「本当にこの体制で良ろしいのですか?司令を引き込んでからの方が……」
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ。よく言うじゃないか」
「つまり?」
「勢いだ、勢い!」
「はぁ……あなた、本当に変わりましたね……」
「ハッ!眼鏡の必要無くなったお前に言われたくは無いな」
「……あの二人はいつも元気で、大変結構ですね」
「あら?一番血の気の多い人が何を言っているのかしら~?」
「ふふ、そうでしたか?」
「そうよ……それにしても、楽しみだわ~」
「そうですね……ふふふ。早く、あの人の心を折らないと」
「……相変わらず怖い女ね……うふふ」
「……待っていて下さいね、提督。あなたを絶望に染め上げて……そして、救済して差し上げますよーー」
赤城「……この、赤城が」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1429367001
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ。よく言うじゃないか」
「つまり?」
「勢いだ、勢い!」
「はぁ……あなた、本当に変わりましたね……」
「ハッ!眼鏡の必要無くなったお前に言われたくは無いな」
「……あの二人はいつも元気で、大変結構ですね」
「あら?一番血の気の多い人が何を言っているのかしら~?」
「ふふ、そうでしたか?」
「そうよ……それにしても、楽しみだわ~」
「そうですね……ふふふ。早く、あの人の心を折らないと」
「……相変わらず怖い女ね……うふふ」
「……待っていて下さいね、提督。あなたを絶望に染め上げて……そして、救済して差し上げますよーー」
赤城「……この、赤城が」
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29: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/21(火) 22:40:47.87 ID:z2QfDskr0
どこまでも冴え渡る蒼穹。
燦然と輝く太陽。
太陽を映しては砕く海。
その海に浮かぶサセン島、その周辺海域に、艦娘が一人。
哨戒任務中の足柄である。
足柄「ん〜!いい天気……」
自然と表情が綻んだ。
こんな良い日は、水偵を思いきり飛ばしたい欲求に駆られる。
その機体に意識を乗せて、ロールさせて、ループして。
そしたらいつか、空と海の境目がわからなくなって。
目が回って、海面にぶっ倒れるのだ。
そうやって仰向けで太陽を見ると、気持ちが良さそうだ、と思う。
実際にやれば、気分の悪さで太陽どころでは無いのだろうけれど。
燦然と輝く太陽。
太陽を映しては砕く海。
その海に浮かぶサセン島、その周辺海域に、艦娘が一人。
哨戒任務中の足柄である。
足柄「ん〜!いい天気……」
自然と表情が綻んだ。
こんな良い日は、水偵を思いきり飛ばしたい欲求に駆られる。
その機体に意識を乗せて、ロールさせて、ループして。
そしたらいつか、空と海の境目がわからなくなって。
目が回って、海面にぶっ倒れるのだ。
そうやって仰向けで太陽を見ると、気持ちが良さそうだ、と思う。
実際にやれば、気分の悪さで太陽どころでは無いのだろうけれど。
30: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/21(火) 22:42:23.60 ID:z2QfDskr0
足柄「……!」
そんな事を考えながら輝く水平を眺めていると、一瞬背筋にピリッとくる感覚があった。
足柄はそれが何の感覚か直ぐに理解する。
自分の電探の感知範囲内に何かが入ったのだ。
対深海棲艦戦に於いて、艦娘の物以外のレーダーはアテにならないらしい。
深海棲艦の周囲に発生する歪んだ電磁波が電波を強く妨害するだの、乱反射するだの、位相が乱れるだの、クラッターに偽装されるだの……
とにかく位置がわからないと偉い学者が言っていたのを足柄は思い出す。
ミサイルについても、レーダーが死んでいるお陰で、終端誘導の問題以前に中間誘導が極めて難しいらしい。
ミサイルによる攻撃が為されていないのもその為だとか。
そんな事を考えながら輝く水平を眺めていると、一瞬背筋にピリッとくる感覚があった。
足柄はそれが何の感覚か直ぐに理解する。
自分の電探の感知範囲内に何かが入ったのだ。
対深海棲艦戦に於いて、艦娘の物以外のレーダーはアテにならないらしい。
深海棲艦の周囲に発生する歪んだ電磁波が電波を強く妨害するだの、乱反射するだの、位相が乱れるだの、クラッターに偽装されるだの……
とにかく位置がわからないと偉い学者が言っていたのを足柄は思い出す。
ミサイルについても、レーダーが死んでいるお陰で、終端誘導の問題以前に中間誘導が極めて難しいらしい。
ミサイルによる攻撃が為されていないのもその為だとか。
31: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/21(火) 22:43:58.11 ID:z2QfDskr0
実際は、視認可能性より有視界圏内での光波誘導が一時期目論まれた。
だが、標的のサイズの関係でミサイルの命中率は悪く。
その上、対艦ミサイルが敵を直撃しても敵装甲を抜けない事がままあると言う始末。
更に、誘導する機体・艦船の生還率も低いとあれば、結局深海棲艦への対処を艦娘に頼るのは仕方の無い事と言える、のかも知れない。
だが、標的のサイズの関係でミサイルの命中率は悪く。
その上、対艦ミサイルが敵を直撃しても敵装甲を抜けない事がままあると言う始末。
更に、誘導する機体・艦船の生還率も低いとあれば、結局深海棲艦への対処を艦娘に頼るのは仕方の無い事と言える、のかも知れない。
32: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/21(火) 22:44:50.82 ID:z2QfDskr0
足柄「ま、その電磁波のお陰で、深海棲艦ら自身が電探を使えなかったり、無線通信出来ないって話だけど……」
それに対し、艦娘に備え付きの電探は極めて特殊、と聞く。
起動時は旧式のパルスレーダーとして機能するが、性能は人間のレーダーに全く及ばない。
しかし、探知圏内に深海棲艦が存在する場合、その方位がわかる。それが出来るのは艦娘の電探だけである、らしい。
あくまで方角しかわからず、数の区別も難しい上に勘違いも多く、最終的には目視が一番の頼りとなるのだけども。
まぁ、今はそんな事はどうでも良くて。
今自分が感じているのは、深海棲艦のそれとは違う物だ。
反射の小ささから、小船舶と推測できた。
丁度提督が本土へ向かう際に乗っていたような。
そう言えば、提督が今頃の時間帯に帰って来る、と代理が言っていたのを思い出す。
つまりこの反射波が示すのは。
足柄「……お帰りなさい、かしら?」
足柄の脚部艤装は、自然とその方へ向いていた。
それに対し、艦娘に備え付きの電探は極めて特殊、と聞く。
起動時は旧式のパルスレーダーとして機能するが、性能は人間のレーダーに全く及ばない。
しかし、探知圏内に深海棲艦が存在する場合、その方位がわかる。それが出来るのは艦娘の電探だけである、らしい。
あくまで方角しかわからず、数の区別も難しい上に勘違いも多く、最終的には目視が一番の頼りとなるのだけども。
まぁ、今はそんな事はどうでも良くて。
今自分が感じているのは、深海棲艦のそれとは違う物だ。
反射の小ささから、小船舶と推測できた。
丁度提督が本土へ向かう際に乗っていたような。
そう言えば、提督が今頃の時間帯に帰って来る、と代理が言っていたのを思い出す。
つまりこの反射波が示すのは。
足柄「……お帰りなさい、かしら?」
足柄の脚部艤装は、自然とその方へ向いていた。
33: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/21(火) 22:48:44.12 ID:z2QfDskr0
提督達が港に降り立つと、四人が彼らを出迎えた。
隼鷹「おっかえりぃ!」
鳳翔「お帰りなさい……お疲れ様です、皆さん」
足柄「お帰り〜……っつってもあたしは海上で合流したケド。雷ちゃんは私と交代で哨戒ね」
提督「ああ、ありがとう……代理君もご苦労だった」
代理「はっ。滅相もございません」
提督「とりあえず、中に入ろうか……私は代理君と執務室へ行く。鳳翔、飯はあるのか?」
鳳翔「勿論です」
提督「よし、不知火と榛名は飯に行ってくると良い。積もる話もあるだろう。私も後からあずかりたい」
鳳翔「お待ちしてますね」
隼鷹「おっかえりぃ!」
鳳翔「お帰りなさい……お疲れ様です、皆さん」
足柄「お帰り〜……っつってもあたしは海上で合流したケド。雷ちゃんは私と交代で哨戒ね」
提督「ああ、ありがとう……代理君もご苦労だった」
代理「はっ。滅相もございません」
提督「とりあえず、中に入ろうか……私は代理君と執務室へ行く。鳳翔、飯はあるのか?」
鳳翔「勿論です」
提督「よし、不知火と榛名は飯に行ってくると良い。積もる話もあるだろう。私も後からあずかりたい」
鳳翔「お待ちしてますね」
34: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/21(火) 22:49:58.86 ID:z2QfDskr0
………
……
…
食堂
隼鷹「おみ!」
足柄「やげ!」
隼鷹「は?!」
榛名「ありますよ!」
不知火「多くは無いですが……時間が無かったので、鎮守府の酒保で売ってた物を適当に選びました」
隼鷹「全然いいよ!ありがとー!」
不知火「いえいえ……まずは……」
榛名「中央ばな奈です!」ドン
足柄「有名なヤツね!あたしこれ好きよ!」
隼鷹「食っていい?」
鳳翔「ご飯の前ですよ、ダメです」
隼鷹「ちぇー」
榛名「なんか、『中央ばな奈 いちご味』とかもあったんですけど……」
足柄「バナナなのに苺!苺なのにバナナ!ああ、なんて不気味なの!きっと口の中で革命が起こってしまうのね……」
隼鷹「なんだこいつ……お前だよ不気味なのは……」
榛名「苺好きなんですかね?」
……
…
食堂
隼鷹「おみ!」
足柄「やげ!」
隼鷹「は?!」
榛名「ありますよ!」
不知火「多くは無いですが……時間が無かったので、鎮守府の酒保で売ってた物を適当に選びました」
隼鷹「全然いいよ!ありがとー!」
不知火「いえいえ……まずは……」
榛名「中央ばな奈です!」ドン
足柄「有名なヤツね!あたしこれ好きよ!」
隼鷹「食っていい?」
鳳翔「ご飯の前ですよ、ダメです」
隼鷹「ちぇー」
榛名「なんか、『中央ばな奈 いちご味』とかもあったんですけど……」
足柄「バナナなのに苺!苺なのにバナナ!ああ、なんて不気味なの!きっと口の中で革命が起こってしまうのね……」
隼鷹「なんだこいつ……お前だよ不気味なのは……」
榛名「苺好きなんですかね?」
35: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/21(火) 22:51:17.68 ID:z2QfDskr0
不知火「次は……」
榛名「中央ひよ子饅頭ですよ!」ドン
足柄「どこから食べても悲惨な事になる饅頭ね!あたしこれ好きよ!」
隼鷹「食っていい?」
鳳翔「ご飯の前ですよ、ダメです」
隼鷹「ちぇー」
榛名「これ内臓が美味しいですよね」
隼鷹「内臓?!」
足柄「外皮が歯の裏側にくっつくのよね……」
隼鷹「外皮?!」
不知火「餡って言いましょうよ生々しい……とにかく次ですよ」
足柄「結構買ってるわね……」
不知火「中々お金の使い道が無いもので……コレです」ガサゴソ
榛名「中央の恋人ですよ!」
足柄「これ中央じゃなくて北の銘菓じゃない!でもあたしこれ好きよ!」
隼鷹「食っていい?」
鳳翔「ご飯の前ですよ、ダメです」
隼鷹「ちぇー」
榛名「完全にパクリですよね!」
足柄「なんで買ったのよ……」
不知火「まぁ、ひよ子も元々、中央の物では無いですから……」
榛名「中央ひよ子饅頭ですよ!」ドン
足柄「どこから食べても悲惨な事になる饅頭ね!あたしこれ好きよ!」
隼鷹「食っていい?」
鳳翔「ご飯の前ですよ、ダメです」
隼鷹「ちぇー」
榛名「これ内臓が美味しいですよね」
隼鷹「内臓?!」
足柄「外皮が歯の裏側にくっつくのよね……」
隼鷹「外皮?!」
不知火「餡って言いましょうよ生々しい……とにかく次ですよ」
足柄「結構買ってるわね……」
不知火「中々お金の使い道が無いもので……コレです」ガサゴソ
榛名「中央の恋人ですよ!」
足柄「これ中央じゃなくて北の銘菓じゃない!でもあたしこれ好きよ!」
隼鷹「食っていい?」
鳳翔「ご飯の前ですよ、ダメです」
隼鷹「ちぇー」
榛名「完全にパクリですよね!」
足柄「なんで買ったのよ……」
不知火「まぁ、ひよ子も元々、中央の物では無いですから……」
36: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/21(火) 22:53:54.72 ID:z2QfDskr0
ガサゴソ
不知火「最後は……コレです」
榛名「ワニ肉ですよ!」ドン
足柄「あなた達どこに行ってたのかしら?!でもあたしこれ好きよ!」
隼鷹「足柄マジかよ……」
鳳翔「隼鷹さん?食べないのですか?」
隼鷹「勘弁してつかぁさい……」
榛名「結構いけますよ。……多分!」
隼鷹「多分……?」
足柄「ひよ子饅頭と大体同じよ」
隼鷹「……どこが?」
榛名「……可愛さ?」
隼鷹「肉が……可愛い……え……?」
不知火「とまぁ、こんな感じですね」
隼鷹「所で酒は?!」
鳳翔「こら」
隼鷹「まぁまぁ……あるの?」
不知火「さぁ……そういう物については司令に聞いていただければ……」
隼鷹「後で聞きに行くか……」
鳳翔「もう……」
隼鷹「うぇっへっへ」
不知火「最後は……コレです」
榛名「ワニ肉ですよ!」ドン
足柄「あなた達どこに行ってたのかしら?!でもあたしこれ好きよ!」
隼鷹「足柄マジかよ……」
鳳翔「隼鷹さん?食べないのですか?」
隼鷹「勘弁してつかぁさい……」
榛名「結構いけますよ。……多分!」
隼鷹「多分……?」
足柄「ひよ子饅頭と大体同じよ」
隼鷹「……どこが?」
榛名「……可愛さ?」
隼鷹「肉が……可愛い……え……?」
不知火「とまぁ、こんな感じですね」
隼鷹「所で酒は?!」
鳳翔「こら」
隼鷹「まぁまぁ……あるの?」
不知火「さぁ……そういう物については司令に聞いていただければ……」
隼鷹「後で聞きに行くか……」
鳳翔「もう……」
隼鷹「うぇっへっへ」
37: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/21(火) 22:55:23.83 ID:z2QfDskr0
榛名「私達が不在の間のサセン島はどうでしたか?」
足柄「どうもこうも……代理さんは何もしない何も言わない関わらないって人だったから」
隼鷹「中間管理職?みたいだったね。全部マニュアル通り、みたいな。私がお酒をねだったら、鳳翔さんに告げ口されたし……」
鳳翔「それはあなたが悪いんですよ?」
隼鷹「あれえ?」
鳳翔「馬鹿なことを言ってないで、配膳を手伝って下さい?」
隼鷹「はい……」
足柄「そっちはどうだったの?結構心配したのよー?あたし」
榛名「足柄さん……!」
足柄「自分が粗相しないかをね……!」
榛名「足柄さん……」
足柄「どうもこうも……代理さんは何もしない何も言わない関わらないって人だったから」
隼鷹「中間管理職?みたいだったね。全部マニュアル通り、みたいな。私がお酒をねだったら、鳳翔さんに告げ口されたし……」
鳳翔「それはあなたが悪いんですよ?」
隼鷹「あれえ?」
鳳翔「馬鹿なことを言ってないで、配膳を手伝って下さい?」
隼鷹「はい……」
足柄「そっちはどうだったの?結構心配したのよー?あたし」
榛名「足柄さん……!」
足柄「自分が粗相しないかをね……!」
榛名「足柄さん……」
38: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/21(火) 22:57:19.74 ID:z2QfDskr0
足柄「で、どーだったのよ」
榛名「……結構、自信がついたかも知れません」
足柄「へぇ……」
不知火「(……やはり、何かあったんですよね……うーん)」
足柄「不知火さんは?」
不知火「私はーー……まぁ、有意義であったとは思います……」
足柄「ほほぅ……」
鳳翔「それは何よりですね、お二人とも。はい、ご飯ですよ」コトン
榛名「ありがとう御座います!」
足柄「ありがと。……良いなぁ、本土!あたしも行きたいわぁ。どこ出掛けたの?流石に外出たんでしょう?」
榛名「いえ、外には……」もぐもぐ
足柄「マジ?鎮守府内でそんな成長しちゃった?てことは……何々〜?提督となんかあったのね〜?」
榛名「いやぁ……えへへ」もぐもぐ
鳳翔「怪しいですね……」
足柄「お姉さんに教えてごらんなさい?ガールズトークしましょ?」
榛名「……結構、自信がついたかも知れません」
足柄「へぇ……」
不知火「(……やはり、何かあったんですよね……うーん)」
足柄「不知火さんは?」
不知火「私はーー……まぁ、有意義であったとは思います……」
足柄「ほほぅ……」
鳳翔「それは何よりですね、お二人とも。はい、ご飯ですよ」コトン
榛名「ありがとう御座います!」
足柄「ありがと。……良いなぁ、本土!あたしも行きたいわぁ。どこ出掛けたの?流石に外出たんでしょう?」
榛名「いえ、外には……」もぐもぐ
足柄「マジ?鎮守府内でそんな成長しちゃった?てことは……何々〜?提督となんかあったのね〜?」
榛名「いやぁ……えへへ」もぐもぐ
鳳翔「怪しいですね……」
足柄「お姉さんに教えてごらんなさい?ガールズトークしましょ?」
39: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/21(火) 22:58:08.04 ID:z2QfDskr0
榛名「い、いや別に特別な事は何もないですよ?連れて行って頂けたのが嬉しかっただけで……」
足柄「そういうのいいから」
榛名「ええ……」
不知火「(……私も、榛名と提督の急接近の原因は気になるところです……大体予想はつくとは言え……)」もぐもぐ
足柄「ほらゲロッちゃいなさいよ榛名……」
榛名「ちょ、本当に何もないですから……ッ……離脱!」
足柄「させるか!隼鷹!出口を塞ぐのよ!」
隼鷹「あいよっ!」ダッ
榛名「させません!」ドゴォ
隼鷹「おぐぅ?!……まさかの……ガチ……腹パン……?」ドサッ
足柄「そういうのいいから」
榛名「ええ……」
不知火「(……私も、榛名と提督の急接近の原因は気になるところです……大体予想はつくとは言え……)」もぐもぐ
足柄「ほらゲロッちゃいなさいよ榛名……」
榛名「ちょ、本当に何もないですから……ッ……離脱!」
足柄「させるか!隼鷹!出口を塞ぐのよ!」
隼鷹「あいよっ!」ダッ
榛名「させません!」ドゴォ
隼鷹「おぐぅ?!……まさかの……ガチ……腹パン……?」ドサッ
40: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/21(火) 22:59:42.95 ID:z2QfDskr0
榛名「!……足柄さんが出口に……」
足柄「やるじゃない……榛名」
榛名「……足柄さんが相手ですか?腕が鳴るわね……!」
足柄「ふふふ……あたしは戦わないわよ?狼は……一方的に狩るの」
足柄が目を細め、腰を落とすと場の空気が一変した。
その存在感に、榛名の目線が釘付けになる。
足柄の一挙一動には全く隙が無く、それでいてどこか余裕があった。
彼女の絶妙な足運びから、榛名は己の間合いが読まれている事を悟る。
榛名「(これは迂闊に動けない……フェイントから攻めを組み立てるべき……?)」
ジリジリと、動きそうで動かない二人。
緊張の糸が張り詰める。
榛名は両腕を体の前にスッと上げ。
足柄は自然体のままに間合いを図り。
不知火はご飯をもぐもぐ食べる。
榛名が左手の掌を使って彼我の距離を確認し、戦術を決めたその瞬間。
それは来た。
足柄「やるじゃない……榛名」
榛名「……足柄さんが相手ですか?腕が鳴るわね……!」
足柄「ふふふ……あたしは戦わないわよ?狼は……一方的に狩るの」
足柄が目を細め、腰を落とすと場の空気が一変した。
その存在感に、榛名の目線が釘付けになる。
足柄の一挙一動には全く隙が無く、それでいてどこか余裕があった。
彼女の絶妙な足運びから、榛名は己の間合いが読まれている事を悟る。
榛名「(これは迂闊に動けない……フェイントから攻めを組み立てるべき……?)」
ジリジリと、動きそうで動かない二人。
緊張の糸が張り詰める。
榛名は両腕を体の前にスッと上げ。
足柄は自然体のままに間合いを図り。
不知火はご飯をもぐもぐ食べる。
榛名が左手の掌を使って彼我の距離を確認し、戦術を決めたその瞬間。
それは来た。
41: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/21(火) 23:00:36.15 ID:z2QfDskr0
鳳翔「ご飯の!」ガス
榛名「痛いですっ」
鳳翔「途中で!」ガス
足柄「痛いっ」
鳳翔「暴れない!」ドゴッ
隼鷹「ぐぼぁ?!……倒れてたのに……死体蹴り……?理不尽……」ガクッ
鳳翔「席につきなさい!」
榛名「痛いですっ」
鳳翔「途中で!」ガス
足柄「痛いっ」
鳳翔「暴れない!」ドゴッ
隼鷹「ぐぼぁ?!……倒れてたのに……死体蹴り……?理不尽……」ガクッ
鳳翔「席につきなさい!」
53: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/22(水) 21:04:32.91 ID:bE8DWnPLO
鳳翔「……いけない。つい、隼鷹さんをやってしまいました……」
不知火「(つい……?)」もぐもぐ
榛名「(うわぁ……)」
足柄「ま、まぁ鳳翔さんも浮かれてるって事よね」
鳳翔「お恥ずかしい限りです……しっかりして下さい、隼鷹さん」ペシペシ
隼鷹「うーん」
足柄「で、何があったのよ〜榛名〜。教えなさいよ〜」
榛名「本当に何もありませんってばぁ〜」
足柄「いいこと考えたわ!提督に聞きに行けば良いじゃない!」
榛名「もうご自由にどうぞ……」
不知火「(つい……?)」もぐもぐ
榛名「(うわぁ……)」
足柄「ま、まぁ鳳翔さんも浮かれてるって事よね」
鳳翔「お恥ずかしい限りです……しっかりして下さい、隼鷹さん」ペシペシ
隼鷹「うーん」
足柄「で、何があったのよ〜榛名〜。教えなさいよ〜」
榛名「本当に何もありませんってばぁ〜」
足柄「いいこと考えたわ!提督に聞きに行けば良いじゃない!」
榛名「もうご自由にどうぞ……」
54: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/22(水) 21:05:34.71 ID:bE8DWnPLO
鳳翔「それよりも、困りましたね……隼鷹さんが動きません」
足柄「ん?……叩きゃ治るわよ。いい感じの角度で……ほら、榛名、あんたが最初にやったんだから治しなさいよ」
榛名「私ですか……わかりました」
不知火「えええ……大丈夫なんですか……?」
榛名「どうすれば良いでしょうか」
足柄「頭のここらへんをこう……スコーンと」
鳳翔「ちょ、ちょっとあまり手荒なのは……」
榛名「こうですか?」パコーン
隼鷹「ぴゃあ」
足柄「良い音するわねー。頭の中空っぽなんじゃないかしら?」
鳳翔「嗚呼……」
足柄「ん?……叩きゃ治るわよ。いい感じの角度で……ほら、榛名、あんたが最初にやったんだから治しなさいよ」
榛名「私ですか……わかりました」
不知火「えええ……大丈夫なんですか……?」
榛名「どうすれば良いでしょうか」
足柄「頭のここらへんをこう……スコーンと」
鳳翔「ちょ、ちょっとあまり手荒なのは……」
榛名「こうですか?」パコーン
隼鷹「ぴゃあ」
足柄「良い音するわねー。頭の中空っぽなんじゃないかしら?」
鳳翔「嗚呼……」
55: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/22(水) 21:06:18.21 ID:bE8DWnPLO
榛名「隼鷹さーん?大丈夫ですかー?」
隼鷹「……あ……」
榛名「あ、気が付きましたね!」
不知火「(ええー……)」
鳳翔「だ、大丈夫ですか?」
隼鷹「Yes…… I feel very good……」
鳳翔「……」
榛名「……」
足柄「……」
不知火「……」
隼鷹「What's up? Everything goes so well……」
鳳翔「わ、私が蹴ってしまったばかりにこんな事に……!斯くなる上は、私が責任を持って……えいっ」ドゴッ
隼鷹「オマイガー!」ドサッ
隼鷹「……あ……」
榛名「あ、気が付きましたね!」
不知火「(ええー……)」
鳳翔「だ、大丈夫ですか?」
隼鷹「Yes…… I feel very good……」
鳳翔「……」
榛名「……」
足柄「……」
不知火「……」
隼鷹「What's up? Everything goes so well……」
鳳翔「わ、私が蹴ってしまったばかりにこんな事に……!斯くなる上は、私が責任を持って……えいっ」ドゴッ
隼鷹「オマイガー!」ドサッ
56: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/22(水) 21:06:50.75 ID:bE8DWnPLO
鳳翔「じ、隼鷹さん?大丈夫ですか?」
隼鷹「……あ……」
足柄「お?」
隼鷹「……」スッ
隼鷹は無言で立ち上がった。
足柄「おお?」
そして、カッと目を見開き。
隼鷹「私と言う神が誕生した……」
榛名「なんか生まれましたよ」
鳳翔「ど、どうしましょう」
足柄「ふはは、面白いから次いくわよ」パコッ
隼鷹「ぎゃあ」
隼鷹「……あ……」
足柄「お?」
隼鷹「……」スッ
隼鷹は無言で立ち上がった。
足柄「おお?」
そして、カッと目を見開き。
隼鷹「私と言う神が誕生した……」
榛名「なんか生まれましたよ」
鳳翔「ど、どうしましょう」
足柄「ふはは、面白いから次いくわよ」パコッ
隼鷹「ぎゃあ」
57: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/22(水) 21:08:54.70 ID:bE8DWnPLO
………
……
…
基地内、廊下
執務室にて業務連絡等が終わった二人は、昼食を取りに食堂へ向かっていた。
提督「特に問題は無かったと言う事で、安心したよ」
代理「はい。皆真面目に任務に取り組んでおり、規律の乱れも見られませんでした。
こういう言い方はどうかと思いますが……とても問題のある艦娘達だったとは思えませんでしたよ」
提督「それは素晴らしい。……さて、食堂だ。中に全員揃ってるはずだな……久しぶりに鳳翔の手料理か。胸が踊るな」
ガチャ
……
…
基地内、廊下
執務室にて業務連絡等が終わった二人は、昼食を取りに食堂へ向かっていた。
提督「特に問題は無かったと言う事で、安心したよ」
代理「はい。皆真面目に任務に取り組んでおり、規律の乱れも見られませんでした。
こういう言い方はどうかと思いますが……とても問題のある艦娘達だったとは思えませんでしたよ」
提督「それは素晴らしい。……さて、食堂だ。中に全員揃ってるはずだな……久しぶりに鳳翔の手料理か。胸が踊るな」
ガチャ
58: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/22(水) 21:10:04.36 ID:+koDCwsm0
隼鷹「ギシャアアア!」ブぅーン
ガッシャーン!
鳳翔「きゃあっ」
足柄「ああっ!隼鷹を部屋の隅に追い詰めたら、空を飛んだわ!普通に怖い!」
榛名「さっきから食器とか色々破壊しまくりですよ……」
隼鷹「キエエエエイ!」カサカサカサ……
不知火「……くっ……素早い……まさか壁や天井まで這い回るとは……」
隼鷹「……我はベルゼブブ……ハエの王也」
榛名「なんか言ってますよ」
足柄「そんな事はどうでも良いから、提督が来る前になんとかしないと……!」
不知火「連携を取れば行けます……!やりましょう!」
榛名「はい!」
提督「……」
代理「……」
ガッシャーン!
鳳翔「きゃあっ」
足柄「ああっ!隼鷹を部屋の隅に追い詰めたら、空を飛んだわ!普通に怖い!」
榛名「さっきから食器とか色々破壊しまくりですよ……」
隼鷹「キエエエエイ!」カサカサカサ……
不知火「……くっ……素早い……まさか壁や天井まで這い回るとは……」
隼鷹「……我はベルゼブブ……ハエの王也」
榛名「なんか言ってますよ」
足柄「そんな事はどうでも良いから、提督が来る前になんとかしないと……!」
不知火「連携を取れば行けます……!やりましょう!」
榛名「はい!」
提督「……」
代理「……」
59: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/22(水) 21:11:30.86 ID:+koDCwsm0
隼鷹「ギャオオオオス!」ブーン
不知火「また飛びましたよ!」
鳳翔「そっちには出口が……提督?!いつからいらしたんですか?!」
足柄「えっ?!やべっ……」
榛名「はわわ……」
提督「……」
不知火「!……そんな事より司令!隼鷹さんを避けてください!」
鳳翔「ぶつかります……!」
足柄「危ない!」
榛名「提督ー!!」
隼鷹「ヒャハアアア!」ブーン
提督「……」
………
……
…
不知火「また飛びましたよ!」
鳳翔「そっちには出口が……提督?!いつからいらしたんですか?!」
足柄「えっ?!やべっ……」
榛名「はわわ……」
提督「……」
不知火「!……そんな事より司令!隼鷹さんを避けてください!」
鳳翔「ぶつかります……!」
足柄「危ない!」
榛名「提督ー!!」
隼鷹「ヒャハアアア!」ブーン
提督「……」
………
……
…
60: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/22(水) 21:12:22.97 ID:+koDCwsm0
足柄「まさかアイアンクローで飛んでる隼鷹を顔面から捉えるとは……」
榛名「(流石私の英雄提督ですっ)」
提督「……ああ、うん」
鳳翔「ううっ……ごめんなさい……ごめんなさい……」
不知火「……なぜ私まで……」
隼鷹「動けぬ」
数分後、隼鷹は簀巻きにされ、ほか四人は地面に正座していた。全員の服がソースや醤油、食べ物の汁等でベタベタに汚れている。
提督「今、代理君から、お前たちの素行が素晴らしいと言う話を聞いていたばかりなんだがな……」チラ
見た先はぐちゃぐちゃの食堂。
榛名「ごめんなさい……」
提督「……いや、百歩譲って食堂の惨状は良い。コレはなんなんだ……」
提督は隼鷹を見る。
焦点の合ってない目と目が合った。
隼鷹は一言。
隼鷹「滅びよ」
提督「……」
榛名「(流石私の英雄提督ですっ)」
提督「……ああ、うん」
鳳翔「ううっ……ごめんなさい……ごめんなさい……」
不知火「……なぜ私まで……」
隼鷹「動けぬ」
数分後、隼鷹は簀巻きにされ、ほか四人は地面に正座していた。全員の服がソースや醤油、食べ物の汁等でベタベタに汚れている。
提督「今、代理君から、お前たちの素行が素晴らしいと言う話を聞いていたばかりなんだがな……」チラ
見た先はぐちゃぐちゃの食堂。
榛名「ごめんなさい……」
提督「……いや、百歩譲って食堂の惨状は良い。コレはなんなんだ……」
提督は隼鷹を見る。
焦点の合ってない目と目が合った。
隼鷹は一言。
隼鷹「滅びよ」
提督「……」
61: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/22(水) 21:13:58.40 ID:+koDCwsm0
足柄「あはは……いやぁ、ちょっと隼鷹が舞い上がっちゃって……許してほしいなぁ……なんて」
不知火「(うわぁ……さり気なく隼鷹さんに全責任をなすりつけましたよ、この人……)」
提督「……入渠して治るのか?邪悪な気配を感じるんだが……」チラッ
隼鷹「跪け」
提督「……」
足柄「……多分」
提督「……なら、とっとと全員風呂に入って来い」
鳳翔「……わ、私は掃除して配膳を……」
提督「……お前は醤油まみれじゃないか……髪も服も傷む。後でいい」
鳳翔「そんな物はどうでも……」
提督「良い、良い。行け」
鳳翔「うう……」
足柄「ほら、隼鷹!立つのよ……!」
隼鷹「ベルゼブーーむぐっ」
榛名が隼鷹の口を塞いだ。
提督「……」
榛名「あ、あはは……ほら早く行きましょうねー!」
不知火「(……ソースまみれになるわ、怒られるわで最悪です……)」トボトボ
鳳翔「……失礼します。すぐに戻って参りますので」
バタン
不知火「(うわぁ……さり気なく隼鷹さんに全責任をなすりつけましたよ、この人……)」
提督「……入渠して治るのか?邪悪な気配を感じるんだが……」チラッ
隼鷹「跪け」
提督「……」
足柄「……多分」
提督「……なら、とっとと全員風呂に入って来い」
鳳翔「……わ、私は掃除して配膳を……」
提督「……お前は醤油まみれじゃないか……髪も服も傷む。後でいい」
鳳翔「そんな物はどうでも……」
提督「良い、良い。行け」
鳳翔「うう……」
足柄「ほら、隼鷹!立つのよ……!」
隼鷹「ベルゼブーーむぐっ」
榛名が隼鷹の口を塞いだ。
提督「……」
榛名「あ、あはは……ほら早く行きましょうねー!」
不知火「(……ソースまみれになるわ、怒られるわで最悪です……)」トボトボ
鳳翔「……失礼します。すぐに戻って参りますので」
バタン
62: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/22(水) 21:16:49.79 ID:+koDCwsm0
代理「申し訳御座いません!きっと私のせいで艦娘達に変なストレスが……!」
提督「いや、違う。奴らは馬鹿だ、気にするな。……それより、この事は……内密に頼む」
代理「も、勿論です」
提督「ありがたい。……掃除、するか」
代理「では、私も」
提督「いや、私一人でやるさ。格好がつかん。君は今のうちに書類整理をして来ると良い。明日、発つんだろう。飯の時、また呼ぼう」
代理「……しかし……」
提督「良い、良い。行って来い」
代理「は……失礼します」
ガチャ、バタン
提督「……さて、と」
提督「面倒だ。面倒だが……何故だか、俺が後始末をやりたくなった。何故だろうな……」
掃除を始める提督の横顔は、少し楽しそうだった。
提督「やれやれ……帰って来たか、この島に」
提督「いや、違う。奴らは馬鹿だ、気にするな。……それより、この事は……内密に頼む」
代理「も、勿論です」
提督「ありがたい。……掃除、するか」
代理「では、私も」
提督「いや、私一人でやるさ。格好がつかん。君は今のうちに書類整理をして来ると良い。明日、発つんだろう。飯の時、また呼ぼう」
代理「……しかし……」
提督「良い、良い。行って来い」
代理「は……失礼します」
ガチャ、バタン
提督「……さて、と」
提督「面倒だ。面倒だが……何故だか、俺が後始末をやりたくなった。何故だろうな……」
掃除を始める提督の横顔は、少し楽しそうだった。
提督「やれやれ……帰って来たか、この島に」
76: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/23(木) 20:10:48.57 ID:tlQ5Pm4y0
船渠
足柄「ふぃぃ〜……一仕事終えた後の風呂は良いねぇ」
不知火「あの……隼鷹さんが頭から修復槽に突っ込まれてるんですが」
足柄「頭がおかしくなったら、頭を漬けないと」
榛名「そういう問題なんですかね……」
足柄「だって頭を出しとくと『滅びよ』とか煩いし……良いのよこれで」
不知火「能天気ですねぇ……」
足柄「あら、ありがと」
不知火「全然褒めてませんよ?」
榛名「ガバガバですね……」
足柄「ふぃぃ〜……一仕事終えた後の風呂は良いねぇ」
不知火「あの……隼鷹さんが頭から修復槽に突っ込まれてるんですが」
足柄「頭がおかしくなったら、頭を漬けないと」
榛名「そういう問題なんですかね……」
足柄「だって頭を出しとくと『滅びよ』とか煩いし……良いのよこれで」
不知火「能天気ですねぇ……」
足柄「あら、ありがと」
不知火「全然褒めてませんよ?」
榛名「ガバガバですね……」
77: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/23(木) 20:11:56.16 ID:tlQ5Pm4y0
鳳翔「……」ゴシゴシ
鳳翔「髪からお醤油の匂いが取れません……!」
不知火「……私なんかソースですよソース……」
榛名「……そーっすか?」ボソッ
足柄「……?!」ガバッ
不知火「……?!」
鳳翔「……」ポカーン
足柄「……そ、そーっすね!」
榛名「無理に拾わないで下さいっ!私だってたまにはギャグ言いますよ!」
足柄「初めて聞いたわよ……」
不知火「……本当に」
榛名「も、もう言いません!」
足柄「……なんか、明るくなったわねー榛名。前はもっと思い詰めてたというか、そんな感じだったけど」
不知火「確かに……」
足柄「あなたもじゃない?不知火さん。行く前は結構しんどそうだったけど、今はそうでも無さそうだし」
不知火「……そうでしょうか?」
足柄「二人ともそーよ。提督の面子選びの時、結構心配だったんだから」
不知火「……ふむ」
足柄「ま、結局二人とも良くなったみたいだし、提督様々って事かしら?」
榛名「……足柄さんってそういう所、意外と見てくれてますよね。ふふふ」
足柄「……そう?普通よ普通」
榛名「ふふ」
鳳翔「髪からお醤油の匂いが取れません……!」
不知火「……私なんかソースですよソース……」
榛名「……そーっすか?」ボソッ
足柄「……?!」ガバッ
不知火「……?!」
鳳翔「……」ポカーン
足柄「……そ、そーっすね!」
榛名「無理に拾わないで下さいっ!私だってたまにはギャグ言いますよ!」
足柄「初めて聞いたわよ……」
不知火「……本当に」
榛名「も、もう言いません!」
足柄「……なんか、明るくなったわねー榛名。前はもっと思い詰めてたというか、そんな感じだったけど」
不知火「確かに……」
足柄「あなたもじゃない?不知火さん。行く前は結構しんどそうだったけど、今はそうでも無さそうだし」
不知火「……そうでしょうか?」
足柄「二人ともそーよ。提督の面子選びの時、結構心配だったんだから」
不知火「……ふむ」
足柄「ま、結局二人とも良くなったみたいだし、提督様々って事かしら?」
榛名「……足柄さんってそういう所、意外と見てくれてますよね。ふふふ」
足柄「……そう?普通よ普通」
榛名「ふふ」
78: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/23(木) 20:12:57.80 ID:tlQ5Pm4y0
鳳翔「くっ……だいぶマシでしょうか……」
不知火「……まだですね」くんくん
鳳翔「うう……」
不知火「こういう時は……これですね」
何処からか取り出されたクレンザー。
鳳翔「……クレン……ザー……?」
不知火「これで頭を洗えば一発ですよ」
足柄「あんた髪がバッシバシになるわよ……」
不知火「何言ってるんですか。ソースや醤油と言えば食器、食器と言えばクレンザーですよ。つまりクレンザーは万能……」
榛名「あなたが何言ってるんですか不知火さん」
足柄「クレンザーって研磨剤なんだけど……」
不知火「……まだですね」くんくん
鳳翔「うう……」
不知火「こういう時は……これですね」
何処からか取り出されたクレンザー。
鳳翔「……クレン……ザー……?」
不知火「これで頭を洗えば一発ですよ」
足柄「あんた髪がバッシバシになるわよ……」
不知火「何言ってるんですか。ソースや醤油と言えば食器、食器と言えばクレンザーですよ。つまりクレンザーは万能……」
榛名「あなたが何言ってるんですか不知火さん」
足柄「クレンザーって研磨剤なんだけど……」
79: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/23(木) 20:14:16.27 ID:tlQ5Pm4y0
不知火「とりあえずこれを頭にーー」
鳳翔「ダメです」ガシッ
不知火「!」
鳳翔「髪は女の命ですよ?大事にお手入れしないと……」
不知火「クレンザーで良いじゃないですか」
鳳翔「なんでそんなにクレンザー好きなんですか……ダメですよ……
ほら、まずはシャンプーをして……」
榛名「(……鳳翔さん、慣れてますねえ。お母さんみたいです。……そういえば艦娘って子供産めるんでしょうか?)」
鳳翔「次はトリートメントですよ……って私はこんな事をしている場合では!早く上がって、お掃除をしなければ……」
不知火「もうクレンザー使いますね」ドバッ
鳳翔「嗚呼っ……」ガクッ
鳳翔「ダメです」ガシッ
不知火「!」
鳳翔「髪は女の命ですよ?大事にお手入れしないと……」
不知火「クレンザーで良いじゃないですか」
鳳翔「なんでそんなにクレンザー好きなんですか……ダメですよ……
ほら、まずはシャンプーをして……」
榛名「(……鳳翔さん、慣れてますねえ。お母さんみたいです。……そういえば艦娘って子供産めるんでしょうか?)」
鳳翔「次はトリートメントですよ……って私はこんな事をしている場合では!早く上がって、お掃除をしなければ……」
不知火「もうクレンザー使いますね」ドバッ
鳳翔「嗚呼っ……」ガクッ
80: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/23(木) 20:15:06.15 ID:tlQ5Pm4y0
足柄「そいえば隼鷹生きてるかしら」
足柄「よいしょ」ザバァ
榛名「わぁ隼鷹さんの水揚げですね」
足柄「隼鷹ー?」
隼鷹「……あ……」
足柄「隼鷹?」
隼鷹「あ、あれ?アタシ……」
足柄「良かったー。気が付いたのね」
隼鷹「ここは船渠……?なんだか記憶が……アタシ、どうなってた?」
足柄「……知らない方が良いこともあるわ」
隼鷹「えっ……榛名?」
榛名「……」サッ
隼鷹「……なんで目を逸らすんだ……」
鳳翔「あ、隼鷹さん!大丈夫ですか?」
隼鷹「おう!このとーり!記憶は無いけど!」アハハ
鳳翔「良かった……Gになってしまうかと……」
隼鷹「……G……?」
鳳翔「あ、私はお先に失礼しますね!お掃除しないと……」
足柄「あ、あたしももう上がるわ!」ザバッ
榛名「わ、私も!」ザバァ
不知火「不知火も失礼します」サッ
隼鷹「えっ!……お、おい!」
ガラガラガラ……ピシャッ!
隼鷹「……」
隼鷹「……アタシ何したんだ……」
足柄「よいしょ」ザバァ
榛名「わぁ隼鷹さんの水揚げですね」
足柄「隼鷹ー?」
隼鷹「……あ……」
足柄「隼鷹?」
隼鷹「あ、あれ?アタシ……」
足柄「良かったー。気が付いたのね」
隼鷹「ここは船渠……?なんだか記憶が……アタシ、どうなってた?」
足柄「……知らない方が良いこともあるわ」
隼鷹「えっ……榛名?」
榛名「……」サッ
隼鷹「……なんで目を逸らすんだ……」
鳳翔「あ、隼鷹さん!大丈夫ですか?」
隼鷹「おう!このとーり!記憶は無いけど!」アハハ
鳳翔「良かった……Gになってしまうかと……」
隼鷹「……G……?」
鳳翔「あ、私はお先に失礼しますね!お掃除しないと……」
足柄「あ、あたしももう上がるわ!」ザバッ
榛名「わ、私も!」ザバァ
不知火「不知火も失礼します」サッ
隼鷹「えっ!……お、おい!」
ガラガラガラ……ピシャッ!
