杏子「気に入らねー魔法少女どもをボコボコにしてやる」 前編

652: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/24(土) 21:55:30.87 ID:pDYv9vpQ0

~ 教生活5日目~

たっくん「パパどこー? パパー?」グスッ

杏子「……ゆま、お前ならあの迷子をどうする?」

ゆま「うーん、わたしなら……お菓子をムリヤリ食べさせてあげちゃうかな!」

ゆま「知らない人からお菓子を貰ったとなれば、あの子きっと叱られるに違いないよ!」

ゆま「えっへっへ、想像しただけで楽しくなるねっ」

杏子「くくっ、なかなかやるようになったな」

杏子「……ちなみに与えるお菓子ってのは?」

ゆま「もちろん幼児でも食べられる、安心安全のオヤツだよ!」

杏子「よぉーし完璧な解答だ! それで行け!」

ゆま「うん!」

653: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/24(土) 21:56:11.86 ID:pDYv9vpQ0

…………。

まどパパ「この子と一緒に遊んでくれたんだね、ありがとう」

たっくん「ありがと~」

ゆま「えへへ、どういたしまして」

まどパパ「お菓子まで貰っちゃって……」

まどパパ「ほらタツヤ、ちゃんとお礼を言いなさい?」

たっくん「ごちそうさまでした!」

ゆま「いえいえ、おそまつさまでした!」

まどパパ「ふふ……」

654: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/24(土) 21:57:44.25 ID:pDYv9vpQ0

まどパパ「それじゃ、帰ろうかタツヤ」

たっくん「やだ! ゆまともっと遊ぶ!」

まどパパ「こらこら、お姉ちゃんを困らせちゃダメだろ?」

たっくん「やーだー!」

ゆま「ごめんね、たっくん……わたしももう行かないと」

たっくん「うー……」

ゆま「また今度一緒に遊ぼう? ね?」

たっくん「……うん」

ゆま「そーだ! 指きりして約束しようよ、ほら!」

たっくん「ゆびきり?」

ゆま「うん、こうやってね」

ゆま「ゆーびきりげんまん……」

655: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/24(土) 21:59:50.32 ID:pDYv9vpQ0

杏子(ほほー……実現出来るかどうか分からない約束なんかして幼児を騙すとはね)

杏子( 教は順調だな。ゆまが一人前の鬼畜になる日もそう遠くないぞ……くっくっく!)

杏子(……しかし、だ)

杏子(もうすぐほむらが言ってた例の日だ)

杏子(しばらくゆまを放置プレイしてやる必要があるな)

杏子(さて、何処に放り出してやろうか……)

杏子(……そーだ! こんなときこそアイツんちに行けばいいんじゃんか!)

杏子(ゆまをアイツの家に送り込もう!)

656: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/24(土) 22:00:43.11 ID:pDYv9vpQ0

~ 教生活6日目~

仁美「杏子さん! またお会いて嬉しいですわ!」

杏子「悪いね、急に邪魔しちゃって」

仁美「いいえ、杏子さんならいつでも歓迎いたしますわ♪」

仁美「ところで……そちらの方は?」

ゆま「初めまして! わたしは千歳ゆまだよ!」

仁美「ふふっ、元気な方ですわね」

仁美「私は志筑仁美ですわ。よろしくおねがいしますわね」

ゆま「うんっ!」

657: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/24(土) 22:03:53.99 ID:pDYv9vpQ0

杏子「今日はさ、コイツ……ゆまのことで頼みがあって来たんだ」

仁美「頼み、ですか?」

杏子「ああ。しばらくの間、コイツを泊めてやってほしいんだよ」

杏子「……いいかな?」

仁美「……杏子さんの頼みでしたら喜んでお受けしますが……」

仁美「でもいったいどうしてなんですの?」

杏子「ま……ちょっと事情があってね」

ゆま「…………」

658: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/24(土) 22:06:07.85 ID:pDYv9vpQ0

仁美(……ゆまさん、あんなに悲しそうな目をされて……)

仁美(きっと何かあったんですのね)

仁美(…………)

仁美「……わかりましたわ。しばらくの間、ゆまさんをお預かりいたします」

杏子「すまないな、仁美……ほらゆま、ちゃんと御礼をいいな」

ゆま「お姉ちゃんありがとう!」

仁美「ふふ、どういたしまして」

仁美「さて……それでは両親に事情を説明してきますわね」

仁美「お二人は私の部屋でお待ちになっていてくださいな」

ゆま「はーい」

杏子「ん。頼むよ」

659: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/24(土) 22:06:50.18 ID:pDYv9vpQ0

~仁美の部屋~

杏子「……それじゃ、後のことは分かるな?」

ゆま「うんっ」

ゆま「杏子の『用事』が済んで帰ってくるまで、この家に居座ってればいいんだね!」

杏子「バカッ、声がでけーよ」

ゆま「あわわ」

杏子「まったく……そんなんでやっていけるのかよ?」

ゆま「だ、大丈夫だよ。わたしの鬼畜な本性がバレないようにネコかぶるよ」

ゆま「それだけじゃないよ。別れが辛く悲しくなるようにいっぱい楽しい思い出も作っちゃうよ」

杏子「……また口だけにならないといいな?」

ゆま「ぶー」

660: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/24(土) 22:07:34.65 ID:pDYv9vpQ0

ゆま「……ね、キョーコ」

杏子「ん? なんだ?」

ゆま「杏子の『用事』、って……いつものバケモノ退治と関係あること?」

杏子「……さて、どーだろーね」

ゆま「ゆまは手伝えないの? ゆまに出来ることは……」

杏子「ばーか、自分から手伝いを願い出るなんて鬼畜失格だぞ?」

杏子「お前はこの家でアクギャクヒドーなことしてりゃいいんだよ」

ゆま「……うん」

661: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/24(土) 22:08:32.36 ID:pDYv9vpQ0

ゆま「……それじゃあ、さっそく鬼畜なことしちゃおうかな!」

杏子「お、やる気まんまんだな。いいぞいいぞ」

ゆま「キョーコ! ゆまにプレゼント買ってちょーだい!」

杏子「……はあ? なんだそりゃ」

ゆま「えへへ、鬼畜なわたしからの不当な命令だよ」

杏子「オイオイ、アタシがお前の命令に大人しく従うと思ってんのか?」

ゆま「……ふーん、そんなコト言っていいの?」

杏子「あん?」

ゆま「言うこと聞かないとキョーコの恥ずかしい秘密をヒトミにバラしちゃうよ?」

杏子「な、なんだって?」

ゆま「ゆまね、知ってるんだよ? キョーコが毎晩寝る前に、オ……」

杏子「っ!! わ、分かった! 分かったからその先は言うな!」

ゆま「えへっ♪」

662: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/24(土) 22:09:59.04 ID:pDYv9vpQ0

杏子「クソッ、アタシとしたことが見られてたなんて……!」

ゆま「ゆまは鬼畜だもん! 弱みを握るくらい当然のことだよ~」

杏子「……まったく、大したヤツだよお前は」

杏子「今回は負けを認めてやる。んで、何を買ってきて欲しいんだ?」

ゆま「うーん、どうしようかなー」

ゆま「……キョーコが帰ってきてから決めよっかな」

杏子「は?」

ゆま「うん、そうしよう。キョーコが帰ってきたら、一緒にデパートとか行って、それでプレゼントを決めるの!」

ゆま「だから……ね? ちゃんと帰ってきてくれなきゃ、ダメなんだからね!」

杏子「はぁ……仕方ねーな、分かったよ」

杏子「約束してやる。アタシは必ず帰ってきて、ゆまにプレゼントをくれてやるよ」

ゆま「わーい! 絶対だよ!」

663: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/24(土) 22:10:33.62 ID:pDYv9vpQ0

仁美「あら、なんだか楽しそうですわね? 何のお話ですか?」

ゆま「えへへ……あのね! 今度キョーコとお買いものに行く約束したんだー♪」

ゆま「しかもキョーコがプレゼント買ってくれるんだよ!」

仁美「まあ! 良いですわね、うらやましいですわ~」

ゆま「じゃあヒトミも一緒に行く? キョーコに欲しいもの買ってもらいなよ!」

杏子「お、オイ! なに勝手なこと言って……」

ゆま「……キョーコ? 良いよね?」

杏子「くっ……!」

仁美「?」

665: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/24(土) 22:14:44.24 ID:pDYv9vpQ0

杏子「わ、わかったよ、仁美も一緒だ! なんでも買ってやるよ!」

仁美「良いんですの? 別にそんな無理していただかなくても……」

杏子「いいんだよ。友達に贈り物するくらいフツーだろ?」

杏子「……コイツが迷惑掛けちまうことだしね」

ゆま「ゆまは迷惑なんてかけないよ!」

仁美「ふふっ……杏子さんがそうおっしゃるなら、お言葉に甘えさせていただきます」

仁美「素敵なプレゼントを買ってもらいますわね」

杏子「よし、決まりだな。何が欲しいかは今度出かけるときまでに決めとけよ?」

仁美「はい♪」

ゆま「えへへ、楽しみだな~」

666: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/24(土) 22:15:21.53 ID:pDYv9vpQ0

杏子(やれやれ……まさかゆまに一本取られるなんてね)

杏子(ここまで才能があるとは思わなかったよ、まったく)

杏子(……ま、あれだな。ゆまもだいぶ成長したって証拠だし)

杏子(合格祝い的なモンだと思って、なんか買ってやるとしよう)

杏子(……その前にワルプルギスの夜を片づけなきゃなんねーけど)

杏子(アタシにかかれば魔女の一つや二つ、どうにかなるだろ!)

杏子(よっしゃ、いっちょ気合い入れていくとしますか!)

668: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/24(土) 22:18:12.52 ID:pDYv9vpQ0
次回・『復讐の魔法少女』編へ続く

682: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 19:49:26.43 ID:tEuyfvui0

~ある日の放課後・マミの家~

まどか「と、いうわけで、何かしてあげようと思うんだけど……どうかな?」

ほむら「素晴らしい考えだわ。私は賛成よ、まどか」

マミ「そうね、ワルプルギスの夜を倒せたのも彼女のおかげだし……」

さやか「ま、御礼に何かしてやるのも良いよね」

まどか「えへへ……じゃあ決まりだね」

まどか「杏子ちゃんに『お返し』をしよう!」

683: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 19:51:03.82 ID:tEuyfvui0

まどか「何をしてあげたら喜んでもらえるかなぁ?」

さやか「やっぱ食べ物系じゃない? 美味しい料理を作ってあげるとか」

ほむら「そうね、佐倉杏子は食に対してこだわりがあるものね」

まどか「きっと喜んでもらえるよね!」

マミ「新しい洋服を買ってあげるとかはどうかしら?」

まどか「あっ、それもいいですね!」

さやか「うん、あたし達でコーディネートしてやるのも楽しそうじゃん?」

ほむら「意外とアクセサリーなんかも喜んでもらえるかもしれないわね」

684: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 19:52:43.99 ID:tEuyfvui0

まどか「ご馳走の材料に、お洋服に、アクセサリー……」

まどか「うーん、買いたいものがいっぱいあるねー」

ほむら「そうね……何を買うか絞り切らないと、お金が足りなくなりそうだわ」

さやか「平凡な女子中学生のサイフにゃ限界があるもんねぇ」

マミ「どうしましょうかしら?」

ほむら「いっそ佐倉杏子に欲しいものを決めてもらうのはどう?」

さやか「えー? それはつまんないでしょ」

まどか「杏子ちゃんには内緒にしておいて、サプライズを演出したいな」

ほむら「なるほど……それもそうね」

685: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 19:54:07.43 ID:tEuyfvui0

さやか「……ところでマミさん? 今日は杏子のやつはどこ行ったんです?」

まどか「あ、それ私も気になってたんです。杏子ちゃんはいつ頃帰って来るんですか?」

マミ「うーん、それがね? 杏子ったら野暮用があるとかで出かけちゃったのよ」

マミ「何処へ行ったのか、何時くらいに帰ってくるのかも聞いてなくて……」

ほむら「……昨日のワルプルギスとの戦いの疲労が残っているとか、そういうことはなさそうだった?」

マミ「ないみたいよ。全然元気で、朝食もモリモリ食べてたわ」

ほむら「そう……なら良いのだけれど」



QB「――――ああ、杏子なら今頃デートを楽しんでいるはずだよ」



マミ「…………え?」

さやか「なっ……!?」

686: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 19:56:00.76 ID:tEuyfvui0

ほむら「デート、ですって?」

QB「そうだよ。以前から約束していたみたいだったね」

マミ「ほ、本当に!? 相手は誰なの!?」

QB「名前までは聞いていないけれど、年下の女の子が一緒だったよ」

さやか「と、年下の……女の子!?」

まどか「へぇ~、杏子ちゃんにもそんな人がいたんだ……素敵だね!」

さやか「どこがよ! 女の子って、そんな……!」

マミ「そ、そうよ! 私の杏子が知らない女の子と一緒だなんてありえないわ!」

さやか「……ちょーっとマミさん? 『私の杏子』ってなんですか? 別に杏子はマミさんのじゃないでしょ?」

マミ「あっ、そ、それはその……ほ、保護者的な意味であって別に変な意味じゃ……」

687: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 19:57:59.84 ID:tEuyfvui0

まどか「杏子ちゃんの彼女さんは年下かあ~、何歳くらいの子なのかな?」

さやか「か、彼女って決まったわけじゃないでしょ」

マミ「そ、そうね、キュゥべえの勘違いの可能性もあるんじゃないかしら」

QB「でもプレゼントを買ってあげるとか何とか言っていたよ」

さやか「ぷ、プレゼント……?」

ほむら「……親しい間柄なのは確かみたいね」

マミ「うう……」

まどか「どんなコなんだろ、気になるね?」

ほむら(年下の女の子……もしかしたら……?)

688: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 19:59:03.39 ID:tEuyfvui0

~見滝原市・デパート~

さやか「と、いうわけでさやかちゃん達は杏子を尾行することにしました」

ほむら「……お返しをどうするかは決めないの?」

さやか「まあまあそれは後で、ってことで」

マミ「……ここに杏子が来ているのね?」

QB「そう聞いているけど」

さやか「デパートでデートねぇ……何を買うつもりなのかな」

まどか「あっ! あそこにいるの杏子ちゃんじゃない?」

さやか「ホントだ! ということは、一緒にいるあの子が……!」

マミ「杏子の恋人……!?」

ほむら(あれは……やっぱり……)

689: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:01:00.63 ID:tEuyfvui0

ゆま「お買い物♪ お買い物♪」

杏子「オイオイあんまりはしゃぐなよ、転んで怪我するぞ?」

ゆま「平気だよ~」



さやか「……幼女じゃん!!」

マミ「そ、そんな……まさか杏子がそういう趣味だったなんて……!」

まどか「歳の差カップルだね♪」

ほむら(……単純に面倒を見てあげてるだけだと思うけど)

690: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:02:44.48 ID:tEuyfvui0

ゆま「お買いも……きゃっ!?」フラッ

杏子「危ないっ!」

ガシッ

杏子「……ったく、言ったそばから転ぶなよな」

ゆま「ご、ごめんねキョーコ」



マミ「だ、抱き着いたわ!」

さやか「こんなとこであんな大胆な……!」

まどか「ラブラブだね~、私も……えいっ!」ダキッ

ほむら「きゃっ! まどかったらそんないきなり……」///

まどか「えへへ」///

さやか「……おい」

691: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:03:51.76 ID:tEuyfvui0

ゆま「それにしても残念だったね、ヒトミが来れないなんて」

杏子「アイツには愛しい愛しい恋人クンがいるらしーからな」

杏子「今頃仲良くデートしてるんじゃないか?」

ゆま「ふーん? ……男の子と一緒に遊ぶのって楽しいのかなぁ?」

ゆま「ゆま、そういうの良く分かんないや」

杏子「ははっ、もーちょい大人になれば分かるかもな」

692: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:04:38.50 ID:tEuyfvui0

マミ「何を話してるのかしら……」

さやか「シッ! 静かに、今聞き取るから!」

さやか「……恋人……男の子……わかんない……」

さやか「くぅっ、単語だけしか聞き取れない!」

まどか「ううん、分かったよ! それらの言葉を繋げると――――」

まどか「『恋人に男の子を選ぶなんてわけわかんない! やっぱり女の子同士で愛し合うのがだよねー』」

まどか「っていう感じの会話をしてるんだよ!」

マミ「な、なんですって……!?」

さやか「や、やっぱり二人はそーいう関係なの!?」

ほむら「その解釈は強引過ぎるんじゃないかしら……」

まどか「そんなことないよ! だってほら、わ、私たちだって……」///

ほむら「そ、そうね、私たちが愛し合ってるのと同じことよね」///

マミ「はいはい」

693: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:06:13.55 ID:tEuyfvui0

ゆま「さてさて! 何を買ってもらおうかなー」

杏子「あんまり高いのはダメだかんな」

ゆま「はーい♪」

杏子「……やけに素直だな?」

ゆま「えへへ、そのほーがキョーコの好感度がアップするでしょ?」

杏子「くくっ……なるほど、実に鬼畜な判断だ」

杏子「その身体にはすっかりアタシの 教が染み付いたみたいだね?」

ゆま「えへへ」

694: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:07:45.11 ID:tEuyfvui0

さやか「……鬼畜…… 教……身体に……染み付いて……?」

さやか「な、なによそれ……どんな会話してんのよあいつ!」

まどか「杏子ちゃんが鬼畜な 教をあの子にして……」

マミ「か、身体に覚え込ませたってこと!? ナニを!?」

まどか「杏子ちゃんてば、大人だね……」///

ほむら「佐倉杏子がそういったことに詳しいとは思えないけど……」

まどか「……こ、今度、私たちもしてみよっか……?」///

ほむら「えっ……そ、その、それは……」///

さやか「ええい! いい加減にしろぉっ!!」

まどか「ご、ごめんなさい」

695: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:09:55.47 ID:tEuyfvui0

さやか(はあ……まったく、まどかもほむらも色ボケしちゃって)

さやか(……それにしても、なんか……杏子のやつ)

さやか(あたし達といるときより楽しそうにしてる気がするなあ……)



マミ(……私たちには見せない、ありのままの自分をさらけ出してる、っていう感じがするわね……)

マミ(……やっぱりあのコは特別な関係なのかしら)

マミ(ちょっぴり、悔しいな……)

696: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:12:05.20 ID:tEuyfvui0

さやか「……よっしゃ、決めた!」

マミ「美樹さん?」

さやか「杏子とあの子が……その、恋人同士だっていうならさ」

さやか「二人で仲良く使えるようなものをプレゼントしてやろーよ!」

まどか「あっ、それ素敵だね!」

マミ「……そうね、それもいいわね」

マミ「杏子たちの幸せを願って……ペアになっているものを贈りましょう!」



ほむら(……どうしよう、完全にタイミングを逃したわ)

ほむら(いまさら『あの二人は恋人じゃない』なんて言い出せない……)

697: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:13:57.34 ID:tEuyfvui0

さやか「んじゃ何にする? カップルが使うものって言えば……夫婦茶碗とか?」

まどか「め、夫婦茶碗?」

マミ「女子中学生が喜ぶものじゃないでしょう、それは……」

さやか「あはは、確かにそーだね」

マミ「食器を贈るなら……ティーカップとかのほうが良いんじゃないかしら」

まどか「うん、カップなら可愛いデザインのも沢山ありそうだよね!」

698: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:16:04.33 ID:tEuyfvui0

杏子「あー、そういやアタシのお気に入りはマミが割っちゃったんだよな」

マミ「ごめんなさい、あのときは色々あってボーッとしてたから……」

さやか「ならカップでちょうど良さそうだね。後はどんなデザインのにするか……」

さやか「……って杏子!?」

まどか「あ、えっ!? い、いつの間に!?」

杏子「よぉ、こんなトコでなにしてんだ?」

ゆま「こんにちわー」

699: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:17:20.53 ID:tEuyfvui0

杏子「なんか買い物の相談でもしてたみたいだったけど……」

マミ「いえっ、べ、別になんでもないわよ!」

さやか「そ、そうそう! たまたま通り掛かっただけなんだからねっ!」

杏子「ふーん?」

まどか「きょ、杏子ちゃんこそどうしたの? その子とお買い物?」

杏子「おう、ちょいと約束してたもんだからね」

ほむら「……良かったら紹介してもらえるかしら、その子のこと」

杏子「ん? ああ、コイツはゆま。千歳ゆまだよ」

ゆま「初めまして!」ニパッ

杏子「ま、なんつーかアタシの弟子みたいなモンだね」

マミ「で、弟子!?」

さやか「ホントに!?」

杏子「こんなことで嘘ついてどーするよ」

700: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:20:16.95 ID:tEuyfvui0

まどか「あの……杏子ちゃんは、その子とデートしてたんじゃないの?」

杏子「はぁ? デートぉ? アタシとゆまがか?」

杏子「ありえねーだろ、何言ってんだ?」

ゆま「デートって……男の人とするやつだよね?」

さやか「……ちょっとキュゥべえ?」

QB「あれ、おかしいな……この国では二人で買い物に行くことをデートって呼ぶんじゃなかったのかい?」

マミ「はあ……なんだ、やっぱりキュゥべえの勘違いだったのね……」

杏子「??」

701: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:22:07.73 ID:tEuyfvui0

ゆま「ね、キョーコ? このお姉ちゃんたちとはどーゆうカンケーなの?」

杏子「うーん、なんて言えばいいかな……」

ゆま「……あ!?」

杏子「お?」

ゆま「お姉ちゃんたち、キョーコとお揃いの指輪つけてる!」

マミ「ああ、これね? これは魔法しょ……」

杏子「っ! マミ!!」

マミ「えっ?! な、なに?」

ゆま「どーしたのキョーコ?」

杏子「あ、ああ、いや、何でもねーよ」

ほむら(……なるほど、そういうことね)

702: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:24:41.71 ID:tEuyfvui0

ゆま「……あのね、ゆま知ってるよ」

杏子「な、何をだ?」

ゆま「そのお揃いのユビワって、ケッコンユビワって言うんでしょ?」

さやか「……は、はぁ?」

ゆま「大好きな人同士でつけるんだよねー? ゆまだってそれくらい知ってるんだから!」

杏子「おいおい? なに言ってんだよお前は」

ゆま「えへへ、キョーコってば照れちゃって!」

ゆま「みんなとラブラブなのが恥ずかしいんでしょ?」

杏子「らぶらっ……!? ち、ちげーよバカ! これはそーいうんじゃなくて……」

ゆま「いいないいなぁ……ねえキョーコ! ゆまもお揃いの指輪が欲しいな!」

杏子「!」

703: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:25:36.64 ID:tEuyfvui0

ゆま「何でも買ってくれる約束だったよね? ゆまもおんなじ指輪が欲しい!」

杏子「……駄目だ!」

ゆま「え……どーして?」

杏子「それは……その、お前にゃまだ早いんだよ指輪なんて」

ゆま「えー?」

QB「おや、指輪が欲しいのかい? だったら僕と契約して……」

杏子(お前は黙ってろっ!)蹴りっ!

