1: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 02:02:32.62 ID:21IOf5zl0
◆最初に
※咲-Saki-とウルトラマンシリーズのクロスオーバー
※京太郎もの
※基本平成
※地の文多め、かも
※麻雀関係あるようなないような、これウルトラファイト
※>>1以外はsageでお願いします
※“たまに”安価
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1630256552
2: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 02:04:31.91 ID:21IOf5zl0
◆プロローグtanima
須賀京太郎、15歳、高校一年生
夏、自らの在籍している清澄高校のインターハイでの団体戦優勝を見届けた
もちろん、自らが親友【宮永咲】の個人戦優勝すらも
過ぎゆく平和な日々
そして夏が過ぎ―――光と闇の混沌とした戦いが始まる
3: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 02:05:16.49 ID:21IOf5zl0
第1話【幻影を継ぐ者】
4: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 02:07:11.71 ID:21IOf5zl0
―――9月7日・夜
彼、須賀京太郎は麻雀をしていた。そのはずだった
“いつも通りの敗北”だったはずだ
だがおかしい
「っ!」
麻雀卓によりかかり、そのまま椅子から転げ落ちる
対面にいた【原村和】が立ち上がり、京太郎を見下ろす
体中に激痛、それと共に薄れ行く意識
「のど、か……」
さらに両面に座っている【染谷まこ】と【南浦数絵】も意識を失っている
立ち上がった和が“メダルのようなもの”を投げると、目の錯覚かそれが二人の身体に入っていった
「な、にを……」
這うように手を伸ばすと、自らの鞄に手が届く
かといってなにかができるわけでもないが……
「外れ、ですか……ここまでの力量の差では持ちませんね」
傍によってきた原村和が口を開いているのは見えるが、それが和の言葉のようには聞こえない
「まぁ結果的には同じです。待っているものは」
頬に和の手が添えられるのを感じ、見上げる
その背後に光り輝くなにかが見えた気がした
掠れた声で、思わず呟く
「天使……?」
「ふふっ、ふふふ……もったいない。でもさよならです。すぐにみんなそちらに」
手が離れていくが、気力だけで起き上がろうと上体を起こした
固定されている椅子を背に、和を見上げる
「人類的な表現であれば……“根源的破滅”ですか、それをお贈りします」
女神のような笑顔を浮かべる和
そんな彼女を視線の先に、京太郎は“お守り”を握りしめたまま、暗闇に意識を鎮める
5: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 02:13:34.92 ID:21IOf5zl0
―――数日前
緑の葉も赤みがかかり始め、季節は秋へと移っていく
夕日に照らされる道も、すっかり夏と違って見える
街中を、二つの影が並んで動く
「そういえば京ちゃん」
「ん?」
彼、須賀京太郎に声をかけるのは宮永咲
同じ麻雀部、今日も今日とて麻雀をやった帰りである
「お母さん、今日からいないんだって?」
「ん、ああ……しばらく外国だって」
「相変わらずだねぇ」
「まぁ楽しそうでなによりだ。慣れたし」
ケラケラと笑う京太郎と、それを見てクスリと笑う咲
二人の様子からして別段珍しいことではないということがわかる
父は京太郎が物心ついてから一度も会ったことがない
たまに送りものが届くぐらいでほぼ母子家庭であったのだが、別段それを憂うこともなく育ってきた
「あ、そういえば親父から珍しくお土産っぽいもの送られてきたなぁ」
「へぇ~珍しいね?」
「ん、たまに送られてくるものもそのまま親父の書斎に入れちゃうからなぁ」
「で、なにもらったの?」
「え~っと、なんでもない……ただその、お、お守り」
少しばかり気恥ずかしさがあるのか、ほんのりと赤い顔でそっぽを向きポケットからそれを取り出す
京太郎の手にあるのはお守り、すこしばかり硬いなにかが入ったそれを手に取って咲に見せる
ニヤニヤと笑う咲、そんな顔を見て京太郎は軽く肘でつついた
「笑うなよ」
「え~だって京ちゃん嬉しそうだし~」
幼馴染二人、影を左右に揺らしながら帰路を行く
6: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 02:17:25.70 ID:21IOf5zl0
―――9月7日・夕方
茜色に染まる校門前、立っているのは二つの影
須賀京太郎と原村和の二人だ
部活が終わってから帰路につこうとしていたのだが、咲と仲間である片岡優希を待つために校門にいる
(和と二人きりとか久しぶりだなぁ……)
「須賀君と二人きりなんて、久しぶりですね」
「あっ、お、おう……」
最近はこうして彼女から話を振られることも多くなってきた
憧れの少女、彼女がいたから麻雀の道に足を踏み入れたぐらいだ。緊張もしよう
「その、和」
ぐっと拳を握りしめる
あくまでナチュラルに自然に、意識しつつうなずく
「俺は次のインターハイ、必ず清澄にふさわしい活躍をしてみせる」
「?」
「そしたら、俺と……」
「和ちゃん、京ちゃん!」
「あっ、咲さん!」
決意を決めて言おうとした“なにか”が言い終わる前に、やってきたのは宮永咲
そちらへと軽く駆けていく和を見て京太郎は少しばかり顔をしかめる
まぁ仕方のないことだとあきらめて息をつくと、京太郎もそちらへと歩いていく
「京ちゃん聞いてよ! 私今度お姉ちゃんと一緒に取材で―――」
景気の良い話である。きっと普段ならばもっと喜べたはずなのだが……
一緒だった友達、いや親友とどんどんと離れていく感覚を覚える
端から違うのだが……それでも感情ではそうもいかずに
「さすが、だな」
笑みを浮かべる京太郎、そんな彼のポケットのケータイが震えた
まだ気づかぬものの、それはそばにいた和からのメッセージ
気づくのは一人になった帰り道で、喜んですぐ肯定の返事を返すことになる提案
『夜、麻雀でもしませんか? まこ先輩のお店で』
―――そしてそれが、彼にとっての始まりの終わり
7: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 02:22:35.61 ID:21IOf5zl0
―――9月7日・深夜
ふと、目を覚ました
雀荘でもなんでもない、そこは―――
京太郎「俺の、家?」
自宅の自室―――ベッドの上
??「おはよう」
その声に、勢いよく上体を起こす
和に倒された後の激痛は余韻もなく、倦怠感すら感じさせない
だが俊敏に起き上がった京太郎は声のした方に視線を移した
??「危なかったね……父親に感謝しときな」
京太郎「あなた、は?」
そこには白髪の老婆―――老婆というには若いかもしれない
なにはともあれそこには女性が座っていた
知らない人間でありなぜ自分の家にいるのか、なぜ自分すらも自宅にいるのか理解が追いつかない
??「原村和がやられてるとはね、意外……でもないか、あれもまた能力を持った者」
京太郎「な、なんの話ですか?」
??「リトルスターの、もっと邪悪なものか……」
京太郎「だからなんの話かって」
??「おいで……きっとあんたの父親が鍵だ。いや、鍵はむしろ―――」
その言葉と共に、女性が立ち上がるので京太郎も立ち上がる
なぜだかその女性の言葉に説得力を感じた
??「私は熊倉トシ……通りすがりの、風来坊ってことにでもしとくかね」
京太郎「は?」
8: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 02:27:18.12 ID:21IOf5zl0
なぜかその熊倉トシを先導に部屋へと入る
父の部屋に入るのは久しぶりで、他の部屋とは違う匂いに違和感を感じながらも足を踏み入れた
妙な感覚を感じる
京太郎「前は、こんな感じ……」
トシ「あんたの中のそれと関係あるのか、とりあえず、ここか?」
京太郎「俺の中って……って、あ」
ポケットになにかが入っているのを感じて出してみればそれは父からのお守り
なんだか軽くなっている気がする。硬さもない
京太郎「……なんで?」
トシ「ほら、やっぱり」
京太郎「って、何勝手に開けてるんですか」
そう言って近づくと、父の机の引き出し
その一番下に金庫のようなものがはめてあった
だが鍵穴が見つからない、ダイヤルも
トシ「開けて」
京太郎「え? 別に閉まって」
トシ「閉まってるよ」
その言葉に、訝しげな表情を浮かべつつなぜか従い金庫の取っ手に手をかけて上に持ち上げるように開く
別段、光が広がるわけでも闇があふれるわけでもない
ただ純粋に、そこにはモノが在った
京太郎「なんだ、これ?」
トシ「ゼットライザー……設計図でもパクッてきたか?」
京太郎「へ? ぜ、ぜっと?」
トシ「いい、あんたのものだ……本来の使い道とはたぶん、違うけど」
そういうと、熊倉トシはその【ゼットライザー】を手に持って、京太郎に渡す
受け取った京太郎は、その重みを感じつつ手を上下させる
さらに中に入っていたものを、トシが京太郎の腰横につけた
トシ「ホルダー……“メダル”を拾ったらそこに入れときな」
京太郎「え、メダル? ゲーセンでも行くんですか? あ! これ太鼓の達人のマイ鉢的な」
トシ「……」
京太郎「あ、違いますよね、はい」
9: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 02:29:17.65 ID:21IOf5zl0
軽く手を返してゼットライザーを見て、触ってみる
両についたブレードのようなものがスライドし、丸い何かをはめる場所もあった
なるほど、とうなずく。メダルとゼットライザーの関係、つまりはそういうことだろう
京太郎「で、なんなんですこれ?」
トシ「運命は動き出した。もう止まらない……いや、既に動き出してたのか」
溜息をつく熊倉トシを見て、京太郎は小首をかしげた
京太郎「一体、なにが起こってるんですか?」
トシ「それは……」
瞬間―――咆哮が聞こえる
10: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 02:30:08.01 ID:21IOf5zl0
野犬やらの声ではない。そんなものわかる
窓が揺れるような咆哮
そんなもの聞いたこともない
京太郎「なっ、なんだよ!?」
トシ「きたか……」
カーテンを開けたトシの視線の先、蠢く影
街が燃えているのか、影に赤い光が当たっている
京太郎「か、怪獣!!?」
トシ「始まりの怪獣―――ベムラー!」
それは怪獣、黒く棘の生えた鱗
二足歩行、短い前足、長い尻尾、口から吐くのは青い炎
京太郎「な、なんだよあれっ……」
トシ「まだ本格的に市街地、ではないか」
京太郎「そ、そんなこと言ってる場合じゃ!」
トシ「行くよ」
京太郎「どこに!? なにしに!?」
トシ「……あんたにしかできないことさ」
11: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 02:32:55.97 ID:21IOf5zl0
数分後、京太郎とトシの二人は【ベムラー】と呼ばれた怪獣が近くに見える丘に来ていた
熊倉トシの、年齢に合わぬ体力と走力についてきた京太郎
だが、中学の頃にハンドボールをやっていたころより走力も体力も上に感じた
京太郎(むしろ、自分でブレーキをしてた気すらする……)
トシ「デビルスプリンター……やっぱり」
京太郎「?」
少し離れた場所に見えるベムラー
いつ自分たちがその炎の餌食になるかわからない
京太郎「あ、危なくないっすか?」
トシ「……京ちゃん」
京太郎「は、はい」
トシ「ごめん、すまないと思ってる……あんたに背負わせて」
意味がわからない。自分にしかできないことがあるというからついてきたが、説明がない
トシ「戦うんだ。あんたが……」
京太郎「いきなりなにを」
街を壊すベムラーが、トシの背後に見えた
人々が走っているのすら見える
ゼットライザーを握った拳に、自然と力がこもる
京太郎「……はい!」
トシ「トリガーを」
ゼットライザーのトリガーを引く
それと共に、目の前に輝く扉が現れた
別空間に通じているであろうその扉を前に、京太郎は迷うことなく走る
トシ「あ、待った」
京太郎「え?」
トシ「最後にもう一回トリガーだよ、忘れないでね」
京太郎「あ……はい」
そう返事をすると、深呼吸
仕切り直しだと言わんばかりに深く息を吐いてから、光る扉-ゲート-に飛び込んだ
12: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 02:37:17.79 ID:21IOf5zl0
真っ白に輝く空間
入り口は既にふさがっており、中にいるのは京太郎のみ
両の足を踏みしめて立つ京太郎の右手にはゼットライザー
京太郎「っ!」
そして左手に現れるのは、京太郎が映った赤いカード
それを見つめる京太郎の赤い瞳
『ジーッと見つめててもどうにもならないぞ』
京太郎「ッ!?」
『気に入らない感覚だ……カードを差し込め!』
京太郎「は、はい!」
威圧感のある声に押される
息をついて、右手のゼットライザーに左手のカードを差し込む
【キョウタロウ・アクセスグランテッド】
京太郎「!」
異様な力を感じる
目の前の怪獣から街を、人々を守る力
自分の内に感じる―――“チカラ”
京太郎「!」
ゼットライザーのブレードを
『叫べ! 俺の名を!』
「ウルトラマン―――」
ゼットライザーを掲げ―――トリガーを引く
「―――ベリアル!!」
13: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 02:41:06.26 ID:21IOf5zl0
―――【街中】
青い炎を吐く宇宙怪獣ベムラー
そんなベムラーが“蹴り飛ばされる”
ベムラー「……!!」
倒れたベムラーがハッキリと視線をそちらに向ける
そこに立つのはベムラーとほぼ同サイズの、光の巨人
白銀と赤の身体を持ち、胸に輝く星-カラータイマー-
京太郎『こ、これは?』
べリアル『ハッ! 腕慣らしには丁度良いが、こっちは素人か……』
京太郎『え、そ、そんなこと言われても』
べリアル『まぁ良い……気に入らん奴は潰す!』
爪を立てた両手で構えを取る京太郎こと、ウルトラマンべリアル
今ここに―――【最恐のウルトラマン】が復活した
14: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 02:43:22.16 ID:21IOf5zl0
京太郎が消えた丘の上で、熊倉トシはベムラーと対峙するべリアルを見やる
その瞳に映るのは喜びでもなんでもなかった
そんな感情は存在しない。彼女は顔をしかめる
トシ「すまないね、京ちゃん……」
謝罪は闘う運命を選ばせたこと
戦いに駆りだしたこと、頼らざるをえなかったこと
そしてその謝罪は、まだ続く
トシ「そしてべリアル……そっとしておいてやりたかったよ。私だって」
その視線の先、ウルトラマンべリアルは【始まりの怪獣-ベムラー-】を前に構えを取った
19: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 22:10:50.41 ID:me+r5grG0
構えを取るベリアルを前に、ベムラーが威嚇するように咆哮をあげた
京太郎はベリアルの中で自分自身がベリアルになっているという違和感に顔をしかめる
京太郎『な、なんなんだよこれっ!』
ベリアル『チッ、妙な姿で蘇えらされたな』
その言葉に、少しばかりの違和感を感じるも、今すぐに指摘できるほど心の余裕もない
ベリアル『おい小僧、合わせろ!』
京太郎『あ、合わせろっても』
突如、ベムラーへと走り出すベリアル
引っ張られるような感覚に、京太郎は逆らわないように体を動かす
走り出したベリアルが、爪を立てた右腕を振るう
ベリアル「ハァッ!」
ベムラー「―――!!?」
振るわれた右手、それは斬撃へと変わりベムラーの強固な鱗を引き裂き攻撃を通す
その感覚に驚愕する京太郎だが、すぐ左側の動く感覚にあわせて左腕を振るった
左拳をベムラーの胴体に打ちつけて、その巨体を後退させる
ベリアル「ハッ!」
ベリアルに合わせて背後に跳ぶと、青い炎が先ほどまでいた場所を燃やす
京太郎『っぶね~!』
ベリアル『ハ! はじめてにしちゃぁ悪くねぇ……人間と融合なんざ俺も初めてだから普通どんなもんかもわかんねぇがな』
京太郎『ゆ、融合っすか?』
ベリアル『なんも知らねぇみたいだな』
その言葉に、恐る恐る肯定で返す
ベリアルがなにかを話し出そうとするも、ベムラーが接近して尻尾を横薙ぎに振るう
再び、合わせるように跳んでそのままベムラーの背後へと回る
ベリアル「ハァッ!」
素早く手から光弾を撃ち出し、ベムラーを攻撃
倒れるベムラーがビルを破壊する
京太郎『あっ! 街がっ!!』
20: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 22:19:45.48 ID:me+r5grG0
立ち上がるベムラーがさらに尻尾を振るう
後ろへと下がるベリアルだが、ベムラー周囲のビルが破壊されていく
それを見て、京太郎は歯を噛みしめた
ベリアル『チッ、しぶといな……』
京太郎『え、えっと、ベリアル、さん!』
ベリアル『あぁ? なんだ?』
京太郎『なるべく街を壊さないように戦えませんか!』
ベリアルが、ベムラーを見据えたまま左手を顎に添えて首を左右に振るう
ゴキゴキと関節が鳴るような感覚を感じた
この短い間で、おそらくベリアルがどういう人物(?)かはある程度見えたつもりだ
京太郎『頼みますっ、街を守れなきゃ俺は……ここで戦う意味がない!』
素直に聞いてくれるとは、思っていない
だが自分がやれることは、それでも頼みこむのみ、だ
ベリアル『守るもの、ねぇ……ハッ! ならどうする?』
京太郎『え?』
ベリアル『街に被害が無いようにあいつを仕留めるために、だ』
試すような言葉に、京太郎は頷く
なんとなくだが戦い方も、使える技すらも感覚的に理解してきた
所謂“必殺技”の使用や威力、その他の攻撃もまた然り
京太郎『ベリアルさん! 力、お借りします!』
21: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 22:42:45.55 ID:me+r5grG0
ベリアルがベムラーに駆ける
口から吐き出される青い炎を、前に転がるように避けて懐に入るとそのまま爪撃を放つと同時に背後へと斬り抜ける
叫びをあげ尻尾を振るうベムラー
ベリアル「ハッ!」
ベムラー「―――!!」
前へと転がって回避するベリアルが、即座に振り返る
京太郎もまったく誤差の無い動きで着いていく
京太郎『そこぉ!』
手の平から光弾を三度放つ
ベムラーがその攻撃に火花を散らしながら下がるも、すぐに怒りに震える姿が見えた
作戦通りと、京太郎が笑みを浮かべる
ベムラー「―――!!」
走り出すベムラー
ベリアル『来るぞ、合わせてやる―――やってみせろ小僧!』
京太郎『オオォォォォ!!!』
それに合わせて走り出すベリアル
◆BGM:DREAM FIGHTER【http://www.youtube.com/watch?v=2bJEDgeuVtE
】
道路を踏みしめて、ベムラーへと駆けだす
二つの巨体がぶつかりあう―――その直前
京太郎『ここだぁっ!』
即座に身体をかがめると、背を地につけた
走る勢いそのままのベムラーの腹を、受け流すように蹴り上げる
空へと勢いよく飛ぶベムラー
京太郎『ベリアルさん!』
ベリアル『ハッ! おもしろい!』
即座に立ち上がったベリアルの右手が赤い稲妻を纏う
22: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 22:55:33.04 ID:me+r5grG0
ベムラー「―――!!」
空のベムラーが自由落下を始めようとしている
その前に―――
京太郎『やる!』
腰を少し落とすと左手を水平に、その後ろの赤い稲妻を纏う右手を垂直に
数多の宇宙に広がる光の巨人の伝説
この宇宙にこそ、その伝説はない―――今までは
これから後世に続くであろう伝説、その始まり!
京太郎・ベリアル 『デスシウム光線!』
赤い稲妻を纏った光線
その一撃が空のベムラーへと放たれる
真っ直ぐに、夜を照らす輝き―――
ベムラー「―――!!?」
―――そして、爆発
23: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 23:11:38.06 ID:DoAjmxbH0
空中で爆散したベムラー
爆煙から輝く何かが落ちる
ベリアルは右手を払うように振るうと、首を再び鳴らす
ベリアル「……ハァッ!」
両手を上に向けて、ベリアルは空へ―――消えた
―――【丘の上】
熊倉トシは、静かに事の良く末を見守っていた
その表情に浮かぶのは混乱か安心か
トシ「……ベリアルが、京ちゃんに合わせた?」
やはり混乱だったのだろうか、熊倉トシは軽く丘の柵を飛び越える
数メートルを落下するも軽く着地して、さらに歩き出す
トシ「相性の問題? それとも―――息子に殺されれば嫌でも変わる、か?」
24: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 23:25:46.77 ID:DoAjmxbH0
―――【街中】
走る京太郎、その右手にはゼットライザー
燃え盛る街の中を息を切らしながら走る
体力の消耗は、初めての戦い故か―――
京太郎「ハァッ、ハァッ……」
ベリアル『戻った途端に、せわしない奴だ』
京太郎「な、なんか落ちたんだ……怪獣が、出た原因かもっ!」
その言葉に、ベリアルは興味なさげに息をつく
破壊されたビルの瓦礫を飛び越えて、京太郎は―――見つけた
京太郎「あれっ!」
ベリアル『なんだ?』
京太郎「せ、妹尾さん!?」
妹尾佳織―――鶴賀学園の麻雀部、二年生
一応、部活の繋がりで数言か交わした記憶はある
急いでそちらへと駆け寄るとすぐに抱き上げた
京太郎「妹尾さん!」
佳織「うっ……」カランッ
なにかが落ちた音がして、京太郎はそちらを見やる
京太郎「これ……メダル?」
ベリアル『ほう、こいつがこのメダルの持ち主だったわけだ』
京太郎「っ」
そのメダルに描かれているのは怪獣―――ベムラー
25: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 23:35:09.72 ID:DoAjmxbH0
佳織の上体を片手で支えている京太郎は、そのメダルに驚愕しながらもホルダーにしまった
レスキュー隊が近くに来ているのか声が聞こえる
すぐにそちらへ向かって佳織を預けようとも動こうとする
??「待った」
京太郎「っ……トシさん」ハァ
トシ「こっち」
そう言って歩いていくトシ
佳織を抱き上げるとそちらへと歩き出す京太郎
別に大きな怪我などがある様子はないものの、危なければトシが放っておくとも思えないと行く
ベリアル『おい小僧、あれは?』
京太郎『熊倉トシさん、よくわかんないですけど……助けてくれたっていうか、ベリアルさんと会わせてくれた、人?』
ベリアル『きな臭いな』
京太郎『ごもっとも』
瓦礫の少ない道を行き、徐々に破壊されていない街中へと入っていく
野次馬を避けて裏道を行くトシはこの街の立地にかなり詳しく見えた
トシ「さて、ここで良いだろう」
京太郎「?」
ただの道路だった
歩道で立ち止まったトシの後ろで立ち止まる京太郎
佳織をお姫様抱っこで抱えたままで、職質に怯えながら周囲を見渡す
トシ「ほら来た」
京太郎「車?」
26: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/30(月) 23:44:48.48 ID:DoAjmxbH0
◇大変! プロがきた!
1、瑞原はやり
2、野依理沙
3、三尋木咏
4、戒能良子
5、赤土晴絵(プロ?)
◇5分間で↓1からコンマが一番高い人物
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/08/30(月) 23:46:10.34 ID:Kwl+OOY70
1はやりん
28: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/31(火) 00:02:26.63 ID:I/gkF6ga0
(まぁ正直1↓で良いかなって思ってた!
1、瑞原はやり
目の前に勢いよく止まる車
4WDタイプの四輪駆動車両
その窓が開くと、そこにはどこかで見た女性
???「お待たせしました~」
トシ「いや、丁度良い到着だ……京ちゃん、あんたは後ろへ」
京太郎「あ、はい」
トシがドアを開けると、京太郎は少し高くなっている後部座席へと佳織共に乗り込む
少しばかり大きな車なだけあって、中もそこそこに広い
佳織をどうにか座らせると、支えるように京太郎も座る
???「出発しま~す」
トシ「ん」
助手席に座ったトシの返事を機に、車が走り出す
京太郎「えっと……状況が読めないんですけど」
トシ「ああすまないね、それはこのあと……紹介するよ。あたしの協力者」
バックミラー越しに運転席の女性と眼が合う
ニコリ、と聞こえてきそうな笑みを浮かべた女性
???「こんにちは、瑞原はやりです☆」
京太郎「……はやりん!!?」
ベリアル『……誰だ?』
1、瑞原はやり
目の前に勢いよく止まる車
4WDタイプの四輪駆動車両
その窓が開くと、そこにはどこかで見た女性
???「お待たせしました~」
トシ「いや、丁度良い到着だ……京ちゃん、あんたは後ろへ」
京太郎「あ、はい」
トシがドアを開けると、京太郎は少し高くなっている後部座席へと佳織共に乗り込む
少しばかり大きな車なだけあって、中もそこそこに広い
佳織をどうにか座らせると、支えるように京太郎も座る
???「出発しま~す」
トシ「ん」
助手席に座ったトシの返事を機に、車が走り出す
京太郎「えっと……状況が読めないんですけど」
トシ「ああすまないね、それはこのあと……紹介するよ。あたしの協力者」
バックミラー越しに運転席の女性と眼が合う
ニコリ、と聞こえてきそうな笑みを浮かべた女性
???「こんにちは、瑞原はやりです☆」
京太郎「……はやりん!!?」
ベリアル『……誰だ?』
29: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/31(火) 00:18:37.14 ID:amw9zL0U0
十数分走った車が、施設に入る
敷地に入り、真っ直ぐに走っていくと車庫が開く
自動なのか手動なのか、そこに入ると電気がつきハイテク機器が並ぶ車庫だとわかる
京太郎(すげぇな……なんだここ)
ベリアル『おい、この地球には“そーゆー組織”があるのか?』
京太郎『え、そうゆうって?』
その疑問に、ベリアルは応えることはなかった
小首をかしげる京太郎をよそに運転席のはやりと助手席のトシが降りる
それに続くように京太郎は佳織を支えながらドアを開け、抱えて降りた
京太郎「えっと」
はやり「こっちにきて?」
京太郎「あ、はい」
トシ「余計なとこ行ったり触ったりしないでね」
京太郎「俺は子供ですか」
トシ「子供だよ」
京太郎「……まぁ、はい」
ベリアル『情けねぇ』
京太郎『うっ』
閉まって行くシャッターを横目に、近くのドアから二人の後を追って施設に入る
白い壁、明るい蛍光
研究所とか言葉が脳裏をよぎる
京太郎『ついてきちゃって良かったんですかね?』
ベリアル『今更だ、それにいざとなれば俺がやる』
京太郎『あはは……いざって時が来なきゃいいけど……』
30: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/31(火) 00:29:33.82 ID:amw9zL0U0
少し歩くと部屋に案内され、自動ドアが開いて二人に続いて中に入る
ベッドが置いてあり、他にも機器が設置してあった
はやりが手でそちらを差す
京太郎「妹尾さんを?」
はやり「うん」
その言葉に従うほかないと、そちらに佳織を寝かした
京太郎が言葉を発そうとした瞬間、自動ドアが再び開く
入ってきたのは、これまた見覚えのある女性
はやり「裕子ちゃん☆」
裕子「妹尾佳織さん……鶴賀の麻雀部、役満を上がっている」
はやり「はやぁ、リサーチが早いねぇ」
裕子「一応メディカルチェックをします。出て行ってください」
はやり「はいはい、いこートシさん、須賀君?」
京太郎「あ、はい!」
彼女がクルッと身体を回して出口へと向く
それと共に揺れる二つの 満な果実
京太郎(くっ、伸びる! 鼻の下が伸びる!)