隼鷹「……」
隼鷹「……アタシ何したんだ……」
92: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/25(土) 13:33:23.67 ID:tiRDPEhZO
着替え室
鳳翔「急がないと……」いそいそ
鳳翔「お先です!」
足柄「あの人ビショビショで出て行ったわ……」
榛名「髪を下ろしてる鳳翔さん、新鮮ですねぇ」
不知火「ドライヤーありますか?」
足柄「そこにあるわよ〜」
不知火「ありがとうございます」ぶぉーん
鳳翔「急がないと……」いそいそ
鳳翔「お先です!」
足柄「あの人ビショビショで出て行ったわ……」
榛名「髪を下ろしてる鳳翔さん、新鮮ですねぇ」
不知火「ドライヤーありますか?」
足柄「そこにあるわよ〜」
不知火「ありがとうございます」ぶぉーん
93: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/25(土) 13:34:30.66 ID:tiRDPEhZO
足柄「しっかし風呂上がりはコーヒー牛乳一気飲みしたくなるわね!なんで置いてないのかしら!」
榛名「私はサイダーですね」
足柄「ふっ、わかってないわねー……牛乳が良いのよ……」
榛名「キンキンに冷えた、サイダーの喉越しと清涼感は何事にも代え難いです!牛乳、口の中に残るじゃないですかぁ」
足柄「チッチッチ。牛乳はもはや文化!風情の領域なのよこれは……!ポッと出のシュワシュワ水とは違うわ……!」
不知火「シュワシュワ水て」ぶぉーん
榛名「むむむ……!」
足柄「ふふふ……!」
不知火「もう混ぜたらどうですか」ぶぉーん
足柄「あんたそれクッソ不味かったわよ」
榛名「やったことあるんですね……」
榛名「私はサイダーですね」
足柄「ふっ、わかってないわねー……牛乳が良いのよ……」
榛名「キンキンに冷えた、サイダーの喉越しと清涼感は何事にも代え難いです!牛乳、口の中に残るじゃないですかぁ」
足柄「チッチッチ。牛乳はもはや文化!風情の領域なのよこれは……!ポッと出のシュワシュワ水とは違うわ……!」
不知火「シュワシュワ水て」ぶぉーん
榛名「むむむ……!」
足柄「ふふふ……!」
不知火「もう混ぜたらどうですか」ぶぉーん
足柄「あんたそれクッソ不味かったわよ」
榛名「やったことあるんですね……」
94: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/25(土) 13:36:09.81 ID:tiRDPEhZO
食堂
鳳翔「急がないと……」パタパタパタ
タオルを首に巻いたまま、走る。
思えばお昼もお出ししていないのだ。
ガチャ
鳳翔「……提、督?」
提督「なんだ、早かったな」
食堂への扉を開けると、掃除を終えた提督がコーヒーを飲んでいた。
まさか提督が掃除をするとは考えなかった鳳翔は驚く。
提督「ゴミや割れたガラスは捨てた。破損したものについては纏めておいたから、そっちで判断してくれ」
鳳翔「……」
提督「鳳翔?」
鳳翔「あ……ごめんなさい!ありがとうございます」
別段時間を掛けた訳ではない、筈だ。
全員の服を剥ぎ取り、洗剤に漬けておき、風呂に入って臭いを落とす。
その間に、提督が掃除を終えてしまったらしい。
鳳翔「急がないと……」パタパタパタ
タオルを首に巻いたまま、走る。
思えばお昼もお出ししていないのだ。
ガチャ
鳳翔「……提、督?」
提督「なんだ、早かったな」
食堂への扉を開けると、掃除を終えた提督がコーヒーを飲んでいた。
まさか提督が掃除をするとは考えなかった鳳翔は驚く。
提督「ゴミや割れたガラスは捨てた。破損したものについては纏めておいたから、そっちで判断してくれ」
鳳翔「……」
提督「鳳翔?」
鳳翔「あ……ごめんなさい!ありがとうございます」
別段時間を掛けた訳ではない、筈だ。
全員の服を剥ぎ取り、洗剤に漬けておき、風呂に入って臭いを落とす。
その間に、提督が掃除を終えてしまったらしい。
95: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/25(土) 13:37:01.14 ID:tiRDPEhZO
鳳翔「申し訳……ございません」
頭を下げる。
だめだ。
浮かれてミスをした。
恥ずかしい。
鳳翔の、濡れたまま束ねずにいた髪が垂れた。
提督「気にするな。良い気分転換になった」
沈む鳳翔と対照的に、提督の声はどこか明るい。
鳳翔「そういう問題では……」
提督「……そんな事より、髪はキチンと乾かせ。傷むぞ」
鳳翔「……そんな事よりーー」
提督「ほら、座れ」
鳳翔「えっ?ちょ、」
鳳翔は多少強引に手を引かれ、バランスを崩すように椅子に座らされた。
提督はそのまま、鳳翔の首からタオルを取り上げ、フワッと髪に被せる。
鳳翔「あ……」
提督は丁寧に、髪の水分をタオルに吸わせていった。
決して擦らず、あくまで優しく揉む程度に留めている。
頭を下げる。
だめだ。
浮かれてミスをした。
恥ずかしい。
鳳翔の、濡れたまま束ねずにいた髪が垂れた。
提督「気にするな。良い気分転換になった」
沈む鳳翔と対照的に、提督の声はどこか明るい。
鳳翔「そういう問題では……」
提督「……そんな事より、髪はキチンと乾かせ。傷むぞ」
鳳翔「……そんな事よりーー」
提督「ほら、座れ」
鳳翔「えっ?ちょ、」
鳳翔は多少強引に手を引かれ、バランスを崩すように椅子に座らされた。
提督はそのまま、鳳翔の首からタオルを取り上げ、フワッと髪に被せる。
鳳翔「あ……」
提督は丁寧に、髪の水分をタオルに吸わせていった。
決して擦らず、あくまで優しく揉む程度に留めている。
96: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/25(土) 13:38:09.18 ID:tiRDPEhZO
提督「いつも、キチンと髪を乾かさないのか?」
展開について行けず、されるがままになっている鳳翔に話しかける。
鳳翔「い、いえ、そんな事は……」
鳳翔はそれきり黙ってしまった。
いきなりの事に緊張して、肩が強張り、背筋が伸びて。
誰かに髪を拭かれるなんて経験は無くて、どうして良いのかわからないまま俯いてしまう。
無言の、少し気不味い、気恥ずかしい空間。
それをどう勘違いしたのか、提督が鳳翔の髪に顔を近づける。
そして、フワリと香る、ヒトの髪の匂い。
鳳翔は驚いて、反射的に振り返った。
鳳翔「ぁ……」
すると、それはもう、お互いの吐息が触れ合う距離。
彼の濃い、茶色の瞳の中に、自分の顔が見える。
鳳翔は狼狽し、その頬は一気に紅潮して。
すぐに正面に向き直ってしまう。
その様子を見て、提督は小さく笑った。
展開について行けず、されるがままになっている鳳翔に話しかける。
鳳翔「い、いえ、そんな事は……」
鳳翔はそれきり黙ってしまった。
いきなりの事に緊張して、肩が強張り、背筋が伸びて。
誰かに髪を拭かれるなんて経験は無くて、どうして良いのかわからないまま俯いてしまう。
無言の、少し気不味い、気恥ずかしい空間。
それをどう勘違いしたのか、提督が鳳翔の髪に顔を近づける。
そして、フワリと香る、ヒトの髪の匂い。
鳳翔は驚いて、反射的に振り返った。
鳳翔「ぁ……」
すると、それはもう、お互いの吐息が触れ合う距離。
彼の濃い、茶色の瞳の中に、自分の顔が見える。
鳳翔は狼狽し、その頬は一気に紅潮して。
すぐに正面に向き直ってしまう。
その様子を見て、提督は小さく笑った。
97: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/25(土) 13:38:56.37 ID:tiRDPEhZO
提督「すまん、鳳翔。 無神経だった」
鳳翔「い、いえ……」
提督「……昔、シャンプーの代わりにクレンザーを使う馬鹿が居てな」
鳳翔「は、はぁ……」
提督「アレは石灰みたいな匂いがする。もしやと思って少し失礼した。驚かせてすまない」
鳳翔「だ、大丈夫です」
提督は鳳翔の髪を乾かす作業に戻った。
提督「クレンザーでは無いようで安心したよ」
長い髪の先端をタオルで挟み、その上からポンポン、と優しく叩く。
少しずつ、手際よく、丁寧に。
髪の水分が無くなるにつれ、次第に鳳翔の緊張も薄れていった。
鳳翔「い、いえ……」
提督「……昔、シャンプーの代わりにクレンザーを使う馬鹿が居てな」
鳳翔「は、はぁ……」
提督「アレは石灰みたいな匂いがする。もしやと思って少し失礼した。驚かせてすまない」
鳳翔「だ、大丈夫です」
提督は鳳翔の髪を乾かす作業に戻った。
提督「クレンザーでは無いようで安心したよ」
長い髪の先端をタオルで挟み、その上からポンポン、と優しく叩く。
少しずつ、手際よく、丁寧に。
髪の水分が無くなるにつれ、次第に鳳翔の緊張も薄れていった。
98: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/25(土) 13:39:42.33 ID:tiRDPEhZO
鳳翔「……慣れてらっしゃるのですね、提督」
提督「まぁな」
鳳翔は目を伏せ、髪を拭かれながら、少しいじらしく聞いてみる。
鳳翔「よく、こういった事をなさるのですか?」
提督「今はしない」
提督は簡潔に答えるが、その後の催促するような沈黙に押され、言葉を続けた。
提督「……昔、艦娘に髪の手入れを教える為に、少しな」
鳳翔「……あなたが教えたのですか?」
鳳翔の意外そうな声音に、提督は苦笑する。
提督「本当に昔の話だ。奴ら、シャンプーの存在も知らなくてな」
鳳翔「それはまた……」
提督「当時は石鹸しか支給されていなかった。
食器用クレンザーの方が石鹸より早く汚れが落ちると、艦娘の中で一時期流行ってな」
鳳翔「(不知火さんは確か提督と一緒の部隊の出ですよね……アレも、そういう事でしょうか)」
提督「その時、私が個人的にシャンプーやらを購入して与えたんだが……まぁ、手入れはそのついでだ」
鳳翔「……」
提督「まぁな」
鳳翔は目を伏せ、髪を拭かれながら、少しいじらしく聞いてみる。
鳳翔「よく、こういった事をなさるのですか?」
提督「今はしない」
提督は簡潔に答えるが、その後の催促するような沈黙に押され、言葉を続けた。
提督「……昔、艦娘に髪の手入れを教える為に、少しな」
鳳翔「……あなたが教えたのですか?」
鳳翔の意外そうな声音に、提督は苦笑する。
提督「本当に昔の話だ。奴ら、シャンプーの存在も知らなくてな」
鳳翔「それはまた……」
提督「当時は石鹸しか支給されていなかった。
食器用クレンザーの方が石鹸より早く汚れが落ちると、艦娘の中で一時期流行ってな」
鳳翔「(不知火さんは確か提督と一緒の部隊の出ですよね……アレも、そういう事でしょうか)」
提督「その時、私が個人的にシャンプーやらを購入して与えたんだが……まぁ、手入れはそのついでだ」
鳳翔「……」
99: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/25(土) 13:43:16.69 ID:tiRDPEhZO
提督「さっきのも他意があった訳ではない。許せ」
鳳翔「いえ、謝罪なさる程の事では……」
提督「そうか。……よし、こんな所だろう」
そう言って、提督はタオルを取り払う。
まだ少し水分を含んだ、綺麗な黒髪が露わになった。
滑らかなそれは、食堂の明かりを映して輝く。
提督はそれを手櫛で、優しく梳かしていった。
鳳翔には、それが気持ち良くて。
再び訪れた静寂は、どこか優しい。
鳳翔「……不思議な方です」
不意に漏れた呟きを、提督は拾った。
提督「……そうかも知れんな」
鳳翔は顔を上げる。
鳳翔「……私達は結局の所、兵器であっても人間ではありませんから」
提督「……」
鳳翔「いえ、謝罪なさる程の事では……」
提督「そうか。……よし、こんな所だろう」
そう言って、提督はタオルを取り払う。
まだ少し水分を含んだ、綺麗な黒髪が露わになった。
滑らかなそれは、食堂の明かりを映して輝く。
提督はそれを手櫛で、優しく梳かしていった。
鳳翔には、それが気持ち良くて。
再び訪れた静寂は、どこか優しい。
鳳翔「……不思議な方です」
不意に漏れた呟きを、提督は拾った。
提督「……そうかも知れんな」
鳳翔は顔を上げる。
鳳翔「……私達は結局の所、兵器であっても人間ではありませんから」
提督「……」
100: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/25(土) 13:48:58.61 ID:tiRDPEhZO
鳳翔はゆっくりと振り返った。
提督の顔を見ようとして、自然と上目遣いになる。
湿った黒髪が額に、頬に張り付いて、やけに艶かしい。
濡れた瞳が、提督の視線を至近距離で捉えた。
鳳翔「……なぜ、私達を大切になさるのですか?」
提督は少し困ったように笑って、答える。
彼女の髪を撫でながら。
提督「お前達が、そんな事を聞くからだ」
鳳翔がそれを聞いて、何かを言おうとした時。
「「「わぁぁ?!」」」
という悲鳴と共に、四人の艦娘達が食堂の入り口で、折り重なるようにして倒れ込んだ。
どうやらドアの隙間から中を覗いていて、バランスを崩して部屋に雪崩れ込んだらしい。
呆れ顔の提督と、真っ赤になって口をパクパクさせる鳳翔の視線の先で、榛名達は積み重なったまま、えへへーと笑っていた。
提督の顔を見ようとして、自然と上目遣いになる。
湿った黒髪が額に、頬に張り付いて、やけに艶かしい。
濡れた瞳が、提督の視線を至近距離で捉えた。
鳳翔「……なぜ、私達を大切になさるのですか?」
提督は少し困ったように笑って、答える。
彼女の髪を撫でながら。
提督「お前達が、そんな事を聞くからだ」
鳳翔がそれを聞いて、何かを言おうとした時。
「「「わぁぁ?!」」」
という悲鳴と共に、四人の艦娘達が食堂の入り口で、折り重なるようにして倒れ込んだ。
どうやらドアの隙間から中を覗いていて、バランスを崩して部屋に雪崩れ込んだらしい。
呆れ顔の提督と、真っ赤になって口をパクパクさせる鳳翔の視線の先で、榛名達は積み重なったまま、えへへーと笑っていた。
110: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/26(日) 01:24:34.96 ID:AxpXdKUQ0
………
……
…
少し前の事。
足柄「いい湯だったわねー」
不知火「気持ち良かったです」
榛名「隼鷹さんはまだ湯船に浸かってましたね」
足柄「てか、不知火さん髪型えらいことになってるんだけど」
不知火「括ればなんとかなります」
榛名「バッシバシですね……キューティクル死滅したんじゃないですか?」
リフレッシュし、服も着替えた三人は船渠から暖簾をくぐって出てきた。
足柄「……さて、と。これからどーしましょ」
榛名「いやいや……掃除ですよ足柄さん……」
足柄「……記憶のない隼鷹に全てを押し付けて……」
不知火「あなたは悪魔か何かですか……」
足柄「はぁー……鳳翔さんも今頃掃除してるだろうし、行くしか無いわねー」
……
…
少し前の事。
足柄「いい湯だったわねー」
不知火「気持ち良かったです」
榛名「隼鷹さんはまだ湯船に浸かってましたね」
足柄「てか、不知火さん髪型えらいことになってるんだけど」
不知火「括ればなんとかなります」
榛名「バッシバシですね……キューティクル死滅したんじゃないですか?」
リフレッシュし、服も着替えた三人は船渠から暖簾をくぐって出てきた。
足柄「……さて、と。これからどーしましょ」
榛名「いやいや……掃除ですよ足柄さん……」
足柄「……記憶のない隼鷹に全てを押し付けて……」
不知火「あなたは悪魔か何かですか……」
足柄「はぁー……鳳翔さんも今頃掃除してるだろうし、行くしか無いわねー」
111: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/26(日) 01:25:13.39 ID:AxpXdKUQ0
食堂
不知火「……?ドアが少し開いてますね。中で何か……。……!!」
不知火がドアの少しの隙間から片目だけで中を覗くと、固まってしまった。
足柄「……?どうしたの?」
足柄は不知火に駆け寄り、その肩に手を置くようにして食堂の様子を伺う。
足柄「……ほぅん?」
そして謎の声を発した。
榛名「え、何ですか何ですか」
榛名も気になって、足柄の肩を押さえつけるようにして中を見ると。
鳳翔が提督に髪を拭かれていた。
榛名「……ん?……」
不知火「……あの……腰、ヤバいんですけど……」
一番下、中腰で2人分の体重を支える不知火が、額に汗を浮かべながら言う。
足柄「……榛名?握力緩めて?」
その上の、肩を榛名に握られた足柄が言うが、榛名は聞いていない。
部屋の中では鳳翔が振り返り、二人の顔が一瞬急接近していた。
足柄「……い、痛い……!握力……!榛名、握力……!」
不知火「ちょ、足柄さん……わ、私もう、腰が……」
下二人もそう言いつつ、視線は食堂の方に釘付けだ。
不知火「……?ドアが少し開いてますね。中で何か……。……!!」
不知火がドアの少しの隙間から片目だけで中を覗くと、固まってしまった。
足柄「……?どうしたの?」
足柄は不知火に駆け寄り、その肩に手を置くようにして食堂の様子を伺う。
足柄「……ほぅん?」
そして謎の声を発した。
榛名「え、何ですか何ですか」
榛名も気になって、足柄の肩を押さえつけるようにして中を見ると。
鳳翔が提督に髪を拭かれていた。
榛名「……ん?……」
不知火「……あの……腰、ヤバいんですけど……」
一番下、中腰で2人分の体重を支える不知火が、額に汗を浮かべながら言う。
足柄「……榛名?握力緩めて?」
その上の、肩を榛名に握られた足柄が言うが、榛名は聞いていない。
部屋の中では鳳翔が振り返り、二人の顔が一瞬急接近していた。
足柄「……い、痛い……!握力……!榛名、握力……!」
不知火「ちょ、足柄さん……わ、私もう、腰が……」
下二人もそう言いつつ、視線は食堂の方に釘付けだ。
112: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/26(日) 01:26:01.94 ID:AxpXdKUQ0
足柄「くっ……何なのよ、あのいい雰囲気は……!」
榛名「……」ギュ
足柄「痛い!は、榛名……!肉が千切れるわ……!」
不知火「こ、腰が……!腰が……!」
榛名の意識が完全に提督の方へ行って。
足柄の肩が激痛を発し。
不知火の腰が悲鳴をあげる頃。
そいつは来た。
隼鷹「うわぁ……何やってんだ?こいつら……」
ここでお茶目な隼鷹は、悪戯を思いついてしまう。
あれ?これ驚かしたら面白くね?と。
隼鷹「……」
彼女はひっそりと三人に近づき。
榛名「……」
足柄「ぎゃあ!私の肩ロースが!」
不知火「腰が!腰が!私泣きそうですよもう!」
隼鷹「……」
驚かした。
隼鷹「ばぁぁぁ!」
完全に意識が別の所にあった榛名は、それで度肝を抜かし、結果的に全体重を足柄にかける。
足柄も、肩が痛い所に重みが掛かって耐えられるはずもなく。
自然と死に体の不知火への荷重がさらに増え。
自然と。
「「「わぁぁ?!」」」
崩れた。
榛名「……」ギュ
足柄「痛い!は、榛名……!肉が千切れるわ……!」
不知火「こ、腰が……!腰が……!」
榛名の意識が完全に提督の方へ行って。
足柄の肩が激痛を発し。
不知火の腰が悲鳴をあげる頃。
そいつは来た。
隼鷹「うわぁ……何やってんだ?こいつら……」
ここでお茶目な隼鷹は、悪戯を思いついてしまう。
あれ?これ驚かしたら面白くね?と。
隼鷹「……」
彼女はひっそりと三人に近づき。
榛名「……」
足柄「ぎゃあ!私の肩ロースが!」
不知火「腰が!腰が!私泣きそうですよもう!」
隼鷹「……」
驚かした。
隼鷹「ばぁぁぁ!」
完全に意識が別の所にあった榛名は、それで度肝を抜かし、結果的に全体重を足柄にかける。
足柄も、肩が痛い所に重みが掛かって耐えられるはずもなく。
自然と死に体の不知火への荷重がさらに増え。
自然と。
「「「わぁぁ?!」」」
崩れた。
113: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/26(日) 01:26:44.40 ID:AxpXdKUQ0
………
……
…
提督「お前達は本当に馬鹿だな……」
足柄「んな事言って、イチャコラしてんじゃないわよ〜」
ニヤニヤしながら言う足柄を、提督は半目で眺める。
隣に佇む鳳翔は平静を装っているが、頬は上気したままだ。
提督「髪を拭いてやっただけだろうが……」
足柄「だけって……夫婦か!」
榛名と鳳翔がビクッとなる。
提督「そこは親子だろ……」
溜息。
提督「ほら、散れ、散れ。……いや、待て。雷は居ないが、他が揃ってるならここで話しておくか……」
足柄「?」
提督「今後、我々は深海棲艦からの防衛作戦に従事する事になる可能性が高い」
隼鷹「?!」
足柄「……」
鳳翔「……」ハッ
……
…
提督「お前達は本当に馬鹿だな……」
足柄「んな事言って、イチャコラしてんじゃないわよ〜」
ニヤニヤしながら言う足柄を、提督は半目で眺める。
隣に佇む鳳翔は平静を装っているが、頬は上気したままだ。
提督「髪を拭いてやっただけだろうが……」
足柄「だけって……夫婦か!」
榛名と鳳翔がビクッとなる。
提督「そこは親子だろ……」
溜息。
提督「ほら、散れ、散れ。……いや、待て。雷は居ないが、他が揃ってるならここで話しておくか……」
足柄「?」
提督「今後、我々は深海棲艦からの防衛作戦に従事する事になる可能性が高い」
隼鷹「?!」
足柄「……」
鳳翔「……」ハッ
114: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/26(日) 01:27:24.88 ID:AxpXdKUQ0
隼鷹があからさまに動揺し、鳳翔の顔が険しくなった。
足柄は特に反応を見せずに、自分の爪を眺めている。
隼鷹「……敵がここまで攻めてくるって、こと?」
提督「防衛線の一部となる、と言うことだ。過剰に心配するな」
提督はポン、と隼鷹の頭に手を置く。
提督「全員、追加の防衛訓練を入れる。それだけ知っておいてくれ」
先程までの浮ついた空気は何処へやら、沈痛な雰囲気が辺りを支配する。
提督「……適切な訓練と適切な作戦、適切な判断」
隼鷹が顔を上げる。
提督「お前達は丈夫だ。それがあれば、沈まん。……私は作戦と判断を下してやれるが、訓練ばかりはお前達に頑張って貰わねばならん」
隼鷹の目を見て告げる。
何故ならば、この事は隼鷹の為に言っているようなものだからだ。
上司と一対一で同じ事を聞くより、こういう場で聞く事で、仲間と感情を共有でき、心理的負担が軽くなる、筈だ。
足柄は特に反応を見せずに、自分の爪を眺めている。
隼鷹「……敵がここまで攻めてくるって、こと?」
提督「防衛線の一部となる、と言うことだ。過剰に心配するな」
提督はポン、と隼鷹の頭に手を置く。
提督「全員、追加の防衛訓練を入れる。それだけ知っておいてくれ」
先程までの浮ついた空気は何処へやら、沈痛な雰囲気が辺りを支配する。
提督「……適切な訓練と適切な作戦、適切な判断」
隼鷹が顔を上げる。
提督「お前達は丈夫だ。それがあれば、沈まん。……私は作戦と判断を下してやれるが、訓練ばかりはお前達に頑張って貰わねばならん」
隼鷹の目を見て告げる。
何故ならば、この事は隼鷹の為に言っているようなものだからだ。
上司と一対一で同じ事を聞くより、こういう場で聞く事で、仲間と感情を共有でき、心理的負担が軽くなる、筈だ。
115: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/26(日) 01:28:14.71 ID:AxpXdKUQ0
隼鷹「……」
提督「生き残る為に力をつけろ。恐れるな、隼鷹。道は教えてやる」
ポンポン、と隼鷹の頭を叩く。
隼鷹「……ん」
提督「とまぁ、これだけだな」
足柄「結構重い話じゃなーい?」
提督「知っておく事は重要な事だ。この世界で知りませんでしたは通用しない。
そういう意味では、良いニュースだろう?」
足柄「何が良いんだか」
提督「ま、私が生きている内は、お前達も死なせんさ」
足柄「……ほほう。発言の責任取ってよ?」
……いかんな。
足柄の何気ない返しに、提督は、ふと思った。
俺は嘘つきなのだ。
……だが、この言葉ばかりは、嘘ではない。嘘にはならない、筈だ。
提督「生き残る為に力をつけろ。恐れるな、隼鷹。道は教えてやる」
ポンポン、と隼鷹の頭を叩く。
隼鷹「……ん」
提督「とまぁ、これだけだな」
足柄「結構重い話じゃなーい?」
提督「知っておく事は重要な事だ。この世界で知りませんでしたは通用しない。
そういう意味では、良いニュースだろう?」
足柄「何が良いんだか」
提督「ま、私が生きている内は、お前達も死なせんさ」
足柄「……ほほう。発言の責任取ってよ?」
……いかんな。
足柄の何気ない返しに、提督は、ふと思った。
俺は嘘つきなのだ。
……だが、この言葉ばかりは、嘘ではない。嘘にはならない、筈だ。
116: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/26(日) 01:28:50.94 ID:AxpXdKUQ0
勿論、気持ちだって嘘では無い。
だけれど、思っている事というのは大概実現しない物なのだ。
提督はその事を嫌という程知っている。
赤城の顔が、飛龍の顔が心に浮かんだ。
提督はそれを振り払い、気持ちに蓋をして、艦娘を安心させるための言葉を紡ぐ。
提督「生憎自信があるもんでね」
足柄「ふぅん……じゃ、期待できるわね!」
笑顔で言う。
笑顔で言うが。
足柄はきっと、その言葉に意味がない事になんて気がついてるのだろう。
その上で、発言の意図を汲んでくれた。
提督「当たり前だ」
ふん、と鼻を鳴らして言うが、その実、提督は感謝している。
それがちゃんと伝わると良いのだが
、と彼は思った。
だけれど、思っている事というのは大概実現しない物なのだ。
提督はその事を嫌という程知っている。
赤城の顔が、飛龍の顔が心に浮かんだ。
提督はそれを振り払い、気持ちに蓋をして、艦娘を安心させるための言葉を紡ぐ。
提督「生憎自信があるもんでね」
足柄「ふぅん……じゃ、期待できるわね!」
笑顔で言う。
笑顔で言うが。
足柄はきっと、その言葉に意味がない事になんて気がついてるのだろう。
その上で、発言の意図を汲んでくれた。
提督「当たり前だ」
ふん、と鼻を鳴らして言うが、その実、提督は感謝している。
それがちゃんと伝わると良いのだが
、と彼は思った。
117: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/26(日) 01:30:12.59 ID:AxpXdKUQ0
足柄「じゃ、勝たないとね!……提督、酒は?!」
提督「……仕方のない奴だな……」
足柄「あるのね!今夜は代理さんの送別会も兼ねて、決起会をするわよ!
漲ってきたわー!大量のカツを揚げるわー!」
隼鷹「飲むぞー!」
鳳翔「ご一緒します!」
榛名「右に同じく!」
沈んでいた空気が、また盛り上がりを見せる。
提督「やれやれ……」
こうやって、防衛訓練の件を話しておき、時間をおけば気持ちの整理がつくはずだ。
特に隼鷹が、不安で訓練に身が入らない、なんてことになっては困る。
そういう意味で、この宴は良い提案なのだろう。
チラリと足柄を見ると、彼女は提督にだけわかるようにウインクをした。
そんな、とても自然で、魅力的なウインクに、ドキリとしてしまっている初心な自分がいる。
全く、足柄は良い女だ。
それは認めざるを得ない。
提督「……仕方のない奴だな……」
足柄「あるのね!今夜は代理さんの送別会も兼ねて、決起会をするわよ!
漲ってきたわー!大量のカツを揚げるわー!」
隼鷹「飲むぞー!」
鳳翔「ご一緒します!」
榛名「右に同じく!」
沈んでいた空気が、また盛り上がりを見せる。
提督「やれやれ……」
こうやって、防衛訓練の件を話しておき、時間をおけば気持ちの整理がつくはずだ。
特に隼鷹が、不安で訓練に身が入らない、なんてことになっては困る。
そういう意味で、この宴は良い提案なのだろう。
チラリと足柄を見ると、彼女は提督にだけわかるようにウインクをした。
そんな、とても自然で、魅力的なウインクに、ドキリとしてしまっている初心な自分がいる。
全く、足柄は良い女だ。
それは認めざるを得ない。
128: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:18:56.25 ID:qq87r/Xe0
執務室
部屋に戻り、溜まった書類を整理する事数時間。
今日は、哨戒以外の仕事はさせていない。無論、秘書艦も。
少し寂しさを覚え始めた頃、提督はふと気がついた。
あれ?誰が夜間哨戒行くんだ?、と。
提督「今更ながら、何故雷が昼に哨戒へ出ているんだ……」
夜に空母に哨戒させる訳にはいかない。
提督「……どうしたものか」
提督が思い悩んでいると、来訪者があった。
コンコン
不知火「不知火です」
提督「入れ」
不知火「失礼します。お願いがあって参りました。……私を、哨戒に出して下さい」
不知火は沈痛な表情で言う。
提督「……理由を聞こう」
不知火「食堂は、壊滅状態です……」
提督「……は?」
不知火「……隼鷹さんが完成して……榛名さんと足柄さんを巻き込んでカオスが発生して……」
不知火は再び目を伏せた。
不知火「鳳翔さんも……今頃、もう……」
部屋に戻り、溜まった書類を整理する事数時間。
今日は、哨戒以外の仕事はさせていない。無論、秘書艦も。
少し寂しさを覚え始めた頃、提督はふと気がついた。
あれ?誰が夜間哨戒行くんだ?、と。
提督「今更ながら、何故雷が昼に哨戒へ出ているんだ……」
夜に空母に哨戒させる訳にはいかない。
提督「……どうしたものか」
提督が思い悩んでいると、来訪者があった。
コンコン
不知火「不知火です」
提督「入れ」
不知火「失礼します。お願いがあって参りました。……私を、哨戒に出して下さい」
不知火は沈痛な表情で言う。
提督「……理由を聞こう」
不知火「食堂は、壊滅状態です……」
提督「……は?」
不知火「……隼鷹さんが完成して……榛名さんと足柄さんを巻き込んでカオスが発生して……」
不知火は再び目を伏せた。
不知火「鳳翔さんも……今頃、もう……」
129: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:19:56.22 ID:qq87r/Xe0
提督「……つまり?」
不知火「私は貧乏クジを引いて飲酒出来なかったので、哨戒に行かざるを得ません」
提督「……すまないが、頼む」
不知火「……はい」
しょんぼりとした様子で、不知火は執務室を出て行った。
提督「……酒、残しといてやらないとな……」
提督「……」
提督「嫌な予感がする……」
不知火「私は貧乏クジを引いて飲酒出来なかったので、哨戒に行かざるを得ません」
提督「……すまないが、頼む」
不知火「……はい」
しょんぼりとした様子で、不知火は執務室を出て行った。
提督「……酒、残しといてやらないとな……」
提督「……」
提督「嫌な予感がする……」
130: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:20:37.11 ID:qq87r/Xe0
夜
提督「代理くん。書類の具合はどうだ?君の送別会の準備が整った」
提督は業務がひと段落すると、客室にて同じく業務中であった代理を呼びに行った。
扉が開き、不思議そうな顔をした代理が顔を覗かせた。
代理「私なんぞの為に、送別会ですか?」
提督「すまんな……忙しいか?」
代理「いえ、とんでもありません。仕事も丁度終わったところです。ご一緒させていただきます」
提督「よし、では行こうか……」
代理「楽しみですね」
提督「代理くん。書類の具合はどうだ?君の送別会の準備が整った」
提督は業務がひと段落すると、客室にて同じく業務中であった代理を呼びに行った。
扉が開き、不思議そうな顔をした代理が顔を覗かせた。
代理「私なんぞの為に、送別会ですか?」
提督「すまんな……忙しいか?」
代理「いえ、とんでもありません。仕事も丁度終わったところです。ご一緒させていただきます」
提督「よし、では行こうか……」
代理「楽しみですね」
131: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:21:18.73 ID:qq87r/Xe0
食堂
足柄「調子に乗ってやり過ぎたわ!」
鳳翔「あああ……一体何日分の食料をあげたんですか……」
足柄「大丈夫よ!提督達がいなかった分時のだから!」
隼鷹「うめぇ!」
足柄「隼鷹!つまみ食いをするな!」
隼鷹「うひょっ」ピョン
足柄のパンチを、隼鷹は腰の動きで躱した。
鳳翔「……少し酔ってるせいでしょうか?隼鷹さんの腰がありえない方向を向いてるんですが……」
足柄「……奇遇ね。あたしも酔ってるみたいだわ……」
鳳翔「というか、私が昼間から酔うなど……不覚です……」
足柄「確かに!」
鳳翔「確かにじゃありません!何故人が水を求めているのに日本酒を渡すのですか!」
足柄「いやぁ……まさか一升瓶を一口でいくとは……」
鳳翔「あ、あれは!慌ててて、味がわからなかっただけです!」
足柄「(わからなくても普通無理でしょ……)」
足柄「……大体あなたが私を煽るから!」
足柄「はいはーい。アツアツでしたもんねー」
鳳翔「足柄さん!」
足柄「アハハハッ!」
足柄「調子に乗ってやり過ぎたわ!」
鳳翔「あああ……一体何日分の食料をあげたんですか……」
足柄「大丈夫よ!提督達がいなかった分時のだから!」
隼鷹「うめぇ!」
足柄「隼鷹!つまみ食いをするな!」
隼鷹「うひょっ」ピョン
足柄のパンチを、隼鷹は腰の動きで躱した。
鳳翔「……少し酔ってるせいでしょうか?隼鷹さんの腰がありえない方向を向いてるんですが……」
足柄「……奇遇ね。あたしも酔ってるみたいだわ……」
鳳翔「というか、私が昼間から酔うなど……不覚です……」
足柄「確かに!」
鳳翔「確かにじゃありません!何故人が水を求めているのに日本酒を渡すのですか!」
足柄「いやぁ……まさか一升瓶を一口でいくとは……」
鳳翔「あ、あれは!慌ててて、味がわからなかっただけです!」
足柄「(わからなくても普通無理でしょ……)」
足柄「……大体あなたが私を煽るから!」
足柄「はいはーい。アツアツでしたもんねー」
鳳翔「足柄さん!」
足柄「アハハハッ!」
132: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:22:02.29 ID:qq87r/Xe0
隼鷹「……あるぇ?そう言えば榛名は?」
鳳翔「見てませんね」
足柄「……嫌な予感がするんだけど。あの子はあの子で飲んでたわよね……榛名?榛名ー?」
はーい!と厨房から声がした。
足柄「居たわね、厨房に!……あたし用事思い出したから、後はよろしく!」
そう言って何処かへ駆け出そうとした足柄の手首を、鳳翔はガシッと掴む。
鳳翔「逃がしません……!」
足柄「嫌ぁ!あの子厨房出禁なんでしょう?!鳳翔さんがなんとかしてー!」
鳳翔「死なば諸共です……!」
足柄「いやぁぁ……!」
そのままズルズルと厨房へ引きずられていく。
鳳翔「見てませんね」
足柄「……嫌な予感がするんだけど。あの子はあの子で飲んでたわよね……榛名?榛名ー?」
はーい!と厨房から声がした。
足柄「居たわね、厨房に!……あたし用事思い出したから、後はよろしく!」
そう言って何処かへ駆け出そうとした足柄の手首を、鳳翔はガシッと掴む。
鳳翔「逃がしません……!」
足柄「嫌ぁ!あの子厨房出禁なんでしょう?!鳳翔さんがなんとかしてー!」
鳳翔「死なば諸共です……!」
足柄「いやぁぁ……!」
そのままズルズルと厨房へ引きずられていく。
133: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:23:30.84 ID:qq87r/Xe0
2人が恐る恐る厨房を覗くと、榛名が揚げ物をしていた。
一見普通の料理風景だが、榛名は厨房を吹き飛ばした過去がある。
足柄「は、榛名?何をしているのかしら?」
榛名「揚げ物ですよ!」
鳳翔「榛名さん、厨房出禁だったのでは……?」
榛名「あ……」
足柄「……」
鳳翔「……」
榛名「……榛名は大丈夫です!」
足柄「あたし達が大丈夫じゃないわよ!」
榛名「なんとかなるもんですよ!ほら、これなんか……」デローン
足柄「やぁぁ!」
一見普通の料理風景だが、榛名は厨房を吹き飛ばした過去がある。
足柄「は、榛名?何をしているのかしら?」
榛名「揚げ物ですよ!」
鳳翔「榛名さん、厨房出禁だったのでは……?」
榛名「あ……」
足柄「……」
鳳翔「……」
榛名「……榛名は大丈夫です!」
足柄「あたし達が大丈夫じゃないわよ!」
榛名「なんとかなるもんですよ!ほら、これなんか……」デローン
足柄「やぁぁ!」
134: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:24:11.27 ID:qq87r/Xe0
………
……
…
それから間もなくして、提督と代理が食堂にやってきた。
提督「……ふぅ」
代理「……?どうなされたのですか?ドアの前で深呼吸とは……」
提督「いや、ちょっと覚悟をな……」
そう言って、ドアを開けると、ちょうど足柄と榛名が会話していた。
足柄「料理オンチとかそういうレベルじゃないわよこれ……揚げ物でどうやってこんなダークマターを……」
榛名「ひ、酷いです!ダークマターだなんて!」
足柄「こんなん提督でも食べれないわよ……」
榛名「そ、そんな事ありません!提督ならきっと食べて下さいます!」
提督「(やめてくれ……)」
……
…
それから間もなくして、提督と代理が食堂にやってきた。
提督「……ふぅ」
代理「……?どうなされたのですか?ドアの前で深呼吸とは……」
提督「いや、ちょっと覚悟をな……」
そう言って、ドアを開けると、ちょうど足柄と榛名が会話していた。
足柄「料理オンチとかそういうレベルじゃないわよこれ……揚げ物でどうやってこんなダークマターを……」
榛名「ひ、酷いです!ダークマターだなんて!」
足柄「こんなん提督でも食べれないわよ……」
榛名「そ、そんな事ありません!提督ならきっと食べて下さいます!」
提督「(やめてくれ……)」
135: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:24:57.73 ID:qq87r/Xe0
鳳翔「……あら?提督?」
榛名「え"っ」サッ
足柄「なんで今ダークマターを隠したのよ。提督に食べさせましょうよ」
榛名「意地悪ですね、このっ……ほらお先に味見をどうぞ足柄さん!」グイッ
足柄「読んでたわ!隼鷹ガード!」さっ
隼鷹「もごぉっ」ムシャ
鳳翔「あっ……」
提督「……」
隼鷹「……」ムシャムシャ
榛名「ど、どうですか?」
隼鷹「案外いけrゴデュファ!」ゲボァ
鳳翔「きゃっ」
足柄「ひぃ!なんか黒い塊を吐いて倒れたわ!」
榛名「……案外いけますか!良かったです!」
足柄「つ、都合の悪い事を全部無視したわ!恐ろしい子……!」
榛名「え"っ」サッ
足柄「なんで今ダークマターを隠したのよ。提督に食べさせましょうよ」
榛名「意地悪ですね、このっ……ほらお先に味見をどうぞ足柄さん!」グイッ
足柄「読んでたわ!隼鷹ガード!」さっ
隼鷹「もごぉっ」ムシャ
鳳翔「あっ……」
提督「……」
隼鷹「……」ムシャムシャ
榛名「ど、どうですか?」
隼鷹「案外いけrゴデュファ!」ゲボァ
鳳翔「きゃっ」
足柄「ひぃ!なんか黒い塊を吐いて倒れたわ!」
榛名「……案外いけますか!良かったです!」
足柄「つ、都合の悪い事を全部無視したわ!恐ろしい子……!」
136: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:25:43.48 ID:qq87r/Xe0
榛名「味わう猶予があるようですから……うふふ」
足柄「(くっ……こんなのがまだ5つも残ってる……!)」チラ
提督と目が合った。
目線で『食え』と足柄に訴えている。
足柄「(じ、冗談じゃないわ!……かくなる上は!)ちょ、ちょうど5個あるわね?!せっかくだし皆で頂きましょう?!」
その発言に、提督の顔が引き攣り。
隼鷹を介抱していた鳳翔の顔が、絶望に染まった。
榛名「そ、それなら提督には此方を……」
しかし、榛名はいそいそと厨房に戻ると、黄金色のカツを持って来た。
榛名「これは上手くいきました!」
提督「ほう。頂こう」
足柄「(榛名ぁぁぁぁぁ!何故それを隠しているぅぅぅ?!)」
提督「(馬鹿め足柄……!巻き添えを狙うからこうなる……!)」
鳳翔「(私、完全に被害者です……!)」
足柄「(くっ……こんなのがまだ5つも残ってる……!)」チラ
提督と目が合った。
目線で『食え』と足柄に訴えている。
足柄「(じ、冗談じゃないわ!……かくなる上は!)ちょ、ちょうど5個あるわね?!せっかくだし皆で頂きましょう?!」
その発言に、提督の顔が引き攣り。
隼鷹を介抱していた鳳翔の顔が、絶望に染まった。
榛名「そ、それなら提督には此方を……」
しかし、榛名はいそいそと厨房に戻ると、黄金色のカツを持って来た。
榛名「これは上手くいきました!」
提督「ほう。頂こう」
足柄「(榛名ぁぁぁぁぁ!何故それを隠しているぅぅぅ?!)」
提督「(馬鹿め足柄……!巻き添えを狙うからこうなる……!)」
鳳翔「(私、完全に被害者です……!)」
137: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:26:27.70 ID:qq87r/Xe0
榛名「では、みなさんにも!」
榛名は嬉々として暗黒物質を配布する。言い出しっぺの足柄は勿論、鳳翔も榛名の笑顔に負けて受け取ってしまう。
代理「わ、私もいただいてよろしいのですかな?」
榛名「あ、あまり見た目はよろしくないですが……」
代理「い、いえ……頂きます」
代理も覚悟を決めたようだ。
榛名を含む全員が、カツを手に持った。一つ余ったのは皿の上のまま。
提督「……いただこう」
代理「いただきます」
鳳翔・足柄「……いただきます……」
榛名「……はい!頂きます!」
そして、全員が同時に口にそれを放り込む。
瞬間、
「「「……!!」」」
提督を除く全員がぶっ倒れた。
榛名は嬉々として暗黒物質を配布する。言い出しっぺの足柄は勿論、鳳翔も榛名の笑顔に負けて受け取ってしまう。
代理「わ、私もいただいてよろしいのですかな?」
榛名「あ、あまり見た目はよろしくないですが……」
代理「い、いえ……頂きます」
代理も覚悟を決めたようだ。
榛名を含む全員が、カツを手に持った。一つ余ったのは皿の上のまま。
提督「……いただこう」
代理「いただきます」
鳳翔・足柄「……いただきます……」
榛名「……はい!頂きます!」
そして、全員が同時に口にそれを放り込む。
瞬間、
「「「……!!」」」
提督を除く全員がぶっ倒れた。
138: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:27:01.08 ID:qq87r/Xe0
自分は良いものが食べれて良かったと、提督は安堵する。
しかし。
提督「やれやれ……なんとかなった……な」
何かがおかしい。
提督「……あれ?……視界が……」
ボヤける。
提督「まさか……上手く行ったのは……見た目……だけ……ごふっ」ドサッ
提督も倒れた。
その暫く後。
雷「司令官!哨戒から戻ったわよ!」
雷「……あら?皆、転がって……飲み過ぎかしら?もう、だらしないんだからー」
雷「……こんなところにカツが!黒焦げ?とは言え勿体無いわね!」パクッ
雷「……きゅう」ポテッ
そして、誰もいなくなった。
しかし。
提督「やれやれ……なんとかなった……な」
何かがおかしい。
提督「……あれ?……視界が……」
ボヤける。
提督「まさか……上手く行ったのは……見た目……だけ……ごふっ」ドサッ
提督も倒れた。
その暫く後。
雷「司令官!哨戒から戻ったわよ!」
雷「……あら?皆、転がって……飲み過ぎかしら?もう、だらしないんだからー」
雷「……こんなところにカツが!黒焦げ?とは言え勿体無いわね!」パクッ
雷「……きゅう」ポテッ
そして、誰もいなくなった。
139: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:27:47.65 ID:qq87r/Xe0
一時間後
全員がダークマターによる昏倒から覚醒していた。
提督「やれやれ、大変な目にあったな……」
榛名「ごめんなさい……」
提督「焦らず、まずは鳳翔か足柄に料理を習う事だな」
提督は苦笑して言う。
榛名「はい……」
鳳翔「(そういう問題なのでしょうか……私達は一体何を食べたのでしょう……?)」
隼鷹「……飲み直しだ!酒取ってくる」
足柄「カツを暖めてくるわ……揚げたてだったのに……」フラフラ
雷「うう……なんて味なの……おおよそこの世の物とは思えなかったわ……」
鳳翔「……あら?代理さん?代理さん大丈夫ですか?」
代理「あ……爺さんが、川の向こうから手招きしてる……」
鳳翔「その川は渡ってはいけませんよ?代理さん?」ペチペチ
隼鷹「オラァ!ビールだ!飲め!」
足柄「オラァ!カツよ!食え!」
ドン!と大量のカツとビールが置かれる。
紆余曲折を経て、やっと宴会が開かれようとしていた。
雷「最高ね!乾杯しましょ!」
足柄「ほら、提督!音頭!」
足柄が提督を催促した。
提督「えーコホン……では、諸君。改めてお互いに出逢えたことに、感謝の気持ちを持つのだ。そう……思えば、10年前の夏ーー」
足柄「なんの話よ!長いわ!乾杯!」
足柄の勢いあるツッコミと共に、全員がグラスを突き合わせた。
「「「乾杯ー!」」」
全員がダークマターによる昏倒から覚醒していた。
提督「やれやれ、大変な目にあったな……」
榛名「ごめんなさい……」
提督「焦らず、まずは鳳翔か足柄に料理を習う事だな」
提督は苦笑して言う。
榛名「はい……」
鳳翔「(そういう問題なのでしょうか……私達は一体何を食べたのでしょう……?)」
隼鷹「……飲み直しだ!酒取ってくる」
足柄「カツを暖めてくるわ……揚げたてだったのに……」フラフラ
雷「うう……なんて味なの……おおよそこの世の物とは思えなかったわ……」
鳳翔「……あら?代理さん?代理さん大丈夫ですか?」
代理「あ……爺さんが、川の向こうから手招きしてる……」
鳳翔「その川は渡ってはいけませんよ?代理さん?」ペチペチ
隼鷹「オラァ!ビールだ!飲め!」
足柄「オラァ!カツよ!食え!」
ドン!と大量のカツとビールが置かれる。
紆余曲折を経て、やっと宴会が開かれようとしていた。
雷「最高ね!乾杯しましょ!」
足柄「ほら、提督!音頭!」
足柄が提督を催促した。
提督「えーコホン……では、諸君。改めてお互いに出逢えたことに、感謝の気持ちを持つのだ。そう……思えば、10年前の夏ーー」
足柄「なんの話よ!長いわ!乾杯!」
足柄の勢いあるツッコミと共に、全員がグラスを突き合わせた。
「「「乾杯ー!」」」
140: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:29:34.70 ID:qq87r/Xe0
提督「監督役ご苦労だった、代理君。助かったよ」
代理「それは何よりです」
隼鷹「」ゴキュッゴキュッゴキュッ
隼鷹「……かぁぁ〜!このために生きてる!もう一杯!」
足柄「……ビールおかわり!」
提督「おいおい、お前らペース早いぞ……」
雷「もう少し落ち着いて飲めば良いのにね、司令官?」
提督「全くだ……俺もビールくれ」
雷「司令官?!」
隼鷹「お?お?この流れはー?」
足柄「提督の〜?」
隼鷹「ちょっとイイとこ見てみたい?!」
雷「待ってコールに入るの早くない?!」
提督「……」
足柄「大きく3つ?」
隼鷹「小さく3つ?」
足柄「おまけに3つ!」
隼鷹「そーれ!」
足柄・隼鷹「イッキ!イッキ!イッキ!」
提督「……」グイッ
足柄・隼鷹「ヒューヒュー!」
代理「それは何よりです」
隼鷹「」ゴキュッゴキュッゴキュッ
隼鷹「……かぁぁ〜!このために生きてる!もう一杯!」
足柄「……ビールおかわり!」
提督「おいおい、お前らペース早いぞ……」
雷「もう少し落ち着いて飲めば良いのにね、司令官?」
提督「全くだ……俺もビールくれ」
雷「司令官?!」
隼鷹「お?お?この流れはー?」
足柄「提督の〜?」
隼鷹「ちょっとイイとこ見てみたい?!」
雷「待ってコールに入るの早くない?!」
提督「……」
足柄「大きく3つ?」
隼鷹「小さく3つ?」
足柄「おまけに3つ!」
隼鷹「そーれ!」
足柄・隼鷹「イッキ!イッキ!イッキ!」
提督「……」グイッ
足柄・隼鷹「ヒューヒュー!」
141: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:31:37.64 ID:qq87r/Xe0
雷「う、うわぁ……」
鳳翔「少しは落ち着けないのですか……」
代理「凄まじい盛り上がりですね」
提督「悪くない」
代理「……そうですね」
提督「騒げる時に騒ぐべきだ。人でも、艦娘でも……その時は突然来る」
代理「……」
少し、二人が沈黙する。
足柄はそれに気がつくと、
足柄「なーに盛り下がってんのよ、そこの二人は!ほらイッキなさい!今すぐイッキよ!」
足柄・榛名「そーれイッキイッキ!」
提督「……やるか」
代理「ええ!」
鳳翔「あらあら、もう無茶苦茶ですね……うふふ」
雷「ええい!こうなったら私も飲むわ!ビール持ってきなさーい!」
鳳翔「少しは落ち着けないのですか……」
代理「凄まじい盛り上がりですね」
提督「悪くない」
代理「……そうですね」
提督「騒げる時に騒ぐべきだ。人でも、艦娘でも……その時は突然来る」
代理「……」
少し、二人が沈黙する。
足柄はそれに気がつくと、
足柄「なーに盛り下がってんのよ、そこの二人は!ほらイッキなさい!今すぐイッキよ!」
足柄・榛名「そーれイッキイッキ!」
提督「……やるか」
代理「ええ!」
鳳翔「あらあら、もう無茶苦茶ですね……うふふ」
雷「ええい!こうなったら私も飲むわ!ビール持ってきなさーい!」
142: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:33:01.68 ID:qq87r/Xe0
………
……
…
代理「もう……だめで候……」ドサッ
雷「あら?主役カッコカリが……まぁいいわ!隼鷹、日本酒おかわりー!」
隼鷹「あいよー!」
榛名「憐れな代理さん……ここ、皆酒強いですよね……」
榛名が倒れた代理に毛布を被せた。
提督「どうした、足柄。もうダウンか」
足柄「ハァァァ?なめてんの?まだまだいけるわよ!」グビー
鳳翔「ヒック……提督……」ギュ
足柄「……ちょ!今日昼から思ってたけどそのポジは鳳翔あざとい!」
提督「……?」
鳳翔「……」つーん
足柄「こ、この老夫婦どもが……」
鳳翔「……」ふふん
足柄「……」
隼鷹「てかさー、実際提督はアタシらの事どう思ってんの?」
提督「……どう、とは?」
隼鷹「あるじゃん、そういう……こう……イメージみたいな!」
榛名「それ、気になります!」
雷「気になります!」
足柄「ます!」
鳳翔「……」なります
提督「ふむ……イメージ……隼鷹はおっさんのイメージだな」
隼鷹「マジかよ……もっとこう、オブラート的なの無いの?」
提督「中年」
隼鷹「悪化した!」
提督「でもまぁ、アレだな……隼鷹とは本土で食い倒れしたいな……飲み屋をハシゴだ」
隼鷹「ああ……いいなぁ……食い倒れてぇ……鎮守府の外出た事無いからな……」
提督「俺もここ数年出てないな」
隼鷹「……そんなもんかねー」
提督「ま、いつか何かあるだろ」
隼鷹「ハハッ。酔ってて適当だなぁ」
提督「そんなもんだ」
……
…
代理「もう……だめで候……」ドサッ
雷「あら?主役カッコカリが……まぁいいわ!隼鷹、日本酒おかわりー!」
隼鷹「あいよー!」
榛名「憐れな代理さん……ここ、皆酒強いですよね……」
榛名が倒れた代理に毛布を被せた。
提督「どうした、足柄。もうダウンか」
足柄「ハァァァ?なめてんの?まだまだいけるわよ!」グビー
鳳翔「ヒック……提督……」ギュ
足柄「……ちょ!今日昼から思ってたけどそのポジは鳳翔あざとい!」
提督「……?」
鳳翔「……」つーん
足柄「こ、この老夫婦どもが……」
鳳翔「……」ふふん
足柄「……」
隼鷹「てかさー、実際提督はアタシらの事どう思ってんの?」
提督「……どう、とは?」
隼鷹「あるじゃん、そういう……こう……イメージみたいな!」
榛名「それ、気になります!」
雷「気になります!」
足柄「ます!」
鳳翔「……」なります
提督「ふむ……イメージ……隼鷹はおっさんのイメージだな」
隼鷹「マジかよ……もっとこう、オブラート的なの無いの?」
提督「中年」
隼鷹「悪化した!」
提督「でもまぁ、アレだな……隼鷹とは本土で食い倒れしたいな……飲み屋をハシゴだ」
隼鷹「ああ……いいなぁ……食い倒れてぇ……鎮守府の外出た事無いからな……」
提督「俺もここ数年出てないな」
隼鷹「……そんなもんかねー」
提督「ま、いつか何かあるだろ」
隼鷹「ハハッ。酔ってて適当だなぁ」
提督「そんなもんだ」
143: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:33:42.55 ID:qq87r/Xe0
足柄「あたしも飲み屋まーわーりーたーいー!」
提督「足柄はアレだな……お前となら、飲み屋に限らず何処へでも行けそうだな……」
足柄「キャー!告白よー!」
提督「言ってろ……実際海でも山でも行くだろお前。いろいろ想像できる」
足柄「いろいろ想像?!卑 ね?!」
提督「……俺がお前に引きずり回される光景がな」
足柄「そう?案外従順よあたし!」
提督「そりゃ重巡だもんな」
足柄「……」
提督「足柄はアレだな……お前となら、飲み屋に限らず何処へでも行けそうだな……」
足柄「キャー!告白よー!」
提督「言ってろ……実際海でも山でも行くだろお前。いろいろ想像できる」
足柄「いろいろ想像?!卑 ね?!」
提督「……俺がお前に引きずり回される光景がな」
足柄「そう?案外従順よあたし!」
提督「そりゃ重巡だもんな」
足柄「……」
144: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:35:48.22 ID:qq87r/Xe0
榛名「私はどうでしょう?」
提督「お前とも何処でも行けそうだな」
足柄「なにいきなり浮気?!許さないわ!」
提督「やめろ!引っ掻くな!……足柄は引っ張ってくタイプだろ。榛名は着いてくるタイプに見える」
榛名「榛名、提督に一生ついていきます!」
提督「やめとけ、やめとけ」
提督は笑って酒を煽る。
鳳翔「……」くいっ
提督「……」チラッ
提督「……温泉行きたい」
隼鷹「急になんだ……」
提督「……いや、鳳翔を見て思った。温泉旅行に行きたい。
そして露天風呂で星を見ながら日本酒が飲みたい。そして畳の上で寝たい」
足柄「この老夫婦が……!」
隼鷹「そんなん誰だってそうだよ!てか畳はあるだろ!」
提督「露天風呂作るか……」
隼鷹「マジ?!やった!!」
提督「嘘だよ……お前可愛いな……」
隼鷹「……意地悪かよ……」
提督「お前とも何処でも行けそうだな」
足柄「なにいきなり浮気?!許さないわ!」
提督「やめろ!引っ掻くな!……足柄は引っ張ってくタイプだろ。榛名は着いてくるタイプに見える」
榛名「榛名、提督に一生ついていきます!」
提督「やめとけ、やめとけ」
提督は笑って酒を煽る。
鳳翔「……」くいっ
提督「……」チラッ
提督「……温泉行きたい」
隼鷹「急になんだ……」
提督「……いや、鳳翔を見て思った。温泉旅行に行きたい。
そして露天風呂で星を見ながら日本酒が飲みたい。そして畳の上で寝たい」
足柄「この老夫婦が……!」
隼鷹「そんなん誰だってそうだよ!てか畳はあるだろ!」
提督「露天風呂作るか……」
隼鷹「マジ?!やった!!」
提督「嘘だよ……お前可愛いな……」
隼鷹「……意地悪かよ……」
145: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:36:36.38 ID:qq87r/Xe0
雷「所で……わ、私は?!」
提督「……あー……」
雷「……」ドキドキ
提督「お前、家にいそう」
雷「家にいそう?!」
提督「養ってくれそう……」
雷「ええ?!なにこれプロポーズ?!」
隼鷹「うわぁ……ないわ……これは引くわ……」
足柄「ドン引きだわ……」
提督「イメージだよイメージ」
足柄「ふっ……! コンにはお仕置きが必要ね!隼鷹!酒を!」
隼鷹「待ってましたぁ!」
提督「いや、ここは全員で飲み比べだ。残った奴が総取りだ……!」
足柄「ほほう……受けて立つわ!」
榛名「えへへ、腕が鳴るわね……!」
雷「待って?!一体何を総取りするつもりの?!」
提督「いいから杯を出せ」
雷「……ええい、ままよー!」
各々の杯に酒が満たされてゆく。
提督「行き渡ったな……それでは宜しいか?」
頷く。
「「「まずは一杯!」」」
提督「……あー……」
雷「……」ドキドキ
提督「お前、家にいそう」
雷「家にいそう?!」
提督「養ってくれそう……」
雷「ええ?!なにこれプロポーズ?!」
隼鷹「うわぁ……ないわ……これは引くわ……」
足柄「ドン引きだわ……」
提督「イメージだよイメージ」
足柄「ふっ……! コンにはお仕置きが必要ね!隼鷹!酒を!」
隼鷹「待ってましたぁ!」
提督「いや、ここは全員で飲み比べだ。残った奴が総取りだ……!」
足柄「ほほう……受けて立つわ!」
榛名「えへへ、腕が鳴るわね……!」
雷「待って?!一体何を総取りするつもりの?!」
提督「いいから杯を出せ」
雷「……ええい、ままよー!」
各々の杯に酒が満たされてゆく。
提督「行き渡ったな……それでは宜しいか?」
頷く。
「「「まずは一杯!」」」
146: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:38:21.33 ID:qq87r/Xe0
………
……
…
提督「ふぅ……」
提督はビールとウイスキーを持ち、艦娘らが食堂で雑魚寝する中、一人基地の外の海岸へと向かった。
竹鶴。本土で手に入れた、お気に入りの逸品である。
提督「やぁ、いい天気だな」
