1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 01:58:40.18 ID:q12NjYWH0
貴音「二人とも、何をしているのですか?」

真美「あ、お姫ちーん。これを見ようと思ってたんだ」

貴音「その長方形の黒い物はいったい?」

亜美「ビデオだよビデオ! 映像を記録するもの!」

貴音「つまり、でぃーぶいでぃーや、ぶるーれいでぃすくのようなものですか?」

真美「そうそう。兄ちゃんの机の上に置いてあったから、たぶん兄ちゃんのだよ」

亜美「ムフフな内容かもしれませんなー」

貴音「ムフフ……ですか?」

真美「ちょうどビデオデッキもあるし、早速見てみよーよ」ガチャ

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:00:48.12 ID:q12NjYWH0
亜美「ん?」

真美「あれ?」

貴音「これがムフフ……」

真美「全然違うよ……」

亜美「ただの井戸? かなり古いっぽいけど」

貴音「おや、井戸から何か出てきましたよ?」

真美「髪長いし女の人かな?」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:02:21.03 ID:q12NjYWH0
小鳥「あら? 皆で何見て……ぴよおおおおお!?」

真美「うわっ!? ピヨちゃんどうしたの!?」

小鳥「こ、こここここれはだめえええええ」プツン

亜美「ちょっとピヨちゃん! 勝手にビデオ止めないでよー!」

貴音「どうしたのですか小鳥嬢?」

小鳥「こんな物どこから見つけてきたの!?」

真美「兄ちゃんの机の上に置いてあったんだけど」

貴音「見てはいけない物だったのでしょうか?」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:04:01.72 ID:q12NjYWH0
小鳥「見ていいとか見ちゃいけないとか、そういうレベルじゃないわ……」

亜美「井戸と女の人が映ってただけだよ?」

貴音「特に問題は無かったと思いますが」

小鳥「これはね……」

真美「これは?」

小鳥「これは……呪いのビデオよ」

バターン

亜美「お姫ちん!?」

真美「お姫ちん!? お姫ちん大丈夫!?」

小鳥「き、気絶してる……」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:06:15.09 ID:q12NjYWH0
貴音「ん……」

P「大丈夫か貴音?」

貴音「プロデューサー? 私は……」

P「ビデオを見た後倒れたらしい。本当に貴音は怖いものが苦手なんだな」

貴音「そ、そうです! 私は呪いのびでおを……」

P「ああ、あれ偽物だよ」

貴音「偽物……?」

P「そう偽物。昨日営業に行ったら、テレビ局に勤めてる友人に会ってな。そこでおふざけで呪いのビデオを作ったから見てみろって渡されたんだよ」

貴音「……」

P「もう24時過ぎてるな……俺達も帰るぞ。送ってくよ」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:08:07.30 ID:q12NjYWH0
P「ここを曲がってすぐだよな?」

貴音「はい」

P「じゃあここで。おやすみ貴音」

貴音「おやすみなさいませ」

P「……」

貴音「……」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:10:08.74 ID:q12NjYWH0
P「……貴音」

貴音「はい」

P「服を掴まれてたら、動けないんだが」

貴音「あなた様は私を置いていくつもりですか……」

P「えっ」

貴音「これでは今夜は一人で寝ることなどできません……」

P「いや、だからあれは偽物で……」

貴音「もしかしたら本物かもしれません!」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:12:07.84 ID:q12NjYWH0
P「……そうだ! 確か響の家が近くにあったんじゃないか? 今日は響の家に泊めさせてもらえ。送ってってやるから」

貴音「響は撮影で明日まで帰って来ません……」

P「あっ……そうだったな……」

貴音「今の私に頼れるのは……あなた様しかいないのです……」

P「そう言われてもなぁ」

貴音「……」ウルウル

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:14:24.89 ID:q12NjYWH0
P「あーもうわかったよ。貴音の家に行けばいいんだな?」

貴音「いえ、あなた様の家に行きましょう」

P「別に構わんが、なんで俺の家に?」

貴音「我が家に幽霊が出ては困ります!」

P「……」

貴音「宿泊の準備をして参ります。そこで待っていてくださいね?」

P「はいはい」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:16:19.20 ID:q12NjYWH0
貴音「おじゃまします」