はやり「?」
なにかおかしい京太郎を覗き込むはやり
そんな風にかがまれるともちろんシャツの間から 間が見えるわけで
京太郎『ぐおぉ! ベリアルさんここ不味いっす!』
ベリアル『鼻の下を伸ばすな、ヒッポリト星人か』
京太郎『誰か知らんけどたぶん悪口!』
31: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/31(火) 00:39:25.14 ID:amw9zL0U0
―――【施設】
二人についていき、一つの部屋に案内された
大きなモニターと大きなテーブル、機器が沢山ある
椅子に座るトシとはやり
はやり「どーぞ☆」
京太郎「し、失礼します」
椅子に座る京太郎、あまりこういう雰囲気には慣れていない
というより、慣れている人の方が珍しいだろう
京太郎「えっと……妹尾さんは?」
トシ「とりあえず検査待ち、まぁ運がいい方だと思うよやっぱり」
京太郎「ど、どこがっすか」
トシ「さぁ、どうとらえるかは自由だけども……」
その言葉に、京太郎は小首をかしげた
はやり「えっと、どこまで説明しましたか?」
トシ「全然さ、その前に……変身してもらったから」
はやり「じゃあ須賀君が?」
トシ「ああ……さっきの“ウルトラマン”だ」
勢いよく立ち上がる
京太郎「ええ!? そういうの言っちゃうんですか!?」
トシ「まぁ、こいつにはね」
はやり「信頼されてるね~☆」
トシ「一応ね」
はやり「はやや、一応って」
京太郎「……俺、なんなんですか?」
トシ「……父親から、いやそれ以外からでもなんかもらった?」
京太郎「え、なんかって……あ! お守り!」
トシ「それだ。それに入ってたんだろうね……ウルトラマンベリアルの力の入った、カードかカプセルか……メダル」
京太郎「メダル……」
32: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/31(火) 00:55:25.09 ID:c6JmA97W0
おそらくメダルだと、謎の確信があった
父からのお守り、だがそれがなぜ
京太郎「メダルがなんだってんですか?」
トシ「それがベリアルメダルだったんだろうね。あんたが死にかけた時に、同化した」
京太郎「俺が死にかけ……あ!」
確実にあれだ。というより“彼女”が言っていた
京太郎「あのあと、俺はその……ベリアルさんのメダルと?」
トシ「ぶふっ!」
珍しいリアクションに、京太郎が疑問符を浮かべる
トシ「い、いや……ベリアルを、さん付けっ」
京太郎「なにがツボだったんです?」
はやり「さぁ?」
ベリアル『失礼な奴だな』
そんな声に軽く苦笑を返す
トシ「こほん……ともかく、そのあと外に捨てられてた京ちゃんを私が見つけて家に運んだと」
京太郎「俺、運ばれたんだ」
トシ「そういうこと、色々あってあんたの父親が鍵を握ってるんじゃないかって思ったら……」
京太郎「俺の父親知ってるんですか?」
トシ「知ってると言えば知ってる。ただ“ここの京ちゃんの父親”ではないけど」
京太郎「?」
トシ「ウルトラマン好きなんだよ。あんたの父親……なろうと思ってゼットライザーを作っちゃうくらいには」
京太郎「親父、こっち側なんだ……しかも変な感じ」
ベリアル『なにに憧れたんだかな、くだらん』
京太郎『ウルトラマンからの意見ですか?』
ベリアル『さぁな……それとオレはオレをウルトラマンなんざだと思ってねぇ』
なにか、複雑な理由があるのだろうと勝手に解釈して深く聞くのをやめた
今やるべきはそんなことでもない
自分の身の周りで起きたことの詳細、それを聞く方が先決だ
京太郎「それで、親父は一体?」
トシ「それは知らない」
京太郎「え~」
トシ「あとは“怪獣”について、かね」
はやり「ん、それについては私からかな☆」
京太郎「お~」
33: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/31(火) 01:10:34.97 ID:c6JmA97W0
スーツ姿の瑞原はやり、説明を始めるために立ち上がった
コンピューターのキーボードを軽く叩くとモニターに映るのは怪獣
先ほどのベムラー
はやり「まぁ実際に怪獣が出たのは……今回が初めてだけどね」
京太郎「の割に、瑞原さん落ち着いてますね」
はやり「はやりで良いよ」
そう言うと、さらにキーボードになにかを打ちこむ
怪獣の映像が小さくなり、映るのはメダル
それは沢山の画像があるようで、怪獣が描かれたメダルが複数表示された
はやり「鍵はね、麻雀なの」
京太郎「……は?」
ベリアル『麻雀?』
はやり「ホントだよ?」
京太郎「ああいや、信じてないわけではないです。麻雀でその、殺されかけたんで」
ベリアル『ちょっとおもしろいな』
京太郎『おもしろくないっす』
自分も和と麻雀をして、死にかけたのだ
あの体を突き抜けるような激痛、遠のく意識
トシ「そもそも“この宇宙の麻雀”は……能力ってものが作用する」
京太郎「え、ああまぁ……聞いてはいます」
トシ「ここでは麻雀ってのは、異能を引き出すものでもあるわけだ。そのエネルギーに目を付ける奴がいてもおかしくないだろ?」
京太郎「麻雀の異能で発するエネルギー……ってことですか?」
トシ「そういうこと」
脳裏に浮かぶのはインターハイ
自らの仲間たちが戦った、数多の異能を持つ雀士たち
トシ「で、ちょっと話は変わるけど、どっかにこの星に害をなそうと言う奴がいた」
京太郎「この地球、に?」
トシ「まず人間を掃除するのに怪獣を使おうと思ったわけだ」
京太郎「あの、ベムラー?」
トシ「そういうこと、ただ怪獣を持ってくるよりもっと効率が良いモノがあった。怪獣の力の一部が入れられたメダル」
ベリアル『なるほどな』
京太郎『いや全然わかりませんけど』
トシ「その怪獣の力を持ったメダルと、この世界の雀士の異能を使う力を共振させれば」
はやり「……この通り」
再び大きく映し出されるベムラー
今までは水面下で凌いでいたが、とうとう怪獣が現れてしまったということだろう
34: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/31(火) 01:28:12.18 ID:wVNMeWmW0
京太郎「じゃあ、和は?」
トシ「実際に見ていないけど、たぶんメダルを入れられたんだろう」
京太郎「メダルを?」
トシ「あんたと一緒だ」
自分と一緒、だと説明されてもハッキリとしない
京太郎自身とベリアルは、どちらかが支配している関係、では無いと思う
思いたいのだ、まだ出会ったばかりだが……
京太郎「……」
トシ「まぁメダルにも相性ってもんがあるからなんともだけどね」
京太郎「相性ですか?」
トシ「……まぁその時の感情だったり、相性だったり、状況だったり?」
京太郎「俺と、ベリアルさんは?」
トシ「さて、そこまでは知らないよ」
静かに息をつくトシを前に、京太郎は顔をしかめた
はやり「はやや、私の出番だったんじゃ?」
トシ「ん、すまないね」
京太郎「あ、それで……なんでしたっけ?」
はやり「……麻雀の話」
少し沈んでいるはやり
苦笑しながら眼を逸らす
京太郎「あ~で、なんで今更、負けたぐらい俺は死にかけたんですか?」
はやり「たぶん、その原村和ちゃんに入っていたメダルがかなり強いんだろうね。強いメダルはそのぶん適合しないと弾かれるはずだけど」
京太郎「強い、メダル……あの天使」
はやり「まぁ強いエネルギーを持ったメダルと強い異能、それに負ければ……それも大差なんてただじゃすまないよね」
そう言いながら、そっと京太郎の傍による
はやり「でも、死までいくなんて……こわかったよね?」
やわらかな手が、頭の上に置かれる
妙に気恥ずかしくなって俯く
一方のはやりは暖かな笑みを浮かべて手を離した
はやり「うん、強い子だ……でもそんな君に、頼ることになる」
京太郎「?」
寂しげな声に、京太郎は首をかしげた
はやり「まぁなにはともあれ、メダルを入れた雀士が止まらずに勝ち進むと……エネルギーはどんどんと溜まっていく」
京太郎「……まさか、それで?」
はやり「そう、エネルギーが溜まると……メダルが覚醒する。怪獣が、現れるんだよ」
35: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/31(火) 01:34:58.51 ID:wVNMeWmW0
京太郎「……つまり、雀士を止めれば怪獣は」
見えてきた答えを口にしようとした瞬間、扉が開く
入ってきたのは先ほどの女性
ようやくそこで京太郎は理解した
京太郎『佐藤裕子さん……』
ベリアル『誰だ』
京太郎『あ、え~と……女子アナ?』
ベリアル『なんだそれは』
京太郎『ですよね』
なにかがわかったのか、裕子は三人を前に息をつく
裕子「身体に別状はありません……体内にメダルも、良くないエネルギーもデビルスプリンターも確認されませんでした」
京太郎「デビルスプリンター?」
トシ「ま、そこは良いよ。とりあえず別状はないんだね?」
裕子「はい、精神ダメージがあるのかまだ眠っていますが数値自体は至って正常です」
はやり「だって」
京太郎「良かったぁ」ハァ
トシ「運が良いねぇ……」
京太郎「でも、勝ち続けてしまったから……ベムラーになったんですよね?」
ベムラーメダルが入ったホルダーに手を添える
トシ「……ま、話の続きは明日でいいか」
はやり「夜も遅いですしね☆」
京太郎「あ、いや」
トシ「急いても仕方ないよ。ゆっくりしすぎてもしょうがないけど……」
京太郎「……はい」
36: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/31(火) 01:42:43.27 ID:wVNMeWmW0
はやりに話をしていた部屋こと作戦室から少し離れた部屋に案内される
壁から伸びたテーブル、白いシーツが敷かれたベッド
椅子に小さな冷蔵庫なんかもあった
京太郎「ここは……」
はやり「一応、宿舎……で良いのかな」
京太郎「ありがとうございます」
ペコリ、と頭を下げると、はやりは笑って手を前で振る
はやり「こちらこそ、ありがとう……街と人を守ってくれて」
京太郎「いえ、俺なんてベリアルさんに」
はやり「それでも京太郎くんの、力でもあるんだよ」
京太郎「……はい」コクリ
はやり「それじゃあ、おやすみ」
京太郎「はい、おやすみなさい」
笑顔を浮かべて別れる二人
京太郎はそのまま、ドサッとベッドに倒れ込む
今日一日で色々とありすぎて、思うことが多すぎる
京太郎『ベリアルさん、俺たちどうなっちゃうんでしょう』
ベリアル『ハッ! オレは気に入らないものをぶっ潰す。それだけだ』
京太郎『できれば、それが怪獣であることを願いますよ』
それだけを言って、眼を瞑る
すぐに睡魔が襲い掛かってきた
心につっかえているのは和、彼女はどうなってしまうのだろうということ
京太郎(みんな、無事でいて欲しいけど……)
一抹の不安を抱えつつも、意識は微睡の中に沈んでいく
ゆっくり……ゆっくりと……
37: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/31(火) 01:45:13.47 ID:wVNMeWmW0
第一話【幻影を継ぐ者】 END
38: ◆dBIP2XuQhg 2021/08/31(火) 02:11:53.84 ID:wVNMeWmW0
―――次回予告
京太郎:消える雀士! 消える怪獣! もーわけわかんないっすよ!
京太郎:なにがなんだかわかんないけど、この力で人を守れるなら、俺戦います!
京太郎:って麻雀、かと思ったら麻雀じゃないしぃ!
次回【雀士で戦士】
ベリアル:おもしろい、斬ってみるか!
京太郎:あ、おもち
44: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/01(水) 21:40:17.68 ID:2s5yzSvb0
―――【???】
胸を焦がす感情
熱いほどの野心と闘争心
なにかが、心を覆う、邪悪なナニか、深き闇―――
「っ……なんだよ、これ」
呟くように、言う
「ベリアルさんっ!? いないんすか!」
今、最も頼りになる相手、自らの半身
死の淵から救ってくれた“英雄-ヒーロー-”に近き者
「こんな闇っ」
その闇に戸惑いながらも
それでも
胸を焦がすその感情には、憶えがあった
つい最近も抱いた―――狂おしいほどの、憧憬を超えた感情
「嫉妬、妬み……」
45: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/01(水) 21:49:01.41 ID:2s5yzSvb0
―――【???:京太郎の部屋】
京太郎「ッ!!」バッ
勢いよく起き上がった京太郎
純白のシーツに汗のシミを残し、荒々しい呼吸をしながら自分の手を見る
一瞬だけ、自分の手に【漆黒の爪の生えた手】が重なって見えた
京太郎「っ!」ビクッ
ベリアル『なんだ? 起きて早々』
京太郎「あっ……すみません」
肩で呼吸をしながら、ベッドから降りる
着替えもなかったので 着姿で眠っていたので、エアコンからの冷風に少しばかり寒気を感じた
まず、着替えて部屋から出ようと、立ち上がった―――その瞬間
ウィン
はやり「おはよー☆」
京太郎「あ」
はやり「……」
京太郎「……」
沈黙、ただただ沈黙
京太郎とはやり、ただ沈黙
ベリアルは興味はないのか、なにも言わない
京太郎「……あの、とりあえず閉めてもらっても?」
はやり「はやぁっ!!? ごごご、ごめんねっ!!」ボンッ
真っ赤な顔のはやりがすぐさま背を向けて、自動ドアがゆっくりと閉まる
京太郎「……さて、着替えるか」
46: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/01(水) 21:55:45.89 ID:2s5yzSvb0
第2話【雀士で戦士】
47: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/01(水) 22:03:04.37 ID:2s5yzSvb0
―――【???】
自動ドアが開いて、京太郎が出る
昨日と同じ服なので少しばかり匂いを気にしながらだ
出てすぐ横に、はやりが壁を背に立っていた
京太郎「お待たせしました」
はやり「はやっ!? ぜぜぜ、全然!!?」
48: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/01(水) 22:15:16.12 ID:UMGkm6dA0
京太郎(初心だなぁ)
はやり「と、とりあえず昨日の話の続きをしようか、とりあえず作戦室に行って」
京太郎(そもそも、ここってなんの施設なんだ? てかこの人らもなんなんだ?)
はやり「まずは」
瞬間、はやりのスーツのポケットから音が響く
着信音なのか、音の元たる端末を取り出してはやりはボタンを押す
はやり「どーしたの?」
裕子『協力な反応を検知しました。おそらくメダルを持った雀士です』
はやり「っ! すぐに行くよ!」
トシ『頼んだ。京ちゃんも……』
京太郎「え、俺もっすか!?」
トシ『頼んだよ。今の内に止めとかないと昨日みたいになる』
頭の中をよぎるのは昨日の街
火がと鉄となにかが焼けるような異臭
破壊された建物
京太郎「っ……」
はやり「私だけでも、まだ間に合うなら」
裕子『いつ“覚醒”してもおかしくありませんよ。この波形』
はやり「だからって戦いたくない子供をっ」
京太郎「行きます」
はやり「っ」
京太郎「……戦います。守りますよ俺が」
トシ『……京ちゃん、頼んだ』
京太郎「はい」
熊倉トシの言葉に、ハッキリと返事を返す
見えないだろうけれどしっかりと頷いて、だ
はやりは複雑そうな表情を浮かべる
京太郎「よくわかんないけど、戦います。街を、人々を守るために!」
ベリアル『……ふん』
おそらく、機嫌がよろしくないのは理解できた
自分の発言故なのかはわからない
しかし、ベリアルの力を借りなくてはならないのも事実だ
京太郎『ベリアルさん、お願いします!』
ベリアル『……』
京太郎『ベリアルさん?』
はやり「行こう、京太郎くん!
京太郎「あ、はい」
49: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/01(水) 22:28:08.34 ID:UMGkm6dA0
昨日と同じ車に乗り込む
今回は運転席にはやり、助手席に京太郎と二人だけ
目的は一つ―――怪獣メダルを持った雀士を止める
京太郎「ところで、俺はなにをすれば?」
はやり「あ~話が途中だったもんね」
その言葉に頷く京太郎
改めてスーツ姿の瑞原はやりに違和感を覚えるが、今はそこに突っ込める雰囲気でもない
はやり「私は良くわかんないんだけどね……トシさんからの情報しか」
京太郎「はぁ」
はやり「……麻雀をしてもらうんだよ。私と一緒にね」
京太郎「……」
はやり「……」
京太郎「はぁ!!?」
50: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/01(水) 22:46:58.99 ID:TOJ3oX3q0
田舎道を走る車その車内で、なんとなく事情は説明された
未だに納得はできないが、それでも……やらざるをえないだろう
自分でも、役に立つなら、守れるなら
京太郎『ベリアルさん、俺にできますかね?』
ベリアル『さぁな、オレはまだお前のことを何も知らねぇ』
京太郎『確かに……』
ベリアル『ただこれだけはわかる』
京太郎『な、なんっすか』
おもしろそうに言うベリアルに、小首をかしげる
隣のはやりは車に装備されたカーナビを見ながら走っているようだった
京太郎『聞かせてくれないんですか?』
ベリアル『……さてな』
ケラケラ笑うベリアルに、顔をしかめる京太郎
隣のはやりが京太郎の方を横目で見て、なにかを察したのか苦笑する
―――瞬間、車に通信が入ったのか車内に声が響く
裕子『はやりさん! 雀士の真横を通り過ぎました!』
はやり「はやっ!?」
京太郎「え、今誰かいました?」
裕子『反応だけは確かなんですけどっ……近くに雀荘は!』
はやり「あるけど、と、通り過ぎるなんて」
裕子『歩いてます!』
はやり「はやっ!?」
京太郎「ど、どういう……」
ベリアル『ほぉ』
楽しそうなベリアルの声をよそに、車が止まると京太郎とはやりの二人が後ろの道を見返す
ただの道路、誰もいないように見える
京太郎とはやりは顔を合わせて、困惑に首をかしげた
51: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/01(水) 22:59:34.30 ID:8W6qAzpz0
車を近くのパーキングに止めて二人で歩く
はやりはサングラスをかけていてポニーテール
おそらくバレるのを防ぐためなのだろうけれど……
京太郎(おもちがっ! おもちが凄い!)
はやり「こっちの方のはず……」
通信機にもなっている携帯端末を持って歩くはやり
そのあとをついていく京太郎だが、確かにその先には雀荘が見えた
先ほど、すれ違ったというのがいまだにわからない
京太郎「なんだろ」
はやり「そこの雀荘にいるのは間違いなし、ここまでだよ」
そう言いながら、はやりが中に入る
次いで京太郎も入るのだが、中は普通の雀荘―――と言いたいところだが、雰囲気が異様
この雰囲気を京太郎は知っている。昨日味わっている
京太郎(そういや一日しか経ってないんだよなぁ……)
はやり「いるね。でも……」
卓数は8つ、はやりが端末を左右に振るが、反応が近いためか細かくはわからないようだ
京太郎「……」
はやり「逃げただけでは、ないはずだけど……」
京太郎「あ」
はやり「ん?」
京太郎「わかったかも」
はやり「え、ほんと!?」
52: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/01(水) 23:07:01.27 ID:8W6qAzpz0
憶えはある。あったはずだった
話したことこそないものの、確かに彼女のことは聞いている
消える雀士、それにはあの原村和も崩されかけた
京太郎「……」キョロキョロ
はやり「京太郎くん?」
京太郎「はやりさん、あの三麻の卓」
指差した先の卓、三麻をやっているように見えるが、雀牌はしっかりと置かれていた
意識しだしてようやく違和感を感じたのかはやりも“なるほど”と頷く
京太郎「……消える雀士」
揺れる空気、倒れる牌
決着は着いてしまったのだろう
相手どっていた雀士三人が倒れた
京太郎「っ」
はやり「他の人は気にもならないよ。しばらくしないとね」
京太郎「随分、都合が良い力なようで」
ベリアル『ハッ、おもしろい力だな……』
徐々に、その姿を捉えられるようになってくる
京太郎「鶴賀学園……」
シュゥゥゥッ
京太郎「東横、桃子……」
桃子「……」ニヤッ
53: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/01(水) 23:25:22.77 ID:8W6qAzpz0
倒れた一般人をそっと壁際に寄せる
はやり曰く『病院に連れて行ってどうにかなるものでもない』らしい
京太郎とはやりの二人が東横桃子の座る卓につく
京太郎「素直にやってくれるんですね」
はやり「まぁ強い雀士を倒した方が覚醒が近づくからね……トシさんからの情報だと」
つまり―――
京太郎・ベリアル『飛んで火に入る夏の虫、か』
二人の声が重なる
京太郎「……っていうか、俺にほんとにやれるんですか?」
はやり「メダルを入れた雀士は強くなるからね、ベリアルメダルの入った京太郎くんなら」
京太郎「ベリアルさんのおかげで、ですか……」
はやり「まぁね……それは敵も一緒だけど」
自分も相手も強化をされているらしい
だが、元が弱い自分がベリアルメダルを入れるだけでそれほど強くなれるのか甚だ疑問でもある
それでも、自分は頼られた―――自分は、頼られたのだ
ベリアル『……』
京太郎「役に、たちますか?」
はやり「うん、トシさん曰く京太郎くんとベリアルメダルの相性は、かなりいいらしいから」
京太郎「わかり、ました……」
はやり「それと」
京太郎「はい」
はやり「これもトシさん情報だけど……ビックリしすぎないでね?」
京太郎「は、はい……?」
54: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/01(水) 23:33:05.87 ID:8W6qAzpz0
自動卓のボタンを押すのは、桃子
ガラガラと音を立てて、牌が自動卓の中で移動していく
東横桃子から溢れだすのは、オーラ
京太郎「っ!」
ベリアル『ハッ、くるぞ小僧!』
京太郎『……はい!』
消える東横桃子、だがその淀んだ邪悪な闇が、ハッキリとわかる
手元にせり出てくる雀牌
それに触れて、感覚が妙に鋭くなっていくのがわかる
京太郎(え、てかこれ鋭くなるってか……視界が、細まるって、いうか……)
55: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/01(水) 23:44:25.19 ID:8W6qAzpz0
―――【???】
しっかりと、眼を見開いた
雀卓の前に自分はいた―――はずだ
京太郎「はず、なんだけど……」
街―――だった。
そこは街で、先ほどまでいた雀荘の前
田舎道にある雀荘だ
京太郎「えっと……」
ベリアル『そういうことか』
京太郎「え、わかります?」
ベリアル『ハッ! 別にそれほど珍しいことじゃない』
京太郎「そうなんっすか?」
ベリアル『夢の中に出る怪獣の話を聞いたこともあるしな』
京太郎「え、どうやって倒すんですか?」
ベリアル『寝て戦うに決まってるだろうが』
京太郎「えー」
57: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/02(木) 00:00:45.60 ID:39PjmD9I0
京太郎「にしても、俺は一体これからどうすれば―――」
瞬間、轟音が響く
ビクッと体を震わせてそちらに目をやれば
少し離れた場所に―――
京太郎「なんもいない……」
しかし建造物は倒れている
次の瞬間、さらなる轟音と共に近場の木々が潰された
焦って走り出す京太郎
京太郎「なんだよぉ!」
ベリアル『怪獣だな、ハッ……あいつは確か』
京太郎「と、ともかく!」
取り出したゼットライザーのトリガーを引くと前方に現れるゲート
背後の道が潰される音が響く
ナニカに潰されるより早く、京太郎はゲートへと飛び込んだ
京太郎「い、命拾いしたっ!」
ベリアル「ハッ! 早くしろ! 暴れたい気分だ!」
京太郎「りょ、了解っす!」
ベリアル「それにここなら、好きなだけ暴れられるしなァ!」
頷いて、京太郎が左手にウルトラアクセスカードを持つ
それを右手のゼットライザーにセットするとブレードを稼働させる
ベリアル「いくぞ小僧!」
京太郎「ベリアァル!」
トリガーを引き、叫ぶ!
