………
……
…
北上「うっひょう!やるぅ翔ぴー!」
大井「艦隊が出会う前から大破1、中破2……これはかなり決定的じゃないかしら……」
隼鷹「……くそぅ……」
北上「速力も低下してるしねぇ。提督不利だねぇ。翔鶴は第二次攻撃も出来る訳だし」
隼鷹「だぁー!アタシが出れたらなぁ!」
北上「ほほぅ。艦攻を落とせると?」
隼鷹「そうだぜ!こう、バババババってな感じで……」
北上「ふっふっふ……そう思うじゃん?」
隼鷹「おおん?」
北上「前に演習した相手の空母が言ってたけど、怖いらしいぞぉ翔ぴーのケツにつくの。
なんせあんだけ高度低いからな。艦戦って艦攻より下が見えないんだろ?」
隼鷹「……」
大井「艦攻には後部銃座もあるわ。真後ろにつくしかないけど、真後ろについたら撃たれる。
それを避けようとすると、海に墜落、ってな感じね。
落とすのは簡単じゃ無さそうよ」
北上「翔鶴のシースキミングは……芸術だぜ?」 ニヤリ
隼鷹「……ぐぬぬ……」
北上「はぁーっはっはっはぁ!どうだ!まいったか!」
…
……
………
……
…
北上「うっひょう!やるぅ翔ぴー!」
大井「艦隊が出会う前から大破1、中破2……これはかなり決定的じゃないかしら……」
隼鷹「……くそぅ……」
北上「速力も低下してるしねぇ。提督不利だねぇ。翔鶴は第二次攻撃も出来る訳だし」
隼鷹「だぁー!アタシが出れたらなぁ!」
北上「ほほぅ。艦攻を落とせると?」
隼鷹「そうだぜ!こう、バババババってな感じで……」
北上「ふっふっふ……そう思うじゃん?」
隼鷹「おおん?」
北上「前に演習した相手の空母が言ってたけど、怖いらしいぞぉ翔ぴーのケツにつくの。
なんせあんだけ高度低いからな。艦戦って艦攻より下が見えないんだろ?」
隼鷹「……」
大井「艦攻には後部銃座もあるわ。真後ろにつくしかないけど、真後ろについたら撃たれる。
それを避けようとすると、海に墜落、ってな感じね。
落とすのは簡単じゃ無さそうよ」
北上「翔鶴のシースキミングは……芸術だぜ?」 ニヤリ
隼鷹「……ぐぬぬ……」
北上「はぁーっはっはっはぁ!どうだ!まいったか!」
…
……
………
495: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:37:05.42 ID:a1Zf4IAM0
◇
翔鶴「艦載機通報。
攻撃成功、攻撃成功。ウィンチェスター、RTB」
太郎「翔鶴、コマンド。攻撃報告を求む、オーバー」
翔鶴「コマンド、翔鶴。敵駆逐艦大破、空母・重巡中破。艦載機による追撃も無し」
太郎『翔鶴、コマンド。素晴らしい、流石は私の空母だ』
愛しの人に褒められて、先程までの攻撃的な嗤いは鳴りを潜め。
代わりに、翔鶴はとても嬉しそうに微笑んだ。
しかし、すぐに切り替える。
まだ演習が終わった訳では無いのだ。
翔鶴「翔鶴より通達。
敵艦隊上空で確認出来た敵航空隊は一隊のみ。
別働隊が奇襲を仕掛けてくる可能性があります。艦娘各位は上空に十分留意して下さい」
金剛「Roger」
翔鶴「艦載機通報。
攻撃成功、攻撃成功。ウィンチェスター、RTB」
太郎「翔鶴、コマンド。攻撃報告を求む、オーバー」
翔鶴「コマンド、翔鶴。敵駆逐艦大破、空母・重巡中破。艦載機による追撃も無し」
太郎『翔鶴、コマンド。素晴らしい、流石は私の空母だ』
愛しの人に褒められて、先程までの攻撃的な嗤いは鳴りを潜め。
代わりに、翔鶴はとても嬉しそうに微笑んだ。
しかし、すぐに切り替える。
まだ演習が終わった訳では無いのだ。
翔鶴「翔鶴より通達。
敵艦隊上空で確認出来た敵航空隊は一隊のみ。
別働隊が奇襲を仕掛けてくる可能性があります。艦娘各位は上空に十分留意して下さい」
金剛「Roger」
496: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:37:50.40 ID:a1Zf4IAM0
摩耶「……しっかし、敵はもう半壊かぁ。こりゃまた出番無しかな?」
摩耶が不満気にボヤく。
陽炎「気を抜いちゃダメよ、摩耶。榛名さんは無傷なんだから」
摩耶「……それもそうか」
頷いて、摩耶はガツン!と拳を打ち合わせ、気合を入れた。
翔鶴「(……問題はそこですね。雷さんが予想外の動きで榛名さんの盾に……)
……まぁ、艦攻隊の補給をして、第二次攻撃でカタが着くでしょう」
翔鶴も、太郎に褒められた時の笑顔のままに応じた。
そんな艦隊を金剛が諌める。
金剛「Hey girls、私語は止めるネ。いくら優勢だからって気を抜き過ぎダヨ」
太郎『その通りだ。まだ演習は終わっていない。気を抜くなよ』
翔鶴「はい!」
しかし、勝っている時に気を抜くな、と言われても、そうするのは難しい。
たとえ気を抜いていない、と思っていても、どこか浮ついてしまうのだ。
それがわかっているからこそ、金剛は自分がしっかりしなければ、と気を引き締める。
摩耶が不満気にボヤく。
陽炎「気を抜いちゃダメよ、摩耶。榛名さんは無傷なんだから」
摩耶「……それもそうか」
頷いて、摩耶はガツン!と拳を打ち合わせ、気合を入れた。
翔鶴「(……問題はそこですね。雷さんが予想外の動きで榛名さんの盾に……)
……まぁ、艦攻隊の補給をして、第二次攻撃でカタが着くでしょう」
翔鶴も、太郎に褒められた時の笑顔のままに応じた。
そんな艦隊を金剛が諌める。
金剛「Hey girls、私語は止めるネ。いくら優勢だからって気を抜き過ぎダヨ」
太郎『その通りだ。まだ演習は終わっていない。気を抜くなよ』
翔鶴「はい!」
しかし、勝っている時に気を抜くな、と言われても、そうするのは難しい。
たとえ気を抜いていない、と思っていても、どこか浮ついてしまうのだ。
それがわかっているからこそ、金剛は自分がしっかりしなければ、と気を引き締める。
497: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:38:29.00 ID:a1Zf4IAM0
◇
提督『サセン島防衛隊、被害報告』
足柄「あー……食らった食らった。中破判定よ。速度もおっそいわ」
足柄が液まみれになりながら言う。
榛名「榛名は無傷です……雷さんに守って頂いて……」
雷「その私は大破よ。もうベトベト」
鳳翔「私は中破です……が、甲板は無事です。艦戦も4機、残りました」
提督『把握した。全員、よく耐えたな。雷は良い働きをしてくれた』
雷「当然よね!私が悪い働きをする訳が無いんだから!」
胸を張る雷。
提督『飛行甲板も無傷の戦艦も残った。良いぞ、勝負はこれからだ』
鳳翔「はい」
榛名「はい!頑張りましょう!」
提督『サセン島防衛隊、被害報告』
足柄「あー……食らった食らった。中破判定よ。速度もおっそいわ」
足柄が液まみれになりながら言う。
榛名「榛名は無傷です……雷さんに守って頂いて……」
雷「その私は大破よ。もうベトベト」
鳳翔「私は中破です……が、甲板は無事です。艦戦も4機、残りました」
提督『把握した。全員、よく耐えたな。雷は良い働きをしてくれた』
雷「当然よね!私が悪い働きをする訳が無いんだから!」
胸を張る雷。
提督『飛行甲板も無傷の戦艦も残った。良いぞ、勝負はこれからだ』
鳳翔「はい」
榛名「はい!頑張りましょう!」
498: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/23(土) 22:39:24.26 ID:a1Zf4IAM0
足柄「ったり前よ……髪までベタベタなのに……やられっぱなしで黙ってらんないわ」
足柄が文句を言いながら南東の空へと目をやる。
足柄「……ふん。榛名、見なさい、アレ」
離れ行く翔鶴隊を指差す足柄。
榛名「編隊も組まずにふらふらと帰還してますねぇ、敵の攻撃隊。
ね、雷さん」
もう、と言った様子の榛名。
雷「あらあら。敵さん、もう勝ったと思ってるようね、提督?」
ニヤリと不敵に笑う雷。
提督『ほほう。
それは大変だ。なぁ、鳳翔?』
余裕のある調子の提督
鳳翔「……ええ」
最後に、鳳翔はニコリと微笑む。
鳳翔「……教育が、必要ですね」
足柄が文句を言いながら南東の空へと目をやる。
足柄「……ふん。榛名、見なさい、アレ」
離れ行く翔鶴隊を指差す足柄。
榛名「編隊も組まずにふらふらと帰還してますねぇ、敵の攻撃隊。
ね、雷さん」
もう、と言った様子の榛名。
雷「あらあら。敵さん、もう勝ったと思ってるようね、提督?」
ニヤリと不敵に笑う雷。
提督『ほほう。
それは大変だ。なぁ、鳳翔?』
余裕のある調子の提督
鳳翔「……ええ」
最後に、鳳翔はニコリと微笑む。
鳳翔「……教育が、必要ですね」
517: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/25(月) 19:57:29.76 ID:GRn4Pv9R0
◇
艦載機からの視界は、それを操る空母にしか見えない。だから局地的な航空戦略は基本的に空母が立てる。
翔鶴(……さて、今私がすべき事は……)
戦闘哨戒空域の拡大。
今、最も警戒すべきは敵の艦爆・艦攻によるカウンターエア。
翔鶴「コマンド、翔鶴。哨戒空域の拡大を提案、オーバー」
太郎『翔鶴、コマンド。提案を承認する、アウト』
翔鶴は、1系統でくるくると回していた12機の艦戦を6系統に分割、散開させ、哨戒旋回半径をグッと増やした。
艦載機からの視界は、それを操る空母にしか見えない。だから局地的な航空戦略は基本的に空母が立てる。
翔鶴(……さて、今私がすべき事は……)
戦闘哨戒空域の拡大。
今、最も警戒すべきは敵の艦爆・艦攻によるカウンターエア。
翔鶴「コマンド、翔鶴。哨戒空域の拡大を提案、オーバー」
太郎『翔鶴、コマンド。提案を承認する、アウト』
翔鶴は、1系統でくるくると回していた12機の艦戦を6系統に分割、散開させ、哨戒旋回半径をグッと増やした。
518: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/25(月) 19:58:40.02 ID:GRn4Pv9R0
本来的には対空防御は艦戦で行うべきではない。
それは艦爆・艦攻の役目だ。
無論、それは空戦を行うと言う意味ではないが。
航空機の特性とは、いつでも、どこへでも、どこからでも。
つまり、何時どこから侵入されるかが全くわからない。
艦戦による戦闘空中哨戒ですべての侵攻を防ごうとする事には無理がある。
だからこそ、爆撃なのだ。
つまり、甲板の破壊。
早期の艦載機発着艦能力の簒奪こそが最も有効な防空戦術である。
その接近を見落としたら、寡兵からの一発逆転もあり得るのが航空戦の怖い所でもあり。
翔鶴(……先程の制空戦、増援は出てこなかった……
これは、出てこれなかった、もしくはもう出ていた、という事……)
思案する。
翔鶴(出てこれなかったとしたら、それは残りのペイロードに艦爆・艦攻しか積んでいなかったという事)
思案する。
翔鶴(出てこなかったとしたら、それは攻撃編隊が此方に向かっている可能性が高いという事)
思案する。
それは艦爆・艦攻の役目だ。
無論、それは空戦を行うと言う意味ではないが。
航空機の特性とは、いつでも、どこへでも、どこからでも。
つまり、何時どこから侵入されるかが全くわからない。
艦戦による戦闘空中哨戒ですべての侵攻を防ごうとする事には無理がある。
だからこそ、爆撃なのだ。
つまり、甲板の破壊。
早期の艦載機発着艦能力の簒奪こそが最も有効な防空戦術である。
その接近を見落としたら、寡兵からの一発逆転もあり得るのが航空戦の怖い所でもあり。
翔鶴(……先程の制空戦、増援は出てこなかった……
これは、出てこれなかった、もしくはもう出ていた、という事……)
思案する。
翔鶴(出てこれなかったとしたら、それは残りのペイロードに艦爆・艦攻しか積んでいなかったという事)
思案する。
翔鶴(出てこなかったとしたら、それは攻撃編隊が此方に向かっている可能性が高いという事)
思案する。
519: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/25(月) 20:00:19.06 ID:GRn4Pv9R0
翔鶴(攻撃隊への追撃も無い……
ならば、どちらのケースも戦闘空中哨戒に重点を置きつつ、早急に第二次攻撃を加えるのが最善手の筈……)
やはり、自分の判断に間違いは無い、と再確認。
翔鶴(この搭載差で、空戦を積極的に展開してくるとは考え辛いから……
一番不味いのは、私が被弾して艦載機運用能力を喪失する事……)
懸念事項の検討。
翔鶴(でも、相手の攻撃機数は多くない。
……大丈夫、オーソドックスに守って攻めれば、勝てる筈。
だから神経を空中哨戒に集中させて……)
そこまで考えて、ふぅ、と深呼吸。
翔鶴(しかし……少し、疲れましたね……)
勝利には確実に迫っている。
このまま、情勢を維持せねば。
翔鶴はさらに哨戒へと注力した。
ならば、どちらのケースも戦闘空中哨戒に重点を置きつつ、早急に第二次攻撃を加えるのが最善手の筈……)
やはり、自分の判断に間違いは無い、と再確認。
翔鶴(この搭載差で、空戦を積極的に展開してくるとは考え辛いから……
一番不味いのは、私が被弾して艦載機運用能力を喪失する事……)
懸念事項の検討。
翔鶴(でも、相手の攻撃機数は多くない。
……大丈夫、オーソドックスに守って攻めれば、勝てる筈。
だから神経を空中哨戒に集中させて……)
そこまで考えて、ふぅ、と深呼吸。
翔鶴(しかし……少し、疲れましたね……)
勝利には確実に迫っている。
このまま、情勢を維持せねば。
翔鶴はさらに哨戒へと注力した。
520: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/25(月) 20:04:47.73 ID:GRn4Pv9R0
◇
戦場で、一番油断のある瞬間はいつか。
それは単純。
勝った時だ。
それが局地戦であろうと、大局的な戦いであろうと。
ストレス反応により極限まで高められた緊張が弛緩する、その時が一番危ない。
副交感神経が働き、血管が拡大し、疲労から注意力が散漫になる。
心では無い。体が油断をする。
それは艦娘でも同じ事。
提督『……さて、と』
提督が口を開く。
戦場で、一番油断のある瞬間はいつか。
それは単純。
勝った時だ。
それが局地戦であろうと、大局的な戦いであろうと。
ストレス反応により極限まで高められた緊張が弛緩する、その時が一番危ない。
副交感神経が働き、血管が拡大し、疲労から注意力が散漫になる。
心では無い。体が油断をする。
それは艦娘でも同じ事。
提督『……さて、と』
提督が口を開く。
521: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/25(月) 20:08:44.17 ID:GRn4Pv9R0
提督『榛名、単艦で針路1-8-0へ全速前進。南部島群への最短経路を取れ』
榛名「榛名、了解です!」
無傷の榛名は快速で南下していく。
提督『足柄以下、榛名に追随せよ』
足柄「足柄了解」
提督『鳳翔と雷は同行、足柄は速度に余裕があるならば単独航行を許可する』
鳳翔「鳳翔了解」
雷「雷了解」
足柄「足柄了解」
それから間も無く。
鳳翔「……本部、こちら鳳翔。
敵が、かかりました」
極めて落ち着いた声で告げる。
返って来る言葉もまた、落ち着いていて。
提督『始めろ、鳳翔。
我々は……周到な送り狼だ』
鳳翔「……はい」
反撃の狼煙が上がる。
榛名「榛名、了解です!」
無傷の榛名は快速で南下していく。
提督『足柄以下、榛名に追随せよ』
足柄「足柄了解」
提督『鳳翔と雷は同行、足柄は速度に余裕があるならば単独航行を許可する』
鳳翔「鳳翔了解」
雷「雷了解」
足柄「足柄了解」
それから間も無く。
鳳翔「……本部、こちら鳳翔。
敵が、かかりました」
極めて落ち着いた声で告げる。
返って来る言葉もまた、落ち着いていて。
提督『始めろ、鳳翔。
我々は……周到な送り狼だ』
鳳翔「……はい」
反撃の狼煙が上がる。
522: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/25(月) 20:18:35.61 ID:GRn4Pv9R0
提督『榛名、単艦で針路1-8-0へ全速前進。南部島群への最短経路を取れ』
榛名「榛名、了解です!」
無傷の榛名は快速で南下していく。
提督『足柄以下、榛名に追随せよ』
足柄「足柄了解」
提督『鳳翔と雷は同行、足柄は速度に余裕があるならば単独航行を許可する』
鳳翔「鳳翔了解」
雷「雷了解」
足柄「足柄了解」
それから間も無く。
鳳翔「……本部、こちら鳳翔。
敵が、かかりました」
極めて落ち着いた声で告げる。
返って来る言葉もまた、落ち着いていて。
提督『始めろ、鳳翔。
我々は……周到な送り狼だ』
鳳翔「……はい」
反撃の狼煙が上がる。
榛名「榛名、了解です!」
無傷の榛名は快速で南下していく。
提督『足柄以下、榛名に追随せよ』
足柄「足柄了解」
提督『鳳翔と雷は同行、足柄は速度に余裕があるならば単独航行を許可する』
鳳翔「鳳翔了解」
雷「雷了解」
足柄「足柄了解」
それから間も無く。
鳳翔「……本部、こちら鳳翔。
敵が、かかりました」
極めて落ち着いた声で告げる。
返って来る言葉もまた、落ち着いていて。
提督『始めろ、鳳翔。
我々は……周到な送り狼だ』
鳳翔「……はい」
反撃の狼煙が上がる。
523: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/25(月) 20:19:38.50 ID:GRn4Pv9R0
◇
洋上を飛ぶ攻撃編隊の内、10機が何の前触れも無く撃墜された。
翔鶴「はぁ?!」
翔鶴は思わず、似つかわしくない声を上げる。
訪れるパニック。
翔鶴(一体どこから?!
追撃機は無かったはず!見落とし?!馬鹿な!)
しかし、流石は最前線に立つ空母。
撃ち落とされた艦載機から情報を割り出し、攻撃された方向を判定。
攻撃編隊の系統を分割しつつ、翔鶴は意識の全てを、その方向に向ける。
しかし、それは罠だ。
翔鶴(しまった……!眩、しい……!)
翔鶴は8以上の視点から同時に太陽を直視してしまった。
太陽とは。
希望の象徴であり、道標であり。
そして、空における最大の障害物だ。
空戦中に、太陽の事を忘れる空母は意外と多い。
いつだってそこにある物は、往々にして無いように感じるものだ。
艦載機に瞼は無いから、咄嗟に目を閉じる事が出来ない。
直ぐに視線を逸らすが、既に目に太陽が焼き付いており、視界の中心に大きな黒い円。
まともに前が見えない。
洋上を飛ぶ攻撃編隊の内、10機が何の前触れも無く撃墜された。
翔鶴「はぁ?!」
翔鶴は思わず、似つかわしくない声を上げる。
訪れるパニック。
翔鶴(一体どこから?!
追撃機は無かったはず!見落とし?!馬鹿な!)
しかし、流石は最前線に立つ空母。
撃ち落とされた艦載機から情報を割り出し、攻撃された方向を判定。
攻撃編隊の系統を分割しつつ、翔鶴は意識の全てを、その方向に向ける。
しかし、それは罠だ。
翔鶴(しまった……!眩、しい……!)
翔鶴は8以上の視点から同時に太陽を直視してしまった。
太陽とは。
希望の象徴であり、道標であり。
そして、空における最大の障害物だ。
空戦中に、太陽の事を忘れる空母は意外と多い。
いつだってそこにある物は、往々にして無いように感じるものだ。
艦載機に瞼は無いから、咄嗟に目を閉じる事が出来ない。
直ぐに視線を逸らすが、既に目に太陽が焼き付いており、視界の中心に大きな黒い円。
まともに前が見えない。
524: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/25(月) 20:20:18.61 ID:GRn4Pv9R0
翔鶴(不味い不味い不味い不味い不味い不味い)
募る焦り。
翔鶴(結局敵がよく見えない!不味い不味い不味い……!
ジンキング、しないと……!)
果たしてその焦りの通り、追撃は来た。
敵の射線を躱すために、上下左右に動く機動をジンキングと呼ぶ。
本来は、どうしても敵を振り切れない際の最終手段だ。
翔鶴はそれを繰り返すが、敵が見えていないのに射線をかわせる筈も無く。
更に8機が落とされる。
既に艦戦は全て失われ、残っている艦攻にも、無傷の物は殆どない。
これはつまり。
翔鶴(艦攻と、無傷の機体を狙われた……
極めて計画的な……襲撃……!
これは……確実に待ち伏せされていた……!)
募る焦り。
翔鶴(結局敵がよく見えない!不味い不味い不味い……!
ジンキング、しないと……!)
果たしてその焦りの通り、追撃は来た。
敵の射線を躱すために、上下左右に動く機動をジンキングと呼ぶ。
本来は、どうしても敵を振り切れない際の最終手段だ。
翔鶴はそれを繰り返すが、敵が見えていないのに射線をかわせる筈も無く。
更に8機が落とされる。
既に艦戦は全て失われ、残っている艦攻にも、無傷の物は殆どない。
これはつまり。
翔鶴(艦攻と、無傷の機体を狙われた……
極めて計画的な……襲撃……!
これは……確実に待ち伏せされていた……!)
525: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/25(月) 20:22:19.45 ID:GRn4Pv9R0
太郎『翔鶴、コマンド。状況を報告せよ、オーバー』
翔鶴の声に疑問を持った太郎が質問し。
翔鶴「コ、コマンド、翔鶴!
アンブッシュ!アンブッシュ!」
アンブッシュ、つまり、待ち伏せ。
翔鶴は艦載機の襲撃に慌てるあまり、この通信を艦載機通報では無く、通常コールサインから送信してしまった。
待ち伏せだ、と。
必然的に、艦隊の付近に伏兵が居たと、そう判断した金剛が艤装の速度を一気に落とし、摩耶と陽炎が翔鶴の左右に展開。
18戦隊は、極めてスムーズに輪形陣へと移行した。
金剛「Clear!」
陽炎「クリアー!」
摩耶「クリア!」
素早く全360度を三人が目視で索敵、敵が見えない事を伝え合う。
翔鶴「ディスリガード!
コレクトアイセイアゲン、艦載機通報、待ち伏せされていました!
ディフェンシブ!」
翔鶴が慌てて訂正すると共に、急減速によって目前に迫った金剛を避ける。
金剛も気付いて急回頭し、激突はすんでの所で回避された。
が、隊列は大きく乱れ。
艦隊の速度が一時大きく低下した。
翔鶴の声に疑問を持った太郎が質問し。
翔鶴「コ、コマンド、翔鶴!
アンブッシュ!アンブッシュ!」
アンブッシュ、つまり、待ち伏せ。
翔鶴は艦載機の襲撃に慌てるあまり、この通信を艦載機通報では無く、通常コールサインから送信してしまった。
待ち伏せだ、と。
必然的に、艦隊の付近に伏兵が居たと、そう判断した金剛が艤装の速度を一気に落とし、摩耶と陽炎が翔鶴の左右に展開。
18戦隊は、極めてスムーズに輪形陣へと移行した。
金剛「Clear!」
陽炎「クリアー!」
摩耶「クリア!」
素早く全360度を三人が目視で索敵、敵が見えない事を伝え合う。
翔鶴「ディスリガード!
コレクトアイセイアゲン、艦載機通報、待ち伏せされていました!
ディフェンシブ!」
翔鶴が慌てて訂正すると共に、急減速によって目前に迫った金剛を避ける。
金剛も気付いて急回頭し、激突はすんでの所で回避された。
が、隊列は大きく乱れ。
艦隊の速度が一時大きく低下した。
526: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/25(月) 20:23:03.45 ID:GRn4Pv9R0
更に、この騒乱の影響から艦載機に気を配れなかった翔鶴は、更に被撃墜数を重ねていた。
翔鶴(……ああもう!)
そもそも何故待ち伏せが、と苛立つ。
少ない兵力を更に分散させるなど、あり得ない。
あり得ない。あり得ない。
翔鶴(……あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない!)
そもそも、いつ飛ばした?
自分は襲撃の少し前から、絶えず監視していたはずだ。
直掩機以外の発艦はおろか、遠くの機影すら見ていない。
つまり、この待ち伏せ隊はかなり前から飛ばしていた事になる。
そして、増援に駆け付けるわけでもなく。
ただひたすらに、待っていた。
本隊が攻撃されても、ただひたすらに。
つまり、初めから攻撃後の帰還を狙った待ち伏せだった訳だ。
翔鶴(こんな、小規模艦隊同士の戦闘で、本隊の多大な損害と引き換えに……!
艦載機だけを狙い撃ちですか……?!
出鱈目な……!)
36機もあった此方の残機は、僅か艦攻が14機。
視力が回復し、太陽を直視しないようにして周囲を確認する。
翔鶴(……ああもう!)
そもそも何故待ち伏せが、と苛立つ。
少ない兵力を更に分散させるなど、あり得ない。
あり得ない。あり得ない。
翔鶴(……あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない!)
そもそも、いつ飛ばした?
自分は襲撃の少し前から、絶えず監視していたはずだ。
直掩機以外の発艦はおろか、遠くの機影すら見ていない。
つまり、この待ち伏せ隊はかなり前から飛ばしていた事になる。
そして、増援に駆け付けるわけでもなく。
ただひたすらに、待っていた。
本隊が攻撃されても、ただひたすらに。
つまり、初めから攻撃後の帰還を狙った待ち伏せだった訳だ。
翔鶴(こんな、小規模艦隊同士の戦闘で、本隊の多大な損害と引き換えに……!
艦載機だけを狙い撃ちですか……?!
出鱈目な……!)
36機もあった此方の残機は、僅か艦攻が14機。
視力が回復し、太陽を直視しないようにして周囲を確認する。
527: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/25(月) 20:25:14.93 ID:GRn4Pv9R0
翔鶴(居た……!
上空……14?15?の編隊……
そろそろ太陽から抜けます。
影が見えれば、ダイブアンドズームでも何とか……)
ダイブアンドズーム。
高空からの不意打ち後、再上昇しての再度攻撃を狙う戦術。
これは一見、一方的な戦術に見えるが、実際はそうでもない。
とにかく再上昇のタイミングが難しいのだ。遅ければ位置取りはずれ、最悪後ろを取られる。
早すぎても、弾が当たらない。
翔鶴(仕掛けてきた……4度目のアタック!)
翔鶴はタイミングを計る。
残った艦攻は何れも速度が低下していて、編隊が上手く組めない。
恐らく、これも計算済みなのだろう。
翔鶴(10機……いや、8機残れば……まだ、私は、戦える……!)
鳳翔隊が降下し、距離を詰め、まさに機銃を放とうとした、その瞬間。
翔鶴(小手先の戦術で……思い通りになると思うなぁぁぁぁぁ!)
完璧なタイミングで翔鶴隊はブレイク。
鳳翔隊は完全に攻撃のタイミングを失った。
かのように、見えた。
翔鶴(……違う!ハナから攻撃する気何てなかった!
格闘戦に持ち込むつもりで……減速していたんですね……!)
鳳翔は。
翔鶴の完璧なブレイクに対し。
完璧な減速から、格闘戦に持ち込んだ。
翔鶴(このっ……教本みたいな、動きですね……!)
最早翔鶴に、打つ手は無い。
上空……14?15?の編隊……
そろそろ太陽から抜けます。
影が見えれば、ダイブアンドズームでも何とか……)
ダイブアンドズーム。
高空からの不意打ち後、再上昇しての再度攻撃を狙う戦術。
これは一見、一方的な戦術に見えるが、実際はそうでもない。
とにかく再上昇のタイミングが難しいのだ。遅ければ位置取りはずれ、最悪後ろを取られる。
早すぎても、弾が当たらない。
翔鶴(仕掛けてきた……4度目のアタック!)
翔鶴はタイミングを計る。
残った艦攻は何れも速度が低下していて、編隊が上手く組めない。
恐らく、これも計算済みなのだろう。
翔鶴(10機……いや、8機残れば……まだ、私は、戦える……!)
鳳翔隊が降下し、距離を詰め、まさに機銃を放とうとした、その瞬間。
翔鶴(小手先の戦術で……思い通りになると思うなぁぁぁぁぁ!)
完璧なタイミングで翔鶴隊はブレイク。
鳳翔隊は完全に攻撃のタイミングを失った。
かのように、見えた。
翔鶴(……違う!ハナから攻撃する気何てなかった!
格闘戦に持ち込むつもりで……減速していたんですね……!)
鳳翔は。
翔鶴の完璧なブレイクに対し。
完璧な減速から、格闘戦に持ち込んだ。
翔鶴(このっ……教本みたいな、動きですね……!)
最早翔鶴に、打つ手は無い。
529: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/25(月) 21:03:38.64 ID:GRn4Pv9R0
◇
鳳翔「鳳翔より通達。奇襲に成功。
撃墜36、被撃墜0。敵は全滅です」
提督『上々だな』
鳳翔「直進する編隊飛行から、敵艦隊の位置、割り出しました。
南方を直進していると仮定し、相対座標180-30付近に敵艦隊が居ると予想されます」
提督『了解した』
鳳翔「第二航空隊、補給の為、一旦帰投します」
提督『よし。艦攻を出すぞ。最早敵に攻撃手段は無い。艦戦は艦攻の直掩だ』
鳳翔「了解」
一瞬にして航空優勢が入れ替わった。
提督(脆いな、翔鶴。この程度では……
いや、まだ結論を出すには早い)
提督(さてさて……次も肝心だ。しっかり頼むぞ、鳳翔)
鳳翔「鳳翔より通達。奇襲に成功。
撃墜36、被撃墜0。敵は全滅です」
提督『上々だな』
鳳翔「直進する編隊飛行から、敵艦隊の位置、割り出しました。
南方を直進していると仮定し、相対座標180-30付近に敵艦隊が居ると予想されます」
提督『了解した』
鳳翔「第二航空隊、補給の為、一旦帰投します」
提督『よし。艦攻を出すぞ。最早敵に攻撃手段は無い。艦戦は艦攻の直掩だ』
鳳翔「了解」
一瞬にして航空優勢が入れ替わった。
提督(脆いな、翔鶴。この程度では……
いや、まだ結論を出すには早い)
提督(さてさて……次も肝心だ。しっかり頼むぞ、鳳翔)
531: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/25(月) 21:23:17.83 ID:GRn4Pv9R0
………
……
…
北上「……カメラが無いから何とも言えないけどさぁ。まぁ、大体何が起こったかわかったわ」
大井「油断かしら?」
北上「何にせよ、待ち伏せを見つけられなかったって事だろうねぇ。
陣形も一時期乱れてヤバかった。あわや衝突ってカンジ」
大井「そりゃ、普通にアンブッシュ!なんて叫んだらそうなるわよ」
北上「相当テンパってるねぇ」
隼鷹「なんかよくわからんが……こっちが勝ってるんだろ?」
北上「隼鷹っちは空母だからもっとわかろうよ……」
隼鷹「うへへ」
大井「しっかし、翔鶴。48機喪失、ね。
鳳翔さんのキルレシオ、4.5よ4.5。とんでもない数字よね」
北上「ああんもう、翔ぴーしっかりぃー」
隼鷹「イケイケ鳳翔さん!」
…
……
………
……
…
北上「……カメラが無いから何とも言えないけどさぁ。まぁ、大体何が起こったかわかったわ」
大井「油断かしら?」
北上「何にせよ、待ち伏せを見つけられなかったって事だろうねぇ。
陣形も一時期乱れてヤバかった。あわや衝突ってカンジ」
大井「そりゃ、普通にアンブッシュ!なんて叫んだらそうなるわよ」
北上「相当テンパってるねぇ」
隼鷹「なんかよくわからんが……こっちが勝ってるんだろ?」
北上「隼鷹っちは空母だからもっとわかろうよ……」
隼鷹「うへへ」
大井「しっかし、翔鶴。48機喪失、ね。
鳳翔さんのキルレシオ、4.5よ4.5。とんでもない数字よね」
北上「ああんもう、翔ぴーしっかりぃー」
隼鷹「イケイケ鳳翔さん!」
…
……
………
532: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/25(月) 21:24:09.17 ID:GRn4Pv9R0
◇
翔鶴「……か、艦載機通報……全機、そ、喪失……」
翔鶴が震える声で言う。
陽炎「嘘……」
金剛「……」
太郎『……翔鶴、コマンド。
落ち着け。状況は絶望的ではない。
残機を駆使し、防空に努めよ』
太郎は努めて冷静に返すが。
翔鶴「翔鶴……了解」
沈痛な面持ちで呟く翔鶴。
予想し得なかった事態に、艦隊の空気が一気に重くなる。
しかし。
太郎は、これしきの事で動揺する男では無い。
太郎『……なんだ?お前達』
艦隊に、太郎は告げる。
太郎『怖気付いたのか?』
挑発するように。
摩耶はそれに対し、拳を打ち鳴らして応じる。
摩耶「ハッ!……んな訳ねぇだろ!」
陽炎「士気は高いわよ……!」
金剛「当たり前ネ……!」
太郎『いい返事だ。
……聞け!摩耶、陽炎、金剛!
お節介な翔鶴が、お前たちに見せ場を作ってくれたそうだ!
存分に実力を発揮しろ!』
金剛「Aye, aye, sir!」
太郎『派手に、行こうぜ……!』
翔鶴「……か、艦載機通報……全機、そ、喪失……」
翔鶴が震える声で言う。
陽炎「嘘……」
金剛「……」
太郎『……翔鶴、コマンド。
落ち着け。状況は絶望的ではない。
残機を駆使し、防空に努めよ』
太郎は努めて冷静に返すが。
翔鶴「翔鶴……了解」
沈痛な面持ちで呟く翔鶴。
予想し得なかった事態に、艦隊の空気が一気に重くなる。
しかし。
太郎は、これしきの事で動揺する男では無い。
太郎『……なんだ?お前達』
艦隊に、太郎は告げる。
太郎『怖気付いたのか?』
挑発するように。
摩耶はそれに対し、拳を打ち鳴らして応じる。
摩耶「ハッ!……んな訳ねぇだろ!」
陽炎「士気は高いわよ……!」
金剛「当たり前ネ……!」
太郎『いい返事だ。
……聞け!摩耶、陽炎、金剛!
お節介な翔鶴が、お前たちに見せ場を作ってくれたそうだ!
存分に実力を発揮しろ!』
金剛「Aye, aye, sir!」
太郎『派手に、行こうぜ……!』
533: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/25(月) 21:24:38.02 ID:GRn4Pv9R0
摩耶「へっ、任せとけよ……!」
陽炎「合点承知!」
金剛「Very well!」
翔鶴「……ぁ……」
太郎『翔鶴、コマンド。戦闘空中哨戒を継続しているか?オーバー』
翔鶴「は、はい!」
太郎『失った物はたかが艦載機48機。
たかが48機だ。
攻撃を終えた艦載機にどれ程の価値がある?
……これしきの事で抜かるなよ。
私の空母は負けちゃ居ない。
そうだろ?』
翔鶴「……はい!」
太郎『艦隊、針路ステディー!
島群は直ぐそこだ!敵も直ぐそこだ!
決戦の時は近いぞ……!』
陽炎「ええ!」
太郎『祭りだ!艦隊決戦だ!
諸君、白昼の花火大会と洒落込もうじゃあないか……!』
陽炎「合点承知!」
金剛「Very well!」
翔鶴「……ぁ……」
太郎『翔鶴、コマンド。戦闘空中哨戒を継続しているか?オーバー』
翔鶴「は、はい!」
太郎『失った物はたかが艦載機48機。
たかが48機だ。
攻撃を終えた艦載機にどれ程の価値がある?
……これしきの事で抜かるなよ。
私の空母は負けちゃ居ない。
そうだろ?』
翔鶴「……はい!」
太郎『艦隊、針路ステディー!
島群は直ぐそこだ!敵も直ぐそこだ!
決戦の時は近いぞ……!』
陽炎「ええ!」
太郎『祭りだ!艦隊決戦だ!
諸君、白昼の花火大会と洒落込もうじゃあないか……!』
544: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/26(火) 23:37:54.65 ID:Jb7T/n0L0
◇
足柄「あー……こちら足柄、戦闘序列を離脱する。これより単独航行に移行」
提督『了解した』
そこそこ速度が出ていた為、突出気味だった足柄が戦闘序列からの離脱を宣言した。
これで、艦隊は完全に3つに分かれた事になる。
低速の雷、鳳翔。
中速の足柄。
高速の榛名。
榛名『本部、こちら榛名。島影を経由して順調に航行中。敵偵察機見えず』
提督『了解。航行を続けろ』
大きく先行する榛名は、敵の偵察機から見えぬよう細心の注意を払いつつ進んでいた。
足柄「あー……こちら足柄、戦闘序列を離脱する。これより単独航行に移行」
提督『了解した』
そこそこ速度が出ていた為、突出気味だった足柄が戦闘序列からの離脱を宣言した。
これで、艦隊は完全に3つに分かれた事になる。
低速の雷、鳳翔。
中速の足柄。
高速の榛名。
榛名『本部、こちら榛名。島影を経由して順調に航行中。敵偵察機見えず』
提督『了解。航行を続けろ』
大きく先行する榛名は、敵の偵察機から見えぬよう細心の注意を払いつつ進んでいた。
545: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/26(火) 23:39:21.40 ID:Jb7T/n0L0
榛名(凄いです、鳳翔さん……私も頑張って……提督に褒められたい……)
決意を胸に、榛名は一人進む。
鳳翔「こちら鳳翔。艦載機補給完了。艦戦20、艦攻14。いつでも行けます」
素早く着艦と補給を終えた鳳翔が告げる。
提督『了解。全34機について、敵予測到達点に向け、攻撃隊としてすぐに発艦。
速攻だ……!』
鳳翔「鳳翔了解」
提督『総員、グズグズするなよ。
拙速を尊べ。
Smooth, Swift, Deadlyだ』
雷「……?!」
足柄『Rog.』
鳳翔「了解」
榛名『らじゃー!』
決意を胸に、榛名は一人進む。
鳳翔「こちら鳳翔。艦載機補給完了。艦戦20、艦攻14。いつでも行けます」
素早く着艦と補給を終えた鳳翔が告げる。
提督『了解。全34機について、敵予測到達点に向け、攻撃隊としてすぐに発艦。
速攻だ……!』
鳳翔「鳳翔了解」
提督『総員、グズグズするなよ。
拙速を尊べ。
Smooth, Swift, Deadlyだ』
雷「……?!」
足柄『Rog.』
鳳翔「了解」
榛名『らじゃー!』
546: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/26(火) 23:40:58.14 ID:Jb7T/n0L0
足柄『本部、こちら足柄。水偵発艦許可を』
翔鶴の残機は既に割れている。
艦攻48機、艦戦12機、艦偵1機の計61機を撃墜している。
つまり、残りは艦戦12機、艦偵11機だ。
対して、鳳翔は艦攻14機を含む計34機。この状況で艦戦がこちらに出張ってくる事はまず考えられない。
提督『足柄、発艦を許可する』
来るとしたら、それは艦偵。
水偵を上げ、遠方・高空で艦偵を発見出来たならば。
体の小さい艦娘など、側に島影が有ればいくらでも身を隠す事が出来る。
足柄『水偵3機発艦』
そして。
提督『鳳翔!敵は今、確実に動揺している!
冷静に考える時間なぞ与えるな!
一度膝をついた者を、再び立ち上がらせるな!
潰せ、潰せ、潰せ!』
鳳翔「はい。
……あなたの、仰せのままに」
翔鶴の残機は既に割れている。
艦攻48機、艦戦12機、艦偵1機の計61機を撃墜している。
つまり、残りは艦戦12機、艦偵11機だ。
対して、鳳翔は艦攻14機を含む計34機。この状況で艦戦がこちらに出張ってくる事はまず考えられない。
提督『足柄、発艦を許可する』
来るとしたら、それは艦偵。
水偵を上げ、遠方・高空で艦偵を発見出来たならば。
体の小さい艦娘など、側に島影が有ればいくらでも身を隠す事が出来る。
足柄『水偵3機発艦』
そして。
提督『鳳翔!敵は今、確実に動揺している!
冷静に考える時間なぞ与えるな!
一度膝をついた者を、再び立ち上がらせるな!
潰せ、潰せ、潰せ!』
鳳翔「はい。
……あなたの、仰せのままに」
547: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/26(火) 23:42:17.10 ID:Jb7T/n0L0
………
……
…
北上「諸君!白昼の花火大会と洒落込もうじゃないかぁ!んんー?」
大井「ふふふふ。後で本人に聞かせてあげましょうよ、それ」
北上「うはは!でも、まぁ士気は持ち直したね。
前々から思ってたけど、翔鶴はメンタルがちと弱いなぁ」
大井「そうね。今回は太郎さんが盛り上げたけれど……」
北上「……ま、ゴッさんが居るし、大丈夫っしょ」
隼鷹「ウチの提督もなんかかっこいい事言えよ!了解しか言わねぇ!」
大井「いやいや……本来は無線で雑談なんてご法度も良いところよ?」
北上「うははは!……こっちの勝ちだな!」
隼鷹「くっ……」
大井「……」
北上「しっかし、榛名っち単騎かぁ。
うーん……一応格闘戦控えろ、とは言われてるんだよね、榛名っち」
隼鷹「おう。提督が言ってたぞ。
向こうから仕掛けてこない限り、格闘戦は厳禁って」
……
…
北上「諸君!白昼の花火大会と洒落込もうじゃないかぁ!んんー?」
大井「ふふふふ。後で本人に聞かせてあげましょうよ、それ」
北上「うはは!でも、まぁ士気は持ち直したね。
前々から思ってたけど、翔鶴はメンタルがちと弱いなぁ」
大井「そうね。今回は太郎さんが盛り上げたけれど……」
北上「……ま、ゴッさんが居るし、大丈夫っしょ」
隼鷹「ウチの提督もなんかかっこいい事言えよ!了解しか言わねぇ!」
大井「いやいや……本来は無線で雑談なんてご法度も良いところよ?」
北上「うははは!……こっちの勝ちだな!」
隼鷹「くっ……」
大井「……」
北上「しっかし、榛名っち単騎かぁ。
うーん……一応格闘戦控えろ、とは言われてるんだよね、榛名っち」
隼鷹「おう。提督が言ってたぞ。
向こうから仕掛けてこない限り、格闘戦は厳禁って」
548: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/26(火) 23:43:11.53 ID:Jb7T/n0L0
北上「仕掛けてこない限り、か」
隼鷹「……そりゃ格闘戦のレンジでは、角度的に砲が当たらんから仕方無くね?」
北上「……やべぇなぁ……マズいことしたかなぁ」
大井「……大丈夫よ北上さん。
死にはしないわ。……多分。
摩耶は丈夫だし」
隼鷹「ええ……なんの話だよ……」
北上「いやぁ……アタシ、摩耶を煽っちゃったからさぁ。
なんか、アイツなら、自分から殴りかねんよなぁ、と……いちおー止められてるけど」
隼鷹「ええ……アタシゃどうなっても知らんよ……」
…
……
………
549: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/26(火) 23:44:58.03 ID:Jb7T/n0L0
◇
太郎は思案する。
太郎(ああは言った物の。計60機の損失は痛いな……
航空機数が逆転した。
さてどうすべきか……)
敵の次の一手は確実に航空機による攻めだ。
太郎(……敵を真似るか?)
艦戦を迎撃にあげない選択肢を考える。
太郎(ここで更に艦載機の損失を増やすのは良くない……
島群に空からの目無しで入るのは自殺行為だ)
しかし、そこで思い当たる。
太郎(……いや。ダメだ。陽炎と摩耶の練度では、対空砲だけでは対処が難しい……回避も。
誰かが被雷し、速力が低下した場合……それを置いて行くことは出来ない……特に制空能力の低下した今……孤立は即ち、轟沈だ)
つまり、被雷が有れば、艦隊全体の速度が低下する。
太郎(……やはり迎撃の艦載機は必要か……しかし、艦戦も一緒に来るだろう……ううむ。
向こうの方が数もあるだろうから……)
太郎は思案する。
太郎(ああは言った物の。計60機の損失は痛いな……
航空機数が逆転した。
さてどうすべきか……)
敵の次の一手は確実に航空機による攻めだ。
太郎(……敵を真似るか?)
艦戦を迎撃にあげない選択肢を考える。
太郎(ここで更に艦載機の損失を増やすのは良くない……
島群に空からの目無しで入るのは自殺行為だ)
しかし、そこで思い当たる。
太郎(……いや。ダメだ。陽炎と摩耶の練度では、対空砲だけでは対処が難しい……回避も。
誰かが被雷し、速力が低下した場合……それを置いて行くことは出来ない……特に制空能力の低下した今……孤立は即ち、轟沈だ)
つまり、被雷が有れば、艦隊全体の速度が低下する。
太郎(……やはり迎撃の艦載機は必要か……しかし、艦戦も一緒に来るだろう……ううむ。
向こうの方が数もあるだろうから……)
550: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/26(火) 23:45:57.83 ID:Jb7T/n0L0
太郎の立てた戦略に、航空劣勢となるシナリオは存在していなかった。
太郎(……それを見透かされた、かな。
しかし……艦隊を犠牲にして艦載機を落とすとはまた、破天荒な……)
どうしたものか、と考え、翔鶴に伝える
時間を提督が与える筈がなかった。
翔鶴「艦載機通報!タリホー!ベアリング3-1-5フォー1500!
敵の艦攻、下降中!」
太郎(早い……考える余裕を与えない、と……
しかし、1500の距離に接近されるまで発見出来なかったか、翔鶴。
やはり敗北が堪えている様だな)
とは言うものの、艦載機はかなり小さい。2000でギリギリ見えるかどうか、と言った程度だ。
足柄は3000の距離から視認したが、それは足柄がおかしいだけである。
太郎『……翔鶴、コマンド。敵に魚雷を撃たせるな』
太郎は、そう言う事しか出来なかった。
翔鶴「翔鶴、了解……!」
太郎(……それを見透かされた、かな。
しかし……艦隊を犠牲にして艦載機を落とすとはまた、破天荒な……)
どうしたものか、と考え、翔鶴に伝える
時間を提督が与える筈がなかった。
翔鶴「艦載機通報!タリホー!ベアリング3-1-5フォー1500!
敵の艦攻、下降中!」
太郎(早い……考える余裕を与えない、と……
しかし、1500の距離に接近されるまで発見出来なかったか、翔鶴。
やはり敗北が堪えている様だな)
とは言うものの、艦載機はかなり小さい。2000でギリギリ見えるかどうか、と言った程度だ。
足柄は3000の距離から視認したが、それは足柄がおかしいだけである。
太郎『……翔鶴、コマンド。敵に魚雷を撃たせるな』
太郎は、そう言う事しか出来なかった。
翔鶴「翔鶴、了解……!」
551: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/26(火) 23:47:37.41 ID:Jb7T/n0L0
が。
提督『鳳翔。恐らくワゴンホイールだ』
提督が別の戦術について言及した。
ワゴンホイール。
複数の戦闘機が同じ円上を旋回し、一機が後ろにつかれると、自動的に後方の味方が敵の後ろを取る事になる、という戦術であるが。
提督『二機編隊なら、敵の戦闘空中哨戒と見てまず間違いないだろう。
敵には12機しか無い。
2機編隊でサッチウィーブより、ワゴンホイールの方が現実的だ』
そう。
2機編隊でのサッチウィーブは、4機を一箇所に留める必要がある。
円周360度を三隊で見る事は非効率だし、穴も増える。
鳳翔「了解」
鳳翔はサッチウィーブの可能性を捨て、ワゴンホイールの対策へと切り替えた。
鳳翔は艦戦隊を4機ずつの5系統に分割。
うち1系統は、目前の艦戦を追って。
他3系統は敵を無視して直進。
最後の1系統は、高度を更に上げて、超高空からの視界を確保した。
提督『鳳翔。恐らくワゴンホイールだ』
提督が別の戦術について言及した。
ワゴンホイール。
複数の戦闘機が同じ円上を旋回し、一機が後ろにつかれると、自動的に後方の味方が敵の後ろを取る事になる、という戦術であるが。
提督『二機編隊なら、敵の戦闘空中哨戒と見てまず間違いないだろう。
敵には12機しか無い。
2機編隊でサッチウィーブより、ワゴンホイールの方が現実的だ』
そう。
2機編隊でのサッチウィーブは、4機を一箇所に留める必要がある。
円周360度を三隊で見る事は非効率だし、穴も増える。
鳳翔「了解」
鳳翔はサッチウィーブの可能性を捨て、ワゴンホイールの対策へと切り替えた。
鳳翔は艦戦隊を4機ずつの5系統に分割。
うち1系統は、目前の艦戦を追って。
他3系統は敵を無視して直進。
最後の1系統は、高度を更に上げて、超高空からの視界を確保した。
552: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/26(火) 23:48:14.05 ID:Jb7T/n0L0
その結果。
鳳翔(……後方で緩やかな旋回を続ける敵機が有りますね)
上空の系統を、直近のそれへの対処に充てる。
それとは別に、鳳翔は直進していた3系統をロールさせ、背面飛行に移行。
鳳翔(……居た)
自分の艦攻を狙った下降中の艦戦を、遥か先に見つける。
鳳翔(10……12機。
これで敵の位置は全て、把握出来ましたね。
どうやら艦戦の一部を囮にして、艦攻を優先的に抑えようとしている様子ですが……)
ふぅ、と短くため息。
今度は自分が高度も、速度も、数も勝っている。
気合いを入れて。
鳳翔(……補習の時間ですよ?)
鳳翔(……後方で緩やかな旋回を続ける敵機が有りますね)
上空の系統を、直近のそれへの対処に充てる。
それとは別に、鳳翔は直進していた3系統をロールさせ、背面飛行に移行。
鳳翔(……居た)
自分の艦攻を狙った下降中の艦戦を、遥か先に見つける。
鳳翔(10……12機。
これで敵の位置は全て、把握出来ましたね。
どうやら艦戦の一部を囮にして、艦攻を優先的に抑えようとしている様子ですが……)
ふぅ、と短くため息。
今度は自分が高度も、速度も、数も勝っている。
気合いを入れて。
鳳翔(……補習の時間ですよ?)
553: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/26(火) 23:49:01.88 ID:Jb7T/n0L0
◇
翔鶴「艦載機通報!
……艦戦、4機喪失……!ダメです、敵艦攻押さえきれません!
敵が防衛線を突破、方位2-7-0より侵入されました……!
