1: ◆1x09ynSyQU 2013/01/05(土) 22:51:28.82 ID:fl66Amia0


―――弓道場


ビューティ「話とは何ですか、ジョーカー」

ジョーカー「恐い顔ですねぇ。今日は戦いに来たんじゃありませんから、変身する必要はありませんよ?」

ビューティ「私がその言葉を信用できると思いますか?」

ジョーカー「フフ…。ならいいでしょう。そのままで聞いて下さってかまいませんよ」

ジョーカー「実は昨日、アカオーニさんが角を片方折られて帰って来たんです」

ビューティ「それは…。一体どうして…?」

ジョーカー「彼には人間界の偵察に出てもらっていたんですが、どうやら出先で襲われたようなんです」

ビューティ「あのアカオーニが、襲われた…?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1357393888

2: ◆1x09ynSyQU 2013/01/05(土) 23:00:43.61 ID:fl66Amia0

ジョーカー「ワタシは最初、てっきりプリキュアの皆さんにやられたんだと思ってたんですがねぇ」

ビューティ「ですが、そのような話は聞いていません。昨日は誰もプリキュアになっていないはずです」

ジョーカー「ええ。アカオーニさんが違うって言い張るので少し調べてみたんですよ。そしたら…こんなものが出てきたんです」

ビューティ「何ですかこれは…? 白い、かけら…?」

ジョーカー「これは過去にピエーロ様の命で試作した、アカンベエのシロッパナ。その破片です」

ビューティ「アカンベエが、どうしてアカオーニさんを襲ったりするんですか?」

ジョーカー「失敗作だからですよ」

3: ◆1x09ynSyQU 2013/01/05(土) 23:06:43.28 ID:fl66Amia0

ビューティ「失敗作…」

ジョーカー「兵器とは、敵に厳しく、自分に無害でなければなりません」

ジョーカー「ですからあれは失敗作です。一度物体に憑依したが最後、エネルギーを全て破壊活動に費やすまで、止まりません」

ビューティ「そのようなものが、どうして人間界にあるのですか?」

ジョーカー「ワタシに訊かれても困りますねぇ…」

ビューティ「…」

ジョーカー「やだなぁ。見つめないで下さいよ。その視線、誘ってるんですかぁ?」

4: ◆1x09ynSyQU 2013/01/05(土) 23:08:24.77 ID:fl66Amia0

ビューティ「帰りますよ?」

ジョーカー「怒ったんですか? 可愛いですねぇ…」

ビューティ「……、それで、どうしてその話を私に?」

ジョーカー「シロッパナを止めるには、ビューティさんの力が必要なんです」

ビューティ「ふぅん。そうなのですか」

ジョーカー「おや。今度は疑わないんですか?」ニヤニヤ

ビューティ「ジョーカーさん、本当に協力してほしいんですか?」

ビューティ「人に頼み事をする時は、誠意を見せるのが筋…いいえ、道理…いいえ、道ではないのですか?」

ジョーカー「頼み事なんてワタシは一度も言っていませんよぉ?」

ジョーカー「でも」

ジョーカー「いいんですかぁ?」

5: ◆1x09ynSyQU 2013/01/05(土) 23:10:41.63 ID:fl66Amia0

ビューティ「な、何がです…」

ジョーカー「プリキュアであるアナタが、あんなに危ないシロッパナを放って置いていいんですか、と言ったんですよ」

ジョーカー「アカオーニさんと偶然にもぶつかってしまいエネルギーを消耗したのか、まだ動けずに人里へは出ていないようですが」

ジョーカー「いつまた動き出すかもわかりません。そうなれば、どれだけの被害が出るかわかりませんよぉ…」

ジョーカー「そんなものを、放っておいていいんですかぁ? 正義の戦士である、プリキュアのアナタは」

6: ◆1x09ynSyQU 2013/01/05(土) 23:49:49.98 ID:fl66Amia0

ビューティ「それは……」

ジョーカー「そしてワタシ達にとっても、バッドエンド空間の外で暴れているアカンベエなんて邪魔でしかありません。バッドエナジーの苗床が減るのはいただけませんからねぇ」

ビューティ「人間の事を…そんな風に言わないで下さい!」

ジョーカー「だからぁ、一々怒らないで下さいよ、ビューティさん」

ジョーカー「ワタシとアナタの利害は一致していると思いますが、違いますか?」

ビューティ「くっ…」

ビューティ「確かに、そのようですね…」

ビューティ「色々と思うところはありますが、今はその暴走したアカンベェを倒すことを優先すべきです」

7: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 09:57:28.02 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「やっとわかってもらえましたか!」

