1: ◆oDLutFYnAI 2010/08/16(月) 15:13:47.39 ID:By5Wa32o
白井「『延長戦』で卑 な想像した殿方はさっさと消えてくださいですの」

番外「選択肢しだいじゃその想像も当たっちゃうけどね」

白井「……!?ワ、ワイルドなお姉さまですの!!」


ここは佐天さんが第四波動を使ったらどうなるのってスレだったんですが、前スレで一応完結したので
今は後日談。なので前スレまで読んでなくても全く問題ないです。

簡単にあらすじを。
佐天さんが一方さんと仲良し。打ち止めと恋敵。
打ち止め「アナタなんかにあの人は渡さない!ってミサカはミサカは包丁でお腹を抉ってみる」
佐天「らすと……おー、だー、ちゃん……?」ガフッ
選択肢でルート分岐するので、最悪こういうパターンも。
国外逃亡するまでには終わらせられる予定。


一応前スレまで。
佐天「第四……波動……か」 

佐天「ストリームディストーション!」

佐天「第四……波動……か」 

佐天「今までありがとうございました―――左天お兄ちゃん」 

佐天「未元物質って知ってます?第五波動ー!」←制作。前スレ

五か月ほど前に衝動的に立てたスレがもはや8スレめ。馬鹿なんじゃないのか。

591: ◆oDLutFYnAI 2010/09/11(土) 15:29:36.58 ID:VNd/TeYo
おいすー。場所としては前々スレの807あたりからですわ。

簡単なあらすじ。

なんやかんやのうちに御坂に「ああそうか、自分は止めて欲しかったのか」と今までの気持ちを折られた佐天。
しかし、御坂の何気ない一言が、そんな佐天をまた元に戻してしまった。
一緒に帰ることは出来ない。そう伝えると、御坂はまた要らぬ一言を。
「佐天さんの救いたいという人に、それだけの価値があるのか」
その言葉に、佐天は一方通行を馬鹿にされたと思い、彼の名を出して怒りをあらわにした。
だがそれがまたいけない。一方通行は御坂にとって絶対に許せぬ輩である。

そんな人間のために、自分達を切り捨てた。
その事実が、御坂にとっては耐え難いものであった。

そして。集束第四波動と超電磁砲の正面対決が始まった。


とまあ、こんな感じで。

592: ◆oDLutFYnAI 2010/09/11(土) 15:30:17.26 ID:VNd/TeYo
放たれてからでは反応出来ない。
音速の三倍の速度に反応するなど、それはもはや人の域を超えている。
だから私に出来ることは、彼女が撃つ直前に私の攻撃を繰り出すこと。

それでようやく互角の速度。
彼女の初動は熱を見れば把握出来る―――そこに問題は無い。


「――――ベクトル操作」

即座に演算を開始する。
熱ベクトル操作―――それ単体では、今の私ではさして強力とは言えない威力。
これだけではアレを打倒することは出来ない。
だが私には、この能力を最大限に使用する能力を持っている―――!

「―――第四、」

右手を彼女の右手を直線状に構える。
狙うはあくまで同時打ち。
正面から制覇しなければ、この戦いには何の意味もない―――!


――――ゆらり、と彼女の右手の周囲が揺らぐ。

――――来る。
      彼女の名を表す、電撃使い最高位の必殺技―――『超電磁砲』。

――――あらゆるものをなぎ倒すその一撃は。

「―――波動ォォォおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」

私の爆炎と重なった。

593: ◆oDLutFYnAI 2010/09/11(土) 15:37:42.50 ID:VNd/TeYo
「――――――」

互いに攻撃を放った姿勢のまま動かない。
しかし、私が生きているということは。
第四波動が奴の必殺の一撃を破ったということに他ならない。

そして。

「……ぁ、ごふっ」

倒れたのは、彼女だった。

「―――勝負あり、ってとこですか。さすがの超電磁砲も、ゲーセンのコインなんかじゃ私の前には塵に等しかったということですね」

もしも彼女が超電磁砲の軌道をズラしていれば、私の第四波動の軌道もまたズレて直撃しなかったかもしれない。
けれど、私の第四波動が彼女の右胸を貫いたということは、超電磁砲もまた私の右胸を貫く軌道をもっていたということ。

「殺す気で撃ってきたんですから、殺されても文句言わないでください―――それじゃあ、これで」

もう彼女に立つ力は残されていない。
肉体へのダメージなど関係なく、そのレベル5としての心はすでに折れた。
私は、膝をついて傷口を抑えている彼女を後にしようとして―――


―――闇の中に、懐かしい二つの顔を見た。

594: ◆oDLutFYnAI 2010/09/11(土) 15:45:23.13 ID:VNd/TeYo
「……誰かと思えば。初春と白井さんですか」

二人とも、私と御坂を見て固まっている。
それはかつての親友を傷つけてなお平然としている私への考察か。
それともレベル5である御坂が私の前で膝をついている事実へか。

―――どうでもいい。

「なにぼんやりしてるんですか―――私を止めたいならかかってくる。御坂を助けたいのなら、早く病院へ運んだほうがいいですよ」

「……佐天さん。あなた、自分が何をしたかわかってますの?」

―――どうでもいい。

「―――つまらないですね、白井さん。そんなありきたりで、見たらわかることを聞くなんて。ジャバウォックもびっくりですよ」

「茶化さないでくださいまし!お姉さまがどれだけ貴女のことを心配していたか―――」

―――本当に、どうでもいい。

「―――助けてくださいなんて頼んでません。ほら、どうするんですか。傷口は焼かれているとはいえ、肺を貫通してるんです。放っておけば死にますけど?」

「……ッ!お姉さま、今すぐ病院に!」

「わた、しより……はやく、さてん、さんを……」

傷口を抑えながら、苦しそうに声を出す。
たいしたものだ。あの傷では、声帯を振るわせることでさえ辛いだろうに。

「ほらほら、白井さんの愛しのお姉さまは私を止めるように言ってますけど?やるんですか?やらないんですか?」

「佐天さんッ……ッ!」

597: ◆oDLutFYnAI 2010/09/11(土) 15:52:11.35 ID:VNd/TeYo
わざと挑発するように言ってやる。

―――ああ、本当にいらいらする。
     あんな風に誰かと慣れ合って。
     こっちは、ずっと一人で戦ってきているというのに。

「……白井、さん。御坂さんを連れて、いってください」

さっきから黙っていた初春が、ようやく口を開いた。
しかしその声は絞り出したようにか細いものだったが、どうでもいい。

「ここは、私がなんとかしますから」

……。
何を言っているんだろうか。
初春ごときに、なんとかできるはずないのに。

「なっ……馬鹿なことを言うんじゃありませんの!お姉さまでさえ破れたのに、貴女がどうこう―――」

「ごちゃごちゃうるさいですよ白井さん……今は、それしかないでしょう。あなたも私の先輩なら、今とるべき最善の行動を選んでください」

「ですがッ……!」

「……大丈夫です。だてに、親友やってませんから」


――――――。


「……わかりましたの。では、あとは任せましたのよ、相棒」

「ええ―――あとは、任せてください」

598: ◆oDLutFYnAI 2010/09/11(土) 16:02:39.64 ID:VNd/TeYo
そして白井と御坂は少しの音を残してその場から消え去った。
残されたのは私と初春のみ。


「……はっ。それで?初春なんかが、私を止めようっていうの?無理だよ、絶対無理。初春なんかじゃ、
    無能力者だったころの私ですら止められるわけないじゃない。それに、随分辛そうな顔だけど?」

暗闇の中にうかぶ初春の表情は、どこか苦悶に歪んでいた。
顔もすこしばかり赤いし、額には汗もかいている。風邪でもいいたのだろうか。

けれど。
顔を伏せて、少し深呼吸して、また顔をあげたその時。
彼女の表情は、それまでのものとは違い、凛として無表情なものへと変わっていた。

「……っ」

その変貌に僅かに驚く。
いきなり目つきが変わったこともそうだが、あんな表情今まで見たことがない。
いつもの温和でどこか調子づいててふにゃふにゃしてる初春とは全く違う、冬の空気のような視線にたじろいでしまう。

「――――――佐天さんに何があったとか、そんなことは聞きません。
 それは佐天さんが話したいと思った時に話してくれればいいですから」

声質が違う。
低いのに張り詰めている。
冷た過ぎて熱いような、不思議な感覚。

「けれど、御坂さんを怪我させたことは許せませんし、佐天さんが自分を傷つけているのも許せません。
―――だから、ここは本気で力づくであなたを止めてみせます」

601: ◆oDLutFYnAI 2010/09/11(土) 16:14:03.01 ID:VNd/TeYo
力づくで止める。
そんなことは出来るはずがない。彼女の能力はせいぜい人間ポットだ。そんなもので、私に太刀打ちできるはずがない。

わかっている。だというのに。
どうして、いちいち彼女の言葉に気押されてしまうのか。

「―――止める?私を?力づくで?ははっ、初春の能力でどうやって止めるっていうのさ」

言いながら、ベクトル操作を開始。
標的は初春。彼女の両足へベクトル操作によって熱吸収するための道を作り出す。

「言っとくけど、今の私は初春にだって容赦しない。だから、逃げるなら今のうちだよ」

もういつだって、彼女の両足から熱を奪える。
決まってしまえば、よくて凍傷わるくて壊死。
むごいことだが、御坂を斃した私に、もう躊躇する心なんて微塵も残っていなかった。

「……ベクトル操作、でしたか。けど、どうやらそれ以外にも能力があるみたいですね」

「ふぅん。随分断言するような言い方だけど、能力は一人につき1つが大原則。それはレベル1の初春だって知ってると思うけど?」

「ええ、勿論」

なんだこいつ。

「……はぁ。それで?忠告はしたけど、逃げるの?逃げないの?」

うんざりしながら彼女の問いかける。
いくら幻想御手で強化しているとはいえ、演算し続けるのも疲れるのだ。

「……止めるって言った相手に、いちいち戦意を尋ねるなんて愚かだと思いますけどね」

「―――ははっ。いいね、初春。あんた最高だわ。負けるってわかってて、そうやって人をイラつかせるんだから。
 ―――せいぜい足が無くなってから後悔しろ」

そして。
彼女の足から体温が消え去った。

603: ◆oDLutFYnAI 2010/09/11(土) 16:35:05.80 ID:VNd/TeYo
「―――あれ?」

消え去った。はずだった。
確かに熱吸収は成功したし、相応の熱は腕輪の中に入ってきている。
だから、今頃初春は足が凍結した苦痛で悶えて、立っていられないはずなのに。
だというのに、彼女は顔色ひとつ変えずそこに立っていた。

「どうしたんですか佐天さん―――御自慢の能力で、しっかり視たほうがいいんじゃないんですか?」

「ちっ……いちいち腹の立つ言い方を」

悪態をつきながらも、彼女の言った通りベクトルを視覚化して―――

「―――何、それ」

そのベクトルの大きさと方向性の有り得無さに、驚きを隠せなかった。

本来力は高いところから低いところへ流れる。
低い熱が自然と一か所に集まるなんてことは絶対にあり得ない。
水に角砂糖を入れたら時間の経過とともに拡散するが、それが時間の経過とともに一か所に集まるということが有り得ないのと同じだ。

熱もまた力で、だから高い熱は周囲の熱が低いところへと拡散していく。
しかしそれを捻じ曲げるのが初春の保温能力。
触れているだけで熱の拡散を防ぎ、さらにエネルギーを損なわせないという力学を無視した能力。
(そもそも能力自体いろいろな物理法則を無視している点はあるからこの点に関しては今更だが)

その能力によって方向性が本来あり得ないベクトルを描いていたとしても、彼女の能力だと考えれば説明がつく。
手で触れているもののみということだったが、私も無理をして出来ること以上の力を出したことがあるし、それは問題ない。

しかし、あのベクトルの大きさはなんだというのだろうか。
温度にしておよそ1000℃。もはや人の身が耐えられる温度をはるかに超えた熱量を、彼女はその両足に宿していた。

「……どういうことよ。あんたの能力は、保温能力だったはずなのに」

「何事にも例外はあります―――佐天さんと同じように」

「……まさ、か」

605: ◆oDLutFYnAI 2010/09/11(土) 16:45:32.51 ID:VNd/TeYo
まさか。
初春も、能力を二つ……?


