歩夢「KILL THE FIGHT」ss 前編 

歩夢「KILL THE FIGHT」ss 後編

10: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/21(日) 22:06:16.04 ID:P9DqO1L/
一応スマホで調べてみるとそれはやっぱりお酒だった

アルコールなのになんで店員さんは止めてくれなかったの…

侑「…っ!?」

少し考えてハッとする

一日中一緒にいて忘れていたけど、歩夢の今日の格好はどこからどう見ても世界一可愛い大人のお姉さんにしか見えないんだ

そんな人が大人びた雰囲気で自信満々に。小慣れたようにすら感じるほど堂々とお酒を頼むんだから違和感を感じないのも当然だろう

今更ながら予約時にパートナーの年齢確認が無かったのが悔やまれる

歩夢「えっへへ~ゆ~ちゃん~」

成長した顔で油断しきった子供の表情を浮かべるのは卑怯じゃない?

毎日会う彼女は久しぶりに見る懐かしい顔をしていた

12: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/21(日) 22:16:36.43 ID:P9DqO1L/
幸運にもコース料理は既に食べ終わっていたので歩夢を支えながら会計を済ませて店を出る

エレベーターを下りて一歩外に踏み出すと暖かな室内とは一転して一気に寒さが襲って来た

歩夢「うぅっ、侑ちゃん」
その空気が冷たいのか歩夢は私に強くしがみつく

その体温が私にはとても心地良い

高級な料理の感想?
ドキドキして味なんて分からなかったけど、ニコニコする歩夢が凄く可愛かったよ

14: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/21(日) 22:19:54.90 ID:P9DqO1L/
こんなに可愛い歩夢が外にいたら何をされるかわかったものじゃない!

急いで家に帰らないと!

その為にも早く駅に

歩夢「えへへ~侑ちゃんが2人~」

侑「ほら歩夢、あそこまで歩こう?」

歩夢「侑ちゃんが~3人~」

侑「歩夢ぅ…」

ダメだ、歩夢がフラフラしちゃってとてもじゃないけど駅まで行けそうにない

かといって私じゃ歩夢は背負えないし

道路沿いで途方に暮れる

こうなったら恥を忍んでさっきのお店に戻って一休みさせてもらおうかな?


15: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/21(日) 22:23:02.22 ID:P9DqO1L/
そんなところに丁度梨のマークがついたタクシーが通りかかる

現金なもので普段何気なく見ているそれが今は救いの天使のようにすら思えた

侑「すいませーんっ!」

急いでそれを捕まえる

痛い出費だけど、歩夢の為なら惜しくない

車中にいる運転手さんはほんのり赤みがかった髪のとても綺麗な女性だった

「あら?あら??あら???」

「うん。良いわ」

「何も言わなくて良いわ」

「お姉さん、2人の関係も何もかも一目でわかったから」

侑「?」

この運転手さんは何を言っているんだろう…

16: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/21(日) 22:25:36.15 ID:P9DqO1L/
歩夢「関係~?」

歩夢「私とゆうちゃんはね~、恋人なの~」

そしてすぐにタクシーは動き出す

侑「ちょっと歩夢っ!?」

歩夢「侑ちゃんはねぇ~かっこよくってね~」

侑「歩夢!?」

「うふふふふっ、ご馳走様」

「良いわね若いって」

「もっと聞かせて、貴女達の事を」

歩夢「侑ちゃんすっっごく大好きなの~」


車内で子犬のように私に頭を擦り付ける歩夢による私への惚気話は結局、タクシーが停まるまで止まることは無かった

19: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/21(日) 22:30:11.33 ID:P9DqO1L/
侑「お幾らでしょうか?」

到着を知らせる声に財布を取り出しながら私は尋ねる

でも、その返答は私のビックリするものだった

「良いわ。お代は」

侑「えぇっ!?」

「ふふ、寧ろこっちが払いたいくらいよ」

「今時こんな幸せそうなカップルなんて滅多に見れないもの」

「久しぶりにすっごく良いインスピレーションが湧いて来ちゃったからそのお礼」

「そのお金はここで使っちゃえば良いと思うわ」

「彼女さんと仲良くするのよ」

20: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/21(日) 22:32:53.04 ID:P9DqO1L/
歩夢「ばいば~いっ」

唖然としながら走り去るタクシーを見送ってふと思い返す

侑「私、行き先言ってたっけ…」

歩夢「言ってなかったよ~」

侑「そうだよね。それにタクシー代はここでって…っ!?」

歩夢に夢中で気がつかなかったけど…

私達は今大きな建物の前にいた

でも、それは駅でも私たちの住んでいるマンションでもなくって

おとぎ話に出て来そうなお城で

休憩と書かれていた

22: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/21(日) 22:36:59.29 ID:P9DqO1L/
手続きを済ませて私達は室内に入る

