1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 19:35:54.94 ID:ed3tbj4xO
二穂「……ほう。今度の劇団エテルノの脚本として使えと?」

モルガナ「……ええ。隊長さんの世界から持ってきたんですよ」

二穂「何、あの猫隊長の本体がいる世界だと?」

依咲里「二穂様。このような者の戯言に付き合う必要はございませんわ。だいたい、劇団エテルノの脚本は私が担当していますのに……」

モルガナ「うふふ……戯言かどうかは、隊長さんに聞いてみれば分かるのではないでしょうか」

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2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 19:38:27.26 ID:ed3tbj4xO
二穂「ふむ。どうだ、隊長?」

隊長「……」

二穂「な、何!? 知っているだと!? ……一体どうやって持ってきた、どこのチャンネルだ?」

モルガナ「まあ、まあ……それはさておき、是非やってみてはいかがでしょうか? きっと面白いですよ、ふふふ……」スーッ

二穂「お、おい待て!」

依咲里「二穂様。あの者のことです、これは罠かと……」

二穂「まぁ、そうかもしれんが……とりあえず読んでみるか」

依咲里「二穂様! その必要は……」

雪枝「どうしたの、二穂?」

楓「あら、何やら面白そうなことになってるわね」

二穂「ああ、何でも隊長の世界から持ってきた脚本らしいぞ、コレ」

雪枝「ええ!? すごい……」

楓「それは興味あるわね。もしかして、私達の世界の常識とはかけ離れてたりするのかしら?」

依咲里「ああ、もう……」

華賀利「お姉様、いいではないですか。隊長様の世界の本、華賀利も気になります」

依咲里「華賀利、聞いてたのなら止めなさい! ……もう、仕方ないですわね」

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 19:41:11.51 ID:ed3tbj4xO
……………………

二穂「ふむ……適当にパラパラと読み進めてみたが、どうも典型的な勇者と姫と魔王のストーリーのようだな」

雪枝「いいな〜、お姫様……ちょっと、やって……みたいかも」

楓「主人公の剣士と仲間の魔法使い、何だか二穂と私みたいね」

華賀利「確かにお似合いですわ! 主役は二穂様で、魔法使いは
楓様、王女は雪枝様で決まりですわね♪」

二穂「悪くない。この際だ、ビスケット・シリウス全員で出てみてはどうだ。この途中で出てくる伝説の勇者と僧侶の役は華賀利と依咲里でいけるだろう」

華賀利「まあ、私が二穂様を導く伝説の勇者だなんておこがましい……それに、ご老人の役となれば髭もつけなければいけませんわね」

雪枝「あはは、お髭つけた華賀利さんと依咲里さん、見てみたいかも」

楓「決まりね。ねえ二穂、この役だと二穂と私、ライバル関係じゃない。あなたと本気で戦うなんて中々ない機会だからちょっと刺激的ね、楽しみだわ」

二穂「言ったな、楓。あたしも楽しみだ。冒頭のライバル同士の戦いのシーン、実戦ばりの本格アクションにするぞ」

雪枝「楽しみ〜! 王様とかの他の役もみんなに頼まなきゃね!」

依咲里「……あの者が寄越したモノにしてはマトモですわね……何か裏があるのでは……例えば結末とか……」

二穂「依咲里、腑に落ちないかもしれんが、たまにはいいだろう。今回は劇団エテルノ番外編ということならどうだ? さあ、他の役を探しに行くぞ!」

依咲里「……え、は、はいっ、二穂様!」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 19:42:41.14 ID:ed3tbj4xO
……………………
数日後

依咲里「……なんですの、この結末は!! やはり、あの者が持ってきた脚本などロクなものでは……」

雪枝「うう……ひどい……」

二穂「……すまん。最後まで読んでから決めるべきだった。だが、もう配役も決めて準備も始めてしまったし……今更変えられないな」

華賀利「た、隊長様……このストーリー、ご存知だったのですか?」

隊長「にゃー」

依咲里「!! 逃げましたわね……!」

二穂「よせ、依咲里。責任はあたしにある。こうなったからには、何としてでもこの劇、成功させるぞ」

依咲里「で、ですが! このような内容では成功したとしても後味が……今からでも遅くはありませんわ、中止にしてくださいませ二穂様! あるいは私が脚本を書き換えて……きゃあっ!?」バチッ

華賀利「お姉様!? 大丈夫ですか!?」

楓「この本……何か仕掛けがされてるわね」

二穂「脚本の書き換えはできないということか? 別の紙に書き写せばできないこともないが……いや、いい。このままやろう。あのモルガナの小さい方の挑戦、受けて立とうじゃないか」