58: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/02(木) 00:27:09.86 ID:gzXPI60Z0
空から降りてくるのは白銀の巨人
ウルトラマン、とベリアルは呼ばれたくないとは言っていた
故に呼ばなかったのだが―――ウルトラマン。そう言うにふさわしいと京太郎とて思ってはいる
京太郎『……ベリアルさん、東横さんを助けるために戦いましょう!』
ベリアル『……良いだろう』
意外といえば意外なのだ
粗暴な雰囲気を出すベリアルがここまであっさり自分に協力してくれるのは……
だが、それで助かっているのも事実
そして、まだ変に踏み込んで聞くほどの関係ではないと京太郎とて理解していた
ベリアル『ボケッとしてるな、いくぞ小僧!』
京太郎『はい! ……ってどこに?』
ベリアル『こいつは……』
????「―――!!」
瞬間、咆哮が聞こえた
それと共に衝撃で吹き飛ばされるベリアル
当然変身している京太郎自身も、ダメージを受ける
京太郎『ぐああっ!』
ベリアル『ぐっ……このオレが!』
吹き飛ばされて、身体はそのまま民家を押しつぶして倒れた
顔をしかめる京太郎は、ベリアルの身体を気遣いつつ起き上がる
もちろん京太郎が起き上がればベリアルの身体も起き上がるのだが……
????「―――!」
ベリアル「グアアッ!」
“なにもない空間”から電撃
それを受けてベリアルは黒煙を上げながら、膝をつく
咆哮が聞こえる
京太郎『ベリアルさん! 動きましょう!』
ベリアル『当然だ!』
すぐに横に転がると、先ほどまでいた場所に電撃が直撃していた
京太郎とてなんとなく理解してる
ベリアルの能力は本来ならばもっと高いはずだ
京太郎『すんません、足引っ張って!』
ベリアル『……』
京太郎『でも、それでもっ!』
59: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/02(木) 00:44:01.43 ID:gzXPI60Z0
京太郎『俺は……戦う、東横さんを助ける!』
転がるベリアルがさらに電撃を避ける
京太郎はハッキリとその願望を口にし、闘志を込めた瞳を虚空に向けた
ベリアルの笑い声が聞こえる
京太郎『ベリアルさん?』
ベリアル『フハハハ! 小僧、ちったぁ戦士らしい眼をする』
そう言うと、京太郎と共に構えを取るベリアル
爪を透明な虚空に向け、しっかりと足を踏みしめる
ベリアルの胸のカラータイマーが点滅を始めた
京太郎『これは?』
ベリアル『不安定な状態じゃ、動ける時間に限界があるってことだ』
つまり、見えない敵を相手に、一方的に攻撃してくる相手に、時間制限までついた
頭を回転させる京太郎
先ほどからの電撃攻撃、破壊された建物
京太郎『もしかしたら!』
ベリアル『やってみろ』
両腕を前に構えるベリアル
その瞬間、右側からの電撃が直撃する
ベリアル「グゥッ!」
京太郎『右ぃ!』
そちらへと顔を向けるベリアル
京太郎『デスシウムロアー!』
顔の、口あたりから放たれる破壊音波
それが攻撃するのは地面であり、巻き起こる砂埃
ベリアル『ハッ! おもしれぇ』
60: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/02(木) 01:01:59.26 ID:rPNSB7PE0
◆BGM:DREAM FIGHTER【http://www.youtube.com/watch?v=2bJEDgeuVtE
】
その砂埃は敵の姿を映しだす
静電気により、その怪獣の姿が見えるようになった
形は曖昧だが、おおよそは理解できる
京太郎『四足歩行?』
ベリアル『ネロンガか』
京太郎『……知ってましたね?』
おそらく、自分を試したのだろう
ベリアル『上出来だ。もうしばらくは、お前の身体を使ってやる』
京太郎『あはは、ありがたいことで……』
ベリアル『それにしてもネロンガ、相手をするのは初めてだな』
そう言うと、素早くその場から退く
迸った電撃がベリアルの真横を奔った
ベリアル『おもしろい、斬ってみるか!』
京太郎『はい!』
ベリアル・京太郎『デスシウムリッパー!』
胸の前で両手を水平に振るう
放たれる斬撃が、ネロンガの頭部にあった角を斬り裂いた
咆哮を上げるネロンガの姿が露わになる。今度はハッキリと
ベリアル「デヤァッ!」
跳び上がり、ネロンガを飛び越えるその瞬間、爪撃をくわえる
京太郎『まだまだぁ!』
さらに斬撃、斬撃、打撃
怒涛の攻撃に、ネロンガはひるみ、吹き飛んで倒れる
まだ立ち上がろうとするネロンガを前に、ベリアルは右手に紅い稲妻を纏う
京太郎『東横さんを、返してもらうぞ!』
そして水平に構えた左腕の後ろに、垂直に右腕を構える
京太郎・ベリアル『デスシウム光線!』
61: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/02(木) 01:11:58.40 ID:rPNSB7PE0
光線の直撃と共に、爆散するネロンガ
その爆煙を前に、ベリアルは静かに立つ
赤いカラータイマーが点滅し、音を鳴らしている
京太郎『……やりましたね』
なにも言わぬベリアル
地を蹴り、上空へと飛び上がり―――精神世界から去る
京太郎は、東横桃子の無事を願いながら
62: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/02(木) 01:26:01.06 ID:rPNSB7PE0
―――【雀荘】
意識がはっきりと戻ってくる
だが突如、京太郎の脳内に溢れる記憶
京太郎「ッ!」
ベリアル『ほう、そういうことか』
ハッキリと、記憶があるのだ
東横桃子、瑞原はやりの二人と―――麻雀をやった
京太郎「これは……」
はやり「京太郎くん?」
京太郎「あ、はやりさん……」
桃子の方に視線をやると、意識を失っているようだった
視線をはやりの方へ移すと、安心したような表情を浮かべている
はやり「話に聞いていたより全然、麻雀強いね」
京太郎「そう、なんですかね……」
手に感触もある。自分が打ったと言う経験すら残っていた
精神世界で戦った自分と麻雀を打った自分、どっちが本当かわからない
あるいは両方が本物だからおかしな感覚なのだろう
京太郎「……」
ベリアル『どうでもいいことだ。お前は……戦うだけだ』
京太郎「雀士として、戦士として……」
はやり「……京太郎くん、東横さん連れて行こう? 今ならまだ、認知されてない」
京太郎「え、あ、はい」
周囲のだれも気にしていないようだった
立ち上がった京太郎
昨日ほどの倦怠感はないものの、疲労は確かにあった
京太郎「よっと」
はやり「行こう」
63: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/02(木) 01:36:00.42 ID:rPNSB7PE0
車に乗り込むはやりと京太郎
後部座席に桃子を横に寝かした状態にする
息をついて座席に身体を預ける京太郎
はやり「ありがとう、京太郎くんが……きっと戦ってくれたんだよね。私の知らないとこで」
京太郎「……いや、はやりさんも麻雀してましたし」
はやり「ううん、勝ったのは京太郎くんだから」
確かに、喜んだ感覚すらも存在するが、自分が自分の力だけでそんな結果生み出せるわけがないのだ
京太郎「……複雑ですけど」
はやり「割り切れると良いね。借りものだとしてもそれは京太郎くんの力だよ」
京太郎「そう簡単に割り切れませんよぉ」
苦笑するはやりが車を動かす
少しの揺れと共に、来た道を引き返していく
今はハッキリと東横桃子の姿が視認できる
京太郎「……」チラッ
桃子「……」ガタンッ タユン
京太郎「あ、おもち」
はやり「おもち?」
京太郎「なんでもないです!」
69: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 14:16:23.39 ID:2W1DMbNk0
―――【???】
車が昨日と同じく施設内の車庫へと入る
息をつくはやりが隣を見れば、そこには眼を閉じて眠っている京太郎
背後の東横桃子も、眠っているようだ
はやり「こんな子供に、守ってもらっちゃって……」
そっと、京太郎の頬に触れる
脳裏に浮かぶのは、昨日のウルトラマンベリアルの姿
はやり「それは京太郎くんで……」
少しばかりの溜息をつきながらも、自身の頬を二度叩く
やることは一つ、今は目の前の少年のサポートと、街を―――世界を守ること
はやり「さて……起きて京太郎くん」ユサユサ
京太郎「んぁ……え?」
はやり「おはよう」フフッ
京太郎「……すみません!」バッ
はやり「いいよ、お疲れさまだね……東横さんをお願いして良い?」
頷くと、京太郎はすぐに車を降りて桃子を抱える
そんな姿を見て、少しばかり眉をひそめはやりは笑った
70: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 14:39:11.50 ID:0daSruSx0
―――【???:作戦室】
京太郎は、東横桃子を裕子に預け戻ってくる
佳織の方の精密検査の結果はもう出ていると聞いた
その話を聞くためにも、トシとはやりの二人を眼前に席に着く
京太郎「お待たせしました」
トシ「いいや、こっちも積もる話だらけだからね……」
京太郎「そりゃそうか……ところで」
トシ「妹尾佳織なら心配ない。全ての数値が正常だね」
はやり「後は起きるのを待つだけだね……今までのパターンと一緒」
京太郎「麻雀で倒したパターンとってことですよね?」
トシ「ん、ところで東横のメダルは?」
京太郎「え、麻雀で倒してもメダルって出るんですか?」
トシ「そりゃね、身体から出たメダルを手に入れないと、どうにもならないし」
はやり「元を断たないとってことだね」
そう言って、はやりが取り出すメダル
先ほどの怪獣ネロンガが描かれているところを見れば、やはりそれは昨日のベムラーと同じ
京太郎「……怪獣メダル。こんなもの」
ベリアル『ハッ、地球はどこも狙われるもんだ』
京太郎「地球は、どこも……?」
ベリアル『ともかくだ、気にいらねぇ……怪獣の力はともかく……』
京太郎「ともかくって……?」
トシ「デビルスプリンターは?」
はやり「はや? ああ例の、そっちに関しては……倒した時に同時に、消滅を確認してます」
トシ「なるほどね」
頷くトシに、京太郎は小首をかしげた
ベリアルはなにを言うでもない
71: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 14:55:26.04 ID:0daSruSx0
少しばかりの沈黙
三人とも考えることは山ほどあるということだろう
そして、京太郎は沈黙を破る
京太郎「そういえば、今日って平日ですよね……俺、学校が」
トシ「そっちは大丈夫、それに妹尾や東横の方も大丈夫にした」
京太郎「した?」
トシ「ああ、した」
その言葉に、京太郎が小首をかしげた
京太郎「した、って……どういうことっすか?」
はやり「そのままの意味だよ。公休扱いでどーにでもできるってこと」
そこにきて、根本的な疑問が浮かぶ
昨日と今日でそれどころでは無かったものの……
京太郎「……ここ、なんなんです?」
トシ「……言ってなかったっけ?」
はやり「なかった?」
京太郎「ないっすよ!」
トシ「……じゃあ改めまして」
そう言ってキーボードを叩くトシ
モニターに表示されるのは逆三角のエンブレム
なにやらしっかりと装飾もされていた
トシ「政府極秘公認、特異災害及び特異現象及び超常現象対策課……略して特異課」
はやり「まぁ……お金全然ないけどね」
トシ「実際に怪獣も超常現象も起きてるんだ、こっからだよ。経費使い放題」
はやり「お酒飲み放題ですね」
ベリアル『欲望まみれだな、ハッ!』
京太郎「えっと……とりあえず学校のことは特異課にお任せするとして」
72: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 15:07:27.92 ID:0daSruSx0
もう一つの疑問が思い浮かぶ
京太郎ははやりが置いたネロンガメダルを手に取った
そこに描かれるネロンガ、そしてホルダーのベムラー
京太郎「和は、原村和は……学校に? それにまこ先輩と、南浦数絵とか」
トシ「……秘匿されてるけど、今は珍しくないんだよ」
京太郎「え?」
トシ「雀士の行方不明」
京太郎「……ま、じっす、か」
はやり「うん、メダルを入れられて敵になっているのか……それとも」
京太郎「嘘でしょ。ゆ、優希! 片岡優希と竹井久さんは!」
焦ったように聞く京太郎に、トシは手を前に出す
落ち着けと言いたいのだろうと理解するが、そう簡単にできるものでもない
はやりが横に来てそっと背中に手をそえた
はやり「わかる、私の友達も行方不明だから……」
京太郎「はやりさん……」
はやり「私たちがやらなきゃだから、今は……ね?」
京太郎「っ……はい」コクリ
トシ「正直に話すとだ、行方不明さ。今あげた全員」
京太郎「なら」
トシ「でも必ず動き出す。それは間違いない……」
ベリアル『後手後手だな』
京太郎「……待つしか、ないか」
そう言って肩を落とす京太郎
トシは静かに、背もたれに身体を預けた
京太郎の背中に添えられていた手が、離れる
はやり「ゆっくり、それまでしっかり休まないとだね」
京太郎「……はい」コクリ
二人が部屋から出ていく
トシ「……明確に全国に広がる前に、なんとかしないと、だねぇ」フゥ
73: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 15:21:58.12 ID:0daSruSx0
―――【特異課施設:京太郎の部屋】
部屋に入った京太郎が、背を伸ばした
徒歩10分の道のりでコンビニまで行って買ってきた紙パックの飲み物にストローを差す
京太郎「みんな、行方不明……きっと、咲も」
幼馴染を思い浮かべる
数々の出来事、この夏での仲間たちとの……
咲と、麻雀部の者達と、あの―――
京太郎「っ」
燻るような感覚
ベリアル『ハッ……』
京太郎「なにがおもしろいんっすか?」
ベリアル『さぁな』
投げやるような言葉に、京太郎は顔をしかめた
ベッドに体を投げて自らの手を真上に向ける
今朝見えたのはなんだったのかと思い出す
ベリアルの白銀の指先でなく、黒い爪
京太郎「俺は、どうすればいいんだ」
ベリアル『振りかかる火の粉全部、吹き飛ばしゃ良いんだよ』
京太郎「爆風消化ってレベルじゃないっすね」ハハッ
ベリアル『ああ、それで見えた火の元を……叩き潰す、だろ?』
その言葉に、頷く
言葉こそ粗暴、しかし言っていることに間違いを感じない
やることは一致している
自分とベリアル、今はまだ、相棒なのだ……
74: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 15:30:18.12 ID:0daSruSx0
第2話【雀士で戦士】 END
82: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 21:37:47.02 ID:7wrwALsG0
3、桃子か佳織が起きるまで待つ
83: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 21:48:40.71 ID:7wrwALsG0
あれから五日が経った
京太郎はと言えば、家に帰って荷物を取って来たり寝たり
少し運動したり、ベリアルやはやり、それに裕子と話をしたり
―――戦ったり、の日々である
森林地帯。ここもまた精神世界
二足歩行の怪獣、シルバゴン
京太郎・ベリアル『デスシウムリッパー!』
水平に腕を振るえば放たれる斬撃
それが真っ直ぐに―――シルバゴンの首を落とした
ベリアル「……ハッ!」
そして白銀の巨人、ベリアルは空へと消えていく
84: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 22:00:32.90 ID:7wrwALsG0
―――【特異課施設:作戦室】
ドアが開いて、京太郎が入ってくる
肩をぐるぐる回しながら、欠伸を噛み殺す
京太郎「戻りました~」
裕子「あ、お疲れ」
トシ「お疲れさん」
京太郎「うぃっす」
軽く返事をして、ググーッと体を伸ばした
京太郎「あれ、トシさん三日ぶりです……てか怪獣倒した時ぐらいしか来ないじゃないっすか」
トシ「これでも忙しいの」
裕子「今回は風越の麻雀部生徒だったみたいね」
京太郎「はい、詳しくは知りませんけど
そう言う京太郎に裕子も『レギュラーメンバーじゃない』ということを伝える
知っている顔ばかりがこうなるものと思っていた京太郎だったが、三日前の“戦い”でも知らない他校の生徒だったことを思いだす
京太郎「ここ二回とも余裕でしたけどね」
トシ「麻雀の腕も能力も、妹尾や東横と比べれば……だからね」
京太郎「不思議なもんですね。それで怪獣の強さが変わるなんて」
そんな言葉に、裕子は苦笑する
裕子「こっちから見てる分には麻雀してるようにしか見えないけれど」
京太郎「そっすよね……」
トシ「それとメダルとの相性もそれほど良くないんだろう」
京太郎「そういうもんっすか?」
トシ「そういうもんさ」
85: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 22:10:40.47 ID:7wrwALsG0
さらに、ドアが開いて入ってくるのははやり
スーツ姿で、身体を伸ばしながら
見慣れたそんなはやりを前に、京太郎は頷く
京太郎「お疲れさんです」
ベリアル『アイツは麻雀打ってただけだろ』
京太郎「そんなこと言わない」
裕子「え?」
京太郎「ああいやなんでも!」
未だに裕子は、京太郎の中に“ウルトラマン”がいることを知らない
はやり「……お疲れ様だね、京ちゃんも」
京太郎「うっす」フッ
トシ「仲良くて結構」
はやり「まぁバディですし?」
トシ「あんたと京ちゃんでバディ・ゴーと」
京太郎「ボケました?」
トシ「どっちの意味か知らないけど、場合によってはぶつよ」
京太郎「すみません」メソラシ
謝って視線を逸らすと、丁度裕子と眼が合う
裕子がハッとしてポンと手の平を拳で叩く
京太郎「?」
裕子「妹尾さんと東横さんが起きました」
京太郎「……えっ!?」
はやり「はやっ! 早く言ってよ!」
トシ「それじゃ、行くかね」
86: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 22:23:02.83 ID:7wrwALsG0
第3話【連続車両失踪事件】
87: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 22:30:58.91 ID:7wrwALsG0
―――【特異課施設:休憩所】
丸テーブルがいくつも置かれた場所
その一つのテーブルを囲むようにいる京太郎、はやり、裕子、トシ
そして……
桃子「えっと……」
佳織「そのぉ……」
東横桃子と妹尾佳織の二人
入院患者のような服を着ている二人の前に、京太郎は冷静さを保つのに精いっぱいだ
深くは語るまい……
ベリアル『こいつら、ただの人間だな』
京太郎『そりゃそうですよ、俺の知ってる二人です』
トシ「二人共別状ないようでなにより」
桃子「別状どころか、記憶も曖昧で」
佳織「私なんてほとんどないよぉ」
その方が幸せだとは言うまい、と京太郎は目を伏せる
桃子はともかく佳織はあんまりだ
トシはラッキーだと言っていたがどこがだ、と京太郎は心の中で悪態をつく
トシ「さてと……じゃあ説明を始めようか」
京太郎「どこまで?」
トシ「怪獣のメダルと、身に降りかかったことについてね……」
88: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 22:40:34.69 ID:7wrwALsG0
説明したのは、文字通りおおよそのことだ
最近このあたりで起きたこと、メダルを入れられたこと
それによって、麻雀をしてどういうことがおこったのかということ……
京太郎(さすがに、妹尾さんの怪獣化までは話さなかったけど……)
ベリアル『いずれわかることだろ』
京太郎『それでも、ですよ……今はね』
ベリアル『ふん』
苦笑する京太郎は佳織と桃子の二人に視線を向けた
どういう状況か、飲み込もうとしていはいる。いるのだが……
桃子「か、怪獣メダルで……」
佳織「雀士が大暴れで雀士が大変?」
トシ「まぁ、大体そんな感じ?」
京太郎「そんな感じですか?」
はやり「誰にメダルを入れられたとか、わからない?」
桃子「えーっと」
佳織「どうして、いつ……」
二人が頭を抱えている
それを見て、京太郎はトシの方に視線を移す
言いたいことは理解できたのか、トシは頷く
トシ「まぁ良いよ、その内思い出すだろ……」
はやり「そういうものかなー?」
トシ「そういうもんだよ」
裕子「それじゃ今日は解散で、妹尾さん東横さん、二人もゆっくり休んでね」
桃子「は、はい!」
佳織「え、えっと……お、お願い、します?」
はやりと裕子の二人が笑みを浮かべて頷いた
89: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 22:56:40.44 ID:1PSdxxpq0
それからしばらくして、京太郎は先ほどと同じく休憩所
一度、部屋に戻ったもやることもないとそこで麻雀のアプリをしている
はやりが一度通って、世間話をしたが忙しいのか去って行った
京太郎「んー」
ベリアル『おい、テレビを見ろ』
京太郎「あ、またっすか?」
点いていたテレビに映っているのはベリアル
あの日、ベムラーと戦う姿
ここ数日はずっとこうだが、それもまた仕方ないことだ
京太郎「よく雀士が消えてることだけでも隠せてるよなぁ」
ベリアル『ハッ、時間の問題だろ』
京太郎「ですけどね」
??「一人事っすか?」
京太郎「うおっ!?」ビクッ
突然の声に驚きながら首を声のした方へと向ける
京太郎「東横さん……」
桃子「私とかおりん先輩があんなことになってる内に、とんでもないことになってたんっすね」
京太郎「あ~、あはは、らしい」
桃子「怪獣にウルトラマン、なにがなんだか……」
京太郎「……俺もだよ」ハハハ
90: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 23:06:18.65 ID:1PSdxxpq0
桃子と二人で話す
そんな機会があるとは京太郎とて夢にも思っていなかった
不思議な感覚を覚えながらも、会話は止まらない
桃子「須賀さんも大変っすねー」
京太郎「まぁお互いだけど……先輩、だっけ?」
桃子「はい、どうやら学校に行ってたり雀荘に行ってたりで、足取りつかめてるって言ってたんで安心ですけど」
京太郎「そりゃなによりです」
ただ、純粋にその言葉を送る
だが桃子の方はというと、少しばかり眉をひそめる
桃子「あ~清澄はその」
京太郎「麻雀部、全員行方不明らしいから……まぁ内、和にやられてっけど」
桃子「じゃあそのかたき討ちのために?」
京太郎「……そんなつもりじゃないけど」
そんなつもりではないはずだ。だが、実際はどうなのだろうか?
街を、人々を守りたいから戦っているのではないのか?
悩む京太郎
京太郎「……」
??「あ、モモちゃんと須賀君」
桃子「かおりん先輩!」
京太郎「妹尾さん、大丈夫そうっすね」
佳織「あ、うん……聞いたよ。須賀君が助けてくれたって、ありがとう」ニコッ タユン
京太郎「あ、はい」
京太郎(めっちゃ 揺れるやんけー!)ヒャッホー
そして悩みが吹き飛ぶ京太郎だった
91: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 23:13:26.28 ID:1PSdxxpq0
―――深夜【道路】
長野の地を走る一台の車
真紅のRX-7が風を切って走る
そして、その運転席に座るのが……
はやり「いや~! やっぱ自分の車が一番だなー!」
自分が出した曲を流しながら走る
特異課の4WDとはまったく違う爽快感
はやり「ん~今度は京ちゃんも乗せてあげよー」
ピーピーピー
はやり「はやっ?」
車の速度を落として、改造して装備したカーナビに触れる
モニターに映るのは裕子の顔
眠そうな顔をして眼をこすっている
はやり「どしたの?」
裕子『ふぁ~えっと、その近くにぃ、特異反応がぁ』
はやり「寝てたね」
そう言いながら、カーナビの画面に表示された方へと走る
92: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 23:29:23.43 ID:1PSdxxpq0
反応をたどって車でやってきた
砂利道を走り、街灯も民家も少ないそこで止まる
倉庫のようなものがいくつもあるが、それだけだ
はやり「ん~……」
車を降りて、はやりは背を伸ばす
綺麗な空気を肺一杯に入れて深呼吸
そしてケータイを取り出して歩き出す
はやり「ライトつけないと危ないかぁ」
ケータイでライトをつけて車から離れて歩く
はやり(というか、一人って危ない気も……いやいや)
懐から取り出すのはメタリックな銃―――のようなもの
トシ曰く【ガッツハイパー】とかいう名前、円柱型のカートリッジをいくつか左手に持って歩く
ライトを点け目の前を照らしながら……
はやり「ちょっと怖いなぁ……」
ガシャンッ
はやり「はやぁっ!!?」
大きな音に驚いて、ケータイを落とす
少し地面が揺れる感覚を覚えるが、きっと動揺しているからだろう
ケータイを拾って周囲を見渡すが、なにもない
はやり「はやぁ、京ちゃんに来てもらえばよかったぁ」
そこで気づいて、後ろへと振り向く
はやり「え?」
さらに、周囲を見渡す
はやり「え……え?」
おかしい、そんなわけがない
93: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 23:33:32.37 ID:1PSdxxpq0
ライトが左右へと振られる
はやりの目もくるくる回っていく
はやり「は、は……は……」
倉庫しかない。そう、なかった
“倉庫しか”なかったのだ
はやり「は、はやりの車アァァァァァァァッ!!!!????」
94: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/03(金) 23:43:54.81 ID:1PSdxxpq0
―――朝【特異課施設:休憩所】
京太郎が作った朝御飯を、桃子と佳織の二人と食べる
昨日の話の流れからそうなったのだが二人共満足そうでなによりと頷く
京太郎「さて、今日は……」
裕子「あら須賀君」
京太郎「ああ裕子さん、どしたんですか?」
裕子「いやぁ、作戦室で寝ちゃって~異常反応があって~」
京太郎「へぇ~」
そう返事をしながらテレビへと視線を向ける
裕子も欠伸をしながらそちらを見て……なにかを思いだそうとしていた
桃子「え~この辺のニュースっすよ」
佳織「結構、この辺のニュースに敏感になってるみたいだね、みんな」
京太郎「車が一晩で何十台も消えた?」
裕子「なんか思い出しそう……」
京太郎「なんかって……あ、はやりさん」
裕子「そうそう! 瑞原さん!」
そう言った瞬間、止まる
京太郎は小首をかしげて裕子の背後の方を見ていた
裕子の脳内に昨夜のことが、鮮明に思い出される
京太郎「ってどうしたんっすか?」
はやり「……」
振り返る裕子
俯いているはやりは、少しばかりボロっとしているようにも見えた
この季節といえど数十キロも歩いたせいか汗もかくだろうし、髪もぼさっとしているし
裕子「ごごご、ごめんなさい」メソラシ
京太郎「はやりさんどうしたんっすか?」
そう言って、近づいていく京太郎
俯いていたはやりが顔を上げると―――その瞳には一杯の涙
ギョッとする京太郎
京太郎「どどど、どうしたんっすか!?」
はやり「は、はやりの車ぁぁぁぁ」ビエーン
京太郎「く、車……車ぁ!!?」
桃子「……なんか大変そうっすね」
佳織「だねー」
95: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 00:08:18.89 ID:hctyo9Wo0
―――【特異課施設:作戦室】
集まっているのは京太郎、トシ、はやり、裕子の四人
イツメンというやつである
超常現象だということで色々と情報を整理しようとも思ったのだが……
京太郎「えっと……」
はやり「うぅ~」エグエグ
京太郎「なんつーか、はい」
泣いているはやりの背中を撫でる
昨日キラキラの瞳で出かけて行ったはやりが脳裏を浮かぶ
哀れである
京太郎「えっと……怪獣ですか? リアルに」
トシ「だろうねぇ、想像つくけど」ハァ
京太郎「さすがっすね
裕子「どんな怪獣なんですか? 周囲のものを砂に分解するとか?」
ベリアル『そう言われると波動生命体を思い出す』
京太郎『知ってるんですか?』
ベリアル『まぁ今回は違うと思うがなぁ』
京太郎「?」
トシ「昨日、はやりが行ったとこの地図出せるかい?」
裕子「あ、はい」
キーボードを叩く裕子
モニターに映し出される上空からの映像
京太郎「倉庫が沢山……」
裕子「元、廃車ばかり置いてあった場所らしいけど」
はやり「なかったよ? 視えるのはシャッターばっかで……」
トシ「ん~なるほどね」
京太郎「なるほどって?」
トシ「倉庫かぁ」
97: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 00:18:42.07 ID:hctyo9Wo0
手を顎に当てて言うトシに、京太郎が小首をかしげた
京太郎「倉庫がなんかあるんですか?」
トシ「まぁーあくまで予想だけどね」
京太郎「予想? えっと、波動なんとかですか?」
その言葉に、トシが少し眉をひそめる
ベリアルからの知識だと理解したのだろう
トシ「メザードにしちゃ被害が少ないからその可能性は低い」
はやり「少なくないですぅ!」クワッ
トシ「あ~はいはい、そうだね、被害甚大甚大」
はやり「ばかにしてぇ~!」
トシ「京ちゃん、はやくはやり連れて調査! 裕子も!」
裕子「はい」コクリ
すぐに立ち上がった裕子に習って京太郎も立ち上がった
スーツ姿のはやりの背に手を添えて立たせる
京太郎「あ~行きましょうはやりさん」
はやり「ぶっころしてやるぅ~」
京太郎「牌のお姉さんがそんなこと言わない」
98: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 00:37:29.97 ID:hctyo9Wo0
―――【廃車場】
トシの指示に従って、京太郎たちは昨日の場所へとやってきた
消えた車の行方を追って、並びに怪獣探しだ
いざとなった時のために京太郎も来たわけなのだが……
京太郎「車ねぇ……」
ベリアル『……』
京太郎『ベリアルさん、心当たりあるんでしょ?』
ベリアル『あるが……まぁ一応周りは見といてやる』
頷く京太郎が、周囲へと視線を向ける
懐からトシから受け取った【ガッツハイパー】を手に、はやり、裕子と共に周囲を探っていく
それでもおかしいところなど見当たらないのだ
京太郎「え~倉庫の中とか、探りたくないんですけど」
はやり「昨日はやりはもっと怖い思いしたんだからねっ!」
裕子「あ~はいはい」
はやり「信じてない! 歩いて帰る羽目になったしぃ!」ナミダメ
京太郎「ま、まぁまぁ……」
はやり「じゃあ探索!」
京太郎「あーはい」コクリ
99: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 00:52:12.52 ID:SUs7zei00
警戒しつつ移動する京太郎たち
ガッツハイパーの射撃訓練は、京太郎とて一応していた
万が一のために、ではない……直近の“使命のため”だ
京太郎「ところで、なんですけど」
はやり「はや?」
京太郎「車、ですか?」
隣のはやりに聞くと、戸惑い気味に頷く
はやり「え、うん」
京太郎『ベリアルさん、車を消す怪獣っていうか……それに近しいのが、いるんですか?』
ベリアル『……ああ、食う、じゃねぇか、運ぶ怪獣がな』
車を運ぶ怪獣。どこに、など些細な問題だ
一番の問題、今ようやく京太郎が辿りつけそうなその問題
裕子がシャッターを遠隔操作で一つ一つ開いていく
京太郎「妹尾さん、東横さん……間に何人かいたけど、鶴賀は五人、そのうちの二人」
あの五人の仲の良さは咲たちからも聞いている
清澄と同じく人数ギリギリの団体戦出場、基本五人でしていた練習
インターハイが終わってからもだと聞いている
京太郎「……それで、車」
一度だけ、故あって乗せてもらった記憶があった
その答えに辿りつけそうな瞬間、地響きが鳴る
京太郎「蒲原智美?」
はやり「はやぁっ!!?」
裕子「そうきたかぁ」
少し離れた場所にある、倉庫が―――“立ち上がった”
裕子「あ、ああ……あーーーー!!」
はやり「倉庫が、倉庫が建ったーーー!!」
裕子「今うまうこと言った!」
京太郎「言ってる場合ですか!」
ベリアル『クレージーゴンか!』
101: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 01:02:47.47 ID:SUs7zei00
立ち上がった倉庫ことクレージーゴン
脚はあるが腕が、右が巨大で左が小さい
右は大きなクレーンのようにも見える……というよりクレーンなのだろう
はやり「て、撤退!」
裕子「はやく車へ!」
京太郎「っ」
走りながら、三人がガッツハイパーを撃つ
その攻撃にひるみもせずクレージーゴンは京太郎たちの方を向く
京太郎「二人はそのまま車へ!」
はやり「っ……わかった!」
裕子「え、はやりさん!?」
狼狽える裕子の腕を掴んで、はやりが4WDの車へと走る
京太郎はそんな裕子たちと離れながらガッツハイパーを撃ちつつ倉庫の影に隠れた
一応周囲を見渡してから頷く
京太郎「っし! いきますよベリアルさん!」
ベリアル『ハッ! 久しぶりのシャバだ……暴れさせろ!』
ゼットライザーのトリガーを引き、ゲートへと飛びこむ
102: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 01:15:52.82 ID:SUs7zei00
インナースペースと呼ばれる空間
外の世界とは流れる時間が違うそこで、京太郎は静かに息をつく
なにはともあれ、現実で戦うのはまだ二回目
京太郎「……」フゥ
ベリアル『怖気づいたか?』
京太郎「まさか、俺は自分の使命を果たすだけです……!」
ベリアル『使命、か……ハッ!』
笑うベリアルに、少しばかり気になることもある
だが、京太郎がやることとベリアルがやること、目的は違えど手段は同じ
ベリアル『まぁ良い、この不愉快な感覚を全て潰すまでは、付き合ってやる!』
京太郎「ベリアルさん、お願いします!」
頷いてウルトラアクセスカードを差し込む
ベリアル『さぁ、ぶっ潰してやる!』
京太郎「ベリアァル!」
108: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 21:29:09.71 ID:UFvEmmJL0
ロボット怪獣クレージーゴン
それがはやりと裕子の乗る4WDへと迫る
右腕の大きなクレーンを振りかぶったその瞬間―――
ベリアル「デヤァッ!」
クレージーゴン「―――!!?」
―――現れた白銀の巨人“ベリアル”が蹴りを放つ
後ろに下がって、そのまま倉庫を踏み潰すクレージーゴン
ベリアルは爪を立てた指先を開いたまま、両腕を構える
京太郎『はやりさんたちが逃げるまでの時間かせぎを!』
ベリアル『ハッ! 倒しゃ済む話だろ!』
京太郎『ごもっとも、でぇ!』
勢いよく飛び出したベリアルが腕を振るう
別に鋭い爪があるわけでもないが、斬撃が奔りクレージーゴンに確かなダメージを与える
はやり「うわぁっ!」
裕子「はやく! はやく!」
はやり「わかってるよぉ!」
即座にシフトをリバースに入れ、アクセルを踏み込む
勢いよくタイヤが回転して車が後ろへと下がっていく
その上を、行くベリアルが迫るクレージーゴンに両手で光弾を撃つ
ベリアル「ハァッ!」
109: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 21:44:39.85 ID:UFvEmmJL0
その光弾がクレージーゴンに直撃するも、そちらはあまり効いている様子はない
まだ車も離れておらず、突っ込んでくるクレージーゴンを避けるわけにもいかず両手で押さえようとする
ベリアル「グウァ!」
両腕でクレージーゴンの身体を押さえるも、大きな右腕がベリアルの身体を打つ
京太郎『ぐぅ! こっちが大人しくしてりゃ良い気になりやがってぇ!』
ベリアル『気張れよ!』
クレージーゴンへと、勢いよく蹴りを打ち込み素早く爪撃を三度撃ち込んだ
多少よろけるが大したダメージではなさそうだ
車が離れていくのを見て、身体を横へと転がして少しばかりの距離を取った
京太郎『ベリアルさん! ここらへんなら民家もない……存分にやりましょう!』
ベリアル『あろうがなかろうが、オレはどっちでも良いがなぁ!』
勢いよく飛びかかり、素早く爪撃を撃ちこむ
さらに流れるように拳を数度打ち込み、背後へとジャンプした
京太郎『痛って~! 硬っ、パンチはやめときましょ!』
ベリアル『クローで攻撃してもそんなダメージが通りそうにねぇな』
京太郎『くっ、こんな硬いのがいるなんてなぁ……』
110: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 21:57:23.47 ID:VCgdBPbf0
クレージーゴンの右腕が振るわれる
それがそのままベリアルの身体に打ち付けられた
吹き飛んだベリアルが倉庫を潰す
ベリアル「ガァアッ!」
京太郎『くっそが!』
ベリアル『クソ、こんな雑魚を相手に!』
融合しているせいか、それとも別の要因か
本来の力で戦えないベリアルが歯がゆさに悪態をつく
京太郎『つえぇ……最近の奴らと格が違うっ!』
膝をつくベリアルの、胸のカラータイマーが赤くなり点滅を始める
離れていく車の中で、はやりがそれを見ている
はやり「ッ!」
素早くガッツハイパーを取り出す
窓を開けると、裕子と目を合わせて頷く
二人で窓から身を乗り出してトリガーを引いた
クレージーゴン「―――ッ!!」
ダメージなど入っていないのだろうが、クレージーゴンはそちらを見る
頭部からビームが放たれた
はやり「ッ!」
車両はなんとかそのビームを回避するも、周囲の爆発の衝撃は凄まじいだろう
それでもクレージーゴンの敵意を釘付けにするためにはやりと裕子の二人は射撃を続ける
クレージーゴンははやりたちの方へと歩き出そうとしていた
はやり「今だよ! ベリアル!」
111: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 22:14:35.97 ID:3ez9bDKm0
ベリアルが立ち上がり、再び構えを取る
赤いカラータイマーは動ける限界が近いことを示していた
クレージーゴンは銃撃をするはやりのほうへと向かっていく
ベリアル『ハッ! 余計な真似しやがって』
京太郎『はやりさん! サンキューです!』
◆BGM:DREAM FIGHTER【http://www.youtube.com/watch?v=2bJEDgeuVtE
】
素早くクレージーゴンへと接近していくベリアル
クレージーゴンが、接近するベリアルに気づいて右腕を振るう
ベリアル「ハァッ!」
頭を下げて回避すると、素早くクローで右腕を攻撃する
大したダメージでないのはわかっていた
ベリアル『機械が相手なら良いのがある!』
京太郎『この距離ならなァ!』
右腕をクレージーゴンの身体に近づける
掌底を撃ちこむようにクレージーゴンへと掌を向けた
ベリアル「フハハハッ!」
掌から放たれる赤い雷が、クレージーゴンの全身へと流れる
狂ったように左右へと体を振るうクレージーゴンから、ベリアルが距離を取った
腹のシャッターが勢いよく開閉する
京太郎『これならば!』
ベリアル『ハッ、バンダ星人もお粗末なロボットを作るもんだぜ!』
112: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 22:23:38.86 ID:3ez9bDKm0
ベリアルが、両腕を構えた
右腕に赤い稲妻が奔る
ベリアル『こいつで決まりだ!』
京太郎『こいつでハコ割れだ!』
水平に構えた左腕を前に、垂直に構えた右腕を後ろに……
クレージーゴンを見据えて、ベリアルは必殺の光線を放つ
ベリアル・京太郎『デスシウム光線!!』
放たれた光線が真っ直ぐに、クレージーゴンの開いたシャッターへと奔る
光線はそのままクレージーゴンの背中から突き抜けて空へと消えた
ベリアル「……フンッ!」
光線が消えると、立ったベリアルが右腕を振るう
倒れたクレージーゴンが、その場で大爆発を起こした
それを見据えたベリアルが、両腕を空に、飛び上がる
ベリアル「ハァッ!」
そしてそのまま、ベリアルは空へと消えた
113: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 22:30:03.60 ID:3ez9bDKm0
車から降りたはやりと裕子の二人
爆散するクレージーゴンを見るはやりの瞳から、涙が流れる
はやり「……ローン、まだ残ってるのになぁ」ツゥー
裕子(哀れ……)
オーイ
裕子「え……あ、あれは!」
走ってくる姿が見えて、裕子の表情がパァッと明るくなった
京太郎「おーい!」ブンブン
裕子「須賀君……よかったぁ」ホッ
はやり「はやりの……」
京太郎「どこか怪我でも?」
裕子「大丈夫、気にしないであげて」
京太郎「あ、はい」
114: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 22:39:37.07 ID:3ez9bDKm0
その後、京太郎とはやりは車を裕子に任せてクレージーゴンの爆散した地点へと向かう
歩いている二人、炎もすっかり消えているようだった
ベリアル『見つけたぞ……』
京太郎「え、やっぱり……蒲原さん!」
倒れている少女を見つけてそちらへと走っていく京太郎
それに続いて、はやりも“蒲原智美”へと駆け寄る
京太郎「蒲原さん!」
ベリアル『嫌な感じが消えたな……おい小僧』
京太郎「あ……クレージーゴンのメダル」
傍に落ちていたその小さなメダルを拾うとホルダーに入れた
すぐに智美を抱き上げると、車の方へと歩き出す
はやり「お疲れ様……二人共」
京太郎「……うっす」フッ
ベリアル『ハッ、造作もなかったな』
京太郎『そうですか? まぁ、これからもそうであることを、願いますよ』
115: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 22:58:32.62 ID:3ez9bDKm0
―――【特異課施設:作戦室】
部屋に入るのは京太郎、はやりの二人
裕子は蒲原智美の検査らしい
桃子と佳織の二人も付き添っているそうだ
京太郎「ただいまです」
トシ「おかえり」
はやり「はぁ~」
トシ「……京ちゃん、良い感じだねぇ。戻ってくる時とか完璧」
京太郎「どゆこと?」
はやり「さぁ?」
まぁトシがわけのわからない話なんて、今更だ
ホルダーに入っているメダルを取り出す
ベムラー・ネロンガ・ガギ・シルバゴン、そして今回のクレージーゴン
京太郎「トシさん……次は」
トシ「ああ、行方不明なのは津山睦月だね」
京太郎「津山さん……」
トシ「ってことで、新しい協力者がきたよ」
京太郎「なにが『ってことで』なんですか?」
はやり「まぁまぁ」
扉が開き、誰かが入ってきた
116: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 23:07:00.97 ID:3ez9bDKm0
ウィーン
京太郎「ん?」
?「お邪魔しまーす」
トシ「いらっしゃい」
入ってきたのは長い茶髪の女性
どこかおっとりとした雰囲気のようにも見える
はやり「慕ちゃん!」
京太郎「し、の?」
慕「白築慕です……よろしくね?」ニコリ
117: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 23:21:39.88 ID:3ez9bDKm0
その後、京太郎と慕は軽く挨拶をしあった
それだけで解散となったのはトシの一声があったからだ
詳しくは後日、ということらしいが……
―――【特異課施設:休憩所】
京太郎「どうなるかなぁ」
ベリアル『ハッ! 俺もお前も、やることは戦うことだけだろ?』
京太郎「……人探しぐらい、しますよ」
苦笑していう京太郎
そんな返しにベリアルはなにを言うでもないが、たぶん笑ってるのだろうと思う
なにはともあれ、ベリアルの言うとおり自分がやれることは戦うことだ
京太郎「ま、なんでも良いけど……人々を守るため、なら」
ベリアル『小僧お前……』
京太郎「ん? なんっすか?」
ベリアル『……さてなぁ』
◆誰か来た
1、東横桃子
2、妹尾佳織
3、佐藤裕子
◇安価1↓から~ 五分間でコンマ最高値の選択肢
118: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/09/04(土) 23:23:35.75 ID:ElXMvTdl0
1
120: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 23:33:58.89 ID:3ez9bDKm0
(選択肢によってはガギ対シルバゴンがあったりした
1、東横桃子
桃子「あれ、須賀さんじゃないっすか」
京太郎「あ、東横さん……」
別に珍しくもない。最近は特に
京太郎の対面に座ると、テレビへと視線を向ける
やはりやっているのは今日のクレージーゴンとベリアルの戦い
桃子「須賀さんもここいたんっすよね」
京太郎「ああ、銃撃してたぞ一応……囮になったり?」
桃子「なんで、命をかけれるんですか? こわくないんっすか?」
その言葉に、ふと京太郎は考えた
恐いと考えたことが無かった
戦える力があるからだろうか? ベリアルが一緒にいるからだろうか?