QB「きゅっぷい!」

ゆま「あれ? いまキョーコ何か蹴っ飛ばした?」

704: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:26:15.17 ID:tEuyfvui0

マミ《……どうしたのかしら、杏子?》テレパシー

ほむら《どうやらあの子を……千歳ゆまを魔法少女にしたくないようね》

まどか《杏子ちゃんは優しいから、あんなちっちゃな子を戦わせたくないんだよ、きっと》

さやか《……あいつのことだから多分そーだろうね》

マミ《でもあの子、指輪を……ソウルジェムを欲しがっちゃってるわ》

まどか《うん、このままだとキュゥべえと契約しちゃいそうだよ……》

さやか《……そーだ!! それならさ、あたし達の魔法で……ごにょごにょ》

ほむら《なるほど、面白い考えね》

まどか《ちょうどお返しにもなるし、すっごく良いと思うよ!》

マミ《それじゃあみんなで力を合わせて……!》

705: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:27:07.60 ID:tEuyfvui0

ゆま「指輪ほしい! ゆーびーわー!」

杏子「ダメなモンはダメなの!」

ゆま「ひどいっ、酷いよキョーコ! わたしとは遊びだったの!?」

杏子「どこでんな言葉覚えたんだよ!」

マミ「……ねえゆまちゃん? ちょっといいかしら?」

ゆま「う?」

まどか「えへへ、私たちからゆまちゃんにプレゼントをあげるよ」

ゆま「え? ほんと? なになに?」

さやか「ふっふっふ……じゃじゃーん! こんなんでましたー!」

ゆま「あ……指輪! キョーコのとお揃いだ!」

杏子「!? お、おい、どーいうことだ!?」

706: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:28:42.71 ID:tEuyfvui0

ほむら《私たちの魔法で作ってみたのよ》テレパシー

まどか《ソウルジェムの指輪ソックリでしょ?》

杏子《……なるほどな、ソウルジェムの贋作ってとこか》

マミ《銃や剣が作れるなら、って思って試してみたんだけど》

さやか《いやー、思いのほか上手くいったね》

ほむら《普段使い捨てている武器と違って消えたりしないはずよ》

まどか《四人分の魔力が込められてるもんね!》

杏子《……わりぃ、サンキューな》

707: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:30:26.81 ID:tEuyfvui0

ゆま「キョーコとお揃いだぁ! やったやった!」

マミ「ふふ、満足してもらえたかしら?」

ゆま「大満足だよ! ありがとうお姉ちゃんたち!」

まどか「じゃあもう指輪が欲しい、なんてワガママ言わない?」

ゆま「うん!」

さやか「よしよし、ゆまちゃんはイイコだねー」

杏子「やれやれ……」

708: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:31:34.54 ID:tEuyfvui0

杏子《助かったよ……おかげでコイツを魔法少女にせずに済みそうだ》テレパシー

ほむら《とりあえずは、ね》

まどか《ふふ、それにしても杏子ちゃんは優しいね!》

杏子《は?》

さやか《隠さなくたっていいって! そのコを危険なことに巻き込みたくなかったんでしょ?》

マミ《だから魔法少女のことも教えてなかった。違うかしら?》

杏子《……バーカ、そんなんじゃねーよ》

杏子《また魔法少女が増えたらアタシの取り分が減っちまうだろ?》

杏子《ライバルを予め潰しておきたかった。それだけのことさ》

マミ《くすっ……》

ほむら《相変わらずね、貴女は》

さやか《ま、そーいうことにしておいてあげるよ》

杏子《けっ、うるせーやい》

709: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:32:07.93 ID:tEuyfvui0

杏子「……なあ、ところでマミたちはこのあと暇なのか?」

マミ「え? ええ、とりあえず予定はないけれど」

杏子「だったら一緒にメシでも食おうぜ、せっかくみんな揃ってるわけだしさ」

まどか「うん、良いね! ゆまちゃんのことももっと知りたいし」

ほむら「反対する理由はないわ」

杏子「ゆまもそれで良いか?」

ゆま「うん! ゆま、お姉ちゃん達と仲良くなりたいな!」

さやか「へー、うれしーこと言ってくれるじゃない?」

マミ「ふふ、それじゃあ……どこかお店に入りましょうか?」

まどか「賛成ですっ!」

杏子「おう!」

710: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:32:53.01 ID:tEuyfvui0

さやか(はあ……結局、杏子に恋人なんていなかったわけだ)

さやか(……良かった……)

さやか(…………)

さやか(っ!? あ、あたしってば何でほっとしてんのよ!?)

さやか(べ、別にあいつに恋人がいようがいまいがカンケーないし!)

さやか(ただ、その……そうよ、ライバルと競い合う時間が減っちゃうかも、って思ってただけで)

さやか(嫉妬とかそーいうんじゃないんだから!)

711: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:34:31.89 ID:tEuyfvui0

マミ(うふふ、杏子に喜んでもらえてよかったわ)

マミ(でも……良く考えるとゆまちゃんに指輪をあげただけで……)

マミ(杏子自身には何も贈ってあげてないのよね)

マミ(……今度、二人っきりのときにプレセントしちゃおっかな?)

マミ(魔法を使えばいろいろと作れそうだってことが分かったし……)

マミ(たとえば……あんなものやそんなものとか)

マミ(それとも……)

マミ(きゃっ! わ、わたしったら何考えてるのかしらっ!)///

712: 1 ◆NsfUjTiOGg 2011/12/31(土) 20:35:00.66 ID:tEuyfvui0

ゆま(あれ……そういえば?)

ゆま(お姉ちゃん達からは指輪を貰ったけど……)

ゆま(結局キョーコからは何も買ってもらってない!)

ゆま(うう、ずるいよキョーコ!)

ゆま(うやむやにして誤魔化そうったってそーはいかないんだから!)

ゆま(えっへっへ……今度3倍にして返してもらうんだからね!)

733: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:29:09.98 ID:kGER2Xkm0

~学校・薄暗い体育倉庫~

さやか「あーもぉっ! どーして開かないのよ!」ガチャガチャガチャ!

仁美「……どうやら完全に閉じ込められてしまったみたいですわね」

さやか「はぁ……体育倉庫に閉じ込められるとかベタ過ぎでしょ……」

仁美「まさか実際に経験することになるなんて思ってもみませんでしたわね……」

さやか「そーだね……」

さやか「……うーん、思い切り蹴飛ばせば開くかな?」

仁美「や、やめてくださいましっ」

さやか「あはは、冗談だよ」

さやか(ホントに本気でやったら、ドアが粉々になっちゃうだろーしさ)

734: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:30:22.60 ID:kGER2Xkm0

仁美「困りましたわね……携帯電話も手元にないですし」

仁美「それに……くしゅん!!」

さやか「大丈夫? 寒いの?」

仁美「はい、少しだけ……」

さやか「体育で汗かいた後だもんね……体操着だし」

仁美「早くどなたか気が付いてくださると良いのですけど……」

さやか「ま、すぐにまどかが来てくれるでしょ。少しの辛抱だって!」

仁美「そう……ですわよね」

さやか「うんうん」

さやか(テレパシーで呼べばいいだけのことだもんね)

735: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:31:11.63 ID:kGER2Xkm0

さやか《まどかー? 聴こえるー?》テレパシー

まどか《はい、まどかです》

さやか《あっ、まどか? あたしあたし! ちょっと助けてほしいんだけど!》

まどか《ただいまテレパシーに出ることが出来ません》

まどか《御用のあるかたはピーッという発信音の後に――――》

さやか(ありゃりゃ、まどかはマナーモードになってるみたいだ)

さやか(仕方ない、ほむらを呼ぶかな)

さやか《ほむらー? ほむほむー?》

ほむら《……おかけになった魔法少女は、ただ今テレパシーが届かないところにいるか、電源を切って――――》

さやか(ほむらは電源切ってるのか。マメだなー)

736: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:32:18.67 ID:kGER2Xkm0

さやか(うーん、ちょっと悪いけど……マミさんに助けてもらうしかないみたいだ)

さやか《あのー、マミさん? お願いが……》テレパシー

マミ《ぷー、ぷー、ぷー》

さやか(通話中だ……困ったなー)

さやか(わざわざ杏子を呼ぶほどのことでもないし……キュゥべえ呼んでも意味ないし)

さやか(やれやれ、純粋に待つしかないみたいねー)

さやか(誰か来てくれるまで……仁美と二人っきり、か)

738: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:33:48.26 ID:kGER2Xkm0

仁美「さやかさん? 先程から難しい顔をされて……どうかしましたの?」

さやか「えっ、ああ、別になんでもないよ」

仁美「はッ!? まさか私のブルマ姿に欲 して、    い想像を……!?」

さやか「ええっ!?」

仁美「いけませんわっ、密室だからってそんな破  な行為をするなんてっ!」

さやか「いや、んな馬鹿な……」

さやか「…………」

さやか「ぐへへ、バレちまっちゃしょうがねぇ……太股をナデナデさせろー!」

仁美「きゃーっ♪」

739: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:34:57.09 ID:kGER2Xkm0

さやか「……ぷっ」

仁美「……くすっ」

さやか「あははっ! なんか久しぶりだね、こーいうバカなやり取りするのも」

仁美「ふふっ、そうですわね」

仁美「さやかさんもまどかさんも、最近お忙しいみたいでしたから……」

さやか「……ゴメンね、仁美」

さやか「ちょっと色々あってさ、なかなか話す時間が取れなかったんだ」

さやか「その、別に仁美のコト嫌いになったとか……そーいうんじゃないからね、絶対!」

仁美「ふふっ……大丈夫、わかってますわ」

740: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:35:57.61 ID:kGER2Xkm0

さやか「……恭介とはどーなの? 仲良くやってるわけ?」

仁美「それが……恭介さん、コンクールに向けての練習が忙しいみたいで」

仁美「あまり一緒にいる時間がありませんの……」

さやか「えー、マジ? 恭介ってば、こーんなに可愛い恋人をほったらかしにしてるんだ?」

さやか「仁美に寂しい想いをさせて……罪な奴だねぇまったく」

仁美「ふふっ……でもそんなふうに、ヴァイオリンに真剣な恭介さんだからこそ……私は好きになったんです」

さやか「あーはいはい、お熱いですなー」

741: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:37:14.05 ID:kGER2Xkm0

仁美「それに私、寂しくなんかありませんのよ?」

さやか「え、なんでさ?」

仁美「実は私……つい先日、新しいお友達が出来ましたの」

仁美「その方のおかげで最近は毎日が充実してますのよ」

さやか「へー、もしかして……浮気?」

仁美「違います! もうっ、さやかさんたら酷いですわ!」

さやか「ごっ、ごめんごめん」

仁美「そもそもその方は女性ですのよ? 浮気だなんて……」

仁美「……浮気、だなんて……」

仁美「………ぽっ」///

さやか「ちょっ!?」

742: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:38:44.16 ID:kGER2Xkm0

さやか「え、えーと。それで、その新しいお友達ってのはどんなコなの?」

仁美「うふっ、実はさやかさんも良く知ってる方ですのよ」

さやか「へえ? 誰だろ……」

仁美「ポニーテールが良くお似合いで……」

さやか「ふむ」

仁美「ちょっぴりネコさんみたいな釣り目で」

さやか「ほうほう」

仁美「お菓子が大好きで、いっつも何か食べていらっしゃって……」

さやか「ん……? え、もしかして……」

仁美「うふふ、お分かりになりました?」

仁美「私、佐倉杏子さんとお友達になりましたの!」

さやか「ええーっ!? ウソ、いつ知り合ったの!?」

仁美「実は……」

743: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:39:35.16 ID:kGER2Xkm0

仁美「あんこちゃんあんあん!」

仁美「……と、いうわけなんです」

さやか「そっか、そんなことが……」

仁美「はい、危ないところを助けていただいて……」

さやか「……じゃあ、仁美にも話さなきゃだよね」

さやか「あたし達の、秘密」

仁美「……聞かせてくださいますか?」

さやか「うん、あたしね……」

744: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:40:19.65 ID:kGER2Xkm0

さやか「あんこちゃんあんあん!」

さやか「……ってなわけなんだ」

仁美「魔法少女……それに、魔女ですか……」

さやか「そ。仁美が操られた、っていうのも魔女の仕業」

さやか「……信じらんないだろーけど、ホントのことなんだ」

仁美「いいえ……私信じますわ、さやかさんのこと」

仁美「私の大好きなお友達が、嘘をつくはずなんてありませんもの!」

さやか「仁美……」

さやか「ふふっ……ありがと」

745: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:41:07.75 ID:kGER2Xkm0

仁美「今の話だと、さやかさん以外にも魔法少女はいらっしゃるみたいでしたけれど」

さやか「あ、うん。あたしだけじゃなくて杏子もそうだし……」

さやか「まどかもほむらも、あと三年の巴マミって人も魔法少女なんだ」

仁美「まあ! まどかさんも暁美さんもなんですか?」

仁美「最近やけに仲が良いと思ってましたけど……そういう理由があったんですのね」

仁美「……ちょっぴり、仲間外れになった気分ですわ」

さやか「ごめんね、内緒にしててさ」

746: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:44:14.30 ID:kGER2Xkm0

さやか「……でもね仁美、魔法少女になろうなんて思っちゃダメなんだからね?」

仁美「あ……同じようなことを杏子さんにも言われました」

仁美「アンタに出来ることじゃないから、首を突っ込むな……と」

仁美「……やっぱり、命の危険があることだからですか?」

さやか「うん、それもあるんだけど……」

仁美「?」

さやか「……この指輪、さ。キレーでしょ?」

仁美「えっ? あ、はい。ソウルジェムっていうんですわよね?」

仁美「……何と無く、不思議な雰囲気を持った指輪だと思いますわ」

さやか「仁美は鋭いね」

さやか「これね……あたしの魂なの」

仁美「たま、しい……?」

747: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:45:15.75 ID:kGER2Xkm0

さやか「そう、魂」

さやか「いまここにあるあたしの身体は単なる人形で……」

さやか「このちっぽけな指輪こそが、あたしそのものなんだ」

仁美「そ、そんな……!?」

さやか「魔法少女はその魂をソウルジェムに変えられてしまうの」

さやか「コレがないと死んじゃうんだよ、あたしたち魔法少女って」

さやか「その代わりにソウルジェムさえ無事ならどんな怪我も治っちゃうから……」

さやか「便利といえば便利なんだけどさ、あはは」

さやか「……けどそんなゾンビみたいな身体になんかなりたくないでしょ?」

さやか「だからさ、魔法少女になんてならないほうがいいんだよ」

さやか「じゃないと、あたしみたいに……ゾンビにっ……」

さやか「あ、あれ? おかしーな。目にゴミでも入ったかな、えへへ……」ゴシゴシ

仁美「…………っ」

748: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:46:37.51 ID:kGER2Xkm0

仁美「さやかさんっ……」ぎゅっ

さやか「え、ちょ、仁美?」

さやか「あ、あはは。やだなあ、いきなり抱き着かないでよ」

仁美「……大丈夫。大丈夫ですわ」

仁美「さやかさんは、ゾンビなんかじゃありません」

さやか「……!」

仁美「だって……だってさやかさんはこんなにも温かいですもの……!」

仁美「さやかさんはさやかさんです。私の、大切なお友達にかわりありませんわ!」

さやか「仁美……」

仁美「だから……そんなふうに自分を傷付けるのはやめてください、さやかさん……」

さやか「う……うう……」

さやか「仁美……仁美ぃ……!」グスッ

749: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:47:53.49 ID:kGER2Xkm0

…………。

さやか「はは……みっともないとこ見せちゃったね」

さやか「……もう吹っ切れたつもりだったんだけどさ」

さやか「仁美に話したら、なんだかまた悲しくなっちゃって……泣けてきちゃった」

さやか「ごめんね、仁美」

仁美「謝らないでください、さやかさんが頭を下げる理由なんてありませんわ」

仁美「さやかさんの本当のお気持ちを聞かせてもらえて……私、嬉しいくらいですもの」

さやか「あたしもあんあん泣いて、なんだかスッキリしたよ」

さやか「……ね、仁美。約束して? 魔法少女になんかならないって」

仁美「……はい」

仁美「でもその代わりに、困ったことがあったら何でもおっしゃってくださいね」

仁美「微力ながら皆さんのお手伝いをさせていただきますわ」

さやか「うん、ありがと」

さやか「あっ……それと!」

仁美「?」

さやか「あたしが泣いたなんて……皆には内緒なんだからね!」

仁美「うふふっ……わかってますわ、さやかさん」

750: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:49:22.75 ID:kGER2Xkm0

ゴンゴンッ!

「さやかちゃん、仁美ちゃん! 中にいるの?!」

仁美「あら、この声は……」

さやか「まどかだ! 助けに来てくれたんだ!」

さやか「おーいまどかぁ! 早く開けてくれーい!」バンバンバン

「……いま開けるから静かにしなさい」

さやか「おっ? ほむらも来てくれたの?」

ガチャガチャ...

ガチャンッ

まどか「さやかちゃん! 仁美ちゃん!」

さやか「おぉー、あたしの嫁ー! 会いたかったぞー!」抱きっ!

まどか「きゃっ、や、やめてよさやかちゃん!」

仁美「まどかさん、暁美さん、助けていただいてありがとうございます」

まどか「えへへ、どういたしまして」

751: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:50:11.84 ID:kGER2Xkm0

ほむら「……あら? 志筑さん」

仁美「はい?」

ほむら「胸元が変に濡れているけれど、どうしたの?」

さやか「!?」

仁美「あっ……これは、その……」チラッ

さやか「べ、別に何もなかったよ! 気にしないでよ、あはは……」

ほむら「……明らかに怪しいのだけれど」

まどか「も、もしかして……! 二人でナニか変なコトしてたの!?」

さやか「ち、違うよ! なんでそーいう方向に話を持ってくのさ、あんたは!」

752: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:51:07.83 ID:kGER2Xkm0

さやか「ほら、仁美からも何か言ってやってよ!」

まどか「ど、どーなの仁美ちゃん?」

仁美「……は、恥ずかしくて……私の口からはとても言えませんわ……」///

さやか「おぉい! そーいう冗談はいらないから!」

まどか「や、やっぱりそうなんだ」///

ほむら「ふふ、貴女もやるわね」

さやか「ちがーう!! 別になんもしてないってば!!」

さやか「ほ、ほら早く行こ! 次の授業がもう始まっちゃうでしょ!」

スタスタスタ...

仁美「あ、待ってくださいまし、さやかさん!」

753: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:53:04.60 ID:kGER2Xkm0

さやか「もう、仁美が変なコト言うからややこしくなったじゃんか!」

仁美「だって秘密にするように言われていましたし」

さやか「う……確かにそーだけど、アレじゃ余計に恥ずかしいじゃん!」

仁美「うふふっ、ごめんなさい」

さやか「はぁ……ま、いーけどさ」

さやか「久しぶりに仁美と二人で話が出来て楽しかったしね」

仁美「はい、私も……さやかさんの秘密を聞かせてもらえて嬉しかったです」

さやか「誰があたし達を閉じ込めてくれちゃったのか知らないけど……」

さやか「ハプニングを提供してくれた『誰か』に感謝、ってとこかな?」

仁美「ふふ、そうですわね」

755: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:55:20.13 ID:kGER2Xkm0

――少し時間を遡り――




さやか「あーもぉっ! どーして開かないのよ!」ガチャガチャガチャ!

仁美「……どうやら完全に閉じ込められてしまったみたいですわね……」



杏子(くっくっく……)

杏子(よぉし……気まずい関係の二人を密室に閉じ込めてやったぞ!)

杏子(さてさて、アイツらはどんな愉快なショーを繰り広げてくれるかな?)

杏子(たっぷりと楽しませてもらうよ……くくっ)

杏子(このカビ臭い跳び箱の中からな!)

756: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:56:19.50 ID:kGER2Xkm0

QB《言われた通り、カギを閉めてきたよ》テレパシー

杏子《ごくろーさん》

杏子《んじゃ、引き続き作戦のほうを進めるぞ》

QB《……わかったよ》

QB《今回の目的は、さやかと仁美の仲をメチャクチャにすること……だったよね?》

杏子《そうさ。せっかくこの前に仕込みをしたんだからな》

杏子《ちゃーんと二人の関係を進展させてやらなきゃねぇ……くっくっく》

757: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:57:15.53 ID:kGER2Xkm0

仁美「早くどなたか気が付いてくださると良いのですけど……」

さやか「ま、すぐにまどかが来てくれるでしょ。少しの辛抱だって!」

さやか(テレパシーで呼べばいいだけのことだもんね)



杏子《『テレパシーを使えばいい』……さやかの奴はそう考えてるだろう》テレパシー

杏子《そこでキュゥべえ、お前の出番だ》

QB《さやかのテレパシーに割り込んで、邪魔すればいいんだよね》

杏子《そーさ。しっかりやれよ?》

杏子《まどか達が助けに来ちまったら作戦が台なしだからな》

758: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:58:05.60 ID:kGER2Xkm0

QB《……おかけになった魔法少女は、ただ今テレパシーが届かないところにいるか、電源を切って――――》

さやか(ほむらは電源切ってるのか。マメだなー)

さやか(うーん、ちょっと悪いけど……マミさんに助けてもらうしかないみたいだ)



QB《上手くいってるよ。今度はマミにかけるつもりのようだね》テレパシー

杏子《くくっ、無駄だってのにね》

杏子《ああ、キュゥべえ。アタシにだけはさやかからのテレパシーが通じるようにしておけよ?》

QB《え? どうして?》

杏子《そうすれば交渉に持ち込めるからな》

QB《なるほど、『助けてほしければ代わりに……』ってやつだね》

杏子《そーいうことさ。くっくっく……簡単には助けてやらねーぞ、さやか!》

759: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 18:59:05.11 ID:kGER2Xkm0

QB《ぷー、ぷー、ぷー》

さやか(通話中だ……困ったなー)

さやか(わざわざ杏子を呼ぶほどのことでもないし……キュゥべえ呼んでも意味ないし)

さやか(やれやれ、純粋に待つしかないみたいねー)



QB《あれ……?》

杏子《ん、どした?》

QB《えと、さやかがさ……杏子にはテレパシーかける気がないみたい》

杏子《え……》

杏子《そ、そっか……さやか、アタシのこと頼ってくれないんだ……》

QB《杏子……》

杏子《な、なんだよ! 別に寂しくなんかねーからな!》

760: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 19:00:43.00 ID:kGER2Xkm0

さやか「……ぷっ」

仁美「……くすっ」

さやか「あははっ! なんか久しぶりだね、こーいうバカなやり取りするのも」

仁美「ふふっ、そうですわね」



QB《二人とも随分と楽しそうだね……》

杏子《……ふんっ、お前にはそう見えるかもしれねーな》

QB《え? 違うのかい?》

杏子《アレはな、気まずい空気をごまかすために無理して笑ってんだよ》

QB《そ、そうなの?》

杏子《アイツらもいろいろとあったみたいだからね》

杏子《そう簡単に仲直りは出来ねーのさ》

QB《なるほど……》

杏子《くくっ……まぁそーいうわけで、だ》

杏子《無理してる可哀相な二人のために、アタシがちょいと力を貸してやろーと思うわけだよ》

QB《え……?》

761: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 19:01:54.31 ID:kGER2Xkm0

杏子《アイツらきっと、何を話せばいいか分からなくて困ってるだろーからねぇ》

杏子《ここは一つ、幻惑魔法で気分転換させてやろうじゃないか!》

QB《な、なんだって!?》

杏子《くくっ……まずはそうだな……》

杏子《強くてカッコいい佐倉杏子様の幻で頭がいっぱいになるようにしてやろうかな!》

QB《そ、そんな……!? 二人っきりなのに他の女の子のことを考えちゃうなんて……嫌がられること間違いなしだよ!》

QB《『また他のオンナのこと考えてたのね……最低!』》

QB《ってな感じのセリフが昼ドラであったから間違いないよ!》

杏子《くくっ、知らねーなそんなこと》

杏子《アタシはアイツらを気遣って、ムードを変えてやろうとしてるだけだからなぁ?》

QB《嘘ばっかり……!》

762: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 19:03:34.76 ID:kGER2Xkm0
仁美「実は私……つい先日、新しいお友達が出来ましたの」

仁美「その方のおかげで最近は毎日が充実してますのよ」

さやか「へー、もしかして……浮気?」

仁美「違います! もうっ、さやかさんたら酷いですわ!」

さやか「ごっ、ごめんごめん」

仁美「そもそもその方は女性ですのよ? 浮気だなんて……」

モヤモヤ...

仁美「……浮気、だなんて……」



杏子『なあ、仁美……今だけはアタシのオンナになってくれよ』

仁美『い、いけませんわ! 私には恭介さんが……!』



仁美(……!?)

仁美(わ、私ったら何を考えて……!)

仁美(嗚呼っ、ダメですわ! こんな破廉恥な想像っ)

仁美「………ぽっ」///

さやか「ちょっ!?」

763: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 19:04:51.50 ID:kGER2Xkm0

QB《幻惑魔法は仁美の方に効果が出たみたいだね》

杏子《くくっ、そーだな……見ろよ、さやかのあの呆れ返った表情!》

杏子《『まーた仁美のビョーキが始まったよ……相変わらずだなぁ』》

杏子《『でも……何も変わってなくて安心しちゃった!』》

杏子《って考えてる顔だぞ、あれは!》

QB《友達にあんな目で見られて……可哀相な仁美! 悪いのは全部杏子なのに!》

杏子《はっはっは! 気分良いぜ!》

杏子《お次はなんだかシリアスな空気になる幻惑魔法をかけてやるかな……!》

QB《ううっ! なんて便利なんだ、幻惑魔法!》

764: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 19:05:58.82 ID:kGER2Xkm0

さやか「……ってなわけなんだ」

仁美「魔法少女……それに、魔女ですか……」

さやか「そ。仁美が操られた、っていうのも魔女の仕業」

さやか「……信じらんないだろーけど、ホントのことなんだ」

仁美「いいえ……私信じますわ、さやかさんのこと」

仁美「私の大好きなお友達が、嘘をつくはずなんてありませんもの!」

さやか「仁美……」

さやか「ふふっ……ありがと」



QB《そんな……まさかさやかが、ずっと秘密にしてきた魔法少女のことを打ち明けちゃうなんて!》

杏子《くっくっく……アタシが作り上げたなんとなくシリアスな雰囲気に呑まれたんだろうよ》

765: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 19:07:09.46 ID:kGER2Xkm0

さやか「……けどそんなゾンビみたいな身体になんかなりたくないでしょ?」

さやか「だからさ、魔法少女になんてならないほうがいいんだよ」

さやか「じゃないと、あたしみたいに……ゾンビにっ……」

さやか「あ、あれ? おかしーな。目にゴミでも入ったかな、えへへ……」ゴシゴシ



杏子《あははっ! シリアスムード過ぎてとうとう泣きだしやがったな、さやか!》

杏子《良い光景だぜ……見てるだけで胸が締め付けられて苦しくなるよーだ!》

QB《うぅっ……》

杏子《ん? どーした?》

QB《僕……僕っ! こんな残酷な光景もう耐えられないよ!》

ダッ!