備えて下さい!」
翔鶴はボロボロだった。
まず、障壁となる筈のワゴンホイールを垂直方向から崩され。
それを囮と割り切って、下の艦攻を攻撃したのがまずかった。
艦攻もまた、囮だったのだ。
敵艦攻2機の撃墜と引き換えに、翔鶴は艦戦の殆どを失ってしまっていた。
翔鶴(私の艦載機のせいで、味方は対空砲を撃てないままに接近されるわ、上空は取られるわ……どうして、こんな……私は……)
失敗をした者が、一番失敗し易いのいつか。
これも単純。
失敗の直後である。
ミスを取り返そうと、それだけに必死になり、艦攻ばかりを気にして視野の狭まった翔鶴に、圧倒的不利を覆せる道理は無かった。
翔鶴「艦載機通報!
……艦戦、4機喪失……!ダメです、敵艦攻押さえきれません!
敵が防衛線を突破、方位2-7-0より侵入されました……!
備えて下さい!」
翔鶴はボロボロだった。
まず、障壁となる筈のワゴンホイールを垂直方向から崩され。
それを囮と割り切って、下の艦攻を攻撃したのがまずかった。
艦攻もまた、囮だったのだ。
敵艦攻2機の撃墜と引き換えに、翔鶴は艦戦の殆どを失ってしまっていた。
翔鶴(私の艦載機のせいで、味方は対空砲を撃てないままに接近されるわ、上空は取られるわ……どうして、こんな……私は……)
失敗をした者が、一番失敗し易いのいつか。
これも単純。
失敗の直後である。
ミスを取り返そうと、それだけに必死になり、艦攻ばかりを気にして視野の狭まった翔鶴に、圧倒的不利を覆せる道理は無かった。
554: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/26(火) 23:50:11.80 ID:Jb7T/n0L0
翔鶴「ああ……」
最悪だ。
絶望が心を染めあげる。
正直、少し鳳翔を見下していた。
だって、自分は……自分は最前線の空母で……。
型落ち、教官風情に負ける訳が無いと。
それが、どうだ。
情けないーー
ドン!!!
翔鶴「ゴボッ……?!」
棒立ちで感傷に浸り、泣きそうになっていた翔鶴の全身に海水が打ち付けられた。
まるで至近距離に砲弾が着弾したかのような衝撃と水柱。
口に大量の海水が入り、咳き込む。
その正体は。
金剛の、海面への全力の踵落とし。
金剛は敢えて、それを翔鶴の近傍で行った。
金剛「Good morning ma'am.
Nap time's over.」
ずぶ濡れの翔鶴に、昼寝は終わりだ、と告げる。
最悪だ。
絶望が心を染めあげる。
正直、少し鳳翔を見下していた。
だって、自分は……自分は最前線の空母で……。
型落ち、教官風情に負ける訳が無いと。
それが、どうだ。
情けないーー
ドン!!!
翔鶴「ゴボッ……?!」
棒立ちで感傷に浸り、泣きそうになっていた翔鶴の全身に海水が打ち付けられた。
まるで至近距離に砲弾が着弾したかのような衝撃と水柱。
口に大量の海水が入り、咳き込む。
その正体は。
金剛の、海面への全力の踵落とし。
金剛は敢えて、それを翔鶴の近傍で行った。
金剛「Good morning ma'am.
Nap time's over.」
ずぶ濡れの翔鶴に、昼寝は終わりだ、と告げる。
555: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/26(火) 23:51:12.89 ID:Jb7T/n0L0
金剛「Do that later. You are not alone.」
反省は後でやれ、と。
お前は一人ではない、と。
翔鶴「……はい……っ」
お前は一人ではない。
叱責と同時に、励ましの言葉でもある。
今は、皆で凌がねば、ならない。
太郎『艦隊、対空砲火!短時間で火力を集中しろ!』
敵は既に程近い。
回避行動までの僅かな時間の間に、少しでも敵を削る。
金剛「回避ー!」
金剛がそう叫ぶ迄に、4機を撃墜。
敵の艦攻は僅か8機。
この数なら、恐らく1人に狙いを集中させる筈だ。
誰だ、誰を狙う?
緊迫の一瞬。
翔鶴「……私っ……?!」
翔鶴が、狙われた。
翔鶴(……どうしてっ、もう艦載機も無いのに……私を?!)
驚愕し、反応が遅れる。
慌てて回頭するが。
翔鶴(嫌……いやっ!)
当る。
その瞬間。
陽炎「翔鶴さんには……触れさせないんだからぁ!」
陽炎がすんでのところで、翔鶴を庇った。
着弾する。
反省は後でやれ、と。
お前は一人ではない、と。
翔鶴「……はい……っ」
お前は一人ではない。
叱責と同時に、励ましの言葉でもある。
今は、皆で凌がねば、ならない。
太郎『艦隊、対空砲火!短時間で火力を集中しろ!』
敵は既に程近い。
回避行動までの僅かな時間の間に、少しでも敵を削る。
金剛「回避ー!」
金剛がそう叫ぶ迄に、4機を撃墜。
敵の艦攻は僅か8機。
この数なら、恐らく1人に狙いを集中させる筈だ。
誰だ、誰を狙う?
緊迫の一瞬。
翔鶴「……私っ……?!」
翔鶴が、狙われた。
翔鶴(……どうしてっ、もう艦載機も無いのに……私を?!)
驚愕し、反応が遅れる。
慌てて回頭するが。
翔鶴(嫌……いやっ!)
当る。
その瞬間。
陽炎「翔鶴さんには……触れさせないんだからぁ!」
陽炎がすんでのところで、翔鶴を庇った。
着弾する。
556: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/26(火) 23:52:40.23 ID:Jb7T/n0L0
翔鶴「陽炎?!」
陽炎「えへへ……うわぁ……ベトベトだ……」
翔鶴「なんで……そんな馬鹿な事を……私はもう戦えないのよ……?」
陽炎「……わかんない。つい……」
翔鶴「……なんでっ!こんなーー」
太郎『翔鶴。今お前がすべき事は叱責では無いな』
陽炎の行動は、決して褒められた物では無い。
しかし、それで怒るのは違う。
翔鶴の、不甲斐ない自分への怒りが他人へと向けられようとしたのを、太郎が止めた。
翔鶴「は……い」
太郎『艦隊、ダメージリポート!』
金剛「No damage.」
摩耶「ノーダメージ」
陽炎「中破、速力低下、航行に問題なし」
翔鶴「ノー……ダメージ。艦戦全喪失。残機、彩雲11機……の、み」
太郎『把握した』
状況は太郎が想定した、限りなく最悪に近い。
そして。
摩耶「コマンド、摩耶。島群に差し掛かるぞ、オーバー」
艦隊は島群に到達していた。
陽炎「えへへ……うわぁ……ベトベトだ……」
翔鶴「なんで……そんな馬鹿な事を……私はもう戦えないのよ……?」
陽炎「……わかんない。つい……」
翔鶴「……なんでっ!こんなーー」
太郎『翔鶴。今お前がすべき事は叱責では無いな』
陽炎の行動は、決して褒められた物では無い。
しかし、それで怒るのは違う。
翔鶴の、不甲斐ない自分への怒りが他人へと向けられようとしたのを、太郎が止めた。
翔鶴「は……い」
太郎『艦隊、ダメージリポート!』
金剛「No damage.」
摩耶「ノーダメージ」
陽炎「中破、速力低下、航行に問題なし」
翔鶴「ノー……ダメージ。艦戦全喪失。残機、彩雲11機……の、み」
太郎『把握した』
状況は太郎が想定した、限りなく最悪に近い。
そして。
摩耶「コマンド、摩耶。島群に差し掛かるぞ、オーバー」
艦隊は島群に到達していた。
557: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/26(火) 23:53:10.91 ID:Jb7T/n0L0
太郎(不利な、択だ……引いても突っ込んでも、不利。
ならば……突っ込んで……
最速で抜ける他、無い)
太郎『艦隊、針路ステディー。戦闘序列、陽炎を基準に調整せよ』
金剛「Roger」
太郎(陽炎を一人、置き去りに……すべきか……?
いや、敵も速度が落ちているはず……
何より……空が完全に取られている今、一人置いていくことなど、出来ない……)
手で眉間を抑える。
太郎(完全に制空能力を喪失した……
マズイことに、なったな……
偵察も無しに、こんなに早く攻められるものか……?
……戦略が単純過ぎたか?)
太郎『水平に細心の注意を払えよ。
艦攻はたかが8機。落として避ければ、問題無い』
そう、無線では言うが。
そう、単純でない事は太郎が一番よくわかっていた。
ならば……突っ込んで……
最速で抜ける他、無い)
太郎『艦隊、針路ステディー。戦闘序列、陽炎を基準に調整せよ』
金剛「Roger」
太郎(陽炎を一人、置き去りに……すべきか……?
いや、敵も速度が落ちているはず……
何より……空が完全に取られている今、一人置いていくことなど、出来ない……)
手で眉間を抑える。
太郎(完全に制空能力を喪失した……
マズイことに、なったな……
偵察も無しに、こんなに早く攻められるものか……?
……戦略が単純過ぎたか?)
太郎『水平に細心の注意を払えよ。
艦攻はたかが8機。落として避ければ、問題無い』
そう、無線では言うが。
そう、単純でない事は太郎が一番よくわかっていた。
558: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/26(火) 23:53:54.18 ID:Jb7T/n0L0
◇
鳳翔「……撃墜12。被撃墜6。敵は完全に空戦能力を喪失しました」
提督『素晴らしい』
その声を聞きながら、鳳翔は飛行編隊を引き上げさせて行く。
鳳翔「敵艦隊、被雷した陽炎さんを中心とした隊形に移行して、島群へと侵入して行きます。針路2-7-0、速度低下」
提督『良いぞ。
正規空母相手によくやってくれた、鳳翔。素晴らしい戦果だ。
……流石、私の空母だな』
そんな、と照れる。
正直に、勝てて嬉しい。
褒められて、嬉しい。
期待に応える事が出来て、嬉しい。
鳳翔はニヤける口許を手で隠し、平静を装った。
鳳翔「……撃墜12。被撃墜6。敵は完全に空戦能力を喪失しました」
提督『素晴らしい』
その声を聞きながら、鳳翔は飛行編隊を引き上げさせて行く。
鳳翔「敵艦隊、被雷した陽炎さんを中心とした隊形に移行して、島群へと侵入して行きます。針路2-7-0、速度低下」
提督『良いぞ。
正規空母相手によくやってくれた、鳳翔。素晴らしい戦果だ。
……流石、私の空母だな』
そんな、と照れる。
正直に、勝てて嬉しい。
褒められて、嬉しい。
期待に応える事が出来て、嬉しい。
鳳翔はニヤける口許を手で隠し、平静を装った。
559: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/26(火) 23:55:48.80 ID:Jb7T/n0L0
提督『引き続き空は頼むぞ、鳳翔』
鳳翔「はい!私に、お任せ下さい」
丁度、榛名と足柄から通信が入る。
榛名『こちら榛名、島群に侵入しました』
足柄『こちら足柄、島群から5000の位置に到達。水偵からの視界もクリア』
満足そうに、提督は良し、と呟く。
提督『……さて、と。
空は鳳翔が取った。
食い荒らせ、餓狼共。
……狩りの時間だ』
鳳翔「はい!私に、お任せ下さい」
丁度、榛名と足柄から通信が入る。
榛名『こちら榛名、島群に侵入しました』
足柄『こちら足柄、島群から5000の位置に到達。水偵からの視界もクリア』
満足そうに、提督は良し、と呟く。
提督『……さて、と。
空は鳳翔が取った。
食い荒らせ、餓狼共。
……狩りの時間だ』
575: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/29(金) 22:08:14.35 ID:99biNk7PO
◇
金剛(さてと、どうすべきかしら……)
思案する。
金剛(こちらの手駒は無傷の私、摩耶、中破の陽炎……そして翔鶴……はもうダメね)
翔鶴はさっきから俯きっぱなしだ。
金剛(普段失敗しない子が立て続けに失敗すると、こうなるのよね……
ミスを誘発されたのだろうけど)
太郎『翔鶴、コマンド。偵察機上げろ、オーバー』
翔鶴「……」
太郎『翔鶴、コマンド。復唱を要求する、オーバー』
翔鶴「……あ、コマンド、翔鶴!偵察機了解」
そして、彩雲6機を空へと放つ。
金剛(これは……私と摩耶でなんとかするしか無い……
この演習は……負けられない)
金剛(さてと、どうすべきかしら……)
思案する。
金剛(こちらの手駒は無傷の私、摩耶、中破の陽炎……そして翔鶴……はもうダメね)
翔鶴はさっきから俯きっぱなしだ。
金剛(普段失敗しない子が立て続けに失敗すると、こうなるのよね……
ミスを誘発されたのだろうけど)
太郎『翔鶴、コマンド。偵察機上げろ、オーバー』
翔鶴「……」
太郎『翔鶴、コマンド。復唱を要求する、オーバー』
翔鶴「……あ、コマンド、翔鶴!偵察機了解」
そして、彩雲6機を空へと放つ。
金剛(これは……私と摩耶でなんとかするしか無い……
この演習は……負けられない)
576: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/29(金) 22:26:33.62 ID:99biNk7PO
◇
水偵から。
足柄はそれを見た。
足柄(?……光の帯が……
プロペラ?……偵察機?)
距離は……正面からではわからない。
三機あげた水偵のうち、別の二機からも同じ方向を伺う。
足柄(また光った……うーん?三角測距で……8000と見た)
記憶した三角関数から、おおよその距離を叩き出す。
距離8000。
サイズは掌大の、敵艦載機。
それは見える見えないでは無く、最早直感の領域に達しつつある。
僅かな、しかし特徴的な金属の反射光を、足柄は確かに捉えた。
水偵から。
足柄はそれを見た。
足柄(?……光の帯が……
プロペラ?……偵察機?)
距離は……正面からではわからない。
三機あげた水偵のうち、別の二機からも同じ方向を伺う。
足柄(また光った……うーん?三角測距で……8000と見た)
記憶した三角関数から、おおよその距離を叩き出す。
距離8000。
サイズは掌大の、敵艦載機。
それは見える見えないでは無く、最早直感の領域に達しつつある。
僅かな、しかし特徴的な金属の反射光を、足柄は確かに捉えた。
577: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/29(金) 22:42:02.61 ID:99biNk7PO
海図を開く。
足柄(……敵艦隊の位置的にもおかしくない。
うん、あれは偵察機でしょうね)
無線に向けて喋る。
足柄「……榛名、こちら足柄。そちらの正面、距離6000に不明機。
ブレイク、ブレイク、鳳翔、こちら足柄。方位1-5-0、距離12000に不明機を確認。進行方向不明。航空支援要請、送れ」
鳳翔『足柄、こちら鳳翔。要請を把握しました。少し待て』
そのまま鳳翔は提督に攻撃許可を取る。
鳳翔『……足柄、こちら鳳翔。要請は受理されました。艦戦、補給を途中で切り上げ、迎撃にあたります』
足柄「足柄了解」
これで、補給を終え次第、鳳翔の艦載機が偵察機の排除を行う筈だ。
ふぅ、と溜息。
足柄(……しっかし提督もエゲツない事させるわよね……
まぁ、榛名が適任なんだろうけど、さ)
提督の目論見は単純。
敵艦隊の真っ只中に榛名を放り込み、そこを鳳翔の艦攻と足柄が援護する。
足柄(……敵艦隊の位置的にもおかしくない。
うん、あれは偵察機でしょうね)
無線に向けて喋る。
足柄「……榛名、こちら足柄。そちらの正面、距離6000に不明機。
ブレイク、ブレイク、鳳翔、こちら足柄。方位1-5-0、距離12000に不明機を確認。進行方向不明。航空支援要請、送れ」
鳳翔『足柄、こちら鳳翔。要請を把握しました。少し待て』
そのまま鳳翔は提督に攻撃許可を取る。
鳳翔『……足柄、こちら鳳翔。要請は受理されました。艦戦、補給を途中で切り上げ、迎撃にあたります』
足柄「足柄了解」
これで、補給を終え次第、鳳翔の艦載機が偵察機の排除を行う筈だ。
ふぅ、と溜息。
足柄(……しっかし提督もエゲツない事させるわよね……
まぁ、榛名が適任なんだろうけど、さ)
提督の目論見は単純。
敵艦隊の真っ只中に榛名を放り込み、そこを鳳翔の艦攻と足柄が援護する。
578: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/29(金) 23:02:28.44 ID:99biNk7PO
密集形態を取る艦隊の中に、いきなり敵が単艦で出現したらどうなるか。
これは、敵味方双方ともが甚大な被害を被ることになる。
一見、敵の単艦が袋叩きに合って終わりそうだ。
しかし、輪形陣等の密集形態の中に入られた時点で、砲撃が極めて難しくなる。
砲撃が外れた場合、敵の背後の味方に当たる可能性がある故に、安易に撃てないのだ。
単艦側は如何に敵と同一射線上に立つか。
艦隊側は如何に敵と射線が被らないようにするか。
位置の取り合い、立ち回りの勝負になる。
榛名はこの立ち回りが上手かった。
否、経験から、体が立ち回りを覚えていた。
榛名は決して天才ではない。
只ひたすらに、強いられ。
研鑽を積み。
痛みと、怒りを糧に。
かつて、屍の山を築くに至った。
足柄(更に……味方の攻撃を避けるのも上手い、か……
これは良い事でも無いんだけど……)
最前線で戦っていた頃、榛名はその戦闘スタイルの性質上、戦果を独占する傾向があった。
それを疎ましく思う味方は、敵陣に榛名が居る居ないに関わらず、容赦の無い砲撃を加えて。
その為、背後からの味方の攻撃を避ける技術を、彼女は体得せざるを得なかった。
『魚雷』として『完成』する迄に。
榛名が歩んだ道程はあまりに痛ましく。
心が歪まない、筈もなかった。
これは、敵味方双方ともが甚大な被害を被ることになる。
一見、敵の単艦が袋叩きに合って終わりそうだ。
しかし、輪形陣等の密集形態の中に入られた時点で、砲撃が極めて難しくなる。
砲撃が外れた場合、敵の背後の味方に当たる可能性がある故に、安易に撃てないのだ。
単艦側は如何に敵と同一射線上に立つか。
艦隊側は如何に敵と射線が被らないようにするか。
位置の取り合い、立ち回りの勝負になる。
榛名はこの立ち回りが上手かった。
否、経験から、体が立ち回りを覚えていた。
榛名は決して天才ではない。
只ひたすらに、強いられ。
研鑽を積み。
痛みと、怒りを糧に。
かつて、屍の山を築くに至った。
足柄(更に……味方の攻撃を避けるのも上手い、か……
これは良い事でも無いんだけど……)
最前線で戦っていた頃、榛名はその戦闘スタイルの性質上、戦果を独占する傾向があった。
それを疎ましく思う味方は、敵陣に榛名が居る居ないに関わらず、容赦の無い砲撃を加えて。
その為、背後からの味方の攻撃を避ける技術を、彼女は体得せざるを得なかった。
『魚雷』として『完成』する迄に。
榛名が歩んだ道程はあまりに痛ましく。
心が歪まない、筈もなかった。
579: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/29(金) 23:59:11.15 ID:99biNk7PO
だから。
懸念がある。
足柄(……暴走しないわよね?)
普段は温厚な榛名だが、一度戦場に出ると、悪鬼羅刹と化す。
単艦で突っ込む以上、榛名が暴走し始めると、それを止める術はない。
最悪の場合、比喩抜きに皆殺しになる可能性すらあるのだ。
提督は榛名を信頼しているようだったが……
本土から帰り、榛名が少し変わったとは言え……些か無責任な気がしてならない。
足柄(万一の際は……あたしがなんとかしろって事かしら……)
提督が足柄の単独航行を認めたのは、そういう背景もあるのだろうか?
足柄(……あーあ……演習とは思えないくらい、しんどいじゃない……
おまけに地味だし……)
水偵から、岩陰に小ぢんまりと隠れる榛名を見つつ、はぁ、と短く溜息。
足柄(……ま、誰かさんが大変さをわかってくれたら、それで良いわね。
どうやって労って貰おうかしら……)
その誰かさんから、通信が入った。
提督『現在地の確認だ』
そう言って、艦隊の位置を確認していく。
榛名は島群内部、岩場の中を進んでおり。
足柄は島群の外、北北西から島群を臨み。
鳳翔と雷は、その足柄の背後に居た。
懸念がある。
足柄(……暴走しないわよね?)
普段は温厚な榛名だが、一度戦場に出ると、悪鬼羅刹と化す。
単艦で突っ込む以上、榛名が暴走し始めると、それを止める術はない。
最悪の場合、比喩抜きに皆殺しになる可能性すらあるのだ。
提督は榛名を信頼しているようだったが……
本土から帰り、榛名が少し変わったとは言え……些か無責任な気がしてならない。
足柄(万一の際は……あたしがなんとかしろって事かしら……)
提督が足柄の単独航行を認めたのは、そういう背景もあるのだろうか?
足柄(……あーあ……演習とは思えないくらい、しんどいじゃない……
おまけに地味だし……)
水偵から、岩陰に小ぢんまりと隠れる榛名を見つつ、はぁ、と短く溜息。
足柄(……ま、誰かさんが大変さをわかってくれたら、それで良いわね。
どうやって労って貰おうかしら……)
その誰かさんから、通信が入った。
提督『現在地の確認だ』
そう言って、艦隊の位置を確認していく。
榛名は島群内部、岩場の中を進んでおり。
足柄は島群の外、北北西から島群を臨み。
鳳翔と雷は、その足柄の背後に居た。
580: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/30(土) 00:12:25.57 ID:9/vbkoCzO
提督『概ね計画通りだな。
さて、榛名。お前にはこれから更に南下してもらう』
そう言って、提督は作戦を切り出した。
提督『敵は減速している。海域南端に到達後、回頭して敵の南東から接近、側面を叩け』
榛名『榛名、了解です!』
敵艦隊は海域の南端付近を真西へと航行している。
故に、北と西を最も警戒すると考え。
南東からの接近ならば、発見が遅れる可能性が高い。
提督『足柄。南東から榛名が敵を狩り出す。
敵は北西に逃れようとするだろう。
北北西に居るお前は、現在地で待ち伏せし、これを叩け』
足柄「足柄了解」
提督『鳳翔、雷はこのまま南下を続けろ。島群の真西に陣取り、艦載機の拠点となって貰う』
空母が敵に近い程、短い間隔で艦載機の補給を行え、攻撃できる回数が増える。
しかし、その分接近される危険性も高くなるのだが。
今回は榛名が南から攻め上がる為、提督は敢えて南下させる事で敵を遠ざけようとした。
鳳翔『鳳翔了解』
雷『雷了解よ』
提督『彩雲排除が接近開始の合図だ。各員、抜かるなよ。臨機応変にな』
さて、榛名。お前にはこれから更に南下してもらう』
そう言って、提督は作戦を切り出した。
提督『敵は減速している。海域南端に到達後、回頭して敵の南東から接近、側面を叩け』
榛名『榛名、了解です!』
敵艦隊は海域の南端付近を真西へと航行している。
故に、北と西を最も警戒すると考え。
南東からの接近ならば、発見が遅れる可能性が高い。
提督『足柄。南東から榛名が敵を狩り出す。
敵は北西に逃れようとするだろう。
北北西に居るお前は、現在地で待ち伏せし、これを叩け』
足柄「足柄了解」
提督『鳳翔、雷はこのまま南下を続けろ。島群の真西に陣取り、艦載機の拠点となって貰う』
空母が敵に近い程、短い間隔で艦載機の補給を行え、攻撃できる回数が増える。
しかし、その分接近される危険性も高くなるのだが。
今回は榛名が南から攻め上がる為、提督は敢えて南下させる事で敵を遠ざけようとした。
鳳翔『鳳翔了解』
雷『雷了解よ』
提督『彩雲排除が接近開始の合図だ。各員、抜かるなよ。臨機応変にな』
581: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/30(土) 00:26:26.70 ID:9/vbkoCzO
………
……
…
北上「いやいや、足柄さん目良すぎでしょ。笑えねーよ」
大井「彩雲上げたその瞬間に見つかったわね……
元々その方向に居るのがわかってるし、注視してたんでしょうけれど……それにしても……」
北上「うーん。太郎さんからしたら、敵が退いたタイミングでなんとか偵察をしたかっただろうに……
ヤバイなぁ!」
うがー!と、頭をワシャワシャ掻き毟る北上。
隼鷹「……しっかし、何で提督は榛名に南下させるんだ?
岩陰でじっとしてた方が航跡も無くて、不意打ちには良いんじゃ無いの?」
北上「停止、或いは減速しての待ち伏せは敵にバレづらいけど、確実に敵を葬れる確証がない限りは得策じゃないよぉ。
人間の足と違い、艦娘は急に加速できないからねぇ」
大井「艤装は停止状態から巡航速度になる迄、時間がかかるわ。
つまり、『停止状態の待ち伏せ』を突破された場合ーー」
北上「ーー通り過ぎて行く敵には追い付けないわ、敵からの良い標的になるわ、とエライ事になるワケよ」
大井「特に今回、待ち伏せを仕掛けるのは榛名さん1人。
固定砲台として4隻を相手にするには、火力が全く足りていないわね」
北上「待ち伏せとは、動的な奇襲に他ならないのだぁ!」
隼鷹「成る程なぁ……」
…
……
………
……
…
北上「いやいや、足柄さん目良すぎでしょ。笑えねーよ」
大井「彩雲上げたその瞬間に見つかったわね……
元々その方向に居るのがわかってるし、注視してたんでしょうけれど……それにしても……」
北上「うーん。太郎さんからしたら、敵が退いたタイミングでなんとか偵察をしたかっただろうに……
ヤバイなぁ!」
うがー!と、頭をワシャワシャ掻き毟る北上。
隼鷹「……しっかし、何で提督は榛名に南下させるんだ?
岩陰でじっとしてた方が航跡も無くて、不意打ちには良いんじゃ無いの?」
北上「停止、或いは減速しての待ち伏せは敵にバレづらいけど、確実に敵を葬れる確証がない限りは得策じゃないよぉ。
人間の足と違い、艦娘は急に加速できないからねぇ」
大井「艤装は停止状態から巡航速度になる迄、時間がかかるわ。
つまり、『停止状態の待ち伏せ』を突破された場合ーー」
北上「ーー通り過ぎて行く敵には追い付けないわ、敵からの良い標的になるわ、とエライ事になるワケよ」
大井「特に今回、待ち伏せを仕掛けるのは榛名さん1人。
固定砲台として4隻を相手にするには、火力が全く足りていないわね」
北上「待ち伏せとは、動的な奇襲に他ならないのだぁ!」
隼鷹「成る程なぁ……」
…
……
………
582: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/30(土) 01:09:03.61 ID:9/vbkoCzO
◇
翔鶴「……艦載機通報。
彩雲6機、全て敵艦載機に発見され、撤退。
敵艦隊の位置不明」
そう言って、ため息と共に翔鶴は彩雲を収容する。
太郎『目敏いな……艦戦は去っていったばかりだったが……
まともに補給せずに出て来たか』
こんなに早く敵と鉢合わせると言う事は。
彩雲が上がった事、及びその位置が敵に露見していたという事だ。
太郎(一体どこから……
見落とし?艦隊付近を別の艦載機が飛んでいる?
いや……思考を読まれた?)
太郎は眉間を押さえた。
翔鶴が信じられない程に追い込まれている。
素早い彩雲が、狭い演習海域で敵の影すら見れない状況は、異常だ。
太郎(……いや、そもそも航空機をほぼ全て喪失している状態が……
とにかく、今は艦娘の目視に頼るしかない)
翔鶴「……艦載機通報。
彩雲6機、全て敵艦載機に発見され、撤退。
敵艦隊の位置不明」
そう言って、ため息と共に翔鶴は彩雲を収容する。
太郎『目敏いな……艦戦は去っていったばかりだったが……
まともに補給せずに出て来たか』
こんなに早く敵と鉢合わせると言う事は。
彩雲が上がった事、及びその位置が敵に露見していたという事だ。
太郎(一体どこから……
見落とし?艦隊付近を別の艦載機が飛んでいる?
いや……思考を読まれた?)
太郎は眉間を押さえた。
翔鶴が信じられない程に追い込まれている。
素早い彩雲が、狭い演習海域で敵の影すら見れない状況は、異常だ。
太郎(……いや、そもそも航空機をほぼ全て喪失している状態が……
とにかく、今は艦娘の目視に頼るしかない)
583: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/30(土) 01:10:15.58 ID:9/vbkoCzO
海図を見る。
現在の艦隊の位置は、島群の中心部付近。
島群を半分抜けた計算になる。
太郎(……今の所待ち伏せは無し、か。敵も速度が落ちている艦に合わせていて、島群に到達してない……?
……いや、無いな……
どちらにせよ、そろそろ艦載機の二次攻撃隊が来てもおかしくない……)
本来ならば、艦戦もこれくらいのタイミングで来る筈だ。
それを読んでの彩雲だったのだが。
太郎(……空は一先ず置こう。
敵艦隊が速度を落としているとしたら……近くに居る筈だ)
でなければ、早すぎる対応の説明がつかない。
太郎(最後の観測と照らし合わせて、島群の北西に船団が居ると見て良いだろう。
北西に抜ける……そこに敵が居る筈だ……)
太郎『艦隊、針路3-1-5。敵が近い。気を抜くなよ!』
金剛「針路3-1-5, Roger」
輪形陣を維持したまま、方向転換。
翔鶴「……ごめんなさい、皆さん。
私が足を引っ張ってしまって……」
翔鶴が何度目かの謝罪をする。
現在の艦隊の位置は、島群の中心部付近。
島群を半分抜けた計算になる。
太郎(……今の所待ち伏せは無し、か。敵も速度が落ちている艦に合わせていて、島群に到達してない……?
……いや、無いな……
どちらにせよ、そろそろ艦載機の二次攻撃隊が来てもおかしくない……)
本来ならば、艦戦もこれくらいのタイミングで来る筈だ。
それを読んでの彩雲だったのだが。
太郎(……空は一先ず置こう。
敵艦隊が速度を落としているとしたら……近くに居る筈だ)
でなければ、早すぎる対応の説明がつかない。
太郎(最後の観測と照らし合わせて、島群の北西に船団が居ると見て良いだろう。
北西に抜ける……そこに敵が居る筈だ……)
太郎『艦隊、針路3-1-5。敵が近い。気を抜くなよ!』
金剛「針路3-1-5, Roger」
輪形陣を維持したまま、方向転換。
翔鶴「……ごめんなさい、皆さん。
私が足を引っ張ってしまって……」
翔鶴が何度目かの謝罪をする。
584: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/30(土) 01:11:30.30 ID:9/vbkoCzO
陽炎「クヨクヨしない!」
金剛「……翔鶴はもう仕事をしたヨ。後は任せナサイ!」
ぽんぽん、と肩を叩いて励ます。
金剛「艤装へのダメージ的にはこっちが有利ネ。
後は榛名さえなんとか出来れば、どうにでもなるヨ」
軽くウインク。
本当は言いたい事もある。
が、今それを言っても、状況の改善は見込めない。
ならば黙っていた方が良いと言うものだ。
陽炎「問題はその榛名さんが、どこに居るかなんだけど……」
摩耶「……今の所、見えねえよなぁ」
金剛「気を抜いてはNo!ヨー」
陽炎「きっと敵も固まってるんじゃないかしら?」
陽炎が楽観的な意見を述べる。
金剛「それはあり得ないネ」
陽炎「そう?」
金剛「敵は無思慮では無いヨ。
何故、艤装を犠牲にしてまで此方の航空戦力を削ったかを考えるネ」
摩耶「……この島群で、事を有利に運ぶため、か」
金剛「Exactly. 今から島群を抜けるまでの時間、そこが一番危ないヨ」
絶対に仕掛けて来る。
その確信が金剛にはあった。
陽炎「そうね……索敵、索敵……」
金剛「……翔鶴はもう仕事をしたヨ。後は任せナサイ!」
ぽんぽん、と肩を叩いて励ます。
金剛「艤装へのダメージ的にはこっちが有利ネ。
後は榛名さえなんとか出来れば、どうにでもなるヨ」
軽くウインク。
本当は言いたい事もある。
が、今それを言っても、状況の改善は見込めない。
ならば黙っていた方が良いと言うものだ。
陽炎「問題はその榛名さんが、どこに居るかなんだけど……」
摩耶「……今の所、見えねえよなぁ」
金剛「気を抜いてはNo!ヨー」
陽炎「きっと敵も固まってるんじゃないかしら?」
陽炎が楽観的な意見を述べる。
金剛「それはあり得ないネ」
陽炎「そう?」
金剛「敵は無思慮では無いヨ。
何故、艤装を犠牲にしてまで此方の航空戦力を削ったかを考えるネ」
摩耶「……この島群で、事を有利に運ぶため、か」
金剛「Exactly. 今から島群を抜けるまでの時間、そこが一番危ないヨ」
絶対に仕掛けて来る。
その確信が金剛にはあった。
陽炎「そうね……索敵、索敵……」
585: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/30(土) 01:13:21.10 ID:9/vbkoCzO
一般的に、強いストレス下での索敵中、意識は前のめりになる。
敵がどこに潜んでいるかわからない。
ならば。
自分達が何事も無く通って来た道より、未だ見ぬ前方に敵が潜む。
そう思えるのは必然だ。
翔鶴「……コマンド、翔鶴。強行偵察を提案、オーバー」
太郎『……翔鶴、コマンド。強行偵察をーー』
太郎と翔鶴が通信している時。
現にそれは、前から来た。
前方。
岩と岩の隙間を縫うように飛ぶ何か。
金剛「Flash, flash, flash!
Contact hostile warbirds, 10 o'clock!」
会話中の無線に割り込んで叫ぶ。
10時の方向に、敵艦載機を見たからだ。
岩場での、艦攻の低空飛行。
それは、空母にとって難易度が高いが。
同時に隠匿効果も高く。
故に、接近に気付くのが遅れる。
金剛の声に呼応して、全員が対空兵器を構えた。
太郎『接近を許すな!放て!』
号令と共に発砲。
張られる弾幕。
敵がどこに潜んでいるかわからない。
ならば。
自分達が何事も無く通って来た道より、未だ見ぬ前方に敵が潜む。
そう思えるのは必然だ。
翔鶴「……コマンド、翔鶴。強行偵察を提案、オーバー」
太郎『……翔鶴、コマンド。強行偵察をーー』
太郎と翔鶴が通信している時。
現にそれは、前から来た。
前方。
岩と岩の隙間を縫うように飛ぶ何か。
金剛「Flash, flash, flash!
Contact hostile warbirds, 10 o'clock!」
会話中の無線に割り込んで叫ぶ。
10時の方向に、敵艦載機を見たからだ。
岩場での、艦攻の低空飛行。
それは、空母にとって難易度が高いが。
同時に隠匿効果も高く。
故に、接近に気付くのが遅れる。
金剛の声に呼応して、全員が対空兵器を構えた。
太郎『接近を許すな!放て!』
号令と共に発砲。
張られる弾幕。
586: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/30(土) 01:18:52.05 ID:9/vbkoCzO
前方からの艦載機に、対処する。
対処は出来ている。
敵は弾幕の前に、攻めあぐねているようだ。
しかし。
ーーこれで、良いのか?
金剛の理性は。
艦攻の脅威を捉えるが。
金剛の本能は。
疑問を呈していた。
艦攻だけ?
艦攻だけの攻撃があり得るのか?
提督がそんな中途半端な事をさせるのか?
自分が見ている光景は、作られたものじゃないのか?
……榛名が居るんじゃ無いのか?
この状況で榛名が居るとしたら何処だ?
ーー後ろだ。
対空攻撃の最中、冷静に思考し。
バッと勢いよく、振り返る。
背後、輪形陣の後部に陣取る摩耶と目が合う。
いきなり、主砲に切り替えつつ振り返る金剛に、怪訝な顔を向ける摩耶。
その摩耶の、更に向こう側。
奴は居た。
否。
このタイミングで、居ない訳が無かった。
金剛「摩ぁ耶ーー!」
叫ぶ。
反射的にその場でしゃがむ摩耶。
太郎の攻撃許可を待っている暇はない。
榛名との距離が余りにも近い。
もし弾をばら撒かれたら、艦隊は瓦解する。
終わりだ。
しかし。
だからこそ。
金剛は冷静に。
回頭中にも関わらず、榛名に狙いをつける。
唸る35.6cm砲。
揚弾。装填。閉鎖。着火。
金剛「ーーFire.」
ーー滑らかに、素早く。
火力投射。
対処は出来ている。
敵は弾幕の前に、攻めあぐねているようだ。
しかし。
ーーこれで、良いのか?
金剛の理性は。
艦攻の脅威を捉えるが。
金剛の本能は。
疑問を呈していた。
艦攻だけ?
艦攻だけの攻撃があり得るのか?
提督がそんな中途半端な事をさせるのか?
自分が見ている光景は、作られたものじゃないのか?
……榛名が居るんじゃ無いのか?
この状況で榛名が居るとしたら何処だ?
ーー後ろだ。
対空攻撃の最中、冷静に思考し。
バッと勢いよく、振り返る。
背後、輪形陣の後部に陣取る摩耶と目が合う。
いきなり、主砲に切り替えつつ振り返る金剛に、怪訝な顔を向ける摩耶。
その摩耶の、更に向こう側。
奴は居た。
否。
このタイミングで、居ない訳が無かった。
金剛「摩ぁ耶ーー!」
叫ぶ。
反射的にその場でしゃがむ摩耶。
太郎の攻撃許可を待っている暇はない。
榛名との距離が余りにも近い。
もし弾をばら撒かれたら、艦隊は瓦解する。
終わりだ。
しかし。
だからこそ。
金剛は冷静に。
回頭中にも関わらず、榛名に狙いをつける。
唸る35.6cm砲。
揚弾。装填。閉鎖。着火。
金剛「ーーFire.」
ーー滑らかに、素早く。
火力投射。
598: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:24:19.96 ID:1MAWl3G60
◇
金剛がいきなり振り向いて。
砲撃された。
榛名「……っ!」
それは、輪形陣へ突入するつもりだった榛名の虚をつく形となり。
ドン!
上がる水柱。
直撃弾は無し。
金剛の砲撃は、急回頭に伴う慣性力により狙いが狂ったのだ。
しかし、至近弾は榛名の体制を崩す。
お陰で、榛名はスムーズに射撃姿勢への移行が出来なかった。
榛名(やりますねぇ……)
ストレスを与えつつ、目の前に脅威をぶら下げて。
更に、敢えて反撃を貰うことで意識を完全に釣り上げる。
鳳翔主導の、上手い陽動だった。
にも関わらず、まるで榛名の存在がわかっていたかのような、振り向きざまの攻撃。
金剛がいきなり振り向いて。
砲撃された。
榛名「……っ!」
それは、輪形陣へ突入するつもりだった榛名の虚をつく形となり。
ドン!
上がる水柱。
直撃弾は無し。
金剛の砲撃は、急回頭に伴う慣性力により狙いが狂ったのだ。
しかし、至近弾は榛名の体制を崩す。
お陰で、榛名はスムーズに射撃姿勢への移行が出来なかった。
榛名(やりますねぇ……)
ストレスを与えつつ、目の前に脅威をぶら下げて。
更に、敢えて反撃を貰うことで意識を完全に釣り上げる。
鳳翔主導の、上手い陽動だった。
にも関わらず、まるで榛名の存在がわかっていたかのような、振り向きざまの攻撃。
599: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:25:41.05 ID:1MAWl3G60
榛名(運が良い……というのは過小評価ですね。
読まれましたか)
舌打ち。
金剛が再装填し、狙いをつけようとしている。
目の前に、金剛の砲撃を避け、膝立ち状態の摩耶も居て。
その摩耶もまた、すぐにでも動き出せる状況の中、砲を構えようとしていた。
対空砲火に勤しむその他の二人も、榛名の存在は把握している。
榛名(不意打ち失敗……
何か対策を講じねばなりませんね)
これが実戦ならば榛名は艤装の砲塔等、機関部以外の部位を全てパージ、身軽になって格闘戦を挑むが……
榛名(訓練で艤装を海中投棄するのはご法度ですし。サルベージが大変ですから……)
四門の主砲が重い。
動きが鈍重にならざるを得ない。
榛名(……せめて格闘戦が許可されていれば……)
眉をひそめる。
訓練用の砲弾がある砲撃戦とは違い、格闘戦では訓練でも普通にダメージが入る。
実戦では格闘戦がある程度有効な為に、訓練としての格闘戦を禁じる規則は無い。
しかし、特に最前線の部隊は損害を嫌って、格闘戦を行わない事を不文律としている。
不文律と、している。
格闘戦を禁じる規則は無い。
格闘戦は、起こりうる。
榛名(……)
読まれましたか)
舌打ち。
金剛が再装填し、狙いをつけようとしている。
目の前に、金剛の砲撃を避け、膝立ち状態の摩耶も居て。
その摩耶もまた、すぐにでも動き出せる状況の中、砲を構えようとしていた。
対空砲火に勤しむその他の二人も、榛名の存在は把握している。
榛名(不意打ち失敗……
何か対策を講じねばなりませんね)
これが実戦ならば榛名は艤装の砲塔等、機関部以外の部位を全てパージ、身軽になって格闘戦を挑むが……
榛名(訓練で艤装を海中投棄するのはご法度ですし。サルベージが大変ですから……)
四門の主砲が重い。
動きが鈍重にならざるを得ない。
榛名(……せめて格闘戦が許可されていれば……)
眉をひそめる。
訓練用の砲弾がある砲撃戦とは違い、格闘戦では訓練でも普通にダメージが入る。
実戦では格闘戦がある程度有効な為に、訓練としての格闘戦を禁じる規則は無い。
しかし、特に最前線の部隊は損害を嫌って、格闘戦を行わない事を不文律としている。
不文律と、している。
格闘戦を禁じる規則は無い。
格闘戦は、起こりうる。
榛名(……)
600: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:26:45.98 ID:1MAWl3G60
榛名は、英雄提督の忠実な僕だった。
理性がある以上。
たかが演習で暴走し、提督の信頼を失う訳にはいかない。
が。
榛名(……私の)
大切な男の名誉が失われる事を、榛名の心は許さなかった。
榛名(私の私の私の提督が……18戦隊?なんて……
聞いたこと無いような部隊にぃ……
負ける事は……この私が許しませんよ……)
しかし。
ここで自分が敵を撃破出来なければ負けるだろう。
思考する。
榛名(摩耶さん……
応接室で、好戦的な視線を私に向けていましたね……)
金剛との会話を思い出す。
榛名(最近珍しい近接武闘派、らしいですね……
でも、実戦経験は浅そう。
そして同僚との仲も良い……)
薄ら笑いを浮かべながら出した結論は。
榛名(……取り敢えず煽ってみるか)
理性がある以上。
たかが演習で暴走し、提督の信頼を失う訳にはいかない。
が。
榛名(……私の)
大切な男の名誉が失われる事を、榛名の心は許さなかった。
榛名(私の私の私の提督が……18戦隊?なんて……
聞いたこと無いような部隊にぃ……
負ける事は……この私が許しませんよ……)
しかし。
ここで自分が敵を撃破出来なければ負けるだろう。
思考する。
榛名(摩耶さん……
応接室で、好戦的な視線を私に向けていましたね……)
金剛との会話を思い出す。
榛名(最近珍しい近接武闘派、らしいですね……
でも、実戦経験は浅そう。
そして同僚との仲も良い……)
薄ら笑いを浮かべながら出した結論は。
榛名(……取り敢えず煽ってみるか)
601: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:27:44.51 ID:1MAWl3G60
どうせ自分の体勢は崩れている。
砲撃は止めだ。
そう決めると、榛名は前のめりのまま、摩耶に向かって全速力を維持して突っ込む。
摩耶「……!」
摩耶も反応する。
この重巡もまた砲撃を断念し、位置取りに専念するようだ。
再装填を終え、左前方で砲を構える金剛の射線を考慮し、前に出る榛名の右から背後へ抜けようとする。
が。
その程度の動きが予想出来ない榛名ではない。
榛名は既に右寄りの針路を取っていた。
摩耶が顔を顰める。
結果。二人は交差地点で、艤装が接触する程に接近。
交錯の瞬間。
榛名は勢いよく右手を振り上げた。
摩耶は防御のため、慌てて顔の前で腕を交差させる。
しかし。
榛名は、果たして右手を挙げただけであった。
砲撃は止めだ。
そう決めると、榛名は前のめりのまま、摩耶に向かって全速力を維持して突っ込む。
摩耶「……!」
摩耶も反応する。
この重巡もまた砲撃を断念し、位置取りに専念するようだ。
再装填を終え、左前方で砲を構える金剛の射線を考慮し、前に出る榛名の右から背後へ抜けようとする。
が。
その程度の動きが予想出来ない榛名ではない。
榛名は既に右寄りの針路を取っていた。
摩耶が顔を顰める。
結果。二人は交差地点で、艤装が接触する程に接近。
交錯の瞬間。
榛名は勢いよく右手を振り上げた。
摩耶は防御のため、慌てて顔の前で腕を交差させる。
しかし。
榛名は、果たして右手を挙げただけであった。
602: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:31:02.07 ID:1MAWl3G60
摩耶は腕を交差させたまま、榛名の右腕の下を、間抜けに通り過ぎる。
攻撃する代わり。
榛名は、すれ違い様に。
無様な摩耶を鼻で笑った。
部隊間、司令官同士の関係に気を遣った、最低限の煽り。
だが。
たったそれだけの事が。
摩耶の目を大きく見開かせた。
そんな摩耶の様子を目の端に捉えつつ、榛名は針路を変えた。
その先には陽炎。
被弾し、弱っている駆逐艦だ。
榛名は、金剛すら無視し。
摩耶に見せつけるように砲を構える。
フリをした。
攻撃する代わり。
榛名は、すれ違い様に。
無様な摩耶を鼻で笑った。
部隊間、司令官同士の関係に気を遣った、最低限の煽り。
だが。
たったそれだけの事が。
摩耶の目を大きく見開かせた。
そんな摩耶の様子を目の端に捉えつつ、榛名は針路を変えた。
その先には陽炎。
被弾し、弱っている駆逐艦だ。
榛名は、金剛すら無視し。
摩耶に見せつけるように砲を構える。
フリをした。
603: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:32:42.43 ID:1MAWl3G60
◇
金剛(摩耶が射線から抜けた……貰ったわ、榛名!)
ニヤリと笑う金剛がいよいよ砲を放とうとする。
金剛(狙いは陽炎?この状況で私を無視するとは、いい度胸ね……!)
最早、砲が外れる距離ではない。
艤装の砲塔、その栓尾に火を入れようとした、その瞬間。
摩耶「撃たせねぇぇぇ!」
摩耶が、榛名に背後から殴りかかっていた。
金剛「What the……
xxxx摩耶……!
Get the hell out of there!」
味方の乱入で、主砲を撃てなくなった金剛が叫ぶ。
金剛(摩耶が射線から抜けた……貰ったわ、榛名!)
ニヤリと笑う金剛がいよいよ砲を放とうとする。
金剛(狙いは陽炎?この状況で私を無視するとは、いい度胸ね……!)
最早、砲が外れる距離ではない。
艤装の砲塔、その栓尾に火を入れようとした、その瞬間。
摩耶「撃たせねぇぇぇ!」
摩耶が、榛名に背後から殴りかかっていた。
金剛「What the……
xxxx摩耶……!
Get the hell out of there!」
味方の乱入で、主砲を撃てなくなった金剛が叫ぶ。
604: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:33:17.92 ID:1MAWl3G60
摩耶「んな事してたら陽炎が撃たれるだろうが!」
負けじと摩耶も叫び返す。
金剛(何故?!さっきまで格闘戦に持ち込む気配は無かったのに……!
今、今、撃てていれば確実にもっていけた……!)
金剛は地団駄を踏みたい気分に駆られた。
が、摩耶は摩耶で頭に血が昇っていて。
摩耶(この野郎……!
アタシを、馬鹿にしやがって……
金剛も、陽炎をダシに使うような真似は気持ち良くねぇよ……!)
すっかり榛名の術中に嵌り、摩耶は拳を構える。
摩耶(つまりアタシがケリをつければ良いだろ!
魚雷か何だか知らんが、ぶっ倒してやらぁ!)
狙うは榛名の脊椎付近にある、判定装置。
これを破壊すれば、自動的に轟沈判定となる。
摩耶「シッ……!」
放つ、渾身の右ストレート。
負けじと摩耶も叫び返す。
金剛(何故?!さっきまで格闘戦に持ち込む気配は無かったのに……!
今、今、撃てていれば確実にもっていけた……!)
金剛は地団駄を踏みたい気分に駆られた。
が、摩耶は摩耶で頭に血が昇っていて。
摩耶(この野郎……!
アタシを、馬鹿にしやがって……
金剛も、陽炎をダシに使うような真似は気持ち良くねぇよ……!)
すっかり榛名の術中に嵌り、摩耶は拳を構える。
摩耶(つまりアタシがケリをつければ良いだろ!
魚雷か何だか知らんが、ぶっ倒してやらぁ!)
狙うは榛名の脊椎付近にある、判定装置。
これを破壊すれば、自動的に轟沈判定となる。
摩耶「シッ……!」
放つ、渾身の右ストレート。
605: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:34:27.59 ID:1MAWl3G60
◇
雑魚が掛かったぞ。
榛名はほくそ笑む。
なんと仲間思いで。
なんと御し易い艦娘か。
榛名は、摩耶の右ストレートを艤装で受けた。
ガゥン!
軋む砲塔。
歪む艤装。
榛名「きゃ……!」
わざとらしく声を上げる。
無線がその声を拾うように。
鳳翔の艦攻からもその光景は見えていた。
鳳翔『こちら鳳翔。摩耶さんが榛名さんに格闘戦を……!』
少し焦ったような報告。
提督『何っ?』
提督が驚く。
鳳翔『榛名さんからは攻撃を行ってません……
こ、このままでは……!』
事実、摩耶に向き直った榛名は、摩耶の怒濤の攻撃を受けていた。
素手の攻撃は、面積が小さく。
ガードが難しい。
それ故に、拳が当たる。
雑魚が掛かったぞ。
榛名はほくそ笑む。
なんと仲間思いで。
なんと御し易い艦娘か。
榛名は、摩耶の右ストレートを艤装で受けた。
ガゥン!
