも俺の話を聞き入れてくれる形になり
黄色先輩は組織に…俺と空は、俺の部屋に戻る流れとなった。
黄色「なぁお前………その変わり様。ひょっとして、他ん所の面倒事に巻き込まれてんじゃ無ぇだろうな?」
俺「当たらずとも遠からず…ですね」
黄色「そっか…まぁ、何だ。選ぶんなら、とにかく後悔し無ぇ道を選ぶようにしとけよ」
俺「そうですね………善処します」
506: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/23(水) 08:08:08.51 ID:tFoa20L1o
●思い出の空
ニヤ「まぁ………事情は判ったッス。いや、正規の手順だからこれで良いんッスけどね」
俺「思う所がありそうな…含みのある言い方ですね」
ニヤ「ボクを頼るより…こういうのは理央ちゃんを頼った方が良かったんじゃないか…って思っただけッスよ」
前回の記憶…そして今後の身の振り方を相談すべく、ニヤ先輩を訪ねた俺。
情報を共有すると言う意味では、理央に相談するという選択肢もあったものの……前回の最後の事もあって、それを避けていてたのだが…
ニヤ先輩は、外す事なく的確にそこを突いて来た。
ニヤ「空ちゃんもカレンちゃんも…皆、理央ちゃんに殺された。そんな風に考えて、信用出来ないってのも判るんッスけどね…」
俺「だってそうでしょ?例えどんな事情があったにしても、二人を………」
ニヤ「ま、あんな事する理央ちゃんを見たら仕方ないッスけど…そもそも、信用どうこう言い始めたらボクだって信用できないッスよ?」
俺「…え?それは一体どう言う…」
ニヤ「ぶっちゃけ、今だから言っちゃうッスけど……ボクがカレンちゃんを唆して、キミの純情を弄んだからッス」
俺「……………は?」
ニヤ先輩のあまりに唐突な告白…それに対して俺は、ただただ唖然とするしか無かった。
ニヤ「リア充爆散能力の発動条件…と言うか前提で、使用者に恋人が居ると使えなくなる可能性が濃厚だったんッスよ」
俺「それってつまり…」
ニヤ「あ、勘違いしちゃ駄目ッスよ。ボクはともかくカレンちゃんは、キミの身を案じた上でやった事なんッスから」
俺「…………え?」
ニヤ「キミ…例え能力が無くても、カレンちゃんの力になろうとしてたッスよね?」
俺「………」
ニヤ「そんな状態で戦いに巻き込まれれば…いや、飛び込んで行けば、まず生き残れない。だから、せめて能力の保持をさせようとしたんッスよ」
俺「それ…一つ、嘘を吐いてますよね?」
ニヤ「………何の事ッスか?」
俺「カレンだけじゃなくて…ニヤ先輩だって、俺の心配して護衛を付けてくれてたじゃないですか。空から聞きましたよ」
ニヤ「あれはあくまで、キミの超能力に対する警護ッスよ。希少価値とピーキー加減を考慮した結果ッス」
俺「さあ?どうでしょうね」
ニヤ「………まぁ、とにかく…理央ちゃんとも会って、ちゃんと相談した方が良いッスよ。あ、ただ…」
俺「…ただ?」
ニヤ「理央ちゃんからの弁明が無かったとしても…例えはぐらかされたとしても、それを責めないであげて欲しいッス」
こうしてニヤ先輩との話を終え…俺は改めて理央と猫カフェで落ち合い、前回で起きた事を知らせたのだが………
理央「事の顛末…何があったのかは判りました。でも、先輩は知らない方が…良いと思います」
結果的に返って来た言葉は、ニヤ先輩の予想通りの物だった。
ニヤ「まぁ………事情は判ったッス。いや、正規の手順だからこれで良いんッスけどね」
俺「思う所がありそうな…含みのある言い方ですね」
ニヤ「ボクを頼るより…こういうのは理央ちゃんを頼った方が良かったんじゃないか…って思っただけッスよ」
前回の記憶…そして今後の身の振り方を相談すべく、ニヤ先輩を訪ねた俺。
情報を共有すると言う意味では、理央に相談するという選択肢もあったものの……前回の最後の事もあって、それを避けていてたのだが…
ニヤ先輩は、外す事なく的確にそこを突いて来た。
ニヤ「空ちゃんもカレンちゃんも…皆、理央ちゃんに殺された。そんな風に考えて、信用出来ないってのも判るんッスけどね…」
俺「だってそうでしょ?例えどんな事情があったにしても、二人を………」
ニヤ「ま、あんな事する理央ちゃんを見たら仕方ないッスけど…そもそも、信用どうこう言い始めたらボクだって信用できないッスよ?」
俺「…え?それは一体どう言う…」
ニヤ「ぶっちゃけ、今だから言っちゃうッスけど……ボクがカレンちゃんを唆して、キミの純情を弄んだからッス」
俺「……………は?」
ニヤ先輩のあまりに唐突な告白…それに対して俺は、ただただ唖然とするしか無かった。
ニヤ「リア充爆散能力の発動条件…と言うか前提で、使用者に恋人が居ると使えなくなる可能性が濃厚だったんッスよ」
俺「それってつまり…」
ニヤ「あ、勘違いしちゃ駄目ッスよ。ボクはともかくカレンちゃんは、キミの身を案じた上でやった事なんッスから」
俺「…………え?」
ニヤ「キミ…例え能力が無くても、カレンちゃんの力になろうとしてたッスよね?」
俺「………」
ニヤ「そんな状態で戦いに巻き込まれれば…いや、飛び込んで行けば、まず生き残れない。だから、せめて能力の保持をさせようとしたんッスよ」
俺「それ…一つ、嘘を吐いてますよね?」
ニヤ「………何の事ッスか?」
俺「カレンだけじゃなくて…ニヤ先輩だって、俺の心配して護衛を付けてくれてたじゃないですか。空から聞きましたよ」
ニヤ「あれはあくまで、キミの超能力に対する警護ッスよ。希少価値とピーキー加減を考慮した結果ッス」
俺「さあ?どうでしょうね」
ニヤ「………まぁ、とにかく…理央ちゃんとも会って、ちゃんと相談した方が良いッスよ。あ、ただ…」
俺「…ただ?」
ニヤ「理央ちゃんからの弁明が無かったとしても…例えはぐらかされたとしても、それを責めないであげて欲しいッス」
こうしてニヤ先輩との話を終え…俺は改めて理央と猫カフェで落ち合い、前回で起きた事を知らせたのだが………
理央「事の顛末…何があったのかは判りました。でも、先輩は知らない方が…良いと思います」
結果的に返って来た言葉は、ニヤ先輩の予想通りの物だった。
507: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/23(水) 08:15:54.27 ID:tFoa20L1o
●空飛ぶ小鳥達
空「つまり…組織に話を通して、俺達は公認のカップルになった…ってー事だよなぁ?だったら…」
カップルかどうかはさておき…
空の存在は、組織の方でも知る所となり…懸念していたような、尋問や拘束を受けるような事にはならなかった。
だが…
空「このお嬢ちゃん達は一体何なんだ?」
俺の部屋で…空を挟んで椅子に座る、カレンと理央。
そう………最低限の監視を付けると言う名目で、この二人が俺の部屋に住み込む事になってしまったのだ。
前回に、限りなく近いシチュエーン。この状態で…まず第一に懸念するのは、前回にも起きた悲劇…理央の暴走。
俺から下手に行動を起こさなければ、その事態を回避出来るかも知れないのだが……それならそれで、問題が残る。
ベリルからの課題……ハーレムエンドだ。
誰か一人と仲良くなる事さえ困難だと言うのに、ハーレムエンドだなんてハードルが高すぎる。
加えて理央の件までどうにかしなければいけない…となると、それはもう難易度がどうこうなんて問題じゃ無い。
俺は頭を抱え、テーブルに突っ伏す。すると…それを見た理央が立ち上がり………
理央「私………先輩の事が好きです。空さんにも…カレン先輩にも負けるつもありはありませんから!」
カンダタも真っ青になるような、ヘルモードのフラグを立ち上げ…戦いの幕を切って落としてくれた。
空「は…………はぁっ!?な、何いきなり言い出してんだ!?ってか、一体どー言う事だ!?」
カレン「そ…そうよ!一体どう言う事!?まさか貴方………理央に!?な…何を考えてるの!?理央はまだ中学生なのよ!?」
二人揃って俺を責め立てるような視線を向け、更にそこからあらぬ方向へと展開して行く疑惑。
四面楚歌…まな板の上の鯉…蛇に睨まれた蛙…そんな言葉が似合うのだろう。色んな物を諦めかけたその時…不意に、インターホンの音が鳴り響き…
作業員「あ、その…おた……お忙しい所を失礼します。外の手すりが脆くなっているとの事で、補修工事に伺いました」
訪ねて来たのは、ツナギを着た青年。格好や手荷物を見る限りでは、何かの作業員らしいのだが…おい、今一瞬お楽しみとか言いかけなかったか?
作業員「作業は1時間くらいで終わると思います。その間は騒音等でご迷惑をおかけしますが、ご容赦下さい」
………と言った感じで、このどうでも良い出来事のお陰で、張り詰めた空気からは逃れる事が出来たのだが…
肝心の…俺達の四角関係については、解決の目を見ないまま保留されただけだった。
空「つまり…組織に話を通して、俺達は公認のカップルになった…ってー事だよなぁ?だったら…」
カップルかどうかはさておき…
空の存在は、組織の方でも知る所となり…懸念していたような、尋問や拘束を受けるような事にはならなかった。
だが…
空「このお嬢ちゃん達は一体何なんだ?」
俺の部屋で…空を挟んで椅子に座る、カレンと理央。
そう………最低限の監視を付けると言う名目で、この二人が俺の部屋に住み込む事になってしまったのだ。
前回に、限りなく近いシチュエーン。この状態で…まず第一に懸念するのは、前回にも起きた悲劇…理央の暴走。
俺から下手に行動を起こさなければ、その事態を回避出来るかも知れないのだが……それならそれで、問題が残る。
ベリルからの課題……ハーレムエンドだ。
誰か一人と仲良くなる事さえ困難だと言うのに、ハーレムエンドだなんてハードルが高すぎる。
加えて理央の件までどうにかしなければいけない…となると、それはもう難易度がどうこうなんて問題じゃ無い。
俺は頭を抱え、テーブルに突っ伏す。すると…それを見た理央が立ち上がり………
理央「私………先輩の事が好きです。空さんにも…カレン先輩にも負けるつもありはありませんから!」
カンダタも真っ青になるような、ヘルモードのフラグを立ち上げ…戦いの幕を切って落としてくれた。
空「は…………はぁっ!?な、何いきなり言い出してんだ!?ってか、一体どー言う事だ!?」
カレン「そ…そうよ!一体どう言う事!?まさか貴方………理央に!?な…何を考えてるの!?理央はまだ中学生なのよ!?」
二人揃って俺を責め立てるような視線を向け、更にそこからあらぬ方向へと展開して行く疑惑。
四面楚歌…まな板の上の鯉…蛇に睨まれた蛙…そんな言葉が似合うのだろう。色んな物を諦めかけたその時…不意に、インターホンの音が鳴り響き…
作業員「あ、その…おた……お忙しい所を失礼します。外の手すりが脆くなっているとの事で、補修工事に伺いました」
訪ねて来たのは、ツナギを着た青年。格好や手荷物を見る限りでは、何かの作業員らしいのだが…おい、今一瞬お楽しみとか言いかけなかったか?
作業員「作業は1時間くらいで終わると思います。その間は騒音等でご迷惑をおかけしますが、ご容赦下さい」
………と言った感じで、このどうでも良い出来事のお陰で、張り詰めた空気からは逃れる事が出来たのだが…
肝心の…俺達の四角関係については、解決の目を見ないまま保留されただけだった。
508: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/23(水) 08:21:11.48 ID:tFoa20L1o
●空の彩りかしましく
カレン「ちょっと、また私のシャンプー使ったでしょ!?」
空「んだよケチくせぇなぁ…んな事でいちいち目くじら立ててんじゃ無ぇよ。ってか、アイツが使うのは怒んねぇくせに」
カレン「そう言う問題じゃ無いのよ!…って、嘘っ…彼も使ってるの!?」
喧騒の絶える日々は無く…
ニヤ「それにしても…同棲してるって感じが大分染み付いて来たッスね」
俺「え?そうですか?例えばどんな所が?」
ニヤ「そーッスね、例えば…カレンちゃんや理央ちゃんと同じ匂いがするようになった所とか」
退屈を覚える日々も無く…
理央「先輩…今日のお弁当は自信作です。新しい隠し味を試してみたので、楽しみにしていて下さい」
カレン「腕によりをかけて…今度こそ食べられる物を作ったんだからっ!」
空「いや…お前等、まず普通に作る事から覚えろよ」
平坦に時を刻むだけの日々は、忘却の彼方に消え去って居た。
理央「せ…先輩!入る時はノックして下さいよ!」
俺「わ、悪い!!」
カレン「ちょっと、そ…それ、私の!!」
俺「え…?な、何で俺の下着と一緒に入ってんだ!?」
空「直接当たってる訳でも無ぇんだし…んな事、いちいち気にすんなよ」
俺「はっ…今日の洗濯当番………犯人は、空!お前だったか!!」
理央「……ま、まさか…一緒に洗ったりしてませんよね!?」
空「何だ?一緒に洗ったら何かマズいのか!?」
俺「当たり前だーーー!!!」
カレン「貴女ねぇ…もう少し、自分が女だって言う自覚を持ちなさいよ!」
空「いや、ちゃんと持ってっぞ?ってか……お前等が男と女で壁を作り過ぎてるだけだろ」
理央「そ、そんな事はありませんよ!最低限の礼節です!そうですよね?先輩!」
俺「いや、そこで俺に振るなよ!?」
何だかんだで過ぎ去って行く、居心地の良い日常。もう戻る無いと思って居た筈の世界に…俺は居る。
そう………俺は、そんな日常に浸り切ってしまって居た。
カレン「ちょっと、また私のシャンプー使ったでしょ!?」
空「んだよケチくせぇなぁ…んな事でいちいち目くじら立ててんじゃ無ぇよ。ってか、アイツが使うのは怒んねぇくせに」
カレン「そう言う問題じゃ無いのよ!…って、嘘っ…彼も使ってるの!?」
喧騒の絶える日々は無く…
ニヤ「それにしても…同棲してるって感じが大分染み付いて来たッスね」
俺「え?そうですか?例えばどんな所が?」
ニヤ「そーッスね、例えば…カレンちゃんや理央ちゃんと同じ匂いがするようになった所とか」
退屈を覚える日々も無く…
理央「先輩…今日のお弁当は自信作です。新しい隠し味を試してみたので、楽しみにしていて下さい」
カレン「腕によりをかけて…今度こそ食べられる物を作ったんだからっ!」
空「いや…お前等、まず普通に作る事から覚えろよ」
平坦に時を刻むだけの日々は、忘却の彼方に消え去って居た。
理央「せ…先輩!入る時はノックして下さいよ!」
俺「わ、悪い!!」
カレン「ちょっと、そ…それ、私の!!」
俺「え…?な、何で俺の下着と一緒に入ってんだ!?」
空「直接当たってる訳でも無ぇんだし…んな事、いちいち気にすんなよ」
俺「はっ…今日の洗濯当番………犯人は、空!お前だったか!!」
理央「……ま、まさか…一緒に洗ったりしてませんよね!?」
空「何だ?一緒に洗ったら何かマズいのか!?」
俺「当たり前だーーー!!!」
カレン「貴女ねぇ…もう少し、自分が女だって言う自覚を持ちなさいよ!」
空「いや、ちゃんと持ってっぞ?ってか……お前等が男と女で壁を作り過ぎてるだけだろ」
理央「そ、そんな事はありませんよ!最低限の礼節です!そうですよね?先輩!」
俺「いや、そこで俺に振るなよ!?」
何だかんだで過ぎ去って行く、居心地の良い日常。もう戻る無いと思って居た筈の世界に…俺は居る。
そう………俺は、そんな日常に浸り切ってしまって居た。
509: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/23(水) 08:26:45.51 ID:tFoa20L1o
●荒れ模様の空
空「あ、そだ。PC借りて良いか?」
俺「良いけど…何するんだ?」
空「WOの生存報告な。しとかねーと、お前みてーに心配されちまうし」
俺「ん?俺って心配されてたのか…ってか、もしかして、お前も心配してくれてたのか?」
空「そりゃぁ、テロの場所に行った後から連絡取れなくなってりゃ心配もすんだろ…」
俺「そう言えばそうだった…っと、あの事件って一般には報道されて無いんだろ?他のギルメンは…」
空「そっちは、普通にログインが無かったから心配してただけだろ」
俺「あぁ、それもそうか…」
ある日…空が久しぶりにWOにログイン…復帰した日の事。
空「ってか、お前も一緒に復帰しねーか?」
俺「復帰しようにも、PCは今お前が使ってるから無理だろ」
空「それもそうか。んー………お前が2PC使いだったら良かったんだがなぁ」
理央「だったら…もう一台買えば良いんじゃないですか?」
俺「それだ!」
…と言うやりとりがあり、俺達は新PCを買いに行く運びとなったのだが…
カレン「貴方達…ここの所、ずっと部屋に引き篭もりっぱなしだったものね。丁度良い機会じゃない」
空「………さすが、元筋金入りの引き篭もりの言葉は説得力が違ぇなぁ」
カレン「ひきっ……!?ちょっ、ちょっと待って、私のを貴女のと一緒にしないで!?」
空「あぁ…引き篭もりじゃなくて閉じ篭りだっけか?悪ぃ、俺なんかとはレベルが違ったな!」
理央「空さんもカレン先輩も…世間から隔絶されていたと言う点では同じのような……」
空「コミュ障ボッチは黙ってろ!」
理央「ボッ………ちっ…違います!!私は、能力があるからコミュニケーションを取る必要が無いだけでっ!!」
空「大体何なんだよ!手前ぇら揃いも揃って、不幸設定だの血族設定だの当たり前みてぇに装備しやがって… ゲのヒロインか!?」
カレン「何なのよそれ!意味判らないわよ!?」
理央「判らなくも無いですけど、否定させて貰いますからっ!!」
繰り広げられる光景により…判定すらされないままSAN値がゴリゴリと削られて行く。
こうして……いざ出発に漕ぎ着けるまでに、ここから更に時間を要する事となったのだった。
空「あ、そだ。PC借りて良いか?」
俺「良いけど…何するんだ?」
空「WOの生存報告な。しとかねーと、お前みてーに心配されちまうし」
俺「ん?俺って心配されてたのか…ってか、もしかして、お前も心配してくれてたのか?」
空「そりゃぁ、テロの場所に行った後から連絡取れなくなってりゃ心配もすんだろ…」
俺「そう言えばそうだった…っと、あの事件って一般には報道されて無いんだろ?他のギルメンは…」
空「そっちは、普通にログインが無かったから心配してただけだろ」
俺「あぁ、それもそうか…」
ある日…空が久しぶりにWOにログイン…復帰した日の事。
空「ってか、お前も一緒に復帰しねーか?」
俺「復帰しようにも、PCは今お前が使ってるから無理だろ」
空「それもそうか。んー………お前が2PC使いだったら良かったんだがなぁ」
理央「だったら…もう一台買えば良いんじゃないですか?」
俺「それだ!」
…と言うやりとりがあり、俺達は新PCを買いに行く運びとなったのだが…
カレン「貴方達…ここの所、ずっと部屋に引き篭もりっぱなしだったものね。丁度良い機会じゃない」
空「………さすが、元筋金入りの引き篭もりの言葉は説得力が違ぇなぁ」
カレン「ひきっ……!?ちょっ、ちょっと待って、私のを貴女のと一緒にしないで!?」
空「あぁ…引き篭もりじゃなくて閉じ篭りだっけか?悪ぃ、俺なんかとはレベルが違ったな!」
理央「空さんもカレン先輩も…世間から隔絶されていたと言う点では同じのような……」
空「コミュ障ボッチは黙ってろ!」
理央「ボッ………ちっ…違います!!私は、能力があるからコミュニケーションを取る必要が無いだけでっ!!」
空「大体何なんだよ!手前ぇら揃いも揃って、不幸設定だの血族設定だの当たり前みてぇに装備しやがって… ゲのヒロインか!?」
カレン「何なのよそれ!意味判らないわよ!?」
理央「判らなくも無いですけど、否定させて貰いますからっ!!」
繰り広げられる光景により…判定すらされないままSAN値がゴリゴリと削られて行く。
こうして……いざ出発に漕ぎ着けるまでに、ここから更に時間を要する事となったのだった。
510: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/23(水) 08:37:25.02 ID:tFoa20L1o
●空を覆い始める雲
………誰かが言って居た言葉を思い出す。
終わりと言う物は、唐突に訪れる。それは、いくら予見しようと抗おうと…必ず追いついて来る。
問題なのは、どう終わりを退けるかでは無く………どう終わりを受け入れるかだ…と。
カレン「何かしら…駅前の方が騒がしいわね。理央、何か読み取れる?」
理央「私の能力では範囲外なので、ここからでは何とも。ただ…あまり良い予感がしないので、念のため確認に行きましょうか?」
新PCを買いに、街中まで出て来た俺達。だが…そこで出くわしたのは、お世辞にも吉報とは言えないようなサプライズだった。
しばらく続く喧騒に紛れ…聞こえ始める悲鳴。
それを耳にした俺達は、無言のままに頷き…声のする方へと走り出す。
十字路…交番を過ぎて、駅ビル前。蜘蛛の子を散らすように逃げる群衆の中央にそれは居た。
黒い霧のような物の中で……幅の広い真っ黒な包帯を螺旋状に巻き上げたような、柱のような…植物のような出で立ちの『何か』。
俺が知る生き物とは全く異なる…異様な存在が、包帯の隙間から目のような物を覗かせ…俺達を見据える。
雰囲気からして、どう見ても友好的とは思えないその存在。俺がそれに対峙し、身構えると…何故か空が割って入り、前に出て来た。
空「おい…嘘だろ。あれ…DCDCじゃねぇか!?あんな物を解き放ちやがって…ジョージの野郎、何考えてやがんだ!!」
DCDC…恐らくは、目の前のあれの名前だろう。何故空がその名前を知っているのかは判らないが…それを聞いている余裕は無さそうだった。
DCDCの本体から解け、俺達に向けて迫り来る包帯…いや、触手の一本一本。
空…カレン…理央…そして俺。各々へと迫る触手を、寸での所でパトリオットで弾くのだが……
俺「何だこれ……軽そうな動きに反して、滅茶苦茶攻撃が重たいぞ」
こんな物を連打されたら、パトリオットでもいつまで防ぎ切れるか判らない。そんな…この危機的現状を理解しているのは、俺だけでは無かった。
空「駄目だ………コイツ等と正面からやり合ったら、万に一つも勝ち目が無ぇ!とにかく、生きて逃げ延びる事だけを考えろ!!」
切迫し…確信の篭った声で叫びを上げる、空。俺達は、空の言葉に篭った意図を瞬時に察し…一直線に駆け出す。
空が先頭に立って、ソーサー=ソーサで障害物を蹴散らし…俺がしんがりを勤めて、DCDCの触手から皆を守り…
辛うじて、その触手の射程範囲外へと辿り着きかけた時…何故か、空の足が止まる。
俺「どうした!一体何が………」
と…途中まで口に出した時………その理由を理解した。
出かけた言葉が喉の奥へと引っ込み、代わりに俺は心臓が飛び出るような錯覚に襲われる。
俺「嘘だろ………あんなのがもう一体居たのかよ……」
真っ黒な身体の………背中から幾つもの棘を生やした獅子のような姿の…DCDCが、俺達の行く手を阻んで居た。
………誰かが言って居た言葉を思い出す。
終わりと言う物は、唐突に訪れる。それは、いくら予見しようと抗おうと…必ず追いついて来る。
問題なのは、どう終わりを退けるかでは無く………どう終わりを受け入れるかだ…と。
カレン「何かしら…駅前の方が騒がしいわね。理央、何か読み取れる?」
理央「私の能力では範囲外なので、ここからでは何とも。ただ…あまり良い予感がしないので、念のため確認に行きましょうか?」
新PCを買いに、街中まで出て来た俺達。だが…そこで出くわしたのは、お世辞にも吉報とは言えないようなサプライズだった。
しばらく続く喧騒に紛れ…聞こえ始める悲鳴。
それを耳にした俺達は、無言のままに頷き…声のする方へと走り出す。
十字路…交番を過ぎて、駅ビル前。蜘蛛の子を散らすように逃げる群衆の中央にそれは居た。
黒い霧のような物の中で……幅の広い真っ黒な包帯を螺旋状に巻き上げたような、柱のような…植物のような出で立ちの『何か』。
俺が知る生き物とは全く異なる…異様な存在が、包帯の隙間から目のような物を覗かせ…俺達を見据える。
雰囲気からして、どう見ても友好的とは思えないその存在。俺がそれに対峙し、身構えると…何故か空が割って入り、前に出て来た。
空「おい…嘘だろ。あれ…DCDCじゃねぇか!?あんな物を解き放ちやがって…ジョージの野郎、何考えてやがんだ!!」
DCDC…恐らくは、目の前のあれの名前だろう。何故空がその名前を知っているのかは判らないが…それを聞いている余裕は無さそうだった。
DCDCの本体から解け、俺達に向けて迫り来る包帯…いや、触手の一本一本。
空…カレン…理央…そして俺。各々へと迫る触手を、寸での所でパトリオットで弾くのだが……
俺「何だこれ……軽そうな動きに反して、滅茶苦茶攻撃が重たいぞ」
こんな物を連打されたら、パトリオットでもいつまで防ぎ切れるか判らない。そんな…この危機的現状を理解しているのは、俺だけでは無かった。
空「駄目だ………コイツ等と正面からやり合ったら、万に一つも勝ち目が無ぇ!とにかく、生きて逃げ延びる事だけを考えろ!!」
切迫し…確信の篭った声で叫びを上げる、空。俺達は、空の言葉に篭った意図を瞬時に察し…一直線に駆け出す。
空が先頭に立って、ソーサー=ソーサで障害物を蹴散らし…俺がしんがりを勤めて、DCDCの触手から皆を守り…
辛うじて、その触手の射程範囲外へと辿り着きかけた時…何故か、空の足が止まる。
俺「どうした!一体何が………」
と…途中まで口に出した時………その理由を理解した。
出かけた言葉が喉の奥へと引っ込み、代わりに俺は心臓が飛び出るような錯覚に襲われる。
俺「嘘だろ………あんなのがもう一体居たのかよ……」
真っ黒な身体の………背中から幾つもの棘を生やした獅子のような姿の…DCDCが、俺達の行く手を阻んで居た。
513: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/24(木) 23:23:22.21 ID:hq0pPgO9o
●空から落ちた希望
絶体絶命………
今持っている全ての力を出し尽くしても尚、無駄な足掻きで終わってしまう事が判ってしまう程の敵。
理屈では無く本能でそれを理解出来てしまう程の、強大な相手と対峙し…絶望が俺達を飲み込んだ瞬間……それは現れた。
ユズ「皆…伏せるッスよぉぉぉぉぉ!!!!」
声に従ってか…元々竦んでいた足が、勢いで力を失っただけかは判らないが…皆が一斉にしゃがみ込む。
そして、それとほぼ同時に俺達の頭上を光が駆け抜け――――次の瞬間には、真っ二つに切り裂かれたDCDCが霧散していった。
ユズ「皆、怪我は無いッスか?」
どこか覚えのある…ニヤ先輩のような喋り方の、声の主に問われ、俺達は一斉に振り向く。
オレンジ色のポニーテールの、RPGに出て来そうなファンタジー風の服装の……
多分、俺達よりもほんの少し年上であろう女性が…そこに居た。
空「えっ…もしかして……ユズ姐さん?ユズ姐さんなのか!?」
ユズ「そう言うキミは……ソラちゃんッスか?髪切ったんッスね」
そして…聞いている限りでは、その女性の名前はユズ。空の知人のようだ。
理央「えっと………危ない所を助けて頂いて、ありがとうございます。その…空さんのお知り合いの方ですか?」
感謝の言葉と共に、皆が疑問に思っていた事を理央が聞く。能力で読むのでは無く、あえて口頭で聞くのは…多分俺達に気を遣っての事だろう。
ユズ「あ、自分の名前はユズって言って…魔法使いをやってるッス。ソラちゃんとの関係は…魔法少女時代の先輩って所ッスかね」
と…理央に問いに対して、ユズの口から返される自己紹介。
魔法使い…元魔法少女と言う事は、カライモンみたいな魔法少女と何か関係があるのだろうか…そんな事を考え…………ん?
……………ん?
ちょっと待て?
俺「空が魔法少女!?」
カレン「空が魔法少女!?」
思わず…カレンと声を合わせて叫んでしまった。
絶体絶命………
今持っている全ての力を出し尽くしても尚、無駄な足掻きで終わってしまう事が判ってしまう程の敵。
理屈では無く本能でそれを理解出来てしまう程の、強大な相手と対峙し…絶望が俺達を飲み込んだ瞬間……それは現れた。
ユズ「皆…伏せるッスよぉぉぉぉぉ!!!!」
声に従ってか…元々竦んでいた足が、勢いで力を失っただけかは判らないが…皆が一斉にしゃがみ込む。
そして、それとほぼ同時に俺達の頭上を光が駆け抜け――――次の瞬間には、真っ二つに切り裂かれたDCDCが霧散していった。
ユズ「皆、怪我は無いッスか?」
どこか覚えのある…ニヤ先輩のような喋り方の、声の主に問われ、俺達は一斉に振り向く。
オレンジ色のポニーテールの、RPGに出て来そうなファンタジー風の服装の……
多分、俺達よりもほんの少し年上であろう女性が…そこに居た。
空「えっ…もしかして……ユズ姐さん?ユズ姐さんなのか!?」
ユズ「そう言うキミは……ソラちゃんッスか?髪切ったんッスね」
そして…聞いている限りでは、その女性の名前はユズ。空の知人のようだ。
理央「えっと………危ない所を助けて頂いて、ありがとうございます。その…空さんのお知り合いの方ですか?」
感謝の言葉と共に、皆が疑問に思っていた事を理央が聞く。能力で読むのでは無く、あえて口頭で聞くのは…多分俺達に気を遣っての事だろう。
ユズ「あ、自分の名前はユズって言って…魔法使いをやってるッス。ソラちゃんとの関係は…魔法少女時代の先輩って所ッスかね」
と…理央に問いに対して、ユズの口から返される自己紹介。
魔法使い…元魔法少女と言う事は、カライモンみたいな魔法少女と何か関係があるのだろうか…そんな事を考え…………ん?
……………ん?
ちょっと待て?