京太郎「……人々を、守るためだから」
ベリアル『ハッ、反吐が出る』
頭の中に響く声に、苦笑する
桃子「凄いっすね須賀さんは……私には無理っす」
京太郎「……でも」
桃子「?」
京太郎「死ぬのが……死ぬのが怖くないわけないだろ?」
その言葉に、一瞬目を見開く桃子だったがすぐに微笑して頷く
1、東横桃子
桃子「あれ、須賀さんじゃないっすか」
京太郎「あ、東横さん……」
別に珍しくもない。最近は特に
京太郎の対面に座ると、テレビへと視線を向ける
やはりやっているのは今日のクレージーゴンとベリアルの戦い
桃子「須賀さんもここいたんっすよね」
京太郎「ああ、銃撃してたぞ一応……囮になったり?」
桃子「なんで、命をかけれるんですか? こわくないんっすか?」
その言葉に、ふと京太郎は考えた
恐いと考えたことが無かった
戦える力があるからだろうか? ベリアルが一緒にいるからだろうか?
京太郎「……人々を、守るためだから」
ベリアル『ハッ、反吐が出る』
頭の中に響く声に、苦笑する
桃子「凄いっすね須賀さんは……私には無理っす」
京太郎「……でも」
桃子「?」
京太郎「死ぬのが……死ぬのが怖くないわけないだろ?」
その言葉に、一瞬目を見開く桃子だったがすぐに微笑して頷く
121: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 23:41:35.30 ID:a+8RQ6DD0
怪獣を倒す。自分だけにしかできないことだ
それに強制されているつもりはない
だが、戦わなければ後ろの人間の命が危ないのだ
京太郎「……人が好きだから、じゃダメか?」
桃子「……立派っすね」クスッ
京太郎「そんなこと、ないよ」
テレビの方を見て笑う
報道は『敵か味方か、光の巨人』と報道をしていた
京太郎「加治木さんに、会いたくなったりしない?」
桃子「まだ、安全が確実じゃないらしいっすから、私たちの周り」
京太郎「そっか、大変だなお互い」ハハッ
笑う京太郎
少しばかり、頬を赤らめて桃子が視線を逸らす
すぐに意を決したようにうなずいて口を開く
桃子「……京太郎さん、ほどじゃないっす」
京太郎「……そんなことないさ、桃子」
桃子「モモで、良いっすよ」フフッ
京太郎「ん」フッ
他愛のない話が続く
ちょっとした交流だが、こんな事件が起きなければなかった交流なのだろう
不謹慎ながら京太郎は悪くない、と思ってしまった
122: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/04(土) 23:50:46.87 ID:lREGgiqO0
―――翌朝【特異課施設:休憩所】
京太郎「たぶん、そろそろ津山さん探し、だよな……きっと」
はやり「どしたの?」
京太郎「ああいや、大したことじゃ……」
わざわざはやりに話すことでもない
桃子も佳織も同じ気持ち、いやもっと強い気持ちなのだろうから
京太郎「そういや、車は大丈夫なんっすか?」
はやり「ふふ~ん、実は一台、隣町二丁目の中古車ショップで良いレトロ車が」
ピリリリリリ
裕子「大変です! 隣町二丁目で怪獣が出現! 暴れ出しました!」
京太郎「えー……」チラッ
はやり「」シロメ
京太郎「……えー」
第3話【連続車両失踪事件】 END
124: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 00:22:40.39 ID:hFMCnCX60
―――【特異課施設:作戦室】
あれから数日が経った
別段変わったことはなく、蒲原智美も未だ眼を覚ましていない
怪獣に覚醒した者は目覚めが遅いのだろうか?
京太郎「ん~」
はやり「智美ちゃんの眼がさめればなにかわかるかなぁ?」
京太郎「そうだと良いけど……」
だが、あの日から手に入れたメダルは二つ
隣町で暴れたアーストロン、そして麻雀で倒した他校の生徒から出たダイゲルン
すっかり戦い慣れもしたものでダイゲルンとの戦いはカラータイマーが鳴る前に決着がついた
京太郎「まぁやっぱり……」
ベリアル『相性の問題だろうな』
京太郎「ですよねぇ」
はやり「またベリアルとお話し?」
ベリアル『様をつけろと言っておけ』
京太郎『言いませんよ』
ウィーン
京太郎「あ、トシさんと……白築さん?」
慕「こんにちは京太郎くん」
トシ「ちょっと困ったことになってね」
京太郎「困ったこと、ですか?」
トシ「……まぁ、二者択一ってやつだ」
125: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 00:32:40.36 ID:hFMCnCX60
京太郎「どういうことっすか?」
トシ「ちょっと鶴賀で妙な反応があってね」
京太郎「鶴賀って、加治木さんがいる!?」
京太郎の言葉に頷くトシ
それと反対に慕の方はというと少し迷った表情をしている
そんな彼女を見てはやりは少しばかり首をかしげた
はやり「どうしたの慕ちゃん?」
慕「えっと、それと同時になんだけど……先日から変な反応が会った場所があって」
はやり「変な反応?」
慕「うん、ちょっとした洞窟の中だったんだけど……巨大な石像があって、それが」
京太郎「どっち行くかって話ですか?」
トシ「そういうこと、片方にはやり片方に京ちゃんだね」
顔をしかめる京太郎ははやりの方を向く
はやりも悩んだような表情をしているが、それもそうだ
どちらかが正解なんていうことでもないように見える
はやり「京ちゃんはどっちに行きたい?」
京太郎「え~」
トシ「まぁなんでも良いけど」
京太郎「投げやりな……」
京太郎(鶴賀も気になるけど、石像の方も気になる)
ベリアル『ハッ、暴れられるならなんでも良いじゃねぇか』
京太郎『えー』
◆どちらに向かう?
1、石像の調査同行
2、鶴賀の異変調査
◇
126: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 00:39:10.11 ID:hFMCnCX60
◆どちらに向かう?
1、石像の調査同行
2、鶴賀の異変調査
◇安価1↓から~ 5分間でコンマ最高値の選択肢
127: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/09/05(日) 00:42:20.49 ID:RC2mX1930
1
安価早くてビビった
もしかしてティガ出るのか?
安価早くてビビった
もしかしてティガ出るのか?
128: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 00:52:06.51 ID:hFMCnCX60
1、石像の調査同行
一つ頷くと、京太郎は慕に視線を向けた
京太郎「白築さんに同行します」
慕「ありがとう……はやりちゃん」
はやり「ん、私は大丈夫。ただの調査だしね、怪獣が出ても……きっとウルトラマンがなんとかしてくれるでしょ」
そんな言葉に、慕は苦笑した
加治木ゆみは学園にいまだに通っていると情報が入っているし問題ないだろう
津山睦月がメダルを入れられて、ゆみを狙っているとかだとしたらむしろはやりでも十分対処可能である
はやり「そっちは任せたよ京ちゃん」
京太郎「ラジャーです。はやりさん」フッ
トシ「さて、それじゃあさっそく行ってきな」
京太郎「行きましょう、白築さん」
慕「うん」フフッ
一つ頷くと、京太郎は慕に視線を向けた
京太郎「白築さんに同行します」
慕「ありがとう……はやりちゃん」
はやり「ん、私は大丈夫。ただの調査だしね、怪獣が出ても……きっとウルトラマンがなんとかしてくれるでしょ」
そんな言葉に、慕は苦笑した
加治木ゆみは学園にいまだに通っていると情報が入っているし問題ないだろう
津山睦月がメダルを入れられて、ゆみを狙っているとかだとしたらむしろはやりでも十分対処可能である
はやり「そっちは任せたよ京ちゃん」
京太郎「ラジャーです。はやりさん」フッ
トシ「さて、それじゃあさっそく行ってきな」
京太郎「行きましょう、白築さん」
慕「うん」フフッ
129: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 01:03:19.12 ID:hFMCnCX60
特異課の基地を慕の運転するジープで出る
助手席には京太郎、後部座席には色々と調査に必要なのか機材が積んであった
はやりに習って、トシが用意したスーツ姿の京太郎
ベリアル『悪くないな』
京太郎『ベリアルさんが褒めてくれるなんて珍しい……』
ベリアル『ハッ、褒めたつもりはねぇがな』
慕「須賀君は」
京太郎「え?」
慕「須賀君はどうして、戦ってるの? まだ学生、子供なのに……」
そんな疑問に、京太郎は視線を慕に向けた
横顔に少しばかりの哀愁を感じるのは大人としての責任か……
似たような表情を、はやりで見た記憶がある
慕「大人に任せておいて良いんだよ?」
京太郎「それを言うために、わざわざ俺を?」
慕「まぁ、半分ね……ただそれでも、きっと須賀君は頼りになるって感じちゃってるんだよね」
京太郎「……そりゃ男冥利に尽きる話です」フッ
そう言って、懐にあるゼットライザーに視線を移す
京太郎(俺にしかできないこと、それがあるから……とは言えないか)
ベリアルのことを知らない者たちからすれば、確かに京太郎がここにいる必要性はないのだ
麻雀で勝つということだけであれば、はやりや白築慕がいる
京太郎「やりたいって、思ったんですよ。ただきっと、白築さんと同じです」
慕「……そっか、それじゃあ頼りにしちゃおうかな」
京太郎「是非」
慕「でも危なくなったら逃げるんだよ?」
京太郎「……了解です」フッ
130: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 01:14:48.06 ID:hFMCnCX60
車はそのまま山中へと入る
雑に手入れされた道を行き、ある程度の場所で止まった
京太郎と慕の二人が車を出て、荷物を持ち歩き出す
慕「でも……怪獣とか、驚きだよね」
京太郎「そうですね」
慕「メダルを撒いた相手、早く見つけないと……」
京太郎「そう、ですね」
山を登って行き、次に下る
洞窟のような道を行く
階段のようになっている通路、壁には電飾がついていた
京太郎「明るいですね」
慕「一応、特異課の研究員の人たちも入ってるからね」
京太郎「なるほど、ちゃんとスタッフの人いたんですね」
慕「あー熊倉さんの基地、立ち寄る人少ないからね」
どんどんと降りていくと、開けた空洞へと出る
そこにたどり着いて、そこにある石像を見上げて、京太郎は固まった
灰色の人型石像
京太郎「これは……っ」
慕「驚いたでしょ?」
京太郎「―――ウルトラマン」
その石像は、ウルトラマンと形容するほかない姿をしていた
131: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 01:27:38.64 ID:hFMCnCX60
そこに立つ石像の、なるべく傍へと近寄る京太郎
周囲には沢山の研究員がおり、計器で色々と調べているようだった
二人は持ってきた機材を研究員たちに渡し、並んで石像を見上げる
慕「京太郎くんは、何度も近くでウルトラマンを見てるんだよね?」
京太郎「まぁ、はい」コクリ
慕「どう、その目から見て……」
京太郎「姿かたちは全然違うけど、それでも……これはウルトラマンです」
その言葉に、慕が頷く
ベリアルのことは、良くは聞いていない
おそらく聞かれたくないのだろうということは、察しているからだ
だが―――
京太郎『ベリアルさんは……一体、どこから来たんですか?』
ベリアル『ハッ、地獄の底だ』
京太郎『真面目に答えてくださいよぉ』
ベリアル『……にしても、ティガの石像か』
そんな言葉に、京太郎はつぶやく
京太郎「“ティガの石像”……?」
慕「え?」
京太郎「あ、いや……そんな言葉が、思い浮かんで」
慕「ティガの石像、か……いいね。さしずめここは、ティガの地だ」
笑う慕の隣で、京太郎は黙って石像を見上げている
ネクタイに指を突っ込んで少し緩めつつ京太郎は腕時計型端末を見て時間を確認した
慕「ちょっと歩けばコンビニあるよ?」
京太郎「こんな山中に?」
慕「まぁ、対した山じゃないから、道に沿って歩いてけば」
京太郎「……まぁとりあえず、向かってみます」
慕「行ってらっしゃい、気を付けてね」
京太郎「はい」
132: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 01:39:58.65 ID:hFMCnCX60
―――【コンビニ】
10分ほど歩いて辿り着いたコンビニ
京太郎は慕に頼まれたものと、自身の昼食を買って出た
店前に置いてあったベンチに座ってパンをかじっている
京太郎『ウルトラマンは、この星にもいるんですか?』
ベリアル『……地球が生んだウルトラマンも確かにいるがなぁ、ティガ、あれはそういうもんとは違う』
京太郎『どういうことですか?』
ベリアル『ティガのガワだ。ありゃな』
京太郎「……ガワ?」
パンをかじってモグモグと口を動かす
9月のほどよく涼しい空気が心地良い
地面を見て考える……ウルトラマン、怪獣、そして仲間たち……
???「須賀君、よね?」
京太郎「へ?」
声がして顔を上げる
噂をすればなんとやら、仲間―――の仲間
京太郎「……福路、さん?」
美穂子「や、やっぱり須賀君!」
彼の数少ない知り合いの一人
そして彼の仲間、竹井久の友人である福路美穂子がそこにはいた
青い右目は、相変わらず閉じられている
京太郎「……お久し、ぶりです」
美穂子「ええ、久しぶり」ニコリ
133: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 01:42:56.55 ID:hFMCnCX60
第4話【光を継ぐ者】
137: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 21:52:34.70 ID:RUvJ9HOT0
風越女子麻雀部部長、福路美穂子
かつて憧れていたところもあったが、今の京太郎としてはそう高揚するものでもない
ただ綺麗な少女、そんな彼女が目の前で自分に声をかけてきた
京太郎(……嘘、やっぱちょっとテンション上がる)
美穂子「その、隣良い?」
京太郎「ああどうぞ」
京太郎(嘘、めっちゃテンション上がる)
顔に出さないようにしつつ、京太郎はベンチの座る位置を少しずらす
隣に、そっと腰を下ろす美穂子
その表情は憂いを帯びている
京太郎「……その、風越の」
美穂子「あ、ええ……そうね、そっちも、よね」
京太郎「はい」コクリ
咲、優希、和、まこ、久
誰一人として未だ、見つかっていないのだ
トシから聞いた情報によると、風越はレギュラーメンバーは福路美穂子以外、全員行方不明
京太郎が倒した風越の生徒はレギュラーではない
美穂子「なぜだか、ニュースとかでもやってないし……」
京太郎「福路さん……」
美穂子「華菜、みんなっ……」フルフル
京太郎(なんとか、しないとなぁ……ここも)
138: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 21:59:34.53 ID:RUvJ9HOT0
俯いていた美穂子が、目元を拭って顔を上げる
なるべく明るく振舞おうと笑顔を浮かべるが、どこかぎこちない
美穂子「ごめんね、須賀君も大変なのに……」
京太郎「いや、俺は全然……」
美穂子「どうして私たちだけ、無事なのかしら」
自分は無事では済まなかったが、それを言うわけにもいかない
しかし、麻雀の力が強い者が襲われている中、どうして美穂子が無事だったのかわからなかった
京太郎「……たまたま、なんですかね」
美穂子「そう、なのかしら……」
京太郎「俺の場合は、仲間と認識されてなかったのかも、なんて」ハハッ
美穂子「そ、そんなことないっ! だって久はっ」
京太郎「じょ、冗談ですよ」
美穂子「あっ……ご、ごめんね?」
京太郎「いや、俺もちょっとここで言うべきことじゃなかったかも」ハハハ
そう言って立ち上がると、背を伸ばす
そろそろ戻らなくては慕も心配するかもしれない
京太郎を見上げる美穂子は、少しばかり驚いた表情を浮かべている
美穂子「……」
京太郎「福路さん?」
美穂子「あ、ごめんね……どうして、スーツなの?」
京太郎「う゛っ……ま、まぁ色々あって」
美穂子「?」
139: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 22:12:08.31 ID:RUvJ9HOT0
京太郎「と、とりあえず福路さん、その……」
ハッと気づいて、胸ポケットから出したのは名刺ケース
入っているのは無論名刺のようなもの
念のためにとトシに渡されていたが役に立つと思わなかった
京太郎「ど、どうぞ」
美穂子「え、え? 名刺? えっと日本政府公認、特異災害……」
京太郎「見るの名前と電話番号だけで良いんで、はい」
そもそもこんなもの持ち歩いているなんてヤバい奴なのだが、致し方ない
とりあえず連絡先が書いてあるものだけが必要だったのだ
京太郎「……一応、今回の事件解決に協力してるっていうか、協力者として?」
美穂子「え、そうなの? じゃ、じゃあ華菜たちは」
京太郎「そこです。一応、見かけたら話しかけたり近づいたりしないで、連絡をください」
美穂子「一体どういう」
京太郎「お願いです! ね! 約束ってことで!」
美穂子「え、あ……え、ええ……?」
半場強制的に頷かせると、京太郎は立ち上がる
京太郎「それじゃこれで!」
美穂子「え、須賀君っ!」
京太郎「約束しましたからねー!」
自分でも怪しい挙動をしているなと思いつつ、美穂子から遠ざかって慕のいる方へと向かっていく
140: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 22:22:55.43 ID:RUvJ9HOT0
コンビニからしばらく歩いて、元の山道へと戻ってくる京太郎
森の中に無理矢理作られた駐車場のような場所へとたどり着くと車が何台も止まっている
研究員たちのものだろう
京太郎「えっと、こっちか……」
ベリアル『迷子なんて笑えねぇからな?』
京太郎「わかってますよぉ」
そこからは慕と歩いた道を思いだしつつ、歩く
すぐに洞窟のような場所を見つけて、京太郎は中へと入って行った
物陰から、顔を出すのは福路美穂子
手に持っているのは、ビニール袋
単純に京太郎の忘れものを持って追いかけてきただけなのだが……
美穂子「……悪い子だ、私」
声をかければ良いものを、普通にストーキングしてしまっている
開かれた右目、相手の一挙一動を見逃さないその眼
ガチのストーキング
美穂子「うっ……で、でも、きっと華菜たちに関することが」
自分を納得させて頷くと、ゆっくりと京太郎の後を追い洞窟へと入っていく
141: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 22:40:05.31 ID:RUvJ9HOT0
京太郎は、洞窟の入り口を通って大きな空洞へと入る
そこには変わらず研究員たち、そしてティガの像
やはり圧倒されるな、と思いつつ慕を見つけて近づいていく
京太郎「戻りましたー」
慕「あ、お帰り……荷物は?」
京太郎「え、あ……忘れた」
慕「なにしに行ったの?」ジト
京太郎「えーっと」メソラシ
戻っても今更、しょうがないだろう
どうするかなぁと思いつつ慕を見るが、クスリと笑った
慕「良いよ別に、ついでだからね……」
京太郎「すみません」
慕「ほんと大丈夫、っていうかなにかあった?」
京太郎「え?」
慕「んー、なんとなくだけど」
京太郎「えー」
慕「あはは」
142: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 22:49:36.37 ID:RUvJ9HOT0
洞窟の入り口から、一本道
美穂子は隠れる場所も無いのでそのまま進んでいく
足場が悪いものの、電飾に照らされた足場を見てゆっくり
「誰だ!」
美穂子「ひゃっ!?」
そこにいたのは警備員らしく男性
持っているのは―――銃
「何者だ!」
必死に見えるのは、色々な情報を聞いているからだろう
女子高生雀士がおもに怪獣メダルの宿主になっていること、怪獣に覚醒すること
美穂子「わ、私っ……こ、これ!」
バッと出したのは先ほどもらった京太郎の“名刺”である
「こ、これ……須賀京太郎の名刺。あの特権持ちの?」
美穂子「とっけ?」
「ああいえ、協力者の方ですか?」
美穂子「あ、はい……その、か、風越の生徒について」
「なるほど、ではどうぞここから道が分かれていたりするんでご案内します」
美穂子「……お、お願いします」
そのまま、美穂子は警備員の後をついていく
143: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 23:10:53.46 ID:ckC9uJ0E0
空洞、ティガの像の前に立つ京太郎と慕
慕の持った端末のディスプレイに表示されている映像を横から見る
そんな京太郎に気づき、慕がそっと見やすいように傾けた
京太郎「……つまり?」
慕「なにもわからないって」
京太郎「そっかぁ」
ベリアル『ここより科学が発達した宇宙でも、完全に解析なんてできないだろうな』
京太郎『じゃあ、ここじゃあ……』
ベリアル『10年ぐらい経てばちったぁ変わるんじゃなぇか? それまでこの地球が人間のものだったら、な』
京太郎「嫌なことを……」
そう言って、ティガの像を再び見上げる
瞬間―――警備員の声が響く
「誰だ!」
「なんだこいつ!?」
そちらを見る京太郎
既に、数人の警備員が地面を転がっていた
奔る影が、京太郎の前に現れる
京太郎「ッ!」
ベリアル『小僧!』
京太郎「わかってんよ!」
すぐに拳を振るうが、その影は上に跳ぶ
京太郎の上を飛び越えて、反対側に回った影
素早く回転して脚を後ろへと振るう
京太郎「ッ!」
影は“両腕”でその蹴りを凌ぐも、勢いだけは殺しきれずに吹き飛ぶ
跳んだ影はそのまま、ティガの像、その前に着地する
着地したその影の正体を見て、京太郎は驚愕に眼を見開く
京太郎「なっ!?」
慕「え、あの人って……!」
京太郎「な、なにやってんです!」
わなわなとふるわせた拳を、強く握る
京太郎「部長ォ!」
久「……」
144: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/05(日) 23:51:36.49 ID:ckC9uJ0E0
叫ぶ京太郎の視線の先の久が、出ている鼻血を拭った
久「所詮は人間の体か」
京太郎「ッ!」
素早くガッツハイパーを向ける慕と京太郎の二人
トリガーに指をかけるも、その銃身も指もブレる
ベリアル『あいつは人間じゃねぇ!』
京太郎「人の部長の体、勝手に使いやがって!」
久「ふん、ティガの像……人間の体を使ってもダメか」
そう言って息をつく
久「私はレギュラン星人」
京太郎「異星人!!?」
ベリアル『悪質宇宙人か!』
京太郎『通り名最悪っすね』
久「ならば!」
そう言って指を鳴らす久、それと共に周囲の警備員たちの銃が弾き飛ばされる
影が行ったり来たり、そしてそれが京太郎に触れようとした瞬間―――
京太郎「チャアッ!」
―――蹴りを放つ。その直撃により影は吹き飛び久の隣へ
京太郎「なっ!?」
慕「あれは……」
京太郎「池田、華菜……」
久と同じく、身体が着いて行かないのか鼻血を出した華菜が右手で鼻を拭う
さらにダラン、と下がっている左腕を掴み動かすとゴキ、という音がした
左腕を動かして、そのまま京太郎を見る
久「良い知能を持っている。兵器にされていただけあるな……」
京太郎「部長の口で余計なことをっ!」
ベリアル『あいつ、メダルじゃねぇな』
京太郎「メダルじゃないって!」
久「その通り、私は私の技術でこの体を使っている!」
京太郎「汚い技術でうちの部長にっ!」ギリッ
145: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/06(月) 00:07:06.13 ID:oTuCkeB90
舌打ちをする京太郎だが、ガッツイハイパーのトリガーを引くことなどできない
だが相手もティガの像をどうすることもできないだろう
京太郎(膠着状態、か?)
