1: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/29(土) 12:31:53.89 ID:iFKyUDNi0

禁書×めだかのクロス作品です。

球磨川『学園都市?』 前編 

球磨川『学園都市?』 後編

あらすじ的なの

球磨川が絶対能力進化計画の中止を『なかったこと』にし、死んだはずの妹達が蘇る。
打ち止めをさらわれた一方通行、黒子を傷つけられた美琴が打倒球磨川のため動き出す。

負能力というマイナスの能力に目覚めた佐天、ミサカ9982号、天井が立ち塞がるが、
何とか球磨川の元へ辿り着く。

そしてその事件当日の朝、学校へ登校した上条を待ち受けていたのは友人である姫神と青髪ピアス。
彼らもまた凶悪な負能力を保持していた。

人吉瞳という助っ人ともに上条は二人と戦う決意をする。

不幸(マイナス)と幸福(プラス)が交差するとき物語は始まる――



2: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/29(土) 12:43:05.89 ID:iFKyUDNi0
負能力まとめ

佐天涙子
能力名【公平構成(フェアフォーマット)】
レベル【マイナス4】
効果【対象の身体能力、演算能力などを佐天基準にする】

ミサカ9982号
能力名【狂痛回廊(インストーラー)】
レベル【マイナス4】
効果【感覚委託】

天井亜雄
能力名【破綻理論(サイコロジカル)】
レベル【マイナス3】
効果【現象の不安定化】

球磨川禊
能力名【大嘘憑き(オールフィクション)】
レベル【マイナス5】
効果【全てを虚構にする】

以上です。青髪、姫神は作中で説明していきますので


13: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/29(土) 22:38:11.66 ID:NYo14NJu0
「こんな現実はどう殺す?幻想殺し!!」

もう青髪は上条を親しくカミやんとは呼ばない。

それは明らかなる宣戦布告であり、この場を戦場と変える合図だった。

叫びと共に地面は再び沈下し、風が吹き荒れ、雷が降り注ぐ。

圧倒的で、絶対的で、絶望的な負能力をふるう青髪に、上条は己の持つ右手一本で立ち向かう。

地面を戻し、風を止め、雷を受け止める。

だが、一向に青髪の元へはたどり着けず、ベクトル操作による攻撃で間を開けられてしまう。

それでも上条はひるむことなく突進を続けた。

その姿はまるで、戦時中の特攻隊のように自らを省みるものではなく、傷つきながらも一歩一歩前進をする。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

上条の雄叫びが木霊する。

今、上条を支えているのは信念でしかなかった。

あの日、あの大嘘憑きに否定された自分の信念。他人を殺してまでも自分の想いを貫き通す信念。

誰かを助けたいと思う信念だった。

14: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/29(土) 23:01:26.47 ID:NYo14NJu0
「無駄や!」

青髪は猪突猛進を続ける上条へ、薙ぎ払うように右手を膝元から上げ空を切ると、

地割れなどと生易しい表現では現しきれない勢いで地面が爆発した。

「レベル4最強クラスの念動力や!その り上げた地面を壁にする!!」

空中で強固な土壁を形成し、まるで一つの部屋のようなものを造り出し、そのままそこへ上条を閉じ込める。

当然、青髪はこれで動きを止めれたとは思っていない。幻想殺しの前では、能力で作った壁の強度など関係はない。

だから青髪はそのまま平衡戦場の能力で雨雲を呼び寄せ、大雨を降らせる。一瞬の足止めと、目隠しが出来ればよかったのだ。

「常盤台の超電磁砲が勝てんかったのは能力の使い方を間違えとっただけや、知ってるやろ?水は電気をよく通す」

土壁が幻想殺しの効果によって土に還らされ、上条の視界が戻った先では両手に電気を帯電させた青髪が待っていた。

「くそっ!」

慌てて上条は右手をかざすが、電撃は上条を目標としていなかった。

「目標はそこや」

それは上条の足元に出来た深い水溜り。

青髪の意図に気が付いた上条は急いで水溜りを消そうとするが、人間の動作より遅い電撃があるはずもない。

「っがあぁぁぁああ!!」

結果、水溜りに落とされた雷撃は上条の体へ伝導しその身を焼きつけた。

15: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/29(土) 23:19:43.89 ID:NYo14NJu0
この戦いで初めて膝をつく上条。

「なんや、気を失っとらんのか。そこで寝むっときゃあ幾分ましやったのになぁ」

「っは!どこかのビリビリ娘のおかげで電気には耐性ができてるんだよ!!」

「そーか。んじゃ炎ならどうや?」

そう言った青髪の両手には巨大な火の玉が形成される。

「発火能力!?いや、あれは……」

その炎は単なる発火能力のものではなかった。それは上条がインデックスと関わりを持ち始めて戦った魔術師の技。

「イノケンティウスってゆうらしいわ。まぁ記憶を亡くした君には分からんやろうけどな」

炎が集まり人の形を作り出す。

「やれ」

青髪の短い一声で炎の悪魔は上条へと襲いかかる。右手で形を崩しても何度も蘇り、上条の体を焼く。

「ぁあぁああああ!!」

上条を抱くようにして全てを燃やそうとするイノケンティウスをもう一度右手で殺し、一瞬形が崩れた隙をつき脱出をする。

追撃に備え右手を構えた上条だったが、既に炎の悪魔は居なかった。

代わりに二メートルを超える日本刀を、抜刀の構えで待ち受ける青髪の姿。

「七閃……」

そして、そこから繰り出された七つの斬撃(正確にいえば七本の鋼糸)が上条の体を切り裂いた。

19: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/29(土) 23:41:29.54 ID:NYo14NJu0
「っぐ……」

先程と同じように膝をつき息を切らす上条だったが、最早軽口を言う元気などは残っておらず、満身創痍だった。

「圧殺!」

青髪は攻撃の手を休めない。

三度上条が対戦したことのある人物の技、黄金錬成で頭上に2トントラックを出現させそのまま落下させる。

なんとか右手を上げることのできた上条はトラックを打ち消すことが出来たが、あまりのダメージに倒れこんでしまった。

「ラスボス前はこうやってボスラッシュがあるのが当たり前やで?ダウンするのはまだ早い!!」

倒れた上条のすぐ側に空間転移で移動する青髪は右手をそっと上条の足首へ伸ばすと、がっしりと掴んだ。

そして、その掴んだ足首は徐々に腐敗を始めたのである。

ぐじゅる、ぐじゅると。

「っ痛!!」

足を思い切り振り回し、無理やり青髪の手を除け、上条は異変を感じた足首へ右手を伸ばした。

そこで腐敗は止まりかろうじて皮膚の表面だけが腐るだけとなった。

「荒廃した腐花(ラフラフレシア)。これはボク等と同じ病院に通ってた子の負能力や」

上条を逃したにも関わらず慌てる様子も見せず能力の解説をする青髪は両手の平を上条に向けるように立っていた。

「すごいで、この手は。生物・無生物問わず全て腐らせてしまうんやで……気体すらもな」

上条は自身の内部に起きた異変を察知したところで青髪の言葉の意味を理解した。

「要は毒ガス攻撃ってか……」

服の袖で空気を直接吸わないようにして、風通りの良い所まで移動する。

さらなる追撃が来ると思っていた上条だったが、そこで一つの疑問が頭を過ぎる。

22: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/29(土) 23:54:53.95 ID:NYo14NJu0
「なぁ……青髪……」

自分を呼ばれ、攻撃の手を止める青髪。どうやら質問をする機会が与えられたようだ。

「今、負能力も反映させたんだよな……どうして球磨川の負能力を使って勝負を決めない?」

上条は球磨川の負能力の効果は知らないが、

始めに青髪が説明したことが真実ならば、球磨川の持つ負能力は青髪の平衡戦場よりも厄介な能力なはずだと考えた。

なのに、青髪はそれをしない。

「良い所に気がつくなぁ幻想殺し。でもな、球磨川さんの【大嘘憑き】は幻想殺しと相性が悪いんや」

「その右手の効果のせいで、大嘘憑きは全く意味をなさんからな」

全てを虚構に返す大嘘憑きは確かに無敵だが、それはあくまで効果が対象に効いたらの話である。

神の加護さえ打ち消してしまう幻想殺しの前では、上条に傷一つつけることが出来ない。

だから平衡戦場で様々な能力を使って追いつめた方が効率的なのだ。

「それに、ボクはあの負能力を反映できん」

それは意外な言葉だった。

全ての平行世界を司る青髪が、反映できないという事は皆無なはずである。

「ホンマ不気味やであの人は。どの平行世界にも存在しぃへん、彼はこの世界にしか居ないんや」

無限ともいえる平行世界に存在しない男。球磨川禊。

「だから、あの人が関わった出来事はボクでも先が読めんし、どうする事も出来ない」

せやから、と続けて青髪は呟く。

「せやから、カミやんにはあの人と関わってほしくないんや」

23: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/30(日) 00:05:48.13 ID:rpHhZSIR0
「…………」

確かに、今目の前の男はそう言った。

そのたった一言が、上条の抱いていた疑問を全て繋げ確信へと導く。

「なんだよ……」

この最悪な男は。

「そういう事だったのかよ……」

平行世界を操る力を持ちながら、今まで普通の生活を送ってきたこの男は。

「全部、俺の為だったんだな……」

どこまでも不幸(マイナス)で、どこまでも不器用なこの男は。

「ありがとうよ、青髪」

……どこまでも優しい(プラス)な男だった。

思えば、これほどまでに圧倒的な力を持つ青髪を敵に回してここまで生きて居られるはずもないのだ。

上条は優しく微笑む。

「また呼んでくれたよな、カミやんって」

それは、目の前の不器用な男なりの不器用な伝え方だった。

「だから、お前も助けてやる!球磨川を倒してまた普段の生活に戻ろうぜ!!青髪ぃ!!」

だから上条は、今は全力でこの喧嘩に挑む事にした。それが、上条なりの答えなのだろう。

25: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/30(日) 00:24:38.80 ID:rpHhZSIR0
「……全く、暑苦しい男やな……カミやんは。頼むからボクに負けたら大人しゅう帰ってや!!」

そう言って青髪は楽しそうに笑みを浮かべる。

「幾ら良いこと言ったってボクは手加減せぇへんで!!」

青髪の背中に天使のような純白の翼が生え、そしてそのまま空高く跳びあがった。

「おいおい!幾らなんでもそりゃあ反則だろ!!」

「第二位の能力!どうせカミやんは厄介事に巻き込まれていつかは戦うやろ、予行練習や!」

青髪はそのまま空中で両手をかざすと、風が吹き荒れ手の中に青白く光る球体が作り出されていった。

「第二位と第一位のコラボレーションや!」

徐々に体積を増やし膨張する球体の正体を、上条は知っていた。

「プラズマか!」

あの時、一方通行が最後の決め技として作成したものと同じプラズマの球体。あんなものが右手以外の部位に当たったら骨も残らず蒸発してしまう。

「げ・ん・き・だ・まってなぁ!!」

青髪は孫悟空よろしく、膨れ上がったプラズマを思い切り上条へ叩きつける。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

対する上条はそれを右手で迎え撃つ。

白い光がお互いの視界を奪っていった。

27: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/30(日) 00:32:52.18 ID:rpHhZSIR0
閃光の光によって一時的に奪われた青髪の視力が徐々に回復していき、プラズマを落とした場所を見つめる。

そこには、右手を突き出したまま立っている、親友の姿。

「あは、あはははははは!!」

思わず笑ってしまう青髪に唖然とする上条。

「ホンマなんやねん自分?反則やでその右手」

「お前ほどじゃねえよ」

空から降りてきて羽をしまった青髪に上条も笑う。

「なぁ、カミやん。ちょっと昔話聞いてくれん?」

笑みを浮かべたまま話し始める青髪に、上条は黙って頷いた。

「さっきちょろっと話した通り、ボクぁ球磨川さんのこと昔からしっててなぁ」

そして、青髪は語り出した。十二年前の出来事を。

29: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/30(日) 00:58:48.09 ID:rpHhZSIR0
「箱庭総合病院っちゅうボクらみたいな異常な子供を集めて検査する施設があってな、ボクと球磨川さんはそこで出会ったんや」

「学園都市の縮小バージョンって感じでな、もう気づいてると思うけどボクの負能力はそのころからあったんや」

姫神のように、球磨川に後押しをされて負能力に目覚めたのではない。青髪はそんな幼少の時代からこのマイナスと付き合っていたのだ。

「その頃のボクは好き勝手にこの能力を使ってて、気に入らん事は取り換え、未来を先読みして危機を回避してきた」

「平行世界がどんなことになるかも分からずにな」

「塵も積もればなんとやら、って奴や。当時いちばん身近な世界しか把握できんかったボクはその世界を滅ぼしてもうた」

「ホンマ、あの時の映像は今でも夢にでるわ」

青髪はそう言って首を横に振る。

「で、何回か目の通院の時に待合室の椅子に座ってたボクの隣に気味の悪い人形を持った球磨川さんが座ってな」

「『へぇ、君からはなんだか僕に近いものを感じるよ。きっと何かを終わらせてここに来たんだね』って言いよった」

「正直、その言葉だけで救われたわ。だって自分と同じような人間が居るんやで?安心しんほうがおかしいやん」

「そこから懺悔するように全てを話した。そしてら球磨川さんは一言『気にする事ないよ』って言ってくれた」

「『その世界はこの世界じゃないし、そんな世界は無数にある。だから君は悪くない。負の力を持った不幸な君はそれをしてもいいんだよ』」

「『その力をもっとうまく扱えれば、もっと沢山の世界に干渉できる。そうしたらまた僕の処へ来てね』」

「『君と、【あの男の子】と【あの女の子】と僕が居れば、何だってできるんだから』」

「・・・・・・そう言って去って行った」

30: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/30(日) 01:01:32.68 ID:rpHhZSIR0
「それからこの学園都市に来るまで、色んな世界を滅ぼして生きてきた。なんの罪悪感も感じずにな」

「でも、カミやんに会って気がつかされたんよ。不幸に振り回されながらもひたむきに生きる姿を見てな」

「結局は自分の心一つでプラスにもマイナスにもなれるっちゅうことにな」

「だから、人を不幸(マイナス)にするあの人の所へカミやんは行かせないんや」

全てを話し終え、青髪はゆらりと拳を握り胸の前に持っていく。

「負能力も、能力も打ち消すんなら拳で勝負や。言っとくけどボクは強いで」

その言葉に上条も同じように構える。

「上条さんは潜ってきた修羅場の数ほど強くなってるんですよ。お前だろうが、球磨川だろうがこの右手で倒してやるさ」

じりじりと滲み寄りながら距離を詰めていく。

そしてお互いの拳が届く距離になった瞬間――

能力も負能力もない、ただの喧嘩が始まった。

50: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/30(日) 19:05:18.44 ID:rpHhZSIR0
―――――――――――――――――――――――――

「あら、こんな所でお昼寝?」

グラウンドの中央で仰向けで倒れ伏す少年に、声をかける小柄な少女。

お互いに身体は傷ついている。少年は打撲が多く、少女には裂傷が多い。

「なんや、姫神ちゃん負けてもうたんかいな」

話しかけらた少年は、少女へ顔を向けることなく高く上がった太陽がいる空を眺めていた。

少女はその言葉に胸を張って答える。

「母の愛の前ではあの程度の過負荷は無意味なのよ」

「なんやそれ……善吉クン、やったか?元気しとる?」

善吉。それは少年に話しかけている少女の息子の名前。

「元気も元気。相変わらずめだかちゃんの為に奔走してるわ」

「あの子の相方は大変やろうに、よぉやるわ」

「そうね、毎日毎日文句ばかり言ってるわ」

「それでも、離れんのやろ?あの二人はそういう間柄や」

「……そう、ね」

「人吉先生がよぉ見とらなアカンで。善吉クンじゃなくあの子をな」

「それは警告?それとも忠告?」

「どっちともや」

「でしょうね」

そこで一度会話が途切れる。つい先程までの戦いが嘘のように穏やかな日差しが差し込み、空を仰ぐ少女は少し目を細める。

52: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/30(日) 19:22:13.31 ID:rpHhZSIR0
「よかったの?上条君を行かせて」

少し躊躇うように瞳は少年に尋ねるが、返答はない。

「貴方の過負荷なら、例え上条君自身に使用できなくても勝てたでしょうに」

「同じ事を言わせてもらいますわ。先生もカミやん止めるつもりで来たんやないん?」

そこで、再び沈黙が流れる。それを破ったのは勢いよく状態を起こし立ち上がった少年だった。

「殺すことはできても、勝てんかったよ」

「なるほどね」

「幻想殺しが、って訳やないで」

「分かってるわ。たぶん私も貴方と同じ理由よ」

確かに瞳は上条を止めるつもりでこの場所へやってきた。そして初めから殺すつもりのない少年に上条をぶつけたのもそのため。

彼の負能力なら十分に上条を止める事が出来ると思ったからだった。

それでも、二人は上条を止められなかった。否。止めなかった。

「カミやんなら何とかする、って思ってまったからなぁ」

「ええ、間違って思ってしまったわ」

幻想殺しを持つ彼なら、揺るぎない信念を持つ上条当麻なら、例えあの球磨川と相対してもマイナスに落ちないだろうと思ってしまったのだ。

「もし彼が過負荷になったらどうする?」

「っは!決まってるやないですか。ボクぁカミやんの親友やで」

そして少年は力強く瞳を見つめてこう言った。

「間違った友達を導いてあげるのが親友としてのボクの役目や」

その言葉に優しく微笑んだ瞳。

少し冷たくなってきた風が少年の青髪を揺らしていた。

65: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/30(日) 22:49:19.21 ID:HSkKCCfF0
御坂が研究所に突入し、一方通行が球磨川に敗北する数時間前には上条は既に研究所内へと入っていた。

それなのに御坂が球磨川と邂逅した場に上条が居なかった理由。それは不意打ちによる催眠ガスの攻撃によって意識を失って別室に居たためである。

場面はとある研究所の一室。球磨川と佐天涙子の会話から始まる。

「球磨川さんの言うとおり、初春や御坂さん、白井さんは私を見捨てませんでした」

「自らが不幸(マイナス)になってまでも、私を助けてくれた……」

嬉々として球磨川にそう話す佐天。現状が理解できないのか御坂達は呆然と二人を眺めているだけだった。

『でしょー?だから涙子ちゃんは一人ぼっちじゃないんだよ。お友達が居るし何より僕が居るんだから、さ』

『うっかりお友達を殺しちゃっても僕が全部〝なかったこと”にしてあげるよ』

『さて、ところで君達はどうしてこんな所まで来たのかな?涙子ちゃんを保護するのが目的じゃなかったの?』

『それとも、そこの風紀委員さんの敵討ちとか?嫌だなぁそれはさっき水に流したじゃないか』

『とりあえずこっちにおいでよ。お茶でも飲もう』

両手に螺子を携えたままおいでおいでと手招きをする球磨川の元に佐天と9982号は歩み寄る。

「佐天さん!!」

その友人の姿に思わず初春が叫ぶ。その叫びに佐天は一度振り返り微笑を向け、すぐに球磨川の元へと行ってしまった。

同時に振り返った9982号も御坂に何か言いたげな目を向けたと思えば踵を返しさっさと歩いていってしまう。

「……」

初春と白井は目の前の光景に立ち竦んでいるままだったが、御坂だけは何かを考えるよう腕を組んでいた。

「佐天さん!妹さん!こっちに戻ってきてください!」

「そうですわ!もうわたくしの敵討ちなどどうでもいいですから、一緒に帰りましょう!」

二人の悲痛な叫びも佐天には届いていないのか、歩みを止めることはなく球磨川の隣に立つ佐天と9982号。

67: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/30(日) 23:02:27.27 ID:HSkKCCfF0
「球磨川さん、ありがとうございました」