俺「空が魔法少女!?」
カレン「空が魔法少女!?」
思わず…カレンと声を合わせて叫んでしまった。
514: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/24(木) 23:54:43.07 ID:hq0pPgO9o
●空の奥底に
俺「つまり…4年前、空はあのDCDC達を倒すために魔法少女になって…ユズさんはその時に一緒に行動してた相方だった、って事か」
カレン「しかも、空が関わる前は黄色先輩もDCDCに関わってて…マイさんまで。で…そこで何でジョージの名前が出て来たの?」
空「ジョージの野郎も、一枚噛んでやがったんだよ。んで…そん時にDCDCをくすねてたって事を、後から知ったんだが…」
ユズ「なるほど…倒した筈のDCDC達が再び現れたのは、そう言う事だった訳ッスか…」
俺「今になって、それを持ち出して来た…って事か。んでも…あれがジョージの仕業だって確証はあるのか?」
ユズ「その点に関しては…新しい容疑者が浮上して来ない限りは、ソラちゃんの予想の通りに行動して間違い無いと思うッスよ」
カレン「と言うよりも…その口ぶりだと、知った後も、今の今まで黙認してた風に聞こえるんだけど?」
空「DCDCの正体を探ったり、他に危険性が無いか調べるためって言われてたんだよ。馬鹿正直に全部信じてたって訳じゃぁ無いが、まさかここまでやるたぁ…」
と、そこまで言った所で口ごもる空。
カレンからしたらまだまだ言いたい事はあるのだろうが、ここで空を責めても事態が好転する訳では無し。
俺は二人の間に入って、カレンをなだめ…会話をその先へと促して行く。
カレン「それならそれで、仕方無いとして……確認したいんだけど、DCDCって言うの怪物は、さっきのあの二体だけ?」
空「どんだけの数をくすねてやがったのかは、判らねぇんだが…DCDC自体は、もっと…それこそ数え切れねぇ程の数が居た筈だ」
ユズ「確実に消滅させた分は、差し引くとしても…ジョージくんが居合わせた回数を考えると、少なく無い数のDCDCが捕獲されてそうッスね…」
俺「つまり………今回ので終わった可能性は低いって事か」
あんな化け物が、まだ何体も残っているかも知れない…いや、その可能性が高い。
その事実を認識した事で、俺は全身に寒気が走った。
ユズ「何にしても…あれだけの騒ぎで、民間人への被害が無かったのが不幸中の幸いって所ッスかね」
こうして語られて行く、過去…空とDCDCに纏わる過去の出来事。
皆が二人の話に耳を傾ける、そんな最中…僅かだが、理央の身体が不自然に傾く様が目に入った。
俺「つまり…4年前、空はあのDCDC達を倒すために魔法少女になって…ユズさんはその時に一緒に行動してた相方だった、って事か」
カレン「しかも、空が関わる前は黄色先輩もDCDCに関わってて…マイさんまで。で…そこで何でジョージの名前が出て来たの?」
空「ジョージの野郎も、一枚噛んでやがったんだよ。んで…そん時にDCDCをくすねてたって事を、後から知ったんだが…」
ユズ「なるほど…倒した筈のDCDC達が再び現れたのは、そう言う事だった訳ッスか…」
俺「今になって、それを持ち出して来た…って事か。んでも…あれがジョージの仕業だって確証はあるのか?」
ユズ「その点に関しては…新しい容疑者が浮上して来ない限りは、ソラちゃんの予想の通りに行動して間違い無いと思うッスよ」
カレン「と言うよりも…その口ぶりだと、知った後も、今の今まで黙認してた風に聞こえるんだけど?」
空「DCDCの正体を探ったり、他に危険性が無いか調べるためって言われてたんだよ。馬鹿正直に全部信じてたって訳じゃぁ無いが、まさかここまでやるたぁ…」
と、そこまで言った所で口ごもる空。
カレンからしたらまだまだ言いたい事はあるのだろうが、ここで空を責めても事態が好転する訳では無し。
俺は二人の間に入って、カレンをなだめ…会話をその先へと促して行く。
カレン「それならそれで、仕方無いとして……確認したいんだけど、DCDCって言うの怪物は、さっきのあの二体だけ?」
空「どんだけの数をくすねてやがったのかは、判らねぇんだが…DCDC自体は、もっと…それこそ数え切れねぇ程の数が居た筈だ」
ユズ「確実に消滅させた分は、差し引くとしても…ジョージくんが居合わせた回数を考えると、少なく無い数のDCDCが捕獲されてそうッスね…」
俺「つまり………今回ので終わった可能性は低いって事か」
あんな化け物が、まだ何体も残っているかも知れない…いや、その可能性が高い。
その事実を認識した事で、俺は全身に寒気が走った。
ユズ「何にしても…あれだけの騒ぎで、民間人への被害が無かったのが不幸中の幸いって所ッスかね」
こうして語られて行く、過去…空とDCDCに纏わる過去の出来事。
皆が二人の話に耳を傾ける、そんな最中…僅かだが、理央の身体が不自然に傾く様が目に入った。
515: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/25(金) 00:14:24.54 ID:6pv+EZDvo
●空元気の奥に
俺「理央…どうかしたのか?さっきの戦闘で何か…」
よくよく見ると、戦闘前とは明らかに顔色の違う理央。誰から見ても不調が明らかな…その様子が気になり、俺は声をかける。
だが…そんな俺の問いに答えるだけの気力すら、今の理央には無いらしい。
原因不明の、理央の不調を目にしながら…そこに来て初めて、自分の身体も妙に重くなっている事に気付く。
恐らくは理央程の症状では無い。だが…それでも不安を感じるには十分過ぎる変調。
DCDCに続いて訪れた、正体不明のそれを前に、俺はまたも寒気を覚える。
だが…そんな中で、何故か空とユズはお互いに目配せをして…
空「多分…DCDCの瘴気にやられたんだろうな。ユズ姐さん、看てやってくれねぇか?」
ユズ「判ったッス。それじゃぁ理央ちゃん、こっち向いてくれるッスか?」
俺達の知らない…魔法少女達だけが知っているそれに対し、何らかの処置を施し始めた。
俺「…瘴気って何だ?」
空「奴等…DCDCが活動時に発散する、毒性物質みたいな物だと思ってくれ。近くで吸い過ぎると命に関わるが…まぁ、あのくらいなら大事は無ぇだろ」
俺「あれだけの状態でも、大事無い…か」
カレン「それって…接近戦になった場合、あれよりも危険な状態になるって事なのよね?そんな相手と、どうやって戦えば…」
当然と言えば当然…必然的に湧き上がってくる疑問を、空へと向けるカレン。
同じ疑問を抱いていた俺も、便乗して空の返答を待つのだが………
空「………馬鹿か手前ぇ」
カレン「…何よ、私変な事言ってる?そうならないためのコツでもあるって言うの?」
空「そうじゃ無ぇよ、何DCDC相手に戦おうとしてんだっつってんだよ」
空から返って来たのは、まずそれ以前の話だった。
俺「いや、あんなの放っておく訳にはいかないだろ!?」
空「そりゃぁそうだが、奴等はお前等の組織の管轄じゃ無ぇんだぞ。下手に首突っ込んで巻き込まれんな……この件からは手を引けって言ってんだ」
俺「それは…ユズさん達の管轄って事か。んじゃ一つ聞いておきたいんだが、空………お前はどうするんだ?」
話を進める上で…この先の身の振り方を決める上で、決して無視出来ないであろう物………空の意思を、俺は問う。
空「俺は…」
ユズ「………空ちゃんにも手を引いて貰うッスよ。今の空ちゃんは部外者ッスから」
空「………………」
そして…空の変わりにユズが答え、空は沈黙を以ってそれを肯定するばかり。
しかし…その時の俺は、沈黙の意味を問い詰めようともしなかった。
俺「理央…どうかしたのか?さっきの戦闘で何か…」
よくよく見ると、戦闘前とは明らかに顔色の違う理央。誰から見ても不調が明らかな…その様子が気になり、俺は声をかける。
だが…そんな俺の問いに答えるだけの気力すら、今の理央には無いらしい。
原因不明の、理央の不調を目にしながら…そこに来て初めて、自分の身体も妙に重くなっている事に気付く。
恐らくは理央程の症状では無い。だが…それでも不安を感じるには十分過ぎる変調。
DCDCに続いて訪れた、正体不明のそれを前に、俺はまたも寒気を覚える。
だが…そんな中で、何故か空とユズはお互いに目配せをして…
空「多分…DCDCの瘴気にやられたんだろうな。ユズ姐さん、看てやってくれねぇか?」
ユズ「判ったッス。それじゃぁ理央ちゃん、こっち向いてくれるッスか?」
俺達の知らない…魔法少女達だけが知っているそれに対し、何らかの処置を施し始めた。
俺「…瘴気って何だ?」
空「奴等…DCDCが活動時に発散する、毒性物質みたいな物だと思ってくれ。近くで吸い過ぎると命に関わるが…まぁ、あのくらいなら大事は無ぇだろ」
俺「あれだけの状態でも、大事無い…か」
カレン「それって…接近戦になった場合、あれよりも危険な状態になるって事なのよね?そんな相手と、どうやって戦えば…」
当然と言えば当然…必然的に湧き上がってくる疑問を、空へと向けるカレン。
同じ疑問を抱いていた俺も、便乗して空の返答を待つのだが………
空「………馬鹿か手前ぇ」
カレン「…何よ、私変な事言ってる?そうならないためのコツでもあるって言うの?」
空「そうじゃ無ぇよ、何DCDC相手に戦おうとしてんだっつってんだよ」
空から返って来たのは、まずそれ以前の話だった。
俺「いや、あんなの放っておく訳にはいかないだろ!?」
空「そりゃぁそうだが、奴等はお前等の組織の管轄じゃ無ぇんだぞ。下手に首突っ込んで巻き込まれんな……この件からは手を引けって言ってんだ」
俺「それは…ユズさん達の管轄って事か。んじゃ一つ聞いておきたいんだが、空………お前はどうするんだ?」
話を進める上で…この先の身の振り方を決める上で、決して無視出来ないであろう物………空の意思を、俺は問う。
空「俺は…」
ユズ「………空ちゃんにも手を引いて貰うッスよ。今の空ちゃんは部外者ッスから」
空「………………」
そして…空の変わりにユズが答え、空は沈黙を以ってそれを肯定するばかり。
しかし…その時の俺は、沈黙の意味を問い詰めようともしなかった。
516: ◆TPk5R1h7Ng 2015/12/25(金) 00:17:34.64 ID:6pv+EZDvo
●雷雲潜む空
俺「で…実際の所、どうする?このまま大人しく引き下がるか?」
俺の部屋に戻り………DCDCの件以来、沈黙を保ったままの三人。カレン…理央…空に問いかける。
カレン「ジョージが関わっている限り、このまま退く事は出来ない。直接戦う事は出来なくても、サポートくらいなら出来るかも知れ無いし」
理央「私は…反対です。あれは、関わるだけでも危険な存在です。どうしても立ち向かうと言うなら、前回と同じ苦しみを覚悟する事になります」
カレン「…前回って?」
俺「あ、いや…そこは気にしないでくれ」
理央の言う、前回…恐らくは、理央が二人を殺した結末の事を言っているのだろうが………それを引き合いに出す理由が、俺には理解出来ない。
類似性のある事態なのか、何かの引き金がそこにあるのか………あるいは、単なる脅迫か…
ただ、そのいずれにしても…理央が絶対的な反対の意思を持っている事だけは伺えた。
カレン「ところで空…貴女はどうなの?以前は魔法少女としてDCDCと戦っていたんでしょう?尻尾を巻くなんて貴女らしく無いわよ?」
空「ッ――…知ったような…知ったような口利いてんじゃ無ぇよ!!手前ぇが俺の何を知ってるってんだよ!」
そして………カレンの問いにより何故か豹変し、声を張り上げる空。
俺とカレンは呆気に取られ…空は首を何度も横に振った。
空「いや…突然怒鳴って悪かった。その…何だ、魔法少女だったのは本当に過去の話でな。俺はもう…魔法を使え無ぇんだ」
俺「それは、どう言う―――」
問いの言葉を紡ぎかける俺。だが、理央が俺と空の間に手を伸ばして、その言葉を遮る。
理央「意見が別れてしまった以上…ここから先は別行動と言う事になりますね」
俺「あぁ…そうなるな」
理央と空、二人と別れるのは寂しくもあるが………本当の事を言うと、巻き込まずに済んだ事に安堵しても居た。
空「俺は…事が事なだけに、信用出来る仲間にこの事を伝えて来ようと思う」
俺「俺とカレンは…話を通さなけりゃいけない所があるから、そっちに行くつもりだ」
理央「では、私は組織に今回の件を報告して…今後の指示を仰ぎます」
こうして俺達は…それぞれの選択の下、己が信じる道を進む事になった。
カレン「それで、話を通さなければいけない所ってどこなの?」
俺「このアパートの16号室。この周辺のリーディング阻害や、能力者の管轄なんかの…ルールを決めた、張本人の所だ」
俺「で…実際の所、どうする?このまま大人しく引き下がるか?」
俺の部屋に戻り………DCDCの件以来、沈黙を保ったままの三人。カレン…理央…空に問いかける。
カレン「ジョージが関わっている限り、このまま退く事は出来ない。直接戦う事は出来なくても、サポートくらいなら出来るかも知れ無いし」
理央「私は…反対です。あれは、関わるだけでも危険な存在です。どうしても立ち向かうと言うなら、前回と同じ苦しみを覚悟する事になります」
カレン「…前回って?」
俺「あ、いや…そこは気にしないでくれ」
理央の言う、前回…恐らくは、理央が二人を殺した結末の事を言っているのだろうが………それを引き合いに出す理由が、俺には理解出来ない。
類似性のある事態なのか、何かの引き金がそこにあるのか………あるいは、単なる脅迫か…
ただ、そのいずれにしても…理央が絶対的な反対の意思を持っている事だけは伺えた。
カレン「ところで空…貴女はどうなの?以前は魔法少女としてDCDCと戦っていたんでしょう?尻尾を巻くなんて貴女らしく無いわよ?」
空「ッ――…知ったような…知ったような口利いてんじゃ無ぇよ!!手前ぇが俺の何を知ってるってんだよ!」
そして………カレンの問いにより何故か豹変し、声を張り上げる空。
俺とカレンは呆気に取られ…空は首を何度も横に振った。
空「いや…突然怒鳴って悪かった。その…何だ、魔法少女だったのは本当に過去の話でな。俺はもう…魔法を使え無ぇんだ」
俺「それは、どう言う―――」
問いの言葉を紡ぎかける俺。だが、理央が俺と空の間に手を伸ばして、その言葉を遮る。
理央「意見が別れてしまった以上…ここから先は別行動と言う事になりますね」
俺「あぁ…そうなるな」
理央と空、二人と別れるのは寂しくもあるが………本当の事を言うと、巻き込まずに済んだ事に安堵しても居た。
空「俺は…事が事なだけに、信用出来る仲間にこの事を伝えて来ようと思う」
俺「俺とカレンは…話を通さなけりゃいけない所があるから、そっちに行くつもりだ」
理央「では、私は組織に今回の件を報告して…今後の指示を仰ぎます」
こうして俺達は…それぞれの選択の下、己が信じる道を進む事になった。
カレン「それで、話を通さなければいけない所ってどこなの?」
俺「このアパートの16号室。この周辺のリーディング阻害や、能力者の管轄なんかの…ルールを決めた、張本人の所だ」
518: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/13(水) 13:19:44.38 ID:wkwQQ1E4o
●閉ざされた空
朱桜「張本人なんて言われると、諸悪の根源みたいで心外なの」
16号室…住人達の間では、開かずの間として有名な部屋。この部屋に訪れた俺達を、最初に迎えたのは…そんな言葉だった。
俺「ルールでは…リーディングは阻害されてるんじゃ無かったのか?」
朱桜「私は結界から除外するようにベリルちゃんに頼んであるから、阻害される事は無いの。けど…今回の話は、それとはまた別の理由があるの」
真っ白な部屋に、真っ白な家具……その中央で、これまた真っ白な椅子に座る真っ白な服を着た真っ白な少女。
言葉にすると真っ白ばかり…真っ白でゲシュタルト崩壊を起こしそうなその景色の中で、俺達は言葉を連ねる。
俺「だったら、よっぽど耳が良いのか…それとも…」
朱桜「予め知って居たの。勿論ここに来た用件も知っているから…特別に許可をあげるの」
俺「成る程…そいつは話が早くて助かる。ありがとな」
朱桜「ただし…形式だから一応忠告しておくの。自分の分を弁えず、不相応な領域に足を踏み入れるなら…」
俺「命を始め、ありとあらゆる事態を保障出来ない…だろ?あと、それとは別で頼みがあるんだが…」
朱桜「理央ちゃんと空ちゃんの事なら判ってるの。貴方達みたいに自分から踏み込まない限りは、ルールに則って安全を保障するから安心して欲しいの」
俺「そっか、ありがとう。それを聞いて安心した」
朱桜の言葉に俺は安堵し、目を閉じて深呼吸をする。
目下の心配は、消え去った。しかし…当事者てある俺とカレンに関してはその限りでは無い事を、確認する事にもなった。
一抹の不安を胸に残しながら、俺は再び朱桜に向き直り…話をその先へと進めて行く。
俺「それで…あんたには…」
朱桜「朱桜ちゃんって呼んで欲しいの」
俺「んじゃ、えっと…朱桜ちゃんには…この先の未来が見えてるのか?」
朱桜「この先起こりうる可能性は、全部視えているの」
俺「全部…か。それじゃぁ聞きたいんだが………その中に、俺達全員…誰一人命を落とさずに迎えられる未来はあるか?」
朱桜「あるけれど…ここまで来てしまった以上、それの未来はは極々少数しか残って居ないの。それこそ、前回よりもずっと少ない割合…なの」
俺「そっか………」
可能性は0では無い。気休め程度にしかならないが、逆にいえば気休め程度にはなった。
朱桜の言葉から、進むべき先…目標を定め……不安を押しのけるだけの決意を胸に、踏み出そうとした…その時……
カレン「あの…ちょっと良い?総統やニヤ先輩も、しきりに気にしてたんだけど…そもそも、ルールって一体何なの?」
好奇心に負けたのだろうか…今まで黙したまま傍観していたカレンが、その口を開いた。
朱桜「悪戯に戦闘の規模を拡げないように、最低限の範囲で収拾を付けるための措置…なの」
しかし…朱桜の口からカレンの問いに返されたのは…その概要のみ。
詳細までは明かされない事に対し、カレンは今一つ納得が行かない様子だったが…そ以上の事を無理に聞き出せないであろう事も、理解出来ていたらしい。
カレン「教えたく無いのか、教えない方が良いのか判らないけど…多分、ここで私が粘っても時間の無駄になりそうって事は判ったわ」
こうして…渋々ながらもカレンは引き下がり、時間に追われた俺達は、朱桜の部屋…16号室を後にする事になった。
朱桜「張本人なんて言われると、諸悪の根源みたいで心外なの」
16号室…住人達の間では、開かずの間として有名な部屋。この部屋に訪れた俺達を、最初に迎えたのは…そんな言葉だった。
俺「ルールでは…リーディングは阻害されてるんじゃ無かったのか?」
朱桜「私は結界から除外するようにベリルちゃんに頼んであるから、阻害される事は無いの。けど…今回の話は、それとはまた別の理由があるの」
真っ白な部屋に、真っ白な家具……その中央で、これまた真っ白な椅子に座る真っ白な服を着た真っ白な少女。
言葉にすると真っ白ばかり…真っ白でゲシュタルト崩壊を起こしそうなその景色の中で、俺達は言葉を連ねる。
俺「だったら、よっぽど耳が良いのか…それとも…」
朱桜「予め知って居たの。勿論ここに来た用件も知っているから…特別に許可をあげるの」
俺「成る程…そいつは話が早くて助かる。ありがとな」
朱桜「ただし…形式だから一応忠告しておくの。自分の分を弁えず、不相応な領域に足を踏み入れるなら…」
俺「命を始め、ありとあらゆる事態を保障出来ない…だろ?あと、それとは別で頼みがあるんだが…」
朱桜「理央ちゃんと空ちゃんの事なら判ってるの。貴方達みたいに自分から踏み込まない限りは、ルールに則って安全を保障するから安心して欲しいの」
俺「そっか、ありがとう。それを聞いて安心した」
朱桜の言葉に俺は安堵し、目を閉じて深呼吸をする。
目下の心配は、消え去った。しかし…当事者てある俺とカレンに関してはその限りでは無い事を、確認する事にもなった。
一抹の不安を胸に残しながら、俺は再び朱桜に向き直り…話をその先へと進めて行く。
俺「それで…あんたには…」
朱桜「朱桜ちゃんって呼んで欲しいの」
俺「んじゃ、えっと…朱桜ちゃんには…この先の未来が見えてるのか?」
朱桜「この先起こりうる可能性は、全部視えているの」
俺「全部…か。それじゃぁ聞きたいんだが………その中に、俺達全員…誰一人命を落とさずに迎えられる未来はあるか?」
朱桜「あるけれど…ここまで来てしまった以上、それの未来はは極々少数しか残って居ないの。それこそ、前回よりもずっと少ない割合…なの」
俺「そっか………」
可能性は0では無い。気休め程度にしかならないが、逆にいえば気休め程度にはなった。
朱桜の言葉から、進むべき先…目標を定め……不安を押しのけるだけの決意を胸に、踏み出そうとした…その時……
カレン「あの…ちょっと良い?総統やニヤ先輩も、しきりに気にしてたんだけど…そもそも、ルールって一体何なの?」
好奇心に負けたのだろうか…今まで黙したまま傍観していたカレンが、その口を開いた。
朱桜「悪戯に戦闘の規模を拡げないように、最低限の範囲で収拾を付けるための措置…なの」
しかし…朱桜の口からカレンの問いに返されたのは…その概要のみ。
詳細までは明かされない事に対し、カレンは今一つ納得が行かない様子だったが…そ以上の事を無理に聞き出せないであろう事も、理解出来ていたらしい。
カレン「教えたく無いのか、教えない方が良いのか判らないけど…多分、ここで私が粘っても時間の無駄になりそうって事は判ったわ」
こうして…渋々ながらもカレンは引き下がり、時間に追われた俺達は、朱桜の部屋…16号室を後にする事になった。
520: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/13(水) 13:30:18.01 ID:wkwQQ1E4o
●嵐吹き荒ぶ空
アパートを発ち…街中に舞い戻った所で、ユズと合流した俺とカレン。
その後、すんなり……とは行かないながらも、経緯を話す事で何とかユズの説得に成功し…戦線に参加する所にまで漕ぎ着け、今に至る。
ユズ「それじゃ…簡単に現状を説明するッスね?」
DCDC達の居る区画からは少し離れた場所…比較的安全な地帯での作戦会議の最中。ユズが広げた地図を、俺達は促されるまま注視する。
ユズ「今回の主犯…ジョージが居るのが、この赤い点…ハーモニカシティの地下シェルターの中。それで、彼を捕まえるのが最終目標なんッスけど…」
俺「この沢山ある黒い点が、DCDC…って事だよな。さすがにこの数をやり過ごすってのは無理がありそうだが…」
ユズ「…と言う訳で、今回は陽動作戦ッス。自分が反対側の駅前の大通りで派手に戦闘をするんで…」
俺「その隙に俺達が…ここから、ジョージの居る地下シェルターに接近及び潜入。速やかに身柄を確保…って所か」
ユズ「そう言う事になるッス。で…無事確保出来たら、自分が正面突破して君達と合流。君達が来た方向に撤退って言う手筈ッス」
カレン「でも、その場合…撤退後に残ったDCDCはどうするの?人を襲ったりしないの?」
ユズ「住民の避難や交通規制は済んでるんで、人的被害を心配する必要は無いッス。なんで…ちょっと後になるけど、別働隊と合流して殲滅になるッスね」
俺「戦力に宛てがあるんなら、その別働隊を待ってから行動……あ、いや。さすがにそこまで待ってたら、ジョージに逃げられる可能性もあるか」
ユズ「それあるッスけど、ジョージがDCDCに殺されてしまうパターンや…DCDCが拡散してしまう可能性があるから、放置は出来ないッス」
カレン「それらの事態に対応するための、陽動作戦でもある…って事ね。ねぇ…その、空も…こう言う危ない戦いをしてたの?」
ユズ「危険…って言う意味では、ソラちゃんは…今回とは比較にならないような死線を何度も潜り抜けて来たッスね」
カレン「………それは何のため?どうして空がそんな事をしなければいけなかったの?」
ユズ「それは、自分の口から言える事じゃ無いッス。ソラちゃんに聞いて…答えて貰えないなら、追求しないであげて欲しいッス」
俺「つまり…それだけの重い物を、空は背負ってるって事なんだな?」
ユズ「…………」
ユズは答えず…無言を以って肯定を返す。
俺「お節介かも知れないけど………今回の件を片付けられたら、少しは軽くしてやれるのかな?」
カレン「軽く出来なくても…私達が一緒に持ってあげる事は出来る筈じゃない?」
そして…そんな俺達のやり取りを見て、ユズは笑みを零した。
ユズ「ソラちゃん…良い友達が出来たみたいッスね」
アパートを発ち…街中に舞い戻った所で、ユズと合流した俺とカレン。
その後、すんなり……とは行かないながらも、経緯を話す事で何とかユズの説得に成功し…戦線に参加する所にまで漕ぎ着け、今に至る。
ユズ「それじゃ…簡単に現状を説明するッスね?」
DCDC達の居る区画からは少し離れた場所…比較的安全な地帯での作戦会議の最中。ユズが広げた地図を、俺達は促されるまま注視する。
ユズ「今回の主犯…ジョージが居るのが、この赤い点…ハーモニカシティの地下シェルターの中。それで、彼を捕まえるのが最終目標なんッスけど…」
俺「この沢山ある黒い点が、DCDC…って事だよな。さすがにこの数をやり過ごすってのは無理がありそうだが…」
ユズ「…と言う訳で、今回は陽動作戦ッス。自分が反対側の駅前の大通りで派手に戦闘をするんで…」
俺「その隙に俺達が…ここから、ジョージの居る地下シェルターに接近及び潜入。速やかに身柄を確保…って所か」
ユズ「そう言う事になるッス。で…無事確保出来たら、自分が正面突破して君達と合流。君達が来た方向に撤退って言う手筈ッス」
カレン「でも、その場合…撤退後に残ったDCDCはどうするの?人を襲ったりしないの?」
ユズ「住民の避難や交通規制は済んでるんで、人的被害を心配する必要は無いッス。なんで…ちょっと後になるけど、別働隊と合流して殲滅になるッスね」
俺「戦力に宛てがあるんなら、その別働隊を待ってから行動……あ、いや。さすがにそこまで待ってたら、ジョージに逃げられる可能性もあるか」
ユズ「それあるッスけど、ジョージがDCDCに殺されてしまうパターンや…DCDCが拡散してしまう可能性があるから、放置は出来ないッス」
カレン「それらの事態に対応するための、陽動作戦でもある…って事ね。ねぇ…その、空も…こう言う危ない戦いをしてたの?」
ユズ「危険…って言う意味では、ソラちゃんは…今回とは比較にならないような死線を何度も潜り抜けて来たッスね」
カレン「………それは何のため?どうして空がそんな事をしなければいけなかったの?」
ユズ「それは、自分の口から言える事じゃ無いッス。ソラちゃんに聞いて…答えて貰えないなら、追求しないであげて欲しいッス」
俺「つまり…それだけの重い物を、空は背負ってるって事なんだな?」
ユズ「…………」
ユズは答えず…無言を以って肯定を返す。
俺「お節介かも知れないけど………今回の件を片付けられたら、少しは軽くしてやれるのかな?」
カレン「軽く出来なくても…私達が一緒に持ってあげる事は出来る筈じゃない?」
そして…そんな俺達のやり取りを見て、ユズは笑みを零した。
ユズ「ソラちゃん…良い友達が出来たみたいッスね」
521: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/13(水) 13:35:13.93 ID:wkwQQ1E4o
●偽りの空から
俺「で、まずは…地下繁華街に入って、駅地下を通過。そしたら今度は北口から出て、ハーモニカシティの地下に向かう…ってのが今回のルートな訳だが…」
カレン「ユズさんが陽動しているとは言え…目視出来る限りでも、まだ少なく無い数のDCDCが残っているわね」
予め打ち合わせた通り…ユズが予想した通りの位置に残存するDCDCを、見据える俺達。
幸いな事に、索敵能力においてはDCDCの方が俺達よりも劣っている様子……と言うよりは、その索敵能力の低さ故に、陽動にかかってない…と言う方が正しい所だろう。
何にせよ、俺達の存在はDCDCに気付かれては居ない。それを確認した上で、俺達は当初の予定通り地下道に入り…地下繁華街を進む事になったのだが……
俺「………くそっ…冗談だろ!?」
地下繁華街を進んで、間もない無い場所…丁度入り口からは死角になっていた場所に、それはあった。
天井から突き出た、円錐状のDCDC……恐らくは地上のDCDCの内の一体の、地下茎にあたるであろう物…それが、俺達を待ち構えて居た。
俺「作戦変更だ、一旦戻って別のルートを……」
予想外の事態…いや、本来ならば予想しておかなければいけない筈だった事態にも関わらず、それを失念していたために招いてしまった事態。
出だしから頓挫しかけた計画を、一旦横に退け…別の道を模索するべく、俺がカレンに声をかけた…その時……
「―――――――」
地下茎DCDCから、耳鳴りのような高周波が響き渡った。
カレン「え………今の何?」
状況を一瞥した限りだが…幸いな事に、俺にもカレンにも音波によるダメージは無し。音で三半規管がやられていると言う訳でも無い。
不発に終わったのか、俺達に有効では無い攻撃だったのか…いずれにしても損害は無し。だが…それ故に、DCDCの行動が腑に落ちない。
俺の中に生まれる、疑念と懸念。そして…その疑念を裏付けるかのように、懸念した物その物が…嫌な足音と共に、俺達に迫り来て居た。
カレン「今度は…足音?これって………私達が来た方角からよね?」
俺「やられた…コイツは警報装置代わりか!」
俺達の背後…階段の中腹辺りで目視出来た、新たなDCDCの姿。そこに現れたのは…ゴリラのような身体に、トカゲのような頭を持ったDCDCだった。
巨体その物が壁となって、俺達が通ってきた通路を塞ぎ…俺達は、実質上退路を絶たれた状態。
このゴリラDCDCに追い付かれる前に、前進するしか無い…が、目の前には地下茎型のDCDCが待ち構えている。
見た目にも判るゴリラDCDCの脅威もさる事ながら、地下茎型DCDCが他にどんな攻撃を持っているのかすら、定かでは無い。
前門の虎、後門の狼。進む事も戻る事も憚られる中…俺は、この事態を打開すべく思考を巡らせる。
しかし……そうこうしている間にも、ゴリラ型のDCDCが俺達の間近まで迫り………
その巨大な腕を振り上げた。
俺は反射的にパトリオットを撃ち込み、その攻撃を阻害しようと試みる……が、効果は無し。手数で補うべく、乱打しても…当然のように変化は無し。
DCDCの攻撃を、俺の力で遮る事は適わない。絶体絶命………迫り来る死を垣間見た、その瞬間……
俺「で、まずは…地下繁華街に入って、駅地下を通過。そしたら今度は北口から出て、ハーモニカシティの地下に向かう…ってのが今回のルートな訳だが…」
カレン「ユズさんが陽動しているとは言え…目視出来る限りでも、まだ少なく無い数のDCDCが残っているわね」
予め打ち合わせた通り…ユズが予想した通りの位置に残存するDCDCを、見据える俺達。
幸いな事に、索敵能力においてはDCDCの方が俺達よりも劣っている様子……と言うよりは、その索敵能力の低さ故に、陽動にかかってない…と言う方が正しい所だろう。
何にせよ、俺達の存在はDCDCに気付かれては居ない。それを確認した上で、俺達は当初の予定通り地下道に入り…地下繁華街を進む事になったのだが……
俺「………くそっ…冗談だろ!?」
地下繁華街を進んで、間もない無い場所…丁度入り口からは死角になっていた場所に、それはあった。
天井から突き出た、円錐状のDCDC……恐らくは地上のDCDCの内の一体の、地下茎にあたるであろう物…それが、俺達を待ち構えて居た。
俺「作戦変更だ、一旦戻って別のルートを……」
予想外の事態…いや、本来ならば予想しておかなければいけない筈だった事態にも関わらず、それを失念していたために招いてしまった事態。
出だしから頓挫しかけた計画を、一旦横に退け…別の道を模索するべく、俺がカレンに声をかけた…その時……
「―――――――」
地下茎DCDCから、耳鳴りのような高周波が響き渡った。
カレン「え………今の何?」
状況を一瞥した限りだが…幸いな事に、俺にもカレンにも音波によるダメージは無し。音で三半規管がやられていると言う訳でも無い。
不発に終わったのか、俺達に有効では無い攻撃だったのか…いずれにしても損害は無し。だが…それ故に、DCDCの行動が腑に落ちない。
俺の中に生まれる、疑念と懸念。そして…その疑念を裏付けるかのように、懸念した物その物が…嫌な足音と共に、俺達に迫り来て居た。
カレン「今度は…足音?これって………私達が来た方角からよね?」
俺「やられた…コイツは警報装置代わりか!」
俺達の背後…階段の中腹辺りで目視出来た、新たなDCDCの姿。そこに現れたのは…ゴリラのような身体に、トカゲのような頭を持ったDCDCだった。
巨体その物が壁となって、俺達が通ってきた通路を塞ぎ…俺達は、実質上退路を絶たれた状態。
このゴリラDCDCに追い付かれる前に、前進するしか無い…が、目の前には地下茎型のDCDCが待ち構えている。
見た目にも判るゴリラDCDCの脅威もさる事ながら、地下茎型DCDCが他にどんな攻撃を持っているのかすら、定かでは無い。
前門の虎、後門の狼。進む事も戻る事も憚られる中…俺は、この事態を打開すべく思考を巡らせる。
しかし……そうこうしている間にも、ゴリラ型のDCDCが俺達の間近まで迫り………
その巨大な腕を振り上げた。
俺は反射的にパトリオットを撃ち込み、その攻撃を阻害しようと試みる……が、効果は無し。手数で補うべく、乱打しても…当然のように変化は無し。
DCDCの攻撃を、俺の力で遮る事は適わない。絶体絶命………迫り来る死を垣間見た、その瞬間……
