2: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 21:55:09.45 ID:gs0YsU8U
すみれ「なによ?別に普通でしょ?」ゴクゴク

かのん「なんか意外だなー」

すみれ「そう?」

かのん「ギャラクシーっていつも言ってるから、もっとキラキラしたものが好きなんだと思ってた」

すみれ「私が神社の娘ってこと忘れてない?和オブ和」

かのん「あっ、そう言われると不思議じゃないかも」

4: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 21:57:30.66 ID:gs0YsU8U
すみれ「ショービジネスの世界にいた頃、ご褒美に飲み物貰うことあったけど」ゴクゴク

すみれ「お茶ばかり頼んでたら、小さいのにシブいね~、とか言われたもんだわ」

かのん「もし今も続けてたら、お茶のCMに出られたんじゃない?」

かのん「ほら、今も子役だった子が出てるじゃん!」

すみれ「あー、なんたらのおきてで有名になったあの人ね」

5: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 21:59:37.09 ID:gs0YsU8U
すみれ「主役もやって、お茶の間の人気も知名度もある人ならともかく」

すみれ「私みたいな脇役しかやった事ない人間には無理よ」

かのん「そっかー。ショービジネスの世界は厳しいんだねえ」



かのん「ねえねえ、それちょっとひと口飲ませてよ!」

すみれ「え?」

6: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:02:45.31 ID:gs0YsU8U
かのん「美味しそうに飲むから、見てたら飲みたくなっちゃって」

すみれ「同じのがすぐそこの自販機で売ってるわよ」

かのん「今すぐ飲みたいの!」

すみれ「私の飲む分が減るじゃない」

かのん「ひと口だけでしょ。ケチ~」

すみれ「はぁ、しょうがないったらしょうがないわねー」

かのん「ありがとう!いただきまーす!」

7: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:04:52.48 ID:gs0YsU8U
かのん「...」ゴクゴク

すみれ「...」

かのん「...」ゴクゴク

すみれ「──って、あんたひと口って言ったでしょ!飲みすぎ!」

かのん「ぷはぁ!」

かのん「ごめんごめん!つい」テヘヘ

すみれ「まったく...」

すみれ「...」

すみれ「...」チラ

かのん「...ん?どうかした?」

すみれ「いいえ」


すみれ「かのんは、あまりこういうの気にしないのね」

かのん「なにがー?」

すみれ「何でもない」

10: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:07:41.72 ID:gs0YsU8U
すみれ「…で、どうだったのよ?」

かのん「え?」

すみれ「感想の一言二言あっても良いでしょ」

かのん「うーん」

かのん「渋味と甘みのバランスが絶妙で──」

すみれ「いや、そこまで凝ったコメント求めてないから」

かのん「あ、そう?じゃあ...」

かのん「美味しかったよ!すっごく!」ニカッ

すみれ「そりゃあれだけ気持ちよく飲めばねえ」

かのん「あと、なんか分かんないけど甘酸っぱかった!」

すみれ「.......」

すみれ「かのんはお茶より──」


すみれ「サイダーみたいなさわやか系のCMが似合いそうね」

かのん「何の話?」

すみれ「何でもないったら何でもないわよ」

11: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:10:37.51 ID:gs0YsU8U
かのん「でも、そっかー。すみれちゃんは緑茶好きなのかー」

すみれ「まだ意外とか言うつもり?」

かのん「違う違う!」

かのん「良かったらさ、今日の練習後、うちの店のも飲みにきてよ!」

すみれ「かのんの喫茶店って、コーヒーとか紅茶が主流なんじゃないの?」

かのん「緑茶の良いメニューもあるんだよ、これが!」

すみれ「何それ。静岡茶とか宇治茶とか?」

かのん「ううん!けど、すみれちゃん絶対気に入ると思うんだ!」

すみれ「へえ、そこまで言うなら楽しみね」

12: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:12:50.70 ID:gs0YsU8U
すみれ「いいわ!今日の練習後、早速行ってあげる!」

かのん「良かったー!実は今日1人で店番だから、心細かったんだよー!」

すみれ「他のみんなは誘わないの?」

かのん「みんなバイトに推し活に生徒会で忙しくって」

かのん「すみれちゃんはなんか暇そうだし」

すみれ「暇そうって何よ!」

───
──

14: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:15:23.80 ID:gs0YsU8U
──かのん's Cafe──