「そのまさかですよ―――熱吸収、熱放出。ああなるほど―――」

声質が変わる。
いや、雰囲気か。

「―――そこにいたのか、左天」

「……ッ!!」

サテン、と。
しかし、それは私ではなく私の中の彼にあてたものだと、すぐに気付く。
わからない。
どういうことか、理解できない。

外見が初春なのに、初春ではない彼女がやれやれと頭を押さえてため息をつく。

「全く……こんなに近くにいたとはな。まぁ、私が起きていたのは基本この子が一人きりの時だったし、しょうがないと言えばしょうがないか」

「……誰なんですか、あなた」

いや、尋ねるまでもなく、私は彼の記憶のなかで彼女を知っていた。
左天さんを左天と呼び捨てにし。
彼を探していて。
そして熱を生み出す能力者といえば、それは。

「ん、なんだ。この子と同じように夢の中で知ったと思ったんだがな―――アルカだ。お前の中にいる左天を探してここまで来た、そいつの同僚だよ」

四天王最後の一人と言われている、「炎神の息吹」のアルカ。
対象の分子運動を加速させ、さながら電子レンジのように高熱を帯びさせ蒸発させる、炎系統最強の能力者。

「なるほど―――人間ポットと人間電子レンジ、家電製品同士気があったというわけか」

じゃなくて。

611: ◆oDLutFYnAI 2010/09/11(土) 18:22:09.21 ID:VNd/TeYo
「そうじゃなくて―――初春」

初春の名前を呼ぶと、やはりほんの少し雰囲気が変わった。

「なんですか、佐天さん」

「……その、アルカって人とはどこで会ったの?いや、いつ会ったのか、って言ったほうがいいのかな。
 ともかく、ふつう出会えるはずはないはずなんだけど」

「それについては私よりアルカさんから話てももらいますから」



―――回想始め


アークライト「左天がやられたらしい」

アルカ「なっ……左天が、ですか!?あの神父軍団に?」

アークライト「いや、のらニードレスだ。ただ、報告によると随分特殊な力を持っているニードレスだったらしくてな。
      空間移動系統……いや、時空移動か」

アルカ「そのようなフラグメントは初めて聞きますが……」

アークライト「全てのフラグメントがすでに発現しているというわけでもあるまい。これから未来、さらに新しい能力が
      発見されるだろうからそう驚くほどの話でもない」

アルカ「はぁ……して、私の任務はそのニードレスの捕縛ですか?」

アークライト「いや、そのニードレスはすでに死んでいる。死に際に、能力を暴走させて左天を巻き添えにしたといったところだ」

612: ◆oDLutFYnAI 2010/09/11(土) 18:26:37.52 ID:VNd/TeYo
アークライト「さて、そこでお前の任務は、左天を道連れにしたニードレスと同じ系統のフラグメントをもつ能力者を探すこと、
      およびその能力によって左天を探し連れ戻すことだ」

アルカ「お言葉ですがアークライト様。能力者を探すことについては異論はありませんが、左天が消えたのは奴自身の責任。
     結局それまでの男だったと思えば、いちいち探すなど―――」

アークライト「それはそうかもしれないが、奴の力はまだ必要だ。それに、だ」

アルカ「それに?」

アークライト「……お前も知っているだろう。シメオン内に、やつのファンクラブがあることくらい」

アルカ「というわ私のファンクラブもありますけど」

アークライト「私のもあるぞ。そういうわけで、だ。左天がいなくなったとなったら、士気が下がる。それは避けねばならない。わかるな?」

アルカ「……承知しました。では、」

アークライト「ああ、頼んだ」

613: ◆oDLutFYnAI 2010/09/11(土) 18:42:36.24 ID:VNd/TeYo
――――。

アルカ「全く、左天め……余計な手間を増やしてくれる」

アルカ「しかし、空間移動系統のニードレスなど初めて聞いたし、報告にもそれに近い能力をもったニードレスはいないか……」

アルカ「……しかたない。まずは左天が消えたというその場所に行ってみることにしよう」


―――。


アルカ「なるほど、まるで爆心地のように土地が削れている。半径5,6mといったところか。おそらく、この土地ごと
     左天を巻き込んで消滅したのか

アルカ「……って、そんなことわかってどうするんだ。しかし」

アルカ「そういえば、この辺りはまだ調査が完全ではなかった場所だったな。ということは、この辺りを探せばまだ―――」

???「ですのー!どこですのー!ですのー!」

615: ◆oDLutFYnAI 2010/09/11(土) 19:11:12.20 ID:VNd/TeYo
アルカ「うるさいな……この辺りに住んでる子供か?」

???「お姉さまーお姉さまー!……ああっ、そこの方、お姉さまはどこへ行ったかしりませんの?」

アルカ「知らん」

???「ですの……お姉さまはいつも突然どこかへ消えてしまわれますの。匂いをおっかけてきたらここへたどり着きましたのに、
     匂いがここでぷっつり途切れてますの。こんなの初めてですの」