雪枝「に、二穂……無理だよ私、二穂に向かってこんなセリフ言えない……」

二穂「演技だ、雪枝。本当にあたしに向かって言ってるわけじゃないだろう。ほら、練習するぞ」ズルズル

雪枝「いやぁぁぁ〜……」ズルズル

楓「大変なことになったわね……」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 19:44:49.14 ID:ed3tbj4xO
……………………
公演本番直前 舞台裏

二穂「よろしく頼むぞ、生徒会長」

あおい「任せてくれ。この大臣の役……正直、自分で自分を斬り捨てたくなるが、やるからには本気でやらせてもらう」

楓「本当にごめんなさいね……やってもらっちゃって。夜木沼さんも、王様役やってもらってありがとう」

伊緒「あはは……私はチョイ役だから。やられるシーン、思いっきりやるからね」

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 19:46:51.51 ID:ed3tbj4xO
……………………

依咲里「ああ、このような二穂様を辱める舞台……忌まわしい」

華賀利「お姉様……」

依咲里「二穂様が主役のはずだったのが、まさかの悪役だなんて……せめてもの救いのためにも、主人公役の7人には頑張っていただかないと」



遥「森部のじーさんの奥技が! てめーをぶっつぶす!!」

天音「ちょっとうるさいわよ! こっちはクンフーで精神集中しなきゃいけないんだから……てか、セリフ抜けてない?」

遥「あれ? そうだった……『そして俺の怒りがっ!』あーどうしよう、セリフ覚えらんないよー!」

天音「まったく……これだから知力25とか言われるのよ!」



依咲里「……」

華賀利「……ちょっと不安ですわ♪」

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 19:48:09.18 ID:ed3tbj4xO
……………………

二穂「雪枝」

雪枝「二穂……」

二穂「大丈夫だ。あくまであたしは緋ノ宮二穂ではない、剣士ニホステッドだ。ふふ、間抜けな名前だろう? 気にせず演じればいい」

雪枝「……うん。ありがとう。本気でやるね」

二穂「ああ。さ、もう時間だ」

楓「準備はいい、二穂?」

二穂「大丈夫だ。楓、言っておくが……」

楓「言わなくても分かってるわよ、二穂。演技、楽しみましょう?」

二穂「……そうだな。あたしは楓を、そして雪枝も、依咲里も、華賀利も、信じているぞ」

あおい「何をしている? 始まるぞ!」

二穂「今行く!」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 19:49:44.40 ID:ed3tbj4xO
……………………
劇団エテルノ番外編「ライブアライブ」
開幕


あおい「ではこれより、我がエテルノ国武闘大会、決勝戦を行う! まず、王よりお言葉がある」

伊緒「二人とも見事! これから二人に勝負してもらうわけだが、優勝した方にはこの……」

雪枝「……」

伊緒「ユキシアに求婚する権利を与える!」

二穂(雪枝……顔がこわばってるぞ!)

楓「ニホステッド……遠慮は無しだ。友達だからといって……手加減などしたら許さんからな!」

二穂(あたしはセリフがないから暇だな……そして改めて聞いてると、楓に男言葉は似合わないな。威圧感は三倍増しだが)

あおい「ではニホステッド対カエレイボウ……決勝戦、始めい!」

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 19:52:51.87 ID:ed3tbj4xO
……………………

あおい「ニホステッドの勝ち!」

二穂(よし、完璧だぞ楓。中々良い殺陣だったな。観客からも歓声があがっていた)

楓「くっ……お前の勝ちだ……」

伊緒「よくやった、ニホステッド! さ、ユキシアよ……」

雪枝「……ニホステッド様とおっしゃいましたね? とても男らしい……戦いぶりでした。よっ、よろこんで……あなたの妃となりましょう」

二穂(惜しいな……)

伊緒「ニホステッドの優勝と、ユキシアとの結婚……いや、我がエテルノの未来を築く二人を祝おうではないか! 皆の者、宴の準備じゃ!」

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 19:55:10.65 ID:ed3tbj4xO
……………………
宴の後 屋上にて

雪枝「とても、素敵な、宴でしたね……」

二穂(雪枝、固い固い!)

雪枝「父上も嬉しいのです。……もちろん私もです」

二穂(セリフ飛ばしたぞ!)

雪枝「姫というのはやめてください……」

雪枝「……」

二穂(……どうした?)