佐天はそう言うと深々と頭を下げる。球磨川はそんな佐天の行動に少し意外そうな表情を浮かべた後、

身振り手振りを含めて『気にしないでよ』と答えた。

そんな姿をじっと見つめる9982号。

「それと、ごめんなさい」

頭を上げたと同時に、白井にされたように球磨川の後ろに周り、両腕を球磨川の両脇から通しがっしりと拘束した。

『えーっと……なに?涙子ちゃん式の謝罪方法?』

佐天の行動に首をかしげる球磨川はさして抵抗をしようともせず、佐天に質問をする。

「球磨川さんのおかげで、普通の能力とはちょっと違いますが、力を手に入れることができました」

「球磨川さんのおかげで、何も考えずにこの負能力をふるう事ができました」

「球磨川さんのおかげで、本当の意味で皆と友達になれました」

「だから心から感謝しています。でも……」

佐天が言葉を紡ぐ中、9982号はナイフを取り出す。

『!!』

初めて、球磨川が動揺の表情を浮かべる。

「皆は私のために不幸(マイナス)になってくれた……だから、今度は私が幸福(プラス)になって皆と同じ場所に行きます」

「佐天さん!」

佐天と9982号の意図にようやく気がついた御坂が慌てて駆け寄ろうとするが、

9982号が脹脛にナイフを突きたて痛みを御坂へ委託することで、足を止めた。

68: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/30(日) 23:20:08.98 ID:HSkKCCfF0
「っつ……ミサカも球磨川禊へ伝えたいことがあります、とミサカは痛みを堪えつつ言葉を発します」

「アンタ……!!」

自らの妹へ言葉をかけようとするが、痛みのせいでうまく考えがまとまらない。

「再びこの世へ戻していただき、感謝しています。感情を残していただいて感激しています」

「貴方がお姉様とミサカを戦うように仕向けなければ、このような感情も生まれなかったでしょう」

「自分の為、そしてなにより他人の為に何かをしたいという気持ち――これがあの時お姉様を奮い立たせた感情なのですね」

「だから、ミサカも佐天涙子と同じ考えです。ミサカは、再び生まれたミサカ達は全員で幸せ(プラス)になりたい、と」

「全てを元に戻してくれた貴方に対し、刃を向けるのは心苦しいですが観念してください」

『い、いやだ……助けてよ……死にたくない』

涙目で懇願する球磨川など無関係にギラリと刃を光らせ、ナイフを振り上げる9982号。

二人は、自らの手を汚してまでもこの男を排除しようとしたのだ。

「駄目です!!」

その瞬間、初春が渾身の力を込め叫ぶ。

一瞬9982号の動きが止まった瞬間白井が空間転移で球磨川と9982号の間へ割り込み、思い切りナイフを蹴り上げ弾き飛ばす。

そして、跪きながら御坂がナイフを威力が弱くなっている電撃で破壊した。

「風紀委員として、一人の人間としてそのような行動は見過ごせませんの!」

白井が激昂する。

「アンタ達の気持ちは分かるけど、それはやりすぎよ。せいぜい一発殴るだけにしなさい」

「ま、その殴る役目は私のものなんだけどね」

不適な笑みを浮かべて御坂は立ち上がる。痛みはもう無い。

そして狼狽する球磨川のそばまで近づいた。

69: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/30(日) 23:35:13.24 ID:HSkKCCfF0
『美琴ちゃん、でよかったよね……ありがとう助かったよ……』

先ほどの攻防に驚き、手を離してしまった佐天の拘束から逃れた球磨川は、両膝を床につきながら御坂に感謝の言葉を伝える。

『まったく、驚いたよ……まさか二人がこんなことをするなんて……』

冷や汗を流しながら、信じられないといったように首を横に振る球磨川。

「ずいぶんと二人を信用してるみたいね」

冷たい氷のような言葉を球磨川に吐く御坂。

『当たり前じゃないか!成り立てとは言え二人は僕と同じ過負荷(マイナス)で負(マイナス)で敗北者(マイナス)なんだぞ!!』

『それがこんな行動にでるなんて、まるで悪夢だよ!!』

『もう何も信じられない!!せっかく悪役になってまで皆の仲を取りまとめようとしてあげたというのに!!』

『なんで僕ばかりこんな目にあわなければならないんだ!!なんで大事な仲間に裏切られなきゃいけないんだ!!』

今度は急に立ち上がり怒号を撒き散らす球磨川の姿に、御坂は少し疑念を抱いた。

御坂はこの球磨川という男は人を人とも思わない人でなしで、仲間だのなんだのという感情は持ち合わせていないと思っていたからだった。

それがどうだ。目の前にいる男は二人を大事な仲間と称し、挙句は全ては自分たちの為に悪役に徹していたというのだ。

御坂は、辛そうに叫ぶ球磨川の姿を見て、少し同情をしてしまった。

『一方ちゃんだって急に僕に襲いかかって来たから仕方なく攻撃をしただけなんだ!』

『だからこうして直ぐに戻(なお)してあげるつもりだったんだよ!』

そう言って球磨川は倒れ付す一方通行の体へ手を添える。すると刺さっていた螺子は消えうせ、一瞬のうちに傷が治っていった。

『だから、これ以上僕を責めないでくれ!攻めないでくれ!』

とうとう球磨川はその両目から涙を零してしまう。

72: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/30(日) 23:45:58.50 ID:HSkKCCfF0
「お姉様……」

そんな球磨川の姿を見て、最初に口を開いたのは白井だった。

「この殿方は抵抗するつもりは無いみたいですし、今後風紀委員で監視をつけるように申請します。なのでここは……」

「黒子?」

被害にあった白井の口からそんなことを言われてしまえば、御坂は何も言い返せない。

「もちろん、許すつもりはありませんわ。しかし無抵抗の相手をこれ以上責めるのはいささかやりすぎかと」

「それに、そうすれば誰も傷つきませんわ」

暴力を暴力で返すのでは何も解決にはならない、と白井は言いたいのだろう。

目には目を、ではいずれ世界は盲目になる。と言った言葉があるようにその先に待っているのは破壊の物語でしかない。

確かに白井の言うとおり、佐天は帰ってきたし、妹達は全て無事。これ以上ない状態ともいえた。

「皆がいいって言うなら、私はそれでかまわないけど……」

御坂が周りを見渡すと、全員が頷いた。それを確認すると御坂は大きなため息をつきもう一度球磨川を睨み付ける。

「今回は見逃してあげるけど、二度と同じようなことはしないこと!いいわね!」

「もしこの警告を無視したら、全身全霊でアンタを焼いてやるわ!!」

『わかった……二度とこんなことはしないよ』

伏し目がちに了解する弱弱しい球磨川の姿をみて、完全に御坂の中に戦意は無くなっていた。

75: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/30(日) 23:55:49.16 ID:HSkKCCfF0
「はぁ……なんか拍子抜けね。黒幕がアンタみたいな三下だと」

「まぁいいじゃありませんか、一応アンチスキルに連絡を取ってこの方の身柄を拘束するまでは監視しておきましょう」

「はい、それでは通報は私が」

「球磨川さん、ありがとうございました。それとごめんなさい。もう一度言っておきます」

「球磨川禊。貴方に頂いた命は決して無駄にしません、とミサカは決意を表明します」

全てが終わったと、少女たちは思い思いの言葉を口にする。

だだっ広い研究室内にはさっきまでの殺伐とした雰囲気が嘘のように、朗らかなムードが流れていた。

「おっねぇさまー!寮に戻ったら約束を果たしていただきますわ。ぐふ、ぐふふふふふ」

「だぁー!それは忘れろー!!」

「お姉様、ミサカはアイスが食べたいです、とミサカは物欲しそうな表情を浮かべます」

「あー!そういえば一週間も休んでるから宿題がやばい!!」

「大丈夫ですよぉ佐天さん。私がしっかり教えてあげますから」

それは、とても微笑ましい光景だった。

そんな中、球磨川が口を開いた。

『美琴ちゃん、ひとつだけお願いがあるんだ』

「……なによ?」

怪訝な表情を浮かべ、球磨川のお願いを聞くことにする御坂。

『この外部メモリのプログラムを調整中のミサカちゃん達に使ってやってくれないかい?それで全ての調整が終わるんだ』

77: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/31(月) 00:05:45.17 ID:D011MshU0
「怪しいわね……」

『本当だ、信じてくれよ僕を』

メモリを受け取りそれを摘むようにして持ち上げじっと観察する御坂。

「大丈夫ですよ御坂さん。どんな用途のプログラムか分かりませんが私が解析しますから」

「その花頭が解析したら、無害かどうかをミサカが判断します」

「は、花頭って……!!」

「初春さんやアンタが判断してくれるんなら問題ないわ。分かった、やってやるわ」

『ありがとう。調整室はC棟にあるからね』

御坂は初春と9982号を連れて部屋を後にしようとする。

「お姉様わたくしもいきますの」

「御坂さん、私もついていきます」

球磨川と同じ空間に居たくないと無意識に思った白井と佐天も同行すると名乗りを上げる。

「じゃあコイツの監視はどうすんのよ?」

さすがに球磨川を一人にしておくことはできないと危惧した御坂の問いに白井は手錠を取り出して答える。

「これで拘束しておけば問題ありませんわ。では参りましょう」

「じゃ、すぐ戻ってくるから変な真似しないでよね」

球磨川を支柱に手錠で拘束し、御坂達は部屋を出ようと球磨川に背を向ける。

当然、その時球磨川が口元を歪めた事に誰も気がつかなかった。

83: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/31(月) 00:21:26.84 ID:D011MshU0
「えーっとC棟は左で」

最後尾についた白井の声が途中で途絶える。

異変に気がつき全員が振り向いた瞬間、背中に螺子を螺子込まれ顔面から倒れこむ白井。

「!!」

いつの間にか、御坂達の真後ろには螺子を持った球磨川が凄惨な笑みを浮かべていた。

「アンタ!手錠を!!」

『だめだよ、あんなもので僕を拘束した気になっちゃ。ついこの間「金田一少年の事件簿」を読破した僕の気分は地獄の傀儡子なんだからね』

よく分からない例えを出しながら螺子を9982号、佐天へと突き刺す。

9982号は負能力の委託対象を無差別に設定していたのか、それとも一瞬で気を失ってしまったのか御坂や初春に痛みが伝わることは無かった。

あっという間に、残りは二人となってしまう。

「さっき約束したことを忘れちゃったのかしら!?」

佐天が気を失ったことにより公平構成の効果も解除されたのか、体中から放電しながら御坂が声を張り上げる。

『約束は覚えてるよ。二度としない、でしょ?だからこうして一度はしたのさ。いや三回さしたから三度かな?』

「初春さん!逃げて!!」

その言葉に初春は直ぐに廊下を走り抜けていく。

御坂の言葉は「私を置いて逃げろ」という意味ではなく「電撃に巻き込まれるから逃げろ」という意味だと理解したからだった。

倒れ付す三人に電撃が当たらないように、御坂は壁に含まれる鉄へ磁力を発生させ壁走りで部屋の中央へと移動する。

『カッコいいね。人生で一度は言ってみた台詞だよ。でもそれって死亡フラグじゃないかな?』

再び両手に螺子を出現させた球磨川は御坂と向き合う。

「確かに死亡フラグよ。ただしアンタのね。後悔しなさい!佐天さんを先に気絶させなければ私の能力は制限できてたことを!!」

ポケットからコインを取り出し、球磨川へと向ける。

それは、御坂の最強技の構え。

「いっけえええええええええええええええええええええええ!!」

そして、出力最大の超電磁砲を球磨川へと放射した。

85: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/01/31(月) 00:31:34.97 ID:D011MshU0
球磨川さんが高遠ファンだと暴露したところで今日はここまでです。
え?球磨川さんはジャンプしか読まないって?嫌だな、金田一はコミックだからセーフなのさ。

結局、佐天さんや9982号はあの時点で改心していたってオチ。
で、仲間思いの球磨川さんがあっさり二人を刺した理由も元から仲間と思っていなかったからです。

なんというか、名瀬ちゃんを勧誘失敗して古賀ちゃん襲わせた時の感じ。
こうなるのも球磨川さんの想定内。

実は、過負荷(マイナス)と負能力(マイナス)の使い分けがありまして、禁書側は負能力、めだか側(ひとみちゃんだけだけど)は過負荷。
球磨川さんは両方使うって感じでいます。

あれ?青髪過負荷って言ってたかも……


存在証明さんの扱いがアレな感じがするのが否めませんが、これは西尾作品なら誰かがやらなければならないのです。

姫神サンが錆白兵で裏6がノイズ君でヤバイ。


存在証明の攻略方法は、瞳ちゃんが言ったとおり母の愛でごり押ししたからです。

瞳「子供も生んだことがない子供が、母親の存在証明を奪えるわけ無いでしょうが!」

こんな台詞があったとかないとか。



それでは、いよいよ始まりましたラストバトル。
最後に笑うのは誰なのでしょうか?

『それじゃ、また近いうちに』

133: 気を取り直して投下します ◆d.DwwZfFCo 2011/02/01(火) 00:23:23.87 ID:8/QW8FZE0
御坂の放った超電磁砲は床をえぐり、青白い閃光と共に球磨川に向け進んでいく。

発射されたと視覚で捕らえると同時に着弾している程のスピードで飛んでくるコインを球磨川がかわせる訳もなく、

あっけなくその右脇腹を打ち抜いた。

貫通したコインが壁へ激突し、轟音が鳴り響く。

高熱を伴う超電磁砲が直撃した傷口は焼け焦げ、出血はしないが、その代りに人体を支える骨と、生命活動を維持するための内蔵が剥き出しになる。

当たり前だが、そんな傷を負ったらまずは助からない。事実、球磨川は両手に持った螺子を離し、そのまま倒れこんでしまう。

思わずそんな光景に息を呑む御坂。自身が超電磁砲を放った結果、目の前のグロテスクな光景がある。

これまで彼女は人に向け超電磁砲を放ったことは何度かあるが、その全てが消されるか、反射されてしまいこのような事態にまで発展したことはない。

人を殺した。

彼女は改めて自分の能力の強大さを確認すると共に、後悔の念に押されてしまっていた。

何もここまですることはなかったのだろうか、少し冷静になって威嚇程度でもよかったのではないだろうか。

今となっては後の祭りだが、怒りに身を任せて行動してしまった自分を責める。

そんな、混乱している御坂は一つだけ失念していた。

目の前のこの男は、どんな傷を負ったところで回復し何度でも立ち上がることができるということを。

だから、ほぼ無意識のうちに球磨川に近寄ってしまった時点で、球磨川の心配をしてしまった時点で、“大嘘衝き”の術中だった。

それは、負能力だけだという話ではない。

球磨川はあえて悲惨なシュチュエーションを作り出すことによって、御坂への攻撃を開始していたのだ。

そして、自らの螺子が届く距離まで近づいた御坂にめがけ、今度は思い切り物理的な攻撃を仕掛ける。

既に球磨川の痛々しい傷はもうない。御坂は攻撃に気がつき慌てて回避しようとするが、球磨川の螺子は的確に人体の稼動範囲が一番狭い腹部を狙っていた。

もはや、避ける事は不可能な距離。命中必須の攻撃だった。

が、それは突如飛来した無数の石つぶてにより叶うことはなかった。

「なァンで敵に同情してンですかァ?御坂美琴(オリジナル)」

134: 気を取り直して投下します ◆d.DwwZfFCo 2011/02/01(火) 00:23:53.03 ID:8/QW8FZE0
球磨川と御坂が同時に声のした方へ顔を向ける。そこには気を取り戻した学園都市最強の一方通行が口元を歪め、愉快そうに立っていた。

「超電磁砲の音か……ちょいと目覚ましにしてはデカ過ぎる音だなァ」

面倒臭そうに頭を掻きながら言う一方通行に球磨川が意識をそらした隙に、御坂は距離をとり一方通行の隣まで移動する。

「助かったわ」

「甘ェんだよ、しっかり相手が死ぬまで攻撃をやめるんじゃねェ……こんな感じになァ!!」

御坂の礼など一蹴し、ダンッと思い切り右足で床を踏みつける一方通行。するとその箇所がひび割れ無数の破片が宙に舞い球磨川に襲い掛かる。

「さっきはバッテリー切れで何もできなかったがな、なぜか今は充電満タンだァ!!一瞬で素敵なオブジェに変えてやンよ!!」

「御坂美琴(オリジナル)!!砂鉄の剣だァ!」

その言葉を聞き、破壊され地面が剥き出しになった床から砂鉄を磁力で集め剣を形成させる。

「拡散させて逃げ場を奪え!」

「分かってるわよ!!」

鞭のように球磨川へ向け砂鉄の剣を伸ばし、上空で拡散させ竜巻のように形を変え球磨川を包み込む。

『わぁお、これは流石に死んじゃうなぁ』

しかし球磨川は慌てた様子を見せず、右手を砂鉄の竜巻に向け差し出す。

その瞬間、御坂の制御が聞かず元ある地面へと還っていく砂鉄。

そして飛来する破片には両手を万歳の姿勢から一気に下へ振り下ろす事で全段叩き落した。

135: 気を取り直して投下します ◆d.DwwZfFCo 2011/02/01(火) 00:24:25.67 ID:8/QW8FZE0
「なっ!!」

全てを無効化した球磨川を見て二人は驚愕の声を上げる。

「磁力が……」

「ベクトルが……」

「消えた!?」

御坂が操作していた砂鉄からは磁力が消え、一方通行が放った破片に存在するベクトルもなくなってしまい、停止したのだ。

二人が思い浮かべるのは一人の少年。全ての異能を殺す右手をもつ上条当麻の顔だった。

『幻想殺し、とはちょっと違うけどね。僕の大嘘憑きは殺すんじゃない、無くすんだ』

そんな二人から思考を読み取ったように言葉を発する球磨川の両手には再び螺子が握られている。

『ねぇ一方ちゃん……充電満タンなら何だって?美琴ちゃん。教えてあげなよ、誰が一方ちゃんの傷を戻(なお)したのかを』

『ベクトル操作?超電磁砲?いくら君たちが強い(プラス)の能力を持ったところで』

『僕の弱さ(マイナス)の前じゃあんまり意味がないんじゃないかなぁ?』

『知ってるでしょ?どれだけ桁が多いプラスの数字だって、マイナスを掛けてしまえばそれはプラスじゃなくなるって事ぐらい』

球磨川は言葉を終えると、一気に駆け一方通行の眼前へと迫る。

完全に虚をつかれた一方通行は簡単に懐へ球磨川の侵入を許してしまい、美琴も対応に遅れてしまう。

137: 気を取り直して投下します ◆d.DwwZfFCo 2011/02/01(火) 00:25:20.38 ID:8/QW8FZE0
『こんなふうにね』

笑顔のまま右手に持った螺子を一方通行の腕へ螺子込もうとする球磨川に対し、一方通行は回避する素振りを見せない。

「は!反射膜ができてンだ、そんな螺子なンぞはじき返してやンよォ!」

先の天井戦の時のように今の一方通行は能力を十全に使用できる。だから今度こそこの攻撃は反射される筈だった。

「避けて!!」

思考がオンになった御坂が叫び、反射的に避けた一方通行は球磨川の魔手から逃れることができた。

そして二人揃って球磨川と距離を取る。

「なに言ってンだ!オリジ」

「さっきアンタが言ったじゃないの!ベクトルが消えたって。つまりアイツは反射膜さえ無視できるのよ!見なさいその腕を」

その第一位の頭脳でよく考えなさい、と御坂が叫ぶ。

一方通行は言われて自分の腕を確認すると、反射膜で守られているはずの服が螺子によって破れていたのだ。

確かに、避ける瞬間に演算に異変があった事を思い出す。

「おいおい、まさしくあのムカツク三下みてェじゃねェか」

「それ以上よ。アイツは右手だけだけどコイツはどうやら全身でそれができるみたいだから」

「……なるほどなァ」

改めて目の前の敵のでたらめさを再確認する一方通行。そんな話し合いをする二人に球磨川は無邪気な笑みを浮かべながら螺子を消し口を開いた。

『じゃあそろそろ僕の能力を教えてあげるよ。週間少年ジャンプじゃもはや通例となっていると言っても過言ではないからね』

とはいっても学園都市に来て結構名乗ってるんだけどね、と前置きをおいて。

『球磨川禊、高校二年生。過負荷、いや負能力名は【大嘘憑き(オールフィクション)】マイナスレベル5。気になる効果は……』

言いながら球磨川は一方通行の服を指を指す。すると破れた箇所が元通りに戻る。

そして、球磨川は自身の抱える負能力の効果を口にした。

138: 気を取り直して投下します ◆d.DwwZfFCo 2011/02/01(火) 00:25:50.94 ID:8/QW8FZE0









『全てを虚構にする事ができるんだ』












199: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/02(水) 22:22:39.55 ID:GLcprDJ70
全てを虚構にする事ができる。

