ゆま「えっと……なぎさちゃん?」
なぎさ「う、うん……」
ゆま「わたし、千歳ゆま。よろしくね」
ゆま「ゆまって呼んで」
なぎさ「……よ、よろしく……なのです」
なぎさ「……ゆま、ちゃんは……キリカお姉さんのお友達?」
ゆま「……うん!」
キリカ「あ、ちょっと悩んだ」
杏子「仕方ないな」
まどか「うん」
キリカ「いや、まぁ、ほら……あー……まぁいいけどさ」
415: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:12:10.26 ID:DE/T/7vEo
ゆまちゃんと初めて会った時のことを思い出しました。
ほむらちゃんとマミさんが会わせたい人がいると行って、
こことは違う……人気のない夕暮れの公園に来ました。
少し待って、杏子ちゃんが来て……その後ろにいたのがゆまちゃんでした。
杏子ちゃんはマミさんを睨みながら何か話してました。聞き取れなかったのでわかりません。
ゆまちゃんには威嚇されました。
そしてマミさんの背後にこっそりと回って、何故かスカートをめくろうとしました。
多分杏子ちゃんを責めてるように見えたんでしょうね。
ほむらちゃんに止められて、叱られてショボンってしてました。
さやかちゃんは「何この変な子」って言ってましたが、
まぁ今にして思えば、警戒していたからと、まぁわかりますが……。
416: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:13:23.93 ID:DE/T/7vEo
ゆまちゃんは、人見知りでした。
というより、杏子ちゃん以外に不信感を持っていたというか……
勿論、今では思いっきり飛びついてくる程に人懐っこい子です。
猫みたいな言い方ですが、人に慣れました。
いや、むしろゆまちゃんは猫みたいな子なのです。
ゆま「お話しようよ?なぎさちゃん!」
なぎさ「……う、うん」
ゆま「魔法少女になってどれくらい?」
なぎさ「えっと……結構前なのです」
ゆま「……それっていつ?」
なぎさ「いつかは今じゃないのです」
ゆま「え?何が?」
年が近いということもあるんだろうけど、
こうして初対面の相手にフレンドリーに接するようになって、嬉しいものです。
417: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:14:10.71 ID:DE/T/7vEo
キリカ「まぁまぁ二人とも」
キリカ「ほら、そこの自販機で好きなの買って飲みなよ。ほら、お金あげるから」
キリカさんが金色のコインを乗せた手を差し出すと、ゆまちゃんは丁寧に受け取ります。
少し前までキリカさんを本気で怖がっていたのに、慣れたものです。
そしてキリカさん、何でも子どもが苦手だそうですが……ゆまちゃんとなぎさちゃんは大丈夫みたいですね。
タツヤとはまだ会わせてませんが、いつか会わせる機会来るでしょうか。
キリカ「釣りはお駄賃にしていいよ。山分けしな」
ゆま「ありがとう!」
なぎさ「な、なのです」
ゆま「行こっ、なぎさちゃん!」
なぎさ「あっ、ゆまちゃん。待って」
418: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:15:03.53 ID:DE/T/7vEo
ゆまちゃんの後を追って、なぎさちゃんもとっとこ走る。
ゆまちゃんとなぎさちゃん。幼い魔法少女同士すぐに仲良しになれそうです。
かわいいなぁ。
キリカ「あぁー……やれやれ、二人とも。来てくれて助かったよ」
キリカ「ほら、私って子ども苦手なんだよね。精神的に疲れちゃった」
杏子「あぁ、ゆま見て何かそんなことも言ってた気がするな」
まどか「でもその割には結構……ね?」
キリカ「うん?」
まどか「結構お姉さんしてたなって」
キリカ「そうかな……?」
キリカ「でも、そりゃあさ」
419: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:16:45.32 ID:DE/T/7vEo
キリカ「流石に当の子どもの前で節操なく拒絶したりはしないよ」
キリカ「世間体というか公私混合っていうかコペルニクス的転回というか?」
杏子「何言ってんだお前?」
キリカ「うん、ゆまでちょっと慣れたってとこもあるね」
まどか「……あの、それで。なぎさちゃんは……」
キリカ「うん?」
まどか「キリカさんと、どういう関係なんですか?」
キリカ「どういうって言われると……そうだね……」
杏子「親戚か?」
キリカ「親戚……ってわけでもないけど……」
キリカ「んー、まぁ、知り合い。そんなとこだね」
420: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:17:20.57 ID:DE/T/7vEo
キリカ「近い内にみんなにも紹介するつもりだったんだ」
杏子「一応聞くが、マミんとこにおしつけるってんじゃないだろうな?」
キリカ「……もしかしたら泊めてやってって頼むことはあるかもしれないけど、そんなつもりはないよ」
キリカ「なぎさはとりま、織莉子んとこにつれてく。私と織莉子二人きりの時間が減るのは少し寂しいけどさ」
杏子「織莉子のとこか……」
まどか「じゃあ入れ違いでしたね」
キリカ「うん、悪いね。理想としては君らが来て、その時ついでに紹介したかったんだけど」
キリカ「色々と立て込んじゃってね……」
キリカさんはぽりぽりと頭を掻きながら空を見上げました。
鮮やかな空色。ぽかぽか陽気。
421: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:18:25.34 ID:DE/T/7vEo
キリカ「ま、なぎさのことはいいとして」
キリカ「やっぱ、ほむらのこと?」
まどか「…………」
杏子「あぁ……その通りだ」
キリカ「まぁそうだろうね」
キリカ「私も織莉子から聞いたよ。大変だったね」
視線を空からわたしに移し、同情の目をしてくれました。
かつてその目で殺意を向けられましたが。
なので、不意に見つめられると一瞬、ぎくりとしちゃう。
わたしの悪い癖。
422: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:19:44.38 ID:DE/T/7vEo
キリカ「あぎりさんとか言ったね?ほむらを攫ったのは」
まどか「はい……」
杏子「…………」
キリカ「ん?どうかした?」
杏子「いや、お前がさん付けなんて珍しいなって」
キリカ「……私だって一応、年上に対する敬意とか、ある」
キリカさん……マミさんと織莉子さんは三年生です。
だから、この三人が「先生」以外の年上のことを話してる様子……
少なくともわたしは見たことはない。あぎりさんが何歳かは知りませんが
だから、キリカさんの「さん付け」は、何となく真新しいなって気持ち。
423: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:20:55.42 ID:DE/T/7vEo
キリカ「魔法少女じゃないのに、魔法少女を攫うなんて……」
キリカ「すごい輩もいたもんだね」
まどか「それで……わたし達は、織莉子さんに……予知で、ほむらちゃんの居場所とかわかったらなって思って」
キリカ「そうか。それが要件だったんだね」
キリカ「はは、まぁ無理だったんだろうね。それでわかればもっと早く君を殺しに出かけられたよ私達は」
まどか「…………」
キリカ「タチの悪い冗談だったね。謝るよ」
杏子「ま、あたしとゆまは付き添いというより護衛に近かったりするんだよな。そんなお前達だから」
キリカ「…………」
杏子「タチの悪い冗談さ。大体は」
キリカ「言ってくれるねぇ。……ん?大体?」
424: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:22:12.83 ID:DE/T/7vEo
キリカ「ま、まぁいいや」
杏子「一応収穫はあったから、会って無駄ではなかった。な?」
まどか「う、うん……」
キリカ「ほむらが戻ってくるっていう予知のことだね。私も聞いた」
キリカ「それじゃ私からも……ちょっと情報をば。脳の片隅にでも置いといて」
杏子「……情報?」
キリカ「織莉子は話してないかもしれないけどさ」
キリカ「実はさ……ちょっと、心当たりがある」
杏子「心当たり?何の?」
キリカ「……ほむらを狙う犯人」
まどか「……!」
425: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:23:09.52 ID:DE/T/7vEo
杏子「狙うって……あぎりとは違うのか?」
キリカ「あぎりさんは危害を与えないって言ったんだろう?そして実際戻ってくる未来だ」
キリカ「それでさ……あぎりさんがほむらを匿っているんじゃって……私と織莉子は考えてんだよね」
キリカ「私が言いたいのは、その匿う理由、その敵」
トラブルに巻き込まれて……あぎりさんはそう言った。
無事は保証します……あぎりさんはそう言った。
わたし達を巻き込ませたくない……ほむらちゃんはそう言ったらしい。
キリカさんの言う犯人。
何となく、わたしの中で何かが繋がっていっているような気がします。
キリカ「名前は『優木沙々』……」
キリカ「勿論魔法少女だ」
426: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:23:48.10 ID:DE/T/7vEo
杏子「……優木、沙々?」
まどか「……魔法少女」
キリカ「実はね……私と織莉子は、君達に出会う前にそいつと会っていたんだ」
キリカ「いや、会ったというよりは……襲われたって言い方が近い」
まどか「……!」
杏子「テリトリーを狙って、か」
初めて聞く名前。でも、魔法少女。
他のテリトリーを狙う魔法少女がいるという話は聞いていた。
優木沙々という人も「その」魔法少女だったんだ。
あとで詳細をネットで調べてみよう。キュゥベえネットワークがあれば、
魔法少女に関係することならわからないことは少ない。
キリカ「まぁそうだね」
キリカ「人を洗脳する能力を持っている……自意識過剰でコンプレックスの塊みたいなケチな魔法少女さ」
427: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:24:42.78 ID:DE/T/7vEo
キリカ「織莉子は、あいつの術中に嵌ってしまったんだ。まだ、私達は経験も浅かった」
キリカさんは、ことの経緯をダイジェストかのように、簡単に話してくれました。
他の街から、その優木沙々って人が見滝原に来たそうです。
目的は勿論、見滝原の魔法少女を支配してテリトリーをゲットすること。
それで、最初に目をつけたのが織莉子さんでした。織莉子さんはお嬢様学校の生徒。
……その人は織莉子さんの身の上にコンプレックスを抱いたっぽいです。
なので織莉子さんを不意を突く形で洗脳し、親友を装いました。
その人の洗脳魔法は『自分より優れている相手』しか操れないんだそうです。
『魔女を操る』こともできるそうで……驚きの能力。
キリカ「魔女を操るったってね……所詮は洗脳だけが取り柄みたいなとこあるから」
キリカ「あいつ自身はただ並以下の魔法少女だと思うね」
428: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:26:58.23 ID:DE/T/7vEo
キリカ「時間停止能力がないナイフ一本持ったほむらでも判定負けするレベル」
キリカ「ほむらとあいつじゃ戦闘センスやメンタルにも差がでっかいだろう」
でも、その洗脳はキリカさんによって(キリカさん曰く『深い愛』故に)織莉子さんは正気を取り戻しました。
で、なんだかんだあってフルボッコにしたそうです。
だけどその人は(魔女を操ることができるから)孵化寸前のグリーフシードを隠し持っていて、
偶然か必然か、魔女が誕生し、そのどさくさに紛れて逃げられてしまったんだそうです。
その後、織莉子さんは見滝原中学校に目を向けて……とのことでした。
と、大まかな話と洗脳を解くコツを話し、
キリカさんは大げさなアクションで「やれやれ」と肩を竦めました。
……そんなことがあったんだ。初めて知った、二人の過去のこと。
思えばわたしは二人のことを、何も知らないや。
429: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:27:24.78 ID:DE/T/7vEo
杏子「逃がした……ねぇ。……で?それがどうしてほむらと繋がるんだ?」
杏子「聞いた話じゃ、ただ単に、過去にいざこざがあったとした」
キリカ「まぁ話は最後まで聞いてよ」
キリカ「君達とのいざこざが何とか落ち着いた後にちょいと、そいつを探して見たんだ」
キリカ「一度逃した敵の再来に警戒するのは当然だからさ、一応ね」
キリカ「……で、行方不明になってた」
まどか「行方不明……!?」
キリカ「魔女の結界で死んだ?魔女になった?」
キリカ「しろまるに聞いてみたら、違った。生きていると言っていた」
キリカ「家にも学校にも見せてないらしい。一応捜索願が出ている」
キリカ「今日、私はなぎさのとこに行って……しろまるに会った。そして、聞いた」
キリカ「しろまるがあいつを最後に見たのは見滝原だ。それもほむらのアパートの近くだ」
430: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:28:12.35 ID:DE/T/7vEo
まどか「…………」
キリカ「……しかも、昨日の夜だ。ほむらが攫われた日の深夜」
杏子「……!」
キリカ「私と君達じゃあないが……あぎりさんと入れ違いだったんじゃないか……ってのが、私の意見さ」
まどか「それで……その人が怪しいって……」
キリカ「私が言ったことは全部、推測に過ぎない。だから織莉子も話さなかったんだろう」
キリカ「……まぁ、なんだ」
キリカ「私はヤツの能力を伝えた。だからってことでもないけどまぁ、気を付けてね」
……キリカさんの話に集中しすぎて、体が固まってました。
優木沙々っていう人……行方不明で、ほむらちゃんのお家に近づいた、織莉子さんとキリカさんの敵。
ほむらちゃんは帰ってくるっていう、安心要素をいただいたはいいけど……
別の不安要素が生まれてしまいました。
431: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:28:48.35 ID:DE/T/7vEo
キリカさんは困ったように笑って「怖がらせちゃったかな?」って言いました。
わたしは「いいえ、そんなことは……」と言って……誤魔化しました。
……大丈夫。
仮に、優木沙々という人が関係あったとしても、
あぎりさんと入れ違い説とすれば……その人とあぎりさんは別。
織莉子さんの予知とあぎりさんの言葉を信じれば、
ほむらちゃんは、優木沙々っていう人には負けない。
万が一にでも、ほむらちゃんが洗脳されて帰ってこようものなら、
キリカさんから聞いた、洗脳を解く方法を試みればいいのです。
……ゆまちゃんとなぎさちゃん遅いね。
と、別のことに意識を向けて紛らわせることにしました。
432: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:29:27.54 ID:DE/T/7vEo
ゆま「キョーコ!キョーコ!」
杏子「うおっ!びっくりした。なんだよ」
ゆま「鬼!」
杏子「本当になんだよいきなり!」
なぎさ「ゆまちゃんがキョーコお姉さんと追いかけっこするって」
なぎさ「鬼さんなのです!」
ゆま「早く早く!」
……おやおや?もう仲良しになったんだね。二人とも。
ゆまちゃんがビシーっと杏子ちゃんを指さして、
真似するようになぎさちゃんも若干ドヤ顔で杏子ちゃんをさす。
でもね二人とも。普通、鬼からは逃げるものなんだよ?
433: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:30:27.66 ID:DE/T/7vEo
キリカ「ジュースはもういいのかな?」
ゆま「ゆまオレンジジュース飲んだ」
なぎさ「なぎさはリンゴジュースなのです。ゆまちゃんととりかえっこして一緒に飲んだのです」
キリカ「ほう……間接キ」
杏子「よし、お前黙れ」
すっかりお互い仲良しだね。
どんなお話したのかな。わたしもなぎさちゃんから色々お話聞きたいなって。
なぎさ「元気いっぱいだから遊ぶのです!」
ゆま「キョーコ!キョーコ!」
杏子「お、おいおい……」
434: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:30:55.53 ID:DE/T/7vEo
杏子「……よし。まどか」
まどか「わたし?」
杏子「あんたに任せる。弟いるからお手の物だろ?」
まどか「えー、走りたくないなって」
杏子「あ!テメェ!」
キリカ「まぁいいじゃないか。付き合ってあげてよ」
杏子「あたしだって走りたくねぇよ。面倒くさい」
なぎさ「えぇー!キョーコお姉さん鬼さんなのですー!」
杏子「それはどっちの意味での鬼だ?」
ゆま「キョーコのお尻のシールを取るの!」
杏子「は?シールって……」
435: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:31:45.18 ID:DE/T/7vEo
杏子「……あ!」
杏子「テメェいつの間に!」
ゆまちゃんの言った通り、杏子ちゃんのお尻……
正確にはいつものホットパンツにキラキラした星のシール。
なぎさ「キョーコ鬼さんのお星さまを取ったらなぎさ達の勝ちなのです!」
杏子「誰が鬼か」
杏子「ってか、いつの間にこんなものを……」
ゆま「朝から」
杏子「朝!?」
436: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:32:45.83 ID:DE/T/7vEo
……わたしは気づいてたよ?
でも、そういうファッションだと思ってました。アップリケっていったっけ。それかと。
キリカさんはニヤリと笑う。知ってた上で黙ってたんですね。
杏子「くそ……恥かいたぞ」
杏子「おいキリカ。あんたが預かったんだろ。だったら責任取ってあんたが鬼ごっこをだな」
キリカ「えー、君達が来るまでは私一人でなぎさ見てたんだよ?」
杏子「いや知らねえよ」
キリカ「見知らぬ人と二人きりでおどおどしてたなぎさにこうして友達ができたのは気を利かせた私の功績」
杏子「だから知らねえって」
キリカ「いいじゃないか。魔法少女同士楽しみなよ」
杏子「テメーもだろうが魔法少女は」
キリカ「そういう君こそゆまで慣れてて、まさにお手の物のはずさ」
437: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:33:45.78 ID:DE/T/7vEo
杏子ちゃんがキリカさんに鬼役を押しつけようとしている、その後方から、
こっそりこっそりと近寄るなぎさちゃん。
そしてソーっと杏子ちゃんのお尻に手を伸ばして……
杏子「おうケツ触んなコラ!」
なぎさ「ひゃあ!」
ゆま「惜しい!」
杏子「てめぇら……不意打ちとは良い度胸だな……」
なぎさ「鬼さん。お尻くださいなのです……!」
杏子「何だその言い回しはキモいぞ」
小さい手をわきわきさせて、ジリジリと杏子ちゃんを囲む二人。
杏子ちゃんはキリカさんを恨めしそうな目でジトーっと見ると……
438: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:34:28.64 ID:DE/T/7vEo
キリカ「こんな子どもに背後を取られるようじゃ、甘ちゃんだよ」
まどか「転ばないようにね?」
杏子「……くそっ、貸しにしとくから……な!」
ゆま「あ!逃げた!かかれー!」
なぎさ「鬼さん待つのですー!」
踵を返してダッシュ!それを追うゆまちゃんとなぎさちゃん!
杏子ちゃんは走るペースをちゃんと落としてちゃんと、追われてくれる優しい子。
まぁ……魔法少女の脚力で本気で追いかけっこしたら大変なことになりそうだけど。
小さな魔法少女達はきゃあきゃあかわいい声をあげて杏子ちゃんを追いかけてます。
杏子ちゃんのお尻を追いかけてます。
わたしとキリカさんは心地良い日差しを浴びながら、
面白半分微笑ましく一人と二人の駆け引きを見守ります。
439: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:35:37.92 ID:DE/T/7vEo
キリカ「なんだかんだ言って杏子は子どもに甘いね」
まどか「あはは、ほんと、そうですね」
キリカ「口ではああ言ってるけど、楽しそうに逃げとるねぇ」
キリカ「いやー、助かっちゃった。ありがとね、まどか」
まどか「あ、あはは……わたし何もしてない……」
キリカ「さて、いい加減座るか」
鬼を追いかける勇敢なる二人を微笑ましく眺めながら、
キリカさんは近くのベンチに歩いて、腰を下ろす。
わたしもついていって、お隣失礼します。
思えば、キリカさんの隣には初めて座ります。
大抵、キリカさんの隣には織莉子さんがいましたから。
440: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:36:22.23 ID:DE/T/7vEo
キリカ「よし、そこだ。行けっ」
キリカ「あー……やるねぇ。腐っても杏子だ」
まどか「腐ってもって……」
キリカ「…………」
まどか「……?」
キリカ「……ほむらのことだけどね」
まどか「…………」
キリカ「もちろん、私も私なりに心配してるつもりだよ」
キリカ「ただね、私は織莉子のことを信用してる」
キリカ「少し大げさかもしれないが、自分自身よりも信用してる」
キリカ「織莉子の言うことならどんなことでも自信を持てる」
441: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:37:19.63 ID:DE/T/7vEo
キリカ「だから織莉子がほむらが戻ってくるっていうなら……」
キリカ「私は心配はすれど不安はないよ」
キリカ「だって、織莉子の予知を、本人以外で一番理解しているのは私だと思っているから」
キリカ「だから君も、あまり落ち込みすぎない方がいい」
まどか「キリカさん……」
キリカ「なぎさと織莉子と友達になって、楽しく待ってればいいと思うよ」
まどか「…………」
まどか「……わたしの魔女の予知は外れましたけどね」
キリカ「……はは、言うねぇ。絶対に契約しないって?」
キリカ「でも……わかんないよ?」
まどか「な、ないですもん!」
442: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:38:01.32 ID:DE/T/7vEo
キリカ「わかった、わかった」
まどか「みんなと約束しましたもん」
キリカ「そうだね……うん。君、本当にいい奴だ」
まどか「え?」
キリカ「自分を殺そうとした人間に、こうもあったかい感情を表してくれるなんてね」
キリカ「ほむらが君を愛する気持ちわかるよ。本当に心優しい人だ。君は」
まどか「あ、愛するって……!」
キリカ「君は愛されてるし、愛してる。美しいね」
……キリカさんはすぐに、愛という表現を使う。
別にだからと言って悪いこととは……むしろいいことだとは思うけど、ビックリしちゃう。
確かにわたしはほむらちゃんのことが大好き。
だけど、キリカさんが「愛がー」って言うと……なんて言うか「別」の意味に聞こえて……
……ちょっと、敏感すぎるかな?
443: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:38:48.79 ID:DE/T/7vEo
キリカ「君が死んだらきっと天国に行けるよ」
まどか「ぶ、物騒なこと言わないでください……」
キリカ「はは、悪いね」
まどか「……?」
キリカ「……さて、と」
わたしは、キリカさんの笑顔を何度か見たことがあります。
織莉子さんに甘えていたり、惚気てたりする、エヘヘっていう照れた笑顔。
冗談を言ったり面白い漫画を読んだ時の、アハハっていう明るい笑顔。
ゆまちゃんと一緒に杏子ちゃんを追いかけるなぎさちゃんを見るその横顔は、
その二種どっちにも当てはまらない、優しい笑顔。
ほむらちゃんがわたしによく向けてくれるのと、同じタイプの笑顔でした。
ただ……少し、その目が悲しそうに見えたのは、気のせいだったのでしょうか。
444: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/11/23(土) 23:39:23.72 ID:DE/T/7vEo
キリカ「まどかも行ってきたら?」
まどか「……行くならキリカさんもですよ?」
キリカ「帰らせて欲しいなって思ってしまうのでした」
まどか「あはは、真似しないで下さいよー」
キリカさんは、追い回されてる杏子ちゃんを指さして笑む。
きゃあきゃあ言いながら、ゆまちゃんとなぎさちゃんが追いかける。
それにしてもなぎさちゃんとキリカさん。どういう関係なんだろう。
これから織莉子さんの家に行くみたいだけど……
もしかして、織莉子さんの親戚なのかな?
何にしても、また改めて紹介して欲しいなって思ったのでした。
そして……織莉子さんとも、世間話をしたいと思いました。
454: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:02:01.14 ID:ubeDvX9Po
――昼休み
ソーニャ(あぎりの存在がほむらの仲間に知られたのは痛かったが……)
ソーニャ(こっちのことを詮索するような動きがないというのは助かる)
ソーニャ(しかし、何がどうであれ、あのあぎりの変装を見破ったということになるが……)
ソーニャ(魔法少女の仲間と言うからには、やはりそいつらもただものではないらしい)
ソーニャ(まぁ、見滝原に関しては『アッチ』に任せるとして……)
ソーニャ(問題は敵組織の動きだ。あれからまだ一週間も経ってないが、刺客を送るとかいった動きを全く見せていない)
ソーニャ(組織の裏切り者にどこまで知られていて……どこまでリークされているかわからない以上……何とも言えないか)
ソーニャ(肝心の裏切り者については未だに捜査中だが……)
ソーニャ(この動きのなさは……嵐の前の静けさ、とでも言うものか)
やすな「くっはぁぁァ~~~!ンニャフッ!」ノビー
ソーニャ(静けさなんてなかった)
455: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:03:06.67 ID:ubeDvX9Po
やすな「午前の授業やっと終わったー!」
ほむら「お、お疲れ様です」
やすな「おっひる♪おっひる♪」
やすな「お勉強で頭使ったからカロリーが足りないぜ!」
ソーニャ「寝てたくせに、何が頭を使った、だよ」
やすな「ぐぬぅ」
やすな「……そういうソーニャちゃんもウトウトしてたよね」
ほむら「…………」
ソーニャ「う、うるさいな」
やすな「人のこと言えませんぞなもし」
ソーニャ「ほ、ほら、私は……」
456: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:04:00.51 ID:ubeDvX9Po
ソーニャ「その、ある意味一日中仕事してるわけだからな」
ソーニャ「いつ刺客が来るかわからんし……気を張ってて疲れてんだ」
やすな「ふふふ、言い訳ですね」
ソーニャ「それよりほむら」
やすな「おぅスルー」
ほむら「はい」
ソーニャ「学校は慣れたか?まだ一週間も経ってないが」
ほむら「はい、割と」
ソーニャ「そうか。割とか」
ソーニャ「ならいい。授業でわからないことがあったら聞けよ」
やすな「聞けったってぶっちゃけソーニャちゃんより頭良いんじゃない?」
ソーニャ「…………」
457: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:05:10.52 ID:ubeDvX9Po
やすな「取りあえずで受けた小テストは満点で、先生がノリで指したらちょっとキョドった後に答えちゃう」
ほむら(キョドるって……)
やすな「高校の内容についていけてるなんて、ほむらちゃんって頭良いんだね。中学生なのに」
ほむら「へ?い、いえ、そんな……」
ソーニャ「見習えよ」
やすな「ソーニャちゃんもね」
ソーニャ「お前の方が見習えバカ」
やすな「仕方ない」
ソーニャ「仕方なくねぇよ」
やすな「見滝原学校って頭いい学校なんだね?」
ほむら「い、いえ、そうとも言えません。その……私の同級生に……ちょっと……」
ほむら(かく言う私もかつては……ちょっと所ではない、か)
458: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:05:58.09 ID:ubeDvX9Po
ソーニャ「あー……まぁ、どこにだってやすなレベルはいるよな」
やすな「そうだね」
ソーニャ「認めただと……?」
やすな「うんうん。私のように成績こそ悪くても天才肌な子が……」
ソーニャ「は?」
ほむら(時間遡行してる間……)
ほむら(武器を使う過程で色々な知識――特に語学数学物理時々化学とかの分野を学んだり……)
ほむら(ループ始点から退院するまでに授業の内容を予習をしていた時期もあった)
ほむら(……案外覚えているものね)
ほむら(世界史や生物とかはちんぷんかんぷんだったけど。……指されなくてよかった)
459: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:06:23.90 ID:ubeDvX9Po
ほむら(この学校に通うようになって……)
ほむら(主にソーニャさん、呉識さん……そして折部さんと仲良くさせてもらっている)
ほむら(緊張は未だ残るけど、大分落ち着いてきたわ)
ほむら(制服や体操着が違うから浮いてしまっているというのはまだ気になるけど……)
ほむら「…………」
ほむら(呉識さんの存在がまどか達に知られて……)
ほむら(フォローするつもりで、まどかに送ったメール……)
ほむら(私は元気でやってるよって……そういうメール)
ほむら(未だに……返事が返ってこない)
ほむら(ただ一言「無事でよかった」とか、せめて私のメールを読んでくれたことに対してアクションをして欲しいのに)
ほむら(うぅ……せめて「fromまどか」が見たい……まどかの言葉が欲しいのに)
ほむら(ヘコむ……悲しい)
460: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:12:28.64 ID:ubeDvX9Po
やすな「いやー、お腹空いたー!」
やすな「お昼ーうおー」ガタガタ
ソーニャ「机をくっつけるな。揺れてうっとうしい」
やすな「ほら、ほむらちゃんもほむらちゃんも」
ほむら「は、はぁ……」
ほむら(……折部さんの明るさには少し救われる気持ちになるわ)
やすな「それともソーニャちゃん。屋上で食べるのご所望かしら?」
やすな「もー、しょうがないなー。そんなお外がいいんでちゅかー?」
ソーニャ「何も言ってねぇよ」
やすな「それじゃ、待ってるからね」
461: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:15:01.63 ID:ubeDvX9Po
やすな「…………」
ソーニャ「ん?」
やすな「あれ?二人とも、今日は購買行かないの?」
ソーニャ「行かない」
ほむら「はい」
やすな「んんん?お財布忘れちゃったの~?」
やすな「ソーニャちゃんが土下座して頼むというのであれば奢ってあげ……」
ソーニャ「忘れてねぇよ」トン
やすな「あ!こ、これは……!」
やすな「お弁当……だと……!?」
462: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:16:36.53 ID:ubeDvX9Po
ソーニャ「……何だよ。そのリアクション」
やすな「いつも購買パンなソーニャちゃんが!?」
やすな「不器用で面倒くさがりでぶっきらぼうなソーニャちゃんが自炊するとは到底思えないから……」
ソーニャ「いちいち煽るような言い方するの何とかならんのか?」
やすな「もしかしてほむらちゃんが?」
ほむら「は、はい。そんな手の込んだものではありませんが……」
やすな「すごい!」
ほむら「その……守られてる立場な上、色々御教授いただいてますから」
ほむら「食事とか色々用意してもらいましたので、これからしばらくは……」
ほむら「せめてものと思って、先日から、炊事をお手伝いさせていただくことに」
ソーニャ「そういう気遣いしなくていいのに……まぁ経費として落ちるからいいけど」
463: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:17:25.67 ID:ubeDvX9Po
ほむら「呉識さんに相談したら便宜を図ってもらいまして」
やすな「へぇー」
ソーニャ「……しかし、何だな」
ソーニャ「あぎりと私で三人分も作ってもらってなんなんだが……」
ソーニャ「守ってくれてる相手におつかいさせるなんて案外図太いよなお前」
ほむら「え゙、あ、その……」
ほむら「ふ、ふふっ、ふ……」
ソーニャ「笑って誤魔化すな」
やすな「いいなー私もソーニャちゃんパシらせたい」
ソーニャ「憧れのベクトルおかしいだろ。パシリじゃねーし」
464: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:18:19.89 ID:ubeDvX9Po
やすな「まー、でもそうだよね」
やすな「ほむらちゃんは成長期だもん。焼きそばパンなんかよりもお弁当の方がいい!」
ほむら(成長期……ね)
ソーニャ「焼きそばパンディスってんのか」
やすな「栄養ないじゃん焼きそばパン」
やすな「ところでさ、あぎりさんって料理作るの?」
ソーニャ「…………」
ほむら「…………」
やすな「……あれ?どったの?」
ソーニャ「……あぎりの家には何度か泊まったことはある」
やすな「ほう」
465: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:19:13.90 ID:ubeDvX9Po
ほむら「わ、私も……呉識さんの料理、いただきました。……多分」
やすな「いいなー。あぎりさんの手料理……ん、多分?」
やすな「よくわかんないけど、どうなの?美味しい?」
やすな「あぎりさんは何でもできるイメージがあるからね」
ソーニャ「…………」
ソーニャ「……う、うん」チラッ
ほむら「……は、はぁ」コクリ
やすな「え、何?どうしたの?」
やすな「もしかして実はメシマズだったり?」
ソーニャ「い、いや、下手ではない……と思う」
やすな「思う?」
466: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:20:24.37 ID:ubeDvX9Po
やすな「普通ってこと?」
ソーニャ「いや……はっきり言って、美味い」
やすな「あ、上手なんだ、イメージ通り!」
ソーニャ「いや、上手なのかと聞かれると……」
ソーニャ「わからない」
やすな「はぁ?」
やすな「もー、ソーニャちゃんじゃ埒明かないや」
やすな「ほむらちゃん。あぎりさんのご飯はどうだった?」
ほむら「…………」
467: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:21:06.07 ID:ubeDvX9Po
ほむら「……食事をする際、呉識さんはまずテーブルに布を被せます」
やすな「布?」
やすな(テーブルクロス?)
ほむら「布を取ると、そこにはつきたてのお餅が」
やすな「…………」
やすな「ん?」
ほむら「大変おいしゅうございました」
やすな「…………」
ソーニャ「…………」
ほむら「…………」
468: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:22:19.21 ID:ubeDvX9Po
やすな「そ、それにしても手料理なんて!」
やすな「すごいねほむらちゃん!」
ソーニャ「お、おう。そうだな」
ほむら「せ、先輩や知り合いに教わったり、色々勉強しまして」
ほむら(まぁ流石にあんなに繰り返せば自然と色々なことは身に付く)
やすな「へー、すごい」
ソーニャ「しっかりしてるな」
ほむら「一人暮らしですし、しっかりしてないと大変ですから」
やすな「え!?」
やすな「ひ、一人暮らし!?中学生なのに!?」ヤベェ
469: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:23:18.85 ID:ubeDvX9Po
やすな「しかも手作りのお弁当……女子力53万はあるね」
ほむら「女子力ってそういうものなんですか?」
ソーニャ「よく知らないが絶対に違う」
やすな「女子力たったの5か……ゴミめ」ヘッ
ソーニャ「ふん!」ゲシ
やすな「きゃん!足踏まないで!」
ほむら(あ、今のは痛そう……)
やすな「ソーニャちゃんはほむらちゃんの手料理もう食べた?」
ほむら(そしてこの回復力である)
ソーニャ「いや、私はこの弁当が初めてだが……」
ソーニャ「あぎりが美味いって言ってたからな。期待できる」
ほむら「い、いやぁそんな……」
470: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:24:10.90 ID:ubeDvX9Po
やすな「自炊かぁ……」
やすな「じゃあ献立も考えるんだ?」
ほむら「はい。栄養も色々考えて……」
やすな「いつも購買パンのソーニャちゃんのために……」
やすな「あぁ!眩しい!ほむらちゃんから後光が差してるよ!前世の罪が洗われるゥ!」
ソーニャ「何言ってんだお前」
やすな「ほむらちゃん!」
やすな「貴殿の女子力を見込んでお願いがあります」
ほむら「は、はぁ……何でしょうか」
やすな「ソーニャちゃんにカルシウムをたくさん食べさせてあげてね」
ほむら「カルシウム?」
471: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:25:14.80 ID:ubeDvX9Po
ソーニャ「……どうせすぐ怒るからとか言うんだろう」
やすな「うん」
ほむら「…………」
ソーニャ「……なるほど」
ソーニャ「お前もたくさん摂るといいぞ」
やすな「私?」
ソーニャ「多分治りも早くなる」ニギニギ
やすな「あっ……折る気だこの人!?」ビクッ
ほむら「ぜ、善処します」
ソーニャ「別にせんでいい」
472: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:27:00.80 ID:ubeDvX9Po
ソーニャ「バカはほっといて、いただくとしよう」
ソーニャ「どれ」パカ
やすな「わぁ!美味しそう!」
ソーニャ「あぁ、手慣れているな」
ほむら「ど、どうも」
やすな「いいなーいいなー」
やすな「ねぇソーニャちゃん。私にもほむらちゃんを一口……」
ソーニャ「何だその言い回し」
ソーニャ「まぁいいだろう」
やすな「やったー」
473: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:28:08.91 ID:ubeDvX9Po
ソーニャ「言っておくが」
ソーニャ「玉子焼きを丸ごと口に突っ込んで一口っていうのはなしだぞ」
やすな「先手を打たれた!」
ソーニャ「てめぇやっぱりそのつもりだったのか」
ソーニャ「……ん?」
やすな「どしたの?」
ソーニャ「いや、玉子焼き……」
ほむら「はい。結構自信作です」
ソーニャ「いや、それはいいんだが……」
ソーニャ「私、卵なんか買ったっけか……?」
ほむら「え」
474: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:29:18.09 ID:ubeDvX9Po
ほむら「あ、た、卵は……元々ありましたので……」
ソーニャ「……そうだったか?確か前来た時は……」
ほむら(お手製卵ですなんて言えない)
やすな「買ったかどうかもわからないなんて……」
やすな「こないだみたいに記憶喪失?」
ほむら(こないだ……?)