アルカ「聞いてもないことをぺらぺらと……まて、お前の姉はニードレスなのか?」

???「にーどれす?そういえばお姉さまはよく自分のことをそう言ってましたの」

アルカ「(……なるほど。つまりこの娘の姉が左天をほふった能力者か)」

アルカ「そういえば貴様は今匂いを追ってきたと言ったが、それはどういうことだ?」

???「お姉さまの匂いをおいかけて、私もここまでとんできただけですのよ?」

アルカ「とんできた?」

???「お姉さまはよくテレポートといっていましたの。私はお姉さまの匂いがあるところにしか行けませんから使えませんけど」

???「というかあなた何者ですの?お姉さまの居場所をしっていますの?」

アルカ「いや知らん。が、もしかしたらわかるかもしれんぞ」

???「本当ですのっ!?」

アルカ「ああ、一緒に来い」

616: ◆oDLutFYnAI 2010/09/11(土) 19:13:20.07 ID:VNd/TeYo
―――。

アルカ「―――というわけで、この娘の能力をアークライト様が使えば」

アークライト「なるほど」

~~~~。

アークライト「覚えた……ふむ、よし、ではとばしてみるか」

アルカ「えっ」

アークライト「?何を不思議そうにしている。お前の任務だろう」

アルカ「え、いや、ですがしかし、左天についで私までアークライト様のおそばからいなくなるというのは不味いと思いますが……」

アークライト「お前は私がそんなに簡単にやられると思っているのか?」

アルカ「いえ、そんなことは」

アークライト「ではいってらっしゃい」

618: ◆oDLutFYnAI 2010/09/11(土) 19:25:44.82 ID:VNd/TeYo
―――空間移動中

アルカ「うぅ、気持ち悪い……酔いそうだ」

アルカ「しかし、こんなことで本当に左天の元へ行けるのだろうか―――って、あれ?」

アルカ「これ、私帰りどうすれば……あれ?」

アルカ「……はぁ。まぁ、しかたない。左天を見つけてからいろいろ考えるとしよう」

アルカ「っと、視界が開けてきたな―――ッ!?」

アルカ「ぐ、ず―――は、ぁ……!なん、だ、これ……身体、が……!」

―――。

アルカ「……ん。気を失っていたか―――痛っ」

アルカ「ハハ、ひどいな……身体がぼろぼろだ。なるほど、左天もこうだったのか?」

アルカ「それにしても、ここはどこだ……ブラックスポットじゃない、シティか?」

アルカ「ま、何にしたところで、身体の痛みでまともに動けない、か……やれやれだ」

662: ◆oDLutFYnAI 2010/09/30(木) 21:38:09.25 ID:h6h2iuYo
 

アルカ「ま、何にしたところで、体の痛みでまともに動けない、か……やれやれだ」


初春「だっ、大丈夫ですかっ!?」

アルカ「……(誰?)」

初春「いきなり現れたからテレポーターの方ですか!?でもそんな体……ってなんですかその格好!ちじょ!?」

アルカ「(うるさいな……炎神の息吹)」

アルカ「――――!?(な―――能力が、使えない……?)」

初春「えっと、とにかくまずは救急車ですよね!警備員ー!」

アルカ「あ、いや……待ってくれ。私は大ジョブだから、あんまりさわいでくれるな」

初春「え、でもそんn」

アルカ「いいから」カッ

初春「」びくっ

アルカ「ぁ……いや、本当に大丈夫なんだ。だから、静かにしててくれ」

666:  2010/09/30(木) 21:45:15.83 ID:h6h2iuYo
かまってほしかったんだよ、きっと。夜のテンションだからな、何してたのかわからん。
囀る貝のシナリオ練りながら書いてく


初春「えっと、それじゃあ何しましょう」

アルカ「何もしなくていい」

初春「それは駄目です!風紀委員を目指すものとして、怪我をした人を放っておくなんてできません!!」

アルカ「ジャッジ……何?」

初春「ジャッジメントですよ、って知らないんですか?」

アルカ「あいにくな。私はここの住人じゃないから」

初春「えっ……ふっ、不法侵入者っ!?」

アルカ「ああ、そうなるな。さぁどうする?こんな怪しい人間のそばにいると危険だぞ?」

初春「……」スッ

アルカ「……何をしている」

初春「怪我の手当てです。少しくらいは心得がありますから」

アルカ「……さっきの話を聞いてなかったのか」

初春「聞いてましたよ」

アルカ「なら―――」

初春「〝己の信念に従い、正しいと感じた行動をとるべし〟―――昨日出会った、風紀委員の方の言葉です」

初春「あなたが侵入者であろうと、怪我をしている人を放ってはおけません。これが私の正義です」

アルカ「……は。おめでたいことだな」

668: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/09/30(木) 21:49:28.38 ID:h6h2iuYo
―――。

初春「はいっ、できました」

アルカ「……へたくそ」

初春「なぁっ!?ひ、ひどいですっ!!」

アルカ「……それでも、感謝はするよ。ありがとう」

初春「……えへへー」

アルカ「(……何年ぶりだ、こんな風な会話をしたのは)」

アルカ「(―――クルス。私は、)が、ぁっ……!?」

初春「ど、どうしましたっ!?どこか痛みますか?!」

アルカ「ハ―――、ぁ、ぅ……!(なん、だ、これは……!体が、端から崩れていくような―――!)」

初春「う、うぅ……あのっ、あのっ、私は……」

アルカ「……ぁ、は、大丈夫、だ……なに、手当を、してもらっても、痛みは消えない、からな……(くそっ……そんな顔しないでくれ)」

初春「うぅー」オロオロ

669: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/09/30(木) 21:56:12.33 ID:h6h2iuYo
アルカ「(さて―――どうしたもんだろうか)」

アルカ「(この痛みはおそらく時空移動の代償か……ここがどこかはわからないが、もともと居た世界と異なる層に位置する
     所へ飛ばされてきたのだとしたら)」

アルカ「(そんなこと有り得無さそうだが、そもそも空間移動の能力自体が希少能力だ……何があってもおかしくない)」

アルカ「……なあ、お前。ブラックスポットって知ってるか?」

初春「え?なんのことですか?」

アルカ「(やはり知らないか……確定だな)」

アルカ「(以前、カフカが熱心に語っていたな……こういう話。確か、本来あるべきでない存在が出現してしまった場合、世界の修正を受けるだとかどうとか)」

アルカ「(その当時は何言ってるんだこいつと受け流しておいたが、こうなるとその説を取り入れてみるしかないか)」

アルカ「(だとすればつまり、今の私はこの世界からすれば異物―――故に取り除かれようと、分解されようとしている、といったところか)」

アルカ「(参ったな―――くそぅ、左天のやつめ。お前のせいで私はどこともわからない世界でのたれ死にそうだ)」

アルカ「(……悪いな、クルス。もう一度お前と、話をしたかったんだが―――)」

アルカ「(それも、もう―――)」

初春「……!?お、お姉さん、足が、手が……!」

アルカ「ああ……はは、本当にうっすらと消えていくもんなんだな」

670: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/09/30(木) 21:59:07.81 ID:h6h2iuYo
初春「え、ええ……?」

アルカ「悪いな―――折角手当してもらったのに、無駄になってしまった」

初春「あの、一体どういう……?」

アルカ「私にもわからんが、ここで死ぬらしい。跡形もなく消えるはずだから、後片付けの心配はいらないさ」

初春「死ぬって、」

アルカ「じゃあな、小娘。あんな風に人間らしく会話をしたのは久しぶりだった。嬉しかったよ―――――」

初春「まっ―――」










―――あぁ。
暗いな。これが死んだあとか。
驚いた、死後の世界なんてものが、本当にあるなんて。

―――ん。
なんだろう。
光が、ひろがって、

671: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/09/30(木) 22:05:28.77 ID:h6h2iuYo
アルカ(……どういうことだ)

初春「はぁうっ!?だ、誰ですか!?」

アルカ(その声は……あの時の小娘)

初春「え……あの時消えた人?」

アルカ(どうなってる、どうして私はこうして意識がある。手足は動かないが、意識だけはしっかりと)

初春「えっと、そのですね。あなたが消える瞬間に、こう、手で触れたんですよ。そしたらぴかーって光って、あなたがいなくなってました」

アルカ(……?)



それから、小娘―――初春と色々話をした。
理由はよくわからないが、意識だけがこうして初春の頭の中に残ったこと。
そして、ここが学園都市とかいう街だということ。
そのた諸々、私のことも彼女のことも。
曰く彼女はレベル1とかいう能力者らしい。保温能力とは、分子振動という点では私の能力とよく似ている。
そこでフラグメントはどうなったのかとふと気になり使おうとしたが、それは出来なかった。
しかし、


初春「ヒートエクスプロージョン!」ごっ


何故か、彼女が使えるようになっていた。どういうことだ。

673: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/09/30(木) 22:23:32.25 ID:h6h2iuYo
初春「すごい!すごいですよアルカさん!!この能力さえあれば私も一発で風紀委員になれます!!」

アルカ(……)

初春「?どうしたんですかアルカさん」

アルカ(いや、お前はそれでいいのかと思ってな。これは私の能力だぞ?それでその、あこがれの風紀委員になってお前はいいのか?)

初春「う……た、確かにそれはそうかもしれないです……」

アルカ(目指したものがあるのなら自分の力で勝ち取ってみろ。そうでなければ、信念なんて貫けないぞ?)

初春「わかりました……はぁー、やっぱり情報でなんとかするしかないですかー」

アルカ(ふふ、しかしその代わりに、君と私はよく似ている。ああ、勿論能力面での話だが。
    どちらも分子運動とそれによる熱をつかさどる能力―――私の能力を使って、すこしは勘がつかめたんじゃないか?)

初春「んー、確かになんだかそんな気がします。能力開発は演算力もそうですが、まずはなにより『自分だけの現実』、
    自分が出来ると信じることが大切ですからね。実際に能力が出来るのなら、思いこみ以上の成果が発揮できるに決まってます」

アルカ(その経験はお前のものだから、恥じることはない。この能力を直接使うのはよくないが、これを土台にして高いところを目指す分には構わないさ)

初春「……アルカさんって優しい人なんですね。過去の話を聞くとそうでもないのに」

アルカ(まぁ、いろいろと背負っていたものが消えてしまったからな。どこか自暴自棄ぎみなのかもしれないさ)

674: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/09/30(木) 22:28:27.75 ID:h6h2iuYo
―――――――――回想終わり


「というわけだ」

初春の形をしたアルカがそう話を〆た。
しかし、今の話には腑に落ちないところがある。

「待って……でも、私が左天さんと会ったのは、幻想御手事件以降なのに……」

そうだ。時間軸がおかしい。
今の話では、初春はまだ風紀委員になっていなかった。今のは、いつか聞かされた初春と白井との慣れ染めの話のすぐ後だ。
そんな私の疑問を、眼をふせながらアルカは解答する。

「時空移動の能力者だ。そもそも同じ世界にこられることが奇跡なんだ、時間の前後関係くらい許容範囲だろう。
さぁ、いつまでそこで寝ている左天。いい加減起きろ」

716: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/07(木) 21:34:24.57 ID:.oUkx7oo
アルカ「ほら、早く出てこい左天。起きてるのはなんとなくわかってるぞ」

佐天「え……?(左天さんが起きてる―――?)」

佐天「(……佐天さん、本当に起きてるんですか?)」

左天(割とな)

左天(しかしまぁ、まさかアルカまでこっちに来てたとは驚いたな。しかも時系列的には俺より早く、か)

左天(……ふん。ちょいと体貸してくれよ)

佐天「(体貸すって―――ぁ)」

佐天「……あっあー、ん。どうにも他人の体はなれねぇな―――久しぶりだなアルカ」

初春「全くだな。まさかこんなに近くにいたとは思わなかったが」

佐天「基本寝てたんでね。それに、嬢ちゃんがその子の前じゃあんまり能力喋らなかったからな」

初春「なるほど」

