泰葉(昔出会ったアイドルの男の子の笑顔に私は惹かれた)
泰葉(再会したその笑顔は少し暗くなっていたけれど、根っこの部分は変わってなくて……)
泰葉(この笑顔を守る。私はそう心に誓った)
泰葉(再会したその笑顔は少し暗くなっていたけれど、根っこの部分は変わってなくて……)
泰葉(この笑顔を守る。私はそう心に誓った)
3: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)01:53:56 ID:g4IG
泰葉(レッスン前。私は事務所の廊下を歩いていた)
ほたる「あっ」
泰葉(廊下の角を曲がったそのとき、ちょうど女子トイレから出て行くほたるちゃんとばったり会った)
ほたる「あ、あの、泰葉ちゃん、違うの、これは……」
泰葉「そんな動揺しなくても……。ほたるちゃんは女の子なんだから女子トイレを使っても別におかしくないよ」
泰葉(ほたるちゃんは女子トイレを使ってたところを見られて気まずいようだ)
泰葉(まあそれも仕方ないか)
泰葉(白菊ほたる君は男の子だから)
4: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)01:55:09 ID:g4IG
ほたる「うぅ、まさか女子トイレに入ってるところを見られるなんて……」
泰葉「別にそこまで気にすることでもないような……。いつも使ってる共用トイレが使えなかったんでしょ?」
ほたる「はい……」
泰葉(場所は変わってレッスンルーム。ダンスレッスンの休憩中、私とほたる君は座って先程のことを話していた)
泰葉(ほたる君は事情があって男の子であることを隠してアイドルをやっている)
泰葉(どうして私がほたる君の正体を知っているのかというと、ずっと昔、男の子として活動していたほたる君と共演したことがあるからだ)
ほたる「でもやっぱり知ってる人に見られるのは恥ずかしいというか……」
泰葉「むしろ女子トイレに入れるようになったんだって安心したよ」
ほたる「え?」
泰葉「だって女装したての頃……」
泰葉(私はある記憶を思い起こす。それはほたる君がこの事務所に入ったばかりの頃の話だ……)
5: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)01:56:55 ID:g4IG
…
……
………
泰葉(白菊ほたる……。やっぱりそう、昔共演したあの子だ……)
泰葉(先週入ってきた新人の白菊ほたるちゃん。私の記憶では確か男の子のはずなんだけど、何故かスカートを履いている)
ほたる「や、泰葉さん……!」
泰葉「ほたるく……ちゃん。どうしたの?」
泰葉(1週間経って分かったことだけど、ほたる君は私のことを覚えていて避けている。何か事情があるのだろうけど、あからさまに避けられると流石に傷つく)
泰葉(……とにかく。そんなほたる君の方から話しかけてくるというのは珍しい。よほどのことがあったのだろう)
ほたる「えっと、その……」
泰葉(ほたる君は何やら身体をもじもじとさせている。時折り苦しそうに顔を歪ませていた)
泰葉「大丈夫? 具合悪いの?」
ほたる「そうじゃなくて、その……」
泰葉「……?」
ほたる「トイレ……って、どこにありますか!」
6: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)01:58:40 ID:g4IG
泰葉「トイレ……?」
泰葉(ほたる君が歩いてきた道を見る。通路の奥にはきちんとトイレがあった)
泰葉「トイレなら向こうにあるけど……」
ほたる「そうじゃなくて、その、男でも女でも使えるような……」
泰葉「……あ」
泰葉(ようやくほたる君の言いたいことを理解した。ほたる君は男の子だけど男子トイレを使ったら正体がバレちゃう。男女共用のトイレを探しているんだ)
泰葉「女子トイレじゃダメなの?」
ほたる「女子トイレはその、事情があって使いたくないといいますか……」
泰葉(私じゃなかったら全く意味がわからないだろうな……)
泰葉(そうこうしているうちにほたる君はどんどん内股になっていった)
ほたる「あう……ま、まずい……」
泰葉「ほたるちゃん! 落ち着いて深呼吸して!」
ほたる「ひっ、ひっ、ふー」
泰葉「その事情っていうのは漏らしてまで守らないといけないものなの!?」
ほたる「それは……」
泰葉「女子トイレか! 漏らすか! どっち!?」
ほたる「じょ、女子トイレで……」
泰葉(必死の説得の甲斐あってほたる君は女子トイレに入ってくれた)
泰葉(世話が焼けるなあ)