ソーニャ「うるさいな。他人の家の卵の有無なんてイチイチ覚えてるわけがないだろ」
やすな「ボケたのかな?」
ソーニャ「天然物のボケはほっといて、いただこう」パクッ
やすな「どうなのわさわさっ」
ソーニャ「……うん」
475: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:30:13.88 ID:ubeDvX9Po
ソーニャ「美味い」
ほむら「よ、よかった……口に合ったようで」
ほむら「やっぱり外国の方って味覚違うのかなと思って」
やすな「あー、味覚もおバカなのかしら」
ソーニャ「その発言は国際問題だぞ」
やすな「それではグルメリポーターのソーニャさん」
ソーニャ「は?」
やすな「感想をどうぞ。中継です」
ソーニャ「…………かなり美味い」
やすな「くそ下手め」
ソーニャ「一瞬でもノってやった私がバカだった」
476: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:31:02.16 ID:ubeDvX9Po
やすな「私も食べてみたい。いい?」
ソーニャ「あぁ」
やすな「いただきます」パクッ
ほむら「……どうですか?」
やすな「激うまです」
ほむら「恐れ入ります」
ほむら(誉めてもらうのって、本当に嬉しい)
やすな「それではグルメリポートをしたいと思います」
やすな「見た目の奇麗さに相応しく、甘くて美味でございますね。ふわふわしっとりしてて、何だか卵の味が濃い?ような気がします」
やすな「そうだ!これは卵が違うんだ!烏骨鶏!」
ソーニャ「そんなわけあるか。……いや、あぎりの家にあるって言うからには案外……だ、だがしかし……」
ほむら(私です)
477: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:31:44.13 ID:ubeDvX9Po
やすな「ごちそうさま。ほむらちゃん」
ほむら「ふふ、はい、お粗末様です」
やすな「間接キスだねソーニャちゃん」チラッ
ソーニャ「よし、お前黙れ」
ほむら「そ、それじゃ、私も……同じものですけど」
やすな「……あれ?」
やすな「同じお弁当なのに、ほむらちゃんのは量少ないんだね」
ほむら「はい、私小食でして……」
やすな「そっかー。でも何だかイメージ通りだね。悪い意味でなく」
ほむら「イメージ?」
478: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:33:35.68 ID:ubeDvX9Po
やすな「ほむらちゃんみたいなクール!って感じの子は小食って相場は決まってるからね」
ソーニャ「何の話だ?」
やすな「あ、もちろんソーニャちゃんはたくさん食べるイメージあるからね」
ソーニャ「それはどういう意味合いで言った……?」ギロ
やすな「そ、そうやってメンチ切るとこかなっ!?」
やすな「ソ、ソーニャちゃんはともかくとして!」
やすな「ほむらちゃんは育ち盛りだからもっともりもり食べなきゃ」
ほむら「そうは言っても……」
やすな「ちゃんと食べないとおっきくなれないよ」
やすな「高校生になってもぺったんこだよ!ソーニャちゃんみたいに」
ソーニャ「あ゙?」
479: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:35:49.63 ID:ubeDvX9Po
ほむら「…………」ジー
ソーニャ「おい、深刻そうな顔で人の胸を見るな」
ソーニャ「大体、やすなも人のこと言える程じゃないだろ」
やすな「ひゃっ!セクハラ!」
ソーニャ「腹の脂肪を切り取って胸に移植するか?」スチャ
やすな「結構です」
ほむら(帰ったら巴さんの食生活、聞いてみようかな……いや、その前に呉識さんか)
ソーニャ「お前は私とやすなの胸を交互に見るのをやめろ」
ほむら「へ?あっ!す、すみません。別にそんなつもりじゃ……!」」
やすな「●●●ー」
480: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:36:43.24 ID:ubeDvX9Po
やすな「しかし、うーん」
ほむら「……どうかしました?」
やすな「何だか同じお弁当でソーニャちゃんの方が大きいってなると……」
やすな「ソーニャちゃんが食いしん坊みたい」
ソーニャ「うるせぇ」
やすな「ごっつぁんです」ムハー
ソーニャ「デブ声やめろ。気持ち悪い」
ほむら(本当に仲がいい……)
ほむら(折部さんの明るさは……時たま、さやかを思い出される)
ほむら(楽しげがある一方で……ちょっとしたホームシック)
481: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:37:23.50 ID:ubeDvX9Po
――昇降口
やすな「やったぁぁぁぁぁ帰るぜよぉぉぉぉぉ!」
ソーニャ「うるせぇよ!」ガスッ
やすな「ブゲァ!」
ほむら「あ」
やすな「ねぇねぇソーニャちゃん」
ソーニャ「ん?」
ほむら(安定のリカバリー)
やすな「ほむらちゃんのためにパシ……じゃなかった。おつかいするの?」
ソーニャ「絶対にわざとだろ今の」
482: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:38:42.54 ID:ubeDvX9Po
やすな「気になったんだけどさ、やっぱり領収書とかもらうの?上様なの?」
ソーニャ「お前が気にすることじゃない」
やすな「相変わらずつまらない答え……リポーターとしても芸人としても失格だよ」
ソーニャ「誰が芸人だ。……っていうか昼の話続いてたのかよ」
ほむら「…………」
ほむら「……あ、あの、ソーニャさん」
ソーニャ「うん、どうした?」
ほむら「今日は、私も一緒に行ってもいいですか?」
ソーニャ「……なんで」
ほむら「え?なんでって……」
ほむら「なんでって言われると……その……」
483: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:40:16.29 ID:ubeDvX9Po
ソーニャ「……いつ刺客なり何なり現れるのかわからないんだぞ」
ソーニャ「あまり外をうろつくのはよくない」
ほむら「でも……」
ソーニャ「でも何だよ。いつもの通りあぎりとまっすぐ帰れ。買い物なら私一人で十分……」
やすな「なるほど。ほむらちゃんが言いたいことはわかった」
ソーニャ「あんだよ」
やすな「ソーニャちゃんは食材を見る目がないから買ってくるものがみんな微妙。萎びてたりね」
やすな「ここは一人暮らしマスターの私がこの目で食材選びをしたいのだ!」
やすな「人参は葉っぱが生えてくる何か丸いっこいとこが小さい方のが美味しいのよん」
やすな「……ってことでしょ?」
ソーニャ「ふざけんな」
484: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:41:39.70 ID:ubeDvX9Po
ソーニャ「私だってそれなりに選別して……」
ほむら「まぁ、それもちょっとあるんですけど……」
ソーニャ「あんのかよ!」
ほむら「ちょ、ちょっとです!ちょっと!」
ソーニャ「ちょっとでもあんのかよ」
やすな「あー、やっぱりソーニャちゃんだね」
ソーニャ「やっぱりって何だ。やっぱりて」
ほむら「い、いえ、ただ、あの、買いに行かせてるのも気が引けるんで……せめて一緒にと」
ソーニャ「……昼に言ったこと気にしてたのか?」
やすな「守ってくれてやっている俺様におつかいをさせるなんて肝っ玉の据わったベイビーだぜニヤリ……」
ソーニャ「それは私のつもりか?」
485: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:43:17.45 ID:ubeDvX9Po
ほむら「…………」
ソーニャ「ったく……そんなことお前が気にすることじゃ……」
やすな「ほむらちゃんがかわいそーだよー」
やすな「あぎりさんにソーニャちゃんがほむらちゃんをイジめたって言いつけてやるー」
やすな「私が慰めてあげるぜぇ、よちよちベイベー」ナデナデ
ほむら「あっ、ちょ、お、折部さん……!」
ソーニャ「…………」
ほむら「あ、あの……や、やめてください……」モジモジ
やすな「ふひひ!きゃわたんですなぁ!」
ソーニャ「きめぇ」
ほむら「うぅ」
やすな「ふひっ」
486: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:44:02.37 ID:ubeDvX9Po
やすな「……羨ましい?」
ソーニャ「あ?」
やすな「ソーニャちゃんもほむらちゃん撫でたい?」
ソーニャ「バカか」
やすな「あっ、撫でられたい?仕方ないなー」ワキワキ
ソーニャ「近寄るなバカ」
やすな「チッ、相変わらず可愛げのない人」
ソーニャ「……おい、やすな。頭を出せ」スッ
やすな「え……?」
ソーニャ「……」ポン
やすな「わっ、ソーニャちゃんが私の頭に手を……も、もしかして……私を撫でたかったの!?」
やすな「もうっ、しょ、しょうがないにゃぁ……撫でさせてあ・げ・る☆」
ソーニャ「……」ギリギリ
やすな「いだだだだだ!爪!爪が!爪が食い込んでる!爪!」
487: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:45:19.62 ID:ubeDvX9Po
やすな「ひどいよぉ……」
ほむら「ソーニャさん……」
ソーニャ「……はぁ、もう、わかった。わかったよ」
ソーニャ「買い物くらいならつれてってやるよ……全く……」
ほむら「あ、ありがとうございます」
ソーニャ「何で礼を言われなくちゃいけないんだか」
やすな「オホン、コホンオホン!」
ほむら「?」
やすな「ゴホホーン!オホン!」
ソーニャ「うるさいぞ息止めろ」
やすな「咳じゃなくて息を!?」
488: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:46:35.41 ID:ubeDvX9Po
ほむら「……風邪ですか?」
ソーニャ「なるほど風邪か。よし帰って寝ろ」
やすな「ち、違うよ!」
やすな「んもう、鈍感なんだからっ」
やすな「これはね、私もお買い物に行きたいなってサインだよ!察して察して」
ソーニャ「やだ」
やすな「即答!何で!」
ソーニャ「ウザイから」
やすな「ぶーぶー」
ほむら「……別に、いいんじゃないんでしょうか」
やすな「そーだそーだ」
489: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:48:57.22 ID:ubeDvX9Po
ソーニャ「ほむら、お前……自分が置かれてる立場、たまに忘れてないか?」
ほむら「?」
ソーニャ「……さっきも言ったが、あまりうろついて人目にだな」
ほむら(あ……見える……)
ほむら(折部さんがはしゃいでそれを殴って余計に目立ってしまっている二人プラス私が見える……!)
やすな「嫌だって言ってもついてくよ!」
ソーニャ「……はぁ、仕方ないな。許可してやる。じゃないとしつこいからな」
やすな「YES!YES!」
ソーニャ「お前荷物持ちな」
やすな「Oh……」
「何の話してるの~?」
490: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:50:20.34 ID:ubeDvX9Po
ソーニャ「うおっ!?」
やすな「うわっ!」
ほむら「あ、呉識さん」
やすな「な、何で下駄箱の上にいるんですか!?」
あぎり「え~?何でですかね?」
ソーニャ「知らねぇよ!?」
ほむら「えっと、私達これから一緒に……」
やすな「っていうかほむらちゃん……」
ほむら「はい?」
やすな「あぎりさんが下駄箱の上から見下ろしてるのに驚いてない……」
ほむら「え?まぁ……慣れました」
ソーニャ「お前ら家でどう過ごしているんだ?」
491: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:52:00.91 ID:ubeDvX9Po
あぎり「一緒に?」
やすな「あ、はい。みんなでスーパー寄ろうよって話です」
あぎり「みんなでお買い物ですか。それならぁ、私もお買い物行きたいなって~」
ソーニャ「ああ、いいぞ」
やすな「即答!?私の時は渋ったのに!」
ソーニャ「だってやすなだし」
やすな「くそぅ!くそぅ!」
ほむら「え、えっと……そ、それじゃ、行きましょうか?」
ソーニャ「ああ」
やすな「了解です!」
ほむら「それで、お店は?」
あぎり「少し回り道をする程度で、そう遠い場所ではありませんよ」
ソーニャ「まずお前は降りてこい」
492: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:54:35.12 ID:ubeDvX9Po
あぎり「学校はどう?楽しいですか?」
ほむら「えぇ、はい。楽しませてもらってます」
あぎり「それはなにより」
ほむら「……あの、呉識さん」
あぎり「はい?」
ほむら「あれから……見滝原には……」
あぎり「いえ~、行ってませんね」
ほむら「そうですか……」
あぎり「でも、お友達は元気そうだという報告を受けてます。ご安心ください」
ほむら「元気そう……ですか。それなら……え、報告?」
493: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:55:46.40 ID:ubeDvX9Po
ほむら(……それって、皆が組織に見られてるってこと?)
ほむら(それはそれで安心できるかと言われると……うーん……)
ほむら(……いいのかしら?)
やすな「ほむらちゃんの友達かぁ……」
やすな「どんな人?」
ほむら「どんなって……」
ほむら「…………」
ほむら「みんなそれぞれ個性的ですね」
ソーニャ「そりゃそうだろうな」
やすな「じゃあじゃあ、一番好きな人は?」
494: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:56:58.51 ID:ubeDvX9Po
ほむら「す、好きなって……」
ほむら「…………」
ほむら「えと、何より……とても優しい人ですね」
ほむら「それでいて、可愛らしくて……話していて心が和む……私の憧れの人……」
やすな「ほぇー」
やすな「会ってみたい」
あぎり「私は会いましたよ」
やすな「いいなぁ」
ほむら「会いたいです……」
ソーニャ「……切実だな」
495: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:58:12.64 ID:ubeDvX9Po
あぎり「そうですねぇ」
あぎり「また行く機会があれば、お伝えてしておきますね」
あぎり「とても優しくて可愛らしくて……」
ほむら「伝えるってそっち!?やめてください恥ずかしい!」
あぎり「うふふふふ……」
ほむら「話したいことは山ほどあるけど、私は元気だとだけ伝えてください」
あぎり「はい」
やすな「仲良しだねぇ」
ソーニャ「あぁ、そうだな……大分打ち解けてるようには見える」
ソーニャ「まだたどたどしい所もあるが……それはほむらの性格か」
496: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 22:59:18.20 ID:ubeDvX9Po
あぎり「ところで、今日の夕飯は何ですか?」
ほむら「そうですね……オムライスとサラダにしようと考えてましたが……」
やすな「ほむライス」
ソーニャ「ん?」
ほむら「何か食べたい物とかありますか?」
ほむら「折角ご一緒しているので、売ってる物を見て決めようかと」
あぎり「そうですねぇ」
ほむら「夕飯だけでなくとも、明日の朝食、お弁当のおかずとか……」
ほむら「ソーニャさんは、お弁当で何か食べたいものとかありませんか?」
ソーニャ「私か?」
やすな「唐揚げ食べたいな」
ソーニャ「お前じゃねぇよ」
497: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 23:00:21.07 ID:ubeDvX9Po
あぎり「突然ですがソーニャ。今日泊まりません?」
ほむら「あ、それなら朝と夜にも食べたい物があれば……」
ソーニャ「…………ああ、そうだな……うん。泊まらせてもらおう」
やすな「美女二人に誘われるなんてギャルゲーの主人公みたいだね!」
ソーニャ「うるさい。……食事は任せる。何でもいい」
ほむら「何でもいい、ですか」
あぎり「何でもいいが一番困るんですよ」
あぎり「ねー」
やすな「ねー」
ほむら「ね、ねー……」
ソーニャ「てめぇら……」
498: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 23:02:41.99 ID:ubeDvX9Po
ソーニャ「家主はあぎり、お前だろ。お前が決めろよ」
ソーニャ「大体、ほむらの料理のレパートリー知らないし」
あぎり「それはそうかもしれませんけどぉ、何よりソーニャはお客さんですから」
あぎり「ねー」
やすな「ねー」
ほむら「ね、ねー……」
ソーニャ「てめぇら……」
ソーニャ「くだらねぇテンドンしてんじゃ……」
ソーニャ「――ッ!?」ゾクッ
499: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 23:03:41.58 ID:ubeDvX9Po
ソーニャ「!」バッ
ほむら「へっ?」
やすな「うぇっ!?ど、どうしたの!?いきなり振り返って!?」
あぎり「…………」
ほむら「ソ、ソーニャさん?」
ソーニャ(今……背後から……)
ほむら「…………」
ほむら「……天丼?」
やすな「えー?天ぷら作るのって大変なんだよ。少しは遠慮しようよソーニャちゃん」
ソーニャ(確かに……今、感じた……)
ソーニャ(……『殺気』だ)
500: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 23:04:35.98 ID:ubeDvX9Po
ソーニャ「……あぎり」
あぎり「そうですね」
やすな「?」
ほむら「?」
ソーニャ「……ほむら。やすな」
ほむら「は、はい」
やすな「どうしたの?」
やすな「……あ、もしかして財布なくした?」
やすな「やれやれドジッ娘だねソーニャちゃん」
ソーニャ「お前ちょっと黙ってろ」
501: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 23:05:15.67 ID:ubeDvX9Po
ソーニャ「今日はこれで解散する」
やすな「へ?」
ほむら「……?」
ソーニャ「ほむら。お前はあぎりと先に帰れ」
ソーニャ「買い物なら私がやっておく。……オムライスとサラダでいいんだな」
ほむら「え、で、でも……」
ソーニャ「私の言うことが聞けないのか」
ほむら「…………」
やすな「えー、お買い物したいよー」
ソーニャ「黙ってろ……やすな」
やすな「……ソーニャちゃん?」
502: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 23:05:58.83 ID:ubeDvX9Po
ソーニャ「やすな、お前は私と来い。一応家まで送ってやる」
ソーニャ「ただし少し回り道をする」
やすな「あらあら?デート?きゃっ」
ソーニャ「……走ってもらうこともあるかもしれん」
やすな「えっ何でやだ」
ソーニャ「いいからついてこい……『撒く』ぞ」
やすな「え?マク?何を?尺?」
ソーニャ「それじゃ……また明日。あぎり……頼んだぞ」
ほむら「は、はい……」
あぎり「えぇ、任せてください」
やすな「また明日ね」
503: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 23:06:47.56 ID:ubeDvX9Po
あぎり「振り向かないで~」
ほむら「…………」
あぎり「はい、次はこっちの道を通りましょう」
ほむら「は、はい」
ほむら「……あ、あの、呉識さん?」
あぎり「はい」
ほむら「あの、いきなりどうして……」
あぎり「気付きませんでしたか?」
ほむら「気付くって……」
あぎり「実はあの時、私達をつけてきていた人がいたんです」
504: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 23:07:48.70 ID:ubeDvX9Po
ほむら「……!」
ほむら「そ、それって……もしかして……!」
あぎり「お察しの通りかと」
ほむら「刺客……!」
あぎり「はい、正解です♪」
ほむら(あ、緊張感がログアウトする)
あぎり「ついに向こうも動き出しました」
ほむら「そ、それで……分かれたんですね」
あぎり「はい」
505: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 23:08:26.44 ID:ubeDvX9Po
あぎり「ソーニャも上手ですが、私の方が追っ手を撒くのは得意です」
あぎり「忍者ですし」
ほむら「それは……うん……そうでしょうね……」
ほむら(私を狙う刺客……)
ほむら(一体、どんな……)
ほむら(だけど……呉識さんとソーニャさんがついてくれている)
ほむら(相手が何者であろうと……)
ほむら(決して屈しない。もう何も怖くない)
あぎり「ではこの角を曲がった辺りで忍法を使って私達の存在感を世界から抹消し逃れましょう」
ほむら「なにそれこわい」
506: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/06(金) 23:08:54.10 ID:ubeDvX9Po
「…………」
「……くそ」
「バレちまいましたねぇ……」
「呉識あぎり……つったっけ。アイツと一緒ってのはマズイ」
「しかも……わたしの存在がバレちまった」
「チッ、仕方ないですね……やはり、直接出向いてやるしかないか……」
「まぁいいですとも」
「どうせ元々、暗殺をするつもりなんてあってないようなもんですからね……」
「……くふふ」
517: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:26:27.28 ID:XornqcgHo
――呉識さんの家にお世話になって、結構な期間が経った……経ってしまった。
和室で生活した経験はほぼないのに「和の家」というのは不思議と落ち着く。
ただ……この家の場合壁を撫でながら廊下を歩いていたら真後ろに金ダライが落ちてきたり、
何気なしに掛け軸を捲ったらその裏は抜け穴のようになっていてうっかり落ちかけたり、
テレビのリモコンを押したつもりが「オブジェだとばかり思っていた物体」が動き出してビームを撃たれたり、
対侵入者用なのか酔狂でつけたカラクリなのか……順当な場所から意外な場所に、色々仕掛けがある。
当初は怖く思ったがもう慣れた。むしろカラクリを見つけるのが一つの楽しみになっていると言っても案外否定できない。
怖いと言えば、呉識さんは天井に逆さまにぶら下って「おはよ~」と言ってきたり、
湯船に竹筒型スピーカー(その時はそれがスピーカーとは思わなかった。アヒルの玩具のノリかと思った)が浮かんでいて、
ほっこりしてたらいきなりそのスピーカーで話しかけてきて、何かと私を驚かせてくれる。色々な意味で。
意外にお茶目な不思議系くのいちとの生活は、何かとビックリすることが多いし心臓にも悪い。
でもなんやかんやで私はこの生活、環境に……それらを踏まえても馴染めていると思う。
「私は適応力が高い」と、これからは自負していいかもしれない。
518: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:27:01.58 ID:XornqcgHo
巴さんのお茶をよくご馳走になっているという私の習性を呉識さんは知っていた。
普段からそういう習慣であるという可能性がないこともない以上「だから」とは言えないけど、
学校から帰ると呉識さんは私にお茶を用意してくれる。嬉しい。
お茶がというよりもその心遣いが身にしみる。
ただ呉識さんが用意してくれるお茶は紅茶ではない。だから気持ちが新鮮。
昨日は緑茶だった。でも一昨日いただいたお茶の名前を私は知らない。
そして何故か教えてくれない。企業秘密?
呉識さんは、私の手から卵が出てきても全然リアクションなさそうなくらいに不思議な人。
しかしそれでいてそういう心遣いをしてくれる魅力的な人。
むしろ負けじと指先からイクラとか出してきそうではあるが……
私の玉子料理には大層お気に召してくれているようだが、何にしても私の卵事情は見せられない。
いつも驚かせてくる仕返しに見せてみたいとこではあるけれども。
519: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:28:41.05 ID:XornqcgHo
ソーニャ「おう、ほむら」
ほむら「おはようございますソーニャさん」
ソーニャ「ああ……ん?」
ソーニャ「あぎりは一緒じゃないのか?一緒に行動しろと言ってあるはずだが……」
ほむら「呉識さんなら校門の前まで一緒でした」
ほむら「ホームルームが始まるまでにやっておきたいことがあるんだそうで、分かれました」
ソーニャ「あいつ何か委員会とかやってたかな……?」
ほむら「日直とか……」
ソーニャ「だとしても……まぁいいか。あいつの考えてることはよくわからんからな」
ソーニャ「さっさと上履きに履き替えて教室に行こう」
ほむら「はい」
520: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:30:50.96 ID:XornqcgHo
ソーニャ「……なぁ、ほむら」
ほむら「あ、はい」
ソーニャ「お前ってさ、下駄箱に手紙とか入ってたことあるか?」
ほむら「手紙……?」
ほむら「も、もしかしてソーニャさん、下駄箱にラブレ……」
ソーニャ「そういうお前はあるのか?そういうのもらったこと」
ほむら「え、あ、えっと、ま、まぁ……何回かは」
ソーニャさんの方からそんな浮ついた話題が出るとは思わなかった。
下駄箱に手紙……重ねたループの間、そういうことは何度かあった。
さやかのイタズラ怪文書だったり、まどかに書かせた潜入捜査的魔法少女体験三行報告書、
魔法少女相手ならテレパシーで事足りる。
所謂ラブレターもなかったこともない。返事は言うまでもない。
何度か同性からのもあったということは秘密にしておこう。
そのラブレターに対し何故かヤキモチを妬いていた四週前のまどかは可愛かった。……亡くしてしまったけれども。
521: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:31:24.67 ID:XornqcgHo
ほむら「それで……どうし、ましたか?」
ソーニャ「どうしたもなにも……」
ほむら「まさかやっぱり恋文……!」
ソーニャ「ちげぇよ」
ソーニャ「……お前、ノリが若干やすなに汚染されてきてないか?」
ソーニャ「元の生活に戻ったらキャラ変わったねとかいわれないよう気をつけろよ」
ほむら「…………」
ソーニャ「たまに、暗号化された指令書が下駄箱に入ってることもあるんだよ」
ほむら「指令書」
ソーニャ「それで魔法少女とやらはそういうのはどうなのかとちょっと気になっただけ」
ほむら「そうでしたか。……魔法少女でそういう手紙のやり取りはほぼないですね」
ソーニャ「ふーん」
522: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:32:21.19 ID:XornqcgHo
折部さんのノリに少し影響されているのだろうか、私は。
この前、刺客がどうのこうのと呉識さんとソーニャさんは言っていた。
刺客の影が見えてから、自分が思っている以上確かに長い時間経過している。
この時間を合わせれば……どれだけの時間、ここにいるというのだろう。
あれからしばらくはピリピリしていたソーニャさんも、割と落ち着いてきているようだ。
しかし結局、以後私を買い物に連れて行ってくれるようなことはなく、
呉識さんかソーニャさんのどちらかがお買い物。私の書いたメモを片手に。
どちらかもう片方は常に一緒にいるという、いつもの直帰であった。
通学の場合はどちらか片方あるいは二人と一緒。通学路でも警戒は怠らない……らしい。
気になるその刺客だが、以降影も形も見せていない。
バレたことに気付き、一旦間を置いて、警戒心が少しでも緩んだところに来るものなのだろう。
多分。
523: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:33:07.30 ID:XornqcgHo
「おっはよう!」ポム
ほむら「あ、折部さん」
ほむら「おはようございます」
やすな「うんうん。挨拶は気持ちいいね」
やすな「増して肩に手を置いて即サブミッション!ってのがない挨拶は特に気持ちがいい!」チラッ
ソーニャ「お前がウザいから悪い。自業自得だ」
やすな「ボデータッチはインポータン!」
ほむら「……でもそれって、大丈夫なんですか?」
ソーニャ「あん?」
ほむら「挨拶されただけで誰彼かまわず関節をってなったら……」
ソーニャ「大丈夫だ。気配でわかるようになっているからな。そんなことはありえない」
やすな「は?」
524: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:34:18.41 ID:XornqcgHo
ほむら「で、でも何度か私の前でも折部さん……」
やすな「納得いかんでおまんがな」
ソーニャ「普通は何度も見せるシーンじゃないはずなんだが……」
ソーニャ「ぶっちゃけやすなの場合はわざとだ」
やすな「ひどっ!?」
ソーニャ「お前は何度言っても懲りないからな」
ソーニャ「背中から話しかけるなって何度も言ってるのに」
やすな「い~じゃーん。挨拶ぐらいさー」
やすな「ねー?」
ほむら「え、あ、はぁ……そうですね」
ソーニャ「…………」
525: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:35:49.24 ID:XornqcgHo
やすな「挨拶して関節キめるだなんてそんなの絶対おかしいよ!暴力娘!」
ソーニャ「ほむら行くぞ」
やすな「無視!」
やすな「……チッ、ほんとコイツしょうがねぇわ」
ソーニャ「お望み通りにしてやる」ギリギリ
やすな「あががが!肩が!肩が!」
ほむら「…………」
ただ……未だに、二人のペースには完全に慣れてはいない。
慣れないというより……心なしか二人に取り残されたような気持ちによくなる。
本当に二人は仲良しだ。ケンカするほど仲がいいとはよくいったもの。暴力が一方的なケースは知らないが。
なんだかんだで、今日もまた授業を受ける。
知ってる分野と否の分野。余裕と理解不能の高低差の大きい授業はストレスになる。
526: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:39:35.17 ID:XornqcgHo
――昼休み
やすな「じゃーん!」
ソーニャ「食後からうるさい」
ほむら「?」
やすな「ふふふ、見て見て」
ほむら「……ビニール袋?デザートですか?」
やすな「やだっ、デザートとか発想が可愛い。キャハッ」
ソーニャ「うぜぇ」
やすな「ふふふ、これはね……ばばーん!」ザー
ほむら「……これは」
お昼休みは素晴らしい。
折部さんがどこからともなく取り出したビニール袋から何かを出した。
机から落下する程たくさんのそれは黄緑だったりオレンジだったりカラフルな……
……手裏剣?
527: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:40:53.23 ID:XornqcgHo
やすな「ほむらちゃんが手裏剣を勉強してるそうだからね」
やすな「私も協力したいと思い、手裏剣をたくさん用意しました!」
ソーニャ「折り紙じゃねぇか」
やすな「本物なんか用意できるわけないじゃん。常識的に考えてよ」
ソーニャ「……」
……目に見えて、苛立っている。
ソーニャさんは、短気な人だと思う。
殺し屋としてそれはどうなのかと思うくらいに短気だ。
とは言え、その怒りが折部さん以外の人あるいは物に向いたところは今のところ見たことがない。
折部さんが煽る以外に彼女を怒らせる要素がないからだ。
だからこの場合、折部さんが怒らせるのが上手だから気が短く見えるのかそれとも本当に怒りっぽいのか……
私には判断できない。
528: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:41:48.74 ID:XornqcgHo
ほむら「えっと……あ、ありがとうございます」
やすな「うふふ、よくてよよくてよ」
ソーニャ「お前ほむらに気を使われているってわかっているのか?」
やすな「え?なに?」
折部さんも折部さんなりに、気を使っているのね……
お気遣いは嬉しいけど、あまり手裏剣がどうとか人前で言わないで欲しい。
そのおかげでいつの間にか私は忍者マニアの歴女と噂されている。日本史は得意でない。
その件を物申したいと思いはしたが、彼女の厚意を無下にできない。
ほむら「……奇麗に折れてますね」
やすな「でしょ?でしょ?」
ソーニャ「無駄に器用だからなコイツ」
ほむら「それにしてもこんなにたくさん……」
やすな「ほむらちゃんのためを思えばいとわない」
ソーニャ「暇なヤツだ」
やすな「眠気に耐えながら授業中にコツコツと……」
ソーニャ「勉強しろよ!」
529: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:42:59.27 ID:XornqcgHo
呉識さんからは手裏剣の投擲術。
ソーニャさんからは刃物の扱い方。
二人方それぞれから戦い方を教わっている。
手裏剣はナイフと同様、魔力で作ることができる。
目を盗んでこっそりと木(多分変わり身の術用)に投げつけてみたら奇麗に刺さった。
手裏剣の質十二分に良し、私の技術もそれなりに良し。
手裏剣にも色々種類があるがまだその違いがいまいちよくわかっていない。
そして問題は、その手裏剣術が魔女や使い魔相手に通用するか。
……流石に魔女を探しに出掛けられない。試せない。
そういえばその魔女や使い魔もしばらく見ていない。
この辺りは魔女や使い魔の気配を全く感じない。
キュゥべえさえも見ていない。それは別に見なくてもいいけど。
グリーフシードのストックは盾の中に十分過ぎる程あるからいいが……
現れないは現れないで気になる。
530: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:44:46.06 ID:XornqcgHo
やすな「ほら、的も用意してあるから、投げて。投げて」
ソーニャ「……的?」
ほむら「?」
やすな「はい、手裏剣。紫が似合うね」
やすな「よーし、二人でソーニャちゃんをやっつけるでござる!」
ソーニャ「やっぱり的って私のことか」
やすな「当たり前じゃん。空気読め」
ソーニャ「フッ!」パァン!
やすな「ゴボボーッ!」
ソーニャ「……いいかほむら。やすなをビンタをする時はこう手首のスナップをだな」
ほむら「…………」
531: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:45:32.07 ID:XornqcgHo
折部さんは本当に明るく賑やかで……
落ち込んでいても無理矢理元気を引き出されそうだ。
巻き込まれているソーニャさんからしたらたまったものではないテンションかもしれないが、私は案外、嫌いでない。
これがさやかだったら「ウザい」と思うところだが……いや、この状況ならさやかでも……。
……気にしていない時なんてなかった。いつだって気になる。見滝原のこと。皆のことが気になる。
まどかはもちろん、巴さん達……普段はうるさいと感じていたそのさやかとでさえ、寝る間を惜しんででも話したい気持ちにある。
この際、正直なところあまり親しいとは言えない美国織莉子と呉キリカとだって世間話をしたい。
……何でも呉識さんは私を攫った次の日、高校生(仮)になった日に、見滝原に行ってまどか達に会っていたらしい。ずるい。
内容を聞いてみれば、取りあえず私の安否、及び心配しないでいいというようなことを話してくれたらしいが……
それなら、まぁ……うん。
それに呉識さん達との生活もそれはそれで良い。
寂しさも少しは和らいでいる。ともかく、いつまでも気にしすぎてナーバスになってはいけない。
私は毎日のおかずと刃物講座のことを考えなくては。今夜は何にしよう。
532: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:46:26.67 ID:XornqcgHo
ソーニャ「……さて、と。そろそろだな」
ほむら「はい?」
ソーニャ「ほむら、ちょっと来い」
やすな「あれ?どこ行くの?私も行く!」
ソーニャ「お前は来るな」
やすな「えー!」
ソーニャ「ほむらと大事な話をしたいんだ」
ほむら「話?」
ソーニャ「それこそお前、空気読めよ」
やすな「からけ?」
ソーニャ「……行くぞほむら」
やすな「ブー」
533: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:47:24.74 ID:XornqcgHo
ふてくされた折部さんを置いて、ソーニャさんにつれられる。
大事な話と言っていた。
それはきっと、組織関係の話だ。
あるいは、見滝原の話……まどか達に何かあったのでは……!?
