2: ◆hsyiOEw8Kw 2015/02/28(土) 18:21:34.45 ID:e7scRF+bO
とある島にて


提督「やっと到着か…ここが俺の新しい家、か。随分と遠くまで来たもんだな。…不知火。」

不知火「はい。」

提督「状況はどうなっている。」

不知火「既に書類、業務等の引き継ぎは完了しております。前任者は既に島を離れているそうです。また、本日午後、新たな艦娘が1名、もう1名が本土からの主計係として渡航、着任予定です。」

提督「そうか。しかし、引き継ぎ時に前任者不在とは…いくらここが防衛線の中とは言え、無責任が過ぎる。急ごう。」

不知火「はい。」


島の基地内


榛名「(今日から新しい提督さんが来るのですね…また、失敗する…もう嫌…)」

足柄「…榛名?探したわ」

榛名「ぁ…足柄、さん…」

足柄「もうすぐ提督の到着予定時刻。倉庫でボーっとしている暇は無いよ。準備準備…」

榛名「私は、行かない方が良いと思います。きっとまた…」

足柄「榛名…いや、でも…」

不知火「お二方。ここにいらしたのですか。」

榛名・足柄「?!」

不知火「提督が執務室にてお待ちです。急ぎ参上して下さい。」

榛名・足柄「は、はい!」

3: ◆hsyiOEw8Kw 2015/02/28(土) 19:39:44.40 ID:e7scRF+bO
執務室


コンコン
不知火「不知火です。艦娘を2名、連れてまいりました。」

提督「入れ。」

足柄「重巡艦娘、足柄です!本日はお出迎えにあがれず、申し訳御座いません!」

榛名「同じく戦艦艦娘、は、榛名です!申し訳御座いません!」

提督「構わんよ。こちらが予定より早く到着したんだ。楽にしてくれ。」

足柄・榛名「は、はい。」

提督「えっと…もう一名、確か隼鷹だったか、は単艦で警備任務に当たっていると。ああ、あと新顔一名と主計艦娘は後ほど到着する、か。」

不知火「2名の予定到着時刻までおよそ120分です。」

提督「そうか、では…私が提督だ。現在より諸君ら、及び主計艦娘を含む6名の艦娘の指揮を執り行う。よろしく頼む。」

一同「はい!」

提督「ああ、喋り方については各員に任せる。知ってるとは思うが、お前たちには階級が無い。敬語は任意で構わん。ただし、私の下した指令等には従うこと。これは強制である。良いな。」

一同「はい!」

提督「よし。基本的な規則について変更はない。ああ、後、今晩全員が揃った段階でもう一度招集をかける。留意しておけ。以上、榛名と足柄は下がって構わん。」

榛名・足柄「失礼します!」

ガチャ
バタン

提督「…さて、不知火。榛名と足柄をどう見る。」

不知火「先程の倉庫内での会話を聞く限り、足柄さんはともかく、榛名さんは問題を抱えているようですね。」

提督「やはり左遷基地と呼ばれるだけあるか…なんでも、扱いにくい艦娘が各艦隊から集められたって話だったが…しかし、そうか…この榛名…これも因果か。」

不知火「司令…」

提督「…」

5: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 00:02:26.84 ID:Di+AC3JWO
艦娘寮内


足柄「いやぁ〜、ビビったわ。なんでこんな来んの早いのよってね。」

榛名「は、はい…」

足柄「まぁ怒られなかったしいっかー。それにしてもちょっと怖そうな人だったわねー。若かったけど。」

榛名「今までで二番目くらいに若かったですね。」

足柄「マジ?あたしは初めてだわー。」

榛名「若い人は…苦手かもしれません…怖いです…自分が…」

足柄「…ま、なんかあってもあたしが居るわよ。気楽にいきましょ。」

榛名「…そうですね。前の人とは、違いますよね。…榛名、頑張ります!」

足柄「そうと決まればまずはメシよメシ。昨晩の残り物でチャーハンでも作りますか!」

榛名「はい!ご一緒します!」


時が経ち、午後


雷「駆逐艦の雷よ!よろしくね!」

鳳翔「鳳翔です。主計艦娘として派遣されました。よろしくお願い致します。」

隼鷹「軽空母のじゅうーんよーうでーす。よろしくねー!」

提督「私が提督だ。よろしく頼む。しかし…隼鷹、お前まさか哨戒中に酒を…」

隼鷹「あぇー…気のせいだよぉアハハ」

不知火「開いた口が塞がりません…」

提督「…」

コンコン

榛名「し、失礼致します。足柄、榛名、共に参上しました。」

提督「ああ、入れ。あとそんなに堅苦しくなくていい。」

榛名「し、しかし…」

足柄「提督がああ言ってんだから良いじゃん榛名。ね、提督?」

提督「構わんよ。」

榛名「は、はい…ありがとう御座います。」

6: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 00:09:02.96 ID:Di+AC3JWO
提督「さてと、新しい2人が到着して全員揃ったな…これでこの島の戦力が一堂に会した訳だ。駆逐艦2、重巡1、戦艦1、軽空母2か。悪くない面子だ。ココが左遷基地とは思えん。」

一同「…ッ!」

隼鷹「…ちょっと提督サンさ、いきなり失礼じゃない?そりゃ提督サンは左遷されたかも知んないけど、アタシ達の事もロクに知らずにそういう事言うの、やめてほしいな。」

提督「そう思うなら勤務中に酒を飲むな、隼鷹。いくらここが後方の基地とはいえ物事には限度がある。」

隼鷹「…確かにアタシはクズだけど、他のみんなは違う。」

提督「もういいだろう。今ここでお互いの傷の舐め合いをしても何の意味もない。大事なのは、今我々がドン底にいるということを認識する事だ。」

一同「…」

提督「我々は今、軍のお荷物だ。本土の近くに居ては危険だからと遠ざけられ、前線に居ては邪魔だと遠ざけられる。その結果がココだ。」

提督「…ココは人類が近海から深海棲艦を殲滅して久しい。哨戒する必要性も薄いような場所だ。有っても無くても同じ。そこに居る者もまた然り。だから掃き溜めのような扱いを受けてきた。それは各々感じているだろう。」

一同「…」

提督「しかし、それでは勿体無い。お前たちは磨けば光る。」

足柄「…あらそう?で、左遷されたアンタが磨いてくれんの?それであたしらが光んの?」

提督「磨かず錆びて朽ちるよりはマシだろう?…私の目的は、沈みかけているお前たちを自力で航行できるようにする事だ。それ以下でも以上でもない。」

一同「…」

提督「私の言いたいことは以上だ。明日より本格的な指揮を行う。まずは基地機能の回復だな…不知火、鳳翔、雷は残れ。他は寮に戻り休んで構わん。」

榛名「は、はい。…行きましょう、足柄さん、隼鷹さん。」

足柄・隼鷹「…うい。」

三名「…失礼します。」
ガチャ、バタン

7: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 00:12:30.41 ID:Di+AC3JWO
提督「さて、不知火、ここの基地の設備は大体把握したか?」

不知火「はい、午前中に確認致しました。」

提督「では雷を案内してやってくれ。…雷、荷物は後で寮の自室に置いておこう。」

雷「わかったわ。ありがと。」

不知火「では、行ってまいります。」
ガチャ、バタン

提督「…鳳翔、お前はこれらの書類に目を通しておいてくれ。配給される資材のリスト等だ。今すぐ必要な物が有れば今言ってくれ。」

鳳翔「わかりました。」

提督「では、仕事を始めようか…」

8: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 00:13:56.61 ID:Di+AC3JWO
艦娘寮内


隼鷹「任務完了早々最悪だったわ。」

足柄「あいつ感じわっるいわねー。」

隼鷹「酒瓶あったら殴ってた。自分も左遷されたくせにエラそーにねぇ!」

足柄「間違いないわぁ。」

榛名「で、でも、ココに着任した今までの提督の中では一番マトモそうでしたよね。」

足柄「え、なに榛名!ああいうのがタイプなの?」

榛名「い、いえ、そういう訳では…」

隼鷹「ダメだよ、ダメダメ!ああいう手合いが一番面倒なの!実力無いくせに声だけ大きくて…また上から睨まれて…あーあ、来年には解体かねぇ。」

足柄「間違いないわぁ。」

榛名「…」

隼鷹「…どうせ消えるなら酒飲むか!」

足柄「賛成ー!」

榛名「ちょ、ちょっと!まだ夕方ですよ!それにさっき…」

隼鷹「いいのいいの!飲みたい時が飲むときだよ!」

足柄「ほら、榛名も行くのよ!」

榛名「ちょ、え、まっ、あー!」

ヒャッハー!

9: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 00:15:12.45 ID:Di+AC3JWO
一方、同じ頃、寮内…


雷「人数の割に随分と賑やかね。」

不知火「そのようですね…反省が見られません。」

雷「ま、良いんじゃないかしら。提督を直接攻撃するよりはね。」

不知火「…」

雷「…ところであなたは何故ここに?」

不知火「私は司令が以前指揮していた艦隊に所属していたので。お供ですね。」

雷「…ふーん。で、その艦隊の他の艦娘は?」

不知火「6名中4名は沈みました。1名は今も前線で戦っています。」

雷「そう…悪い事聞いたわね。ごめんなさい。」

不知火「いえ、構いません。…つきましたよ、ここがあなたの部屋です。」

雷「あら、中は…普通ね、思ったより。」

不知火「かつてはここも前線基地でしたから。ある程度の設備は整っている筈です。…荷物の整理が済み次第休んで構わないとの事ですので。私はここで失礼しますね。」

雷「ありがと。またね。」

10: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 00:19:53.11 ID:Di+AC3JWO
妄想垂れ流しな感じで進めてきます

地の文は戦闘シーンだけとか入れようかなとか

ツッコミは入れていただけたら嬉しいのですが、設定がわりと見切り発車なので、そういう世界なんだなーとか思って貰えればとも思ってます

あと、主計艦娘=家事とかメインの艦娘って事で一つお願いします

 

13: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 09:43:34.25 ID:Di+AC3JWO
執務室

提督「…」カリカリ…チラ

鳳翔「…」ペラ…

提督「(鳳翔…本土防衛の第3艦隊に所属していたが、その後艦娘学校に教官として転属となり、かなりの期間を教官として過ごしたが…突如ココに転属となった、か。)」

鳳翔「提督、この書類のここはーー」

提督「ああ、そこは問題無い。」

鳳翔「わかりました。」

提督「(慎重で、事故を起こすタイプにも見えんなぁ…性格に問題があるのか…?)」

鳳翔「しかし、少し驚きました。このような場所でもきちんと資材は配給されているのですね。」

提督「そうだな…今現在人類は比較的優勢にあるからだろうが…これから先どうなるかはわからん。」

鳳翔「フフフ。提督はこれから先、私達を光らせて下さるのでしょう?それでしたら心配は不要なのではないでしょうか。」

提督「それもそうか。」

鳳翔「期待していますよ、提督。」

提督「…そうだな。」

提督「(まあ、なんにせよ今更警戒する事でもないか。変に疑って艦娘間に不信感が広がる方が問題だしなぁ。)」

コンコン
不知火「失礼します。」

提督「入れ。」

ガチャ
不知火「司令、お呼びでしょうか。」

提督「休んでいるところ、すまんな。…鳳翔、書類の確認は済んだか?」

鳳翔「はい、一通り目を通しました。」

提督「よし、では飯炊きの方をして貰おう。不知火、案内してやってくれ。」

不知火「わかりました。鳳翔さん、行きましょうか。」

鳳翔「はい。それでは提督、失礼いたしますね。」

ガチャ
バタン

14: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 09:48:24.12 ID:Di+AC3JWO
間違えて連投しました…ごめんなさい


提督「(あーしんど…やっと1人か…こういう時は風呂に浸かりたいが、あるのか?風呂…)」

提督「(…今のうちに各艦娘の詳細資料でも見返しておくか。)」

ペラペラ…

コンコン
不知火「失礼します。」

提督「入れ。」

不知火「鳳翔の案内、完了しました。」

提督「そうか。…不知火、お前には今から哨戒を1人でしてもらうことになるが…」

不知火「問題ありません。不知火にお任せください。」

提督「すまないな。では、今から一緒に工廠に行こうか。装備など確認しておきたい。」

不知火「はい。」


島の工廠


提督「艤装の取り付け方はわかるな?」

不知火「はい。」

提督「そう、ハンガーに吊り下げられてる艤装を腰部のハードポイントで固定して止める。慎重にな。砲の点検も怠るなよ。あと、無線装備も艤装につけておけ。…艤装を接続した瞬間から、」

ガチャコン
不知火「艦娘としての本来の出力が発揮されるので注意深くなれ、ですよね。」

提督「うむ。今のお前は壁に寄りかかっただけで壁が粉砕されるからな…工廠内で事故を起こさん様にな。…そこに水路がある。艤装を装備し、状態を確認して問題なければそこに降りてくれ。」

不知火「艤装出力等問題ありません。装甲にも破損なし。いつでも行けます。」

提督「よし、不知火、海図は持ったか?」

不知火「はい。」

提督「では、領域内の哨戒を頼む。出撃を許可する。」

不知火「不知火、出撃します!」


15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/01(日) 09:50:31.82 ID:Di+AC3JWO
確認

16: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 09:51:52.42 ID:Di+AC3JWO
執務室


提督「あーあー…聞こえるか、不知火。」

不知火『はい。』

提督「よし、何かあればすぐに連絡をよこせ。良いな。」

不知火『了解。』

提督「異常が無ければ2000に帰投せよ。」

不知火『了解。』

提督「さて、と。次は…」


17: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 09:53:04.97 ID:Di+AC3JWO
艦娘寮内


提督「…」

隼鷹「左遷じゃん!オッスオッス!」グビー

足柄「あら、ほんと!左遷も飲みなさいよ!イッキよイッキ!」

榛名「はい、榛名は大丈夫です!」

提督「…」無言で酒を取り上げる

隼鷹「あー!左遷独り占めー!」

足柄「ダメよ左遷!その酒は共有財産よ!」

榛名「榛名は大丈夫です!」

隼鷹「ちょ、左遷提督どこ行くの!…どっか行っちゃったよ〜」

足柄「これだから左遷は!酒もっとないの?」

榛名「はい?榛名は大丈夫です?」

隼鷹「どこに隠してたかな…あ、確かあそk」

バケツザバー!

足柄・隼鷹・榛名「…」ポタポタ

提督「…目は覚めたか。休めとは言ったが勤務時間内だぞ。」

隼鷹「…隼鷹に何か落ち度でも?」

提督「…」

隼鷹「…」

ザバー!

隼鷹「口に!口に修復液が!」オヴェェェェ

足柄「修復液って不味かったのね…」

榛名「榛名、やってしまいました…」

隼鷹「ちゃ、ちゃうねん!聞いてや提督!左遷がアタシに酷いこと言うねん!」

提督「おい、榛名!この酔っ払いを入渠させろ!バケツではどうしようもない!」

榛名「は、はいぃ!隼鷹、早く行きますよ!」

隼鷹「まあ、そうなるな。」

榛名「なに言ってるんですかもう!」

どたどた

18: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 09:53:49.74 ID:Di+AC3JWO
提督「…」ハァ…

足柄「頭抱えてどうしたのかしら?頭痛が痛いの?」

提督「…お前まだ…」スッとバケツを構える

足柄「冗談よ冗談!ジョークジョーク!酔いは覚めてる!」

提督「…足柄、お前には誰かと組んで夜間哨戒に当たって貰う。」

足柄「ゲッ…マジ?」

提督「…マジ。」

足柄「…わかったわ。やりましょう。」

提督「わかってると思うが、」

足柄「断ったら襲うって?」

提督「…」

ザバー!

足柄「ギャアアアア!口に!口に修復液が!」オボロロロロ

提督「酒は持って行くな、という事だ。…しかしお前らは本当に馬鹿だな…鳳翔が晩飯の用意をしてくれた。榛名をサルベージして飯を食ってこい。」

足柄「…はい」オエッ

トコトコ

提督「行ったか…ハァ…」

雷「大変そうね。」テクテク

提督「ああ、雷か。まぁ、まだ初日だ。なんとかなるだろう。」

雷「そうね、きっと大丈夫よ!それにわた…し…」

提督「…?どうした」

雷「い、いえ。なんでもないわ。」

提督「…鳳翔が晩飯を用意してくれたそうだ。行ってこい。」

雷「え、ええ。行ってくるわ。ありがと。」

23: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 18:27:13.02 ID:Di+AC3JWO
執務室


コンコン
不知火「失礼します!不知火、任務より帰還しました。」

提督「入れ。近海はどうだった?」

不知火「特に深海棲艦の痕跡や予兆は見られませんでした。」

提督「そうか…それは良かった。他に特筆事項はあるか?」

不知火「いえ、御座いません。」

提督「わかった。今日はもう下がって良い。食堂で鳳翔に晩飯を用意させてある。行ってこい。」

不知火「はい。…ところで司令はお夕飯はお済みですか?」

提督「いや、私は少し忙しくてな…先に済ましてある。すまんな。」

不知火「い、いえ!あの、では、不知火、失礼いたします。」

提督「ああ、ご苦労だった。」

ガチャ、バタン

提督「さて、足柄と雷を呼ぶか…」

24: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 18:29:18.61 ID:Di+AC3JWO
数分後


足柄「足柄よ。入るわよ。」ガチャ

雷「え、ちょ、足柄さんノックは…」

提督「…雷も入れ。さて、お前たち2人にはしばらく夜間哨戒を行ってもらう。足柄は雷に夜間、特に注意すべき点などを教える事。良いな。前任者のマニュアル通りにやれよ。それと、翌日は夕方頃の起床でも構わん。」

足柄「は〜い。」

雷「わかったわ!」

提督「よし、では工廠へ向かえ。準備が整ったら無線で連絡。行ってこい」

ガチャ、バタン

提督「あとは榛名か…どれくらいできるのか知っておきたいな…明日、不知火と模擬弾で演習させるか…隼鷹…は、まぁいいや。」

『ビーッビーッ』
足柄『準備が整ったわよ。雷ちゃんも。』

雷『いつでもいけます!』

提督「よし、では出撃を許可する。何かあれば報告する事。良いな。」

25: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 18:31:43.59 ID:Di+AC3JWO
翌日


コンコン
不知火「おはようございます、司令…司令、顔色がわるいようですが、御加減が優れませんか?」

提督「いや、問題無い…足柄の10分毎の緊急報告で寝てないだけだ。全部どうでもいいものでしかなかったが…」

不知火「ああ…」

コンコン
榛名「は、榛名です。提督、お呼びでしょうか。」

提督「ああ、入れ。」

榛名「失礼します。」

提督「本日、2人には模擬弾で戦闘演習をしてもらう。」

榛名「ぇ…それは、必ず参加しなければ、いけないものですか…?」

提督「そうだな。戦力の程度はきちんと把握しておきたい。」

榛名「そう、ですか…わかり、ました…」

提督「…心配しなくていい。戦闘は全て模擬弾でーー」

『ビーッビーッ』

足柄『緊急報告よ!朝なのに小さなイカがいたわ!』

提督「…そうか。それは良かったな…」

足柄『以上です!』ブチッ

提督「…戦闘は全て非殺傷性の模擬弾で行う。色が付くあれだ。入渠すれば落ちる。」

榛名「…はい。」

提督「それでは、2人とも準備してくれ。準備出来次第始めよう。」

29: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 20:19:55.26 ID:Di+AC3JWO
島の基地から双眼鏡で十分に見える距離。そこに二人は向かい合って居た。不知火と榛名。演習である。

(哨戒は鳳翔に頼んだし問題無いな…。足柄と雷は寝たようだ。)

そろそろ始めるか。そう提督は考え、無線で開戦を告げた。

『大破の判定は艤装に内蔵されたセンサが行う。その大破判定、もしくは倒れてしばらく動きが無ければその後は攻撃しないように。ご存知の通り、お前たちの艤装は脚部を水に浸けて前進するが、全身が倒れこんでも艤装の出力がある限り沈まんようにはなってるからな。急に止まれる物でも無いんだから必要以上に接近するなよ。では、始めてくれ。』

先に不知火が動いた。
「先手必勝です。」
不知火は、榛名とその右側に模擬魚雷を計3発放ち、12.7cm連装砲を榛名に向けて構えながら、標的の左側に弧を描くように急速接近していく。

「…!」

榛名は思考する。

(右側と正面に広い角度で魚雷3…左から駆逐艦の接近…普通に考えて左を向いて正面から撃ち合いをすれば勝てます…)

しかし、

「…不知火さん、確か魚雷4つ持ってましたね…」

不知火が左手で魚雷を3つ放っている間に、右手は何をしていたのか。何故、主砲を構えるのが遅かったのか。
榛名が知覚している魚雷は3つ。しかし、すべて撃ち切らず、決死の特攻を仕掛けてくるとは考えにくい。だとすると、あと1つは…

30: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 20:21:15.70 ID:Di+AC3JWO
「不知火さんの影に魚雷かな?」

そう結論づけた榛名は左側を向き、接近する不知火と正面から向かい合った。そして微速で少しだけ後退した。

「…!」

不知火は心の中で舌打ちをした。

(私が体で隠した魚雷に気付きましたか。榛名さんがこっちに突っ込んでくれたら当たる角度だったのですが…。)

そう考えている間にも不知火は主砲を放ってはいるが、急速旋回中に体を傾斜させている状態ではろくに当たらない。榛名もそれを把握しているようで、その場で静止して主砲を構えようとしていた。

(右側に高速で離脱される事を考えて魚雷の間隔を大きくとったのが裏目に出ましたね…。あの位置は)

「魚雷が当たらない…!」

その言葉の通り、4本の魚雷が榛名の周囲を通過していった。そこに残ったのは主砲を構え、射撃姿勢を取る戦艦。不知火の主砲はいくばかが榛名に命中していたものの、損害は無視できると言わざるを得ない程度だった。

31: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 20:23:45.67 ID:Di+AC3JWO
(やはり、私のこの主砲だけでは有効打たり得ませんか…!予定では魚雷被弾後のあと一押しとしての主砲だったのですが…もっと装備があれば…!)

そして榛名の姿勢が安定する。

「いただきました…!」

榛名がよく狙って主砲を放つ。

「くッ!」

不知火はそれを強引な加速によって回避したが、代償にバランスを喪失した。そのふらついた体を立て直したところで2射目が来る。

(頭に直撃コース…!)

不知火は己の頭めがけて飛ぶ砲弾を反射的にしゃがんで避けた。と、

「それは悪手ですよ不知火さん…!」

狙い澄ました3射目が来た。

(二段構えだったと言う訳ですか…!)

しゃがんでいる状態では最早避けようがない。不知火は衝撃に備え、歯をくいしばった。
そして、着弾。

「…命中しました…これでご満足いただけましたか、提督。」

32: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 20:25:10.60 ID:Di+AC3JWO
着弾と、水面に倒れこむ不知火を確認し、榛名は通信機へと喋りかけた。が、帰ってきた言葉は。

『榛名、油断するな!』

と同時に。
装甲に衝撃。驚いてその方向を見ると、ペイントに塗れた不知火が榛名に対して、拳による突きを放っていた。装甲がダメージを受け、体制が崩れる。

「…大破判定は無しですか…!」

忌々しそうに呟き、榛名は不知火から離れようと後ろに下がるが、不知火はそれを許さない。体制だけでも立て直そうと距離を置こうとする榛名に向かって追い討ちをかけ、転倒を狙っている。

(迂闊でした…!駆逐艦の砲では戦艦に対してダメージは小さい。よって接近戦は考慮に値しないと考えていましたが…まさか演習で徒手格闘に持ち込まれるとは…!)

ギリリと歯ぎしりをする榛名に対して不知火は不敵な笑みを浮かべていた。

「我々は艦娘…!ただの船ではありません…!」

そして、不知火の拳が、ついに榛名を捉えた。

33: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 20:26:50.84 ID:Di+AC3JWO
「不知火…徒手格闘はするなと…負けず嫌いの馬鹿野郎が…」

提督は一度双眼鏡から目を離し、溜息をついた。

(艦娘の徒手格闘…艦娘としてのスペックを用い、己の体を武器とする、か…艦娘は船ではない、人型であるなら人の戦い方も出来るだろうと考案された手法だが…)

渋面を作る。

(確かに艦娘の偽装の出力を用いて格闘すれば、大きなダメージを与えられる…小さな砲しか搭載できない駆逐艦や軽巡は特にそうだ。だが…)

そして、自らを責めるように呟く。

(いくら艦娘とはいえ、精神年齢の若い娘に、敵を殴り殺す事を教えたらどうなるかと、何故考慮しなかったんだ。)

「…艦娘は戦争の道具じゃないんだぞ…」

まるで自分に言い聞かせるような提督の拳は、強く握りしめられていた。

34: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 20:30:29.95 ID:Di+AC3JWO
大きな波飛沫と共に榛名は水面に背中から倒れこんだ。

「たてない…あれ?…私、負け、る…?」

そして、その側に不知火が少し自慢気に胸を張って立っていた。その両目は海岸からこちらを見てるであろう提督を探している。

(私、駆逐艦に負けるのですか…また…また?…前も、こんな…)

榛名の記憶。その奥底。忌まわしき言葉が、聞こえる。

(榛名…お前は弱いなぁ…榛名…どうしてあんな近くの大きい的にも当たらないんだ?…どうしてあんな弱い駆逐艦に負けそうになるんだ?…ごめんなさい、じゃないだろう?…解体されたいのかい…榛名…榛名…)

記憶が、語りかけてくる。海面で仰向けに転がっている榛名の瞳はだんだん虚ろになっていく。

(榛名…こいつを殴るんだ…死ぬまで殴るんだよ…出来ない?出来るだろう…榛名、敵は殺さないとダメだよ…榛名…榛名…榛名…)

記憶が榛名を唆す。そうだ。自分は艦娘なんだから。戦わないと。だから、自分を傷つける敵は…敵は…どうする?

「てき、は…死ぬまで…殴らないと…」

榛名はゆっくりと起き上がった。

35: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 20:31:41.76 ID:Di+AC3JWO
双眼鏡を覗いていた提督は、そこてま異変を感じ取った。

(やはり、この榛名…いかんな。確認しなければならない事だったとはいえ、負けず嫌いの不知火に相手をさせたのは軽率だったか…!)

そして無線で不知火と榛名両方に向かって叫ぶ。

『演習は終わりだ、双方、さっさと陸へ上がれ!』

不知火は了解です、と反応し、頭だけ背後に向けて、榛名を呼ぼうとした。

「榛名さん、演習、は、おわり…大丈夫ですか?」

俯いたままユラユラと揺れる榛名に対し、怪訝な顔をして不知火は問いかけるが、反応はない。榛名は聞き取れないような小さな呟きを続けていた。

(榛名…敗北…解体…榛名…解体…敗北…殺せ…解体…榛名…殺せ…殺せ…殺せ…)

しかし、そのうち榛名は顔を上げた。その顔に歪んだ笑みを湛えて。
そして一言ハッキリと。

「敵は殺さないと。」

36: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 20:33:18.91 ID:Di+AC3JWO
刹那、凄まじい掌打が、不知火の顔が数瞬前まであった空間を背後から襲った。

「…!!」

間一髪のところでそれを避けた不知火は、全身から冷や汗が吹き出すのを感じた。

(今のはヤバい…今のをモロに食らうと…本当にヤバい…ですね…!)

「うふふ、よく避けましたね!でもお互い様ですよ?不意打ち!」

からころと嗤う榛名は、不知火を焦らせていた。

(この榛名は…!)

「私、戦艦ですけど、徒手格闘の方が得意なんです!」

(やはり…!)

通常、大きな砲を搭載している戦艦は徒手格闘をしない、若しくは苦手とする傾向がある。単純に、通常群れているであろう敵に接近しなくても強い砲で敵を始末した方が効率的かつ安全だからだ。しかし、ごく稀に超近接戦闘を得意とする戦艦が居る。その場合、その戦艦の出力や相手によっては拳の一撃で半身が吹き飛んだりする。それくらいの出力が戦艦の艤装にはあるのだ。

37: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 20:35:03.20 ID:Di+AC3JWO
『榛名!もうやめろ!演習は終わりだ!』

提督が必死に榛名を止めようと無線で呼びかけるが、

「はい!榛名は大丈夫ですよ、提督!必ずや敵を撃滅して見せましょう!」

榛名には言葉は通じていなかった。

『くそ!榛名はパニック状態に陥っている!不知火!一旦距離を取って、北の港まで榛名を引っ張れ!俺は工廠から強制偽装解離装置を取ってくる!』

「申し訳ございません、提督…私の勝手な、」

『今は目の前のことに集中しろ!くるぞ!』

謝罪する不知火を遮る提督の言葉は、不知火の咄嗟の回避行動を助けた。不知火は頸椎を狙った上段蹴りをすんでのところで躱した。

38: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 20:36:11.86 ID:Di+AC3JWO
「よそ見ですか?余裕ですね!」

不知火が体制を立て直した時、既に榛名は体を反転させ、回し蹴りを繰り出している。

「くっ…!」

不知火はその回し蹴りを回避不能と判断し、咄嗟に主砲を盾にした。そして衝撃が来た。

「ガッ…!」

主砲が受けた衝撃は艤装を変形させ、不知火を大きく港側に吹き飛ばした。海面に背中から叩きつけられた不知火は一瞬呼吸困難になり、思考が停止する。その一瞬を榛名が見逃す筈もなく、さらなる追い討ちをかけるべく起き上がろうとする不知火に急速接近した。

(榛名ッ…!戦艦らしい、デタラメな威力ですね…!)