ビューティ「…そのシロッパナは、何に取り憑いたのですか?」

ジョーカー「ウフフ…。それは見てのお楽しみにしようと思っていたんですけど、洒落にならないのでお伝えしておきますね」

ビューティ「…」ゴクリ

ジョーカー「一〇式戦車です」

ビューティ「…………はい?」

ジョーカー「おや? 知りませんか? 陸自の最新式戦車ですよ?」

8: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 10:46:02.23 ID:qbBGW6D60

ビューティ「すいません。軍事には疎いのですが…、それは、どのようなものなのですか?」

ジョーカー「ふぅむ」

ジョーカー「一言で言って、変 ですね」

ビューティ「……へん  ? 編隊を組んでいるのですか?」

ジョーカー「そのヘンタイではありませんよ。通学路に出没する方のヘンタイです。ご覧になったことはありませんか?」

ビューティ「あ、ありませんよ…///」カァァァ・・・

ジョーカー「そうですか。つまり変 という言葉はご存じなんですね?」ニヤニヤ

ビューティ「…その言葉についての説明はもはや無用です。その戦車について教えて下さい」

ジョーカー「ですから変 なんです。変 性能、変 戦車とでも言い換えましょうか」

ジョーカー「実際に見ていただいた方が早いでしょう」

ジョーカーテレビ
http://www.youtube.com/watch?v=KdVK4iceZ1w


9: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 10:48:17.44 ID:qbBGW6D60

ビューティ「これは…、気持ち悪いですね」

ジョーカー「気持ち悪いでしょう?」

ビューティ「ぬるぬる動きつつも狙いを外しはしない…。見習いたくはないですが、これもまた見事な道です」

ジョーカー「感心してどうするんですか、これに憑依してしまったシロッパナを倒さないといけないんですよ?」

ビューティ「何か対抗策はあるのですか?」

ジョーカー「ええ。ワタシ一人では流石にどうしようもないので、こうしてビューティさんに話を持ってきたのですよ」

ジョーカー「アナタ、擬似的に絶対零度を作り出せますよね?」

ビューティ「できますが…」

10: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 10:49:35.00 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「一〇式戦車の主砲である一二〇ミリ滑空砲の砲弾は、薬莢式です。薬莢の中に詰められた炸薬が爆発するエネルギーで、弾頭を正面に発射するんですね」

ビューティ「ふむ…。勉強になります」

ジョーカー「炸薬とはつまり火薬のことです。要するに、この火薬の燃焼を妨げれば」

ビューティ「弾頭を発射させないようにできる、という事ですね」

ジョーカー「ご名答♪」

ビューティ「上手くいくでしょうか?」

ジョーカー「大丈夫ですよ。ワタシを信じて下さい」

ビューティ「…」

ビューティ「もう一回言ってもらってもかまいませんか?」

ジョーカー「いいですよぉ。――ワタシを信じて下さい」

ビューティ「……ちょっと、目眩が…」クラリ

ジョーカー「基本的にワタシ、正直者なんですけどねぇ」ヒヒヒ

11: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 10:50:43.29 ID:qbBGW6D60



―――陸上自衛隊東富士演習場


ビューティ「どこか荒涼とした場所ですね…」

ジョーカー「そうですか? バッドエンド王国にあれば観光地になるくらい素晴らしい風景だと思いますが」ククク

ビューティ「アカンベェはどこですか?」

ジョーカー「アレです。…おやおや、もう動きはじめていますね」

アカンベェ「アカァァァ…」キュララララ・・・

ビューティ「早く止めないと…!」

ジョーカー「その前に打ち合わせをしましょう。ビューティさんがこっそり近づいて冷却。撃てなくなったところでワタシが正面からコアを攻撃。それでかまいませんね?」

ビューティ「はい。では行きます!」ビュン

ジョーカー「元気ですねぇ…」

12: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 10:51:48.98 ID:qbBGW6D60

アカンベェ「アカァァァ…」キュララララ・・・

ビューティ(大きい…! 普通乗用車の倍以上あります…!)

アカンベェ「アカァァァ…」キュララララ・・・

ビューティ(主砲のある正面からでは気付かれる。背後から近づいて、全体を一気に冷やすしかありません…!)

アカンベェ「アカァァァ…」キュララララ・・・

ビューティ「……」コッソリ

ビューティ「…ビューティブリザード!」ゴォォォォ!!!

アカンベェ「アッカ!?」パキパキパキ・・・!!

