―――【特異課東京基地:休憩所】


座ってコーヒーを飲んでいる京太郎

なんだか妙な日だった

智葉には助けられたものの、京太郎の手にメダルはない


京太郎「テンペラー星人か和に回収されたか……?」

ベリアル『だろうな、ガンQメダルは喉から手が出るほどほしいだろ』

京太郎「……そうなんっすか?」

ベリアル『まぁな』


静かに、京太郎は息をつく

すると突如、通信が入った

手首の端末を開くとそこにはトシ


京太郎「いつの間にどっか行ったんですか」

トシ『こっちは色々忙しいの……いや“こっちも”か』

京太郎「……お互いさまです」


苦笑する京太郎


トシ『フッ、それと……新しい情報だ』

京太郎「なんの?」

トシ『……原村和じゃない』

京太郎「そっすかぁ」

トシ『宮永咲の』

京太郎「!」

615: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/04(月) 00:50:00.38 ID:d7G4HbFy0


―――【特異課東京基地:屋上】


難しい顔をしつつ屋上への扉を開ける京太郎

目の前には―――


京太郎「……誰だ」

ベリアル『あぁ? 嫌な感じだな』

京太郎「……」


―――須賀京太郎が、いた


京太郎「ハッ、なんだよその顔」


二人の須賀京太郎が向きあっている

京太郎は即座にガッツハイパーを抜くが、相手こと京太郎は何をするでもなく笑っていた

迷いなくトリガーを引く


京太郎?「おっと危ねぇ」


軽く体をかたむけて回避する京太郎(?)


京太郎?「ちょっと顔見せにきただけだよ」

京太郎「なに?」

京太郎?「じゃあな、俺はあいつの方に行く―――咲の方にな」

京太郎「お前は一体なんだ!」

京太郎?「わかってるんだろ?」


笑みを浮かべる京太郎(?)


京太郎「俺はお前だよ須賀京太郎!」


616: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/04(月) 01:04:44.33 ID:jdjI7KP10


―――翌朝【特異課東京基地:作戦室】


京太郎「それじゃ出ます」

アレク「え、なんでまた?」

京太郎「ちょっと次の目的地が決定したんで」


そう言うと財布とケータイをポケットにあるのを確認する

頷いた京太郎が、アレクサンドラの方を見て笑う


アレク「……また戻ってくるの?」

京太郎「まぁ別れの挨拶も済まさず行くつもりですからね」

アレク「……そうか、みんなには話しとくよ」

京太郎「お願いします」フッ

アレク「なにかあったの?」


サングラスをかけた京太郎は、静かに息をつく

その奥の瞳は僅かに歪む


京太郎「……いえ、俺の問題ですから」

アレク「……京太郎」

京太郎「?」

アレク「お前の問題はきっと、私たちの問題でもあるからね」

京太郎「……うっす」ニッ

アレク「行ってらっしゃい」


617: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/04(月) 01:16:54.91 ID:jdjI7KP10


基地を出る正面玄関から出る京太郎

朝日が照らす道、しかし京太郎の視界は暗い

きっとサングラスだけのせいではない


京太郎「ん……風?」


揺れる日傘、隣に立つ少女


京太郎「明華さん……」

明華「行ってしまうんですか、挨拶もなしで」ムゥ

京太郎「すいません、名残惜しくなるんで」

明華「それは嬉しいことを聞きました」フフッ


そんな少女の笑みに、京太郎は顔をしかめる

涼しく心地の良い10月の空気、風は京太郎の背を押す


明華「しっかり帰ってきてくださいね」

京太郎「……はい」フッ

明華「それでは……行ってらっしゃい」フフッ

京太郎「行ってきます」ニッ


618: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/04(月) 01:19:47.04 ID:jdjI7KP10


     第14話【呪いの微笑】 END


619: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/04(月) 01:24:18.68 ID:jdjI7KP10


◆どこへ向かう!


1、奈良(阿知賀・晩成)
×、東京(臨海)
3、大阪(千里山→姫松)
4、大阪(姫松→千里山)
5、岩手(宮守)
6、東京(アナ・プロ)
7、東京(白糸台)
8、北海道(有珠山)
9、長野(鶴賀・風越)





622: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/04(月) 02:00:42.06 ID:jdjI7KP10
3、大阪(千里山→姫松)


―――次回予告


京太郎:なぜに銭湯?

竜華:水きったな!

京太郎:くっさぁぁぁ!?

セーラ:なんじゃこりゃぁぁぁっ!!

京太郎:あれも魔王獣っすか!?

セーラ:上流からおいださんかい!

洋榎:出番か!

京太郎:愛宕の    ない方!


次回【水ノ魔王獣】


京太郎:お借りしても?

洋榎:むしろお借りしたいんやけど


628: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/04(月) 22:52:13.13 ID:QDIuUM3o0


―――【大阪駅】


新幹線に乗って、東京から大阪までやってきた

ザッ、と音を立てて駅を出てあたりを見回す京太郎

スーツ、サングラス、そしてトランク一つ


京太郎「……」


職質されないという奇跡


京太郎「ん」

ピピピピ

京太郎「はい須賀です」

???『おーお前が須賀京太郎か、車見えるやろ』

京太郎「ん?」


窓が開いている車がある

そこから手を振っている―――短髪の少女

新幹線車内での情報通りだと、そちらに近寄る


京太郎「どうも、お迎えありがとうございます」

???「ん、別にええけどな……結構成果あげてるって聞いとるし」

京太郎「尾ひれとかついてなきゃいいですけど」


苦笑しつつ、助手席に座る


京太郎「にしてもよくわかりましたね?」

???「自分、めっちゃ目立っとったで」

京太郎「マジっすか?」

???「大マジ……あ、そういやオレはセーラ、江口セーラや」ニッ

京太郎「よろしくです。須賀京太郎です」フッ

629: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/04(月) 23:06:10.79 ID:QDIuUM3o0


江口セーラの運転する車が新大阪の特異課基地のガレージへと入った

大したことはないただの会話をしていた

ほとんどあの夏と阿知賀の話だ


セーラ「ふぅ……さってと」

京太郎「ここが……」


奈良とはまた違った空気に、京太郎は気を引き締める


セーラ「さて、とりあえず行こか……作戦室」

京太郎「なにかあったんですか?」

セーラ「お前がきた」


指を向けてそういうセーラに、京太郎は小首をかしげた

歩いていくセーラについて歩く


京太郎「俺がきたってだけで?」

セーラ「一番功績上げてる奴やからな、いった場所じゃ必ず成果上げてくるやろ」

京太郎「……偶然ですよ。みんなやウルトラマンのおかげってだけで」

セーラ「その偶然を呼ぶのが勝利につながるんやろ? 麻雀にしろなんにしろ」

京太郎「そういうもんですかね」

セーラ「そういうもんや」

京太郎『ベリアルさん、この基地またなんかあったりします?』

ベリアル『あぁ? いやわかんねぇな……カネゴンみたいなのはいなさそうだ』

京太郎『了解っす』


630: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/04(月) 23:21:46.28 ID:QDIuUM3o0


―――【特異課大阪基地:作戦室】


扉の向こうには、作戦室があった

長野や東京と変わらぬ部屋

座っているのは二人


セーラ「ただいまー」

京太郎「お邪魔します」ペコリ


一人は知っている


京太郎「清水谷竜華さん?」

竜華「お、知ってるんや」エヘヘ

セーラ「さすがうちのエースやな」ニッ

京太郎(    です。    だからです!)


須賀京太郎は    が好きという感情をコントロールできない


??「私のことは、さすがに知らんか」フッ

京太郎「え、あ、すみません」ペコリ

??「まぁええねんけど……愛宕雅枝や」

京太郎「あ、たご……ああ、愛宕って姫松の!」

雅枝「そういうこと」

京太郎「よろしくお願いします」ペコ

雅枝「そんじゃ現状についてお話ししよか」

631: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/04(月) 23:41:07.67 ID:IEhXR2Vl0


現状、大阪の雀士で行方不明なのは未だ数十人を超えるとのことだ

最近では各地での雀士行方不明事件も徐々に明るみに出てしまっているらしい

怪獣事件とのつながりが判明される日もそう遠くはないだろう


京太郎「それで……夏のインターハイに出た雀士は」

雅枝「行方不明なのは船久保浩子、二条泉、園城寺怜」

竜華「……」

セーラ「上重漫、真瀬由子、末原恭子、愛宕絹恵……」


そうそうたるメンバーだ

夏で清澄と戦った姫松高校も五人中四名が行方不明

あげく……


ベリアル『同じ姓だな』

京太郎『……愛宕雅枝さんは愛宕絹恵さんのお母さんです』

ベリアル『親、なぁ……』

京太郎『……?』


京太郎「手がかりとかは?」

セーラ「それが見つかってたら苦労せぇへんねんけども……」


632: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/04(月) 23:52:22.97 ID:IEhXR2Vl0


京太郎「なるほど、ねぇ……」

雅枝「それで、須賀君はどう思う?」

京太郎「え、なんで俺なんっすか?」


その言葉に、逆に雅枝が首をかしげた


雅枝「そりゃ一番成果をあげてる人やからなぁ……噂はかねがね」

京太郎「えーってもなぁ」

セーラ「今までの共通点とか?」

京太郎「情報がないとどうにも……」


ウィーン


??「情報あるで!」

セーラ「情報でかした!」

京太郎(愛宕の    ない方!)

愛宕の    ない方「愛宕の    ない方って思ったやろ!」

京太郎「めめめめめっそうもございません!」

雅枝「洋榎ぇ、ちったぁ大人しくしい!」

洋榎「そんなおかん!」

雅枝「須賀君、そんなこと思ってへんよな?」タユン

京太郎「はい」

京太郎『    』

ベリアル『黙れ』

633: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/05(火) 00:06:00.41 ID:vmvMWTnk0


少し状況が落ち着いたのか、雅枝が咳払い


雅枝「で、情報って?」

京太郎「ん、お聞きしたい」コクリ

洋榎「そやそや! あ、そういやうちが愛宕洋榎な!」

京太郎「ご丁寧に、須賀京太郎です」フッ


なるだけクールに、紳士的に笑みを浮かべる


洋榎「おー、まぁ久に聞いたことあるけど」

京太郎「うちの部長から? なんか変なこときいてないっすか?」

洋榎「●が好きなんやろ」

京太郎「うぉい!」

竜華「えー」ジト

京太郎「部長のお茶目! 部長の!」


必死の言い訳、洋榎が両手で自らの体を抱く


洋榎「いやや! うちの体が目的なんやな!」

京太郎「ハァ?」

竜華「ちょっとなに言うてるかわからんな」

セーラ「地獄に落ちろ」

洋榎「うぉい! 冷たぁ!」


雅枝「ええから早く喋らんかぁい!」


634: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/05(火) 00:16:19.74 ID:vmvMWTnk0


洋榎「それで、や……」


深刻そうな顔をして座っている洋榎の頭部にはたんこぶ

少し涙目だった

そしてご立腹の雅枝


京太郎「……」

洋榎「泉を見つけた……らしい」

セーラ「なんやて!?」

竜華「っ! ら、らしいって?」

洋榎「いやぁ写真とかは撮れなかったらしいからしゃあないねんけど……うちの後輩から情報入ってなぁ」

京太郎「なるほどぉ」


ふむ、と頷く

さっそく情報がまいこんできてくれたおかげで役立たずの汚名は被らずに済みそうだ

戦いは避けられないだろう。麻雀にしろなんにしろだ


雅枝「で、どこで発見したんや?」

洋榎「……銭湯!」

セーラ「銭湯!?」

竜華「銭湯!」

雅枝「銭湯!!」

京太郎「……なぜに銭湯?」


洋榎「銭湯に行くでぇ!」


636: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/05(火) 00:23:58.58 ID:vmvMWTnk0


     第15話【水ノ魔王獣】


637: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/05(火) 00:39:29.23 ID:vmvMWTnk0


―――【銭湯:男湯】


その後、当然のように銭湯に来ていた

両腕を縁に乗せて湯船に入っている京太郎

頭の上にタオルを乗せたまま、天井を見つめる


京太郎「二条泉が見つかったのはともかく……俺、来る必要あった?」


二条泉が見つかった銭湯がここなのは間違いない

だが、間違いなく男湯ではないはずだ


京太郎「俺、必要かなぁ……」

洋榎「おーいガースー聞こえるかー!」

京太郎「……」


周囲に客はいない

それもそうだ、まだ夕方にもなっていない

息を吸うと、京太郎は洋榎に応える


京太郎「なんっすかー!」

洋榎「おー聞こえた」

セーラ「そっちはどうやー?」

京太郎「いたらもっと騒いでますー」

竜華「そらそうやねー」


京太郎(この向こうに清水谷さんが……)

京太郎「くっ、俺としたことが邪念を!」

ベリアル『いつも通りだろが』


638: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/05(火) 00:53:57.70 ID:vmvMWTnk0


それから数十分

京太郎は―――茹蛸だった


京太郎「……しぬ」

ベリアル『そろそろ出ろ』

洋榎「すが~ど~や~うちはまだ入っとるでぇー」

京太郎「……え~」

竜華「うちは入ってへんけど……ていうかずっと入ってる意味ある?」


京太郎「確かに!」ザパーン

洋榎「天才やな竜華!」

セーラ「アホか!」


639: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/05(火) 01:08:52.37 ID:IRUcANZg0


脱衣所の椅子に座っている京太郎

扇風機を前にしながら、うちわで自らをあおぐ

したたる汗、空いてる片手でコーヒー牛乳を飲む


京太郎「だぁ~!」

ベリアル『何やってんだお前は』

京太郎「すいませんつい」


しかしこういうのも久々な感じがした

松実館での温泉を思い出す


京太郎「ふぃ~」


徐々に人が増えてきている


京太郎「……出るか」

ベリアル『まぁ興味深いもんでもあったな』

京太郎『そうなんっすか?』

ベリアル『ジャグラスジャグラーは気にいってたらしいぞ』

京太郎『トゲトゲ星人が、ですか』

640: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/05(火) 01:17:13.44 ID:IRUcANZg0


肩にタオルをかけたまま出てくる京太郎

緩められたネクタイ、Yシャツのボタンも上から二つは外している

外に出ると、既に雅枝が立っていた


京太郎「ただいまっす」

雅枝「色っぽ」

京太郎「はじめて言われた」

雅枝「マジか」

京太郎「ところでそちらは、なにか手がかりとか?」

雅枝「あるわけなかった」

京太郎「……ただ銭湯に入っただけでは」

雅枝「勘が良いな、そういうことや」

京太郎「……」

竜華「監督、洋榎が」


やってきた竜華、その後ろにセーラに肩をかされた洋榎


洋榎「……う、うちの勝ちや」

雅枝「捨て置け」

セーラ「ラジャー」パッ

洋榎「ぐへっ! この人でなしども!」

京太郎「……」

竜華「なんとも言えん顔しとるね」

京太郎「なんとも言えないので」

雅枝「違いない」

644: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/05(火) 01:43:52.27 ID:4a3LwELw0
1、清水谷竜華


―――夜【特異課大阪基地:休憩所】


晩御飯、コンビニ弁当を食べる京太郎

キッチンなんかもあるらしいが、面倒という立派な理由がある


京太郎「……ん、清水谷さん」

竜華「ん、須賀君、ここええ?」

京太郎「どーぞ」モグモグ


正面に座る竜華、晩御飯はおそらく自分で作ったのだろう料理


京太郎「にしても意外っすね。地元こっちの方でしょう?」

竜華「うん、だけど……家じゃ気ぃ抜けるからなぁ」

京太郎「気を張るためにわざわざここに」

竜華「ん、親友……怜がいつ見つかるかもわからへんから」


その言葉に、京太郎は笑みを浮かべる

ここにもいたのだと安心感すら覚えたためだ


京太郎「みんな、なくしたものを取り戻すために、ですね」

竜華「せやね……須賀君も?」

京太郎「はい、仲間を」


そもそも、ここに来たのも咲と自分の姿をしたなにかがいると聞いたからいる


竜華「そっか、清澄の……」

京太郎「まだ、部長しか見つかってないから」

竜華「そか、お互い頑張らんとやね」フッ

京太郎「はい」フッ

竜華「……下の、名前で呼んでええ?」

京太郎「あ、はい。じゃあこっちも」

竜華「ん、それじゃよろしくな! 京太郎君!」

京太郎「はい、竜華さん」ニッ

645: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/05(火) 02:08:28.66 ID:4a3LwELw0


それから食事を終えてコーヒーを飲む京太郎

テレビの方を見ているがティガもガイアも戦っている姿が映っていた

ベリアルは―――


竜華「ベリアルの映像っていつも少なない?」

京太郎「目つき悪いから」

ベリアル『ハッ』


苦笑する京太郎


竜華「でもな、情報だと一番色々なとこ行って敵倒してるのはベリアルなんよ?」

京太郎「……そう、ですか」


ベリアル『嬉しそうにしてんじゃねぇよ』

京太郎『嬉しくないっすか?』

ベリアル『オレが暴れれる場所で暴れてるだけだ、そこで他人からどう思われようと関係ねぇよ』

京太郎『……そういうとこ、ほんと好きっす』

ベリアル『どうしたお前』

京太郎『いや、素直に気持ちを』

ベリアル『気持ちわりぃ』

京太郎『ひどい』


ニュースを見ると、ウルトラマンの特集をやるようだった


京太郎「園城寺さん、見つかるといいっすね」

竜華「うん、そしたら京太郎君にも紹介したいな」

京太郎「……是非」フッ


646: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/05(火) 02:19:03.80 ID:4a3LwELw0

―――翌朝【銭湯】


ガラッ


今日も今日とてやってきた京太郎たち

脱衣所で服を脱ぎ腰にタオルを巻いて扉を開いた、その瞬間―――


竜華「水きったな!」

京太郎「くっさぁぁぁ!? 」

セーラ「なんじゃこりゃぁぁぁっ!!」


番頭のおばあちゃんはおっとりと前を向いている

女湯の方からも響いてくる声


洋榎「ゲロはく! ゲロ!」

雅枝「ゲロゲロ言うんやない!」

竜華「京太郎くん大丈夫かぁ!?」

京太郎「くさぁぁぁい!」


銭湯の見ずというかお湯がおかしい

その異臭に思わず口を押える


京太郎「なんなんだよぉ……」

ベリアル『こいつぁ……』

647: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/05(火) 02:26:30.35 ID:4a3LwELw0


銭湯の前で立っている四人

異臭騒ぎは銭湯だけでないようだ


「くっさぁ!」

「くさぁい!」

「くさすぎる!」


四人とも鼻をつまんだまま会話をはじめる


京太郎「……これは?」

雅枝「……水源やな」

竜華「水源ですね」

セーラ「いくで水源」

京太郎「洋榎さんは?」

雅枝「なんか水が目に入ったらしくて悶えてた」

京太郎「御愁傷さんです」

雅枝「とりあえず行くで」

京太郎「うっす……水源ってことは、琵琶湖?」

雅枝「いや、もっと手前らしい」

京太郎「なるほど、早くいきましょう……まじやべぇんで」

セーラ「かつてない危機や」


654: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/06(水) 23:03:58.42 ID:UA2WhUax0


雅枝の運転する車に揺られる助手席の京太郎

そして後部座席には竜華、セーラ、洋榎の三人

窓を開けて涼しい風を浴びる


京太郎「……はぁ」

雅枝「憂鬱そうやな」

京太郎「いやまぁ、なんていうか……」


顔をしかめつつ、言い淀む


雅枝「?」

竜華「どないしたん?」

京太郎「言って良いのかなんなのか」

セーラ「ん?」

京太郎「臭いません?」

洋榎「うちの目がか!」

京太郎「ちげぇから!」

洋榎「ならな……うっ!」


瞬間、風が異臭を運んでくる

瞬時に窓をしめる面々


京太郎「あぶねぇ……」

雅枝「近いな!」


655: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/06(水) 23:17:40.29 ID:UA2WhUax0


森の中……鼻をつまんでそこにいる面々

だがしかし、その強烈な臭いはその程度で防ぐこともできない

車から離れて森の中へとやってきたものの、目の前の川に浸かっている怪獣に苦笑を禁じ得ない


京太郎「最悪だ……」

セーラ「確かに、この悪臭」

京太郎「いや、ていうか……」

ベリアル『マガジャッパか』


そのマガジャッパを見ている面々


雅枝「さっきからずいぶん言い淀むやないか、どないしたん?」

京太郎「どないもなにも……」

洋榎「ん、お前の意見は貴重や言うてみい!」

京太郎「たぶん二条さんなんだよなぁあの怪獣……」

セーラ「おい臭いぞ泉ィ!」

洋榎「泉ィ臭いんちゃうかぁ!」

竜華「なんでそんなこと言ったん」ジト

京太郎「だから言わなかったじゃないっすかぁ!」

雅枝「遊んでへんと解決策探さんかい!」

656: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/06(水) 23:31:11.32 ID:e1yL3ss10


怪獣、マガジャッパを見上げる


京太郎「……どうしますか」

ベリアル『水ノ魔王獣マガジャッパ……まぁやるしかねぇな』

京太郎『あれも魔王獣っすか!?』

ベリアル『ああ、厄介な奴だろうな』

京太郎「戦う、かぁ」


ガッツハイパーを取り出して顔を銃口をマガジャッパへと向ける


雅枝「え、勝てるん?」

京太郎「でもこのままじゃ水が、でしょう……少なからず移動はさせないと」

竜華「せやな、じゃあみんな!」


全員が、ガッツハイパーを取り出した


洋榎「あ、そういやなんやけどこの場合って」

雅枝「あ」


マガジャッパが京太郎たちの方を見る

面々の目とマガジャッパの眼が合う

息を吸うように頭を少し後ろに振るマガジャッパ


京太郎「散開ィ!」


その声と共に“洋榎を除いたメンバー”が散開する

残された洋榎が、遅れて走り出す

だが―――遅い


マガジャッパ「―――!」ブシャァッ

洋榎「ぬにゃあぁぁっ!!!?」


657: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/06(水) 23:45:43.51 ID:e1yL3ss10


放たれた黄色い水

しかし、洋榎は直撃だけは避けたのか、地面に転がっていた

それでも多少、かかってはいるのだが……


洋榎「くっさあぁぁぁっぁぁっ!」

マガジャッパ「!」


立ち上がったマガジャッパが川の中で暴れる


セーラ「なにやってんのや! 上流からおいださんかい!」

洋榎「鬼か!」

京太郎「鬼と言うか魔王というか」

ベリアル『おい、さっさとやるぞ!』

京太郎『よくあんなのとやる気になりますね!』

ベリアル『耐えれねえからさっさと潰すってんだよ!』

京太郎『納得だけども……!』


雅枝が京太郎の腕を掴む


京太郎「!?」

雅枝「とりあえず避難や! 全員ちゃんと逃げえや!」

竜華「りょ、了解です!」

セーラ「ラジャー!」

洋榎「うおぉぉぉ! くさぁぁっ!」


それぞれが逃げていく


658: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/06(水) 23:53:01.63 ID:e1yL3ss10


マガジャッパはとうとう川から出ると、なにを感じたのか街のほうへと歩いていく

京太郎と雅枝の二人は銃撃をしながら走るも、マガジャッパの気を引くにいたらない

それにその異臭に気力がゴリゴリ削られていく


京太郎「このままじゃ……」

ベリアル『さっさと離れて変身しろ!』

京太郎『わ、わかってるんですけど!』


別方向からの銃撃が、マガジャッパの目に直撃する

大きく怯んだマガジャッパが、銃撃のあった方向を向く


京太郎「お?」

雅枝「誰や!」


659: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 00:00:54.36 ID:qqPMbpM60


マガジャッパを怯ませた銃撃

それを撃ったのは―――愛宕洋榎だった


洋榎「よっしゃ! みたかうちの超ファインプレー!」


グッと拳を握りしめて舞い上がる


マガジャッパ「!」

洋榎「あ」


目と目が合う


洋榎「……!」ダッ

マガジャッパ「!」


水を放つわけでもなく、シンプルに走り出す

迫るマガジャッパを前に、洋榎が懐からなにかを取り出した


洋榎「やったらぁ!」


そして“それ”を持った右腕を振り上げる


洋榎「ダイナァッ!」

660: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 00:18:06.25 ID:qqPMbpM60


京太郎「光!!?」

雅枝「きたかっ!」

京太郎「!?」


光と共に、現れるのは巨人

どこかティガを思い出す、光の巨人だった

赤と青と銀、その巨人の名は―――


ベリアル『ダイナ……!』

雅枝「ダイナ!」


◆BGM:われらのダイナ【http://www.youtube.com/watch?v=TTQtHBH5hE8&list=PL69534061E9D0C813&index=2



京太郎『さすがベリアルさん、知ってるんすね! 会ったことが?』

ベリアル『ああ、まぁ良い思いはしてねぇけどな』

京太郎『ですよね』ハハハ


雅枝「知らんかったやろ、ガイアとティガに負けんとおるんやでこっちも!」

京太郎「しかしまぁ……奈良の隣にいるとは」

雅枝「三回目やしガイアやと間違えられてそうやし」

京太郎「ところで俺、いりました?」

雅枝「それとこれとは話が別やろ?」

京太郎(まぁ、そりゃそうか……?)


