アナウンス『次は、柳新道に停まります』

提督「ここまでは結構距離が短いんだよな」

電『なのです！』

提督「お降りの際は、お忘れ物にご注意願います」

電『はわわ！』

アナウンス『次は、菜園川徳前に停まります』


電『司令官さんは、ちょっと発進が苦手なのですか？』

提督「どうしてだい？」

電『もっとクラッチを緩めてから発進した方が良いと思うのです』

提督「そうか？　まぁ、エンジンに負担がかかるからな」

提督「じゃあ・・・それっ！」





ｶﾞｺﾝ　　　　　ﾋﾟｰｰｰｰｰ





提督「あ」

電『エンストなのです・・・』

提督「すまんすまん」ｸｸｸｸｸ　　ｶﾞﾙﾙﾙﾙｩｰｰﾝ

電『発進なのです！』

提督「よいしゃ！」

アナウンス『次は、盛岡城跡公園に停まります』


提督「桜が咲いたら綺麗なんだよな、ここ」

電『なのです！』

提督「早く咲くと良いな！」

電『ちょっとの間ですけど、一緒に見ましょう！』

提督「あぁ！」

アナウンス『次は、県庁・市役所前に停まります』


提督「えぇ～、走行中のバス内での移動は危険ですので」

提督「バスが停まってから、席をお立ち願います」

電『なのです！』

提督「ゆっくり安全運転っと」

提督「はい、ありがとうございます」

提督「あ、子供料金は50円となっております」

提督「はい、どうもありがとうございます」

電『とっても安いのです！』

提督「そうだな！」

アナウンス『次は、盛岡バスセンター・ななっく向に停まります』


提督「こちらはななっく向となっております」

提督「お降りの際はご注意下さい」

提督「結構間違えるんだよね、ここ」

電『初めて使う人は要注意なのです！』

提督「うぬうぬ」

アナウンス『次は、盛岡バスセンター・神明町に停まります』


提督「ご乗車、ありがとうございました」

提督「しばらくの間、停車いたします」

提督「もう少々お待ち下さいませ」

電『少し休憩なのです！』

提督「おぅ、じゃあギアをニュートラルに入れてっと」ｶﾞｺﾝ

提督「はい、ありがとうございます」

提督「あ、バスカードですか？　少し待っていて下さいね・・・」ｺﾞｿｺﾞｿ

提督「5,000円で良いですか？」

提督「はい、どうぞ」ｽｯ

提督「ありがとうございます」

電『後は駅に向かうのです！』

提督「おうよ！　行くぞ！」

アナウンス『次は、若園町に停まります』


提督「おっと、ブレーキブレーキ」ﾌﾟｼｭｰｰ　　ﾌﾟｼｭｯ　　ﾌﾟｼｭｯ

電『んっ///』

提督「どうした？　電」

電『あ、あまりエアブレーキはかけないでほしいのです・・・///』

提督「どうしてだい？」

電『は、恥ずかしいのです・・・///』

提督「？」

提督「あ、自転車来ていますよ」

提督「お気をつけてお降り下さい」

提督「あと道路との間に隙間がありますので、ご注意を」

電『転ぶととっても痛いのです！』

提督「そうだな、気をつけないと」

アナウンス『次は、上の橋町に停まります』


提督「あ、黄色信号・・・」

電『がるるるーーーん！！』ﾌﾞｳｩｩｰｰｰﾝ

提督「ひぃっ！？」

爺「ひょえぇぇ！？　ワシの入れ歯が！」ｶﾎﾟｰﾝ

電『ｗｗｗｗｗｗｗ』

アナウンス『次は、上の橋に停まります』


提督「本当に次のバス停まで早いよな」

提督「1分もかからずに行けるからな」

電『電の本気なのです！』

提督「さっき見たから！　ダメだよ！」

電『なのです・・・』

アナウンス『次は、本町通一丁目に停まります』


提督「お、ちょっとお客さんが多いな」

電『まだまだ乗れるのです！』

提督「後ろが空いている・・・な」

提督「大丈夫そうだ」

電『なのです！』

アナウンス『次は、岩手医大前に停まります』


提督「(あ、あの人目が不自由なのかな・・・)」

提督「(このアナウンスも流しておこう)」





アナウンス『お年寄りや、目の不自由な方には』

アナウンス『優先して、席をお譲り下さいますよう』

アナウンス『お願いします』





提督「(・・・・・・)」

提督「(・・・よし、大丈夫そうだな)」

電『(なのです！)』

アナウンス『次は、中央通一丁目に停まります』


提督「こちらは一丁目となっております」