不知火はすぐに呼吸を整え、迎撃に備えた。

「不知火さん、タフですね…!」

その言葉と共に突き出される右手を不知火は視認できなかったが、辛うじて、最早使い物にならないであろうレベルに変形した主砲を壁にすることは出来た。そして腹に力を入れ、衝撃に備える。しかし。
榛名の右手はこの主砲を撃ち抜くこと無く鷲掴みにした。

39: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 20:37:12.38 ID:Di+AC3JWO
(これは不味い…!)

死を間近に感じた不知火は咄嗟の判断で主砲を艤装からパージ、その勢いで後退。その時、榛名の左手は不知火の鳩尾あたりを狙って打ち出されていた。後退していなければ確実に食らっていただろう。

(艤装を掴みに来るとは…!力押しだけでは無い…!)

しかし、これで距離が少し開いた。これを好機と見た不知火は急反転し、港に向けて一気に加速。それを榛名が追う。

(演習用の弾を積んでいてよかった…後ろからの射撃は無い!戦艦は遅い筈、流石に追いつかれは…!)

焦る不知火はそう考えるが、実際の距離はジリジリと狭まっている。このままでは陸の手前で追いつかれるだろう。

(…さっきの艤装へのダメージで出力が低下していますか…!かくなる上は…)

40: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 20:38:59.97 ID:Di+AC3JWO
不知火は腹を決め、港のある湾内に入った瞬間右方向に鋭い旋回を開始した。榛名もそれに続く。両者の体は急カーブを曲がる時のように右に傾く。

(この状態で軸足を払い、転倒を狙います…!)

不知火の後を追う榛名の視界から突如、不知火が消えた。不知火が己の姿勢を水面に張り付くように低くしたからだ。それと同時に急減速。そして、

「軸足貰いました…!」

右にカーブを描きながら近づく、榛名の右脚に向けて全体重を乗せた蹴りを繰り出した。それは果たして榛名の右脚にクリーンヒットした。しかし、

「はい、いただきました!」

「ごぼっ…」

吹き飛んだのは不知火だった。榛名は左脚で立っていたのだ。その右脚は不知火をボールのように前方の宙に蹴り上げていた。

(馬鹿な…あれだけ右に傾斜して、いて、左脚が軸足…フェイント…だとは…重心、操作ですか…かなりの、手練れ…)

薄れゆく意識の中で不知火は敗北を悟り。戦艦に蹴られたその体は長い距離を飛び、港の防波堤に叩きつけられ、そのまま気絶した。

43: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 20:43:38.78 ID:Di+AC3JWO
とりあえずここまで…
地の文はもう少し続きますが。

地の文は下手だからやめろ!

地の文の方がマシだよ!
とか
混ぜてけよ…
等のご意見いただきたいです

無ければ戦闘シーンだけ地の文入れて練習させてもらおうかと思ってます。

46: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 22:29:57.92 ID:Di+AC3JWO
「止めですよ、ふふふ。」

笑みを浮かべつつ榛名は意識のない不知火へと近づいていく。そして、ついに海から陸へと上がった、その時。

「すまなかった、榛名。もういい。もう、やめろ。」

提督が榛名の前に立ちはだかった。

「提督…?どいてください。敵を殺せません。」

提督が何をしているのか全く理解できない、という表情で榛名は強引に前に出ようとする。が、提督は動かない。

「…提督?…榛名は敵を殺さねばなりません。殴って殴って殴って殴って。だからどいてください。」

それでも動かない。それに対し、榛名は苛立ちを隠そうともせずに、

「〜ッ!!…どかないというのなら!あなたも私の敵ですよ!わかってるんですか!」

怒鳴る。

「…」

しかし、提督は何も言わない。

47: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/01(日) 22:30:41.94 ID:Di+AC3JWO
「榛名は!戦わないと!解体されます!だから!だから!…死んで!!」

そして、ついに痺れを切らした榛名が提督に蹴りを繰り出した。

「…あまり女の子が足を上げるもんじゃないぞ。」

苛立ちから放たれた蹴りは雑で大振りだ。提督は最小の動きでそれを避けると、素早く榛名の背後に回った。そして、蹴りを空振って体制を崩した榛名が反応するより前に、大型のスパナのような工具を、艤装を支える榛名の腰のハードポイントの接続部に差し込む。すると、榛名の艤装は強制解除され、榛名が振り返りながら放った裏拳は提督を捉えたが、ダメージを与えることは無かった。そして、提督は、

「もう良い。榛名、すまなかった。」

榛名を、抱きしめた。

52: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 00:41:57.32 ID:Jg9b7YSAO
榛名「…てい、と、く…?…何して、どい、て…解体…」

提督「お前は解体されない。俺が許さん。もう大丈夫だ。大丈夫…」

榛名「嘘、う、うううう…う…」ポロポロ

提督「大丈夫だ…」

榛名「い、いま…私…提督…なぐて…不知火さん…」

提督「…気にするな、ただの演習だ。不知火はあの程度で死ぬ程ヤワじゃない。俺もな。」

榛名「」えぐっえぐっ

提督「お前を脅した上司は、ここにはいない。大丈夫だよ…」

榛名「う、うええええ!」ビエーン

53: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 00:42:40.17 ID:Jg9b7YSAO
ドタドタドタ

足柄「ちょっと!凄い音がしたけど大丈夫なの?!…なんで不知火がズタボロになってる横でアンタ達抱き合って榛名が泣いてんのよ?!全然意味わかんないわ!」

提督「あ、ああ、すまん、足柄。…お前ナイトキャップ被って寝てんのか…」

足柄「うっさいわね!アンタいつまで抱いてんのよ!榛名、ちょっと大丈夫…うわ鼻水ヤバ…」デローン

榛名「あ…あ゛じがら゛ざん゛!!」ビエーン抱きつき

足柄「おうふ!よ、よーしよーし大丈夫よー榛名。きっとセクハラマンに泣かされたのね可哀想に…」

提督「さりげない私への風評被害はよせ…おい、不知火、大丈夫か?」

不知火「我が人生に…一片の…」ウーン

提督「…大丈夫そうだな…足柄、とりあえずドックに榛名を連れて行ってくれ。私も不知火の艤装を外してすぐに連れて行く。」

足柄「アンタまさか一緒に入るつもり…?」

提督「…セクハラマンとはお前の事だな…」溜息

54: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 00:44:10.54 ID:Jg9b7YSAO
ドック


足柄「ドックで隼鷹が溺れてたから再び入渠させてきたわ!だから今一つしか枠が空いてないわね。」

提督「隼鷹を見ないと思ったらそんな悲惨な事になってたのか…完全なマッチポンプだな…」

榛名「あの、不知火さんから、入っていただいても良いですか。やっぱり状態とか考えると…」

足柄「提督はそれで良いかしら?」

提督「ああ。足柄、不知火を頼む。放り込んできてくれ。」

足柄「しゃーなしよ、しゃーなし。ほら、不知火さん、しっかり。」

不知火「うう…」グター

ドタドタ

榛名「提督…あの、今なら誰も人が居ません。」

提督「…」

55: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 00:45:29.22 ID:Jg9b7YSAO
榛名「…私を、榛名を解体して下さい。」

提督「断る。理由がない。」

榛名「…理由ならあります!今だって…」

提督「私は負傷していない。不知火も死んではいない。全ては演習の枠組みの中で行われた事だ。」

榛名「でも!私は今まで癇癪で沢山の人を傷つけてきました!提督だけじゃありません…前任者の方だって!…もう、嫌なんです…」

提督「…榛名、お前のそれは癇癪ではない。それは、心の傷だ。」

榛名「変わりません!傷つけた事に変わりはないんですよ!私は居てはいけないんです!」

提督「それは違う。」

榛名「違いません!本土が私を解体しないのも、艦娘の建造の難度が高いからです。ただそれだけです。今も艦娘の数はカツカツだから!私は要らない子だけど!もしもの時、ちょっとはマシな壁になるから残されてるだけです。意思も何もない。…だって、自分で自分をコントロール出来ない艦娘なんて、要りませんよね。…私だって、役に、立ちたかった…!」

56: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 00:46:59.80 ID:Jg9b7YSAO
提督「榛名。お前は要らない子などではない。私に必要な艦娘だ。」

榛名「…ありがとうございます。嬉しいです。でも…私はその言葉を頂くには、人を傷付け過ぎました。だから、」

提督「榛名。お前が自分をコントロール出来ないと言うのなら。俺がお前をコントロールしてやる。自分で自分の舵を取れるようになるその時までな。」

榛名「ぇ…それは、どういう…」

提督「今日と一緒だ。やばいと思ったら止めてやる。」

榛名「…今日は偶然うまくいっただけですよ。貴方は艤装を装備した私が肩に手を置くだけで死にかねないんですよ。」

提督「偶然じゃない。偶然でアレが出来てたまるか。」

榛名「でも!」

足柄「…ちょっと、何また榛名泣かしてんのよアンタ。ぶっとばすわよ。」

提督「おっと怖いな。では、私はここらで失礼する。榛名はドックが空き次第入渠しろ。」

榛名「あ!提督!待って…」

提督「…解体するしないを決めるのは私だ。私はお前を解体しない。…もう一度、誰かに任せてみろ。」

榛名「…」

提督「…ああ、そうだ。足柄、後で隼鷹を執務室に連れてこい。奴には話がある…」

足柄「…へいへい。」

57: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 00:48:07.45 ID:Jg9b7YSAO
執務室、数分後


コンコン
足柄「あたし。」

提督「…相変わらず雑だな。入れ。」

足柄「」テクテクテク

机バン!

足柄「アンタ、なんで榛名に戦わせたの?まさか引き継ぎ時の資料読んでない、なんて事無いわよね。」

提督「…戦力の把握に必要な事だった。」

足柄「あの子のトラウマを抉ることが?」

提督「それに関しては、演習相手の人選を誤ったと思っている。私の責任だ。」

足柄「…あのさぁ、提督。言った事には責任持ってよ。言ってるだけじゃダメだよほんとに。まだ二日目だけどさ。あんな話されて期待してんだから。足の小指の爪くらいには。」

提督「努力する。」

足柄「…そ。榛名に関しては任せるわ。発作的に暴れないかも側でみといてあげる…でもね。」

提督「…」

足柄「あんだけ言って抱きしめて、あの子を見捨てたり解体したりしたら。」

アンタ、殺すわよ。

足柄「…隼鷹はもうすぐ来るわ。じゃ、私はまた寝るから。おやすみー。」

提督「…ああ。」

ガチャ、バタン

提督「(やれやれ、血気盛んで濃いのが多いなぁ。)」

提督「…やり甲斐がある。その方が良い。」

62: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 08:30:19.20 ID:Jg9b7YSAO
さらに数分後、執務室


コンコン
隼鷹「隼鷹です。」

提督「入れ。」

隼鷹「うっす。」

提督「お前、次鳳翔と入れ替わりで哨戒任務に当たってくれ。」

隼鷹「うっす。」

提督「2200まで頼む。」

隼鷹「うっす。」

提督「今週中には哨戒のシフトを出す。それまで適当に割り振るからしっかり頼む。」

隼鷹「うっす。」

提督「あと酒は無しな。」

隼鷹「うっす…はぁ?!」

提督「何故驚く…当たり前だろう。お前はとりあえず勤務中に酒を飲むな。それが当面のお前の目標だな。」

隼鷹「ぐぬぬ…そんなの無理だよ無理!…無理ー!」

提督「死なないから大丈夫だろ。鳳翔は60分以内に帰投する予定だ。準備だけはしておけ。」

隼鷹「60分で何本隠せるかの勝負か…!」

提督「…お前…これまでとは違い、艦載偵察機の使用を解禁する。」

隼鷹「え、いいの?前の上司はボーキ使うからダメッつってたけど。」

提督「普段から使っておかないと、いざという時操作出来るのか?」

隼鷹「う…まぁ、そりゃそうだが。…てか飛行機使っていいならアタシ外出る必要無くない?」

提督「お前は艤装を陸上で長時間動かし続けると自壊する事も知らんのか…」

隼鷹「ぐ…ほ、ほら!湾内の事よ!」

提督「つべこべ言わずに行ってこい。艤装に比べて艦載機は燃料消費が激しいんだ。お前の艤装もボーキ補充しないといけなくなるし…自分の足で距離を稼いでくれ。」

隼鷹「やっぱボーキの話かよ!アタシは燃費良いんだぞ!ばかにすんなよ!」

提督「してないから行ってこい。…ああ、出撃前に工廠で私がお前の艤装を点検するからな。酒を持ち込むなよ…」

隼鷹「…うっす。」

63: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 08:33:19.25 ID:Jg9b7YSAO
艦娘寮内


榛名「ハァ…」トボトボ

足柄「あら?榛名じゃない。もうお風呂は良いの?」

榛名「足柄さん…はい、もう済みました。ご迷惑をおかけして…」

足柄「いいわよいいわよ!そんな日もあるわ。悪いのは提督だしね。」

榛名「て、提督に非は…!」

足柄「あるに決まってんじゃない。アレが監督責任者なんだから。全部押し付けときゃいいのよ!…でもね、榛名。アンタも無理な事は無理って言わなきゃダメよ。アンタが一番傷付くんだから…」

榛名「…はい。…でも、私…やっぱりお役に立ちたいんです。だから…演習ならと思って…」

足柄「…そう。なら、今回の提督は?自分に自信あるみたいだし?榛名の事も止めてくれたんでしょ?じゃああんまり思い悩まなくて良いんじゃない?前の粗相しちゃった奴らはもう忘れな。」

榛名「…でも、提督は人間で…」

足柄「責任者がが大丈夫だって言ってんだから大丈夫よ。最初のスピーチで自分でハードル上げまくってたし。…いやでも左遷か…不安ね…」

榛名「…!!」涙目

足柄「あー嘘嘘!あの提督、目からビーム出るから!大丈夫よ!」

榛名「…」

足柄「…ま、気楽にいきましょ。…でも、万が一あの提督が口だけで使い物にならなかったら…あたしがなんとかしてあげるわ。」

榛名「…足柄、さん…」うるっ

足柄「…ほら!もう湿っぽいのはやめて!今鳳翔さん出てるし自分らでご飯作りに行きましょ!」

榛名「…はい!」

雷「…提督、目からビーム出るんだ…」

64: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 08:56:28.87 ID:Jg9b7YSAO
工廠

提督「…髪の毛の中にも!!お前!一体何本酒を隠し持ってるんだ!!」

隼鷹「ふふふあーははー!絶対に持ち込んでやる…!」

提督「何なんだこの情熱は…!命令違反をしているんだぞ…!」

隼鷹「ぐふふふ。全て見つけられるかなぁ?!」

提督「…こいつ…!」

鳳翔「あら?提督と隼鷹さん。」

提督「あ、鳳翔。すまない、少しゴタついてる。」

鳳翔「はい…哨戒の引き継ぎ予定時刻を過ぎても隼鷹さんがいらっしゃらないので、念のため一度工廠まで戻ってきました。…ところで一体何を?」

提督「この馬鹿が酒を隠し持ってるんだ。もう5本みつけたんだがまだ持っているようでな…。」

鳳翔「はぁ…艦載機の中に小分けして入ってそうですね。あとは…下着の下かしら?」

隼鷹「!!!!…馬鹿な…」

提督「…鳳翔、すまないが隼鷹から酒類を取り上げてやってくれないか…」

鳳翔「わかりました。」えいっ

隼鷹「ギ、ギャアアアア!!血が!私の血がぁ!」

鳳翔「はい、小瓶6つと中瓶1つです。」

隼鷹「くそう…勤務時間外は飲まないようにしてたのに…!ささやかな楽しみが…」

提督「…お前、ほんと馬鹿だな…さっさと行ってこい。」

隼鷹「はいはい…うう…」

隼鷹「…」チラッ

隼鷹「(でも隠し場所がわかるってことは…鳳翔ももしかして…)」

68: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 11:31:34.00 ID:Jg9b7YSAO
提督「やっと行ったか…」

鳳翔「提督、お疲れ様です。」

提督「ああ、ご苦労、鳳翔。すまないな、遅れてしまって。」

鳳翔「大丈夫ですよ。…ところで提督、お昼はお済みですか?何やら港が騒がしかった様子でしたが。」

提督「ああ、いや…もう1500か…まだだな。」

鳳翔「よろしければ何かお作りするので、食堂にいらして下さい。」

提督「…わかった、行こう。」

鳳翔「では、私は今から食堂へ向かいますので、いつでもどうぞ。お先に失礼しますね。」

提督「ああ、ありがとう。」


食堂


鳳翔「どうぞ。簡単な物ですが…。」

提督「頂こう。」

提督「…うむ、美味い。」モグモグ

鳳翔「お口に合ったようで何よりです。お代わりもありますよ。…ところで提督、お隣宜しいですか?」

提督「構わんよ。」

鳳翔「失礼します。…ご存知の通り、我々空母の艦載機は極めて小型の為、搭乗者はおらず、操作等は全て空母自身が管制します。」

提督「そうだな、そう聞いている。」

鳳翔「無論、飛行機からの視覚も認識出来るのですが…提督、本日午前の港での件、私は近海から偵察機を通して見ていました。」

69: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 11:33:09.97 ID:Jg9b7YSAO
提督「…(来たか。)」

鳳翔「単刀直入に申します。提督、あの戦艦は危険です。」

提督「…以降は私が責任を持って管理するとしても、不満か。」

鳳翔「それでも、榛名の作戦遂行能力には疑問が残ります。…提督、空母は主砲を持ちません。艦載機を飛ばしながら徒手格闘も難しい。…我々には頼れる前衛が必要なのです。」

提督「それは把握しているつもりだ。しかし、今現在榛名無しでは対応不可能な脅威は無い。余裕のある間に、榛名のトラウマを解消しようと考えている。」

鳳翔「…そうですか。すいません、お食事中にこんなお話をしてしまって。」

提督「…榛名の戦闘能力自体は高いことが確認できている。不安かもしれないが、少し私を信じてみてほしい。会って二日目では無理かもしれんが。」

鳳翔「…わかりました。…では、提督。私は晩御飯の下準備をして参りますので、失礼しますね。ごゆっくりどうぞ。」

提督「世話をかける。」

鳳翔「大丈夫です。では。」テコテコ

提督「しかし美味いなコレ…」モグモグ

70: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 11:34:14.81 ID:Jg9b7YSAO
暫く後、執務室


コンコン
不知火「…不知火です。」

提督「入れ。」

不知火「失礼します。…提督、この度は申し訳ございませんでした。不知火の、落ち度です。」

提督「…傷はもう大丈夫なのか。」

不知火「…はい。」

提督「そうか。…不知火。お前の実力は俺が一番よくわかっている。」

不知火「…はい。」

提督「たかが演習で負けたくらいで覆るような評価ではない。これは信頼の裏返しだ。…勝つべき時を見誤るなよ。能があるなら爪を隠せ。良いな。」

不知火「…はい。」

提督「しばらくは、事務の仕事を任せる。秘書艦だ。」

不知火「…はい。」

提督「今日はもう休め。明日0600に執務室へと来るように。」

不知火「…了解しました。不知火、失礼します。」

ガチャ、バタン

提督「さて、あとは足柄と雷を、隼鷹と入れ替わりで出すだけだな。…今晩は寝れると良いんだが。」

72: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 15:29:25.86 ID:Jg9b7YSAO
翌日


コンコン
不知火「失礼します。不知火です。」

提督「入れ。」

不知火「おはようございます。…あら?榛名さん?」

榛名「お、おはようございます…」

提督「おはよう、不知火。今日からお前は秘書艦な訳だが…もう一人、秘書艦をつける。」

不知火「…不知火一人では、ご不満ですか。」

提督「いや、違う。秘書艦の仕事を覚えてもらうためだ。」

不知火「…つまり、不知火が指導をするという訳ですか?」

提督「そういうことだ。榛名、隼鷹、鳳翔は秘書艦としての経験が無い、もしくはほとんど無いようでな。ローテーションで回していくから色々教えてやってくれ。」

不知火「はぁ…」

提督「ここから前線や本土に転属となった時、秘書艦経験が無いと困るかもしれないからな。」

不知火「そうかもしれませんが…」

提督「艦娘は常に必要とされている。癖の強い艦娘も、しっかり対応してやれば丸くなるさ。活躍すれば転属もあるだろう。そのための準備さ。私の目的はここの艦を一流にする事な訳だからな。」

不知火「…わかりました。努力します。」

提督「早速今日から榛名を頼むよ。」

榛名「よ、よろしくお願いします…」

不知火「榛名さん。…よろしくお願いします。」

提督「さて、始めるか。書類の振り分けから頼む。まだ3日目だ。仕事は山程あるからな。」

73: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 15:30:20.07 ID:Jg9b7YSAO
仕事中


榛名「あの、不知火さん…」

不知火「はい。」

榛名「演習の件、すみませんでした。」

不知火「いえ…あれは私が…」

榛名「そんなことありません!ほんと、私ああなると制御できなくて…。今までも止めようとして下さった、他の提督を血だるまにしてしまったり…」

不知火「…大丈夫ですよ。私も、私の提督も他とは違います。殺しても死にませんから。」

榛名「(私の提督…)そ、そうですか!殴っても死なないのですね!安心しました!」

提督「…その理屈はおかしい…」

74: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 15:32:12.28 ID:Jg9b7YSAO
ドドドドド…

提督「ん?…誰かが走ってくるな。」

隼鷹「オラァ!」
ドバン!

提督「…ドアを蹴るなドアを。静かに入れないのか…」

隼鷹「こまけぇこたぁ良いんだよ!提督アンタ、アタシの酒をどこへやった…!」

提督「…ああ…大量の安酒か…早朝に処分したな。」

隼鷹「きっ、貴様の血は何色だー!」

提督「執務室で暴れるな!…?!隼鷹こいつ血の涙を…!」

隼鷹「アタシの私物だぞあれは!」

提督「勤務中に飲んでた罰則だ。受け入れろ。」

隼鷹「そもそも女子寮に勝手に入るなぁ!下着入れに隠してあったのも持って行きやがって!」

提督「落ち着け、私は入ってない。鳳翔が掃除中に隠してあるのを見つけたと私の所に持ってきたんだ。」

隼鷹「げぇっ鳳翔!あの人アタシの下着入れまで漁ったのかよ…怖いわ…」

提督「(…確かに怖いな…自室の掃除は自分でやろう…)」

隼鷹「…ちくしょー…ノー酒ノーライフだよ…」

提督「暫く我慢する事だな。アルコール抜け。」

隼鷹「…くそー…」トボトボ

提督「それと、隼鷹、1400に執務室へ来い。良いな。」

隼鷹「…うん。」
ガチャ、バタン

榛名「…隼鷹さん、落ち込んでました…」

不知火「…自業自得とは言え、少しかわいそうでしたね。」

提督「…隼鷹は酒が問題だからな。安酒を延々と飲んでる。以前勤務していた鎮守府からも、それが原因でここへ転属となったようだし…暫く断酒させて様子を見る。しかたあるまい。」

75: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 15:36:08.98 ID:Jg9b7YSAO

更に仕事継続…


提督「(そろそろ頃合いか…)二人とも、キリのいいところで飯に行って来い。鳳翔の作り置きがあるらしい。」

榛名「提督はどうなさるのですか?」

提督「私の事は気にするな。仮眠を取る。」

不知火「しかし…」

提督「いい、いい。二人で行って来い。そのまま1400まで自由行動とする。時間になったら戻ってこい。ほれ、解散解散。」

二人「…では、お先に失礼します。」

提督「おう」

ガチャ、バタン

提督「さて、と。そこそこ事情が掴めて来たな…」

提督「不知火は置いとくか…
まず、榛名。これはトラウマから自己制御を失ってる艦。

次に隼鷹。酒癖の圧倒的悪さだな。大方暴れて上司あたりを殴り、出向だろうな。

足柄。前任者のレポートには悪口しか書かれていないな…こいつも足柄にめちゃくちゃされたようだ。」

提督「(…足柄、か。自分本位、と書類では分析されているが…こいつは多分、自分ではなく艦娘本位なんだろうな…艦娘と人間が同等の扱いを受けないのはおかしいと考えてる。だから人間に対して攻撃的なのか?)」

提督「うーん…軍にとって都合が悪い危険思想…か。俺は嫌いじゃないが…足柄は…

鳳翔。明らかに行動が行き過ぎてる感じがするな。隼鷹の酒にしても、昨日の意見具申にしても率直すぎるし…危険を考えれば妥当ではあるが…ここら辺の性格で失敗してそうだな…

最後に雷。接する機会が少ないが…全く自己主張が無いな。まだこの娘に関しては何も言えんか。」

提督「(まぁまずは…榛名か。戦闘を行わない限り落ち着いているようだが…)」

76: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 15:41:56.88 ID:Jg9b7YSAO
食堂


榛名「…」モグモグ

不知火「…」まぐまぐ

榛名「(き、気まずい…何か喋らないと…)あ、あの!不知火さん。」

不知火「はい。」

榛名「提督、そばで見てると、凄くお仕事の出来る方ですよね。」

不知火「当然です。私の自慢の司令です。」

榛名「(私の司令…)…不思議なんですけど、何故あんな方がこんな辺境に?」

不知火「それは…」

足柄「なになにー?あたしにも聞かせてよ、それ。」

榛名「足柄さん!夜間哨戒、いつもありがとうございます。きちんと睡眠はなさいましたか?」

足柄「腹減って目が覚めたのよね。なんせ飢えてんのよ…これ並んでるの一つ食べれば良いのね?」

榛名「はい。」

足柄「どっこらしょっと…で、何であの人こんなとこにいるの?やっぱセクハラ?」

不知火「司令はそんな事なさいませんよ。」

足柄「わかんないわよー。男は獣慾を持て余すものよ…」

不知火「…その発言、むしろあなたが司令にセクハラしてますよね…」

榛名「実際どうなんですか?なんというか、私の蹴りを避けれる人間の方は初めて見ました。」

不知火「司令は…一流です…でした。かつては最前線で指揮を取ってました。…何故、あの人がここに送られたかは…私の口からは言えませんが。少なくとも私は司令を尊敬しています。」

足柄「…あの人階級章とか勲章とか全く着けて無いわよね。不思議だったけど。身バレすると不味いのかしら。」

不知火「…いつか、司令からお話しされると思います。」

足柄「…そ。じゃ、待つわ。必死になって探す程の事でも無さそうだし。」

榛名「…(…私は知りたい、です。)」

不知火「…私はここで失礼しますね。榛名さん、足柄さん、1400に執務室でまた会いましょう。では。」

77: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 18:18:10.90 ID:Vn+/rZZ+O
足柄「はーい。…何やらかしたのかしらね、提督。アナーキストなのかしら。ねえ、榛名?」

榛名「…」

足柄「…榛名?」

榛名「は、はい!榛名は大丈夫です!」

足柄「あ、そう…」モグモグ

榛名「…(気になります…)」モグモグ


1400、執務室にて


提督「よし、全員揃ったか。」

一同「はい!」

78: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/02(月) 18:19:29.78 ID:Vn+/rZZ+O
提督「では、今週の仕事の割り振りを発表する。週刻みで変えていくからな。まずは榛名、お前は秘書艦補佐として不知火につき、仕事を学べ。」

榛名「はい!」

提督「足柄。引き続き単艦で2000から0400までの夜間哨戒を頼む。」

足柄「…こうなるだろうと思ってたわ…夜更かし…私の美貌が…」ハァ…

提督「…コホン。雷。お前は0400から1200までの単艦哨戒を頼む。」

雷「わかったわ。」

提督「隼鷹。お前は1200から2000までの哨戒を頼む。一番接敵する可能性の高い時間だ。きっちり艦載機を飛ばして行ってくれ。」

隼鷹「…はい。」

提督「鳳翔。お前は哨戒の必要は無いが、食事洗濯等の雑事を任せる。」

鳳翔「お任せください。」

提督「不知火は以前伝えた通り、秘書艦とする。また、全員空いた時間に呼び出し、実力を見たり訓練を行う可能性があることに留意。以上だ。」

足柄「…実力を見るって全員模擬戦すんの?」

提督「いや、榛名は特例だ。引継ぎ時の書類で戦闘能力が不明とされていたからな。基本的には各々の能力をチェックする程度だ。」

足柄「…あ、そ。面白くないわねー。」

榛名「ちょっと足柄さん…」

提督「安心しろ。そのうち模擬戦もやる。…特に何もなければこれで一時解散とする。隼鷹は哨戒へ急げ。不知火と榛名は残る事。」

一同「了解。」

83: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 00:28:41.36 ID:8rYj7xKaO
その後…


提督「不知火、すまないがしばらく仕事を頼む。榛名、着いてこい。」

榛名「は、はい。」


提督の部屋


榛名「執務室の隣の部屋、提督の私室だったのですね…」

提督「まぁな。適当に座ってくれ。…さて、榛名。ここなら外に声は通らない。今日から少しずつお前の話を聞かせて欲しい。昔お前の身に何があったのかを。」

榛名「私の、話、ですか…それは、この島での話では…無いですよね。」

提督「ああ。…少しずつで構わない。…無理そうなら別の日でも良い。」

榛名「いえ…少しずつ、ですよね。…頑張って思い出します。」

85: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 00:45:09.46 ID:8rYj7xKaO
榛名「…私が艦娘として建造されたのは、7,8年前の事です。あの大反攻作戦の、そのまた前でした。その頃、軍内部ではある派閥が勢力を伸ばしていたそうです。後に、軍に大きな勝利と、そして裏切りをもたらした…」

提督「…主張派か。」

榛名「はい…私はその主張派系の開発工廠にて建造されました。艦娘の建造には妖精のいたずらと呼ばれる、不可解な現象が絡んでいます。だから莫大な資材を投入しても艦娘の建造が難しいのは提督もご存知だとは思います。」