ソーニャ「ほむら」
ほむら「はい」
ソーニャ「今まで話してなかったが……実は殺し屋という身分上、たまに来るんだ」
ほむら「来るって……何がですか?」
ソーニャ「……所謂、果たし状と言ったところか」
ほむら「果たし状?」
ブレザーの内ポケットから一枚の紙を取り出した。白い紙に明朝体で何やら書かれている。
差し出されたので「読んでみろ」という意味と受け取り、紙を手に取った。
行動選択は正答らしい。読んでみる。
534: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:48:14.40 ID:XornqcgHo
『 お前を消しに来ました。空き教室に来なさい
もちろん、あけみほむらを連れてきなさい 刺客 』
ほむら「……こ、これって」
ソーニャ「多分、こないだ現れた刺客のものだと思う。今更来やがった」
ほむら「もしかして今朝、下駄箱に……」
ソーニャ「その通りだ。これが入っていた」
ソーニャ「これから空き教室に行って、その刺客を引っ捕らえる」
ソーニャ「お前にはそれに付き合ってもらう」
ほむら「…………」
ソーニャ「どうした?」
ほむら「い、いえ……何でも……」
ソーニャ「?」
535: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:48:47.31 ID:XornqcgHo
刺客はどうやら私の苗字を漢字がわからなかったらしい。
ではなくて、
殺し屋……の抗争的な物というのは……こう……
もっと、何と言えばいいのか……丁度いい言葉は思いつかないが、
こんな、昔の漫画によくある不良同士の決闘みたいな展開が待っていたとは思わなかった。
肩すかしどころの話ではない。しかもソーニャさんからすればそれは割とよくあることらしい。
散々私の中の殺し屋、そのイメージにあらゆる面で反したソーニャさんだけれども……
「あっち」の業界では案外それが普通なのかもしれない。……いや、多分違う。
ほむら「……呉識さんは?」
ソーニャ「あぎりは学校にいるにはいるが」
ほむら「一緒ではないんですか」
536: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:50:28.85 ID:XornqcgHo
ソーニャ「あぁ」
ソーニャ「何か忙しそうだったしな。まぁ私一人で十分だ」
ほむら「……き、緊張します」
ソーニャ「私一人だから不安か?刺客の相手は慣れてる」
ほむら「別に不安だなんてことはないんですが……」
ソーニャ「フッ、それならいい」
不敵に微笑むソーニャさん。
護ってもらっている立場上、本来なら「頼もしい」と思いたいところだが、
折部さんとのやりとりが印象に強く、些か不安がある。
「刺客に負けるんじゃないか」という悲観的な不安ではなく、
「私、ボケに回らないといけなくなったりしないだろうか」という自分でもよくわからない謎の不安が。
537: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:51:07.61 ID:XornqcgHo
兎にも角にも、緊張する。
色々な意味で。
それに、もしかしたら私も加勢した方がいい状況というのも起こりうるかもしれない。
もしそういう可能性が、少しでもあるというのなら、準備が必要。
ほむら「……あの、ソーニャさん」
ソーニャ「何だ?」
ほむら「……そ、その前に、お手洗いに行ってもいいですか?」
ソーニャ「…………」
ほむら「…………」
ソーニャ「……行ってこい」
ほむら「は、はい、すみません」
538: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:52:35.25 ID:XornqcgHo
ソーニャ「ここだ」
ほむら「ここが空き教室……」
こんなところにも教室があるとは知らなかった。
そもそも使われない教室なんて、あるものなのだろうか。
それはさておき、ここに刺客が待ちかまえているらしいが……
確かに、昼休みでも人通りは少ないかもしれない。が、何故よりによって校内で?
ソーニャ「……入るぞ」
ほむら「……は、はい」
ソーニャ「まずはこのさっき拾った何か丁度良い感じの棒を投げ込む。そしたらすぐに入るぞ」
囮による陽動。
いつの間に、そして校内のどこでそんな物を拾えたのか。
539: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:53:02.11 ID:XornqcgHo
カラン、カランという音の後に一拍おいて、にソーニャさんは教室の中に飛び込んだ。
どこからの攻撃に対応できるっぽい姿勢に、ビシッと身構える。敵の動きはない。
あ、私も入らなくちゃ。
ほむら「……誰もいませんね」
ソーニャ「ああ、やすなのイタズラだったか?」
ほむら「折部さんの?」
ソーニャ「過去にあったからな」
ソーニャ「……コケないぞ」
ほむら「?」
警戒の姿勢を解いたソーニャさんは辺りを見渡す。
自分で投げた棒を見下ろし睨むソーニャさんを尻目に、
私なりに警戒をする……。
「……くっふっふ」
540: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:53:56.15 ID:XornqcgHo
ソーニャ「!」
ほむら「こ、この声は!?」
「やっと来ましたね……待ちくたびれましたよ」
ソーニャ「刺客か!どこに隠れてやがる!」
ほむら「そ、そこのロッカーから声が……!」
ソーニャ「!」
刺客「何者だって聞きたいことでしょうので名乗りますけども……」
刺客「わたしは魔法少女の『優木沙々』ッ!」
沙々「暁美ほむらを狙う、貴様の刺客です!」
ロッカーの中から籠もった声が空き教室内に響く。
魔法少女……!?刺客は魔法少女だった!
いや、ターゲットが魔法少女だからある意味妥当なのかもしれないけど。
541: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:54:40.54 ID:XornqcgHo
ほむら「魔法少女……」
ソーニャ「魔法少女……か」
沙々「あれ?あんまり驚いてないトーン」
ソーニャ「そんなことよりも……」
沙々「何さ?」
ソーニャ「何でロッカーの中にいんだよ」
沙々「…………」
沙々「何か……バーンって、かっこよく出てこようと思ってて」
ソーニャ「は?」
沙々「何!魔法少女だと!って驚いてるとこにバーン!って出たらかっこよかったのに。何で驚かないんですか」
ソーニャ「何だこいつ」
542: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:55:13.10 ID:XornqcgHo
沙々「では……出ますよ。バーンって出ますよ」
ソーニャ「さっさとしろ」
沙々「せーのっ……!」ガタッ
ソーニャ「…………」
沙々「あれ?」ガタッ
沙々「あ、あれれ?」ガタガタ
ソーニャ「おい、早くしろ」
沙々「開かないんですけど」
ソーニャ「ほむら帰るぞ」
沙々「待って!待ってください!」ガタガタガッタン
沙々「引っかかってる!?引っかかってる!?」ガンガン
543: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:55:52.62 ID:XornqcgHo
ほむら「……何、これ。コント?」
ソーニャ「今までの刺客も大抵こんなもんだ」
ほむら「……こんなもんなんですか?」
ソーニャ「うん」
沙々「一緒にすんな!過去にしくじった奴らとわたしを一緒にすんな!」ガタガタガタガタガタガタガタ
ソーニャ「ガタガタうるせぇ!同類だバカ!」
沙々「わたしを見下すんじゃねェェッ!」
バァン!
沙々「開いた!やったぜ」
片足を高くあげ息を荒げて叫ぶ刺客。
声の感じ、そして魔法少女と名乗った以上……
確かに魔法少女だ。ロッカーの中で既に変身をしていたらしい。
544: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:57:22.87 ID:XornqcgHo
ソーニャ「うわっ、ダセー服」
沙々「ダ、ダサくない!ダサくありませんよ!」
魔法少女の衣装はともかく、ロッカーの扉を蹴り上げたその姿は不格好だ。
というかそれ以前にもう既に格好が悪い。色々と。
ダサい服……か。
……私の魔法少女の姿もソーニャさんに「ダサい」認定をされてしまうのだろうか。
沙々「とぉっ!」ピョン
ほむら「あ、棒……」
沙々「れっ?」
沙々「どげっ!」ベチン!
ソーニャ「あ、コケた」
沙々「散々じゃねぇかくそったれが!」
545: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:58:12.97 ID:XornqcgHo
優木沙々は自分で踏んだ棒を思い切り踏み、それをへし折った。
冷めた目で見るソーニャさん。多分私も同じ様な目をしている。
刺客は取り繕ってソーニャさん……いや、私を指さしてニヤリと笑った。
切り替えが早い。
沙々「初めまして暁美ほむらさん。わざわざ言うまでもないことですが、わたしの目的はあなたですよ」
ほむら「…………」
沙々「一度お話したかったものです。お時間いただいてどうもです」
沙々「っていうか素直に連れてくるとかバカなんじゃない?」
ソーニャ「何だとてめぇ」
沙々「バカで結構!わたしとしてはとても助かりますよ。言う通りにしてくれて!くふふっ」
ソーニャ「ふん。刺客が魔法少女であるという情報は受けていたんだ」
ソーニャ「だから本職を連れてきただけだ」
沙々「何……だと……」
546: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 22:59:38.69 ID:XornqcgHo
……情報、か。
刺客が魔法少女だなんてどういうルートで知れるのだろう。
思えばこれまでの日々において、組織に関しては何も知り得るものはなかった。
知る必要もないことかもしれないし、その謎は謎のままでいい。余計なことはしない。
ソーニャ「ほむら。こいつは本当に魔法少女か?そして見覚えがあったりするか?」
ほむら「は、はい。彼女は魔法少女で間違いありませんし、初めて見る名前と顔です」
ソーニャ「そうか」
ソーニャ(報告によれば見滝原に住む魔法少女と抗争した過去があるとのことだった)
ソーニャ(魔法少女とかいうのは見滝原だけで何人いるんだって話だが)
沙々「……まさかわたしが魔法少女であることが既にわかっていたとは」
沙々「流石と言うべきか、ちきしょーと言うべきか……」
ソーニャ「そんなことより私の質問に答えろ。組織の『裏切り者』は誰だ」
ソーニャ「誰が組織の武器を売り払って、そして情報をお前達に流した」
547: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:00:41.99 ID:XornqcgHo
私が事務所から盗んだ武器は、ソーニャさん達の組織から盗まれた物。
組織の裏切り者が、その事務所に武器を横流ししたということ。
そういえばそんな理由だった。私と「組織」の繋がりは。
……別に忘れかけていたわけじゃない。……わけじゃない。
沙々「くふっ、くふふふふふ」
沙々「バーカ。言うわけないでしょう。貴重な情報源を」
沙々「ほむらをいただいて、わたし達は外から、彼女達は内部から……あなたの組織をぶっ壊してやりますよ」
ソーニャ「そうか、裏切り者は複数いるのか……そして少なくとも一人は女と」
沙々「…………ハッ!」
察した。
……いや、ロッカーのくだりでもうわかっていた。
優木沙々。この人はダメだ。
548: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:01:47.51 ID:XornqcgHo
沙々「くっそぅ!くそぅ!」
沙々「と、と、ともかくソーニャ!あんたを倒してほむらを攫わせてもらいます!」
ソーニャ「返り討ちにしてやる」
ソーニャ「お前を引っ捕らえて情報を吐いてもらうからな」
沙々「ハッ!返り討ちの返り討ちにしてやるわ!」
私は誘拐された当日、緊張感が湧かないとまったりとしてしまった。
優木沙々も多分、この世界の空気感染をしたとかなんとかなんじゃないか。そう思う。
そんな魔法少女と、殺し屋が対峙する。
殺し屋vs魔法少女。字面だけで見ると割とシュール。
私も魔法少女となって応戦したいところではあるが、ソーニャさんの前で変身するのは少々憚れる。
結局のところ彼女は魔法少女をそこまで認知していない。服装が一瞬で変化するような非現実的な行動は取りたくはない。
しかし、相手は既に変身をしていた。
中身がアレとは言え、単純に考えれば魔法少女の刺客の方がアドバンテージがある。
549: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:02:33.30 ID:XornqcgHo
沙々「ではではっ!ほむらをいただいちゃいます!」
沙々「覚悟しなさい!」
ほむら「……いただく?」
沙々「うん?何ですかな?」
ほむら「攫うとも言ったけれども……」
ほむら「私を消しに来たんじゃないの?優木沙々」
沙々「あ?くふっ、消すだなんてとんでもありませんよ」
沙々「……ははーん、これはもしや、わたしに解説をさせて時間稼ぎしようって?」
……別にそんな意図はないが、気になっただけだ。
私はてっきり、敵組織に狙われてるって言うからに命を狙われていると思っていた。
聞いた直後に、ここで消さずに「まずは攫って別の場所で消す」という可能性も考えられたが、
この反応を見るにどうやら違うらしい。
550: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:03:23.24 ID:XornqcgHo
沙々「パツキンの殺し屋さん。あんたは知ってましたかな?」
沙々「わたし達の狙いはほむらの命ではない……って」
沙々「敵の事情はどこまで踏み込めていますか?」
ソーニャ「……興味ないな」
沙々「知らなかった?へぇー!護衛対象の命の危機だったかもしれないのに!」
ソーニャ「私は護るという命令があればそれに従うだけだ」
ソーニャ「増して貴様等の事情なんてくそどうでもいい」
ソーニャ(そもそも肝心のほむらがそんな危機感持ってないし)
沙々「……つまらない人ですね」
沙々「ま、いいでしょう。教えてさしあげましょう。訳も分からず刺客に狙われるのもキモいことでしょうし……」
沙々「折角の機会ですしお教えします」
551: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:04:11.64 ID:XornqcgHo
沙々「ま、とは言ってもですね、そんな難しいことじゃありません」
沙々「事の始まりはあんたの組織の誰かさんが『こっち』に寝返ったこと」
沙々「そしてそいつは、あんたの組織の武器庫から武器を盗んで……」
沙々「それを『こっち』の下っ端に横流しした。下っ端はそれを売ったり、ドンパチやらかしたりしてお金を稼いでました」
沙々「ところが!ほむらがその武器をパクりやがりました!」
沙々「そのせいでその下っ端チンピラーズは責任を取らされて……どうなったかはわたしの知ったことではありません」
沙々「あ、わたしは組織に入って日は浅いですが、そんなチンピラ共とは違いますよ?」
沙々「魔法少女に理解のある組織でしたから、魔法少女優木沙々はここまでのし上がりました」
ほむら「優木沙々の組織に魔法少女が……!?」
ソーニャ「…………」
沙々「すごいでしょ。で、ま、あんたのおかげで横領ルートがバレちゃいましてね……」
552: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:05:42.39 ID:XornqcgHo
ソーニャ「ほむらが浮かんでくるまで、外部犯の線が濃いと思われていたんだ」
沙々「そう。波と調子に乗りかけていました。……なのに、あんたのせいで……」
沙々「しかし、わたしは短気な方ですが我々寛容です」
沙々「あのそれなりに厳重な警備からよく盗め出せたものです。あそこから盗めた時点でこっちは魔法少女の仕業だと思われていました」
沙々「そして……こう、結論がつきました」
沙々「……『欲しい』ってね」
ソーニャ「……欲しいだと?」
沙々「その窃盗スキルがものすごく欲しいらしいんですよ!だってそうでしょ?」
沙々「あんなとこから証拠もなしに盗めるなんて、その気になれば国際要人のマル秘情報とかも盗めると思うでしょ?ルパン顔負けですよ」
沙々「お金とれるレベルですよ。本当にこればかりはわたしも純粋に尊敬しちゃいますよ」
沙々「あなたの様なプロの泥棒さんは是非とも組織に迎え入れたい!」
沙々「要は勧誘ですよ!攫って仲間に迎え入れます!」
553: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:06:20.55 ID:XornqcgHo
……勧誘ときたか。
どうやら、時間を止める能力に関しては知らないようだ。
どうやって武器を盗んだのかわかっていないようだ。
……にも関わらず、優木沙々の言う窃盗スキル。敵組織はそれが目的らしい。
狙いは私の命ではない。口封じなんかではない。
もっとも、仮に「もう盗めない」と言っても、
嘘だと信じないか、それなら用はないとそれこそ口封じに狙われることだろう。
なら、黙っておくに越したことはなさそう。
仮に可能であっても、端からもう二度と『こんなこと』はしたくない。
増して呉識さんとソーニャさんの敵に加担するだなんて絶対にありえない。
……ソーニャさんはあまり動揺していない。
最初から私の命が狙われていたわけではないということを彼女は知っていたのだろうか。
554: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:07:10.37 ID:XornqcgHo
ほむら「拒否するわ……そんなこと」
沙々「くふふっ、あんたに決める権利なんてあるわけないじゃないですか」
沙々「必ずや、あんたはわたしの組織に忠誠を誓わせますよ」
ソーニャ「フン……そんなの、私が許さない」
ソーニャ「お前をぶちのめして尋問してやる。誰に依頼されたか、裏切り者は誰か……」
ソーニャ「洗いざらい吐いてもらうぞ!」
沙々「ハン!そんなみみっちぃナイフで魔法少女のわたしに勝てると思っているのか!?」
ソーニャ「魔法少女だろうが何だろうが関係ない」
ソーニャ「すぐに終わらせてやる!」
沙々「すぐに終わる立場は逆ですがねぇっ!」
555: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:08:00.76 ID:XornqcgHo
ソーニャさんはナイフを構え、体幹と脚に力を込めている。いつでも走り出せる姿勢。
対し優木沙々は、鈍器……いや、杖を構える。これが魔法武器か。
相手は魔法少女。何をしてくるかわからない。固有魔法も不明。
迂闊に距離を詰めるのはまずい。
それはソーニャさんも理解しているらしい。手札がわからない相手に取るに妥当な距離感。
優木沙々と睨み合ったまま、互いに膠着状態。空気が張りつめる。
動かないということはその攻撃方法に隙が大きいか、そもそも届かないか。そうでないなら既に攻撃をしかけている。
優木沙々がソーニャさんの相手をしている隙に変身をして私も加勢を……
いや、相手が何をしてくるかわからない以上私も下手に動かない方がいいかもしれない。
やはりこういう緊張した状態の時、いてくれて嬉しいのは……もちろん、呉し――
「逃げてーッ!」ドンッ
ソーニャ「んぐぅっ!」
556: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:09:24.93 ID:XornqcgHo
沙々「は!?」
ほむら「!?」
ソーニャ「ぐ……ぐふっ」
ソーニャ「や、やすな貴様……!」
やすな「この鬼ー!」
ほむら「お、折部さん……」
いてくれて嬉しいのは呉識さんだ。
頼もしさ、何とかしてくれる感は正直なところ巴さんをも凌駕する。
しかし実際に現れたのは折部さんでした。
ソーニャさんを追って来てしまったんですね。
やっぱり校内で「こういうこと」やるのは絶対におかしいって。
557: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:10:07.86 ID:XornqcgHo
沙々「な、何だ?こいつは……」
やすな「ソーニャちゃん!こんなちっちゃい子まで手にかけるつもり!?」
沙々「あぁ!?誰がちっちゃいって!?」
私の知っている魔法少女は一人の幼女を除いて全員中学生だ。
優木沙々が何歳かは知ったことではないが、見た目だけで判断するなら中学生が妥当だ。
中学生が殺し屋の刺客だなんていうのも冷静に考えたらとんでもない……いや、高校生でも十二分におかしい。
ソーニャ「バ、バカヤロ……こいつは刺客だ!」
やすな「うっそだー、こんな子どもがそんなわけないじゃーん」
沙々「だ、だ、だっ……!誰が子どもだ!失礼ですよあんた!」
やすな「どうみてもほむらちゃんとそう変わらないじゃん」
ソーニャ「お前、ほむらが何でここにいるかわかってんのか?」
やすな「…………ハッ!」
ほむら「……もしかして、忘れられていた?」
558: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:10:51.71 ID:XornqcgHo
やすな「そ、そうだ!ほむらちゃんは敵の組織に狙われている身!」
やすな「だったらその刺客も子どもで何ら問題ない!」
ソーニャ「いやその理屈はおかしい」
沙々「子ども扱いすんなっつーの!」
やすな「うおおおお!ほむらちゃん!私の後ろに!」バッ!
ほむら「お、折部さん……!」
沙々「ふふん。ほむらを庇うおつもりで?格好つけんじゃねーよ」
やすな「ほむらちゃんは私が守る!」
ソーニャ「おい、余計なことすんな!」
沙々「ムカつきますね……ヒーローのつもりですか」
やすな「うん!」
沙々「パワフルに肯定されるとは思いもしませんでしたわ」
559: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:14:15.29 ID:XornqcgHo
やすな「ほむらちゃん!ソーニャちゃんを後方支援するよ!」
やすな「やすな手裏剣ボンバー!」ペイッペイッ
沙々「いたっ、痛いっ。地味に痛いっ。やめろ!」
ほむら「折り紙持ってきてたんですか?」
やすな「やすな手裏剣シューティング!」
ソーニャ「うっとうしいから邪魔すんじゃ……」
やすな「やすな手裏剣ストロガノフ!」
ソーニャ「いたっ」
ソーニャ「てんめぇー!どさくさに紛れて私に当ててんじゃねぇ!」
やすな「わ、わざとじゃないよ!」
沙々「舐めんなこのクソガキ!」
やすな「どう見ても私の方が年上だよね!」
ギャーギャー
ほむら「……えーっと」
560: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:15:48.99 ID:XornqcgHo
やすな「さあ!ほむらちゃんも手裏剣を!」
ほむら「は、はぁ……」
ほむら「…………」
沙々「がー!ムカつくから先にあんたをぶっ殺す!」
やすな「ひぃっ!」
ほむら「……!」
シャッ!
沙々「!?」
沙々「うおっ!?」バッ
やすな「あ、避けた。ほ、ほむらちゃん!ナイス手裏剣!」
沙々「き、貴様……!?」
沙々「ど、どこにそんなものを隠し持っていた!」
やすな「?」
ほむら「…………」
561: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:17:06.38 ID:XornqcgHo
折角作ってもらって申し訳ないが……
折り紙の手裏剣なんて話にならない。
……勿論、今、魔力で作った。上手く再現できた。
折り紙でなく、本物……いや、本物ではない。魔力の手裏剣。
巴さんの作る魔力のリボンを参考にした……「作る」コツは大方理解できている。
ナイフの刃、その簡単な応用。
しかし、優木沙々……ふざけていてもやはり刺客を名乗るだけのことはあるらしい。。
不意打ちのつもりが、その身に刺さるに至らなかった。
手裏剣は肩を掠めたらしく、衣装の一部は裂け、血が滲んでいる。
今の一瞬でよく手裏剣が折り紙でないと見極めて回避するに至れたものだと思う。
ソーニャ「…………」
やすな「あれ?何で怪我してんの?紙なのに。あ!紙でも切れるね!納得」
ソーニャ「紙じゃねぇ」
ソーニャ「……今のは本物だ」
562: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:18:14.69 ID:XornqcgHo
やすな「ほ、本物!?」
ソーニャ「どこで仕入れたのか……あぎりから貰ったのかしらないが」
お世話になってる二人から学んだ手裏剣と刃物の知識。
狙ったところに飛び、標的に刺さるくらいの腕は身につけた。
どういう刺さり方をするか、刃が入りやすい角度もある程度頭に詰め込んだ。
肝心の魔女や使い魔相手に通用するかはさておいて、我ながら上手く刺さった。ロッカーに。
人間に向けて刃物を投擲するのは抵抗感があるし、折部さんが見ている。
だから顔は避けた。刺さるかはさておき狙おうと思えば狙えた。
沙々「い、今のはビビッた……危なかった……」
沙々「折り紙の手裏剣のせいで油断した……お、恐ろしいヤツですね……やってくれますね」
ソーニャ「どっから持ち出したのかしらんが……なるほど、なかなか上手じゃないか」
ソーニャ「それはそうと……」
563: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:20:12.31 ID:XornqcgHo
沙々「くふふ……面白くなってきやがりましたね……!」
沙々「まずはターゲットであるあなたを……」
ソーニャ「おい」
沙々「ああ!?うっさい邪魔すん……」
ソーニャ「ふん!」ドスッ
沙々「なばァッ!」
沙々「」ドサッ
……ありのままに起こったこと。
今の手裏剣で、私に意識を向けた刺客。
そこをソーニャさんに呼び止められ振り返る刺客。
腹パン。倒れる刺客。
あっけない。
しかし……。
564: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:24:51.09 ID:XornqcgHo
ほむら「い、一撃……」
やすな「うわー、痛そう」
ソーニャ「ふん」
ソーニャ「……しかしこれでやすなでない限りしばらくは動けまい」
やすな「あーあ……もう、こんなちっちゃい子にも容赦ないんだから……」
ソーニャ「うるさい」
今ので折部さん基準って……どれだけ丈夫なの折部さんは……。
それはそうと、二人はまだ気付いていない。
いや、気付いたところでわかるはずがない。
ソーニャ「さっさと縛り上げて組織に受け渡してやる」
ソーニャ「ほむら。紐か何か持ってないか」
ほむら「……いえ」
ソーニャ「そうか……参ったな。気絶してるとは言えほったらかしにするわけにもいかないし」
565: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:26:16.71 ID:XornqcgHo
やすな「私には聞かないの?」
ソーニャ「あるのか?」
やすな「そんなもんあるわけないじゃん。バカなの?」
ソーニャ「フン!」ドスッ
やすな「ハムッ!」
やすな「ぐ、ぐぬぅ……」
ほむら「こ、これは痛そう……」
ソーニャ「安心しろ。刺客にやったのと同じくらいだ」
ほむら「……普通は手を抜きますよね」
どこまで頑丈なのか折部さん。それはさておいて。
……なるべく気づかないフリをする。気にしていないフリをする。
演技力に特別自信があるわけではないが。
沙々「…………」
566: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:27:44.54 ID:XornqcgHo
沙々(……くぅ……い、息が止まるかと思った)
沙々(く、くふふ……)ムクリ
沙々(なかなか強烈な腹パンでした……食後だったら多分吐いてた)
沙々(しかし、わたしは魔法少女……まして、刺客!)
沙々(その気になれば、痛みなんて消せる!)
沙々(よし、そのまま背後から……!)
ほむら「…………」ジー
沙々(あっ)
沙々(……そうだった)
沙々(こいつ……『変身しない』から……)
ソーニャ「あぎりに持ってきてもら……」
ほむら「動かないで」チャッ
567: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:28:51.39 ID:XornqcgHo
ソーニャ「!?」
やすな「何それ?」
やすな「……ヒィッ!?じゅ、銃!?」
ソーニャ「ほむら!?」
やすな「ま、まさかほむらちゃん!?」
ソーニャ「そんなはずが……へ、変装か!?」
ほむら「……後ろを見てください。二人とも」
二人には私が突然銃を突きつけたように見えているようだ。
否定している暇はない。驚く二人の間から、銃を構え優木沙々の眉間を狙う。
二人の間を銃の引き金に指を置いたまま歩いて……刺客の方へ。
優木沙々は気絶なんてしていない。
本当に気を失うのであれば、魔法少女の衣装は解かれる。
私が変身していなかったから油断したのか、魔法少女と対峙した経験がないのか知らないが……何にしても愚策というものだった。
ソーニャさんの一撃で気を失わなかったのも大したものと思うべきなのかもしれない。
568: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:30:11.88 ID:XornqcgHo
変身をするのは憚れる。
しかし、変身して盾を出さなければ『こんなもの』は手に持てない。
こんなこともあろうかと、隠し持っていた。
トイレに行った際、盾から取り出して……。
新しい武器の補充はできないのには違いない。
しかし、全て無くなったわけではない。
……とは言え、このハンドガンには弾は入っていない。
ないものはない。ただの脅し。
沙々「くっ……う……!」
ソーニャ「刺客が……目を覚ましてやがる」
やすな「仕留め損なうとはソーニャも衰えたものだな」
ソーニャ「うるせぇ」ゴツッ
やすな「いぎゃん!」
569: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:30:58.12 ID:XornqcgHo
やすな「そ、それよりもソーニャちゃん……」
やすな「ほむらちゃんが持ってるアレって……?」
ソーニャ「本物だ……」
やすな「な、なんでほむらちゃんがそんなのを……!?」
ソーニャ「わ、私が知るか……確かに、確かに回収できるものはされたはずなんだ」
ソーニャ「手裏剣はまだ、あぎりから貰ったとかで説明はつくが、どうして……」
やすな「いいなぁ」
ソーニャ「羨むなバカ」
やすな「憧れちゃうよね。ピストル」
沙々「まだ……隠し持っていやがったか……!」
ほむら「…………」
570: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:31:29.14 ID:XornqcgHo
ソーニャ(やはり、盗難されたものと同じ型だ……見間違えじゃない)
ソーニャ(回収できなかったものは既に売り払われたとかしたと思っていた)
ソーニャ(あいつの家も実家も下駄箱の中も全部確認したのに!)
ソーニャ(まだ隠し持ってたのか!ちゃっかりしやがって!どこに隠し持っていたんだ)
ほむら「…………」
に、睨んでる……ソーニャさんが睨んでる……。
背後からでもわかる。
絶対怒られる。武器まだ全部返してなかったこと絶対に怒られる。
と、とりあえず今は目の前の敵を……。
優木沙々は、銃を眉間に向けられて憎らしげに私を睨んだまま動かない。
弾が入ってると思っている相手に逃げる隙なんて与えない。
571: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:32:37.13 ID:XornqcgHo
ほむら『まさか……魔法少女が殺し屋をやるなんて世も末ね』
沙々(テレパシー……!)
ほむら『いくら魔法少女とは言え、眉間を撃ち抜かれたらどうなることか』
沙々(くっ……!)
ほむら『見ればわかるだろうけど、この銃にはサイレンサーがついていない……だから本当に撃てば騒ぎになる』
ほむら『仮に即死を免れても、あなたもそれを望まないでしょう』
ほむら『私も撃ちたくはないが……あなたを殺さなければならないなら仕方ないと考えている』
沙々「…………」
沙々『く、くふふ……変身しないから舐めプかなと思ったのですが……』
沙々『なるほど。わたしを油断させるためってとこですか……わたしも考えが甘かった』
沙々『しかし、この銃……。これが……ですか』
ほむら『……何かしら?』
沙々『これが例の……武器ですね』
ほむら『中学生に根こそぎ盗まれた……という?』
沙々『くふふっ、皮肉屋さんですね。そんな情けない話なわけないじゃないですか』
572: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:33:18.36 ID:XornqcgHo
沙々『魔女によく効くそうですね』
ほむら「…………」
沙々『魔女に使い魔にいい仕事をするとかしないとか』
ほむら『……私が盗んだ武器の用途を知っていたのね』
ほむら『それは皮肉と受け取ってもいいのかしら?』
沙々『用途も何もどうせそれ以外にないですしね。社会的身分はただのJC』
沙々『それで?これでわたしに勝ったつもりなんですかねぇ?』
ほむら『……つもり、ですって?』
沙々『くふふ……わたしが、魔法少女ターゲットに何の準備もなく攻め込むわけがないということです』
沙々『あなたはわたしがそんなただのバカと思ってました?』
ほむら『……割と』
沙々『ちくしょー!』
ほむら『いやだからそういうところがよ』
沙々「…………」
573: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:35:21.07 ID:XornqcgHo
沙々『わたしをバカ呼ばわりしたことを後悔させてやるぞクソが』
ほむら『そう……でもさっき自分でも認めてなかったかしら』
沙々『まぁそれはそうなんだけど……』
沙々「くふふ、くふっ……もう、思わず笑ってしまいますよ」
ソーニャ「気絶したフリなんかしやがって……」
沙々「わたしが入ってたロッカーを調べてみてくださいよ」
ソーニャ「……ロッカー?」
沙々「ほら、早くしないと危ないですよ?」
ほむら「……あなた、何が言いたいの?」
沙々「ロッカーの中にある物がわたしの脱出経路だと言ってんだよ!」
やすな「どれどれ?」ガチャ
ソーニャ「お、おいやすな!気を付けろ!」
やすな「なぁに?これ」
574: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:36:25.39 ID:XornqcgHo
ほむら「あ、あれは……!?」
沙々「ほほう、まさか一目見てわかっちゃいましたか?いや、わからなくちゃいけないんですがね」
ソーニャ「……!」
沙々「これにビビってもらわなくちゃいけない……素人は知らなくても無理ないですね?」
やすな「?」
そう。見てわかった。
形は違うが、同じようなものを私はいくつも自作した。
時に魔女の首を吹き飛ばす。……『爆弾』以外の何物でもない。
沙々「爆弾ですよ!これは!」
やすな「ば、爆弾!?」
沙々「撃たれるのは死んでも……じゃなくて、死ぬからいやですね。ほむら。わたしは目立つのは嫌です。あくまでこっそりと攫いたかった」
沙々「でもね、あんたらも、学校で爆弾がーって目立つのは嫌じゃありませんか?」
ソーニャ「何……!?」
沙々「でもわたし達は別に構わない。この学校に通ってなんかいませんから」
ソーニャ「くっ、くそ……!」
やすな「ひ、ひぃぃ!」
沙々「くふふ……できたら爆発されたくなければって脅したいとこですが……そうは言ってられません。さよなら!」
575: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:36:55.67 ID:XornqcgHo
ほむら「あ!」
ソーニャ「しまっ……!」
優木沙々は、こちらにニヤニヤとした憎たらしい顔を向けたまま、
いつの間にか開いていた窓から飛び降りた。バク宙のフォーム。
ソーニャ「くそっ……みすみす逃してしまった……」
やすな「あわあわわ爆弾あわわわわ」
ほむら「お、落ち着いて折部さん!」
やすな「でででででででもでもでもでも」
ソーニャ「こんな状況でもうっとうしいな……」
ほむら「こ、ここは、避難させた方が……」
ソーニャ「そりゃまぁそうだな」
576: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:37:22.52 ID:XornqcgHo
ソーニャ「やすな。お前は逃げろ」
やすな「で、でも……!」
ソーニャ「爆弾があるなんて言うな。爆発なんてさせない」
やすな「ソ、ソーニャちゃん分解できるの!?」
ソーニャ「知識はある」
やすな「無理だぁぁぁぁぁ!」
ソーニャ「何でだぁぁぁぁぁ!」
悔しげな表情から一転、冷静に状況を判断し、折部さんに煽られて怒るソーニャさん。
パタパタを両手を振ってパニックになる折部さん。
ソーニャさんが解体できるかどうかはともかくとして、
折部さんを落ち着かせる必要がある。
577: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:39:34.97 ID:XornqcgHo
ほむら「お、折部さん!落ち着いて下さい!」
やすな「!」
ほむら「必ず、爆弾は何とかします!呉識さんと私もついてます!」
やすな「ほ、ほむらちゃんも……?もしかしてほむらちゃんも爆弾を……!?」
ほむら「私も……知識は、あります!」
やすな「う、うん!し、信じてるよ!」
ソーニャ「何だこの扱いの差は!」
やすな「だってソーニャちゃんだし」
ソーニャ「……!」ガツン
やすな「ォウチ!」
ほむら(非常時でも安定しているわね……)
ソーニャ「まぁこの際いい。いいか、やすな。爆弾のことは誰にも言うなよ」
やすな「あい」
578: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:41:59.53 ID:XornqcgHo
折部さんはロボットのようにギクシャクした動きで空き教室を出て行った。
色々な意味でマイペースだとは思うが平常心は無理だと思った。
空き教室のドアがパタンと閉まった。
ソーニャ「……よし、それじゃ早速」
ソーニャ「ん?」
ほむら「あっ」
その直後、ガタッとドアが開いた。
そこにいたのはやはりというか、呉識さんだった。
何やら大きな袋を持っている。何だっけ……そう、唐草模様っていうアレ。
ソーニャ「あぎり……!」
あぎり「お待たせしました~」
ソーニャ「いたんなら刺客を……!」
あぎり「いいえー、それはちょっとぉ、間に合いませんでしたね」
あぎり「これを集めるのに夢中になってて」
ほむら「!」
ソーニャ「お、お前……!」
あぎり「えぇ、仕掛けられることはわかっていましたからねぇ~」
ソーニャ「お、おう……」
579: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:43:46.10 ID:XornqcgHo
風呂敷を解くとロッカーにあるものと寸分違わず同じ物があった。
これで全部?……全部な気がする。何せ呉識さんだし。
しかし……爆弾が仕掛けられるということをわかっていたとは……?