522: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/13(水) 13:41:23.00 ID:wkwQQ1E4o
●落ちてきた空
背後で何かが煌めき…ゴリラ型DCDCの、トカゲ頭が吹き飛んだ。
空「頭を狙え。一時的だが、行動不能に出来る」
荒いだ呼吸を整える間も惜しみ、声のする方へと首を向ける俺。そして、頭部を失ったゴリラDCDCの…その陰から現れたのは………
空と……見知らぬ三人組だった。
カレン「空!貴女………この件からは手を引いた筈じゃ…」
空「反対はしたが、手を引くって言った覚えは無ぇなぁ」
俺「ってか、後ろの三人組は一体誰なんだ?」
空「あぁ…そー言やぁ初対面なんだよな。この三人は―――」
マーク「俺の名前はマーク…マーク・ノーティ=ガイだ。手前がミラの言ってた、お気に入りで…リア充爆散使いだな?」
エリー「私はエリー、ミドルネームは乙女のヒミツ。あ、マークが言い忘れてたけど…キングダムのメンバーよぉん」
マリオ「………………」
空が紹介するまでも無く、各々の個性が判るような自己紹介を展開する三人。
文脈や経緯から察するに…この三人は…
俺「この三人が…お前の、信頼出来る仲間か?」
マーク「仲間って言うよか、俺は家族だがな。ま、可愛い姪っ子が頭下げて頼んで来たんだ…お前等に手ぇ貸してやんよ」
空「なっ………馬鹿叔父貴!何言ってんだよ!!その事は――」
エリー「そして私は、ミラちゃんの元チームメイト。こっちのマリオは、空ちゃんのの後釜だけどぉ…信用出来るわよぉ?」
俺「そっか…判った、協力に感謝するぜ」
エリー「良いのよぉう………って言うかぁ、あまり無駄話してる余裕は無さそうねぇ。耳を澄ましてご覧なさぁい?」
俺「………え?」
俺は、エリーの言う通り耳を澄ます…と、そこで初めて異音に気付く。聞いた限りでは…その異音は、ネオンのような…振動音のような………いや
俺「虫………まさか、虫型のDCDCの羽音か?それも大量に…こっちに来てるのか!?」
エリー「ご名答ぅん…さ、それじゃ迎撃しましょっ?」
コインを宙に舞わせ、それを自分の周りで周回させ始めるマーク…
手榴弾を両手に持ち、安全ピンを歯で抜き去るエリー…
黙したまま、ただ拳を握るマリオ…
キングダムの三人組が臨戦体制に入り、待ち構える中………地下繁華街の奥から、虫型DCDCの大群が現れた。
背後で何かが煌めき…ゴリラ型DCDCの、トカゲ頭が吹き飛んだ。
空「頭を狙え。一時的だが、行動不能に出来る」
荒いだ呼吸を整える間も惜しみ、声のする方へと首を向ける俺。そして、頭部を失ったゴリラDCDCの…その陰から現れたのは………
空と……見知らぬ三人組だった。
カレン「空!貴女………この件からは手を引いた筈じゃ…」
空「反対はしたが、手を引くって言った覚えは無ぇなぁ」
俺「ってか、後ろの三人組は一体誰なんだ?」
空「あぁ…そー言やぁ初対面なんだよな。この三人は―――」
マーク「俺の名前はマーク…マーク・ノーティ=ガイだ。手前がミラの言ってた、お気に入りで…リア充爆散使いだな?」
エリー「私はエリー、ミドルネームは乙女のヒミツ。あ、マークが言い忘れてたけど…キングダムのメンバーよぉん」
マリオ「………………」
空が紹介するまでも無く、各々の個性が判るような自己紹介を展開する三人。
文脈や経緯から察するに…この三人は…
俺「この三人が…お前の、信頼出来る仲間か?」
マーク「仲間って言うよか、俺は家族だがな。ま、可愛い姪っ子が頭下げて頼んで来たんだ…お前等に手ぇ貸してやんよ」
空「なっ………馬鹿叔父貴!何言ってんだよ!!その事は――」
エリー「そして私は、ミラちゃんの元チームメイト。こっちのマリオは、空ちゃんのの後釜だけどぉ…信用出来るわよぉ?」
俺「そっか…判った、協力に感謝するぜ」
エリー「良いのよぉう………って言うかぁ、あまり無駄話してる余裕は無さそうねぇ。耳を澄ましてご覧なさぁい?」
俺「………え?」
俺は、エリーの言う通り耳を澄ます…と、そこで初めて異音に気付く。聞いた限りでは…その異音は、ネオンのような…振動音のような………いや
俺「虫………まさか、虫型のDCDCの羽音か?それも大量に…こっちに来てるのか!?」
エリー「ご名答ぅん…さ、それじゃ迎撃しましょっ?」
コインを宙に舞わせ、それを自分の周りで周回させ始めるマーク…
手榴弾を両手に持ち、安全ピンを歯で抜き去るエリー…
黙したまま、ただ拳を握るマリオ…
キングダムの三人組が臨戦体制に入り、待ち構える中………地下繁華街の奥から、虫型DCDCの大群が現れた。
523: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/13(水) 13:45:53.76 ID:wkwQQ1E4o
●ありし日の空
エリー「本当はぁ、火炎放射機でも持って来れたら良かったんだけどねぇん…今はこれが精一杯」
まずはエリーが、手榴弾を放り投げ…爆心地の周囲に居たDCDC達は、その爆発により霧散。
閉鎖された空間を吹き荒ぶ爆風と爆煙の中、続くようにマークの放った硬貨が残存戦力を削ぎ……開かれた活路を通って、マリオが前に出る。
俺「待て!DCDCは瘴気を纏ってる。接近戦は―――」
エリー「大丈夫よぉ。マリオの超能力は斥力場…瘴気だって弾いちゃうんだから」
そして………残ったDCDCをマリオが叩き落し、この場に攻め込んで来たDCDCを、瞬く間に殲滅して見せた。
が…それで終わりでは無い。おかわりとばかりに、虫DCDCの増援が俺達の目の前に現れる。
マーク「チッ…次から次へとキリが無ぇなぁオイ!」
空「多分………天井から出っ張ってるアイツが増援を呼んでるんだろうなぁ。まずはアイツをどーにかしねぇと…」
エリー「って言ってもぉ…まずはこの大群をどうにかしないと手出し出来ないのよねぇ」
俺「だったら…俺に考えがある。空…トレインからジェノサイドだ、出来るか?」
空「出来無ぇ事は無いが…お前、正気か!?」
俺「正気じゃ無けりゃぁ、こんなイカれた作戦思い付きやしないだろ」
そう言うか否か、俺は一人飛び出し…虫DCDC達の中心へと突っ込んで行く。
まずは…ヘイト取り。パトリオットで身を守りながら、同時に周囲のDCDCに攻撃を加え…そいつらの注意を俺に向ける。
そしてその隙に、マリオが迂回しながら地下茎DCDCに近付き……すれ違いながら、俺は空の方へと駆け出す。
俺「今だ、やれ!!フレンドリーファイヤは気にすんな!!」
俺の合図と共に…敵味方の区別をする余裕も無いまま、斜め薙ぎに走る無数の金属盤。更に…ワンテンポ遅れて降り注ぐ硬貨の雨。
致命傷になりそうな物だけをパトリオットで弾きながら、金属の雨風の中を突き進み………振り返れば、そこに残るのはDCDCの残骸のみ。
マリオに至っても…地下茎DCDCを引きずり下ろし、行動不能にする事が出来た模様。
少々の痛手を受けはした物の……俺の目論見は見事に成功したらしい。
俺「よし………今の内に突っ切るぞ!!」
僅かに残った虫DCDCをやり過ごし、駅の一階へ続く階段に向かう俺達。
しかし…すんなりと事は運ばないらしい。
俺「くそっ…あのゴリラ野郎。もう再生しやがった!」
エリー「本当はぁ、火炎放射機でも持って来れたら良かったんだけどねぇん…今はこれが精一杯」
まずはエリーが、手榴弾を放り投げ…爆心地の周囲に居たDCDC達は、その爆発により霧散。
閉鎖された空間を吹き荒ぶ爆風と爆煙の中、続くようにマークの放った硬貨が残存戦力を削ぎ……開かれた活路を通って、マリオが前に出る。
俺「待て!DCDCは瘴気を纏ってる。接近戦は―――」
エリー「大丈夫よぉ。マリオの超能力は斥力場…瘴気だって弾いちゃうんだから」
そして………残ったDCDCをマリオが叩き落し、この場に攻め込んで来たDCDCを、瞬く間に殲滅して見せた。
が…それで終わりでは無い。おかわりとばかりに、虫DCDCの増援が俺達の目の前に現れる。
マーク「チッ…次から次へとキリが無ぇなぁオイ!」
空「多分………天井から出っ張ってるアイツが増援を呼んでるんだろうなぁ。まずはアイツをどーにかしねぇと…」
エリー「って言ってもぉ…まずはこの大群をどうにかしないと手出し出来ないのよねぇ」
俺「だったら…俺に考えがある。空…トレインからジェノサイドだ、出来るか?」
空「出来無ぇ事は無いが…お前、正気か!?」
俺「正気じゃ無けりゃぁ、こんなイカれた作戦思い付きやしないだろ」
そう言うか否か、俺は一人飛び出し…虫DCDC達の中心へと突っ込んで行く。
まずは…ヘイト取り。パトリオットで身を守りながら、同時に周囲のDCDCに攻撃を加え…そいつらの注意を俺に向ける。
そしてその隙に、マリオが迂回しながら地下茎DCDCに近付き……すれ違いながら、俺は空の方へと駆け出す。
俺「今だ、やれ!!フレンドリーファイヤは気にすんな!!」
俺の合図と共に…敵味方の区別をする余裕も無いまま、斜め薙ぎに走る無数の金属盤。更に…ワンテンポ遅れて降り注ぐ硬貨の雨。
致命傷になりそうな物だけをパトリオットで弾きながら、金属の雨風の中を突き進み………振り返れば、そこに残るのはDCDCの残骸のみ。
マリオに至っても…地下茎DCDCを引きずり下ろし、行動不能にする事が出来た模様。
少々の痛手を受けはした物の……俺の目論見は見事に成功したらしい。
俺「よし………今の内に突っ切るぞ!!」
僅かに残った虫DCDCをやり過ごし、駅の一階へ続く階段に向かう俺達。
しかし…すんなりと事は運ばないらしい。
俺「くそっ…あのゴリラ野郎。もう再生しやがった!」
524: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/13(水) 13:53:21.18 ID:wkwQQ1E4o
●空に木霊する声
マーク「しゃぁねなぁ、おい………手前ぇ等、先に行け」
俺「何言ってんだ!虫DCDC達もまだ居るんだ、あんた達だけでなんて……」
エリー「良いから行けつってんだろぉぉが!!」
俺「なっ……えっ…?」
一瞬、マークが怒鳴ったのかと思った…が、その声の主はマークでは無くエリーだった。
エリー「貴方達には貴方達の、やるべき事があるんでしょう?だったら先に行きなさい。若者達の踏み台になるのは、私達ロートルの役目なのよぉん?」
俺「………エリー」
マーク「つっても…ここでくたばる気は毛頭無ぇけどな!あくまで先に行かせるだけだ、すぐ追い付くから心配すんな」
空「叔父貴…………」
マリオ「………」
マーク…エリー……そしてマリオまで、三人共親指を立てて俺達を送り出す。
俺達は……俺達は、それに後押しされるように走り出し…駅の北口へ向かう。
誰一人振り返る事無く…ただ我武者羅に前だけを見据え…
不意に………思い出す。
俺『全部…か。その中に、俺達全員…誰一人命を落とさずに迎えられる未来はあるか?』
朱桜『あるけれど…ここまで来てしまった以上、それの未来はは極々少数しか残って居ないの。それこそ、前回よりもずっと少ない割合…なの』
俺「………くそっ…くそっ!!ちくしょおぉぉぉぉぉ!!!」
溢れ出す…説明の付かない感情。
そんな中で…目の前に、俺達を送り出したマーク達の顔が浮かぶ。
俺「何でだよ…ついさっき会ったばっかりだろ!?なのに…何で!!」
そして……気が付けば、俺は大声で叫んでいた。
525: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/15(金) 13:59:04.54 ID:WaaPoV9io
●うつろう空と夢の狭間
俺「――――ッ!?」
空「うぉっ!?な、何だ、急に起き上がってどーした!?」
俺「………え?…あれ?北口は……DCDCは?」
カレン「何?変な夢でも見たの?」
俺「………え?」
駅の北口……ハーモニカシティへと続く道へと向かっていた筈の俺達。
そう…駅の中に居た筈の俺達が、何故か………アパートの、俺の部屋に居た。
俺「えっと…俺達…ジョージを捕まえるために、シティに向かってる最中だったよな?」
カレン「何言ってるの?ジョージなら貴方が倒したんじゃない」
空「ったく…良い加減目ぇ覚ませよな。そら、飯が出来たぞ?」
直前までの記憶と現状が結び付かず、困惑が俺を支配する。
俺「あぁ……って事はあれか?ジョージを捕まえた後で…俺は、DCDCの瘴気か何かの影響で記憶障害でも起こしてるのか?」
カレン「…………」
空「…………」
肯定も否定も無く…無言のまま微笑みを浮かべ、服を脱ぎ始めるカレンと空。
瞬く間に一糸纏わぬ姿となった二人は、俺の服の中へと手を滑らせて来て…
俺「なっ…え?な、何してんだ!?」
空「つまんねー事考えて無ぇで…今日は三人でヤろうぜ?」
カレン「私も…ずっとお預けだったから、もう我慢出来ないの。貴方も私の―――に、入れたいでしょ?」
な二人の姿に、興奮して激しく脈打つ鼓動。
抗えない誘惑を目の前にして、俺は理性の箍を外しかけるが……
その箍が、何かに引っかかって止まるのを感じた。
俺「あれ……?いや、これ………何かおかしくないか?」
俺「――――ッ!?」
空「うぉっ!?な、何だ、急に起き上がってどーした!?」
俺「………え?…あれ?北口は……DCDCは?」
カレン「何?変な夢でも見たの?」
俺「………え?」
駅の北口……ハーモニカシティへと続く道へと向かっていた筈の俺達。
そう…駅の中に居た筈の俺達が、何故か………アパートの、俺の部屋に居た。
俺「えっと…俺達…ジョージを捕まえるために、シティに向かってる最中だったよな?」
カレン「何言ってるの?ジョージなら貴方が倒したんじゃない」
空「ったく…良い加減目ぇ覚ませよな。そら、飯が出来たぞ?」
直前までの記憶と現状が結び付かず、困惑が俺を支配する。
俺「あぁ……って事はあれか?ジョージを捕まえた後で…俺は、DCDCの瘴気か何かの影響で記憶障害でも起こしてるのか?」
カレン「…………」
空「…………」
肯定も否定も無く…無言のまま微笑みを浮かべ、服を脱ぎ始めるカレンと空。
瞬く間に一糸纏わぬ姿となった二人は、俺の服の中へと手を滑らせて来て…
俺「なっ…え?な、何してんだ!?」
空「つまんねー事考えて無ぇで…今日は三人でヤろうぜ?」
カレン「私も…ずっとお預けだったから、もう我慢出来ないの。貴方も私の―――に、入れたいでしょ?」
な二人の姿に、興奮して激しく脈打つ鼓動。
抗えない誘惑を目の前にして、俺は理性の箍を外しかけるが……
その箍が、何かに引っかかって止まるのを感じた。
俺「あれ……?いや、これ………何かおかしくないか?」
526: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/15(金) 14:14:04.60 ID:WaaPoV9io
●空から毀れた夢の欠片
カレン「おかしいって…何が?」
俺のベルトを外し…ファスナーを下ろしながら問い返すカレン
俺「いや、まず…ほら。お前達って、そんなに仲…良かったか?」
空「何言ってんだ?お前だって仲良くしろって言ってたじゃねぇか。それに…前からこうやって三人でヤりたかったんだろ?」
俺の腰に跨り…腰を擦りつけながら答える、空。
何がどうしてこうなったのか…失った空白の時間に何があったのかは判らない。
だが俺は、目の前の誘惑に…快楽に抗う事も出来無い。
カレンが俺の頭を跨ぐ体勢で膝立ちになり、俺はせめてもの抵抗で視線を逸らす。
……と、ほんの一瞬だけ…包丁を持った、理央の姿が見えた気がした。
俺「そうだ…理央は?理央は一体どこに?」
カレン「何?理央も加えたいの?本当…どこまでも貪欲なケダモノね」
空「―――――」
空の下半身が俺の下半身を呑み込み…腰を前後に滑らせながら、何かを喋る…が……何故か……空の声が掠れて聞こえない。
おかしいな…こんな事がどこかで…別のどこかで、同じような事があった気がする。
少し前…………いや、少し先?先って何だ?今は何だ?
それを考えた時…全身の毛穴から汗が噴き出るのを感じた。
俺「俺は今どこに居る?さっきまで見ていたのが予知夢なのか?ここは未来なのか?それとも―――」
カレン「ほら…そんなに貴方が望むから、理央が来ちゃったじゃない」
俺「………え?」
言葉を遮られて、促された先…そこには、カレンの言った通り理央の姿があった。
理央「―――っ……」
抵抗する理央の服を、無理矢理に引き剥がして行くカレンと空。
そうして衣服の殆どを剥ぎ取られた理央は、後ろから空に羽交い絞めにされ…カレンに足を開かされて、その全てを俺に曝け出す。
カレン「さぁ…理央にもしてあげましょう?」
羞恥に染まる顔……それに伴って薄く紅を帯び始める肌。初めて見る…未成熟な理央の身体を前にして、俺は鼓動が激しくなるのを実感する。
カレンの言葉に背中を押され、俺は理央を覆うように身体を傾け………それを聞いた。
理央「だから…だから、言ったんです。苦しみを覚悟する事になるって………」
カレン「おかしいって…何が?」
俺のベルトを外し…ファスナーを下ろしながら問い返すカレン
俺「いや、まず…ほら。お前達って、そんなに仲…良かったか?」
空「何言ってんだ?お前だって仲良くしろって言ってたじゃねぇか。それに…前からこうやって三人でヤりたかったんだろ?」
俺の腰に跨り…腰を擦りつけながら答える、空。
何がどうしてこうなったのか…失った空白の時間に何があったのかは判らない。
だが俺は、目の前の誘惑に…快楽に抗う事も出来無い。
カレンが俺の頭を跨ぐ体勢で膝立ちになり、俺はせめてもの抵抗で視線を逸らす。
……と、ほんの一瞬だけ…包丁を持った、理央の姿が見えた気がした。
俺「そうだ…理央は?理央は一体どこに?」
カレン「何?理央も加えたいの?本当…どこまでも貪欲なケダモノね」
空「―――――」
空の下半身が俺の下半身を呑み込み…腰を前後に滑らせながら、何かを喋る…が……何故か……空の声が掠れて聞こえない。
おかしいな…こんな事がどこかで…別のどこかで、同じような事があった気がする。
少し前…………いや、少し先?先って何だ?今は何だ?
それを考えた時…全身の毛穴から汗が噴き出るのを感じた。
俺「俺は今どこに居る?さっきまで見ていたのが予知夢なのか?ここは未来なのか?それとも―――」
カレン「ほら…そんなに貴方が望むから、理央が来ちゃったじゃない」
俺「………え?」
言葉を遮られて、促された先…そこには、カレンの言った通り理央の姿があった。
理央「―――っ……」
抵抗する理央の服を、無理矢理に引き剥がして行くカレンと空。
そうして衣服の殆どを剥ぎ取られた理央は、後ろから空に羽交い絞めにされ…カレンに足を開かされて、その全てを俺に曝け出す。
カレン「さぁ…理央にもしてあげましょう?」
羞恥に染まる顔……それに伴って薄く紅を帯び始める肌。初めて見る…未成熟な理央の身体を前にして、俺は鼓動が激しくなるのを実感する。
カレンの言葉に背中を押され、俺は理央を覆うように身体を傾け………それを聞いた。
理央「だから…だから、言ったんです。苦しみを覚悟する事になるって………」
527: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/15(金) 14:30:58.94 ID:WaaPoV9io
●崩れ行く空
苦しみ……苦しみって何だ?そうだ…理央は以前も同じ事を言っていた。
前回と同じ苦しみ………それはつまり…
俺「ここは…過去じゃ…無い………未来でも無い。前回があった上で今回を経験して………前回の虚像を見てる…のか?」
それを呟いた瞬間………世界は一変した。
空「やれやれ………気付かなけりゃぁあのまま幸せで居られたってのになぁ…」
胸に風穴の空いた…空……
カレン「でも…今ならまだ戻れるわよ?ほら…理央と一緒にあの頃に戻りましょう?」
あらぬ方向に首が捻じ曲がった…カレン……
二人の姿には、見覚えがあった。そう……二人の姿には見覚えがあった。
何故こんな姿を覚えているのか…何故こんな姿を知っているのか…
記憶の奥底の…固く閉ざして居た筈の扉がギリギリと音を立てて開いて行く。
バスルームを覗き込み………空の姿を見て後退りして行ったカレン。
そうだあの時は………外の手すりが壊れやすくなってて…壊れて………カレンが落ちて………
そもそも…何でカレンは空を見て……あぁ…そうだ………驚いて当然だ、恐怖して当然だ…
あの時………空は死んでいたんだから。
そして…その後のカレンも死んでいた。
俺は二人の死体を、生きていると信じ込んで………
理央「先輩………」
俺「そうか…あの時の理央は、二人がもう死んでいる事を…教えるために、刺して……その後、見せられたのが…現実だったんだな」
理央「……………」
理央からの…無言の肯定。それにより答えを得た俺が、取るべき行動は…決まっていた。
空「なぁ…やり直そうぜ?このまま4人でよぉ」
カレン「そうよ、やり直しましょう?」
俺「あぁ、そうだな…やり直そう。でもな…それは、ここでじゃ無い」
俺「本当に進まなければいけない………現実で…だ!」
俺は…理央の持って居た包丁を手にして、それを…空とカレンに突き刺した。
苦しみ……苦しみって何だ?そうだ…理央は以前も同じ事を言っていた。
前回と同じ苦しみ………それはつまり…
俺「ここは…過去じゃ…無い………未来でも無い。前回があった上で今回を経験して………前回の虚像を見てる…のか?」
それを呟いた瞬間………世界は一変した。
空「やれやれ………気付かなけりゃぁあのまま幸せで居られたってのになぁ…」
胸に風穴の空いた…空……
カレン「でも…今ならまだ戻れるわよ?ほら…理央と一緒にあの頃に戻りましょう?」
あらぬ方向に首が捻じ曲がった…カレン……
二人の姿には、見覚えがあった。そう……二人の姿には見覚えがあった。
何故こんな姿を覚えているのか…何故こんな姿を知っているのか…
記憶の奥底の…固く閉ざして居た筈の扉がギリギリと音を立てて開いて行く。
バスルームを覗き込み………空の姿を見て後退りして行ったカレン。
そうだあの時は………外の手すりが壊れやすくなってて…壊れて………カレンが落ちて………
そもそも…何でカレンは空を見て……あぁ…そうだ………驚いて当然だ、恐怖して当然だ…
あの時………空は死んでいたんだから。
そして…その後のカレンも死んでいた。
俺は二人の死体を、生きていると信じ込んで………
理央「先輩………」
俺「そうか…あの時の理央は、二人がもう死んでいる事を…教えるために、刺して……その後、見せられたのが…現実だったんだな」
理央「……………」
理央からの…無言の肯定。それにより答えを得た俺が、取るべき行動は…決まっていた。
空「なぁ…やり直そうぜ?このまま4人でよぉ」
カレン「そうよ、やり直しましょう?」
俺「あぁ、そうだな…やり直そう。でもな…それは、ここでじゃ無い」
俺「本当に進まなければいけない………現実で…だ!」
俺は…理央の持って居た包丁を手にして、それを…空とカレンに突き刺した。
528: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/15(金) 14:38:38.55 ID:WaaPoV9io
●繋がる心と繋がる空
俺「―――――――ッ!!!??」
張り裂けそうな心臓の脈動に、叩き起こされる身体と意識。反射的に開いた目には、目まぐるしく揺さ振られた世界が映り……
ふと………俺の手を握る存在に気付いた。
俺「え………?理央…?まさか、まだ…」
理央「いえ…今度こそ現実です。先輩…おかえりなさい」
俺「じゃぁ、やっぱり……理央が助けてくれたんだな」
理央「はい…今回は………良かった…良かったです。先輩が…先輩が戻って来てくれて…」
涙ぐみながら語る理央。そうだ…理央はこう言う子なんだ。前回だって、勇気を振り絞って俺の事を救おうとしてくれていたのに、俺は…
そう考えると…胸の奥から無力感と罪悪感が溢れ出す…が、今はそんな感情に飲まれている場合では無いらしい。
涙を拭った理央が俺の手を強く握り、カレンの方に視線を向ける。
理央「テレパスによる精神攻撃を仕掛けて来たDCDCは、無力化しましたが…カレン先輩も空さんも、まだ目を覚まさないんです」
俺「DCDCを…理央がやったのか?」
理央「幸いな事に、複合リーディングのおかげで精神攻撃に対抗出来たので…後は手持ちの武装で何とか…」
俺「そっか…………怖かっただろうに…理央にばっかり辛い思いせて悪いな」
理央「怖かった……ですけど、辛くはありませんでした。私よりも、皆さんの方がずっと辛い目に遭ってますし」
と言って理央は、カレンと空に視線を向け…再び俺に視線を戻す。
俺「それで……二人を起こすには、俺の時みたいに…中に入って、何かきっかけを与えて、叩き起こさないと駄目…って所か?」
理央「………はい。私が中継するので、まずはカレン先輩の思考の中に入って下さい」
理央の指示に従い…俺は、改めて理央とカレンの手を握る。そして、ゆっくりと目を閉じると……
俺………いや、カレンは水の中に居た………かと思えば今度は景色が暗転して、木漏れ日の下。
注射器………錠剤………メス………そして、倒れた両親の血溜まりの中で、幼いカレンが泣きじゃくり………
真っ暗な………閉ざされた部屋にカレンが居た。
俺「―――――――ッ!!!??」
張り裂けそうな心臓の脈動に、叩き起こされる身体と意識。反射的に開いた目には、目まぐるしく揺さ振られた世界が映り……
ふと………俺の手を握る存在に気付いた。
俺「え………?理央…?まさか、まだ…」
理央「いえ…今度こそ現実です。先輩…おかえりなさい」
俺「じゃぁ、やっぱり……理央が助けてくれたんだな」
理央「はい…今回は………良かった…良かったです。先輩が…先輩が戻って来てくれて…」
涙ぐみながら語る理央。そうだ…理央はこう言う子なんだ。前回だって、勇気を振り絞って俺の事を救おうとしてくれていたのに、俺は…
そう考えると…胸の奥から無力感と罪悪感が溢れ出す…が、今はそんな感情に飲まれている場合では無いらしい。
涙を拭った理央が俺の手を強く握り、カレンの方に視線を向ける。
理央「テレパスによる精神攻撃を仕掛けて来たDCDCは、無力化しましたが…カレン先輩も空さんも、まだ目を覚まさないんです」
俺「DCDCを…理央がやったのか?」
理央「幸いな事に、複合リーディングのおかげで精神攻撃に対抗出来たので…後は手持ちの武装で何とか…」
俺「そっか…………怖かっただろうに…理央にばっかり辛い思いせて悪いな」
理央「怖かった……ですけど、辛くはありませんでした。私よりも、皆さんの方がずっと辛い目に遭ってますし」
と言って理央は、カレンと空に視線を向け…再び俺に視線を戻す。
俺「それで……二人を起こすには、俺の時みたいに…中に入って、何かきっかけを与えて、叩き起こさないと駄目…って所か?」
理央「………はい。私が中継するので、まずはカレン先輩の思考の中に入って下さい」
理央の指示に従い…俺は、改めて理央とカレンの手を握る。そして、ゆっくりと目を閉じると……
俺………いや、カレンは水の中に居た………かと思えば今度は景色が暗転して、木漏れ日の下。
注射器………錠剤………メス………そして、倒れた両親の血溜まりの中で、幼いカレンが泣きじゃくり………
真っ暗な………閉ざされた部屋にカレンが居た。
529: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/15(金) 14:46:45.90 ID:WaaPoV9io
●彼女の空はまだ見えない
俺「カレン……」
まず何を話しかければ良いのか判らず…自然と口から飛び出したのは、カレンの名前。
そして、俺の声が届いたのか…カレンは俺の方へと、虚ろな瞳を向けて来る。
俺「カレン…その……大丈夫か?」
もう一度…カレンの名を呼び、その安否を問う。すると今度は、カレンの瞳に光が戻り…
カレン「…え?あ、そうね…………もしかして、向かえに来てくれたの?」
いつもの調子の受け答えで、俺に言葉を返して来た。
俺「えっとまぁ…そんな所だ」
カレン「何よその煮え切らない態度…何か文句でもあるの?」
俺「あ、いや…そう言う訳じゃ無いんだが。ちょっと拍子抜けって言うか…思ってたより、すんなり事が運んだもんだから…」
カレン「何よそれ…良いわよ、どうせ私はチョロインなんだから」
俺「って、どんだけ前の事を持ち出すんだよ!ってか拗ねる所か!?」
カレン「あ、今根に持つ女だって思ったでしょ?言っておくけど、根に持たれるような事を言ったのは貴方の方なんだからね!」
俺「いや、そもそも何でこんな話になってるんだ!?今はそれより大事な事があるだろ」
カレン「あぁ………うん…それもそうよね」
俺「………」
カレン「…………」
大幅に脱線した話の方向を戻し、深呼吸をする俺とカレン。
そして一度、カレンが咳払いをしてから…再び口を開く。
カレン「とりあえず…心配して来てくれたのよね?それはありがとう。私はもう大丈夫だから、戻りましょう?」
俺「あぁ…って、戻るって言ってもどうすれば戻れるんだ?」
カレン「私が目を覚ませば、貴方の意識も戻ってるんじゃない?それじゃ、またあっちで…ね?」
俺「……そう言う物なのか?」
と言っている間に、俺の意識は現実に戻り…目の前には、既に目を覚ましたカレンが座って居た。
カレン「それじゃ…後は空だけね。二人とも…任せたわよ」
理央「……………はい。それでは先輩…目を閉じて下さい」
そうして再び俺は目を閉じ…俺達は、空の記憶………心の中へと入って行った。
俺「カレン……」
まず何を話しかければ良いのか判らず…自然と口から飛び出したのは、カレンの名前。
そして、俺の声が届いたのか…カレンは俺の方へと、虚ろな瞳を向けて来る。
俺「カレン…その……大丈夫か?」
もう一度…カレンの名を呼び、その安否を問う。すると今度は、カレンの瞳に光が戻り…
カレン「…え?あ、そうね…………もしかして、向かえに来てくれたの?」
いつもの調子の受け答えで、俺に言葉を返して来た。
俺「えっとまぁ…そんな所だ」
カレン「何よその煮え切らない態度…何か文句でもあるの?」
俺「あ、いや…そう言う訳じゃ無いんだが。ちょっと拍子抜けって言うか…思ってたより、すんなり事が運んだもんだから…」
カレン「何よそれ…良いわよ、どうせ私はチョロインなんだから」
俺「って、どんだけ前の事を持ち出すんだよ!ってか拗ねる所か!?」
カレン「あ、今根に持つ女だって思ったでしょ?言っておくけど、根に持たれるような事を言ったのは貴方の方なんだからね!」
俺「いや、そもそも何でこんな話になってるんだ!?今はそれより大事な事があるだろ」
カレン「あぁ………うん…それもそうよね」
俺「………」
カレン「…………」
大幅に脱線した話の方向を戻し、深呼吸をする俺とカレン。
そして一度、カレンが咳払いをしてから…再び口を開く。
カレン「とりあえず…心配して来てくれたのよね?それはありがとう。私はもう大丈夫だから、戻りましょう?」
俺「あぁ…って、戻るって言ってもどうすれば戻れるんだ?」
カレン「私が目を覚ませば、貴方の意識も戻ってるんじゃない?それじゃ、またあっちで…ね?」
俺「……そう言う物なのか?」
と言っている間に、俺の意識は現実に戻り…目の前には、既に目を覚ましたカレンが座って居た。
カレン「それじゃ…後は空だけね。二人とも…任せたわよ」
理央「……………はい。それでは先輩…目を閉じて下さい」
そうして再び俺は目を閉じ…俺達は、空の記憶………心の中へと入って行った。
532: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/19(火) 21:47:05.48 ID:K64N9v1Bo
○空に詰まった思い出
親父も…お袋も……俺の両親は、飛行機事故で死んだ。
お袋『また涯の真似なんかして…女の子なんだから、もっと言葉遣いに気を付けなさい』
親父『まぁまぁ…そう言う年頃なんだから、目くじら立てなくても良いだろう』
お袋『もう…あなたがそうやって甘やかすから。この分だと、私達が居ない間にどんな事になるか…』
親父『おいおい、家を空けるのはほんの一週間だけなんだよ?そんな大袈裟な』
お袋『判ってるけど……空、お母さん達が居ない間も良い子にしてないと駄目よ?』
親父『涯叔父さんに迷惑をかけないようにね?それじゃ、行って来るよ』
俺『ったく…心配すんなよ。安心して働いて来い』
葬儀の最中………両親との最後の会話が、頭の中に蘇る。
親戚の奴等は、誰が俺を引き取るかで揉めている。
そういう話くらい本人に聞こえないようにしろよ…と思うが、あえて口には出さない…正直どうでも良い。
………俺は今、空っぽになってる…それを自覚し、消沈する中…不意に空気が震えた。
涯「どいつもこいつも……ふざけた事言ってんじゃ無ぇ!!空は俺が引き取る!」
会場全体に響く怒号の後…俺の目の前に現れたのは、叔父貴だった。
それから俺は、叔父貴の所で世話になり…何一つ不自由の無い生活を送った。
自分の部屋があって、テレビもゲームもあって…PCもあって………
食事も食べさせて貰って…………学校に行かなくても、何も言わないで居てくれて………
何も聞かれない…何も聞かない…
叔父貴がどんな仕事をしているのか…俺が日々何を思って生きているのか…何も聞かないのが暗黙のルールになっていた。
何もする事が無い…何もする気が起きない。
叔父貴が居ない間に、頼まれた訳でも無い家事を淡々とこなし…
余った時間を埋める言い訳のよう、ただゲームを消化するだけの毎日。
学校に行って、面倒な人付き合いをするのは嫌だ………
腫れ物のように扱われ、上辺だけの笑顔を向けられるのが嫌だ………
何かをしても『可愛そうな子』って言うレッテルが前に出て、誰も本当の意味で俺と関わろうとはしない…そんな気がしてならない。
だが……ずっと一人で居ると、どうしようも無い孤独感が襲って来る時がある。