そこは思っていたよりも存外綺麗だった

普通のホテルよりは安く済むし、変なことをしなければ快適に過ごせるんじゃないかな

うん。思っていたよりは楽に過ごせそう

歩夢「暑くなってきちゃった…」

…変なことをしなければ

侑「そうかな?私はそうでもないけど」

歩夢「暑い~」

確かに歩夢の服装は室内じゃ少し暑いかもしれない

24: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/21(日) 22:40:39.39 ID:P9DqO1L/
侑「じゃ…じゃあ上着を脱いだら良いんじゃない?」

歩夢「お~っ!侑ちゃん天才~」

歩夢は上着のジッパーに手を伸ばす

でも、その手つきはどこか辿々しい

歩夢「ありぇ?手が上手く動かないよぅ」

歩夢「侑ちゃん、外してぇ」

侑「じっ!自分でやりなよ」

歩夢「出来ないのぉ~」

人の心って単純なもので、ここがそういう場所だと考えるだけで雰囲気に呑まれそう

普段なら何気なく手伝えるんだろうけど、今はこのやり取りだけで心臓がバクバクしちゃってるもん

43: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 18:29:27.99 ID:+dWbfGjj
侑「…今回だけだからね」


自分の中にある邪な思いを悟られちゃうのは恥ずかしいし、何より歩夢にそんな人だって思われたくない

だから私は何でもないようにそう言ってファスナーを下ろす

極力歩夢の体に触れないように気をつけながら

44: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 18:38:58.52 ID:+dWbfGjj
意を決すると呆気ないくらい簡単にそれは開けた

考えてみれば当然だよね

だって掴んで下げれば良いだけなんだから

なんだ、少しでも悩んだのがバカらしい

思わず苦笑しちゃうよ

侑「ほら、開いたよ歩夢」

歩夢「ありがと~侑ちゃん」

歩夢が屈託のない笑顔を浮かべてくれる

46: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 18:46:45.21 ID:+dWbfGjj
モゾモゾと服を脱ごうとする歩夢を見ながら一息つく

何はともあれこれで解け…

歩夢「…脱げない」

侑「え?」

歩夢「侑ちゃん手伝って~」

侑「…え?」

歩夢は笑顔で両手を広げながら、まるでシャーペンを貸してとでも言うように軽く言ってくる

でも、私にとっては軽いことなんかじゃない

それは体に触れないことがほぼ不可能

我慢できる?

今私が歩夢に触れて

47: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 18:55:25.56 ID:+dWbfGjj
いやいや、もちろん我慢するよ?

だってまさか初デートで

しかも酔った歩夢に手を出しちゃうなんて絶対にダメだもん!

でも、歩夢の可愛さは無限だ

万が一にでも私が過ちを犯してしまうような可能性は排除しなきゃ

どうやって回避しようか思考を巡らせる

歩夢「おねがいゆ~ちゃん…からだの奥が暑いの…」

侑「でっ…でもね歩夢。私達もう高校生なんだし流石に洋服は自分でさ」

歩夢「え~」

侑「ごめんね?」

49: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 19:02:29.44 ID:+dWbfGjj
歩夢「うん…わかったよぉ」

歩夢「もうわたしたちおねーさんだもんね…」

不満そうな表情ではあるけど彼女はわかってくれたみたい

よかったぁ…

心の中でホッと息を吐く

そうだよね。歩夢は素直で良い子なんだからわがままなんて…

51: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 19:12:14.76 ID:+dWbfGjj
歩夢「うんしょっ…うんしょ…」
歩夢「うんしょっ……うんしょ……」
歩夢「うんしょっ………うんしょ………」

歩夢「…」

歩夢「む~~っ」

歩夢「やつぱりムリだよぉ~」

侑「ほら、もう少しで脱げそうでしょ?頑張って!あとちょっとだよ!」

歩夢「ねぇ…侑ちゃん…暑いの」

歩夢「本当に辛いの」

歩夢「イジワル言わないで助けてよぉ侑ちゃん…」ウルウル

その声色は本当に辛そうで…

もしかするとアルコールのせいで私の想像以上に熱が出ているのかも

覚悟を決めよう

どんな状況でも歩夢に助けてって言われたら私が助けたいんだもん!
それは私にとって三大欲求なんかよりも優先される大事な想い

53: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 19:19:55.11 ID:+dWbfGjj
飛び出しそうな自分の心臓に謝りながら

侑「…わかったよ」

歩夢「やった~、ありがと~ゆ~ちゃん」

生唾を飲み込みながら歩夢の着ているレザージャケットを開く

服がずれていくにつれて体のラインを浮かび上がらせるようなセーターがその形の良い双丘を主張させる

そういう目で歩夢を見たくないからとずっと意識しないようにしていたそれが、今ハッキリと眼前でアピールするように揺れ動く

54: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 19:27:36.36 ID:+dWbfGjj
私の鼓動を早めるのはそれだけじゃない

一日中通気性の良くない革の服に覆われていたからだろう

濃縮された歩夢の匂いが届く

それは私が少し嗅ぐだけでも幸せになれる香り

だってそうでしょ?