杏子《あ、おいキュゥべえ!?》

杏子(ちっ……逃げ出しやがったか、甘ったれめ)

杏子(……まぁいいさ、アタシ一人で楽しませてもらうとするよ……くっくっく)

766: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 19:08:36.35 ID:kGER2Xkm0

仁美「……大丈夫。大丈夫ですわ」

仁美「さやかさんは、ゾンビなんかじゃありません」

さやか「……!」

仁美「だって……だってさやかさんはこんなにも温かいですもの……!」

仁美「さやかさんはさやかさんです。私の、大切なお友達にかわりありませんわ!」

さやか「仁美……」

仁美「だから……そんなふうに自分を傷付けるのはやめてください、さやかさん……」

さやか「う……うう……」

さやか「仁美……仁美ぃ……!」グスッ



杏子(……くくっ、よかったなぁさやか?)

杏子(秘密をバラしちまって、情けない姿を見られて)

杏子(すっかり仲が進展したじゃねーか)

767: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 19:09:36.11 ID:kGER2Xkm0

杏子(その代わりに、自分がフツーの人間じゃないってことを改めて思い知って……)

杏子(酷く傷ついたみたいだけどねぇ……くっくっく)

杏子(仁美も今後はさやかへの認識が変わるだろーけど……)

杏子(ま、ここから先はアタシの知ったことじゃないね!)

杏子(アンタらがどーなろうとアタシの責任じゃない)

杏子(せいぜいがんばって仲良くするがいいさ……あーっはっはっは!)

768: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 19:10:10.70 ID:kGER2Xkm0

ゴンゴンッ!

「さやかちゃん、仁美ちゃん! 中にいるの?!」

仁美「あら、この声は……」

さやか「まどかだ! 助けに来てくれたんだ!」

さやか「おーいまどかぁ! 早く開けてくれーい!」バンバンバン

「……いま開けるから静かにしなさい」



杏子(……っと、もうまどか達が来ちまったみたいだな)

杏子(さやかと仁美の関係をいじくりまわすのも満喫したことだし……)

杏子(んじゃ、そろそろネタばらしといこうかね)

杏子(くくっ……アタシがここから飛び出してったら、きっとびっくりするぞアイツら!)

769: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/01/28(土) 19:11:14.18 ID:kGER2Xkm0

さやか「ほ、ほら早く行こ! 次の授業がもう始まっちゃうでしょ!」

スタスタスタ...

仁美「あ、待ってくださいまし、さやかさん!」

まどか「さやかちゃん待ってよー、もっと詳しく話を……」

ほむら「まどか、私は鍵を職員室に持っていってから行くわね」

まどか「あ、うん、お願いね!」

ほむら「それじゃ忘れずに閉めて、っと……」

ガチャガチャ...ガチャン!

ほむら「授業に遅れたくないし……急ぐとしましょう」

タッタッタ...



杏子「え……」

杏子「ちょ、待っ……」

780: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:27:21.43 ID:lqm7KyQ+0

~マミの家~

ゆま「こんにちは、マミお姉ちゃん!」

マミ「あ……ゆまちゃん、今日も来たのね……」

ゆま「ねぇマミお姉ちゃん! お姉ちゃんちにキョーコ来なかった?」

マミ「……来なかったわよ」

ゆま「えー、ホント? その辺に隠れてたりしない?」

マミ「居ないわ……杏子は……ここにはいないの」

ゆま「そっかぁ……うーん、キョーコったらどーしたんだろ」

マミ「あのね、ゆまちゃん……杏子は……」

ゆま「もう3日も連絡がないんだよ? まったくキョーコってばズボラなんだから!」

マミ「違うのよ、ゆまちゃん……杏子は、もう……」



マミ「杏子はもう、この世にはいないのよ……」



ゆま「…………」

781: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:28:25.62 ID:lqm7KyQ+0

ゆま「えへへぇ……」

ゆま「マミお姉ちゃんたら、またその冗談なの?」

ゆま「前にも言ったよね? あんまり面白くないよ、それ!」

マミ「ゆまちゃん……」

ゆま「ヒトミもおんなじ冗談言ってたけど……」

ゆま「誰かが死んだとか、そーいうウソって言っちゃいけないんだよ?」

マミ「冗談でも嘘でもないの……本当のことよ」

マミ「杏子はいないの、死んでしまったのよ……!」

ゆま「……えへっ、えへへへへぇ……」

ゆま「……ゆま、しつこいお姉ちゃんはキライだなぁ」

マミ「……っ!」

782: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:29:35.47 ID:lqm7KyQ+0

ゆま「……まあいいや! ここにいないなら探しにいこっと!」

ゆま「じゃあね、マミお姉ちゃん!」

マミ「あっ……ゆまちゃ……!」

ガチャッ バタンッ!

マミ「……ゆま、ちゃん……」

マミ「う……うう……」グスッ

マミ(……こんなの、酷すぎるわ……)

マミ(ゆまちゃん、あんなに悲しい目をして……)

マミ(……どうして)

マミ(どうして逝ってしまったのよ、杏子……)

783: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:31:28.87 ID:lqm7KyQ+0

~廃教会~

ほむら「…………」

ほむら(誰もいない、わよね……)

ほむら(それに、何も残っていない)

ほむら(もしかしたらと思ったけど……)

ほむら(やっぱりそんな都合の良い話があるわけないわよね……)

ガタッ

ほむら「っ!! 誰っ!?」

784: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:32:03.48 ID:lqm7KyQ+0

ゆま「……えへへ、こんばんわ」

ほむら「千歳、ゆま……どうしてここに?」

ゆま「ゆまはキョーコを探しに来たんだよ!」

ほむら「そう……」

ゆま「ホムラこそ何してたの? ……あっ! もしかしてキョーコとかくれんぼしてたとか!?」

ほむら「……違うわ」

ほむら「ただ少し探し物をしていただけよ」

ゆま「なーんだぁ」

785: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:33:36.50 ID:lqm7KyQ+0

ゆま「ここにもキョーコはいないのかぁ……どこ行ったのかなぁ?」

ほむら「……ゆま、貴女は志筑仁美の家に住んでいるんだったわよね」

ゆま「えっ? あ、うん。そーだよ」

ほむら「ならそろそろ帰らないと……あの家は門限が厳しいのでしょう?」

ゆま「あっ! そうだった! ありがと、ホムラ!」

ゆま「門限を破って怒られたりなんかしたらキョーコに笑われちゃうところだったよ!」

ほむら「……どういたしまして」

ほむら「ついでだし、途中まで送りましょうか?」

ゆま「ううん、だいじょーぶ! 一人で帰れるもん!」

ほむら「そう……なら気をつけて帰りなさい」

ゆま「うん! バイバイ!」

786: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:35:03.26 ID:lqm7KyQ+0

~帰り道~

ゆま(ほんと、キョーコってば何処で何してるんだろ?)

ゆま(早く帰ってこないせーで、マミもヒトミもみーんな、キョーコが死んだなんて変な冗談を言いはじめるし……)

ゆま(そんなことあるわけないのにね! キョーコが死ぬなんて!)

ゆま(キョーコは……ゆまが一人前になるまで監視し続ける、って言ってたもん)

ゆま(ゆまを捨てていなくなるなんてありえないんだよ!)

ゆま(きっと何処かに隠れてて、ゆまを困らせようとしてるんだよね!)

787: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:37:02.98 ID:lqm7KyQ+0

ゆま(キョーコは極悪だもんなぁ……早く見つけださないと、また何か酷いコトしてくるかも?)

ゆま(ぶるぶる、想像しただけでも怖くなっちゃう!)

ゆま(急いで見つけよっと! 今度はどこを探そうかな……)



「――――今日は夕日が綺麗だね」



ゆま「……?」

「まるで街が鮮血に染まるようだよ」

「キミもそう思わないかい、おチビちゃん?」

ゆま「……お姉ちゃん、誰?」

「私は呉キリカ。キミと同じ魔法少女だよ」

788: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:39:03.54 ID:lqm7KyQ+0

ゆま「魔法、少女……?」

キリカ「うん? とぼける気かな?」

キリカ「無駄なことだね。キミが魔法少女であることはお見通しだよ」

キリカ「何よりその指輪が証明している。動かぬ証拠さ」

ゆま「何言ってるの? これはお姉ちゃん達が……」

キリカ「まあいいさ、あれだ、そんなことは瑣事に過ぎない」

キリカ「どうせ――――」










――――すぐにお別れだからね

789: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:40:08.85 ID:lqm7KyQ+0

~さやかの家~

さやか「はぁっ……」

さやか「なんか、全然元気でないや……」

さやか「あれから毎日……こうしてウジウジして……」

さやか「こんなんじゃダメだよね……向こうで杏子も呆れてるだろーなぁ」

さやか「もっとシャキッとしなきゃ……」

♪~♪~♪

さやか「うわっ!?」

さやか「け、ケータイか、びっくりしたなあもぉ」

さやか「ん……仁美から電話? なんだろ?」

790: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:41:04.64 ID:lqm7KyQ+0

さやか「もしもし、仁美?」

仁美『はぁっ、はぁっ……さ、さやかさん? あのっ、お願いします! 力を貸してくださいまし!』

さやか「ど、どしたの? 何かあったの?」

仁美『駅前も、商店街も、教会も探したのにっ……いないんです!』

さやか「落ち着いてよ! 事情を説明して?」

仁美『っ……ゆ、ゆまさんが……』

仁美『ゆまさんがいないんです、どこにも!』

さやか「えっ……?」

791: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:42:29.69 ID:lqm7KyQ+0

さやか「ゆ、ゆまちゃんまだ帰ってないの……?!」

仁美『ゆまさんが門限を守らないなんて初めてのことでっ……』

仁美『おかしいと思って探しに出たんですけど、どこにもいないんですの……!』

さやか「門限、っていうか……もう11時になるじゃん!」

さやか「絶対おかしいでしょソレ! 何かあったんじゃ……!?」

仁美『ううっ……』

仁美『もし、ゆまさんに何かあったら……私……私っ……!』

仁美『天国の杏子さんに顔向け出来ませんわっ……!』グスッ

さやか「仁美……!」

792: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:43:35.98 ID:lqm7KyQ+0

さやか「わかった、あたしも探すの手伝うよ!」

さやか「まずは皆に連絡をとってみる。もしかしたら誰かの家にいるかもだし」

さやか「皆で探した方が効率もいいしね!」

仁美『お、お願いします……!』

仁美『私もまだ、もっと探してみますわ!』

さやか「うん、でも物騒なトコに入っちゃダメだからね?」

さやか「そーいうのはあたしに任せて、仁美は人通りの多いトコとか探して!」

仁美『は、はいっ……』

さやか「……だいじょーぶだよ仁美、絶対見つかるって!」

さやか「なんてったって、あたし達魔法少女がついてるんだから!」

793: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:44:43.17 ID:lqm7KyQ+0


………………

…………

……

794: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:45:43.41 ID:lqm7KyQ+0

~夜・廃教会周辺~

まどか「ゆまちゃーん! いたら返事してー!」

ほむら「…………」

ほむら「……この辺りにもいないみたいね……」

まどか「うん……」

まどか「マミさんたちの方はどうなのかな……」

ほむら「何も連絡がないところからいって……成果はあがっていないのでしょうね……」

まどか「……そう、だよね……」

795: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:46:53.21 ID:lqm7KyQ+0

ほむら「……私が……」

まどか「えっ?」

ほむら「私があの時、千歳ゆまをちゃんと送り届けていたら……」

ほむら「こんなことにはならなかったのに……」

ほむら「私のせいだわ……」

まどか「ほむらちゃん……」

まどか「……大丈夫! ゆまちゃんはきっと無事だし、絶対に見つかるよ」

まどか「だから、そんなに自分を責めないで……ね?」

ほむら「……ごめんなさい……」

796: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:48:23.78 ID:lqm7KyQ+0

~見滝原市・繁華街~

仁美(ゆまさん……どうしてどこにも居ないんですの……?)

仁美(まさか、誰かに連れ去られたとか……)

仁美(それとも杏子さんの後を追って……)

仁美(っ! だ、駄目ですわ、変なことを想像しては……)

仁美(ゆまさんは……きっとちょっと迷子になってしまっただけですわ)

仁美(早く見つけてあげないと……)

仁美(……あと探していないところは……)



《――――――……》



仁美(……町外れの、廃工場……?)

797: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:49:19.31 ID:lqm7KyQ+0

~見滝原市・廃工場~

仁美(携帯のライトだけでは暗くて良く見えませんが……)

仁美(……かなり荒れ果てていますわね)

仁美(あちこちに機械の部品やガラス片が落ちてますわ)

仁美(……この辺りは先日の嵐の被害が特に大きかったから、ですわね)

仁美(正確には嵐のせいではなく、魔女との戦いが原因なのだそうですけれど……)

仁美(……確か、ワルプルギスの夜とかいう……)

仁美(…………)

仁美(ワルプルギスの夜……)

仁美(杏子さんの命を奪った魔女……)

仁美(……っ)グスッ

798: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:50:57.17 ID:lqm7KyQ+0

仁美(……泣いてもいられませんわ)

仁美(今は……ゆまさんを探さないと)

仁美(いなくなってしまった杏子さんの分も……)

仁美(私が、ゆまさんを守らなければいけないんですから)



《――――――……》



仁美(……? いま何か光ったような……)

仁美(工場の奥……?)

仁美(少し……行ってみましょう)

799: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:52:37.88 ID:lqm7KyQ+0

仁美(……あ)

仁美(この部屋、天井が抜け落ちてますわ)

仁美(雲の切れ間から少しだけ星空が見えますわね)

仁美(あの程度では明かりの足しにもなりませんけど……)

仁美(…………あら?)

仁美(良く見ると、床が変な色に染ま……)

仁美「…………ひっ!?」

仁美(こ、これ……血の跡……!?)

仁美(いったいここで何が――――)

800: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:53:56.32 ID:lqm7KyQ+0

きらり、と。

紅い輝きが視界の端に映る。

「あっ……?」

仁美は反射的にその輝きへと視線を向け、震える手で携帯電話のライトをかざした。

ぼんやりとした明かりに照らし出され、何かのシルエットが浮かび上がる。

「…………!?」

血の跡が一面に広がる床の上。仁美からほんの数歩の距離に。

打ち捨てられるようにして、得体の知れないモノが転がっていた。

801: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:55:16.99 ID:lqm7KyQ+0

ソレは紅く、黒いカタマリ。

ボロ切れと化した『衣服』に包まれ、

乾いた血で『髪』が張り付いており、

『肌』はドス黒く変色していて、

棒のように硬直した『腕』を突き出し、



そして、その『指』には、見覚えのある指輪がはめられている――――

802: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:56:06.65 ID:lqm7KyQ+0

「あ……あああ……!」

あのカタマリを飾り付けている指輪は、誰のものだったろうか。

大好きな人とお揃いなのだと。

優しいお姉ちゃん達から貰ったのだと。

あの美しい指輪を得意げに自慢していた幼い少女の名は、なんだったろうか。

仁美は必死に頭を働かせるが、答えは出てこなかった。

「あああぁああぁぁっ!!!」

その答えを、拒絶していた。

803: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 15:59:34.20 ID:lqm7KyQ+0

(ウソですわウソですわウソですわウソですわ――――!!)

心臓が早鐘の如く鳴り響く。

呼吸も荒く、整えることが出来ない。

滲みだした脂汗で衣服がじっとりと湿っていく。

(そんなはずないアレが■■さんだなんてそんなわけない!!)

現実を否定する呪文を唱えながら、覚束ない足取りで歩み寄り、

(私の勘違いに決まってますわそうですわ――――)

カタマリから突き出る腕に、その指に、手を伸ばす。

804: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 16:00:46.62 ID:lqm7KyQ+0

(そうコレは■■さんなんかじゃなくて廃棄された機械か何かで――――)

仁美は震える指先でソレを掴むと、

(指輪に見えるのも電球とかで、暗いから恐ろしい想像をしてしまっただけに決まって――――)

ずるり、という気持ちの悪い感触と共に、紅き指輪を引き抜いた。

「…………あ」

そして、黒ずんだ汚らしい滓がこびりついたソレを手の平に乗せ、悟る。



これは――――



千歳ゆまが身につけていたものと、同じ指輪だ。

805: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 16:02:08.32 ID:lqm7KyQ+0









つまり、

考えるまでもなく、

足元に転がるこの物体は。

806: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 16:03:56.69 ID:lqm7KyQ+0

「――――嫌ああああああぁああ!!」

廃工場に叫び声がこだまする。

「そんな……どうしてッ……あああああ!!」

仁美は自分の衣服が汚れることも構わず、そのカタマリを抱きしめた。

冷たく、グニャリとした感触のソレは、

誰もが生理的な拒絶感を覚えるだろう。

それでも仁美は、両の手を離すことはなかった。

「なんで! なんでこんなっ……!!」

807: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 16:04:55.88 ID:lqm7KyQ+0

認めたくはなかった。

ソレが何なのか。

『誰』であるのか。

決してその名を口にしてはいけないと思っていた。

しかし溢れだす涙を抑え切れないように、

ついに仁美の口から彼女の名がこぼれ落ちる――――

808: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 16:06:49.95 ID:lqm7KyQ+0

その直前。



《――――――……》



「え……?」

誰かの笑い声が、微かに仁美の耳に届く。

しかしその声の主が誰であるのか確かめる前に、

「……あぐっ!?」

仁美は頭蓋が叩き割られるような痛みに襲われ、

――――そのまま意識を失い、ドサリと床に倒れ込んだ。

809: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 16:08:14.87 ID:lqm7KyQ+0

~とある屋敷~

キリカ「上手くいったよ、織莉子。全部キミが指示した通りさ」

キリカ「この通り、指輪も回収してきたよ」

織莉子「ご苦労様、キリカ。いつもありがとうね」

織莉子「……それで、あの子は?」

キリカ「うん? ああ……あの無力なお姫様なら、暗い暗い檻の中で眠っているよ」

キリカ「万が一、目を覚ましても平気さ。拘束具を着せてあるからね」

織莉子「さすがキリカね、手際が良いわ」

キリカ「ふふ! 織莉子にそう言ってもらえるだけで、天にも昇る心地だよ」

810: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 16:09:35.76 ID:lqm7KyQ+0

キリカ「さてさて、私は次に何をすればいいのかな?」

キリカ「織莉子のために、私の時間を、私の命を使わせておくれよ」

織莉子「次は……この写真の魔法少女がターゲットよ」

織莉子「彼女は私たちが成し遂げる救世の妨げになる存在なの」

キリカ「と、いうことは……また『処理』すればいいのかい?」

織莉子「ええ、千歳ゆまと同じようにしてくれればいいわ」

キリカ「千歳ゆま? ……誰だっけ、それ」

織莉子「……相変わらず他人の名前を覚えていられないのね、キリカは」

キリカ「私が覚えておく必要のある名前は『美国織莉子』だけだからね!」

織莉子「クスっ……まったくもう、貴女って子は」

811: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/02/11(土) 16:14:31.48 ID:lqm7KyQ+0

織莉子(……私が予知した、いずれ来たる『絶望』……)

織莉子(それを回避するためにも、私たちは戦い続けなくてはいけない)

織莉子(この手で罪を犯してでも……)

織莉子(…………)

織莉子(あの『絶望』の中心にいた千歳ゆまは片づいた)

織莉子(次は貴女の番よ――――)






織莉子(――――暁美、ほむら)

820: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:19:43.01 ID:Zx4khWJs0

~とある屋敷~

『お願い――――目を醒まして!』

『ごめんよ織莉子……私は、もう』

『嫌ッ……待って、行かないで、キリカぁああぁ!』





織莉子「――――――っ!?」

織莉子(また、この予知だわ……)

織莉子(やはり未来を変えるためには……千歳ゆまだけでなく暁美ほむらも……)

821: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:20:53.66 ID:Zx4khWJs0

織莉子(…………)

織莉子(キリカは『私一人で大丈夫だよ』と言ってくれたけれど……)

織莉子(ここは万全を期すためにも、私も動くとしましょう)

織莉子(そうなると問題は……千歳ゆまから奪ったこの指輪をどうするか、ね)

織莉子(もしこれが暁美ほむらの手に渡ったら、予知の通りになってしまう)

織莉子(さて、どうしましょうか……)

織莉子(……そうだ、確かお父様の書斎には金庫がある)

織莉子(あそこにしまっておくとしましょう)

822: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:22:06.65 ID:Zx4khWJs0

~路地裏~

ほむら「…………」

まどか「この辺りにもいないね、ゆまちゃん……」

まどか「どうしよう、ほむらちゃん……このまま見つからなかっ――――」

ほむら「……っ!! まどか危ないっ!!」

まどか「え、きゃあ!?」

ガキィン!!

キリカ「……おや? そんな小さな盾で私の一撃を防ぐなんて」

キリカ「なかなかやるね、今度の標的は」

まどか「なっ……あ、貴女だれ!?」

ほむら「……呉、キリカ……!?」

まどか「!?」

ほむら(まさか……まどかを狙って……!?)

823: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:23:13.49 ID:Zx4khWJs0

キリカ「へえ、私のことを知ってるのかい? どこで会ったかな?」

ほむら「……答える義理はないわね」

キリカ「ふぅん……まあ関係ないけど」

キリカ「私はただ標的を『処理』するだけだからね」

まどか(……あの子が呉キリカ……!)

まどか(前にほむらちゃんが話してくれた、別の時間軸で会った魔法少女……)

まどか(魔法少女狩りの犯人……私を殺した人の一人……!!)ゾクッ

824: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:25:41.51 ID:Zx4khWJs0

キリカ「君達はさっきの『オチビちゃん』よりも歯ごたえがありそうだね」

キリカ「困ったな、朝食の時間に間に合うかな? まあ意地でも間に合わせるんだけど」

まどか「……オチビ、ちゃん?」

まどか「待って、オチビちゃんって、まさか……」

ほむら「貴女、千歳ゆまに何かしたの……!?」

キリカ「千歳、ゆま……? 何だかさっきも聞いたような……」

キリカ「……あ、そうだ! 私の一人目の標的の名前だ!」

キリカ「魔法少女だっていうのに変身もしないで……」

まどか「……え?」

キリカ「私にあっさり敗れた無力なお姫様……彼女が千歳ゆまだったかな!」

825: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:26:54.27 ID:Zx4khWJs0

ほむら「何を言っているの……? あの子は、魔法少女なんかじゃ……」

キリカ「うん? 君達までそんなことを言うんだ?」

キリカ「そんな嘘になんの意味があるんだか……やれやれ」

キリカ「彼女はソウルジェムの指輪をしていた――――」

キリカ「間違いなく魔法少女である証じゃないか」

まどか「――――!?」

まどか「ち、違うよ! あれはソウルジェムなんかじゃなくて、私達が作った――――」

キリカ「まあ、そんなことはどうだって良いんだよ」

キリカ「君達も、すぐにあのオチビちゃんと同じ所へ行くんだからさ」

ほむら「…………!!」

826: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:29:15.94 ID:Zx4khWJs0

まどか(そんな……じゃあ、ゆまちゃんは、もう……?)

まどか(私達が作った指輪のせいで……魔法少女狩りに……?)

ジワ...

ほむら《しっかりして、まどか!》

まどか《!》

ほむら《あいつの言葉が真実とは限らないわ……惑わされてはダメ!》

まどか《う、うん!》

キリカ「――――さて、おしゃべりはここまでにしようか!」

キリカ「急がないと日が明けてしまうからね、早々に決着をつけさせてもらうよ!」

ジャキッ!!

ほむら「来るわ、気をつけてまどか!」

まどか「うんっ!」

827: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:30:15.26 ID:Zx4khWJs0

~病院・駐輪場~

マミ「やっぱり『いる』わね……」

さやか「くっそぉ……! こんなときに魔女が出るなんて!!」

マミ「でも放っておくわけにもいかないわ。下手すればそれこそ……」

さやか「……ゆまちゃんが襲われるかもしれないもんね」

マミ「そういうことよ、急いで片付けましょう!」

さやか「はい、マミさんっ!」

828: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:31:33.64 ID:Zx4khWJs0

~魔女の結界内部~

さやか「…………」

マミ(さっきは、ああいうふうに言ったけど……)

マミ(……美樹さんも、本当は気がついているのでしょうね)

マミ(ゆまちゃんが……既に手遅れな可能性もある、ってこと)

マミ(…………)

マミ(駄目ね……悪いことを考えるのはやめましょう)

マミ(信じなきゃ、あの子の無事を……)

829: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:32:41.70 ID:Zx4khWJs0

さやか「それにしても……」

マミ「うん?」

さやか「見てるだけで胸やけしそうな結界ですね、ココ」

マミ「そうね……これが本物だったら胸が弾むんだけど」

さやか「さすがに手をつける気には……なれないなぁ」

さやか「ほら、見てくださいよコレ。ぶよぶよしてますよ」

マミ「いったい何で出来てるのかしらね」



マミ「――――この、お菓子の山」

830: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:36:12.23 ID:Zx4khWJs0

さやか「っと……魔女はこの奥にいるみたいですね」

マミ「そうね。準備はいい?」

さやか「はいっ!」

マミ「それじゃあ……開けるわよ!」

バタンッ!