雪枝「……」スゥ…ハァ…

雪枝「今は、私とあなただけ」

二穂(お……)

雪枝「これからは父上よりも……いいえ、誰よりも」

雪枝「あなたを……信じます」

二穂(!!)ドキッ



竜「ーーグオオオオッ!!!」バッサバッサ

雪枝「きゃぁぁぁっ!! 助けて二穂、ニホステッドーーッ!!!」



『東の山に魔王あり……邪悪な心、邪悪な力をーーー』

二穂(やるじゃないか雪枝、いい演技だったぞ。でも最後あたしの名前を呼んだな……まぁいい)

『西の山に勇者あり……強き心、ーーー』

二穂(さぁ……ここからだな)

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 19:56:54.81 ID:ed3tbj4xO
……………………
観客席

椿芽「いいですね……やっぱり憧れます、お姫様って」

ハヅキ「あら……いつもドロドロのドラマ見て楽しんでる子の言葉とは思えないねぇ」

椿芽「そ、それはそれ、これはこれですっ!」

ハヅキ「まぁ、ここから……本当にドロドロになったりしてね」

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 19:59:45.74 ID:ed3tbj4xO
……………………
舞台裏

サトカ「ふう、竜終わりですね。次のモンスターは、っと……」

アコ「サトカっちはある意味気楽でいいのだ、ひたすらモンスター役だし」

サトカ「アコさんこそ、原始人役だから気楽だと思うですよ。主人公のうちの一人だし、いいじゃないですか」

アコ「そりゃそうだけど……このストーリーのラスボスを倒すのは気が進まないのだ」

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:01:23.30 ID:ed3tbj4xO
……………………
僧侶イサヌスの小屋

依咲里「カガッシュは確かに、かつて魔王を倒し勇者となった。しかしカガッシュを頼る人間、もてはやす人間が後を絶たず……やがて北の山に篭ってしまった」

二穂(ふむ、流石だな依咲里。いつもは監督だが、演者としてもよくやっている。ふふ、老人のヒゲも似合っているぞ)

依咲里「ーーーワシもそうじゃ。勇者という名声は人間を堕落させる。だからここで静かに暮らしていたのじゃ」

楓「すると、あなた……」

依咲里「左様……ワシがかつてカガッシュと共に戦った僧侶、イサヌスじゃ」

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:02:46.81 ID:ed3tbj4xO
……………………
カガッシュの山小屋

依咲里「カガッシュ……いつまでそうやって心を閉ざすつもりじゃ……。魔王が蘇ったのじゃ!」

華賀利「……」

二穂(うむ、華賀利もヒゲが似合っておる)

依咲里「弱くなったなカガッシュ。確かに人間は弱い……弱いゆえに強い者を頼りもする。じゃが弱いからこそ!強くなろうともする。人を信じるからこそ!強くもなれる……」

華賀利「……」

依咲里「行こうニホステッド。人違いじゃった。勇者カガッシュは死んだ……ここにいるのはただの拗ねた臆病者じゃ!」

二穂(依咲里に呼び捨てにされるのも新鮮だな。うむ、もっと普段からくだけてくれてもよいのに)

華賀利「……」ガチャリ

依咲里「……カガッシュ!」

華賀利「勘違いするな。くだらない人間達のために行くのではない。私が弱い人間ではないことを証明するためだ」

二穂(おい華賀利、素が出ていないか……? 少しニヤけてるぞ)

華賀利「魔王……今一度! この手でカタをつけてやる!!」

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:04:25.32 ID:ed3tbj4xO
……………………
魔王山 奥地
魔王像の部屋

二穂(さて……ここからが本番だ。ここから、あまりにも救われない展開が始まる)

華賀利「魔王!」

魔王「これは勇者カガッシュに僧侶イサヌス……この私が以前と同じかどうか、その命をもって知るがよいですよ!」

二穂(いくぞ……まずはここの殺陣を完璧に決める!)

17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:07:20.67 ID:ed3tbj4xO
……………………

魔王「ぐふっ……」

二穂(少々華賀利が張り切り過ぎな気もしたが……まぁなんとかあたし達でカバーできたな)

華賀利「ば、バカな……魔王ではない! こんな、魔王でもないザコ相手に……」

依咲里「カガッシュ! おぬし……」

華賀利「……ハッ、勇者カガッシュが……聞いてあきれるぜ……これが臆病になった者への報いか」ガクッ

楓「ヤツは魔王ではないと?」

華賀利「本当の魔王はあんなものではない……」

楓「で、では姫は!?」

依咲里「カガッシュ……おぬし病を患っておったな!! そんな体でなぜ来たのだ!!」

華賀利「私は……老いたりとはいえ、一度は呼ばれた人間だ……勇者と」

ザザ……

二穂(……ん?)