そして、その孤独感を紛らわすために始めたネットゲーム…WOで、あいつと出会った。
親父も…お袋も……俺の両親は、飛行機事故で死んだ。
お袋『また涯の真似なんかして…女の子なんだから、もっと言葉遣いに気を付けなさい』
親父『まぁまぁ…そう言う年頃なんだから、目くじら立てなくても良いだろう』
お袋『もう…あなたがそうやって甘やかすから。この分だと、私達が居ない間にどんな事になるか…』
親父『おいおい、家を空けるのはほんの一週間だけなんだよ?そんな大袈裟な』
お袋『判ってるけど……空、お母さん達が居ない間も良い子にしてないと駄目よ?』
親父『涯叔父さんに迷惑をかけないようにね?それじゃ、行って来るよ』
俺『ったく…心配すんなよ。安心して働いて来い』
葬儀の最中………両親との最後の会話が、頭の中に蘇る。
親戚の奴等は、誰が俺を引き取るかで揉めている。
そういう話くらい本人に聞こえないようにしろよ…と思うが、あえて口には出さない…正直どうでも良い。
………俺は今、空っぽになってる…それを自覚し、消沈する中…不意に空気が震えた。
涯「どいつもこいつも……ふざけた事言ってんじゃ無ぇ!!空は俺が引き取る!」
会場全体に響く怒号の後…俺の目の前に現れたのは、叔父貴だった。
それから俺は、叔父貴の所で世話になり…何一つ不自由の無い生活を送った。
自分の部屋があって、テレビもゲームもあって…PCもあって………
食事も食べさせて貰って…………学校に行かなくても、何も言わないで居てくれて………
何も聞かれない…何も聞かない…
叔父貴がどんな仕事をしているのか…俺が日々何を思って生きているのか…何も聞かないのが暗黙のルールになっていた。
何もする事が無い…何もする気が起きない。
叔父貴が居ない間に、頼まれた訳でも無い家事を淡々とこなし…
余った時間を埋める言い訳のよう、ただゲームを消化するだけの毎日。
学校に行って、面倒な人付き合いをするのは嫌だ………
腫れ物のように扱われ、上辺だけの笑顔を向けられるのが嫌だ………
何かをしても『可愛そうな子』って言うレッテルが前に出て、誰も本当の意味で俺と関わろうとはしない…そんな気がしてならない。
だが……ずっと一人で居ると、どうしようも無い孤独感が襲って来る時がある。
そして、その孤独感を紛らわすために始めたネットゲーム…WOで、あいつと出会った。
533: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/19(火) 22:09:24.95 ID:K64N9v1Bo
○空に沈んだ真実
あいつは…………何て言うか、損するタイプの人間だった。
下心無しで面倒見が良くて…普通に考えれば途中で投げ出しちまうような事にも、最後まで付き合って…
他人の問題だって、本人が諦めた後もずっと抱え込んで……忘れた頃になって解決するような、空気を読めない奴。
俺は…そんなあいつと一緒にいるのが、ゆるくて…気楽で…楽しくて…気が付けば、一緒に居るのが当たり前になっていた。
こんな言い方をあいつにするのは癪だが………多分、あいつに助けられたんだと思う。
以前なら、買出しなんかの仕方無い理由が無ければ避けていた外出………煩わしく思っていた他人との付き合い。
何かある度に、あいつの顔…つってもWOのオーク聖騎士なんだが…それを思い出して………
『もしかしたら、俺でも大丈夫なんじゃ無いか』『俺が関わっても良いんじゃないか』…そう思えるようになっていた。
あと、その時気付いたんだが…両親の葬儀の時に親戚中から拒絶されたのが地味にショックで引き摺っていたらしい。
と言っても、気付いた時にはもうどうでも良い事になってた訳で…だから何だって話だけどな。
………とまぁ、そんなこんなで最低限の社交性を取り戻して…夕飯の買出しに出かけたある日の事だ。
両手に買い物袋を下げて、マンションに戻ろうとした俺の前に……ジョージが現れた。
ジョージ「やぁ、はじめまして。僕の名前はジョージ。いきなりだけど………君の両親の死について、真実を知りたく無いかい?」
俺「…………は?何だ手前ぇ…ちったぁ言葉を選びやがれ。誰に聞いたか知らねぇが…冗談のネタにして許される話だと思ってんのか?」
ジョージ「僕はよく冗談を言うけど、嘘は言わないさ。もし君が嘘だと思うなら、その目で確かめてみれば良い」
そう言ってジョージが差し出したのは、A4サイズの封筒。俺は、不審がりながらもその封筒の中身を取り出し…驚愕した。
俺「何だよこりゃ……ふざけてんのか?中々手が込んでっけど…さっきも言ったよな?冗談のネタにして許されねぇ話だってよぉ!?」
封筒の中に入ってたのは、三枚の写真。
一枚目は…飛行機の中と思われる場所で、真っ黒な化け物が人に襲い掛かっている写真
二枚目は……その化け物がお袋の喉笛に食らい付いている写真
三枚目は………飛行機の天井を、化け物の腕が突き破っている写真…恐らくこれだけは衛星写真。
冗談にしては度が過ぎまくっている。
俺は激怒し、買い物袋を落としてジョージに掴みかかる…が、ジョージはそんな俺の様子にも眉一つ動かさず…言葉を続ける。
ジョージ「信じられないなら、実際に見に行ってみるかい?」
俺「…………はぁっ!?」
そして、俺はジョージに口車に乗せられ………辿り着いた先で、魔法少女…ユズ姐さん達の存在を知る事になった。
あいつは…………何て言うか、損するタイプの人間だった。
下心無しで面倒見が良くて…普通に考えれば途中で投げ出しちまうような事にも、最後まで付き合って…
他人の問題だって、本人が諦めた後もずっと抱え込んで……忘れた頃になって解決するような、空気を読めない奴。
俺は…そんなあいつと一緒にいるのが、ゆるくて…気楽で…楽しくて…気が付けば、一緒に居るのが当たり前になっていた。
こんな言い方をあいつにするのは癪だが………多分、あいつに助けられたんだと思う。
以前なら、買出しなんかの仕方無い理由が無ければ避けていた外出………煩わしく思っていた他人との付き合い。
何かある度に、あいつの顔…つってもWOのオーク聖騎士なんだが…それを思い出して………
『もしかしたら、俺でも大丈夫なんじゃ無いか』『俺が関わっても良いんじゃないか』…そう思えるようになっていた。
あと、その時気付いたんだが…両親の葬儀の時に親戚中から拒絶されたのが地味にショックで引き摺っていたらしい。
と言っても、気付いた時にはもうどうでも良い事になってた訳で…だから何だって話だけどな。
………とまぁ、そんなこんなで最低限の社交性を取り戻して…夕飯の買出しに出かけたある日の事だ。
両手に買い物袋を下げて、マンションに戻ろうとした俺の前に……ジョージが現れた。
ジョージ「やぁ、はじめまして。僕の名前はジョージ。いきなりだけど………君の両親の死について、真実を知りたく無いかい?」
俺「…………は?何だ手前ぇ…ちったぁ言葉を選びやがれ。誰に聞いたか知らねぇが…冗談のネタにして許される話だと思ってんのか?」
ジョージ「僕はよく冗談を言うけど、嘘は言わないさ。もし君が嘘だと思うなら、その目で確かめてみれば良い」
そう言ってジョージが差し出したのは、A4サイズの封筒。俺は、不審がりながらもその封筒の中身を取り出し…驚愕した。
俺「何だよこりゃ……ふざけてんのか?中々手が込んでっけど…さっきも言ったよな?冗談のネタにして許されねぇ話だってよぉ!?」
封筒の中に入ってたのは、三枚の写真。
一枚目は…飛行機の中と思われる場所で、真っ黒な化け物が人に襲い掛かっている写真
二枚目は……その化け物がお袋の喉笛に食らい付いている写真
三枚目は………飛行機の天井を、化け物の腕が突き破っている写真…恐らくこれだけは衛星写真。
冗談にしては度が過ぎまくっている。
俺は激怒し、買い物袋を落としてジョージに掴みかかる…が、ジョージはそんな俺の様子にも眉一つ動かさず…言葉を続ける。
ジョージ「信じられないなら、実際に見に行ってみるかい?」
俺「…………はぁっ!?」
そして、俺はジョージに口車に乗せられ………辿り着いた先で、魔法少女…ユズ姐さん達の存在を知る事になった。
534: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/19(火) 22:28:32.77 ID:K64N9v1Bo
○翼が空に届くまで
俺「あれが………あの写真の化け物か?」
ジョージ「正確には、あの化け物の仲間…因みに、彼等の総称はダークチェイサーデッドコピー…略してDCDCって呼ばれてるよ」
街から離れて、暫く北に向かった先……山の中を双眼鏡で覗き込み、化け物の姿を捉えた所で問い…ジョージがそれに答えた。
両親が事故で死んだのでは無く、殺されたと言う事…その事実を裏付ける証拠がそこにあった。と言うのもかなりの衝撃だったが…それだけでは無い。
DCDC…両親を殺した連中の仲間が、今もこうして生きていて、俺はそれを知らずに居た……
その事に対する怒りと恐怖が入り混じり、言い表せないような感情が俺の中から溢れ出る中…視界の端に、ある物が映った。
俺「って…おい!近くに人が居るぞ!二人…このままじゃ襲われちまう!知らせてやんねーと!」
DCDCの姿を追った先…河原で二人の姿を見付け、俺は叫ぶ。だが、そんな俺とは反対に…ジョージは相変わらず、平然としたまま笑みを浮かべ…
ジョージ「彼等の事なら心配要らないよ」
事も無げに、そう言って除けた
俺「…どう言う事だよ」
ジョージ「見ていれば判るさ」
返された言葉…何かを含んだ物言いに従って、俺は様子を見る事にしたんだが…そこから先は圧巻の一言に尽きた。
金髪の男に飛び掛かる、DCDC。だがその牙が届く前に、その身体がねじれ…圧縮されて…跡形も無く消え去ってしまった。
俺「…何だありゃ…一体何が起きたんだ!?」
ジョージ「彼…金色の竜と呼ばれる存在の特殊能力さ。それと…目を離して良いのかい?まだ終わって無いよ?」
俺「こんじき………何?」
俺は再び双眼鏡を覗き込み、先の現場を注視する…と、そこに現れたのは、新たなDCDCの姿。
そのDCDCが、今度は女の方に襲い掛かるんだが………そいつもまた、今度は…突如巻き上がった炎により、一瞬に焼き尽くされてしまった。
ジョージ「彼女は、魔法少女。君にとって、最も重要な存在になる筈の人物さ」
俺「……は?魔法少女!?何言ってんだ?どう言う事だよ」
ジョージ「それは…直接話してみれば判るんじゃないかな?ほら、丁度こっちに来てるよ」
双眼鏡を覗いた先には、ジョージの言う通りこちらに向かって…文字通り空を飛んでくる魔法少女の姿。
今までの常識を覆すような、その存在を待ち構えながら…俺は唾を飲み込んだ。
俺「あれが………あの写真の化け物か?」
ジョージ「正確には、あの化け物の仲間…因みに、彼等の総称はダークチェイサーデッドコピー…略してDCDCって呼ばれてるよ」
街から離れて、暫く北に向かった先……山の中を双眼鏡で覗き込み、化け物の姿を捉えた所で問い…ジョージがそれに答えた。
両親が事故で死んだのでは無く、殺されたと言う事…その事実を裏付ける証拠がそこにあった。と言うのもかなりの衝撃だったが…それだけでは無い。
DCDC…両親を殺した連中の仲間が、今もこうして生きていて、俺はそれを知らずに居た……
その事に対する怒りと恐怖が入り混じり、言い表せないような感情が俺の中から溢れ出る中…視界の端に、ある物が映った。
俺「って…おい!近くに人が居るぞ!二人…このままじゃ襲われちまう!知らせてやんねーと!」
DCDCの姿を追った先…河原で二人の姿を見付け、俺は叫ぶ。だが、そんな俺とは反対に…ジョージは相変わらず、平然としたまま笑みを浮かべ…
ジョージ「彼等の事なら心配要らないよ」
事も無げに、そう言って除けた
俺「…どう言う事だよ」
ジョージ「見ていれば判るさ」
返された言葉…何かを含んだ物言いに従って、俺は様子を見る事にしたんだが…そこから先は圧巻の一言に尽きた。
金髪の男に飛び掛かる、DCDC。だがその牙が届く前に、その身体がねじれ…圧縮されて…跡形も無く消え去ってしまった。
俺「…何だありゃ…一体何が起きたんだ!?」
ジョージ「彼…金色の竜と呼ばれる存在の特殊能力さ。それと…目を離して良いのかい?まだ終わって無いよ?」
俺「こんじき………何?」
俺は再び双眼鏡を覗き込み、先の現場を注視する…と、そこに現れたのは、新たなDCDCの姿。
そのDCDCが、今度は女の方に襲い掛かるんだが………そいつもまた、今度は…突如巻き上がった炎により、一瞬に焼き尽くされてしまった。
ジョージ「彼女は、魔法少女。君にとって、最も重要な存在になる筈の人物さ」
俺「……は?魔法少女!?何言ってんだ?どう言う事だよ」
ジョージ「それは…直接話してみれば判るんじゃないかな?ほら、丁度こっちに来てるよ」
双眼鏡を覗いた先には、ジョージの言う通りこちらに向かって…文字通り空を飛んでくる魔法少女の姿。
今までの常識を覆すような、その存在を待ち構えながら…俺は唾を飲み込んだ。
536: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/19(火) 22:40:07.73 ID:K64N9v1Bo
○空飛ぶ来訪者
ユズ「君達…さっきの戦いを見てた人達ッスよね?」
俺達の目の前に訪れた、魔法少女…つい先程までDCDCと交戦していた女が、宙に浮きながら問いかけて来る。
歳の頃は…俺と同じか少し上で、14くらいって所だろう。
オレンジ色の髪をポニーテールにしていて………いかにもって感じの、フリフリの服を着込んだ魔法少女だ。
正直な所…色んな事が起こり過ぎて、俺の中で理解が追い付いて無いんだが……さっきのジョージの言葉で、辛うじて足がかりだけは得ていた。
ならこの後、何をするべきか…何をしたいか……それを考えた末、俺の心は決まった。
ユズ「簡単に用件を言わせて貰うと…さっき見た事を、他の人には話さないって約束して欲しいんッスけど…」
俺「そんな事はどうでも良い!何をした?どうやってあいつ等を倒した?!」
ユズ「……えっ?」
俺「俺の両親はあいつ等に殺された…だから、俺もあいつ等を倒したい。仇を討ちたいんだ!!」
ユズ「えっと…ちょっと待って欲しいッス。その話だと、つまり…偶然居合わせた訳じゃ無さそうッスね」
ジョージ「飲み込みが早くて助かるよ。まぁ簡単に言えば…彼女、空を魔法少女として売り込みに来たんだ。話を通して貰えるかい?」
案の定…ジョージからの説明は、大体は俺の予想と同じ。だが………その説明を聞いた魔法少女の方は…
ユズ「駄目ッス」
それを即断…キッパリと拒否した。
俺「何でだよ!理由を聞かせろ!!」
だが、俺の方も引き下がらない………全力で食い下がる。
ユズ「理由は沢山あるッスけど……とりあえず、第一の理由が判らないッスか?」
俺「まさか…復讐って動機が不純だと言い出すんじゃぁ無ぇだろうなぁ?」
ユズ「当然ッス。それに…復讐で力を振るえば、必ずその力で自らも滅ぼすッス」
俺「望む所だ!そんくれぇのリスクも背負わねぇで、こんな事言えっかよ!?」
ユズ「そ…そうで無くても、条件はまだまだあるッスよ!まず最低限の魔力が無ければ無理で…契約者になる獣人も居ないと駄目ッスし…他にも…」
俺「何だよ、言ってみろよ!」
俺の剣幕に押されてか、たじろぎ気味になる魔法少女。それを畳み込むように、俺は詰め寄って行く。
ユズ「空ちゃんは…一般人ッスよね?他の領域の存在を知ってしまっただけでも充分危険なのに…もし踏み込んでしまったら…」
俺「元の生活には戻れなくなる…そう言いたいんだろ?んな事は百も承知だ!」
ジョージ「それに…その話だと、中途半端に色々知ってしまった今の彼女は、危険な立場に居るんじゃないかい?だったら………」
ユズ「そう来るッスか……と言うよりも、最初からそのつもりだった訳ッスね」
ジョージ「さぁ、それはどうだろうね?彼女が決めた事だから僕には何とも…」
ユズ「食えない男ッスね……とりあえず、これ以上は自分の独断じゃ決められないッスから、また後日連絡するッス」
ユズ「君達…さっきの戦いを見てた人達ッスよね?」
俺達の目の前に訪れた、魔法少女…つい先程までDCDCと交戦していた女が、宙に浮きながら問いかけて来る。
歳の頃は…俺と同じか少し上で、14くらいって所だろう。
オレンジ色の髪をポニーテールにしていて………いかにもって感じの、フリフリの服を着込んだ魔法少女だ。
正直な所…色んな事が起こり過ぎて、俺の中で理解が追い付いて無いんだが……さっきのジョージの言葉で、辛うじて足がかりだけは得ていた。
ならこの後、何をするべきか…何をしたいか……それを考えた末、俺の心は決まった。
ユズ「簡単に用件を言わせて貰うと…さっき見た事を、他の人には話さないって約束して欲しいんッスけど…」
俺「そんな事はどうでも良い!何をした?どうやってあいつ等を倒した?!」
ユズ「……えっ?」
俺「俺の両親はあいつ等に殺された…だから、俺もあいつ等を倒したい。仇を討ちたいんだ!!」
ユズ「えっと…ちょっと待って欲しいッス。その話だと、つまり…偶然居合わせた訳じゃ無さそうッスね」
ジョージ「飲み込みが早くて助かるよ。まぁ簡単に言えば…彼女、空を魔法少女として売り込みに来たんだ。話を通して貰えるかい?」
案の定…ジョージからの説明は、大体は俺の予想と同じ。だが………その説明を聞いた魔法少女の方は…
ユズ「駄目ッス」
それを即断…キッパリと拒否した。
俺「何でだよ!理由を聞かせろ!!」
だが、俺の方も引き下がらない………全力で食い下がる。
ユズ「理由は沢山あるッスけど……とりあえず、第一の理由が判らないッスか?」
俺「まさか…復讐って動機が不純だと言い出すんじゃぁ無ぇだろうなぁ?」
ユズ「当然ッス。それに…復讐で力を振るえば、必ずその力で自らも滅ぼすッス」
俺「望む所だ!そんくれぇのリスクも背負わねぇで、こんな事言えっかよ!?」
ユズ「そ…そうで無くても、条件はまだまだあるッスよ!まず最低限の魔力が無ければ無理で…契約者になる獣人も居ないと駄目ッスし…他にも…」
俺「何だよ、言ってみろよ!」
俺の剣幕に押されてか、たじろぎ気味になる魔法少女。それを畳み込むように、俺は詰め寄って行く。
ユズ「空ちゃんは…一般人ッスよね?他の領域の存在を知ってしまっただけでも充分危険なのに…もし踏み込んでしまったら…」
俺「元の生活には戻れなくなる…そう言いたいんだろ?んな事は百も承知だ!」
ジョージ「それに…その話だと、中途半端に色々知ってしまった今の彼女は、危険な立場に居るんじゃないかい?だったら………」
ユズ「そう来るッスか……と言うよりも、最初からそのつもりだった訳ッスね」
ジョージ「さぁ、それはどうだろうね?彼女が決めた事だから僕には何とも…」
ユズ「食えない男ッスね……とりあえず、これ以上は自分の独断じゃ決められないッスから、また後日連絡するッス」
537: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/19(火) 23:01:56.95 ID:K64N9v1Bo
○空への宅配便
俺「そんで…このぬいぐるみが答えって訳か」
あの魔法少女からと思われる…宛名の無い小包。その中に入っていた…額にマジックで『13』と書かれた、羽根の生えた猫のぬいぐるみ。
俺はそのぬいぐるみの尻尾を摘んで持ち上げ、安っぽい造りの顔を見据え………
俺「ガキはぬいぐるみでも抱いて大人しく寝てろって事か?ナメた真似してくれやが―――」
と、愚痴り始めた矢先。不意に…そのぬいぐるみが、瞬きをしたように見えた。
目の錯覚だろうか…そう思って、俺は改めてぬいぐるみを凝視する。だが…そんな俺を待ち構えていたのは、瞬きなんて程度の物では無かった。
ぬいぐるみ「それはちょっと早計じゃ無いかな?と言うか…この体勢で話すのは何だから、離して貰えるかい?」
俺「おわっ!?ぬ、ぬいぐるみが喋った!?」
そう、瞬きどころの話では無い。ぬいぐるみが言葉を発した事に…俺は、思わず驚きの声を上げてしまった。
ぬいぐるみ「ぬいぐるみじゃなくて…ボクは獣人。その辺りの事は聞いて無かったかい?あと、ボクの名前はサーティーンだ。よろしく」
俺「獣人…あぁ、そー言やぁ契約者がどうとか言ってたな。っと…俺は空だ、こっちこそよろしく頼む。んで…この後どうすれば良い?」
サーティーン「まずは適性検査かな。最低限の魔力量を保有しているかのチェックと、魔法その物への適性…後は動機なんかの面接もか」
俺「何ってーか…随分とややこしい手順があるみてぇだな。もっとこう…サクっと、契約を済ませる物かと思ってたんだが…」
サーティーン「手順を省略するのはスカウトの時くらいだよ。と言うかむしろ…キミみたいな売り込みタイプの方が異例なんだから、そこは我慢してよ」
俺「そう言う物なのか?」
サーティーン「そう言う物さ。と言うか今回だって、本当なら検査するまでも無く不採用の筈だったんだから」
俺「んじゃ、何でここまで事が運んでんだ?」
サーティーン「聞いた限りだけど…キミ、DCDCに浅からぬ因縁があるらしいじゃないか」
俺「あぁ………奴等は俺の両親の仇だからな」
サーティーン「と言う事は…もし魔法少女になれなくても…」
俺「自分なりに奴等を追ってた…仇を討とうとしてただろうな」
サーティーン「と言う訳で……下手に放置するよりは、自分達の手元に置いて管理しようって事になったのさ」
俺「成る程な……あ、もし検査で不採用になったらどうなるんだ?」
サーティーン「ルールに則って、キミをDCDCや魔法に関わる因果から保護する…ってのが本来の手順なんだけど…」
俺「さっきも言ったが、指咥えて見てるだけってつもりは無ぇな」
サーティーン「となると…キミの記憶を操作して、魔法少女とDCDC関する事を全部忘れて貰う事になる訳だ」
俺「……最初からそれをしなかったのは、何でだ?」
サーティーン「記憶を操作するって事は、今までの君の人生を否定するって事。つまりは…今のキミと言う存在を消してしまうのに等しい行為なんだ」
俺「…………」
サーティーン「だから…記憶を操作するのは最後の手段。それ以外の方法があるなら、そっちを優先するって訳さ」
俺「そんで…このぬいぐるみが答えって訳か」
あの魔法少女からと思われる…宛名の無い小包。その中に入っていた…額にマジックで『13』と書かれた、羽根の生えた猫のぬいぐるみ。
俺はそのぬいぐるみの尻尾を摘んで持ち上げ、安っぽい造りの顔を見据え………
俺「ガキはぬいぐるみでも抱いて大人しく寝てろって事か?ナメた真似してくれやが―――」
と、愚痴り始めた矢先。不意に…そのぬいぐるみが、瞬きをしたように見えた。
目の錯覚だろうか…そう思って、俺は改めてぬいぐるみを凝視する。だが…そんな俺を待ち構えていたのは、瞬きなんて程度の物では無かった。
ぬいぐるみ「それはちょっと早計じゃ無いかな?と言うか…この体勢で話すのは何だから、離して貰えるかい?」
俺「おわっ!?ぬ、ぬいぐるみが喋った!?」
そう、瞬きどころの話では無い。ぬいぐるみが言葉を発した事に…俺は、思わず驚きの声を上げてしまった。
ぬいぐるみ「ぬいぐるみじゃなくて…ボクは獣人。その辺りの事は聞いて無かったかい?あと、ボクの名前はサーティーンだ。よろしく」
俺「獣人…あぁ、そー言やぁ契約者がどうとか言ってたな。っと…俺は空だ、こっちこそよろしく頼む。んで…この後どうすれば良い?」
サーティーン「まずは適性検査かな。最低限の魔力量を保有しているかのチェックと、魔法その物への適性…後は動機なんかの面接もか」
俺「何ってーか…随分とややこしい手順があるみてぇだな。もっとこう…サクっと、契約を済ませる物かと思ってたんだが…」
サーティーン「手順を省略するのはスカウトの時くらいだよ。と言うかむしろ…キミみたいな売り込みタイプの方が異例なんだから、そこは我慢してよ」
俺「そう言う物なのか?」
サーティーン「そう言う物さ。と言うか今回だって、本当なら検査するまでも無く不採用の筈だったんだから」
俺「んじゃ、何でここまで事が運んでんだ?」
サーティーン「聞いた限りだけど…キミ、DCDCに浅からぬ因縁があるらしいじゃないか」
俺「あぁ………奴等は俺の両親の仇だからな」
サーティーン「と言う事は…もし魔法少女になれなくても…」
俺「自分なりに奴等を追ってた…仇を討とうとしてただろうな」
サーティーン「と言う訳で……下手に放置するよりは、自分達の手元に置いて管理しようって事になったのさ」
俺「成る程な……あ、もし検査で不採用になったらどうなるんだ?」
サーティーン「ルールに則って、キミをDCDCや魔法に関わる因果から保護する…ってのが本来の手順なんだけど…」
俺「さっきも言ったが、指咥えて見てるだけってつもりは無ぇな」
サーティーン「となると…キミの記憶を操作して、魔法少女とDCDC関する事を全部忘れて貰う事になる訳だ」
俺「……最初からそれをしなかったのは、何でだ?」
サーティーン「記憶を操作するって事は、今までの君の人生を否定するって事。つまりは…今のキミと言う存在を消してしまうのに等しい行為なんだ」
俺「…………」
サーティーン「だから…記憶を操作するのは最後の手段。それ以外の方法があるなら、そっちを優先するって訳さ」
538: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/19(火) 23:16:30.22 ID:K64N9v1Bo
○空の中に目覚める物
サーティーン「さて…本当にギリギリのラインだけど、保有魔力量は合格。適性も…光の魔力への適正があるみたいだし…面接も今ので充分かな」
俺「…って事は?」
サーティーン「採用査定は合格って事さ。今日から…キミは晴れて魔法少女だ。区分は、闇を狩る者……狩猟者だね」
俺「よっっっ…しゃっ!!」
鼓動の高鳴りと共に、俺のは笑みを浮かべる。
これであの力を使えるようになる…これでDCDCと戦える。そう思うと、自然と心が昂ぶって行く…が、一つ気になる事があった。
俺「んでも…具体的に、どうやって魔法を使やぁ良いんだ?今ん所、何も変わったよーな感じはしないんだが…」
サーティーン「焦らない焦らない。今からキミとボクの心を繋いで、魔法の使い方を書き込むから……答えてくれ。キミはボクと契約するかい?」
俺「確かめるまでも無ぇ…俺はお前と契約する。そんで、DCDC共をブッ潰す!!」
サーティーン「じゃぁ、契約完了だね。空……心を開いて」
サーティーンの言葉に従い……何となくだが、俺は心を開いてサーティーンの意識を受け入れる。
俺の中に流れ込んで来る、魔法の仕組みと…その行使の方法。
俺が用いるのに適した形のイメージが浮かび、それと同時に………
俺「………いや、待ってくれ。あのヒラヒラの服って必須なのか?」
ユズが着ていた物と同じような…ヒラヒラなコスチュームを着込んだ俺の姿が脳裏に浮かび…思わず抗議の声を上げる。
サーティーン『デザインが気になるなら、ある程度改装出来るけど…DCDCと戦う上では、必須になると考えて欲しいね』
俺「そりゃぁつまり、あぁ見えても防具……って、何だ!?お前の声が直接頭ん中に聞こえるぞ!?」
サーティーン『これは、契約者同士が使えるテレパシーさ。キミも早く使えるようになった方が良いよ?で…話を戻すけど…』
俺「お、おう……」
サーティーン『DCDC達は…活動中、常に瘴気を放っていて…それは、生物にとってとても有害な性質を持っているんだ』
俺「あぁ…それを防ぐために必要な訳だな」
サーティーン「そう言う事さ。さぁ…それじゃぁこの後は、早速だけど実地訓練に入ってみようか」
俺「よっしゃ!望む所だ!!」
こうして俺は魔法少女になって…DCDC達との戦いの日々が始まった。
サーティーン「さて…本当にギリギリのラインだけど、保有魔力量は合格。適性も…光の魔力への適正があるみたいだし…面接も今ので充分かな」
俺「…って事は?」
サーティーン「採用査定は合格って事さ。今日から…キミは晴れて魔法少女だ。区分は、闇を狩る者……狩猟者だね」
俺「よっっっ…しゃっ!!」
鼓動の高鳴りと共に、俺のは笑みを浮かべる。
これであの力を使えるようになる…これでDCDCと戦える。そう思うと、自然と心が昂ぶって行く…が、一つ気になる事があった。
俺「んでも…具体的に、どうやって魔法を使やぁ良いんだ?今ん所、何も変わったよーな感じはしないんだが…」
サーティーン「焦らない焦らない。今からキミとボクの心を繋いで、魔法の使い方を書き込むから……答えてくれ。キミはボクと契約するかい?」
俺「確かめるまでも無ぇ…俺はお前と契約する。そんで、DCDC共をブッ潰す!!」
サーティーン「じゃぁ、契約完了だね。空……心を開いて」
サーティーンの言葉に従い……何となくだが、俺は心を開いてサーティーンの意識を受け入れる。
俺の中に流れ込んで来る、魔法の仕組みと…その行使の方法。
俺が用いるのに適した形のイメージが浮かび、それと同時に………
俺「………いや、待ってくれ。あのヒラヒラの服って必須なのか?」
ユズが着ていた物と同じような…ヒラヒラなコスチュームを着込んだ俺の姿が脳裏に浮かび…思わず抗議の声を上げる。
サーティーン『デザインが気になるなら、ある程度改装出来るけど…DCDCと戦う上では、必須になると考えて欲しいね』
俺「そりゃぁつまり、あぁ見えても防具……って、何だ!?お前の声が直接頭ん中に聞こえるぞ!?」
サーティーン『これは、契約者同士が使えるテレパシーさ。キミも早く使えるようになった方が良いよ?で…話を戻すけど…』
俺「お、おう……」
サーティーン『DCDC達は…活動中、常に瘴気を放っていて…それは、生物にとってとても有害な性質を持っているんだ』
俺「あぁ…それを防ぐために必要な訳だな」
サーティーン「そう言う事さ。さぁ…それじゃぁこの後は、早速だけど実地訓練に入ってみようか」
俺「よっしゃ!望む所だ!!」
こうして俺は魔法少女になって…DCDC達との戦いの日々が始まった。
539: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/19(火) 23:33:06.60 ID:K64N9v1Bo
○移り変わる空
ユズ「どうやら魔法少女になれたみたいッスね。正直な所、まだ複雑な思いは残ってるッスけど…こうなった以上は歓迎するッス」
俺「あぁ…その件はありがとな。っと…そー言やぁ、まだアンタの名前を聞いて無かったよな?」
ユズ「自分の名前はユズ。改めて…これからよろしくお願いするッスよ」
俺「そー言やぁ…今回は俺とユズ姐さんの二人だけか?」
ユズ「今回って言うか…これからは自分と空ちゃんの二人でコンビを組む事になるッス」
俺「あん時に一緒に居た男…確か、金色の竜とか言う奴は?」
ユズ「彼は元々非常用の補充要員ッスから、こうして正式なコンビが出来たからお払い箱ッス」
俺「あぁ………ってか、そうだよな。男なのに魔法少女って訳ぁ無ぇしな」
魔法少女になって…ユズ姐さんとのコンビを組む事になった日の事。
俺「なぁ………俺の力ってあれが限界なのか?何とかして、もっと強くなれ無ぇのか?」
サーティーン「方法が無い訳じゃ無いけど…正直、やらない方が良いね。断言する」
俺「何だよそりゃ…気になるから、とりあえず方法だけ教えろよ」
サーティーン「ま、聞けば君も諦めるか。まず…魔力保有量と魔力供給については覚えてるね?」
俺「魔力保有量は、個人…または個体が蓄積出来る限界値…まぁ、最大MPみたいな物だよな」
サーティーン「そう…これにより、一度に行使出来る出力が決定する。じゃぁ魔力供給は?」
俺「その場…空間に残留する魔力や、他の物体から魔力を直接吸収、または生命活動の上で魔力を生成…だったよな」
サーティーン「で、次に魔法道具」
俺「魔法の術式を道具に刻み込む事で、目的の魔法の構築を補助する物…だっけか?」
サーティーン「その通り。魔法道具に関しては…さっき形成した指輪と腕輪が最もキミに適している形だから、これ以上の向上は望めない」
俺「んじゃやっぱ、魔力保有量か供給量を上げるしか無くなる訳だが…」
サーティーン「キミの魔法は、使用後に魔力を再利用し易い光輪の魔法で…魔力の供給を補う手段はもう既に取っている。じゃぁ残されたのは?」
俺「魔力保有量の増加…最大MPを底上げして、もっと一撃の威力が強い魔法を使えるようになる……」
サーティーン「………って考えるだろう?でも、それは凄く危険な事なんだ」
俺「いや、一回りして最初に戻ってんじゃ無ぇか。良いから、その方法を教えろっての」
サーティーン「…自分自身の改造だよ。細胞レベルで魔力の保有量を増やし、神経もそれに耐えるうる物に作り変えれば…理論的には可能だけど」
ユズ「ほんの少しでもその過程で失敗すれば、ボロボロになって魔法を使えない身体に…下手をすれば廃人になってしまうッス」
俺「何だよユズ姐さん…まるで見て来たみてーだな」
ユズ「ほんのちょっとだけッスけど、ね…それに、ソラちゃんにしても魔法が使えなくなったら困るッスよね?」
俺「確かに…って事は結局、今のままでどうにかするしか無いって事か」
ユズ「そう言う事ッス」
ユズ「どうやら魔法少女になれたみたいッスね。正直な所、まだ複雑な思いは残ってるッスけど…こうなった以上は歓迎するッス」
俺「あぁ…その件はありがとな。っと…そー言やぁ、まだアンタの名前を聞いて無かったよな?」
ユズ「自分の名前はユズ。改めて…これからよろしくお願いするッスよ」
俺「そー言やぁ…今回は俺とユズ姐さんの二人だけか?」
ユズ「今回って言うか…これからは自分と空ちゃんの二人でコンビを組む事になるッス」
俺「あん時に一緒に居た男…確か、金色の竜とか言う奴は?」
ユズ「彼は元々非常用の補充要員ッスから、こうして正式なコンビが出来たからお払い箱ッス」
俺「あぁ………ってか、そうだよな。男なのに魔法少女って訳ぁ無ぇしな」