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さやか「なんだ、ずいぶん弱っちそうな魔女じゃん」

マミ「一気にケリをつけるとしましょうか。……でも、油断は禁物よ」

さやか「分かってますって!」

さやか「いっくぞー!! たああああっ!」

マミ「喰らいなさいっ!」

831: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:37:55.08 ID:Zx4khWJs0

…………。

さやか「ふうっ……あっさり片付いたね」

マミ「そうね。見た目通り、大したことなかっ――――」

まどか《マミさん、さやかちゃん! お願いっ……助けて!》

マミ《鹿目さん! 何かあったの!?》

まどか《いま、悪い魔法少女に襲われてるんです!》

さやか《魔法少女に!? どーいうことよソレ!》

まどか《詳しいことはわかんないけど、ゆまちゃんのことも知ってるみたいで……きゃあ!?》

マミ《鹿目さん!? 鹿目さん、どうしたの!?》

832: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:39:51.89 ID:Zx4khWJs0

マミ「くっ! テレパシーが途絶えたわ!」

さやか「どーいうこと!? なんで魔法少女がまどか達を襲って!?」

マミ「それにゆまちゃんのことも関係あるみたいだった……!」

さやか「急いで二人を探そう!」

マミ「ええ!」

マミ(もう一度テレパシーを送って、場所の確認を……)



さやか「――――っ!? マミさん、後ろ!! 魔女が――――!!」



マミ「え……?」

833: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:41:19.85 ID:Zx4khWJs0













――――グシャリ

ゴキメシャブチバキメシャ...

834: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:43:14.63 ID:Zx4khWJs0

~路地裏~

キリカ「ふぅ……ふふふ、なかなか手こずらせてくれるね」

ほむら「まどか、大丈夫!?」

まどか「だ、大丈夫……ちょっと腕を掠っただけだから……」

ほむら「そう……」

ほむら(……やせ我慢、してるわね)

ほむら(あの傷じゃあ弓が引けないわ……)

835: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:44:16.89 ID:Zx4khWJs0

ほむら(それに……いつもよりまどかの動きが鈍いわのも問題ね)

ほむら(相手が魔女じゃないから、というのもあるでしょうけど……)

ほむら(やっぱり千歳ゆまのことが気掛かりなんでしょうね……)

ほむら(…………)

ほむら(許さないわよ、呉キリカ……)

ほむら(お前は私の大切な友達を傷付けた……!!)

836: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:46:03.49 ID:Zx4khWJs0

まどか(どうしよう……血が止まらないよ……)

まどか(それに、マミさんもさやかちゃんも、テレパシーに応えてくれなくなっちゃった)

まどか(きっと向こうでも何かあったんだ……)

まどか(早く……早くなんとかしなきゃ)

まどか(でもどうすればいいの? あの子の魔法……周りの時間を遅くするものらしいけど)

まどか(あれがある限り攻撃も当たらない。逃げることも出来ない……)

まどか(…………)

まどか(……ゆまちゃんもこんなふうに、酷い目に合わされたのかな……)

まどか(私達のプレゼントのせいで……勘違いされて……)

ジワ...

837: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:47:07.77 ID:Zx4khWJs0

キリカ「うーん、そろそろ観念してほしいんだけれどなぁ」

キリカ「大人しくやられてみる気はないかな?」

ほむら「お断りよ」

まどか「こんなトコで死ぬ気なんてないもん!」

キリカ「……うん?」

キリカ「あれ、もしかしてキミ達は……」



織莉子「――――苦戦しているみたいね、キリカ?」



ほむら「!?」

キリカ「あれっ!? 織莉子、来ちゃったの!?」

キリカ「私一人で充分だって言ったのに!」

織莉子「ごめんなさい、貴女のことが心配だったから……」

838: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:48:57.82 ID:Zx4khWJs0

ほむら《美国、織莉子!!》

まどか《あの人が、美国織莉子……!?》

ほむら《そうよ……予知能力を持つ魔法少女……!!》

ほむら《……状況は最悪ね》

ほむら《まどか! ここは私が時間を稼ぐわ、貴女は逃げて!》

まどか《だ、駄目だよそんなの! ほむらちゃんを置いてなんて……!!》

ほむら《いいから早く!》

まどか《でもっ……!!》

839: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:50:04.80 ID:Zx4khWJs0

ほむら《……まどか、貴女のその怪我では戦えないでしょう?》

まどか《!!》

ほむら《ハッキリ言わせてもらうわ。今の貴女は足手まといなのよ》

まどか《そ、そんな……》

ほむら《だから貴女は早くここから離れて、マミやさやかと合流しなさい》

まどか《…………っ》

まどか《わかったよ……ほむらちゃん》

まどか《でも!! 必ず戻ってくるから! マミさん達を連れてくるから!》

まどか《それまで……絶対に無事でいてね……?》

ほむら《……ええ》

まどか《絶対……絶対だからね!!》

ダッ!

840: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:50:57.52 ID:Zx4khWJs0

キリカ「あっ、一人逃げるよ織莉子!」

織莉子「構わないわ。放っておきましょう」

織莉子「これくらいで私の計画に影響は出ないもの」

ほむら「……大した余裕ね」

ほむら「そんな簡単に私を倒せると思っているのかしら」

織莉子「……貴女が、暁美ほむらね」

織莉子「残念だけれど貴女に勝ち目はないわ」

キリカ「そうさ! 私達のコンビネーションにキミ一人で勝てるわけないよ!」

キリカ「無駄な抵抗は止したほうが良いと思うけどな?」

ほむら「……甘く見ないでほしいわね」

841: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:52:03.37 ID:Zx4khWJs0

ほむら「例え勝ち目がないとしても私は絶対に諦めない……」

ほむら「まどかは絶対に守ってみせる! 貴女達に殺させはしないわ!!」

織莉子「…………」

織莉子「貴女、何か勘違いしていないかしら」

ほむら「……えっ?」

織莉子「私の狙いは貴女よ、暁美ほむら」



織莉子「――――まどか、なんていう子を害する気はないわ」



ほむら(…………!?)

842: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:53:15.03 ID:Zx4khWJs0

ほむら(どういうこと……?)

ほむら(美国織莉子は、まどかを殺そうとしているのではないの?)

ほむら(……なら、千歳ゆまを襲った理由は?)

ほむら(以前の時間軸のように魔法少女狩りを行なったのだと思っていたけれど……)

キリカ「――――考え事してる余裕なんてあるのかなっ!?」

ほむら「っ! しまっ……!!」

ザシュ!!

843: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:55:51.36 ID:Zx4khWJs0

ほむら「あっ……くっ……!!」

ほむら(足がッ……立てない……腱を切られた……!?)

ガクッ...

キリカ「ははっ! ほら見てよ織莉子! 私一人でも上手く出来たでしょ?」

織莉子「……少し卑怯だった気もするけれど」

キリカ「うっ。ま、まあ良いじゃないか。これで目的は達成できるよ」

織莉子「ふふっ、そうね。ありがとう、キリカ」

ほむら「くっ……うぅ……」

ほむら(このままじゃやられる……治療を……)

ほむら(時間を……時間を稼がなきゃ……!)

844: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:57:09.06 ID:Zx4khWJs0

ほむら「貴女達は……どうして私を……千歳ゆまを襲ったの……?」

キリカ「……図々しいな、キミ」

キリカ「自分が質問なんて出来る立場だと思っているのかい?」

ほむら「くっ……」

織莉子「構わないわキリカ。少しくらい話をしてあげましょう?」

キリカ「……織莉子がそう言うなら仕方ないね」

845: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 15:59:42.29 ID:Zx4khWJs0

織莉子「私が貴女を襲った理由……」

織莉子「それは、貴女が世界の『絶望』を生み出す存在だからよ」

織莉子「そして『絶望』の鍵となるのが千歳ゆまだった。だから……」

キリカ「私が彼女からソウルジェムを奪い、天国へご招待した、ってわけさ」

キリカ「ま、安らかな眠りにつけてオチビちゃんも幸せだろうよ!」

ほむら「…………!」

ほむら(やっぱり千歳ゆまは……もう……!)

846: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 16:00:26.24 ID:Zx4khWJs0

ほむら「……あの子は魔法少女なんかじゃない、普通の女の子だったのよ……!?」

ほむら「あの子が絶望の鍵になる? そんなわけないじゃない!」

ほむら「なのに貴女達は……!」

織莉子「そう……千歳ゆまは魔法少女ではなかったの」

織莉子「でも関係ないわ。私の世界を脅かす者は全て排除するだけ」

織莉子「例えそれが何の力も持たない『一般人』だとしても……ね」

ほむら「っ!!」

847: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 16:02:37.85 ID:Zx4khWJs0

織莉子「さて……そろそろ話も終わりにしましょうか、暁美ほむら」

織莉子「これ以上、回復のための時間を稼がれても困るし……ね」

ほむら「ちっ……!」

キリカ「それじゃあ織莉子! そろそろ幕引きといこうか!」

織莉子「ええ。そうね、キリカ」



織莉子「せめて――――安らかに眠らせてあげましょう」



ほむら(まどか………!)

848: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 16:06:53.02 ID:Zx4khWJs0


………………

…………

……



849: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/03/04(日) 16:07:23.61 ID:Zx4khWJs0








《――――――…………》



仁美(……声が……聴こえる……?)

仁美(あなたは……いったい誰……?)

仁美(……私に何をしろと? 何の力もない私に……)

仁美(…………)

仁美(――――――私に、魔法少女の力をくださるの?)

870: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 00:54:27.57 ID:IBaT1rcP0

~病院・駐輪場~

さやか「ねえ……起きてよマミさん」

さやか「魔女はもう倒したんだよ?」

さやか「凄い苦戦しちゃったけどさ……あたし、勝ったんだよ?」

さやか「ほら、マミさんの怪我も全部治したんだよ?」

さやか「なのになんで……」

さやか「なんで起きてくれないの、マミさん……?」

マミ「…………」

871: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 00:55:04.57 ID:IBaT1rcP0

ジワッ...

さやか「あっ……?」

さやか「マミさん、ソウルジェムが真っ黒だ……」

さやか「これがいけないのかな……」

さやか「早くキレイにしなきゃ……キレイにしないと……」

さやか「……キレイにしないと、どうなるんだっけか……」

さやか「死んじゃうんだっけかな……」

さやか「…………」

さやか「……じゃあ……」

さやか「……あたしも、もうすぐ死んじゃうんだね……」

ジワッ...

さやか「……うっ……くぅぅ……!?」

872: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 00:55:57.48 ID:IBaT1rcP0

さやか(胸が……苦しいッ……)

さやか(ソウルジェムが濁ると……こんなに苦しいものだったの……?)

さやか(これが……これが死ぬってことなの……?)

マミ「う……あ……」

さやか「マミ、さん……」

さやか「……ごめんね……あたし……もう……」

さやか「マミさん……助けてあげられそうにないや……」

さやか「……せめて……」

さやか「最期まで、一緒にいよっか……」

ギュッ...

873: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 00:57:15.88 ID:IBaT1rcP0

さやか「ああ……」

さやか「苦しいなぁ……」

さやか「あいつも……」

さやか「杏子も……こんなふうに、苦しかったのかな……」

さやか「……はは、そう考えれば……この苦しみも悪くない、かな」

さやか「マミさんも……そう思うよね……?」

さやか「……杏子」

さやか「あたし達もそっちに……」





《ばーか。なに格好つけてるんだよ、さやか》

874: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 00:58:18.22 ID:IBaT1rcP0

さやか「え……?」

《どーせ苦しんでる自分が格好良いとでも思ってるんだろうけどさ》

《意味ないぞ、そーいうの。ただの自己満足じゃんか》

《さやかやマミが苦しんだって、何にもならないんだよ》

さやか「そう、かな……」

《そーだよ》

《……アタシも、アンタらのそんな姿見せられたって嬉しくない》

《だからさ……》





《――――アタシがその苦しみから救ってやるよ》

875: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:00:41.19 ID:IBaT1rcP0

《ほら行こうぜ、さやか》

さやか「……どこへ?」

《決まってるだろ、皆のとこさ》

《あ、マミのヤツも叩き起こさなきゃな!》

《全員一緒のほうが楽しいに決まってるし……》

《無理矢理引きずってでも連れていこうぜ!》

さやか「うん……うん、そうだね」

さやか「一緒に……行こっか……」

876: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:01:13.86 ID:IBaT1rcP0

~崩壊した鉄橋~

キリカ「げほげほ……大丈夫かい、織莉子!?」

織莉子「ええ、ちょっとビックリしたけれど……怪我はないわ」

キリカ「それは良かった! 君に何かあったら私は生きていけないところだったよ!」

織莉子「ふふ、大袈裟ね……キリカは」

織莉子「それにしても、暁美ほむらがここまでするなんて思わなかったわ……」

キリカ「うん。傷付いた足でここまで逃げてきただけでも凄いのに……」

キリカ「まさか橋を爆破して、河に逃げ込むなんて!」

織莉子「そうね……まああれだけの傷を負っているわけだし、遠くへは行けないでしょう」

織莉子「すぐに私の予知で場所を特定して……」

織莉子「――――この舞台にも幕を引くとしましょうか」

877: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:02:00.51 ID:IBaT1rcP0

~河原~

ほむら「ゲホッ……ゴホッ、ゴホッ!」

ほむら「……逃げ、きれた?」

ほむら(……いいえダメだわ……相手はあの美国織莉子……)

ほむら(もっと遠くへ……逃げないと……)

ほむら(……ううん、みんなと合流しなきゃ……)

ほむら(合流…………どうやって?)

ほむら(……なんでだろう、頭がぼーっとする……考えがまとまらない……)

ほむら(…………)

ほむら(この河……なんでこんなに真っ赤なのかしら……)

ほむら(……ああ、そうか……)





ほむら(これ、私の血だ……)

878: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:03:11.88 ID:IBaT1rcP0

ほむら(身体に力が入らない……)

ほむら(なんだか寒いわ……それに眠い……)

ほむら(どうしてこんなに眠いのかしら……)

ほむら(……このまま……このまま目を閉じてしまいたい……)

ほむら(…………ダメ、逃げなきゃ……)

ほむら(まどかを……守らなきゃ……)

ほむら(……まど、か……)





《なーに寝てんだよ、ほむら》

879: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:04:59.60 ID:IBaT1rcP0

ほむら「あ…………」

《あーあ、全身びしょびしょじゃねーか、まったく》

ほむら「……お日様だ……」

《んなトコで寝てたら風邪引いちまうぞ》

ほむら「もう、夜明けなのね……」

《ほら、さっさと起きろって。さやかもマミも待ってるぞ》

ほむら「キラキラして……綺麗……」

《そんな寂しいとこで寝っ転がってないでさ》

ほむら「……温かい……」

《……こっちに来いよ、ほむら》

ほむら「私も……そっちに――――」

880: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:06:00.18 ID:IBaT1rcP0
~住宅地~

まどか「はあっ、はあっ……」

まどか(マミさん、さやかちゃん、どこにいるの……!?)

まどか(早く合流しないと……早くしないとほむらちゃんが……!!)

まどか(テレパシーも全然反応がないし……)

まどか(もしかして、さやかちゃん達も、もう……?)

まどか(っ……! そんなはずないっ、そんなことあるわけない!)

まどか(もっと魔力を込めてテレパシーを使えば通じるよ、きっと!)

まどか(さやかちゃん、マミさん!! お願い、返事をして……!!)

881: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:06:52.70 ID:IBaT1rcP0

まどか(…………)

まどか(……)

まどか「っ……ううっ……」グスッ

まどか「マミさん……さやかちゃん……どうしてなの……?」

まどか「お願いだから……返事をしてよぉ……」



――――ドォン!!



まどか「あっ!?」

まどか「今の音……ほむらちゃんの爆弾の音……!?」

まどか「橋のほうだ……まさか……!?」

まどか「――――っ!!」ダッ!

882: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:07:46.53 ID:IBaT1rcP0

まどか《ほむらちゃんっ……ほむらちゃん!!》

まどか《ねえ聞こえる!? 何があったの!?》

まどか《怪我なんかしてないよね、大丈夫だよね!?》

まどか《ほむらちゃん……!》

まどか(………ほむらちゃんの声が……聞こえない……!)

まどか「う……」

まどか「うああああっ!!」

まどか(そんなはずない! ほむらちゃんがやられるわけない!)

まどか(絶対に無事でいてくれる、って約束したもん!)

まどか(絶対に助けに行くって言ったもん!!)

まどか(待っててほむらちゃんっ……今行くから……!!)

883: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:09:17.71 ID:IBaT1rcP0

~崩壊した鉄橋~

キリカ「……おや? さっき見た顔が来たよ、織莉子」

まどか「……っ! 貴女たちは!」

織莉子「わざわざ戻ってきたのね、貴女」

まどか「ほむらちゃんは……ほむらちゃんは何処なの!?」

織莉子「彼女なら……」

キリカ「ははっ、一足遅かったね」

まどか「どういう、意味……?」

キリカ「ここに私達がいて、彼女がいない」

キリカ「それが意味することなんて言わなくてもわかるだろう?」

まどか「っ!!」

884: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:10:00.63 ID:IBaT1rcP0

織莉子「キリカったら、またそんな回りくどい言い方して……」

キリカ「ふふっ、これが私の性分だからね」

織莉子「はっきりと言ってあげないと可哀相でしょう?」

織莉子「暁美ほむらは、もう逃――――」

まどか「…………い」

織莉子「え?」

まどか「許さない!! 貴女たちのこと、絶対に許さないんだからッ!!」

織莉子「――――っ!?」ゾクッ

885: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:10:34.45 ID:IBaT1rcP0

織莉子(何、このプレッシャーは……!?)

織莉子(彼女がただそこにいるだけで息が苦しくなる……!)

まどか「やあああああああっ!!」

キリカ「くっ……!?」

キリカ(圧倒的な魔力……あんな力をぶつけられたら一溜まりもないじゃないか!!)

キリカ「……まあ、でも」

織莉子「ええ、そうね」



織莉子「――――撃たせなければ何も問題ないわ」



まどか「っ!?」

886: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:11:58.46 ID:IBaT1rcP0

引き絞った弓を放つ直前――――

呉キリカの魔法に支配された『時間』は、

澄んだ水が泥水に変わるようにその流れを澱ませた。

キリカ「遅い遅いッ!」

まどか「――――っ!?」

澱んだ時間が、まどかの全身に重たく纏わり付く。

まどか「こ、このっ……」

それに抗うよりも早く――――

織莉子「させないわ」

魔法で作り出された球体がまどかへと襲い掛かった。

887: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:13:05.43 ID:IBaT1rcP0

まどか「あうっ……!」

腕、腹部、足。

動きの鈍ったまどかは、ただ弓を放つだけの動きも出来ず、

成す術もなく美国織莉子の攻撃を受けた。

まどか「つっ……あっ……!」

からん、と乾いた音が虚しく響く。

それはまどかが弓を取り落としてしまった音。

絶望に立ち向かう希望を手放してしまった音――――

888: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:14:10.10 ID:IBaT1rcP0

その隙を、呉キリカが見逃すはずがなかった。

まどか(――――どうして?)

一瞬にして間合いを詰め、背後に回り込む。

まどか(どうして私たちが、こんな目に?)

そして黒の魔法少女は、その鋭い爪を、全てを切り裂く魔法の刃を構え――――

まどか(………ごめんね、みんな……)





――――まどかの細い首筋へ振り下ろした。

889: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:14:57.62 ID:IBaT1rcP0











「――――うん」

「そうさ、君を魔法少女にしてあげる」

「でも残念ながら君に魔法少女の素質はほとんどない」

「まともに僕の姿を見ることも出来ないし、かろうじて声が聴こえる程度だ」

「魔法少女としては最低ランクの能力」

「『どんな願いも叶えてあげる』、とはいかないんだ」

「願いで起こせる奇跡も、本当にちっぽけなものになってしまうだろう」

「……そうだね、例えば」





「死の淵に立つ『彼女』の魂を救うことなら……出来るかもしれないね」

890: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:16:32.33 ID:IBaT1rcP0

「君がその指輪を手にした時、頭が割れるような痛みを感じなかったかい?」

「それはね、その指輪に宿った『彼女』の魂に、魔力にあてられてしまったからなんだよ」

「実は君の内に秘めた素質がわずかとはいえ開花したのも、そのおかげなのさ」

「……『彼女』の肉体は使い物にならないほど損傷してしまったけれど、魂は違う」

「その指輪に宿った『彼女』の魂は、朽ちることなく輝き続けているんだよ」

「君が願えば、君が呼べば、『彼女』は応えてくれるだろう」

「君は自身の魂を、『彼女』のために使う気はあるかい?」

891: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:17:40.16 ID:IBaT1rcP0

「まあでも、きっと彼女は怒るだろうね」

「そういった願いが嫌いだったから」

「……それでも君は願いを変えないのかい?」

「……うん。やっぱりね」

「君達人間はそういったことが大好きだものね」

「例え周りの人間が止めても、自身に待つ苦難を知っていても」

「愛する人を救うためなら我が身も惜しまない」

「……わけがわからないよ」

892: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:19:16.76 ID:IBaT1rcP0

「別に、僕はどちらでも構わないけどね」

「君がそう願うのであれば、止めたりなんかしないさ」

「さあ、願いを言ってごらん」

「それで契約は交わされる」

「…………」

「それが君の願いだね?」

「うん、わかったよ」

「……君の願いはエントロピーを凌駕した」

「喜ぶといい。君の願いが彼女の魂を救うんだ」





「そう――――佐倉杏子の魂を!」

893: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:20:38.20 ID:IBaT1rcP0

布が擦れ合う、乾いた音が微かに響く。

キリカ「なっ……!?」

まどかの首筋へ振り下ろされるはずだった黒の魔爪は、その寸前で――――



――――黄色のリボンに阻まれ、動きを止められていた。



キリカ「なんだこれっ!? リボンっ……!?」

まどか「えっ……!!」

894: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:21:54.47 ID:IBaT1rcP0

織莉子「きゃっ……! な、何、巻き付いて………!?」

キリカ「織莉子! くっ……!」

まどか「この魔法は……!!」



「――――ふう、危ないところだったわね」



まどか「あ…………!」

マミ「ごめんなさい鹿目さん。お待たせしちゃったみたいね?」

まどか「やっぱり、マミさんっ……!!」

まどか「良かった……無事だったんですね!」

マミ「ええ、実は……」

895: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:22:23.95 ID:IBaT1rcP0

織莉子(新手……!?)

織莉子(面倒なことになったわ……)

織莉子(でも、この程度の拘束なら問題ない……)

織莉子(私の武器を飛ばして、彼女たちの隙を突く!!)

ギュンッ!

まどか「あっ! マミさん危ない! 後ろ……!」

「心配いらないよ、まどか!」



ガキィーン!