7: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)01:59:33 ID:g4IG
ほたる「ふぅーっ」
泰葉「間に合った?」
ほたる「泰葉さん、待ってたんですか?」
泰葉「うん。ほたるちゃんにこれ渡そうと思って」
ほたる「これは?」
泰葉「事務所の共用トイレの場所を書いたメモ。ほたるちゃんがトイレ行ってる間調べてたんだ」
ほたる「あ、ありがとうございます……!」
泰葉「どういたしまして」
ほたる「それじゃあ私レッスンがあるのでいきますね」
泰葉「うん、頑張ってね」
泰葉(ほたる君と別れる。私もこれから撮影だしトイレに寄っていこうかな)
泰葉「あっ……」
泰葉(個室に入った私はトイレの便座が開けたままであることに気づいた)
泰葉「なんてベタな……」
泰葉(このことをどうやってほたる君に伝えよう。そんなことを考えながら私は便座を閉めた)
………
……
…
8: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:00:06 ID:g4IG
ほたる「あー、そんなことがあったような……」
泰葉「一歩間違えたら大惨事だったからね」
ほたる「あはは……そっか、あのとき泰葉ちゃん僕の正体知ってたんだ」
泰葉「そうだよ」
ほたる「泰葉ちゃんって僕の気づかないところでサポートしてくれてたんだね……もしかしてあの時も?」
泰葉「あのとき?」
ほたる「ほら、ユニットで海に行こうって話があったじゃない?」
泰葉「ああ……」
9: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:01:16 ID:g4IG
…
……
………
裕美「みんなで海にいかない?」
ほたる「え゛っ」
千鶴「いいね」
泰葉(ユニットのみんなとおしゃべりの時間。裕美ちゃんが海に行かないかと提案してきた)
裕美「ほたるちゃんは?」
ほたる「私はちょっと厳しそうで……」
千鶴「予定入ってた?」
ほたる「予定といいますか……身体の問題といいますか……」
裕美「身体?」
泰葉(ほたる君際どいこと言うなあ)
千鶴「それって何かの病気だったり……」
ほたる「え、えっと……」
泰葉(中途半端に本当のことを言っちゃったから、ほたる君は少しピンチになっている。ここは助けた方がいいだろう)
泰葉「ほたるちゃんは肌が弱いもんね」
ほたる「えっ?」
千鶴「肌?」
泰葉「ほたるちゃん海行くと日焼けするし、肌も荒れちゃうでしょ?」
ほたる「え、えっと……はい」
裕美「そっか、ほたるちゃん肌白いもんね」
千鶴「これから水着の仕事があるかもしれないし、海に行くのは難しいかもね」
泰葉(私がでっち上げた理由に裕美ちゃんも千鶴ちゃんも納得したみたい。さすが私、我ながら完璧なフォローだ)
裕美「じゃあ屋内プール行こうよ。それならいいでしょ?」
ほたる「えっ」
泰葉「えっ」
………
……
…
10: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:04:35 ID:g4IG
ほたる「あのときは本当に助かりました」
泰葉「ほたる君変に正直なんだもん。もっと上手く誤魔化さないと」
ほたる「あの二人にはなるべく嘘をつきたくなくて……」
泰葉「そっか。今でも言えない? 身体のこと」
ほたる「それは……まだ言えそうにないです」
泰葉「秘密をお墓まで持っていくつもり?」
ほたる「いや、いつかは正直に話したいと思ってるけど、二人の反応を考えたら怖くて……」
泰葉「……そうだよね。でも何かあったらいつでも私や茄子さんに言ってね。全力でサポートするから」
ほたる「ありがとうございます。……あの、泰葉ちゃん」
泰葉「なに?」
ほたる「どうしてここまで僕に協力してくれるんですか?」
泰葉「え?」
泰葉(ほたる君は申し訳なさそうに聞いてきました。私がほたる君に協力する理由……)
泰葉「それはね……」
ほたる「……」
泰葉「秘密」
ほたる「ええ……」
泰葉「そろそろレッスンに戻ろ?」
ほたる「……はーい」
泰葉(適当に話を切り上げてレッスンに戻る。このとき私たちの会話を盗み聞きしている子がいるなんて、思いもしなかった)
11: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:05:44 ID:g4IG
裕美「……聞いた?」
千鶴「少しだけ。ほたるちゃん、私たちに秘密にしていることがあるって」
裕美「身体のことって言ってたけど……なんだろう? 何か深刻そうにしてたけど……」
千鶴「……」
裕美「千鶴ちゃん?」
千鶴「やっぱり、病気なんじゃないかな?」