P「散らかってるけど許してくれ」

貴音「そんな事はありませんよ?」

P「さて、もうこんな時間だし、先に風呂に入っててくれ。その間に軽い夕食でも作っとくから」

貴音「あの、お願いがあるのですが……」

P「ん? どうした?」

貴音「私がお風呂に入っている間、近くにいて頂けませんでしょうか?」

P「な、ナンデ!?」

貴音「近くにあなた様がいないと、安心できないのです……」

P「さすがにそれは……」

貴音「あなた様……」ウルウル

P「わかった! わかったから泣かないでくれ! そばにいてやるから!」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:18:10.63 ID:q12NjYWH0
スルスル

P(衣擦れの音って妙に官能的だよな……)

ガラガラ

貴音「あなた様、脱衣所まで入ってきてくれませんか?」

P「えっ!?」

貴音「私はもうお風呂場にいるので。ダメでしょうか?」

P「わ、わかった……」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:20:08.00 ID:q12NjYWH0
P(貴音が脱いだばかりの私服が……)

貴音「あなた様」ザーザー

P「な、なんだ?

貴音「そこにいますか?」ザーザー

P「ああ、いるよ」

貴音「……」ザーザー

P「……」

貴音「あなた様?」ザーザー

P「いるよー」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:22:11.79 ID:q12NjYWH0
ザバー

P(湯船に入ったか)

貴音「……」

P「……」

貴音「あなた様?」

P「いーるーよー」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:24:08.30 ID:q12NjYWH0
P「俺がここにいるってわかるように、ちょっとしたお話をしてやろう」

P(少しからかってやるか)

貴音「どんなお話ですか?」

P「そうだな……貴音はだるまさんがころんだって知ってるか?」

貴音「はい。稚児の遊びでしたら」

P「そう、それで合ってる。お風呂場でな、だるまさんがころんだって考えたり、言ったりしちゃいけないんだ」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:26:11.74 ID:q12NjYWH0
貴音「……なぜです?」

P「水場ってのは、どうやら幽霊の類が集まりやすい場所らしい。そこでもし、だるまさんがころんだなんて考えると……」

ザバァ

ガラガラ

P「ちょっ!?」

ギュッ

P「まっ!? 貴音!?」

貴音「……」ブルブル

P「待て! 落ち着け貴音!」

貴音「……」ブルブル

P「じょ、冗談だ嘘だ! 全部つくり話だ!」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:28:24.72 ID:q12NjYWH0
貴音「本当……ですか……?」ブルブル

P「本当だ! ちょっとからかってやろうって思っただけなんだ。すまなかった」

貴音「……あなた様はいけずです」

P「ああ、そうだな。いくらなんでも意地悪が過ぎたよ。ごめんな?」

貴音「私も、少し取り乱しすぎました……」

P「ほら、身体拭いて、服も着て。風邪ひいちゃうぞ」

貴音「あ……」

P「ハッ!? スマン! すぐ出てくから!」ガチャ

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:30:10.45 ID:q12NjYWH0
P「さっきはごめんな」

貴音「いえ、もう大丈夫ですので」

P「お詫びってわけじゃないんだが、卵雑炊作ったから。こんな適当なもので悪いけど、身体温まるだろうし」

貴音「ありがとうございます。いただきます」

P「いただきまーす」

貴音「……」モグモグ

P「……」モグモグ

貴音「とても美味しいです」

P「そりゃ良かった」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:32:14.87 ID:q12NjYWH0
P「そうだ、あのビデオが偽物だって証拠見せてやるよ」

貴音「もう一度……あれを見るのですか?」

P「大丈夫だ。最後まで見ればちゃんと偽物だってわかるから。もし変なものだったら、俺が責任とってやる」

貴音「あなた様がそこまで言うのなら、見ないわけにはいきませんね」

P「ちょっと待っててくれ」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:34:22.34 ID:q12NjYWH0
P「よし、準備完了だ。それじゃあ始めるぞ?」ポチッ

