1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:03:10.78 ID:hzjJoOcI0
―事務所―


貴音「あなた様」

P「は?」

貴音「この世には、さんたくろぉすなどという

 恐ろしい存在がいると聞きました」

P「サンタクロース?」

貴音「はい」

 
2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:04:47.96 ID:hzjJoOcI0
P「えーっと、サンタクロースっていうのはだな」

貴音「夜中に家に忍び寄る存在であるとか」

P「まあそうなんだけど」

貴音「夜中に無断で他人の家に侵入するなど、

真っ当な存在ではありません」

P「そう言われると……」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:06:48.29 ID:hzjJoOcI0
貴音「煙突があれば煙突から、

無くても、どこからともなく家の中に入り込み……」

P「そういう風に言われるとちょっとアレだな」

貴音「しかも、侵入に誰も気づかないとか」

P「まあ、気づかれたら普通に犯罪者だよなあ」

貴音「そして……何という事でしょう……

 い、家のものを連れ去ってしまうとか……」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:09:45.20 ID:hzjJoOcI0
P「いやいやいや、まてまて」

貴音「うう……なんという恐ろしい存在でしょう……」

P「その話誰に聞いた?」

貴音「亜美と真美が親切に教えてくれました」

P「やっぱり……」

貴音「もみの木を飾り、独特の歌を歌うとのこと……

 これは、魔除けの儀式なのですね」

P「おーい」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:11:30.62 ID:hzjJoOcI0
貴音「そういえば、靴下を飾ることも魔除けであると、

亜美と真美は言っていましたね……」

貴音「そのような恐ろしい存在が、年に一度襲い来る日こそ、くりすます……」

P「聞いてるかー?」

貴音「字をあてるならば、苦離棲魔棄……」

貴音「恐ろしい……」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:13:11.17 ID:hzjJoOcI0
P「貴音、良く聞け」

貴音「は、はい?」

P「サンタってのはそういう存在じゃあない」

貴音「さんた……字をあてるならば……」

P「字は当てなくていい」

貴音「なるほど……むやみに名を呼んではいけないほどの存在ということですか……」

P「いや、待て」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:15:21.70 ID:hzjJoOcI0
P「サンタってのは、別に怖い存在ではなくて、贈り物をくれる存在なんだ」

貴音「贈り物?」

P「そう。いい子にしていた子供に、プレゼントをくれるのさ」

貴音「……」

P「だから亜美と真美の話は……」

貴音「古の悪魔は、願いをかなえることと引き換えに魂を要求すると聞きます」

P「は?」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:16:58.50 ID:hzjJoOcI0
貴音「やはりさんたくろぉすとは魔性の類……」

貴音「贈り物で人の心を籠絡し、そして連れ去る……」

貴音「字をあてるならば……」

P「だから、当てなくていい」

貴音「名前の響きからして、おそらくは西洋から渡ってきた存在ですね?」

P「まあそうなんだけど」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:19:09.13 ID:hzjJoOcI0
貴音「そのような恐ろしい存在と今まで出会わずに過ごしたわたくしの幸運に感謝を」

貴音「しかし、そのような邪悪な悪魔が日本に上陸していようとは……」

貴音「わたくし、全く知りませんでした……」

P「四条の家ではそういうイベントは無さそうだよなあ」

貴音「ええ、四条の家は十重二十重の結界によって守られていますので」

P「そ、そうか」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:20:42.00 ID:hzjJoOcI0
貴音「して、くりすますとは、いつ訪れるのです?」

P「え?」

貴音「先ほどは、恐ろしさで亜美と真美に聞きそびれましたので」

P「ああ、12月25日だよ」

貴音「なんと!もうすぐなのですね」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:22:34.40 ID:hzjJoOcI0
P「その前日をクリスマス・イブという」

貴音「なんと!くりすますにはそのような新種が存在したのですね!」

貴音「恐ろしい……」

貴音「いぶ、とは紫電改の改の字のようなものでしょうか」

P「よくそんなの知ってるな」

貴音「ふふっ、あなた様に褒められると照れてしまいますね」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:23:59.82 ID:hzjJoOcI0
貴音「はっ!そういえば……」

P「どうした?」

貴音「12月24日といえば、雪歩の誕生日ではありませんか」

P「そうだけど」

貴音「そのような禍々しい日に生を受けてしまうとは……

 本来であれば皆に祝福される日だというのに……」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:26:11.97 ID:hzjJoOcI0
P「そういえば、クリスマスと一緒にされてさみしいって言ってたな」

貴音「そうでしょうとも。

 今年はわたくしが盛大に祝ってあげなくては」

P「それはいいことだな」

貴音「雪歩がそのような境遇であったとは……」

貴音「察するに余りあるものがあります」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:28:01.46 ID:hzjJoOcI0
P「……」

P「よし、それじゃあ、クリスマスを体験してみるか」

貴音「た、体験!!