裕美「病気?」
千鶴「あそこまで深刻そうに話す秘密なんてそれしか思い浮かばないよ。お墓とかなんとか言ってたし……」
裕美「たしかに……」
千鶴「茄子さんも知ってるみたいだし、聞いてみよう」
裕美「うん!」
12: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:08:06 ID:g4IG
泰葉(数日後。今日はユニットのミーティングがあり、少し早めに到着した私とほたる君はソファに並んで座っていた)
泰葉「次のライブのことなんだけど……」
ほたる「……」
泰葉「……? ほたる君?」
ほたる「……むにゃ」
泰葉「ありゃ、寝ちゃった?」
ほたる「……zzz」
泰葉「ふふっ、しょうがないなぁ」
ほたる「……ぐがっ」
泰葉「でもこの体勢だと首を痛めちゃいそうだなぁ……そうだ」
泰葉(寝ているほたる君を慎重に引き倒し、私の膝の上にほたる君の頭を乗せた)
裕美「おはようございます」
千鶴「おはようございます」
泰葉「裕美ちゃんに千鶴ちゃん、おはよう」
裕美「……膝枕?」
泰葉「ほたるちゃん眠っちゃったから」
千鶴「気持ちよさようだね」
13: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:10:54 ID:g4IG
千鶴「……」
裕美「……」
泰葉「……?」
泰葉(二人の様子がおかしい。妙にそわそわしてほたる君の方に視線を向けていた)
泰葉「二人ともどうしたの?」
千鶴「え、えっと……」
裕美「ほたるちゃんが……」
泰葉「ほたるちゃん?」
千鶴「……もう今聞いちゃおうか」
裕美「そうだね」
泰葉「……?」
千鶴「あのね、泰葉ちゃん」
裕美「聞きたいことがあるんだけど……」
泰葉「何?」
泰葉(二人のただならない様子に思わず体に緊張が走る。一体何を聞きたいのだろう?)
14: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:11:36 ID:g4IG
裕美「ほたるちゃんって、何か病気を持ってるの?」
泰葉「……え?」
泰葉(二人から思いもしなかった言葉が出てきた。ほたる君が……病気?)
泰葉「どういうこと?」
裕美「この間泰葉ちゃんとほたるちゃんの会話を聞いちゃったの」
泰葉「会話?」
千鶴「そしたらほたる君の身体がどうこうって……それで何か病気なんじゃないかと」
泰葉「あー……」
泰葉(この間のレッスンの休憩中のことだ。まさか聞かれていたなんて。中途半端に聞こえてたみたいだから勘違いしてしまったのだろう。これなら上手く誤魔化せるかな?)
裕美「それで茄子さんに話を聞いてみたの」
泰葉「え、茄子さん?」
千鶴「ほたるちゃんと仲良いから。そしたら……」
15: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:16:28 ID:g4IG
…
……
………
茄子「ほたるちゃんの身体について教えて欲しい?」
裕美「はい。偶然泰葉ちゃんとほたるちゃんの会話を聞いて、ほたるちゃんの身体のことを知っちゃったんです」
茄子「……そうですか。ついに二人も……」
千鶴「茄子さんはほたるちゃんの身体の秘密を知っているんですか?」
茄子「はい、知ってます」
裕美「やっぱり」
千鶴「詳しく教えてくれませんか?」
茄子「教えたいところですけど、二人はほたるちゃんから直接聞いたわけではないんですよね?」
裕美「はい。会話を盗み聞きしちゃっただけだから」
千鶴「それに私たちに隠してたみたいだし……」
茄子「それなら私からは何も。ほたるちゃんが隠していることを私が教えるわけにはいきません」
裕美「そっか、そうだよね。ほたるちゃんから直接聞かないとダメだよね」
茄子「二人ならほたるちゃんも話してくれますよ」
千鶴「でも、一つだけいいですか?」
茄子「はい、なんでしょう」
千鶴「ほたるちゃんはその重い……病気なんですか?」
茄子「重い?」
裕美「その……永くないんですか?」
茄子「な、長い? 長いって……アレのことですよね? えっと、晴ちゃんと違って私はしっかり触ったわけではないのでわからないですけど、中学生だし長くはないんじゃないですか?」
千鶴「そんな……」
裕美「どうして……」
茄子「……そんなショックなことですか?」
………
……
…
16: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:17:14 ID:g4IG
千鶴「……ということがあって」
泰葉(茄子さん何言ってるの!? 長いってナニが!?)
