【咲-saki-】京太郎「ウルトラマンの力」咲「光よ!」 前編

300: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/16(木) 02:01:49.29 ID:yuZcirNl0

―――【???】


公園近くのデパート

はやりはソフトクリーム片手に眼を腐らせていた

もちろん比喩で


はやり「……」


ヒーロー『子供たちを離せ!』

悪の幹部『ええい、いけバギラ!』

怪獣『ギャオー!』


はやり「……ヒーローショーって」 ペロ


サングラスの奥で死んだ瞳をしているはやり

深いため息をつく

こんなことならばせめてデートぐらいしたかったものだと、空を仰ぐ


「怪獣だー!」

「怪獣だ!?」

「うわー!」


はやり「そういうのもう良いから」


ヒーロー「怪獣だー!」

悪の幹部「怪獣がでたぞー!」

怪獣『ギャオー!!?』


はやり「え?」


振り返ると、手からソフトクリームを落とす


はやり「……怪獣だー!!?」


301: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/16(木) 02:13:40.20 ID:yuZcirNl0

―――【特異課施設:廊下】


廊下を走る京太郎

いつの間にかいなくなっていた順子と大介の二人を探す

先ほどから走り回っているがまるで見つからない


京太郎「たくどこに……あぁ」


視線を動かして道を見る


京太郎「こっちの方、行ったことな」


―――宇宙人だぁあぁぁぁぁぁっ!!


京太郎「ビンゴだし宇宙人だし!?」

ベリアル『よく隠れてたな、間違いなく敵の気配だ』

京太郎『よくわかりますね!』

ベリアル『余計なカケラが入ってるようでな……』

京太郎『カケラ?』

ベリアル『とりあえずこの場でカードを入れてゼットライザーのトリガーを引け!』

京太郎「へ?」

ベリアル『いいからさっさとしろ!』

京太郎「オッス!」


周囲を確認してから、迷わずトリガーを引き、開いたゲートに走り出す

次の瞬間、ゲートから出てくるのは白銀のベリアル

人型サイズのベリアルはそのまま走って声のした方向へと向かう

302: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/16(木) 02:20:56.89 ID:Cq01tkJP0

―――【久の医務室】


座って本を読んでいる美穂子

すると、呼び出し音のようなものがポケットから響く

焦りながらもそれを取り出す


美穂子「え、えっと……ど、どのボタンで」

ピッ

美穂子「あら?」

トシ『聞こえるかい?』

美穂子「あれ、なんか操作した?」

トシ『強制的に通話した。あんたの端末にだけつけてみた』

美穂子「助かり、ます?」

トシ『この機能にそう言うのはあんただけだよ……まぁなにはともあれ』

美穂子「なにかありました?」

トシ『怪獣が出た。避難誘導等……任せた』

美穂子「は、はい!」


立ち上がると、自室待機を命じられたものの仕方ないと部屋を出る

慌ただしい廊下、ガレージの方へと向かおうとすると白築慕が手を振っているのが見えた

頷き、急いでそちらへと駆けていく

303: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/16(木) 02:28:33.47 ID:Cq01tkJP0

―――【特異課施設内:???部屋】


貴子が驚愕する

順子も驚愕する

大介も驚愕する


もうなにがなんだかわからない空間で、貴子が立ち上がった


貴子「こうなれば仕方あるまい! ふん!」


勢いよく声をかけた貴子の体が、エネルギーを纏う

それと共に現れるのは宇宙人、暗黒星人ババルウ星人


順子「……こっちも宇宙人だー!!?」

ババルウ星人・大介「え、どゆこと!?」


もはや三人いる中、順子しか状況を掴めていない


ババルウ星人「もういい!」


そう言うと、左腕から光弾を放つ


大介「っ!」


跳びだした大介が順子と共にその光弾を回避するも、爆風で転がり二人まとめて気絶してしまう

そしてそんな空間に入ってくるのは―――白銀の戦士


ベリアル「シャアッ!」

ベリアル『見つけたぜ!』

京太郎『この二人こんなとこに、ってかなにこの場所! てかなにあいつ!』

ババルウ星人「ううう、ウルトラマンだぁぁぁぁっ!!?」

307: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/17(金) 15:57:38.50 ID:bjzvKeFE0


―――【街中:デパート近く】


逃げ惑う人々とは反対方向へと走るはやりがガッツハイパーを撃つ

非番とはいえ、特異課なのだ

やることは見失わない


はやり「こっちだよ! このっ、ええっと、恐竜? 戦車?」

トシ『恐竜戦車だね』

はやり「まんま!!?」


恐竜戦車が咆哮を上げながら走る

はやりの方ではなく―――


はやり「デパートにっ!」

トシ『……』

はやり「はやく京ちゃんを!」

トシ『いや、くるよ』

はやり「っ!」


その言葉と共に、恐竜戦車に銃撃が放たれる

そちらを見ればそこには車が一台


はやり「慕ちゃんと、福路ちゃん!?」

美穂子「瑞原さん!」

慕「はやりちゃん!」


走る車が、はやりの前に止まる

出てくる美穂子が素早く銃撃

恐竜戦車が、はやりたちの方を向く


はやり「逃げるよぉ!」

美穂子「分散しましょう!」

慕「えっ、それじゃあ!」

美穂子「か、解散です!」ダッ

はやり「ちょ! もう!」


車から離れながら銃撃する美穂子、慕は車で、はやりは再び走り出す


308: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/17(金) 16:09:10.12 ID:bjzvKeFE0


徐々に怪獣戦車と距離を取っていく美穂子

二つの銃撃も確かに見えた

だが、既に恐竜戦車は気にした様子もない


美穂子「……ならっ!」


物陰に入ると、美穂子はスーツの内側からスパークレンスを取り出す

両腕を組むようにして、ぐるっと回した


美穂子「ティガァ!」


スパークレンスが開き、光が溢れる



一方、デパートの方に向かいそうな恐竜戦車を引きつけようと銃撃を続けるはやり

顔をしかめながら、ガッツハイパーのカートリッジを交換する


はやり「まだまだ!」


だがその瞬間、光と共に巨人が現れる


はやり「……ティガ」ホッ


ティガ「チャァッ!」

恐竜戦車「―――!!」

309: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/17(金) 16:28:01.53 ID:bjzvKeFE0


―――【特異課施設:???】


ベリアルが素早く構えを取り、ババルウ星人へと走る

そんなベリアルを見て、ババルウ星人は素早く武器である刺又を振るう


ベリアル「ハッ!」


その刺又を左手の爪撃で弾くと、右腕での爪撃でババルウ星人を攻撃


ババルウ星人「うぐあっ!」

京太郎『ここで暴れられても厄介です。やりましょう!』

ベリアル『ハッ、暴れるのはオレも一緒だけどなァ』

京太郎『ほどほどに!』


起き上がり、走ってくるババルウ星人

振るわれる刺又を再びベリアルクローで弾くも、ババルウ星人は今度は近距離で光弾を放つ

ベリアルが素早く光弾を放ち相殺させるも―――爆発


ババルウ星人「ぐっ、まだまだぁ!」


次々と光弾を放つババルウ星人

だが、ベリアルはその場に立つのみ



―――【インナースペース】


ベリアル「やるぞ小僧ォ!」

京太郎「はい、ベリアルさん!」


メダルを弾く、宙に浮いたメダルが闇を吐きだし周囲を暗黒に染めていく


京太郎「究極生命体!」バッ


落ちてきたメダルを掴むと、ゼットライザーにメダルをはめこむ


『Alien Rayblood』

京太郎「ベリァァルッ!」

310: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/17(金) 16:41:09.61 ID:mjL5v+ZE0


溢れだす漆黒と共に、現れるのは暗黒の皇帝―――ベリアル

凶悪なその爪を振るい放たれる光弾を一掃する

首をゴキリと鳴らすと、ババルウ星人へと跳ぶ


ベリアル「シャアッ!」

ババルウ星人「うわぁっと!!?」

ベリアル『やっぱこの姿は調子が違ぇな!』

京太郎『違いないっすね!』


接近と同時にクローを振るう

ババルウ星人が刺又でその攻撃を凌ごうとするも―――


ベリアル・京太郎『無駄だァ!』


―――刺又ごと、斬り裂かれる


体にその斬撃を受けるババルウ星人が、倒れそうになるもすかさず蹴りを放つ

吹き飛んだババルウ星人は壁を突き抜けて外へと跳びだした

敷地外に転がるババルウ星人を追って現れるベリアル


ババルウ星人「べ、ベリアル! な、仲間にならないか!?」

ベリアル『つまらん……!』

ババルウ星人「即答ですかぁ!」

ベリアル『いくぞ小僧!』

京太郎『はい!』


右腕に集まる暗黒

そして左腕へと重ねて必殺の光線を放つ


ベリアル・京太郎『デスシウム光線!』


放たれたそれは真っ直ぐとババルウ星人へ


ババルウ星人「こんなことなら情報共有しとくんだったぁ!」

ベリアル「ハアァッ!」

ババルウ星人「ぐぅわぁぁっ!」


そして―――爆散


その爆炎の前、ベリアルは右腕を払うように振るうと、空へと飛び立つ


314: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/17(金) 21:57:52.58 ID:F4cZYAR80

―――【郊外】


カラータイマーが点滅するティガ

恐竜戦車の三連戦車砲と、目からのレーザーに苦戦していた

デパートを守りながの戦い故、というのもあるのだろう


美穂子『はぁっ、はぁっ……こ、このままじゃ!』


さらに恐竜戦車の攻撃

ティガがバリアを張って攻撃を凌ぐが、やはりその攻撃を前に押されていく

だがその瞬間、恐竜戦車にさらなる銃撃


はやり「こっちだよ!」

美穂子『はやりさん……っ!』


一瞬の隙、恐竜戦車がはやりの方を向いたその瞬間―――


ティガ「テァッ!」


パワータイプへとタイプチェンジをしたティガが、恐竜戦車へと接近

恐竜戦車は素早く回転して尻尾を振るうも、ティガはパワータイプの力でその尻尾を押さえる


ティガ「テヤァッ!」

恐竜戦車「―――!」


そのままのパワーで、ティガは恐竜戦車を持ち上げ―――大地へと叩きつける


恐竜戦車「―――!」

ティガ「タアッ!」


逆さになった恐竜戦車に、光弾を撃つ

起き上がろうと尻尾を動かした恐竜戦車が大きくよろめく

さらに距離を取ると、ティガは両腕を胸の前で構えた


美穂子『これでぇ!』


赤いエネルギーが弾を生成する


美穂子『終わりィ!』

ティガ「テヤァッ!」


放たれたデラシウム光流が恐竜戦車に直撃

一旦止まった恐竜戦車だったが、間を置いて粉々に爆散する

それを見届けると、ティガは空へと去って行く


はやり「また、ティガに助けられた……」

慕「ふぅ……あ、基地の方でもベリアルが宇宙人を倒したって」

はやり「え、どゆこと?」

はやり(京ちゃん、戦ってたんだ……)

315: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/17(金) 22:09:51.45 ID:F4cZYAR80


―――【???】


黒いスーツの男、いや宇宙人

ゼットン星人が椅子に座っていた

その向かいに現れる影


「ババルウ星人がやられた」

ゼットン星人「あれは―――功を焦ったか」

「……例の場所、やはりあそこには我々とは別の地球外の痕跡があった」

ゼットン星人「やはり……なら次にやることは」


立ち上がったゼットン星人が振り返る

窓ガラスになっていたその向こうに大きな空間、そしてそこに立つのは―――怪獣


ゼットン星人「潰す。そろそろ本気でな」


パチン、と指を鳴らすと、肩を揺らして笑った


316: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/17(金) 22:39:26.37 ID:kZ8Kh0qX0

―――【特異課施設:正面口】


夕方―――立っているのは西田順子と山口大介

気絶していた二人だったが今しがた眼を覚ました

別状問題もないとのことで止まっているホテルへと帰ることになったのだが……


順子「ほんとに宇宙人が」

京太郎「またまたワハハ」

大介「見たけどなぁ……」

京太郎「勝手に歩いてっすか?」

順子「うっ……」


眼を逸らす順子に、京太郎は軽く溜息をつく


京太郎「二度目の取材許可、下りないと思った方がイイっすよ」

順子「はーい」ハァ

大介「自業自得っすね、とりあえず今回はこれで帰りましょう」

京太郎(今回は、かい!)

順子「お世話になりました」

大介「お騒がせしました」


頭を下げてから帰っていく二人

なんだか長い一日だったと、京太郎は息をつく


美穂子「須賀君」

京太郎「うおっ!」


背後からの声にビクッと体を震わせた

振り返ればそこには福路美穂子


京太郎「あ~……お疲れ様です」

美穂子「京太郎くんこそ」クスッ

はやり「はやぁ~」ズーン

京太郎「お、お疲れさまです?」

はやり「疲れたよぉ~色々~」


そう言うと京太郎の体にもたれかかるはやり

そしてそんなはやりの頭を撫でる


京太郎「おーかわいそうに」

はやり「はやぁ~」グテー

317: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/17(金) 22:45:59.64 ID:kZ8Kh0qX0


特異課施設から遠ざかり、車に乗り込む順子と大介

少しの振動と共にエンジンがかかり、そのまま走り出す


大介「それにしてもなんにもでしたね」

順子「ふっ、ふふふ」

大介「ぶっこわれました? 宇宙人に襲われて」

順子「黙らっしゃい!」


人差し指が大介の頬にささる

顔をしかめつつ、安全運転を心掛ける大介だが、順子は指を離してからメガネを外す


順子「本日の私のメガネ、探偵ご用達のカメラ付き!」

大介「えっ! さすがにまずいんじゃ!?」

順子「そのままは出せないわね。でも私が個人的に見て、個人的に色々と立証を立てて文字を書いたりはできる!」

大介「……大丈夫っすか、その内なんか」

順子「大丈夫大丈夫! さて、ホテル戻って確認よー!」

大介「……変なもの、映ってなきゃ良いですけど」

順子「変なもの映ってるのがベストでしょ」

大介「……違いない」


318: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/17(金) 22:55:22.29 ID:kZ8Kh0qX0


―――【特異課施設:休憩所】


テーブルに倒れている京太郎

溜め息をつきつつ、見るのはテレビ

ニュース番組では今日のティガの活躍を映している


『今回もティガがやってくれました!』

『さすが、まさらに光の戦士と言ったところですか』

京太郎「……なんだよ」

ベリアル『オレはああいうんじゃねェからな』

京太郎『確かに』


体を起こして背を伸ばす

すぐに首を慣らし、手に入れたババルウ星人メダルを見る

宿主であった久保貴子は眠っているらしい


京太郎「ん~」

ベリアル『どうした』

京太郎「いや、宇宙人たち……このメダルの宇宙人も、なにが目的なんだろ」

ベリアル『さてな、黒幕を掴まえないことには、だろ』

京太郎「……ごもっともで」


そう言うと、苦笑を浮かべて再びニュースに視線を移した

319: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/17(金) 23:00:01.01 ID:kZ8Kh0qX0


     第7話【THE・パパラッチ】 END


320: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/17(金) 23:15:35.00 ID:kZ8Kh0qX0


―――次回予告


京太郎:今回の敵は違う?

ベリアル:今のお前じゃキツいな

ゼットン星人:いでよ―――キングジョー!

美穂子:ロボット怪獣!!?

京太郎:美穂子ォ!

トシ:セブンを追いつめただけある

ゼットン星人:ペダニウムの光で、消し去れ!


次回【いつかの再開へ】


久:あれが光の力

京太郎:闇の力で、消し去る!

324: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/18(土) 22:07:44.32 ID:sX8HpUd40


―――【特異課施設:作戦室】


あれから二日、京太郎はトシに呼ばれて作戦室へと着ていた

今日も麻雀を終えて、京太郎は戻ってくる

美穂子は他に向かったようで、付き合ってくれたのははやりだった


トシ「きたね、どうだった?」」

京太郎「ハズレっす」

トシ「フッ、正直に言う」


それは彼にとっての事実だ


トシ「さて、良いニュースと悪いニュースが」

京太郎「そういうのいいっすから」ジト

トシ「はいはい、遊び心がないねぇ」

京太郎「いや、深刻な呼び方するからぁ」

トシ「まぁね」クスッ


軽く、キーボードが叩かれた

モニターに表示される画像


トシ「さ、まずは良いニュースだ。見つかったよ……お目当ての人物の一人」


それは―――


京太郎「和っ!?」


―――原村和だ


325: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/18(土) 22:10:46.48 ID:sX8HpUd40


     第8話【いつかの再開へ】


326: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/18(土) 22:19:54.03 ID:sX8HpUd40


作戦室を出た京太郎は休憩所に座ってコーヒーを飲んでいた

静かに、その波紋を見つめる

目的、やるべき道しるべは新たに示された


京太郎「だが……」

ベリアル『ハッ、やるべきことは決まってんだろ?』

京太郎「それでも……」


息をついて天井を見上げる

真っ白な天井と、照明


京太郎「天使……」

ベリアル『根源的破滅だろ? つまりアレだ』

京太郎「知ってるんですか?」

ベリアル『ハッ、この記憶が正しいのかなんて、知らねェしな』

京太郎「それって」


足音が聞こえて、言葉を止める

心の中で会話すれば良いのだが、ついつい普通に話してしまう

咳払いをしつつ、ニュースに目を移す


京太郎『それって、どういうことですか?』

ベリアル『あ? どぉでもいいことだ……』

京太郎「俺はよくないんだけどなぁ」


そう言って息をつくと、近づいてくる影を見つける


331: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/18(土) 22:47:27.05 ID:sX8HpUd40
1、瑞原はやり



歩いてきたのは見慣れた女性

最近は相棒、と言っても良い間柄でもあるだろう

緊張感皆無で笑みを浮かべる京太郎


はやり「あ、京ちゃん」ニコッ

京太郎「はやりさん」


彼女の方も、笑みを浮かべて京太郎の向かいに座った


はやり「今日も大活躍だったね。麻雀」

京太郎「まぁ……強くなって良かったと言うべきか、俺の力じゃないって言うべきか」

はやり「もー京ちゃんの力だって言ってるのに」

京太郎「……納得いかないなぁ」

はやり「私から見てカッコよく映ってるのはベリアルじゃないよ」

京太郎「え?」

はやり「私がカッコいいって思うのはいつだって京ちゃんだから」


そう言って屈託のない笑みを浮かべるはやりに、京太郎は顔を赤らめてそっぽを向く

こう正面切ってそんなことを言われるのは初めてだった


京太郎「その……あ、ありがとう」

はやり「どういたしまして」


クスリと笑うはやりはやはり自分よりも大人だった

だからこそ“あの日”から一緒にいてくれているはやりだからこそ、話をしても良いかもしれない

故に、口を開く


京太郎「その……」

はやり「ん?」

京太郎「和が……原村和が、見つかったんです」

はやり「!」

332: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/18(土) 22:58:12.56 ID:sX8HpUd40

淡々と、話を始めていく

一番最初の話、そしてこうなった話

夏のインターハイ


京太郎「……」

はやり「良かったね。それじゃあようやく竹井さんに続いて」

京太郎「その、ただ……」

はやり「?」


言いよどむ京太郎を見て、はやりは小首をかしげた

少しして、眼を逸らすとそっと京太郎の方を向く


はやり「……好きなの? その、原村さんのこと」

京太郎「そのつもり、だったんですけど……わかりません」

はやり「そういうもの、なのかな? はやや、わかんないけど」

京太郎「さぁ、でもまぁ……大事な仲間です」

はやり「じゃあ!」

京太郎「……ここから離れることになります」

はやり「え?」

京太郎「そういうこと、なんですけど」

はやり「……そ、そっかぁ」


さすがに止めることはできない

だが京太郎はこの街を放って行って良いのだろうかと、悩んでいる

それを理解して、はやりは顔をしかめた


はやり「……私は、京ちゃ」

美穂子「ひ、久が起きました!」

はやり「はやぁっ!!?」ビクッ

美穂子「え、ど、どうしたました?」

はやり「なんでもないよ! うん! ほら京ちゃん行っといで!」

京太郎「え、あ、はい」コクリ


333: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/18(土) 23:18:59.62 ID:sX8HpUd40

それから、京太郎と美穂子の二人は竹井久の部屋へと向かう

検査等も終わらせたそうで、問題はないらしいが……


京太郎「ふぅ」

コンコン

?「どうぞ~」

ガチャッ

京太郎「……」

?「あら、須賀君」

京太郎「ぶ、部長ぉ~」

美穂子「久……」ニコリ

久「あら、珍しい二人……でもない?」


そう言うと、患者衣の久は笑みを浮かべる

少しばかり痩せたように見られた


京太郎「よかったぁ」

美穂子「ほんとに!」

久「色々聞いたけど、二人が宇宙人から私を助けてくれたのよね」


その言葉に、京太郎と美穂子が気づく

美穂子が『ウルトラマンティガ』であると、バレているのかどうか


久「あまり覚えていないんだけど、ね?」

美穂子「じゃあその、宇宙人から解放された後のことは?」

久「んーさぁ?」

美穂子「そう……」ホッ

久「あ、そう言えば須賀君以外の……まこたちは?」

京太郎「え、あ……あーその」


言いよどむ京太郎を見て察したのか、苦笑を浮かべる


久「……そっか」

京太郎「すみません」

久「なんで須賀君が謝るの?」

京太郎「あ、いや……絶対、連れ戻しますから、みんな!」

久「……うん、ありがとう」ニコリ

334: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/18(土) 23:31:38.27 ID:sX8HpUd40

京太郎「……はい」

美穂子「その、久……私も、頑張るから」

久「……うん」


返事をする久を前に、美穂子と京太郎は向かい合って笑顔を浮かべた

鶴賀のメンバーに加えて久まで

風越はあと華菜だ


美穂子「それじゃあ京太郎、いきましょう」

京太郎「そっすね、部長も疲れてるだろうし」

久「また来てね」

京太郎「ん、必ず」ニッ

美穂子「私も」


二人が並んで、部屋を出ていく

一人で医療室に残った久は、勢いよくベッドに倒れ込んだ

疲労だとかいう雰囲気ではない


久「光、美穂子……あなたが光の巨人、ティガ」


思い出すのはあの光景

スパークレンスをかかげ、光になる美穂子

両手を真上に上げる


久「須賀君とも、ずいぶんと仲良くなっちゃって……うらやましいことで」


グッと手を握りしめる


久「光の巨人、私も……光があれば」


335: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/18(土) 23:42:11.25 ID:sX8HpUd40

―――【街中】


マンションが立ち並ぶ住宅街

だがその中に異様な人物

スーツを着た、宇宙人


ゼットン星人「平和ボケ、だな」


周囲の人々は眼を向けるが、コスプレとでも思っているのだろう

構わず、ゼットライザーを持ちだした


ゼットン星人「いでよ―――」


メダルをセットしてブレードを可動させる


ゼットン星人「―――キングジョー!」


不可思議な音と共に、現れるのはロボット“キングジョー”

336: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 00:05:05.29 ID:nIBxnP6O0


―――【特異課施設:廊下】



久の部屋から出て歩いている京太郎と美穂子の二人

他愛ない話をしつつ、歩いていると警報が鳴り響く

ハッとした京太郎は即座に、端末を開く


『街中にロボット怪獣出現、コード……キングジョー!』

美穂子「ロボット怪獣!!?」

京太郎「トシさん!?」

トシ『裕子はガレージに向かった、あんたと福路も早く』

京太郎「了解っす!」

美穂子「行くわ」コクリ

京太郎「……お願いします!」


頷いて走り出す二人

そんな二人にさらに合流する人物


はやり「はや、私もいくよ!」

京太郎「はい!」

美穂子「……!」グッ


337: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 00:20:51.14 ID:nIBxnP6O0


裕子の運転する4WDに乗り込む面々

助手席にははやり、後部座席に京太郎と美穂子の二人だ

中々近場だったようで、ロボット怪獣キングジョーが巻き上げる爆煙が見えた


裕子「あの破壊力……これまでの相手とは違うみたいです」

ベリアル『あの女の言うとおりみてぇだな』

京太郎『今回の敵は違う?』

ベリアル『今のお前じゃキツいな』

京太郎『でも、美穂子さんと一緒なら……』


その言葉に、ベリアルはなにも言わない

あの闇の力を使ってもキツいと言っているのかだとか、詳しいことを聞く気はない

結局、やることは一つ


京太郎「戦って勝つ……」

美穂子「任せて、私がみんなを……貴方を守るから」

京太郎「っ……」コクリ


頷いた京太郎に、美穂子が笑みを浮かべる

バックミラーからちらりとはやりの顔が見えた


はやり「……」

京太郎「……」


アイコンタクトでお互い察する

もうすぐ、キングジョーが見える範囲だ

338: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 00:40:45.27 ID:OPt9BXHB0


ミサイル、光線で街を破壊するキングジョー

裕子の運転する車を降りて銃撃する面々

すぐにターゲットが変わった


京太郎「こっちを見た!」

はやり「散開しよう!」

裕子「えっ!」

はやり「行こう!」

美穂子「はい!」


四人がそれぞれ散って行く

キングジョーがそれぞれの方へと体を向けるが、一人に絞り歩き出す

目標は―――


京太郎「俺かよッ!」

ベリアル『おい小僧! 仕方ねぇ、やるぞ!』

京太郎「はい!」


ゼットライザーを取り出したその瞬間、なにかが前に現れ攻撃をしかけてくる

ハッとして回避しようとするも、遅かったのかゼットライザーが弾かれた

舌打ちをして後ろに下がる


ベリアル『チッ! なんだ!』

京太郎「お前っ、池田ァ!」

華菜「……」


両手両足を地につけて、獣のような構えをとる池田華菜が眼を光らせた

素早く両手を構える京太郎

お互いの視線が交差する


ベリアル『さっさとあいつを拾いにいくぞ!』

京太郎「はい、それにキングジョーが……いや、あっちは」


瞬間、現れた光の巨人ウルトラマンティガ

ティガが即座にキングジョーへと攻撃をしかけていく

ならば京太郎が集中すべきは……


京太郎「池田華菜……ッ!」

華菜「……!」ダッ

339: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 00:58:57.25 ID:OPt9BXHB0

キングジョーと相対するティガ

格闘戦をしかけるも、その頑強な装甲には通用しない

光弾を放つも、また無駄


ティガ「チャアッ!」


タイプチェンジでパワータイプへと変わる

拳を打ち込めば、確かに怯む


美穂子『これなら!』

キングジョー「―――!」


放たれる破壊光線を、回避してさらに回し蹴り

頑強な体だが、パワータイプならダメージは入る


美穂子『これなら……っ!?』


ふと、視界に映った光景

華菜が京太郎へと襲い掛かっていた

素早い華菜の格闘をさばいていく京太郎


美穂子『華菜っ!?』


だがそちらに意識を飛ばしていた一瞬が、キングジョーの勝機

近くのトラックを掴むと、そのままティガを殴り飛ばす


ティガ「ダアッ!」


吹き飛んで、そのままビルへと倒れ込むティガ

さらに破壊光線を受ける


美穂子『うっ、アアァァァッ!!?』

キングジョー「――-!」


破壊光線を止めて、近づくキングジョーがティガに張り手を打ち込む

真横からの張り手に、吹き飛んで地面に倒れ込むティガ


美穂子『っ、華菜っ……京太郎ぉ!』

キングジョー「―――!」

340: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 01:17:06.03 ID:7nNPiMH60