ジョーカー「あれ、これワタシが出る必要なくありませんか?」

13: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 10:53:19.67 ID:qbBGW6D60

ビューティ「いいえ! このシロッパナ、ビューティブリザードに耐えています! 砲弾は冷やしていますから、畳みかけて下さい!」

ジョーカー「仕方ありませんねぇ…」

ジョーカー「…失敗作に生まれた不幸と、ワタシを呪いなさい」ジョーカーソード!!!

アカンベェ「アッカンベェ!!?」ドゥゥン!!

モクモク

ビューティ「すごい煙です。窒素や二酸化炭素も瞬間的に固体化させていたせいでしょうか」

ジョーカー「やりましたねぇ。初めての共同作業というやつですか」ククク

14: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 10:54:50.21 ID:qbBGW6D60

ビューティ「……ジョーカー。以前、ピースから聞いたことがあります」

ジョーカー「どうしたんですか神妙な顔しちゃって。もしかしてここでいつぞやの決着も付けますか?」

ビューティ「いえ…、違います」

ビューティ「ピース曰く」


ビューティ「――『こういう時は大抵やっていない』とか」



16: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 10:55:45.20 ID:qbBGW6D60

アカンベェ「アカァァァ!!!」キュララララ!!!

ジョーカー「ほう…。あれでまだ動きますか。失敗作とするには惜しい気もしますね」

ビューティ「…! もう一度、同じ攻撃をかけましょう!」

ジョーカー「待って下さい。砲塔が回転していますよ?」

ビューティ「へ?」

アカンベェ「ハァァァイ!!!」ドォォォン!!!

17: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 10:56:46.58 ID:qbBGW6D60

ビューティ「きゃあっ?!」ビュン!!

ジョーカー「おっと」シュン

ボカァァァァ・・・ン!!!

ビューティ「あ…、あれが、一二〇ミリ滑空砲の威力…?」

ジョーカー「当たったらどんな童話より悲惨な事になりそうですねぇ」

ビューティ「変身しているから防御力も上がっているはず…ですが…あれは……」

ジョーカー「疑問なんですが、あれはもう元の温度に戻っているんですか?」

ビューティ「いえ…。まだ車体はマイナス二〇〇度くらいのはずです」

ジョーカー「まぁ、ある程度気密された車内が急激に冷却されても潰れなかった時点で察していたんですが――どうやら、アレはもう冷やしても無意味なようですね」

ビューティ「そんな…」


18: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:05:11.56 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「アカンベェに通常の物理法則は通用しません。しかし憑依された物体部分に関しては、常にそうとは言い切れないのです」

ジョーカー「しかし今回は…アカンベェに取り憑かれた時点で、車体も砲弾も変異してしまっているようです。あるいはピースさんの技で自動装填装置を壊せるんじゃないかと考えましたが、ビューティさんに冷却されてもあれでは、きっと電撃も効果ありませんね」

ジョーカー「ですから、あくまでも参考までにお教えしますが、プリキュアが五人で挑んだところで、アレは無理だと思いますよ」

ジョーカー「ビューティさんの単体技が効かない以上、可能性があるのはレインボーヒーリングかレインボーバースト、及びロイヤルレインボーバーストですが、タメの長い技であるそれの射程を一〇式は完全にカバーしています。ですから、五人のうちの誰かが確実に刺し違えて被弾します」

ジョーカー「ああいった技は一人でも欠ければ発動できないんでしょう? つまり発動しようとする度に砲撃されてキャンセルされます。手詰まりですねぇ」



19: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:07:16.01 ID:qbBGW6D60

ビューティ「あなた達は…本当に何てものを…」

ジョーカー「ワタシを責めたところで、アレは無くなりませんよぉ?」

ビューティ「く…」

ビューティ「そうですね。言ってもはじまりません」

ビューティ「それで、どうするんですか? 次の策は?」

ジョーカー「次の策? そんなものありません」


20: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:08:13.04 ID:qbBGW6D60

ビューティ「そんな…」

ジョーカー「アレはもう、ワタシの手には負えません」

ジョーカー「よって放置します」

ビューティ「放置って…。そのような無責任がありますか!」

ジョーカー「ありますよぉ…? だって、アレがこの世界に飛ばされてきたのは偶然ですから。こればかりはピエーロ様に誓っても、嘘じゃありませんよぉ?」

ビューティ「ですが、あれは、あなたの世界のものでしょう!」


21: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:10:58.70 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「だから言ってるじゃないですか。弾頭を無効化さえしてくれたら、アレを普通のアカンベェにしてくれたら、あとはワタシがどうにかすると」