真夜中にも関わらず、辺りは明るい。
雲ひとつない空。
月明かりが浜辺を照らす。
しかし、その先の海は、月明かりすら飲み込み。
行く末は深淵へと繋がっている。
……
…
提督「ふぅ……」
提督はビールとウイスキーを持ち、艦娘らが食堂で雑魚寝する中、一人基地の外の海岸へと向かった。
竹鶴。本土で手に入れた、お気に入りの逸品である。
提督「やぁ、いい天気だな」
真夜中にも関わらず、辺りは明るい。
雲ひとつない空。
月明かりが浜辺を照らす。
しかし、その先の海は、月明かりすら飲み込み。
行く末は深淵へと繋がっている。
147: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 00:39:09.40 ID:qq87r/Xe0
提督「……」
暗黒を見つめながら、提督は右手のウイスキーを少し、口に含み、飲む。
甘い日本酒は好かないが、甘いウイスキーは嫌いじゃない。
チェイサーは左手のビール。
嚥下された、喉を焼くようなアルコールの刺激と豊かな香りを、炭酸と苦味が追い掛ける。
そしてまたウイスキーを口へ放り込む。
今度は残るビールの所為で、さっきより更に甘く、薫り高く感じる。
最高だ。
暗黒を見つめながら、提督は右手のウイスキーを少し、口に含み、飲む。
甘い日本酒は好かないが、甘いウイスキーは嫌いじゃない。
チェイサーは左手のビール。
嚥下された、喉を焼くようなアルコールの刺激と豊かな香りを、炭酸と苦味が追い掛ける。
そしてまたウイスキーを口へ放り込む。
今度は残るビールの所為で、さっきより更に甘く、薫り高く感じる。
最高だ。
157: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 22:58:53.58 ID:qq87r/Xe0
宴会は盛り上がった。
今は気分も良い。
だが、明日からの事を考えると、憂鬱だ。
サセン島は南方の防衛線の奥深くに位置する。だから、直接ここに深海棲艦が来る事は少ない……筈だ。
奴らがここに来ようと思うと、太郎ら南方方面軍の居る前線基地を突破せねばならなくなる。
彼らの能力は悪くなかった記憶がある。少なくとも、敵の大船団を見逃すような真似はしない。
更に、現在深海棲艦の抵抗が激しいのは北だ。五十鈴撃破以降も繰り返し襲撃を仕掛けてきているらしい。
それに対して南には殆ど襲撃が無いのである。
提督「……」
今は気分も良い。
だが、明日からの事を考えると、憂鬱だ。
サセン島は南方の防衛線の奥深くに位置する。だから、直接ここに深海棲艦が来る事は少ない……筈だ。
奴らがここに来ようと思うと、太郎ら南方方面軍の居る前線基地を突破せねばならなくなる。
彼らの能力は悪くなかった記憶がある。少なくとも、敵の大船団を見逃すような真似はしない。
更に、現在深海棲艦の抵抗が激しいのは北だ。五十鈴撃破以降も繰り返し襲撃を仕掛けてきているらしい。
それに対して南には殆ど襲撃が無いのである。
提督「……」
158: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/28(火) 22:59:54.40 ID:qq87r/Xe0
ウイスキーを煽る。
今のうちに、赤城が来ぬうちに、艦娘達にもっと力をつけてやらねばならない。
死なぬように。
自分が守ってやれなくなっても、己で己の身を守れるように。
ウイスキーを煽る。
早めに、部下達に深海棲艦化する艦娘の話をしておこう、と考える。
心構えは重要だ。
正式な情報開示令前なので、代理君に聞かれると不味い。
彼が帰った後に皆に話をしよう、と提督は決めた。
……そして、もう一つ。
物資の集積を急がねば、と。
それは、己が我儘の為に。
提督「……」
ウイスキーを煽る。
ウイスキーを煽る。
ウイスキーを煽る。
しかし、冷たく蒼い月光が、まるでアルコールを浄化しているかのようで。
提督は嫌になるほど冷静だった。
提督「……潮時だな……」
呟きは波に攫われて消える。
暫く闇を見つめた後、提督は踵を返し、基地の中へと戻って行った。
人の明かりの元へと。
今のうちに、赤城が来ぬうちに、艦娘達にもっと力をつけてやらねばならない。
死なぬように。
自分が守ってやれなくなっても、己で己の身を守れるように。
ウイスキーを煽る。
早めに、部下達に深海棲艦化する艦娘の話をしておこう、と考える。
心構えは重要だ。
正式な情報開示令前なので、代理君に聞かれると不味い。
彼が帰った後に皆に話をしよう、と提督は決めた。
……そして、もう一つ。
物資の集積を急がねば、と。
それは、己が我儘の為に。
提督「……」
ウイスキーを煽る。
ウイスキーを煽る。
ウイスキーを煽る。
しかし、冷たく蒼い月光が、まるでアルコールを浄化しているかのようで。
提督は嫌になるほど冷静だった。
提督「……潮時だな……」
呟きは波に攫われて消える。
暫く闇を見つめた後、提督は踵を返し、基地の中へと戻って行った。
人の明かりの元へと。
164: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/30(木) 23:18:29.91 ID:+WBZKzJF0
◇ファースト・コンタクト◇
提督が、宴会の翌日、自分の艦娘達に『深海棲艦化する艦娘』の話をしてから一ヶ月が経過した。
本来、本土にて未だ検討中の、情報開示ガイドラインに沿って話さねば為らぬ事だが、いつ完成するかわからないそれを待ってはいられない。
こういったことは早く知った方が良い。
反応は様々だった。
怯える者。狼狽える者。飄々としている者。
不知火に関しては、知っていたので無反応だったが。
これを契機に、基地での生活は少し変わった。
まず、隼鷹と鳳翔以外の訓練メニューとスケジュールが一新された。
以前から訓練自体は行われていたが、基本訓練のみであり、戦況を意識したような訓練は行われていなかった。
それが今回、高い密度で行われるようになったのだ。
隼鷹に関しては鳳翔の判断で、相変わらず艦載機の訓練を重ねているが。
尚、これに伴って秘書艦の業務も一時停止している。
さらに、燃料や弾薬等、余剰物資の集積が行われるようになった。
ストックに余裕を持たせる事で有事に対応しようという魂胆である。
そして。
艦娘達が、戦いを意識し始めた。
基地の雰囲気が、いつもと同じに見えて、どこかピリピリしている。
緊張感は戦いに必要だが、それは同時にストレスとなる。
心身の削りあいが、始まったのだ。
季節は夏。
新たな戦が、起ころうとしていた。
提督が、宴会の翌日、自分の艦娘達に『深海棲艦化する艦娘』の話をしてから一ヶ月が経過した。
本来、本土にて未だ検討中の、情報開示ガイドラインに沿って話さねば為らぬ事だが、いつ完成するかわからないそれを待ってはいられない。
こういったことは早く知った方が良い。
反応は様々だった。
怯える者。狼狽える者。飄々としている者。
不知火に関しては、知っていたので無反応だったが。
これを契機に、基地での生活は少し変わった。
まず、隼鷹と鳳翔以外の訓練メニューとスケジュールが一新された。
以前から訓練自体は行われていたが、基本訓練のみであり、戦況を意識したような訓練は行われていなかった。
それが今回、高い密度で行われるようになったのだ。
隼鷹に関しては鳳翔の判断で、相変わらず艦載機の訓練を重ねているが。
尚、これに伴って秘書艦の業務も一時停止している。
さらに、燃料や弾薬等、余剰物資の集積が行われるようになった。
ストックに余裕を持たせる事で有事に対応しようという魂胆である。
そして。
艦娘達が、戦いを意識し始めた。
基地の雰囲気が、いつもと同じに見えて、どこかピリピリしている。
緊張感は戦いに必要だが、それは同時にストレスとなる。
心身の削りあいが、始まったのだ。
季節は夏。
新たな戦が、起ころうとしていた。
165: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/30(木) 23:20:32.07 ID:+WBZKzJF0
◇ファースト・コンタクト◇
提督が、宴会の翌日、自分の艦娘達に『深海棲艦化する艦娘』の話をしてから一ヶ月が経過した。
本来、本土にて検討中の情報開示ガイドラインに沿って話さねば為らぬ事だが、いつ完成するかわからないそれを待ってはいられない。
こういったことは早く知った方が良い。
反応は様々だった。
怯える者。狼狽える者。飄々としている者。
不知火に関しては、知っていたので無反応だったが。
これを契機に、基地での生活は少し変わった。
まず、隼鷹と鳳翔以外の訓練メニューとスケジュールが一新された。
以前から訓練自体は行われていたが、基本訓練のみであり、戦況を意識したような訓練は行われていなかった。
それが今回、高い密度で行われるようになったのだ。
隼鷹に関しては鳳翔の判断で、相変わらず艦載機の訓練を重ねているが。
尚、これに伴って秘書艦の業務も一時停止している。
さらに、燃料や弾薬等、余剰物資の集積が行われるようになった。
ストックに余裕を持たせる事で有事に対応しようという魂胆である。
そして。
艦娘達が、戦いを意識し始めた。
基地の雰囲気が、いつもと同じに見えて、どこかピリピリしている。
戦いに緊張感は必要だが、それは同時にストレスとなる。
心身の削りあいが、始まったのだ。
季節は夏。
新たな戦が、起ころうとしていた。
提督が、宴会の翌日、自分の艦娘達に『深海棲艦化する艦娘』の話をしてから一ヶ月が経過した。
本来、本土にて検討中の情報開示ガイドラインに沿って話さねば為らぬ事だが、いつ完成するかわからないそれを待ってはいられない。
こういったことは早く知った方が良い。
反応は様々だった。
怯える者。狼狽える者。飄々としている者。
不知火に関しては、知っていたので無反応だったが。
これを契機に、基地での生活は少し変わった。
まず、隼鷹と鳳翔以外の訓練メニューとスケジュールが一新された。
以前から訓練自体は行われていたが、基本訓練のみであり、戦況を意識したような訓練は行われていなかった。
それが今回、高い密度で行われるようになったのだ。
隼鷹に関しては鳳翔の判断で、相変わらず艦載機の訓練を重ねているが。
尚、これに伴って秘書艦の業務も一時停止している。
さらに、燃料や弾薬等、余剰物資の集積が行われるようになった。
ストックに余裕を持たせる事で有事に対応しようという魂胆である。
そして。
艦娘達が、戦いを意識し始めた。
基地の雰囲気が、いつもと同じに見えて、どこかピリピリしている。
戦いに緊張感は必要だが、それは同時にストレスとなる。
心身の削りあいが、始まったのだ。
季節は夏。
新たな戦が、起ころうとしていた。
166: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/30(木) 23:21:36.07 ID:+WBZKzJF0
………
……
…
昼下がり。うだるような暑さが基地全体を包んでいた。
提督「暑い……」
執務室の窓を全開にして、涼しい風を部屋の中へ呼び込もうと試みる。
提督「……」
サァァァ、と吹き込む風に、少し目を細めた。
眼下に海原が見える。
波の音が心地よい。
提督「……」
もし、自分にも艤装が有れば、こんな暑い日には海に出たいと思うだろう。
群青色の波打つ水面は実に涼しそうだ。
……馬鹿なことを考えてないで、仕事に戻らねば、と気分を切り替え、席に戻った時。
コンコン
足柄「あたし」
来訪者。
……
…
昼下がり。うだるような暑さが基地全体を包んでいた。
提督「暑い……」
執務室の窓を全開にして、涼しい風を部屋の中へ呼び込もうと試みる。
提督「……」
サァァァ、と吹き込む風に、少し目を細めた。
眼下に海原が見える。
波の音が心地よい。
提督「……」
もし、自分にも艤装が有れば、こんな暑い日には海に出たいと思うだろう。
群青色の波打つ水面は実に涼しそうだ。
……馬鹿なことを考えてないで、仕事に戻らねば、と気分を切り替え、席に戻った時。
コンコン
足柄「あたし」
来訪者。
167: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/30(木) 23:22:24.93 ID:+WBZKzJF0
提督「入れ」
ガチャ
足柄「ども」
足柄は入って来るなり、執務室の黒い革張りソファーを見つけ、ゴロンと寝転んだ。
最近の足柄のお気に入りスポットである。表面がそれなりに冷えていて気持ち良いらしい。
足柄「……はぁー!ただでさえクソ暑いってのに、雰囲気もピリピリしてて、もうやんなっちゃうわ!」
んー!と伸びをしながら愚痴る。
次いで大きな欠伸。
提督は書類を整理する手を止め、その様子をぼーっと眺めていた。
提督「……また寝に来たのか?」
足柄「ん。ダメ?」
提督「空き時間なら構わんが……」
足柄「じゃ、失礼しまーす」
そう言って、足柄は目を瞑ってしまう。
静かになった部屋に響くはペンの音。
そのうち安らかな寝息が聞こえてきた。
ガチャ
足柄「ども」
足柄は入って来るなり、執務室の黒い革張りソファーを見つけ、ゴロンと寝転んだ。
最近の足柄のお気に入りスポットである。表面がそれなりに冷えていて気持ち良いらしい。
足柄「……はぁー!ただでさえクソ暑いってのに、雰囲気もピリピリしてて、もうやんなっちゃうわ!」
んー!と伸びをしながら愚痴る。
次いで大きな欠伸。
提督は書類を整理する手を止め、その様子をぼーっと眺めていた。
提督「……また寝に来たのか?」
足柄「ん。ダメ?」
提督「空き時間なら構わんが……」
足柄「じゃ、失礼しまーす」
そう言って、足柄は目を瞑ってしまう。
静かになった部屋に響くはペンの音。
そのうち安らかな寝息が聞こえてきた。
168: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/30(木) 23:22:59.16 ID:+WBZKzJF0
提督「(規律もあったもんじゃない……ってのは、古い考え方だ)」
書類を機械的に処理しながら、思う。
提督「(艦娘は人間じゃない。厳しい規律等無くとも自律する。深海棲艦と戦う事が、レゾンデートルだから……人の軍隊とは違う)」
穏やかな足柄の寝顔を眺める。
提督「(必要なのは、安らぎ。与えてやるべきは、別の価値観。……こいつらの家に厳しい規律は要らん)」
くちゅん!とクシャミをする足柄。
提督は彼女に薄手の毛布を掛けてやった。
提督「(……それだけの、単純な事の筈、だったんだがな……)」
溜息。
提督「(過去に縛られるとは、この事か、全く……厄介だ)」
席に戻る。
もう一度足柄を見ると、毛布を既に蹴り飛ばしていた。
提督「暑かったか」
提督は苦笑して、作業に戻った。
書類を機械的に処理しながら、思う。
提督「(艦娘は人間じゃない。厳しい規律等無くとも自律する。深海棲艦と戦う事が、レゾンデートルだから……人の軍隊とは違う)」
穏やかな足柄の寝顔を眺める。
提督「(必要なのは、安らぎ。与えてやるべきは、別の価値観。……こいつらの家に厳しい規律は要らん)」
くちゅん!とクシャミをする足柄。
提督は彼女に薄手の毛布を掛けてやった。
提督「(……それだけの、単純な事の筈、だったんだがな……)」
溜息。
提督「(過去に縛られるとは、この事か、全く……厄介だ)」
席に戻る。
もう一度足柄を見ると、毛布を既に蹴り飛ばしていた。
提督「暑かったか」
提督は苦笑して、作業に戻った。
169: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/30(木) 23:23:53.05 ID:+WBZKzJF0
………
……
…
それから何度波の音を聞いただろうか。
鮮やかな斜陽が部屋を照らす中、足柄は目覚めた。
足柄「ん……」
提督「おはよう」
足柄「ん……作業は捗った?」
提督「まぁな」
足柄「そう……あたしのお陰ね」
提督「……まぁな」
寝ていた所為で、足柄の長い髪がボサボサになっている。
まだ眠そうな目をこすり、ふわぁ、と欠伸。
提督「最近よく寝に来るが……夜、寝れてるのか?」
足柄「寝れてるわー。別にあたしは道楽でここに来てるような物だし。……この部屋が一番風通しが良くて涼しいのよ」
提督「そうか……」
道楽というのもどうかと思うが、秘書艦の居ない執務室は少し広く感じる。
たまに足柄のような来訪者が居ると、気分が落ち着くのも事実だ。
……
…
それから何度波の音を聞いただろうか。
鮮やかな斜陽が部屋を照らす中、足柄は目覚めた。
足柄「ん……」
提督「おはよう」
足柄「ん……作業は捗った?」
提督「まぁな」
足柄「そう……あたしのお陰ね」
提督「……まぁな」
寝ていた所為で、足柄の長い髪がボサボサになっている。
まだ眠そうな目をこすり、ふわぁ、と欠伸。
提督「最近よく寝に来るが……夜、寝れてるのか?」
足柄「寝れてるわー。別にあたしは道楽でここに来てるような物だし。……この部屋が一番風通しが良くて涼しいのよ」
提督「そうか……」
道楽というのもどうかと思うが、秘書艦の居ない執務室は少し広く感じる。
たまに足柄のような来訪者が居ると、気分が落ち着くのも事実だ。
170: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/30(木) 23:24:42.74 ID:+WBZKzJF0
足柄「……んー。あたしより、隼鷹の方がヤバいと思う」
提督「……隼鷹。となると……鳳翔、か」
足柄「そうね。深海棲艦化する云々の話聞いてからあの人、ちょっとね。訓練も激しさを増したみたい」
提督「……」
ペンを置き、思案する。
意外にも、鳳翔は例の話を聞いた時に最も取り乱していた。
その後もどこか暗く、今の島のピリピリした空気、その原因の一つとなっている。
主計艦娘として、他の艦娘と触れ合う機会の多い彼女が暗いと、島全体の雰囲気も沈んでしまうのだ。
提督「……話をする必要があるか」
足柄「さぁ?隼鷹は隼鷹で必死に食らいついてるみたいだけどーー」
足柄「あたしから見たらオーバーワークよ。
この間艦載機飛ばせるようになった空母に、ドッグファイトと母艦の爆撃回避軌道を同時にやらせようってのは無理があるわ」
提督「……隼鷹。となると……鳳翔、か」
足柄「そうね。深海棲艦化する云々の話聞いてからあの人、ちょっとね。訓練も激しさを増したみたい」
提督「……」
ペンを置き、思案する。
意外にも、鳳翔は例の話を聞いた時に最も取り乱していた。
その後もどこか暗く、今の島のピリピリした空気、その原因の一つとなっている。
主計艦娘として、他の艦娘と触れ合う機会の多い彼女が暗いと、島全体の雰囲気も沈んでしまうのだ。
提督「……話をする必要があるか」
足柄「さぁ?隼鷹は隼鷹で必死に食らいついてるみたいだけどーー」
足柄「あたしから見たらオーバーワークよ。
この間艦載機飛ばせるようになった空母に、ドッグファイトと母艦の爆撃回避軌道を同時にやらせようってのは無理があるわ」
171: ◆hsyiOEw8Kw 2015/04/30(木) 23:25:37.40 ID:+WBZKzJF0
提督「……」
足柄「まぁでも、あの人教官やってたらしいし……色々あるんじゃないかしら?」
提督「……初耳だな」
足柄「そうなの?あたし、本人から聞いたけど……資料には載ってなかった?」
提督「いや……無かったはずだ」
足柄「そう……ま、とにかく教官やってたらしいわよ」
提督「……そうか。一度、話をしてみよう」
足柄「そ」
提督「ああ」
足柄は、くー!ともう一度伸びをして、立ち上がった。
そして、窓の桟にもたれ掛かり、海を覗く。
足柄「もう夕方ねぇ……」
昼間とは違い、蒼かった景色は今、オレンジが支配していた。
足柄の髪が潮風にたなびく。
足柄「……どう?このアングル?」
提督「悪くない。……黙っていればな」
足柄「あんたも一言多いわよね」
フッとお互い笑いあった。
足柄「まぁでも、あの人教官やってたらしいし……色々あるんじゃないかしら?」
提督「……初耳だな」
足柄「そうなの?あたし、本人から聞いたけど……資料には載ってなかった?」
提督「いや……無かったはずだ」
足柄「そう……ま、とにかく教官やってたらしいわよ」
提督「……そうか。一度、話をしてみよう」
足柄「そ」
提督「ああ」
足柄は、くー!ともう一度伸びをして、立ち上がった。
そして、窓の桟にもたれ掛かり、海を覗く。
足柄「もう夕方ねぇ……」
昼間とは違い、蒼かった景色は今、オレンジが支配していた。
足柄の髪が潮風にたなびく。
足柄「……どう?このアングル?」
提督「悪くない。……黙っていればな」
足柄「あんたも一言多いわよね」
フッとお互い笑いあった。
180: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/03(日) 23:27:09.50 ID:6nxtudru0
演習海域にて
精神を統一する。
ふぅ、と溜息を一つ。
無線からビー、とブザー音がした。
『動体射撃訓練、開始』
同時に、動き回る標的が遠方に出現。
榛名は素早く狙いをつける。
艦砲の砲弾は重く、遅い。
艦娘達の深海棲艦との平均交戦距離は3〜4キロと言われている。
お互いの全身が見える距離だ。
その為、相対速度や重力を考慮した偏差射撃が必要となる。
榛名「(射撃管制の無い私達は、感覚でこの偏差を覚えるしかないのです……!)」
どの程度の放物線を描くか。
これくらいの距離だと着弾までの時間はどれくらいか。
戦闘中にそんな事を一々考える暇は無い。
精神を統一する。
ふぅ、と溜息を一つ。
無線からビー、とブザー音がした。
『動体射撃訓練、開始』
同時に、動き回る標的が遠方に出現。
榛名は素早く狙いをつける。
艦砲の砲弾は重く、遅い。
艦娘達の深海棲艦との平均交戦距離は3〜4キロと言われている。
お互いの全身が見える距離だ。
その為、相対速度や重力を考慮した偏差射撃が必要となる。
榛名「(射撃管制の無い私達は、感覚でこの偏差を覚えるしかないのです……!)」
どの程度の放物線を描くか。
これくらいの距離だと着弾までの時間はどれくらいか。
戦闘中にそんな事を一々考える暇は無い。
181: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/03(日) 23:28:53.97 ID:6nxtudru0
だから、何度も何度も何度も何度も訓練を繰り返して、身体で覚える。
榛名「いきます……!」
第一砲塔の射撃。
榛名「至近弾……狭叉!」
初弾から目測がドンピシャで、目標の前後に至近弾。
砲撃の散布界内に目標がある証左だ。
発生した大きい水飛沫が目標を揺らす。
榛名「……次は当たります、よ……!」
続く第二砲塔の斉射では、その言葉通り直撃弾があった。
榛名「いきます……!」
第一砲塔の射撃。
榛名「至近弾……狭叉!」
初弾から目測がドンピシャで、目標の前後に至近弾。
砲撃の散布界内に目標がある証左だ。
発生した大きい水飛沫が目標を揺らす。
榛名「……次は当たります、よ……!」
続く第二砲塔の斉射では、その言葉通り直撃弾があった。
182: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/03(日) 23:30:36.91 ID:6nxtudru0
………
……
…
榛名「……今日はここまでにしておきますか……」
日が暮れた頃、艤装を仕舞い、印字されたデータを確認する。
本日の結果、3.5キロ遠方への命中率10%。
訓練ではわりかし標準的な数値だ。
3連装の主砲が3門、その射撃が一巡する間に大体一発当てる事が出来た計算になる。
だが。
榛名「(……まだまだ足りませんね……)」
榛名は不満気だ。
それは、一月前の出来事に起因する。
榛名「(提督の寵愛を受けるにはどうしたら良いか)」
冷静に考える。
榛名「(当初は戦わせて頂けなかったので、提督のお人形になろうかと思っていましたが……)」
榛名「(戦いが、近付いている……提督は戦える艦娘を必要としています)」
……
…
榛名「……今日はここまでにしておきますか……」
日が暮れた頃、艤装を仕舞い、印字されたデータを確認する。
本日の結果、3.5キロ遠方への命中率10%。
訓練ではわりかし標準的な数値だ。
3連装の主砲が3門、その射撃が一巡する間に大体一発当てる事が出来た計算になる。
だが。
榛名「(……まだまだ足りませんね……)」
榛名は不満気だ。
それは、一月前の出来事に起因する。
榛名「(提督の寵愛を受けるにはどうしたら良いか)」
冷静に考える。
榛名「(当初は戦わせて頂けなかったので、提督のお人形になろうかと思っていましたが……)」
榛名「(戦いが、近付いている……提督は戦える艦娘を必要としています)」
183: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/03(日) 23:31:46.21 ID:6nxtudru0
榛名「(……もっと、強くなって。提督のお役に立ちたい……)」
榛名「(そうすれば、もっともっと大切にして頂けますよね)」
無意識に口許が緩む。
当初、戦闘訓練をしたいと申し出た所、提督は渋った。
あれだけ暴れたのだ、当然である。
しかし、榛名の中にはもう、黒提督は存在していなかった。
代わりに提督、提督、提督。
もう黒提督の影に怯え、暴れる事は無いだろうという確信があった。
深海棲艦など、黒提督など怖くない。
何よりも、提督に見向きされなくなる事が嫌だった。
だから、もっと強くなる。
拳での殴り合いには自信がある。
次は、砲撃を更に伸ばす。
もっと提督に大事にしてほしい、大切にされたい、愛されたい。
そんな、単純な理由。
榛名は提督に心酔しきっていた。
死ねと言われれば、すぐさま目の前で腹を裂いて死ねる程に。
榛名「……あ、そうだ。今から少し暇ですし、提督のところへお邪魔しても良いかしら……」
榛名の足取りが軽くなる。
提督に会いたい。
そばに居られるだけで心が弾む。
提督が榛名を心の隅に置いて居るだけで幸せになれる。
一番じゃなくたっていい。
一瞬でもいい。
嘘でもいい。
あの人の心を、一部でもいい。
私で、私だけで占有したい。
それだけ。
榛名「(そうすれば、もっともっと大切にして頂けますよね)」
無意識に口許が緩む。
当初、戦闘訓練をしたいと申し出た所、提督は渋った。
あれだけ暴れたのだ、当然である。
しかし、榛名の中にはもう、黒提督は存在していなかった。
代わりに提督、提督、提督。
もう黒提督の影に怯え、暴れる事は無いだろうという確信があった。
深海棲艦など、黒提督など怖くない。
何よりも、提督に見向きされなくなる事が嫌だった。
だから、もっと強くなる。
拳での殴り合いには自信がある。
次は、砲撃を更に伸ばす。
もっと提督に大事にしてほしい、大切にされたい、愛されたい。
そんな、単純な理由。
榛名は提督に心酔しきっていた。
死ねと言われれば、すぐさま目の前で腹を裂いて死ねる程に。
榛名「……あ、そうだ。今から少し暇ですし、提督のところへお邪魔しても良いかしら……」
榛名の足取りが軽くなる。
提督に会いたい。
そばに居られるだけで心が弾む。
提督が榛名を心の隅に置いて居るだけで幸せになれる。
一番じゃなくたっていい。
一瞬でもいい。
嘘でもいい。
あの人の心を、一部でもいい。
私で、私だけで占有したい。
それだけ。
184: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/03(日) 23:32:58.67 ID:6nxtudru0
………
……
…
執務室に訪問者があった。
コンコン
榛名「提督。榛名です」
提督「入れ」
ガチャ
榛名「失礼します……あら、足柄さん?」
足柄「やっほー」
榛名「そういえば足柄さん、今日訓練してました?」
足柄「ん、んーん?今日は仕方なく、提督を助けてあげたのよ?ね?」チラッ
提督「……そうだな。大変な働きっぷりだった。四時間もの間、何をしていたか榛名に教えてやれ」
足柄「……」
榛名「……また寝てたんですか……提督のお邪魔をしてはいけませんよ?」
足柄「……提督の意地悪!」
提督「事実だ。……して、榛名。用向きはなんだ?」
……
…
執務室に訪問者があった。
コンコン
榛名「提督。榛名です」
提督「入れ」
ガチャ
榛名「失礼します……あら、足柄さん?」
足柄「やっほー」
榛名「そういえば足柄さん、今日訓練してました?」
足柄「ん、んーん?今日は仕方なく、提督を助けてあげたのよ?ね?」チラッ
提督「……そうだな。大変な働きっぷりだった。四時間もの間、何をしていたか榛名に教えてやれ」
足柄「……」
榛名「……また寝てたんですか……提督のお邪魔をしてはいけませんよ?」
足柄「……提督の意地悪!」
提督「事実だ。……して、榛名。用向きはなんだ?」
185: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/03(日) 23:33:45.66 ID:6nxtudru0
榛名「訓練のご報告に上がりました!」
提督「聞こう」
榛名「榛名は、遠方静止射撃の命中率50%、至近の動目標に対する移動射撃精度10%を達成しました!」
榛名が嬉しそうに告げる。
提督「素晴らしい。また腕を上げたな、榛名」
えへへ、と笑う榛名を褒める。
その実、ひと月前から榛名は極めて真面目に訓練に取り組んでいた。
彼女は本土から帰還して以来、戦闘時に我を失う事が無くなったのだ。
実戦は未経験だが、少なくとも訓練や演習では。
しかし、榛名はやや『英雄提督』に傾倒し過ぎているようだと、提督は感じる。
単なる敬意以上の何かが自分に向けられているような気がするのだ。
恨まれるよりはよほど良いのだが……果たしてそれを『好意』の一言で片して良いものだろうか。
提督「聞こう」
榛名「榛名は、遠方静止射撃の命中率50%、至近の動目標に対する移動射撃精度10%を達成しました!」
榛名が嬉しそうに告げる。
提督「素晴らしい。また腕を上げたな、榛名」
えへへ、と笑う榛名を褒める。
その実、ひと月前から榛名は極めて真面目に訓練に取り組んでいた。
彼女は本土から帰還して以来、戦闘時に我を失う事が無くなったのだ。
実戦は未経験だが、少なくとも訓練や演習では。
しかし、榛名はやや『英雄提督』に傾倒し過ぎているようだと、提督は感じる。
単なる敬意以上の何かが自分に向けられているような気がするのだ。
恨まれるよりはよほど良いのだが……果たしてそれを『好意』の一言で片して良いものだろうか。
186: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/03(日) 23:34:33.03 ID:6nxtudru0
そんな提督の思案をよそに、当の艦娘達は騒ぐ。
足柄「ふ、まだまだあたしには及ばないわね、榛名!」
榛名「う……」
足柄の訓練スコアは一線級の艦娘を上回る。
現在の海軍のエース、第一機動部隊旗艦の長門に迫る程だ。
提督「お前何気に凄いよな……」
足柄「失礼ね!あたり前よ!」
提督「そうか」
足柄「うわ、超どうでも良さそうな返事……」
榛名「足柄さぁん!コツを教えて下さいよぅ」
足柄「フッ……いい女は秘密が多いものよ……」
榛名「……」
提督「……」
足柄「ふ、まだまだあたしには及ばないわね、榛名!」
榛名「う……」
足柄の訓練スコアは一線級の艦娘を上回る。
現在の海軍のエース、第一機動部隊旗艦の長門に迫る程だ。
提督「お前何気に凄いよな……」
足柄「失礼ね!あたり前よ!」
提督「そうか」
足柄「うわ、超どうでも良さそうな返事……」
榛名「足柄さぁん!コツを教えて下さいよぅ」
足柄「フッ……いい女は秘密が多いものよ……」
榛名「……」
提督「……」
187: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/03(日) 23:35:18.22 ID:6nxtudru0
足柄「冗談よ……訓練上手くなっても、実戦では何の役にも立たない事くらい榛名もわかってるでしょ」
榛名「……私は砲撃苦手ですから……」
足柄「分かってると思うけど、あんなもん感覚よ感覚。つまり量こなす他無いってこと!
訓練のコツなんかを探すより、距離と弾着の感覚を掴まないと話にならないわ」
榛名「確かにそうですね……」
足柄「現実の敵はパターン通りに動いちゃくれない。重要なのは応用。
訓練なんて数重ねてりゃ勝手にスコア上がるわよ。
例えどれだけ不器用でもね!」
足柄は手をプラプラ振りながら何でもなさそうに言うが、その発言にはどこか重みがあった。
榛名「……はい!榛名、頑張ります!」
提督「その意気だ。期待している」
榛名「はい!……えへへ」
榛名「……私は砲撃苦手ですから……」
足柄「分かってると思うけど、あんなもん感覚よ感覚。つまり量こなす他無いってこと!
訓練のコツなんかを探すより、距離と弾着の感覚を掴まないと話にならないわ」
榛名「確かにそうですね……」
足柄「現実の敵はパターン通りに動いちゃくれない。重要なのは応用。
訓練なんて数重ねてりゃ勝手にスコア上がるわよ。
例えどれだけ不器用でもね!」
足柄は手をプラプラ振りながら何でもなさそうに言うが、その発言にはどこか重みがあった。
榛名「……はい!榛名、頑張ります!」
提督「その意気だ。期待している」
榛名「はい!……えへへ」
188: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/03(日) 23:36:14.29 ID:6nxtudru0
足柄「そろそろ腹減ってきたわね!」
提督「確かにいい時間だな……二人とも、夕飯に行ったらどうだ」
榛名「提督も一緒に如何ですか?」
提督「ありがとう。だが、私は片付ける仕事がある。すまないな」
榛名「いえ!」
足柄「じゃ、失礼しまーす。行きましょ、榛名」
榛名「はい!失礼します」
提督「またな」
バタン
提督「……さて、次はこの書類か……」
………
……
…
提督「……こんなものか」
提督がペンを置いたのは深夜。既に時計の針は12時を回っている。
提督「……腹減ったな……何かあるか?……食堂に降りるか……」
そう言って提督は部屋を離れ、食堂へ向かった。
提督「確かにいい時間だな……二人とも、夕飯に行ったらどうだ」
榛名「提督も一緒に如何ですか?」
提督「ありがとう。だが、私は片付ける仕事がある。すまないな」
榛名「いえ!」
足柄「じゃ、失礼しまーす。行きましょ、榛名」
榛名「はい!失礼します」
提督「またな」
バタン
提督「……さて、次はこの書類か……」
………
……
…
提督「……こんなものか」
提督がペンを置いたのは深夜。既に時計の針は12時を回っている。
提督「……腹減ったな……何かあるか?……食堂に降りるか……」
そう言って提督は部屋を離れ、食堂へ向かった。
196: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/05(火) 00:37:58.70 ID:UCXPdR/I0
小さな艦娘達が手を振っている。
私に向かって手を振っている。
曰く、出撃の時間が来たと。
栄光をもたらす作戦の為の。
私は教え子達に、戦場へと行って欲しく無かった。
彼女達はあまりに未熟だった。
送り出したくなかった。
仕方なかった。
命令だから。
命令だから仕方なく、送り出した。
戦場に。
大事な大事な教え子を。
そうやって私の手元から彼女らは飛び立ち。
そして。
砕け散って真っ黒な海に堕ちて、死んだ。
あの子達は何のために死んだの?
名誉ある戦死の、何が名誉なの?
艦娘が何故、人間の為に死ななければならないの?
艦娘は何の為に、戦うの……?
昏い浜辺で、涙を流して立ち尽くす私の足首を、海中から来た黒い何かが掴んだ。
見ると、それは艦娘の姿をしたような何かで。
でも、目のある筈の場所はポッカリ黒い穴が空いてるばかりで。
口のような穴が動いて。
呪詛の言葉を吐いて。
怖い。
怖いけれど、目が離せない。
だって。
だって、その顔は。
私の大事な。
私は発狂したように叫んだ。
私に向かって手を振っている。
曰く、出撃の時間が来たと。
栄光をもたらす作戦の為の。
私は教え子達に、戦場へと行って欲しく無かった。
彼女達はあまりに未熟だった。
送り出したくなかった。
仕方なかった。
命令だから。
命令だから仕方なく、送り出した。
戦場に。
大事な大事な教え子を。
そうやって私の手元から彼女らは飛び立ち。
そして。
砕け散って真っ黒な海に堕ちて、死んだ。
あの子達は何のために死んだの?
名誉ある戦死の、何が名誉なの?
艦娘が何故、人間の為に死ななければならないの?
艦娘は何の為に、戦うの……?
昏い浜辺で、涙を流して立ち尽くす私の足首を、海中から来た黒い何かが掴んだ。
見ると、それは艦娘の姿をしたような何かで。
でも、目のある筈の場所はポッカリ黒い穴が空いてるばかりで。
口のような穴が動いて。
呪詛の言葉を吐いて。
怖い。
怖いけれど、目が離せない。
だって。
だって、その顔は。
私の大事な。
私は発狂したように叫んだ。
197: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/05(火) 00:38:59.18 ID:UCXPdR/I0
………
……
…
提督「大丈夫だ、鳳翔、大丈夫……」
鳳翔「あああぁぁぁっ……はっ……はっ……はぁ……はっ……」
鳳翔は気がつくと、提督に抱かれていた。
激しく上下する背中を、彼の手が優しく撫ぜる。
鳳翔「……はぁ……はぁ……」
夢と現実が入り混じり、思考が混乱して言葉にならない。
提督「大丈夫だ、鳳翔。ここは安全だ……」
鳳翔「……ふっ……えぐっ……ひっく……」
荒い呼吸に嗚咽が混じる。
涙が溢れて止まらない。
鳳翔「うああ……あああああ……えっく……うううう……ひぐ……」
提督に身を任せ、泣く。
涙の枯れるまで。
……
…
提督「大丈夫だ、鳳翔、大丈夫……」
鳳翔「あああぁぁぁっ……はっ……はっ……はぁ……はっ……」
鳳翔は気がつくと、提督に抱かれていた。
激しく上下する背中を、彼の手が優しく撫ぜる。
鳳翔「……はぁ……はぁ……」
夢と現実が入り混じり、思考が混乱して言葉にならない。
提督「大丈夫だ、鳳翔。ここは安全だ……」
鳳翔「……ふっ……えぐっ……ひっく……」
荒い呼吸に嗚咽が混じる。
涙が溢れて止まらない。
鳳翔「うああ……あああああ……えっく……うううう……ひぐ……」
提督に身を任せ、泣く。
涙の枯れるまで。
198: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/05(火) 00:39:39.69 ID:UCXPdR/I0
………
……
…
提督「……落ち着いたか」
鳳翔「……はい。取り乱して、失礼しました」
提督「私は問題ないが……」
ひとしきり泣いた後、鳳翔は周囲を確認する。
深夜。
食堂。
どうやら自分はまた机に突っ伏して寝ていたようだ。
そして、あの夢を見てしまった。
それで苦しんでいるところ、提督が助けようとして、抱いてくれたのかも知らない。
提督「……怖い夢でも見たか」
提督の声音は優しい。
鳳翔「……少し」
沈黙が降りる。
提督「……少し無理してるんじゃないか」
鳳翔「……いえ、そのような事は……」
提督「……そうか。隼鷹の調子はどうだ」
鳳翔「まだまだです……マニューバも艤装操作も。課題は山積しています」
提督「そうか……あまり焦り過ぎるな」
鳳翔「時間がないんです!」
無意識にドン!と強く机を叩く。
鳳翔「……っ……ごめんなさい……そんなつもりじゃ……」
提督「構わん……が……何がお前をそんなに焦らせている……?」
怪訝な提督の顔。
……
…
提督「……落ち着いたか」
鳳翔「……はい。取り乱して、失礼しました」
提督「私は問題ないが……」
ひとしきり泣いた後、鳳翔は周囲を確認する。
深夜。
食堂。
どうやら自分はまた机に突っ伏して寝ていたようだ。
そして、あの夢を見てしまった。
それで苦しんでいるところ、提督が助けようとして、抱いてくれたのかも知らない。
提督「……怖い夢でも見たか」
提督の声音は優しい。
鳳翔「……少し」
沈黙が降りる。
提督「……少し無理してるんじゃないか」
鳳翔「……いえ、そのような事は……」
提督「……そうか。隼鷹の調子はどうだ」
鳳翔「まだまだです……マニューバも艤装操作も。課題は山積しています」
提督「そうか……あまり焦り過ぎるな」
鳳翔「時間がないんです!」
無意識にドン!と強く机を叩く。
鳳翔「……っ……ごめんなさい……そんなつもりじゃ……」
提督「構わん……が……何がお前をそんなに焦らせている……?」
怪訝な提督の顔。
199: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/05(火) 00:40:31.38 ID:UCXPdR/I0
鳳翔「……戦いが、近づいていると……このままでは、隼鷹さんは死んでしまう……!」
気がつけば、鳳翔は指が青白くなる程、強く拳を握りしめていた。
提督「……昔、教官をしていたそうだな」
鳳翔「!……足柄さんから、聞きましたか」
提督「ああ」
鳳翔「……そうです。私はかつて本土で教官をしていました」
提督「……何か、あったか」
鳳翔はその問いにすぐには答えなかった。
口を開きかけては、やめる。
それを何度かくり返したのち、彼女は意を決したように言った。
鳳翔「……少し、お話を聞いて頂いてもよろしいですか?」
提督「聞かせてくれ」
彼女は静かに語り始める。
鳳翔「……私は主計科へ異動する以前は教官として、新規建造された艦娘の指導に当たっていました。
艤装の艦載量の関係から、最前線での起用が見送られた結果です。
そうして、四名の艦娘達の指導を担当する事になりました」
鳳翔「当初は教える事が初めてでしたので、本当にマニュアル通りの、今考えるとあまりに不完全な訓練を行っていました。
最前線から外された、虚脱感のようなものも手伝って、当時は無気力状態で考える事もしなかったのです。
艦娘としての自分を見失いかけていて……」
提督「……」
鳳翔「そんな私を励ましてくれたのが、その四人の艦娘達でした」
気がつけば、鳳翔は指が青白くなる程、強く拳を握りしめていた。
提督「……昔、教官をしていたそうだな」
鳳翔「!……足柄さんから、聞きましたか」
提督「ああ」
鳳翔「……そうです。私はかつて本土で教官をしていました」
提督「……何か、あったか」
鳳翔はその問いにすぐには答えなかった。
口を開きかけては、やめる。
それを何度かくり返したのち、彼女は意を決したように言った。
鳳翔「……少し、お話を聞いて頂いてもよろしいですか?」
提督「聞かせてくれ」
彼女は静かに語り始める。
鳳翔「……私は主計科へ異動する以前は教官として、新規建造された艦娘の指導に当たっていました。
艤装の艦載量の関係から、最前線での起用が見送られた結果です。
そうして、四名の艦娘達の指導を担当する事になりました」
鳳翔「当初は教える事が初めてでしたので、本当にマニュアル通りの、今考えるとあまりに不完全な訓練を行っていました。
最前線から外された、虚脱感のようなものも手伝って、当時は無気力状態で考える事もしなかったのです。
艦娘としての自分を見失いかけていて……」
提督「……」
鳳翔「そんな私を励ましてくれたのが、その四人の艦娘達でした」
200: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/05(火) 00:41:04.67 ID:UCXPdR/I0
鳳翔「なんとも情けのない話です。
前線から外された艦娘が、生まれて間も無く、砲撃の仕方も知らない艦娘に慰められるなど」
鳳翔「最初は馬鹿にされてるように感じて、これから戦える彼女達が羨ましくて、どうしてもその心遣いが受け入れられませんでした」
鳳翔「冷たい態度を取りました。無視もしました。でも、彼女達は折れませんでした。
放って置かなかったのです、こんな下らない私を」
鳳翔「根気よく、優しさを持って、あの子達は私に接してくれました……私は、それにだんだん救われていったのです」
鳳翔「次第に私達の関係は良好になり、訓練も少しずつマニュアルを逸脱し、私の経験に基づいた物になりました」
鳳翔「思えばあの頃が一番、充実していたのかも知れません。
あの子達が訓練成績で、養成所内トップを取った時、まるで自分の事のように嬉しかった」
鳳翔「楽しい事も沢山しました。
女子会なんて物の存在、知りませんでした。……ふふ。
甘味があんなに美味しいだなんて事も」
鳳翔「……こうやってこの子達が、私の教えた技術で生き残れるのなら、教官をするのも悪くないな、と。
感じ始めていました」
前線から外された艦娘が、生まれて間も無く、砲撃の仕方も知らない艦娘に慰められるなど」
鳳翔「最初は馬鹿にされてるように感じて、これから戦える彼女達が羨ましくて、どうしてもその心遣いが受け入れられませんでした」
鳳翔「冷たい態度を取りました。無視もしました。でも、彼女達は折れませんでした。
放って置かなかったのです、こんな下らない私を」
鳳翔「根気よく、優しさを持って、あの子達は私に接してくれました……私は、それにだんだん救われていったのです」
鳳翔「次第に私達の関係は良好になり、訓練も少しずつマニュアルを逸脱し、私の経験に基づいた物になりました」
鳳翔「思えばあの頃が一番、充実していたのかも知れません。
あの子達が訓練成績で、養成所内トップを取った時、まるで自分の事のように嬉しかった」
鳳翔「楽しい事も沢山しました。
女子会なんて物の存在、知りませんでした。……ふふ。
甘味があんなに美味しいだなんて事も」
鳳翔「……こうやってこの子達が、私の教えた技術で生き残れるのなら、教官をするのも悪くないな、と。
感じ始めていました」
201: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/05(火) 00:41:41.81 ID:UCXPdR/I0
鳳翔「でも」
鳳翔「それはあまりに、遅過ぎました」
鳳翔「……彼女たちに突然出撃命令が下りました」
提督「……」
鳳翔「過酷な作戦だったと聞いています。私は、私は……十分な備えもなく……彼女達を送り出しました」
提督「……」
鳳翔「誰一人、帰ってきませんでした」
提督「……」
鳳翔「……彼女達の墓は、立ちませんでした」
提督「……」
鳳翔「……」
提督「……」
鳳翔「あの時ほど、己の教育を後悔した日はありませんでした。
それ以来、私は受け持った生徒に過酷な訓練を課すようになりました。
マニュアルと生存戦略、両方を同時にやらせたのです」
鳳翔「生徒が『もう嫌だ』と投げ出す事もありました。
でも……でもそれは、ひとえに生徒達の為でした。
理解してくれる生徒は居ませんでしたが」
鳳翔「それはあまりに、遅過ぎました」
鳳翔「……彼女たちに突然出撃命令が下りました」
提督「……」
鳳翔「過酷な作戦だったと聞いています。私は、私は……十分な備えもなく……彼女達を送り出しました」
提督「……」
鳳翔「誰一人、帰ってきませんでした」
提督「……」
鳳翔「……彼女達の墓は、立ちませんでした」
提督「……」
鳳翔「……」
提督「……」
鳳翔「あの時ほど、己の教育を後悔した日はありませんでした。
それ以来、私は受け持った生徒に過酷な訓練を課すようになりました。
マニュアルと生存戦略、両方を同時にやらせたのです」
鳳翔「生徒が『もう嫌だ』と投げ出す事もありました。
でも……でもそれは、ひとえに生徒達の為でした。
理解してくれる生徒は居ませんでしたが」
202: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/05(火) 00:42:15.32 ID:UCXPdR/I0
鳳翔「……生存性を重視した私の教育は、殲滅力を重視した当時の風潮とは合わず、訓練成績も振るいませんでした」
鳳翔「成績は悪いのに、私は厳しく艦娘にあたり、評判はすこぶる悪い。
……結果、私は主計科に飛ばされました」
鳳翔「その後は……私は……戦闘のない主計科に馴染めず……周囲と揉めて……ここに、辿り着きました」
鳳翔の目尻には涙が浮かんでいた。
それは果たして悲しみの為か、悔恨の為か。
提督「……そうか」
鳳翔「私は……隼鷹さんに……死んでほしくありません……死んでほしくないんです……。
もう、もう二度と……失いたくない……」
提督「ならば、焦るな」
鳳翔「しかし……!」
提督「焦れば、事を仕損じる」
鳳翔「……!」
提督「これは昔、俺が最も信頼していた艦娘の言葉だが……。
鳳翔。俺も昔……そうやって焦った事があった。
……その結果……俺は……大変な過ちを犯す事になった」
鳳翔「……」
鳳翔「成績は悪いのに、私は厳しく艦娘にあたり、評判はすこぶる悪い。
……結果、私は主計科に飛ばされました」
鳳翔「その後は……私は……戦闘のない主計科に馴染めず……周囲と揉めて……ここに、辿り着きました」
鳳翔の目尻には涙が浮かんでいた。
それは果たして悲しみの為か、悔恨の為か。
提督「……そうか」
鳳翔「私は……隼鷹さんに……死んでほしくありません……死んでほしくないんです……。
もう、もう二度と……失いたくない……」
提督「ならば、焦るな」
鳳翔「しかし……!」
提督「焦れば、事を仕損じる」
鳳翔「……!」
提督「これは昔、俺が最も信頼していた艦娘の言葉だが……。
鳳翔。俺も昔……そうやって焦った事があった。
……その結果……俺は……大変な過ちを犯す事になった」
鳳翔「……」
203: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/05(火) 00:42:58.52 ID:UCXPdR/I0
提督「だから俺は……お前の気持ちがわかるような……そんな気がする。
……ひとつ、言っておこう。
艦娘の死の責任は、人間にあると」
鳳翔「……」
提督「お前が、艦娘の死の責任を背負う必要は無い」
鳳翔「……でも、私がもっとーー」
提督「お前は最善を尽くした」
鳳翔「!……そんなことは……!」
提督「鳳翔。お前は、最善を尽くしたんだ」
鳳翔「……」
提督「お前は……よくやった」
鳳翔「……」
提督「隼鷹には、しっかり丁寧に、確実に技術を教えてやってくれ。
まずは生存戦略だけだ。
……このままだと、持たない。隼鷹も……お前も」
提督の目はどこか遠くを見つめていた。
提督「……隼鷹は……お前たちは……簡単には死なせないから。例え、俺の命に代えても」
鳳翔を抱く手に力がこもる。
鳳翔「……」
その言葉は素直に嬉しかった。
例えそれが、理想論でも。
その言葉を艦娘に掛けてくれる人間は中々居ないから。
提督「だから……無理は、するな。お前が隼鷹を大切にするように……私もお前が大切なんだ」
噛みしめるように提督は言う。
鳳翔は黙ってそれを聞いていた。
抱かれたまま。
鳳翔「(提督……。
もう、一線級では無い私ではありますが……私はあなたの盾となりましょう。
……あなたが死なぬように、私は……。
私の、戦う意味は……)」
口には出さず、心に決める。
その後は二人、無言のまま。
朝を迎える。
……ひとつ、言っておこう。
艦娘の死の責任は、人間にあると」
鳳翔「……」
提督「お前が、艦娘の死の責任を背負う必要は無い」
鳳翔「……でも、私がもっとーー」
提督「お前は最善を尽くした」
鳳翔「!……そんなことは……!」
提督「鳳翔。お前は、最善を尽くしたんだ」
鳳翔「……」
提督「お前は……よくやった」
鳳翔「……」
提督「隼鷹には、しっかり丁寧に、確実に技術を教えてやってくれ。
まずは生存戦略だけだ。
……このままだと、持たない。隼鷹も……お前も」
提督の目はどこか遠くを見つめていた。
提督「……隼鷹は……お前たちは……簡単には死なせないから。例え、俺の命に代えても」
鳳翔を抱く手に力がこもる。
鳳翔「……」
その言葉は素直に嬉しかった。
例えそれが、理想論でも。
その言葉を艦娘に掛けてくれる人間は中々居ないから。
提督「だから……無理は、するな。お前が隼鷹を大切にするように……私もお前が大切なんだ」
噛みしめるように提督は言う。
鳳翔は黙ってそれを聞いていた。
抱かれたまま。
鳳翔「(提督……。
もう、一線級では無い私ではありますが……私はあなたの盾となりましょう。
……あなたが死なぬように、私は……。
私の、戦う意味は……)」
口には出さず、心に決める。
その後は二人、無言のまま。
朝を迎える。
212: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/05(火) 22:44:39.06 ID:m9laGpqPO
ある日
雷「あっつー……」
昼、訓練上がりの雷は艤装を収納し、訓練所から艦娘寮へと向かっていた。
太陽の光を遮る物は何もなく、げんなりするような暑さが辺りを支配している。
雷「はぁぁ……訓練用の魚雷は撃ったら回収しないといけないし……
疲れたわ……」
汗で服が肌に張り付き、不快だ。
早くお風呂に入りたい。
もうすぐ寮だ。
雷「……あ」
しかし、艦娘寮まであと一歩のところで仕事を思い出した。
雷「……艤装の整備しないと……私としたことが、忘れてたわ……提督にまた艤装装備の許可、貰わなきゃ……」
何故ここまで戻ってきてしまったの……と自分に苛立ちを覚えつつも、雷は重い足を執務室へと向けた。
雷「あっつー……」
昼、訓練上がりの雷は艤装を収納し、訓練所から艦娘寮へと向かっていた。
太陽の光を遮る物は何もなく、げんなりするような暑さが辺りを支配している。
雷「はぁぁ……訓練用の魚雷は撃ったら回収しないといけないし……
疲れたわ……」
汗で服が肌に張り付き、不快だ。
早くお風呂に入りたい。
もうすぐ寮だ。
雷「……あ」
しかし、艦娘寮まであと一歩のところで仕事を思い出した。
雷「……艤装の整備しないと……私としたことが、忘れてたわ……提督にまた艤装装備の許可、貰わなきゃ……」
何故ここまで戻ってきてしまったの……と自分に苛立ちを覚えつつも、雷は重い足を執務室へと向けた。
213: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/05(火) 22:45:16.29 ID:m9laGpqPO
執務室
提督「ふむふむ……」
提督は執務室で『ある書類』をペラペラとめくっていた。
提督「……中々だな……ふぅ」
提督は少し満足そうだ。
そのまま椅子の背もたれに全体重を掛ける。
椅子が少し傾き、ミシ、と音がした。
提督「(……しっかし、こんな所を艦娘たちに見られたら……失望されるだろうな、間違いなく)」
ほ、と溜息。
もう一度、目だけ動かしてチラリと『書類』を眺める。
提督「(……これは彼女達の為だ……俺のーー)」
提督「ふむふむ……」
提督は執務室で『ある書類』をペラペラとめくっていた。
提督「……中々だな……ふぅ」
提督は少し満足そうだ。
そのまま椅子の背もたれに全体重を掛ける。
椅子が少し傾き、ミシ、と音がした。
提督「(……しっかし、こんな所を艦娘たちに見られたら……失望されるだろうな、間違いなく)」
ほ、と溜息。
もう一度、目だけ動かしてチラリと『書類』を眺める。
提督「(……これは彼女達の為だ……俺のーー)」
214: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/05(火) 22:46:07.53 ID:m9laGpqPO
提督が悶々としていると、いきなり執務室のドアがバァン!と開いた。
そしてノックも無しに入ってくる雷。
提督「……おぉっ?!」
提督は度肝を抜かれ、そのまま椅子ごと後ろにひっくり返った。
雷「司令官?!ごめんなさい!」
雷が驚いて駆け寄ろうとする。
提督「ま、待て!動くな!」
提督は慌てて起き上がり、机の上の『書類』を隠した。
雷「え、ええ?!」
提督「い、今近寄られると……困る……」
雷「……!」
雷から見ると。
提督は前屈みになって、両手で机の上の何かを隠している。
その下半身は机の影にあって見えない。
そして転けたからか、はぁはぁと荒い息。
そしてノックも無しに入ってくる雷。
提督「……おぉっ?!」
提督は度肝を抜かれ、そのまま椅子ごと後ろにひっくり返った。
雷「司令官?!ごめんなさい!」
雷が驚いて駆け寄ろうとする。
提督「ま、待て!動くな!」
提督は慌てて起き上がり、机の上の『書類』を隠した。
雷「え、ええ?!」
提督「い、今近寄られると……困る……」
雷「……!」
雷から見ると。
提督は前屈みになって、両手で机の上の何かを隠している。
その下半身は机の影にあって見えない。
そして転けたからか、はぁはぁと荒い息。
215: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/05(火) 22:46:56.45 ID:m9laGpqPO
ポクポクポク。
雷はしばらく思考し、何かに思い当たった。
提督「わ、わかってくれたか……?」
提督は雷の様子に気付かない。
雷はぎこちない様子で首を動かして。
提督と目が合った瞬間、その顔は真っ赤になった。
雷「ご、ごめんなさい!今度からちゃんとノックするわ!司令官も男の子だもんね!」
提督「?!……待て!……ご、極秘資料なんだ……!」
雷「極秘資料?!」
雷の頬がさらに赤くなる。
正常な思考をするには、少し島は暑過ぎたのだ。
提督「落ち着け!」
雷「大丈夫大丈夫よ大丈夫私は落ち着いてるわ!」
提督「?!」
雷はしばらく思考し、何かに思い当たった。
提督「わ、わかってくれたか……?」
提督は雷の様子に気付かない。
雷はぎこちない様子で首を動かして。
提督と目が合った瞬間、その顔は真っ赤になった。
雷「ご、ごめんなさい!今度からちゃんとノックするわ!司令官も男の子だもんね!」
提督「?!……待て!……ご、極秘資料なんだ……!」
雷「極秘資料?!」
雷の頬がさらに赤くなる。
正常な思考をするには、少し島は暑過ぎたのだ。
提督「落ち着け!」
雷「大丈夫大丈夫よ大丈夫私は落ち着いてるわ!」
提督「?!」
216: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/05(火) 22:47:36.01 ID:m9laGpqPO
雷「……男の子なんだから極秘資料の一つや二つ、持ってて当たり前よ!
