1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 01:40:14.06 ID:KYE1EfKf0
律子「ほら昨日、平気でレッスン遅刻してきたじゃないですか。最近タルんでるんです」

P「ああ……」

律子「ああ……じゃないです! あなたがちゃんと指導してください!」

P「怒ったり注意したりするの、苦手なんだよ」

律子「もう、またそんなこと……そうやってあなたが甘やかすから」

P「わかったわかった、もう小言は勘弁してくれ」

律子「……ホントに分かってくれてます?」

P「ちゃんと注意しとくって」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 01:43:18.01 ID:KYE1EfKf0
P「響ー、ちょっとこっち来い」

響「なんだ? プロデューサー」

P「お前、最近レッスンに身が入ってないよな」

響「え……そうか?」

P「昨日のレッスンも5分くらい遅刻してきただろ」

響「遅刻って、たった5分だろ? 次から気を付けるさー」

P「……次から気を付ける、ね」


P(いつもならここで終わりなんだけど、さっき律子に怒られちゃったからなぁ)

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 01:47:10.89 ID:KYE1EfKf0
P「5分とはいえ、遅刻したのは事実だよな。なんで遅刻したんだ?」

響「なんでって……昨日はたまたま、何度も信号に引っかかっちゃって」

P「それはいつも通る道なんだから予想できるだろ。なんでもっと早く家を出ない?」

響「…………ごめん」

P「ごめんって何だ? 俺は『なんで』って理由を聞いてるんだけど」

響「それは、その……えっと……」

P「『5分くらい遅れてもいいや』って、お前の気が緩んでたからじゃないのか?」

響「……うん……」

P「それを身が入ってないって言うんじゃないのか? ん?」

響「………………」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 01:50:01.39 ID:KYE1EfKf0
P「それによってどれだけ周りが迷惑するか、分かってるか?」

響「迷惑って……」

P「スタジオを借りるのもタダじゃない。つまり5分は使ってなくても金を払う必要がある」

響「…………」

P「トレーナーさんを雇うのも同じだよな。しかもこっちは人間相手だから、心象も悪くなる」

響「…………」

P「それに俺も、待ちぼうけを食った5分は無駄になった。5分あれば書類の1枚は片付くのにな」

響「…………」

P「これらのお金は全部、お前が全責任をもって払ってくれるんだったっけ?」

響「……違う……」

P「違うよな? 事務所だよな? お前の給料から天引きされるわけじゃないよな?」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 01:54:17.21 ID:KYE1EfKf0
響「ごめん……」

P「いや、そんな言葉が聞きたいんじゃないんだけど」

響「え……」

P「別にな、何度も謝ってほしいわけじゃないから。それは一回で十分だから」

響「…………」

P「ただね? 5分前行動なんて、小学校で習うようなことが何でできないのか不思議なんだわ」

響「……っ」

P「ちょっと響と俺の間で認識相違あったかなって思ってな。次からちゃんとできるよな?」

響「……うん。わかった……」

P「『わかった』?」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 01:57:48.99 ID:KYE1EfKf0
P「一応さ、俺ってプロデューサーだよな」

響「? う、うん」

P「しかも響より年上なんだよな。で、ちょっと聞いていいか?」

響「……うん」

P「今更こんなこと言うのもなんだけど、なんで俺に対してタメ口なんだ?」

響「えっ……」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 02:02:17.13 ID:KYE1EfKf0
P「目上の人には敬語って、これも小学校で習う話だよな? いや幼稚園か?」

響「だ、だって伊織や亜美たちだって……」

P「年下と比較しても意味ないだろ? 春香も真も雪歩も、みんな敬語だぞ?」

響「美希とか……」

P「美希の態度を見習うべきだと本気で思ってるんだったら、それでいいけどな。思ってるのか?」

響「…………」

P「思ってないよな? アレはダメだよな? な?」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 02:06:42.58 ID:KYE1EfKf0
響「……ごめん……なさい」

P「うわ、びっくりした」

響「……?」

P「今まであまりにも自然にタメ口で話してたから敬語使えないのかと思ってた。使えるんだなー」

響「……じゃあ、挨拶とかも」

P「いやー、挨拶の『はいさーい』はいいよ。アイドルなんだし、それも個性だからな」

響「そ、そっか……」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 02:10:04.41 ID:KYE1EfKf0
P「まあそういう個性は別として。ちょっと気になったわけだ、プロデューサーとしては」

響「え?」

P「さっき俺が呼んだときも『なんだ? プロデューサー』って言ったよな」

響「あ…………」

P「春香なら『なんですか?』で、あずささんなら『なんでしょうか?』って言うところをだ」

響「…………」

P「『なんだ?』って来るからさ。俺もギョッとしちゃったのね。これ大丈夫かなーって」

響「…………」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 02:14:28.19 ID:KYE1EfKf0
響「……プロデューサー、さん」