もちろん歩夢が良い匂いって事もあるよ

でも私にとってはそれだけじゃ無いんだ

歩夢の匂いがするってことは私が歩夢の近くにいるってこと

つまり、小さい頃から私が最高の時間を過ごす時必ず吸っていた匂い

私の頭には歩夢の匂い=幸せって刷り込まれてるんだから

56: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 19:34:48.21 ID:+dWbfGjj
許容量を超える幸福感が私の脳を侵していく

それは金木犀みたいな優しい甘さと同時に、こちらを飲み込む蜂蜜のようなドロリとした甘さをも感じさせて…

全てを忘れて今すぐそれに呑み込まれて溺れてしまいたくなる

2人で腰掛けているベッドに押し倒してその匂いを全身で感じたくなる


その欲望を押し留めるのは皮肉な事に、その匂いの持ち主を好きだという想い

大切にしたいという決意

57: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 19:43:18.02 ID:+dWbfGjj
歩夢「侑ちゃん、早くぅ~」

色々な意味で時間をかける訳にはいかないのに

身体にしっかりフィットしていて硬いそれは中々脱がせることが出来ない

侑「ごめんね、もう少しだから」

歩夢「あっ…ありがとうっ…ゆ~ひゃんっ!?」

身体に手が触れると艶のある声を出すのはわざとなの?

いや…歩夢はくすぐったがりだったからそれは無いか

何より歩夢は私と違ってピュアだからそんなことしないよね

58: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 19:50:47.23 ID:+dWbfGjj
理性を壊されないように、なんとなく幼稚園の頃を思い出す

あの時もボタンを上手く外せない歩夢の着替えを先生の代わりに手伝ってたなぁ…

柔らかいなぁ

っていうか先生が手伝おうとしてたら私が威嚇してたよね

歩夢「侑ちゃん?」

その思い出と今の歩夢が重なって私の思考は変な方向に…

歩夢「ふふっ、ゆ~ちゃんくすぐったいよぉ」

あの時はまさか歩夢がここまで綺麗になるとは思わなかったなぁ…

可愛らしさは変わらずに綺麗さが上がるのは卑怯だよね

歩夢「きゃははははっ、もうっそんなところなでないでよぉ~」

侑「?あっ!?ごめんね、歩夢っ!」



やっとの思いで革のジャケットを脱がすと、そこには私のよく知る可愛い格好の歩夢がいた

行動と表情はまだ幼い日に近いけど

60: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 19:58:24.76 ID:+dWbfGjj
歩夢「えへへ~」

歩夢「ゆ~ちゃ~ん」

侑「歩夢っ!?」

自由になった彼女は私に勢い良く抱きついてくる

胸元と口元を幸せそうに緩ませながら絡みついてくる

歩夢「ゆ~うちゃんっ♡」

それだけで私は幸福に溺れそうになる

動作は普段と同じ筈なのに何故かいつものハグとは何か決定的に違う感覚

心臓は痛い程に跳ねて、私のお腹の奥へ血を巡らせる

61: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 20:05:44.54 ID:+dWbfGjj
侑「歩夢っ!?暑いんじゃなかったの!?」

歩夢「ん~?」

歩夢「えへ~ゆ~ちゃん~」

…ダメだ、今の歩夢には話が通じそうにない

私が空腹を我慢している狼だとも知らずに無邪気な笑顔で擦り寄ってくる

63: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 20:14:11.04 ID:+dWbfGjj
このままじゃマズい

獣欲に支配されそうな理性を必死に総動員して歩夢に懇願する

侑「歩夢っ、少し離れて」

歩夢「ど~して~?」

侑「どうしてって…」

正直に理由を言うのはちょっと格好悪いよね…

でも、これをどう言い訳したらいい良いんだろう

なんて思って口をモゴモゴさせていると何を勘違いしたのか歩夢は幸せそうな笑顔から一転して心底悲しそうな表情になる

歩夢「もしかしてゆ~ちゃん、わたしのことキライになっちゃったの?」ウルウル

64: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 20:22:38.27 ID:+dWbfGjj
侑「違うよ!」
侑「私が言いたいのは別のこと」


私は歩夢が好き

初めて会った幼稚園の頃から今までずっと

そしてそれはこれからも絶対に変わらない

女の子同士なんて関係無いくらい好き


性別なんて考える前に好きになった

65: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 20:31:29.15 ID:+dWbfGjj
でも、だからこそこの欲を伝えるのが怖い

長年大切にしてきたこの想いが一時の情欲なんかで流されて良いものなの?

もしかすると私は歩夢とそういうことをしたいから好きになっただけなんじゃないの?

勿論そんな事はない。絶対に

私は歩夢の見た目も好きだけど、それ以外の全ても愛してるんだから

だけど、目の前の欲に溺れてしまったら私は心のどこかで否定出来なくなってしまうんじゃないだろうか?

67: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 20:37:40.96 ID:+dWbfGjj
その行為は人によって凄く痛いものだって聞いたことがある

私は歩夢を一生大切にしたいのに、そんな痛みを伴う行為をしても良いんだろうか?

歩夢を痛がらせてでも自分の欲望を押し付ける

それが愛なの?

