1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 22:38:06.56 ID:nom7NTBI0
憂「あっ、紬さんいらっしゃい」

紬「おはようございます、憂ちゃん。今日はよろしくお願いするね」

憂「はいっ。任せてください」

唯「誰かきたの…? あれ、ムギちゃんだ」

紬「こんにちは唯ちゃん。これ、お土産のプリンよ」

唯「わーい。でもムギちゃんがくるなんて珍しいねぇ」

紬「憂ちゃんにお菓子の作り方を教えて貰いにきたの」

唯「へぇー。そうなんだ」

紬「ええ、そうなの」

憂「それじゃ台所に行きましょうか」




2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 22:42:26.40 ID:nom7NTBI0
唯「ねーねー憂。何を作るの?」

憂「トリュフを作るんだよ、お姉ちゃん」

唯「トリュフ?」

紬「ええ。あの生っぽい柔らかいチョコレートのこと」

唯「あぁ、あれ。ムギちゃんもたまに持ってきてくれるよね」

紬「ええ。賞味期限が短いから頂いても食べきれないから」

唯「でもなんで手作り?」

紬「梓ちゃんとプレゼント交換するの」

唯「ははーん。ムギちゃん恋してますねぇー」

紬「実はそうなの」

憂「今日の紬さんとっても楽しそうです」

紬「そう見えるちゃうかな。実は今日の夕方梓ちゃんに渡そうと思ってるの」

憂「今日は頑張りましょう紬さん」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 22:44:19.43 ID:nom7NTBI0
―――
澪「あずさー、こっちこっち」

梓「澪先輩、待たせてしまってすいません。ところで…」

澪「あぁ…」

梓「なんで律先輩までいるんですか?」

澪「悪い。梓と遊びに行くって言ったら自分も行くって聞かなくてさ」

律「私がいちゃいけないのか?」

梓「いえ。そんなことありません」

澪「そうなのか?」

梓「むしろ考え様によってはついてきてもらったほうが助かるかもしれません」

澪「ならよかったよ」

律「それじゃあ行くか」

梓「はい」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 22:45:39.16 ID:nom7NTBI0
律「それにしても梓がなぁ」

梓「いけませんか?」

律「いや、そんなことないが、ちょっと意外というか」

梓「まぁ、それはあるかもしれません」

澪「そうなのか?」

梓「そうですね。私も出会ったときはこうなるなんて思ってませんでしたから」

澪「ふぅん」

梓「それでどこへ行きましょうか」

澪「考えてたんだけどさ、やっぱり百貨店かなって」

梓「だけどムギ先輩って庶民的なもののほうが好きじゃないですか?」

澪「確かにそうなんだけど、最初はちゃんとしたものがいいと思うんだ」

梓「……一理ありますね。今日は澪先輩にお任せします」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 22:47:46.24 ID:nom7NTBI0
―――
憂「こうやってチョコレートを溶かします」

紬「ふむふむ」

憂「温度を上げすぎても下げすぎてもだめでなんです」

紬「ふむふむ」

憂「正しい温度で作らないと滑らかさと口溶けが全然違っちゃいますから」

紬「温度管理が命なのね」

憂「はい。お菓子作りは正確さが命なんです。目分量でやったら大失敗しますから」

唯「ふむふむ」

憂「あっ、お姉ちゃんは遊んていいよ。完成したら持っていってあげるから」

唯「えーっ、私も見てるよ。二人が料理してるところ」

憂「退屈じゃない?」

唯「憂を見てるのは楽しいよ」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 22:48:59.66 ID:nom7NTBI0
憂「そ、そうかな。えへへ」

紬「二人は本当に仲がいいのね」

憂「はい! そうなんです」

唯「私達とっても仲良しなんだよー」

紬「うふふふ」

憂「さっ、それじゃあ気を取り直して、まずはこの板チョコを溶かしていきましょう」

紬「はいっ! 憂先生」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 22:51:29.67 ID:nom7NTBI0
―――――
律「それで、どこから見るんだ?」

澪「まずは宝石売り場にでも行ってみようかなと思ってるんだが」

律「えっ、お金は大丈夫なのか?」

梓「予算は十分あります」

律「マジで?」

梓「大マジです」

澪「ムギはさぁ、意外とピアスとか似合うと思うんだ」

梓「ピアスですか……でも穴あけてませんよね」

澪「マグネット式なら大丈夫だろ」

梓「確かに」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 22:53:38.83 ID:nom7NTBI0
律「そうかぁ? 私はネックレスのほうが似合うと思うけどなぁ」