ソーニャ「こいつが仕掛けられていた爆弾か……」
あぎり「あと一つがどうしても見つからなかったんですが、刺客が持ち歩いていたんですね」
ほむら「ずっと探してたんですか?もしかして朝から」
あぎり「はい~。これで数が合いました」
ソーニャ「呑気だな……で、これで全部ってことなんだな?」
あぎり「はい。でも全部を持ち運ぶのは大変。ここで早速分解しましょう」
ソーニャ「面倒くさいな……」
……あと一つ?爆弾の数までわかっていた?
仕掛けられること自体よりも、仕掛けられた場所さえもわかっていたような態度とノリに思える。
本当に謎な人だ。でもまぁ、呉識さんだし。
580: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:44:24.97 ID:XornqcgHo
呉識さんはスカートの中から工具箱を取りだした。
これで分解……スカートの中から?
あ、でも別に巴さんもスカートからマスケット銃を……
って魔法少女基準で考えてどうするのよ。
ソーニャ「忍術で何とかならないのか」
あぎり「そう言われましても無理ですよ。私の忍法は魔法じゃありませんから」
ソーニャ「説得力がねぇよ」
ほむら「魔法少女ながらすごく同意です」
ソーニャ「何が魔法少女ながらだっての……しかし、どっちにしても全部解体するのは骨が折れるな」
ソーニャさんが話している間にも、呉識さんは爆弾の一つを開けていた。
中の構造……パッと見では複雑そうに思えなくもないが……。
581: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:44:57.50 ID:XornqcgHo
ほむら「…………」
ほむら「この程度なら……」
ソーニャ「ん?」
ほむら「これくらいなら私も分解できます」
ソーニャ「は?」
ほむら「私も手伝います。工具を貸していただけますか?」
ソーニャ「……知識はある、みたいなことさっき言ってたが……」
ソーニャ「ダメだ。素人に触らせられない」
あぎり「はい、どうぞ」
ほむら「お借りします」
ソーニャ「おい」
582: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:46:33.29 ID:XornqcgHo
あぎり「平気ですよ~私が保証します」
ソーニャ「保証とか言ってる場合じゃねぇだろ」
あぎり「でも本人もそう言ってますし、実際に作れるんですよ?」
あぎり「暇な時は忍法用の爆弾一緒に作りましたし」
ソーニャ「プラモデルじゃねぇんだぞ!」
ほむら「取った蓋はどうしますか?」
ソーニャ「さらっと作業してんじゃねぇよ!」
あぎり「ほら、ソーニャ。急がなくちゃ」
ソーニャ「お、おい!……くそっ」
内部構造。あれとそれをこうしてどうのこうので、信管を外して……色々何とかすれば問題ない。
私の機械操作の魔法と知識があれば時間の迫る解体作業ではない。
むしろ簡単すぎる。最初からただの囮や時間稼ぎの方法に過ぎないのなら質より量といったところ。
これならまだ呉識さんと雑談しながら『爆の巻物』を作っている方が楽しい。
……さらっと私、とんでもないことを考えた気がする。
583: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:47:29.92 ID:XornqcgHo
――廊下
やすな(爆弾かぁ……)
やすな(急いで逃げ走ってきちゃったけど)
やすな「ど、どうしよう」
やすな「爆弾は何とかなるって言ってた……」
やすな「みんなを避難させた方がいいのかな」
やすな「でも爆弾のこと言うなって言ってたし……」
やすな「…………」
やすな「みんななら大丈夫だよね」
やすな「ソーニャちゃんは不器用だからちょっと不安だけど」
やすな「あぎりさんやほむらちゃんもいるから、大丈夫だよね」
やすな「教室で待ってよっと」
584: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:48:14.94 ID:XornqcgHo
「お待ちになってください」
やすな「!?」
やすな「あ、あなたは……!?」
やすな「そんな!だ、だってさっき……」
「……飛び降りてすぐに同じ階に戻っちゃきちゃいけませんかね」
やすな「刺客……!」
「そういえばあなた個人には名乗ってませんでしたね……わたしの名前は優木沙々」
やすな「沙々にゃん!」
沙々「そう、わたしは……って誰が沙々にゃんだ!」
沙々「まあ、いいけど……お話しませんか?」
沙々「あなたとお話したいからこそ、わたしは逃げたフリをしたんですよ……安物の爆弾をたくさんバラ撒く程ね」
585: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:49:12.01 ID:XornqcgHo
やすな(ど、どうしよう!刺客だ!)
やすな(私の手裏剣捌きに恐れ戦いて私を狙いに来たんだ!くぅ!自分の才能が憎い!)
沙々(何か知らないけど不意にイラッとした。何でだろう)
やすな(逃げてソーニャちゃんに教えなくちゃ!)
やすな「……あッ!あんな所にアンニュイな物が!」ビシッ
沙々「!?」バッ
やすな「うおおおおおお!」ダッ
沙々「あっ!てめぇ!」
やすな「逃げ切ってやるー!いやっふえぇぇ――――い!」
沙々「そ、そうはいくかッ!」
沙々「洗脳☆マギカビーム!」ズビビ
586: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:50:14.52 ID:XornqcgHo
やすな「ギャー!?」バリバリ
沙々「よし!」
やすな「あ、あわわ……あぅ……」
やすな「…………」
沙々「……折部やすな」
沙々「あなた、わたしの仲間。オーケー?」
やすな「……あい」
沙々「イエス」
沙々「トモダチ。トモダチ」ワサワサ
やすな「トモダチ。トモダチ」ワサワサ
沙々「オーケーオーケー」
587: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:50:50.08 ID:XornqcgHo
沙々「よし、洗脳成功」
沙々「くふふ……ソーニャの友達、いただいちゃいました」
沙々「わたしの洗脳魔法は『自分より優れたヤツ』しか操れない」
沙々「魔法少女でもないこのクソウゼーのを洗脳できちまう事実は癪なもんだけど……致し方なし」
沙々「ついて来て下さい。学校はサボタージュしましょう」
やすな「うん」
沙々「これからあなたはわたしの下僕です」
やすな「あれ?友達じゃないの?」
沙々「え?」
沙々「え、えぇ、えぇ!友達ですよ!」
やすな「今下僕って……」
沙々「それは、ほら。親しき仲にも礼儀っつーか、便宜上っつぅか」
588: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:51:21.97 ID:XornqcgHo
沙々「シュレディンガーの猫というか、ラプラスの魔というか……」
やすな「?」
沙々「パブロフの犬とか、コペルニクス的転回といいますか、そういう関係がいいかと」
やすな「……?」
やすな「まぁいっか」
沙々「よろしい」
沙々(バカで助かった)
沙々「……それじゃ、わたしの『お願い』はちゃーんと聞いてもらいますからね?下僕さん」
やすな「わんわん!」
沙々「何で!?」
やすな「下僕といったら犬かと思って」
沙々「…………」
589: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/23(月) 23:51:59.67 ID:XornqcgHo
沙々(わたしは、織莉子とキリカに敗北して自分を分析した)
沙々(わたしは自信過剰なところがあった)
沙々(少しは控えめに……)
沙々(この心構えで、魔法少女でないうざいJKでしかないこいつ……)
沙々(お嬢様学校出身でもなく、わたしを一度倒したとかもない)
沙々(そんなヤツでも、わたしに勝る箇所がある箇所を見ることができた)
沙々(少し前のわたしなら、こいつを見下してて洗脳なんてできない)
沙々(……殺し屋と忍者と友達になれる、その"コミュ力"だ)
沙々(わたしが持っていない、わたしが劣る能力……憧れてしまう)
沙々(憧れは劣等感……彼女は『上』だ……ウザいけど賞賛に値する。ウザいけど)
沙々(……ウザいけど!)
597: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 21:40:40.67 ID:sWvgChZpo
ほむらちゃんがいなくなって、どれくらい経っちゃったんだろう。
学校が休みだと、曜日の感覚がちょっと狂って正確な日数があやふやです。
加えて、大好きな友達が攫われているとあっては、気が気でないものです。
無事に帰ってくるっていう信じる心というか確信というか、そういうのがあるので少しは落ち着いています。
ただ……わたしのほむらちゃん分はとっくに枯渇しているのはこの世の真実です。
なぎさ「……マミさんのくるくるした髪」
マミ「うん?」
なぎさ「チーズみたいなのです」
マミ「……!?」
マミ「な、何だか急に寒気が……」
なぎさ「くわえてみていいです?」
マミ「だ、ダメ!ダメよ!」
なぎさ「さきっちょだけ!さきっちょだけでいいから!」
さやか「お行儀悪いよなぎっち」
なぎさ「なぎっち?」
598: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 21:42:04.18 ID:sWvgChZpo
ほむらちゃんがいない期間は、なぎさちゃんがわたし達とお友達になった日から今までとそんなに変わらない。
人見知りだったなぎさちゃんに懐かれたのはいいんだけど、その分期間の長さを実感してしまいます。
百江なぎさちゃん。
キリカさんがどこからともなくつれて来た親戚ではない子。
どういう事情があるのかわからないけど、はぐらかして教えてくれません。
で、なぎさちゃんは現在、織莉子さんの家で暮らしています。
家族はどうしたの?とかは誰も聞きません。ゆまちゃんの例があるからです。
最初は恥ずかしがってたなぎさちゃんも、今ではマミさんの背中にへばりついてカールした髪をスンスンと嗅ぐくらいになりました。
なぎさちゃんは甘えん坊さんです。
なぎさ「いいにおいなのです」
マミ「あ、ありがとう」
なぎさ「でもチーズのにおいはしないのです」
マミ「うん。発酵食品のにおいがしたら困るわ」
なぎさ「黄色いのに……」
マミ「なぎさちゃんの中では黄色=チーズなのかしら?」
なぎさ「うん!」
マミ「いい返事ね」
599: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 21:43:47.02 ID:sWvgChZpo
マミ「ほら、そろそろ離れて?」
なぎさ「やなのです」
マミ「チーズあげるから」
なぎさ「はいなのです」
さやか「欲望に忠実だなぁ」
まどか「あはは……」
なぎさちゃんはチーズに目がなくて、昨日のお茶会で出てきたちチーズケーキへの喜びっぷりったらすごかったです。
「チーズフォンデュなんて見せたら卒倒するんじゃない?」ってさやかちゃんが言ってました。それくらい大好きです。
チーズ好きに関してはこんなエピソードも……
一緒に暮らしてる織莉子さん曰く、なぎさちゃんは何にでもパルメザンチーズをかけたがるそうです。
スパゲティはもちろん。トースト、カレーライス、サラダ……チーズと名がつくもの以外は大抵かけたがるそうです。
「新たなる境地への挑戦なのです」とか言ってカレイの煮付けにかけようとして流石に怒られたそうです。
そんななぎさちゃんをキリカさんは「ほとんどビョーキ」って言ってました。チョコケーキに紅茶に入れる用の砂糖をパラパラさせながら。
……そっちはチーズバーガーに裂けちゃうチーズを挟んでオーブンする所業です。
しっかりしてる織莉子さんが見ているから大丈夫とは思いますが……二人とも、将来偏食になっちゃったりしないか少し心配です。はい。
600: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 21:46:55.67 ID:sWvgChZpo
なぎさ「退屈なのです」
なぎさ「ゆ~まちゃ~んとあ~そびた~いのです~」
さやか「あたしじゃ不服かい?」
なぎさ「さやかも楽しいですけども」
マミ「ゆまちゃんはね、佐倉さんと風見野へ魔女退治に行ってるのよ」
なぎさ「いつ帰ってくるです?」
マミ「魔女を倒したら、だから……なんとも言えないわ」
なぎさ「ぶー」
まどか「トランプやろうトランプ」
なぎさ「なぎさジジ抜き得意なのです!」
さやか「ほほう。このさやかちゃんに勝てるかな?」
なぎさ「キリカはジジ抜き弱いのです」
601: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 21:48:57.89 ID:sWvgChZpo
なぎさちゃんはゆまちゃんがお気に入りのようです。
やっぱり同い年の方がいいのかな?
確かにゆまちゃんも、周りはみんな年上だからか、喜んでましたし。
二人を比べれば……ゆまちゃんの方がしっかりしてるかな?
……今日も、マミさんの家に集まりました。
このところ、毎日マミさんのお家に集まっているような気がします。
本日はマミさんとさやかちゃんとなぎさちゃん、わたしの四人です。
杏子ちゃんとゆまちゃんは今、風見野に行っています。
織莉子さんとキリカさんもお出かけだそうです。
何でも、予知で見滝原と風見野のいろんなとこに魔女が現れるらしいから……とのことです
予知で魔女が現れる場所は大雑把にはわかるけど、予知でほむらちゃんの居場所は全くわからない。
無理もないことかもだけど、なんだかもどかしい。
602: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 21:53:36.50 ID:sWvgChZpo
わたしの中では結構長いこと、ほむらちゃんとの繋がりが途絶えています。
とは言え、メールとか電話とかする気にはなれない。やっぱり怖いって思いがあるから。
でも、織莉子さんとキリカさんのお言葉もあって、
ほむらちゃんに危ない目を遭わせないみたいなことを言ってたあぎりさんを、一度しか会ったことないけど……信用しています。
だからほむらちゃんの安否に関して言えば、不安は割と弱い。
さやか「まどか。マミさん。トランプよトランプ」
まどか「あ、うん。いいよ」
マミ「ポーカーフェイスには自信あるわよ」
さやか「ババがわかんないのに必要ですかねそれ」
マミ「そうね。いらないかも」
さやか「切っちゃいますよー」
なぎさ「あっ、あっ、さやか、さやか」
さやか「んー?」
603: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 21:54:51.57 ID:sWvgChZpo
なぎさ「なぎさ混ぜ混ぜしたいのです」
なぎさ「バララーってのを練習したいのです」
さやか「ばらら?」
マミ「リフルシャッフルのことかしら」
まどか「りふる?」
マミ「だから……貸して」
マミ「こうするのよ」
さやかちゃんからトランプの束を受け取ると、マミさんはそれを二分にして、
バララーってしました。テレビとかでよく見るあの混ぜ方。
リフルシャッフルっていうんですね。また一つ、わたし賢くなった。
流石マミさん手先が器用です。わたしの場合は何度やってもバララーじゃなくてバラバラーってなっちゃいます。
604: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:00:57.93 ID:sWvgChZpo
なぎさ「それなのです!」
さやか「イッカスゥー!」
なぎさ「やらせてやらせて!」
マミ「はい、どうぞ」
なぎさ「えっと、半分にして、こうやって」
なぎさ「あー」
まどか「あぁあぁ、バラバラに」
なぎさ「まとめてー」
なぎさ「半分にしてーこうやってー」
なぎさ「あー」
マミ「難しいわよね」
なぎさ「むむむ……」
605: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:04:15.65 ID:sWvgChZpo
さやか「うずうず」
まどか「?」
さやか「頑張る姿。そして頬を膨らましてカードをまとめるその姿」
マミ「ふふ、微笑ましいわね」
さやか「うずうず」
まどか「効果音が口に出てるよさやかちゃん」
さやか「さやかちゃんホールド!」
なぎさ「ひゃっ」
さやか「かわいいねぇー!」
さやか「なでなでベイベー!」
なぎさ「あぁん、くすぐったいのです~」
606: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:08:11.74 ID:sWvgChZpo
いきなりなぎさちゃんに抱きついてくすぐるさやかちゃん。
なぎさちゃんはきゃあきゃあ言って笑ってる。
ゆまちゃんでほとんど同じ流れを見たよ。いや、わたし自身でも体験したよ。
見る分には、微笑ましいなぁ。
さやかちゃんったら、頭を力強く撫でちゃって……なぎさちゃんの髪が乱れちゃうよ。
なぎさちゃんといいゆまちゃんといい杏子ちゃんといいわたしといい……どうしてさやかちゃんは人の頭を撫でたがるのだろう。
ほむらちゃんにもやろうとして普通に振り払われてた。さやかちゃんでも流石に年上にはしません。
なでなで……か。わたしも好きかって聞かれたら正直嫌いじゃないけど、
ほむらちゃんに撫でてもらえたらそれはとっても……って、何を考えてるのわたしは……。
うーん……。
……恥ずかしいけど、ほむらちゃんが戻ってきたら頼んでみようかな。
全然会えなくて寂しかったからっていう言い訳に撫でて欲しいなって。想像するだけでも恥ずかしいですね。
607: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:11:49.55 ID:sWvgChZpo
ピンポーン
マミ「あら?」
なぎさ「誰か来たのです。ゆまちゃん!?」
さやか「それにしては早くない?さっき出掛けたんでしょ?」
なぎさ「忘れ物なのです」
まどか「普通に郵便じゃないでしょうか」
マミ「ごめんなさい、席外すわね」
ピンポンって音がすると、一瞬ほむらちゃんが!?なんて思っちゃう。
ある種の条件反射みたいなものかな?
ほんの一瞬だけ期待して「そんなはずが……」って即思う。
悲しい寂しい条件反射。
多分条件反射ってそういう意味じゃないと思うけど……。
608: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:19:14.10 ID:sWvgChZpo
マミ「はい」ガチャ
「こんにちは!」
マミ「え?あ、はぁ……こんにちは」
「いやー、会ってみたかったんだよねー!」
「初めまして!えーっと……」
「…………ハッ!私あなた達の名前知らない!」
マミ「あのー……」
「ほむらちゃんのお友達だよね?」
マミ「……ッ!」
マミ「暁美さんを知っている……んですか!」
「うん!」
「私、折部やすな!いっそ高校生!」バーン
609: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:21:20.96 ID:sWvgChZpo
……!?
今、玄関の方で「ほむらちゃん」「暁美さん」というキーワードが聞こえてきました。
さやかちゃんも聞こえてたようで、わたしと目を合わせました。
すぐにわたしは立ち上がって、玄関の方へ小走りに近い早歩き。
視界の隅でさやかちゃんも立ち上がったのが見えて、なぎさちゃんの「あっ、待って」という声が聞こえます。
まどか「マミさん!」
マミ「か、鹿目さん」
やすな「あれ?この人達は?」
さやか「えっと……い、今あなた、ほむらって言いました!?」
やすな「うん」
そこに立っていたのは、明るい笑顔をした女性。
何故かブレザーを着ている……中学生か高校生なのかな。
……何やらあぎりさんと近しいものを感じました。何でだろう。
610: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:24:03.04 ID:sWvgChZpo
やすな「私折部やすな!疑いもなく高校生!」
マミ「……だ、そうよ」
元気な声で自己紹介。何だろう、さやかちゃんとも近しい何かを感じる。
なぎさちゃんはわたしの後ろに隠れてやすなさんの方を見ています。
人見知りだものね、初対面だものね。わたしもちょっぴり緊張してるよ。
まどか「あ、あの……ほむらちゃんとのご関係は……?」
やすな「友達です」キリッ
マミ「そ、それはそれは……」
マミ「あ、申し遅れました。私、巴マミです」
さやか「さやかです」
まどか「わ、わたしはまどかです」
なぎさ「な、なぎさなのです」
やすな「みんなほむらちゃんの友達?」
さやか「あ、なぎさちゃんはほむら知らないです」
やすな「ふーん……」
611: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:26:40.90 ID:sWvgChZpo
やすな「いやはやいやはや」
やすな「ほむらちゃんが友達に会いたがってたからさ、どんな人達かなってさ」
会いたがってた……。やっぱりほむらちゃん、向こうで寂しい思いを……。
やすなさんって人は……「向こう」でほむらちゃんと知り合ったのかな。
じゃあこの人はあぎりさんの仲間……?忍者?
やすな「この中でほむらちゃんと一番仲良しなのは誰かな?」
まどか「へ?」
さやか「えーっと……」
さやか「それは、まぁ……一番はまどかですね。はい」
まどか「そ、そういう風に言われると恥ずかしい……」
612: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:28:05.31 ID:sWvgChZpo
やすな「なるほど!」
やすな「まどかちゃん!」
まどか「は、はいっ」ビクッ
やすな「ほむらちゃん、まどかちゃんのこと大好きだって言ってたよ」
まどか「へっ……!?」
やすな「優しくて可愛らしくってー。えっと、あとなんか言ってたっけ」
マミ「あらあら、ふふ、良かったわね」
さやか「フゥー!」
まどか「あ、あわわ……はぅ」
なぎさ「顔真っ赤なのですー」
613: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:30:28.20 ID:sWvgChZpo
まどか「そ、そ、それよりもっ」
まどか「ほむらちゃんの知り合いなんですよねっ」
やすな「そだよー」
まどか「ほむらちゃんは……どうですか?」
やすな「どうって?」
元気ですか、無事ですか、寂しがってませんか、悲しんでませんか、
わたし達のこともっと何か言ってませんか、どこにいますか、
何でつれてかれちゃったんですか、いつ帰って来ますか、
聞きたいことがありすぎて、ぼんやりとした質問になってしまいました。
やすな「うん。まーそれよりも、ほむらちゃんのことなんだけど」
さやか「それよりって最初からほむらの話なんスけど」
やすな「とりあえず、私がここに来たのはね……」
やすな「実は何と!」
やすな「ほむらちゃんも見滝原に来てるのです!」
614: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:32:40.62 ID:sWvgChZpo
まどか「……!」
マミ「ええっ!?」
さやか「マジですか!?」
なぎさ「やったのです!やっとほむほむにご挨拶できる!?」
まどか「……ど、どこ」
やすな「へ?」
まどか「どこ!どこにいるんですか!?ほむらちゃん!」ガバッ
やすな「わおっ」
さやか「お、落ち着けまどか!」ガシッ
まどか「あっ……す、すみません、つい……」
やすな「んもう、落ち着いて落ち着いて!」
やすな「こんなにあわあわしちゃって、せっかちさんだね」
615: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:35:07.51 ID:sWvgChZpo
やすな「ついてきて。案内するから!」
まどか「はい!」
マミ「あ、ま、待って。出掛ける仕度が……」
さやか「そうですね。ケータイ置きっぱにするわけにもいかんね」
なぎさ「戸締まりなのです」
やすな「ガス栓閉めた?」
ほむらちゃんが……見滝原に来ている。
ほむらちゃんが……いる。
ほむらちゃんに……会える!
やっと、やっと会える……!
ほむらちゃん!
616: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:36:19.77 ID:sWvgChZpo
路地。
いつかの夕方。ここでさやかちゃんと杏子ちゃんはケンカをしていました。
きのことたけのこどっちが美味しいかという口喧嘩。
それはさておき
わたし達はやすなさんの後を歩きながら小声でお話中。
「ほむらちゃんは今あまり人目につく場所にはいられない」
と、やすなさんはさっきそう言いました。
どういう訳かもちろん聞いたけど、はぐらかされちゃいました。
さやか「でもさ、結局なんでほむら攫われちゃったんだろ」
まどか「あぎりさん、トラブルに巻き込まれたとか何とか言ってた気がする」
マミ「巻き込まれた……ね。どういうことかしら」
まどか「向こうで魔女が何かして、ほむらちゃんの力がどうしても必要だったとか」
さやか「でもほむら、戦う力が……」
マミ「……いえ、ありえない話でもないわ」
617: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:38:38.13 ID:sWvgChZpo
なぎさ「何で?」
マミ「暁美さんがワルプルギスの夜を倒した魔法少女の一人だって知っていれば、その経歴ある暁美さんの協力を求める理由もわかる」
マミ「時間を止める力がなくなったかどうかなんて第三者からしたらわからないもの」
さやか「なるほど……まだ帰ってこないのは『それ』が立て込んでいるから……?」
まどか「そ、それならどうして秘密にするんでしょうか」
なぎさ「時間止める能力がなくて大変なら、なおさらなぎさ達の助けが必要なのです」
なぎさ「それに、そういうのは多い方がいいに決まってるのです」
マミ「それは……」
マミ「……『そういう事情』だから、といったところかしら」
なぎさ「そういうって、どういう?」
マミ「わからないわ。あくまで仮説だもの」
618: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:40:41.15 ID:sWvgChZpo
その仮説に則ると、あぎりさんはほむらちゃんに協力してほしいことがあったってことになります。
秘密にしなくちゃいけなくて、一日や二日で解決する問題ではない内容。
だけど、それだとどうにもいまいち納得できないこともあります。
なぎさ「ほむほむ、魔女の口づけとか?」
さやか「あー、そっか。魔女か……」
さやか「魔女の口づけ受けて帰るに帰れないって」
なぎさ「魔女の口づけ喰らったから帰すなんてできないもんね」
なるほど。そういう考え方もありですね。
……でも、まぁ考えることもないんじゃないでしょうか。
やすなさんはほむらちゃんの居場所につれてってくれている。だから……
……本人から直接聞いた方がいい。
やすな「魔女?」
まどか「へっ」
619: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:42:15.83 ID:sWvgChZpo
やすな「魔女ってなぁに?」
なぎさ「えっと……」
あっ、き、聞こえちゃってたみたい。
魔法少女じゃない人にいきなり魔女とか言っても、そりゃハテナってなるよね。
さやか「い、いえいえ!聞き違いです!」
やすな「そんなことないですー。ちゃんと聞いたよっ」
マミ「…………」
マミ「な、なぎさちゃんが見てるアニメの話です」
やすな「アニメ?」
まどか「……!」
察しました。
マミさんの言わんとすること。
620: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:43:52.18 ID:sWvgChZpo
まどか「じ、実はさやかちゃんもそのアニメのファンでして」
さやか「へ?」
なぎさ「面白いアニメ大好きなのです」
まどか「子ども向けのだから恥ずかしいので誤魔化して……ね?」
マミ「えぇえぇ」
まどか「そ、それに魔女が出てくるんです。はい」
さやか「……あっ」
さやか「そ、そうなんスよぉー!アニメ大好きー!」
さやか「魔女っ子サイコー!フゥー!」
やすな「へぇー」
やすな「さやかちゃん子っどもー」
さやか「あ、あはは、女の子はいつでも魔法少女に憧れるんスぅー」
621: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:45:09.98 ID:sWvgChZpo
さやか「あはは……」
さやか「はは……は……」
さやか「……うん」
さやかちゃんがすごい微妙な顔をしてます。
恥ずかしいやら恨めしいやら。
言葉に出来ない。こんな顔初めて。
だからそんな顔で見ないでほしいなと思ってしまうのでした。
やすな「魔女……か」
やすな「その魔女のことなんだけどさ、聞きたいことがあるの」
マミ「聞きたいこと?」
なぎさ「アニメ?」
やすな「あのさ……『これ』何だか知ってる?」スッ
622: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:45:43.89 ID:sWvgChZpo
やすなさんはポケットから何かを取り出しました。
よく見たらポケットが膨らんでいる。結構何か入っているみたいです。
やすなさんの手の平にあるもの……
それを見て、わたしは……なんて言うか、その……
横隔膜じゃなくて全身の細胞一つ一つが一斉にしゃっくりしたかのような、そんな気持ちになりました。
黒くて丸くて尖ってる。
マミ「グ……『グリーフシード』ッ!?」
やすな「私と沙々にゃんで、これを色んなところに置いてきたんだ~」
まどか「!?」
やすな「沙々ちゃんは『魔女パワーで戦力の分散』だって言ってたの!まあ私よくわかんないけどね!」ドヤァ…
マミ「な、なんですって……!?」
なぎさ「ささ?」
さやか「何でドヤ顔なんスかねぇ……」
さやか「……あれ?ササ?どっかで聞いたような……」
623: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:46:54.28 ID:sWvgChZpo
……さ、沙々!?
それって……それって、優木沙々って人のこと!?
キリカさんが、前に話してくれた、行方不明の魔法少女!
ほむらちゃんが誘拐された日の夜に現れた……疑惑の!
確か……えっと、その能力は……!
マミ「まさか……あなた、優木沙々の術中に……!」
やすな「?」
さやか「優木沙々……ササ!そうだ!それだ!」
……洗脳魔法!
そうなると……間違いありません。
やすなさんは操られている!
そして、その洗脳魔法は確か……魔女さえも操れる!
魔女を操れるということは……使い魔も……!
そして、やすなさんの手にあるのは、真っ黒なグリーフシード……
624: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:48:41.61 ID:sWvgChZpo
やすな「キャラット!」
マミ「な、何……!?」
やすな「マックス!フォワード!ミラク!カリノ!」クルクル
なぎさ「何してるのです?」
さやか「よ、よくわかんないけど……なんかしてくる!」
やすなさんは軽やかっぽいステップをしながら、何か叫んでます。
まるでゲームやアニメにある魔法とか呪文の詠唱のようなことを……
……魔法。
やすな「マギカッ!」
ズアッ!
まどか「きゃあ!」
さやか「こ、これは……!?」
625: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:52:32.90 ID:sWvgChZpo
ターンをビシッと決めて、ポケットから出した真っ黒な球体を天に掲げると、
辺りが……路地が変わってしまいました。
何とも形容しがたいオブジェクトとカラーリング。
終始ドヤ顔の折部さんの後ろに、何やら動く壁。
壁……じゃない。
――魔女。
ここは魔女の結界!
マミ「ま、魔女……!」
なぎさ「どうしてグリーフシードなんて持ってるのです!?」
やすな「召喚魔法」キリッ
さやか「そ、そうだ……思い出した。優木沙々……前聞いた……」
さやか「洗脳魔法で……魔女も……操れるって!」
626: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:54:27.14 ID:sWvgChZpo
どんよりしている空間。
何か赤黒くてもさもさしてずっしりしてる巨大な魔女。
魔女の、口っぽいところからわさわさと出てくる物体……。
何やらつやつやして丸っこくてぐにゃぐにゃしてるようでポンポコポンって感じの、大型犬くらいのサイズで赤と黒のインクを混ぜ混ぜしたような色した使い魔。
大きな魔女の前に仁王立ちでドヤ顔してるやすなさん。
こんもりしたポケットからグリーフシードを取り出したので、
きっとあと何個かそのポケットに入ってるんだろうな。
マミ「なぎさちゃん!」
なぎさ「はいなのです!」
なぎさ「……二人には初めてだね」
まどか「へ?」
なぎさ「なぎさの魔法少女おべべをお披露目なのです!」
さやか「お、言われてみれば」
627: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:55:00.76 ID:sWvgChZpo
マミさんとなぎさちゃん、変身です。
言われてみれば、そう言えば、変身シーンを生で見たの久しぶりな気がする。
なぎさちゃんが魔法少女であることは知ってたけど、魔法少女の姿を見るのは初めて。
ネコミミっぽいフード……ゆまちゃんと被ってます。フードだけに。
そして手にはラッパのようなものを……音波攻撃とかするのかな?
さやか「マミさん!あたし達は……」
マミ「あなた達は……そうね。そこの物陰に隠れてて」
マミ「そして……これ」シュルッ
さやか「こ、これは……」
マミ「リボンで作ったわ。名を冠するならトッカ・コントラッタッコ・ランデッロ」
なぎさ「何語なのです?」
マミ「……魔法で作ったバットよ。いざという時はこれで鹿目さんを護ってあげて」
マミ「いつか『前』と同じようにね」
さやか「……はい!」
628: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:55:53.26 ID:sWvgChZpo
やすな「すごい!何か変身した!」
やすな「くふふ、負けてられないね」
やすな「やすな召喚獣アタック!」
やすな「行って!金つば(名前)!ういろう(名前)!」
使い魔「ガチ」
使い魔「スギテ」
やすなさんの指示で使い魔がマミさんとなぎさちゃんの方へもうダッシュ。
操られている魔女から出た使い魔を、操られているやすなさんが指示を出す。
なぎさ「来るのです!」
マミ「なぎさちゃん!動きを止めて!」
なぎさ「了解なのです!」
マミさんは何度かなぎさちゃんと戦っています。
動きを止めてという指示。
と、いうことはなぎさちゃんはそういうことができる能力
なぎさ「ぷわー」プワー
さやか「あ、何か出た」
まどか「あれは……」
629: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:56:19.55 ID:sWvgChZpo
なぎさちゃんの魔法武器から出てきた、キラキラした透明の球体……
織莉子さんの水晶玉と違う透明の球。虹色に光っている、柔らかくて、そして濡れている。
シャボン玉。おっきなシャボン玉。
屋根までじゃなくてそのままふわふわと使い魔の方向へ飛んでいきます。
さやか「奇麗だなー」
まどか「あれがなぎさちゃんの武器……!」
さやか「でもさ、シャボン玉でどうやって戦うっていうのよ」
確かに、ちょっと頼りない。
シャボン玉はどちらかというと戦いとは正反対の位置に存在するイメージ。
平和と儚さ。
だけど、マミさんがなぎさちゃんに「それ」を出すことを指示したということは、
きっと何か、不思議な力のあるシャボン玉なんだなっていうのがわかります。
630: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:57:01.44 ID:sWvgChZpo
使い魔は勢いそのままシャボン玉に突進しました。
当然シャボン玉はパチンと……
まどか「あ!」
さやか「あれは……!?」
……割れない?