恥ずかしがることなんてないわ!」
提督「扉開いてるんだぞ?!大声を出さないでくれ……!」
雷「そりゃ、こんなに女の子に囲まれてたら……うう、気付いてあげられなくてごめんなさい!」
提督「そこは一生気付かないで欲しい……!」
雷「あ、足柄さんに注意してくるわ!あの人よく夜一緒にお酒飲んでるものね?!
司令官も大変よね!」
提督「?!……やめてくれ!足柄には言うんじゃない!えらいことになる……!」
雷「で、でも万が一の事があったら……!」
提督「無い。大丈夫だ、無い。俺は大人だぞ」
恥ずかしがることなんてないわ!」
提督「扉開いてるんだぞ?!大声を出さないでくれ……!」
雷「そりゃ、こんなに女の子に囲まれてたら……うう、気付いてあげられなくてごめんなさい!」
提督「そこは一生気付かないで欲しい……!」
雷「あ、足柄さんに注意してくるわ!あの人よく夜一緒にお酒飲んでるものね?!
司令官も大変よね!」
提督「?!……やめてくれ!足柄には言うんじゃない!えらいことになる……!」
雷「で、でも万が一の事があったら……!」
提督「無い。大丈夫だ、無い。俺は大人だぞ」
217: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/05(火) 22:48:24.12 ID:m9laGpqPO
雷「そ、そうよね!その為の極秘資料よね!……もし無理そうだったら……い、言うのよ?」
提督「言う?!……ま、待て、その理屈はおかしい」
雷「……?……!タイプの話?!」
提督「何が?!」
雷「ショ、ショートとロング、どっちが好きなの?!」
提督「なんの話だ?!」
雷「こ、答えて!」
提督「……(これは……ショートってうちの艦隊だと雷だけじゃないか……
いやそれはマズいだろ……しかし、ロングと言って大丈夫なのか……?)」
雷「……」
提督「……(……いや、この状況で本人を目の前にしてショートとはいえん。……くっ……)」
提督「……ロ、ロング」
雷「っ……」
提督「……(どう動く……?)」ゴクリ
雷「……皆に言わなきゃ」ダッ
提督「言う?!……ま、待て、その理屈はおかしい」
雷「……?……!タイプの話?!」
提督「何が?!」
雷「ショ、ショートとロング、どっちが好きなの?!」
提督「なんの話だ?!」
雷「こ、答えて!」
提督「……(これは……ショートってうちの艦隊だと雷だけじゃないか……
いやそれはマズいだろ……しかし、ロングと言って大丈夫なのか……?)」
雷「……」
提督「……(……いや、この状況で本人を目の前にしてショートとはいえん。……くっ……)」
提督「……ロ、ロング」
雷「っ……」
提督「……(どう動く……?)」ゴクリ
雷「……皆に言わなきゃ」ダッ
218: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/05(火) 22:49:00.28 ID:m9laGpqPO
提督「(どっちも地雷だったじゃないか……!)
ま、待て!雷!待ってくれ!」
執務室から駆け出した雷を追って、提督も執務室を出ようとした。
と。
頬を紅潮させて、ドアの影で俯く榛名を発見してしまった。
提督「……」
榛名「……」
提督「……」
榛名「……あの」
提督「……」
榛名「……榛名は、大丈夫ですよ?」
長い髪の毛をいじいじしながら、上目遣いで言われて。
提督「……聞いてたのか」
提督は目眩を感じた。
榛名「うう……榛名はなんてはしたないことを……!は、恥ずかしいです……!」
榛名は真っ赤になって、パタパタと逃げていく。
提督「これは……大変な事になったぞ……」
提督の噂は一瞬で基地中を駆け巡った。
ま、待て!雷!待ってくれ!」
執務室から駆け出した雷を追って、提督も執務室を出ようとした。
と。
頬を紅潮させて、ドアの影で俯く榛名を発見してしまった。
提督「……」
榛名「……」
提督「……」
榛名「……あの」
提督「……」
榛名「……榛名は、大丈夫ですよ?」
長い髪の毛をいじいじしながら、上目遣いで言われて。
提督「……聞いてたのか」
提督は目眩を感じた。
榛名「うう……榛名はなんてはしたないことを……!は、恥ずかしいです……!」
榛名は真っ赤になって、パタパタと逃げていく。
提督「これは……大変な事になったぞ……」
提督の噂は一瞬で基地中を駆け巡った。
228: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/07(木) 00:46:10.44 ID:cpTlL5QY0
翌日
提督「……えー……今日、皆に集まって貰ったのは……重要な連絡事項があるからだ……」
雷「……」////
榛名「……」////
足柄「……」ニヤニヤ
隼鷹「……」ニヤニヤ
提督「(昨日の今日でやり辛い……)」
鳳翔「……」
提督「(鳳翔だけは平静か、助かる)」チラッ
しかし。
鳳翔「っ……////」
視線が会うと、頬を染めて目を逸らされてしまった。
提督「(……ああ……全滅か……)」
提督「……えー……今日、皆に集まって貰ったのは……重要な連絡事項があるからだ……」
雷「……」////
榛名「……」////
足柄「……」ニヤニヤ
隼鷹「……」ニヤニヤ
提督「(昨日の今日でやり辛い……)」
鳳翔「……」
提督「(鳳翔だけは平静か、助かる)」チラッ
しかし。
鳳翔「っ……////」
視線が会うと、頬を染めて目を逸らされてしまった。
提督「(……ああ……全滅か……)」
229: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/07(木) 00:46:59.90 ID:cpTlL5QY0
提督が黄昏ていると、足柄が喋り出した。
足柄「何黄昏てんのよー。で?重要なことってナニよ」
隼鷹「そうそう、ナニナニ?」
2人がニヤニヤしながら言う。
提督は敢えて無視して話を進めた。
提督「……演習だ」
足柄「……ん?部隊内演習って事?」
榛名「三対三ですか?」
提督「いや、違う。他の艦隊との実戦演習だ」
足柄「……ほほう?」
榛名「実戦、演習」
鳳翔「……」
足柄「で、誰なの?こんなサセン島に喧嘩売ろうってのは」
提督「……お相手は第5艦隊南方方面部隊、第18戦隊だ」
足柄「へえ?結構なとこじゃない」
提督「……まぁな」
足柄「ナニナニ?コネ?コネなの」
提督「……そんなところだ」
榛名「?……有名な部隊なのですか?」
足柄「知らないのー?南方方面軍の主力の一つじゃなーい」
榛名「はぁ……」
提督「……本土で金剛や翔鶴に会ったろう。奴らだ」
榛名「え!金剛さん達ですか!」
提督「ああ」
榛名「わぁ……」
提督「形式は防衛隊と攻撃隊に分かれての殲滅戦、演習海域は直前に指定、だそうだ」
足柄「出たとこ勝負ってやつね!」
提督「まぁ、な。とにかく、それが近くある」
足柄「しっかし……いきなり大物ねぇ……」
榛名「そうなんですか?」
足柄「んー?18戦と言えば最前線突っ走ってる連中の中でも、結構戦果出してる方よ?」
榛名「へぇ……」
足柄「何黄昏てんのよー。で?重要なことってナニよ」
隼鷹「そうそう、ナニナニ?」
2人がニヤニヤしながら言う。
提督は敢えて無視して話を進めた。
提督「……演習だ」
足柄「……ん?部隊内演習って事?」
榛名「三対三ですか?」
提督「いや、違う。他の艦隊との実戦演習だ」
足柄「……ほほう?」
榛名「実戦、演習」
鳳翔「……」
足柄「で、誰なの?こんなサセン島に喧嘩売ろうってのは」
提督「……お相手は第5艦隊南方方面部隊、第18戦隊だ」
足柄「へえ?結構なとこじゃない」
提督「……まぁな」
足柄「ナニナニ?コネ?コネなの」
提督「……そんなところだ」
榛名「?……有名な部隊なのですか?」
足柄「知らないのー?南方方面軍の主力の一つじゃなーい」
榛名「はぁ……」
提督「……本土で金剛や翔鶴に会ったろう。奴らだ」
榛名「え!金剛さん達ですか!」
提督「ああ」
榛名「わぁ……」
提督「形式は防衛隊と攻撃隊に分かれての殲滅戦、演習海域は直前に指定、だそうだ」
足柄「出たとこ勝負ってやつね!」
提督「まぁ、な。とにかく、それが近くある」
足柄「しっかし……いきなり大物ねぇ……」
榛名「そうなんですか?」
足柄「んー?18戦と言えば最前線突っ走ってる連中の中でも、結構戦果出してる方よ?」
榛名「へぇ……」
231: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/07(木) 00:47:42.34 ID:cpTlL5QY0
提督「急になって、すまんな」
足柄「どしてまた?」
提督「……もうすぐ例の情報開示が行われるとの事だ。そうなるとどこも慌ただしくなるだろうからな。その前に一戦やっておきたかった」
足柄「……成る程」
提督「どうせやるなら、相手の質が良い方が良いだろう」
足柄「一理あるわね」
提督「(……それに、太郎くんと翔鶴の具合も見ておきたい、しな)」
榛名「腕が鳴るわね!」
足柄「6対6?」
提督「いや、4対4だ。此方からは足柄、榛名、雷、鳳翔を出す」
隼鷹「……」
提督「隼鷹、お前は着いてきて観戦だ」
隼鷹「えっ?」
提督「まずは見てみろ。ぶっつけ本番をする必要は無い」
隼鷹「……むぅ」
提督「焦るな、隼鷹。焦れば事を仕損じる。……これは、間違い無い」
隼鷹「……わかった。不知火も観戦?」
提督「奴は留守番だ。ここを無人にする訳にはいかん。それに、アレの実力は見るまでも無い」
隼鷹「そっかー」
提督「とまぁ、今日は知らせるだけだな」
足柄「そんだけ?」
提督「ああ」
足柄「ほんとに?」
提督「……」
足柄「そんだけー?」ニヤリ
提督「そうだ。もう散れ!散れ!出てけ!」ブンブン
足柄「キャハハァ!」
足柄「どしてまた?」
提督「……もうすぐ例の情報開示が行われるとの事だ。そうなるとどこも慌ただしくなるだろうからな。その前に一戦やっておきたかった」
足柄「……成る程」
提督「どうせやるなら、相手の質が良い方が良いだろう」
足柄「一理あるわね」
提督「(……それに、太郎くんと翔鶴の具合も見ておきたい、しな)」
榛名「腕が鳴るわね!」
足柄「6対6?」
提督「いや、4対4だ。此方からは足柄、榛名、雷、鳳翔を出す」
隼鷹「……」
提督「隼鷹、お前は着いてきて観戦だ」
隼鷹「えっ?」
提督「まずは見てみろ。ぶっつけ本番をする必要は無い」
隼鷹「……むぅ」
提督「焦るな、隼鷹。焦れば事を仕損じる。……これは、間違い無い」
隼鷹「……わかった。不知火も観戦?」
提督「奴は留守番だ。ここを無人にする訳にはいかん。それに、アレの実力は見るまでも無い」
隼鷹「そっかー」
提督「とまぁ、今日は知らせるだけだな」
足柄「そんだけ?」
提督「ああ」
足柄「ほんとに?」
提督「……」
足柄「そんだけー?」ニヤリ
提督「そうだ。もう散れ!散れ!出てけ!」ブンブン
足柄「キャハハァ!」
232: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/07(木) 00:48:25.88 ID:cpTlL5QY0
数時間後、執務室
コンコン
足柄「足柄です」
提督「入れ」
ガチャ
足柄「失礼します」
提督「ああ……えらく丁寧だな」
足柄「ほら、誰かさんがナニしてるかもしれないじゃない?」
提督「勘弁してくれ……」
足柄「冗談よ、冗談。ウフフ」
提督「……で、何の用だ」
足柄「……榛名、大丈夫なの?出して」
提督「……一応、本人の希望ではあるんだが……」
足柄「……ちょっと怖くない?」
提督「……榛名の意思を尊重したいのが、ある。本人が大丈夫と言っている事だしな」
足柄「……」
提督「……何、大丈夫だ。何かあれば私が責任を取る。榛名を責めはさせんよ」
足柄「……ダメよ」
提督「……どうせ、失う物なんて無い身だ。問題無いさ」
提督がその時見せた笑みは、儚くて。
すぐにでも消えてしまいそうだった。
足柄「ダメ」
足柄は語気を強める。
提督「……どうした」
足柄「……あんた、あたし達の提督でしょ?あんたがどっか飛ばされたらあたし達どーなんのよ」
バン!と机を叩く。
コンコン
足柄「足柄です」
提督「入れ」
ガチャ
足柄「失礼します」
提督「ああ……えらく丁寧だな」
足柄「ほら、誰かさんがナニしてるかもしれないじゃない?」
提督「勘弁してくれ……」
足柄「冗談よ、冗談。ウフフ」
提督「……で、何の用だ」
足柄「……榛名、大丈夫なの?出して」
提督「……一応、本人の希望ではあるんだが……」
足柄「……ちょっと怖くない?」
提督「……榛名の意思を尊重したいのが、ある。本人が大丈夫と言っている事だしな」
足柄「……」
提督「……何、大丈夫だ。何かあれば私が責任を取る。榛名を責めはさせんよ」
足柄「……ダメよ」
提督「……どうせ、失う物なんて無い身だ。問題無いさ」
提督がその時見せた笑みは、儚くて。
すぐにでも消えてしまいそうだった。
足柄「ダメ」
足柄は語気を強める。
提督「……どうした」
足柄「……あんた、あたし達の提督でしょ?あんたがどっか飛ばされたらあたし達どーなんのよ」
バン!と机を叩く。
233: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/07(木) 00:51:12.43 ID:cpTlL5QY0
提督「……ハッ。そう言えば、そうだったな」
提督は苦笑する。
足柄「頼むわよ?でないと……」
提督「でないと?」
足柄「……あんたを社会的に抹殺するわ!艦娘を孕ませた男と吹聴して回るの……!」
提督「や、やめろ。勘弁してくれ……」
足柄「冗談よ、冗談」
提督「……頼むぞ、全く……」
足柄「……まぁもし編成変えるなら、あたしからも榛名に言えるし……
ちゃんと考えてよ」
提督「……ああ。まぁ、変えんだろうがな。榛名は信頼している」
足柄「……そ。あたしが聞きたかったのはそれだけよ。お邪魔したわね」
足柄はドアへ向かう。
提督「そうか……お前にはいつも苦労をかけるな。すまない。頼りにしてるよ」
足柄「あら、そう?ふふっ」
ドアに手をかけて。
足柄「……ただ、まぁ」
ちらっと振り返り。
足柄「ちゃんとセキニン、とってよね!」
悪戯っぽく笑って言う。
そのまま、パタン、と閉じるドア。
提督「……主語が足りてないぞ、主語が……」
提督は、はぁ、とため息をついた。
提督は苦笑する。
足柄「頼むわよ?でないと……」
提督「でないと?」
足柄「……あんたを社会的に抹殺するわ!艦娘を孕ませた男と吹聴して回るの……!」
提督「や、やめろ。勘弁してくれ……」
足柄「冗談よ、冗談」
提督「……頼むぞ、全く……」
足柄「……まぁもし編成変えるなら、あたしからも榛名に言えるし……
ちゃんと考えてよ」
提督「……ああ。まぁ、変えんだろうがな。榛名は信頼している」
足柄「……そ。あたしが聞きたかったのはそれだけよ。お邪魔したわね」
足柄はドアへ向かう。
提督「そうか……お前にはいつも苦労をかけるな。すまない。頼りにしてるよ」
足柄「あら、そう?ふふっ」
ドアに手をかけて。
足柄「……ただ、まぁ」
ちらっと振り返り。
足柄「ちゃんとセキニン、とってよね!」
悪戯っぽく笑って言う。
そのまま、パタン、と閉じるドア。
提督「……主語が足りてないぞ、主語が……」
提督は、はぁ、とため息をついた。
241: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/07(木) 20:10:22.67 ID:cpTlL5QY0
食堂
足柄「作戦会議よ!」
バン!と机を叩く足柄。
哨戒に出ている隼鷹、それ以外の面子が足柄を見る。
全員の前に置かれた茶が揺れた。
不知火「……私は留守番なのですが」
ズズ、と茶を啜りながら言う不知火。
足柄「演習なんてどうでも良いわ!」
榛名「ええ……なんの作戦会議ですかこれ……」
足柄「ふふふ……そりゃ提督をおちょくる作戦よ!」
榛名「えええ……」
不知火「……一体そこになんのメリットが……」
足柄「作戦会議よ!」
バン!と机を叩く足柄。
哨戒に出ている隼鷹、それ以外の面子が足柄を見る。
全員の前に置かれた茶が揺れた。
不知火「……私は留守番なのですが」
ズズ、と茶を啜りながら言う不知火。
足柄「演習なんてどうでも良いわ!」
榛名「ええ……なんの作戦会議ですかこれ……」
足柄「ふふふ……そりゃ提督をおちょくる作戦よ!」
榛名「えええ……」
不知火「……一体そこになんのメリットが……」
242: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/07(木) 20:11:00.97 ID:cpTlL5QY0
足柄「いつも飄々としてて、何考えてるかよくわからないじゃない!そういう一面を知るのよ!」
榛名「はあ……つまりちょっかい出して慌てさせたいと」
足柄「そうとも言うわね……!」
鳳翔「……そうとしか言わないのでは……」
不知火「足柄さんは提督が大好きですねぇ……」
雷「そうね……」
足柄「駆逐艦勢はやる気無いわねー……こんなに面白いオモチャが転がってるのに」
雷「提督ロングが良いらしいし……私はダメよダメ。なんか寂しいわねぇ」
榛名「(……ロングってのは私も聞いてましたが、冷静に考えて雷さんに気を遣って言ったのでは……)」
榛名「はあ……つまりちょっかい出して慌てさせたいと」
足柄「そうとも言うわね……!」
鳳翔「……そうとしか言わないのでは……」
不知火「足柄さんは提督が大好きですねぇ……」
雷「そうね……」
足柄「駆逐艦勢はやる気無いわねー……こんなに面白いオモチャが転がってるのに」
雷「提督ロングが良いらしいし……私はダメよダメ。なんか寂しいわねぇ」
榛名「(……ロングってのは私も聞いてましたが、冷静に考えて雷さんに気を遣って言ったのでは……)」
243: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/07(木) 20:11:39.60 ID:cpTlL5QY0
足柄「伸ばしなさいよ」
雷「……」
不知火「(……加賀さんも聞いたら伸ばすんでしょうか……)」
足柄「とりあえず色気出すわよ色気!誘惑よ誘惑!」
榛名「ゆうわ……は、はしたないです……」
足柄「あと、どんなブツを持ち込んでたのかとか興味あるわね……」
鳳翔「元気ですねぇ……」
足柄「基本的にこの島、娯楽無いんだもの!」
雷「……」
不知火「(……加賀さんも聞いたら伸ばすんでしょうか……)」
足柄「とりあえず色気出すわよ色気!誘惑よ誘惑!」
榛名「ゆうわ……は、はしたないです……」
足柄「あと、どんなブツを持ち込んでたのかとか興味あるわね……」
鳳翔「元気ですねぇ……」
足柄「基本的にこの島、娯楽無いんだもの!」
244: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/07(木) 20:13:31.54 ID:cpTlL5QY0
榛名「でもでも!も、もしですよ?誘惑して我慢出来ずに襲われちゃったら、ど、ど、どうするんですか?」
足柄「……あんたどこまで本格的に誘惑するつもりだったの?
あたし的には悶々とさせようって意図だったんだけど……」
榛名「え"っ……」
雷「ムッツリかしら……」
不知火「……これは、はしたない娘ですね」
榛名「……な、なんかコメント厳しくないですか?!」
鳳翔「あの方でしたら我慢出来ずに、何てことは無さそうですけど、ね」
足柄「ま、ムッツリ榛名は置いといて。肌チラよ肌チラ!」
榛名「……」
足柄「……あんたどこまで本格的に誘惑するつもりだったの?
あたし的には悶々とさせようって意図だったんだけど……」
榛名「え"っ……」
雷「ムッツリかしら……」
不知火「……これは、はしたない娘ですね」
榛名「……な、なんかコメント厳しくないですか?!」
鳳翔「あの方でしたら我慢出来ずに、何てことは無さそうですけど、ね」
足柄「ま、ムッツリ榛名は置いといて。肌チラよ肌チラ!」
榛名「……」
245: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/07(木) 20:14:18.19 ID:cpTlL5QY0
鳳翔「それこそはしたないのでは……」
足柄「何言ってんのよ!鳳翔さんみたいなのが、うなじをチラッと見せたら……もう大変よ」
鳳翔「た、大変なんですか……?」
雷「何ちょっとその気になってるのよ……」
不知火「足柄さんがオッサン臭い……」
足柄「さらに!暑い……とか言いながら、胸元開けていけば提督は目のやり場に困りそうね」
雷「最早痴女ね……」
足柄「こ、この子ついに暴言を吐いたわ……」
鳳翔「やさぐれてますね……」
榛名「(まぁでも間違ってませんよね……)」
足柄「何言ってんのよ!鳳翔さんみたいなのが、うなじをチラッと見せたら……もう大変よ」
鳳翔「た、大変なんですか……?」
雷「何ちょっとその気になってるのよ……」
不知火「足柄さんがオッサン臭い……」
足柄「さらに!暑い……とか言いながら、胸元開けていけば提督は目のやり場に困りそうね」
雷「最早痴女ね……」
足柄「こ、この子ついに暴言を吐いたわ……」
鳳翔「やさぐれてますね……」
榛名「(まぁでも間違ってませんよね……)」
246: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/07(木) 20:15:57.69 ID:cpTlL5QY0
雷「はぁ……この面と向かってタイプじゃないと言われた虚脱感……」グデー
足柄「……ナニしてる途中に突っ込んで、タイプ聞いたらそうなるわよ……」
榛名「ナ、ナニとか言わないで下さいよぅ……」
足柄「じゃあ何て言うのよ!」
榛名「あうぅ……」
足柄「……とにかく、ウチにはショートが雷ちゃんと、かろうじて不知火さんしか居ないんだから。
そのシチュエーションで、面と向かってタイプですなんて言ったら変 よ……
あ、お茶頂戴」
雷「……それは……そうかもしれないわね。
はい、どうぞ」
足柄「ありがと……というか、そんなに提督のタイプが良いの?」
雷「え?提督に好かれたいっての、おかしいかしら?」
ストレートな物言いに、皆呆気にとられる。
足柄「……ナニしてる途中に突っ込んで、タイプ聞いたらそうなるわよ……」
榛名「ナ、ナニとか言わないで下さいよぅ……」
足柄「じゃあ何て言うのよ!」
榛名「あうぅ……」
足柄「……とにかく、ウチにはショートが雷ちゃんと、かろうじて不知火さんしか居ないんだから。
そのシチュエーションで、面と向かってタイプですなんて言ったら変 よ……
あ、お茶頂戴」
雷「……それは……そうかもしれないわね。
はい、どうぞ」
足柄「ありがと……というか、そんなに提督のタイプが良いの?」
雷「え?提督に好かれたいっての、おかしいかしら?」
ストレートな物言いに、皆呆気にとられる。
247: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/07(木) 20:16:33.84 ID:cpTlL5QY0
不知火「(こんな所に思わぬ伏兵が……)」
足柄「……いやぁ……おかしくは無いけど……タイプってアレよ?恋人とか、そういうのよ……?」
雷「恋人であれ部下であれ、好かれたい事に変わりはないわ!その方が良いじゃない!
艦娘を大事にしてくれる人って希少よ!」
足柄「まぁ、うん……」
雷「んー……でも、まぁ……強いて言うと……こう、もっと頼って欲しいのよね……私を」
足柄「保護欲ね……」
雷「皆だって好かれたいでしょ?」
榛名「……まぁ……はい」
不知火「それはそうですが……」
鳳翔「……」ズズー
足柄「……」ズズー
足柄と鳳翔は茶を飲んでやり過ごした。
雷「足柄さんと鳳翔さんは素直じゃないわねー……」
足柄「……ま、向こうが好きだと言ってくれるなら?悪い気はしないけど?」
雷「……」
足柄「な、何よ……」
足柄「……いやぁ……おかしくは無いけど……タイプってアレよ?恋人とか、そういうのよ……?」
雷「恋人であれ部下であれ、好かれたい事に変わりはないわ!その方が良いじゃない!
艦娘を大事にしてくれる人って希少よ!」
足柄「まぁ、うん……」
雷「んー……でも、まぁ……強いて言うと……こう、もっと頼って欲しいのよね……私を」
足柄「保護欲ね……」
雷「皆だって好かれたいでしょ?」
榛名「……まぁ……はい」
不知火「それはそうですが……」
鳳翔「……」ズズー
足柄「……」ズズー
足柄と鳳翔は茶を飲んでやり過ごした。
雷「足柄さんと鳳翔さんは素直じゃないわねー……」
足柄「……ま、向こうが好きだと言ってくれるなら?悪い気はしないけど?」
雷「……」
足柄「な、何よ……」
248: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/07(木) 20:17:14.87 ID:cpTlL5QY0
雷「……弁当」ボソッ
足柄「うっ……?!」
雷「……」
足柄「……」////
榛名「いつもクールな足柄さんがゆでダコみたいに!」
不知火「え?弁当って何ですか弁当って」
足柄「ひ、秘密よ秘密!」
榛名「えええ……」
鳳翔「全く……はしたないですよ」
榛名「鳳翔さんは落ち着いてますねー……」
不知火「いやいや、この人髪の毛拭かれてる時顔真っ赤でしたよ」
鳳翔「……」コホン
雷「……上着」ボソッ
鳳翔「……?!」
鳳翔は動揺して、手に持っていた湯のみを落とした。
雷「返さないのは、はしたないと思うの……」
鳳翔「……な、何故それを……」
鳳翔はバツの悪そうな顔をする。
足柄「うっ……?!」
雷「……」
足柄「……」////
榛名「いつもクールな足柄さんがゆでダコみたいに!」
不知火「え?弁当って何ですか弁当って」
足柄「ひ、秘密よ秘密!」
榛名「えええ……」
鳳翔「全く……はしたないですよ」
榛名「鳳翔さんは落ち着いてますねー……」
不知火「いやいや、この人髪の毛拭かれてる時顔真っ赤でしたよ」
鳳翔「……」コホン
雷「……上着」ボソッ
鳳翔「……?!」
鳳翔は動揺して、手に持っていた湯のみを落とした。
雷「返さないのは、はしたないと思うの……」
鳳翔「……な、何故それを……」
鳳翔はバツの悪そうな顔をする。
249: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/07(木) 20:17:54.37 ID:cpTlL5QY0
榛名「待って下さい待って下さい、どういう事ですか」
不知火「正直、展開について行けないのですが……」
雷「ふふふ……私の知らない事なんて無いわ!
榛名と不知火の部屋に提督の写真が飾られてる事だって知ってるもの!」
榛名「きゃあ!飛び火!今飛び火しましたよ!恥ずかしい……!」
不知火「ちょ……このなんか暴露大会みたいなの止めましょうよ……!」
足柄「なんか暴走してるわね……」
鳳翔「提督の話から何故こんな事に……」
足柄「てかなんで写真なんか飾ってんのよ……」
榛名「そ、それより上着って何ですか!」
鳳翔「……」ズズ
榛名「鳳翔さん?!」
不知火「正直、展開について行けないのですが……」
雷「ふふふ……私の知らない事なんて無いわ!
榛名と不知火の部屋に提督の写真が飾られてる事だって知ってるもの!」
榛名「きゃあ!飛び火!今飛び火しましたよ!恥ずかしい……!」
不知火「ちょ……このなんか暴露大会みたいなの止めましょうよ……!」
足柄「なんか暴走してるわね……」
鳳翔「提督の話から何故こんな事に……」
足柄「てかなんで写真なんか飾ってんのよ……」
榛名「そ、それより上着って何ですか!」
鳳翔「……」ズズ
榛名「鳳翔さん?!」
250: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/07(木) 20:18:50.61 ID:cpTlL5QY0
雷「もう!皆素直じゃないんだから!」
榛名「わりと素直に言ったのに……!」
不知火「……」
足柄「……とりあえず」コホン
雷「……?」
足柄「提督が何見てたのか、気になるわね……」
榛名「えええ……もうそっとしときましょうよ……」
足柄「ふふふ……一度やってみたかったのよね……。
今晩部屋に押しかけて……飲ませて酔わせて寝かしましょ!
本探しよ!」
榛名「わりと素直に言ったのに……!」
不知火「……」
足柄「……とりあえず」コホン
雷「……?」
足柄「提督が何見てたのか、気になるわね……」
榛名「えええ……もうそっとしときましょうよ……」
足柄「ふふふ……一度やってみたかったのよね……。
今晩部屋に押しかけて……飲ませて酔わせて寝かしましょ!
本探しよ!」
259: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/09(土) 22:27:39.70 ID:j7YNtzNn0
夜、提督の自室
提督「……」
足柄「……」
隼鷹「……」
榛名「……」
鳳翔「……」
雷「……」
提督「寝たいんだが」
足柄「だーめ!」
提督「……」
はぁ、と溜息。
提督「……何か、あったかな……」
提督は自室の棚を漁り始めた。
提督「……」
足柄「……」
隼鷹「……」
榛名「……」
鳳翔「……」
雷「……」
提督「寝たいんだが」
足柄「だーめ!」
提督「……」
はぁ、と溜息。
提督「……何か、あったかな……」
提督は自室の棚を漁り始めた。
260: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/09(土) 22:28:23.47 ID:j7YNtzNn0
榛名「うう……榛名は申し訳ない気持ちでいっぱいです……」
雷「あなたウキウキだったじゃない……」
榛名「……」
足柄「……ムッツリ。かつ、ぶりっ子」
榛名「……!」////
榛名がポカポカと足柄を叩く。
提督「……良いじゃないか、可愛げがあって」
コトン、と酒を机に置いて提督は言う。
足柄「何よー?最近榛名に甘過ぎじゃなーい?」
提督「全員に甘いと思うが……」
足柄「むー……」
隼鷹「こまけぇこたぁいいんだよ!酒!酒ー!」
提督「……これも、開けるか……」
提督は棚から瓶を一本取り出す。
雷「あなたウキウキだったじゃない……」
榛名「……」
足柄「……ムッツリ。かつ、ぶりっ子」
榛名「……!」////
榛名がポカポカと足柄を叩く。
提督「……良いじゃないか、可愛げがあって」
コトン、と酒を机に置いて提督は言う。
足柄「何よー?最近榛名に甘過ぎじゃなーい?」
提督「全員に甘いと思うが……」
足柄「むー……」
隼鷹「こまけぇこたぁいいんだよ!酒!酒ー!」
提督「……これも、開けるか……」
提督は棚から瓶を一本取り出す。
261: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/09(土) 22:28:55.58 ID:j7YNtzNn0
隼鷹「なにそれ?」
提督「大吟醸」
隼鷹「おお?!日本酒飲むのな?!」
提督「前からたまに飲んでるが……」
榛名「日本酒……」
榛名が瓶を手に取る。
榛名「……加賀、鳶?」
提督「辛口が好きでな」
隼鷹「飲もう飲もう!」
足柄「ウイスキー無いの?!」
雷「ビールは?!」
提督「チャンポンするつもりか……お前朝早いだろ……」
そう言いつつも、ウイスキーとビールを机に置く。
足柄「良いのよ今日は!」
鳳翔「……おつぎしましょう」
鳳翔がすかさず器に注ぎ始める。
提督「手際が良いなぁ……お前達……」
足柄「まぁまぁ……乾杯しましょう!」
提督「何にだよ……」
足柄「何でも良いじゃない!乾杯!」
提督「大吟醸」
隼鷹「おお?!日本酒飲むのな?!」
提督「前からたまに飲んでるが……」
榛名「日本酒……」
榛名が瓶を手に取る。
榛名「……加賀、鳶?」
提督「辛口が好きでな」
隼鷹「飲もう飲もう!」
足柄「ウイスキー無いの?!」
雷「ビールは?!」
提督「チャンポンするつもりか……お前朝早いだろ……」
そう言いつつも、ウイスキーとビールを机に置く。
足柄「良いのよ今日は!」
鳳翔「……おつぎしましょう」
鳳翔がすかさず器に注ぎ始める。
提督「手際が良いなぁ……お前達……」
足柄「まぁまぁ……乾杯しましょう!」
提督「何にだよ……」
足柄「何でも良いじゃない!乾杯!」
262: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/09(土) 22:29:31.48 ID:j7YNtzNn0
………
……
…
数時間後
隼鷹「くぁー!もう飲めないぞう!」ドプドプドプ
榛名「なんでそう言いつつ酒を追加するんですかね……」
鳳翔「隼鷹さん?明日もあるんですよ?」
雷「大丈夫なの?」
隼鷹「うるせえ!お前達器が空だぞ!飲め!」
そう言いつつ、雷や鳳翔のコップに酒を追加していく。
榛名「ひぃ?!私達は飲まない作戦なのでは?!」
雷「ちょ、ちょっと!これ以上飲んだらべろんべろんよ!」
鳳翔「だ、誰ですか!隼鷹さんを連れて来たのは……!」
……
…
数時間後
隼鷹「くぁー!もう飲めないぞう!」ドプドプドプ
榛名「なんでそう言いつつ酒を追加するんですかね……」
鳳翔「隼鷹さん?明日もあるんですよ?」
雷「大丈夫なの?」
隼鷹「うるせえ!お前達器が空だぞ!飲め!」
そう言いつつ、雷や鳳翔のコップに酒を追加していく。
榛名「ひぃ?!私達は飲まない作戦なのでは?!」
雷「ちょ、ちょっと!これ以上飲んだらべろんべろんよ!」
鳳翔「だ、誰ですか!隼鷹さんを連れて来たのは……!」
263: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/09(土) 22:32:08.73 ID:j7YNtzNn0
提督「……ちょっと距離が近いぞ、足柄」
足柄「……んー?そうー?……ひっく」
提督「ダメだ酔ってやがる……」
足柄「酔ってないわよぉ!このぉ、変 !」
提督「こ、こいつ上官に暴言を吐いたぞ……」
溜息をついて酒を煽る。
足柄「あはは!……あー……あっつい……」
そう言って足柄は大きく開襟した。
露わになる胸元。
提督「氷でも舐めたらどうだ……って、開けすぎだ……」
提督は気まずくなって目を逸らす。
榛名「足柄さんが色仕掛けしてますよ?!」
鳳翔「は、はしたない……!」
雷「ちょっとアレ抜け駆けじゃないの?!」
隼鷹「オラオラ酒足りてないんじゃねーの?!」
雷「ギャー!もう注がないで頂戴!」
足柄「……んー?そうー?……ひっく」
提督「ダメだ酔ってやがる……」
足柄「酔ってないわよぉ!このぉ、変 !」
提督「こ、こいつ上官に暴言を吐いたぞ……」
溜息をついて酒を煽る。
足柄「あはは!……あー……あっつい……」
そう言って足柄は大きく開襟した。
露わになる胸元。
提督「氷でも舐めたらどうだ……って、開けすぎだ……」
提督は気まずくなって目を逸らす。
榛名「足柄さんが色仕掛けしてますよ?!」
鳳翔「は、はしたない……!」
雷「ちょっとアレ抜け駆けじゃないの?!」
隼鷹「オラオラ酒足りてないんじゃねーの?!」
雷「ギャー!もう注がないで頂戴!」
264: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/09(土) 22:33:08.37 ID:j7YNtzNn0
足柄「ねぇー提督ってばーこっち見てよー」
提督「やめろ!シャツを引っ張るな!ボタンが千切れる!」
足柄「もう、いけずぅ」
提督「アホか!襟を閉じろ……」
足柄「うへへへ」
提督「酔っ払いめ……」
雷「鳳翔さん!飲んで飲んで!」
榛名「鳳翔さん!の、飲んで飲んで!」
隼鷹「飲むぞ飲むぞー!」
鳳翔「ちょっと……!私に酒を押し付けるのは……!」
隼鷹「お?鳳翔さんともあろう者が敵前逃亡?」
鳳翔「……受けて立ちましょう。杯を持ちなさい」
榛名「(うわぁ……酔っ払ってるなぁ……この人も)」
雷「くっ……隼鷹さんに提督を潰してもらう筈が……!
足柄さんが向こうでべったりくっつき過ぎて付け入る隙が無いわ……!」
榛名「というか、首謀者がなんであんなに酔っ払ってるんですかね……」チラ
足柄「提督ぅ……だっこぉ」
提督「……なんだこいつは……」
雷「我慢ならないわ!突撃よ!」
榛名「は、はい!」
鳳翔「そうは問屋が卸しません!さぁ、飲みなさい!」
グワシ、と榛名と雷の首根っこを掴む。
雷「ギャー!
馬鹿じゃないのかしらこの人達?!当初の目標を完全に忘れてない?!」
榛名「ひ、ひええ……」
提督「やめろ!シャツを引っ張るな!ボタンが千切れる!」
足柄「もう、いけずぅ」
提督「アホか!襟を閉じろ……」
足柄「うへへへ」
提督「酔っ払いめ……」
雷「鳳翔さん!飲んで飲んで!」
榛名「鳳翔さん!の、飲んで飲んで!」
隼鷹「飲むぞ飲むぞー!」
鳳翔「ちょっと……!私に酒を押し付けるのは……!」
隼鷹「お?鳳翔さんともあろう者が敵前逃亡?」
鳳翔「……受けて立ちましょう。杯を持ちなさい」
榛名「(うわぁ……酔っ払ってるなぁ……この人も)」
雷「くっ……隼鷹さんに提督を潰してもらう筈が……!
足柄さんが向こうでべったりくっつき過ぎて付け入る隙が無いわ……!」
榛名「というか、首謀者がなんであんなに酔っ払ってるんですかね……」チラ
足柄「提督ぅ……だっこぉ」
提督「……なんだこいつは……」
雷「我慢ならないわ!突撃よ!」
榛名「は、はい!」
鳳翔「そうは問屋が卸しません!さぁ、飲みなさい!」
グワシ、と榛名と雷の首根っこを掴む。
雷「ギャー!
馬鹿じゃないのかしらこの人達?!当初の目標を完全に忘れてない?!」
榛名「ひ、ひええ……」
265: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/09(土) 22:35:09.85 ID:j7YNtzNn0
足柄「ねぇねぇー」
足柄は思い切り提督に甘えるようにしてまとわりつく。
提督「ええい!腕に胸を当てるな!」
足柄「うふふ。ドキドキした?」
提督「したよ……頭がな……」
提督は眉間に手を当てて溜息をついた。
そしてチラリと足柄の方を見る。
足柄「?」
ニコニコと上機嫌そうに提督を見る足柄と目があった。
その頬は上気している。
そちらを向くことで、自然と開いた胸元も目に入った。
無論、その肌色も。
提督は頬が熱を持つのを感じた。
提督「……」
いかんな、と思う。
自分が酔っている自覚がある。
足柄「……ん。今、見てた」
にへら、と笑いながら足柄は提督に迫った。
前かがみになって提督の正面に回る。
足柄は思い切り提督に甘えるようにしてまとわりつく。
提督「ええい!腕に胸を当てるな!」
足柄「うふふ。ドキドキした?」
提督「したよ……頭がな……」
提督は眉間に手を当てて溜息をついた。
そしてチラリと足柄の方を見る。
足柄「?」
ニコニコと上機嫌そうに提督を見る足柄と目があった。
その頬は上気している。
そちらを向くことで、自然と開いた胸元も目に入った。
無論、その肌色も。
提督は頬が熱を持つのを感じた。
提督「……」
いかんな、と思う。
自分が酔っている自覚がある。
足柄「……ん。今、見てた」
にへら、と笑いながら足柄は提督に迫った。
前かがみになって提督の正面に回る。
266: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/09(土) 22:36:29.98 ID:j7YNtzNn0
提督「……よせ……」
足柄「……」
濡れた瞳が近づいて来る。
強調された が、いやでも目を引いた。
足柄「……んふふ」
更に胸を寄せるような姿勢を取る足柄。
提督「……そんな事をしていたら……」
提督はふぅ、と溜息をついて。
足柄「きゃ……!」
ぐい、と。
ソファに勢いよく足柄を押し倒した。
その時、頭を打たないように、腕を足柄の後頭部に回して。
必然的に提督は足柄に覆いかぶさるような体勢なる。
触れ合う息と息。
更に顔を近づけ、耳元で囁く。
提督「……襲うぞ?」
足柄「……」
濡れた瞳が近づいて来る。
強調された が、いやでも目を引いた。
足柄「……んふふ」
更に胸を寄せるような姿勢を取る足柄。
提督「……そんな事をしていたら……」
提督はふぅ、と溜息をついて。
足柄「きゃ……!」
ぐい、と。
ソファに勢いよく足柄を押し倒した。
その時、頭を打たないように、腕を足柄の後頭部に回して。
必然的に提督は足柄に覆いかぶさるような体勢なる。
触れ合う息と息。
更に顔を近づけ、耳元で囁く。
提督「……襲うぞ?」
267: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/09(土) 22:38:43.30 ID:j7YNtzNn0
足柄「ふぁっ……ゃ……」
突然の事に足柄は真っ赤になって。
腕を胸の前でクロスさせ、目をギュッと瞑って。
怯えたように縮こまる。
「えええ?!なんかあっちで夜戦してません?!」という声が向こうから聞こえるが、それももう足柄の耳には入らない。
そんな様子の足柄を見て、提督の真面目な顔が段々と崩れ、ついには吹き出した。
提督「ぷははっ!存外初心じゃないか、足柄。可愛いぞ!」
提督は起き上がって笑う。
足柄「な……あ、ああ……な……」
足柄はからかわれた事に気付き、ワナワナと震え出した。
そんな足柄の頭に手を置き、告げる提督。
提督「娘っ子があまり男をからかうな……ふふっ」
縮こまった様子がよほどツボに入ったのか、まだ笑っている。
足柄の頬は更に紅潮する。
それは羞恥と。
足柄「よ、酔いが吹っ飛んだわ……!」
怒りの為。
足柄「乙女心を弄んで……!も、もう許さないんだから……!」
突然の事に足柄は真っ赤になって。
腕を胸の前でクロスさせ、目をギュッと瞑って。
怯えたように縮こまる。
「えええ?!なんかあっちで夜戦してません?!」という声が向こうから聞こえるが、それももう足柄の耳には入らない。
そんな様子の足柄を見て、提督の真面目な顔が段々と崩れ、ついには吹き出した。
提督「ぷははっ!存外初心じゃないか、足柄。可愛いぞ!」
提督は起き上がって笑う。
足柄「な……あ、ああ……な……」
足柄はからかわれた事に気付き、ワナワナと震え出した。
そんな足柄の頭に手を置き、告げる提督。
提督「娘っ子があまり男をからかうな……ふふっ」
縮こまった様子がよほどツボに入ったのか、まだ笑っている。
足柄の頬は更に紅潮する。
それは羞恥と。
足柄「よ、酔いが吹っ飛んだわ……!」
怒りの為。
足柄「乙女心を弄んで……!も、もう許さないんだから……!」
268: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/09(土) 22:39:20.25 ID:j7YNtzNn0
そう言うが早いが、足柄は素早い動きで提督を羽交い締めにした。
提督「うおお?!」
足柄「隼鷹!彼にとびきりの酒を!」
隼鷹「アーイアーイマダーム!」
先ほどまでべろんべろんになっていたと思えないような俊敏さで、隼鷹は半分以上が残った加賀鳶の瓶を提督の口に突っ込んだ。
提督「もごぉ?!」
足柄「ほーら美味しいわねー?!」
隼鷹「幸せ者だなぁ提督は?!」
提督「もごぉもごぉ!」
榛名「うわぁ……これ軍法会議モノですよ……榛名は何も見てませんからね?」
雷「すでに同罪よ……私達全員、ね……うう……吐きそう……」
鳳翔「雷さん?何を休んでいるのですか?」ドプドプドプ
雷「ギャー!また注がれたー!
こ、この人……!昼の暴露への復讐ね?!そうなのね?!」
鳳翔「さぁ?何のことやら……」
提督「うおお?!」
足柄「隼鷹!彼にとびきりの酒を!」
隼鷹「アーイアーイマダーム!」
先ほどまでべろんべろんになっていたと思えないような俊敏さで、隼鷹は半分以上が残った加賀鳶の瓶を提督の口に突っ込んだ。
提督「もごぉ?!」
足柄「ほーら美味しいわねー?!」
隼鷹「幸せ者だなぁ提督は?!」
提督「もごぉもごぉ!」
榛名「うわぁ……これ軍法会議モノですよ……榛名は何も見てませんからね?」
雷「すでに同罪よ……私達全員、ね……うう……吐きそう……」
鳳翔「雷さん?何を休んでいるのですか?」ドプドプドプ
雷「ギャー!また注がれたー!