それは私の想いが自分の醜い欲望に負けたってことなんじゃないの…?

そんなことをして私は今まで通り歩夢に接する事が出来るの?

胸を張って歩夢を護るって言えるの?

こんな私の葛藤を知らない歩夢は無垢な瞳を潤ませたまま私から離れてくれない

それを私の色に染めてしまいたい
歩夢を見てそう思ってしまう自分がいる事に嫌悪感が湧く

68: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 20:47:45.09 ID:+dWbfGjj
歩夢「ゆ~ちゃん、離れちゃイヤっ」

侑「歩夢、少し落ち着いて」

歩夢「いや~っ!」ギュ~ッ

侑「っ///」

こんな顔をさせちゃうくらいなら

カッコ悪いって思われてでも正直に言おう

呆れられちゃう方が歩夢を悲しませちゃうよりはずっと良い

69: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 20:54:08.75 ID:+dWbfGjj
侑「あのね、歩夢」

侑「流石にもう私の理性が…」

歩夢「りせ~?」

侑「私は歩夢が好き」

歩夢「私もゆ~ちゃん好きだよ?」

侑「知ってるよ。ありがとう」 

歩夢「うん!」

歩夢「えっへへ~どういたしまして~」

侑「でもね、好きな人にベッドでこんなに抱きつかれちゃうと我慢できなくなりそうっていうか…」

70: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 20:58:39.50 ID:+dWbfGjj
歩夢「がまん?」

歩夢「何かがまんしてるの?」

歩夢「がまんはよくないよ?」

侑「うん。そうだよね…」

歩夢「えへへっ、私が力になれるなら何でも言って!」

侑「あはは、ありがとう」

侑「…でもね、私は歩夢を傷つけたくないの」

歩夢「私を傷つけたいの?」

侑「…多分ニュアンスは違うけど簡単に言うとそう」

侑「私が歩夢に酷いことをしちゃうかもしれないの」



侑「歩夢もそれは嫌でしょ?」

72: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 21:15:30.36 ID:+dWbfGjj
歩夢「侑ちゃんは私がイヤなことなんてしないよ?」

やっぱりそうだよね…

歩夢の好きな私は歩夢のことを大切にする私

歩夢とずっと一緒にいる為だもんね

こんな気持ちは封印しなきゃ

…その為にも今の状況をなんとかしなきゃなんだけど

73: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 21:21:57.19 ID:+dWbfGjj
でも、歩夢の言葉はそれで終わらなかった
歩夢「ねえ、侑ちゃん」

歩夢「侑ちゃんは私のこと好き?」

侑「好き!大好き!!」

それだけは絶対に勘違いされたくない

私の力強い否定に歩夢は安心したように笑顔を浮かべる

歩夢「ふふっ」

歩夢「ねえ、侑ちゃん」

歩夢「侑ちゃんが私を想ってしてくれるなら何でも私は嬉しいの」

歩夢「良いよ?」

侑「…えっ!?」

74: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 21:27:32.42 ID:+dWbfGjj
歩夢「私、侑ちゃんなら何をしてくれても幸せだから」

歩夢「嬉しさも、楽しさも、ドキドキも」

歩夢「悩みも、苦しみも、痛みも」

歩夢「それが侑ちゃんの愛なら全部受け止める」

歩夢「今まで侑ちゃんが私にそうしてくれてたみたいにね」

歩夢「侑ちゃんがくれるなら痛みも嬉しいの」

歩夢「かっこいい侑ちゃん、かわいい侑ちゃん、私がまだ知らない侑ちゃん…」

歩夢「侑ちゃんの全てを愛したいの」

歩夢「私が…私だけが侑ちゃんの全てを知っていたいの」

歩夢「だって好きだから」

歩夢「侑ちゃんの事が好きだから」

歩夢「世界で一番侑ちゃんの事が好きだから」

歩夢「私だけの侑ちゃんもいてほしい」

歩夢「侑ちゃんだけの私でもいたい」

76: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 21:37:42.77 ID:+dWbfGjj
歩夢「だからね」

歩夢「今は私を侑ちゃんの物にして…?」

歩夢「侑ちゃんの特別にして」

歩夢「それが私のお願い」

侑「でっ、でもっ!」

侑「歩夢の思いはどうなるの!?」

侑「私に好き勝手されちゃっても本当に幸せなの?」

歩夢「幸せだよ?」

歩夢「私だって侑ちゃんと一つになりたいんだから」

歩夢「う~んと」

歩夢「強いて言うなら、私からのワガママはね」

歩夢「抱きしめて」

歩夢「強く、強く」

歩夢「侑ちゃんをもっともっと感じられるように」

歩夢「私をもっと感じてくれるように」

歩夢「愛されてるって実感できるように」

歩夢「愛してるって実感してもらえるように」

歩夢「強く、強く」

77: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 21:43:27.68 ID:+dWbfGjj
歩夢「私だって侑ちゃんが思ってくれてる程ピュアじゃないんだからね?」クスリ

歩夢「ふふっ、不思議」

歩夢「今日の私はなんだか普段言えないことも言えちゃってるね」

歩夢「でも、これがずっと隠してた私の本心」

歩夢「ずっと言いたくって言えずにいた私の気持ち」

歩夢「来て…侑ちゃん…」

そう言って歩夢は両手を広げながら天使のような笑顔を浮かべる

79: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/11/28(日) 21:49:42.84 ID:+dWbfGjj
…私はこの気持ちを抑えなくっても良いの?