魔法少女になって…ユズ姐さんとのコンビを組む事になった日の事。
俺「なぁ………俺の力ってあれが限界なのか?何とかして、もっと強くなれ無ぇのか?」
サーティーン「方法が無い訳じゃ無いけど…正直、やらない方が良いね。断言する」
俺「何だよそりゃ…気になるから、とりあえず方法だけ教えろよ」
サーティーン「ま、聞けば君も諦めるか。まず…魔力保有量と魔力供給については覚えてるね?」
俺「魔力保有量は、個人…または個体が蓄積出来る限界値…まぁ、最大MPみたいな物だよな」
サーティーン「そう…これにより、一度に行使出来る出力が決定する。じゃぁ魔力供給は?」
俺「その場…空間に残留する魔力や、他の物体から魔力を直接吸収、または生命活動の上で魔力を生成…だったよな」
サーティーン「で、次に魔法道具」
俺「魔法の術式を道具に刻み込む事で、目的の魔法の構築を補助する物…だっけか?」
サーティーン「その通り。魔法道具に関しては…さっき形成した指輪と腕輪が最もキミに適している形だから、これ以上の向上は望めない」
俺「んじゃやっぱ、魔力保有量か供給量を上げるしか無くなる訳だが…」
サーティーン「キミの魔法は、使用後に魔力を再利用し易い光輪の魔法で…魔力の供給を補う手段はもう既に取っている。じゃぁ残されたのは?」
俺「魔力保有量の増加…最大MPを底上げして、もっと一撃の威力が強い魔法を使えるようになる……」
サーティーン「………って考えるだろう?でも、それは凄く危険な事なんだ」
俺「いや、一回りして最初に戻ってんじゃ無ぇか。良いから、その方法を教えろっての」
サーティーン「…自分自身の改造だよ。細胞レベルで魔力の保有量を増やし、神経もそれに耐えるうる物に作り変えれば…理論的には可能だけど」
ユズ「ほんの少しでもその過程で失敗すれば、ボロボロになって魔法を使えない身体に…下手をすれば廃人になってしまうッス」
俺「何だよユズ姐さん…まるで見て来たみてーだな」
ユズ「ほんのちょっとだけッスけど、ね…それに、ソラちゃんにしても魔法が使えなくなったら困るッスよね?」
俺「確かに…って事は結局、今のままでどうにかするしか無いって事か」
ユズ「そう言う事ッス」
540: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/19(火) 23:52:29.89 ID:K64N9v1Bo
○空に沈む翼
俺は…DCDCを狩り続けた。
………と言っても、奴等も四六時中現れている訳じゃ無く…家事やらネトゲやらをする時間は充分にあった。
目的のために全てを擲って生きる訳では無く…ある程度のゆとりを持って、目標をこなす日々。
ある意味理想的とも言えるそんな日々が、日常になり始めた頃………
俺「手前ぇ…遂に見つけたぜ。ここで会ったが百年目だ…親父とお袋の仇…ここで討たせて貰うぜ!!」
そう………親父とお袋の仇である、あのDCDCに出会った。
サーティーン「駄目だソラ!キミ一人じゃ危ない、ユズの到着を待つんだ!」
俺「いや…こんなヤツは俺一人で充分だ!それに、ユズ姐さんを待ってる間に逃げられちまうかも知れねぇだろ!」
その時の俺は浮ついていた…慢心していた……正直、舐めていた。
ここまでで何匹ものDCDCを屠り、DCDCとの戦いその物に慣れたつもりで…サーティーンの忠告も聞かず、ユズ姐さんの到着も待たず…
いつものように、いつもの手順で両親の仇を分解する……そのつもりで、DCDCに対峙して………
俺「………は?何だこりゃ……一体何が起こってるってん…だ…?」
実際にDCDCを分解して…仇を取った…そう思った直後の事だった。
達成感により弛緩した俺の気の隙を突き、現れた伏兵…新たなDCDC。
だがそのDCDCは、俺には目も暮れず…俺の倒したDCDCを貪り始め……その姿を変貌させて行った。
俺「はっ……はははは…いや、幾ら姿を変えたって関係無ぇ。いつも通り切り刻んでやれば良いだけじゃ無ぇか!!」
俺は指輪と腕輪から光輪を発生させ、それをDCDCに向けて放つ。
いつも通り、それで終わり…いつもならそれで終わりの筈だった。にも関わらず…
俺の放った光輪はDCDCの身体に食い込むが、それを切断するには至らず…途中でかき消えてしまう。
俺「何だこりゃ…一体どう言う事だ!?」
サーティーン「これは多分…光の魔法で倒されたDCDCを取り込む事で、光の魔法に対する耐性を身に付けたんだ」
俺「だったら、どうすりゃ倒せる?」
サーティーン「より強い光の力で押し切るか、別の力…ユズの炎で倒すしか無い。こうなったら一旦退いて…」
俺「そうか…より強ぇ光の力がありゃぁ倒せんだな?」
サーティーン「何を考えて……まさか!?」
俺「なぁに…ぶっつけ本番だが、何とかなるさ。やってやんよ!」
サーティーン「駄目だソラ…止めるんだ!!」
サーティーンの制止を振り切り、俺は自分自身に魔法をかけ……強化する。
ピシリ…と、僅かに何かが欠けるような感覚を覚えるが、強化は成功。
俺の中に、今までとは桁違いの魔力が集まるのを実感しながら…今度はその魔力を使って、DCDCに攻撃を仕掛ける。
俺は…DCDCを狩り続けた。
………と言っても、奴等も四六時中現れている訳じゃ無く…家事やらネトゲやらをする時間は充分にあった。
目的のために全てを擲って生きる訳では無く…ある程度のゆとりを持って、目標をこなす日々。
ある意味理想的とも言えるそんな日々が、日常になり始めた頃………
俺「手前ぇ…遂に見つけたぜ。ここで会ったが百年目だ…親父とお袋の仇…ここで討たせて貰うぜ!!」
そう………親父とお袋の仇である、あのDCDCに出会った。
サーティーン「駄目だソラ!キミ一人じゃ危ない、ユズの到着を待つんだ!」
俺「いや…こんなヤツは俺一人で充分だ!それに、ユズ姐さんを待ってる間に逃げられちまうかも知れねぇだろ!」
その時の俺は浮ついていた…慢心していた……正直、舐めていた。
ここまでで何匹ものDCDCを屠り、DCDCとの戦いその物に慣れたつもりで…サーティーンの忠告も聞かず、ユズ姐さんの到着も待たず…
いつものように、いつもの手順で両親の仇を分解する……そのつもりで、DCDCに対峙して………
俺「………は?何だこりゃ……一体何が起こってるってん…だ…?」
実際にDCDCを分解して…仇を取った…そう思った直後の事だった。
達成感により弛緩した俺の気の隙を突き、現れた伏兵…新たなDCDC。
だがそのDCDCは、俺には目も暮れず…俺の倒したDCDCを貪り始め……その姿を変貌させて行った。
俺「はっ……はははは…いや、幾ら姿を変えたって関係無ぇ。いつも通り切り刻んでやれば良いだけじゃ無ぇか!!」
俺は指輪と腕輪から光輪を発生させ、それをDCDCに向けて放つ。
いつも通り、それで終わり…いつもならそれで終わりの筈だった。にも関わらず…
俺の放った光輪はDCDCの身体に食い込むが、それを切断するには至らず…途中でかき消えてしまう。
俺「何だこりゃ…一体どう言う事だ!?」
サーティーン「これは多分…光の魔法で倒されたDCDCを取り込む事で、光の魔法に対する耐性を身に付けたんだ」
俺「だったら、どうすりゃ倒せる?」
サーティーン「より強い光の力で押し切るか、別の力…ユズの炎で倒すしか無い。こうなったら一旦退いて…」
俺「そうか…より強ぇ光の力がありゃぁ倒せんだな?」
サーティーン「何を考えて……まさか!?」
俺「なぁに…ぶっつけ本番だが、何とかなるさ。やってやんよ!」
サーティーン「駄目だソラ…止めるんだ!!」
サーティーンの制止を振り切り、俺は自分自身に魔法をかけ……強化する。
ピシリ…と、僅かに何かが欠けるような感覚を覚えるが、強化は成功。
俺の中に、今までとは桁違いの魔力が集まるのを実感しながら…今度はその魔力を使って、DCDCに攻撃を仕掛ける。
541: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/20(水) 00:05:04.39 ID:Hj+87zSCo
○空が堕ちる時
用いる魔法その物の変化は無い。だが…その力は今までのそれとは比較にならない程の物だった。
指輪と腕輪から形成した光の輪は、大きさも密度のも段違いに強化されていて…俺は、心を躍らせながらそれを放つ。
…ものの一撃で、DCDCは真っ二つ。俺に対して攻撃を加える事すら無いまま、為す術もなく霧散する。
どうして今まで、こんな簡単な事をしなかったんだろうか…それを悔やんでいる間に、新たに訪れるDCDCの大群。
普段の俺だったならば、尻尾を巻いて逃げ出すような数…だが、今は違う。強化に強化を加え、俺は魔力の限界を更に跳ね上げる。
息をするように光輪を生み出し、踊るような一振りで次々にDCDCが薙ぎ払われて行く。
自分に…力に酔いながら、俺はDCDCを蹴散らす。
更に………更に更に更に更に…力を求め、力を跳ね上げ………遂に、それが訪れた。
俺「―――――ッ!?」
ピシッ……と大きな音を立てながら、俺の中で何かが崩れ去って行く感覚。
俺の手元からは光輪が消え去り…俺の意思に関係無く変身が解けて、元の姿に戻ってしまう。
俺「………え?何だ…こりゃ……」
理解出来無い…のでは無く、理解する事を拒んで居た。
そう……無茶苦茶な強化が祟り、俺は魔力を…魔法を使えなくなっていたんだ。
そして、今この瞬間…それが意味する物は何か……その片鱗を垣間見ただけで足が竦み、目の前が歪み始める。
しかし…そんな俺の都合など奴等には関係無く、奴等…DCDCの一体が俺に襲い来る。
死………それに直面し、恐怖したその瞬間………俺は何かに突き飛ばされた。
何か…いや、それが何かなんてのは考えるまでも無い。
目の前には、俺の代わりにDCDCの牙を受けるサーティーンの姿。
牙が胴体に食い込み、赤い血が口と傷口から溢れ出す。
そして、更に別のDCDCがサーティーンに食らい付き、腕を…足を………そして胴を噛み千切る。
俺「ぁ……あ…ぁぁ……うあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は…恐怖で動けなかった。
目の前でサーティーンが凄惨な目に遭わされていると言うのに、それを助ける事も出来ず…
恐怖に身を震わせて、その光景を目に焼き付ける事しか出来なかった。
サーティーン『ソラ………早く……今の内に…逃げ――――』
言葉の途中で、サーティーンの頭部にDCDCの牙が食い込み……遮られたまま紡がれなかった…それ。
そこで俺は意識を失い………目覚めたのは、ユズ姐さんがDCDCを全滅させた後の事だった。
用いる魔法その物の変化は無い。だが…その力は今までのそれとは比較にならない程の物だった。
指輪と腕輪から形成した光の輪は、大きさも密度のも段違いに強化されていて…俺は、心を躍らせながらそれを放つ。
…ものの一撃で、DCDCは真っ二つ。俺に対して攻撃を加える事すら無いまま、為す術もなく霧散する。
どうして今まで、こんな簡単な事をしなかったんだろうか…それを悔やんでいる間に、新たに訪れるDCDCの大群。
普段の俺だったならば、尻尾を巻いて逃げ出すような数…だが、今は違う。強化に強化を加え、俺は魔力の限界を更に跳ね上げる。
息をするように光輪を生み出し、踊るような一振りで次々にDCDCが薙ぎ払われて行く。
自分に…力に酔いながら、俺はDCDCを蹴散らす。
更に………更に更に更に更に…力を求め、力を跳ね上げ………遂に、それが訪れた。
俺「―――――ッ!?」
ピシッ……と大きな音を立てながら、俺の中で何かが崩れ去って行く感覚。
俺の手元からは光輪が消え去り…俺の意思に関係無く変身が解けて、元の姿に戻ってしまう。
俺「………え?何だ…こりゃ……」
理解出来無い…のでは無く、理解する事を拒んで居た。
そう……無茶苦茶な強化が祟り、俺は魔力を…魔法を使えなくなっていたんだ。
そして、今この瞬間…それが意味する物は何か……その片鱗を垣間見ただけで足が竦み、目の前が歪み始める。
しかし…そんな俺の都合など奴等には関係無く、奴等…DCDCの一体が俺に襲い来る。
死………それに直面し、恐怖したその瞬間………俺は何かに突き飛ばされた。
何か…いや、それが何かなんてのは考えるまでも無い。
目の前には、俺の代わりにDCDCの牙を受けるサーティーンの姿。
牙が胴体に食い込み、赤い血が口と傷口から溢れ出す。
そして、更に別のDCDCがサーティーンに食らい付き、腕を…足を………そして胴を噛み千切る。
俺「ぁ……あ…ぁぁ……うあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は…恐怖で動けなかった。
目の前でサーティーンが凄惨な目に遭わされていると言うのに、それを助ける事も出来ず…
恐怖に身を震わせて、その光景を目に焼き付ける事しか出来なかった。
サーティーン『ソラ………早く……今の内に…逃げ――――』
言葉の途中で、サーティーンの頭部にDCDCの牙が食い込み……遮られたまま紡がれなかった…それ。
そこで俺は意識を失い………目覚めたのは、ユズ姐さんがDCDCを全滅させた後の事だった。
542: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/20(水) 00:22:21.95 ID:Hj+87zSCo
○泣き出した空
ユズ「ソラちゃんの責任じゃ無いッスよ…サーティーンが、自分の意思で…全部判ってて引き受けた事ッスから」
俺「引き受けた………って?」
ユズ「最初の採用査定…あれ、サーティーンが言い出した事なんッスよ」
俺「……え?」
ユズ「ソラちゃんの事、放って置けない…自分が責任を持って受け持つから、チャンスをあげて欲しいって…」
俺「そんな…そんな事、サーティーンは一言も…」
ユズ「あの子は、そう言うの自分から言い出すタイプじゃ無いッスからね…」
俺「……………」
ユズ「だから…ソラちゃんの責任じゃ無いッス。ただ、それでもどうしても責任を感じるって言うなら……」
俺「………どうすれば良い?」
ユズ「もうちょっとだけ…自分を大事にして、少しでも生きる事の意味を考えて欲しいッス。きっとサーティーンもそれを望んでる筈ッス」
俺「ユズ姐さん…俺………俺……」
ユズ「胸…貸すッスよ」
俺「―――――――」
俺は…声にならない嗚咽を上げて泣いた。
声が枯れる程…涙が枯れる程……
泣いて泣いて…泣き尽くした。
それからの俺は……魔力を失った俺は、魔法少女を辞めて普通の民間人に戻った。
本当ならば許されないような特例らしいんだが…俺の知らない所で何かがあったらしい。
以前のように、家事をして…WOをして…
たまに買出しに出て………店先に並んだぬいぐるみに、サーティーンの面影を見て……
サーティーン『ソラ…元気にやってるようだね』
俺「―――――なっ!?」
サーティーンの声が聞こえた…そんな気がした。
ユズ「ソラちゃんの責任じゃ無いッスよ…サーティーンが、自分の意思で…全部判ってて引き受けた事ッスから」
俺「引き受けた………って?」
ユズ「最初の採用査定…あれ、サーティーンが言い出した事なんッスよ」
俺「……え?」
ユズ「ソラちゃんの事、放って置けない…自分が責任を持って受け持つから、チャンスをあげて欲しいって…」
俺「そんな…そんな事、サーティーンは一言も…」
ユズ「あの子は、そう言うの自分から言い出すタイプじゃ無いッスからね…」
俺「……………」
ユズ「だから…ソラちゃんの責任じゃ無いッス。ただ、それでもどうしても責任を感じるって言うなら……」
俺「………どうすれば良い?」
ユズ「もうちょっとだけ…自分を大事にして、少しでも生きる事の意味を考えて欲しいッス。きっとサーティーンもそれを望んでる筈ッス」
俺「ユズ姐さん…俺………俺……」
ユズ「胸…貸すッスよ」
俺「―――――――」
俺は…声にならない嗚咽を上げて泣いた。
声が枯れる程…涙が枯れる程……
泣いて泣いて…泣き尽くした。
それからの俺は……魔力を失った俺は、魔法少女を辞めて普通の民間人に戻った。
本当ならば許されないような特例らしいんだが…俺の知らない所で何かがあったらしい。
以前のように、家事をして…WOをして…
たまに買出しに出て………店先に並んだぬいぐるみに、サーティーンの面影を見て……
サーティーン『ソラ…元気にやってるようだね』
俺「―――――なっ!?」
サーティーンの声が聞こえた…そんな気がした。
543: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/28(木) 17:01:40.16 ID:pnN625Xpo
○空の色が変わり始めて
サーティーン『よくもまぁ…のうのうと生きて居られる物だね』
ぬいぐるみがこちらを向き…サーティーンの声で、俺の心の中に入り込んで来る。
サーティーン『キミのせいでボクは死んだ…なのに、何でキミは生きて居られるんだい?』
俺「サーティーン…なのか…?」
サーティーン『キミも死ぬべきだ…そうだろう?』
周囲のぬいぐるみが次々と俺の方を向き、その声が俺の中で反響して脳を揺らす。
俺「止めてくれ…止めてくれよ!サーティーン!!」
サーティーン『冗談だろう?ボクが止めろって言った時は耳を貸さなかったくせに!』
俺「俺が…俺が悪かった!だから…頼む、止めてくれ!!」
サーティーン『いいや、ボクは止めない…キミが生き続ける限り、ずっとボクの影は付いて回るんだ』
俺「だったら……だったら、俺はどうすりゃ良いんだよ!!」
サーティーン『簡単さ。言っただろう?キミが生きている限り………そう』
俺「あぁ……そうか…俺が死ねば…」
サーティーン『そうそう…判ってるじゃないか』
俺「俺が死ねば…いや、俺があの死んでりゃぁ良かったんだな」
サーティーン『判ったんだったら、もう答えは決まってるよね?』
俺は自分の首に手を伸ばし…その手に力を込める。
俺「ここで俺が死んで…」
サーティーン『清算するんだ…過去をね』
血流が止まり、呼吸が辛くなり…喉の骨がミシミシと悲鳴を上げ始める。だが…それでも俺は手を緩めない。
俺の手の上からサーティーンが腕を重ね、より一層強く首を締め付ける。
俺「そうだ…これで終わ――――」
そして………俺の意識が途切れかけた瞬間………
「っっっっっざけた事言ってんじゃ無ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
知らない…んでも、何故か聞き覚えのある…男の…アイツの叫び声が聞こえた。
サーティーン『よくもまぁ…のうのうと生きて居られる物だね』
ぬいぐるみがこちらを向き…サーティーンの声で、俺の心の中に入り込んで来る。
サーティーン『キミのせいでボクは死んだ…なのに、何でキミは生きて居られるんだい?』
俺「サーティーン…なのか…?」
サーティーン『キミも死ぬべきだ…そうだろう?』
周囲のぬいぐるみが次々と俺の方を向き、その声が俺の中で反響して脳を揺らす。
俺「止めてくれ…止めてくれよ!サーティーン!!」
サーティーン『冗談だろう?ボクが止めろって言った時は耳を貸さなかったくせに!』
俺「俺が…俺が悪かった!だから…頼む、止めてくれ!!」
サーティーン『いいや、ボクは止めない…キミが生き続ける限り、ずっとボクの影は付いて回るんだ』
俺「だったら……だったら、俺はどうすりゃ良いんだよ!!」
サーティーン『簡単さ。言っただろう?キミが生きている限り………そう』
俺「あぁ……そうか…俺が死ねば…」
サーティーン『そうそう…判ってるじゃないか』
俺「俺が死ねば…いや、俺があの死んでりゃぁ良かったんだな」
サーティーン『判ったんだったら、もう答えは決まってるよね?』
俺は自分の首に手を伸ばし…その手に力を込める。
俺「ここで俺が死んで…」
サーティーン『清算するんだ…過去をね』
血流が止まり、呼吸が辛くなり…喉の骨がミシミシと悲鳴を上げ始める。だが…それでも俺は手を緩めない。
俺の手の上からサーティーンが腕を重ね、より一層強く首を締め付ける。
俺「そうだ…これで終わ――――」
そして………俺の意識が途切れかけた瞬間………
「っっっっっざけた事言ってんじゃ無ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
知らない…んでも、何故か聞き覚えのある…男の…アイツの叫び声が聞こえた。
544: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/28(木) 17:15:54.90 ID:pnN625Xpo
○空に落し物
サーティーン「何だい何だい…折角良い所なんだから、邪魔をしないでくれないかな?」
アイツ「寝言は寝てから言いやがれ、この偽者野郎!お前の手口は全部判ってんだよ!」
そして、俺達の前に現れる、アイツ………知らない筈なのに、見覚えのある男の姿。
それにしても………偽者?こいつは何を言っているんだ?
サーティーン『ソラ…こんなヤツの言葉に耳を貸しちゃダメだ。キミはキミのすべき事をすれば良い』
アイツ「そんな偽者野郎の声にこそ、耳を貸すんじゃ無い!」
何なんだ?一体何なんだ?コイツは誰だ?俺の心が生み出した幻か?
サーティーン『そうさ…彼は幻。キミの弱い心が生み出した、存在する筈の無い幻さ。ソラ…自分に負けないで、するべき事をしよう?』
あぁ…やっぱりそうか、都合が良過ぎるもんな。
俺は、再び手に力を込める…が、幻である筈のアイツがまたもそれを邪魔して来る。
アイツ「俺は幻なんかじゃ無い…その偽者野郎にお前が飲み込まれるのを、止めに来たんだ!」
サーティーン『戯言だよ。あんな根拠も証拠も無いような男の言葉を信じはしないだろう?』
アイツ「いや……証拠ならある!!」
何故だろうか…力強く叫ぶアイツの事が、俺の胸を揺さぶる。
サーティーン『だったら見せておくれよ、その証拠とやらをね!』
アイツ「それは………俺自身だ!今ここに居る俺自身が証拠だ!」
サーティーン『…………は?』
サーティーンと同じく、俺も耳を疑った。
サーティーン『コギトエルゴスムでも唱えているのかい…それは提唱者の証明であって、他者への証明にはならないよ?』
コギトエルゴスム…我思う、故に我あり。しかし…それは他人からすれば、哲学的ゾンビの戯言。意識を持たない物が、それを演じているようにしか見えない。
だったら、何でそんな事を持ち出したのか……俺は、呆然としながら…つい、アイツの言葉に聞き入ってしまった。
アイツ「何を勘違いしてやがる…俺はそんな哲学的な話なんかして無いんだよ!」
サーティーン『………やれやれ、キミは一体何を言っているんだい?何を言いたいんだい?』
アイツ「空………お前から見て、俺はどんな風に見える?率直な意見を言ってくれ!」
サーティーン「何だい何だい…折角良い所なんだから、邪魔をしないでくれないかな?」
アイツ「寝言は寝てから言いやがれ、この偽者野郎!お前の手口は全部判ってんだよ!」
そして、俺達の前に現れる、アイツ………知らない筈なのに、見覚えのある男の姿。
それにしても………偽者?こいつは何を言っているんだ?
サーティーン『ソラ…こんなヤツの言葉に耳を貸しちゃダメだ。キミはキミのすべき事をすれば良い』
アイツ「そんな偽者野郎の声にこそ、耳を貸すんじゃ無い!」
何なんだ?一体何なんだ?コイツは誰だ?俺の心が生み出した幻か?
サーティーン『そうさ…彼は幻。キミの弱い心が生み出した、存在する筈の無い幻さ。ソラ…自分に負けないで、するべき事をしよう?』
あぁ…やっぱりそうか、都合が良過ぎるもんな。
俺は、再び手に力を込める…が、幻である筈のアイツがまたもそれを邪魔して来る。
アイツ「俺は幻なんかじゃ無い…その偽者野郎にお前が飲み込まれるのを、止めに来たんだ!」
サーティーン『戯言だよ。あんな根拠も証拠も無いような男の言葉を信じはしないだろう?』
アイツ「いや……証拠ならある!!」
何故だろうか…力強く叫ぶアイツの事が、俺の胸を揺さぶる。
サーティーン『だったら見せておくれよ、その証拠とやらをね!』
アイツ「それは………俺自身だ!今ここに居る俺自身が証拠だ!」
サーティーン『…………は?』
サーティーンと同じく、俺も耳を疑った。
サーティーン『コギトエルゴスムでも唱えているのかい…それは提唱者の証明であって、他者への証明にはならないよ?』
コギトエルゴスム…我思う、故に我あり。しかし…それは他人からすれば、哲学的ゾンビの戯言。意識を持たない物が、それを演じているようにしか見えない。
だったら、何でそんな事を持ち出したのか……俺は、呆然としながら…つい、アイツの言葉に聞き入ってしまった。
アイツ「何を勘違いしてやがる…俺はそんな哲学的な話なんかして無いんだよ!」
サーティーン『………やれやれ、キミは一体何を言っているんだい?何を言いたいんだい?』
アイツ「空………お前から見て、俺はどんな風に見える?率直な意見を言ってくれ!」
545: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/28(木) 17:24:05.84 ID:pnN625Xpo
○掬い上げた空
俺「どんな風にって……いきなり現れて、俺の話に突っ込んできて……お節介なヤツ…か?」
アイツに言われたまま…思ったままの事を口に出す。
アイツ「それから?俺の見た目はどうだ?お前好みか?美形か?」
俺「えっと………その…どっかで見た感じはするんだが、普通?いや、どっちかってーと…中の下って感じか?」
続ける言葉も、ありのままの感想。どこかで見たような…既視感の正体は掴めないが……そんな事はどうでも良かったらしい。
俺は…問われた内容に対する率直な答えを返す。
アイツ「………だろ?だから、それがそれが俺の存在の証明だ」
サーティーン『だからそれがどう言う事なのか説明しろって言ってるんだよ!』
アイツ「本っ当…察しの悪いいヤツだな。つまり俺が言ってるのは…だ」
俺「言ってるのは…?」
ディーティーと共に、俺は思わず聞き返す。
そして………
アイツ「空がご都合主義で作り上げた存在なら、こんなダサい男な筈無いだろ!!そう言ってるんだよ!!」
アイツは、親指で自分を指差し…自身満々にそう言い切った。
俺「…………は?」
サーティーン『何だコイツ…本当に何を言っているんだい?』
俺「………は……はは………」
サーティーン『………空?』
馬鹿馬鹿しい…あまりにも馬鹿馬鹿しくて、証拠能力の無いような主張。にも関わらず…それなのに…
俺「はは……はははは……何だよ、何だよそれ」
気が付けば…俺の口からは笑いが毀れて居た。
俺「どんな風にって……いきなり現れて、俺の話に突っ込んできて……お節介なヤツ…か?」
アイツに言われたまま…思ったままの事を口に出す。
アイツ「それから?俺の見た目はどうだ?お前好みか?美形か?」
俺「えっと………その…どっかで見た感じはするんだが、普通?いや、どっちかってーと…中の下って感じか?」
続ける言葉も、ありのままの感想。どこかで見たような…既視感の正体は掴めないが……そんな事はどうでも良かったらしい。
俺は…問われた内容に対する率直な答えを返す。
アイツ「………だろ?だから、それがそれが俺の存在の証明だ」
サーティーン『だからそれがどう言う事なのか説明しろって言ってるんだよ!』
アイツ「本っ当…察しの悪いいヤツだな。つまり俺が言ってるのは…だ」
俺「言ってるのは…?」
ディーティーと共に、俺は思わず聞き返す。
そして………
アイツ「空がご都合主義で作り上げた存在なら、こんなダサい男な筈無いだろ!!そう言ってるんだよ!!」
アイツは、親指で自分を指差し…自身満々にそう言い切った。
俺「…………は?」
サーティーン『何だコイツ…本当に何を言っているんだい?』
俺「………は……はは………」
サーティーン『………空?』
馬鹿馬鹿しい…あまりにも馬鹿馬鹿しくて、証拠能力の無いような主張。にも関わらず…それなのに…
俺「はは……はははは……何だよ、何だよそれ」
気が付けば…俺の口からは笑いが毀れて居た。
546: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/28(木) 17:39:10.09 ID:pnN625Xpo
○空に届く声
俺「自分の証明がダサさって…馬鹿だろ……あり得無ぇだろ…」
アイツ「こんな屁理屈、空じゃ考え付かないだろ?」
俺「おまけに、自分で屁理屈って……あぁ…そうだな。そうだ………こんな馬鹿な事考え付くのは、お前くらいの物だ」
サーティーン『っ………いや、まだだよ!キミが幻じゃ無いとしても、まだ終わって無い!』
アイツ「いいや、これで終わりだ。一旦我を取り戻したんなら、空には判るんだよ」
俺「そう…お前はサーティーンじゃ無ぇ、偽者だ。お前の方こそ…俺が作り出した幻だったんだよな」
サーティーン『…………』
俺「判ってた…判ってたんだよ、サーティーンが考えてた事…全部。んでも、それに甘えるのが怖かったんだ」
サーティーン『その言葉…それは…自分を認めて、受け入れた…そう考えても良いのかな?』
俺「あぁ…多分、そんな所なんだろうな。だから………手前ぇとはここでお別れだ」
サーティーンを真っ直ぐに見据え…俺はそれを告げる
俺「あばよ、サーティン」
景色が光に包まれ…その中に溶けるように消えて行く、サーティーンの姿。
もう二度と、見る事が無かった筈の姿…聞く筈の無かった声…その最後の姿を見据える中……
サーティーン『強くなったね…ソラ』
俺「―――――――!?」
最後の最後で……その声が聞こえた。
俺「………なぁ」
アイツ「あぁ………今のは多分」
そう…そこから先はあえて言葉にする必要は無かった。
俺「さて…そんじゃ現実に戻る前に、ついでだから続きも巻きで見てくか」
アイツ「…良いのか?お前、自分の過去の事はあんまり…」
俺「吹っ切れたから良いんだよ。それに…ここまで見ちまったんなら、途中を飛ばしちまった方が気持ち悪いだろ?」
俺「自分の証明がダサさって…馬鹿だろ……あり得無ぇだろ…」
アイツ「こんな屁理屈、空じゃ考え付かないだろ?」
俺「おまけに、自分で屁理屈って……あぁ…そうだな。そうだ………こんな馬鹿な事考え付くのは、お前くらいの物だ」
サーティーン『っ………いや、まだだよ!キミが幻じゃ無いとしても、まだ終わって無い!』
アイツ「いいや、これで終わりだ。一旦我を取り戻したんなら、空には判るんだよ」
俺「そう…お前はサーティーンじゃ無ぇ、偽者だ。お前の方こそ…俺が作り出した幻だったんだよな」
サーティーン『…………』
俺「判ってた…判ってたんだよ、サーティーンが考えてた事…全部。んでも、それに甘えるのが怖かったんだ」
サーティーン『その言葉…それは…自分を認めて、受け入れた…そう考えても良いのかな?』
俺「あぁ…多分、そんな所なんだろうな。だから………手前ぇとはここでお別れだ」
サーティーンを真っ直ぐに見据え…俺はそれを告げる
俺「あばよ、サーティン」
景色が光に包まれ…その中に溶けるように消えて行く、サーティーンの姿。
もう二度と、見る事が無かった筈の姿…聞く筈の無かった声…その最後の姿を見据える中……
サーティーン『強くなったね…ソラ』
俺「―――――――!?」
最後の最後で……その声が聞こえた。
俺「………なぁ」
アイツ「あぁ………今のは多分」
そう…そこから先はあえて言葉にする必要は無かった。
俺「さて…そんじゃ現実に戻る前に、ついでだから続きも巻きで見てくか」
アイツ「…良いのか?お前、自分の過去の事はあんまり…」
俺「吹っ切れたから良いんだよ。それに…ここまで見ちまったんなら、途中を飛ばしちまった方が気持ち悪いだろ?」
547: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/28(木) 17:58:49.69 ID:pnN625Xpo
●追憶の空
空「さて…どこまで見せたんだっけかな。魔力を失った俺は…魔法少女を辞めて普通の民間人に戻った。多分、この辺りまでだよな」
俺「そうだな」
空「とりあえず両親の仇は討ったし…残りのDCDCも、ユズ姐さんが何とかしてくれると信じてた。んでも…やっぱり煮え切らない物は残ってた」
空「本当にこれで終わったのか…そもそも親父とお袋の乗った飛行機が何でDCDCに襲われたのか…」
ジョージの持って来た写真…空の母親をDCDCが襲った時の写真が、目の前に現れた。
空「そして、その答えは…またもあの野郎…ジョージが持ってきた」
空「親父とお袋…そして叔父貴はキングダムってグループに所属してて…DCDCは、組織に開発された生物兵器だったって事…」
空「組織の構成員がDCDCを輸送中、それを阻止しようとして起きたのが…あの事故………それが事の真相らしい」
空「他にも…キングダムのメンバーになれば超能力を得られると言う事や、それに伴う強制力が無い事なんかを知ったり…」
キングダムの事を空に説明し…勧誘するジョージの姿。
空「あと…組織と戦う事が、両親の意思を継ぐ事…なんて事を考えてた時期もあったんだが…」
空「組織のトップ…総統の首が挿げ変わって、丸ごと体制が変わったもんだから…それも不完全燃焼」
今の総帥…と言っても、今よりも少し若い姿の総帥が…前の総帥を責任追及で失脚させた時の物、と思われる映像が流れる。
空「親父とお袋のため…そう考えて得た超能力も、力の行き場を無くして………何だかもう、色んな物がどうでも良くなってた」
空が、力…超能力を得たと思われる場面。
認識した瞬間に黒く塗り潰されて、記憶したばかりのその姿を思い出す事の出来無い人物……恐らくはこの人物が王と呼ばれる存在だろう。
だが、何故だろうか………俺はこの人物を見た事がある気がする。どこかで見た記憶がある…そんな気がした。
空「で………最終的に行き付いた…ってか逃げ込んだ先が、WO………お前との時間だった」