提督「二丁目は、次のバス停になりますので」

提督「お間違いのないよう、ご注意願います」

電『司令官さん、向かいから同僚さんが来たのです』

提督「あ」ｽｯ

憲兵『』ｽｯ

提督「よし」

提督「ありがとうな、電」

電『なのです！』

アナウンス『次は、中央通二丁目に停まります』


提督「電、エンジンの調子はどうだ？」

電『良好なのです！』

提督「よしよし、大丈夫そうだな」

提督「クラッチの油圧も大丈夫・・・っと」

アナウンス『次は、商工中金前に停まります』


提督「お、メーターが0になったぞ」

電『100万km走ったのです！』

提督「もうそんなに走ったのか！　すごいなぁ」

提督「整備もしているし、まだまだ走れるな！」

電『頑張るのです！』

アナウンス『次は、啄木新婚の家口に停まります』


提督「そういえば啄木新婚の家なんだけどさ」

電『？』

提督「トイレが水洗式になっていたんだよなぁ」

提督「トイレマニアの俺としては、浄化槽式か汲み取り式のままで良かったんだが」

電『トイレは綺麗な方が良いのです』

提督「はは、そうかそうか」

アナウンス『次は、材木町南口に停まります』


提督「よいしょ」

電『痛たた！』

提督「あ、すまん、クラッチの踏みが甘かったな」

電『たまにあるのです』

提督「知っているか？　オートマ車のバスが1台あるんだって」

電『そうなのですか？　知らなかったのです』

提督「俺も見たことがなくてなぁ、伝説だと思っているよ」

アナウンス『次は、旭橋に停まります』


提督「よし、電！　あともうちょっとだ！」

提督「頑張って走るぞ！」

電『なのです！』

提督「よし！　終点だ！」

電『午前も頑張ったのです！』

提督「偉いぞ、電！」

提督「さて、この後はちょっと点検するか」

電『よろしくなのです！』

― 冬 ―


提督「もうすっかり冬だなぁ」

提督「電、タイヤにチェーン巻いてやるからな」

電『なのです！』

提督「よいしょ・・・」ﾁｬﾘﾝ

電『ふぁ・・・///』

提督「へ、変な声出すなよ・・・」

電『く、くすぐったいのです///』

提督「我慢してくれ、スリップ対策だ」ｼﾞｬﾘｼﾞｬﾘ

電『んっ・・・んんっ！///』

提督「あと後ろに重錘も乗っけるからな」

電『了解なのです！』

― そして廃車 ―


提督「電・・・」

電『司令官さん・・・』

提督「今まで本当によく頑張った」

提督「偉いぞ？」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

電『ん・・・』

提督「今日が来るまで君と一緒に走ることができて、本当に楽しかったよ」

提督「ありがとう」

電『こちらこそ、ありがとうなのです』

提督「俺は絶対にお前のことを忘れないよ」

電『電も、司令官さんとの思い出、絶対に忘れないのです・・・』

提督「電・・・」

提督「・・・あ」

米内光政「・・・・・・」ｺｸ

提督「・・・・・・」

提督「電、お迎えが来たよ」

電『なの・・・です・・・・・・』

提督「電、今まで本当にありがとう」

提督「じゃあな・・・」

電『司令官さん・・・』

電『さようなら・・・なのです・・・・・・』





ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛﾛﾛ･･････





提督「(電・・・・・・)」

アナウンス『次は、終点、松園バスターミナルに停まります』


提督「(・・・・・・)」

提督「(・・・・・・・・・)」

提督「(電・・・電・・・・・・)」

提督「(寂しいなぁ・・・)」

提督「(もう一度会いたいなぁ・・・)」

提督「(・・・・・・)」

― 納車　そして再開 ―


提督「電！」

電『司令官さん！　お久しぶりなのです！』

提督「また系統になったのか！」

電『なのです！　体もピカピカの新品なのです！』

提督「良かった！　また会えて！」

電『電もなのです！』

電『また一緒に頑張るのです！』

提督「あぁ！　もちろんだよ！」

提督「よし！　電、じゃあ早速・・・」

提督「走りに行くか！」

電『なのです！』







　









――― 終 ―――