こ、この人……!昼の暴露への復讐ね?!そうなのね?!」
鳳翔「さぁ?何のことやら……」
270: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/09(土) 22:48:17.47 ID:j7YNtzNn0
………
……
…
提督「」zzz
隼鷹「……」zzz
足柄「ざまぁないわね!隼鷹は勝手に寝はじめたけど!」
雷「隼鷹何しに来たんだよこいつ……」
榛名「雷さん飲み過ぎて性格が……」
雷「あん?」
榛名「ひっ……」
鳳翔「……では、始めましょうか」
足柄「ふっふっふ……痴態を暴いてやるわよ……!」
……
…
提督「」zzz
隼鷹「……」zzz
足柄「ざまぁないわね!隼鷹は勝手に寝はじめたけど!」
雷「隼鷹何しに来たんだよこいつ……」
榛名「雷さん飲み過ぎて性格が……」
雷「あん?」
榛名「ひっ……」
鳳翔「……では、始めましょうか」
足柄「ふっふっふ……痴態を暴いてやるわよ……!」
272: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/09(土) 22:49:28.18 ID:j7YNtzNn0
………
……
…
榛名「でもちょっと、足柄さん羨ましかったですねー」ガサゴソ
足柄「そ、そう?」ガサゴソ
雷「『ふぁっ……ゃ……』」ガサゴソ
足柄「……」ガサゴソ
榛名「最近はやりの壁ドンみたいだったじゃないですかぁ」ガサゴソ
足柄「壁ドンの何処が良いのよ……」ガサゴソ
鳳翔「こう、強引な感じが、良いのでは?」ガサゴソ
足柄「鳳翔さん、壁ドン知ってんのね……」ガサゴソ
雷「チッ、見つからないわね」ガサゴソ
榛名「ちょっと雷さんが怖すぎやしませんかね」
鳳翔「お酒は人を変えてしまうのです……」
足柄「鳳翔さんが飲ませたんでしょ……」
雷「……これでもない……違う……」
榛名「雷さんの探し方が徹底的過ぎて恐ろしい……」
……
…
榛名「でもちょっと、足柄さん羨ましかったですねー」ガサゴソ
足柄「そ、そう?」ガサゴソ
雷「『ふぁっ……ゃ……』」ガサゴソ
足柄「……」ガサゴソ
榛名「最近はやりの壁ドンみたいだったじゃないですかぁ」ガサゴソ
足柄「壁ドンの何処が良いのよ……」ガサゴソ
鳳翔「こう、強引な感じが、良いのでは?」ガサゴソ
足柄「鳳翔さん、壁ドン知ってんのね……」ガサゴソ
雷「チッ、見つからないわね」ガサゴソ
榛名「ちょっと雷さんが怖すぎやしませんかね」
鳳翔「お酒は人を変えてしまうのです……」
足柄「鳳翔さんが飲ませたんでしょ……」
雷「……これでもない……違う……」
榛名「雷さんの探し方が徹底的過ぎて恐ろしい……」
273: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/09(土) 22:50:08.10 ID:j7YNtzNn0
足柄「……?これは……もしや?」ガサゴソ
足柄「!あったわー!」
足柄が一冊のピンク色の雑誌を引き出しの中からサルベージした。
一同「「「?!」」」
足柄「これよこれ!……やらしい表紙ね〜」
榛名「わ、わ、わ……(……でもこの表紙の方、誰かに似ているような……?)」
鳳翔「これは……また……」
雷「はぁ?!なんで表紙がロングなのよ!ショートでしょ!」
足柄「中身は……ほほぅ」
榛名「わぁ……○○○、です」
鳳翔「ふしだらですね……殿方はこのようなものを普段から見ているのですか……」
雷「ショ、ショートヘアが居ない……何故なの……」
暫くの間、四人の艦娘が一冊の卑 な本に夢中になる。
ページをめくる度におお、だのわぁ、だの感嘆詞が漏れる。
足柄「……と、まぁ、こんな感じね」
鳳翔「……なかなか、でしたね……」
榛名「うう……(……表紙の方、誰かに似てると思ったら……これは確か正規空母の……)」
全員、どことなく顔が赤い。
内容が内容だけに、仕方のないことだが。
雷「……私、決めたわ。髪を伸ばすって。……まさかこの本に載ってるのが全員ロングだなんて……」
ただ1人、雷だけは悲壮な覚悟を決めていた。
足柄「……よし!そろそろ切り上げるわよ!」
榛名「こ、この本はどうしますか?」
足柄「ふふふ!そんなの、きまってるじゃない!」
足柄「!あったわー!」
足柄が一冊のピンク色の雑誌を引き出しの中からサルベージした。
一同「「「?!」」」
足柄「これよこれ!……やらしい表紙ね〜」
榛名「わ、わ、わ……(……でもこの表紙の方、誰かに似ているような……?)」
鳳翔「これは……また……」
雷「はぁ?!なんで表紙がロングなのよ!ショートでしょ!」
足柄「中身は……ほほぅ」
榛名「わぁ……○○○、です」
鳳翔「ふしだらですね……殿方はこのようなものを普段から見ているのですか……」
雷「ショ、ショートヘアが居ない……何故なの……」
暫くの間、四人の艦娘が一冊の卑 な本に夢中になる。
ページをめくる度におお、だのわぁ、だの感嘆詞が漏れる。
足柄「……と、まぁ、こんな感じね」
鳳翔「……なかなか、でしたね……」
榛名「うう……(……表紙の方、誰かに似てると思ったら……これは確か正規空母の……)」
全員、どことなく顔が赤い。
内容が内容だけに、仕方のないことだが。
雷「……私、決めたわ。髪を伸ばすって。……まさかこの本に載ってるのが全員ロングだなんて……」
ただ1人、雷だけは悲壮な覚悟を決めていた。
足柄「……よし!そろそろ切り上げるわよ!」
榛名「こ、この本はどうしますか?」
足柄「ふふふ!そんなの、きまってるじゃない!」
281: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/10(日) 01:48:46.26 ID:CJNbViTW0
………
……
…
足柄達が出て行った数分後。
戻ってくる足音が無い事を確認して、提督はむくりと起き上がった。
提督「……」
実は、寝たふりをしてずっと起きていたのだ。
彼女らが何のために今晩飲みに来たのか、そんなものは自明である。
それでいて、見つかって不味いものを発見させる訳が無い。
不味いと思ったら止めるつもりだった。
提督「奴らは素直だな……良い、子達だ」
我発見せりとばかりに、自慢げに机の上に置かれた 本を見やる。
どうやら見つけた事を知らせたかったようだ。
その表紙には翔鶴に良く似た被写体。
提督「……怪我の功名、か。太郎くんから貰っておいて結果的に良かった」
それを手に取ると、 パラパラとめくる。
提督「……しっかし、よく似ているな……これ、翔鶴に見つかったら怒られるから俺に渡したんだろうな……」
フン、と鼻で笑い、 本をくず箱に放り込む。
本はブラフだった。
念のため、隠しておきたかった物の安否を確認する。
自室の机、上から二番目の引き出し、二重底の下。
現れるは同じ書類が六枚と、数字が書き込まれた書類が数枚。
その書類の内容ーー
提督「……」
を確認する事無く、提督は枚数を確認してからそれを元の場所に戻した。
提督「後は演習が上手くいくと良いんだが……」
そう呟いて、椅子にもたれかかる。
提督「……お前たちの我儘を聞いてやっているんだ……一度だけ、俺の我儘を、許してくれ……」
そして自嘲気味に、フッ、と笑った。
……
…
足柄達が出て行った数分後。
戻ってくる足音が無い事を確認して、提督はむくりと起き上がった。
提督「……」
実は、寝たふりをしてずっと起きていたのだ。
彼女らが何のために今晩飲みに来たのか、そんなものは自明である。
それでいて、見つかって不味いものを発見させる訳が無い。
不味いと思ったら止めるつもりだった。
提督「奴らは素直だな……良い、子達だ」
我発見せりとばかりに、自慢げに机の上に置かれた 本を見やる。
どうやら見つけた事を知らせたかったようだ。
その表紙には翔鶴に良く似た被写体。
提督「……怪我の功名、か。太郎くんから貰っておいて結果的に良かった」
それを手に取ると、 パラパラとめくる。
提督「……しっかし、よく似ているな……これ、翔鶴に見つかったら怒られるから俺に渡したんだろうな……」
フン、と鼻で笑い、 本をくず箱に放り込む。
本はブラフだった。
念のため、隠しておきたかった物の安否を確認する。
自室の机、上から二番目の引き出し、二重底の下。
現れるは同じ書類が六枚と、数字が書き込まれた書類が数枚。
その書類の内容ーー
提督「……」
を確認する事無く、提督は枚数を確認してからそれを元の場所に戻した。
提督「後は演習が上手くいくと良いんだが……」
そう呟いて、椅子にもたれかかる。
提督「……お前たちの我儘を聞いてやっているんだ……一度だけ、俺の我儘を、許してくれ……」
そして自嘲気味に、フッ、と笑った。
282: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/10(日) 01:50:47.08 ID:CJNbViTW0
終わり!
次回から演習シーンかも?
表現の甘さには是非目を瞑ってやって下さい
次回から演習シーンかも?
表現の甘さには是非目を瞑ってやって下さい
288: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 19:55:51.13 ID:PeeFadoN0
数週間後……執務室
提督「前にも伝えた通り、明後日、演習がある。これまでの訓練の成果を発揮する良い機会だ」
提督は一堂に会した艦娘達に告げる。
提督「これに伴い、選抜隊は明日から南方基地へと赴く事となる。
演習海域は南方基地付近に設定される手筈となっているからな」
提督「詳細な演習海域の発表は、哨戒ルートの調整に従って演習当日に行われる。
……まぁ、作戦を練る時間が少ない、という事だが。
海域の発表は0800、演習開始時刻は1000だ」
提督「この島を離れたら、演習終了後まで戻る事は出来ない。
各員、使用する可能性のある全ての装備について本日中に整備点検を徹底しろ。良いな」
一同「はっ!」
提督「前にも伝えた通り、明後日、演習がある。これまでの訓練の成果を発揮する良い機会だ」
提督は一堂に会した艦娘達に告げる。
提督「これに伴い、選抜隊は明日から南方基地へと赴く事となる。
演習海域は南方基地付近に設定される手筈となっているからな」
提督「詳細な演習海域の発表は、哨戒ルートの調整に従って演習当日に行われる。
……まぁ、作戦を練る時間が少ない、という事だが。
海域の発表は0800、演習開始時刻は1000だ」
提督「この島を離れたら、演習終了後まで戻る事は出来ない。
各員、使用する可能性のある全ての装備について本日中に整備点検を徹底しろ。良いな」
一同「はっ!」
289: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 19:56:52.83 ID:PeeFadoN0
………
……
…
提督「……すまんな、太郎くん。このクソ忙しい時に」
太郎『いえ、むしろ此方からお願いさせていただきたかった演習ですので』
提督「助かる」
太郎『そんな。此方の都合に合わせて頂いているのですから』
提督「いやいや……まぁ、お手柔らかに頼むよ」
太郎『此方こそ、よろしくお願い致します』
提督「それと……この間話した件だが……」
太郎『はい。英雄提督であることを伏せておく件ですか?』
提督「ああ……」
太郎『部下にはきっちりと言い含めておきます。……しかし、ずっと隠し通せるとは……』
提督「わかっている。今しばらく、保てばいい」
太郎『……そう、ですか。わかりました』
提督「手間を掛ける」
太郎『いえいえーー』
そんなこんなで打ち合わせをしていると、電話の向こうで翔鶴が太郎を呼ぶ声が聞こえた。
提督「おっと。すまん、時間を取らせたな。では、また明日に」
太郎『とんでもありません。では、失礼致します』
ガチャリ、と受話器を置く。
彼に負担をかけているという自覚はある。
太郎は今、極めて多忙だった。
なんせ、彼は最前線の部隊にあり。
そして件の情報公開ガイドラインの通達がもうすぐ行われるからだ。
また、南方基地が、情報公開と同時に決定した防衛線構想の一部である事が忙しさに拍車をかけていた。
直前に演習海域が公開されるのも、単純に太郎が演習準備の時間を取れない為、公平を期しての事である。
提督「……しかし、これは有益な演習となる筈だ……お互いにな」
……
…
提督「……すまんな、太郎くん。このクソ忙しい時に」
太郎『いえ、むしろ此方からお願いさせていただきたかった演習ですので』
提督「助かる」
太郎『そんな。此方の都合に合わせて頂いているのですから』
提督「いやいや……まぁ、お手柔らかに頼むよ」
太郎『此方こそ、よろしくお願い致します』
提督「それと……この間話した件だが……」
太郎『はい。英雄提督であることを伏せておく件ですか?』
提督「ああ……」
太郎『部下にはきっちりと言い含めておきます。……しかし、ずっと隠し通せるとは……』
提督「わかっている。今しばらく、保てばいい」
太郎『……そう、ですか。わかりました』
提督「手間を掛ける」
太郎『いえいえーー』
そんなこんなで打ち合わせをしていると、電話の向こうで翔鶴が太郎を呼ぶ声が聞こえた。
提督「おっと。すまん、時間を取らせたな。では、また明日に」
太郎『とんでもありません。では、失礼致します』
ガチャリ、と受話器を置く。
彼に負担をかけているという自覚はある。
太郎は今、極めて多忙だった。
なんせ、彼は最前線の部隊にあり。
そして件の情報公開ガイドラインの通達がもうすぐ行われるからだ。
また、南方基地が、情報公開と同時に決定した防衛線構想の一部である事が忙しさに拍車をかけていた。
直前に演習海域が公開されるのも、単純に太郎が演習準備の時間を取れない為、公平を期しての事である。
提督「……しかし、これは有益な演習となる筈だ……お互いにな」
290: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 19:57:42.67 ID:PeeFadoN0
翌日、南方基地
提督「……着いたな……」
足柄「暑い暑い暑い暑い……」
榛名「もう……暑苦しいですよ足柄さん……」
足柄「そう言うあんたも汗まみれじゃないの……」
隼鷹「うへぇ……」
鳳翔「汗が……」
雷「……服が張り付いて気持ち悪い……」
足柄「こ、こんな事なら艤装で海の上を来るべきだった……!」
提督「まさか輸送船の冷房機が壊れているとは……」
榛名「うう……汗臭いです……」すんすん
鳳翔「……仕方ありません。出航してからは、ハンガー横の待機室にて常に待機せねばならなかったのですから……」
雷「……べとべとー」
隼鷹「もう帰っていい?」
提督「帰る便は、来た船しか無いが。それで良いならな」
隼鷹「うへぇ……」
提督「……着いたな……」
足柄「暑い暑い暑い暑い……」
榛名「もう……暑苦しいですよ足柄さん……」
足柄「そう言うあんたも汗まみれじゃないの……」
隼鷹「うへぇ……」
鳳翔「汗が……」
雷「……服が張り付いて気持ち悪い……」
足柄「こ、こんな事なら艤装で海の上を来るべきだった……!」
提督「まさか輸送船の冷房機が壊れているとは……」
榛名「うう……汗臭いです……」すんすん
鳳翔「……仕方ありません。出航してからは、ハンガー横の待機室にて常に待機せねばならなかったのですから……」
雷「……べとべとー」
隼鷹「もう帰っていい?」
提督「帰る便は、来た船しか無いが。それで良いならな」
隼鷹「うへぇ……」
291: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 19:58:11.52 ID:PeeFadoN0
そんな6人に近づく影があった。
それを認めた足柄が、声のトーンを下げて艦娘達に言う。
足柄「……皆、切り替えて行くわよ」
艦娘が一様に頷く。
提督「(別に構える必要は無いんだが……まぁ、良いか)」
金剛「Hey!サセン島防衛隊デスカー?
お待ちしてましたヨー!船旅、お疲れ様ネー!」
迎えに出てきたのは18戦隊旗艦、金剛だった。
足柄「(ず、随分と馴れ馴れしいわね……提督とは前々から……?)」
提督「出迎えご苦労。世話になる」
榛名「金剛さん!ご無沙汰しております」
金剛「榛名!……Wow……」
金剛は近づき、改めて提督を含めた全員を見渡して、顔が少し引き攣る。
金剛「Um……雨でも降ってたノー?……I mean, guys are soaking wet……」
提督「Nay. 輸送船のエアコンの故障だ。……あとは察してくれ」
金剛「Oh……I see……that's too bad……とりあえず、シャワー浴びたいヨネ?」
提督「まずは挨拶だろ……太郎くんに通してくれ」
金剛「Oh, as well. 着いて来てクダサーイ!」
それを認めた足柄が、声のトーンを下げて艦娘達に言う。
足柄「……皆、切り替えて行くわよ」
艦娘が一様に頷く。
提督「(別に構える必要は無いんだが……まぁ、良いか)」
金剛「Hey!サセン島防衛隊デスカー?
お待ちしてましたヨー!船旅、お疲れ様ネー!」
迎えに出てきたのは18戦隊旗艦、金剛だった。
足柄「(ず、随分と馴れ馴れしいわね……提督とは前々から……?)」
提督「出迎えご苦労。世話になる」
榛名「金剛さん!ご無沙汰しております」
金剛「榛名!……Wow……」
金剛は近づき、改めて提督を含めた全員を見渡して、顔が少し引き攣る。
金剛「Um……雨でも降ってたノー?……I mean, guys are soaking wet……」
提督「Nay. 輸送船のエアコンの故障だ。……あとは察してくれ」
金剛「Oh……I see……that's too bad……とりあえず、シャワー浴びたいヨネ?」
提督「まずは挨拶だろ……太郎くんに通してくれ」
金剛「Oh, as well. 着いて来てクダサーイ!」
292: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 19:58:53.94 ID:PeeFadoN0
………
……
…
南方基地、執務室
コンコン
金剛「Excuse me sir!提督をお連れしましたヨ」
太郎「入っていただけ」
ガチャ
金剛「どぞー!」
提督「失礼する」
太郎が机から立ち上がり、入室して来た提督と握手を交わす。
太郎「船旅お疲れ様でした。所で……何か不備が御座いましたか?」
ずぶ濡れの集団を見て、怪訝な顔をした。
提督「いや……輸送船のエアコンが故障していてな……まるでサウナだったよ」
太郎「嗚呼……それは災難でしたね……。翔鶴」
翔鶴「はい。入浴所を手配して参ります」
提督「何?……そこまではーー」
太郎「いえ、このところ船渠の圧迫はありませんので……このままでは不快でしょうし」
提督「……手間を掛ける」
……
…
南方基地、執務室
コンコン
金剛「Excuse me sir!提督をお連れしましたヨ」
太郎「入っていただけ」
ガチャ
金剛「どぞー!」
提督「失礼する」
太郎が机から立ち上がり、入室して来た提督と握手を交わす。
太郎「船旅お疲れ様でした。所で……何か不備が御座いましたか?」
ずぶ濡れの集団を見て、怪訝な顔をした。
提督「いや……輸送船のエアコンが故障していてな……まるでサウナだったよ」
太郎「嗚呼……それは災難でしたね……。翔鶴」
翔鶴「はい。入浴所を手配して参ります」
提督「何?……そこまではーー」
太郎「いえ、このところ船渠の圧迫はありませんので……このままでは不快でしょうし」
提督「……手間を掛ける」
293: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 19:59:34.64 ID:PeeFadoN0
太郎「いえいえ。ところで……此方が今回の演習の……」
太郎は、直立不動で並ぶ5名の艦娘達に目をやりながら聞く。
提督「そうなるな」
太郎「成る程……」
太郎「(うーん……中々骨の有りそうなのが居るな……うん、戦力分析は北上達に丸投げしよう)」
丁度良いタイミングで翔鶴の報告。
翔鶴「……入浴所の手配が済みました」
太郎「有難う。金剛、サセン島防衛隊の艦娘達を案内して差し上げろ」
金剛「Aye!Follow me!」
足柄「提督。よろしいでしょうか」
足柄はやや困惑気味に提督に許可を求める。
提督「行ってこい」
足柄「はっ。失礼致します」
太郎は、直立不動で並ぶ5名の艦娘達に目をやりながら聞く。
提督「そうなるな」
太郎「成る程……」
太郎「(うーん……中々骨の有りそうなのが居るな……うん、戦力分析は北上達に丸投げしよう)」
丁度良いタイミングで翔鶴の報告。
翔鶴「……入浴所の手配が済みました」
太郎「有難う。金剛、サセン島防衛隊の艦娘達を案内して差し上げろ」
金剛「Aye!Follow me!」
足柄「提督。よろしいでしょうか」
足柄はやや困惑気味に提督に許可を求める。
提督「行ってこい」
足柄「はっ。失礼致します」
294: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 20:00:09.46 ID:PeeFadoN0
金剛「こちらデース!」
そして、足柄達は金剛に連れられて行った。
同時に、一人艦娘が入室する。
大井「失礼致します。大井出頭致しました」
太郎「提督さんには宿舎の方で……此方が案内です」
提督「……よろしく頼む」
大井「よろしくお願い致します」
提督「何から何まで、すまないな」
太郎「いえいえ。一時間後にまた迎えをやりますので、ごゆるりとお過ごし下さい。
……私はこれから別件で少し来賓がございまして……」
提督「そうか、それでは早々に失礼するとしよう」
太郎「慌ただしくて、申し訳御座いません」
提督「構わん。……夜、少し時間を取れるか。話したい事がある」
太郎「わかりました」
提督「助かる。では、また」
太郎「はい、また夜に」
提督「失礼」
大井「此方へ……」
提督「ああ」
バタム
そして、足柄達は金剛に連れられて行った。
同時に、一人艦娘が入室する。
大井「失礼致します。大井出頭致しました」
太郎「提督さんには宿舎の方で……此方が案内です」
提督「……よろしく頼む」
大井「よろしくお願い致します」
提督「何から何まで、すまないな」
太郎「いえいえ。一時間後にまた迎えをやりますので、ごゆるりとお過ごし下さい。
……私はこれから別件で少し来賓がございまして……」
提督「そうか、それでは早々に失礼するとしよう」
太郎「慌ただしくて、申し訳御座いません」
提督「構わん。……夜、少し時間を取れるか。話したい事がある」
太郎「わかりました」
提督「助かる。では、また」
太郎「はい、また夜に」
提督「失礼」
大井「此方へ……」
提督「ああ」
バタム
295: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 20:02:00.85 ID:PeeFadoN0
………
……
…
南方基地、屋外
提督「……(……大井。会うのはかなり久しぶりだな……サセン島に来る更にその前、だもんな……)」
大井「……」
提督「……」
大井「……なんか喋んなさいよ」
提督「……ひ、久しぶりだな」
大井「そうですね」
提督「……」
大井「……終わり?」
提督「どう繋げろと言うんだ……!」
大井と提督の二人が、南方の島を宿舎に向けて基地の敷地内を歩く。
大井「なんか……ないの?」
提督「……さ、最近は暑いよな?」
それに対し、大井は苛々したように振り返った。
大井「……良いですか、提督?」
提督「はい」
思わず敬語になる提督。
大井「私の、北上さんとの時間を?
わざわざあなたに割いて居るのですから?
私を楽しませようという、殊勝な心掛けは当然ではありませんか?」
提督「当然ではありませんよ……」
大井「シャラァップ!」
提督「?!」
大井「世の中の全ての事は最終的に北上さんに収束するんですよ!!
言わばあなたは外乱なんです!!
その存在を認めているだけ感謝なさい!!」
提督「きょ、極限で収束するなら多少外乱があっても良いじゃないか……」
……
…
南方基地、屋外
提督「……(……大井。会うのはかなり久しぶりだな……サセン島に来る更にその前、だもんな……)」
大井「……」
提督「……」
大井「……なんか喋んなさいよ」
提督「……ひ、久しぶりだな」
大井「そうですね」
提督「……」
大井「……終わり?」
提督「どう繋げろと言うんだ……!」
大井と提督の二人が、南方の島を宿舎に向けて基地の敷地内を歩く。
大井「なんか……ないの?」
提督「……さ、最近は暑いよな?」
それに対し、大井は苛々したように振り返った。
大井「……良いですか、提督?」
提督「はい」
思わず敬語になる提督。
大井「私の、北上さんとの時間を?
わざわざあなたに割いて居るのですから?
私を楽しませようという、殊勝な心掛けは当然ではありませんか?」
提督「当然ではありませんよ……」
大井「シャラァップ!」
提督「?!」
大井「世の中の全ての事は最終的に北上さんに収束するんですよ!!
言わばあなたは外乱なんです!!
その存在を認めているだけ感謝なさい!!」
提督「きょ、極限で収束するなら多少外乱があっても良いじゃないか……」
296: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 20:02:37.59 ID:PeeFadoN0
大井「ノォォォォ!」
提督「?!……な、なんだよ」
大井「私は可及的速やかに北上さんに収束したいんですよ……!」
提督「お、お前が北上に収束するのか……」
大井「とにかく!
私を楽しませなさい?!」
提督「いやもうさっさと案内してくれ……」
大井「却下よ」
提督「何故だ……」
大井「私が気に入らないからよ」
提督「お前は何様だよ……」
大井「大井様よ?ハイパー大井様。ほら、言ってごらんなさい?」
提督「言いたくねえ……」
大井「ほほん?そんな態度で良いのかしら?」
提督「……何をするつもりだ」
大井「このクソ暑い中、ここで貴方を足止めするわ。
宿舎に到達出来ると思わない事ね……!」
提督「それは命令違反と言うんじゃないのか」
大井「ハん!翔鶴の尻に敷かれてる男なんて怖くないわよ!」
提督「軍規も何もあったもんじゃ無いな……」
提督「?!……な、なんだよ」
大井「私は可及的速やかに北上さんに収束したいんですよ……!」
提督「お、お前が北上に収束するのか……」
大井「とにかく!
私を楽しませなさい?!」
提督「いやもうさっさと案内してくれ……」
大井「却下よ」
提督「何故だ……」
大井「私が気に入らないからよ」
提督「お前は何様だよ……」
大井「大井様よ?ハイパー大井様。ほら、言ってごらんなさい?」
提督「言いたくねえ……」
大井「ほほん?そんな態度で良いのかしら?」
提督「……何をするつもりだ」
大井「このクソ暑い中、ここで貴方を足止めするわ。
宿舎に到達出来ると思わない事ね……!」
提督「それは命令違反と言うんじゃないのか」
大井「ハん!翔鶴の尻に敷かれてる男なんて怖くないわよ!」
提督「軍規も何もあったもんじゃ無いな……」
297: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 20:03:15.42 ID:PeeFadoN0
大井「ふふふ!それにね?
私は太郎さんの 本を、発見してしまったのよ……!
どうやら処分したようだけど、翔鶴に似た表紙だったわね!」
提督「最高に悪い顔してるな」
大井「オーホホホ!私は太郎……さんの弱みも握ってるのよ!」
提督「お前今呼び捨てにしたろ」
大井「さぁ私をハイパー大井様と呼びなさい?!」
提督「……ハイパー大井様」
大井「チッ……もう言うとは、根性の無い男ね……」
提督「お前……」
大井「気分が変わったわ!勝負よ!
勝たなきゃ案内はナシ、良いわね?」
提督「良くねえよ……」
私は太郎さんの 本を、発見してしまったのよ……!
どうやら処分したようだけど、翔鶴に似た表紙だったわね!」
提督「最高に悪い顔してるな」
大井「オーホホホ!私は太郎……さんの弱みも握ってるのよ!」
提督「お前今呼び捨てにしたろ」
大井「さぁ私をハイパー大井様と呼びなさい?!」
提督「……ハイパー大井様」
大井「チッ……もう言うとは、根性の無い男ね……」
提督「お前……」
大井「気分が変わったわ!勝負よ!
勝たなきゃ案内はナシ、良いわね?」
提督「良くねえよ……」
298: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 20:04:38.15 ID:PeeFadoN0
………
……
…
応接室
シャワーで手早く汗を流し、服を着替えた足柄達と金剛が、提督の到着を待っていた。
が、予定の到着時間を既に大幅に過ぎている。
本来ならば大井が、汗を流した提督をここに連れてくる手筈になっていた。
足柄「……あの、我々の提督は?」
金剛「……おかしいネー。ちょっと失礼するネ」
金剛は足柄達に背を向け、無線で喋り出した。
金剛「北上、居る?」
ややあってから返信がある。
北上『居るよ。もう顔合わせの時間?』
金剛『Negative. 大井と連絡がつかないデース。居場所、わかりマスか?』
北上『ちょっとわかんないなぁ……提督の案内じゃなかったの?』
金剛「提督ごと行方知れずなのデース」
北上『わかった、アタシちょっと探してくるね』
金剛「なるべく早くお願いしマス」
雷「司令官、大丈夫かしら?」
……
…
応接室
シャワーで手早く汗を流し、服を着替えた足柄達と金剛が、提督の到着を待っていた。
が、予定の到着時間を既に大幅に過ぎている。
本来ならば大井が、汗を流した提督をここに連れてくる手筈になっていた。
足柄「……あの、我々の提督は?」
金剛「……おかしいネー。ちょっと失礼するネ」
金剛は足柄達に背を向け、無線で喋り出した。
金剛「北上、居る?」
ややあってから返信がある。
北上『居るよ。もう顔合わせの時間?』
金剛『Negative. 大井と連絡がつかないデース。居場所、わかりマスか?』
北上『ちょっとわかんないなぁ……提督の案内じゃなかったの?』
金剛「提督ごと行方知れずなのデース」
北上『わかった、アタシちょっと探してくるね』
金剛「なるべく早くお願いしマス」
雷「司令官、大丈夫かしら?」
299: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 20:05:12.79 ID:PeeFadoN0
………
……
…
北上「大井っち……どこだろ……」タッタッタ
北上「ん……?あれは大井っち……と提督?」
北上「何してんだろ……」コソコソ
大井「負けたっ……!
この……っ!女の子相手に容赦なさ過ぎんのよ!女の敵!」
提督「じゃんけんに容赦もクソも無ぇよ……」
大井「……あ、これ三回勝負だから」
提督「出たよ負けた途端それ言い出す奴……」
大井「うっさいわね!じゃあ指相撲よ!
オラ!手出せ!」
提督「冗談だろ……」
北上「久しぶりに提督に会ったからか、はしゃいでんなぁ大井っち……」
北上「あー……金剛、こちら北上。応答せよ」
金剛『北上、金剛。Go ahead.』
北上「あー……大井っちと提督をセットで発見したんだけどさ……なんか、やってんだよね……」
金剛『……どーゆー事デス?』
……
…
北上「大井っち……どこだろ……」タッタッタ
北上「ん……?あれは大井っち……と提督?」
北上「何してんだろ……」コソコソ
大井「負けたっ……!
この……っ!女の子相手に容赦なさ過ぎんのよ!女の敵!」
提督「じゃんけんに容赦もクソも無ぇよ……」
大井「……あ、これ三回勝負だから」
提督「出たよ負けた途端それ言い出す奴……」
大井「うっさいわね!じゃあ指相撲よ!
オラ!手出せ!」
提督「冗談だろ……」
北上「久しぶりに提督に会ったからか、はしゃいでんなぁ大井っち……」
北上「あー……金剛、こちら北上。応答せよ」
金剛『北上、金剛。Go ahead.』
北上「あー……大井っちと提督をセットで発見したんだけどさ……なんか、やってんだよね……」
金剛『……どーゆー事デス?』
300: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 20:05:45.24 ID:PeeFadoN0
北上「なんかね……外でさ、汗塗れで指相撲してる……」
金剛『……Say again, over.』
北上「アイセイアゲイン、提督と大井っちが汗塗れで指相撲をしている、オーバー」
金剛『……汗塗れで指相撲?……それは何かの隠語デスか?』
北上「いや、マジで。……あ、大井っちが勝った」
金剛『……What the……!……北上、I want them right here right now……!』
北上「オ、オゥケィ……おーい、大井っちー」
大井「?!……き、北上さん?!
だめよ北上さん!来ないで!私今汗臭い……!」
北上「いやいや、そんな事言ってる場合じゃないよ大井っち〜。
金剛がお冠だぜ?」
大井「あ、あらもうそんな時間?」
提督「……宿舎は……」
提督は疲れきった表情をしていた。
北上「え、提督まだ荷物持ってるし……大井っち案内してから遊んでたんじゃないの?」
大井「……」
大井はサッと目を逸らす。
北上「えええ……もしかしてずっと遊んでたの……?」
大井「……」
北上「ダメじゃん大井っちー」
大井「……」
北上「そういう時はアタシも呼ばなきゃ!」
提督「お前らダメダメだよ……」
金剛『……Say again, over.』
北上「アイセイアゲイン、提督と大井っちが汗塗れで指相撲をしている、オーバー」
金剛『……汗塗れで指相撲?……それは何かの隠語デスか?』
北上「いや、マジで。……あ、大井っちが勝った」
金剛『……What the……!……北上、I want them right here right now……!』
北上「オ、オゥケィ……おーい、大井っちー」
大井「?!……き、北上さん?!
だめよ北上さん!来ないで!私今汗臭い……!」
北上「いやいや、そんな事言ってる場合じゃないよ大井っち〜。
金剛がお冠だぜ?」
大井「あ、あらもうそんな時間?」
提督「……宿舎は……」
提督は疲れきった表情をしていた。
北上「え、提督まだ荷物持ってるし……大井っち案内してから遊んでたんじゃないの?」
大井「……」
大井はサッと目を逸らす。
北上「えええ……もしかしてずっと遊んでたの……?」
大井「……」
北上「ダメじゃん大井っちー」
大井「……」
北上「そういう時はアタシも呼ばなきゃ!」
提督「お前らダメダメだよ……」
301: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 20:06:20.76 ID:PeeFadoN0
………
……
…
金剛「Where the bloody hell is 大井 ?!」
金剛が無線に怒鳴る。
北上『大丈夫大丈夫、提督ごとサルベージしたからすぐ戻るよ〜。
ごめんなさいって大井っちが』
金剛「Yes, she better be……!」
金剛はイラついた様子で無線機のスイッチを切った。
金剛「……申し訳ありません。此方の不手際で少々食い違いが……すぐに到着するとの事デス」
足柄「……(……なーんかガバガバねぇ、この基地)」
鳳翔「(……まるで、サセン島に居るかのようなユルさ……)」
ガチャ
北上「連れて来たよー」
大井「申し訳ありません」
提督「……遅れてすまない……」
金剛「……?!」
足柄「……」
榛名「(提督が泥だらけで汗塗れなんですが……しかも荷物も持ったまま……)」
……
…
金剛「Where the bloody hell is 大井 ?!」
金剛が無線に怒鳴る。
北上『大丈夫大丈夫、提督ごとサルベージしたからすぐ戻るよ〜。
ごめんなさいって大井っちが』
金剛「Yes, she better be……!」
金剛はイラついた様子で無線機のスイッチを切った。
金剛「……申し訳ありません。此方の不手際で少々食い違いが……すぐに到着するとの事デス」
足柄「……(……なーんかガバガバねぇ、この基地)」
鳳翔「(……まるで、サセン島に居るかのようなユルさ……)」
ガチャ
北上「連れて来たよー」
大井「申し訳ありません」
提督「……遅れてすまない……」
金剛「……?!」
足柄「……」
榛名「(提督が泥だらけで汗塗れなんですが……しかも荷物も持ったまま……)」
302: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 20:07:23.03 ID:PeeFadoN0
鳳翔「提督、そのお姿は如何なさいましたか?」
鳳翔が横目で金剛を捉えながら聞く。
が、当の金剛も困惑していた。
足柄「何故お荷物を?宿舎の方で御入浴なさったのでは?」
提督「いや……少しな。……私の方は問題無い」
金剛「……大井?」
大井「私は何も存じ上げておりません故」
金剛「……」
北上「えーっと……始めちゃって良いのかな?」
提督「……すまん、北上。進めてくれ」
北上「えー……お待たせしました。金剛に変わりまして、わたくし北上の司会で……えー……懇親会の方をですね……執り行わせていただきます」
北上「後程、翔鶴及び陽炎、麻耶も参ります……ねぇ、もう良い?」
北上がダルそうに提督に聞く。
提督「何がだよ……」
北上「喋り。なんか翔ぴーが頑張ってカンペ作ってくれてたんだけど。長過ぎ。
もう伝わったよね、アタシの気持ち」
提督「翔ぴー……?……翔鶴か。後、内容は何一つ伝わってこないから続けろ」
鳳翔が横目で金剛を捉えながら聞く。
が、当の金剛も困惑していた。
足柄「何故お荷物を?宿舎の方で御入浴なさったのでは?」
提督「いや……少しな。……私の方は問題無い」
金剛「……大井?」
大井「私は何も存じ上げておりません故」
金剛「……」
北上「えーっと……始めちゃって良いのかな?」
提督「……すまん、北上。進めてくれ」
北上「えー……お待たせしました。金剛に変わりまして、わたくし北上の司会で……えー……懇親会の方をですね……執り行わせていただきます」
北上「後程、翔鶴及び陽炎、麻耶も参ります……ねぇ、もう良い?」
北上がダルそうに提督に聞く。
提督「何がだよ……」
北上「喋り。なんか翔ぴーが頑張ってカンペ作ってくれてたんだけど。長過ぎ。
もう伝わったよね、アタシの気持ち」
提督「翔ぴー……?……翔鶴か。後、内容は何一つ伝わってこないから続けろ」
303: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 20:07:55.12 ID:PeeFadoN0
北上「酷いよ提督!昔はあんなに以心伝心だったのに!」
提督「いつの話だ、いつの!
大井は俊敏な動きを見せるな!」
北上「まぁいいや。えー……そんなこんなで皆仲良くしましょう。終わり!」
提督「適当か……」
金剛「北上……!」
北上「ゴッさんも翔ぴーも真面目すぎ!仲良くなったらイイじゃん!ねぇ、榛名っち」
榛名「え?あ、は、はい!(……ゴッさんって金剛さん……?)」
金剛「……」
足柄「(この人苦労してるんでしょうね……)」
北上「もう堅苦しいのは無しで!
提督の部下って事はどうせサセン島もユルユルなんしょ?」
足柄「……まぁ」
北上「コッチも中々ユルいから温度差無いよ〜。
他のお堅いトコとは違うから大丈夫。だれも怒んない怒んない」
足柄「そ、そうですか」
北上「敬語ー」
足柄「そ、そう」
北上「そう!」
提督「いつの話だ、いつの!
大井は俊敏な動きを見せるな!」
北上「まぁいいや。えー……そんなこんなで皆仲良くしましょう。終わり!」
提督「適当か……」
金剛「北上……!」
北上「ゴッさんも翔ぴーも真面目すぎ!仲良くなったらイイじゃん!ねぇ、榛名っち」
榛名「え?あ、は、はい!(……ゴッさんって金剛さん……?)」
金剛「……」
足柄「(この人苦労してるんでしょうね……)」
北上「もう堅苦しいのは無しで!
提督の部下って事はどうせサセン島もユルユルなんしょ?」
足柄「……まぁ」
北上「コッチも中々ユルいから温度差無いよ〜。
他のお堅いトコとは違うから大丈夫。だれも怒んない怒んない」
足柄「そ、そうですか」
北上「敬語ー」
足柄「そ、そう」
北上「そう!」
304: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 20:08:29.47 ID:PeeFadoN0
………
……
…
鳳翔「あら、前は本土で艦娘の指導をしてらっしゃったんですね、提督。そこで知り合ったと」
北上「そそ。と言っても公式の指導員では無かったんだけどね。
まぁ艦娘にセクハラし過ぎて結局左遷されたし」
足柄「あぁー。わかるわー」
北上「マジ?わかる?」
提督「お互いに嘘を教えあうのはやめろ……」
足柄「え?嘘?……襲うぞ、ってあたしを押し倒したじゃない」ニヤニヤ
提督「……あれはノーカンだろ……」
北上「え?ガチ?うっひゃあ。やるなぁ、提督!」
金剛「それは本当デスか提督!?」
榛名「襲ってませんよ……榛名は見てましたから!」
大井「……他の子が見てる前で押し倒したの?」
雷「……色々あったのよ……」チラ
隼鷹「なんでアタシを見るんだよ」
……
…
鳳翔「あら、前は本土で艦娘の指導をしてらっしゃったんですね、提督。そこで知り合ったと」
北上「そそ。と言っても公式の指導員では無かったんだけどね。
まぁ艦娘にセクハラし過ぎて結局左遷されたし」
足柄「あぁー。わかるわー」
北上「マジ?わかる?」
提督「お互いに嘘を教えあうのはやめろ……」
足柄「え?嘘?……襲うぞ、ってあたしを押し倒したじゃない」ニヤニヤ
提督「……あれはノーカンだろ……」
北上「え?ガチ?うっひゃあ。やるなぁ、提督!」
金剛「それは本当デスか提督!?」
榛名「襲ってませんよ……榛名は見てましたから!」
大井「……他の子が見てる前で押し倒したの?」
雷「……色々あったのよ……」チラ
隼鷹「なんでアタシを見るんだよ」
305: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/12(火) 20:09:08.46 ID:PeeFadoN0
提督「……居た堪れないから俺は一度風呂に行く……各々仲良くやっといてくれ」
大井「では、案内しましょう」
提督「お前……まぁ良い、案内してくれ」
金剛「大井?……ワタシが行きマス」
提督「大丈夫だ、金剛。ありがとう」
金剛「……本当に大丈夫デスか?」
大井「大丈夫よ」
金剛「I'm not asking you.」
提督「問題無い。いざとなれば一人で行けるさ」
金剛「……そうデスか。わかりました。お気をつけて」
大井「では、案内しましょう」
提督「お前……まぁ良い、案内してくれ」
金剛「大井?……ワタシが行きマス」
提督「大丈夫だ、金剛。ありがとう」
金剛「……本当に大丈夫デスか?」
大井「大丈夫よ」
金剛「I'm not asking you.」
提督「問題無い。いざとなれば一人で行けるさ」
金剛「……そうデスか。わかりました。お気をつけて」
319: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/13(水) 21:57:59.13 ID:HfuHxqSA0
基地の外
提督「北上さんとの時間云々は良かったのか?」
大井「残念ながら、私もシャワーを浴びなければ汗が……」
提督「自業自得だけどな……」
大井「そう言えば……本土でまた何かやらかしたの?」
提督「……質問の意図が見えないな」
大井「中央の艦娘たちの間で話題になってたらしいけど」
提督「ほう」
大井「魚雷を抱えた死神の黄泉返りかって」
提督「はっはっは!神とは大きく出たな」
大井「笑い事じゃないわ。
それだけあなたの噂が広まってるってことなんだけど」
提督「噂が広がる、か。……大変結構」
大井「何が良いのよ……」
提督「昔は噂話なんて艦娘はしなかった。……良い傾向じゃないか」
大井「……いったい何年前の話よ……ジジイねぇ」
はぁ、と溜息。
提督「北上さんとの時間云々は良かったのか?」
大井「残念ながら、私もシャワーを浴びなければ汗が……」
提督「自業自得だけどな……」
大井「そう言えば……本土でまた何かやらかしたの?」
提督「……質問の意図が見えないな」
大井「中央の艦娘たちの間で話題になってたらしいけど」
提督「ほう」
大井「魚雷を抱えた死神の黄泉返りかって」
提督「はっはっは!神とは大きく出たな」
大井「笑い事じゃないわ。
それだけあなたの噂が広まってるってことなんだけど」
提督「噂が広がる、か。……大変結構」
大井「何が良いのよ……」
提督「昔は噂話なんて艦娘はしなかった。……良い傾向じゃないか」
大井「……いったい何年前の話よ……ジジイねぇ」
はぁ、と溜息。
320: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/13(水) 21:59:02.46 ID:HfuHxqSA0
大井「……あなたは本当に沢山の艦娘から嫌われたわ。……いえ、嫌いと言うか、怖がられてると言うか……」
提督「そうだな。……ま、それでいい」
そんな提督を見て、大井は更に深いため息をつく。
大井「……ほんと、わかんない人」
カラカラと笑う提督。
大井「あなた、艦娘が好きなんじゃ無いの?」
提督「勿論。皆大事だ」
大井「……だったらなんで……」
提督「向こうが俺を好む必要は無い。俺は恋愛がしたい訳じゃあない」
大井「……」
提督「俺は悪者で良いのさ」
大井「……呆れた人ね。そうやって一生自分に酔ってなさい」
提督「ははは、こいつは手厳しい」
暫しの沈黙。
提督「……まぁ、なんだ。俺に続く奴らは必ず出てくる。
太郎くんなんか、その筆頭だろ」
提督「そうだな。……ま、それでいい」
そんな提督を見て、大井は更に深いため息をつく。
大井「……ほんと、わかんない人」
カラカラと笑う提督。
大井「あなた、艦娘が好きなんじゃ無いの?」
提督「勿論。皆大事だ」
大井「……だったらなんで……」
提督「向こうが俺を好む必要は無い。俺は恋愛がしたい訳じゃあない」
大井「……」
提督「俺は悪者で良いのさ」
大井「……呆れた人ね。そうやって一生自分に酔ってなさい」
提督「ははは、こいつは手厳しい」
暫しの沈黙。
提督「……まぁ、なんだ。俺に続く奴らは必ず出てくる。
太郎くんなんか、その筆頭だろ」
321: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/13(水) 22:09:19.73 ID:HfuHxqSA0
大井「……あなたは、もう台頭しないの?」
提督「まさか。老兵はただ消えゆくのみ」
大井「老兵って歳でもないでしょうに……」
提督「お前の4,5倍は生きてる」
大井「成る程やっぱりジジイね」
また、沈黙。
提督「……やったことの皺寄せは、自分に来る。だが、それをうまい具合になんとか出来れば……後には残らないさ。それは俺の仕事だ」
大井「……そんな、色んな事にがんじがらめで、うまい具合に出来る訳が無いじゃないの」
提督「……」
大井「ほんと夢みがちなんだから……現実見なさいよ。
……着いたわよ、入浴所。男用はそっちね。さっさとシャワー浴びて着替えて来て頂戴。」
大井は手をヒラヒラさせて言う。
大井「私は北上さんの側に早く戻りたいの。
もうあなたに割く時間は無いわ。……馬鹿につける薬もね」
提督「まさか。老兵はただ消えゆくのみ」
大井「老兵って歳でもないでしょうに……」
提督「お前の4,5倍は生きてる」
大井「成る程やっぱりジジイね」
また、沈黙。
提督「……やったことの皺寄せは、自分に来る。だが、それをうまい具合になんとか出来れば……後には残らないさ。それは俺の仕事だ」
大井「……そんな、色んな事にがんじがらめで、うまい具合に出来る訳が無いじゃないの」
提督「……」
大井「ほんと夢みがちなんだから……現実見なさいよ。
……着いたわよ、入浴所。男用はそっちね。さっさとシャワー浴びて着替えて来て頂戴。」
大井は手をヒラヒラさせて言う。
大井「私は北上さんの側に早く戻りたいの。
もうあなたに割く時間は無いわ。……馬鹿につける薬もね」
322: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/13(水) 22:10:32.97 ID:HfuHxqSA0
提督「それはどうも」
大井「……あーあ。面倒くさ。あなたになんか出会うんじゃなかった」
提督「はっはっは!そいつは最高の誉め言葉だよ」
大井「ウッザ……変 ……もう死んじゃえ……」
クックックと笑う提督に、侮蔑の視線を送りながら大井は女子更衣室に入っていった。
提督もさぁ着替えようかという時、大井が更衣室の壁からひょっこり頭だけを出す。
大井「……死ねってのは嘘」
それだけ言うと、戻ってしまった。
大井「……あーあ。面倒くさ。あなたになんか出会うんじゃなかった」
提督「はっはっは!そいつは最高の誉め言葉だよ」
大井「ウッザ……変 ……もう死んじゃえ……」
クックックと笑う提督に、侮蔑の視線を送りながら大井は女子更衣室に入っていった。
提督もさぁ着替えようかという時、大井が更衣室の壁からひょっこり頭だけを出す。
大井「……死ねってのは嘘」
それだけ言うと、戻ってしまった。
331: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/15(金) 23:42:36.15 ID:FkDt47yA0
応接室
扉が開き、入浴を済ませた提督と大井が応接室へと入って来た。
大井「ただいま帰りましたぁ!北上さぁん!」
北上「うおおお大井っちー!大丈夫?セクハラされなかった?」
大井「されました……」
提督「風評被害はやめろ……」
北上「うはは」
金剛「テートクー!大丈夫でしたカー?」
提督「問題ない。サッパリしたよ」
榛名「それは良かったです!」
提督「ところで……」
チラリと提督は部屋の中、見知らぬ二人に目をやる。
提督「この二人は?」
金剛「Oh!麻耶と陽炎デース!提督とは初対面なのネ!」
提督「そうだな」
陽炎「お初にお目にかかります!駆逐艦陽炎です!」
麻耶「……重巡、麻耶だ……です」
ビシッと決める陽炎とは対照的に、麻耶は提督に目もくれない。
扉が開き、入浴を済ませた提督と大井が応接室へと入って来た。
大井「ただいま帰りましたぁ!北上さぁん!」
北上「うおおお大井っちー!大丈夫?セクハラされなかった?」
大井「されました……」
提督「風評被害はやめろ……」
北上「うはは」
金剛「テートクー!大丈夫でしたカー?」
提督「問題ない。サッパリしたよ」
榛名「それは良かったです!」
提督「ところで……」
チラリと提督は部屋の中、見知らぬ二人に目をやる。
提督「この二人は?」
金剛「Oh!麻耶と陽炎デース!提督とは初対面なのネ!」
提督「そうだな」
陽炎「お初にお目にかかります!駆逐艦陽炎です!」
麻耶「……重巡、麻耶だ……です」
ビシッと決める陽炎とは対照的に、麻耶は提督に目もくれない。
332: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/15(金) 23:43:47.02 ID:FkDt47yA0
金剛「麻耶はちょっとshyナノー。ごめんネー」
提督「そうか。それは結構」
提督「(麻耶か。……愛宕の姉妹艦。……恥ずかしがり屋、ねぇ……
俺が居てはやり辛かろう。退散するか)」
提督「さて、俺は一度宿舎に戻る。荷物を運ばないとな」
金剛「もう行ってしまうのデスかー?折角陽炎らが来たノニー」
北上「もうちょいゆっくりしてったら〜?」
提督「そうは言うがな……」
陽炎「そうです提督!」
完全に宿舎へ行くつもりだった提督に、陽炎は身を乗り出すようにして言う。
陽炎「お噂はかねがね!
それで、幾つかご相談したいことが!」
提督「(……ぐいぐい来るなぁ)……わかった。聞こう」
提督「そうか。それは結構」
提督「(麻耶か。……愛宕の姉妹艦。……恥ずかしがり屋、ねぇ……
俺が居てはやり辛かろう。退散するか)」
提督「さて、俺は一度宿舎に戻る。荷物を運ばないとな」
金剛「もう行ってしまうのデスかー?折角陽炎らが来たノニー」
北上「もうちょいゆっくりしてったら〜?」
提督「そうは言うがな……」
陽炎「そうです提督!」
完全に宿舎へ行くつもりだった提督に、陽炎は身を乗り出すようにして言う。
陽炎「お噂はかねがね!
それで、幾つかご相談したいことが!」
提督「(……ぐいぐい来るなぁ)……わかった。聞こう」
333: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/15(金) 23:44:24.15 ID:FkDt47yA0
………
……
…
陽炎「ですから魚雷を投下する際の角度はーー」
提督「(うーむ……)」
陽炎「遠距離から狙うのも仰角が要らなくてーー」
提督「(初対面の人間に対して出す話題が魚雷か……)」
陽炎「ーーつまり少ない魚雷による遠距離からの狙撃は有効だと思うの!」
提督「(この子はバトルジャンキーっぽいな……)」
陽炎「如何でしょうか?!」
提督「……言わんとしていることはわかるが……標的が小さい。
特に速度が遅いから遠距離の敵には当てづらい上に、直進するから位置もバレる。」
陽炎「む」
提督「……例え敵がこちらに気づいて無くとも、遠距離から一発必中を狙うのはリスキーだ。
中々難しいんじゃないか?」
陽炎「……ならば、ある程度の数を角度つけて撒くとか?」
提督「趣旨からズレてるな。魚雷をそれなりの数撃てば発見される可能性も上がる。
そもそも一発必中の話だろう」
陽炎「……むぅ」
……
…
陽炎「ですから魚雷を投下する際の角度はーー」
提督「(うーむ……)」
陽炎「遠距離から狙うのも仰角が要らなくてーー」
提督「(初対面の人間に対して出す話題が魚雷か……)」
陽炎「ーーつまり少ない魚雷による遠距離からの狙撃は有効だと思うの!」
提督「(この子はバトルジャンキーっぽいな……)」
陽炎「如何でしょうか?!」
提督「……言わんとしていることはわかるが……標的が小さい。
特に速度が遅いから遠距離の敵には当てづらい上に、直進するから位置もバレる。」
陽炎「む」
提督「……例え敵がこちらに気づいて無くとも、遠距離から一発必中を狙うのはリスキーだ。
中々難しいんじゃないか?」
陽炎「……ならば、ある程度の数を角度つけて撒くとか?」
提督「趣旨からズレてるな。魚雷をそれなりの数撃てば発見される可能性も上がる。
そもそも一発必中の話だろう」
陽炎「……むぅ」
334: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/15(金) 23:45:03.97 ID:FkDt47yA0
北上「まーた陽炎が魚雷トーク繰り広げてるよー。ホント魚雷好きだねー」
榛名「……」ビクッ
金剛「榛名?どーかしたネー?」
榛名「い、いえ!榛名は大丈夫です!」
大井「全く……私達が居る以上、甲標的が有ると言うのに」
北上「まぁでもロマンがあるんじゃなーいの?なんかカッコイイじゃん、視界外攻撃」
大井「……狙い撃つって感じは……まぁ、嫌いじゃありませんね」
北上「アウトレンジで決めたいわね!うっひょう!」
大井「北上さん……」
榛名「……」ビクッ
金剛「榛名?どーかしたネー?」
榛名「い、いえ!榛名は大丈夫です!」
大井「全く……私達が居る以上、甲標的が有ると言うのに」
北上「まぁでもロマンがあるんじゃなーいの?なんかカッコイイじゃん、視界外攻撃」
大井「……狙い撃つって感じは……まぁ、嫌いじゃありませんね」
北上「アウトレンジで決めたいわね!うっひょう!」
大井「北上さん……」
335: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/15(金) 23:45:40.81 ID:FkDt47yA0
提督「夜間、若しくは極限まで訓練をこなせば或いは可能かも知れんが……
電探による早期発見能力は、我々が深海棲艦に対して持っている優位点だ。
視界外の艦載機攻撃と、魚雷攻撃、どちらがそれを失う可能性が高いかはわかるな」
陽炎「……ここは極限まで訓練を!そうすれば!」
提督「よしんばそれで出来る様になったとして、100人中1人にしか出来ない事が果たして有効な戦術だと言えるのかどうか、だな」
陽炎「ぐぬう」
提督「だがまぁ、個人技を磨くのは生き残る上で重要だ。その一環として、訓練を重ねるのも良い……励めよ、陽炎」
陽炎「……はいっ!」
提督「……所で、お前は配属されてから、どれくらい経つ?」
陽炎「麻耶と共に、つい半年程前に初等教育を終え、着任しました!」
提督「……半年程前に初等教育を終えた?」
陽炎「?……はい」
電探による早期発見能力は、我々が深海棲艦に対して持っている優位点だ。
視界外の艦載機攻撃と、魚雷攻撃、どちらがそれを失う可能性が高いかはわかるな」
陽炎「……ここは極限まで訓練を!そうすれば!」
提督「よしんばそれで出来る様になったとして、100人中1人にしか出来ない事が果たして有効な戦術だと言えるのかどうか、だな」
陽炎「ぐぬう」
提督「だがまぁ、個人技を磨くのは生き残る上で重要だ。その一環として、訓練を重ねるのも良い……励めよ、陽炎」
陽炎「……はいっ!」
提督「……所で、お前は配属されてから、どれくらい経つ?」
陽炎「麻耶と共に、つい半年程前に初等教育を終え、着任しました!」
提督「……半年程前に初等教育を終えた?」
陽炎「?……はい」
336: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/15(金) 23:46:21.38 ID:FkDt47yA0
提督「実戦経験は?」
陽炎「緊急出撃を含む12回の出撃と、な、7回の戦闘を経験しています!」
北上「こらこら、その7回のうち5回くらいは翔ぴーと私達で、敵を見る前に〆たじゃんかぁ」
陽炎「……う……!」
陽炎が言葉に詰まる。
その時、応接間の扉が開き、新たな艦娘が部屋に入ってきた。
翔鶴「でも、2回の戦闘では、きちんと戦果を上げているんですよ?