軋む砲塔。
歪む艤装。
榛名「きゃ……!」
わざとらしく声を上げる。
無線がその声を拾うように。
鳳翔の艦攻からもその光景は見えていた。
鳳翔『こちら鳳翔。摩耶さんが榛名さんに格闘戦を……!』
少し焦ったような報告。
提督『何っ?』
提督が驚く。
鳳翔『榛名さんからは攻撃を行ってません……
こ、このままでは……!』
事実、摩耶に向き直った榛名は、摩耶の怒濤の攻撃を受けていた。
素手の攻撃は、面積が小さく。
ガードが難しい。
それ故に、拳が当たる。
606: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:36:25.62 ID:1MAWl3G60
榛名「て、提督ぅ……あうっ」
保護欲を掻き立てるような、甘える声で呼び掛け。
榛名は、致命的な技だけを防ぎ、避け、提督の許可を待つ。
格闘戦の許可を。
摩耶「喋くりたぁ、悠長だな、ええ?!」
摩耶は攻勢を強めた。
榛名「くっ……!」
なんとか捌く。
鳳翔『提督……!』
榛名と摩耶は密着している為、攻撃機による援護も難しい。
提督は判断を迫られていた。
榛名を信用していない訳ではない。
訓練でも暴走する事は無く。
何より、本土で黒提督を殺さなかった。
過去に暴走した際も、榛名が艦娘を殺害した事はない。
故に、提督は榛名が艦娘を殺害する事は無いだろうと踏んでいた。
だが……
保護欲を掻き立てるような、甘える声で呼び掛け。
榛名は、致命的な技だけを防ぎ、避け、提督の許可を待つ。
格闘戦の許可を。
摩耶「喋くりたぁ、悠長だな、ええ?!」
摩耶は攻勢を強めた。
榛名「くっ……!」
なんとか捌く。
鳳翔『提督……!』
榛名と摩耶は密着している為、攻撃機による援護も難しい。
提督は判断を迫られていた。
榛名を信用していない訳ではない。
訓練でも暴走する事は無く。
何より、本土で黒提督を殺さなかった。
過去に暴走した際も、榛名が艦娘を殺害した事はない。
故に、提督は榛名が艦娘を殺害する事は無いだろうと踏んでいた。
だが……
607: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:36:53.76 ID:1MAWl3G60
提督(……太郎くんのとこの新人と、榛名を闘わせて良いのか?)
殺害する事は無いだろうが、それでも。
榛名『痛いっ!……てい……とくっ!』
無線から聞こえる、悲痛な榛名の声。
榛名の猫被りを看過できない提督では無い、が。
心を動かされない訳では無い。
決断する。
提督『……くれぐれもやり過ぎるなよ、榛名』
提督は仕方ない、と溜息と共に告げて。
榛名「……ありがとう、ございます」
榛名の口元は歪に吊り上がる。
殺害する事は無いだろうが、それでも。
榛名『痛いっ!……てい……とくっ!』
無線から聞こえる、悲痛な榛名の声。
榛名の猫被りを看過できない提督では無い、が。
心を動かされない訳では無い。
決断する。
提督『……くれぐれもやり過ぎるなよ、榛名』
提督は仕方ない、と溜息と共に告げて。
榛名「……ありがとう、ございます」
榛名の口元は歪に吊り上がる。
608: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:37:26.72 ID:1MAWl3G60
◇
摩耶(防戦一方かよ……!)
自分の有効打が無い事に苛立つ。
摩耶「口程にもねぇなぁ、オイ!」
榛名「……」
摩耶(埒があかねぇ……投げるか)
摩耶は更に距離を詰める。
右の中段正拳突き。
防がれるが、無論それを読んでの事だ。
摩耶(貰うぜ右手……!)
摩耶は、左手を伸ばす。
その手は、ガードの為に上がった、榛名の右手首を掴み。
引き寄せる。
摩耶(防戦一方かよ……!)
自分の有効打が無い事に苛立つ。
摩耶「口程にもねぇなぁ、オイ!」
榛名「……」
摩耶(埒があかねぇ……投げるか)
摩耶は更に距離を詰める。
右の中段正拳突き。
防がれるが、無論それを読んでの事だ。
摩耶(貰うぜ右手……!)
摩耶は、左手を伸ばす。
その手は、ガードの為に上がった、榛名の右手首を掴み。
引き寄せる。
609: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:37:58.64 ID:1MAWl3G60
榛名「わ……」
前のめりになる榛名。
その襟元が空いた。
どう投げる?
腰で投げるには艤装が邪魔だ。
……大外刈りで後頭部から落としてやろう。
摩耶(決まりだ)
榛名は今、体勢を崩しているように見えた。
今のうちに釣り手をとるべし、と榛名の空いた襟に右手を伸ばす。
誘われている事に気付かずに。
前のめりになる榛名。
その襟元が空いた。
どう投げる?
腰で投げるには艤装が邪魔だ。
……大外刈りで後頭部から落としてやろう。
摩耶(決まりだ)
榛名は今、体勢を崩しているように見えた。
今のうちに釣り手をとるべし、と榛名の空いた襟に右手を伸ばす。
誘われている事に気付かずに。
610: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:38:32.76 ID:1MAWl3G60
◇
榛名はバランスを取るのが得意だった。
敵からは、榛名がバランスを崩しているように見えても、それはフェイントである事が多い。
摩耶も、そのフェイントの餌食となった。
彼女の右手が伸びてくるのが榛名には見えている。
榛名(やりますか……)
自分の右手は掴まれて動かせないが、左手はフリーだ。
襟を狙いに来ている摩耶の右掌を、その左手で掴んだ。
榛名はバランスを取るのが得意だった。
敵からは、榛名がバランスを崩しているように見えても、それはフェイントである事が多い。
摩耶も、そのフェイントの餌食となった。
彼女の右手が伸びてくるのが榛名には見えている。
榛名(やりますか……)
自分の右手は掴まれて動かせないが、左手はフリーだ。
襟を狙いに来ている摩耶の右掌を、その左手で掴んだ。
611: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:42:07.99 ID:1MAWl3G60
摩耶「……?!」
榛名がバランスを崩していると誤解していた摩耶は、予想できなかった動きに驚愕する。
榛名は顔を上げた。
摩耶と視線が合う。
榛名は歪んだ笑みを見せ。
戦艦の圧倒的な膂力から。
摩耶の右掌を握り潰した。
グチャッ。
ボキボキボキボキ。
と、嫌な音がする。
摩耶「あがっ……!」
激痛に、摩耶の顔が引き攣り。
堪らず榛名の腕を掴んでいた左手を離し、相手を突き飛ばした。
榛名も摩耶の右手を離し、五指と掌の骨をへし折られた手が露わになる。
唇を噛んで痛みに耐える摩耶へ。
両手がフリーになった榛名は追撃を仕掛ける。
榛名がバランスを崩していると誤解していた摩耶は、予想できなかった動きに驚愕する。
榛名は顔を上げた。
摩耶と視線が合う。
榛名は歪んだ笑みを見せ。
戦艦の圧倒的な膂力から。
摩耶の右掌を握り潰した。
グチャッ。
ボキボキボキボキ。
と、嫌な音がする。
摩耶「あがっ……!」
激痛に、摩耶の顔が引き攣り。
堪らず榛名の腕を掴んでいた左手を離し、相手を突き飛ばした。
榛名も摩耶の右手を離し、五指と掌の骨をへし折られた手が露わになる。
唇を噛んで痛みに耐える摩耶へ。
両手がフリーになった榛名は追撃を仕掛ける。
612: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:43:10.22 ID:1MAWl3G60
摩耶「……畜生……!」
摩耶は榛名の接近に合わせ、榛名を引き離す意図で、左の正拳突きを放つ。
が。
榛名は下がらず。
逆に前へ出ながら左腕でそれを受け。
更に体幹を思い切り左に捻る事で、打撃をいなした。
榛名の流れるような動作により、摩耶は腹部がガラ空きになる。
摩耶(やっべ……)
摩耶の意識は危機を認識するが、左腕は榛名に流され、伸びきっている。
右手に至ってはうまく動かず。
ガードが出来ない。
そんな摩耶を尻目に。
榛名は、左に捩れた体を、今度は勢い良く右に捻った。
腰の回転が、腕に乗る。
そして。
榛名は。
猛烈な右裏拳を。
一切の容赦無く、摩耶の鳩尾に叩き込んだ。
摩耶は榛名の接近に合わせ、榛名を引き離す意図で、左の正拳突きを放つ。
が。
榛名は下がらず。
逆に前へ出ながら左腕でそれを受け。
更に体幹を思い切り左に捻る事で、打撃をいなした。
榛名の流れるような動作により、摩耶は腹部がガラ空きになる。
摩耶(やっべ……)
摩耶の意識は危機を認識するが、左腕は榛名に流され、伸びきっている。
右手に至ってはうまく動かず。
ガードが出来ない。
そんな摩耶を尻目に。
榛名は、左に捩れた体を、今度は勢い良く右に捻った。
腰の回転が、腕に乗る。
そして。
榛名は。
猛烈な右裏拳を。
一切の容赦無く、摩耶の鳩尾に叩き込んだ。
613: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:44:00.61 ID:1MAWl3G60
摩耶の鍛えられていた筈の腹筋は、スポンジのように凹み。
摩耶「ごぼっ……」
横隔膜がダメージを受け、呼吸が止まり。
摩耶の体がくの字に折れ曲がり、顎が前に出る。
その、顎を。
撃ち抜く榛名の左アッパー。
摩耶「ガッ」
摩耶は視界が真っ白になる。
脳が激しく揺さぶられて脳震盪を起こし、意識が混濁する。
自分が何処に居るのか、立っているのか、寝ているのかすら。
わからなくなる。
最早勝負はついた。
が、ここで榛名は終わらない。
一瞬で周囲を確認する。
摩耶「ごぼっ……」
横隔膜がダメージを受け、呼吸が止まり。
摩耶の体がくの字に折れ曲がり、顎が前に出る。
その、顎を。
撃ち抜く榛名の左アッパー。
摩耶「ガッ」
摩耶は視界が真っ白になる。
脳が激しく揺さぶられて脳震盪を起こし、意識が混濁する。
自分が何処に居るのか、立っているのか、寝ているのかすら。
わからなくなる。
最早勝負はついた。
が、ここで榛名は終わらない。
一瞬で周囲を確認する。
614: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:44:45.82 ID:1MAWl3G60
榛名(金剛さんは……私に狙いをつけたまま……
陽炎さんは此方をチラチラ見ながら対空砲火……
翔鶴さんは私を見る余裕は無さそうですね)
金剛は動けないでいた。
閉鎖機に弾を突っ込んだ状態で近接戦闘をすると暴発し兼ねない。
かといって、閉鎖機から弾を取り出すと、隙ができる。
が、榛名も動けない。
摩耶から離れた瞬間、金剛に撃たれる。
榛名(……誰も安易に動けない……ならーー)
ここで。
瀕死の摩耶を、どう使うか。
榛名(ーーこいつを嬲るか)
決める。
理不尽な暴力が摩耶を襲う事が、決まる。
陽炎さんは此方をチラチラ見ながら対空砲火……
翔鶴さんは私を見る余裕は無さそうですね)
金剛は動けないでいた。
閉鎖機に弾を突っ込んだ状態で近接戦闘をすると暴発し兼ねない。
かといって、閉鎖機から弾を取り出すと、隙ができる。
が、榛名も動けない。
摩耶から離れた瞬間、金剛に撃たれる。
榛名(……誰も安易に動けない……ならーー)
ここで。
瀕死の摩耶を、どう使うか。
榛名(ーーこいつを嬲るか)
決める。
理不尽な暴力が摩耶を襲う事が、決まる。
615: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:45:31.73 ID:1MAWl3G60
榛名が繰り出すは下段回し蹴り。
最早抵抗出来ない摩耶の左膝が、曲がってはいけない方向に曲がる。
そのまま、ガクンと膝をつくように、前屈みになり。
差し出された頭を榛名は両手で掴み。
顔に強烈な膝蹴りをぶち込む。
鼻の軟骨が砕け、血が吹き出る。
顔面への膝蹴りによって摩耶の体が跳ね上がり、再び腹部が無防備に晒される。
そこへ、榛名は軽いワンツー。
苦痛から、摩耶の体が再びくの字に折れ曲がる。
差し出された後頭部をつかんで。
再び、顔面へと強烈な膝蹴り。
吹き出る血。
最早抵抗出来ない摩耶の左膝が、曲がってはいけない方向に曲がる。
そのまま、ガクンと膝をつくように、前屈みになり。
差し出された頭を榛名は両手で掴み。
顔に強烈な膝蹴りをぶち込む。
鼻の軟骨が砕け、血が吹き出る。
顔面への膝蹴りによって摩耶の体が跳ね上がり、再び腹部が無防備に晒される。
そこへ、榛名は軽いワンツー。
苦痛から、摩耶の体が再びくの字に折れ曲がる。
差し出された後頭部をつかんで。
再び、顔面へと強烈な膝蹴り。
吹き出る血。
616: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:46:18.75 ID:1MAWl3G60
終わらない。
反動で立ち上がる摩耶。
そこへ、胃の付近を右中段前蹴り。
蹌踉めいた所へ、左膝に下段足刀蹴り。
膝をつきそうになれば、顔面へ肘鉄。
後ろへ倒れそうになる頭を掴み、三度目の膝蹴り。
止まらない。
右脇腹へ中段足刀蹴り。
傾いた右側頭部へ上段回し蹴り。
脳天に鉄槌。
崩れ落ちる摩耶の顎に蹴り上げ。
ガラ空きの鳩尾へ、全体重を乗せた諸手突き。
摩耶が血の塊を吐いた。
反動で立ち上がる摩耶。
そこへ、胃の付近を右中段前蹴り。
蹌踉めいた所へ、左膝に下段足刀蹴り。
膝をつきそうになれば、顔面へ肘鉄。
後ろへ倒れそうになる頭を掴み、三度目の膝蹴り。
止まらない。
右脇腹へ中段足刀蹴り。
傾いた右側頭部へ上段回し蹴り。
脳天に鉄槌。
崩れ落ちる摩耶の顎に蹴り上げ。
ガラ空きの鳩尾へ、全体重を乗せた諸手突き。
摩耶が血の塊を吐いた。
617: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:48:30.32 ID:1MAWl3G60
陽炎「嫌あああああ!
やめて、やめてよおおおおお!
摩耶が、摩耶が死んじゃううううう!」
陽炎が泣き叫ぶ。
だが、榛名は底冷えのする笑いを浮かべたまま。
摩耶へと暴力を振るう。
悪鬼羅刹がそこに居た。
額への上段正拳。
空いた喉仏へと貫手。
咳き込む摩耶の胸骨への飛び膝。
落ちてくる顔面へと裏打ち。
●●を蹴り上げ。
上がってきた顎に頭突き。
陽炎「あああああ!」
ついに陽炎が、いたぶられる摩耶を見ていられなくなり、憤怒のままに榛名へと突っ込んで行った。
やめて、やめてよおおおおお!
摩耶が、摩耶が死んじゃううううう!」
陽炎が泣き叫ぶ。
だが、榛名は底冷えのする笑いを浮かべたまま。
摩耶へと暴力を振るう。
悪鬼羅刹がそこに居た。
額への上段正拳。
空いた喉仏へと貫手。
咳き込む摩耶の胸骨への飛び膝。
落ちてくる顔面へと裏打ち。
●●を蹴り上げ。
上がってきた顎に頭突き。
陽炎「あああああ!」
ついに陽炎が、いたぶられる摩耶を見ていられなくなり、憤怒のままに榛名へと突っ込んで行った。
618: ◆hsyiOEw8Kw 2015/05/31(日) 23:48:59.75 ID:1MAWl3G60
金剛「No!陽炎!」
金剛の制止も聞かずに、猪突猛進に。
榛名は。
それを待っていた。
榛名は、別に好きで摩耶を嬲っていた訳では無い。
18戦隊は艦娘同士、仲が良い。
だからこそ、摩耶を餌にして。
次の獲物を釣り上げようと。
待っていたのだ。
陽炎「摩耶を離せええええええ!」
そうとは知らずに。
全速で、榛名の背後からタックルを仕掛ける陽炎。
陽炎が榛名の間合いに入った瞬間、榛名は摩耶への攻撃を止め。
全力の下段・右後ろ回し蹴りを陽炎へと放った。
陽炎「ーーばっ」
榛名の踵は、陽炎の艤装右舷をスクラップにし。
陽炎本体ごと、吹き飛ばした。
壊れた人形のように、すっ飛んでいく陽炎は。
背中から強かに、海面へと叩きつけられた。
金剛の制止も聞かずに、猪突猛進に。
榛名は。
それを待っていた。
榛名は、別に好きで摩耶を嬲っていた訳では無い。
18戦隊は艦娘同士、仲が良い。
だからこそ、摩耶を餌にして。
次の獲物を釣り上げようと。
待っていたのだ。
陽炎「摩耶を離せええええええ!」
そうとは知らずに。
全速で、榛名の背後からタックルを仕掛ける陽炎。
陽炎が榛名の間合いに入った瞬間、榛名は摩耶への攻撃を止め。
全力の下段・右後ろ回し蹴りを陽炎へと放った。
陽炎「ーーばっ」
榛名の踵は、陽炎の艤装右舷をスクラップにし。
陽炎本体ごと、吹き飛ばした。
壊れた人形のように、すっ飛んでいく陽炎は。
背中から強かに、海面へと叩きつけられた。
639: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 21:50:10.11 ID:gxK4/g3v0
陽炎「こひゅっ……」
肺と腰が圧迫され、息が出来ず。
立ち上がれない。
が、意識はあった。
榛名(……上手いこと仰向けに飛びましたね。良かった良かった)
うつ伏せの状態で立ち上がれなければ、呼吸が出来ずに死んでしまう。
もしうつ伏せになったら、陽炎を抱き起こしに行かざるを得なかった。
榛名はそんな事を。
役目を終えた摩耶を裸締めで絞め落としながら、つらつらと考えていた。
榛名(金剛さんも翔鶴さんも、摩耶さんでは釣れなさそうですし。
摩耶さんのお仕事はここで終わりですね)
弱々しい抵抗が無くなり、摩耶が意識を失う。
そこで気付いた。
榛名(……あれ?これ意識無い艦娘って水面に置いといて大丈夫なんですかね?)
肺と腰が圧迫され、息が出来ず。
立ち上がれない。
が、意識はあった。
榛名(……上手いこと仰向けに飛びましたね。良かった良かった)
うつ伏せの状態で立ち上がれなければ、呼吸が出来ずに死んでしまう。
もしうつ伏せになったら、陽炎を抱き起こしに行かざるを得なかった。
榛名はそんな事を。
役目を終えた摩耶を裸締めで絞め落としながら、つらつらと考えていた。
榛名(金剛さんも翔鶴さんも、摩耶さんでは釣れなさそうですし。
摩耶さんのお仕事はここで終わりですね)
弱々しい抵抗が無くなり、摩耶が意識を失う。
そこで気付いた。
榛名(……あれ?これ意識無い艦娘って水面に置いといて大丈夫なんですかね?)
640: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 21:51:19.48 ID:gxK4/g3v0
意識の無い艦娘が海上で姿勢を保つ事は出来ない。
榛名(大丈夫じゃないですよね……
摩耶さん溺れちゃうと不味いから……持っててあげないと……)
しくじりましたね、と小さく呟く。
実戦なら首の骨をへし折ってポイッと捨てる所だが、そういう訳にも行かない。
榛名(どーしましょ……)
困った。
金剛はまだ此方を狙っている。
翔鶴は鳳翔の艦攻を一手に引き受け、脚部艤装がほぼ働かなくなっていた。
その代わり、鳳翔の攻撃隊は魚雷を撃ちつくし、一旦補給に戻っている。
その為、今は翔鶴も弓で榛名を狙っていた。
榛名(うーん……動けない……
でも優勢ですし……
と、取り敢えず……降伏勧告でもしてみますか?)
グッと摩耶を抱き上げ、言ってみる。
榛名「こ、降伏しなさいー。
む、無駄な抵抗はやめるのです!」
返事の代わりに砲撃が飛んで来た。
榛名(大丈夫じゃないですよね……
摩耶さん溺れちゃうと不味いから……持っててあげないと……)
しくじりましたね、と小さく呟く。
実戦なら首の骨をへし折ってポイッと捨てる所だが、そういう訳にも行かない。
榛名(どーしましょ……)
困った。
金剛はまだ此方を狙っている。
翔鶴は鳳翔の艦攻を一手に引き受け、脚部艤装がほぼ働かなくなっていた。
その代わり、鳳翔の攻撃隊は魚雷を撃ちつくし、一旦補給に戻っている。
その為、今は翔鶴も弓で榛名を狙っていた。
榛名(うーん……動けない……
でも優勢ですし……
と、取り敢えず……降伏勧告でもしてみますか?)
グッと摩耶を抱き上げ、言ってみる。
榛名「こ、降伏しなさいー。
む、無駄な抵抗はやめるのです!」
返事の代わりに砲撃が飛んで来た。
641: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 21:52:34.47 ID:gxK4/g3v0
………
……
…
北上「……」
大井「……」
隼鷹「……(やべぇ……お通夜ムードだコレ……)」
北上「……やべぇ……」
大井「……」
隼鷹「……うちの榛名がすいません……」
北上「……いやいや……摩耶から殴りかかってたし……」
大井「……そうね。
……と言うか、生きてるわよね?
摩耶の艤装のカメラ、レンズが血塗れで、何も見えないのだけど」
隼鷹「榛名は……殺しはしないぜ」
北上「……」
隼鷹「……たぶん」
北上「自信ないんかーい!」
大井「お、落ち着いて北上さん!ツッコミは貴女の仕事じゃないわ!」
北上「ハッ!アタシは一体何を……?」
隼鷹(別に大丈夫そうだなこの人達……)
…
……
………
……
…
北上「……」
大井「……」
隼鷹「……(やべぇ……お通夜ムードだコレ……)」
北上「……やべぇ……」
大井「……」
隼鷹「……うちの榛名がすいません……」
北上「……いやいや……摩耶から殴りかかってたし……」
大井「……そうね。
……と言うか、生きてるわよね?
摩耶の艤装のカメラ、レンズが血塗れで、何も見えないのだけど」
隼鷹「榛名は……殺しはしないぜ」
北上「……」
隼鷹「……たぶん」
北上「自信ないんかーい!」
大井「お、落ち着いて北上さん!ツッコミは貴女の仕事じゃないわ!」
北上「ハッ!アタシは一体何を……?」
隼鷹(別に大丈夫そうだなこの人達……)
…
……
………
642: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 21:53:23.30 ID:gxK4/g3v0
◇
摩耶と陽炎が二人、斃れ。
艦攻を一手に引き受けた翔鶴は中破。
速力が大幅に低下してしまって。
ただひとり無事な金剛は。
金剛(……総員、自覚が足りてない……)
ゲンナリしていた。
金剛(油断に命令違反に……
この私に、ケツを拭かせないで欲しいんだけど……)
第18戦隊が辺境の島の防衛隊に負ける。
あってはならない。
と、無線が入る。
激しい音が止み、戦闘が小休止に入ったと判断した太郎だった。
摩耶と陽炎が二人、斃れ。
艦攻を一手に引き受けた翔鶴は中破。
速力が大幅に低下してしまって。
ただひとり無事な金剛は。
金剛(……総員、自覚が足りてない……)
ゲンナリしていた。
金剛(油断に命令違反に……
この私に、ケツを拭かせないで欲しいんだけど……)
第18戦隊が辺境の島の防衛隊に負ける。
あってはならない。
と、無線が入る。
激しい音が止み、戦闘が小休止に入ったと判断した太郎だった。
643: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 21:54:21.78 ID:gxK4/g3v0
太郎『……金剛、コマンド。状況はどうなっている、オーバー』
全てを察した上で、太郎は聞いていた。
近接戦闘や航空戦闘中に無線通信を入れると、往々にして失敗が起こる。
攻撃隊を落とされた際の翔鶴が良い例だ。
艦娘達が必ず交戦前に許可を取る理由はそれである。
交戦中、艦隊と司令官は、お互いに一方的な情報提供を行う事のみに留めるのが普通だ。
だからこそ、現場レベルでの状況把握・即応が出来る旗艦の存在が重要なのだが。
金剛「コマンド、金剛。As you know sir.
We got 摩耶 and 陽炎 down.」
金剛は榛名から目を離さぬまま告げる。
太郎『……金剛、コマンド。了解した。二人の息は有るな?オーバー』
金剛「コマンド、金剛。Affirmative.」
是の意。
全てを察した上で、太郎は聞いていた。
近接戦闘や航空戦闘中に無線通信を入れると、往々にして失敗が起こる。
攻撃隊を落とされた際の翔鶴が良い例だ。
艦娘達が必ず交戦前に許可を取る理由はそれである。
交戦中、艦隊と司令官は、お互いに一方的な情報提供を行う事のみに留めるのが普通だ。
だからこそ、現場レベルでの状況把握・即応が出来る旗艦の存在が重要なのだが。
金剛「コマンド、金剛。As you know sir.
We got 摩耶 and 陽炎 down.」
金剛は榛名から目を離さぬまま告げる。
太郎『……金剛、コマンド。了解した。二人の息は有るな?オーバー』
金剛「コマンド、金剛。Affirmative.」
是の意。
644: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 21:56:32.64 ID:gxK4/g3v0
太郎『……金剛、コマンド。了解。……ならばまぁ、いい経験になったろう』
その言葉を聞いて、金剛はカッと頭に血が昇るのを感じた。
金剛(太郎さん的には、純粋に経験を積ませる目的なんだろうけど……
結果を見た上層部は、他の司令官は、提督は。
そうは思ってくれない……)
苛立つ。
金剛(……相手が提督だから、榛名が居るから、演習だから……勝てない?負けてもいい?
そんな物は、言い訳でしか無い。
如何なる敗北にも、価値は無い……!)
ギリッと歯を噛みしめる。
金剛(……今、あなたと相対している男は、どんな戦いにおいても妥協しなかったわよ、太郎さん……)
そんな折に、狙いをつけていた榛名が口を開いた。
榛名「こ、降伏しなさいー。
む、無駄な抵抗はやめるのです!」
その言葉を聞いて、金剛はカッと頭に血が昇るのを感じた。
金剛(太郎さん的には、純粋に経験を積ませる目的なんだろうけど……
結果を見た上層部は、他の司令官は、提督は。
そうは思ってくれない……)
苛立つ。
金剛(……相手が提督だから、榛名が居るから、演習だから……勝てない?負けてもいい?
そんな物は、言い訳でしか無い。
如何なる敗北にも、価値は無い……!)
ギリッと歯を噛みしめる。
金剛(……今、あなたと相対している男は、どんな戦いにおいても妥協しなかったわよ、太郎さん……)
そんな折に、狙いをつけていた榛名が口を開いた。
榛名「こ、降伏しなさいー。
む、無駄な抵抗はやめるのです!」
645: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 21:58:11.76 ID:gxK4/g3v0
それを聞いて。
プッツーンと。
金剛のこめかみに血管が浮かび上がり。
金剛「Engaging.」
金剛は摩耶ごと榛名を砲撃した。
榛名「ぎゃあ?!」
砲弾は摩耶に命中し、少なくない量の蛍光液が榛名にも付着する。
翔鶴「ちょ、ちょっと金剛?!」
翔鶴が抗議の声を上げた。
が。
金剛「Shut the xxxx up 翔鶴.
摩耶 is dead and gone.」
冷たく。
黙れ、摩耶は轟沈した。
と告げた。
翔鶴が息を飲む。
金剛は翔鶴を無視して、榛名が体勢を崩している間に次弾装填。
プッツーンと。
金剛のこめかみに血管が浮かび上がり。
金剛「Engaging.」
金剛は摩耶ごと榛名を砲撃した。
榛名「ぎゃあ?!」
砲弾は摩耶に命中し、少なくない量の蛍光液が榛名にも付着する。
翔鶴「ちょ、ちょっと金剛?!」
翔鶴が抗議の声を上げた。
が。
金剛「Shut the xxxx up 翔鶴.
摩耶 is dead and gone.」
冷たく。
黙れ、摩耶は轟沈した。
と告げた。
翔鶴が息を飲む。
金剛は翔鶴を無視して、榛名が体勢を崩している間に次弾装填。
646: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 21:59:50.13 ID:gxK4/g3v0
呟く。
金剛「Surrender……?榛名、You're telling me to surrender……?」
降伏せよ?私に降伏せよと、言うのか?
無駄だから?
舐めるなよ。
カラカラと、金剛の喉から乾いた笑いが出て。
怒鳴る。
金剛「SILLY SILLY SILLY!
That was a good joke, 榛名!」
面白い冗談だと。
金剛「Am I going to surrender?
NO NO NO NO……!」
降参はあり得ないと。
二射目の装填が完了した。
発射する。
金剛「Surrender……?榛名、You're telling me to surrender……?」
降伏せよ?私に降伏せよと、言うのか?
無駄だから?
舐めるなよ。
カラカラと、金剛の喉から乾いた笑いが出て。
怒鳴る。
金剛「SILLY SILLY SILLY!
That was a good joke, 榛名!」
面白い冗談だと。
金剛「Am I going to surrender?
NO NO NO NO……!」
降参はあり得ないと。
二射目の装填が完了した。
発射する。
648: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 22:06:51.27 ID:gxK4/g3v0
榛名「くっ……」
再び摩耶に着弾。
摩耶は既に蛍光液まみれだ。
榛名もかなり液を被り、判定は中破まで進行している。
榛名(もうちょい躊躇すると思ったんですけどね……!
せめて鳳翔さんの増援を待つ筈が……
あれ?もしかして私、人を怒らせる才能あります?)
馬鹿なことを考えている場合では無い。
このままではジリ貧だ。
金剛は再装填している。
その隙に、榛名は摩耶を盾にして金剛と翔鶴の射線を躱しつつ、前進を試みた。
榛名(距離を詰めたいけれど……
摩耶さん重っ……)
思うように速度が出ない。
モタついている間に、金剛の装填が終わり。
砲撃が来た。
これも摩耶で防ぐが、前に進んでいる分、被弾が増える。
榛名(チッ……大破判定……)
だが、金剛には十分近付けた。
榛名は金剛の顔に向けて摩耶を頭から投げつける。
これは衝突させるのが目的ではない。
死角と、隙を作る為だ。
再び摩耶に着弾。
摩耶は既に蛍光液まみれだ。
榛名もかなり液を被り、判定は中破まで進行している。
榛名(もうちょい躊躇すると思ったんですけどね……!
せめて鳳翔さんの増援を待つ筈が……
あれ?もしかして私、人を怒らせる才能あります?)
馬鹿なことを考えている場合では無い。
このままではジリ貧だ。
金剛は再装填している。
その隙に、榛名は摩耶を盾にして金剛と翔鶴の射線を躱しつつ、前進を試みた。
榛名(距離を詰めたいけれど……
摩耶さん重っ……)
思うように速度が出ない。
モタついている間に、金剛の装填が終わり。
砲撃が来た。
これも摩耶で防ぐが、前に進んでいる分、被弾が増える。
榛名(チッ……大破判定……)
だが、金剛には十分近付けた。
榛名は金剛の顔に向けて摩耶を頭から投げつける。
これは衝突させるのが目的ではない。
死角と、隙を作る為だ。
649: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 22:11:18.08 ID:gxK4/g3v0
金剛「……!」
金剛は飛んでくる摩耶を見て、迷う。
目の前の摩耶を叩き落とすべきか、受け止めるべきか。
勢い良く叩き落とせば、その下の榛名も潰す事が出来るだろう。
逡巡する。
摩耶は意識が無いようだ。
それでも、演習弾は当たってもダメージが無い。
しかし、打撃はそうも行かない。
さらに、これを避けても摩耶は海面で頭を強打するだろう。
金剛「………………xxxx」
悔しそうに小さく呟き。
金剛は、大事な仲間を抱き止めるためにガードを捨て、腕を伸ばした。
それを見て、ほくそ笑む悪魔。
榛名(なんだかんだ言って……
受け止めようとするんですね。
摩耶さんが叩き落とされていたら、私の負けでした)
その優しさは、隙になる。
榛名は超低姿勢から、強烈な加速。
一瞬で金剛の懐へ潜り込んだ。
榛名(御免なさいね、金剛さん。
私、あなたの事、好きですよ。
でも、提督の方が……もっともっともっともっともっともっと大切なんです)
金剛は飛んでくる摩耶を見て、迷う。
目の前の摩耶を叩き落とすべきか、受け止めるべきか。
勢い良く叩き落とせば、その下の榛名も潰す事が出来るだろう。
逡巡する。
摩耶は意識が無いようだ。
それでも、演習弾は当たってもダメージが無い。
しかし、打撃はそうも行かない。
さらに、これを避けても摩耶は海面で頭を強打するだろう。
金剛「………………xxxx」
悔しそうに小さく呟き。
金剛は、大事な仲間を抱き止めるためにガードを捨て、腕を伸ばした。
それを見て、ほくそ笑む悪魔。
榛名(なんだかんだ言って……
受け止めようとするんですね。
摩耶さんが叩き落とされていたら、私の負けでした)
その優しさは、隙になる。
榛名は超低姿勢から、強烈な加速。
一瞬で金剛の懐へ潜り込んだ。
榛名(御免なさいね、金剛さん。
私、あなたの事、好きですよ。
でも、提督の方が……もっともっともっともっともっともっと大切なんです)
650: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 22:12:59.74 ID:gxK4/g3v0
金剛が、摩耶を受け止めた瞬間。
榛名は金剛の腹へ、下から突き上げるような肘鉄を放つ。
速度の乗ったそれにより、金剛は苦悶の表情を浮かべ。
体がくの字に曲がり、摩耶を取り落としてしまう。
榛名は、意識の無い摩耶が水面に落ちないよう、左手で首根っこをキャッチしつつ。
金剛の首に右腕をかけた。
榛名「……勝利をーー」
一の腕と二の腕で、ガッチリ金剛の首を前からロック。
すっぽ抜けないように、メキッ、と金剛の首骨が軋む程の圧力をかける。
そのまま、後ろ蹴りで金剛の軸足を払いながら、一気に体を沈ませ。
榛名「ーー提督に」
投げた。
榛名は金剛の腹へ、下から突き上げるような肘鉄を放つ。
速度の乗ったそれにより、金剛は苦悶の表情を浮かべ。
体がくの字に曲がり、摩耶を取り落としてしまう。
榛名は、意識の無い摩耶が水面に落ちないよう、左手で首根っこをキャッチしつつ。
金剛の首に右腕をかけた。
榛名「……勝利をーー」
一の腕と二の腕で、ガッチリ金剛の首を前からロック。
すっぽ抜けないように、メキッ、と金剛の首骨が軋む程の圧力をかける。
そのまま、後ろ蹴りで金剛の軸足を払いながら、一気に体を沈ませ。
榛名「ーー提督に」
投げた。
651: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 22:14:39.10 ID:gxK4/g3v0
榛名の右上腕が支点となり。
金剛は綺麗に縦回転。
金剛が味わうは浮遊感。
キラキラと、太陽が照らす水飛沫が頭上に見えた次の瞬間。
背後から海面に叩きつけられる。
膂力に物を言わせた、首投げ。
金剛「ガッ……」
から、流れるように繋げた、裸締め。
投げ出されたばかりで、ガードも儘ならない金剛の首をギリギリギリと締め付ける。
だが、締める手が片手であるせいか金剛の意識は中々落ちず、苦しそうに暴れる。
しかし、ここで決着をつけたい榛名は、離さない。
状況は絶望的。
左手に摩耶を。
右手に金剛を。
抱える榛名の微笑みに。
翔鶴は邪悪を感じる。
金剛は綺麗に縦回転。
金剛が味わうは浮遊感。
キラキラと、太陽が照らす水飛沫が頭上に見えた次の瞬間。
背後から海面に叩きつけられる。
膂力に物を言わせた、首投げ。
金剛「ガッ……」
から、流れるように繋げた、裸締め。
投げ出されたばかりで、ガードも儘ならない金剛の首をギリギリギリと締め付ける。
だが、締める手が片手であるせいか金剛の意識は中々落ちず、苦しそうに暴れる。
しかし、ここで決着をつけたい榛名は、離さない。
状況は絶望的。
左手に摩耶を。
右手に金剛を。
抱える榛名の微笑みに。
翔鶴は邪悪を感じる。
652: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 22:20:40.35 ID:gxK4/g3v0
翔鶴(……金剛が接近戦に敗れた以上、私が撃たねばなりませんね。
金剛をやらせる訳には……)
翔鶴は弓を構えているが、榛名は金剛を盾にするようにしている。
しかし、ここで金剛を喪失すれば、その時点で負けが決定する。
翔鶴「……金剛ぉぉぉぉっー!!」
何とか隙を作れないか、と。
弓を引き絞りながら、叫ぶ。
それに呼応して、金剛は苦しい中、脚部艤装の出力を全開にした。
しかし、金剛は榛名にバックチョークを極められている。
そんな事をすれば、より苦しくなるのは自明だ。
金剛をやらせる訳には……)
翔鶴は弓を構えているが、榛名は金剛を盾にするようにしている。
しかし、ここで金剛を喪失すれば、その時点で負けが決定する。
翔鶴「……金剛ぉぉぉぉっー!!」
何とか隙を作れないか、と。
弓を引き絞りながら、叫ぶ。
それに呼応して、金剛は苦しい中、脚部艤装の出力を全開にした。
しかし、金剛は榛名にバックチョークを極められている。
そんな事をすれば、より苦しくなるのは自明だ。
653: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 22:21:51.33 ID:gxK4/g3v0
榛名「?!」
だからこそ、それは榛名の虚をついた。
腕が、金剛の首に深く沈む。
それにより体が引っ張られ。
金剛の陰に隠れていた榛名の頭が、弓の射線に晒される。
見えている部位は頭部のみ。
チャンスはこの一瞬だけ。
榛名と翔鶴の視線が交錯した、その瞬間。
翔鶴「頭一個。
……抜いて魅せる……!」
裂帛の気合いと共に、放つ。
果たして、訓練用の矢は。
翔鶴「ーー合いましたぁ!」
榛名の眉間を撃ち抜いた。
だからこそ、それは榛名の虚をついた。
腕が、金剛の首に深く沈む。
それにより体が引っ張られ。
金剛の陰に隠れていた榛名の頭が、弓の射線に晒される。
見えている部位は頭部のみ。
チャンスはこの一瞬だけ。
榛名と翔鶴の視線が交錯した、その瞬間。
翔鶴「頭一個。
……抜いて魅せる……!」
裂帛の気合いと共に、放つ。
果たして、訓練用の矢は。
翔鶴「ーー合いましたぁ!」
榛名の眉間を撃ち抜いた。
654: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 22:23:18.16 ID:gxK4/g3v0
榛名「がっ……」
衝撃で仰け反り。
金剛と摩耶を解放する榛名は、判定機より轟沈判定を受けた。
金剛「ゴホッゲホッ……」
金剛は自分の加速で気管を傷付けたのか、少量の鮮血を吐く。
その状態でもしっかりと摩耶を受け止めたあたり、流石旗艦と言えよう。
翔鶴「大丈夫?」
翔鶴が心配そうに呼び掛けた。
金剛「No problem.
ただのトマトジュースだヨ」
指で口許の血を払いながら答える金剛。
衝撃で仰け反り。
金剛と摩耶を解放する榛名は、判定機より轟沈判定を受けた。
金剛「ゴホッゲホッ……」
金剛は自分の加速で気管を傷付けたのか、少量の鮮血を吐く。
その状態でもしっかりと摩耶を受け止めたあたり、流石旗艦と言えよう。
翔鶴「大丈夫?」
翔鶴が心配そうに呼び掛けた。
金剛「No problem.
ただのトマトジュースだヨ」
指で口許の血を払いながら答える金剛。
657: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 22:33:01.90 ID:gxK4/g3v0
翔鶴「……やるのね」
金剛「当たり前だヨ」
翔鶴「私は動けない……
あなたも、判定こそ無傷だけど……かなり傷ついてる」
金剛「何が言いたいノ?」
依然気絶したままの摩耶を、翔鶴に任せながら聞く。
諦めろというのか、と。
金剛の目は、責めるように翔鶴を見つめていた。
翔鶴「……いえ」
金剛が負けず嫌い、と言うより。
艦娘として高潔である事を、翔鶴はよく知っている。
敗北してはならぬ、と。
人間の為に、弱い艦娘の為に、敗北してはならぬ、と。
己が守護者である、と。
金剛は決して諦めない。
金剛「当たり前だヨ」
翔鶴「私は動けない……
あなたも、判定こそ無傷だけど……かなり傷ついてる」
金剛「何が言いたいノ?」
依然気絶したままの摩耶を、翔鶴に任せながら聞く。
諦めろというのか、と。
金剛の目は、責めるように翔鶴を見つめていた。
翔鶴「……いえ」
金剛が負けず嫌い、と言うより。
艦娘として高潔である事を、翔鶴はよく知っている。
敗北してはならぬ、と。
人間の為に、弱い艦娘の為に、敗北してはならぬ、と。
己が守護者である、と。
金剛は決して諦めない。
658: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/01(月) 22:33:49.31 ID:gxK4/g3v0
翔鶴「……敵は実質三倍よ」
翔鶴はなんだか居た堪れなくなって、自分の足元を見つめながら呟いた。
金剛「三倍?……たかが三倍ネ」
そんな翔鶴の肩をポンポンと叩き。
金剛は言う。
金剛「Cover me 翔鶴。I'm going in.」
援護せよ。
攻め入る。
翔鶴「……」
18戦隊の心臓、金剛。
未だ、止まらず。
金剛「Remember.
ーーDefeat is NOT an option.」
敗北は、選択肢に無い。
翔鶴はなんだか居た堪れなくなって、自分の足元を見つめながら呟いた。
金剛「三倍?……たかが三倍ネ」
そんな翔鶴の肩をポンポンと叩き。
金剛は言う。
金剛「Cover me 翔鶴。I'm going in.」
援護せよ。
攻め入る。
翔鶴「……」
18戦隊の心臓、金剛。
未だ、止まらず。
金剛「Remember.
ーーDefeat is NOT an option.」
敗北は、選択肢に無い。
676: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:01:02.04 ID:Ome3SCLk0
◇
足柄「榛名、応答せよ」
しかし、帰ってくる言葉は無い。
足柄「榛名、空押しせよ、送れ」
やはり反応は無く。
足柄「本部、こちら足柄。榛名ロスト」
提督『……本部了解』
足柄は舌打ちする。
足柄(あのポンコツめ……
戦果を上げる為に、一人で決着を付けようとしたわね?)
溜息。
足柄(あんなに接近しなくても、隠れながら北西に追い込めば良いものを……
負けてちゃ世話無いわ)
足柄「榛名、応答せよ」
しかし、帰ってくる言葉は無い。
足柄「榛名、空押しせよ、送れ」
やはり反応は無く。
足柄「本部、こちら足柄。榛名ロスト」
提督『……本部了解』
足柄は舌打ちする。
足柄(あのポンコツめ……
戦果を上げる為に、一人で決着を付けようとしたわね?)
溜息。
足柄(あんなに接近しなくても、隠れながら北西に追い込めば良いものを……
負けてちゃ世話無いわ)
677: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:01:58.24 ID:Ome3SCLk0
足柄は、水偵から一部始終を見ていた。
足柄(大体金剛さんを残してどーすんのよ……
ペーペーの相手なんて誰でも出来るんだから……)
そう思いつつも、意識は水偵に乗ったまま金剛らを見つめ続けている。
足柄(取り敢えず……陽炎さんと摩耶さんがダウン。
……旗艦が単艦で突出、ね)
鳳翔の報告によると、翔鶴にもかなりの損害を与えたそうだ。
足柄(もう金剛さんしか戦えない、か。
まぁこっちも似たような状況だけど……あれ?)
足柄(大体金剛さんを残してどーすんのよ……
ペーペーの相手なんて誰でも出来るんだから……)
そう思いつつも、意識は水偵に乗ったまま金剛らを見つめ続けている。
足柄(取り敢えず……陽炎さんと摩耶さんがダウン。
……旗艦が単艦で突出、ね)
鳳翔の報告によると、翔鶴にもかなりの損害を与えたそうだ。
足柄(もう金剛さんしか戦えない、か。
まぁこっちも似たような状況だけど……あれ?)
678: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:11:38.20 ID:Ome3SCLk0
ふと、気がつく。
足柄(針路が北西じゃない……
金剛さんが西南西に向かってる……
……待ち伏せを嫌がったか)
しかし、今は悠長に考えている場合では無い。
足柄「鳳翔、こちら足柄。
脅威がそちらへ向かっている。
警戒せよ。
ブレイク、ブレイク。
本部、こちら足柄。
敵針路2-5-0。快速で別働隊に接近中」
提督『足柄、こちら本部。
了解。針路2-2-5を取れ、応援急げ』
足柄「足柄了解」
鳳翔「こちら鳳翔、艦載機の出撃許可を」
提督「出撃を許可する」
鳳翔「鳳翔了解」
その返事を聞いてから、提督は溜息。
提督(こうなると困るから、榛名には堅実に動いて欲しかった所だが……)
足柄(針路が北西じゃない……
金剛さんが西南西に向かってる……
……待ち伏せを嫌がったか)
しかし、今は悠長に考えている場合では無い。
足柄「鳳翔、こちら足柄。
脅威がそちらへ向かっている。
警戒せよ。
ブレイク、ブレイク。
本部、こちら足柄。
敵針路2-5-0。快速で別働隊に接近中」
提督『足柄、こちら本部。
了解。針路2-2-5を取れ、応援急げ』
足柄「足柄了解」
鳳翔「こちら鳳翔、艦載機の出撃許可を」
提督「出撃を許可する」
鳳翔「鳳翔了解」
その返事を聞いてから、提督は溜息。
提督(こうなると困るから、榛名には堅実に動いて欲しかった所だが……)
679: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:13:20.55 ID:Ome3SCLk0
◇
金剛(さて……)ゴホッ
血の混じった咳をしつつも海図を開き、戦略を練る。
金剛(3対1……相手は全員負傷している……
勝ち目はある)
金剛「コマンド、金剛。
敵の待ち伏せが予想されマス。
西への進軍を提案しマス,over」
自分達が北西に針路を取っていたことは敵も知っている。
とすれば、今現在敵が待ち構えているのは北西だ。
待たれているとわかっている場所へ自ら進んで行く必要は無い。
太郎『……金剛、コマンド。
Roger, 針路 2-5-0を取れ』
太郎も同じ事を考えていたようで、提言をすぐに承認。
金剛「針路 2-5-0, Roger.」
金剛は針路を方位2-5-0へ向けた。
金剛(さて……)ゴホッ
血の混じった咳をしつつも海図を開き、戦略を練る。
金剛(3対1……相手は全員負傷している……
勝ち目はある)
金剛「コマンド、金剛。
敵の待ち伏せが予想されマス。
西への進軍を提案しマス,over」
自分達が北西に針路を取っていたことは敵も知っている。
とすれば、今現在敵が待ち構えているのは北西だ。
待たれているとわかっている場所へ自ら進んで行く必要は無い。
太郎『……金剛、コマンド。
Roger, 針路 2-5-0を取れ』
太郎も同じ事を考えていたようで、提言をすぐに承認。
金剛「針路 2-5-0, Roger.」
金剛は針路を方位2-5-0へ向けた。
680: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:14:06.36 ID:Ome3SCLk0
太郎『翔鶴、コマンド。状況報告を要請、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。
摩耶、及び陽炎が負傷。
自律航行不能。
演習状況終了まで曳航状態で待機予定」
太郎『翔鶴、コマンド。
了解した。彩雲は出せるか、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。可能です、オーバー」
太郎『翔鶴、コマンド。彩雲にて金剛を支援せよ、オーバー』
翔鶴「翔鶴、了解」
翔鶴は摩耶と陽炎を支えたまま、無事な彩雲を全機、即ち9機放った。
翔鶴「彩雲エアボーン」
意識が彩雲に乗る。
翔鶴「コマンド、翔鶴。
摩耶、及び陽炎が負傷。
自律航行不能。
演習状況終了まで曳航状態で待機予定」
太郎『翔鶴、コマンド。
了解した。彩雲は出せるか、オーバー』
翔鶴「コマンド、翔鶴。可能です、オーバー」
太郎『翔鶴、コマンド。彩雲にて金剛を支援せよ、オーバー』
翔鶴「翔鶴、了解」
翔鶴は摩耶と陽炎を支えたまま、無事な彩雲を全機、即ち9機放った。
翔鶴「彩雲エアボーン」
意識が彩雲に乗る。
681: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:16:37.58 ID:Ome3SCLk0
翔鶴「……艦載機通報。
北西、方位3-1-5、2000の距離に敵影有。
……西南西上空に敵航空機編隊確認。
コマンド、指示を、オーバー」
太郎『翔鶴、コマンド。西南西の敵機を突っ切って強行偵察を行え、オーバー』
翔鶴らの会話を聞き、金剛は大体敵の戦力がどう分散したか、予想がついた。
金剛(西で艦載機が見えたという事は、西に空母が居るという事)
仮に北西に鳳翔が居たとして、時間をかけて西に迂回させてまで、金剛の正面から艦載機を突っ込ませる意味が無い。
金剛(おそらく榛名は南から北へ、私達を狩り出す役目だった……
北西で待っているのは狼……榛名との挟撃を狙っていた筈。
空母は、戦闘に巻き込まれないように南下した、って所かしら)
ゴホゴホと激しい咳をしつつも、意志は強く。
金剛(……都合が良いかも知れない)
そんな折、翔鶴から通信。
翔鶴「艦載機通報。
西に空母と駆逐を確認。
接近する攻撃機に注意して下さい」
数機を落とされながらも、無理に敵機編隊を突破した偵察の結果は、金剛の予想を裏付けた。
金剛(Bingo。……攻めるわ)
北西、方位3-1-5、2000の距離に敵影有。
……西南西上空に敵航空機編隊確認。
コマンド、指示を、オーバー」
太郎『翔鶴、コマンド。西南西の敵機を突っ切って強行偵察を行え、オーバー』
翔鶴らの会話を聞き、金剛は大体敵の戦力がどう分散したか、予想がついた。
金剛(西で艦載機が見えたという事は、西に空母が居るという事)
仮に北西に鳳翔が居たとして、時間をかけて西に迂回させてまで、金剛の正面から艦載機を突っ込ませる意味が無い。
金剛(おそらく榛名は南から北へ、私達を狩り出す役目だった……
北西で待っているのは狼……榛名との挟撃を狙っていた筈。
空母は、戦闘に巻き込まれないように南下した、って所かしら)
ゴホゴホと激しい咳をしつつも、意志は強く。
金剛(……都合が良いかも知れない)
そんな折、翔鶴から通信。
翔鶴「艦載機通報。
西に空母と駆逐を確認。
接近する攻撃機に注意して下さい」
数機を落とされながらも、無理に敵機編隊を突破した偵察の結果は、金剛の予想を裏付けた。
金剛(Bingo。……攻めるわ)
682: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:18:30.89 ID:Ome3SCLk0
◇
鳳翔(不味いですね……)
足柄は速力が低下している為、襲撃には間に合わないだろう。
鳳翔「……雷さん、生きている武装は?」
雷「胸から下はダメダメよ。
魚雷管ロスト、主砲のみ稼動しているけど……
戦艦相手は、あまり期待しないで欲しいわ」
溜息と共に告げる雷。
魚雷があれば、まだなんとかなったかも知れないが。
鳳翔「……弓で、なんとかなるでしょうか……」
むむ、と眉間に皺を寄せる。
雷「弓って射程1000か1500よね。
超接近すればなんとか?」
鳳翔「それは……難しいですね……」
そこまで接近する前に排除されるだろう。
弓でダメージを入れるのはあまり現実的で無い、と判断して、鳳翔は自分の飛行甲板を見た。
攻撃機の残機は僅か5機。
正直、これだけで戦艦をなんとか出来る気がしない。
特に、相手は彩雲でこちらの攻撃隊を見ている。
悪条件が重なっていた。
鳳翔(不味いですね……)
足柄は速力が低下している為、襲撃には間に合わないだろう。
鳳翔「……雷さん、生きている武装は?」
雷「胸から下はダメダメよ。
魚雷管ロスト、主砲のみ稼動しているけど……
戦艦相手は、あまり期待しないで欲しいわ」
溜息と共に告げる雷。
魚雷があれば、まだなんとかなったかも知れないが。
鳳翔「……弓で、なんとかなるでしょうか……」
むむ、と眉間に皺を寄せる。
雷「弓って射程1000か1500よね。
超接近すればなんとか?」
鳳翔「それは……難しいですね……」
そこまで接近する前に排除されるだろう。
弓でダメージを入れるのはあまり現実的で無い、と判断して、鳳翔は自分の飛行甲板を見た。
攻撃機の残機は僅か5機。
正直、これだけで戦艦をなんとか出来る気がしない。
特に、相手は彩雲でこちらの攻撃隊を見ている。
悪条件が重なっていた。
683: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:21:28.83 ID:Ome3SCLk0
と、その時。
鳳翔「……!艦攻から金剛さんが見えました!