澪「でもネックレスって首元開ける服じゃないと見えないぞ。これから冬になるんだし」

律「それもそうか」

梓「ピアスやネックレスもいいですけど、シンプルな指輪も似合うと思うんです」

律「…」

澪「…」

梓「どうしました?」

律「いや、なんでもないよ」

澪「あぁ、意外と大胆だなって」

梓「えっ、えっ」

律「とりあえず行くか」

澪「あぁ」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 22:54:48.19 ID:nom7NTBI0
―――――
紬「……どうかな?」

憂「……ちょっと柔らかすぎます。これじゃ上手く固まらないと思います」

紬「テンパリングって難しいのね」

憂「私も慣れるまで苦労しました」

紬「どうしても焦っちゃって駄目ね。テンパリングだけにてん――」

憂「その先は――」

唯「駄目だよ!!」

紬「……っ」

憂「ふぅ、ぎりぎりセーフだったね、お姉ちゃん」

唯「うん。チョコレートの温度が一気に氷点下まで下がるところだったよ」

紬「おそろしいこともあるのね…」

憂「紬さん、気をつけてくださいね。梓ちゃんの前でそんなこと言ったら百年の恋も冷めちゃいますから」

紬「えっと…いつも笑ってくれてるけど」

唯「あずにゃんの笑いのツボって…」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 22:57:42.25 ID:nom7NTBI0
紬「えっと……これからは出来るだけ気をつけるわ」

憂「ええっと。それで、どうしましょうか。だいぶ材料が減っちゃいましたけど」

紬「これだと足りない?」

憂「3つぐらいしか出来ないと思います」

紬「梓ちゃんの分と憂ちゃんの分と唯ちゃんの分で丁度じゃない?」

憂「1個でいいんですか?」

紬「ええ、それに多分今から作り直してたら時間がなくなっちゃうから」

憂「……そうですね。次は成形していきましょうか」

紬「はい、憂師匠」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 22:59:07.91 ID:nom7NTBI0
―――
澪「結局アクセサリーは駄目だったか」

梓「駄目ってわけではないんですが、ピンとくるのがなくて…」

律「あの指輪良かったと思うんだけどなぁ」

梓「あんな大きなターコイズのついた指輪はムギ先輩に似合いませんよ」

律「そうかー?」

梓「そうです」

澪「あぁ、私も梓に同感だ」

律「むむむ」

梓「それじゃあ次はどこを見に行きましょうか」

律「あっ、あれだ。エクササイズマシーンとかどうだろう」

澪「あっ、いいな。私だったら凄く嬉しい」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:01:50.27 ID:nom7NTBI0
梓「確かにムギ先輩も喜んでくれるかもしれませんが……」

律「だろだろ」

梓「初めてのプレゼントがダイエット器具ってのはちょっと…」

澪「……あぁ、ごめんな、梓。確かに私でも嫌かもしれない」

律「なんでだ?」

澪「……」

ポカ

律「な、なんで無言で殴るんだよ」

澪「はぁ、梓。行こ行こ」

梓「そうですね。律先輩は置いていきましょうか」

律「お、おい」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:03:18.08 ID:nom7NTBI0
―――
紬「できた」

憂「はい。できました」

唯「やったね」

紬「ええ」

憂「えっと、お姉ちゃんお腹空いてる?」

唯「うん」

憂「それじゃあ、あーん」

唯「あーん」

モグモグ

唯「うん。とっても美味しいよ!」

紬・憂「やった!」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:04:39.94 ID:nom7NTBI0
紬「あっ、私はそろそろ行かなきゃ」

唯「時間なんだね」

紬「ええ。憂ちゃん、今日は本当にありがとうございました」

憂「どういたしまして。また遊びに来てくださいね」

紬「ええ、そうね。それじゃあまた」

唯「ばいばーい」

憂「さようなら」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:06:07.48 ID:nom7NTBI0
―――
唯「行っちゃったね」

憂「うん」

唯「それじゃあ今度は私が憂に食べさせてあげるよ」

憂「えっ、いいよ。恥ずかしいし」

唯「そんなこと言わずに、あーん」

憂「もう、お姉ちゃんったら……」

唯「あーん」

憂「あーん」

モグモグ

憂「うん。とっても美味しいね」

唯「ねっ」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:10:19.96 ID:nom7NTBI0
―――
澪「あのぬいぐるみなんて結構良かったんじゃないか」