ジョーカー「悪いのはアナタ達ですよ? 戦争をやめないから、兵器なんて作り続けるからこういう事になるのです」

ビューティ「アカンベェだって兵器じゃありませんか!」

ジョーカー「あらら、ビューティさんらしくない反論ですねぇ。泥棒は泥棒されても仕方無いんですか? ジョーカーを引くのはいつもワタシの役目ですか? それっておかしくないですかぁ?」

ビューティ「…」

23: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:12:51.21 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「アナタはいいですよねぇ。いつも正しい事しか言わないんですから。それしか言わなくていいんですから」

ジョーカー「ワタシは正しい事なんて言いません。いつだって道を違えます。でもだからこそ。言える台詞もあるんですよぉ…?」ニタニタ

ジョーカー「何度でも言います。ワタシ達は悪くない、悪いのはアナタ達人間なんですよ」

ジョーカー「侵略とか防衛とか、不安とか保安とか、そんな理由で兵器を作り続けるなんて、愚か極まりない」

ジョーカー「だからワタシに責任なんてありませんよ。だってあのシロッパナが手に負えないのは、変 みたいな戦車を造った人間のせいなんですからねぇ」


24: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:14:09.38 ID:qbBGW6D60

ビューティ「ジョーカー…! アナタは…!」

ジョーカー「ビューティ。アナタにとってワタシの言葉は、筋違いで意地悪に聞こえるでしょう」

ジョーカー「ですがワタシは間違っていません」

ジョーカー「筋違いで意地悪かもしれませんが、それでもワタシは間違っていません」


25: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:15:33.05 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「だから、ビューティさん」

ビューティ「何ですか?」

ジョーカー「アナタにだって、逃げる道はあるんですよ?」

ビューティ「ジョーカー…?」

ジョーカー「アナタはまだ若い。この世界に兵器が溢れていたって、政治が腐っていたって、戦争が無くならなくたって、アナタに責任はない」

ビューティ「そのような事はありません…! わたしにだって、できる事はあるはずです…!」


26: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:17:09.49 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「ほらぁ。アナタはそうやってすぐに、何でも背負い込もうとする。正しくあろうとする」

ジョーカー「誰がアナタにそうあってくれと頼んだんですか? 願ったんですか? アナタが勝手に周囲の期待を曲解しているだけなんじゃないんですかぁ?」

ジョーカー「大事なのは程度なんですよ。アナタが生徒会に立候補すれば歓迎されるでしょうが、何か憲法訴訟でも起こして不公平な法律を変えようとか言い出せば、周囲はきっと迷惑に思いますよぉ。それがいかに正しい事でも、です」

ジョーカー「そういう社会を作ったのは今までの大人達で、そういう社会を維持しているのはアナタの親達なんです」

ジョーカー「だからアナタは子供としてこの世界に何の責任もない。大人になってから気にすればいいんですよ」

ジョーカー「ですから、子供であるアナタは逃げてもいいんです。中学生が世界の為にとか、そういうの気持ち悪いですよ正直」


27: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:18:11.77 ID:qbBGW6D60


ビューティ「わたしは………」

ジョーカー「…」ニヤニヤニヤニヤ

ビューティ「わたしは………」グッ・・・

ジョーカー「―――――――おや、逃げるんですかぁ?」


28: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:19:33.99 ID:qbBGW6D60

ビューティ「えっ…?」

ジョーカー「こんなに危ないものを放置するなんて、それは絶対に正しい事じゃありませんよねぇ?」

ビューティ「あなた、さっきと言っている事が…」

ジョーカー「沢山の人が傷つきますよ?」

ジョーカー「新たな悲劇が生まれますよ?」

ジョーカー「あったかもしれない幸せな可能性が、潰えてしまうんですよ?」

ジョーカー「愛とか、正義とか、希望とか、そういう下らないものを守るのが『プリキュア』じゃないんですか?」

ビューティ「な……っ」

ビューティ「ジョーカー…。あなたは…、本当に……本当に…!」


30: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:21:51.68 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「いいですよぉ。ワタシは何一つ困りませんからねぇ」ニヤニヤ

ジョーカー「そうだ、折角だから帰りも送って差し上げますね」

ジョーカー「アナタは何も気にせずに、あの街に、いつもの日々に戻ればいいんですよ」

ジョーカー「破壊活動には大量のエネルギーが必要ですからねぇ。放っておけば、数日で消耗しきって勝手に自滅します」

ジョーカー「だからご心配なく。アナタの街が、アナタのご家族が、アナタのご友人が、アレに蹂躙される事はありえません」

ジョーカー「プリキュアであるアナタは、ワタシ達バッドエンド王国だけ相手していればいいんです」


31: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:22:28.59 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「妖精により与えられた使命はそれしかなく、ここで闘う事に関しては賞賛も報償も何一つ無いのだから」