 すると、さんたくろぉすとか申す恐ろしい存在も呼び出すのですか!?」

P「いや、今日はクリスマスじゃないからな」

貴音「それを聞いて安心しました……」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:29:43.70 ID:hzjJoOcI0
P「えーっと、確かこの辺に……」

貴音「何を探しているのです?」

P「クリスマスツリーの小っちゃいのがあったはず」

貴音「つりー?魔除けの木のことですね?」

P「ああ、まあそんなもんだ」

P「……お、あったあった」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:31:03.59 ID:hzjJoOcI0
P「さ、飾り付けるぞ」

貴音「飾り付ける?」

P「ああ、このキラキラしたのを飾るんだ。こっちの電飾も巻いてっと」

P「やってみろ」

貴音「はい……」

P「で、俺はっと……

 えーっと、一本余ってたシャンメリーはきちんとあるな」

P「貴音、俺ちょっと出かけるから」

貴音「はい、いってらっしゃいませ」(真剣)

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:33:20.03 ID:hzjJoOcI0
貴音「この飾りはもう少しずらした方がよさそうですね」

貴音「……」

貴音「できました!」

貴音「あなた様、ご覧ください!実に美事に仕上がりましたよ!」

貴音「……」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:34:48.55 ID:hzjJoOcI0
貴音「あ、あなた様……?」

貴音「あなた様、どちらに?!」

貴音「い、いない……」

貴音「これはもしや、くりすますの瘴気……、さんたの呪い……」

貴音「あなた様……あなた様が居なくなったら、わたくし、どうすれば……」

貴音「うう……」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:38:00.17 ID:hzjJoOcI0
P「ただいまー……って、なんで泣いてるんだ?」

貴音「!!」

貴音「あなた様ぁ~!!」

P「ちょっと待て、抱きつくな」

貴音「わ、わたくしを置き去りにして……」

貴音「さんたの呪いに捕らわれてしまったのかと……」

P「いや、出かけるって言ったろ」

貴音「はて?そうでしたか……」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:40:53.72 ID:hzjJoOcI0
P「ちょっとスーパーまで行ってきた」

貴音「何と!」

P「とりあえずチキンとお惣菜と、あとケーキ」

貴音「な、何ゆえこのような……」

P「クリスマスはこういうの食べるんだよ」

貴音「なるほど……しっかり食べて体力をつけるのですね?」

P「あ、うん。おっと、ツリーも綺麗に飾り付け出来てるじゃないか」

貴音「はいっ、全身全霊を込めて仕上げました!」

P「よーし、偉いぞー」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:42:12.02 ID:hzjJoOcI0
P「あ、あと、はい、これかぶって」

貴音「これは……とんがりぼうしですか?」

P「ああ」

P「おっと、クリスマスソングのCDあったな」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:45:39.24 ID:hzjJoOcI0
―しゅはきまっせりーしゅはきまっせりー―


貴音「面妖な呪文です……」

貴音「しかし、何というかこう……」

貴音「楽しげな音楽ですね……」

P「クリスマスソングって独特の雰囲気があるよなー」

貴音「なるほど、これがくりすますに歌う歌ですか……」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:47:26.10 ID:hzjJoOcI0
―We wish you a Merry Christmas,―
―We wish you a Merry Christmas,―
―We wish you a Merry Christmas,―
―And a Happy New Year―


貴音「~♪」

P「~♪」

貴音「はっ、思わず口ずさんでしまいました」

貴音「何やら異国の言葉の響き故、歌詞はわかりませんが」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:49:10.40 ID:hzjJoOcI0
P「そう思って、歌詞をだな」