P「そんな春香みたいにバカ丁寧にしなくていい。『先生さん』とか言わないだろ?」

響「……プロデューサーは自分のこと、嫌いなの……なんですか?」

P「いやいや。ちょっと勘違いしてるなぁ、響は」

響「勘違い……?」

P「俺は別に、お前のことが嫌いでこんな風に言ってるわけじゃないからな?」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 02:18:05.43 ID:KYE1EfKf0
P「響って可愛いじゃん?」

響「え……」

P「それにダンスも歌も上手いし、個性もあるし、人懐っこいし」

響「ちょっ……」

P「それだけ有望な子が変なところで躓かないように、今のうちにこうして注意してるわけだ」

響「……そ、そういうこと……?」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 02:23:39.91 ID:KYE1EfKf0
P「というか個人的に、響は将来ウチの大黒柱になると思ってるし」

響「ほ、ホントか!?」

P「………………」

響「あ……ほ、本当ですか?」

P「本当だ。他の子にはここまで言ったりしないからな。それだけ期待してるってことだ」

響「そ、そうですか……ありがとう、ございます」

P「じゃあそんなところで、今日のレッスンもバッチリ頼むぞ」

響「はいっ!」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 02:27:54.90 ID:KYE1EfKf0
翌日――


律子「プロデューサー」

P「ん?」

律子「響が急に敬語を使い始めて驚きました。どういう指導をされたんです?」

P「どういうって……普通に、ちょっと注意しただけだよ」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 02:32:15.20 ID:KYE1EfKf0
律子「ところで、今日は響がペットのハムスターを連れてきてまして」

P「ふーん」

律子「ただ、事務所に動物を連れ込むのはどうかと」

P「あー、また指導しろってこと?」

律子「仰る通りです」

P「めんどくさっ……」

律子「面倒とか言わない! あなたがそんなだからあの子が」

P「あーあー分かりましたって……」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 02:36:53.98 ID:KYE1EfKf0
P「響ー、ちょっと来い」

響「はい。なんですか?」

P「うわっ……」

響「……?」

P「いや、お前の敬語って違和感すごいなと思って」

響「……だって、プロデューサーが」

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 02:40:38.69 ID:KYE1EfKf0
P「まあ、それはそうなんだけど。ていうかやっぱり、タメ口にしよう。うん、そうしよう」

響「え……い、いいのか?」

P「だって、さっきのセリフだけで鳥肌立ったし……」

響「ひ、ひどいぞ! 自分で敬語使えって言ったクセに!」

P「いやホントすまん。予想以上に酷かった」

響「周りのアイドル達も気持ち悪いとか違和感すごいとかボロクソに言うし、さっきだって……」

P「だからさっき謝っただろ。過ぎたことをネチネチ責めるなんてみっともないぞ」

響「うう~……」

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 02:44:24.81 ID:KYE1EfKf0
P「ところで、今日はハム蔵を連れてきてるらしいな」

響「うん! 可愛いだろ?」

P「可愛いけど、ちょっと気になってることがあって」

響「なんだ?」

P「ハム蔵って、毛とか抜けたりしないのか?」

響「そりゃいっぱい抜けるさー。ハムスターなんだから当たり前だぞ!」

P「え?」

響「え?」

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 02:47:09.04 ID:KYE1EfKf0
P「あのさ。事務所にPCあるの知ってる?」

響「PCって、プロデューサーやピヨ子が使ってるヤツ?」

P「そう。あれって精密機器なんだけど、それは分かる?」

響「う、うん」

P「機器に動物の毛とか絡まると、ショートや発火の原因になるんだけど」

響「…………あ」

P「知らなかった?」

響「……ごめん。知ってた……」

P「あ、知ってた?」

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 02:49:16.28 ID:KYE1EfKf0
P「知ってたなら、なんでハム蔵とか連れてくるの?」

響「…………」

P「あのPCの中、結構重要なデータ入ってるんだけど。見積りとか契約とか」

響「ごめん……」

P「だからさぁ、昨日も言ったじゃん。『なんで』って言ってるの。理由を聞いてるの」

響「……可愛いから、つい……」

P「可愛いから連れてくるって何? じゃあ可愛い子供が産まれたら事務所に連れてきていいの?」

響「…………」

P「違うよな? サラリーマン金太郎じゃないんだから、一般的なルールっていうのがあるよな?」

響「……はい……」

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 02:52:11.25 ID:KYE1EfKf0
P「そりゃあ、本当に大事なデータはバックアップとってるよ?」

響「…………」

P「でも作りかけの資料とか、朝来たばかりのメールとかはバックアップされてないし」

響「…………」

P「それを抜きにしても、リカバリってそれなりに時間かかるんだわ」

響「…………」

P「ここにかかる時間だけ、俺や律子、音無さんは時間を損するわけだ。わかる?」

響「……わかります……」

P「そう? その分の俺達の給料は出るけど、結局事務所から見れば損になっちゃうよな?」

響「うん……」

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 02:55:06.87 ID:KYE1EfKf0
P「いきなりだけど、伊織って金持ちだろ」