裕美「それで晴ちゃんにも聞いたんだけど……」
17: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:18:55 ID:g4IG
…
……
………
裕美「晴ちゃん」
晴「なんだ?」
千鶴「茄子さんから聞いたんだけど、晴ちゃんもほたるちゃんの身体のことを知ってるの?」
晴「ほたるの身体? ああ……」
千鶴「私たち偶然知っちゃって……」
裕美「もっとよく知りたいの。何か知っていることがあったら教えて!」
晴「いいけど……ていっても俺も別によく知ってるわけじゃ……」
千鶴「晴ちゃんはどうやってほたるちゃんの秘密を知ったの?」
晴「俺も偶然聞いちゃってさ……」
千鶴「それでどうしたの?」
晴「そのあとちょっとほたると言い争って……」
裕美「言い争って?」
晴「蹴った」
千鶴「蹴ったあ!?」
晴「あのときのほたるやばかったなあ。うずくまって声も出さなくて」
裕美「そ、そんなに……」
晴「あとで聞いたんだけど腹を抉られたような痛みがするみたいだぜ」
千鶴「やっぱりただの病気じゃないんだ……」
………
……
…
18: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:19:24 ID:g4IG
千鶴「ほたるちゃんがこんなにも苦しんでいたなんて、私知らなかった……」
泰葉「……」
裕美「手術とかでどうにかならないのかな?」
泰葉「……頭痛くなってきた」
千鶴「あと乃々ちゃんから聞いたんだけど……」
泰葉「まだあるの?」
19: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:21:05 ID:g4IG
…
……
………
裕美「乃々ちゃん」
乃々「な、なんでしょう……」
千鶴「晴ちゃんから聞いたんだけど、乃々ちゃんもほたる君の秘密を知ってるの?」
乃々「ほたるちゃんの秘密?」
千鶴「その……身体のこと」
乃々「身体? ああ、知ってますよ」
裕美「なんて病気なの?」
乃々「……………………病気?」
裕美「うん。ほたるちゃん重い病気なんだよね?」
乃々「…………」
裕美「乃々ちゃん?」
乃々「すみません。実はもりくぼも詳しくは知らないんです」
千鶴「そうなんだ」
乃々「ですから泰葉さんに聞いてください」
………
……
…
20: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:21:35 ID:g4IG
千鶴「ということで泰葉ちゃんに聞いてみたんだけど……」
泰葉(乃々ちゃん!? 諦めないで誤解を解いて!)
裕美「それでほたるちゃんはどうなの?」
千鶴「本当はほたるちゃんに聞くべきなんだけど少し怖くて……」
泰葉「うーん……」
泰葉(誤魔化すことはできなくもない。だけどそれでいいのかな……?)
泰葉(二人は思ったよりほたる君の秘密に迫っている……だいぶずれているけど。このまま有耶無耶にするよりも、今後きちんとユニット活動するためにも正直に話した方がいいんじゃないかな?)
21: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:23:02 ID:g4IG
ほたる「……」
泰葉「……ん?」
泰葉(そんなことを考えていると太ももに乗せたほたる君の頭がもぞもぞと動いた)
泰葉「……」
泰葉(ほたる君は私の服の裾をギュッと掴む。手が少し震えているようだった)
泰葉(ほたる君……起きてたんだ)
ほたる『たくさんの人を笑顔にするのが僕の夢なんです!』
泰葉(頭に浮かんできたのはずっと昔共演した幼い頃のほたる君)
泰葉(この業界で生き残るため、作り笑顔しか出来なくなった私の元に現れた純粋な笑顔を持つ男の子)
泰葉(この笑顔を守りたい。そう思ったのに、すぐほたる君の事務所は倒産して行方がわからなくなった)
泰葉(ようやく再会したほたる君は女装して少し暗い笑顔をしていたけど、最近はまた昔のような明るい笑顔をするようになった)
泰葉(この笑顔を今度こそ守るために、私は……)
22: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:23:45 ID:g4IG
泰葉「ほたるちゃんはね……」
裕美「……」
千鶴「……」
泰葉「お尻に古傷があるの」
裕美「え?」
千鶴「え?」
ほたる「え?」
23: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:26:09 ID:g4IG
泰葉「そう、古傷。昔不幸にも割れたガラスの上で尻餅ついちゃったみたいでね」
裕美「うわあ……」
千鶴「痛そう……」
泰葉「ほたるちゃんはその傷跡がついてるお尻がコンプレックスなんだ」
千鶴「じゃあ茄子さんの長くないっていうのは……」
泰葉「傷跡のことだね」