襲い掛かる華菜の攻撃をなんとかさばいていく

獣のように両手を振るってくる華菜


京太郎「っ!」

ベリアル『殺れ!』

京太郎「美穂子さんが見てるっ、怪我させるわけにはっ!」

ベリアル『テメェがやられちゃ世話ねぇぞ!』

京太郎「わかってる、けど!」


爪が掠り、頬に切り傷

舌打ちをして、ガッツハイパーを懐から取り出すとさらにスタンモードのカートリッジに変えた

麻痺さえさせればどうとでもなる


京太郎「こいつでっ!」

華菜「しゃっ!」


獣の勘か、即座に後ろに跳ねられた

銃弾は地面を穿つのみ


京太郎「くっ!」

ティガ「ダァッ!」


倒れてくるティガ

京太郎は顔をしかめつつ、その場を後ろに跳んだ

一瞬だが華菜も後ろへと跳んだのが見えた


京太郎「美穂子さん!」


倒れるティガに、キングジョーが馬乗りになる

華菜が追撃してくる様子がないのを確認しつつ、ゼットライザーを拾う

今更ここで、など言っていられない

ティガのカラータイマーが点滅している


京太郎「ベリアルさん!」

ベリアル『やるか!』

美穂子『っ、京太郎……?』


取り出したゼットライザーのトリガーを引き、ゲートへと飛び込む

341: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 01:25:06.00 ID:7nNPiMH60


インナースペースで、京太郎はゼットライザーを左手に持つ

背後にベリアルが現れた

キングジョー確かにいつもと違う雰囲気を感じている


京太郎「今の俺じゃキツいって、無理じゃないんですよね」

ベリアル「ああ、余裕じゃあねぇな」

京太郎「上等! 余裕のバトルなんてそうそう無かったですし!」

ベリアル「ハッ、おもしろいやってみろ!」


カードを差し込む


『キョウタロウ・アクセスグランデット』


ベリアル「小僧、やってみな!」

京太郎「ベリアァルッ!」


ゼットライザーを掲げ、トリガーを引く

342: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 01:40:06.29 ID:7nNPiMH60

現れるのは白銀のベリアル

素早くキングジョーに対して爪撃を見舞う

よろめいたキングジョーを掴まえて、力一杯にティガから引き離す


京太郎『っのぉ!』

ベリアル「ハアッ!」

キングジョー「―――!」


立ち上がったキングジョーがベリアルに頭突きを見舞う

ひるむベリアルに、張り手を放つ

吹き飛んだベリアルが倒れた


京太郎『なんつーパワー!』

ベリアル『ハッ、大したもんだ……だけどなぁ!』


起き上がったベリアルが電撃攻撃を放つ

キングジョーは一時的に動かなくなった


京太郎『ッ!』


倒れているティガが、そのまま光の粒子となって散る

そこには、美穂子が倒れていた


京太郎『このままじゃ、回り込んでっ!』

ベリアル『あぁ?』


素早く場所を移してキングジョーの横に立つ

そのまま、拳を打ち込むも怯む様子もない

電撃に対する攻撃の効果がなくなったのか、キングジョーが動き出そうとする


京太郎『まずい!』

343: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 01:56:31.17 ID:7nNPiMH60


インナースペース内で、京太郎は左手のメダルを弾く

溢れだす闇が周囲を包んでいく

そして、京太郎の赤い瞳が輝いた


京太郎「究極生命体!」


落ちてくるメダルを左手で取って、ゼットライザーへとセット

ブレードを可動させた


『Alien Rayblood』

京太郎「ベェリアルッ!」


トリガーが引かれた


344: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 02:09:48.78 ID:7nNPiMH60


キングジョーを殴りつけるベリアルの姿が黒いものに変わる

その威力に押されてか、キングジョーは仰け反った

さらに素早く蹴りを打ち込んでさらに美穂子から距離を離す



ベリアル「フハァッ!」

キングジョー「―――!」

京太郎『美穂子さんに近づけさせ、るかァッ!』


両腕を振るう


ベリアル・京太郎『デスシウムロアー!』


音波攻撃でさらに後ろへと後退していくキングジョー

さすがのパワーだと、京太郎はどこか高揚する

さらなる攻撃の連打


京太郎『ダアァッ!』

ベリアル「シャアッ!」

ベリアル・京太郎『デスシウムリッパー!』

キングジョー「―――!」


放たれた斬撃がキングジョーを両断する―――ことはなかった


京太郎『分裂した!?』


上半身と下半身が分かれる

さらに次々と別れていき四つの飛行船になるキングジョー

それぞれがベリアルへと攻撃をしかける


京太郎『くっ!』

ベリアル「グッ!」


周囲に砂埃が舞い視界を塞ぐが、ベリアルは素早く両腕を振るい砂煙を払う

だがそこには―――


京太郎『逃げられたっ!』


悪態をつく京太郎は、美穂子の方へと視線を向けた

そしてそんなベリアルを、はやりは黙って見上げている

345: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 02:24:01.01 ID:7nNPiMH60


―――【特異課施設:病室】


竹井久はそこでテレビを見ていた

生中継、ベリアルが飛び立つのが見える

破壊された街


『ウルトラマンが怪獣を取り逃がしてしまいました!』

久「……光の、巨人、ティガ」


憧れるような表情


久「私も、光に……」


思い浮かぶのは友


久「美穂子、どうして貴女なの……」


350: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 22:35:44.70 ID:VmD3mKQI0


―――【特異課施設:休憩所】


あれから8時間、時刻は夜23時

ニュースでは相も変わらずウルトラマンの話題ばかりだ

やれティガが良いだのベリアルが悪人顔だの、怪獣を逃がしただのウルトラマンが死んだだの


京太郎「頭ぁ痛くなるな……」

ベリアル『あの小娘がやられたが、お前はどうしたい?』

京太郎「……とりあえずキングジョーは倒します」

ベリアル『ハッ、当然だな』


だが考えていることはそれ以外にもある

今後のこと……


京太郎「俺は……」

??「あ、須賀君」

京太郎「吉留さん……」


そこにいたのは三人、吉留末春、文堂星夏、深堀純代

福路美穂子の後輩三人

池田華菜であれば同級生二人、後輩が一人


京太郎「……どしたんすか?」


今日、生で戦った相手の友人たち

思うところがあっても良いのだが


京太郎(思ったより、罪悪感とかないなぁ……酷い奴だ)

351: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 22:45:53.16 ID:VmD3mKQI0

末春「えっと、助けてくれたらしいから」

京太郎「まぁウルトラマンと一緒に戦ってましたから……怪我ぐらいしますよ」

星夏「でも、そこまで外傷はなくて良かった」


三人は美穂子の様子を見に行ったのであろう

抱えて車に乗せたのも京太郎だった


純代「私たちも、力になれれば……」

末春「言いはしたんだけどね」

京太郎「美穂子さんが止めたんじゃないですか?」

末春「正解」アハハ


苦笑する末春に、京太郎も苦笑で返す

優しい彼女だからこそだろう

それに瑞原はやりや熊倉トシだって、よほどのことがなければ子供を戦わせようと思うことも無い


京太郎「それに、美穂子さんって優しすぎるからなぁ」

末春「おー、わかってるね須賀君」

京太郎「誰だって、一緒にいればわかるでしょ」フッ

星夏「確かに」

純代「……次、あのロボットが出てきたら須賀君が?」

京太郎「はい、あとはやりさんと」

星夏「……怪我、しないようにね」

京太郎「はい」


そう言って笑うと、ふと通信が入ったことに気づいた

三人に『おやすみ』とだけ言って呼びだされた場所へと向かう

352: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 23:07:29.65 ID:RH8EkDKj0


この施設内でもあまり立ち寄らない方へとやってくる

前にババルウ星人が現れた部屋、そこに入った

あの時と同じ機械、壁はすでに修繕されている


京太郎「……どうしたんっすか?」

トシ「きたね」


そう言って振り返るトシ、巨大な機械の前

京太郎はそっとトシの隣に立つ


トシ「……」

京太郎「これは?」

トシ「見よう見まねで作ってみたんだけどね……メダルを生成する機械」

京太郎「え」

トシ「まぁなんかの役に立つと思ったんだけど対して」


溜息をついて京太郎の方を向くトシ


京太郎「……話しってこれじゃないっすよね?」

トシ「そうなんだけど、いざ目の前にこられるとどうもね」

京太郎「珍しく濁しますね」


その言葉に、トシは自嘲するように笑った

なんだか責めるような言葉になってしまったかと、京太郎は心中で反省する

頭を振ってトシは口を開く


トシ「……うちの生徒と連絡が取れなくなった」

京太郎「え」

トシ「おそらく、そういうことだろ」

京太郎「でも岩手!?」

トシ「悪魔の種は思ったより広く速く広がってるらしいね」

京太郎「……それじゃあ岩手に?」

トシ「さて、実際に岩手にいるかもわからないしね。原村がいい例さ」

京太郎「……他県に行っている可能性もある、か」

トシ「そゆこと、情報を掴めるまではね」

京太郎「……」

トシ「可能性はあった。それを放ってこちらに来たのは私だ」

京太郎「絶対、助けますから」グッ

トシ「ん、ありがとね」フッ

ベリアル『ハッ面倒事が増えたな』

京太郎『さぁ、どうでしょう、ね……』

353: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 23:20:03.05 ID:RH8EkDKj0


―――翌朝【特異課施設】


廊下を歩く京太郎

そんな廊下に置いてあるベンチに座っている女性が一人

軽く手を上げると、そちらは気づいたようで隣をポンポンと叩いた


京太郎「じゃあお邪魔して」

はやり「どーぞ」


そう言って隣に座った


京太郎「どうしたんっすか?」

はやり「……その、ね」

京太郎「?」

はやり「その……着いて行こうかな」

京太郎「え?」

はやり「あーいや、その……どう、かな?」


お勧めはできない

なぜならば、彼の原動力は彼の欲望だと理解した

自分のために、自分のためだけに、原村和を取り戻す


京太郎「……その、ですね」

ビービー

京太郎「っ!」

はやり「敵!?」

裕子『キングジョーの出現を確認! 戦闘メンバーはただちにガレージへ!』

京太郎「っ……行きましょう!」

はやり「うんっ!」

354: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 23:27:00.95 ID:RH8EkDKj0

ガレージへとやってくる京太郎とはやりの二人

いつもの車がそこに止まっているのだが、既に後部座席には一人

ドアを開けると二人で車内へ


京太郎「な、なにやってんですか!」

はやり「そうだよ。安静にしてないと!」

美穂子「いえ、戦います。幸い大した怪我じゃありませんし」

はやり「でもっ、ウルトラマン同士の戦いに巻き込まれ」

美穂子「お願い、します」

京太郎「……行きましょう」

はやり「京太郎くん!?」

裕子「言って引き下がるならもうやってますよ」フッ

はやり「……」

京太郎「美穂子さん、無理せず下がってくださいよ。いざとなったら」

美穂子「……ええ」コクリ

はやり「ああもう……行こう!」

裕子「!」コクリ

美穂子「ありがとう、ございます!」


アクセルをベタ踏みして、裕子は車を発進させる


355: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 23:42:24.32 ID:RH8EkDKj0

―――【市街地】


街中を進むキングジョー

なにが目的かなど考える必要もない

ただ暴れているならばやることは一つだけ


裕子「はいどうぞ!」


車が止まると即座に降りる裕子を除いた三人

走り去る車だが、裕子も銃撃をしているようだ


キングジョー「―――!」


機械音を出しながら、車の方を向くキングジョー

三人で同時にガッツハイパーにて銃撃を行うと、次はこちらを見る

動き出そうとする三人


京太郎「……」

美穂子「……京太郎」

京太郎「?」

美穂子「私は、一人で戦う」

はやり「……!」

京太郎「美穂子さん!?」


ハッキリと美穂子は口にした

彼女とて先日の戦いで京太郎がベリアルだということは理解している

だからこそ、なのだろう……


美穂子「私は一人で、大丈夫……戦えるからッ!!」


そう言うと、スパークレンスを掲げる

京太郎とはやりの前で、美穂子は―――ティガ-光-になる

はやりは、京太郎の手を取るとキングジョーと逆方向へと走り出す

356: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/19(日) 23:58:02.95 ID:pV28kx5m0

ティガが再び、キングジョーへと立ち向かっていく

パワータイプへと変わりキングジョーの胴体に拳を打ち込む

力強い攻撃に怯むキングジョー


はやりに先導されて離れる京太郎


京太郎「なんで知ってんだよ、美穂子さんが……俺が行くって!」

はやり「わかんないけど、でも! あの子は一人で戦うって言った!」

京太郎「っ」

はやり「!?」


瞬間、はやりの前に現れる影

青みがかった黒髪を振り乱して、池田華菜ははやりの腹部を蹴る

京太郎は、はやりを抱えて即座に後ろに跳んで背中から落ちた


華菜「……」

京太郎「っ!」

はやり「げほっ、えほっ……う゛っ」


衝撃を殺すために後ろに跳んだが、完全には殺し切れずに咳き込み嘔吐するはやり

その背を軽く撫でてから、立っている華菜を睨む

特に、彼女とは話したことはない。見たことはあるがそれ以上はない


京太郎「お前……池田さんを操ってんのが誰か知らないけどな」


立ち上がった京太郎の瞳が赤く輝く


京太郎「効くと思うなよ、俺にィ! 人質なんかが!」


麻雀関係の知人が少なかったが故の、自分の強みではある

多少手を出したところで無事であれば問題ないという、どこか他人事のような思考

否、事実そうである。須賀京太郎にとっては


京太郎「多少怪我させてでも連れてくッ!!」

華菜「……!」ダッ

京太郎「ちったぁ勘弁しろよ池田ァ!」


はやり「きょ、きょうちゃっ」ゲホッ

357: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 00:13:09.47 ID:Baa7Fog+0


ティガのパンチがキングジョーのボディに叩きこまれる

怯んだキングジョーがすぐに張り手をするも、今回こそティガは受け止めて耐えた

お返しとばかりにさらに拳を打ち込む


美穂子『これなら……京太郎くん、私は大丈夫だから……!』

ティガ「タァッ!」

キングジョー「―――!」


さらに拳を打ち込もうとした瞬間、キングジョーが破壊光線を放つ

即座にティガは回避

その光である美穂子の両の瞳は、はっきりとキングジョーを捉えている


美穂子『もう、同じ手は!』

ティガ「テアッ!」


光弾を放つ―――だが、キングジョーはバリアを張って光弾を凌ぐ


美穂子『知らない技、でも!』


キングジョーがさらに破壊光線を放つ

バリアが解除されるも、回避せねばならないため横に転がった

しかし、すぐにキングジョーが大股で歩くような蹴りをティガに打ち込む


ティガ「グアッ!」

358: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 00:32:12.37 ID:NZXuWEF40


そこから離れた道路、池田華菜が路地裏から吹き飛ばされて転がる

体にいくつかの擦り傷がついているも、表情は変えない

鼻から出てくる鼻血を拭う仕草を見せる


京太郎「……」


路地裏から出てくるのは須賀京太郎

素早くスーツの内側から取り出すのはガッツハイパー


華菜「!」

京太郎「大人しくしとけよじゃじゃ猫っ!」


すぐに目の前まで接近してくる華菜の振るう手を後ろに反って避ける

立てた爪、それが京太郎の前髪を僅かに掠った

背中から地面に倒れる京太郎が、ガッツハイパーを池田華菜に向ける


華菜「!」

京太郎「正体を現せよォ!」

華菜「!!?」


放たれたガッツハイパーのスタン弾

それが華菜の体にぶつかり、その意識を刈り取る

前のめりに倒れる華菜を、即座に起き上がって抱きとめた


京太郎「池田さんっ!」


だが池田がいたその場所に現れるのは、宇宙人


京太郎「ッ!」

ベリアル『ゴドラ星人か!』

ゴドラ星人「巨大化するエネルギーすら収穫できずに……!」

359: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 00:48:01.78 ID:mf5Tl7ls0


すぐに華菜を寝かせて、両手を地に着くと勢いのままに加速し、ゴドラ星人へと蹴りを打ち込む

放たれたその蹴りを、両手で防ぐゴドラ星人だが勢いにより京太郎から離される

いや、敢えて離れたのか……


京太郎「ッ!」

ゴドラ星人「!」

ベリアル『両手のハサミ! ゴドラガンの光線に気ィつけろよ!』

京太郎「ッ! ……了解っす!」


ガッツハイパーのカートリッジを排出させると、ゴドラ星人に向かって平行に走る

放たれるリング状の光線を回避していく


京太郎「ベリアルさん、俺は……一人じゃないんっすよね。最初から」

ベリアル『アァ?』

京太郎「だからッ!」


カートリッジをはめると、ゴドラ星人の方を向く

加速を殺すために脚を横に出して砂煙をあげて止まる

放たれる光線は、頭部に向けて


ベリアル『ビビんじゃねぇぞ!』

京太郎「当然!」


頭を下げて、光線を真上に加速

驚愕するゴドラ星人がさらに京太郎に光線を放つも、横にステップして回避

ガッツハイパーを撃つ


ゴドラ星人「ぐわっ!」

京太郎「まだッ!」


さらに銃弾を撃ち、ゴドラ星人を怯ませつつ接近

どんどんと距離を詰めていく

3メートル、1メートル、そして―――


ゴドラ星人「ぬおぉ!」

ベリアル『小僧ォ!』

京太郎「今ァッ!」


ゴドラ星人の右手のハサミが振るわれる!


360: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 00:56:15.85 ID:mf5Tl7ls0


京太郎たちの戦場から離れた場所で戦うティガとキングジョー

一進一退の戦いは繰り広げられている

そんな二体の戦いを見ているのは―――熊倉トシ


トシ「さすがだねぇ……セブンを追いつめただけある」


背後にはトシが乗ってきた車両

そしてその後部座席には……


久「あれが光の力……」


熊倉トシの視線はティガとキングジョーの戦いから逸らされる

視線の先にはビル、その屋上―――そこに立つ、ゼットン星人

だがそのゼットン星人の意識はキングジョーとティガの戦いに向けられていた


ゼットン星人「いいぞキングジョー! ペダニウムの光で、消し去れ!」


両手を広げ、ゼットン星人は高らかに笑う


361: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 01:08:30.28 ID:mf5Tl7ls0


京太郎とゴドラ星人

振るわれた爪は、京太郎を斬り裂くことなく止まっている

その斬撃を止めているのは―――ゼットライザーのブレード


ベリアル『ハッ、やるじゃねぇか!』

京太郎「……そうだよ。そりゃな!」

ゴドラ星人「なんだとぉ!?


超至近距離、京太郎はガッツハイパーの銃口をゴドラ星人の眼前に突き付けた


京太郎「これで和了ってな―――!」


トリガーが引かれると、ゴドラ星人が真後ろに倒れる


ベリアル『やったか』

京太郎「っ……はぁ」


立ち上がった京太郎

ゴドラ星人が粒子となって消えると、メダルが落ちる

それを拾うと、離れた場所に見えるキングジョーとティガの方に眼を向けた


京太郎「ッ!」ダッ


362: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 01:16:30.12 ID:mf5Tl7ls0


キングジョーの張り手を受け止めて、ティガが蹴りを打ち込む

怯むキングジョーが再び破壊光線を撃つ

吹き飛んだティガ、そのカラータイマーが点滅する


ティガ「ヴアッ!」

キングジョー「―――!」


さらに放たれる破壊光線を、バリアで防いだ

だが照射される破壊光線を防ぎ続けるのも無理がある


ティガ「グッ!」

美穂子『みんなを、守る! それが私の力の源……だから!』


バリアで破壊光線を防ぎながらも、立ち上がる

一歩一歩進むが、押し込まれて怯む


美穂子『だから、私は一人でもっ!』

キングジョー「―――!」


だが、キングジョーに銃撃が飛ぶ

それに僅かに怯むキングジョー


ティガ「!」バッ

美穂子『京太郎!?』


ガッツハイパーを撃つ京太郎、その横には瑞原はやり

二人で銃撃をしていると、さらに他の方向からも銃撃、おそらく裕子なのだろう

京太郎は、ティガの方をはっきりと見た


美穂子『私は、私は一人でも!』

京太郎「一人でっ……一人で戦えるわけないだろッ!」

美穂子『ッ!!?』


363: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 01:28:32.97 ID:mf5Tl7ls0


銃撃を続ける京太郎とはやり

それにより僅かに破壊光線の威力が弱まっている

だが、まだだ……


京太郎「ならッ!」

ベリアル『あの小娘は、まだ負けてねェんだろ?』

京太郎「でもっ!」

ベリアル『ここで死ぬような奴はいらねぇだろ』


言いたいことは理解できるが、それでもだ

だがその瞬間、前に差し出される何か

京太郎はそれを差し出した相手、熊倉トシを見る


京太郎「トシさん」

トシ「こいつを使いな」

はやり「……もらうよ」


受け渡されたそのカートリッジを、はやりが受け取る

驚く京太郎に、はやりは笑みを浮かべた


トシ「ライトン30弾、一発きりだよ」

はやり「りょーかいです☆」

京太郎「ちょ、なんではやりさん」

はやり「……大丈夫だよ」

京太郎「へ?」

はやり「福路ちゃんは……一人で戦ってるわけじゃ、ないからね!」


そう言うと、ガッツハイパーをキングジョーへと向ける


はやり「京ちゃん……行ってらっしゃい」

京太郎「……はい!」


京太郎が走り出すと同時に、はやりはトリガーを引いた


364: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 01:41:55.75 ID:Astajtfw0


放たれたガッツハイパーの新たな弾丸

はやりの照準に狂いはない

ライトン30弾は、キングジョーに直撃―――爆発


キングジョー「―――!」

ティガ「!」

美穂子『そうよ、私は……一人で戦ってるんじゃない!』


◆BGM:TAKE ME HIGHER【http://www.youtube.com/watch?v=2FzlpZqyuKg



エラーしたかのようなキングジョーを前にティガがマルチタイプへと変わる

張り手をするキングジョーの手を弾くと、拳を打ち込む

パワーダウンしているキングジョーは、僅かに怯んだ


ティガ「タァッ!」

キングジョー「!」


はやり「そうだよ! 頑張って、ティガ!」


通常の銃撃だが、キングジョーを怯ませる

裕子も、別の場所から銃撃を放っていた


美穂子『ハアァァッ!』

ティガ「デヤァッ!」


蹴りを打ち込むと、後ろへと下がり―――そして、必殺の構えを取る


美穂子『これで終わり!』

ティガ「タアァッ!」


紫の光と共に、ゼぺリオン光線が放たれた


365: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 01:48:23.84 ID:Astajtfw0


キングジョー「―――!」


ゼぺリオン光線の直撃を受けて、キングジョーが止まる

ずっと上げていた両手を下に下げ、後ろ向きに倒れた


ティガ「……」


ゼットン星人「私のキングジョーがあぁぁっ!」


そして―――爆散

キングジョーの破片が周囲に散らばる

そしてティガは光となってその場に収束していく


地に立っているのは福路美穂子

膝をついて、その顔に疲労を滲ませた


美穂子「っ……ありがとう。みんなっ」


そして空を見上げる


美穂子「大事なこと、忘れてた……仲間がいる。ありがとう、京太郎っ」


思い出すは、はるか遠くに感じるあの夏

仲間たちとの―――絆


366: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 02:00:57.92 ID:Astajtfw0


ビルの屋上で、ゼットン星人がガクリと崩れ落ちる

膝をつき、地面を殴った


ゼットン星人「ペダニウムの光おぉっ!」

「なんの光がなんだって?」

ゼットン星人「っ! 貴様!」


そこにいたのは、闇の巨人―――ベリアル


ゼットン星人が後ずさるが、即座に接近するとその首を掴んで投げ飛ばす

吹き飛んだゼットン星人がビルの貯水槽にぶつかり、めりこむ


ベリアル「ハッ! 雑魚は小細工が好きだなァ」

ゼットン星人「ぐっ……卑怯と、言いたいか?」

ベリアル「あぁ? 言わねェよ、卑怯もラッキョウもあるものかとか言われかねねぇからな」

ゼットン星人「メフィラス、そうかいたな……貴様の昔の仲間に」

ベリアル「はっ、オレの仲間っつうには微妙だけどな


そう言うと、ベリアルは両足で地をふみしめる


ベリアル「オレの中の奴も相当ォキレてっからな……生半可な威力じゃねぇぞ」

ゼットン星人「人間風情、がっ」

ベリアル「ハッ、いつもそのたかが人間に苦渋舐めさせられてる奴が言うセリフじゃねぇなぁ」


右腕に集まる闇の力、赤い雷


京太郎『闇の力で、消し去る!』

ベリアル・京太郎「デスシウム光線!」


放たれた光線は、真っ直ぐにゼットン星人を飲み込む


ゼットン星人「オォォォ!!?」


貯水槽を貫き、そのまま光線は空へと―――伸びていく

367: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 02:09:43.85 ID:Astajtfw0


手を降ろしたベリアルが、右腕を振るう

左手を顎にそえて首を鳴らすと、空を見上げた


ベリアル『行くか? このまま』

京太郎『はい、名残惜しくなりそうなんで』

ベリアル『ハッ、そうか……』

京太郎『どうしたんっすか?』

ベリアル『昔を思い出しただけだ……』

京太郎『昔にそんな仲間が?』

ベリアル『しもべだ、まぁ着いてきたがな』

京太郎『良い、仲間ですね』

ベリアル「オイ! だから下僕だって」

京太郎『じゃあ、これが初めてっすね』


勢いあまって荒々しく喋るベリアル

それと反対に京太郎は優しげな声


京太郎『帰るべき場所に仲間がいるの……』

ベリアル「……」

京太郎『たぶん、きっとそれは……良いもんっすよ』

ベリアル「ハンッ! どーだかな」


そう言うと、ベリアルが飛び立つ

次の目的地は既に決まっている

やるべきことも……


京太郎『きっとまた強敵ばっかですよ』

ベリアル「ハッ、上等だ!」

368: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 02:19:10.60 ID:Astajtfw0


空を行くベリアル

その小さな影を、福路美穂子と瑞原はやりが見上げる

救護班の車に乗せられている池田華菜

その近くにいた熊倉トシもまた然り


トシ「行ってらっしゃい……」

はやり「……」

美穂子「京太郎……」


グッと、拳を握りしめるはやり


はやり(京ちゃん……待ってるから、君の帰ってくるココで)

美穂子(守るから、京太郎が帰ってくる場所を)


はやりは満面の笑顔を浮かべ、戦士を見送る


369: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 02:23:29.08 ID:Astajtfw0


     第8話【いつかの再開へ】 END


379: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 22:07:32.12 ID:Jm5FS51B0


1、奈良(阿知賀・晩成)


380: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 22:15:53.52 ID:Jm5FS51B0
(>>378 こっちのスレに派遣!


―――次回予告


京太郎:吉野についたぞ!

ベリアル:さっそくろくでもねぇ感覚だ

穏乃:須賀君だ!

宥:ゆっくりしていってね

晴絵:特異課奈良支部にようこそ

京太郎:デビルスプリンターっていったい……


次回【大地の光】


京太郎:また、ウルトラマン!?

