1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/23(月) 11:05:10.13 ID:lPp7wiPdO
事務所でふと美希が言った。

「道端で沈んだ顔して歩いてるオ☆ト☆ナ見てるとイライラしてくるの!」

誰もいないような静けさの中、よく通る声だった。

ピクッと頭が動いて、やよいがその声に反応した。

「どうしたんですか、急に」

心配そうに声を掛けられても、美希は黙ったままムスッとした顔をして、それ以後口を開かなかった。


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2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/23(月) 11:14:42.72 ID:oV6lJGaeO
私は今20歳。

数年前の出来事が、頭の中でよみがえっていた。

道を歩きながら、車の中で話す皆の声が思い出される。

伊織が言った。

「これからライブだというのに、一体どうしたのかしら」

いつも眠っている美希が移動中でもムスッとした顔で起きていることに、皆疑問を持ち始めていた。

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/23(月) 11:18:25.17 ID:oV6lJGaeO
イライラしながら窓を睨んでいる美希に、真が気まずそうな顔で配られた飲み物を手渡す。

それを美希は無言で受け取り、またじっと窓を睨む。

「あんた…」

「…なに?」

冷たい声で呟く美希に、伊織もそれ以上何も言わなかった。

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/23(月) 11:30:44.17 ID:oV6lJGaeO

…私は美希が怒っている理由を知っていた。



「今日もファンの人達、盛り上がってはいたけどあんまり良いステージにはならなかったね」

ライブが終わった夜、事務所の屋上で夜景を見ながら、私に美希は言った。

「皆分かってないの。最近ファンの人達が、ミキ達のライブを見てもキラキラしなくなってきていることに。もしかしたら、アリーナライブが成功しちゃったのが原因なんじゃないのかな」

「それは違うよ。あの時は皆で成功させようって、その気持ちでやっていたんだから成功したんだと思う」

私の話を、美希はじっと街並みを見つめながら聞いていた。

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/23(月) 11:45:07.35 ID:oV6lJGaeO
事務所で皆が集まっているときに、自分を褒めるように亜美が言った。

「昨日のライブ、どうだった兄ちゃん!」

プロデューサーさんの前でウインクする亜美に、真美も後ろから割り込んだ。

「うんうん、どうだったー?」

「あぁ。二人ともまた一段と大人っぽくなったな」

答えながら頷くプロデューサーさんを見て、亜美はぐっと胸を張った。

「んっふっふ。大人っぽくなった亜美に、ファンの皆もメロメロっしょ」

楽しそうに話すプロデューサーさん達を、じっと美希は睨んでいた。

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/23(月) 11:53:50.76 ID:oV6lJGaeO
いつしか765プロは、燃えていた火が消えたように、煙だけがうすうすと立ち上るように、ゆっくりと姿を消していった。



「おはようございます」

いつも通っているビルに入った私は沢山の人達に聞こえるように挨拶した。

「おはよう、春香ちゃん」

「あっあずささん、おはようございます」

「うっふふ、そんなにかしこまらなくてもいいのよ」

昔に比べたらまた随分と大人っぽくなったあずささんが、私の前にやってきた。

あずささんの隣にいる美希に小さく手を振ると、美希は楽しそうに笑って言う。

「今日も、私お仕事がんばるのー」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/23(月) 11:55:24.52 ID:oV6lJGaeO




…美希は楽しそうに、自分の持ち場へと歩いていくのであった。









9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/23(月) 11:58:31.99 ID:oV6lJGaeO
仕事帰りの事だった。






あずささんと美希と三人で居酒屋へと向かっている時、あずささんに電話が掛かってきた。

「まただわ」

あずささんは面倒そうに電話に出ると、最後にこう言った。

「そのことについて今から話すから、あなたもあの居酒屋に来なさい」

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/23(月) 12:05:16.77 ID:oV6lJGaeO
「誰ですか?」

「あの子よ」

「ほんと、しつこいの」

お酒を飲んで、出てきた話題は電話の事だった。

「そろそろ来ると思うんだけど…」

あずささんが首を傾げている所に、ガラガラっとドアが開く。

「待ったか?」

「プロデューサーさん…!」

「おう、春香と美希も来てたのかってもうその呼び方は止めてくれ…というより、あいつはまだ来てないのか?」

「えぇ、私一人じゃ手に負えないから、お願いしたんですけど」

「あぁ俺に任せてくれ、ああいう奴にはちゃんと分からせないといけないからな」

心配するな、お前らの元で働かせたりはしない、とプロデューサーさんは言う。

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/23(月) 12:09:37.37 ID:oV6lJGaeO
「しかし面倒なやつだな、二十歳も過ぎて泣き面晒すなんてな。あいつには俺も腹が立ってるんだ」

プロデューサーさんは尻を浮かせながら、今か今かとメガネを曇らせる。

腰を上下に動かしながら…


「…頑張るの」

美希がそう呟いた……

…………………………………その時だった







タンッと音がして


「きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

プロデューサーさんがドアへと走って行って…

ドアを思いっきり開け放った

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/23(月) 12:25:52.36 ID:oV6lJGaeO
「はっテメェか!世の中のクズってのは。

えっ?学生時代はロクに勉強もしないで他に何か努力していることがあるわけでもなくて、毎日カラオケやら何やら遊びまくって、後先の事なんか考えもせずに好き放題過ごしてよ!

やれ学校ではカッコつけて天下取った気になって狭い世界でデカイ態度とってたやつが今や落ちこぼれか?お前みたいなクズは腐る程いるんだよ!

俺から言わせりゃなぁ、やる事やって来なかったんだからロクな仕事付けないのは自業自得なんだよ、それを自覚すらせずに体だけデカくなったヒヨッコが、これが現実だの現実は厳しいだの世の中を知った気になって、酒飲みながら愚痴こぼしてな、終いの挙句小さな子供達に自分の中身のない人生経験から夢のない事を教えだしてほんっとお前ら社会のゴミでしかないよな!そう言う奴は沢山いるぞ!

そういう中途半端な奴ほどプライドだけは高ぇから上から目線で物事を話して中身のない上下関係を作って、これが社会だの仕事は辛いだの、今自分辛い目にあってますぅ!!!みたいなアピールして、俺からすりゃぁほんっっっとバカでしか無いんだよな!

何にも努力してきてないのに努力した気になって、そういう勘違い野郎共が自分の仲間を作って自分を正当化してな、
クズが集まれば自分って普通なんだって錯覚してな、頑張ってきたやつを天才だの才能が違うだの最後には才能なんて言葉に逃げるんだぜ!

そんな害悪はうちの会社にはいらねぇんだよ、いい加減気づけよゴミがぁ!」



引用元: 春香「惰性で生きてる人多いですよね」