歩夢の顔を見る

いつも通りかわいい彼女が浮かべる表情は

純粋でいて

それでいてどこか挑発的な色を秘めている

魔性の笑みってきっとこういうのをいうんじゃないかな?

99: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:49:04.20 ID:1uElq8Wk
侑「歩夢っ!」

もう我慢の限界だった

優しくベッドに押し倒す

柔らかい、優しく包み込むような温かさ
それは私の力に対し何の抵抗もなく後ろに倒れた

両手を歩夢の顔を挟むようにしながら

私の体重で歩夢に密着して身体中に歩夢を感じる

胸を満たす歩夢の花のような匂い

視覚を支配するのは可愛らしい歩夢の姿

聞こえるのは耳に心地よい歩夢の声だけ

101: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 19:55:50.11 ID:1uElq8Wk
歩夢「えへへ、ゆうちゃん…すき…大好きっ!」

その言葉が私に僅かに残っていた残った最後の理性すらも弾き飛ばした

顔を抱き寄せてキスをする

でも、まだ足りない

いつもならそれで満足できるのに、まだ満たされない

もっと

侑「歩夢っ、歩夢ぅ」

本能に従って歩夢の唇に舌を捻り込む

ぎこちなく入り込むそれは、口腔内で優しい温かさに迎え入れられた

初めて体験する不思議な味がする

でも、これは間違いなく私の好きな味だ

102: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 20:01:19.22 ID:1uElq8Wk
それが控えめに動いて初めて、歩夢の舌が自ら絡み付いてくれているのだと理解する

歩夢「んっ…」

今、私の五感全てが歩夢に支配された

今まで何度もキスを重ねて、その度にこれ以上の幸福は無いと思っていた

だというのに…

侑「…んッ…ンちゅッ…」

歩夢「ゆぅッ…ちゃ…」

人生初の深いキス

それは私の想像なんて軽く超えていた

104: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 20:07:35.32 ID:1uElq8Wk
歯を

歯茎を

頬を

舌を

全てを夢中になって味わう

唾液が互いの口腔内を循環して

全身が例えようの無い幸福感に満たされる

くすぐったくもあり、それ以上に気持ち良い

105: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 20:13:35.84 ID:1uElq8Wk
舌と舌が触れ合うたびに電流にも似た快感が身を震わせる

それは歩夢も同じようで、身体の下で彼女が嬉しそうに身じろぎするのを感じた

より深く、歩夢と分かり合えている気がした

私がついさっきまで恐れていた性的な交わりとはその実、快楽を伴った愛だったのだと今気がつく

でも、その幸せは私を完全には満足させてくれない

それどころかより抗い難い新たな欲を生む

106: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 20:19:11.11 ID:1uElq8Wk
これより深く繋がりたい

もっと歩夢と近づきたい

歩夢も抱き返してくれているけどまだ遠い 

強く強く抱きしめてもまだ遠い

今は服一枚の距離が果てしなく遠い

もっと
もっと
もっと

全身で彼女を感じたい

全身を彼女に感じさせたい

触れ合い

繋がって

一つに溶け合いたい

そんな激しい衝動に突き動かされる

107: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 20:27:18.66 ID:1uElq8Wk
気がつくと私の口は勝手に動いていた

無意識で、でも大きな決意を持って

侑「脱がすね、歩夢」

歩夢「ふふっ、やっと素直になってくれたね」

歩夢「…うん。良いよ」

返事を聞きながら歩夢の服に手をかける

緩やかなその服はさっきの服と違って手を動かすと簡単に開いた

はだけた服の間から覗く素肌の美しさに息が荒くなる

108: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 20:32:47.56 ID:1uElq8Wk
幼い頃から何度も見る機会があって

その度に見ないよう必死に目を逸らしていた

新雪みたいに穢れの無い綺麗な肌が私の心を奪う

もっと…もっと先が見たい

歩夢の身を隠す最後の障害物を退かそうと私が手を伸ばすと…

109: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 20:37:40.06 ID:1uElq8Wk
ガチャリ

大きな音が響いた

せつ菜「おっ邪魔しまーーす!!」

侑「はあっ!?」

はぁっ!?

歩夢「あ~っ、せつ菜ちゃんだぁ」

歩夢は一瞬前までの妖艶さが嘘のように子供みたいに純粋な笑顔を浮かべていた

…はぁっ!?切り替えが早すぎない!?