佐天「それで?さっきの回想シーンからすると俺を向こうへ連れ戻すみてぇだが―――そんな方法あるのか?」

初春「なければこうしてコイツの中に残っているなんてしない。そういう意味では、私はお前のことがわからんがな」

初春「何があってソイツの中に入り込んだか知らないが、どうしてまだ意識を残したままでいる?帰る気があってというならわかるが、
    今のくちぶりからするとそういうわけでもあるまい」

佐天「そうだねぇ……なんとなくだ」

初春「……まぁ、お前は昔から何を考えているかわからなかったからな。どうでもいい質問だったな」

718: ◆oDLutFYnAI 2010/10/08(金) 22:22:50.75 ID:PIn8t2Eo
初春「で、どうするんだ」

佐天「何がだ?」

初春「BSに戻ってくる気はあるのかと聞いている」

佐天「そうだな……」



――――――――――――――――――――――。



佐天「……っは!」

佐天「あ……っと、いきなり意識が遠のいて、それから、」

左天「よっ」

佐天「うおあっ!?さ、左天さん!?どうして外に?!」

左天「そりゃあ、こういうことよ」コツン

佐天「え?――――ぁ、」

佐天「(腕の金属が初めて会った時と同じに―――まさか)」

佐天「……第四波動が、使えなくなってる」

左天「そりゃま、そうだろうな」

佐天「どう、いう―――」

アルカ「ああ、それは私から話してやる」

佐天「 女っ!?」

アルカ「ぶっ殺すぞ―――まあ、いい。いろいろ端折るが、左天は私とともにBSに帰ることになった」

佐天「……。え?」

アルカ「ま、問題あるまい?そもそも私達がここにいることがおかしいのだからな」

左天「そういうこった。随分世話になったな」

佐天「え……え?」


佐天「……え?」

719: ◆oDLutFYnAI 2010/10/08(金) 22:23:47.48 ID:PIn8t2Eo
アルカ「というわけだ。随分世話になったな、初春」

初春「いえーこちらこそですよ。おかげで能力も向上しましたし」

アルカ「私が眠っている間は結局上がらずじまいだったがな」

初春「それは仕方ないですけどねぇ」

左天「そんでよ花の嬢ちゃん。帰る方法ってのは?」

初春「ああ、それなんですけどね。アルカさんといろいろ相談した結果、空間移動を使えばいいってことになりました」

アルカ「この街には空間移動をつかえる能力者が何十人もいるらしい。あのツインテのですの娘がいただろう」

左天「ああ、あのちっこいのか」

初春「左天さんからしたら私達はみんなちっこいですけど、まあそれです。白井さんは空間移動能力者ですからね」
左天「しかし空間移動ってだけで、時空間移動は無理なんじゃねえか」

アルカ「確かにそうだろうな。しかし忘れたわけではないだろう。私達はこの世界ではあやふやな存在だ。
    そんなモノを演算無しで空間移動すればどうなる?」

左天「わかんねえだろ、どうなるかなんざ」

アルカ「まあな。だが、おそらく方法はこれくらいだぞ。もとより死んだ身だ、どうなっても後悔はしないだろ?」
左天「……まぁな。それに、ま。俺の勘がこれで大丈夫だとも囁いてるからな」

アルカ「悔しいがお前の勘はよくあたるからなぁ」

初春「予知能力とかあったりして。せっかくだから検査してみませんか?」

左天「そんな時間ねえだろうよ」

初春「それもそうですねぇ」

三人「HAHAHAHAHAHAHA」

720: ◆oDLutFYnAI 2010/10/08(金) 22:24:23.31 ID:PIn8t2Eo
佐天「……何勝手に話進めてんのよ」

アルカ「ん―――おい初春、左天。アレはどうするんだ」

初春「アレって」

左天「俺がなんとかしてみるさ」


左天「随分ボロボロだなぁお前」

佐天「……佐天さん」

左天「まぁ、さっき話してた通りだよ。これでお前は普通の女の子に戻ったわけだ。死ぬだ復讐だと下らねえことはもうやめちまえ」

佐天「今すぐ私のところへ戻ってください」

左天「……ま、納得しねえわな」

左天「ひとつ聞かせろよ―――お前にとっての俺ってなんなんだ?」

佐天「それは、


①第四波動という力の源
②お兄ちゃん

この下とります。1時間

724: 反応早っ ◆oDLutFYnAI 2010/10/08(金) 22:42:23.76 ID:PIn8t2Eo
「それは―――」

そういえば、そんなことは考えたことも無かった。
三カ月前に路地裏で出会って。
それから色々あったけど。
左天さんは私にとっての―――


「……お兄ちゃん、です」


「……なに?」

予想外の返答だったのだろうか、左天さんの顔が崩れる。
後ろの二人もぽかんとしている。まあ、仕方ないことだ。

「左天さんが私にとっての何か、なんてはっきり考えたことありませんでしたけど、
 ふと思い出したのが御使墜しの時のことだったんですよ」

御使墜し。
夏休みに、二日間だけ起こった本来ありえなかった左天さんとの休日。
左天さんがどこかへ行ってしまうと。
もう会えなくなってしまうと思うと。
思い出されるのは、楽しかったあの日のことしかない。

「―――恥ずかしいから全部言いませんけど。一日目の夜に言ったことが全部だよ、お兄ちゃん」




初春「(oh...)」

725: 反応早っ ◆oDLutFYnAI 2010/10/08(金) 22:48:53.95 ID:PIn8t2Eo
左天「……ふぅ。参ったな、最近のお前の狂いっぷりからすると、もっとトンデモな返事がくると思ってたんだが」

左天「まあ、気持ちは嬉しいがな。でもそれってよ、結局お前が満たされるためのものでしかないわけだ」

佐天「っ!そんなこと―――」

左天「そういやその時に言ったか。俺は死んだ人間なんだからそんな感情抱くなって」

左天「死人に何かを求めるなんざ、どうかしてるぜ?」

佐天「左天さんは死んでなんかいない!今もそこにいるじゃないですか!」

左天「残像のある分身さ」

アルカ「こら左天、真面目にやる」

左天「うぃ。えー、まあそうは言われてもな、それだけの理由で、そんな甘えた理由でアークライトの旦那と秤にかけるわけにゃいかねえなぁ」

左天「つーわけで、だ。やっぱ俺BS帰るわ」

佐天「……!そんなの、」

726: ◆oDLutFYnAI 2010/10/08(金) 22:57:49.11 ID:PIn8t2Eo
左天「いいじゃねえか。空いた隙間は、他の奴らで埋めてもらえ。俺がただ甘える為の存在ってんなら、それでいいだろ」

左天「お前に、もう戦う理由なんざねえはずだからな」

佐天「――――――――」

佐天「(そうだ……あまりに唐突すぎる流れで、いろいろ忘れてたけど。
     いつのまにか、私の中から、一方通行さんのために戦おうって気持ちが―――)」

左天「原理は省略するがな、今までのお前の戦う理由は、ほとんど俺のせいなんだよ。悪かったな」

佐天「……っ!そんなこと言われても、納得できるはずが」

左天「けどすでにお前はわかってるはずだぜ?戦う気なんて、もうさらさら無ぇんだろ」

佐天「……それは」

佐天「(さっきまで、御坂さんを殺してまで前へ進もうって思ってたのに。もう今は、確かに何も―――)」

左天「そういうわけだ。さっきも言ったように、お前はもう普通の生活へ戻れ」

727: ◆oDLutFYnAI 2010/10/08(金) 23:01:17.48 ID:PIn8t2Eo
佐天「……ぅ」

佐天「いやだ……嫌だ嫌だ嫌だ!左天さんを、お兄ちゃんを失くすくらいなら、お兄ちゃんを殺して私も死ぬ!」

左天「やだ何このこ怖い」

アルカ「それは困るな。折角左天を見つけたんだ、勝手に殺されてはこちらも任務が完了できない」

佐天「うるさい!お前がお兄ちゃんを連れていくっていうんなら、まずはお前から殺してやる……!」

佐天「そうだよ……お前を殺せば、お兄ちゃんは戻ってくるしかないもんね」

佐天「殺してやる……」

アルカ「……ただの中学生に私がやられるわけないだろうに」

左天「おいおい、本気になんなよ」

アルカ「だがなぁ、今にもかかってきそうな勢いだぞ」

初春「……ふむ、なら、私がなんとかしますから、アルカさんは下がっててください」

729: ◆oDLutFYnAI 2010/10/08(金) 23:15:17.31 ID:PIn8t2Eo
佐天「初春も私の邪魔をするの?いいよ、いくら初春だからって容赦しないんだから。ていうかさ、そもそも初春が私に勝てるわけないじゃん」

初春「ふ……アルカさんが頭の中からいなくなった今の私の演算力を舐めないほうがいいですよ」

アルカ「なんだ、私は邪魔ものみたいな言い方だな」

佐天「ふん、どれだけ演算力が上がろうと保温能力は保温能力でしょ?私のベクトル操作なら―――」

佐天「(幻想御手最大出力。熱ベクトルを初春の首に集束――――っ!?)」

佐天「ちっ……またそれか」

初春「保温能力レベル2~3ってとこですかね。手で触れてない部分の温度も変化させないでいられます」

佐天「ふん―――それじゃあ、こういうのはどうさ!」だっ

アルカ「ほう、能力が不利と見えて直接殴りにきたか。賢明だが、しかし―――」

初春「ええ―――その程度じゃ、私には届きません」

佐天「―――……っ!?な、ぁ……拳が、動かない……!」

初春「ちょっとだけ無理してますけど、これも私の能力です」

佐天「馬鹿な……保温能力で、こんなこと……!」

730: ◆oDLutFYnAI 2010/10/08(金) 23:24:18.52 ID:PIn8t2Eo
初春「ふぅ。保温保温って、勝手なこと言ってくれますけど。正しくは『分子制御能力』ですよ?」

初春「そもそも原理としてはテレキネシスが強く働いてますし。だから、その力のつかいかたをちょっと変えてあげればご覧の通りです」

佐天「そんなこと、できるわけが……!」

初春「出来ない理由がありません。分子なんて目に見えないものを大量に制御するんですから、目に見えてる佐天さんの拳程度を
   制御するくらいなんてことないです」

佐天「ぐ……」

初春「確かに佐天さんは御坂さんを倒しました。とても強かったと思いますよ。けど、それは佐天さんの力じゃない」

佐天「っ……!」

初春「左天さんの第四波動って能力があったからこそ成しえたことです。その辺り勘違いしちゃだめですよ?」

初春「佐天さん一人で何かできるわけないじゃないですか。熱ベクトル操作なんて、幻想御手を使っても私にすら勝てませんし」

佐天「く……このぉっ……!」

初春「というか、皆さん保温って軽視しすぎですよね。温度を一定で保つ、ということのむずかしさを全くわかってないんですから。
    加える力が強すぎても弱過ぎても駄目。そんな微細な調整をし続けなきゃいけないんですよ?」

初春「だから―――ちょっと応用すれば、気体操作なんてこともできちゃいます」

佐天「……っ」ばたん

初春「酸欠にして終了、っと。終わりましたよーアルカさん」

アルカ「よしよし、なかなか容赦のないやりかただ。さすがは私の弟子だぞ」

初春「えへへー」

左天「なにこの人達こわい」

731: ◆oDLutFYnAI 2010/10/08(金) 23:27:30.17 ID:PIn8t2Eo
――――病院

「ん……」

目が覚めると、いつもの天井。
清潔なシーツと薄青色の病院服につつまれて私は眠っていたらしい。

「……」

よく、思い出せない。
何か大切なことを忘れているはずなのに、よく思いだせない。
何だったか―――気持ち悪い。

「……」

なんとなく腕を見る。
別になんら変わらない、普通の腕だ。

「……」

お腹を触ってみる。
別に傷跡なんてあるわけもなく。

「……」

どうして病院にいるのか思い出せない。
特に怪我なんてないみたいなのに。

732: ◆oDLutFYnAI 2010/10/08(金) 23:30:18.93 ID:PIn8t2Eo
―――。

白井「っと、初春、大丈夫ですの―――ってどういうことですのこの現状」

初春「あ、白井さん終わりましたよー。ちなみにこっちがアルカさんでこっちが左天さんです」

白井「佐天さんならそこで倒れていらっしゃいますけれど」

初春「お約束いただきましたー。まあそれはどうでもいいんですけど、白井さんにちょっとお願いがあるんですよ」

白井「はぁ、なんですの?」

初春「この人達二人を、特に場所も決めず空間移動しちゃってください」

白井「はぁ?何を言ってますの、そんなことをすれば大変なことになりますわよ?」

アルカ「いや、それでいいんだ」

左天「ああ、事情は割愛するが、花の嬢ちゃんが言った通りにしてくれねえか」

白井「……?ご本人がそう言うのでしたら、構いませんけれど」


733: ◆oDLutFYnAI 2010/10/08(金) 23:34:37.31 ID:PIn8t2Eo
アルカ「じゃあ、今まで世話になったな」

初春「こちらこそ。無事あちらへ着いたら私のことは忘れてもらっても構いませんよ?」