提督「…そうだな。」

榛名「私の艦種は戦艦ですので、それは喜ばれました。大戦力であると。」

榛名「当初の予定では、私は主張派の主力艦隊であった第3艦隊の、第4機動群に編入される予定でした。第4と言えば、あの大反攻戦を勝利に導いた、英雄提督が指揮していた艦隊ですよ!…今思えば、これが私の最盛期だったのかもしれません。」

提督「…」

榛名「配属直前に、少し大きな問題が発生しました。第4群はその問題の対処に当たる為、急ぎ国を離れたのです。その結果、主張派本部の決定により、私は…私は、英雄提督では無く、彼の部下が指揮する、艦娘決戦部隊に配属されました。」

提督「主張派の、第3艦隊の艦娘決戦部隊…あの有名な黒提督だな…さぞ辛かったろう…」

榛名「ご存知なのですね。そうです、榛名は黒提督の元に配属されたのです。…」ブルブル

提督「…今日はここまでにしておこう。ありがとう榛名、話してくれて。…続きは落ち着いたらで良い。」

榛名「は、い…すいません…」

提督「…榛名、黒提督はここには居ない。俺がお前には指一本触れさせはしない。大丈夫だ。黒提督のやり方は間違っていた。…お前は悪く無い、大丈夫だよ。」

榛名「…ありがとうございます…すいません、ほんとに…あの、少し、風に当たってきてもよろしいですか。」

提督「構わん。」

榛名「すいません、失礼します。」


執務室


提督「すまない、不知火。今戻った。」

不知火「司令。」

提督「…榛名の元上司は黒提督だったよ。」

不知火「…そうでしたか。」

提督「…主張派にはバカとクズしか居なかった。黒提督も英雄提督も、糞食らえだ…」

不知火「司令…」

提督「畜生…」

86: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 02:12:17.21 ID:8rYj7xKaO
数日後の夜、食堂にて


隼鷹「哨戒から戻った。あーダルしんど酒ー!」

鳳翔「あら、隼鷹さん。」

隼鷹「こんばんは。夜遅いね。もう2300回ってるけど大丈夫?」

鳳翔「大丈夫ですよ。まだ、仕事もありますし。ドックのお風呂掃除とか、朝ごはんの下準備やら何やら…休憩する暇がありません」

隼鷹「あへー。大変なもんだね。それに加えて戦闘に備えないといけないし…」

鳳翔「仕方ありませんよ。艦娘は民衆には秘匿とされていますから。家事などは艦娘同士でやらないと。」

鳳翔「軍の一部、それも提督と呼ばれるような方だけが艦娘と喋る事を許されているくらいですから。…洗濯や掃除だけでもこなしてくれる第三者が居ればもっと楽になるとは思うのですけどね。それに、提督は私を部屋に入れて下さらないし…掃除がしたいだけなのに。提督も、男の方と言う事でしょうか。」

隼鷹「(アンタ怖いもん…)提督はダメだなぁ!」

提督「私がなんだって?」

隼鷹「げえっ関羽!」

提督「誰が関羽だ…。隼鷹、鳳翔、任務ご苦労。二人とも今から暇があれば私の部屋に来るといい。良いものがある。」

隼鷹「(気になるけど、鳳翔さんまだ忙しいって言ってたしなぁ。一人で行くのなんか悪いし断るか。)アタ 鳳翔「行きます。」

隼鷹「」

提督「隼鷹はどうする?」

隼鷹「…行くよ!」

91: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 08:27:13.13 ID:8rYj7xKaO
提督の部屋


提督「日本酒ウイスキーブランデー…日本酒だな。…ほれ。器がグラスしか無いが。」

隼鷹「酒?…酒は禁止じゃないのか。」

提督「もう非番だろう。せっかくの大吟醸だ。燗は…面倒だな。もうそのまま飲んでみろ。」トクトクトク

隼鷹「…いただきます…(!…美味しい…なんか腹立つな…)」

鳳翔「いただきます。んっ…かなり辛口ですね。提督の好みですか?美味しいです。」

提督「まあな。」くいっ

提督「何かつまみが欲しいな…」

鳳翔「では、何か用意してきましょう。」

提督「ありがたい。」

隼鷹「…何で急に酒を…」

提督「…隼鷹。…酒は良いものを飲めよ。」

隼鷹「…そんな酒ねーよ。」

提督「…お前の戦闘評価、見させて貰った。」

隼鷹「!…悲惨だったろ。」

提督「まぁな。変な笑いが出たよ。」

隼鷹「…それ計測したの、前任者の時だったけど…まぁ、その、泥酔してたしな。」

提督「…本当にそれだけか?」

92: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 08:29:18.17 ID:8rYj7xKaO
隼鷹「…何が言いたいのさ。」

提督「…艦載機、シラフでいくつ展開出来る?」

隼鷹「…そりゃ、アタシは58しか積めないから、」

提督「…俺の目は節穴じゃないぞ。本当に58機、シラフなら余す事無くキチンと操作可能なのか?」

隼鷹「…」

提督「イチから鍛え直すぞ、隼鷹。」

隼鷹「…やめときなよ。無駄だって。」

提督「なんだ、えらい弱気だな。」

隼鷹「…みんな、さ。アタシが酒抜いたら出来るって言い方するんだ。…でもさ、そんな事無いんだよ。アタシゃ不器用でね。艦載機の扱いが難しいんだ。」

提督「…」くいっ

隼鷹「…大分前、この島に来るより前ね、遠洋に深海棲艦が出現した時迎撃に向かったんだけどさ、あ、勿論シラフね。…あれは傑作だったなー!まさか自分の艦載機同士ぶつけまくるとは思わなかったよ。ボンボン空中で爆発起こるんだけど接敵すらしてなくて。味方超混乱してたよ。アハハ。」

提督「…隼鷹、ほれ、飲め」トプトプトプ

隼鷹「ありがと。…もうさ、そのせいで凄い混戦になっちゃって。何とか勝てたけど、先制されたせいで結構な被害出てさ。同僚も上司もクチ聞いてくんなくて。…そんなん飲むしかないじゃん!」グイッ

提督「…」くいっ

隼鷹「アタシが悪いんだけどね…提督、もう一杯!」

提督「…」トプトプトプ

隼鷹「ありがとうございます!…なーんでアタシこんな話したんだろね。アハハ。」グイッ

93: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 08:31:44.41 ID:8rYj7xKaO
提督「…お前、もう一人で酒は飲むな。」

隼鷹「…飲む酒がねーよ。」

提督「…酒に逃げるなという事だ。」

隼鷹「…わかってるよ。ダメだって思ってた。でもしゃーないじゃん。アタシ艦娘だし。逃げ場が酒しかないよ…戦えないのに期待されるって気持ち、仕事の出来る提督にはわかんないかもしんないけどさ。」

提督「…最初から仕事の出来る奴なんざいないさ。愚直に修練を積み上げねば実力は付かん。お前は積み直しだ、隼鷹。」

隼鷹「…きっと崩れる。」

提督「何、崩れそうになったら俺が支えてやる。…昔正規空母の部下が言ってたよ。艦載機の扱いなど才能ではなく積み上げた期間だと。昔のお前の上司はそれを見誤ったんだろう。」

隼鷹「…飲み込み悪いし。」

提督「人より多く、長くやれば良いさ。簡単なことではないが。」

隼鷹「でも!アタシはきっと失敗して!提督は…提督はアタシに失望するんだ!」

提督「簡単な話だ。失敗したら、飲んで笑って忘れて、また積み直しだな。」

隼鷹「…アンタ変だよ。」

提督「よく言われる。」

隼鷹「あーもう!もっと酒下さい提督!」

提督「明日からまた忙しいぞ。大丈夫か?」トプトプトプ

隼鷹「こんな湿っぽい空気のが嫌だわ!」

提督「…だ、そうだ。鳳翔、気を遣わせたな。」

鳳翔「いえ、今戻った所ですよ。」ガチャ

隼鷹「げえっ?!アタシの恥ずかしい話聞かれてた…?」

鳳翔「あら、何の話でしょうか?…どうぞ、刺身です。夕方に上がった魚ですよ。」ニコニコ

提督「お、釣ったのか?旨そうだな。ほれ、酒だ。」

鳳翔「ありがとうございます。…いえ、発破を少々。」

提督「おま…まぁ良いか。どうせ孤島だ。因みに何の魚だ?」

鳳翔「鯛…のお友達です。」

提督「居るもんだな…」

隼鷹「旨え!」

95: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 11:28:22.70 ID:8rYj7xKaO
週の終わり、夜

提督「哨戒中の足柄以外全員揃ったか。」

一同「はい!」

提督「初めの一週間ご苦労だった。上が変わって慣れない事もあったと思うが、引き続き頑張ってくれ。」

一同「はい!」

提督「尚、シフトは据え置きとする。ただ、雷は一月後から夜間哨戒を任せる可能性があるので留意しておけ。」

一同「はい!」

提督「では解散とする。時間も遅い。部屋で休め。」

一同「失礼します!」
ガチャ、バタン

提督「さて…」

提督「足柄、聞こえるか。」

足柄『聞こえてるわ。』

提督「すまないが、しばらく夜間哨戒は続けてもらう。」

足柄『どーせこうなると思ってたから良いわよ。夜は見えないから慣れた艦娘のが良いし。かと言って隼鷹は夜は飛ばせないし、榛名は万が一接敵したらヤバイし。』

97: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 11:34:55.59 ID:8rYj7xKaO
提督「苦労をかけるな。」

足柄『…あー提督の誠意が見たいわー。誠意で喉を潤したいわー。』

提督「…哨戒が終わったら私の部屋に来い。」

足柄『マジ?酒?酒?隼鷹が美味いの飲んだって言ってたから狙ってたのよねー!役得役得。』

提督「…私は寝る。0400以降来るといい。油断するなよ。緊急の場合は起こせ。」

足柄『りょうかーい!』ブチッ

提督「…寝るか。」


早朝


コンコン
足柄「あたしよ。」

提督「…入れ。」

足柄「お邪魔するわね。さぁ、酒を寄越しなさい!何でもいいわ!」

提督「元気だな…ほれ、日本酒。」トプトプトプ

足柄「…うまいじゃない…」

提督「…当たり前だ…なぜ驚く。」

足柄「隼鷹のうまいはアテになんないのよね。あの子ついこないだまで常に酒飲んでたから。舌がバカんなってるわよアレ。」くいっ

提督「まぁ、全て取り上げたがな…」

足柄「アレ鳳翔さんがやったんですって?…鳳翔って何者なの?床下に隠してたのも消えてたとかなんとか。」

提督「初耳だぞ…私にもわからん。ただ…まぁ、物事を徹底的にやって、更にやり過ぎてそうだな。」

足柄「なるほどねー…要注意ね。私物隠しとこ…アンタも  本とか見つからないようにしなさいよ…見つかったら爆笑よ爆笑。」

提督「ああ…」

足柄「…え?あんの?ちょっと家探しして良い?てっきり枯れてんのかと。」

提督「アホか。…コーヒーを淹れてくる。」

98: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 11:37:26.47 ID:8rYj7xKaO
足柄「アンタ飲まないの?」トプトプトプ

提督「勘弁してくれ。もう朝だぞ。仕事がある。」

足柄「いいじゃないの〜」

提督「酔っ払いめ…」

足柄「ああん。」

提督「…0600までには出て行けよ。仕事がある。」

足柄「わーってるわよー。そいえば日本酒以外ないの?」

提督「…一応いろいろあるな…忙しくて口にしてないから減ってない。」

足柄「このラック?見せて…ニッカじゃん!…ドライビールある?」

提督「もう日本酒三杯行ってるのか。もっと味わってだな…」

足柄「うるさいわねー。…これ冷蔵庫?…あったわ!」

提督「ウイスキーをビールで割るのか…お前悪酔いするぞ。」

足柄「たまにしか飲めないんだからいいじゃないの!今や鎮守府には提督の酒と鳳翔の料理酒しか無いんだから!隼鷹なんて料理酒飲もうとして鳳翔に捕まってたわよ。」マゼマゼ

提督「救いようがねえな。…もう好きにしろ」ハァ

足柄「これがうまいのよねー!…ツマミはないの?」グビー

提督「…この部屋には置いてないな。」

足柄「気が利かないわねー!まぁいいわ!酒のツマミは酒よ!」グビー

提督「おま、ペース考えろよ…」


0600


足柄「うう…」

提督「案の定潰れやがった…一気に飲みすぎなんだよ…ベッドで寝かしておくか。」

100: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 12:44:07.52 ID:8rYj7xKaO
足柄「…那智、ねえさん…」

提督「!!…寝言か。」

足柄「…ぇくしっ」

提督「酒飲んで暑いからって服をはだけさせるからだぞ…布団くらいきちんと着せてやるか…」ファサ…

提督「…仕事中に執務室側のドアから出ないようにと書き置きしておかないとな…」

『外のドアから出ろよ。任務ご苦労。 提督』

提督「よし…今日も1日が始まるな。」


執務室


コンコン
不知火「おはようございます。不知火と榛名、参上しました。」

提督「ふぁあ…入れ。」

不知火・榛名「失礼します。」

提督「おはよう。さて、今日も始めるか…」

101: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 12:45:42.91 ID:8rYj7xKaO
仕事中


榛名「秘書艦をやるまで、提督のお仕事を知りませんでした。」

提督「…まぁ、ここは楽な方だ。時間にかなりゆとりがある。だからこそ訓練を見てやったり出来る訳だが…。下からの要求と上からの指令があるからな、規模の大きいところは本当に忙しい。」

榛名「今私の手元にあるのでも、日品や資材の為の輸送船の依頼、それらの護衛の艦娘の依頼、物品リスト…まだまだたくさんありますね…」ゴチャ

提督「使った資材やら金勘定やらは私が確認せねばならんが、他を手伝ってもらえるだけで随分と助かる物だ。ありがとう、二人とも。」

不知火「…秘書艦の務めですから。」

榛名「…お役に立ててますか…えへへ。」

提督「さて、どんどん進めていこう。」


数時間後


不知火「司令、榛名さん。コーヒーが入りました。今持っていきますね。」スチャッ

提督「ああ、ありがとう。そこにーー」

ガチャ
足柄「…あれ?この扉で提督の部屋と執務室、繋がってんの?」

不知火「…は?え?…え?」ポロッガシャーン!

提督「…!(足柄こいつやりやがった…!お前服ぐらいきちんと着ろよ…!)」

榛名「え…足柄さん何で…提督の部屋から…服も乱れて…」

足柄「え?…夜伽?」

榛名「…!////」カアァ

提督「お前そろそろぶっ飛ばすぞ。」

足柄「冗談よ冗談。哨戒帰りにお酒を頂いて、そのまま1人で寝てしまっただけ。」

提督「…頼むぞ、本当に。」

足柄「あんな分かり辛いメモ残す方が悪いのよ。提督の部屋とか入った事無かったし。」

不知火「コーヒーを落としてしまってすいません。と、取り乱しました…」フキフキ

足柄「…なんか邪魔したわね。失礼するわ。…頭いてぇわね…」
ガチャ、バタン

提督「…」

不知火「…」フキフキ

榛名「…榛名は大丈夫です。」

提督「いや、本当に何も無いからな…」

103: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 13:30:52.49 ID:8rYj7xKaO

ある日

バーン!
隼鷹「て、提督!助けて!助けてー!」

不知火「?!」ビクッ

榛名「じ、隼鷹さん?」

提督「なんだなんだ、お前は鳳翔さんと訓練中だろう。あとドアはもっと丁寧にだな…」

隼鷹「あかん…あかんでぇ…!鳳翔さんはマジモンの鬼やで…ウチ、殺されてまう!」

提督「落ち着け。エセ関西弁はやめろ。」

隼鷹「…しっ!…提督、聞こえるでしょう…鬼の足音が…」

…コツ、コツ、コツ

隼鷹「ひ、ひぃ!闇がすぐそこまで迫っているぅ!」

提督「闇って…お前言いたい放題だな…後でどうなっても知らんぞ…」

鳳翔「…隼鷹さーん?どこに隠れたのですかー?」コツ、コツ

提督「お、お前呼ばれてんぞ…早く行けよ…」

隼鷹「アンタは悪魔か?!…さっき八つ裂きにしますよ?って笑顔で言われたんだよ…・・」

提督「(鳳翔、やはりそんな感じなのか…?!)」

104: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 13:39:56.16 ID:8rYj7xKaO
鳳翔「あら…提督、そこに隼鷹はいるのですかー?」コツ、コツ、コツ

提督「…」チラッ

隼鷹「…・・…・・・・」ブンブン

提督「い、いや、居ないが。」

榛名「(はわわ…提督が賭けに出ました…)」

鳳翔「あら、そうですか?」

隼鷹「…!鳳翔さんがココに来る!…提督の部屋に隠れる!」サッ

コンコン
鳳翔「失礼しますね?」

提督「あ、ああ。」

ガチャ、バタン
鳳翔「…」

不知火「(ハラハラ)」

榛名「(ドキドキ)」

鳳翔「…提督。少しよろしいでしょうか?」

提督「?…ああ。」

鳳翔「失礼します。」

提督「…?!ほ、鳳翔!顔が近い!」

不知火「…・・」ガタッ

榛名「…・・」ビクッ

鳳翔「…」クンクン

提督「(に、匂いか?!)」

鳳翔「…うふふ。提督?嘘はいけませんよ?隼鷹さんの匂いがします。」

提督「…なんのことかな。(お前終わったぞ隼鷹…)」

鳳翔「…提督のお部屋ですね?隼鷹さん、そこに居るのはわかっていますよ。出てこないと大変な事になりますよ。腕が。」

榛名「(う、腕?!腕って…腕が大変なことになるんですか?!)」

隼鷹「ひ、ひいいい・・ごめんなさい!でも!鳳翔さん、肘は後ろには曲がらないんだよおおお・・」

不知火「(会話の内容があまりに恐ろしいのですが…本当に味方ですかねこの人…)」

鳳翔「…わかりました。右は勘弁してあげますから出てきてください。」ハァ

提督「(あの酒の会の後、隼鷹に艦載機の扱いを教えてやってくれ、と頼んだ時にスパルタでも構わんとは言ったが…スパルタどころじゃないなこれ…)…すまん、隼鷹。」

隼鷹「謝るな!い、嫌だ!もう入渠と訓練と哨戒を繰り返すのは嫌だー!」

………
……


榛名「結局出てきて連れて行かれましたね、隼鷹さん…鬼とか悪魔とか叫んでましたけど、突然グッタリして聞こえなくなりました…」

提督「もう言うな、榛名…」

不知火「…鳳翔さん、恐ろしい人…隼鷹さんの魂に黙祷…」

116: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 19:57:51.74 ID:8rYj7xKaO
ある日

執務室、仕事中

不知火「…」ペラペラ

榛名「…」ウーン

提督「…ふむ。北で我が国が防衛線を前に押し上げた様だな。」ペラ…

不知火「本当ですか!喜ばしい事です…!」

提督「まぁ小さな勝利だが、喜ばしいことに変わりはない。」

榛名「はい!」

提督「ただ、深海棲艦に対抗できる艦娘を持っているのは我が国だけだったからな…他の国はどうなっているのやら…」

榛名「そういえば、最後の通信衛星が機能を停止して久しいですね。海底ケーブルも破壊され、新たな衛星を打ち上げようとすると、攻撃される…そのせいで諸外国と連絡が全く取れない訳ですが…」

提督「シーレーンはズタズタだから手紙は論外だしな…まぁ、内陸部は無事な可能性はある。深海棲艦は丘に長時間居られない。…深海棲艦が川を遡れたらわからんが…」

榛名「心配です…。」

提督「今は他の国を心配している場合ではないだろう。とりあえずは自分たちの今の領海を守らねばならない。」

118: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 19:59:56.71 ID:8rYj7xKaO
榛名「そうですね…。…私はまた、きちんと戦えるようになるのでしょうか…」

提督「大丈夫だ。今は心配するな。それよりも、もうそろそろ秘書官任命から2週間か…どうだ?仕事は覚えられたか?」

榛名「は、はい!一通りは…」

提督「ふむ。どうだ、不知火。」

不知火「榛名さんは、とても飲み込みが早くて驚かされます。既に秘書艦としてほぼ問題ありません。」

榛名「不知火さん…!」

提督「素晴らしい。では、今日これから秘書艦は榛名一人に…」

不知火「と、思いましたが、よくよく考えると榛名さんはまだまだですね。」

榛名「…不知火さん…」

提督「どっちなんだ…いや、と言うのもだな。先程隼鷹がオーバーワークで完全にダウンしてしまったらしい。鳳翔が責任を感じ、隼鷹の分の哨戒をすると言って聞かなくてな。」

不知火「…はあ。」

提督「鳳翔曰く、隼鷹が自分でゴーサイン出したトレーニングメニューだったらしいが…。とにかく今、鳳翔が居ない訳だ。そこで不知火に料理と家事を処理してもらおうかと思っていた。」

不知火「…家事ですか…榛名さんの方が適任では?」

榛名「えぇ…いえ、榛名には勿体無いです…」

提督「何なんだお前らは…もういい、二人とも行ってこい。仕事は私一人でやっておく。」ハァ

不知火「…そんな!」

提督「もめるくらいなら早く行ってこい。ほれ、ほれ。」

不知火「あ、うぅ…失礼します。」

榛名「し、失礼します。(完全なとばっちりですよコレ…折角…折角?)」トボトボ

榛名「(…あれ?…何故、私は今少しモヤっと…?)」

不知火「…榛名さん、行きましょう…」

榛名「あ、はい。」パタパタ
ガチャ、バタン

提督「…そういや不知火と榛名って料理出来るのか…?…俺の采配とは言え、晩飯大丈夫かコレ…」

119: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 20:30:11.47 ID:8rYj7xKaO
コンコン
雷「雷よ。」

提督「入ってくれ。」

ガチャ、バタン
雷「お疲れ様、司令!任務完了の報告に来たわ。引き継ぎ地点にて鳳翔さんに哨戒任務を引き継ぎました!」

提督「(雷…これまで殆ど、事務的な会話以外してこなかったが…そうだ、丁度良い。)ご苦労、雷。…一つ頼みがあるんだが。」

雷「?何かしら?」

提督「ちょっと今から秘書艦を頼む。」

雷「…私が?」

提督「ああ。」

雷「…わかったわ。」

提督「頼むよ。」

提督「(…さて、この艦娘に関しては全然情報が無い。と言うか、何故左遷されたのかがわからない。引き継ぎ書類には問題等無しと記されていたが、問題が無いのに、ここへ送られてくるとは考え辛いな。…)なぁ、雷。ここでの生活には慣れたか?」

雷「…え、えぇ。」

提督「…そうか。(…今ので返答が終わりか…これは手強い…足柄と二人で夜間哨戒に行かせた時も、殆ど会話が無かったと報告を受けているし…うーむ)」

雷「…」

提督「(そして、書類を見つめているだけで微動だにしないとな…何か強迫性の症状でもあるのか…対人恐怖症か…?)…大丈夫か?雷。」

雷「…あ、ご、ごめんなさい。大丈夫よ。」

提督「…辛ければ無理はするな。すまないな、急な仕事を頼んでーー『ボムン』…?!なんだ今の音は…」

…タッタッタッタ、バン

不知火「て、提督…!」プスプスプス

提督「不知火!なぜ黒焦げなんだ!しっかりしろ!何があった?」ガシッ

不知火「榛名さん…」ウウ…

提督「まさか榛名がまた…!」

不知火「違…榛名さん…飯…死」カクン

提督「…馬鹿な…少し様子を見てくる。雷、留守を任せた。起きろ不知火、行くぞ!」ダッ

雷「!…ま、任されたわ!」

雷「行っちゃった…提督、大丈夫かしら。」…チラッ

雷「(ど、どうしようかしら…留守を任されちゃったわ…くっ…部屋が私を誘惑する…うぅ…ダメよ、私…我慢しなきゃ…か、体が疼く!…うあ、ああ…あ?…あんなところにコーヒーのシミが!提督ったらもう…じゃない!…もうしないって決めたのにぃぃぃぃ!体が勝手に…)」

120: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 20:37:32.91 ID:8rYj7xKaO
厨房


提督「…」

榛名「…」

不知火「…」

提督「…なんだ、この鍋の中にあるタール状の物体は…」

不知火「…爆発しました。」ウウ

榛名「ち、違うんです!お料理ってどうするかわからなくって…」

提督「…おう。」

榛名「足柄さんがまず最初に油をお鍋に入れてたのを思い出したので…」

提督「…おう。」

榛名「艤装の燃料をナミナミ注いで火にかけました…」

提督「いや、その理屈はおかしい。」

提督「爆発するに決まっているだろ!…まず、何故ナミナミ注いだ…!」

榛名「ちょっとのつもりが、不知火さんが艤装を傾けすぎて…でも、いけますよって言うのでつい…」

提督「不知火…やはりお前も同類なのか…しかし、よく厨房が無事だったな。その量の燃料を熱したら厨房くらい吹き飛びそうだが…」

不知火「爆発の瞬間、体張りましたから…ぐふっ」

提督「…お前らは明日から厨房立ち入り禁止な…鳳翔が戻る前になんとかするぞ、いいな。まずは掃除だ。その黒いのをなんとかしろ。」

榛名「ごめんなさい…」

提督「とにかく、時間がない。お前ら2人は掃除に専念しろ。私が晩飯を作っておく。」

不知火・榛名「は、はい…」

提督「…ええい、残り物と米を混ぜてチャーハンだ…!」

121: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/03(火) 20:41:42.52 ID:8rYj7xKaO
執務室への廊下


提督「…なんとか片付け、人数分の食事を用意したは良いが…疲れたな…今から残りの書類を一人で片付けるのは中々しんどいぞ…」テクテク

ガチャ
提督「すまない、雷。今戻っ…た…。」

雷「お帰りなさい、司令官!」

提督「…ここは本当に私の執務室か…?」

提督「(書類が綺麗に全てイロハ順でファイリングされ、さらに分類されて綺麗に棚に並べられている…丁寧に貼られたラベルで何がどこにあるか一目瞭然だ…埃一つ無いぞ…)」

雷「勝手に整理したの。ごめんなさいね。」

提督「(机の上にただ積まれていた書類までトレイに分類され、これにもラベルが…)」

雷「もちろん、今日の処理する書類の分類は終わらせて、提督のやる必要のないものは私がやっておいたわ…!」

提督「(…責任者の認可が必要な書類は残して、他は完璧にこなしてある、のか…)」

雷「更に!全体的に掃除をして、床の絨毯に染み込んでたコーヒーもシミ抜きをしておいたのよ!」

提督「(これは…)か…」

雷「か?」

提督「完璧だ…」

雷「えへへへ。雷だもの!さ、重要書類に目を通して、ご飯にしましょ!」

130: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/04(水) 00:39:20.27 ID:HUmJxggeO
提督「ありがとう、雷。もう仕事が片付いた。」

雷「…(やっちゃった…私のバカ…)」

提督「…雷?頼りになるな。」

雷「…あ、ええ!良かったわ!(…頼りなる…)」

提督「…。さぁ、飯を食いに行こうか。」


食堂


足柄「(あら…?あれは榛名と不知火じゃない。なんか雰囲気暗いわねー…)」

足柄「夜だけどおはよ、二人とも。」

不知火「あ、おはようございます、足柄さん。」

榛名「あ、足柄さん。これから哨戒ですか?」

足柄「そんなとこよ。…そいえば、今日の晩御飯、榛名と不知火が作ったらしいわね。臨時料理人って札立ってたわよ。中々美味しいじゃない!」

131: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/04(水) 00:42:39.96 ID:HUmJxggeO
榛名「え"…」

不知火「…」ビクッ

足柄「…?どうしたのよ。結構いけてるわよ?」

榛名「いやー、実は…」

提督「…光栄だな、足柄。お褒めに預かるとは。」

足柄「あー…なんか色々察したわー…」

不知火「あ…提督、と…雷さん?」

雷「こ、こんばんは…」モジモジ

足柄「珍しい組み合わせね?というか、雷ちゃんがレアキャラよねー。」

提督「少し秘書艦の代わりをやって貰ってな。…ほれ、雷。足柄の横に座ると良い。私は不知火の横に失礼するよ。」

不知火「えっ…代わり…。…どうぞ。」

雷「お、お隣失礼するわ」

足柄「良いわよー。…ねぇ雷ちゃん、このチャーハン味付けにムラがあるわよね。」

提督「座って2秒で上司のネガキャンはやめろ…」

雷「そ、そんなことないわ!美味しチャーハンよ!」

足柄「な、なんていい子なの…ちょっと提督アンタ、この小さな天使に感謝なさいよ。」

提督「…足柄、文句があるなら食うなよ…」

足柄「冗談よ冗談…なーんかタール臭がするのは事実だけどね…」

榛名「…」ビクッ

不知火「…」ビクッ

雷「…」モグモグ

提督「そういう日もあろう。…榛名、不知火。あまり気にするな。今回はまだ良かったさ。まだ建造されて7,8年だろう?知らない事もあるさ。」

榛名・不知火「提督…」

足柄「何この空間…あーヤダヤダ。それじゃ、あたしは行くわね。またお話しましょ、雷ちゃん。」バイバイ

雷「え、ええ!是非!」

提督「さて…私もそろそろ寝るかな。また明日、諸君。早めに休めよ。おやすみ。」

榛名・不知火「おやすみなさい、提督。」
雷「おやすみなさい!」

136: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/04(水) 10:51:11.47 ID:HUmJxggeO
翌日