それが球磨川禊の欠点(マイナス)であり過負荷(マイナス)であり不能力(マイナス)の正体。

悪意も善意も渾然一体とし、全てを無に返す。

傷をなかったことに。汚れをなかったことに。距離をなかったことに。視力をなかったことに。筋力をなかったことに。

磁力を、ベクトルを、努力を、理性を、知性を、結果を、過程を、記憶を、生を、死を、世界を。

森羅万象を虚構にする能力。

『それが大嘘憑き(オールフィクション)』

その言葉に学園都市が誇る二人の超能力者は言葉を失い、驚愕していた。

「勝てるわけ……ないじゃないの……」

思わず御坂の口から漏れる諦めの声。一方通行も口にこそ出さないが、似たような意見を持っていた。

自身の持つ長所が、能力が、存在証明が通用しない相手にどう立ち振る舞えばいいのだろうか。

『とは言っても、まだまだ無くしたての欠点だからね。把握してない部分も沢山あるんだよ』

だからまだ諦めないで、とあろう事か二人を励ますように、しかしどこか愉快そうに話すのは絶望の象徴である球磨川。

『黙ってないでお喋りしようよー。それとも僕みたいなのとは喋りたくないのかな?』

『やれやれ、いくら僕がモブキャラみたいな顔立ちだからって差別するのはよくないと思うな』

『僕だって君たちと同じ人間なんだからさ。仲良くしようよ』

ピースサインを向けて屈託のない笑顔を浮かべる球磨川に対し、いまだ口を利けないでいる二人。

200: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/02(水) 22:23:12.39 ID:GLcprDJ70
「よォ…御坂美琴(オリジナル)」

「なによ」

一方通行が御坂へ囁く。

「こりゃァ勝ち目がねェかもしンねェなァ。いっそ二人そろって逃げるかァ?」

「冗談。佐天さん達を置いて逃げるわけないじゃない」

「さっき敗北宣言したのはどなたでしたっけェ?」

「勝てなくても、止めるのよ」

「ふゥン……」

コソコソと話す二人が囁き会っている姿をじっと眺めている球磨川。

「それなら、一つギャンブルに出てみようじゃねェか」

「え?」

「よく聞けェ」

そして、一方通行から持ちかけられたのは一つの作戦。

だがそれは作戦とは到底いえる物ではなく、仮説を前提に置いたいわば希望だった。

伝達が終了し、いくらか驚いた表情を浮かべる御坂だったがしっかりと頷き了解をする。

201: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/02(水) 22:24:10.05 ID:GLcprDJ70
『作戦タイム終了かい?それじゃどっからでもどーぞ』

「ハハ!」

余裕を崩さずノーガードで迎える球磨川に、一方通行は短く笑う。

「後悔しないでよね!」

御坂がそう叫ぶと共に二人の作戦が実行された。

『わぁお!ミナデインみたいだね!!』

御坂から放たれた無数の雷をまるで河川敷から花火を眺めているかのように暢気に待ち受ける球磨川。

それをあえて避けず全身で受け止め、自らの体を傷つける。

『あれぇ?なんだか体が動かないぞ』

雷の熱で服が焼け、露出した皮膚の所々が焼け爛れても笑顔を崩さない。

「そのまま死んどけェ!糞野郎ォォォォ!!」

一方通行は絶叫しながら先ほどの攻撃と同じよう無数の崩れたコンクリート片を飛ばす。

これすらも受け入れ体中の至る所に穴が開き、右腕にいたっては引きちぎれて肩から伸びる数本の筋繊維で繋がったままぶら下がっていた。

「く……」

その光景に思わず目をそらそうとするのは御坂だった。

いくら攻撃が無効化され傷が治るとはいえ人間が壊れていく様は直視するには耐えがたいものである。

「攻撃をやめんじゃねェ!!」

202: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/02(水) 22:29:06.53 ID:GLcprDJ70
「くっそおおおおおおおおおおおおお!!」

一方通行の叱咤により、球磨川を“殺す”決意を固めた御坂は磁力で床から一本の鉄骨を取り出し、球磨川の心臓めがけて飛ばす。

『それは避けなきゃ不味いかなぁ』

的確に球磨川の左胸、つまり心臓めがけて飛来する一本の鉄骨。

残った左手で頬を掻く球磨川は苦笑いを浮かべ、傷もそのまま横にそれて回避をしようとするが、

頭上に浮かぶ自らを覆い隠すほどの鉄板に気がつく。

「悪ィがこの攻撃は一方通行だァ。進入も回避も禁止ってなァ……」

一方通行は口元を歪めながら自らの右手の親指だけを立てて首元を切る素振りを見せ、そのまま手首を返し親指を下に向ける。

その先にある球磨川の運命と、この悪魔のような物語を締めくくるように言葉を添えて

「ジエンドだ」

遥か上空から勢いよく球磨川へ落下を始める鉄板。

鉄骨は回避できるかもしれないが、その傷ついた体では大きい動作ができないのか、球磨川は鉄板を見上げる。

『う、おおお!死ぬ!これは死ぬ!くそおおおおおおおおおおお!!』

そうして巨大な鉄板は、叫びをあげる球磨川へと落ちていった。

203: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/02(水) 22:30:44.73 ID:GLcprDJ70
一方通行の作戦とは、天井戦と同じく物量で攻めきるという単純なものだった。

大嘘憑きの効果範囲、発動条件などはわからなかったが、

磁力とベクトルを別々になかったことにしたことから、複数の事柄を同時に虚構にすることはできないと一方通行は考えた。

それならば、回復をする暇を与えず全力で攻撃を続ければいい。回避をする間を与えず全霊で殺せばいい。

それが、もはや希望ともいえる一方通行の考えた作戦の全貌だった。

この作戦において、一方通行や御坂は最初の一撃を与えることを課題としていた。

多面攻撃を仕掛けたところで、最初の攻撃と同じようになかったことにされるのが落ち。

だから一撃さえ与えれば動きを止めれ、なおかつ回復と回避の二つの処理を与えれる。

その後は、弾幕のように攻撃を繰り出せば勝機はあると思っていたため、球磨川の油断した状態は正直二人にとっては僥倖といえたのだった。

勝てる。

二人は落ち行く鉄板を眺めつつ少し安堵していた。

事実、処理に追われた球磨川はこうして鉄板の下敷きになろうとしているのだから。

この作戦は成功といえよう。

だが。

『なんちゃって』

だが。それは仮説が正しかった場合の話である。

206: きぬはた荘を超見てました ◆d.DwwZfFCo 2011/02/02(水) 22:54:56.39 ID:GLcprDJ70
球磨川はそう言って、鉄板と鉄骨、それに体の傷を同時に虚構にし何食わぬ顔で立ったままだった。

「なっ!!」

目の前の光景に信じられないといった声を上げるのは御坂。

一方通行は自らの希望を打ち砕かれ苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべている。

『同時に消せないと思った?』

球磨川は相変わらず笑顔を浮かべているが、二人にはそれがただただ不気味に見える。

両手には何も持たず、背筋を伸ばした良い姿勢のままスタスタと早足で二人へと歩み寄りながら言葉を続ける。

『二人のレベル5なら何とかなると思った?』

その言葉はまるで呪詛のようで、何かの呪いのようで。

『僕が攻撃を受けたから、切実な表情を見せたから殺せると思った?』

二人の足を地面へ縫い付ける。

『どれだけ自分達が重要な役回りだと勘違いしてたのかな?恥ずかしげもなく』

これが恐怖、これが絶望、これが過負荷。

『この物語に主人公は一人だけ。悪役も僕一人だけ。それ以外は舞台袖へ下がって頂戴』

207: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/02(水) 22:57:42.16 ID:GLcprDJ70
二人は逃げるという選択をしなかったことを後悔していた。

『一方ちゃん。どうだい?これが殺される恐怖だよ』

一方通行は何も言えない。最強と呼ばれ無敵を目指した少年ですら目の前の最悪の前ではただの人間だった。

『美琴ちゃん。今から僕がミサカちゃん達の敵討ちをしてあげるね』

御坂は立ち竦む。その胸にはただ恐怖と後悔の渦が巻いているだけで他には何も考えることができない。

『心配しないで。ミサカちゃん達を殺した犯人と仲良く戦っていた君も、仲良く殺してあげるから』

そして笑みを浮かべたまま螺子を取り出した球磨川。

その螺子はプラスを螺子伏せる象徴。

その螺子は巨悪なマイナスの権化。

その螺子は二人の終わりを告げる物。

『それじゃ、天国で会おう』

球磨川は螺子を振り上げる。

二人は思わず目を瞑り、その時を待つだけだった。

208: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/02(水) 23:07:39.30 ID:GLcprDJ70
振り下ろされる螺子が刺さる音だろうか?ドゴッという鈍い音が御坂の耳に飛び込んできた。

おそらく一方通行が刺されたのだろうと、恐る恐る瞼を開き状況を確認する。

「え……?」

螺子伏せられた一方通行の姿を想像していた御坂は目に映った光景を疑った。

無理もない。倒れているのは一方通行ではなく、球磨川禊だったからだ。

そこにはさっきまではこの場に居なかった人物が息を切らしたまま、振り切った拳を伸ばしている少年が一人。

一方通行も目の前の人物に驚き、どこか不機嫌そうな表情を浮かべている。

当然だろう。その少年はかつて一方通行を撃破した少年なのだから。

そして恐らく少年に殴られ吹き飛んだであろう球磨川は対照的に嬉しそうな表情を浮かべていた。

「ふざけんじゃねぇぞ……」

ゆらりと腕を下ろし、球磨川に向けつぶやく少年。

「何が過負荷だよ。何が負能力だよ……」

その姿からは抑えきれない怒りが漏れているのがわかる。

「関係ない人まで不幸にして、不幸から抜け出そうとした人まで巻き込んでんじゃねえよ!!」

とうとう少年は叫びだしてしまった。

211: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/02(水) 23:25:17.02 ID:GLcprDJ70
「テメエ知ってるんだろ!?御坂の友達が自分の感情抑えてまで友達でいようと努力してたことを」

「必死になって能力者になろうと頑張ってたことを!」

「それだけじゃねえ!妹達がどんな気持ちで死んでいったのか、生き残った奴等がどんな決意で今を生きてるのか!」

「必死に今を生きてるんだよ!死んでいった妹達のことなんざ一瞬たりとも忘れてねぇ!」

「御坂だって同じだ!苦しんで、悩んで、涙を流して、葛藤して、それでも前向いて生きてるんだ!」

「どれだけ不幸だろうと、どれだけ欠点だらけでも皆幸せになろうって必死にもがいてんだよ!!」

「一方通行があの日から何をして過ごしたのかも知ってんだろうが!」

「許されるつもりはねえって十字架背負って、命を懸けて打ち止めを、妹達を救ったんだ!」

「死んで許されるならコイツはとっくに死んでるはずだろうが!?でもこうやってコイツ生きてる」

「そうやってどうしようもない現実に抗って、もがいて生きてる奴等をテメエは何で不幸にしようとしやがる!」

「どうしようもない運命(マイナス)を持っちまったアイツだって頑張ってんだろうが!」

「後悔して、懺悔して、それでもアイツは笑ってるんだ!!」

「どうしてそれが分からない!?なんで分かろうとしねぇんだよ!!」

213: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/02(水) 23:40:17.65 ID:GLcprDJ70
「なんでテメエはそれを邪魔することができるんだ!!」

少年は叫ぶ。

それは、球磨川に弄ばれた者達の気持ち。

平等を望んだ佐天涙子の願い。

一万回死んだ妹達の痛み。

それを受け止め生きる妹達の重み。

過酷な運命を背負う御坂の悲しみ。

許されることのない一方通行の苦しみ。

存在証明を無くした姫神の悩み。

巨大な負を抱えながらも懸命に生きる青髪の想い。

それを全て、目の前に居る大嘘憑きに向けぶつける。

それは少年の――

上条当麻の心からの言葉だった。

「立てよ最悪(本物)。俺の最良(偽者)で正してやるよ!」

見下ろす球磨川に向け上条は右拳を突き出す。

「テメエが何でもなかった事にできるって言うんなら……全てを不幸にすると言うんなら――」

214: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/02(水) 23:41:05.81 ID:GLcprDJ70









「その幻想をぶち殺す!!」













327: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/04(金) 22:41:09.50 ID:20P0evo80
『…………』

上条の言葉に球磨川を始め誰も口を開こうとしない。

静寂が、場を支配する。

『はぁ……』

それを破ったのは、球磨川の漏らす溜息の音。

『何でそんなことができるのか分からないって、上条ちゃん、そんな当たり前の事を言わないでほしいな』

やれやれと首を振るう球磨川に対し、上条は言葉を出せなかった。

激昂するわけでも、言い訳をするわけでも、ない。

ただ球磨川は興が削がれた様に先ほどまでの笑みを消し、ただただ上条に対し落胆をしているように見えた。

『人間が、人間を理解するなんて不可能に決まっているじゃないか。それとも上条ちゃんは読心能力でも使えるのかい?』

『使えないよね、だって君はそんな利点のある能力者じゃない。どう足掻いても殺すだけの人間だから』

『第一、そんな能力を持っていたとしても本質的な意味では理解することなんてできない』

多勢に無勢のこの状況で、御坂に追い詰められた時よりも不利なこの場面でも、球磨川は淡々と言葉を吐き出す。

命乞いの嘘もつかず、適当な理由を並べるわけでもない。

真正面から上条の言葉を否定する。

329: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/04(金) 22:42:43.52 ID:20P0evo80
『分からないのに、分かってもらおうとするなよ』

「っつ!!」

その言葉に後頭部を殴られたかのようなショックを覚える上条。

ゆらゆらと視界が揺れる。

『そこに居る打ち止めちゃんや花飾りちゃんから聞いたのか知らないけど、それだけで僕達(マイナス)を理解したつもりだった?』

球磨川の言葉で御坂と一方通行は入り口にへと目を向ける。

「打ち止め……」

「初春さん……」

そこには心配そうな眼差しで上条たちを見つめる二人の少女が居た。

実は上条がここに来れたのは初春がC棟の妹達の調整室で眠る上条を発見したからだった。

その途中、ビーカーに閉じ込められていた打ち止めを発見した二人は、幻想殺しでビーカーを破壊、救出しこの部屋へと向かったのだ。

球磨川が言う様に、上条がこれまでの経緯を把握しているのは二人が現場に向かう中、彼に説明したからである。

330: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/04(金) 22:43:15.42 ID:20P0evo80
『いいかい、上条ちゃん。人間が他人を理解したって思うのは他人と同じ意見を持った時か、他人を自分色に染めた時にそう思っちゃうんだよ』

「…………」

球磨川の話に何を言い返すわけでもなく、ただ公演を聴く一人の観客のように黙り込む上条。

『例えば同じ趣味を持っていたとき。例えば同じ相手を好きになったとき。例えば同じ敵を前にしたとき。そうだね、後は……』

そして球磨川は再び仮面のような笑顔を浮かべ、こう言った。

『自分の思想を無理やり相手に押し付けて、それが正義だと思ったとき、ぐらいかな』

『例えば、今までの上条ちゃんが“敵”にしてきたみたいにね』

数々の相手にその拳と言葉は球磨川には届くことはなく、逆に上条の信念を再び揺らがすことになった。

「……でも、だからって目の前の人を助けない訳にはならねぇだろうが!!」

登場したときのように吼える上条だったが、どこかその言葉は弱く感じてしまう。

「皆が幸せになりゃあそれが一番だろうが!!」

もはや上条の言葉は誰かを正す為のものではなく、今にも倒れそうな自身の体と信念を支える為のものだった。

『皆が幸せに、か……』

「そうだ!」

球磨川はそんな上条に対し再び深い溜息をつく。無感情な無表情を浮かべ上条を見つめる目は、もはや落胆ですらなく哀れなものを見るそれだった。

ガシガシと頭を掻き、面倒くさそうに球磨川が言った言葉は、上条の主張を打ち砕く。

『でも、その皆ってのに僕は入ってないんだろう?』

もう、どんな言葉も球磨川には届くことがない。この場に居る人間は例外なくそう思った。

334: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/04(金) 23:09:25.01 ID:20P0evo80
『涙子ちゃんも、ミサカちゃんも、天井ちゃんも、姫神ちゃんも……あぁ青髪ちゃんは少し違うけどさ』

『みーんな僕に感謝してくれたよ』

『心のどこかに抱えた感情を受け入れてくれたことが嬉しかったんだろうね、誰も彼女達に目を向けなかったんだろうね』

『能力者(プラス)が、生きている者(プラス)が、成功者(プラス)が、人気者(プラス)が』

『僕達(マイナス)に少しでも気をかけてくれたら、こうならずに済んだかもしれないというのに』

球磨川の言葉は止まらない。

球磨川の過負荷は止まらない。

『涙子ちゃんがどんな気持ちで能力者を見ていたのか』

『ミサカちゃん達がどんな気持ちで死に、今を生きているのか』

『天井ちゃんがどんな気持ちで成功しようと努力していたのか』

『姫神ちゃんがどんな気持ちで存在証明を探していたのか』

『青髪ちゃんがどんな気持ちで今まで生きてきたのか』

『他人は理解はできないけど、上条ちゃんは他人をちゃんと理解しようとしたのかな?』

『いいよ、上条ちゃんが全部自分の思い通りに事が運ぶと思うなら、他人を無理やり幸福(プラス)に導こうとするなら』

『そのふざけた現実をぶち殺してあげるね』

336: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/04(金) 23:10:47.22 ID:20P0evo80
「っ……そ、それは」

『それは、なんだい?上条ちゃん。何か間違いがあったら教えてほしいな』

弱弱しく言葉に詰まる上条。もはや、自分の信念など音をたてて崩れ落ちていた彼の足は、小さく震えていた。

それは恐怖でも、畏怖でもない。

純粋に上条当麻が否定された為だった。

「何をビビってるのよ!!」

と、今にも崩れ落ちそうな上条にかかる一つの叫び。御坂の声だった。

「例えそれが偽善でも、間違いでも、自己満足でも私達がアンタに助けられたことは事実なのよ!!」

妹達を巡る事件の時、自らの命を差し出してまでも実験を止めようとした御坂を救ったのは紛れもない上条の言葉。

「そうだよ!ヒーローさんのおかげでミサカ達はこうやって生きてるし、あの人も変われたんだから!」

姉の言葉を続けるように、小さな体を震わせながら打ち止めも叫ぶ。

打ち止めの言葉に、一方通行は小さく舌を打つ。

「そうだァ三下……悪党は主人公に負けるってのが物語のお約束だろうがァ……」

どこかバツが悪そうな表情を浮かべながら一方通行も上条へ言葉を送る。

「その通りです!」

初春も、それに続く。

「だからアンタは今まで通り――」

思い切り息を吸い、御坂が上条に向けて伝えた言葉は。

一人で何でも抱え込む素直じゃない彼女が今まで誰にも伝えられなかった言葉だった。

それは。

「私達を助けてよ!!」

助けてほしいという、願いだった。

337: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/04(金) 23:23:16.03 ID:20P0evo80
『あらら、嫌われたもんだね。まぁいいかこんな役回りは僕の役目だからね』