俺「何だよそれ…俺との時間なんて、別に大層な物じゃ無いだろ?」
空「バーカ………それが良かったんだよ」
空「さて…どこまで見せたんだっけかな。魔力を失った俺は…魔法少女を辞めて普通の民間人に戻った。多分、この辺りまでだよな」
俺「そうだな」
空「とりあえず両親の仇は討ったし…残りのDCDCも、ユズ姐さんが何とかしてくれると信じてた。んでも…やっぱり煮え切らない物は残ってた」
空「本当にこれで終わったのか…そもそも親父とお袋の乗った飛行機が何でDCDCに襲われたのか…」
ジョージの持って来た写真…空の母親をDCDCが襲った時の写真が、目の前に現れた。
空「そして、その答えは…またもあの野郎…ジョージが持ってきた」
空「親父とお袋…そして叔父貴はキングダムってグループに所属してて…DCDCは、組織に開発された生物兵器だったって事…」
空「組織の構成員がDCDCを輸送中、それを阻止しようとして起きたのが…あの事故………それが事の真相らしい」
空「他にも…キングダムのメンバーになれば超能力を得られると言う事や、それに伴う強制力が無い事なんかを知ったり…」
キングダムの事を空に説明し…勧誘するジョージの姿。
空「あと…組織と戦う事が、両親の意思を継ぐ事…なんて事を考えてた時期もあったんだが…」
空「組織のトップ…総統の首が挿げ変わって、丸ごと体制が変わったもんだから…それも不完全燃焼」
今の総帥…と言っても、今よりも少し若い姿の総帥が…前の総帥を責任追及で失脚させた時の物、と思われる映像が流れる。
空「親父とお袋のため…そう考えて得た超能力も、力の行き場を無くして………何だかもう、色んな物がどうでも良くなってた」
空が、力…超能力を得たと思われる場面。
認識した瞬間に黒く塗り潰されて、記憶したばかりのその姿を思い出す事の出来無い人物……恐らくはこの人物が王と呼ばれる存在だろう。
だが、何故だろうか………俺はこの人物を見た事がある気がする。どこかで見た記憶がある…そんな気がした。
空「で………最終的に行き付いた…ってか逃げ込んだ先が、WO………お前との時間だった」
俺「何だよそれ…俺との時間なんて、別に大層な物じゃ無いだろ?」
空「バーカ………それが良かったんだよ」
548: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/28(木) 18:09:22.17 ID:pnN625Xpo
●取り戻した空
空「ってーか、あん時は焦ったぜ。クリスマスイヴ…ハーモニカタワーの最上階に行くって言い出した時」
空「ジョージが何かするってのは聞いてたんだが、その情報を漏洩する訳にも行かねぇし…かと言って、放っちゃぁおけねぇ…」
空「そんな感じで悩んでる間に、お前は飛び出して行っちまって…」
空「んで、後から調べてみたら…これまた仰天。事後情報からだが、お前が組織に所属した事が判って…」
俺「いや…それどうやって知ったんだ?一応機密事項の筈だよな?」
空「お前の口座に不自然な入金がされるようになったから、スパイに頼んで人事の情報なんかを…な」
俺「…今サラっと、変な事言ったな?なぁ?!」
空「で、再会したのはオフ前日のWO…実際にお前と会ったのは、お前も知っての通り…」
俺「お前とのサシオフ…か」
空「お前は待ち合わせに遅れて来て……俺は、お前の事をオーク聖騎士でイメージしてたから内心物凄く驚いて…」
空「更にそこから、お前が俺の事を男だと思ってた事に驚いて憤慨して…仕返しに困らせてやろうとしたら、変なスイッチ入って……」
俺「あー………あん時は本当驚いたよな。ってか、困ってたのは俺だけじゃ無くて…お前もだろ?」
空「まぁな。今思えば…自分でもよくあんな出任せを口にしたり、あんな大胆な事が出来た物だなって思うぜ」
俺「ん?出任せって何の事だ?」
空「……………教えてやんねぇ」
俺「いや、そこは教えろよ!でないと、無理にでも覗き見るぞ?」
空「っ………くそっ…あれだよ、その……………レ 専だとか言った事だ」
俺「あー…あれか。んでも、何であんな事言ったんだ?」
空「そっ………そー言っときゃぁ、遊んでる女だと思って、お前も手ぇ出し易くなるかと思ったんだよ!!」
言わせんなよ恥ずかしい…とでも続きそうな勢いで空が叫ぶ。
俺「いや、遊んでそうだとか い感じは出るけど…逆に手は出し難くなったぞ?レ に男が手ぇ出すのってハードル高いからな!?どういう思考回路だよ!?」
空「マジか!?いや、あん時は…その…お前の近くに別の女の影が見えてたしよぉ…その…お前を俺のモノにしたくて、焦って暴走しちまってたんだ……と思う」
俺「空…お前………」
空「な、何だよ…」
俺「意外と…そう言う可愛い所あるよな」
空「―――――ッ……うるせぇ!!俺の自分語りはこれで終わりだ!とっとと現実に戻るぞ!!」
空は照れ隠しにそう叫び、一方的に話題を討ち切る。
そして………俺は、元居た現実……DCDCとの戦場へと舞い戻った。
空「ってーか、あん時は焦ったぜ。クリスマスイヴ…ハーモニカタワーの最上階に行くって言い出した時」
空「ジョージが何かするってのは聞いてたんだが、その情報を漏洩する訳にも行かねぇし…かと言って、放っちゃぁおけねぇ…」
空「そんな感じで悩んでる間に、お前は飛び出して行っちまって…」
空「んで、後から調べてみたら…これまた仰天。事後情報からだが、お前が組織に所属した事が判って…」
俺「いや…それどうやって知ったんだ?一応機密事項の筈だよな?」
空「お前の口座に不自然な入金がされるようになったから、スパイに頼んで人事の情報なんかを…な」
俺「…今サラっと、変な事言ったな?なぁ?!」
空「で、再会したのはオフ前日のWO…実際にお前と会ったのは、お前も知っての通り…」
俺「お前とのサシオフ…か」
空「お前は待ち合わせに遅れて来て……俺は、お前の事をオーク聖騎士でイメージしてたから内心物凄く驚いて…」
空「更にそこから、お前が俺の事を男だと思ってた事に驚いて憤慨して…仕返しに困らせてやろうとしたら、変なスイッチ入って……」
俺「あー………あん時は本当驚いたよな。ってか、困ってたのは俺だけじゃ無くて…お前もだろ?」
空「まぁな。今思えば…自分でもよくあんな出任せを口にしたり、あんな大胆な事が出来た物だなって思うぜ」
俺「ん?出任せって何の事だ?」
空「……………教えてやんねぇ」
俺「いや、そこは教えろよ!でないと、無理にでも覗き見るぞ?」
空「っ………くそっ…あれだよ、その……………レ 専だとか言った事だ」
俺「あー…あれか。んでも、何であんな事言ったんだ?」
空「そっ………そー言っときゃぁ、遊んでる女だと思って、お前も手ぇ出し易くなるかと思ったんだよ!!」
言わせんなよ恥ずかしい…とでも続きそうな勢いで空が叫ぶ。
俺「いや、遊んでそうだとか い感じは出るけど…逆に手は出し難くなったぞ?レ に男が手ぇ出すのってハードル高いからな!?どういう思考回路だよ!?」
空「マジか!?いや、あん時は…その…お前の近くに別の女の影が見えてたしよぉ…その…お前を俺のモノにしたくて、焦って暴走しちまってたんだ……と思う」
俺「空…お前………」
空「な、何だよ…」
俺「意外と…そう言う可愛い所あるよな」
空「―――――ッ……うるせぇ!!俺の自分語りはこれで終わりだ!とっとと現実に戻るぞ!!」
空は照れ隠しにそう叫び、一方的に話題を討ち切る。
そして………俺は、元居た現実……DCDCとの戦場へと舞い戻った。
549: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/28(木) 18:29:13.50 ID:pnN625Xpo
●空の目覚め
空「その…何だ。色々と迷惑かけちまったみてぇだな」
俺「どっちかってーと、俺もかけた側だから気にするな」
カレン「そう言えば、理央から聞いたんだけど……人に散々言うだけ言っておいて、何よもう…貴方も不幸設定持ってるんじゃない」
空「いや、人の過去を設定とか言うなよ」
カレン「貴女が言い出した言い回しよね!?」
空「ちっ、覚えてたか」
いつもの調子に戻り…相変わらずのやりとりを繰り広げるカレンと空。
そんな中、俺は理央に視線を下ろし…
俺「しっかし…理央が来てくれて無かったら、俺達あそこで確実に全滅してたよな」
カレン「本当…全員、見事なまでにあのDCDCにしてやられてものね」
改めて…理央が俺達にとって必要不可欠な存在である事を実感した。
空「にしてもよぉ…嬢ちゃんは、何であの場に居たんだ?確かDCDCとの戦闘には反対してたよなぁ?」
理央「空さんに先を越されてしまいましたが…私も、反対しただけで行かないとは言って居ません。規則通りの手順を踏んで来たんです」
理央は少し頬を膨らませてから語り、ホルスターから銃…ベレッタM84を取り出す。先に言って居た武装とは、これの事だろう。
空「ったく…後出しで俺の見せ場を奪いやがって。こーなったら………」
理央と張り合いながら、そう言って俺の方を向く空。そして…不意に意味深な笑みを浮かべ……
空「この戦いから生きて帰れたら…あの部屋で俺に対するクレアボヤント、解禁してやんよ」
これまた、騒動の火種になりそうな事を口走ってくれやがった。
俺「いや…生きて帰れたらとか、死亡フラグみたいな事口走ってんじゃ無ぇよ!」
とりあえず俺は、お約束とも言える突っ込みを入れる。
が…この面子を前にして、その時点で話が締め括られる筈は無く…
空「その…何だ。色々と迷惑かけちまったみてぇだな」
俺「どっちかってーと、俺もかけた側だから気にするな」
カレン「そう言えば、理央から聞いたんだけど……人に散々言うだけ言っておいて、何よもう…貴方も不幸設定持ってるんじゃない」
空「いや、人の過去を設定とか言うなよ」
カレン「貴女が言い出した言い回しよね!?」
空「ちっ、覚えてたか」
いつもの調子に戻り…相変わらずのやりとりを繰り広げるカレンと空。
そんな中、俺は理央に視線を下ろし…
俺「しっかし…理央が来てくれて無かったら、俺達あそこで確実に全滅してたよな」
カレン「本当…全員、見事なまでにあのDCDCにしてやられてものね」
改めて…理央が俺達にとって必要不可欠な存在である事を実感した。
空「にしてもよぉ…嬢ちゃんは、何であの場に居たんだ?確かDCDCとの戦闘には反対してたよなぁ?」
理央「空さんに先を越されてしまいましたが…私も、反対しただけで行かないとは言って居ません。規則通りの手順を踏んで来たんです」
理央は少し頬を膨らませてから語り、ホルスターから銃…ベレッタM84を取り出す。先に言って居た武装とは、これの事だろう。
空「ったく…後出しで俺の見せ場を奪いやがって。こーなったら………」
理央と張り合いながら、そう言って俺の方を向く空。そして…不意に意味深な笑みを浮かべ……
空「この戦いから生きて帰れたら…あの部屋で俺に対するクレアボヤント、解禁してやんよ」
これまた、騒動の火種になりそうな事を口走ってくれやがった。
俺「いや…生きて帰れたらとか、死亡フラグみたいな事口走ってんじゃ無ぇよ!」
とりあえず俺は、お約束とも言える突っ込みを入れる。
が…この面子を前にして、その時点で話が締め括られる筈は無く…
550: ◆TPk5R1h7Ng 2016/01/28(木) 18:31:56.57 ID:pnN625Xpo
カレン「クレアボヤントの解禁って…それってつまり………え?ちょっと…何て事言ってるの!?」
空「今までは……外でやったら、組織や理央にばれるから出来無くて…自分の部屋じゃぁ、相手が許可しなけりゃいけねぇから出来なかった」
理央「でも…許可されたなら、見放題。服なんて物が意味を成さず、文字通り一糸纏わぬ姿を先輩に晒す…と言う事ですよね」
カレン「しかも…見られる方は服を着てても見られる訳だから、彼がいつ見てるかも判らない…」
理央「…最低ですね」
カレン「最低」
空「最も低いな」
で…何故かその矛先が俺に向く。はい、ここまで予定調和でした。
俺「いや待て!何で俺が言い出したような流れになってんの!?ってか、本来の目的忘れて無いか!?」
そして俺からの反論。だが三人娘は、全員が空のように笑みを浮かべ…
カレン「判ってるわよ。第一…例え許可されても、貴方じゃ実行する勇気も無いでしょう?」
空「俺と二人っきりの時だって、手ぇ出すどころか風呂も一人でしてる時も覗きに来なかったしなぁ」
理央「それに…先輩から私達への許可を頂ければ、気の迷いから出来心で…なんて、万が一の事態も防げますしね」
反論の余地すら無い程の、酷い理解されっぷりをぶちまけられた。
俺「お前等………これからジョージとの決戦だってのに、俺のモチベーション下げてどうするんだよ」
空「大丈夫だ、お前のモチベーションを生贄にして俺達のモチベーションは回復したかんな」
カレン「そうそう…尊い犠牲になれたんだからそこは誇りなさいよね?」
理央「それに…空さんのそれとは違いますが、全部終わったら私とカレン先輩からもご褒美は考えて居ますから。やる気を出して下さい」
こんな流れでご褒美と言われても…正直な所、警戒心の方が圧倒的に大きい。
………が、それでもほんの僅かの可能性に賭けてしまうのが男の悲しい性だ。
俺「あぁぁ、くそっ!!乗せられてやろうじゃ無いか!行くぞ、お前達!!!」
こうして俺のモチベーションとテンションは無理矢理跳ね上げられ…
半ばヤケクソになりながら、ジョージの待つ地下シェルターへの先陣を切る事となったのだった。
空「今までは……外でやったら、組織や理央にばれるから出来無くて…自分の部屋じゃぁ、相手が許可しなけりゃいけねぇから出来なかった」
理央「でも…許可されたなら、見放題。服なんて物が意味を成さず、文字通り一糸纏わぬ姿を先輩に晒す…と言う事ですよね」
カレン「しかも…見られる方は服を着てても見られる訳だから、彼がいつ見てるかも判らない…」
理央「…最低ですね」
カレン「最低」
空「最も低いな」
で…何故かその矛先が俺に向く。はい、ここまで予定調和でした。
俺「いや待て!何で俺が言い出したような流れになってんの!?ってか、本来の目的忘れて無いか!?」
そして俺からの反論。だが三人娘は、全員が空のように笑みを浮かべ…
カレン「判ってるわよ。第一…例え許可されても、貴方じゃ実行する勇気も無いでしょう?」
空「俺と二人っきりの時だって、手ぇ出すどころか風呂も一人でしてる時も覗きに来なかったしなぁ」
理央「それに…先輩から私達への許可を頂ければ、気の迷いから出来心で…なんて、万が一の事態も防げますしね」
反論の余地すら無い程の、酷い理解されっぷりをぶちまけられた。
俺「お前等………これからジョージとの決戦だってのに、俺のモチベーション下げてどうするんだよ」
空「大丈夫だ、お前のモチベーションを生贄にして俺達のモチベーションは回復したかんな」
カレン「そうそう…尊い犠牲になれたんだからそこは誇りなさいよね?」
理央「それに…空さんのそれとは違いますが、全部終わったら私とカレン先輩からもご褒美は考えて居ますから。やる気を出して下さい」
こんな流れでご褒美と言われても…正直な所、警戒心の方が圧倒的に大きい。
………が、それでもほんの僅かの可能性に賭けてしまうのが男の悲しい性だ。
俺「あぁぁ、くそっ!!乗せられてやろうじゃ無いか!行くぞ、お前達!!!」
こうして俺のモチベーションとテンションは無理矢理跳ね上げられ…
半ばヤケクソになりながら、ジョージの待つ地下シェルターへの先陣を切る事となったのだった。
551: ◆TPk5R1h7Ng 2016/02/17(水) 02:47:22.53 ID:zOAdX3g1o
●空を遮る壁の下
俺「暗証番号は…判りそうか?」
理央「問題ありません、読み取れます」
DCDC達をやり過ごし……地下駐車場の隠し通路を通って、シェルターの扉の前へと辿り着いた俺達。
扉の開錠には、24桁の暗号が必要だったが…理央のリーディングにより、滞り無くこれを突破。
開いた扉の先には、エントランスらしき空間が広がって居たのだが…
あろう事か、その空間…シェルターの内部にも、DCDCが…蟹とも蜘蛛とも付かないような姿の、それが待ち構えて居た。
俺「おいおい…冗談だろ。シェルター内にDCDCを放つなんて…ジョージの野郎、逃げられないと悟って自棄を起こしたか?」
理央「いえ…そう言う訳では無さそうです」
カレン「…って言うと?」
理央「ジョージはこの先の扉の向こうで…人質を取って立て篭もって居るようです」
俺「成る程…な。って事はつまり…このDCDCも、俺達が来るのも織り込み済で仕込んどいた…って訳か」
と言い終えるか否か…俺達に向けて突進を始める、目の前のDCDC。
俺達は、各々が別の方向に跳んでそれを避け…各自の判断により、奥の扉に向けて走り出す。
俺「皆、撒けそうか!?」
まず一番最初に、扉の前に辿り着いたのは…俺。
俺は振り向きざまに、皆に問いかけ…その援護を行うべく、DCDCの軸足に向けてパトリオットを放つ。
DCDCが体勢を崩し…その隙を突いて、扉へと駆け寄る皆。まず、空が俺の横を通り過ぎ……後はカレンと、カレンに手を引かれる理央を残すのみ。
緩慢な動きで向き直るDCDCを背に…あと数歩の所まで迫る二人。俺は二人の到着を迎えるべく、手を伸ばした…その瞬間………
突如、俺とカレン達との間にシャッターが降り………無情にも、その合流を遮ってしまった。
俺「なっ………くそっ!!カレン!理央!無事か!?」
カレン「問題無し…って訳にはいかないみたいだけど、辛うじて無事よ」
理央「多分…ジョージが制御室から操作して、進路を塞いだんだと思います。私とカレン先輩の事は構わず、先輩と空さんは先に行っていて下さい!」
シャッター越しに声を響かせ、俺達は言葉を交わす。
空「んじゃぁ、俺達は制御室に向かうとして…お前達はどうすんだ!?」
カレン「悔しいけど、正面から戦って勝てる相手じゃ無いし……来た道を戻る…くらいの手しか無いわよね」
俺「逃げたとしても…外まで逃げた所で、外のDCDCと挟み撃ちになるかも知れないんじゃないのか!?」
理央「それに関しては…策があります。とは言え、まずはあのDCDCから逃げきらなければ話は始まりませんけど」
カレン「と言うか……さっきから私達の心配ばっかりしてるけど。どちらかと言うと、危険なのは敵のお腹の中に残された貴方達の方なのよ?判ってる?」
俺「俺達は大丈夫だ、腐っても戦闘型能力者二人だぞ!!でも、二人共…非戦闘じゃないか!」
カレン「心配しないで。貴方にご褒美をあげるまでは、私も理央もちゃんと無事で居るから」
理央「…と言っている間にも、さっきのDCDCがこちらに来ます。会話はここまでです、後は各自で!」
俺「くそっ…皆……必ず逃げ延びてくれよ!?」
俺達の会話を遮るように、DCDCの突撃がシャッターを揺らし…カレン達の足音が、元来た方向へと遠ざかって行く。
攻撃はやり過ごし、とりあえず二人は無事。それを確認した上で、俺達は駆け出し…シェルターの奥へと向かった。
俺「暗証番号は…判りそうか?」
理央「問題ありません、読み取れます」
DCDC達をやり過ごし……地下駐車場の隠し通路を通って、シェルターの扉の前へと辿り着いた俺達。
扉の開錠には、24桁の暗号が必要だったが…理央のリーディングにより、滞り無くこれを突破。
開いた扉の先には、エントランスらしき空間が広がって居たのだが…
あろう事か、その空間…シェルターの内部にも、DCDCが…蟹とも蜘蛛とも付かないような姿の、それが待ち構えて居た。
俺「おいおい…冗談だろ。シェルター内にDCDCを放つなんて…ジョージの野郎、逃げられないと悟って自棄を起こしたか?」
理央「いえ…そう言う訳では無さそうです」
カレン「…って言うと?」
理央「ジョージはこの先の扉の向こうで…人質を取って立て篭もって居るようです」
俺「成る程…な。って事はつまり…このDCDCも、俺達が来るのも織り込み済で仕込んどいた…って訳か」
と言い終えるか否か…俺達に向けて突進を始める、目の前のDCDC。
俺達は、各々が別の方向に跳んでそれを避け…各自の判断により、奥の扉に向けて走り出す。
俺「皆、撒けそうか!?」
まず一番最初に、扉の前に辿り着いたのは…俺。
俺は振り向きざまに、皆に問いかけ…その援護を行うべく、DCDCの軸足に向けてパトリオットを放つ。
DCDCが体勢を崩し…その隙を突いて、扉へと駆け寄る皆。まず、空が俺の横を通り過ぎ……後はカレンと、カレンに手を引かれる理央を残すのみ。
緩慢な動きで向き直るDCDCを背に…あと数歩の所まで迫る二人。俺は二人の到着を迎えるべく、手を伸ばした…その瞬間………
突如、俺とカレン達との間にシャッターが降り………無情にも、その合流を遮ってしまった。
俺「なっ………くそっ!!カレン!理央!無事か!?」
カレン「問題無し…って訳にはいかないみたいだけど、辛うじて無事よ」
理央「多分…ジョージが制御室から操作して、進路を塞いだんだと思います。私とカレン先輩の事は構わず、先輩と空さんは先に行っていて下さい!」
シャッター越しに声を響かせ、俺達は言葉を交わす。
空「んじゃぁ、俺達は制御室に向かうとして…お前達はどうすんだ!?」
カレン「悔しいけど、正面から戦って勝てる相手じゃ無いし……来た道を戻る…くらいの手しか無いわよね」
俺「逃げたとしても…外まで逃げた所で、外のDCDCと挟み撃ちになるかも知れないんじゃないのか!?」
理央「それに関しては…策があります。とは言え、まずはあのDCDCから逃げきらなければ話は始まりませんけど」
カレン「と言うか……さっきから私達の心配ばっかりしてるけど。どちらかと言うと、危険なのは敵のお腹の中に残された貴方達の方なのよ?判ってる?」
俺「俺達は大丈夫だ、腐っても戦闘型能力者二人だぞ!!でも、二人共…非戦闘じゃないか!」
カレン「心配しないで。貴方にご褒美をあげるまでは、私も理央もちゃんと無事で居るから」
理央「…と言っている間にも、さっきのDCDCがこちらに来ます。会話はここまでです、後は各自で!」
俺「くそっ…皆……必ず逃げ延びてくれよ!?」
俺達の会話を遮るように、DCDCの突撃がシャッターを揺らし…カレン達の足音が、元来た方向へと遠ざかって行く。
攻撃はやり過ごし、とりあえず二人は無事。それを確認した上で、俺達は駆け出し…シェルターの奥へと向かった。
552: ◆TPk5R1h7Ng 2016/02/17(水) 03:05:31.40 ID:zOAdX3g1o
●空の分かれ道
そして………辿り着いた先…制御室で俺達を待ち受けていたのは、他でも無い……ジョージ。
一見無害そうな、どこにでも居るような地味男。俺がイベントで爆殺したジョージとは、正反対の容姿の……空の記憶の中に居たジョージが、そこに居た。
ジョージ「やぁ、久しぶりだねぇ君達。元気にしていたかい?」
俺「久しぶりも何も…俺はお前とは、初対面の筈なんだがなぁ?」
ジョージ「おやぁ?君の方は空の記憶の中でボクの事を見た筈じゃ無いのかい?」
俺「全部お見通し…って訳か」
ふと視線をずらすと、シェルター内の施設を始めとした要所の…監視カメラの映像らしき画面が幾つも見える。
恐らくは、この映像を元に俺達の行動を監視して…先のような手を打って居たのだろう。
空「んで………この後はどーする?俺等がここに辿り着いた以上、もう逃げ場は無いぜ?」
俺「大人しく人質を解放して投降して貰おうか?」
ジョージの捕獲もいよいよ大詰め。
到底従うとは思えないが、俺達はお約束とも言えるその勧告をジョージに向け……
ジョージ「………そうだね。もうこれ以上打つ手は無いし、ここで降参しておこうか」
意外や意外……ジョージはそれを受け入れた。だが……
俺「んじゃぁまずは、ベルトで自分の手を縛ってうつ伏せになれ。お前の超能力の発動条件は理央から聞いてるんでな」
当然ながらそれを信用する事など出来無い。俺は事前に仕入れた情報から、ジョージにそれを指示する。
ジョージ「…………やれやれ、そこまでお見通しか」
俺「大方、投降したフリして俺達の記憶を改竄しようとしてたんだろうが…その手は食わないんだよ」
改めて観念し…俺に従うジョージ。俺達はそれを確認してから、改めてシェルター内にあったロープとカーテンでジョージを簀巻きにする。
空「さて…これで文字通り手も足も出せねぇよな。後は…人質達はどこに居る?とっとと吐きやがれ」
ジョージ「奥のドアの向こう側さ。安心しておくれ、彼等に危害は加えて無いよ」
と言って首を扉の方に向け、ジョージは監禁場所を示す。
人質の場所は確認した。だが…先に退路を確保しておかなければならない。
俺達は制御用のパソコンを操作して、シャッターを開け…改めてその後で、監禁部屋のドアに手をかけて……人質達が囚われてる部屋へと踏み込んだ。
そして………辿り着いた先…制御室で俺達を待ち受けていたのは、他でも無い……ジョージ。
一見無害そうな、どこにでも居るような地味男。俺がイベントで爆殺したジョージとは、正反対の容姿の……空の記憶の中に居たジョージが、そこに居た。
ジョージ「やぁ、久しぶりだねぇ君達。元気にしていたかい?」
俺「久しぶりも何も…俺はお前とは、初対面の筈なんだがなぁ?」
ジョージ「おやぁ?君の方は空の記憶の中でボクの事を見た筈じゃ無いのかい?」
俺「全部お見通し…って訳か」
ふと視線をずらすと、シェルター内の施設を始めとした要所の…監視カメラの映像らしき画面が幾つも見える。
恐らくは、この映像を元に俺達の行動を監視して…先のような手を打って居たのだろう。
空「んで………この後はどーする?俺等がここに辿り着いた以上、もう逃げ場は無いぜ?」
俺「大人しく人質を解放して投降して貰おうか?」
ジョージの捕獲もいよいよ大詰め。
到底従うとは思えないが、俺達はお約束とも言えるその勧告をジョージに向け……
ジョージ「………そうだね。もうこれ以上打つ手は無いし、ここで降参しておこうか」
意外や意外……ジョージはそれを受け入れた。だが……
俺「んじゃぁまずは、ベルトで自分の手を縛ってうつ伏せになれ。お前の超能力の発動条件は理央から聞いてるんでな」
当然ながらそれを信用する事など出来無い。俺は事前に仕入れた情報から、ジョージにそれを指示する。
ジョージ「…………やれやれ、そこまでお見通しか」
俺「大方、投降したフリして俺達の記憶を改竄しようとしてたんだろうが…その手は食わないんだよ」
改めて観念し…俺に従うジョージ。俺達はそれを確認してから、改めてシェルター内にあったロープとカーテンでジョージを簀巻きにする。
空「さて…これで文字通り手も足も出せねぇよな。後は…人質達はどこに居る?とっとと吐きやがれ」
ジョージ「奥のドアの向こう側さ。安心しておくれ、彼等に危害は加えて無いよ」
と言って首を扉の方に向け、ジョージは監禁場所を示す。
人質の場所は確認した。だが…先に退路を確保しておかなければならない。
俺達は制御用のパソコンを操作して、シャッターを開け…改めてその後で、監禁部屋のドアに手をかけて……人質達が囚われてる部屋へと踏み込んだ。
553: ◆TPk5R1h7Ng 2016/02/17(水) 03:24:44.04 ID:zOAdX3g1o
●謎めく空
部屋の中に居たのは、三人の人質。
ソバージュがかかった茶髪の女性と、サングラスをかけたスカジャンの男。それと、サラリーマン風の中年。
三人とも後ろ手に縛られ、意識を失っているらしい。
俺と空はその三人に近寄り、その手を縛るロープを解こうと試みる。
まず、自分から近くの人物。空は茶髪の女性…俺はサラリーマンのロープに手を伸ばし………ふと、そこで何かに違和感を覚えた。
ロープを解く手を、一旦止め…俺は、違和感の正体を探るべく頭の中で思考を駆け巡らせる。
空「どーした?ジョージはもう捕まえたんだから、そんなに警戒する事ぁ無ぇだろ?」
今を整理して、過去に遡って…情報を統合し……先を見据える事で明るみに出る、違和感の正体。そうして答えに辿り着いた俺は…ロープを持つ手を離し、空の方を見る。
空は、女性のロープを解き終え…残ったスカジャンの男の方へと向かう最中。そして、俺は…そんな空を止めるべく、声を上げる。
俺「空、待て!!」
空「………はっ?」
俺が声を上げるのと、ほぼ同時。女性が起き上がって、空に掴みかかり…スカジャンの男が、ロープを振り解いて空に手を伸ばす。
が………そんな事は、俺が許さない。女性とスカジャンの男…双方の胴体に向けてパトリオットを放ち、二人の身体を壁際へと弾き飛ばす。
空「な…何だ、どーした!?」
俺「考えてみれば、おかなしな話だったんだよな。まず…記憶を改竄出来る奴が、何でわざわざ人質を拘束なんてしてるのか…」
空「そりゃぁ、あれだろ?さっきのジョージ…生き残ってたジョージはの能力は、記憶改竄能力じゃ無くて…記憶を改竄出来なかったか。あるいは…」
俺「記憶を改竄された人質が、拘束されたフリをして俺達に襲い掛かる手筈だったか…だろ?」
空「ま、現にそうだった訳なんだが…別にあのくれぇなら何とでき出来たぜ?と言うか…罠だからって放っとく訳にもいかねぇって思ってたからな」
俺「でもな…そんな空の考えまでも、計略の内だったみたいなんだよな」
空「は…?」
俺「そこまでの想定をした上で…いや、想定したからこそ、その結論のまま……その程度の認識で行動してしまう」
空「んの言い方だと、それも違うみてぇだな。いい加減教えろよ、どーいう事なんだ?」
俺「本物のジョージは、ついさっき拘束した。例え人質が操られていても、それで罠を張られて居る程度…そこまで警戒するような状況じゃ無い」
俺「そう言う前提を作った上で、本物のジョージが俺達に触れ…記憶改竄を行う。そう言う手筈だったんだろうな」
俺「なぁ、ジョージ!!」
俺はスカジャンの男に視線を向け…そう言い放った。
部屋の中に居たのは、三人の人質。
ソバージュがかかった茶髪の女性と、サングラスをかけたスカジャンの男。それと、サラリーマン風の中年。
三人とも後ろ手に縛られ、意識を失っているらしい。
俺と空はその三人に近寄り、その手を縛るロープを解こうと試みる。
まず、自分から近くの人物。空は茶髪の女性…俺はサラリーマンのロープに手を伸ばし………ふと、そこで何かに違和感を覚えた。
ロープを解く手を、一旦止め…俺は、違和感の正体を探るべく頭の中で思考を駆け巡らせる。
空「どーした?ジョージはもう捕まえたんだから、そんなに警戒する事ぁ無ぇだろ?」
今を整理して、過去に遡って…情報を統合し……先を見据える事で明るみに出る、違和感の正体。そうして答えに辿り着いた俺は…ロープを持つ手を離し、空の方を見る。
空は、女性のロープを解き終え…残ったスカジャンの男の方へと向かう最中。そして、俺は…そんな空を止めるべく、声を上げる。
俺「空、待て!!」
空「………はっ?」
俺が声を上げるのと、ほぼ同時。女性が起き上がって、空に掴みかかり…スカジャンの男が、ロープを振り解いて空に手を伸ばす。
が………そんな事は、俺が許さない。女性とスカジャンの男…双方の胴体に向けてパトリオットを放ち、二人の身体を壁際へと弾き飛ばす。
空「な…何だ、どーした!?」
俺「考えてみれば、おかなしな話だったんだよな。まず…記憶を改竄出来る奴が、何でわざわざ人質を拘束なんてしてるのか…」
空「そりゃぁ、あれだろ?さっきのジョージ…生き残ってたジョージはの能力は、記憶改竄能力じゃ無くて…記憶を改竄出来なかったか。あるいは…」
俺「記憶を改竄された人質が、拘束されたフリをして俺達に襲い掛かる手筈だったか…だろ?」
空「ま、現にそうだった訳なんだが…別にあのくれぇなら何とでき出来たぜ?と言うか…罠だからって放っとく訳にもいかねぇって思ってたからな」
俺「でもな…そんな空の考えまでも、計略の内だったみたいなんだよな」
空「は…?」
俺「そこまでの想定をした上で…いや、想定したからこそ、その結論のまま……その程度の認識で行動してしまう」
空「んの言い方だと、それも違うみてぇだな。いい加減教えろよ、どーいう事なんだ?」
俺「本物のジョージは、ついさっき拘束した。例え人質が操られていても、それで罠を張られて居る程度…そこまで警戒するような状況じゃ無い」
俺「そう言う前提を作った上で、本物のジョージが俺達に触れ…記憶改竄を行う。そう言う手筈だったんだろうな」
俺「なぁ、ジョージ!!」
俺はスカジャンの男に視線を向け…そう言い放った。
554: ◆TPk5R1h7Ng 2016/02/17(水) 03:47:41.70 ID:zOAdX3g1o
●明かされる空
スカジャンの男「参ったな……本物の僕…記憶改竄能力を持った僕は、クリスマスに死んだ。後はバックアップが残っている…って設定になってる筈なのにねえ」
俺「あぁ、俺も最初はそう思ってた」
スカジャンの男「だったら、何故判ったんだい?この姿は君達には見せて居ないから、絶対にばれないと思ったのに」
空「手前ぇ…ジョージ…なのか?一体どー言う事だ?」
ジョージ「彼が言った通り、僕の方が本物だったと言う事さ。しかし正直な所…君達がここまで読んで来るとは思ってもみなかったよ」
スカジャンの男…ジョージが起き上がり、サングラスを外して糸目を晒しながら…俺達の方を向く。
俺「今思えば…理央やカレンと分断したのもこのためか。小賢しい真似しやがって」
ジョージ「その通り。理央は僕の顔を知っているし…そうでなくても、二人ともリーディングで…ネタバラシをしかねないからね。と言うか…それよりも」
俺「それよりも…何だ?」
ジョージ「何故ここまで、僕の手を読む事が出来たのか…それを教えて欲しいね。今出てるピースからじゃ、どうしても推理経路が想像出来ないんだ」
俺「ちょっとしたズルで、俺は本当のお前の顔と…前回、何をされたのかを知ってたからな」
ジョージ「ズル?あぁ…そう言う事か、彼女の差し金だね。前回って言うのはよく判らないけど…トリックを知った上で手品を見に来るとか、酷い話だよ…本当」