662: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 00:28:01.41 ID:qqPMbpM60

現れたウルトラマンダイナ

すぐにマガジャッパを相手に両手を構えた

ティガやガイアとはまた違った構え―――


京太郎『行った方がイイっすか?』

ベリアル『さてな、状況見てで良いんじゃねぇか?』

京太郎『……まぁやりたくなさそうでしたもんね』


雅枝「逃げるで!」

京太郎「え、あ……はい!」ダッ


ダイナ「デヤァッ!」

マガジャッパ「!!?」


ダイナが接近して拳をぶつける

ひるむマガジャッパにさらに追撃をかけようと―――するも


ダイナ「グアッ!」


その臭さに、怯む


マガジャッパ「!」


放たれる黄色い高圧水流

それを受けて、ダイナは吹き飛んで背中から地面に倒れる

さらにその悪臭からもだえていた


京太郎『大丈夫っすか?』

ベリアル『ああいうもんだ』

京太郎『えー……援護、いかなくて』

ベリアル『さてな』

京太郎『……行きたくないんっすね』

ベリアル『たりめぇだろ』

京太郎『ですよねぇ……』


664: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 00:43:57.31 ID:+Vpifffr0

顔を押さえながら起き上がるダイナに、マガジャッパは蹴りを打ち込む

それを受けたダイナが後ろに吹き飛ぶとさらに水流を放った


ダイナ「グアァッ!」


京太郎『やられてますよ!』

ベリアル『あっちみたくベテランじゃねぇからに……しょうがねぇ、さっさと潰すぞ!』

京太郎「雅枝さん、あっちに!」

雅枝「車あるな!」

京太郎「あっちでしたっけ!?」

雅枝「え、車の方ってこと言いたかったんやろ?」

京太郎「えーあーはい」メソラシ

ベリアル『テメェ……』

京太郎『い、良いタイミングで失踪します!』


とは言え、間に合わなくなってからでは遅いのだ

マガジャッパに射撃をすると、次いで他の二方向からも射撃があった


京太郎「……二つ? もう一人は?」


ダイナ「テヤァッ!」


起き上がったダイナがティガのように腕を振るうと、その体の色が赤く変わった

同時に体にかかっていた水が消えたのか、問題無さそうに立つ

このパターンを京太郎は知っている


京太郎「あれは、パワータイプか?」

雅枝「おー、さすがティガを見てきただけあるなぁ、赤は初めてみたけど」

京太郎「それじゃあ紫が?」

雅枝「青やな、超能力戦士や」

京太郎「へぇー」

ベリアル『呑気に話してる場合か』

京太郎「そうだった!」ダッ

雅枝「そうやった!」

665: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 01:00:58.20 ID:+Vpifffr0


赤いダイナが拳を打ち込んでマガジャッパを倒す

反撃しようと水を放つも、ダイナはバリアを張ってそれを凌ぐ

通常のフォームであれば押し負けていたことだろう


ダイナ「ハァッ!」


水流が止むとすぐに走って蹴りを打ち込む

さらに吹き飛んだマガジャッパだが、今度はすぐに起き上がる


マガジャッパ「!」

ダイナ「!」


接近したダイナが拳を打ち込んだその瞬間、マガジャッパはその一撃に耐えつつ両手でダイナの腕を掴む

振り払おうと両腕を振るうダイナだが……


ダイナ「!」

マガジャッパ「!」


その両腕についた吸盤により振り払うことができない

近距離での異臭に悶えるダイナの、カラータイマーが点滅をはじめる


京太郎『くさくて?』

ベリアル『臭くてだな』

666: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 01:15:02.53 ID:+Vpifffr0


ダイナに、マガジャッパがさらに水流を放つ

その水圧を受けるダイナだが、吸盤の力で吹き飛ぶこともない


ダイナ「グアアァッ!」


悶えているダイナに水流を続けるマガジャッパに―――銃撃


マガジャッパ「!!?」


その一撃がマガジャッパの水流を放つ鼻を撃つ

損傷はしないものの、ダメージは大きいのか悶えてダイナを放す

倒れるダイナ、マガジャッパは銃撃のあった方向へ体を向ける。そこには―――


竜華「ッ!」


マガジャッパが頭を少し後ろにすぐに水流を放つ


竜華「まずっ!」


背後には崖、その下には川……


竜華「怜っ!」


飛び込もうとするも、その余裕すらなく水流を受けるかと思われたその瞬間……

竜華の胸の中心に青い光、それと共にその瞳すらも青く輝く

放たれた水流は、竜華の目の前で―――水に弾かれた


竜華「……」


背後の川から、水が逆巻き水流を弾いている

667: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 01:32:52.73 ID:X+dWHAog0


マガジャッパ「!!?」


驚愕するマガジャッパを前に、竜華は眉一つ動かさずそこにいた

逆巻き、舞い上がる水が形を作る

巨大な水の化身―――


京太郎「あれは!?」

ベリアル『確か、ミズノエノリュウ……か?』

京太郎『あれも知ってるんですか?』

ベリアル『ハンッ、当然だ』

京太郎『にしても、なんで?』


雅枝「水の龍……」


その八本の頭を持つ龍、ミズノエノリュウが咆哮を上げて水の弾丸を放つ

それを受けたマガジャッパが大きくひるんで倒れた

立ち上がったダイナが腕を振るい最初のフォーム『フラッシュタイプ』に変身する


ミズノエノリュウ「―――」


静かに、ミズノエノリュウが消える

それと共に、竜華もゆっくりと地面に倒れた


ダイナ「デァ!」

◆BGM:ウルトラマンダイナ【http://www.youtube.com/watch?v=hwxlUyBzWVE



668: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 01:54:33.33 ID:X+dWHAog0


起き上がったマガジャッパにダイナが斬撃を放つ

放たれたそれがマガジャッパの鼻部を斬り裂いた


マガジャッパ「!」

ダイナ「……デヤァッ!」


そして腕を十字にして―――ソルジェント光線が放たれる


マガジャッパ「!!?」


直撃を受けたマガジャッパが、一端止まるも―――爆散


ダイナ「……」コクリ


輝きと共に、地に落ちるのは二条泉

それを見届けたダイナは両手を上げて空へと去って行った

669: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 02:01:38.09 ID:X+dWHAog0


二条泉の元へと、現れる人影


雅枝「泉ぃ!」


駆け寄って、泉を抱き上げる雅枝

周囲の臭いはマガジャッパを倒した影響か徐々に薄れてきている


京太郎「……ウルトラマン、ダイナね」

ベリアル『本人じゃねぇのは間違いねぇな……メダルの力か?』

京太郎『……ま、やれることをやるだけっすよ』


そう言うと、ふと視界のはしに見知った影を見た

即座に、京太郎はそちらへと走り出す


雅枝「え、須賀!」

京太郎「すみません!」


走り去る京太郎、荒れた足場を跳ぶ


ベリアル『お前の知り合いの女か?』

京太郎『はい……!』

ベリアル『……この気配、右だ!』

京太郎『ざっす!』


即座に地を脚で蹴って方向転換と共にそちらへと走った

木々の間、少し開けたその場所に―――立つ


京太郎「咲っ!!」


視線の先、その少女―――宮永咲はいた


咲「……」


670: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 02:15:03.41 ID:Bp54EomZ0


目の前に立つ少女、宮永咲と見合う京太郎

その瞳は真っ暗な闇を彷彿とさせ、その禍々しい気配に京太郎の額に嫌な汗が流れる

ガッツハイパーを即座に抜く


京太郎「貴様誰だ!」

「無礼者が!」


瞬間、光弾がどこからか飛んできて京太郎の手のガッツハイパーを弾く

驚愕しながらそちらを見る京太郎


ベリアル『メフィラス星人か!』

京太郎「メフィラス星人!?」

咲「……ふぅん、やっぱりベリアル」

京太郎「ッ!」


地を蹴ってメフィラス星人から距離を取る

即座にゼットライザーを取り出すも、席が手を前に出す


咲「……ここで消える?」

京太郎「……なに?」

メフィラス「我が皇帝の邪魔をするな!」

ベリアル『まさかアイツは!』

京太郎「ッ!」


さらに放たれた光弾を回避、咲の方を見るが闇の中に消えていく


京太郎「咲ィ!」

メフィラス「消えろ!」

京太郎「ッ!?」

洋榎「やらせるかアホ!」


そう言って銃撃をしたのは洋榎

その一撃を受けたメフィラス星人


メフィラス星人「……さすがに二体が相手では分が悪いな」


そう言うと、メフィラス星人も闇の中に消えた

残された京太郎が隣の木に拳を叩きつける


京太郎「くそっ!」


671: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 02:27:39.22 ID:2HWRIyjh0


―――【特異課大阪基地:休憩室】


座ってコーヒーを飲む京太郎の手にあるマガジャッパメダル

二条泉は精密検査の後、異常がないとのことで医務室で寝ているそうだ


京太郎「……咲も和も、か」


咲もすでに和と同じように怪獣メダルに思考を奪われているようだった

メフィラス星人という新たな敵も現れた


京太郎「新たなウルトラマン……ダイナか」


ティガ、ガイアに次ぐ光の巨人

今回はベリアルとして共に戦うことはなかったが、いずれその時がくるだろう

そうしていると、背中に衝撃


洋榎「辛気臭い顔してどしたー!」バシッ

京太郎「痛ぁっ!?」

洋榎「マガジャッパも倒せて、新しい宇宙人も出おったし宮永妹もおったけど」


腕を組んで頷く洋榎


洋榎「まぁなんとかなるやろ! 少なからず敵の姿は見えたんやからな!」ニッ

京太郎「楽観的っすねー」

洋榎「ポジティブシンキングと言ぃや……格調高く!」

京太郎「ま、そういう人いると助かりますけどー」

洋榎「そやろー!」ナデナデ

ベリアル『こいつ……おい小僧、聞いてみろ』

京太郎『え、なにをっすか?』

ベリアル『……』

672: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 02:34:23.49 ID:2HWRIyjh0


京太郎「さっきの太平風土記じゃ禍邪波じゃなかったっすか?」

洋榎「あーえっと、そやったっけ!!?」

京太郎『めっちゃ動揺してますね』

ベリアル『ハッ、馬鹿は扱いやすいな』

京太郎『悪口っすよ』


彼女がダイナ、あるいはそれに近しいなにかなのは間違いない

まぁ十中八九ダイナなのだろう

だがなにはともあれ……


京太郎「洋榎さん」

洋榎「ん?」

京太郎「お力、お借りします」フッ

洋榎「へ? ああ……むしろお借りしたいんやけど」


673: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 02:36:15.99 ID:2HWRIyjh0


     第15話【水ノ魔王獣】 END


674: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 02:45:43.61 ID:2HWRIyjh0


―――次回予告


京太郎:ダイナミックのダイナ?

セーラ:ダイナマイトのダイナでもある!

竜華:怜……?

セーラ:オレたちでダイナを助ける!

ベリアル:いくぞ、四分の一人前!

京太郎:はい、いきましょう!


次回【戦士の戦い】


洋榎:本当の戦いはここからやぁッ!


678: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 21:27:21.32 ID:i4LUsTsh0
(また酉ミスった



―――【特異課大阪基地:休憩室】


あれから五日

その状況にはすっかり慣れて、京太郎はのんびりとそこでコーヒーを飲んでくつろいでいる

あれから咲はめっきり姿を見せない

あの須賀京太郎の姿もだ


京太郎「……」ポケー

雅枝「暇そうやなー」

京太郎「え、ああまぁ……パトロール行ってきますよ」

雅枝「もうちょっとあとでええよ、ついでに……私用頼みたいし」

京太郎「?」

雅枝「このあと会議なもんで忙しくて……」


そう言う雅枝の目元にはクマが見える


京太郎「徹夜ですか?」

雅枝「まぁな~昔は徹マンとかできたんやけどもーむりやな」ハァ

京太郎「……」

雅枝「あ、そや昨日は麻雀で行方不明者二人まとめてやって?」

京太郎「まぁ竜華さんの手伝いしただけっすよ」

雅枝「ん~でもだいぶ強いんやね。怪獣メダル持ち相手に勝つなんて」

京太郎「まぁ、ある程度……」


ベリアル『テメェの力なんだか胸張って言えよ』

京太郎『うぅ~なんかなぁ』

ベリアル『メンドくせぇな』

京太郎『す、すみません』


昨日手に入れたクラブガンとアネモスのメダル

確かに自分の麻雀で倒した記憶がはっきりと存在する

ベリアルとして戦った記憶と共に……


雅枝「まぁなにはともあれこのあと頼むわ」

京太郎「あ、はい……それでなにを?」

雅枝「洋榎のバカを起こしに行って欲しいんや」

京太郎「……ファ!?」

679: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 21:30:50.61 ID:i4LUsTsh0


     第16話【戦士の戦い】


685: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 21:57:03.95 ID:i4LUsTsh0
11、江口セーラ



街を行く車、目的地へと走る

その助手席の京太郎、運転席には―――江口セーラ

目的地は、愛宕洋榎の家


京太郎「にしても、基地で寝泊まりすりゃいいのに」

セーラ「まぁ、色々あるんやろ……お、あそこや」

京太郎「おー実家」

セーラ「カギもらったって? どしたー監督とそういう関係かー?」ニヤニヤ

京太郎「なっ、なに言ってんすか!?」

セーラ「いんやぁ~」


狼狽するも、すぐに平静を装う

確かに魅力的な女性ではあるが、娘がいかんせん自分より年上

むしろ向こうがどう思うか……


京太郎「まったく」

セーラ「京太郎ってほら、顔はええやろ?」

京太郎「ハッキリ言いますね……否定はしないっすけど」

セーラ「おー、まぁだからモテるかなー思うたんやけど」

京太郎「……セーラさん的にはありっすか?」

セーラ「は? あぁ、まぁその……か、かっこええと、思うけどぉ……」カァッ

京太郎「え、なに照れてるんっすかかわいい」

セーラ「はあぁっ!!?」


瞬間、車がブレる


京太郎「どわぁっ!?」

セーラ「うわっ!?」

686: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 22:07:28.46 ID:i4LUsTsh0


車は真っ直ぐな軌道を取り戻す

耳まで赤くしたセーラが横目で京太郎の方を見る


京太郎「あ、あぶなぃ……」

セーラ「お前が余計なこと言うからやろ!」


その言葉に、京太郎は苦笑

余計なことは言わない方がいいだろうと思いつつも、ついつい口が滑る

スーツ姿のセーラを見てから、ふと思い出した故に口にする


京太郎「泉に見せてもらった夏のインターハイの写真」

セーラ「あいつなにやってんねん!」

京太郎「可愛かったじゃないっすか」

セーラ「事故るぞマジで!」

京太郎「それは怖い」


マジで怖い


セーラ「たくっ……なんでんな」

京太郎「麻雀で俺が勝ったことを黙ってるという約束のもと」

セーラ「お前話しとるやんけ」

京太郎「別いに良いかなって」

セーラ「泉ぇ……麻雀の特訓やな」

京太郎「ほどほどにしてやってください。病み上がりなんで」


687: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 22:16:58.09 ID:i4LUsTsh0


着くまでやけに長く感じた止まった車

それから降りる京太郎は軽く手を振ってセーラと別れようとする


セーラ「忘れぇよ絶対」

京太郎「えー凄い可愛かったじゃないっすかぁ」

セーラ「ええから!」マッカ


茹蛸状態のセーラに向けて笑みを浮かべると頷く


京太郎「それじゃあまた」

セーラ「むぅ」


不満そうな表情を浮かべつつ、セーラの車が去って行く

手を振って見送った京太郎は目の前の家を向く


京太郎「女の人の家の鍵開けるってどういう状況よ」

ベリアル『年相応の経験があるようで結構じゃねぇか』ハッ

京太郎「ベリアルさんもそういう経験が?」

ベリアル『……オレは寝る。なにかありゃ起こせ』

京太郎「えー」


688: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 22:34:57.49 ID:i4LUsTsh0


鍵をつかって入る京太郎

雅枝は『洋榎にはメッセージ送っとくから大丈夫やろ!』とのことだが動悸は抑えられない

そっと扉をしめると、京太郎は息をつく


京太郎「お邪魔しまーす」


ここで『邪魔すんねやったら帰ってー』とも帰ってこない辺り、やはり……


京太郎「ね、寝ている」


十中八九寝坊とのことだ

京太郎は聞いていた洋榎の部屋である二階へと上って行く

仲良くはなっているが、さすがにこれはどうだろうか


京太郎「……おはようございまーす」


とかなんとか言って、二階の『洋榎』と書いてある部屋前に立つ

軽く握りこぶしを作ってから、扉を叩く


京太郎「はいおはようございます! 須賀京太郎です!」

コンコン

京太郎「……おーい洋榎さーん?」

ガチャッ

京太郎「お?」


後ろに下がる京太郎、扉は開く


京太郎「お、洋榎さ」

洋榎「んぁ?」


出てきた洋榎はパジャマ姿であった

ボタンはいくつか開いていてそれはまぁ……扇情的である


京太郎「oh、こんなイベントがあろうとは……」

洋榎「ふぁ……なあぁっ!!?」ビクッ

京太郎「ああもう」

洋榎「ななな、なにしとんのや!」

バタンッ


扉が閉められる


京太郎「遅刻です」

洋榎「なんでお前そんな冷静やねん!!?」

京太郎「あー……いや、ドキドキしてますよ?」

洋榎「そんな報告いらんわぁっ!」

689: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 22:55:44.62 ID:i4LUsTsh0


一階の居間でくつろぐ京太郎

そうしていると、愛宕洋榎がスーツ姿で降りてくる

その顔はほんのりと赤い


京太郎「……照れちゃってぇ」

洋榎「うっさいわアホ!」カァッ


言ったせいなのか余計に赤くなっている

笑う京太郎の腕を掴んで洋榎を立ち上がらせた


洋榎「ほら、行くで!」

京太郎「まぁそっすね……雅枝さんも怒ってましたし」

洋榎「げきおこ?」

京太郎「げきおこ」

洋榎「えぇ……」

京太郎「ま、行きますか」


そう言って歩き出す京太郎

その後を追って、洋榎も歩き出す


洋榎「もっとこう……動揺したりせぇへんの?」

京太郎「なんかこう、思ったより平気でした」

洋榎「それはそれでムカつく」

京太郎「なんで」

690: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 23:06:56.43 ID:i4LUsTsh0


―――【大阪市内】


ザッ、と音を立てて立つ女性

見上げるのは大型デパート

後ろに立つ男の手には紙袋が複数


??「よっし、当面はここで調査よ!」


そう言って西川順子は満足気に頷く

一方、背後にいる山口大介は訝しげに表情をしかめた


大介「本当に大阪にいるんっすか?」

順子「ええ、私たちが奈良にいる間に東京に出たらしいけど……大阪にもウルトラマンがいるらしいわ」

大介「奈良のガイアと間違ったんじゃなくて?」

順子「ええ、それに私の勘が告げてるわ……ベリアルはここにくる!」ニッ

大介「……てかなんでそんなに見たいんっすか?」

順子「ありのままを伝えるのが報道の義務、よ!」ニッ

大介「余計なことにならなきゃいいけど」ハァ


691: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/07(木) 23:31:31.78 ID:i4LUsTsh0


―――【大阪市内】


西田順子と山口大介が話をしているそれと同時刻

須賀京太郎は街中で立っていた

腕時計型の端末を開いて、そこに表示されるマップ


京太郎『次で三件目ですか……』

ベリアル『雀荘を巡ってるのは良いが情報がまったくねぇな』

京太郎『まぁとりあえず、いまはやれることをやりましょ』


洋榎と共に大阪基地に向かった後、京太郎は街中に出ていた

雀荘で手がかり集めをしながらも、京太郎は時間になったのでセーラと竜華との合流地点へとやってきている


ベリアル『……おい、この感覚』

京太郎『あたりですか?』

ベリアル『ああ、急げ!』


その言葉を受けて、京太郎が駆けだす

二人との合流もあるが、今はそれどころでもない


ベリアル『雀荘じゃねぇ、裏口だ!』

京太郎「了解っす!」


目と鼻の先の雀荘の横にある路地裏へと入る


692: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/08(金) 00:02:02.04 ID:KD7feXQt0


路地裏に駆けこんだ京太郎

雀荘の裏口、二階の非常階段から降りた直後の少女がそこにいた

いや、少女たち……


京太郎「……咲ぃ、和ァ!」

咲「……」

和「また貴方ですか、須賀京太郎」


忌々しげにつぶやいて、振り返った原村和が京太郎を睨む

一方の宮永咲は現状、興味無さげではあった

素早くガッツハイパーを取り出して銃口を二人、いや三人に向ける


京太郎「撃てるんだぜ俺は……園城寺怜だろうとも」


視界に映っているのは園城寺怜だ

付き合いはない。竜華の友達だが―――撃てなくはない


京太郎「……!」


トリガーを引こうとした瞬間、真上から降ちてくる影

顔をしかめつつ後ろに跳ぶ

目の前に、いるのは―――


京太郎「たくまたかよオレのそっくり野郎……!」

京太郎?「……お前は俺だよ」

ベリアル『なんだあいつは……破滅招来体か?』

京太郎「なにはともあれ……こいつ、人の顔で堂々と!」チャキッ


竜華「京太郎くん!」

セーラ「おい京太郎!」

京太郎「セーラさん竜華さん!」


やってきた二人の仲間はガッツハイパーを構える

軽く視線をそちらに向けてから、即座に前を向く


京太郎「いないっ!」

ベリアル『なんだ、アイツは……?』

竜華「……あ、嘘」

セーラ「なっ!?」

京太郎「っ……!」

693: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/08(金) 00:17:59.23 ID:KD7feXQt0


目の前で、宮永咲と原村和といる園城寺怜

その瞳は虚ろであるものの、両目は輝いていた

ただ一人、真っ直ぐと銃口を向けている京太郎


セーラ「おい怜!」

竜華「怜……?」


いつの間にか消えている京太郎の偽物、周囲に軽く視線を送るが気配はない


ベリアル『やるか?』

京太郎『ともなれば……やらざるをえませんか』


そう言うと懐に手を伸ばす京太郎

和が手を真上に向けるハッとしてそちらを見れば、上空を飛ぶなにか

路地裏のビルの狭間から一瞬だけ見えた球状の白い飛行物体


京太郎「あれは……!?」

ベリアル『スフィア!? メダルであんなもんまで呼べんのか!』

京太郎『スフィア……?』

和「さて、我々はこれで……」

京太郎「待てよ! 結局お前らの目的って」

咲「復讐だよ。この世界の―――異能の力を使って蘇らせた怪獣を使っての」

京太郎「っ!」

ベリアル『こいつまさか……』

咲「この世界の異能の力というのは怪獣をメダルから復活させるどころか、上手くやればより強力にすることもできるからね」フッ

京太郎「っ……復讐って誰への!」


咲の背後に漆黒の闇が広がる

両腕を広げる咲の瞳は赤く輝く


咲「ウルトラマンだ!」

694: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/08(金) 00:36:02.67 ID:KD7feXQt0


京太郎「なっ、貴様っ!」

ベリアル『暗黒の皇帝!』


笑い、闇の中に消えていく咲


京太郎「チッ、逃がした!」

和「須賀京太郎……ここで死んでもらいましょうか」スッ


手を前に出す和の背後が光り輝く

そしてその手から放たれる透明な―――波動

両手を前に出してそれを受ける京太郎


京太郎「ぐっ!!?」


両足を地面につけて凌ごうとするが、徐々に押されていく

顔をしかめる和の背後には闇

それが少しづつ和を包み込もうとしていく


和「現状の力ではこんなものですか……」

京太郎「お、まえっ!」

和「ではだめ押しで」


さらに波動弾が放たれると、京太郎は今度こそ吹き飛ぶ

セーラと竜華の間を後ろに跳んでいく京太郎


京太郎「どわぁっ!!?」

696: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/08(金) 00:51:58.87 ID:KD7feXQt0

路地裏からはじき出された京太郎

そのまま勢いよく地に叩きつけられて、悶える

すぐに京太郎を追って出てくる竜華とセーラの二人


京太郎「ぐっ、あっ……がっ」

セーラ「京太郎!」

ベリアル『小僧ォ!』

京太郎「だ、だいじょう、ぶっす……」

竜華「アホ! どこがやっ!」


京太郎の上体を支える竜華

だが吹き飛ばされた京太郎は既にボロボロで、口や額から血を流している

セーラが拳を握りしめて、路地裏へと通じる方に視線を向けた


竜華「怜ぃ……」

京太郎「園城寺、怜っ……」


地に手をつけて、ふらつきながら立ち上がる京太郎

視線の先には怜がおり、上空にはスフィア


竜華「怜ぃ!」

京太郎「届かないっすよ。ああなったら……」

竜華「そんなこと言うても!」

京太郎「それにあれも……!」


上空のスフィアが街を光弾にて攻撃する

くわえて、轟音と共に怪獣が現れた

二足歩行の恐竜型


京太郎「あれは……」

ベリアル『ネオダランビアだったか……スフィア合成獣か!』

京太郎『ダランビア……確か、最初にダイナと戦ったっていう?』

ベリアル『こっちでもか』

竜華「あれは……!」


ネオダランビアに、別方向から銃撃がある

だがその攻撃がある方向に、スフィアが向かっていく

京太郎は目の前の園城寺怜に視線を向けた

697: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/08(金) 01:04:06.77 ID:KD7feXQt0


一方、京太郎たちが園城寺怜と相対しているのと同時刻

愛宕洋榎が街中を走っていた

人々が走る中を逆走している


洋榎「あいつ……今回はスフィアも一緒かい!」


そう言いながら、銃撃

反対方向に走っている故か、周囲の人々もまばらになってきていた


洋榎「っ!?」


三体のスフィアが攻撃をしかけてくる

その光弾の直撃は回避するも、その爆風により吹き飛ぶ


洋榎「痛ぅ~」


体を押さえながら、起き上がる洋榎

周囲に誰もいないことを確認しつつ、懐から取り出すのは―――変身アイテム“リーフラッシャー”

それを握りしめると、ネオダランビアと三体のスフィアを睨みつける


洋榎「本当の戦いはここからやぁッ!」


かかげられたリーフラッシャーが展開され、輝く

そして、光と共に現れるのは巨人―――ウルトラマンダイナ


698: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/08(金) 01:17:42.86 ID:x3c4Nqdi0


ダイナが登場、それと共に斬撃を飛ばして三体のスフィアを叩き落とす

京太郎はそれを見て笑みを浮かべた

形勢逆転……とはいかないかもしれないが


京太郎「状況は悪くない……まだ東場だ」

セーラ「んなこと言ってる場合かい」

京太郎「来たでしょウルトラマンが……ダイナミックのダイナ?」


その言葉に、セーラは頷く


セーラ「ダイナマイトのダイナでもある!」

京太郎「セーラさんと竜華さんは、ダイナの方を」

竜華「でも怜がっ!」

京太郎「こういう時の対処法は俺のが詳しいっすよ。一人でいけるけど時間かかるんで、頼みます。二人はダイナを」

竜華「っ」


まだなにか言いたそうにしている竜華だが、セーラがそんな竜華の肩を掴む


セーラ「行くで竜華! オレたちでダイナを助ける!」

竜華「……京太郎くん、怜をお願いっ」

京太郎「……うっす」フッ


そう言って笑うボロボロの京太郎は、しっかりと立つ


京太郎「あっちは頼みましたよ!」ニッ

セーラ「ラジャー! ほら、竜華も!」

竜華「二人で、絶対帰ってきてな?」

京太郎「……」コクリ


去って行く二人

そして残された京太郎と怜

699: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/08(金) 01:40:57.91 ID:x3c4Nqdi0