声援を浴びる上条を他所にどこからか取り出した螺子を構える球磨川。

『ちょっと長々と話しすぎちゃったね。ここは週間少年ジャンプみたいに戦って決着をつけようか』

立ち尽くしたまま動かない上条に、襲い掛かる上条。そしてゆらりと挙げた右手で球磨川の螺子を掴む。

その瞬間、球磨川の螺子は消滅してしまう。

「わかったよ球磨川……」

そして空いていた左手で拳を握り、球磨川の顔面へと叩きつける。

衝撃で仰け反り、顔面を押さえながら悶絶する球磨川に向け、上条は決意の言葉を投げる。

「俺は、お前を助けない」

球磨川は一瞬でダメージをなかったことにして、醜悪で、凄惨な笑みを浮かべる。

それは上条がこの部屋に来たときと同じ、どこか嬉しそうな笑顔。

『そう、それでいいんだよ。これで心おきなく戦える』

「ああ、何の気兼ねなくな」

向き合う上条にもう迷いはない。

「俺は、俺の幻想を守る為にこの拳をお前に振るう」

『そう。だったら僕はただ何となく君を螺子伏せることにするよ』

「いくぜ、大嘘憑き」

『おいでよ、幻想殺し』

372: 2011/02/05(土) 15:04:43.62 ID:ES9/s1/30

どれだけ時間がたっただろうか。

上条は螺子で壁に貼り付けられ、
動かない体を無理やり動かして、自分の痛めつけられた右手を見る。
球磨川によって効力を無くした右手を。


一方通行、御坂美琴、初春、打ち止め。
皆、球磨川に殺されてしまった。


研究室の扉がゆっくりと開く。

『やあ上条ちゃん。気分はどうだい?』

入ってきた球磨川は笑顔で聞いてくる。

『さみしいかい?大丈夫。すぐにみんなと会わせてあげる!』

螺子を取り出し、ゆっくりと上条に向ける。


そうだ今度は自分の番。


この男には自分の信念は通じなかった。
この男とはかかわるべきだはなかった。


『じゃあね、上条ちゃん』



上条の幻想(信念)はその右手とともに






すべて負(マイナス)にされてしまった。

430: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/06(日) 19:52:10.49 ID:NxV0z6U30
犬は柴犬が好き。
さて、投下時刻が遅くなりそうなので報告と小ネタでも。


【とある小ネタの負能力者達】


佐天「うーん、どっちが正解だろ?」

天井「どうしたのかな?ほうクイズゲームか、それn「絶対間違えるんで出てってください」

天井「………………」

9982号「むむ、これを差し込めば量産型ザクの記念すべき20000体目が完成します、とミサカは慎重にパーツを……」

天井「ガンプラね、昔よくつくt「出てけ」

天井「………………」


天井「あ、あの少年ならきっと受け入れてくれるはずだ……」

球磨川『ふぅ。あと一段で【ミソギスペシャル  本タワー】が完成するぞ!』

天井「やあくまg」ドサドサ

球磨川天井『「………………」』

球磨川『天井ちゃんを僕のディナーに招く』

天井「(´・ω・`)」



天井ェ……

それじゃ10時頃また来ます。

446: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/06(日) 23:14:09.35 ID:pkRzaC0/0
上条と球磨川の戦いは平行線を辿っていた。

上条が与えるダメージはすぐに“なかったこと”にされるが、

逆に球磨川の螺子での攻撃は全て幻想殺しによって打ち消され、上条へダメージを与えることができない。

だが、それでも上条が絶対的に不利だった。

上条の攻撃が全てなかったことにされるのに対し、球磨川の攻撃は当たってさえしまえば確実にダメージを与えることができるのだ。

幻想殺しでは傷まで消すことはできない。

説得は届かず、暴力でさえ制圧することができない現状では、いずれ上条が負けてしまうのは明白だった。

『いい加減に諦めなよ、上条ちゃん』

「お前の指図はうけねぇよ!」

そんなことは上条は分かっている。だが拳を振り回すことを止めない。

周りにいる御坂達も助太刀はせず、ただ二人の行く末を見守っているだけである。

なぜだか二人の間に割って入ろうという気にはなれなかったのだ。

447: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/06(日) 23:14:39.19 ID:pkRzaC0/0
『それじゃ、こういうのはどうかな?』

球磨川はポケットから螺子を取り出し、上条へと攻撃を仕掛ける。

それは先ほどから何度もあったシーンで、そのつど上条は螺子を消しカウンターを決めていた。

「何度でも消してやる!!」

上条は迫りくる螺子に思い切り拳を握り締めた右手を振りぬく。そこで螺子は消滅する――

はずだった。

「ぐぅっ!!」

消えるはずの螺子はそのまま上条の右拳へ突き刺さり、痛みで上条は顔をゆがめ、思わず幹部を抑えながら蹲ってしまう。

『幻想殺し殺しってね』

そんな上条へ追撃は行わず、距離を開けて楽しげな笑みを浮かべたままそう言った。

『確かに今までの螺子は消せたかもしれないけど、普通にホームセンターで売ってたその螺子は消せないよねー』

「テメェ……!!」

球磨川が攻撃に使用した螺子は、能力によって出現させたものではなく紛れもなく現実の物。

わざわざポケットから出したのがその証拠である。

『さて、もう閉演の時間かな。こうやってヒーローが負ける物語もなかなか乙だよねぇ』

今度は螺子を能力によって出現させ、上条へ歩み寄る。

『呆気なかったね。まぁ流石に“彼女”みたいなのは例外か』

球磨川が指す彼女とはいったい誰なのかなど上条に分かるはずもない。

それは過去に球磨川が通っていた学校から武力によって撤退を余儀なくされた相手。

球磨川が『大嫌い』と証する黒神めだかという少女のことだった。

448: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/06(日) 23:15:57.61 ID:pkRzaC0/0
『それじゃ、また明日とか』

そういって蹲る上条へ振り下ろされた巨大な螺子は、そのまま右肩を貫いた。

「っがああああああああああああああああ!!」

飛び散る鮮血と共に上条の叫び声が部屋の内部に木霊する。

『あは!いい声だねかみじょ……痛!』

もう一つの螺子も振り下ろさんとした球磨川が、飛来した電撃を浴び苦悶の声を上げる。

流石に黙ってみている訳にはいかないと判断した御坂の放ったものだった。

「させないわ」

その言葉に一方通行も臨戦態勢をとる。けして敵わないと知っているが、せめて少しでも時間を稼ごうとしたのだ。

『おいおい、美琴ちゃんはこういったラストバトルには手出し無用ってのが暗黙の了解なのを知らないのかい?空気読めよ』

火傷を負ったまま目線を御坂へとずらし、ゆらりと体を御坂に向ける。

『観客のままだったら手出しはしないつもりだったけど、しかたないよね。舞台に上がったんなら容赦はしないよ』

ゆっくりと御坂達に歩み寄ろうとした球磨川だったが、足首を何かに掴まれ前進を止める。

ふと視線を落とすと、血だらけの右手で球磨川の足首を掴む上条が居た。

「お前の相手は……俺だろうが……」

息も絶え絶えになりながらも、その右手に加える力は増すばかりである。怪我をしているのにもかかわらず、球磨川が振りほどけないほどに。

『……離しなよ、上条ちゃん』

どことなく早口でそう話す球磨川に上条はあることに気がつく。

「なぁ球磨川。お前、その火傷を消さないのか?」

その言葉に一瞬場の空気が止まる。

今まで好き勝手なタイミングで傷を消してきた球磨川だったが、今は傷どころか服の汚れさえ消えていない。

相手に対し何かしらの意図がない限り即座に傷を消してきた球磨川だったからこそ、上条はその違和感に気がついたのだ。

今も何かしらの思惑の上で傷を消さないのか――

449: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/06(日) 23:16:59.39 ID:pkRzaC0/0









「傷を、消せないのか――」














452: もう直接書いて落としていきます ◆d.DwwZfFCo 2011/02/06(日) 23:28:06.82 ID:pkRzaC0/0
傷を消さないのではなく、消せない。

全てを虚構にする大嘘憑きにはあってはならないこと。

球磨川にとってイレギュラーもいいところだった。

「そうだよ、青髪も言ってたじゃねえか……この右手の前じゃ大嘘憑きは意味を無さねぇって」

――その右手の効果のせいで、大嘘憑きは全く意味をなさんからな

それは上条の親友である青髪の言葉。

確かに幻想殺しの特性を考えれば当たり前のことだった。

御坂の手を握れば電撃は放たれず、一方通行の反射膜さえ形成できなくなる。

今にして思えば、幻想殺しを無かったことにしなかった時点でこの答えに辿りつかなければならなかった。

“強制力は幻想殺しの方が上”ということに。

へへ、と不適な笑い声を漏らしながら上条は球磨川の体を支えにする様にゆっくりと立ち上がる。

当然、右手で触られたままなので螺子を出現させることはできない。

「さて、ようやくラスボスの攻略方法がわかっ!?」

いざ反撃開始、というところで上条の言葉が止まる。その原因は球磨川の表情だった。

弱点がばれて困惑するわけでもない。

追い詰められて泣き顔になるわけでもない。

今頃気がついたのかと呆れた表情なわけでもない。

不気味な笑みを浮かべているわけでもない。

球磨川はただ、怒っていたのだ。

453: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/06(日) 23:38:04.01 ID:pkRzaC0/0
球磨川が学園都市に来て、始めてみせるはっきりとした『怒り』の感情。

その表情は修羅のごとく、上条を怯ませるには十分なものだった。

『そうだね、どうも大嘘憑きが発動できないみたいだ』

冷静に喋る球磨川だったが、やはり今までのような人をおちょくるような感じは見受けられない。

冷静すぎるほど冷静なのだ。

『まぁある程度は予想はしてたよ、でもいざ結果が出ると落ち着いてはいられないみたいだ』

上条の右手は現在、球磨川の左肩に置かれている。

払いのければきっと怪我を負った上条の右手などすぐにどかせるだろう。だが球磨川はそれをしない。

『よく頑張ったね、上条ちゃん。これで五分と五分……いや上条ちゃんのほうが有利かな?』

コロッと表情を笑顔に変える球磨川はそう言って上条を見つめる。

『だから、“久しぶり”に喧嘩をしてあげるよ』

言うが早いか球磨川の右拳が上条の顔面へと振りぬかれる。

「っが!」

だが、懸命に右手を握り締めて倒れようとしない上条は、そのまま柔道の組み手のように手を返し球磨川の学ランを巻き込む。

これでちょっとやそっとじゃ上条の手は離れない。

454: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/06(日) 23:41:10.61 ID:pkRzaC0/0
「おらぁ!!」

叫びながら上条は左拳で球磨川を殴りつける。

『痛いじゃない……か!』

球磨川も同じように殴り返す。

上条が殴る。

球磨川が返す。

上条が蹴る。

球磨川が返す。

上条が頭突きをする。

球磨川が返す。

そのやり取りが数分続いた。

二人の顔面は腫れ上がり、息を切らしている。

どこかその姿は、友人同士が喧嘩をしているように見えた。

457: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/06(日) 23:50:04.68 ID:pkRzaC0/0
「いい加減……倒れろよ!!」

上条が殴る。

『上条ちゃんこそ!!』

球磨川が返す。だが、上条に比べて既にその拳には力が入っていない。

体ひとつで数々の修羅場を潜って来た上条と、大嘘憑きによって難なく事を収めてきた球磨川との違い。

それは経験地と体力。そして純粋な身体能力の差だった。

無論、球磨川がひ弱というわけではない。彼はいわばエリートと呼ばれても遜色の無い潜在能力の持ち主である。

しかしそれでも、上条には敵わなかった。

上条の左拳が球磨川の顔面を殴りつけた瞬間、上条の右手に負荷がかかる。それは球磨川が倒れようとしている証だった。

右手を離された球磨川はドサリと仰向けに倒れてしまう。

『あーあ負けちゃった』

「傷を戻さないのかよ」

『いいよ、なんだかどうでもよくなった』

「そうかい」

そんな会話を交わす二人を御坂達は心配そうに眺めている。

球磨川はあっさりと約束を反故する。それは身にもって学んだことだったからだ。

458: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/06(日) 23:59:29.88 ID:pkRzaC0/0
しかし、球磨川は一向に傷を戻す気配はみせない。いっそ清々しい表情を浮かべているくらいである。

『なんだか週刊少年ジャンプみたいだね。青春を感じるよ』

「こんな青春はごめんだね」

『そうかい』

もう球磨川には戦う意思はない。上条は会話を交わしながら確信した。

「球磨川、ここは見逃してやる。だから約束をしろ」

『いいよ、今の僕はどんな不平等条約だって守る気持ちだからね』

立ち上がることをしない球磨川に対し、見下ろしながら言葉を続ける。

「お前が壊した物や、傷つけた人を元に戻せ」

『分かった』

「俺たちの前に姿を現すな」

『分かった。僕は君たちの前に現れない』

「それだけだ」

そんな口約束を取りつけたあと、球磨川は口を開いた。

『了解だよ。上条ちゃん一つだけお願いを聞いてくれないかい?僕を立ち上がらせてくれ』

「傷を戻せばいいじゃねえか」

『この傷はできればそのままにしておきたいんだ。戒めのためにもね』

その言葉にどこか納得できない様子の上条だったが、すこし間を空けた後左手を差し出した。

そして、球磨川がその手をとろうとした刹那――

爆発音が鳴り響いた。

462: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/07(月) 00:20:24.04 ID:12GWCCFK0
「なんだァ?」

突然爆発した研究所の天井。その異変に一方通行が怪訝な表情を浮かべる。

一方通行だけではない、初春も、打ち止めも、御坂も、上条も、そして球磨川でさえも現状を把握できていなかった。

「よぉマイナス第一位。殺しに来たぜ」

そしてこの場に居る誰でもない声が響き渡り、同時に真っ白な羽が舞い落ちてくる。

それは打ち止めを閉じ込めていたビーカーを作成した人物の能力によって作り出された未元物質の羽。

レベル5第二位、垣根帝督によるものだった。

「なんだぁ?どいつもこいつもしけた表情しやがって。心配すんなお前らは殺さねえよ。第一位お前もな」

風穴の開いた天井からまるで天使のような羽を羽ばたかせながら降りてくる垣根はそう言った。

どこかのホストのような姿に天使の羽とはシュールな光景だが、この状況下笑う人間は誰も居ない。

「なンですかァ?このメルヘンホストくンはァ?」

垣根が放った言葉は一方通行の逆鱗に触れた。お前は簡単に殺せる、そういった意図を感じたためだ。

ベクトル操作で垣根をしとめようと演算を開始したところで、突如それが中断する。

球磨川の負能力ではない、これは――

「バッテリー切れだよってミサカはミサカはあなたに教えてみる」

バッテリー切れだァ、と一方通行は言おうとするが言語機能さえ上手く働いていないようで言葉を紡ぐことができない。

465: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/07(月) 00:25:42.26 ID:12GWCCFK0
『上条ちゃん。ごめんね傷を戻すよ』

球磨川は差し出されていた手をとることは無く、自らの傷を戻し立ち上がる。

『みんなを連れて先に逃げて』

「……わかった」

球磨川の提案にいくらか驚いた上条だったが、頷き御坂達の下へ走っていく。

「おいおい、ずいぶんと余裕だな」

『まったく、余りに想定通りで逆にテンション下がっちゃうよ』

垣根と向き合った球磨川はやれやれと首を横に振る。

『どうせ統括理事長さんの差し金でしょ?』

「まぁ俺を動かせるのはあの野郎くらいだしな。ちなみに今日は暗部の垣根帝督じゃなく、あくまで一個人への依頼としてを受けて来た」

『ふぅん』

「その態度、ムカついた。テメェはグチャグチャ殺してミンチにしてやるよ」

そして垣根は両翼を広げ臨戦態勢をとる。

そんな中、気を失っている佐天を初春が、9982号を御坂、そして一方通行は上条が担ぎ避難を始める。

最後に部屋を出ようとした上条は一度振り返り球磨川を見る。すると球磨川も振り返り微笑んだ。

『もう君の前に現れることは無いけど、こんなことで償いができるとは思わないけど……』

球磨川ははっきりとこう言った。

『できれば僕とまた友達になってくれると嬉しいな』

469: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/07(月) 00:36:56.79 ID:12GWCCFK0
球磨川は上条の返事を聞くことができなかった。

それは垣根の放った無数の光る羽が部屋中を破壊し、轟音を鳴り響かせたためである。

『ずいぶんとメルヘンチックだね。垣根ちゃんのイメージには合わないかも』

「安心しろ、自覚はしている」

螺子を取り出し応戦する球磨川だったが、遠距離からの攻撃に垣根へ近づくことはできない。

羽が球磨川を打ち抜くが、すぐに元に戻す。

先の上条との戦いのように平行線を辿る二人の戦い。

『それならその似合わない羽はなくしてあげるよ』

被弾する羽など気にも留めず、球磨川は前進し、宙を舞う垣根へ螺子を投げつける。

垣根はそれを羽で防ぐが、球磨川の目的は攻撃ではなく羽を消すことにあった。

「な……!」

驚愕の表情を浮かべてそのまま地面へと落ちる垣根。その落下点のすぐ傍には球磨川が螺子を持ち待ち構えていた。

『これで終わり?垣根ちゃん』

「っへ、テメェの特徴の無い面に戦意をそがれただけだよ」

慌てる様子も無く垣根は軽口を叩く。

そんな垣根に球磨川は無邪気な笑顔を浮かべ「それじゃ怒らしてあげるから本気出してよ」と前置きをし口を開く。

『お前、なんだか冷蔵庫の中に入ってそうな顔してるよな(笑)』

垣根はブチ切れた。

475: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/07(月) 00:46:27.89 ID:12GWCCFK0
「ぶっ殺す!!」

垣根はそう叫び、羽を作成。高く飛び上がる。

『学習能力が無いなぁ。そんなに堕天使ごっこをしたいのかい?ひょっとして垣根ちゃんって中二病?』

「うるせええええええええええええええええええ!!」

怒りに任せ先ほどの倍以上の羽を降り注がせる垣根。その衝撃で粉塵が舞い視界が奪われる。

そして視界が晴れてきた時、そこに居たのは無傷の球磨川の姿だった。

『もういいや、飽きたから死んじゃって』

そう言って球磨川がつまらなさそうに螺子を構えた瞬間、一筋の光が走り――

球磨川の右頭部が消し飛んだ。

「誰が一人だけっていったにゃーん」

頭部の四分の一が無くなった球磨川だったそれは無残にも倒れ、どこからか現れた一人の女に蹴り飛ばされる。

「おせぇんだよ、第四位。死ぬか?」

第四位と呼ばれた女は顔を引きつかせ、球磨川の死体を何度も踏みにじる。

「あぁ!?こんなダセェ野郎に我忘れてた奴は何処のどいつだ!?」

「俺の未元物質で姿を消してやったろうが。もともとこういう作戦なんだよ」

「っは!上からの命令じゃなきゃぜってぇテメェなんかとは組まなかったよ」

「俺もだよ」

477: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/07(月) 00:49:40.55 ID:12GWCCFK0
「とっととしたい回収して、この研究所破壊しておさらばすんぞ」

「指図すんな。私は先に帰るから後よろしく」

女はそういい残すとさっさと研究所から出て行ってしまった。

一人残された垣根は球磨川の死体を担ぎ上げると、穴を開けた天井から飛び立ち空中から未元物質を降り注がせ研究所を破壊した。

478: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/07(月) 00:55:23.14 ID:12GWCCFK0
研究所外部。脱出した上条たちは突如崩壊を始めた研究所をぼんやりと眺めていた。

誰も何も口にしない。

この戦いには勝者も敗者も存在しない。ただ、上条たちは徒労感を感じているだけだった。

「まぁだこんな所にいたのかよ」

そして突如投げかけれた聞き覚えの無い声。いや性格には御坂だけは知っていた。

「麦野……!」

かつて一度だけ戦ったことのある相手を前に放電する御坂。

「おいおい、こんなところで戦う気は無いわよ。であんた達は何をしてるのさ」

両手をあげ万歳をする麦野に上条が答える。

「球磨川を待ってる」

その言葉に一瞬首を傾げた麦野だったが、すぐに腹をかかえて大爆笑を始める。

麦野の姿に一同は困惑を覚えるが、麦野が言った言葉ですべてを理解した。

479: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/07(月) 00:55:54.17 ID:12GWCCFK0




「あぁ?なにめでたいこと言ってんだよ?アイツなら死んだよ。私が殺したよ」






540: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/07(月) 23:35:57.58 ID:U9NLiCsX0
後日談、というか今回のオチ、というかあの事件からのあたしの周りについて話したいと思う。

あまり表立ってこういった説明をしたことがないので、上手く伝えることができるかは少し疑問ではあるが、

やっぱりあの事件に関わった以上、それによってなにやらヘンテコな能力を持つことができた以上、あたしは話さなければならないのだろう。

あの事件、と称してなかなか首謀者であるあの人の名前を出せないのはなぜだろうか?