響「……え? そ、そうだな」

P「金持ちのアイツが、フサフサの毛が付いた高級コートを着てこないのは何でか分かるか?」

響「あ……」

P「そういう事故を防ぐためなんだな。別に俺がそう言ったわけじゃなく、自主的にそうしてるんだ」

響「…………」

P「ところで、響って今何歳だっけ?」

響「……16歳」

P「伊織は15だ。つまり、響もそういうことに気配りできてておかしくない歳だよな?」

響「……うん……」

P「自分だけじゃなくて、周りも気にしていける人間になろうな?」

響「はい……」

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 02:58:13.50 ID:KYE1EfKf0
数日後――


律子「あの、プロデューサー」

P「ん?」

律子「響のことでちょっと。あの子、ハム蔵を連れてこなくなったのは良かったんですけど」

P「良かったじゃないか」

律子「……ただ、目に光が無いというか。覇気が無くなったというか。心当たりあります?」

P「ハム蔵を事務所に連れてこられなくなったからだろ?」

律子「ああ、そういうこと……」

P「自分自身の問題だし、こればっかりは時間が解決するのを待つしかないな」

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 03:01:27.88 ID:KYE1EfKf0
律子「ところで、別の話になりますけど……プロデューサー殿にお願いがありまして」

P「……なんだ? あらたまって」

律子「実は、伊織の身勝手さに最近ますます拍車が……」

P「おい、まさか伊織を説教しろとか言うんじゃないだろうな」

律子「はい……そのまさかです。お願いします!」

P「えぇぇー? 竜宮小町はお前の担当だろ?」

律子「そこをなんとか! 伊織はもう私の小言に慣れすぎてて、全然言うこと聞かないんですよ……」

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 03:05:01.34 ID:KYE1EfKf0
P「……まあ、律子には普段から世話になってるしな。これくらいは」

律子「ありがとうございます!」

P「で、それはいいとして。ちょっと律子に話があるんだけど」

律子「話……ですか?」

P「うん。そこ座って」

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 03:09:23.41 ID:KYE1EfKf0
P「あのさ。伊織が言うこと聞かないって?」

律子「は、はい」

P「なんでそんな事態になってんの?」

律子「……なぜかと言われると、即答できないです」

P「いつ答えられるようになるの?」

律子「いつって……わかりませんよ」

P「それを先延ばしにしてたらいつまでも解決しないし、伊織も言うこと聞かないままだよね」

律子「…………」

88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 03:13:18.61 ID:KYE1EfKf0
P「なんで根本原因を突き止めようとしないんだ?」

律子「…………」

P「伊織が自己中なままだとどこかで失敗するのは明らかだよな。伊織に大成して欲しくないのか?」

律子「そんなわけないでしょう!?」

P「じゃあすぐ改善案を考えればいいだろ? なんで考えないの?」

律子「それは……忙しくて、考える時間が」

P「忙しいなら、代わりに俺や音無さんからアイデアを募るとか、いくらでもやりようはあるけど?」

律子「……それは、そうですけど……」

P「『けど』? 何? 反論があるなら聞くよ? 遠慮無く言って、ほら」

律子「…………なんでもないです……」

89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 03:17:27.80 ID:KYE1EfKf0
P「そもそも、律子の怒り方が足りないんじゃないか?」

律子「そう、でしょうか……結構、キツめに言って……」

P「俺も怒るの苦手だけどさ。怒鳴るのと怒るのは違うよな」

律子「別に、怒鳴ってなんか……」

P「それは律子の考え方だろ? 伊織や亜美も同じ捉え方だと思うか?」

律子「…………」

P「中学生からしたら、口うるさい人、くらいのイメージしか持ってないんじゃないのか?」

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 03:21:44.18 ID:KYE1EfKf0
P「律子って、そこそこプロデューサー歴長いよな?」

律子「…………」

P「その間にできたコネを使って、うまく指導できる方法を誰かに教わったらどうだ?」

律子「…………」

P「他の事務所のプロデューサーとか、マネージャーとか。いくらでもいるだろ?」

律子「…………」

P「765プロっていう閉じた世界じゃなくて、もっと視野を広く持った方が成長できると思うけど」

律子「…………」

P「返事無いけど、言ってること伝わってる?」

律子「はい……」

92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 03:25:29.62 ID:KYE1EfKf0
翌日――


あずさ「プロデューサーさん」

P「はい?」

あずさ「今日、私のレッスンがあるんですけど、律子さん急にお休みになったみたいで」

P「ああ、本人から電話で聞きました。風邪引いたそうですね」

あずさ「それで、レッスンスタジオまでの道案内をお願いできないかなって……」

P「それも聞いてます。なので、道案内はしますけど……」

あずさ「?」

P「ちょっと話したいことがあるので、そこ座ってもらえます?」

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/19(水) 03:28:08.08 ID:KYE1EfKf0
終わり。

引用元: P「響に説教しろ?」