侑「せつ菜ちゃん!?」

歩夢「いらっしゃ~」

侑「…!?歩夢はそんな格好で起きあがろうとしないで!」

歩夢「わぷぅ!?」

扇情的な格好のまま友を出迎えようとする歩夢をすぐに掛け布団で包む

111: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 20:41:27.02 ID:1uElq8Wk
侑「なんでここにいるのさ!?」

せつ菜「生徒会長として不純な交際は認められませんからね!」

侑「…まさかストーキングしてたの!?」

せつ菜「それこそまさかですよ!」

せつ菜「そんなことを私がする訳ないじゃないですか!」

侑「じゃあ、発信機でも付けたの!?」

せつ菜「違います!法に背くようなことは何一つしていないですよ」

侑「じゃあどうしてこんなタイミングでここに来れたのさ」

113: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 20:46:05.24 ID:1uElq8Wk
せつ菜「ふふっ…」

せつ菜「璃奈さんに潜在戦闘能力スカウターを作ってもらって正解でした!」

侑「いきなり関係の無い話しないでよ!」

せつ菜「まあ、そんなこと言わずに聞いてくださいよ」

せつ菜「これ、最初は単純にあのアニメの真似っこをしたくて作ってもらったのですが!」

せつ菜「付けてみるとあら不思議」

せつ菜「皆さん一桁なんですが…バグのせいか歩夢さんだけ三桁を越えてたんですよ!」

せつ菜「…まぁ、測定不能の方が少し離れた場所に1人だけいるのですが…」

せつ菜「何にせよ、これで歩夢さんがどこにいるのかがすぐにわかるんです!」

114: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 20:51:11.24 ID:1uElq8Wk
侑「…それって実質発信機つけてるのと同じじゃない?」

せつ菜「あはは、お二人のデートの日に偶然これを付けて遊んでいたら」

せつ菜「歩夢さんがホテルに入っているのがわかったので生徒会長として確認しない訳にいかなかったんですよ」

つまりは邪魔しにきたって事だよね?

侑「偶然じゃ無いよね…!」チッ

舌打ちするのも仕方ないよ

115: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 20:54:22.42 ID:1uElq8Wk
身体を燃やすような興奮が一気に冷めていくのを感じる

歩夢「スー…スー…」

布団にくるんでるうちに歩夢は寝ちゃってるし…

侑「…まあ、良いよ」

侑「初めてがこんな形でなんて私もちょっぴり不本意だし…」

歩夢「く~く~」

歩夢「えへ~…ゆ〜ちゃん…」

歩夢に魅了された勢いでシようとしちゃったけど

酔っ払ってる歩夢は明日になったらこの事を忘れちゃってるかもしれない

初めての大事な思い出なのに歩夢と語り合えないなんて嫌だもんね

…いや、これは流石に語り合わないだろうけど!胸の中で共有出来ない思い出があるのは嫌だ!

それが大切な物であるなら尚更

116: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 20:57:49.60 ID:1uElq8Wk
歩夢の天使のような寝顔を見つめると、思わず口元が綻ぶ

侑「それに、結婚すればいつでも出来るんだからね」

侑「夫婦の関係に口出し出来るほど生徒会長は偉くないでしょ?」

せつ菜「ほう?自信満々ですね」

せつ菜「同性同士では結婚できませんよ?」

侑「そんなこと当然知ってるよ」

侑「でも、それなら結婚出来る国に行けばいいだけでしょ?」

ずっと昔、ここでは歩夢と結婚できないと知って絶望した私が見つけた希望

ずっと温めていた計画

118: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 21:01:39.39 ID:1uElq8Wk
せつ菜「その言葉…冗談ではなさそうですね」

侑「もちろん」

せつ菜「…心配はないんですか?」

侑「無い訳じゃ無いけど、何とかなるって思うよ」

侑「だって私達は誰よりも深く愛し合ってるんだから」

お互いがお互いのために限界以上の力を出せる。それが私達だもん

胸元の指輪に優しく触れながら

歩夢「えへへ~」ムニャムニャ

幸せそうに眠っている歩夢の頭を撫でながら夜通しせつ菜ちゃんと語り合う

119: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 21:06:43.53 ID:1uElq8Wk
侑「ところで、潜在能力スカウターって何?」

せつ菜「その名の通りですよ!」

せつ菜「その人が出せる最大限の戦闘能力を測るんです!」

せつ菜「3桁あればゾウさんも素手で楽々倒せるんじゃないかって璃奈さんが言ってましたよ!」

侑「えぇ…」

それはどう考えても故障してるね…

120: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 21:12:25.82 ID:1uElq8Wk
帰り際、せつ菜ちゃんにこんな事を聞かれた

せつ菜「侑さん」

侑「うん?」

せつ菜「海外にはいつ頃行かれる予定なんですか?」

侑「う~ん…歩夢と相談しなきゃだけど、大学を卒業する頃には行こうかなって思ってるよ」

侑「実は既にエマさんから語学を習わせてもらってるんだ」

自己学習だけじゃなく、現地の人から教えてもらう方がより効果的

そう思って迷惑を承知で教わることにした

122: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 21:17:45.46 ID:1uElq8Wk
志望するスイスの大学合格へかなり余裕を持っているエマさんは二つ返事でOKしてくれた。エマさんは教え方が上手いし、たまに恋愛相談にも乗ってくれる

凄く有難いと思う

エマさんと同じ大学に行く為に、一緒にスイスの言語を学ぶ彼方さんや果林さんも色々と話を聞いてくれるんだ

このお陰で誤解だったとはいえ果林先輩と歩夢が一緒にいたってことを知れた

そういう意味でもかなり助かってるね

…そのせいか歩夢からは少し不本意な勘違いされてそうだったけど

私、盗聴器なんて付けないからね!