そんなことを初春に話してみたところ「ひょっとして恋ですか?」と頭に咲く花から漂う香りよりも甘く、その飴玉を転がしたような声よりも甘い発言をしたので、とりあえずスカートを っておいた。

苺柄だった。

違うよ、と言ってしまえばそれで終わったのだろうが、言えなかったあたり決して初春の言うことに間違いはないかもしれないが、

あの人に持つ感情は恋ではなく、それに近い別の何かだと思う。

感謝の気持ちともまた違うこの感情は、いかんせん語彙が乏しいあたしでは表しきれないのだ。

あたしの気持ちを察してくれたあの人。

あたしに能力を与えてくれたあの人。

あたしをどん底まで落としてくれたあの人。

541: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/07(月) 23:40:48.96 ID:U9NLiCsX0
三人。

これはあたしが能力の試運転のために傷つけた人の数。

殺してはいないし、別段何か障害が残ったわけでもないが、それでもあたしがあたしの理由で傷つけたのだから謝罪をしなければならい。

でも、いまだにあたしはそれを行動に移せないでいる。

それについては白井さんに相談をしてみたら

「今にでも行ったほうがいいですけど、もう少し気持ちの整理をしたほうが相手にも上手く伝わると思いますわ」

そう言って笑ってくれた。その笑顔はあたしを助けに来てくれたときと同じで、とても優しいものだった。

その言葉に勇気付けられたあたしは、その日の内にご丁寧にメモ帳に謝罪文をビッシリと記入して、入院している彼等をたずね謝罪した。

きっと怒られるだろうとふんでいたあたしを待ち受けていたのは、なぜか彼らからの謝罪だった。

無能力者を馬鹿にしていて申し訳ない。それが三人が三人ともあたしに言った言葉。

混乱しているあたしは三時間かけて書いた謝罪文の一行目にあった「ごめんなさい」という言葉しか言うことができず病室を後にした。

どうやらあたしに怪我をさせられて何か思うところがあったようだが、残念ながらあたしは読心能力など持っていないので知るよしもない。

「人間は他人を理解できない、らしいわよ」

これを言ったのは御坂さんだった。

ただ御坂さんも自分で辿り着いた意見ではなく、あの時、あの場所で、あたしが気絶をしている間にあの人が上条さんに言った言葉らしい。

それを聞いてあたしは少し噴き出した。いかにもあの人らしい意見だな、と思った。

だけどあたしは他人を理解しようと決めた。少なくとも大事な親友たちの気持ちぐらいは。

さて、前置きが長くなってしまった気がするけど、ようやくあの事件におけるあたしのエピローグを語りたいと思う。

あたし、佐天涙子の最初で最後の一人舞台。不慣れな点もあるかもしれないがどうかそれは見逃してほしい。

だって、これはあたしが初めて主人公として語る後日談なのだから、それくらいは欲張ってもいいでしょう?

545: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/08(火) 00:38:12.75 ID:Ri3UQg5s0








後日談・佐天涙子の場合







546: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/08(火) 00:40:23.24 ID:Ri3UQg5s0
「ん……」

どこか倦怠感を身に覚えながらもゆっくりと瞼を開ける。

そこでまず視界へ飛び込んできたのは記憶が途切れた研究所の天井でも、空でもなく、大きな花の群れだった。

あぁここはきっと天国なのだろうか、だからお花畑が見えるのか、

でもあたしはきっと地獄行きの筈だからきっとこれは三途の川原なのか、と一人で思いふけっていると、

突然、その花がゆらゆらと蠢き出し一瞬で視界から消える。変わりに目に映ったのは親友の初春飾利の涙でクシャクシャになった顔だった。

「うぅ……佐天ざん……よがっだぁよぅ」

その顔を見てここが現実なのだと理解し、

さらに言えば初春の顔面の後ろにかすかに見える天井の模様は風紀委員第一七七支部の詰め所のものだと把握する。

気を失った自分をここまで運んでくれたであろう初春にとっては感動の再開なのだろうが、

今にも垂れ落ちそうな鼻から伸びる液体に標準を合わせられているあたしはそれどころではない。

「……おっけー初春。とりあえず顔を洗おうか」

きっと予想以上にハキハキと喋ったあたしに驚いたのだろう初春は、ピクッと体を揺らし、

そして自分がどんな顔をしているのかを把握して慌てて洗面所へと駆けていった。

鼻水という魔の手から開放されたあたしはとりあえず自分の状態を把握する。

研究所内で何か背中に刺され、そのまま気を失った。そのまま初春につれられこの支部まで来たのだろう。

今、あたしは応接用のソファーの上で仰向けになって寝ている。

背中には、もう痛みがない。つまりあの人の能力でなかったことにされたのか。

「佐天さん」

そこまで考えを巡らした所であたしを呼ぶ声が聞こえる。

547: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/08(火) 00:42:07.10 ID:Ri3UQg5s0
「せっかくの再開ですのでもう少し気を掛けてやってもよかったでしょうに」

あたしはソファーから飛び起きて、声のした方角を見つめる。

そこには苦笑いを浮かべている白井さんと、壁にもたれかかったまま何か考えている御坂さんの姿。

「だって、もう少しで鼻水があたしの顔にクリーンヒットするところだったんですよー」

「それだけ軽い口がきけるのなら、別段問題は無いようですわね」

「えぇ……おかげ様で」

そんな会話を白井さんと交わすも、御坂さんの反応は無い。あたしは相変わらず同じ体勢を取り続けている御坂さんを見つめる。

あたしの視線に気がついたのは御坂さんではなく白井さんで、自身の後ろに立つ御坂さんに小声で「お姉様」と呟いた。

そこでようやく御坂さんは伏目を止めあたしへ目を向ける。

「あ、ゴメンね。ちょっと考え事を」

取り繕うようにワタワタと慌てながら答える御坂さんにあたしは一つ質問を投げかける。

「どうなりました?」

それは少しずるい質問だった。

この室内に漂う雰囲気を考えれば全てが全てハッピーエンドで終わったわけでは無いだろうし、

御坂さんがあんな顔をしている原因と分かっていての質問だから。

あたしの問いに御坂さんは「あー」とか「えー」とか呻くばかりで一向に説明が始まる様子が無い。

それに見かねて助け舟ねを渡すように口を開いたのはやはり白井さんだった。

風紀委員として立ち回っているので、こういった状況説明が得意なのだろう。

それがどんな伝え辛いことでも。

548: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/08(火) 00:44:28.98 ID:Ri3UQg5s0
白井さんは淡々と説明してくれた。

あの時、あの人があたしと白井さんと妹さんに螺子を突き立てたこと。

その後、学園都市の第一位の能力者が現れ御坂さんと共にあの人と戦うも負けてしまったこと。

窮地を救ったのが上条さんだということ。

突然現れた第二位と第四位のこと。

研究所が崩壊したこと。

そして、あの人が死んだということ。

「まぁ、わたくしも気を失っていたので半分以上はお姉様方から聞いた話ですが……」

「その、確かにあの人は死んだんですか?」

「えぇっと……」

問いただしたら、急にしどろもどろになってしまう白井さんは助けを求めるように御坂さんを見つめる。

あたしの言葉にだから話したくなかったんだ、という様な表情を浮かべるのは御坂さんだった。

そして白井さんの言葉を引き継いだのも御坂さん。

「実際に死体を見たわけじゃないけどね。あの時麦野……第四位が言うには事実らしいわ。それにあの崩壊した研究所内に居たのよ。きっと助からないと思う」

「そう、ですか……」

分かりやすく声のトーンが落ちたあたしのせいで、重かった部屋の空気がさらに重くなってしまう。

結局その沈黙を破ったのは、ようやく洗面所から戻ってきた初春だった。

「これで大丈夫です!」

フンス、と主張するには物足りない胸を張りながら自信満々にそう言った初春に、あたしを含め三人が声を出して笑った。

「どど、どうしたんですかぁ!?まだ何か顔についてますか?」

切実に言う初春にあたし達は何も答えず、ただただ笑い続けた。初春はいきなり笑われたことに混乱している。

オロオロと現状を理解できずに慌てる初春には悪いがしばらくこうやって笑わさせてもらおう。

せっかく帰ってきたあたしの居場所だ。今日は疲れて寝てしまうまで笑っていよう。

落ち込むのも、現実を受け入れるのも取り合えず明日へ持ち越しだ。

そして、つられて笑い出した初春も含め、あたし達仲良し四人組みは結局この支部の中で夜を明かすことになり、

翌日出勤してきた固法先輩に叩き起こされるまで泥のように眠っていた。

571: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/08(火) 23:12:38.59 ID:Kuml9aT00
あの事件から一週間経ったとある平日。学生であるあたしは当然の如く学校へと通いいつもの様に授業を受けていた。

だが、内心は正直穏やかではない。なぜなら今日は身体検査(システムスキャン)があるのだ。

学園都市の学生なら誰もが行うこの身体検査は能力のレベルを測るもので、定期的に行われるのだが

あたしの様な無能力者には期末テストよりも酷な行事でしかない。

はっきりと第三者から才能がないと決断を下されるのだ。

無能、という言葉がどれだけ人を傷つけるのかは学園都市にやって来て初めてあたしは知った。

無能力者、レベル0、欠陥品、才能欠如。

検査結果が渡された後は、どんどんマイナスの思考に陥ってしまい例えどれだけ気丈に振る舞ったとしても、

胸の奥に蓄積する感情は膨れていくだけで、偶然見かけた能力者に嫉妬してしまうほど落ち込んでしまう。

そんな弱いあたしはその感情を言い訳にし二回とある事件に関わってしまった事がある。

幻想御手事件と、先述したあの事件である。

幻想御手事件の場合は能力に憧れ、ある種ドラッグのような幻想御手に手を出し一時的ではあるが能力を手に入れた。

ただ意識不明になるというおまけ付だったが。

572: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/08(火) 23:13:09.36 ID:Kuml9aT00
そして二回目のあの事件。ちょっとも成長してないあたしは今度は能力者を痛めつけるという行動をとってしまった。

これは単純に嫉妬や願望に押し負けてしまった結果で、そこにあったのは能力への憧れという前向きな理由

(幻想御手に手を出した時点で前向きではないかもしれないが)ではなく、どこまでも負の理由しかなかった。

それによって友人との仲も深まったし、負能力というあたしにピッタリなマイナスの力も手に入れることができたのだが、それでも、だ。

それでもあたしの罪は消えることはないし、今こうやって身体検査を前に憂鬱になっているあたり、やっぱり成長できていない。

まぁ今度はこの感情が爆発する前にきっと友人たちが相談に乗ってくれるだろうし、

あたしも一人で抱え込むことはしないようにしているので二度したことを三度することはないと思う。多分。

「よし!頑張れ佐天涙子!」

自分を奮い立たせるように言い、勢いよく立ち上がる。

「そぉか、じゃあ頑張ってこの問題を解いてくれ」

ただ、ひたすらそんなことを考えていたので、今が授業中だということを忘れてしまっていた。

立ち上がったあたしに数学の担当教諭がにこやかな笑みを浮かべながらそういうと同時に、クスクスと笑う声が教室のいたる所から聞こえてきた。

当然、そんな問題が解けるわけもなく廊下に立たされるという時代錯誤もはなはだしい罰を受けることになり、

あたしはこのやり場のない気持ちは休み時間に初春のスカートを って晴らす事をしっかりと心に誓った。

きっと上条さんなら「不幸だー」と叫ぶのだろうが、残念ながらあたしにはこれ以上クラスメイトに笑われる勇気は持ち合わせていない。

573: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/08(火) 23:13:45.00 ID:Kuml9aT00
廊下に立つという拷問の様な罰を終えた後、授業をまじめに受けたり、

休み時間には初春のスカートを ったりして過ごしているうちに身体検査の時間がやってきた。やってきてしまった。

「それじゃ行こっか」

「そうですねぇ」

あたしは初春を連れて指定の検査場所に移動しようと教室の出口へと向かう。

「あ、佐天はちょっと残ってくれ」

引き戸の取っ手に手を掛けた瞬間、担任の教師に呼び止められる。

はて、いったい何か粗相をしてしまったのだろうか。必死に記憶を辿るが思い当たる節が多すぎてすぐに検索を中止して担任の下へ向かうことにした。

初春が心配そうな表情を浮かべていたので、またスカートを ってやろうかと思ったが体操着だったので諦めた。非常に残念だ。

初春にとっては迷惑もいいところだろうけど。

先に検査場所へ向かってくれと初春に促し、教室から全ての生徒が出て行ったのを見計らって担任が口を開いた。

「実は、佐天には特別教室で検査を受けてもらう」

「はい?」

意味が分からなかった。これまで何度も検査を受けて、その度に結果が出ていないあたしを何で特別に検査する必要があるのか。

別に能力に目覚めた訳でもないというのに……あ。

そこで一つの事に思い当たる。負能力だ。

574: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/08(火) 23:19:28.46 ID:Kuml9aT00
あの日以来もあたしは変わらずに負能力を使用できる。

ただ一つだけ変わったことがあると言えば『負能力のオンオフができるようになった』ことだ。

心境の変化か、それとも全く別の要因なのか分からないが、

それまで常時発動しっぱなしだったあたしの“公平構成”が自らの意思で使用できるようになった。

公平構成。マイナスレベル4の負能力。

効果範囲内の人物のレベルをあたし基準にするという何とも使い道のないマイナスの能力。平等を願ったあたしを象徴する負能力。

正直なところ、この能力が消えなくて少しほっとした。それは決してこの能力に未練があったわけではない。

そう、未練があるとすればその人が発現させてくれたというところだろう。

「そんな顔をするなよ。俺だって校長に言われて動いているだけなんだから。んじゃ案内するぞ」

「はぁ……」

きっと真剣な表情を浮かべていたのだろう。担任があたしを気遣うようにそう言った。

どうやら担任はあたしの事情などは知らないようで、疑問を覚えつつもあたしを特別教室へ案内してくれた。

この様子だと、おそらく指示を出した校長も深くは事情を知らないのだろうなぁ、とぼんやり考える。

「それじゃ、この中にいる人の指示に従ってくれ。終わったら帰っていいそうだから頑張れよ」

そういい残しさっさと廊下を歩いていってしまった担任を見送り、あたしは教室のドアを開ける。

その中に居たのは――

「やっほう佐天さん」

陽気な挨拶をする、御坂さんだった。

575: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/08(火) 23:20:54.04 ID:Kuml9aT00
ちょっと休憩します。

577: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/08(火) 23:52:41.74 ID:Kuml9aT00
「ええええええええ!?何で御坂さんが!?」

「落ち着きなさいっての」

目の前に現れた友人に、あたしの思考は大パニックを起こしていた。

「い、いや普通驚きますよ!?いきなり特別教室連れてかれて、御坂さんが居て……」

「まぁ、私も今朝知らされた時は驚いたけどね……」

思い切り慌てふためくあたしに、どこか照れくさそうに頬を掻く御坂さん。なるほど、事前に知っていたから落ち着いているのか。

そこであたしは一つの疑問を抱く。この机も椅子もない教室にはあたしと御坂さんだけ。

「あれ?御坂さん一人って事は……」

この中にいる人の指示に従ってくれ、と先ほど担任が言ったことを思い出す。

「そうよ。私が貴女の能力を測る試験官」

どうやらあたしが思い至った結論は正しかったようで、御坂さんは少し不適な笑みを浮かべながらそう言った。

「登校したら突然の呼び出しをくらってね、ウチの理事長からこんな紙を貰ったのよ」

御坂さんは言いながら、ポケットから一枚のプリントを取り出しあたしへと渡す。

あたしはプリントと御坂さんを交互に見つめた後、ゆっくりと内容を読み上げることにした。

「えっと、第七学区立柵川中学に通う佐天涙子に希少価値の能力が発現した可能性があり……」

「能力内容及び強度を測定する為の試験官を貴校の生徒である御坂美琴へ依頼する……」

ポツリと一行だけ書いてあった文を読み上げ、あたしは再び御坂さんとプリントを交互に見る。

そして差出人の欄を見て驚愕することになった。

「差出人……学園都市統括理事長ぉぉ!?」

そこには学園都市最高責任者の肩書きが記載されており、

全く関わることのないであろう人種があたしの為だけにこの書類を送ってきた事実に思わず声を荒げてしまう。

578: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/08(火) 23:53:16.10 ID:Kuml9aT00
「そう、統括理事長」

とんでもない人物から送られてきた書類だというのに御坂さんは落ち着いた様子のままだ。

やっぱりレベル5ともなるとこの程度では驚かないの!?それともすでに面識があるの!?