むしろ使い魔がシャボン玉の中に入っちゃった!
使い魔がシャボン玉の内壁をベチベチ攻撃します。
でも割れない。シャボン玉なのに割れない!
なぎさ「ゲットだぜなのです!」
マミ「ティーロッ!」
631: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:57:37.32 ID:sWvgChZpo
そして逃げ場のない使い魔をマミさんが狙撃!
当たらないはずがありません。
シャボン玉の中の使い魔が撃ち抜かれて、シャボン玉が何か爆発しました。ボーン。
どこかの漫画で爆発するシャボン玉を見ましたが、それはさておき一匹撃破です。
もう一匹が来ます!
まどか「あ、見て!さやかちゃん!」
さやか「もう片方の使い魔の動きが止まってるよ!」
さやか「そして使い魔の足下が光ってる……あれはちっちゃいシャボン玉!」
さやか「そうか!あの爆発性だけでなく弾力性のあるシャボン玉が地面にくっついてて、それに触れた使い魔がそれを踏んだんだ!」
さやか「さっきの使い魔がシャボン玉に閉じこめられたように、割れないシャボン玉が使い魔の足にくっついて、動きを止めた!」
さやか「そしてマミさんの狙撃二発目ー!当然使い魔の急所を直撃ー!今の一瞬で二匹の使い魔を葬ったー!」
さやか「一発ずつで隙の大きいマミさんのマスケット銃に対して相手の身動きを封じて爆発で追い打ちかましてくれるシャボン玉!いいコンビだ!まさにパスタとチーズのようなナイスな組み合わせだぁー!」
さやか「はぁ……はぁ……」
まどか「お、お疲れさま」
さやか「あー、あっつい」
632: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:58:30.53 ID:sWvgChZpo
マミ「なぎさちゃん!」
なぎさ「はいなのです!」
なぎさ「マミさん命名の必殺技を喰らうのです!」
なぎさ「何とか・何とか・ディ・サポーネなのですー!」ポポポ
マミ「覚えてない!覚えてない!」
やすな「すごいなーみんな。魔法みたいなことしてるよー」
やすな「まるで魔法少女だね!」
やすな「どうしよう。このままじゃ負けちゃう!」
やすな「もっと!もっと出して!」
魔女「…………」
やすな「沙々ちゃんに持たされた変な黒いのあげるから」ペイペイッ
魔女「…………」
やすな「ぐりぃふ何とかって言ってた気がするよ!食べて食べて」
633: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:59:02.70 ID:sWvgChZpo
――数十分後
マミ「明らかに……使い魔を倒して……優勢」
マミ「最初は……調子よく倒していたのに……」
なぎさ「はぁ……はぁ……」
なぎさ「つ、疲れたのです……」
マミ「使い魔が多すぎる……!キリがない!」
マミ「折部さんのとこに近寄れないし……この距離で魔女を狙撃しても通じないし……」
マミ「心なしか使い魔も耐久力が普通より高い気がするし……」
マミ「い、一体どれくらい戦っているの……」
マミ「このままだと……くっ」
QB「まずいね」
なぎさ「あ、いたの?キュゥべえ」
QB「今さっき来たところだよ」
QB「随分と時間をかけているなと思ったけど……納得いったよ」
マミ「……どういうこと?」
634: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 22:59:34.65 ID:sWvgChZpo
QB「優木沙々の能力で魔女は操られて、それに準じて使い魔も思い通りに動かされている」
QB「だから一斉に絶え間なく、使い魔同士である程度連携して襲いかかることができる」
QB「さらに、折部やすな……彼女は穢れたグリーフシードを魔女に与えている」
なぎさ「与えるとどうなるのです?」
QB「魔女にグリーフシードを与えるケースはあまりないから何とも言えないけれども」
QB「この魔女の場合……グリーフシードの穢れを、使い魔を強く多く産むエネルギーに置換している」
マミ「グリーフシードを食べている……というの」
QB「体力は大丈夫かい?」
マミ「えぇ、私は大丈夫だけど……」
なぎさ「なぎさしんどいのです」
QB「このままだと消耗戦だね」
マミ「急にだったからグリーフシードあまり持ってきてないのに……」
マミ「ここは、一旦退いた方がいいかしら」
QB「それが安全策になるね」
635: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:00:03.40 ID:sWvgChZpo
マミ「なぎさちゃん!悔しいけど、一時撤退するわ」
なぎさ「ええー!」
マミ「このままだとキリがないわ。私が退路を確保するから、美樹さん達をつれてきて!」
なぎさ「わかりました!」タター
やすな「ふふふ……二手に離れたね。今がチャンス!」
やすな「よーし!捕まえて!すあま(名前)!」
やすな「この子達はできたら生け捕り!時給900円!」
使い魔「ギリギリ」バッ
なぎさ「ま、待ち伏せッ!?最初からその陰に隠れて……!?」
なぎさ「ひっ!ひゃああ!」バッ
マミ「――ッ!?」
マミ「なぎさちゃん!」
636: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:00:29.62 ID:sWvgChZpo
使い魔「トモスレバ!」
なぎさ「うぅ……」
なぎさ「……あ、あれ?」
なぎさ「襲ってこないのです」
なぎさ「?」
ドサッ
マミ「あ、あれは……!?」
マミ「使い魔が……倒れた?」
マミ「体に……何か刺さって……」
マミ「……ッ!?」
マミ「き、消えた……」
マミ「……『紫』の光!」
637: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:00:57.12 ID:sWvgChZpo
マミ(使い魔に刺さった……黒い……塊)
マミ(それが何なのかはよくわからない内に消えてしまった……)
マミ(でも……この『紫の光』は……使い魔に刺さって、淡紫の光を発するそれの持ち主は……)
マミ(まさか……)
マミ「まさかッ!」
「……間に合ったようね」
なぎさ「あ、危なかったのです……」
マミ「ほ、本当……だった」
マミ「嘘だって思ってた……」
マミ「あ……あ……」
マミ「暁美さんッ!?」
638: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:01:27.25 ID:sWvgChZpo
懐かしく思える声が私の名前を呼ぶ。
上手く手裏剣が刺さってくれて良かった。
魔力でできた手裏剣ということもあって、決して悪くない威力。
『実戦』で使うのは今が初めてだ。
……そして間に合った。
私の手裏剣は、使い魔から人を守ることができた。
この……
この……えっと……
幼女。
魔法少女だ。
一応聞いておこう。
ほむら「……怪我はないかしら?」
なぎさ「…………」
ほむら「…………」
639: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:02:03.69 ID:sWvgChZpo
なぎさ「……誰?」
ほむら「……私も聞きたい」
なぎさ「?」
なぎさ「キオクソーシツなのです?」
ほむら「いえそういう意味じゃなくて……」
ほむら「えーっと……」
……そして、この幼女。
美国織莉子の髪と思わせる銀髪。
丸い目でじっとこっちを見る……魔法少女。
ネコミミのような突起のついたフードが真っ先に目に付く。
ネコミミっぽいカチューシャをつけたゆまちゃんといいコンビになりそうね。
それはそうと、何者なのか。
魔法少女とは言え、見ず知らずの子どもが結界で巴さんと一緒というのには、
なんらかの事情があるに違いない。どうしたものか。
640: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:02:30.39 ID:sWvgChZpo
マミ「暁美さん!戻ってきてたのね!」
ほむら「えぇ……心配かけてすみません。巴さん」
こちらに駆け寄ってきた人物の、その優しい眼差しがとても懐かしい。
隣にいる子はきょとんとしている。
マミ「……えぇ、えぇ、とっても……とても心配したわ。でも必ず帰ってくるってわかっていた」
ほむら「もちろんです」
なぎさ「?」
ほむら「積もる話はありますが……この子、誰ですか?」
マミ「そ、そうだったわ!」
マミ「怪我はない!?なぎさちゃん!」
なぎさ「は、はい……助かったのです」
マミ「ごめんなさい……焦って判断ミスをしてしまったわ……」
なぎさ「大丈夫なのです!なぎさこそビックリしちゃって何もできなくて……情けないのです」
641: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:02:58.49 ID:sWvgChZpo
ほむら「なぎさ……」
マミ「あ、そうね。暁美さんは初めてね」
なぎさ「アケミサン?」
ほむら「え?あぁ、私の名前は暁美ほむら」
なぎさ「あなたが!話には聞いてたのです!」
ほむら「そう」
なぎさ「まどかがいつも心配してたのです!ほむほむに会いたがってたのです!」
ほむら「まどか……!」
ほむら「って誰がほむほむ!?」
なぎさ「さやかがそう呼ぶと喜ぶって」
ほむら「そんなことないわよ……」
……さ、さやかなら言いかねない。
人がいないことをいいことに……!後で覚えてなさいよ。
あることないこと吹き込んでないでしょうね……鬼黒髪とか。
というか誰もその呼び方を止めなかったの?
ねぇ巴さん。目を逸らさないで。絶対笑ってるでしょあなた。
642: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:03:28.37 ID:sWvgChZpo
ほむら「と、取りあえず、その呼び方はよしてね」
なぎさ「嫌なのです?」
ほむら「ええ、普通に呼んで」
なぎさ「ほむら」
ほむら「うん」
なぎさ「…………」
ほむら「…………」
なぎさ「わたしはほむほむ派です」
ほむら「やめてって」
マミ「ふふふっ……」
ほむら「と、巴さん……」
643: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:03:56.18 ID:sWvgChZpo
マミ「どうしましょう、あなたと再会できてとっても嬉しくて、緊張感が」
マミ「もっとあなた達のやり取りを見ていたいとこだけど……」
マミ「話は後にしましょう。終わってからね」
ほむら「……えぇ、そうですね」
ほむら「取りあえず、グリーフシードです」
マミ「まあ、助かるわ。……ごめんなさい」
なぎさ「ありがとうほむほむ!」
ほむら「その呼び方やめて」
やすな「じぇじぇじぇー!ど、どうしてほむらちゃんがここに!?」
やすな「学校サボったの!?いけない子!」
やすな「じぇっと……じゃなかった。えっと、どうしよう」
やすな「もしほむらちゃんが来たらどうするのか何て聞いてないよ」
やすな「私は何をすればいいんだろう?」
やすな「何したらいいと思う?かるかん(名前)」
使い魔「シランヨ」
やすな「喋った!?」
644: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:04:22.33 ID:sWvgChZpo
――
――――
ほむら「そ、そんな……!」
ほむら「折部さんが優木沙々に攫われるなんて……!」
ソーニャ「……迂闊だった」
ソーニャ「まさかアイツを狙うとは思わなかった」
ソーニャ「アイツがムカツクからって狙われることはないこともなかった……」
ソーニャ「だけど……くそっ。あの爆弾は逃げるためじゃなくて……時間を稼ぐためだった」
あぎり「どうしましょ~」
ソーニャ「本当に困ってんのかお前は」
ほむら「誘拐したとなると……近い内に何かしらコンタクトが……」
ソーニャ「そうだな。ほむらを引き替えに……と言ったところか」
ほむら「…………」
645: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:05:41.82 ID:sWvgChZpo
ソーニャ「……あぁ、そうだ。だから私はこれから見滝原に行く」
ほむら「!」
ソーニャ「やすなと刺客は見滝原にいる」
あぎり「そうなんですかー?」
ソーニャ「私の机の中に刺客からのメッセージが入っていた」
ほむら「メッセージ……」
あぎり「見せて欲しいです」
ソーニャ「ああ」
「 折部やすなは預かった。ざまーみろー
返してほしかったら見滝原にほむらをつれて来なさい
取引の内容と場所はあなたが見滝原に来たら教えましょう
言う通りにしなきゃ、折部やすなの無事は保証しません
あなたの刺客より 」
あぎり「……なるほど」
ほむら「折部さん……」
ほむら「…………」
ほむら「見滝原……」
646: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:06:10.59 ID:sWvgChZpo
ほむら「……そ、ソーニャさん」
ソーニャ「ダメだ」
ほむら「まだ何も言ってない……」
ソーニャ「どうせ見滝原に一緒に行きたいとでも言うつもりだろ」
ほむら「は、はい」
ソーニャ「だからダメだと言ったんだ」
ほむら「そ、そんな……」
ほむら「刺客が来いと言ってるんですよ」
ほむら「その場所を単身で行くなんて、そんなの、みすみす罠に突っ込むようなもの……!」
ほむら「私なら、見滝原の地理もある程度わかりますし……」
ソーニャ「住んでるのにある程度なのかよ」
647: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:06:41.48 ID:sWvgChZpo
ほむら「それに向こうなら私の仲間も……」
ソーニャ「そういうことに巻き込ませたくないみたいなこといってなかったか?」
ほむら「そ、そうですけど……相手は魔法少女ですし……」
ソーニャ「……ただお前が会いたいだけなんじゃないか?」
ほむら「べべ、別にそ、そんなことないですよ?」
ソーニャ「わかりやすいな」
ソーニャ「わざわざ相手の要求通りに連れてくるまでもない」
ソーニャ「兎に角、お前はあぎりとここに残ってろ。一人で十分だ」
あぎり「でも、危ないのには変わりませんよ」
ソーニャ「……ああ」
ほむら「……友達が心配なのは痛い程わかります。だけど、そんな……」
ソーニャ「し、心配だとかそんなんじゃない!」
ソーニャ「別にあいつのことなんてどうでもいい」
ほむら「どうでもいい、だなんて……!」
648: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:07:16.88 ID:sWvgChZpo
ソーニャ「あいつはそもそも、私の事情に踏み込み過ぎなんだ」
ソーニャ「関わらない方がいいのに、しつこくしつこく……」
ソーニャ「本来なら普通の一般人として暮らせばいいのに、そんなバカなことをして……」
ソーニャ「そんなバカが、巻き込まれてその身に何かあったらとなったら……」
ソーニャ「後味が悪いからだ」
ほむら「…………」
ほむら「……ソーニャさん」
ソーニャ「それに、向こうにも組織の仲間はいる」
ソーニャ「いいか、お前は来るな。……あぎりも釘刺せよ」
あぎり「了解しました。定期連絡忘れないで下さいね」
ほむら「呉識さ……!そ、そんな……」
ソーニャ「あぁ、任せたぞ。あぎり」
649: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:07:55.54 ID:sWvgChZpo
ほむら「……呉識さん」
あぎり「なぁに?」
ほむら「ソーニャさんはああ言ってましたけど……」
ほむら「本当に大丈夫なんですか」
あぎり「心配ですか?」
ほむら「そ、それはもちろん……!」
あぎり「そうですね」
あぎり「私も行きたいところですが、あなたの身を一番に考えないといけませんからね」
ほむら「……うぅ」
あぎり「でも」
ほむら「?」
あぎり「自衛能力、あなたならもう十分あるかと思います」
650: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:08:32.98 ID:sWvgChZpo
ほむら「……!」
あぎり「向こうのお仲間もあなたの顔を見たがってますし」
あぎり「私も助けに行きたい気持ちは山々です」
あぎり「大切なご友人の一人ですからね」
ほむら「呉識さん……!」
あぎり「ソーニャからの連絡が途絶えたら参りましょう」
あぎり「早くて明日」
ほむら「……はい!」
あぎり「一応渡しておきますね」
ほむら「渡す?」
あぎり「はい」
ほむら「……?」
651: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:09:01.97 ID:sWvgChZpo
あぎり「何と、あなたの袖に」
ほむら「て、手品ですか……」ゴソゴソ
ほむら「これは、カード?」
あぎり「これで見滝原に行きます」
ほむら「ま、まさかこれは……!」
ほむら「組織で秘密裏に作られてる乗り物とか……」
ほむら「そういうののカードキー的な……!」
あぎり「九千円くらい入ってます」
ほむら「あ、電子マネー……」
あぎり「電車もバスも、ありますよぉ」
――――
――
652: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:09:34.35 ID:sWvgChZpo
結局、ソーニャさんからの連絡はなかった。
だから呉識さんと共に、見滝原に来た。
呉識さんはソーニャさんを捜すとのことで分かれた。
呉識さんは「あなたの仲間と合流してください」と言っていた。
魔女の気配を感じたから取りあえず来てみた。そこに誰かしらいる、あるいは来ると思ったから。
結果はドンピシャというものだった。
だけど、どうしてこんな所に折部さんが……。
優木沙々に攫われたはず。それならその優木沙々の側にいるのが普通。
ほむら「…………」
マミ「彼女……折部さんとは知り合いなのかしら?」
ほむら「えぇ……向こうの学校で」
マミ「学校?」
ほむら「詳しい話は後でしましょう」
マミ「そうね」
653: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:10:20.05 ID:sWvgChZpo
マミ「それで……彼女は今、洗脳されているわ」
ほむら「洗脳……!?」
マミ「それが優木沙々っていう魔法少女の能力。魔女と使い魔も操れるそうよ」
ほむら「洗脳魔法……そうか……それで」
なぎさ「なぎさはなぎさなのです!」
ほむら「え?……あ、名前ね。うん……知ってる。名乗らなくてもわかるわ」
ほむら「でも何でそのタイミングで自己紹介したの?」
なぎさ「してなかったから……」
ほむら「そう……律儀ね」
優木沙々の能力。洗脳魔法……。
これが折部さんがこんな場所にいる理由?操られている……。
それはそうと、結界には……この二人と折部さん以外にいないのかしら。
気になるし周りをじっくり見回して探したいところだけど、魔女と折部さんの方に集中をしなければならない。
もし仮にまどかとさやかが結界に巻き込まれたとしても……
巴さんのことだ。きっと既に避難させていることだろう。
654: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:10:46.36 ID:sWvgChZpo
ほむら「……優木沙々のことを知っているようでしたが?」
マミ「えぇ、美国さんと呉さんから聞いたわ」
マミ「何でも、私達と会う前に戦ったそうよ」
ほむら「なるほど……そうですか」
ほむら「ひとまず私は、折部さんを保護したい」
マミ「わかったわ。だったら私となぎさちゃんであなたと援護するわ」
ほむら「ありがとうございます……ですが」
ほむら「二人は魔女の方をお願いします」
マミ「で、でもあなたは……」
なぎさ「みんなから聞いたのです……ほむほむは弱いって……大丈夫なのです?」
ほむら「……間違ってはいないけど、その言われ方はちょっと不服ね」
ほむら「あとほむほむやめて」
655: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:11:12.39 ID:sWvgChZpo
ほむら「でも大丈夫。私が弱いのは……もう、過去のこと」
なぎさ「ナイフ……!」
マミ「でも、暁美さん……ナイフで渡り合うには近づかないといけない」
マミ「この通り使い魔が多すぎて……それに、使い魔も操られているというわ」
マミ「獣のようにただ襲いかかるだけということがない……」
ほむら「……なるほど」
ほむら「でも折部さんに近づくだけなら何てこともない。使い魔の移動速度も覚えました」
ほむら「増して……思考は少しでも人間に近い方がむしろ避けやすい」
ナイフの使い方は学んだ。それも対人間に特化している。
殺し屋に教わったのだからそれは当然だけど。
手裏剣だって使える。
精製できるナイフの刃渡りだって一センチ伸びた。
手裏剣は効いた。なら、ナイフだって通用する。
656: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:11:43.97 ID:sWvgChZpo
なぎさ「短い武器なのです……!危ないのです……!」
マミ「……大丈夫よ。なぎさちゃん」
マミ「暁美さんを信じて」
なぎさ「わ、わかったのです……」
ほむら「素直な子ね」
ありがたいこと。
心配してくれるのは結構だけど……
巴さんの言う通り、信じて欲しい。
なぎさ「……怪我しないでね?ほむほむ」
ほむら「もういいわよそれで……」
ほむら「……さて、と」
657: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:12:25.66 ID:sWvgChZpo
ほむら「…………」タッ
やすな「お、おお!?ほむらちゃんがめっちゃすごい速さでこっちに来る!」
やすな「えっと、えっと、マミちゃんとなぎさちゃんはさなづら(名前)とかるかん(名前)にやらせて……」
やすな「八つ橋(名前)!大福(名前)!おはぎ(名前)!やすなストリームアタックだ!」
使い魔「ピロシキ」バッ
使い魔「モトイ」ダッ
使い魔「デハアウチ」ズアッ
ほむら「……!」
折部さんの前に立ちはだかる、赤黒い異形達。
使い魔は全部同じような姿だが、折部さんには見分けがついているのだろうか。
名前を付けているということは……
やすな「あ、ごめん全然違った」
やすな「ちまき(名前)!えっと、以下略!」
ついていないようだ。
658: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:12:54.45 ID:sWvgChZpo
使い魔「ナカヨシ」
使い魔「コボルスキ」ズアッ
ほむら(……甘い!)サッ
やすな「よ、避けた!?華麗!」
やすな「つ、捕まえて!」
使い魔「ミゾオチ」
ほむら「……!」
スカッ!
使い魔「フォリシッ」ズシャッ
やすな「ひぃ!真っ二つ!?」
やすな「あ!ナイフ持ってる!」
659: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:13:29.02 ID:sWvgChZpo
やすな「うっそ!?あれで斬っちゃったの!?」
やすな「やだああああ!ほむらちゃんがソーニャちゃんに似ちゃったあああああ!」
やすな「あんなに良い子だったのにぃぃぃぃ!ふえぇぇん!」
やすな「絶☆望した!」
ほむら「……さ、流石魔法で作っただけあってよく切れるわね」
ソーニャさん直伝のナイフ術……。
斬る角度、持ち方、振るい方……。
教わった知識が役に立った。
難点があるとすれば射程が短いこと。
しかし、距離の詰め方、身のこなしを教わった。カバーが可能。
使い魔相手にナイフは微妙だと思っていたけど……
この程度の使い魔相手なら十分。
660: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:13:55.67 ID:sWvgChZpo
使い魔を躱し、文字通り道を切り開いて距離を詰めた。
すぐ目の前にあわあわしている折部さんがいる。
使い魔の新しい介入も間に合わない。
やすな「ああ!金つばぁぁぁ!」
やすな「あれ、違ったっけ」
ほむら「…………」
やすな「ひぃっ!ほ、ほむらちゃんがすぐそこに……!ヤバイかも!」
やすな「こ、こうなったら……!やるしかない!」
やすな「ほむらちゃん!ごめん!私は暴力に走るよ!」
やすな「うおー!やすな真拳!」バッ
やすな「ズババー!」
ほむら「…………」
661: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:14:34.88 ID:sWvgChZpo
ガシィッ!
やすな「んぎゃあああああ!」
やすな「一瞬で手首取られたぁぁぁぁ!」
やすな「あだだだだだだ痛い痛い痛い!ギブ!ギブ!ギブギブ!」
手足をバタバタさせる折部さんの背後に回り込み、手首を掴んで軽く捻る。
手裏剣術。ナイフ術。
そしてこれは……サブミッション。
魔女や使い魔にはてんで役に立たないことだが……
ソーニャさんにしょっちゅう喰らっている様を見せつけられて、覚えてしまった。
見様見真似ではあるけど……これは、折部さん。あなたから学ばせてもらったと言って過言でない。
呉識さんの手裏剣、ソーニャさんの知識、そしてあなたの……えっと……うん。
「向こう」で学んだ技術で、私は、優木沙々に勝利したい。
662: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:15:07.98 ID:sWvgChZpo
ほむら「……折部やすな」
やすな「……ほ、ほへ?」
ほむら「優木沙々はどこにいる」
やすな「……ほむらちゃん?」
ほむら「優木沙々の居場所を言いなさい」
やすな「こ、怖いよ……いつものほむらちゃんじゃない……!?」
ほむら「言わないなら例えあなたでも……折る」
やすな「ひっ!?」
やすな「ほむらちゃんはそんなこと言わないもん!偽物め!」
ほむら「……」ギュッ
やすな「ノォォォ!痛い!肩が!肩が!」
663: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:15:42.26 ID:sWvgChZpo
巴さんに然り、それまで敬語で話していた相手に対しこういう言葉遣いや態度をとるのは少々心が痛む。
増して関節技で悶絶させるなんて罪悪感で胸が苦しい。
それでも可能な限り威圧をする。声のトーンを落とし「どす」とやらを利かせる。
折部さんを脅してでも、敵の居場所を吐かせなければならない。
最悪、本当に折ってでも。
大丈夫。彼女のタフさはよく知っているし、もしアレしてしまっても魔法で治すこともできる。
ほむら「早く言いなさい……さもないと……」
やすな「う、うぐぐ……!痛い……痛いよ、ほむらちゃん……!」
やすな「やめて……お願い、痛いよぉ……ふえぇ」プルプル
ほむら「…………」
やすな「…………」
やすな「……あ、泣き落としダメ?」
ほむら「ダメ」
やすな「ですよね」
664: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:16:11.19 ID:sWvgChZpo
やすな「……ふ、ふふ……ふ」
ほむら「……何がおかしいのかしら?折部やすな」
やすな「この締め方。ソーニャちゃん程じゃないね」
やすな「やっぱりほむらちゃん優しい子。手加減してる」
やすな「その刺々しい喋り方、むしろギャップカッコイイよ」
ほむら(刺々しい……)
ほむら「……余計なことは言わないでくだ……言わないことよ。折部やすな」
ほむら「優木沙々はどこに行ったの」
やすな「うへ、へへへ」
やすな「で、でも悪いけど……さ、沙々ちゃんの居場所は……わから、ないよ」
ほむら「…………」
やすな「嘘じゃないよ!……マジね、これ」
やすな「でも……」
やすな「でも、まどかちゃんは……」
ほむら「!」
665: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:17:06.46 ID:sWvgChZpo
ほむら「まどかが……?」
ほむら「まどかが!まどかがどうしたと言うの!?」
やすな「まど、かちゃんは……もう、ここにはいないよ。ふへへ」
ほむら「……!?」
まどかは……もう『ここ』にいない!?
まさか……結界の中にいたというの!
……不覚だ、気付かなかった。
やすな「よく見てなかったけど……誰かが、連れてったよ」
ほむら「つ、連れてかれた……!?誰がまどかを!?そしてどこに!?優木沙々!?」
やすな「だ、だからわかんないって……でも、きっと、沙々ちゃんの仲間だね」
ほむら「……ッ!」
やすな「ふ、ふふ……ふ…………くふっ」
やすな「」カクッ
ほむら「……折部やすな?」
ほむら「折部……さん?」
ほむら「折部さん!?折部さん!」
ほむら「き、気を失ってる……?」
666: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:17:54.69 ID:sWvgChZpo
マミ「暁美さん!そのまま彼女を!」
ほむら「巴さん!?」
マミ「折部さんが捕らわれたら魔女の動きが鈍った……!」
マミ「彼女は魔女の司令塔!」
マミ「ティロ・フィナーレッ!」
魔女は巴さんに任せていたから特に意識していなかったが……
折部さんに気を取られていたから巴さんが例の砲台を作っていたのに微塵とも気付かなかった。
そして魔女の体には透明な……柔らかくて、そして濡れている球がいくつも張り付いている。
その近くを、大きなシャボン玉が浮いている。その中に使い魔が閉じこめられている。
動きを制限している。なぎさ……ちゃん、とやらの能力ね。
いつもの居眠りと大差のない顔で力無く倒れそう……そんな折部さんの体を支えながら、
静止する魔女の体が貫かれるのを見送った。あと何か爆発した。
結界は解かれた。
667: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:18:50.26 ID:sWvgChZpo
結界が解け、景色が見慣れた路地になって……
二人の魔法少女が変身を解いたのを見て、私もひとまず解く。
そして真っ先に私と側で眠る折部さんの元に駆け寄るのは……
さやか「ほむらァー!」
ほむら「……さやか」
さやか「えっと、えっと、な、何から話せばいいんだろ……」
さやか「ま、まずは……お、おかえり!」
焦燥と歓喜が混濁した、中途半端な笑顔をしている。
嬉しいけどそれどころじゃない。でも嬉しい。きっとそう考えている。
まどかが結界の中にいたと知って……さやかも何となく、いるんじゃないかと思った。
本当に、理由もなく、何となくそう思えば、その通りだったらしい。
「おかえり」……まどかからも聞きたいその言葉。
しかし、さやかとも、こうして再会できたのはとても嬉しく思う。
元気そうで何よりだ。
嬉しいは嬉しい。しかし……
668: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:19:20.55 ID:sWvgChZpo
さやか「うぅぅ……まどかに会わせたい」
なぎさ「あ、あれ!?まどかは!?」
さやか「わかんないんだよ……」
マミ「わ、わからない!?」
さやか「あたし……まどかと一緒に隠れて見てたんです」
さやか「それで、ほむらが現れて……」
さやか「ビックリしてまどかの方を見たら……もう……」
マミ「そんな……!」
なぎさ「今度はまどかが攫われちゃったのです!?」
ほむら「……そう。わかったわ、さやか」
さやか「ごめん……あたしがついていながら……」
ほむら「……いえ、仕方ないわ」
ほむら「それに……下手に気付いていたらあなたにも危害が及んでいたかもしれない」
669: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:20:11.03 ID:sWvgChZpo
さやか「危害?」
ほむら「現実味ないでしょうけど、相手は殺し屋の類よ」
なぎさ「こ、殺し屋!?」
マミ「暁美さんあなた、それ本気で言っているの!?」
さやか「あんた……一体、何に巻き込まれたっていうの……」
ほむら「……それは教えられない」
ほむら「片足だけでも突っ込んでいい話でもないから」
さやか「……ほむら」
さやか「あんたはいつもそうだよ……」
ほむら「…………」
さやか「悲しいことや辛いこと、ほんとの気持ちをみんな自分の中に閉じ篭らせちゃってさ」
マミ「美樹さん……」
さやか「あたしだって……あたし達だって、色々思うことはあったんだよ……」
ほむら「その話、長くなりそう?」
さやか「まぁそれなりには」
670: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:20:45.09 ID:sWvgChZpo
ほむら「じゃあ後にして頂戴」
さやか「あっはい」
マミ「それで、暁美さん」
マミ「その……折部さんのことなんだけれど……」
なぎさ「寝てるのです?」
ほむら「……巴さんの言うところの、優木沙々の洗脳魔法」
ほむら「多分それが解けたからか……何とも言えませんが、急に気を失ってしまって」
なぎさ「任せるのです!」
なぎさ「どれどれ」サワサワ
なぎさ「……ふむふむなのです」ペタペタ
なぎさ「このお姉さんから悪い魔力を感じるのです!」
さやか「触診の意味ある?」
671: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:21:33.94 ID:sWvgChZpo
マミ「……瘴気を浴びてしまったとか、そういったところね?」
なぎさ「です!」
ほむら「……!」
QB「穢れの溜まったグリーフシードをいくつか持ち歩いていたみたいだしね。全部魔女に与えてしまったようだ」
QB「魔法を受けていたということもある……その影響も受けているだろう」
さやか「だ、大丈夫なんですか!?マミさん!」
マミ「顔色はよくないけど……呼吸は乱れてたり、弱ってたりはしていないようね」
マミ「……どう?キュゥべえ」
QB「魔女の口づけを喰らった訳でもないからね」
QB「瘴気を浴びたことに加えて洗脳魔法を受けて肉体と精神に負荷を受けたといったところかな」
QB「そのまま放置しておくと危険なのには間違いないけど、命に別状はないだろう」
マミ「……だ、そうよ」
672: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:22:05.28 ID:sWvgChZpo
ほむら「とにかく、折部さんを避難させないと」
さやか「あ、あぁ、うん。そっちはあたしに任せてよ」
ほむら「任せるわ。それじゃあ巴さんは……」
マミ「折部さんの話では、他にもグリーフシードが仕掛けられて――」
なぎさ「!」
マミ「……今、また産まれたようよ。丁度。魔女は私がやるわ」
ほむら「お願いします」
マミ「暁美さんは、鹿目さんを追うんでしょう?」
ほむら「……はい」
マミ「…………」
マミ「少し前のあなたなら『心配だからやめなさい』と言いたいところだけど……」
マミ「今のあなたなら、大丈夫そうね。……あなたの師匠ができなくて残念だわ」
ほむら「と、巴さん……」
マミ「ふふ、何てね」
673: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:22:33.44 ID:sWvgChZpo
なぎさ「なぎさはっ!?なぎさはっ!?」
なぎさ「なぎさは何すればいいのです!?」
随分と元気な子ね……本人は真剣なんだろうけど。
一人称が自分の名前という点でゆまちゃんと印象が被る……
ともかくとして、見知らぬ子どもの役割を私に託されても困る。
巴さんと一緒にと言うべきか、私についてきてと言うべきか。
マミ「なぎさちゃんは、美樹さんと一緒にいた方がいいわね」
マミ「それで折部さんをお願いね」
ほむら「……そ、そうですね。優木沙々のような敵がまだいる可能性もある」
マミ「えぇ、魔法少女が側にいるに越したことないわ」
QB「僕も何か手伝おうか?」
674: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:23:04.85 ID:sWvgChZpo
マミ「そうね……」
マミ「二人……いえ、三人をつれてったらゆまちゃんを折部さんのところへ誘導してあげて」
さやか「ゆまちゃん?」
マミ「佐倉さんなら一人でも大丈夫でしょうけど、なぎさちゃんを一人にするのは不安……」
マミ「それにゆまちゃんの治癒魔法が折部さんに効くかもしれないしね」
QB「うん、わかったよ」
なぎさ「むっ、なぎさも一人でも大丈夫なのです!」
マミ「ゆまちゃんと一緒なのよ」
なぎさ「了解なのです」
さやか「チョロいなー」
ほむら「二人は仲良しなのね」
さやか「まあね」
マミ「それじゃ三人とも、私は行くわ」
675: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:23:56.42 ID:sWvgChZpo
ほむら「ええ……よろしくお願いします」
さやか「まっかせて下さいよ!」
マミ「いつもみたいに鹿目さんに抱きつかれるがいいわ!」
ほむら「なっ……!」
ほむら「も、もうっ、巴さん……」
さやか「ふへへへ」
ほむら「そこ、ニヤニヤしない」
さやか「ふひっ」
まどかに抱きつかれたいのは山々だが……
って、そうじゃなくて。
そんな恥ずかしい気持ちになるようなことを言って巴さんは駆けていってしまった。
676: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:24:38.99 ID:sWvgChZpo
やらなければならないことがある。それも、二つ。
一つは、魔女の結界で攫われたまどかを追いかけること。
そして、折部さんの安全を確保すること。
ほむら「……悪いけど、折部さんを頼んだわ」
ほむら「ここからなら私の家が一番近い……場所はわかるわね」
さやか「おうよ!」
なぎさ「なのです!」
ほむら「これ、私の家の鍵よ」
ほむら「……任せたわ」
なぎさ「なのです!」
ほむら「……それって口癖?」
なぎさ「?」
ほむら「いえ、何でもない」
677: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:25:10.12 ID:sWvgChZpo
ほむら「しかし……まどかは一体どこに……」
なぎさ「キュゥべえ知らない?」
QB「うん、わかるよ」
QB「まどかは僕にとっても重要人物だからね。危害が及ぶのは避けたい」
ほむら「…………」
さやか「ど、どこに!?」
QB「まどかなら『廃墟』に行ったようだ」
ほむら「廃墟?」
さやか「……あ、それって」
さやか「あたしとまどかがマミさんと会った場所?」
QB「うん。そうだね。僕とも、出会った場所だね」
ほむら「なるほど……わかったわ。それじゃ……任せたわ」
678: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:25:47.65 ID:sWvgChZpo
さやか「…………」
なぎさ「…………」
さやか「え、えーっと……」
さやか「念のためもしもーし」ツンツン
やすな「…………」
なぎさ「やっぱ起きないのです……」
QB「完全に気を失っているね」
さやか「ですよね……やすなさん!失礼します!」グイッ
さやか「ぬおぉ……!お、重い!」
さやか「一般人代表現役ピチピチJCがJKをおぶさって運ぶのには……は、ハードすぎる!」
QB「増して気を失っている人間を担ぐのは、相当な力と体力を要するよ」
679: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:26:19.56 ID:sWvgChZpo
さやか「うぐぐ……あ、やばい!これ思った以上にキツイ!」
さやか「ま、まさか魔法少女じゃないという設定がこんなところで枷になるなんて!」プルプル
QB「何を言ってるんだい?」
なぎさ「だ、大丈夫?」
さやか「へーき、へーき……!あたしかて、魔法少女じゃないけど……」
さやか「ほむらに頼られたなら……」
さやか「やってやろうじゃないのよォッ!」
QB「契約するかい?目を覚ま……」
さやか「ぬゥゥゥゥゥゥゥゥッ!」
QB「わけがわからないよ」
なぎさ「なぎさも手伝うのです!」
さやか「どうやって?」
なぎさ「このお姉さんをシャボン玉に閉じこめてプカプカ浮かべるのです」
さやか「無理無理!めっちゃ目立つもん!」
680: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:26:57.33 ID:sWvgChZpo
なぎさ「ダメです?」
さやか「ダメポ」
なぎさ「じゃあちっちゃいシャボン玉をいっぱい出すのです」ポポポ
さやか「ほうほうそれで?」
なぎさ「シャボン玉をいっぱいくっつけるのです」ペタシペタシ
さやか「……お?」
さやか「何だかやすなさんがちょっぴり軽くなったような……」
なぎさ「シャボン玉のフリョクっていうのなのです。持ち上げるのです」
さやか「なるへそ……でもさ……これ、爆発するよね」
なぎさ「うん」
さやか「怖いわぁ……」
QB「魔力で作られているものだからね。そう簡単には割れないよ」
さやか「でも……強度ってどれくらいになるわけ?」
QB「なぎさが込めた魔力によるね」
さやか「あやふや!」
681: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:27:24.81 ID:sWvgChZpo
なぎさ「よくわかんないけどなぎさを信じてほしいのです!」
さやか「……う、うんそうだね」
さやか「大体、背負ってる人につけたシャボン玉が割れる要素なんてないよね。多分」
さやか「よし!待っててやすなさん……!」
さやか「このさやかちゃんアンドなぎさちゃんが、あなたをほむほむハウスに招待しちゃいますからね!」
やすな「…………う」
さやか「……やすなさん?」
やすな「……うぅ」
さやか「や、やすなさん!?」
やすな「うぅ……ん……」
なぎさ「ま、まさか目を覚まして……」
やすな「……もぉ食べれない」
さやか「都市伝説レベルの寝言を!?」
682: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:27:52.32 ID:sWvgChZpo
さやか「でもこんなこと言うようなら……」
なぎさ「割と大丈夫そう?」
QB「うなされているようだね」
さやか「うなされ!?言葉と裏腹にハードな状況!」
なぎさ「い、急がなくちゃ!」
さやか「おんぶして走るなんてぶっちゃけ恥ずかしいけどそんなの気にしてられないぜ!」
さやか「うおおおおおお!」ダダダ
なぎさ「ですううううう!」タタタ
さやか「なぎさちゃんはえええぇぇぇ!?魔法少女の脚力すごっ!」
さやか「待って!待って!おいてかないで!」
さやか「っていうかそんな有り余るパワーあるならやすなさん運ぶの手伝ってよ!やすなさんのお尻支える何なりさぁ!」
なぎさ「あ、そうなのです。それは気付かなかったのです。目からウロコなのです」
さやか「マジで?」
683: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:28:45.96 ID:sWvgChZpo
廃墟。
キュゥべえが言うには、ここにまどかがいるらしい。
この時間軸にとっては、ここがまどかとさやかの始まりと言ってもいい。
二人が、キュゥべえに導かれ、魔女と出遭い、巴さんと出会った場所。
薔薇に執着しているグロテスクな魔女がここに産まれた……あるいは現れた。
経営難に陥り開発が中止された、埃っぽい廃墟。
ここに刺客もきっといる。ここに入る直前に変身した。
警戒をして歩いていたが……
そこでまず出会ったのは、刺客ではなかった。
まどかでもなかった。
無彩色の空間に、青と白と黄色はとてもよく似合う。
ほむら「そ、ソーニャさん!」
ソーニャ「……ほむらか」
ソーニャ「何だお前その格好」
ほむら「あ、えっと……」
ほむら「ま、魔法少女の……作業服?」
ソーニャ「お、おう」
684: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:29:19.80 ID:sWvgChZpo
ソーニャ「それで何でお前、ここにいるんだ?」
ほむら「何でって……」
ほむら「ソーニャさんこそ、今までどこに……!?」
ソーニャ「ん?ああ……やすなを追ってきたはいいんだが……」
ソーニャ「結局見つからなくてな」
ほむら「だ、だったら……!」
ほむら「ソーニャさんの連絡が途絶えたから私と呉識さんが……!」
ソーニャ「そうか。そういうことだったのか」
ソーニャ「すまないな。心配かけて」
ソーニャ「だがそんなことはさておいて」
ほむら「そ、そんなこと……!?」
685: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:29:55.82 ID:sWvgChZpo
ソーニャ「お前に会わせたい……というか、会ってもらわなければならないヤツがいる」
ほむら「わ、私に……?」
ソーニャ「おい!」
「はいはーい♪」
ほむら「……ッ!」
ソーニャさんは、後ろの柱に向けて呼びかける。
そして、返答。
この声……聞き覚えがある。
ま、まさか……
優木沙々……っ!