晴絵:目に見えるものだけを信じるな


382: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 22:29:45.58 ID:Jm5FS51B0


あれからそれほど時間はかからなかった

ベリアルとなって奈良の地、吉野までやってきた京太郎

街中を歩き、まずは目的地まで向かう


京太郎「吉野についたぞ!」

ベリアル『デカい独り言だな』

京太郎「良いじゃないっすか……ちょっとテンションあがってるんですよ」


それにしてもだ、原村和が見つかった地

思い入れなどがあったからこそ、なのだろうか


京太郎「まぁまずは」


そのまま真っ直ぐと道路を下って行く


京太郎「……あった」

ベリアル『ああ? 寝床探しか?』

京太郎「まぁ、そんなもんっす」


ベリアルの疑問に軽く返して、その旅館“松実館”へと入って行く


383: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 22:41:49.79 ID:Jm5FS51B0


松実館へと入ると、そこに立っていたのは9月にしても厚着の少女

マフラーとセーター、ロングスカート

見間違えるわけがない。一度とはいえ見た時は度胆を抜かれた


京太郎「えっと、松実宥さん……ですよね?」

宥「あ、はい、須賀京太郎君、ですよね?」


お互いに恐る恐ると言った様子で挨拶をする

合流予定があったのは京太郎がしっかりと連絡をしていたからと、トシの根回しのおかげだろう

スーツ姿の京太郎と、私服である宥の二人


京太郎「……えっと、案内をお願いしても?」

宥「あ、はい! ご、ごめんねっ」

京太郎「いえいえ、急にお邪魔しちゃってすみません」

宥「ううん、赤土先生は驚いてたけど」

京太郎「ハハハ、まぁ……色々あって」

宥「そっか、ちょっとボロボロに見えるけど」

京太郎「まぁ色々ありまして」


あの戦いから直接来たのだ

砂埃がスーツを汚している

軽く叩いて払うと、先を行き松実館を出る宥の後を追う

384: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 23:05:41.11 ID:Jm5FS51B0


松実館から五分ほど歩いて、宥と京太郎は阿知賀学院近くの5階建ての小さなビルへと入る

ロビーに入ると受付に女性がいて、宥が軽く頭を下げて服の内側から首にかけていた証明章を出した

京太郎もスーツのポケットに入った証明章を出す


「どうぞ、五階へ」


受付の女性の言葉に宥の方を見ると頷かれる

そのまま着いていき、エレベーターへと入った


宥「えっと、久しぶり……だよね?」

京太郎「憶えてます? 話してもないっすよ?」

宥「あ、でも唯一の男子生徒だったから、和ちゃんからもお話聞いたらしいから玄ちゃんが」

京太郎「ああ、松実玄さん」ハハッ


そう笑う京太郎は、僅かに宥の表情が曇るのを見逃さなかった

妙な感覚だが、憶えがある

顔をしかめて上のエレベーターのランプに視界を向けた


京太郎「ん」

宥「あ、ついたね」


扉が開くと廊下、そこを歩き大きな扉の前に立つ

軽くノックをする宥、中から声が聞こえた


??「どうぞー」

宥「入りまーす

ガチャッ


扉を開くと、そこは長野の特異課施設の作戦室を思い出す作り

大きなテーブルと、モニター、そして機材

そのテーブルを前に座っているのは二人


??「須賀君だ!」


声を上げるのは高鴨穏乃

そして、もう一人……赤土晴絵


晴絵「特異課奈良支部へようこそ」フッ


385: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 23:07:25.89 ID:Jm5FS51B0


     第9話【大地の光】


386: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 23:36:49.63 ID:Jm5FS51B0

テーブルを囲んで座る面々

須賀京太郎、松実宥、高鴨穏乃、赤土晴絵

アンバランスというかなんというか、穏乃のスーツ姿が見慣れない


京太郎「……特異課なんですね」

晴絵「その通り、特異災害及び特異現象及び超常現象対策課……の奈良支部」

京太郎「しかも、いやしかももなにもないか、そりゃ雀士が必要だ」

晴絵「話早くて助かるねーうん」


満足げに頷く晴絵


京太郎「で、さっそく本題なんですけど」

晴絵「和のことだよね」

穏乃「……」

京太郎「はい、場所は掴んでるんですか?」

晴絵「いいや、掴んでたら早かったんだけどね……また行方不明」

京太郎「……そうっすか」


そう返事をして、息をつく


晴絵「悪いね。こっちもこっちで色々あってさ」

京太郎「察しはついてますよ」

穏乃「やっぱり、そっちも同じなんだ」


無言でうなずく


京太郎「……和が相手だから、そっちも油断するわな」

晴絵「そういうこと、憧と玄、そして灼」

宥「それに晩成の小走さんたちも……」

京太郎「長野と一緒か」ハァ


387: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/20(月) 23:46:57.48 ID:Jm5FS51B0


晴絵がキーボードを叩くと、モニターに画像が表示される

それはトシからの見せられたものと別の原村和が映る画像


京太郎「これは……」

穏乃「和……」グッ


映っているのは和、さらに憧と玄

三人の少女、そこから灼も犠牲になったのだろうと想像がつく


京太郎「……しばらく、次の手がかりが見つかるまでこちらにいても?」

穏乃「えっ」

京太郎「協力する……させてもらう」

晴絵「おっ、そりゃ助かる! 噂はかねがね聞いてるからね」

宥「あ、ありがとうっ!」

京太郎「いえ、ただその代わりと言っちゃぁなんですが」


その言葉に、晴絵はウインクで返す


晴絵「させてもらうよ、色々サポートさ!」ニッ


389: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/21(火) 00:09:29.33 ID:FNg1wCSV0


その後、京太郎は代えのスーツをもらい更衣室で着替える

納得したようで頷くと、サングラスを胸ポケットに入れてゼットライザーをしまう


ベリアル『おい、ここにいつくつもりか?』

京太郎「とりあえず次の手がかりをつかむまでは、ですね……なにがあるかわからないし」

ベリアル『ま、オレはこの妙な感覚全部を消し飛ばせれば、どーだって構わねぇ』

京太郎「そりゃなによりです」


自分とベリアルの目的は一致している

そうでなくても、身体の貸し借りをしているのだからある程度譲歩をしてくれるのはわかっている

だからこそ、今までもこれからも上手くやっていける気がしていた


京太郎「……まずは、メダルを回収しつつ和をあぶりだせれば上々ってとこっす」

ベリアル『ハッ、戦士の面構えと思考になってきやがったな』

京太郎「……褒められるとは」

ベリアル『褒めてねぇ、まともになったって言ってるだけだ』


それを褒めているというのでは、と思うがそうでもないのだろう

未だにベリアルは本来の力を出せていないのだろうし……

ドアを開いて廊下へと出る


京太郎「さてと……」

穏乃「お、須賀君!」

京太郎「ん、高鴨さん」

穏乃「これから一緒に戦うわけだから、ね!」


目の前に手が差しだされる

390: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/21(火) 00:23:45.62 ID:FNg1wCSV0


差し出された手をじっと見つめて、京太郎は手を出す

二人の手が合わさり、グッと握手が交わされた


京太郎「っ」


だがその瞬間、京太郎の視界が揺れた

一瞬だけ変わった景色の中に見えた穏乃の胸に宿る“赤い光”

すぐに元に戻ると、京太郎は頭を振って笑みを浮かべる


京太郎「その、よろしく」

穏乃「うん、京太郎!」ニッ

京太郎「……ああ、穏乃」フッ


そうして手を離すと、京太郎はまずやるべきことを頭で整理しようと考える……のだが


穏乃「それじゃあ京太郎には話しておかないとかな」

京太郎「ん?」

穏乃「この街にいる、ウルトラマンのこと!」

京太郎「……え、そんなの聞いたことないぞ」

ベリアル『あのばあさんからも聞いてねぇよな』

穏乃「まぁまだ二回しか出てないし」

京太郎「そ、それでも」

穏乃「あれじゃない、じょ、じょ」

晴絵「情報統制、ね」


廊下の向こうからやってきたのは赤土晴絵


穏乃「あ、それです!」

京太郎「いやにしたって」

晴絵「大概の話題は長野に取られてたし、デマ情報もネットにゃ多かったからね」

京太郎「そういうもんっすか?」

晴絵「そういうもんだよ。それに被害はほとんど出てなかったし余計にね……次からは、どうなるかな」


そう言う晴絵はなにかを含んだような笑みを浮かべる

391: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/21(火) 00:36:03.43 ID:FNg1wCSV0


京太郎「それで、ウルトラマンってどんな?」

ベリアル『ハッ、知ってる奴だったらどうすっかな』

京太郎『なんかマズイんですか……ってそっか』

ベリアル『オレがいて不味くない場合が知りてぇもんだな』


頭の中で、ベリアルの笑い声が聞こえる


晴絵「それは……ん?


瞬間、ビル内に警報が鳴る


京太郎「これはっ!」

晴絵「タイミングが悪いなぁ」ハッ

京太郎「ここってどういう感じっすか!?」

晴絵「そっちと変わらないよ。出撃! 車で!」

穏乃「了解です!」

京太郎「なるほど!」


392: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/21(火) 00:46:56.06 ID:FNg1wCSV0


特異課奈良支部の一階

入口と反対方向にあるガレージから発進する車

運転席には赤土晴絵、助手席に松実宥


京太郎「松実さんもっすか!」

宥「うん、一応……正規隊員じゃないんだけど」

京太郎「なるほど」


後部座席に座っているのは京太郎と穏乃の二人

その手にはガッツハイパーとは別の大型銃DUNKショットがある


晴絵「見えてきた」


車の進行方向、そちらには鉄の塊のようなものがあった

地面に刺さっているようにも見える


晴絵「アーカイブに情報なし……なにあれ」

京太郎「あれは……怪獣?」

穏乃「とりあえず撃ってみます! オーッス!」

晴絵「ちょっ! バカ!」


窓から乗り出した穏乃が大型銃を撃つ

それが真っ直ぐに金属塊へとぶつかると、それが形を変えて巨大な人型怪獣に変わった

しかしそれは……


京太郎「ウルトラマンに、似てる?」


どこか、そんな雰囲気があった


ベリアル『金属生命体アパテーだな』

京太郎『知ってるんですか!?』

ベリアル『名前と容姿だけだがなぁ』

京太郎「なにはともあれ、やるしかないか……!」


車が止まると共に出てくる京太郎、宥、穏乃の三人


京太郎「さて、やるか!」

宥「須賀君、銃似合うねぇ」

京太郎「それ、褒めてます?」


394: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/21(火) 00:59:00.66 ID:FNg1wCSV0


金属生命体アパテーが、勢いよく民家を踏み潰す

次にマンションを破壊しようとするが、銃撃によって怯む

その銃撃は二か所から、片方は京太郎と宥の二人だ


京太郎「穏乃どこいった!」

宥「須賀君っ!」


宥が指差す方向に、穏乃が走って行くのが見えた


京太郎「たくっ、合流し」


瞬間、目の前に建物の残骸が落ちる


京太郎「うおぉっ!!?」

宥「あ、あぶないよ!」


合流するにはいかんせん障害が多い

だが、宥と共にいても変身ができないのは確かだ

とりあえずやるべきことは……


京太郎「……例のウルトラマン、出てこないんっすか?」

宥「わ、わからないから、がんばらないと……!」

京太郎「確かに……速攻でウルトラマン頼りも良くないか」ハァ


そう言って苦笑を浮かべると、銃撃を再開する

宥も反動に耐えながら銃撃をしていく


京太郎「逆になんで穏乃はサクサク撃ててんだ」


395: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/21(火) 01:07:35.95 ID:FNg1wCSV0


宥の手を取って走る京太郎

走りながら銃撃をしつつ、穏乃を確認した

場所は真反対、距離はかなり空いている


京太郎「っ!」

アパテー「―――!」


瞬間、手から光弾を放ったアパテー

それは真っ直ぐ穏乃がいる場所に―――


京太郎『ベリアルさん!』

ベリアル『いや、これで良い!』


その瞬間、赤い光の柱が立つ

隣の宥が立ち止まり、つられて京太郎も止まった

ベリアルの言っていた意味を悟る


京太郎「あれは……」

宥「ウルトラマン、ガイア……」


空中に現れたガイアが、着地

それと共に地面、砂が舞い上がった

ティガとは違う光の巨人


京太郎「ガイア……」

ベリアル『地球が生んだウルトラマンか……』


396: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/21(火) 01:23:38.78 ID:FNg1wCSV0


現れたウルトラマンガイアが、勢いよく構えを取る

ベリアルともティガともまったく違うスタイル

現れたガイアを相手に、アパテーが変わる


アパテー「!」


体に追加装甲を纏い、右腕を槍に変形させた


ガイア「タァッ!」


走り出すガイアがアパテーの胴体に拳をぶつける

ひるみつつ、アパテーが右腕を振るう

ガイアは腕を使ってその槍を凌ぎ、さらに拳を振るった


アパテー「!」


そんな二体の戦いを見守る京太郎

その左手はメダルホルダーに添えられている


京太郎「なんで奈良にまで?」

宥「わからないけど、助けてくれてるよ。私たちを」

ベリアル『脅威に対する抗体みたいなもんか……それか』

京太郎『それか?』

ベリアル『メダルの力かもな、ウルトラメダルの』

京太郎「……」


アパテーを追いこんでいくガイアを見る京太郎

その“変身者”が誰であろうと、おそらくそれなりに戦い慣れしている

ガイアは今まで二回出現したと聞いたが、おそらく“麻雀”を何度もしているのだろう


ベリアル『確かぁ……量子物理学者、とかがガイアだったって聞いたことがある』

京太郎「……たぶん、いや絶対そんな頭良いタイプじゃないよなぁ」

宥「え?」

京太郎「ああいや、なんでもないっす!」

397: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/21(火) 01:46:20.67 ID:c5iFS6rl0


ガイアの拳が、アパテーの胸部を打つ

後ろへと怯むアパテーに、回転蹴りを放った


アパテー「!」

ガイア「テアッ! タァッ! デヤァッ!」


さらに二撃、三撃と回転蹴りを放ち怯ませていく

アパテーが徐々に後退していき、後ろに吹き飛んで倒れる

倒れていたアパテーが、溶解する鉄のように形を崩すと、八本の槍へと姿を変わった


ガイア「!!?」


その槍が持ち上がるとひとりでに回転、切っ先がガイアの方を向く


ガイア「チャッ!」


向かってくる槍を、素早く光弾で落とす

落とし切れなかった槍はバリアで凌いだ


京太郎「やるな……」

ベリアル『ハッ、おもしれぇ』

京太郎『やめてくださいよ、わざと敵にまわったりするの』

ベリアル『やらねぇよ、今はな』

京太郎『一生やめてください』


弾かれた槍が、再び人型のアパテーへと戻る

弱っているのか追加装甲も外れ、ふらついている


ガイア「フンッ!」


ガイアが両腕を前に構えて、足を開き、頭を後ろへと逸らす

赤い光が、その額へと集まり、エネルギーが伸びる


ガイア「……タアアァァァァァッ!」


頭を真っ直ぐに振るうと、そのエネルギーは鞭の如くしなり―――真っ直ぐに伸びていく


アパテー「!!?」


その光線がアパテーに突き刺さり、その体を粉々に―――爆散させる

吹き飛んだアパテー、そしてそこに立つのはウルトラマンガイア

静かに、そこに立つ


京太郎「終わった……のか」

宥「良かったぁ」ホッ


398: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/21(火) 01:59:04.68 ID:c5iFS6rl0


ガイアが例に洩れず飛び立とうとする


京太郎「ッ!」


その瞬間―――青い光がガイアを背中から撃つ


ガイア「グアアァッ!」


吹き飛んだガイアが、地上へと落ちる

そのカラータイマーを赤く点滅させながらも、起き上がり攻撃の飛んできた方向を見た

そこにいるのは……


京太郎「青い、ウルトラマン!?」

ベリアル『アグルか!』


◆BGM:アグル降臨【https://www.youtube.com/watch?v=qTa7XrlYBR4



立っているのは青い巨人、ウルトラマンアグル

青と銀の体を持ったウルトラマンはガイアへと近づいていく

ガイアがなんとか起き上がり、構えを取ろうとするが……蹴りを受けて倒れる


京太郎「くっ!」ダッ

宥「あ、須賀君!!?」


走り、アグルの方へと走る京太郎

宥から離れていき、銃を撃つ

そのレーザーを受けたアグルが少しばかり怯み、京太郎の方を向く


ベリアル『あぁん? 嫌な感じがしやがる……あれは普通じゃねぇ! 小僧ォ!』

京太郎「ベリアルさん!」


ゼットライザーのトリガーを引く

その瞬間、アグルの光弾が京太郎のいた場所を爆破した


399: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/21(火) 02:05:46.13 ID:c5iFS6rl0


―――インナースペース


そこに立つ京太郎が、アクセスカードを右手に取る


京太郎「また、ウルトラマン!?」

ベリアル「アグルねぇ」

京太郎「どんなウルトラマンなんですか?」

ベリアル「詳しくは知らねぇよ」

京太郎「そうっすか……でも、このままじゃガイアが」


ならば、やることは一つだ―――だが


京太郎「っ!」フラッ

ベリアル「一日に二回目、しかも休憩ほとんどしてねぇんだから当然だな」

京太郎「っ……一気に決めます!」

ベリアル「ハッ、良いじゃねぇか! おもしれぇ!」


カードを差し込む


『キョウタロウ・アクセスグランテッド』

京太郎「さらに! 究極生命体!」


弾かれたメダルから闇が溢れだす

赤い瞳が輝く

レイブラッド星人メダルがセットされる


『Alien Rayblood』

京太郎「ベリアァルッ!」


トリガーが引かれた

401: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/21(火) 02:16:31.74 ID:c5iFS6rl0


暗い光と共に現れるのは闇の巨人ベリアル

黄色の目でアグルを見る

一方のアグルはベリアルを見据えて構えを取った


ベリアル『時間はそんなねぇぞ!』

京太郎『南入りやきとりって感じっすね! 上等ォ!』


素早く、ベリアルも構えを取って走り出す

膝をついたガイアがその二体の巨人を見ていた


ベリアル「ハアァッ!」

アグル「デヤァッ!」


二人の巨人、蹴りを同時に放ち、ぶつかりあう

即座に体を返して、二人は同時に光弾を放つ

相殺されるが、衝撃波が周囲に広がった


そして一人、その戦いを離れた場所から苦笑交じりに見ている者がいた


晴絵「あ~あ、マズい気がするなぁこれ」


407: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 19:55:11.94 ID:gCtEykWI0

ベリアルとアグルの二人の巨人がぶつかりあう

素早い格闘戦、拳と拳、脚と脚、素早い連打をお互いに行う


ベリアル「グッ!」

京太郎『疲労してるっても……こいつっ!』


一瞬組みあうと、すぐに離れる

ベリアルはガイアの前に立って、素早く構えをとった

黒い巨人ベリアルは即座に光弾を放つ


??『べ、ベリアル!? どうして!』

京太郎(……あんま話さない方がイイか?)

アグル「フッ!」


両手を前に出してバリアを張るアグルに対して、ベリアルは地を蹴り接近し宙に浮いた状態で連続蹴りを打ち込む

それらを後ろに下がりながらさばいていくアグルだが、フェイントをかけつつ蹴りを一撃打ち込むことに成功した


アグル「グアッ!」


僅かに吹き飛び後ろに跳ぶアグルだが、無事着地

地上に脚をついたベリアル

だが、ガイアが立ち上がるとベリアルの隣にたった


??『手伝います!』

ベリアル「……」


黙って構えを取るベリアル、そしてガイア

だがアグルは、青い光となって―――消える

408: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 20:05:48.41 ID:gCtEykWI0


消えたアグルに、京太郎は驚愕しながらもガイアに声が通らないようにベリアルに語りかける


京太郎『逃げられましたね』

ベリアル『弱ってるお前とオレとでそれなりにやれるんだ。二体一はそーはいかねぇんだろぉな』ハッ

京太郎『なら、やれますね』


軽く肩を回すと、ベリアルが首を鳴らす

隣のガイアが、赤い光となって消えた

ベリアルはというと、空へと飛び立っていく


京太郎『なんなんっすかね、奈良にきたとたんこんな』

ベリアル『オレたちが来たからトラブルがおきたんじゃねぇ、トラブルのある場所に乗りこだんだから当然だろ?』

京太郎『まぁ、確かに』

ベリアル『例の原村和は潰す、ついでにアグルは潰す、それで良いんだろ?』

京太郎『うっす! わかりやすい!』

ベリアル『ハッ、お前も良い感じになってきたじゃねぇか』

京太郎『ありがとうございます!』


そして一方、地上では誰かが膝ついて上空を見上げる

黒い影が見えなくなっていく……


??「べ、ベリアル……どうしてここに」


そう言うと、高鴨穏乃は倒れて意識を手放した


409: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 20:21:14.53 ID:UwhGgoVQ0


黒い光と共に、地上へと現れる京太郎

破壊された街、京太郎はその中を歩いて穏乃を探す

おそらく、普通でいないはずだ


京太郎『にしても、さっそく長野とは違うパターンですね。ウルトラマンが敵とは』

ベリアル『まぁ別に珍しいことじゃねぇ、オレはな』

京太郎『俺には凄いことなんっすよ……』


そう言いながら、瓦礫を飛び越えつつ周囲を見回す


京太郎『まぁ、俺の邪魔すんなら……それなりに痛い思いはしてもらいます、けど』

ベリアル『ハッ、良いじゃねぇか』

京太郎『邪魔されないにこしたことないんですけどね』


そう言うと、視線の先に高鴨穏乃を見た

だがそんな穏乃はというと……


京太郎「赤土さん!」

晴絵「ああ、須賀か」

京太郎「穏乃、怪我したんっすか?」

晴絵「まぁ一人で飛び込んで行ったしね」


赤土晴絵が背負っている穏乃は少しばかり怪我をして眠っている

息をついて、車の方へと二人で歩き出す

そうしていると、車の前には少女が一人


京太郎「あ、松実さん」

宥「あ、須賀君」ホッ

京太郎「心配かけました」

宥「ううん……安心した」フフッ


そう言って笑みを浮かべる宥

その豊満な が揺れた


京太郎(あー! 好きになる!)


410: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 20:36:01.50 ID:UwhGgoVQ0

―――【特異課奈良支部:作戦室】


そこにいるのは、京太郎と晴絵と宥の三人

穏乃は医務室に寝かせているらしいが……


京太郎「えっと……」

晴絵「ガイアがなんとかあの金属生命体を倒してくれたわけだけど……」

京太郎「あ、メダルは?」

晴絵「研究班に送った。欲しがってたから」

京太郎「そうっすか」


まぁ集めている理由も無いので別に構わない


晴絵「にしてもあっちのウルトラマンだよね」

京太郎「ああ……青い、ウルトラマンですか」

宥「が、ガイアを攻撃したってことは……」

晴絵「敵かぁ」

京太郎「ですねぇ」

晴絵「問題が増えるなぁ」

京太郎「まぁ俺は和を探すだけっすけど」

晴絵「おー薄情だねぇ」ニヤニヤ

京太郎「……だけなことないですけど、とりあえず和最優先で」

晴絵「好きなのか!」

京太郎「違います!」

宥「えっ、そ、そうなの?」カァッ

京太郎「違うって!」


強く否定してから、咳払いを一つ


京太郎「とりあえず、俺はその……」

晴絵「わかってるわかってる。仲間だもんな、うちもそうだから」

宥(あ、違ったんだ……)

京太郎「たく、からかわないでくださいよぉ」

414: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 20:55:14.95 ID:UwhGgoVQ0
1、松実宥



作戦室、解散ということで京太郎が立ち上がり背を伸ばす

とりあえずは部屋でももらおうかとしていると、降ろした手の裾が引っ張られらた

振り返る京太郎、そこには―――松実宥


京太郎『かわいぃぃぃぃぃ!』

ベリアル『うるせぇ!』


平静を装う京太郎が、フッと笑みを浮かべる


京太郎「どうしました?」

宥「その、泊まるところこまってるなら……うち、くる?」

京太郎(え、なんか始まった?)

宥「松実館、泊まる?」エヘヘ

京太郎「はい」キリッ

ベリアル『お前、女に弱いな』

京太郎『稀に強い場合もあります!』


415: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 21:05:02.32 ID:UwhGgoVQ0

そのまま、宥と共に松実館に向かう

昼間の時と逆だなと、京太郎は街並みを目に焼き付けつつ歩く

仲間が育った街の一つ


京太郎「……和」

宥「私は、原村和さん、よく知らないからなんとも言えないけど……」

京太郎「俺も、良くわかってないですよ……シンプルに憧だったんですよ。きっと」

宥「だった?」

京太郎「もうわかんないですけどね。色々あって知見も広がって」


そう言いながら、立ち止まって振り返る

見えないが、遠い空にのぼっている黒煙は戦火の痕だ


京太郎「ま、もう終わった話ですから」

宥「……」

京太郎「ん?」


そっと近づいてきた宥が、京太郎にジェスチャー

少し頭をかがめろと言う意味だと理解して、そっと頭を下げた

すると、宥の手が伸びて京太郎の頭に置かれる


宥「……きっと頑張ってるの知ってるよ、和ちゃんは」ナデナデ

京太郎「そうっすか、ね?」

宥「うん、玄ちゃんに須賀君のこと話してるぐらいだから」

京太郎「……」

宥「それに私も今日見たから、須賀君が頑張ってるの」フフッ

京太郎「……ありがとうございます」

宥「ううん、こちらこそ……ありがとう」ニコリ

417: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 21:18:46.95 ID:UwhGgoVQ0

その後、二人は気恥ずかしさで無言になりながらも歩く

松実館へと着くと、宥について玄関から旅館内に入る

奥から足音が聞こえてきた


???「お、宥おかえ……り?」

宥「あ、お父さん、子の人」

松実父「じ、地上げかっ!!?」

京太郎「人聞き悪りぃ!」

宥「?」

京太郎「と、とりあえず誤解を! 誤解を解いてください!」


どうにか宥に訴えかけると、理解したのか頷く


宥「あ、えっと……お父さん、この人、今日うちに泊まる」

京太郎(なんか嫌な予感)

松実父「まさか! かかか、かか、かかかか、か、かれっ、かれっ」

京太郎「誤解です! 誤解ですから!」

松実父「か、カレピッピ!!?」

京太郎「ちょっと古い!」

宥「……ふぇっ!?」カァッ

京太郎「初心なのはかわいいけど否定してください!」

宥「あ、えっと! ちち、違うよ!?」

松実父「本当っぽい!」

京太郎「とりあえず聞いてください!」

松実父「玄が麻雀合宿行ってる間に大変なことになったぁ!」

京太郎「だから聞けって!」

418: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 21:30:37.45 ID:UwhGgoVQ0

その後、誤解が解けた京太郎は松実館の一室を借りていた


松実父『なぁんだ、そういうことなら早く言ってくれよ』

京太郎『最初から言ってましたけど』

松実父『はははは!』


ほぼ手ぶらの京太郎は、そのほどほどの広さの部屋で腰を下ろす

最近は旅行客も少ないらしく、一室貸すぐらい問題もないそうだ

松実玄はと言えば、麻雀合宿というていでいなくなっているらしい


京太郎「やっぱ特異課ブランド凄いな……快く受け入れてくれるとは」

コンコン

京太郎「あ、はい」

ガラッ

宥「あ、須賀君」

京太郎「松実さん」

宥「その……改めてこれからよろしくね」

京太郎「こちらこそ」フッ

宥「玄ちゃん、早く見つけてあげないと」

京太郎「ですね。俺も協力します……」

宥「ん、私もなにかあった協力するからね、須賀君に」

京太郎「……もう、してもらってますから」

宥「こんなことで?」

京太郎「自分が戻る場所が必要なんっすよ。人間」

宥「……そっか」フフッ

宥(戻る場所……かぁ)

419: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 21:47:02.30 ID:pTC6lcdC0

―――【松実館:温泉】


温泉に胸まで浸かっている京太郎

頭に乗せたタオル、緩みきった表情

深い息をついて、屋根の隙間から空を見上げる


京太郎「長い、一日だったぁ……」

ベリアル『ハッ、ご苦労だったな』

京太郎「ありがとうございます」フッ


労いの言葉を素直に受け取りつつ、京太郎は自らの手を真上に上げた

少しばかり内側のナニカに力を込めると、その手にベリアルの手が重なって見える


ベリアル『妙な感覚は消えてねぇ、まだなんかあるな』

京太郎「それって……」

ベリアル『デビルスプリンター、とか呼ばれてるもんだろぉな』

京太郎「デビルスプリンターっていったい……」

ベリアル『そのうちわかんだろ』


彼がなにかしらの予想がついていることは、なんとなく京太郎とて理解はしている

だがそれを食い下がって聞くほど野暮でもなかった

踏み込まれたくない部分があるだろう……


京太郎「……ふぅ、待ってろよ。みんな」


立ち上がると、星々煌めく空を見上げつつ……手を握りしめた


420: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 21:51:18.79 ID:pTC6lcdC0


     第9話【大地の光】 END


421: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 22:07:14.07 ID:pTC6lcdC0

―――【特異課奈良支部:医務室】


起きている穏乃の前に赤土晴絵

別に問題はないそうだが、今夜はそこに泊まることとなったようだ

晴絵は軽く穏乃の頭を撫でて頷く


穏乃「すみません、心配かけて」

晴絵「まぁ良いけどさ」

穏乃「でもあのウルトラマン、なんで……」


その言葉に、晴絵は笑みを浮かべた


晴絵「ま、倒すしかないでしょ」

穏乃「同じウルトラマンなのに、なんでガイアと戦うんだろう」


そんな穏乃の肩をポンと叩くと、踵を返す


晴絵「……目に見えるものだけを信じるな」

穏乃「え?」

晴絵「じゃあね」フッ


それだけを言うと、晴絵は部屋を出る

残された穏乃は首をかしげた


部屋を出た晴絵は、暗い廊下の闇に溶けるように去って行く


422: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 22:28:45.32 ID:pTC6lcdC0


―――次回予告


京太郎:強くなってきちゃったな

宥:麻雀、強いんだねぇ

ベリアル:麻雀だけじゃねぇがな

穏乃:和!?