方位0-4-0、距離4000、島群の西端に差し掛かってます!
もう目と鼻の先です!」
接敵する。
途端に飛んでくる対空砲火。
鳳翔(……さて、どうしましょうか……)
なんとか、ダメージを入れておきたい。
いくら足柄が歴戦の重巡でも、無傷の戦艦とやりあうのは荷が重いだろう。
相手もやり手なら尚更。
鳳翔(……あまり使いたくない手ですが……致し方ありませんね)
ふぅ、と深呼吸。
鳳翔(……勝利の、礎となりましょう)
鳳翔「……!艦攻から金剛さんが見えました!
方位0-4-0、距離4000、島群の西端に差し掛かってます!
もう目と鼻の先です!」
接敵する。
途端に飛んでくる対空砲火。
鳳翔(……さて、どうしましょうか……)
なんとか、ダメージを入れておきたい。
いくら足柄が歴戦の重巡でも、無傷の戦艦とやりあうのは荷が重いだろう。
相手もやり手なら尚更。
鳳翔(……あまり使いたくない手ですが……致し方ありませんね)
ふぅ、と深呼吸。
鳳翔(……勝利の、礎となりましょう)
684: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:24:34.77 ID:Ome3SCLk0
◇
金剛(翔鶴の報告的に、そろそろ攻撃隊が見えてもいい頃……)
しきりに出る咳を鬱陶しく思いつつ、金剛は目を皿のようにして水平を見渡していた。
そこから幾つかの岩陰を抜けたところで、上空に敵編隊を認める。
金剛「Contact hostile warbirds. Engaging.」
まぐれ当たりを期待し、対空砲火を開始する。
それに対し、敵機が散会しながら接近し、その正確な数が把握された。
金剛(5機……)
大した数ではない。
自分なら避けれる。
そう判断し。
対空砲火は続けながら、足は止めない。
金剛の計算だと、自分はあと3分程で島群を抜ける。
つまり、敵が自分の射程内に入るまで、あと3分。
この180秒のうちに、敵はアタックを仕掛けたい筈だ。
つまり、今すぐに来てもおかしく無くーー
金剛(翔鶴の報告的に、そろそろ攻撃隊が見えてもいい頃……)
しきりに出る咳を鬱陶しく思いつつ、金剛は目を皿のようにして水平を見渡していた。
そこから幾つかの岩陰を抜けたところで、上空に敵編隊を認める。
金剛「Contact hostile warbirds. Engaging.」
まぐれ当たりを期待し、対空砲火を開始する。
それに対し、敵機が散会しながら接近し、その正確な数が把握された。
金剛(5機……)
大した数ではない。
自分なら避けれる。
そう判断し。
対空砲火は続けながら、足は止めない。
金剛の計算だと、自分はあと3分程で島群を抜ける。
つまり、敵が自分の射程内に入るまで、あと3分。
この180秒のうちに、敵はアタックを仕掛けたい筈だ。
つまり、今すぐに来てもおかしく無くーー
685: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:27:03.01 ID:Ome3SCLk0
金剛(ほら……来た)
ーーそう考えているうちに、敵が降下してきた。
翔鶴『金剛、インカミング!』
彩雲から見ていた翔鶴が叫ぶが、言われるまでもない。
金剛は対空砲火を維持したまま、回避機動を取った。
一見ランダムに見える、不連続なトロコイド曲線を描く金剛。
決して急では無いが、魚雷や爆弾を放る側からすると予測が難しい。
一方、不規則移動しながらの対空砲火では艦攻を撃墜する事は叶わず。
魚雷が4発投下される。
が、機動のお陰で艦攻側も命中弾が無かった。
航空魚雷は金剛の両サイドをそのまま抜けて行く。
残弾の無い艦攻隊は低空飛行を保ったまま、魚雷を追うように離脱。
金剛(……よし)
ふー、と溜息。
被弾は無し。
これで、一つ目の関門は越えた。
追撃は良いだろう。
もう、二つ目の関門が見えるはずだから。
ーーそう考えているうちに、敵が降下してきた。
翔鶴『金剛、インカミング!』
彩雲から見ていた翔鶴が叫ぶが、言われるまでもない。
金剛は対空砲火を維持したまま、回避機動を取った。
一見ランダムに見える、不連続なトロコイド曲線を描く金剛。
決して急では無いが、魚雷や爆弾を放る側からすると予測が難しい。
一方、不規則移動しながらの対空砲火では艦攻を撃墜する事は叶わず。
魚雷が4発投下される。
が、機動のお陰で艦攻側も命中弾が無かった。
航空魚雷は金剛の両サイドをそのまま抜けて行く。
残弾の無い艦攻隊は低空飛行を保ったまま、魚雷を追うように離脱。
金剛(……よし)
ふー、と溜息。
被弾は無し。
これで、一つ目の関門は越えた。
追撃は良いだろう。
もう、二つ目の関門が見えるはずだから。
686: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:28:11.79 ID:Ome3SCLk0
金剛(……島群を、抜けるーー)
一気に開ける視界。
そして、浮かび上がる敵影。
金剛「Enemy contact.」
接敵。
金剛「Azimuth 2-4-0, dist 3000, two visual.」
方位2-4-0、距離3000、敵影2。
金剛「Engaging.」
交戦する。
金剛「Guns loaded.」
艤装が唸り、主砲に弾薬が装填された。
金剛「Open fire.」
ズドン、という轟音と共に、砲撃戦が始まる。
一気に開ける視界。
そして、浮かび上がる敵影。
金剛「Enemy contact.」
接敵。
金剛「Azimuth 2-4-0, dist 3000, two visual.」
方位2-4-0、距離3000、敵影2。
金剛「Engaging.」
交戦する。
金剛「Guns loaded.」
艤装が唸り、主砲に弾薬が装填された。
金剛「Open fire.」
ズドン、という轟音と共に、砲撃戦が始まる。
687: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:33:05.89 ID:Ome3SCLk0
◇
雷(来たわ来たわ……)
ガシャコン、と右肩の主砲に装薬と砲弾を装填しつつ、前方を注視。
距離3000に、島群を抜けたばかりの敵が見える。
雷「雷、火器管制良し!主砲撃方始め!」
初弾を放った。
12.7cm砲では戦艦に有効打を与えるのは難しいだろう。
その上、雷は大破し極めて低速である。
敵からすればいい的だ。
が、座して死を待つのも癪である。
雷「一矢報いたいわね……!」
と、呟くと同時に。
金剛の35.6cm砲弾が、一斉に海面に着弾。
雷の前方に、凄まじい高さの水柱が幾つも立ち、視界を覆い隠す。
雷(全近だけど……ほとんど正中……!)
金剛は正中、つまり左右にブレ無く弾を放り込んで来た。
雷(やばっ……やっぱり足が遅いと一瞬で狙われる……)
雷(来たわ来たわ……)
ガシャコン、と右肩の主砲に装薬と砲弾を装填しつつ、前方を注視。
距離3000に、島群を抜けたばかりの敵が見える。
雷「雷、火器管制良し!主砲撃方始め!」
初弾を放った。
12.7cm砲では戦艦に有効打を与えるのは難しいだろう。
その上、雷は大破し極めて低速である。
敵からすればいい的だ。
が、座して死を待つのも癪である。
雷「一矢報いたいわね……!」
と、呟くと同時に。
金剛の35.6cm砲弾が、一斉に海面に着弾。
雷の前方に、凄まじい高さの水柱が幾つも立ち、視界を覆い隠す。
雷(全近だけど……ほとんど正中……!)
金剛は正中、つまり左右にブレ無く弾を放り込んで来た。
雷(やばっ……やっぱり足が遅いと一瞬で狙われる……)
688: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:34:39.90 ID:Ome3SCLk0
敵はどうやら、一人ずつ仕留めるつもりのようだ。
高精度砲撃を受けている今、自分の弾着がどうのと言っている場合では無い。
雷は二射目を装填しながら、舵を斜めに切った。
鈍足ながらも、全速航行でなんとか敵の砲撃の軸線を避けようとする。
が。
直後、雷の前後、至近の海面が爆発した。
金剛の砲撃である。
雷(夾叉……!)
砲弾の巻き上げた水柱により、濡れ鼠になった雷は歯噛みする。
視認から僅か数十秒。
既に敵は自分を砲の散布界に収めようとしていた。
次からは確実に有効弾が飛んでくる。
これはかなり、不味い。
自分の速力が小さすぎる。
満足に蛇行も出来ない。
チラッと少し離れた鳳翔の方を見る。
彼女は膝立ちで矢を放っていたが、そもそも艦娘の弓は射程距離1000や1500の近接用だ。
3000の距離を撃ち抜く物ではない。
援護して貰うのは難しいだろう。
状況は非常に不味い。
と、雷近傍に一発着弾し、雷は更に水をかぶる。
至近弾でこそ無かったが、それはとても運が良かっただけだ。
もういつ被弾してもおかしく無い。
高精度砲撃を受けている今、自分の弾着がどうのと言っている場合では無い。
雷は二射目を装填しながら、舵を斜めに切った。
鈍足ながらも、全速航行でなんとか敵の砲撃の軸線を避けようとする。
が。
直後、雷の前後、至近の海面が爆発した。
金剛の砲撃である。
雷(夾叉……!)
砲弾の巻き上げた水柱により、濡れ鼠になった雷は歯噛みする。
視認から僅か数十秒。
既に敵は自分を砲の散布界に収めようとしていた。
次からは確実に有効弾が飛んでくる。
これはかなり、不味い。
自分の速力が小さすぎる。
満足に蛇行も出来ない。
チラッと少し離れた鳳翔の方を見る。
彼女は膝立ちで矢を放っていたが、そもそも艦娘の弓は射程距離1000や1500の近接用だ。
3000の距離を撃ち抜く物ではない。
援護して貰うのは難しいだろう。
状況は非常に不味い。
と、雷近傍に一発着弾し、雷は更に水をかぶる。
至近弾でこそ無かったが、それはとても運が良かっただけだ。
もういつ被弾してもおかしく無い。
689: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:36:06.90 ID:Ome3SCLk0
焦って無線に叫ぶ。
雷「足柄!まだなの!」
足柄『到達予想は300、凌いで頂戴』
雷「300も持たないわ……!」
そう言いつつも、動けぬ状態で少しでも被弾の確率を避ける為、雷は伏射体勢に移行した。
脚部艤装が水面から露出し移動が全く出来なくなるこれは、砲弾回避の最終手段だ。
と、金剛の四射目が来る。
雷の少し横に着弾。
もし伏射に移行し、速度を殺してなければ確実に被弾していた。
ーーだが、次は避けれないだろう。
雷「……ああもうっ!」
悪態をつきながら雷も伏せたまま、殆どあてずっぽうで狙いをつける。
ゆっくりと測距測角している時間はない。
砲撃。
しかし、その着弾を確認する前に。
金剛の五射目が雷を捉えた。
雷「足柄!まだなの!」
足柄『到達予想は300、凌いで頂戴』
雷「300も持たないわ……!」
そう言いつつも、動けぬ状態で少しでも被弾の確率を避ける為、雷は伏射体勢に移行した。
脚部艤装が水面から露出し移動が全く出来なくなるこれは、砲弾回避の最終手段だ。
と、金剛の四射目が来る。
雷の少し横に着弾。
もし伏射に移行し、速度を殺してなければ確実に被弾していた。
ーーだが、次は避けれないだろう。
雷「……ああもうっ!」
悪態をつきながら雷も伏せたまま、殆どあてずっぽうで狙いをつける。
ゆっくりと測距測角している時間はない。
砲撃。
しかし、その着弾を確認する前に。
金剛の五射目が雷を捉えた。
690: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:37:20.74 ID:Ome3SCLk0
◇
金剛「Good hit on target. DA follow.」
命中弾に、握り拳を作り、翔鶴に攻撃成果の判定を頼む。
翔鶴『雷ダウン。
ビューティフル』
翔鶴は賞賛と共に雷の撃破を伝えた。
金剛はよし、と満足気に頷く。
次は、先程から矢を放ってくる鳳翔だ。
流石に距離があり、弓は脅威ではない。
そう判断し、金剛は速度を落とす。
雷と鳳翔の相対位置を考慮し、落ち着いておおまかな狙いをつけた。
艦娘には便利な射撃管制装置は無い。
その代わり、簡単な電探であったり、パッと見で大体の距離がわかったりする。
そこから如何に目標に当てるかが、艦娘の腕の見せ所だ。
金剛「Good hit on target. DA follow.」
命中弾に、握り拳を作り、翔鶴に攻撃成果の判定を頼む。
翔鶴『雷ダウン。
ビューティフル』
翔鶴は賞賛と共に雷の撃破を伝えた。
金剛はよし、と満足気に頷く。
次は、先程から矢を放ってくる鳳翔だ。
流石に距離があり、弓は脅威ではない。
そう判断し、金剛は速度を落とす。
雷と鳳翔の相対位置を考慮し、落ち着いておおまかな狙いをつけた。
艦娘には便利な射撃管制装置は無い。
その代わり、簡単な電探であったり、パッと見で大体の距離がわかったりする。
そこから如何に目標に当てるかが、艦娘の腕の見せ所だ。
691: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:38:18.08 ID:Ome3SCLk0
実際の艦隊砲撃戦の様に、厳密な理論に基づいて砲撃を行う艦娘も居るには居る。
が、艦娘には意識が一つしかない。
人がかつて駆った艦艇のように、舵や砲撃の役割分担が出来ない以上、実戦で公算やら何やらを考慮する時間は無い。
そもそも、目標が小さ過ぎるので、船の理論通りにいく筈も無いのだが。
だから、風向きやら湿度やらを考えず、感覚で取り敢えず試射するのが普通だ。
そこから、修正を加える。
それが最も手っ取り早く、単純で効果があるから。
が、艦娘には意識が一つしかない。
人がかつて駆った艦艇のように、舵や砲撃の役割分担が出来ない以上、実戦で公算やら何やらを考慮する時間は無い。
そもそも、目標が小さ過ぎるので、船の理論通りにいく筈も無いのだが。
だから、風向きやら湿度やらを考えず、感覚で取り敢えず試射するのが普通だ。
そこから、修正を加える。
それが最も手っ取り早く、単純で効果があるから。
692: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:40:52.88 ID:Ome3SCLk0
金剛「Fire.」
金剛は最初、わざと手前に投射した。
着弾。
無論全近、左寄り。
金剛は立った水柱の高さと鳳翔の大きさを相対的に評価し、次弾を準備する。
金剛「Fire.」
第二射、斉射。
着弾。
今度は全遠、大きく右寄り。
どうやら鳳翔は手前側に回頭を始めたようだ。
敵の未来位置を予測して仰角、方位角を調整。
金剛「Fire.」
斉射。
着弾。
全近、若干右寄り。
先程の着弾地点よりは鳳翔に近い。
金剛(砲撃の精度がイマイチ……咳が鬱陶しい……
……鳳翔さんは回頭を続けるのかしら?)
今、鳳翔は回頭の頂点にいる。
次にどう動くかは、同平面からの視点ではわからない。
金剛は最初、わざと手前に投射した。
着弾。
無論全近、左寄り。
金剛は立った水柱の高さと鳳翔の大きさを相対的に評価し、次弾を準備する。
金剛「Fire.」
第二射、斉射。
着弾。
今度は全遠、大きく右寄り。
どうやら鳳翔は手前側に回頭を始めたようだ。
敵の未来位置を予測して仰角、方位角を調整。
金剛「Fire.」
斉射。
着弾。
全近、若干右寄り。
先程の着弾地点よりは鳳翔に近い。
金剛(砲撃の精度がイマイチ……咳が鬱陶しい……
……鳳翔さんは回頭を続けるのかしら?)
今、鳳翔は回頭の頂点にいる。
次にどう動くかは、同平面からの視点ではわからない。
693: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:41:45.46 ID:Ome3SCLk0
金剛は次弾の装填を済ませつつ、翔鶴に鳳翔の体が傾斜しているかを聞いた。
金剛「翔鶴!Is 鳳翔 leaning right?」
翔鶴『アファーマティブ!』
肯定。
そこから、鳳翔が回頭を続けると判断。
砲塔を上げ、方位角微調整。
放つ。
金剛「Fire.」
着弾を待たずに、方位角のみを右に調整し、追加で砲撃。
金剛「Fire.」
二射目を放った頃、一斉射目が着弾した。
正中、全遠。
その砲弾が鳳翔の正面を爆裂させ。
鳳翔は慌てて、やや旋回を早める。
その結果、続いての二射目が夾叉となった。
金剛(捕まえた)
金剛は砲の仰角、方位角を記憶、鳳翔の動きをトレスするように脚部艤装の出力を調整。
金剛「翔鶴!Is 鳳翔 leaning right?」
翔鶴『アファーマティブ!』
肯定。
そこから、鳳翔が回頭を続けると判断。
砲塔を上げ、方位角微調整。
放つ。
金剛「Fire.」
着弾を待たずに、方位角のみを右に調整し、追加で砲撃。
金剛「Fire.」
二射目を放った頃、一斉射目が着弾した。
正中、全遠。
その砲弾が鳳翔の正面を爆裂させ。
鳳翔は慌てて、やや旋回を早める。
その結果、続いての二射目が夾叉となった。
金剛(捕まえた)
金剛は砲の仰角、方位角を記憶、鳳翔の動きをトレスするように脚部艤装の出力を調整。
694: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:44:26.21 ID:Ome3SCLk0
若干先読み気味の動きから放つ、第六射。
再び夾叉。
有効弾無し。
足柄が近付いて来ている。
早期に決着をつけねばならぬのに、運が無い。
焦りを感じて舌打ちしつつ、角度を微調整して第七射。
蛇行していた鳳翔を、遂に至近弾が捉えた。
翔鶴が興奮して叫ぶ。
翔鶴『至近弾!』
金剛(よし……)
鳳翔は着弾の衝撃からバランスを崩した。
敵の失速に合わせ、金剛も減速。
金剛(完璧な相対位置……仕留めるわ)
ニヤリと、獰猛に笑い。
放つ、第八斉射。
そしてーー
金剛「ーーBullseye.」
再び夾叉。
有効弾無し。
足柄が近付いて来ている。
早期に決着をつけねばならぬのに、運が無い。
焦りを感じて舌打ちしつつ、角度を微調整して第七射。
蛇行していた鳳翔を、遂に至近弾が捉えた。
翔鶴が興奮して叫ぶ。
翔鶴『至近弾!』
金剛(よし……)
鳳翔は着弾の衝撃からバランスを崩した。
敵の失速に合わせ、金剛も減速。
金剛(完璧な相対位置……仕留めるわ)
ニヤリと、獰猛に笑い。
放つ、第八斉射。
そしてーー
金剛「ーーBullseye.」
695: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:45:01.71 ID:Ome3SCLk0
◇
何故、翔鶴が彩雲を落とされつつも、観測を続ける事が出来ていたのか。
それは数機がまだ落とされていないから。
何故、鳳翔が20機の艦戦を展開しているにも関わらず、全て落とされていないのか。
翔鶴の腕前が確かだから、というのもある。
が。
最大の要因は、鳳翔が別の事に集中していたから。
金剛の背後、500。
島群の中から迫る、単機の攻撃機。
何故、翔鶴が彩雲を落とされつつも、観測を続ける事が出来ていたのか。
それは数機がまだ落とされていないから。
何故、鳳翔が20機の艦戦を展開しているにも関わらず、全て落とされていないのか。
翔鶴の腕前が確かだから、というのもある。
が。
最大の要因は、鳳翔が別の事に集中していたから。
金剛の背後、500。
島群の中から迫る、単機の攻撃機。
696: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 21:46:33.52 ID:Ome3SCLk0
先程、金剛が島群を抜ける前に鳳翔の攻撃隊が放った魚雷は4発。
対する攻撃機の数は5機。
一発温存していたのだ。
この瞬間の為に。
金剛は見事に、鳳翔隊は魚雷を全て放った物だと誤認していた。
そして今、完全に射撃に集中している。
鳳翔からすると、絶好の攻撃チャンスだ。
翔鶴の彩雲からも接近を知られぬよう、鳳翔は細心の注意と共に低空飛行でギリギリまで接近。
金剛が低速第8斉射を行った瞬間、魚雷投下。
金剛は背後からの攻撃に全く気付かない。
ズン。
衝撃。
鳳翔「ぅくっ……」
金剛「?!……What the……」
まずは鳳翔が、少し遅れて金剛が被弾する。
鳳翔にとっては、骨を断たせて肉を切る格好になったが、そうでもせねばこの状況で金剛にダメージを入れる事は難しかった。
対する攻撃機の数は5機。
一発温存していたのだ。
この瞬間の為に。
金剛は見事に、鳳翔隊は魚雷を全て放った物だと誤認していた。
そして今、完全に射撃に集中している。
鳳翔からすると、絶好の攻撃チャンスだ。
翔鶴の彩雲からも接近を知られぬよう、鳳翔は細心の注意と共に低空飛行でギリギリまで接近。
金剛が低速第8斉射を行った瞬間、魚雷投下。
金剛は背後からの攻撃に全く気付かない。
ズン。
衝撃。
鳳翔「ぅくっ……」
金剛「?!……What the……」
まずは鳳翔が、少し遅れて金剛が被弾する。
鳳翔にとっては、骨を断たせて肉を切る格好になったが、そうでもせねばこの状況で金剛にダメージを入れる事は難しかった。
697: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 22:13:34.86 ID:Ome3SCLk0
鳳翔「私は轟沈、判定ですね……」
ふぅ、と溜息。
轟沈判定を受けた空母は、艦載機による攻撃を速やかに中止、収容せねばならない。
艦載機を収容していると、同じく轟沈判定を受けた雷が近付いて来た。
雷「お疲れ様。一矢報いたわね?」
鳳翔「……そう……だと良いのですが」
中破していたら良いな、と思う。
雷「……うーん。足柄さん、勝てるかしら。
お互い魚雷一発喰らってて……」
鳳翔「……」
正直、難しいだろう。
足柄は歴戦の重巡かも知れない。
が、金剛もなかなかのやり手だというのが鳳翔の感想だった。
鳳翔(夾叉までの持って行き方は少し雑でしたが……
その後は完全に回避機動を読まれていました……)
艤装の向きと体の傾き。
重心移動とテンポ。
経験と、勘。
艦娘はこれらの要素から相手の未来航路を予想して砲撃する。
熟練している者程その読みはシャープになり。
鳳翔の様に、対策せずに回避機動を取ってもバシバシ当ててくる。
雷「……むー。北西に流れてくれたらなぁ。
足柄さんと戦ってる時に、横っ腹を艦載機で殴れたのにね」
鳳翔「……そこは敵が冴えていた、という事でしょう」
はぁ、と雷は溜息。
鳳翔(……足柄さん、後はーー)
空を仰いで、目を瞑る。
ふぅ、と溜息。
轟沈判定を受けた空母は、艦載機による攻撃を速やかに中止、収容せねばならない。
艦載機を収容していると、同じく轟沈判定を受けた雷が近付いて来た。
雷「お疲れ様。一矢報いたわね?」
鳳翔「……そう……だと良いのですが」
中破していたら良いな、と思う。
雷「……うーん。足柄さん、勝てるかしら。
お互い魚雷一発喰らってて……」
鳳翔「……」
正直、難しいだろう。
足柄は歴戦の重巡かも知れない。
が、金剛もなかなかのやり手だというのが鳳翔の感想だった。
鳳翔(夾叉までの持って行き方は少し雑でしたが……
その後は完全に回避機動を読まれていました……)
艤装の向きと体の傾き。
重心移動とテンポ。
経験と、勘。
艦娘はこれらの要素から相手の未来航路を予想して砲撃する。
熟練している者程その読みはシャープになり。
鳳翔の様に、対策せずに回避機動を取ってもバシバシ当ててくる。
雷「……むー。北西に流れてくれたらなぁ。
足柄さんと戦ってる時に、横っ腹を艦載機で殴れたのにね」
鳳翔「……そこは敵が冴えていた、という事でしょう」
はぁ、と雷は溜息。
鳳翔(……足柄さん、後はーー)
空を仰いで、目を瞑る。
698: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 22:52:57.32 ID:Ome3SCLk0
………
……
…
提督『はぁ……どうやら鳳翔と雷がやられたらしいな』
足柄「そうみたいね」
魚雷管のチェック。左右問題なし。
提督『残りは金剛とお前だけだ』
足柄「ん」
主砲は正常、装填済み。
提督『どうも鳳翔が一発与えたようだ』
足柄「やるわねぇ」
脚部艤装は出力が4割近く減少。
提督『ふと思ったが、演習弾の蛍光色は修復材で落ちるのか?』
足柄「落ちるは落ちるわよ」
鼻歌を歌いながら、襟元とスカーフが乱れていないかをチェック。
提督『やはり落ちにくいのか』
足柄「ベトベトがね。漬けときゃ消えるんだけど……擦る方が早いのよ。
んで皆擦るわけ」
手袋と服の裾が裏返っていないかを確かめる。
提督『大変そうだな……』
足柄「大変よ。知らなかったの?」
締めに髪の毛を手で梳いて。
……
…
提督『はぁ……どうやら鳳翔と雷がやられたらしいな』
足柄「そうみたいね」
魚雷管のチェック。左右問題なし。
提督『残りは金剛とお前だけだ』
足柄「ん」
主砲は正常、装填済み。
提督『どうも鳳翔が一発与えたようだ』
足柄「やるわねぇ」
脚部艤装は出力が4割近く減少。
提督『ふと思ったが、演習弾の蛍光色は修復材で落ちるのか?』
足柄「落ちるは落ちるわよ」
鼻歌を歌いながら、襟元とスカーフが乱れていないかをチェック。
提督『やはり落ちにくいのか』
足柄「ベトベトがね。漬けときゃ消えるんだけど……擦る方が早いのよ。
んで皆擦るわけ」
手袋と服の裾が裏返っていないかを確かめる。
提督『大変そうだな……』
足柄「大変よ。知らなかったの?」
締めに髪の毛を手で梳いて。
699: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 22:58:05.77 ID:Ome3SCLk0
足柄「……あ、じゃあ、あたしが勝ったらぁ……
あなたが家事、やってくれないかしら?」
提督『何だと……』
足柄「洗うの面倒だしぃ。鳳翔さんに押し付けるのも悪いしぃ。
洗濯ついでにご飯風呂諸々よろしくぅ!」
あはは!と笑う。
提督『……執務が有るんだがなぁ……』
足柄「イマドキ家事出来なきゃモテないわよ?」
あなたはモテなくても良いんだけど。
提督『どこでそんな情報を仕入れて来るんだ……
少なくとも飯は鳳翔の方が良いんじゃないか』
足柄「何よー。料理も出来ないのかしら?」
ちょっかいをかけるように、煽ってみる。
提督『ほう……そこまで言うのなら、男の料理を見せてやろう』
足柄「あら、楽しみにしてるわ」
それは本音で。
提督『しかし……飯といえば……
昼飯を食ってないな……』
呟く提督に。
足柄「そうね」
足柄は応じる。
あなたが家事、やってくれないかしら?」
提督『何だと……』
足柄「洗うの面倒だしぃ。鳳翔さんに押し付けるのも悪いしぃ。
洗濯ついでにご飯風呂諸々よろしくぅ!」
あはは!と笑う。
提督『……執務が有るんだがなぁ……』
足柄「イマドキ家事出来なきゃモテないわよ?」
あなたはモテなくても良いんだけど。
提督『どこでそんな情報を仕入れて来るんだ……
少なくとも飯は鳳翔の方が良いんじゃないか』
足柄「何よー。料理も出来ないのかしら?」
ちょっかいをかけるように、煽ってみる。
提督『ほう……そこまで言うのなら、男の料理を見せてやろう』
足柄「あら、楽しみにしてるわ」
それは本音で。
提督『しかし……飯といえば……
昼飯を食ってないな……』
呟く提督に。
足柄「そうね」
足柄は応じる。
700: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/04(木) 22:58:56.99 ID:Ome3SCLk0
軽口の応酬は、終わりだ。
提督『お前も、そろそろ腹が減ったろう』
今度は提督が煽った。
足柄「ええーー」
その感情の昂りに乗って。
足柄「ーー腹が、減ったわ」
精悍な餓狼が、牙を剥く。
提督『お前も、そろそろ腹が減ったろう』
今度は提督が煽った。
足柄「ええーー」
その感情の昂りに乗って。
足柄「ーー腹が、減ったわ」
精悍な餓狼が、牙を剥く。
712: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:38:44.56 ID:xNy+1qNb0
◇
金剛の脚部艤装には大量の蛍光塗料が付着していた。
速度を落としてから踵を上げ、金剛は損害を確認する。
金剛「Ugh……Shit……
Foot rig's damaged……」
鳳翔の、被弾前提の攻撃。
それをモロに後ろから食らい、金剛は中破程度のダメージを受けた。
粘性塗料が推進器にベッタリと絡みついており、速度低下が予想される。
金剛「……翔鶴、any 彩雲 alive?」
次に上空を見上げ、彩雲がいない事に気付いて翔鶴に残機を確認。
すぐに無線が帰ってくる。
金剛の脚部艤装には大量の蛍光塗料が付着していた。
速度を落としてから踵を上げ、金剛は損害を確認する。
金剛「Ugh……Shit……
Foot rig's damaged……」
鳳翔の、被弾前提の攻撃。
それをモロに後ろから食らい、金剛は中破程度のダメージを受けた。
粘性塗料が推進器にベッタリと絡みついており、速度低下が予想される。
金剛「……翔鶴、any 彩雲 alive?」
次に上空を見上げ、彩雲がいない事に気付いて翔鶴に残機を確認。
すぐに無線が帰ってくる。
713: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:39:30.41 ID:xNy+1qNb0
翔鶴『金剛、翔鶴。
彩雲はタンクに被弾、燃料がビンゴ、一旦撤収しました。
簡単な補修後、直ぐに上げますが……あまり長くは……』
金剛「Roger.」
無傷の機体が有れば、まだ飛んでいる筈だから……
残機全て被弾しているという事だろう。
被弾した機体に良い働きは期待出来ない。
金剛「Well well……seems like……
it's only you and me, doggy……」
呟く。
状況確認を終え、金剛は海図を開いた。
自分の現在地は……島群の西側。
対する足柄の予想位置は、島群を挟んだ北側。
金剛(最後に翔鶴が観測してから……
足柄は南西に下ったと予想される……
今は島群が間にあって視界が通っていないけれど……
私が北上すれば右手に見える筈)
彩雲はタンクに被弾、燃料がビンゴ、一旦撤収しました。
簡単な補修後、直ぐに上げますが……あまり長くは……』
金剛「Roger.」
無傷の機体が有れば、まだ飛んでいる筈だから……
残機全て被弾しているという事だろう。
被弾した機体に良い働きは期待出来ない。
金剛「Well well……seems like……
it's only you and me, doggy……」
呟く。
状況確認を終え、金剛は海図を開いた。
自分の現在地は……島群の西側。
対する足柄の予想位置は、島群を挟んだ北側。
金剛(最後に翔鶴が観測してから……
足柄は南西に下ったと予想される……
今は島群が間にあって視界が通っていないけれど……
私が北上すれば右手に見える筈)
714: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:40:39.51 ID:xNy+1qNb0
ならば北上しよう。
自分は戦艦。
重巡など、正面から圧倒する。
が、接近しすぎては、出会い頭から魚雷を食らう事故が起こり兼ねない。
そう考え、金剛は北西へ針路を取り、速度を上げ始めた。
視線は北東、即ち足柄が見えるであろう位置に固定されたまま。
しかし。
金剛(……居ない?)
いくら進んでも、いくら水平をじっと見つめても、何も見えなかった。
金剛は今、島群を真横に捉えている。
つまり、足柄が島の陰に隠れて見えない、という事はあり得ない。
金剛(……おかしい)
艦娘の身長から、水平線までの距離は約4000。
よって、彼我の距離7500〜8000で、少なくとも頭や艤装の先端は見える筈だ。
それが見えない。
自分は戦艦。
重巡など、正面から圧倒する。
が、接近しすぎては、出会い頭から魚雷を食らう事故が起こり兼ねない。
そう考え、金剛は北西へ針路を取り、速度を上げ始めた。
視線は北東、即ち足柄が見えるであろう位置に固定されたまま。
しかし。
金剛(……居ない?)
いくら進んでも、いくら水平をじっと見つめても、何も見えなかった。
金剛は今、島群を真横に捉えている。
つまり、足柄が島の陰に隠れて見えない、という事はあり得ない。
金剛(……おかしい)
艦娘の身長から、水平線までの距離は約4000。
よって、彼我の距離7500〜8000で、少なくとも頭や艤装の先端は見える筈だ。
それが見えない。
715: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:41:49.04 ID:xNy+1qNb0
金剛(これは……足柄が距離8000以遠に居るか、或いはーー)
先程の翔鶴からの方向では、足柄と自分の距離が8000以上も離れているとは思えなかった。
金剛(ーー島群の中に入った、か)
重巡と戦艦。
その差を考えれば、正面戦闘を避けて不意打ちを狙うのは正しい戦術と言える。
が。
金剛(……それならそれで、良いわね。
演習の勝利条件は別に敵の殲滅ではない……
防衛ラインを突破すれば私達の勝ちよ)
金剛はそう考え、針路、速度を維持。
注意は全て島群へ向けたまま。
先程の翔鶴からの方向では、足柄と自分の距離が8000以上も離れているとは思えなかった。
金剛(ーー島群の中に入った、か)
重巡と戦艦。
その差を考えれば、正面戦闘を避けて不意打ちを狙うのは正しい戦術と言える。
が。
金剛(……それならそれで、良いわね。
演習の勝利条件は別に敵の殲滅ではない……
防衛ラインを突破すれば私達の勝ちよ)
金剛はそう考え、針路、速度を維持。
注意は全て島群へ向けたまま。
716: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:42:22.00 ID:xNy+1qNb0
すると、島群の上に何か光る物。
金剛(……艦載機。
あれ、なんで飛んでるかと思ったけど……
足柄の艦載機か)
恐らくあの下に足柄が居るのだろう。
対空砲火をかけようかと考えて、やめた。
金剛(どうせ、島群の中からでは射線は通らない。
速度を落として対空砲火するよりは……)
そんな思考と共に、金剛は確実にサセン隊の陣地へと近付いて行く。
金剛(私の針路を見て、慌てて追いかけて来るが良いわ。
ーーそこを、潰してやる)
金剛(……艦載機。
あれ、なんで飛んでるかと思ったけど……
足柄の艦載機か)
恐らくあの下に足柄が居るのだろう。
対空砲火をかけようかと考えて、やめた。
金剛(どうせ、島群の中からでは射線は通らない。
速度を落として対空砲火するよりは……)
そんな思考と共に、金剛は確実にサセン隊の陣地へと近付いて行く。
金剛(私の針路を見て、慌てて追いかけて来るが良いわ。
ーーそこを、潰してやる)
717: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:43:35.18 ID:xNy+1qNb0
◇
足柄「ーーとか考えてるんでしょうねぇ……」
足柄は、島群の中などに居ない。
金剛の北東、距離6000、島も何も無い海のど真ん中。
そこで、仰向けの伏射姿勢。
増援が間に合わないと察した足柄は南下を止め、待ち伏せを敢行した。
何も無い場所でどう待ち伏せするか。
単純に伏射だ。
そうやって、伏射で体高を海面から50センチ未満に抑える事で得られる、金剛の視界に入らないギリギリの距離。
それが距離6000。
足柄「ーーとか考えてるんでしょうねぇ……」
足柄は、島群の中などに居ない。
金剛の北東、距離6000、島も何も無い海のど真ん中。
そこで、仰向けの伏射姿勢。
増援が間に合わないと察した足柄は南下を止め、待ち伏せを敢行した。
何も無い場所でどう待ち伏せするか。
単純に伏射だ。
そうやって、伏射で体高を海面から50センチ未満に抑える事で得られる、金剛の視界に入らないギリギリの距離。
それが距離6000。
718: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:44:47.82 ID:xNy+1qNb0
相手のこれまでの思考は合理的だ。ならば……
足柄(まさか機関停止して寝そべってるとは思わないわよねー。
案の定、今のあの人の注意は完全に島群に向いてるワケで。
単調な動きしちゃってサ)
足柄は艦載機三機から得た情報で、砲の綿密な角度調整を行っていた。
足柄(初段で必ず有効弾が、欲しい)
戦艦の装甲は伊達じゃない。
重巡の砲では、一撃のダメージは期待出来ない。
ならば、数を当てる。
角度調整を終えて。
あとは、運と、勘。
足柄(ーー翔鶴さんが艦載機あげる前に、始めるか)
足柄(まさか機関停止して寝そべってるとは思わないわよねー。
案の定、今のあの人の注意は完全に島群に向いてるワケで。
単調な動きしちゃってサ)
足柄は艦載機三機から得た情報で、砲の綿密な角度調整を行っていた。
足柄(初段で必ず有効弾が、欲しい)
戦艦の装甲は伊達じゃない。
重巡の砲では、一撃のダメージは期待出来ない。
ならば、数を当てる。
角度調整を終えて。
あとは、運と、勘。
足柄(ーー翔鶴さんが艦載機あげる前に、始めるか)
719: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:46:22.32 ID:xNy+1qNb0
◇
南東の島群へと最大の注意を払いながら航行する中。
突然、
ぼぉ……ん
と、響く音。
金剛(……どこかで砲撃音?)
それを疑問に感じた瞬間。
ズン!
と、背中に衝撃。
同時に周囲の海面が爆裂する。
金剛「……!」
被弾した。
何故、と考えるよりも先に、体が回避機動を取る。
続く二射目は全近、正中。
なんとか回避。
思考する。
金剛(死角から撃たれた!
足柄は島群には居なかった?!)
南東の島群へと最大の注意を払いながら航行する中。
突然、
ぼぉ……ん
と、響く音。
金剛(……どこかで砲撃音?)
それを疑問に感じた瞬間。
ズン!
と、背中に衝撃。
同時に周囲の海面が爆裂する。
金剛「……!」
被弾した。
何故、と考えるよりも先に、体が回避機動を取る。
続く二射目は全近、正中。
なんとか回避。
思考する。
金剛(死角から撃たれた!
足柄は島群には居なかった?!)
720: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:47:17.71 ID:xNy+1qNb0
舌打ち。
振り返って北東の方を見る。
すると僅かに見える、砲火。
金剛(……大体6000くらい……
さっきは見えなかった……
いや、今も体は見えてない……
……伏せ撃ちか……!)
考えている間に、三射目が着弾。
至近弾を貰う。
体が揺れる中、翔鶴へ叫ぶ。
金剛「翔鶴ーッ!Deploy 彩雲!
Taking fire from azimuth 0-4-5!
I have negative vision of the target!
Locate the bullshit!」
翔鶴『……ッ!了解、彩雲出します!』
翔鶴は補修も完了していない彩雲を二機、飛ばした。
金剛(クソッ……艦載機を残したのは悪手だったか……)
金剛も主砲を装填、大体のあたりを付けて応射。
振り返って北東の方を見る。
すると僅かに見える、砲火。
金剛(……大体6000くらい……
さっきは見えなかった……
いや、今も体は見えてない……
……伏せ撃ちか……!)
考えている間に、三射目が着弾。
至近弾を貰う。
体が揺れる中、翔鶴へ叫ぶ。
金剛「翔鶴ーッ!Deploy 彩雲!
Taking fire from azimuth 0-4-5!
I have negative vision of the target!
Locate the bullshit!」
翔鶴『……ッ!了解、彩雲出します!』
翔鶴は補修も完了していない彩雲を二機、飛ばした。
金剛(クソッ……艦載機を残したのは悪手だったか……)
金剛も主砲を装填、大体のあたりを付けて応射。
721: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:48:35.71 ID:xNy+1qNb0
◇
足柄「初撃は悪くないわぁ」
一発の直撃弾と、至近弾。
ダメージは確実に蓄積されている。
と、艦載機が翔鶴の彩雲を捉えた。
足柄(……見られたらマズイわね……
そろそろ詰めますか……)
金剛も距離を詰めてきている上に、彩雲からも見られるだろう。
動かないでいれば、やってくるのは戦艦の砲弾だ。
足柄(さて……攻め方を変えるか)
足柄「初撃は悪くないわぁ」
一発の直撃弾と、至近弾。
ダメージは確実に蓄積されている。
と、艦載機が翔鶴の彩雲を捉えた。
足柄(……見られたらマズイわね……
そろそろ詰めますか……)
金剛も距離を詰めてきている上に、彩雲からも見られるだろう。
動かないでいれば、やってくるのは戦艦の砲弾だ。
足柄(さて……攻め方を変えるか)
722: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:50:02.49 ID:xNy+1qNb0
いっそ見つかるくらいなら、自分から行こう。
砲撃をしつつ立ち上がり、抜錨。
脚部艤装の出力を上げる。
そして、金剛と足柄の、交わる視線。
先程金剛が放った応射弾は、足柄が見えてないだけあって、見当はずれの場所に着弾した。
が、それは弾着修正の材料となり得る。
足柄は素早くその場を離脱。
案の定、足柄が寝そべっていたあたりの海面を金剛の二射目が叩いた。
自身も砲撃しつつ、考える。
足柄(九三式魚雷一本と……もう一発くらい主砲を直撃で入れれば……
轟沈判定になるわよね……)
決まりだ。
砲撃をしつつ立ち上がり、抜錨。
脚部艤装の出力を上げる。
そして、金剛と足柄の、交わる視線。
先程金剛が放った応射弾は、足柄が見えてないだけあって、見当はずれの場所に着弾した。
が、それは弾着修正の材料となり得る。
足柄は素早くその場を離脱。
案の定、足柄が寝そべっていたあたりの海面を金剛の二射目が叩いた。
自身も砲撃しつつ、考える。
足柄(九三式魚雷一本と……もう一発くらい主砲を直撃で入れれば……
轟沈判定になるわよね……)
決まりだ。
723: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:50:37.73 ID:xNy+1qNb0
◇
北西へ進む金剛の背後に水柱が幾つも立ち上がり、水の屏風の形成する。
金剛(立ち上がると同時に、砲撃の質が変わった……?)
目を細める。
金剛(全遠ばかり。
立ち上がりで測距が狂ったか?)
いや、観測機すら出ている。
それは無いだろう。
金剛(……チキンレースか)
目を細める。
振り返ってみれば。
先程からの全遠弾、金剛が速度を落とせば直撃するような弾だ。
北西へ進む金剛の背後に水柱が幾つも立ち上がり、水の屏風の形成する。
金剛(立ち上がると同時に、砲撃の質が変わった……?)
目を細める。
金剛(全遠ばかり。
立ち上がりで測距が狂ったか?)
いや、観測機すら出ている。
それは無いだろう。
金剛(……チキンレースか)
目を細める。
振り返ってみれば。
先程からの全遠弾、金剛が速度を落とせば直撃するような弾だ。
724: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:51:17.76 ID:xNy+1qNb0
金剛(成る程。減速させない、と)
現在の速度を維持しながらの、安定した射撃は難しい。
金剛(……狙いをつけさせないまま、近接魚雷でケリをつける、ね。
……上等)
足柄は手練れだ。
それは認めざるを得ない。
動きが極めて読みづらい。
針路変更にしても、回頭にしても。
体が殆ど傾かない。
そして視線は金剛に釘付け。
進行方向を向かずに、正確に曲がるのはかなり難しいにも関わらず。
しかし、向こうからしても金剛の動きは読みづらいだろう。
金剛だって場数を踏んでいる。
そういう時、どうするか。
現在の速度を維持しながらの、安定した射撃は難しい。
金剛(……狙いをつけさせないまま、近接魚雷でケリをつける、ね。
……上等)
足柄は手練れだ。
それは認めざるを得ない。
動きが極めて読みづらい。
針路変更にしても、回頭にしても。
体が殆ど傾かない。
そして視線は金剛に釘付け。
進行方向を向かずに、正確に曲がるのはかなり難しいにも関わらず。
しかし、向こうからしても金剛の動きは読みづらいだろう。
金剛だって場数を踏んでいる。
そういう時、どうするか。
725: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:51:55.03 ID:xNy+1qNb0
一つは今、足柄がやっているような置き射撃。
敵が、ある行動をしたら当たる、という前提の元の攻撃。
一つは、接近しての水平撃。
着弾までのタイムラグが無ければ予測など意味はない。
だが、金剛は。
持ち前のセンスと勘で。
ゴリ押した。
金剛(悠長過ぎる。
戦艦に、舐めた真似をする重巡はーー)
装填、射撃。
金剛(ーー沈め)
装填、射撃。
翔鶴『弾着観測、北西400!次、北東300!』
翔鶴からの通信で、射撃が補正されていく。
少しずつ、少しずつ。
足柄を捉えつつあった。
敵が、ある行動をしたら当たる、という前提の元の攻撃。
一つは、接近しての水平撃。
着弾までのタイムラグが無ければ予測など意味はない。
だが、金剛は。
持ち前のセンスと勘で。
ゴリ押した。
金剛(悠長過ぎる。
戦艦に、舐めた真似をする重巡はーー)
装填、射撃。
金剛(ーー沈め)
装填、射撃。
翔鶴『弾着観測、北西400!次、北東300!』
翔鶴からの通信で、射撃が補正されていく。
少しずつ、少しずつ。
足柄を捉えつつあった。
726: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:54:16.78 ID:xNy+1qNb0
◇
足柄「おっとっと……」
少し前方に着弾。
金剛の砲弾が作った水のアーチをくぐる。
足柄「合わせてくるなぁ……」
距離は4000まで接近している。
脚の向きを見ているんだろうが……
足柄を含め、ある程度経験を積んでる艦娘は独自の航行パターンをいくつか持っていることが多い。
訓練した航行パターンをランダムに繰り返す事で、意識を砲撃に向けつつも効率的に回避が出来る。
さらに言うなれば、繰り返し訓練しているからこそ、姿勢を偽装しながら旋回出来るのだが。
それを金剛は見切りつつあるのかもしれない。
足柄「おっとっと……」
少し前方に着弾。
金剛の砲弾が作った水のアーチをくぐる。
足柄「合わせてくるなぁ……」
距離は4000まで接近している。
脚の向きを見ているんだろうが……
足柄を含め、ある程度経験を積んでる艦娘は独自の航行パターンをいくつか持っていることが多い。
訓練した航行パターンをランダムに繰り返す事で、意識を砲撃に向けつつも効率的に回避が出来る。
さらに言うなれば、繰り返し訓練しているからこそ、姿勢を偽装しながら旋回出来るのだが。
それを金剛は見切りつつあるのかもしれない。
727: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:54:46.73 ID:xNy+1qNb0
足柄「いいセンスしてるわねぇ……ったく!」
砲撃する。
それは金剛を通り過ぎ、その背後の海面を叩いた。
先程から、こればかり。
が。
無論、意味なくやっている訳では無い。
足柄(そろそろ仕掛けるか……
チンタラしてらんないわ)
格納庫から魚雷を8本取り出す。
雷速を調整後、それぞれ左右の魚雷管に4本ずつ装填。
射出する。
その後、更に4発を取り出し。
タイミングを見計らって。
足柄「……醸すわぁ……!」
最大雷速で発射した。
砲撃する。
それは金剛を通り過ぎ、その背後の海面を叩いた。
先程から、こればかり。
が。
無論、意味なくやっている訳では無い。
足柄(そろそろ仕掛けるか……
チンタラしてらんないわ)
格納庫から魚雷を8本取り出す。
雷速を調整後、それぞれ左右の魚雷管に4本ずつ装填。
射出する。
その後、更に4発を取り出し。
タイミングを見計らって。
足柄「……醸すわぁ……!」
最大雷速で発射した。
728: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:55:37.35 ID:xNy+1qNb0
◇
自分の背後の水面を叩く砲撃を目の端に捉えつつ、思う。
金剛(直撃を狙えない訳ではない筈……)
初撃、及びその後の追撃は見事だった。
そこから、魚雷への追い込みに砲撃を使い始めたようだが。
金剛(ま、とても都合が良いわね……!
ワザワザ時間をくれるなんて)
注視を続ける事で、なんとなく足柄の動きがわかってきた。
向こうが全力の回避を行わない限り、そろそろ有効弾が出てもおかしくはないだろう。
と、注視をしていた足柄が、魚雷を取り出したのが見える。
金剛(……あなたの戦略は間違ってないわ)
それを見て、金剛は砲を構える。
魚雷を放つために、足柄は多少減速し、角度を調整するだろう。
そこに弾を叩き込むつもりだ。
自分の背後の水面を叩く砲撃を目の端に捉えつつ、思う。
金剛(直撃を狙えない訳ではない筈……)
初撃、及びその後の追撃は見事だった。
そこから、魚雷への追い込みに砲撃を使い始めたようだが。
金剛(ま、とても都合が良いわね……!
ワザワザ時間をくれるなんて)
注視を続ける事で、なんとなく足柄の動きがわかってきた。
向こうが全力の回避を行わない限り、そろそろ有効弾が出てもおかしくはないだろう。
と、注視をしていた足柄が、魚雷を取り出したのが見える。
金剛(……あなたの戦略は間違ってないわ)
それを見て、金剛は砲を構える。
魚雷を放つために、足柄は多少減速し、角度を調整するだろう。
そこに弾を叩き込むつもりだ。
729: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:56:07.67 ID:xNy+1qNb0
金剛(ーーでも、少し時間をかけ過ぎた)
距離は4000。
いくら高速航行中でも。
この距離は、金剛の間合いだ。
金剛(私の実力、見せてあげるわ)
速度は維持したまま、姿勢を制御。
砲弾と装薬を揚弾。
金剛「THISーー」
そして主砲全門に装填。
唸る砲門。
金剛「ーーISーー」
胸を張って右手を前に突き出すのは。
砲撃の合図。
金剛「ーーIT.」
距離は4000。
いくら高速航行中でも。
この距離は、金剛の間合いだ。
金剛(私の実力、見せてあげるわ)
速度は維持したまま、姿勢を制御。
砲弾と装薬を揚弾。
金剛「THISーー」
そして主砲全門に装填。
唸る砲門。
金剛「ーーISーー」
胸を張って右手を前に突き出すのは。
砲撃の合図。
金剛「ーーIT.」
730: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:57:25.71 ID:xNy+1qNb0
◇
ズドン!