アルカ「ああ、私のことも忘れてくれ―――なあ初春」

初春「なんですか?」

アルカ「頑張れよ、お前なら強くなれるさ」

初春「言われずとも、です」

左天「なぁ、花のお嬢ちゃん。涙子が目ぇ覚ましたら言っといてくれ。『お前と過ごした三ヶ月間、悪く無かったぜ』ってな」

初春「ああ、ピッコロさんですね。わかりました、伝えておきます」



白井「では、いきますのよ……そいやっ」

白井「……これでよかったんですの?」

初春「ええ(さよならアルカさん)」

白井「それで、佐天さんは病院で?」

初春「そうですねぇ、お願いします。そういえば御坂さんは?」

白井「集中治療室ですの。治療室へ入る前まで意識はありまして、佐天さんをお願いと言われましたので戻ってまいりましたの」

初春「おー御坂さんらしいですねー」

740: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 12:06:13.52 ID:O2N7k3ko
白井「……?初春、貴女何かありましたの?」

初春「んー、まぁ、いろいろと。寂しいのも悲しいのも、佐天さんだけじゃないってことです」

白井「はぁ?」

初春「ささ、そんなことはどうでもいいんですよ、さっさと佐天さんを病院へ運んじゃってください」

白井「わかりましたの」



―――――。


御坂「ん……ぁぁ、病院か」

御坂妹「目が覚めましたか、とミサカはお姉さまに確認をとります」

御坂「……ナース服って」

御坂妹「おや、そういえばこれを披露するのは初めてでしたか、とミサカはくるくるとまわって見せびらかせます」

御坂「(リアルゲコ太の趣味とかだったら嫌だなぁ。聞くのも怖いから聞かないけど)」

御坂「……そうだ、佐天さんは」

御坂妹「彼女なら今ぐっすりと眠っています、とミサカは報告します」

御坂妹「ここ最近、まともな精神状態ではありませんでしたから、体も心もすり減っていたのでしょうね、とミサカは推測します」

741: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 12:07:19.99 ID:O2N7k3ko
御坂「そう……ってことは、初春さん止めたんだ。どうやったんだろう」

御坂妹「友情パワーじゃないですか?とミサカはわりとぶっきらぼうに答えます」

御坂「えー……それじゃ私と佐天さんの間には友情ないみたいじゃない」

御坂妹「あっあー、ん……『レベル0のあしらいからぐらい十分にわかってるのよ』」

御坂「」

御坂妹「『あ、佐天さんは別よ?』」

御坂「やめて!」

御坂妹「さて、お姉さまをいじめるのはこの辺りにしておきましょうか、とミサカは中中似ていたモノマネを封印します」

御坂「そりゃ姉妹なんだから似てるでしょうよ……」

御坂妹「ほほう、姉妹といってくださるとは嬉しい限りです、とミサカは本心を隠さずに伝えます」

御坂妹「さて、それはそうとお姉さまの容態ですが―――」



御坂「―――ふぅん、まぁ確かに、お腹にちっちゃい穴が開いたってだけだしね」

御坂「てことはもう動いても大丈夫なの?」

御坂妹「ええ、学園都市の素敵技術でほぼ治っていますから、とミサカはry」

御坂「じゃ、ちょっと外行ってくるわね」

742: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 12:08:04.25 ID:O2N7k3ko
初春「御坂さんから電話があってとんできました、初春飾利です」

白井「お姉さまの言葉ならなんなりと、白井黒子ですの」

御坂「なにその自己紹介」

初春「それでなんですか?」

御坂「いやね、これからの佐天さんについての話なんだけど―――って、そうだ、初春さんどうやって佐天さんを止めたの?」

初春「……あ、そっか。御坂さんたちも知りませんでしたよね、私の能力」

御坂「保温能力でしょ?」

白井「保温能力ですの」

初春「公式でもそう出ちゃってますし、名前なんてサーマルハンドって言われてますけどね。わりと死にたい」

初春「まぁ、簡単に言っちゃうと友情パワーですよ」

御坂「(やっぱり私と佐天さんじゃ友情はなかったのか……)」

白井「(私佐天さんに嫌われてますの?)」

初春「それで、これからの佐天さんでしたっけ?とりあえず、無能力者に戻っちゃいましたから、何もできないと思いますけど」

白井「さらっとひどいこと言いましたの」

御坂「え、佐天さん能力なくなっちゃったの?」

743: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 12:08:35.08 ID:O2N7k3ko
初春「御坂さんたちは知ってましたっけ?佐天さんの能力について」

御坂「あれでしょ、サテンって人からなにゃなんやあって貰ったんでしょ?」

白井「熱ベクトル操作はその影響で発現したとかなんとか」

初春「うー、やっぱり私以外の人には言ってたんですね……まぁ、いいです。その左天って人が佐天さんの中からいなくなっちゃったので、もう第四波動は使えません」

初春「ついでに言うと、幻想御手の副作用で能力も使えなくなりました。さっき木山先生に確認をとったところ、想定内の副作用だそうで」

御坂「あの人そんな危険なものを佐天さんに……」

白井「……というか、やはり初春雰囲気かわりましたの。以前はそんなにたんたんと喋る子ではなかったと思いますけれど」

初春「色々あったんですよ、ほんとに。てなわけですから、もう佐天さんは何もしないと思いますよ?」

御坂「ふぅん……けど、それはそれで」

白井「能力が無くなったとなれば、ショックが激しい気が……」

初春「しかも御坂さんを傷つけてまでやろうとしてたことも出来なくなっちゃいましたからねぇ。全部が全部ご破算ですよ。何もかもが無駄になっちゃったって、どんな気分なんでしょうね」

御坂「軽く死ねるわね」

白井「わりと辛いですの」

初春「そこで私は、佐天さんの記憶をいじろうと思うんです」

御坂「えっ」

白井「えっ」

744: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 12:09:52.70 ID:O2N7k3ko
初春「佐天さんが目を覚ましたとき、なるべく傷つかないように。今のままの記憶じゃ、やるせない気持ちとかやりきれない気持ちとかで、佐天さんが壊れちゃう気がするんですよね」

御坂「まぁ……それは」

白井「けれど、それも乗り越えてようやく、ではないですの?」

初春「私はなるべく佐天さんに笑っていて欲しいんですよ。それが例え佐天さんのためでなくとも」

白井「ひどい自己満足ですの」

初春「わかってますけどね。でも、白井さんも御坂さんも、佐天さんが壊れちゃうよりいいとは思いませんか」

初春「佐天さんは弱い子ですよ。御坂さんや白井さんのように強くなんてないんです」

御坂「……」

白井「……」

初春「もともとちょっと前までただの中学生だったのが、いきなり戦いの世界にきたってことがどれだけ負担だったか、わからないわけでもないですよね?」

御坂「……、それは」

初春「ここまで張り詰めてたからもってましたけど、とうに限界は超えてます。糸が切れれば、そこで終わっちゃうんですから」

白井「ですの……」

初春「これをお二人に話したのは、私一人じゃ決められないからですよ。さあ、どうしますか」


どうしますか?
この下の意見とり。一時間

746: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 13:07:41.42 ID:O2N7k3ko
御坂「……私、は―――さんせい、かな」

白井「お姉さまっ!?」

御坂「だって、黒子は戻りたくないの?前みたいな、4人できゃっきゃうふふしてた頃に」

白井「それは、そうですけれど……」

御坂「なら、」

白井「……そうです、わね」

初春「お二人とも賛成ということでいいですね―――それじゃあ、依頼しますか」

御坂「ああ、心理系統の能力者ね。知り合いにいるの?」

初春「いいえ。けれどとても有名な方ですよ―――第五位ですし」

御坂「なっ、アイツは……!」

初春「仕事の依頼、だとしたらちゃんと引き受けてくれます。大丈夫ですよ」

747: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 13:08:31.39 ID:O2N7k3ko
―――――――――――――――――――――。
―――――――――――――――――――――。
―――――――――――――――――――――。



佐天「……なんだろう。頭がぼんやりと、してるような」

御坂妹「お目覚めですか、とミサカは確認をとります」

佐天「ん、妹さんか……(あれ?なんだろこの違和感)」

御坂妹「……ふむ、意識の混濁も無し、大丈夫なようですね、とミサカは調査書に書き込みます」

佐天「あの、私ってなんで病院に?」

御坂妹「階段から落ちて頭を強く打ったのですよ、それでもう一週間ほど昏睡してました、とミサカは容態を説明します」

佐天「一週間……ああ、だからこんなに頭がぼんやりしてるのか」

御坂妹「午後の検査でとくに問題がみられなければ退院です、とミサカは予定を告げます」

佐天「ん、わかった」

御坂妹「それではお大事に、とミサカは病室を―――」

佐天「あ、ちょっと待って妹さん」

御坂妹「?なんでしょうか」

佐天「変なこと聞くけどさ―――私って、いつ妹さんと知り合ったっけ?」

御坂妹「―――いつもなにも。ずっと前から知り合いではないですか、とミサカは病室をあとにします」

748: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 13:09:22.96 ID:O2N7k3ko
――――――――――――。
――――――――――――。
――――――――――――。

第五位「記憶操作ねぇ。仕事だからちゃんとしますけど」

初春「お願いしますね」

第五位「けれど、これだけ大規模な改竄だとこの子は騙せても周囲はだませないわよ。その辺り、考えてるの?」

初春「まあ、なんとかしますけれど」

第五位「……ま、私には関係ないことですわね。ではまずは血なまぐさい記憶を消去、のちに適当につじつま合わせの記憶をでっち上げ。
    改変する過程で消えてしまう人間もいるけれど、しょうがないと思って諦めて頂戴」

初春「例えば、誰ですか?」

第五位「まず上条当麻と一方通行……第一位ね。その二人のことは完全に消えるわよ。ほかにも数人。
    ある程度はなんとかするけれど」

初春「まーしょうがないですからねぇ。お願いします」

第五位「それじゃ、」


――――――――――――。
――――――――――――。
――――――――――――。

752: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 13:43:25.76 ID:O2N7k3ko
佐天「そんなわけで退院が決定しました。夕方かぁ」

佐天「まだ結構時間あるなぁ。売店にでも行きますか」


佐天「コアラのマーチを買うかチョコパイを買うか……」ムー

上条「お……よー佐天さん」

佐天「……?」

上条「なんだなんです何なんですかー?まーた怪我しちゃったのかこの不良娘め」

佐天「え……あの、どちらさま?」

上条「えっ」

佐天「ナ、ナンパしてくれるのは嬉しいですけどここは病院ですしそういうのは退院してからでですね……」

上条「……。……―――あ、ああーそうですよねー!ごめんごめん、あんまりに可愛かったからさー」

佐天「あっはー、やだなぁ。それにしても凄い怪我ですね、車にでもひかれたんですか?」

上条「ま、まあそんなとこかな。それじゃ、お互いお大事にな!」

佐天「はーい……うーん、なんだったんだろ。い、いやそれより年上に声かけられるっていうのも、なかなか悪くないね、うん」

753: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 13:44:04.77 ID:O2N7k3ko
pllllplllll

御坂「ん……って、アイツから!?」

御坂「も、もしもし!何よ、なんかあったかしらっ!?」

上条『……御坂。佐天さんに、何があったんだ?』

御坂「え?」

上条『さっき病院で会ったんだけどさ、俺のことをまったく覚えてなかったんだ』

御坂「……っ。そう」

上条『なぁ、何があったんだよ。もし俺が力になれるなら遠慮なく呼んでくれていいんだぜ?』

御坂「……そうね。でも、いいのよ。あれでいいの。電話ありがと、じゃあね」ピッ


御坂「……そうよ。それで構わないはず、なんだから」



――――――――――――――――。


上条「っ……御坂のやつ、一方的に切りやがって」