ジョーカー「集められないのが残念ですが、悲劇は拡散して、きっと沢山のバッドエナジーが生じるんでしょうねぇ…」

ジョーカー「でも、キュアビューティさん。アナタには関係無い事ですから、気にしないで下さいね」

ジョーカー「今日はどうも、無駄足踏ませてすみませんねぇ」ニヤニヤ

ジョーカー「それではこれで、お疲れ様でしたぁ」ウヒャヒャ


32: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:23:28.60 ID:qbBGW6D60

ビューティ「――――――ってません…」

ジョーカー「はいぃ? 何か言いましたか?」

ビューティ「言ってません…!」

ビューティ「あれを見過ごして帰るなんて…!」


ビューティ「わたしは一言も、言ってません!!!」


33: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:24:46.23 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「アッハハハァ!!! ウヒャヒャァ!!! ホントに…ホントに、アナタという人は、楽しませてくれます…!!!」ゲラゲラヒーヒー

ビューティ「ジョーカー。今日はいい勉強になりました」

ビューティ「わたしとあなたの道は違う」

ビューティ「敵同士、手を取り合う事など最初から叶わぬ空論だったのでしょう」

ジョーカー「ですよねぇ! 実はワタシも、結構最初からそう思ってたんですよ!」

ビューティ「…帰りは新幹線で帰ります」

ビューティ「ですから、お帰りならばどうぞお先にお一人で」

34: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:25:33.42 ID:qbBGW6D60


ビューティ「―――参ります!」ビュンッ!!!


ジョーカー「あーあ、何て楽しいんでしょう」

ジョーカー「ま、精々頑張って下さい」シュン

ビューティ「ハァァァァァ!!」ガキィィィ!!

アカンベェ「アッカァァァ!!」バキィィィ!!



35: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:30:20.06 ID:qbBGW6D60


―――バッドエンド王国

ジョーカー「やはりまだ中学生。お馬鹿さんですねぇ」

ジョーカー「これでプリキュアが一人減る。思わぬ収穫です…」

ジョーカー「嬉しいですねぇ…!」

ジョーカー「そうだ! 折角だから録画しましょう! キュアビューティ敗北の瞬間を…!」

ジョーカーテレビ<ダンドウダッテミチナラバ!!!

ジョーカー「こんな時まで道、道、道ですか。やはりちょっと気持ち悪いですね」


36: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:31:51.70 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「あらぁ~。ビューティなんて名乗っておきながら、無様ですねぇ。何て美しくない戦いでしょう」

ジョーカー「こんなもの、見るだけ無駄ですねぇ…」

ジョーカーテレビ<クッ・・・!! スラロームシナガラ!?!?

ジョーカー「…」

ジョーカーテレビ<アッ?! ウグ・・・ック、マダ、ニンゲンノアバラハマダジュッポンイジョウアルノデス・・・!!!


37: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:33:02.95 ID:qbBGW6D60


ジョーカー「あー…」

ジョーカー「これは大きな、誤算ですねぇ…」

ジョーカーテレビ<クライナサイ! ビューテ(プツン)

ジョーカー「…」

ウルフルン「ジョーカー? こんなトコで何してんだ?」

ジョーカー「…」シュン!

ウルフルン「シカトかよ……。にしても、何だってんだ?」

ウルフルン「目なんか光らせて、おっかねぇったらありゃしねぇ」

ウルフルン「さしずめ、プリキュアでもぶっ潰しに行ったってトコだろうな」


38: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:33:45.38 ID:qbBGW6D60


―――陸上自衛隊東富士演習場


ビューティ「ハァ…ハァ…ハァ…!」

ビューティ(強くて…速い…!)

ビューティ(変身しているとは言え、一二〇ミリを何度も頂くと流石にきついですね…!)

アカンベェ「アッカンベェェェ………!」

ビューティ「行かせませんよ。ここから先には、行かせません」パキーン!

アカンベェ「アッカンベァァ!!!」バキーン!!

ビューティ(くっ…。足止めもできないなんて…!)


39: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:34:53.74 ID:qbBGW6D60

アカンベェ「ハァァァイ!!!」ドォォォン!!!

ビューティ「ビューティブリザードアロー!!!」バッシュゥゥゥ!!!

ガキィィィィィィィン!!!!!!!

ビューティ「……っ!」

ビューティ(全力でも、逸らすのがやっと…)

ビューティ(もう、手がありません…!)

ビューティ(ここまでなんて…そんな…!)


40: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:35:29.43 ID:qbBGW6D60

ビューティ(これでは、ジョーカーの舌先三寸の罠に嵌ったのと同じではありませんか…!)