梓「でも、ムギ先輩ならあの手のものは結構持っていそうですし」

澪「そうだな」

梓「あっ、でもそろそろ時間が……」

澪「うーん。そろそろ決めないといけないか。やっぱりアクセサリーで」

梓「そうですね、やっぱりそれが無難でしょうか」

律「おーい」

澪「律? 今まで何やってたんだ」

律「置いてっといてそれはないだろ、なっ、これなんてどうだろう?」

澪「湯呑? 敬老の日のプレゼントじゃないんだぞ?」

梓「それですっ!!」

澪「えっ?」

梓「律先輩、見直しました」

律「えっ?」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:12:39.19 ID:nom7NTBI0
梓「ムギ先輩、ずっと湯呑を欲しがってたんです」

澪「そ、そうなのか?」

梓「はい。このペアの湯呑ならプレゼントにピッタリです」

律「だろ」

梓「伊達に部長をやってるわけじゃないんですね」

律「あはは、そう褒めるなよ」

梓「別に褒めてませんよ」

律「えっ」

澪「まぁ、なんにせよ決まってよかったよ」

梓「……はい。お二人とも、今日は本当にありがとうございました」

律「あぁ、後は梓次第だ」

澪「頑張れよ」

梓「はい!」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:13:43.92 ID:nom7NTBI0
―――
澪「行ったな」

律「あぁ」

澪「なぁ、律」

律「なんだ?」

澪「これからカラオケにでも寄ってかないか?」

律「二人でか?」

澪「二人で」

律「いいぞ」

澪「よしっ! 今日は歌うぞー」

律「だなっ!」


二人は繁華街へと消えていった。

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:16:27.04 ID:nom7NTBI0
―――
紬「…………あら」

純「…えっ」

紬「あなた……純ちゃんね」

純「あっ…と………紬先輩でしたっけ」

紬「えぇ」

純「こんなところで会うなんて奇遇ですね」

紬「この公園にはよく来るの?」

純「めったに来ませんね。今日はたまたまこれを――」

紬「カメラ?」

純「最近はまってるんです。先輩も一枚撮ってもいいですか?」

紬「いいわよ」

パシャッ

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:19:55.52 ID:nom7NTBI0
純「ところで、紬先輩はこんなところで何を?」

紬「梓ちゃんと待ち合わせしてるの」

純「梓と?」

紬「えぇ」

純「逢引ですか?」

紬「実はそうなの」

純「えっ、本当にそうなんですか」

紬「ええ」

純「それじゃあ私はお邪魔になる前に――」

グー

純「…」

紬「…」

純「す、すいません。実はお昼ごはん食べそびれちゃって…」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:22:57.55 ID:nom7NTBI0
―――
タタタタタ

バン

ドタッ

ガッシャーン

梓「っ……いたたた」

和「派手に転んだみたいだけど大丈夫? あら、あなたは」

梓「えっと……真壁先輩?」

和「真鍋よ」

梓「すいません。真鍋先輩」

和「ところでその荷物だけど……あら、これ…」

梓「割れてますね……」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:24:50.61 ID:nom7NTBI0
和「梱包が甘かったみたいね」

梓「……」

和「これ、もしかしてムギへのプレゼントだったのかしら?」

梓「えっ、なんで……」

和「ムギからある程度聞いてるから」

梓「そう…ですか」

和「ねぇ、ちょっと移動しない。ここは人通りも多いし」

梓「……はい」

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:26:07.37 ID:nom7NTBI0
―――
純「紬先輩!!」

紬「は、はい」

純「好きな人へのプレゼントを何処の馬の骨とも知らない奴にやっちゃ駄目ですよ! 美味しかったですけど」

紬「馬の骨って…」

純「紬先輩は梓のことが好きなんですよね?」

紬「う、うん」

純「そして梓も紬先輩のことが好き」

紬「そうかな?」

純「そうです。そして、好きな人からプレゼントを貰って嬉しくない人なんていません」

紬「私からでも?」

純「もちろん。絶対梓のやつ喜びます。だからちゃんと渡すべき人に渡してください」

紬「…ごめんなさい」

純「私に謝っても意味無いです」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:27:13.44 ID:nom7NTBI0
紬「そうね……」

純「あっ、そんなに落ち込まないでください」

紬「でも……」

純「いざとなったら自分がプレゼントですって言って迫れば」

紬「それは流石に…」

純「ですよねー」

紬「でもそうね。プレゼントはちゃんと渡さないと。だけど…」

純「だけど?」

紬「困ってる梓ちゃんの友達を放ってはおけないから」

純「……」

紬「純ちゃん?」

純「ちょっとだけ、梓が惚れた理由がわかった気がします」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:29:24.10 ID:nom7NTBI0
紬「そう?」