上条「あれでいい、か……馬鹿野郎、全然そんな風な声じゃなかったじゃねえか」

上条「ったく……」

754: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 13:45:01.35 ID:O2N7k3ko
――――次の日。

佐天「というわけで佐天涙子完全復活です!いやあ一週間も眠ってたみたいでご迷惑おかけしましたー!」

初春「階段から落ちるなんて間抜けですよねぇ」

佐天「ぬっ……ま、まあ、たしかにそれは、反論できにゃいけど……」

御坂「にゃい?」

佐天「にゃふ」

御坂「うにゃあ」

白井「何やってるんですのお姉さま……」

御坂「え?あ、いやぁ、こうやって佐天さんと会話できるのがなんだかすっごく久しぶりだからねー」

白井「ああ……それも、そうですわね」

初春「そうですねぇ……本当、久しぶりです」

佐天「え?そ、そんな一週間ごときげ大げさな……」

御坂「佐天さん……おかえりなさい」ぎゅっ

佐天「ふおあっ!?み、みみみ御坂さんっ、ここ道路!人の目!」

白井「くっ……今回ばかりは見逃してさしあげますのよ」

初春「わーい私もぎゅっとします」ぎゅっ

佐天「う、初春まで……」




通行人「なんだあれ……」

通行人2「コントじゃねえの」

通行人「なんだ、やけに冷静だな」

755: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 15:34:16.79 ID:O2N7k3ko
佐天「う、うーっ……もう、恥ずかしいからやめてくださいよぉ」

御坂「あはっ、ごめんごめん……ちょっと感極まっちゃって」

初春「私は便乗してみただけですけど」

御坂「さ、それじゃいこっか。佐天さんの退院祝いだし、私がおごっちゃうわよー」

初春「まじですかっ!」

佐天「ひゃーさっすがレベル5!財力が違いますね!」

御坂「あ、でも黒子は自分で払ってね」

白井「どうしてっ!?」

御坂「あはは、冗談に決まってるじゃない。あははははは」

白井「お、お姉さまが気味悪いほどにテンション高いですの……」

初春「まぁ……無理もないですよ」

白井「そうですわね……」

756: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 15:34:55.44 ID:O2N7k3ko
――――ファミレス

佐天「そういやですねぇ、昨日病院の売店でナンパにあっちゃいまして」

初春「なん……」

白井「ですと……?」

初春「どっ、どんな人なんですか?」

佐天「顔はまぁ普通かな?頭ツンツンでさぁ、あたかも知り合いみたいに近づいてきてびっくりしちゃったよ」

御坂「(……どう考えてもアイツね)」

佐天「ま、お断りしましたけどね!」

白井「佐天さんは可愛らしいからしかたないことですのよ」

佐天「はっはー、またそんなこと言っちゃって」



打ち止め「うわーいアタナと二人でファミレスも久しぶりーってミサカはミサカは席についてみる!」

一方通行「あんまりうるさくするんじゃねェぞ」



御坂「ぶふぉっ」

白井「お、お姉さま?」

佐天「うおあ、どうしたんですか御坂さん、汚いですよ!?」

御坂「い、いやちょっと……ごめん、花つんでくる」

757: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 15:39:25.81 ID:O2N7k3ko
御坂「……」チラッ

一方「……!……ちょっと便所」

打ち止め「うん、いってらっさいってミサカはミサカはメニュー表とにらめっこ中だったり」




一方「……」

御坂「……」

一方「……わざとじゃねェぞ」

御坂「はんっ、どうだか。言ったわよね?これ以上佐天さんに近づかないで、って」

一方「オマエらが壁側の席座ってるから外から確認できなかったンだよ。いいじゃねェか、あの距離と位置関係なら万が一にも打ち止めに気づかれねェ」

御坂「……前にも言ったけど。佐天さんはアンタのことなんて完全に忘れてるんだから」

一方「ちっ……何度も言わなくともわかってる」

御坂「ふん……別に今更どうしろって言わないわよ。だから今からは何もしないでよ」

一方「わかってるって言ってンだろ」

御坂「何?怒ってるの?怒りたいのはこっちよ、アンタなんかのせいで佐天さんは大変なことになったんだから」

御坂「記憶を消すことになったのも、全部アンタが原因なんだからね」

一方「……それは、」

御坂「それは自分のせいじゃない、って言いたいの?はっ、佐天さんはアンタなんかのために今まで戦ってたんだから」

御坂「どうやって佐天さんをたぶらかしたのかは知らないけど―――本当は、今すぐにアンタを殺してやりたいわ」

御坂「勿論、打ち止めがいるからそれも出来ないけどね」

御坂「そういうことだから」



一方「……」

一方「……ハッ」

758: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 15:40:37.87 ID:O2N7k3ko
御坂「ごめんねー、って初春さんそのパフェ何……」

初春「御坂さんのおごりなので注文してみました!」

佐天「甘い……甘すぎるよこれ……」

白井「ぎぶあっぷですのー……」

初春「さっきから三人でつついてたんですけど、一向に減らないし二人はダウンしちゃうしで。ささ、御坂さんもどうぞ」

御坂「むむ……カロリー凄そうだけど……」

初春「このあとバッティングセンターとかで運動すればいいんですよ。ほらほらー」

御坂「くぅ……」



御坂「もうパフェなんて見たくないわ……」

初春「なんだかんだで私が一番食べましたねぇ」

佐天「さーて、それじゃ次はどこ行きますか。本当にバッティングセンター行きますか?」

白井「まぁー腹ごなしにはちょうどいいですの」

御坂「それじゃ出よっかしらね」

759: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 15:41:25.39 ID:O2N7k3ko
打ち止め「ごっちそうさまぁー!ってミサカはミサカは手を合わせたり!」

一方通行「腹ァ膨れたな」

打ち止め「あー駄目だよごちそうさまってしなきゃ、ってミサカはミサカはアナタをしかってみる!」

一方通行「……ゴチソウサマ」

打ち止め「うわあ素直に言うなんて思ってなかったかも、ってミサカはミサカは割と予想外なアナタの行動に驚いてみる」

一方通行「テメェ……」

打ち止め「ほらほら食べ終わったし早くお会計して!ってミサカはミサカは今後の予定を考えてスピーディーに行動することを心がけてみたり!」

一方通行「ハイハイ」

760: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 15:42:17.89 ID:O2N7k3ko
店員「――-以上で、お会計6320円ですー」

御坂「カードで」

店員「かしこまりました、少々お待ち下さいませ」

佐天「『カードで』」(キリッ

初春「かっこいいですねぇ、惚れちゃいそうでした」

白井「貴女たちの基準がわかりませんの……これくらい普通でなくて?」

佐天「私は無能力者ですからカードなんて持ちません!」

初春「同じくただのレベル1ですからカードなんて必要ありません!」

白井「いばることですの?」




打ち止め「お会計ーお会計ー」

一方通行「伝票出すのなンざ誰がやってもいいだろうに……」

打ち止め「じゃあミサカがやってもいいよね?ってミサカはミサカは―――あー!サテnむぐっ」

一方通行「(あ、あっぶねェ!!こンなとこではち合わせるなンざどンだけついてねェンだ)」

御坂「(げっ、何このタイミングで来てんのよアイツ……!そ、そのまま打ち止め押さえてなさいよ!)」アイコンタクト

一方通行「(言われなくてもわかってンだよ!!)」アイコンタクト

店員「―――はい、カードお返しします。こちらレシートですね、ありがとうございましたー」

御坂「さ、さあ皆はやく行こうか!」

佐天「?どうしたんですかそんなに急いで」

御坂「時は金なりよ!」カランカラン

761: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 15:42:51.73 ID:O2N7k3ko
一方通行「ふゥ……(焦った……)」

打ち止め「むぅー!むぅぅー!」

一方通行「っと、悪ィ」パッ

打ち止め「ぷはぁっ!い、いきなりどうしたの!?ってミサカはミサカは息を大きく吸いながらたずねてみる!」

一方通行「い、いや、アイツは今ツレと一緒だっただろ?オマエが入ってく場面じゃねェと思ってな」

打ち止め「そうかなぁ、ってミサカはミサカは久しぶりにサテンに会ったし挨拶したかったって想ったり」

打ち止め「アナタだって久しぶりに挨拶したかったんじゃないの?ってミサカはミサカはたずねてみる」

一方通行「……まァ」

一方通行「(アイツ、笑ってたな―――俺が言うのもおかしな話だが、いい笑顔だった)」

一方通行「(そうだ、これでいいンじゃねェか……俺みてェなクソッタレと関わっている必要なンてねェ)」

一方通行「(忘れちまったほうが、アイツのためじゃねェか……!)」

打ち止め「え……えぇ!?ちょ、どうして泣いてるの!?ってミサカはミサカは静かに涙を流し始めたアナタに驚いてみる!!」

一方通行「な、なンでもねェ!目にゴミがはいっちまったンだよォ!くそっ、反射が使えねェってのはホンット不便だなァ!!」

766: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 19:37:01.55 ID:O2N7k3ko
―――――――バッティングセンター

カキーン

佐天「うおっ……すっごい飛んだ」

初春「さっきからよく飛んでますねぇ」

佐天「私も不思議だよ。なんか、思ったより体が軽くなってるっているかさ」

佐天「一週間も寝てたわりによく動くなーとか」

初春「まぁ、そういうこともありますよ」

―――――――ゲームセンター

佐天「そぉいっ!!」バァンッ

佐天「さーて……お!記録更新!!」

御坂「すごっ」

白井「およそ私たちと同じ年齢とは思えませんの」

初春「でも怪力女ってどうなんですかね?」

佐天「ちょ、そんなこと言わないでよ……」




―――。

御坂「さって、時間も時間だし、そろそろ帰りますか」

佐天「やー、なんだかすっごく久しぶりに遊んだ気がします」

初春「(実際久しぶりですしね)」

佐天「そいじゃー御坂さん、今日はありがとうございましたっ!」

御坂「気にしないで気にしないで。じゃあ、またね」

佐天「はいっ、それではー」だっ

白井「?走っていきましたの」

初春「何か急ぎの用事でもあるんですかねぇ」

御坂「……」

767: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 19:38:14.72 ID:O2N7k3ko
佐天「……っと、あれ?なんで私走ってるんだろ」

佐天「んー、けどなんだろなぁ。なんだか、毎日走ってたような……あれ?」

佐天「……いっか。走ってる方がなんだか落ちつくし、気持ちいいし。よーし、久しぶりにあそこ行ってみますか」




佐天「さんじゅうきゅうどーのー!たいおんだいてー!」

佐天「ふぅー……マイベストプレイス到着、っと。うん、いいトレーニングになった!」

佐天「……トレーニング?なーんかひっかかる……けど、ま、いいかな」

佐天「それにしても、やっぱりここからの夕焼けの眺めは綺麗だなー。秋と薙いだような雲が重なってすっごく綺麗」

佐天「……ん」

佐天「あれ……夕焼け、空」

佐天「何か、忘れてる、ような」

ガサッ

佐天「っ」ビクッ

上条「よっ、佐天さん」

佐天「……あ!昨日の人!あんな怪我だったのにもう退院したんですか?」

上条「体の回復力には定評のある上条さんですよ、っと。隣いいか?」

佐天「はぁ、いいですけど……けど、よくここを知ってましたね。道の手入れされてなくて普通気付かないんですよ。
   夕焼けが見られる、私が学園都市に来て初めて見つけたお気に入りの―――何笑ってるんですか?」

上条「いや、大覇星祭の時と同じこと言ってるなと思ってさ」

佐天「?大覇星祭の、とき?」

佐天「……あれ……確かに、大覇星祭のとき、私はここに来たけど―――何だろ、この違和感」

上条「ここで、俺は佐天さんに愚痴ったよな。記憶喪失のこと」

佐天「記憶、喪失……」

768: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 19:38:57.33 ID:O2N7k3ko
ビリビリッ

上条「っ!」パキーン

佐天「でっ、電撃?!」ビクッ

上条「これは……御坂か」

ガサッ