貴音「あなた様、手を握ってくれませんか?」

P「これでいいか?」ギュッ

貴音「はい……」

P「元ネタはホラー映画なんだ。それを真似て作ったらしいんだが……ここで井戸から女が出てくる」

貴音「……」ブルブル

P「この女は貞子って言って……いや、この話はいいか。ここからだ! よく見て」

貴音「女性が近寄ってきて……」

ハーイカットー

オツカレサマデシター

イヤーサダコノエンギヨカッタネ!コワカッタヨー

アリガトウゴザイマスー

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:36:19.97 ID:q12NjYWH0
P「……な? 作り物だろ?」

貴音「最後まで見ればよかったのですね……」

P「幽霊の正体見たり枯れ尾花じゃないけど、幽霊やら妖怪なんてこんなもんだよ」

貴音「良かった……あなた様、あれはなんです?」

P「どれだ?」

貴音「あの、井戸のところから白い手のような物が」

P「あれ? 貞子役の人はもう出てきたはずだが……」

貴音「あそこです。少しぼやけていますが、人の手ではありませんか?」

P「本当だ。いや、でもありえな……もしかしてこれ、心霊ビデオじゃ」

バターン

P「貴音!?」

P「き、気絶してる……」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:38:06.53 ID:q12NjYWH0
P(一応貴音をベッドに寝かせたけど、少しうなされてたな……)

P(はぁ……申し訳ないことをしてしまった。まさか本物の心霊ビデオだったなんてな)

P(あの手のものを作ると映り込むことがあるって噂、聞いたことはあったけど、実際あるもんなんだな)

P(明日、なんて謝ろうか……とにかく俺もソファで……)

P「……zzz」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:40:11.09 ID:q12NjYWH0
サマ……アナタサマ……

P「ん……」

貴音「あなた様、朝ですよ。起きてください」

P「……おはよう貴音」

貴音「おはようございます。台所をお借りしました。朝食にいたしましょう?」

P「ありがと……」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:42:02.77 ID:q12NjYWH0
P「うん、美味い」モグモグ

貴音「……」モグモグ

P「……」モグモグ

貴音「昨日のこと、覚えていますよね?」

P「もちろん……」

貴音「あんなものを見てしまっては、これから一人で夜を過ごすことなどできません」

P「なんて謝っていいのか……まさかあんなものだったなんて」

貴音「見てしまったものは仕方ありません。もう良いのです」

P「だが……」

貴音「昨日、あなた様がおっしゃったことも、覚えていますよね?」

P「……え?」

貴音「私にはもう、一人暮らしはできそうにありません」

貴音「責任、とってもらいますよ? あなた様」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:44:04.29 ID:q12NjYWH0
後日 某テレビ局


友人「よぉ、どうだったよあのビデオ。よくできてただろ?」

P「よくできてるとかそういう問題じゃないだろあれは……」

友人「なんでだ? 大学時代に作ったにしてはいい作品だったと思うんだが」

P「映像は良かったよ。でもな、本物が映り込んでたぞ。撮影が終わった後の井戸に、女性の手が」

友人「は? そんなもの映ってなかったぞ。俺が編集のためにどれだけあのビデオを見たと思ってんだ」

P「じゃあ、あれはいったい……」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/11(火) 02:46:28.57 ID:q12NjYWH0
友人「見間違いだろ。ただな、実はあれ……本物の呪いのビデオなんだ」

P「はぁ!? なんて物を見せてくれたんだよ!」

友人「落ち着け。呪いって言っても、見た奴が死ぬとかそういうもんじゃないんだよ」

P「なんの呪いなんだ?」

友人「あれを男女二人っきりで見た二組が……」

P「二組が……?」

友人「結婚した」

P「え?」

友人「あのビデオを男女二人っきりで見るとな、恋が結ばれるんだよ。的中率100%だぞ? まぁその二組だけなんだがな。ある意味呪いみたいなもんだろ?」

P「……マジで?」




おわり

引用元: 貴音「呪いのびでお」