口の中に溜まった血を吐きだすと、京太郎は懐からゼットライザーを取りだす

目の前の園城寺怜は、例によって黒き輝きを胸の中央から発す


京太郎「園城寺怜ィ! 引っ張って連れ帰る!」

怜「!」


瞬間、闇が怜を包んでその闇は新たな形を作り出す


京太郎「怪鳥の類かっ!」

ベリアル『あいつは……エアロヴァイパーか!』

京太郎「やっぱ知ってますか!」

ベリアル『オレは座学でもケンに引けを取らねぇ!』

京太郎「誰っすか……」


現れた鳥型の怪獣


ベリアル『ともかく、野郎がそのままの力を使えるなら厄介だぞ!』

京太郎「どういうことっすか?」

ベリアル『時間を歪ませる能力だ。時間を移動して自分の都合のいい未来を導き出そうとかする奴だ!』

京太郎「意外と頭良いのか……!」

ベリアル『だがそんな強力な力を使えるほど力が溜まってるようには見えねぇな!』

京太郎「なら!」


トリガーを引くと、真上にゲートが作りだされる


ベリアル『いくぞ、四分の一人前!』

京太郎「はい、いきましょう!」


700: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/08(金) 01:50:43.36 ID:x3c4Nqdi0


―――【インナースペース】


右手にカードを左手のゼットライザーへと差し込む


『キョウタロウ・アクセスグランテッド』

京太郎「レイブラッド星人……」


メダルを弾くと、周囲に闇が広がっていく

落ちるメダルを右手で取ると、赤き瞳が輝く


京太郎「究極生命体……」


ゼットライザーにメダルを差し込みブレードをスライドさせる


『Alien Rayblood』

京太郎「ベリアァルッ!」


トリガーを引き、叫んだ

701: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/08(金) 02:11:56.26 ID:x3c4Nqdi0


時空怪獣エアロヴァイパー

ネオダランビアと戦っていたダイナがそちらを見る

だがエアロヴァイパーと相対するように黒い影が現れた


ベリアル「……」ゴキリゴキリ


首を鳴らしながら現れたベリアル

エアロヴァイパーとネオダランビアが少しばかり後ずさる様子を見せた

溢れだす闇の力


京太郎『なんか、なんっすかこれ?』

ベリアル『散々、闇の残滓が残ったメダルとかを集めてるわけだからな、当然じゃねぇか?』

京太郎『なるほど……まぁ強くなるならなんでも良いっすけど!』

ベリアル『ハッ、良いじゃねぇか!』


構えを取ると、即座にエアロヴァイパーへと跳ぶ

だが、その瞬間にエアロヴァイパーの角が輝く

ベリアルはすぐに構えをといて着地した


京太郎『その手の攻撃なら、種がわかってりゃなぁ!』

ベリアル『後ろだァ!』


振り返ったベリアルが即座に腕を振るうと光弾が放たれる

その一撃はエアロヴァイパーを―――撃たない


京太郎『あぁ?!』

ベリアル『避けただァ!?』


空へと飛ぶエアロヴァイパー

それを追って飛びたつベリアルだが、エアロヴァイパーは旋回して口から火球を放った

回避しようと動くベリアルだが、さらに放たれた火球がベリアルの回避した方向に飛ぶ


ベリアル『チィッ、妙に避けにくい真似しやがるっ!』


バリアを張って火球を空に逸らす


エアロヴァイパー「!」

京太郎『まるで未来が見えてるような……未来が!?』

ベリアル『あいつの能力はそこまで戻ってねぇはずだ』

京太郎『いや……園城寺怜は一巡先を見る能力があるとか聞いたことがあります!』

ベリアル『ああ? 巡……いや、エアロヴァイパーメダルと共鳴強化されたなら未来視になったなんてことも、あるかもしれねぇな……!』


702: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/08(金) 02:24:38.92 ID:x3c4Nqdi0


空を飛ぶベリアルが、いくつかの光弾を放った

だがエアロヴァイパーの目が輝きを放つ

エアロヴァイパーは未来が見えているかのように攻撃を回避していく


京太郎『やっぱコイツ!』

ベリアル『ッ!』


放たれるエアロヴァイパーの火球をバリアで凌ぐ

だが目の前に迫った瞬間、その角が光り輝いた


京太郎『っ!』

ベリアル『こいつぁ不味ぃな』


後ろを振り返るがいない

火球が―――真横からベリアルを襲う


ベリアル「ガァッ!」


地上へと落ちるベリアルに、さらに火球を放つエアロヴァイパー

爆発と共に、周囲のビルが破壊されていく

そこから離れた場所で戦うダイナがそちらに助けに入ろうとするが、ネオダランビアの攻撃に押されていた


ベリアル『チィッ! 未来が見える、でもあいつは最強じゃぁねぇんだろ?』

京太郎『はい、咲の姉貴、照さんに負けてる……』


起き上がったベリアルの前方に降りてくるエアロヴァイパー

胸のカラータイマーが点滅を始める


ベリアル『どうやって勝ったとか、知らねぇよな』

京太郎『まぁ……でも未来を視るようなのを倒す方法はいつだって一つですよ』


その言葉に、ベリアルは笑った


ベリアル「ハァッ!」

ベリアル『どんな未来もあいつをぶっ潰す未来にすりゃ良いんだろ!』

京太郎『そういうことです!』


708: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/09(土) 22:29:19.87 ID:bydFScek0


空へと飛びあがったべリアルを追うエアロヴァイパー

その角が輝くと共に、エアロヴァイパーの姿は消える

止まるべリアルは両腕を振るって周囲に電撃を放つ


べリアル「ハアッ!」

京太郎『ぐっ、さすがにこれは消耗激しいっ!』


その周囲に放たれた電撃に、火球がぶつかり爆散する

放たれたのは背後からで、もちろんエアロヴァイパーもそこにいた


べリアル『やはり見れる未来に限界があるか!』

京太郎『せいぜい数十秒先っすね!』

べリアル『やりようはいくらでもあるな!』ハッ


笑うべリアルが、更に空へと向かって飛ぶ

エアロヴァイパーは角を輝かせる


べリアル「ハァッ!」


火球が飛んでくるのは、背後から

それを爪で切り裂く


べリアル『追いついてこれなきゃ意味がねぇな!』

京太郎『未来が見えてもなぁ!』


地上へと加速するべリアル

それを追うエアロヴァイパーの瞳が輝く

さらに、角も輝くが―――


べリアル『意味ねぇってんだよ!』


振り返ったべリアルが素早く光弾を放つ

それが火球とぶつかり爆散

709: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/09(土) 22:34:29.26 ID:bydFScek0

地上へと降りたべリアルが、空を見上げるとそこにはエアロヴァイパー


京太郎『やるっきゃないか!』

べリアル『へばるんじゃねぇぞ!』

京太郎『おっす!』


迫るエアロヴァイパーへと―――べリアルが飛ぶ

だがその少し前にエアロヴァイパーは方向を転換していた


京太郎『視えてる!』

べリアル『だがなぁ!』


そのままエアロヴァイパーを追って飛ぶべリアル

エアロヴァイパーが振り返って火球を放つ

だがべリアルとてそれを読んでいる


べリアル『避けれる軌道じゃねぇ!』

京太郎『けどなぁ!』


バリアを張ってその火球を凌ぐ

エアロヴァイパーとの距離が離れるが即座に距離を詰めるために加速

それでもエアロヴァイパーは直撃コースに火球を放つ


べリアル「ジャアッ!」


クローで火球を切り裂く

減速して再びエアロヴァイパーに距離を離される

だが、再度加速


べリアル『バテてねぇだろうな!』

京太郎『当然ッッ!!』

710: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/09(土) 22:42:26.80 ID:bydFScek0


一方のダイナは、ネオダランビアの攻撃で吹き飛ぶ

点滅するカラータイマー

立ち上がったダイナが両腕を振るい、変わる


ダイナ「チャアッ!」


その姿は青

超能力戦士ダイナ、ミラクルタイプ

ネオダランビアが体当たりしようとダイナに走るが、ダイナは真上へと回転しながら飛ぶ


ダイナ「ハッ!」


体を丸めつつ回転

ネオダランビアを飛び越えて着地すると、体をそちらに向けて構える

突進していたネオダランビアが止まるが背中はがら空きだ


ダイナ「チャアッ!」


両手を突き出して光線を放つ

その攻撃を受けて、ネオダランビアの尻尾が落ちる

大きくひるみつつネオダランビアが右腕を振るうと、その右腕が触手のように伸びた


ダイナ「!」


素早くダイナが腕をかざす

落ちていたネオダランビアの尻尾を超能力により盾する

触手が尻尾にぶつかり、力が相殺された

ダイナは素早くナイフ型の光弾で斬撃を放ち、ネオダランビアの触手を切り裂く


ネオダランビア「!」

ダイナ「ハァァッ……!」


叫ぶネオダランビアを前に、ダイナが右腕に光を宿す

そして、右腕を真っ直ぐに突き出す


ダイナ「チャアッ!」」


放たれる超衝撃波


711: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/09(土) 22:47:06.36 ID:bydFScek0


ネオダランビア「!!?」


衝撃波を受けたネオダランビア

そしてその背後に現れるのは小さなブラックホール

それがネオダランビアを吸い込んでいく


歪むネオダランビアがその中に吸い込まれると、それは即座に閉じる


ダイナ「……」


ブラックホールを出現させて次元の狭間にて圧殺するレボリウムウェーブにより、ネオダランビアは塵一つ残さず地上より消え去った


712: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/09(土) 22:54:35.93 ID:bydFScek0

ベリアルから距離を取ろうと飛ぶエアロヴァイパー

その瞳と角が一瞬だけ輝く

背後から迫る光弾を回避


ベリアル「ハアァッ!」


だが、さらに接近してくるベリアルに気づき再び瞳と角を輝かせるも……


エアロヴァイパー「!」


わずかに怯むような動作を見せる

だがベリアルがそれを逃すはずもなく、背中に電撃を受けた


エアロヴァイパー「!!?」

京太郎『っしゃあ!』


落ちていくエアロヴァイパー

そのまま地上へと打ちつけられるも、起き上がる

ベリアルの方を見ようとするも……見当たらない


エアロヴァイパー「!」

ベリアル『ここだァ!』


空から勢いよく飛んできたベリアルが、エアロヴァイパーのその頭部に蹴りを打ち込む

その衝撃でエアロヴァイパーの角が破壊される

鳴き声を上げるエアロヴァイパーをしり目に、その勢いのまま着地したベリアルはスライディングしながら体をそちらに向けた


京太郎『これでェ!』

ベリアル『終わりだァ!』


713: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/09(土) 23:04:12.88 ID:bydFScek0


地上に跡を作りながらもエアロヴァイパーへと向くベリアル

膝を地に着けたその体勢のまま、黒と赤の光を宿す右腕を左腕に添える


ベリアル・京太郎『デスシウム光線!』


放たれた暗黒の光線

エアロヴァイパーがよろけながらも瞳を輝かせて、横に避ける

だが―――


京太郎『やらせるかァ!』


勢いよく立ち上がったベリアルがデスシウム光線を―――曲げた


ベリアル「デヤアァッ!」

エアロヴァイパー「!!!?」


その一撃を受けたエアロヴァイパーが爆散する


巻き起こる爆煙を前に、ベリアルが右腕を払って首を鳴らす


714: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/09(土) 23:13:40.35 ID:bydFScek0


そして、漆黒のウルトラマンことベリアルが顔をそちらに向ける

そこにいるのはウルトラマン―――ダイナ

通常のフラシュタイプのダイナをしり目に、ベリアルは背を向けて歩いていく


洋榎『ベリアル! なんでここに! 誰なんやあんたは!』

ベリアル「……」


その疑問に答えるわけにもいかず、ベリアルはそのまま空へと飛び去って行く

残されたダイナが、去って行く姿を見送る


洋榎『なんやねん、味方なんやろけど……』


ウルトラマンのはずだが、自分やティガやガイアとは違いすぎる

その疑問の答えが見つかるはずもなく、ダイナも空へと去って行く


ダイナ「……シュワッ!」


715: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/09(土) 23:32:53.46 ID:bydFScek0


―――【地上】


京太郎は園城寺怜をおぶったまま歩く

右手にはしっかりとメダルも握ったままだ

目的地付近へと近づくと、すでに待ち人がいた


京太郎「お待たせしましたー!」


そう言うと、振り返る二人の少女

清水谷竜華と江口セーラ


セーラ「っ!」

竜華「と、怜ぃっ!」


駆け寄る二人に、京太郎へ笑みを浮かべる

二人はすぐに怜の方を見るが別段、異常があるようには見られない

元々身体が弱いということもありすぐに精密検査にかけるつもりではあるが……


京太郎(怪獣メダルも取り除いたし、そんな気配もないし……たぶん平気なんだろうけど)

洋榎「おーい!」

セーラ「お、アイツも帰ってきよった」

竜華「洋榎っ!」


現れるのは愛宕洋榎、その背中には―――上重漫を背負っていた


京太郎「ふぃ……まぁなにはともあれ、無事で良かった」ホッ

ベリアル『にしても、またどっか行きやがったな』

京太郎『ならば追うだけっすよ。あいつらの目的を果たさせるわけにはいかない』

ベリアル『ならどうする?』

京太郎『そろそろ、マジでなりふり構ってらんなくなってきましたね』


覚悟は決めなければならない……咲や和を本当に“傷つける”という覚悟を

716: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/09(土) 23:43:01.10 ID:bydFScek0


―――【特異課大阪基地:作戦室】



今度はしっかりと、口にした

驚愕するような表情の竜華とセーラ、そして洋榎

同席している二条泉は小首をかしげている


竜華「もう行ってまうん!?」

京太郎「はい、応援要請がきたので」

雅枝「お前も人気やな」ケラケラ

京太郎「まぁ多少は……役に立ってるようで」


苦笑しながら言うと、雅枝は笑って頷く

名残惜しいと言いながら、京太郎は立ち上がる

そしてそれに合わせるように同時に立ち上がる洋榎


洋榎「送ってくわ、駅まで」

京太郎「え、良いんですか?」

竜華「そ、それなら私が! 怜のお礼もあるし!」

洋榎「ええから」

竜華「……まぁ、洋榎がそういうなら」

洋榎「行くで」

京太郎「ん、ありがとうございます」フッ


717: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/09(土) 23:51:28.23 ID:bydFScek0


その後、車に乗り込んで運転席の洋榎の隣に座る京太郎

助手席で揺られながらも、短かった大阪でのことを思いだす

やるべきことはやったつもりだ


赤信号で車が止まる


京太郎(ダイナのことも、多少はわかったしな)

洋榎「……気づいてるか?」

京太郎「え?」


前を向いたまま、洋榎はつぶやくように言う


洋榎「……うちのこと」

京太郎「あー……まぁ」フッ

洋榎「やっぱかぁ」


溜息をついて苦笑する洋榎

どこで気づいたと気づいたのか疑問だが、それはそれで良い


洋榎「……どうなんやろ、うちの戦い方」

京太郎「え?」

洋榎「光の戦士の戦いができとるんかなって」


そんな言葉に、京太郎は顔をしかめる

お生憎様、彼はそのような戦いをしているつもりもないし、するつもりもない

ただ守れるならば守れる。最大限被害を出さない努力をする……というのが彼なりのやりかただ


故に―――


京太郎「きっとできますよ」

洋榎「ほんま?」

京太郎「そういう戦い方をしようと思いながら戦うってことが……大事なんじゃないっすかね」


月並みな台詞、ただ本当にそう思って言っている


京太郎「光の戦士なんっすよ。きっとそうやって戦うのが」

洋榎「……そっか」フフッ


笑顔の洋榎は信号が青になったことを確認するとアクセルを踏む

走り出した車、洋榎は上機嫌で会話を再開していく


ベリアル『憧れてんのか?』

京太郎『そういうのは過ぎましたよ。俺には俺ができることをやるだけっす……こういう人らができないこととか』

ベリアル『ハッ! 良い戦士になってきたじゃねぇか』

京太郎『どうも』フッ


718: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/09(土) 23:52:52.64 ID:bydFScek0


    第16話【戦士の戦い】 END


725: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/10(日) 21:31:54.98 ID:dChXXoYk0

―――【岩手県・遠野市】


その地を歩く柄の悪い男、そう―――


京太郎(―――俺です)


スーツを着たグラサン金髪長身男が歩いている

おそらく、相当目立つ

故に合流はしやすいのだが……


京太郎「お、トシさん」

トシ「よっ」


目の前の車、片手を上げる運転手のトシ


トシ「助手席乗りな」

京太郎「うっす」


726: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/10(日) 21:41:20.30 ID:dChXXoYk0


素直に助手席へと乗り込む京太郎

シートベルトをつけると車が走り出す


京太郎「東京からこっちに?」

トシ「色々あるからねぇ、大阪ではお疲れさん」

京太郎「大したことできてませんけどね」

トシ「魔王獣を一体と、エアロヴァイパーを倒した功績はでかいね」

京太郎「マガジャッパの方はダイナですけど」

トシ「愛宕洋榎か」

京太郎「なんでも知ってるんですね」

トシ「さて、なんでもだったらこっちはこんなことになってないよ」

京太郎「俺を呼んだ理由って……」

トシ「あたしじゃ、手におえなくてね」


そう言って苦笑するトシを横に、京太郎は顔をしかめた

トシがそこまで言う問題なのだ

巨人の力がが必要なのだろう……


京太郎「で、ここからどこに?」

トシ「特異科岩手支部、あたしのホームさ」フッ

727: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/10(日) 21:54:11.84 ID:dChXXoYk0

―――【特異科岩手基地】


ガレージに停まった車から出る京太郎とトシの二人

東京と大阪、いや長野よりも小さい基地だった

スタッフもそれほどいないのだろう、その基地で京太郎はトシの後をついていく


京太郎「ところで、俺を呼び出した理由って?」

トシ「焦らない」


そう言うと、トシは手で扉を開く

そこには―――作戦室

ただしそこまで派手でもない


京太郎「普通にキーボード置いてあるし……モニターもなんか小さい」

トシ「プロトタイプだからね」

京太郎「へぇ~」


そう言いながら座ると、トシも座った


京太郎「……」

トシ「……」

京太郎「……え、なんの時間ですか?」

トシ「待ってな、もう一人来る」

京太郎「そういうの早く言ってくださいよ」


そう言って息をつく京太郎

すると、扉が開かれた

知らない少女―――宮守麻雀部にもいなかった気がする


728: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/10(日) 22:00:07.50 ID:dChXXoYk0


黒い髪、真ん中分け、タレ目

少しばかり訝しげな表情をしつつ、京太郎を見る


京太郎(誰じゃ……)


黙って歩くと、少女はトシと京太郎から距離を置いて座った

結局わかりもしないまま、京太郎はトシの方へと視線を向ける


京太郎(誰?)

べリアル『誰だ?』

京太郎『わかんないんっすよ』


視線を向けると、うなずくトシ


トシ「この子は宇夫方葵」

京太郎「……う、宇夫方さん?」

葵「よろしく」

トシ「あたしの大事な教え子……のおまけ」

葵「誰がおまけ!?」


聞いたことがない名前だった


トシ「ご察しの通り麻雀部じゃないよ」

京太郎「え!?」

葵「良いでしょ別に、正義の味方全員が雀士とでも?」ジト

京太郎「いや、そんなつもりじゃぁ……」

葵「ところで熊倉さん、この男子がキーマン?」


その言葉に、小首をかしげる京太郎


トシ「そ、須賀京太郎……あんたの大事なものを取り戻すために来た」フッ


729: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/10(日) 22:21:46.06 ID:WpJCFJlR0


京太郎「……え、なんで俺?」

トシ「そりゃあ実績さ」フッ


その言葉に、なにかを反論しようとするもそうするわけにもいかない

自分がベリアルということはともかく、麻雀で怪獣メダル持ちを倒しているのも事実

しかし―――


京太郎「宮守麻雀部、倒せますか俺に?」

トシ「……まぁとりあえずだ」


京太郎の疑問に答えるわけでもなく、トシは置いてあるキーボードを叩く

モニターが点き、画像が表示される

そこに映るのは―――


京太郎「あれは確か、臼沢塞さん?」

葵「よく知ってるね」

京太郎「うちと戦ってますからね……和とやりあってました」

葵「……そう、だったね」


そう言って、どこか懐かしむように言う葵


京太郎「?」

トシ「まぁなにはともあれ、塞が見つかった」

葵「どこでですか?」

トシ「数日前、葵が胡桃を倒しただろ……その近く」

京太郎「胡桃って、鹿倉胡桃さん?」

葵「そ」

京太郎「麻雀部でもないのになんでそんなに……」

葵「なんでも良いでしょ、とりあえず臼沢さんが見つかった場所に行こうか」

京太郎「うっす!」

730: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/10(日) 22:46:51.68 ID:gam4J/C90


葵が先に歩いていく

さっそくトシは本部待機らしく、二人にされるらしい

後ろを歩く京太郎を見送るために隣を歩くトシ


京太郎「……臼沢さんが見つかったって怪獣化の兆候でも?」


小声で、隣のトシに声をかける


トシ「いやあの子は、もうちょっとは耐えてくれるはずだ」

京太郎「え?」

トシ「ともかく急いでよ?」

京太郎「そりゃ当然ですけど……」


その言葉に頷く京太郎

隣のトシが前を向いて苦笑する

京太郎もそちらを見れば、そこには……


トシ「どした?」

葵「いや……別に」

京太郎「?」

トシ「大好きなシロじゃなくて悪いけど、頼んだよ」

葵「ちょ! そういう言い方!」

京太郎「え、どういう?」

葵「ほらー!」

731: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/10(日) 23:00:32.69 ID:gam4J/C90


ガレージの車に乗り込む京太郎と葵の二人

トシが外から手を振って見送るので、京太郎はそれに軽く応える

走り出す車、ガレージを出て陽の光が当たる外へと飛びだす


京太郎「ところで、宇夫方さんと小瀬川さんってどういう?」

葵「……友達、と思いたい」


そう言いながら、道を曲がって車は市街地へと入る


葵「わ、私はただ小瀬川さんの大事な麻雀部を救いたいだけでっ!」

京太郎(うわぁ、ガチっぽい)

葵「ガチっぽいと思ったでしょ!? そんな眼をしてる! 見慣れた眼!」

京太郎「慣れてるし」

葵「くっ、どいつもこいつも恋愛脳でっ!」ギリギリ

京太郎(なんだこの人)


ベリアル『おい小僧』

京太郎『はい、どうしたんっすか?』

ベリアル『妙な気配するな』

京太郎『え、どこから?』

ベリアル『目の前の女から一瞬だが……』

京太郎『……怪獣メダル持ちに勝てる雀士っすからね』

ベリアル『こいつにも入ってんじゃねぇか?』

京太郎『まさ、か……とも言い切れないかぁ』

ベリアル『ちょっと小突いてみるか?』

京太郎『なんで敵増やすんっすかぁ』

ベリアル『ハッ、冗談だ』ケラケラ

京太郎(ベリアルさん、冗談とか言うんだ……)

732: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/10(日) 23:28:03.60 ID:CkUNLCIF0


車は塞が発見されたポイント付近へと接近する

駐車場が近場になく、仕方ないと葵は道に駐車して車を出た

京太郎も共に車を出ると、周囲を見渡す


葵「雀荘もないけど……っていうか」


周囲は、というより視線の先は森


京太郎「こっちっすか?」

葵「田舎はこれだから」ハァ

京太郎「JKみたいなこといいますね」

葵「JKだよ!」


だがおそらくむかった先はそちらということだろう

溜息をついて、京太郎はスーツ内側からガッツハイパーを取り出した

カートリッジも確認して頷く


京太郎「いつでもどうぞ」

葵「ちょ、撃ったらただじゃおかないから!」

京太郎「ショック弾ですよ?」

葵「ひ、人の小瀬川さんの友達のことなんだと思ってんの!?」

京太郎「……ん?」

葵「あ、今のはあれね! 焦って言い間違えた!」

京太郎「……」ウワァ

葵「だから違うって! ていうかあんた自分の仲間でも撃つの!?」

京太郎「撃ちますよ」

葵「……え、正気?」

京太郎「当然です」

葵「……とりあえず行こう、撃たなくてよさそうなら撃たないでね」

京太郎「了解っす」


733: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/10(日) 23:52:50.27 ID:L7oyotFj0


森の中を行く二人

なぜこのような場所に、とも思う

怪獣メダルが入れられた者は麻雀で力を集めるはずだが……


京太郎「なんで?」

葵「……鹿倉さんは普通に雀荘だったけど」

京太郎「ですよね」


麻雀で勝ったのでなければ怪獣を倒したということになる

それはまずないだろう

そうだったとしたら、トシからなにかしらの報告があるはずだ


ベリアル『本当にこっちか?』

京太郎『わかりませんけど……』

葵「……臼沢さん、どこに」

ベリアル『気配はないな』


彼がそういうのならば、やはりこちらではないのだろうか?