裕美「晴ちゃんに蹴られてうずくまっていたのは……」
泰葉「ちょうど古傷を蹴られちゃったんだね」
裕美「そういうことか~」
千鶴「そういえばほたるちゃんっていつも隠れて着替えてるけど……」
泰葉「お尻の傷跡を見られるのが恥ずかしいみたい。だから2人ともあんまり着替えてるほたるちゃんを見ちゃダメだよ。特に下半身」
千鶴「そんなの気にしないのに……」
泰葉「小学生の頃クラスの男子にからかわれたのがトラウマになっているみたい」
裕美「ひどい」
泰葉「だからほたるちゃんが自分から本当のことを話すまで、二人とも待っててあげよう?」
裕美「そうだね」
千鶴「わかった。でも病気じゃなくて安心したな」
裕美「千鶴ちゃんが勝手に勘違いするから私も騙されちゃった」
千鶴「わ、私のせい!? 裕美ちゃんだって……」
泰葉(重い病気ではないことが分かって二人が賑やかになる。これでひとまずは一件落着かな。もう大丈夫だと意味を込めてほたる君の手を握ると、静かに握り返してくれた)
24: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:26:52 ID:g4IG
泰葉(その後のミーティングを終え、裕美ちゃんと千鶴ちゃんは先に帰った)
泰葉「ふぅ……なんか今日は疲れちゃったな」
ほたる「……はい」
泰葉(ソファに座って背筋を伸ばす。本当今日一日は長く感じた)
ほたる「あの、泰葉ちゃん……ありがとうございます。僕の秘密を隠し通してくれて」
泰葉「いいっていいって。前にも言ったでしょ? 最後まで協力するって」
ほたる「でも本当に泰葉ちゃんには良くしてもらってばかりで、何もお返しできないのが申し訳なくて……」
泰葉「そんなことないよ」
ほたる「え?」
泰葉「ほたる君からは大事なものをもらったから」
ほたる「大切なもの? それってなんですか?」
泰葉「秘密」
ほたる「またそれですか……」
25: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:27:55 ID:g4IG
泰葉(ほたる君は私の言葉に納得がいかないようだった)
泰葉(……私ね、ほたる君と出会ってから自分の笑顔について考えるようになったんだ)
泰葉(貼り付いた笑顔を少しでも君に近づけたくて、笑顔の練習をしているところを当時のマネージャーさんに見られて笑われて)
泰葉(それでも前より柔らかくなったねって言われるようになったんだ)
泰葉(今なら自信を持って、ありのままの笑顔をしているって言える)
泰葉(これがほたる君からもらった大切なもの)
泰葉(協力する理由なんて、それだけで充分)
26: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:29:21 ID:g4IG
泰葉「ところで、気持ちよさそうに寝てたけどどんな夢を見てたの?」
ほたる「えっと、アイドルをやってる夢……」
泰葉「夢の中でもアイドル? 本当にアイドルが好きなんだね」
ほたる「えへへ……。夢の中ではちゃんと男のアイドルとして活動していて……」
ほたる「泰葉ちゃんや茄子さん、愛海ちゃん達と一緒に楽しくお仕事をしていました」
泰葉「…………そっか。そんな日が来るといいね」
ほたる「はい」
泰葉「プロデューサーさんは再デビューに向けて何かしてるの?」
ほたる「それが何も教えてくれなくて……聞いても聞いても検討中。この間なんてカッコいいお仕事だぞって言われて渡された資料がバニーガールのお仕事で……」
泰葉「あはは……それじゃあまだ時間がかかりそうだね」
ほたる「はい……」
泰葉「まあ協力者も増えてきたことだし、これからも頑張ろう?」
ほたる「はい!」
27: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:31:38 ID:g4IG
泰葉(決意を新たにするほたる君の傍ら、私の心はチクチクと棘が刺さっているような感覚でいた)
泰葉(やっぱりほたる君は男の子としてアイドルをやりたいんだね)
泰葉(男の子として再デビューする。これはほたるちゃんのゴールであり、ほたる君のスタートだ)
泰葉(そのときは多分、別の事務所に移籍することになると思う。今の事務所に男性アイドルは所属していない)
泰葉(正直そんなの嫌だけど私はこれからも協力を惜しまないつもりだ。これからもほたる君が笑顔であり続けるには、やっぱり今のままではダメなんだと思う)
泰葉(白菊ほたる君は男の子だから)
28: ◆r5XXOuQGNQ 21/09/03(金)02:32:35 ID:g4IG
終わりです。ありがとうございました
デレステ 6周年おめでとうございます!
引用元: ・岡崎泰葉「白菊ほたるは男の子」
コメントする
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。