ビューティ「……っ」グラッ

ビューティ(いいえ、それは違うのでしょう)

ビューティ(この道は、わたしが決めたわたしの道です)

ビューティ(……逃げ道だって、あったのに)


41: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:39:16.02 ID:qbBGW6D60

ビューティ(彼は嘘など言わなかった。正しい道も、正しくない道も示した上で、わたしに決めさせた)

ビューティ(彼は、残酷で)

ビューティ(そして、正しい…)

ビューティ「悔しい…」

アカンベェ「アッカァ…?」

42: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:41:49.75 ID:qbBGW6D60


ビューティ「この道は…」

ビューティ「この道は、正しいはずなのに。間違っていないのに。どうして道半ばで倒れなければならないのですか…!」

ビューティ「道とは明日へ続くからこそ道なのです! ここで途切れていい道理なんてありません!」

ビューティ「…ここでわたしが負けるなんて、そのような…」

ビューティ「そのような道は、間違っています!」

ビューティ「間違っています!!!」

43: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:42:51.52 ID:qbBGW6D60

アカンベェ「ハァァァイ!!!」ドォォォン!!!

ビューティ(しまっ…避けな―――)

ジョゥン!!

ビューティ「…っ……?」

ビューティ(この巨大なカードは…。まさか…!?)


ジョーカー「あーあーもぅ。熱くなっちゃってまぁ。ご自慢の氷が溶けてしまいますよぉ?」


44: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:44:43.61 ID:qbBGW6D60

ビューティ「また…茶化しに来たんですか…」

ジョーカー「お礼くらい言って欲しいですねぇ。お父さんお母さんにそう習いませんでしたか?」

ビューティ「…」

ビューティ「……今は立て込んでいるので、あれを倒してからにしてもらえますか?」

ジョーカー「そうですかぁ」ニタニタ


45: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:46:58.67 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「実はワタシ、ちょっとした策を思いついたので、それをお伝えしに来たんです」

ビューティ「…教えてもらえますか?」

ジョーカー(やけに素直ですねぇ…? もしや罠? 周囲に他のプリキュアでも潜んでいるんでしょうか)

ビューティ(やけに親切ですね…? もしかして罠? 周りで三幹部が隠れているのかもしれません)

ビューティ「それで、どのような策なのですか?」

46: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:53:54.11 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「ビューティさん。アローはまだ出せますか?」

ビューティ「はい、あと一射ならどうにか」

ジョーカー「砲口がこちらを向いている時に、その砲身にアローを叩き込むんです。ワタシの盾さえ砕いた貫通力ですから、変異した弾頭とは言え起爆させる事ができるでしょう」

ビューティ「危ない策ですね」

ジョーカー「はい。危ない策です。しかしこれしか思いつきませんでした」ヤレヤレ



47: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:54:42.89 ID:qbBGW6D60


ビューティ「砲口がこちらを向いた瞬間に一〇式は弾頭を発射するでしょう。アローにはタメが要りますから、先んじて放つ事はできません。よくても途中で弾頭と矢がぶつかってしまいます」

ビューティ「砲弾と正面衝突すれば、ただでさえアローの威力が削がれる上に、とんでもない方向へ逸れてしまいます。それでは意味がありません」

ビューティ「それに、最悪の場合、アローを放つ前に弾頭がわたしに当たるかもしれません。避ける自信はもうないです」

ジョーカー「そんな事はわかってますよぉ。策を伝えるだけなら手紙でも書きます。こうしてワタシが出てきたって事がどういう事か、わかりませんかぁ?」ピッ

ビューティ「これは、先程と同じカード…」


48: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:55:37.72 ID:qbBGW6D60


ジョーカー「これで一〇式の砲弾を吸収します。つまり一瞬だけ盾になるわけですね」

ジョーカー「そしてビューティさんの準備が整い次第、射線から外れますから、砲口にアローをお願いします」

ビューティ「最初の策よりも不確かな気がします。成功する気がしません」

ジョーカー「酷い言い様ですねぇ。ワタシなんて盾になるんですよ? しかも背中にビューティブリザードアローを突き付けられた状態で」


49: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:56:17.56 ID:qbBGW6D60


ビューティ「そもそもあなたが大人しく盾になってくれるのを、信じろと?」


ジョーカー「信じて頂かなくても結構です。ワタシが勝手に背中を預けるだけですから、裏切りたければご自由にどうぞ」スタッ



50: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:57:32.94 ID:qbBGW6D60

ビューティ「…ジョーカー」

ジョーカー「何ですか?」

ビューティ「何故、戻ってきたのですか?」

ビューティ「あなた曰く…いえ、あなたにとっては、あれを退治する謂われも無く、わたしを助ける理由もありません」

ビューティ「よって…、あなたの行動は、間違っています」


51: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:58:29.06 ID:qbBGW6D60


ジョーカー「おやおや…」ククク

ジョーカー「アナタが言ったんでしょう? ワタシ、アナタとは違うんです」

ジョーカー「だからワタシは、いつだって間違えるんですよ」ククク



52: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 11:59:24.76 ID:qbBGW6D60