京太郎は眉をひそめつつ、葵のあとを追って歩いていく

突如、葵がハッとした表情で走り出す


京太郎「ちょ、宇夫方さん!?」

葵「足跡!」


足元には確かに、靴跡のようなものがあった

それに従い京太郎は葵と共に走る

734: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 00:13:58.40 ID:HKIiBoY30


そして、ほぼ山中と言って差し支えないまでに侵入した二人

前の葵が止まると、その隣で止まる京太郎

少しばかり開けた、木々に囲まれたそこに―――


葵「臼沢さん!」

塞「っ……」


臼沢塞がいた

ヒビの入ったモノクルをつけたその少女は、自らの体を押さえるように抱いている

肩で息をしながら、葵たちから一歩後ずさった


京太郎「臼沢塞……」

ベリアル『撃たねぇのか?』

京太郎『一人ならともかくっすよ。今は宇夫方葵がいるんですよ』

ベリアル『チッ』


右手のガッツハイパーの銃口は下を向いている

隣にいる葵は武器一つもたないまま、両手を広げて歩いていく

丸腰のまま、ゆっくりと


塞「っ、あ、おいっ……」

葵「臼沢さん、大丈夫……きっとトシさんがなんとかしてくれるから」


そう言いながら近寄る葵


京太郎「おい待て、俺の知らない情報ばっかじゃないか……?」

ベリアル『そういうことか、あいつ抑え込んでやがるな!』

京太郎「抑えるって」

ベリアル『溢れ出そうなのに蓋をしてやがる!』

京太郎「蓋……塞ぐ、ってそういう!?」

735: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 00:31:57.43 ID:b2gOsdN10


自らの体を抱いて、膝をつく塞

京太郎はショック弾を入れたガッツハイパーを確認する

だが、それに気づいた葵


葵「ちょっと待って須賀っ」

京太郎「このままじゃ臼沢さんも!」

塞「塞ぐっ、シロたちを、早く見つけて……わたしはっ」


そのような状況で他人のそれを“塞ぐ”ことなどできるわけもないだろう

京太郎は顔をしかめて葵を見る


葵「無理だよっ、小瀬川さんを助けて欲しいけど……だからって臼沢さんが犠牲になったら」

京太郎「……っ」

葵「奪われた場所を……小瀬川さんのために私はぁ!」


葵が塞に駆け寄ろうとするが、顔を上げた塞のモノクルに新たにひびが入って行く


塞「私にっ」

葵「臼沢さんっ!」

塞「私に近寄るなぁ!」


瞬間―――モノクルが砕け散る

736: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 01:04:28.12 ID:b2gOsdN10


―――【特異課岩手基地:作戦室】


トシ「……塞か」チッ


作戦室で座っている熊倉トシ

モニターに表示されている映像は、ティガやダイナやガイア

さらに、銀色の巨人もいた


トシ「葵、あれも早いとこなんとかしないと……」


頭を押さえて天井を見上げる


トシ「……模造品とは、なんつーか皮肉だねぇ」ハァ


モニターに映る画像は、ベリアルとは別の黒きウルトラマンの横顔が描かれたメダル

737: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 01:33:02.36 ID:b2gOsdN10


―――【山中】


森の中、塞からあふれ出した闇

塞がれていた故なのか、その質量は異常だ

京太郎は葵の腕を掴んで下がる


葵「須賀っ!」

京太郎「不味い、怪獣が出る!」

葵「怪獣がなんだよっ!」

京太郎「小瀬川さんのためなんだろっ、テメェが死んでどうする!」


そう言い葵の手を掴んで離れるが、闇はすぐにその正体を現す

巨大な鳥のようでもあるその菱形の怪獣


ベリアル『ベムスターか!』

京太郎『強敵っすか!?』

ベムスター『個体による!』

京太郎『そりゃなにより!』


確実に、強力な敵のはずだ


京太郎「……!」

葵「怪獣になってしまった……もう、これじゃぁっ!」

京太郎「トシさん、予想してたのかこれ!」


ベムスターに対してガッツハイパーを放つ

弾丸はベムスターの顔に当たるも、大したダメージもないのかぽりぽりと当たった部分を掻く

舌打ちをする京太郎は、ガッツハイパーを懐にしまった


葵「くそっ!」


奪われた場所と、葵は言っていた

この今の世界にはありふれたことだが、だからこそ―――


葵「逃げよう、これじゃっ」

京太郎「……俺にできることは!」


前に出て、ゼットライザーを取り出す

738: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 01:42:11.20 ID:b2gOsdN10


そんな京太郎の背を見て、今度は葵がその手を掴む


葵「豆鉄砲で今更どうしようっての!」

京太郎「だから、俺が……俺達が戦うんだよ」


そう言って腕を振り払う

宇夫方葵はその京太郎の背に、ベリアルの背中を感じ取る

頭を横に振って、しっかりとベムスターを見上げた


葵「……遠くで見てるだけで良かったんだ」

京太郎「……」カチッ


トリガーを押すと、京太郎の真上にゲートが開く


葵「たまに話して、その輪に入れてもらったりして……それだけで良かったのに」

京太郎「だから……」

葵「それを奪われてっ」

京太郎「だから奪い返すんだろうがッ!」


そして、地を蹴って京太郎はゲートへと突入する


739: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 01:49:01.64 ID:b2gOsdN10


―――【インナースペース】


現れるアクセスカードを右手で掴んだ

カードを左手のゼットライザーへと差し込むと音声が響く


『キョウタロウ・アクセスグランテッド』

京太郎「レイブラッド星人……」


メダルを弾き、周囲に闇が広げる

落ちてきたメダルを右手で取ると、赤き瞳が輝かせた


京太郎「究極生命体……」


ゼットライザーにメダルを差し込みブレードをスライドさせる


『Alien Rayblood』

京太郎「ベリアァルッ!」


トリガーを引き、叫んだ


740: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 02:01:32.77 ID:j9yXfN/E0


現れるベリアルが、その勢いのままベムスターの腹に拳を打ち込み、離れた

凄まじい強風、地上の葵が髪を押さえながらそちらを見る

戦闘の余波がほぼない範囲まで距離を取るベリアルとベムスター


葵「須賀がベリアルっ……熊倉さん知ってたなっ!」


だが、それで色々納得するところもある

彼が功績者な理由も―――キーマンと言われた訳も


葵「……お願い」


頷くと、葵はその戦いをもう少し離れたとこから見守ろうと走る

足手まといになるわけにはいかない

自分のため、ではないだろうけれど……塞たちのために戦っているのだ


741: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 02:40:50.52 ID:j9yXfN/E0


倒れたベムスターから離れるベリアル

起き上がったベムスターに、ベリアルは接近して拳を打ち込む

少し怯むも、即座に反撃とばかりに右腕を振るう


ベリアル「グッ!」


振るわれた右腕を、ベリアルが左腕で凌ぐ

すぐに空いている右腕を伸ばして、拳をその腹部に―――


ベリアル『おい止めろ!』

京太郎『へっ!?』


―――突き刺す


京太郎『えっ』

ベリアル『っんのバカが!』


その手ごたえに違和感を感じるがもう遅い

右腕が生温かな感触に包まれている


京太郎『う、腕がくわれたっ!?』

ベリアル『アトラクタースパウト! こいつがベムスターの本当の消化器官だ!』


ベムスターの腹部の口に突き刺さった右腕を引き抜こうとするも、そうもいかない

腕が飲み込まれたそのまま、ベムスターが頭を振るう

ベリアルの肩にそのクチバシが直撃し、火花が散る


京太郎『ぐっ!』

ベリアル『ガッ、おい』


さらにその至近距離で、ベムスターは角から破壊光線を放つ


ベリアル「グアァッ!」

京太郎『くそっ、このままやられっか!』


空いた右腕でエルボーを打つと、ベムスターがわずかに怯む

純粋に耐久力などが高いのだろう

闇の力が強い故なのか、それはわからない


京太郎『だとしても!』

742: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 03:06:24.26 ID:j9yXfN/E0


自由な右腕での打撃の連続

ベムスターがクチバシ攻撃をしかけるために頭を後ろに振るう

だが、ベリアルはその頭を右腕でおさえる


京太郎『こいつでぇ!』

ベリアル『えらい気合い入ってんな!』

京太郎『あんなもん目の前でみりゃあ!』


右腕からの電撃攻撃

ベムスターが叫びながら腹の口を緩める

そこから蹴りを打ち込むと同時に腕を引き抜くと、素早く光弾を放ちつつ後ろへと跳ぶ


ベリアル「シャアッ!」

ベムスター「!!?」


だが、ベムスターはそれを腹の口で吸収してしまう


京太郎『チィッこいつ!』

ベリアル『腹の容量には限界があるがな』

京太郎『だったら!』

ベリアル『今のオレたちにそんな力の余裕はねぇよ!』


その言葉に、顔をしかめる京太郎

だがやれることはある

吸収さえされなければ、戦うことはできる


京太郎『根気勝負とか苦手なんっすよね!』

ベリアル『ケンの奴に足止めされたのを思い出すな……』


接近するベリアルが爪撃を放つ

腹での吸収を回避するために、その攻撃場所は腕や頭だ

だが、ベムスターが今度は翼を振るった


ベリアル「ッ!!?」


その強風により、ベリアルの攻撃の手が止まる

さらに強風を生み出すベムスターが、同時に破壊光線を放つ

直撃を受けて、吹き飛ぶベリアル


ベリアル「ガアァッ!」

743: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 03:14:20.18 ID:j9yXfN/E0


吹き飛んだベリアルだが、即座に起き上がる

さらにベムスターが破壊光線を放つも、それをバリアでなんとか凌ぐ


京太郎『こいつっ!』


破壊光線を凌ぎ切ると即座に光弾を放つが、ベムスターがやはりそれを吸収する

カラータイマーが点滅をはじめた


ベリアル『チィッ! 』

京太郎『ならもう一度接近戦で!』


牽制に光弾を放つと、ベムスターは腹を突きだす

再び吸収―――と思いきや


ベムスター「!?」

京太郎『当たった!?』


怯み、叫ぶベムスターが、突如腹をおさえる

その口部分が、妙な挙動をしていた

違和感に気づく


京太郎『あれ、口が閉じっぱなし?』

ベリアル『なんだ?』

?『べ、ベリアルっ!』


声が聞こえた


京太郎『臼沢塞!?』

塞『はやくっ、私が押さえてるうちにっ……はやくぅっ!』


紛れもない臼沢塞の声に、京太郎は頷く


ベリアル『ハッ、やるじゃねぇか……いくぜ』

京太郎『……おっす!』

744: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 03:31:44.28 ID:j9yXfN/E0


ベリアルが右腕に闇の力を集める

その挙動に気づいたのかベムスターが自らの腹を叩くがなにも起きない

そのまま、ベリアルは腕をクロスさせた


ベリアル・京太郎『デスシウム光線!』


放たれた一撃、それは真っ直ぐにベムスターの腹に直撃

口が開くこともなくそのまま―――爆散


京太郎『ヤキトリだな』ニッ


右腕を振るって首を鳴らす

爆煙の中、光が地上へと落ちていくのを確認すると、ベリアルは空へと飛び去った


それを見ていた宇夫方葵が、走り出す


745: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 03:44:20.47 ID:j9yXfN/E0


地上に降り立った京太郎は、すぐに塞へと駆け寄る

クレーターのようになっている中心に塞は倒れており、メダルもあった

すぐにメダルを拾うと、膝をついて塞の上体を起こす


京太郎『大丈夫そうっすね』

ベリアル『大した奴だったな、この女』

京太郎『ベリアルさんが褒めるなんて、ほんと大したもんですね』


葵「須賀! 臼沢さん!」

京太郎「宇夫方さん」


駆け寄ってくる葵が、塞の傍で膝をつく

意識はもちろんない

それでもホッとしたような表情を見せる葵


京太郎「背負うんで、帰りましょうか」

葵「あ、うん! 精密検査と事後処理班お願いするね!」


そういうとすぐに腕に着いた端末の操作を始める

塞を腕に抱えて立ち上がる京太郎

二人で車の方へと向かっていく


葵「ふぅ」

京太郎「通信終わりましたか」

葵「うん……ああ、それと一つ」

京太郎「はい?」

葵「小瀬川さん助けた時にその抱え方したらもぐから」

京太郎「こっわ……てかラブじゃん」

葵「ライクだよ! 誰がレ だ!」

京太郎「そこまで言ってねぇ……」


746: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 04:08:02.92 ID:dSe4j3eh0


―――【特異課岩手基地:作戦室】


帰ってきた京太郎と葵は座っている

熊倉トシももちろんいた

臼沢塞は精密検査


京太郎「てかわかってて俺と宇夫方さんいかせましたね」

葵「なんで須賀がベリアルなのさ」

京太郎「俺とベリアルさんは色々あったの……」

葵「別人なの?」

京太郎「憑依ってかそんな感じ」

葵「へぇ~」


不思議そうに頷く葵

数分で説明できるようなものでもないと、京太郎は説明を省く

そこにそれほど興味があるわけではないのか葵はなにも言わない


京太郎「ていうかあの感じ絶対バレざるをえなかったじゃないですか、どうして」

トシ「風水的にその方がイイって」

葵「うわ雑にスピリチュアル」

トシ「あと葵に男も悪くないよってことを教えようと」

葵「余計なお世話だよ!」

京太郎「……」

トシ「……」

葵「女好きじゃねぇから!」

京トシ「おー」

葵「感心すんな!」


754: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 22:56:08.19 ID:Ue+h61JQ0
7、辻垣内智葉



―――【特異課岩手基地:屋上】


星々が空に輝く

街の明かりは都会ではないためか少なく、星が良く見える

ベンチに座り、缶コーヒーを飲む


京太郎「んぁ、電話……」


ケータイを出して、名前を見ると通話ボタンを押す


京太郎「もしもし、どうしたんっすか智葉さん」

智葉『あ、その、久しぶりだな……』

京太郎「そうっすね」フッ

智葉『その、何も言わずに行ったから……嫌になったのかと』

京太郎「そんなことないっすよ。なにかあればすぐに跳んでいきますし」

智葉『……知ってる』フッ


ケータイの向こうから聞こえてくる智葉の笑う声に、京太郎も口元を綻ばす


京太郎「そっちは大丈夫っすか? 怪獣とか」

智葉『ああ、そっちは今のところどうにかなってる。今日はメグも取り戻せたし』

京太郎「メガンダヴァンさんが……」

智葉『もしも怪獣が出たら、助けに来てくれるか?』

京太郎「もちろんっすよ」フッ

755: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 23:14:11.39 ID:Ue+h61JQ0


空を見上げる

思い出すのは助けてきた雀士たち

そして、仲間として戦ってきた者達


京太郎「俺は、自分の守りたいものだけを守るんっすから」

智葉『……そ、そうかっ』

京太郎「?」


どこか上ずったような智葉の声に京太郎は小首をかしげる


京太郎「なにはともあれまた行くこともあるでしょうし、連絡頼みます」

智葉『ああ、それと……帰ってくるならすぐに連絡しろ』

京太郎「はい」フッ

智葉『私が一番に迎えに行くから……』


そんな言葉に、京太郎はフッと笑みを浮かべた

そこまでしっかり仲間として認識してくれていたのかと、京太郎も胸の奥が熱くなる感覚を覚える

仲間―――夏の時とは違う、隣で戦うことのできる……


智葉『その』

京太郎「はい」

智葉『わ、私も早く……お前に会いたいっ』

京太郎「へ?」

智葉『そ、それじゃあおやすみ!』


プツッ


京太郎「き、切れた……にしても、一体?」


なんだか、妙な感覚だった

やけに熱のこもった声音で、京太郎は理解できずに小首をかしげる

ともかくだ、今度東京に行ったときには彼女となにかありそうだと、妙な予感を感じていた


756: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 23:23:25.05 ID:Ue+h61JQ0


智葉との電話が終わったあと、基地の廊下を歩く京太郎

トシを探して右往左往していると、ふと見つける

彼女も京太郎を探していたようで片手をあげて近づいてきた


京太郎「そういえばトシさん、俺の部屋って」

トシ「うちを使いな」

京太郎「へ?」

トシ「あたしの家、部屋はあるしね……行くよ」

京太郎「う、うっす!」

トシ「にしても免許持ってないの?」

京太郎「まだ15歳っすよ」


そう口にしつつ、顔をしかめる京太郎


トシ「……そんななりして?」

京太郎「う゛っ!」


760: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/11(月) 23:55:45.88 ID:aUouUeea0
1、松実宥


―――【熊倉家】


トシに連れられて、基地から車で3分ほどのトシの家へとやってきた京太郎

晩御飯を食べた後に、与えられた和室へと入る

布団で横になろうした直前―――ケータイが鳴った


京太郎「ん、今度は……宥さんか」

ピッ

宥『あ、もしもし……?』

京太郎「久しぶりです」フッ

宥『うんっ、久しぶりぃ』エヘヘ


ケータイの向こうから聞こえる久しい声

松実玄が見つかったという話は未だに聞かない


京太郎「……またそっちに行きますね」

宥『うんっ、帰る時も忙しなかったし』


確かに、しっかりとあいさつもできていない


宥『お父さんも心配してたよ?』

京太郎「えーあーまぁ、ありがとうございます……?」

宥『えへへ、また松実館、きてね?』

京太郎「うっす」フッ

京太郎(でも宥さんのお父さん、誤解してるのか外堀埋めにかかってくるんだよなぁ)


761: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/12(火) 00:13:07.13 ID:lsoOa9wt0



宥『それに赤土先生たちも、灼ちゃんも京太郎くんに会いたいって』

京太郎「鷺森さんが?」

宥『うんっ』


どういうことだろう

なにか気になることでもあっただろうか?


京太郎「……俺、なんかしました?」

宥『ううん、やっぱり私たちのために頑張ってくれたから』エヘヘ

京太郎「自分のためっすよ?」

宥『私たちのこと、自分のためだと思ってくれてるんだ』フフッ

京太郎「うっ、そういう……」

宥『京太郎くんのそういうところ、好き、だよ?』

京太郎(うわぁぁぁっ! 好きにされるぅぅぅ!)

宥『だからまた、ね?』

京太郎「はい!」キリッ

宥『それじゃあ、またね……おやすみぃ』

京太郎「おやすみなさい」フッ

プツッ

京太郎「……ふぅ、好きになるとこだったぜ」

ベリアル『お前のことだから胸だけだろ』

京太郎「失敬な!」


762: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/12(火) 00:28:16.56 ID:lsoOa9wt0


―――???


夢の中、そんなことはすぐに理解できた

妙な浮遊感、京太郎はただそこにいた


京太郎「ベリアルさん?」


青いウルトラマンと戦うベリアルの姿がいくつも映る

さらに、ベリアルに似た別のウルトラマンの姿も見えた

歩くベリアル、その背後に並ぶ宇宙人たち


京太郎「……ダークネスファイブ?」


それに、人型の宇宙人もそこにいた


京太郎「あれもまた……ベリアルさんの?」


二本の角を持ったウルトラマン、その横には女性のようなウルトラマン

再び、ベリアルに似たウルトラマン

それにベリアルに似た怪獣


京太郎「っ」


焦燥感、憧憬、様々な感情が流れ込んでくる


京太郎「なんだ、この感じ、どこか……俺と……?」

763: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/12(火) 00:38:58.62 ID:lsoOa9wt0


    第17話【星】 END


772: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/13(水) 23:00:18.99 ID:OQUs+arm0


―――【熊倉家】


あれから二日、特に何事もなく

10月も半ばにさしかかり、スーツ姿もすっかり悪くない環境となってきた

それでも今は―――


ジャラジャラジャラ

京太郎「なぜに麻雀?」

葵「だって情報ないし……」

トシ「当てもなく歩くにはねぇ」


その言葉に、頷く葵


京太郎「小瀬川さんを早く見つけたいんじゃないんっすかぁ?」

葵「そうだけど!?」

京太郎「うおっ、圧が強い」

トシ「グラビティレ 」

京太郎「あ、そういう」

葵「ちげぇから!」


なんだかんだ、基地にいるよりもトシの家にいるほうが長くなっている

情報があれば端末に送られるし、そうでなければなにもない

京太郎は手慣れた仕草で雀牌を並べていく


葵「まぁなにはともあれ」

トシ「やろうか」

京太郎(なら一旦、ほかの場所に行くのが良いかもなぁ)


こうしているのは楽しい、だが……


773: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/13(水) 23:09:20.47 ID:OQUs+arm0


―――少しして


べリアル『おい小僧!』

京太郎「!?」


南三局の三本場、開始直後に声が聞こえた

ハッとする京太郎の手元の牌が倒れる


葵「うわチョンボ……てか国士聴牌ってるし」

トシ「三麻だし多少はね」

京太郎「ってそれどころじゃ!」

葵「え、あ! べリアル……さん?」

べリアル『わかってる女だな』

京太郎「そうじゃなくて!」

べリアル『っと、妙な気配がしやがる』

京太郎「妙な気配?」

べリアル『ああ……!』


立ち上がった京太郎

それに次いで、トシと葵も立ち上がる

べリアルが京太郎だと知っていることもあり、二人とも行動が早い


京太郎「次は……」

トシ「シロか豊音だろうね」

京太郎「ウィッシュアートさんの可能性は?」

トシ「あの子はこの事件が起きる前に一旦、ニュージーランドに帰ってる」

774: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/13(水) 23:18:02.82 ID:n4LTJIQp0


京太郎「え、そうなんっすか?」

トシ「ああ、だから次は……」

葵「小瀬川さんか姉帯さん……!」


気合の入った様子の葵

頷いた京太郎が玄関に向かって歩き出す

ほか二人ももちろん一緒だ


京太郎『べリアルさん、位置は?』

べリアル『わりと近ぇぞ……』

京太郎『……なんでまた』

べリアル『罠かもな、あっちにはメフィラスにテンペラー星人もいる』

京太郎『狡猾なんですか?』

べリアル『姑息で狡猾だ』


そりゃ厄介だと、京太郎は顔をしかめつつも車に乗り込む

運転席に乗った葵と後部座席に乗るトシ

すぐにギアを変えて葵がスーツの内側からしっかりとガッツハイパーに視線を送った


京太郎「撃たなくていい」

葵「え」

京太郎「そういう罪は俺が背負う」


そんな言葉に、葵はふっと笑ってアクセルを踏む


べリアル『かっこつけてんじゃねぇよ』

京太郎『いいじゃないっすかカッコつけたくなる年頃なんっすよ』


バックミラーに視線を向けると、トシが温かく笑っているのが見えた


京太郎『……男なら誰かのために強くなるんですよ』

べリアル『クハハハッ!』


775: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/13(水) 23:20:47.34 ID:n4LTJIQp0


    第18話【絶えぬ執念】


776: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/13(水) 23:32:38.81 ID:n4LTJIQp0


京太郎がべリアルのナビの元、葵をナビする

二度手間的な行為ではあるがいたしかたないだろう

場所はやはり―――雀荘


京太郎「位置は動いてます?」

べリアル『いいや、待ってんじゃねぇか?』


駐車場に車を停めて、三人が降りる

ガッツハイパーを持つ京太郎が、サングラスを外してポケットに入れた

暗い雀荘―――東京の時を思い出す


京太郎『どうっすか?』

べリアル『気配が強いな……』


やはりデビルスプリンターかメダルの力を感じているのだろう

しゃがんだまま、静かに息を吐く


京太郎「……いきます」

葵「了解……!」


トシは後ろで立っているが、頷く

扉を蹴破ってから突入―――しない

開いている扉には、なにもない


京太郎「……」

葵「肝冷やすわぁ」


呟くように言ってから今度こそ突入

転がるように侵入した京太郎が素早くガッツハイパーを構える

そしてそんな彼の背後から葵も銃を構えていた

777: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/13(水) 23:40:16.31 ID:n4LTJIQp0

京太郎「……誰も?」

葵「須賀っ!」

べリアル『小僧ォ!』

京太郎「っ」


殺気を感じて、前に転がる

先までいた場所に―――ナイフが突き刺さった


京太郎「ゾッとした……」


そう言いながら、ナイフが飛んできた方向を見る

そこには―――


葵「っ……小瀬川さんっ」

京太郎「小瀬川白望!?」


白い髪の少女、小瀬川白望がいた

その瞳は虚ろであり、メダルの力で動いているのだと理解できる

だが妙な感覚、それは通常とはまた違う


京太郎(いや、覚えはある……これは)

トシ「操られてる。思考誘導とかその類じゃぁないね」

京太郎「ゆみさんの……エースキラーの時と同じ!」

白望「……」


なにを言うでもなく、白望はいた

右手にハンマー、左手に鎌を持っている

やけに物騒な武装をした小瀬川白望に、京太郎は銃口を向けた


京太郎「ダルそうなイメージなんっすけどね……」

葵「小瀬川さんが、そんな感じなわけない!」


そう叫びながらも、宇夫方葵が構えるガッツハイパーの銃口は震えている

表情一つ変えることなく、小瀬川白望は口を開く


白望「見つけたぞべリアル……エースキラーを倒したぐらいで調子に乗るなよ」

葵「っ!?」

京太郎「コイツっ!」

べリアル『ヤプールか!』

京太郎「ヤプール?」

白望「貴様がいまだ弱いこともわかっているのだ」

京太郎「っ……!」

葵「小瀬川さんの口でべらべらとっ!」

778: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/14(木) 00:09:35.65 ID:gii0zsIM0


それでも、銃口は震えていた

小瀬川白望に向けられるわけがない

憧れていた、その場所にいるべき一人―――


葵「くっそ!」

白望「……ハッ、なんだ小娘」

葵「小瀬川さんの顔で、声でクソみたいな台詞喋んなよっ!」


歯を食いしばって、しっかりと銃口を小瀬川白望に向けた


葵「解釈違いにも程があんだよっ!」

白望「……!」


迷った末に引かれたトリガー

放たれた弾丸は、小瀬川白望に当たることもない

飛び上がって空中へと回避する小瀬川白望に京太郎が銃口を向ける


京太郎「こいつでッ!」

ベリアル『まだいるぞ!』

京太郎「!?」


さらなる殺気に、京太郎が後ろへと跳ぶ

京太郎が元いた場所に火球がぶつかる

爆散する火球、炎の向こうに着地するのは―――小瀬川白望


京太郎「外したっ」

葵「なにあいつっ!」

トシ「そうきたか……」

京太郎「!」バッ


火球が放たれた方向、そちらにいたのは―――宇宙人


京太郎「何者っすか!」

ベリアル『今度はデスレ星雲人か!』


そこにいたのは黒い体に白い骨のようなものを纏った宇宙人

左手は扇型で右手に比べて大きい

そんなデスレ星雲人は、さらに顔部分から火球を放つ


京太郎「っ!」

葵「須賀っ!」


素早く転がって回避すると、出口付近の葵の隣に立つ

779: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/14(木) 00:31:54.28 ID:gii0zsIM0


ガッツハイパーを小瀬川白望に向ける京太郎

葵はというと、デスレ星雲人に向けている

二人が同時にトリガーを引く


デスレ星雲人「しゃらくさい!」

白望「この私にそのような攻撃」


再び跳ねて、小瀬川白望は回避

迫る銃弾をデスレ星雲人は左腕で弾く


京太郎「こいつっ!」

デスレ星雲人「一時撤退するぞヤプール!」

白望「私に指示するな!」

葵「返せよォ!」


さらに放たれた弾丸を、デスレ星雲人は弾き、手を向ける

京太郎が素早くポケットから出したカートリッジを弾く


デスレ星雲人「消えろ!」

葵「っ!?」


放たれた火球、京太郎が近くにあった椅子を勢いよく蹴る

少しでも衝撃を消せるようにと素早くだ

さらに、先ほど弾いたカートリッジを素早くガッツハイパーに装填すると、トリガーを引く


京太郎「っ!」


放たれた弾丸が目の前で小さなバリアを形成する


京太郎「葵っ!」

葵「っ!?」


素早く身を翻し、葵を抱いて背をバリアの方に向けた

火球が爆散してバリアが砕ける

その衝撃を受けて、吹き飛ぶ京太郎

780: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/14(木) 00:47:31.20 ID:7Uf3K40z0


雀荘の外に、葵を抱えたまま転がり出る京太郎

京太郎の腕の中から出た葵が、京太郎の上体をそっと起こす

怪我をしているようで、痛みに顔をしかめながら眼を開く


京太郎「っそが!」

ベリアル『おい小僧、あいつらの気配が消えた!』

京太郎「っ……そりゃ、なによりでっ」

トシ「京ちゃん……」


傍に寄るトシが、京太郎の胸に手を当てる

息をつくと頷いた


トシ「早く基地に運ぶよ」

葵「あっ、はい……ご、ごめん須賀っ」

京太郎「いや、謝ることなんて……痛っ」

葵「須賀、肩貸すからっ」


そう言いながら、葵の肩に腕を回してなんとか起き上がる


京太郎(アイツ、ヤプール……潰すッ!)