提督「んぁ…もう1500か…昼飯忘れてたが…もう良いか…」

榛名「提督、やはりお昼食べてらっしゃらなかったんですね…」

不知火「適度な休息も仕事のウチですよ、司令。少しお休みになって下さい。」

榛名「そうですよ、提督。部下にだけ昼休みを取らせるなんて…」

提督「そうしたいのは山々なんだが、もうすぐ輸送船の到着があるからな…どうしても忙しくなる。」

コンコン
雷「雷よ!」

提督「雷か。入ってくれ。」

ガチャ、バタン
雷「こんにちは、提督!良い天気ね。ご飯出来てるわ。どうせ忙しくて食べてないと思って運んで来たわよ!」

提督「す、すまんな。」

雷「また机の上散らかして、ダメじゃないの…これはここ、これは秘書艦でも出来る書類…」ガサゴソ…

提督「あ、ああ…」

雷「はい!スペースが出来たわ。ここにご飯置くわね。」

提督「ありがとう…」

雷「私もお仕事手伝うから、その間に食べなさい!コーヒー淹れるわね。」

提督「う、うむ。(不知火と榛名の視線が痛い…)」

雷「あとメモよ、鳳翔さんから。」

提督「ああ、ありがとう。…メモ?嫌な予感が…」

『提督へ。二度と厨房でタールを作らないで下さい。鳳翔より』

提督「まぁ、バレるわな…」

雷「お手紙なの?見てもいい?」

提督「構わんが。」

雷「…もしかしてこれって榛名さんと不知火さんが…」

提督「言ってやるな。…色々悪いな、雷。助かるよ。」

雷「…もーっと私に頼ってもいいのよ、司令!」

榛名「なんだか我々空気ですねぇ…」

不知火「はい…」

137: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/04(水) 10:56:44.52 ID:HUmJxggeO
数日後、艦娘寮内


不知火「…雷さんが、昼過ぎに毎日毎日来ては、毎日毎日毎日毎日、提督に近付き過ぎです…!」イライラ

榛名「…は、はぁ…確かに近いなーとは思いますが…」

不知火「これは由々しき事態ですよ!…私ですら提督と手を繋いだ事も無いのに…!」

榛名「(それはただの嫉妬じゃ…でも、私も少し…嫌です。)」

不知火「提督も提督です!ポンポン秘書艦増やして…!」

榛名「(あれー?これまた私にとばっちりですかー?)」

不知火「…それとも…最近不知火は失敗ばかりですから…失望、されたのでしょうか…雷さん、凄く仕事出来ますし…」

榛名「そ、そんな事無いですよきっと!…元気出してください!」

不知火「…かくなる上は!雷さんに演習を挑みます…!」

榛名「私情で演習はダメですよ!」

不知火「…う、うう…私は…どうすれば…」

………
……


足柄『ーーってな会話を聞いたわよ、今日』

提督「そうか。わざわざ夜間の哨戒中にすまんな。」

足柄『だって日中ずっと雷ちゃん側にいるじゃない。言えねーわよ。…なんかアンタ駆逐艦にモテるのね。』

提督「余計なお世話だ。」

足柄『で、なんとかしなさいよ。まずいんじゃないの?』

提督「そうしたいのは山々なんだがな…雷が、どうにも艦娘同士のコミュニケーションが少し苦手なようだ。」

足柄『あたしも話しかけてはいるんだけどね。目を合わせてくれないわ。』

提督「その為に三人目の秘書艦に置いて、不知火達との距離を物理的に縮めてみたが効果無しか。打ち解けてさえくれれば問題なくなると思うんだがな。」

足柄『…雷ちゃん、あの子そんなに仕事出来るの?』

提督「アレはヤバい。あんなのが秘書艦やってたらダメ人間になるぞ…。仕事だけじゃないからな…」

足柄『アンタが言うくらいなんだから凄いわね…』

提督「雷は、本人にも多少原因はあるが、周りが原因で島流しされたんだろうな。仕事の効率が段違いだし、何より上司に甘い。」

足柄『なる程ねー。それで艦娘同士のコミュニケーションが苦手だと孤立するわよね。孤立してる秘書艦は扱いづらいでしょうね。』

提督「聞いてみたところ、勤務先は様々なところを転々としていたようだ。一部では、雷を贔屓し過ぎて、提督が先にトんだりした事もあったらしいが。…恐らく、この島に来てから全然交流が無かったのも、こうなるのを恐れての事だったのだろうな。しかひ、やはりまだ幼いか…自分を抑えられなかったんだろう。」

足柄『世話したいのを抑えられないって…まぁある種の自己顕示欲なのかしら…で?どーすんの、アンタ。』

提督「策はあるが…隼鷹と鳳翔に大きな負担が掛かる…」

足柄『…隼鷹、死ぬのね。』

提督「まだそうと決まったわけじゃない。あきらめるな…それと、足柄。お前にももう少し…」

足柄『夜間でしょ?慣れてきたから良いわよ、別に。』

提督「…そうか、助かる。すまんな。」

足柄『…しゃーなしよ、しゃーなし。』

138: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/04(水) 11:00:37.03 ID:HUmJxggeO
数日後、月末の前


提督「…というわけなんだ。鳳翔と雷にシフトを代わってもらいたい。短期間で良い。協力してもらえるか、二人とも。」

隼鷹「いいよ。…今のうちに休んどくぜっ!」

鳳翔「あらあら、隼鷹さん?哨戒終わってから次の哨戒まで16時間もあるんですよ?…夜は、長いですよ…うふふ。」

隼鷹「…うげぇー?!夜に飛行機飛ばせないよー?!というか哨戒終わってから訓練て辛すぎるよ?!」

鳳翔「頑張りましょうね!隼鷹さん!」

隼鷹「い、嫌だー!しんどいー!」

鳳翔「…頑張りましょうね?隼鷹さん?」

隼鷹「ア、ハイ。」

提督「…すまん。恩に着る。」

隼鷹「丸く収まったら、酒、思いっきり飲ませろよな!」

鳳翔「あら。それでしたら私も…」

提督「…そうだな、また三人で飲もうか。」


更に数日後、月末
執務室にて


提督「隼鷹以外揃ったな。」

一同「はい!」

提督「では、シフト変えを発表する。変更の部分のみ伝える。鳳翔!」

鳳翔「はい。」

提督「0400から1200までの哨戒を頼む。雷!」

雷「は、はい!(正式に秘書艦に任命かしら?)」

提督「お前には鳳翔の代わりに家事雑事をこなしてもらう。」

雷「…えっ」

提督「返事は?」

雷「は、はい…」

不知火「…」

榛名「…」

提督「よし、以上だ。雷と秘書艦はここに残れ。解散!」

152: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/04(水) 21:21:31.72 ID:By9DwhOB0
雷「どうして?!司令官!私のどこがいけなかったの?!」

提督「落ち着け、雷。」

雷「…!(また…どこかへ飛ばされちゃうのかな…折角、司令官と仲良くなれたと思ったのに…)」グスッ

不知火「…」

榛名「…」

提督「ここでは話せない。私の部屋に来てくれ。不知火と榛名は仕事を頼む。」


提督の部屋


雷「…理由が知りたいわ…」

提督「…実はな、隼鷹から相談があったんだ。鳳翔の指導がキツすぎるから、自分が居る時に鳳翔を哨戒に出して欲しいと。(大嘘だが。)」

雷「えっ…確かに隼鷹はかなりしんどそうだったわね…」

提督「それでシフトを変更した訳だ。」

雷「でも、それは、どうして私が外れるの…?秘書艦としてダメだったから…?」グスッ

提督「…雷!」

雷「は、はい!」ビクッ

提督「私は雷だからこそ、頼んでいる。これはお前にしか出来ないことだ。」

雷「雷、だからこそ…」

提督「私はお前に、皆の秘書艦となって欲しい。私一人でなく、全員のな。その意味で、今の鳳翔のスペースに敢えて割り振った。」

雷「…」

提督「…お前より優秀な秘書艦は見たことが無い。だから、全員を提督だと思って仕事に取り組んでくれないか?」

雷「全員が提督…」

提督「雷。お前を頼らせてくれ。」

雷「…わかったわ!私に任せて、提督!」

153: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/04(水) 21:23:49.01 ID:By9DwhOB0
1週間経過…


不知火「雷さん、ご飯おいしかったです。いつもご馳走様です。」

雷「お粗末様!バランスよく作ってるから、ちゃんと食べてもらえて嬉しいわ!」

………
……


榛名「いやぁぁぁぁ!雷さん!そこに虫が!黒光りする虫がー!助けて!助けてー!」

雷「スリッパで…えいっ」ペシンっ

雷「もう大丈夫よ!これは片づけとくわね!」

榛名「ありがとうございます!榛名、感激です!」

………
……


隼鷹「お!服のシミが綺麗に取れてる!ありがとー雷!」

雷「お洗濯してて気になったんだけど…そのシミ、まさか血じゃないわよね…?」

隼鷹「…世の中には知らない方が良いこともある。」

雷「…!!…負けないで!隼鷹さん!」

隼鷹「雷…お前って奴は!」ギュー

雷「無理そうならちゃんと言うのよ?」よしよし

隼鷹「…アタシ、また頑張るよ!うおおおお!」

………
……


雷「あら、提督!」

提督「…雷。調子はどうだ。」

雷「バッチリよ!提督はどう?ちゃんと寝てる?ご飯は毎日ちゃんと食べさせてるけど!」

提督「問題ない。」

雷「そう、良かったわ!」

不知火「あ、雷さーん、向こうでお茶しませんか?…あら、提督もいらしたのですね。お疲れ様です。」

雷「行くわ!お茶菓子は何が良いかしらね。提督も如何?」

提督「遠慮しておこう。私はすぐ執務室に戻る。」

不知火「それは残念です…雷さん、先に行ってお茶の準備しときますね。榛名さんの部屋ですよ。では。」パタパタ

雷「…あのね、提督。ありがとう!あなたのおかげで…皆と仲良くなれたわ。」

提督「それはお前の努力の結果だ。私の力じゃ無いさ。」

雷「…そんなことないわ!本当に感謝してるんだから!…お友達って初めてなの。」

提督「…良かったな。私も嬉しいよ。」

雷「…うん。…それじゃ、私は行くわね!本当にありがとう!」タッタッタ

154: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/04(水) 21:25:16.00 ID:By9DwhOB0
提督の自室、早朝


コンコン
足柄「あたし。起きてる?」

提督「…入れ。」

足柄「あんがと。哨戒終わってお酒飲みたくなっちゃった。提督、頂戴?」

提督「…何が欲しい。」

足柄「スコッチ。」

提督「このご時世、国外の品があると思うな。…余市だ。」ゴトン

足柄「…マジ?良いの?」

提督「世話になったからな。…ほれ。ロックだ。」チョロロ…

足柄「やっぱり香りが違うわぁ…雷ちゃん、たった一週間で皆と友達になっちゃったわよ。その代償に、さっきお風呂で隼鷹が浮いてたけど。」

提督「…奴と鳳翔には苦労をかけたな。」

足柄「こう言っちゃアレだけど。何故あの程度で改善される事が、今まで改善されなかったのかしら?不思議よね。」

155: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/04(水) 21:27:39.94 ID:By9DwhOB0
提督「…お前は偽装を装着する時、艤装の心情を考えるか?」

足柄「はぁ?艤装に心なんて…」

提督「艦娘を対深海棲艦の武器としか見ない提督は多い。そう言う事だ。」

足柄「…」

提督「特に雷は事務作業が恐ろしく早い。あれだけ仕事が出来たら、効率を上げる為に、戦闘には出さずにずっと秘書艦をさせておくだろう?戦闘に出したら、その間は秘書艦の仕事が出来ないからな。すると当然他の艦娘と接する時間が無くなり、提督とばかり接する。それは他の艦娘の嫉妬の対象になる。提督が贔屓すれば尚更な。何故戦わない奴が一番評価されるのかと。」

足柄「…確かに、嫉妬は理屈なんて関係無く起こるわね…」

提督「すると雷は排斥される。他の艦娘によってな。上が下の心情を考えなければこんな事はよく起こる。雷自身は原因を未だに理解してないだろうな。…自分では原因がわからずに、他の艦娘に嫌われると、どうなるだろうか。」

足柄「他の艦娘とコミュニケーションを取るのが怖くなる…」

提督「その結果が今回の雷だろう。接し方を知れば良いだけだが、それを経験で覚える余裕も、指し示す者も居なかった。そう言う事だ。」

足柄「…ねぇ、一つ聞いても良いかしら。」

提督「何だ。」

足柄「あなたは今までの提督とは違う。私達がまるで近しい人間かの様な態度を取るわ。雷の件にしたってそう。きちんと考えてる。」

提督「…」

156: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/04(水) 21:29:47.78 ID:By9DwhOB0
足柄「…今までの提督は皆、高圧的で、命令は絶対。まるで艦娘を物のように扱っていたわ。」

提督「…それは艦娘が怖いからだ。人間は恐る物に対し、威圧し、上から制御しようとする。」

足柄「何でなの?私達艦娘は人間と共に深海棲艦と戦っているのに!何故恐れられるの?」

提督「…人間の目には敵の深海棲艦しか写っていない。種の存続を脅かす天敵だ。」

足柄「…?」

提督「そっくりだろ?艦娘と深海棲艦は。見た目だけの話じゃない。」

足柄「…!」

提督「…もう良い時間だ。そろそろ不知火と榛名が来る。部屋に戻れ。」

足柄「…わかったわ…」

提督「…風邪を引かんようにな。」

162: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/05(木) 13:59:04.19 ID:wLDLsCwSO
深夜、執務室


提督「(あのシフトをまた改変してからしばらく経って、皆また生活に慣れてきたな…)」

提督「(夜間哨戒を雷と不知火に、秘書官を榛名1人、足柄は午前の哨戒、鳳翔はまた主計として働いて貰いつつ隼鷹の訓練をして貰ってるが…)」

提督「(足柄が夜、ちょくちょく酒をねだるようになってきたな…勤務中に誰も酒を飲まなくなったのは良い事だが。あとは夕方頃に起きてきた雷と不知火が、執務室に居座ろうとしたり…)」

提督「(しかし、艦娘たちと接する時間が増えると、終わる仕事も終わらんな。榛名もまだ一人での秘書艦に慣れてないし。…まぁ、良い事ではある。)」

提督「あぁ…やっと終わった…。榛名は先に部屋に帰らせて正解だったな…ん?」

提督「…飲み水がもう無い。…仕方無いから食堂に降りて飲みに行くか。」

163: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/05(木) 14:00:24.70 ID:wLDLsCwSO
深夜、食堂


提督「…鳳翔?お前、なぜ机に突っ伏して…」

鳳翔「…」スー…スー…

提督「…なんだ、寝ているのか。…ん?」

鳳翔「…っ」ツー…

提督「…(涙が…泣いているのか…)」

鳳翔「…」ぽろぽろ

提督「…(悲しい夢か。それとも…記憶か。)」

提督「…(上着を掛けておいてやろう。)」ナデナデ

鳳翔「んっ…」スー…スー…

提督「…やれやれ、もう一踏ん張りするか。」

164: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/05(木) 14:03:57.90 ID:wLDLsCwSO
朝、食堂


鳳翔「…(…うっすら提督の匂いがします。)」

??「…さ…?…さん?大…夫?」

鳳翔「…(…あれ?私は何をして?…提督?そこにいるの?)」パチッ

雷「鳳翔さん?あ、起きたわね。」

不知火「大丈夫ですか?」

鳳翔「…あれ…今、何時でしょうか?」ぼーっ

雷「0600よ。食堂で鳳翔さんが寝てたからびっくりして…あまりに動かないから起こしたの。ごめんなさいね。」

鳳翔「…ごめんなさい、すぐご飯用意しますね。」

不知火「…え?ご飯なら先程カウンターに用意されてたのを頂きましたよ?少し冷めてましたけど…」

鳳翔「…えっ」ガタッ

バサッ

鳳翔「あ…(提督の上着が…私に着せられていた?…まさか。)」

鳳翔「…すみません、少し確認してきます。」パタパタ

165: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/05(木) 14:04:59.16 ID:wLDLsCwSO
鳳翔「…(お風呂場も、洗濯物も、工廠や寮のお掃除も、私のやっていなかった所が一通り済んでました…朝ご飯まで…)」

鳳翔「…提督に謝らないと。」


執務室


コンコン
鳳翔「鳳翔です。」

提督「入れ。」

ガチャ、バタン
鳳翔「失礼します。…あの、提督、」

提督「鳳翔。」

鳳翔「は、はい。」

提督「…睡眠はきちんと取れているのか?」

鳳翔「…は、い。」

提督「あまり無理はするな。家事も完璧にこなす必要はない。」

鳳翔「…はい。」

提督「ところで、隼鷹の調子はどうだ?」

鳳翔「もう空母として、独り立ちしていると言って良いレベルに達しています。」

提督「そうか…早かったな。二ヶ月、三ヶ月程度か?」

鳳翔「そうですね。」

提督「隼鷹、やれば出来るじゃないか…今度、自分の目で是非見てみたい。用意しておいてくれるか。」

鳳翔「はい、わかりました。」

提督「よし。では行って構わない。」

鳳翔「はい…失礼致します。」
ガチャ、バタン

榛名「あ、おはようございます、鳳翔さん。提督に御用ですか?」

鳳翔「あ…(…謝ってませんでした。出直して来ないと…)い、いえ、なんでも。失礼しますね。」

榛名「…?は、はい。(何だったのでしょうか…まぁ、今は秘書艦の仕事に集中です。)」

コンコン
榛名「失礼します!榛名です!」

提督「入れ。」

ガチャ
榛名「おはようございます…?あ、提督。今日はシャツなのですね。珍しいです。」

提督「…気分だ。(上着を返してもらうのを忘れてたな…)」

172: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/05(木) 19:57:55.80 ID:72APyNr50
提督「…(しかし、鳳翔を休ませる必要があるな…前々から気になっていたが…私より寝るのが遅く、私が0500に起きた時には既に起きている…明らかに、寝ていないな…いくら艦娘とは言え、無理は良くないぞ…)」


また、深夜、食堂


鳳翔「…」スー…スー…


ーー鳳翔さん、私、また強くなりました!

ーーいつもありがとな、鳳翔さん。

ーー鳳翔さん?大丈夫?

ーー鳳翔さんが大好き!なのです!

ーー鳳翔さん!鳳翔さん!…


ーー…ああ、鳳翔か。



第7水雷戦隊はその役目を全うし、全滅した。



鳳翔「…ッッ!!」ガバッ

鳳翔「あ…(また夢…涙が…)」ボロボロ

鳳翔「…」

鳳翔「…提督は…居ませんか。…居て欲しい時に、居ないものですね…」

鳳翔「…もう…女の子が泣いてるんですよ…」グスッ

鳳翔「…上着は…返してあげませんからね…」

鳳翔「…バカ…」

鳳翔「…」

鳳翔「…お仕事…しないと…」

173: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/05(木) 21:27:08.50 ID:72APyNr50
着任から約3カ月…島の港にて


提督「さて、どの程度できるようになったか見せてくれ、隼鷹。」

隼鷹「へへへー。きっとビビるぜ、提督…!」

鳳翔「それでは、始めて下さい。」

隼鷹「…!いけーっ!」

提督「おぉ…」

榛名「隼鷹が展開した甲板から艦載機がどんどん飛びたってます…一体いくつ飛ばせるのでしょうか…」

隼鷹「まだまだー!」

提督「…そろそろ出尽くすな。」

隼鷹「ほら!全部出た!」

榛名「…凄いです…隼鷹さんの周りに飛行機があんなに…」

鳳翔「隼鷹さん、では、私が的を飛ばしますから。全て撃墜して下さい。」

提督「…(聞いてないぞ…ボーキサイトが…まぁ、良いか。)」

隼鷹「よっしゃ!」

鳳翔「…」…ブーン

榛名「…(左腕の甲板から飛行機が次々と飛び立ってます。隼鷹さんとは比較にならない程展開が早いですね…)そういえば提督、鳳翔さんは何故弓を持ってるのでしょうか。」

提督「それは矢を放つ為だろう。」

榛名「矢が艦載機になる訳では無いのですね。」

提督「成らんよ。」

榛名「しかし、何故弓なのですか?砲を持てば…」

提督「空母の艤装は砲に対応してないからな。搭載できない物は、仕方がない。」

榛名「そうなのですね。」

提督「ああ。…しかし、艤装を装着した艦娘の膂力から放たれる矢だ。かなりの威力があるぞ。だから、艦載機を操る事に慣れている空母は副兵装として持っている者が多いな。」

榛名「ほえー。そうだったのですね。」

提督「無論、持たぬ者も存在する。…そろそろ始まるか。」


176: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/06(金) 00:13:16.11 ID:jsHrEbwN0
隼鷹「行くよ、鳳翔さん!」

鳳翔「来なさい。」

ブィーン…ボン…ボン

提督「…悪くない動きだ。鳳翔の艦載機が単純な動きをしているとはいえ、しっかり相手のケツを取れてるな。不利な場合は複数で処理に当たる。良いぞ。」

隼鷹「ヒャッハー!どんなもんよ、提督!」

提督「素晴らしい上達っぷりだ。感心したぞ、隼鷹!」

隼鷹「へっへっへー。じゃあ今夜は祝い酒かなー?」

提督「単純な奴だな。全く…」

榛名「…ついこないだまで呑んだくれてた隼鷹さんが…嘘、みたいです。昔は3機しか飛ばせなかったのに…」

隼鷹「…最後の一機、撃破だ!」

………
……


隼鷹「どんなもんだい!」

提督「よく頑張ったな。…宴会でも開くか。」

隼鷹「ええっマジかよ!開こう開こう!今日!今から!」

提督「落ち着け落ち着け…お前は今から哨戒だろうが。」

隼鷹「頑張った甲斐があったぜ!」

鳳翔「…隼鷹さん?まだ訓練が全て終わった訳ではありませんよ?」

隼鷹「わかってるよう。ただ、こう、嬉しいじゃん!…強くなれたんだな、アタシ。」

提督「そうだな。」

隼鷹「…提督には悪いけど、アタシ、鳳翔さんに一番感謝してる。本当にありがとう。」

鳳翔「…あなたが、実戦で死なない為ですから。」

隼鷹「提督もありがとう。…多分、2人がいなかったら、アタシはあのまま腐って行くだけだったよ。」

提督「…私は何もしてない。お前が変われたのは、お前と鳳翔の努力の結果さ。よくやってくれた、隼鷹、鳳翔。」

隼鷹「…ん。」

鳳翔「…はい、提督。」

隼鷹「…じゃ!酒、よろしくね!アタシはこのまま哨戒の準備して行ってくるよ!」

提督「気をつけてな。」

鳳翔「…では、私もそろそろ失礼します。」

提督「鳳翔。」

鳳翔「…はい。なんでしょうか。」

提督「お前はしばらく休め。」

鳳翔「…いえ、大丈夫です。」

提督「ダメだ。これは命令だ。」

鳳翔「…どうして…」

提督「着任してから3ヶ月。お前がきちんと休んでいる姿を見たことが無い。…雷にまた家事を頼む。お前はしばらく、休養を取れ。…何ならば、本土に一時的に戻る事も許す。


鳳翔「…わかり、ました…」

提督「…良し。では、そういう事だ。」

181: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/06(金) 09:44:57.63 ID:jsHrEbwN0
夜、宴会


隼鷹「もっと酒持ってこんかい!!」

提督「おいおい、飲み過ぎだろ…明日辛いだろうな、これは。」

足柄「ちょっと榛名!器が空よ!入れたげるから出しなさいよ!」ドバドバ

榛名「これは…霧島と言えばライバル!ライバルと言えば霧島!って感じですね!行きます!」ゴキュゴキュ

雷「ちょっと!焼酎の一気飲みはダメよ!倒れちゃうわ!」

足柄「大丈夫大丈夫!雷ちゃんが居るじゃない!」

雷「もうわけわかんないわ…」



提督「混沌としてるな…」

鳳翔「提督。お注ぎしますよ。」

提督「すまん、ありがとう。…しかし、クジでハズレを引いた不知火が少し可哀想だな…こうやって哨戒を外せないからあまり宴会はやらなかったんだが。」

鳳翔「…私が変わってあげたかったのですが…」

提督「鳳翔。お前が遠慮する必要は無い。それに…まぁ、拒むだろうな。不知火の性格だ。…また労ってやらねば…」

足柄「ねぎらうってなんかやらしいわねこのス  !」

隼鷹「そうだそうだ!もっと酒!さらに酒!そして酒!」

提督「…お前らはもう黙って酒飲んでろ。」



榛名「隼鷹ざーん!榛名はがんどうじまじだぁー!!」ビエエーン

隼鷹「うおお榛名が泣いてるぞ!こいつ泣き上戸だっけ?」

雷「榛名さん、ちょっと大丈夫…?」フラフラ…

提督「雷、お前も釣られて飲み過ぎてるぞ。フラフラじゃないか。」抱きっ

雷「あっ…(提督のお膝に…)」

足柄「あー!提督が雷ちゃん抱いてる!ちょっと  コンなの?死ぬの?」

隼鷹「…雷…テクニシャンだな…」

榛名「…雷ちゃん!」フラフラ

提督「ダメだこいつら…酔っ払ってやがる…おい鳳翔、助け…て…」

鳳翔「…」ギュッ

提督「(左腕に抱きつかれた…この人もダメだ…!)」

榛名「…私は提督の右腕です!」ギュッ

足柄「…両手に花ね。羨ましいじゃない…!」

提督「お前は何を言ってるんだ…」

182: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/06(金) 09:47:17.30 ID:jsHrEbwN0
隼鷹「提督、勝負だ!飲み比べだー!」

提督「もう飲んでるだろ…今からやるのか?」

隼鷹「当たり前だろ!いくぜ提督!まずは一杯!」

………
……


隼鷹「提督…酒…強…」オエッ

提督「お前も…充分強いわ…(飲まないようにしてたんだがなぁ…)」ウッ

足柄「次はあたしよ、提督…!」

提督「無茶だろ!今どれだけ飲んだか見てなかったのか…!」

足柄「鳳翔さん、榛名、雷ちゃん、そのまま提督を押さえててね…まずは一杯!」

提督「…ムグッ?!」

………
……


提督「…」死

足柄「…勝ったわ…オエッ…ザル過ぎでしょうあなた…」

足柄「…提督ー?起きてるー?」

提督「…」ウウッ

足柄「…あれ?これもしかしてやりたい放題?」

榛名「…!」

足柄「そこをどきなさい雷ちゃん…!」

雷「い、嫌よ!提督に何をするつもりなの?!」

足柄「そりゃ確認すんのよ!」

鳳翔「…何を?」

足柄「枯れて無いかをよ…!この提督、この私が夜に部屋に酒を飲みに行っても何もしてこないのよ…!枯れてるに違いないわ…!」

榛名「さ、流石にダメですよ…!」

雷「そ、そうよ!例え枯れてても提督は提督よ!」

鳳翔「…雷さん、どいて下さい。」

雷「鳳翔さん?!」

足柄「2対2ね…こうなったら!もうアレしかないわね!」

雷「て、提督の純潔は私が守るわ!」

鳳翔「…やるときは、やるのです!」

榛名「…勝手は!榛名が!許しません!」

「「「「まずは一杯!」」」」

183: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/06(金) 09:48:24.61 ID:jsHrEbwN0
不知火「帰ってきてみたら、案の定、惨劇が起きたようですね…死体の山が…提督?大丈夫ですか?提督ー?」

提督「う…うーん…」

不知火「下手に動かして吐いたら困りますし…不知火もお酒をいただきましょうか。」

隼鷹「…んむ。」ムクッ

不知火「…あら。おはようございます。」

隼鷹「あ、不知火。帰ってたんだ…おかえり。…あーきもちわりー迎酒ちょうだい。」

不知火「…迎酒して大丈夫なんですか…」

隼鷹「大丈夫大丈夫!…日本酒のんでんの?」

不知火「はい。菊正宗、好きなんですよ。提督の影響ですけど。」

隼鷹「…案外普通だね。もっとコアなのが好きだと思ってたよ、アハハ。」

不知火「…珍しい物は中々手に入りませんから。…偶にかつての部下から届くお酒がありますが。」

隼鷹「ほほう。」

不知火「提督は、それは中々飲ませてくれませんね。残念ながら。」

隼鷹「そうなんだ。飲んでみたいなぁそれ…あれ?鳳翔さんがいない。」

不知火「鳳翔さんなら、今哨戒任務にあたって下さってますよ。足柄さんが動けないからと、任務を引き継ぎしました。」

隼鷹「そうなのか…鳳翔さん、いつも目立たないとこでずっと働いてるよね。ほんと…アタシも訓練メニューとかアドバイスとか、ちゃんと考えてもらってたし。縁の下の力持ちって言うのかな。」

不知火「…いつも感謝しています。」くいっ

隼鷹「アタシもあれくらい、出来るようになりたい。ならなくちゃな…」

不知火「…頑張りましょうね。」

隼鷹「…うん。」

187: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/06(金) 11:33:09.00 ID:jsHrEbwN0
提督「頭が…痛い…吐きそうだ…」