京太郎:和!?

晴絵:根源的破滅招来体か!

ベリアル:こいつは!

穏乃:ガイアー!


次回【破滅の使徒】


京太郎:決めたぜ、覚悟!

穏乃:京太郎!?


423: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 22:56:07.96 ID:yR0l5iMX0


―――【特異課奈良支部:休憩所】


椅子に座ってコーヒーを飲んでいるのは―――須賀京太郎

すっかり見慣れたスタッフが行き来する

欠伸を噛み殺しつつ、京太郎は立ち上がった


京太郎「見回りでも行くか」

ベリアル『めっきりだな』

京太郎『めっきりっすね』


あれから一週間と少し、10月へと突入したもののまるで状況の変化はない

戦ったのは三度だが、どれも麻雀だった

一度目、無酸素怪獣カンデア

二度目、奇怪生命ディーンツ

三度目、宇宙雷獣パズズ


京太郎(メダル、全部渡しちゃってるけど)

ベリアル『また麻雀か?』

京太郎『さぁ……麻雀のが被害少ないし俺も強くなるしで良いことだらけですけどね』

ベリアル『俺はデビルスプリンターを殲滅できりゃなんでも良いけどな』

京太郎「そりゃなにより」

穏乃「なにが?」

京太郎「うおっ!」


突然の横からの声に驚き、立ち止まって跳ねる


穏乃「あはははは! 京太郎、びっくりしすぎ!」

京太郎「んなビックリするわ」


頭を掻きながら、京太郎は穏乃の方を向く

笑う穏乃は前よりも懐いたような笑みを浮かべていた

424: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 23:13:59.80 ID:8cWU/9Ht0


穏乃「そういえば一緒に行ったことないよね、パトロール!」

京太郎「あーそういえばそうだ」

京太郎(穏乃がガイアと思えば……どうにもなぁ、美穂子さんときも変身できないから見てるだけになってたし)

穏乃「これでも強いんだよ? 麻雀!」

京太郎「知ってるよ」フッ


夏、自分の目で見ていた

白糸台の大星淡、臨海のネリー・ヴィルサラーゼ、そして宮永咲を追いこんだ

今の自分ではどのくらい食い付けるだろうか……


穏乃「清澄でも打ってたんでしょ? というか怪獣メダル持ちを倒せるって結構凄いよ?」

京太郎「……まぁ鶴賀の人たちとかも打ってたしな」

穏乃「おー加治木さんたちと!? 勝率は!?」

京太郎「……まぁまぁ」

穏乃「すご!」

?「麻雀、強いんだねぇ」

京太郎「うお、宥さん」

宥「えへへ、おはよう」

京太郎「朝会ったじゃないですか」


松実館に泊まっているのも変わりない


宥「それじゃパトロール行っちゃう?」

京太郎「お願いしまーす」

宥「お任せあれっ!」ニコッ

穏乃「おー!」

425: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 23:30:11.45 ID:8cWU/9Ht0


     第10話【破滅の使徒】


427: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 23:38:03.34 ID:8cWU/9Ht0


車に揺られる京太郎と穏乃

運転席には松実宥

三人で揺られながら、街を行く


京太郎「ところでこのまま通信待ち?」

穏乃「そうだねー、京太郎はいままで三回だっけ、どうしてたの?」

京太郎「歩いてたら通信入って向かうだけ」

穏乃「へぇ~」


だが、穏乃たちの知り合いも、自分の知り合いもどこにも見つからない

ベリアルは順調のようで、京太郎も戦いでストレス解消程度にはなっているのだが……

やはりこうも時間が過ぎると思うところがある


穏乃「憧も見つからないしなぁ」

京太郎「新子さんか、和の幼馴染の一人だよな。松実玄さんも」

穏乃「うん、憧はね……凄い麻雀に一生懸命で、私のとっても大事な親友で幼馴染で相棒で」

京太郎(幼馴染、か……)

宥「ライバル、でもあるんじゃないかなぁ」

京太郎「ライバル?」

穏乃「え、別に敵対なんて」

宥「そうじゃなくって、なんていうのかなぁ……う~ん」


悩む宥と、不思議なものでなんとなく理解できた穏乃

そんな関係性を、どこかうらやましくも思う


京太郎「……相棒で、ライバルね」フッ

ベリアル『……ハッ、拮抗してるからこそ成り立つ関係だろ』

京太郎「?」

428: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/22(水) 23:52:34.21 ID:8cWU/9Ht0


そこから少しばかり車で街を散策していく

ついでに穏乃のガイド付きである

余談が多めではあるが……


ベリアル『おい! 止まれ小僧!』

京太郎「!? と、止めて!」

宥「えっ! ちょ、ちょっと待って!」


すぐに路肩に駐車する宥


京太郎「ありがとうございます!」

ベリアル『あっちだ!』

穏乃「京太郎!!?」

宥「え、二人共!?」


車を跳びだす京太郎と、そのあとを追う穏乃

戸惑いつつ、宥は駐車場を探すために車を走らせた


429: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/23(木) 00:22:19.27 ID:ouhMKmMs0

車を飛び出て、走る京太郎

急ぎ道を戻って、ベリアルの指示通りに狭い道へと飛び込んだ

個人店の居酒屋などの合間を縫って、走る


京太郎「こっちですか!」

ベリアル『ああ、この先だ……間違いねぇ、今は気配が薄れてきやがったが』

京太郎「逃がすかァッ!」


そして、視界に映ったのは―――雀荘


京太郎「!」


その雀荘の扉が、開いた


京太郎「あれはっ!」

ベリアル『出たぞ!』


だが、その雀荘から出てくるのは―――


京太郎「和!?」


原村和だった


ベリアル『この鬱陶しい感覚、間違いねぇ……メダルにくわえて』

京太郎「デビルスプリンターってやつか……!」

和「……」


冷たい目が、京太郎を貫く


和「……ああ、須賀京太郎ですか」

京太郎「貴様ッ! 和をォ!」

和「外れが、よくもここまで……」


表情を変えない原村和、その背後に現れる少女


京太郎「松実玄!」

和「……どうして生きてるかなんて、どうでもいいことですね」


京太郎が口を開こうとした瞬間、走ってきた穏乃が京太郎の前に立つ


穏乃「和!? 玄さんも!?」

和「……高鴨穏乃ですか、メダルの力を集めるのを邪魔してたのは貴女ですか」

穏乃「私たちだ! 京太郎も、私も、和を見つけるために戦った!」

和「……麻雀、強くなったんですね。須賀君」フフッ

ベリアル『麻雀だけじゃねぇがな』

京太郎「その顔でっ! その声でっ!」

430: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/23(木) 00:42:50.96 ID:ouhMKmMs0


拳を握りしめる

全身の血が熱く沸騰するような感覚に陥っていく

瞳が、赤く輝いた


京太郎「オレを呼ぶなァッ!!」ゴゥッ

穏乃「えっ!?」ビクッ

和「……」


なにかが変わったわけでは無いが、穏乃は胸の奥が振るえるような感覚を覚える

怒りに満ちた京太郎の怒気だけを感じる

原村和が、自らの違和感に手を見た


和「震えている……この生命体の?」

京太郎「和、お前を! お前達を!」

和「厄介ですね」


すると、原村和と松実玄の背後から現れるのは、一人の少女


穏乃「巽由華さんッ!? 晩成の二年生がどうして!?」

京太郎「こっちの雀士か!」

和「……では、お願いします」


笑みを浮かべて、巽由華の背中に手をそえる原村和

その背後に浮かぶのは……


京太郎「天使っ!?」


由華の体が黒い光に包まれる

そして黒い光は空へと舞いあがった

その異様な不快感に、京太郎と穏乃は顔をしかめる


和「……」

玄「っ」ググッ

和「……いえ、まだですね」


431: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/23(木) 00:53:19.43 ID:ouhMKmMs0


苦しむような松実玄

和が手をかざすと、輝くゲートが現れた

そしてその中に苦悶の表情を浮かべて入って行く松実玄


京太郎「貴様ッ!」

ベリアル『小僧!』


穏乃の前に跳びだした京太郎

だがその瞬間、上から振ってくる影が目の前に着地した


京太郎「ッ!?」

和「アレの差し金ですか」


なにかを呟いて、和はゲートへと消える

もちろん、ゲートは即座に消滅した

一方、京太郎の前に着地したのは人型だが人でない者


京太郎「こいつはっ!?」

ベリアル『グローザ星系人か!』


銀色の体を持つ宇宙人が、腕のブレードを構えて京太郎へと接近する

素早くゼットライザーを持つが、それより速く目の前に―――“ナニか”が現れた


432: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/23(木) 01:05:41.62 ID:ouhMKmMs0


グローザ星系人「!?」

??「なんだお前……あーどっかに記憶、が?」


目の前で、刀を持った宇宙人―――のようなものがいた

それがグローザ星系人のブレードを受け止めている


穏乃「あれは、トゲトゲ星人!」

京太郎「そんな名前!?」

ベリアル『こいつは!』

トゲトゲ星人「んなわけないから! ったく」


そう言って、目の前のグローザ星系人に蹴りを打ち込む

後ろに吹き飛んだグローザ星系人を、さらに刀で追い打ちをかけようとする

だが、グローザ星系人は氷の壁を作った


トゲトゲ星人「無駄ァ!」


振るわれた刀、氷の壁が斬り裂かれて砕けるも―――グローザ星系人には逃げられていた


トゲトゲ星人「逃げられたか……」

京太郎「っ……」

穏乃「くるっ!」


空を見上げる二人、と一体

上空の黒い光が弾け、中から現れたのは巨大な怪獣

どこか虫を思い出すような姿だがハッキリと手足は存在する


京太郎「ッ!」

トゲトゲ星人「カイザードビシ、なるほどねぇ」

ベリアル『ジャグラス・ジャグラーの姿をしてるこいつはなんだ!』

京太郎「え、じゃぐじゃぐ?」

トゲトゲ星人「ふーん、なるほどね……」

433: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/23(木) 01:16:57.98 ID:ouhMKmMs0

京太郎「お前一体なんな」

トゲトゲ星人「じゃーねー」シュン


即座に消えるトゲトゲ星人

京太郎が真上を向くと、怪獣ことカイザードビシがそらから落ちようとしてきていた

手に持ったゼットライザーを穏乃は気にしていないようだ


京太郎「逃げるぞ!」

穏乃「ッ!」


素早く、穏乃がなにかを取り出す


京太郎「おい穏乃っ!」

穏乃「私は、私は戦う!」

京太郎「ッ!」

ベリアル『見せてもらうとしようじゃねぇか』


その手に持った“エスプレンダー”を掲げる


穏乃「ガイアー!」


そして、高鴨穏乃は赤い光と共に―――ウルトラマンになる

434: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/23(木) 01:36:30.50 ID:4nL/MMW80


ウルトラマンガイアが、地上へと着地する

土が舞い上がり、それと共にカイザードビシはガイアの方を向く

素早く構えを取るガイアが、両手を広げるカイザードビシに接近していく


ガイア「デヤァッ!」


そして、接近と共に格闘戦を挑む

拳はカイザードビシを怯ませる


ガイア「ッ!」

穏乃『効くならやりようはある!』


さらに格闘戦をしかけようとするも、カイザードビシは腹にある口のようなものを開く

そこから出てきたのは口の付いた触手だった

それが伸びると、ガイアの首に巻きつく


ガイア「グアッ!」


そんなガイアを見上げながら、走る京太郎


京太郎「穏乃っ!」

ベリアル『ハッ、あの程度じゃカイザードビシはキツいだろうな』

京太郎「……なら!」バッ

ベリアル『おい!』

京太郎「!」


視線を感じて、そちらに目を向ける

ビルの屋上、そこから京太郎を見ていたのはトゲトゲ星人


ベリアル『付き纏われるぜ?』

京太郎「……」

ベリアル『覚悟を決めておけよ』


だが即座に、京太郎はゼットライザーのトリガーを押した

目の前に開くゲート


京太郎「……決めたぜ、覚悟!」

ベリアル『!? ハッ、おもしれぇじゃねぇか……!』

京太郎「ウオォッ!」

435: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/23(木) 01:48:21.74 ID:4nL/MMW80


―――【インナースペース】


深く息を吐く京太郎が、笑みを浮かべる

ようやく見つけた

自らの目的、欲望を満たす。そのために……


京太郎「いくぜ!」


右手にカードを取ると、左手のゼットライザーを差し込む


『キョウタロウ・アクセスグランテッド』

京太郎「究極生命体……!」


弾かれたメダルが周囲を闇に包む

すっかり居心地の良さを感じる空間


京太郎「……!」

『Alien Rayblood』

京太郎「ベリアルッッ!」


トリガーを引き、その名を叫ぶ


436: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/23(木) 02:01:12.47 ID:XqIyjg8Z0


カイザードビシの腹部から伸びたバトル触手に首をしめられているガイア

だが黒い光と共に現れたベリアルがその爪で触手を斬り裂く

勢いによって、後ろに下がるカイザードビシ


カイザードビシ「―――!!?」

ベリアル「ハッ!」

ベリアル『楽しませてもらおうじゃねぇか!』


首を鳴らすベリアル

そしてその背後では、ガイアは首を押さえながら立ち上がった

カイザードビシが、その上半身の目と、膝の目からビームを放つ


ベリアル「フンッ!」


だがバリアを張って、それらを上空へと弾くベリアル


そんなベリアルをビルの上から見るトゲトゲ星人

刀を肩に当てながら、鼻で笑うような仕草を見せた


トゲトゲ星人「ハッ、私の記憶の中のベリアルとは全然違うじゃん」


そう言うと、トゲトゲ星人の姿が変わる

現れたのは―――赤土晴絵

その手に持っているのは、トゲトゲ星人ことジャグラス・ジャグラーが描かれたメダル


晴絵「……ったく、私もわけわかんなくなるなこのメダル使うと」ハァ


視線の先には、ベリアルとガイア

437: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/23(木) 02:11:20.37 ID:XqIyjg8Z0


構える二人の巨人

同時に光弾を撃つと、カイザードビシが怯む

即座に、カイザードビシが光線を放つもベリアルが爪撃にて相殺した


ベリアル『ハッ、大したことねけな……これなら一人でもやれたんじゃねぇか?』

京太郎『ベリアルさんっ!』

ベリアル『あぁ?』


焦ったような声に、ベリアルがそちらに意識を向ける

そちらにはガイアがいて、そのガイアは別方向に視線を向けていた

視線の先を辿れば、そこには―――神社


京太郎『あれはっ!』


その境内の鳥居の下、見覚えのある少女がいた


穏乃『憧!』

ガイア「!」


手をそちらに向けるガイアだが、その先に入る“新子憧”は表情を変えることはない

ただ静かに、右腕を前に出し、そのまま拳を真上に向けた

そしてその手首につけられた“アグレイター”が開き、回転する

439: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/23(木) 02:22:15.38 ID:XqIyjg8Z0


そして青い輝きと共に、現れるのは―――ウルトラマンアグル

勢いよく地上に降りると、土を舞い上がらせる

そして、静かに構えをとった


穏乃『憧がアグル!? な、ならなんで攻撃なんて!』


◆BGM:アグルの戦い【http://www.youtube.com/watch?v=rh8gv1BGJl8



ベリアル『おい、あれ大丈夫なのか!』

京太郎『わかんないっすよ!』


カイザードビシに向かって走り、爪撃を打ち込む

だがその結果、ガイアとアグルから遠ざかる

さすがにそちらを気にしながら戦えるほど器用でも、余裕でもない


アグル「ハアッ!」


素早くガイアに近づいたアグルが、ガイアに蹴りを放つ

その直撃を受けて倒れるガイアだが、すぐに起き上がった


穏乃『っ……なら、憧なら……私は!』


立ち上がったガイアが拳を握りしめる


穏乃『私は光で、ぶん殴るッ!!』

ガイア「チャアァッ!」

アグル「ハアァッ!」


二体のウルトラマンが組みあう

そちらにカイザードビシを相手にしながら視線を送るベリアル


京太郎『新子だとわかっても……いや、わかったから殴れるか』

ベリアル『フン、オレ達はまずこいつをヤるぞ!』

京太郎『はい!』


444: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/23(木) 22:20:33.39 ID:FhfUC18S0

ガイアがアグルに走る

アグルは立ち止まったまま右腕を振るう

その右手の青い光が―――剣となる


ガイア「!?」

アグル「ハァッ!」


立ち止まったガイアに、接近したアグルが剣を振るう

だが、それをなんとか開始して蹴りを打ち込むガイア


アグル「グゥッ!」

ガイア「ハアアッ!」

穏乃『憧ォ!』


さらに拳を打ち込もうとするも、アグルは素早く腕を返して剣を振るう

その一撃がガイアに直撃、火花を散らしながら後ろに下がる


穏乃『ぐっ! まだァッ!』

ガイア「チャッ!」


光弾を放つと、アグルは剣を振るってその光弾を斬り裂く、だがその隙をついて接近したガイアは回し蹴りでアグルの手を蹴る

その手から離れて消える青い剣、そこでガイアはアグルに掴みかかると巴投げをかけた


アグル「グアァッ!」

ガイア「ハアァッ!」


さらに、勢いよく立ち上がらせると背負い投げでアグルを投げ飛ばした

離れた場所に倒れるアグルだが、起き上がりガイアと向き合う


ガイア「ッ!」

アグル「……!」


445: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/23(木) 22:35:25.34 ID:FhfUC18S0


街中、ガイアとアグル、ベリアルとカイザードビシ

二組の戦いから離れて道路の真ん中で立っている赤土晴絵

顔をしかめて、メダルを握り歩く


晴絵「憧が、アグル……どうしてだ?」


彼女もそこがわからないのか、歯がゆい感情を顔に出していた

そしてそんな晴絵の傍に走ってくる車


宥「先生!」

晴絵「宥か、ありがとう」


礼だけを言うと助手席に座る

走り出す車が戦いの場から遠ざかって行くが、サイドミラー越しに後ろの方にある戦いが見えた

ハッとして窓を開けると、身体を乗り出す


宥「せ、先生!?」

晴絵「そうか、そういうことか!」


風の音で宥に晴絵の声は届いていない。逆もまたしかり

そして晴絵の目に映っているウルトラマンアグルは、ピンク色の眼でガイアを睨んでいた


晴絵「根源的破滅招来体か!」

宥「先生っ!」

ガンッ


瞬間、なにかに後頭部をぶつける晴絵


晴絵「いったぁぁぁっ!?」

宥「だから言ったのにぃ……」

446: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/23(木) 22:54:57.45 ID:FhfUC18S0


カイザードビシと戦っているベリアル

再生したのか再び腹からバトル触手を伸ばされる

即座にそれを回避すると、ベリアルは走りだしカイザードビシへと接近


ベリアル「フハァッ!」


跳び蹴りを喰らわせてひるませると、すぐにクローを使い再びバトル触手を切断

さらにもう片方の手で斬撃を放ってカイザードビシを怯ませた


ベリアル『相手にならねぇな!』

京太郎『さっさと終わらせて穏乃の方に!』


素早い攻撃、さらなる斬撃

だがカイザードビシが飛んで距離を取った

上空へと跳び上がったカイザードビシが目から放つ光線を、飛んで回避する


京太郎『ならっ!』


光線を放つカイザードビシだが、すべて回避していくベリアル

効かないとわかったのか、カイザードビシは次に腹を開いた

バトル触手でなく、出てくるのは小さな虫―――破滅魔虫ドビシの群れを放つ


ベリアル『ハッ、気持ちわりぃやつだな!』

京太郎『あれを喰らうのは遠慮したいんで……!』


ベリアル・京太郎『デスシウムリッパー!』


放たれた斬撃がドビシを斬り裂き進む


カイザードビシ「―――!!」


上昇して回避しようとするが、もう遅い

その両足を斬り裂くデスシウムリッパー


京太郎『よし!』

ベリアル『まだだ小僧ォ!』


だが、カイザードビシの脚がバラバラになり、小さなドビシが大量に出現した

素早く光弾を放つと、爆発で出現したドビシを消滅させる

両足を失くしたカイザードビシが残った一つの目から光線を放つ

447: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/23(木) 23:03:39.24 ID:FhfUC18S0


京太郎『これでハコ割れだ!』


ベリアルの右腕に黒い光と赤い雷が奔る

空中で素早く、ベリアルは腕を十字に構えた


ベリアル・京太郎『デスシウム光線!』


放たれた一撃はカイザードビシの光線をかき消して真っ直ぐにカイザードビシへと直撃する


カイザードビシ「―――」


そして、空中でカイザードビシは爆散

ベリアルはカイザードビシの殲滅を確認すると、ガイアとアグルの方へと視線を向けた

戦いは佳境のようだった


京太郎『……』

ベリアル『あぁ? なにもしねぇのか?』

京太郎『……はい、まだ』

ベリアル『ハッ、好きにしろ』


448: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/23(木) 23:28:51.84 ID:FhfUC18S0


ガイアとアグルの二人のウルトラマン

そのカラータイマーが点滅をしているものの、お互いに攻撃の手はゆるめないようだった

アグルが剣でガイアを袈裟切りする


ガイア「グアアッ!」

アグル「フッ!」


その隙を逃さず素早い突きを放つも、ガイアは切っ先を回避するとその腕を掴む


アグル「ッ!」

ガイア「ハァッ!」


掴んだ方とは別の手でその剣を持つ手を攻撃し、剣を手放させると素早く拳を叩き込んだ

怯むアグルに、ガイアは距離を取る


アグル「グゥッ!」

ガイア「ハァァ……」

アグル「! オォォッ!」


ガイアとアグルが、お互いの必殺技の準備に入る

二体のウルトラマンの額から伸びる光刃

そして、ベリアルは静かに地上へと降りた


京太郎『ベリアルさん?』

ベリアル『いや、止めるぞ!』

京太郎『……はい!』


抗議をしようとなんて考えなかった

ベリアルの言葉に頷くと、即座に間に立ってアグルに光弾を放つ

驚愕するアグルだが、その光弾を受けると後ろへと吹き飛んだ


ガイア「!?」

穏乃『ベリアル! どうして!?』


吹き飛んだアグルが、光となって消える

ガイアが驚愕しながらも光刃を消すと、空へと飛びたった


京太郎『どうして?』

ベリアル『妙な予感がしてな……』

京太郎『まぁ、ベリアルさんがそう言うなら反対の意思はありませんけど』

ベリアル『ハッ!』


京太郎の返事に、なにかおもしろかったのか笑うベリアルも、遅れて空へと飛び立つ

449: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/23(木) 23:49:18.26 ID:Z0NIfZvW0


地上で、破壊された街中を走る京太郎

自衛隊や特異課の事後処理部隊等も到着するころだろう

宥からの連絡により『巽由華』の保護は確認されたのだが……


京太郎「このへんのはずだ……」


その中でも走る理由は、穏乃だ


京太郎「このへん、ですよね……?」

ベリアル『さてな』

京太郎「うーむ」


アグルが光へと変わった場所、その周囲

探すのは穏乃

新子憧を探す穏乃だ


京太郎「穏乃ー!」

「京太郎?」

京太郎「穏乃、ここって青い巨人が倒れた場所だよな」

穏乃「あ、うん……」


あの青い巨人が新子憧だと、知っているものの知らないふりをする京太郎

とりあえず周囲を見渡すがなにも無いようだった

すでに撤退したのだろう……


京太郎「……帰ろう、たぶん事後処理部隊がそろそろくる」

穏乃「京太郎は、なにも言わないの?」

京太郎「……なにがだ」

穏乃「私が!」

京太郎「別に良いよ……お前が一緒に戦うってのは変わらないだろ?」

穏乃「……ありがと」

京太郎「おう」


歩いていく京太郎のあとを追っていく穏乃

遠くに宥が運転する車が見えた

手を振りながら、そちらへと歩いていく

450: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/24(金) 00:04:29.72 ID:aL+wWFoL0


―――【特異課奈良支部:作戦室】


いつも通り四人が集まる

映し出された画像に、はカイザードビシとウルトラマンアグル

そしてさらに……


晴絵「京太郎、よくあのタイミングで撮ったね」

京太郎「まぁ、サングラスさまさまってことで」


胸ポケットに入れていたサングラスでこっそり撮っていた写真

それに映っていたのは和と玄


晴絵「……灼は、いないか」

宥「玄ちゃん……っ」

京太郎(余計なことしたかなぁ……)


悲しそうな表情をしている宥、顔をしかめる晴絵

京太郎は眉をひそめて穏乃を見た

穏乃は静かに、自らの手を見ている


京太郎「……まだここ、吉野でやることはありそうっすね」

晴絵「頼んだよ京太郎」

京太郎「お任せあれっすよ晴絵さん」フッ

454: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/24(金) 00:27:30.90 ID:aL+wWFoL0
2、高鴨穏乃



作戦室での話を終えて、京太郎は休憩所でコーヒーを飲んでいた

そんな彼の視線の先に高鴨穏乃を見つける

目が合うと共に、穏乃は笑みを浮かべて近づいてきた


京太郎「よ、今日はお疲れ」

穏乃「京太郎も……にしても危なかったねぇ」


対面に座る穏乃


京太郎「……ああ、グローザ星系人の時」

穏乃「え、あの宇宙人知ってるの?」

京太郎「あ、いや~長野でみた!」

穏乃「あ~熊倉さんかぁ」

京太郎「そうそう」


京太郎『っぶね~!』

ベリアル『お前、ほんと変なとこで抜けてんなぁ』


咳払いをして、話を再開する


京太郎「あのトゲトゲ星人、なんなんだ?」

穏乃「さぁ、トゲトゲ星人……たまに助けてくれるトゲトゲ」

京太郎「へぇ~トゲトゲかぁ」



晴絵「っくしゅっ!」

宥「風邪ですか?」

晴絵「ははは、まさか~」

455: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/24(金) 00:37:00.04 ID:aL+wWFoL0


周囲に人がいないことを確認して、穏乃が京太郎の隣に移動する

丸テーブルに二人なのに隣同士なのに違和感を感じた

それによって理解はして、京太郎は穏乃の方に耳を傾ける


京太郎「どした」

穏乃「その、黙っててくれて」

京太郎「いいよ。それよりなんだけどさ……」

穏乃「どしたの?」

京太郎「ありがとうな、戦ってくれて」


そんな言葉に、穏乃は驚いたような表情をしてからはにかんで笑う


穏乃「……えっと、こっちこそありがとね!」


逆に面喰って黙る京太郎が、首をかしげる


穏乃「色々!」

京太郎「……お前はさ」

穏乃「ん?」

京太郎「どうして戦うんだ?」


素朴だが、京太郎にとっては大事な質問だった

それに迷走した者として、同じ悩みを持っているのだとしたら……

456: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/24(金) 00:41:25.49 ID:aL+wWFoL0


穏乃「……私はさ、戦いたいからさ」

京太郎「好き、なわけじゃないだろ」


大凡、穏乃のことは理解していたつもりだ

だからこそ、言葉の本質は違うとわかる


穏乃「うん、でも私はこの地球を、そこに住む生き物たちを守るために戦いたいんだ」

京太郎「……」

穏乃「植物や動物とかも含めてさ」

京太郎「そっか……」


そんな本心からの言葉を聞いて、京太郎は穏乃の頭に手を置いて撫でる


穏乃「わっ、な、なにっ!?」カァッ

京太郎「お前は、ウルトラマンだよ……うん、光の巨人ウルトラマン」ニッ

穏乃「……う、うんっ……あ、ありがとっ」


うつむいてそういう穏乃に、京太郎は笑みを浮かべて頷く

457: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/24(金) 00:48:32.61 ID:aL+wWFoL0


―――【東京:???】


とある出版社、その休憩所

そこにいたのは―――西田順子である

もちろん山口大介も一緒だった


順子「奈良よ」

大介「え?」

順子「奈良に行くわ! ベリアルが出た!」

大介「いやティガがいる長野じゃ」

順子「奈良に他の巨人も確認されたし、追加でベリアル……なにかあるでしょ絶対」


そう言うと、ノートパソコンを叩いて大介に画面を向ける

そこに映るのはベリアルとガイア、そしてアグルの画像もあった


順子「やっぱベリアルが一番なにかあると思うのよね」

大介「じゃあ、次は奈良っすか?」

順子「ええ、それにあそこには阿知賀学院があるわ」

大介「麻雀、やっぱ関係あるんですか?」

順子「絶対あるから!」

大介「はぁ……」

順子「絶対、手掛かりを見つけてやるわよ!!」


そう言うと、テーブルを叩いて両腕を上に上げた

溜息をついて大介は頷く

458: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/24(金) 00:50:22.02 ID:aL+wWFoL0


     第10話【破滅の使徒】 END


460: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/24(金) 00:58:43.84 ID:aL+wWFoL0


―――次回予告


京太郎:邪魔ァすんなら!