華賀利「少しは勇者らしい最期を迎えられそうだ……ニホステッド、この剣はお前が使え」

二穂(……! しまった、ボーッとしていた。うむ、しかと受け取ったぞ)

華賀利「姫は……お前が助けに来ると信じている……信じてくれる者が一人でもいる限ーーー」

ザザ……

二穂(な、なんだ……視界が)

華賀利「ーーそーーー人間をーーー信ーーー」

二穂(う……どうした、あたし……目眩か? 華賀利の声が……聞こえ……ない)

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:09:04.04 ID:ed3tbj4xO
…………ザザ……ザザザザ……

華賀利『二穂……さま……』

二穂『か……華賀利……! この大馬鹿者! なぜそんな無茶を!!』

二穂(な、なんだ、これは……)

華賀利『ああ……二穂様……二穂様が、私の、げほっ、げほっ!! だ、大好きな、に、ほさまに……』

二穂『喋るな、くそっ、撤退だ!! 戻るぞ楓!!』

楓『……』

華賀利『戻って、くださるの、なら……この命、投げ出しても……悔いは、ありません』

二穂『!!』

華賀利『……』

……ザザ……ザザ……

19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:13:03.87 ID:ed3tbj4xO
楓「いかん! ここは危険だ! 早くここを出るんだ!!」

二穂(……はっ!! しまった、このあたしが白昼夢などに……)

華賀利「……」

二穂(華賀利……)

楓「死んだ人間に構ってる場合か! 俺たちも死ぬぞ!!」

二穂(……ええい、今は演技に集中だ! まずはこの落盤から逃げる。そしてカエレイボウが)

楓「うわぁ……!!」

二穂(落盤に巻き込まれる。一瞬振り向くが、助けることができないと判断し逃げるしかなかった、と。走るぞイサヌス!)

20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:14:36.87 ID:ed3tbj4xO
……………………
舞台袖

二穂「……はあ」

あおい「どうした、らしくない。ほら、すぐ次のシーンだ、行くぞ」

二穂「あ、ああ……」

二穂(あの光景は……いや、いい。行こう)



華賀利「……魔王戦の記憶が無いですわ……」

サトカ「いたたた……華賀利さん、本気で蹴りすぎですよ。勇者なのに剣も使わずに……」

華賀利「ああ澄原様、これは誠に申し訳ありません……!」

サトカ「いえいえ……ふふふ、詫びカレーパンならいつでも受付中ですよ。それでは私はまた次の魔王がありますので」

21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:15:58.57 ID:ed3tbj4xO
……………………
エテルノ城

伊緒「そうか、勇者カガッシュもカエレイボウも……とすると本当の魔王はどこに。いや、最悪ユキシアは既に……」

伊緒「……取り乱してすまん。今日はもう休んでくれ」

22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:17:30.67 ID:ed3tbj4xO
……………………


雪枝『来ないで!』

二穂(魔王に襲われるユキシアの夢を見て目覚めると、不穏な気配を感じる。そして王の間に行ってみると……)

魔王?「……」

二穂(玉座に魔王の幻。これに剣を突き立てると、幻はあっけなく消滅し……)

伊緒「……う……」

二穂(王の死体だけが残る、というわけだ。よくできた大道具だ、さすがだな美少女探偵)

あおい「へ……陛下! 貴様、陛下を! 皆の者、出会え出会えーっ!」

二穂(すまぬな、会長。これでもかというぐらいの汚い役をやらせてしまって)

あおい「勇者カガッシュもカエレイボウも……もしや貴様が? ……魔王! ニホステッドは魔王だっ!!」

依咲里「何事じゃ!」

あおい「貴様も魔王山から生きて帰ってきた……魔王の仲間かっ!!」

依咲里「な、何ぃっ!?」

二穂(ふ、客席の生徒会役員が泣きそうな顔をしてるぞ。名演技だな)

依咲里「いかん、ニホステッド! 歯向かってはならん! 逃げるのじゃ、早く!!」

23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:19:01.35 ID:ed3tbj4xO
……………………
観客席

栞「あおい……よくあんな役やったわね。今にも自害したそうな顔してるわ」

チカ「ほんとだ、顔ピクピクしてる……あおいさん、ここんとこ機嫌悪かったのもしかしてこのせいかなぁ……」

夕依「そういえば最近、お茶請けをいつもよりたくさん食べていただいてましたが……」

栞「ストレスだったのね……」

24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:20:27.98 ID:ed3tbj4xO
……………………
城下町

「魔王だ……!」

「悪魔め、このエテルノから出て行け!」

ザザ……

二穂(……な、またか!?)