ビューティ「……ふふっ」



53: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 12:00:34.69 ID:qbBGW6D60



ビューティ「呉越同舟もまた一つの道、ですか」



ジョーカー「ぞっとしない話ですねぇ」




キュラララララ・・・・・・・・・!!!!!

54: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 12:01:17.86 ID:qbBGW6D60


アカンベェ「アッカンベェァ!!」

ジョーカー「来ますよ、ビューティさん!」

ビューティ「はい!」

アカンベェ「ハァァァイ!!!」ドォォォン!!!

55: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 12:02:09.10 ID:qbBGW6D60


ジョーカー「」ジョゥン!!

ジョーカー「ビューティ! 今です!」シュン!!

ビューティ「っ!」

ビューティ(道が、空いた…!)

ビューティ「ビューティ!」ゴォォォォ!!!

ビューティ「ブリザード!!」ビュォォォ!!!

ビューティ「アロー!!!」バッシュゥゥゥ!!!

アカンベェ「アカッ?」コンッ

アカンベェ「アガアアアアアア!?!?」ズドォォォォォォォン!!!!!!


56: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 12:03:07.71 ID:qbBGW6D60


ビューティ「ハァ…ッ、ハァ…ッ…!」

ジョーカー「そう言えば、あれって七億円くらいするんですよねぇ」

ビューティ「勝った…のですか?」

ジョーカー「ええ。今度こそ、間違い無く」

ビューティ「よかった…」ヘタァ

ジョーカー「おっとっと」ガシッ


57: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 12:04:18.46 ID:qbBGW6D60


ビューティ「…は、放して下さいっ…///」ヨロッ

ジョーカー「アナタ、思ってる以上にボロボロですよ?」ククク

ビューティ「…絶好のチャンスではないのですか?」ジロリ

ジョーカー「何がですか?」ニヤニヤ

ビューティ「……」

ビューティ「……もぅ…」


58: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 12:05:37.70 ID:qbBGW6D60


ジョーカー「帰りはどうするんです? 送って差し上げますよ」

ビューティ「敵の情けは…」

ジョーカー「新幹線のチケット、取ってあるんですか?」ニタニタ

ビューティ「…。送って下さい。病院まで」

ジョーカー「それよりも、折角ですから富士山でも見物に行くのはどうですか? ワタシとなら山頂までひとっ飛びですよ?」


59: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 12:06:25.83 ID:qbBGW6D60


ビューティ「あの……わたし、肋骨が折れているんですけど」ズキズキ

ジョーカー「あれぇ? 知らないんですか?」

ジョーカー「プリキュアの姿で二、三時間過ごせば、骨折ぐらい簡単に治りますよ」

ビューティ「………本当ですか?」

ジョーカー「ええ、快復力も上がっていますから」


60: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 12:09:12.96 ID:qbBGW6D60


ビューティ「それなら…、怪我だらけで帰るわけにもいきませんし…暇つぶしに、行ってもいいですよ?」チラッ

ジョーカー「そうですか。なら行きましょう」アラヨット

ビューティ「ひゃっ…」

ビューティ「…あ、あのっ!」

ジョーカー「何ですか?」

ビューティ「お、お姫様抱っこはやめて下さい…! 降ろして下さい!」ジタバタ

ジョーカー「暴れないで下さい。こうでもしないと、空中で安全に支えられないじゃないですか」ヒュッ!

ビューティ「そ、そうですか…」

ジョーカー「…」ニタニタ

61: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 12:10:22.17 ID:qbBGW6D60


ビューティ「飛んでますね…わたし達…。何か、新鮮な気持ちです」

ジョーカー「あれれ? 蝶々デコルでも同じ事ができるんじゃないですか? 使ったこと無いんですか?」

ビューティ「ありますが…あれは戦闘中で、制御するのも自分でしたし…何と言うか、今のこれはフワフワして…少し、楽しいです」

ジョーカー「そうですか。フワフワもいいですけど、危ないのでもうちょっとしっかり掴まって下さいね」

ビューティ「…」ギュッ

ジョーカー「…」ニヤニヤ


62: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 12:11:13.67 ID:qbBGW6D60