御坂「……ふん」

佐天「え、御坂さん?どうしてここに?」

御坂「……ちょっとね」

御坂「(佐天さんの行動が、記憶を消す前の佐天さんの行動とそっくりだったからよ。記憶は消しても習慣は変わらない、ってことかしらね。
   それで何か思い出さないか不安になってついてきたけど、まさかアイツがここにいるなんて)」

上条「いきなり電撃とはご挨拶だな御坂。何か佐天さんにバレちゃ不味いことがあるのか?」

御坂「……べっつにぃ?私が電撃飛ばすのはいつものことでしょ?」

上条「自覚してんのか……」

佐天「え?え?あのっ、お二人は知り合いで?」

上条「……やっぱり、俺のことは何も覚えてねぇのか」

佐天「覚えて……?」

上条「ああ。理由や理屈は知らねえけどよ。どうやら、佐天さんは記憶を―――」

御坂「それ以上は……!」ビリビリッ

上条「うおっ!」パキーン

上条「……まさかとは思ってたが、御坂。お前が佐天さんの……」

御坂「……だったら何よ。何だっていうのよ」



佐天「(いまいち話が視えてこない……)」

769: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 19:40:07.04 ID:O2N7k3ko
上条「お前、自分が何したのかわかってんのか」

御坂「ふん。それが佐天さんにとって、一番なのよ」

上条「記憶が消えることが、一番だと……?」

御坂「だってそうでしょ?佐天さんは普通の中学生じゃない。それが、ちょっとした拍子で私やアンタが関わってる世界に入って来た。
   それは本来あり得ないことだし、そのせいで佐天さんは辛い思いをしてきたのよ。
   けど、佐天さんはもう何の力も無い中学生に戻ったの……もう戦わないでいいのよ」

佐天「た、戦う?」

御坂「だったら、いままで関わって来た辛い記憶なんて消しちゃった方が幸せに決まってるじゃない!」

上条「……御坂、お前、それ、本気で言ってんのか」

御坂「だったら何よ……」

上条「……ふざけんなよ。勝手に人の記憶消して、何良いことやったみてぇに言ってんだ」

御坂「けど、こうでもしなきゃ佐天さんの心はもたなかったのよ」

上条「勝手に佐天さんの可能性を否定してんじゃねえよ!」

佐天「(そういえば私って『佐天』って呼び捨てにされたことないなぁ……あ、でも涙子って呼ばれたことは、ある、よな……)」

御坂「くっ……何よ、また説教するつもりなの?でもおあいにくさまね。今回は、私は悪いだなんて思ってない!」

御坂「これが!一番良い方法に決まってるんだから!」

上条「何が一番良い方法だ……記憶を消すことが良い方法なわけねぇだろうが……!」

上条「それに、そんな方法で幸せになるのはお前だけだ……傷つく佐天さんが見たくないからって、お前の自己満足に周りを巻き込むなよ!」

御坂「……!そんなのアンタには言われたくないわよ!」

上条「そうだな、確かに俺にはそんなこと言う資格は無いのかもしれない。けど、それとこれとは話が別だ」

上条「佐天さんの意思を無視した記憶消去だぁ?記憶が無くなることの怖さを知らねえやつが勝手なことするんじゃねえ!」

上条「しかも俺のことを完全に忘れちまってるってことは、他にも何人か完全に忘れてる奴がいるってことだろ?」

上条「もしそいつらが佐天さんに声をかけたらどうなる!俺は傷ついたぞ!他人の人間関係を勝手に壊してまで手に入れる幸せなんてまやかし以外の何物でもない!」

御坂「……っ!!知らない……知らない知らない知らない!周りなんてどうでもいい!私はただ、佐天さんが―――!」


佐天「……うーん。話はよくわかりませんが、私はよく言う記憶喪失になっちゃったってわけですね。しかも御坂さんの手で」

佐天「御坂さんがそんなことするとは思いませんけれど、でもところどころ感じるこの違和感は、記憶が無くなってるってことにほかなりませんね」

770: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 19:41:36.50 ID:O2N7k3ko
御坂「……ふふ、安心して佐天さん。今日ここで起こったことも、あとで忘れさせてあげるから」

佐天「こわっ」

上条「御坂、お前……!」

御坂「ここまできたらもう戻れないのよ……例えあの第五位、心理掌握の手を借り続けてでも、私は佐天さんを、」

佐天「なにこの御坂さんこわい」

上条「……佐天さん。一応聞いとくぜ」

佐天「え?」

上条「もし佐天さんが記憶を取り戻したいってんなら、ひとつ心当たりがある。どうだ?」

御坂「なっ……アンタまさかその右手で!」

上条「さっきお前が第五位、って言ったからな……能力ってことなら、この右手で打ち消せるかもしれないだろ?」

佐天「ふむ?そういう能力をもっていると?」

上条「ああ。それで、どうする?」

御坂「やめ……やめて、駄目よ佐天さん!」

佐天「えっと、それじゃお願いします」

御坂「……!そんな……」

上条「わかったか御坂。これが佐天さんの選択だよ。他人の記憶をどうこうするなんて、やっちゃいけないことなんだ」

御坂「そんな……私は、私はただ―――佐天さんに笑っていてほしかっただけなのに……!」

佐天「んー、そこまで私のことを想ってくれるのはすっごく有難いんですけどね。
   ただ、やっぱり、私は嫌なことも辛いこともあってこその人生だと思うので」

佐天「折角のお気持ですが、ごめんなさい」

上条「……だそうだ。それじゃあ、佐天さん」

佐天「はい、なるべく痛くしないでくださいね?」
                  ゲンソウ
上条「ああ―――佐天さんの幸せを、この手で壊してやるよ」



パキーン

771: ◆oDLutFYnAI 2010/10/09(土) 19:48:35.63 ID:O2N7k3ko
「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――、ぁ」


頭にかかっていた靄がはれて、忘れていた記憶が戻ってくる。
一方通行さんを助けられなかったことも。
左天さんが消えてしまったことも。
能力を失ってしまったことも。
三ヶ月間ひたすらに走り続けてきたことが、全て無にかえってしまったことも。

「――――――……ああ、そっか」

なるほど、確かにこれは辛い。
辛いのを通り過ぎて、胸にぽっかりと穴があいてしまったようだ。
足の力が抜ける。もう立っている気力も無い。
骨が無くなったように、べしゃりと座り込む。

御坂さんが心配してか近寄ってくるがどうでもいい。
上条さんが声をかけてくれるがどうでもいい。
今はただ。
何もかも失くして何もかも終わってしまったことが、ひたすらに心にのしかかってきて―――



―――私は、考えることを止めた。

788: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 10:23:47.17 ID:lmVhWtko
――――――――――。


佐天「―――……病院、か」

御坂妹「目が覚めましたか、とミサカは声をかけます」

佐天「……うん。いろいろと」

御坂妹「……申し訳ありませんでした、とミサカは記憶の件に関して謝罪します」

佐天「いいよ、別に。それじゃ」

御坂妹「っ、まだ立たないほうが―――」

佐天「大丈夫だから放っておいて。じゃあね」

ガチャン

789: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 10:24:27.95 ID:lmVhWtko
佐天「……ん」


上条「だから、どんな事情だとしても記憶を消すなんて間違ってるんだよ!」

御坂「アンタは佐天さんの友達じゃないからそんなこと言えるのよ!!」

白井「このまま佐天さんが意識を取り戻さなかったらどう責任をとるつもりですの」

初春「初対面の方にこう言うのもなんですけど、勝手なことしないでください」

上条「テメエら……いい加減に―――」

佐天「病院ではお静かに、ですよ。例え談話室でも」

初春「佐天さんっ!もう体は大丈夫なんですか?」

佐天「おかげさまで、ね。体どころか頭も元通りだよ」

御坂「……っ。佐天さん、誤解しないでほしいんだけど、私達は佐天さんのことを想って―――」

佐天「上条さん。右手、ありがとうございました」

御坂「―――っ!」

790: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 10:24:59.51 ID:lmVhWtko
上条「ん?ああ、そりゃいいけど……大丈夫か?」

佐天「ええ。運んでもらってごめんなさい。また今度ごはんつくりに行きますから。何時になるか、わかりませんけど」

上条「……無理すんなよな」

佐天「はい」

初春「あの……佐天、さん」

佐天「なに?」

初春「……いえ、なんでも、ないです」

佐天「そう。それじゃあね」



御坂「……ありがとう、ね」

初春「……っ」だっ

白井「う、初春?どこへ行くんですのー?」

御坂「……くっ」

791: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 10:27:03.95 ID:lmVhWtko
佐天「(――――――――――――――――――)」フラフラ

佐天「(――――――どうして、左天さんは……)……っ!」

佐天「……ぅ、あ……!」

佐天「(駄目だ……何か考えようとすると息がとまる……)」

佐天「(……なるべく何も考えないように)」

佐天「――――――――――――――」フラフラ


ポツ  ポツ

ザアアアアアアアアアアアアアアアアア


佐天「……(雨……)」

佐天「……まぁ、いいや」フラフラ




通行人「あれ、あの子……」

通行人2「ああ、雨で透けてるな」

通行人「お前は最低だな」

792: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 10:30:27.94 ID:lmVhWtko
佐天「……」フラフラ

佐天「……っと」コツンッ ベシャッ

佐天「ぁ……(何も無いとこで躓くなんて……)」

佐天「……ふぅ(でも、まぁ、いっか……なんだか、起き上がるのも面倒になっちゃった)」

佐天「……(見た感じ路地裏みたいだし、ここにいたら、こんな天気じゃきっと誰も来ないよね)」

佐天「……ぁぁ、疲れたな」

佐天「……まあ、もういいや」

佐天「(もう、いい……こんな、意味のない)」

佐天「……(眠ってしまおう……)」





こうして佐天涙子の戦いの生活は幕を閉じた。
しかし彼女はまだ知らなかった。
やり残したことが、まだあることに――――

796: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 11:34:49.15 ID:lmVhWtko
佐天「――――――――――――――――」

佐天「……ぅ(あたたかい……)」

佐天「……あれ……どこ、だろ。ここ」

初春「気づきましたか、佐天さん」

佐天「……初春、か」

初春「雨のなか倒れててびっくりしましたよ。寒気とかしませんか?」

佐天「……世話んなったね。それじゃ」

初春「……怒ってますか」

佐天「何をさ」

初春「記憶を変えたこと」

佐天「……愚問だね」

初春「……っ。けど、私は、」

佐天「余計なお世話なんだよ!!」

初春「っ」ビクッ

797: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 11:35:34.41 ID:lmVhWtko
佐天「私を助ける?勝手なことしないでよ!!誰がいつ助けてなんて言ったのよ!
   私はやらなきゃいけないことがあった!自分なんかより大切な人がいたんだ!!
   だっていうのに、もう何かをする力も残ってない!何かをする想いも能力と一緒に消え去った!」

佐天「そりゃあ初春たちは満足だよね。私を救ったつもりでいてさ!
   けど救われない、初春たちのせいで私の三ヶ月間は無駄になった!何もかもが無くなった!
   血を吐きながら走り続けてきたのに―――!」

初春「ぁ……け、ど、だって、私は、友達が傷ついてるところなんて見たくなくて、」

佐天「友達?はっ―――勝手に人の記憶をいじる奴が、友達なわけないでしょ」

初春「――――、ぁ」

佐天「じゃあね」

ガチャン

798: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 11:36:28.60 ID:lmVhWtko
ザアアアアアアアアアアアア

佐天「まだ降ってたか……まあ、どうでもいいか」

佐天「……あーあ、初春に、ひどいこと言っちゃったな」

佐天「……わかってるよ。初春の気持ちくらい」

佐天「(だからあれはただの八つ辺りなんだよ……けど、そうでもしなきゃやってけない)」