と言う音と共に、水のドームが足柄を覆う。
魚雷を放った直後の狼は、夾叉された。
が、当の本人は眉ひとつ動かさずに砲撃を続ける。
足柄(速度を落としたら狙われる事なんてわかってんのよ)
予想できる攻撃には、怯まない。
ひたすらに、訓練を重ねた航行機動を描きながら砲撃を続ける。
足柄(女は度胸!当たったらその時はその時よ!
あと一発くらい耐えるでしょ、多分!)
続く射撃は、足柄を水柱で覆ったものの、夾叉ではなかった。
どうやら外したようだ。
イケる。ツイてる。ニヤリと笑い。
足柄「さぁ……魚雷到着までのあと300秒。
踊るわぁ!」
海水の壁をぶち破って進む足柄の表情には、喜色が浮かんでいた。
ズドン!
と言う音と共に、水のドームが足柄を覆う。
魚雷を放った直後の狼は、夾叉された。
が、当の本人は眉ひとつ動かさずに砲撃を続ける。
足柄(速度を落としたら狙われる事なんてわかってんのよ)
予想できる攻撃には、怯まない。
ひたすらに、訓練を重ねた航行機動を描きながら砲撃を続ける。
足柄(女は度胸!当たったらその時はその時よ!
あと一発くらい耐えるでしょ、多分!)
続く射撃は、足柄を水柱で覆ったものの、夾叉ではなかった。
どうやら外したようだ。
イケる。ツイてる。ニヤリと笑い。
足柄「さぁ……魚雷到着までのあと300秒。
踊るわぁ!」
海水の壁をぶち破って進む足柄の表情には、喜色が浮かんでいた。
731: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:58:05.66 ID:xNy+1qNb0
◇
金剛「ゴホッゴホッ!」
しくじった。
第二斉射の瞬間、金剛は咳き込んで狙いが狂ってしまった。
金剛(完全に捉えていたのに……!)
榛名戦でのダメージが、ここに来て金剛の邪魔をする。
思えば、鳳翔の時と言い、今と言い、上手く狙いがつけられないのは、呼吸が上手くいっていないからだろう。
呼吸方法と言うのは、それ程戦闘に影響する。
浅くヒューヒューと鳴る喉に不快感を覚えつつ、無理矢理それを意識の奥底に抑え込んだ。
金剛「ゴホッゴホッ!」
しくじった。
第二斉射の瞬間、金剛は咳き込んで狙いが狂ってしまった。
金剛(完全に捉えていたのに……!)
榛名戦でのダメージが、ここに来て金剛の邪魔をする。
思えば、鳳翔の時と言い、今と言い、上手く狙いがつけられないのは、呼吸が上手くいっていないからだろう。
呼吸方法と言うのは、それ程戦闘に影響する。
浅くヒューヒューと鳴る喉に不快感を覚えつつ、無理矢理それを意識の奥底に抑え込んだ。
732: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:58:37.89 ID:xNy+1qNb0
これしきの事でへこたれていてたまるか。
金剛(私は……
艦娘が好きだ……人間が好きだ……
私が負ければ、それは失われてしまう)
負けは、許されない。
金剛(愛は負けないんじゃあない……
負けられない……!
いつ如何なる時でも、負けてはならない!)
それは金剛の信条。
砲撃後の爆炎に喉を焼かれ、再び咳き込む金剛。
しかし、追撃は止めない。
鮮血を辺りに撒き散らそうとも、止まらない。
装填し、放つ、裂帛の砲撃。
金剛(私は……
艦娘が好きだ……人間が好きだ……
私が負ければ、それは失われてしまう)
負けは、許されない。
金剛(愛は負けないんじゃあない……
負けられない……!
いつ如何なる時でも、負けてはならない!)
それは金剛の信条。
砲撃後の爆炎に喉を焼かれ、再び咳き込む金剛。
しかし、追撃は止めない。
鮮血を辺りに撒き散らそうとも、止まらない。
装填し、放つ、裂帛の砲撃。
733: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 01:59:26.53 ID:xNy+1qNb0
◇
足柄「ぐっ……!」
至近弾を貰って、体がぐらつく。
狙いを引き離したと思ったら、一瞬で戻された。
足柄「大した砲撃の腕よ、全く……!」
流石18戦隊旗艦、と心の中で賞賛する。
だが。
この戦いの決着は、もう、着く。
足柄「ーーでも悪いけど」
ニヤリと笑って。
足柄「これ、砲撃戦じゃなくて、砲雷撃戦なのよねぇ……!」
今の一撃で足柄が沈まなかった意味は、大きい。
足柄「280秒経過。
……ショータイムよ……!」
足柄「ぐっ……!」
至近弾を貰って、体がぐらつく。
狙いを引き離したと思ったら、一瞬で戻された。
足柄「大した砲撃の腕よ、全く……!」
流石18戦隊旗艦、と心の中で賞賛する。
だが。
この戦いの決着は、もう、着く。
足柄「ーーでも悪いけど」
ニヤリと笑って。
足柄「これ、砲撃戦じゃなくて、砲雷撃戦なのよねぇ……!」
今の一撃で足柄が沈まなかった意味は、大きい。
足柄「280秒経過。
……ショータイムよ……!」
734: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 02:02:00.33 ID:xNy+1qNb0
◇
追撃の直前。
金剛は己の斜め前に魚雷群を見た。
先程足柄が放った魚雷。
咳やら何やらで意識の外側にあったが、足柄の狙いは極めて綺麗だったようだ。
このまま行くと直撃で間違いない。
だが、それは射撃を行ってからでも十分回避が可能な位置に見える。
そう、見えるだけ。
金剛(あれは見せ魚雷ね……)
見せ魚雷。
避けられるのを前提とした、罠だ。
金剛は同時に、足柄が時間差で放った、高速で迫るもう一つの魚雷群を手前に捉えていた。
射撃を行ってからの回避では、これに確実に当たる。
金剛は瞬時に射撃中止の判断を下し、手前に急回頭。
そうする事で、本命の魚雷を金剛は避ける事が出来た。
ーー本命の『見せ魚雷』を。
追撃の直前。
金剛は己の斜め前に魚雷群を見た。
先程足柄が放った魚雷。
咳やら何やらで意識の外側にあったが、足柄の狙いは極めて綺麗だったようだ。
このまま行くと直撃で間違いない。
だが、それは射撃を行ってからでも十分回避が可能な位置に見える。
そう、見えるだけ。
金剛(あれは見せ魚雷ね……)
見せ魚雷。
避けられるのを前提とした、罠だ。
金剛は同時に、足柄が時間差で放った、高速で迫るもう一つの魚雷群を手前に捉えていた。
射撃を行ってからの回避では、これに確実に当たる。
金剛は瞬時に射撃中止の判断を下し、手前に急回頭。
そうする事で、本命の魚雷を金剛は避ける事が出来た。
ーー本命の『見せ魚雷』を。
735: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 02:03:02.13 ID:xNy+1qNb0
金剛「……Shit!」
急回頭先に、金剛はさらなる魚雷群に気付く。
低速で接近するそれは、金剛の判断を見越した軌道を取っている。
そう、足柄が放った魚雷群は3つ。
元々、本命は最後の1つしかない。
罠を一つ越えると、意識は油断する。
それ故の、三段構えの雷撃。
金剛(避けれない……!)
そして金剛は魚雷と、激突した。
爆裂。
ズン、と衝撃。
一際高い水柱が立つ。
ーーだが。
金剛は、耐える。
それは戦艦の装甲か、矜持か。
蛍光液まみれで、ずぶ濡れで。
それでも、金剛は立っていた。
急回頭先に、金剛はさらなる魚雷群に気付く。
低速で接近するそれは、金剛の判断を見越した軌道を取っている。
そう、足柄が放った魚雷群は3つ。
元々、本命は最後の1つしかない。
罠を一つ越えると、意識は油断する。
それ故の、三段構えの雷撃。
金剛(避けれない……!)
そして金剛は魚雷と、激突した。
爆裂。
ズン、と衝撃。
一際高い水柱が立つ。
ーーだが。
金剛は、耐える。
それは戦艦の装甲か、矜持か。
蛍光液まみれで、ずぶ濡れで。
それでも、金剛は立っていた。
736: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 02:03:52.32 ID:xNy+1qNb0
血の混じった海水を吐き出し。
立ち昇る水煙の中、戦艦が吠える。
金剛「No……!You have not yet overcome this……
This, Sizzling, Burning Luuuuuve!」
まだ沈んじゃいないと。
心は折れずに。
脚部艤装を再起動し。
主砲を再装填する。
だが。
その次の瞬間。
足柄の砲撃が、金剛の顔面を捉えた。
追撃には、あまりに早すぎるタイミング。
金剛「あっ……かっ……」
まるで元から狙っていたかのようなーー。
そこで理解した。
金剛(あぁ……)
何故、足柄の主砲が、金剛の背後ばかりを狙っていたのか。
金剛(被雷して……失速したら……直撃、するじゃないの……)
判定機が出した判定は、轟沈。
金剛は、膝から崩れ落ちた。
立ち昇る水煙の中、戦艦が吠える。
金剛「No……!You have not yet overcome this……
This, Sizzling, Burning Luuuuuve!」
まだ沈んじゃいないと。
心は折れずに。
脚部艤装を再起動し。
主砲を再装填する。
だが。
その次の瞬間。
足柄の砲撃が、金剛の顔面を捉えた。
追撃には、あまりに早すぎるタイミング。
金剛「あっ……かっ……」
まるで元から狙っていたかのようなーー。
そこで理解した。
金剛(あぁ……)
何故、足柄の主砲が、金剛の背後ばかりを狙っていたのか。
金剛(被雷して……失速したら……直撃、するじゃないの……)
判定機が出した判定は、轟沈。
金剛は、膝から崩れ落ちた。
737: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 02:04:20.53 ID:xNy+1qNb0
………
……
…
翔鶴「……コマンド、翔鶴。金剛、ダウン」
彩雲から全てを見ていた翔鶴は、静かに告げた。
太郎『……そうか』
翔鶴「私には、もう戦闘能力がありません。……降参を、提言します」
太郎『……ああ。皆、よく、頑張ってくれた。
金剛も回収してやってくれ。
皆一緒に帰ってこい。ディブリーフだ』
翔鶴「……はい」
……
…
翔鶴「……コマンド、翔鶴。金剛、ダウン」
彩雲から全てを見ていた翔鶴は、静かに告げた。
太郎『……そうか』
翔鶴「私には、もう戦闘能力がありません。……降参を、提言します」
太郎『……ああ。皆、よく、頑張ってくれた。
金剛も回収してやってくれ。
皆一緒に帰ってこい。ディブリーフだ』
翔鶴「……はい」
738: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/07(日) 02:05:04.36 ID:xNy+1qNb0
◇
足柄「提督、終わったわよ〜」
提督『ああ……怪我は無いな?』
足柄「は、はぁ?勝敗を聞きなさいよ……」
提督『何?負けたのか?』
満面の笑みで。
足柄「ーーそんなことあるわけ……ナイじゃない!」
足柄「提督、終わったわよ〜」
提督『ああ……怪我は無いな?』
足柄「は、はぁ?勝敗を聞きなさいよ……」
提督『何?負けたのか?』
満面の笑みで。
足柄「ーーそんなことあるわけ……ナイじゃない!」
768: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/09(火) 21:10:23.52 ID:gvgaO9Cq0
提督『素晴らしい』
足柄「ま、当然の結果よね!」
足柄(本当はかなり運が良かったけれど……)
提督『……実に頼もしいな、お前は』
そんな軽口の応酬を続けていると、正式に降参が受理され、轟沈判定組とも無線が繋がるようになった。
提督『……あーあー。聞こえるか?』
榛名『ぁ……は、はい!』
鳳翔『聞こえています』
雷『問題無し!』
提督『よし。演習は終わりだ。総員、ご苦労。
我々のーー勝利だ』
榛名『やった!!』
雷『ふふん!』
鳳翔『……やりましたね』
提督『総員、合流して回航せよ。
戻ったら……飯にしよう』
『『『了解!』』』
足柄「ま、当然の結果よね!」
足柄(本当はかなり運が良かったけれど……)
提督『……実に頼もしいな、お前は』
そんな軽口の応酬を続けていると、正式に降参が受理され、轟沈判定組とも無線が繋がるようになった。
提督『……あーあー。聞こえるか?』
榛名『ぁ……は、はい!』
鳳翔『聞こえています』
雷『問題無し!』
提督『よし。演習は終わりだ。総員、ご苦労。
我々のーー勝利だ』
榛名『やった!!』
雷『ふふん!』
鳳翔『……やりましたね』
提督『総員、合流して回航せよ。
戻ったら……飯にしよう』
『『『了解!』』』
769: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/09(火) 21:11:03.87 ID:gvgaO9Cq0
………
……
…
北上「……」
大井「……」
隼鷹「……(喜びヅレェ……)」
北上「……負けたなー」
大井「脆かったわね」
北上「ま、ゴッサンはよくやったと思うよ。あと一歩だったし。
翔ぴーは油断したっちゃ油断したけど……一番敵に損害与えたよね」
大井「摩耶と陽炎……
全く仕事しなかったけれど……まぁ、課題が幾つか見えたでしょう」
北上「んー。
得るものもあった演習だったんじゃなーい?」
大井「そうね……しかし……
……この後が少し面倒ね……」
北上「自主訓練量が跳ね上がりそうだねぃ」
隼鷹「……(……アタシも、もっと頑張らないと、な……)」
北上「……さてとっ!
お互いの上司のとこに一旦戻るか!」
隼鷹「……ん!」
大井「ここは私達が片しておくから、もう行ってもらって良いわよ。
こちらの設備だし」
隼鷹「あいよっ!じゃ、また!
えーっと……提督は第二司令室だっけ?」
ガチャ、バタン
……
…
北上「……」
大井「……」
隼鷹「……(喜びヅレェ……)」
北上「……負けたなー」
大井「脆かったわね」
北上「ま、ゴッサンはよくやったと思うよ。あと一歩だったし。
翔ぴーは油断したっちゃ油断したけど……一番敵に損害与えたよね」
大井「摩耶と陽炎……
全く仕事しなかったけれど……まぁ、課題が幾つか見えたでしょう」
北上「んー。
得るものもあった演習だったんじゃなーい?」
大井「そうね……しかし……
……この後が少し面倒ね……」
北上「自主訓練量が跳ね上がりそうだねぃ」
隼鷹「……(……アタシも、もっと頑張らないと、な……)」
北上「……さてとっ!
お互いの上司のとこに一旦戻るか!」
隼鷹「……ん!」
大井「ここは私達が片しておくから、もう行ってもらって良いわよ。
こちらの設備だし」
隼鷹「あいよっ!じゃ、また!
えーっと……提督は第二司令室だっけ?」
ガチャ、バタン
770: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/09(火) 21:11:55.76 ID:gvgaO9Cq0
北上「……行った?」
大井「ええ」
北上「はぁーーー!ニコニコすんの疲れたー!」
大井「……」
北上「負けたぞ、おい!
なっさけねぇなぁもう!」
大井「……そうね」
北上「あーあーあー……
相手は方々から見放された左遷組なのになぁ。
普通にキビキビ動いてたなぁ。
まとめあげるとは、さすが提督だなぁ」
大井「……」
大井「ええ」
北上「はぁーーー!ニコニコすんの疲れたー!」
大井「……」
北上「負けたぞ、おい!
なっさけねぇなぁもう!」
大井「……そうね」
北上「あーあーあー……
相手は方々から見放された左遷組なのになぁ。
普通にキビキビ動いてたなぁ。
まとめあげるとは、さすが提督だなぁ」
大井「……」
771: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/09(火) 21:12:30.75 ID:gvgaO9Cq0
…
……
………
南方基地、第二司令室
コンコン
隼鷹「しつれいしまーす!」ガチャ
提督「……ノックの意味が無いぞ……」
隼鷹「細かいこたぁ良いんだよ!
勝ったな提督!」
提督「まぁ、な……」フゥー
隼鷹「……なんかえらい疲れてんな。
大丈夫か?」
提督「……ああ、大丈夫だ。
お前こそ、しっかり観戦は出来たか?」
隼鷹「おう!
最初はヒヤヒヤしたけど……
やっぱ、鳳翔さんが最強だな!」
提督「……その最強がお前を育てているんだ。
励めよ」
隼鷹「……ああ!」
……
………
南方基地、第二司令室
コンコン
隼鷹「しつれいしまーす!」ガチャ
提督「……ノックの意味が無いぞ……」
隼鷹「細かいこたぁ良いんだよ!
勝ったな提督!」
提督「まぁ、な……」フゥー
隼鷹「……なんかえらい疲れてんな。
大丈夫か?」
提督「……ああ、大丈夫だ。
お前こそ、しっかり観戦は出来たか?」
隼鷹「おう!
最初はヒヤヒヤしたけど……
やっぱ、鳳翔さんが最強だな!」
提督「……その最強がお前を育てているんだ。
励めよ」
隼鷹「……ああ!」
772: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/09(火) 21:13:44.13 ID:gvgaO9Cq0
提督「……いやしかし、勝てて良かった……」
提督は心底安心したように深い溜息をつき、椅子に脱力した。
隼鷹「なんだよー。
負けると思ってたのかー?」
提督「……違うさ。本当に、疲れてな……
なんせ、数年越しの演習だったもんで」
隼鷹「へぇ。
提督、前は本土で教官やってたんだっけか」
提督「……まぁ、正式な教官では無いんだがな。
教えてただけだ」
隼鷹「……ってか、アタシら提督の事あんま知らないよね。
よく考えたら。
提督は、書類やらアタシら自身の話やらで、アタシらの事よく知ってるけど」
提督「まぁな」
隼鷹「教官やる前も司令官やってたんだよな、その口振りからすると」
提督「……さぁな」
隼鷹「は?隠すんかーい!」
提督「……プライベートだ」
隼鷹「アタシらのプライベートは無いんかーい!」
提督「私がいつ、お前達に自分の事を話せと強要したんだ……
自然と話す感じだったろう」
隼鷹「いやまぁそうだけどさぁ」
提督「ほら、馬鹿な事を言ってないで、港の方の方で出迎えの準備をしておいてくれ。
私は太郎くんの所に行く」
隼鷹「お、おう」
提督「行った行った」
隼鷹「んだよぉ!はぐらかしやがって!
忘れねえからなぁ!」
そう言って隼鷹は出て行った。
提督(……昔の事、か……
……知る必要は、無いな……
否、知られたく無いだけ……か)
提督は心底安心したように深い溜息をつき、椅子に脱力した。
隼鷹「なんだよー。
負けると思ってたのかー?」
提督「……違うさ。本当に、疲れてな……
なんせ、数年越しの演習だったもんで」
隼鷹「へぇ。
提督、前は本土で教官やってたんだっけか」
提督「……まぁ、正式な教官では無いんだがな。
教えてただけだ」
隼鷹「……ってか、アタシら提督の事あんま知らないよね。
よく考えたら。
提督は、書類やらアタシら自身の話やらで、アタシらの事よく知ってるけど」
提督「まぁな」
隼鷹「教官やる前も司令官やってたんだよな、その口振りからすると」
提督「……さぁな」
隼鷹「は?隠すんかーい!」
提督「……プライベートだ」
隼鷹「アタシらのプライベートは無いんかーい!」
提督「私がいつ、お前達に自分の事を話せと強要したんだ……
自然と話す感じだったろう」
隼鷹「いやまぁそうだけどさぁ」
提督「ほら、馬鹿な事を言ってないで、港の方の方で出迎えの準備をしておいてくれ。
私は太郎くんの所に行く」
隼鷹「お、おう」
提督「行った行った」
隼鷹「んだよぉ!はぐらかしやがって!
忘れねえからなぁ!」
そう言って隼鷹は出て行った。
提督(……昔の事、か……
……知る必要は、無いな……
否、知られたく無いだけ……か)
773: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/09(火) 21:14:18.98 ID:gvgaO9Cq0
南方基地、第一司令室
コンコン
提督「私だ」
太郎「どうぞ」
ガチャ
提督「失礼する」
太郎「今回は見苦しい格好となって、申し訳ーー」
提督「フン。最初からこのつもりだったのだろう。
顔を見ればわかる。敗者のそれじゃない」
太郎「……いやぁ、悔しくない訳ではありませんよ」
提督「どうだか」
太郎「……勝利によって、絶対に得られないものも有りますから。
艦娘達が得るもののあった演習であったと信じます」
提督「……ま、此方としても、助かったというのが本音だが、な」
太郎「しかし、翔鶴の無力化は予想外です……
あれは良い勉強になりました」
提督「……ああ。是非、次に活かしてくれ。
何せ、あれはーー」
コンコン
提督「私だ」
太郎「どうぞ」
ガチャ
提督「失礼する」
太郎「今回は見苦しい格好となって、申し訳ーー」
提督「フン。最初からこのつもりだったのだろう。
顔を見ればわかる。敗者のそれじゃない」
太郎「……いやぁ、悔しくない訳ではありませんよ」
提督「どうだか」
太郎「……勝利によって、絶対に得られないものも有りますから。
艦娘達が得るもののあった演習であったと信じます」
提督「……ま、此方としても、助かったというのが本音だが、な」
太郎「しかし、翔鶴の無力化は予想外です……
あれは良い勉強になりました」
提督「……ああ。是非、次に活かしてくれ。
何せ、あれはーー」
774: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/09(火) 21:15:02.60 ID:gvgaO9Cq0
ガチャ
北上「うぃーっす。機材撤収したぜー……
あれ?提督じゃーん」
大井「あら」
提督「……ああ。二人とも、隼鷹を押し付けてすまんかったな」
北上「……んー。別に問題無かったよ」
提督「そうか。ならば良かった」
北上「んー……」
提督「……なんだ」
北上「負けて悔しいんだけど?」
提督「そりゃそうだろうな」
北上「アタシと大井っちが出てたら……
いや、アタシと陽炎が入れ替わってれば……絶対勝ってた」
提督「まぁ、そうかもな」
北上「うぃーっす。機材撤収したぜー……
あれ?提督じゃーん」
大井「あら」
提督「……ああ。二人とも、隼鷹を押し付けてすまんかったな」
北上「……んー。別に問題無かったよ」
提督「そうか。ならば良かった」
北上「んー……」
提督「……なんだ」
北上「負けて悔しいんだけど?」
提督「そりゃそうだろうな」
北上「アタシと大井っちが出てたら……
いや、アタシと陽炎が入れ替わってれば……絶対勝ってた」
提督「まぁ、そうかもな」
775: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/09(火) 21:15:32.58 ID:gvgaO9Cq0
北上「……」
提督「そうカッカするな。
お前たちの実力は知っているさ」
大井「北上さん……」
北上「むー……」
提督「北上。次だ。6対6でやろう」
北上「……へっ。楽しみにしてるよ」
大井「……提督。そう言えば、港の方で隼鷹さんが呼んでましたよ。
『何もわからん!』とかなんとか」
提督「あのバカは……
太郎くん、来ていきなりだが失礼する。
意図も確認出来た事だしな」
太郎「はい。ではまた、後ほど……」
提督「ああ」
提督「そうカッカするな。
お前たちの実力は知っているさ」
大井「北上さん……」
北上「むー……」
提督「北上。次だ。6対6でやろう」
北上「……へっ。楽しみにしてるよ」
大井「……提督。そう言えば、港の方で隼鷹さんが呼んでましたよ。
『何もわからん!』とかなんとか」
提督「あのバカは……
太郎くん、来ていきなりだが失礼する。
意図も確認出来た事だしな」
太郎「はい。ではまた、後ほど……」
提督「ああ」
776: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/09(火) 21:16:19.81 ID:gvgaO9Cq0
ガチャ、バタン
北上「……何?意図って」
大井「まさか、出来レースだったの?」
太郎「耳聡いな……」
北上「説明がぁ、欲しいなぁ」
太郎「私は……陽炎と摩耶に、超接近された時の自分達の脆さを認識して欲しかったんだ」
北上「……やっぱりハナから負けに行ってたってコトじゃん?」
太郎「違う。
ただ、翔鶴に近付く敵艦を一隻通してくれ、とは伝えてあった。
まぁ、今回は艦載が全部吹き飛んでその命令も無意味だったんだが」
北上「何が違うの?」
太郎「もし、摩耶と陽炎が接近者に正しく対処出来れば、演習は勝ちだった。
彼女達が正しく対処出来なかったから負けた。それだけの事さ」
北上「……はぁ?そんなのーー」
太郎「北上。
私達は実戦でミス出来ない。
でも失敗は必要だ。そうだろ?」
北上「……」
太郎「失敗せずに学ぶ者は居ない。
君達は機械制御の兵器じゃあないんだから」
北上「……あ、そ」
北上「……何?意図って」
大井「まさか、出来レースだったの?」
太郎「耳聡いな……」
北上「説明がぁ、欲しいなぁ」
太郎「私は……陽炎と摩耶に、超接近された時の自分達の脆さを認識して欲しかったんだ」
北上「……やっぱりハナから負けに行ってたってコトじゃん?」
太郎「違う。
ただ、翔鶴に近付く敵艦を一隻通してくれ、とは伝えてあった。
まぁ、今回は艦載が全部吹き飛んでその命令も無意味だったんだが」
北上「何が違うの?」
太郎「もし、摩耶と陽炎が接近者に正しく対処出来れば、演習は勝ちだった。
彼女達が正しく対処出来なかったから負けた。それだけの事さ」
北上「……はぁ?そんなのーー」
太郎「北上。
私達は実戦でミス出来ない。
でも失敗は必要だ。そうだろ?」
北上「……」
太郎「失敗せずに学ぶ者は居ない。
君達は機械制御の兵器じゃあないんだから」
北上「……あ、そ」
777: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/09(火) 21:16:50.24 ID:gvgaO9Cq0
太郎「……まぁ、提督さんに勝ってほしいって気持ちがあった事は否定出来ない」
北上「やっぱそうじゃねーか!このヤロー!裏切り者!」
太郎「……あの方は軍に必要な人だ。
我々は教訓を得て、あの方は復帰への足掛かりを得る。
悪くない演習だったと思うがね」
北上「大井っち〜こいつホ だよ」
大井「フケツ……」
太郎「上官になんて事を……」
北上「翔ぴーに有る事無い事吹き込んでやる……」
太郎「悪意しか無いな……」
大井「……まぁ、復帰への足掛かりにってのは……
提督の元に居た私達には……わからなくはないわ」
太郎「いや……うーん。
違うんだがな……」
大井「……」
北上「やっぱそうじゃねーか!このヤロー!裏切り者!」
太郎「……あの方は軍に必要な人だ。
我々は教訓を得て、あの方は復帰への足掛かりを得る。
悪くない演習だったと思うがね」
北上「大井っち〜こいつホ だよ」
大井「フケツ……」
太郎「上官になんて事を……」
北上「翔ぴーに有る事無い事吹き込んでやる……」
太郎「悪意しか無いな……」
大井「……まぁ、復帰への足掛かりにってのは……
提督の元に居た私達には……わからなくはないわ」
太郎「いや……うーん。
違うんだがな……」
大井「……」
778: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/09(火) 21:19:58.83 ID:gvgaO9Cq0
太郎「失言だったが……復帰の足掛かりなんてのは副次的効果だ。
要は摩耶と陽炎が、実力を自覚出来れば結果はどちらでも良かった。
だから金剛には何も伝えてないし、翔鶴に負けろとも言っていない」
大井「……でも、今回の敗北はあなたの株を下げたわ。
同時に私達の評価も。
これから、先制しか能が無いとか言われるわよ」
太郎「実際そうだった、というのが今回の結果だろう」
大井「……私と北上さんはっ」
太郎「お前たちが強いのも知っている。
だが、私達はチームだ。
私達はチームとして評価される」
大井「っ……」
太郎「今回の編成も相手に合わせた。
不利な事は何一つ無い。
寧ろ有利だったろう。
チームの一部として摩耶と陽炎が機能しているなら、勝たねばならなかった。
それとも、摩耶と陽炎がお荷物だと言いたいのか?」
大井「違うっ!私は……私達は負けたのが悔しいだけよ!」
堰を切ったようにまくしたてる。
大井「戦力的にはこっちが上なのに……!
そういう評価を下されるのよ?!」
要は摩耶と陽炎が、実力を自覚出来れば結果はどちらでも良かった。
だから金剛には何も伝えてないし、翔鶴に負けろとも言っていない」
大井「……でも、今回の敗北はあなたの株を下げたわ。
同時に私達の評価も。
これから、先制しか能が無いとか言われるわよ」
太郎「実際そうだった、というのが今回の結果だろう」
大井「……私と北上さんはっ」
太郎「お前たちが強いのも知っている。
だが、私達はチームだ。
私達はチームとして評価される」
大井「っ……」
太郎「今回の編成も相手に合わせた。
不利な事は何一つ無い。
寧ろ有利だったろう。
チームの一部として摩耶と陽炎が機能しているなら、勝たねばならなかった。
それとも、摩耶と陽炎がお荷物だと言いたいのか?」
大井「違うっ!私は……私達は負けたのが悔しいだけよ!」
堰を切ったようにまくしたてる。
大井「戦力的にはこっちが上なのに……!
そういう評価を下されるのよ?!」
779: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/09(火) 21:21:12.46 ID:gvgaO9Cq0
太郎「中身の伴わない評価に意味はない。
それに、評価で艦娘も人も助かりはしない」
大井「ああ言えばこう言うわね……!
あなたは、あなたは単純に嫌じゃないの?!
敬愛する提督に負けて、悔しくないの?!」
太郎「お前達はそれで良い。
……だが、私は司令官だ。
負ける事が必要なら、負ける」
大井「〜〜〜ッ!
あんたがそうでも私は嫌なのよ!バカ!」
太郎「……提督さんは意図を確認したと仰ってたろう。
あの方はわかって下さってるよ」
それに、評価で艦娘も人も助かりはしない」
大井「ああ言えばこう言うわね……!
あなたは、あなたは単純に嫌じゃないの?!
敬愛する提督に負けて、悔しくないの?!」
太郎「お前達はそれで良い。
……だが、私は司令官だ。
負ける事が必要なら、負ける」
大井「〜〜〜ッ!
あんたがそうでも私は嫌なのよ!バカ!」
太郎「……提督さんは意図を確認したと仰ってたろう。
あの方はわかって下さってるよ」
780: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/09(火) 21:21:48.89 ID:gvgaO9Cq0
大井「あ、あ、あんたねぇ!
ペラペラと煩いのよ!もういいわ!」ダッ
北上「大井っちー!出てっちゃったよ……」
太郎「……ペラペラと煩い、か。
間違い無いな。いや、私も悔しいんだよ、ほんと……負け惜しみには違いないんだ……」
北上「そこを上手いこと誤魔化して、言いたい事を心の中にしまえたら……
一人前の司令官だったな」
太郎「……いや、本当にな」
北上「うはは」
太郎「……北上。後で大井に謝っておいてくれないか」
北上「嫌だよ、自分で言いな。
……司令官だろ?」
太郎「……そうだったな」
ペラペラと煩いのよ!もういいわ!」ダッ
北上「大井っちー!出てっちゃったよ……」
太郎「……ペラペラと煩い、か。
間違い無いな。いや、私も悔しいんだよ、ほんと……負け惜しみには違いないんだ……」
北上「そこを上手いこと誤魔化して、言いたい事を心の中にしまえたら……
一人前の司令官だったな」
太郎「……いや、本当にな」
北上「うはは」
太郎「……北上。後で大井に謝っておいてくれないか」
北上「嫌だよ、自分で言いな。
……司令官だろ?」
太郎「……そうだったな」
803: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/11(木) 02:05:32.12 ID:sKkgVh1w0
南方基地、ハンガー
隼鷹「……」
提督「……」
隼鷹「ウス」
提督「……お前はなぜ、艤装ごと上に釣り上げられてるんだ……」
隼鷹「いやぁ……艤装つけて迎えに行こうかと思ったんだけどさぁ。
なんか艤装の接続がうまくいかなくて、いきなりクレーンで釣り上げられちまった!」
提督「当たり前だろ……俺の許可無しに艤装を装着できる訳がない」
隼鷹「確かに!!」
提督「お前は本当にバカだな……自力で降りれそうか?」
隼鷹「無理だな。10分くらいこの状態だしな」
提督「……はぁ……ハシゴを探してくる」
隼鷹「うへへ。ありがとー!」
隼鷹「……」
提督「……」
隼鷹「ウス」
提督「……お前はなぜ、艤装ごと上に釣り上げられてるんだ……」
隼鷹「いやぁ……艤装つけて迎えに行こうかと思ったんだけどさぁ。
なんか艤装の接続がうまくいかなくて、いきなりクレーンで釣り上げられちまった!」
提督「当たり前だろ……俺の許可無しに艤装を装着できる訳がない」
隼鷹「確かに!!」
提督「お前は本当にバカだな……自力で降りれそうか?」
隼鷹「無理だな。10分くらいこの状態だしな」
提督「……はぁ……ハシゴを探してくる」
隼鷹「うへへ。ありがとー!」
804: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/11(木) 02:06:04.06 ID:sKkgVh1w0
数十分後……
提督「くそっ……なんでセーフティレバーがスタックしてるんだ……!」ガチャ
隼鷹「無理矢理つけたからかな?」
提督「装着出来ないからって無理矢理噛み合わせるとは……
ゴリラかお前は」ガチャガチャ
隼鷹「ウホッ」
提督「お前……森に捨てるぞ……」カチカチ
隼鷹「やめろよ……」
提督「全く……」
提督「くそっ……なんでセーフティレバーがスタックしてるんだ……!」ガチャ
隼鷹「無理矢理つけたからかな?」
提督「装着出来ないからって無理矢理噛み合わせるとは……
ゴリラかお前は」ガチャガチャ
隼鷹「ウホッ」
提督「お前……森に捨てるぞ……」カチカチ
隼鷹「やめろよ……」
提督「全く……」
805: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/11(木) 02:06:38.93 ID:sKkgVh1w0
ガチャガチャ……バキッ
提督「うおお……」
隼鷹「なんかヤバい音したよな今!」
提督「多分大丈夫だろ……お前なら落ちても」
隼鷹「嫌だよ!」
ガコンッ
提督「お、おお?」
隼鷹「おお?!」
ガシャコン……ウィーン
提督「……ふう……クレーンが下がり出したな……」
隼鷹「ドキドキしたぜ……これでやっと下に降りれるーー」
提督「うおお……」
隼鷹「なんかヤバい音したよな今!」
提督「多分大丈夫だろ……お前なら落ちても」
隼鷹「嫌だよ!」
ガコンッ
提督「お、おお?」
隼鷹「おお?!」
ガシャコン……ウィーン
提督「……ふう……クレーンが下がり出したな……」
隼鷹「ドキドキしたぜ……これでやっと下に降りれるーー」
806: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/11(木) 02:07:04.10 ID:sKkgVh1w0
ウィーン……ガギン!
隼鷹「……」
提督「……」
隼鷹「また止まったんだが」
提督「……この高さなら落ちても大丈夫だろ」
隼鷹「うわあああ!
それが司令官の言葉かぁ!」
提督「……はぁ」
………
……
…
隼鷹「……」
提督「……」
隼鷹「また止まったんだが」
提督「……この高さなら落ちても大丈夫だろ」
隼鷹「うわあああ!
それが司令官の言葉かぁ!」
提督「……はぁ」
………
……
…
807: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/11(木) 02:07:38.54 ID:sKkgVh1w0
更に数十分後……
提督は黙々と作業を続けていた
提督「……暑い……」ガチャガチャ
隼鷹「ねー……と言うかこれ、太郎さんに言った方が良いんじゃ……」
提督「そうだな……まさかこんなに手間取るとは」ガチャ……
提督は作業する手を止め、ふぅ、と一息つく。
提督「まぁ、言ってもやることは変わらんのだが……
クレーンが上がる事はままある。
下ろすのは大体手作業だ」
隼鷹「へぇ」
提督「……許可の出ていない艤装を無理に接続しようとすると、クレーンが上に上がるのさ。
普通はセーフティレバーを下げたら降りるはず何だが……
今回はマヌケが一緒に釣られたからな……」
提督は黙々と作業を続けていた
提督「……暑い……」ガチャガチャ
隼鷹「ねー……と言うかこれ、太郎さんに言った方が良いんじゃ……」
提督「そうだな……まさかこんなに手間取るとは」ガチャ……
提督は作業する手を止め、ふぅ、と一息つく。
提督「まぁ、言ってもやることは変わらんのだが……
クレーンが上がる事はままある。
下ろすのは大体手作業だ」
隼鷹「へぇ」
提督「……許可の出ていない艤装を無理に接続しようとすると、クレーンが上に上がるのさ。
普通はセーフティレバーを下げたら降りるはず何だが……
今回はマヌケが一緒に釣られたからな……」
808: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/11(木) 02:08:38.46 ID:sKkgVh1w0
隼鷹「うへへ……でもなんでそんな仕組みが?」
提督「人間は艦娘を管理しようと躍起なんだよ。武器を持たせないようにな。
本質的に深海棲艦と艦娘は似ている。
連中は艦娘が怖いんだ。
決して口にはしない事だが。
お前も、もしかしたら以前居た所で覚えがあるかも知れんが」
隼鷹「……」
提督「深海棲艦が現れたのも、艦娘が現れたのも最近だ。
艦娘による迎撃態勢が整うまでに、沢山の軍人が深海棲艦の攻撃で死んだ。
今の上層部は、その死んだ奴らの同僚が殆どなのさ。
まぁ……後はわかるだろ」
隼鷹「……ん」
提督「人間は艦娘を管理しようと躍起なんだよ。武器を持たせないようにな。
本質的に深海棲艦と艦娘は似ている。
連中は艦娘が怖いんだ。
決して口にはしない事だが。
お前も、もしかしたら以前居た所で覚えがあるかも知れんが」
隼鷹「……」
提督「深海棲艦が現れたのも、艦娘が現れたのも最近だ。
艦娘による迎撃態勢が整うまでに、沢山の軍人が深海棲艦の攻撃で死んだ。
今の上層部は、その死んだ奴らの同僚が殆どなのさ。
まぁ……後はわかるだろ」
隼鷹「……ん」
809: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/11(木) 02:09:05.07 ID:sKkgVh1w0
暫く、沈黙。
隼鷹「なぁ。あんたは……怖いか?アタシが」
提督「そう見えるか?」
隼鷹「見えないけど……」
提督「ならそういう事だ。
本当にビビってたら、人間所作に出るんだ……よっと!」ガチン!
……ウィーン
隼鷹「お、動き出した!」
提督「ふぅ……」
隼鷹「よしっ、これで一件落着だな!」
提督「おい、暴れるなよ。
落ちるぞ」
隼鷹「大丈夫大丈夫ーー」
と言ったそばから。
隼鷹「あーれー?」
隼鷹「なぁ。あんたは……怖いか?アタシが」
提督「そう見えるか?」
隼鷹「見えないけど……」
提督「ならそういう事だ。
本当にビビってたら、人間所作に出るんだ……よっと!」ガチン!
……ウィーン
隼鷹「お、動き出した!」
提督「ふぅ……」
隼鷹「よしっ、これで一件落着だな!」
提督「おい、暴れるなよ。
落ちるぞ」
隼鷹「大丈夫大丈夫ーー」
と言ったそばから。
隼鷹「あーれー?」
810: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/11(木) 02:09:57.68 ID:sKkgVh1w0
ズルッ
提督「おいっ!」
艤装に引っかかっていた隼鷹は、唐突に滑り落ちた。
提督「言わんこっちゃない……!」
艦娘でも、艤装を着けてない状態で頭から落ちると、何か酷い怪我をするかも知れない。
提督は、なんとか受け止めようと、足掻く。
提督「くそっ……!」
…
……
………
雷「……もうすぐ帰還ね。やっお港が見えっ……は?」
榛名「……えええー……」
鳳翔「……おかしいですね……
他人様の港で、隼鷹が提督に馬乗りになっているように見えるのですが……」
足柄「……奇遇ね。あたしもよ」
必死な提督が隼鷹の下敷きになったところは、丁度帰ってきた足柄達にバッチリ見られてしまった。
足柄「何やってんのよ……あの馬鹿……」
やれやれ、と溜息。
提督「おいっ!」
艤装に引っかかっていた隼鷹は、唐突に滑り落ちた。
提督「言わんこっちゃない……!」
艦娘でも、艤装を着けてない状態で頭から落ちると、何か酷い怪我をするかも知れない。
提督は、なんとか受け止めようと、足掻く。
提督「くそっ……!」
…
……
………
雷「……もうすぐ帰還ね。やっお港が見えっ……は?」
榛名「……えええー……」
鳳翔「……おかしいですね……
他人様の港で、隼鷹が提督に馬乗りになっているように見えるのですが……」
足柄「……奇遇ね。あたしもよ」
必死な提督が隼鷹の下敷きになったところは、丁度帰ってきた足柄達にバッチリ見られてしまった。
足柄「何やってんのよ……あの馬鹿……」
やれやれ、と溜息。
817: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/14(日) 23:56:49.34 ID:NL1R4qYX0
隼鷹「て、提督?大丈夫?」
提督「まずは……どいてくれ……」
隼鷹「あ、ああ。ごめん」
隼鷹はサッと提督の上から退いた。
隼鷹「大丈夫?立てそうか?」
提督「……立てん……」
隼鷹「……マジで?アタシを陥れようとしてない?」
提督「お前……しばき倒すぞ……」
隼鷹「うわぁ、ごめん!まさか提督がクッションになってくれるとは……」
提督「とにかく落ちた位置が悪かったな……
腰をやったかも知れん」
隼鷹「マジかよ……肩貸すぜ」
提督「頼む……痛たたた!急に起こすな!」
隼鷹「あ、ごめん!」サッ
隼鷹が驚いて手を離し、提督は顔からベチャッと地べたに落ちた。
提督「痛いわ!怪我人を落とす奴があるか……!」
隼鷹「す、すまねぇ」
提督「まずは……どいてくれ……」
隼鷹「あ、ああ。ごめん」
隼鷹はサッと提督の上から退いた。
隼鷹「大丈夫?立てそうか?」
提督「……立てん……」
隼鷹「……マジで?アタシを陥れようとしてない?」
提督「お前……しばき倒すぞ……」
隼鷹「うわぁ、ごめん!まさか提督がクッションになってくれるとは……」
提督「とにかく落ちた位置が悪かったな……
腰をやったかも知れん」
隼鷹「マジかよ……肩貸すぜ」
提督「頼む……痛たたた!急に起こすな!」
隼鷹「あ、ごめん!」サッ
隼鷹が驚いて手を離し、提督は顔からベチャッと地べたに落ちた。
提督「痛いわ!怪我人を落とす奴があるか……!」
隼鷹「す、すまねぇ」
818: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/14(日) 23:57:27.89 ID:NL1R4qYX0
………
……
…
数分後……
提督「もっと怪我人は丁寧に扱え!ゴリラか!」
隼鷹「注文が多いわ!ゴリラパンチかますぞ!」
提督「何てやつだ……」
足柄「……で?何やってんの?」
隼鷹「……あ……!」
提督「足柄……榛名、鳳翔、雷。
戻ってたのか」
足柄「今戻ったとこよ」
提督「そうか。
……見事な勝利だった。
とりあえず風呂の申請は済ませてあるから、艤装をハンガーに引っ掛けたら行ってこい。
よく頑張ったな」
……
…
数分後……
提督「もっと怪我人は丁寧に扱え!ゴリラか!」
隼鷹「注文が多いわ!ゴリラパンチかますぞ!」
提督「何てやつだ……」
足柄「……で?何やってんの?」
隼鷹「……あ……!」
提督「足柄……榛名、鳳翔、雷。
戻ってたのか」
足柄「今戻ったとこよ」
提督「そうか。
……見事な勝利だった。
とりあえず風呂の申請は済ませてあるから、艤装をハンガーに引っ掛けたら行ってこい。
よく頑張ったな」
819: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/14(日) 23:58:06.50 ID:NL1R4qYX0
足柄「あ、ありがと。まぁ、それは良いんだけどさ……
何で地べたに寝そべったまま喋ってんの?
凄くみっともないわよ?」
提督「……立てないんだ……」
足柄「……は?」
提督「……」
足柄「……隼鷹?」
隼鷹「……ウホ」
足柄「……」
榛名「……」
雷「……」
鳳翔「……躾……」
隼鷹「ひっ……」
何で地べたに寝そべったまま喋ってんの?
凄くみっともないわよ?」
提督「……立てないんだ……」
足柄「……は?」
提督「……」
足柄「……隼鷹?」
隼鷹「……ウホ」
足柄「……」
榛名「……」
雷「……」
鳳翔「……躾……」
隼鷹「ひっ……」
820: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 00:06:33.48 ID:WQWBkUhi0
………
……
…
提督の私室
提督「痛たたた……お前だけすまんな」
足柄「ほんとに何やってんのよ……」
一番被弾の少なかった足柄に抱かれて、提督は私室へと運ばれた。
他のメンバーは風呂へと向かった様だ。
提督「それは隼鷹に言え隼鷹に……」
足柄「……もう、艤装付けてなくても、艦娘は丈夫だから落ちた所で大丈夫よ。
人間の方がヤワなんだから……」
提督「でも、落ちたら痛いだろ?」
足柄「そうだけど、そういう問題じゃないわよ」
提督「そういう問題じゃない、とは?」
……
…
提督の私室
提督「痛たたた……お前だけすまんな」
足柄「ほんとに何やってんのよ……」
一番被弾の少なかった足柄に抱かれて、提督は私室へと運ばれた。
他のメンバーは風呂へと向かった様だ。
提督「それは隼鷹に言え隼鷹に……」
足柄「……もう、艤装付けてなくても、艦娘は丈夫だから落ちた所で大丈夫よ。
人間の方がヤワなんだから……」
提督「でも、落ちたら痛いだろ?」
足柄「そうだけど、そういう問題じゃないわよ」
提督「そういう問題じゃない、とは?」
821: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 00:07:09.86 ID:WQWBkUhi0
足柄「……論理的じゃないわ」
提督「……論理的で無いと、そう思うのか?」
足柄「……だから、隼鷹なら落ちても大丈夫ーー」
提督「いや、落ちたら痛いだろう。
だから俺はその痛みを軽減しようとした。何かおかしかったか」
足柄「……じゃあ、非効率的、と言うわ」
提督「感情とは非効率的な性質を持っているんだ。それを排するのは違うな」
足柄「……あたしが言いたいのは、隼鷹が丈夫って事よ。
少しの間痛むだけ、最悪でも入渠で、あなたが腰を痛める必要は無かったわ」
提督「……論理的で無いと、そう思うのか?」
足柄「……だから、隼鷹なら落ちても大丈夫ーー」
提督「いや、落ちたら痛いだろう。
だから俺はその痛みを軽減しようとした。何かおかしかったか」
足柄「……じゃあ、非効率的、と言うわ」
提督「感情とは非効率的な性質を持っているんだ。それを排するのは違うな」
足柄「……あたしが言いたいのは、隼鷹が丈夫って事よ。
少しの間痛むだけ、最悪でも入渠で、あなたが腰を痛める必要は無かったわ」
822: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 00:08:18.76 ID:WQWBkUhi0
提督「……俺の心配をしてくれるのは嬉しいが……まぁ、なんだ。
あまり艦娘を強度で評価するな」
足柄「……あたしはそんなつもりじゃ……」
提督「わかってる。
ただ、俺が好きじゃなくてな……
お前達は無機物じゃない。
他の人間は、そう思わせたいのかもしれないが……
少なくとも、俺はそうは思わん。
すまんな」
ポンポン、と足柄の頭に手を置く。
まただ、と足柄は思う。
時折この男が言う事。
それは足柄の心を酷く、乱した。
よくわからないままに。
足柄「……なんでそんな甘いのよ」
提督「普通の事だ。お前が『異常』に慣れ過ぎている」
足柄「……」
提督「運んでくれて助かった。
お前も風呂に行ってくれて構わん。
夕方には船でサセン島に戻るぞ」
足柄「……あなたはどうするの?」
提督「痛みはマシになってきている。
杖でもつけば大丈夫さ。
ほら、行ってこい」
足柄「……ん」
あまり艦娘を強度で評価するな」
足柄「……あたしはそんなつもりじゃ……」
提督「わかってる。
ただ、俺が好きじゃなくてな……
お前達は無機物じゃない。
他の人間は、そう思わせたいのかもしれないが……
少なくとも、俺はそうは思わん。
すまんな」
ポンポン、と足柄の頭に手を置く。
まただ、と足柄は思う。
時折この男が言う事。
それは足柄の心を酷く、乱した。
よくわからないままに。
足柄「……なんでそんな甘いのよ」
提督「普通の事だ。お前が『異常』に慣れ過ぎている」
足柄「……」
提督「運んでくれて助かった。
お前も風呂に行ってくれて構わん。
夕方には船でサセン島に戻るぞ」
足柄「……あなたはどうするの?」
提督「痛みはマシになってきている。
杖でもつけば大丈夫さ。
ほら、行ってこい」
足柄「……ん」
823: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 00:09:01.55 ID:WQWBkUhi0
………
……
…
南方基地、脱衣所
足柄(……別に隼鷹をモノ扱いしたかった訳じゃなかったわ)
服を脱ぎながら、考える。
足柄(……そう見えたのかしら。
いや、でも艦娘って丈夫だし……
……あたしは提督の体を心配しただけなんだけどなぁ……
……それだけあたし達が大事にされてるってことよね)
ため息。
足柄(あたし達を兵器じゃないなんて言い切るのは……
少なくとも提督くらいしか、あたしは見たことがない)
服を脱ぎ終え、浴室への扉へ手を掛け。
足柄(あたしはどこへ行っても鉄屑扱いされるのが嫌だった。
それで反抗してトバされた訳だけど……
いざ、兵器じゃ無いと断言されると、なんか、ヘンな感じ。
……何なのかしら、これ)
不完全燃焼な心模様のまま、ガラガラ、と戸を引いた。
……
…
南方基地、脱衣所
足柄(……別に隼鷹をモノ扱いしたかった訳じゃなかったわ)
服を脱ぎながら、考える。
足柄(……そう見えたのかしら。
いや、でも艦娘って丈夫だし……
……あたしは提督の体を心配しただけなんだけどなぁ……
……それだけあたし達が大事にされてるってことよね)
ため息。
足柄(あたし達を兵器じゃないなんて言い切るのは……
少なくとも提督くらいしか、あたしは見たことがない)
服を脱ぎ終え、浴室への扉へ手を掛け。
足柄(あたしはどこへ行っても鉄屑扱いされるのが嫌だった。
それで反抗してトバされた訳だけど……
いざ、兵器じゃ無いと断言されると、なんか、ヘンな感じ。
……何なのかしら、これ)
不完全燃焼な心模様のまま、ガラガラ、と戸を引いた。
824: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 00:09:37.45 ID:WQWBkUhi0
隼鷹「……お。足柄」
足柄「……なんで、あんたも入ってんのよ……」
隼鷹「うへへ」
鳳翔「提督は大丈夫でしたか?」
榛名「私達は蛍光液塗れだったので、ご一緒出来ませんでしたが……」
足柄「ヘラヘラしてたわ。心配するだけ損よ損」
雷「あらそう?なら良かったわ」
と、足柄の後ろの扉が開き、18戦隊の面々が入って来た。
金剛「気絶したままの摩耶が重いヨ……コホンッ」
陽炎「こ、腰がなんかヘンよ私は……」
翔鶴「転けないでよ?……あら、皆さん」
足柄「お疲れ様です……
お風呂、お先に頂いてるわ」
翔鶴「お疲れ様でした。大丈夫ですよ」
足柄「……なんで、あんたも入ってんのよ……」
隼鷹「うへへ」
鳳翔「提督は大丈夫でしたか?」
榛名「私達は蛍光液塗れだったので、ご一緒出来ませんでしたが……」
足柄「ヘラヘラしてたわ。心配するだけ損よ損」
雷「あらそう?なら良かったわ」
と、足柄の後ろの扉が開き、18戦隊の面々が入って来た。
金剛「気絶したままの摩耶が重いヨ……コホンッ」
陽炎「こ、腰がなんかヘンよ私は……」
翔鶴「転けないでよ?……あら、皆さん」
足柄「お疲れ様です……
お風呂、お先に頂いてるわ」
翔鶴「お疲れ様でした。大丈夫ですよ」
825: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 00:10:03.50 ID:WQWBkUhi0
と。
金剛「足柄サン……」
足柄「……!」
金剛が摩耶を肩に抱えたまま、スッと前に出た。
浴室内の空気が緊張する。
見ると摩耶はかなり派手にやられていた。
先日の応接室でのやり取りを見ても、金剛は気が長くは無さそうだ。
今も怒っているのかもしれない。
そう考え、少し身構える足柄に。
金剛は、スッと、手を差し出した。
そして、笑顔で。
金剛「Gratz!見事だったネ!」
足柄もその手を取り。
足柄「ありがと。
ナイスファイト!