その瞬間、聞き覚えのある声が響く
???「久、華菜!」
京太郎「福路さんか!」
チラッと後ろを見て言う
それに否定の言葉はなく、走ってくると京太郎の隣に立つ
美穂子「どうして、二人とも! なにがっ!」
京太郎「あれは中身が違う!」
美穂子「えっ」
京太郎「部長と、池田さんを返せ!」
久「……まぁ良い、ならばこの像もろとも消えろォ!」
指を鳴らす久
その瞬間、地が揺れ、咆哮が聞こえた
それは間違いなく“怪獣の声”だ
京太郎「これはっ!」
久「ハハハハハ!」
笑いながら、揺れる地面をもろともせず走り去る久と華菜
その動きは人間を逸している
やはり体を無理矢理使っているようで京太郎が歯ぎしりをするが、どうにかできるレベルでもない
京太郎「怪獣っ、慕さん! みんなを逃がしましょう!」
慕「あ、うん!」
京太郎「福路さんも、手伝ってください!」
美穂子「え……は、はい!」
146: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/06(月) 00:27:39.27 ID:1cipy6df0
警備員や研究員たちを立ち上がらせていく慕と美穂子
だが京太郎は素早くガッツハイパーのカートリッジを確認して頷く
京太郎「俺は、たぶん出て来てる怪獣を、囮になって遠ざけます!」
慕「っ! そんな!」
京太郎「お願いします。みんなのこと!」
美穂子「まって須賀君!」
京太郎「……!」
笑みを浮かべて頷くと、京太郎は出口へと走っていく
地面を伝わる振動はどんどんと強くなっていくのがわかる
本当に“怪獣”がいるのだろう
美穂子「須賀くん!」
慕「……やろう。福路さんお願い! あの子のやってることを無駄にできない!」
美穂子「そんなっ」
慕「今はそういう世界なだよ。やらなきゃ!」
美穂子「っ……」
慕の言葉に従う美穂子
しかしその表情には焦り
京太郎を心底心配している証拠
慕(どうしてっ……!)
147: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/06(月) 00:54:07.25 ID:1cipy6df0
外へと出た京太郎が、勢いよく森を走っていく
向上した身体能力、それらを駆使して木々の間を縫って道なき道を行き、道路へと出た
何号線かは忘れた国道、そこに飛び出てから足音のする方へと視線を向けた
京太郎「怪獣!」
両手が鎌となっている二足歩行の怪獣
ベリアル『ほう、宇宙戦闘獣コッヴか』
京太郎「……なんでも良い。あいつを倒す!」
ベリアル『ハッ! わかりやすくて良いじゃねぇか!』
トリガーを引いて、目の前のゲートへと飛びこむ
インナースペースに立つ京太郎
ウルトラアクセスカードを差し込んだ
『キョウタロウ・アクセスグランテッド』
ベリアル「ぶっ潰す!」
京太郎「いきます! ベリアルゥッ!」
ゼットライザーを掲げてトリガーを引く
それと共に、光が広がり―――
ベリアル「ジャアッ!」
―――ベリアルが地上へと現れる
着地と同時に周囲の土を舞い上がらせ、素早く構えを取った
148: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/06(月) 01:11:06.64 ID:fmyBTt6T0
咆哮をあげるコッヴへと接近すると、素早く爪撃をみまう
その攻撃に下がっていくゴッブ
鎌で攻撃をしかけてくるも、ベリアルは素早く後ろへと下がる
京太郎『こいつ、さっさと決着つけましょう!』
ベリアル『ハッ、こんな雑魚相手に戸惑ってられねェからな』
近寄ると、右腕から電撃を放つ
怯むコッヴにさらに爪撃を打ち込み怯ませる
両腕の鎌を振りかぶって攻撃をしかけてくるが、それを爪撃で撃ち返す
コッヴ「―――!!!」
ベリアル「ハァッ!」
コッヴの両腕の鎌がベリアルの爪撃で破壊された
さらに、素早く膝蹴りを放ち、拳を数度打ち込む
コッヴ「―――!」
怯んだコッヴから距離を取ると、コッヴが頭部から光弾を放つ
それをベリアルは両手を前に出して出現させた円状のバリアで弾く
そこに隙を見つける
京太郎『決めます!』
ベリアル『やるぞ!』
両腕を左右に開き、顔を前に出す
京太郎・ベリアル『デスシウム・ロアー!』
放たれた破壊音波の攻撃
それに怯むコッヴにさらに接近、素早く背後に回ってその尻尾を掴むと、勢いよく回す
宙に浮いて回転するコッヴを、離す
コッヴ「―――!!?」
空へと舞いあがるコッヴに、素早く両腕を振るった
京太郎・ベリアル『デスシウムリッパー!』
放たれた斬撃が空中のコッヴの体を真っ二つにした
地上へと落ちていくコッヴが、途中で光の粒子へと変わって消える
さらに光がゆっくり落ちていくのが見えた
―――その光の先には、風越の吉留末春がいる
京太郎『やっぱり……』
149: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/06(月) 01:17:54.84 ID:fmyBTt6T0
瞬間、さらに地面が揺れる
驚愕する京太郎が、その震源地らしき方へと顔を向けた
それはティガ石造があった山
京太郎『あれは!』
怪獣が、現れた
頭部が特徴的な、コッヴと同じく二足歩行の怪獣
さらに咆哮が響く、それは空から
京太郎『空にも!!?』
ベリアル『ゴルザにメルバか!』
京太郎『くそっ、だけどこっちはまだ!』
現れた二体の怪獣、ゴルザとメルバ
その二体が山へと攻撃を開始する
京太郎『こいつらティガの石像を狙ってるのか!?』
ゴルザが額から光線を、メルバが口から光弾を放つ
大地を揺るがす怪獣ゴルザ、空を斬り裂く怪獣メルバ
京太郎『やりますベリアルさん! 二体まとめて潰す!』
ベリアル『ハッ、気合入ってるじゃねぇか、上等だ!』
地を蹴り、ベリアルが二体の古代怪獣に飛びだす
156: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/08(水) 20:40:57.53 ID:ZfZwEZIv0
―――【ティガの地:洞窟内】
凄まじい衝撃と共に、洞窟全体が揺れる
研究員たちを次々に起こして、逃がしていく慕と美穂子の二人
天井からパラパラと落ちてくる
慕「福路美穂子、さんだっけ! 早く逃げて、私一人でいいから!」
美穂子「い、いえ私もっ!」
慕「怪獣が来てるんだよ!? 子供にこんなことっ」
そう言いつつも、慕とて美穂子のおかげで避難が進んでいるのも理解していた
もう最後の研究員が出口へと向かう
数人の研究員たちが出口通路の傍で待っていた
慕「まったくもぉ、福路さん、早く!」
美穂子「は、はいっ!」
走って出口へと向かう二人
揺れるティガの像に視線を移すが、慕は顔をしかめつつ出口に視線を向け直した
いま必要なのはティガの像ではない
慕「なに? 鳴き声が変わった? ううん、増えた?」
「白築さん!」
慕「え……福路さん!」
美穂子「え?」
上から落ちてくる巨大な岩
このまま走って間に合う気がしない
だが―――
美穂子「ごめん、なさいっ!」ガッ
慕「っ!」
勢いよく、美穂子が慕を突き飛ばした
その反動で後ろへと跳ぶ美穂子、前へと転がる慕
その間に、岩が落ちる
慕「福路さぁん!」
157: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/08(水) 20:48:37.01 ID:ZfZwEZIv0
起き上がる慕が叫ぶも、その声が届いているようには思えない
洞窟全体が揺れる音もそうだが、その奥
岩の向こう側からさらになにかが落ちる音などが聞こえてくる
慕「なんでっ、また子供ばっかり……!」
「白築さん、早く! ここで死んじゃぁ!」
慕「っ!」
揺れる通路を走って出口へと向かう
慕「っ!」
あふれ出る涙が頬を伝って地へと落ちていく
158: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/08(水) 21:12:20.07 ID:al2ZVL680
ベリアルがゴルザの背からその体を掴んで、山から遠ざける
勢いよく引き離されて転がるゴルザをよそに、ベリアルが右手から光弾を出してメルバを撃ち落とす
二体の怪獣が、ベリアルに狙いをさだめた
ベリアル『ハッ、超古代怪獣を超古代竜の二体か……!』
京太郎『こいつら、なんであれを!』
ベリアル『そういうもんだろ―――この世界、アレがあるのか?』
京太郎『え、あれって……』
起き上がった二体を前に、京太郎は言葉を止める
まずは出てくるはずの慕たちを避難させる時間稼ぎをしなくてはならない
ベリアル『気合入れとけよ、二体一だ!』
京太郎『二体二ですよ!』
ベリアル『ハッ、半人前―――いや四分の一人前で言うじゃねぇか』フハハ
ゴルザとメルバへと飛びだすベリアル
まだ余力はある
戦えるはずだ
159: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/08(水) 21:32:13.23 ID:al2ZVL680
ティガの像がある洞窟、その真上である山から離れた場所
コッヴが現れたような場所に存在していたのは人間―――ではない
体は人間のようで、スーツまで着ている
だが頭が黒く細長で、亀裂のように黄色い部分に単眼がついていた
????「ウルトラマンベリアル……最凶のウルトラマン」
そう言いながら、メダルを一つ取り出した
そのメダルに描かれているのは『コッヴ』に似たもの
????「なぜこの宇宙に……まぁ良い、早く片付けるか」
そう言いながら、その男(?)は“ゼットライザーのようなもの”を取り出してメダルを差し込んだ
ブレードを、可動させる
『スーパーコッヴ』
????「消えろ、ベリアル!」
そこから放たれる光が真っ直ぐに伸びて、怪獣を出現させた
先ほどベリアルが倒したコッヴ
そこからさらに洗礼された姿、鎌は鋭く胸のクリスタルの形も違う
咆哮と共に、歩き出した超コッヴ
ベリアルは掴みかかってくるゴルザをなんとか投げ飛ばし、メルバの光弾をバリアで弾く
京太郎『ベリアルさん!』
ベリアル『チッ! 超コッヴ……三体相手か!』
京太郎『くそっ!』
160: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/08(水) 21:47:41.14 ID:ItkBuVu20
ゴルザと超コッヴの二体を、ベリアルは爪撃でひるませる
だが―――
メルバ「―――!」
ベリアル「ガァッ!」
メルバが放った光弾の直撃を受けて、ベリアルが後ろへと下がった
膝をつき、胸のカラータイマーが点滅を始める
さすがに三体一ともなれば苦戦もするだろう
京太郎『はぁっ、はぁっ……あ、あれは慕さんたち』
ベリアル『よそ見できるほど余裕か小僧?』
京太郎『そんなこと……あれ?』
そちらに、慕たちの方に美穂子の姿はない
先に脱出した様子もないはずだ
なのに―――
京太郎『ッ!?』
泣いている。慕が、泣いていた
京太郎『まさか……』
ベリアル『おい小僧!』
京太郎『ッ!』
慕が洞窟の方を振り返り、大粒の涙を流しているのが見える
なぜだか直感した
福路美穂子がどこにいるのか、どうしたのか
京太郎『あ、あ……アアアァァァッ!』
ベリアル『この力は……そういうことか!』
立ち上がったベリアルの目が赤く輝く
161: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/08(水) 21:57:07.99 ID:4K/gn1+i0
―――【ティガの地】
外からの振動が響く
起き上がるのは―――福路美穂子
切り傷や擦り傷、体は砂埃まみれ
美穂子「っ……生きてる」
両足をしっかりと動かして、ティガの像へと近寄る
なぜだか惹かれ、なぜだかそうしていた
美穂子「華菜を、久を……少し前、みたいにっ」
流れる涙、両目を開きその像を見上げる
美穂子「……!」
ティガの像のさらに上、天井が崩れる
山の一部が重力によって降りかかってくる
その瞬間、美穂子は―――
美穂子「―――光?」
162: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/08(水) 22:27:33.11 ID:4K/gn1+i0
赤い瞳のベリアル
空飛ぶメルバに光弾を数発撃ちこむ
ベリアル「ジャア!」
落ちるメルバにさらに追撃を放ち、近寄るゴルザに爪撃
斬撃が奔り、ゴルザが仰け反る
ベリアル「デアッ!」
さらに膝蹴りを打つと、即座にかかと落とし
逆方向から近寄る超ゴッヴに雷を放つとさらに回し蹴り
ゴルザを蹴りで倒すと、コッヴの方へと向きなおす
京太郎『テメエェェェ!』
ベリアル『ハッ! 中々やるじぇねぇか!』
さらに両腕を水平に構える
京太郎・ベリアル『デスシウムリッパー!』
超コッヴの胴体に斬撃が直撃した
だが先ほどのコッヴとは違い切断までに至ることもない
それでも弱ってはいるようでふらつく
京太郎『まだまだァ!』
ベリアル「シャア!」
振り返ると同時に腕を振るう
立ち上がって来ていたゴルザとメルバが後ろへと退く
163: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/08(水) 22:53:05.48 ID:0+f5H4eq0
そして超コッヴに狙いを定めると、ベリアルが走り出す
振るわれる鎌を避けて後ろへと回るとその胴体に腕を回す
尻尾を振るわれるより、早く―――!
京太郎『ダアアアァッ!』
ベリアル「ウオラァッ!」
超コッヴをバックドロップで投げ飛ばす
即座に起き上がるベリアル
超コッヴ「―――!」
ふらつきながらも起き上がる超コッヴ
ベリアルは即座に接近して拳を何度か打ち込む
超コッヴが鎌を振るおうとするも―――
ベリアル「ジャァッ!」
それに合わせるように両手で光弾を放ち、二つの鎌を破壊する
京太郎『まず一体!』
ベリアル『上等だ!』
両腕を構える
右手と左手をクロスし、必殺の光線を放つ
京太郎・ベリアル『デスシウム光線!』
近距離で放たれた光線は超コッヴを貫き、爆散させた
京太郎『っし!』
ベリアル『油断するな小僧!』
素早く後ろへと下がるベリアル
そのベリアルに、ゴルザが光線を、メルバが光弾を放った
それを避けることもできずに、ベリアルは後ろへと吹き飛ぶ
164: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/08(水) 23:08:14.24 ID:0+f5H4eq0
京太郎『ぐっ! 大丈夫っすかベリアルさん!』
ベリアル『こんな雑魚どもにっ!』
起き上がるベリアルが両腕を構える
咆哮する二体の怪獣にどう立ち回るかを考えていた、その瞬間―――
ベリアル『ッ!』
京太郎『え、光?』
山から立ち上る光
それはおそらくティガの像があったその場所
空へと伸びた光が曲がり、ベリアルの隣に落ちた
京太郎『敵か!?』
ベリアル『この光を見て、敵か疑うたぁお前やっぱ』フッ
京太郎『え、なんっすか!』
隣に落ちた光から、なにかが現れた
片手を真っ直ぐと上に、そしてもう片手をまげて、現れるのは―――
京太郎『光の、戦士……?』
―――その名はティガ。超古代の光の巨人
165: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/08(水) 23:31:20.02 ID:0+f5H4eq0
ベリアル『ティガだと?』
京太郎『復活した……』
ティガが、上げていた腕を下げて腕を構える
前に出した手を平手に、後ろの手を拳に……
ベリアル『声、届くんじゃねぇか?』
その言葉に、京太郎は頷いてティガの方を見る
京太郎『味方で、良いんですか?』
ティガ「……」コクリ
頷くティガ、そしてなぜだか確信した
目の前のウルトラマンティガ……その、此度の―――
京太郎『ッ! ……行きましょうベリアルさん!』
ベリアル『ハッ、やれるみてぇだな』
京太郎『き、気のせいでしょ!』
両腕を構えるベリアルのその瞳は元の色へと戻っていた
ゴルザとメルバが咆哮を上げ、走ってくる
それを迎え撃つのは、ベリアルとティガ
◆BGM:TAKE ME HIGHER【http://www.youtube.com/watch?v=2FzlpZqyuKg
】
ベリアル「セヤァ!」
ティガ「デァ!」
二人のウルトラマンが走り出す
167: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/08(水) 23:44:16.98 ID:0+f5H4eq0
二人のウルトラマンが飛びだす
ベリアルはメルバへと接近し素早く爪撃で攻撃をしかける
さらに素早く打撃
ベリアル『一体一ならな!』
京太郎『負けねぇ!』
拳を打ち込む、その隣でティガがゴルザへと打撃をしかけていく
ベリアルとはまた違った戦い方であり、チョップからの蹴り、さらに光弾を放つ
ゴルザ「―――!」
ティガ「―――チャァ!」
両腕を眼前でクロスしたティガが、勢いよく両手を振るう
するとティガの姿が赤く変わった
京太郎『あれは!?』
ベリアル『タイプチェンジだな』
京太郎『そりゃうらやましいこって……!』
そう言うと、ベリアルが腕を振るう
斬撃でメルバが怯むがさらにベリアルは前蹴りを撃ちこんで下がらせる
メルバ「―――!」
168: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/08(水) 23:55:49.25 ID:0+f5H4eq0
退いたメルバが素早く顔をベリアルへと向ける
そして、その両目から破壊光線を放つ
京太郎『こいつで!』
ベリアル「ジャア!」
素早く前に出した両手から放たれる光線
それがメルバとベリアルの真ん中で弾ける
ティガ「チャア!」
ゴルザ「――-!」
下がるゴルザがベリアルの真後ろへとやっくると、ベリアルは爪を振るってゴルザを背中から斬る
怯んだゴルザの尻尾を掴み、ベリアルが投げ飛ばそうとするとメルバが再び交戦を放つ
だが前に出たティガがメルバへと光弾を放ち、射線をそらす
ベリアル「デヤァ!」
投げ飛ばされたゴルザが転がる
メルバが、空へと飛び上がった
京太郎『ベリアルさんメルバが!』
ベリアル『あ?』
だがティガが再びタイプチェンジを行った
その身体は紫色に変わる
京太郎『また変わった!』
ティガが素早く空へと飛び上がった
起き上がったゴルザがベリアルへと走る
ベリアルは跳び上がると、突進するゴルザの頭を踏んで、その向こうに着地し回避した
169: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/09(木) 00:12:31.90 ID:5RqDhQ3N0
空を飛ぶメルバを追って、ティガスカイタイプが空を行く
後ろへと振り返ってメルバが目から光線を放つ
だが、ティガは軽く体をそらしてそれらを回避
メルバ「―――!」
逃げようと、加速しようとするメルバ
だが、ティガはそれよりも素早く、追い付いてその加速度のままメルバへと蹴りをみまう
ティガ「ゼァ!」
メルバ「―――!!」
その攻撃により高度が落ち、地上へとぶつかりそうになるも、すぐにメルバは体勢を整える
再び破壊光線を放つが、ティガは即座に回避
ティガは両腕を上空へと上げると、左わき腹へと手を構える
ティガ「デァ!」
右手が振るわれると、紫電の如き輝きが伸び、メルバを貫く
紫電の光、ランバルト光弾を受けたメルバが空中で爆散する
170: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/09(木) 00:29:40.18 ID:5RqDhQ3N0
地上で、ゴルザを相手に格闘するベリアル
力はゴルザの方が強い
だが素早く爪撃で腕を振り払いつつ、拳を打ち込む
ゴルザ「―――!」
ベリアル「ダリャア!」
さらに回し蹴りを放ってゴルザを後退させる
弱っている様子のゴルザを前に、ベリアルが顎に手を当てて首を鳴らす
隣へと降りてくるティガが、タイプチェンジをして最初のマルチタイプへと戻った
京太郎『いきますよ!』
ベリアル『言われるまでもねぇ!』
ティガ「テァッ!」
ベリアル「ダリャッ!」
ティガが両腕を脇へとやり、すぐに真っ直ぐ伸ばし目の前で交差させる
それを開いていくと紫色の光があふれ出た
京太郎・ベリアル『デスシウム光線!』
ベリアル「ハアァッ!」
ティガ「デァッ!」
ベリアルのクロスされた腕、そしてティガのL字型の腕
放たれた二つの光線がゴルザへと直撃
ゆっくりと倒れていくゴルザが、爆散した
171: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/09(木) 01:04:29.64 ID:bFqseOGQ0
敵意を感じないことを確認して、ベリアルはティガの方を見る
ティガはなにを言うでもなく、静かに頷いた
ベリアルはそれになにを返すこともなく、空へと飛び上がる
ベリアル「デヤッ!」
空へと消えるベリアル
ティガはそれを見送ると、光と共に収束して消えた
そして、光が収まったその場所に立っていたのは―――
「ハァッ……ハァッ……」
―――福路美穂子
肩で呼吸をしながら、森の中で尻もちをつき木によりかかった
その疲労は、あの洞窟の中でのものだけではない
美穂子「華菜、久っ……」
京太郎「福路さん!」
美穂子「す、がくん……?」
京太郎「福路さん、大丈夫ですか?」
美穂子「だ、いじょうぶ……」
そう言って弱々しく笑う美穂子を見て、京太郎は顔をしかめる
抱えて帰るしかあるまいと、美穂子を見る
その手に持っているものを視界に入れて、息をついた
美穂子「ちょっと、疲れた……だけ、だから」
京太郎「……はい、休んでください」コクリ
美穂子「ん、ありが、とぉ」
眼を瞑り、一定の呼吸をする美穂子
安心したように京太郎は頷くと、その手に持っていた“モノ”を自分の手に
不思議な形をしたアイテムだった
ベリアル『スパークレンス、だな……似たようなのを見たことある。気がする』
京太郎「?」
ベリアル『まぁ良い、これで確定だな』
京太郎「はい……美穂子さんが、ティガ」コクリ
172: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/09(木) 01:15:43.86 ID:bFqseOGQ0
山を降りてすぐ、コンビニの駐車場にいるのは慕
スタッフたちも数人が残っているだけでほとんどが熊倉トシの施設へと向かったようだった
慕「京太郎くん、通信に応えて……!」
「白築さんあれ!」
慕「え?」
スタッフの声に慕がスタッフの指差す方を見る
そこには須賀京太郎、それに……
京太郎「おーい!」
慕「福路さんっ!」
流れそうになる涙を拭って、慕が走っていく
京太郎へ、その背中に乗せている美穂子へ―――
173: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/09(木) 01:31:37.01 ID:DLFHj4D10
森の中、落ちているメダル
ゴルザのメダルを拾う影
赤い髪をなびかせる竹井久が、虚ろな目で拾ったメダルを確認した
久「超古代怪獣……」
それを素早く投げれば、受け取る影
先ほどの宇宙人だった
「ご苦労だ……ゴルザ、メルバ、そして超コッヴ」
三枚のメダルを手に入れて、笑う宇宙人
それを見るのは竹井久、そしてその隣には池田華菜
「中途半端な因子のメダルだが、やはり人間に入れて熟成させると……完璧になるなぁ」
久「それで、これから?」
「レギュラン星人、お前は戦闘向けの生物ではないからな……色々と、私が考えてやろう」
久「……貴様」
「役に立つはずだ。貴様の同族の復讐のためにも」
久「……」
なにを言うでもなく、竹井久―――レギュラン星人は山を下りていく
174: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/09(木) 01:45:17.82 ID:AvZcA1Yz0
ベリアルとティガが戦った山近く
カメラを持った男がいた
その近くにはメガネをかけた記者
「どう?」
「ウルトラマンの写真は取れましたけど……」
「上々!」
グッと手を振るう女性、西田順子
そしてカメラマンの男の名は山口大介
二人は『WEEKLY麻雀TODAY』の記者であり、京太郎の所属する清澄高校とも関わりがある二人
大介「でも俺らって、麻雀雑誌の記者ですよね? ウルトラマン撮っても」
順子「いえ、私たちはウルトラマン関係の記者よ」
大介「はぁ?」
順子「編集長には話を通してる……表だって報道されない雀士行方不明とコレ、関係あると思わない?」
大介「根拠は?」
順子「勘よ……だから追うわよ。ウルトラマンを」ニッ
大介「……はい」ハァ
意気揚々と歩き出す順子に、大介はため息を吐きつつ着いていくのだった
175: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/09(木) 01:47:56.29 ID:AvZcA1Yz0
第4話【光を継ぐ者】 END
177: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/09(木) 02:06:58.74 ID:AvZcA1Yz0
―――次回予告
京太郎:鶴賀に異変!
はやり:私はさながら囚われのヒロインってわけだ!
トシ:こんな元気な囚われのヒロインはいない
京太郎:強敵ですベリアルさん!
ベリアル:対ウルトラマン用だろうが関係ねぇ! 潰す!
次回【闇の力】
ベリアル:おもしろい、やってみろ!
京太郎:力、お借りします!
182: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/10(金) 22:05:35.64 ID:w1o+XgEm0
―――【特異課施設:休憩所】
あれから一日
美穂子は未だに眠っているようで、さらに吉留末春
そして付近で深堀純代、文堂星夏も発見された
京太郎「……」
まだ風越の面々が起きた様子はない
だが……
智美「ワハハ、暇か」
桃子「あ、京さんじゃないっすか」
佳織「今日はお仕事ないんだねぇ」
やってきたのは蒲原智美を筆頭に桃子と佳織
ティガが蘇ったあの日の夜、智美が起きたのだがやはり記憶は曖昧なようだった
津山睦月を見た、とのことは聞いていたのだが……
京太郎「ふむ……」
智美「むっきー、見つかりそーか?」
京太郎「全然」ハァ
息をつく京太郎、その視線の先にはテレビ
映っているのはベリアルこと自分と、ウルトラマンティガだった
183: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/10(金) 22:21:48.55 ID:jRxxruUV0
京太郎「……」
智美「おーウルトラマン、私の恩人だなーワハハ」
佳織「私も、なんだよね……」
桃子「私はそうじゃないらしいっすけど」
確かに佳織と智美を止めたのはベリアルだ
だが、それも京太郎にとってはやらなくてはならないことだった
人々を守る。それが今の京太郎のやるべきことだ
ベリアル『どぉーせ使命だとか、なんとか思ってんだろ?』
京太郎『うおっ!? なんでわかるんっすか!』
ベリアル『やめとけ、そういうタマじゃねぇよ』
京太郎『……え、どういうことっすか?』
ベリアル『さてな』
それだけ言うとベリアルは返事をしなくなった
小首をかしげる京太郎
佳織「京太郎くん、そういえば瑞原さんは?」
京太郎「ああ、今日も鶴賀だと思うんですけど……」
ピピピピ
京太郎「あれ、通信」
そう言うと、携帯端末を取り出した
京太郎「はいどうも」
裕子『京太郎くん、ちょっと第三医務室までお願いしていい?』
京太郎「っ! はい……」
桃子「仕事っすか?」
京太郎「おう、行ってくる!」
桃子「行ってらっしゃいっす」ニコッ タユン
京太郎(おもち!)
185: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/10(金) 22:40:50.77 ID:jRxxruUV0
休憩所から離れて、京太郎は佐藤裕子に指定された部屋へとやってくる
インターホンを押すと、ドアが開いて裕子が顔を出す
京太郎「え、ど、どうも?」
裕子「……ん、どうぞ」
京太郎「どうも」
軽く会釈をして中に入ると、そこにはベッドに座っている少女
そうは言っても京太郎よりも年上なのだが……福路美穂子は相変わらず右目を閉じたまま、京太郎を見た
少しも驚いた表情を見せないのは裕子からある程度聞いていたのか……
京太郎「えっと……おはようございます?」
美穂子「えっと、おはよう?」
二人でぎこちなく挨拶をして、笑う
入院服のようなものを着ている美穂子
だが! その は豊満であった!