さやか「バッターさやかちゃん、打ちましたぁ!」

さやか「……なんてねっ!」

まどか「さやかちゃん!?」

896: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:23:54.23 ID:IBaT1rcP0

まどか「さやかちゃんも無事だったんだ!」

さやか「あったり前でしょ、まどか!」

さやか「正義の味方はそー簡単にやられたりしないんだよ!」

まどか「……もうっ、さやかちゃんたら……」

織莉子「また新手……!? なんてことなの……!?」

キリカ「大丈夫さ織莉子! 私がついてるよ!」

キリカ「まずはこんなリボン、八つ裂きにして……!」

「……動いたら、美国織莉子のソウルジェムを撃ち抜くわ」

キリカ「っ!?」

まどか「あっ……ああ……!」

ほむら「無駄な抵抗はやめなさい、呉キリカ」

キリカ「お前は……いつの間に!?」

織莉子「私が背後を取られるなんて……!?」

897: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:25:09.98 ID:IBaT1rcP0

まどか「ほ……ほむらちゃん……!!」

ほむら「ごめんなさい……心配かけたわね、まどか」

まどか「う……うぅうう……」グスッ

まどか「良かった……ほむらちゃんが生きててくれて良かったよぉ……」

まどか「私……ほむらちゃんが死んじゃったのかと思って……」

ほむら「まどか……」

キリカ「暁美ほむらまで現れるなんて……!?」

織莉子「どうして!? 私の予知なら、この程度の不意打ちなんて予測出来たはずなのに……!!」





「――――きっと幻でも見てたんだろ」





織莉子「ッ!?」

「周囲に敵はいない。全て上手くいく」

「……そんな幻をさ」

898: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/04/09(月) 01:26:48.37 ID:IBaT1rcP0

まどか「あっ……!?」

「よぉ、まどか。危ないところだったな?」

キリカ「っ!? 誰だ!!」

「まったく、無茶しすぎなんだよオマエは。もっと自分を大事にしろ、って言ったろ?」

織莉子「貴女は……!?」

まどか「嘘……そんな、なんで……!?」

「ま、オマエはもう安心して見てればいいよ」





杏子「――――アタシが美味しいトコ全部、貰ってやるからさ!」

918: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:15:54.11 ID:U+cPV63/0

まどか「杏子ちゃんっ……本当に杏子ちゃんなの!?」

杏子「なんだよまどか? アタシが他の誰かに見えるのか?」

まどか「だ、だって……杏子ちゃんはあの日……!」

織莉子「……あ……あああああ……!!」

杏子「……ん?」

キリカ「ど、どうしたんだい織莉子?」

織莉子「なぜ……!? なぜ佐倉杏子が此処に現れるの!?」

織莉子「私は予知に抗ったのに……! 未来を変えるために行動したのに……!!」

織莉子「なぜなの? なぜ貴女が……!!」

キリカ「織莉子……?」

919: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:16:43.59 ID:U+cPV63/0

仁美「はあっ、はあっ……や、やっと追い付きましたわ~」

織莉子「っ!?」

杏子「遅かったじゃんか、仁美」

仁美「もうへとへとですわぁ~」

さやか「仕方ないよ、まだ力の使い方に慣れてないんだからさ」

まどか「仁美ちゃん、その格好は……もしかして!」

仁美「はい、私も魔法少女になりましたの!」

ほむら「…………」

まどか「そんな……どうして?」

杏子「……馬鹿な奴だよ、魔法少女がどんなものか知ってる癖にさ」

杏子「アタシなんかのために願いを使っちまうんだからね」

まどか「……まさか、杏子ちゃんを生き返らせるために……!?」

仁美「……ええ、そうですわ」

仁美「ただ、『生き返らせる』というと少し違うのですけれど」

まどか「え?」

920: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:17:39.18 ID:U+cPV63/0

仁美「私はゆまさんを探している時に、杏子さんの……その、お身体を見つけましたの」

まどか「杏子ちゃんの、身体?」

仁美「はい。とても酷い状態でしたので……はじめは杏子さんだと分からないくらいでしたわ」

仁美「でもその指には、ゆまさんと同じ紅い指輪がはめられていましたの」

仁美「その指輪を手にして、杏子さんの声を聞いて……」

仁美「それでようやく杏子さんと分かりましたわ」

まどか「声を聞いたってことは、じゃあ……」

ほむら「私たちは佐倉杏子が死んだものと思っていたけれど……」

ほむら「実は彼女のソウルジェムは無事だった、ということみたいよ」

杏子「殆ど死んでるのと変わらない状態だったから、意識もなかったんだけどな」

仁美「キュゥべえさんもそのようにおっしゃっていましたわ」

921: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:18:23.67 ID:U+cPV63/0

仁美「杏子さんのソウルジェムは、いつ限界を迎えてもおかしくない状況でした」

仁美「でも、私が魔法少女になれば……杏子さんを救えるのだと、そう言われて……」

さやか「契約しちゃったんだってさ、仁美ってば」

さやか「前にあれだけ説明したんだけどねー……魔法少女の辛さは」

仁美「……ごめんなさい、さやかさん」

仁美「でも私は、どうしても杏子さんを助けたかったんです」

仁美「その願いが叶うなら……どうなろうと、後悔なんてありませんわ」

まどか「仁美ちゃん……」

織莉子「くっ……そういうことなのね……!!」

織莉子「新たな魔法少女っ……まさかこんなことで私の計画が覆されるなんて!!」

922: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:18:55.82 ID:U+cPV63/0

織莉子「……貴女たちは、自分が何をしたのかわかっていない!!」

織莉子「佐倉杏子を復活させたことで引き起こされる絶望が、破滅が、どんなに恐ろしいか……!!」

キリカ「織莉子! 何をそんなにうろたえているんだい?」

キリカ「あの子がいったいなんだって言うのさ!?」

織莉子「彼女は……佐倉杏子は……」

織莉子「――――私たちの世界を滅ぼす悪夢の遣いよ!」

織莉子「私が予知した、最悪の絶望をもたらす者……!」

キリカ「な、なんだって……!?」

まどか「えっ……!?」

ほむら「――――っ!?」

923: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:19:47.93 ID:U+cPV63/0

仁美「な、何の話なんですの?」

マミ「良く分からないけれど……」

杏子「……アタシが居ちゃ都合が悪いみたいだね」

織莉子「そうよ、貴女は私の世界にいてはならない存在……!」

キリカ「それなら織莉子! 私に任せておくれよ!」

キリカ「こんな奴、すぐに私が蹴散らして……!」

さやか「そんなことさせるもんか!」

マミ「貴女達が杏子を害すると言うのなら……」

マミ「このリボンを緩めてあげるわけにはいかないわね」

ギシッ!

織莉子「つっ……!」

キリカ「く、クソッ……!」

924: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:20:58.42 ID:U+cPV63/0

ほむら「……私から質問があるのだけれど、いいかしら」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「美国織莉子。貴女は今、佐倉杏子が絶望をもたらすと言ったけれど……」

ほむら「それは何故? 貴女は何を予知したと言うの?」

織莉子「…………」

キリカ「……ふんっ!」

杏子「おいおい……立場分かってねーな?」

杏子「この状況でお前らに拒否権なんてねーんだよ」

杏子「さっさと吐きな。さもないと……」

キリカ「脅しかい? 私達は何をされたって……」

織莉子「……いいわ、教えてあげる」

キリカ「え……織莉子?」

織莉子「佐倉杏子を蘇らせたことがどれだけ罪深いことか……」

織莉子「――――最悪の絶望がどんなものか!」

925: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:22:31.23 ID:U+cPV63/0

まどか「あ、でもその前に……」



ザワザワ...

「おい見ろよ、橋が……」

「なにコレ、もしかしてテロ?」

「だれか警察呼べ!」



仁美「……場所を移した方が良さそうですわね」

マミ「人が集まり始めてるものね」

ほむら「瓦礫のおかげで私たちの姿は見られていないみたいだけれど」

さやか「どーする? どこいこっか?」

織莉子「……ここからなら私の家が近いわ」

まどか「え?」

織莉子「案内するわ。話の続きはそこでしましょう」

926: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:24:58.08 ID:U+cPV63/0

~織莉子の屋敷・客間~

まどか「わー……すっごいお部屋」

さやか「仁美んちよりもデッカイかも」

ほむら「……敵を家にあげるなんて、どういうつもりなの?」

織莉子「あのまま騒ぎに巻き込まれるよりはマシでしょう?」

ほむら「……何か企んでいるわね?」

織莉子「……さぁ?」

マミ「心配いらないわよ暁美さん、こうして私のリボンで拘束しているわけだし」

キリカ「ああそうだね、悔しいけれど私達には手も足もでないよ」

ほむら「…………」

杏子「まあどーだっていいさ、それよりも聞かせてもらおうか」

杏子「アンタらは何でこいつらを狙ったんだ? アタシが絶望をもたらすってのはどーいうこった?」

織莉子「ええ、聞かせてあげるわ」

織莉子「貴女たちの犯した罪の重さを、ね」

927: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:26:18.35 ID:U+cPV63/0

~別の時間軸・廃教会~

ほむら(…………状況は最悪ね)

ほむら(佐倉杏子の死が、皆の心を深く傷付けてしまった……)

ほむら(特に千歳ゆま……彼女の病的な行動は見ているだけで辛い……)

ほむら(巴マミも美樹さやかも……まどかも)

ほむら(千歳ゆまのあの振る舞いを見せられて、精神的に追い詰められているみたいだし……)

ほむら(こんな状態じゃあ、魔法少女の真実なんて告げられないわ……)

ほむら(皆の心が絶望に染まってしまう前に、早く手を打たないと……)

ゆま「――――あ、ホムラ!」

ほむら「!」

928: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:27:32.04 ID:U+cPV63/0

ほむら「……また、会ったわね」

ゆま「うん! きぐうだね!」

ゆま「聞いてよホムラ、キョーコってばまだ見付からないんだよ?」

ほむら「貴女はまだ……佐倉杏子を捜しているのね」

ゆま「うん!」

ゆま「まったくもう、どこをほっつき歩いてるのかなぁ、キョーコ?」

ほむら「…………」

ゆま「ホムラは今日もさがしもの?」

ほむら「……そうよ、そんなところ」

929: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:29:33.47 ID:U+cPV63/0

ゆま「何をさがしてるの? ゆまでよかったら手伝ってあげるよ?」

ゆま「キョーコを探すついでだけど!」

ほむら「別に手伝ってもらう必要は……」

ほむら「……いえ、そうね。貴女も探してくれるかしら」

ゆま「うん、いいよ!」

ほむら「ありがとう」

ほむら「私が探しているのは……指輪よ」

ゆま「指輪?」

ほむら「そう、指輪」

ほむら「佐倉杏子が身に着けていた紅い指輪よ」

ゆま「ああ、アレかあ! どーしてあの指輪を探してるの?」

ほむら「ある目的のために必要なのよ」

ほむら「……もし、あの指輪が残っていたのなら……佐倉杏子を……」

ゆま「?」

ほむら「……なんでもないわ」

930: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:30:26.09 ID:U+cPV63/0

ゆま「よくわかんないけど、キョーコの指輪がいるんだよね?」

ほむら「ええ」

ゆま「それってこの指輪じゃダメなの?」

ほむら「……えっ?」

ゆま「ほら、ゆまが着けてるコレ! ホムラたちがくれたやつ!」

ゆま「キョーコとお揃いで、おんなじ指輪だけど……これじゃ代わりにならない?」

ほむら「いえ、それでは……」

ほむら「…………」

ほむら「私たちが作った模造品……」

ほむら「魔法で、作り上げた……」

ほむら「…………!」

ほむら「ありがとう、おかげ良いことを思いついたわ」

ゆま「?」

ほむら「それ、借りてもいいかしら」

ゆま「いいよ! でも後でちゃんと返してね!」

ほむら「わかったわ」

ほむら「上手くいったら……指輪よりも素敵なお返しをしてあげる」

ゆま「ホント!? やったあ!」

931: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:32:16.25 ID:U+cPV63/0

~マミの家~

ほむら「……部屋の明かりくらいつけなさいよ、巴マミ」

マミ「…………必要ないもの」

ほむら「こんなに暗くちゃ何も見えないじゃない」

マミ「杏子がいないこの世界なんて、見たくもないわ」

ほむら「っ! この臭いは……貴女、まさかお酒を飲んで!?」

マミ「……気が晴れるかと思ったんだけど……ダメね」

マミ「杏子のことが、あの子の最期が、頭から離れないのよ……」

マミ「それにゆまちゃんがね? 私を責めるのよ」

マミ「『キョーコはどこ? どこに隠したのマミお姉ちゃん?』って……」

マミ「ごめんなさい……ごめんなさいっ……」

マミ「私のせいで杏子は……私の力が足りなかったばかりに……!」グスッ

ほむら「……私が来たのはその件よ」

マミ「…………?」

ほむら「私は、僅かでも可能性があるなら……絶対にムリだって分かるまで諦めたくない」

ほむら「……佐倉杏子の受け売りだけれどね」

マミ「…………」

ほむら「――――力を貸してもらうわよ、巴マミ」

932: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:33:42.75 ID:U+cPV63/0

~さやかの家~

さやか「……何しに来たんだよ、ほむら」

ほむら「佐倉杏子のことで話があるわ」

さやか「っ……お前がっ! 杏子の名前を口にするな!!」

ほむら「…………」

さやか「見殺しにしたお前がっ……時間を巻き戻せるのに、杏子を助けなかったお前が!」

ほむら「そう、ね……」

ほむら「私がもっと早くに彼女の異常に気がついていたら……」

ほむら「時間遡航の能力を失う前に、佐倉杏子の死に気がついていたら……」

ほむら「彼女を助けられたのにね……」

さやか「…………」

ほむら「でも……だからこそ私は、罪滅ぼしのために出来ることならなんでもするわ」

ほむら「たとえそれが魂を冒涜する行為だとしても……ね」

さやか「……あんた、何かする気なの?」

ほむら「……ついてくれば分かるわよ」

933: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:34:55.41 ID:U+cPV63/0

~ほむらの家~

ほむら「まどか……貴女は私を軽蔑する?」

まどか「ううん、軽蔑なんてするはずないよ」

まどか「……私もほむらちゃんと同じ気持ちだもん」

ほむら「ありがとう、まどか……」

まどか「……大丈夫、きっと上手くいくよ」

まどか「私達が力を合わせれば、どんな奇跡だって起きる」

まどか「それで……またみんな一緒に……」

ほむら「……うん」

934: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:35:59.81 ID:U+cPV63/0

マミ「……お邪魔するわね、暁美さん」

さやか「約束通り……来てやったわよ」

ほむら「……来たわね」

マミ「それで、いったい何を始めようと言うの?」

さやか「みんな集めて……何がしたいのさ、ほむら」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「…………みんなに、力を貸してほしいの」





ほむら「――――私達で、佐倉杏子のソウルジェムを作りあげるために」

935: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:36:34.97 ID:U+cPV63/0

~現在・織莉子の屋敷~

織莉子「千歳ゆまからソウルジェムを譲り受けた暁美ほむらは……」

織莉子「……そうしてあの絶望を生み出す未来を選択してしまった」

織莉子「まあ正確には千歳ゆまが手渡したのはソウルジェムではなかったようだけど……ね」

マミ「…………」

さやか「……それで、どーなったわけ?」

ほむら「察するに……その時間軸の私達は、魔法に失敗したわけね?」

織莉子「そうよ」

織莉子「出来そこないのソウルジェムに宿った魂は、不完全な肉体を生み出した」

織莉子「……そして、最悪の絶望が世に解き放たれたのよ」

936: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:38:24.97 ID:U+cPV63/0

~別の時間軸・ほむらの家~

マミ「あ……ああ……!」

まどか「嘘……ウソだよこんなの……」

さやか「これが、杏子だっていうの……?」

ほむら「なんて……こと……」





きょーこ「どーいうことだよおい……アタシ、ちぢんでるじゃねーか!」





マミ「杏子が……」

さやか「よ、幼女になっちゃった!!」

937: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:39:42.60 ID:U+cPV63/0

~現在・織莉子の屋敷~

織莉子「……こうして最悪の絶望は始まったのよ……!」

ほむら「…………はあ?」

さやか「そ、それが最悪の絶望?」

まどか「杏子ちゃんが、幼女に……?」チラッ

杏子「な、なんだよ……変な目で見るなよ」

仁美「……ありですわね」ジュルリ

織莉子「……そして解き放たれた絶望は、私達の世界を滅ぼすために活動を開始するわ……」

マミ「い……いったい杏子が何をするっていうの?」

織莉子「それは……」

938: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:40:48.65 ID:U+cPV63/0

~別の時間軸・ほむらの家~

マミ「きょ、杏子が……幼児になっちゃったわ!」

ほむら「外見的には幼稚園児くらいかしら……」

きょーこ「なんでだよー! なんでめがさめたらこんなカッコになってんだよー!」プンプン!

さやか「か、かわええ~! なにこれ、ヤバすぎでしょ!」ナデナデ

きょーこ「うあー! なでんなさやか!」

QB「……どうやら魔法での蘇生が不完全だったみたいだね」

きょーこ「きゅーべー!」

さやか「いつの間に!?」

ほむら「不完全だったって……つまりどういうことなの?」

QB「まあ簡単なことだよ」

QB「君達の起こした奇跡は、確かに佐倉杏子の魂を呼び出すことに成功した」

QB「でも少しばかり魔力が足りなかったみたいだね」

QB「肉体を完全な状態で復活させることは出来なかったんだ」

まどか「な、なるほど……?」

939: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:41:15.92 ID:U+cPV63/0

きょーこ「りくつはいいから元にもどせよー!」ウガー

ほむら「どうすれば佐倉杏子を本来の姿に戻せるの?」

QB「うーん、君達の魔力をわけてあげれば……出来ないこともない、かな?」

まどか「そっか、じゃあ早速魔力を分けて……!」

マミ「…………」

さやか「…………」

まどか「……マミさん? さやかちゃん?」

マミ「……あー」

マミ「なんだか魔力を使いすぎちゃった気がするわー」

きょーこ「!?」

さやか「そーだねー、誰かに魔力を分けてあげる余裕ないかもー」

きょーこ「!?!?」

940: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:42:08.48 ID:U+cPV63/0

きょーこ「おまえらふざけんな! ウソだろそれ!」

さやか「ねー、まどかも無理しないほうがいいんじゃない?」

まどか「え……?」

ほむら「……そうね、無理はいけないわ」

まどか「ほ、ほむらちゃん?」

ほむら「佐倉杏子には悪いけれど……」

ほむら「少し焦らし……じゃなくて嫌がらせ……でもなくて待って貰ってもいいと思うわ」

まどか「う、う~ん」

きょーこ「なやむなよ! はやく元にもどせってば!」

まどか「……ティヒヒ!」

きょーこ「?」

まどか「ごめんねきょーこちゃん! 私も魔力が足りないみたい!」

まどか「でも仕方ないよね、魔力が足りないんだもん!」

きょーこ「……どーいうことだよおい……みかたがいねーじゃねーか!」

941: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:43:51.56 ID:U+cPV63/0

マミ「ふふっ、それじゃあ私達の魔力が回復するまで……」

さやか「可愛い可愛いきょーこちゃんを堪能するとしましょーか!」

ほむら「精神を充実させれば魔力の回復も早くなるわ、きっと」

まどか「ねぇ、きょーこちゃん! まずはオヤツにする? お風呂にする? それとも……」

きょーこ「ふ、ふざけんな! オマエらのオモチャになんかされてたまるか!」

ダッ!

さやか「あ、逃げた!」

まどか「ダメだよきょーこちゃん! お外は危険でいっぱいだよ!」

マミ「追うわよ!」

ほむら「ええ、逃がさないわ」

942: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:45:22.77 ID:U+cPV63/0

~おそと~

きょーこ「はあはあ……な、なんとかにげたぞ!」

きょーこ「くそー、なんだってこんなめに……」

きょーこ(……あいつらに好き勝手に弄られるのは嫌だ)

きょーこ(どっかでほとぼりが冷めるまで潜伏しないと)

きょーこ(とはいえ……仁美にもゆまにも会えねーな、こりゃ)

きょーこ(どーするか……)

ドンッ!

きょーこ「わわっ!?」

キリカ「おっと、ごめんよオチビちゃん」

943: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:46:53.55 ID:U+cPV63/0

きょーこ「あ……」

キリカ「うん? キミは……どうやら魔法少女みたいだね」

きょーこ「!」

キリカ「はじめまして、私は呉キリカ。キミと同じ魔法少女だよ」

きょーこ(魔法少女っ……!!)

きょーこ(どうする、逃げるか……!?)

キリカ「そんなに怯えないでおくれよ。別に襲い掛かったりなんかしないからさ」

キリカ「むしろ今の私は非常に機嫌が良い! この幸せを分けてあげたいくらいさ!」

キリカ「なぜなら織莉子が食べたがってた限定シュークリームがたくさん買えたからね!」

きょーこ「は、はあ……?」

キリカ「なんだったらキミもウチに来るかい? お茶くらいなら出すよ!」

944: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:48:58.60 ID:U+cPV63/0

きょーこ(……変な奴。関わらないほうがいいか……)

きょーこ(……いや、待てよ? コイツも魔法少女だっていうなら……)

きょーこ(コイツから元に戻るための魔力を分けてもらえばいいんじゃんか!)

きょーこ(よっしゃ、そーと決まれば……!)

きょーこ「……なぁ、えーと、キリカだっけか?」

キリカ「うん?」

きょーこ「せっかくだから、おじゃましてもいいかな?」

キリカ「ははっ、いいともいいとも」

キリカ「それじゃあおいでよ、お茶をご馳走してあげよう!」

きょーこ「ん、さんきゅー!」ニコッ

946: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:50:22.65 ID:U+cPV63/0

~現在・織莉子の屋敷~

織莉子「幼女になった佐倉杏子は、魔力を求めてキリカに接触した」

織莉子「それから地獄のような日々が始まるの……」

織莉子「佐倉杏子はなんだかんだで私の家に居候することになるわ」

織莉子「……そのせいで、私とキリカが二人っきりでいる時間が減っていくのよ!」

仁美「まあ……!」

織莉子「しかもキリカは佐倉杏子を気に入ってしまって、彼女の世話を焼くようになって……」

織莉子「どんどん私のことを構ってくれなくなるの……!」

さやか「……なんか割とどーでも良くなってきた気がするんだけど」

マミ「と、とりあえずは最後まで聞きましょう?」

949: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:51:38.99 ID:U+cPV63/0

~別の時間軸・織莉子の屋敷~

織莉子「ねえ、キリカ! 今日は一緒に買い物に行かない?」

キリカ「うん、いいね。きょーこの服を買ってあげたいと思ってたんだ」

きょーこ「ほんとか? さんきゅーキリカ!」

キリカ「いやいや、いいってことさ」

織莉子「……その子も連れていくのね……」





織莉子「ねえキリカ! 今日のオヤツのことだけど、私が手作りしてみようと思うの!」

キリカ「うん? オヤツならもう、きょーこが作ってくれたよ」

きょーこ「おー。なかなかの出来だぞ」

織莉子「あ、そ、そうなんだ……」

950: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:53:28.74 ID:U+cPV63/0

織莉子「ね、ねえキリカ! 今日は一緒のベッドで、その……」

キリカ「むにゃむにゃ」

きょーこ「すーすー」

織莉子「なっ……!」

織莉子(なんでこの子と一緒に寝てるの……!?)

織莉子(……ずるい!)

織莉子「……お願いキリカ、目を醒まして!」

キリカ「むにゃ……? ごめんよ織莉子……私は、もう……眠いんだ……」

織莉子「嫌ッ……待って、行かないで、キリカぁああぁ!」

きょーこ「うー……うるさいなー」

キリカ「織莉子……ちょっとしずかにして……」

織莉子「ううう……!」

キリカ「あと部屋の中でくらいバケツ被るのやめたほうがいいと思うよ……」

織莉子「う……うわーん!!」ダッ!

952: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:54:31.16 ID:U+cPV63/0

~現在・織莉子の屋敷~

織莉子「……これが、私の予知した絶望の全容よ」

織莉子「何より恐ろしいのが、これが半年も続くということなの……!」

織莉子「私には耐えられなかったっ! 愛するキリカが私から離れていってしまうことが……!」

キリカ「そうだったのか……嗚呼っ、ゴメンよ織莉子!!」

キリカ「別の未来の私が君に寂しい思いをさせてしまったんだね!」

キリカ「でも大丈夫さ織莉子! この私は君から離れたりなんかしないよ、絶対に!」

織莉子「キリカ……!」

キリカ「織莉子……!」

さやか「……なんなのコイツら……」

仁美「ま、まさしく禁断の愛ですわー!」

953: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:55:31.25 ID:U+cPV63/0

ほむら「…………ふ」

まどか「?」

ほむら「ふざけないでッ!! 貴女達はそんな理由で私達を襲ったの!?」

ほむら「そんなくだらないことで千歳ゆまの命を奪ったというの!?」

さやか「えっ……?」

マミ「ゆ、ゆまちゃんを……!?」

杏子「おい! なんだよそれ、聞いてねーぞ!!」

まどか「っ……!! やっぱり、貴女達が……!」

織莉子「…………はい?」

キリカ「なんのことだい?」

ほむら「とぼける気!?」

キリカ「とぼけるも何も……」

織莉子「――――私たちは、千歳ゆまを殺してなんかいないわよ?」

954: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:56:16.30 ID:U+cPV63/0

………………

…………

……




~織莉子の屋敷・寝室~

ゆま「うにゃ……キョーコのフランクフルトおっきすぎぃ……」

杏子「……ハッ、呑気な顔して寝てやがる」

まどか「よかった……ゆまちゃんも無事だったんだ……」

さやか「びっくりさせないでよほむら! 殺された、とか言っちゃってさ!」

ほむら「……呉キリカが『天国へ送った』とか、『同じ場所へ送ってやる』とか言っていたのよ」

ほむら「だからてっきりそうなのかと思っていたんだけれど……」

マミ「ハッタリだった、ってことね」

955: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:56:56.02 ID:U+cPV63/0

キリカ「いやいや、私は嘘はついていないよ」

ほむら「?」

キリカ「私にとってこの家、織莉子の家は天国と同義だからね!」

キリカ「何たって織莉子と一緒に過ごせるんだから!」

キリカ「だから『天国へ送った』という言葉に偽りなんてないのさ!」

ほむら「……そう」

織莉子「キリカの言い回しのせいで誤解していたみたいだけれど……」

織莉子「私達は未来を変えるために、千歳ゆまから指輪を奪って拘束した」

織莉子「ただそれだけよ。怪我一つさせていないわ」

キリカ「うんうん、いくら私でも人殺しはしないよ」

キリカ「そんなことしたら織莉子に嫌われてしまうからね!」

ほむら「………………そう」

956: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:58:23.92 ID:U+cPV63/0

マミ「でも何でこんな拘束具を着せているの?」

キリカ「下手に暴れられて怪我されても困るからね」

キリカ「私はオチビちゃんが魔法少女だと勘違いしてたし……」

まどか「可哀相だよこんなの、早く脱がしてあげようよ!」

さやか「そーだね。……けどコレどーやって脱がすんだろ」

杏子「おいマミ、織莉子とやらのリボンをほどいてやりな」

杏子「脱がせるのはそいつにやらせよう」

マミ「分かったわ」

シュルルッ

織莉子「…………」

杏子「言うまでもないと思うけど、変な真似はするなよ?」

織莉子「……ええ」

957: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:59:02.28 ID:U+cPV63/0

…………。

織莉子「……脱がしたわよ」

ゆま「むにゃ……」

仁美「脱がす時に起きるかと思いましたけど」

まどか「……ゆまちゃん、起きないね」

さやか「こんな時間だし仕方ないよ」

マミ「でも、これはある意味好都合なんじゃないかしら?」

ほむら「……そうね」

杏子「ゆまが起きる前に……こいつらをどーするか、決めちまおうかね」

織莉子「…………」

キリカ「織莉子…………」

ゆま「……むにゃ……こくまろミルク……ノドにからみつくよぉ……」

958: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 22:59:41.26 ID:U+cPV63/0

織莉子「私は……貴女たちには屈しないわ!」

ほむら「!」

織莉子「予知とは少し形が変わったみたいだけれど……」

織莉子「佐倉杏子が存在する以上、キリカが奪われる未来は否定できない」

織莉子「なら私は、どんな手段を使ってでも貴女を排除する!」

マミ「っ! なんですって!」

さやか「こいつっ……!」

杏子「ふん……拘束を解いてやったら強気になっちまったか?」

ほむら「美国織莉子! 動くなら撃つわよ!」

仁美「無駄な抵抗はよした方がいいと思いますわよ?」

キリカ「……あっははは! さっすが織莉子! そうこなくっちゃ!」

ジャキンッ!