沙々「やっほーですよ。くふふっ。また会えましたね」
ほむら「…………!」
686: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:30:43.77 ID:sWvgChZpo
沙々「くふふふっ、驚きのあまり声も出ない?」
沙々「何でわたしとソーニャが一緒にいるん……」
ほむら「まどかッ!」
まどか「ほ、ほむらちゃん!」
沙々「……おいこらテメェ。いや、まぁそりゃそうかもしれないけどもさ……」
柱の陰から、優木沙々が現れた。その側に……両手首を紐で束縛された……
悲しげな表情をする、小さくて、大きな存在。
やっと会えた……まどか。
優木沙々に肩を抱かれ粗雑に体を揺すられている。
沙々「ほらっ、返してやんよ」トンッ
まどか「あわわっ」
優木沙々は乱暴にまどかの背中を押した。
両手の自由が利かないまどかはそれにより転びそうに……。
ほむら「ま、まどか!」ガシッ
まどか「ほむらちゃん……」
まどか「ご、ごめんね。ほむらちゃん……私……」
ほむら「まどか……大丈夫。大丈夫よ……」
ほむら「……やっと、会えたわね」
まどか「うん……」
ほむら「今、紐を切るわ」
まどか「ありがとう……」
687: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:31:16.60 ID:sWvgChZpo
ナイフを作り、縄を切る。
紅い縄の跡が痛々しい……。
まどかの震える肩を掴む……その握力が、自然と強くなってしまう。
久しぶりにまどかに触れることができたのに、会えたのに、何の喜びも沸かない。
不気味に沸かない。別の感情が私の心を支配しているから。
優木沙々への怒り、ソーニャさんが優木沙々のすぐ側で腕を組んでいる戸惑い。
これは今、どういう状況なんだろうか。
ところでまどか……ちょっと背伸びたかしら?
ほむら「くっ……優木沙々……!」
沙々「くふふ、おお怖い怖い」
沙々「でもですねぇ、こいつはあんたを誘き寄せるための餌であって、人質ではありません」
沙々「だから返してやるんですよ」
沙々「せめてもの情け……どうせ、今生の別れになるのですから。ここでちゅっちゅしてもいいのよ」
ほむら「今生の……?」
688: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:31:44.42 ID:sWvgChZpo
ほむら「あなた、何を言って……」
ソーニャ「ほむら」
ほむら「……ソーニャさん」
何故ソーニャさんが刺客を目の前にして、何もしないのか。
色々と嫌な想像をしてしまう。
裏切ったのか、ソーニャさんに変装した敵か、あるいは……
ソーニャ「沙々の特技は催眠術……『洗脳』だ」
ほむら「……ま、まさか」
ソーニャ「お前も沙々にかけてもらうといい」
ほむら「……っ!」
何と言うこと……!
優木沙々の術中に、ソーニャさんまで……!
多分、今の私の状況と、同じように……折部さんを餌にした。
そうか、それでだ……それでいつもと空気が何となく違うのか……!
689: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:32:12.87 ID:sWvgChZpo
ソーニャ「ほむら……まどかのことが大事なんだそうだな……」
ソーニャ「助けたいか?」
ソーニャ「それなら、沙々に洗脳されて、従え」
ほむら「くっ……!」
ソーニャ「これは、まどかのためでも、お前のためでもある」
ソーニャ「私だって、お前が心配なんだよ」
ソーニャ「お前が従って『向こう』の組織に忠誠を誓えば……」
ソーニャ「まどかは無事に解放されるし、もっとたくさんのことを教えてやる」
ソーニャ「私もついてってやるんだ」
ソーニャ「あぎりだって来てくれる」
ソーニャ「共に『向こう』で仕事するぞ」
ほむら「ソーニャさん……!」
690: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:32:43.44 ID:sWvgChZpo
ソーニャさんの口から、とても嫌な言葉の羅列を聞いた。
私が心配だとか、従えだとか……
彼女を洗脳したことは元より、折部さんを利用したことも、
まどかに乱暴な扱いをしたことも、何もかもが許せない。
沙々「くふふ……いつでもウェルカムですよ」
沙々「わたしと契約して、後輩及びパシリになってくださいよォッ!」
沙々「大丈夫です!ちょっとわたしの前に来て跪くだけでいい……」
沙々「そして、あなたはわたしの支配の下に置かれます……それだけでいい!」
ほむら「くっ……!」
ほむら「ソ、ソーニャさん……」
ほむら「目を覚まして!あなたはそんな人じゃない!」
ソーニャ「お前に私の何がわかる。会ってたかだか数週間程度だ」
ほむら「それでも……!それでもあなたは……」
ほむら「折部さんを救うために単身乗り込む……そういう人なのに!」
ソーニャ「や、やすなは関係ないと言っただろ!人の話を聞け!」
691: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:33:11.28 ID:sWvgChZpo
ほむら「う……で、でも……」
ソーニャ「……嫌か?私の言うことを聞かないのは」
ソーニャ「嫌なら力ずくで屈服させてやる!」チャッ
ほむら「くっ……!」
ナイフを向けられた……。二度目、だ。
このソーニャさん。柄にもなく……じゃ、じゃなくて、いつになくシリアス!
これが殺し屋の本気か……それとも、優木沙々の洗脳の力か……!
やるしかない。
やらなきゃやられる!
ほむら「……!」チャッ
まどか「ほむらちゃん……私……!」
ほむら「……まどか」
ほむら「大丈夫よ……必ずあなたを護る」
692: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:33:50.33 ID:sWvgChZpo
彼女と生活をして、そのスピードは何となく理解している。
ナイフの間合いや動きが――多分距離を一気に詰めてサブミッションをしてくる。何となくで推測ができる。
逆にこっちが距離を詰めて、ナイフを何とか取り上げて、関節技を決めるのが得策か。
関節をキメればどんな力持ちが相手でも無力化ができる。
問題は、それができるか……。
ソーニャさんの性格からすれば、私がまさか関節技できるはずが……と、油断する。
攻めるならその隙を突くしかない。兎に角まずは一手……!
ほむら「!」シャッ
まどか「手裏剣!」
ソーニャ「……!」
ソーニャ「投げりゃいいってもんじゃないぞバカめ!
投擲した手裏剣を、尽く弾かれた。
片手に持ったナイフを素速く動かして、手裏剣は光を放って消えていく。
……最初から、当てるつもりはない。つもりがない……というより、できない。
やはり……彼女に向けて、投げられない。敵ではない。操られているに過ぎないから……。
……手裏剣を弾いたくらいの隙でナイフを握った手首は掴めない。
693: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:34:23.99 ID:sWvgChZpo
ほむら「……!」
キィィンッ!
ソーニャ「む……っ!」
ほむら「……く!」
ソーニャ「……な、懐かしいな、ほむら」
ソーニャ「お前と初めて会った時もこうやって、ナイフで押し合ったな」
ほむら「ぐくっ……ううぅ……!」
ソーニャ「……っ」
ソーニャ「あの時よりも……ずっと力が強いな……!」
やはり強い。
手裏剣を弾いた隙を突いたつもりが、あっさり止められてしまった。
しかし、あの時と違って今の私は魔法少女の姿をしている。
そしてナイフの扱いを学んでいる。
今のままなら……いける!何とか押し勝って……!
694: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:34:56.93 ID:sWvgChZpo
ソーニャ「だが……」
ソーニャ「プロには遠く及ばないな!」
ほむら「ぐ……!うぅ……!?」
ほむら「て、手に力が……!こ、これが本気の……!」
ソーニャ「ふん、まだ本気じゃないぞ」
ほむら「う……く……ま、負けられない」
ほむら「うぬあぁっ!」
ソーニャ「!」
キィィン!
ソーニャ「くっ」
魔法少女の腕力でも彼女のナイフを奪うことはできなかった。
お互いにナイフが無くなった。作戦を変える。
全ての出来事がプロット通りにいくとは限らない。
どうする?どうしたものか。
695: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:35:28.14 ID:sWvgChZpo
……っ!
お腹がガラ空きだ……!
心苦しいが、空いた手で……鳩尾を……
殴る!
力が私と拮抗して動揺している。その動揺の僅かな隙を突く!
魔力を込めた手刀ではなく、魔力を込めた腹パン。
気を失わせれば洗脳魔法も何とかなる。多分。
気を失わないにしても、殴ったことで何らかの隙が……きっと
ほむら「……ごめんなさいッ!」バッ
ソーニャ「……っ!」
ドスッ!
ソーニャ「む……!」
ほむら「は、入った……!」
ほむら「こ、これで気を失……」
ドスッ
ほむら「う……ぐっ!?」
696: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:36:01.96 ID:sWvgChZpo
一瞬、呼吸が止まった。
視界が一瞬でぼやけた。吐きそうになる。
倒れまいと思った時には既に膝を地面についていた。
お腹を攻撃したと思ったら、されていた。
何が起こった……!?
まどか「ほ、ほむらちゃん!」
沙々「おーおー、見事に入りましたねぇ」
ほむら「げほっ、ごほごほ!」
ほむら「ぐぶっ……げほっ」
ほむら「お……おえっ、ごふ、うぇ」
沙々「くふふ……わたしも喰らった腹パンですよ。健康に影響はないぜ」
ほむら「な、なんで……今……確かに……」
ソーニャ「私はこの下に高性能薄型防弾チョッキを着ている」
ソーニャ「そんなパンチは効かないぞ」
ほむら「そ、そんな……」
ソーニャ「殺し屋の嗜みだな……お前には話してなかった」
ソーニャ「勿論着忘れてなんかない」
まどか「ほむらちゃん!」タッ
ほむら「はぁ……はぁ……!」
まどか「だ、大丈夫?ほむらちゃん……!」
まどか「……ごめんね……ごめんね。私のせいで……!」
ほむら「泣かないで……まどか……」
697: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:36:48.61 ID:sWvgChZpo
沙々「くっふっふ……」
沙々「わかりましたか?プロとの格の違いを!」
沙々「痛いほど身に染みたでしょう……あなたではソーニャに勝てないと」
沙々「さぁ、わたしに洗脳されなさい」
沙々「それが嫌ならソーニャにボコボコにされますし、背中をさすってるそこのチビに危害加えられても文句は言えない」
ほむら「くっ……!」
まどか「……っ」
沙々「ぶっちゃけた話、要求を呑まなきゃボコボコにします。あなたも、そいつも」
魔力で痛みを紛らわすものの、何だか胃が重い。
ま、まどかにまで手を出すと言うの……!
どうする……。
ソーニャさん相手に、私の力では勝てない。身をもってわかった。
まさかそんなソーニャさんともあろう人が、こんな簡単に操られるなんて……。
自分の力と彼女を少し過大評価をしていたというのか。私は。
間違っても優木沙々が優れていたとは認めない。
698: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:37:15.88 ID:sWvgChZpo
どうするか。
他のみんなの合流を待つ余裕はない。
そして、私が条件を呑まなければまどかに危害が及ぶ。
それだけは避けなければならない。呉識さんは今、どこにいる。
ソーニャさんを捜すと言って、どうしてここにいてくれないのか……
……自分の無力さに、やつあたりをしてしまった。
ほむら「くっ……」
まどか「ほむらちゃん……」
まどか……。
まどかは守らなくては……。
それが……私の生き甲斐だから。
私一人が犠牲になれば、ここはひとまず穏便に片が付く。
ここは……従おう。
699: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:37:43.43 ID:sWvgChZpo
ほむら「……わかった、わ」
まどか「!」
ソーニャ「…………」
ほむら「まどかに手を出さないと約束するなら……」
ほむら「……仕方、ない」
まどか「そ、そんな……!」
沙々「賢明ですよ。くふふっ」
ほむら「…………」
こうすれば……いい。
元はと言えば、全て私に原因がある。
まどか達も……呉識さん、ソーニャさんも折部さんだって、私のせいで巻き込まれたようなもの。
……全ては、こうなるべきだったのかもしれない。私が自身を持ってして落とし前をつけなければ。
私は敢えて洗脳される道を選ぶ。そして……助けてもらうしか……道がない。
一人で勝手に突っ込んで他力本願だなんて、自信過剰の救いようのない話だ。
でも……信じるしかない。どうか、そんな馬鹿な私を救って欲しい。
700: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:38:14.77 ID:sWvgChZpo
まどか「ダメ!」
まどか「ダメだよほむらちゃん!」
ほむら「まどか……」
まどかが私とソーニャさんの間に立ちふさがって、真剣な目で、私の顔を見る。
その目は好きだけど、こんな真っ直ぐな目で見ないで欲しい。
私はあなたに尊敬されるような人間じゃない。
私は、私は……。
まどか「……ほむらちゃん」
まどか「ダメ……行っちゃ……」
ほむら「でも……」
ほむら「でも、こうでもしないと……私の頭じゃ、これ以上いい方法が思いつかないわ……」
まどか「…………」
701: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:38:59.02 ID:sWvgChZpo
まどか「……言ったよね。ほむらちゃん」
ほむら「…………」
まどか「確かに言った。……『護る』って」
まどか「こんなことに屈したら、それができなくなる」
確かに私は……まどかを護ると誓った。
まどかのために戦うと誓った。護ると心に誓った。
ほむら「だったら、尚のことよ……。従わなければ……あなたに被害が及ぶ」
ほむら「それだけは……それだけは……!」
ほむら「…………」
まどか「その必要はないんだよ」
まどか「……手は出させません」
ほむら「……え?」
702: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:39:32.39 ID:sWvgChZpo
まどか「私はあなたのことを護るって、決めて……いいえ、決まっていた」
まどか「あなたには鹿目まどかという人を護るために戦った過去がある」
まどか「だったら、私こそ尚のこと」
ほむら(え、あれ……?な、何だか……この、まどか……)
まどか「あなたを護らなくてはいけないから」
ほむら「…………」
ソーニャ「……おい、どけ。まどかっつったか」
まどか「絶対に、絶対に手出しはさせません」
ソーニャ「威勢がいいな……だがどけ。怪我をしたくないだろ」
まどか「どきません」
ソーニャ「どけ」
まどか「どきません」
ソーニャ「……脅しじゃないぞ」スッ
ほむら「ナ、ナイフ!まだ持って……!」
ほむら「まどか!危ない!避けて!」
まどか「どきませんし、逃げません」
ソーニャ「……見た目に反して大した度胸持っているな」
703: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:40:10.84 ID:sWvgChZpo
沙々「くっふっふ……仕方ないですねぇ……」
沙々「必要とあらば力ずくにでも退けなさい」
ソーニャ「……大体お前、何で私の名前を……」
まどか「…………」
ソーニャ「……なんだよ」
まどか「…………」
ソーニャ「…………」
まどか「……私の目を見てください」
ソーニャ「……は?」
ソーニャ「…………」
ソーニャ「……!」
ソーニャ「まさか、お前……!」
まどか「私の目を……よく、見てください」
ほむら「……?」
704: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:40:46.93 ID:sWvgChZpo
沙々「……ハッ!」
沙々「ソーニャ!退け!退くんだッ!」
沙々「こいつは……!こいつはッ!」
ほむら「…………ッ!」
ほむら「ま、まさか……」
ほむら「う、嘘……だ、だって……そんな……」
ほむら「まどか……いえ……!」
ほむら「あなたは……!」
沙々「ソーニャ!逃げろと言ってんだよ!」
沙々「こいつは鹿目まどかじゃな――」
まどか「洗脳されても何とかなるの術~」パチン
705: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:41:21.82 ID:sWvgChZpo
ソーニャ「うっ……く……」
ソーニャ「ああ……頭がくらくらする……」
ソーニャ「……ん?あれ?」
ソーニャ「私、何をして……」
沙々「アイエエエエ!?な、何でだよ!?洗脳が解けた!?」
ソーニャ「……?」
ソーニャ「あいつは……刺客?何でこんなところに……」
ソーニャ「えっと……私は、見滝原に来て……」
ソーニャ「そう、誘拐されたやすなを捜して……それでやすなを見つけて……」
ソーニャ「そしたらやすながほむらの知り合いと仲良くなったとか言って、連れて行かれて……」
ソーニャ「それで、こいつに……そうだ!そうだった!」バッ
沙々「う、うぅ……!」
706: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:42:05.73 ID:sWvgChZpo
ソーニャ「……くそっ、頭が痛い」
まどか「大丈夫ですか?」
ソーニャ「あぁ、何とか……って誰だお前」
ソーニャ「いや……お前は……そうか。お前か」
ソーニャ「何でこんな薄汚いところにいるんだ、私は」
まどか「刺客に操られていたんですよ」
ソーニャ「あ、操られただと?」
ソーニャ「そんなバカな……」
まどか「催眠術的なのにかかる直前までの記憶はないんですね?」
ソーニャ「催眠術……」
ソーニャ「多分……ないんだと思う」
ソーニャ「……私、ほむらに何かしちまったか?」
707: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:42:41.54 ID:sWvgChZpo
まどか「どうもー。怪我はありませんかー」
ほむら「ま、まどか……」
ほむら「い、いや……違う……」
まどか「忍法、敵を騙すなら味方からの術~」バリバリーッ
ほむら「…………」
ソーニャ「あぎり……」
あぎり「どうもー」
ほむら「え……」
ほむら「ええええええぇぇぇぇぇぇぇ!?」
あぎり「にん♪」
あぎり「お疲れさまでしたー。後は任せてね」
ほむら「え、え、い、いつ?いつの間に?いや、いつから?」
708: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:43:21.56 ID:sWvgChZpo
あぎり「禁則事項です」
ほむら「それ何か違うんじゃ……」
ほむら「え、えっと……と、取りあえず」
ほむら「あ、あの……えっと……」
あぎり「はい?」
ほむら「本物のまどかは……」
あぎり「えぇ、いますよ」
ほむら「ど、どこに!?まどかは!?」
あぎり「私と一緒に行動していました」
ほむら「呉識さんと……一緒に?」
あぎり「それでは、どうぞ~♪」
709: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:44:03.55 ID:sWvgChZpo
……どこから説明すればいいのでしょうか。
大好きな声がわたしの名を呼んで……声の主と対面する前に……
わたし自身の気持ちを整理するために、ちょっと振り返ってみようと思います。
わたしは、マミさん、さやかちゃん、なぎさちゃんの四人で、マミさんの家にいました。
織莉子さんとキリカさんは近くに魔女が現れると予知をして待ってるそうで、
杏子ちゃんとゆまちゃんは同じく魔女が現れる予知を聞いて風見野に行ってて……
そしたら、やすなさんが来ました。とっても明るくて……さやかちゃんのような人でした。
やすなさんは、ほむらちゃんのことを知っていました。あぎりさんの知り合いなんだそうです。
ほむらちゃんの居場所に案内すると言って、わたし達はついていきました。
その結果、魔女の結界に誘い込まれました。
事前に優木沙々って人……つまり、そこにいて目を丸くしてる人のことは聞いていました。
やすなさんと魔女が操られているんだって、わかりました。
710: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:44:30.84 ID:sWvgChZpo
それで、さやかちゃんの後ろでマミさんとなぎさちゃんが魔女と戦っている所を見ていました。
やすなさんは魔女と使い魔に何やら大声で叫んでいて……
それで……ふと、後ろを見ました。
気が付いたら、そこに「わたし」がいましたのです。
「もう一人のわたし」
一瞬ビックリしましたけど、正体はすぐにわかりました。
しれーっと魔女の結界にいました。
あぎりさん。
わたし(あぎりさん)は人差し指を口元に「しー……」って言って、
マミさんとなぎさちゃんに集中しているさやかちゃんに気付かれずに、
やすなさんの方をチラッと見て、何も言わずにわたしの手を引いて結界の外へ……。
さやかちゃんに何も言わずに行くのはちょっと……って思いましたが素直に黙って、わたし(あぎりさん)に従いました。
途中、やすなさんがこちらを見ていたような気がしましたが……。
711: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:44:57.78 ID:sWvgChZpo
そしたらわたし(あぎりさん)に、いつか来た廃墟へと連れてってもらいました。
で、そこで待っててって言って柱の影に。
その間、わたし(あぎりさん)はわたしと全く同じ……声も背格好も同じです。
ドッペルゲンガーまどか。
そして言われた場所でじっとしてました。
それで……優木沙々って人が金髪の人と一緒に来て……大喜びでわたし(あぎりさん)を羽交い締めにしました。
その間、わたし(あぎりさん)がひぃって怯えてふえぇって言ってたりました。迫真の演技です。
決していい気分はしませんが……本当にあぎりさんがわたしだったら、きっとふえぇぇって言ってるんだろうなって。
鹿目まどかがわざわざこんなところに単身で来たという不自然さも、あぎりさんの演技力で丸め込まれました。
あぎりさんは……待ち伏せをしていたんだ。あの魔法少女を捕まえるために。
まどか(そして……)
まどか(そして……ついに)
まどか(ついに……あの人に会える!)
712: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:45:25.33 ID:sWvgChZpo
まどか「……ほむらちゃん」
ほむら「……まどか」
目の前にいる人は、変装でも幻影でもありません。
本物です。確信をもって言えます。わかります。
違和感は微塵としてありません。
わたしの大好きな親友です。
まどか「ほむらちゃん……!」
ほむら「まどか……!」
『向こう』にいる間……ずっと、ずっと会いたかった。
その手で触れて、声を聞きたかった。私の大好きな親友、その姿……!
目の前にいる人は、変装でも幻覚でもない……本当に、目の前に!
わかってる。確信を持ってわかってはいるんだけど、でも、念のため……。
713: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:46:35.69 ID:sWvgChZpo
まどか「ほむらちゃ……!」
ほむら「本物よね?」
まどか「へ?あ、うん」
ほむら「……まどか!」
まどか「はわっ!?」
ほ、ほむらちゃんが抱きついてきた……!
ほむらちゃんとのスキンシップの一環としてボディタッチの一つや二つはありました。手を繋ぐとか……。
わたしがテンションあがってほむらちゃんに抱きついたりとか、そういうことだってあります。
だけど、ほむらちゃんの方からこうしてくるのは……初めて!
き、緊張しちゃってます!温かいです!
ほむらちゃんのほっぺがわたしのほっぺに触れてます!柔いです!
この体温、力加減、肌触り、髪が撫でるこそばゆさ。
ああ……本当に、本当に戻ってきた。ほむらちゃんが、すぐそこに!
嬉しい……嬉しい!
714: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:47:13.60 ID:sWvgChZpo
ほむら「やっと……やっと会えたぁ……まどかぁ……」
まどか「ほ、ほむらちゃん……」
ほむら「まどかぁ……」
わたしも……ほむらちゃんが無事でよかった。
無事に、こうやってわたしの射程距離に……本物のほむらちゃんが……。
温かくて柔らかい……ほむらちゃんの頬が、心地良い。
震える声が、すぐ側に……。そして頬に、液体の感覚……。
ほむらちゃん……!
わたしも……わたしも、ほむらちゃんの頬に涙つけちゃいそう。
ほむら「えぐっ……まどか。まどか……!」
ほむら「会いたかった……会いたかったよ……!」
715: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:47:51.78 ID:sWvgChZpo
まどか「わたしも……だよ。ほむらちゃん……」
まどか「ぐすっ……ほむらちゃん……!」
まどか「無事で……無事で良かった……!」
ほむら「寂しかったよ、まどかぁ……」
まどか「うん……!わたしも、とっても寂しかった!会いたかった!」
ほむら「だって、メールしても全然返ってこないんだもん……」
まどか「…………メ、メール?」
ほむら「うん……一生懸命頑張って書いたんだけど……」
ほむら「あなた達との繋がりが一切なくなっちゃって……本当に寂しかった……!」
まどか「…………」
ほむら「……まどか?」
まどか「……ほ、ほむりゃちゃー!」ギュー
ほむら「まどか……!」
716: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:48:27.10 ID:sWvgChZpo
まどかも、私と同じ気持ちだったんだ。
噛んじゃうくらいに喜んでくれている。
力強く、私を抱きしめ返してくる。
まどかに、こんな強く抱きしめてもらえるのも、本当、久しぶりに思えてしまう。
まどかの体温をより感じる。むしろ、ちょっと暑い。でも、その暑さと柔らかさが何よりも嬉しい。
ほむら「まどか……まどか……!」
まどか「ほむらちゃん……ほむらちゃん……!」
お互いに、名前を言い合うことしかできません。
色々言いたいこと、話したいことがありすぎて、こんがらがって、実際に出せません。
それにしても……やっばーい。
わたし、これまでに来た『fromほむらちゃん』のメール全部……。
だって、偽物だと思ったんだもん。あぎりさんが信頼に値する人物だって心でわかっても、やっぱり……って思って結局返信できませんでしたもん。
ごめんね。……ごめんなさい。
717: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:49:01.71 ID:sWvgChZpo
あぎり「感動的なシーンですねぇ」
ソーニャ「……見てるこっちが恥ずかしいんだが」
あぎり「水を差しちゃダメですよ」
ソーニャ「いいや、限界だ。差すね」
ソーニャ「おいほむら!」
ほむら「は、はいっ!」
ソーニャ「喜ぶのは後にしろ。まだ終わってない」
ほむら「……!」
まどか「…………」
ソーニャさんの声で、ほむらちゃんの抱きしめる腕の力が一気に無くなって、
パッと離れました。名残惜しい……。
そしてほむらちゃんは涙目ながら、いつものキリッとした凛々しいご尊顔になりました。
視線の先は……。
718: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:49:29.55 ID:sWvgChZpo
ほむら「……優木沙々」
沙々「う、うぅ……!」
ソーニャ「よくも私を洗脳しやがったな……」
あぎり「もう逃がしませんよ~」
あぎり「『連絡』がありました。あちこちに仕掛けたという……」
あぎり「ぐりぃふしぃど?ってのはもう全て、回収しました」
ほむら「グリーフシード……!」
ソーニャ「それが何かは知らないが……仕掛けたっていうからには爆弾か何かだろ」
学校に襲撃に来て、爆弾を仕掛けた……同じような方法。
グリーフシードを仕掛けたということは、魔法少女勢の戦力分散が目的か。
姑息なことをしてくれる。
そして……無関係である折部さんを攫って利用するとは、腹立たしいことこの上ない。
719: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:50:17.46 ID:sWvgChZpo
沙々(そ、そんな……わ、わたしの洗脳が……!)ワナワナ
沙々(忍法……だと……!?ふざけんじゃねぇ……!)
沙々(あのワルプルギスの夜に勝った魔法少女の一人……そして、名の立つ仕事人……!)
沙々(逃げ道は……ない!)
沙々(……つ、詰んだ?……詰んだ!)
沙々「う、うぅ……!うぅぅ……!」
沙々(こ、このままだと……わたしは……!)
沙々(きっと、アイツラの組織で……酷い目に遭う!)
沙々(監禁されて、拷問されて、自白剤でラリラリさせられて……)
沙々(尋問させられる! 同人みたいに!)
沙々(くそ……!こ、このまま……!)
沙々(このままやられるくらいなら!)
沙々(……さようなら)
720: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:50:48.34 ID:sWvgChZpo
沙々「うおおおあああああぁぁぁ!」バッ
ほむら「あっ!」
まどか「……あっ!」
沙々っていう人はソーニャさんの洗脳を破られて戦意を喪失したのか、
いつの間にか魔法少女の姿を解いていました。
そして、右手を高く突き上げる。
その手には……とても見覚えのある、光沢のある宝石……。
……まさか!
優木沙々。抵抗する気はないらしい。
しかし、捕まるつもりもないらしい。
きっと、掲げた物を破壊するだろう。
……『自殺』するつもりだ!