佐天「……はぁ。あそこで折れてたら、私はきっとまた、前みたいに4人で笑えてたんだろうな」

佐天「……間違えちゃった、か」

佐天「……これで完全にひとりぼっちになったけど……まあ、いいか」

佐天「どうせもう――――先なんてない」

佐天「疲れた……本当に、疲れた」

佐天「……疲れた、な」フラフラ


ザアアアアアアアアアアアアアアアアア

799: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 11:37:03.03 ID:lmVhWtko
pllllllpllllllll

御坂「……もしもし」

初春『御坂さん……』

御坂「初春さんか……どうしたの」

初春『佐天さんが……私たちのこと、友達じゃないって』

御坂「っ……、そう」

初春『……どうしましょう、これから』

御坂「……悔しいけど、私たちはもうどうしようもないわよ」

御坂「だって佐天さんをずっと騙そうとしてたんだもん……もう、どうにも」

初春『……』ピッ

白井「お姉さま、初春はなんと」

御坂「……なんでもないわよ。ただ、私達はもう手を出せないってこと」

800: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 11:39:10.55 ID:lmVhWtko
佐天「……」フラフラ

佐天「……、ん」

スキルアウト「ようお嬢ちゃん、ここに一人で来るなんて不用心だぜ」

スキルアウト2「ここは俺たちみたいな悪い奴らがたまってるからよ」

スキルアウト3「jcがこんなところに来るなんて不自然でござる」

佐天「……そう」

スキルアウト「なんだぁその反応」

スキルアウト2「あんまり舐めた態度とってるとオイタしちゃうぞ☆」

スキルアウト3「まさか……そうか、貴様も組織の……」

佐天「……組織?」ピクッ

スキルアウト「え、そっちに反応しちゃうの?」

スキルアウト2「てめっ、なんか俺がすべったみてぇじゃねえか。このやろうっ」ぶんっ

佐天「っと」ヒョイ

スキルアウト2「っとと、いっちょまえに避けやがったか。おい、抑えてろ」

スキルアウト3「あいよー」ガシッ

佐天「む……」

スキルアウト3「うむ、  のいい香りがするでござる」

スキルアウト「いやその発言はどうかと思う」

スキルアウト2「しかし確かに、よく見るとなかなか可愛い顔してんなぁ」

スキルアウト「ええーお前もそんなこと言っちゃうの」

スキルアウト2「いいじゃねえか、もとはと言えばこんな場所に来ちまうことが悪いんだぜ?」

スキルアウト「んー、まぁ俺は写真とってそれネットで売れればいいから好きにすりゃいいよ」

スキルアウト2「アンタのほうがよっぽどゲスだぜ……というわけで、お嬢ちゃん。俺はこう見えても紳士だからよ、暴れなきゃ優しくしてやんぜ」

スキルアウト3「おうふ、拙者はすでに我慢できないので後ろから擦りつけているでござる」

スキルアウト「(きめぇ……)」

801: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 11:39:48.84 ID:lmVhWtko
「それじゃあ」

そう言うと、スキルアウトの一人は私の制服の中へと手を伸ばす。
指先で下腹部からおへその辺りを撫で廻しながら、首筋に舌をはわせてくる。

「……んっ」

気持ちいいとか気持ち悪いとか、そういうのはもう感じない。
ただくすぐったくて声が漏れた。それを、彼はどう勘違いしたのか、感じてやがるぜふひひと
さらにまさぐる手の動きをいやらしくする。
わき腹をなでる手が、肋骨の溝を丁寧に撫でつつ私の胸へとのびる。

「 

荒い息遣いが後頭部から聞こえてくる。はがいじめにしている男が、興奮しているようだった。
そういえば、さっきからスカートごしに い何かが  つけられているが、まあ、おそらくそういうことなのだろう。
嫌悪感は不思議と感じない。どうでもよかった。

「へへ……おとなしくして、良い子だな。ご褒美をやるよ」

   んでいた男が、そんなことを言いながら私の頭にもう片方の手を置いて頭を固定し、唇を近づける。




―――――――――――――その時に。
頭に手を置かれた時に、ふと思い出した。
もう随分前に感じられるけれど―――――――――――

809: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 14:50:09.67 ID:lmVhWtko
「……れるな」

「ん?なんだって?」

「触れるな……!」

距離は30cm。腕は固定され動かない。
自由が利くのは足と頭だけと言えども、頭突きをするには距離が足りない。
故に、狙うは、

「いってぇ!」

まずは脛をつま先で蹴り飛ばす。
痛みにひるみもだえ、先より距離があいたところを見逃す手は無い。
地面を蹴り、左足を奴の体にかけ右足で顔面を蹴り飛ばす。
そして、

「せぇ……のっ!」

頭より上に上がった足を、思いっきり振り下ろす。
その速度をもってはがいじめにしていた後ろの男を背負い投げる。

「……ふぅー」

これで体の自由は取り戻せた。
しかしこの程度では逆上させただけで気絶させるほどのダメージは無い。
だからここからは三対一。しかしたかがスキルアウト如き、3人まとめてかかってきたとしてもどうということはない。

だって、この体は――――





810: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 14:50:59.60 ID:lmVhWtko


――――――――――――。

「……」

朽ちた床に横たわるのは先のスキルアウト達。
何の問題もなかった。
男三人相手にしたところで、負けるはずがなかった。
だって、この体は―――

「……お兄ちゃん」

この体は、ずっと左天さんと共にあったんだから。
左天さんはいなくなってしまったし、能力もなくなってしまった。
けれど、左天さんと共に過ごした証なら。左天さんから得たバトルセンスなら。
未だ消えず、こうして残っていた。

無駄なんかじゃなかった。
意味がないなんてなかった。
確かに、たくさんのものを失くしてしまったけれど、それでも左天さんは確かにここに居たんだ。


「――――あぁ」


それだけで十分。
立ち止まるのはもう止めにしよう。
これから先。
もうなにも失くさないように、今はまた前へ。









――――――――――――――――――――――――おわり。

811: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 14:51:57.25 ID:lmVhWtko























―――――――――――――――――――――――そして。


佐天「おっはよーうういはるー!」バサッ

初春「とォイいっ!?さ、もう、佐天さん!!新学期早々やめてください!!」

佐天「いやぁ初春は二年生になってもパンツはお子様だねぇ。でもそれでいいと思うよ、だって可愛いもん」

初春「くぅぅぅ……なんて辱め」

812: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 14:52:23.55 ID:lmVhWtko
―――あれから。
いろいろあったけど、まずは初春にひどいことを言ったことについて謝罪した。
一方通行さんにもなんとか会えて、なんかいろいろごめんね、って謝ったら気にすンなってあしらわれた。
ぶっきらぼうな答え方だったけど、口元がにやけてたのを私は覚えてる。  こんめ。
あとは、上条さんが死んじゃったり一方通行さんがマジ天使になったりしたけれど、全体的には変わりなく。
今日も今日とて、いつもどおりの毎日が過ぎている。


佐天「ああ、そうだ初春。今日って初春放課後時間ある?」

初春「ん、いえ、今日は新しく風紀委員になった人が配属されてくるので、その人の歓迎会がありますので」

佐天「んーそっか。ま、そうだよねぇ」

初春「すみません、また時間あるときに埋め合わせしますから」

佐天「いいよいいよ、なんとなく聞いただけだから」

初春「そうですか?―――あ、佐天さん見てください!また一緒のクラスですよ!」

佐天「おーそれじゃまた一年よろしくおねがいしますだね、いろいろと」



―――。


佐天「ふぅ、半ドンだと楽だねぇー」

初春「半ドンって言い方知ってるのたぶん少数だと思いますけど……」

佐天「さって、それじゃ私用事あるから、この辺で。またね」

初春「はーい、また明日ー」

813: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 14:53:12.94 ID:lmVhWtko
―――。


初春「おはようございまーす」

白井「ごきげんようですの」

初春「結局、今日配属されてくる新人さんって誰なんですか?」

白井「私もまだ教えてもらってませんのよ」

固法「私は勿論知ってるけどね。まぁ、言っちゃったら面白くないし」

白井「面白いどうのという問題ではないと思いますけれど……」



佐天「どうもーおくれてすいませーん」

白井「?佐天さん、申し訳ございませんけれど今日は新人の歓迎会ですので……」

初春「あれぇ、佐天さん用事はもう終わったんですか?」

佐天「いや、用事は今から始まるんだよ」

初春「えっ」

佐天「というわけで、風紀委員第177支部に配属されました佐天涙子です!新米ですが日々精進していきたいと思いますので、
  これからご指導ご鞭撻よろしくお願いします!」

白井「えっ」

初春「えっ」

固法「こちらこそ、よろしくね佐天さん。自己紹介は、まあいいかしら?」

佐天「ええ、固法先輩。あ、これどうぞ、つまらないものですが牛乳プリンです」

814: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 14:53:56.23 ID:lmVhWtko
白井「……え?」

初春「え……っと?」

固法「いつまで呆けてるのよ、ほらほら席について」

白井「いや……いやいやいやいや」

初春「だって、え、その、え……?」

佐天「んー?そんなに私が風紀委員になるのが意外だった?」

初春「だって……だって佐天さん、そんなこと一言も言ってなかったじゃないですかぁ!」

佐天「そりゃかくしてたからね。今日のために。いやぁ大変だったよ、たった半年で試験に合格するのは」

白井「大変もなにも、そもそも佐天さんは無能力者ですのよ……?初春のような情報処理能力があるわけでもありませんのに……」

佐天「まあそうですけどね」

固法「佐天さんは能力も情報処理も確かにダメダメだったけどね。その分ペーパーと、それから実技試験で突破したのよ」

白井「実技?」

佐天「ええ、実技です。能力無しなら白井さんに負ける気はしませんよ?能力ありでもやりようによっては勝てます」

白井「それはまあ大層なことを」

佐天「あの寮監さんにはさすがに負けるかなぁ……ちなみに、試験当日の相手は固法先輩だったわけで」

初春「固法先輩が?」

固法「ええ。で、負けちゃった」

白井「なんと」

佐天「ま、そういうわけで!これからよろしくお願いしますね、先輩方っ」

初春「ならココア買ってこいよ新人」

白井「私はミネラルウォーターで」

佐天「なん……だと……」

815: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 15:00:17.14 ID:lmVhWtko
――――。

初春「それにしても、どうして風紀委員になったんですか?」

佐天「ん……それは、さ」

佐天「……左天さんの残してくれたモノを、左天さんがここに居てくれた証を、無駄になんてしたくなかった」

佐天「それに、もう何も失くさないように、何かを守れるように強くなりたいって思った」

佐天「だからだよ。それだけさ」

初春「……そう、ですか」

佐天「うん―――ねぇ、初春」

初春「なんですか?」

佐天「―――左天さんは。最後に、何か言ってた?」

初春「―――『お前と過ごした三ヶ月間、悪く無かったぜ』、と」

佐天「……そっか。なら、いい。それでいい」

817: ◆oDLutFYnAI 2010/10/11(月) 15:05:50.79 ID:lmVhWtko
左天さんは自分の世界に帰り、自分の道を進み始めた。
だから私も元の生活に戻って、自分の道を進むことにしよう。

佐天「さて、と!それじゃあさ、今から二人で二次会しよっか」

初春「二次会って……どこでですか」

佐天「そりゃ勿論私の家だよ。この半年で少しは成長したかなーって思ったけど、やっぱり最近寂しくてさ」

初春「それって……」

佐天「……その、今日は、一緒に」





―――――――とある佐天の第四波動  おわり。

引用元: 佐天「延長戦はいりますねー」