空「酷い話だぁ?毎度毎度、どの口がほざきやがるってんだよ。まぁ良い…残りのDCDCの事を吐いて、お縄に付きやがれ!」
ジョージ「DCDCか……そうだね…とりあえず、残りのDCDCは一つだけ…まだ開放して無い…って事だけは、教えておこうか」
俺「その最後の一つはどこだ?渡せ」
ジョージ「判らないかい?残念ながら渡せない所にあるんだよねぇ、これ…」
空「んの…ふざけやがって……」
とぼけるジョージと、その様子に憤慨する空。かく言う俺も、人を食ったようなジョージの言葉と態度に怒りを煽られ……頭に血が昇って行く。
が…そんな中でも、巡る思考が文面の意味を読み取り………遂に、その意味に気付いてしまう。
俺「ジョージ…お前、まさか!?」
ジョージ「その通り………最後のDCDCは僕の中…僕がDCDCで、DCDCが僕なのさ!!」
そう宣言するか否か…ジョージの身体から溢れ出す真っ黒な瘴気。
瞬く間に部屋を埋め尽くして行くそれを前にして、俺と空は反射的に後退り…ドアを潜って制御室へと逃げ込んだ。
空「あぁくそっ!!信じられねぇ!何から何まで信じられねぇ!ジョージの野郎…何て事しやがったんだ!!」
俺「ぼやいてても仕方無い!とにかく、何とか……くそっ、逃げる以外の手段が浮かんで来ねぇ!!」
空「ってーか…あれに飲み込まれたら、そんな事言ってる余裕も無くなっちまう!とにかく逃げるぞ!」
限られた手段を選択し、逃走する俺と空。
来た道を戻り、ひたすらに駆け抜ける中……カレンと理央を追い掛けていた筈のDCDCの姿を、再びエントランスで確認。
DCDCその物もさる事ながら、周囲にカレン達が襲われたような形跡は無し。まだ道の途中故に断言する事は出来ないが、無事に逃げ果せた可能性が高い。
安堵する俺…そんな俺に狙いを付けたのか、DCDCが向き直る……が、今はそんな物とやり合うだけの暇は無い。
俺達は、更に足を速めてDCDCの横を駆け抜け…それを追うようにDCDCが身体を旋回する。が…その行動こそが命取り。
俺は…重心となった足に向けて、すかさずパトリオットを放ち……効果の程は、先にも見た通り。加えて遠心力のかかった巨体は、あえなく転倒する結果となった、
仰向けに裏返り、何とかして起き上がろうともがくDCDC。しかしその身体は、俺達を追いかけて来た瘴気に飲まれ……
少し足を進めた頃には、既に暴れもがく物音さえ聞こえなくなっていた。
スカジャンの男「参ったな……本物の僕…記憶改竄能力を持った僕は、クリスマスに死んだ。後はバックアップが残っている…って設定になってる筈なのにねえ」
俺「あぁ、俺も最初はそう思ってた」
スカジャンの男「だったら、何故判ったんだい?この姿は君達には見せて居ないから、絶対にばれないと思ったのに」
空「手前ぇ…ジョージ…なのか?一体どー言う事だ?」
ジョージ「彼が言った通り、僕の方が本物だったと言う事さ。しかし正直な所…君達がここまで読んで来るとは思ってもみなかったよ」
スカジャンの男…ジョージが起き上がり、サングラスを外して糸目を晒しながら…俺達の方を向く。
俺「今思えば…理央やカレンと分断したのもこのためか。小賢しい真似しやがって」
ジョージ「その通り。理央は僕の顔を知っているし…そうでなくても、二人ともリーディングで…ネタバラシをしかねないからね。と言うか…それよりも」
俺「それよりも…何だ?」
ジョージ「何故ここまで、僕の手を読む事が出来たのか…それを教えて欲しいね。今出てるピースからじゃ、どうしても推理経路が想像出来ないんだ」
俺「ちょっとしたズルで、俺は本当のお前の顔と…前回、何をされたのかを知ってたからな」
ジョージ「ズル?あぁ…そう言う事か、彼女の差し金だね。前回って言うのはよく判らないけど…トリックを知った上で手品を見に来るとか、酷い話だよ…本当」
空「酷い話だぁ?毎度毎度、どの口がほざきやがるってんだよ。まぁ良い…残りのDCDCの事を吐いて、お縄に付きやがれ!」
ジョージ「DCDCか……そうだね…とりあえず、残りのDCDCは一つだけ…まだ開放して無い…って事だけは、教えておこうか」
俺「その最後の一つはどこだ?渡せ」
ジョージ「判らないかい?残念ながら渡せない所にあるんだよねぇ、これ…」
空「んの…ふざけやがって……」
とぼけるジョージと、その様子に憤慨する空。かく言う俺も、人を食ったようなジョージの言葉と態度に怒りを煽られ……頭に血が昇って行く。
が…そんな中でも、巡る思考が文面の意味を読み取り………遂に、その意味に気付いてしまう。
俺「ジョージ…お前、まさか!?」
ジョージ「その通り………最後のDCDCは僕の中…僕がDCDCで、DCDCが僕なのさ!!」
そう宣言するか否か…ジョージの身体から溢れ出す真っ黒な瘴気。
瞬く間に部屋を埋め尽くして行くそれを前にして、俺と空は反射的に後退り…ドアを潜って制御室へと逃げ込んだ。
空「あぁくそっ!!信じられねぇ!何から何まで信じられねぇ!ジョージの野郎…何て事しやがったんだ!!」
俺「ぼやいてても仕方無い!とにかく、何とか……くそっ、逃げる以外の手段が浮かんで来ねぇ!!」
空「ってーか…あれに飲み込まれたら、そんな事言ってる余裕も無くなっちまう!とにかく逃げるぞ!」
限られた手段を選択し、逃走する俺と空。
来た道を戻り、ひたすらに駆け抜ける中……カレンと理央を追い掛けていた筈のDCDCの姿を、再びエントランスで確認。
DCDCその物もさる事ながら、周囲にカレン達が襲われたような形跡は無し。まだ道の途中故に断言する事は出来ないが、無事に逃げ果せた可能性が高い。
安堵する俺…そんな俺に狙いを付けたのか、DCDCが向き直る……が、今はそんな物とやり合うだけの暇は無い。
俺達は、更に足を速めてDCDCの横を駆け抜け…それを追うようにDCDCが身体を旋回する。が…その行動こそが命取り。
俺は…重心となった足に向けて、すかさずパトリオットを放ち……効果の程は、先にも見た通り。加えて遠心力のかかった巨体は、あえなく転倒する結果となった、
仰向けに裏返り、何とかして起き上がろうともがくDCDC。しかしその身体は、俺達を追いかけて来た瘴気に飲まれ……
少し足を進めた頃には、既に暴れもがく物音さえ聞こえなくなっていた。
555: ◆TPk5R1h7Ng 2016/02/19(金) 00:21:42.77 ID:Rc9X7KK2o
●空の下に戻った二人
地下駐車場を抜け…再び地上へと戻った俺達。
溢れ出る瘴気の、勢いこそ弱まったものの…その奔流は、未だに俺達を追い続けている。
逃げる場所………瘴気の届かない、より高い場所へと向かう俺と空。
だが…それをあざ笑うかのように、ジョージから溢れた瘴気が俺達を取り囲む。
俺「くそっ…パトリオットじゃ振り払えない!ソーサー=ソーサで何とか出来ないか!?」
空「こっちも駄目だ!密度が濃すぎて、とてもじゃ無ぇが振り払えねぇ!」
俺達の超能力を用いても、振り払う事が出来無い瘴気の層。
打つ手を持たない俺達は、足止めを食らい…そうしている間にも、周囲は完全に包まれ…既に瘴気向こう側は見えなくなり、八方塞がり。
……にも関わらず。瘴気は俺達から一定の距離を保ったまま……緩やかに俺達を蝕む範囲で留まって居た。
空「こんな事ぁ言いたく無いが…万策尽きちまったよな」
俺「しかも…ジョージの野郎、俺達をなぶり殺しにするつもりみたいだ」
呼吸をする度に吸い込む瘴気が、肺の中で激痛を生み…思考までも蝕んで行く。
喋る事すら困難で、マトモに何かを考える事さえままならない。
死………その存在が足音を立てながら俺達の背後に近付いて来た、その時……俺の頭の中に、僅かな閃きが走った。
迷っている暇も、試す暇も…残されてはいない。
余計な事に思考を割る事さえ惜しみ、俺はすぐさまその閃きを形にする。
俺「空…もう少しだけ待ってろ。今…俺が何とかしてやるからな」
空「何言ってんだ…こんな状態で………え?お前…それ…何で…え!?」
それは俺にとって、未だに踏み込んだ事の無い領域。実行する事に、抵抗を感じなかった訳では無い。だが、この状況が俺を後押しして…そこに辿り着いた。
空「何で…何でお前が、魔法を使えるんだ!?」
俺は右腕から光輪を発生させ…それを瘴気の壁へと向けて投げ放つ。
光輪は瘴気を蹴散らして突き進み…そうして作られた道を、空と俺が駆け抜ける。
途中で足を取られそうになった空を支え、その手を取りながら瘴気を抜けた先…階段を半ばまで進んだ辺りで、少しペースを落としてから向き合い…
空「も一回聞くが…何でお前が……あれを使えたんだ?」
俺「空の記憶の中で…サーティーンが空に教えた内容を…覚えてたからな。言うなれば…サーティーンがくれた起死回生の一手って所か」
息も切れ切れに、言葉を交わした。そして……そんな俺の言葉を聞いた空は…
空「そっか………サーティーンが……な」
あれ程の…死にそうな目に遭ったと言うのにも関わらず。顔が、笑みで僅かに綻んでいた。
地下駐車場を抜け…再び地上へと戻った俺達。
溢れ出る瘴気の、勢いこそ弱まったものの…その奔流は、未だに俺達を追い続けている。
逃げる場所………瘴気の届かない、より高い場所へと向かう俺と空。
だが…それをあざ笑うかのように、ジョージから溢れた瘴気が俺達を取り囲む。
俺「くそっ…パトリオットじゃ振り払えない!ソーサー=ソーサで何とか出来ないか!?」
空「こっちも駄目だ!密度が濃すぎて、とてもじゃ無ぇが振り払えねぇ!」
俺達の超能力を用いても、振り払う事が出来無い瘴気の層。
打つ手を持たない俺達は、足止めを食らい…そうしている間にも、周囲は完全に包まれ…既に瘴気向こう側は見えなくなり、八方塞がり。
……にも関わらず。瘴気は俺達から一定の距離を保ったまま……緩やかに俺達を蝕む範囲で留まって居た。
空「こんな事ぁ言いたく無いが…万策尽きちまったよな」
俺「しかも…ジョージの野郎、俺達をなぶり殺しにするつもりみたいだ」
呼吸をする度に吸い込む瘴気が、肺の中で激痛を生み…思考までも蝕んで行く。
喋る事すら困難で、マトモに何かを考える事さえままならない。
死………その存在が足音を立てながら俺達の背後に近付いて来た、その時……俺の頭の中に、僅かな閃きが走った。
迷っている暇も、試す暇も…残されてはいない。
余計な事に思考を割る事さえ惜しみ、俺はすぐさまその閃きを形にする。
俺「空…もう少しだけ待ってろ。今…俺が何とかしてやるからな」
空「何言ってんだ…こんな状態で………え?お前…それ…何で…え!?」
それは俺にとって、未だに踏み込んだ事の無い領域。実行する事に、抵抗を感じなかった訳では無い。だが、この状況が俺を後押しして…そこに辿り着いた。
空「何で…何でお前が、魔法を使えるんだ!?」
俺は右腕から光輪を発生させ…それを瘴気の壁へと向けて投げ放つ。
光輪は瘴気を蹴散らして突き進み…そうして作られた道を、空と俺が駆け抜ける。
途中で足を取られそうになった空を支え、その手を取りながら瘴気を抜けた先…階段を半ばまで進んだ辺りで、少しペースを落としてから向き合い…
空「も一回聞くが…何でお前が……あれを使えたんだ?」
俺「空の記憶の中で…サーティーンが空に教えた内容を…覚えてたからな。言うなれば…サーティーンがくれた起死回生の一手って所か」
息も切れ切れに、言葉を交わした。そして……そんな俺の言葉を聞いた空は…
空「そっか………サーティーンが……な」
あれ程の…死にそうな目に遭ったと言うのにも関わらず。顔が、笑みで僅かに綻んでいた。
556: ◆TPk5R1h7Ng 2016/02/19(金) 00:32:42.69 ID:Rc9X7KK2o
●敷き詰められた空
体中にダメージを負いながらも、瘴気の海から逃れ……おぼつかない足取りで…それでも、迫る瘴気に追い付かれないよう、力を振り絞って階段を上る俺達。
一歩一歩が重く…瘴気から逃れた今でも尚、肺が呼吸の度に悲鳴を上げる中…ついに俺達は階段を上り切り、大通りへと辿り着いた。
………だが
俺「ぁー………ちくしょう。コイツ等の事、完全に忘れてた」
空「考えてる余裕なんざ無かった…ってのが正しいんだろーがなぁ…」
目の前には…俺達の行く手を阻むように、DCDCの群が立ち塞がっていた。
それも…2匹や3匹じゃ無い。ざっと見た限りでも…10匹以上のDCDCの姿が…俺達に絶望を与えるには、充分過ぎる程の数が見て取れた。
空「なぁ…さっきの魔法………」
俺「いや、さすがにもう無理だ…魔力が残って無い」
空「再利用してねぇのかよ…ってか、自然吸収は?」
俺「ん…全然されてる感じがしないな。こりゃ、魔法少女の採用基準に全然届いて無いわ」
空「いや、そもそも男なんだから魔法少女にゃなれねぇだろ」
俺「それもそうだな。あぁ…でもあれが残ってるよな、自分自身を改造…」
空「止めとけ…ありゃ壊れた時に死ぬほど痛い。ってーか……改造する魔力も残って無ぇだろ?」
俺「あぁ…そうだった」
空「悪いな…俺がポンコツじゃ無けりゃなぁ…」
俺「それ言ったら、俺だって役立たずの劣等生だ」
空「ポンコツと劣等生か…俺達、結構お似合いかもな」
俺「あぁ…そうかもな」
前方には、DCDCの群…後方からは、迫り来る瘴気。
文字通り絶体絶命の窮地に立たされながら、俺と空は手を握り合い…
ただただ目の前の現実を受け入れ、瞼を閉じた…………その時。
「中々頑張ったじゃねぇか」
「ここから先は…ボク達の出番だ!」
「………後は任せて」
どこかで聞いた事があるような……そんな声が聞こえた気がした。
体中にダメージを負いながらも、瘴気の海から逃れ……おぼつかない足取りで…それでも、迫る瘴気に追い付かれないよう、力を振り絞って階段を上る俺達。
一歩一歩が重く…瘴気から逃れた今でも尚、肺が呼吸の度に悲鳴を上げる中…ついに俺達は階段を上り切り、大通りへと辿り着いた。
………だが
俺「ぁー………ちくしょう。コイツ等の事、完全に忘れてた」
空「考えてる余裕なんざ無かった…ってのが正しいんだろーがなぁ…」
目の前には…俺達の行く手を阻むように、DCDCの群が立ち塞がっていた。
それも…2匹や3匹じゃ無い。ざっと見た限りでも…10匹以上のDCDCの姿が…俺達に絶望を与えるには、充分過ぎる程の数が見て取れた。
空「なぁ…さっきの魔法………」
俺「いや、さすがにもう無理だ…魔力が残って無い」
空「再利用してねぇのかよ…ってか、自然吸収は?」
俺「ん…全然されてる感じがしないな。こりゃ、魔法少女の採用基準に全然届いて無いわ」
空「いや、そもそも男なんだから魔法少女にゃなれねぇだろ」
俺「それもそうだな。あぁ…でもあれが残ってるよな、自分自身を改造…」
空「止めとけ…ありゃ壊れた時に死ぬほど痛い。ってーか……改造する魔力も残って無ぇだろ?」
俺「あぁ…そうだった」
空「悪いな…俺がポンコツじゃ無けりゃなぁ…」
俺「それ言ったら、俺だって役立たずの劣等生だ」
空「ポンコツと劣等生か…俺達、結構お似合いかもな」
俺「あぁ…そうかもな」
前方には、DCDCの群…後方からは、迫り来る瘴気。
文字通り絶体絶命の窮地に立たされながら、俺と空は手を握り合い…
ただただ目の前の現実を受け入れ、瞼を閉じた…………その時。
「中々頑張ったじゃねぇか」
「ここから先は…ボク達の出番だ!」
「………後は任せて」
どこかで聞いた事があるような……そんな声が聞こえた気がした。
557: ◆TPk5R1h7Ng 2016/02/27(土) 02:36:01.65 ID:YpV3FltMo
●空を迎える者達
俺は………その声に誘われるように瞼を開き…霞んだ眼にその光景を焼き付ける。
黄色「あーっ…ったくよぉ!やっとこさ御役御免になったかと思ったら、また沸いて出て来やがって!」
愚痴りながらも、DCDCに立ちはだかり…掌を向ける黄色先輩。
そして、掌を向けたその先の空間が捻じれ……瞬く間にDCDCが押し潰されて、そのまま消えて無くなり…
アウィス「本当もう…黄色みたいにしつこくて、キリが無いったらありゃしないよ!」
白い鎧を着込んだアウィスさんが……翼の羽ばたきにも似た炎を繰って、DCDCを焼き払い…
リーゼ「………大丈夫、今回は空気を読んで手加減してる」
リーゼが…以前会った時のような、無表情を俺に向けながら親指を立て……その片手間に放った黒い閃光で、DCDC達を飲み込み…消し去って行く。
目の前で繰り広げられる光景は…争いでは無く、まさに一方的な殲滅行為。
俺は『手加減してこれとか、貴方は一体何者なのでしょうか!?』と…心の中で発生した突っ込みを、声に出さないよう我慢した。しかし…その直後。
マーク「金色の竜に、灼炎の翼…おまけに白銀の竜姫まで出て来るたぁなぁ…」
気が緩んだ所に、不意に飛び込んで来る追撃の一言。
『いや、突っ込まない…その二つ名のネーミングセンスには突っ込まないぞ!?』と、またも突っ込みを堪え…辛うじて踏み止まる事は出来たのだが…
マーク「……ん?おうおう、どうした。幽霊でも見たような顔しやがって」
ワンテンポ遅れた後で、改めてその声の主に気付き……俺は、目を丸くした。
空「叔父貴…!良かった、無事で…」
エリー「ここまで終わってるんだったらぁん…もぅ、私達に出番は無さそうよねぇん」
俺「エリー…あんたも生きてたんだな」
理央「それに……マリオも。私も、カレン先輩も無事ですよ」
俺「理央…カレン…良かった、無事に逃げ延びたんだな。にしても……これは一体…」
理央「だから、言いましたよね?組織に報告して指示を仰いだ…って」
俺「え?…って事は…」
ニヤ「組織の方で救援を頼んで…その結果、あの三人が駆けつけてくれたって事ッスよ」
ユズ「あ、ニヤ先生お久しぶりッス!」
いつの間に現れたのか、ニヤ先輩とユズさんも合流。
仲間の生存…全員の無事を確認した事で……俺は、安堵の溜息を零さずには居られなかった。
こうして………増援の圧倒的火力により、戦局は逆転。DCDC達は跡形も無く消え去り、後は地下のジョージを残すのみ。
この時点でも、充分過ぎる程の優勢なのだが……最後の一手を緩める事無く、確実に詰めるかのように…それは現れた。
俺「ん?………これは、桜の花弁…?」
周囲に舞う…季節外れの桜の花弁。この場にそぐわず、異彩を放つその存在に気付き…俺は、その花弁の元を追うように空を見上げる。
そして、その先に広がって居たのは…大空一面を埋め尽くすような薄紅色の桜吹雪と、その中央に浮かび…地上へと降り立つ少女の姿―――
俺「………って、朱桜…ちゃん!?」
朱桜「…なの」
少女…朱桜ちゃんは俺達へと向き直り………ニコリと微笑んだ。
俺は………その声に誘われるように瞼を開き…霞んだ眼にその光景を焼き付ける。
黄色「あーっ…ったくよぉ!やっとこさ御役御免になったかと思ったら、また沸いて出て来やがって!」
愚痴りながらも、DCDCに立ちはだかり…掌を向ける黄色先輩。
そして、掌を向けたその先の空間が捻じれ……瞬く間にDCDCが押し潰されて、そのまま消えて無くなり…
アウィス「本当もう…黄色みたいにしつこくて、キリが無いったらありゃしないよ!」
白い鎧を着込んだアウィスさんが……翼の羽ばたきにも似た炎を繰って、DCDCを焼き払い…
リーゼ「………大丈夫、今回は空気を読んで手加減してる」
リーゼが…以前会った時のような、無表情を俺に向けながら親指を立て……その片手間に放った黒い閃光で、DCDC達を飲み込み…消し去って行く。
目の前で繰り広げられる光景は…争いでは無く、まさに一方的な殲滅行為。
俺は『手加減してこれとか、貴方は一体何者なのでしょうか!?』と…心の中で発生した突っ込みを、声に出さないよう我慢した。しかし…その直後。
マーク「金色の竜に、灼炎の翼…おまけに白銀の竜姫まで出て来るたぁなぁ…」
気が緩んだ所に、不意に飛び込んで来る追撃の一言。
『いや、突っ込まない…その二つ名のネーミングセンスには突っ込まないぞ!?』と、またも突っ込みを堪え…辛うじて踏み止まる事は出来たのだが…
マーク「……ん?おうおう、どうした。幽霊でも見たような顔しやがって」
ワンテンポ遅れた後で、改めてその声の主に気付き……俺は、目を丸くした。
空「叔父貴…!良かった、無事で…」
エリー「ここまで終わってるんだったらぁん…もぅ、私達に出番は無さそうよねぇん」
俺「エリー…あんたも生きてたんだな」
理央「それに……マリオも。私も、カレン先輩も無事ですよ」
俺「理央…カレン…良かった、無事に逃げ延びたんだな。にしても……これは一体…」
理央「だから、言いましたよね?組織に報告して指示を仰いだ…って」
俺「え?…って事は…」
ニヤ「組織の方で救援を頼んで…その結果、あの三人が駆けつけてくれたって事ッスよ」
ユズ「あ、ニヤ先生お久しぶりッス!」
いつの間に現れたのか、ニヤ先輩とユズさんも合流。
仲間の生存…全員の無事を確認した事で……俺は、安堵の溜息を零さずには居られなかった。
こうして………増援の圧倒的火力により、戦局は逆転。DCDC達は跡形も無く消え去り、後は地下のジョージを残すのみ。
この時点でも、充分過ぎる程の優勢なのだが……最後の一手を緩める事無く、確実に詰めるかのように…それは現れた。
俺「ん?………これは、桜の花弁…?」
周囲に舞う…季節外れの桜の花弁。この場にそぐわず、異彩を放つその存在に気付き…俺は、その花弁の元を追うように空を見上げる。
そして、その先に広がって居たのは…大空一面を埋め尽くすような薄紅色の桜吹雪と、その中央に浮かび…地上へと降り立つ少女の姿―――
俺「………って、朱桜…ちゃん!?」
朱桜「…なの」
少女…朱桜ちゃんは俺達へと向き直り………ニコリと微笑んだ。
558: ◆TPk5R1h7Ng 2016/02/27(土) 02:59:14.17 ID:YpV3FltMo
●空より来たる断罪者
ジョージ「まさか…君達が出て来るとはね。ルールの上では、干渉しない事になってるんじゃ無かったのかい?」
瘴気の層を伝い…その奥底から響き渡る、ジョージの声。
朱桜「先にルールを破ったのは貴方の方なの」
しかし、その声に微塵も臆する事無く朱桜ちゃんが言い返す。
ジョージ「だけど…忘れて居ないかい?いや、言わなくても判っているとは思うんだけど…」
朱桜「……あえて戯言を聞いてあげるの」
ジョージ「じゃぁ言わせてもらうけど…この中にはまだ、人質が居るんだよ?」
朱桜「………」
ジョージの脅しに対して、朱桜ちゃんは無言。と言っても…その表情を窺う限りでは、困窮しているような感じは一切無く…
むしろ哀れみのような物を帯びた瞳で、ジョージの居るであろう地下を見据えていた。
ジョージ「人質を助けたければ、そう…彼一人で来て貰おう。そこで直接対決と行こうじゃないか」
黄色「馬鹿馬鹿しい…こんな状況で、今更そんな戯言に乗ると思ってんのか?」
リーゼ「……人質に手をかけるのが先か、自分が消滅するのが先か…判ってる筈」
と、黄色先輩達は言い切っているが…幾らこの戦力であっても、人質がジョージの手元にある以上は、絶対に間に合うと断言する事は出来ない筈。
その言葉が、俺の身を案じての虚勢…ブラフである事は目に見えている。
俺「いや…俺が行きます」
でも……いや、だからこそ………俺は逃げる訳にはいかない。
空「おい、待てよ!どー見たって罠じゃ無ぇかよ!」
理央「駄目です、先輩!」
カレン「そうよ!この状態で、貴方が行く必要なんて無いじゃない!」
俺「自分でも、危ない橋を渡ってるのは判ってるんだが…何て言うか、ここは俺が決着を付けないといけない気がするんだよな」
朱桜「………判ったの。でも…助力を跳ね除けて、自分の意思で向かう以上は…」
俺「自己責任…なんだろ?判ってるって」
…と、意見が纏まったのを見計らってか、地下駐車場の中へと引いて行く瘴気の層。
ジョージが俺を待っている………そこにどんな意図があり、何を仕掛けているのかは判らない。
だが俺は、立ち止まる事無く…ジョージを討つべく……決戦の地へと向かった。
ジョージ「まさか…君達が出て来るとはね。ルールの上では、干渉しない事になってるんじゃ無かったのかい?」
瘴気の層を伝い…その奥底から響き渡る、ジョージの声。
朱桜「先にルールを破ったのは貴方の方なの」
しかし、その声に微塵も臆する事無く朱桜ちゃんが言い返す。
ジョージ「だけど…忘れて居ないかい?いや、言わなくても判っているとは思うんだけど…」
朱桜「……あえて戯言を聞いてあげるの」
ジョージ「じゃぁ言わせてもらうけど…この中にはまだ、人質が居るんだよ?」
朱桜「………」
ジョージの脅しに対して、朱桜ちゃんは無言。と言っても…その表情を窺う限りでは、困窮しているような感じは一切無く…
むしろ哀れみのような物を帯びた瞳で、ジョージの居るであろう地下を見据えていた。
ジョージ「人質を助けたければ、そう…彼一人で来て貰おう。そこで直接対決と行こうじゃないか」
黄色「馬鹿馬鹿しい…こんな状況で、今更そんな戯言に乗ると思ってんのか?」
リーゼ「……人質に手をかけるのが先か、自分が消滅するのが先か…判ってる筈」
と、黄色先輩達は言い切っているが…幾らこの戦力であっても、人質がジョージの手元にある以上は、絶対に間に合うと断言する事は出来ない筈。
その言葉が、俺の身を案じての虚勢…ブラフである事は目に見えている。
俺「いや…俺が行きます」
でも……いや、だからこそ………俺は逃げる訳にはいかない。
空「おい、待てよ!どー見たって罠じゃ無ぇかよ!」
理央「駄目です、先輩!」
カレン「そうよ!この状態で、貴方が行く必要なんて無いじゃない!」
俺「自分でも、危ない橋を渡ってるのは判ってるんだが…何て言うか、ここは俺が決着を付けないといけない気がするんだよな」
朱桜「………判ったの。でも…助力を跳ね除けて、自分の意思で向かう以上は…」
俺「自己責任…なんだろ?判ってるって」
…と、意見が纏まったのを見計らってか、地下駐車場の中へと引いて行く瘴気の層。
ジョージが俺を待っている………そこにどんな意図があり、何を仕掛けているのかは判らない。
だが俺は、立ち止まる事無く…ジョージを討つべく……決戦の地へと向かった。
559: ◆TPk5R1h7Ng 2016/02/27(土) 03:21:16.62 ID:YpV3FltMo
●空より離れて
ジョージ「やぁ、よく来てくれたね」
俺「………待たせたな。折角DCDCになったんだから、首を長くして待ってると思ったんだが…とんだ期待外れだなぁ?」
ジョージ「期待に添えられなくて残念だよ。でもまぁ代わりに…こうやってキミに手を伸ばせるようになったんだから、これで勘弁しておくれよ!」
駐車場地下で、再びまみえる俺とジョージ………
他愛の無い会話から始まり…ゴングも鳴らない内から、お互いの姿勢は戦闘へと移行する。
まずジョージが、宣言通りにその腕を伸ばして俺の頭を掴みにかかる…が、俺は身を屈めてそれを回避。
そのまま踏み込む事で、互いの距離を詰め……間合いに入った所で、胴体に向けてパトリオットを放つ。
パトリオットを受けたジョージの腹部は、成す術無く抉れ…あえなく霧散。通常の人間であれば、充分過ぎる程の致命傷な筈なのだが……
霧散した筈のその腹部も、次の瞬間には何事も無かったかのように、元の形状へと戻ってしまっていた。
ジョージ「それにしても…本当、よく来てくれたよねぇ。こんな圧倒的に不利で理不尽な状況に…」
俺「あぁ…そうだな。こんな勝ち目も無い絶望的な戦いだってのに、何故か……お前との決着は、俺が着けないといけないって気がしてな」
ジョージ「良いねぇ…良いねぇ良いねぇ良いねぇ!!今までのどれよりも、僕が望む君に近付いてくれてるじゃないか!」
俺「へっ…気持ち悪い事言ってくれんじゃ無ぇよ。それだとまるで、俺がお前のために頑張ってるみたいじゃないか………っ!!」
ジョージの身体は恐らく、瘴気…と言うよりも、霧状のDCDCで形成されているのだろう。
今まで戦ってきたDCDCとは間逆の意味で、胴体に幾ら物理攻撃を当てても意味が無い。
となれば………狙うべきはやはり頭部、と言う事になって来る訳だが……そう簡単にはやらせてはくれないようだ。
ジョージの腕が、今度は俺の脚を狙い………後退を余儀無くされた俺は、後方に飛び退く。
再び距離を開かれ、パトリオットは射程外。更には…再び距離を詰めようにも、片手を温存したまま警戒され……迂闊に飛び込めば、返り討ちは必至。
最初に頭部を狙わなかったのは失敗だった…が、今更それを悔やんでも仕方が無い。
射程範囲から外れてしまった以上、この場に留まる事も出来ず……俺はそのまま後退を続け、柱の後ろへと身を潜める事にした。
ジョージ「しかし…まさか君が魔法まで使うとはね。あれには正直驚かされたよ」
俺「安心しな、あれはあの時限りの一発芸だ。それはお前も判ってんだろ?」
ジョージ「いやいや、警戒してるんじゃ無くて…純粋に驚愕して賞賛して感動してるんだよ。それでこそ君だ…ってね」
俺「だーからよぉ…気持ちの悪い事言うなって言ってんだろ?お前が一体俺の何を知ってるんだ?」
そう問い終えるのとほぼ同時に…視界の端を過ぎ去る、黒い影。
途中にある柱を掠め、コンクリート片を撒き散らしながら…ジョージの右腕が、俺の隠れる柱を削り取っていた。
パトリオットでは届かない…射程範囲に近付く事も出来無い。先にも言った通り、光輪の魔法は使えない。
リア充爆散にしても…DCDCに成り果てた今のジョージを対象にするには無理があり…多分不発に終わる。それどころか、顔を出した途端にやられる可能性もある。
しかし…今の位置取りでは、一方的に攻撃を受けるばかり。何か…現状を打開する策を打ち出す他は無い。
一撃…また一撃…ジョージの腕から繰り出された攻撃の振動を、柱越しに感じながら…思考を巡らせた末、俺は一つの結論に至り………
近くに落ちているコンクリート片を拾い上げた。
ジョージ「やぁ、よく来てくれたね」
俺「………待たせたな。折角DCDCになったんだから、首を長くして待ってると思ったんだが…とんだ期待外れだなぁ?」
ジョージ「期待に添えられなくて残念だよ。でもまぁ代わりに…こうやってキミに手を伸ばせるようになったんだから、これで勘弁しておくれよ!」
駐車場地下で、再びまみえる俺とジョージ………
他愛の無い会話から始まり…ゴングも鳴らない内から、お互いの姿勢は戦闘へと移行する。
まずジョージが、宣言通りにその腕を伸ばして俺の頭を掴みにかかる…が、俺は身を屈めてそれを回避。
そのまま踏み込む事で、互いの距離を詰め……間合いに入った所で、胴体に向けてパトリオットを放つ。
パトリオットを受けたジョージの腹部は、成す術無く抉れ…あえなく霧散。通常の人間であれば、充分過ぎる程の致命傷な筈なのだが……
霧散した筈のその腹部も、次の瞬間には何事も無かったかのように、元の形状へと戻ってしまっていた。
ジョージ「それにしても…本当、よく来てくれたよねぇ。こんな圧倒的に不利で理不尽な状況に…」
俺「あぁ…そうだな。こんな勝ち目も無い絶望的な戦いだってのに、何故か……お前との決着は、俺が着けないといけないって気がしてな」
ジョージ「良いねぇ…良いねぇ良いねぇ良いねぇ!!今までのどれよりも、僕が望む君に近付いてくれてるじゃないか!」
俺「へっ…気持ち悪い事言ってくれんじゃ無ぇよ。それだとまるで、俺がお前のために頑張ってるみたいじゃないか………っ!!」
ジョージの身体は恐らく、瘴気…と言うよりも、霧状のDCDCで形成されているのだろう。
今まで戦ってきたDCDCとは間逆の意味で、胴体に幾ら物理攻撃を当てても意味が無い。
となれば………狙うべきはやはり頭部、と言う事になって来る訳だが……そう簡単にはやらせてはくれないようだ。
ジョージの腕が、今度は俺の脚を狙い………後退を余儀無くされた俺は、後方に飛び退く。
再び距離を開かれ、パトリオットは射程外。更には…再び距離を詰めようにも、片手を温存したまま警戒され……迂闊に飛び込めば、返り討ちは必至。
最初に頭部を狙わなかったのは失敗だった…が、今更それを悔やんでも仕方が無い。
射程範囲から外れてしまった以上、この場に留まる事も出来ず……俺はそのまま後退を続け、柱の後ろへと身を潜める事にした。
ジョージ「しかし…まさか君が魔法まで使うとはね。あれには正直驚かされたよ」
俺「安心しな、あれはあの時限りの一発芸だ。それはお前も判ってんだろ?」
ジョージ「いやいや、警戒してるんじゃ無くて…純粋に驚愕して賞賛して感動してるんだよ。それでこそ君だ…ってね」
俺「だーからよぉ…気持ちの悪い事言うなって言ってんだろ?お前が一体俺の何を知ってるんだ?」
そう問い終えるのとほぼ同時に…視界の端を過ぎ去る、黒い影。
途中にある柱を掠め、コンクリート片を撒き散らしながら…ジョージの右腕が、俺の隠れる柱を削り取っていた。
パトリオットでは届かない…射程範囲に近付く事も出来無い。先にも言った通り、光輪の魔法は使えない。
リア充爆散にしても…DCDCに成り果てた今のジョージを対象にするには無理があり…多分不発に終わる。それどころか、顔を出した途端にやられる可能性もある。
しかし…今の位置取りでは、一方的に攻撃を受けるばかり。何か…現状を打開する策を打ち出す他は無い。
一撃…また一撃…ジョージの腕から繰り出された攻撃の振動を、柱越しに感じながら…思考を巡らせた末、俺は一つの結論に至り………
近くに落ちているコンクリート片を拾い上げた。
560: ◆TPk5R1h7Ng 2016/02/27(土) 03:41:00.83 ID:YpV3FltMo
●空が教えてくれた
ジョージ「知っているさ…多分君自身よりも、僕は君の事を知って居るんだよ」
俺「そうかい。だったら………こんな事が出来るってのも、知ってるんだろうなぁ!!」
俺はまず、サイコキネシスで力場を発生させ…拾い上げたコンクリート片を、腕の周りで回し………
充分に加速を付けてから、弧を描く軌道で…そのコンクリート片を、ジョージの頭部に向けて放つ。
空の……ソーサー=ソーサの変則型だ!