123: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 21:23:12.65 ID:1uElq8Wk
せつ菜「もしかすると、海外に行く準備はしなくて良くなるかもしれませんよ?」

侑「…なに?もしかしてまだ歩夢を諦めてないの?」

言葉に棘が入っちゃうのは仕方ないよね

せつ菜ちゃんは仲間であると共にrival〔流暢な発音〕なんだから

せつ菜「勿論それもありますが、それ以外の理由もありますよ!」

侑「?」

侑「どういうこと?」

せつ菜「ふふふ、歩夢さんが海外に行ってしまうのは私イヤですからね」

せつ菜「今は詳しく言えませんが」

せつ菜「私は野望実現のために色々と頑張っているんですよ!」

正直何を言いたいのかがよくわからないね

せつ菜ちゃんが出て行った後、私は歩夢を抱きしめながら夢に入った

124: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 21:25:57.86 ID:1uElq8Wk
せつ菜ちゃんが語っていた真意を私が知るのは数年後

現役大学生の中川首相が大好き法を制定した時

その更なる真意を私が知ったのは歩夢が出産して暫くしてからだった

126: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 21:31:42.58 ID:1uElq8Wk
歩夢「ねえ、侑ちゃん…ここどこ?」

翌朝起きた歩夢は幸か不幸か何も覚えていなかった

歩夢が覚えていないのはまあ、結果としては良かったのかな?

あのまま行為をしてたら私の懸念通り、歩夢はそれを覚えていられなかったってことだし

でも…したかったなぁ…

複雑な胸中を悟られないように私は小さくため息を吐いた

127: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 21:35:08.33 ID:1uElq8Wk
数年後

大学生になった私たちは同棲している

進学先は別々の大学だったから最初は違う場所に住む予定だったんだ

でも料理を作りにきてくれるなら一緒に住もうよって侑ちゃんが言ってくれたから、その誘いに乗らせてもらったの

…あの日もしかするとここまで計算してたのかな?

そうだとしたら普通に誘ってくれても良かったのに…

まあ、きっとこれが侑ちゃんの言う保険だったんだろう

私の"日課"を初めて見た侑ちゃんは
侑『やっぱり璃奈ちゃんは凄いんだなぁ…』なんて言ってたっけ

128: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 21:39:08.13 ID:1uElq8Wk
そうそう

同棲を決めた時ケジメとしてお互いの両親に侑ちゃんとの関係を初めて言ったんだ

凄くドキドキしながら、絶縁も覚悟してたのにお母さんもお父さんも微笑みながら

『知ってたよ』

って一言だけ言ってくれたの

嬉しくって思わず泣いちゃった…

その後同棲をどうするか双方の両親と話し合って一緒に決めたのが

"学生の内は結婚するまで清いお付き合いをする"って事

学生の本分は勉強!仕方がないよね…

130: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 21:43:54.97 ID:1uElq8Wk
同棲生活は毎日楽しいんだけど、少しでも帰りが遅くなると侑ちゃんから物凄く心配されちゃうのは複雑な気持ち…

この前課題で遅くなっちゃった日なんて学校の前でずっと待ってくれてたんだよ?

あの日は本当にびっくりした…


侑ちゃんの帰りが遅くなった時はどうするかって?

もちろん私がすぐ迎えに行くよ!

侑ちゃんはモテちゃう上に無防備だからね

私が守らなきゃ

131: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 21:46:48.64 ID:1uElq8Wk
そして今

小洒落たバーで私と侑ちゃんは語り合っている

大学の帰りに2人で見つけたお店で、侑ちゃんと来たいなってずっと話してたお店

成人してやっと入れたんだ

さっきから種類が違う物を何杯も、今日は私の分まで侑ちゃんが注文してくれている

ネグローニ、ジンライム、XYZ、テキーラサンライズ…

132: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 21:50:06.66 ID:1uElq8Wk
お酒がまわっちゃってるのか侑ちゃんは私への褒め言葉もまわる

侑「歩夢のことを最初に可愛いって思ったのは私なんだからね」

侑「最後に歩夢を可愛いって思うのも私なんだから」

侑「マスター、彼女にコープスリバイバーを」

…その意味は知ってるよ

それを直接私に言う勇気がないってことも

133: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 21:53:06.89 ID:1uElq8Wk
いや、勇気がないというよりか言うのが気恥ずかしいんだろうね