不知火「おはようございます、司令。」

隼鷹「おはよ、提督!」

提督「ああ、おはよう、二人とも…他の艦娘は…」

足柄「」

榛名「」

雷「」

提督「何でこいつらが潰れてるんだ…おい、起きろお前ら。特に足柄、お前哨戒だろ。」

不知火「あ、司令。哨戒は今、鳳翔さんが。」

提督「…鳳翔には苦労をかけてばかりだな…」

足柄「う、うう…ここは…?」

雷「…吐きそう。」

榛名「…頭が…」

提督「…お前らしっかりしろ。何故そんなになってるんだ。」

榛名「…足柄さんと鳳翔さんが、酔い潰れた提督にいやらしい事をしようとしたので…」

提督「足柄、お前…」

足柄「全っ然、記憶にございません…」

雷「…私たちが防ごうとして、飲み比べに…」

提督「何故そこで更に飲むんだ…馬鹿しか居ないな…」

榛名「足柄さんは一瞬で潰れたんですが…鳳翔さんがおかしくて…」

雷「足柄さんが沈んでからは、鳳翔さん1人に対して私たちは交互に飲んでたのに、2人共潰されたの…信じられない…」

不知火「鳳翔さんピンピンしてましたよ、さっき。」

雷「化け物ね…」ウップ

榛名「…ちょっと待って下さい。鳳翔さんが勝ったということはまさか、提督にいやらしい事を?!」

提督「ええ…」

不知火「…ピンピンしてましたね…さっき…」

隼鷹「えらい意味深だな、その言い方。」

提督「流石に無いと信じたい…。…ちょっと手洗いに行ってくる…」

榛名「…まさか、提督を守れなかった…?」

雷「嘘…でしょ…」

足柄「朝からなんて重い空気なの…!」

不知火「まぁ原因は足柄さんですよね。」

隼鷹「まぁ、そうなるな。」

191: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/07(土) 00:33:46.11 ID:J3QxmmZZ0
足柄「…なんかさ、提督が居るとチョーシ狂うのよね、ほんとに。…なんであんな艦娘に甘いのかしら。」

不知火「…提督はあまり怒る方ではありませんから。」

足柄「…あたしは人間が嫌いだからさ。今までの上司とは衝突しかしてなかったワケよ。まぁ、それで飛ばされたんだけど。」

雷「…口が悪いとかじゃなくて?」

足柄「口も悪かったけど…あたしが本気で罵ってたらこんなんじゃないし。どっちかっていうと危険思想とか言われてたしね…今回の提督も見た感じ真面目そうだったから、どんな奴かと思ってたら、変なスピーチするし。榛名が暴れてもなんとかするし。あたしが嫌がらせしても気にも留めないし。そのうち、だんだん嫌いでもなくなって来てるし。」

不知火「…」

足柄「…ほんと、変な人よ。」


執務室


提督「また北の方で我が方の艦隊が勝利か。…随分と調子が良いな。…良い事ではあるが…うーん。」

榛名「…(隼鷹さんや、雷さん…それにあの、人間をあまり好かなかった足柄さんでさえ…今や提督に信頼を寄せています。…私も…提督の協力で…変われるでしょうか…)」

榛名「…提督。お話があります。」

提督「ん?何だ。」

榛名「私の、昔話の…続きです。」

提督「…部屋に移動しようか。」

192: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/07(土) 00:40:43.76 ID:J3QxmmZZ0
提督の部屋


榛名「…この間、私が黒提督の元に配属になった事までお話しましたね。」

提督「ああ。」

榛名「…黒提督の勤務地、黒鎮守府で私は訓練を受けました。その鎮守府で私は初の戦艦でした。…黒提督は、戦艦無しでかなりの戦果を上げている方でしたので、そんな方が戦艦を手に入れたら、あの英雄提督と並ぶのではないか、と主張派の中ではもっぱらの噂だったそうです。」

榛名「一通りの訓練を終え、私は初の実戦に臨みました。いけると思ってました。」

榛名「…でも、榛名は悪い子でした。私は敵を前にして、足がすくんで一歩も動けませんでした。」

榛名「…私は結局、一発たりとも砲撃出来ませんでした。黒提督は私を叱りました。お仕置きもされました。それから、私は沢山訓練を積みました。ここで武勲をあげたら英雄提督の所に行けると思って、寝る間も惜しんで訓練をしました。そして、二回目の出陣の時。」

榛名「私はやっぱり敵が怖くて動けませんでした。その場で砲撃は出来ましたが、一発たりとも当たりませんでした。あれだけ訓練を重ねた時間も労力も無駄でした。榛名は無能でした。」

榛名「榛名は帰ると、沢山叱られて沢山お仕置きされました。黒提督に、英雄提督はお前なんて要らないと言うだろう、と言われました。私が英雄提督に憧れているのを、彼は知ってたのです。でも、私は黒提督の、そして英雄提督のお役に立ちたかった。」

榛名「榛名は悔しくて、もっともっと訓練を積みました。…不思議ですね、演習ではちゃんと弾が撃てるのに、3度目の実戦でも榛名は役立たずでした。」

榛名「私はもっと沢山叱られて、もっと沢山お仕置きされました。痛かったけれど入渠させてもらえなくて、2日くらいご飯が食べられませんでした。それでもまだ、私はお役に立ちたかった。」

193: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/07(土) 00:42:02.75 ID:J3QxmmZZ0
榛名「しばらく謹慎を命じられた後、黒提督が私の前に、捕らえられた深海棲艦を連れてきました。深海棲艦はまだ生きてました。私はそれが動けないと知っていても、足がすくんで動けませんでした。素手で殴れ、と黒提督は言いました。でも、私は怖くて動けませんでした。」

榛名「黒提督と一緒に、とても意地悪な艦娘が居ました。私が動けないで居ると、その艦娘が私を殴りました。同時に黒提督は私を叱りました。何故殴らないのかと。」

榛名「私は何回も深海棲艦を殴ろうとしましたが、ダメで、その度にお腹を殴られ、叱られました。敵を殴れない私は悪い子だったのです。」

榛名「いっぱい殴られて、いっぱい叱られた後、やっと私は理解しました。敵は殴り殺さないといけないんだって。だから深海棲艦を殴りました。意外と柔らかかったですよ。5,6発お腹を思いっきり殴ったら動かなくなりました。私はその時始めて褒められました。同時に深海棲艦があまり怖くなくなりました。」

榛名「次の日私は実戦に出ました。少し賢くなった私は敵を4つ殴り殺しました。黒提督は言いました、英雄提督は榛名を誇りに思うだろうと。私はとても嬉しかったです。」

194: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/07(土) 00:43:32.30 ID:J3QxmmZZ0
榛名「それから私は沢山殺しました。でも、たまに殺しきれなかったり、黒提督のご機嫌が悪いとお仕置きされました。役立たず、解体するぞ、と沢山言われました。私はだんだん黒提督が怖くなってきました。その頃からです…段々、自分が我を忘れて暴れる事が増えてきたのは。そこに居ないはずの黒提督が榛名に語りかけてくるようになったのは。」

榛名「制御を失いつつある私は、命令違反が増えました。そのせいでら黒提督もお上に叱られました。手ぶらで帰ったら解体するぞ、役立たずが。そのうち不機嫌な黒提督にそう言われるようになりました。」

榛名「私は死に物狂いで訓練し、技術を磨き、戦果を稼ぎました。そして敵を見つけたら何も考えずに突っ込んで殺しました。隊列から突出するので撃たれたりするのは痛かったですが、解体されたりお仕置きされるよりはよっぽどマシでした。何より黒提督は榛名を叱る時、役立たずと言います。それが何より嫌でした。私はお役に立ちたかったのに。」

195: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/07(土) 00:44:59.90 ID:J3QxmmZZ0
榛名「私は英雄提督に拾われるのを夢見て戦い続けました。黒提督に睨まれていた私には艦娘のお友達も居なくて、深海棲艦を相手に快進撃を続ける英雄提督のニュースだけが私の支えでした。」

榛名「ある時、味方の艦娘に獲物を横取りされて、戦果無しで黒鎮守府に戻りました。黒提督は、役立たずは解体すると言いましたが、私は泣いて命乞いをしました。そしたら、きついお仕置きだけで済みました。その時から他の艦娘が信用できなくなりました。」

榛名「後日、その艦娘と演習を行いました。私はその艦娘が自分の敵だと思っていたので沢山殴りました。半殺しにしたところで他の艦娘数人に押さえ込まれました。そのあと黒提督に私は叱られました。私はまた泣きました。次やったら英雄提督に事態を伝えた上で解体すると言われました。それだけはやめて欲しかったので、私はもっと必死になりました。」

196: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/07(土) 00:46:52.62 ID:J3QxmmZZ0
榛名「でも、私は、いくら結果を出そうと、いくら敵を殺そうと、役立たずだったのです。」

榛名「しばらく後。あの意地悪な艦娘がかなり強引に私の獲物を奪おうとしました。私はその頃、最早自分のコントロールが完全にできませんでした。私は、私の邪魔をするその艦娘を大破させてしまいました。黒提督は怒り狂いました。私は許されませんでした。そして、遂に私は解体される事になりました。」

榛名「でも、戦艦を解体するのは勿体無い、と言って他の提督が私を引き取る事になりました。転属先の鎮守府であった最初の演習で、私はまた自分のコントロールを失いました。私は殆ど初対面の、友好的な艦娘を徹底的に叩き潰しました。私を止めようとした艦娘も半殺しにしました。解体を止めた面子上、解体できなかったのでしょう。私は更に転属になりました。」

榛名「次の鎮守府で、私は英雄提督を馬鹿にする上司にあたりました。精神的に参っていた私は、逆上して、上司を殴り倒しました。幸いにも艤装をつけていなかったので、上司は死にませんでしたが。」

197: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/07(土) 00:48:41.39 ID:J3QxmmZZ0
榛名「私は運良く解体されずに、この島に流されました。元々居た足柄さんや隼鷹さんは私にとても良くしてくれました。艦娘を信用できなくなっていた私でしたが、2人とずっと居る内に、だんだん打ち解けてきました。しかし、島での最初の上司は私達を怖がって滅多に接触がありませんでした。」

榛名「この島でも、昔は他の艦隊との交流がありました。無論、演習もありました。私はこの島に来て始めての演習で、また制御を失い、他の鎮守府の艦娘を血祭りにあげました。その所為か上司はどこかへ飛ばされ、他の艦隊との交流は二度となくなりました。」

198: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/07(土) 00:50:42.49 ID:J3QxmmZZ0
榛名「次に来た島の上司には…提督?…泣いてらっしゃるのですか?」

提督「…」

榛名「…提督が泣くのは榛名が悪い子だからですね。ごめんなさい…」

提督「…違う。」

榛名「…では何故泣いているのですか?」

提督「…榛名、私は…」

榛名「おかしいですよ。何故涙を流すのですか。何故悲しそうにするのですか。いつものように、憮然としていて下さいよ!そして命令を下さい!隼鷹や雷を助けた時のように!悪い子の榛名を、役立たずの榛名をなんとかして下さい!」

199: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/07(土) 00:53:04.29 ID:J3QxmmZZ0
提督「違うんだ…榛名…お前は…」

榛名「…止めて下さい。榛名のために泣かないで下さい。泣くくらいなら榛名を罵って下さい。榛名は悪い子なんです!榛名は悪い子なんです!」

提督「もういい!もうやめろ!榛名!」

榛名「私は誰の役にも立たない無能なんです!英雄提督の部隊に配属されなくて良かったんです!…こんな役立たず…!」

提督「榛名!!」ギュッ

200: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/07(土) 00:54:45.73 ID:J3QxmmZZ0
榛名「…男が泣くなんて情けないですよ、提督!そして、こんな無能を抱かないで下さい!それより早く命令してあなたのお役に立たせて下さい!提督がお望みなら何だってやります!便所掃除でもいいです!靴だって舐めましょう!最早、死ねと言われれば死にます!」

提督「榛名…お前は…間違っている!…お前は役立たずなんかじゃない…」

榛名「…うう、ううううう」

提督「…お前は今、もう、とても良くやってくれているんだ…死ぬなんて、言うな…」

榛名「…なんで…提督…」ぐすっ

提督「…お前は役立たずじゃない。俺はお前を捨てたりしない。」

榛名「…嫌…優しくしないで…甘い言葉をかけないで…」えぐっ

提督「…もう良いんだ、榛名…もう、良いんだ…」

榛名「ううううう…ううう…」ボロボロ

提督「…お前はもう、私の大事な艦娘なんだ…」

204: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/07(土) 07:57:10.90 ID:J3QxmmZZ0
数時間後、執務室

コンコン
不知火「不知火です。」

提督「入れ。」

ガチャ、バタン
不知火「失礼します。…お一人ですか?」

提督「…奥で榛名が眠っている。」

不知火「…榛名さんの話を…?」

提督「…聞いた。」

不知火「…そうですか。」

提督「今後榛名には徹底的に事務能力をつけてもらおうと思っている。それこそ雷並みにな。」

不知火「…戦場には出さない、という事ですか。」

提督「そうだ。…榛名は私が面倒を見る。二度と手放さないと約束した。」

不知火「…一体彼女に何が…」

提督「…黒提督は、戦えない怖がりな艦娘に捕虜の深海棲艦を殺害させる事で、恐怖感を麻痺させるのと同時に、心身に対する暴力で艦娘を支配していたようだ。」

不知火「…戦えない艦を、無理矢理戦わせていた。」

提督「…主張派は…どこまでも…愚かな奴ばかりだな…」

205: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/07(土) 07:58:26.95 ID:J3QxmmZZ0
不知火「…榛名さんを大切にする事は…あなたの贖罪なのですか?」

提督「…そう、なのかもしれない。」

不知火「…何故っ!!…あなたは罪を犯してなんかいないわ!あなたは、艦娘の為を思って!」

提督「思っているだけではダメなんだ!榛名は…榛名の心は…俺が壊したのも同然なんだぞ!榛名だけじゃない…他にも沢山の艦娘が死んだ…俺が…俺が殺した…!」

不知火「そんな事無い!もうやめて!何故あなたばかり苦しまなければならないの!あなたは悪くないのに!こんなの、こんなのおかしいわ!」

提督「…」

不知火「赤城さんも!愛宕さんも、那智さんも霧島さんも!…こんな司令官は…きっと、望み、ませんよ…!」

提督「…」

不知火「…加賀さんから、連絡がありました。近く様子を見に来たいと。」

提督「…そうか。…私から連絡を返しておこう。」

不知火「…私はこれで失礼します…」

提督「…すまない、不知火…」

不知火「…」
ガチャ、バタン

206: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/07(土) 08:00:04.41 ID:J3QxmmZZ0
キィ…
榛名「あ、あの…提督?」

提督「あぁ、榛名。…聞かれていたか?」

榛名「い、いえ。今目が覚めた所です。…大きな声でしたけど、誰かと喧嘩ですか?…もしかして榛名が、」

提督「違う。お前の事では無い。…こっちへおいで、榛名。」

榛名「は、はい。」

提督「辛かったろうな…演習なんかさせて悪かった。」よしよし

榛名「榛名は…大丈夫ですよ…」

提督「…お前には、戦う才能より事務管理の才能を感じる。物覚えも早い。…常設の秘書艦に任命する予定だ。」

榛名「は、榛名が常設の秘書艦ですか?」

提督「そうだ。」

榛名「不知火さんや雷さんを差し置いて、何故私が…?それに、私は戦艦ですよ?」

提督「艦種で仕事を振り分けるのは良からぬ事だとは思わないか。」

榛名「…でも…榛名が、役立たずだからですか?」

提督「おいおい、それは世の秘書艦に失礼が過ぎるぞ。何故役立たずを秘書艦にするんだ。お前はきちんと役に立っているよ。」

榛名「し、しかし。」

提督「榛名。お前に戦場は似合わない。が、お前の戦う能力も私は高く評価している。常設秘書艦は、提督の最終防衛ラインでもある。両方をこなせる艦娘。だからこそ、お前なんだよ。」

榛名「だからこそ、私…ですか…」

提督「懐刀として私を支えてくれ。」

榛名「…わかりました。榛名、頑張りますね。…こんな榛名をよろしくお願いします。」

提督「よろしく頼むよ。頼りにしている。」よしよし

榛名「はい!(…頑張らねば、なりませんね。…提督の常設秘書艦…えへへ…)」

219: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/08(日) 13:33:27.25 ID:HLJ08eLb0
執務室


コンコン
鳳翔「鳳翔です。足柄の代理として哨戒から戻りました。」

提督「…入れ。」

ガチャ、バタン
鳳翔「失礼します。」

提督「ご苦労だった。」

榛名「お疲れ様です。」

鳳翔「…あの。」

提督「どうした。」

鳳翔「不知火さんが、号泣しながらお酒を煽っていたのですが、大丈夫でしょうか。何かあったのですか?」

提督「…止めに行こう。」

榛名「…(さっきの大きな声、提督と不知火さんだったのでしょうか…泣き疲れて寝てしまっていたとは、榛名、不覚です…)」

鳳翔「いえ、今は寝ています。見てられない、と足柄さんが止めて、吐かせてから寝かしていました。」

提督「…そうか。」

鳳翔「…提督の名を呼びながら泣いてましたよ。」

提督「…そうか。…そのうち落ち着くだろう。手間を掛けたな。また不知火とは話をしておく。」

鳳翔「…何があったのですか?」

提督「…見解の相違だ。心配する必要はない。」

鳳翔「…わかりました。失礼します。


提督「…」

220: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/08(日) 13:38:38.18 ID:HLJ08eLb0
夜、提督の部屋


コンコン

提督「…誰だ。」

鳳翔「鳳翔です。」

提督「…入れ。」

鳳翔「失礼します。…お一人で晩酌ですか。」

提督「…何か用か。」

鳳翔「…しばらくお休みを頂けるとの事でしたので、早速お酒を頂きに。」

提督「…ウイスキーしか無いぞ。宴会で出したから日本酒はスッカラカンだ。ビールも無い。」

鳳翔「では、ウイスキーを下さい。」

221: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/08(日) 13:41:36.36 ID:HLJ08eLb0
提督「…何で割る。」

鳳翔「えっと…すみません。飲んだ事が無くて…」

提督「初めて。初めてか…山崎、のストレートで良いか。」

鳳翔「ありがとうございます。」

提督「…ほれ」コトン

鳳翔「…このお水は…?」

提督「チェイサー…口直しだ。」

鳳翔「成る程。では、頂きます。」くいっ

提督「あ、おいおい…」

鳳翔「けほっけほっ」

提督「…日本酒と同じ感覚で飲むなと言っておくべきだったな…水を飲め」

鳳翔「すみません…」

提督「…少しずつ飲むと良い。香りも楽しめるだろう。」

鳳翔「…はい。…木のような、不思議な香りがします。」チビチビ

提督「樽で熟成されてるからな…どうだ、気に入ったか。」

鳳翔「美味しいです。辛いのに甘いですね。後味が果実のようで…」チビチビ

提督「それは良かった。山崎はわりと飲みやすい。…舌が痺れて味がわからなくなる前に、水を口に含むと良い。」

鳳翔「はい。ありがとうございます。」

提督「酒は、良い物に限る。最初に悪い物に慣れると、繊細な味がわからなくなる。」

鳳翔「最初が肝心、ですか。」

提督「そうだな。酒に限った話では無いが…」

222: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/08(日) 13:43:20.92 ID:HLJ08eLb0
コンコン
足柄「あたし。」

提督「…入れ。」

足柄「お邪魔しまーす…あら?鳳翔さん?…本当にお邪魔だったかしら。」

鳳翔「いえ、大丈夫ですよ。」

足柄「良かった。あ、ウイスキー!…提督、あたしロックで。」

提督「お前…哨戒を代わってもらった身で、よく飲みに来たな…」コトン

足柄「まぁ、そういう事もあるわよね。ありがと。…やっぱ山崎は甘いわね。余市無いの?」

提督「今私が飲んでる。鳳翔も山崎と飲み比べてみると良い。」コトン

鳳翔「あら、ありがとうございます。」

足柄「…ありがと。なんか今日はやけに素直ね。…不知火さんと喧嘩して落ち込んでるの?」

提督「…そんな事は無い。」

足柄「なんか最初はコンビって感じだったのに、最近全然じゃない?」

提督「…」グイッ

足柄「最近不知火さんに冷たくない?」

提督「…いや。」

足柄「…とは言い切れなくない?」

鳳翔「ちょっと足柄さん…」

提督「…艦娘は不思議な生き物だな。まるで人間のように生き、恋をする。その想いはとても一途で、深い。…海よりもな。」

足柄「…はい?急に何?」

223: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/08(日) 13:45:59.89 ID:HLJ08eLb0
提督「足柄、何故人間が艦娘と距離を取るのか。もう一つ理由を教えよう。これは噂話だがな。」

足柄「…」

提督「艦娘は沈んだ後、海底の無念や怨念によって深海棲艦に成ると言われているのは知ってるな。」

鳳翔「はい。そう聞いたことがあります。」

提督「艦娘がもし、海底の怨念に負けない程の強い愛情を抱いて深海棲艦になったらどうなるか。…帰ってくるのさ。愛情を頼りにな。そして地獄の果てまで追ってくるらしい。一緒に海底に沈む、その時まで…」

足柄「…はあ?それで不知火さんと距離を取ってるって?提督、あんた酔ってるわね…」

提督「…ただの冗談じゃないか。不知火とは方針の違いから少し揉めただけだ。不知火はああ見えて繊細だからな…少し負担をかけ過ぎた。信頼してるからこそ負担を強いる事になってしまったが…明日謝ろう。」

足柄「…そいえば榛名を常設秘書艦にしたんだって?榛名は喜んでたけど、あの子、榛名に嫉妬してるかもよ。」

提督「…例えそうだとしても、榛名をこれ以上戦わせる訳にはいかん。」

足柄「あ、そういう結論になったんだ?」

鳳翔「やはり、危険であると?」

提督「いや…どちらかというと、榛名の事情を聞いて、少しな…陽菜の分の戦力の補強をしたい所だが…」

足柄「まぁ、無理よね。戦闘も全く無いような小さな島だし。」

提督「そうなるな…」

224: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/08(日) 13:47:29.27 ID:HLJ08eLb0
足柄「ま、人間側が勝ってるし良いんじゃない?」

鳳翔「…そういえば、もし、人間が深海棲艦を世界から駆逐したら、私達艦娘はどうなるのでしょうか…」

足柄「…ま、解体じゃない?良くて幽閉かしらね。」

提督「そんな事はさせんよ。」

足柄「あら、左遷のくせに言うじゃない。させんよ、ですって。」

鳳翔「…心強いですね、ふふふ。」

足柄「ま、気持ちは嬉しいけどね。」

提督「…本当にそんな事が決まったら、徹底抗戦だな。今度は全艦娘対全人類だ。」

足柄「…んで?誰が指揮を取るの?」

鳳翔「ふふ、提督ですよね。」

提督「まあな。」

足柄「なーに生意気言ってんのよこの酔っ払い!左遷のくせに〜!噛みついてやるわ!」

提督「痛っ!…酔っ払いに噛みつかれたぞ…」

鳳翔「やっぱり狼ですね…」

提督「…どっちかって言うとこれでは野良犬…痛い痛い痛い!」

鳳翔「うふふ。…敵が近くに居ないって、幸せ、ですよね。」

足柄「…ほうね。」

提督「噛んだまま喋るな…」

鳳翔「…約束ですよ?提督。戦いが終わったら…きちんと面倒、見て下さいね?ふふふ。」

提督「ああ…そうだな。」

鳳翔「あと、不知火さんの事も、約束ですよ。」

提督「…わかっている。」

鳳翔「…なら、良かったです。」ニッコリ

233: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/10(火) 22:59:21.62 ID:LRlxPc6c0
翌日、午前0500


コンコン
不知火「不知火です。」

提督「入れ。」

ガチャ、バタン
不知火「失礼します。任務完了の報告に上がりました。」

提督「ご苦労。…不知火、いつも苦労を掛けるな。…昨日は、すまなかった。」

不知火「…いえ、不知火こそ、必要以上に取り乱してしまいました。申し訳ありません。」

提督「…不甲斐ないのは私だ。…二回目だな。艦娘を泣かせてしまったのは。」

不知火「…不知火は、大丈夫ですよ。アレは…あなたを想って…泣いてしまった…だけです。」

提督「…」

不知火「それに、あの日誓いましたから。私は何があってもあなたについて行くと。だから、大丈夫です。」

提督「…ありがとう。今は、その言葉に甘えさせて貰おう。」

不知火「…はい、司令官。」

234: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/10(火) 23:00:18.09 ID:LRlxPc6c0
北の提督率いる、第3艦隊が駐屯する
北の前線基地にて


執務室


加賀「…そう。休暇もダメと言うのね。」

北提「ちょ、落ち着いて!!」

加賀「…」ギリギリギリギリ

北提「待って!加賀さん待って!矢はヤバいって!」

加賀「…」ピュン

北提「ああああああ!!」ドスッ

加賀「やりました。」

235: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/10(火) 23:01:39.28 ID:LRlxPc6c0
ガチャ
瑞鶴「大きな音がしたけど、どうかしたのー…北提?!お尻に矢が刺さってる?!…加賀さん、北提に何をしたんですか!」

加賀「なにって。粗相よ?」

瑞鶴「そんな当然かのように言われても…北提、大丈夫?」

北提「…あ…瑞鶴…今日もかわいいね…」

瑞鶴「大丈夫そうね。…何でこんな事するんですか、加賀さん!」

加賀「…」

瑞鶴「…だんまり…?」イラッ

236: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/10(火) 23:03:45.87 ID:LRlxPc6c0
北提「…待って、瑞鶴…加賀さんは左遷、されたいんだと。僕が休暇も断ったから実力行使に出たらしい。」

瑞鶴「…ちょっと意味がよく…何で左遷されたいんですかね」

北提「…あの左遷の島に、元上司が居るんだと」

瑞鶴「…え?左遷させた上司…もしかして、あの人ですか。最近少し話題になってた。」

加賀「…」

北提「…ねぇ、加賀さん。そこは、自らを貶めてまで、行かなくてはならない場所なのかい?」

加賀「そうよ。」

北提「はっきりと言おう。僕は君が粗相をしても、君を左遷するつもりはない。…今回のようなわざと嫌われようだなんて、悲しい真似は二度としないでくれ。」

加賀「…」

北提「今、僕たちは最も戦果を挙げている艦隊の一つだ。そして、加賀さん。君はその中心の一人なんだよ。」

加賀「…そう。」

北提「…君が、あの大反抗作戦で深く傷つき、1年以上を掛けて修復された後、僕の所に来てくれた時の事は忘れない。」

加賀「…嫌々配属されただけよ。」

北提「それでも、僕は君を大事に思っている。」

加賀「…」

237: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/10(火) 23:07:15.20 ID:LRlxPc6c0
北提「加賀さん。僕はここの艦隊を家族だと思ってるんだ。…君は軍務に復帰して以来、少し足腰が悪いだろう。あまり遠くにやりたくないんだ。休暇もまた然りだ。…わかってほしい。」

加賀「…」

北提「今回の件は不問とするし、下がっていいよ。」

加賀「…せめて休暇を…!」

北提「加賀さん。」

加賀「…ッ!…失礼します。」
ガチャ、バン!