京太郎(いかん、俺としたことが……)ブンブンブン
裕子「あ~」ジト
京太郎「な、なんっすか」
裕子「さてね、まぁそのぐらいの方が健全か」
京太郎「ちょ!」カァッ
美穂子「?」
186: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/10(金) 22:54:08.82 ID:jRxxruUV0
座っている美穂子の正面に、椅子を出して座る京太郎
裕子はと言うと、頷いて外に出てしまった
知り合い同士でと、気を使ってくれたのだろう
京太郎「……その、福路美穂子さん」
美穂子「あ、その……気絶した私を背負って連れてきてくれたんだよ、ね?」
話を明らかに切ったのだが、理由は予想がつく
美穂子は、ベリアルが京太郎だと気づいていないのだろう
京太郎「……」
美穂子「うっ……む、無理?」
京太郎「はい、俺はわかってますから……」
その言葉に、美穂子がため息をつきつつ頷く
美穂子「光を掴んだの……それで、戦わなくちゃって、あの……べ、ベリアル、さんと」
京太郎「そっか、ティガとして、ウルトラマンとして、か……」
美穂子「……」
京太郎「その……」スッ
服の内側から取り出したのは“スパークレンス”
ベリアル曰く、ティガに変身するためのアイテム
187: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/10(金) 23:12:48.57 ID:dZGeKDBJ0
美穂子「あ、これ……」
すぐに理解したのか京太郎の手から受け取って両手でそっと持つ
使い方も心得ているのは文字通り“光を受け継いだ”からか……
京太郎(俺ともまた違うか……)
ベリアルと自分のように同居しているような感じでもない
京太郎「美穂子さんが、その……これを手にすると、また戦うことになります」
美穂子「……」
じっと、美穂子の眼を見つめた
京太郎と美穂子、二人の赤い目が交差する
京太郎「義務感で戦うもんじゃないですよ」
ベリアル『良く言う』
京太郎『え?』
ベリアル『……ていうか、それじゃお前がオレだってバレちまうんじゃねぇか?』
京太郎『う、そこはなんとか……』
目の前の美穂子が、フッと息をついて笑みを浮かべた
美穂子「ううん、戦うわ……私はね、光を継いだ。きっと守るために」
京太郎「……」
美穂子「私自身も守りたいと思う、人が好きだし……なによりも、華菜と久のために」ニコッ
ベリアル『こいつ本心から言ってやがる』
京太郎『えー嫌そうに言いますね』
ベリアル『嫌だからな』
京太郎「……美穂子さん」
188: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/10(金) 23:24:05.66 ID:dZGeKDBJ0
美穂子「どうしたの?」
京太郎「お願いします」
そう言って笑うと、美穂子も笑顔を浮かべて頷いた
その後は簡単な話だ
彼女の正体は言わないだとか
自分と同じ立場の方が戦いやすいと、トシには口利きしておくだとかだ
京太郎(まぁ、一緒に麻雀で戦うことはできないだろうけどなぁ)
美穂子「えっと、それじゃあ熊倉さんに話を?」
京太郎「はい、あの人ならなんとかしてくれると……思い、ます」コクリ
美穂子「京太郎くんがそこまで信用してるなら、大丈夫ね」クスッ
笑う美穂子に、京太郎も笑って返す
だがしかし、トシを信用しているのは確かだが謎が多いのも確か
彼女は一体何者なのだろうとも思う
京太郎『しばらく顔出してないけど、あの人……美穂子さんのこと知ってると思います?』
ベリアル『たぶんな、あの感じ……普通じゃねぇだろ』
京太郎『ベリアルさんが言うなら間違いないんでしょうけど』
頭の中でベリアルと会話をしていると、扉が開いた
美穂子は慌てながら入院服の中にスパークレンスを隠す
京太郎(おー……正直、その、いい……)
裕子「さ、福路さん、着替え持ってきたから」
京太郎「それじゃ俺はこれで!」
美穂子「あ、うん」コクリ
京太郎「……それじゃ、また」フッ
美穂子「ええ」ニコリ
裕子「ふ~ん」
京太郎「え、な、なんっすか」
裕子「すーぐ女の子と仲良くなるんだから」
京太郎「えー、別に良いじゃないっすかぁ」
裕子「……別に良いけど」ジト
京太郎「?」
189: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/10(金) 23:39:17.15 ID:dZGeKDBJ0
美穂子の部屋から出て、京太郎はすぐに呼び出された作戦室へと向かう
ティガの一件から増えたスタッフたちに軽く会釈しながらトシの待つ部屋へと入った
そこにいたのは、トシの一人
京太郎「来てたんですね」
トシ「まぁね……とりあえず瑞原から連絡もあったし」
京太郎「いつ?」
トシ「さっき」
京太郎「……え、すぐ来たんっすか? ターボババァ?」
ゴッ
トシ「ぶつよ」
京太郎「ぶってるぅ」ヒリヒリ
頭を押さえながら、京太郎がトシの方を見る
ともかく、とドッシリと椅子に座する熊倉トシが端末を叩く
そこに映っているのはウルトラマンティガ
京太郎「……美穂子さんは、戦うって」
トシ「そ、なにより……」
京太郎「あっけからんとしてますね」
トシ「あの子がティガに、光に選ばれた時点でわかってたことさ」
京太郎「……?」
トシ「あの子はシンプルに、人々を愛するタイプだからね。ウルトラマンに向いてる」
その言葉に、京太郎は自分の手を見る
一瞬だけベリアルの手が重なって見えて、その直後黒い手が重なって見えた
京太郎「ッ!」
トシ「悩んで戦って答えを出す。それが人間でありティガ」
京太郎「え?」
トシ「なにはともあれ、京ちゃんとは違うってことさ」
京太郎「なんっすかそれぇ」
トシ「まぁ人それぞれ、あるってことさ」
190: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/10(金) 23:56:29.13 ID:dZGeKDBJ0
トシ「とりあえず福路に話は通しておくよ」
京太郎「あの、美穂子さんの正体については」
トシ「わかってるよ。知らないふりする」
そう言って端末を操作して、ティガの画像を小さく
そして鶴賀学園の画像が大きく映し出された
おそらくだがはやりが撮った写真なのだが、そこに映っていたのは
京太郎「……加治木さん?」
トシ「そう、加治木……ただし、こいつ」
京太郎「……メダルを、握ってる?」
トシ「そ、ちなみにこの後、麻雀やったらしい」
京太郎「ッ!」
つまり、そういうことだろう
しかしメダルを入れられた人間がそこまで狡猾に動くのを見たことが無い
そのはずなのだが……
トシ「ちなみにそっから瑞原から連絡がない」
京太郎「一大事じゃないっすか!」
トシ「だから呼んだ。頼んだ……はい、特異課手帳」
京太郎「なんっすかこれ」
トシ「警察手帳みたいなもんさ、見せりゃなんとかなる」
京太郎「えー眉唾」
トシ「いいから行っといで、瑞原があんなことやこんなことになる前に」
京太郎「行ってきます!」ダッ
191: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/10(金) 23:58:04.94 ID:dZGeKDBJ0
第5話【闇の力】
192: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 00:17:51.30 ID:8f7FJ2Wy0
―――【鶴賀学園:一階】
スーツ姿、サングラスをかけた京太郎が歩く
顔を隠せと言うことでもらったがいかんせん、ガラが悪い気もする
手帳を見せたら当然のように入れたがそれも意味が分からない
京太郎(世の中、知らないことばっかだなぁ……案外宇宙人とかも珍しくなかったり?)
そんなことを思いながら歩く京太郎の隣を歩く女子生徒二人
なんだかコソコソと話をしながら去って行った
京太郎(絶対、恐がられてる)
「今の人こわぁ」
「え、カッコ良くない?」
「まぁどっちかってーと?」
歩いていく京太郎のつけているサングラス
その内側、右方向がピコピコと光る
京太郎(こっちか、はやりさんの反応……)
はやりの端末を示しているらしい、とトシから聞いた
内ポケットのガッツハイパーはいつでも手に取れるようにはしている
だが、実際に出てきたとして“加治木ゆみ”を打てる気がしない
京太郎「……いや、なにかあってからじゃ遅いからな」
193: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 00:37:28.17 ID:8f7FJ2Wy0
一階の反応がある教室を覗く
だが、そこにはなにもなかった
サングラスの内側の反応は、上を示していた
京太郎「……もっと上? いや、三年の教室があるのは二階、だよな」
ということは、と京太郎は小走りで上階へと向かっていく
すぐに反応を追って行き京太郎は部屋の前へとたどり着いた
明らかに異常な気配を感じる
京太郎「……っ」
ベリアル『上等じゃねぇか、やっちまえ!』
京太郎「はやりさん!」
扉を勢いよく開けて中へと入る
カーテンが引かれた暗い教室
その中に、少女が1人で立っていた
京太郎「加治木、ゆみ……!」
ガッツハイパーを構えるその手に、震えは無い
彼自身も驚くほどだった
京太郎「……人でなしか、俺は」
ゆみ「そうだな。貴様は人でなしだ……ベリアルの器」フフフ
京太郎「ハッ、まさかこんな風に会話できる敵がいるとは」
負けじと笑ってみせるが、内心では気が気でない
銃口はまっすぐゆみの方を向いている
「京ちゃん!」
京太郎「はやりさん!?」
194: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 00:53:18.51 ID:8f7FJ2Wy0
そこには立てられた十字架にはりつけられているはやり
京太郎がガッツハイパーをそちらに向けた
ゆみ「甘いなベリアルの器!」ガッ
京太郎「っ!」
蹴りでガッツハイパーが弾き飛ばされる
だが、京太郎は体勢を低くして足払いをかけた
跳んで回避したゆみが京太郎と距離を取る
ゆみ「ゼットン星人もこんなものに遅れを取るとは」
京太郎「チィ!」
ベリアル『おい、こいつは一味違うみたいだぞ』
ゆみ「……どうした? ベリアルの器」
京太郎「パンの袋とめるアレみたいに言うんじゃねぇよ」
構える京太郎、次の行動を待ち構えるも―――
ゆみ「それじゃ、これは?」パチンッ
その音共に、カーテンが開かれる
明るい陽射しが教室内に差し込む
ゆみ「さぁ、十分に育ったろう……!」
その向こう、街に現れる影
光りと共に―――巨大なアリジゴクのような怪獣が現れる
京太郎「ッ!」
ベリアル『アリブンタか!』
ゆみ「さぁ、どうする?」
はやり「行って京ちゃん!」
ゆみ「黙れ!」
その瞬間、十字かに電撃が奔る
はやり「がっ、あああっ!!?」
京太郎「はやりさん!」
はやり「っ……アァァッ!」
195: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 01:03:24.01 ID:8f7FJ2Wy0
京太郎「お、お前ッ!!」
ゆみ「フハハハハ!」
外のアリブンタが徐々に迫ってくる
まだ小さく見えるほどの距離ではあるものの、それは確実だ
十字架からの電撃は収まっている
はやり「っぁ……はぁ、はぁ……」
京太郎「っ」
ゆみ「変身しようとすれば」
だが次の瞬間、アリブンタに銃撃が奔った
驚愕に眼を見開くゆみ
京太郎はその顔に笑みを浮かべる
京太郎「頼んだ、美穂子さん!」
196: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 01:13:21.08 ID:8f7FJ2Wy0
―――【街中】
トシの運転で、スーツを着た美穂子は街中へとやってきていた
タイミングよく現れたアリブンタ
二人は避難誘導を始めるも……
美穂子「あっちの避難誘導にいきます!」
トシ「……任せた!」
頷いた美穂子がアリブンタを相手にガッツハイパーを撃ちながら走る
アリブンタが美穂子の方に顔を向けた
美穂子「ちゃんと囮はやれてるわね……」
走って裏路地に入る
やることはただ一つ、決めたことだ
美穂子「人々を守る。そのために私は光を……!」
スーツの内側から、スパークレンスを取り出す
強い瞳で、両目を開き……腕を回す
美穂子「……!」
そして、光が溢れる
197: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 01:21:35.41 ID:8f7FJ2Wy0
―――【鶴賀学園:二階教室】
街中に現れた光の巨人―――ウルトラマンティガ
アリブンタの行く手を遮り、素早く蹴りをみまう
怯み、倒れるアリブンタ
ゆみ「なっ!?」
京太郎「そこだぁっ!」
素早く跳びだした京太郎が、ゆみへと接近して脚を振るう
京太郎「ごめん加治木さんっ!」
ゆみは素早く腕を横に出して凌ぐも、勢いを殺し切れず床を転がる
はやりの拘束を解こうとするが、起き上がったゆみの方が早かった
その瞳がエメラルド色に輝く
ゆみ「ならばァ!」
京太郎「!!」
瞬間、光と共に、校舎が吹き飛ぶ
198: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 01:34:49.70 ID:8f7FJ2Wy0
校舎を拭き飛ばし、現れるのは巨大な影
金色の鎧のようなものを纏った人型ロボット
右手にナイフ、左手に鋭利なカギ爪
『潰れろベリアル!』
だが次の瞬間、光りと共に現れる白銀の巨人―――ベリアル
体を丸めた状態で現れると、手をそっと下げる
その手から、眠っているはやりが地に降ろされた
『らしくないことを!』
ベリアル『オレもそう思うが、やったのは小僧だ』
京太郎『お前ェ!』
立ち上がると、そのまま敵へと掴みかかる
はやりに被害が及ばぬようそのまま転がって離れると、すぐに距離を取った
もちろん、はやりがいる方を背にだ
ベリアル『エースキラーか』
京太郎『エース殺し、加治木さんにはあってる、のか?』
ベリアル『そういうエースじゃねぇけどな』
京太郎『え?』
ベリアル『だが……あれは中身、いやもっと前提、ヤプールの意思か』
京太郎『誰っすか』
ベリアル『雑魚だ、気にすることじゃねぇよ』
エースキラー『ベリアルゥ!』
両腕を開いて怒りを表すと、エースキラーはベリアルへと走り出す
204: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 21:46:44.89 ID:8cKaUmd20
叫び、吠えたエースキラーがベリアルに向かって走る
振るわれたナイフを左手の爪撃で凌ぎ、右手の爪撃で攻撃
だがその攻撃は右手の鉤爪に止められる
ベリアル「!」
エースキラー『半端な力で復活した貴様が、勝てると思うかァ!』
ベリアル『くっ、テメェだってそうじゃねぇのか?』
エースキラー『侮るな、こちらはメダルの力をこの女の力を使い増幅させ……さらにエースキラーの執念、そして私の執念をも取り込んだ超獣ロボット!』
京太郎『ベリアルさん!? 超獣って!?』
ベリアル『怪獣を超えた怪獣、とかヤプールが勝手に言ってるだけだけどなぁ!』
エースキラーの左腕が振るわれるが、ベリアルはその手首を掴む
さらにナイフが振るわれるがそちらの手首を掴んだ
エースキラー『防戦一方のようだなベリアル!』
ベリアル『チッ! 気合入れろ小僧!』
京太郎『入れてますよさっきからぁっ!』
徐々に、力負けしてベリアルが膝をつく
エースキラーのエメラルド色の眼がジッとベリアルを見下ろす
ベリアル『ヤプールっ、テメェ……メダルに取りついた残留思念風情がっ!』
エースキラー『それは貴様も一緒だろうベリアル! フッハハハハ!』
京太郎『っのぉ!』
頭を振りかぶり、そのままエースキラーの頭部にぶつける
ふらつくエースキラーを相手に、ベリアルは素早く後ろに下がろうとするも、エースキラーは素早くナイフを振るった
ベリアル「グアァッ!」
京太郎『ぐぅっ!』
エースキラー『そらぁっ!』
さらに鉤爪での攻撃で、ベリアルはふらつく
205: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 22:03:19.71 ID:8cKaUmd20
エースキラーが追撃とばかりに蹴りをみまう
ふらついたベリアルが転がるも、すぐに起き上がり手から光弾を放つ
ベリアル「ハァ!」
エースキラー『効くか! そんな情けない攻撃が!』
その光弾を軽く弾くと、エースキラーが額からビームを放つ
素早く転がり、ベリアルは攻撃を回避しさらに左手から雷を放った
京太郎『こいつで!』
エースキラー『そのような半人前の人間と同化した貴様のなにが最凶か!』
雷が当たるかと思われたその瞬間、右腕が前に出されエースキラーが光線を放つ
その光線が、押し負けてベリアルに直撃
ベリアル「ガァッ!」
京太郎『俺が足を引っ張って……またっ』
歯がゆさに顔をしかめて、京太郎は力を込めた
京太郎『俺は、人々を守るために!』
エースキラー『そんな力でウルトラマンのようなことを言う!』
京太郎『今の俺はウルトラマンだ!』
エースキラー『笑わせる! 貴様はウルトラマンではない! その器でもな!』
京太郎『なっ、言わせておけば!』
ベリアル『小僧! さっさと決めるぞ!』
京太郎『はい!』
起き上がるベリアルが、右腕に雷を纏う
206: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 22:11:58.57 ID:8cKaUmd20
ベリアル『チッ! こんな奴に!』
京太郎『負けるかァ! デスシウム光線!』
放たれるデスシウム光線だが、エースキラーは両腕をクロスにする
左手を水平に前、右手を垂直に後ろ―――それはベリアルと同じ構え
エースキラー『スペシウム光線!』
京太郎『同じ!!?』
エースキラー『ハァ!』
ぶつかった光線、だがそれは呆気なく結果が決まる
そのままエースキラーの光線がベリアルの方へと迫った
京太郎『ッ!!?』
ベリアル『クソがァ!』
エースキラー『貴様らのようなウルトラマンのなりそこないが、消えろ!』
真っ直ぐと、ベリアルへとぶつかる光線
そのまま吹き飛んだベリアルは校舎を押しつぶして倒れた
はやりは踏んでいないはずだし、避難は済んでいると思いたいところだが……
京太郎(ベリアルさんは悪くない、でもっ! 俺がッ!)
ベリアルの中にいる京太郎は拳を握りしめる
噛みしめた唇から血が流れる感覚がした
京太郎(俺はっ、人々を救う。救わなきゃなんだよ!)
207: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 22:27:00.94 ID:8cKaUmd20
一方、ティガはアリブンタとの戦いで苦戦していた
ティガである美穂子は知らないだろうが、そのアリブンタもまた“ヤプールの執念の力”で強化されている
スカイタイプとなったティガが素早く連続打撃をするが、効いている様子はない
ティガ「!」
アリブンタ「―――!」
振るわれるアリブンタの腕
ティガが素早く回避するも、そのまま回転したアリブンタの尻尾攻撃を受ける
ひるむティガに、アリブンタは近距離でハサミから炎を撃つ
ティガ「ウアッ!」
アリブンタ「―――!」
炎に包まれるティガだが、素早くパワータイプにチェンジ
その火炎攻撃に耐えながら拳を振るってアリブンタをひるませた
美穂子『このアリさん、強い!』
ティガ「ハアァ!」」
アリブンタ「―――!!」
拳を打ち込まれて、アリブンタが怯んだ
だがそれで少しばかり距離を取ったアリブンタは口から蟻酸を放つ
ティガは両手を前にしてバリアを発生させる
アリブンタ「―――!」
ティガ「―――!」
バリアを解いたティガが、手から光弾を放ってアリブンタを攻撃する
208: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 22:33:27.76 ID:8cKaUmd20
倒れているベリアルへと近づいたエースキラー
ベリアルの胸のカラータイマーが、点滅を始めていた
圧倒的な劣勢―――
京太郎『それでも、それでも俺はっ! 守らなきゃっ!』
ベリアル『おい小僧!』
京太郎『ベリアルさん、俺はッ!』
立ち上がるベリアル
エースキラーは鉤爪でそんなベリアルの首を掴み上げる
両手でその腕を掴むが、ベリアルの体はそのまま徐々に持ち上げられていく
エースキラー『仲間割れとは、ベリアル、貴様らしい!』
ベリアル『黙りやがれっ!』
京太郎『このっ!』
エースキラーがナイフをベリアルへと向ける
210: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 22:50:30.51 ID:af5i3PFv0
ベリアルが倒れている鶴賀学園
その近くのマンションの屋上に、誰かがいた
ローブをまとった真っ黒な人物
「ベリアル様……貴方の力はそんなものじゃない」
そう言うと、ローブに隠れた腕を振るう
それはメダルであり、真っ直ぐに倒れているベリアルへと向かって行った
「だが、その“異物”が余計だ」
足元から消えるローブの人物
「それが早々に消え去ることを期待しています。または、ベリアル様の糧となることを……」
211: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 23:03:07.54 ID:kpx7DOA+0
ベリアルの中、インナースペースで首を押さえている京太郎
京太郎「ぐっ!」
浮遊感と首を絞められている感覚
呼吸困難になりながらも、突如目の前に現れたそれを見て顔をしかめる
京太郎「こ、れはっ……」
ベリアル『小僧、気合入れろォ!』
京太郎「こ、こいつ、でっ……!」
目の前に現れたメダルを、右手で掴む
ベリアル『なにやってるっ、小僧!』
京太郎「べ、ベリアルさん! メダルがっ……うわっ!」
右手に持ったメダルが、左手に持ったゼットライザーに引き寄せられていく
それに異様な感覚―――“深い闇”を感じる
京太郎「闇がっ……こ、こんなっ!」
ベリアル『なにしてるっ! 小僧ォ!』
京太郎「や、闇の、力っ……」
京太郎の右手ごと引き寄せるようにメダルがゼットライザーへとハメられた
体が操られるように、ゼットライザーのブレードを動かす
そして、メダルが読み込まれる
『Alien Rayblood』
―――レイブラッド星人
212: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 23:12:01.51 ID:kpx7DOA+0
今にもナイフを突き刺されようとしているベリアル
だが次の瞬間、その身体からあふれ出る大量の―――闇
ベリアル「ウオォォォ!」
エースキラー『なっ、なにィ!!?』
勢いよくあふれ出た闇に、吹き飛ばされるエースキラー
その場に、着地するのはベリアル
ベリアル『小僧! この力!』
京太郎『闇っ、この力ッ……!!』
ベリアル「ウオォォォッ!」
そしてその闇はベリアルへと吸収されていく
纏うは闇、全てを飲み込む力
光の相対―――そしてベリアルが“変身”する
エースキラー『そ、その姿は!』
ベリアル『ハッ! よーやく盛り上がってきたじゃねぇか、なぁ小僧?』
京太郎『こ、この力はッ!?』
その身体には黒と赤、先の形態とは正反対の姿
荒々しい表情、そして荒々しい姿、鋭い爪
ベリアルは構えを取ると、狼狽するエースキラーへと走り出す
213: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 23:23:53.16 ID:kpx7DOA+0
エースキラーへと接近すると即座に爪を振るう
その一撃は先ほどよりも強力
エースキラー「―――!!?」
ベリアル『戻ってきたじゃねぇか、力がァ!』
京太郎『こんな凄い力!』
高揚する感情
さらに連続で爪撃を放っていけば、エースキラーはなんとか防ごうと両腕の武器を使う
ベリアルの爪をナイフで凌ぐが、即座にもう片手で弾かれる
ベリアル『今のオレに!』
京太郎『勝てるかよォ!』
エースキラーが左手の鉤爪でベリアルの次の攻撃を凌ごうとする
だが、今のベリアルの攻撃はそれでは凌げない
鉤爪ごと、ヅタヅタになるエースキラーの左手
ベリアル『気にくわねぇ類の奴の力だが、力に良いも悪いもねぇ、やるぞ!』
京太郎『でも、これは……』
ベリアル『小僧!』
京太郎『は、はい!』
214: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 23:33:01.28 ID:kpx7DOA+0
ティガが、アリブンタの右腕を光弾で吹き飛ばす
さらに左手のハサミをパワータイプの怪力で破壊した
アリブンタ「―――!!」
美穂子『強かった、けど……私は守りたいから、みんなを!』
力強い拳が、アリブンタの胴体を突く
後ろへと仰け反るアリブンタを掴まえると、そのまま回転
凄まじい回転力のまま、アリブンタを上空へと吹き飛ばす
ティガ「ハッ!」
きりもみ回転しながら空へ飛び上がるアリブンタへ、ティガは両手を構える
赤い光が、ティガの両手に集まっていく
ティガ「……ハァ!」
赤い光弾、デラシウム光流が真っ直ぐに伸びていく
アリブンタ「―――!!?」
上空のアリブンタに直撃すると同時に、爆発
爆風と共に、小さな光が地上へと落ちていくのが見えた
それに頷いたティガは、すぐにベリアルの方を見る
美穂子『あれは!!?』
215: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 23:40:45.96 ID:kpx7DOA+0
振るわれる腕、爪撃を止める術もなく食らっていくエースキラー
中身、であると思われるヤプールの戸惑う声が聞こえる
エースキラー『なんだ、なぜ闇の力が! レイブラッド星人の力が!』
ベリアル『誰かは知らねェが、力自体はお前らと似たようなもんだろォ!』
上からの爪撃、その勢いのまま回転したベリアルが蹴りを放つ
直撃してエースキラーが倒れる
走って接近したベリアルが倒れたエースキラーに爪を突き立て、上へと振るう
エースキラー「―――!!?」
ベリアル『こいつで決めるぞ小僧!』
京太郎『は、はいっ!』
両腕をいつも通りに構えるベリアル
左手を水平、右手を垂直、そして右手の手の平を目標に向けて
ベリアル『デスシウム光線!』
京太郎『で、デスシウム光線っ』
放たれた光線が、上空のエースキラーを貫き―――爆散
ベリアル『ハッ!』
右手を振るい、左手を顎にそえて首の音を鳴らす
216: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/11(土) 23:50:07.67 ID:kpx7DOA+0
黒きウルトラマン
最凶と言われたベリアルの姿がそこにはあった
京太郎の知らないもう一つの姿
ベリアル『これならしばらくは困らねぇな……相手が対策してこなきゃだが』
京太郎『ッ!」
ベリアル『あ? なんだ小僧、ぐっ!』
瞬間、ふらついて膝をつくベリアル
駆け寄ってくるティガが、ベリアルの傍に寄る
美穂子『ベリアルさん!?』
―――【インナースペース】
立っている京太郎は狼狽していた
周囲を見渡すその瞳に映る動揺
京太郎「なんだよっ、これ!」
いつもの白銀の空間とは違う
周囲には闇
京太郎「ま、纏わりつくな! くるな!」
ベリアル『闇を受け入れろ……!』
京太郎「そ、そんなふざけたことっ!」
腕を振るう京太郎が闇を遠ざけようとする
だが迫る闇は―――止まらない
218: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/12(日) 00:02:57.51 ID:WzyYGAuN0
インナースペースでの京太郎
そんな彼を知らない美穂子ことティガはベリアルの傍にいた
だが突如、ベリアルの腕が振るわれる
ベリアル「ガァッ!」
ティガ「グァ!」
その腕の直撃を受けて、ティガが倒れる
美穂子『な、なに!? ベリアルさん!?』
ベリアル「ガアァ!」
暴れるベリアルの手から光弾が放たれた
それが瓦礫を吹き飛ばす
美穂子『て、敵なの!? 闇の力に、操られてるとか!?』
ティガ「テァ!」
パワータイプの力で抑えつけようとするが、ベリアルの爪撃をもらう
ティガのカラータイマーが赤く点滅を開始する
ベリアル「ウオォォ!」
美穂子『ベリアルさん! 届かないの!?』
まだまだだと、近づくティガ
爪での攻撃を回避して胴体にタックルをする
そのままベリアルを地面に倒すも、身体を回転させられてマウントポジションを取られた
ベリアル「ウゴアァァ!」
そのまま両手は、ティガの首へと伸びた
グググ、とティガの首がしめられていく
219: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/12(日) 00:08:24.28 ID:WzyYGAuN0
―――【インナースペース】
京太郎「闇がっ!」
紅に輝く瞳の京太郎が、暴れていた
体を振りまわす京太郎は闇から逃れようとしている
京太郎「っ……!」
美穂子『ぐっ……べりある、さんっ』
京太郎「!」
美穂子『あなたはっ、うるとら、まん、人々を守るっ……』
瞬間、京太郎がハッと前を見る
そこに立つのは黒いウルトラマン
ベリアル『……小僧!』
京太郎「ベリアルさん!」
220: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/12(日) 00:17:16.26 ID:WzyYGAuN0
ティガに馬乗りになっていたベリアルの姿が消えていく
そして、立ち上がったティガが上空へと跳び上がった
空へ消えていくティガ
京太郎「……」
そんなティガを見ながら、京太郎は瓦礫の中で倒れている
全身ボロボロで、口の端には血がにじんでいた
京太郎「俺はっ……」
左手にはゼットライザー、そして右手に握られているのはレイブラッド星人メダル
その顔には、悔しさが滲んでいた
なにに対してのものかはわからない。京太郎自身にも……
京太郎「俺はっ……なにをしたって、弱いっ」
勢いよく上げた右手を、地面に叩きつけた
221: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/12(日) 00:22:56.89 ID:WzyYGAuN0
第5話【闇の力】 END
222: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/12(日) 00:35:47.18 ID:WzyYGAuN0
倒れている京太郎を、高い場所から見下ろすのは熊倉トシ
静かに息を吐きつつ周囲を見渡す
トシ「……誰がレイブラッド星人メダルなんか、って予想はつくけど」
右手でメダルを弾き、右手で撮る
トシ「メダルと執念、厄介だね……」
持っているメダルからあふれ出るのは―――闇
トシ「京ちゃんは弱いんじゃない、不器用なだけだよ」
憂鬱とした表情で別方向を見るトシ
そこには周囲を見回している美穂子、そしてはやり
おそらく京太郎を探しているのだろう
トシ「ベリアル、京ちゃんを……」グッ
223: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/12(日) 00:46:28.25 ID:WzyYGAuN0
―――次回予告
ベリアル:闇を受け入れろ
京太郎:闇!?