純「…良かったら二人の馴れ初めを教えてくれませんか?」

紬「梓ちゃんから聞いてないの?」

純「梓はあんまり教えてくれないんです」

紬「うーん。それじゃあ少しだけね」

純「はい、それでいいです」

紬「実はね、梓ちゃんにこの公園に呼び出されたのがきっかけだったの」

純「この公園ですか?」

紬「ええ。最初は本当に些細な理由で呼び出されたの」

紬「あの頃の梓ちゃんは私のことが苦手だったみたい」

純「梓が、紬先輩のことを苦手だったんですか?」

紬「たぶんね」

45: 描写不足ですまん 純ちゃんがプレゼントだと知ったのは食後 2012/10/30(火) 23:32:25.82 ID:nom7NTBI0
紬「たぶん私が悪かったの」

紬「梓ちゃんは真っ直ぐな子だから。だから嫌われちゃったんだと思う」

純「でも今は…」

紬「ええ。梓ちゃんは毎週私をこの公園に呼んでくれたの」

紬「ちょっとずつお話して、互いのことがちょっとずつわかってきて」

紬「いつの間にか私は梓ちゃんのことを好きになっていたの」

紬「ほら、梓ちゃんって、小さな体でまっすぐに体当たりしていくでしょ」

紬「そういうところを好きになったのかもしれない」

紬「たぶん、正確な理由なんてないんだけどね」

紬「この公園で会ってるうちに、本当に知らないうちに好きになってたの」

純「いいですね」

紬「えっ」

純「二人はとってもいい恋してると思います。今の話を聞いてそう感じました」

紬「ええ、そうなの!」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:33:26.43 ID:nom7NTBI0
純「それじゃあ私はそろそろ行きます」

紬「そうなの? ねぇ、今度部室に来てくれる? お菓子を用意して待ってるから」

純「考えておきます」

紬「絶対に来てね。話を聞いてくれたお礼をしたいし」

純「お礼をしなきゃいけないのは私なのに……。あっ、じゃあ一つお願いしてもいいですか」

紬「なぁに?」

純「二人が付き合ったら、ツーショットで写真を撮らせてください」

紬「もちろんいいわ」

純「紬先輩、ご武運を」

紬「さようなら。また会いましょう」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:34:31.88 ID:nom7NTBI0
―――
和「へぇ、じゃあこれはプレゼントだったんだ」

梓「はい。澪先輩と律先輩に協力してもらって選んだのに…」

和「それは残念だったわね」

梓「でも、これからどうしよう……」

和「プレゼント交換のこと?」

梓「今からプレゼントを選ぶわけにも……あっ、そうだ。明日にしてもらえば……」

和「ねぇ、中野さん」

梓「なんですか?」

和「ムギはね、きっとあなたが隣にいるだけでいいのよ」

梓「えっ」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:35:29.80 ID:nom7NTBI0
和「確かにプレゼントは嬉しいだろうけど、そんなことより一緒にいてあげなさい」

梓「……」

和「ご、ごめんなさい。お説教をするつもりはなかったの。だけれど……」

梓「いえ…そうかもしれません」

和「そう?」

梓「ちょっとだけ話、聞いてもらえますか?」

和「えぇ、いいわ」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:36:52.04 ID:nom7NTBI0
梓「私とムギ先輩がいつも公園で会ってたことは知ってますか?」

和「ムギから聞いたわ」

梓「最初は謝ろうと思ったんです」

梓「私、軽音部に入部してすぐ、ティーセットなんて撤去してしまえって言っちゃったんです」

梓「でも、後になって、お茶の時間がムギ先輩にとってとても大切な時間だとわかって」

梓「自分はものすごく酷いことを言っちゃったんじゃないかって思って」

梓「だから公園にムギ先輩を呼び出して、ごめんなさいって言おうと思って」

和「そうなんだ」

梓「はい。でも、ムギ先輩は気にしなくていいとしか言わないんです」

梓「悪いのは自分だからって」

梓「私はそれにとても苛ついたんです」

和「苛ついた?」

52:  2012/10/30(火) 23:39:12.97 ID:nom7NTBI0
梓「はい。怒ってくれてもいい。叱ってくれてもいい。それなのにムギ先輩は何もしてくれなかったんです」

梓「だから最初はムギ先輩のこと、少しだけ嫌いでした」

梓「私は意固地になって何度も何度も呼び出したんですよ」

梓「そのたびいろんなお話をして、いろんなことを聞いて」

梓「ムギ先輩の考え方がわかってきたんです」

梓「ムギ先輩はきっと、私達と一緒にいることが一番大切で」

梓「そのためならなんだって犠牲にできちゃう人なんです」

梓「そんなムギ先輩だから、私は……」

梓「私はちょっずつ惹かれていったんです」

和「そうなんだ」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:40:30.17 ID:nom7NTBI0
梓「だから私は、ムギ先輩が何も犠牲にしなくていいように、ずっとそばで支えたいなって」