瑞鶴「…北提、あんな人さっさと左遷したら良いのに。」

北提「そう言うな…何回、僕らがあの人に助けられたと思ってるんだ。君だってそうだろう。」

瑞鶴「あたしは別に!…そんな事ないし…」

北提「…素直じゃないなあ。」

瑞鶴「どっちがよ!」

北提「どっちもだよ。」

238: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/10(火) 23:08:09.55 ID:LRlxPc6c0
加賀の部屋


加賀「…休暇も断られるとは…電話をしなければ。」

ジーコジーコジーコ…

ガチャ
不知火『もしもし。』

加賀「…不知火?私です。」

不知火『…あら、加賀さん。最近はよく連絡を下さいますね。』

加賀「…休暇の許可が降りなかったの。残念だけれど、そちらへは行けないわ。」

不知火『ええー…加賀さん許可取ってたんじゃ無かったんですか…』

加賀「強引にすれば行けると踏んだのだけれど。ダメでした。」

不知火『慢心ですよそれ。…わかりました、伝えておきましょう。』

加賀「ありがとう。助かるわ。」

不知火『しかし加賀さん、何で自分で言わないんですか…』

加賀「提督、プライベートな電話って持ってないんじゃないかしら。あの人も面倒臭がりだから…」

不知火『あー…』

加賀「執務室の電話に電話をして、仕事に支障が出ては困るわ。」

不知火『…まぁ、それもそうですね。』

239: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/10(火) 23:09:16.13 ID:LRlxPc6c0
加賀「それよりも、不知火。あの人に変な虫は着いてないでしょうね。」

不知火『えっ…』

加賀「…教えて頂戴。」

不知火『…その、黒提督のとこにいた榛名さんが居て…』

加賀「大体把握しました。どうせあの人の事だから、甘やかしているのでしょう?」

不知火『まぁ…そんな感じですね…』

加賀「呆れた、と言いたいところだけど…あの人、大丈夫?」

不知火『身体面は問題無いかと。精神的にも、本土に居た時よりは安定してると思いますよ。…私は泣かされましたが。』

加賀「…そう。とりあえず、良かったわ。…でも、私という女を差し置いて、現地妻を作った提督には制裁が必要ね。」

不知火『早めに来てくださいよ。…取られちゃうかもしれませんよ。』

加賀「あら、不知火。貴女も言うようになったわね。…誰に取られるのかしら?」

不知火『…さぁ?』

加賀「…まぁ、良いわ。また連絡します。提督によろしく伝えて頂戴。では。」

不知火『はい。ではまた。』
ガチャ

240: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/10(火) 23:10:19.05 ID:LRlxPc6c0
龍驤「んでんで?今の誰なん?恋のライバル?」

加賀「…あら?龍驤。ドアは閉めてあったのだけれど…隙間から入ってきたのかしら。流石フルフラットね。」

龍驤「あんま言うてたら削ぎ落とすで自分。…鍵あいとったわ。」

加賀「そう。」

龍驤「…自分、北提のケツに矢を刺したんやって?瑞鶴が随分とお冠やったで。」

加賀「…」

龍驤「そんなおもろい事やってんのに、何でウチと日向をそこに呼ばんのや!えらい間抜けな絵やったらしいやん。」

加賀「…真面目な話だったから。」

龍驤「アホ抜かせや。自分の上司の尻に矢を刺しといて、何が真面目やねん。」

加賀「…」

龍驤「…何や元気ないなぁ自分。…せや、日向のとこに飲みに行こや!」

加賀「…そうね、行きましょう。」

241: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/10(火) 23:13:21.27 ID:LRlxPc6c0
日向の部屋にて、酒盛り


日向「あっはっは!北提の尻に矢か!それは良くやったな、加賀。」

龍驤「あの北提に『ああああああ!!』言わせるなんてホンマ鬼畜やなー。」

加賀「自業自得よ。私を手放そうとしないから…」くいっ

日向「まぁ、そう言うなよ加賀。君が就役当初から、その提督に会いたいと言っていたのは知ってるさ。でも、私達も君を頼りにしてるんだ。」

加賀「…あなた達はもう充分強いわ。最初とは見違えるほどに成長して。」

日向「君に皆鍛えられたからな…。まぁなんだ、信頼してると言いたいのさ。…恥ずかしいから言わせないでくれ。」

龍驤「素直な日向やん。珍し。」

日向「…」スッ

龍驤「やめて!殴ったらアカーン!」

ワイワイガヤガヤ

龍驤「でもなー好きな人に会えへんのは辛いなー。」

加賀「…チッ…知ったような事を…」

龍驤「え、今ウチなんで舌打ちされたんや…」

日向「北提じゃダメなのか?…私が言うのも何だが、アレは悪くない男だと思うぞ。」

加賀「滅多なことは言うもんじゃないわ。…彼に惚れてるのはあなたの方でしょう。」

242: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/10(火) 23:14:10.83 ID:LRlxPc6c0
日向「…やめてくれ、そんな大層な思いじゃない。」

加賀「後悔しないうちにヤる事はヤるべきです。」

龍驤「ちょ、完全に出来上がってるやんけこの人…いつもよりタチ悪い…」

日向「いや…私は…」

加賀「最近は瑞鶴がずっと提督のそばに居るけれど。それでいいのですか?」

日向「…」

龍驤「ちょ、やめーや!北提はウチらの事もちゃんと見てくれてるって!」

加賀「駆逐艦の貴女にはわからないかもしれないけど、これは重要な事よ。」

龍驤「誰が駆逐艦やねんシバき倒すぞ!」

日向「それは…嫌…かもしれない…が、既に割り切ったことだ。」

龍驤「日向…」

日向「最近始まったことじゃない。私は奴の最初の艦だ。長い時間を共に過ごせば…まぁ、そうなるな。」

加賀「いっそ好意をぶつけたらどうかしら。そうすれば、彼もそれを感じ取ってくれるでしょう。」

243: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/10(火) 23:15:45.78 ID:LRlxPc6c0
日向「好意を…ぶつける…か。それはきっと、彼の迷惑になるだろうな。彼はきっと迷い、戸惑う。…だからこの気持ちには、私は蓋をする。彼の伴侶は…彼自身が決める事だ。それが私なら、嬉しい。それだけだ。違うとしても、私はそれを祝福するだろう、な。」

加賀「…そう。見上げた覚悟ね。私が男ならこんないい女放っておかないのだけれど。」

日向「…よしてくれ。」グイッ

龍驤「しっかし、尻に矢が刺さってる男のどこがええねん…」

加賀「…好みは人それぞれよ。」

日向「とにかく!北提と同じように、私達も君を家族のように思ってるんだ。…私は寂しがりでな。あんまりそういうのは御免だぞ。」

加賀「…そう。」

龍驤「逆に、そんなええ男なんか?その、左遷なんちゃらの提督は。」

加賀「…どうかしら。」

龍驤「なんやそれ…」

加賀「恥ずかしいから、言いません。」

龍驤「うわぁ…こう言うのなんて言うか知っとる?日向…」

日向「…知らん。」グイッ

246: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/11(水) 01:13:16.26 ID:SiYv0r7W0
左遷の島、執務室


コンコン
不知火「不知火です。」

提督「入れ。」

ガチャ
不知火「失礼します。(…榛名さんが居ますね…)…提督、内密なお話が。」

提督「わかった、部屋に来てくれ。榛名、しばらくここを頼む。」

榛名「わかりました。(内密…なんだか気になります…)」


提督の部屋


不知火「加賀さんが来れなくなった、との事です。もうすぐ北の島攻略作戦があるとかで、休暇も許可されなかったそうで。」

提督「そうか…まぁ、仕方あるまい。加賀の今の上司は北提だったか。彼にとって加賀の力はどうしても必要な物だろう。しかし、てっきり許可を貰ってから言ってる物かと思っていたが…少し抜けているところは相変わらずだな、加賀は。」

不知火「そうですね…少し心配になります。」

251: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/11(水) 16:33:01.34 ID:SiYv0r7W0
また場所は戻って、北の前線基地、艦娘寮内


日向「…」スー…スー…

龍驤「…そんな…いくらうちがグラマラスやからって…あかん…」zzz…

加賀「あら…二人とも、寝てしまったのね。」

加賀「…家族、ですか。」

加賀「(…家族、それは艦娘にとってとても暖かい言葉。大切にされている証。)」

加賀「(…だけれど北提。あなたはそれがもたらす副作用に、耐えることが出来るの?…艦娘なんて、一瞬の油断から沈んでしまうものよ。…主張派と、同じ過ちを繰り返す事になるわ。)」

加賀「大体、私が今まで何度僚艦の被弾を防いだか…だからこそ私を手放せないのだろうけれど。」

加賀「…はぁ。飲み過ぎかしら。…もう寝ましょう。」

260: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/13(金) 01:11:49.84 ID:vaHQ+iaVO
翌日、北の前線基地、執務室


北提「瑞鶴、龍驤、日向、そして、加賀さん。皆揃ったかい。響には先に作戦概要を伝えて、この島の防衛部隊の所へ相談に行ってもらってるから居ないけど。」

一同「はい。」

北提「じゃあ、作戦会議を始めるよ。」

北提「えっと、今回の攻略目標はこの基地の東にある比較的大きな離島。現在は周辺に深海棲艦の艦載機が確認されていて、空母ヲ級及びその護衛戦力が存在すると考えられる。深海棲艦出現以前の資料によると、ここに地下資源が存在する事が確認されているらしい。僕たちはこの離島を深海棲艦より奪還し、資源の回収及び新たな前線基地として利用する意図がある。」

北提「戦力はこの4隻に加え、今ここには居ない響、更に本土からの増援が3隻手配されている。この離島の奪還は、戦略的戦術的に重要。諸君には一層の奮起を期待するよ。」

一同「はっ!」

加賀「(…離島は確か、かなり離れていたはず…数百キロを巡洋した後の戦闘…厳しくなりそうね。)」

北提「今は増援部隊を待ち、合流後調整が済み次第出撃、という流れだ。今すぐではないが、各員準備だけはしておいてくれ。」

261: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/13(金) 01:12:49.63 ID:vaHQ+iaVO
艦娘寮内


龍驤「いよいよ出撃やな。離島を確保出来れば、周辺に島は無いからな。暫くはゆっくりできそうや。」

日向「そうだな。資源開発に力を注ぐだろうし、前線拡大は一時的に停止するらしいな。」

龍驤「しっかし深海棲艦もヘンやなー。海の底から上がって来よった癖に、陸地の付近に集中して居るもんな。ずっと海上を漂っとるワケではないと。ウチらの本土に近づいてた時も島を経由してたらしいし。」

日向「恐らく陸に、奴らに補給が必要な何かが存在するのではないかという話だが…まだよくわかってないようだな。」

262: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/13(金) 01:14:09.83 ID:vaHQ+iaVO
龍驤「そもそも、深海棲艦がどこから来るねんっていう話になるねんけどな…もういっそ仲良くしたらええのにな。艦娘と人間みたいに、深海棲艦と人間も。」

日向「…まぁ、我々と違って深海棲艦は人間の天敵だからな。難しいだろうな。」

龍驤「ま、倒せばええねんけどな。」

加賀「慢心はダメよ。」

龍驤「加賀、おったんかいな!ビビらせんといてーや。」

加賀「勝てると決まったわけではないわ。」

龍驤「言うて瑞鶴の偵察によると、敵は今のところ4隻って話やん?大丈夫やろ。こっちは倍やで。」

加賀「だからと言って気を抜いてはダメよ。そういうのが思わぬ惨事に繋がるの。」

龍驤「そうかもしれんけどなぁ…」

263: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/13(金) 01:15:48.69 ID:vaHQ+iaVO
響「皆、お疲れ様。」

日向「お、響。お疲れ様。防衛部隊の連中とは上手くいったか?」

響「うん。いい人達だったよ。」

日向「そうか。それは良かった。我々が留守の間は、ここを守って貰わねばならないからな。」

響「皆、ご飯は済ませた?」

日向「いや、こっちはまだだな。」

響「それなら、ご飯に行こうよ。」

日向「私は構わん。」

龍驤「ウチもええで。」

加賀「右に同じく。」


食堂


響「次の作戦は離島攻略なんだってね。偵察機によると確認された敵影は4なんだっけ?」

龍驤「それらしい影は4やって瑞鶴が言うてたね。」

響「なんだか、最近敵の数が少なくなったよね。どこか別のところに集まってるのかな?」

龍驤「ちょ、怖い事言わんといてーな。嫌やでまた総力戦とか。前の大反攻作戦でお腹いっぱいや。」

加賀「あり得ない話ではないわ。ただ、ここ以外でそんな話は聞かないわね。指揮可能な深海棲艦が残存してるかもわからないし…」

響「洋上に新たな拠点を求めているとか?」

日向「だとしても、本土からはかなり離れているはず…大反攻戦によって国近海の深海棲艦の拠点は潰れたからな。」

264: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/13(金) 01:18:16.19 ID:vaHQ+iaVO
加賀「何れにせよ、我々が今出来ることは目の前の離島を攻略する事ね。余計な事に気を回していては、沈みますよ。」

龍驤「加賀はいっつもストイックやねぇ。」

加賀「あなたがユル過ぎるだけよ。」

響「…あー、間宮さん、また来てくれないかなぁ。そろそろ毎日同じ食事にも飽きてきたよー。」モシャモシャ

日向「間違い無いな。やれやれ、本土時代に舌が肥えてしまってかなわん。」

響「そういえば、龍驤と日向は北提と本土で出会ったんだっけ?」

龍驤「せやで。ペーペーの頃からずっと一緒や。」

響「私と瑞鶴と、あと加賀さんは北東海域の攻略のために、直前に編入されたんだよね。」

加賀「そうね。私は大反攻戦で受けた傷が原因で1年?2年?…それくらい眠っていたらしいから、突然違う人の元に配属されて驚いたわ。」

響「ま、私は良かったと思ってるけどさ。前の人が厳しい人だったし。」

加賀「本来ならば、厳しいのが普通なのだけれど。特に主張派が解体されてからは、以前の体制の保守派が主流だから。艦娘に甘い北提は特殊よ。」

265: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/13(金) 01:19:43.10 ID:vaHQ+iaVO
龍驤「そんな他の上司は艦娘にきついん?」

加賀「きついというか…北提流に言うと、家族という扱いはあり得ないわ。」

日向「まぁ、我々は兵器だしな。…それだけに、人間扱いされるのは…素直に嬉しいんだが。」

龍驤「それに、ウチらが沈んだら深海棲艦なってまう言う話もあるくらいやしなぁ。仲良うし辛いんかなぁ。」

日向「…いつからだろうな、沈むのが怖くなったのは…」

加賀「ならば沈まないようになさい。それが全員にとっての最良なのだから。幸い、深海棲艦一つ一つは艦娘より弱い。入念に準備し、良い作戦を立てれば、滅多な事では死なないわ。」

日向「…そうだな、うん。…食い終わったら訓練に励むとしよう。」

響「がんばろうね。…あれ?もしかしてあれは瑞鶴と北提?」

日向「…ッ」

龍驤「お、ほんまや。二人でどこ行くんやろ。」

加賀「…さぁ?細かいブリーフィングじゃないかしら。電波の中継アンテナも瑞鶴の艦載機が持つのでしょう?」

龍驤「確か今回は攻略目標がかなり遠くにあるから、無線指示や映像電波の為のアンテナを艦載機につけて、中継地点で飛ばしとくんやっけ?」

加賀「そうね。北提が戦場に出るには船が必要だし、船は深海棲艦の格好の的。自ら弱点を作るよりは、基地で指示を出して貰った方がよっぽど良いわ。」

龍驤「深海棲艦はある程度のサイズの物体を感知できるんやっけ。難儀やなぁ。」

加賀「そう言われているわね。」

日向「…」

275: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 02:00:58.35 ID:icBJggVQ0
訓練海域にて


日向「っふ!…っふ!」ブン!ブン!

龍驤「刀を振り回して…えろう気合入ってんなぁ。それ、特注品やっけ。」

日向「ああ、龍驤…そうだ。北提が私の為に無理を言って拵えさせたらしい。お陰で、深海棲艦共を何体切り捨てても折れない。ありがたい話だ。」

276: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 02:02:07.57 ID:icBJggVQ0
瑞鶴「あ、そうだったんだ。良いなぁ。」

日向「…なんだ。居たのか、瑞鶴。」

瑞鶴「居たのか、とはご挨拶ね。普通に龍驤、あと加賀…と演出よ!」

加賀「…あなたも偉くなったものね。」

瑞鶴「げぇっ加賀!…さん!」

龍驤「瑞鶴、自分弱いのぉ…」

加賀「まぁ、そんなことはどうでもいいのだけれど。さっさと演習を行いましょう。」

瑞鶴「今日も勝ちますからね!」

加賀「…そう。」

瑞鶴「最近、私また強くなったもの!」

龍驤「ほんま強なったもんな…。…?瑞鶴、どうしたんやその髪留め。今朝はつけてなかったやろ。」

277: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 02:02:48.64 ID:icBJggVQ0
瑞鶴「ふふ、よく気づいたわね龍驤!さっき北提から新しく頂いたのよ!」

加賀「あら、可愛いわね。」

瑞鶴「ふふふふ…似合ってますか?加賀さん?」

加賀「ドヤ顔はやめてほしいのだけれど。…まぁ、似合ってないことも無いわね。」

瑞鶴「やたっ!」

加賀「…」イラッ

龍驤「ほえー。ウチも前、勾玉とか色々もろたわそういえば。箪笥の中に封印されてるけどな。」

日向「私はこの刀一本あれば十分だな。」

瑞鶴「む!…北提、艦載機か弓くれないかしら…」

龍驤「瑞鶴、自分ワガママやなぁ…」

加賀「…ほら、そろそろ行くわよ。日が暮れたら着艦出来ないわ。」

龍驤「ほなまたね、日向!」

日向「ああ、気をつけてな。」

日向「…」

日向「さて、もうひと頑張りしようか。」

279: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 02:04:19.56 ID:icBJggVQ0
数日後、執務室


コンコン
響「響だよ。さっき到着した増援の艦娘たちを連れて来たよ。」

北提「おお!入ってくれ。」

ガチャ、ゾロゾロ
響「うん。…えっと、紹介すると、まずこの軽巡さんがーー」

那珂「初めまして!地方巡業に来ましたっ!艦隊のアイドル、那珂・ちゃん・です☆」

吹雪「あああああ…いきなりぶちかましてくれましたね那珂さん…どうすんですかこの空気…」

妙高「…(頭が痛い…)」

北提「(濃いのが来たなあ…)よ、よろしく頼むよ。」

280: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 02:05:23.79 ID:icBJggVQ0
吹雪「ほんとスイマセンスイマセン、こんなポンコツで。あ、私は駆逐艦の吹雪です、よろしくお願いします。」

那珂「ポンコツ?!」

妙高「私は妙高型重巡の妙高です。よろしくお願い致します。」

北提「皆、宜しく頼むね。ここの鎮守府の面子は隣の応接室に揃ってる。そっちへ移動してくれるかな。」

一同「はい。」

ガチャ

那珂「みんな、こんにちはー!那珂ちゃんだよー!」

吹雪「ちょ、那珂さんほんとやめて下さい!」

妙高「…妙高です。よろしくお願い致しますね。」

龍驤「なんか1人ヤバそうな奴、入ってきたで…」

瑞鶴「シッ!聞こえるわよ!」

那珂「会話筒抜けだよー?」

281: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 02:05:58.36 ID:icBJggVQ0
北提「…とまぁ、愉快な増援が来てくれた事だし、今晩は下の宴会場で、懇親会でも開こうかな?」

吹雪「よ、よろしくお願いします!」

妙高「…この私が愉快なキャラに…?」

日向「はっはっは。陽気なのは良い事だ。私は日向だ。よろしく頼む。」

加賀「…加賀よ。」

妙高「…!」

吹雪「懇親会、楽しみですね!…妙高さん?」

妙高「あ、いえ、ごめんなさい。楽しみですね!」

那珂「那珂ちゃん、ステージしちゃおかな?」

龍驤「なんやねん自分…」

282: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 02:06:41.53 ID:icBJggVQ0
夜、懇親会


北提「遠路遥々よく来てくれた!今宵はパーっと騒いで明日からに備えてくれ!乾杯!」

カンパーイ!ワー!キャー!

加賀「…」スッ

北提「あれ?加賀さん、酒持ってどこか行くの?」

加賀「ちょっと応接室でラッパ飲みしてきます。」

北提「ええ…」

加賀「では。」テコテコ、ガチャ

北提「行っちゃった…大丈夫かな?」

283: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 02:07:48.15 ID:icBJggVQ0
那珂「恋の!」

日向「トゥーぅー!」

瑞鶴「フォーぉー!」

龍驤「イレーブぅーン!」

わいのわいの

北提「なんやかんやで仲良くしてるみたいだね。良かった良かった。」

吹雪「那珂さんあっという間に3人を吸収してステージ始めちゃいましたね…ちょっと真似出来ません。」

響「恋の2-4-11か。私も実は聞いたことなかったんだよね。」

北提「CDも出してるのか…マジでアイドルだったんだね…」

吹雪「私も最初は半信半疑でしたよ…」

響「だろうね。私も吃驚ーー」

ズン…!!!

一同「?!」

北提「なんの音だ!敵襲か?!防衛部隊は何を…」

響「いや、上の階、応接室の辺りから聞こえたような…!」

284: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 02:08:53.95 ID:icBJggVQ0
日向「見てくる。」

北提「ま、待て日向!僕も行く。」

瑞鶴「私が行くわよ!」

那珂「ここは那珂ちゃんが!」

龍驤「いや、ここはウチが!」

一同「「「どーぞどーぞ」」」

龍驤「なんでやねん!こんな冗談言うてる場合ちゃうやろ!」

北提「とりあえず、様子を見に行こう。龍驤たちはここで待っていてくれ。行こう、日向。」

………
……



北提「こ、これは…」

加賀「…」

日向「応接室のテーブルが真っ二つに…大丈夫か、加賀。」

加賀「煩い。」

日向「…ッ(恐ろしく虫の居所が悪いな…こんな加賀は初めてだ。目が完全に据わっている。)」

北提「(一升瓶が3本も転がってる…短時間に全部一人で飲んだのか…)…一体何があったんだ…」

加賀「…お願いだから一人にして頂戴。」

北提「わ、わかった。とりあえず敵襲でないとわかって良かった。一旦戻ろう、日向。」

日向「…わかった。」
ガチャ、バタン

日向「加賀に一体何が…おや?妙高?」

妙高「あ、北提と日向さん…」

北提「妙高?何かあったのかい。」

妙高「申し訳ありません、私が少し加賀さんと言い争いを…」

北提「加賀さんと?何を…」

妙高「それは…」

285: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 02:10:03.79 ID:icBJggVQ0
数分前


加賀「…」グビー

ガチャ
妙高「失礼します。お久しぶりですね、加賀。大反攻戦以来ですか。驚きましたよ、此処に居て。」

加賀「…何か用?」

妙高「わかっていらっしゃるのでは?」

加賀「…来るんじゃないかとは思っていました。だから場所を移したのだけれど。」ハァ

妙高「…少し飲み過ぎですよ?」

加賀「…あなたの知った事では無いわ。」

286: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 02:11:00.01 ID:icBJggVQ0
妙高「…あなたの元上司が私の妹、足柄を現在指導していると聞きました。」

加賀「…未だに同型艦で姉妹を意識しているのはあなたくらいよ。」

妙高「何故、あの人が足柄の上司を?」

加賀「…さぁ?」グビー

妙高「あの人の所為で那智が死に、それによって羽黒がおかしくなったのは知っているでしょう…!何とか足柄を彼から離せないのですか!彼は足柄に己の正体を明かしていないと聞きましたよ!」

加賀「…知らないわ。足柄に直接言えば良いのでは?」グビー

妙高「事実を教えて、あの子が更に反抗したら解体されるかもしれないのに、そんな事は出来ません!」

加賀「…」グビー

妙高「…そもそも!主張派が解体された中、何故あの人は提督としてまだ残っているのですか!」

加賀「…」グビー

妙高「あの人は人類の味方かも知れませんが、艦娘の敵なのですよ!」

加賀「…」グビー

妙高「…何か答えなさい、加賀!あなたも艦娘なのでしょう!」

287: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 02:12:28.63 ID:icBJggVQ0
加賀「…ひとつ、良いかしら。」ゴトン

妙高「…?」

加賀「あなたは主張派を、あの人を取り違えているわ。保守派の情報工作か何か知りませんけど。あの人は艦娘の敵などでは無かった。」

妙高「何を馬鹿な!彼が艦娘を何人犠牲に…!」

加賀「…ねぇ、妙高。この議論はきっと平行線よ。あなたと私は交わる事は無いでしょう。あなたは彼を憎み、私は彼を愛している。それは、物の見方の問題よ。」

妙高「…」

加賀「だから、私はあなたと非生産的な罵り合いをしても構わないわ。」

妙高「…それは…」

288: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 02:14:18.62 ID:icBJggVQ0
加賀「…あなたが…あなたがこの…!私が内に秘めた怒りと苛立ちを!今!!ここで!!曝け出しても構わないと言うのなら!!!」

妙高「…遠慮しておくわ。…ごめんなさい、邪魔したわね。」

加賀「…さっさと失せなさい。」

妙高「そう、させてもらうわ。」
ガチャ、バタン

加賀「…ああああああ!!!どいつもこいつも!!!私の提督を!!!莫迦にしてぇぇぇ!!!」ズン…!!!

………
……



妙高「といった事が…」

北提「…」

日向「なるほど、な。加賀の気持ちはわからんでもない。が…」

妙高「…加賀…私としたことが…焦りから冷静さを欠いてしまい、彼女に八つ当たりのような真似をしてしまいました…」

293: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 11:42:06.11 ID:icBJggVQ0
翌日朝、食堂


加賀「あったま痛い…」

龍驤「おはようさん、加賀。」

加賀「あら、龍驤。おはよう。」

龍驤「昨日えらい暴れてんて?」

加賀「さぁ…記憶にないわね。」

龍驤「応接室の机粉砕したって聞いたけどな。」

加賀「…存じません。」

龍驤「…さいでっか。」

日向「おはよう、加賀、龍驤。」

加賀「日向。おはよう。」

龍驤「おっはー。」

日向「加賀、大丈夫か?」

加賀「あんまり覚えて無いのだけれど…問題無いわ…心配掛けたわね。」

日向「こちらこそ問題無いんだがな。いや、北提は机が無いと嘆いていたが。…そうだ、今日と明日は合同演習だが、いけるか?」

加賀「私は仕事に私情は持ち込まないわ。」

日向「そうか…なら良いんだが。」

加賀「昨日は少し…飲みすぎただけよ。」

日向「まぁ日本酒の一升瓶3本も行けばなぁ…」

294: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 11:42:47.25 ID:icBJggVQ0
執務室


北提「皆、揃ったか。今回の作戦は、編成は単純に5名と増援隊の3名で別れて貰う。これは多数の艦娘が一箇所に集中し、深海棲艦に探知されるのを防ぐためだ。知ってると思うが、艦娘は多ければ多いほど感知されやすく、強襲されやすい傾向にある。特に1艦隊に7名以上は危険とされている。」

北提「まず、初動の5名で奇襲をかけて貰う。ここで決着をつけれたら、後続の3名は島の周囲を確保。もし、戦闘が泥沼状態になるなら、後の3名を前進させ、5名のうち2名を下げる事で対処する。簡単に言うとこうなるね。今日明日はその、前進と後退の打ち合わせと訓練をしておきたい。」

一同「はい!」

北提「よし、では早速準備に取り掛かろう。」

295: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 11:43:40.66 ID:icBJggVQ0
演習海域


響「ふぁ…暇だね、日向。港で艤装も無しに座ってるだけなんて」

日向「まぁ、既に6名が演習している以上、我々は海に出れないからな。万が一この島に深海棲艦が押し寄せてきたら大変だ。」

響「まぁ、私の役目は対潜と雷撃、日向は前衛って決まってるもんね。」

日向「そうだな。入れ替わりのある空母連中が、一番苦労するんだろう。あとその護衛に吹雪だっけか?」

響「まぁそんな感じらしいけどね。」

北提「や、お二人さん。」

日向「北提。」

北提「僕もここから無線で演習の指揮を取ろうかと思ってね…『チョット離脱遅いよ今の!』…と言うわけさ。」

響「しっかし、艤装の数が7以上だっけ?か何かで指数関数的に襲われる確率が伸びるって凄いよね…」

日向「実際のデータを整理したら6人以下の基地近海の航行で襲われた例は極めて少なかったらしいな。7名以上では頻繁に交戦があったらしいが。」

響「ね。…それを発見し、1艦隊6名以下を体系化したのが、加賀さんの元上司さんだっけ。」

日向「そうだな。加賀が酔った時、自慢げに話していたのを覚えている。」

296: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 11:46:30.25 ID:icBJggVQ0
響「まぁ、凄い人だよね。噂で聞く話によると、大変な事もしてたみたいだけど。」

日向「加賀はその話をすると、すぐムキになって否定してたな。…加賀が信用できるだけに、左遷提督について、加賀の語る人物像と軍内の一般認識に大きな齟齬があって…もう、よくわからないな。」

北提「…僕は、加賀さんをどうするべきなんだろうな。」

日向「…どうだかな。それは北提と加賀が決める事だ。」

響「ただ、サヨナラするとしたら…寂しくなるね。」

日向「まぁ、まずは無事に離島攻略を目指そうじゃないか。その話はそれからでも遅くはない。」

北提「…そうだね。」


作戦決行日、夜、工廠


北提「さて、目標の島はここから400キロ東にある。第一艦隊、加賀、瑞鶴、龍驤、日向、響は現時刻より基地を出撃、0400に作戦圏内到着、敵を撃破後帰投。第二艦隊、吹雪、那珂、妙高は2200より出撃、0700に作戦圏内到達後、周囲を哨戒をして命令まで待機とする。」

一同「はっ!」

北提「艤装を装備しているから体力的には問題ないはずだが、精神的には辛いだろう。しかし、本土から離島開拓の先遣隊が既にこちらへ向かっている以上、失敗するわけにはいかない。各員、心してかかってほしい!」

北提「では、第一艦隊は艤装装着後工廠内水路に降りてくれ。」

297: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 11:49:33.37 ID:icBJggVQ0
龍驤「いよいよやな…」ガチャ

日向「そうだな。」ガチャ

瑞鶴「余裕よね!」ガチャ

加賀「そうね。」ガチャ

響「とにかく、がんばろう。」ガチャ

加賀「第一艦隊、艤装装着完了。状態確認異常なし。命令待機中です。」

北提「よろしい。出撃を許可する。」

加賀「了解。第一艦隊、加賀、瑞鶴、龍驤、日向、響、出ます。」

………
……



加賀「各艦は間隔を開けて、尚且つ僚艦を見失わないように。迷子は御免よ。観測機をローテーションで飛ばしてるけど、各自で念の為潜水艦に注意。」

瑞鶴「あーあー。北提、全員、聞こえる?」

北提『バッチリだね。』

瑞鶴「無線感度良し!」

龍驤「しっかし夜の海は最高やね!風を切るこの感じ!」

日向「テンション高いな…空母に夜戦は辛いだろうに。」

龍驤「軍艦と艦娘はちゃうからな!敵が来たらワンパンやで!」

日向「はっはっは!それは心強いな。」

瑞鶴「…んで?加賀さん。なんで妙高さんと言い争うことに?」

加賀「…」

瑞鶴「無線入力切ってるわよ。」

加賀「…大反攻戦で、主張派の艦娘が大勢死んだわ。妙高の妹、那智もその一人。そして、指揮官の一人が左遷提督だったというだけよ。」

瑞鶴「…ねぇ、主張派は…なんで…」

加賀「軍事機密だから。あまり詳しい事はお話できないわ。今私が話してる事だって、聞かれたらとても怒られる。」

日向「…」

加賀「…そうね。軍機ついでにひとつだけ、教えてあげるわ。」

瑞鶴「…?」

298: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 11:50:24.26 ID:icBJggVQ0
加賀「主張派ってね。略語なのよ。」

響「…加賀さん?」

加賀「…主張派はね。艦娘の主張派、の略。」

龍驤「…は?…え?」

日向「初耳だぞ…」

加賀「そうでしょうね…だって、」

響「加賀さん。いけないよ。」

加賀「…あら。…ごめんなさい、戯言よ。忘れて頂戴。」

311: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 22:49:17.36 ID:icBJggVQ0
日向「…なぁ龍驤」ヒソヒソ

龍驤「なんや。」

日向「加賀、最近おかしいよな…」

龍驤「妙高はん来てから?」

日向「北提を矢でやったあたりからだよ。」

龍驤「まぁ、確かにな…あれはおもろかったけどビックリしたな。」

日向「…妙高さんの件にしたって、加賀さんは怒鳴るような人では無かったし、今回も、機密を漏らすような人では無かった筈だ。」

龍驤「やなぁ…苛々が募って昨日爆発して、今自棄になってるんちゃう?」

加賀「…そこ。集中なさい。」

龍驤「はーい。…怒られたわ。」

日向「…」

312: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 22:52:01.03 ID:icBJggVQ0
………
……