まどか「あっ……! マミさんのリボンが!」

キリカ「大人しくしているのももう飽き飽きだ! さあ織莉子! 反撃といこうじゃないか!」

織莉子「ええ!」

959: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 23:00:29.54 ID:U+cPV63/0

ほむら「勝手な真似はさせな……!」

キリカ「ふふん! 残念だけれどね――――」

ヒュンッ!

ほむら(っ!? 速いっ!!)

キリカ「こっちの『準備』はもう万全なのさ!」

ゲシッ!

ほむら「きゃっ!」

まどか「ほむらちゃん!」

さやか「このっ! 暴れんじゃないわよ!」

ブンッ!

キリカ「遅い遅い!」

さやか「なっ、加速した……!?」

960: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 23:01:27.20 ID:U+cPV63/0

キリカ「ふっふっふ、君達にはもう反撃の余地もないよ」

さやか「な、なんなのよあいつの素早さは!?」

仁美「いくら魔法少女といえ人間離れしすぎですわ!」

ほむら「これは、呉キリカの速度低下魔法……! いつの間に!?」

織莉子「……こんなこともあろうかと、この屋敷の敷地内にはキリカの魔法が仕込んであったのよ」

キリカ「それを織莉子が時間を稼いでくれているうちに発動させたってわけさ」

杏子「なるほど、わざわざこの家に招いてくれたのも、ご丁寧に説明してくれたのも……」

まどか「全部罠だったの……!?」

キリカ「そういうことさ! この私の魔法と――――」

織莉子「私の予知魔法があれば、貴女たち全員を相手にしても十分に戦えるわ!」

織莉子「覚悟しなさい、佐倉杏子!」

961: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 23:03:14.33 ID:U+cPV63/0

杏子「――――ぷっ……くく、あーはっはっは!!」

まどか「きょ、杏子ちゃん?」

さやか「ど、どしたのあんた?」

キリカ「……!?」

織莉子「な、何故笑って……なにがおかしいの!?」

杏子「……アンタらさぁ、アタシ達のこと舐めすぎでしょ」

杏子「アタシら全員を相手にしても十分に戦える? 笑わせんなって」

仁美「きょ、杏子さん、下手な挑発は止した方が……」

キリカ「こいつっ……馬鹿にしてっ!」

織莉子「私たちの力を甘く見てるのは貴女よ、佐倉杏子!」

織莉子「今からそのことを証明してみせて……!」

杏子「アンタらごときに全員で戦うまでもねー」

杏子「……来いよ、アタシ一人で相手してやる」

織莉子「なんですって……?」

962: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 23:03:47.86 ID:U+cPV63/0

さやか「ちょっとあんた! ふざけたこと言ってんじゃ……」

まどか「だ、ダメだよ杏子ちゃん! そんなの無謀だよ!」

ほむら「貴女、また全てを一人で背負う気なの……!?」

杏子「はんっ、そんなんじゃねーよ」

杏子「アタシはただ、予知なんて下らねーモンに踊らされてるボンクラに……」

杏子「現実ってヤツを思い知らせてやりたいだけさ」

マミ「馬鹿な真似は止して! 杏子ひとりで戦わせるなんてできないわ!」

仁美「そ、そうですわ! 危険すぎます!」

杏子「へーきへーき。地獄から帰ってきたアタシは無敵だよ」

まどか「でも……」

杏子「……いいからやらせてくれよ、な?」

963: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 23:04:28.79 ID:U+cPV63/0

ほむら「……なにか考えが、策があるのね?」

杏子「ま、そーいうこった」

ほむら「なら私は止めないわ。好きにしなさい」

まどか「ほむらちゃんっ!?」

ほむら「もちろん危なくなったら手を出させてもらうからね」

杏子「それで良いよ。さんきゅ、ほむら」

さやか「ちょ、ちょっと待ってよ! なに勝手に話を進めて……!」

杏子「さやかはアタシを信じてくれないのか?」

さやか「え……それは、その」

杏子「大丈夫だって、アタシを信じて任せてくれよ!」

さやか「う、う~……」

マミ「……そうね、貴女なりに考えがあるなら」

仁美「……私、信じますわ。杏子さんのこと」

さやか「わ、わかったわよ! ……あんたに任せるっ!」

杏子「……へへっ、決まりだな!」

964: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/06(日) 23:07:58.92 ID:U+cPV63/0

杏子「おっしゃ、そーいうわけで……」

杏子「アンタらの相手はアタシ一人だ、喜べよ?」

織莉子「……私たちも随分と舐められたものね」

織莉子「それとも挑発のつもりなのかしら、それは?」

杏子「挑発なんかじゃないさ。単純に余裕なだけだよ」

杏子「アンタらはアタシの前に屈するのさ」

キリカ「ふ、ふざけるな! 私たちを侮辱するのもいい加減にしろッ!」

杏子「……なあ美国織莉子、今どんな未来が見えてる?」

織莉子「……さっきまでは未来が不安定な状態で良く見えなかったわ」

織莉子「でも……ふふ、貴女が一人で戦うと決まってからはとてもよく見える様になった」

織莉子「……貴女が私たちの前に跪いている光景がね」

キリカ「あははっ! すぐにその光景が現実になるだろうね!」

杏子「……宣言しておくぞ」

キリカ「うん?」

織莉子「…………何かしら?」

杏子「そんな未来、アタシがこの手で変えてやる」

杏子「――――予知なんてもんに操られてるオマエらなんかに、アタシは負けやしない」

996: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/19(土) 22:03:09.34 ID:FBZT7wXm0

    /i´Y´`ヽ
   ハ7'´ ̄`ヽ.
   l ,イl//`ヘヘ! 
   リノ(! ゚ ヮ゚ノリ  そうだ、ボツネタでも投下しよう
   ノ /)i杏i|、  
  (( Uく__ハj_)====<>
      し'ノ

997: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/19(土) 22:03:52.18 ID:FBZT7wXm0

杏子「なあまどか、猫を預かってくれないか?」

まどか「猫を? どしたの急に?」

杏子「迷子の子猫を見つけちまってさ、放っておけなかったんだよ」

杏子「飼い主を見つけるまででいいから預かってくれないかな?」

まどか「そういうことなら……うん、いいよ!」

杏子「サンキュー! 助かるよ!」

まどか「それで、その猫ちゃんはどこに?」

杏子「ああ、紹介するよ。おーい、ゆまー!」

ゆま「にゃー!」

まどか「わあ、かわいい猫ちゃん!」

998: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/19(土) 22:04:35.57 ID:FBZT7wXm0

ゆま(とまあそんなわけでしばらくの間、まどかの家で住むことになったよ!)

ゆま(まどかは私が猫だって思いこんでるみたいだね!)

ゆま(よーし、このまままどかの家の子になって……)

まどか「わーい、今日のオヤツはショートケーキだぁ♪」

ゆま「にゃ!」

ゆま(ショートケーキ! ゆま甘いの大好き!)

まどか「あれ、ゆまちゃんも食べたいの?」

ゆま「にゃー♪」

まどか「うふふ、でもダメだよ。猫ちゃんにはあげられないの」

ゆま「にゃ!?」

まどか「ゆまちゃんには……はいコレ、にぼし!」

ゆま「にゃ、にゃー……」

999: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/19(土) 22:05:11.63 ID:FBZT7wXm0

ゆま「にゃ~にゃ~……」

ゆま(なんだかトイレに行きたくなってきちゃった……)

まどか「あれ? もしかしてトイレかな?」

ゆま「にゃ」

まどか「じゃあ、あそこでオシッコしてね!」

ゆま「にゃ!?」

ゆま(あ、あれって……猫用トイレ!?)

ゆま(こんな部屋の中でするなんてヤダよぉ!)

1000: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/05/19(土) 22:06:06.31 ID:FBZT7wXm0

ゆま「にゃー!」

まどか「あ、コラだめだよ逃げちゃ!」ガシッ

まどか「こういうのは子猫のウチに躾なきゃいけないからね、厳しくいくよ!」

ゆま「にゃああ……!」

ゆま(ま、まどかが見てるのにオシッコなんてできないよぉ……!)

ゆま(あうぅ……で、でも、もう我慢が……)

ゆま「にゃ、にゃああ~……」

 
18: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/06/06(水) 00:41:48.16 ID:M2jFaXW50

【ほむら「盾が喋った!」】


盾「ほむらー、メシくれー」

ほむら「どういうことなの……なんで盾が喋って……」

盾「早くメシくれよー、この中ピストルしかねーんだもん」

ほむら「これはまさか、私の新しい魔法?」

ほむら「使い続けてきた盾が、私のパートナーとして自我を持ったとか……」

ほむら「愛用の道具には魂が宿るというものね」

ほむら「……もしかしたら、この子がワルプルギスを倒すカギになるかも……」

盾「だめだー、アタシもう限界……空腹で死ぬー」

ほむら「っ! いけない、考えるのは後にしましょう」

ほむら「今はこの子にご飯をあげないと……」

ほむら「ねえ貴女、何が食べたいの?」

盾「鯛焼き……饅頭……アンパン……」

ほむら「わかったわ、すぐに用意するわね」

19: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/06/06(水) 00:42:27.12 ID:M2jFaXW50

ほむら「……どうかしら?」

盾「うまいうまい!」ムシャムシャ

ほむら「よかったわ、満足して貰えたみたいで」

ほむら(それにしても……この子は一体なんなのかしら?)

ほむら(まるで人間みたいに感情豊かでだわ)

ほむら(食べる物もやけに人間くさいというか、単なる甘党の女の子みたいだし)

ほむら(あ……そういえば、この子のことは今後なんて呼べばいいのかしら?)

盾「もぐもぐ……鯛焼きはやっぱつぶあんだよなー」

ほむら「…………」

ほむら(この子の名前はあんこちゃんにしましょう)



続かない。

20: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/06/06(水) 00:44:51.33 ID:M2jFaXW50

【マミ「赤ちゃん……出来ちゃった」///】


~マミの家~

杏子「それで……相談って何だよ、マミ?」

マミ「その……そのね?」

マミ「えっと……」

杏子「なあ早くしてくれよ。アタシ買い物行きたいんだけど」

マミ「ご、ごめんなさい! いま話すわ……」

マミ「あ、あのね……」

マミ「……赤ちゃん、出来ちゃったの」

杏子「……え?」



まどか(え……ええーっ!?)

まどか(マミさんちに遊びに来てみたら……すごいこと聞いちゃった!)

まどか(ま、マミさんが……妊娠!?)

まどか(ど、どういうことなの? マミさん、まだ中学生なのに……!)

まどか(あ、相手は誰なんだろ……)コソコソ

21: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/06/06(水) 00:45:23.34 ID:M2jFaXW50

マミ「で、出来ちゃったのは杏子のせいなんだからね! 貴女があんな……っ!」

杏子「あ、アタシのせいって……まさかあの時の!?」

マミ「そうよっ……せ、責任とってよね?」

杏子「あ、あれは、その、し、知らなかったんだからしょうがないじゃん!」

杏子「まさかホントに妊娠しちゃうなんて思ってなかったんだよ!」



まどか(えぇええっ!?)

まどか(も、もしかして……きょ、杏子ちゃんがお腹の子のパパなの!?)

まどか(女の子同士で、そんなっ……ぜ、絶対おかしいよ!)

まどか(どうやって赤ちゃんを作っちゃったんだろ……)

まどか(まさか魔法の力で……!?)

22: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/06/06(水) 00:45:54.23 ID:M2jFaXW50

マミ「もう……妊娠三ヶ月なの」

マミ「私、どうしたらいいのか……」

マミ「普通のお医者さんに相談なんて出来ないし……」

杏子「……大丈夫だよ、アタシたちは魔法少女だろ?」

杏子「二人で力を合わせれば、きっと上手くいくって」

杏子「お腹の子も元気に育って、無事に生まれてきてくれるはずだよ」

マミ「杏子……!」



まどか(あわわ……も、もうこれ以上聞いてられないよぉっ!)

ダッ!

23: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/06/06(水) 00:47:15.57 ID:M2jFaXW50

杏子「ん……今だれかいたような……」

マミ「気のせいじゃないかしら?」

杏子「……そーだね。今はそれよりも」

マミ「ええ……キュゥべえが妊娠しちゃったことについて話し合いましょう」

杏子「それにしてもまさか、本当に妊娠するなんてなあ」

マミ「杏子がキュゥべえを唆すからこんなことになったのよ?」

杏子「『動物の赤ちゃんって女子にウケが良いから、キュゥべえも赤ちゃんを作れば契約しやすいかもね』」

杏子「って言っただけで……実際に子供作っちゃうなんて思わなかったんだよ」

マミ「キュゥべえってば『性別なんてない』って言ってたくせにね……」



続かない

24: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/06/06(水) 00:49:01.13 ID:M2jFaXW50

【さやか「あんあん一回千円?」】



杏子「あんあん一回千円だよ。どーだいさやか、試してみるかい?」

さやか「あ、あんあんって……!? 何よそれ! そ、そんなの別に興味ないし!」

杏子「そーか、残念だなあ。キモチいいって評判なんだけど」

さやか「だ、誰がそんなことを!?」

杏子「……っと、噂をすればお客様だ」

仁美「杏子さん! またあんあんしてもらいに来ましたわ!」

杏子「おう、いらっしゃいませー」

25: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/06/06(水) 00:49:33.34 ID:M2jFaXW50

さやか「お客様って……仁美なの!?」

仁美「あ……さやかさん。恥ずかしいですわ、こんなところを見られるなんて……」

さやか「ちょっと仁美! あんたなんでこんなこと……!」

仁美「あの……話は後でいいですか? 私、もう我慢できないんですの……」

さやか「えっ……」

杏子「くくっ、アンタも好きだね仁美」

杏子「いいぜ、んじゃあっちの部屋で……」

仁美「は、はいっ!」

さやか「ちょ、ま、待ちなさいよ!」

26: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/06/06(水) 00:50:19.37 ID:M2jFaXW50

…………。

さやか(しばらくしたら仁美が顔真っ赤にして部屋から出てきた……)

仁美「ありがとうございました杏子さん……今日もスッゴく良かったですわ……」モジモジ

杏子「喜んで貰えたなら何よりだよ」

仁美「あの、これ……今回の代金……」

杏子「……一枚多いぞ?」

仁美「その……いつもキモチ良くして貰ってるから……感謝を込めて、ですわ」

杏子「そっか、ありがたく受けとっておくよ」

杏子「……次はいつもよりサービスしてやるよ」

仁美「本当ですか? 嬉しいっ……!」

27: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/06/06(水) 00:52:29.79 ID:M2jFaXW50

さやか「アンタらっ……いったいナニしてたのよ!?」

杏子「くく、そいつは企業秘密ってやつだよ」

杏子「……まあ仁美の様子を見ればある程度は分かるんじゃないか」

仁美「ええ……蕩けてしまいそうなくらいの快感ですのよぉ……」

さやか「う、ううう……」///

さやか「……ね、ねえ杏子……」

杏子「くっくっく、どーしたさやか?」

さやか「そ、その……あたしにも……」

仁美(ふぅ、本当に気持ち良かったですわぁ……杏子さんのマッサージ)



続かない。

42: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/06/19(火) 00:19:14.84 ID:4A69XXut0
【ゆま「マッサージ屋さん!」】


杏子「いやー、今日の魔女退治は疲れたなー」

ゆま「だったらゆまがマッサージしてあげる!」

ゆま「こうみえてもゆま、マッサージ得意なんだよ!」

杏子「へぇ、そうなのか」

ゆま「うん! パパから教わった特別なマッサージなんだ~」

杏子「特別なマッサージ?」

ゆま「そーだよ。何だかむつかしい名前がついてて……」

ゆま「あ、そーだ思い出した! 確かそのマッサージの名前が……」

ゆま「『せいかんマッサージ』っていうんだよ♪」

70: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/07/31(火) 23:21:56.40 ID:AQVCAGZw0

▽これまでのあらすじ

美国織莉子は愛と正義の魔法少女である。
見滝原の平和を守るため、邪神・佐倉杏子の復活を阻止しようと奮闘していた。

しかし、邪教徒である志筑仁美の手により、ついに佐倉杏子は復活を遂げてしまう。
目覚めたばかりの邪神は、織莉子の実力を見てせせら笑う。

「貴様ごとき一飲みで食い殺してやるわフゥーハハハ」

そう言うと邪神は紅き髪を振り乱し、織莉子に襲いかかるのであった。

71: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/07/31(火) 23:22:31.85 ID:AQVCAGZw0

~美国邸・中庭~

杏子「ふーん、立派な庭じゃんか」

織莉子「……ここなら充分な広さがある。存分に力を奮えるでしょう」

キリカ「さあ、かかってきなよ佐倉杏子! 私達を侮辱したことを後悔させてあげるよ!」

杏子「へっ、後悔すんのはそっちの方だろーけどな」

キリカ「ふん、舐めた口を利いていられるのも今のうちさ!」

織莉子「貴女の自信が何処から来るのかは知らないけれど……」

織莉子「思い知るといいわ。現実というものをね」

72: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/07/31(火) 23:23:18.75 ID:AQVCAGZw0

~距離を置いて見守るまどか達~

まどか「本当に大丈夫なのかな……」

ほむら「信じるしかないわね、佐倉杏子のことを」

マミ「杏子ったら何が狙いなのか結局教えてくれなかったけれど……」

さやか「全くもう……散々あたし達に心配かけたクセに、またこんな無茶するんだもんなあ」

仁美「杏子さんらしいと言えば杏子さんらしいですが……」

ほむら「……あら?」

まどか「どしたの、ほむらちゃん?」

ほむら「あっちから走ってくるのって……」

マミ「キュゥべえ?」

73: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/07/31(火) 23:24:10.06 ID:AQVCAGZw0

QB「杏子ーっ!」タッタッタ

杏子「あん?」

QB《ダメだよ杏子! 一人で戦うなんて無謀すぎるよ!》テレパシー

杏子《よぉキュゥべえ。なんか随分と久しぶりな気がするな》

QB《何を呑気なこと言って……!》

QB《今からでも遅くないよ! 皆で戦うべきだよ!》

QB《せっかく仁美がキミを甦らせてくれたのに、また命を落とすようなことになったらどうするんだい!?》

杏子《……それに関しては色々と言いたいコトがあるんだけどさ》

杏子《アタシを利用して仁美と契約するなんて、随分とセコい真似するよねぇ?》

QB《う……》

杏子《ま、今はソレは置いといてやるよ》

杏子《それよりも、あっちのお嬢さんがたの相手の方が忙しいからね》

織莉子「…………」

キリカ「…………」

74: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/07/31(火) 23:27:44.74 ID:AQVCAGZw0

QB《……あの子達は強いよ。いったい一人でどうやって倒す気なんだい?》

QB《キミのことだから彼女らをボコボコにして再起不能にするくらいのつもりなんだろうけれど……》

杏子《ばーか、アタシがそんな甘いわけないだろ》

QB《え?》

杏子《アイツらにはマミ達が散々『世話』になったみたいだからねぇ》

杏子《……アタシの下僕として、一生服従させてやるつもりさ!》

QB《い、一生服従だって!?》

杏子《でもまずは……美国織莉子の予知魔法は危険すぎるからな》

杏子《二度と予知なんてできないよう、発狂寸前まで精神的に追い詰めてやるよ……くくく》

QB《な、なんだって!? そんなこと出来るはずが……!》

杏子《なーに、簡単なコトさ。アイツらの戦い方はほむらから聞いてるし……》

杏子《ま、大人しく見てなよ》

杏子《アイツらが、死ぬまでアタシに服従し続けることになる様をね!》

QB(杏子……やっぱりキミは恐ろしい存在だ……!)

QB(彼女を蘇らせるなんて、僕のしたことは軽率だったのかもしれない……)

QB(でも杏子にブラッシングしてもらいたかったし仕方ないよね)

75: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/07/31(火) 23:28:28.87 ID:AQVCAGZw0

織莉子「……いつまで内緒話をしているつもりなのかしら?」

杏子「ん、悪い悪い。待たせちまったね」

杏子「ほらキュゥべえ。あっちに行ってな」

QB「う、うん……」テクテク

キリカ「ははっ、キュゥべえに頼んで力を貸して貰うつもりだったのかな?」

杏子「いいや違うさ。確認を取ってたんだよ」

杏子「貴重な魔法少女が二人ほど再起不能になるけど良いかい? ってね」

キリカ「減らず口をッ……!」

織莉子「……これ以上の対話は無意味ね」

杏子「……そーだな」

杏子「んじゃ、始めるとしようじゃないか!」チャキッ!

キリカ「ふんっ、良いとも! 私の爪で切り刻んであげるよ!」

76: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/07/31(火) 23:29:03.48 ID:AQVCAGZw0

杏子(――――美国織莉子と呉キリカ)

杏子(奴らの連携は無敵であると言える)

杏子(織莉子は予知魔法により敵の行動を予測し、その情報をキリカと共有する)

杏子(そしてキリカは時間遅延魔法によって敵の行動自体を遅らせ、対処を容易なものにする)

杏子(どう動けば攻撃を避けられるか)

杏子(どう動けば必殺の一撃を与えられるか)

杏子(常に最適な解を導き出した上で、敵の行動を阻害し、確実に追い詰めていく)

杏子(攻めにおいても守りにおいても、必ず敵より優位に立てる連携)

杏子(それが、アイツらの戦い方だ)

杏子(でも、それなら――――ふふっ)

77: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/07/31(火) 23:30:08.33 ID:AQVCAGZw0

杏子「――――いくぜッ!」ダッ!

キリカ「ふんっ、遅いよ!」

ガキィン!

杏子「まだまだっ……『ロッソ・ファンタズマ』!!」

キリカ「なっ……! 分身した!?」

杏子「これがアタシの魔法さ!」

杏子(幻)『この動き、見切れるか!』

キリカ「ちっ……!」

78: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/07/31(火) 23:31:42.60 ID:AQVCAGZw0

織莉子《大丈夫よキリカ、落ち着いて》

織莉子《いつも通り私が敵の動きを予知する。貴女が分身に惑わされることはないわ》

キリカ《さっすが織莉子! 頼もしくて美しくて神々しいよ!》

織莉子《ふふ、ありがとう》

織莉子《佐倉杏子が敗北する未来は既に見えているわ》

織莉子《後は予知の通りに行動すれば、私達の勝利は確実なものに――――》

――――キィィン...

織莉子《……!?》

キリカ《どうしたんだい?》

織莉子《未来が、変わった……?》



杏子「…………」ニヤリ

79: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/07/31(火) 23:32:53.20 ID:AQVCAGZw0

杏子「ほらほらどうした!」

杏子(幻)『ボサッとしてる暇はねーぞ!』

ブンッ!

キリカ「ちぃっ!?」

キリカ《織莉子! いったいどうしたんだい!? 早く指示を!》

織莉子《え、ええ……》

織莉子(これは……でも、そんなまさか……)

織莉子(……この未来が現実のものになると言うの……?)