781: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/14(木) 01:07:34.37 ID:tuUDOuhC0


―――【特異課岩手基地:休憩所】


ベンチに座って京太郎は静かに、息をつく

顔にガーゼをつけて、頭には包帯を巻いていた

さらに左手は首からかけた包帯で吊るしている


京太郎「……軽傷かな」

塞「重傷でしょ」


隣に座っていた臼沢塞にそう言われて、苦笑する


京太郎「……ですよね」

塞「どうしたの、また……戦い?」

京太郎「階段から落ちて……って言えば信じます?」

塞「信じないけど」


その言葉い、笑う京太郎

そりゃそうだろうと頷くと素早く自分の右手を見る

別に問題なさそうな右手……


京太郎「どうすっかなぁ」

塞「なにが?」

京太郎「ああいや……」


塞は、京太郎がベリアルだということをわかっていない

京太郎と葵が助けようとしたことは憶えているが、そこ以外は曖昧

小首をかしげる塞が、そっと京太郎の顔を覗き込む


京太郎「聞いてます?」

塞「……葵に聞いた。シロでしょ?」

京太郎「はい」コクリ

782: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/14(木) 01:36:55.35 ID:ir9ZAa5S0


その言葉に、塞が苦々しい表情を浮かべた

やはり仲間が敵に回るというのはそういうものなのだろう

いつだって……


京太郎「大丈夫っす、なんとかしますよ」

塞「葵じゃ無理なのに?」

京太郎「だからこその俺でしょ。俺が撃つ……それに」

塞「それに?」


息をついてコーヒーを一口

喉を鳴らして苦味を飲み込むと、口元を綻ばす


京太郎「葵さんにとっての夢らしいですよ」

塞「ゆ、め?」

京太郎「はい、臼沢さんたちがいた場所を取り戻すことが、それを見ていることが」

塞「……そこは一緒にとかで良いのに」フフッ

京太郎「それができる人じゃないっすから」

塞「確かに……シロコンだし」


言いえて妙である


京太郎「ま、なんとかしますよ」

塞「そのさ」

京太郎「?」

塞「いざとなったら、撃ちなよ?」


そんな言葉に、眼を見開く


塞「あっちは、殺しに来るんでしょ?」

京太郎「まぁ、異次元人らしいですし中身」

塞「だから撃ちな」

京太郎「……」

塞「須賀君が死んだらきっと一生後悔する。私も葵も」


死ぬ気なんてない。だが……


京太郎「……それで、シロさんが戻ったら?」

塞「シロが戻ったらきっとシロが苦しむ」

京太郎「わかりました」フッ


歩いていく京太郎、その背中に塞は口を開いた


塞「死んだら、一生許さないからっ!」


無事な右手をあげ応えつつ、京太郎は歩いている


789: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/14(木) 02:10:18.02 ID:XlcxgabG0
(まさかの同数……両方やっちゃうよー


4、瑞原はやり



歩いていた京太郎のポケットのケータイが鳴る

小首をかしげながら、右手でポケットからケータイを取る

画面に表示される名前


京太郎「はやりさん……」ピッ

はやり『あ、もっし~君の愛しの牌のおねーさん、はやりんだよ☆』

京太郎「……」

はやり『あれ、聞こえない?』


その言葉に、京太郎は息をつく


京太郎「はいはい、聞こえてますよ愛しのおねーさん」

はやり『はやっ!? なに恥ずかしいこと言ってるの!?』

京太郎「あんたが言ったんでしょうが」

はやり『まったくもぉ、はやりんはみんなのアイドルなんだから、ダメだよ?』


どこか上ずったようなはやりの声が聞こえる


京太郎「ところで、なんの用で?」

はやり『えー用がないと電話しちゃだめー?』

京太郎「まぁ俺も久しぶりに声聞きたかったし良いけど」

はやり『はやっ!?』

京太郎「声でかっ」キーン

はやり『すぐそーやってぇ!』

京太郎「そうやって、ってなんっすか?」

はやり『なな、なんでもないけどぉ!』


790: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/14(木) 02:20:02.28 ID:XlcxgabG0


なんだか妙だと、京太郎は眉をひそめる

立ち止まって壁を背に、口を開く


京太郎「……え、なんかありました?」

はやり『……なんかあったと言えばあったけど』

京太郎「異変っすか?」

はやり『いやそうじゃなくって……もー』


その言葉に京太郎は小首をかしげる

察して系は苦手である

そういう鈍感さで咲に怒られた記憶もある


はやり『もーなに言おうとしたか忘れちゃったぁ』

京太郎「俺もわかんないっすよ」

はやり『……まぁなにはともあれ、あまり無理しないでよ?』

京太郎「……それは無理っすよ」フッ


そう言う京太郎の怪我を、はやりは知らないだろう

無理も無茶もしないわけにはいかない

前とは違う。使命感等でもない。ただ純粋に自分の望みのためだ


京太郎「ありがと、はやりさん」

はやり『うん、また会いにきてね?』

京太郎「近いうちに、必ず……」

791: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/14(木) 02:38:59.14 ID:XlcxgabG0
7、辻垣内智葉



はやりとの会話が終わって電話を切る

その瞬間、電話が再び鳴った

驚きながらも通話ボタンを押す


京太郎「……智葉さん?」

智葉『あ、京太郎か』ホッ

京太郎「どうしたんっすか……てかタイミング良いっすね」

智葉『かけたの七回目だし』

京太郎「あ、へ……ふ、ふぅん」


少しばかり眉がピクピクと動く


智葉『い、いや友達を心配してだぞ!』

京太郎「わ、わかってますよ」

智葉『わかってなさそう!』

京太郎「心配かけてますからね、はい」

智葉『本当に、わかってるか?』

京太郎「もちろん」フッ


そんな言葉に、智葉はケータイの向こうでクスリ、と笑う


京太郎「そういえば、メガンダヴァンさんは?」

智葉『起きた、そういえば国広一は長野に帰った』

京太郎「え、はやりさんなにも言ってなかったなぁ」

智葉『はやり……瑞原はやりか』

京太郎「はい、世話になってるんで」フッ

智葉『その……』

京太郎「?」

智葉『瑞原はやりとはどういう関係だ?』

京太郎「えっ……あ、いや普通に仲間っすよ!? 普通に!」

智葉『怪しい……』

京太郎「怪しくないって!」

792: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/14(木) 02:46:27.27 ID:XlcxgabG0


京太郎「俺なんかがあの瑞原はやりと親密になれるわけないじゃないっすかぁ」

智葉『お前のような奴の言うことは信用しない』

京太郎「え~そんな上等な男じゃないですってぇ」


そう言って笑う京太郎

ケータイの向こうの声は、少し震えるようだった


智葉『京太郎は……』

京太郎「?」

智葉『そ、それぐらい上等で……かっこいいと、思う』

京太郎「……ふぇっ!?」カァッ

智葉『い、以上! また異常があったら連絡する!』

京太郎「ちょ、智葉さ」プツッ


そしてケータイが消れた

少しばかり赤い顔の京太郎が、そのままケータイをぽっけに突っ込む

後頭部を掻きつつ、京太郎は息をつく


京太郎「……なんだよもぉ」


804: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/16(土) 23:26:12.26 ID:B59WI06F0
1、松実宥


―――【熊倉家:京太郎の部屋】


静かに、息をつく京太郎

シャワーはなんとか浴びて晩御飯も食べ終えた

あとは再び、白望の情報を待つのみだ


京太郎「……」

ベリアル『黄昏てるんじゃねぇよ。そんな暇ありゃ歩け、んで戦え』

京太郎「そうできりゃ……てか鍛えるとかできるんっすか?」

ベリアル『お前が強くなりゃ良いだけだろ』

京太郎「シンプルっすね」

ベリアル『場合によっちゃ麻雀、とかだろ?』

京太郎「ああ、そういう戦いなら……」

ピリリリ

京太郎「ん?」


音を鳴らすケータイを取り出す

その画面に表示されるのは―――


京太郎「宥さんだ」

ベリアル『あの暑がり女か』

京太郎「可愛いじゃないっすか」


そう言いながら、通話ボタンを押す

805: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/16(土) 23:38:18.33 ID:B59WI06F0


京太郎「もしもし?」

宥『あ、京太郎くん?』

京太郎「はい、京太郎です」フッ


おっとりとしたその声に自然と、笑みが浮かぶ


宥『その、元気?』

京太郎「え、そりゃまぁ……」

宥『そのね、私ね……』

京太郎「ん?」

宥『……最近、寒がりになっちゃって』


京太郎(元々では?)

ベリアル(元々じゃねぇのか?)


京太郎「えっと……」

宥『い、いつもよりだよ?』

京太郎「どういう状況ですか」

宥『いま、こたつから出れなくて……ストーブも』

京太郎「本格的な冬になったらどうするんっすか」

宥『ど、どうしよぉ……』

京太郎「ん~」ムムム

京太郎(でも、宥さんの縦セーターなら見て見たいかも)

宥『だから、その……』

京太郎「はい?」

宥『……ふ、不安だから早く、きて?』

京太郎(ああぁぁ!!!! 好きされるぅ! あぶねぇ!)

806: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/16(土) 23:57:55.30 ID:SH76M+3n0

京太郎「あぶねぇあぶねぇ」

宥『なにが?』

京太郎「ああいや、行きますよ……近いうちに」


そう言う、自分の感情がどうとかではない

穏乃や憧、玄や灼に近い彼女になにかあったということは、メダル関係かもしれない

もしくは異星人関係か……


京太郎「絶対」

宥『……うんっ、うれしぃ』エヘヘ


京太郎『やばぁい! 好きになっちゃう!』

ベリアル『うるせぇよ』


宥『ぜったい、きてね?』

京太郎「行きます。穏乃や晴絵さんたちにも会いたいし」

宥『……ぅん』

京太郎「?」

宥『帰ってくるときは、ぜったい連絡してね?』

京太郎「はい……ちゃんと」

宥『絶対、だからね?』


その念の押しように、小首をかしげる


京太郎「はい」フッ

宥『それじゃ、約束……』

京太郎「約束します」

宥『うん、じゃあ……待ってるね』

京太郎「……はい」コクリ


そう言うと京太郎は星空を見上げる

今、やるべきことは一つだ

だが、それでも次にやれることがあるならば……


807: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 00:20:28.23 ID:tLbuMdXB0


―――朝【街中】


その後ろには宇夫方葵と臼沢塞がいる

片手を頭に当てて立ち止まっている京太郎

そんな京太郎の顔を覗き込む葵


葵「なにその顔?」

京太郎「……」

葵「愛しの辻垣内さんとの電話でなにかあった~?」ニヤリ

京太郎「は!? なんで知って! って愛しってなんっすか!?」

葵「おーおー動揺しちゃって」

京太郎「そーいうんじゃないですって、俺が頭抱えてたのは!」


その言葉の直前で、言い淀む

小首をかしげる葵と塞の二人に、京太郎は頭を抱える

溜息をついてから、京太郎は葵の方を向く


京太郎「塞さん、なんでいるんです?」

塞「えー仲間外れ?」

京太郎「なんでトシさんも許可だしてんですか」

塞「……二人だけじゃ気が気じゃないからね」

葵「私も!?」

塞「そ、葵は葵でシロのためなら無茶しちゃうしねぇ」

葵「こ、小瀬川さんのためだし!」

塞「……まぁそこに偽りはないだろうけど」ジト

葵「……レ じゃねぇわ!」

京太郎「はいはい」

葵「だからぁ!」

京太郎「行きますよ」

塞「りょーかい!」

葵「ちょっ!」

808: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 00:36:15.38 ID:SqLuZIrX0


そうして街中を歩いていると、ふと京太郎が立ち止まる

その後ろを歩いていた葵と塞も立ち止まり、京太郎の横から顔を出す


塞「っ」

葵「……」


動揺する塞、顔をしかめる葵

京太郎は眼を細めて目の前の相手を見据える

そこにいるのは―――


京太郎「……和」

和「お待たせしました」


―――原村和


京太郎「待ってねぇよ、今回限りはな」


そう言った京太郎の目の前に現れる原村和

横に立っているのは、小瀬川白望

後ろの二人は顔をしかめつつ、ガッツハイパーを持つ


京太郎「俺は撃てるぞ」


そう言って、ガッツハイパーを真っ直ぐ構えた

瞳に迷いはなく、素早くトリガーを引く

だがその弾丸は小瀬川白望が振るった鎌に弾かれる


京太郎「っ」

和「無駄ですよ」

白望「終わらせるぞ、ベリアル……!」


瞬間、黒く輝き白望の内からあふれ出す闇

そしてその背後に蠢くのはさらに深く憎悪と執念に満ちた闇だ

京太郎はガッツハイパーをしまうと、代わりにゼットライザーを持ちだす

809: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 00:51:19.84 ID:SqLuZIrX0


大きくなっていく闇を前に、葵は塞の腕を取る

引かれたことにより葵の傍に体を寄せる塞

だが、京太郎は―――


塞「ねぇなんで!」

葵「っ……」

塞「葵……?」


顔をしかめる葵に、首をかしげる塞

だが、京太郎は巨大な闇を前に立っている


葵「須賀ぁ!」

京太郎「?」


振り返る京太郎を相手に、葵が手を下から上に振るう

放り投げられたなにかを受け取った京太郎が、そっと手を開く

そこにあるのは……


京太郎「マスコット?」

葵「ガンバルクイナくん! お守り!」

京太郎「お守り?」

葵「あとで返してよ!」

京太郎「……りょーかいっす」


そう言う京太郎の返事を聞くと、頷く葵

二人が去って行く

ただ一人残った京太郎が見上げる闇が巨大になっていく


810: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 01:03:58.53 ID:SqLuZIrX0

―――【特異課岩手基地:作戦室】


一人残っている熊倉トシ

その隣に座っているのは―――鹿倉胡桃

インカムをつけたままキーボードを叩く


トシ「……」

胡桃「塞と葵、撤退済み……あと須賀も」

トシ「そうか、あの闇は?」

胡桃「ちょっと待って」


そう言うと、素早くキーボードを叩く

映像の闇が個体となって形を形成していくのが見える

横にはそのデータなどが表示されていく


胡桃「これ……出てくるっ」

トシ「っ!」


闇が巨大な怪獣へと変わる

頭部には剣、右手にハンマー、左手には鎌

その怪獣。否、超獣は―――


トシ「きたね殺し屋超獣!」


―――殺し屋超獣バラバ

812: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 01:09:07.29 ID:SqLuZIrX0


咆哮をあげる殺し屋超獣バラバ

京太郎は、ゼットライザーを構えて頷いた

その口元に浮かべるのは笑み


ベリアル『ハッ、小僧いつからそんな好戦的になった?』

京太郎「戦うのが楽しいわけじゃないっすよ。ただ―――」

ベリアル『あぁ?』


トリガーを引くと、正面に現れるゲート


京太郎「夢に、近づくっぽいです」

ベリアル『夢だぁ?』

京太郎「はい、ベリアルさんにはあります?」

ベリアル『ねぇよ。そんなもん』

京太郎「……俺にも夢はない」


一歩一歩、進んでいく

ヤプール人が中にいるというバラバの視線を受けながら、京太郎はゲートへと歩む


京太郎「でも、夢を守ることはできる……から!」


813: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 01:22:57.74 ID:SqLuZIrX0


街中に現れた殺し屋超獣バラバを、突如として暗い光が打つ

後ろへと怯むバラバを前に、暗い光が漆黒の闇を纏い姿を現す


バラバ『ベリアルぅ……!』


目の前の漆黒の闇を纏いし巨人、ベリアルにバラバが殺意を向ける

ベリアルは首を鳴らしながらバラバを見据えた


京太郎『恨みかってるらしいっすよ。何個目っすか?』

ベリアル『ハッ、今更数えきれるか』

バラバ『ベリアルゥ!』


右腕のハンマーを振るうバラバ

その先についたアンカーがチェーンにつながれ伸びる

それをベリアルは上に飛んで回避すると、素早く光弾を放つ


バラバ「!!?」


その光弾をうけて、バラバが怯む

さらに上空から蹴りを放つベリアル

それを受けて、さらにバラバは怯んだ


京太郎『厄介だけど……』

ベリアル『オレにはなァ!』


接近するベリアル

振るわれる鎌を爪で凌ぐと、もう片手の爪で斬撃を放つ

それを受けたバラバがさらに後ずさった


京太郎『俺達ならぁ!』

ベリアル「ハッ……ハァッ!」


さらに、膝蹴りを打ち込んでから拳を打ち込む


814: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 01:43:50.06 ID:/qcDEUiW0


その拳によってバラバが怯む

だが、ベリアルは攻撃の手を緩めない

数々の戦い、闇を受け入れるということ―――それらを持ってベリアルは


京太郎『さっきの闇は、取り込ませてもらった!』


闇のオーラがその拳に宿る

そして放たれた一撃がバラバの巨体を吹き飛ばす

吹き飛んだバラバはそのまま倒れるも、すぐに起き上がり頭部の剣を射出する


ベリアル「! ハァッ!」


放たれたその剣を、爪で弾く


バラバ『まだだぞベリアルぅ!』

ベリアル『しつけぇ野郎だ!』

京太郎『俺達であればなァ!』


弾かれた剣は、バラバの思いのままに動く

ベリアルの背後から迫る剣が、バラバの背中に斬撃を放つ

ひるむベリアル


京太郎『ぐっ、でもなぁ……!』


倒れることなく、前に走る

ベリアルが接近するとバラバはアンカー伸ばした右腕を振るった

伸びるアンカーがベリアルを襲う


ベリアル「ハアァッ!」


だが、即座に爪撃を放ちアンカーを弾く


ベリアル『オレの本来の力ももどってきたぞぉ!』

京太郎『これなら、闇だろうが光だろうがァ!』

バラバ『闇に堕ちた……ウルトラマンがァ!』

815: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 02:01:20.27 ID:fvMq2ZPZ0


ベリアル『闇に堕ちた? ナマ言ってんじゃねぇよ!』

京太郎『闇だって使うだけだろ、力を手に入れるためならァ!』


バラバの、振るわれた鎌を受けるベリアル

だが怯まない、後退りもしない

ただその場で、腕を振るった


バラバ「!!」


爪撃に怯むバラバ、だがさらにバラバが反撃をしようとする

だが、ベリアルはそのまま拳を打ち込む

追撃に次ぐ追撃によってさらに怯んでいくバラバ


バラバ『一度、距離をっ!』

ベリアル『距離なんてなぁ!』

京太郎『これで、終・わ・り・だァァァッ!』


振るわれた鎌を、暗い光と赤い稲妻が宿った右腕で弾く

そして、両腕を十字の形に構える


ベリアル・京太郎『デスシウム光線ッ!!』


放たれた光線が、超至近距離でバラバを撃つ

その光線はバラバを貫く


バラバ「!!?」

京太郎『うおぉぉぉ!』

ベリアル『消え去れェッ!』


バラバの両目が、飛びだす


ヤプール『ベリアルぅぅぅぅ!!!』


そして―――爆散

816: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 02:14:51.63 ID:fvMq2ZPZ0


爆煙渦巻く中、イエローに輝く瞳

腕を振るい爆煙を張らすベリアルが、そこにはいた

右腕を振るって首を鳴らすと、目の前に落ちていく光を見つめる


ベリアル「……」


その光は地上へと落ちる

小瀬川白望が眠っていた

駆け寄る葵と塞を見て、頷く


京太郎『守れたみたいっすよ。俺にも……』

ベリアル『そうかよ……いくぞ』


空へと飛び去って行くベリアル

地上の葵は、白望を抱き上げたまま空を見上げ強く頷いた


817: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 02:29:45.73 ID:sPOr8mxI0


―――【特異課岩手基地:作戦室】


気の抜けたような表情で、京太郎は息をつく

ホットコーヒーの湯気はすでに出ていない

そこにいたトシは深く息をつく


京太郎「……はぁ」

胡桃「気の抜けた顔しない!」ビシッ

京太郎「厳しいっすね」

塞「まぁ、京太郎も頑張ってくれたみたいだから、ね?」

胡桃「……そうなの?」

塞「まぁほとんどベリアルらしいけど、てかよくあそこに残ったね京太郎」

京太郎「勝てる見込みあったんですけどね」アハハ


そういう京太郎の顔を見て、小首をかしげる塞と胡桃

立ち上がった京太郎が背を伸ばす

手に持っているのはガンバルクイナくんのストラップ


塞「ん、もういく?」

京太郎「はい……長野、なんかあるっぽいんで」

塞「そっか」

胡桃「……ありがと」

京太郎「いいえ」


そう言って笑うと、荷物を確認する


トシ「送ってく……とりあえずガレージで待ってるね」

京太郎「?」

トシ「葵にも挨拶してきな」

京太郎「……了解です」フッ


818: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 02:41:41.78 ID:sPOr8mxI0


歩く京太郎が、休憩所付近で葵を見つけた

向こうも京太郎に気づいたようで笑みを浮かべて片手をあげる

向かっているのは出口の方だ


京太郎「これから帰りですか?」

葵「……まぁね」

京太郎「俺もっす」

葵「もう行くんだ」


その言葉に頷くと、そっと手を差し出すその掌には―――


葵「ありがと、ガンバルクイナくん」

京太郎「効果覿面でしたよ。ベリアルとバラバに踏み潰されずに済みましたし?」

葵「はいはい」


彼の手の中にあるストラップを勢いよく取る葵

そしてストラップを握りしめた葵は、京太郎の胸に拳を当てる

笑みを浮かべて、頷く


京太郎「?」

葵「頑張って、あんたのおかげであたしの夢……かないそうだから」

京太郎「うっす、そっちも……早く帰ってくるといいですね。エイスリンさん」


そう言うと、去って行く京太郎

819: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 02:55:33.83 ID:sPOr8mxI0


京太郎の背中が見えなくなると同時に、葵が膝をつく

顔をしかめて、自らの胸部分を押さえる

そこから僅かに滲みだすのは―――闇


葵「ぐっ……さっさとここ、離れないとっ」


漏れだす闇に蓋をするように胸を押さえる葵


葵「っ……はぁっ、はぁっ」


立ち上がると、一歩ずつ歩き出す

一刻も早くその場から去るために……


820: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 03:02:59.56 ID:sPOr8mxI0


ガレージへとたどり着いた京太郎

先に車に乗っていたトシの助手席に座る


京太郎「ありがとうございます」

トシ「いや……こっちこそありがとう」


その言葉に、笑みを浮かべて頷く京太郎


京太郎「……だって、ベリアルさん」

ベリアル『あ? なにがだ?』

京太郎「お礼ですって」

ベリアル『……んなもんどーだっていい』


その言葉に苦笑する京太郎は、トシの方を見る

表情で察したのか、トシも苦笑を浮かべた

闇を手にし、ベリアルと共に歩む京太郎


トシ「奴もいずれ……いや、どうだかね」

京太郎「?」

トシ「いや、いくよ」

京太郎「はい……」

トシ「長野―――」


―――始まりの地へ


821: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 03:09:28.32 ID:sPOr8mxI0


    第18話【絶えぬ執念】 END


822: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 03:25:36.18 ID:sPOr8mxI0


―――次回予告


京太郎:しつこいんだよ!

和:お互い様です

ベリアル:レイキュバスか!

?:氷塵と朽ち果てろ

京太郎:長野に海はねぇんだよぉ!

久:闇と光……!


次回【終わりがはじまる日】


ベリアル:じゃあな

京太郎:ベリアルさんっ!?