721: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:51:15.93 ID:sWvgChZpo
まどか「ソウルジェム!」
ソーニャ「あ?何だそりゃ」
あぎり「色違いのを持ってましたね?」
ほむら「た、叩き割る気!?」
あぎり「?」
ほむら「と、止めなくちゃ!」ダッ
ソーニャ「あ!おい!」
あぎり「どうかしたんですか?」
ソーニャさんと呉識さんは知らない!
ソウルジェムは魔法少女の魂……。
それを割るということは、魂を砕くということ……。
死んでしまうということ!追いつめられて自殺させてしまう!
まどかに、遺体を見せられない!見せてはいけない!
722: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:51:51.57 ID:sWvgChZpo
沙々「わあああああぁぁぁぁ!」ブンッ!
ほむら「ま、間に合わな……!」
まどか「きゃああぁぁぁぁぁ!」
バシィッ!
沙々「がああっ!」
ほむら「!?」
まどか「えっ!?」
沙々「ああっ!く……うっ!」
沙々「て、手が……くぅっ、うぅぅ……!」
ほむら「な……何……!?」
パシッ
「ちょっと『遅くして』……ソウルジェムは回収させてもらったよ」
「ここに来ることも予測通りね……ただちょっと、様子を見させてもらっていたわ」
723: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:52:17.66 ID:sWvgChZpo
ソーニャ「来るのに結構かかったな。ここに住んでるんじゃなかったか?」
「えぇ……ですが、色々準備してまして」
「ごめんなさーい」
ソーニャ「そっちはともかくお前のノリが苦手だ」
「ええー……」
あぎり「お疲れさまです~」
「いえ、呉識さんこそ、ご苦労さまでした」
「お世話になってますよ。はい」
まどか「あ……あなたは……」
ほむら「そ、そんな……どうして……」
ほむら「み、美国織莉子!?呉キリカ!?」
724: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:52:49.39 ID:sWvgChZpo
優木沙々の手に、光の玉がぶつかった。
そしてソウルジェムを落とした。
その瞬間……黒い影の、残像のような物が視界に現れ、落とした宝石を奪い取った。
黒い影だった人型はその手にソウルジェムを持っている。……呉キリカ。
ゆったりと歩きその元に寄る白いカーテンのような姿。……美国織莉子。
二人が現れたのは予想外ではあるが……それはまだいい。
しかし……何故、呉識さんとソーニャさんと普通に話している?
織莉子さんとキリカさん。
優木沙々って人を知っている二人がここに来たのはまだ何となくわかります。キュゥべえから聞いたとか何とかで……。
でも、あぎりさんとソーニャさんっていう人……と知り合いなの?
そうなると、ほむらちゃんが攫われちゃったことを、どういう視点で見ていたの?
え?何?えっと……うん?
一体どうなってるの?
色々あって混乱しちゃって……考えがまとまらない。
725: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:53:25.73 ID:sWvgChZpo
織莉子「どうも、暁美さん。お久しぶり」
キリカ「君とはワルプルギスの夜以来になるね。ははっ、ほんとお久しぶりだよ」
ソーニャ「ん?何だほむら」
ソーニャ「こいつらと知り合いだったのか」
ほむら「し、知り合いもなにも……」
あぎり「同じ魔法少女なんですってね」
まどか「…………」
ソーニャ「世間は狭いな」
ソーニャ「ちょくちょく話には出てたと思うが……」
ソーニャ「見滝原にも組織の目、手足がある」
ソーニャ「それがこいつらだ。織莉子とキリカ」
ソーニャ「つい最近入った新人だ。まぁ、私達の後輩にあたる。一応」
726: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:53:58.91 ID:sWvgChZpo
沙々「う、うああ……ああ……お、お前ら……!」
キリカ「はぁ……また会うとは思わなかったよ」
織莉子「いつぞやは世話になったわ」
沙々「う、うぅぅう……!うっ、うぅ……!」
あぎり「お知り合いですか?」
織莉子「えぇ、まぁ、一応……」
あぎり「じゃあ縛っておいて。はい、紐」スッ
キリカ「あっ、はい」
キリカ「……知り合いだから縛るっていう発想の飛躍」
あぎり「何ですか?」
キリカ「いいいいいえ!何でもないです!」
727: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:54:25.80 ID:sWvgChZpo
沙々「…………」
キリカ「何だか、急に静かになったな」
織莉子「よく見て、キリカ」
キリカ「なぁに?」
織莉子「気を失っているわ」
キリカ「え?何で?」
織莉子「さぁ……?取りあえず縛って」
キリカ「はぁーい」
キリカ「よいしょ、よいしょ」ギュッギュッ
キリカ「……どうやって結ぶの?」
織莉子「それはまぁ普通に……」
キリカ「普通って?蝶結び?」
織莉子「……えっと」
728: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:55:00.16 ID:sWvgChZpo
ソーニャ「……で、結局何だったんだ……ソウルジェムってのは」
あぎり「同じようなの持ってましたね」
ほむら「え?あ、は、はい……」
まどか「えっと、わたしは持ってませんけど……」
まどか「何て言うか、その……魔法少女の証というか……」
ほむら「そ、そう……それがないと死んだも同然、みたいな……」
ほむら「……ね?」
まどか「うん、うんっ」コクコク
ソーニャ「よくわからん」
死んだも同然……その通りです。
何で織莉子さんとキリカさんがここに、そしてこの二人と普通にお話しているのか、
そういう疑問はさておいて。
取りあえず、追いつめて自殺させたということにならなくてよかった……のかな?
729: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:55:39.12 ID:sWvgChZpo
ソーニャ「そ、そうだ!おい!お前等!」
キリカ「は、はいぃっ!?」
ソーニャ「やすなはどうなった!」
織莉子「わ、私に聞かれても……あ、暁美さん?」
ほむら「え、あ、はい」
ほむら「折部さんは、友人に私の家へ運ばせました」
ソーニャ「ほむらの家か……」
ソーニャ「よし、行ってくる」
ほむら「私の家の住所は……」
ソーニャ「わかってる」
ソーニャ「後は任せたぞあぎり」ダッ
あぎり「行ってらっしゃーい」
730: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:56:07.83 ID:sWvgChZpo
ほむら「……行っちゃった」
まどか「うん……」
あぎり「元気ですねー」
ソーニャさんはすごい勢いで走って行っちゃいました。
きっと、やすなさんのこと大切なんだな。
その気持ち、本当に、痛い程よくわかります。
ほむらちゃんのお家か……行きたいなって、思うところだけど。
あぎり「ところで、結べましたー?」
織莉子「あ、はい」
あぎり「うんこらしょっと」
あぎり「……それでは、この刺客は私が組織に引き渡しておきますね」
キリカ「あざっす!先輩!」
あぎり「だから二人に色々話してあげてね~」
織莉子「はい。よろしくお願いします」
731: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:56:58.38 ID:sWvgChZpo
試行錯誤の跡が見受けられる雑なグルグル巻きにされた刺客を引きずる呉識さん。
ひらひらと手を振って、そのまま埃まみれの廃墟の陰に消えていった。
取り残された三人の魔法少女とまどか。
ほむら「…………」
ほむら「あなた達と、二人は一体どういう関係なの?」
ほむらちゃんは織莉子さんとキリカさんの方を見て尋ねます。
尋ねられた、二人はお互いに顔を一度見合わせます。
そのタイミング寸分違わずほぼ同時。本当に仲が良いですね。
織莉子「そうね……ここで話すのも何だから……」
キリカ「喫茶店にでも……あ、いやそこで話すのはまずいか」
織莉子「私の家に行きましょう」
ほむら「……えぇ、お邪魔するわ」
まどか「……う、うん」
732: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:58:11.83 ID:sWvgChZpo
織莉子「あ、でも……ごめんなさい、鹿目さん」
まどか「へ?」
キリカ「この話は、ちょっと一般人にゃ手厳しいというか」
ほむら「…………」
織莉子「呉識さんが忍者ということはご存じでしょう」
キリカ「で、ソーニャさんは……『殺し屋』なんだ」
まどか「こ、ころ……!」
織莉子「言ってしまえば、暁美さんは『そういう事情』があるの。だから……」
まどか「…………」
ほむら「……なんだかんだで、あなた達が組織の一員であること」
ほむら「そして、私に対して居心地の良い待遇であったこと」
ほむら「なんとなく、線が繋がっていってるように思える」
ほむら「あなたが話したいことが何となくだけどある程度推測できるわ。……多分、私の今後を話すことになるのでしょう」
キリカ「勘がいいね。平和ボケしてるものかと思ってたよ」
ほむら「それなら……私のことだと言うのなら、まどかにも無関係の話じゃないわ」
ほむら「まどかには聞かせられない話だと言うなら仕方ないけれど……」
まどか「ほむらちゃん……」
733: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:58:50.89 ID:sWvgChZpo
織莉子「……相変わらず、ね」
キリカ「気持ちはわかるよ。うん」
キリカ「でもさ、言っておくけどさ……そんな感情論の通用する次元の話じゃない」
ほむら「いいえ、通用しなくはないわ。折部さんが良い例よ」
キリカ「いや、私はその折部って人は知らないんだけどさ……」
織莉子「…………」
ほむら「…………」
ほむらちゃんと織莉子さんがじっと見つめ合っています。
きっと、テレパシーでお話をしているんだ。
……わたしのわがままに、ほむらちゃんは交渉をしてくれている。
ほむらちゃんの優しさを改めて痛感すると同時に、
わたしの不甲斐なさが情けなく思う。
734: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:59:17.98 ID:sWvgChZpo
織莉子「わかったわ」
織莉子「鹿目さんなら口外することはない。そのことについては信用に値するわ」
織莉子「でも鹿目さんにとって、気持ちのいい話ではないとは思う」
織莉子「それでもいいのなら」
わたしはふと、いつか織莉子さんが話してくれた予知の内容……
ほむらちゃんと肩を並べてお茶を飲む。
というのを、思い出しました。
それは、これからのことなんだと、わたしは思いました。
織莉子さん達が話す内容。組織という言葉。殺し屋という言葉。
一緒に話を聞くことに後悔はありませんが、すごく不安を、予感させる。
……取りあえず、絶対にほむらちゃんの隣に座ろうと決意をしました。
735: ◆G/i6ASkNm1oc 2013/12/31(火) 23:59:59.40 ID:sWvgChZpo
――風見野
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!」
ズザァァァッ!
「ついに、ついにッ!わたしの出番が来たァッ!」バーン
没キャラ「ソーニャ!あぎり!」
没キャラ「このわたしがわざわざ来てやったぞ!」
没キャラ「ふふ……だが勘違いするなよ!わたしはお前達を助けに来たんじゃないからな!」
没キャラ「何故なら!お前達を倒すのは!」
没キャラ「このわた……し……」
没キャラ「なん……だか……ら?」
没キャラ「……あ、あれ?」
没キャラ「……誰もいない」
没キャラ「…………」ポツーン
没キャラ「くそぅ」
736: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:00:50.01 ID:ORX3u8ppo
没キャラ「おっかしいなぁ……」
没キャラ「ここにいるはずなのに……もしかして間違えちゃったかな」
没キャラ「……ハッ!まさかこのわたしに恐れを成して逃げ出したな!?」
没キャラ「くっくっく……逃げたなら仕方ない」
没キャラ「逃げるとは卑怯なり!」
没キャラ「はぁ……どうやって帰ろう」トボトボ
「……赤毛」
「髪を後ろに束ねている」
「幼い印象を受ける声」
「チラッと見える八重歯がチャームポイント」
「……間違いない!」
「こいつが……『サクラ』ッ!」
737: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:01:22.39 ID:ORX3u8ppo
没キャラ「見ててくれ神様……!次こそは……」
「止まりなさい!」バッ
没キャラ「!?」
「ついに見つけたわ……サクラッ!」
没キャラ「え!?ええ!?何?何!」
「私の名前は浅古小巻!」
小巻「あんたを引っ捕らえに来た刺客よ!」
没キャラ「し、刺客!?」
没キャラ「わ、わたし狙われる側デビュー!?」
没キャラ「スポットライトがこのわたしに!」
没キャラ「ついにこのわたしの拳法が日の目に……!」
小巻「うるさいわよ!サクラ!」
738: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:01:56.20 ID:ORX3u8ppo
没キャラ「サクラ?」
没キャラ「…………」
没キャラ「……人違いだよ」ガックシ
小巻「そんなはずないわ!」
小巻「聞かされた特徴からドンピシャなのよ!」
没キャラ「ち、違うって!」
小巻「じゃああんたは何者よ!」
小巻「名乗りなさいよ!」
没キャラ「な、名前……!?」
小巻「何年!何組!名前は!?」
没キャラ「名前……は……」
739: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:03:21.46 ID:ORX3u8ppo
没キャラ「わたしの……名前は……えっとあのえとそのうんと……」ダラダラ
没キャラ「わたし名前はそのちょっとなんというかそれはあのね」
没キャラ「サクラなんていう可愛い名前とか憧れるけどいやそれは違くて」
没キャラ「わたし名前がそのあのその名前がこのどのものかの」
没キャラ「えっと……えっと……」
没キャラ「……うぅ」ジワッ
没キャラ「うぅぅぅ……」ポロポロ
小巻「あ、泣いた」
小巻「……えーっと」
小巻「の、逃れることができないと悟ったわね」
小巻「さぁ、私に捕らえられるといいわ」
小巻「えっと、手錠、手錠……」ゴソゴソ
「……何やってんだ?あんたら」
740: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:04:15.87 ID:ORX3u8ppo
小巻「ッ!?」バッ
小巻「何者!?」
「あたしか?ここの魔法少女……佐倉杏子だ」
小巻「サクラ……佐倉!」
小巻「赤毛……ポニテ……八重歯……ロリ声……」
杏子「誰がロリ声だ」
小巻「あんたが佐倉杏子!」
杏子「だからそう言っただろ」
杏子「あんた、魔法少女だな。それなら狙いは魔法少女のこのあたしに決まってる」
杏子「バカだねあんた。なもん、指見りゃわかんだろ」
杏子「こいつが魔法少女に見えるか?ん?」
没キャラ「?」
741: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:04:56.37 ID:ORX3u8ppo
小巻「う、うるさいわよ!あんた!」
杏子「……それで?あんたはあたしに何の用があるんだ?」
杏子「っていうかどこのどいつだ?」
QB「彼女は浅古小巻。見滝原の魔法少女だね」
杏子「魔法少女っつーのは見りゃわかる。こんな斧持ち歩いてる一般人いてたまるか」
QB「彼女とは知り合いかい?杏子」
杏子「いや、知らない。急に絡んできた」
QB「初対面ということかい?」
杏子「初対面なのにだよ」
没キャラ(この人は何と話してるんだろ……?)
小巻「…………」
742: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:05:39.00 ID:ORX3u8ppo
小巻「佐倉……あんたのことはざっくりとした外見以外にも聞いている」
小巻「幻惑使いだそうね」
杏子「…………」
杏子「それはどうかな?」
小巻「今更しらばっくれるんじゃないわよ」
杏子「幻惑使いとして用があるなら当てが外れたなと言ってるんだよ」
小巻「……チッ、さっきからうざったいわね」
小巻「私に敗北して引っ捕らえてやるわ!」ジリッ
杏子「威勢がいいな。しかし、引っ捕らえるだと?」
杏子「確かにあまりよろしくないことはしているが……あんたに捕まる理由がないね」
743: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:06:21.81 ID:ORX3u8ppo
小巻「佐倉……」
小巻「……あんたに個人的な恨みはないわ」
小巻「でも……あんたは捕まらなければならない」
小巻「あなたは引き替えなのよ……」
杏子「何を言ってんだ?引き替え?」
杏子「何か?あたしの身柄で何か報酬でももらえるとか?」
杏子「あんたも『組織』の人間なのか?」
小巻「私……『も』?」
杏子「いや、あたしは違うけど」
小巻「む、無駄話はもういいわ!」
小巻「幻惑使いのあんたを差し出せば、優木を救い出せるのよ!」
744: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:07:11.23 ID:ORX3u8ppo
杏子「ユーキ?どっかで聞いたな……」
QB「優木沙々のことだと思うよ」
杏子「優木沙々……ああ、あいつか」
杏子「何だお前、それの知り合いなのか」
小巻「……そうよ」
小巻「共に『ヤツ』をギャフンと言わせようと結託した……」
小巻「私の親友よ!」
杏子「うわ、面倒くさそうな関係だな」
小巻「優木は、ああ見えて甘えん坊なのよ。可愛い妹のような子なのよ……腹黒いけど」
杏子「いや知らねぇよ。沙々とかいうヤツは会ったことねぇもん」
745: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:07:42.85 ID:ORX3u8ppo
小巻「優木は突然、行方不明になったのよ……私は捜したわ」
小巻「そしたら、黒ずくめの女が現れて……」
杏子(うっわ胡散くせー)
小巻「佐倉……あんたの幻惑魔法が欲しいそうだった」
小巻「それで、あんたを引っ捕らえれば、優木を取り戻せる……と!」
杏子「何だよいきなり自分語りしやがって……」
QB「杏子の幻惑魔法はその気になれば確かに強力だ」
QB「使いようによっては……」
杏子「やめろ」
杏子「あたしはもう幻惑魔法なんざ、ロッソのアレ以外使わないんだ」
小巻「あんたの主義なんてどうでもいいわ!」
746: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:10:12.47 ID:ORX3u8ppo
杏子「……あっ」
杏子「浅古小巻……ああ、どっかで聞いたと思ったら」
杏子「織莉子の知り合いだな。さっきの『ヤツ』って織莉子のことか」
小巻「……!」
小巻「……美国を知っているの?」
杏子「ああ。あたしの仲間だ」
小巻「仲間……ですって……!?」
小巻「くそっ……」
小巻「……金かしら?」
杏子「……かつて、あたしと織莉子は敵同士だった」
杏子「しかし……なんだな。仲間のことをそう言われるのは腹立つね」
杏子「てめぇみたいな成金はむかっ腹が立つ」
小巻「ぐっ……!き、貴様……!」
747: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:10:48.39 ID:ORX3u8ppo
杏子「織莉子とキリカから色々聞いてるんだよ」
杏子「何でもさ、お前、織莉子が気に入らないんだって?」
杏子「だけどあんたはその織莉子から直々と……」
杏子「ワルプルギスの夜の存在を教わって、共闘を持ちかけられたんだろう?」
小巻「…………」
杏子「ところがお前はそれに応じなかった。ま、織莉子の言うことを聞くとか何とかでちっぽけなプライド様が許さなかったんだろう」
杏子「それどころか、ワルプルギスの夜にビビッてちゃっかり見滝原を出ていった」
小巻「……っ!」
杏子「いや、まぁあの伝説級の魔女だ。逃げても誰も責めねぇよ」
杏子「ただ、織莉子とキリカは戦った」
杏子「倒せはしなかったが勝利して生き延びた。一方お前はすごすご帰ってきた」
小巻「…………」
748: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:12:15.41 ID:ORX3u8ppo
杏子「そして、友達のためだか何だか知らないが、あたしを引っ捕らえようとしているな」
杏子「……ワルプルギスの夜に勝った一人のあたしとやろうってかい?」
杏子「いいぜ、早く帰りたいと思っていたとこだがな」
小巻「クッ……!」
小巻「う、うぅぅ……くっ……!」
小巻「ぐぬ、ぬ……!さ、佐倉……!」
小巻「や……やってやろうじゃない!かかってきなさいよ!」
杏子「…………」
杏子「沙々の居場所なら、あたしは知っているぞ」
杏子「織莉子から聞いた」
小巻「ッ!?」
小巻「何ですって!?ど、どこにいるの!」
749: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:13:31.86 ID:ORX3u8ppo
杏子「見滝原さ。すれ違っちまったな」
小巻「そ、そんな……!」
杏子「それで、まぁ、織莉子の仲間が……うん、保護したのかな?知らないけど」
小巻「!」
杏子「あんたが織莉子に頼むなら……」
杏子「詳しいこと教えてくれるかもよ?あいつなら詳しく知ってるはずだ」
杏子「何せ保護した奴の仲間だからね」
小巻「…………」
小巻「…………優木」
小巻「……フン!誰が美国なんかの世話になるか!」ダッ
QB「行ってしまったね」
杏子「そうだな」
杏子「ま、あんなプライドの高い小物でも友情はそれなりに大事ってことか」
750: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:14:01.35 ID:ORX3u8ppo
杏子「……やれやれ、大丈夫か?あんた」
没キャラ「…………」ポカーン
杏子「おーい?」
没キャラ「え、あ、えっと……あ、ありがとう」
没キャラ「おかげで……その、助かった……のかな」
杏子「どうだかねぇ……」
杏子「……あんた、旅行者かい?」
没キャラ「え?」
杏子「旅行者って成りじゃねぇな。何しに来た?」
没キャラ「え、えっと……」
没キャラ「ひ、人捜し」
杏子「あんたもかい」
751: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:15:09.93 ID:ORX3u8ppo
杏子「そうだな……交番の場所でも教えようか?」
没キャラ「あ、ううん……いい。もう帰るよ」
杏子「帰る?人捜しなんじゃないのか?」
没キャラ「い、いや、もう大丈夫」
没キャラ「それじゃあ……駅、教えて。見滝原駅」
杏子「見滝原駅ぃ?ここ風見野だぞ?」
没キャラ「ええっ!?嘘だろ!?」
杏子「本当」
没キャラ「見滝原じゃない……」
杏子「隣だけどな」
没キャラ「……えっと、じゃあ、最寄り駅教えて」
杏子「あ、ああ……。……立てるか?手ぇ貸すか?」
没キャラ「…………」
杏子「あの変 ……じゃなかった。変なヤツに襲われてたっぽいけど、怪我はしてないか?」
没キャラ「…………」ホロリ
杏子「ちょ……!」
752: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:16:03.12 ID:ORX3u8ppo
杏子「お、お前何泣いてんだよ!」
没キャラ「え……?」
没キャラ「あ、あれ……なんでだろうな」
没キャラ「嬉しいはずなのに……何で涙が……」
没キャラ「こんなに優しくされたのって……ぐすっ」
没キャラ「あ、あはは……あれ、おかしいな……ひっく」
杏子「……あんたも苦労してんだな」
杏子「送ってやるよ。そんな遠くないからさ」
没キャラ「でも……そんな、悪いよ」
杏子「あぁ、気を使ってくれんのか。ヘッ、別にいいよ」
没キャラ「……ごめんね?」
杏子「気にすんな」
753: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:16:58.62 ID:ORX3u8ppo
――見滝原
ソーニャ「……ここだ」
ソーニャ「場所は知っていたが……来るのは初めてだな」
ソーニャ「ここにやすなと……ほむらの友人がいるのか……?」
ピンポーン
ソーニャ「…………」
ドタドタガタガタガタ
ソーニャ(うるせぇ……)
ガチャッ
「ほむら!?」
ソーニャ「…………」
「誰!?」ビクッ
「が、外国人だ!どうしよ!」
754: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:17:36.75 ID:ORX3u8ppo
「な、ないすとぅーみーとぅー!」
「うぇるかむさんきゅー!かもかも!あいむさやかみき!」
ソーニャ「何だお前……」
さやか「日本語!?」
さやか「喋れるなら初めから言ってくださいよ!ビビッたー!」
ソーニャ(何だこのやすな臭いガキは……)
ソーニャ「……お前がほむらの仲間か?」
さやか「え?あ、は、はい……仲間っていうか……」
さやか「あ……あたし、美樹さやかです。どうも」ペコッ
ソーニャ「今名乗っただろ」
さやか「あ、そうでしたね」
755: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:18:19.97 ID:ORX3u8ppo
さやか「それで……その……」
ソーニャ「……私は」
さやか「あ、織莉子さんから聞きました」
さやか「ほむらを守ってくださったそうで……」
ソーニャ「ん?あぁ」
さやか「確か……そう、やすなさんの愛人」
ソーニャ「バカにしてんのか」
さやか「えへ、冗談スよ」
ソーニャ「……」イラッ
ソーニャ「おい貴様。私はふざけている程暇じゃないんだ」ギロッ
さやか「ひっ」ビクッ
756: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:19:15.93 ID:ORX3u8ppo
ソーニャ「とっとと中に入れろ」
さやか「は、はい……」
さやか(怖ェェェ――!この人怖エェェ――!)
さやか(あぎりさんややすなさんの知り合いって聞いてたからフレンドリーな人かと思ったのに!)
さやか(怖い!怖いよぉー!)ビクビク
ソーニャ「やすなはどうした」
さやか「あ、その、まだ目を覚ましてないです……はい」
ソーニャ「……怪我は?」
さやか「し、してないであります!」
さやか(……でも、やすなさんが心配なのかな)
さやか(息切れはあんましてないけど顔が赤い……急いで来たんだろうね)
さやか(恐ろしいと思ったのは必死さの現れだったんだ!ってとこかな?)
757: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:20:23.98 ID:ORX3u8ppo
ソーニャ「入らせてもらう」
さやか「どうぞどうぞ。あたしの家じゃありませんが」
ソーニャ「…………」
ソーニャ(……『向こう』に色々持ち出したことを含めても……何というか、質素だな)
ソーニャ(中学生の一人暮らしなんてそんなゴロゴロもの置かないもんなのかもしれないが……)
マミ「美樹さん。この方が……」
なぎさ「ガイジンさんなのです」
ゆま「な、ないとぅみとぅ。あいむゆまー」
さやか「ゆまちゃん。この人日本語オッケー」
ゆま「あ、なーんだ」
なぎさ「なぎさなのです」
マミ「……こんにちは、巴マミです。美国さんから聞いています」
ソーニャ(こいつらが……ほむらの……)
ソーニャ(……この小さい二人も魔法少女とやらなのか?)
ソーニャ(そして……)
758: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:22:15.74 ID:ORX3u8ppo
やすな「…………」
ソーニャ「やすな……」
さやか「えぇ、はい。色々あって、こうして寝かせている所存にあります」
ソーニャ「……そうか」
ソーニャ「…………」
ゆま(キュゥべえにほむらお姉ちゃんの家に行くように言われて……)
ゆま(キョーコ置いてっちゃったのは気残りだけど、行ってみたら、このお姉ちゃんが寝ていて……)
ゆま(魔女の悪い空気とか何かそんな感じので倒れちゃったみたいで……)
ゆま(ゆまの治癒魔法で浄化をしたんだよね)
ゆま(このお姉ちゃんの体調は治せたと思うけど、体力がないとかで眠ったまま……)
ゆま(……って説明したいけど、このお姉さんは魔法少女じゃないんだよね)
なぎさ(教えて安心させたいよね)
ゆま(なぎさちゃん直接脳内に……!)
759: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:22:49.73 ID:ORX3u8ppo
ソーニャ「……しかし、何だな」
さやか「?」
マミ「?」
ゆま「?」
なぎさ「?」
やすな「…………」
ソーニャ「……狭いんだが」
さやか「そ、そりゃ一人暮らしのあれですからね……」
マミ「その上布団も敷いてるから……」
760: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:23:44.09 ID:ORX3u8ppo
さやか「でも何故か枕までないんスよね」
ゆま「いくら探してもなくって」
ソーニャ「…………」
ソーニャ「気を失ったと聞いたが……何故だ?」
さやか「えーと、何でかと聞かれると……えっと……」
なぎさ「色々あったのです」
ソーニャ「……ふ、ふーん」
マミ(まぁ、実際は……)
マミ(孵化寸前のグリーフシードを携帯して、魔女の結界にしばらくいたから……)
マミ(その瘴気の影響を毒のように受けていて……)
マミ(それはもう取り払ったから大丈夫とは思うけど)
マミ(……なんて、言えないわよね)
なぎさ(教えて安心させたいよね)
ゆま(なぎさちゃん直接脳内に……!)
761: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:24:26.32 ID:ORX3u8ppo
ソーニャ「……まぁ、大丈夫なんだろう?」
ゆま「任せてー」
なぎさ「なのですー」
マミ「体力さえ回復すれば目を覚ますかと思います」
さやか「安静にですね。はい」
ソーニャ「そうか……お前達が大丈夫だというなら」
ソーニャ「ほむらの仲間だから、信用はできる」
さやか「どやぁ……」
なぎさ「どやぁ……」
ソーニャ「何でドヤ顔なんだよ」
マミ「…………」
762: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:25:05.33 ID:ORX3u8ppo
マミ「あの……ソーニャさん?」
ソーニャ「ん?」
マミ「暁美さんは……」
マミ「暁美さんは、どうしてあなた達の所へ連れて行かれたんですか?」
ゆま「あ、ゆまも知りたい」
なぎさ「なぎさも」
さやか「さやかちゃんも」
ソーニャ「…………」
ソーニャ「お前達が気にすることじゃない……」
ソーニャ「……と、言いたいところだが」
763: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:26:12.83 ID:ORX3u8ppo
ソーニャ「…………」
ゆま「?」
なぎさ「?」
ソーニャ「お前達……魔法少女なんだろ?」
マミ「えぇ……はい」
ゆま「うん」
なぎさ「なぎさもなのです」
さやか「あたしは違います」
ソーニャ「知らん」
ソーニャ「私は魔法少女じゃないし……」
ソーニャ「魔法少女のことなんて正直さっぱりわからん」
764: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:26:43.41 ID:ORX3u8ppo
ソーニャ「しかし……魔法少女だと言うのなら……」
ソーニャ「お前達にも全く関係ない話でもないかもしれない」
マミ「……私達とも?」
ゆま「どういうことなの?」
ソーニャ「……それは、私の口からは言わないでおく」
さやか「えーっ、何ですかそれー気になる」
ソーニャ「いつか、知ることになるだろ」
さやか「ほぇー、焦らしますねぇ」
ソーニャ「焦らすも何もねぇよ」
なぎさ「いつか?」
ソーニャ「いつか」
765: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:27:14.73 ID:ORX3u8ppo
ゆま「いつかは今じゃないよ」
マミ「どうしたの?」
ゆま「何でもないよ」
さやか「いつかと言われましても……ねぇ?」
なぎさ「ですです」
ソーニャ「いつかはいつかだ」
ソーニャ「問題は、それが誰から聞くのかだが……」
ソーニャ「……そう、だな」
ソーニャ「ほむらの口から聞かされることを、ちょっぴり期待する」
さやか「?」
ソーニャ「……ちょっぴりな。ちょっぴり」
766: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:27:56.40 ID:ORX3u8ppo
織莉子さんの家。
テーブルを挟んで二対二。
紅茶が四つ。ケーキ四切れ。
織莉子さんとキリカさん。わたしとほむらちゃん。
ほむらちゃんは『向こう』での暮らしのことを話してくれました。
思ったよりも楽しくやっていたみたいです。
あぎりさんと一緒に暮らしてたって聞いて、ちょっとヤキモチ。
それで少し世間話をしたところで……本題に入りました。
織莉子「まず、鹿目さん……あなたに謝らないといけないことがあるの」
まどか「わたしに……?」
織莉子「えぇ……」
織莉子「ほら、佐倉さんとゆまちゃんの三人で来てくれたでしょ?」
まどか「はい」
織莉子「その時、予知で暁美さんの居場所はわからないと言ったわね?」
767: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:28:45.18 ID:ORX3u8ppo
織莉子「あれ、嘘」
まどか「…………」
……私が『向こう』に行ってる間、見滝原でどういうことがあったのかはわからない。
まどかもまどかなりに、私を救おうとしてくれていたのね。
その事実だけで十二分に嬉しい。
一方で、下手に干渉して巻き込まれなくて本当に良かったと安堵の気持ちもある。
織莉子「私だって、予知能力の訓練を積んだんだもの。結構わかるわ」
キリカ「ワルプルギスの夜との戦いを通して成長したってとこだね」
織莉子「予知を使うことで、暁美さんはもちろん、呉識さんの周りのこと……優木さんのこともわかっていた」
織莉子「だけど、とても巻き込ませられない話だったから」
織莉子「みんな……あなたを組織の抗争に巻き込ませないためだったのよ」
織莉子「騙すようなことしてごめんなさい」
768: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:29:36.19 ID:ORX3u8ppo
織莉子さんは頭をペコリと下げました。
それに続いて素速くキリカさんも、テーブルにおでこぶつけるくらいの勢いで。
二人はほむらちゃんだけじゃなくて、わたし達も護ろうとしていたんだ……。
わたしの命を狙ってた、この二人が……。何だか感慨深いものがあります。
まどか「そ、そんなっ、謝らないで……」
キリカ「そうはいかないよ。君は私達のことを信じてくれていたのに……」
キリカ「嘘をつくっていうことは裏切ることと同じさ」
まどか「……あ、ありがとうございます……何から何まで、本当に……」
織莉子「……ふふ、変な話ね」
織莉子「あなたを殺すために動いていた私達が、こうして頭を下げ合うなんて」
ほむら「…………」
まどか「そ、そうですね……あはは」
769: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:30:20.39 ID:ORX3u8ppo
ほむら「……美国織莉子。呉キリカ」
キリカ「うん?」
ほむら「あなた達はどうして組織のことを知っていたの」
ほむら「どこであの二人と知り合ったの」
織莉子「…………」
キリカ「…………」
ほむら「それを話すためにこの場を用意したのでしょう?」
ほむらちゃんは、二人をまだフルネームで呼んでいる。
まだほむらちゃんは二人に対して心を開いていない……ってことになるのかな。
わたしはもう二人にはそれなりに慣れた。
ほむらちゃんも……仲良くしてもらいたいものです。
770: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:32:39.36 ID:ORX3u8ppo
織莉子「……私の父のことはご存知かしら?」
まどか「?」
ほむら「……えぇ、知っているわ」
キリカ「まだ誰にも話してないはずだけど……どこかの時間軸で聞いたのかな」
ほむら「そうよ」
織莉子「まあ……鹿目さんに簡単な説明をすると、私の父は我ながらそれはそれは素晴らしい政治家だった」
織莉子「だけど、父は……汚職に手を染めて、そして自殺をしてしまった」
まどか「……!」
織莉子「そこから、私は……私の生活はおかしくなっていったのよ」
織莉子「それこそ、鹿目さん。あなたを殺すことを人生の目標と考えるくらいにね」
織莉子「そういう予知を見たのよ。あなたを抹殺しなければ世界が滅ぶって」
771: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:33:25.67 ID:ORX3u8ppo
まどか「…………」
キリカ「…………」
織莉子「今はそういう予知は見えないけど……それはおいておきましょう。これは前置き、プロローグ」
織莉子「鹿目さん抹殺計画も失敗に終わりひと段落ついた時……」
織莉子「私とキリカは、秘密裏でお父様の死の真相を追ったわ」
織莉子「警察でも自殺と断定されたけれど……」
織莉子「私はどうしても、お父様が自殺だなんて納得いっていなかった」
織莉子「少なくとも、私一人残して自殺するような人じゃない。私はそう信じている」
ほむら「調べていったら……組織に?」
キリカ「そうなんだよね。まさかあんな大事になるとはね」
織莉子「それで色々あった後に、入らせてもらったのよ」
ほむら「……肝心なところがあやふやね」
キリカ「魔法少女の力を欲しがっててさ、本当に渡りに船だったね」
772: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:33:54.98 ID:ORX3u8ppo
ほむら「……もしかして、だけど、ソーニャさんの組織がその……」
ほむら「自殺に見せかけての……隠蔽したとか」
織莉子「尋ねてみたところ『こっち』は関係なかったわ」
織莉子「大体、もしそうだったらこうしてソーニャさん達にお世話になってないわ」
ほむら「それは……まぁ……」
織莉子「結局未だにお父様の死の真相はわからないままだけど……」
キリカ「きっと、辿り着けるさ」
ほむら「……優木沙々の能力は洗脳と聞いたけど」
キリカ「うん。あいつが織莉子の御尊父の行動を操ったとか考えたんだけど、やっぱ時期とかが合わないんだよね」
織莉子「犯人に近づけるかもしれないけど復讐に許可がいるのがちょっとネックかしらね」
まどか「…………」
織莉子「……何てね、ふふ」
773: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:34:42.15 ID:ORX3u8ppo
まどかの顔を見てか、美国織莉子は取り繕うように言った。
どんな顔をしているのか、首を回してまで見たいものではない。
まどか「あの……もしかして、なぎさちゃんって」
織莉子「なぎさちゃん?」
ほむら「なぎさ……そうだ。結局あの子は何だったの?」
ほむら「あなた達が預かっているそうだけど」
織莉子「あら、会ったのね」
ほむら「少しだけね」
まどか「なぎさちゃんて……その、組織と関わりが?」
織莉子「…………」
キリカ「…………」
キリカ「……ま、その辺りは秘密」
キリカ「なぎさの件は、あまり深く聞かないでほしいんだよね」
キリカ「公私混同っていうのかな?」
まどか「?」
774: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:35:31.93 ID:ORX3u8ppo
キリカさんは笑って言いました。
同じようなことを前も聞いた気がします。
なぎさちゃん……前々から何だか不思議な子とは思っていた。
一体どういう事情が……。
織莉子「……条件を満たせば、暁美さんには教えてあげられるかも」
ほむら「……条件?」
ほむら「あの子の事情にはあまり興味は沸かないけど……何?」
美国織莉子はコホンと咳払いをして、背筋を伸ばした。
彼女にとって大切な話なのだろうか。
そして自身の膝を数秒見つめた後に、私の目を見る。
織莉子「……私達の仲間にならない?」
ほむら「……何ですって?」
775: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:36:06.46 ID:ORX3u8ppo
織莉子さんは、照れくさそうに言いました。
わたしとほむらちゃんは、首を傾げるだけでした。
ほむら「仲間って……既にそうじゃない。一応」
織莉子「いえ、そういう意味じゃ……え、一応?」
織莉子「……ちょっとショック」
ほむら「……ご、ごめんなさい」
キリカ「……えっと、うん」
キリカ「要はさ、組織に入らないかって言うんだよ。ほむら」
ほむら「いや、言ってることはわかるわ……」
ほむら「だけど、私を組織にって……」
織莉子「呉識さんとソーニャさんは……あなたに色々教えたことでしょう」
ほむら「え、ええ……手裏剣と、刃物……」
織莉子「それは実は、私がお願いしたことなの」
ほむら「……!?」
美国織莉子が、あの二人に依頼した……!?