晴絵:灼!

宥:玄ちゃぁん!

ベリアル:闇も光もねぇ

和:さよならです

晴絵:しょうがないなぁ

ベリアル:逃げるぞ!

穏乃:そのために、ガイアの光を託された!


次回【悪魔】


京太郎:さよならだ、新子憧

穏乃:憧ォ!


466: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/25(土) 21:30:19.16 ID:HK2K41Su0


―――【松実館:廊下】


あれから三日、京太郎は相も変わらず松実館だった

それなりにここでの暮らしも慣れてきた……慣れてきてしまったのだ

これでは良くない。目的と違う


京太郎「……」

ベリアル『良い目をするようになったじゃねぇか』

京太郎『え?』

ベリアル『なんでもねぇよ……とりあえず、また気配があったら教えてやる。潰させろ』

京太郎『是非っすよ』


宥「あ、おはよう京太郎くん」

京太郎「ん、おはようございます宥さん」フッ

松実父「京太郎くーん」

京太郎「おはようございますおとうっ……えっと、松実さん」

松実父「お義父さんで良いって!」バシバシ

京太郎「そういうの普通逆なんじゃ……」

宥「あぅっ」カァッ


赤くなる宥、京太郎は松実父の方に眼をやるが笑いながら去って行くのみ

少し気恥ずかしそうに、京太郎は後頭部を掻きながら宥に笑いかけた


京太郎「……それじゃ、いきます」

宥「あ、うんっ……わ、私もすぐ行くから玄関で待ってて!」

京太郎「はい」フッ


そう返事をして去って行く京太郎の背を見送る宥

少しばかり赤い顔、だが宥は少しばかり心配そうな視線を京太郎の背中に送る


宥「大丈夫かなぁ、恐い目してたけど……」


467: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/25(土) 21:33:31.13 ID:HK2K41Su0


     第11話【悪魔】


468: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/25(土) 21:50:55.32 ID:HK2K41Su0


―――【特異課奈良支部:作戦室】


宥と共に、基地へとやってきたが今そこにいるのは京太郎一人である

机の上に並べられているのは京太郎が持っているメダル

中々な枚数になったなと思いながら、一枚一枚を見ながらしまっていく


京太郎「増えたなぁ」

ベリアル『まぁなんの足しにもなんねぇけどな』

京太郎「たしかに」フッ


・ベムラー
・ネロンガ
・ゴモラ
・レッドキング
・グビラ
・エレキング
・ゴドラ星人
・クレージーゴン
・アーストロン
・タッコング
・アリブンタ
・ガギ
・シルバゴン
・レギュラン星人
・ガグマ(α・β)
・レイブラッド星人


京太郎「……しかし」

ベリアル『ああ?』

京太郎「レギュラン星人、こいつってメダルじゃないって言ってませんでした?」

ベリアル『よーやくか』

京太郎「はい……なのにメダルになった」

ベリアル『こいつはかなりのエネルギーを持ってたんだろうな。それこそメダルを必要としないほどにな』

京太郎「元は、メダルなんですよね?」

ベリアル『ああ、だが意思と執念とエネルギー、それで実体化したんだろぉよ』

京太郎「そんなこと、が……」

ベリアル『あるんだろぉな、見た通りな』

京太郎「……」


メダルをすべてしまい終ったその瞬間、扉が開く


京太郎「ん?」

晴絵「よ!」

京太郎「晴絵さん」

469: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/25(土) 22:13:34.43 ID:G/ZltYch0


入ってきたのは赤土晴絵

そもそも、今ここにいるのは晴絵に呼ばれたからだ

だからこそ待っていましたとばかりに顔をそちらに向けた


京太郎「で、今日はなんですか?」

晴絵「いやぁ~どうかなって」

京太郎「近況報告なんて聞きたいですか? 俺の」

晴絵「なんていうか、進展なさ過ぎてね」

京太郎「まぁ……」


手がかりはあの日から一切ない

顔をしかめる京太郎と、苦笑する晴絵

立ち上がった京太郎はケータイを確認する


京太郎「行ってきますよ?」

晴絵「待った」

京太郎「?」

晴絵「ほい」


投げられたガッツハイパーのカートリッジ、それを受け取る


京太郎「なんで?」

晴絵「さぁ、なんかの役に立つかもだし……って熊倉さんが」

京太郎「……トシさんか、どうもです」


そう言うと、それをポケットに入れて京太郎は部屋を出る

座った晴絵がため息をついて一枚のメダルを取り出した

そこに描かれているのは―――トゲトゲ星人ことジャグラス・ジャグラー


晴絵「私はどーすれば良いのかねぇ」


470: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/25(土) 22:14:55.95 ID:G/ZltYch0


入ってきたのは赤土晴絵

そもそも、今ここにいるのは晴絵に呼ばれたからだ

だからこそ待っていましたとばかりに顔をそちらに向けた


京太郎「で、今日はなんですか?」

晴絵「いやぁ~どうかなって」

京太郎「近況報告なんて聞きたいですか? 俺の」

晴絵「なんていうか、進展なさ過ぎてね」

京太郎「まぁ……」


手がかりはあの日から一切ない

顔をしかめる京太郎と、苦笑する晴絵

立ち上がった京太郎はケータイを確認する


京太郎「行ってきますよ?」

晴絵「待った」

京太郎「?」

晴絵「ほい」


投げられたガッツハイパーのカートリッジ、それを受け取る


京太郎「なんで?」

晴絵「さぁ、なんかの役に立つかもだし……って熊倉さんが」

京太郎「……トシさんか、どうもです」


そう言うと、それをポケットに入れて京太郎は部屋を出る

座った晴絵がため息をついて一枚のメダルを取り出した

そこに描かれているのは―――トゲトゲ星人ことジャグラス・ジャグラー


晴絵「私はどーすれば良いのかねぇ」


471: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/25(土) 22:36:33.06 ID:DdSWADeE0


そのまま、ケータイでの連絡通りに京太郎は基地の正面玄関へとやってくる

手を振られてそちらに近づく

立っていたのは穏乃と宥の二人


京太郎「珍しいっすね歩きとは」

穏乃「まぁやることないしねー」

宥「玄ちゃんも、灼ちゃんも、憧ちゃんも……和ちゃんの手がかりもないし」


その言葉に頷く京太郎は、二人と共に歩き出す

基地を出て、街中へと出る

カイザードビシやアグルとの戦いの爪痕はまだ残っているがそれでも復興速度はかなりのものだ


京太郎(特異課ってか、御上のパワー?)

宥「どうしよっかぁ」

穏乃「当てもなく歩いててもしょうがないしなぁ」


そう言いながらも三人で歩く

スーツ姿の穏乃、宥の違和感、そして京太郎の納得感

それでも不思議なものでこう日数が経てばそれなりに慣れているのか街中では挨拶までされる

472: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/25(土) 22:50:56.78 ID:YzVVhoFV0


歩く三人、京太郎はふと立ち止まった

後ろの二人も足を止める


京太郎「もう、いないのかなぁ」

穏乃「……和かぁ、玄さんたち連れてっちゃったかなぁ」

宥「憧ちゃんも……」

穏乃「……はぁ」


手がかりさえ見つかれば、動きようがあるのだ

だが最近ではベリアルですら気配を掴めていない

ともなれば……


京太郎「もう、いないのか?」

ベリアル『っ! おい小僧ォ!』

京太郎「え?」

?「誰がいないんですか?」


三人の、誰の言葉でもなかった。声でなかった

だがしかし、聞き覚えのある。聞きなれた声だ

だからこそ勢いよく振り返った京太郎


京太郎「ッ!?」


その視界に映るのは―――原村和

さらに振り返った穏乃と宥の二人の腕を掴んで、原村和から離して京太郎は自分の後ろにやる

流れるような動きで、京太郎はガッツハイパーを抜いた


京太郎「……なんで」

和「なんでなんて、簡単なことじゃぁありませんか?」

京太郎「……」

和「別れの挨拶です」

京太郎「……は?」


473: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/25(土) 23:38:49.04 ID:zo6/eFgX0


拍子抜けして、止まる

言いたいことは何一つとして思い浮かばない

目の前の和は和では無い。それもそうだ


和「とりあえず、ここはもう用はありません」

穏乃「……あ、あなたたちは一体何が目的で!」

和「?」

京太郎「やめろ穏乃、どうせ根源的破滅招来体なんだ……」

和「その通り」

京太郎「その、紛い物だけどな」

和「……」


殺気を感じて、京太郎は眼を鋭く細めてからガッツハイパーをしっかりと和に向ける

だが、その後ろにさらに現れる影

それは、松実玄と鷺森灼


京太郎「ッ!」

和「さよならです」


そう言う和の前に立つのは鷺森灼

消える和と玄の二人


宥「玄ちゃぁん!」


宥が伸ばそうとする手を下げさせて、京太郎は鷺森灼に銃口を向けた


穏乃「京太郎!?」

京太郎「下がれ!」


灼の中心から溢れるのは―――光


穏乃「光!? 闇!?」

京太郎「いや……!」

ベリアル『闇も光もねぇ』

京太郎「純粋な、破滅の意思……!」


そして舞い上がる光と共に現れるのは―――


ベリアル『宇宙悪魔ベゼルブ!』


474: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/25(土) 23:57:46.65 ID:/m/60dX/0


空に現れる黒い蟲型怪獣こと宇宙悪魔ベゼルブ

羽音を立てながら一度飛び上がると、勢いよく地面に降り立った

吹き飛ばされそうになる京太郎は宥と穏乃をしっかりと抱えている


京太郎「くそっ!」

穏乃「きょ、京太郎っ!」


暴風がおさまると、二人の手を握って走る

近場の路地裏へと入ると、息をついてガッツハイパーを握り直す

カートリッジは実弾へと変えた


穏乃「ちょっと京太郎!」

宥「京太郎くんっ!」

京太郎「大人しくしとけよ」


路地裏の向こう、大通りの方では暴風が吹いている

瓦礫が飛んでいるのも見えた

穏乃は、グッとスーツの内側にしまってあるそれを握る


穏乃「ダメだよ!」

京太郎「は?」

穏乃「……行くよ私が、でなきゃ一緒に」


その強い瞳を真っ直ぐと見て、言い返すこともできなかった

静かに息をつくと頷いて宥の方を見る

首を横に振る宥の頭を、そっと撫でた


京太郎「いってきます」

宥「だ、ダメだよ! 玄ちゃんも帰ってこないのにっ、京太郎くんと穏乃ちゃんまでっ!」

京太郎「……俺たちは、死なないから」

宥「そ、そんなっ」


頷いた京太郎が、宥の制止を振り切って飛びだす

同じく穏乃も飛びだすので、宥が追いかけようとするが路地裏からの出口を丁度、瓦礫が塞いだ

僅かな隙間から走って行く二人が一瞬だけ見えた


宥「ッ……玄ちゃんっ、私一体どうすればっ」


475: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/26(日) 00:17:21.36 ID:peVSvvL80


路地裏から飛び出た京太郎と穏乃の二人がベゼルブへと走る

勿論ガッツハイパーを撃ちながらな京太郎だが、その隣の穏乃は周囲を見回すとエスプレンダーを握った

やることは一つ、なのだろう……


京太郎「……」

穏乃「行ってくる!」


無言でうなずくと、穏乃は笑みを浮かべてベゼルブの方へと走る

宇宙悪魔ベゼルブは爪と口から火炎弾を撃ち出した


穏乃「ガイアァァッ!」


爆発―――だが、赤き光と共に、土を巻き上げてウルトラマンガイアが現れる


ガイア「チャァッ!」

◆BGM:逆転のクァンタムストリーム【http://www.youtube.com/watch?v=LleQVTBhwXQ



素早く構えを取ると、ベゼルブもガイアを警戒しているのか動きを止める

ベゼルブを中心に、円を描くように横に移動するガイア

出方を待っているのだろう……


京太郎「光の巨人、ガイアか……」

ベリアル『ハッ、どうしたい?』

京太郎「まだ、前と同じなら……!」

ベリアル『そういうことか、ちったぁ頭使うじゃねぇか』

京太郎「案外頭脳派っすよ。これでも雀士なんで!」


476: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/26(日) 00:41:16.81 ID:peVSvvL80


ベゼルブが尾を伸ばす


穏乃『やばい気がする!』


その尾の先の針に当たらぬよう回避

長いその手のものは先のカイザードビシのバトル触手で学習済みだ

ガイアが素早く光弾を放って尾を破壊する


ベゼルブ「―――!」

ガイア「ハアァッ!」


素早く接近して拳を打ち込み、怯んだところで回し蹴り

仰け反るベゼルブにさらに拳を打ち込んだ

だが、ベゼルブはその一撃を耐えた


ガイア「!」

ベゼルブ「!」


口から、火球が放たれる

その直撃をうけてガイアが後ろへと吹き飛ぶ

倒れるガイアの傍、ビルの屋上に立つ影


ガイア「ッ!」

穏乃『―――憧!?』


そこに立っているのは、新子憧だった

虚ろな瞳で、ガイアを見つめる


穏乃『憧ォ!』


咆哮を上げてから、ゆっくりと近づくベゼルブ

屋上の憧へと手を伸ばすガイア

そして―――


京太郎「ホールドアップだ……ベタ下りを勧めるぜ新子憧」

憧「……」

京太郎「いや、ウルトラマンアグル……根源的、破滅招来体……」


真っ直ぐに、ガッツハイパーの銃口を新子憧に向けていた

480: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/26(日) 22:17:13.78 ID:mDDPBhgJ0


京太郎「……俺は撃つぞ、生身だろうと」

憧「……」


迷いのない京太郎の瞳

ゆっくりと、新子憧が振り返った

その瞳は“アグルと同じくピンク”だ


京太郎「……」

ベリアル『やはりな、あれはアグルじゃねえ!』

京太郎「なら!」


その言葉を聞き、トリガーにそえた指に力を込め引く

ガッツハイパーから銃弾が放たれる。スタン能力が宿ったショック弾

だがその弾丸が憧にぶつかるよりも早く、憧の体から光が溢れる


京太郎「ッ!?」

穏乃『嘘っ!?』


倒れる新子憧だがその光は上空でカタチとなった

起き上がるガイア、そこから少し離れたベゼルブの前に降り立つのは―――アグル

土を舞い上げ、降臨する


京太郎「アグルっ!」

ベリアル『やはりな、あれは本物のアグルじゃねぇ』

京太郎「ガイア! 新子憧はここにいる!」


倒れている憧を抱き上げて叫ぶ京太郎

それに頷いて、ガイアはアグルとその隣に並ぶベゼルブに構えをとった

ビルの中に入る京太郎が、勢いよくかけていく


京太郎「……さっさとやる!」

ベリアル『アグルじゃねぇってもあれは、能力を丸々コピーした代物だ』

京太郎「了解、注意しますよ……」


そう言ってビルから出る京太郎

その背後でガイアが走り出す

481: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/26(日) 22:29:56.10 ID:mDDPBhgJ0


大きく腕を振るって、拳を振るうガイア

その一撃がベゼルブを怯ませるが、アグルが素早くガイアの胴体に蹴りを打ち込む

ひるんだガイアを、ベゼルブが火球で攻撃


ガイア「グアァッ!」


吹き飛び、地上へと倒れるガイアだが転がって距離を取り起き上がる

だがその瞬間、目の前へとやってきたアグルが腕を振るう

そしてその腕に出現していた光の剣がガイアを斬り裂いた


穏乃『ぐっ、ああぁっ!』


ガイアが膝をつく

その正面に立つアグルは、ゆっくりと剣を持った右手を振り上げる

アグルの口元が歪に曲がる


穏乃『ぐっ! こいつはぁっ!』

アグル「フッ!」


京太郎「やらせるかよぉ!」


走る京太郎がゲートをくぐる


482: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/26(日) 22:47:04.00 ID:mDDPBhgJ0


黒い光が真っ直ぐに飛び、途中で漆黒のベリアルが現れる

その勢いのまま、ベリアルはアグルの体をクローで斬り裂く

吹き飛んだアグルが、ビルを破壊しながら倒れる


ベリアル「ハァッ!」

京太郎『次はァ!』


ベゼルブが放つ火球をクローで斬り裂くと、光弾を放ちベゼルブを怯ませた

素早く、ベゼルブへと近づくと膝蹴り、さらに爪撃を打ち込む


ベゼルブ「―――!」

ベリアル「ハァッ!」

京太郎『鷺森灼だろうと!』


さらなる爪撃で、ベゼルブは吹き飛んで倒れた

右腕を空に振るうベリアル

そこから少し離れた場所で、起き上がるアグル


アグル「グウッ!」

ガイア「……シュワッ!」

穏乃『憧に憑りついてあんなことしてッ!』


アグルが両手を構える

強く握った拳を目の前に構えたガイア


穏乃『……許さんッ!』


483: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/26(日) 23:02:02.27 ID:mDDPBhgJ0


ベゼルブを蹴り飛ばして、ベリアルが振り返る


インナースペースの京太郎は握りしめた拳を見つつ、開く

そこにあるのは、一枚のメダル

怪獣メダルとは違う


京太郎「……」


初めて見る―――ウルトラマンのメダル

そこにはアグルが描かれていて、目に色はもちろん白

その本物のアグルのメダルを握りしめて、しっかりと正面のベゼルブを見据える


京太郎「ならっ!」


素早く回し蹴りをすると、外側ではベリアルが蹴りを放つ

ベゼルブが吹き飛んだのを確認して、京太郎はガイアの方を向く

アグル相手に防戦一方のガイア


京太郎「……受け取れよ、ガイア!」


腕を振るい、メダルを投げた

インナースペースで投げられたメダルは、外側のベリアルのカラータイマーから放たれる

そのまま真っ直ぐに、ガイアへと跳ぶアグルメダル


穏乃『ッ!!?』


それは途中で青い光へと変わり、ガイアの胸のカラータイマーへと吸い込まれていく

立ち上がるガイア、その体が輝きを放つ

アグルがその光に怯む

484: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/26(日) 23:17:09.36 ID:mDDPBhgJ0


そして、ガイアの姿が変わる

玄が混ざり、その胸には青き光すらも宿していた

ウルトラマンガイアV2―――新たなる光の誕生である


それを見ていたベリアル

その中で、苦笑を浮かべる京太郎


京太郎『……光、か』

ベリアル『あぁん? 憧れたか、今更?』

京太郎『まさか、今は闇の力が強い。だから使うだけっすよ……光が強けりゃそれを使う』

ベリアル『ハッ、上等だ!』


飛び上がったベゼルブを追い、ベリアルも飛び上がる


相対するガイアV2とニセアグル

剣を出現させるアグルと、相成すようにガイアもその手に剣を出現させた

二つのアグルの力、だが本物の光は―――


穏乃『これが、地球から、アグルから受け取った光の力ッ!!』

ガイア「シェアッ!」

アグル「フンッ!」


二つの剣がぶつかりあう


485: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/26(日) 23:54:37.58 ID:zkAlcSlz0


素早い剣戟の応酬、だがガイアのパワーの方が上なのか、アグルは徐々に押されていく

剣を振るう速度を上げるアグルだが、ガイアの剣を止めるのにペースが乱れる

そして―――


ガイア「チャァッ!」

アグル「グアッ!」


斬撃を受けて、吹き飛ぶアグル

立ち上がるアグルが、怒りをあらわにするように両腕を左右に振るう

怒りのままに、アグルは右腕を真上へと上げていく


穏乃『なら!』


アグルの額から伸びる光刃

だが、ガイアも同じように構えを取る

そしてガイアの額からも同じように光刃が出現する

いつものフォトエッジとは違う……光の剣


ガイア「ッ……!」

アグル「……デヤアァッ!」

ガイア「ハアァァッ!」


二つの光刃が、ぶつかり合う


486: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/27(月) 00:12:27.08 ID:gWIe4LpM0


空中でベゼルブがベリアルへと飛ぶ

一方のベリアルはそのまま、真っ直ぐに飛んでいる


京太郎『正面から潰す!』

ベリアル『わかりやすいな!』

ベゼルブ「―――!」


そしてそのまま―――すれ違う

だが、ベゼルブの羽が斬り裂かれて地上へと落ちていく


京太郎『俺達かなり強くなってんじゃないっすか?』

ベリアル『ハッ、本来のオレの半分の力もねぇよ』


アスファルトと土を巻き上げて落下するベゼルブ

その正面に降り立つ、ベリアル

起き上がったベゼルブが、ベリアルへと走り出す


京太郎『いきまァす!』

ベリアル『いくぞォ!』


クロスする腕、右腕の手の平は相手の方に向けている


ベリアル・京太郎『デスシウム光線!』


そして、光線が放たれる

488: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/27(月) 00:27:52.52 ID:gWIe4LpM0


ガイアとアグルの二つの光刃がぶつかりあう

だが、ガイアの光刃のパワーは圧倒的だった

そのまま真っ直ぐにアグルにがぶつかり、それと共にアグルは爆散


ガイア「!」


吹き飛んだ破片は金属、それが正体だったのだろう

そして一方、ベゼルブもデスシウム光線を受けて爆散した

右腕を払うように振るベリアルが、振り返ってガイアの方を向く


穏乃『誰、なの? ベリアル……あなたは一体!』

ベリアル「……シャッ!」

穏乃『ベリアル……』


空へと消えるベリアル

それを見送ると、ガイアもまた上空へと飛んでいく


そして地上、ベゼルブがいた場所には―――鷺森灼がいた

489: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/27(月) 00:44:59.33 ID:gWIe4LpM0


地上で横たわる鷺森灼

そしてそこに現れるのは―――アンドロイド兵 バリスレイダー


バリスレイダー「……!」


手を伸ばすその瞬間、バリスレイダーの手が切断されて宙を舞う

バリスレイダーが攻撃があった方向を向く

だが遅い、刀はバリスレイダーを真っ二つにする


晴絵「……」


トゲトゲ星人こと無幻魔人ジャグラス ジャグラーの姿をした赤土晴絵がそこにいた

真っ二つになったバリスレイダーを前に、刀を逆手持ちして膝をつく


晴絵「灼!」

灼「うっ……」

晴絵「……灼」ホッ


息をつく晴絵だが、すぐに立ち上がった

視線の先には、少女―――を抱いた少年


晴絵「お前か」

京太郎「離れろ……」

晴絵「はいはい、なんだよ助けてやったのに」

京太郎「信用ならないだろ。顔も見せない奴」

晴絵「やっぱベリアルと一緒の奴は違うねぇ」


その言葉に返すことなく、京太郎はそのまま灼に近づいて憧を降ろす

上着を脱ぐと、それをまくらにして二人の頭をそっと降ろした


晴絵「優しいねぇ」

京太郎「うるせ」

490: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/27(月) 00:56:31.59 ID:gWIe4LpM0


晴絵「それじゃ私はこれで……」

京太郎「おい、お前一体なにが目的で」

晴絵「さて……じゃあな」


それだけ言うと、黒い閃光となって消えるジャグラス ジャグラー

息を吐いた京太郎

敵意を感じないことに確かな納得を感じつつ、膝をつく


京太郎「怪我は、許してくれよな……鷺森さん」

穏乃「おーい!」

京太郎「穏乃……」


走ってきた穏乃が、憧と灼を見て安心したように息をついた


京太郎「……アグルの光、か」

穏乃「え」

京太郎「……いや」


フッと微笑みつつも憧の方を見る

穏乃には見えていないようだが、京太郎には見えた

暗い場所からだからこそ見える僅かな星の光


京太郎『……まだ、残ってるんですね』

ベリアル『みてぇだな、金属生命体とウルトラメダルを合わせることでウルトラメダルの力を強制的に引き出すたぁ考えたな』

京太郎『でも』

ベリアル『ま、どうなるかはわかんねぇがな』

491: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/27(月) 01:14:06.08 ID:gWIe4LpM0


頭の中でベリアルと話をしていると、声が聞こえる

そちらを見れば―――揺れていた


京太郎「宥さん!」

宥「きょ、京太郎くんっ! 穏乃ちゃんっ!」


勢いよく走ってきた宥を受け止める

ギュッと背中に回された腕に、戸惑うも穏乃は笑みを浮かべていた

後から歩いてくる晴絵


晴絵「私は?」

京太郎「すみません見えませんでした」

晴絵「宥の胸しか見てなかったの間違いじゃ?」

京太郎「う゛!」

宥「あぅっ」カァッ


離れる宥、いたしかたないと汗を浮かべながら頷く京太郎

ともかくだ、今はそんなことをしている場合ではない


晴絵「灼、憧……」

宥「玄ちゃん、は……」

京太郎「和と共に、か」


顔をしかめる京太郎だが、穏乃は頷く


穏乃「やるよ、私は……玄さんも、和も救い出す!」グッ

京太郎「……そうか」フッ

穏乃「そのために、ガイアの光を託された!」

京太郎・晴絵「あ」

宥「え」

穏乃「……え、あ、うわぁっ!!?」

京太郎「お前が驚くな、驚くタイミング逃すから」

宥「え、え!? ど、どういうこと!?」

晴絵「あーなるほどね」

穏乃「どどど、どうしよう!」

京太郎「ま、まぁ二人なら良いだろ、うん」

穏乃「ま、まぁ確かに……?」


無理矢理納得する穏乃、そして京太郎

とりあえず状況説明も必要だろうと、話すことを頭で整理する

まずは―――

492: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/27(月) 01:30:27.17 ID:9b4S8r0J0


「こっち! こっちにウルトラマンの気配ィ!」

「絶対いないですってぇ!」


突然、声が聞こえた

数十メートル離れた場所に人影が見えた


晴絵「ん? マスコミ?」

京太郎「この声……」

ベリアル『逃げるぞ!』

京太郎『ベリアルさんが即座にその判断とは……了解です!』


即座に持ち物を確認して頷くと、宥、晴絵、穏乃の順で顔を合わせる

言いたいことを理解してくれたのか、笑顔を浮かべて頷く晴絵


宥「また来たら、松実館に……お帰りお待ちしてます」ニコッ

京太郎「また帰ってきます。お父さんにもよろしくっす」

穏乃「ありがとう京太郎! また一緒に!」

京太郎「……ああ、また一緒に」コクリ


次に目線は、新子憧―――アグル守られた者に


京太郎(さよならだ、新子憧)


静かに頷くと、京太郎は走り出した



目的地はまだ決まっていない

だが、友と約束した……


京太郎「―――和、玄さん、必ず……!」

ベリアル『いくぞ小僧ォ!』

京太郎「はい!」


返事と共に、京太郎はゼットライザーのトリガーを引いた


493: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/27(月) 01:41:55.07 ID:9b4S8r0J0


     第11話【悪魔】 END



494: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/27(月) 02:02:18.27 ID:9b4S8r0J0


◆どこへ向かう!