ねえ、陽炎」
北上「……」
陽炎「そ、そうよ!」
提督「ほう。素晴らしい」
翔鶴「陽炎も、麻耶もとても優秀なんですよ。うふふ」
提督「流石、18戦隊に配属されるだけはあるな」
翔鶴「はい……提督、ご無沙汰しております」
提督「ああ」
翔鶴「サセン隊の皆様も、こんにちは。18戦隊指揮・太郎の秘書艦を務めます翔鶴です。
改めまして、よろしくお願い致しますね」
足柄達にニコッと笑顔を向ける。
陽炎「緊急出撃を含む12回の出撃と、な、7回の戦闘を経験しています!」
北上「こらこら、その7回のうち5回くらいは翔ぴーと私達で、敵を見る前に〆たじゃんかぁ」
陽炎「……う……!」
陽炎が言葉に詰まる。
その時、応接間の扉が開き、新たな艦娘が部屋に入ってきた。
翔鶴「でも、2回の戦闘では、きちんと戦果を上げているんですよ?
ねえ、陽炎」
北上「……」
陽炎「そ、そうよ!」
提督「ほう。素晴らしい」
翔鶴「陽炎も、麻耶もとても優秀なんですよ。うふふ」
提督「流石、18戦隊に配属されるだけはあるな」
翔鶴「はい……提督、ご無沙汰しております」
提督「ああ」
翔鶴「サセン隊の皆様も、こんにちは。18戦隊指揮・太郎の秘書艦を務めます翔鶴です。
改めまして、よろしくお願い致しますね」
足柄達にニコッと笑顔を向ける。
337: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/15(金) 23:47:12.71 ID:FkDt47yA0
北上「あーもー硬いよ翔ぴー!折角アタシ達が仲良くしてたのにぃ。ねぇ足柄さん」
北上がアヒル口をしながら言った。
足柄「まぁまぁ!艦娘たる者、剛柔併せ持つ事も大事よ!」
翔鶴「そうですよ、北上。全く、あなたはフニャフニャなんですから……」
北上「大井っち、アタシゃまーた誉められちまったぜ」
大井「流石よ北上さん……!」
翔鶴「全く誉めてませんよ?」
北上「うはは。……そー言えば、サセン隊ってアタシみたいなウハウハ系居ないよねぇ」
榛名「ウハウハ系……」チラ
提督「……」チラ
足柄「そうねぇ……」おすまし
提督「……だそうだが、足柄」
提督は足柄の肩にぽん、と手をおく。
それに対し、足柄は笑顔のまま提督の足を思い切り踏みつけた。
ミシッと嫌な音がする。
提督「……!……!」
北上がアヒル口をしながら言った。
足柄「まぁまぁ!艦娘たる者、剛柔併せ持つ事も大事よ!」
翔鶴「そうですよ、北上。全く、あなたはフニャフニャなんですから……」
北上「大井っち、アタシゃまーた誉められちまったぜ」
大井「流石よ北上さん……!」
翔鶴「全く誉めてませんよ?」
北上「うはは。……そー言えば、サセン隊ってアタシみたいなウハウハ系居ないよねぇ」
榛名「ウハウハ系……」チラ
提督「……」チラ
足柄「そうねぇ……」おすまし
提督「……だそうだが、足柄」
提督は足柄の肩にぽん、と手をおく。
それに対し、足柄は笑顔のまま提督の足を思い切り踏みつけた。
ミシッと嫌な音がする。
提督「……!……!」
338: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/15(金) 23:47:43.61 ID:FkDt47yA0
榛名「あわわわ……」
雷「うわぁ……」
鳳翔「だ、大丈夫ですか?」
北上「うはは。ファンキーだねぇ」
大井「ざまぁないわね」
翔鶴「ふふ。仲がよろしいのですね」
足柄「そうかしらー?」
翔鶴「はい、そう見えますよ。……皆さん全員と仲がよろしいように。うふふ」
翔鶴はサセン隊の面々と苦痛の表情を浮かべる提督を見比べて、ニコニコとしている。
雷「うわぁ……」
鳳翔「だ、大丈夫ですか?」
北上「うはは。ファンキーだねぇ」
大井「ざまぁないわね」
翔鶴「ふふ。仲がよろしいのですね」
足柄「そうかしらー?」
翔鶴「はい、そう見えますよ。……皆さん全員と仲がよろしいように。うふふ」
翔鶴はサセン隊の面々と苦痛の表情を浮かべる提督を見比べて、ニコニコとしている。
347: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 00:51:07.33 ID:/v3vGR1L0
翔鶴「……所で、軽空母の方がお二人いらっしゃる様ですね」
提督「ああ、隼鷹はペーペーなんだ。今回は観戦に連れてきた」
翔鶴「成る程……」
提督「少し翔鶴に話を聞いてみたらどうだ、隼鷹。為になることもあるかもしれん」
隼鷹「お、おう」
鳳翔「私も、よろしいですか?」
翔鶴「お二人とも、是非是非」
足柄「そういえば、北上さんと大井さんは演習には出ないの?
そちらのメンバーは摩耶さん、陽炎さん、翔鶴さん、金剛さんって聞いたけど」
北上「うん。太郎さんが艦種揃えるって聞かなくてねぇ」
足柄「へぇ……フェア?って言って良いのかしら?」
北上「いいと思うよぉ〜。演習だしね、誰も死なないしねぇ」
大井「そうね。実戦なら抗議するけど。演習なら文句は言えないわ。
それに……最も経験が必要なのは私達では無いから」
提督「ああ、隼鷹はペーペーなんだ。今回は観戦に連れてきた」
翔鶴「成る程……」
提督「少し翔鶴に話を聞いてみたらどうだ、隼鷹。為になることもあるかもしれん」
隼鷹「お、おう」
鳳翔「私も、よろしいですか?」
翔鶴「お二人とも、是非是非」
足柄「そういえば、北上さんと大井さんは演習には出ないの?
そちらのメンバーは摩耶さん、陽炎さん、翔鶴さん、金剛さんって聞いたけど」
北上「うん。太郎さんが艦種揃えるって聞かなくてねぇ」
足柄「へぇ……フェア?って言って良いのかしら?」
北上「いいと思うよぉ〜。演習だしね、誰も死なないしねぇ」
大井「そうね。実戦なら抗議するけど。演習なら文句は言えないわ。
それに……最も経験が必要なのは私達では無いから」
348: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 00:51:53.61 ID:/v3vGR1L0
隼鷹「翔鶴さんは、何系統くらい同時に動かせるんだ?」
翔鶴「そうねぇ……」
空母の能力。
それは単純に、同時に幾つの艦載機を操作できるか、という事に集約される。
それは単純に機数の問題ではなく、何種類の機動を同時に取れるかと言う事だ。
通常、空母たちは飛行機を編隊で移動させる。
このように編隊で移動させる事で操縦する意識を連結させる事が出来るのだ。
全く同じ動きを取るならば、一機分の脳内負荷で編隊全機を動かす事が出来る。
別々の機動を取る編隊、若しくは単機の艦載機。
それを、空母たちは『系統』と呼んだ。
翔鶴「私は……訓練では20系統くらいかしら。実戦では16系統以上は試した事が有りませんが……」
隼鷹「すげー。アタシはまだ3で一杯一杯だよー……」
翔鶴「ふふ。最初は誰だってそうですよ」
隼鷹「むー」
翔鶴「そうねぇ……」
空母の能力。
それは単純に、同時に幾つの艦載機を操作できるか、という事に集約される。
それは単純に機数の問題ではなく、何種類の機動を同時に取れるかと言う事だ。
通常、空母たちは飛行機を編隊で移動させる。
このように編隊で移動させる事で操縦する意識を連結させる事が出来るのだ。
全く同じ動きを取るならば、一機分の脳内負荷で編隊全機を動かす事が出来る。
別々の機動を取る編隊、若しくは単機の艦載機。
それを、空母たちは『系統』と呼んだ。
翔鶴「私は……訓練では20系統くらいかしら。実戦では16系統以上は試した事が有りませんが……」
隼鷹「すげー。アタシはまだ3で一杯一杯だよー……」
翔鶴「ふふ。最初は誰だってそうですよ」
隼鷹「むー」
349: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 00:52:50.07 ID:/v3vGR1L0
翔鶴「それに、私はまだまだですから……第一機動部隊の飛龍さんは40、50系統の操作が出来るそうですよ」
隼鷹「ご、50?同時に50種類の操作をするって事?」
翔鶴「はい」
隼鷹「冗談だろ……」
鳳翔「……系統数が、全てではありませんよ、隼鷹。いつも言っているでしょう。
……全く、あなたはそればかりなんだから」
隼鷹「そうは言うけど、操作系統多い方が良いじゃん!」
翔鶴「多いに越した事は有りませんが……訓練と実戦は違いますからね。
操作系統を増やすと、それだけ意識が分割される訳ですから、やはり動きに精彩を欠くことになります」
鳳翔「そうですよ。だから、まずは10系統を目指しなさい。最終的に15、20まで、極めて綺麗に操作出来れば一人前です」
隼鷹「……むー」
隼鷹「ご、50?同時に50種類の操作をするって事?」
翔鶴「はい」
隼鷹「冗談だろ……」
鳳翔「……系統数が、全てではありませんよ、隼鷹。いつも言っているでしょう。
……全く、あなたはそればかりなんだから」
隼鷹「そうは言うけど、操作系統多い方が良いじゃん!」
翔鶴「多いに越した事は有りませんが……訓練と実戦は違いますからね。
操作系統を増やすと、それだけ意識が分割される訳ですから、やはり動きに精彩を欠くことになります」
鳳翔「そうですよ。だから、まずは10系統を目指しなさい。最終的に15、20まで、極めて綺麗に操作出来れば一人前です」
隼鷹「……むー」
350: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 00:53:38.08 ID:/v3vGR1L0
翔鶴「今の所、空母型の深海棲艦らは4、5系統が限界の様ですから。
単純計算なら、15系統有れば3体まで同時に相手取れます」
鳳翔「そもそも、最近は敵空母が密集している事は少ないですし」
隼鷹「……じゃあなんで飛龍さんなんかは50系統まで伸ばしたんだ?30とかで良かったんじゃないか?
決して楽じゃなかった筈だけど……他の訓練もできた筈だし……」
翔鶴「飛龍さんは……大反抗戦以前の艦娘ですから……」
隼鷹「……?」
翔鶴「……大反抗戦以前は領海の奪還がまだまだで、敵が密集する傾向にあったと聞きます。しかも、此方の空母は少なかった」
隼鷹「……つまり、空母一人でめちゃめちゃ多くの敵と渡り合う必要があったって事か……」
翔鶴「更に、常に偵察機で奇襲に警戒したり、味方に情報を伝えたり……
制空権が敵に有るのに、爆雷撃を仕掛けなければならなかったりと、色々有ったみたいです」
単純計算なら、15系統有れば3体まで同時に相手取れます」
鳳翔「そもそも、最近は敵空母が密集している事は少ないですし」
隼鷹「……じゃあなんで飛龍さんなんかは50系統まで伸ばしたんだ?30とかで良かったんじゃないか?
決して楽じゃなかった筈だけど……他の訓練もできた筈だし……」
翔鶴「飛龍さんは……大反抗戦以前の艦娘ですから……」
隼鷹「……?」
翔鶴「……大反抗戦以前は領海の奪還がまだまだで、敵が密集する傾向にあったと聞きます。しかも、此方の空母は少なかった」
隼鷹「……つまり、空母一人でめちゃめちゃ多くの敵と渡り合う必要があったって事か……」
翔鶴「更に、常に偵察機で奇襲に警戒したり、味方に情報を伝えたり……
制空権が敵に有るのに、爆雷撃を仕掛けなければならなかったりと、色々有ったみたいです」
351: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 00:54:19.63 ID:/v3vGR1L0
隼鷹「うへぇ……考えたくもないなぁ」
翔鶴「当時は大変だとか、そういう事を考える余裕は無かった、って笑いながら仰ってましたよ」
隼鷹「……でも、今でも維持してるんだよなぁ、50の操作系統。凄く大変そうだ」
翔鶴「……それは……」
翔鶴はチラリと提督を見る。
鳳翔「……?」
訝しむ鳳翔に気付かず、翔鶴は続けた。
翔鶴「これは、あくまで噂ですが……敵に、単艦で80系以上統操る空母が存在する、らしいです」
隼鷹「……ええ……」
翔鶴「それを圧倒する為に、第一機動部隊の飛龍さんと蒼龍さんで併せて90系統以上を確保しているのだとか」
隼鷹「マジ……か……」
鳳翔「……聞いたことがありませんね」
翔鶴「わ、私も最近本土で聞いたばかりですから!あくまで噂ですしね」
翔鶴「当時は大変だとか、そういう事を考える余裕は無かった、って笑いながら仰ってましたよ」
隼鷹「……でも、今でも維持してるんだよなぁ、50の操作系統。凄く大変そうだ」
翔鶴「……それは……」
翔鶴はチラリと提督を見る。
鳳翔「……?」
訝しむ鳳翔に気付かず、翔鶴は続けた。
翔鶴「これは、あくまで噂ですが……敵に、単艦で80系以上統操る空母が存在する、らしいです」
隼鷹「……ええ……」
翔鶴「それを圧倒する為に、第一機動部隊の飛龍さんと蒼龍さんで併せて90系統以上を確保しているのだとか」
隼鷹「マジ……か……」
鳳翔「……聞いたことがありませんね」
翔鶴「わ、私も最近本土で聞いたばかりですから!あくまで噂ですしね」
352: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 00:55:05.14 ID:/v3vGR1L0
首を傾げる鳳翔に、翔鶴が慌てて言う。
三者のその様子を、いつからか。
提督は静かに見つめていた。
金剛「テートク?どーしたの?」
提督「ん、ああ、すまん」
北上「提督?翔ぴーは止めといた方が良いぜ」
北上がニヤニヤしながら言う。
提督「……生憎だが、俺は余所の艦娘に手は出さん」
提督はため息。
北上「余所の?自分のトコのには手を出すんだ」
足柄「まぁね?」
提督「出さねぇよ……」
三者のその様子を、いつからか。
提督は静かに見つめていた。
金剛「テートク?どーしたの?」
提督「ん、ああ、すまん」
北上「提督?翔ぴーは止めといた方が良いぜ」
北上がニヤニヤしながら言う。
提督「……生憎だが、俺は余所の艦娘に手は出さん」
提督はため息。
北上「余所の?自分のトコのには手を出すんだ」
足柄「まぁね?」
提督「出さねぇよ……」
353: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 00:55:43.06 ID:/v3vGR1L0
榛名「は、榛名は大丈夫です!」
金剛「榛名?!セクハラされてるノー?!」
金剛が提督から榛名を背に隠す。
大井「……この変 、少しお手つきし過ぎじゃないかしら。バイ菌が移るから離れましょう北上さん……」
北上「うはは」
提督「待て!誤解だ!」
榛名「そ、そうです!提督は艦娘の嫌がる事をなさる方ではありません!」
大井「つまりセクハラされて嬉しかったと」
榛名「はい!……え?いや、違いますよ?!」
金剛「……榛名……」
提督「待て待て待て……なんだこの流れは……俺は一度としてセクハラした事は無いぞ……」
金剛「榛名?!セクハラされてるノー?!」
金剛が提督から榛名を背に隠す。
大井「……この変 、少しお手つきし過ぎじゃないかしら。バイ菌が移るから離れましょう北上さん……」
北上「うはは」
提督「待て!誤解だ!」
榛名「そ、そうです!提督は艦娘の嫌がる事をなさる方ではありません!」
大井「つまりセクハラされて嬉しかったと」
榛名「はい!……え?いや、違いますよ?!」
金剛「……榛名……」
提督「待て待て待て……なんだこの流れは……俺は一度としてセクハラした事は無いぞ……」
354: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 00:57:12.82 ID:/v3vGR1L0
北上「つまり榛名っちは提督にセクハラされたいと」
榛名「はい!……いやぁ!何言わせるんですかぁ!」
金剛「……榛名……」
雷「何言ってんのかしらこの子……」
北上「うはは。愛されてるなぁ提督」
提督「お前はこれを愛と呼ぶのか……」
金剛「……おや?もうそろそろイイ時間ですネ」
提督「時間?」
金剛「Yup!晩御飯……の前に、施設の案内を!艤装の確認とか、しときたいデショ?」
榛名「はい!……いやぁ!何言わせるんですかぁ!」
金剛「……榛名……」
雷「何言ってんのかしらこの子……」
北上「うはは。愛されてるなぁ提督」
提督「お前はこれを愛と呼ぶのか……」
金剛「……おや?もうそろそろイイ時間ですネ」
提督「時間?」
金剛「Yup!晩御飯……の前に、施設の案内を!艤装の確認とか、しときたいデショ?」
367: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 23:00:56.86 ID:/v3vGR1L0
北上「ふぁーあ。ゴッさんが全員連れてっちゃったね」
大井「しかし……濃いメンツだったわね……」
北上「アタシ、隼鷹ちゃんと、いかずっち以外全員知ってたぞ。うはは」
大井「北の狼に魚雷に鬼教師に……」
北上「スタンドプレーの目立ちそうなチームだよねぇ」
翔鶴「物知りね……」
大井「噂が自然と耳に入るのよ?」
北上「ゴシップガールと呼んでくれ!うはは」
陽炎「ところで皆、つ、強いの?」
北上「榛名っちと足柄さんは強いんじゃねー?いかずっちは未知数だけど、鳳翔さんはまぁ……」
翔鶴「戦闘が不得手なの?」
北上「んー?聞いたこと無い?
訓練所の鬼教師は口先だけって」
翔鶴「……?」
北上「んー……鳳翔さんを悪く言う訳じゃ無いけどさ……
強くないくせに言う事は厳しいって、教え子からの評価は散々だったみたいだね」
翔鶴「へぇ……」
北上「……ま、実際どうかなんてわかんないけどねぇ」
ヘラヘラと笑う北上。
北上「そんな事よりも!……まーやん、明日榛名っちに格闘戦挑むなよー?」
摩耶「……んでだよ」
不服そうな摩耶。
大井「しかし……濃いメンツだったわね……」
北上「アタシ、隼鷹ちゃんと、いかずっち以外全員知ってたぞ。うはは」
大井「北の狼に魚雷に鬼教師に……」
北上「スタンドプレーの目立ちそうなチームだよねぇ」
翔鶴「物知りね……」
大井「噂が自然と耳に入るのよ?」
北上「ゴシップガールと呼んでくれ!うはは」
陽炎「ところで皆、つ、強いの?」
北上「榛名っちと足柄さんは強いんじゃねー?いかずっちは未知数だけど、鳳翔さんはまぁ……」
翔鶴「戦闘が不得手なの?」
北上「んー?聞いたこと無い?
訓練所の鬼教師は口先だけって」
翔鶴「……?」
北上「んー……鳳翔さんを悪く言う訳じゃ無いけどさ……
強くないくせに言う事は厳しいって、教え子からの評価は散々だったみたいだね」
翔鶴「へぇ……」
北上「……ま、実際どうかなんてわかんないけどねぇ」
ヘラヘラと笑う北上。
北上「そんな事よりも!……まーやん、明日榛名っちに格闘戦挑むなよー?」
摩耶「……んでだよ」
不服そうな摩耶。
368: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 23:01:45.06 ID:/v3vGR1L0
北上「ね!ほら!こいつやっぱりやる気だったっしょ大井っち!うはは」
大井「……怖いもの知らずねぇ……」
摩耶「……やってみなきゃあ、わかんねぇからな」
北上「漢気溢れるねぃ!
いよっ!18戦隊の切り込み隊長!」
摩耶はフン、と鼻を鳴らす。
翔鶴「ちょっと北上!煽らないで!……摩耶?榛名さんは……かなり危険だから。本当に、格闘戦はダメよ?」
摩耶「……ハッ!あぶねー方が燃えるだろ!」
北上「うはは」
翔鶴「ちょっと……」
北上「ま、大丈夫なんじゃね?提督が連れて来てるんだし」
翔鶴「……」
大井「後は北の狼だけど」
北上「足柄さんは……まぁ……強そうって事しかわかんないよね……」
陽炎「何よそれ……」
北上「あの人、元々北方面軍らしいよ?んで、北と言えば保守派だけど……
保守派の人間と折り合いが悪かったとか」
陽炎「へぇ……保守派って、本土に居た厳しい人達よね」
北上「ま、その認識で良んじゃね」
陽炎「それで?」
北上「出撃任務の殆どが単艦だったらしくてさー。それでついたアダ名が『北の一匹狼』」
陽炎「……つまり、実力不明と」
北上「んまぁ、相当な手練れではあるんだろうけど。単艦で生き抜いてきた訳だし」
翔鶴「ふむ……」
大井「こちらの戦術としては、航空優勢を利用して敵を近づけさせないのが第一じゃない?
海域もわからない以上、今は何とも言えないわ」
大井「……怖いもの知らずねぇ……」
摩耶「……やってみなきゃあ、わかんねぇからな」
北上「漢気溢れるねぃ!
いよっ!18戦隊の切り込み隊長!」
摩耶はフン、と鼻を鳴らす。
翔鶴「ちょっと北上!煽らないで!……摩耶?榛名さんは……かなり危険だから。本当に、格闘戦はダメよ?」
摩耶「……ハッ!あぶねー方が燃えるだろ!」
北上「うはは」
翔鶴「ちょっと……」
北上「ま、大丈夫なんじゃね?提督が連れて来てるんだし」
翔鶴「……」
大井「後は北の狼だけど」
北上「足柄さんは……まぁ……強そうって事しかわかんないよね……」
陽炎「何よそれ……」
北上「あの人、元々北方面軍らしいよ?んで、北と言えば保守派だけど……
保守派の人間と折り合いが悪かったとか」
陽炎「へぇ……保守派って、本土に居た厳しい人達よね」
北上「ま、その認識で良んじゃね」
陽炎「それで?」
北上「出撃任務の殆どが単艦だったらしくてさー。それでついたアダ名が『北の一匹狼』」
陽炎「……つまり、実力不明と」
北上「んまぁ、相当な手練れではあるんだろうけど。単艦で生き抜いてきた訳だし」
翔鶴「ふむ……」
大井「こちらの戦術としては、航空優勢を利用して敵を近づけさせないのが第一じゃない?
海域もわからない以上、今は何とも言えないわ」
369: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 23:02:16.02 ID:/v3vGR1L0
北上「高価値目標は榛名っちで決まりだね!次いで足柄さんかな?いかずっちは何とも言えないけど……
ま、なんとかなるんじゃない?」
摩耶「へっ……やるからには、勝たねぇとな」
陽炎「榛名さんと足柄さん……そんなに強かったのね……うう、ドキドキしてきたわ……」
北上「榛名っちはダントツでヤバいよねぇ。
近寄らせたらダメよ〜ダメダメ〜」
翔鶴「一体いつのネタを……」
北上「うはは。……ま、頑張ってね。アタシと大井っちは出れないけど、影から応援してるしさ!」
大井「いつもの戦術が通用しないってことでもあるのよ、陽炎、摩耶。用心なさい」
陽炎「はいっ!」
摩耶「まぁ、任せとけよ」
北上「あとは太郎さん次第だね」
そんなこんなで時間が過ぎ、応接室のドアが開く。
金剛「ご飯の時間ネ。皆待ってるヨ!」
翔鶴「はぁい。皆さん、行きましょうか」
北上「うっひょう!腹ペコだぜ」
ま、なんとかなるんじゃない?」
摩耶「へっ……やるからには、勝たねぇとな」
陽炎「榛名さんと足柄さん……そんなに強かったのね……うう、ドキドキしてきたわ……」
北上「榛名っちはダントツでヤバいよねぇ。
近寄らせたらダメよ〜ダメダメ〜」
翔鶴「一体いつのネタを……」
北上「うはは。……ま、頑張ってね。アタシと大井っちは出れないけど、影から応援してるしさ!」
大井「いつもの戦術が通用しないってことでもあるのよ、陽炎、摩耶。用心なさい」
陽炎「はいっ!」
摩耶「まぁ、任せとけよ」
北上「あとは太郎さん次第だね」
そんなこんなで時間が過ぎ、応接室のドアが開く。
金剛「ご飯の時間ネ。皆待ってるヨ!」
翔鶴「はぁい。皆さん、行きましょうか」
北上「うっひょう!腹ペコだぜ」
370: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 23:03:01.17 ID:/v3vGR1L0
………
……
…
南方基地、執務室
提督「いやぁ、満腹満腹」
食事会は恙無く終わった。
今、艦娘達は食事を終え、軽い酒と共に談笑している筈だ。
提督と太郎はその様子を知る由も無い。
太郎「お口に合って何よりです」
と言うのも、二人は執務室に移動していたからだ。
太郎「提督さんも軽く一杯、如何ですか?」
提督「是非。いただこう」
太郎は立ち上がり、酒を探す。
提督「……君は、君の部隊に例の件を伝えたのか?」
太郎「……いえ。深海棲艦化する艦娘の話を知るのは翔鶴のみです。
方面軍として足並みを揃えるべきと判断しました」
提督「そうか」
……
…
南方基地、執務室
提督「いやぁ、満腹満腹」
食事会は恙無く終わった。
今、艦娘達は食事を終え、軽い酒と共に談笑している筈だ。
提督と太郎はその様子を知る由も無い。
太郎「お口に合って何よりです」
と言うのも、二人は執務室に移動していたからだ。
太郎「提督さんも軽く一杯、如何ですか?」
提督「是非。いただこう」
太郎は立ち上がり、酒を探す。
提督「……君は、君の部隊に例の件を伝えたのか?」
太郎「……いえ。深海棲艦化する艦娘の話を知るのは翔鶴のみです。
方面軍として足並みを揃えるべきと判断しました」
提督「そうか」
371: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 23:03:41.15 ID:/v3vGR1L0
太郎「……サセン隊の方は、もう……?」
提督「二ヶ月程前に。ウチの島は外との交流が無いから、な」
太郎「そうですか」
提督「……そういえば、防衛線構築計画書にはもう目を通したか」
太郎「一応、骨子は理解したつもりです」
提督「そうか。……君のことだから心配はしていないが」
太郎「ありがとうございます……どうぞ」
コト、と提督の目の前に琥珀色の液体。
提督「どうも」
太郎がスッと自分のグラスを持ち上げる。
提督もそれに倣った。
「「乾杯」」
チン、と軽快な音。
提督「二ヶ月程前に。ウチの島は外との交流が無いから、な」
太郎「そうですか」
提督「……そういえば、防衛線構築計画書にはもう目を通したか」
太郎「一応、骨子は理解したつもりです」
提督「そうか。……君のことだから心配はしていないが」
太郎「ありがとうございます……どうぞ」
コト、と提督の目の前に琥珀色の液体。
提督「どうも」
太郎がスッと自分のグラスを持ち上げる。
提督もそれに倣った。
「「乾杯」」
チン、と軽快な音。
372: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 23:04:37.77 ID:/v3vGR1L0
太郎「……思えば、こうして二人でお会いするのは初めての様な気がします」
提督「そうだったか?」
太郎「提督さんは当時、ご多忙でしたから……私も父の巾着袋の様な存在でしたし」
苦笑する。
提督「今では君が多忙だな。いや、素晴らしい事だが」
太郎「またまた。そんな事を仰っていられるのも今のうちですよ」
提督「どうだかな」
沈黙。
太郎「……これは……極秘情報なのですが……」
提督「なんだ?今度は翔鶴のスリーサイズか?」
太郎「ち、違いますよ!茶化さないで下さい」
提督「ははは。悪い悪い。貰ったアレ、中々良かった」
クックックと笑う提督に、太郎はコホン、と咳払いを一つ。
提督「そうだったか?」
太郎「提督さんは当時、ご多忙でしたから……私も父の巾着袋の様な存在でしたし」
苦笑する。
提督「今では君が多忙だな。いや、素晴らしい事だが」
太郎「またまた。そんな事を仰っていられるのも今のうちですよ」
提督「どうだかな」
沈黙。
太郎「……これは……極秘情報なのですが……」
提督「なんだ?今度は翔鶴のスリーサイズか?」
太郎「ち、違いますよ!茶化さないで下さい」
提督「ははは。悪い悪い。貰ったアレ、中々良かった」
クックックと笑う提督に、太郎はコホン、と咳払いを一つ。
373: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 23:09:53.11 ID:/v3vGR1L0
太郎「……特海が既に南方海域に展開していると聞きました」
提督「……特海が?」
太郎「ええ。……中央は相当に危機感を募らせているようですね」
提督「……」
特海。特殊海上技術開発局。
表向きは技術開発局となっているが、実際は艦娘による特殊部隊である。
しかしその任務の性格上、部隊の実像を知る者は極めて少ない。
太郎「……ただ、今、敵は北に集中しているようです。
北では毎日のようにドンパチやってますが、南で偵察を行っても何も引っかかりません。
居るとしてもかなり遠くという事になります」
提督「私が北に居ると勘違いでもしているのかね」
太郎「あながち間違いでもないかもしれません……提督さん。あなたが、キーパーソンなんですから」
提督「……特海が?」
太郎「ええ。……中央は相当に危機感を募らせているようですね」
提督「……」
特海。特殊海上技術開発局。
表向きは技術開発局となっているが、実際は艦娘による特殊部隊である。
しかしその任務の性格上、部隊の実像を知る者は極めて少ない。
太郎「……ただ、今、敵は北に集中しているようです。
北では毎日のようにドンパチやってますが、南で偵察を行っても何も引っかかりません。
居るとしてもかなり遠くという事になります」
提督「私が北に居ると勘違いでもしているのかね」
太郎「あながち間違いでもないかもしれません……提督さん。あなたが、キーパーソンなんですから」
374: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 23:10:54.66 ID:/v3vGR1L0
提督「……」
太郎「今は居なくとも、敵は……必ずあなたの元へ、南方へ来るでしょう。
サセン島は領海内にありますが……敵は構築されるであろう防衛線も、容易に越えてくるやも知れません」
提督「……そうだな。覚悟はしている」
太郎「……」
提督「安心しろ。もしそうなった時、奴らに引導を渡すのは……私だ」
太郎「……」
提督「まぁ、そうならないようしっかり頼むよ、太郎くん」
太郎「……はい」
提督「……ああ、そうだ。それに託けて一つ頼みがある」
太郎「私に出来る事でしたら、何なりと仰ってください」
提督「ああ、ーー」
太郎「今は居なくとも、敵は……必ずあなたの元へ、南方へ来るでしょう。
サセン島は領海内にありますが……敵は構築されるであろう防衛線も、容易に越えてくるやも知れません」
提督「……そうだな。覚悟はしている」
太郎「……」
提督「安心しろ。もしそうなった時、奴らに引導を渡すのは……私だ」
太郎「……」
提督「まぁ、そうならないようしっかり頼むよ、太郎くん」
太郎「……はい」
提督「……ああ、そうだ。それに託けて一つ頼みがある」
太郎「私に出来る事でしたら、何なりと仰ってください」
提督「ああ、ーー」
375: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 23:11:36.56 ID:/v3vGR1L0
………
……
…
食堂
軽く酒が入り、会話の弾む空間。
はじめは緊張もあり、少しぎこちなかった艦娘同士が打ち解けてきた頃。
ガチャ、とドアが開き、提督が入って来た。
提督「仲良くしている所すまないが、お前達、そろそろ宿舎に戻るぞ」
足柄「……あら、もうそんな時間?」
提督「明日は早いからな」
榛名「そうですね。名残惜しいですが……」
北上「ええー!もう行っちゃうのかい?」
提督「まぁな」
……
…
食堂
軽く酒が入り、会話の弾む空間。
はじめは緊張もあり、少しぎこちなかった艦娘同士が打ち解けてきた頃。
ガチャ、とドアが開き、提督が入って来た。
提督「仲良くしている所すまないが、お前達、そろそろ宿舎に戻るぞ」
足柄「……あら、もうそんな時間?」
提督「明日は早いからな」
榛名「そうですね。名残惜しいですが……」
北上「ええー!もう行っちゃうのかい?」
提督「まぁな」
376: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 23:12:10.63 ID:/v3vGR1L0
北上「もう泊まってきなよー!」
提督「馬鹿。演習に来たんだぞ、こっちは」
北上「えええー!」
大井「北上さん!ダメですよ!セクハラがうつります!」ガシッ
北上「うはは」
金剛「Eww……drunk……ゴメンネー提督。この人達、明日演習無いからって飲み過ぎネー」
提督「……しっかり寝かしつけてやってくれ」
金剛「ハイ!」
提督「では、失礼するよ。金剛、翔鶴、また明日。……陽炎と……摩耶も。よろしく頼む」
陽炎「はい!」
摩耶「……ん」
提督「馬鹿。演習に来たんだぞ、こっちは」
北上「えええー!」
大井「北上さん!ダメですよ!セクハラがうつります!」ガシッ
北上「うはは」
金剛「Eww……drunk……ゴメンネー提督。この人達、明日演習無いからって飲み過ぎネー」
提督「……しっかり寝かしつけてやってくれ」
金剛「ハイ!」
提督「では、失礼するよ。金剛、翔鶴、また明日。……陽炎と……摩耶も。よろしく頼む」
陽炎「はい!」
摩耶「……ん」
377: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/17(日) 23:12:52.18 ID:/v3vGR1L0
………
……
…
宿舎
提督「ほら、各々の部屋に入れ。0600に私の部屋に集合だ。良いな」
足柄「はーい」
榛名「はい!おやすみなさい」
隼鷹「うい」
鳳翔「はい。わかりました」
雷「任せて!」
提督「……あー、雷、少し良いか」
雷「?……良いわよ?」
そう言って、提督は雷だけを伴って部屋に向かう。
そうして雷を先に部屋に入れ、すべての艦娘が寝室のドアを閉めたのを確認してから、自室のドアを閉めた。
雷「……どしたの?」
怪訝な表情の雷。
提督「……少し、話がある。明日の事だ」
いつになく、神妙な面持ちの提督。
そして、何かを言った。
雷「……!」
提督「頼めるか?」
雷「……わかったわ」
提督「……すまんな」
その後、暫く二人で話し込む。
……
…
宿舎
提督「ほら、各々の部屋に入れ。0600に私の部屋に集合だ。良いな」
足柄「はーい」
榛名「はい!おやすみなさい」
隼鷹「うい」
鳳翔「はい。わかりました」
雷「任せて!」
提督「……あー、雷、少し良いか」
雷「?……良いわよ?」
そう言って、提督は雷だけを伴って部屋に向かう。
そうして雷を先に部屋に入れ、すべての艦娘が寝室のドアを閉めたのを確認してから、自室のドアを閉めた。
雷「……どしたの?」
怪訝な表情の雷。
提督「……少し、話がある。明日の事だ」
いつになく、神妙な面持ちの提督。
そして、何かを言った。
雷「……!」
提督「頼めるか?」
雷「……わかったわ」
提督「……すまんな」
その後、暫く二人で話し込む。
384: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/18(月) 21:00:10.19 ID:f3y0y+ex0
翌朝、提督の自室
提督「揃ったか」
一同「はい!」
提督「もうじき海域が公開される。
恐らく、諸君には海図を持ったら直ぐに出てもらわなくてはならん」
一同「はい」
提督「戦術は此方で検討する……が、あまりアテにするな。
訓練海域はかなり狭い。戦術よりも日々の訓練、経験がモノを言うだろう」
一同「……」
提督「編成は以前も伝えた通り、
旗艦足柄以下鳳翔、榛名、雷と続く」
一同「はっ」
提督「相手は最前線の部隊とは言え、勝てぬ相手ではない。……勝つぞ」
一同「はっ!」
提督「よし、では装備の確認急げーー」
提督「揃ったか」
一同「はい!」
提督「もうじき海域が公開される。
恐らく、諸君には海図を持ったら直ぐに出てもらわなくてはならん」
一同「はい」
提督「戦術は此方で検討する……が、あまりアテにするな。
訓練海域はかなり狭い。戦術よりも日々の訓練、経験がモノを言うだろう」
一同「……」
提督「編成は以前も伝えた通り、
旗艦足柄以下鳳翔、榛名、雷と続く」
一同「はっ」
提督「相手は最前線の部隊とは言え、勝てぬ相手ではない。……勝つぞ」
一同「はっ!」
提督「よし、では装備の確認急げーー」
385: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/18(月) 21:01:06.91 ID:f3y0y+ex0
………
……
…
南方基地、執務室
太郎「おはよう、諸君」
一同「おはようございます!」
太郎「えー……本日の編成は、旗艦金剛、翔鶴、陽炎、摩耶。
基本戦略はファーストルック・ファーストキル。いつも通りだ」
北上「今回はアタシ達がいないけどねぇ」
太郎「そうだな。だから今回翔鶴には艦攻48機で挑んで貰う事は伝えたな」
翔鶴「はい」
太郎「この航空機数での優勢を利用して一気に畳み掛ける。
理想的には、目視圏内に入る前になんとかカタをつけたい」
摩耶「アタシの出番はねーってか?」
太郎「それが理想だが……戦局がどう転ぶかはわからん。
……まだ実戦経験の少ないお前や陽炎にはいい経験になるとは思う」
摩耶「へっ」
陽炎「はい!」
太郎「よし、各員、装備の確認急げ」
一同「らじゃー!」
……
…
南方基地、執務室
太郎「おはよう、諸君」
一同「おはようございます!」
太郎「えー……本日の編成は、旗艦金剛、翔鶴、陽炎、摩耶。
基本戦略はファーストルック・ファーストキル。いつも通りだ」
北上「今回はアタシ達がいないけどねぇ」
太郎「そうだな。だから今回翔鶴には艦攻48機で挑んで貰う事は伝えたな」
翔鶴「はい」
太郎「この航空機数での優勢を利用して一気に畳み掛ける。
理想的には、目視圏内に入る前になんとかカタをつけたい」
摩耶「アタシの出番はねーってか?」
太郎「それが理想だが……戦局がどう転ぶかはわからん。
……まだ実戦経験の少ないお前や陽炎にはいい経験になるとは思う」
摩耶「へっ」
陽炎「はい!」
太郎「よし、各員、装備の確認急げ」
一同「らじゃー!」
386: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/18(月) 21:02:03.34 ID:f3y0y+ex0
………
……
…
0800、海域公開
提督「これは……また島の多い……」
海図を眺めて呟く。
だが、今はゆっくりそれを眺める時間は無い。
提督「総員、海図は行き渡ったか!」
一同「はっ!」
提督「よし、出撃だ。無線のバンドは指定されている。注意しろ」
一同「はっ!行って参ります!」
提督「隼鷹、お前は北上達と観戦だな。所定の部屋で、艤装付属のカメラから映像を見ることが出来る」
隼鷹「う、うん」
提督「翔鶴と鳳翔の様子をよく見ておけ」
……
…
0800、海域公開
提督「これは……また島の多い……」
海図を眺めて呟く。
だが、今はゆっくりそれを眺める時間は無い。
提督「総員、海図は行き渡ったか!」
一同「はっ!」
提督「よし、出撃だ。無線のバンドは指定されている。注意しろ」
一同「はっ!行って参ります!」
提督「隼鷹、お前は北上達と観戦だな。所定の部屋で、艤装付属のカメラから映像を見ることが出来る」
隼鷹「う、うん」
提督「翔鶴と鳳翔の様子をよく見ておけ」
387: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/18(月) 21:02:46.88 ID:f3y0y+ex0
隼鷹「おっけい……ちなみに、作戦はあんのー?」
提督「そうだな……翔鶴には悪癖があるからな。そこをなんとか……と言う感じか」
隼鷹「悪癖?」
提督「じきにわかる。……誰だって一度は通る道だ。ま、だからと言って勝てるとは限らんが」
隼鷹「へぇ……てか、海図見ると島?岩?が多いねぇ。
これ、待ち伏せ出来るアタシ達が有利なんじゃない?!」
提督「そうだな……一見、待ち伏せ出来る防御側が有利だが……」
隼鷹「うん?」
提督「……お前は艦載機でシースキミングが出来るか?」
隼鷹「うん?」
提督「海面に対する超低空飛行だ」
隼鷹「うん、無理」
提督「そうだな……翔鶴には悪癖があるからな。そこをなんとか……と言う感じか」
隼鷹「悪癖?」
提督「じきにわかる。……誰だって一度は通る道だ。ま、だからと言って勝てるとは限らんが」
隼鷹「へぇ……てか、海図見ると島?岩?が多いねぇ。
これ、待ち伏せ出来るアタシ達が有利なんじゃない?!」
提督「そうだな……一見、待ち伏せ出来る防御側が有利だが……」
隼鷹「うん?」
提督「……お前は艦載機でシースキミングが出来るか?」
隼鷹「うん?」
提督「海面に対する超低空飛行だ」
隼鷹「うん、無理」
388: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/18(月) 21:04:16.38 ID:f3y0y+ex0
提督「……まぁ、シースキミングで侵入した場合、目視なら4000メートルくらいで視界に入る」
隼鷹「うん?」
提督「地球は丸いだろ?お前たちの身長ならだいたい4000メートル以内の、海面スレスレのモノが見える。
艦娘は目が良いからな。本来なら10キロくらいなら見えるらしいが……」
隼鷹「ほーん」
提督「……で、だ。海面をだいたい300キロ毎時で飛ぶ艦攻なら、接近まで大体50秒くらいだな。
結構長いぞ、50秒。対空砲の餌食だ」
隼鷹「ウーム、確かに」
提督「まぁ、そこでだな。対空砲がもっとも苦手とするのは地形だろ」
隼鷹「あー。山とかの裏側は狙えないしねぇ」
提督「そう。山の斜面に沿って侵入するのが攻撃機の常だ。
そうなると、山のある島影で待ち伏せしてる艦娘がどうなるかはわかるな」
隼鷹「いきなり至近距離に敵機が出現するって事か」
提督「それが小高い丘程度でもな。彼我の距離1、2キロの至近距離に40、50機の敵編隊が出ると」
隼鷹「うへぇ」
提督「嫌だろ?」
隼鷹「うん?」
提督「地球は丸いだろ?お前たちの身長ならだいたい4000メートル以内の、海面スレスレのモノが見える。
艦娘は目が良いからな。本来なら10キロくらいなら見えるらしいが……」
隼鷹「ほーん」
提督「……で、だ。海面をだいたい300キロ毎時で飛ぶ艦攻なら、接近まで大体50秒くらいだな。
結構長いぞ、50秒。対空砲の餌食だ」
隼鷹「ウーム、確かに」
提督「まぁ、そこでだな。対空砲がもっとも苦手とするのは地形だろ」
隼鷹「あー。山とかの裏側は狙えないしねぇ」
提督「そう。山の斜面に沿って侵入するのが攻撃機の常だ。
そうなると、山のある島影で待ち伏せしてる艦娘がどうなるかはわかるな」
隼鷹「いきなり至近距離に敵機が出現するって事か」
提督「それが小高い丘程度でもな。彼我の距離1、2キロの至近距離に40、50機の敵編隊が出ると」
隼鷹「うへぇ」
提督「嫌だろ?」
389: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/18(月) 21:06:48.42 ID:f3y0y+ex0
隼鷹「まぁね。待ち伏せも楽じゃないなぁ」
提督「翔鶴の艦載は84。鳳翔の42の倍だ。腕も……翔鶴の方が上だろうな。空を獲るのは難しい」
隼鷹「……」
提督「そう膨れるな。鳳翔は経験とメンタルで勝っている。
必ずしも技術で勝っている方が勝つとは限らん」
隼鷹「……ったり前じゃん!鳳翔さんが負ける訳ないだろ!」
提督「……そうだな。……と言うか、こういった話は鳳翔から聞かないのか?」
隼鷹「んー……攻撃の事はあんまり。今は主に回避とかディフェンシブかなぁ」
提督「……成る程な。それで良い」
隼鷹「で?で?どう艦隊を動かすの?」
提督「ふむ。この海図を見ればわかるが……まず、西端に我々の陣地、東端に敵の陣地が有る。ここが開始地点だ。
敵の作戦目標は我々の殲滅或いは拠点の占拠。我々は時間一杯まで防衛、もしくは敵の殲滅」
隼鷹「うむ」
提督「翔鶴の艦載は84。鳳翔の42の倍だ。腕も……翔鶴の方が上だろうな。空を獲るのは難しい」
隼鷹「……」
提督「そう膨れるな。鳳翔は経験とメンタルで勝っている。
必ずしも技術で勝っている方が勝つとは限らん」
隼鷹「……ったり前じゃん!鳳翔さんが負ける訳ないだろ!」
提督「……そうだな。……と言うか、こういった話は鳳翔から聞かないのか?」
隼鷹「んー……攻撃の事はあんまり。今は主に回避とかディフェンシブかなぁ」
提督「……成る程な。それで良い」
隼鷹「で?で?どう艦隊を動かすの?」
提督「ふむ。この海図を見ればわかるが……まず、西端に我々の陣地、東端に敵の陣地が有る。ここが開始地点だ。
敵の作戦目標は我々の殲滅或いは拠点の占拠。我々は時間一杯まで防衛、もしくは敵の殲滅」
隼鷹「うむ」
390: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/18(月) 21:13:00.00 ID:f3y0y+ex0
提督「まぁ、拠点の占拠といっても、単純にこの陣地を防衛線と見なして、突破されたらダメって事だが」
隼鷹「わかるよー」
提督「さて、海域西部中央に平坦だが大きな陸地がある。
東から来る敵の進入経路はこの両サイド、北か南か」
隼鷹「んだね」
提督「そして、南の水道に小島が集中している。お互いに死角が多い。
ここは空からの目が有るかどうかで、大きく戦い方が変わる……
つまり空を取ってる方が有利だな」
隼鷹「ふむふむ」
提督「逆に、北は待ち伏せが居る事がわかっていても侵入は難しい地形だな……陰も多く、爆撃も難しい。
ただ、一度侵入されると……敵は地形を盾にしながら此方の拠点に到達出来る」
隼鷹「リスクとリターンがデカイ……北は敵からしたら博打、か」
提督「そうだな」
隼鷹「わかるよー」
提督「さて、海域西部中央に平坦だが大きな陸地がある。
東から来る敵の進入経路はこの両サイド、北か南か」
隼鷹「んだね」
提督「そして、南の水道に小島が集中している。お互いに死角が多い。
ここは空からの目が有るかどうかで、大きく戦い方が変わる……
つまり空を取ってる方が有利だな」
隼鷹「ふむふむ」
提督「逆に、北は待ち伏せが居る事がわかっていても侵入は難しい地形だな……陰も多く、爆撃も難しい。
ただ、一度侵入されると……敵は地形を盾にしながら此方の拠点に到達出来る」
隼鷹「リスクとリターンがデカイ……北は敵からしたら博打、か」
提督「そうだな」
391: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/18(月) 21:16:03.28 ID:f3y0y+ex0
提督「そうだな」
隼鷹「コッチはやっぱ南の待ち伏せ難しいかな?」
提督「航空優勢を取れれば、或いは。相手から見えている待ち伏せは待ち伏せにならん」
隼鷹「……敵からしたら南から入るのが安定だよね」
提督「そうなる。が、だからと言って南にかまけて北を開ける訳にはいかん。入られたら終わりだ」
隼鷹「航空優勢って大事だな……」
提督「当たり前だ」
隼鷹「てか、よく知ってるねぇ。地形」
提督「昔、ここらに居た事があってな……」
隼鷹「へぇ……んで、どーすんの?」
提督「始めは北に展開する。そして、それを敵に発見させ、それから南下だ」
隼鷹「うーん……?なんか二度手間?間に合うの?
てか、南に展開してから偵察機飛ばして、北にいない事を確かめたほうが……」
提督「物事には全て理由がある……まぁ、見てろ」
隼鷹「……ほほう。見せてもらおうか、貴様の力を……!」
提督「……」ぽこんっ
隼鷹「あいてっ!」
提督「さて、こっちも準備を始めないとな……無線で移動しながら会議だ……」
隼鷹「コッチはやっぱ南の待ち伏せ難しいかな?」
提督「航空優勢を取れれば、或いは。相手から見えている待ち伏せは待ち伏せにならん」
隼鷹「……敵からしたら南から入るのが安定だよね」
提督「そうなる。が、だからと言って南にかまけて北を開ける訳にはいかん。入られたら終わりだ」
隼鷹「航空優勢って大事だな……」
提督「当たり前だ」
隼鷹「てか、よく知ってるねぇ。地形」
提督「昔、ここらに居た事があってな……」
隼鷹「へぇ……んで、どーすんの?」
提督「始めは北に展開する。そして、それを敵に発見させ、それから南下だ」
隼鷹「うーん……?なんか二度手間?間に合うの?
てか、南に展開してから偵察機飛ばして、北にいない事を確かめたほうが……」
提督「物事には全て理由がある……まぁ、見てろ」
隼鷹「……ほほう。見せてもらおうか、貴様の力を……!」
提督「……」ぽこんっ
隼鷹「あいてっ!」
提督「さて、こっちも準備を始めないとな……無線で移動しながら会議だ……」
403: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/19(火) 23:02:38.22 ID:0ygxf3IM0
ハンガーにて
北上「もーすぐ出撃だよぉ。皆、どんな感じー?
サセンさん達も準備してたけどぉ」
北上と大井が、ハンガーに様子を見に来た。
摩耶「バッチリだぜ。もう出撃許可待ちだよ」
陽炎「今日はなんだか行けそうな感じね!」
北上「うはは。良いねぇ気合入ってるねぇ」
大井「……」チラ
陽気な二人とは対照的に。
翔鶴と金剛は集中力を高めている。
翔鶴「……」
金剛「……」
二人は目を伏せ、無言で瞑想していた。
北上「もーすぐ出撃だよぉ。皆、どんな感じー?
サセンさん達も準備してたけどぉ」
北上と大井が、ハンガーに様子を見に来た。
摩耶「バッチリだぜ。もう出撃許可待ちだよ」
陽炎「今日はなんだか行けそうな感じね!」
北上「うはは。良いねぇ気合入ってるねぇ」
大井「……」チラ
陽気な二人とは対照的に。
翔鶴と金剛は集中力を高めている。
翔鶴「……」
金剛「……」
二人は目を伏せ、無言で瞑想していた。
406: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/19(火) 23:07:51.43 ID:0ygxf3IM0
ふと、金剛が目を開け、閉じていた右手を開く。
そこには何かが握られていた。
それを見つめながら、呟く。
金剛「……Si vis Pacem, para bellum」
汝平和を欲さば、戦いに備えよ。
金剛「To East, to West. To North, to ……South.」
東へ西へ。北へ……南へ。
金剛「We, navy, guardian of the discipline.」
我ら海軍は、秩序を守る者。
金剛「By force, by wisdom.」
力で、知恵で。
金剛 「We fight to the last stand.」
最期の瞬間まで、闘う。
金剛「For the peace, through the strength.」
力による、平和の為に。
最後に拳をグッと閉じると、立ち上がった。
そこには何かが握られていた。
それを見つめながら、呟く。
金剛「……Si vis Pacem, para bellum」
汝平和を欲さば、戦いに備えよ。
金剛「To East, to West. To North, to ……South.」
東へ西へ。北へ……南へ。
金剛「We, navy, guardian of the discipline.」
我ら海軍は、秩序を守る者。
金剛「By force, by wisdom.」
力で、知恵で。
金剛 「We fight to the last stand.」
最期の瞬間まで、闘う。
金剛「For the peace, through the strength.」
力による、平和の為に。
最後に拳をグッと閉じると、立ち上がった。
407: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/19(火) 23:08:23.51 ID:0ygxf3IM0
北上「……アレ、いつも実戦前に言ってる奴だよね?」
大井「……そうね。訓練や演習であのジンクス?ルーチン?を実行してるのは見た事、無いけど」
北上「……うーん、仕上げてきたね、ゴッさん。第18戦隊の旗艦様が本気だぞぅ?