織莉子(確かに予知の通りに動けば、私達は間違いなく勝てる……)

織莉子(でも……こんな……悪魔に魂を売るような下劣な行為を……)

織莉子(――――こんなことをしてまで得る勝利を、私は誇れるの?)

80: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/07/31(火) 23:35:45.26 ID:AQVCAGZw0

杏子「続けて食らえっ!」

杏子(幻)『足元がお留守だぜ!』

キリカ「ま……まだまだぁ!」

ガキィン!

キリカ《織莉子! まだ『視え』ないのかい、私達が勝つための方法は!》

織莉子《い、いえ……視えてはいるわ》

織莉子《でも……》

キリカ《もしかして……自信がないのかい? 大丈夫さ、私がついてる!》

キリカ《私は必ず織莉子に勝利を捧げるよ!》

キリカ《例えどんな困難があろうと! どんな罪を犯そうと!》

織莉子《……!》

81: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/07/31(火) 23:37:11.69 ID:AQVCAGZw0

織莉子《……ありがとう、キリカ……》

織莉子《おかげで私も……決心がついたわ!》

キリカ《それでこそ織莉子だよ!》

キリカ《じゃあ、私はどう動けばいい? 織莉子の予知を聞かせておくれよ!》

織莉子《う、うん……あのね? 怒らないで聞いてほしいのだけれど……》

キリカ《うん》

織莉子《予知によれば――――》



織莉子《――――わ、私達が小学生の時のスクール水着に着替えれば勝てるらしいわ!》



キリカ《!?》

82: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/07/31(火) 23:39:18.22 ID:AQVCAGZw0

キリカ《ど、どーいうことなんだい織莉子!?》

織莉子《よ、良く分からないけれど……予知ではそう出ているわ》

織莉子《小学生のときの、ひらがなで名前が書いてある、キツキツのスク水に着替えて……》

織莉子《は、はみ出ちゃいそうなトコを隠しながら戦うと勝てるらしいの!》

キリカ《いったい何を言ってるんだい織莉子!?》

織莉子《更にランドセルを背負うと勝率がアップするみたい……》

織莉子《その際ニーソックスがセットになるとボーナスポイントですって……》

キリカ《流石の私もわけがわからないよ織莉子!?》

83: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/07/31(火) 23:40:05.84 ID:AQVCAGZw0

キリカ《織莉子! ホントにそう予知したのかい!? 何かの間違いじゃ……》

織莉子《……ごめんなさいキリカ……こんなの意味分からないわよね、気持ち悪いわよね……》

キリカ《い、いいやッ! そんなコトないさ!》

キリカ《うん、そうさ! 織莉子の言うことに間違いなんてあるわけないよね!》

キリカ《疑った私が愚かだったんだよ!》

織莉子《キリカ……》

キリカ《よ、よぉし! それじゃあ織莉子の言う通り、思い切ってスクール水着に着替えようじゃないか!》

キリカ《私達の勝利のために! 私達の未来のために!》

織莉子《……え、ええ! 私も……スク水になるわ!》

84: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/07/31(火) 23:40:37.75 ID:AQVCAGZw0

マミ「……なんだか敵の動きが鈍いわね」

さやか「目配せしながら、何かやりとりしてるみたいだけど……テレパシーかな」

ほむら「おそらくそうでしょうね……必殺の機会をうがかっているんだわ、きっと」

仁美「なるほど……そう言われてみれば、何かを決意したような鋭い目をされてますわ」

マミ「決着の時は近そうね……」

まどか「杏子ちゃんっ……頑張って……!」

110: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/09/15(土) 08:53:31.91 ID:7cHhdLvE0

杏子「どーした? 防戦一方じゃないか!」

キリカ「ふ、ふんっ! いい気になっていられるのも今だけさ!」

キリカ「私達は覚悟を決めた! 君を奈落の底へ叩き落とすために、悪魔に魂を売る覚悟をね!」

織莉子「え、ええ! 私達の一撃、思い知るといいわ!」

杏子「へぇ……いいぜ、見せてみなよ」

杏子「アンタらの覚悟ってヤツをさぁ!」

キリカ「言われなくても!」

織莉子「い、行くわよ……!!」

キリカ「はああッ!」

キラキラキラ...

111: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/09/15(土) 08:54:43.08 ID:7cHhdLvE0

まばゆい光に包まれた織莉子とキリカ。

杏子はその様子を身構えながら注視していたが、
やがて光が弱まり消え去ると……

杏子「……!」

そこには、紺色の水着に身を包んだ二人の少女が立っていた。

織莉子「こ、これが私達の覚悟よ!」///

キリカ「もう君に勝ち目はないよ! 佐倉杏子!」///

頬を真っ赤にして織莉子とキリカが叫ぶ。

同年代の少女より発育の良い織莉子は、
その豊 な を水着に納めきることが出来ていなかった。
押し潰された  の大部分がはみ出しており、
少しでも肩紐をずらせば  の  が姿を現してしまうだろう状態だ。

織莉子「あっ……きゃ!」

織莉子(も、もうちょっとで出ちゃうところだった……!)

織莉子(ど、どうしましょう……これじゃ下手に動けないわ……)///

キリカは辛うじてスクール水着を着れていたが、
やはり無理に着用しているせいで股間部分の食い込みが限界に近かった。
身じろぎする度に股布が擦れ、
キリカのデリケートな部分を刺激する。

キリカ「んっ……くっ!」///

キリカ(こ、こんな恥辱を味わうなんて初めてだ……!)

キリカ(でも織莉子の指示だし……わ、私は逃げないよ!)

そんな二人に対して杏子は――――

112: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/09/15(土) 08:55:31.18 ID:7cHhdLvE0

杏子「ぐわあああっ!?」

ズシャア!

織莉子「や、やったわ! 予知した通りに佐倉杏子が血ヘドを吐きつつキリモミ回転しながら3mほど吹っ飛んだわ!」

キリカ「やったね織莉子!」

杏子「くっ……なんて攻撃だ……!」

織莉子「かなりのダメージを与えたみたいね……」

キリカ「やっぱり織莉子の言う通りだったね!」

織莉子「ええ! 攻撃を続けましょう!」

キリカ「次はどうすればいいんだい?」

織莉子「予知の通り、ランドセルとニーソを足しましょう!」

キリカ「よ、よーし!」

113: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/09/15(土) 08:56:13.01 ID:7cHhdLvE0

まどか「なっ……!」

マミ「なんて強力な一撃なの!?」

ほむら「まさか彼女たちがあんな技を隠し持っていたなんて……!!」

仁美「ど、どうしましょう! このままじゃ杏子さんがやられてしまいますわ!」

さやか「助けにいかなきゃっ!」

まどか「うん!」

マミ「……いえ、もう少しだけ……様子を見ましょう」

まどか「マミさん!?」

マミ「私たちは杏子を信じて任せたのよ。ここで邪魔をしたら、あの子裏切ることになるわ……」

仁美「そ、そんなことを言ってる場合じゃ……!」

114: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/09/15(土) 08:56:50.39 ID:7cHhdLvE0

織莉子「す、スク水ニーソっ!」

杏子「うわあああっ!」

キリカ「プラスランドセルっ!」

杏子「ぐはあああっ!」

織莉子「効果は抜群だわ! あと一息よ!」

キリカ「トドメはどうするんだいっ?」

織莉子「ええ、予知によれば……」

織莉子「…………っ!?」

キリカ「ど、どうしたんだい織莉子? まさかまた……」

織莉子「……そ、その……えと……今度は……」



織莉子「――――わ、私達が幼稚園児服に着替えて、カボチャパンツをはみ出しながら戦うと決着がつくらしいわ!」



キリカ「!?!?」

115: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/09/15(土) 08:58:05.55 ID:7cHhdLvE0

織莉子「その際、可愛いデザインの名札忘れてはいけないみたい……」

織莉子「そして親指をしゃぶりながら上目遣いになって……」

織莉子「『かるぴしゅ作って?』とおねだりすると完全勝利を収めることが出来るのよ!」

キリカ「ま、マニアック過ぎるよ織莉子!!」

織莉子「でも予知が……」

キリカ「わ、分かってるさ! もちろん君の予知に従うよ!」

キリカ「勝利の舞台に相応しい衣装に早着替えといこうじゃないか!」

116: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/09/15(土) 08:59:16.34 ID:7cHhdLvE0

杏子「ぐっ……はあはあ、どうした、まだアタシは倒れちゃいねーぞ?」

杏子「てめぇらの攻撃ってのも大したことねーな……へっ!」

織莉子「負け惜しみを……」

キリカ「そんなに死にたいなら、今トドメを刺してあげるよ!」

織莉子「これで終わりよ佐倉杏子!」

キラキラ...

杏子「……!」

117: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/09/15(土) 09:01:31.95 ID:7cHhdLvE0

再び、輝きが二人を包む。

それが何を意味するのか理解はしていたが、満身創痍の杏子にはその様子をただ見ていることしか出来なかった。

やがて光が収まると――――

織莉子「……か、かるぴしゅ……」///

キリカ「かるぴしゅちゅくって……」///

涙目になりながら訴えかける、幼稚園児服姿の二人がそこにいた。

年齢に相応しくない衣装を身に纏い幼児の口調を真似することへの抵抗感と羞恥心からか視線をあちらこちらに泳がせながらもチラチラと杏子を伺うその様子は親に構って欲しがっている幼子の姿によく似ていたがしかしながら少女から女性へと成長しつつある肉体から溢れ出すエロスが背徳的な興奮を見る者にもたらし当の本人達も恥態を晒すことにある種の快感を(省略

杏子「ぐはああああっ……」

サラサラサラ...

織莉子「や、やったわ! 予知した通りダメージを受けた佐倉杏子が灰になって消えていくわ!」

キリカ「ついに決着だね織莉子! 私達の勝……!」

118: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/09/15(土) 09:02:32.10 ID:7cHhdLvE0

「――――これで、アタシの勝ちだね」



キリカ(――――後ろッ!?)

杏子「おーっと、動くなよ?」

杏子「動いたらアタシの槍を味わうことになるぜ」チャキッ!

キリカ「どういうことだ!? いつの間に……!?」

キリカ「くっ……織莉子! 私に構わずコイツを攻撃して……!」

杏子「無駄だよ」

杏子「美国織莉子は『そっちのアタシ』が制圧したからね」

キリカ「……!?」

織莉子「ごめんなさい、キリカ……」

杏子(幻)『ま、こーいうことだよ』チャキッ

キリカ(織莉子の背後に……佐倉杏子がもう一人いる!?)

119: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/09/15(土) 09:04:27.17 ID:7cHhdLvE0

キリカ「くっ……! 油断した……分身を潜ませていたのか!」

杏子「ふふ、そのとーりさ。もちろんさっき灰になって消えたのも分身だよ」

杏子(幻)『こんなにあっさり上手くいくとは思ってなかったけどねぇ、くっくっく』

ツンツン!

織莉子「ひゃうっ!」

キリカ「や、やめろ! 織莉子に手を出すな!」

杏子(幻)『くっくっく……さーて、どーするかな?』

杏子「ま、それはアンタらの態度次第だね」

120: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/09/15(土) 09:05:23.20 ID:7cHhdLvE0

織莉子(ど、どうして……? 私の予知は完璧だったはず)

織莉子(それなのになぜ、佐倉杏子がまだ倒れていないの……?)

キリカ《織莉子……》

織莉子《……心配しないで。確かにこの状況は不利だけれど……》

織莉子《私がこの先の動きを予知するわ。そこから打開策を――――》

杏子「――――『予知でどうにか切り抜けよう』、なんて思ってるだろ?」

織莉子「……!」

杏子(幻)『そいつは無駄ってもんさ。さっきも言っただろ、予知なんかじゃアタシには勝てない』

織莉子「大した余裕ね……」

織莉子「いいでしょう、その言葉が本当かどうか確かめさせてもらうわ……!」

カッ!

121: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/09/15(土) 09:08:23.12 ID:7cHhdLvE0

キリカ『いやー、やっぱりまどっちは可愛いなー』

まどか『えへへ! そんな、照れちゃうよ』///

キリカ『さやかも凛々しくて素敵だし』

さやか『もう、キリカったら……』///

キリカ『マミの    も柔らかくて気持ちいいよね』

マミ『あんっ! そ、そこはだめよキリカ』///

キリカ『ほら、ほむらも意地張ってないでこっちにおいでよ』

ほむら『う、うん……』

織莉子『ね、ねぇキリカ? 私は?』

キリカ『水でも汲んでろよバケツ』

織莉子『ふぇぇ……』

122: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/09/15(土) 09:10:48.36 ID:7cHhdLvE0

織莉子「いやぁぁぁぁあああ!!??」

キリカ「ど、どーしたんだい織莉子!?」

織莉子「違うもん! バケツじゃないもん!」

織莉子「ほら良く見てキリカ! これは帽子よ!」

キリカ「う、うん知ってるよ織莉子! だから落ち着いて!」

杏子「あっはっは! どーだいこれで分かったろ?」

杏子「アンタの予知は通用しないってことがさ」

織莉子「く、うう……そういうことね……」

織莉子「貴女の魔法は分身だけじゃなく、他者に幻覚を見せることができる……」

杏子「そーさ。それでアンタが見る予知の光景を塗り替えたんだ」

123: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/09/15(土) 09:11:25.42 ID:7cHhdLvE0

織莉子「じゃあ、私達が……す、スク水や園児服に着替えれば勝てるという予知も……」

杏子「全部アタシが見せた幻覚。デタラメな予知だったわけさ」

キリカ「な、なんだって!?」

杏子「いやー、傑作だよねぇ。騙されてるともしらないでこんな格好しちゃってさ」

杏子「来年には高校生にもなるってヤツが……くくっ、かるぴしゅときたもんだ」

織莉子「や、やめてぇっ……言わないでぇ……!」///

キリカ「く、くぅぅ……!」///

杏子「あははっ!」

124: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/09/15(土) 09:12:29.56 ID:7cHhdLvE0

杏子「……ま、からかうのはこれくらいにしておいてやるよ」

チャキッ...

キリカ「え……?」

織莉子(槍を引いた……?)

杏子「さあ、第二ラウンドといこうじゃないか」

キリカ「なんだって……?」

杏子「このままアンタらを串刺しにしてやるのは簡単だ」

杏子「でもそれじゃあつまんないからね。もう一度だけチャンスをやるよ」

織莉子「何を……何を企んでいるの!?」

杏子「くく、さーてね?」

杏子「……んじゃ、仕切り直しだ。御自慢の予知は通じないぜ、覚悟決めろよ!」バッ!

織莉子「くっ……!?」

織莉子(佐倉杏子の意図は理解出来ないけれど……)

キリカ(千載一遇の機会だ、今度こそ仕留めてやるッ!)

143: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:05:49.29 ID:H4j2GTsC0

まどか「な、なんで!? 杏子ちゃん勝ってたのに……」

さやか「なにやってんのよあの馬鹿!?」

マミ「何か考えがあるのかしら……」

ほむら「……予知」

仁美「え?」

ほむら「さっきから佐倉杏子は、予知を否定するような言動を繰り返しているわ」

ほむら「そして実際に、美国織莉子の予知を封じ込めた……」

仁美「……そこに、何か意味があると?」

ほむら「確証はないけれど……」

144: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:06:44.84 ID:H4j2GTsC0

杏子「いっくぜぇ!」

キリカ「くっ!」

ガキィン!!

杏子「まだまだぁ!」

キリカ「舐め、るなぁ!」

織莉子(キリカが押されている! 援護しないと……!)

織莉子(でも、どうやって……?)

織莉子(下手に攻撃なんかしたらキリカに当たってしまうかもしれない)

織莉子(予知魔法が使えれば、二人の動きを先読みできるのに……!)

145: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:07:25.07 ID:H4j2GTsC0

杏子「ほらほらっ、どーしたよ! ボサッとしてると大事なお友達がやられちまうぜ!」

織莉子「!」

杏子「『ロッソ・ファンタズマ!』」

キリカ「くっ、また増えっ……うわあっ!!」

ズシャァッ

織莉子「キリカ!!」

キリカ「く、くそぉ……」

杏子「……やれやれ」

杏子「おい織莉子とやら。なにボーっとしてんだよ」

杏子「アンタ、まさか予知が使えなくなったら何も出来ないのか?」

織莉子「っ……!!」

146: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:09:39.52 ID:H4j2GTsC0

杏子「まったく……つまらないヤツだな、アンタ。まるで人形だ」

織莉子「人、形……? 私が……?」

杏子「だってそうだろ? 予知を頼らなきゃ自分で判断して動くことが出来ないなんて……」

杏子「操ってもらうのを待つお人形みたいなもんじゃないか」

キリカ「ふざ、けるなっ……織莉子を侮辱するな!!」

杏子「いやいやまてよ? 人形には人形なりの価値があるけど……」

杏子「アンタにはそんな価値もなさそーだよなぁ?」

織莉子「なんですって……!?」

杏子「アンタが何を願って、その魔法を得たのかは知らないけどさ」

杏子「アンタの予知は所詮もらいモンの力だろ? アンタ自身の価値じゃあない」

杏子「つまり予知なしじゃ何も出来ないアンタは……」

杏子「なんの価値もない、『生きる意味』もないクズってことだろーが!」

織莉子「――――っ!!」

147: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:10:27.35 ID:H4j2GTsC0

(みんな、私のことをお父様を通して見ていた)

(誰も私のことなんて見ていなかった)

(私がお父様の一部でしかないのなら……)

(私の価値はどこにあるの?)

『さあ、君の願いを聞かせてご覧』

(私は……)



(――――私の生きる意味を知りたい)

148: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:11:22.57 ID:H4j2GTsC0

織莉子「言ったわね……」ギリッ

杏子「お?」

織莉子「……良いでしょう、それなら見せてあげるわ!」

織莉子「予知なんて力に頼らない、私自身の力を!」

キリカ「織莉子……!」

織莉子「……キリカ、貴女は少し休んでいて頂戴?」

キリカ「な、なにを言うんだい織莉子! 私も戦うよ!」

織莉子「いいえ、私は一人で戦いたいの。だから……ね?」

キリカ「そんな、でも!」

織莉子「行くわよ、佐倉杏子」

杏子「っはは! 良いツラになってきたじゃねーか!」

杏子「いいぜ、できるもんならやってみな!」

149: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:12:12.91 ID:H4j2GTsC0

――――ポツッ

さやか「……ん?」

ポツッ ポツッ...

まどか「雨……?」

マミ「こんな時についてないわね……すぐ止むといいんだけれど」

仁美「杏子さん、風邪をひいてしまわないでしょうか?」

さやか「魔法少女がそう簡単に風邪をひくとは思えないけど……」

まどか「……少し、荒れそうな空だね……」

150: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:13:14.30 ID:H4j2GTsC0

織莉子(私は…………)

織莉子(――――私は、私の力で、私の生きる意味を証明してみせる!)

織莉子「これでも、喰らいなさい!」

織莉子は魔法で作り出した水晶玉を飛ばし、杏子を狙う。

杏子「おおっと!」ガキィン!

当たれば一たまりもない一撃だったが、杏子の槍によって受け流される。

軌道を逸らされた水晶玉は地面にめり込み、水しぶきを上げ、その動きを停止した。

杏子「おいおい、こんな程度がアンタの全力か?」

杏子(幻)「こんな玉を飛ばしたくらいじゃ、アタシはやられねーぞ!」

織莉子「くっ……まだよ!」

再び魔力を込め、水晶玉を操る。

151: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:14:11.93 ID:H4j2GTsC0

織莉子(もっと動きを読まれない攻撃をしないと……!)

織莉子「今度は見切らせないわ!」

先程とは異なり、水晶は縦横無尽に軌道を変化させた。

杏子「成る程、そう来たか……だが!」

杏子(幻)「こーして間合いを詰められたらどうするよ!?」

一瞬の隙を突き、織莉子の懐まで杏子の幻が飛び込む。

織莉子(っ!? やられる……!?)

突き出される槍。

織莉子は考えるよりも先に――――

織莉子「くっ、あああ!」

身体を投げ出し、ぬかるみの中を転がり、その切っ先を避ける。

織莉子「くっ……!」

152: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:16:17.48 ID:H4j2GTsC0

キリカ「織莉子ッ!?」

キリカ(攻撃を喰らった!?)

織莉子「はあっ、はあっ……」

キリカ(いや、違う……ギリギリのところで転がって避けたみたいだ)

キリカ(でも、嗚呼……織莉子、あんなに泥だらけになって……!)

153: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:17:01.94 ID:H4j2GTsC0

織莉子(危ないところだったわ……)

ジャリッ...

織莉子(……土の味がする)

織莉子(雨に体温を奪われる……泥水で湿った服が重い……)

織莉子(まさか私がこんな不様な戦い方をすることになるなんて、思ってもみなかったわ……)

織莉子(……けれど今は、格好つけてる余裕なんてない)

織莉子(予知に頼らないと決めた以上、私に出来ることは一つ)

織莉子(惨めでも何でもいい、全力でもって戦いに挑む!)

織莉子(ただ、それだけよ!)

154: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:17:29.94 ID:H4j2GTsC0

杏子「はっ、ますます良い面構えになってきたじゃねーか」

杏子「でも……」

杏子2「アタシのこの攻撃に」

杏子3「耐え切れるか」

杏子4「な!」

織莉子「っ!?」

織莉子(更に分身した!?)

織莉子(……ならこちらも、数で勝負するまでよ!)

織莉子「やぁあっ!」

155: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:19:16.81 ID:H4j2GTsC0

杏子「ほー……成る程ね」

杏子2「水晶玉を増やして対抗する気か」

杏子3「くくっ、それで何処までアタシ達の動きについてこられるか」

杏子4「ね!」

織莉子「くっ! ……当たれぇ!」

杏子「おおっと!」

杏子2「どこ狙ってるのさ!!」

156: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:20:14.79 ID:H4j2GTsC0

織莉子(ダメっ……狙いをつけている余裕がない……!)

杏子3「このままチェックメイトと行かせてもらうぜ!」

織莉子(っ!! 捌き切れない!)

織莉子(――――ならッ!)

杏子3「なっ……!?」

織莉子「うああああっ!!」

避けられないと悟った織莉子は、大きく前に踏み込む。

そしてそのままの勢いで、思い切り頭を打ち付けた。

杏子「っつ! このっ!」

織莉子「ぐっ……!」

薙ぎ払われる多節槍。

間合いが近すぎるため致命傷にはならなかったが、織莉子は杏子の一撃で吹き飛ばされる。

157: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:21:07.13 ID:H4j2GTsC0

キリカ「織莉子ぉ!!」

織莉子「ゲホッ! く、うっ……」

織莉子(痛いッ……!)

織莉子(これが、戦い、なのね……)

織莉子(ほんの少しの油断が、ほんの少しの間違いが、私を殺す……)

織莉子(……怖い……でも……)

キリカ《織莉子!》

織莉子「!」

キリカ《もうだめだ、これ以上キミ一人に戦わせるなんて出来ないよ!》

158: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:22:04.69 ID:H4j2GTsC0

キリカ《今助けに――――》

織莉子《待って、キリカ……もう少しだけ、私にやらせて》

キリカ《で、でも! 私は嫌だよ! 君が傷付けられるのを見ているだけなんて!》

織莉子《……初めてなの》

キリカ《え?》

織莉子《こんなに痛いのも、こんなに怖いのも、初めて》

織莉子《でも……だからこそ、私は逃げてはいけない》

織莉子《そう、思うの》

キリカ《織莉子……?》

織莉子《大丈夫、私は必ず勝つわ》



織莉子《だから……もう少しだけ私を見守っていて?》ニコッ



キリカ(!)

キリカ(……ズルいよ、織莉子……)

キリカ(そんなカッコいい顔をされたら……止めることなんて出来ないじゃないか……)

159: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:22:53.06 ID:H4j2GTsC0

織莉子「くっ……はあっ……い、行くわよ……佐倉杏子ッ!」

杏子「へえ、まだ立てるんだ」

杏子2「でも何度やったって同じだぜ」

杏子3「さっきの頭突きは悪くなかったけど……」

杏子「アンタにゃアタシを倒せる武器がない」

杏子2「弾数を増やしても、アタシの動きについてこれないから当てられない」

杏子3「予知があればもっと違ったんだろーけど」

杏子4「ね?」

織莉子「…………」

160: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:23:48.52 ID:H4j2GTsC0

織莉子(……そう。私には佐倉杏子の動きを捕らえることが出来ない)

織莉子(今までなら予知と連動させて、半自動的に敵を追尾させることが出来たのだけれど……)

織莉子(今の私にはそれが出来ない)

織莉子(武器を増やしても、一つ一つを的確に誘導する余裕はないし……)

織莉子(……悔しいけれど、このままでは……)

ザアアア...