梓「そう思ったんです」

和「そう」

梓「だから、きっとプレゼントなんていらなかったんだと思います」

和「…心は決まったみたいね」

梓「はい」

和「それじゃあ、行ってきなさい。あっ、この割れた湯呑は私が持って帰っていいかしら?」

梓「あっ、お願いします。ゴミを押し付けちゃってすいません。」

和「いいのよ」

梓「いろいろありがとうございました」

和「ええ、頑張ってきなさい」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:41:09.65 ID:nom7NTBI0
―――


和「ふふっ、今夜は徹夜ね」



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:43:15.43 ID:nom7NTBI0
―――
梓「プレゼント、なくなっちゃいました」

紬「私も」

梓「ムギ先輩も?」

紬「うん」

梓「そうですか」

紬「そうなの」

梓「残念ですね」

紬「そうね。だけど――」

梓「ムギ先輩、好きです」

紬「私も」

梓「…」

紬「…」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:44:17.26 ID:nom7NTBI0
梓「あれ?」

紬「どうしたの?」

梓「告白ってこんなにあっさりしたものでしたっけ?」

紬「どうだろう?」

梓「どうでしょうか?」

紬「でも、いいんじゃないかな」

梓「そうですね。些細なことです」

紬「手、繋いでみよっか」

梓「はい」

紬「梓ちゃんの手、ちっさくてやわらかい」

梓「ムギ先輩の手は、温かくてやわらかです」

紬「ずっと握ってたいな」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:45:16.79 ID:nom7NTBI0
梓「私もです」

紬「じゃあ」

梓「ずっと一緒にいましょうか」

紬「ええ、ずっと傍にいてね、梓ちゃん」

梓「約束します。だから一つ約束してください」

紬「私にできることならなんでも」

梓「それじゃあお願いします。何も犠牲にせず、私だけを愛してください」

紬「何も犠牲にせず?」

梓「はい。欲しいものは全部手に入れてください。諦めたりなんてしないでください。それがお願いです」

紬「欲張りになれってこと?」

梓「そうです」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:46:01.42 ID:nom7NTBI0
紬「……難しいことを言うんだね」

梓「そうですね、ムギ先輩には難しいかもしれません。でも、お願いします」

紬「うん。わかった。じゃあ手始めに」

梓「なにをしたいんですか?」

紬「梓ちゃんとキスしたい。梓ちゃんの全部が欲しい」

梓「……はい。ムギ先輩の望むままに」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:46:49.00 ID:nom7NTBI0
―――
純「うーん。このクッキーとっても美味しいです。紬先輩、腕をあげましたねー」

紬「そうかしら?」

純「はいっ!」

梓「それで、なんで純が部室にいるの?」

純「そりゃあ、紬先輩のお菓子をもらいに」

梓「はぁ…」

純「な、なんだよ。私がいちゃいけないの?」

紬「うふふ。いいのよ純ちゃん」

ガラッ

さわ子「はーい。みんないる? ってムギちゃんと梓ちゃんと……鈴木さんね」

純「はい。おじゃましてます」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:47:38.90 ID:nom7NTBI0
さわ子「あら、クッキーじゃない。私の分もあるのかしら」

紬「ええ、今用意しますね」

さわ子「お願いするわ」

紬「ふふふ」

さわ子「あら、今日は紅茶じゃなくて日本茶なの?」

梓「紅茶ですよ」

さわ子「だってこの湯呑……」

梓「湯呑だけど中身は紅茶です」

さわ子「よく見たらこの湯呑割れた跡があるわね。わざわざ直したの?」

梓「はい。親切な先輩が直してくれたんです」

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/30(火) 23:49:06.02 ID:nom7NTBI0
紬「はい、お茶とお菓子をどうぞ」

さわ子「ムムム…」

紬「どうかしましたか?」

さわ子「なんだかムギちゃんと梓ちゃんの雰囲気がちょっと変わった気がするかなって」

梓「そうですか?」

さわ子「そして修復した湯呑で紅茶を飲む二人、うーん。これは何かあったわね」

紬「ええ、色々」

梓「あったんです」

紬・梓「ね!」

パシャッ!


おしまいっ!

引用元: 紬「気がつけばいつも隣に貴女がいた」