1: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 21:32:54.10 ID:AqiB1pat
恋「え、し、しかしあそこは──」

サヤ「お金は私のポケットマネーから出しますので恋様はご心配なさらず」

恋「いえ、そうではなくてですね……」

サヤ「雨に濡れてしまいましたしこのままではお風邪を召してしまいますよ」

サヤ「恋様の体調管理も仕様人の務めです」

サヤ「さあ、入りましょう」

恋「で、ですからサヤさん、話を聞いてください!」

2: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 21:36:29.60 ID:AqiB1pat
──

サヤ「値段の割には広い部屋ですね」

サヤ「大きいベッドがひとつ、ということはダブルルームでしょうか」

恋「あ、あの、サヤさん……」

サヤ「今お風呂の準備をしていますので少々お待ちください」

サヤ「にわか雨みたいですしお風呂に入っている間に止むと思いますし」

サヤ「あ、衣服が濡れているのでルームウェアに着替えた方がいいかもしれませんね」

恋「サヤさんはここがどういうホテルなのかご存知ですか?」

サヤ「? ホテルはホテルじゃないのですか?」

恋「こ、ここはその、いわゆるラブホテルなのです/////」

サヤ「えっ」

3: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 21:40:15.19 ID:AqiB1pat
サヤ「ら、ラブホテルというのは、愛し合う者同士が愛を深め合うというあの?」

恋「はい/////」

サヤ「も、申し訳ありません! 恋様をそんな場所に誘い込む気持ちは全然なくて」アセアセ

恋「わかっています/////」

恋「でも、サヤさんはこういうことに疎いんですね」

サヤ「お恥ずかしながら、ずっと葉月家に仕えてきたもので、そういった知識には疎く……」

恋「わ、わたくしも存在は知っていたのですが入ったのは初めてで/////」

サヤ「/////」

恋「/////」

5: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 21:44:48.86 ID:AqiB1pat
恋「あ、でも、この前かのんさんと千砂都さんがラブホテルから出てきたことがあって」

サヤ「えっ」

恋「いえ、お2人も今のわたくしたちと同じように雨宿りで入ったと言っていました」

恋「なので、案外普通のことなのかもしれませんね」

サヤ「そ、それならよかったです」ホッ

恋「それにしてもすごいですね、カラオケもあるなんて」

サヤ「お風呂も広かったですよ」

サヤ「それこそ2人で入れるくらい──」ハッ

恋「そ、そういう用途なのでしょうね/////」

サヤ「そ、そうですね/////」

6: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 21:49:49.24 ID:AqiB1pat
サヤ「お、お風呂の様子見てきますね!」

恋「はい」

恋(ラブホテルというだけでサヤさんとこんなに気まずくなってしまうなんて……)

恋(意識しなければいいだけの話ではあるのですが……)

サヤ「恋様、お風呂の準備ができましたのでどうぞ」

恋「ありがとうございます」

恋「しかしサヤさんも雨で濡れていますよね?」

サヤ「私はいいのです、まずは恋様が優先で──くしゅん」

恋「くしゃみをしているではないですか、わたくしは大丈夫なのでサヤさんが先に入るべきです!」

サヤ「いえ、恋様が!」

7: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 21:52:58.28 ID:AqiB1pat
──

サヤ「し、失礼します」

恋「は、はい!」

サヤ「恋様と一緒にお風呂に入るのなんていつぶりでしょうか」

恋「わたくしが小さい頃、お母様が家にいない時はサヤさんに入れてもらっていましたね」

サヤ「なんだか懐かしい気持ちです」

恋「ふふ、そうですね」

サヤ「お背中お流ししますね」

恋「い、いえ結構です、自分でできますから!」

サヤ「本日色々とご迷惑をおかけしているお詫びです」

恋「迷惑だなんて、サヤさんがわたくしのことを思って行動してくれた結果なのに……」

8: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 21:56:22.88 ID:AqiB1pat
サヤ「痛くはないですか?」

恋「は、はい、気持ちいいです」

サヤ「恋様もこんなに大きくなったんですね」

サヤ「一緒にお風呂に入っていた頃はあんなに小さかったのに」ゴシゴシ

恋「サヤさんは変わりませんね」

恋「それどころかあの頃より綺麗になっている気がします」

サヤ「ふふ、お世辞でも嬉しいです」

恋「お世辞ではありませんよ」クスクス

9: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 22:00:16.07 ID:AqiB1pat
サヤ「流しますね」

サヤ「お湯、熱くないですか?」

恋「大丈夫です」

サヤ「ふふ、なんだか美容院みたいですね」

サヤ「痒いところはございませんか? なんて」クスクス

恋「では、次はわたくしがサヤさんの背中を流す番ですね」

サヤ「そんな、恋様にそんなことさせるわけには──」

恋「わたくしだってサヤさんには感謝しているのですよ?」

恋「ずっと葉月家に仕えてきてくれたこと、帰ってきてくれたこと」

恋「ですから、今日はそのお礼です!」

サヤ「恋様……!」ホロリ

11: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 22:04:23.45 ID:AqiB1pat
──

恋「いいお湯でしたね」

恋「まさか浴槽が光るとは……」

サヤ「とても綺麗でしたね」ニコッ

恋「……」

サヤ「恋様?」

恋「いえ、ここがラブホテルだというのをつい意識してしまって」

サヤ「あぁ、なるほど……」

サヤ「大丈夫ですよ、手を出したりしませんから」クスクス

恋「……」

13: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 22:08:40.15 ID:AqiB1pat
恋「手を出さないのは、わたくしに魅力がないからですか?」