25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:21:54.82 ID:ed3tbj4xO
……ザザ……ザザザザ……

『何が世界制覇だ! これは緋ノ宮家による侵略だ!!』

二穂『ま、待て……違う』

『……魔王だ、奴は魔王だっ!!』

『出て行け、独裁者め!!』

二穂『……』

…………ザザ……ザザザザ……

26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:22:52.96 ID:ed3tbj4xO
「ウソだよね、ニホステッド様が陛下を殺したなんて!」

「いけません、近寄っちゃ!!」

二穂(……はっ!? またか……いかん、今どこまで進んだ!?)

二穂(……居場所を失ったニホステッドは、城へ戻り捕らえられる、か)

27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:23:49.74 ID:ed3tbj4xO
……………………
観客席

まな「うう……伊緒ちんが死んじゃったよぉ〜」

悠水「まなちゃん落ち着いて、演技だから!」

リョウコ「私の声が使われてた……あんなシーンだったなんて……てっきり本物の魔王に向けてのセリフだと思ってたよ」

悠水「あ、私も! いや〜、こんなキッツい展開だったとはねぇ、あはは……」

28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:25:08.34 ID:ed3tbj4xO
……………………
牢屋

依咲里「うう……誰じゃ……ニホステッド? 馬鹿な、何故戻ってきた……」

二穂(さっきの白昼夢……あれは)

依咲里「フォフォ……拷問にかけられたよ、お主が魔王なのかとな。酷いモンじゃな。カガッシュの人間ギライが分かる気もする」

二穂(……薄々分かってはいる。見えてしまったのだろう)

依咲里「じゃがな、ニホステッド。わしはこう思う。ここで人間を憎んでは負けじゃ……かといって、自分の心に嘘をついてもいかん」

二穂(いつか、どこかのチャンネルが)

依咲里「じゃから……ワシは命をかけても、魔王ではないと訴えるしかないのじゃ」

29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:26:19.29 ID:ed3tbj4xO
……ザザ……ザザ……

二穂『ここを開けろ、依咲里ーーっ!!』

依咲里『何をしておられるのですか二穂様! 早く逃げてくださいませ、でないと巻き込まれますわ!!』

二穂『だ、だがお前は!!』

依咲里『これは罰なのですっ! 主である二穂様を信じられなくなってしまった、私への……』

二穂『な……』

依咲里『私にはもう二穂様に付き従う資格はありません、どうか、ご自分を信じて……世界制覇を果たしてくださいませ!!』

二穂『……』

……ザザ……ザザザザ……

30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:27:19.84 ID:ed3tbj4xO
依咲里「カガッシュやワシらが命をかけて守ったものを……守り続けるのじゃ……」キュイイン……

ガチャッ!

依咲里「さ……行くのじゃ……お主には、まだすべきことが……信じる者がいるではないか……」

依咲里「そうじゃ、今一度あの場所、魔王山へ……カガッシュの死んだあの場所へ……!」ドサッ

二穂「依咲……っ」

二穂(依咲里……うう、今は劇に集中しなければ! いざ、魔王山に向かうぞ!!)

31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:28:44.89 ID:ed3tbj4xO
……………………
魔王山山頂

楓「やはり来たか!」

二穂(楓……お前は、まさかな?)

楓「俺がここにいることが不思議そうだな。あの時の落盤は魔王山の仕掛けなどではない……」

二穂(……いかん、あたしは今何を考えた? 楓を疑ったのか?)

楓「俺はあの時、魔王像の秘密に気づいた……その瞬間俺の、今まで抑えていた気持ちが爆発した! お前を出し抜いて……俺がユキシアを救おうと!!」

楓「そしていかにもここに仕掛けられたワナのように俺は魔法を唱えた!」

二穂(ん……楓、どうした? 冷や汗かいてないか?)

楓「……あ、後はてめえを絶望のどん底に突き落とすため王殺しの罪を負わせた! だが……てめえはここに来やがった!!」

二穂(セリフだいぶ飛ばしたな。大丈夫か? 何か我慢しているように見えるが)

楓「てめえはいつもそうやって! 俺のしたいことをぶち壊しやがる!!」

二穂(楓、落ち着け……! らしくないぞ!)

楓「昔からそうだ! 俺がどんなに努力しても、てめえはいつもその一つ上を行っちまう! あの決勝大会の時もなあ!!」

楓「はあ、はあ……俺が、あの夜、どんなに苦しんだか……てめえに、てめえなんかに! わかられてたまるかよっ!」

32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:29:57.69 ID:ed3tbj4xO
……………………
観客席

いつみ「……こ、これはさすがに引くわ、楓さんには悪いけど」

紗々「迫真の演技ですね〜!」

真乃「確かにすごいですけど……なんか二人とも様子がおかしくないですか?」

33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:31:21.72 ID:ed3tbj4xO
……………………

楓「今こそ! てめえをぶっ倒し! てめえの引き立て役だった過去に決別してやる!」

……ザザ……

二穂(こ、ここでかっ!!)