私に戦う力を教授してあげてほしいと……?
な、何でそんな……
776: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:37:18.72 ID:ORX3u8ppo
織莉子「私達の同期になってもらいたくて依頼した……というところもあるのだけれどね」
織莉子「つまり、あの二人があなたに色々と……ある意味で商売道具の一部。それを教えたのは……」
織莉子「それは、あなたが後輩になる可能性があったから……よ」
まどか「ま、待ってくださいっ」
まどか「よ、よくわかりません」
ほむら「同じくよ。私に組織に入れと言っているのはわかるけど……何がどうなっているのよ」
織莉子「優木沙々サイドと少し被りますが……」
織莉子「武器を盗める技術はないにしても、その度量とそれらをバレずに隠し持てる能力……」
キリカ「まぁ、盾の能力だね」
織莉子「それに対しての、スカウトというものよ」
ほむら「スカウト……」
織莉子「時間を止めることができないのは知っているわ。だからその内容で推薦したのよ」
777: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:37:44.60 ID:ORX3u8ppo
ほむら「……あれだけ気を遣ってくれてたのは、私が『後輩』になるかもしれなかったからなのね」
キリカ「まぁそれはその人達次第」
ほむら「……呉識さんにも、ソーニャさんにも、私はとても感謝している」
ほむら「あの二人が……いえ、折部さんもいたから、私は向こうでの生活は割と充実していた」
ほむら「可能なことなら、その恩に報いたいと思う」
ほむら「だけど……組織に『入る』となると……」
ほむら「こう言っては何だけど……殺し屋の仲間になるということじゃない」
織莉子「まぁそうですね」
私はただの一般人として過ごしたいが、
もしそういう存在になったら……平穏はないんじゃないだろうか。
そうなると、それは……。
778: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:39:27.41 ID:ORX3u8ppo
キリカ「感謝しているって言うなら……私達もだよ」
キリカ「君に出会ったから、私は今こうして織莉子と一緒にいられる」
織莉子「そう。私もキリカ以外の人を信じられるようになったと言ってもいい」
織莉子「だからこういう形で報恩のアプローチをしてみたのよ。何であれ、あなたは欲していた戦力を手に入れられた」
ほむら「そ、それはそうだけど……」
織莉子「あのね……私、また、別の予知を見たの」
まどか「予知……?」
織莉子「今や遠い昔のことにも思える……撃退したワルプルギスの夜」
織莉子「まだヤツは生きている……」
織莉子「そして……そう遠くない未来に再び現れる」
ほむら「……!?」
織莉子「そういう予知を見たわ」
779: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:40:55.81 ID:ORX3u8ppo
ワルプルギスの夜がまた現れる……!?
そう遠くない……そんな間を空けずに現れるというの……!?
確かに倒すことはできず、逃げられてしまった。
だけど……
織莉子「具体的にいつかはまだわからないし、場所も日本と限らない」
キリカ「今度こそ、倒そうと思うんだ。それが今の私達の生きる目標」
キリカ「その魔法少女の悲願に……協力してもらいたいと考えている」
織莉子「組織に入ることで……力をつけて」
ほむら「…………」
まどか「…………」
織莉子「魔法少女は、その存在を世間に知られてはいけないけれど……」
織莉子「その存在を許容してくれて、そしてある程度の社会的地位を保証してくれる。それが組織よ」
780: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:43:05.78 ID:ORX3u8ppo
キリカ「まぁ、ね。別にさ、魔法少女とは言え、たかだか中学生」
キリカ「誰かを消せとか遺体を処理しろとか、そういう話じゃないんだよ
キリカ「……まぁ将来的にそれ紛いなこともするかもしれないけどさ」
まどか「……っ」
織莉子「たまに……例えば私で言えば予知で『仕事』のサポートをしたり、キリカの能力を使ったり……」
織莉子「あなたなら……所謂運び屋ね。武器とか運ぶとか……そういうお手伝いもある」
ほむら「……『そういうこと』に加担するのね」
キリカ「そう奇麗事だけの世界じゃないからね。そう推薦しちゃったしさ」
キリカ「まぁでもさっき言ったように私達はたかが中学生。そんな私達が基本的にすることと言ったら今のところいつもの通りグリーフシードを集めるだけだよ。ただ遠出することもあるかもってくらいさ」
キリカ「お給料出るよ」
ほむら「グリーフシード?……それは、組織に対しメリットはあるのかしら?」
織莉子「あるわ。組織にグリーフシードが必要な人がいるのだから」
キリカ「先輩魔法少女も、いるんだよ。数人だけだけどね」
キリカ「私達はまだ会ったことないんだけど、その先輩魔法少女の内一人が君のことを大層気に入ってるみたいなんだ」
キリカ「君が入ってきたらそれはとっても嬉しいなって言ってた」
ほむら「…………」
781: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:44:52.87 ID:ORX3u8ppo
織莉子「あなたが盗んだ改造銃だけど……」
織莉子「実はあの銃を作ったのが、その先輩魔法少女なのよ」
ほむら「……そう、だったのね」
ほむら「じゃあ……その人によろしく言っておいて」
キリカ「だから会ったことないんだってば」
織莉子「……その武器は、元々魔女に対して特に効くよう、弾丸とか一つ一つご丁寧に微量の魔力が込められていたのよ。そういうのを作る能力」
織莉子「対ワルプルギスの夜を想定して作られたはいいけど……結局お眼鏡に適うの使い手がいなかった。しかもそもそもそれ以前に横領された」
キリカ「結局の所その武器でワルプルギスを殺すには至らなかったわけだけど……君が一番、その手作りを上手く使えるってんで会いたがってる」
キリカ「他の方は詳しくは知らない。何か色々研究してるんだってさ。魔法少女に関する何かかも」
織莉子「それと、あなたの盾に入れたグリーフシードは穢れない。食べ物も腐らない。その辺りにおいてはこの上ない素敵なレイトウコよ」
ほむら「人の能力を家電みたいに使うと言うの?」
キリカ「まぁそうだね。それ含めて組織の魔法少女達は君を欲しがっている」
まどか「…………」
782: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:46:00.80 ID:ORX3u8ppo
まどか「でも……」
ほむら「……まどか?」
まどか「…………」
ソーニャさんって人はまだどんな人かよくわかんないけど、
あぎりさんは本当にほむらちゃんを護ってくれた。とっても素敵な人だってわかりました。
とは言え……忍者はともかくとして『殺し屋』って言葉が出てきました。
殺し屋が所属する組織……だから……。
キリカ「わかる。わかるよ。まどかの言いたいこと」
キリカ「組織だって『そういうとこ』だし、そういうこともするかもしれない。今はともかく将来的にはね」
キリカ「それを、ほむらにやらせたくないってんだろう?汚いモノに触らせたくないと」
織莉子「組織にこれ以上深く関われば、両親や鹿目さん達を悲しませることになるかもしれない」
織莉子「しかし、現実を言えば……いつまでもそのまま生き続けるのも難しいわ」
キリカ「残酷な言い方かもしれないけど、魔法少女って時点で取りあえず普通の生活には戻れないんだよね」
織莉子「大学へ行くことを考えているなら、大学受験と魔女狩りを並行することになるもの」
織莉子「まぁ、あなたならできなくはないでしょうけど……」
783: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:47:11.29 ID:ORX3u8ppo
大学受験と両立する自信はないが……
常日頃から抱いていた不安を突きつけられた。
いつまでもまどかと一緒にいたい。
しかしそれはできない。それをはっきりと言われた。
ほむら「…………」
まどか「…………」
わかってました。
ほむらちゃんが魔法少女としわたしを護ってくれて……
そのせいで、ほむらちゃんの人生を変えてしまった。
ほむらちゃんの将来の道を狭めてしまった。罪悪感。
織莉子「……決定権はあなたにある」
織莉子「メリットもデメリットもいくらだって言えるけれど……」
織莉子「今これ以上話しても仕方ないわよね。あなたも疲れているでしょうし」
784: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:48:01.70 ID:ORX3u8ppo
織莉子さんが思い出したかのように紅茶を啜りました。
そういえば、紅茶……。
……すっかり冷めちゃってる。
ほむら「……私」
キリカ「ん?」
ほむら「私は……」
まどか「……ほむらちゃん?」
織莉子「…………」
ほむら「魔法少女という立場上……」
ほむら「みんなといつまでも同じ時間を生きていられない」
ほむら「それは、寂しいことだけど仕方ないことだと思うけど覚悟が……」
ほむら「……できていた、つもりだった」
785: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:49:01.37 ID:ORX3u8ppo
ほむら「だけど……少なくとも今はまだ……まどか……」
ほむら「みんなと、日常を過ごしていたい」
ほむら「こうして久しぶりに会えて、わかったの」
ほむら「友達と過ごせる日常に、私にはまだ未練がありすぎる……。覚悟なんて口だけ」
ほむら「……組織に入るのは魅力的とは思うけど……決心つかないわ」
ほむら「仮に入った後でも……いつでもどこでも会えたとしても……」
ほむら「入ってしまったら、単純に、まどかとは遠い世界の存在になる……ということよ」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「友達と過ごせる日常を大事にしたい」
織莉子「そう……ね。私も、そう思う」
キリカ「私は、織莉子と一緒なら、こういう生き方でいいと思ってる。少なくとも私の場合はそれで納得している」
キリカ「両親やまどか……君達には悪いとは思うけどね」
織莉子「あなたがそう考えるのも至極当然だと思うわ」
786: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:50:48.28 ID:ORX3u8ppo
ほむら「……保留じゃあダメかしら」
織莉子「問題ないわ」
ほむら「それじゃ……それでお願いするわ」
ほむら「よろしく伝えておいて」
キリカ「了解」
織莉子「まぁ……日常を……と言っても、取りあえずもう少し向こうで過ごしてもらうのだけれどね」
まどか「え……ほむらちゃんまだ帰ってこないの?」
キリカ「そりゃ何も告げずに忽然と学校からお世話様ってのはいないからね」
ほむら「……その辺はまぁ、わかるわ。武器を盗んだ罰と受け取ることにする」
キリカ「ほう、それ以外は罪でないと?」
ほむら「そう思うことにしたわ」
キリカ「ははは、虫がいいねぇ」
787: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:52:12.87 ID:ORX3u8ppo
織莉子「あ、そうだ」
織莉子「一応これ……組織の求人」
キリカ「聞きたいこととかあったらいつでも言っておくれ」
ほむら「求人あるんだ……」
織莉子さんがほむらちゃんに渡した一枚の紙。
どんなのか気になるけど、見えない。
ほむらちゃんは絶妙な角度でわたしの視界に文面が入らないようにしている……
そんな風に見えました。あまり関わらせたくないという意図を感じます。偶然かもだけれど。
織莉子「渡しはしたけど……」
織莉子「入る入らないはさておいて、今度あなたに魔法少女として、私の……」
織莉子「と、友だ……仲間として、仕事を手伝ってもらいたいの」
ほむら「仕事?」
織莉子「仕事とは言ったけど、ビラ配りとかそういうのと大差ないわ」
まどか「ビラ配りって……そ、その、そんなノリで組織……に誘うんですか?」
788: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:54:28.06 ID:ORX3u8ppo
キリカ「んー、組織に誘うというにはちょっと違うかな?組織と裏で繋がっているチーム、的な?」
まどか「は、はぁ……」
織莉子「えっと、その魔法少女に一人候補がいましてね。いえ、もしかしたら二人になるかも」
キリカ「私は『両方』とも大っ嫌いなんだけどね、ほむら。君に同行を願いたい」
ほむら「……私達が、魔法少女を勧誘、と?」
織莉子「えぇ、皮肉なものよね」
織莉子「浅……じゃなくって、仕事の話はさておいて」
織莉子「少しでも加入することに対して前向きなら……暁美さん」
織莉子「巴さん達にも話だけはしておいて欲しいわ」
ほむら「……えぇ、そうね」
ほむら「考えておく」
まどか「…………」
789: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:55:38.35 ID:ORX3u8ppo
蚊帳の外です。わたし。
組織がどうとか、わたしにはよくわかりません。
わかることと言えば……
ほむらちゃんの意志によっては、ほむらちゃんの将来が保証されるかも……?ってことかな。
しばらくはいつも通りみたいなことを言ってた。
しばらくっていつまでだろう。
いつまで一緒に、日常を過ごせるんだろう。
……悲しい気持ちになりました。
ほむらちゃんを守ってくれてたあぎりさんやソーニャさん。
ほむらちゃんを助けてくれた織莉子さんとキリカさんがいる。
ほむらちゃんの安否という観点で言えば……
この上ない安心感でしょう。
790: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:57:40.69 ID:ORX3u8ppo
わたしはほむらちゃんが大好きです。
だからできることなら、ほむらちゃんとずっとずっと一緒にいたい。
一ヶ月も経たずに「ほむらちゃんがいないなんて耐えられないよ」と弱気になっていたわたしにとって……
将来的にほむらちゃんが「あっちの世界」に行って、それで会えなくなるとするならば……
とても悲しいし、嫌だで済むなら何度だって嫌だと言うことでしょう。
……でも、残念ながら、織莉子さんの言う通り。ほむらちゃんの言う通り。
魔法少女という時点で……
わたしの考える「ずっと」は……一緒にいられないのかもしれません。
いつお別れになるのか、わからない。
言ってしまえば、昨日の今日で亡くなっちゃう可能性も……ある。少なくとも「普通」よりずっと。
今こうしている間にも、マミさんも、杏子ちゃんもゆまちゃんもなぎさちゃんも、魔女と戦っているのかもしれない。
苦しめられている可能性は……結局、否定できない。
「あの人なら大丈夫」っていう、自信にしかならない。
791: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:58:55.71 ID:ORX3u8ppo
わたしだって、わたしなりに、ほむらちゃんが、魔法少女のみんながそういう存在なんだって、
いつか悲しくて寂しいことに……ってのを覚悟をしようと、していたつもりです。
特にほむらちゃんは……わたしのために魔法少女になったようなもの。
そう思うと、わたしがほむらちゃんの未来を奪ってしまったんじゃないかと、
そう、思えてしまいます。罪悪感があります。
ほむらちゃんは、散々「わたし」に振り回されてきました。
だから、ほむらちゃんに「あっち」に行かないって選択をするのを期待するのは……図々しいことだと思います。
勿論、わたしには、嫌だと言う権利はない。
それを言うことは、ほむらちゃんを縛り付けることになるから。
これ以上、そういうことはできない。
ほむらちゃんが決めたことなら、それこそ覚悟をしなければなりません。
組織からの勧誘……これは、ほむらちゃんの未来が決まる道標。
792: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 00:59:33.12 ID:ORX3u8ppo
ただ……ただ、今は保留です。
だからせめてわたしは……ほむらちゃんと同じく、今という日常を楽しもうと思います。
久しぶりだった分、思い切りほむらちゃんに抱きついて、ほむらちゃんに料理を教わって……
一緒に勉強して、たくさんお喋りして、いっぱい食べて、頭なでなでしてもらって……
お泊まりもしたい。同じお布団とお風呂に入りたい。
もっともっともっと、毎日を楽しみたい。
ほむらちゃんが守ってくれたわたしの日常を、いつまでも、ずっと噛みしめて。
一生の想い出にしたい。
……差しあたり、ワルプルギスの夜祝勝会プラスほむらちゃんおかえりパーティがしたいです。
チーズフォンデュとか用意したら、なぎさちゃんすごい喜ぶだろうな。
織莉子さんとキリカさんはもちろん、あぎりさん、やすなさん、ソーニャさんも呼んで。
きっと……ううん。絶対に楽しいことでしょう。
わさわさ騒ぎたいものです。
793: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:00:00.64 ID:ORX3u8ppo
――夜
ソーニャ「…………」ピッ
ソーニャ「…………」
ソーニャ「もしもし、あぎりか」
あぎり『はーい』
あぎり『お疲れさまでしたー』
ソーニャ「ああ」
ソーニャ「どうだった?」
あぎり『どう、とは?』
ソーニャ「沙々とか言ったっけか。あの刺客のことだ」
ソーニャ「尋問に同行したんだろ?」
あぎり『はいー』
794: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:00:27.85 ID:ORX3u8ppo
あぎり『目を覚ましたらとても取り乱してまして』
あぎり『証言も支離滅裂といいますか』
ソーニャ「何だそりゃ」
あぎり『記憶が混乱しているみたいなんですね』
ソーニャ「記憶が?」
ソーニャ「消されたというわけではないのか?私が操られていた間の記憶が……みたいな」
あぎり『刺客として活動していたことは断片的に覚えています』
あぎり『ですが、どこから指示されたとか、そういったものは殆ど覚えていない、わからないとのことです』
ソーニャ「……そっちでは何か言ってたか?そいつに関して」
あぎり『刺客もまた洗脳されていたのではないか、とのことです』
ソーニャ「洗脳?」
ソーニャ「また洗脳か……で、誰がそうだって?」
あぎり『魔法少女の方です』
ソーニャ「何という説得力だ……」
795: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:01:24.21 ID:ORX3u8ppo
ソーニャ「……あまり有益な情報は得られそうにないな」
ソーニャ「で、そいつはどうするつもりだ?」
あぎり『実は彼女には捜索願が出されてまして』
あぎり『これ以上の拘束する意味もなさそうですし。明日には解放するそうです』
ソーニャ「ああ。わかった」
ソーニャ「……捨てゴマだった、と考えるのが自然か」
あぎり『私には何とも。ですが、その可能性もあり得ますね』
ソーニャ「……それで?」
ソーニャ「組織の裏切り者は誰だったのかわかったのか?」
あぎり『はい。三名でした』
ソーニャ「……そうか。だが、わかってよかった」
あぎり『ひとまず安心ですね』
ソーニャ「それで、そいつらは今どうしてる?」
あぎり『亡くなりました』
796: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:01:54.93 ID:ORX3u8ppo
ソーニャ「……は?」
あぎり『身柄を確保して事情聴取と思った矢先にです』
ソーニャ「…………」
ソーニャ「もしかして……消されたのか?」
あぎり『病死だそうです』
ソーニャ「病気?」
あぎり『違うという声もあります』
ソーニャ「じゃあその声は何だと?」
あぎり『魔法少女の力じゃないか……と』
ソーニャ「また魔法少女か」
あぎり『何とも言えませんね』
ソーニャ「まぁいい。私達には魔法少女のことはよくわからんからな」
ソーニャ「その辺りは上の判断に任せよう」
あぎり『そうですね』
797: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:03:34.66 ID:ORX3u8ppo
あぎり『ところでソーニャは今何してますか?』
ソーニャ「私か?」
あぎり『いつ戻られるのかなって』
ソーニャ「今はほむらの家でやすなを看ているところだ」
ソーニャ「帰るのは……そうだな、やすなの具合次第ってとこ」
あぎり『まだお目覚めになられてない?』
ソーニャ「あぁ……顔色はいいんだがな」
ソーニャ「そういうわけだからそっちは任せた」
あぎり『はい。わかりました』
あぎり『では、よろしくお伝えください』
ソーニャ「ああ」
あぎり『それで、結局どうなりましたか?』
ソーニャ「何が?」
あぎり『あの件ですよ』
ソーニャ「……気になるか?」
あぎり『はい』
ソーニャ「……ほむらを組織に勧誘する」
ソーニャ「織莉子が言うには――」
798: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:04:08.50 ID:ORX3u8ppo
やすな「…………」
やすな「ん……」
やすな「……んん?」ムクッ
やすな「うーん……?」
やすな「……ぬぅ、頭痛が痛い」
やすな「……あれ?」
やすな「……ここ、どこ?」キョロキョロ
やすな「…………」
やすな「私、何してたんだっけ……?」
やすな「私は確か……えっと……」
やすな「刺客に捕まって……えっと……」
やすな「えっと、えっと……」ホワワン
799: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:04:35.42 ID:ORX3u8ppo
――
――――
やすな「ねぇー、沙々ちゃん」
沙々「なんですか?」
やすな「本当にソーニャちゃん来るの?」
沙々「来る来る。超来る」
やすな「そう言ってずっと待ってるじゃない。まだ待つの?」
沙々「ま、もうちょっとですから。頼みますよ」
やすな「はぁ~い」
やすな「終わったらクリームパン奢ってくれるんだよね」
沙々「モチのロンです」
沙々「このままソーニャをわたしのとこに誘導すればいいんです」
800: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:06:04.99 ID:ORX3u8ppo
沙々「そうすればサプライズパーティでソーニャとほむらとあぎりでワッショイ」
沙々「トモダチ、トモダチ」ワサワサ
やすな「トモダチ」ワサ
沙々「……ん」
沙々「もうすぐ来ますね」
やすな「わかるの?」
沙々「超わかりますよ」
やすな「ふーん?」
やすな「でも沙々ちゃんったらツンデレだね!」
やすな「みんなと友達になりたいからって爆弾とか使うなんて!」
沙々「だってだって、恥ずかしいんですものー」
沙々「わたし、シャイなんですぅー」
801: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:06:38.83 ID:ORX3u8ppo
沙々「はぁ……バカだなコイツ」
やすな「え?」
沙々「いや、何でもないです」
やすな「恥ずかしいの範疇を越えてると思うなって」
沙々「しょうがないじゃん。しょうがないじゃん」
沙々「ダイナミック照れ隠し」
沙々「じゃあ……またね。よろしくお願いしますよ」
やすな「うん。沙々ちゃん」
沙々「…………待ってて。小巻さん」
沙々「ほむらさえ……ほむらさえ差し出せば……また、あなたに……」
やすな「沙々ちゃん?」
沙々「え?あ、いえいえ、何でもないですよ」
802: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:07:10.46 ID:ORX3u8ppo
「やすな!」
やすな「あ」
やすな「ソーニャちゃん!」
ソーニャ「な、何でお前ここにいるんだ!?」
やすな「ん?」
ソーニャ「刺客に攫われたとかあったが……どこかで見ているのか?」
やすな「……わからない」
ソーニャ「わからない?」
やすな「す、隙を見て逃げちゃった」
ソーニャ「何?逃げたぁ?」
やすな「うん。案外余裕だったよ」
ソーニャ「よ、よく逃げれたな……」
やすな「やっぱり殺し屋ってみんなマヌケなんだなって思ってしまうのでした」
ソーニャ「おい」
803: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:07:42.29 ID:ORX3u8ppo
やすな「ソーニャちゃんこそ、本当に見滝原に来ちゃうなんて……」
ソーニャ「なんだ?」
やすな「……私を助けに来てくれたんだね」
ソーニャ「…………」
ソーニャ「別に……お前のことなんてどうでもいい……」
ソーニャ「知り合いが組織の事情に巻き込まれたとなったら胸糞悪いからな」
やすな「ツンデレ乙!」
ソーニャ「うるせぇ!」
やすな「でも何にしても……私のこと心配してくれてたんだね、ソーニャちゃん」
やすな「えへへ、嬉しい」
ソーニャ「……ふん」
804: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:08:11.53 ID:ORX3u8ppo
ソーニャ「まぁいい」
ソーニャ「助かったってならそれでいい、すぐに戻ろう」
やすな「うん」
ソーニャ「怪我とかしてないか?」
やすな「大丈夫だよ。ありがとう」
ソーニャ「…………」
ソーニャ「お前を攫ったヤツのこととか色々聞かせてもらうからな」
やすな「色々……?スリーサイズとか?」
やすな「このス !」
ソーニャ「ふざけてるとブッ飛ばすぞ」
やすな「ごめんなさい」
ソーニャ「ここなら……そうだな」
805: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:08:49.76 ID:ORX3u8ppo
ソーニャ「やすな。見滝原にも組織の人間がいる」
ソーニャ「今からとりあえずそいつらのとこに行く。そこで話を聞くからな」
やすな「ソーニャちゃんの友達?」
ソーニャ「……組織に入ってまだ日も浅いから何とも言えない」
やすな「……ねぇ、ソーニャちゃん。その前にさ」
ソーニャ「ん?」
やすな「ちょっと……時間、いいかな?」
ソーニャ「あ?何だよ。後にしろ後に」
やすな「ね、いいからいいから」
ソーニャ「ったく……少しだけだぞ。コンビニにでも行くつもりか?」
沙々「……くふふ」
――――
――
806: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:09:17.92 ID:ORX3u8ppo
やすな「そうだ……何でかわかんないけど、私……刺客と協力なんかしちゃってて……」
やすな「何でそんなことしてたんだろう……?」
やすな「それで、その後、ほむらちゃんの友達の家に行って……」
やすな「それで会いに行って……」
やすな「会って……それから……」
やすな「……どうしたんだったっけ」
やすな「うーん……」
やすな「ダメだ……なんか思い出せない」
やすな「そもそもここどこなんだろう」
「……やっと起きたか」
807: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:10:27.98 ID:ORX3u8ppo
やすな「あ、ソーニャちゃん」
やすな「あれ?誰かと電話してたの?」
ソーニャ「ん?あぁ、まぁな」
ソーニャ「具合はどうだ」
やすな「具合。……えっと、うん。特に何ともないけど……」
ソーニャ「そうか」
やすな「うーん」
やすな「私、ほむらちゃんのお友達のとこに行ったのまではぼんやりと覚えてる気がするんだけど……」
やすな「確か、まどかちゃんって名前に覚えがあるよ」
ソーニャ「そうか」
やすな「っていうかここどこ?」
ソーニャ「ここは……」
808: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:11:58.88 ID:ORX3u8ppo
やすな「ハッ!」
やすな「ま、まさか今度こそソーニャちゃんち!?」
やすな「意外に和風!」
ソーニャ「ほむらの家だ」
やすな「あ、なんだ」
やすな「ほほう……ほむらちゃんのお家ね」キョロキョロ
やすな「……何にもないね」
ソーニャ「ああ」
やすな「ぬいぐるみの一つでも置けばいいのに」
やすな「そうだ!今度ぬいぐるみ作ってあげよう!」
やすな「ほむらちゃんならソーニャちゃんみたいに乱暴にしないだろうし」ジトー
ソーニャ「需要と供給ってもんがあることを学べ」
やすな「それで、そのほむらちゃんは?」
やすな「……って外暗っ!こんな夜に夜遊びですか!ほむらちゃんが不良になった!」
ソーニャ「ちげぇよ」
809: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:12:57.35 ID:ORX3u8ppo
ソーニャ「泊まるんだってよ」
やすな「あ、お友達のとこ?」
ソーニャ「ああ。まあ久しぶりに会えたんだからな」
やすな「そっかぁーそれならたくさんお話したいよね」
ソーニャ「ああ」
やすな「ソーニャちゃんは行かなかったの?」
ソーニャ「行ってどうすんだよ。お前もいるのに」
やすな「おやおや?心配してくれてるの?」ニヤニヤ
ソーニャ「バカ、そんな訳あるか」
ソーニャ「お前が一人目を覚ましたら私の家と勘違いして荒らすだろうからな」
ソーニャ「私が責任を持ってお前を看てんだよ」
やすな「……そっか」
ソーニャ(……洗脳されてほむらを殴っちまったらしいからな)
ソーニャ(記憶にないが……その詫びみたいなもんだ)
ソーニャ(何て言ったらまたうるさいだろうなコイツ)
やすな「……ありがとう。ソーニャちゃん」
ソーニャ「……ふん」
810: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:13:46.19 ID:ORX3u8ppo
ソーニャ「ったく……ほむらもほむらだ」
ソーニャ「他人を置いていくなんて無用心な」
やすな「信用してくれてるんだよ」
やすな「それにやっと友達に会えたんだもん」
やすな「ほむらちゃん、元の生活に戻れたんだよね?」
ソーニャ「……ああ」
やすな「よかった。ほむらちゃん、寂しがってたもんね」
やすな「めでたしめでたしだね」
ソーニャ「…………」
『みんなと、日常を過ごしていたい』
『友達と過ごせる日常を大事にしたい』
ソーニャ「……なぁ……やすな?」
やすな「何?」
811: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:16:06.39 ID:ORX3u8ppo
ソーニャ「……あー」
ソーニャ「その……何だ……えっと」
やすな「?」
ソーニャ「……な、何か」
やすな「うん?」
ソーニャ「……食いたい物とかあるか?」
やすな「え?」
ソーニャ「もう元気そうだが、まだ安静にした方がいい」
やすな「食べたい物かぁ……」グー
やすな「そういえばお腹空いたなー」
ソーニャ「ずっと寝てたからな」
ソーニャ「コンビニで何か買ってきてやるよ」
やすな「!」
812: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:17:37.48 ID:ORX3u8ppo
やすな「ソーニャちゃんが……私に?」
ソーニャ「ああ」
やすな「奢り?」
ソーニャ「……ああ」
やすな「…………」ジー
ソーニャ「な、なんだよ」
やすな「そ、ソーニャちゃんが優しい……!?」
やすな「気持ち悪っ」
ソーニャ「て、てめぇ……!」ギリッ
やすな「う、うそうそ!ありがとうサンキュー!ソーニャちゃん!」
やすな「そ、それじゃあね、私焼きそばパンが食べたいな!」
ソーニャ「……わかった。買ってこよう」
813: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:20:21.82 ID:ORX3u8ppo
やすな「それとクリームパンと唐揚げとアイスと桃缶とー」
ソーニャ「…………」
やすな「魚肉ソーセージとチーズケーキ食べたいな。あ、飲み物はオレンジジュースね!」
ソーニャ「……随分と食うな」
やすな「それと漫画欲しい!」
ソーニャ「は?」
やすな「漫画キャンデロロットときらきらマギカの今月号!」
ソーニャ「おい。食い物と言ったはずだ」
やすな「えー、せっかくソーニャちゃんが奢ってくれるって言うもんだからさぁ」
ソーニャ「食い物と言ったはずだぞ」
ソーニャ「まず食い物に限らなかったにしても流石に図々しいと自重しろよ」
814: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:20:47.53 ID:ORX3u8ppo
やすな「え、だってソーニャちゃんだし」
ソーニャ「あ?」
やすな「仕方ないなー。漫画は私がお金出すから」
ソーニャ「いや、そういうことじゃねぇよ」
ソーニャ「兎に角、金は私が出してやるが……」
ソーニャ「食い物しか買ってこないからな」
やすな「えー」
ソーニャ「何が不服なんだ」
やすな「折角の機会なんだからさ?」
ソーニャ「何の機会だよ」
やすな「ソーニャちゃんを色々パシらせたいなって思っ――」
815: ◆G/i6ASkNm1oc 2014/01/01(水) 01:22:42.00 ID:ORX3u8ppo
ソーニャ「調子に乗んなッ!」
ガツンッ
やすな「ギャフッ!」
ソーニャちゃんはぶっきらぼうで乱暴者。
あぎりさんは何を考えてるかわからない。
ほむらちゃんは素直でいい子だけど何やら秘密を持っている。
私の知らない別の世界でも生きている人達。
……本当に、本当に癖の強い人達です。
だけど……
私の、最高の友達なのです。
引用元: ・ソーニャ「次の仕事は見滝原に行くのか」
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