本日何度か目のパニックを巻き起こすあたしに、御坂さんは冷静に声をかける。

「いい、佐天さん……落ち着いて聞いてね?はっきり言ってこの書類は怪しすぎるのよ」

その言葉にあたしは一瞬で冷静になることができた。

よく考えれば確かにこの書類はおかしいのだ。

あたしが負能力に目覚めたというのはあの事件に関わった人間しか知らないはずだし、あの中の誰かが情報を漏らすとも考えられない。

あたしが傷つけた人物からのリークかとも考えるが、彼らはあたしが能力をもっていたなど思ってもいないのでその線も消える。

残る可能性は一つ。

「監視、されてたのでしょうか……」

「それか、垣根帝督……第二位からの情報かもしれないわね」

御坂さんが提示した可能性を含めても、今のあたしの気分は気持ちの良いものではなかった。

いわばこの書類は『佐天涙子は統括理事会の監視下にある』と言っているようなものだから。

きっと学園都市が研究を進めている能力とは全く別のこの力を解析し我が物にしたいのだろう。

「拒否権は無いんでしょうか……」

「わざわざ私を試験官にしているあたり、それは意味がないと思うわ」

「そうですよね……」

多分あたしが拒否をしたところで次は無理やり研究所へ連れて行かれ、無理やり能力を解析されるのだろう。それは絶対に嫌だ。

579: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/09(水) 00:15:23.21 ID:vadpzJ7y0
「なら、御坂さんに測定をしてもらいます」

覚悟を決め、そう言った。

「分かったわ」

その言葉と共にバチバチと御坂さんの周りに無数の雷が走る。

現在あたしは能力をオフにしているので自由に電撃を操れるのだろう。

あの時の続きよ、とでも言いたげな表情を浮かべる御坂さんにあたしも幾らか興奮をしていた。

そうだ、あたし達の喧嘩はまだ決着がついていなかったんだ。

「ちょうどいい機会だから言わせて貰いますけど、御坂さんいい加減ゲコ太は卒業しましょうよ」

あたしは能力をオンにする。この教室内ではどれだけ離れようと御坂さんは効果対象になるので、幾らか帯電する雷が小さくなった。

御坂さんはそれを確認すると、ニィと楽しげな笑みを浮かべこう言った。

「佐天さんこそ、初春さんのスカート り止めたら?見てるこっちが恥ずかしくなるから」

あたしの言葉に御坂さんも言いたいことを伝える。

これでいい。

これであたし達は言いたいことを素直に言えるようになるだろう。

あたし達の間に静寂が流れる。

580: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/09(水) 00:15:53.25 ID:vadpzJ7y0
超能力者の御坂さんと無能力者のあたし。

きっとその間にはとてつもなく深い溝があるし、とてつもない壁がある。

本当の意味で分かり合えるのはきっととてつもなく時間がかかるだろう。

でも、時間をかければいつかはそれを飛び越えることができる。

飛んだ先ではきっと御坂さんは手を差し伸べているだろうし、初春や白井さんも応援してくれるだろう。

だから、これから始まる喧嘩はその為の助走。他人を理解するための助走。もっと仲良くなるための助走。

あたしは他人は理解できないかもしれない。他人はあたしを理解してくれないかもしれない。

あの人――球磨川さんにこんなことを言ったら呆れられてしまうかも知れない。

でもきっと。

「さっさと終わらせて、初春や白井さんとクレープでも食べに行きましょう」

「そうね。それじゃ行くわよ」

でもきっと、親友なら理解し合えるかも知れない。

581: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/09(水) 00:28:53.24 ID:vadpzJ7y0
「身体検査が終わってから数日が経ったとある日曜日。あたしの元へ結果表が届いた。あたしはそれを確認するとすぐに皆へ報告をした。」

初春の発案で風紀委員の支部でパーティーを開くことが決定し、あたしは普段よりもうんとおめかしをして出かけることにした。

なんと言っても主役はあたしなのだ。

準備を済まして部屋を出る。既に夏が過ぎ秋がひょっこりと顔を出しているこの季節でも日光が照っていればまだ少し汗ばむくらいだ。

支部へ向かう途中いろいろな人とすれ違う。

楽しそうにはしゃぐ子供。

幸せそうに手を繋ぐカップル。

仲良く談笑をする男子高校生。

陽気でのんびりとした表情を浮かべるスキルアウト風の集団。

そんな人達を見てあたしは思う。

この現実は思い通りにいかない。しょうがないだけでは割り切れない出来事も多い。

どうしようもない世界にマイナス思考になってしまうかも知れない。

でも、決して良い事が無いわけでもない。

人生はプラスマイナスゼロだという人がいるけれど、それはきっと間違いだ。

だって世界はこんなにも眩しいのだから。

だって世界にはこんなにもプラスが溢れているのだから。

だから、人生はプラスなんじゃないかな?

その時、優しい風が頬を撫でる。

幻想御手であたしが得た能力も風を起こす力だった。

あたしはその風に身体検査の結果用紙を乗せて飛ばす。

さぁ、これであたしの後日談はおしまい。明日からまた日常が始まる。

優しくて、大事な友人達と過ごすことができる、とても大事な日常が。

582: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/09(水) 00:31:59.48 ID:vadpzJ7y0











身体検査結果表

氏名:佐天涙子
所属:第七学区立柵川中学校
能力名:公平公正(フェアプレイ)
総合結果:レベル4











606: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/10(木) 00:08:41.91 ID:emFxlhkW0
『それでは投下します。今回の後日談の語り部はミサカちゃんでーす』

『かなり眠いですが頑張って落としていきますね』

607: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/10(木) 00:10:14.27 ID:emFxlhkW0
いよいよミサカが語る順番が回ってきました、とミサカは緊張を感じつつ後日談を語りだします。

おっと、一人称で進めていくとはいえこの語尾では進行に支障をきたしますね、とミサカは語尾を我慢することをここに誓います。

さて、気を取り直してミサカのミサカによるミサカの後日談を語りましょうか。

おっと、その前に簡単にミサカ達の説明をしておきましょう。

ミサカ達は妹達と呼ばれ、超電磁砲と呼ばれるお姉様のDNAマップを参考に作り出されたクローン体。

死ぬことが生きる意味と定められた存在です。

そんなミサカには佐天涙子同様、上手く言葉を紡ぐ自信はありませんが、

精一杯頑張ろうと思っていますので最後までお付き合いよろしくお願いします。

かと言って感動的なお話をする訳ではないのでどうか肩の力を抜いて、三流作者が執筆した小説を読むように期待せずご覧ください。

起承転結の後に語る後日談ならぬ余談ですので、もしも飽きてしまったと言うのならそこで手を止めてもらっても構いません。

なんせ病院の一室で同じ顔をした少女達の会話をミサカが語るだけですから。

これは生まれるはずのなかったミサカの話。

これは生きていてはいけないはずのミサカの話。

ネットワークに残るあの少年の言葉を借りるなら、これは虚構の物語。

なにも意味を成さない終わりの終わりの後日談。

それでは皆様、記劇で奇劇な喜劇の悲劇をご覧ください、とミサカは舞台演者の様に頭を深々と下げます。

しまった、語尾をつけてしまった。

……え?ミサカの検体番号ですか?まぁ別に教えるのは構いませんが。

ミサカは検体番号――――

608: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/10(木) 00:10:41.48 ID:emFxlhkW0










後日談・妹達の場合










609: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/10(木) 00:11:26.14 ID:emFxlhkW0
あの事件から一ヵ月後。とある病院の一室。

「……それで他のミサカ達は難を逃れたということですか、とミサカは感嘆します」

「ええ、あの花頭、初春飾利が上条当麻を発見した際にプログラムを実行したので、ギリギリ間に合いました」

「生き返ったミサカ達は天井亜雄の投入したプログラムの影響でネットワークに接続できてませんでしたからね、とミサカは説明口調で話します」

「さらに言えば感情を無くされていましたね、とミサカは13577号の説明に補足をします」

ミサカの眼前にはミサカとまったく同じ顔をした少女が二人、パイプ椅子に腰掛けながらミサカの話を唸りながら聞いています。

少女達はミサカと同じく造りだされた存在である、検体番号13577号と検体番号19090号。

因みにミサカから見て右側に座るのが13577号で、左が19090号です。

「しかし、研究所内で調整を行っていた個体が三体だけだったのも運がよかったといえますね、とミサカは奇跡の存在を感じます」と13577号。

「残りの個体は外部に出払っていたのが幸いでした」とミサカ。

「まぁ流石に研究所内には一万人も収容できませんしね」と19090号。

結果として、あの事件で死んだ妹達は0人でした。

「それでも、球磨川禊という少年は……」

そう言いかけて言葉に詰まる13577号に、ミサカは少し低いトーンで崩壊後の研究所の様子を伝えることにしました。

「研究所跡から発見された死体は0。恐らくは学園都市第二位に回収されてしまったのではないかと、とミサカは推測を伝えます」

「そこまでいくと、流石に生存している可能性はかなり低いですね、とミサカは冷静に分析をします」

顎に手を沿え、まるでどこぞの名探偵のように構える19090号にミサカは少しだけ苛立ちを覚えました。

「球磨川禊はきっと生きていますよ、とミサカは少し不機嫌に答えます」

あの少年が死んだという事実を認めたくありませんでした。

それがどんな感情から来ているのかはミサカにはよく理解できませんが、とにかくそう思ったのです。

651: 1 ◆qSD6YwiTko 2011/02/11(金) 22:48:03.35 ID:FfYoQvRh0
“あんなこと”は球磨川禊以外の人物では出きるはずがないとミサカは推測していたからか、

様々な感情が入り乱れそのような事を口走ってしまったのでしょう。ミサカを見る二人は無表情ながらも疑問を抱いてるように見えました。

「と、とにかくそのような不確定な話題は止めにしましょう、とミサカは無理やり話題を変えます」

うう、13577号と19090号がジト目でこっちをみています。完全にミサカを疑っていますね。

「まぁこの件は貴女のプライバシーに関わることなので無理に詮索はしませんが」

「ネットワークにさえあの事件の顛末を流さないということは深い事情があるのでしょう」

「とミサカ達は言い放ちます」

リレーをして話、語尾だけを揃えて言い放つ13577号と19090号。

あぁ……あの時の一方通行もこの様な気分だったのでしょうか。

「ネットワークといえば生き返った固体の中で唯一接続が可能だった9982号がアクセスしたときはかなり盛り上がりましたね」

ミサカネットワークの話題が出たのでミサカはすかさずそちらに話題を移しました。

「上位固体が調整したおかげでノイズのない信号が受信できました、とミサカは9982号が発信していた信号を思い出します」

「調整前はノイズだらけでミサカ達にも影響がありましたから、とミサカはお姉様と遭遇した時を思い出しつつ言い放ちます」

ミサカの前ではうーんと頭を捻る浸りの姿があります。

ちなみにお姉さまと遭遇したというのは19090号のことです。

「あの時はまさに祭りと表すにふさわしいスレの伸び具合でした、とミサカはネットワークで起きた惨状を思い返します」

13577号の言葉で、ミサカは同時にあの祭り状態のネットワーク内の状況を思い浮かべていました。

652: 1 ◆qSD6YwiTko 2011/02/11(金) 22:48:33.92 ID:FfYoQvRh0
生き返ったけどなんか質問ある?


1:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
あるんなら答える

2:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka19363
はいはい釣り釣り

3:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
いやID見ろよ

4:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka12359
そんな餌につらr
えっ?

5:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10058
えっ?

6:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka18524
>>1
>>1
>>1
>>1

7:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka17452
ひいいいいいいいいいいいいいいいい!!

8:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka12364
おいおいお前らノリがいいn……え?

9:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka14890
落ち着け。まずは落ち着いてタイムマシーンをだな……

10:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka11256
>>9
お前が落ち着け

655: 1 ◆qSD6YwiTko 2011/02/11(金) 22:55:33.72 ID:FfYoQvRh0
11:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
だから生き返ったんだってば

12:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka15923
運営様?いくらジョークでもやっていいことと悪いことが

13:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka20001
ミサカじゃないよー!これは釣りじゃないの!!

14:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
疑い深いなお前ら

15:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10032
運営自演おbbbbbb

16:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka20001
自演なんかじゃないよーってミサカはミサカはお仕置きしてみたり!

17:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka17452
ひいいいいいいいいいいいいいいいい!!




ひいいいいいいいいいいいいいいいい!!

18:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
>>17
お前そればっかじゃねえかwww

19:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka16947
運営様!ソースを!ソースをお願いします!!

10:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka20000
>>19
つ[カゴメソース]

656: 1 ◆qSD6YwiTko 2011/02/11(金) 23:02:32.94 ID:FfYoQvRh0
21:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka14626
>>20
黙れ

22:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka15124
>>20
帰れ

23:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka12364
>>20
失せろ

24:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka13278
>>20
消えろ

25:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10032
>>20
どっかいけ

26:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
>>20
邪魔

27:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka20001
>>20
喋るな

28:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka20000
(´・ω・`)

29:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka17639
運営様ー口調口調

30:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka20001
なんの事かなー?

ソースはmnw://misaroda.co.jp/ms2015457

657: 1 ◆qSD6YwiTko 2011/02/11(金) 23:09:04.61 ID:FfYoQvRh0
31:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10032
>>30
ガチかよ……

32:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka14564
>>30
確かにこれを見させられたら信じざるおえない

33:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
だから言ってるじゃねえか

34:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10088
どうやって生き返ったの?

35:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
死んだことをなかったことにされた。何を言ってるのk(AA略

36:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka19947
なんて気軽に

37:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka20001
不思議な能力だよね!

38:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10078
いや、それは不思議すぎるだろjk

39:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka19090
ほ、ほかの固体も生き返ったのですか!?

40:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
>>39
イエス。ただまぁ感情消されちゃってるけど

658: 1 ◆qSD6YwiTko 2011/02/11(金) 23:15:28.38 ID:FfYoQvRh0
41:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka13577
oh……

42:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka16974
まじか……

43:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
でも多分大丈夫だと思う

44:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10111
>>43
なんで?

45:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
もともと感情が無いに等しいミサカ達だし、感情って概念が消えたわけじゃないからさ

46:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10032
あーなるほど

47:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka19997
???

48:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka12365
>>47
時間をかけてMNWや外部の刺激を受ければ感情が戻るって事だろ

49:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
>>48
そんな感じ。だから気長にまとうぜ。

50:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka14721
りょーかい!
色々聞きたいことがあるぜ!その能力者のこととかな!!

それじゃ質問なんですけど……

713: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/14(月) 06:02:50.46 ID:66I0fpig0
9982号への質問で祭り状態のMNW内。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


生き返ったけどなんか質問ある?その156

651:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10032
これまでのまとめ
・妹達全個体完全復活
・謎の能力者の名前は球磨川禊
・『全てを虚構にする』というトンデモ能力【大嘘憑き】
・9982号以外の蘇った個体は感情が消えている(正し時間をかければ俺らと同じように感情と共に個性が表れる)
・9982号以外は調整のためMNWにはアクセスできない
・9982号は電撃使いの能力だけでなく、負能力なるものを習得している
・あの事件に関しては秘密
・9982号は上条派でもセロリ派でもなくお姉様派
・ただしクマー派でもある

652:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka12478
最後ちょっと待て

653:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka17411
クマー派……だと……

654:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka12345
クマーって悪者じゃないの?

655:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10471
>>654
結果良い事しかしてないじゃん。詳しい事件の内容は教えてもらえないけど。

666:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka19851
そりゃあ文字通り命を救ってくれた訳だからな>クマー
惚れるのも無理ない

667:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10032
つまり上条当麻と同義していいという事か?

668:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka19873
救ったっていっても上条とはベクトルが違うだろ

669:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10637
>>668
お前はセロリ派だな

700:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka19873
>>669
なぜわかったし

714: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/14(月) 06:03:43.51 ID:66I0fpig0
701:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10040
ベクトルとか言っちゃう時点でもうね

702:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
さて質問はもうないかな?ないならそろそろ眠りたいんだが

703:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka19658
俺はないな

704:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka12359
俺も

705:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10077
俺も

706:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka11223
解散でいいんじゃないか?

707:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka17637
そだね

708:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10032
あ、やっぱり一つだけ質問いいかな?

709:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
>>708
おk。でもそれでラストな

710:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10032
>>709
thx
それじゃ最後の質問

……9982号はミサカ達の事をどう思ってる?

715: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/14(月) 06:04:13.80 ID:66I0fpig0
711:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
あー……

712:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10032
無理にとは言わないけどさ

713:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka13249
それは俺も聞きたいかも

714:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10101
確かに。できればだけど

715:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10094
ミサカも気になるかな

716:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
それじゃ、ちょっと語ってもいいかな?

717:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10793
おk

718:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10032
当然

719:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka19322
モチロン

720:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka20000
>>719
モロ  に見えたwwwww

716: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/14(月) 06:04:48.03 ID:66I0fpig0
731:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10032
うわぁ……

732:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka19363
おい







おい

733:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka13777
空気嫁

734:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka12359
>>720
これは許せない

735:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka19090
>>720
頼むから黙ってろ

736:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka13577
変 は黙ってろ

737:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
あはははははは!

738:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka19982
!?

739:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka12000
おい>>720謝れよ

740:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka20000
え……なんかゴメン……

717: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/14(月) 06:05:46.54 ID:66I0fpig0
741:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
>>740
いや、気にしなくていいよ
お前らのやり取りが面白かったからつい笑っちゃったよw


話したい事忘れちまったww

742:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10032
なんだそれwwww

743:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka13962
台無しww

744:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka17773
まぁミサカ達にはこんなオチが丁度いいんじゃないか?

745:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10214
>>741
ハンカチをスタンバった俺に謝れ

746:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka20000
重いふいんき(なぜかry)を吹き飛ばす為に下ネタを使う。それが漏れの流儀だ

747:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka16317
>>746
悲壮感たっぷりな謝罪の後じゃ意味がありませんよ

748:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
>>746
ありがとな。素直に受け取っておくよ

それじゃ、無理やり質問に答えるとする

実際、生き返った当初は憎くて仕方なかったさ。10032号以降の妹達もお姉様も一方通行も。
なんでミサカ達なんだ?
なんで早く製造されて……いや、生まれてしまったのか?
なんで殺されなきゃならないのか?
死ぬ間際にそんな事を思ったからだと思う。


749:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka14890
…………

750:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka19471
…………

718: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/14(月) 06:06:33.56 ID:66I0fpig0
751:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
でもお姉様と戦って、負けた時には綺麗にそんな感情は消えてなくなってた。まるで球磨川に消されたみたいに。
今にして思えば苦しかったのは死んだミサカ達だけじゃなかった。

ミサカ達の分まで必死に生きていた妹達だって
目の前でミサカに死なれたお姉様だって
……ミサカ達を殺した一方通行だって
みーんな苦しんで生きてたんだろ?

752:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10032
……でも、9982号達の方が

753:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
>>752
苦かっただろうって?

754:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka10032
……はい

755:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
それは否定しない。
でもさっき言ったようにミサカは誰も憎んでいないよ

756:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka11111
それは……どうしてですか?

757:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
だって今はこうやって生きてるし、お姉様はアイス奢ってくれるし、上位個体は可愛いし、一方通行だって謝ってくれた
だから、誰かを憎む理由なんてない

758:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka20000
9982号……

759:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982
様々な香りが鼻孔を刺激し胸を満たして

一様でない風が髪をなぶり身体を吹き抜けて

日差しが肌に降り注ぎ、頬が熱を持つのが感じられ

こんな眩しい世界で生きている妹達が……

719: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/14(月) 06:07:36.34 ID:66I0fpig0


760:以下、名無しに変わりましてミサカがお送りします ID:Misaka9982











そんな妹達のことが、大好きです。














721: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/14(月) 06:29:47.02 ID:66I0fpig0
結局、その発言で全ミサカが感動してしまって再度スレが猛加速し、上位個体が一時的ではありましたがネットワークに規制をかけ沈静させてのです。

「…………」

ミサカを含め三人が三人とも口を開くことはなく、コチコチと壁掛け時計の秒針の音だけが場に響いています。

そのまま時が止まってしまうのではないかと思うほどの静寂を破ったのは19090号でした。

「何故、今になってあの事件の事を話そうと思ったのですか、とミサカは疑問を投げかけます」

ミサカを見つめる19090号の瞳は、まるで射抜くように鋭く、そしてどこか覚悟を決めたようなもので、思わず言葉に詰まってしまいました。

「ミサカが語るべき時期が来た、とだけ言っておきましょう、とミサカは言葉を濁します」

きっと誰が聞いても怪しさしか感じ取れない言葉しか発することができません。

しかし19090号は深く問いただそうとはせず「そうですか」と短く呟いて口を閉じた。

コチコチ、コチコチ。

相変わらず時計の秒針は忙しなく動き、規律正しいリズムを刻んでいました。

ただそれだけですが、何も聞こえないこの場に居るミサカには丁度いいBGMとなっていました。

「きっといつかはお話しますから、とミサカは呟くように言います」

ミサカの言葉に小さく頷く二人。

これはミサカの事情で、そこには「ただ話したくない」という感情しかなかったのかもしれません。

ミサカは彼女のように強くはないのです。

「それでは、そろそろ解散しましょうか」

「いずれ全てをお話ししてくださいね」

言葉をリレーしながら立ち上がる二人。先に19090号が退室し、続いて13577号が退室しようとドアノブに手をかけながらミサカに振り向き、こう言いました。

「9982号から直接お話しを聞いた個体は貴女だけですから、とミサカは10032号へ言葉を投げかけつつ退室します」

そして、今度こそ13577号は、扉の向こうに消えていきました。

ミサカは……ミサカ10032号は、それを黙って見送ることしかできなかったのです。

722: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/14(月) 06:34:05.93 ID:66I0fpig0
これにて【後日談・妹達の場合】は終了です。
語り部は9982号ではなく10032号というオチ。

 

759: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/14(月) 21:46:51.81 ID:8NkH2VLx0
幸せか不幸せかなんていうのは所詮、個人の主観によって変わってくるものであって、

それを定義しようとするなんてことは途方も無く無謀で、とてつもなく無駄なことだと思う。

例えば俺は朝から同居人に咬み付かれたり、登校中に不意打ちで電撃を放ってくる中学生と遭遇するなんていう、いかにも不幸な目にあったりしたところで、

友人達は「幸せ者やなぁ」などとその細い目をさらに細くして羨ましがったり「裁かれるにゃー」とサングラスで隠された瞳に殺意を宿らせたりする。

「だったら代わってくれ」なんて言った所で友人達はやれフラグだの、やれカミやん属性だのとよく分からない単語と共に怒りのオーラを放ってくるのだ。

まぁ何が言いたいのかというと、人によって状況の受け止め方、感じ方は様々だということで、さらに言えばそれは別に幸福や不幸だけではないということ。

食べ物に好き嫌いがあるように、人間に好き嫌いがあるように。それは人間として当然のことだ。

共に腐っていきたい。共に古傷を開きあいたい。共に痛みは他人に押し付けたい。

きっとこんな事を常に思っているのはあの大嘘憑き位のもので、

普通なる俺としては腐っていくなら止めたいし、古傷が開いたら手当てをしたいし、痛みは一緒に乗り越えたいと思う。

きっとこんなことを言えば大嘘憑きはお得意の詭弁で くし立てるのだろうが、生憎と俺は物分りの悪いオチコボレ高校生なので落ち込みはせよ、反論はできないにせよ

自身の行き方を変えるつもりは無い。

変らないものなど存在しないという言葉はよく耳にするが、変わらないものは存在すると俺は持論を持っていたりする。

それは一体なんなのか、と問質されれば上手いこと話すことはできないのだが。

論より証拠、とでも言えば良いのか。あの事件から二週間が経ち、人吉先生を始め自分の過去を色々聞いた今でも上条当麻は上条当麻のままで、相も変わらず不幸体質はそのままで。

インデックスには咬み付かれるし、財布は落とすし、同級生には頭突きされるし、特売は買えないし、

補習は受けさせられるし、スキルアウトには絡まれるし、ビリビリ中学生には追い掛け回されるし、厄介事が向こうから手を振ってやってくる。

とにかくちょっとやそっとでは人間は変わらないし代わらないのだ。

だから俺は俺のままで死ぬまで生きていくのだろうと思っていた。

例え一度死んだ身だろうが、厄介ごとに巻き込まれていようが、自分がとんでもない過負荷(マイナス)を抱えていようが、これまで通り生きていくのだろうと思っていた。

俺と一方通行と御坂美琴という少し変わった面子であの研究所を訪れ――

死んだはずの大嘘憑き、球磨川禊と三度目の再開。いや、正確には四度目の再開を果たすまでは。

だからこれは俺の「変化」についての後日談。起承転結の結の後に続いてはいけない起の話だ。

予め言っておくとこの話はバッドエンド。全てを終える頃には全てが台無しになってしまう。そんな後日談。

それでもよければ、どうか聞いてほしい。

761: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/14(月) 21:48:22.10 ID:8NkH2VLx0










後日談・幻想殺しの場合










762: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/14(月) 21:49:33.24 ID:8NkH2VLx0
「よぉーカミやん」

教室へ入ると陽気な声で挨拶をする青髪が教壇に腰をかけていた。

当たり前だが校舎は崩壊などしていなく、他のクラスメイトたちも登校しておりいつも通りの光景が目の間に広がっていた。

「土御門は?」

「今日は用事があるにゃー、やと」

「そうか」

もう一人の友人の姿が見えなかったので確認をしてみるとどうやら登校すらしていないようだ。恐らくはあの事件の後処理、そんなところだろう。

あの事件がとりあえず終結した後日、俺、青髪、土御門、姫神、人吉先生という面子で話し合いが行われた。議題は勿論、球磨川禊について。

話し合いは青髪、姫神の両者が土御門へ謝罪をするところから始まった。

特に姫神の謝り方は凄まじく、「お前そんなテンションできんのかよ」と思わず突っ込んでしまうほど。

当の土御門は顔色一つ変えず「まぁ想定の範囲内だったからにゃー。気にすることは無いぜよ」と不敵な笑みを浮かべて二人を許した。

どうにもやっぱりこの男はどこか含みのある言い回しを好むようだ。

土御門の事情を知る俺や、事情を知ってしまえる青髪はその言葉で土御門は自分なりの役割を終えたのだろうと理解した。食えない奴め。

その後の話し合いはなんというか、消化試合とでも言うのか、どこぞの軽音部よろしく人吉先生が持参したティーセットでお菓子を摘みながら行われた。

そんなわけで、あの事件は一応の解決をみた。

ちなみに人吉先生は久しぶりに訪れる学園都市を観光するだとかで近くのホテルに拠点を構えている。子を持つ身ながらご自由なことだ。

というか、あの容姿であの年齢はないだろう。ウチの担任である小萌先生とも知り合いみたい(先輩後輩の仲らしい)だし、やはり類は友を呼んでしまうのだろうか。

763: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/14(月) 21:50:30.09 ID:8NkH2VLx0
「うーん、平和だなぁ」

思わずそんなことを呟いてしまう。

「なんやぁカミやん。いつもなら不幸だーとか叫んどるのに」

俺の言葉にニヤニヤしながら言う青髪。

「姫神もなんとか能力を抑えてるみたいだし、土御門の傷もたいしたことなかったし、妹達……あぁお前には隠す必要は無いな。妹達も全員無事だしな。これ以上望むのは文武不相応ですよ」

「そんなもんかいな」

「そんなもんだよ。まぁ心残りはあるんだけどな」

心残り。それは球磨川と交わした約束が果たされていないこと。いや一つは守られているのだが、もう一つはやはり実行されてはいない。

というよりも「俺たちの前に現れない」という約束と「全てを元通りにしろ」という約束が前者だけ守られたところから考えるに、やはりあの男は死んでしまったのだろう。

死者は何も語らない。

いくら他人の死をなかったことにできる力を持っていた所で、その術者が死んでしまえば使うことはできない。

「あ、そうやカミやん。放課後でええから人吉センセがホテルに来て欲しいんやと」

「そうなのか?同居人は食事の作り起きしておいたから大丈夫だけど、俺今日はちょっと用事があるんだよなぁ」

ふと思い出したように言う青髪は、どこと無く眉間に皴が寄っているように見えた。

「なに言うてんねん!人吉センセから直々のご指名やぞ!ボクがカミやんやったら今すぐにでも飛んでいくわ!」

まったくこれやからフラグ体質の男は、となにやらブツブツ呟いている青髪。

「ま、まぁその用事も少し遅い持間だから、先に人吉先生のところへ行くようにしますよ」

青髪から滲み出る怒りのオーラを感じ取った俺は、その場を取り繕うために取り合えず首を縦に振った。

まぁ実際、一方通行達との約束は完全下校時間過ぎてからだし、問題は無いだろう。

764: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/14(月) 21:51:35.56 ID:8NkH2VLx0
「ホント、幾らかそのフラグ建築能力をボクにも分けて欲しいわぁ」

「お前が何を言っているのか理解できないんですが……」

俺がその言葉を言った途端、教室の至る所から舌打ちが聞こえた。まずい多分これで目を向けたら俺はヤラレル。

「……でもカミやんはこれからも厄介ごとに巻き込まれるみたいやし?それで勘弁したるわ」

青髪のその言葉には先ほどまでのふざけた様子は無く、真剣な口調だった。

「大変やで、カミやん。ボクが言ったこと覚えてるやろ?」

俺は二つの単語を思い出した。

「代用可能理論と時間収歛理論……だったけか」

「その通り。よぉ覚えとったなぁ、褒めてあげるわ」

「茶化すなよ」

起こるべく出来事は回避したところで必ず起こるし、物事には必ず代わりが用意されている。

「今回、球磨川さんがカミやんと関わったことで本来起こるべき出来事が全部後回しになったんや。だからこれから一気にそれが起こると考えてもええ」

青髪は言葉を続ける。

「平行世界の過半数を占める割合で同じ事件が発生しよる」

「勿論、カミやんはその渦中にいてるよ。当然、多少のズレはこの世界では起こるからその通りに事が進むとは限らんけどな、十中八九カミやんはまた巻き込まれるで」

この世界と平行して存在する世界を自由に覗くことができる青髪は、きっとこれから起こるであろう事件の内容を把握しているのだろう。

「だったら手伝ってくれ……って訳にはいかねえか」

「うん。それは無理や」

あっさりと切り捨てられた。

765: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/14(月) 21:52:44.81 ID:8NkH2VLx0
「あん時……話し合いの場でも言うたけどな」

青髪は語る。

「これから起こる出来事にボクは関わってはいけないんや。他の世界でボクはカミやんのクラスメイト。ただそれが役割やからな」

「今回こうして関わっただけでもイレギュラー」

「そうや。だからボクが関わったところで事件は解決できるかも知れんけど、それがこの世界にどんな影響を及ぼすのかが分からんからな」

つまり、青髪はクラスメイトとして、上条当麻の親友というのが与えられた役割なのだ。事件に加わってはいけない存在。

「だからこれからも、これまで通りの青髪ピアスをヨロシクってことや。それにな」

そう言って右手を差し出す青髪。

コイツはこう言って協力をしない理由付けをしたが、実際のところもう一つ理由がある。

平行世界をこの世界に反映できる強力な能力を使用すれば、いずれどこかの世界は崩壊してしまう、と青髪は言っていた。

ならば青髪は今まで通りその能力を使わないだろう。例え自分が死ぬような目にあったとしても。

それでも、あの時俺を止めるためにコイツは能力を使ってくれた。

その覚悟がどれだけのものか俺には想像もできないが、俺の為に使ってくれたという点で感謝をしている。

俺は青髪の手を握る。握手の形だった。

そして青髪は不適に笑いこう言った。

「ヒーローは自分の力で未来を切り開くもんなんやで」

まったく、俺の親友はどこまでもふざけてやがる。

814: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/15(火) 23:30:49.97 ID:jRrZvv8u0
学校が終わり、俺を呼び出した人物に会うために高級ホテルへと向かい、現在その人物が居る部屋の前に居る。

とりあえずノックをしたところ、入室許可が下りたのでドアを開く。(オートロック式だがどうやら解除してあったらしい)

「失礼しま……す?」

「いらっしゃい」

「…………」

あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!

学園都市でも随一である高級ホテルの一室に入ったらバスローブ姿の幼女が待っていた。

な、何を言ってるのか、わからねーと思うが、俺も何をされたのか分からなかった……

頭がどうにかなりそうだった……

平衡戦場だとか大嘘憑きだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。

もっと恐ろしいもの(合法ロリ)の片鱗を味わったぜ……

「なにポレナレフがDIOのスタンド攻撃を初めて食らったときみたいな顔してるのよ」

「は!」

バスローブ幼女こと人吉瞳先生(41歳)の声で自我を取り戻すことができた。

いやいや、だってバスローブ姿の幼女ですよ?  コンではない上条さんはいささか理解に苦しむ光景ですよ。

これで青髪なんかが居たら、えらい事になってた気がする。

「と、とりあえず着替えたらどうですか?」

「んー。面倒くさいからこのままでいいわよ。別に問題は無いでしょ」

「いや、上条さんの目のやり場的な意味で問題があるんですが……」

俺の抗議などに聞く耳は持っていないようで、人吉先生は部屋の中央にあるキングサイズのベットに腰を下ろし、

向かいにあるもう一つのベットに座るよう俺を促した。

服装についてはこの段階で諦めた俺は素直にベットに腰掛けた。

815: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/15(火) 23:31:42.64 ID:jRrZvv8u0
「で、なんで俺を呼び出したんですか?」

単刀直入に呼ばれた理由を問う。

人吉先生はその言葉を聞きベットの脇においてあったランドセル(なぜランドセルなのかはもう突っ込まない)から分厚い書類を取り出し、それを俺に渡す。

「カルテ……ですか?」

「うん、上条君の」

目を通すと確かに俺のカルテのコピーで、一番新しいカルテから順に揃えられていた。

その中でも記憶喪失(破壊)に関するカルテは含まれていない所から考えると、どうやらあの医師が人吉先生に渡したのだろう。

「ははは……こうやって見ると、途轍もない量ですね……ん?」

苦笑いしながらカルテを眺めていくと、記憶喪失以前のカルテが現れてきた。

まぁそれは大した内容ではなかったのだが、最後のカルテを見た瞬間、俺の手は止まった。

なぜならそのカルテだけが十二年前という表記だったからだ。

「これは……」

じっくりとカルテを眺めるとそこには箱庭総合病院というどこかで聞いた病院で記載されており、担当医は目の前の人吉先生になっていた。

「そう。それは私が書いたカルテ。といっても十二年前の事だからもう覚えてないでしょうけどね」

人吉先生は単純に物心つく前という意味合いで言ったのだろうが、十二年前どころかインデックスの件以前のことは何も覚えていない俺にとっては、記憶の中にあるはずも無い。

「……異常(アブノーマル)な子供達を検査する病院だったのよ」

重々しい口調で話す人吉先生。

「異常(アブノーマル)……ですか?」

816: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/15(火) 23:32:27.58 ID:jRrZvv8u0
「フラスコ計画って言ってね、とある高校の理事会が中心となって人間を完成させる計画があるのよ。この学園都市も一枚どころか中枢に絡んでるんだけど」

「ようは異常……天才と呼んだほうが分かり易いかしら?とにかく天才がなぜ天才たるかを解き明かし、人為的に天才を造り出すことを目標にしてるわけ」

「その為には大量のサンプルが必要で、そうやってあの手この手で異常な子供達の情報を集めてたの」

人吉先生は俺が持っているカルテを指差しながら、どこか疲れたような表情を見せる。

「もう理解しちゃったと思うけど、上条君もその対象だったのよ」

しっかりと俺を見据えて喋る人吉先生に瞳は奪われ、目を逸らす事が出来ない。

「で、でも……俺は天才なんかじゃないですよ!頭だって悪いし」

「幻想殺し」

まるで言い訳をするように話す俺を立った一言で黙らせる。そう、そんなことは俺だって分かっていた。異常な子供を集めているというのなら、この右手は異常すぎるほど異常なのだ。

「別に天才ってのは勉学に優れている、って意味じゃないわ。とにかく通常の人間とは違う何かを持っている人間って意味でのセグメンテーション。そう考えると異常に不幸な貴方の体質を危惧したご両親がこの病院へ預けるのは無理も無いわ」

「実際、その原因は右手にあったわけだしね」と今度は俺の右手を指差す。

「……確か、青髪もその病院に」

「通院してたわ。球磨川君もね」

球磨川、という単語にピクッと反応してしまう。

「その時は異常っていう括りしかなかったけど、過負荷……負能力者ってカテゴリができた今は青髪君も球磨川君もそこに分類されるわ、勿論、当時の貴方もね」

「……今は違うってことですか?」

当時、と人吉先生は言った。それはすなわち現在は違うということ。

817: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/15(火) 23:33:15.56 ID:jRrZvv8u0
「ええ、今の貴方は過負荷なんかじゃないわ。青髪君もね。過負荷だとかそういったのは様は心構えの違いよ」

「はぁ……」

その言葉に幾分か安心すると同時に胸の奥で何かが引っかかっている感覚を覚えた。

何かが、俺を呼んでいるような。

「今回呼んだのはこれを伝えたかっただけよ」

「そうなんですか?」

「あの上条君が今はこうやって立派に生きているだけでオバサンは感動してるのよ」

「もう大丈夫だとは思うけど一応こうやって自分の過去を知っておけば過負荷に落ちることはないと思うし」

だからこれまで通り生きてね、と親指を立ててエールを送ってくれた。

その後は先生の息子の話(どうやら面識があるようだが当然覚えていない)だったり、息子さんが必死に守ろうとしている少女の話だったりで時間が流れた。

そして気がつけば一方通行達との約束の時間が近づいていた。

「あ、すいません。俺ちょっと用事が」

「あら?用事があったの?ゴメンね長話しちゃって」

「いえいえ、とっても楽しかったですよ」

言いながら俺はベットから立ち上がり部屋を後にしようとする。

そして一度振り返り最後に質問を先生に投げかけた。

なぜこんな事を聞いたのか分からない。胸の奥に居る何かが、そうさせたのかもしれない。

「俺の過去は、本当にそれだけですか?」

俺の質問に目を開き驚いた人吉先生だったが、直ぐにいつもの笑顔を浮かべてこう言った。

「ええ、全部よ」

その言葉を聞くと、俺は「失礼します」と呟いて部屋を後にした。

帰りのエレベーターの中、独りになった俺はふと一つの言葉を呟いた。

それは誰に対して言った言葉なのかは分からない。

ただその言葉は冷たくエレベーター内に溶けていった。

818: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/15(火) 23:34:18.60 ID:jRrZvv8u0
『嘘つけ』

871: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/16(水) 22:19:11.33 ID:5DTpGb3h0
待ち合わせ場所はあの研究所から歩いて数分の所で営業しているコンビニで、結果として俺が一番遅く到着した。

予定していた集合時間より五分早く到着したというのに、何故か俺が遅刻をしたような雰囲気が流れるが、誰一人言葉を発しない。

一方通行、御坂、御坂妹、そして俺こと上条当麻を含めた四名。これが今回あの研究所へ向かうメンバー。

研究所、いや実際には研究所跡と呼称した方が正しいだろう。事件後に何度か足を運んでいるが崩壊したまま放置されているのだ。

「……行くぞォ」

一方通行がそう呟くと、返答も待たずさっさと歩きだした。

カツカツカツと杖独特のリズムを奏でながら。

一方通行の後ろに俺たちは何も言わずついていく。

今回の企画は一方通行から持ちかけられたもので「自分の目で最後の確認をし、それでも何もなかったらこの件は完全に完結」という趣旨らしい。

突然の一方通行からの連絡にも驚いたし、提案内容にも驚いたし、なによりそのメンバーの中に御坂が含まれていたのが驚きだった。

当然というか、やはりというか御坂への連絡は俺からとった。(道端でエンカウントした時)