瑞鶴「うーん…(艦娘の主張…?…意味がわからないわね…響は何か知ってるのかしら。)」

龍驤「なんや自分、うんうん唸って。航行中やねんから前見いよ。」

響「大丈夫?」

瑞鶴「…ねぇ、響は何か知ってるんでしょ?加賀さんが言ってた事。」ヒソヒソ

響「…いや、知ってるというよりは…」ヒソヒソ

日向「なんだ、聞かせてくれ。」ヒソヒソ

龍驤「せや、なんで加賀さんを止めたん?」ヒソヒソ

響「…私の以前の知り合いに、同じ事を言ってる人が居た。」

瑞鶴「…それで?」

響「…その人は、暫くしたら怖い人たちに連れてかれて、二度と帰ってこなかったんだ。」

龍驤「こっわ…」

響「…私は、皆が好きだよ。北提も、瑞鶴も、日向も、龍驤も、勿論加賀さんも。…怖かったんだ。あの先を聞いてしまったら、皆が離れ離れになるかもしれないって。」

日向「響…」

響「加賀さんの気持ちもわかるよ。…でもね。私は今、ここにいる事の方が、大事かなって…。こういうのって保守的っていうのかな…わかんないな。」

龍驤「…」

313: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 22:52:29.85 ID:icBJggVQ0
瑞鶴「…とにかく今は、この話は忘れましょ。目前の敵を叩く事に集中しなくちゃ。その事は帰ってからね!」

龍驤「…せやな!鬱な話は忘れて、気合い入れていこや!ウホオオオワアアア!」

加賀「…随分と胸板の薄いゴリラね…」

龍驤「…キングコングスラムかますで。」

加賀「よろしい、来なさい。」

龍驤「うそやろ…」

………
……


加賀「離島を視認。偵察機が敵影を捉えました。一旦偵察機を回収、感ずかれないように離島に接近しますよ。」

瑞鶴「いよいよね。」

龍驤「やったるで!」

北提『よし、では十分近づいたら再び艦載機を飛ばしてくれ。』

加賀「では、気を引き締めて、取り掛かりましょう。」

314: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 22:55:30.62 ID:icBJggVQ0




離島の影。そこに艦娘達は居た。その上空を加賀の偵察機が飛んでいた。

「偵察機より、距離約5000東北東に推定イ級駆逐2、推定リ級重巡1、ヲ級空母1。先制攻撃の準備を。瑞鶴、龍驤。」

「ええで!」

「いつでもいけます!」

加賀は龍驤と瑞鶴からの返事を確認し、北提に指示を仰いだ。

「北提、こちら戦闘準備完了。敵目標を補足、全艦作戦圏内にて待機中。指示を。」

『艤装による攻撃を解禁。交戦を許可する。』

「「「了解。」」」

北提の指示直後、三人とも自分の艦載機を次々と発艦させていく。

「龍驤、瑞鶴、あなたたちは全機発艦させなさい。私は手元に幾つか残しておきます。艦戦による制空権の奪取を優先、敵艦載機不在の今が好機よ。」

加賀の指示に他二人は頷き、全ての艦載機を出し切った。

315: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 22:56:42.00 ID:icBJggVQ0
「こちら空母隊、艦載機発艦終わり。」

『よし。響を先頭に、日向はその後を追って。空母三人は艦載機による先制攻撃後、二人に追随して随時援護を行う事。全速前進!速攻!』

「「「了解!」」」

北提はさらに指示を出し、全員がそれに従う。そして、空母達の艦載機が離島の敵影を捉えたと同時に、

「!敵が艦載機に気付きました。対空砲火、来ます!」

敵がが動きを見せた。イ級やリ級による対空放火が行われ、ヲ級が艦載機を展開しようとする。しかし、

「今更遅いわ。」

加賀は薄い笑みを浮かべてそう呟く。ヲ級が艦載機を数機展開した時、最早敵艦隊はこちらの艦載機の攻撃圏内に入っていたのだ。

316: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 22:58:31.08 ID:icBJggVQ0
「…攻撃成功です!此方の被害は龍驤の艦戦、艦爆各1、敵の被害は空母、イ級1隻大破、もう1隻のイ級小破、リ級には回避されました!」

瑞鶴が興奮しながら叫ぶ。

(敵の戦力を大幅に削れて一安心、ね。後は日向と響が綺麗に〆てくれたら言う事ないのだけれど。…ただ、敵のリ級…あの爆撃の回避軌道はまさか…)

加賀は、攻撃から補給のため帰還させた艦載機を格納しつつ、心の中である疑念を抱いていた。リ級は対空放火をしつつも、複雑な軌道を取り、被弾していなかったのだ。

「残存しているイ級、及びリ級が此方に高速で接近してきています!接触まで、推定120秒!」

瑞鶴の報告に対し、北提は、

『もう一度艦載機による爆撃を頼めるか。』

と言い、加賀はそれに応じた。

「了解。残りの艦載機、発進します。」

再び加賀の艦載機が空を駆ける。

(さて、駆逐艦と重巡。これで沈んでくれると助かるのだけれど。)

艦爆が攻撃を開始した。しかし、

(駆逐艦を撃破したのは良いのだけれど…重巡の動き…これは…)

自慢の艦載機の爆撃を一発も喰らわない敵の重巡に対し、加賀の疑念は確信に変わった。

317: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 22:59:19.29 ID:icBJggVQ0
「…北提及び僚艦に進言。敵リ級重巡が我が軍の、爆雷撃回避マニュアルに準拠する航行軌道を描いているわ。…敵性リ級が、かつて沈んだ同胞である可能性があります。」

「!!!」

艦隊の中に緊張が走った。

「え、嘘やろ?流石に…こんなとこにおる?」

龍驤が冷や汗をかきながら加賀に問うが、瑞鶴の報告によってそれは遮られた。

「前方に推定リ級重巡を直接視認!更に接近してきます!…あれは、重巡のシルエットではありません!」

318: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 23:00:53.90 ID:icBJggVQ0
上空からは重巡に見えたそれは、同じ地平から見ると全く違う姿をしていた。瑞鶴の若干焦ってうわずった声に、北提が落ち着け、と瑞鶴を宥めながら言う。しかし、その北提の声もどこか震えていた。

『…今まで以上に、慎重に行ってくれ。日向を軸に戦闘を組み立てる。響は魚雷による波状攻撃を基本とし、空母三人は弓と艦載機で、同士討ちにならないよう注意しながら援護だ。そして日向、敵が何であろうとお前は背後に鼠一匹通すな…!』

「任せな、北提…!」

日向は薄く笑い、北提に答えた。

「ここが正念場よ、しっかり!」

瑞鶴も気合いを入れ直し、惚けていた龍驤を揺さぶる。我に帰った龍驤は、どうにかなるやろ!と叫びつつ、己の艦載機を展開していった。

『敵は空爆を避ける為、高速接近から格闘戦を挑んでくる事が考えられる。勢い余って味方ごと爆撃しないように、三人とも!』

「わかっているわ。…そろそろね。響!空から援護します。雷撃を!」

加賀が叫んで、再び艦載機を展開し、瑞鶴と龍驤もそれに続いた。

319: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 23:01:51.91 ID:icBJggVQ0
「任せて!」

響は更にスピードを上げ、敵の横に迂回しつつ魚雷を放とうとする。目標が艦載機に翻弄され、その好機に魚雷を水の中に離そうとしたその時。

艦隊に電撃が走った。敵のリ級と思しき存在が、顔を上げたのだ。

「…うそだ。」

それを間近で見た響は完全に停止した。驚きと恐怖に体を支配されて。敵の眼前で。

「響ぃーーー?!」

瑞鶴の悲鳴があがる。響と敵の距離が近すぎて、艦載機による援護は難しい。最早、響を守るものは何も無かった。

「北提!指示を!」

加賀が北提に指示を仰ぐが、

『そん…な…』

北提も戦場の映像を見て、思考がパニックに陥っていた。

320: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 23:06:37.05 ID:icBJggVQ0
「チッ…!…日向!急いで響のカバー!私も前に出るわ!…瑞鶴、龍驤。後ろに響を逃がすから、その救援を。そして…最悪の場合、私と日向及び響ごと敵を爆撃なさい。」

叫ぶ加賀に日向は返事も返さず加速して行くが、響にたどり着くのは敵の方が早かった。

「お久しぶり、響ちゃん。」

「いす…ず…そん…な…」

笑顔で響に接近し、話しかけてくる艦は。リ級などでは無く。姿形が五十鈴に酷似していて。そして、どこまでも黒かった。

「響ちゃんも…一緒に逝きましょ?」

その細腕で響の首を締めながら、軽々と体を持ち上げ、五十鈴は笑顔で言う。

「皆も居るのよ…きっと響ちゃんが居ると、もっと楽しいわ。」

その笑顔はどこか歪んでいて。

「あ…が…」

息が出来ずに、声の出ない響の言葉は涙となって頬を伝った。五十鈴はそれでも、笑いながら首を締め続けた。近付く日向には気付かずに。

321: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 23:07:59.94 ID:icBJggVQ0
「…響に、触れるなァ!!」

緊褌一番、気合十分の抜刀。日向の抜刀は、驚く五十鈴の両腕を、その主砲ごと切り飛ばした。
そして、日向は崩れ落ちた響を庇うように立つ。

「ああ…ああああああああああああああああ!!あああああ!!私の、私の腕ェェェ!!」

「下がれ、響。こいつは…私の獲物だ。」

「ゲホッ…ありがと、日向…」

狂ったように叫ぶ深海棲艦から、響は退避していった。

「…あああ…そう?貴女は誰?敵なのね?残念…」

両腕を失って尚、漲る敵意と一緒に、五十鈴は腰の砲を日向に向ける。

322: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 23:09:02.70 ID:icBJggVQ0
「是非も無し。」

呟く日向は刀を右上段に構え、艤装を操作し、同じく砲を向けた。

(踏み込むべきか…砲撃すべきか…微妙な距離だ。一撃で首を跳ばす事は可能かも知れないが…まず間違いなく撃たれる…いや、砲撃戦をしたとしても撃たれるな…しかし主砲は両手ごと切り飛ばした…副砲を艤装で受けるか。)

日向は一瞬で思考し、

「…決まりだ。」

凄まじい踏み込みで距離を一気に詰めた日向は、砲撃を一切行わずに刀で首を取りに行った。
それに対し、五十鈴は腰の砲を斉射し、更にその勢いで後ろに下がろうとする。
しかし、五十鈴の放った砲弾を日向の艤装はしっかり受け止め、その刃の勢いを止める事は叶わなかった。

「獲った…!」

323: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 23:11:07.39 ID:icBJggVQ0
が、日向の刀は五十鈴の首には届かず、胴を袈裟に斬り裂くだけに終わった。

「…〜〜!!」

五十鈴は苦痛に顔を歪めたが、闘志は揺るがず、刀を振り下ろして姿勢が戻りきっていない日向に再び砲を向ける。しかし。

ドスッ

「…え?」

発車直前に五十鈴の体に、鈍い衝撃が走り、バランスを崩した。鋼鉄の矢が、日向の背後から五十鈴の鎖骨に打ち込まれたのだ。

「日向、少し下がって、体制を立て直して。」

その矢を放った加賀が、追撃の矢を弓につがえつつ告げる。

324: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/14(土) 23:12:19.16 ID:icBJggVQ0
「助かった、加賀。」

「詰めが甘いわ、日向。」

体制を立て直した日向は刀を正眼に構えなおし、後ろに下がる。その間に加賀はもう一発矢を放った。
ドスッと言う音とともに矢は五十鈴の太腿を貫き、逃げようとする五十鈴の機動力を奪った。

「あぐっ…痛ったいわね!くそっ!くそっ!人間も!お前らも!全員殺してやーーー」

動けなくなった五十鈴は吠えたが、その叫びは最後まで続かなかった。
加賀が事前に放った艦爆で追撃を行ったからだ。日向も五十鈴から距離を取った今、爆撃を躊躇する理由は無い。
動けない標的に対する爆撃の命中率は高く、全てが終わった後、そこには黒い残骸が浮いているだけだった。

337: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/15(日) 17:40:30.71 ID:9TfbCCZ90
加賀「標的、喪失。」

日向「…刀を納めても問題なさそうだな」チン

龍驤「日向!大丈夫か?!撃たれてたやんな?!」

日向「何、軽巡如きの砲撃、問題無いさ。それよりも…」

響「五十鈴が…五十鈴が…」

日向「…響…」

338: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/15(日) 17:41:20.15 ID:9TfbCCZ90
瑞鶴「ちょ、加賀さんは大丈夫?」

加賀「鎧袖一触よ、心配要らないわ…と言いたいところだけど。脚をやったわ。少し速度を出し過ぎたかしら。」

龍驤「そういえば、脚が良くないんやったっけ…」

瑞鶴「…なんでそんな無理するのよ!私だって弓も艦爆もあるわ!少しくらい私に任せても…」

加賀「…こういうのは、慣れてる者がやるの。」

瑞鶴「それでも!後ろで見てて、しかも万が一の時は、味方ごと爆撃しろって…歯痒いのよそういうの!」

加賀「私がそう命令したのだから、私が行かないと。僚艦に死ねとは言えないわ。」

瑞鶴「〜〜〜!!!」

龍驤「ちょ、瑞鶴落ち着きーや!なんで怒ってんねん!」

北提『…瑞鶴。それは僕の失態だ。すまない。』

339: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/15(日) 17:43:16.91 ID:9TfbCCZ90
瑞鶴「…ッ!」

加賀「随分とご無沙汰ね、北提。」

北提『すまない、僕が命令できなかったから…ありがとう、日向、加賀さん。…また助けられてしまった…』

加賀「…北提。もっとしっかりなさい。あなた、日向が居なければ響を失っていたかもしれないのよ。」

北提『…返す言葉も、無い…』

加賀「提督として、あらゆる可能性を考慮し、常に最悪を想定なさい。」

北提『そうだ、ね…』

加賀「…驚いて指揮も出来ないなんて、情けない事…」

340: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/15(日) 17:43:54.96 ID:9TfbCCZ90
日向「お、おいおい。そのくらいに…皆も無我夢中だったし…」

響「元はと言えば、私が動けなくなったのが…」

加賀「それでも。響を先頭に据えたのは北提よ。…指揮官がそれでは困ります。」

日向「むう…」

北提『…とりあえず、今は安全に帰投を目指してほしい。後の事は後続が引き継ぐ。』

加賀「…了解。…帰りましょう。」

日向「…加賀、肩を貸そう。脚が悪いんだろう。」

加賀「あら、ありがとう。」

341: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/15(日) 17:44:23.86 ID:9TfbCCZ90
………
……



帰路


龍驤「(実質被害0で勝ったっちゅうのに、なんつー重い空気やねん…)」チラッ

龍驤「(皆ずっと無言やな…五十鈴やっけ、深海棲艦。ウチは知らん艦娘やったけど…響と北提は五十鈴の知り合いやったんかもしれんな…響がすごいショックを受けてたし。)」

瑞鶴「…」イライラ

龍驤「(瑞鶴は何故か機嫌がクソ悪いし…なんでやろ…)」

龍驤「…はぁ…」

342: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/15(日) 17:45:37.19 ID:9TfbCCZ90
数時間後、北の基地、港


龍驤「あー!やっと着いたで!」

加賀「…あら、北提のお出迎えね。」

日向「…ああ。」

北提「…皆、よく帰ってきてくれた。任務、ご苦労様。今日はもう休んでほしい。明日の1000に執務室に集合。以上、解散。…響はちょっと残って欲しい。」

一同「了解。」

龍驤「なぁ、加賀さんと日向と瑞鶴、一杯やらん?」

加賀「やりましょうか。」

日向「構わんよ。」

瑞鶴「…私は、いい。」

龍驤「え?瑞鶴?…行ってしもた。」

日向「…まぁ、まずは風呂だな。そのあとゆっくりやろうじゃないか。」

343: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/15(日) 17:50:25.31 ID:9TfbCCZ90
………
……



執務室


北提「疲れているところを済まない。早速なんだが…響。あの五十鈴に見覚えがあるか。」

響「…五十鈴は、前の前の同僚だったよ。明るくて、いい人だったけど…でも、大反攻戦で沈んだんだ…」

北提「やはりそうか…僕もあの五十鈴を知っている。本土でね、五十鈴がいた艦隊を指揮する司令官の補佐をしていた時代があった。響の事も見た事はあったよ。」

響「え…じゃあ私と昔同じ部隊に居たってこと?」

北提「まぁ、僕もまだ司令官ではなかったから、艦娘とは殆ど接せなかったんだけどね。唯一、五十鈴はよく話す仲だった。」

響「そうなんだ…知らなかった…」

北提「…あの深海棲艦。やっぱり大反攻戦の時に沈んだ五十鈴、だよね…彼女は、僕が、提督を志す…きっかけとなった艦娘だったよ…艤装も、姿も…当時と、よく似ていた…」

響「北提…」

北提「いや、すまない。確認だけとりたかったんだ…中央本部への報告用に。…変な事を言って済まなかったね。もう行ってくれて構わないよ。」

響「…は、い…失礼、します。」
ガチャ、バタン

北提「…何の因果なんだ…くそ…加賀さんはああ言うけど、冷静でいられる訳が無いさ…無いんだ…!…いや、それでもって事か…」

響「…こんな時、どう声を掛ければ良かったんだろう…」

344: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/15(日) 17:50:55.67 ID:9TfbCCZ90
………
……



艦娘寮内


ガン!ガン!ガン!
龍驤「(瑞鶴の部屋から凄い音が…!)」

ガチャ
龍驤「大丈夫か瑞鶴!?」

瑞鶴「くそっくそっくそっくそっ!」ガン!ガン!

龍驤「ちょ、何机殴ってんねん!やめーや!拳痛めるで!」ガシィ

瑞鶴「離し…て!」ブン

龍驤「痛ぁ!…落ち着きーな!勝ったのになんで自分が怒ってんねん!悪い事してへんやろ!」

345: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/15(日) 17:51:24.78 ID:9TfbCCZ90
瑞鶴「あんたは悔しくないの?!私達、後ろで見てろって言われたのよ!万一の際は味方を爆撃しろって!」

龍驤「何言うとんねん!ウチらが後ろにおらんとあかんかったやろ!」

瑞鶴「そんなの…誰でもできるじゃない!」

龍驤「…何を、」

瑞鶴「私は!私は!響が嬲られてても、咄嗟に動けなかった!日向や加賀さんみたいに!情けない悲鳴だけ上げて!…ほんと、私って馬鹿ね…平時に、日向や加賀さんに馬鹿みたいに対抗心燃やして!いざという時役立たずなんだからさぁ!」

龍驤「…瑞鶴…」

瑞鶴「…もう行ってよ…」

龍驤「…ウチは瑞鶴がーー」

瑞鶴「煩い!煩い煩い煩い!もう出てって!」

龍驤「…ごめんな…」
バタン

瑞鶴「ぁ…」

瑞鶴「ごめん…龍驤…」

瑞鶴「もうやだ…私…自分が悪いって…自分が弱いってわかってるのに…」グスッ

346: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/15(日) 17:52:15.40 ID:9TfbCCZ90
瑞鶴の部屋の外


龍驤「…なんや、二人とも盗み聞きかいな…」

加賀「あんな叫んでいて、盗み聞きも何もないわ。」

日向「…」

龍驤「…加賀さんはさ、歴戦の空母やし、きっと深海棲艦化した艦娘とも戦った事あるんやろうからさ。咄嗟に動けるのはわかんねんけど。」チラッ

日向「…なんだ。」

龍驤「いや…日向、よう突っ込めたな、思って。ビビるやん、真っ黒な艦娘歩いてきたら。」

日向「…勝手に身体が動いていた。誰だって、家族が危険に晒されたら、咄嗟に動くだろう。私が一番近かったのだしな。」

龍驤「…ほうか。」

加賀「…さ、早く風呂に行きましょう。」

龍驤「…ほっといてええんかな、瑞鶴。」

加賀「アレはこの程度で折れるタマでは無いでしょう。…後悔を繰り返して、艦娘の意思は強くなる。我々がすべきは、明日からまた平時通りに接してやる事よ。」

龍驤「…そうなんかな。」

日向「…まぁ、なんだ。もう風呂場で酒を飲むか。燗だ燗。部屋から隠し持ってきた。」

加賀「あら。良いわね。」

龍驤「…あーもーそーしよ。もーウチはなんもわからん。」

347: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/15(日) 17:54:00.98 ID:9TfbCCZ90
ドック、風呂場


日向「風呂で飲む日本酒は何故うまい!」

龍驤「かぁ〜!」

加賀「…」くいっ

日向「…しっかし、加賀。今日は北提にやたらと厳しかったな。」

加賀「…甘くして、後々失敗されるよりは良いわ。この先、こんなことなんていくらでもあるんだから。」

龍驤「…そうなんかね。」

加賀「指揮官の仕事は決断する事よ。その結果がどうであれ、決断しなければならない。たとえ全滅する事になったとしてもよ。今回の彼は最悪だった。」

日向「まぁ、それはそうかもしれないが…」

加賀「北提に甘えは許されない。彼は、艦娘を家族と呼んだ。それに対し、日向は覚悟を見せた。彼はそれに応えなければならない。」

日向「…」

348: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/15(日) 17:54:57.19 ID:9TfbCCZ90
加賀「…彼は艦娘に甘い。それはそのまま彼に跳ね返ってくるのよ。」

龍驤「…というと?」くいっ

加賀「艦娘は大事にすればする程、良いパフォーマンスを発揮するかもしれない。家族のように接すれば団結力も上がるでしょう。同時に、喪失した時の反動も大きくなるわ。物質的にも精神的にも。」

日向「まぁ、な。」

加賀「だから、北提は大きな失敗は許されないのよ。…彼にはもっとしっかりして貰わないと。」

龍驤「…失敗できない、か。…最近の加賀は饒舌やね。」

加賀「…少し。」

龍驤「なんやかんやで加賀も北提の事、考えてるんやなぁ。」

日向「…私達も、もっと練度を上げないとな。」

龍驤「…だぁー!もうウチに任せとけや!今回はウチ、全然ええとこ無かったけど!そのうち響も日向も瑞鶴も加賀も深海棲艦も!全員張り倒したるわ!」

加賀「そう。それは楽しみね。」クスッ

日向「はっはっは!私も負けてられんな!今は飲め飲め!」

349: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/15(日) 17:55:45.84 ID:9TfbCCZ90
翌1000、執務室


北提「皆、揃ったかい。」

一同「はい!」

北提「えっと、今回の戦闘記録を中央本部に報告した所、僕と僕の艦隊、つまり君達に対して本土への出頭命令が来た。」

一同「?!」

北提「深海棲艦化した艦娘に関してのデータ収集、だそうだ。既に本土からは、代わりの駐留部隊が派遣されている。数日後に到着する予定だそうだ。」

響「出頭、命令…」

北提「ああ、いや。君達がそこまで心配する必要は無い。君達は極めて高く評価されているし、今回の戦闘でもほぼ被害を出さなかった訳だし。艤装の大規模な整備と改修、及び休暇も兼ねてとの事だ。」

日向「休暇…初めてだな…」

龍驤「…艦娘の休暇とかあり得るんか…」

北提「無論、僕の監督下での話だけどね。だからまぁ、気軽に、気軽にね。」

一同「了解。」

358: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/16(月) 11:25:42.59 ID:80dPXAIw0
場面は再びとある島に戻りーー


ある日、執務室


榛名「提督、お荷物が届いてましたよ。」

提督「ああ、取りに行ってもらって悪いな…本土からか。」

榛名「…本土から、ですか?」

提督「この島に来る前に少しな…」

提督は割れ物注意と書かれた荷物を開けた。

提督「これは…アードベッグ。…何故こんな貴重な物が…手紙が付いてるな。」

『私の上司が幾つか持っていたものだ。一本開けてみて、あまりにも香りが気に入らなかったらしく、捨てようとしていた所を譲り受けた。君が喜ぶだろうと思ってな。』

提督「そうか…まぁ、アードベッグは人を選ぶだろうな…ラッキーだ。」

榛名「アードベッグ…?」

提督「ウイスキーだ。スコッチだから洋酒だな。中々手に入らん。」

榛名「へぇ…」

提督「気になるか?」

榛名「は、はい。」

提督「今夜、部屋に来ると良い。」

榛名「お、お邪魔します!」

359: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/16(月) 11:26:31.00 ID:80dPXAIw0
夜、提督の部屋


コンコン
榛名「は、榛名です!」

提督「お入り。」

ガチャ
榛名「失礼します…あ、あれ?」

足柄「あら、榛名。もしかしてお邪魔しちゃった?」

榛名「い、いえ!そんな事は…(…むぅ…)」

提督「すまないな、榛名。さっき無理矢理入られてしまった。」

足柄「無理矢理とは酷い言われようねー。」

提督「そう言いつつ帰らないんだな、お前は。」ハァ

360: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/16(月) 11:27:10.96 ID:80dPXAIw0
提督「ほれ、アードベッグだ。」ゴトン

足柄「…え、スコッチ?これどこで?」

提督「本土から知り合いが寄越してくれた。」

足柄「すっごいわね…ワクワクしてきたわ…」

提督「そういえば、榛名は初めてだったか、ウイスキー。」

榛名「は、はい。」

足柄「いきなりアイラモルトはウイスキー嫌いになりそうね。しかもストレートって…最初ならジョニーウォーカーなりグレングラントなりの方が良いんじゃないかしら。ハイボールとか、せめてトワイスを…」

提督「まぁまぁ…とりあえず、飲んでみろ、二人とも。」コトン

榛名「い、いただきます!…うっ?!」クンクン

361: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/16(月) 11:28:15.05 ID:80dPXAIw0
足柄「…いやー、やっぱアードベッグ、香りが正露丸よねー。」

提督「…だが、突き抜けるような後味と残り香は、他ではあまり無い。」グイッ

榛名「…ウイスキーって結構キツイ、ですね…」チビチビ

提督「まぁ、これはな…」

足柄「言わんこっちゃ無いわね。…あぁーピーティー…」グィ

榛名「(うう…榛名、これ苦手です…でも、折角提督が下さった物…)」

提督「…ふむ。」

362: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/16(月) 11:29:34.45 ID:80dPXAIw0
提督「折角だ。アレを開けよう。」

榛名「…?」

足柄「おお…?」

提督は瓶を一本、棚から取り出した。

提督「竹鶴。17年。私の一番好きなウイスキーだな。」

足柄「…ウイスキー離れを防ごうって魂胆かしら…」

提督「これを榛名に飲んでもらう。」

足柄「あたしには?」

提督「アードベッグがあるだろ…」

足柄「ケチ。」

提督「…」

363: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/16(月) 11:30:46.63 ID:80dPXAIw0
榛名「あ、でも、前のがまだ残って、」

提督「ほれ、そのグラスを寄越せ。私はそれを貰う。」

榛名「あっ…!」

提督は榛名からアードベッグの入ったグラスを奪い、新しいグラスを榛名に渡した。

榛名「の、飲んではダメです!それは榛名の唾液が付いてて汚いですから…」

提督「何を言っとるんだお前は…」グイッ

榛名「あぁっ…」ドキ…

提督「グラス、出せ。」

榛名「は、はい。」

提督「…」トプトプ

榛名「ありがとう、ございます。」

364: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/16(月) 11:31:39.75 ID:80dPXAIw0
足柄「今、なんだか青春を感じたわ!」

提督「青春か。遠い昔の話だ。艦娘にも有るのか。」

足柄「…小説で読んだだけよ。あるわけないじゃない、戦闘マシーンに青春なんて。」

提督「…」グイッ

榛名「…あれ…これ、さっきと同じ種類のお酒なんですか?」

提督「そうだ。」

榛名「なんというか、全然違います…美味しいです…煙の香り…?」

提督「それは良かった。」

足柄「あぁー!いいなぁー!いいなぁー!」

提督「…ほらよ。」ゴト

足柄「イエーイありがとー!」

提督「全く…騒がしいな…静かに飲めんのか、静かに。」

榛名「…こういう雰囲気は、お嫌いですか?」

提督「…まぁ、悪いとは言わん…」

足柄「これがツンデレって奴よ、榛名!」

榛名「デレ…?」

提督「…何を言ってるんだか…」

378: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/17(火) 01:41:41.02 ID:g2WQyobL0
執務室


榛名「…(提督がこの島に着任してから、早いものでもう半年、ですか…)」

提督「榛名、この書類の確認を。あと、雷から日用品の補充要請が上がってきている。目を通しておいてくれ。」

榛名「はい。わかりました!」

提督「…最近、仕事が早くなってきてるな。素晴らしい。」

榛名「え、本当ですか?自分だと中々実感が…」

提督「初期に比べると目覚ましい進歩だ。秘書艦業務ならもう不知火にも引けを取らないだろう。」

榛名「えへへ…嬉しいです…」

提督「お陰で、私の仕事にもかなり余裕が出てきたよ。」

榛名「…榛名は、お役に立ててますか?」

提督「ああ、勿論だ。」

榛名「良かった…」

提督「その書類が済んだら、一旦休憩を取ろうか。昼飯にしよう。鳳翔に休みを与えているから、最近はずっと雷が作ってくれているが…きちんと食べないと叱られるからな。」

榛名「はい!」

379: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/17(火) 01:43:17.55 ID:g2WQyobL0
食堂