827: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 22:59:16.57 ID:lw2RnXgb0


故郷へとたどり着いた京太郎

左手を確認して、それほどない違和感に頷く

心配をかけるわけにもいかないと、体の動作を確認した


京太郎「さて……このへんも久しぶりだな」

ベリアル『ずいぶん復興が進んでるみてぇだな』

京太郎『そうっすね。しかしまぁ、あのあとも戦いが何度もあったらしいですけど』


今いるあたりはかつてベムラーと戦った場所だ

その周囲は復興が進んでいるが、それ以外の戦場ではどうなっているかわからない


京太郎『とりあえず行きましょう』

ベリアル『迎えは?』

京太郎『一応、くるとは聞いてますよ。実家に来てくれるらしいんで一度帰りますけど』

ベリアル『お前の家、ねぇ……』

京太郎『初めてでしたっけ?』

ベリアル『まぁな』

828: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 23:15:45.26 ID:LArrACE50


歩いて、自宅へと帰ってきた京太郎

財布に入っている鍵を使ってドアを開けて入る

変わらぬ雰囲気、匂い


京太郎「……ただいま」


息をついてそう言うと、ほっとしたような表情で靴を脱いで中に入る


ベリアル『普通だな』

京太郎「裕福な方っすよ」

ベリアル『ハッ、ぼんぼんか』

京太郎「そこまでじゃないっすけど……」


言いながら、居間などを見回る

別段問題はないようで、京太郎は次に階段を上って行く


京太郎「親父の部屋へ行きます」

ベリアル『ゼットライザーを持ってたとかいう親父か?』

京太郎「はい、盗ったらしいっすけど」


苦笑しながらそう言う京太郎


ベリアル『相変わらずのザル警備だな、光の国』

京太郎「光の国?」

ベリアル『ウルトラマン共が住んでる星だ』

京太郎「……ベリアルさんも?」

ベリアル『昔はな、オレもあそこから盗んだり、あそこを襲ったりしたしな』

京太郎「え~」

ベリアル『滅ぼす一歩手前までいったもんだ』

京太郎「……やることやってますね」


829: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 23:37:49.07 ID:LArrACE50


階段を上り、廊下を歩く

父の書斎を前に、ドアノブに手をかける

ふと妙な感覚を覚えて、扉を開く


京太郎「ッ!」

ベリアル『こいつは……』


書斎には―――1人、いる


京太郎「……しつこいんだよ!」


目の前にいるのは、須賀京太郎の顔をした男

曰く、彼自身……


京太郎?「そう言うなって、俺の家に俺がいるだけだろ?」

京太郎「気安く俺の家とか言うな」


そう言いながら、ガッツハイパーを構える京太郎

本を持ったまま、京太郎(?)は京太郎へと近づいていく

迷いなく引かれたトリガー、放たれた弾丸は京太郎(?)に当たることなく―――床にぶつかる


京太郎?「脚を撃つか、尋問目的か?」

京太郎「調べてもらわなきゃだろ」

京太郎?「冷静なこった……なぁ!」


投げられた本、それが視界を覆うもすぐに右手で本を払いのけてガッツハイパーを構えた

だが、そこには誰もいない

投げられた本すら存在せず、床に弾痕だけが残されている


京太郎「……なに?」

ベリアル『おい小僧、奴は……』

京太郎「え、あ……すみま、せん」


そう言うと頭を振るう


京太郎「あいつ、一体……」

ベリアル『さぁな』


顔をしかめて、京太郎は父の書斎の机へと歩く

830: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/17(日) 23:50:35.60 ID:LArrACE50


ゼットライザーの入っていた金庫を開ける

だがやはり、そこにはなにもない

顔をしかめて他の引き出しを開けるも―――


京太郎「なんもない?」

ベリアル『そもそもお前の父親ってのはなんだ? 地球人じゃねぇのか?』

京太郎「いや、普通の親父だったように見えましたけど」

ベリアル『ヒューマノイドタイプってのもなくはねぇが、もしかするかもしれねぇぞ?』

京太郎「……トシさん曰く、ウルトラマンになりたかったらしいじゃないっすか?」


その言葉に、ベリアルは黙る

やはりベリアルには『ウルトラマンになりたかった』という思考が理解できないのだろう

今となっては京太郎は“なれない”という思考に至っているので別段思うことは特にない


京太郎「……」

ベリアル『で、なにが調べたかったんだ?』

京太郎「なんかあると思ったんですけど」

ベリアル『……』

京太郎「いっか、また戻ってくれば……」


そう言って、京太郎は苦笑を浮かべた


京太郎「ベリアルさんが、ちゃんと分離できる方法とかあるかもしれないし」

ベリアル「そりゃ魅力的なこったな」


833: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/18(月) 00:21:50.28 ID:WkXeW+pz0
8、瑞原はやり



家の前、立っている京太郎

見慣れた車が走ってくると前で止まる

窓が開くと……


京太郎「久しぶりっす」フッ

はやり「ほんとだよ、まったく」クスッ


瑞原はやりがそこにいた

電話で連絡はしていたが実際に会うともなればまた別だ

助手席に乗り込むと、息をつく


はやり「美穂子ちゃんたちも会いたがってるよ?」

京太郎「あはは、そりゃ嬉しいことで」

はやり「一ちゃんも、お礼言いたいってさ」

京太郎「国広さんか……」


なんだか妙な感覚だった

遠くから見ているだけと思っていた咲たちの好敵手たち

その面々から自分が認知されているというのは……

走り出す車、黙っている京太郎


京太郎「……」

はやり「……また無茶したでしょ?」

京太郎「っ、な、なんでまた?」

はやり「女の勘だゾ☆」

京太郎「咲にもそれで何度看破されたことか」アハハ…

はやり「咲ちゃん、かぁ」

京太郎「はい」フッ

834: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/18(月) 00:34:54.48 ID:WkXeW+pz0


はやり「うらやましいなぁ」

京太郎「ん?」


横を見るが、はやりは前を向いて運転をしている

不思議に思い首をかしげるもそれは伝わっていない


はやり「……私が、京ちゃんと同じ歳だったらなぁ」アハハ

京太郎「変わらないっすよなにも」

はやり「え~変わるよ~」


不満そうにそういうはやりがどこか可愛らしく見えて、笑う


はやり「アイドルのはやりを一人占めできるかもだゾ☆」

京太郎「いえ、それはちょっと」

はやり「即答!!?」

京太郎「はやりさんはみんなの牌のお姉さんっすからね」フッ

はやり「……そんなこと言ってるとはやりが30代になっちゃうんだよ!!?」クワッ

京太郎「え、はい」


なんだか、苦しそうな表情をしている


はやり「30代はまだしも……後半なんて」

京太郎(アイドルじゃ別に不思議じゃないんじゃ……?)

はやり「はやりは辛い、耐えられない!」

京太郎「あ、はい」

はやり「……だから、ね?」ニコリ

京太郎「……?」

はやり「あ、ダメなやつだこれ」トオイメ

京太郎「?」


835: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/18(月) 00:49:13.60 ID:WkXeW+pz0


    第19話【終わりがはじまる日】


840: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/18(月) 23:12:42.77 ID:Uxesuh7C0


―――【特異課長野基地】



はやりに着いて歩く京太郎

離れて短いながらも、その懐かしさに感慨深さを感じる

作戦室の扉が開かれると、はやりに続いて京太郎が入った


京太郎「お久しぶりです」


そこにいたのは福路美穂子をはじめとする風越高校の面々と鶴賀学園の面々

さらに、国広一と竹井久

京太郎自身は見知っている顔だ……


美穂子「京太郎っ!」パァッ

ゆみ「おかえり」フッ

桃子「京さんっ!」

京太郎「ただいま」


そう言いながら、椅子に座る

自身が倒した池田華菜と目が合う


華菜「……」

京太郎(睨まれてる? なぜ?)

華菜「須賀ぁ……キャップ、キャップが……」

京太郎「はい?」

華菜「キャプテンがお前の話ばっかするし!」シャー!

京太郎(しらんがな)

美穂子「か、華菜! やめなさいっ」

華菜「この野郎キャップとなにをした!」

京太郎「いやなにも」

美穂子「な、なにもないからっ、京太郎とは……ね?」

京太郎「あ、はい」

華菜「なんかあった顔してるし!!?」

桃子「ちょ、匂わせはよくないっすよ!」ビシッ

美穂子「えっ、そ、そんなんじゃっ」

841: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/18(月) 23:19:55.19 ID:BQw4eozZ0


京太郎「なんの話っすか」

ゆみ「相変わらず人気者だな」


そう言うゆみに小首をかしげる

これまで人気者だったことが一度でもあっただろうか、ハンドボールやってた時ぐらいのものだ


末春「あはは、須賀くんも中々……」

睦月「うむ」コクリ

星夏「さすが特異課のエース」

純代「怪獣を何頭も撃ち殺してるとか」


おそらく噂が独り歩きしてるのは確定だろう


智美「ワハハ、とりあえずはじめないか?」

佳織「智美ちゃん、誰もきいてないよ」

智美「ワハハ……」

一「えっと、もうちょっと落ち着かない?」

久「同意……てか須賀君、あなたね」

京太郎「俺のせい?」

久「うん」

京太郎「えぇ~」


不満そうな表情をする京太郎に、眉をひそめる久

どこか、拗ねているようにも見える


はやり「まぁまぁみんな! 京ちゃんははやりんのだか落ち着いてネ☆」


瞬間、空気が凍る


はやり「え?」

京太郎「なにはともあれ会議はじめましょ」

はやり「あ、はい……」

842: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/18(月) 23:37:11.91 ID:jrvgveco0


面々がテーブルを中心にして座る

待っていると、入ってくるのは―――


裕子「お久しぶり」

京太郎「裕子さん!」

裕子「ん、みんな揃ってるようね……熊倉さんは?」

京太郎「まだやることあるって岩手です」

裕子「……そう」


そうとだけ答えると、佐藤裕子はそのままキーボードを前にした席に座る

全員がモニターの方に顔を向けた

そこに映る映像は監視カメラのようで―――


京太郎「これは、路地裏?」

裕子「各地の雀荘周辺には最近、設置してるの」

京太郎「こういうのある程度文句とかきそうっすけど」

ゆみ「まぁ現状、致し方なしだな……」

桃子「怪獣災害も増えてるっす」


その言葉にうなずいて、裕子はさらにボタンを押す

監視カメラの映像が動いていくと人間が奥からやってくるのが見える


京太郎「これは……和と咲」

ゆみ「そういうことだ……」

一「宮永咲っ……」

久「咲のせいじゃないわよ」

一「わかっているけど、どう呼べばいいのさ」

久「……確かに、ね。嫌なことだけどそう呼ばざるをえないのか」ハァ

京太郎「部長……」

久「なにはともあれ、見つかったのよ。二人が……」


やることは決まっている

だが……


京太郎「俺がみつけても麻雀、付き合ってくれねぇんだよな」ハァ

美穂子「わかってるわ。それに異星人を差し向けられて逃げられる場合も多いし」


843: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/18(月) 23:45:41.29 ID:jrvgveco0


京太郎「……それでも、やることは一つっす」


その言葉に、頷くはやりと美穂子

わかっているからこそ、理解しているからこそだ


京太郎「ぶっとばしてでも連れ帰る」フッ

ベリアル『ハッ、良いじゃねぇかわかりやすい!』


末春「や、野蛮だねぇ」

純代「でも、理にかなってる」

星夏「というよりそれしかない、ですね」フム


京太郎は自らの手を見る

幻視するのは漆黒の手、ベリアルのその手

真っ直ぐモニターの方を向けばそこには、その手で倒すべき相手


京太郎「場所は?」

裕子「数件の目撃情報があるけれど、どれも……清澄高校の近く」

ゆみ「帰巣本能か?」

はやり「そんな可愛いもんじゃないよ」

京太郎「挑発してるんですよ。たぶん……向こうも準備が整ったってことでしょ」


そう言って立ち上がる京太郎


はやり「……」

佳織「あ、でも怪獣が出てきちゃったらどうしよう……また、ティガが来てくれるかなぁ?」

智美「ワハハ、ウルトラマン頼りはよくないぞー……そろそろベリアルあたりが来てくれ」

ゆみ「お前もウルトラマン頼りか」コツ

智美「確かに」ワハハ


京太郎『ウルトラマン、ですって』

ベリアル『ハッ、呼びたきゃ好きに呼ばせとけ……』


美穂子「やれるだけやりましょう。人の力で、でも」

華菜「キャップの言うとおりだし!」

京太郎「……ですね」フッ

844: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/18(月) 23:55:32.01 ID:jrvgveco0


会議が終わって、京太郎は休憩所でコーヒーを飲んでいた

それぞれパトロールに行ったり、情報を待つために作戦室に残ったりだ


京太郎(俺だけ暇してるなぁ)

ベリアル『情報が来りゃまっさきに向かってやりあわなきゃなんねぇんだ、大人しくしてろ』

京太郎『俺の思考漏れてました?』

ベリアル『でなくてもわかる』


そんな言葉に、苦笑を浮かべる

すっかり相棒という感じだ

まぁベリアルに言えば拒否されるのだろうけれど―――


京太郎「……」ズズッ

一「須賀、くん」

京太郎「へ? ああ、国広さん」


ガンQ、いや魔頭鬼十郎に憑依されていた彼女

フリルのついた服を着てそこにいる


京太郎「……」

一「……いや、肌寒い季節だし厚着だよ」

京太郎「いや別になにも言って」

一「眼は口ほどにモノを言うんだよ」

京太郎「顔じゃ?」

一「ほらボクって目玉の化け物だから、ちょっとかけてみた」

京太郎「……」

一「冗談だって、真面目な話ありがとうって……言いそびれたからさ?」

京太郎「いや、別に……俺はお礼をされるようなこと」

一「戦ってくれたんでしょ? 聞いたよ、雀さんに」

京太郎「明華さん……」

一「だからね」


そう言って軽く笑みを浮かべる国広一


京太郎「……はい」フッ


845: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/19(火) 00:04:14.12 ID:XdG4uEGV0


基地内を歩いていると、前から見慣れない人物が歩いてくる

見たことがないわけではない。ただ見慣れないだけだ

先ほどはいなかったが……


京太郎「久保、貴子さん?」

貴子「んぁ? 須賀京太郎……そっか、戻ってたんだっけ」

京太郎「ああ、どうもです」ペコ

貴子「こちらこそ、お礼がまだだった……ありがとう」


そう言って頭を下げる貴子を相手に、京太郎は動揺する


京太郎「い、いいですって!」

貴子「いや、私だけじゃなくて、私の生徒たちもたすけてくれたからな」

京太郎「それでも、頭を上げてください。みなさんは俺の仲間を救うために戦ってくれてるんですし」

貴子「……」


頭を上げる貴子が、フッと笑みを浮かべた


京太郎「……今後とも、お願いします」

貴子「ああ、この礼はかならず返す……結果でな」ニッ

京太郎(こんな女教師が許されるんですか!?)


846: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/19(火) 00:23:00.20 ID:sYvGwwVG0


貴子と別れて歩く京太郎

目的地など特にはないのだが、なんとなく足を運んだのは前にババルウ星人と戦った部屋

巨大な機械が置いてあるが不思議とそれは、邪な気配を感じる


京太郎「……なんなんですか、これ」

ベリアル『おそらくだが、メダルを製造するもんだな』

京太郎「メダルを?」

ベリアル『ああ、怪獣の素材を入れてその怪獣メダルを製造するもんだ』

京太郎「なっ! なんでこんなものっ」

ベリアル『さぁな、あのばあさんがなにを考えてるのかわかんねぇが……』


目の前にあるのは怪獣メダルを生成するもの

そんなものが必要になるとは思わない……

ならばなぜ、彼女はそんなものを作ったのか


京太郎「トシさん……」

ピピピピピピ

京太郎「っ!」


手首についている端末が音を鳴らす

即座にそれを開いてボタンを押すと、声が聞こえた


裕子『原村和を発見しました!』

京太郎「行きますッ!」


847: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/19(火) 00:31:15.10 ID:sYvGwwVG0


走る京太郎

ガレージへとたどり着くと、車がある

運転席には―――


京太郎「はやりさん!?」

はやり「はやく!」

美穂子「行きましょうっ!」

京太郎「……はい!」


素早く、助手席へと乗り込む

運転席のはやりが勢いよくアクセルを踏むと、車が走り出す

目的地は……


京太郎「清澄の近く、か」チッ

美穂子「私も戦う……たぶん、すぐに戦うことになるでしょうし」

京太郎「まぁそりゃそうっすね。まともに麻雀でやり合うなら俺達である必要もない」


懐から、ゼットライザーを取り出す


京太郎「ベリアルさん……アイツらは」

ベリアル『今までのどいつよりも強ぇだろうな……』

京太郎「でも俺達なら」グッ

848: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/19(火) 01:01:37.64 ID:sYvGwwVG0


大通りのど真ん中に、原村和はいた

その前に、ドリフトして止まる車

そこから出てくるのは京太郎、はやり、美穂子の三人


和「……きましたか」

京太郎「テメェ、今日こそ潰す!」

和「お互い様です」


そう言う原村和に立つのは―――


京太郎「天江衣!?」

美穂子「龍門渕さん!?」


―――天江衣と龍門渕透華の二人


京太郎「っ」

和「さて……スヒューム」


天江衣が邪悪な笑みを浮かべ、指を鳴らした

その瞬間、龍門渕透華の胸の中心から黒い闇が溢れだす


衣「さぁ、沈め人類!」


闇は透華を包み込み、巨大な影を形成していく

天江衣と原村和の二人を巻き込まないためか、少し離れた場所に現れる怪獣

蟹のようなその姿……


ベリアル『レイキュバスか!』

京太郎「あれはっ!?」

衣「氷塵と朽ち果てろ!」


巨大な蟹型怪獣が咆哮をあげた


衣「地球を水の星にする……そして、私たちの星にする! まずはここからだ!」

京太郎「長野に海はねぇんだよぉ!」


849: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/19(火) 01:17:06.56 ID:sYvGwwVG0


背後の美穂子が、素早くスパークレンスを取り出す

京太郎もゼットライザーを手にするも、目の前の原村和が手から波動を放つ

顔をしかめつつ、トリガーを引いた


はやり「京ちゃん!?」

京太郎「クソっ!」


吹き飛ばされる京太郎の背後に現れるゲート

その勢いのまま、京太郎はゲートへと吸い込まれた

フッと、笑みを浮かべる原村和を前に、美穂子は眼を鋭くする


美穂子「あなたは、京太郎をッ!」

和「あとはよろしくお願いします」

衣「ふん、至極当然」


850: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/19(火) 01:24:45.61 ID:sYvGwwVG0


―――【インナースペース】


転がる京太郎が、その勢いのまま起き上がる

両足と右手を地につけてしっかりと止まると、立ち上がって前髪を払う

左手のゼットライザーを持つ手に力がこもる


京太郎「ベリアルさん!」

ベリアル「あぁ、オレたちを見下した奴だ……ぶっ潰す!」

京太郎「はいッ!! 速攻で決めます!」


右手持ったアクセスカードを挿入


『キョウタロウ・アクセスグランテッド』

京太郎「レイブラッド星人!」


メダルを弾くと、周囲に広がる闇

落ちるメダルを右手で取ると、赤き瞳が輝く


京太郎「究極生命体……」


ゼットライザーにメダルを差し込みブレードをスライドさせる


『Alien Rayblood』


トリガーを引く

851: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/19(火) 01:29:32.25 ID:sYvGwwVG0


美穂子が、腕を回してスパークレンスをかかげる

はやりは素早くその場から車を走らせ離れていく


美穂子「ティガぁ!!」


京太郎「ベェリアァルッ!!」



そして光と闇の二色と共に現れる二体の巨人

レイキュバスを前に構える

ベリアルとティガ


852: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/19(火) 01:38:44.14 ID:sYvGwwVG0


二体の巨人を見上げる天江衣ことスヒューム

その影の形がクラゲのような生き物に変わる


衣「闇に堕ちた巨人と、闇から光に還った巨人」


笑みを浮かべつつ、その手に三つのメダルを持つ


衣「……ゴルザ、メルバ、超ゴッヴ」


三種類のメダルを天江衣は吸収する

そして胸から闇を溢れさせていく

瞳が輝き、巨大な闇を形成していった


衣「さぁ、終末の時だ……!」


現れるのは、強大な闇


―――トライキング



853: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/19(火) 02:08:17.12 ID:sYvGwwVG0


ベリアルとティガの前のレイキュバス

そこからさらに現れるトライキング


京太郎『あいつ、合体怪獣!?』

ベリアル『ゴルザ、メルバ、超コッヴの合体怪獣か!』


その言葉に、京太郎は顔をしかめる

レイキュバスが赤い目を輝かせながら火球を放つ

トライキングは腹部から拡散ビームを放った


ベリアル「ジャアッ!」

ティガ「タッ!」


二体の巨人が横に転がって回避する

起き上がると同時に、二体は光弾を放った

それを弾くレイキュバスとトライキング


ベリアル「シャアッ!」


レイキュバスへと接近したベリアルが爪を振るう

だがレイキュバスも爪を振るい、斬撃を相殺した


京太郎『チィ!』

美穂子『京太郎!』


ティガ「フンッ……チャアッ!」


パワータイプへと変わったティガがレイキュバスを殴りつける

怯んだレイキュバスへすかさず光弾を放つベリアル

ティガが追撃で光弾を放つも、その背後に迫るトライキング


ベリアル「ハアッ!」


だがそんなトライキングを膝蹴りで怯ませると、即座に爪を振るった

それを受けて僅かに怯むトライキングだが、即座に頭部から超音波攻撃を放つ

ベリアルはバリアでそれを凌ぐ


レイキュバス「―――!」

美穂子『京太郎っ』


レイキュバスの目が青く変わると、冷凍ガスを放つ

それを受けたティガが、怯む

トライキングの音波攻撃をバリアで凌いだベリアルがレイキュバスを相手に両腕を振るう

854: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/19(火) 02:14:59.98 ID:sYvGwwVG0


ベリアル・京太郎『デスシウムリッパー!』

レイキュバス「!!?」


放たれた斬撃がレイキュバスを弾き飛ばす

切断までに至らないのはそれほどの強さだから、だろう

冷凍ガスの攻撃を免れたティガはベリアルへと頷き、さらにタイプをスカイタイプへと変化させる


トライキング「!」


スヒューム『消えろベリアル……!』

ベリアル『オレを誰だと思ってんだ。テメェ如きがそんな言葉言っていい相手じゃねぇんだよぉ!』

京太郎『ベリアルさんと、オレを……舐めるなァ!』


振るわれた拳、を受けてトライキングが怯む


スヒューム『やはり、三つでは……!』

ベリアル『さっさとやるぞ小僧!』

京太郎『当然ッ!』


トライキングへの攻勢を強めるベリアル

一方のティガは、レイキュバスの冷凍ガスを飛んで避けると背後へと着地

背中を向けたまま両腕にエネルギーを溜め、右手に集める


美穂子『ランバルト光弾で!』

ティガ「チャアッ!」


振り返ると同時に放ったランバルト光弾がレイキュバスの背中に直撃する

大きく怯んだレイキュバスが振り返り、眼を赤く変えた

口から放たれる火球を、パワータイプに変わったティガがバリアで凌いだ


京太郎『強くなってる……!』

ベリアル『ハッ! オレ達ほどじゃねぇがよくやる!』


855: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/19(火) 02:25:35.12 ID:sYvGwwVG0


トライキングを爪撃で怯ませると、素早く後ろへと下がる

同じく下がってきたティガが背中合わせになった


ベリアル『まさか……おい!』

美穂子『え、私ですか!?』

ベリアル『テメェ、レイキュバスを倒すな!』

美穂子『え、えぇっ!?』

ベリアル『いいから先にこっちをやる!』

京太郎『……ということで!』


地を蹴り、トライキングへと飛ぶベリアルが膝蹴りを放つ

怯むトライキングにさらに蹴りを打ち込む


スヒューム『くっ、読んでいるかベリアルっ』

ベリアル『戦闘向きでもねぇ半端クラゲが調子に乗ってんじゃねぇよ!』


さらなる攻撃で怯むトライキング


スヒューム『ならばっ……!』

ベリアル『あぁ?』


トライキングが超音波を放つ

それを回避するベリアルを確認すると、即座に拡散ビームを放った

射線上にはティガだが、素早く回避する


ティガ「!」

レイキュバス「!!?」


ビームの直撃を受けたレイキュバスが、爆散する


ベリアル『こいつッ!!』


吹き飛んだレイキュバスから光が地に落ちる

それは龍門渕透華

だがメダルは、トライキングの方へと飛んで行った


京太郎『あれはっ!』

ベリアル『チィッ!』


スヒューム『きたぞぉ!』


856: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/19(火) 02:35:11.40 ID:sYvGwwVG0


吸収されるメダル

トライキングの両腕が輝く


スヒューム『レイキュバス! ガンQ!』


―――ファイブキング


ベリアル『きやがった!』

京太郎『さらに!?』

美穂子『合体した!!?』


右腕にレイキュバスの顔とハサミ、左腕にガンQの顔が現れる

それこそが真の姿、ファイブキング

叫びをあげながらファイブキングは右腕から冷気と火炎を放つ


ティガ「!!」


その射線上には龍門渕透華

ティガは素早くその射線上に立つが、バリアを張る余裕がなく真正面から受ける


ティガ「グアァッ!」


攻撃が止まると、膝をつく

そのカラータイマーが点滅を始めた

地上の龍門渕透華の元へと、車が近づくと中にいたはやりが素早く透華を回収していく


はやり「頑張って! お願い、二人共!」


その言葉に、ティガは顔をあげて立ち上がると素早く構えた

ベリアルもファイブキングの方を見て腕を構える

咆哮をあげるファイブキングに、光弾を放つティガ


ベリアル『マズいな!』

京太郎『ガンQの腕ってことは……!』


放たれた光弾を、左腕のガンQの瞳が光弾を吸収

そして、そこから光弾が射出される

そのまま放たれた光弾を、ベリアルはティガの前に出て弾く


美穂子『ベリアルさんっ、京太郎!』

京太郎『コンビネーションでやります。ベリアルさんなら攻略法知ってるでしょ!』

ベリアル『ハッ、誰に口きいてやがる……当ォ然だ!』

857: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/19(火) 02:47:17.23 ID:sYvGwwVG0


ベリアルとティガが、走り出す

ファイブキングが拡散ビームを放つも、素早くそれを回避してベリアルとティガが斬撃を放つ

ガンQの腕がベリアルの斬撃を吸収するも、レイキュバスの腕がティガの斬撃でダメージを受ける


スヒューム『くっ、この程度で!』

ベリアル「ジャアッ!」


さらに放たれた音波攻撃

それをガンQの腕から斬撃を放ちかき消す

転がってそれを回避するベリアル、だがティガは―――


美穂子『デラシウム光流!』


放たれたティガの赤い光が、レイキュバスの腕を完全に破壊した

驚愕するスヒュームがメルバの翼を広げて空へと飛ぶ


ティガ「チャッ!」


素早くスカイタイプへと変わったティガが空へと飛ぶと、ベリアルも飛び上がる

高度を合わせたティガとベリアルに、ファイブキングが上空から拡散ビームと音波攻撃を同時に放つ


ベリアル『ハッ、大したことねぇな!』

京太郎『オレ達なら!』


その攻撃を回避していくティガとベリアル

ティガは高速でファイブキングの背後へと飛ぶと、手から放つ光弾でメルバの片翼を撃つ

怯むファイブキングに接近したベリアルが背中から両翼を掴んで、その背に足をかけた


京太郎『こんなもん!』

ベリアル「ハアァッ!」


勢いよく、その翼をもぎ取る

地上へと落ちるファイブキング

その正面に降りたベリアルとティガ


京太郎『これで決める!』

美穂子『うんッ!』


マルチタイプへと変わるティガ

そして二体の巨人が腕を構える


スヒューム『なぜ、こんな……私たちの戦力で!?』

858: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/19(火) 02:59:02.56 ID:sYvGwwVG0


京太郎『当然だろォが!』

ベリアル『下っ端如きがオレ達に勝てるわけねぇだろォが!』


ティガが腕を脇に構えた後に、目の前で合わせ―――離す

紫色の光、そしてベリアルの漆黒の光

腕をクロスする


ベリアル・京太郎『デスシウム光線!』

美穂子『ゼぺリオン光線!』


放たれた二つの光線

デスシウム光線の方をガンQの腕が吸収するも、ゼぺリオン光線がその体を撃つ

その直撃により、ガンQの腕がズレ、デスシウム光線もその体を撃つ


スヒューム『キャアアァァァァッ!!』


断末魔が響き、ファイブキングが爆散する

光りと共にメダルと天江衣が地に落ちていく

すかさず走って行く車、それを見て頷くティガ


美穂子『……終わった、の?』

京太郎『呆気ないもんっすね』

ベリアル『……まだだ』


その声と共に、眩い輝きがベリアルとティガの背後に現れる

白銀の光、そして真っ白な―――女神が現れた


京太郎『なん、だ?』

美穂子『天、使……?』

ベリアル『ゾグ……!』


和『さぁ審判の刻です』

京太郎『ッ、和ァッ!』



―――根源破滅天使ゾグ

862: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/20(水) 23:00:33.58 ID:1gJ9vHTO0