ベリアル:オレと、闇と共に!
京太郎:これは、この力はッ!
ベリアル:己の欲望を受け入れろ!
次回【欲望-EGO-】
ベリアル:テメェはウルトラマンになんてなれねェ!
京太郎:俺は、俺はァ!!
228: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/12(日) 22:13:55.79 ID:Gz/xyvFa0
―――【特異課施設:休憩所】
座って、コーヒーを飲んでいる京太郎
その視線の先には、暴れる黒いベリアル
『このベリアルと呼ばれる巨人はやはり敵なのでしょうか?』
『やっぱり黒くなったってことは今まで正体を隠してたんですかね?』
『最初から信用するべきじゃなかったんだよ! 荒々しいし、悪い宇宙人っぽいと思ってたね俺は!』
ワイドショーのコメンテーターたちが好き勝手を言うが、映っている映像では確かにベリアルが、否自分が暴れている
コーヒーを一口飲むと、深く息をつく
そしてティガに襲い掛かる自分が映った
『あのどこからかティガと呼ばれだした巨人も、襲われたようですね』
『あれもベリアルの仲間で自作自演なんじゃないの?』
『次に現れた時は軍が出撃してアイツらまとめて倒すべきだね!』
京太郎(俺が美穂子さんを……)
自分の手を見ていると、黒い手を幻視する
京太郎「ッ!」
『あれから三日が経ちました。復興はどうなってるのでしょう!』
京太郎「あれから……三日」
229: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/12(日) 22:17:34.09 ID:Gz/xyvFa0
第6話【欲望-EGO-】
230: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/12(日) 22:18:52.84 ID:Gz/xyvFa0
第6話【欲望-EGO-】
231: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/12(日) 22:28:02.48 ID:Gz/xyvFa0
(ミスった連投
―――三日前【鶴賀学園跡】
破壊された校舎、破壊された建造物
抉れた大地、瓦礫の中で発見された京太郎は車に乗っていた
特異課の息のかかった救助隊や、事後処理部隊なども集まっている
京太郎「……」
慕「お疲れさま……大丈夫?」
京太郎「ちょっと、疲れました……」
慕「そう、だよね……でも無事で良かった」
京太郎「ありがとう、ございます……」
そう応えながら、外を見る
救急隊に連れて行かれる加治木ゆみ
それを見送る福路美穂子
京太郎「あの人は……ちゃんとウルトラマンなんだな」ボソッ
慕「ん?」
京太郎「ああ、いえ……独り言です」
あはは、と笑って慕にそう返すと再び外を見る
瓦礫撤去や、爆散したエースキラーの破片を拾う事後処理部隊
その中に、指揮している熊倉トシもいた
京太郎『ベリアルさん……』
ベリアル『なんだ?』
京太郎『すみません、足引っ張っちゃって』
ベリアル『あれがオレの本来の姿と言っていい』
京太郎『え?』
ベリアル『闇の力を使い世界を手に入れるために暴れ、最後は殺された。それがオレだ』
京太郎『ッ!』
ベリアル『闇を受け入れろ、そうすれば力が手に入る』
京太郎『そんな、ことは……』
ベリアル『……』
京太郎『……ベリアルさん』
ベリアル『なら良い、今はな』
京太郎「……闇の、力」ググッ
―――三日前【鶴賀学園跡】
破壊された校舎、破壊された建造物
抉れた大地、瓦礫の中で発見された京太郎は車に乗っていた
特異課の息のかかった救助隊や、事後処理部隊なども集まっている
京太郎「……」
慕「お疲れさま……大丈夫?」
京太郎「ちょっと、疲れました……」
慕「そう、だよね……でも無事で良かった」
京太郎「ありがとう、ございます……」
そう応えながら、外を見る
救急隊に連れて行かれる加治木ゆみ
それを見送る福路美穂子
京太郎「あの人は……ちゃんとウルトラマンなんだな」ボソッ
慕「ん?」
京太郎「ああ、いえ……独り言です」
あはは、と笑って慕にそう返すと再び外を見る
瓦礫撤去や、爆散したエースキラーの破片を拾う事後処理部隊
その中に、指揮している熊倉トシもいた
京太郎『ベリアルさん……』
ベリアル『なんだ?』
京太郎『すみません、足引っ張っちゃって』
ベリアル『あれがオレの本来の姿と言っていい』
京太郎『え?』
ベリアル『闇の力を使い世界を手に入れるために暴れ、最後は殺された。それがオレだ』
京太郎『ッ!』
ベリアル『闇を受け入れろ、そうすれば力が手に入る』
京太郎『そんな、ことは……』
ベリアル『……』
京太郎『……ベリアルさん』
ベリアル『なら良い、今はな』
京太郎「……闇の、力」ググッ
232: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/12(日) 22:35:56.69 ID:Gz/xyvFa0
あれから、夢を見る
起きればほとんど憶えていない
だが―――追放と思考誘引、そして復讐心と破滅
ウルトラマンであろうとする京太郎自身と相容れない思想
幾度の復活を経ての……
―――疲れたよね? もう、終わりにしよう……!
―――さよなら……◆◆◆◆
虫食いのような記憶、記録
ただわかるのは、どこか釈然とした感覚
ベリアルの―――追憶
233: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/12(日) 22:50:38.85 ID:Gz/xyvFa0
京太郎「……はぁ」
テレビのワイドショーから聞こえる声
だがわざわざ消しに、テレビに近づくのも面倒だった
加治木ゆみは未だに起きない、アリブンタこと―――津山睦月も同じく
京太郎「……」
鶴賀学園の面々が帰ってきたことに喜んでいた桃子たちを思い出す
美穂子の方も風越の生徒たちも起きたようで喜んでいた
清澄の生徒の情報はまだない
それに、エースキラーのメダルは『ゴルザ・メルバ・超コッヴ』のメダルのように、どこかに持ち去られたようだった
『ティガはその翌日、昨日には子供を庇う姿が目撃されてますね』
『まさに自愛の巨人、ですか』
美穂子は昨日、現れた怪獣と戦いがあったそうだ……
京太郎「……」
『ベリアルはやはり敵だとすべきと思う声が多いようですね』
瞬間―――テレビが消された
240: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/12(日) 23:16:46.72 ID:4z7Chdqg0
4、福路美穂子
テレビを消したのは福路美穂子だった
ハッとする京太郎に、美穂子が苦笑を浮かべる
美穂子「そのね、あまり……見てた?」
京太郎「いえ、俺も消そうと」
その言葉に、美穂子はホッと息をついて京太郎の傍に座る
美穂子「……ベリアルさんはね」
京太郎「っ……はい」
次の言葉を待つ
美穂子「きっと、なにかおかしかったの、あんなことするわけない」
京太郎「わかりませんよ、そんなの」
美穂子「私と一緒に戦ってくれたベリアルさんがそんなことするはずない。瑞原さんを助けたあの人なら」
京太郎「気まぐれかもしれない」
美穂子「いえ、一緒に戦った私だから……わかるの」
その言葉に、京太郎は自嘲するような笑みを浮かべる
テレビを消したのは福路美穂子だった
ハッとする京太郎に、美穂子が苦笑を浮かべる
美穂子「そのね、あまり……見てた?」
京太郎「いえ、俺も消そうと」
その言葉に、美穂子はホッと息をついて京太郎の傍に座る
美穂子「……ベリアルさんはね」
京太郎「っ……はい」
次の言葉を待つ
美穂子「きっと、なにかおかしかったの、あんなことするわけない」
京太郎「わかりませんよ、そんなの」
美穂子「私と一緒に戦ってくれたベリアルさんがそんなことするはずない。瑞原さんを助けたあの人なら」
京太郎「気まぐれかもしれない」
美穂子「いえ、一緒に戦った私だから……わかるの」
その言葉に、京太郎は自嘲するような笑みを浮かべる
241: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/12(日) 23:34:21.44 ID:eqaBN+JO0
京太郎「攻撃、されたのに?」
美穂子「ええ、された……闇の力に、飲まれてしまって」
そんな言葉に、京太郎は美穂子に気づかれないようにしながらも拳を握りしめる
相対している美穂子は、持っていたアイスティーを一口
美穂子「私は……それでも、信じたい。人々を助けるという私と同じ願いを持ったウルトラマンを」
京太郎「……」
美穂子「それに最近、夢を見るの」
京太郎「え?」
美穂子「ティガのかつての記憶、別のティガの……闇の巨人の」
京太郎「それって」
美穂子「っ、ごめんね。私のことばかりで」
ごまかすように笑う美穂子を前に、京太郎は小首をかしげた
美穂子「でも京太郎くんも信じてあげて欲しいな、ベリアルさんのこと」
京太郎「俺は……」
信じられないのは、ベリアルではなく自分自身だ
美穂子「信じたい、んだよねきっと」
京太郎「っ」
美穂子「……だから、悩んでる」
京太郎「なんでもわかるんですね」
美穂子「なんでもは、わからないわ」
そう言うと、そっと京太郎の頬に触れる
京太郎「……光の、ウルトラマンですね」
美穂子「いいえ、私は人間よ」
その輝きが、優しさが、今の京太郎には眩しい
242: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/12(日) 23:51:32.03 ID:eqaBN+JO0
そっと、京太郎の手に添えていた手を降ろす美穂子
ふふっ、とほほ笑むその顔をみて京太郎もなんとか笑みを浮かべた
美穂子「……あとこれ、熊倉さんから」
京太郎「え?」
美穂子「昨日、倒した怪獣のメダル」
スッとテーブルの上に置かれたメダルは、昨日ティガが戦った怪獣のもの
京太郎「これは……」
美穂子「熊倉さんに管理は京太郎君だからって」
京太郎「はい、ありがとうございます」コクリ
頷いて、それを受け取る
昨日の戦いはトシから『待機しているように』と言われた
理由はわかっているつもりだ
美穂子「危うく松本城を壊されちゃうところで大変だったのよ……ベリアルさんもいてくれたら良かったんだけど」
京太郎「破壊するかもしれませんよ、むしろ」
ついつい、悪態をついてしまう
良くないなと思いつつ、片手で頭を押さえる
京太郎「こんなんだから待機命令なんて出るんだ」ハァ
美穂子「熊倉さん、京太郎くんが悩んでたから心配してたのよ?」
京太郎「……すみません」
美穂子「ううん、謝らなくて、良いから……その、なにか悩みがあるならしっかりと話して?」
京太郎「……」
美穂子「今じゃなくて、気が向いた時で良いから」
京太郎「……はい」コクリ
そう返事をして、立ち上がる
紙コップの中のコーヒーを飲み干すと、ゴミ箱に入れてそこから立ち去った
残った美穂子が背もたれに体を預ける
美穂子「結構、京太郎くんに助けられてたのかも……」
その表情は僅かに暗かった
243: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 00:04:43.95 ID:T3HrJP+W0
―――【作戦室】
トシからの呼び出しで部屋に入る
そこにいたのは熊倉トシ一人だった
はやりもいないが、まだ怪我が完治していない可能性もある
京太郎「えっと、なんですか?」
トシ「……レギュラン星人から挑戦状だ」
京太郎「部長……」
トシ「ほい」
モニターが変わる
映し出されるのは、データなのだが知らない文字
そうしていると聞きなれた声が頭に響く
ベリアル『なるほどな、決闘か』
京太郎「決闘?」
トシ「そういうこと」
京太郎「はぁ? 宇宙人が?」
トシ「エースキラー、ヤプールの尖兵を倒したからこういうこともあるだろうね」
京太郎「一体どうすれば?」
黙って頷く
トシ「悪質宇宙人レギュラン星人……間違いなく罠を張ってくる」
京太郎「……」
トシ「しかも生身で来いとのことだ」
京太郎「……間違いなく罠じゃないですか」
トシ「だからそう言ってる」
244: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 00:11:04.92 ID:T3HrJP+W0
深い息を吐くトシを見る京太郎
その瞳には不信感、トシに対するかそれとも―――自分か
トシ「目的はティガだそうだ」
京太郎「……美穂子さん」
トシ「まぁ仲間を連れて来ても良いそうだけど」
京太郎「舐めやがって……」
ベリアル『ハッ! あれを見られりゃな』
京太郎「っ」
顔をしかめた京太郎のことを察したのか、トシは頷く
トシ「……ともかく、待ち合わせは今夜21時」
京太郎「夜ですね」
トシ「福路と一緒に待ち合わせ場所に……三時間前には着いとこう、周囲を調べる」
京太郎「大丈夫なんですか?」
トシ「そんなわかりやすいことするとも思えないけど、一応ね」
そう言って、トシはしっかりと京太郎の瞳を見つめる
トシ「頼んだ……京ちゃん」
京太郎「……はい」
245: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 00:27:36.62 ID:T3HrJP+W0
―――そこから数時間後【鶴賀学園跡】
周囲に車両
京太郎は簡易椅子に腰を下ろしてコーヒーを飲んでいた
すると、遠くにスタッフと話している少女を見つける
京太郎「……美穂子さん」
ベリアル『小僧、今回は戦いになるが』
京太郎『俺に、やれますかね』
ベリアル『受け入れろ』
京太郎『なにがですか』
ベリアル『闇を受け入れろ』
京太郎『闇!?』
立ち上がりそうになるも、グッと堪える
思い出すのは這いよって来る黒き闇
京太郎『光の巨人が、闇ですか……過去と関係が?』
ベリアル『過去も未来も関係ねぇよ。ただ今必要なのは、闇だろ?』
京太郎『それで、また暴走して人々を守らなきゃいけない俺がっ』
ベリアル『おいテメェ』
京太郎『ウルトラマンは人々を守らなきゃいけないんですよ!?』
ベリアル『お前はウルトラマンにはなれない』
京太郎「ッ!」
ベリアル『少なからず、お前が考えるようなウルトラマンにはな』
京太郎『才能、ですか?』
ベリアル『ああ』
拳を強く握りしめる
今年、数ヶ月前に既にそれは味わっているのだ
自分は取るに足らぬ存在、外部の人間―――努力はした。ここ最近だってそうだ
だが、どうしたって追い付けない
それに自分より麻雀歴が浅い怪物たちが沢山いることも知った
京太郎「っ……俺は」
美穂子「京太郎くん」
京太郎「美穂子さん……」
246: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 00:39:50.90 ID:T3HrJP+W0
隣に座る美穂子
京太郎の視線の先には破壊された鶴賀学園―――瓦礫の山
周囲に人がいないのを確認してから、口を開く
京太郎「美穂子さんは、どうして戦えるんですか?」
美穂子「え?」
京太郎「人間のため、ですか?」
美穂子「ええ、戦えないすべての人々のため……」
京太郎「……」
美穂子「私はその願いのために、ウルトラマンとなって戦える」
遠くの星を見る美穂子
京太郎はそれに習って空を見た
街灯がない故に目に映るのは満点の星々
美穂子「できるなら、この星々すべてを守りたいとさえ思う」
京太郎「……光の巨人、ウルトラマンにふさわしいですね」
美穂子「こんなに欲張りなのに?」
京太郎「欲張り?」
美穂子「うん、欲張りだと思う……私」クスッ
京太郎「……でも、その願いは」
京太郎(俺が思う。俺がなりたいウルトラマンだ)
247: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 00:49:16.12 ID:T3HrJP+W0
美穂子「でも、京太郎くんは凄いと思う」
ふと、美穂子が発した言葉に京太郎は小首をかしげる
京太郎「え?」
美穂子「……誰かを守るために、戦ってるでしょ?」
それはそうだ。そうありたいと思っている
ウルトラマンであるならば、そうでなければいけないと思っている
京太郎「でも、美穂子さんみたいな」
美穂子「京太郎くんは、私に言ったよね」
京太郎「え?」
美穂子「義務感で戦うものじゃないって」
京太郎「俺は義務感なんかじゃ!」
美穂子「本当にそう?」
閉じられていた青い目が京太郎を見つめる
硝子のように綺麗な瞳、それが真っ直ぐと京太郎の赤い目を見つめた
交差する視線、そして―――
ピピピピ
京太郎「ッ!」
美穂子「時間よ……行きましょう」
京太郎「……はい」
248: ◆oiHx77pVqQ 2021/09/13(月) 00:55:10.12 ID:lCIlMwEA0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
都内 某駅前
京太郎「…日陰でこの暑さなのはヤバいっすね」パタパタ
菫「…ああ。十日連続で真夏日だとかなんとか」
京太郎「温暖化の影響ですか」
菫「どうだろうな…ん?」ブー
菫「…亦野からだ、席が取れたらしい」
京太郎「こっちも…着いたみたいですよ」
都内 某駅前
京太郎「…日陰でこの暑さなのはヤバいっすね」パタパタ
菫「…ああ。十日連続で真夏日だとかなんとか」
京太郎「温暖化の影響ですか」
菫「どうだろうな…ん?」ブー
菫「…亦野からだ、席が取れたらしい」
京太郎「こっちも…着いたみたいですよ」
250: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 01:13:14.40 ID:cmUhPCtn0
二人が瓦礫の中を歩く
目的地地点まで数メートル
ガッツハイパーを持つ京太郎と美穂子
京太郎(俺が、義務感で……)
ベリアル『小僧、くるぞ』
京太郎「っ!」
美穂子「久っ!?」
そこに立っているのは竹井久
素早く、京太郎はガッツハイパーのカートリッジをスタン性のものに変える
美穂子は銃口を震えさせていた
久「フフフフ」
竹井久の姿をしたレギュラン星人が手を向ける
敵意を察した瞬間、京太郎は迷わずトリガーを引く
だがその
京太郎「ッ!」
美穂子「京太郎くんっ!?」
ベリアル『ハッ! 悪くねぇ!』
京太郎「実体じゃない……」
美穂子「なんで、あんな迷いなく……」
京太郎「スタンのものですし……」
銃を降ろす京太郎
その隣で、美穂子も同じく銃を降ろした
目の前の幻影に攻撃手段はないだろうと、それ以外の周囲を警戒する
京太郎「それに、美穂子さんが危なかったし」
ベリアル『……』
京太郎「俺が、守るから」
そんな言葉に、美穂子が少しばかり頬を染める
252: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 01:28:06.84 ID:cmUhPCtn0
美穂子「そ、そのっ……」
久『戯れるな!』
美穂子「え、きゃあっ!?」
瞬間、美穂子を囲むように金色の輪が現れる
京太郎が素早くガッツハイパーを輪に向けるが、なにかをする間もなく消えた
顔をしかめる京太郎が幻影の方を向く
京太郎「美穂子さんをどこにっ!」
久「消えろ雑魚が!」
幻影から、光弾が放たれた
京太郎「ッ!!?」
直撃は回避するが、地面に当たった爆風で吹き飛ぶ
そのまま瓦礫の中に突っ込む京太郎
レギュラン星人の幻影はそのまま消える
京太郎「ぐっ、美穂子さん……!」
ベリアル『よく避けた。いくぞ』
京太郎「……はい」
ベリアル『フッ! この礼はきっちりしてやる』
253: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 01:41:21.85 ID:vAfj5Apj0
―――【???】
そこにいるのは、福路美穂子
立ち上がって目の前の竹井久を見る
笑みを浮かべる竹井久が、美穂子の構える銃、その銃口へと近づいていく
久「どうした? 撃ってみろ」
美穂子「っ……」
震える手、銃口の向きは定まらない
久「……ふんっ!」
手から放たれた光弾の直撃を受けて、美穂子は吹き飛び壁にぶつかる
美穂子「っ……あ、カハッ……」
腹を押さえてうずくまる美穂子は、そのまま久を見上げる
ガッツハイパーも離れた場所に落ちていた
久「フフフフ、力は十分溜まった、もう実体を保てるだけのなぁ!」
突如、久が前のめりに倒れる
そして元立っていた場所にいるのは宇宙人―――レギュラン星人
歪なその姿を晒して、高笑いをする
レギュラン星人「フハハハハ! ようやく元の姿へと戻れたぞ!」
美穂子「っ……」
レギュラン星人「この姿なら、撃てたかぁ?」
美穂子「……っ」
スーツの内側からスパークレンスを取り出すが、すぐに手を蹴られる
美穂子「うあっ!」
吹き飛ばされるスパークレンス
レギュラン星人はそれを見てまた身体を揺らして笑った
倒れている久が、僅かに目を開く
久「み、ほこっ……」
美穂子「久っ!?
久「わ、たしっ……」
美穂子「っ!」
レギュラン星人「二人仲良く地獄に行け! 二度とバルタン星人などと間違えさせんぞ!」
254: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 01:53:24.92 ID:vAfj5Apj0
久を蹴って転がすレギュラン星人
美穂子が久の体を労りながらも、レギュラン星人を睨む
珍しく、怒りの表情を浮かべている美穂子
だがそれも―――無駄
レギュラン星人「死ねェ!」
久「ご、めんね……みほ、こ……」
美穂子「京太郎くんっ」グッ
瞬間、銃撃がレギュラン星人の背中へと直撃する
レギュラン星人「ぐおっ!?」
「オラァッ!」
さらに、走ってきた“京太郎”はレギュラン星人の背中に蹴りを打ち込む
横に転がるレギュラン星人に、さらに京太郎は片手でガッツハイパーを構えて連射
バタバタと転がるレギュラン星人だが、ほぼ全ての銃弾が直撃
京太郎「!」
素早くカートリッジを排出して別のものを差し込み、連射
立ち上がって走り出すと、京太郎が入ってきた扉から外へと飛びだした
レギュラン星人「うおぉぉぉぉ!?」
ベリアル『クハハハハハ! 無様に逃げてやがる!』
京太郎「……」
静かに、ガッツハイパーを降ろすとすぐに振り返る
美穂子と久の元へと膝を降ろした
久は京太郎の顔を見上げる
久「す、が……く、ん?」
京太郎「はい、助けるのが遅れました……」
久「ん……あり、がとう」
美穂子「っ……!」
256: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 02:03:28.38 ID:vAfj5Apj0
急いでスパークレンスを拾いにいく美穂子
京太郎はスーツの上を脱ぎ丸めると、久の頭の裏に枕のように置く
瞬間―――京太郎たちがいたその部屋が幻のように消えた
京太郎「これは、なんつー技術!」
美穂子「あれ!」
京太郎「!」
指差す方に視線を向けると、そこにはレギュラン星人―――しかも、大きい
美穂子「っ!」
京太郎「……」
美穂子「みんなは私が、守るから!」
そして、美穂子がスパークレンスを掲げる
眩い光と共に、光の巨人―――ウルトラマンティガが現れた
それを見ている久が、手を伸ばす
久「ひ、かり……」
京太郎「……」
レギュラン星人へと駆けだすティガ
素早い格闘でどんどんと離れた場所へと行く
入れ替わるように、車が走ってきた
京太郎「トシさん!」
トシ「京ちゃん……竹井か、こっちで保護する」
京太郎「……お願いします!」
260: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 21:47:54.69 ID:HYsWPipr0
鶴賀の廃墟近く、瓦礫の中をレギュランと星人が走る
レギュラン星人『死ねェ!』
ティガ「フゥッ……ハッ!」
ティガがスカイタイプへと変わると、連続で打撃を打ち込んでいく
連続回し蹴りでひるむレギュラン星人
怒りに震えるレギュラン星人が、素早く光弾を放つ
ティガ「テァ!」
レギュラン星人『将軍さえいれば貴様などォ!』
光弾を弾いたティガを目の前に、地団駄を踏む
そんな戦いを、瓦礫の中で見つめる影
スーツを着た宇宙人……ゼットン星人が、そこにはいた
ゼットン星人「ならば、こういうのはどうだ」
そう言うと、メダルを取り出してゼットライザーへと差し込む
ブレードがスライドする
『Erekingu』
そして、光と共に現れるのは黒い斑点模様のイエローの怪獣
黒い角を回転させながら、その怪獣はティガへと迫る
ティガ「!?」
エレキング「―――!」
レギュラン星人『ゼットン星人か!』
不意を突かれたティガが、エレキングのパンチの直撃を受けて転がる
膝をついて起き上がったその瞬間、エレキングの尻尾が首に巻きつく
美穂子『ぐっ!』
エレキング「―――!」
261: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 22:01:24.88 ID:Du3dRABn0
エレキングが咆哮を上げると、その尻尾に電撃が流れていく
その電撃は、もちろんティガにもだ
ティガ「ウアッ!」
美穂子『ガッ、アアアァッ!!?』
エレキング「―――!」
レギュラン星人『いいぞぉ! 私はここで見ている!』
高笑いするレギュラン星人に銃撃
大したダメージでないものの、痛みはあるのか少しばかり跳ねる
銃撃があった方向を見れば、そこには一人の青年
レギュラン星人『またお前か!』
京太郎「……俺は、戦う」
ベリアル『覚悟は決まってんのか?』
京太郎「決まってませんよそんなもん、とりあえずやります!」
ベリアル『ハッ、まぁ良い……やってみせろ!』
ゼットライザーのトリガーを引き、ゲートへと飛び込む
白銀の空間に、京太郎は闇を幻視するが頭を振るい意識を戻す
ウルトラアクセスカードを差し込んだ
『キョウタロウ・アクセスグランテッド』
ベリアル『おもしろい、やれるのか?』
京太郎「やれるだけは!」
そして、トリガーを引く
京太郎「ベリアァルッ!」
262: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 22:15:53.92 ID:Du3dRABn0
光と共に現れるベリアルが、エレキングへと爪撃を放つ
ベリアルクローによりエレキングがひるみ、背後へと下がる
それにより、エレキングの尻尾がティガの首から外れた
京太郎『美穂子さん……ベリアルさん、お願いします』
ベリアル『ハッ、しょうがねぇな』
京太郎『ありがとう』コクリ
黙ってティガの方を見るベリアル
ティガは首を押さえながら立ち上がると、ベリアルの方を向いて頷く
それに対して、ベリアルは一瞥するとエレキングの方へと向き、首を鳴らした
ベリアル『いくぞォ!』
美穂子『っ、はい!』
初めて聞いたベリアルの声に、強く返事を返して立ち上がるティガ
ベリアルはエレキングへ、ティガはレギュラン星人へと走った
エレキングが尻尾を振るうも、ベリアルはベリアルクローでその尻尾を弾く
京太郎『ベリアルさん、こいつは!』
ベリアル『こいつの攻撃パターンはよーく知ってるぜ! ピット星人のペット!』
口らしき部分から光線が放たれるが、体を逸らして回避
素早く体勢を戻すと光弾を放ってエレキングをひるませる
さらに接近すると左手で爪撃を放ち、右拳をぶつけた
エレキング「―――!」
京太郎『これなら!』
263: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 22:24:42.62 ID:Du3dRABn0
瓦礫の中、ベリアルとエレキングの戦いを見ているゼットン星人
肩を落とすような動作を見せたゼットン星人が、メダルを取り出した
さらに、ゼットライザーへとメダルを差し込む
ゼットン星人「サービスだ。ベリアル相手には使いたくはないのだが……潰せば問題はない」
ブレードをスライドさせる
『Redking』
そして、暗い光と共に新たな怪獣が現れた
髑髏怪獣レッドキングは、エレキングと戦うベリアルへと拳を打ち込んだ
不意打ちにより、ベリアルが吹き飛んで転がる
264: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 22:42:09.65 ID:Du3dRABn0
転がったベリアルが膝立ちで起き上がり、即座に光弾を放つ
だがそれはエレキングが光線を放ち相殺
ベリアルの前方に並ぶ二体の怪獣
ベリアル『チッ、昔なら一撃だったがなァ……!』
京太郎『くっ、こいつらっ!』
エレキングからの光線を、転がって回避するベリアル
だが次の瞬間に走ってきたレッドキングの蹴りを受けて、後ろに大きく吹き飛ぶ
ベリアル「ウガァッ!」
地上に体が叩きつけられるが、どうにか立ち上がる
レッドキングが投擲した岩を爪撃で粉々にした
だが次にエレキングからの光線、それを両腕で凌ぐ
京太郎『ぐっ……!』
ベリアル『レイブラッド星人メダルを、闇の力を纏え!』
京太郎『あ、あれを使ったらまた!』
光線を凌いでいたも、押し負けて倒れる
ベリアル『ぐっ、オレは同じ話をするのが好きじゃねぇ……だが言ってやる』
京太郎『ッ!』
ベリアル『闇を受け入れろ!』
その言葉に、京太郎は頭を横に振る
京太郎『俺は、人々を守らなきゃいけないんです!』
ベリアル『小僧ォ!』
京太郎『じゃなきゃ……俺は、ウルトラマンにっ!』
ベリアル『何度も言わすんじゃねェ!』
京太郎『!!』
ベリアル『テメェはウルトラマンになんてなれねェ!』
京太郎『ッ!』
265: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 22:59:22.08 ID:Du3dRABn0
迫るレッドキングを、どうにか受け流す
エレキングからの光弾を、レギュラン星人と戦っていたティガが光弾を放ち凌ぐ
ベリアルは爪撃でエレキングを退けた
ベリアル『テメェの本来の望みは、欲望はなんだ!』
京太郎『俺の、欲望……?』
思い出されるのは、美穂子との会話
美穂子(こんなに欲張りなのに?)