―うぃーうぃっしゅゆあめりーくりすます―

P「と、こんな具合で書いてみたが」

貴音「あ、あなた様!」

P「お、おう」

貴音「そのようなことまで出来るとは……感服いたしました」

P「いや、大したことはしてないぞ」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:51:39.20 ID:hzjJoOcI0
貴音「うぃーうぃっしゅゆあめりーくりすます~♪」

P「さて、貴音、これを」

貴音「はて?何やら綺麗な色の飲み物ですね」

P「本当はシャンパンでも飲めればいいが、今日のところはジュースだ」

P「メリークリスマス」

貴音「ああ、その言葉、知っています!」

貴音「めりーくりすます!」

カチン

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:53:49.03 ID:hzjJoOcI0
P「CDは流しっぱなしにして、じゃ、食べようか、貴音」

貴音「はいっ」

貴音「……」

貴音「このようなきらきらしたつりーを飾り付けて」

貴音「楽しげな歌を歌い……」

貴音「美味しいものを食べる……」

貴音「あなた様、わたくし、とても楽しいのですが……」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:55:53.63 ID:hzjJoOcI0
P「そうだな。俺も楽しい」

貴音「これが本当にくりすますの儀式なのでしょうか?」

P「そうだよ。大切な人と過ごすんだ

 欧米では家族と過ごすらしいぞ、良く知らんけど」

貴音「何と……」

貴音「禍々しいだけのものではないのですね……」

P「そうだぞ。じゃあ、たくさん食べてくれ」

貴音「はい」

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 00:58:47.19 ID:hzjJoOcI0
……

P「ふう、食った食った」

貴音「御馳走様でした」

P「どれ、片づけるか」

貴音「あの……」

P「どうした?」

貴音「つりーは……そのままにしておいてもよろしいでしょうか?」

P「ああ、いいぞ」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 01:01:13.10 ID:hzjJoOcI0
P「さて、帰るか。送るぞ」

貴音「ええ、そういたしましょう」


―外―

貴音「……今日は冷えますね」

P「ああ、本当だな」

P「……」

貴音「……」

P「貴音、ちょっと手を出してくれ」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 01:02:55.72 ID:hzjJoOcI0
貴音「はい?」

P「クリスマスの体験版だからな」

P「今日はサンタがいないと、さっき言ったが……」

P「今日は俺がサンタだ」

貴音「手袋……」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 01:04:40.41 ID:hzjJoOcI0
P「さっき買い物に出た時に買ったんだ」

貴音「あなた様がさんたくろぉす……」

貴音「……」

貴音(何と……プロデューサーがさんたくろぉすだったとは……)

貴音(なるほど、今日の楽しいひと時も、このための……)

貴音(流石は古の悪魔……)


P(あれ……どうしたんだろう……安物だから怒ったのかな……)

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 01:06:29.10 ID:hzjJoOcI0
貴音(これを受け取るということは、わたくしの魂は……)

貴音(しかし……わたくしは、この方無しでは……)

貴音(考えるのです……四条貴音……)

貴音(わたくしの人生は……)

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 01:08:14.82 ID:hzjJoOcI0
貴音「あなた様」

P「うおっ、な、何だ?貴音?」

貴音「一つだけお伺いしたいことがございます」

P「何だ……?」

貴音「あなた様は、ずっとわたくしと共に歩んでくださいますか?」

P「お、おお、俺はいつまでも貴音と一緒だぞ?」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 01:09:48.04 ID:hzjJoOcI0
貴音(死が二人を分かつまで……)

貴音(いえ、死が二人を分かつ日が来たとしても……永劫に……)


P(すげえ悩んでる……やっぱ手袋は駄目だったか……?)

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 01:11:28.46 ID:hzjJoOcI0
貴音「あなた様」

P「お、おう」ゴクリ

貴音「謹んで、お受けいたします」

P「あ、そ、そうか。受け取ってくれるか……」

P「いやー、良かった」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10(月) 01:16:57.50 ID:hzjJoOcI0
貴音「あなた様、寒いでしょう。手を繋ぎましょう」

P「お、おう」

P「貴音、当日はもっといい物買ってやるからな」

貴音(なるほど……婚約→結婚という流れと同じようなものですね)

貴音「はい、楽しみにさせていただきます」

P「お、おう。いやー、月の綺麗な夜だな」

貴音「!!」

貴音「はい、とても綺麗な月の夜ですね」


終わり

引用元: P「貴音にサンタのことを吹き込んだのは誰だ」