×、奈良(阿知賀・晩成)
2、東京(臨海)
3、大阪(千里山→姫松)
4、大阪(姫松→千里山)
5、岩手(宮守)
6、東京(アナ・プロ)
7、東京(白糸台)
8、北海道(有珠山)
9、長野(鶴賀・風越)





502: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/27(月) 22:41:45.41 ID:okMKpijE0
2、東京(臨海)



―――次回予告


京太郎:東京……久しぶりだな

ベリアル:余計なもんをさっそく感じんな

京太郎:余計なもの、ですか?

智葉:男?

ネリー:でもカネゴンはどうかな?

京太郎:どこに行ってもこれだな!


次回【東京の風】


京太郎:ヤキトリにしてやらァ!

503: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/27(月) 22:55:36.91 ID:PZofMT9+0


―――【江東区】


駅を出て、京太郎は背を伸ばす

10月ともなれば空気もずいぶん涼しく夏来た時とはまた違った雰囲気を感じる

腕時計型の端末を開く


京太郎「……和の目撃情報、東京とはな」

ベリアル『にしてもその小娘ばかりだな、他は?』

京太郎「優希、まこ先輩、それに咲……」


誰一人見つかっていない

今は和しか、手掛かりがないのだ


京太郎「……とりあえず合流を待つか」

ベリアル『ハッ、面倒なことだな』

京太郎『走ってくのはナンセンスですよ。今の運動能力だとしたら余計に』


京太郎はロータリーで周囲を見回す

そうしていると、一台の車が目の前に止まった

窓が開いて、運転席に見たことがある顔


??「待たせたな」

京太郎「いえ……いいなぁ車」ボソッ

??「辻垣内智葉だ、よろしく頼む」フッ


504: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/27(月) 23:05:12.60 ID:PZofMT9+0


辻垣内智葉の運転する車の助手席に乗り込む京太郎

目的地はここからそう遠くはないらしいものの、緊張が隠しきれない

自分の仲間たちと戦った相手……


智葉「君が、熊倉トシさんの秘蔵っ子か」

京太郎「秘蔵っ子って、どういう伝わり方しているんですか」

智葉「言った通りのだ……まぁ尾ひれはついてるだろうが」

京太郎「だと思いますよ」


長野や阿知賀とはまた違った街並みを横目に、京太郎は苦笑する

ただ、ベリアルだから色々と動いているにすぎない


智葉「だが奈良からとは……良く働くみたいだな」

京太郎「まぁ仲間もやられてますからね」

智葉「そうなのか?」

京太郎「はい、清澄高校の」

智葉「清澄に……男?」

京太郎「あ~そうなりますよねぇ」ハハハ


当然のことだという風に京太郎は笑った

506: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/27(月) 23:21:54.21 ID:PZofMT9+0


―――【特異課東京支部】


ガレージに入った車

出てくるのは京太郎と智葉の二人

体を伸ばして、長野とも阿知賀とも違う雰囲気の基地


ベリアル『余計なもんをさっそく感じんな』

京太郎『余計なもの、ですか?』

ベリアル『基地内だ』

京太郎「え、それってとってもマズイ状況では……」

智葉「どうした?」

京太郎「ああいえ! いいえ!」


ついつい普通にベリアルに応えてしまった京太郎

両手を振りながら頭を振るうと、外はは首をかしげる


智葉「まぁいいか……行くぞ」

京太郎「はい!」


長い髪をなびかせて歩く智葉の後ろを歩いていく

少しばかり警戒しながら……


京太郎(警戒……警戒……)

ガンッ

京太郎「痛ぁ! なんで一斗缶ンンッ!」

智葉「ああ、気を付けろ」

ベリアル『どこが警戒だ』


507: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/27(月) 23:31:28.77 ID:PZofMT9+0


扉が開く、長野基地と同じつくりの作戦室に入るのは二人

辻垣内智葉と、足を気遣いながら歩く京太郎


智葉「戻ったぞ」

???「おかえりー」

京太郎「痛ぁ……」

智葉「あー……ネリー、こちら」

???「須賀京太郎、でしょ?」


そこに座っていたネリー・ヴィルサラーゼがそう言うと、智葉は意外そうな表情をした

それもそうだ。須賀京太郎を知っている人物なんぞ長野の雀士でも珍しい部類

清澄だからなんとなく知っているという人間がいるぐらいである


京太郎「し、知ってるとは意外……」

ネリー「宮永の彼氏でしょ?」

智葉「そうな」

京太郎「違います」

智葉(だいぶ食い気味……)


508: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/27(月) 23:44:28.57 ID:PZofMT9+0


作戦室のテーブル

やはり囲むように座るのが正解らしく、モニターに背を向けぬように智葉は座る

既に座っているネリーが、指差すのでそちらに座ろうとするも―――


ガンッ

京太郎「いったぁぁあぁぁっ!」

智葉「次はなんだ!」

ネリー「あー、それねこの間、しおりんが買ったダイエット器具」

智葉「あの人は……」

ネリー「ねー体重増えたって言ってたけど絶対    にいってるだけだよ」


あまりの激痛に倒れる京太郎


ネリー「うわぁ」

智葉「どんだけ痛いんだ……」

京太郎「ぐおぉ……いてぇ」

チャリンチャリン


立とうとした時、なにかが落ちた音がした


ネリー「お金!」バッ

京太郎「はえーよ、ちげぇし」

ネリー「……ほんとだ怪獣メダルだ」ハァ

京太郎「露骨にガッカリするなぁ」

ネリー「ネリーは許そう……」


瞬間、作戦室の扉が開いてナニカが入ってくる


????「お金!!?」

京太郎「怪獣だぁぁぁっ!!?」

ネリー「でもカネゴンはどうかな?」

509: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/27(月) 23:54:45.27 ID:PZofMT9+0


入ってきた怪獣カネゴン

京太郎の方を、いや落としたメダルを見る

前に出る智葉


智葉「どうどうどう」

カネゴン「なぁんだメダルかぁ……」

智葉「ほら、今は真面目な話をしてるんだ」


そう言って智葉が京太郎の方を見る

手でメダルをしまえとジェスチャーされるので、京太郎はメダルをホルダーに入れた

カネゴン、と呼ばれた怪獣をマジマジ見る


京太郎「……怪獣だ」

ネリー「カネゴンの怪獣メダル入れられててさぁ」

京太郎「え」

ネリー「最近、ネリーから出てきて……あ、メダルと一緒に」

京太郎「なにそのパターン」


少し気になりもする

ネリーの話ぶりからしておそらく被害などはなかったのだろう


智葉「ほら、小銭は別でやるから」

カネゴン「サトハは優しいねぇー!」

智葉「現金だな」

カネゴン「現金!?」

智葉「そういう意味じゃない」

ネリー「智葉は表に出せないお金一杯あるだろうし、処理に困ったらカネゴンにあげてね」

智葉「あるか!」

京太郎「やっぱり……」

智葉「お前も私をなんだと思ってるんだ!?」


510: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/28(火) 00:13:42.54 ID:8IpIgfJV0


カネゴンが出て行き、京太郎、智葉、ネリーの三人がそこにいた

キーボードを叩く智葉

モニターの表示が切り替わり、画像が出てくる


京太郎「これは……」

智葉「昨日の画像だ。原村和、だろ?」

京太郎「ええ、それに玄さん……」

智葉「ああ、松実玄……覚えている」


その言葉の重み

戦ったからこそわかることもあるのだろう


京太郎「この二人、どこで?」

智葉「案外近場だ……やはり雀荘らしいが」

ネリー「むぅ、麻雀さえできればネリーがメダル吐き出させたるのにぃ!」

京太郎「怪獣メダル入ってる奴は舐めない方が良いぞ」

ネリー「ネリーだって入ってたからわかるよぉ」

京太郎「でも、だよ」


戦ったからこそよくわかる原村和の異常さ

自分はともかく南浦数絵と染谷まこの二人を封殺した強さを……


智葉「まぁともかくだ。まずはこの場所に行ってみるとしようか」

京太郎「はい、ついでにここ最近でここらで起きたこととか教えてもらえれば」

ネリー「ネリーもいく!」

智葉「ああ、監督もまだ戻ってこないし……とりあえず私たちでできることをやろう」

512: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/28(火) 00:27:34.63 ID:8IpIgfJV0


走る車の運転席に座る智葉、助手席に京太郎

そして後部座席にネリー


京太郎「え、神代がスポンサーをしてる?」

智葉「と聞いたが……」

京太郎「なんでまた」


頭に思い浮かぶのは永水女子の雀士たち

石戸霞、神代小蒔、滝見春、石戸霞、石戸霞、狩宿巴、石戸霞、薄墨初美


京太郎(いかん、おもち欠乏症だ)

ベリアル(たぶんアホなこと考えてやがんな)

智葉「それはまぁ、日本の……いや、地球の危機だからな」

ネリー「他の大手企業とかもこぞって特異課にお金出してるらしいよ!」

京太郎「そうか、まぁそうなれば不思議じゃないか」フム

ネリー「やったね須賀! お給料が増えるよ!」

京太郎「おいやめろ」

ネリー「なんで?」

京太郎「なんでも」


そう言って深く頷く


智葉「仲良くてなによりだが……着くぞ」

ネリー「おー禍々しい気配」

京太郎「そうか?」

ネリー「たぶん」

513: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/28(火) 00:49:33.01 ID:JBm5g1HU0


駐車場に車を置いて、三人は雀荘の前に立つ

ネリーが言っていたこともあながち間違いでもないのか、京太郎は顔をしかめる

異様な雰囲気が、漂っていた


京太郎「……電話繋がります?」

智葉「ダメだ、中に電話したがつながらない」

京太郎「こりゃダメだ」

ネリー「えー」


ガッツハイパーを持つ三人

おまけに智葉は、なぜか帯刀している


京太郎「……なんで?」

智葉「……放っておけ」

京太郎「はぁ」


そう言って頷くと、息をつく京太郎が二人を見る

頷く二人に頷いて扉を蹴破るとガッツハイパーを構えながら入った京太郎

そして後から、智葉とネリー


京太郎「……」

智葉「やはり……」


暗い雀荘……その中で雀卓に座っている少女が一人

脚を組んで座っているその少女、原村和は妖艶に笑みを浮かべた

風も無いのにそのピンク色の髪が揺れている


京太郎「和ぁ……」

和「また貴方ですか」ハァ

514: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/28(火) 01:19:15.37 ID:JBm5g1HU0


銃口の先に原村和

動揺の色すら見せず、原村和がため息をついた

松実玄の姿はどこにもないように見える


京太郎「……玄さんは」

和「今回の目的は雀士なので、あまり連れ回したくないんですよね。私の大事な殲滅兵器なので」

京太郎「貴様ッ!」


トリガーを引いてショック弾を放つも、見えないバリアに阻まれた


和「まぁこの辺で怪獣メダル持ちを倒す雀士がいると聞いたので……私が直々に来てみたわけですけど」

智葉「偉そうに……!」スチャッ

和「偉いんですよ実際に人類よりよほど理性的です」

京太郎「だったらさっさと大人しく和の体から出ろ!」


そう言って近づこうとする京太郎

だが和は眉一つ動かさずに、指を鳴らす


ベリアル『小僧ォ!』

京太郎「っ!」


即座に後ろに跳ぶと、一瞬前までいた場所に“光の鞭”が振るわれた

近くの雀卓が真っ二つに斬り裂かれる


京太郎「こいつっ!」

和「さすがですね」フッ


暗闇の影から現れたのは―――宇宙人

青い体、両腕がハサミ

金色のマントをつけた異質な宇宙人


ベリアル『テンペラー星人か!』

ネリー「雀荘は戦う場所じゃないでしょぉ!」

京太郎「まったく同意見だよ!」

515: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/28(火) 01:37:52.31 ID:JBm5g1HU0


テンペラー星人「避けられた!?」

和「まぁ他の方法でいきましょう。勿体ないですし」

テンペラー星人「悠長なことを!」


言い争う和とテンペラー星人

京太郎は素早くガッツハイパーを放つも、やはりバリアで防がれた

ネリーが、テンペラー星人に銃を撃つが、ビームウィップで弾かれる


テンペラー星人「鬱陶しい!」

京太郎「ッ!」


ビームウィップが攻撃のため、ネリーに振るわれた

確実な直撃コースで、京太郎は顔をしかめつつネリーを抱きかかえる


ネリー「須賀っ?!」

京太郎「ッ!」

ベリアル『くるぞ!』

智葉「させるかッ!」


素早い抜刀―――智葉がビームウィップを弾いた


テンペラー星人「なに!?」

智葉「かの錦田小十郎景竜の刀だ、並ではない!」

和「倒してはもったいない……撤退ですよ」


そう言うと、和とテンペラー星人は闇の中に消える

517: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/28(火) 01:53:00.23 ID:JBm5g1HU0


納刀した智葉、京太郎はガッツハイパーを降ろして周囲を見回す

おかしなところはない


京太郎「たぶん俺がいると思わなかったから、ここに誘い込んで二人を倒す気だったっぽいな」

智葉「侮られたものだな」ハァ

ネリー「んーワンチャンあった?」

智葉「宇宙人のみなら……?」


おそらく無理だろう


京太郎「雀荘に、元々いた人たちとかはいないのか?」

智葉「おそらくな……基地から連絡があった」

ネリー「ほんとだ、雀荘の店主と連絡ついたって」

京太郎「そりゃなによりで」フゥ


瞬間、地面が揺れる

驚愕する三人が、急いで外へと飛びだす


すでに街中は混乱しているようで、一般人の叫び声が聞こえる

走って避難していく人々

大きな咆哮が聞こえた


京太郎「ッ!」

智葉「あれは……」

ネリー「鳥怪獣!」


ベリアル『ほう、バードンか』


518: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/28(火) 02:06:27.77 ID:JBm5g1HU0


その火山怪鳥バードンが羽ばたくと、凄まじい突風が巻き起こった

背筋に悪寒が走る京太郎は即座に動く


ベリアル『飛ばされるぞ!』

京太郎「ッ!」


すぐに智葉とネリーを抱き寄せた


智葉「なっ!?」カァッ

ネリー「ひゅえっ!?」カァッ


そのまま、雀荘へと飛び込む

外は凄まじい突風により看板が転がっていた

雀荘の窓ガラスも音を立てている


京太郎「っ!」

智葉「た、助かった……」

ネリー「あ、ありがと」


起き上がった京太郎はガッツハイパーを確認して頷く

二人は小首をかしげたが、京太郎は走る


京太郎「二人共大人しくな!」

智葉「お、おい!」


雀荘から飛びだして走る京太郎

突風は既に止んでいるが、バードンは炎を吐いて街を破壊していた

走る京太郎がガッツハイパーを撃てば、直撃を受けたバードンは京太郎の方を向く


京太郎「どこに行ってもこれだな!」

ベリアル『おもしれぇ!』

京太郎「ですよね! ベリアルさんは!」


ゼットライザーのトリガーを引き、出現したゲートへと飛び込む

519: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/28(火) 02:23:12.85 ID:JBm5g1HU0


―――【インナースペース】


京太郎「いきますよベリアルさん!」

ベリアル「ハッ、上等ォ!」


出現するアクセスカードを右手で取り、挿入した


『キョウタロウ・アクセスグランテッド』


さらに右手で、メダルを弾く

弾かれたメダルが周囲を闇に包んだ

赤く輝く瞳、落ちてきたメダルを右手で掴みゼットライザーにセット


京太郎「究極生命体!」


ブレードをスライドさせる


『Alien Rayblood』

京太郎「ベリアァルッ!」


トリガーを引き、叫んだ


520: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/28(火) 02:34:14.52 ID:JBm5g1HU0


現れるのは漆黒のベリアル

左手を顎にそえて首を鳴らし、バードンの方に視線を向けた

少しばかり腰を落とし、構えを取る


京太郎『炎を吐く鳥、ねぇ……』

ベリアル『クチバシには毒もある怪獣だ。使う分には良さそうなんだがなぁ』

京太郎『使うって……』

ベリアル『レイオニクスだからな』フッ

京太郎『レイオニクス?』


疑問を浮かべて聞くも、バードンが突っ込んでくるのでその質問が止まった

真っ直ぐ突撃してきたバードンのクチバシを回避し、即座に距離をとる

振り返ったバードンが火炎弾を吐きだすが、クローでその火を真っ二つに斬り裂く


ベリアル「ハァッ!」


斬り裂かれた二つの炎がベリアルの左右で爆発する


ベリアル『タロウやゾフィーの小僧共のように無様にやられるなよ』

京太郎『誰っすか、まぁ……ベリアルさんと一緒なら、負けませんよ!』


笑みを浮かべた京太郎

ベリアルは勢いよく、バードンに向かって走り出す


524: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/29(水) 21:56:53.71 ID:spM+7z240

迫るベリアルを相手に、バードンが火球を放つ

ベリアルは素早く爪で火球を斬り裂くと、バードンに蹴りを放った


バードン「―――!」


鳴き声をあげてひるむバードンを、さらに爪で攻撃する

だが、バードンはそれを耐えてクチバシを振るう


ベリアル『毒がくるぞッ! そもそもあのクチバシも伊達じゃねぇ!』

京太郎『やべぇじゃないっすかぁっ!』


目の前に迫ったクチバシ

ベリアルは両手でバードンの頭を押さえてそのクチバシを眼前で止めた

がら空きのベリアルの胴体を、バードンは両手で攻撃


バードン「―――!」

ベリアル「グゥッ!」

ベリアル『アレでやるぞ!』

京太郎『はい!』


徐々に押されていくベリアルの黄色い瞳が輝く


ベリアル・京太郎『デスシウムロアー!』


放たれた音波攻撃

吹き飛ぶバードンはビルを破壊しながら倒れる

ベリアルはバードンを見据えつつ首を鳴らす


525: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/29(水) 22:15:40.81 ID:LBBZxP4F0


ベリアル『まずあの毒袋を潰す!』

京太郎『あの頬の袋っすね!』


素早く光弾を放つも、バードンは空へと舞いあがりそれを回避

見上げるベリアルに対し、バードンは空中から火炎弾を放つ


京太郎『このままじゃ街が!』

ベリアル『ならどうする!』

京太郎『全部……弾き返す!』


バリアを張ったベリアル

火炎弾はバリアにぶつかって空へと返って行く


京太郎『難しっ!』

ベリアル『角度を変えろ! 戦いの中で覚えろ!』

京太郎『ッ!』


バリアにぶつかる火炎弾からの衝撃、それに耐えつつ、街に被害が出ないよう……

そこには智葉とネリーがいるのだ


京太郎『んのぉ!』


力を込めて、バリアの角度を変えた

空のバードンからの火球が、跳ね返る


バードン「―――!!?」


その火球にぶつかり、バードンが落ちた

526: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/29(水) 22:21:17.64 ID:LBBZxP4F0


なんとか起き上がるバードンだが、火球が毒袋に直撃したのか頬の袋はボロボロだった

ふらつくバードンが、ベリアルの方に視線を向ける

怒りに震えながら、バードンはベリアルへと走っていく


京太郎『いきまぁす!』


右腕に集まる黒い光と赤い稲妻

水平に構えた左手の後ろに、垂直に構えた右腕をそえた

掌は真っ直ぐ、そしてその腕から―――


ベリアル・京太郎『デスシウム光線!』


―――光線が放たれる


バードン「―――!!?」


その光線がバードンへと直撃

直後、硬直したバードンが―――爆散する


ベリアル「ハッ!」


右腕を払うように振るうと、左手を顎にそえて首を鳴らす

そして、上空へと飛んで消えた


527: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/29(水) 22:34:22.01 ID:LqDuPV0k0


地上へと降り立つ京太郎が、腰を叩きながら路地裏から出る


京太郎「きっつぅ」

ベリアル『ハッ、バードン相手によくやった』

京太郎「うっす……にしても、慣れないことはするもんじゃないっすね」


そう言いながら、身体を左右にひねってから背を伸ばす

今までの戦いとはまた違う戦い方だった

いつも通りだったらまた違ったのだろう


京太郎「最近は、そこまでの戦いしてこなかったですからねぇ」

ベリアル『ふたを開けりゃ今回も苦戦もしてねぇしな』

京太郎「たしかに……俺も中々やるようになったんじゃないですか?」

ベリアル『オレの力がほとんどだろうが……四分の一人前がナマ言うんじゃねえよ』

京太郎「うっす」フッ


どこか嬉しそうに返事をする京太郎

すると、声が聞こえてくる

そちらを向けば、走ってくる二つの影


ネリー「京太郎ー!」

智葉「無事か!」

京太郎「ああ、心配かけました……助けてもらいました。ベリアルさんに」

智葉「ベリアル……」

ネリー「さん?」

京太郎「あー……な、長野からの付き合いなんで」

智葉「なるほど」フム

京太郎(なんとかなった!)

528: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/29(水) 22:57:08.14 ID:AVIz8r390

―――【特異課東京基地:作戦室】


座っているのは京太郎、智葉、ネリーの三人

あの後、車で戻ってきたというわけで、今は画像を見ていた

表示されているのはバードンとベリアル


智葉「にしてもウルトラマンベリアル、ここに来るとはな」

ネリー「意外だったね。原村を追ってるって聞いたことあるけど」

京太郎「……正確には中身なんでしょうね。根源的破滅招来体」


その言葉に、智葉とネリーが頷く

根源的破滅招来体については熊倉トシが色々なところに話はしているのだと思いたいところだ

瞬間、扉が開く


???「ごめん、遅れた……ああ、貴方が須賀京太郎」

京太郎「あ、はい」

???「今日はありがとう。私はアレクサンドラ・ヴィントハイム……一応ここの責任者」

京太郎「ああ、これはどうも」ペコ

アレク「今日はごめんね」

京太郎「いえいえ、結果的にベリアルさんに助けられましたし、また」


その言葉に、アレクサンドラは笑みを浮かべて頷いた


ネリー「監督おそい」

アレク「だから謝ったでしょう」

智葉「色々終わりましたよ」

アレク「知ってる。例の原村和とは会ったんでしょ?」

ネリー「宇宙人連れてたけどねー」

アレク「今回の件、怪獣メダルの件はまだ不明な点が多いからね……根気強くやってきましょ」


そんな言葉に頷く三人


京太郎(和を、取り戻す方法か……)

529: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/29(水) 23:09:38.41 ID:AVIz8r390


―――【特異課東京基地:休憩所】


京太郎「で」

ジャラジャラジャラ

京太郎「どうしてこうなった?」

ネリー「なにが?」

智葉「それはそれとして、だ」

アレク「お手並み拝見」フフッ


現在、麻雀マットを広げて牌を混ぜている四人

目的はもちろん麻雀をするためだ

なぜか自然な流れで麻雀をさせられている


京太郎「えー」

アレク「多少は強いって熊倉さんから聞いたし」

京太郎(ベリアルさんのおかげっていうか今回の事件のおかげっていうか……おかげってのもおかしいか)

智葉「見せてもらおうか、清澄麻雀部男子の実力を」フッ

ネリー「ヤキトリで終わらないでよぉ?」


クスクス笑うネリーに、京太郎は不敵に笑う

牌を手で積んでいく四人

京太郎はカッと目を見開く


京太郎「上等! ヤキトリにしてやらァ!」


530: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/29(水) 23:19:37.79 ID:AVIz8r390


◆安価!