摩耶と陽炎は浮ついてるけど、大丈夫か?」
北上が真面目な顔をして言う。
大井「まぁ……あの人からしたら、醜態は晒せないわよね」
北上「……どーなるんだろね、この演習」
大井「……いくら私達が居ないとは言え……最前線の部隊が、僻地防衛隊に負けるのは……失態よ」
北上「……」
大井「ま、なるようになるんじゃないかしら?」
北上「……そだねー。アタシ達が心配してもしゃーないか」
ちょうど、通信が入る。
太郎『こちら司令室だ。艦隊、聞こえるか』
翔鶴「……はい。聞こえております」
太郎『よし。出撃の時間だ』
大井「……そうね。訓練や演習であのジンクス?ルーチン?を実行してるのは見た事、無いけど」
北上「……うーん、仕上げてきたね、ゴッさん。第18戦隊の旗艦様が本気だぞぅ?
摩耶と陽炎は浮ついてるけど、大丈夫か?」
北上が真面目な顔をして言う。
大井「まぁ……あの人からしたら、醜態は晒せないわよね」
北上「……どーなるんだろね、この演習」
大井「……いくら私達が居ないとは言え……最前線の部隊が、僻地防衛隊に負けるのは……失態よ」
北上「……」
大井「ま、なるようになるんじゃないかしら?」
北上「……そだねー。アタシ達が心配してもしゃーないか」
ちょうど、通信が入る。
太郎『こちら司令室だ。艦隊、聞こえるか』
翔鶴「……はい。聞こえております」
太郎『よし。出撃の時間だ』
408: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/19(火) 23:08:53.54 ID:0ygxf3IM0
金剛「……Aye.」
摩耶「っしゃ!」
陽炎「ふふん!」
太郎『こちらのコールサインは以下、コマンドとする。注意されたい。
これ以降、無線はこのバンドに固定、常にオープンにしておけ』
翔鶴「了解、コマンド」
太郎『では、出撃を許可する。第18戦隊、抜錨せよ』
金剛「Weigh anchor!」
摩耶「っしゃ!」
陽炎「ふふん!」
太郎『こちらのコールサインは以下、コマンドとする。注意されたい。
これ以降、無線はこのバンドに固定、常にオープンにしておけ』
翔鶴「了解、コマンド」
太郎『では、出撃を許可する。第18戦隊、抜錨せよ』
金剛「Weigh anchor!」
409: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/19(火) 23:10:15.91 ID:0ygxf3IM0
ハンガーにて、サセン隊側
艤装を装着する手が震える。
上手くハードポイントに接続出来ない。
苛立ち、無理にはめ込もうとして、でも失敗して。
ガチンガチンと音が鳴るだけ。
鳳翔「……」
足柄「……大丈夫?鳳翔さん」
そんな鳳翔を心配して、足柄が近寄ってきた。
鳳翔「……ごめんなさい。少し、昂ぶってしまって」
そう言って、力無く微笑む鳳翔はしかし、どう見ても昂ぶっているようには見えない。
足柄「……寝てないわね」
足柄がやれやれといった風に言う。
艤装を装着する手が震える。
上手くハードポイントに接続出来ない。
苛立ち、無理にはめ込もうとして、でも失敗して。
ガチンガチンと音が鳴るだけ。
鳳翔「……」
足柄「……大丈夫?鳳翔さん」
そんな鳳翔を心配して、足柄が近寄ってきた。
鳳翔「……ごめんなさい。少し、昂ぶってしまって」
そう言って、力無く微笑む鳳翔はしかし、どう見ても昂ぶっているようには見えない。
足柄「……寝てないわね」
足柄がやれやれといった風に言う。
410: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/19(火) 23:10:57.02 ID:0ygxf3IM0
鳳翔は何も言えずに目を伏せた。
敏い人です、と思う。
一瞬で見抜かれるのは、彼女がいつも周りを気にかけている証拠だ。
足柄「……」
しかし、気付いた所で今更どうしようもない。
足柄は、下手に言葉を掛けるよりはと、鳳翔の艤装装着を無言で助ける。
鳳翔「ありがとう、御座います」
足柄「ん」
足柄はそのまま何も言わずに去っていった。
いつもなら気の利いた一言でも出てくるのだろうが、今の足柄にその余裕はない。
鳳翔「……」
はぁ、と溜息。
不安がある。
否、不安しかない。
艤装と艦載機の最終確認を行いながら、思案する。
自分は戦場から離れて久しい。
相手は格上。
生徒が、隼鷹が見ている。
提督が……見ている。
敏い人です、と思う。
一瞬で見抜かれるのは、彼女がいつも周りを気にかけている証拠だ。
足柄「……」
しかし、気付いた所で今更どうしようもない。
足柄は、下手に言葉を掛けるよりはと、鳳翔の艤装装着を無言で助ける。
鳳翔「ありがとう、御座います」
足柄「ん」
足柄はそのまま何も言わずに去っていった。
いつもなら気の利いた一言でも出てくるのだろうが、今の足柄にその余裕はない。
鳳翔「……」
はぁ、と溜息。
不安がある。
否、不安しかない。
艤装と艦載機の最終確認を行いながら、思案する。
自分は戦場から離れて久しい。
相手は格上。
生徒が、隼鷹が見ている。
提督が……見ている。
411: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/19(火) 23:11:39.71 ID:0ygxf3IM0
鳳翔「……」
自分が訓練所でなんと呼ばれていたかくらい、知っている。
口先だけの鬼教師。
自分が大事にしているモノから、そう呼ばれる事は。
たとえわかっていても。
シンプルに、辛い。
まだあの頃はそれでも良かった。
教え子を失う事に比べれば、この程度の苦痛、甘んじて受け入れようと。
しかし、今は違う。
サセン島の7人は仲が良い。
これまで生きてきた中では考えられない程に。
隼鷹は大事な教え子であると同時に、対等な仲間であり。
笑顔の素敵な、快活な艦娘で。
今までの教師と生徒の関係とは、明らかに違う。
彼女は自分に、親愛の情を抱いてくれている。
こんなもの。
目の前で無様に失敗など、出来ない。
鳳翔「……はぁ」
溜息。
もう、こんなクヨクヨと考えるようになったのは貴方のせいですよ、提督、とここには居ない人を責めてみる。
自分が訓練所でなんと呼ばれていたかくらい、知っている。
口先だけの鬼教師。
自分が大事にしているモノから、そう呼ばれる事は。
たとえわかっていても。
シンプルに、辛い。
まだあの頃はそれでも良かった。
教え子を失う事に比べれば、この程度の苦痛、甘んじて受け入れようと。
しかし、今は違う。
サセン島の7人は仲が良い。
これまで生きてきた中では考えられない程に。
隼鷹は大事な教え子であると同時に、対等な仲間であり。
笑顔の素敵な、快活な艦娘で。
今までの教師と生徒の関係とは、明らかに違う。
彼女は自分に、親愛の情を抱いてくれている。
こんなもの。
目の前で無様に失敗など、出来ない。
鳳翔「……はぁ」
溜息。
もう、こんなクヨクヨと考えるようになったのは貴方のせいですよ、提督、とここには居ない人を責めてみる。
412: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/19(火) 23:13:09.84 ID:0ygxf3IM0
不思議な人だ。
あの人は敢えて、艦娘に時間を与えているらしい。
訓練や哨戒のスケジュールを練り、纏まった自由時間を作り出しているのだとか。
これまでは、自分はあまり悩む事が無かった。単に仕事に忙殺されていたからだが。
特に主計課に移ってからは忙しく、深く悩む時間は無かった。
しかし、ここに来て時間ができると。
自然と様々なことに思いを馳せてしまう。
悩んでしまう。
今も、苦しい。
艦娘にそんな事をさせて。
提督が、何を考えているかはわからない。
ただ、自分達が大切にされている事は感じる。
言葉の端から、行動の一端から。
だから、思う事がある。
鳳翔「……失望、されたくない……」
思わず本音の呟きが漏れた。
提督に失望されたくない。
嫌われたくない。
最近気がついた、この淡い気持ち。
……だって。
だって、私は提督にーー。
あの人は敢えて、艦娘に時間を与えているらしい。
訓練や哨戒のスケジュールを練り、纏まった自由時間を作り出しているのだとか。
これまでは、自分はあまり悩む事が無かった。単に仕事に忙殺されていたからだが。
特に主計課に移ってからは忙しく、深く悩む時間は無かった。
しかし、ここに来て時間ができると。
自然と様々なことに思いを馳せてしまう。
悩んでしまう。
今も、苦しい。
艦娘にそんな事をさせて。
提督が、何を考えているかはわからない。
ただ、自分達が大切にされている事は感じる。
言葉の端から、行動の一端から。
だから、思う事がある。
鳳翔「……失望、されたくない……」
思わず本音の呟きが漏れた。
提督に失望されたくない。
嫌われたくない。
最近気がついた、この淡い気持ち。
……だって。
だって、私は提督にーー。
413: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/19(火) 23:14:10.65 ID:0ygxf3IM0
提督「鳳翔。期待が重荷か?」
鳳翔「ひゃいっ?!」
想いを馳せていた相手にいきなり背後から声をかけられ、鳳翔は飛び上がった。
提督「すまんすまん、驚かせたな」
ははは、と笑う。
鳳翔「ど、どうしてここに……司令室にいらっしゃるのでは」
提督「まぁ、見送りさ」
よく観察すると、汗をかき、息が少し上がっている。
おそらく此処まで走ってきたのだろう。
足柄が呼んだのだろうか。
提督「……期待が重荷か」
鳳翔の混乱する思考を他所に、提督は再度問うた。
鳳翔「……それはーー」
ーーそう、いうことなんだろう。
でも、言えない。
期待が重荷です、なんて、言えない。
提督「ははは、まるで期待されるのは今回が初めてかのようだな」
提督は鳳翔の言葉の先を察して笑う。
鳳翔「……初めて、ですよ」
そう。
よく考えたら、自分が期待される事は初めてだ。
このプレッシャーを感じるのは、初めてだ。
だが、提督は。
提督「おいおい、そんな事は無いぞ」
鳳翔「ひゃいっ?!」
想いを馳せていた相手にいきなり背後から声をかけられ、鳳翔は飛び上がった。
提督「すまんすまん、驚かせたな」
ははは、と笑う。
鳳翔「ど、どうしてここに……司令室にいらっしゃるのでは」
提督「まぁ、見送りさ」
よく観察すると、汗をかき、息が少し上がっている。
おそらく此処まで走ってきたのだろう。
足柄が呼んだのだろうか。
提督「……期待が重荷か」
鳳翔の混乱する思考を他所に、提督は再度問うた。
鳳翔「……それはーー」
ーーそう、いうことなんだろう。
でも、言えない。
期待が重荷です、なんて、言えない。
提督「ははは、まるで期待されるのは今回が初めてかのようだな」
提督は鳳翔の言葉の先を察して笑う。
鳳翔「……初めて、ですよ」
そう。
よく考えたら、自分が期待される事は初めてだ。
このプレッシャーを感じるのは、初めてだ。
だが、提督は。
提督「おいおい、そんな事は無いぞ」
414: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/19(火) 23:14:55.93 ID:0ygxf3IM0
鳳翔「……?」
可愛らしく小首を傾げる鳳翔。
提督はその頭にぽんぽん、と手を置き。
提督「俺は会った時からずっとお前達に期待している。だからあんな小っ恥ずかしいスピーチをしたんだ」
鳳翔「……むぅ」
提督「たかが演習、されど演習。まずはやってみろ。もし失敗しても、そこから学べ」
鳳翔「……」
提督「自分は型落ちで前線を退いた身だから、教官だからと学ぶ事をやめるなよ。それは慢心だぞ。
お前にはまだ、伸び代がある筈だ」
鳳翔「……!」
提督「プレッシャーに慣れろ、鳳翔。
お前が死なない限り、俺はお前を見捨てない」
このプレッシャーはずっと付いて回るぞ。
提督は笑ってそう言う。
鳳翔「……はい」
見捨てないと。
そう言って貰えて。
少し、気が楽になって。
鳳翔も自然と、笑顔になっていた。
足柄「じーかーんー。金剛さん達はもう出たわよー」
そんな二人に、足柄がジト目で告げる。
その隣にはニコニコしている榛名と、どこか不満気な雷。
それぞれ艤装の最終確認を終え、出撃待機中だった。
鳳翔も、慌てて最終確認を済ませる。
提督「すまんすまん」
提督は謝るが、足柄はジト目のままだ。
足柄「折角見送りに来て頂いたし……なんか、締まる一言ちょーだい?」
提督「……弱ったな……」
足柄の言葉に、提督は苦笑しながら艦娘達を集めた。
が、直ぐに真顔になる。
可愛らしく小首を傾げる鳳翔。
提督はその頭にぽんぽん、と手を置き。
提督「俺は会った時からずっとお前達に期待している。だからあんな小っ恥ずかしいスピーチをしたんだ」
鳳翔「……むぅ」
提督「たかが演習、されど演習。まずはやってみろ。もし失敗しても、そこから学べ」
鳳翔「……」
提督「自分は型落ちで前線を退いた身だから、教官だからと学ぶ事をやめるなよ。それは慢心だぞ。
お前にはまだ、伸び代がある筈だ」
鳳翔「……!」
提督「プレッシャーに慣れろ、鳳翔。
お前が死なない限り、俺はお前を見捨てない」
このプレッシャーはずっと付いて回るぞ。
提督は笑ってそう言う。
鳳翔「……はい」
見捨てないと。
そう言って貰えて。
少し、気が楽になって。
鳳翔も自然と、笑顔になっていた。
足柄「じーかーんー。金剛さん達はもう出たわよー」
そんな二人に、足柄がジト目で告げる。
その隣にはニコニコしている榛名と、どこか不満気な雷。
それぞれ艤装の最終確認を終え、出撃待機中だった。
鳳翔も、慌てて最終確認を済ませる。
提督「すまんすまん」
提督は謝るが、足柄はジト目のままだ。
足柄「折角見送りに来て頂いたし……なんか、締まる一言ちょーだい?」
提督「……弱ったな……」
足柄の言葉に、提督は苦笑しながら艦娘達を集めた。
が、直ぐに真顔になる。
415: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/19(火) 23:16:40.40 ID:0ygxf3IM0
提督「……さて、と」
ふぅ、と深呼吸。
適当な言葉を探す。
提督「……約200時間」
皆の顔を見渡した。
提督「これは直近の二カ月、サセン島で行われた訓練の時間だ」
艦娘達の表情が少し険しくなる。
訓練時間の短さは、全員の懸念事項だったからだ。
提督「短い?……当然だな」
しかし、提督はそれを一笑に付した。
提督「アレはコレの準備運動だろ?」
勘を取り戻すための。
一同「……!」
一喝する。
提督「貴様ら!ウォーミングアップの時間は終わりだ!」
一同「「「……はい!」」」
提督「艤装のコンディションは最高か!」
一同「「「はい!」」」
提督「武装の確認は済ませたか!」
一同「「「はい!!」」」
提督「気合いは入っているか!」
一同「「「はいぃっ!!!」」」
提督「だったら……いつまでここに可愛らしく突っ立っている?!
とっとと行って、敵を叩き潰して来い……!」
一同「「「了解ぃ……!サセン島防衛隊、出撃致します……!!」」」
ふぅ、と深呼吸。
適当な言葉を探す。
提督「……約200時間」
皆の顔を見渡した。
提督「これは直近の二カ月、サセン島で行われた訓練の時間だ」
艦娘達の表情が少し険しくなる。
訓練時間の短さは、全員の懸念事項だったからだ。
提督「短い?……当然だな」
しかし、提督はそれを一笑に付した。
提督「アレはコレの準備運動だろ?」
勘を取り戻すための。
一同「……!」
一喝する。
提督「貴様ら!ウォーミングアップの時間は終わりだ!」
一同「「「……はい!」」」
提督「艤装のコンディションは最高か!」
一同「「「はい!」」」
提督「武装の確認は済ませたか!」
一同「「「はい!!」」」
提督「気合いは入っているか!」
一同「「「はいぃっ!!!」」」
提督「だったら……いつまでここに可愛らしく突っ立っている?!
とっとと行って、敵を叩き潰して来い……!」
一同「「「了解ぃ……!サセン島防衛隊、出撃致します……!!」」」
422: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/20(水) 16:21:32.29 ID:PNoNYX0GO
指定海域、開戦時刻ーー
金剛「We're on the clock. 時間ネ」
旗艦・金剛が静かに時間を告げる。
太郎『全ユニット、こちらコマンド。ラジオチェックワンツースリー、オーバー』
金剛「コマンド、金剛。I hear you loud and clear. How copy, over.」
太郎『金剛、コマンド。ラウド・アンド・クリア』
無線強度は正常だ。
そしてこの通信試験は、演習開始の合図でもある。
太郎『翔鶴、コマンド。偵察機を方位2-1-0から30°刻みで五機、15°ずらして30°刻みで五機、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。五機五機了解、アウト」
偵察命令を出してから、太郎は思案する。
太郎『(さて……海図を見る限り有効な侵入経路は二つ……。北か、南か。
北は地形的に侵入するのは極めて不利だ。
南からの方が、向こうからの死角も多いが、敵が待ち伏せしている可能性は高い……)』
金剛「We're on the clock. 時間ネ」
旗艦・金剛が静かに時間を告げる。
太郎『全ユニット、こちらコマンド。ラジオチェックワンツースリー、オーバー』
金剛「コマンド、金剛。I hear you loud and clear. How copy, over.」
太郎『金剛、コマンド。ラウド・アンド・クリア』
無線強度は正常だ。
そしてこの通信試験は、演習開始の合図でもある。
太郎『翔鶴、コマンド。偵察機を方位2-1-0から30°刻みで五機、15°ずらして30°刻みで五機、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。五機五機了解、アウト」
偵察命令を出してから、太郎は思案する。
太郎『(さて……海図を見る限り有効な侵入経路は二つ……。北か、南か。
北は地形的に侵入するのは極めて不利だ。
南からの方が、向こうからの死角も多いが、敵が待ち伏せしている可能性は高い……)』
423: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/20(水) 17:24:26.52 ID:PNoNYX0GO
太郎はまだ迷っていた。
太郎『(北から入る事が出来れば、敵陣地まで身を隠しながら進軍可能だ)』
目を瞑る。
太郎『(……今回の小戦力で艦隊を分割するのは避けたい……。
しかし、それは相手も同じ事……。
択だな)』
太郎『(……)』
太郎『(……南だ。
相手は北を警戒せざるを得ない。
初めから経路を南に絞り、高速で侵入。
航空機による戦力の漸減を経てから、正面からの殴り合いに持ち込む)』
ポテンシャルで勝っているならば。
正面戦闘でゴリ押せる。
そう決断を下し。
太郎は無線で喋る。
太郎『艦隊、我々は海域南部より敵陣に侵入する。
ブレイク、航空戦力比を利用して、南部島群での戦いを有利に運べ、ブレイク。
艦隊針路2-1-0、オーバー』
金剛「針路2-1-0!」
陽炎「針路2-1-0了解」
摩耶「針路2-1-0了解ぃ」
翔鶴「針路2-1-0了解です」
太郎『中途目標、距離3000の小島』
金剛「Aye.」
金剛ら四人は南西に舵をきる。
翔鶴「翔鶴より通達。
彩雲発艦完了。僚艦は頭上の友軍機に注意されたい。アウト」
太郎『彩雲発艦了解。敵の見落としのないように』
金剛「さーて……お手並み拝見ネー」
呟く金剛の口角が、獰猛に吊り上がった。
太郎『(北から入る事が出来れば、敵陣地まで身を隠しながら進軍可能だ)』
目を瞑る。
太郎『(……今回の小戦力で艦隊を分割するのは避けたい……。
しかし、それは相手も同じ事……。
択だな)』
太郎『(……)』
太郎『(……南だ。
相手は北を警戒せざるを得ない。
初めから経路を南に絞り、高速で侵入。
航空機による戦力の漸減を経てから、正面からの殴り合いに持ち込む)』
ポテンシャルで勝っているならば。
正面戦闘でゴリ押せる。
そう決断を下し。
太郎は無線で喋る。
太郎『艦隊、我々は海域南部より敵陣に侵入する。
ブレイク、航空戦力比を利用して、南部島群での戦いを有利に運べ、ブレイク。
艦隊針路2-1-0、オーバー』
金剛「針路2-1-0!」
陽炎「針路2-1-0了解」
摩耶「針路2-1-0了解ぃ」
翔鶴「針路2-1-0了解です」
太郎『中途目標、距離3000の小島』
金剛「Aye.」
金剛ら四人は南西に舵をきる。
翔鶴「翔鶴より通達。
彩雲発艦完了。僚艦は頭上の友軍機に注意されたい。アウト」
太郎『彩雲発艦了解。敵の見落としのないように』
金剛「さーて……お手並み拝見ネー」
呟く金剛の口角が、獰猛に吊り上がった。
424: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/20(水) 17:30:49.51 ID:PNoNYX0GO
◇
提督『……そろそろだな』
足柄「……やるか」
先程まで黙って瞑想していた足柄が目を開く。
提督『あー、無線感度確認。本日は晴天なり』
足柄「本日は晴天なり。無線感度良好」
提督『了解。こちらも鮮明に聞こえる。
さて、作戦は移動中に伝えた通りだ。まずは北だ』
足柄「了解」
提督『……よし、時間だ。演習状況を開始する。艦隊針路0-4-5』
足柄「針路0-4-5、ヨーソロー」
榛名「針路0-4-5、ようそろ!」
雷「針路0-4-5、ヨーソロー!」
鳳翔「針路0-4-5、ヨーソロー」
足柄以下4名は勢い良く北東へと進みだした。
提督『肉を切らせて骨を断てよ、諸君』
「「「了解」」」
提督『……そろそろだな』
足柄「……やるか」
先程まで黙って瞑想していた足柄が目を開く。
提督『あー、無線感度確認。本日は晴天なり』
足柄「本日は晴天なり。無線感度良好」
提督『了解。こちらも鮮明に聞こえる。
さて、作戦は移動中に伝えた通りだ。まずは北だ』
足柄「了解」
提督『……よし、時間だ。演習状況を開始する。艦隊針路0-4-5』
足柄「針路0-4-5、ヨーソロー」
榛名「針路0-4-5、ようそろ!」
雷「針路0-4-5、ヨーソロー!」
鳳翔「針路0-4-5、ヨーソロー」
足柄以下4名は勢い良く北東へと進みだした。
提督『肉を切らせて骨を断てよ、諸君』
「「「了解」」」
425: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/20(水) 17:36:50.08 ID:PNoNYX0GO
………
……
…
観戦室
北上「さぁ始まって参りましたぁ第18戦隊vsサセン隊演習ぅ!
実況はこの北上、解説の大井さん、ゲストは隼鷹さんでお送りしておりますぅ。
以下敬称略!」
大井「よろしくお願いします」
隼鷹「(なんだこのノリ……)よろしくお願いします!」
北上「えー、現在提督は北東へ、太郎は南下してるねぇ。
太郎は艦載機を展開していて、提督は未だ無し……」
大井「艦載差が絶望的だから、鳳翔が偵察機を積んでいない可能性は大いにあるわ。
艦攻あたりで偵察を行うのかしら?」
北上「今のところ、太郎が位置的に一歩リードかな?」
大井「北からの侵入を読んでの事でしょうけれど……」
北上「……お、翔鶴の彩雲が提督の艦隊から見えたぞ」
…
……
………
……
…
観戦室
北上「さぁ始まって参りましたぁ第18戦隊vsサセン隊演習ぅ!
実況はこの北上、解説の大井さん、ゲストは隼鷹さんでお送りしておりますぅ。
以下敬称略!」
大井「よろしくお願いします」
隼鷹「(なんだこのノリ……)よろしくお願いします!」
北上「えー、現在提督は北東へ、太郎は南下してるねぇ。
太郎は艦載機を展開していて、提督は未だ無し……」
大井「艦載差が絶望的だから、鳳翔が偵察機を積んでいない可能性は大いにあるわ。
艦攻あたりで偵察を行うのかしら?」
北上「今のところ、太郎が位置的に一歩リードかな?」
大井「北からの侵入を読んでの事でしょうけれど……」
北上「……お、翔鶴の彩雲が提督の艦隊から見えたぞ」
…
……
………
426: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/20(水) 17:51:08.53 ID:PNoNYX0GO
◇
翔鶴「翔鶴より通達。
7番、8番、9番彩雲から敵艦隊を視認。敵針路0-4-5、距離60000、KST25」
太郎『(海域の北西域か……やはり北からの侵入を警戒されている)』
金剛「コマンド、金剛。中途目標到達、standing by, over.」
太郎『艦隊針路2-7-0、速度維持せよ』
金剛「針路2-7-0、copy.」
金剛らは、四角形の海域、その底辺と平行な進路を取る。
翔鶴もそれに追随して進路を変えるが、意識はまだ彩雲に乗っていた。
翔鶴「……敵艦載機の発艦を確認。彩雲、退避します」
敵の動きに呼応して、翔鶴が事務的に彩雲を撤退させる。
翔鶴「翔鶴より通達。
7番、8番、9番彩雲から敵艦隊を視認。敵針路0-4-5、距離60000、KST25」
太郎『(海域の北西域か……やはり北からの侵入を警戒されている)』
金剛「コマンド、金剛。中途目標到達、standing by, over.」
太郎『艦隊針路2-7-0、速度維持せよ』
金剛「針路2-7-0、copy.」
金剛らは、四角形の海域、その底辺と平行な進路を取る。
翔鶴もそれに追随して進路を変えるが、意識はまだ彩雲に乗っていた。
翔鶴「……敵艦載機の発艦を確認。彩雲、退避します」
敵の動きに呼応して、翔鶴が事務的に彩雲を撤退させる。
427: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/20(水) 18:33:37.11 ID:PNoNYX0GO
翔鶴「コマンド、翔鶴。標的周辺外の彩雲の帰投許可を、オーバー」
太郎『翔鶴、コマンド。帰投を許可する』
その言葉を言ってから、太郎はある事をふと疑問に思い、それを口にした。
太郎『翔鶴、コマンド。
現在地周辺及び全彩雲から敵の偵察機は見えるか、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。
未だ見えず、オーバー」
太郎『翔鶴、コマンド。了解、アウト』
太郎『(……まさか偵察機を積んでいない?……この狭い訓練海域ならあり得ぬ話ではないが。
艦攻で代用か……?
それか単純に会敵してない?この狭い海域で?……無いな)』
太郎『翔鶴、コマンド。
彩雲は迂回しながら撤退せよ。
我々の位置を気取らせるな、オーバー』
翔鶴「翔鶴、了解。アウト」
太郎『翔鶴、コマンド。帰投を許可する』
その言葉を言ってから、太郎はある事をふと疑問に思い、それを口にした。
太郎『翔鶴、コマンド。
現在地周辺及び全彩雲から敵の偵察機は見えるか、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。
未だ見えず、オーバー」
太郎『翔鶴、コマンド。了解、アウト』
太郎『(……まさか偵察機を積んでいない?……この狭い訓練海域ならあり得ぬ話ではないが。
艦攻で代用か……?
それか単純に会敵してない?この狭い海域で?……無いな)』
太郎『翔鶴、コマンド。
彩雲は迂回しながら撤退せよ。
我々の位置を気取らせるな、オーバー』
翔鶴「翔鶴、了解。アウト」
428: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/20(水) 18:39:30.19 ID:PNoNYX0GO
◇
鳳翔「本部、こちら鳳翔。不明機を3機確認。こちらも迎撃機、発艦しました」
提督は、到達が早いな、と驚く。
偵察機は初期位置から飛ばしている筈だ。
足の速い、かなり良い偵察機であると推測された。
鳳翔「全不明機、ブレイクして退避していきます。どうやら偵察機のようです」
提督『……本部了解。引き返していった方向から母艦の位置を推測出来るか』
鳳翔「現在は旋回するように逃げていますが……初動から南方の可能性があります」
空母の癖に、艦載機を退避させる時、反射的に自分の方に向けてしまう、と言う物がある。
それは深海棲艦、艦娘両方に共通する特性だ。
提督『……ふむ』
提督は海図に目を落とす。
侵入経路を南の一本に絞って来たなら……敵の現在地は……と、海図の南部分を指で押さえつつ思案した。
提督『(やはり南か……ダメ押しに北に足柄の水偵を飛ばして確認させよう。
……北からの侵入を断てば……あとは鳳翔と……雷次第だな……)』
足柄「こちら足柄。本部、指示を」
提督『艦隊、このまま北の島影に入れ。
艦戦も深追いするな。まだ偵察機がそこら辺に居てもおかしくない。それを追っ払わねばならん』
鳳翔「鳳翔了解」
提督『足柄、水偵あげろ。方位0-8-0から1-1-0まで15°刻みで3機。北方及び中央部を走査』
足柄「足柄了解」
足柄は艤装のカタパルトから水偵を3機、北西から西にかけて飛ばした。
提督『(敵の速度を考えて、万が一、北か……中央から北上して攻めてくるならば……この水偵から見える筈だ)』
鳳翔「本部、こちら鳳翔。不明機を3機確認。こちらも迎撃機、発艦しました」
提督は、到達が早いな、と驚く。
偵察機は初期位置から飛ばしている筈だ。
足の速い、かなり良い偵察機であると推測された。
鳳翔「全不明機、ブレイクして退避していきます。どうやら偵察機のようです」
提督『……本部了解。引き返していった方向から母艦の位置を推測出来るか』
鳳翔「現在は旋回するように逃げていますが……初動から南方の可能性があります」
空母の癖に、艦載機を退避させる時、反射的に自分の方に向けてしまう、と言う物がある。
それは深海棲艦、艦娘両方に共通する特性だ。
提督『……ふむ』
提督は海図に目を落とす。
侵入経路を南の一本に絞って来たなら……敵の現在地は……と、海図の南部分を指で押さえつつ思案した。
提督『(やはり南か……ダメ押しに北に足柄の水偵を飛ばして確認させよう。
……北からの侵入を断てば……あとは鳳翔と……雷次第だな……)』
足柄「こちら足柄。本部、指示を」
提督『艦隊、このまま北の島影に入れ。
艦戦も深追いするな。まだ偵察機がそこら辺に居てもおかしくない。それを追っ払わねばならん』
鳳翔「鳳翔了解」
提督『足柄、水偵あげろ。方位0-8-0から1-1-0まで15°刻みで3機。北方及び中央部を走査』
足柄「足柄了解」
足柄は艤装のカタパルトから水偵を3機、北西から西にかけて飛ばした。
提督『(敵の速度を考えて、万が一、北か……中央から北上して攻めてくるならば……この水偵から見える筈だ)』
429: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/20(水) 18:48:21.98 ID:PNoNYX0GO
………
……
…
隼鷹「うーん……?提督はなんで水偵を北に回したんだ……?南に送れば、太郎達が見えて良いんじゃ無いの?」
大井「恐らく水偵を大事に使っていきたいんでしょうね」
隼鷹「……?」
大井「水偵は足が遅いから。敵を発見してから逃げても、出てきた迎撃機に追いつかれるの」
隼鷹「んで、敵が居ないであろう場所に、って事かぁ」
大井「ま、北に誰も居ないから、逆説的に南に居るなんて判断、狭い演習海域以外では出来ないでしょうけど」
…
……
………
……
…
隼鷹「うーん……?提督はなんで水偵を北に回したんだ……?南に送れば、太郎達が見えて良いんじゃ無いの?」
大井「恐らく水偵を大事に使っていきたいんでしょうね」
隼鷹「……?」
大井「水偵は足が遅いから。敵を発見してから逃げても、出てきた迎撃機に追いつかれるの」
隼鷹「んで、敵が居ないであろう場所に、って事かぁ」
大井「ま、北に誰も居ないから、逆説的に南に居るなんて判断、狭い演習海域以外では出来ないでしょうけど」
…
……
………
430: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/20(水) 19:29:03.90 ID:PNoNYX0GO
◇
翔鶴「7番、8番、9番彩雲、敵の艦載機を振り切りました。帰投します」
翔鶴が少しホッとした声音で言う。
しかし、安心している暇はない。
太郎『翔鶴、コマンド。
敵艦隊付近に、依然偵察可能な彩雲はあるか、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。
10番と6番の彩雲が空域にて待機中、オーバー」
太郎『翔鶴、コマンド。
10番は偵察へ直行。6番は敵を迂回するように飛行。時間差で敵を後ろから観察せよ。オーバー』
翔鶴「翔鶴、了解」
太郎『(……針路は南で良かったな。これで相対位置的に有利が取れる可能性が……)』
手元の海図を元に、かかる時間や想定される敵の動きを計算していると、しばらくして再び翔鶴から無線が入る。
翔鶴「翔鶴より通達。
10番彩雲、島を視界に捉えました。敵影見えず、航跡無し」
太郎『……島影に隠れて居るようだな……完全に北からの侵入に掛けているのか?
……偵察も無しに……?』
呟きが漏れる。
太郎『……翔鶴、コマンド。10番彩雲は帰投させろ。敵が見えない以上、深追いは不要だ。オーバー』
翔鶴「翔鶴、了解。アウト」
金剛「……」
翔鶴「7番、8番、9番彩雲、敵の艦載機を振り切りました。帰投します」
翔鶴が少しホッとした声音で言う。
しかし、安心している暇はない。
太郎『翔鶴、コマンド。
敵艦隊付近に、依然偵察可能な彩雲はあるか、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。
10番と6番の彩雲が空域にて待機中、オーバー」
太郎『翔鶴、コマンド。
10番は偵察へ直行。6番は敵を迂回するように飛行。時間差で敵を後ろから観察せよ。オーバー』
翔鶴「翔鶴、了解」
太郎『(……針路は南で良かったな。これで相対位置的に有利が取れる可能性が……)』
手元の海図を元に、かかる時間や想定される敵の動きを計算していると、しばらくして再び翔鶴から無線が入る。
翔鶴「翔鶴より通達。
10番彩雲、島を視界に捉えました。敵影見えず、航跡無し」
太郎『……島影に隠れて居るようだな……完全に北からの侵入に掛けているのか?
……偵察も無しに……?』
呟きが漏れる。
太郎『……翔鶴、コマンド。10番彩雲は帰投させろ。敵が見えない以上、深追いは不要だ。オーバー』
翔鶴「翔鶴、了解。アウト」
金剛「……」
431: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/20(水) 20:15:02.14 ID:PNoNYX0GO
太郎『艦隊、針路そのまま、速度を維持せよ』
金剛「Steady roger.」
翔鶴「コマンド、翔鶴。
島を利用した航空攻撃を提案します、オーバー」
翔鶴の進言に対し、しばし思案し、もう一度確認する。
太郎『翔鶴、コマンド。敵航空機の影はあるか、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。依然として敵機の影無し。低速帰投中の彩雲からも確認出来ず、オーバー」
太郎『(なんだ……相手は一体何を考えている……?どんな作戦だ……?)』
もう一度海図を見る。
太郎『(意図がわからない……が、だからこそ早急に叩くべきだ。兵は拙速を尊ぶ……何かを為される前に、決着を付けたい)』
決断。
太郎『……翔鶴、コマンド。
攻撃を許可する。
艦戦12機及び艦攻48機の発艦用意、オーバー』
金剛「Steady roger.」
翔鶴「コマンド、翔鶴。
島を利用した航空攻撃を提案します、オーバー」
翔鶴の進言に対し、しばし思案し、もう一度確認する。
太郎『翔鶴、コマンド。敵航空機の影はあるか、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。依然として敵機の影無し。低速帰投中の彩雲からも確認出来ず、オーバー」
太郎『(なんだ……相手は一体何を考えている……?どんな作戦だ……?)』
もう一度海図を見る。
太郎『(意図がわからない……が、だからこそ早急に叩くべきだ。兵は拙速を尊ぶ……何かを為される前に、決着を付けたい)』
決断。
太郎『……翔鶴、コマンド。
攻撃を許可する。
艦戦12機及び艦攻48機の発艦用意、オーバー』
432: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/20(水) 20:16:31.06 ID:PNoNYX0GO
敵4艦に対し、48機。
これだけの密度で攻めると、こちらの被害も多いだろうが……やるからには、徹底的に。
飽和攻撃だ。
翔鶴「コマンド、翔鶴。
了解。機銃の確認及び航空魚雷のマウントを開始」
太郎『ブレイク。
飛行編隊は海域中心を大きく迂回するようにして北上後、敵艦隊の真東、島の裏側から侵入する経路を取れ。
ブレイク、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。了解。
機銃、航空魚雷ロード完了。いつでもいけます、オーバー」
魚雷のマウントは一瞬で終わっていた。
流石手慣れている。
太郎『翔鶴、コマンド。全攻撃隊の発艦を許可する、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。攻撃隊発艦許可了解」
翔鶴は右腕の甲板を掲げ、目を瞑る。
魔法のように現れた艦戦12機を北西へ放って数刻後、同様に艦攻48機を北へ放出した。
太郎『翔鶴、コマンド。艦隊周辺にも6機の直掩を出せ。カウンターに警戒せよ、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。了解。直掩機6機、出ます」
翔鶴は更に追加で6機を飛ばし、艦隊の頭上で旋回させ始めた。
これだけの密度で攻めると、こちらの被害も多いだろうが……やるからには、徹底的に。
飽和攻撃だ。
翔鶴「コマンド、翔鶴。
了解。機銃の確認及び航空魚雷のマウントを開始」
太郎『ブレイク。
飛行編隊は海域中心を大きく迂回するようにして北上後、敵艦隊の真東、島の裏側から侵入する経路を取れ。
ブレイク、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。了解。
機銃、航空魚雷ロード完了。いつでもいけます、オーバー」
魚雷のマウントは一瞬で終わっていた。
流石手慣れている。
太郎『翔鶴、コマンド。全攻撃隊の発艦を許可する、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。攻撃隊発艦許可了解」
翔鶴は右腕の甲板を掲げ、目を瞑る。
魔法のように現れた艦戦12機を北西へ放って数刻後、同様に艦攻48機を北へ放出した。
太郎『翔鶴、コマンド。艦隊周辺にも6機の直掩を出せ。カウンターに警戒せよ、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。了解。直掩機6機、出ます」
翔鶴は更に追加で6機を飛ばし、艦隊の頭上で旋回させ始めた。
433: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/20(水) 20:27:24.79 ID:PNoNYX0GO
◇
足柄「本部、こちら足柄。水偵からは敵影見えず」
提督『本部了解』
……あの水偵に映らないと言う事は、移動距離を考慮すると、かなり遠くか南に居ると言う事だ。
提督『……そろそろ潮時だな』
呟く。
提督『各艦、針路1-9-0ヨーソロー。速度上げていけ』
足柄「1-9-0ヨーソロー」
提督の艦隊は隠れていた北の島影から出て、南下を始めた。
途中、提督が艦隊に問う。
提督『南東にまだ雲は見えるか』
鳳翔「方位1-7-0に雲あり」
提督『素晴らしい……鳳翔、今のうちに撒け。……作戦、始動だ』
鳳翔「鳳翔了解。第二航空隊、発艦します」
鳳翔の甲板から第二艦戦隊16機が飛び立つ。
提督『艦隊直上にも直掩機を飛ばしておけ。偵察の頻度が高い。……そろそろ敵の本命が飛んで来ても、おかしくない』
鳳翔「鳳翔了解。第三航空隊、艦戦8機発艦します。直上にて旋回」
足柄「本部、こちら足柄。水偵からは敵影見えず」
提督『本部了解』
……あの水偵に映らないと言う事は、移動距離を考慮すると、かなり遠くか南に居ると言う事だ。
提督『……そろそろ潮時だな』
呟く。
提督『各艦、針路1-9-0ヨーソロー。速度上げていけ』
足柄「1-9-0ヨーソロー」
提督の艦隊は隠れていた北の島影から出て、南下を始めた。
途中、提督が艦隊に問う。
提督『南東にまだ雲は見えるか』
鳳翔「方位1-7-0に雲あり」
提督『素晴らしい……鳳翔、今のうちに撒け。……作戦、始動だ』
鳳翔「鳳翔了解。第二航空隊、発艦します」
鳳翔の甲板から第二艦戦隊16機が飛び立つ。
提督『艦隊直上にも直掩機を飛ばしておけ。偵察の頻度が高い。……そろそろ敵の本命が飛んで来ても、おかしくない』
鳳翔「鳳翔了解。第三航空隊、艦戦8機発艦します。直上にて旋回」
434: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/20(水) 20:33:08.07 ID:O81TS0/c0
………
……
…
隼鷹「翔鶴さんの……ろ……60機編隊……」
北上「飛行編隊は回り込む形で、北の島の裏から侵入させようとしてるねぇ」
大井「完全な飽和攻撃ね。一撃で決めるつもりなのでしょう」
北上「でも、提督が南下を始めたから……超至近距離に出現、ってのはもう無理かな?」
大井「そうね……ただ、これだけの数が有れば……正面からでもかなりの損害を追うことになるでしょうけど」
北上「その間にも18戦隊は南の岩場にズンズン近づいてるぞぉ。
このまま何にも無ければ、30分後くらいに提督と太郎が岩場の中でランデブーだけど……」
大井「……それは難しいでしょうね。被雷したら速力が下がるし。
提督側は48機分の航空魚雷、全部なんて避けられないでしょうし」
北上「太郎有利だねぇ。攻撃側が南の島群に隠れられるような位置取りになっちゃったよ」
隼鷹「ああもう……だから最初から南に展開しておいたらって……」
…
……
………
……
…
隼鷹「翔鶴さんの……ろ……60機編隊……」
北上「飛行編隊は回り込む形で、北の島の裏から侵入させようとしてるねぇ」
大井「完全な飽和攻撃ね。一撃で決めるつもりなのでしょう」
北上「でも、提督が南下を始めたから……超至近距離に出現、ってのはもう無理かな?」
大井「そうね……ただ、これだけの数が有れば……正面からでもかなりの損害を追うことになるでしょうけど」
北上「その間にも18戦隊は南の岩場にズンズン近づいてるぞぉ。
このまま何にも無ければ、30分後くらいに提督と太郎が岩場の中でランデブーだけど……」
大井「……それは難しいでしょうね。被雷したら速力が下がるし。
提督側は48機分の航空魚雷、全部なんて避けられないでしょうし」
北上「太郎有利だねぇ。攻撃側が南の島群に隠れられるような位置取りになっちゃったよ」
隼鷹「ああもう……だから最初から南に展開しておいたらって……」
…
……
………
435: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/20(水) 20:35:29.52 ID:O81TS0/c0
◇
翔鶴「翔鶴より通達。
6番彩雲から敵艦隊確認。敵針路1-7-0。島の海岸から既に3000程離れています。
目標上空に直掩8」
太郎『(……このタイミングで南へ動いたか……行動が読めない……)
翔鶴、コマンド。攻撃隊到着までどの程度か、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。
艦攻、ETA600秒。
艦戦、既に目標近傍に到達済み。オーバー」
太郎『(……10分か……充分接近できるな。)
翔鶴、コマンド。
了解した。攻撃続行。空戦に備え、彩雲を有効に使え。オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。了解。彩雲、陽動します。アウト」
翔鶴「翔鶴より通達。
6番彩雲から敵艦隊確認。敵針路1-7-0。島の海岸から既に3000程離れています。
目標上空に直掩8」
太郎『(……このタイミングで南へ動いたか……行動が読めない……)
翔鶴、コマンド。攻撃隊到着までどの程度か、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。
艦攻、ETA600秒。
艦戦、既に目標近傍に到達済み。オーバー」
太郎『(……10分か……充分接近できるな。)
翔鶴、コマンド。
了解した。攻撃続行。空戦に備え、彩雲を有効に使え。オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。了解。彩雲、陽動します。アウト」
444: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 17:54:15.17 ID:kyTLZS3nO
◇
足柄「各艦に通報、方位3-0-0に不明航空機単機。背後から偵察に来た模様……艦隊上空付近を突っ切って南東に逃れると予想される」
提督『(南東……南東に逃れられると戦術的に不味いな……)』
鳳翔「本部、こちら鳳翔。指示を」
提督『何としても南東への逃亡を阻止せよ』
鳳翔「鳳翔了解」
足柄「本部、こちら足柄。対空砲の使用を要請」
提督『足柄、こちら本部。要請は却下された。引き続き敵航空攻撃隊を警戒せよ』
足柄「足柄了解」
対空砲は許可されず、ブーン、と4機の艦戦が彩雲に向かい、追い回す事数分。
軽やかな動きに翻弄されつつも、鳳翔はようやくすばしこい彩雲を落とす事が出来た。
鳳翔「敵性偵察機撃破」
提督『ご苦労。引き続き艦戦は戦闘空中哨戒』
足柄「各艦に通報、方位3-0-0に不明航空機単機。背後から偵察に来た模様……艦隊上空付近を突っ切って南東に逃れると予想される」
提督『(南東……南東に逃れられると戦術的に不味いな……)』
鳳翔「本部、こちら鳳翔。指示を」
提督『何としても南東への逃亡を阻止せよ』
鳳翔「鳳翔了解」
足柄「本部、こちら足柄。対空砲の使用を要請」
提督『足柄、こちら本部。要請は却下された。引き続き敵航空攻撃隊を警戒せよ』
足柄「足柄了解」
対空砲は許可されず、ブーン、と4機の艦戦が彩雲に向かい、追い回す事数分。
軽やかな動きに翻弄されつつも、鳳翔はようやくすばしこい彩雲を落とす事が出来た。
鳳翔「敵性偵察機撃破」
提督『ご苦労。引き続き艦戦は戦闘空中哨戒』
446: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 18:08:37.33 ID:9gXipQ/IO
だが。
この撃墜された、小さな彩雲がした仕事の意味は大きかった。
足柄「……鳳翔!方位0-7-0、距離2000!お客さんよ……!」
足柄が声をあげる。
全員がその方を見ると、高空で豆粒ほどの艦載機が編隊を組み、此方に接近していた。
彩雲に気を取られ、敵の発見が遅れたのだ。
鳳翔「(……間の悪い……いえ、彩雲は陽動でしたか……)
……不明航空機編隊視認、第三航空隊残機発艦、直掩8機と連結して艦戦12機で迎え撃ちます……!」
鳳翔は、もう少し早く発見出来ていれば……と歯噛みする。
翔鶴の彩雲が下へ下へと逃げた影響で、直掩機4機は低空にあり、更に速度も低下していた。
そして、新たに発艦する4機についても発艦直後であり、高度も速度も無い。
が、接敵した以上、低速低高度からなんとか迎撃する他無い。
バラバラの速度で編隊を組まずに迎撃するよりはと、低速での編隊連結が鳳翔の判断であった。
この撃墜された、小さな彩雲がした仕事の意味は大きかった。
足柄「……鳳翔!方位0-7-0、距離2000!お客さんよ……!」
足柄が声をあげる。
全員がその方を見ると、高空で豆粒ほどの艦載機が編隊を組み、此方に接近していた。
彩雲に気を取られ、敵の発見が遅れたのだ。
鳳翔「(……間の悪い……いえ、彩雲は陽動でしたか……)
……不明航空機編隊視認、第三航空隊残機発艦、直掩8機と連結して艦戦12機で迎え撃ちます……!」
鳳翔は、もう少し早く発見出来ていれば……と歯噛みする。
翔鶴の彩雲が下へ下へと逃げた影響で、直掩機4機は低空にあり、更に速度も低下していた。
そして、新たに発艦する4機についても発艦直後であり、高度も速度も無い。
が、接敵した以上、低速低高度からなんとか迎撃する他無い。
バラバラの速度で編隊を組まずに迎撃するよりはと、低速での編隊連結が鳳翔の判断であった。
447: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 18:19:22.60 ID:9gXipQ/IO
◇
翔鶴(流石に気付かれましたか。追加の艦載機も出てきましたね……)
敵の数を数える。
翔鶴「艦載機通報。
タリー12バンディッツ・ベアリング2-7-0フォー2000」
落ち着いて報告。
翔鶴(しかし12機……此方と同数。確か鳳翔さんの艤装性能は……
うん、あれが第三航空隊ならば、全機出てきている感じですね)
思案する。
翔鶴(出し惜しみは考えにくい……
最小ペイロードを艦戦に振り分けているという事なら……鳳翔さんの偵察機は無いと見て良さそうですが)
しかし、今それをゆっくりと考えている時間は無い。
鳳翔隊はこの間にもグングン高度を上げてきている。
翔鶴「コマンド、翔鶴。
交戦許可を、オーバー」
もうすぐ交戦距離に入ります。
そう判断し、翔鶴は静かに許可を仰いだ。
太郎『翔鶴、コマンド。交戦を許可する』
そして、許可が降りる。
翔鶴は意識を攻撃隊に集中させた。
翔鶴(流石に気付かれましたか。追加の艦載機も出てきましたね……)
敵の数を数える。
翔鶴「艦載機通報。
タリー12バンディッツ・ベアリング2-7-0フォー2000」
落ち着いて報告。
翔鶴(しかし12機……此方と同数。確か鳳翔さんの艤装性能は……
うん、あれが第三航空隊ならば、全機出てきている感じですね)
思案する。
翔鶴(出し惜しみは考えにくい……
最小ペイロードを艦戦に振り分けているという事なら……鳳翔さんの偵察機は無いと見て良さそうですが)
しかし、今それをゆっくりと考えている時間は無い。
鳳翔隊はこの間にもグングン高度を上げてきている。
翔鶴「コマンド、翔鶴。
交戦許可を、オーバー」
もうすぐ交戦距離に入ります。
そう判断し、翔鶴は静かに許可を仰いだ。
太郎『翔鶴、コマンド。交戦を許可する』
そして、許可が降りる。
翔鶴は意識を攻撃隊に集中させた。
448: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 18:28:24.48 ID:9gXipQ/IO
◇
鳳翔「……不明航空機編隊の詳細確認。敵艦戦12のみ、ファイタースウィープです!」
ファイタースウィープ。
戦闘機掃討。
一時的な航空優勢の獲得を目指して、戦闘空中哨戒を排除する為行われる空戦だ。
ファイタースウィープは、敵味方双方にかなりの被害が出る。
積極的に行いたい戦闘では無い。
つまり、これが行われる意味は。
提督『了解。足柄、榛名、雷、艦戦への対応は鳳翔に任せ、敵の別働隊発見に尽力せよ。
敵の攻撃隊本隊が近いぞ……!』
「「「了解」」」
鳳翔「……不明航空機編隊の詳細確認。敵艦戦12のみ、ファイタースウィープです!」
ファイタースウィープ。
戦闘機掃討。
一時的な航空優勢の獲得を目指して、戦闘空中哨戒を排除する為行われる空戦だ。
ファイタースウィープは、敵味方双方にかなりの被害が出る。
積極的に行いたい戦闘では無い。
つまり、これが行われる意味は。
提督『了解。足柄、榛名、雷、艦戦への対応は鳳翔に任せ、敵の別働隊発見に尽力せよ。
敵の攻撃隊本隊が近いぞ……!』
「「「了解」」」
449: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 18:29:24.27 ID:9gXipQ/IO
足柄「本部、こちら足柄。水偵の使用を進言します」
提督『こちら本部、要請は却下された』
足柄「……何故ですか!直掩は迎撃に回っています!空からの目が……」
提督『念の為だ』
足柄「な……了解」
何も語らない提督に、足柄はまだ何か言いたそうだったが、渋々了解した。
提督『空戦に気を取られるなよ。
観戦していて、気が付いたらオシャカになっていた、なんて笑えんからな……!』
提督『こちら本部、要請は却下された』
足柄「……何故ですか!直掩は迎撃に回っています!空からの目が……」
提督『念の為だ』
足柄「な……了解」
何も語らない提督に、足柄はまだ何か言いたそうだったが、渋々了解した。
提督『空戦に気を取られるなよ。
観戦していて、気が付いたらオシャカになっていた、なんて笑えんからな……!』
450: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 18:30:28.12 ID:9gXipQ/IO
◇
上空では、翔鶴がその意識を艦載機に集中させていた。
翔鶴(……ヘッドオンに、なりますか……)
鳳翔と翔鶴、二つの飛行隊は編隊を組み、正面から接近している。
翔鶴(しかし……高高度優速が取れている私の有利)
航空戦は何時だって攻める側が有利だ。
どこからでも、どのようにでも攻撃出来る。
それは、敵が攻める時も同じ。
翔鶴(だから……何かをされる前に、潰す!)