ふふ、怒ってるのかと思ったわ」
金剛「Why?ワタシ達は仲間デース!
得るものや悔しさは有っても、憎しみはアリマセン!」
金剛「足柄サン……」
足柄「……!」
金剛が摩耶を肩に抱えたまま、スッと前に出た。
浴室内の空気が緊張する。
見ると摩耶はかなり派手にやられていた。
先日の応接室でのやり取りを見ても、金剛は気が長くは無さそうだ。
今も怒っているのかもしれない。
そう考え、少し身構える足柄に。
金剛は、スッと、手を差し出した。
そして、笑顔で。
金剛「Gratz!見事だったネ!」
足柄もその手を取り。
足柄「ありがと。
ナイスファイト!
ふふ、怒ってるのかと思ったわ」
金剛「Why?ワタシ達は仲間デース!
得るものや悔しさは有っても、憎しみはアリマセン!」
826: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 00:10:35.33 ID:WQWBkUhi0
………
……
…
金剛「最後、負けるとは思わなかったネ〜」
足柄「うふふ、実際運が良かったわ」
金剛「そうカナ?あの魚雷、that was epic!」
足柄「あら、ありがと」
金剛「どういう戦略でアレをー?」
足柄「えっとねーー」
金剛は修復槽に摩耶を突っ込み、自身もそこに浸かりつつ、足柄との談義に花を咲かせていた。
金剛「ワタシも飛行機、飛ばそうカナ。便利?」
足柄「有ればとても役に立つわ。攻撃以外でも、ね」
金剛「うんうん。初撃は完全にしてやられたしネー。
……よし、決めた。ワタシも艦載機を載せるネ!
翔鶴!翔鶴ー!」
翔鶴「はいはい、聞こえていますよ」
金剛「明日……No、今晩、艦載機の使い方を教えて欲しいヨ!」
翔鶴「あら。良いわよ」
金剛「Thanks!鉄はhotな内にシバくに限るネ!」
……
…
金剛「最後、負けるとは思わなかったネ〜」
足柄「うふふ、実際運が良かったわ」
金剛「そうカナ?あの魚雷、that was epic!」
足柄「あら、ありがと」
金剛「どういう戦略でアレをー?」
足柄「えっとねーー」
金剛は修復槽に摩耶を突っ込み、自身もそこに浸かりつつ、足柄との談義に花を咲かせていた。
金剛「ワタシも飛行機、飛ばそうカナ。便利?」
足柄「有ればとても役に立つわ。攻撃以外でも、ね」
金剛「うんうん。初撃は完全にしてやられたしネー。
……よし、決めた。ワタシも艦載機を載せるネ!
翔鶴!翔鶴ー!」
翔鶴「はいはい、聞こえていますよ」
金剛「明日……No、今晩、艦載機の使い方を教えて欲しいヨ!」
翔鶴「あら。良いわよ」
金剛「Thanks!鉄はhotな内にシバくに限るネ!」
827: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 00:11:11.07 ID:WQWBkUhi0
足柄「だってよ、隼鷹?」
隼鷹「くっ……鳳翔さん!アタシ達は今から訓練だ!」
鳳翔「……はい?」
金剛「What?!……翔鶴、ワタシ達も今からやるネ!」
翔鶴「落ち着きなさい……修復中でしょう」
金剛「Shit!」
足柄「……あなたは、真摯ね」
金剛「そ、そうカナ?」
足柄「ええ」
金剛「あ、アリガト」
金剛(……シンシ……紳士?
私が紳士……?え……?
Shitって言ったばかりよ……?)
日本語が分からず、悶々とする金剛の姿を見て何を勘違いしたのか、足柄は続けた。
足柄「……あなたは……自分を兵器だと思う?」
金剛は暫くキョトンとしてから、微笑んだ。
それを見て、足柄はなんだか慌てる。
隼鷹「くっ……鳳翔さん!アタシ達は今から訓練だ!」
鳳翔「……はい?」
金剛「What?!……翔鶴、ワタシ達も今からやるネ!」
翔鶴「落ち着きなさい……修復中でしょう」
金剛「Shit!」
足柄「……あなたは、真摯ね」
金剛「そ、そうカナ?」
足柄「ええ」
金剛「あ、アリガト」
金剛(……シンシ……紳士?
私が紳士……?え……?
Shitって言ったばかりよ……?)
日本語が分からず、悶々とする金剛の姿を見て何を勘違いしたのか、足柄は続けた。
足柄「……あなたは……自分を兵器だと思う?」
金剛は暫くキョトンとしてから、微笑んだ。
それを見て、足柄はなんだか慌てる。
828: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 00:12:22.99 ID:WQWBkUhi0
足柄「ごめんなさいね、急に。
……あなたが……戦いに対して……とても真面目だから。
少し、不思議で」
金剛「……提督に、何か言われたのネ」
足柄「……んー……直接ってわけでもないけど……
遠からずって所かしら」
金剛「『お前達は兵器じゃ無い』って感じデース?」
足柄「……まぁ、その通りね」
金剛「Fmm……質問を質問で返すようデスが……あなたは自分を兵器だと思うデスカ?」
足柄「……多少は、ね。
意思のある……兵器だと」
金剛「……ナルホド」
足柄「……あそこに隼鷹が居るでしょう」
金剛「ハイ」
足柄「提督、さっき隼鷹のドジをかばって怪我したのよ」
金剛「それは本当デスカ?大丈夫なのデス?」
足柄「ああ、本人はピンピンしてるんだけどね。
ただ、別に隼鷹は艦娘なんだし、それくらい庇わなくても大丈夫って言ったら……『痛いだろ?』って。
艦娘は無機物じゃないってさ」
金剛「……」
……あなたが……戦いに対して……とても真面目だから。
少し、不思議で」
金剛「……提督に、何か言われたのネ」
足柄「……んー……直接ってわけでもないけど……
遠からずって所かしら」
金剛「『お前達は兵器じゃ無い』って感じデース?」
足柄「……まぁ、その通りね」
金剛「Fmm……質問を質問で返すようデスが……あなたは自分を兵器だと思うデスカ?」
足柄「……多少は、ね。
意思のある……兵器だと」
金剛「……ナルホド」
足柄「……あそこに隼鷹が居るでしょう」
金剛「ハイ」
足柄「提督、さっき隼鷹のドジをかばって怪我したのよ」
金剛「それは本当デスカ?大丈夫なのデス?」
足柄「ああ、本人はピンピンしてるんだけどね。
ただ、別に隼鷹は艦娘なんだし、それくらい庇わなくても大丈夫って言ったら……『痛いだろ?』って。
艦娘は無機物じゃないってさ」
金剛「……」
829: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 00:14:19.19 ID:WQWBkUhi0
足柄「あんたの方が痛いでしょって思うんだけど!」
金剛「Haha You got it!……デモ、提督はそんな人デス」
足柄「そうね……
ただ……」
金剛「……?」
足柄「あたしが兵器じゃ無いなら、なんで戦ってんだろって。
提督が来てから……そんなことが頭の中に生まれてきて……
考えないようにしてたんだけれど……」
金剛「Ah……」
足柄「認めたくないけど、あたしのアイデンティティーは兵器である事なのよ、きっと。
それが嫌で、反抗していたはず、なんだけどなぁ……」
金剛「……」
足柄「ねぇ、金剛さん。
あなた、本当に強いわ。
今回は、私の運が良かっただけ。
沢山訓練積んで、場数も踏んでるわよね。
……だから聞くわ。
あなたは何故、戦うの?って」
金剛「Haha You got it!……デモ、提督はそんな人デス」
足柄「そうね……
ただ……」
金剛「……?」
足柄「あたしが兵器じゃ無いなら、なんで戦ってんだろって。
提督が来てから……そんなことが頭の中に生まれてきて……
考えないようにしてたんだけれど……」
金剛「Ah……」
足柄「認めたくないけど、あたしのアイデンティティーは兵器である事なのよ、きっと。
それが嫌で、反抗していたはず、なんだけどなぁ……」
金剛「……」
足柄「ねぇ、金剛さん。
あなた、本当に強いわ。
今回は、私の運が良かっただけ。
沢山訓練積んで、場数も踏んでるわよね。
……だから聞くわ。
あなたは何故、戦うの?って」
830: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 00:15:54.00 ID:WQWBkUhi0
金剛「ワタシは……」
チラリと、気絶したままの摩耶や、鳳翔達と話す翔鶴に目をやる。
金剛「艦娘を、ヒトを、守りたい」
足柄「……」
金剛「今、皆が居て、ワタシは幸せデス。
この時間を守りたいんダヨネ」
足柄「……ヒトってのは……ヒト?」
金剛「そうだヨ。
ヒトは……艦娘を嫌う者も多いネ。
でも、今私に酷い事を言うヒトであっても、大切な家族がいて、幸せな時間があって。
ワタシは……皆の、幸せの礎になりたい」
足柄「……幸、せ」
金剛「その為には、強くならなきゃいけないネー。
それが、真面目な理由ダヨ」
足柄「……他の者の、為に?」
金剛「Hahaha!まさか!全部、ワタシのエゴデース」
足柄「……?」
チラリと、気絶したままの摩耶や、鳳翔達と話す翔鶴に目をやる。
金剛「艦娘を、ヒトを、守りたい」
足柄「……」
金剛「今、皆が居て、ワタシは幸せデス。
この時間を守りたいんダヨネ」
足柄「……ヒトってのは……ヒト?」
金剛「そうだヨ。
ヒトは……艦娘を嫌う者も多いネ。
でも、今私に酷い事を言うヒトであっても、大切な家族がいて、幸せな時間があって。
ワタシは……皆の、幸せの礎になりたい」
足柄「……幸、せ」
金剛「その為には、強くならなきゃいけないネー。
それが、真面目な理由ダヨ」
足柄「……他の者の、為に?」
金剛「Hahaha!まさか!全部、ワタシのエゴデース」
足柄「……?」
831: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 00:17:03.53 ID:WQWBkUhi0
金剛「例えば、皆がやられたら。ワタシは悲しくなるネ。
例え、誰か知らない人が死んでも、ワタシは悲しくなるヨ。
守るのは、失うと、ワタシが、自分が悲しいから。
Loveなんて……結局そんなモノネ。
ワタシはそう思うヨ」
足柄「……」
金剛「足柄、問いへの答えをあげるネ」
足柄「……?」
金剛「ワタシ達は兵器じゃ無い。ワタシ達は人間でも無い。
ワタシ達は、艦娘ダヨ」
足柄「……艦娘」
金剛「……まぁ、それは提督が言ってた事だケド。
あの人はイジワルだからネ!
意味を聞くと、自分で考えろ、と言われマース!」
足柄「なんだか、提督らしいわ」
金剛「……足柄」
足柄「……ん?」
金剛「ワタシは……あなたが少し、羨ましいデス」
足柄「……?」
金剛「提督の元に居られる事デスヨ」
陽炎「えっ……」
今まで金剛の隣で、ずっと黙っていた陽炎が驚きの声を上げた。
陽炎「……ここは嫌なの?」
例え、誰か知らない人が死んでも、ワタシは悲しくなるヨ。
守るのは、失うと、ワタシが、自分が悲しいから。
Loveなんて……結局そんなモノネ。
ワタシはそう思うヨ」
足柄「……」
金剛「足柄、問いへの答えをあげるネ」
足柄「……?」
金剛「ワタシ達は兵器じゃ無い。ワタシ達は人間でも無い。
ワタシ達は、艦娘ダヨ」
足柄「……艦娘」
金剛「……まぁ、それは提督が言ってた事だケド。
あの人はイジワルだからネ!
意味を聞くと、自分で考えろ、と言われマース!」
足柄「なんだか、提督らしいわ」
金剛「……足柄」
足柄「……ん?」
金剛「ワタシは……あなたが少し、羨ましいデス」
足柄「……?」
金剛「提督の元に居られる事デスヨ」
陽炎「えっ……」
今まで金剛の隣で、ずっと黙っていた陽炎が驚きの声を上げた。
陽炎「……ここは嫌なの?」
832: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 00:17:51.93 ID:WQWBkUhi0
金剛「まさか!ワタシは皆を愛してマース!勿論……陽炎もネ!」
陽炎「わわっ……抱きつかないで……は、恥ずかしい……」
金剛「太郎さんも、とても優秀デスヨ!自慢の司令デース。
ただ……提督は……特別なのデスヨ。
あの人は……艦娘に考えさせマース」
足柄「……?考えさせる?」
金剛「まさに『何故戦うのか』とかデスヨ」
足柄「……」
金剛「艦娘に『時間』を与えてくれるのは……あの人だけデス。
他の人には、そうする気が無かったり、現状で一杯一杯だったり……
イロイロ難しいのデース。
艦娘の自由時間を増やすと、司令の負担も増えマスから」
足柄「……そうね」
思えば、提督は毎日遅くまで執務をしていた。
足柄はいくつかの基地を転々とした経験が有るが、特に辺境の基地など、司令があそこまで働いている事は無い。
自分達が食堂で雑談をする、そんな時間を作る為に、あの人は一人で仕事をこなしていたのだろうか。
陽炎「わわっ……抱きつかないで……は、恥ずかしい……」
金剛「太郎さんも、とても優秀デスヨ!自慢の司令デース。
ただ……提督は……特別なのデスヨ。
あの人は……艦娘に考えさせマース」
足柄「……?考えさせる?」
金剛「まさに『何故戦うのか』とかデスヨ」
足柄「……」
金剛「艦娘に『時間』を与えてくれるのは……あの人だけデス。
他の人には、そうする気が無かったり、現状で一杯一杯だったり……
イロイロ難しいのデース。
艦娘の自由時間を増やすと、司令の負担も増えマスから」
足柄「……そうね」
思えば、提督は毎日遅くまで執務をしていた。
足柄はいくつかの基地を転々とした経験が有るが、特に辺境の基地など、司令があそこまで働いている事は無い。
自分達が食堂で雑談をする、そんな時間を作る為に、あの人は一人で仕事をこなしていたのだろうか。
833: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 00:18:30.75 ID:WQWBkUhi0
金剛「まぁ、悩むのはしんどいデスが……悩んだからこそ、得られる答えも有りマス」
足柄「……」
金剛「そういう事を経験してから、忙しい前線に来ると……
悩んでいた事がとても懐かしくて……それで、羨ましいのデース」
足柄「……そう」
金剛「提督に、悩みを打ち明けるのも良いと思いマスヨ!
きっと……喜びマス」
足柄「喜ぶ?」
金剛「ハイ!ワタシの時は……喜んでマシタ」
足柄「……変な人ね、提督って」
金剛「そこがイイ!」
足柄「あなたも、変な人」
金剛「What?!」
うふふ、と笑う。
足柄「あ……そうだ。
一つ聞いていいかしら」
金剛「?」
足柄「提督って……
教官の前は……何をしてたの?」
足柄「……」
金剛「そういう事を経験してから、忙しい前線に来ると……
悩んでいた事がとても懐かしくて……それで、羨ましいのデース」
足柄「……そう」
金剛「提督に、悩みを打ち明けるのも良いと思いマスヨ!
きっと……喜びマス」
足柄「喜ぶ?」
金剛「ハイ!ワタシの時は……喜んでマシタ」
足柄「……変な人ね、提督って」
金剛「そこがイイ!」
足柄「あなたも、変な人」
金剛「What?!」
うふふ、と笑う。
足柄「あ……そうだ。
一つ聞いていいかしら」
金剛「?」
足柄「提督って……
教官の前は……何をしてたの?」
834: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 00:23:24.08 ID:WQWBkUhi0
金剛「んー……実はワタシもよく知らないのデース」
足柄「……そう」
金剛「質問したことは有るのデスが……
頑なに教えてくれなくって……」
足柄「……」
金剛「ただ……
世の中には知らない方が良い事、知らなくて良い事が有るデス。
提督が話さないのならーー」
足柄「わかってるわ。ほんの好奇心よ。
……んー、逆上せちゃったかも。
そろそろ上がろうかしら。
……色々ありがとね、金剛さん」
金剛「いえいえ!こちらこそ艦載機とか参考になったヨ!アリガトー!」
足柄「じゃ、またね」
金剛「あ、そうデース。
一つだけ確かな道標をあげマース」
足柄「?」
金剛「人間でも、兵器でも、艦娘でも。
深海棲艦は、共通の敵デース」
足柄「……」
金剛「アイデンティティーは変化しマス。
ケド、これは絶対に変わらない、事実デース」
足柄「そう、ね」
金剛「……折角なので、ゆっくり考えるデース」
足柄「……そうするわ。ありがと。
……こんな話が出来る人、居なかったから。
なんというか……助かったわ」
金剛「それは良かったデース!
お互いをあまり知らないからこそ、話せる事もありマスから、ネ」
足柄「そうね……それじゃ、また」
足柄「……そう」
金剛「質問したことは有るのデスが……
頑なに教えてくれなくって……」
足柄「……」
金剛「ただ……
世の中には知らない方が良い事、知らなくて良い事が有るデス。
提督が話さないのならーー」
足柄「わかってるわ。ほんの好奇心よ。
……んー、逆上せちゃったかも。
そろそろ上がろうかしら。
……色々ありがとね、金剛さん」
金剛「いえいえ!こちらこそ艦載機とか参考になったヨ!アリガトー!」
足柄「じゃ、またね」
金剛「あ、そうデース。
一つだけ確かな道標をあげマース」
足柄「?」
金剛「人間でも、兵器でも、艦娘でも。
深海棲艦は、共通の敵デース」
足柄「……」
金剛「アイデンティティーは変化しマス。
ケド、これは絶対に変わらない、事実デース」
足柄「そう、ね」
金剛「……折角なので、ゆっくり考えるデース」
足柄「……そうするわ。ありがと。
……こんな話が出来る人、居なかったから。
なんというか……助かったわ」
金剛「それは良かったデース!
お互いをあまり知らないからこそ、話せる事もありマスから、ネ」
足柄「そうね……それじゃ、また」
846: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 23:19:48.88 ID:WQWBkUhi0
足柄(何で勝ったのに、こんなにモヤモヤするかなぁ……)ガラガラ……
榛名「あ、足柄さんが出ましたね」
鳳翔「あら……」
雷「逆上せたのかしら?」
隼鷹「ほうほう、んでんで?」
翔鶴「偵察機を飛ばす時は、全機の視界で一枚絵を作るイメージで飛ばすと良いですよ」
隼鷹「一枚絵……ナルホドなぁ」
翔鶴「景色の流れ方が違うと、見落としが発生したりしてややこしいですが……」
隼鷹「ほむほむ」
雷「こっちはこっちで話し込んでるわねぇ……」
鳳翔「交流するのは、良い事です」
金剛「なら、交流しまショウ!」
榛名「こ、金剛さん?!修復は……」
金剛「もう大丈夫デース!」
鳳翔「それは良かったです」
金剛「しっかし榛名は強かったデスネ!」
榛名「そ、そうでしょうか……えへへ」
鳳翔「……摩耶さんと陽炎さんは大丈夫ですか?」
金剛「ンー。傷的な意味では問題nothingなのデスが……
陽炎がすっかり榛名を怖がってしまって……」
榛名「あ、足柄さんが出ましたね」
鳳翔「あら……」
雷「逆上せたのかしら?」
隼鷹「ほうほう、んでんで?」
翔鶴「偵察機を飛ばす時は、全機の視界で一枚絵を作るイメージで飛ばすと良いですよ」
隼鷹「一枚絵……ナルホドなぁ」
翔鶴「景色の流れ方が違うと、見落としが発生したりしてややこしいですが……」
隼鷹「ほむほむ」
雷「こっちはこっちで話し込んでるわねぇ……」
鳳翔「交流するのは、良い事です」
金剛「なら、交流しまショウ!」
榛名「こ、金剛さん?!修復は……」
金剛「もう大丈夫デース!」
鳳翔「それは良かったです」
金剛「しっかし榛名は強かったデスネ!」
榛名「そ、そうでしょうか……えへへ」
鳳翔「……摩耶さんと陽炎さんは大丈夫ですか?」
金剛「ンー。傷的な意味では問題nothingなのデスが……
陽炎がすっかり榛名を怖がってしまって……」
847: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 23:20:26.36 ID:WQWBkUhi0
榛名「え……?」
雷「そんな心外そうな顔をしなくても……」
榛名「いやぁ……大分手加減したつもりだったのですが……」
陽炎「……あれで、ですか?」
榛名「あら、陽炎さん」
榛名が振り返ると、そこには険しい顔をした陽炎が。
陽炎「もう少し、摩耶への配慮とか、ないんですかっ……」
榛名の目が細められる。
榛名「配慮しましたよ?」
陽炎「摩耶はあんなに血を流してっ!」
金剛「陽炎」
陽炎「だって、やり過ぎじゃないの!私の艤装だってーー」
金剛「陽炎。Cut it out.」
陽炎「でもっ!いくら提督さんの所だからって、勝手が過ぎーー」
ピクリと、榛名の眉が動く。
榛名「あなたを誘う為に……わざと派手に出血するようにと、顔面と胃を狙いましたから。
手心は加えてますってば」
雷「そんな心外そうな顔をしなくても……」
榛名「いやぁ……大分手加減したつもりだったのですが……」
陽炎「……あれで、ですか?」
榛名「あら、陽炎さん」
榛名が振り返ると、そこには険しい顔をした陽炎が。
陽炎「もう少し、摩耶への配慮とか、ないんですかっ……」
榛名の目が細められる。
榛名「配慮しましたよ?」
陽炎「摩耶はあんなに血を流してっ!」
金剛「陽炎」
陽炎「だって、やり過ぎじゃないの!私の艤装だってーー」
金剛「陽炎。Cut it out.」
陽炎「でもっ!いくら提督さんの所だからって、勝手が過ぎーー」
ピクリと、榛名の眉が動く。
榛名「あなたを誘う為に……わざと派手に出血するようにと、顔面と胃を狙いましたから。
手心は加えてますってば」
848: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 23:20:57.87 ID:WQWBkUhi0
陽炎「誘うって……!
納得がいきません……!
私達は、仲間じゃ、無いんですかっ」
榛名「……はぁ……仲間、ですか」
溜息。
雷「ちょっと榛名……」
榛名「とにかく、艦娘はあの程度では死にません。
修復槽に突っ込めば傷も残らないでしょう」
陽炎「そういう問題じゃーー」
駄々を捏ねるように繰り返す陽炎に、榛名は苛立ったのか。
予備動作無しで陽炎の喉元に手を伸ばした。
決して素早い動作ではない。
だが、誰も反応出来ずに。
榛名の人差し指は、いつの間にか陽炎の喉仏あたりをツンツンと突いていた。
納得がいきません……!
私達は、仲間じゃ、無いんですかっ」
榛名「……はぁ……仲間、ですか」
溜息。
雷「ちょっと榛名……」
榛名「とにかく、艦娘はあの程度では死にません。
修復槽に突っ込めば傷も残らないでしょう」
陽炎「そういう問題じゃーー」
駄々を捏ねるように繰り返す陽炎に、榛名は苛立ったのか。
予備動作無しで陽炎の喉元に手を伸ばした。
決して素早い動作ではない。
だが、誰も反応出来ずに。
榛名の人差し指は、いつの間にか陽炎の喉仏あたりをツンツンと突いていた。
849: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 23:21:27.32 ID:WQWBkUhi0
陽炎「ひっ……」
金剛「榛名!」
鳳翔「榛名さん!」
無視して続ける。
榛名「良いですかぁ……?
艦娘なんてのは、喉仏を陥没させただけで戦闘不能になります。
それは締め落とすよりも、遥かに楽なんですよ……?」
陽炎「く、訓練なんだからっ……
そんな、殺すようなっ……」
今度はグリグリと喉仏を押して。
榛名「うふふ。喉仏潰したくらいじゃ死にませんよ?」
陽炎「わかんない、じゃない……」
榛名「わかりますよ。私自身、何度も潰された事がありますから」
陽炎「……っ」
不気味に嗤いながら言う榛名の言葉には、重みがあった。
榛名の人差し指に力が篭る。
榛名「寧ろ、後遺症が残らぬようにと、丁寧に対処した事を感謝してーー」
隼鷹「榛名。
そろそーろ……おイタが過ぎるぜ」
そこで隼鷹が、榛名の人差し指をそっと、しかしがっちりと握った。
榛名「……」
榛名は不満気だが。
鳳翔「ーー提督に、ご迷惑がかかりますよ」
側から見ていた鳳翔のその一言で、矛を収めた。
榛名「……ごめんなさい。
私、もう上がりますね」
金剛「榛名!」
鳳翔「榛名さん!」
無視して続ける。
榛名「良いですかぁ……?
艦娘なんてのは、喉仏を陥没させただけで戦闘不能になります。
それは締め落とすよりも、遥かに楽なんですよ……?」
陽炎「く、訓練なんだからっ……
そんな、殺すようなっ……」
今度はグリグリと喉仏を押して。
榛名「うふふ。喉仏潰したくらいじゃ死にませんよ?」
陽炎「わかんない、じゃない……」
榛名「わかりますよ。私自身、何度も潰された事がありますから」
陽炎「……っ」
不気味に嗤いながら言う榛名の言葉には、重みがあった。
榛名の人差し指に力が篭る。
榛名「寧ろ、後遺症が残らぬようにと、丁寧に対処した事を感謝してーー」
隼鷹「榛名。
そろそーろ……おイタが過ぎるぜ」
そこで隼鷹が、榛名の人差し指をそっと、しかしがっちりと握った。
榛名「……」
榛名は不満気だが。
鳳翔「ーー提督に、ご迷惑がかかりますよ」
側から見ていた鳳翔のその一言で、矛を収めた。
榛名「……ごめんなさい。
私、もう上がりますね」
850: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 23:22:01.42 ID:WQWBkUhi0
鳳翔「……」
去り際に。
榛名「ああ、陽炎さん。重要な事を言い忘れてました」
陽炎「……?」
榛名「強い味方に守って貰う事が、『仲間である』事ですか?」
陽炎「……」
榛名「それは、甘えですよ」
陽炎「……!」
陽炎は、何も言えなかった。
榛名「では」
陽炎「……」
雷「もー……
ウチのポンコツが色々ごめんなさいね……」
雷も謝るが、内容を否定する事はなかった。
去り際に。
榛名「ああ、陽炎さん。重要な事を言い忘れてました」
陽炎「……?」
榛名「強い味方に守って貰う事が、『仲間である』事ですか?」
陽炎「……」
榛名「それは、甘えですよ」
陽炎「……!」
陽炎は、何も言えなかった。
榛名「では」
陽炎「……」
雷「もー……
ウチのポンコツが色々ごめんなさいね……」
雷も謝るが、内容を否定する事はなかった。
851: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 23:23:38.95 ID:WQWBkUhi0
金剛(こりゃまた、榛名の思考は足柄とえらい違うわね……)
陽炎「……」
金剛「陽炎」
陽炎「……?」
金剛「悔しければ、強くなるネ」
陽炎「……」
金剛「失敗した事は、あなたがよくわかっているヨネ。
でも、その悔しさは怒りじゃなくて、自分への努力に向けるべきダヨ」
陽炎「……ごめん……なさいっ」ダキッ
金剛「よしよし。
嫌な事は、涙で流しちゃうに限るヨ!」
陽炎「うわぁぁぁ!」
鳳翔「……我々は退散、しましょうか」
隼鷹「んだね。
またね、翔鶴さん」
翔鶴「……はい」
鳳翔(しかし……榛名さん。
提督という単語にとても敏感になっている……
一体何があったのですか?)
何故だか、モヤモヤする。
何だろう、この気持ちは。
陽炎「……」
金剛「陽炎」
陽炎「……?」
金剛「悔しければ、強くなるネ」
陽炎「……」
金剛「失敗した事は、あなたがよくわかっているヨネ。
でも、その悔しさは怒りじゃなくて、自分への努力に向けるべきダヨ」
陽炎「……ごめん……なさいっ」ダキッ
金剛「よしよし。
嫌な事は、涙で流しちゃうに限るヨ!」
陽炎「うわぁぁぁ!」
鳳翔「……我々は退散、しましょうか」
隼鷹「んだね。
またね、翔鶴さん」
翔鶴「……はい」
鳳翔(しかし……榛名さん。
提督という単語にとても敏感になっている……
一体何があったのですか?)
何故だか、モヤモヤする。
何だろう、この気持ちは。
852: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 23:24:14.46 ID:WQWBkUhi0
………
……
…
陽炎「えぐっ……えぐっ……」
金剛「……」
翔鶴「……」
摩耶「ん……あ?」
金剛「'morning.」
摩耶「あ……ふ、ろ?
そうか……アタシは……
!え、演習はどうなった?!」
金剛「負けたヨ」
摩耶「……そう、か……
……多分、アタシのせいだよ、な……」
金剛「まぁ、それも一因ネ」
摩耶「ほんと、ごめん……
舐めてたよ」
翔鶴「……だからあれ程言ったのよ。
あの人は……危ないの」
摩耶「……ごめん」
金剛「まぁ、これで学んだデショウ。
あなたの弱さを。ダメなトコロを」
摩耶「……ああ」
……
…
陽炎「えぐっ……えぐっ……」
金剛「……」
翔鶴「……」
摩耶「ん……あ?」
金剛「'morning.」
摩耶「あ……ふ、ろ?
そうか……アタシは……
!え、演習はどうなった?!」
金剛「負けたヨ」
摩耶「……そう、か……
……多分、アタシのせいだよ、な……」
金剛「まぁ、それも一因ネ」
摩耶「ほんと、ごめん……
舐めてたよ」
翔鶴「……だからあれ程言ったのよ。
あの人は……危ないの」
摩耶「……ごめん」
金剛「まぁ、これで学んだデショウ。
あなたの弱さを。ダメなトコロを」
摩耶「……ああ」
853: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 23:24:40.32 ID:WQWBkUhi0
金剛「Good. 陽炎もそろそろ泣き止むデース」
陽炎「……グスッ……ハイ……」
金剛「この後ディブリーフがあるから、細かい指摘はしマセン。
ただ、ワタシ達は今回、全員がミスをシマシタ。
そして、全員が死にマシタ。
たとえ擬似的なモノでも」
翔鶴「……」
金剛「敵の実力。こちらのミス。
全てを客観的に受け止め……
この死を……meaningfulなモノにしまショウ」
陽炎「……」
金剛「Now. Let's change before we have to!」
変革しよう。
真に変革が必要になる前に。
翔鶴「……ええ!」
金剛「We gotta carry this xxxxing defeat on!But……」
ニヤリと。
金剛「Let us have the last laugh, ladies!」
最後に笑うのは、私達だ。
陽炎「……グスッ……ハイ……」
金剛「この後ディブリーフがあるから、細かい指摘はしマセン。
ただ、ワタシ達は今回、全員がミスをシマシタ。
そして、全員が死にマシタ。
たとえ擬似的なモノでも」
翔鶴「……」
金剛「敵の実力。こちらのミス。
全てを客観的に受け止め……
この死を……meaningfulなモノにしまショウ」
陽炎「……」
金剛「Now. Let's change before we have to!」
変革しよう。
真に変革が必要になる前に。
翔鶴「……ええ!」
金剛「We gotta carry this xxxxing defeat on!But……」
ニヤリと。
金剛「Let us have the last laugh, ladies!」
最後に笑うのは、私達だ。
854: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 23:25:23.07 ID:WQWBkUhi0
………
……
…
暫く後……
夕刻前、南方基地、港
太郎「提督さん!」
提督「……おお、太郎くん。忙しいところ、見送りさせてすまないな」
船へと向かっていたサセン隊が振り返ると、そこには18戦隊の面々。
太郎「いえいえ……それよりも、腰は大丈夫ですか?」
提督「大丈夫だ。すまんな……万が一クレーンに異常が見つかったらサセン島宛で請求してくれ」
太郎「いえいえ、それには及びません。修理も可能ですし」
提督「そうか……おい、お前たち。
最後に挨拶しておいたらどうだ」
足柄「そうね」
金剛「足柄ー!これ以降は……二度とやられまセーン!
覚悟しておくネ!」
足柄「上等よ。何度来ても返り討ちにしてあげるわ!」
北上「じゃーねー隼鷹っち。
実況スキル上げといてね。
次はアタシと大井っちが演習に出るから、サ」
隼鷹「おおん?!アタシも出るぜ?!」
北上「うはは!そいつぁ楽しみだ!」
大井「そうね、ほんとに」
翔鶴「鳳翔さん。あなたの操縦、見事でした。
でも、次は……負けませんよ」
鳳翔「あら、うふふ。
では、次も……負けませんよ」
そうして、艦娘同士が別れを惜しむ中、提督と太郎は何やら深刻そうな顔をして二、三言葉を交わしていた。
ワイワイとしていたのも、束の間。
船の方から、出港準備完了の合図が出た。
……
…
暫く後……
夕刻前、南方基地、港
太郎「提督さん!」
提督「……おお、太郎くん。忙しいところ、見送りさせてすまないな」
船へと向かっていたサセン隊が振り返ると、そこには18戦隊の面々。
太郎「いえいえ……それよりも、腰は大丈夫ですか?」
提督「大丈夫だ。すまんな……万が一クレーンに異常が見つかったらサセン島宛で請求してくれ」
太郎「いえいえ、それには及びません。修理も可能ですし」
提督「そうか……おい、お前たち。
最後に挨拶しておいたらどうだ」
足柄「そうね」
金剛「足柄ー!これ以降は……二度とやられまセーン!
覚悟しておくネ!」
足柄「上等よ。何度来ても返り討ちにしてあげるわ!」
北上「じゃーねー隼鷹っち。
実況スキル上げといてね。
次はアタシと大井っちが演習に出るから、サ」
隼鷹「おおん?!アタシも出るぜ?!」
北上「うはは!そいつぁ楽しみだ!」
大井「そうね、ほんとに」
翔鶴「鳳翔さん。あなたの操縦、見事でした。
でも、次は……負けませんよ」
鳳翔「あら、うふふ。
では、次も……負けませんよ」
そうして、艦娘同士が別れを惜しむ中、提督と太郎は何やら深刻そうな顔をして二、三言葉を交わしていた。
ワイワイとしていたのも、束の間。
船の方から、出港準備完了の合図が出た。
855: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 23:25:53.38 ID:WQWBkUhi0
提督「そろそろ行かねば……」
太郎「提督さん……」
提督「……昨日も言ったが……
まぁ、一応、頼む」
太郎「…………はい」
提督「うむ。達者でなーー
おい、お前たち!そろそろ時間だ!」
何やら煮え切らない様子の太郎を残し、提督は船へと進んでいく。
そして、全員が船に乗り込む直前。
それまでずっと黙っていた陽炎が叫んだ。
陽炎「……榛名さん!」
榛名「……」
言葉は返さずに、冷たい視線で陽炎を一瞥する。
が、陽炎はそれに構わず、続ける。
陽炎「……私は、私は強くなるわ!
あなたを打ち倒して見せるんだから!」
北上「ヒュー!大きく出たねぇ」
大井「もう……」
陽炎のその叫びに対し、榛名はニコリともせずに。
榛名「また、会いましょう」
と、一言だけ。
そうして、サセン隊は南方基地を去った。
太郎「提督さん……」
提督「……昨日も言ったが……
まぁ、一応、頼む」
太郎「…………はい」
提督「うむ。達者でなーー
おい、お前たち!そろそろ時間だ!」
何やら煮え切らない様子の太郎を残し、提督は船へと進んでいく。
そして、全員が船に乗り込む直前。
それまでずっと黙っていた陽炎が叫んだ。
陽炎「……榛名さん!」
榛名「……」
言葉は返さずに、冷たい視線で陽炎を一瞥する。
が、陽炎はそれに構わず、続ける。
陽炎「……私は、私は強くなるわ!
あなたを打ち倒して見せるんだから!」
北上「ヒュー!大きく出たねぇ」
大井「もう……」
陽炎のその叫びに対し、榛名はニコリともせずに。
榛名「また、会いましょう」
と、一言だけ。
そうして、サセン隊は南方基地を去った。
856: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 23:26:30.13 ID:WQWBkUhi0
………
……
…
帰路、船の航行中、甲板
隼鷹「うっす。夕日がきれいだねぇ」
提督「……ああ、お前か。
……そうだな。綺麗だな」
隼鷹「ん。腰大丈夫?」
提督「大丈夫だ。……それより、他はどうした?」
隼鷹「皆、寝てるよ。疲れてるみたい。榛名は起きてたけど、1人は残っとかないとね……」
提督「そうか……」
隼鷹「ね、最後、太郎さんと怖い顔してたけど、何話してたのさ」
提督「……ああ、アレは……まぁ、戦術の話さ」
隼鷹「ふーん……あ、戦術と言えば!」
提督「ん?」
隼鷹「何で、演習で、最初に北上したの?
やっぱり不利になったじゃん。
最初から南に居れば、もう少し楽だったんじゃ無いの?」
提督「ああ、それか」
隼鷹「アタシの頭じゃ、理由がわかんなかったよー」
……
…
帰路、船の航行中、甲板
隼鷹「うっす。夕日がきれいだねぇ」
提督「……ああ、お前か。
……そうだな。綺麗だな」
隼鷹「ん。腰大丈夫?」
提督「大丈夫だ。……それより、他はどうした?」
隼鷹「皆、寝てるよ。疲れてるみたい。榛名は起きてたけど、1人は残っとかないとね……」
提督「そうか……」
隼鷹「ね、最後、太郎さんと怖い顔してたけど、何話してたのさ」
提督「……ああ、アレは……まぁ、戦術の話さ」
隼鷹「ふーん……あ、戦術と言えば!」
提督「ん?」
隼鷹「何で、演習で、最初に北上したの?
やっぱり不利になったじゃん。
最初から南に居れば、もう少し楽だったんじゃ無いの?」
提督「ああ、それか」
隼鷹「アタシの頭じゃ、理由がわかんなかったよー」
857: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/15(月) 23:33:43.84 ID:WQWBkUhi0
提督「皆、『船』の概念にとらわれ過ぎだ。
お前たちは艦娘だぞ。
お前の二本の足は何の為にある?」
隼鷹「何って……そりゃ、歩く為だけど……
……え?まさか……敵が島の北を徒歩で渡る、と?」
提督「それは大変な不意打ちになる。
だから、それを警戒しての事だ。
島には木々が茂っているからな。
空からでは小柄な敵が見えなくなるのさ」
隼鷹「待ち構えるって事?」
提督「正確には、空母の艦載機を何往復もさせる事で、なんとか木々を吹き飛ばして敵を炙り出すのが目的だ。
それをするには、島の近くに空母が居ないと効率が悪い。
ただでさえ発見が難しいからな」
隼鷹「な、成る程?」
提督「北から上陸し、西へ抜けるのが向こうからすると、最も安定したルートだった。
北に出れると攻撃側は非常に有利だったからな。
それで艦隊を北へ向かわせた訳だ」
隼鷹「へぇ……
……でもまぁ、普通考えないよね、上陸なんて……」
その応答に提督は、フッと笑って。
提督「どうかな。
俺が攻めなら、そうしたさ」
お前たちは艦娘だぞ。
お前の二本の足は何の為にある?」
隼鷹「何って……そりゃ、歩く為だけど……
……え?まさか……敵が島の北を徒歩で渡る、と?」
提督「それは大変な不意打ちになる。
だから、それを警戒しての事だ。
島には木々が茂っているからな。
空からでは小柄な敵が見えなくなるのさ」
隼鷹「待ち構えるって事?」
提督「正確には、空母の艦載機を何往復もさせる事で、なんとか木々を吹き飛ばして敵を炙り出すのが目的だ。
それをするには、島の近くに空母が居ないと効率が悪い。
ただでさえ発見が難しいからな」
隼鷹「な、成る程?」
提督「北から上陸し、西へ抜けるのが向こうからすると、最も安定したルートだった。
北に出れると攻撃側は非常に有利だったからな。
それで艦隊を北へ向かわせた訳だ」
隼鷹「へぇ……
……でもまぁ、普通考えないよね、上陸なんて……」
その応答に提督は、フッと笑って。
提督「どうかな。
俺が攻めなら、そうしたさ」
883: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:20:27.29 ID:TF1bkh/10
サセン島
提督「やっと帰ってきたな……
長い2日間だった」
足柄「ふわぁ……ねむーい」
榛名「提督、お手を……
危ないですから」
提督「あ、ああ……すまん。
迷惑をかける」
榛名「ふふ。榛名は大丈夫です」
鳳翔「……」
雷「もう!しっかりしてよね、提督!」
提督「す、すまん……」
隼鷹「で、今夜は酒盛りなんだろ?
勝ったし!」
提督「……まぁ、そのつもりだが」
隼鷹「うっひょう!」
提督「お前それ、北上から移ったな……」
提督「やっと帰ってきたな……
長い2日間だった」
足柄「ふわぁ……ねむーい」
榛名「提督、お手を……
危ないですから」
提督「あ、ああ……すまん。
迷惑をかける」
榛名「ふふ。榛名は大丈夫です」
鳳翔「……」
雷「もう!しっかりしてよね、提督!」
提督「す、すまん……」
隼鷹「で、今夜は酒盛りなんだろ?
勝ったし!」
提督「……まぁ、そのつもりだが」
隼鷹「うっひょう!」
提督「お前それ、北上から移ったな……」
884: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:21:32.06 ID:TF1bkh/10
そうやってワイワイと騒ぐ集団を。
不知火「ーー皆さん、お帰りなさい」
不知火が出迎えた。
提督「ーーただいま。万事変わりないか」
不知火「はい。大丈夫です……
其方は如何でしたか」
提督「無論、勝利だ」
不知火「本当ですか!
あの18戦隊を下すとは……流石です。
所で……何故、杖を?」
提督「ああ……少しゴリラに襲われてな……」
不知火「南方基地にはゴリラが棲むのですか……!恐ろしい……」
隼鷹「……」
提督(……サセン島のゴリラなんだがな……)
提督「まぁ、とりあえず入ろうか」
不知火「ーー皆さん、お帰りなさい」
不知火が出迎えた。
提督「ーーただいま。万事変わりないか」
不知火「はい。大丈夫です……
其方は如何でしたか」
提督「無論、勝利だ」
不知火「本当ですか!
あの18戦隊を下すとは……流石です。
所で……何故、杖を?」
提督「ああ……少しゴリラに襲われてな……」
不知火「南方基地にはゴリラが棲むのですか……!恐ろしい……」
隼鷹「……」
提督(……サセン島のゴリラなんだがな……)
提督「まぁ、とりあえず入ろうか」
885: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:22:16.82 ID:TF1bkh/10
………
……
…
数時間後、食堂
提督「それでは、勝利を祝ってーー」
「「「乾杯!」」」
隼鷹「イェー!」グビー
足柄「フゥー!」グビー
榛名「やりましたぁ!」
鳳翔「間に合わせの料理ですがーー」
雷「ーーざっくりと簡単にね!」
提督「ありがとう、二人とも。
いただこう」
祝宴が始まる。
隼鷹「いやぁー!
たいしたこと無いな18戦隊!
アタシ戦ってないけど!」グビグビ
不知火「何ですかそれ……」
隼鷹「聞いてくれよ!
足柄が一人でゴッさんを倒したんだぜ?!」
不知火「ゴッさん……件のゴリラでしょうか?!」ガタッ
隼鷹「ちげぇーよ!金剛さんだよ!」
不知火「ああ……一人で倒したのですか?足柄さん」
足柄「ンな訳!
榛名が痛めつけて、鳳翔さんが突撃して、アタシが美味しい所をチューチューしただけよ」グビー
不知火「全然状況が読めませんね……
でも、手負いとは言え、戦艦を仕留めたのは見事、ですね。
金剛さんはかなりの手練れですし」
……
…
数時間後、食堂
提督「それでは、勝利を祝ってーー」
「「「乾杯!」」」
隼鷹「イェー!」グビー
足柄「フゥー!」グビー
榛名「やりましたぁ!」
鳳翔「間に合わせの料理ですがーー」
雷「ーーざっくりと簡単にね!」
提督「ありがとう、二人とも。
いただこう」
祝宴が始まる。
隼鷹「いやぁー!
たいしたこと無いな18戦隊!
アタシ戦ってないけど!」グビグビ
不知火「何ですかそれ……」
隼鷹「聞いてくれよ!
足柄が一人でゴッさんを倒したんだぜ?!」
不知火「ゴッさん……件のゴリラでしょうか?!」ガタッ
隼鷹「ちげぇーよ!金剛さんだよ!」
不知火「ああ……一人で倒したのですか?足柄さん」
足柄「ンな訳!
榛名が痛めつけて、鳳翔さんが突撃して、アタシが美味しい所をチューチューしただけよ」グビー
不知火「全然状況が読めませんね……
でも、手負いとは言え、戦艦を仕留めたのは見事、ですね。
金剛さんはかなりの手練れですし」
886: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:23:14.91 ID:TF1bkh/10
隼鷹「あとあと、鳳翔さんが翔鶴さんを完全撃破したんだぜ!」
不知火「え?それは……凄いですね。
翔鶴さんは、南方でも中々の実力者であった記憶が……」
鳳翔「そ、そんな完全撃破だなんて……
提督の指示通りに動いただけですから」
隼鷹「あと榛名が、ペーペーとは言え、駆逐艦と重巡をぶちのめしたぜ!」
不知火「そうですか」
榛名「……なんか私だけ素っ気なくないですか?!」
足柄「まぁつまり、全部提督の手柄よ!」
不知火「流石ですね、提督」
提督「そいつらは酔ってる。言っている事を間に受けるな。
俺は今回、特に何もしていない」
鳳翔「そんな事、ありませんよ」
榛名「わ、私が敵に接近出来たのも提督の作戦ですよ!」
不知火「……だ、そうですが?」
提督「んなこたぁない」
不知火「え?それは……凄いですね。
翔鶴さんは、南方でも中々の実力者であった記憶が……」
鳳翔「そ、そんな完全撃破だなんて……
提督の指示通りに動いただけですから」
隼鷹「あと榛名が、ペーペーとは言え、駆逐艦と重巡をぶちのめしたぜ!」
不知火「そうですか」
榛名「……なんか私だけ素っ気なくないですか?!」
足柄「まぁつまり、全部提督の手柄よ!」
不知火「流石ですね、提督」
提督「そいつらは酔ってる。言っている事を間に受けるな。
俺は今回、特に何もしていない」
鳳翔「そんな事、ありませんよ」
榛名「わ、私が敵に接近出来たのも提督の作戦ですよ!」
不知火「……だ、そうですが?」
提督「んなこたぁない」
887: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:23:57.23 ID:TF1bkh/10
足柄「……てかさぁ、何で提督飲んでないの?
飲みなさぁい!」
提督「おまっ……やめっ……
アルコールが腰に響くんだよ……!」
足柄「大丈夫!痛いだけよ……!」
提督「何が大丈夫なんだ……!」
足柄「隼鷹!抑えなさい!」
提督「隼鷹!動いたらお前は半年間酒抜きだぞ!」
隼鷹「くっ……すまねぇ足柄……
……アタシにゃ、無理だ……」
足柄「ちぃぃぃ!雷ちゃんは?」
雷「はにゃ?」
足柄「ダメね酔ってる!」
提督「馬鹿め……
あいたたた……腰が……」
足柄「え?だ、大丈夫?」
提督「大丈夫だ。暑いと、少しな。
厠に行ってから夜風に吹かれてくるよ」
足柄「うん……」
提督「シュンとするな。お前のせいじゃない。催しただけだ」
足柄「しょ、食事中に汚いわよ!」
提督「ははは、すまんすまん」
ワシャワシャと頭を撫でる。
榛名「ご一緒します!」
不知火「……あなたは殿方の手洗いについて行くつもりですか……」
榛名「……え?いえあのーー」
提督「幽霊が出たら、その時は頼むよ」
そう笑って提督は立ち上がり、去っていった。
飲みなさぁい!」
提督「おまっ……やめっ……
アルコールが腰に響くんだよ……!」
足柄「大丈夫!痛いだけよ……!」
提督「何が大丈夫なんだ……!」
足柄「隼鷹!抑えなさい!」
提督「隼鷹!動いたらお前は半年間酒抜きだぞ!」
隼鷹「くっ……すまねぇ足柄……
……アタシにゃ、無理だ……」
足柄「ちぃぃぃ!雷ちゃんは?」
雷「はにゃ?」
足柄「ダメね酔ってる!」
提督「馬鹿め……
あいたたた……腰が……」
足柄「え?だ、大丈夫?」
提督「大丈夫だ。暑いと、少しな。
厠に行ってから夜風に吹かれてくるよ」
足柄「うん……」
提督「シュンとするな。お前のせいじゃない。催しただけだ」
足柄「しょ、食事中に汚いわよ!」
提督「ははは、すまんすまん」
ワシャワシャと頭を撫でる。
榛名「ご一緒します!」
不知火「……あなたは殿方の手洗いについて行くつもりですか……」
榛名「……え?いえあのーー」
提督「幽霊が出たら、その時は頼むよ」
そう笑って提督は立ち上がり、去っていった。
888: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:24:48.94 ID:TF1bkh/10
榛名「……何故か、私が提督のお手洗いに着いて行きたかった変 のように!」
不知火「皆知ってますよ」
榛名「何をですか?!
なんか私の扱いがエグくないですか?!
もう良いです、榛名、飲みます!」グビー
隼鷹「いよっ!いい飲みっぷり!」
足柄「……いやぁ、失敗したぁ」
隼鷹「どうしたぁ」
足柄「提督が飲んでなかったからぁ。
強要するつもりは無かったんだけどなぁ……」
隼鷹「カンケー無いっしょ。またすぐ戻って来るって。
そんな器の小さい人じゃないよ」
足柄「うー……」
雷「所で鳳翔さん?