ジョージ「――――――ッ!?」
激突の衝撃で…粉塵を撒き散らしながら砕ける、コンクリート片。
手応えはあり…ジョージに命中した事は確実。俺はクレアボヤントで透視をして、改めてそれを確認するのだが……
俺「くそっ…これまで防ぎやがるのかよ!」
俺の放ったコンクリート片は、ジョージの頭部に命中する事無く…左腕に遮られてしまっていた。
ジョージ「良いねぇ…今回の君は、まるで仲間の力を借りて戦うヒーローみたいじゃないか」
俺「ちょっと前の俺は、仲間の事を信じられずに痛い目見たからな……多分その反動なんだろうなぁ!!」
一発目は遮られてしまった、が……変則ソーサー=ソーサが、有効な攻撃である事は確認出来た。
俺はそのままコンクリート片を幾つも拾い上げ……二発目…三発目と、次々にジョージに向けてそれを放つ。
防戦一方だった戦局は、そのまま一転。攻撃の手段を得た俺は、水を得た魚の如く反撃に転じる。
が…相手も相手。俺の攻撃を大人しく受け続ける程の甘さを、ジョージは持ち合わせては居ないらしい。
今度はジョージが柱の後ろに身を潜め………いや、ただ身を潜めただけじゃ無い。
俺が放つコンクリート片の軌道が、他の柱で遮られる位置……安全地帯とも言える場所に陣取られてしまった。
こうなってしまうと………今度は、また俺の劣勢に逆戻り。
被弾と言う懸念を消し去った以上…ジョージは、防御を気にせず攻撃に移れてしまう。
最初に見せたように、腕を伸ばして攻撃して来るか……あるいは…また身体を霧状に変化して駐車場を満たし、俺を追い詰めるか……
いずれにしても、一方的に俺を攻撃する手段を持っている事に変わりは無い…まさに袋の鼠状態。
俺は………この窮地を脱するべく、全力で…死に物狂いで、次の手を打つために脳細胞をフル稼働させる。
ジョージ「知っているさ…多分君自身よりも、僕は君の事を知って居るんだよ」
俺「そうかい。だったら………こんな事が出来るってのも、知ってるんだろうなぁ!!」
俺はまず、サイコキネシスで力場を発生させ…拾い上げたコンクリート片を、腕の周りで回し………
充分に加速を付けてから、弧を描く軌道で…そのコンクリート片を、ジョージの頭部に向けて放つ。
空の……ソーサー=ソーサの変則型だ!
ジョージ「――――――ッ!?」
激突の衝撃で…粉塵を撒き散らしながら砕ける、コンクリート片。
手応えはあり…ジョージに命中した事は確実。俺はクレアボヤントで透視をして、改めてそれを確認するのだが……
俺「くそっ…これまで防ぎやがるのかよ!」
俺の放ったコンクリート片は、ジョージの頭部に命中する事無く…左腕に遮られてしまっていた。
ジョージ「良いねぇ…今回の君は、まるで仲間の力を借りて戦うヒーローみたいじゃないか」
俺「ちょっと前の俺は、仲間の事を信じられずに痛い目見たからな……多分その反動なんだろうなぁ!!」
一発目は遮られてしまった、が……変則ソーサー=ソーサが、有効な攻撃である事は確認出来た。
俺はそのままコンクリート片を幾つも拾い上げ……二発目…三発目と、次々にジョージに向けてそれを放つ。
防戦一方だった戦局は、そのまま一転。攻撃の手段を得た俺は、水を得た魚の如く反撃に転じる。
が…相手も相手。俺の攻撃を大人しく受け続ける程の甘さを、ジョージは持ち合わせては居ないらしい。
今度はジョージが柱の後ろに身を潜め………いや、ただ身を潜めただけじゃ無い。
俺が放つコンクリート片の軌道が、他の柱で遮られる位置……安全地帯とも言える場所に陣取られてしまった。
こうなってしまうと………今度は、また俺の劣勢に逆戻り。
被弾と言う懸念を消し去った以上…ジョージは、防御を気にせず攻撃に移れてしまう。
最初に見せたように、腕を伸ばして攻撃して来るか……あるいは…また身体を霧状に変化して駐車場を満たし、俺を追い詰めるか……
いずれにしても、一方的に俺を攻撃する手段を持っている事に変わりは無い…まさに袋の鼠状態。
俺は………この窮地を脱するべく、全力で…死に物狂いで、次の手を打つために脳細胞をフル稼働させる。
561: ◆TPk5R1h7Ng 2016/02/27(土) 04:04:52.35 ID:YpV3FltMo
●空に自分を重ねて
俺「なぁ………最後に一つだけ聞かせてくれ。何故こんな事をした?何故DCDCを蘇らせた?」
少しでも時間を稼ぐため…俺はジョージに問いかける。
ジョージ「人はパンのみにて生くるにあらず…かな?」
俺「神の口から出る一つ一つの言葉による…か。意外だな、お前がそんな信仰深い事を言うなんてなぁ。で、これが神の言葉だってのか?」
ジョージ「いいや?そっちじゃなくて…娯楽の方だね。誰かが生きるために娯楽を望み、僕はその願いのままに行動している…それが答えさ」
限られた時間の中…記憶を手繰り……その先にある物、あるべき物、必要な物を組み立てて行く。
俺「そうか……思った通りの糞野郎で安心したぜ。それなら………」
ジョージ「それなら?」
そして――――――
俺「心置きなく、お前をブッ倒す事が出来るぜ!!!」
遂に……俺の中で、それが組み上がった。
空『あれ…どうやってるんだ?迎撃対象の感知もだけどよぉ…どうやったらサイコキネシスであんな瞬発力出せるんだ?』
俺『感知の方はクレアボヤントで…サイコキネシスの方は、こう…両掌を合わせて、力一杯押し付け合う感じかな。んで、片方を離す』
空『ぁー…成る程な。ゼロから加速させるんじゃ無くて、力を溜めて開放してんのか』
俺『ま、そんな所だな。お前のソーサー=ソーサはどうなんだ?あれって、サイコキネシスで軸を作って独楽みたいに回転させてんのか?』
空『軸ってーか…輪だな、ドーナッツ状の。それを縦に伸ばして筒状にしたりもするぞ』
俺『力の向きはどうなんだ?』
空『俺が得意なのは輪を横方向に回す動きかねぇ。サイコキネシスをそのまんま金属盤に乗せれっし』
俺『輪の内側に向けて回したり、外側に向けて回したりは?』
空『出来っけど…あんまし威力は出無ぇなぁ。ってか、例えに使ったせいでドーナッツ食いたくなってきた』
俺「これの名前は何にするかなぁ…」
――――まずは…ジョージに至るまでの軌道に、ソーサー=ソーサのドーナッツ状の力場を幾つも…トンネルのように配置する。
次に、その力場を内側…進行方向に向けて回転させる。一つ一つはソーサー=ソーサ程の力を持って居ないが、それで充分だ。
そして最後に………目の前に浮かべたコンクリート片を解き放つ。
俺「レールガン……サイドワインダー………いや、そうだな…」
パトリオットを着火剤代わりにして…予め配置しておいた輪状の力場の中で加速を続けながら…駐車場の柱の間を縫って、コンクリート片が突き進む。
発射の時点で、ゆうに目視を振り切ったコンクリート片の…その行方を捕らえる事は、DCDC化したジョージであってもまず不可能。
ただ、自らに迫る凶弾が存在する…ジョージはその事だけに気付いた上で、頭への着弾は避けるべく両手でそれを遮ろうと試みる、が………もう遅い。
俺「食らいやがれ…これが、俺と空の………コイルガンだ!!!」
回避不能なまでに加速したコンクリート片は、弾丸となり………爆発音を響かせながら、ジョージの頭を吹き飛ばした。
俺「なぁ………最後に一つだけ聞かせてくれ。何故こんな事をした?何故DCDCを蘇らせた?」
少しでも時間を稼ぐため…俺はジョージに問いかける。
ジョージ「人はパンのみにて生くるにあらず…かな?」
俺「神の口から出る一つ一つの言葉による…か。意外だな、お前がそんな信仰深い事を言うなんてなぁ。で、これが神の言葉だってのか?」
ジョージ「いいや?そっちじゃなくて…娯楽の方だね。誰かが生きるために娯楽を望み、僕はその願いのままに行動している…それが答えさ」
限られた時間の中…記憶を手繰り……その先にある物、あるべき物、必要な物を組み立てて行く。
俺「そうか……思った通りの糞野郎で安心したぜ。それなら………」
ジョージ「それなら?」
そして――――――
俺「心置きなく、お前をブッ倒す事が出来るぜ!!!」
遂に……俺の中で、それが組み上がった。
空『あれ…どうやってるんだ?迎撃対象の感知もだけどよぉ…どうやったらサイコキネシスであんな瞬発力出せるんだ?』
俺『感知の方はクレアボヤントで…サイコキネシスの方は、こう…両掌を合わせて、力一杯押し付け合う感じかな。んで、片方を離す』
空『ぁー…成る程な。ゼロから加速させるんじゃ無くて、力を溜めて開放してんのか』
俺『ま、そんな所だな。お前のソーサー=ソーサはどうなんだ?あれって、サイコキネシスで軸を作って独楽みたいに回転させてんのか?』
空『軸ってーか…輪だな、ドーナッツ状の。それを縦に伸ばして筒状にしたりもするぞ』
俺『力の向きはどうなんだ?』
空『俺が得意なのは輪を横方向に回す動きかねぇ。サイコキネシスをそのまんま金属盤に乗せれっし』
俺『輪の内側に向けて回したり、外側に向けて回したりは?』
空『出来っけど…あんまし威力は出無ぇなぁ。ってか、例えに使ったせいでドーナッツ食いたくなってきた』
俺「これの名前は何にするかなぁ…」
――――まずは…ジョージに至るまでの軌道に、ソーサー=ソーサのドーナッツ状の力場を幾つも…トンネルのように配置する。
次に、その力場を内側…進行方向に向けて回転させる。一つ一つはソーサー=ソーサ程の力を持って居ないが、それで充分だ。
そして最後に………目の前に浮かべたコンクリート片を解き放つ。
俺「レールガン……サイドワインダー………いや、そうだな…」
パトリオットを着火剤代わりにして…予め配置しておいた輪状の力場の中で加速を続けながら…駐車場の柱の間を縫って、コンクリート片が突き進む。
発射の時点で、ゆうに目視を振り切ったコンクリート片の…その行方を捕らえる事は、DCDC化したジョージであってもまず不可能。
ただ、自らに迫る凶弾が存在する…ジョージはその事だけに気付いた上で、頭への着弾は避けるべく両手でそれを遮ろうと試みる、が………もう遅い。
俺「食らいやがれ…これが、俺と空の………コイルガンだ!!!」
回避不能なまでに加速したコンクリート片は、弾丸となり………爆発音を響かせながら、ジョージの頭を吹き飛ばした。
563: ◆TPk5R1h7Ng 2016/03/04(金) 19:46:15.29 ID:+zn1bXE0o
●空が来たりて
頭を失い…力無く前のめりに倒れるジョージ。
空「おい!物凄い音が聞こえて来たんだが…やったのか!?」
静寂がこの場を支配する中……終焉の一撃聞いて駆けつけたのであろう、空の声が…周囲に響き渡る。
俺「あぁ、何とか…な」
空「瘴気が染み込んでボロボロじゃねぇか…無茶しやがって」
俺「いや、これはさっきまでの……って言っても、どの道ボロボロでもう動け無いから同じ事か」
空「だったら無理すんな。肩貸してやんよ」
そうして俺は空の肩を借り、決戦の地…地下駐車場を後にする事になったのだが……その時、ふと…ある事に気付く。
俺「気のせいだと良いんだが……何か、崩れかけて無いか?」
空「気のせい……だったら良かったんだがなぁ。俺から見ても、かなりヤバい感じだ」
あれだけの戦闘を繰り広げ、これでもかと言うくらいに柱を痛め付けた結果だろうか…
地下駐車場のみならず、恐らくは…このハーモニカシティその物が、倒壊しかかっている……と言う危機的状況を、窺い知る事が出来た。
俺「そうと判れば、長居は無用だよなぁ…とにかく急ぐぞ!」
空の肩を借りながら…残った力を振り絞って、出口へと向かう……
そんな中、俺達がジョージの遺体の横を通り抜けた時……これまた、嫌な事に気付いてしまう。
俺「あぁ…くそっ!!!」
これでもかと急ぐ俺達を尻目に、緩やかに膨れ上がって行く…ジョージの身体。それが意味する物…この先起こりうるであろう事は、安易に想像が付く。
俺は、残った最後の力…本当に最後の力を振り絞って、空から離れ……
俺「爆散させたい時には出来無いくせに…して欲しく無い時に限って爆散しやがるんだよなぁ!!」
ジョージから四散するであろう瘴気から…空を守るべく、盾になった。
頭を失い…力無く前のめりに倒れるジョージ。
空「おい!物凄い音が聞こえて来たんだが…やったのか!?」
静寂がこの場を支配する中……終焉の一撃聞いて駆けつけたのであろう、空の声が…周囲に響き渡る。
俺「あぁ、何とか…な」
空「瘴気が染み込んでボロボロじゃねぇか…無茶しやがって」
俺「いや、これはさっきまでの……って言っても、どの道ボロボロでもう動け無いから同じ事か」
空「だったら無理すんな。肩貸してやんよ」
そうして俺は空の肩を借り、決戦の地…地下駐車場を後にする事になったのだが……その時、ふと…ある事に気付く。
俺「気のせいだと良いんだが……何か、崩れかけて無いか?」
空「気のせい……だったら良かったんだがなぁ。俺から見ても、かなりヤバい感じだ」
あれだけの戦闘を繰り広げ、これでもかと言うくらいに柱を痛め付けた結果だろうか…
地下駐車場のみならず、恐らくは…このハーモニカシティその物が、倒壊しかかっている……と言う危機的状況を、窺い知る事が出来た。
俺「そうと判れば、長居は無用だよなぁ…とにかく急ぐぞ!」
空の肩を借りながら…残った力を振り絞って、出口へと向かう……
そんな中、俺達がジョージの遺体の横を通り抜けた時……これまた、嫌な事に気付いてしまう。
俺「あぁ…くそっ!!!」
これでもかと急ぐ俺達を尻目に、緩やかに膨れ上がって行く…ジョージの身体。それが意味する物…この先起こりうるであろう事は、安易に想像が付く。
俺は、残った最後の力…本当に最後の力を振り絞って、空から離れ……
俺「爆散させたい時には出来無いくせに…して欲しく無い時に限って爆散しやがるんだよなぁ!!」
ジョージから四散するであろう瘴気から…空を守るべく、盾になった。
564: ◆TPk5R1h7Ng 2016/03/04(金) 20:08:22.87 ID:+zn1bXE0o
○無垢なる空の願い
何が起こったのか………俺は一瞬理解出来なかった。
物凄い爆発音の後…朱桜ってガキに、戦いが終わった事を教えられて…俺はコイツを迎えに入って…
崩れそうな地下駐車場から抜け出すために、肩を貸してたら…今度はいきなりコイツが離れて………
俺「………おい、嘘だろ……?」
瓦礫の山に閉じ込められた中………大量の瘴気に侵されたコイツが居た。
多分、残ったジョージの体が爆発して…その爆発から俺を庇って、モロに瘴気を受けたんだろう。それは判る。
だが………ここから先が判らない。
俺を守った…その上で、コイツは何をしようとしていた?俺はこの後、何をすれば良い?コイツは何を見据えてこんな行動に出た?
コイツの事だから、何か作戦があって俺を守った筈。俺を守った事で、何か………
いや、違う………コイツは何も見据えて居なかった。ただ目の前の…俺を庇う事で頭が一杯になって、こんな事をした…それに気付いてしまう。
俺「馬鹿野郎………」
元居た場所から、出口までの距離を考えても…瓦礫の層は相当に厚い。
不幸中の幸いなのは…奇跡的にも、瓦礫に押し潰されなかったってのと…瘴気の元からは隔離された常態で閉じ込められた、って事なんだが…
俺はともかく、コイツの身体はモロに瘴気に侵食されてしまっている。
助けが来るまでの間…俺は何とか持ち堪える事が出来るんだろうが、コイツはそうは行かない。
今の状態では、そう長くはもたない…もって後数分。救助を待っていたら到底間に合わない。
俺の中で………焦りと絶望が入り混じる。
俺「………どうする?どうすれば良い?」
考える…だが考えれば考える程、深みに嵌る。いくら考えても、結果は…打つ手無し。
このままでは、コイツに訪れる未来は………死。それだけだった。
俺「死ぬな…死ぬんじゃ無ぇ!!チクショウ…俺に………俺に魔法があれば!!」
コイツを抱き絞める手に力が篭り、瞼の奥から涙が溢れ出す。
幾ら望んでも、俺にコイツを助ける術は無い。憎しみに駆られ、俺が…俺が金繰り捨ててしまったから、もう残っては居ない。
俺「誰か……誰か助けてくれよ!!コイツを助けてくれ!もう嫌なんだ…誰かを…大事な誰かを失うのは、もう嫌なんだよ!!」
訪れる筈の無い救いを求め、喉の奥から張り裂けそうな声で叫ぶ。そして………
後悔………それが心の奥底で大きく口を広げ、俺を飲み込んだ瞬間―――
『魔法は、想いによって紡がれる力。だから…それがソラの本当の願いなら、必ず叶う筈さ』
心の奥底…闇の中から、一筋の光と共にその声が響いた。
何が起こったのか………俺は一瞬理解出来なかった。
物凄い爆発音の後…朱桜ってガキに、戦いが終わった事を教えられて…俺はコイツを迎えに入って…
崩れそうな地下駐車場から抜け出すために、肩を貸してたら…今度はいきなりコイツが離れて………
俺「………おい、嘘だろ……?」
瓦礫の山に閉じ込められた中………大量の瘴気に侵されたコイツが居た。
多分、残ったジョージの体が爆発して…その爆発から俺を庇って、モロに瘴気を受けたんだろう。それは判る。
だが………ここから先が判らない。
俺を守った…その上で、コイツは何をしようとしていた?俺はこの後、何をすれば良い?コイツは何を見据えてこんな行動に出た?
コイツの事だから、何か作戦があって俺を守った筈。俺を守った事で、何か………
いや、違う………コイツは何も見据えて居なかった。ただ目の前の…俺を庇う事で頭が一杯になって、こんな事をした…それに気付いてしまう。
俺「馬鹿野郎………」
元居た場所から、出口までの距離を考えても…瓦礫の層は相当に厚い。
不幸中の幸いなのは…奇跡的にも、瓦礫に押し潰されなかったってのと…瘴気の元からは隔離された常態で閉じ込められた、って事なんだが…
俺はともかく、コイツの身体はモロに瘴気に侵食されてしまっている。
助けが来るまでの間…俺は何とか持ち堪える事が出来るんだろうが、コイツはそうは行かない。
今の状態では、そう長くはもたない…もって後数分。救助を待っていたら到底間に合わない。
俺の中で………焦りと絶望が入り混じる。
俺「………どうする?どうすれば良い?」
考える…だが考えれば考える程、深みに嵌る。いくら考えても、結果は…打つ手無し。
このままでは、コイツに訪れる未来は………死。それだけだった。
俺「死ぬな…死ぬんじゃ無ぇ!!チクショウ…俺に………俺に魔法があれば!!」
コイツを抱き絞める手に力が篭り、瞼の奥から涙が溢れ出す。
幾ら望んでも、俺にコイツを助ける術は無い。憎しみに駆られ、俺が…俺が金繰り捨ててしまったから、もう残っては居ない。
俺「誰か……誰か助けてくれよ!!コイツを助けてくれ!もう嫌なんだ…誰かを…大事な誰かを失うのは、もう嫌なんだよ!!」
訪れる筈の無い救いを求め、喉の奥から張り裂けそうな声で叫ぶ。そして………
後悔………それが心の奥底で大きく口を広げ、俺を飲み込んだ瞬間―――
『魔法は、想いによって紡がれる力。だから…それがソラの本当の願いなら、必ず叶う筈さ』
心の奥底…闇の中から、一筋の光と共にその声が響いた。
565: ◆TPk5R1h7Ng 2016/03/04(金) 20:24:22.92 ID:+zn1bXE0o
●空の向こう側
俺「………え?…あれ…この光………お前、もう魔法は使えなかったんじゃ……」
DCDC…ジョージの瘴気に侵された俺の身体を包み、それを消し去って行く……淡い光。
目が覚めた時には既に崩落の後で…俺と空意外に、人の気配は無い。となれば…考えるまでも無く必然的に、光の主は…残されたその人物と言う事になる訳だが…
俺はその事実を目の当たりにして、困惑せずにはいられなかった。
空「何でだろぉなぁ…本当、もう魔力なんか残って無ぇのに……」
大粒の涙を、俺の頬に落とし…笑顔のまま泣きじゃくり、空が答える。
俺「空にも判んねぇのか…だったら、そりゃぁ奇跡って事なんだろうな…」
俺は…そんな空を見て、冗談めかしながら言ったつもりだったんだが……
何故か、言葉にした時には…それが冗談である事を忘れ、心の奥底でその意味を受け止めて居た。
空「声がな…声が聞こえたんだ。サーティーンの声が…もう居ない筈のアイツの声が…」
俺「そっか……アイツ、結構面倒見が良いもんな。消えたフリして、きっと最後の最後まで空の事を助けてくれたんだろ」
嗚咽交じりの空の声に、俺は思ったままの言葉を返す。
空「ばーか……助けられたのはお前じゃ無ぇか」
俺「ま、それは違い無いな」
そんなやりとりが終わると共に、俺の顔に近付く空の顔。
空は俺の頬に両手を沿え……俺は空の頭の後ろに手を回し………互いの唇を重ねた。
――――その瞬間
俺達を取り囲んでいた瓦礫の一部が崩れ去り、空の向こう側から光が差し込んだ。
俺「………え?…あれ…この光………お前、もう魔法は使えなかったんじゃ……」
DCDC…ジョージの瘴気に侵された俺の身体を包み、それを消し去って行く……淡い光。
目が覚めた時には既に崩落の後で…俺と空意外に、人の気配は無い。となれば…考えるまでも無く必然的に、光の主は…残されたその人物と言う事になる訳だが…
俺はその事実を目の当たりにして、困惑せずにはいられなかった。
空「何でだろぉなぁ…本当、もう魔力なんか残って無ぇのに……」
大粒の涙を、俺の頬に落とし…笑顔のまま泣きじゃくり、空が答える。
俺「空にも判んねぇのか…だったら、そりゃぁ奇跡って事なんだろうな…」
俺は…そんな空を見て、冗談めかしながら言ったつもりだったんだが……
何故か、言葉にした時には…それが冗談である事を忘れ、心の奥底でその意味を受け止めて居た。
空「声がな…声が聞こえたんだ。サーティーンの声が…もう居ない筈のアイツの声が…」
俺「そっか……アイツ、結構面倒見が良いもんな。消えたフリして、きっと最後の最後まで空の事を助けてくれたんだろ」
嗚咽交じりの空の声に、俺は思ったままの言葉を返す。
空「ばーか……助けられたのはお前じゃ無ぇか」
俺「ま、それは違い無いな」
そんなやりとりが終わると共に、俺の顔に近付く空の顔。
空は俺の頬に両手を沿え……俺は空の頭の後ろに手を回し………互いの唇を重ねた。
――――その瞬間
俺達を取り囲んでいた瓦礫の一部が崩れ去り、空の向こう側から光が差し込んだ。
566: ◆TPk5R1h7Ng 2016/03/04(金) 20:40:52.40 ID:+zn1bXE0o
黄色「おぉっと…こりゃぁ、お邪魔しちまったか?」
俺「………って、黄色先輩!?」
空「なっ――――ッ!?」
カレン「ちょっと…二人っきりになったからって抜け駆けしないでよ!」
理央「そうです。空さんは抜け駆けばかりで…ずるいと思います!」
そして……黄色先輩に引き続き、赤面する俺と空の前に現れる…カレンと理央。
空は弁明の言葉も出ないまま硬直し、カレンと理央の視線が今度は俺へと突き刺さる。
俺「あ、えっと……そ、そう言えば他の皆はどうしたんだ?」
何とかして話題を逸らすべく…俺は、瓦礫の向こうを見て真っ先に気付いた事を口に出す。
理央「今回の事が終わった時点…先輩の瘴気が浄化された時点で解散になりました」
カレン「本当…人が心配して助けに来たって言うのに。貴方達、何してるのよ」
黄色「ってか…実際に助けたのは俺なんだけどな」
カレン「黄色先輩は黙ってて!」
理央「黄色先輩は黙ってて下さい!」
黄色「……………」
女の子二人の勢いに押され、押し黙ってしまう黄色先輩。
本来ならば功労賞を貰っても良いくらいの立場だと言うのに、相変わらず酷い扱い……
と、他人事のように言っていられる事態でも無かった事を思い出す。
カレン「まぁ………今回は空の事だったし、頑張ったのは知ってるから大目に見るけど…」
理央「こうして全て解決した以上は……正々堂々、真正面からぶつからせて貰いますよ?」
三人の間にバチバチと飛び散る火花が、俺の皮膚を焦がす…そんな錯覚を覚える中…
空は、残った涙を袖で拭い去り…不敵な笑みを浮かべながら顔を上げ
空「……上等だ。相手になってやんよ!」
改めて……宣戦布告を行った。
―空ルート END―
俺「………って、黄色先輩!?」
空「なっ――――ッ!?」
カレン「ちょっと…二人っきりになったからって抜け駆けしないでよ!」
理央「そうです。空さんは抜け駆けばかりで…ずるいと思います!」
そして……黄色先輩に引き続き、赤面する俺と空の前に現れる…カレンと理央。
空は弁明の言葉も出ないまま硬直し、カレンと理央の視線が今度は俺へと突き刺さる。
俺「あ、えっと……そ、そう言えば他の皆はどうしたんだ?」
何とかして話題を逸らすべく…俺は、瓦礫の向こうを見て真っ先に気付いた事を口に出す。
理央「今回の事が終わった時点…先輩の瘴気が浄化された時点で解散になりました」
カレン「本当…人が心配して助けに来たって言うのに。貴方達、何してるのよ」
黄色「ってか…実際に助けたのは俺なんだけどな」
カレン「黄色先輩は黙ってて!」
理央「黄色先輩は黙ってて下さい!」
黄色「……………」
女の子二人の勢いに押され、押し黙ってしまう黄色先輩。
本来ならば功労賞を貰っても良いくらいの立場だと言うのに、相変わらず酷い扱い……
と、他人事のように言っていられる事態でも無かった事を思い出す。
カレン「まぁ………今回は空の事だったし、頑張ったのは知ってるから大目に見るけど…」
理央「こうして全て解決した以上は……正々堂々、真正面からぶつからせて貰いますよ?」
三人の間にバチバチと飛び散る火花が、俺の皮膚を焦がす…そんな錯覚を覚える中…
空は、残った涙を袖で拭い去り…不敵な笑みを浮かべながら顔を上げ
空「……上等だ。相手になってやんよ!」
改めて……宣戦布告を行った。
―空ルート END―
568: ◆TPk5R1h7Ng 2016/03/04(金) 20:48:20.27 ID:+zn1bXE0o
●反省会
ベリル「ハーレムエンド…なりませんでしたね?」
俺「………」
ベリル「あれだけお膳立てされていて、好意を持たれていたにも関わらず…」
俺「あれは……その……」
ベリル「ここういうのを何と言うのでしたっけ?確か…そうそう」
俺「………」
ベリル「ヘ★タ★レ…ですわよね?」
俺「…………その通りです。返す言葉もありません」
ベリル「まぁ、それでも…他の二つに関しましては、足がかりを作る事ができたようですし?」
俺「あぁ……そっちの方は…な」
ベリル「それでは、今後は…どうなさるお積りですの?」
俺「そうだな…とりあえずは――――」
ベリル「ハーレムエンド…なりませんでしたね?」
俺「………」
ベリル「あれだけお膳立てされていて、好意を持たれていたにも関わらず…」
俺「あれは……その……」
ベリル「ここういうのを何と言うのでしたっけ?確か…そうそう」
俺「………」
ベリル「ヘ★タ★レ…ですわよね?」
俺「…………その通りです。返す言葉もありません」
ベリル「まぁ、それでも…他の二つに関しましては、足がかりを作る事ができたようですし?」
俺「あぁ……そっちの方は…な」
ベリル「それでは、今後は…どうなさるお積りですの?」
俺「そうだな…とりあえずは――――」
570: ◆TPk5R1h7Ng 2016/03/04(金) 21:29:02.97 ID:+zn1bXE0o
―だが断る―
●!!!
ショウ「はーい、空ルートENDお疲れ様ー」
ショウ「いやぁ…彼女の介入で一時はどうなる事かと思ったけど、無事に終わって良かった良かった☆」
ショウ「それじゃぁ改めて、今回も六週目のルート選択を―――」
俺「ルートK……本当の俺のルートを、偽りのカレンルートの続きでやる」
ショウ「…………え?」
俺「それと…シーズン2はここまでだ、次回からはシーズンファイナルで行かせて貰う」
ショウ「おいおい、それはさすがに横暴が過ぎるとは思わないかい?」
俺「思わないな。今までお前が好き勝手やってきた分、ここからは俺が仕切らせて貰う。ここからは収束に向けて一直線だ」
ショウ「へぇ………良いね、良いねぇ良いねぇ☆じゃぁ、やっと―――」
俺「おっと、勘違いはするな。俺はまだ俺自身を取り戻した訳じゃない。これからだ」
ショウ「いやいやいや…それはそれで、楽しみで仕方が無いよ。だったら…」
俺「ただ…もう一つだけ今の時点で言わせて貰う事がある」
ショウ「…………何だい?」
俺「この後二つのルートが終わったら…もう、ジョージを使って舵取りを企むのは止めろ」
ショウ「………何だ、気付いてたんだね?」
俺「元々これは俺とお前の問題だろ?だから……その時になったら、直接蹴りを付けようじゃないか」
リア充爆散しろ シーズン2 ―完―
●!!!
ショウ「はーい、空ルートENDお疲れ様ー」
ショウ「いやぁ…彼女の介入で一時はどうなる事かと思ったけど、無事に終わって良かった良かった☆」
ショウ「それじゃぁ改めて、今回も六週目のルート選択を―――」
俺「ルートK……本当の俺のルートを、偽りのカレンルートの続きでやる」
ショウ「…………え?」
俺「それと…シーズン2はここまでだ、次回からはシーズンファイナルで行かせて貰う」
ショウ「おいおい、それはさすがに横暴が過ぎるとは思わないかい?」
俺「思わないな。今までお前が好き勝手やってきた分、ここからは俺が仕切らせて貰う。ここからは収束に向けて一直線だ」
ショウ「へぇ………良いね、良いねぇ良いねぇ☆じゃぁ、やっと―――」
俺「おっと、勘違いはするな。俺はまだ俺自身を取り戻した訳じゃない。これからだ」
ショウ「いやいやいや…それはそれで、楽しみで仕方が無いよ。だったら…」
俺「ただ…もう一つだけ今の時点で言わせて貰う事がある」
ショウ「…………何だい?」
俺「この後二つのルートが終わったら…もう、ジョージを使って舵取りを企むのは止めろ」
ショウ「………何だ、気付いてたんだね?」
俺「元々これは俺とお前の問題だろ?だから……その時になったら、直接蹴りを付けようじゃないか」
リア充爆散しろ シーズン2 ―完―
コメントする
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。