雷「ささ、司令官!食べて食べて!」ドン

提督「あ、ああ…ありがとう…」

榛名「(同じ昼食なのに、提督のだけ量が多い…食べきれるんでしょうかアレ…)」

雷「今日は、あなたの好きな豚カツよ!ちゃんと食べて、健康に過ごすのよ!」

提督「そうだな…頂くよ。」モグモグ

提督達が食堂で昼食を食べていると、哨戒を終えた足柄が食堂へ入ってきた。

足柄「あー疲れた。雷ちゃんごはんー…うわ、提督、量やば…」

提督「…」モグモグ

足柄「なんか提督だけ、日に日に量が増してるわね…」

提督「…どうだ、羨ましいだろう…」モグモグ

足柄「遠慮しとくわ…」

380: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/17(火) 01:44:10.22 ID:g2WQyobL0
雷「はい、足柄さん!」

足柄「ありがとー雷ちゃん。いただきまーす。」

雷「あら、提督ったら、皿から溢れてるわよ!」

提督「ああ、すまん…」モグモグ

足柄「…(そりゃ、あんなに皿に盛ったら溢れるわよ…)」モシャモシャ

雷「もう、仕方ないわねぇ…」ゴシゴシ

提督「…」モグモグ

榛名「…(提督、大丈夫でしょうか…)」

381: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/17(火) 01:45:50.37 ID:g2WQyobL0
………
……



提督「…」モグモグ

足柄「ご馳走様!」

雷「お粗末様!」

足柄「じゃ、お先に行くわね。バイバーイ。」

榛名「は、はい!お疲れ様です。(私も食べ終わりましたが…)」

提督「…うむ、うまかった。ご馳走様。」

雷「はあい。お粗末様でした。」

榛名「(秘書艦として、食事の量の事を雷に注意した方が良いのでしょうか?迷います…)」

提督「さて、午後からの仕事も頑張ろうか、榛名。」

榛名「はい!(まぁ、今度で良いでしょう…提督も何も言わない訳ですし。)」

雷「あ、二人とも!洗濯物、用意しておいてね!」

提督「わかった。」

榛名「はい。」

382: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/17(火) 01:48:20.66 ID:g2WQyobL0
執務室


榛名「うーん…」

提督「どうかしたか。」

榛名「いえ、本土から配給された武装の数が一致していたか不安で…」

提督「そうずさんな管理はしていないと思うが…一応工廠を確認してきてもらえるか。哨戒に出てる隼鷹の標準兵装以外は今、揃っている筈だ。」

榛名「わかりました。行って参りますね。」

………
……



榛名「(装備は無事揃ってました。私の気のせいで良かったです。執務室に戻らないと…)」テクテク

榛名「…?(執務室のドアが半開きに…あ、雷さんが提督の洗濯物を回収に来たのですね。何やら二人で話してるみたいですが…)」

383: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/17(火) 01:49:31.46 ID:g2WQyobL0
雷「はい、洗濯物はこれだけ?」

提督「そうだな。」

榛名「(…なんとなく入りづらいです…雷さんが出るのを待ちますか…)」

雷「わかったわ。…ああ、あと、司令官。」

提督「ん?」

雷「今日のお昼の量、あれくらいで丁度良かったかしら?少しずつ増やして様子を見てたんだけど。」

提督「…確かに満足したが…よく私が大食らいだと気がついたな?不満を言った事は鳳翔にもお前にもない筈だが。」

榛名「(…え!) 」

雷「見てたらわかるわ。ダメよ?ちゃんと言わないと。食は全ての基礎なんだから。幸い食料は十分すぎるほど配給されてる訳だし。」

提督「雷には敵わんな…」

雷「ふふふ!司令官、もっと私に頼っても良いのよ?」

提督「十分頼りにしてるさ。」

雷「…もーっと、私、私に、頼っても良いのよ?」

提督「…これ以上お前に頼ると、ダメになってしまいそうだな…」

雷「あら。それは褒め言葉として受け取っておくわ。…それじゃ、私はもう行くわね。無理しちゃダメよ?」

提督「ああ。ありがとう。…榛名?ドアの前で突っ立って無いで、入って来ると良い。」

榛名「あ、はい。すみません。」

雷「あら、榛名さんもお仕事頑張ってね!じゃあ、私はこれで!」
バタン

提督「どうだった、装備の方は。」

榛名「きちんと揃っていました。問題ありません。」

提督「それは良かった。さて、続きの業務に移るか…」

榛名「はい…(…お昼の量が多かったのは、雷さんの勝手では無く、提督を思っての事だったのですね…注意なんて、とんでもない…榛名はまだまだです…)」

392: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/18(水) 00:25:59.55 ID:V0BL+PM30
ある日


足柄「あら、榛名?ちゃんと寝てるー?」

榛名「っ…。はい、榛名は大丈夫ですよ。」

足柄「嘘はダメー。今日はきちんと寝ること。良いわね?頑張るのは良い事だけど、あんまり寝てないと提督にご迷惑がかかるわよ?」

榛名「う…はい…」

足柄「よろしい。」

榛名「…(足柄さん、とっても優しいです…そう言えば、他の人にも…)」

393: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/18(水) 00:27:15.83 ID:V0BL+PM30
………
……


榛名の回想


榛名「(今日も秘書艦業務、中々疲れました…寮に帰りますか…。…あれは足柄さんと隼鷹さん?)」

足柄「隼鷹?大丈夫?疲れてるんじゃない?」

隼鷹「うーん…そりゃねー…鳳翔さんのアレもあるし…」

足柄「うーん…明日の哨戒、あんた1600からで良いよ。1200から1600の四時間、あたしが追加で代わりにやってあげる。」

隼鷹「え?でも、悪いよ。0400から足柄ずっと哨戒してるだろ?12時間連続はしんどいんじゃ…」

足柄「1日だけよ、1日だけ。その間にゆっくり休みなさい。良いわね。」

隼鷹「ええー…悪いよー…」

足柄「ほら、もう決めたから!鳳翔さんに伝えて、たまには長めに睡眠とりなさい。」

隼鷹「なんだよ…ありがと。」

足柄「良いってことよ。」

394: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/18(水) 00:28:09.04 ID:V0BL+PM30
………
……



榛名「(お昼の為に食堂に来ましたが、先客が。)

足柄「雷ちゃーん。哨戒終わって時間あるから家事手伝うわー。訓練所は不知火さんが占拠してるし。」

雷「あら、ほんと?助かるわ。」

足柄「あたしが洗濯しちゃうから、お料理やっちゃってー!」

雷「ありがと!」

………
……



榛名「(あら、不知火さんと足柄さんが厨房に…料理の講習でしょうか?)」

足柄「不知火さん、ちょっと塩とってー。」

不知火「これ、ですか?」

足柄「違うわ!それは砂糖よ…」

不知火「こっちですか?」

足柄「そうそう…あー!そんなに入れちゃダメよ。塩は一つまみ、良いわね。」

不知火「はい。」

榛名「(榛名も教えてもらいたかったです…)」

395: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/18(水) 00:28:53.29 ID:V0BL+PM30
………
……


榛名「(あ、提督と足柄さんです。)」

足柄「提督、あんた風邪ひいてんじゃないの?」

提督「そんな事はな…な…」ッハクション!…ズズー

足柄「…」

提督「…」

足柄「…自己管理…」

提督「…少し仕事が詰まっててな…」

足柄「…はぁ。風邪薬持ってきたげる。早めに寝なさいね。」

提督「…ありがたい。」


………
……



回想終了


榛名「(…やっぱり足柄さん、気配りが上手です…たくさん助けられてます。それに比べて私は…頑張らないと…)」グッ…

396: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/18(水) 00:36:41.39 ID:V0BL+PM30
短いですが、とりあえずここまで

397: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/18(水) 01:03:25.89 ID:V0BL+PM30
後日、深夜


榛名「やっと品目の整理が終わりました…」

提督「うむ、ご苦労。今日はこのくらいにしておこうか。」

榛名「…すみません、提督。私の仕事が遅くて…」

提督「いや、大丈夫だ。輸送船の来る時期はいつもこんな感じだな。」

榛名「…それでも、私はもっと頑張らないと…」

提督「焦れば事を仕損じるぞ。…お前はよくやってくれている。この程度の事で気を落とす必要はない。」

榛名「…ありがとう、ございます…」

提督「…寮まで送ろう。」

榛名「え…いえ、そんな。」

提督「ほら、行くぞ。」

榛名「あう…すみません…」

398: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/18(水) 01:04:08.25 ID:V0BL+PM30
艦娘寮


榛名「あの、ありがとうございました。」

提督「構わんさ。また明日、というか最早今日だが…頑張ってくれ。」

榛名「はい。」

提督「…」ヨシヨシ

榛名「わ、わ。」

提督「心配するな、榛名よ。お前は私の役に立っている。」

榛名「…はい。」

提督「早めに休めよ。」

榛名「ありがとう、ございました。」ペコ

提督「ああ。ではな。」

提督「喉が渇いたな…眠いが…自室に戻る前に、食堂で水を汲もう…」

399: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/18(水) 01:04:42.82 ID:V0BL+PM30
食堂


提督「…」

鳳翔「…」スゥ…スゥ…

提督「(何故、自室で寝ずに、食堂の机で寝ているんだ…この人は…)」

鳳翔「…」ツー…

鳳翔の閉じられた瞳の目尻から雫が流れて、透明な軌跡を作った。

提督「(…また、涙が…まさか、毎晩こうしてここで泣いているのか?…何故だ?)」

鳳翔「…」ポロポロ

鳳翔「ぁ…いか、ないで…」

提督「…?!…寝言か…」

鳳翔は、目を瞑ったままの苦しそうな、悲しそうな表情で、虚空へと手を伸ばしていた。

提督「…」

提督は、鳳翔の向いに座ると、その手をそっ、と握った。反対側の手で鳳翔の頭を優しく撫でると、その苦しそうな表情が和らいだように、提督には見えた。

提督「…しばらく、このままでいてやるか…」

夜は、更けていく。

409: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/19(木) 18:12:09.75 ID:JiizqP5h0
早朝、食堂


鳳翔「ふぁ…あら?」ムクッ

鳳翔「…提督は何故、私の手を握りながらこんな所で寝ているのでしょうか…」

鳳翔「ん…朝日?…もう、そんな時間ですか…久しぶりですね、こんなに眠れたのは…」

鳳翔「…ふふふ。あなたが私の手を握って下さったからですか?提督。」頬ツンツン

提督「…」zzz…

鳳翔「…しかし、こんな所を見られると、提督にご迷惑がかかりそうですね。私は先に失礼しましょうか…。あ、そうだ…」

鳳翔「よいしょ、この毛布を掛けておきましょう…では、提督。…もう少し、お休み下さいね。」

鳳翔は提督の髪をすっと撫で、静かにその場を去った。影からその姿を見つめる者に気付かずに。

410: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/19(木) 18:12:46.37 ID:JiizqP5h0
雷「…朝食の用意をしようと思って来たら、2人が手を繋いで寝てたからビックリしたわ…」テコテコ

雷「…提督ったらはしたないわねぇ…もうすぐ0500だけど、起こしたほうが良いかしら。うーん…」

雷「まぁ、もう少し寝かせてあげましょうか。どうせすぐに人が朝食に集まるし、その時起きるわよね。」

雷「…司令官、鳳翔さんが好みなのかしら…むぅ。…やだ、私ったら何を…さ、準備準備…」

411: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/19(木) 18:13:32.99 ID:JiizqP5h0
食堂0530


隼鷹「おはよーみんな。不知火は哨戒お疲れ様!」

榛名「しーっ。隼鷹さん、静かに。」

隼鷹「あん?…提督が寝てる…」

不知火「何故こんなところで…」

隼鷹「…これは、衝撃的に起こすべきだ!」

榛名「で、でも、提督はお仕事で疲れてらっしゃいますから…」

隼鷹「いいや!起こすね!この冷水で…」ガバッ

雷「ちょおっと待ったー。」ドス

隼鷹「オンギャァァァ!しゃもじで鳩尾をやられた…」

雷「起こすにしても、水はダメよ、水は。…でも、司令官、最近は誰よりも遅く寝て、誰よりも早起きだったから。榛名さんの気持ちもわかるわ。」

412: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/19(木) 18:14:30.66 ID:JiizqP5h0
隼鷹「雷と榛名は甘い!こういう時こそ厳しくならないと!」

不知火「…ここぞとばかりに提督を苦しめようとしてるように、私には見えますが…」

隼鷹「そんなことはない!これは部下として上司を思ってのことであって、こう、爽やかな目覚めを…」

不知火「本音は?」

隼鷹「普段あまり隙を見せない提督に、酒を取られた仕返しをしたい。」

不知火「根に持ちますね…隼鷹さん…」

隼鷹「あたしにはわかる。提督なら笑って許してくれる。ああ!未来が見えるようだよ!」

榛名「隼鷹さん…」ハァ

雷「ほら、ご飯できたわよ。馬鹿な事言ってないで、自分で運んで運んで。」

榛名「いい匂いです。」

隼鷹「美味そうだな!いただきます!」

413: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/19(木) 18:17:56.36 ID:JiizqP5h0
………
……



「いい匂い〜!提督〜?ご飯〜?」

「ああ、演習お疲れ。今できた。」

「うふふ…いつもありがとね。」

「ああ。しかしこれでは、まるで主夫だな…」

「あらあら!夫婦だなんて、嬉しいわ。」

「…寝言は寝て言え。」

「あら、じゃあ一緒に寝ないとね!うふっ♪」

「何を馬鹿な…ほら、さっさと食え。」

「うふふっ♪…いただきます!」

もしゃもしゃ

「演習はどうだった?」

「新任提督の艦娘同士の戦いだったのよね。良い経験になったわ。素手で殴りかかってくる艦娘が居てビックリしたけど!私もアレ、習得できるかしら…」

「…そうか…。…よく、不安になる。深海棲艦はすぐそこまで来ているのに、俺は…椅子に座して…平和を守れるのか、と。自分が艦娘になって、前に出たいと何度願ったか。部下に全てを押し付ける等…」

その時、男はそっと撫でられて。

「焦っては事を仕損じるわ。指揮官は重要なお仕事。わかるでしょ、ねぇ、提督?」

「…子供みたいな扱いは…やめて…く…れ…)

………
……


414: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/19(木) 18:20:36.45 ID:JiizqP5h0
隼鷹「冷水はともかく、提督も起こして飯食べさせた方が良いんじゃねーの?」

雷「…疲れてるんだから、少しくらい良いじゃないの…ねぇ、司令官?」なでなで

隼鷹「うわぁ…親子だな最早…」もしゃもしゃ

不知火「(アレ、良いですね。私も提督を撫でてみたい…)」もぐもぐ

提督「…?」ムクッ

雷「!」さっ

提督「あれ…皆…?私は寝てたのか…?すまん、今何時だ。」

榛名「え、えと、0530です!」

提督「ああ、そうか…あれは夢か…この毛布は?」

雷「多分、鳳翔さんの物よ。」

提督「そうか…立場逆転だな…やれやれ…ありがとう、雷。いつも世話をかけるな…」

415: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/19(木) 18:21:47.50 ID:JiizqP5h0
榛名「あの、提督。大丈夫ですか?」

提督「ああ、問題無い。すまないな、心配をかけた。…先に執務室に戻ってシャワーを浴びてくる。いつも通りの時間に頼むよ。」

榛名「はい!」

提督「不知火も、哨戒ご苦労。頼りにしてるぞ。」

不知火「光栄です。」

提督「隼鷹も、訓練に励んでくれ。しんどいのは承知だが、お前には期待している。頑張れよ。」

隼鷹「…おう。」

提督「では、私はこれで…」

416: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/19(木) 18:22:47.21 ID:JiizqP5h0
雷「ちょおっと待ったー。」ガシ

提督「…なんだ。」

雷「ご・は・ん。あなたのために作ったんだから、食べなさい。」

提督「いや、しかし時間が…」

雷「んー?」

提督「…わかった、いただきます。」

雷「はい!おあがりなさい!」

………
……



提督「では、先に戻る!榛名はゆっくり来てくれ!ご馳走様!」ダッ

雷「お粗末様ー!…たいした早食いだったわね…」

425: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/20(金) 00:08:21.82 ID:+gYhSCQK0
榛名「…」

隼鷹「どした?榛名。」もぐもぐ

榛名「隼鷹さん、提督が着任してから、凄いなぁと思って…」

隼鷹「なんだなんだ、急に。」

榛名「隼鷹さん、よく執務中に話題に上がるんですよ。頑張ってるって、提督が褒めてます。」

隼鷹「マジ?なんか嬉しいなー。」

榛名「なんでお酒飲みにこないんだろうって不思議そうにもしてましたよ。」

隼鷹「…実際、フラフラで哨戒終わって飯食ったらバタンキューなんだよなー。部屋に酒があれば飲むんだろうけど…疲れた状態で酔っ払いたくない…失望されるのが、怖くなっちまってさ。」

榛名「大丈夫ですよ、隼鷹さんなら。…本当に、変わられました。」

隼鷹「よせよなー。」

榛名「…羨ましい。」ポツリ

隼鷹「…ん?なんか言った?」

榛名「いいえ、何も。」

426: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:10:05.27 ID:+gYhSCQK0
後日


提督「よし、島を出た輸送船は無事中継地に到達した、と…」

榛名「物資の確認も取れました。」

提督「ああ…やっとひと段落ついたな…」

榛名「鬼のような…忙しさでしたね…すいません、足を引っ張ってしまって…」

提督「いや、榛名は十分やってくれたよ。助かった。…少し、外に出よう…」

榛名「はい。」

427: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:10:35.41 ID:+gYhSCQK0



提督「風が心地良いな。」

榛名「はい。…?…あれは…鳳翔さんと、隼鷹さんですね…訓練中ですか。」

提督「うむ…今は艦載機を出しながら、自分も動き回る訓練をしているようだな。…悪くない動きじゃないか。」

榛名「そう…ですね…戦闘…訓練…」

提督「さて、と。榛名。お前はよく頑張ってくれた。まだ午前だが、仕事も少ないし、今日はこれから休んでくれて構わない。自由に過ごしてくれ。」

榛名「お休み、ですか。」

提督「ああ。半日休暇だな。私はもうしばらくしたら執務室に戻るよ。」

榛名「わかりました、提督。お疲れ様です。」

提督「ではな。」テクテク

428: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:11:07.70 ID:+gYhSCQK0
榛名「…提督は戻られましたか…。」

榛名「…雷さんよりも仕事が遅く、足柄さんよりも気が利かず、不知火さんよりも信頼に足らない…鳳翔さんのように他人を指導も出来ず、隼鷹さんのような急成長も出来ない…」

榛名「提督は助かると仰って下さいますが…こんな、こんな、全てが足りぬ私が…提督のお役に立つには…」

ーー提督の、懐刀。

榛名「…最早戦えぬとは、言ってられません。私の、存在意義の、為に。」

429: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:12:15.04 ID:+gYhSCQK0
訓練所


榛名「自分の艤装…勝手に持って来ちゃいました…。ええい、どうせ休暇です!固定射撃訓練…動体射撃訓練…格闘訓練…全て、やりますか…何セットやりましょう…とりあえず、無限で…訓練用機械の設定を、と」ポチ

榛名「艤装に模擬弾を装填して、と…」ガシャコン

榛名「まずは固定射撃訓練から、ですね…的が自動で浮かぶはずです。」

機械『第1セット、固定射撃訓練、開始』

榛名「よし…!」

ドン…ドドン…ドン…

榛名「きちんと弾は当たりますね…!良かった、あまり腕が鈍ってなくって…。どんどん続けます…!」

ドドン…ドン…

………
……


430: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:12:54.55 ID:+gYhSCQK0
数時間後


機械『第23セット、固定射撃訓練、終了』

榛名「フー…フー…次は…動体…」ガシャコン

機械『第23セット、動体射撃訓練、開始』

ドン…ドドン…ドゥン…

榛名「…23セット目…何時間続けたかわかりません…それでも、ちゃんと、ちゃんと当たります…榛名は戦える、戦える筈なのに…!」

ドゥン…ドン…

榛名「いつからっ…!」

榛名「何故!何故私は味方に疎まれるようになったのですか!」

ドン…ドドドン…ドドン…

榛名「何故っ…!何故私は味方を撃つようになったのですか…!」

ーーそんなもの、わかっているんだろう?

431: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:13:53.70 ID:+gYhSCQK0
榛名「私が、役立たずだったからっ…!」

ーーそうだ。

榛名「榛名は何故役立たずなんですか!榛名は何故役立たずなんですかっ!!!」

ーー敵を殺さないからだ。

榛名「敵ってなんなんですか!深海棲艦ですか!戦果を独り占めする私を、憎む艦娘ですか!仕方ないのに!仕方ないのにぃ!」

ーー…。

ドドン…ドン…ドン…

432: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:14:31.31 ID:+gYhSCQK0
機械『第23セット、動体射撃訓練、終了。第23セット、格闘訓練、開始』

榛名「(…海面に、標的が浮かんで…こちらに向かって来ますね…)あれが敵ですか?」

バキィ!

榛名「これも敵ですか?」

ボコォ!

榛名「それも?そいつも…こいつも…全部、全部!」

グシャ!ボキッ!ベキャ!

榛名「それとも…フー…敵は…フー…フー…役立たずの…榛名自身ですか…?…役立たず…?…そもそも…誰の役に、私は立ちたいのーー。」

433: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:15:21.46 ID:+gYhSCQK0
機械『標的、破損。標的、破損。訓練を中止します。』

榛名「…敵が消えた…?いえ、私の背後、陸上に人型の影が一つありますね…あれも、敵ですか?」ユラァ…

榛名「敵なら、やらないと…やらないと…陸地に上がって…やらないと…」ザバァ…

提督「…よう、榛名。もう夕方だぞ。休暇中に訓練とは熱心だな。」

榛名「…提督でしたか…提督は私の敵、ですか?」

434: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:15:48.18 ID:+gYhSCQK0
提督「…お前には、どう見える。」

榛名「…私には、誰が敵で、誰が味方で、何が自分か、もうわかりません。わからないんです…」

提督「…そうか。」ザッ…ザッ…

榛名「…何故、私に近づくのですか。敵ですか?敵なんですね?」

提督「…」ザッ…ザッ…

榛名「攻撃しますよ?」

提督「…」ザッ…ザッ…

榛名「…あああ!」ブン!

435: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:16:18.82 ID:+gYhSCQK0
提督「良いか。俺は提督だ。そしてお前は、俺の大事な秘書艦だ。」

榛名「…っ!」

榛名の心が揺れ、ムラの出来た攻撃を提督は回避し、手に持った大きなスパナのような装置、強制艤装解離装置で榛名の艤装を強制解除した。

提督「敵が、味方が、自分がわからないなら俺が教えてやる。だから、俺を信じろ。焦るな、榛名。」

榛名「…あ、あああ…」ドサッ

艤装を失った榛名は、際限無く訓練を続けた疲労から、提督に倒れこみ、意識を手放した。

436: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:17:46.76 ID:+gYhSCQK0
さらに数時間後


榛名「…」パチリ

榛名「(視界に星空が…あれ?ここは?私は、寝てたのですか?)」

提督「目が覚めたか。」

榛名「…ぁ…膝枕、されて…」

提督「お前が倒れこんだからな。」

榛名「…すみません。」

437: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:18:27.28 ID:+gYhSCQK0
提督「構わん。…訓練をするなら、言え。艤装を持ち出したら、執務室からわかるようになっているからな。」

榛名「…という事は…」

提督「最初から見ていた。」

榛名「…そう、ですか。」

提督「…綺麗な射撃だった。」

榛名「…血の滲むような、訓練を重ねましたから。」

提督「…黒提督の言った事が、忘れられないか。たとえ黒提督が過ちを犯したと知った上でも。」

榛名「…英雄提督が、私の全てでしたから。その部下の、黒提督の言葉にも…どうしても…逆らえません…それが、私を縛る為の言葉だったとしても…」

438: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:19:04.57 ID:+gYhSCQK0
提督「…きっと、英雄提督はお前のことを役立たずとは思っていない。」

榛名「…ありがとう、ございます。…でも、私、また我を失いました。本当に…訓練も、こなせないなんて…休暇中に勝手に暴走して…」

提督「…」

榛名「…どうして、あなたはこんな私を大事と、言って下さるんですか?こんな、こんなお荷物を…」

提督「部下の艦娘を、大事と言うのに理由なんぞ要らん。」

榛名「…そんなの、甘過ぎますよ…」

提督「俺の勝手だろう。」

榛名「…変な方です…」

439: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:19:44.96 ID:+gYhSCQK0
提督「…俺はお前を荷物とは思っていない。だから無断の訓練を止めなかった。現在の能力を確認する為にもな。」

榛名「…」

提督「…もう一度言おう。俺は、お前の味方だ。お前は、私の部下だ。そして、お前の敵は、俺の敵だ。」

榛名「…提督の、敵…」

提督「榛名。敵がわからなくなったら、お前の敵は俺が教えてやる。だから、焦るな。」

榛名「…でも、」

提督「少しは俺を信じたらどうだ。…あまり独り善がりになるな。」

440: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:22:40.16 ID:+gYhSCQK0
榛名「…!…ごめん、なさい…。…信じて…良いのですね…」

提督「勿論だ。俺はお前の提督だからな。…そろそろ戻ろうか、榛名。夜も遅くなってきたーー」

榛名「すみません…」

提督「ん?」

榛名「もう、少しだけ…このまま…」グスッ

提督「…仕方ないな…」なでなで

榛名「…榛名、頑張りますね…榛名を捨てないで、下さいね…ヒック…こんなに、何回も助けてもらうまで…ヒック…信じて良いって…ごめんなさい…」ぇぐぇぐ

提督「ああ。」よしよし

榛名「…ぅぅぅぅぅ」グスッ

441: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:23:20.70 ID:+gYhSCQK0
食堂


雷「提督!…と榛名さん…!」

榛名「…」ぺこり

提督「ああ、すまない、雷…今戻っーー」

雷「あなたは!なんで!無断で半日も居なくなるの!」

提督「す、すまん…」

雷「足柄が基地中探し回ってたわよ…私も心配したんだから…職務放棄って言われても反論出来ないわよ?」

提督「返す言葉もない…」

榛名「い、いえ!これは榛名がーー」

提督「よせ。」

雷「…無事だったから良かったわ。…二人とも、ご飯?」

提督「…ああ、頼む。」

榛名「…お願いします…」

442: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:25:23.29 ID:QwJHWTQAO
………
……



ドドドドドド

提督「…来たか。」もぐもぐ

足柄「こんばんは、て・い・と・く?と榛名〜?」

榛名「ヒッ…ごめんなさい…」

足柄「あんたら2人がセットで消えて、私がどれだけ心配したか、わかる?」

提督「…申し訳ない…」

足柄「ほんとに、勘弁してよね。…まさか、二人で懇ろしてたとかじゃあ…」

榛名「ち、違います!////」

443: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:25:56.50 ID:QwJHWTQAO
提督「…榛名の訓練を見ていた。」

足柄「…そう。まぁ、無事なら何でも良いわ。あー、心配して損した…」ハァ

提督「…心配をかけたな、足柄。すまない。」

足柄「…本当よ。全く…じゃ、私は無事が確認できたって事で。風呂入ってくるわ。」

提督「お前、飯は…」

足柄「飯は風呂の後に食べる主義なの。それじゃね。」

提督「そうか…すまなかった。」

足柄「…」スタスタ

444: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:27:01.24 ID:QwJHWTQAO
執務室


提督「やれやれ…疲れたな…。まぁ、無断でずっと訓練所で榛名を覗いていた俺が悪いんだが…」

提督「しかし、榛名…どうしたものか…黒提督が亡霊のようにつきまとっている…戦わなければならないという強迫観念…厄介だーー」

ジリリリリリン!ジリリリリリン!

提督「…この時間に電話?」

445: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:27:33.65 ID:QwJHWTQAO
ガチャ
提督「はい、此方、とある島基地執務室。」

『ああ、提督くん。私だ。』

提督「これは…ご無沙汰しております。」

『少し、マズイことが起こった。』

提督「…と、仰りますと。」

『ついこの間、北で離島攻略があったろう。君の加賀が今居る所だ。』

提督「はい。無傷の勝利と聞いておりますが。」

『敵に艦娘が出たらしい。』

446: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/20(金) 00:28:16.70 ID:QwJHWTQAO
提督「深海棲艦化した、艦娘…ですか。」

『それがまた、昔に君の考案した爆撃回避軌道を取ってたらしくてね…五十鈴らしいが。大反攻戦で沈んだ。わかるかい。』

提督「私の部下ではありませんでしたので、あまり…」

『そうか…ともかく、近日中に正式な要求が下ると思うが、本部は君を本土に召喚しようとしている。対策会議の参考人としてね。』

提督「本土…ですか…」

『これは、チャンスでもある。君が本土に返り咲く為のね。』

提督「私は返り咲こうなどとは…」

『…まぁ、今日は時間が無いからこれくらいにしておくが。本土に来たら、顔を出しなさい。息子や艦娘達も会いたがっている。』

提督「わかりました。必ず、そちらへお伺いさせていただきます。」

『結構。ではな。』
ブチッ

提督「本土…本土か…」

459: ◆hsyiOEw8Kw 2015/03/21(土) 12:16:44.53 ID:dGSmV5lW0
提督の部屋


提督「…また本土に…榛名を常設秘書艦とした事が、ここで裏目に出るか。」

提督「1隻、出来れば2隻を、道中の護衛に付けたいが…」

提督「ここで榛名を置いていけば、榛名は自信を喪失するだろう…連れて行くしかない、な。」

提督「あと1人…これは不知火だな。本土で余計な事が露見するのは避けたい。」

提督「…よし、決まりだ。」