1、松実宥

2、高鴨穏乃

3、福路美穂子

4、瑞原はやり

5、東横桃子

6、竹井久

7、辻垣内智葉

8、ネリー・ヴィルサラーゼ


◇5分間で1↓から~ コンマが一番高い選択肢


533: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/29(水) 23:37:20.04 ID:AVIz8r390
2、高鴨穏乃



―――【特異課東京基地:自室】


割与えられた部屋で、京太郎はシャワー上がりなのかタオルで髪を拭いている

シャツと短パンのみの姿、ベッドに腰掛けるとケータイに触れた

その瞬間、そのケータイから音が鳴る


京太郎「うおっ!」ビクッ


タイミングの良さに驚きながらも相手の名前を確認して通話ボタンを押す


京太郎「穏乃か、どした?」

穏乃『あ、京太郎! 昨日ぶり!』

京太郎「おう」フッ


元気そうな声に、軽く返す


京太郎「ああ、そういえばあの後大丈夫だったか?」

穏乃『うん、先生も宥さんも驚いてたけど』

京太郎「だろうな」ハハハ

穏乃『でも、これからも一緒に戦ってくれるって!』

京太郎「そりゃそうさ……俺もな」フッ

穏乃『うん!』

京太郎「ウルトラマンの力がなくても、だからな」

穏乃『わかってるよ。京太郎はそういう人だって』

京太郎「そっか」

穏乃『やっぱギリギリまで頑張らないとウルトラマンも力、貸してくれないしね!』

京太郎「……そうだな」フッ


ベリアル『そうか?』

京太郎『そうだと言っといてください』

ベリアル『ウルトラマンじゃねぇからな、オレは』

京太郎『……ですね』フッ

534: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/29(水) 23:59:28.83 ID:AVIz8r390


京太郎「そういえば、今日……和と会ったよ」

穏乃『え、さっそく!?』


驚愕する穏乃に、同意で返す


京太郎「ああ……でも、やっぱあれは和じゃないからな」

穏乃『そっか、なんとかできそう?』

京太郎「いや、ヤバそうな宇宙人が一緒にいてどうにもな……玄さんもいなかったし」

穏乃『そっか、でも……きっと熊倉さんがなんか作ってくれるよ!』

京太郎「だと良いけどなぁ」


そう言うと、いつだったか熊倉トシからのものとして受け取ったガッツハイパーのカートリッジを取り出す

手の中で転がしつつ、穏乃に話を続ける


京太郎「まぁ俺もなんとか頑張ってみるよ」

穏乃『私も、憧が起きたら色々聞いてみるね』

京太郎「無理ない範囲で頼んだ」

穏乃『うん!』


元気のいい返事に口元をほころばせる


京太郎「それじゃ、気を付けてな」

穏乃『京太郎こそ! また、電話するねっ』

京太郎「ん、楽しいみにしてる」フッ

穏乃『うん、またね!』


電話が切れる

笑みを浮かべたままの京太郎は、そっとカートリッジとケータイをベッドの枕元に置く

横になった京太郎は、天井を見上げて手を上に持ち上げた


京太郎「俺は……」グッ


535: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/30(木) 00:04:48.18 ID:IZjXnqg50


     第12話【東京の風】 END


536: ◆dBIP2XuQhg 2021/09/30(木) 00:25:22.81 ID:IZjXnqg50


―――次回予告


京太郎:魔王獣?

ベリアル:太平風土記はあるか?

智葉:邪な者ならば斬る!

テンペラー星人:人間か!?

ネリー:この風!!?

京太郎:スカート  そう!


次回【風の魔王獣】


京太郎:お借りします!


542: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/01(金) 22:09:44.91 ID:KXMPvVGP0


―――深夜【江東区:街中】


凄まじい咆哮

車を踏み潰し、肉食地底怪獣ダイゲルンは走る

正面に立っているのは―――ベリアル


ベリアル「ジャアッ!」


勢いよく、放たれる光弾

尻尾を振るったダイゲルンは光弾を相殺


京太郎『予想通り!』

ベリアル・京太郎『デスシウムリッパー!』


放たれた斬撃は、振り返ったダイゲルンの首に直撃

そのままダイゲルンの首は落ち、倒れる

ベリアルは右腕を払うと、真上へと飛び上がって去って行く

543: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/01(金) 22:18:35.30 ID:KXMPvVGP0


ダイゲルンが倒れた地上

落ちているダイゲルンの頭部の近くに車が止まった

出てくるのは智葉、探知機のようなものを手に歩くと……


智葉「これか」スッ


拾ったのはメダル

描かれているのはもちろんダイゲルンだった


智葉「さて……いくか」


車に再び乗りこむと、智葉はその場から去って行く


544: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/01(金) 22:29:42.61 ID:KXMPvVGP0


―――【特異課東京基地:作戦室】


開く扉、帰ってくるのは京太郎

先に座っているのは智葉とネリーとアレクサンドラ


京太郎「う~」


欠伸をしながら背を伸ばす京太郎


京太郎「お待たせしゃぁしたぁ」

アレク「まぁ深夜だもんねぇ」

智葉「京太郎」ポイッ

京太郎「どうもっす」


投げ渡されたダイゲルンメダルを受け取る


智葉「にしてもどうしてメダルはお前が回収なんだ?」

アレク「まぁ熊倉さんのことだから考えがあるんだろう、特にこの子は色々なとこいかされてるし」

京太郎「まぁ好きで動いてるんですけどね」

ネリー「お金ならともかくメダルなんてなぁ」

京太郎「ま、なんでも良いじゃないっすか……阿知賀じゃ研究部の方に持ってかれたし」

アレク「へぇ~なにか考えてるんかね」

京太郎「さぁ?」


あれから三日、京太郎はすっかりなじんでいた


545: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/01(金) 22:40:03.97 ID:KXMPvVGP0


ネリー「もー眠いー」

アレク「まぁ今日はこれで解散でいいでしょ」

京太郎「うぃーっす」

智葉「おい京太郎、もう少しだなぁ」


呆れた顔でそういう智葉に、眠気眼のまま頷く京太郎

苦笑するアレクサンドラ


京太郎「すんません」ウトウト

アレク「まぁ、報告書はやっとくからおやすみ」

京太郎「うっす」コクリ


そう応えて部屋を出ようとする京太郎

アレクサンドラがキーボードに触れたモニターにテレビを映した

その画面を見て、全員が眼を点にする


ネリー「……ネリー寝ぼけてる?」

智葉「さぁ……」

京太郎「大型台風同時に七つって……なに?」

ベリアル『こいつぁ……』


546: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/01(金) 22:42:11.15 ID:KXMPvVGP0


     第13話【風の魔王獣】


547: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/01(金) 22:58:24.11 ID:KXMPvVGP0

―――翌朝【特異課東京基地:作戦室】


昨夜と同じくモニターに移されたテレビニュース

そこに映っているニュースがやっているのは突然の大型台風同時発生についてだ

欠伸を噛み殺しつつ、京太郎はその映像を見ている


京太郎「っ……」

アレク「眠そうね」

京太郎「お互いさまっす」

智葉「まったくだ」

ネリー「」zzz


一応の仮眠はとったが、せいぜい3時間程度だ


京太郎「……」

ベリアル『間違いねぇ魔王獣だな』

京太郎『……魔王獣?』

ベリアル『あぁ、こことは別の宇宙で世界を滅ぼすって言われてた怪獣共だ』

京太郎『世界を滅ぼすって……』

ベリアル『ある程度、出現場所が予測できりゃぁ……』

京太郎『予測って』

ベリアル『……この世界に、太平風土記はあるか?』


そんな言葉に、京太郎は小首をかしげた


京太郎「えっと……太平風土記って、知ってます?」

智葉「た、たいへい?」

アレク「ふうど、き?」

京太郎「あーなんかよくわかんないけど」

548: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/01(金) 23:09:03.32 ID:KXMPvVGP0


三者三様、それぞれのリアクション

アレクは調べるためにキーボードを叩く、智葉は思い出そうと頭をひねり、ネリーは……寝ていた

顔をしかめる京太郎


京太郎『やっぱないんですかねぇ』

ベリアル『さてな、あるとこもあればないとこもある』

京太郎『色々博識ですよねベリアルさん』

ベリアル『全宇宙を手に入れようとしてたからな』

京太郎『熱心で』


そんな会話を頭の中でしていると、扉が開く

入ってきたのは一人の少女


?「ただいま帰りました!」

アレク「ん、宇野沢」

ネリー「んー……あ、しおりん」

京太郎「……宇野沢栞、さん?」

栞「あ、須賀京太郎くん、はやりさんから色々聞いてるよ!」

京太郎「色々?」

智葉「ほう、やるじゃないか」フッ

京太郎「なんか勘違いしてません?」


549: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/01(金) 23:20:46.40 ID:eYGCjfEN0


宇野沢栞が、荷物を置いて座る

その豊満な がテーブルに置かれた

血眼の京太郎


ネリー「……うわぁ」

京太郎「……睡眠不足のせいだ」

ネリー「絶対嘘」

京太郎「いいから」


話をごまかすが、智葉からの視線も痛い

アレクサンドラの視線はもっと痛い


アレク「巨 がなんだ……なんなんだ……」ボソボソ

京太郎(こえぇよ)

栞「あ、そうだった! 朝のニュース見ました!?」

アレク「あ、あああれね」

京太郎「台風のジェットストリームアタック?」

ネリー「その二倍ちょい」

智葉「遊ぶな」

栞「それについてなんですけど! 凄いものが見つかったらしくて!」

京太郎「凄いもの?」

栞「その名も、太平風土記!」


京太郎・智葉・アレク「ああー!!」

栞「ええっ!!?」ビクッ

ネリー「……?」

550: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/01(金) 23:45:05.18 ID:eYGCjfEN0


宇野沢栞がモニターを叩く

モニターに表示されるのは古文書『太平風土記』である

見つけたのは瑞原はやりらしいのだが、栞に『必要になる』とのことで預けたらしい


ベリアル『あのイタイ女のダチか』

京太郎『イタイとか言わないであげてくださいよ』


瑞原はやりとの関係はプロ麻雀チーム『ハートビーツ大宮』の仲間である


京太郎「さすがはやりさん」

栞「本当ですよー、さすが」


そう言って、キーボードを叩く

モニターに映ったのは絵、鳥のような怪獣


栞「まだ断片しかないらしいんですけど……」

アレク「十分……で、これは?」

京太郎『なんなんですこれ?』

ベリアル『やはりな、マガバッサー』

栞「禍翼(まがつばさ)……というらしいです」

智葉「今回の台風とこの怪獣に関係が?」

栞「なんか文章を解読したらそうなったとか」

ネリー「雑だなぁ」

栞「でもはやりさんが解読したところ、この文章では禍翼の出現位置から時間まで記されているとか」


そんな言葉に、全員が小首をかしげた


栞「えっと……」

智葉「未来を記した書?」

ネリー「えー全然古文書じゃないじゃん」

京太郎「そういうもんでもないだろ」

ベリアル『禍翼、マガバッサーの出現は間違いねぇ』

京太郎『マジっすか』

ベリアル『ああ、備えとくにこしたことねぇだろうな』

京太郎『……なるほど』


551: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/01(金) 23:56:02.74 ID:eYGCjfEN0


京太郎「……それじゃあ、その予測前提で作戦を立てましょう」

アレク「おお、やる気じゃない」

京太郎「そりゃ怪獣の登場さえ予測できるならそれに越した話ないっすよ」

アレク「確かに、それじゃ……今回は私も現場に出ようか」


立ち上がるアレクサンドラ

ネリーと智葉と京太郎の三人も立ち上がった


栞「それじゃあオペレーターは私が」

智葉「お願いします」

ネリー「よーっし! 早く行こう! そして時間まで寝かせて!」


出口に歩いていくネリーと智葉とアレクサンドラの三人

それを追いかける形で京太郎も歩き出す


栞「あっ、足元!」

京太郎「えっ!?」ガツンッ

ネリー「あ」

京太郎「痛ったぁぁぁぁっ!!?」

栞「あぁっ! ごめんなさぁい!」


倒れた京太郎が転がる


ネリー「なに入ってるのしおりん!?」

栞「ティガの木彫り!」

智葉「!?」

553: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 00:24:25.10 ID:flmx49ub0


―――【東京都墨田区】


古文書に書かれた場所に待機する京太郎と智葉の二人

離れた場所ではネリーとアレクサンドラがいるはずだ

住民の避難は既に完了している


京太郎「……きますかね」

智葉「ここまでやってこなかったら問題だな」


そう言う智葉は相変わらず刀を引っ提げていた

有名な侍の持っていた刀らしいが……


京太郎「……」

智葉「どうした?」

京太郎「……いえ」

ベリアル『あの刀、妙な感じだな』

京太郎『そうなんっすか?』


普通の刀ではないのは確かなのだろう


智葉「敵の目的はなんだ?」

京太郎「え?」

智葉「なぜ禍翼を出現させる?」

京太郎「……目的」


??「根源的破滅招来体というのは、とある宇宙で便利状、そう呼ばれただけだ」


京太郎「っ!?」

智葉「あなたは……」

京太郎「トシさん!」

トシ「元気そうでなにより」


554: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 00:33:57.32 ID:flmx49ub0


現れたのは熊倉トシだった

街中、京太郎と智葉の傍に歩いてくる

トシの言葉に、小首をかしげる京太郎と智葉


京太郎「そう呼ばれただけって?」

トシ「所謂怪獣、人類に仇成すものの総称としてそう呼んでた……」

京太郎「総称してって……」

トシ「ただその宇宙で観測されたそれらを、単純に根源的破滅招来体って私らは呼んでるわけだ」


相変わらず、どこか別のことのように話す


智葉「……つまり、私たちにとっては異星人たちを含めてすべてが?」

トシ「まぁそういうことだけど、今のとこ根源的破滅招来体って呼ぶべきは原村和の“中の奴”だけだ」


そう言うと空を見上げるトシ

太陽が隠れ、暗雲が空を覆っていく


トシ「目的としてはシンプル。宇宙に害する地球人の殲滅ってわけだ」

京太郎「害する?」

トシ「地球をこれだけ汚しといて、宇宙まで進出しようとしてるんだから当然ってわけさ」

智葉「しかし人類はそれを乗り越えようと!」

トシ「まぁここでこの話をしてもしようがないけどね……あたしらの宇宙にはほとんど関係ない。それにアレはメダルと怨念の塊さ」

京太郎「……じゃあこの戦いはどうやったら」

トシ「私もそれを今追ってるわけだ……で、結果」

智葉「ここに着いたと」

トシ「そういうこと、なにかあればまた連絡するよ。ただわかることは」

智葉「強大な闇、ですか?」

トシ「さぁてねぇ……」

555: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 00:44:07.21 ID:flmx49ub0


そんなトシが、しっかりと前を向く

京太郎と智葉も合わせてそちらを見る


智葉「っ!」

京太郎「……雀、明華」


そこにいたのは長い髪とロングスカートを風になびかせる少女

フリルのついた日傘を手に、風神―――そう呼ばれた少女がそこにいた


京太郎「……禍翼」

トシ「風の魔王獣、憑代はその娘か」

智葉「っ!」チャキッ


虚ろな瞳で、京太郎たちを見やる

そして―――突風が吹く


京太郎「ッ!」

智葉「ぐっ!」

トシ「……時間か」


その瞬間、京太郎と智葉の付けている端末が音を鳴らす

マガバッサーが現れるその五分前の合図

京太郎の視界の先の明華


京太郎「まずい!」

智葉「どうした!」

京太郎「スカート  そう!」

智葉「言ってる場合か!」

トシ「やれやれ」

智葉(直立不動!!?)


556: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 00:52:08.14 ID:flmx49ub0


離れた場所で、車の隣で立っているネリーとアレクサンドラ

突如の突風に、ネリーが上空を見上げる

空から離れた場所に伸びる―――竜巻


ネリー「この風!!?」

アレク「そろそろ始まるってわけ、ていうかやっぱあそこ!」

ネリー「智葉、京太郎!!」


557: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 01:08:15.10 ID:z83lL+MB0


京太郎たちの眼前の雀明華が風と共に、少しづつ浮き上がる

京太郎の首根っこを掴んで後ろへと下がる智葉


智葉「見るな!」

京太郎「ちょ、そんなつもりは!」

智葉「今はないだろ!」


本当にその気はないのだが……信じてはくれていないらしい


トシ「今じゃなきゃ見る機会ないからね、許してやりな」

智葉「熊倉さん!?」

京太郎「失敬な!」

智葉「 着ぐらいいくらでも見せてやるから今は下がれ!」カァッ

京太郎「え?」

トシ「え?」

智葉「いいから!」


とりあえず現状をなんとかしようと言った智葉であった

しかし成功はした、京太郎を引っ張って距離を取る

振り返る京太郎と智葉


京太郎「……あれは!」

智葉「覗くな!」

京太郎「覗いてない!」


明華の日傘が風にさらわれ飛んでいく

そして京太郎は、浮いている明華の背後に巨大な翼を見た


京太郎「くるっ!」


勢いよく吹く風

京太郎は片手にガッツハイパーを構える

狙いは雀明華


京太郎「眠れよぉ!」カチッ


放たれた弾丸は、すぐに光の鞭に叩き落された


京太郎「テンペラー星人か!」

テンペラー星人「ご名答!」

558: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 01:16:00.46 ID:z83lL+MB0


強風の中、現れたテンペラー星人

両手のハサミからビームウィップを振るう

京太郎へと伸びたそれを―――刀が弾く


テンペラー星人「!?」

京太郎「智葉さん!?」

智葉「邪な者ならば斬る!」


納刀し駆けだす智葉が、素早く抜刀

テンペラー星人が後ろへと跳びつつ腕を振るう

不規則に智葉に迫る日本のビームウィップだが、智葉は刀でそれらを弾いていく


テンペラー星人「人間か!?」

智葉「もちのロン……ダァッ!」


それを見ている京太郎とトシ


トシ「怪獣を斬る少女ってとこかねぇ」

京太郎「言ってる場合ですか、てか雀明華!」バッ


そちらを見れば、雀明華の姿が風と共に変わる瞬間


京太郎「あれが……」

ベリアル『マガバッサー!』


現れるのは風の魔王獣マガバッサー


559: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 01:30:30.37 ID:z83lL+MB0


智葉とテンペラー星人が攻撃をぶつけあう

見えている京太郎、ゼットライザーがあるしどうにかついてはいける

だが、そんなウルトラマンと同化している故の身体能力を見せるわけには……


智葉「見えている……負けんッ!」

テンペラー星人「ええい、小賢しいィ!」

智葉「ッ!」


素早い剣戟で、光鞭を弾いていく智葉


京太郎(いや、これならやっても大丈夫か?)

トシ「ヤバい、ひとまず退散するよ!」

京太郎「え?」


現出したマガバッサーが、翼を翻す

その瞬間、凄まじい突風が周囲を襲う

トシが素早くその場から走って行く


京太郎「ターボバ……じゃなくて、俺も!」


柱を掴んで踏ん張る京太郎

だが突風は智葉にも


智葉「なっ!!?」

京太郎「智葉さん!!」


だが智葉は風により宙へと浮き上がる

そして―――


テンペラー星人「うぐおぉぉ!!?」


―――空へと飛んでいくテンペラー星人


京太郎「お前もかよ……ってこのままじゃ!」


560: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 01:42:37.70 ID:z83lL+MB0


風が弱まったその瞬間、京太郎は近場の―――証明写真機に走る


ベリアル『おいあそこでか』

京太郎「見られるわけにはいかないんで……智葉さんを助けなきゃ!」


ゼットライザーのトリガーを引き、証明写真機入口に出現したゲートに入った



―――【インナースペース】


インナースペースに、京太郎は立つ

右手にカードを持ち左手のゼットライザーへと差し込んだ


『キョウタロウ・アクセスグランテッド』

京太郎「レイブラッド星人……!」


メダルを弾くと、周囲に闇が広がる

落ちるメダルを右手で取ると、赤い瞳が輝く


京太郎「究極生命体!」


ゼットライザーにメダルを差し込むと、ブレードをスライドさせた


『Alien Rayblood』

京太郎「ベェリアァルッ!」


トリガーを引き、叫ぶ

562: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 01:54:18.33 ID:Ear8ECAo0

巻き起こる竜巻

既に四つも五つも出現し、ビルが倒壊、小さな建物は宙に飛んでいる

その中、辻垣内智葉もどうにか生きていた


智葉「ッ! こ、このままではっ!」

マガバッサー「―――!」


智葉の眼前に現れるマガバッサー

その巨大な口が開かれる


智葉「ここまでっ……すまないっ」


智葉がが覚悟を決めたその瞬間、マガバッサーが弾き飛ばされる

驚愕する智葉の周囲、風が弱くなっていく


智葉「これはっ!」


そっと、智葉は突然現れた足場に着地する


智葉「っ! ウルトラマン、ベリアル!?」


それは黒き巨人の手の上

鋭い爪が周囲を囲んでいるが―――


智葉「暖かい、これは……」


ベリアルは智葉を手に乗せたまま地上へと降りていく

そして、ベリアルは風の弱い場所に降りた


智葉「ここは……」

ネリー「智葉!」

智葉「ネリー……」


ネリーとアレクサンドラがいる

ベリアルの手から降りる智葉が、真上を向く

そこには“目つきが悪いウルトラマン”


智葉「……ありがとう」

ベリアル「……」コクリ

563: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 02:08:33.08 ID:Ear8ECAo0


空を飛ぶベリアル

マガバッサーが再び竜巻を発生させていた

それらに光弾を放つ


ベリアル『なれねェことをさせやがって』

京太郎『ウルトラマンっぽいっすね』

ベリアル『ウルトラマンの埃なんざ何万年も前に死んだっての……』


マガバッサーがベリアルの方を向く

翼を羽ばたかせると、ベリアルを強風が襲う


京太郎『ぐっ!』

ベリアル『さすがに魔王獣かっ!』


突風により吹き飛ばされ、さらに竜巻により浮いているビルなどがぶつかっていく


ベリアル「グゥッ!」

マガバッサー「―――!」


さらに素早く接近するマガバッサーの翼で攻撃を受ける

まるで刃物のようなその翼の攻撃を受けて、落ちるベリアル

そのまま落下してビルを破壊してしまう


ベリアル「ガアァッ!」

マガバッサー「!」


上空から建造物を落としてくるマガバッサー

立ち上がったベリアルがすぐに前に転がってそれを回避、さらに上空へと飛び上がる

ベリアルの胸のカラータイマーが点滅を始める


京太郎『こいつ、今までの比じゃっ!』

ベリアル『チッ、やっぱ今のままの力じゃあな!』

京太郎『それでもッ!』


再び接近してくるマガバッサー

同時にビルなども迫ってくる

564: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 02:17:03.12 ID:Ear8ECAo0


ベリアル『位置取りだ!』

京太郎『はい!』


素早く下降する


マガバッサー「!」


そして体を真上へと向けると、両腕を水平に振るった


ベリアル・京太郎『デスシウムリッパー!』


放たれた斬撃が真上へと放たれる

それは真上のマガバッサーとビル群を斬り裂く

片翼に攻撃を受けたマガバッサーが、バランスを崩して落ちていく


ベリアル「シャアッ!」


地上へと着地したベリアル、その背後に体勢を崩したままマガバッサーが落ちてくる

竜巻の数も減って行く

点滅しているベリアルのカラータイマー、予断は許さない


京太郎『これなら……!』

マガバッサー「!」


起き上がったマガバッサーが足を地上にしっかりと着き、翼を振るう

放たれる衝撃波に、ベリアルが吹き飛ぶ

さらに、遅れて跳んでくるビルがベリアルを襲う


ベリアル「グウッ!」

マガバッサー「―――!」


565: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 02:27:04.33 ID:Ear8ECAo0


マガバッサーの背後の竜巻がビルの残骸等を巻き上げていく


ベリアル『クッ……もう一回くるぞ!』

京太郎『なら!』


勢いよく起き上がるベリアルが構える

マガバッサーが翼を振るい、衝撃波を放つ

ビルも遅れてベリアルの方へと向かうも


京太郎『今だァ!』


ベリアルは腕を前に出してバリアを出現させる

角度は問題無い。バードンの時の応用だ

衝撃波はバリアに弾き返され、放たれるビル群を破壊する


マガバッサー「!?」

ベリアル「ハアァッ!」


地を蹴り飛び上がるベリアルが、マガバッサーへと接近しクローを振るう

その攻撃により怯むマガバッサーに、さらに電撃攻撃を打ち込む


マガバッサー「!」

ベリアル「シャアッ!」


さらに爪撃からの、蹴りでマガバッサーを弾き飛ばす

怯んだマガバッサーが上空へと飛び上がる

それを追い、ベリアルも飛ぶ


マガバッサー「!」


放たれる衝撃波をバリアで弾いて竜巻で舞い上がった残骸を破壊する


ベリアル『いくぞ小僧ォ!』

京太郎『これでハコ割れだァ!』

566: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 02:39:15.26 ID:Ear8ECAo0


右腕に漆黒の光、赤き稲妻

空中でベリアルは腕をクロスさせ、必殺の構えを取る

そして放たれるのは―――


ベリアル・京太郎『デスシウム光線ッ!』


放たれた一撃は―――マガバッサーを直撃


マガバッサー「!!?」


そして、爆散



周囲の竜巻が晴れていく、空に立ち込めていた暗雲すらも

雲の切れ間から光が差しこむ

上空のベリアルは、両手を上に上げて空へと去って行く



地上の智葉、ネリー、アレクサンドラ

飛んで去って行くベリアルを見上げてつつ、智葉は笑みを浮かべ頷く


ネリー「京太郎は?」

智葉「……ベリアルが私しか助けなかったんだ、つまりそういうことだろう」

アレク「……確かに」


そう言ってアレクサンドラが見る方向には、歩いてくる青年

ぼさぼさの金髪を掻きながらスーツにかかった埃を払って笑う


567: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 02:46:44.87 ID:Ear8ECAo0


京太郎「ただいまっす」

アレク「……心配かけてー!」

ネリー「はぁ~」


全員が安心したような表情を浮かべる


ネリー「しおりん聞こえる~?」

栞『あ、ようやく繋がりましたー私いりました?』

ネリー「いてもいなくても良かったね」

栞『ストレートに!?』


京太郎がアレクサンドラに背中を叩かれる

少しばかりの痛みに顔をしかめつつ笑う京太郎

近寄ってくる智葉にも、京太郎は笑みを浮かべる


智葉「……おかえり」フッ

京太郎「……そういえばあの約束」

智葉「黙れ!」ガシッ

京太郎「んぅっ!?」


口を塞がれる京太郎、智葉の顔は真っ赤だ


ネリー「え、約束って?」

智葉「違う! 勢いだ! 勢いで言っただけで本気ではない!」

京太郎「うぞってごとでずがぁっ!?」

ネリー「?」

智葉「いいから! 帰るぞ!」

アレク「?」

ネリー「?」

智葉「いいから!」

京太郎「あんまりだぁ」


568: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 02:52:27.45 ID:Ear8ECAo0


空から落ちてくる物体

それは、地上に叩きつけられて小さなクレーターを作り出す

物体の正体は―――


テンペラー星人「あんまりだぁ」


ボロボロの体をひきずって、テンペラー星人は帰って行く


569: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 03:05:03.63 ID:Ear8ECAo0


―――夜【特異課東京基地:休憩所】


スタッフたちもまばらになった夜の基地

休憩所には京太郎だけで、テレビに映ったベリアルのニュースを見ている


京太郎「まぁなにはともあれ、雀明華は無事か……へへっ、こうしてまたおもちの平和は守られたってわけだ」


遠くを見ながら達成感溢れた笑顔を浮かべる京太郎

その手にはマガバッサーのメダル


京太郎「にしても疲れたけど……」

ネリー「お疲れー」


一本結いの長い髪をなびかせる少女


京太郎「ネリーか」

ネリー「こんな美少女見て“ネリーか”はないでしょー!」

京太郎「あーかわいいかわいい」ポンポン

ネリー「むぅー思ってない!」

京太郎「思ってる思ってる」


笑いながら言う京太郎に、頬を膨らませる


ネリー「……あーあ、せっかく京太郎のために前に行った海の写真見せてあげようと思ったのにー」

京太郎「えー」

ネリー「智葉と明華とかハオとか」

京太郎「なにそれ詳しく!」

ネリー「食い付きかた……」ジト

570: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 03:13:20.34 ID:Ear8ECAo0


ジトーっと京太郎を見るネリー

一方の京太郎は静かに頷く


京太郎「……見せて?」

ネリー「やだ!」

京太郎「見せるつもりだったんじゃ!?」

ネリー「えー……ネリーの姿が見たいってならしょうがないけどなぁー」


その言葉に、なるほどとうなずく


京太郎「ネリー超見たい」

ネリー「……ほんとー?」

京太郎「ホント!」

ネリー「ネリーかわいいから?」

京太郎「ああ!」ニコニコ


ふと、影からそんな二人を見つける智葉


ネリー「かわいい?」

京太郎「超かわいいぜ!」

ネリー「すき?」

京太郎「超すき!」

ネリー「そこまで言うならしょうがないかなぁー」エヘヘ

京太郎「やったぁ!」

智葉(あいつらこんな往来でなんて話を!? というよりそんな、進んでいたのか!? いつの間に!? 私に報告は!?)