こんな告白みたいな事を今みたいな関係になってから改めて口にするのが

歩夢「ふふっ、マスター」

歩夢「この娘にもコープスリバイバーを」

侑「?」

歩夢「私も同じ気持ちだよ、侑ちゃん」

侑「えっ…歩夢…?」

歩夢「いつまでも、一緒にいたいんだ」

歩夢「もちろんこの人生の後も」

歩夢「嬉しいな。侑ちゃんも私と同じ気持ちだったなんて」

134: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 21:55:57.82 ID:1uElq8Wk
侑「…もしかして知ってた?」

歩夢「今日の最初からね」

侑「…ええっ!?」 

歩夢「私だって初デートで失敗しちゃってから色々勉強したんだよ?」

歩夢「カクテル言葉ってオシャレだよね」

侑「…」

歩夢「熱い告白ありがとう///」

侑「///」

侑「いっ、言わないつもりだったのにぃ…///」

侑「自己満足のつもりが…バレてたなんて///」

135: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:00:49.96 ID:1uElq8Wk
歩夢「ふふっ」

その侑ちゃんの姿に背中を押される

本当は初デートで行ったあの場所で伝えたかったんだけど…

私の気持ちはもう止まれそうにないや

鞄の中の"それ"に触れて私は意を決した

歩夢「ねえ、侑ちゃん」

歩夢「私達が付き合う時の告白って侑ちゃんからしてくれたよね?」

侑「そうだよぉ~。あの日私を選んでくれてすごく嬉しかった〜」

侑「今でも辛い時はあの日を思い出して頑張ってるんだから~」

侑「今更それを確認するなんてどうかしたの?」

歩夢「うん」

歩夢「あのね、侑ちゃん」

歩夢「今度は私から言わせて」

深呼吸しながら私は侑ちゃんの眼を見つめる

侑「どうしたのさ、改まって」

そう言いながらも、何か感じ取ったのか彼女も表情と姿勢を正す

137: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:05:31.18 ID:1uElq8Wk
歩夢「何度も言うけど私は侑ちゃんが好き」

歩夢「愛してるの、心の底から」

歩夢「幼馴染としても、恋人としても」

歩夢「貴方の為に生きたい」 

歩夢「私の為に生きて欲しい」

歩夢「未来に続く道を一緒に歩みたい!」

歩夢「侑ちゃん」

歩夢「私の人生全部あげる」

歩夢「だからね、侑ちゃんの人生を半分貰ってもいいかな?」

歩夢「どんな時もずっと一緒にいたいの」

歩夢「長々と語ったけどこの想いは言葉じゃ伝えきれないから一言で言うね」

139: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:10:34.80 ID:1uElq8Wk
歩夢「結婚しよう、侑ちゃん」

それはするりと喉を通って出てきた

緊張も
恥ずかしさも
不安も無い

自分でも驚いちゃうくらい心が澄み切っていた

指輪を出しながら跪き、愛する人の目を見据えて真っ直ぐに想いを伝える

141: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:18:18.44 ID:1uElq8Wk
侑「喜んでっ!」

食い気味に帰ってきた返事もまた同じ

侑「半分なんかじゃないよ!」

侑「私も全部の人生歩夢にあげるっ!」

勢いよく抱きしめてくれる侑ちゃんを包み込むように受け入れる

どうしてだろう?嬉しいのに視界が歪むのは

どうしてだろう?室内なのに私の首筋に温かな雨粒が当たるのは

雨が止むまで暫く抱擁した後、私は愛妻の前で跪く

歩夢「ねえ、侑ちゃん…指を出して?」

侑ちゃんの薬指に指輪を嵌めながら

目が合うと二人ではにかんで微笑み合う

初デートの約束を守ってくれたね

って

142: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2021/12/05(日) 22:23:18.15 ID:1uElq8Wk
おまけ

結婚式の準備を進める中、私はふと思い出した

歩夢「そうだ侑ちゃん」

侑「どうかしたの?歩夢」

歩夢「果林先輩の香典は無しでお願いできる?」

果林先輩、私達の結婚式のために帰国してくれるみたいだからね

あの日の約束は守らなきゃ

最近電話したら

果林『簡単なことだったのよ…私が圧倒的なテクニックを身に付けて攻めに転じれば良かったの!』

なんて凄いハイテンションで言ってて元気そうだった。早く会いたいなぁ

侑「香典?御祝儀じゃなくて?」

歩夢「…えぇっ!?」

侑「結婚式だと御祝儀」

侑「香典じゃお葬式だよ?」

歩夢「そうなの!?」

侑「そうだよ」

侑「ほらっ」 

侑ちゃんの差し出してくれたスマホを見て私の勘違いを悟る

えええ…ウソ

私と果林先輩の2人とも感違いしてたって事!?

歩夢「うぅっ///」

侑「あはは、歩夢にしては珍しい勘違いだね」

歩夢「忘れてぇ…」

侑「忘れないよ。歩夢のことは何もね」

侑「だって歩夢の全てが好きだから」

侑「これまでも、勿論これからも」

デート編end
この後は前スレ469へ

引用元: 歩夢「KILL THE FIGHT」ss2