🚪カラカラン…


すみれ「ほら、来てあげたわよ」

かのん「ありがとうー!ささ、カウンター座って」サッサッ

すみれ「私なんだし、別におしぼりとお冷出さなくてもいいでしょ」

かのん「今日のすみれちゃんは、大事なお客様だからね」

すみれ「律儀ねえ。それより、早く良い緑茶とやらをくれないかしら?」

かのん「はいはーい!ちょっと待ってて」

15: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:18:29.33 ID:gs0YsU8U
かのん「~~~♪」

すみれ「....」


すみれ(鼻歌歌っちゃって。楽しそうね)

すみれ(好きこそものの上手なれ、ってやつかしら)

すみれ(悔しいけど、やっぱり歌上手いのよね)

すみれ(可可や千砂都がかのんの声を気に入るわけだわ)


すみれ(……ま、私もなんだけど)


かのん「はい」🍵

すみれ「へ?」

かのん「できたよ、緑茶ラテ」

16: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:21:44.17 ID:gs0YsU8U
すみれ「ラテ?牛乳が入ってるってこと?」

かのん「そっ。意外と合うんだよ?」

すみれ「見た目は緑茶というより、抹茶みたいね。泡立ってるし」

かのん「味は保証するから!ささっ、一杯行ってみて!」

すみれ「...いただきます」

すみれ「....」ゴクッ

すみれ「────!!」


すみれ「なにこれ!すっごく美味しいじゃない!」

かのん「よっしゃ!」

17: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:24:26.18 ID:gs0YsU8U
すみれ「牛乳と混ざることで、緑茶の苦味がまろやかになる。けれど、本来の苦味は損なわれず、舌の奥でじんわり主張してくる」

すみれ「温かい緑茶を飲んだ時の、思わずほっと息が出てしまうような、心をくすぐる趣も感じられる」

すみれ「間違いなく緑茶好きも苦手な人でも満足する1品だわ!」

かのん「おおう…すごい感想だね」

すみれ「ショービズ界で鍛えた食レポ力よ」

すみれ「この緑茶ラテの評価はギャラクシー級ね! 」

かのん「それ、何段階評価?」

すみれ「下から小石、海、空──」

かのん「あ、ごめん。やっぱいい」

すみれ「ギャラクスィーッ!!」

18: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:26:42.85 ID:gs0YsU8U
かのん「ふふ。でもラテでギャラクシー級って、言い得て妙かも」

すみれ「どういうことよ?」

かのん「ギャラクシーって、ギリシャ語でミルク(の道)を意味する言葉が語源なんだ」

すみれ「よく知ってるわね、そんなこと」

かのん「一応、翻訳家の娘だからね~」



すみれ「ねえ、もう一杯いいかしら?」

かのん「もちろん!」

──....

19: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:31:09.29 ID:gs0YsU8U
かのん「~~~~♪」

すみれ「...」


すみれ(かのんのエプロン姿、似合ってるわね)

すみれ(可可の面倒見たり、ツッコんだり、いじられ役になったり、ショービズ経験もある私が大人みたいなつもりでいたけど)

すみれ(センターやるだけあって、やっぱり貫禄あるわよ、かのん)

すみれ(将来は何になるのかしらね)

すみれ(音楽を仕事にするのか。喫茶店のママさんになるのか)

すみれ(なんにせよ、千砂都はあんたが銀河一になれると信じてるみたいだから)

すみれ(夢を守ってあげなさいよね)


かのん「はい」🍵

すみれ「ありがとう。──って、なにこれ?私?」

かのん「ラテアートで、すみれちゃん描いてみたよ」

20: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:34:33.05 ID:gs0YsU8U
すみれ「は~、よく似ているわ。あんたって結構器用ね」

かのん「いやいやいや。私なんて全然」

すみれ「褒めてるんだから、素直に喜んでおきなさいって」

かのん「いや~、でもほんと──」

すみれ「こらこら」

すみれ「前にも言ったでしょ。嫌われちゃうタイプだって」

すみれ「私なんて~とか、あんまり普段から卑下するクセ付いてると、ステージでのオーラも霞んじゃうわ」

かのん「...」

すみれ「謙虚と卑屈は違うの」

すみれ「もっと自信持って堂々としなさい」



すみれ「Liella!のセンターは、かのんでしょ?」

21: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:36:07.28 ID:gs0YsU8U
かのん「すみれちゃん...」