楓「あの世で俺に詫び続けろニホステッドーーーーッ!!!!」

34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:32:57.26 ID:ed3tbj4xO
……ザザ……ザザザザ……!!

二穂『うわあっ!? や、やめろ楓っ!!』

楓『……容赦はしないわ』ドォン!

二穂『くっ……!』キン!

楓『見損なったわよ……あのころの二穂は、どこにいってしまったの!』

二穂『……ああそうさ。ビスケット・シリウスが崩壊したのは、あたしの責任だっ! だが楓、今からでもっ!!』

楓『もう、手遅れよ!』ドォン!

二穂『ぐっ!! ゆ、雪枝はどうするんだ!!』

楓『私が助けるわ! もうあなたには任せられない! さぁ……覚悟なさい』キュイイン……

二穂『もう……分かり合えないのか……』シャキン

楓『……はあぁぁぁぁっ!!』

二穂『い、行くぞ……うああああああっ!!!』

……ザザ……ザザ……!!

35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:34:25.39 ID:ed3tbj4xO
楓「く、くそ……また……かよ……!!」ドサッ

二穂「はあ、はあ……かえ……っ!」

二穂(い、いや、待て。そんなはずは……あたし達、ビスケット・シリウスは……!)

雪枝「……カエレイボウ」

二穂「ゆ……」

雪枝「来ないでっ!!」

二穂(……)

雪枝「ニホステッド……なぜ来てくれなかったの? 私は待っていたのに……」

雪枝「この人は……カエレイボウは来てくれたわ!」

二穂(何だ、妙に気合いが入ってるな……)

雪枝「この人は、いつもあなたの陰で苦しんでいたのよ……あなたには、この人の……負ける者の悲しみなど分からないのよっ!」

二穂(ゆ、雪枝……そんな目で見るな……!)

雪枝「カエレイボウ……もう何も苦しむことはないわ。私が……」シャキン

二穂(やめろ雪枝、死ぬな……あたしを独りにしないでくれ)

雪枝「ずっと一緒にいてあげる!!」グサッ!

36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:35:43.39 ID:ed3tbj4xO
……ザザ……!!

雪枝『あは、あはは……二穂……!』

二穂『雪枝!』

雪枝『もう、嫌なのっ!! みんながお互いのことを信じられなくなって! みんな死んじゃって……!!』

二穂『雪枝、帰ろう……もういい、世界制覇はいいから二人で静かに暮らそう』

雪枝『嫌、嫌っ!! 来ないで!!』

二穂『……!』

雪枝『ごめんね二穂、ごめんね……! もう、ダメなの……さようなら!』ダッ

二穂『な、何をする気だ雪枝、待てっ!! ……雪枝ーーーーっ!!!』

……ザザ……ザザ……!!

37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:38:17.39 ID:ed3tbj4xO
雪枝「……」ドサッ

二穂「…………」

二穂(……あのチャンネルで何があったのかはわからない)

二穂(だが、一つ分かることがある)

二穂(あの結末は、『こっちのあたしたち』にもあり得るということだ)

二穂(あの世界のあたしが、特別大バカ者だったわけではない。あの世界の雪枝たちが、特別あたしのことを嫌いだったわけでもない)

二穂(ほんのちょっとのミス。すれ違い。不運。そういうのが幾重にも重なって、ビスケット・シリウスが崩壊してしまうことも……無限に広がる平行世界のうち一つくらいはあるのかもしれない)

二穂(……あたしが不甲斐なかったせいで、華賀利に見限られ、依咲里に疑われ、楓に裏切られ、雪枝に拒まれ……そして、民衆の心も離れ、孤独となったあたしには……)

二穂「……私には……もう何も残されてはいない……帰る所も……愛する人も……信じるものさえも」

ゴゴゴゴ……

二穂「魔王など……どこにもいはしなかった……」

ゴゴゴゴ……

二穂「ならば……」

38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:39:52.09 ID:ed3tbj4xO
……………………
観客席

あから「ま、負けるな! カガッシュやイサヌスの言葉を思い出すんだ!」

陽奈「ねえさっちん、あの後ろにある魔王像、なんか太過ぎじゃない? なんか魔王にしてはダサいというか……」

幸子「え!? た、確かに……途中で登場した魔王像と、違いますね……」

小織「……あれ、オブリ……?」

ティエラ「!! 気づきませんでした……よりによってこんな時に、一番厄介なオブリが出てくるなんて!」

あから「な、なんだって!? なら、すぐ劇を中断して助けなくては!」

ティエラ「だ、ダメです! 不用意に近づいてはいけません! あれは……人間の憎しみを増幅させる、『オディオブリ』ですっ!!」

39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:41:32.33 ID:ed3tbj4xO
……………………