ビューティ「あの、ジョーカーさん」

ジョーカー「何ですか?」

ビューティ「助けに来て頂いて、ありがとうございます」

ビューティ「その…ちゃんとお礼を言っていなかったので」

63: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 12:12:01.90 ID:qbBGW6D60


ジョーカー「そう言えば保留されていましたねぇ」

ジョーカー「どういたしまして、ビューティさん」

ビューティ「いえ…」

ジョーカー「…」

ビューティ「…///」

64: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 12:58:24.57 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「と言っても、別に助けに来たわけじゃないんですけどねぇ」

ビューティ「またそんな…」

ジョーカー「いえいえ。ホントですよ? ピエーロ様の従順なしもべであるワタシが、プリキュアの為に行動するわけないじゃないですか」

ジョーカー「ワタシはただ、ビューティさんが正義に殉じるという、ありきたりな結末が気に食わなかっただけなんです」

ビューティ「…そのような結末は、正しくありません。間違っています」

65: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 12:59:15.79 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「そうですかぁ? ハッピーエンドが絶対に正しいのは絵本の中くらいだと、アナタも知っているでしょう? 現実には正しいも悪いも無く、あるのは灰色の因果関係だけなんです」

ジョーカー「いくら正しくてもねじ伏せられ、いくら悪くても世に憚る。それがアナタ達の社会でしょう?」

ジョーカー「だからワタシは気紛れに、その因果関係を破壊してみたくなっただけです。倒されるはずだったアナタを勝たせる事でね」ククク

ジョーカー「わかって頂けましたか? ワタシがこれっぽっちも、アナタを助けたいなんて思っていなかった事を」


66: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 12:59:53.85 ID:qbBGW6D60

ビューティ「…」ハァ・・・

ビューティ「ええ、よくわかりました」

ビューティ「そして結果的に、今回の勝負は、ジョーカーさん、あなたの勝ちです」

ジョーカー「おや? いつワタシがアナタと勝負していたんです?」

ビューティ「あなたに呼び出された時から、わたしの頭の中にはあなたを倒す事しかありませんでした」


67: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 13:00:52.92 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「やっぱりアナタは面白い。恐いくらいです」ヒヒヒ

ビューティ「話を聞いていた時も、アカンベェと闘っていた時も、アナタが戻ってきた時も、隙あらば…と狙っていたのですが、アナタには隙が無かった」

ジョーカー「特に警戒していたわけじゃないんですけどねぇ」

ビューティ「なのにあなたは、いきなりわたしに背中を見せた」

ビューティ「わたしは負けを確信しました。何故ならわたしには、助けに来てくれた人を背中から射る事など、できなかったから」

68: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 13:01:51.55 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「おややぁ? ではワタシ、知らないうちに勝っていたんですか?」

ビューティ「そういう事になります。わたしはあなたが逃げた時に、棄権されたと思いました」

ビューティ「ですがあなたは帰って来た。助けに来てくれたなんて、わたしは少しも思いませんでした」

ビューティ「あなたは勝負の為に帰って来た、勝ちに来ただけなのです」

ビューティ「ですから、ジョーカーさん」



ビューティ「そういう事に、しておきましょう」ニコッ

69: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 13:02:51.05 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「……ククッ」

ジョーカー「…ずるいですねぇ、ビューティさん」ククク

ビューティ「あなたに言われたくありません」フフフ

ジョーカー「……。…ビューティさん」

ビューティ「何ですか?」

70: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 13:03:54.96 ID:qbBGW6D60

ジョーカー「勝負に勝って、今、ワタシは機嫌がとてもいいんです」

ジョーカー「なのでアナタに一つだけ、大事な事を教えてあげましょう」

71: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 13:04:30.44 ID:qbBGW6D60

ビューティ「大事な事…?」

ジョーカー「実はワタシ、一つだけ嘘を吐いていたんですよ」

ビューティ「へぇ…。どれの事かわかりかねますが」

ジョーカー「あのですね…」

ジョーカー「その姿でいる時のアナタなら…」

72: ◆1x09ynSyQU 2013/01/06(日) 13:05:14.04 ID:qbBGW6D60



ジョーカー「数時間で骨折が治るというのは。嘘です」イヒヒ



ビューティ「」

ジョーカー「怒りました?」

ビューティ「…」

ジョーカー「ビューティさん?」

ビューティ「……早く」

ジョーカー「はい?」


ビューティ「早く病院に連れて行って下さいっ!!」ズキズキ





END

引用元: ビューティ「呉越同舟もまた一つの道、ですか」ジョーカー「ぞっとしない話ですねぇ」