かのん「...」

かのん「...そっか」

かのん「──うん。そうだよね!ありがとう!」

すみれ「それでよし!」

かのん「へへっ、すみれちゃんは優しいね」

すみれ「何よ急に」



かのん「私、すみれちゃんのそういうとこ、好きかも!」

すみれ「...っ///」

23: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:38:07.42 ID:gs0YsU8U
すみれ「ふ、ふん!あんたがしっかりしてくれないと、こっちもセンターの奪い甲斐が無いし!」

すみれ「私くらいになると、多少ライバルに塩を送ったくらいでセンターは遠のかないもの!」

かのん「あれ~?褒められたら素直に喜ぶものなんじゃないのー?」ニヤニヤ

すみれ「か~の~ん~!」

かのん「ひいっ…!ほ、ほら!早く緑茶ラテ飲みなよ!冷めちゃうよ!」

すみれ「……まったく」




すみれ「....」ゴクッ

すみれ「ほっ、美味しいったらおいしいわね」

24: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:41:41.34 ID:gs0YsU8U
かのん「なんか今日は、ずーっと一緒にいるね」

すみれ「そうね。それに2人だから、とても静か」

すみれ「可可はいつも突っかかってくるし、千砂都は熱血だし、恋は意外とおっちょこちょい」

すみれ「毎日いつも騒がしいったらありゃしない」

かのん「すみれちゃんも、結構自由だけど?」

すみれ「やかましい」デコピン

かのん「いたっ!」



すみれ「...」

すみれ「...ありがとね」

25: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:44:42.90 ID:gs0YsU8U
かのん「ラテアートのこと?」

すみれ「それもだけど...」


すみれ「スクールアイドル、誘ってくれたこと」


すみれ「楽しいわよ。あんたたちとする練習も、ステージも」


すみれ「少なくとも、スカウト惹くために1人で街中ブラついてた頃より、ずっと充実してるわ」


すみれ「もちろん、今こうしている時間もね」




かのん「.......」


かのん「...なんか、恥ずかしいな」


すみれ「こ、こんなこと、2人きりじゃないと言えないでしょ!」


かのん「あはは、怒鳴んないでよ」

26: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:46:16.08 ID:gs0YsU8U
かのん「私もね──」


かのん「すみれちゃんを誘って良かった !」


かのん「スクールアイドルはもちろんだけど──」


かのん「すみれちゃんがうちの喫茶店に来て、私がお茶を出して、2人きりでゆっくりしてる」


かのん「こうして過ごしてる今も、もしかしたら無かったかもしれないんだよね」


かのん「ありがとう!私も好きだよ!すみれちゃんとの時間!」

27: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:47:30.79 ID:gs0YsU8U
すみれ「...」

すみれ「...か、かのんも、なかなか恥ずかしいこと言ってるわよ」

かのん「すみれちゃんが先に言ったんだよ!」

すみれ「仕返しのつもり?」

かのん「ううん、ありがとうのお返し」

すみれ「....っ」


すみれ「──ほんと、お互い恥ずかしいやつね」

かのん「もしかして私たち、結構似てるのかもね」

すみれ「...」



すみれ「...ふふっ、そうかも」

28: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:49:12.41 ID:gs0YsU8U

──
───

すみれ「そろそろ帰るわね。楽しかったわ」

かのん「もっとゆっくりしてってもいいのに」

すみれ「妹の相手しないといけないのよ」

かのん「すみれちゃん、妹さん居たんだ。ごめんね、わざわざ」

すみれ「ほら、そういうの」

すみれ「楽しかったって言ってるんだから、気にすることないの」

かのん「ごめ──ううん、ありがとう」

すみれ「今度妹を連れてきてもいい?」

かのん「もちろん!」

すみれ「あの子も緑茶好きなの。また似顔絵ラテアート作ってちょうだい」

かのん「任せてよ!」

29: 名無しで叶える物語(光) 2021/10/25(月) 22:50:52.28 ID:gs0YsU8U
すみれ「それじゃ、行くわね」

かのん「うん、ばいばーい!」


──....

──....


すみれ「あ、ちょっと待った」

かのん「?」

すみれ「いろいろ言っちゃったけどさ」






「私、かのんみたいな子、好きよ」


「また、今日みたいに過ごしましょ」






おわり

引用元: かのん「へ~、すみれちゃんって緑茶が好きなんだ!」