飲み過ぎじゃない?」
鳳翔「……?これはお水ですよ?」グビー
雷「黒霧島って水の銘柄じゃないと思うの……」
隼鷹「すげぇ飲んでんな……」
足柄「あらあら、鳳翔さん。
機嫌が良いのね」
鳳翔「今回の勝利は、本当に嬉しかったですから……
……美味しいですね、この大根」もきゅもきゅ
不知火「皆知ってますよ」
榛名「何をですか?!
なんか私の扱いがエグくないですか?!
もう良いです、榛名、飲みます!」グビー
隼鷹「いよっ!いい飲みっぷり!」
足柄「……いやぁ、失敗したぁ」
隼鷹「どうしたぁ」
足柄「提督が飲んでなかったからぁ。
強要するつもりは無かったんだけどなぁ……」
隼鷹「カンケー無いっしょ。またすぐ戻って来るって。
そんな器の小さい人じゃないよ」
足柄「うー……」
雷「所で鳳翔さん?
飲み過ぎじゃない?」
鳳翔「……?これはお水ですよ?」グビー
雷「黒霧島って水の銘柄じゃないと思うの……」
隼鷹「すげぇ飲んでんな……」
足柄「あらあら、鳳翔さん。
機嫌が良いのね」
鳳翔「今回の勝利は、本当に嬉しかったですから……
……美味しいですね、この大根」もきゅもきゅ
889: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:25:47.52 ID:TF1bkh/10
足柄「そうね……
やっぱり鳳翔さんの翔鶴さん撃破はデカかったわね……大根ちょーだい」
鳳翔「どうぞ。
空母として勝ったのなんて、一体いつぶりでしょうか。
柄ではありませんが……血湧き肉躍りましたよ、ふふ。
これも、あの方のお陰ですね」
足柄「そうかも、ね」
隼鷹「……そういや、提督が来てから結構経つよなぁ」
足柄「そうねぇ……早いものね……」
隼鷹「始めはまぁ、印象悪かったなぁ……
酒瓶有ったら殴るとか言ってたぜアタシ。うはは」
足柄「あたしなんて、初めての夜間哨戒で10分毎に連絡して一晩中起こし続けたわよ」
隼鷹「うわっ……そんな事してたのかよ……」
足柄「今思えば、よく毎回毎回通信に出たわね……提督」
隼鷹「あの人らしいや」
鳳翔「私達を光らせる、なんて事も仰ってましたね。
ふふ、懐かしい……」
足柄「あー……あったわねー……」
鳳翔「なんだか、もう、達成されたかのような気分ですよ……ひっく」
隼鷹「待った待った!アタシがまだだぜ!」
足柄「そういえばアンタ、観戦してただけだったわね……」
隼鷹「次はアタシがエースだよ!」
鳳翔「相違ありませんね、ふふふ。
杯が空ですよ。お二人ともどうぞ」コポコポ
足柄「あら、ありがと」
隼鷹「お!ありがとう!」
鳳翔「あなた、最近はお酒お酒と言わなくなりましたものね……
良いことです」
隼鷹「いつでも飲みたいけどな!うはは」グビー
やっぱり鳳翔さんの翔鶴さん撃破はデカかったわね……大根ちょーだい」
鳳翔「どうぞ。
空母として勝ったのなんて、一体いつぶりでしょうか。
柄ではありませんが……血湧き肉躍りましたよ、ふふ。
これも、あの方のお陰ですね」
足柄「そうかも、ね」
隼鷹「……そういや、提督が来てから結構経つよなぁ」
足柄「そうねぇ……早いものね……」
隼鷹「始めはまぁ、印象悪かったなぁ……
酒瓶有ったら殴るとか言ってたぜアタシ。うはは」
足柄「あたしなんて、初めての夜間哨戒で10分毎に連絡して一晩中起こし続けたわよ」
隼鷹「うわっ……そんな事してたのかよ……」
足柄「今思えば、よく毎回毎回通信に出たわね……提督」
隼鷹「あの人らしいや」
鳳翔「私達を光らせる、なんて事も仰ってましたね。
ふふ、懐かしい……」
足柄「あー……あったわねー……」
鳳翔「なんだか、もう、達成されたかのような気分ですよ……ひっく」
隼鷹「待った待った!アタシがまだだぜ!」
足柄「そういえばアンタ、観戦してただけだったわね……」
隼鷹「次はアタシがエースだよ!」
鳳翔「相違ありませんね、ふふふ。
杯が空ですよ。お二人ともどうぞ」コポコポ
足柄「あら、ありがと」
隼鷹「お!ありがとう!」
鳳翔「あなた、最近はお酒お酒と言わなくなりましたものね……
良いことです」
隼鷹「いつでも飲みたいけどな!うはは」グビー
890: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:26:28.67 ID:TF1bkh/10
足柄「提督が赴任して来てから、外面の変化よりは……
内面の変化が多い気がするわ。
今回の演習も、どちらかといえば地力で戦ったし」
鳳翔「確かに、そうかもしれません。
なんと言うか……何かを考える事が多くなったような……
今までは考え無かったような事を……」
隼鷹「そうなのか?」
足柄「……アンタはずっと艦載機訓練してたじゃない」くいっ
隼鷹「確かに!
しかもまだ発揮出来てねー!」
鳳翔「もうすぐですよ、もうすぐ……うふふ……」ぐいっ
雷(皆グイグイいくし……これってほんとに水なのかしら?)ペロッ
雷「辛っ……やっぱ焼酎じゃない……」
鳳翔「あら、雷さん?
欲しいのでしたらお注ぎしますよ」ドボドボ
雷「ちょっ……あっ……ああああ……」
隼鷹「ひっ……
ビールジョッキに焼酎……」
足柄「完全に酔っ払ってるわね……」
隼鷹「んで……あっちはあっちでーー」チラ
内面の変化が多い気がするわ。
今回の演習も、どちらかといえば地力で戦ったし」
鳳翔「確かに、そうかもしれません。
なんと言うか……何かを考える事が多くなったような……
今までは考え無かったような事を……」
隼鷹「そうなのか?」
足柄「……アンタはずっと艦載機訓練してたじゃない」くいっ
隼鷹「確かに!
しかもまだ発揮出来てねー!」
鳳翔「もうすぐですよ、もうすぐ……うふふ……」ぐいっ
雷(皆グイグイいくし……これってほんとに水なのかしら?)ペロッ
雷「辛っ……やっぱ焼酎じゃない……」
鳳翔「あら、雷さん?
欲しいのでしたらお注ぎしますよ」ドボドボ
雷「ちょっ……あっ……ああああ……」
隼鷹「ひっ……
ビールジョッキに焼酎……」
足柄「完全に酔っ払ってるわね……」
隼鷹「んで……あっちはあっちでーー」チラ
891: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:27:02.24 ID:TF1bkh/10
榛名「うぇぇぇぇえん!榛名は、榛名は提督に拾っていただけて幸せですぅ……
はづじょうりです……」ビエーン
隼鷹「榛名が号泣してる、と」
不知火「何泣いてんですか。
蹴りますよ」ゲシゲシ
榛名「痛いです痛いですっ!
て、提督に言いつけますよ!」
不知火「どうぞ」
榛名「ぃやぁ!ううー!」
不知火「威嚇しないで下さい。
可愛くないですよ」
榛名「酷い……提督ぅ!」
不知火「うるさいっ」ゲシッ
榛名「わぁぁぁぁぁん!」ビエーン
隼鷹「うわぁ……不知火も酔ってるし……カオスかよ……」
雷「ちょっろ!じゅんよー何やすんれんのよ!飲みなしゃい!」
隼鷹「げぇっ!ゾンビかよ!
……や、やめて!それは飲めない!
イッキは死ぬ!死ぬゴボグバッ」
足柄「ひぃっ……
あー……あたしちょっと用事を思い出したわ……」ソロー……
「「「……どこへ、行くんですか?」」」
イヤッ……ギャァァァァァーーー……
はづじょうりです……」ビエーン
隼鷹「榛名が号泣してる、と」
不知火「何泣いてんですか。
蹴りますよ」ゲシゲシ
榛名「痛いです痛いですっ!
て、提督に言いつけますよ!」
不知火「どうぞ」
榛名「ぃやぁ!ううー!」
不知火「威嚇しないで下さい。
可愛くないですよ」
榛名「酷い……提督ぅ!」
不知火「うるさいっ」ゲシッ
榛名「わぁぁぁぁぁん!」ビエーン
隼鷹「うわぁ……不知火も酔ってるし……カオスかよ……」
雷「ちょっろ!じゅんよー何やすんれんのよ!飲みなしゃい!」
隼鷹「げぇっ!ゾンビかよ!
……や、やめて!それは飲めない!
イッキは死ぬ!死ぬゴボグバッ」
足柄「ひぃっ……
あー……あたしちょっと用事を思い出したわ……」ソロー……
「「「……どこへ、行くんですか?」」」
イヤッ……ギャァァァァァーーー……
892: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:28:04.54 ID:TF1bkh/10
………
……
…
執務室
提督「悲鳴がここまで聞こえてくるぞ……
随分と楽しそうだ」
提督は夜風には当たらずに一人部屋に戻り、不在の間に溜まった仕事をこなしていた。
提督「……」
演習があって。
太郎くんと会って。
祝勝会があって。
艦娘達が楽しげで。
どうしても昔の事を、思い出してしまう。
かつて在りし日々。
今更考えても仕方の無い事だ。
だけれど。
提督「……心が、痛いなァ」
提督は耐え切れず、逃げ出したのだ。
記憶から。現実から。
仕事が溜まっているからと自分に言い訳して。
たいしたことの無い腰痛を艦娘に言い訳して。
提督「いやいや……
やらねば為らぬ事は山積しているさ」
戦いは近いのだ。
そう自分に言い聞かせて、辛い思考を振り払う。
だが。
カッチコッチと鳴る時計の音が、紙の上をペンが滑る音が、やけに大きく耳に響いた。
……
…
執務室
提督「悲鳴がここまで聞こえてくるぞ……
随分と楽しそうだ」
提督は夜風には当たらずに一人部屋に戻り、不在の間に溜まった仕事をこなしていた。
提督「……」
演習があって。
太郎くんと会って。
祝勝会があって。
艦娘達が楽しげで。
どうしても昔の事を、思い出してしまう。
かつて在りし日々。
今更考えても仕方の無い事だ。
だけれど。
提督「……心が、痛いなァ」
提督は耐え切れず、逃げ出したのだ。
記憶から。現実から。
仕事が溜まっているからと自分に言い訳して。
たいしたことの無い腰痛を艦娘に言い訳して。
提督「いやいや……
やらねば為らぬ事は山積しているさ」
戦いは近いのだ。
そう自分に言い聞かせて、辛い思考を振り払う。
だが。
カッチコッチと鳴る時計の音が、紙の上をペンが滑る音が、やけに大きく耳に響いた。
893: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:28:48.65 ID:TF1bkh/10
…
……
………
どれ位仕事に没頭していただろうか。
提督の集中は、部屋への来訪者によって途切れた。
足柄「お疲れ様」
そう言って、足柄は冷たい水を提督に差し出す。
提督「……お前か。ありがとう」
足柄「随分と淀んだ夜風がお好みなのね」
提督「寒いのも腰には良くないからな。
今、何時だ」
足柄「とっくに夜中を過ぎているわ」
提督「そうか……そんなに経っていたか。
通りで仕事が進む筈だ。
他はどうした?」
足柄「皆潰れて寝てるわ。……榛名だけ居なかったけれど
あたしも潰されて、さっき目が覚めたから」
提督「お前らは毎回毎回潰し合いをしているな……
榛名は……部屋か?
まぁ大丈夫だろう」
苦笑してため息。
足柄「あなた、いつも大量の書類抱えてるわよね。
それでいっつも夜遅くまで……
言ってくれたら手伝うのに」
提督「何、それには及ばない。
実は……俺は太陽が苦手なんだよ。
夜のが落ち着くのさ。
だから大丈夫だ」
足柄「何よそれ……吸血鬼か何かなの?」
提督「はっはっは。まぁ、そんな所だな」
足柄「あら嫌だ。血を吸われるのかしら」
提督「艦娘に噛み付いたら歯が折れそうだな」
苦笑する提督に溜息。
……
………
どれ位仕事に没頭していただろうか。
提督の集中は、部屋への来訪者によって途切れた。
足柄「お疲れ様」
そう言って、足柄は冷たい水を提督に差し出す。
提督「……お前か。ありがとう」
足柄「随分と淀んだ夜風がお好みなのね」
提督「寒いのも腰には良くないからな。
今、何時だ」
足柄「とっくに夜中を過ぎているわ」
提督「そうか……そんなに経っていたか。
通りで仕事が進む筈だ。
他はどうした?」
足柄「皆潰れて寝てるわ。……榛名だけ居なかったけれど
あたしも潰されて、さっき目が覚めたから」
提督「お前らは毎回毎回潰し合いをしているな……
榛名は……部屋か?
まぁ大丈夫だろう」
苦笑してため息。
足柄「あなた、いつも大量の書類抱えてるわよね。
それでいっつも夜遅くまで……
言ってくれたら手伝うのに」
提督「何、それには及ばない。
実は……俺は太陽が苦手なんだよ。
夜のが落ち着くのさ。
だから大丈夫だ」
足柄「何よそれ……吸血鬼か何かなの?」
提督「はっはっは。まぁ、そんな所だな」
足柄「あら嫌だ。血を吸われるのかしら」
提督「艦娘に噛み付いたら歯が折れそうだな」
苦笑する提督に溜息。
894: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:29:28.39 ID:TF1bkh/10
足柄「……ねぇ。教えて欲しい事があるの」
提督「ん?なんだ」
足柄「私達は……艦娘は……何のために、戦うの?」
提督「……」
足柄「昔、聞いたこと覚えてるかしら」
提督「……何故、人間が艦娘を恐れるか、と言う疑問だったか」
足柄「そうよ。よく覚えてるのね。
……私は、人間に疎まれるのが嫌だった。
人間の為に戦っていたのに」
提督「……」
足柄「それが嫌になって、人間に反抗していた。
北ではね。
ここにあなたが来た当初も、結構嫌がらせしたのを思い出したわ」
提督「……」
足柄「でも……でも、あなたは……
私達は兵器じゃないって言う。
私達は艦娘だって。
心があるって」
提督「……」
足柄「あなたが言うように……艦娘が人間の兵器じゃないなら……
私達は、何の為に……戦ってるの……?
何の為に、命を削るの?
わからなく、なるわ……」
提督「……」
足柄「ねぇ……教えてよ、提督……」
提督「……」
提督は無言を貫く。
いくばかの時間が経過し。
不安を煽られた足柄が言葉を発する。
足柄「……提督?」
提督「ん?なんだ」
足柄「私達は……艦娘は……何のために、戦うの?」
提督「……」
足柄「昔、聞いたこと覚えてるかしら」
提督「……何故、人間が艦娘を恐れるか、と言う疑問だったか」
足柄「そうよ。よく覚えてるのね。
……私は、人間に疎まれるのが嫌だった。
人間の為に戦っていたのに」
提督「……」
足柄「それが嫌になって、人間に反抗していた。
北ではね。
ここにあなたが来た当初も、結構嫌がらせしたのを思い出したわ」
提督「……」
足柄「でも……でも、あなたは……
私達は兵器じゃないって言う。
私達は艦娘だって。
心があるって」
提督「……」
足柄「あなたが言うように……艦娘が人間の兵器じゃないなら……
私達は、何の為に……戦ってるの……?
何の為に、命を削るの?
わからなく、なるわ……」
提督「……」
足柄「ねぇ……教えてよ、提督……」
提督「……」
提督は無言を貫く。
いくばかの時間が経過し。
不安を煽られた足柄が言葉を発する。
足柄「……提督?」
895: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:30:07.18 ID:TF1bkh/10
その瞬間、提督は無言で、勢いよく机から立ち上がった。
足柄と目を決して合わせないようにしながら。
ガチャン!と大きな音がして、足柄がビクつく。
足柄「な、何……?」
まさか怒らせちゃった?という思いから、疑問が思わず口をついて出た。
しかし、それを提督は無視し、肩を怒らせたまま、異様な程静かに、しかし確かに、足柄に近づいて来る。
足柄「何?……何なの?怒ったの……?」
提督はそれも無視。
顎を引いて、歩きながらも視線は決して合わせない。
足柄「い、嫌よ……あなた、怖いわ……」
いよいよ不気味に思い、足柄は弱々しい声を発してしまう。
今、この人が何を考えているのか全くわからない。
理解できない故に、恐ろしい。
無意識に足が後ずさりし、いつしか足柄は壁際まで追い込まれていた。
気がつくと、至近距離に無言の提督。
肉薄し、もはや逃れられない。
突然。
提督「ーーこれがァ!!」
提督が怒鳴り、足を思い切り踏み鳴らし、足柄がもたれていた壁を殴る。
あまりの音量と恐怖に身がすくみ、足柄は動けない。
まさに壁ドン。
提督の顔は、足柄が少し顎を前に出せば唇同士が触れ合うような距離にあった。
しかし、ロマンチックさは微塵も無い。
その相貌は先程とは打って変わり、足柄の目を上から見下ろすようにして、しかし真っ直ぐに見つめている。
その視線は恐ろしく冷たくて。
足柄「いやっ……」
怖い。純粋に怖い。
その恐怖心から、足柄はギュッと目を瞑り、声を上げた。
何か酷いことをされる予感がする。
事態に備えて筋肉が収縮し、身が縮こまった。
が。
提督が足柄にした事は、優しく頬を撫でる事だけだった。
足柄と目を決して合わせないようにしながら。
ガチャン!と大きな音がして、足柄がビクつく。
足柄「な、何……?」
まさか怒らせちゃった?という思いから、疑問が思わず口をついて出た。
しかし、それを提督は無視し、肩を怒らせたまま、異様な程静かに、しかし確かに、足柄に近づいて来る。
足柄「何?……何なの?怒ったの……?」
提督はそれも無視。
顎を引いて、歩きながらも視線は決して合わせない。
足柄「い、嫌よ……あなた、怖いわ……」
いよいよ不気味に思い、足柄は弱々しい声を発してしまう。
今、この人が何を考えているのか全くわからない。
理解できない故に、恐ろしい。
無意識に足が後ずさりし、いつしか足柄は壁際まで追い込まれていた。
気がつくと、至近距離に無言の提督。
肉薄し、もはや逃れられない。
突然。
提督「ーーこれがァ!!」
提督が怒鳴り、足を思い切り踏み鳴らし、足柄がもたれていた壁を殴る。
あまりの音量と恐怖に身がすくみ、足柄は動けない。
まさに壁ドン。
提督の顔は、足柄が少し顎を前に出せば唇同士が触れ合うような距離にあった。
しかし、ロマンチックさは微塵も無い。
その相貌は先程とは打って変わり、足柄の目を上から見下ろすようにして、しかし真っ直ぐに見つめている。
その視線は恐ろしく冷たくて。
足柄「いやっ……」
怖い。純粋に怖い。
その恐怖心から、足柄はギュッと目を瞑り、声を上げた。
何か酷いことをされる予感がする。
事態に備えて筋肉が収縮し、身が縮こまった。
が。
提督が足柄にした事は、優しく頬を撫でる事だけだった。
896: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:31:30.33 ID:TF1bkh/10
そして、言う。
提督「……これが、脅迫の手法だ」
足柄「……?」
そっと目を開けた足柄の頬をさする。
その瞳には涙が溜まっているように見えた。
提督「人間が考えた脅迫のメソッドだよ。
視線を合わさず、言葉は無視して、不気味な程静かに近寄り。
肉薄してから、大きな音、暴力と共に強い圧迫感を相手に与える」
足柄「……」
提督「足柄。
お前たち艦娘は、純粋で、無垢で、善良だ。
……それに対して、人間はこんな事ばかり考えている。
残念ながらな」
先程の冷たい瞳はもう無く、いつも通りの温かい視線を足柄は感じる。
しかし提督の言葉は依然厳しく。
提督「他を蹴落とす、陥れる、操作する事ばかり。
人間がどれだけ薄汚く、愚かで、先見性が無く、醜い存在か」
足柄「……」
提督「……なぁ、足柄。
何かがわからない事は、恥ずべき事しゃあない。
それは思考の切っ掛けに過ぎん。
思考する事は即ち罪では無い」
提督「……これが、脅迫の手法だ」
足柄「……?」
そっと目を開けた足柄の頬をさする。
その瞳には涙が溜まっているように見えた。
提督「人間が考えた脅迫のメソッドだよ。
視線を合わさず、言葉は無視して、不気味な程静かに近寄り。
肉薄してから、大きな音、暴力と共に強い圧迫感を相手に与える」
足柄「……」
提督「足柄。
お前たち艦娘は、純粋で、無垢で、善良だ。
……それに対して、人間はこんな事ばかり考えている。
残念ながらな」
先程の冷たい瞳はもう無く、いつも通りの温かい視線を足柄は感じる。
しかし提督の言葉は依然厳しく。
提督「他を蹴落とす、陥れる、操作する事ばかり。
人間がどれだけ薄汚く、愚かで、先見性が無く、醜い存在か」
足柄「……」
提督「……なぁ、足柄。
何かがわからない事は、恥ずべき事しゃあない。
それは思考の切っ掛けに過ぎん。
思考する事は即ち罪では無い」
897: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:33:18.26 ID:TF1bkh/10
提督「……なぁ、足柄。
何かがわからない事は、恥ずべき事しゃあない。
それは思考の切っ掛けに過ぎん。
思考する事は即ち罪では無い」
提督「だが、人間は無知に付け込もうとする下衆でな。
パスカル曰く、偽りの知識を恐れよ、とある。
……お前は偽りの知識に侵食されているぞ」
足柄「……」
提督「艦娘は戦う為に生きてるんじゃない。
生きる為に戦うんだ。
自身の生命を脅かす存在から、自身を守るために」
足柄「……」
そこまで言ってから、提督は足柄を壁際から解放した。
提督「……すまないな……怖がらせた」
足柄「……や、やりかたってもんが、あ、あるでしょ……」
すっかり縮こまってしまっていたせいか、声が震える。
提督「やっぱりお前は……純情だな」
足柄「……ばか」
別に、あんたにやられたから怖かっただけよ、と心の中で呟く。
他の人間にこんな弱みは見せない。
足柄はプクーと膨れた。
何かがわからない事は、恥ずべき事しゃあない。
それは思考の切っ掛けに過ぎん。
思考する事は即ち罪では無い」
提督「だが、人間は無知に付け込もうとする下衆でな。
パスカル曰く、偽りの知識を恐れよ、とある。
……お前は偽りの知識に侵食されているぞ」
足柄「……」
提督「艦娘は戦う為に生きてるんじゃない。
生きる為に戦うんだ。
自身の生命を脅かす存在から、自身を守るために」
足柄「……」
そこまで言ってから、提督は足柄を壁際から解放した。
提督「……すまないな……怖がらせた」
足柄「……や、やりかたってもんが、あ、あるでしょ……」
すっかり縮こまってしまっていたせいか、声が震える。
提督「やっぱりお前は……純情だな」
足柄「……ばか」
別に、あんたにやられたから怖かっただけよ、と心の中で呟く。
他の人間にこんな弱みは見せない。
足柄はプクーと膨れた。
898: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:34:19.19 ID:TF1bkh/10
足柄「でも、あたし達は人間の手によって作られた……のよね。
じゃあ、やっぱり人間の道具、じゃないのかしら」
提督「……例えばーー
ロックは人格を、理性的で、自我があり、思考する知能を持つ存在と定義した。
その意味では、お前たちには人格があるとは思わないか?」
足柄「何……?岩……?
……でもまぁ、言ってる事はわからなくは無いわ。
あるんじゃない?人格」
提督「そこでカントが言ってるのさ。
モノが、その特性においてのみ価値が評価されるのに対して、人格はそのものに掛け替えの無い価値があると」
足柄「……はぁ?てかさっきから誰?」
提督「ふむ……
兵器は変えがきく物だ。だが、艦娘はそうじゃないな。
足柄は2人も居ない。
そうだろ?」
足柄「……まぁ、あたしが2人も居るわけ無いわよね」
提督「まずその時点でお前達は兵器と異なる、と俺は考える。
人格の有無が条件であって、そこに出自は関係無い。
大体、人間も人間から発生する」
じゃあ、やっぱり人間の道具、じゃないのかしら」
提督「……例えばーー
ロックは人格を、理性的で、自我があり、思考する知能を持つ存在と定義した。
その意味では、お前たちには人格があるとは思わないか?」
足柄「何……?岩……?
……でもまぁ、言ってる事はわからなくは無いわ。
あるんじゃない?人格」
提督「そこでカントが言ってるのさ。
モノが、その特性においてのみ価値が評価されるのに対して、人格はそのものに掛け替えの無い価値があると」
足柄「……はぁ?てかさっきから誰?」
提督「ふむ……
兵器は変えがきく物だ。だが、艦娘はそうじゃないな。
足柄は2人も居ない。
そうだろ?」
足柄「……まぁ、あたしが2人も居るわけ無いわよね」
提督「まずその時点でお前達は兵器と異なる、と俺は考える。
人格の有無が条件であって、そこに出自は関係無い。
大体、人間も人間から発生する」
899: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/18(木) 21:35:41.08 ID:TF1bkh/10
足柄「なるほど……?」
提督「ならば、艦娘が人間に作られたから云々なんてのは、人間に都合の良いバイアスでしかない。
自分達が兵器であると、艦娘は人間によって信じ込まされている訳だ。
……まさに偽りの知識だな」
語り終え、ふぅ、と溜息をつく。
足柄「……そっか……」
足柄は、何か思うところがあるのか、黙り込んで考えていた。
その足柄に、言う。
提督「ーーで、だ。
これまでの話を鵜呑みにするようでは、いかんぞ」
足柄「はい……?」
提督「俺の持論が真理であると、誰が保証した?
そもそも、難解な言葉を多用して事実を湾曲してるんじゃないか?
俺の持論こそが偽りの知識である可能性もあるんじゃないのか?」
足柄「えぇ……ややこしいわね……」
提督「ややこしいからと、考えるのを止めるなよ。
考えて、自分で判断するんだ」
足柄「……あなたの言う事を信じてはダメなの?」
提督「ハッ!もっと用心しろ、足柄。
俺は確かにお前達を愛しているが……
俺もまた、薄汚く、愚かな人間の一人だと言う事を忘れるな」
足柄「っ……」
提督「明らかな事は、艦娘は生きていて、思考できると言う事だけだ。
万象を疑え、足柄」
提督「ならば、艦娘が人間に作られたから云々なんてのは、人間に都合の良いバイアスでしかない。
自分達が兵器であると、艦娘は人間によって信じ込まされている訳だ。
……まさに偽りの知識だな」
語り終え、ふぅ、と溜息をつく。
足柄「……そっか……」
足柄は、何か思うところがあるのか、黙り込んで考えていた。
その足柄に、言う。
提督「ーーで、だ。
これまでの話を鵜呑みにするようでは、いかんぞ」
足柄「はい……?」
提督「俺の持論が真理であると、誰が保証した?
そもそも、難解な言葉を多用して事実を湾曲してるんじゃないか?
俺の持論こそが偽りの知識である可能性もあるんじゃないのか?」
足柄「えぇ……ややこしいわね……」
提督「ややこしいからと、考えるのを止めるなよ。
考えて、自分で判断するんだ」
足柄「……あなたの言う事を信じてはダメなの?」
提督「ハッ!もっと用心しろ、足柄。
俺は確かにお前達を愛しているが……
俺もまた、薄汚く、愚かな人間の一人だと言う事を忘れるな」
足柄「っ……」
提督「明らかな事は、艦娘は生きていて、思考できると言う事だけだ。
万象を疑え、足柄」
916: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/21(日) 21:42:52.04 ID:LwjWlo6m0
足柄がなんと言おうかと迷っていた時。
コンコン!とやや荒っぽいノックの音。
提督「入れ」
ガチャ、と言う音とともに入室してきたのは、はぁはぁと荒い息をした榛名。
全身汚れて、顎からは汗が滴っている。
榛名「て、提督……良かった……」
提督を見るなり、泣きそうな顔になる。
提督「どうした?何かあったか?」
榛名「よ、夜風に当たると仰っていたので……
起きたら提督が居らっしゃらなくて……心配で……
どこかで動けなくなっているんじゃないかと……
島を一周してきました……」
コンコン!とやや荒っぽいノックの音。
提督「入れ」
ガチャ、と言う音とともに入室してきたのは、はぁはぁと荒い息をした榛名。
全身汚れて、顎からは汗が滴っている。
榛名「て、提督……良かった……」
提督を見るなり、泣きそうな顔になる。
提督「どうした?何かあったか?」
榛名「よ、夜風に当たると仰っていたので……
起きたら提督が居らっしゃらなくて……心配で……
どこかで動けなくなっているんじゃないかと……
島を一周してきました……」
917: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/21(日) 21:43:37.94 ID:LwjWlo6m0
提督「それは……すまない。
気を遣わせたく無かったんだ」
榛名「いえ、提督がご無事でしたら……榛名は大丈夫です……」
ふっ、と息を整えてから笑顔を見せる。
足柄「それで一人だけ居なかったのね」
榛名「ぁ……足柄さん……」
足柄「良い子ねぇ……でも、今度からは最初に執務室を確認なさいね」
榛名「本当にその通りですね……
まだ酔ってたみたいです……」
提督「いや、本当に申し訳ない……
心配をかけたな。ありがとう、榛名」
提督は榛名に近寄ると、ハンカチで額の汗を拭いてやりながら言う。
榛名「はいっ」
くすぐったそうに身を捩る榛名。
そんな二人の様子をぼーっと眺める足柄。
提督「これだけでは気持ち悪かろう。
風呂に入って来ると良い」
ハンカチをしまいながら提督は言った。
気を遣わせたく無かったんだ」
榛名「いえ、提督がご無事でしたら……榛名は大丈夫です……」
ふっ、と息を整えてから笑顔を見せる。
足柄「それで一人だけ居なかったのね」
榛名「ぁ……足柄さん……」
足柄「良い子ねぇ……でも、今度からは最初に執務室を確認なさいね」
榛名「本当にその通りですね……
まだ酔ってたみたいです……」
提督「いや、本当に申し訳ない……
心配をかけたな。ありがとう、榛名」
提督は榛名に近寄ると、ハンカチで額の汗を拭いてやりながら言う。
榛名「はいっ」
くすぐったそうに身を捩る榛名。
そんな二人の様子をぼーっと眺める足柄。
提督「これだけでは気持ち悪かろう。
風呂に入って来ると良い」
ハンカチをしまいながら提督は言った。
918: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/21(日) 21:44:25.92 ID:LwjWlo6m0
提督「……待てよ……不知火は清掃を嫌がる傾向があった。
シャワーで済ませて、湯を抜いてそうだな」
榛名「榛名はシャワーでも大丈夫ですよ?」
提督「そうか?……うーむ。
やっぱり、今から軽く掃除して来ようか。
鳳翔や雷も寝てるだろうし、後で慌てさせるのも忍びないな……
ズボラな不知火の事だ。他の家事も溜まっていそうだしなぁ」
榛名「お手伝いしましょう!」
足柄「しゃーなしよ、しゃーなし」
提督「いや、お前達はここで休んでいろ。酔ってるからな。
俺がちゃちゃっと済ませて来る」
そう言って出て行こうとして。
提督「……榛名は汗で寒いか。
着替えは……あー……もう風呂入るしなぁ……
とりあえず……」
自分の部屋に入ると、シャツとカッターと毛布を取り出し、榛名に手渡した。
シャワーで済ませて、湯を抜いてそうだな」
榛名「榛名はシャワーでも大丈夫ですよ?」
提督「そうか?……うーむ。
やっぱり、今から軽く掃除して来ようか。
鳳翔や雷も寝てるだろうし、後で慌てさせるのも忍びないな……
ズボラな不知火の事だ。他の家事も溜まっていそうだしなぁ」
榛名「お手伝いしましょう!」
足柄「しゃーなしよ、しゃーなし」
提督「いや、お前達はここで休んでいろ。酔ってるからな。
俺がちゃちゃっと済ませて来る」
そう言って出て行こうとして。
提督「……榛名は汗で寒いか。
着替えは……あー……もう風呂入るしなぁ……
とりあえず……」
自分の部屋に入ると、シャツとカッターと毛布を取り出し、榛名に手渡した。
919: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/21(日) 21:44:56.41 ID:LwjWlo6m0
榛名「え……」
提督「男物ですまないが……寒ければ着替えておけ。
どうせすぐ風呂だし、我慢してほしい。下は毛布でな。
汚してくれて構わんよ」
榛名「は、はいぃ……!」
提督「濡れた服は椅子にでも掛けておけ。後で洗濯する。
……じゃあ、行ってくるな」
足柄「行ってらぁ」
榛名は提督を見送った後、衣類をぎゅっと抱き締め、顔をうずめる。
足柄「……あの人仕事中じゃなかったのかしら……
まぁあたしが言えたことじゃ無いけど……
ねぇ、榛名?ーー」
少し呆れ気味の足柄が榛名の方へ振り返るとーー
榛名「えへへぇ」
既にシャツを着て、毛布にくるまっている榛名が居た。
足柄「……早っ!」
提督「男物ですまないが……寒ければ着替えておけ。
どうせすぐ風呂だし、我慢してほしい。下は毛布でな。
汚してくれて構わんよ」
榛名「は、はいぃ……!」
提督「濡れた服は椅子にでも掛けておけ。後で洗濯する。
……じゃあ、行ってくるな」
足柄「行ってらぁ」
榛名は提督を見送った後、衣類をぎゅっと抱き締め、顔をうずめる。
足柄「……あの人仕事中じゃなかったのかしら……
まぁあたしが言えたことじゃ無いけど……
ねぇ、榛名?ーー」
少し呆れ気味の足柄が榛名の方へ振り返るとーー
榛名「えへへぇ」
既にシャツを着て、毛布にくるまっている榛名が居た。
足柄「……早っ!」
920: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/21(日) 21:46:37.59 ID:LwjWlo6m0
榛名「……すんすん……いい匂い……」
足柄「ちょっと止めなさいよ……
同じ洗剤使ってんだから同じ匂いの筈でしょ……
違ったらそれ提督臭よ」
榛名「提督臭……素敵です……」
足柄「ちょっとドン引きなんだけど……」
榛名「ふへへ」
足柄「……あんた、遠慮が無くなったわよね。前に比べて、さ」
榛名「そ、そうですか?すいません……」
足柄「悪い意味じゃないわ。本土に行ってから。
提督にとても懐っこくなったというか」
榛名「……むむぅ、自分では自覚が無いのですが……」
足柄「そう?
自信も信頼も得て、演習でも暴走せず……
大した成長よね」
足柄「ちょっと止めなさいよ……
同じ洗剤使ってんだから同じ匂いの筈でしょ……
違ったらそれ提督臭よ」
榛名「提督臭……素敵です……」
足柄「ちょっとドン引きなんだけど……」
榛名「ふへへ」
足柄「……あんた、遠慮が無くなったわよね。前に比べて、さ」
榛名「そ、そうですか?すいません……」
足柄「悪い意味じゃないわ。本土に行ってから。
提督にとても懐っこくなったというか」
榛名「……むむぅ、自分では自覚が無いのですが……」
足柄「そう?
自信も信頼も得て、演習でも暴走せず……
大した成長よね」
921: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/21(日) 21:47:08.51 ID:LwjWlo6m0
榛名「ぬぅ……そう言われてみるとなんだか自分が凄く成長した気がしますね」
足柄「したわよー。最初はあなた、提督と会おうとすらしなかったじゃないの」
榛名「そう言えばそんな事も……懐かしいですねぇ」
足柄(本当に……あの頃は私が榛名をなんとかしないとって思ってたけど……
今や榛名はおろか、あたしまで世話になってるしねぇ……)
榛名「ふわぁ……榛名、提督が見つかって安心したら……
だんだん眠くなってきちゃいました……」
足柄「ちょっと……風呂入ってからになさいよ……」
榛名「提督の……香りが……いっぱい……」……zzz
足柄「……ちょっと」
足柄「したわよー。最初はあなた、提督と会おうとすらしなかったじゃないの」
榛名「そう言えばそんな事も……懐かしいですねぇ」
足柄(本当に……あの頃は私が榛名をなんとかしないとって思ってたけど……
今や榛名はおろか、あたしまで世話になってるしねぇ……)
榛名「ふわぁ……榛名、提督が見つかって安心したら……
だんだん眠くなってきちゃいました……」
足柄「ちょっと……風呂入ってからになさいよ……」
榛名「提督の……香りが……いっぱい……」……zzz
足柄「……ちょっと」
922: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/21(日) 21:48:01.40 ID:LwjWlo6m0
………
……
…
数十分後……
提督「……こうなるか……」
湯を張った提督が執務室に戻ると、ソファですやすやと眠る艦娘が2人。
しかし、ソファは2人が眠るには少し狭く、どこか寝苦しそう。
仕方ない、と提督。
彼はくるりと丸まって抱き上げ易い榛名を、そっと自分のベッドへと運んだ。
そして、静かに降ろそうとした時。
榛名「ん……ていとく?」
提督「……起こしたか。すまない」
榛名が薄っすらと目を開ける。
……
…
数十分後……
提督「……こうなるか……」
湯を張った提督が執務室に戻ると、ソファですやすやと眠る艦娘が2人。
しかし、ソファは2人が眠るには少し狭く、どこか寝苦しそう。
仕方ない、と提督。
彼はくるりと丸まって抱き上げ易い榛名を、そっと自分のベッドへと運んだ。
そして、静かに降ろそうとした時。
榛名「ん……ていとく?」
提督「……起こしたか。すまない」
榛名が薄っすらと目を開ける。
923: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/21(日) 21:48:47.30 ID:LwjWlo6m0
榛名「……わぁ……お姫様みたいです……」
お姫様抱っこされ、えへへ、とあどけなく笑う彼女は、どこかフワフワとしている。
完全に覚醒しておらず、夢見心地なのかも知れない。
榛名「……ていとく……
榛名は……がんばりました……」
眠そうに、ポツポツと言葉を紡ぐ。
提督「……そうだな。お前はよくやった」
榛名「ちゃんと……手加減もしましたよ……」
提督「ああ。偉いぞ、榛名」
お姫様抱っこされ、えへへ、とあどけなく笑う彼女は、どこかフワフワとしている。
完全に覚醒しておらず、夢見心地なのかも知れない。
榛名「……ていとく……
榛名は……がんばりました……」
眠そうに、ポツポツと言葉を紡ぐ。
提督「……そうだな。お前はよくやった」
榛名「ちゃんと……手加減もしましたよ……」
提督「ああ。偉いぞ、榛名」
924: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/21(日) 21:50:11.06 ID:LwjWlo6m0
榛名「えへへ……
榛名に……ごほうびを……ください……」
提督「何が良い」
榛名「ちゅー……しましょう……」
提督「何を言っとるんだ、この酔っ払いめ……」
榛名「ふぇ……冗談ですよぅ……
……提督、撫でて、下さい……」
それならば、と。
提督は優しく、頭を撫でる。
榛名「……んぅ……」
榛名はとても満足気だ。
瞳を閉じて、されるがままにしている。
榛名は身をよじることも無く。
提督もただ、撫でるのみ。
静寂の中、長い髪を梳く音だけが空間を支配する。
榛名は幸せだった。
榛名に……ごほうびを……ください……」
提督「何が良い」
榛名「ちゅー……しましょう……」
提督「何を言っとるんだ、この酔っ払いめ……」
榛名「ふぇ……冗談ですよぅ……
……提督、撫でて、下さい……」
それならば、と。
提督は優しく、頭を撫でる。
榛名「……んぅ……」
榛名はとても満足気だ。
瞳を閉じて、されるがままにしている。
榛名は身をよじることも無く。
提督もただ、撫でるのみ。
静寂の中、長い髪を梳く音だけが空間を支配する。
榛名は幸せだった。
925: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/21(日) 21:50:43.92 ID:LwjWlo6m0
それから、どれくらい撫でていただろうか。
気付けば榛名は安らかな寝息を立てているように見えた。
提督「……眠ったか」
そう判断し、榛名のそばを離れようとした時。
グッと上着の裾を掴まれる。
榛名「……ていとく……?」
提督「……ああ。まだ起きていたか」
榛名「……榛名は二人倒したので……
もう一つ……ご褒美を……下さい……」
目は瞑ったままに、もにゅもにゅと喋る。
既に意識を半分手放しているようで、提督の言葉には反応を見せない。
気付けば榛名は安らかな寝息を立てているように見えた。
提督「……眠ったか」
そう判断し、榛名のそばを離れようとした時。
グッと上着の裾を掴まれる。
榛名「……ていとく……?」
提督「……ああ。まだ起きていたか」
榛名「……榛名は二人倒したので……
もう一つ……ご褒美を……下さい……」
目は瞑ったままに、もにゅもにゅと喋る。
既に意識を半分手放しているようで、提督の言葉には反応を見せない。
926: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/21(日) 21:51:24.01 ID:LwjWlo6m0
提督「……欲張りなお姫様だな。
なんだ、言ってみろ」
苦笑しながら提督は応じた。
榛名「榛名を……ずっとお側に……置いて下さい……
大事にして下さいとは……言いません……
せめて……あなたの……道具として……榛名は……」
提督「ーー」
榛名「それが無理なら……あなたの艦娘のまま……榛名を……榛名を……はる、な……を……」
裾を掴んでいた榛名の力が抜ける。
今度は本当に寝てしまったようだ。
すぅ、すぅ……と穏やかな呼吸音が聞こえる。
もう一度、提督は榛名を撫でた。
提督「そうか……お前は……
……ダメかもしれんな」
なんだ、言ってみろ」
苦笑しながら提督は応じた。
榛名「榛名を……ずっとお側に……置いて下さい……
大事にして下さいとは……言いません……
せめて……あなたの……道具として……榛名は……」
提督「ーー」
榛名「それが無理なら……あなたの艦娘のまま……榛名を……榛名を……はる、な……を……」
裾を掴んでいた榛名の力が抜ける。
今度は本当に寝てしまったようだ。
すぅ、すぅ……と穏やかな呼吸音が聞こえる。
もう一度、提督は榛名を撫でた。
提督「そうか……お前は……
……ダメかもしれんな」
927: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/21(日) 21:52:11.32 ID:LwjWlo6m0
そう呟く提督の表情はどこか、哀しくて。
提督「……お前も俺と、行くか……?」
そう続けた時。
提督には、榛名の首が縦に、僅かだけ動いたように見えた。
それは果たして偶然か、提督が見た夢か。
提督「馬鹿な奴だよ……お前も俺も……」
最後にひと撫ですると。
返答の代わりに、榛名の額へ口づけをして。
提督「……今は夢を見ていろ、榛名……」
唇にキスをしては、目が覚めてしまうから。
提督「……お前も俺と、行くか……?」
そう続けた時。
提督には、榛名の首が縦に、僅かだけ動いたように見えた。
それは果たして偶然か、提督が見た夢か。
提督「馬鹿な奴だよ……お前も俺も……」
最後にひと撫ですると。
返答の代わりに、榛名の額へ口づけをして。
提督「……今は夢を見ていろ、榛名……」
唇にキスをしては、目が覚めてしまうから。
944: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/22(月) 21:20:15.60 ID:6ZFuBPk00
提督が自室から執務室に戻ると、ソファで眠る足柄が小さく縮こまっていた。
提督「お前も寒いのか……」
毛布やらを掛けてやりたいが、取り出すと余計な物音がする。
明日も早い。起こしたくはない。
仕方なく、提督は着ていた上着を脱ぎ、足柄にかけてやった。
提督「さて……俺は食堂にでも行くか……
やれやれ……何のために掃除したんだか……」
提督「お前も寒いのか……」
毛布やらを掛けてやりたいが、取り出すと余計な物音がする。
明日も早い。起こしたくはない。
仕方なく、提督は着ていた上着を脱ぎ、足柄にかけてやった。
提督「さて……俺は食堂にでも行くか……
やれやれ……何のために掃除したんだか……」
945: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/22(月) 21:26:49.61 ID:6ZFuBPk00
食堂
提督「っと……鳳翔」
鳳翔「あら、おかえりなさい」
提督が食堂へ向かうと、鳳翔が一人で酒を飲んでいた。
提督「……起きてたのか?寝ていたと聞いたが」
鳳翔「いえ……物音で目が覚めました」
提督「……そうか」
鳳翔の物腰は穏やかだが、頬がかなり上気しており、相当に酔っていることは側から見て明らかである。
提督「少し飲み過ぎじゃないか?」
提督は鳳翔の隣に座りながら尋ねる。
そこ以外の場所は、潰れた不知火らによって占拠されていた。
鳳翔「うふふ。迎え酒ですよ、迎え酒……
目が覚めたら、頭が痛くって……」
提督「っと……鳳翔」
鳳翔「あら、おかえりなさい」
提督が食堂へ向かうと、鳳翔が一人で酒を飲んでいた。
提督「……起きてたのか?寝ていたと聞いたが」
鳳翔「いえ……物音で目が覚めました」
提督「……そうか」
鳳翔の物腰は穏やかだが、頬がかなり上気しており、相当に酔っていることは側から見て明らかである。
提督「少し飲み過ぎじゃないか?」
提督は鳳翔の隣に座りながら尋ねる。
そこ以外の場所は、潰れた不知火らによって占拠されていた。
鳳翔「うふふ。迎え酒ですよ、迎え酒……
目が覚めたら、頭が痛くって……」
946: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/22(月) 21:27:31.57 ID:6ZFuBPk00
提督「やっぱり飲み過ぎじゃないか」
呆れ気味の提督。
鳳翔「もう。
私は提督を待っていたのですよ?
なのにいつまでもお帰りにならないものですから……」
提督の態度に、鳳翔はぷりぷりとした。
提督「……そうか。すまないな……
2日も基地を空けると、仕事が溜まって溜まって、な」
鳳翔「あら?……嘘はいけませんよ?
夜風に吹かれてくるとは何だったのでしょうか」
提督「……そういえば、そうだった。
すまない」
墓穴を掘り、バツの悪そうな顔をする提督に、鳳翔はふらふらと寄り掛かる。
提督「おいおい、しっかりしてくれ……」
鳳翔「あら、ごめんなさい」
と言いつつも、姿勢はそのままで。
提督の鼻腔をアルコールと……何か、懐かしい匂いがくすぐる。
その匂いはなんだったか、と思案する提督に、鳳翔は起き上がって酒瓶を差し出した。
呆れ気味の提督。
鳳翔「もう。
私は提督を待っていたのですよ?
なのにいつまでもお帰りにならないものですから……」
提督の態度に、鳳翔はぷりぷりとした。
提督「……そうか。すまないな……
2日も基地を空けると、仕事が溜まって溜まって、な」
鳳翔「あら?……嘘はいけませんよ?
夜風に吹かれてくるとは何だったのでしょうか」
提督「……そういえば、そうだった。
すまない」
墓穴を掘り、バツの悪そうな顔をする提督に、鳳翔はふらふらと寄り掛かる。
提督「おいおい、しっかりしてくれ……」
鳳翔「あら、ごめんなさい」
と言いつつも、姿勢はそのままで。
提督の鼻腔をアルコールと……何か、懐かしい匂いがくすぐる。
その匂いはなんだったか、と思案する提督に、鳳翔は起き上がって酒瓶を差し出した。
947: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/22(月) 21:28:22.17 ID:6ZFuBPk00
鳳翔「提督も、如何ですか?」
提督「……いただこう」
鳳翔「どうぞ……」
トクトクと注ぐ鳳翔の手つきは危なっかしい。
提督は見ていられなくて、すっと手を添える。
鳳翔「あら……すみません」
その後、鳳翔は自分の杯にも酒を継ぎ足し。
鳳翔「乾杯、しましょう?」
提督は無言で杯を持ち上げ。
「乾杯」
チン、と軽く鳴らし。
そのまま無言でそれを口にする。
提督「冷燗か……旨いが……
迎え酒に選ぶものでは無いな」
鳳翔「この酒は……冷やして飲むものです。
美味しければ……それで良いではありませんか」
提督「刹那的だな。お前はもっと堅実だと思っていたが」
鳳翔「堅実……堅実ですね。そう、いつもは堅実なんです。
今日は違いますよ、うふふ……」
からころと笑って、鳳翔は再び提督にもたれかかった。
提督「……そういえば、前も酔った時に甘えてきたな」
その鳳翔の髪を弄りつつ、話しかける。
提督「……いただこう」
鳳翔「どうぞ……」
トクトクと注ぐ鳳翔の手つきは危なっかしい。
提督は見ていられなくて、すっと手を添える。
鳳翔「あら……すみません」
その後、鳳翔は自分の杯にも酒を継ぎ足し。
鳳翔「乾杯、しましょう?」
提督は無言で杯を持ち上げ。
「乾杯」
チン、と軽く鳴らし。
そのまま無言でそれを口にする。
提督「冷燗か……旨いが……
迎え酒に選ぶものでは無いな」
鳳翔「この酒は……冷やして飲むものです。
美味しければ……それで良いではありませんか」
提督「刹那的だな。お前はもっと堅実だと思っていたが」
鳳翔「堅実……堅実ですね。そう、いつもは堅実なんです。
今日は違いますよ、うふふ……」
からころと笑って、鳳翔は再び提督にもたれかかった。
提督「……そういえば、前も酔った時に甘えてきたな」
その鳳翔の髪を弄りつつ、話しかける。
948: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/22(月) 21:28:59.80 ID:6ZFuBPk00
鳳翔「そうでしたか?……そうでしたね」
提督「お前、実は酒癖が悪いんじゃないのか?」
その問いに対し、鳳翔はじっと提督の瞳を見つめながら答えた。
鳳翔「……それは、勘違いですよ」
提督「……なんのことだ?」
鳳翔が、妖艶に、微笑む。
鳳翔「甘えたいから、酔ってるのーー」
酔ってるから、甘えてるんじゃ無いわ。
それはもう、あなたは特別な人だと言っているような物で。
紅に染まった頬が、少し乱れた髪が、潤んだ瞳をあでやかに演出して。
魅惑的な言の葉を紡ぐ唇が、提督を視覚的にも誘惑する。
提督「お前、実は酒癖が悪いんじゃないのか?」
その問いに対し、鳳翔はじっと提督の瞳を見つめながら答えた。
鳳翔「……それは、勘違いですよ」
提督「……なんのことだ?」
鳳翔が、妖艶に、微笑む。
鳳翔「甘えたいから、酔ってるのーー」
酔ってるから、甘えてるんじゃ無いわ。
それはもう、あなたは特別な人だと言っているような物で。
紅に染まった頬が、少し乱れた髪が、潤んだ瞳をあでやかに演出して。
魅惑的な言の葉を紡ぐ唇が、提督を視覚的にも誘惑する。
949: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/22(月) 21:29:37.65 ID:6ZFuBPk00
提督「そいつは……弱ったな……」
提督は跳ね上がった心拍数を隠して平穏を装い。
鳳翔「うふふ」
鳳翔は目を伏せて、また提督に身を預けた。
鳳翔「……?」すんすん
そこで、鳳翔が不審そうな顔を顔をしながら提督の匂いを嗅ぐ。
提督「な、なんだ?」
鳳翔「……榛名さんと足柄さんの匂いがします……
お仕事をなさっていたのではないのですか……?」
じとーっとした視線を向けられて、たじたじになる提督。
提督「し、してたさ……
そしたら向こうからやって来たんだよ」
鳳翔「ふゥん……そうですか」
鳳翔はどこか不満げだ。
鳳翔「……榛名さんや足柄さん達には……華があって羨ましいです……」
提督は跳ね上がった心拍数を隠して平穏を装い。
鳳翔「うふふ」
鳳翔は目を伏せて、また提督に身を預けた。
鳳翔「……?」すんすん
そこで、鳳翔が不審そうな顔を顔をしながら提督の匂いを嗅ぐ。
提督「な、なんだ?」
鳳翔「……榛名さんと足柄さんの匂いがします……
お仕事をなさっていたのではないのですか……?」
じとーっとした視線を向けられて、たじたじになる提督。
提督「し、してたさ……
そしたら向こうからやって来たんだよ」
鳳翔「ふゥん……そうですか」
鳳翔はどこか不満げだ。
鳳翔「……榛名さんや足柄さん達には……華があって羨ましいです……」
950: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/22(月) 21:30:18.63 ID:6ZFuBPk00
その台詞に。
提督「っ……」
『私には……
華が……ありませんから……』
唐突にフラッシュバックする、記憶。
提督「……そ、うは言うが……鳳翔。
今日はまさにお前が我等の華だったではないか」
鳳翔「……あれは提督の教示あってこそですよ……私の実力では……というか、」
提督「ーー司令をよく理解し、きちんと遂行出来るのは艦娘の実力だ。
お前は実によくやってくれたよ」
鳳翔「……そう、言っていただけるのはとても嬉しいですし、勝てたのも、とても嬉しかったです。
ただ、地力では……」
『嬉しい……』
提督「……あれだけの大勝でも、きちんと反省しているお前なら……
いつか、翔鶴を軽く追い抜くさ」
鳳翔「そ、そうですか……?