サヤ「い、いえ、そういうわけではなく──」

恋「わたくしは、サヤさんとなら、そういうことをしても……」

サヤ「っ!」

恋「というより、したいです……/////」

サヤ「いけません、恋様」

サヤ「きっとこの部屋の雰囲気がそう勘違いさせて──」

恋「違います」

恋「わたくしはずっと昔からサヤさんのことが好きです」

恋「だから、つい意識してしまって/////」

15: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 22:14:52.76 ID:AqiB1pat
サヤ「……恋様はとても素敵な方です」

サヤ「とても可憐で、真っ直ぐで、一生懸命で」

サヤ「偶に少し抜けているところもありますが、そこもとても愛らしくて」クスクス

サヤ「……小さな頃から見てきた方にこんな感情を抱くのもおかしな話ですが」

サヤ「私は恋様をお慕いしています」

恋「では!」

サヤ「でも、ダメなのです」

16: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 22:18:08.74 ID:AqiB1pat
サヤ「私はサヤである以前に葉月家仕える使用人」

サヤ「もしそこのお嬢様と恋仲になんてなったら旦那様に合わせる顔がありません」

サヤ「だから、ごめんなさい……」

恋「サヤさん……」

恋「わたくしこそ、深く考えずに変なことを言ってしまって申し訳ありません」

サヤ「いえ、恋様からよく思われていたと知れて嬉しいです」

恋「……わがままを言ってもいいですか?」

サヤ「わがまま?」

17: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 22:22:01.80 ID:AqiB1pat
恋「この場所でだけは、葉月家の使用人でなく、サヤさんでいてくれませんか?」

恋「ここを出たらまた元通りの関係に戻りましょう」

サヤ「……」

恋「すごく酷なことを言っているのはわかっています」

恋「でも、最後に思い出が欲しいんです」

サヤ「……わかりました」

恋「……ありがとうございます」

サヤ「私も、その、経験がまったくないので恋様を満足させてあげられるかはわかりませんが」

恋「ここでは対等な関係なのですから、わたくしも頑張りますね♡」

サヤ「恋様……♡」

18: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 22:26:50.76 ID:AqiB1pat
サヤ「では、失礼して……んっ♡」チュッ

恋「サヤさんの唇、とても柔らかいです♡」

サヤ「これでいいのでしょうか?」

恋「わたくしの知っている感じだともっと舌を絡ませたりとか……」

サヤ「なるほど、こうでしょうか? んちゅっ♡ れろっ♡」

恋「ちゅぷっ♡ サヤさん、とてもいいです♡」

サヤ「恋様♡」

19: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 22:28:57.41 ID:AqiB1pat
──

サヤ「はぁ、はぁ♡ 恋様は博識ですね♡」

恋「あまり誇れることではないですけどね」クスクス

サヤ「……恋様」

恋「なんですか?」

サヤ「私からもわがままを言っていいですか?」

恋「? はい」

サヤ「ここを出たらまた元通りですが──」

サヤ「またここに一緒に来たいです♡」

恋「! もちろんです!」

恋「ここに来たらまた、愛を深めましょうね♡」

サヤ「はい♡」

21: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 22:32:57.36 ID:AqiB1pat
──

サヤ「雨も止んでいるようですし、帰りましょうか」

恋「そうですね」

恋「夢のようなひとときでした」

サヤ「本当に、夢のようでした……♡」

すみれ「だからあんたはムードってものが──」

可可「ショウビジネスの次はムードムードうるさいデス!」

千砂都「かのんちゃん、雨宿りの度ここにくるのやめない?」

かのん「ちぃちゃんだって楽しんでたくせに♡」

千砂都「それはそうだけど……♡」

れんサヤ「あっ」

クゥすみ「あっ」

かのちぃ「あっ」

22: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 22:36:08.70 ID:AqiB1pat
すみれ「こ、こんなところで奇遇ったら、奇遇ね」アセアセ

可可「く、ククたちは雨宿りをしていただけで、別にやましいことなんて──」

すみれ「そんなこと言ったら余計に怪しいでしょ!」

千砂都「あ、あはは、偶然だね、私たちも雨宿りで偶々入ったんだ」

千砂都「ね? かのんちゃん?」

かのん「うん、気持ちよかったよね♡」

チクレサス「!?」

千砂都「ちょ、ちょっとかのんちゃん!」

かのん「お風呂とか大きなベッドとか♡」

すみれ「そ、そういうことったら、そういうことね……」

23: 名無しで叶える物語(ぎょうざ) 2021/12/15(水) 22:39:15.81 ID:AqiB1pat
恋「わ、わたくしたちも、その、買い物をしていたら雨に降られたので雨宿りに──」

恋「以前かのんさんと千砂都さんが雨宿りをしたというので──」アセアセ

サヤ「/////」

すみれ「そ、そうなのね」

千砂都「み、みんな目的は同じだったんだね」

すみれ「そ、それじゃあ私たち帰るから」アセアセ

可可「そ、それではまた明日デス!」アセアセ

かのん「私たちも行こっか、ちぃちゃん♡」ギュッ

千砂都「う、うん。それじゃあ恋ちゃん、また明日学校でね」アセアセ

恋「……」

サヤ「……」

サヤ「最近の高校生は進んでいますね……」

恋「禁断のセカイだらけですね……」

おわり

引用元: 恋「雨が降ってきましたね」サヤ「あのホテルで雨宿りしましょうか」