二穂「な……オブリだと? そうか、そういうことか……!」

オディオブリ「……」ゴゴゴゴ

楓「……気をつけて、二穂……憎しみに、囚われてはダメ……」

雪枝「……く、苦しい……嫌……二穂のこと、嫌いなんかじゃ……」

二穂「……あたしは大丈夫だ、おかげで目が覚めた。二人とも寝ててくれ、このまま終わらせる」

40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:43:08.13 ID:ed3tbj4xO
……………………
舞台袖

あおい「何っ、オブリだと!? 劇は中断だ、加勢するぞ!!」

依咲里「お待ちくださいませ! 二穂様が、このままでよいと……」

あおい「な、一人で戦うつもりか!?」

伊緒「大丈夫……? 憎しみを増幅するオブリって言ってたけど」

華賀利「ええ、二穂様ならきっと……それに今の二穂様、いつにも増して凛々しく見えます……♪」

モシュネ「あ、あの……」

伊緒「モシュネちゃん、どうしたの?」

モシュネ「今ちょうど、二穂ちゃんの凄いメモカをゲットしたモシュが……」

あおい「なんだと……あのロボットの役はどうした!! 本番中にメモカを探しに行ってたのか!?」

モシュネ「そこは勘弁してほしいモシュ、いいメモカが取れそうな予感がしたモシュ……でもこのメモカ、二穂ちゃんに渡していいものか迷うモシュ」

依咲里「どういうことですの?」

モシュネ「それは……その……」

モルガナ「……渡してきてあげましょうか?」

モシュネ「うわ!? どこから現れたモシュか!!」

依咲里「……また貴方ですかっ! この劇、そしてあのオブリ、全て貴方が仕組んだことですのね!? 二穂様に何かしようというのなら、許しませんわ!!」

モルガナ「それはどうでしょう? うふふ……きっと大丈夫ですよ、ほら」スーッ

モシュネ「あっ! 勝手に奪うでないモシュ! 待つモシューっ!!」

41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:44:55.23 ID:ed3tbj4xO
……………………

二穂「……メモカ……?」

モルガナ(ええ。使ってみてはどうですか? さっきまで見ていたチャンネルの貴方ですよ。あの後、どうなったんでしょうね……?)スーッ

二穂「……」

二穂「……いつかどこかの世界の悲劇の剣士よ。感謝するぞ」

二穂「お前はあたしたちに教えてくれた」

二穂「誰しもが魔王になり得ることを」

二穂「憎しみがある限り、いつの世も……」

二穂「それを知ったからこそ、あたしはあえて逃げずに挑戦しよう」

二穂「たとえ全てを失っても、憎しみに囚われることなく……あたし自身が、人間であることを……信じてみせる!」

二穂「このメモカの中に眠るあたしは、魔王か人間か……?」

二穂「答えは……人間だっ!!」パアァァ

42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:46:13.32 ID:ed3tbj4xO
……………………
舞台袖

モシュネ「あわわ、使っちゃったモシュ……お願いモシュ、魔王にはならないでほしいモシュ……お?」

華賀利「ああ、二穂様! なんと儚く、そして力強いお姿……」

依咲里「きっと、幾多の苦難を乗り越え、世界制覇を成し遂げたお姿なのですね……」

伊緒「鎧とかの見た目はあまり変わってないけど……でも」

あおい「ああ。目がまるで別人だな」

43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:47:26.02 ID:ed3tbj4xO
……………………

二穂「ふふ……ちょっとハラハラしたがな。だが信じてみるものだ」

オディオブリ「グォォォ……!」ゴゴゴゴ

二穂「やってみろ。いくらでも憎しみを増幅してみるがいい。あたしには効かぬぞ」

二穂「憎しみに囚われず……コントロールして……お前に返してやるっ!」ゴゴゴゴ

44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:49:24.57 ID:ed3tbj4xO
……………………
舞台袖

あおい「禍々しいオーラが……大丈夫か?」

モシュネ「多分もう大丈夫モシュ。あれは、あのチャンネルの二穂ちゃんの必殺技……『デストレイル』モシュ!」

……………………

二穂「……行くぞっ! たあああああああっ!!」ゴォォォ!