京太郎(欲張り?)
美穂子(うん、欲張りだと思う……私)
京太郎『欲と望み、欲望……俺の』
ベリアル『借りものの望みじゃねぇ、テメェがテメェで、望んでるものは!』
美穂子(でも、京太郎くんは凄いと思う)
美穂子(……誰かを守るために、戦ってるでしょ?)
反芻される美穂子の言葉
自分自身がやるべきこと、自分自身がやりたいこと
そしてやってきたことと、自分が見えなくても他人には見えていたもの
ベリアル『なぜ闇を否定する。テメェが否定する理由なんてねぇはずだ』
その通りだ。自分は“ウルトラマン”ではないしなれない
そして“光の巨人”ではない
右手に握ったレイブラッド星人のメダルからあふれ出す闇
京太郎『そうか……これは、この力はッ!』
流れる水に逆らうからこそ、力は行き場を失い暴走する
ベリアルは最初から答えを言っていた
京太郎『俺の、願い、欲望は―――!』
266: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 23:21:07.93 ID:Du3dRABn0
須賀京太郎はただの普通な思考を持った人間だ
そうだったのに、ウルトラマンという力を手にした結果がこれだった
ただ人が良いだけの京太郎は、美穂子のような思考を持てはしない
故に―――
ベリアル『己の欲望を受け入れろ!』
―――人々の、知らない他人を守るなど、心底から思うことなどできるわけがない
京太郎『そうか、そうだったのか!』
右手のレイブラッド星人メダルを弾く
溢れ出る闇、それが京太郎の周囲へと溢れだす
その赤い瞳が、輝きを増した
京太郎『他人なんてどうでもいい! 俺が守りたいのは、俺の守りたいものだけだ!』
落ちてくるメダルを掴むと、ゼットライザーへと差し込んだ
ベリアル『さぁ、戦るぞ小僧!』
京太郎「俺は、俺はァ!!」
ベリアル『オレと、闇と共に!』
京太郎『ウルトラマンにはなれない! 今は!』
勢いよく、ブレードをスライドさせる
京太郎『それでも!』
『Alien Rayblood』
京太郎「たたかぁう!」
暗黒満ちるインナースペースで、京太郎は勢いよくゼットライザーを振り上げた
ベリアル『叫べ!』
京太郎『ベェェリアァァァァルッ!!!』
そして―――トリガーが引かれる
268: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 23:36:43.49 ID:Du3dRABn0
溢れ出るのは、闇の光
エレキング「―――!?」
レッドキング「―――!?」
美穂子『あれは!』
レギュラン星人『べべべ、ベリアル!?』
そこに存在するのは―――暗黒の皇帝
黒いボディに赤いライン
そして、その両手にあるのは鋭い爪
ベリアル「ハアァァ……」
深く、息をするようにそこに立つ姿
ベリアル『いくぞ、小僧ォ!』
京太郎『この力、いけます!』
受け入れた闇の力をその身に纏い、ベリアルが跳びだす
地を蹴り、レッドキングとエレキングへと跳ぶ
放たれるエレキングの光線と、レッドキングが岩を投擲する
ベリアル「ハアァ!」」
岩を爪撃で破壊し、両腕でエレキングの光線を凌ぐ
ベリアル『無駄だァ!』
京太郎『こいつでェ!』
レッドキングとエレキングの間に着地すると同時に、二体に爪撃を与える
269: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/13(月) 23:54:21.80 ID:Du3dRABn0
エレキング「―――!」
レッドキング「――-!」
さらにベリアルは爪を振るって二体を攻撃しながら、後ろに下がる
手から雷を放ち、レッドキングを攻撃
苦しみ、怯むレッドキングへと接近して膝蹴りを放って倒す
京太郎『闇の力も、良いもんっすね!』
ベリアル『闇だとか光だとか関係ねぇよ! 今回はたまたま闇を受け入れれば強い力が手に入ったにすぎねェ!』
京太郎『え?』
ベリアル『テメェの望みを達成するためならなんだって良い。利用してやれ』
その言葉に、笑みを浮かべながら京太郎は頷く
エレキングの尻尾が伸びてくるがベリアルはそれを左腕で受け止める
その尻尾から、電撃が奔る
ベリアル「グッ……!」
京太郎『がっ、んなもん!』
右腕を振り上げると、勢いよく振り下ろす
赤い斬撃と共に、エレキングの尻尾が勢いよく切断される
エレキング「―――!」
京太郎『まず一ぉつ!』
ベリアル『バラバラにしてやる!』
起き上がってくるレッドキングを音波攻撃で吹き飛ばす
両腕を開いて接近しようとするエレキングにベリアルが腕を振るう
ベリアル「ウォラァ!」
京太郎『斬り刻む!』
何度も腕を振るって斬撃を生み出す
エレキングはその攻撃を受け続ける
トドメと言わんばかりに、ベリアルが両手を水平に振るう
ベリアル・京太郎『デスシウムリッパー!』
最後に放たれた斬撃がエレキングの首を落とす
それを機に、エレキングの体はクローで攻撃された部分からバラバラと崩れていく
レッドキング「―――!」
ベリアル『見えてんだよ!』
京太郎『そこォ!』
背後から襲いかかるレッドキングに、振り返ると同時に斬撃を放つ
270: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/14(火) 00:13:27.40 ID:edgxsDz+0
レギュラン星人と戦っていたティガ
なぜか風力発電機、鉄製の風車を持って襲い掛かる
ティガ「フッ……ハァ!」
紫色のティガが、赤へと変わる
振るわれたその風車を、左腕で凌ぐと右腕を突きだす
レギュラン星人「ぐおぉ!?」
後ろへと下がるレギュラン星人に接近すると、さらに拳を打ち込む
連続で何十発もの拳を打ちつけられて打ち上げられるレギュラン星人
地面へと激突すると、身体を押さえながら起き上がる
レギュラン星人『おのれ、ティガァ!』
美穂子『許せない。あなたみたいな!』
レギュラン星人『許せないのは私のほっ、のわぁっ!?』
突如とした衝撃に、レギュラン星人が振り返る
そこにはレッドキング
そちらも追いつめられているようで背中合わせて自らの敵を見やる
ベリアル「ハアァァァッ!」
美穂子『ベリアルさん、やりましょう!』
ティガが、両腕を脇にやり手を真っ直ぐに伸ばすと紫色の光が溢れる
ベリアルは右腕に黒い光と紅の雷を纏う
美穂子からの声に、頷く京太郎
京太郎『俺が守りたいもののために―――』
ベリアル『ハッ……守るもの、ねぇ』
京太郎『―――闇の力、お借りします!』
二人の巨人が、同時に腕を組む
ベリアル・京太郎『デスシウム光線!!』
ティガ「ハァッ!」
レッドキングとレギュラン星人に、光線が直撃
レギュラン星人『光と闇よォ!』
髑髏怪獣と悪質宇宙人が―――爆散する
271: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/14(火) 00:22:46.63 ID:edgxsDz+0
爆煙が晴れると共に、炎の中にお互いを見やる
二体のウルトラマン
黒きベリアルが、ティガを見据えた
美穂子『ベリアルさん……』
ベリアル『……小娘、貴様はウルトラマンだ』
美穂子『え』
それに、なにを返すわけでもない
ベリアル「ハァッ!」
真上を向いて、飛び上がる
美穂子『ベリアルさん……』
ティガ「ハッ!」
それを見送り、ティガもまた両手を上に上げて飛び去っていく
272: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/14(火) 00:43:01.07 ID:edgxsDz+0
地上に立つのは須賀京太郎
静かに、息をついて右手にあるレイブラッド星人メダルを見る
そこから僅かに感じる闇の力に、口を綻ばせた
京太郎「闇も光もない、か……ウルトラマンじゃないからこそ」
きっと自分にしかできないことがある
そのメダルをホルダーに入れると、今度は左手のメダルを見た
そこにはレギュラン星人とレッドキング、そしてエレキングのメダル
京太郎「今回は全部頂戴できたな……」
ベリアル『ハッ、おもしろい』
京太郎「そうっすか?」
ベリアル『オレはな』
そんな言葉に苦笑を浮かべながら歩き出す
すぐに熊倉トシと車を見つけて近づいていく
トシ「……おかえり」
京太郎「ただいま、戻りました」
トシ「どうだった?」
京太郎「……わかってるでしょ?」
トシ「ああ、目的のためなら過程と手段をある程度は妥協して戦う。そういうことができる京ちゃんだから、良いんだ」
京太郎「褒めてます?」
トシ「まぁ闇の力を使い戦う。そういうアンタだから……」
そう言って言葉を止める
京太郎が口を出そうとするが、トシが微笑むのでそちらに視線を向けた
そこには金髪を揺らす少女
京太郎「……美穂子さん」フッ
美穂子「京太郎く~ん、熊倉さ~ん!」
駆けてくる元気そうな美穂子
普段であれば“揺れてる”とか思うとこだが、そういう思考でもない
トシが車へと乗り込む
美穂子「はぁっ、はぁっ……」
京太郎「お疲れ様です」
美穂子「うん、京太郎くんも……銃で撃ってくれたでしょ?」
京太郎「あ……はい」フッ
美穂子「ありがとう!」ニコッ
273: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/14(火) 00:49:29.45 ID:edgxsDz+0
そんな美穂子の頬に、京太郎はそっと手を添える
今朝そんなことがあった気がした
だが美穂子は、顔を真っ赤に染める
京太郎「こちらこそ、ありがとう……」
美穂子「え、あっ……う、うんっ!」ニコッ
その輝く笑顔―――京太郎が守りたかったものの一つ
自分の守りたいものだけを、ただ守りたい
それが須賀京太郎の―――欲望
275: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/14(火) 00:57:35.71 ID:edgxsDz+0
第6話【欲望-EGO-】 END
276: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/14(火) 01:07:57.38 ID:edgxsDz+0
―――次回予告
順子:ウルトラマンを追うわよ!
トシ:特異課に取材だって
京太郎:断ってよ
大介:待ってくださっ
順子:ウルトラマンー!
はやり:婚期、お見合い、ぐふっ
京太郎:はやりさーん!
順子:ウルトラマーン!
次回【THE・パパラッチ】
はやり:ザをジって呼んでいいのはアルフィーだけだって!
京太郎:特異課やめていい?
トシ:ダメ
281: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/15(水) 16:18:52.37 ID:kBZSaiy10
―――【???】
真新しい白い壁、慌ただしくデスクに向かってPCとにらめっこをする社員たち
そんなオフィスの外の廊下に立っているのはカメラマン、山口大介
「お待たせー」
大介「ああ、で、どうっすか?」
やってくるのは西田順子
順子「オッケー取材許可おりた」
大介「ほらーだからダメだって……え?」
順子「特異災害及び特異現象及び超常現象対策課……通称特異課の取材許可、おりたよ」
大介「なんで!?」
順子「さぁ、でもあの怪獣災害からわずかな時間で設立されて事後処理まで手を出してる課、きなくさいねぇ」
大介「まぁ前々から存在してた説が有力っすよね……にしても許可おりるとは」
顔をしかめる大介相手に、順子はその背中を叩いて笑う
順子「やるわよ。絶対あの人ら……ウルトラマンと関係あるから!」
大介「……いやいや、あれと? まさかぁ」
順子「いえ、絶対怪しいわ! それに私、これに関しては雀士失踪とも関わりあると思ってるし」
大介「そう全部つながるもんですかねぇ」
順子「繋げるのが私たちの仕事でしょ……あ、もちろんちゃんと下調べした上で、だけど」
大介「……嫌な予感するなぁ」
順子「じゃ、いくわよー!」
意気揚々と歩いていく順子の背中を見ながら、大介は重々しい足取りで着いていく
282: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/15(水) 16:33:03.39 ID:kBZSaiy10
―――【特異課施設:作戦室】
あれから四日、そこにいるのは須賀京太郎のみだ
座っている京太郎が、いつもみんなで囲むテーブルの上にメダルを数枚並べる
先日、美穂子から受け取ったゴモラメダルとレッドキング、エレキング、レギュラン星人
京太郎「さらに……岩石怪獣ガグマのアルファとベータ、深海怪獣グビラ」
合計七枚のメダル、それらを集めてホルダーへと入れる
ガグマのアルファとベータは自分と美穂子が麻雀で倒した他校の生徒から手に入れた
苦戦はさせられたが、別段問題もなく
グビラはベリアルが通常の状態……アーリースタイルで倒した
京太郎「メダル、集まってきたけど黒幕はどこなんだろ」
ベリアル『さてな、だがこの不愉快な感覚が薄れてきてやがる……黒幕も絞れるだろ』
京太郎「だと良いんですけど……」
ウィーン
京太郎「っ!」ビクッ
トシ「どしたんだい……ああ、そういうことか」
美穂子「どういうことですか?」
入ってくる二人に、京太郎は息をつく
派手な“独り言”を見られなくて済んだようだ
美穂子が隣に座り、トシが対面に座る
トシ「さて、京ちゃんと福路に報告」
京太郎「なんすか?」
トシ「取材が来る」
京太郎「どこに?」
トシ「ここに」
美穂子「……えっと、私は」
トシ「あんたは良いけど、東横とかを撮られるとマズい」
京太郎「……いつ?」
トシ「今から」
京太郎「一大事じゃん!」
283: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/15(水) 16:39:47.21 ID:kBZSaiy10
京太郎「え、はやりさんは!?」
トシ「外に出しといた、こんなこともあろうかと」
京太郎「あろうかと思ったならもっと早く言ってくださいよー!」
トシ「まぁまぁ」
両手を前に出して笑うトシ
そして、熊倉トシは回想を始めた
トシ『特異課に取材が来る気がする。明後日』
はやり『はや!? なんで!?』
トシ『とりあえず、明後日にあんたに予定入れたから』
はやり『はやぁ……任務ですか?』
トシ『婚期やばいからお見合い』
はやり『婚期、お見合い、ぐふっ』
京太郎『はやりさーん!』
トシ『回想に入ってくんじゃないよ』
回想終わりである
トシ「ってことで」
京太郎「なんてひどいことを!?」
美穂子「???」
トシ「まぁそういうことだから」
京太郎「断ってよ」
トシ「……ま、京ちゃんに任せるから、案内とかもろもろ」
京太郎「ファッ!?」
トシ「それじゃ、これマニュアル」
京太郎「なんで!?」
トシ「行くよ福路ー」
美穂子「え、え?」
京太郎「この鬼ババァ!」
284: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/15(水) 16:41:48.60 ID:kBZSaiy10
第7話【THE・パパラッチ】
288: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/15(水) 23:11:18.64 ID:FovLWEVY0
―――【特異課施設:入り口前】
そこに立つのは記者とカメラマン
入る前にセキュリティシステムがあるらしく、待たされることになったということだ
さきほどからスタッフの出入りがあるが、そのスタッフたちの取材は許可されていない
大介「意外ですね、関係なくいくと思ってました」
順子「ここのタイミングで機嫌を損ねるわけにはいかないからね……入ってからよ本番は」
大介「さすがっす」
順子「目先の欲に踊らされるなってね」
そう言って待っていると、中から出てくるのは金髪の青年
年齢は20代だろうか、サングラスの奥の瞳はまだ見えない
なぜだか嫌そうな雰囲気をしているが、記者としてそういう対応は慣れきっている
???「お待たせしました……須賀です」
順子「ああ、これはこれはご丁寧に」
大介「WEEKLY麻雀TODAYの山口です」
???「ご丁寧にどう……も」
名刺を差し出したところで、一端止まる
順子「……あれ、どこかで?」
???「いえいえ、どうも」
大介「まぁよろしくお願いします。須賀京太郎さん」
京太郎「あーはい」メソラシ
京太郎(なんで俺にやらせたんだよトシさぁん!)
289: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/15(水) 23:28:36.40 ID:FovLWEVY0
―――【特異課施設内:廊下】
スーツを着ている一人の女性スタッフが歩いている
その顔にはサングラスをかけていたが、口元には笑みが浮かんでいた
長い金髪を揺らす女性が、周囲に誰もいないことを確認する
??「……よっし! 潜入完了だ!」
拳を握りしめる
??「ふふふ、ウルトラマンに邪魔されっぱなしの雑魚共め、私はそうはいかん……」
なにか装置を取り出す
??「ここに間違いなく、ウルトラマンに関係したなにかがある。そしてメダルもある……」
正面からやってきたスタッフに軽く会釈して歩き出した
??(やつらには負けん、私が先んじてやる……あいつらに情報も渡してないしな!)
??「ふふふ、このババルウ星人の智謀を見せてくれる!」
女性―――久保貴子はニヤリと口角を上げた
290: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/15(水) 23:38:27.82 ID:FovLWEVY0
―――【長野:???】
座っているのは瑞原はやり
そして向かいには男性
瑞原はやりの表情は死んでいた
男性「えっと……瑞原、さん?」
はやり「はい、なんでしょう」
男性「……ここのデータなんですが」
はやり「はい、こっちの計算式を持って来れば」
男性「なるほど! さすがです!」
なにがお見合いか、ただの仕事である
トシが勧めてくるきたお見合いだから多少は期待したのである
男性「さすが瑞原さん、頼りになります」
はやり「いいえー」
なにが悲しくてこんな状況になったのか……
はやり(お見合いで京ちゃんが乱入して助け出してくれるとか期待しちゃうのになー)
大きなため息をついて、目の前の男性の後頭部から、椅子を回転させて視線をPCモニターに移す
はやり「……ってなんで京ちゃん!!?」
男性「瑞原さん!?」
291: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/16(木) 00:01:10.25 ID:V+mQVjii0
―――【特異課施設内:廊下】
気まずい思いをしながら歩く京太郎
そしてその後ろには順子と大介
一応、トシから手渡されたマニュアルは憶えた
京太郎(しかしまぁ、一応知った顔なんだけど)
こんなところで働いているとバレたらどうなるかわかったものではない
一応は『雀士失踪と怪獣出現は関係ない』ということで通っているのだ
京太郎「以上のように、怪獣災害等に迅速かつ最善の対応策をとるために我々特異課は」
順子「怪獣災害から発足が早すぎるとの指摘があるそうですが?」
京太郎「それについては私のような者には……ただそのような“予測”を量子コンピューターがしていたという噂を聞いたことがあります」
順子「それはどこに?」
京太郎「そこまでは……」
そう言って笑う京太郎
大介「にしても、最新技術の塊と聞いてましたけど普通ですね」
京太郎「どこ情報ですか、普通ですよほとんど」
順子「へぇ~……怪獣に対処している銃等は最新技術の塊と聞いてましたが」
京太郎「そこまで厳密に言うなら……怪獣と戦う武器が最新型じゃないわけないでしょう」
順子「まぁごもっともで、じゃあ……」
メガネの奥の瞳がキラリと輝く
順子「ウルトラマンになる技術があるとか?」
292: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/16(木) 00:10:56.73 ID:V+mQVjii0
京太郎「はぁ? なに言ってんですか」ケラケラ
順子「では、ウルトラマンとどんな関係が?」
京太郎「あるわけないでしょう、そんなもの」ハァ
そう言うと歩き出す
順子を見て、大介は肩をすくめて歩き出した
順子「しかし、長野に現れるウルトラマンは」
京太郎「なんでしょうか、我々と関係があると?」
順子「んーそうだと思ってますよ?」
京太郎「じゃあ俺達は必要ないじゃないですか、ウルトラマンがいるなら」
順子「……ピンチのピンチのピンチの連続にならないと現れないとか?」
大介「ギリギリまで頑張ってみないと現れない、か」
その言葉に京太郎は止まった
京太郎「……そうなんじゃないですか、だから戦う」
順子「……あーあ、私ウルトラマンだったらなぁ!」
大介「えー大変じゃないですか?」
京太郎「だと思いますよ。知りもしない関係ない奴らを守るなんて……」ハッ
そう言って歩き出す京太郎
順子「ところで食堂とかあるんですか?」
京太郎「まぁ、休憩所が……食べ物も自販機にありますし」
順子「へぇー! 気になります私!」
京太郎「普通っすよ?」
順子「ええ! ええ! そういうのがみたい!」
京太郎「そういうもんですか?」
大介「さぁ?」
293: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/16(木) 00:22:52.54 ID:V+mQVjii0
一方、久保貴子の体を借りたババルウ星人は施設内を歩いていた
バックを片手に周囲を見回しながら歩く
貴子「さて……どこかに、ベリアルやティガの情報があるはず」
「こっちよこっち」
貴子「!!?」ビクッ
転がるように物陰に隠れるババルウ星人
その声の主の方をちらりと見る
順子「怪しい気がする! こっちの方に宇宙的感覚!」
大介「絶対気のせいっすよ」
順子「えーおかし……」
歩いている順子が横を見れば、そこには金髪の女性
もちろんババルウ星人である
貴子「……ご、ゴキゲンうるわしゅう」
順子「……あー!!」
貴子(バレたかぁっ!!?)
順子「久保貴子先生ですよね!? 風越の!」
貴子(セーフ!)
貴子「は、ははは」
大介「ちょ、まずいっす!」
順子「あ……ちょ、ちょっと道に迷っちゃって!」
貴子「あ、はい」
順子「自由に行動しては良いと言われたんですけどね! 一緒に歩いてもらっても!?」
貴子「あ、はい」
貴子(しまったな、ここじゃ……チッ! とりあえず一緒に行動しといてやるか!)
順子(ふふふ、やはり雀士失踪に関係あるのね特異課!)
294: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/16(木) 00:43:31.25 ID:DMKDBawX0
もろもろ暗躍する施設内
そんな特異課施設の一室に集まっている桃子、智美、佳織
さらにプラスで津山睦月と加治木ゆみの二人
ゆみ「みんなには心配をかけたようだ」
桃子「本当っすよー」
智美「なにはともあれ集まってなによりだなーワハハ」
睦月「プロ雀士カードは? 新弾はどうなってる?」
佳織「いつもそれだね」
和気藹々とした空間、しばらくはその部屋より外出禁止令が出されている
ゆみと睦月の二人は揃って数日前に起きたばかりだ
そんな中、扉が突如開く
京太郎「サーせん!」
桃子「うわぁっ!?」
智美「ワハハ、ス だなぁ京太郎」
京太郎「いやいや! てかこれあれ、誰か来てないっすか?」
睦月「須賀だけだが」
京太郎「そ、そっすか」ホッ
佳織「どうしたの?」
ゆみ「私たちがしばらく自室待機とされてたことと関係が?」
京太郎「……関係しかないんで、まだしばらく自室待機で!」
それだけ言うと、京太郎は去って行く
桃子「えーあれだけっすか京さん」
ゆみ「京さん、か」
桃子「なんっすか改まって」
ゆみ「……友達が増えてなによりだ」フッ
桃子「なっ、なんか変な勘違いしてないっすか!?」
ゆみ「してないしてない」
桃子「絶対してる!」
295: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/16(木) 00:57:30.12 ID:DMKDBawX0
医務室にいるのは美穂子と久
竹井久はというと眠っているのだが、美穂子は静かにそんな久の隣にいた
トシから出るなと連絡があって、久を放置するわけにいかないということでここにいる
美穂子「……ちょっと暑いわね」
9月なのだが、と思いつつクーラーの温度を少しばかり下げる
美穂子はネクタイをゆるめてボタンを少し開ける
久も少しばかりを汗をかいているようだった
美穂子「久の汗、拭いた方がいいかしら?」
そう言うと、そっとふとんをめくり久のボタンを外そうとする
別になんの他意もない行為で、あるのだが―――
京太郎「さーせん!」ウィーン
―――こうなると、話が変わってくる
京太郎「」
美穂子「」
久「」zzz
296: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/16(木) 01:10:59.38 ID:DMKDBawX0
京太郎「そ、その……」
美穂子「待って待って」
京太郎「仲良いとは思ってましたけど」
美穂子「ち、違うの!」
京太郎「ね、寝てる相手というのは」
美穂子「だから!」
京太郎「……えー」
美穂子「疑った目で見ないで!?」
必死の弁明である
美穂子「と、とりあえず部屋が暑いからなんとかしようと、ね?」
京太郎「……」ジトー
美穂子「違うんだってばぁ」ナミダメ
京太郎「いや、まぁ良いと思いますけどね」
美穂子「私が好きなのはっ」
京太郎「?」
美穂子「あっ、あぅ……」カァッ
京太郎「まぁ冗談ですけど……」
美穂子「!!?」
話を変えるために、ポンと手を叩く
京太郎「……誰か来ませんでした?」
美穂子「……京太郎くん」ジト
京太郎「あーすみませんって、からかいすぎました」
美穂子「もぉ、許してあげないからっ」ムゥ
京太郎「それはちょっと、すみません……今度お詫びしますから」
美穂子「……ランチ」
京太郎「はい」フッ
美穂子「約束よ?」
京太郎「はい……そんじゃまたあとで、あとまだ部屋からは」
美穂子「わかてるわ」フフッ
京太郎「それじゃまた!」バッ
ウィーン
美穂子「……まったく、気安くなったんだから」
そう言って、椅子に座る
美穂子「……私もか」クスッ
297: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/16(木) 01:18:55.58 ID:DMKDBawX0
特異課施設内、順子と大介と貴子ことババルウ星人が歩いている
目的地はない
あえて言うなら全員そろってそれなりに重要な部屋こそが目的地である
順子「ふふふ、ウルトラマンの秘密掴んでやるわよ」
貴子「え、ウルトラマンの秘密がこの基地に?」
大介「やっぱなにも無いんじゃ」
そんな言葉に、順子は大介に近づいて耳打ちする
順子「一般には知らされてないか、本当でも言うわけないでしょ!」
大介「そういうもんですか?」
順子「そういうもんよ……さ! ウルトラマンの秘密を探しに行くわよ!」
貴子「おー!」
大介「なんで乗り気なんですか」
順子「ウルトラマンー!」
貴子「ウルトラマンー!」
大介「待ってくださ」
順子「ウルトラマーン!」
貴子「ウルトラマーン!」
大介「なぁにこれ」
298: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/16(木) 01:31:21.50 ID:4GkWm5rg0
―――【???】
PCとにらめっこから解放されたはやり
スーツの男たちに感謝されながら、会社を出て今は公園のベンチ
平日の昼間から、スーツ姿でベンチに座っているのが牌のお姉さんだとは誰も思うまい
はやり「……なにがお見合いだよぉ、お似合いの人探せオラァ」
弱々しく独り言をつぶやく
はやり「はぁ~あ……取材が来るから出てけってことだよねぇ」
缶コーヒーを傾けて飲む
はやり「人気者の辛いとこね、これ」
「怪獣だって!」
「えー!!?」
「見に行こうぜー!」
はやり「怪獣ぅ!!?」バッ
299: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/16(木) 01:48:05.82 ID:yuZcirNl0
―――【特異課施設:廊下】
順子「こっちに宇宙の気配!」
貴子「確かに!」
大介(なにが?)
そのまま走り、順子は先に行ってしまう
貴子が駆けてついていこうとするも、その腕を大介が掴む
貴子(こいつ気付いたか!?)
大介「なんかここらへん、人通り少ないしヤバくないっすか?」
貴子「そうか?」
大介「えーそうじゃないっすか?」
貴子「まぁ着いて行ってみよう」
ババルウ星人(確かになんか気配は感じるしな!)
大介「えー」
そしてその間、奥の部屋へと入った順子は―――
順子「あれ、ここは?」
暗い部屋に大きな機械があるようだった
不思議な機械
そしてその前に立っている―――金髪の少女
順子(ぼんやりしてて見えない……てか電気は?)
?「……抱腹絶倒」
順子「え?」
前方にいた少女が、青いクラゲのような生き物の姿になってどこかに消えた
その瞬間、入ってくるのは貴子と大介
貴子はそのまま、真っ直ぐと入って行き機械を見上げた
貴子「これは……」
順子「う、う」
大介「う?」
貴子「う?」
順子「宇宙人だぁあぁぁぁぁぁっ!!」
貴子「な、なにぃぃぃぃ!!?」
コメントする
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。