現れたゾグを相手に構えるティガとべリアル

白銀の天使が笑みを浮かべている


京太郎『でかくないっすか!?』

べリアル『そういうもんだ……チッ、こっちも本来の力に戻ってねぇんだがな』

美穂子『輝いているけれど、あれは強大な闇に感じるわッ!』


べリアルとティガが光弾を放つ

だがそれは、ゾグが手をかざし出現させたバリアで凌ぐ

今まで戦ってきた敵とは桁違いの強敵


京太郎『べリアルさんっ』

べリアル『チッ、情けねぇ声出すんじゃねぇよ……やんぞ!』

京太郎『……はいッ!!』

863: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/20(水) 23:04:47.21 ID:1gJ9vHTO0


地上にて、離れた高台で二体の巨人と女神を見据える久

歯ぎしりをしながら、そちらを見る


久「闇と光……!」


拳を握りしめると、爪が掌の食い込んで血が滲む

悔しそうな表情で勢いよく柵を殴りつける

今度はハッキリと、血が流れた


久「強大な、力っ……!」


ゾグの波動により街が破壊される

わずかに攻撃を受けたのか、ふらついているべリアルとティガが見えた


久「私にも……光をっ……力を!」


奥歯がギリッと音を鳴らす

864: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/20(水) 23:17:26.70 ID:1gJ9vHTO0

ゾグが軽やかに手を振るう

ベリアルと京太郎が回避するために体を翻そうとするが―――


京太郎『ぐっ!?』

ベリアル『拘束、超能力まで使うんだったか!』

美穂子『京太郎っ!』


ティガが素早く光弾を放つも、ゾグがもう片方の手をかざしバリアでそれを凌ぐ

超能力により体を拘束されるベリアルが、空中に持ち上げられる


京太郎『この拘束はッ!』

ベリアル『だが奴の本来の能力は強大だ!』

京太郎『なら連発も長時間使用もできないっ』


抵抗を試みるも、ゾグはそのままもう片方の手をベリアルへと向けた

不味い―――そう思うが抵抗の方法もない


和『消え去り、闇に還りなさい―――!』

美穂子『京太郎ォ!』


透明の波動が放たれる

その一撃は真っ直ぐにベリアルに直撃、そのまま吹き飛ばす

波動は当たって消えることもなく、ベリアルを地上へと吹き飛ばし……


京太郎『これはっ!』

ベリアル「グアァッ!」

美穂子『やらせ、ないっ!』


地上で、ティガがベリアルを受け止める

だがそれでもその波動の威力に押されて、今度は二人まとめて吹き飛ばし“続けた”

865: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/20(水) 23:25:21.53 ID:1gJ9vHTO0


地上を波動によって引きずられるベリアルとティガ

ベリアルのカラータイマーが点滅を始める

だが―――


京太郎『まだまだァッ!』

ベリアル『気張れよ小僧ォ!』


爪を左右のビルに突き立てる

それでも後ろへと吹き飛ばされ続けるのだが、勢いは消えていく


美穂子『キャアァッ!!!?』

京太郎『美穂子ォ!』


瞳が赤く輝く、波動が消えてベリアルとティガが止まった

ふらつきながら起き上がるベリアル


京太郎『っ、はぁ……はぁ……』

美穂子『きょ、うたろっ……』


美穂子の声が聞こえる

ティガは起き上がろうとするも膝をついた。そのカラータイマーの点滅は激しくなっていく

ゾグを睨みつける京太郎、そしてベリアル


和『っ!』


少しばかりゾグが怯んだが、ベリアルが致命傷を受けたことには変わりない

カラータイマーは点滅している

もはや大技もそう連発できないだろう


和『ッ、ここで終わらせます。ベリアル……!』

ベリアル『ハッ勝手に終わってろ!』

京太郎『ここで和を奪い返して、お前らの終わりを初めてやるよ!』


866: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/20(水) 23:41:51.39 ID:1gJ9vHTO0

地を蹴り走り出すベリアル

そんな彼の背後で、ティガは立ち上がろうとするがやはり膝をついてしまう

手を伸ばすがそれも届きはしない


美穂子『京太郎! ベリアルさん!』


強く地を蹴り、飛び上がるベリアル


ベリアル「ハアッ!」

和『愚かな……』

ゾグ「フフフフ!」


笑みを浮かべるゾグが、右手を前に出す

だがベリアルはさらに上昇

右手をそちらに向けるが、ベリアルは上空でジグザグに移動しその射線上から回避していく


和『ちょこまかと!』

ベリアル『ハッ、小僧のわりに良い考えじゃねぇか』

京太郎『相手によって色々変えてかないとっす!』

ベリアル『……ハッ』ニッ


動きながら、両腕を振るう


ベリアル・京太郎『デスシウムリッパー!』


放たれた斬撃だが、ゾグが手をかざしてバリアでそれを凌ぐ

だが反撃の手を打たれるより早く、ベリアルは光弾を両手で放つ

放たれた二発の内、一発がバリアを抜けてゾグにダメージを与える


ゾグ「あぁっ!?」

ベリアル『ハッ、やはりこいつも本来の力は出せてねぇな!』

京太郎『ならばァッ! 』


さらに、接近するベリアル

だがゾグが右手で攻撃を放つ

波動ではなく、光線


ベリアル「ガアァッ!!」


胸に放たれた光線、だがそれを耐えるベリアル

光線を浴びながらベリアルは、そこから一歩も下がらない


京太郎『サンダーを受けろォっ!』

ベリアル『骨の髄まで焼けなァ!』


放たれた電撃が、光線を放つゾグへとダメージを与える

さらに怯んだゾグは攻撃の連続もあってか、かなり弱っていた

867: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/21(木) 00:02:05.58 ID:2CYWVEZH0


ゾグが放っていた光線が怯んだことにより止まる

ベリアルはゾグの目の前で、腕を構えた

カラータイマーの点滅が激しくなっていく


京太郎『ベリアルさんッ!』

ベリアル『やるぞ!』

京太郎『闇の力、お借りしますッ!!』


周囲に充満する闇を右腕に集めていく

そしてその右手に闇の光と共に、赤い稲妻を纏う

ゾグがハッと気づいて右手を前に出す


和『ベリアルゥぅゥ!!』

ベリアル『デスシウム光線!!』


放たれたデスシウム光線、ゾグが両手を前に出して光線を放つ

その二つがぶつかり合うも力は拮抗していた

光線がぶつかる中心がバチバチと音を立てている


京太郎『デアァァァァァッ!』

ベリアル『オォォォォッ!』


空中にて、ゾグの前にて……ベリアルが前方に加速していく

ゾグへと接近していくベリアルと反対に、ゾグが後ろへ下がろうとするがその余裕も既にない

超至近距離へと接近した瞬間、その二つの光線の中心部分が―――爆発を起こす


和『アアァァァァアァッ!!!?』


叫ぶゾグの中の和、ベリアルの中で―――京太郎はゆっくりに時間を感じていた


京太郎『これで、終わるっ……』

ベリアル『もろともなぁ』

京太郎『……はい』フッ

ベリアル『チッ、テメェといたせいで碌でもねぇ結末だ』

京太郎『す、すみません』


相打ちというつもりはなかった

もろとも死ぬつもりもなかった

だが―――


京太郎「ベリアルさんを、元に戻すつもりだったんですよこれでも……」

ベリアル「ハッ、元になら戻るだろ」

京太郎「え?」

ベリアル「オレは元々死んでんだよ」

868: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/21(木) 00:27:15.61 ID:tk9sIAC70


そんな言葉に、京太郎は頷く


京太郎「知ってます。それでも……」

ベリアル「メダルの残留思念とデビルスプリンターだったか、あれが干渉して生み出された人格がオレだ」

京太郎「……」

ベリアル「死ぬも生きるもねぇよ」


笑うベリアルはどこか自嘲しているようだった

それでも京太郎は思う。夢見たベリアルの記憶は本物のはずだと


京太郎「それでも……俺にとってのベリアルさんはベリアルさんですから」

ベリアル「ハッ、テメェはテメェの心配だけしやがれ」

京太郎「自分の心配って言われても……」

ベリアル「京太郎」

京太郎「え?」

ベリアル「じゃあな」

京太郎「ベリアルさんっ!?」


それだけを言って笑うベリアル

瞬間、京太郎が自身の体に違和感を感じる

ハッとするも既に遅い


京太郎「これっ!?」


既に、京太郎は“外”にいた

黒い闇に包まれたまま、地上へと降ろされる

ハッとして上空を見上げる、ベリアルとゾグの姿が視線の先に見えた


京太郎「ベリアルさぁん!」


そして―――爆発


869: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/21(木) 00:38:56.48 ID:tk9sIAC70


上空での爆発

それを見守っていたティガが、光と共に消える

その場にいた美穂子が、ふらつきながらそちらを見ていた


美穂子「ベリアルさんっ、京太郎ぉ……」


ゆっくりと歩いていくも、足をもつれさせ地に倒れる


美穂子「あぁっ」


痛みに顔をしかめながら、両手を使ってどうにか起き上がった

未だに晴れない爆煙だがそこから邪悪な気配は感じない

ゾグは既にいないのだろう、けれど……


美穂子「京太郎っ、ベリアルさんっ、無事なの……?」


一歩一歩を踏み出し、歩いていく

そしてそんな彼女を影から見ている―――竹井久


久「……私にも、光があればっ」


871: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/21(木) 01:12:46.56 ID:yH88GLPy0


地上にて、上空を見上げる京太郎

爆煙が晴れるがそこにはなにも残っていなかった

ゾグも、ベリアルすらもだ


京太郎「なんでっ、ベリアルさん……そんなことできたなら、言っといてくださいよっ」


悔しさが顔ににじみ出る

顔をしかめ、膝を地につけその爆煙が晴れた空を見上げていた


京太郎「俺はっ、ベリアルさんなしで、一体なにができるってんだォ!」

「できるよ」

京太郎「!」バッ


振り返ったそこにいるのは―――熊倉トシ


トシ「これは読めなかった。あのベリアルが……」

京太郎「俺に、なにが……できるってんですか」

トシ「なんでもできるってんだよ。それにね京ちゃん」


近づいた熊倉トシが、京太郎の胸倉をつかむ


トシ「闇を受け入れた男が、仲間一人死んだからって―――うじうじ悩むな」

京太郎「うじうじ!? 誰がッ!」

トシ「……悩むなとは言わない。だから」


力強く立ち上がる


京太郎「……やれることを探します。それにやるべきことを」

トシ「そうだね……」フッ

京太郎「闇だろうが光だろうなにを使ってでも、オレがやるべきことは……」

トシ「それでこそベリアルの……」


どこか嬉しそうに笑みを浮かべて、頷く熊倉トシ

872: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/21(木) 01:25:19.22 ID:yH88GLPy0


車が走ってきて目の前で止まる

そこから降りてくるのは、瑞原はやり

福路美穂子も乗っている


美穂子「京太郎っ」ダッ


走ってきた美穂子を受け止めて、そっと離す


美穂子「その、ベリアルさんはっ」

京太郎「……」


なにも言わない京太郎に、美穂子とはやりが同時に察する

その手に持ったゼットライザーのトリガーを引くが、なにも起きはしない


はやり「京ちゃん」

美穂子「京太郎、ウルトラマンになれなくなっちゃったね」

京太郎「ええ、でも……ウルトラマンになれなくても俺は、オレは戦える……いや」


見上げる夕焼け空

その空も相まって、血のように赤い瞳は上空を見る

敵はまだいる。戦うべき相手も、取り戻すべき相手もだ……


京太郎(戦いたい……!)


その手のゼットライザーを、強く握りしめる


873: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/21(木) 01:27:28.96 ID:yH88GLPy0


    第19話【終わりがはじまる日】 END


878: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/22(金) 17:12:59.79 ID:qjpGCQvk0


―――【特異課長野基地:作戦室】


あれから一日、時刻は午前10時15分

須賀京太郎がそこにはいた

他にはもちろん鶴賀、風越の面々、さらに久と一、はやりや裕子、そしてトシもいる


京太郎「はぁ」

貴子「どした?」

京太郎「あぁ、いやなんでも」


近くにいた久保貴子が心配そうに京太郎を見るが、笑みを浮かべて頭を横に振る

だが美穂子やはやりは顔をしかめた

理解しているからだ、彼がこの戦いでなにを失ったか


京太郎「……」

トシ「さて、昨日はお疲れ様だったね……“みんな”」


その言葉は、避難誘導や救助をした面々に向けても言った言葉だ

戦いだけが特異課の仕事でもない

裕子がキーボードを叩くとモニターに表示される画像は龍門渕透華と天江衣


トシ「龍門渕透華及び、天江衣の救出は完了……だけども」

久「……和っ」

トシ「そう、原村和が行方不明」

京太郎「足取り、手掛かりは?」

トシ「ないね。でも足取りがないってのが」

はやり「まだ終わってないって証拠、かな?」

トシ「そういうこと」


溜息をつくトシが、京太郎の方を向く

苦々しい表情を浮かべているのは自分が捕り逃した故、というのもあるのだろう

誰一人としてそんなことは思っていないのだが、失ったモノと見合わない結果


トシ「……しかしまぁ、生きていたところで、だ」

京太郎「?」

トシ「相当弱ってるだろうね」フッ

京太郎「なら今の俺達でも?」

トシ「たぶんね」

京太郎「なら、やることは一つか」ニッ

トシ「そういうこと」クスッ

879: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/22(金) 17:29:11.69 ID:qjpGCQvk0


今の京太郎にベリアルはいない

だが、やれることはあると理解はしている

だからこそ京太郎は原村和-ゾグ-を探しに行くつもりだったのだが……


トシ「ってことでとりあえず解散、それぞれ街の探索に」

桃子「パトロールってことっすか? その……」チラッ

ゆみ「ん、原村等を見つけた場合は、即行動に移って良いのでしょうか熊倉女史」

トシ「ダメ、必ず連絡入れること……戦力によっては許可出すけど」

ゆみ「了解しました」コクリ


とりあえずはやることが決まった

だが同時に、まだ見つかっていない生徒は多いのだ

龍門渕で言えば井上純、沢村智紀、杉乃歩が見つかっていない


京太郎「みんな気を付けて……」

一「いや、昨日爆心地にいたらしい君に言われたくはないよ」

京太郎「うっ」

一「……ジョーダン、君が頑張ってくれてることは知ってる」

京太郎「一さん……」

一「しっかり休みなよ? 1人で色々やろうとするタイプだって聞いてるし」

京太郎「え、どこから?」

一「色々だよ」フッ


そう言って立ち上がった一が京太郎の肩をポンと叩いて部屋を出る

他の面々も続々出ていく中、トシが手を叩く


トシ「瑞原と福路、京ちゃんは集合ー」

京太郎「えっ」

美穂子「私も?」

華菜「キャップが残るなら私も!」

はやり「鰹節あげるから行っておいで☆」

華菜「誰が猫だし!?」

京太郎(お前しかいないだろ……)


880: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/22(金) 17:47:53.63 ID:qjpGCQvk0


結局、残ったのは京太郎と美穂子とはやり

華菜は美穂子がやんわりと出て行かせた


トシ「で、残ってもらったわけだけど」

京太郎「なんでまた?」

トシ「いや京ちゃんだけでも良かったっちゃそうなんだけど」

はやり「えー」


その言葉にはやりが不満そうな表情をする

美穂子が苦笑しながらも京太郎の方に視線を向けた


トシ「京ちゃんはベリアルからレイオニクスについてなんか聞いた?」

京太郎「え、あ……聞いたことあるような、バードンとの戦いんときだったか」

トシ「なんて?」

京太郎「いや詳しくは……バードンを使うとか使わないとか」

はやり「怪獣を、使う?」

美穂子「怪獣使い?」


その言葉に今度はトシの方が苦笑した

軽く平手を出して中指と人差し指だけをつけたり離したり


トシ「まぁそれとはちょっと違う気もするけど……いや、似たようなもんか?」

京太郎「それでそのレイオニクスってのは?」

トシ「今となっちゃ怪獣を使役しやすい遺伝子を持った者って考えで良い」

京太郎「えっと、ベリアルさんが……そのレイオニクスなんっすよね?」

トシ「そういうこと、それとたぶんあんたも」

京太郎「へ?」

はやり「は?」

美穂子「えぇっ!? ベリアルさんと京太郎って血がつながってるんですか!?」

トシ「いやそういうことじゃない」

京太郎「で、ですよねっ」ホッ


881: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/22(金) 18:03:29.68 ID:qjpGCQvk0


トシ「レイブラッド星人は様々な種族に因子をばら撒き埋め込んだ……そして生まれたのがレイオニクス」

京太郎「なんで俺が?」

トシ「正確にはベリアルと融合してあんたにそれが残ってるってことだ」

京太郎「……外見でわかったりします?」

トシ「あたしの場合は感覚だよ」

京太郎「風水的な?」

トシ「スピリチュアルじゃない」


そう言いながら取り出したのは、小さな端末

スロットが一つ付いている不思議な横長の機械だった


京太郎「これは?」

トシ「バトルナイザー」

美穂子「?」

トシ「怪獣を召喚して使役するものだ」

京太郎「えっ、スゴイ!」

美穂子「でも今の話の内容的に、その……れ、レイオニクスにしか使えないってことよね?」

トシ「いやこれは誰でも使える」

はやり「えっ!?」


その言葉に、はやりが食いつく

バトルナイザーに顔を近づけて色々な角度から見た

天才故の好奇心なのか……


はやり「私にくれます!?」

トシ「今はこれ一個だからダメだよ。あたしのだ」

はやり「えー」

トシ「できたら渡す」

はやり「やった! できるならさらに解体とか」

トシ「ダメ、人類には早すぎるから」

はやり「トシさん宇宙人?」

トシ「さぁね」フッ


まぁ不思議でもないなと、三人は同時に頷いた

今更未来人だろうが異星人だろうが異世界人だろうが驚ける気がしない


トシ「……と言いつつ京ちゃんにはあげる」

はやり「なんで!?」

トシ「なにも渡さない方が危ないからね」

はやり「う゛っ」

京太郎「面目ない」メソラシ

882: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/22(金) 18:17:42.61 ID:qjpGCQvk0


トシ「それにさ、戦いたいんだろ?」フッ

京太郎「っ……はい」フッ


笑みを浮かべて、バトルナイザーを受け取る

そこから感じる異様な気配

だがそれでも、京太郎は戦う


京太郎(ベリアルさん、あなたのためとかじゃない……俺のためにオレは戦いたい)


だがバトルナイザーを持つ、その手を掴む者がいた―――美穂子だ


美穂子「だ、ダメよっ」

京太郎「え?」

美穂子「京太郎はもう戦わなくて良い。沢山戦って、傷ついたのも知ってる!」


真っ直ぐに、京太郎の眼を見る美穂子、そして逆に美穂子の両目をしっかりと見つめる京太郎


美穂子「戦わなくても良い。戦えない京太郎のためにっ、私が!」

京太郎「美穂子さん」

美穂子「っ」


京太郎は自らの手を掴む彼女の手に、そっと手を乗せる

はやりが何かを言おうとするが、トシが口を塞いだ


京太郎「俺は戦いたい、戦いたいんだ」

美穂子「っ、なんで?」

京太郎「みんなのため、なんかじゃない。前から一緒だよ」


美穂子の手がそっと下りていく

バトルナイザーを握った手を見て京太郎は笑った


京太郎「俺は俺のために戦うんだよ」

美穂子「自分の、ため?」

京太郎「俺が守りたいから、俺の大切な人たちを」ニッ


その意味を理解してかしないでか、美穂子は少しばかり頬を赤らめて微笑む

はやりが口を塞がれたまま大声を出そうとするも……京太郎と美穂子に届くことはなかった


883: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/22(金) 18:31:49.60 ID:qjpGCQvk0


その後、バトルナイザーの説明も受けた京太郎

美穂子も頷き、共に戦うということを了承した様子……なのだが


京太郎「なんっすかはやりさんの不満そうな顔は」

はやり「なんでもー」ジトー

京太郎「?」


よくわからないので、とりあえず置いておくこととした

当面の目標のつもりだった“怪獣と戦う力”は手に入れたのだ

だがもう一つ、雀士たちを怪獣メダルから解き放つ方法はそれだけではない

というより最悪、バトルナイザーを使って戦うことになるというだけであって、その前段階でなんとかできればそれに越したことはない


京太郎「ちょっと麻雀しなきゃな」

美穂子「どうしてまた?」

京太郎「今までは怪獣メダル所有者の雀士と一緒でメダルで強くなってたんで……ベリアルさんがいなくなって今はどうなのかなって」

はやり「丁度良いから一緒に雀荘行こっか☆」

京太郎「確かに一石二鳥っすね」

トシ「それじゃ行ってらっしゃい……福路は?」

美穂子「竹井さんか華菜と合流するつもりです」


その言葉にうなずいて、椅子に腰を下ろすトシ


トシ「それじゃ気を付けてね、特に京ちゃん」

京太郎「うっす!」

美穂子「それじゃあ、またね京太郎」ニコッ

京太郎「はい」フッ

はやり「……あー! 早く行くよ京ちゃん!」ガシッ


腕を組むように掴まれる京太郎

 が当たる。豊満な


京太郎(ぐっ! なんてプレッシャー!)

美穂子「行ってらっしゃい」フリフリ

はやり「ぐぬぬ、余裕ぶってぇ……京ちゃん!」

京太郎「あーはいはい」


引っ張られるままについていく京太郎


トシ「やはり    か京ちゃん」

美穂子(    、京太郎は    が……な、なら私も……?)カァッ

トシ(おもしろいことになりそう……)


886: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/22(金) 19:04:28.13 ID:qjpGCQvk0
5、東横桃子


基地からはやりと出ようとガレージに入ると、ケータイに電話がかかってくる

はやりが先に車に入ってると指で合図するのでそれに頷く


京太郎「……モモ?」

スッ

京太郎「もしもし?」

桃子『あ、京さん』

京太郎「どした?」

桃子『京さんって、調査行きます?』

京太郎「ああ、雀荘に行く予定で」

桃子『えへへ、それじゃこれから私と合流してー』

京太郎「ああ、人手が多い方がはやりさんも助かるだろうし」

桃子『はやりんも一緒っすか!?』

京太郎「お、おう」

桃子『危うく二人きりになるとこでしたね! はやりんと!』


やけに焦ったように言う声に、京太郎は小首をかしげた

言わんとしていることの意味が理解できない


京太郎「危うくって……はやりさんとなら安心だろ?」

桃子『逆に危ない! そういうとこ!』

京太郎「……もしかしてはやりさん、宇宙人が化けてたり?」

桃子『そーいうことじゃなくって!』

京太郎「えーどういうこと?」

桃子『こっちの台詞っすよ……』


887: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/22(金) 19:15:49.84 ID:qjpGCQvk0


京太郎「まぁともかく、合流するならあとでポイント送るから」

桃子『お願いします!』


やけに迫真、むしろ桃子が偽物の可能性まで考えてしまう

まぁ言葉の熱的にそれはないのだろうが……


京太郎「大丈夫か?」

桃子『むしろそれでよく今までなにもなかったすね』

京太郎「なにが?」

桃子『いいえなんでもー! このモモがすぐに行くんで先走んないでくださいっす!』

京太郎「わかってるよ、打たずに待ってる」

桃子『はい! あ、それと京さん』

京太郎「ん?」


ケータイの向こうで、桃子の息を飲む音が聞こえた


桃子『こ、今度はちゃんと二人でお出かけ、っすからね?』

京太郎「お、おう……」

桃子『そ、それじゃあまたあとで!』


それだけ言うと、桃子が通話を切った

京太郎はケータイをポケットにしまって腕時計側の端末を開く

目的地に目星をつける


京太郎「なんなんだ、モテ期きたか俺」カァッ


890: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/22(金) 20:18:51.21 ID:1WNEuAa/0
(>>889 人おらんし大丈夫ですよー


1、松実宥



車を降りて、雀荘の近くで桃子を待つ京太郎とはやり

合流の話をした時になにか言っていたがもうすっかり普通になっている

時計を見るがまだ十分かかりそうだ


京太郎「……」

はやり「ちょっとそこのコンビニ行ってくるね」

京太郎「うっす」


そのままはやりが去って行く

1人で待つことになってしまったと、どうしたものかとケータイを出すと丁度電話がかかってくる

名前を見てすぐに通話に出た


京太郎「もしもし」

?『あ、京太郎くん?』

京太郎「宥さん」フッ

宥『あ、ごめんね突然電話しちゃって』

京太郎「いえ、どうかしました?」

宥『ううん、その、ニュース見て』

京太郎「ニュースですか?」


少し心配そうなその声に京太郎は眉をひそめる


宥『ベリアルがその、長野で……』

京太郎「ああ、死んだとか言われてますね」

宥『……京太郎くん、いるかなって』

京太郎「なんでまた?」

宥『いつも同じところにいるでしょ?』クスッ

京太郎(ごもっともで)

891: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/22(金) 20:29:41.67 ID:1WNEuAa/0


宥『だから心配になって……被害も大きかったでしょ?』


たの戦った地域周辺は確かに、大きかった

だがこのあたりはそうでもない


京太郎「……でも平気です。人的被害は最小限におさえましたし」

宥『ちゃんと、京太郎くんは自分のことも考えないとダメだよ?』

京太郎「え?」

宥『大事な体、なんだから……』


その言葉に、フッと口元が綻ぶ


京太郎「はい」

宥『えへへ、いいこだねっ』

京太郎(うわぁぁぁぁ! 宥さんは俺の母親になってくれるかもしれない!)

京太郎「ぐっ、冷静になれ」フゥ

宥『どうしたの?』

京太郎「ああいえなんでも、また近々……」

宥『うん、待ってるからね』フフッ

京太郎「はい」

宥『いつでも、ね』クスッ

京太郎「……うっす」


892: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/22(金) 20:35:25.03 ID:1WNEuAa/0


通話を切って京太郎が欠伸をしながら背を伸ばす

そうすると、走ってくる桃子がはっきりと“視える”

そちらを見ていると、驚いたように首をかしげる桃子


桃子「なんで視えるんっすか」

京太郎「なんでもなにも……」

桃子「もしかして運命!!?」

京太郎「んなことない」

桃子「えー」

ゆみ「相変わらず仲がいいな」フッ

京太郎「ゆみさんも一緒でしたか、そりゃそうかセットだし」

ゆみ「まぁな」

桃子「えへへー」


クールに笑うゆみと、嬉しそうに笑う桃子

そうしていると右腕に重さを感じる


はやり「じゃあはやりと京ちゃんはセットだネ☆」

京太郎「そうっすか?」シレッ

はやり「冷たー」

ゆみ「さ、それでこの雀荘になにか?」

京太郎「ああいや、一局付き合っていただけます?」

ゆみ「ほう……もちろん」フッ

桃子「どんとこいっす!」ニコッ

はやり「お見せしようかな、牌のお姉さんの実力を!」

京太郎「あはは……お手柔らかに」

900: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/23(土) 23:24:04.61 ID:7eTTaUkc0


雀荘にて座るのは京太郎、はやり、桃子、ゆみの四人

全国レベルの雀士と言えど、学生が二人なのだからとはやりは少しばかり手を抜こうとする

だが、突如妙な雰囲気を感じた


はやり(これは、京ちゃん……?)