……と言うより!
それとこれとは話が別ですっ。
おだててもいけませんよ、提督。
今は戦いの話では無くてーー」
『ーーいけませんよ、提督?』
提督(っ……)
提督「っ……」
『私には……
華が……ありませんから……』
唐突にフラッシュバックする、記憶。
提督「……そ、うは言うが……鳳翔。
今日はまさにお前が我等の華だったではないか」
鳳翔「……あれは提督の教示あってこそですよ……私の実力では……というか、」
提督「ーー司令をよく理解し、きちんと遂行出来るのは艦娘の実力だ。
お前は実によくやってくれたよ」
鳳翔「……そう、言っていただけるのはとても嬉しいですし、勝てたのも、とても嬉しかったです。
ただ、地力では……」
『嬉しい……』
提督「……あれだけの大勝でも、きちんと反省しているお前なら……
いつか、翔鶴を軽く追い抜くさ」
鳳翔「そ、そうですか……?
……と言うより!
それとこれとは話が別ですっ。
おだててもいけませんよ、提督。
今は戦いの話では無くてーー」
『ーーいけませんよ、提督?』
提督(っ……)
951: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/22(月) 21:31:34.21 ID:6ZFuBPk00
鳳翔「ーーもう、提督?
聞いてらっしゃるんですか?」
提督の意識が一瞬別の所へ行っている間に、また鳳翔がぷりぷりし始めた。
提督「あ、ああ、すまんすまん……聞いてるよ」
鳳翔「いいですっ。
どうせ普段の私には華がありませんよぅ……」
そう言っていじけてしまう。
提督「そんな事は無い、鳳翔」
鳳翔「……」
鳳翔はムスッとしたままだ。
そんな鳳翔の様子を見て、提督は思わずクスリと笑ってしまう。
鳳翔「む。……笑いましたね」
鳳翔が口を尖らせた。
提督「すまない。……可愛らしくてな、つい」
鳳翔「な、にを……」
顔をますます朱に染めて、鳳翔はそっぽを向いてしまった。
聞いてらっしゃるんですか?」
提督の意識が一瞬別の所へ行っている間に、また鳳翔がぷりぷりし始めた。
提督「あ、ああ、すまんすまん……聞いてるよ」
鳳翔「いいですっ。
どうせ普段の私には華がありませんよぅ……」
そう言っていじけてしまう。
提督「そんな事は無い、鳳翔」
鳳翔「……」
鳳翔はムスッとしたままだ。
そんな鳳翔の様子を見て、提督は思わずクスリと笑ってしまう。
鳳翔「む。……笑いましたね」
鳳翔が口を尖らせた。
提督「すまない。……可愛らしくてな、つい」
鳳翔「な、にを……」
顔をますます朱に染めて、鳳翔はそっぽを向いてしまった。
952: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/22(月) 21:32:03.59 ID:6ZFuBPk00
提督「そもそも、華とは随分抽象的じゃないか。
なんだ、派手さか?」
鳳翔「それは……こう……魅力と言うのですか?
……ニュアンスで理解してくださいっ」
提督「お前はまさか、自分に魅力が無いと思うのか?」
鳳翔「……だったら何ですか」
提督「ふーむ……
確かに、足柄や榛名には魅力がある。
だが、魅力を感じるのはお前の瞳だ」
鳳翔「……?」
提督「……俺の瞳には、お前も十分魅力的に映っているという事さ。
……言わせるな、恥ずかしい……
ああ、俺も酔っているようだ……」
鳳翔「……もう……適当な事ばかり仰るんですから……」
そう言いつつも。
鳳翔は唇を舐める。
付着した透明な唾液が、艶めかしく光った。
鳳翔「ーー本気に、しますよ?」
なんだ、派手さか?」
鳳翔「それは……こう……魅力と言うのですか?
……ニュアンスで理解してくださいっ」
提督「お前はまさか、自分に魅力が無いと思うのか?」
鳳翔「……だったら何ですか」
提督「ふーむ……
確かに、足柄や榛名には魅力がある。
だが、魅力を感じるのはお前の瞳だ」
鳳翔「……?」
提督「……俺の瞳には、お前も十分魅力的に映っているという事さ。
……言わせるな、恥ずかしい……
ああ、俺も酔っているようだ……」
鳳翔「……もう……適当な事ばかり仰るんですから……」
そう言いつつも。
鳳翔は唇を舐める。
付着した透明な唾液が、艶めかしく光った。
鳳翔「ーー本気に、しますよ?」
953: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/22(月) 21:32:59.08 ID:6ZFuBPk00
提督「……ふ、夜中に物事を判断するのは止せ。
朝になってから後悔するぞ」
鳳翔「しませんよ?きっと……」
不敵な笑みを浮かべ、見つめ合う事数分。
鳳翔が眠気を堪えきれずに欠伸した。
鳳翔「うーん、お酒が回ってきました……」
そして、提督にもたれかかったまま、目を閉じてしまう。
提督「おいおい……風邪をひくぞ……」
鳳翔「良いんです……
あたたかい、ですから……」
提督「やれやれ……」
鳳翔を受け止めつつ、提督は杯を傾ける。
朝になってから後悔するぞ」
鳳翔「しませんよ?きっと……」
不敵な笑みを浮かべ、見つめ合う事数分。
鳳翔が眠気を堪えきれずに欠伸した。
鳳翔「うーん、お酒が回ってきました……」
そして、提督にもたれかかったまま、目を閉じてしまう。
提督「おいおい……風邪をひくぞ……」
鳳翔「良いんです……
あたたかい、ですから……」
提督「やれやれ……」
鳳翔を受け止めつつ、提督は杯を傾ける。
954: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/22(月) 21:33:25.29 ID:6ZFuBPk00
鳳翔「提督?」
提督「なんだ?」
鳳翔「……私、待ってたんですからね……」
提督「……ああ、すまない」
鳳翔「……提督?」
提督「どうした」
鳳翔「……呼んでみただけです」
提督「……この酔っ払いめ」
鳳翔「うふふ」
鳳翔「…………提督?」
提督「んー?」
鳳翔「おやすみ、なさい……提督……」
提督「……ああ……おやすみ、鳳翔」
しばらくして。
聞こえるのは、スー……スー……という穏やかな寝息。
肩にかかる重さが心地よい。
提督「……俺も眠くなってきたな……」
くぁ、と提督の欠伸。
提督「今日は……色々あったな……
勝って、話して……思い出して」
チラリと鳳翔を見る。
提督「やはり……愉しい……時間だ……」
そして、目を瞑る。
夢の中へ、沈んでいく。
提督「なんだ?」
鳳翔「……私、待ってたんですからね……」
提督「……ああ、すまない」
鳳翔「……提督?」
提督「どうした」
鳳翔「……呼んでみただけです」
提督「……この酔っ払いめ」
鳳翔「うふふ」
鳳翔「…………提督?」
提督「んー?」
鳳翔「おやすみ、なさい……提督……」
提督「……ああ……おやすみ、鳳翔」
しばらくして。
聞こえるのは、スー……スー……という穏やかな寝息。
肩にかかる重さが心地よい。
提督「……俺も眠くなってきたな……」
くぁ、と提督の欠伸。
提督「今日は……色々あったな……
勝って、話して……思い出して」
チラリと鳳翔を見る。
提督「やはり……愉しい……時間だ……」
そして、目を瞑る。
夢の中へ、沈んでいく。
977: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/29(月) 23:54:46.14 ID:3mslNw6q0
月夜に。
女性がピアノを弾いていた。
その十指は鍵盤の上を情熱的に駆け回り、音を飛ばす。
奏でる旋律は攻撃的で、心休まることがなく。
それはどちらかというと、選曲よりも演奏に起因していた。
静かな、しかし獰猛な笑みを浮かべながら鍵盤を叩く。
まるで、己の実力を誇示するかのような演奏。
そんな彼女を、無言で見守る影があった。
曲を一つ終えた時、その影に女性は気付き、話し掛ける。
赤城『……提督?いつからいらしたのですか?』
振り返り、不敵な笑みを浮かべる赤城。
提督『ついさっきだ。……続けてくれ。
聞きたい』
提督は持っていたグラスを傾けながら、演奏を促す。
赤城『はい……いい月夜ですし……
月光でも弾きましょうか』
先程とは打って変わって、静かな、ゆったりとした演奏が始まる。
そこには先ほどの力強さは無く。
かと言って、ただ静かである訳でも無く。
情緒的に、感情的に音符が紡がれていた。
提督は目を瞑って聞き入る。
女性がピアノを弾いていた。
その十指は鍵盤の上を情熱的に駆け回り、音を飛ばす。
奏でる旋律は攻撃的で、心休まることがなく。
それはどちらかというと、選曲よりも演奏に起因していた。
静かな、しかし獰猛な笑みを浮かべながら鍵盤を叩く。
まるで、己の実力を誇示するかのような演奏。
そんな彼女を、無言で見守る影があった。
曲を一つ終えた時、その影に女性は気付き、話し掛ける。
赤城『……提督?いつからいらしたのですか?』
振り返り、不敵な笑みを浮かべる赤城。
提督『ついさっきだ。……続けてくれ。
聞きたい』
提督は持っていたグラスを傾けながら、演奏を促す。
赤城『はい……いい月夜ですし……
月光でも弾きましょうか』
先程とは打って変わって、静かな、ゆったりとした演奏が始まる。
そこには先ほどの力強さは無く。
かと言って、ただ静かである訳でも無く。
情緒的に、感情的に音符が紡がれていた。
提督は目を瞑って聞き入る。
978: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/29(月) 23:56:15.14 ID:3mslNw6q0
重く、哀しげな第一楽章が終わり、リリカルな第二楽章に移り。
暗い雰囲気から解放されたのも束の間、暴力的な第三楽章が始まる。
そんな、二転三転する音の表情を楽しんでいる間に演奏が終わり。
拍手。
提督『良い。良かった。
物語性があったな、うん。
実に情緒的だった』
感慨深そうに言う提督に、満足気な赤城。
赤城『うふふ。良かった』
提督『随分と成長したものだ。
俺が綺羅綺羅星を教えていた頃が懐かしい』
赤城『そんな、ピアノに触って間もない頃と比べないで下さい……』
提督『それもそうか』
赤城はピアノから立ち上がり、提督の側へと歩み寄り。
赤城『それ、少しいただけますか?』
提督が片手に持ったグラスを見つめて言う。
提督『あん?これは酒だぞ?
お前、明日はーー』
提督が言い終わらない内に、赤城はひったくるようにしてグラスを奪ってしまった。
赤城『んっ……』
そのまま口をつけて、琥珀色の液体を一気に飲み干す。
提督『おまっ……』
赤城『うふふ』
提督『……明日は主張派の連中が集まる大事な演習だろう。
酒を飲んでる場合じゃないぞ……』
赤城『だからですよ。演習だから昂ぶってしまって』
暗い雰囲気から解放されたのも束の間、暴力的な第三楽章が始まる。
そんな、二転三転する音の表情を楽しんでいる間に演奏が終わり。
拍手。
提督『良い。良かった。
物語性があったな、うん。
実に情緒的だった』
感慨深そうに言う提督に、満足気な赤城。
赤城『うふふ。良かった』
提督『随分と成長したものだ。
俺が綺羅綺羅星を教えていた頃が懐かしい』
赤城『そんな、ピアノに触って間もない頃と比べないで下さい……』
提督『それもそうか』
赤城はピアノから立ち上がり、提督の側へと歩み寄り。
赤城『それ、少しいただけますか?』
提督が片手に持ったグラスを見つめて言う。
提督『あん?これは酒だぞ?
お前、明日はーー』
提督が言い終わらない内に、赤城はひったくるようにしてグラスを奪ってしまった。
赤城『んっ……』
そのまま口をつけて、琥珀色の液体を一気に飲み干す。
提督『おまっ……』
赤城『うふふ』
提督『……明日は主張派の連中が集まる大事な演習だろう。
酒を飲んでる場合じゃないぞ……』
赤城『だからですよ。演習だから昂ぶってしまって』
979: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/29(月) 23:57:20.27 ID:3mslNw6q0
提督『そういう時はホットミルクにしておけ、ホットミルクに……』
赤城『あなたがホットミルクを飲んでいたら、それが良かったんですけど』
提督『……なんて奴だ……』
赤城『あら。失礼しちゃいますね。
あなたが育てたんですよ?うふふ』
ニコニコとしている赤城に、提督は呆れて嘆息する。
赤城『ーーそもそも、私が遅れを取ることなど、あり得ません』
提督『……』
赤城『私はあなたの、最高の空母……
あなたの最高の艦娘ですよ?』
提督『早速酔ってやがる……』
赤城『うふふ。事実ですから……』
赤城は提督に更に近寄って、その腕に絡みつく。
胸を押し当てるようにして。
赤城『ね?提督?』
提督『……ん?』
赤城の吐息が提督の耳朶を撫でた。
赤城『私にはあなたが必要なんです……
あなたも、私が必要でしょう?
だからーー』
蠱惑的な笑みと共に、提督の頬へ手を添えて。
赤城『ーーもっと私を育てて……もっと私をあなた色に染め上げてーー』
囁く。
赤城『私を、あなたのモノにして下さい』
私をあなたの特別にして、と。
訴える。
見つめ合い。
やや間を置いてから。
提督『……お前はーー』
提督が何かを言おうとした時。
赤城『あなたがホットミルクを飲んでいたら、それが良かったんですけど』
提督『……なんて奴だ……』
赤城『あら。失礼しちゃいますね。
あなたが育てたんですよ?うふふ』
ニコニコとしている赤城に、提督は呆れて嘆息する。
赤城『ーーそもそも、私が遅れを取ることなど、あり得ません』
提督『……』
赤城『私はあなたの、最高の空母……
あなたの最高の艦娘ですよ?』
提督『早速酔ってやがる……』
赤城『うふふ。事実ですから……』
赤城は提督に更に近寄って、その腕に絡みつく。
胸を押し当てるようにして。
赤城『ね?提督?』
提督『……ん?』
赤城の吐息が提督の耳朶を撫でた。
赤城『私にはあなたが必要なんです……
あなたも、私が必要でしょう?
だからーー』
蠱惑的な笑みと共に、提督の頬へ手を添えて。
赤城『ーーもっと私を育てて……もっと私をあなた色に染め上げてーー』
囁く。
赤城『私を、あなたのモノにして下さい』
私をあなたの特別にして、と。
訴える。
見つめ合い。
やや間を置いてから。
提督『……お前はーー』
提督が何かを言おうとした時。
980: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/29(月) 23:59:10.88 ID:3mslNw6q0
加賀『……赤城さん?』
不機嫌そうな声と共に、加賀が現れる。
赤城『……あら。加賀さん!』
それに対し、笑顔で振り向く赤城。
赤城『……その服装は……訓練上がりですか?』
加賀『はい……少し。
赤城さんは……ピアノ、ですか』
赤城『ええ。
……ごめんなさいね。
訓練をしていると知らなくて。煩かったかしら』
加賀『いえ、そんな事は有りませんでした』
赤城『それは良かったわ。
……んー……明日も早い事だし、加賀さんと部屋に戻ろうかしら』
提督『ああ。とっとと寝ろ』
酔っ払いめ、と手のひらでしっし、と赤城を追いやる。
赤城『ああっ……いけずぅ……化けて出ますよ?』
よよよ、と泣き真似をする赤城。
提督『かかってこい』
赤城『言いましたね……枕元に立ってますからね……』
提督『ああん?布団に引きずり込むぞ』
赤城『いやらしい……』
提督『嬉しそうだな』
赤城『よ、喜んでなんかませんよ!』
不機嫌そうな声と共に、加賀が現れる。
赤城『……あら。加賀さん!』
それに対し、笑顔で振り向く赤城。
赤城『……その服装は……訓練上がりですか?』
加賀『はい……少し。
赤城さんは……ピアノ、ですか』
赤城『ええ。
……ごめんなさいね。
訓練をしていると知らなくて。煩かったかしら』
加賀『いえ、そんな事は有りませんでした』
赤城『それは良かったわ。
……んー……明日も早い事だし、加賀さんと部屋に戻ろうかしら』
提督『ああ。とっとと寝ろ』
酔っ払いめ、と手のひらでしっし、と赤城を追いやる。
赤城『ああっ……いけずぅ……化けて出ますよ?』
よよよ、と泣き真似をする赤城。
提督『かかってこい』
赤城『言いましたね……枕元に立ってますからね……』
提督『ああん?布団に引きずり込むぞ』
赤城『いやらしい……』
提督『嬉しそうだな』
赤城『よ、喜んでなんかませんよ!』
981: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/29(月) 23:59:57.84 ID:3mslNw6q0
加賀『……あのっ!』
提督『ああ、すまんすまん……ほれ、さっさと部屋に戻れ』
赤城『ごめんなさいね、加賀さん……行きましょうか』
加賀『あ、いえ……私は……』
赤城『?』
加賀『提督に少し、ご相談が……』
赤城『……あら、そうでしたか。
では、私は先に部屋に戻ってますね。
おやすみなさい、提督』
提督『おやすみ。良い夢見ろよ』
赤城『うふふ。では』
そうして赤城が去り、加賀と提督が残された。
提督『気が利かなくてすまんな』
加賀『いえ……』
提督『……で、どうした?』
加賀『……赤城さんは……多才ね……』
提督『まぁ、そうだなぁ……』
加賀『……』
提督『……なんだ、そんな顔をして』
加賀『少し。
……あの人がピアノを弾いて、書を読んで……
教養を高めている間も私は戦闘訓練を重ねて……努力、している筈なのに……』
提督『……』
加賀『それでも、私はどんどん離されていって……
もう、あの人の足元にも及ばなくなっている……情けない話ね』
自嘲気味に笑う加賀。
提督『ああ、すまんすまん……ほれ、さっさと部屋に戻れ』
赤城『ごめんなさいね、加賀さん……行きましょうか』
加賀『あ、いえ……私は……』
赤城『?』
加賀『提督に少し、ご相談が……』
赤城『……あら、そうでしたか。
では、私は先に部屋に戻ってますね。
おやすみなさい、提督』
提督『おやすみ。良い夢見ろよ』
赤城『うふふ。では』
そうして赤城が去り、加賀と提督が残された。
提督『気が利かなくてすまんな』
加賀『いえ……』
提督『……で、どうした?』
加賀『……赤城さんは……多才ね……』
提督『まぁ、そうだなぁ……』
加賀『……』
提督『……なんだ、そんな顔をして』
加賀『少し。
……あの人がピアノを弾いて、書を読んで……
教養を高めている間も私は戦闘訓練を重ねて……努力、している筈なのに……』
提督『……』
加賀『それでも、私はどんどん離されていって……
もう、あの人の足元にも及ばなくなっている……情けない話ね』
自嘲気味に笑う加賀。
982: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/30(火) 00:03:27.82 ID:bBz7du5Z0
提督『……何を、』
加賀『ーー上から圧力が、かかっているのでしょう?
空母を一隻手放せと』
提督『……何故それを?』
加賀『聞いただけよ。
……で、話と言うのは……
……私を、手放して頂戴』
提督『……何?』
加賀『……赤城さんは、あなたにとって無くてはならない人。
赤城さんにも……あなたが必要。
赤城さんが居なければ今のあなたは無かったし、あなたが居なければ、今の赤城さんも無かった』
提督『……』
加賀『……私はあなたと一番長く居るのに……
無能、だからっ……
……きっと私があなたの役に立てるのは、もうそれ位しかーー』
提督『……お前は可愛いなぁ……』
悲痛な表情と共に言葉を吐き出す加賀を、提督は優しく撫でる。
加賀『……は?』
提督『はっきり言っておくが、俺はお前を手離さんぞ』
加賀『……しかし』
提督『良い、良い。お前がそんな事を気にするな』
加賀『ーー上から圧力が、かかっているのでしょう?
空母を一隻手放せと』
提督『……何故それを?』
加賀『聞いただけよ。
……で、話と言うのは……
……私を、手放して頂戴』
提督『……何?』
加賀『……赤城さんは、あなたにとって無くてはならない人。
赤城さんにも……あなたが必要。
赤城さんが居なければ今のあなたは無かったし、あなたが居なければ、今の赤城さんも無かった』
提督『……』
加賀『……私はあなたと一番長く居るのに……
無能、だからっ……
……きっと私があなたの役に立てるのは、もうそれ位しかーー』
提督『……お前は可愛いなぁ……』
悲痛な表情と共に言葉を吐き出す加賀を、提督は優しく撫でる。
加賀『……は?』
提督『はっきり言っておくが、俺はお前を手離さんぞ』
加賀『……しかし』
提督『良い、良い。お前がそんな事を気にするな』
983: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/30(火) 00:05:27.40 ID:bBz7du5Z0
加賀『……なんで……』
提督『大事な艦娘を、何があるかわからん所へはやれん。
大体お前は勉強もまだーー』
加賀『なんで……なんなんですかっ……!』
加賀が苛立ちをブチまける。
加賀『私は弱くてっ……後から来た赤城さんに一度も勝ったこと無いしっ……
戦果だって……』
提督『……』
加賀『大体、今は戦時中なのに!
何で勉強やら教養やら……!
あなたは、私たちが兵器じゃないと言うけれど……
こんなにも差がついて、苦しむのなら……
何も思わない、兵器の方が良かったっ……!』
そんな加賀の腰をグッと抱き寄せる。
加賀『あっ……』
提督『兵器で良いワケが無いだろ』
加賀『……なに、が』
提督『俺はお前が好きだ』
加賀『ッ……』
提督『大事な艦娘を、何があるかわからん所へはやれん。
大体お前は勉強もまだーー』
加賀『なんで……なんなんですかっ……!』
加賀が苛立ちをブチまける。
加賀『私は弱くてっ……後から来た赤城さんに一度も勝ったこと無いしっ……
戦果だって……』
提督『……』
加賀『大体、今は戦時中なのに!
何で勉強やら教養やら……!
あなたは、私たちが兵器じゃないと言うけれど……
こんなにも差がついて、苦しむのなら……
何も思わない、兵器の方が良かったっ……!』
そんな加賀の腰をグッと抱き寄せる。
加賀『あっ……』
提督『兵器で良いワケが無いだろ』
加賀『……なに、が』
提督『俺はお前が好きだ』
加賀『ッ……』
984: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/30(火) 00:06:14.45 ID:bBz7du5Z0
提督『でもな、人間はそうで無い連中が大多数なんだよ。知ってるだろ?
そういう奴らは、戦争が終われば真っ先にお前達を解体するだろう』
加賀『……』
提督『負担を強いている事はわかっている。
だが、俺は戦争が終わってもお前達と共に在りたいんだ。
そうするには……戦争が終わる前に、お前達が主張するしか無い。
自分は兵器で無い、と』
加賀『……』
提督『だから俺はお前達に今、考える能力を身につけて欲しいんだ』
優しく頭を撫でる。
加賀『ぁ……』
提督『そうやって、悩んで……
人格として、お前が赤城に劣るなんて事を俺は感じないぞ』
加賀『う……でも……私は赤城さんのように……
女らしい事は何一つ出来ないし……
可愛げのない、嫌な、性格をしているわ……っ』
提督『お前のそれは真面目さだ。
美徳だよ、それは』
加賀『……美徳?』
提督『だが、真面目過ぎては生き辛い。
……来い、加賀。
うまいやり方を教えてやろう』
そう、不敵に笑って。
軽いウィンク。
ドキリと、加賀の心臓が跳ねる。
そういう奴らは、戦争が終われば真っ先にお前達を解体するだろう』
加賀『……』
提督『負担を強いている事はわかっている。
だが、俺は戦争が終わってもお前達と共に在りたいんだ。
そうするには……戦争が終わる前に、お前達が主張するしか無い。
自分は兵器で無い、と』
加賀『……』
提督『だから俺はお前達に今、考える能力を身につけて欲しいんだ』
優しく頭を撫でる。
加賀『ぁ……』
提督『そうやって、悩んで……
人格として、お前が赤城に劣るなんて事を俺は感じないぞ』
加賀『う……でも……私は赤城さんのように……
女らしい事は何一つ出来ないし……
可愛げのない、嫌な、性格をしているわ……っ』
提督『お前のそれは真面目さだ。
美徳だよ、それは』
加賀『……美徳?』
提督『だが、真面目過ぎては生き辛い。
……来い、加賀。
うまいやり方を教えてやろう』
そう、不敵に笑って。
軽いウィンク。
ドキリと、加賀の心臓が跳ねる。
985: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/30(火) 00:07:05.17 ID:bBz7du5Z0
………
……
…
「ーー……がさん?加賀さん?」
加賀「ん……ぁ……?」
瑞鶴「加賀さん、椅子で寝てたらコケて怪我するわよ」
加賀「瑞……鶴?」
瑞鶴「……久しぶりね」
加賀「……あなた、どうしてそんな身体中傷だらけで……」
瑞鶴「……ちょっと、訓練」
加賀「……まさか、あの日からずっと?」
瑞鶴「……ええ。
加賀さんは知らないかもしれないけど……
北提は、もうとっくに北へ戻ったわ。
今は龍驤と……確か瑞鳳?か誰か、新しい空母が北で警備に当たってる」
加賀「……そう」
瑞鶴「……加賀さんは?訓練?」
加賀「そうね。乙種を……」
瑞鶴「……乙種訓練って結構、ハードよね。
教官に任命されたんじゃ無かったっけ」
加賀「……そう、ね」
瑞鶴「戦場、多分出れないよね。
それでも、訓練やるんだ……」
加賀「……そうね」
瑞鶴「加賀さんも訓練、毎日?」
加賀「1日だけの訓練なんて意味が無いわ。
継続は力也って、いつも教えていたでしょう」
瑞鶴「……それは、何のためにしてるの?」
……
…
「ーー……がさん?加賀さん?」
加賀「ん……ぁ……?」
瑞鶴「加賀さん、椅子で寝てたらコケて怪我するわよ」
加賀「瑞……鶴?」
瑞鶴「……久しぶりね」
加賀「……あなた、どうしてそんな身体中傷だらけで……」
瑞鶴「……ちょっと、訓練」
加賀「……まさか、あの日からずっと?」
瑞鶴「……ええ。
加賀さんは知らないかもしれないけど……
北提は、もうとっくに北へ戻ったわ。
今は龍驤と……確か瑞鳳?か誰か、新しい空母が北で警備に当たってる」
加賀「……そう」
瑞鶴「……加賀さんは?訓練?」
加賀「そうね。乙種を……」
瑞鶴「……乙種訓練って結構、ハードよね。
教官に任命されたんじゃ無かったっけ」
加賀「……そう、ね」
瑞鶴「戦場、多分出れないよね。
それでも、訓練やるんだ……」
加賀「……そうね」
瑞鶴「加賀さんも訓練、毎日?」
加賀「1日だけの訓練なんて意味が無いわ。
継続は力也って、いつも教えていたでしょう」
瑞鶴「……それは、何のためにしてるの?」
986: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/30(火) 00:07:52.04 ID:bBz7du5Z0
加賀「……どういう事かしら」
瑞鶴「英雄提督の為に訓練してるの?
もう、実戦に出れないとしても?」
加賀「……そう。わかったわ。
あなた、辛いのね」
瑞鶴「……」
加賀「何の為に訓練しているのか、わからなくなったのかしら?」
瑞鶴「……私は、加賀さんが居なくなって……
あたしがしっかりしないとって……
それで……」
加賀「……」
瑞鶴「……でも、あたし、置いて、行かれちゃったし……
も、何のために……こんな辛い……
上官に殴られるばっかりの訓練してるのか……
辛いーー」
「何が辛いって?」
瑞鶴「……!!」
バッと瑞鶴と加賀の振り向いた先には。
ニヤニヤと笑う飛龍の姿。
瑞鶴「ひりゅ、さん……!」
飛龍「瑞鶴ぅぅぅ?」
瑞鶴「は、いっ」
飛龍「訓練辛いの?」
瑞鶴「い、いいえ!」
飛龍「全く?」
瑞鶴「全く!」
飛龍「あ、そう?じゃあ増やすね」
瑞鶴「えっ……」
瑞鶴「英雄提督の為に訓練してるの?
もう、実戦に出れないとしても?」
加賀「……そう。わかったわ。
あなた、辛いのね」
瑞鶴「……」
加賀「何の為に訓練しているのか、わからなくなったのかしら?」
瑞鶴「……私は、加賀さんが居なくなって……
あたしがしっかりしないとって……
それで……」
加賀「……」
瑞鶴「……でも、あたし、置いて、行かれちゃったし……
も、何のために……こんな辛い……
上官に殴られるばっかりの訓練してるのか……
辛いーー」
「何が辛いって?」
瑞鶴「……!!」
バッと瑞鶴と加賀の振り向いた先には。
ニヤニヤと笑う飛龍の姿。
瑞鶴「ひりゅ、さん……!」
飛龍「瑞鶴ぅぅぅ?」
瑞鶴「は、いっ」
飛龍「訓練辛いの?」
瑞鶴「い、いいえ!」
飛龍「全く?」
瑞鶴「全く!」
飛龍「あ、そう?じゃあ増やすね」
瑞鶴「えっ……」
987: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/30(火) 00:08:40.18 ID:bBz7du5Z0
加賀「飛龍……?これはどういう事?」
飛龍「そっちこそ。
私の弟子にちょっかい出さないで欲しいなぁ」
加賀「弟子……?あなた、まさか」
飛龍「おっと!頼んできたのは瑞鶴だぜ?
わざわざ、この私が時間取ってんだから……
嫌ならいつでもやめるって……ねぇ?」
瑞鶴「は……い」
加賀「飛龍!まさか血を吐くまで訓練させて……!」
飛龍「それはお前のしていた訓練が生温いからだ、加賀。
同じ訓練をしても、あたしは血を吐かない」
加賀「訓練はマニュアルに則ってーー」
飛龍「はぁ?マニュアル?あの英雄提督が規定した?
ハッ!あんなもん信用なるかよ」
加賀「あなた……!」
飛龍「良いか。私は私のやり方でやる。
英雄提督なんて信じない。
あんたは未だに、英雄提督を白馬の王子様かなんかと思って夢見てるみたいだけどーー」
吐き捨てるように。
飛龍「ーー赤城を殺したのだって、英雄提督じゃないか」
飛龍「そっちこそ。
私の弟子にちょっかい出さないで欲しいなぁ」
加賀「弟子……?あなた、まさか」
飛龍「おっと!頼んできたのは瑞鶴だぜ?
わざわざ、この私が時間取ってんだから……
嫌ならいつでもやめるって……ねぇ?」
瑞鶴「は……い」
加賀「飛龍!まさか血を吐くまで訓練させて……!」
飛龍「それはお前のしていた訓練が生温いからだ、加賀。
同じ訓練をしても、あたしは血を吐かない」
加賀「訓練はマニュアルに則ってーー」
飛龍「はぁ?マニュアル?あの英雄提督が規定した?
ハッ!あんなもん信用なるかよ」
加賀「あなた……!」
飛龍「良いか。私は私のやり方でやる。
英雄提督なんて信じない。
あんたは未だに、英雄提督を白馬の王子様かなんかと思って夢見てるみたいだけどーー」
吐き捨てるように。
飛龍「ーー赤城を殺したのだって、英雄提督じゃないか」
988: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/30(火) 00:09:48.98 ID:bBz7du5Z0
………
……
…
神通「川内?天龍?布団で物を食べるのはやめて下さい」
川内「アハハ。神通は神経質だなぁ」
天龍「ホントだぜ。ほら、神通も寝転びながら煎餅食ってみろよ」パリポリ
神通「……誰が掃除すると思ってるんですか……」
川内「んー、神通」
神通「もうイイです……」
川内「アハハ」
天龍「川内ー、アレ見よーぜ。
神通も居るし」
川内「ああ、見る?」
神通「アレ……?」
川内「うん。
神通ー、そこのダンボールの中見てくんない?」
神通「少しは自分で立ち上がったらどうなんですか……コレですか?」
川内「うんソレ〜。DVD入ってるっしょ。
そのDVDをデッキにセットして欲しいなぁ……」
神通「……はぁ……」ガサゴソ
川内「ありがとー!
ついでにリモコン取って!届かなーい!」
神通「……どうぞ……」
川内「最高だぜ神通!いい嫁になれるよ!」
神通「……どうも。所で、このDVDの内容は?」
川内「まぁ見てろって……ほれ!」ポチッ
神通「……?演習の記録映像ですか……?」
川内「そうだ。さっき中央作戦司令室からパクってきた」
神通「ちゃんと返すんですよ……」
川内「大丈夫大丈夫!バレてないって!
結構置いてあったし!」
神通「それで怒られるのはあなたですよ?」
川内「え?なんで?」
神通「嗚呼……頭が痛い……」
……
…
神通「川内?天龍?布団で物を食べるのはやめて下さい」
川内「アハハ。神通は神経質だなぁ」
天龍「ホントだぜ。ほら、神通も寝転びながら煎餅食ってみろよ」パリポリ
神通「……誰が掃除すると思ってるんですか……」
川内「んー、神通」
神通「もうイイです……」
川内「アハハ」
天龍「川内ー、アレ見よーぜ。
神通も居るし」
川内「ああ、見る?」
神通「アレ……?」
川内「うん。
神通ー、そこのダンボールの中見てくんない?」
神通「少しは自分で立ち上がったらどうなんですか……コレですか?」
川内「うんソレ〜。DVD入ってるっしょ。
そのDVDをデッキにセットして欲しいなぁ……」
神通「……はぁ……」ガサゴソ
川内「ありがとー!
ついでにリモコン取って!届かなーい!」
神通「……どうぞ……」
川内「最高だぜ神通!いい嫁になれるよ!」
神通「……どうも。所で、このDVDの内容は?」
川内「まぁ見てろって……ほれ!」ポチッ
神通「……?演習の記録映像ですか……?」
川内「そうだ。さっき中央作戦司令室からパクってきた」
神通「ちゃんと返すんですよ……」
川内「大丈夫大丈夫!バレてないって!
結構置いてあったし!」
神通「それで怒られるのはあなたですよ?」
川内「え?なんで?」
神通「嗚呼……頭が痛い……」
989: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/30(火) 00:11:00.46 ID:bBz7du5Z0
天龍「神通……ほら、煎餅やるよ」
神通「あなたも頭痛のタネなんですけどね……
いただきます」ポリ
天龍(そう言いつつ食うのな……)ボリボリ
川内「お、始まるよ!」
神通「えっと……攻守の編成が……成る程」
川内「サセン隊vs18戦。
見ものだろ?」
神通「ええ。確かに、一見の価値がありそうです」
天龍「お手並み拝見だなぁ」ポリポリ
…
……
………
終了後
天龍「うおおおい!勝ったぞ!
魚雷がブチ抜かれた時はハラハラしたぜ!」
川内「いやマジで!ドキドキワクワクだったね!」
神通「……二人とも、うるさいですよ……
要所要所で歓声を上げないで下さい」
天龍「神通が落ち着き過ぎなんだよ!
かぁーっ!やっぱ榛名魚雷はエゲツねーな!」
川内「そうだぜ神通!足柄つえーな!」
天龍「そして翔鶴の慌てっぷりよ!」
川内「ああ、全部落とされて衝突しそうになってたのは傑作だったな!アハハ!」
神通「もう……
こう、真面目に観る気は無いのですか……」
川内「真面目、真面目ねぇ……
この演習にそんな価値は無いと思うよ」
神通「……?」
川内「だって、これ艦娘のデモンストレーションだもん」
天龍「デモ?」
川内「内容が艦娘の力比べみたいな感じだし?
あんま戦術的価値は無いと見たね。
にも関わらず、艦娘が簡単に入手出来るほど出回ってる。
つまり、誰かがばら撒いてんだ、コレ」
天龍「ふむ……」
川内「誰が、何の為に、だろうね?
……アハハ。もうあんまり時間が無いかもなぁ」
天龍「ほほう……」
川内「なーんて、意味深な事を言うとすぐ乗ってくる天龍ー!
意味わかってんのかー?」
天龍「は、はぁ?!わかってるに決まってんだろ!
要するにアレだ……アレだよ!」
川内「アハハ!馬鹿だこいつ!」
天龍「んだとぉ?!」
神通「煎餅を投げ合うのは止めなさい!」
神通「あなたも頭痛のタネなんですけどね……
いただきます」ポリ
天龍(そう言いつつ食うのな……)ボリボリ
川内「お、始まるよ!」
神通「えっと……攻守の編成が……成る程」
川内「サセン隊vs18戦。
見ものだろ?」
神通「ええ。確かに、一見の価値がありそうです」
天龍「お手並み拝見だなぁ」ポリポリ
…
……
………
終了後
天龍「うおおおい!勝ったぞ!
魚雷がブチ抜かれた時はハラハラしたぜ!」
川内「いやマジで!ドキドキワクワクだったね!」
神通「……二人とも、うるさいですよ……
要所要所で歓声を上げないで下さい」
天龍「神通が落ち着き過ぎなんだよ!
かぁーっ!やっぱ榛名魚雷はエゲツねーな!」
川内「そうだぜ神通!足柄つえーな!」
天龍「そして翔鶴の慌てっぷりよ!」
川内「ああ、全部落とされて衝突しそうになってたのは傑作だったな!アハハ!」
神通「もう……
こう、真面目に観る気は無いのですか……」
川内「真面目、真面目ねぇ……
この演習にそんな価値は無いと思うよ」
神通「……?」
川内「だって、これ艦娘のデモンストレーションだもん」
天龍「デモ?」
川内「内容が艦娘の力比べみたいな感じだし?
あんま戦術的価値は無いと見たね。
にも関わらず、艦娘が簡単に入手出来るほど出回ってる。
つまり、誰かがばら撒いてんだ、コレ」
天龍「ふむ……」
川内「誰が、何の為に、だろうね?
……アハハ。もうあんまり時間が無いかもなぁ」
天龍「ほほう……」
川内「なーんて、意味深な事を言うとすぐ乗ってくる天龍ー!
意味わかってんのかー?」
天龍「は、はぁ?!わかってるに決まってんだろ!
要するにアレだ……アレだよ!」
川内「アハハ!馬鹿だこいつ!」
天龍「んだとぉ?!」
神通「煎餅を投げ合うのは止めなさい!」
990: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/30(火) 00:11:29.38 ID:bBz7du5Z0
川内「いやーしかし足柄だな。上手いね。
やっぱアイツ、ウチに欲しくねぇ?」
天龍「欲しい!」
川内「スカウトしに行こうぜ!」
天龍「行こう!」
神通「……私は鳳翔さんを推しますね」
川内「あぁ……鳳翔ねぇ……」
神通「ええ。判官贔屓と言うのでしょうか?
無名の空母が翔鶴を下したのは中々……
それに、夜戦隊には空母が居ませんし」
天龍「夜戦に空母なんてお荷物だけどな!」
神通「居て困る人材では無いかと」
川内「まぁね。
ただ、実力の程が不明だからなぁ」
神通「……?翔鶴を撃ち破る実力が有ればーー」
川内「不意打ちしか出来ない空母なら要らない。
アタシ達が不意打ちを仕掛けるんだから、欲しいのは正面戦力だ」
神通「戦術は評価に値すると思いますが」
川内「鳳翔が戦術を編み出したのなら、ブレーンとして使えるかもね……
でも、あれは違う。あの戦法は英雄提督直伝、演習用の奇策だよ。
初見じゃ絶対イカれるって有名らしいぜ」
神通「……そうなのですか」
天龍「よく知ってんなー」
川内「そりゃね……
……あれはムカーシ昔、加賀が赤城を初めて破った時に使った戦法なのさ」
やっぱアイツ、ウチに欲しくねぇ?」
天龍「欲しい!」
川内「スカウトしに行こうぜ!」
天龍「行こう!」
神通「……私は鳳翔さんを推しますね」
川内「あぁ……鳳翔ねぇ……」
神通「ええ。判官贔屓と言うのでしょうか?
無名の空母が翔鶴を下したのは中々……
それに、夜戦隊には空母が居ませんし」
天龍「夜戦に空母なんてお荷物だけどな!」
神通「居て困る人材では無いかと」
川内「まぁね。
ただ、実力の程が不明だからなぁ」
神通「……?翔鶴を撃ち破る実力が有ればーー」
川内「不意打ちしか出来ない空母なら要らない。
アタシ達が不意打ちを仕掛けるんだから、欲しいのは正面戦力だ」
神通「戦術は評価に値すると思いますが」
川内「鳳翔が戦術を編み出したのなら、ブレーンとして使えるかもね……
でも、あれは違う。あの戦法は英雄提督直伝、演習用の奇策だよ。
初見じゃ絶対イカれるって有名らしいぜ」
神通「……そうなのですか」
天龍「よく知ってんなー」
川内「そりゃね……
……あれはムカーシ昔、加賀が赤城を初めて破った時に使った戦法なのさ」
991: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/30(火) 00:13:16.50 ID:bBz7du5Z0
………
……
…
提督でない誰かが、執務室で提督の椅子に座っていた。
赤城である。
赤城『……』
腹立たしい。
実に、腹立たしい。
これ程までに屈辱的な事があっただろうか。
貧乏揺すりが激しくなる。
今日の演習は、大差で終わった。
それはいつも通りだ。
唯一違ったのは、敗者が自分であった事。
あり得ない失態だった。
加賀は不器用で、複雑な戦法を好まず基本に忠実だ。
それ故に、実力で大きく勝る自分が負けた事は無かった。
そう、今日迄は。
ある種卑劣とも言える、攻撃を終えた飛行編隊の待ち伏せ。
こんな狡猾な戦術を取るのは加賀らしくない。
そういった戦術を用いるようになる前触れも無かった。
恐らく、提督が加賀へ、演習の直前に教唆したのだろう。
……
…
提督でない誰かが、執務室で提督の椅子に座っていた。
赤城である。
赤城『……』
腹立たしい。
実に、腹立たしい。
これ程までに屈辱的な事があっただろうか。
貧乏揺すりが激しくなる。
今日の演習は、大差で終わった。
それはいつも通りだ。
唯一違ったのは、敗者が自分であった事。
あり得ない失態だった。
加賀は不器用で、複雑な戦法を好まず基本に忠実だ。
それ故に、実力で大きく勝る自分が負けた事は無かった。
そう、今日迄は。
ある種卑劣とも言える、攻撃を終えた飛行編隊の待ち伏せ。
こんな狡猾な戦術を取るのは加賀らしくない。
そういった戦術を用いるようになる前触れも無かった。
恐らく、提督が加賀へ、演習の直前に教唆したのだろう。
992: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/30(火) 00:15:21.51 ID:bBz7du5Z0
自分の慢心は認める。
だが、一番腹立たしかったのは、提督にハシゴを外されたという事実。
自分が提督の一番なのに、提督は加賀の肩を持った。
チッ、と自然に舌打ちが出る。
と、ほぼ同じタイミングで、ガチャ、と執務室の扉が開いて。
提督『……おいおい。とんだ提督代理だな』
赤城『……』
赤城は半ば提督を睨むようにして、椅子から立ち上がり、提督に詰め寄った。
赤城『……加賀に入れ知恵しましたね』
提督『まぁな』
アッサリと認める。
赤城はカァッ、と己の頭に血が昇るのを感じた。
赤城『何故ですか』
提督『請われたからな』
赤城『……あの時ですか?』
提督『そうだ』
赤城『……理由になってませんね。
何故片方に肩入れなさるのでしょうか。
あの時間まで、加賀が訓練を重ねていたからですか?』
提督『……』
だが、一番腹立たしかったのは、提督にハシゴを外されたという事実。
自分が提督の一番なのに、提督は加賀の肩を持った。
チッ、と自然に舌打ちが出る。
と、ほぼ同じタイミングで、ガチャ、と執務室の扉が開いて。
提督『……おいおい。とんだ提督代理だな』
赤城『……』
赤城は半ば提督を睨むようにして、椅子から立ち上がり、提督に詰め寄った。
赤城『……加賀に入れ知恵しましたね』
提督『まぁな』
アッサリと認める。
赤城はカァッ、と己の頭に血が昇るのを感じた。
赤城『何故ですか』
提督『請われたからな』
赤城『……あの時ですか?』
提督『そうだ』
赤城『……理由になってませんね。
何故片方に肩入れなさるのでしょうか。
あの時間まで、加賀が訓練を重ねていたからですか?』
提督『……』
993: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/30(火) 00:16:08.22 ID:bBz7du5Z0
赤城『……提督もご存知でしょう!』
何も言わない提督に、赤城は苛立って、バン!と机を叩く。
赤城『私が誰も見ていない所でどれだけ研鑽を積んでいるか!
あなたならば、わかっていただいていると……思っていました!』
提督『落ち着けよ、赤城……』
赤城『何故加賀を贔屓したのですか!
努力ならば私だってーー』
提督『落ち着け』
『っーー』
赤城の唇を人差し指で抑えて、黙らせる。
提督『俺はお前を高く評価している。
だが、努力はひけらかすものじゃ無いな』
赤城『……私は特別扱いが納得行かないと申した迄です』
提督『特別扱い、特別扱いか……
ふふふ……』
赤城『……何がおかしいのですか』
提督『……赤城。お前は……まだまだだな』
赤城『……!何が!』
提督『聞けよ。
俺が加賀にあの戦術を仕込んだ。それは間違いない。
つまり、お前は俺に敗北したとも言える訳だが……』
赤城『……何を、仰りたいのですか』
何も言わない提督に、赤城は苛立って、バン!と机を叩く。
赤城『私が誰も見ていない所でどれだけ研鑽を積んでいるか!
あなたならば、わかっていただいていると……思っていました!』
提督『落ち着けよ、赤城……』
赤城『何故加賀を贔屓したのですか!
努力ならば私だってーー』
提督『落ち着け』
『っーー』
赤城の唇を人差し指で抑えて、黙らせる。
提督『俺はお前を高く評価している。
だが、努力はひけらかすものじゃ無いな』
赤城『……私は特別扱いが納得行かないと申した迄です』
提督『特別扱い、特別扱いか……
ふふふ……』
赤城『……何がおかしいのですか』
提督『……赤城。お前は……まだまだだな』
赤城『……!何が!』
提督『聞けよ。
俺が加賀にあの戦術を仕込んだ。それは間違いない。
つまり、お前は俺に敗北したとも言える訳だが……』
赤城『……何を、仰りたいのですか』
994: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/30(火) 00:16:48.66 ID:bBz7du5Z0
提督『あの時、お前は言ったな。
私をあなたの特別にして下さいと』
赤城『……はい』
提督『だから、俺はお前に少し意地悪をしてみたんだ』
赤城『……?』
怪訝な顔をする赤城。
くっくっく、と愉快そうに笑う提督。
赤城の唇に当てた指で、その唇をなぞる。
提督『察しろ、赤城。
俺の特別になりたければーー
ーー俺を手玉に取るくらいの事はして見せろ』
赤城『……っ』
提督『いやぁ……怒った顔を久し振りに見たが……
中々どうして可愛いじゃないか』
赤城『……』
赤城はなんだか悔しくて、提督の指に噛み付いた。
………
……
…
私をあなたの特別にして下さいと』
赤城『……はい』
提督『だから、俺はお前に少し意地悪をしてみたんだ』
赤城『……?』
怪訝な顔をする赤城。
くっくっく、と愉快そうに笑う提督。
赤城の唇に当てた指で、その唇をなぞる。
提督『察しろ、赤城。
俺の特別になりたければーー
ーー俺を手玉に取るくらいの事はして見せろ』
赤城『……っ』
提督『いやぁ……怒った顔を久し振りに見たが……
中々どうして可愛いじゃないか』
赤城『……』
赤城はなんだか悔しくて、提督の指に噛み付いた。
………
……
…
995: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/30(火) 00:17:55.92 ID:bBz7du5Z0
赤城「……」
パチリ、と目が開く。
かつて綺麗な栗色であったそれは、今は深海の色をしていた。
愛宕「あら?お目覚めかしら?」
赤城「ええ……少し、昔の夢を」
愛宕「……そう。夢、夢ね……まだ艦娘だった頃の?」
赤城「それ以外に、夢に見る過去がありますか?」
愛宕「それもそうね〜」
赤城「それにしても……
ああ、懐かしかった……うふふ」
赤城は楽しそうだ。
愛宕「……あ、そうそう。
艦載機、来たわよ。北から」
赤城「!……来ましたか、そうですか。……うふふふ」
時は満ちた。
ならば、逢いに行こう。
赤城(そう、私は間違っていた……
私があなたのモノになるなんて考えでは、いけませんね……)
微笑む。
赤城(あなたは私の提督……私のモノにしないと)
意中のあなたを手玉にとって見せると。
パチリ、と目が開く。
かつて綺麗な栗色であったそれは、今は深海の色をしていた。
愛宕「あら?お目覚めかしら?」
赤城「ええ……少し、昔の夢を」
愛宕「……そう。夢、夢ね……まだ艦娘だった頃の?」
赤城「それ以外に、夢に見る過去がありますか?」
愛宕「それもそうね〜」
赤城「それにしても……
ああ、懐かしかった……うふふ」
赤城は楽しそうだ。
愛宕「……あ、そうそう。
艦載機、来たわよ。北から」
赤城「!……来ましたか、そうですか。……うふふふ」
時は満ちた。
ならば、逢いに行こう。
赤城(そう、私は間違っていた……
私があなたのモノになるなんて考えでは、いけませんね……)
微笑む。
赤城(あなたは私の提督……私のモノにしないと)
意中のあなたを手玉にとって見せると。
996: ◆hsyiOEw8Kw 2015/06/30(火) 00:18:48.16 ID:bBz7du5Z0
赤城「……さて、と」
赤城「ーー暁の水平線に、終止符を打ちましょう」
黄昏が、始まる。
コメントする
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。