ネリー「えーでもなー」

京太郎「かわいい! 超かわいいネリー!」

智葉(ぐっ、なんだか納得いかない!)

ネリー「じゃあ……いいよ?」

京太郎「お借りします!」

ネリー「いや借しはしないけど」

571: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 03:21:43.62 ID:Ear8ECAo0


ネリーのケータイ画面を食い入るように見る京太郎

しかしネリーもなぜだか楽しそうであった


京太郎「おぉ!!?」

ネリー「凄いでしょー」

京太郎「さすがネリーさん!」

ネリー「……って京太郎」

京太郎「ん?」

ネリー「……」


後ろを向くネリーと同じく、背後を向く京太郎

そこには―――修羅がいた


智葉「お前ら、なにをしてるかと思えば……ネリー!」

ネリー「ひゃいっ!?」

智葉「なにを勝手に人のぉ!」ギリギリ

ネリー「いひゃいいひゃい!」


頬を引っ張られるネリーは涙目になっている

パッと離すと、両手で頬を押さえているネリー

次は自分かと、苦笑いを浮かべる京太郎


智葉「京太郎ぉ……」

京太郎「は、はい?」

智葉「誰だ……」

京太郎「はい?」

智葉「誰が一番よかった」

京太郎(智葉さんと答えたら……殺られる!)

京太郎「ね、ネリーかなっ!?」


瞬間―――空気が凍った


572: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 03:28:30.71 ID:Ear8ECAo0


京太郎(なんだこのプレッシャーは!)

ベリアル(なにやってんだこの小僧)


凍った時が、動き出す


ネリー「……ふひゃっ!?」マッカ

智葉「……お前、私の 着を見たいとか言っておきながらぁっ!」

京太郎「う、うぇぃっ!!?」

智葉「……この浮気者がぁっ!」

京太郎「ちょ、誤解です! 誤解ですって!」ダッ


怒る智葉、理由もわからないがなだめる京太郎

そしてネリーは、先ほどとは違う意味で赤くなった頬を両手で押さえていた


ネリー「も、もぉ京太郎ったらぁ」エヘヘ


そんな休憩所に現れるのはアレクサンドラ


アレク「……騒がしいなぁ」


そう言うと背を伸ばして欠伸をする


アレク「……寝よ」


573: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 03:35:09.29 ID:Ear8ECAo0


―――【雀荘】


暗い雀荘、倒れている数人の人間

そこにただ一人立っているのは―――原村和


和「……」


その視線の先にはテレビ、ニュースがやっている


『ウルトラマンのおかげで大型台風七つも消滅、やはりベリアルは守護者なのでしょうか』

『結果的にそうなっただけな気も』

『しかし最近ではベリアルが各地で怪獣を倒してくれている人類の味方だという意見も』

『世論もすっかりウルトラマン中心とした』


マガバッサーによる台風も消滅

破壊された街は元通りとはいかないが、これ以上のマガバッサーによる災害はないだろう

今までよりも大規模な怪獣災害ではあったのだが避難も済んでいて死者は奇跡的に出ていない


和「めでたしめでたし―――」


そう言った和が隣の雀卓を叩くと、それは破壊される


和「―――じゃあないんですよ。マガバッサーを出現させるコストもバカにならないのに」


息を吐いて、その黒い瞳をニュース映像のベリアルに向けた


和「本気で潰しますか、須賀京太郎……」


その背後には天使の如く光の輝き

そして口元には笑みが浮かんでいた


574: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 03:37:55.93 ID:Ear8ECAo0


     第13話【風の魔王獣】 END


576: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 03:45:32.30 ID:Ear8ECAo0


―――次回予告


京太郎:呪術っすか?

ベリアル:いくつか憶えがあるな

智葉:眼、だと?

ネリー:眼ェ!?

和:須賀京太郎を潰します

京太郎:お前は!

アレク:なんなんだあれは!

智葉:魔頭鬼十郎!


次回【呪いの微笑】


京太郎:俺はお前だよ須賀京太郎!


586: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 23:01:57.95 ID:gSyrksoS0


―――【特異課東京基地:休憩所】


あれから四日後

東京にきてからかれこれ一週間の時が過ぎた

10月も半ば、中々好転しない事態


京太郎「なんかなぁ」

??「どうしたんですか、そんな顔して」

京太郎「あぁ、明華さん」

明華「おはようございます」ニコリ


ふわりと笑う彼女は雀明華、先日マガバッサーメダルで敵にされていた少女

どこも異常なしということで今は自由に動いているそうだ

長いロングスカートをなびかせて、少女は京太郎の対面に座る


京太郎「いやぁ、なんか目的とかなくて……」

ベリアル『適当に雀荘でも練り歩きゃ暴れられんだろ』

京太郎『やったじゃないですか、二日ほど』

ベリアル『……たく、つまんねぇな』

京太郎「確かに、つまんないなぁ」

明華「敵を求めてます?」

京太郎「うぇっ、そ、そういうわけじゃないっすよ」


それではまるでベリアルだ

戦闘狂二人では収集がつかない


明華「でも戦わなければ、きっと見つからないんですよね。ホェイちゃんも、メグちゃんも」

京太郎「ま、それはそうですよ」

明華「どうして敵対するんでしょう……」

ベリアル『そんなことどーだって良い、敵がいるからぶっつぶす! それで十分だ!』ハッ

京太郎『……まぁ俺も同感っすけど』


やはり、思考が毒されているかもしれない


京太郎「んー……」


瞬間、基地内に放送がかかる


栞『えーっと、実戦部隊のみなさん集合してくださーい!』

京太郎「ん?」

明華「呼び出しですね」

587: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 23:20:43.51 ID:gSyrksoS0


京太郎は作戦室へとやってくる

その後ろに着いてくる明華


京太郎「え、いいんですか?」

明華「ダメなんですか?」

京太郎「さ、さぁ……」


そう言いながら既に座っている智葉、ネリー、アレクサンドラ、栞を視界にいれる

頷いて座る京太郎と明華の二人

アレクサンドラがキーボードを叩く


京太郎「進展ですか?」

智葉「おそらく」

京太郎「曖昧っすね」

ネリー「私たちもまだ聞いてないから」

京太郎「なるほど」


モニターに表示される画像は前のような古文書


栞「えっと、前みつかった太平風土記の近くから発見されたの」

京太郎「またっすか? 予言のやつ?」

アレク「予言かどうかはまだわかんないけど……っと」


表示されるのは、不思議な絵


京太郎「……これは?」

アレク「古文書……魔頭鬼十郎のね」

京太郎「魔頭、鬼十郎……?」

栞「戦国時代の呪術師だって」

京太郎「呪術っすか?」

ベリアル『いくつか憶えがあるな』

京太郎『まじっすか?』

588: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 23:36:45.93 ID:1lswkanY0


明華「えっと、呪術っていうと……呪い、ですよね?」

栞「色々と暗躍してたみたいなんだけど、見て欲しいのは……」


映っていた魔頭鬼十郎本人の絵から、別の絵へと変わる

天使のような絵、黒い人型の絵、色々な絵が描かれていた


アレク「それにこれ……今回の事件についても触れてる」

ネリー「えっ!? 太平風土記みたいな!?」

アレク「まぁそれに近いんだろう……もっと邪悪なもののように見えるが」

栞「魔頭さんは呪術を使って数々の戦国武将さんたちを暗殺していったみたいなんですけど……」


掌に眼がついたような絵


栞「……最後は、一人の剣士に追いつめられて自害したって」

京太郎「自害ですか」フム

栞「でも魔頭さんは最後に、色々と布石を打ってたらしくて」

智葉「っ……メダルを使ってでも、世界をものにすると?」

アレク「ん、その通りだが……どうして?」

智葉「邪な者の考えそうなことです」

京太郎「……」

栞「そして魔頭さんの真の姿が、これなんだとか」


映るのは―――巨大な眼の化け物


京太郎「これは……」

ベリアル『ガンQ……』

589: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 23:39:41.67 ID:1lswkanY0


     第14話【呪いの微笑】


590: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/02(土) 23:43:12.79 ID:1lswkanY0


◆安価!


1、松実宥

2、高鴨穏乃

3、福路美穂子

4、瑞原はやり

5、東横桃子

6、竹井久

7、辻垣内智葉

8、ネリー・ヴィルサラーゼ

9、雀明華


◇5分間で1↓から~ コンマが一番高い選択肢


592: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/03(日) 00:07:13.19 ID:M4GeDWCM0
9、雀明華



―――【江東区】


壁に背を預けている京太郎

少しばかりの肌寒さ、京太郎はコンビニで買ったホットコーヒーを飲む

その隣にやってくるのは、同じくホットコーヒーを持っている少女


京太郎「ん」

明華「お待たせしました」

京太郎「いえ、別にいまいち……5キロ圏内までは絞れたっぽいですけど」

明華「中途半端な予言ですね」


そう言いながら、両手でコーヒーのカップを持って飲む明華


京太郎「……」

明華「どうしました京太郎くん?」

京太郎「ああ、いえ」

京太郎(数ヶ月前じゃ考えられなかったなこんなの……)


雀士としても中途半端だった自分

まさかこんな事態になって、こんな状況になるなんて想像もしていなかった


明華「それにしても京太郎くんは凄いですね」

京太郎「?」

明華「人々を守るために、見も知らぬ人々を助けるために、戦ってるんですよね」

京太郎「そんな上等なもんじゃないっすよ」フッ

明華「……え?」

京太郎「俺は顔も知らない人らを助けるタイプじゃないんで」


遠くを見る京太郎に、明華は少しばかり首をかしげる


京太郎「顔を知ってる仲間や、知り合いだけですよ助けたいのは……最初ここに来たのはただ和追って来ただけですし」

明華「……でも、今は違う?」

京太郎「智葉さんとかネリーとか監督さんとか、栞さんも……」

明華「優しいんですね」クスッ

京太郎「え?」

明華「それで守る対象になるんですから、優しいんですよ」

京太郎「……そういうもんっすかね」

明華「そうですよ、私はそう思ってます」フフッ

593: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/03(日) 00:19:32.16 ID:Eiv6Vr0m0


気恥ずかしそうに、後頭部を掻く京太郎

笑う明華が歩き出すのでその後ろをついていく


京太郎「にしても、なんでついてきたんですか」

明華「私だって麻雀できますから」フフン

京太郎「麻雀だけだとは限りませんよ? 最近は特に」


麻雀を介する力、それを溜めてメダルから怪獣を生み出す

最近は、こちらが後手に出ているせいか力が十分に溜まっている場合が多い

怪獣の出現が増えてきた……


京太郎「……危ないんっすからね」

明華「ふふっ、私も守ってくれます?」

京太郎「もちろんっすよ」


そう言って笑う京太郎に、明華は嬉しそうに笑みで返す


京太郎(ぐおぉぉ! 俺は俺に優しい巨 のおしとやか系女子に弱い!)

ベリアル『おい』

京太郎『あーベリアルさんご察ししてます!?』

ベリアル『大体わかるようになってきた』

京太郎『さーせん!』

ピピピピ

明華「ん、通信ですか?」

京太郎「あ……栞さんから」

594: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/03(日) 00:33:16.74 ID:aS5+THyG0


腕時計のような端末を開く

そこに映るのは―――


京太郎『    』

ベリアル『オレに聞こえるように言うんじゃねぇ』


栞『あれ、あってる? ああ、京太郎君!』

京太郎「どうもっす」キリッ

明華「?」


しっかりと宇野沢栞の顔が映る


栞『京太郎くんたちの近くに妙なエネルギー反応があって……』

京太郎「妙なエネルギー反応って……」

明華「例の、魔頭鬼十郎関係、でしょうか?」

京太郎「さぁ……魔頭鬼十郎、怪獣メダルを使ってでも蘇って世界征服をしようとする輩、か」

栞『気を付けてね。一応他のみんなにも連絡するから』

京太郎「了解です」

明華「……行きますか?」

京太郎「ええ、とりあえず先に向かってから、近くで待って合流しましょう」

明華「はい!」コクリ


595: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/03(日) 00:57:25.42 ID:aS5+THyG0


反応があったという場所―――から数メートル離れた場所

広い陸橋の上にいる京太郎と明華

目的地、というより反応があった場所を見下ろせる陸橋の上


京太郎「……どう思います?」

明華「え、うーん……特に変な感じはしないと思うんですが」

京太郎「同意です、だから気になるんっすよ」


眼を細める京太郎、その赤い瞳が輝く


明華(むしろ、こちらの方が妙な風を感じる……)

京太郎「……」

明華(いえいえ、京太郎くんになにを考えてるんですかっ)フリフリ


頭を振る明華の方を向く京太郎


京太郎「どうかしました?」

明華「ああいえ……ネリーちゃんたちは?」

京太郎「まだみたいっすけど―――だぁッ!!」

明華「ふぇっ!?」


京太郎が、明華を抱くと大きく跳んで転がる

明華を抱えたまま地面を転がり、起き上がると同時に即座に明華を片手に右手でガッツハイパーを構えた

状況を理解できずに、眼を点にしている明華


京太郎「罠ってわけか!」

明華「え……っ!」


バッとそちらを見る明華の視界の先

ピンク色の髪をなびかす少女……


明華「原村、和……」

京太郎「またお前かよ……」

和「こちらの台詞ですが」


そう言う原村和の体を使うナニカの真上に現れ、浮遊する人影……


京太郎「ッ!」

明華「あれは、あの人は確か……」

京太郎「国広一ッ!!」

596: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/03(日) 01:31:18.72 ID:w4sjys6T0


浮遊する国広一は笑顔を浮かべたまま、右腕を向ける

京太郎が立ち上がると明華を後ろにガッツハイパーを国広一へと向けた

向けられた一の右掌に描かれている目玉の絵


京太郎「っ……」

和「魔頭鬼十郎、頼みます」

一「……銭の思念ごときが私に指示するな」

和「それは失礼、しかし力はかしてもらいますよ……須賀京太郎を潰します」


その言葉と共に、殺気が京太郎を貫く

顔をしかめつつトリガーを引くと、その弾丸は国広一の前で止まる

結界のようななにかに止められて弾丸が落ちる


京太郎「っ!」

一「破ァ!」


放たれる紫色の弾

避ける余裕もなく、京太郎は手を前にクロスさせて受け止める

吹き飛ぶ京太郎が背中から地面にぶつかった


京太郎「ぐっ!」

ベリアル『なんで避けねぇ!』

京太郎『明華さんに当たるコースだった!』

ベリアル『ハッ、立てんだろうな?』

京太郎「もちろんですよっ……こんなところでっ」

明華「京太郎くんっ」


起き上がる京太郎をささえる明華

妙に違和感のある両腕に顔をしかめる京太郎は、まだマシな左腕でガッツハイパーを持つ

視線の先には和と一……いや、その中には根源的破滅招来体と魔頭鬼十郎だ


京太郎「テメェ、らっ……!」

和「……」

一「良い魔力を感じる。それ手に入れて我がガンQは完璧になる!」

京太郎「人を素材みたいに言いやがって……!」

597: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/03(日) 01:46:09.79 ID:w4sjys6T0

さらに、一の手に魔力が集まる

紫色の弾が京太郎へと放たれた


京太郎「ッ!」

明華「京太郎くんっ!」バッ

京太郎「明華ッ!?」


前に出て両手を広げる明華

京太郎が顔をしかめてゼットライザーを取り出そうとしたその瞬間―――


「ハァッ!」


紫色の魔力の弾丸が、目の前で斬り裂かれた

呆気にとられている明華

京太郎は安堵に息を吐く


明華「……さ、智葉ちゃんっ」


ガクリと、膝をついて息をつく明華

京太郎は笑みを浮かべながら立ち上がる

智葉は手に持った刀を納刀して、敵を見据えた


一「……貴様、錦田小十郎景竜!」

智葉「の、刀を持っているだけだ……魔頭鬼十郎!」

京太郎「なんなんっすか一体」ハァ

智葉「魔頭鬼十郎を討つならばおあつらい向きということだ」フッ

京太郎「……そりゃなによりっす」

一「消し去れぇ!」

和「私はこれで、ですね」


黒いゲートに消える和

京太郎が追おうとするが、魔頭鬼十郎こと国広一の上空に現れる影

それは―――


智葉「眼、だと?」


598: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/03(日) 01:54:10.23 ID:w4sjys6T0


離れた場所で、ネリーとアレクサンドラが立っていた

本来目的地である場所、だが離れた陸橋の上……


アレク「なんであそこで起こってんのよ!」

ネリー「わかんないよ!」


二人が陸橋の方に視線を向ける

突如、黒き光


アレク「えーっと、なにあれ?」

ネリー「眼ェ!?」

アレク「眼……魔頭鬼十郎!?」


599: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/03(日) 02:10:10.91 ID:mSL/+yGe0


現れるのは巨大な眼の魔物

国広一に憑りついた魔頭鬼十郎―――ガンQ

現れた不条理の魔物が体を揺らす


ガンQ「―――!」

京太郎「……」


独特の鳴き声をあげるガンQ


京太郎「撤退しますよ!」

智葉「チッ!」

明華「は、はい!」


智葉と明華を逃がす京太郎は、ガンQにガッツハイパーを放つ

放たれた弾丸はガンQをすり抜けていく


ガンQ「―――!」


鳴き声と共に放たれた光弾が、京太郎と智葉、明華の間を寸断する

巻き上がる砂煙、智葉たちの声が聞こえるので無事なのだろうと頷く

スーツの内側からゼットライザーを取り出した


京太郎「ベリアルさん、あいつは……」

ベリアル『魔頭鬼十郎、だったか? おそらくガンQのメダルを触媒に蘇ったんだろうよ』

京太郎「ちょっとわかりませんね」

ベリアル『だろぉな……まぁ良い、やるんだろ?』

京太郎「はい!」


そして、トリガーを引く

真上に開かれたゲートが落ちて京太郎をインナースペースに転送する

600: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/03(日) 02:16:03.13 ID:mSL/+yGe0


インナースペースに、京太郎は立って頷く

右手にカードを持ち左手のゼットライザーへと差し込む


『キョウタロウ・アクセスグランテッド』

京太郎「レイブラッド星人……!」


メダルを弾くと、周囲に闇が広がる

落ちるメダルを右手で取ると、赤い瞳が輝く


京太郎「究極生命体……」


ゼットライザーにメダルを差し込むと、ブレードをスライドさせる


『Alien Rayblood』

京太郎「ベリアルゥッ!」


トリガーを引き、叫ぶ


601: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/03(日) 02:21:04.89 ID:mSL/+yGe0


漆黒の光と共に現れる巨人

闇の巨人―――ベリアル


ベリアル「……!」

ガンQ「!!!」


巨大なその背中を見る智葉と明華の二人

駆けていく明華の後ろを追う智葉の足が、止まる


智葉「……京太郎」


つぶやいてから、明華を追って行く

体を震わすガンQの正面、ベリアルが構えをとった


魔頭鬼十郎「闇の巨人……よいではないか、私と共に」

京太郎『寝言は寝て良いなァ!』

ベリアル『気に入らねぇ……テメェは殺す!』

魔頭鬼十郎「ならば、死ねェ!」


ガンQが魔弾を放った

607: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/03(日) 22:56:28.63 ID:6pdBsuWp0


ガンQから放たれた魔弾を、爪で斬り裂くベリアル

肩を回し、首を鳴らしながらガンQへと歩いていく


京太郎『ベリアルさん、こいつ知ってるんですよね?』

ベリアル『ガンQってもひとくくりにできねぇよ。魔頭鬼十郎のガンQはそれこそ不条理の怪獣だとか聞いたことある』


さらにガンQが放つ魔弾を、弾き、斬り裂く


京太郎『不条理ってどういう?』

ベリアル『かつての下僕のその下僕にガンQがいたがな……おそらくこいつとはまた違う』

京太郎『なら、こいつはまた別の怪獣ってことで良いっすか!』

ベリアル『ああ、問題ねぇ……いくぞ!』


歩いていたベリアルが、強く踏み込み―――跳ぶ

一気に距離をつめるようにガンQへと跳ぶベリアルは、そのままクローを振るう


京太郎『もらったァ!』

ベリアル「ジャアァッ!」


振るわれたクローが斬撃を放つ―――だが


ベリアル「!?」


智葉「バカな!」

明華「すり抜けた!?」


ベリアルの斬撃も体もすり抜けて、ガンQの背後に着地する

振り返るベリアルに対してガンQも振り返った

そしてガンQの全身についた眼が輝くと、ベリアルは見えない攻撃を受けて吹き飛ぶ


ベリアル「ガアァッ!」


ビルを破壊して倒れるベリアル


京太郎『なんっ、だと……!』

ベリアル『これが、魔頭鬼十郎のガンQかっ!』

608: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/03(日) 23:06:17.70 ID:6pdBsuWp0


立ち上がったベリアルに、ガンQが魔弾を放つ

バリアを張るベリアルがその魔弾を弾き返す


京太郎『テメェの攻撃ならどうだッ!』


弾き返された魔弾は―――再びガンQをすり抜けた


ベリアル『チッ、これでもダメか!』


ガンQがさらに魔弾を乱射する

数発を弾くも、全てを弾けず直撃を受けて怯む


ベリアル「グァッ!」

京太郎『こ、いつっ……!』


倒れたベリアル、京太郎は顔をしかめる

さらに、ガンQの全身の眼が輝く


京太郎『ウアァッ!!』


その一方的な攻撃、ダメージに胸のカラータイマーが点滅を始めた

609: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/03(日) 23:25:55.57 ID:J0DMloBD0


そこから離れた場所で、智葉が歯ぎしりをする

蘇った魔頭鬼十郎とガンQ

激しい攻撃でベリアルを追いつめている


ネリー「一方的じゃん!」

アレク「京太郎は!」

明華「わ、わかりません……爆発に巻き込まれてっ」


涙目の明華の肩を掴んで、頭を振る智葉


智葉「あいつは大丈夫だ……」フッ

明華「ほんとですかぁ?」ウルウル

智葉「……たぶん」

明華「ふぇっ」

智葉(私も、私も力になれれば……!)


刀を握りしめる


??(ほう、物の怪か……)

智葉「え、なにか……いや、男の声」

ネリー「へ、どしたの?」

智葉「え、あ、いや……」

??(あの大きさになると拙者の手にはおえんな)

智葉「っ……!」ダッ

ネリー「へ、智葉!?」


走る智葉はアレクサンドラたちから離れる

頭の中に声が聞こえていた


??(あちらの人の形をした巨人も十分に邪な気配を感じるが……)

智葉「あっちは、私の友達だ……!」

??(ほう女子、あの巨大な魔頭鬼十郎をどうするつもりだ? 宿儺鬼しかり、拙者はあの寸法では)

智葉「魔頭鬼十郎さえ、ダメージさえ追わせられればいいんだ……錦田小十郎景竜!」

錦田小十郎景竜(そういうことであれば拙者に一案)

610: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/03(日) 23:39:00.14 ID:J0DMloBD0


ベリアルが、バリアを使って魔弾を凌ぐ

バリアを解くと、ガンQの眼が輝く


京太郎『こっちなら!』

ベリアル『もう少しだ!』

京太郎『おっす!』


力強く、地を蹴り横に跳ぶ

元いた場所に爆発が起きるが、ベリアルはダメージを受けずに回避した

だが、着地したベリアルが放つ光弾はガンQをすり抜ける


京太郎『このままじゃぁっ!』

ベリアル『焦んじゃねえよ、あっちも決め手に欠けてやがる』

京太郎『でも……!』

魔頭鬼十郎「ええい、小賢しい……!」


ガンQが体を震わせてさらなる魔弾を放とうとする

その瞬間―――


智葉「魔頭鬼十郎ぉ!」

京太郎『智葉っ!?』


叫ぶ辻垣内智葉の方を、ガンQが向く

その中の魔頭鬼十郎もだ


魔頭鬼十郎「錦田小十郎景竜の血統の者めぇ……忌々しい!」

智葉「やらせるか……京太郎をぉ!」


刀を抜いて、右手で逆手に持つ

ガンQが瞳に魔力を溜めているが、智葉は即座に刀を―――投擲した


魔頭鬼十郎「ん!?」

611: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/03(日) 23:48:03.14 ID:J0DMloBD0


なにかの力が宿っているかのように、真っ直ぐに飛ぶ刀

それは真っ直ぐに、ガンQに―――突き刺さる


魔頭鬼十郎「ぬおぉ!!?」


今までダメージが一切通らなかったガンQが、苦しむ

刀が刺さった部分から紫色の液体を撒き散らす


ガンQ「!!?」

京太郎『あれは……!』

ベリアル『いくぞ小僧ォ!』

京太郎『はい!』


ガンQへと接近したベリアルが、腕を振るう

放たれる斬撃は、ガンQを怯ませる


京太郎『当たる!』


さらに爪撃、蹴り


魔頭鬼十郎「ぬおぉ!? おのれ再びぃ!」

京太郎『いきますよォ!』

ベリアル「シャアッ!」


次々と放たれる攻撃にガンQの巨大な目玉はへこみ、体中から液体を撒き散らしていく

612: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/04(月) 00:03:16.06 ID:BEAUJ56J0


バックステップでガンQから距離を取る


魔頭鬼十郎「貴様ァ!」


ガンQが鳴き声を上げながら揺れる

魔力を集めているようだが、もう遅い

ベリアルの右手に赤い稲妻


ベリアル・京太郎『デスシウム光線!』


放たれる必殺光線


魔頭鬼十郎「いずれ! 私はいずれぇ!」

ベリアル『いずれなんて来ねぇよ!』

京太郎『消え去れェ!』


デスシウム光線を受けたガンQが、爆散する

破片が周囲へと撒き散らされるも、すぐに塵と消えていく

右手を振るい首を鳴らすベリアルが、視線を智葉の方へと向ける


智葉「……!」ニッ

ベリアル「……」


何も言わずになにもせず、ベリアルは視線を上空へと向けると空へと去って行く

613: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/04(月) 00:20:19.43 ID:d7G4HbFy0


立っている智葉

そこにやってくるのはネリー、明華、アレクサンドラの三人

笑みを浮かべて頷く智葉


智葉「……終わった」フッ

ネリー「まだでしょ」

明華「ええ、魔頭鬼十郎を倒してもまだ……私たちは」


その通り、この事件の根本は魔頭鬼十郎ではない

頷いた智葉が思い出すのは、原村和とテンペラー星人


アレク「ところで、京太郎は?」

智葉「京太郎なら……」

「おーい!」

智葉「帰ってきた……」

明華「京太郎くんっ……」


歩いてくる京太郎

その手に刀を持って、近づいてくる

スーツ姿、サングラス―――からの刀


アレク「ジャパニーズヤクザ」

ネリー「智葉の家の人?」

智葉「!!?」


明華「……おかえりなさい」ホッ

ネリー「明華の家の人だったらしいよ」

明華「ふぇっ!?」カァッ

ネリー「いや、そういうことじゃないから」