翔鶴は機首を微妙に下げ、更に速度を稼いだ。
増す、相対速度。
敵の影が段々と大きくなる。
上がる心拍数。
敵の姿が鮮明に浮かび上がる。
ファイタースウィープ等の正面戦闘は互いに損害が多い。
だからこそ、実力がそのまま出る。
だからこそ、刺激される闘争本能。
血圧が上昇し、ドックンドックンと音が聞こえる。
この、興奮。
上空では、翔鶴がその意識を艦載機に集中させていた。
翔鶴(……ヘッドオンに、なりますか……)
鳳翔と翔鶴、二つの飛行隊は編隊を組み、正面から接近している。
翔鶴(しかし……高高度優速が取れている私の有利)
航空戦は何時だって攻める側が有利だ。
どこからでも、どのようにでも攻撃出来る。
それは、敵が攻める時も同じ。
翔鶴(だから……何かをされる前に、潰す!)
翔鶴は機首を微妙に下げ、更に速度を稼いだ。
増す、相対速度。
敵の影が段々と大きくなる。
上がる心拍数。
敵の姿が鮮明に浮かび上がる。
ファイタースウィープ等の正面戦闘は互いに損害が多い。
だからこそ、実力がそのまま出る。
だからこそ、刺激される闘争本能。
血圧が上昇し、ドックンドックンと音が聞こえる。
この、興奮。
451: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 18:36:34.16 ID:9gXipQ/IO
それを抑える事なく。
ついに翔鶴隊と鳳翔隊が交戦距離に入った。
翔鶴はフッ、と軽く息を吐いて。
翔鶴(……仕掛けます!)
翔鶴は途端に己の艦載機の機首を上げる。
それは、相手にケツを見せて、
翔鶴(誘う……宙返り……!)
ここでもし鳳翔隊が翔鶴隊の尻を追いかけて来たら、縦旋回の下降に伴う加速を得て鳳翔隊の背後を取れたが……
翔鶴(乗ってくれたら楽でしたが……そう甘くありませんよね……!)
一瞬遅れて鳳翔隊もピッチアップ。
若干翔鶴隊を追う素振りを見せたものの、こちらのケツを追いかけること無く、同様に宙返りした。
現在、お互い旋回の頂点で逆方向を向いて、海に風防が向いている状態。
つまり背面飛行だ。
ついに翔鶴隊と鳳翔隊が交戦距離に入った。
翔鶴はフッ、と軽く息を吐いて。
翔鶴(……仕掛けます!)
翔鶴は途端に己の艦載機の機首を上げる。
それは、相手にケツを見せて、
翔鶴(誘う……宙返り……!)
ここでもし鳳翔隊が翔鶴隊の尻を追いかけて来たら、縦旋回の下降に伴う加速を得て鳳翔隊の背後を取れたが……
翔鶴(乗ってくれたら楽でしたが……そう甘くありませんよね……!)
一瞬遅れて鳳翔隊もピッチアップ。
若干翔鶴隊を追う素振りを見せたものの、こちらのケツを追いかけること無く、同様に宙返りした。
現在、お互い旋回の頂点で逆方向を向いて、海に風防が向いている状態。
つまり背面飛行だ。
452: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 18:42:40.09 ID:9gXipQ/IO
翔鶴(このままループを終えればまたヘッドオン……しかし。
こちらには速度がある……ここは高度を取ります……!)
翔鶴隊はそこで強引に機体をロールさせ、操縦席を太陽に向ける。
軋むエルロン。
更に翔鶴はエレベーターを上げてピッチアップ、追加の宙返りを行う。
つまり、最初の宙返りの頂点で更に宙返りをしたのだ。
強めのラダーを掛けて方向を補正。
二連続のインメルマン旋回である。
その間、鳳翔隊は宙返りを終え、元の地点に戻っていた。
翔鶴(テッペン獲りました……!)
二度のハーフループを経て、再び翔鶴隊のキャノピーは下、海側を向いている。
そこから、斜め前方に鳳翔隊が見えた。
翔鶴(艦攻隊の到着迄、削れるだけ削ります……!)
機首を上げて下降、加速。
翔鶴の操る機体が、高空から鳳翔隊に猛然と襲いかかろうとしていた。
こちらには速度がある……ここは高度を取ります……!)
翔鶴隊はそこで強引に機体をロールさせ、操縦席を太陽に向ける。
軋むエルロン。
更に翔鶴はエレベーターを上げてピッチアップ、追加の宙返りを行う。
つまり、最初の宙返りの頂点で更に宙返りをしたのだ。
強めのラダーを掛けて方向を補正。
二連続のインメルマン旋回である。
その間、鳳翔隊は宙返りを終え、元の地点に戻っていた。
翔鶴(テッペン獲りました……!)
二度のハーフループを経て、再び翔鶴隊のキャノピーは下、海側を向いている。
そこから、斜め前方に鳳翔隊が見えた。
翔鶴(艦攻隊の到着迄、削れるだけ削ります……!)
機首を上げて下降、加速。
翔鶴の操る機体が、高空から鳳翔隊に猛然と襲いかかろうとしていた。
453: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 18:47:00.08 ID:9gXipQ/IO
◇
上を取られた鳳翔は、眉を潜める。
鳳翔(……不利ですね……ループして再びヘッドオンに持ち込みたかったのですが……)
ループの頂点で背後を確認して、敵機がターンに入っているのは確認出来た。
だが鳳翔には、敵に追随して高度を上げる為の速度が足りなかったのだ。
無理に上昇すれば、待っているのは失速だ。
仕方無しに速度を取る為、鳳翔は下降を続ける。
鳳翔(こちらの速度が足りていなかった……
彩雲の処理がもう少し早く出来ていれば……いえ、編隊を連結したのが良くなかった……?)
しかし、それらを今悔やんでも仕方がない。
鳳翔は狙いを分散させ、翔鶴に負担をかける為に編隊を4-4-4機に分ける。
鳳翔(相手は上から突っ込んでくる……もう、うだうだ考えている余裕はありません!)
左の4機は左に、右の4機は右にそれぞれブレイク。
真ん中の4機は若干機首を下げて直進。
パッと見は敵の良いカモだが……
鳳翔(突き上げます……!)
上を取られた鳳翔は、眉を潜める。
鳳翔(……不利ですね……ループして再びヘッドオンに持ち込みたかったのですが……)
ループの頂点で背後を確認して、敵機がターンに入っているのは確認出来た。
だが鳳翔には、敵に追随して高度を上げる為の速度が足りなかったのだ。
無理に上昇すれば、待っているのは失速だ。
仕方無しに速度を取る為、鳳翔は下降を続ける。
鳳翔(こちらの速度が足りていなかった……
彩雲の処理がもう少し早く出来ていれば……いえ、編隊を連結したのが良くなかった……?)
しかし、それらを今悔やんでも仕方がない。
鳳翔は狙いを分散させ、翔鶴に負担をかける為に編隊を4-4-4機に分ける。
鳳翔(相手は上から突っ込んでくる……もう、うだうだ考えている余裕はありません!)
左の4機は左に、右の4機は右にそれぞれブレイク。
真ん中の4機は若干機首を下げて直進。
パッと見は敵の良いカモだが……
鳳翔(突き上げます……!)
454: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 19:08:58.91 ID:9gXipQ/IO
◇
翔鶴は相手が隊を3つに分割したのを確認、己の隊も4-4-4機に分けた。
右は右を、左は左を、それぞれの獲物を追う。
しかし。
翔鶴(……?真ん中の4機に違和感……?)
上空から高速で接近し、更に左右にも気を割いていた為、翔鶴は気付けていなかった。
その4機の機首下げに。
翔鶴(おかしい……!予想より速い!速度を稼いでいる?!)
翔鶴は攻撃のタイミングを迷った。その一瞬が、鳳翔隊の4機を生かす。
翔鶴は慌てて機銃を撃つが、弾は何もない空間をすり抜けた。
敵の射線を通り過ぎた鳳翔隊はエレベーターが悲鳴をあげるようなピッチアップ。
すれ違いざまに翔鶴機へと銃撃を行う。
翔鶴(上手い!ニアミス……!)
自機の直近を通り過ぎた銃撃に、冷や汗が流れる。
縦旋回して高度を回復しようとする翔鶴隊に、速度を得た鳳翔隊が追随した。
鳳翔隊がその軸線に再び翔鶴隊を捉えようとした瞬間、翔鶴は4機を更に1機ずつの4系統に分け、ランダムなブレイク。
ドッグファイトにおいて、お互いが急旋回を繰り返し、相手を自分の前に出そうとする泥沼のシザース戦の始まりだった。
翔鶴(……厄介な事になりました……!)
翔鶴は相手が隊を3つに分割したのを確認、己の隊も4-4-4機に分けた。
右は右を、左は左を、それぞれの獲物を追う。
しかし。
翔鶴(……?真ん中の4機に違和感……?)
上空から高速で接近し、更に左右にも気を割いていた為、翔鶴は気付けていなかった。
その4機の機首下げに。
翔鶴(おかしい……!予想より速い!速度を稼いでいる?!)
翔鶴は攻撃のタイミングを迷った。その一瞬が、鳳翔隊の4機を生かす。
翔鶴は慌てて機銃を撃つが、弾は何もない空間をすり抜けた。
敵の射線を通り過ぎた鳳翔隊はエレベーターが悲鳴をあげるようなピッチアップ。
すれ違いざまに翔鶴機へと銃撃を行う。
翔鶴(上手い!ニアミス……!)
自機の直近を通り過ぎた銃撃に、冷や汗が流れる。
縦旋回して高度を回復しようとする翔鶴隊に、速度を得た鳳翔隊が追随した。
鳳翔隊がその軸線に再び翔鶴隊を捉えようとした瞬間、翔鶴は4機を更に1機ずつの4系統に分け、ランダムなブレイク。
ドッグファイトにおいて、お互いが急旋回を繰り返し、相手を自分の前に出そうとする泥沼のシザース戦の始まりだった。
翔鶴(……厄介な事になりました……!)
455: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 19:15:14.26 ID:9gXipQ/IO
◇
次第に航空機を運用し続ける疲労が頭に蓄積してくる。
嫌な汗が鳳翔の頬を伝う。
鳳翔(……よし……真ん中はなんとか拮抗させる事が出来ました……)
しかし、左右はそうも言っていられなかった。
鳳翔隊を眼下に捉える左右の翔鶴機が、攻勢に転じたのを感じる。
鳳翔(……!来ましたね……!)
翔鶴機は高度差を利用して急接近してくる。
それに対し、鳳翔隊は期を見計らった急旋回で逃れようとした。
しかし、翔鶴はそのブレイクを読んでいたかのように途中で下降を中止、再上昇し再び有利位置を取る。
鳳翔(ハイヨーヨー……!)
急旋回によって速度の低下した鳳翔隊に、タイミングを合わせた翔鶴機が再び襲いかかった。
鳳翔(不味い……!)
次第に航空機を運用し続ける疲労が頭に蓄積してくる。
嫌な汗が鳳翔の頬を伝う。
鳳翔(……よし……真ん中はなんとか拮抗させる事が出来ました……)
しかし、左右はそうも言っていられなかった。
鳳翔隊を眼下に捉える左右の翔鶴機が、攻勢に転じたのを感じる。
鳳翔(……!来ましたね……!)
翔鶴機は高度差を利用して急接近してくる。
それに対し、鳳翔隊は期を見計らった急旋回で逃れようとした。
しかし、翔鶴はそのブレイクを読んでいたかのように途中で下降を中止、再上昇し再び有利位置を取る。
鳳翔(ハイヨーヨー……!)
急旋回によって速度の低下した鳳翔隊に、タイミングを合わせた翔鶴機が再び襲いかかった。
鳳翔(不味い……!)
456: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 19:18:39.79 ID:9gXipQ/IO
旋回を繰り返すには速度の足りていない鳳翔隊はダイブ。
追う翔鶴機。
放たれる機銃。
外れる。
鳳翔(スクリューで速度を落とす……?いや……
この位置取りで速度を落とすのは自殺行為……!
なんとか……なりませんかね……!)
鳳翔は斜め宙返りを目論んで機体を起こし、横滑りしながら45°バンクして旋回。
自機が一瞬敵の射線に出る。
すかさず放たれる機銃。
外れる。
鳳翔(くっ……左右とも完全に背後につかれている……!)
ループの頂点で逆方向へのターン、インメルマン旋回を試みる。
しかし振り切れない。
更に90°バンクしての急旋回。
追加のターン。
だが。
鳳翔(ぐうう……振り切れない……!)
鳳翔は旋回にバレルロールを組み込む。
機体をロールさせながら横にズレる機動。
軸線を避けながら減速する。
鳳翔はなんとかオーバーシュートを狙いたいが、翔鶴も同じくバレルロールで追従した。
距離は詰まらない。
鳳翔(……苦しい……)
繰り返す三次元的な回転に、目眩がする。
同時に真ん中の4機のシザースもこなさなければならないのだ。
多数対多数の空戦時特有の頭痛が激しくなる。
追う翔鶴機。
放たれる機銃。
外れる。
鳳翔(スクリューで速度を落とす……?いや……
この位置取りで速度を落とすのは自殺行為……!
なんとか……なりませんかね……!)
鳳翔は斜め宙返りを目論んで機体を起こし、横滑りしながら45°バンクして旋回。
自機が一瞬敵の射線に出る。
すかさず放たれる機銃。
外れる。
鳳翔(くっ……左右とも完全に背後につかれている……!)
ループの頂点で逆方向へのターン、インメルマン旋回を試みる。
しかし振り切れない。
更に90°バンクしての急旋回。
追加のターン。
だが。
鳳翔(ぐうう……振り切れない……!)
鳳翔は旋回にバレルロールを組み込む。
機体をロールさせながら横にズレる機動。
軸線を避けながら減速する。
鳳翔はなんとかオーバーシュートを狙いたいが、翔鶴も同じくバレルロールで追従した。
距離は詰まらない。
鳳翔(……苦しい……)
繰り返す三次元的な回転に、目眩がする。
同時に真ん中の4機のシザースもこなさなければならないのだ。
多数対多数の空戦時特有の頭痛が激しくなる。
457: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 19:30:01.34 ID:lGiG5nwK0
◇
翔鶴(ピッチアップ!ラダーもっと……!)
ふーっ、ふーっ、と息が荒くなる。
頭が痛い。辛い。
だが、それは相手も同じだ。
辛いからと投げ出した方が負けるのだ。
バレルロールをしながらループを続ける鳳翔隊に必死に食らいつく。
追い詰めてはいる……が。
翔鶴(なかなか当たらない……!)
要所要所で相手を射線に捉える事は出来るものの、中々有効弾は無い。
苛立ちが募り、集中力の減衰を自覚する。
翔鶴(そろそろ艦攻隊が到着する……時間がありませんね……かくなる上は……!)
覚悟を決め、翔鶴は真ん中でシザース戦を展開している4機を、敢えてその鳳翔隊の前に出した。
あくまで自然に。
まるで、操縦を間違えたかのように。
これは餌だ。
そして、賭けでもある。
翔鶴(乗ってこい……!)
翔鶴(ピッチアップ!ラダーもっと……!)
ふーっ、ふーっ、と息が荒くなる。
頭が痛い。辛い。
だが、それは相手も同じだ。
辛いからと投げ出した方が負けるのだ。
バレルロールをしながらループを続ける鳳翔隊に必死に食らいつく。
追い詰めてはいる……が。
翔鶴(なかなか当たらない……!)
要所要所で相手を射線に捉える事は出来るものの、中々有効弾は無い。
苛立ちが募り、集中力の減衰を自覚する。
翔鶴(そろそろ艦攻隊が到着する……時間がありませんね……かくなる上は……!)
覚悟を決め、翔鶴は真ん中でシザース戦を展開している4機を、敢えてその鳳翔隊の前に出した。
あくまで自然に。
まるで、操縦を間違えたかのように。
これは餌だ。
そして、賭けでもある。
翔鶴(乗ってこい……!)
458: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 19:50:06.23 ID:lGiG5nwK0
鳳翔は瞬時に判断を下す。
真ん中の鳳翔隊は一瞬で翔鶴隊の背後を取った。
そして、左右の鳳翔隊はループの頂点で機体性能ギリギリの急ロールから、水平方向へ強烈なブレイクを行う。
恐らく、翔鶴の集中力が切れたと判断し、それに乗じての離脱を計ったのだろう。
同時に、翔鶴は、真ん中の自分の機が被弾している感覚を味わう。
翔鶴(乗ってきた……!)
悪くない。
これは鳳翔が今、そちらに気を取られている証拠だ。
翔鶴(……ここが、正念場ぁ……!)
鳳翔のブレイクに対して、翔鶴は。
敵の旋回とは、逆側へと。
バレルロールを繰り出した。
翔鶴(……誘う、バレルロール……!)
真ん中の鳳翔隊は一瞬で翔鶴隊の背後を取った。
そして、左右の鳳翔隊はループの頂点で機体性能ギリギリの急ロールから、水平方向へ強烈なブレイクを行う。
恐らく、翔鶴の集中力が切れたと判断し、それに乗じての離脱を計ったのだろう。
同時に、翔鶴は、真ん中の自分の機が被弾している感覚を味わう。
翔鶴(乗ってきた……!)
悪くない。
これは鳳翔が今、そちらに気を取られている証拠だ。
翔鶴(……ここが、正念場ぁ……!)
鳳翔のブレイクに対して、翔鶴は。
敵の旋回とは、逆側へと。
バレルロールを繰り出した。
翔鶴(……誘う、バレルロール……!)
459: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 19:56:04.05 ID:lGiG5nwK0
◇
鳳翔(翔鶴が逆側にバレルロール……態勢を立て直すのでしょうか……ふぅ……)
鳳翔は、離れて行く翔鶴隊の機動を見て、気を緩めた。
気を緩めて、しまった。
その結果、鳳翔の意識は左右の飛行隊から一瞬離れる。
それが命取りとなる事も知らずに。
翔鶴の攻撃は、終わってなどいなかった。
鳳翔(翔鶴が逆側にバレルロール……態勢を立て直すのでしょうか……ふぅ……)
鳳翔は、離れて行く翔鶴隊の機動を見て、気を緩めた。
気を緩めて、しまった。
その結果、鳳翔の意識は左右の飛行隊から一瞬離れる。
それが命取りとなる事も知らずに。
翔鶴の攻撃は、終わってなどいなかった。
460: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 20:04:40.91 ID:lGiG5nwK0
◇
翔鶴機が。
バレルロールの途中、開始から270°バンクした瞬間。
キャノピーは鳳翔隊の方を向いている。
翔鶴(今です……!上がれぇぇぇ……!)
翔鶴は自機すべての機首を無理矢理起こす。
艦載機にかかる8機分のGが、操縦者である翔鶴の脳に直接負担を掛けた。
翔鶴(ぁぁぁぁぁっ……!)
歯を食いしばって堪える。
翔鶴(フラップぅぅぅ……!)
更に旋回半径を短縮させる為に、ガンガンと鳴る激しい頭痛の中、込み上げる嘔吐感を抑えつけて8機のフラップを微調整する。
その努力は身を結び。
翔鶴は鳳翔隊のブレイクより、更に小さい旋回半径を実現した。
この旋回により、翔鶴隊は鳳翔隊は無防備な上面を翔鶴機の射線に長時間晒すこととなり。
翔鶴(……よし、よし、よし、よし!
合いましたぁっ……!)
照準は数瞬後の未来の敵機、その位置をきっちり捉え。
後は、射撃するだけ。
翔鶴機が。
バレルロールの途中、開始から270°バンクした瞬間。
キャノピーは鳳翔隊の方を向いている。
翔鶴(今です……!上がれぇぇぇ……!)
翔鶴は自機すべての機首を無理矢理起こす。
艦載機にかかる8機分のGが、操縦者である翔鶴の脳に直接負担を掛けた。
翔鶴(ぁぁぁぁぁっ……!)
歯を食いしばって堪える。
翔鶴(フラップぅぅぅ……!)
更に旋回半径を短縮させる為に、ガンガンと鳴る激しい頭痛の中、込み上げる嘔吐感を抑えつけて8機のフラップを微調整する。
その努力は身を結び。
翔鶴は鳳翔隊のブレイクより、更に小さい旋回半径を実現した。
この旋回により、翔鶴隊は鳳翔隊は無防備な上面を翔鶴機の射線に長時間晒すこととなり。
翔鶴(……よし、よし、よし、よし!
合いましたぁっ……!)
照準は数瞬後の未来の敵機、その位置をきっちり捉え。
後は、射撃するだけ。
461: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 20:09:10.76 ID:lGiG5nwK0
◇
鳳翔は、己の艦載機が多数撃破されるのを感じた。
鳳翔(……やられた……!)
鳳翔は己の失策を痛感する。
鳳翔(逆側へのバレルロールで、減速しながらの強引な旋回……
あんな急に曲がれるんですね……)
自分は、真ん中における3機の敵撃墜に対して、左右で6機の被撃墜を食らった。
そして、更に2機が翼や発動機に被弾し、撃墜されつつある。
鳳翔(……真ん中に意識が行った、一瞬で……不覚……!)
そのうち被弾している2機も墜落するだろう。
鳳翔(ほぼ同数、ヘッドオンからのドッグファイトでキルレシオ0.5……これは……完敗です)
不利な状態だったとは言え、負けは負けだ。
悔しさにギリッ、と歯を噛みしめる。
鳳翔は、己の艦載機が多数撃破されるのを感じた。
鳳翔(……やられた……!)
鳳翔は己の失策を痛感する。
鳳翔(逆側へのバレルロールで、減速しながらの強引な旋回……
あんな急に曲がれるんですね……)
自分は、真ん中における3機の敵撃墜に対して、左右で6機の被撃墜を食らった。
そして、更に2機が翼や発動機に被弾し、撃墜されつつある。
鳳翔(……真ん中に意識が行った、一瞬で……不覚……!)
そのうち被弾している2機も墜落するだろう。
鳳翔(ほぼ同数、ヘッドオンからのドッグファイトでキルレシオ0.5……これは……完敗です)
不利な状態だったとは言え、負けは負けだ。
悔しさにギリッ、と歯を噛みしめる。
462: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 20:28:36.86 ID:lGiG5nwK0
その音が無線を通して聞こえたのか、提督が鳳翔に状況を確認した。
提督『鳳翔、状態はどうなっている』
鳳翔「……撃墜4、被撃墜8、です。……敵航空優勢」
提督『了解した。なんとか持ち堪えてくれ』
鳳翔「……はいっ……!」
……提督はこうなるのがわかっていて、足柄に水偵を上げさせなかったのだろうか。
水偵を上げている状態で鳳翔が劣勢になれば、敵は必ず水偵を落としにかかるだろうから。
鳳翔は、悔しさにうち震える。
だが、提督はそれを察したのか、言った。
提督『鳳翔、冷静な戦力の分析は勝つ為に一番必要な事だ。……信頼する事と、無責任に任せる事は違う。
そうだな?』
鳳翔「……はい」
自分は翔鶴より弱い。
そう言っている、一見冷たい言葉だが。
同時に、鳳翔を信頼しているとも言っていて。
ヒートアップしていた鳳翔は、一気に冷静になった。
自分が翔鶴に劣る事は、自分が一番よくわかっている。
ならば、今は最善を尽くすのみ。
ふぅ、と軽く呼吸を整え、気持ちを切り替える。
提督『他三名は引き続き周囲の島の上に目を光らせろ!敵の航空優勢だ、低空侵入で仕掛けて来るぞ……対空砲火用意』
気分転換のお陰か、鳳翔の艦載機は4機が翔鶴隊からなんとか逃れ続けている。
しかし、味方の戦闘機が居ては、流れ弾を恐れて対空砲による支援も難しい。
この対空砲は、敵攻撃隊本隊の迎撃用だ。
足柄「了解」
榛名「了解」
雷「了解」
足柄達は、味方が撃破されているのを知りながら、それに目を向ける事すら出来なかった。
提督『鳳翔、状態はどうなっている』
鳳翔「……撃墜4、被撃墜8、です。……敵航空優勢」
提督『了解した。なんとか持ち堪えてくれ』
鳳翔「……はいっ……!」
……提督はこうなるのがわかっていて、足柄に水偵を上げさせなかったのだろうか。
水偵を上げている状態で鳳翔が劣勢になれば、敵は必ず水偵を落としにかかるだろうから。
鳳翔は、悔しさにうち震える。
だが、提督はそれを察したのか、言った。
提督『鳳翔、冷静な戦力の分析は勝つ為に一番必要な事だ。……信頼する事と、無責任に任せる事は違う。
そうだな?』
鳳翔「……はい」
自分は翔鶴より弱い。
そう言っている、一見冷たい言葉だが。
同時に、鳳翔を信頼しているとも言っていて。
ヒートアップしていた鳳翔は、一気に冷静になった。
自分が翔鶴に劣る事は、自分が一番よくわかっている。
ならば、今は最善を尽くすのみ。
ふぅ、と軽く呼吸を整え、気持ちを切り替える。
提督『他三名は引き続き周囲の島の上に目を光らせろ!敵の航空優勢だ、低空侵入で仕掛けて来るぞ……対空砲火用意』
気分転換のお陰か、鳳翔の艦載機は4機が翔鶴隊からなんとか逃れ続けている。
しかし、味方の戦闘機が居ては、流れ弾を恐れて対空砲による支援も難しい。
この対空砲は、敵攻撃隊本隊の迎撃用だ。
足柄「了解」
榛名「了解」
雷「了解」
足柄達は、味方が撃破されているのを知りながら、それに目を向ける事すら出来なかった。
463: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 20:29:14.05 ID:lGiG5nwK0
◇
翔鶴「コマンド、翔鶴!
航空優勢確立、オーバー!」
空戦がひと段落した翔鶴が、興奮したまま無線に叫ぶ。
太郎『翔鶴、コマンド。艦攻隊の位置を報告せよ、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴!
敵艦隊までの距離3000!島の裏側から低空飛行で接近中、オーバー!」
太郎『翔鶴、コマンド。
良いぞ。敵の艦戦を釘付けにしたまま艦攻隊を突入させろ。オーバー』
翔鶴「翔鶴、了解!艦攻隊、島を越えます!」
翔鶴「コマンド、翔鶴!
航空優勢確立、オーバー!」
空戦がひと段落した翔鶴が、興奮したまま無線に叫ぶ。
太郎『翔鶴、コマンド。艦攻隊の位置を報告せよ、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴!
敵艦隊までの距離3000!島の裏側から低空飛行で接近中、オーバー!」
太郎『翔鶴、コマンド。
良いぞ。敵の艦戦を釘付けにしたまま艦攻隊を突入させろ。オーバー』
翔鶴「翔鶴、了解!艦攻隊、島を越えます!」
464: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/21(木) 20:33:18.21 ID:lGiG5nwK0
とりあえずここまで
空戦描写は書いてる本人は楽しいのですが……
ハイヨーヨーやらバレルロールやらはマニューバの一種
これらは、なんとかペディアを見ていただくと図解で紹介されています
バンクは機体を傾ける事で、ブレイクは急旋回
です……
空戦描写は書いてる本人は楽しいのですが……
ハイヨーヨーやらバレルロールやらはマニューバの一種
これらは、なんとかペディアを見ていただくと図解で紹介されています
バンクは機体を傾ける事で、ブレイクは急旋回
です……
480: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:12:55.78 ID:a1Zf4IAM0
◇
それを最初に見つけたのは足柄だった。
今日は快晴だ。燦然と輝く太陽の光を、揺れる海の水面はよく跳ね返していた。
もし演習など無ければ、浜辺に繰り出したい、そんな天気。
太陽の反射光が目を焼く。
残光が視界の邪魔をする。
それでも。
チラッと、視界の端、ほぼ水平線上で一瞬、太陽光では無い何かがキラキラと光ったのを。
足柄の研ぎ澄まされた感覚は取り逃さなかった。
距離3000以上先の平坦な島の上、あまりに遠く、小さい。
故に形は見えないが、経験からあれが何かは、わかる。
あれは、プロペラの反射光だ。
呟く。
足柄「……ペラが光った」
榛名「……?」
足柄「敵襲!方位0-7-0、距離3000、島の上空低高度にプロペラの反射光を多数確認!攻撃許可を要請!」
足柄は部隊に告げながら、島に狙いをつけたーー対空砲でなく、主砲で。
それを最初に見つけたのは足柄だった。
今日は快晴だ。燦然と輝く太陽の光を、揺れる海の水面はよく跳ね返していた。
もし演習など無ければ、浜辺に繰り出したい、そんな天気。
太陽の反射光が目を焼く。
残光が視界の邪魔をする。
それでも。
チラッと、視界の端、ほぼ水平線上で一瞬、太陽光では無い何かがキラキラと光ったのを。
足柄の研ぎ澄まされた感覚は取り逃さなかった。
距離3000以上先の平坦な島の上、あまりに遠く、小さい。
故に形は見えないが、経験からあれが何かは、わかる。
あれは、プロペラの反射光だ。
呟く。
足柄「……ペラが光った」
榛名「……?」
足柄「敵襲!方位0-7-0、距離3000、島の上空低高度にプロペラの反射光を多数確認!攻撃許可を要請!」
足柄は部隊に告げながら、島に狙いをつけたーー対空砲でなく、主砲で。
481: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:14:51.73 ID:a1Zf4IAM0
足柄の艤装は、装着者の意思に呼応するように唸り、弾薬庫から演習用砲弾と装薬を、艤装左右の主砲塔4つへと供給する。
同時に砲の尾栓が開き、揚弾された砲弾と装薬をラマーがチャンバーに叩き込んだ。
提督『攻撃を許可する』
足柄の判断を信頼した躊躇の無い認可と、同じタイミングで砲塔の尾栓が閉まる。
20.3cm砲のチャンバーが、ガギン!と完全に閉鎖された。
足柄「主砲射撃準備良し、撃方始めぇ!」
足柄はグッと腰を落とし、砲塔の射撃によるトルクの発生に備える。
瞬間、装薬の起爆。
チャンバー内で生じた凄まじい圧力に、
ギャリギャリギャリギャリ!と砲弾が砲身のライフリングと摩擦を起こしながら回転飛翔。
果たして砲塔の先から放たれるは、足柄の身長以上もある爆煙、耳をつん裂く轟音、そして、8つの弾頭。
それらの砲弾は、翔鶴の艦載機が越えようとする島へと、ほぼ一直線を飛び。
流石に艦載機には当たらず、地形に着弾する。
作動する信管。
炸裂。
訓練用の弾薬は、大規模な爆発を起こす代わりに、島の斜面を抉りながら、蛍光色の液体を周囲にばら撒いた。
同時に砲の尾栓が開き、揚弾された砲弾と装薬をラマーがチャンバーに叩き込んだ。
提督『攻撃を許可する』
足柄の判断を信頼した躊躇の無い認可と、同じタイミングで砲塔の尾栓が閉まる。
20.3cm砲のチャンバーが、ガギン!と完全に閉鎖された。
足柄「主砲射撃準備良し、撃方始めぇ!」
足柄はグッと腰を落とし、砲塔の射撃によるトルクの発生に備える。
瞬間、装薬の起爆。
チャンバー内で生じた凄まじい圧力に、
ギャリギャリギャリギャリ!と砲弾が砲身のライフリングと摩擦を起こしながら回転飛翔。
果たして砲塔の先から放たれるは、足柄の身長以上もある爆煙、耳をつん裂く轟音、そして、8つの弾頭。
それらの砲弾は、翔鶴の艦載機が越えようとする島へと、ほぼ一直線を飛び。
流石に艦載機には当たらず、地形に着弾する。
作動する信管。
炸裂。
訓練用の弾薬は、大規模な爆発を起こす代わりに、島の斜面を抉りながら、蛍光色の液体を周囲にばら撒いた。
482: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:17:43.94 ID:a1Zf4IAM0
ところで、訓練用の砲弾は信管作動時に炸裂するが、中身は爆薬では無い。
代わりに蛍光色で粘度の高い、非殺傷性の流体を搭載している。
それは実際の砲弾と同等の効果半径を持ち、範囲内の物体に付着する。
一度付着すれば、粘度の高いそれは、実際にダメージを受けたかの様に艤装の動きを阻害するのだ。
演習時の轟沈・大破判定はこれを基に、艦娘の頸椎付近に取り付けられた判定機によって行われる。
またこの液体は、艦載機に付着するとその比重から操縦を著しく困難にする。
あたかも被弾したかのように。
低空飛行が災いし、翔鶴隊数機が、巻き上げられた土や、飛び散った液体を喰らって落ちた。
代わりに蛍光色で粘度の高い、非殺傷性の流体を搭載している。
それは実際の砲弾と同等の効果半径を持ち、範囲内の物体に付着する。
一度付着すれば、粘度の高いそれは、実際にダメージを受けたかの様に艤装の動きを阻害するのだ。
演習時の轟沈・大破判定はこれを基に、艦娘の頸椎付近に取り付けられた判定機によって行われる。
またこの液体は、艦載機に付着するとその比重から操縦を著しく困難にする。
あたかも被弾したかのように。
低空飛行が災いし、翔鶴隊数機が、巻き上げられた土や、飛び散った液体を喰らって落ちた。
483: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:18:23.86 ID:a1Zf4IAM0
榛名「えっと……何にも見えないんですが……」
榛名には砲弾の炸裂しか見えていないらしく、懐疑的な眼差しで足柄に聞いた。
足柄「あなた少し目が悪いわね?
良いから撃ちなさい!
あっこに居るのよ!目の前の地面を抉るの!」
足柄はその疑念を一蹴し、指示を出す。
榛名「……ええい!わかりました!
榛名、火器管制、主砲装填!
射撃態勢よし、撃ちます!」
雷「雷、主砲装填、射撃準備良し!」
榛名に続き、雷も主砲の射撃を行う。
目標の島で、しばらく小規模な爆発が繰り返された。
榛名には砲弾の炸裂しか見えていないらしく、懐疑的な眼差しで足柄に聞いた。
足柄「あなた少し目が悪いわね?
良いから撃ちなさい!
あっこに居るのよ!目の前の地面を抉るの!」
足柄はその疑念を一蹴し、指示を出す。
榛名「……ええい!わかりました!
榛名、火器管制、主砲装填!
射撃態勢よし、撃ちます!」
雷「雷、主砲装填、射撃準備良し!」
榛名に続き、雷も主砲の射撃を行う。
目標の島で、しばらく小規模な爆発が繰り返された。
484: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:19:36.01 ID:a1Zf4IAM0
………
……
…
隼鷹「……鳳翔さんが……負けてる……?」
北上「だね。ま、防衛戦なんてそんなもんだ」
大井「……」
北上「しかし足柄さん、すげぇ目ざといなぁ。マジで編隊の先頭が島のテッペン越えた瞬間に見つけるんだもん。
お陰で翔鶴隊はまともに攻撃食らっちゃってるよ」
大井「早期発見から、攻撃開始までがまた早かった……これは流石と言わざるを得ないわね」
隼鷹「……でもなんで主砲撃ってんだ?当たんないんじゃね?」
北上「落ち着いて考えるんだ、隼鷹っち。見えるか見えないか、そんなサイズの相手に機関砲撃ったところで当たらないよ」
大井「それよりも地面を撃って、土を巻き上げて相手の視界を塞いだ方が落ちるでしょ?
……あなたも空母ならそのうち体験する事になるわ」
隼鷹「うへぇ……」
…
……
………
……
…
隼鷹「……鳳翔さんが……負けてる……?」
北上「だね。ま、防衛戦なんてそんなもんだ」
大井「……」
北上「しかし足柄さん、すげぇ目ざといなぁ。マジで編隊の先頭が島のテッペン越えた瞬間に見つけるんだもん。
お陰で翔鶴隊はまともに攻撃食らっちゃってるよ」
大井「早期発見から、攻撃開始までがまた早かった……これは流石と言わざるを得ないわね」
隼鷹「……でもなんで主砲撃ってんだ?当たんないんじゃね?」
北上「落ち着いて考えるんだ、隼鷹っち。見えるか見えないか、そんなサイズの相手に機関砲撃ったところで当たらないよ」
大井「それよりも地面を撃って、土を巻き上げて相手の視界を塞いだ方が落ちるでしょ?
……あなたも空母ならそのうち体験する事になるわ」
隼鷹「うへぇ……」
…
……
………
485: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:26:22.35 ID:a1Zf4IAM0
◇
翔鶴(目が良いですね……対応も早い……しかし、損害はたかが4機。
このまま、押し切ります!)
翔鶴の口角が吊り上がり。
44機の編隊を4機ずつの11系統に分割する。
翔鶴(ふふふ……)
現在の総合操作系統は15。
これは、決して多い数字ではないが、翔鶴の今の能力的には、ここらが限度だ。
正規空母に限らず、軽空母でも翔鶴より操作系統数が多い者は沢山居る。
そんな翔鶴が何故、最前線で戦果を挙げ、士官の寵愛を受けているのか。
その理由がここにあった。
翔鶴(これ……これよ……!
艦攻による攻撃……ゾクゾクするわね……!)
依然艦載機による頭痛は続いている。
が、今は高揚感がそれに勝っていた。
既に編隊は島を越え、海の上を低空飛行している。
空母によっては、ドッグファイトに魅入られ、取り憑かれたように空戦を繰り返す者も居る。
しかし翔鶴は、そのクチでは無かった。
翔鶴(目が良いですね……対応も早い……しかし、損害はたかが4機。
このまま、押し切ります!)
翔鶴の口角が吊り上がり。
44機の編隊を4機ずつの11系統に分割する。
翔鶴(ふふふ……)
現在の総合操作系統は15。
これは、決して多い数字ではないが、翔鶴の今の能力的には、ここらが限度だ。
正規空母に限らず、軽空母でも翔鶴より操作系統数が多い者は沢山居る。
そんな翔鶴が何故、最前線で戦果を挙げ、士官の寵愛を受けているのか。
その理由がここにあった。
翔鶴(これ……これよ……!
艦攻による攻撃……ゾクゾクするわね……!)
依然艦載機による頭痛は続いている。
が、今は高揚感がそれに勝っていた。
既に編隊は島を越え、海の上を低空飛行している。
空母によっては、ドッグファイトに魅入られ、取り憑かれたように空戦を繰り返す者も居る。
しかし翔鶴は、そのクチでは無かった。
486: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:27:29.70 ID:a1Zf4IAM0
翔鶴(どこまで機体高度を落とせるか……)
翔鶴は更に高度を落とす。
翔鶴(もっと低く……もっと……!)
遂に、回転するプロペラが、時折波の先端を叩く程にまで海面に接近する。
あと数センチ下降するだけで、あるいは少しでも高い波があるだけで、機体は海にさらわれ、編隊の大多数が失われるだろう。
それでも落ちない。
翔鶴にはセンスがあった。
翔鶴(うふ、うふふふふふ!
紙一重の領域で、私は今!
生きて、いる……!)
深淵に片脚を突っ込んで、嗤う。
通常、艤装の砲塔は下を向かない。
そして、艤装自体が水平を保とうとする性質がある為、水平より下の標的を狙うのはかなり難しくなる。
つまり、低空飛行は敵の対空砲火を躱す有効な手段だ。
更に低空飛行時の危険を減らす為、鳳翔の直掩機を削る必要があった。
翔鶴は更に高度を落とす。
翔鶴(もっと低く……もっと……!)
遂に、回転するプロペラが、時折波の先端を叩く程にまで海面に接近する。
あと数センチ下降するだけで、あるいは少しでも高い波があるだけで、機体は海にさらわれ、編隊の大多数が失われるだろう。
それでも落ちない。
翔鶴にはセンスがあった。
翔鶴(うふ、うふふふふふ!
紙一重の領域で、私は今!
生きて、いる……!)
深淵に片脚を突っ込んで、嗤う。
通常、艤装の砲塔は下を向かない。
そして、艤装自体が水平を保とうとする性質がある為、水平より下の標的を狙うのはかなり難しくなる。
つまり、低空飛行は敵の対空砲火を躱す有効な手段だ。
更に低空飛行時の危険を減らす為、鳳翔の直掩機を削る必要があった。
487: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:28:02.96 ID:a1Zf4IAM0
しかし、翔鶴にとって、最早この低空飛行はただの回避行動ではない。
破滅の境界線。
それの綱渡りに翔鶴は興奮を覚えていた。
そして、その興奮は、信じがたいほどの集中力を翔鶴に与える。
敵は既に機関砲による対空砲火に切り替えてきている。
張られる弾幕に、既に数機が犠牲となる。
が。
依然として40機弱の艦攻が敵めがけて進んでいた。
翔鶴(さぁ……さぁ……さぁ……!
当て辛いでしょう……?!)
艦攻、艦爆による攻撃こそが翔鶴の真骨頂。
華々しい空戦など、翔鶴は求めていない。
求むは撃破数ただ一つ。
敵までの距離、2000。
破滅の境界線。
それの綱渡りに翔鶴は興奮を覚えていた。
そして、その興奮は、信じがたいほどの集中力を翔鶴に与える。
敵は既に機関砲による対空砲火に切り替えてきている。
張られる弾幕に、既に数機が犠牲となる。
が。
依然として40機弱の艦攻が敵めがけて進んでいた。
翔鶴(さぁ……さぁ……さぁ……!
当て辛いでしょう……?!)
艦攻、艦爆による攻撃こそが翔鶴の真骨頂。
華々しい空戦など、翔鶴は求めていない。
求むは撃破数ただ一つ。
敵までの距離、2000。
488: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:28:52.61 ID:a1Zf4IAM0
◇
足柄「ああもう何アレ?!水面滑ってんじゃないの?!」
翔鶴の極端なシースキミングに足柄が呻く。
榛名「マズイですよ……!このままだと仰角が……!」
雷「既にマズイわよ……!高角砲がもう当たんないんだけど?!」
足柄「奴らの前の海面、機関砲で叩いて!操作ミスを誘うのよ!あんだけ低けりゃ、水柱でビビるわ!」
榛名「了解です!」
雷「了解!」
足柄「それと、一応聞くけど、鳳翔、応援回せる?!」
足柄が叫ぶ。
鳳翔「無理です!自分でなんとかなさって下さい!」
鳳翔は足柄の顔を見ずに応じる。
ここに来て、更に動きが鋭くなった敵艦戦からの逃避に鳳翔は手いっぱいだった。
足柄「ですよねー!」
榛名「くっ……中々落ちない、当たらない……!」
雷「18戦隊の正規空母は伊達じゃないわね……!」
足柄「もうすぐ距離1000切るわよ!切ったら打ち合わせ通りの回避航行、良いわね?!射線被らないように!」
榛名「了解!」
雷「わかってるわ!」
足柄「皆、ここが正念場よ!気合い入れなさい!」
足柄が叫んだ時点で、翔鶴航空隊との距離、1500。
足柄「ああもう何アレ?!水面滑ってんじゃないの?!」
翔鶴の極端なシースキミングに足柄が呻く。
榛名「マズイですよ……!このままだと仰角が……!」
雷「既にマズイわよ……!高角砲がもう当たんないんだけど?!」
足柄「奴らの前の海面、機関砲で叩いて!操作ミスを誘うのよ!あんだけ低けりゃ、水柱でビビるわ!」
榛名「了解です!」
雷「了解!」
足柄「それと、一応聞くけど、鳳翔、応援回せる?!」
足柄が叫ぶ。
鳳翔「無理です!自分でなんとかなさって下さい!」
鳳翔は足柄の顔を見ずに応じる。
ここに来て、更に動きが鋭くなった敵艦戦からの逃避に鳳翔は手いっぱいだった。
足柄「ですよねー!」
榛名「くっ……中々落ちない、当たらない……!」
雷「18戦隊の正規空母は伊達じゃないわね……!」
足柄「もうすぐ距離1000切るわよ!切ったら打ち合わせ通りの回避航行、良いわね?!射線被らないように!」
榛名「了解!」
雷「わかってるわ!」
足柄「皆、ここが正念場よ!気合い入れなさい!」
足柄が叫んだ時点で、翔鶴航空隊との距離、1500。
489: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:31:05.84 ID:a1Zf4IAM0
………
……
…
北上「うっはー!相変わらず翔ぴーの艦載機はひっくいなー!これ水に浮いてんじゃないの?」
大井「ほんとにいつ見ても危ういわね……ちょっと波が来たら終わりよあんなの……」
北上「いやぁ艦攻の操作、上手いねぇ、翔ぴー」
大井「でも、いつもは艦爆よね。反跳爆撃って言うんでしたったけ、アレ。水面跳ねるの」
北上「そだねぇ」
隼鷹「……皆……」
そして。
遂に。
艦攻隊とサセン隊の距離、1000。
…
……
………
……
…
北上「うっはー!相変わらず翔ぴーの艦載機はひっくいなー!これ水に浮いてんじゃないの?」
大井「ほんとにいつ見ても危ういわね……ちょっと波が来たら終わりよあんなの……」
北上「いやぁ艦攻の操作、上手いねぇ、翔ぴー」
大井「でも、いつもは艦爆よね。反跳爆撃って言うんでしたったけ、アレ。水面跳ねるの」
北上「そだねぇ」
隼鷹「……皆……」
そして。
遂に。
艦攻隊とサセン隊の距離、1000。
…
……
………
490: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:32:33.18 ID:a1Zf4IAM0
◇
超低空飛行の艦攻。
その目の前の海面を敵の砲が叩き、水面がせりあがった。
しかし、翔鶴の集中は乱されない。艦攻は躊躇なく水柱の中を突っ切る。
無論、抜けれずに水に沈む艦攻もある。破片が命中して、速力の低下した機体も多い。
が、既に彼我の距離は1000。
敵の迎撃限界ラインを超えている。
これ以降の攻撃は無いと見て良いだろう。
その証拠に、敵は既に散開して防御機動を取り始めていた。
翔鶴(うふふ……仕掛けますよ)
攻撃的に嗤う。
36機の艦攻は12-12-6-6の編隊に別れ、魚雷の投下態勢に入った。
超低空飛行の艦攻。
その目の前の海面を敵の砲が叩き、水面がせりあがった。
しかし、翔鶴の集中は乱されない。艦攻は躊躇なく水柱の中を突っ切る。
無論、抜けれずに水に沈む艦攻もある。破片が命中して、速力の低下した機体も多い。
が、既に彼我の距離は1000。
敵の迎撃限界ラインを超えている。
これ以降の攻撃は無いと見て良いだろう。
その証拠に、敵は既に散開して防御機動を取り始めていた。
翔鶴(うふふ……仕掛けますよ)
攻撃的に嗤う。
36機の艦攻は12-12-6-6の編隊に別れ、魚雷の投下態勢に入った。
491: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:33:02.54 ID:a1Zf4IAM0
翔鶴「艦載機通報。魚雷投下、魚雷投下」
距離が500を切り。
水面スレスレの艦載機から放たれた魚雷は極めて静かに入水し、殆ど狙い通りの軌道を描く。
足柄へ10発。
榛名へ12発。
鳳翔、雷へは5発ずつ。
若干の魚雷が脱落したものの、処理能力を超えた数がサセン隊に襲いかかる。
それらは、扇状に、進路を塞ぐように進む。
翔鶴(イイ感じ……これは当たるわ……!)
雷撃効果判定を、上空で空戦を続ける艦戦に任せ、艦攻は高度を上げて旋回、南東へと離脱を開始する。
今なら相手は魚雷の対処に追われ、高度を上げても撃たれることは無い。
翔鶴(うふふふ……!皆さん……私のスコアに、なって?)
翔鶴の表情には、普段見せる事の無い攻撃性が宿っていた。
距離が500を切り。
水面スレスレの艦載機から放たれた魚雷は極めて静かに入水し、殆ど狙い通りの軌道を描く。
足柄へ10発。
榛名へ12発。
鳳翔、雷へは5発ずつ。
若干の魚雷が脱落したものの、処理能力を超えた数がサセン隊に襲いかかる。
それらは、扇状に、進路を塞ぐように進む。
翔鶴(イイ感じ……これは当たるわ……!)
雷撃効果判定を、上空で空戦を続ける艦戦に任せ、艦攻は高度を上げて旋回、南東へと離脱を開始する。
今なら相手は魚雷の対処に追われ、高度を上げても撃たれることは無い。
翔鶴(うふふふ……!皆さん……私のスコアに、なって?)
翔鶴の表情には、普段見せる事の無い攻撃性が宿っていた。
492: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:34:16.49 ID:a1Zf4IAM0
◇
足柄「各員回避ー!」
足柄が焦った声で号令をかける。
が、雷は対極の精神状態にあった。
雷(……たった5発?ナメてんのかしら)
既に魚雷は見切り。
雷は他の三人に目をやる。
雷(鳳翔さんは……空戦してるし……多分一発貰うわね……
榛名さん……と足柄さんはもっとヤバい)
特に榛名は12発もの魚雷を撃たれており、必死に回避行動を取ってはいるが、2,3発被雷するのは目に見えていた。
雷(……仕方ないわね。この雷様にこんな事させるなんて……
あなたの頼みだから、特別なんだからね?)
そう心の中で呟き。
雷は瞬時の判断で榛名に接近する。
榛名「雷さん?!」
榛名が驚愕するが、無視してその前に出た。
見えるのは目前に迫った魚雷。
当然、被雷する。
右足の脚部艤装で小規模な爆発が起こり、訓練用の液体が飛び散る。
雷「うえ……」
付着したベトベトに嫌そうな顔をしつつ、雷はそのままもう一発魚雷を受けた。
今度は反転し、左足で。
またもや飛び散る液体。
榛名「雷さん?!大丈夫ですか?!」
雷に庇われたお陰で被雷しなかった榛名が声を上げる。
雷「大丈夫、まだ大破判定よ」
片脚ずつ受けたからね。
そう、雷は落ち着いた声音で返し、チラリと足柄の方を見る。
足柄「各員回避ー!」
足柄が焦った声で号令をかける。
が、雷は対極の精神状態にあった。
雷(……たった5発?ナメてんのかしら)
既に魚雷は見切り。
雷は他の三人に目をやる。
雷(鳳翔さんは……空戦してるし……多分一発貰うわね……
榛名さん……と足柄さんはもっとヤバい)
特に榛名は12発もの魚雷を撃たれており、必死に回避行動を取ってはいるが、2,3発被雷するのは目に見えていた。
雷(……仕方ないわね。この雷様にこんな事させるなんて……
あなたの頼みだから、特別なんだからね?)
そう心の中で呟き。
雷は瞬時の判断で榛名に接近する。
榛名「雷さん?!」
榛名が驚愕するが、無視してその前に出た。
見えるのは目前に迫った魚雷。
当然、被雷する。
右足の脚部艤装で小規模な爆発が起こり、訓練用の液体が飛び散る。
雷「うえ……」
付着したベトベトに嫌そうな顔をしつつ、雷はそのままもう一発魚雷を受けた。
今度は反転し、左足で。
またもや飛び散る液体。
榛名「雷さん?!大丈夫ですか?!」
雷に庇われたお陰で被雷しなかった榛名が声を上げる。
雷「大丈夫、まだ大破判定よ」
片脚ずつ受けたからね。
そう、雷は落ち着いた声音で返し、チラリと足柄の方を見る。
493: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:35:12.44 ID:a1Zf4IAM0
足柄は魚雷の速度と角度を把握し、未来予測していた。
翔鶴の魚雷は鋭い。
普通に旋回していては被雷する。
だから、艤装が水面に触れるか触れないか、ギリギリのラインまで身体を倒す。
更に足を外側に蹴り出せば、それは凄まじい角度の急回頭。
絶妙なバランスの上に成り立つそれは、少しでもバランスを崩せば艤装が海面に触れて。横転する危険を孕んでいる。
それを恐れず、足柄は冷静にバランスを取り続けた。
しかし、それでも。
足柄「……一発は貰うか……!」
どう考えても避けれない魚雷がある。
舌打ちして、足柄は一気に身体を起こし、姿勢を低くして被雷に備えた。
そして、衝撃。
翔鶴の魚雷は鋭い。
普通に旋回していては被雷する。
だから、艤装が水面に触れるか触れないか、ギリギリのラインまで身体を倒す。
更に足を外側に蹴り出せば、それは凄まじい角度の急回頭。
絶妙なバランスの上に成り立つそれは、少しでもバランスを崩せば艤装が海面に触れて。横転する危険を孕んでいる。
それを恐れず、足柄は冷静にバランスを取り続けた。
しかし、それでも。
足柄「……一発は貰うか……!」
どう考えても避けれない魚雷がある。
舌打ちして、足柄は一気に身体を起こし、姿勢を低くして被雷に備えた。
そして、衝撃。
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