織莉子「……!!」

161: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:24:48.40 ID:H4j2GTsC0

杏子「チッ、いきなり土砂降りになりやがった」

杏子「面倒臭いね……悪いけどさっさと決めさせて貰うよ!」

織莉子「……雨」

杏子「あん?」

織莉子(そうだわ、雨なら……!)

織莉子「……来なさい。今度こそ決着をつけてあげます」

杏子「……へっ、何か企んでやがるな?」

杏子2「面白い! いいぜ、乗ってやるさ!」

杏子3「こっちも全力全開でいかせてもらうぞ!」

162: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:25:44.35 ID:H4j2GTsC0

織莉子「はあああっ……!!」

杏子達が動き出すよりも先に、織莉子はありったけの魔力を練り上げ、

巨大な水晶球を数個作り出した。

自身と杏子達のちょうど中間辺り……その上空に。

直径は織莉子の身の丈の三倍程。

それぞれがレンズのように空を歪めて映している。

杏子「……ふんっ、なんだよそりゃ」

杏子2「デカイだけじゃ虚仮威しにもなんねーぞ?」

163: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:27:10.41 ID:H4j2GTsC0

小馬鹿にしたような態度取りつつも、油断なく構える杏子達。

織莉子(――――でもそれは無駄)

織莉子(どんなに警戒しようとも……)

織莉子(『雨』に濡れない人間なんて、いない!)

両手を掲げ、更に魔力を練り上げる。

巨大な水晶達は、拳ほどの小さな無数の球体へと分裂し、空を覆うように拡散し始めた。

肉眼では確認しきれない数の球体が広がりゆく様は――――『雨雲』のよう。

164: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:28:16.68 ID:H4j2GTsC0

杏子「っ!?」

杏子2「ちぃっ!」

危険を感じ取ったのか、分身達が一斉に飛び掛かる。

織莉子(もう遅い!)

だがしかし、既にその魔法は完成していた。



織莉子「降り注げ…………《ピオーヴァ・メテオーリコ》!!」



織莉子が空に掲げた腕を振り下ろすと――――

――――『雨雲』から、豪雨が降り注いだ。

杏子「っが――――!!」

165: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:29:34.22 ID:H4j2GTsC0

雨の正体は、魔法で作り出された無数の水晶玉だ。

一つ一つに魔力が込められた『雨粒』は煌めきを放ちながら、

流星の如く地を穿ち、杏子の身体を蹂躙する。

織莉子「っ……!」

水晶同士がぶつかり合い生み出す音は凄まじく、織莉子自身でさえも顔をしかめた。

杏子「――――! ――――っ!!」

杏子の悲鳴もただ『雨音』に掻き消されるのみ。

雨は無慈悲に、ひたすら降り続ける。

166: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:30:56.45 ID:H4j2GTsC0

織莉子(う、くっ……予想以上に魔力の消耗が激しい……!)

織莉子(でも、ここで退くわけにはいかないわ!)

織莉子(私の力で、佐倉杏子に勝って……)

織莉子(私の生きる意味を証明しなければならないのだから!)

織莉子(一気に決着をつける!)



織莉子(全ての魔力を使いきってでも――――!)

167: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:31:25.02 ID:H4j2GTsC0

しかしそれでも、止まない雨はない。

空に浮かんだ水晶球は降り尽くし、後に残ったのは

杏子「ぐっ……つぅっ……!」

ズタボロになりながらも槍を支えに立つ杏子と……



――――糸の切れた人形のように、倒れ伏した美国織莉子の姿だった。



キリカ「織莉、子……?」

168: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:32:07.98 ID:H4j2GTsC0

キリカ「そ、そんな、なんで君が倒れて……!?」

杏子「はぁっ、はぁっ……ど、どーしたよ? これでお終いか、美国織莉子?」

織莉子「…………」

杏子「……おい?」

キリカ「っ!!」ダッ!

キリカ「織莉子! 目を開けておくれよ織莉子!」

織莉子「…………」

キリカ「そうだ、今すぐ治療を――――」

キリカ「……!?」

織莉子「…………」

キリカ「あ……あああ……そ、そんな、嘘だ、まさか……今の魔法で……?!」

169: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/10/22(月) 00:32:50.93 ID:H4j2GTsC0











キリカ「織莉子の頭におっきいタンコブが……!!」

184: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/23(金) 14:31:00.83 ID:mfJdkoQa0

織莉子「う……あれ、私は……」

キリカ「織莉子! 目が覚めたんだね!」

織莉子「キリカ……? 私は確か、佐倉杏子と戦っていて……!」

ズキンッ

織莉子「痛っ! あ、頭が……」

キリカ「無理しないで織莉子! 君の頭にはおっきなタンコブが出来ているんだ!」

織莉子「タンコブ……」

織莉子「ああ……そうだ、そうだったわ……」

織莉子「私、自分の魔法で自滅して……」

キリカ「うん……」

織莉子「……負けてしまったのね、私……」

185: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/23(金) 14:32:02.98 ID:mfJdkoQa0

杏子「……ま、なかなかイイ線いってたけどね」

織莉子「……!」

杏子「やるじゃんか、さっきの魔法」

杏子「水晶球に細かい指示を出す余裕がないと悟って……」

杏子「広域を一斉に破壊する魔法に切り替えたわけだな」

織莉子「……ええ、私の全てをかけた魔法だったわ」

織莉子「でも、それでも、私は勝てなかった……」

キリカ「織莉子……」

織莉子「こんな不様な負け方をして……」

織莉子「た、タンコブ……だ、なんてっ……」

キリカ「……織莉子?」





杏子(……ところでコイツらいつまで幼稚園児の格好をしてんだろ)

186: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/23(金) 14:32:28.86 ID:mfJdkoQa0

織莉子「こんな……こんな……」

織莉子「…………く、くく……」

織莉子「く……ふふ、あははっ!」

杏子「!?」

キリカ「織莉子!?」

織莉子「ふ、あははっ! あ、あんなに必死に戦ってた、っていうのに、た、たんこぶって……」

織莉子「ば、馬鹿みたい、あははっ」

キリカ「し、しっかりしておくれよ織莉子! 正気に戻って!」

187: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/23(金) 14:33:11.60 ID:mfJdkoQa0

織莉子「ふ、ふふふ、あはははっ」

キリカ「う、うわーん! 織莉子が壊れたー!」

織莉子「ふ、あはは、だ、大丈夫よキリカ、ただ、可笑しくて」

織莉子「頭をどうにかしたわけじゃないわ」

キリカ「ほ、本当かい?」

織莉子「ええ、ふふっ、むしろ頭がスッキリしているわ」

織莉子「……全部、わかったから」

キリカ「?」





杏子(スモックを着てバカ笑いしている色気たっぷりの女子中学生……)

杏子(危ないな、うん)

188: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/23(金) 14:34:01.94 ID:mfJdkoQa0

織莉子「私は今までずっと、予知を頼りに戦ってきたわ」

織莉子「この力を使いこなして、私の世界を救済する」

織莉子「それこそが私の生きる意味だと思っていたから」

織莉子「でも、佐倉杏子……いえ、佐倉さん。貴女と戦って分かりました」

織莉子「それがどれだけでつまらない生き方で……」

織莉子「私の生きる意味とは言えない、お粗末な生き方だったのか」

189: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/23(金) 14:34:51.34 ID:mfJdkoQa0

織莉子「戦うのは怖い。傷付くのは怖い」

織莉子「でも、だからこそ、予知などに頼らず、自分の意思で歩むべき道を決めて」

織莉子「自分の力で乗り越えなければならないの」

織莉子「怖い思いもするけれど、こんな風に泥に塗れることもあるけれど……」

織莉子「そこに生きる意味があるのだと、私は悟ったわ」

キリカ「織莉子……! 嗚呼、カッコイイよ織莉子!」

織莉子「ふふ、ありがとうキリカ」

織莉子「私はもう予知に頼らなくとも生きて行ける。予知なんて必要ない」

織莉子「……そして、もっと強くなれる」





杏子(泥まみれのかぼちゃパンツ……)

杏子(絵面的にマズイだろこれ)

190: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/23(金) 14:41:38.32 ID:mfJdkoQa0

織莉子「……佐倉さん、貴女との戦いはとても有意義でした」

織莉子「『今回は』私の完敗です」

杏子「……ん? 今回、だあ? おいおい、次があるとでも思ってやがんのか?」

織莉子「ふふっ……ええ。ここは退かせてもらいます」

織莉子「負けっぱなしでは納得がいきませんから」

織莉子「……またいつか、お会いしましょう」

織莉子「そのときこそ、私の生きる意味を証明してみせます」

杏子「馬鹿かテメー、逃がすわけが……」

191: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/23(金) 14:42:49.70 ID:mfJdkoQa0

織莉子「……屋敷の、ちょうどあの辺り」

杏子「?」

織莉子「ゆまさんが眠ってる部屋だけれど……」

織莉子「コレをぶつけたら――――」

ズズズ...

杏子(水晶を出した……!? さっきの魔法!?)

杏子「っ! やめっ……!」

織莉子「どうなるかしら、ねっ!」





杏子(なっ……!)

杏子(こいつ、ノー  じゃねえか!!)

192: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/23(金) 14:43:35.86 ID:mfJdkoQa0

さやか「杏子が『説得するから離れて見てろ』っていうから待ってるわけだけど……」

マミ「いったい何を話しているのかしら……」

ほむら「っ! 美国織莉子が――――」



ズガァンッ!!



仁美「きゃっ!?」

まどか「お、おウチを攻撃した……!?」

さやか「ど、どーいうこと?!」

マミ「……まさか、ゆまちゃんを狙って!?」

まどか「!!」

193: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/23(金) 14:44:18.86 ID:mfJdkoQa0

杏子「っ……ゆまっ!!」

杏子「てめぇ、何てことを……!」

杏子(……居ないっ!?)

キリカ「ははっ! どっちを見てるんだい、佐倉杏子!」

杏子「!」

杏子(いつの間にあんな遠くに……ちっ、時間遅延魔法か!!)

織莉子「ふふ、予想のつかない人生って素敵ね?」

織莉子「それでは、ご機嫌よう」

杏子「ま、待ちやがれ!!」



杏子(とりあえず写メとっとこ)パシャー

194: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/23(金) 14:45:20.71 ID:mfJdkoQa0

さやか「あ! あいつらが逃げるよ!?」

ほむら「くっ……逃がすものですか!」

まどか「私はゆまちゃんの様子を見に行くね!」

仁美「わ、私もそうします!」

ほむら「任せたわ!」

ダッ!

マミ「私達も行くわよ、美樹さん!」

さやか「うん!」

195: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/23(金) 14:46:28.81 ID:mfJdkoQa0

~屋敷周辺~

杏子「くそっ、逃げられたか!」

杏子「畜生……途中までは完璧な計画だったってのに……!」

杏子(……美国織莉子の予知を封じ込める作戦にはミスはなかった)

杏子(幻惑魔法をかけて、更に言葉と幻で発狂寸前まで精神を追い詰めることで……)



杏子(――――美国織莉子を人間的に大きく成長させ、予知に頼り切りにならない強い心を得させる!)



杏子(そうすることで二度と予知を使わなくなる……完全に予知を封じ込める、完璧な作戦だったのに……!)

杏子(まさか幼稚園児コスプレでアタシの集中力を乱して撹乱してくるなんてな)

杏子(アタシの幻惑魔法を逆手に取られた形だね……ちっ!)

杏子(……ふん、まあいいさ。予知を封じ込めることには成功したんだ)

杏子(またアイツらが現れるようなことがあれば、その時こそボコボコにしてやる!)

196: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/23(金) 14:47:44.78 ID:mfJdkoQa0

織莉子「ふふ……あははっ……!」

織莉子「上手くいったわ、やっぱり予知がなくたって問題ないわね?」

キリカ「う、うん……でも良かったのかい? 無関係な女の子を攻撃するなんて」

織莉子「……ふふ、平気よ。あれはハッタリだもの」

織莉子「私が攻撃したのは全く別の部屋。千歳ゆまは怪我一つ負うはずもないわ」

キリカ「そ、そうだったのかい!?」

キリカ「は、ははっ……なんだ、良かったよ!」

織莉子「もしかして……私が幼い子供を痛め付けるような悪党になったかと思ったかしら?」

キリカ「いやいや! そんなんじゃないさ!」

キリカ「私はただ、私の愛した織莉子が、誇り高く美しい人であることを再認識しただけだよ!」

織莉子「ふふっ……そう、嬉しいわ」

197: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/23(金) 14:48:42.38 ID:mfJdkoQa0

織莉子「さて、これからどうしましょうか」

織莉子「屋敷にはもう戻れなさそうだし……」

キリカ「それなら旅に出るのはどうだい、織莉子?」

織莉子「旅?」

キリカ「そうとも!」

キリカ「私と織莉子で、何が待っているかわからない、当てのない旅に出るのさ!」

織莉子「ふふ……なるほど、良いわね。今の私達に相応しいわ」

キリカ「ははっ、だろう?」

織莉子「……それじゃあ行きましょうか」

織莉子「――――未来のことなんて見えない、自分の道を歩む旅に」

198: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/23(金) 14:53:43.92 ID:mfJdkoQa0
美国織莉子編おしまい。

当初この美国織莉子編はトゥルーエンド編って題してたはずなんだけど
たぶんそれは幻惑魔法かなにかだったんじゃないかと思います。

208: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:01:34.48 ID:NdjNvfNy0

~ほむらの家~

ゆま「キョーコキョーコ!!」

杏子「……なんだよゆま」

ゆま「えへへ、呼んでみただけー♪」

杏子「はいはいあっそ」

ゆま「キョーコ、おんぶしてー!」

杏子「こら、急に抱き着くな!」

209: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:02:12.96 ID:NdjNvfNy0

仁美「ふふ、ゆまさんたらあんなにはしゃいで」

まどか「杏子ちゃんが帰ってきたことが本当に嬉しいんだね」

さやか「……ちょ~っとくっつき過ぎな気もするけどね」

マミ「そうね、そうよね。ここ数日ずっとベタベタしちゃって……」

仁美「くすっ……私も少しヤキモチを妬いてしまいそうですわ」

仁美(でも……あの笑顔を見ることが出来ただけでも)

仁美(私が魔法少女になったのは間違いではなかったと、そう思えますわ)

仁美(杏子さんを助けられて、本当によかった……)

210: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:03:04.19 ID:NdjNvfNy0

ゆま「ところでキョーコ? 今日はどうしてホムラの家に集まってるの?」

杏子「ああ、何でもほむらの奴が話があるらしいんだよ」

杏子「魔法少女のことで、な」

ゆま「魔法少女……」

さやか「ゆまちゃんに改めて魔法少女のことを説明する気なのかな、ほむらの奴」

マミ「でも、この前の一件の時に一通り説明はしたはずだけれど」

仁美「……それに全員集めたということは、用件がそれだけとは思えませんし」

まどか「…………」

211: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:04:14.03 ID:NdjNvfNy0

ほむら「みんな、お待たせ」

ゆま「あ、ホムラ!」

ほむら「ごめんなさい、こんな汚い家に集まって貰っちゃって」

さやか「いや~、あたしの部屋に比べたら全然キレイだし!」

杏子「んなことより、話って何だよ?」

ほむら「……私が話したいのは、魔法少女のことよ」

ほむら「魔法少女の、最後の秘密」

まどか「ほむらちゃん……」

212: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:05:14.87 ID:NdjNvfNy0

………………

…………

……

ほむら「……というわけなの」

さやか「そん、な」

マミ「魔法少女が……魔女になるですって……!?」

仁美「そ、それでは私達もいずれ……?」

ほむら「ソウルジェムの管理を誤らなければ、問題はないわ」

ほむら「けれども一度濁り切ってしまえば……それでお終い」

マミ「う、嘘でしょう? 冗談は止してよ!」

ほむら「残念だけれど……本当のことなの」

213: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:06:38.93 ID:NdjNvfNy0

ほむら「……それについてはお前のほうが詳しいわよね? インキュベーター」

まどか「?」

QB「……うん」

さやか「キュゥべえ!」

杏子「てめぇ、いつの間に!」

QB「……ほむらが言っていたことは全て事実だよ」

QB「魔法少女たちは絶望に染まった時、グリーフシードを産んで魔女になる」

QB「そしてその際に発生したエネルギーを僕らインキュベーターは回収する……」

さやか「ふ、ふざけんなっ! じゃああんたは……!」

マミ「騙してたのね、私達をっ!!」

QB「…………」

214: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:07:34.66 ID:NdjNvfNy0

仁美「私達が魔女に……」

ほむら「ごめんなさい、今まで黙っていて」

さやか「どーしてっ! どーして教えてくれなかったのさ、ほむら!」

さやか「そのことをもっと早く教えてくれれば……」

さやか「仁美は魔法少女にならずにすんだかもしれないのに!」

仁美「さやかさん……」

ほむら「……ごめんなさい……」

まどか「お願いさやかちゃん、ほむらちゃんを責めないで……」

さやか「まどか……?」

まどか「ほむらちゃんはずっと秘密を打ち明けたかったんだよ」

まどか「でも、私達がその事実に傷付いて、絶望してしまうかもしれないから……」

まどか「だからずっと秘密にしていてくれたんだよ……」

さやか「…………」

215: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:09:05.71 ID:NdjNvfNy0

仁美「……さやかさん、私なら大丈夫ですわ」

さやか「仁美……」

仁美「確かにショックですけれど、でも」

仁美「私は自分の願いに後悔なんてしていません」

仁美「こうして佐倉さんと一緒にいられる。それだけで十分過ぎるくらい幸せです」

仁美「佐倉さんを助けることが出来て、本当に良かったと思ってますから……」

杏子「……ははっ。馬鹿だな、あんたも」

杏子「アタシなんかのためにさ……」

仁美「はい、馬鹿なんです、私」ニコッ

216: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:10:13.71 ID:NdjNvfNy0

マミ「……でもっ、そんなこと言っても!」

マミ「ソウルジェムが魔女を生むならっ」

マミ「私達みんな死ぬしかないじゃないっ!!」

まどか「だ、大丈夫だよ! だって私達はワルプルギスの夜も乗り越えられたんだよ?」

まどか「それに、仁美ちゃんのおかげで杏子ちゃんもこうして帰ってきてくれた」

仁美「…………」

まどか「だから、もう私達に怖いものなんてないんだよ!」

まどか「大丈夫……大丈夫だよ! 私達は絶望なんかに負けない!」

まどか「私達は魔女になんかならないよ、絶対!」

マミ「そんなの、気休めでしょうっ……!?」

217: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:11:11.56 ID:NdjNvfNy0

マミ「いつか魔女になって災厄を撒き散らすかもしれない! この現実は変わらないわ!」

マミ「それなら、いっそ今すぐ……!」

ゆま「……ねえ、マミお姉ちゃんっ、あのねっ」

杏子「……アタシは、さ」

ゆま「?」

マミ「……杏子?」

杏子「親父がトチ狂って家族みんなを道連れにしてから、ずっと考えてたよ」

杏子「アタシなんか死んじゃった方がいいって」

ゆま「きょ、キョーコ……!?」

218: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:12:03.80 ID:NdjNvfNy0

杏子「でもワルプルギスの夜との戦いで死んじまうって時」

杏子「アタシは必死に生きようとしたんだ」

杏子「そのおかげでアタシの声は仁美に届いた。アタシはここに帰ってこれた」

マミ「その貴女も、私たちもいつかは魔女になるのよ!?」



杏子「――――いつかは今じゃないよ」



ゆま「!?!?」

杏子「人は皆いつか死ぬよ」

杏子「それでもマミは本当に今死ぬのか?」

219: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:12:36.14 ID:NdjNvfNy0

マミ「杏子……」

マミ「……いつかは今じゃない、か……」

さやか「……あははっ、良いこと言うじゃんか杏子」

仁美「流石は杏子さんですわ!」

杏子「よせやい照れるだろ」

まどか「ふふっ」

ゆま「あわわわ」

ゆま(な、何だろ、なんか物凄く大事なものをキョーコに盗られた気がする……)

220: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:13:39.22 ID:NdjNvfNy0

マミ「そうね……貴女の言う通りだわ」

マミ「ごめんなさい、皆。取り乱してしまって」

マミ「……私達はいつか魔女になってしまうのかもしれないけれど」

マミ「でも、いつかは今じゃないんですもの」

マミ「……私達は、今を一生懸命に生きなきゃダメよね!」

さやか「……うん! そーだね!」

仁美「はいっ!」

221: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:14:56.77 ID:NdjNvfNy0

ほむら(良かった……本当に良かった)

ほむら(皆が絶望に負けないでくれて……)

ほむら(これも佐倉さんのおかげね。やっぱり彼女は私達の希望だったんだ)

ほむら(もう大丈夫……私達は皆、きっと強く生きていけるはず……)

ほむら「ありがとう、みんな……」グスッ

まどか「ふふ、ダメだよほむらちゃん。ここは笑わなきゃ」

ほむら「えっ……?」

まどか「やっと幸せな未来を掴めたんだよ? 泣いてちゃ勿体ないよ」

ほむら「……くすっ、そうね……今は涙じゃなくて、笑顔でいるべきよね……」

222: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:16:15.88 ID:NdjNvfNy0

QB《……魔法少女たちの魂が希望に満ちていくのを感じるよ》

QB《いったいどういう風の吹き回しだい、杏子? みんなを励ますなんて……》

杏子《くっくっく……なーに簡単なことさ》

杏子《こいつらはアタシの大事な大事な下僕だからねぇ》

杏子《勝手に潰れて貰っちゃ困るんだよ》

杏子《それに……》

QB《それに?》

杏子《この宇宙が延命のためにエネルギーを必要としているっていうなら……》

杏子《それを全部台なしにしてやるのも面白そうだと思ってね!》

QB《な、なんだって……!?》

223: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:17:39.34 ID:NdjNvfNy0

杏子《くくく……そうだなあ、まずは世界中の魔法少女をアタシの管理下に置いてやるとするかな!》

杏子《そして決して絶望することがないように希望に満ちた未来を与えてやるぜ……くっくっく!》

QB《そんな! そんなことをされたらエネルギー回収が出来ないじゃないか!》

QB《き、君は宇宙の未来がどうなっても構わないっていうのかい!?》

杏子《んなコトしらねーよ、アタシは悪党だからねぇ!》

杏子《エネルギー問題を解決するだとか……》

杏子《宇宙のために犠牲になるだとか、んなコト糞食らえだ!》

杏子《アタシのせいでエネルギーが枯渇して世界が破滅しようが知ったこっちゃないね!》

QB《馬鹿な……そんな考え方、宇宙に生きる全ての人々を敵に回すようなものだよ!?》

杏子《上等じゃねーか!》

杏子《宇宙がこのアタシに牙を剥くっていうなら……》

杏子《返り討ちにしてボコボコにしてやるよ!》

QB《なっ……!?》

224: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:18:53.49 ID:NdjNvfNy0

QB(なんてことだ……佐倉杏子、彼女は本気だ!)

QB(彼女は本当に魔法少女達を希望で染め上げて、エネルギー回収を妨害する気なんだ!)

QB(……普通ならそんなこと出来るわけない、と笑い飛ばすところだけど……)

QB(佐倉杏子なら実現しかねない! 近い将来にこの世界は……)

QB(魔法少女達が絶望せず、幸せな笑顔が溢れる世界になってしまうだろう!)

QB(嗚呼、もう宇宙はおしまいだ……!)

225: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:19:29.02 ID:NdjNvfNy0

杏子(アタシらが幸せになればなるほど宇宙が、人類が苦しむことになる……)

杏子(くくく……最高じゃんか、極悪過ぎるぜ!)

杏子(この宇宙を恐怖のドン底に陥れてやるために……)

杏子(アタシの手で、魔法少女ども皆まとめて幸せの絶頂に追い込んでやるぞ!)

杏子(……まずは皆が幸せに生きていけるようにエネルギー問題を解決してやるかな)

杏子(くっくっく、これから忙しくなるぞー!)

杏子(ふふふ……ふは、あーはっはっは!!)

226: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:27:17.87 ID:NdjNvfNy0

マミ「杏子? 急に黙り込んで……どうかしたの?」

杏子「ん? ああ、いや、なんでもないよ」

杏子「ただ、みんなが居ることが嬉しくてさ」

さやか「はあ? な、なに言ってんのよ急に」

仁美「ふふっ、そういうことなら私も同じ気持ちですわ」

まどか「うん、私もだよ! みんなと一緒に居られることがとっても嬉しい!」

ほむら「そうね……私も、貴女たちと共に歩んでいきたい」

マミ「……そうね、私たちこれからもずっと一緒よ!」

さやか「な、なんか恥ずかしいノリだけど……うん、あたしも、みんなとなら怖くないよ」

ゆま「ゆ、ゆまも一緒だよ!」

杏子「あははっ! それじゃあ……これからもよろしくな、みんな!」

227: 1 ◆NsfUjTiOGg 2012/11/29(木) 22:27:54.13 ID:NdjNvfNy0
おしまい。

引用元: 杏子「気に入らねー魔法少女どもをボコボコにしてやる」(完結編)