オディオブリ「グォォォ!!?」シュゥゥゥ……



二穂「……倒した、か」ガクッ

45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:50:46.66 ID:ed3tbj4xO
……………………
舞台袖

依咲里「……っ!! 今です華賀利、マイクをっ!」

華賀利「え? あ、はいっ!!」

依咲里『……こうして勇者ニホステッドは、一度は絶望し自ら魔王となりかけるも、その強靭な精神力で人間を、そして己自身を信じ……人間の心に潜む真の魔王を見出し、打ち勝ったのです』

……………………
観客席

悠水「お、おおお! なんかきれいにまとまったよ!!」パチパチ

リョウコ「えっ、あれ、アドリブだよね……?」パチパチ

46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:51:58.29 ID:ed3tbj4xO
……………………
舞台裏

天音「えっ……ちょっと、何勝手に終わらせてるのよ、私たちの出番は!?」

アコ「オブリも現れてトラブってたみたいだし……スッキリ終わったならまぁいいのだ」

イミナ「ま、確かに重い話だったしね。せっかく衣装まで作ったのは勿体無いけどさ」

マリ「……別にいいんじゃない。写真でも撮っとけば」

イミナ「お、気に入ったのかマリ? あっはっは、確かに似合うもんな、死に場所求めて荒野さまよう役」

マリ「……」

アコ「イミナっちも無法っぷりが似合ってるのだ」

イミナ「う、うるさい! それに無法なのは松のほうだろ!!」


遥「……えーと、ジャッキーのパワーにモーガンの力、あれ、逆だっけ……あーもうややこしい!!」

ほたる「……ああ……勇者様は来てくれなかった……私はあなたを愛してもいいの……? ああっ……!」


アコ「じゃ、そろそろ向こうの二人も集めて写真撮影でもするのだ」

イミナ「あいつは忍者の役じゃなかったのか……? あっ、あとモシュネも連れて来なくちゃな」

天音「私はこんなの、納得いかないわよーーーっ!!!」

47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/19(日) 20:53:28.39 ID:ed3tbj4xO
……………………
劇団エテルノ番外編「ライブアライブ」
閉幕

依咲里「二穂様っ!!」

華賀利「二穂様! 楓様に雪枝様も、大丈夫ですか……?」

二穂「……ああ、大丈夫だ……」

楓「う……やったわね、二穂……」

雪枝「はあ、はあ……苦しかったぁ」

二穂「……二人とも、あのオブリに憎しみを増幅されていたのか?」

楓「そうみたいね。役に入れば入るほど、ニホステッドへの憎しみが募って……コントロールできなくて焦ったわ」

雪枝「……二穂、私、私! 違うから! 本気で二穂に向けて言ったわけじゃないから……!!」

二穂「はは……分かってるぞ、雪枝。大丈夫だ。よく耐えたな」

雪枝「二穂〜っ……」

華賀利「私も、魔王戦の時の記憶がございませんわ……確か、憎き魔王を倒さねばと思ったところまでは覚えてますが」

依咲里「オブリの影響ですわね。私も違和感は感じていました」

二穂「……みんな、すまない」

依咲里「……え? い、一体何を謝られているのですか、お顔を上げてくださいませ」

二穂「いや……ちょっと色々あってな。オブリの出現は意外だったが、それ以外にも……」

楓「その、メモカのこと?」

二穂「……そうだ。聞いてくれ、みんな」

雪枝「……」

二穂「あたしはまだまだ未熟だ。世界制覇には多くの困難が伴うだろうし、皆に迷惑をかけることもあろう」

華賀利「そんな……二穂様は」

依咲里「完璧ですのに……」

二穂「お前たちはあたしを過信しすぎだ! ……その、たまには、あたしがちゃんとあたしでいられているかどうか、厳しく見てくれてもいいんだぞ」

二穂「それから楓、お前もだ。あたしが道を誤ったら、遠慮なくぶん殴ってくれ」

楓「ふふ、どうしたの二穂? そんな乱暴するつもりはないけど……でもそうね、分かった」

二穂「雪枝……お前は戦いのとき、無理しすぎだ。辛かったら言ってくれていいんだぞ?」

雪枝「え!? ……う、うん。ありがとう。でも、二穂こそ!」

依咲里「そうです、二穂様。二穂様こそ、どうかお体をお大事に……」

二穂「ああ。……何があっても、あたしはお前達を信じる。そして、あたしはあたしであることを信じる。これから世界制覇まで先は長いぞ、よろしくな」

華賀利「はい♪」

依咲里「はい!」

楓「ふふ……よろしくね」

雪枝「……一緒に頑張ろうね、二穂!」

二穂「うむ! これにて閉幕だ! さぁ、特訓でもするか!!」


おわり!

引用元: 二穂「ライブアライブだと?」モルガナ「ええ」