桃子(これは……っ?)

ゆみ(なんだ、二人の表情が変わった……?)


スゥッ、と息をつく京太郎

静かに、そっと目の前にせり上がってきた雀牌に触れる

失ったはずの何かが、戻ってくるような妙な感覚


京太郎「これは……いや、そういうわけではないか」

はやり(ベリアルが抜けたのに、深い闇を感じる……?)

京太郎「さて、やりますか……胸をお借りしますよ」フッ

はやり「はやりの    は京ちゃんのものだゾ☆」

桃子「なぁっ!?」

京太郎(マジで?)

京太郎「マジで?」

はやり「責任とってネ☆」

京太郎「さて、麻雀やりましょうか」

はやり「はやぁっ!?」

桃子「高1には重いっすよ」フフッ

ゆみ(なぜに得意気?)

901: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/23(土) 23:35:37.77 ID:7eTTaUkc0


そして―――


京太郎「ふぃ~」

はやり「はぁ~」


大きく息をついて背を背もたれに預ける京太郎とはやりの二人

桃子とゆみの二人はというと、疲れた表情を浮かべている


ゆみ「京太郎、こんなに強かったのか?」

京太郎「あ~いや」

桃子「前やった時よりはマシっすよ」

ゆみ「そうなのか? それで県予選敗退?」

京太郎「強くなったんですよ。それなりに修行したので」


記憶にあるのは確かにした闘牌である

もう一つ同時間軸には、精神世界でベリアルと共に戦った記憶もあった

修行と言っていいのかは微妙だが、自ら得た力ということに間違いはない。間違いなどと言わせない


京太郎「……これで、ちょっと確認したいことも終わりました」


ベリアルがいなくても、どの程度麻雀ができるか……

はやりと同レベルでやれるということは、麻雀で雀士を解放することもできるということだ


京太郎「さて、出ますか」

ゆみ「ああ……今度、私の修行に付き合ってもらおうか」フッ

京太郎「俺の修行のためにも、是非」ニッ

902: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/23(土) 23:47:13.75 ID:7eTTaUkc0


外に出る四人

ともかく、やるべきことは決まった

戦い方もおおよそは固まってきた


京太郎(ともなれば、今やるべきことは……)

桃子「……」ジー

京太郎「ん?」

桃子「なんでもないっす」フフッ

京太郎(何この子かわいい、好きになっちゃうよ?)


自らを覗き込んで笑う桃子……その は豊満である

京太郎の弱点である


京太郎「ふむ……」

はやり「もう京ちゃんったら、わかるよ?」

京太郎「え、なにが!?」


明らかな動揺


はやり「……はやりをお嫁さんにした時のこと考えてたんでしょ?」フフフ

京太郎「なんか変なメダルでも入ってますか?」

はやり「なんで!?」

ゆみ「瑞原さん……」

はやり「そんな目で私を見ないで!」

903: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/24(日) 00:00:21.53 ID:kosH5Exs0


車までの道を歩いていると、突如四人の腕に付けている端末が鳴る

同時に手首の端末を開く

そこに映るのは佐藤裕子



京太郎「なにが!」

裕子『異常な反応です!』

京太郎「っ……敵ですか!?」

裕子『雀荘とかじゃない。もうメダルの力は溜まってたのか、溜めたのか……とりあえずエネルギーの波長がどんどんとっ』


その言葉を言い終える前に、轟音が響き地が揺れる

驚きながらも両足をしっかりと地につけて耐える京太郎

ふらつく桃子を支える


京太郎「っと!」ガシッ

桃子「ひゃっ!?」カァッ

京太郎「大丈夫か?」

桃子「は、はぃっ……」

はやり「わー倒れそう!」フラフラ

ゆみ「おっと大丈夫ですか?」スッ

はやり「違うよ!」

ゆみ「?」


くわっと表情を変えるはやりに、首をかしげるゆみ


京太郎「ふざけてないで!」

はやり「ふざけてないよ!」

京太郎「あ、え、いや……あれを見ろ!」

はやり「っ!?」

ゆみ「あれは!」

904: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/24(日) 00:17:53.85 ID:kosH5Exs0

離れた場所、ビルの間の道

そこを通る―――


京太郎「背びれ?」

はやり「さ、サメだ!?」

京太郎「サメって!」


だが確かに背びれが通っていた

さらに、再び視界に映る背びれ……道を泳ぐ、サメ


京太郎「このアスファルトを泳ぐサメだぁ!?」

桃子「よくあることっす!」

ゆみ「どういうことだ、まるで意味がわからんぞ!?」

桃子「相手はサメっすよ!?」


わけがわからないが、そういうことなのだろう


はやり「どどど、どうしようこっち来てるよ!?」

京太郎「……やります!」


そう言うと、バトルナイザーを取り出す

理解はしている

だがやるのは初めてだ


京太郎(俺にベリアルさんの力が僅かでも残ってるのだとしたら……!)

「―――!!」


背びれだけの姿だったサメがその顔を地上へと出す

地中鮫ゲオザークが咆哮を上げる


京太郎「ッ!」


905: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/24(日) 00:44:07.60 ID:kosH5Exs0


掲げたバトルナイザーが輝きだす

“本来のバトルナイザー”とはまた違ったモノ

だがその能力に遜色はない


京太郎「いけ、バギラ!」


光と共に、現れるのは怪獣―――裂刀怪獣バギラ


京太郎「……でき、た?」


現れた怪獣バギラが咆哮をあげる

京太郎は顔を引き締めて、そのバトルナイザーに力を込めた

バギラは全身につけた鋭いナイフを輝かせながら、腕を振るう


バギラ「!」


放たれた剣閃がゲオザークを撃つ

怯むゲオザークだが即座に地中にもぐり背びれをみせたままバギラの方へと突っ込む

勝手がわからないながらも、回避のためにバギラを移動させようとするが、背びれでの攻撃を受けてバギラが怯む


京太郎「っ!」


痛みが僅かに伝わり顔をしかめる

それは“通常のバトルナイザーであれば本来起きないこと”であった


京太郎「ぐっ、でも!」

はやり「京ちゃんっ」

京太郎「いいから早く撤退して!」

はやり「でもっ」

桃子「っ……」

ゆみ「行くぞ瑞原さん! モモ!」


二人の手を掴んで走り出すゆみ

そちらに視線を向けて、京太郎は笑みを浮かべて頷く

視線をそちらへ向けたゆみが、苦虫をかみつぶしたような表情で頷いて走る

906: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/24(日) 01:03:53.88 ID:kosH5Exs0


バギラが徐々に押されていく

その度に、京太郎の体には負荷と痛みが増していく

膝をつく京太郎が、悪態をつく


京太郎「っ……慣らし運転もしないで使うからかっ」

バギラ「!」


ゲオザークが地上から飛びだす

それがバギラを吹き飛ばす直前で、京太郎はバトルナイザーにバギラを戻す


京太郎「セーフっ」

ゲオザーク「!」


だが次に地上にいるゲオザークの視線が向く先は―――


京太郎「俺かっ」


だがその瞬間、京太郎の前に立ち上る光

そして、現れたウルトラマンティガが、ゲオザークを受け止めた


ティガ「タァッ!」


パワータイプに変わったティガがそのままゲオザークを投げ飛ばす


京太郎「っ、美穂子か!」

ティガ「!」


膝を突く京太郎の方へと視線を向けるティガ

頷く京太郎にティガは同じく頷いて、ゲオザークに構えを撮った

ティガが光弾を放つが、ゲオザークはそのまま地中へと潜航する


京太郎「っ」

ティガ「!」


907: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/24(日) 01:15:45.55 ID:kosH5Exs0


周囲を見回すティガの背後から、ゲオザークが突っ込む

その勢いのまま、ティガが背中からゲオザークの突撃を受けて吹き飛ぶ


ティガ「グァッ!」


倒れたティガ

ゲオザークはそのまま再び潜航する

立ち上がるティガのカラータイマーが鳴る


京太郎(まだ回復しきってないのか……?)


再び、ゲオザークが飛びだす

もちろん背後からであり、ティガは振り向くと同時にゲオザークを受け止める

だがその尖った鼻先から光線が放たれる


ティガ「グッ!」

京太郎「ッ、もう一回、行けるか?」


もう一度バトルナイザーを握りしめる


ティガ「!」


だが、ティガは光線に耐えながらもゲオザークを振り回して空に飛ばす

吹き飛んでいくゲオザークに、ティガが両腕を構える


ティガ「タァッ!」


―――デラシウム光流

放たれた一撃が空中のゲオザークに直撃し、爆散させる

ティガが光と共に消え去った


京太郎「ッ!」


光と共に、目の前に降り立つのは福路美穂子

立ったまま現れるも、すぐに膝から崩れ落ちる

ハッとして京太郎は美穂子を受け止めた


京太郎「ぐっ!」


美穂子を受け止めつつ、そっと地面に座る京太郎と美穂子


美穂子「ご、ごめんねっ……」ハァハァ

京太郎「無理、しないでくださいよ……っ」

美穂子「お互いさま、でしょ?」フフッ

京太郎「まぁ」フッ

908: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/24(日) 01:26:43.30 ID:kosH5Exs0


そう言って笑う二人

だが、再び轟音が響く


京太郎「!?」

美穂子「そ、んなっ」


視線の先に現れるのは―――ゴルザ


京太郎「なっ」

美穂子「でも、少し違う……」


その怪獣はファイヤーゴルザ

赤い体を持つそのゴルザは、角から光線を放った

京太郎が美穂子を抱えて走り出すも、その光線が二人が元いた場所にぶつかった衝撃から逃れることもできない


京太郎「っ!」

美穂子「京太郎ぉっ」


吹き飛んだ二人

地上を転がるが、止まった

しっかりと目を見開いて確認すれば、周囲に砂埃が巻き起こっている

建造物の残骸が周囲に散らばっていた


京太郎「ぐっ」


美穂子は近くに倒れていた


京太郎「俺はっ、俺にはっ」


うつぶせのまま、京太郎は美穂子から視線を動かした

吹き飛んだ時に落としたメダルやゼットライザー


京太郎「ぐっ……」

美穂子「京太郎っ……」

京太郎「っ」


近くに落ちているメダルを取る

それは―――


京太郎「レイブラッド星人……っ」

909: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/24(日) 01:39:35.71 ID:kosH5Exs0


右掌にあるそのメダル

青い宇宙人を視界に入れて、顔をしかめた

ベリアルを利用し、ベリアルが利用した究極生命体


京太郎「……」


そのメダルを握りしめて、京太郎は力を振り絞りつつ立ち上がろうとする

視界の先にいるのはファイヤーゴルザ

一歩一歩近づいてくる姿を視えた


京太郎「ッ!」


その赤い瞳が輝く


京太郎「俺は……オレは、戦いたい!」


自らの欲望のために、戦う……

誰を、誰かを守りたいという欲望


京太郎「オレはァッ!!」


その京太郎の胸からあふれ出した闇


美穂子「あ、れはっ……」


闇は京太郎の握りしめた右手へと集まる

その赤い瞳、京太郎の左手にひとりでに舞い戻るゼットライザー


京太郎「面子は、揃った……!」


910: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/24(日) 01:43:27.98 ID:kosH5Exs0


ファイヤーゴルザの跡地を走るのは、はやり

ゆみからの手を振り払いやってきたが、足に当たったそれを見て眼を見開く

そっと腰を下ろしてそれを撮った


はやり「バトルナイザー……?」


そことは離れた場所、砂煙だけではない

周囲には何かが焦げたようなにおいと共に黒煙もあがっている

立っているのは―――竹井久


久「なんで……なんでッ、なんであなたが光なのよっ!」


視界の先に小さく映るのは美穂子と京太郎

歩く京太郎、そんな彼が纏っているのは―――闇


久「あれは、闇……?」


911: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/24(日) 01:48:23.41 ID:kosH5Exs0


歩く京太郎が、トリガーを引く

それと共に真上に現れるゲート


京太郎「オレは、オレたちでもっと……!」


真下に落ちたゲートが京太郎を消し去る

残された美穂子が、顔をしかめた

そこに現れる人影


美穂子「っ熊倉さん……!」

トシ「いけ京ちゃんッ!」


912: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/24(日) 02:03:19.37 ID:kosH5Exs0


―――【インナースペース】



京太郎「もっと、もっとだ!」


赤い瞳を爛々と輝かせる京太郎

左手のゼットライザーにひとりでに挿入されるアクセスカード


『キョウタロウ・アクセスグランテッド』


京太郎「もっとオレ達で……戦いたいんだ!」


右手を開くと、レイブラッド星人メダルが赤い雷と共に変わる

それは―――ベリアル


京太郎「ベリアルさんっ!」


取り出したのはさらに二枚のメダル


京太郎「ゴモラ、レッドキング」


ブレードに、三枚のメダルを差し込む


『Belial』『GOMORA』『RED KING』


京太郎「これでオーラスだ!」


そして、トリガーが引かれる


『Skull Gomora』


深い闇の力が増幅していく

だがそれは京太郎にとって別れてからそれほど経ってないにも関わらず懐かしさを感じさせる

眼を見開き、咆哮した


京太郎「闇よォォォッッ!!」


そして―――ベリアル融合獣、スカルゴモラが顕現する


913: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/24(日) 02:05:24.65 ID:kosH5Exs0


    第20話【闇-ダークネス-】


919: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/25(月) 23:28:51.80 ID:KfWZoA4S0


―――【街中】


ファイヤーゴルザの正面に現れる黒い光

それと共に溢れる闇

ゴルザが僅かに怯むのは本能故か……


スカルゴモラ「!!!」


そして現れるのはベリアル融合獣スカルゴモラ

古代怪獣と髑髏怪獣の力を纏う、ベリアルの力を借りた京太郎の新たな姿

紫色のカラータイマーを持つ怪獣が咆哮を上げた


京太郎『闇の力、お借りします!』


走り出したスカルゴモラ

相対するようにゴルザも走り出す

地上で見ている人類からはどう見えるのだろうか、仲間割れに見えるのかそれとも―――


スカルゴモラ「!」

ファイヤーゴルザ「!」


二体の怪獣が同時に体を回す

振るわれる尻尾同士がぶつかるも、スカルゴモラの尻尾がゴルザの尻尾を掴む

驚愕するゴルザだが、スカルゴモラはそのままのパワーでゴルザを引っ張り体勢を崩させる


京太郎『まだまだぁ!』


体勢が崩れてふらつくゴルザの尻尾を離すと、接近してその拳をぶつける

ゴルザは後ろに吹き飛んで倒れた

920: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/25(月) 23:41:31.99 ID:KfWZoA4S0


戦う二体の怪獣を見据える美穂子とトシ

さらに隣に立つのははやり


美穂子「あれは……」

はやり「京ちゃんっ!」

トシ「自らに残っていたベリアル因子を使ってメダルを進化させたか……さすがだね」


フッと笑みを浮かべて頷くトシ

言っている意味はわからないが、ベリアルが復活したわけではないのだろう

だが京太郎が新たな力を手に入れて戦っているのは理解できた


はやり「頑張れっ、がんばれ京ちゃん……!」

美穂子「京太郎を、また……」

トシ「良いのさ、あの子が望んだことだ」


そう言うと美穂子の腕を掴んで起き上がらせた

ふら付く美穂子だが―――


ガシッ

久「大丈夫……?」

美穂子「久、ありがとう」

久「……」


遠くの怪獣たちの戦いを見る

ゴルザが超音波攻撃を放つと、スカルゴモラは振動波でそれを相殺した

ぶつかりあう怪獣

さらに現れる仲間たち


ゆみ「どうなるんだ?」

華菜「勝った方があたしたちの敵になるだけだし!」

桃子「でも、そうはならない気がするっす……」

佳織「うん、私もそう思う……」

華菜「?」

佳織(後から出てきた方の怪獣に、なにか感じる……荒々しいけどあたたかい、感じ)

921: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/25(月) 23:57:19.21 ID:KfWZoA4S0


ゴルザが拳を振るう

それを受けて怯むスカルゴモラだが、すぐに体勢を整えた

さらにゴルザが音波攻撃を放つ


京太郎『ッ、スカル振動波!』


またしても相殺、京太郎は舌打ち

接近し尻尾でゴルザを怯ませようとするが、ゴルザが尻尾を掴む

ハッとするが遅く、そのままゴルザに尻尾を引っ張られてスカルゴモラはビルに突っ込んだ


スカルゴモラ「!!?」

京太郎『ガァァッ! っ……!』


咆哮するゴルザ、スカルゴモラが起き上がる


インナースペースで、京太郎が新たにメダルホルダーからメダルを取り出した

その手に握ったのはベリアルメダルと、新たに取り出した二枚のメダル


京太郎「ベリアルさん!」


差し込まれるベリアルメダル

さらに、二枚のメダルも差し込む


京太郎「ベムラー、アーストロン!」


『Belial.』

『Bemular.』

『Arstron』


そして、京太郎の双眸が輝きトリガーが引かれる


『Burning Bemustra』

922: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/26(火) 00:10:46.96 ID:qcXOEFkD0


スカルゴモラが、黒き光と共に姿を変える

現れるのは新たな怪獣、バーニング・ベムストラ

咆哮を上げながら現れた怪獣はスカルゴモラと同じく、その胸に紫色のカラータイマーがある


京太郎『ウオォォッ!』


走り出すバーニング・ベムストラにゴルザが尻尾を振るう

だがその尻尾を、今度はバーニング・ベムストラの方が掴み強く引く


ゴルザ「!!?」


先ほどのスカルゴモラとはまた違った腕、腕力はこちらの方が上なのかゴルザは抵抗できない

そのまま体勢を崩したゴルザ

スカルゴモラと違い、バーニング・ベムストラでは軽い光弾や光線は放てない


だが―――切り札はこちらの方が強力だ


ゴルザ「!!」

京太郎『……ならッ!』


しっかりと起き上がったゴルザが、走り出す

それに相対するように、バーニングベムストラも走り出す


京太郎『これで、決めるッッ!!』


923: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/26(火) 00:24:47.28 ID:qcXOEFkD0


走りながら、ゴルザが頭部から光線を放つ

だが、バーニング・ベムストラはその攻撃を回避した


京太郎『ッ!』


◆BGM:運命のしずく〜Destiny's star〜【http://www.youtube.com/watch?v=AcqDZYSxKNg



体勢を低くしてそのまま頭部を狙ったその攻撃を避けつつ、ゴルザへと接近

走った二体の怪獣、その勢いは凄まじく―――


京太郎『オラァ!』


バーニング・ベムストラのその角がゴルザの腹部を突く

驚愕するゴルザ、勢いが消失するより先にバーニング・ベムストラは頭を上げる

走った勢いをそのままに上空へと舞い上がるゴルザ


京太郎『高度は低い、それでもォ!』


空のゴルザが自由落下を始めるより早く、バーニング・ベムストラはその口から青い光線を放つ


京太郎『ペイルゥ……サイックロォン!!』


渦巻く青き光線、ペイルサイクロンが真っ直ぐに上空のゴルザへと放たれた


ゴルザ「!!?」

バーニング・ベムストラ「!!」


その一撃を受けたゴルザは―――爆散する


924: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/26(火) 00:43:20.46 ID:qcXOEFkD0


その強力な一撃の余波により、爆散したゴルザから近いビルが崩れる

咆哮を上げるバーニング・ベムストラ

その姿は闇となって四散していった



地上に、黒い光と共に降り立つ影


京太郎「……ふぅ」


立っているのは須賀京太郎、ベリアル融合獣へと変わった者

静かに手を見て、開いて閉じてを繰り返した

できることは見えた、はずだ……


京太郎「っ」


少しばかりふらつくのと体の痛みや気怠さは、バトルナイザーのせいか融合獣を使用したせいか

それも今後わかってくることだろう


京太郎「ありがとう、ベリアルさん……」


笑みを浮かべつつ、手にあるメダルを見る


925: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/26(火) 00:49:39.04 ID:qcXOEFkD0


メダルをしまうと、すぐに声が聞こえてくる

そちらを見れば歩いてくるのは―――仲間たち


京太郎「……」フッ


美穂子「京太郎ッ!」

桃子「京さんっ」

はやり「京ちゃぁん!」


駆け寄ってくる少女たち、笑みを浮かべながらゆっくりと歩きだす


京太郎「おーい!」


手を振って、この後の言い訳を考える

まぁ深く考える必要もないだろう

はやりのフォローもある


京太郎(俺は、オレたちはまだ―――)


―――戦える。


926: ◆dBIP2XuQhg 2021/10/26(火) 00:56:51.63 ID:qcXOEFkD0


    第20話【闇-ダークネス-】 END


955: ◆dBIP2XuQhg 2021/11/01(月) 01:17:19.14 ID:wvniyEpc0


―――次回予告


トシ:あんたを呼ぶ理由なんて一つだろ

京太郎:葵さんは!?

塞:豊音は!?

デスレ星雲人:器だ。人間にしては素晴らしいな!

トシ:京ちゃんに託す……!

京太郎:オレがやるべきと思ったこと、できること……!

胡桃:お願い!

葵:須賀ァ!!


次回【暴君を超えていけ!】


京太郎:質が違うんだよ!


956: ◆dBIP2XuQhg 2021/11/01(月) 01:28:22.68 ID:wvniyEpc0


―――【特異課長野基地:作戦室】


あれから一日

作戦室にいるのは京太郎、トシ、はやり、美穂子の四人だ

京太郎のことを理解している面々である


京太郎「で、なんっすけど……」

トシ「ゲオザークこと染谷まこはまだ寝てるよ」

京太郎「わかってますよ」

はやり「はや?」

京太郎「いやその、トシさんが来た理由って」

トシ「もちろん京ちゃんを呼びに来た。とんぼ返りになるから悪いんだけどね」


その言葉に、岩手に行くことになるのだということは理解できた


京太郎「それって……」

トシ「あんたを呼ぶ理由なんて一つだろ」

京太郎「確かに」

はやり「もう行っちゃうの?」

京太郎「まぁ呼ばれたなら、それに」


そう言いつつ、視線は美穂子の方に


美穂子「……ええ」フフッ

京太郎「任せました」

美穂子「うんっ」ニコッ


957: ◆dBIP2XuQhg 2021/11/01(月) 01:33:36.43 ID:wvniyEpc0


    第21話【暴君を超えていけ!】


958: ◆dBIP2XuQhg 2021/11/01(月) 01:53:00.13 ID:wvniyEpc0

―――【岩手:遠野市】


岩手基地の最寄駅に降りる京太郎とトシの二人

改札を通ってロータリーに出ると、見慣れた車を見つける


京太郎「久しぶり、でもないか」


車の窓が開く


塞「久しぶりーじゃないか」

京太郎「うわぁ」

塞「なにその顔」

京太郎「いやぁ、被ったというかなんというか」

塞「?」

トシ「被りたくないならもうちょっとおもしろいこと考えな」

京太郎「ぐうの音もでねぇ……」

塞「いいから乗りなよ」

京太郎「うっす」コクリ


959: ◆dBIP2XuQhg 2021/11/01(月) 02:03:27.72 ID:wvniyEpc0

―――【特異課岩手基地:作戦室】


扉が開いて、入るのは塞と京太郎、そしてトシだ

先にいるのは二人、否三人

鹿倉胡桃、小瀬川白望、そして―――


京太郎「慕さん?」

慕「おひさだね」

京太郎「久しぶりです……ってか、なんでここに!? てか、葵さんは!?」

塞「なんここ?」

トシ「その略し方やめな」

慕「まぁ色々あってここにね」

白望「……須賀京太郎」

京太郎「あ、どうもです」


バラバだった少女、小瀬川白望

軽く会釈をするが白望の方は軽く片手を上げて応えるのみ

ダルそうにしているが知っている。片岡優希がやりあった相手だ


京太郎(にしても    )


その は豊満である


慕「まぁ座って座って、離すことは一杯あるしね」

京太郎「うっす」コクリ

胡桃「京ちゃん久しぶり!」

京太郎「久しぶりっす」フッ


960: ◆dBIP2XuQhg 2021/11/01(月) 02:22:02.69 ID:wvniyEpc0


椅子に座った京太郎、塞、トシ

元々座っていた慕がキーボードを操作してモニターに画像を表示させる

そこに映っていたのは少女―――なのだが違和感を感じた


京太郎「これは?」

慕「とりあえずこれは最近手に入れた画像」


その違和感の正体に気づいた


京太郎「ああ、遠近法が狂ってる感じするけど……」

胡桃「豊音が大きいだけだね」

京太郎「はい」


映っている姉帯豊音

全身黒い服、黒い長髪、そして黒い帽子

表情が視えないのが不気味さを感じさせる


京太郎「……じゃあ今度は?」

トシ「まぁ通例であれば豊音だろうけど……」

京太郎「和と同じパターンですか」

トシ「そういうこと、敵の幹部クラスであれば、だね」

京太郎「……」

塞「なにはともあれ豊音を追うのを手伝ってほしいんだよね」

京太郎「了解です……ところでその、葵さんは?」

塞「えっと……」

胡桃「それは……」

京太郎「あんなに小瀬川さんが起きるのを待ってたのに」

白望「……消えた」

京太郎「え?」

白望「私が起きるより前に、いなくなった」

京太郎「葵さんが、行方不明……」

961: ◆dBIP2XuQhg 2021/11/01(月) 02:43:53.99 ID:pr8dXYOt0


作戦室を出て、休憩所に座る京太郎

飲んでいるのは案の定コーヒー

だがその表情は憂鬱だった


京太郎「……葵さんが、ね」


彼女は行方不明なのだが、原因が不明

あまりに突然で誰も予測も、理由すらも出てこないらしい


京太郎(ならなんで……元々敵だったとか敵対していたわけじゃないはずだ)


敵だったとしたらあの動きはおかしい

白望を助けようとするあの熱は演技で出せるものではない


京太郎「……」


考えても答えは出ない

そもそもそういうタイプでもない


京太郎(体でも動かすか……)


引用元: 【咲-saki-】京太郎「ウルトラマンの力」咲「光よ!」