絶対に拒否されるだろうと思っていたのだが、「いいわよ」とまさかの返事を貰いずいぶん困惑した覚えがある。

あの御坂が、あの一方通行との同行を許容する。

俺が困惑するには十分な理由だった。

さらに言えば御坂妹(正式名称はミサカ10032号だが、俺はそう呼んでいる)も9982号の代理という形だがこの場にいる事も驚きだ。

きっとあの事件で思うところもあるのだろうし、また違った理由でここに居るのかもしれない。

仲良きことは素晴らしきかな。とまではいかないが、どうやら争いは起こっていないらしい。

それでもこの雰囲気は耐え難いものなのだが。

結局、俺達は目的地に到着するまで一言も喋らなかった。喋れなかった。

872:  ◆d.DwwZfFCo 2011/02/16(水) 22:48:24.02 ID:OiMnwfzL0
「なっ……」

「なンだァ?」

「なによ……これ……」

「これはいったい……」

研究所跡、いや研究所を見て四者四様の声を上げる。

共通点は全員が全員目の前の光景に驚愕しているということだった。

開いた口が塞がらないとはまさにこの事だろう。なんせ崩壊したはずの研究所が元通りに戻っているのだ。

当然、再び建設された訳ではない。仮に建設される予定があったとしてもこの規模の建造物はこうも早く建つはずがない。

以前からあったように、まるで崩壊などなかったように。

悪夢の象徴はそこにあったのである。

「ふっざけンなァァアア!」

一方通行が叫びと共に研究所へ向けて走り出す。杖をついていないということは、能力を使用しているのだろう。

それはつまり戦闘体制に入った事を示していた。

「待ちなさい!」

「お姉様も静止してください!とミサカは走る二人を追いかけます!」

一方通行を追って御坂、御坂妹の二人も研究所へ向かって行った。

「お、おい!待て……」

俺も三人を追おうと走り出そうとした瞬間、背後から感じた気配に足を止めてしまった。

873:  ◆d.DwwZfFCo 2011/02/16(水) 22:55:16.36 ID:OiMnwfzL0
おぞましき気配を肌で感じる。

おぞましき過負荷(マイナス)を背後に感じる。

この押しつぶされる様な嫌悪感。

この押しのけられるような怠惰感。

振り向かなくても分かる。あの男が俺のすぐ後ろに居る。

きっと相変わらず屈託のない無邪気な邪気を含んだ笑みを浮かべているだろう。

研究所を元に戻す。いや、文字通り崩壊をなかったことにしたであろう張本人。

冷や汗が、頬を伝う。

身を震わすほどの恐怖を振りまきながら。

身を凍らすほどの悪意を滲み出しながら。

アイツはそこに立っている。

ドクン、と胸の奥が、脳の最下層が脈を打つ。

何かが、俺の中で、何かを言っている。

そして、アイツは声を発した。

874: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/16(水) 22:56:00.08 ID:OiMnwfzL0










『やぁ、上条ちゃん』










878: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/16(水) 23:03:39.41 ID:OiMnwfzL0
振り向くことは、できない。

振り返れば奴が、大嘘憑きが、最悪が立っているから。

――球磨川禊が立っているから。

『おーい。聞こえてるんだろう?無視は流石に傷つくなぁ』

『あ、でも振り向かないでね。『君たちの前に姿を現さない』っていう約束破っちゃうから、さ』

『一方ちゃん達が戻ってくるまでお喋りしようよ。上条ちゃん』

どこか楽しそうな声が背後から聞こえる。間違いない。球磨川の声だ。

「な、なんで生きてるんだよ……」

搾り出すように発した声は今にも消えてしまいそうだと自分でも分かるほどで、明らかに混乱している。

いや、混乱などという言葉では俺の心情は表しきれない。これは、混沌だ。

『えー、逆になんで僕が死んだと思ったんだい?』

「それは、あの時第四位が……」

――あぁ?なにめでたいこと言ってんだよ?アイツなら死んだよ。私が殺した

確かに、そう言っていた。そうでなくともあの崩壊した研究所からは死体は発見されなかった筈だ。

つまり、球磨川が生きていてはおかしい。

882: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/16(水) 23:14:48.63 ID:OiMnwfzL0
『ふぅん。麦野ちゃんがそう言ったんだー。まぁ間違いではないからね』

『ただ訂正しなきゃいけないよ。“球磨川禊は死んだけど生き返った”ってさ』

「生き返った……?」

とても理解できる言葉ではなかった。

『これは僕も知らなかったんだけど、どうやら死後にも大嘘憑きは発動できるみたいでね』

『ただ副作用というか、副産物というか、誤作動というかなんというか、ある女の子と会わなきゃいけないんだよ』

球磨川が、何を言っているのか、分からない。

わからない。

『っま、そんなことはどうでもいいんだ!今日こうやって上条ちゃんに会いに来たのは理由があるんだ』

『これはもう一つの約束を守ったよって報告。いやー思ったより時間がかかっちゃって……ごめんね』

俺は答えない。

『ほら、上条ちゃん言ったじゃないか「元に戻せ」って』

『だから殺しちゃったスキルアウトの子達や壊れた物をなかったことにするのが大変で大変で……』

『この苦労分かってくれるよね!』

他人を理解することはできないと言っておきながら、苦労を分かってくれるかと言い出す球磨川。

俺はまだその言葉の意味を理解しきっていなかった。

球磨川が関わった事を元に戻すという意味を。

887: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/16(水) 23:22:35.13 ID:OiMnwfzL0
「なにが、言いたい……」

辛うじて言葉を吐くことができた。拳も握ることができた。

球磨川がまた何か企んでいるというなら、再び止める覚悟もできた。

『スキルアウトの子は六人でしょー、研究所は大きいし疲れちゃったな』

『まぁそれだけなら良いんだけど、なんせ一万人以上の存在をなくさなきゃいけなかったしね』

……おい。今なんて言った?

一万人以上の存在をなくす?

一万人以上の存在を無くす?

一万人以上の存在を失くす?

一万人以上の存在を亡くす?

「お……お前……」

もう、ちゃんと声が出ているかすら怪しい。

喉は渇ききって、対照的に全身を濡らすほどの汗が滲む。

球磨川は、何を言っている?

『どうしたの上条ちゃん?僕はリクエスト通り動いただけだよ』

球磨川は変わらない口調で言葉を続ける。

895: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/16(水) 23:27:10.26 ID:OiMnwfzL0
『  カ    』

なにを

『ミ        な  し   』

なにをいっているんだ

『  大 嘘  』

わからない

『 約                  上  ん   ?』

なにもいえない

『    だ     』

なにもかんがえられない

『よ              !』

たのむから

『  え    だ        さ 』

たのむから

『       なかったことに』

たのむから

『ミサカちゃん達        』

嘘だといってくれ、大嘘憑き

897: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/16(水) 23:28:42.12 ID:OiMnwfzL0












『生き返らせたミサカちゃん達の存在をなかったことにしたのさ』












908: 『死をなかったことにしたので存在をなかった事にしました』 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/16(水) 23:35:59.03 ID:OiMnwfzL0
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

気がつけば叫んでいた。

気がつけば振り向いていた。

気がつけば拳を振り上げていた。

気がつけば球磨川へ飛び掛っていた。

そして、気がつけば、倒されていた。

『おいおい、せっかく約束を守っていたのに上条ちゃんが破ったらいけないじゃないか』

『全部台無しだぜ?』

学ランのポケットへ手を突っ込んだまま済ました表情で俺を見下す球磨川。

その表情が、声が、仕草が、挙動が、すべてが腹立たしい。

「お前が……それを言うなぁぁあああ!!」

立ち上がり、再び殴りかかる。

もう説得をするなどという選択肢は、俺には、なかった。

911: 『死をなかったことにしたので存在をなかった事にしました』 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/16(水) 23:37:21.85 ID:OiMnwfzL0
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

気がつけば叫んでいた。

気がつけば振り向いていた。

気がつけば拳を振り上げていた。

気がつけば球磨川へ飛び掛っていた。

そして、気がつけば、倒されていた。

『おいおい、せっかく約束を守っていたのに上条ちゃんが破ったらいけないじゃないか』

『全部台無しだぜ?』

学ランのポケットへ手を突っ込んだまま済ました表情で俺を見下す球磨川。

その表情が、声が、仕草が、挙動が、すべてが腹立たしい。

「お前が……それを言うなぁぁあああ!!」

立ち上がり、再び殴りかかる。

もう説得をするなどという選択肢は、俺には、なかった。

『相変わらず上条ちゃんは元気が良いね。なにか“悪いこと”でもあったのかい?』

『とりあえず、落ち着いて僕の話を聞きなよ!』

915: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/16(水) 23:43:53.60 ID:OiMnwfzL0
「っが!」

軽く足を払われただけで俺の体が宙を舞い、無様に地面へと叩きつけられる。

『よいしょ』

そしてうつ伏せ状態の俺の背に球磨川は腰を下ろすことによって身動きを拘束する。

必死に抵抗するが、動くことができない。

「お前、ここに来て……学園都市に来て何がしたかったんだよ!!」

俺にはコイツの真意が全く分からない。

『学園都市?』

『ああ、別に学園都市には用事なんてないよ。用があったのは上条ちゃん、君にだよ』

「俺……に……?」

言葉の意味が分からない。

俺が居るというだけで、ここまでの事を起こしたというのか?

『おかしいとは思わなかったのかい?僕の行動が、君に起こった偶然が』

球磨川は、語る。

920: 『連投してたorz』 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/16(水) 23:53:52.93 ID:OiMnwfzL0
『なんでミサカちゃん達を蘇らしたのか』

『なんで涙子ちゃんに過負荷を与えたのか』

『なんで風紀委員ちゃんと戦ったのか、まぁこれは偶然だけど』

『なんで上条ちゃんと接触したのか』

『なんで青髪ちゃんと上条ちゃんの居る高校へ転校したのか』

『なんで僕の行動が分からないようにログをなかった事にしなかったのか』

『なんでわざわざ君達の到着をのんびり研究所内で待っていたのか』



球磨川は語り続ける。

大嘘憑きは止まらない。

『偶然、一方ちゃんや美琴ちゃんが研究所に居たと思った?』

『偶然、あの日天井ちゃんが打ち止めちゃんの居場所を芳川さんに教えたと思った?』

『偶然、気を失ったのがC棟の調整室だと思った?』

『偶然、花飾りちゃんが調整室に向かったと思った?』

『偶然、僕が調整用のプログラムを花飾りちゃんへ渡したと思った?』

『偶然、涙子ちゃんと風紀委員ちゃんとミサカちゃんだけに攻撃したと思った?』

球磨川は一呼吸置き、こう言った。

921: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/16(水) 23:54:32.83 ID:OiMnwfzL0










『甘ぇよ』











927: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/17(木) 00:06:25.99 ID:X8TXWhNH0
『ねぇ上条ちゃん。君は本来ここに居てはいけない存在なんだよ』

『不幸体質、とか言ってるけどそれは自分だけで納まらなず、こうして僕みたいなのを呼んじゃってさ』

『言い換えれば僕がこんな事をしたのもぜーんぶ上条ちゃんのせいだからね』

『そうだ、人吉先生から話を聞いたんだろ?』

『どうせ「貴方は今、過負荷なんかじゃない」とか言われて安心したんじゃない?』

『安心したって事は裏を返せば、自分が過負荷だって自覚があると同義だよ』

『それに人吉先生は本当に上条ちゃんの過去を全部教えてくれたかい?』

球磨川の言葉に、再び俺の中で何かが脈を打つ。

『疫病神と呼ばれた過去』

『平気で他人を不幸に巻き込んでいた過去』

『他人の幻想を面白がって殺していた過去』

『投薬によって無理やり記憶を強制された過去』

『そして……』

ゆっくりと、俺の真実が明かされていく。

不思議とそれを聞くたびに鼓動が収まっていく。

『僕と親友だった過去をね』

931: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/17(木) 00:19:30.31 ID:X8TXWhNH0
「お前と親友だった……?」

記憶を失っている俺には確かめる術はないが、球磨川が嘘を言っているようには思えなかった。

散々嘘をつかれているというのに、なぜだかそう思ってしまった。

『僕は一度しかあの病院へ行かなかったけど、上条ちゃんとは意気投合してね。いつか一緒に遊びたいなって思ってたんだ』

『それが風の噂で更正したって聞いてね、とても信じれなかったよ』

『だからこうやって学園都市に来て確認したんだ。すると本当に善行を行っている君の姿をみちゃってね』

『そのとき僕は思ったんだ。間違った友達を導いてあげるのが親友としての僕の役目だって!』

『その為にこんな茶番を仕組んだって訳』

「…………」

黙って話を聞くしかなかった。

そしてこの後、問われるであろう質問に対し考えを張り巡らせる。

『おっと、一方ちゃん達が戻ってきたみたいだ。名残惜しいけど僕はこれで帰るね』

俺はなんて答えればいいのだろう。

『学園都市ともこれでお別れかぁ。寂しくなるな』

俺はどうやって受け入れればいいのだろう。

『さて、最後にあの時の答えを聞かせてね。垣根ちゃんのせいで聞き取れなかったんだ』

それは、研究所での一コマ。

俺はあの時なんて答えたんだっけ。

『上条ちゃん』

俺は。

『できれば僕とまた友達になってくれると嬉しいな』

俺は、俺は――

932: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/17(木) 00:21:12.23 ID:X8TXWhNH0
『これで今日の投下はおしまい☆』

『ついでに禁書サイドのお話もこれにて終了』

『色々質問もあるだろうけど、次の投下で最終回だからその時に答えるね』

『それじゃ』



『また明日とか』

971: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/17(木) 20:57:29.65 ID:uihTyTvw0
研究所崩壊当日の深夜、窓の無いビル。

学園都市統括理事長アレイスター=クロウリーはある人物を待っていた。

今しがた球磨川禊の死体を回収した垣根帝督がビルの案内人とコンタクトをとったことを確認したので、もうまもなくこの場に現れるだろう。

そしてどこからともなく、室内へ現れた一つの影。その姿までは確認が出来ないが恐らく死体をかついでいる垣根が居る。

「無事回収できたようだな……」

労いの言葉などはない。「回収して当たり前だ」と言わんばかりの対応である。

しかし、垣根からの返答はない。

「どうした?未元物質よ。報告をしたまえ」

アレイスターの言葉でようやく歩を進め、その人物の姿を確認することが出来る。

確かに、垣根帝督はそこにいた。

ただし、後頭部に螺子を螺子込まれて垣根は既に死んでいて、死んだはずの球磨川に担がれていたのだが。

『どうも、統括理事長さん』

何食わぬ顔、文字通り何食わぬ顔で頭を下げ、挨拶をする球磨川は、頭をあげると同時に垣根の死体を無造作に放り投げた。

あの、アレイスターが無表情の中に困惑の色を見せている。

それほどまでに現在の状況は異常だった。

「はて……確か君は死んだはずではなかったのかな?」

『確かに死にましたよ。でも僕はこうして生きているから、そんな事はどうでもいいじゃないですか』

「いつ未元物質を?」

『垣根ちゃんが案内人さんと話をしている時に、後ろからちょと螺子を入れさせてもらいました』

「なるほど……」

いつかのような抑揚のない内容の無い会話が続く。

だが、アレイスターとしては計画を大きく遺脱した現状は好ましくない。

972: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/17(木) 21:12:19.88 ID:uihTyTvw0
【大嘘憑き】という前代未聞の能力を持つ球磨川禊の回収。

有り体に言えば今回アレイスターが球磨川の転向を許可した理由はそのようなものだった。

大嘘憑きの試運転という名目を掲げていた球磨川の不意を打って殺害、回収。

それはそんなに難しい事ではなく、成功すればアレイスターの「計画」を大きく省略できるはずだったのだ。

しかし、現実は球磨川禊は生きている。

『さて、貴方の目的なんて分かり切っていますし、それを邪魔立てするつもりもありません』

自身の頬から肩へとかけて染みついた血液をハンカチで拭き落しながら球磨川は言う。

「何が目的だ?」

『最初にお話しした大嘘憑きの試運転、てのも目的の一つですよ。ただ本命は種を蒔くことでして』

種を蒔く。その言葉にアレイスターは即座に意味を理解した。

「幻想殺しの回収か」

アレイスターは幻想殺しこと上条当麻と球磨川禊の過去については把握している。

『回収なんて嫌な言い方をしますね。僕はただ友達に戻っていつか力を貸して欲しかっただけなんですよ』

「言っておくが幻想殺しは私の計画の中でも最重要でね。簡単に手放す訳にはいかないのだよ」

『ん。だから言っているじゃないですか。計画の邪魔をするつもりはないって』

いまいち要点を得ない語りをする球磨川だったが、アレイスターはそれだけで意図を掴んだようだ。

「なるほど。種を蒔くとはそういった意味か」

『ええ、だから貴方が進めている計画が完了する頃には、花が咲くはずですから』

それはきっと綺麗で、毒々しい花なのだろう。

この時点でアレイスターと球磨川禊の交渉は終了していた。

974: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/17(木) 21:22:52.79 ID:uihTyTvw0
「もし断ると言ったら?」

だがアレイスターは少しばかり抵抗をして見せる。もちろん断るつもりは、ない。

球磨川もそこは重々承知の上で、こう言った。

『学園都市のレベル1からレベル5までの能力者を皆殺しにします。勿論そこには貴方も含まれていますよ』

にっこりとほほ笑む球磨川に、アレイスターも口元を少しつり上げる。

「それは困りものだ。よかろう、君の計画とやらにも乗らせてもらうよ」

アレイスターはその後に「ただし」と付け加える。

「未元物質だけは元に戻してやってくれ。大事な第二候補なのでね」

その言葉に深く頷くと、垣根に手を添え傷を戻す球磨川。

気を失っているのだろう、起きる気配はない。

『これで大丈夫ですか?それじゃあ僕は約束を守りに行かないといけないので失礼します』

アレイスターの返答も聞かず、すたすたと闇の中へ消えていく球磨川。

転送前にこんな言葉だけを残して去って言った。

『垣根ちゃんと麦野ちゃんにはお返しをするので、邪魔はしないでくださいね』

そして、球磨川が研究所で上条と再会した翌日の早朝。

二基の風車に螺子で張りつけにされている、瀕死の垣根帝督と麦野沈利の姿があった。

975: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/17(木) 21:25:10.41 ID:uihTyTvw0











一年後・箱庭学園









976: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/17(木) 21:42:22.43 ID:uihTyTvw0
『僕といれば君は世界一不幸になれる』

箱庭学園二年マイナス十三組の教室内にて、球磨川は机に両足を乗せて組み、後頭部に両手を添えている態度の悪い少女に言い放った。

少女の名は名瀬夭歌(なぜようか)。現在球磨川が敵対している生徒会の会長を務める黒神めだかの姉に当たり、本名は黒神くじらという。

顔面を包帯でグルグル巻きにし、額にはナイフが刺さっているいかにもな格好の名瀬は、球磨川の言葉にギィと醜く歪める。

「ときめくね」

今回、球磨川が名瀬に持ちかけている提案、それは「生徒会を裏切り過負荷側へ付け」というもの。

球磨川の文句に心揺らいだ名瀬は即答で「今日から俺は二年マイナス十三組の名瀬夭歌だ」と言いつつ、その包帯を解く。

そこから現れた顔はとても整っており、百人中誰もが振り向くであろう顔立ちだった。

生徒会を裏切った名瀬は球磨川に、これから集まる過負荷のリストを提示するよう要求し、球磨川はあっさりそのリストを差し出す。

「へー流石に知ってる名前もないでもないな」

ペラペラとリストを流し読みしている名瀬は、ある一人の転校生の名前に手を止めた。

「おいおい、人が悪いぜ。こんな隠し玉があるなら俺なんて必要ないだろう?」

そこに記載されている一人の男子生徒の名前に名瀬は見覚えがあった。

いや、少しでも血生臭い裏の世界に触ったことがあるものなら誰もが聞いたことがある名前。

『いや、実はその子は選挙に間に合うかわからないんだ。無事に転校できるかも怪しいものでね』

『僕は悪くない』と相変わらずの笑顔を浮かべる球磨川。

978: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/17(木) 21:54:14.98 ID:uihTyTvw0
名瀬は見覚えがあると言ったが、実際にこの少年の姿を目撃したことがある。

バイオテクノロジーの世界的権威である彼女は研究の為、各地の施設を回ることが多かった。

その中で学園都市と呼ばれる、もはや一つの国と現わしても語弊の無い巨大な「研究施設」に招致された時だ。

名瀬が少年を目撃したのは。

学園都市では超能力という力の研究を進めており、ランク付けされた「モルモット」達が生活していた。

炎を生み出し、水を操り、瞬間移動をし、電撃を繰り出す。

学園都市内ではそんな非日常の光景が日常であり、名瀬もいくらか驚いた記憶があった。

そんな中、学園都市の観光中に一人の少女が少年に対して電撃を放った瞬間を名瀬は目撃した。

心の中で「ご愁傷様」とつぶやいた名瀬だったが、少年は電撃に対し右手を差し出しただけで打ち消したのだ。

それが、名瀬が学園都市で最先端の科学に触れたことより、超能力というスキルを見たとことよりも彼女に衝撃を与えることとなり、

残りの滞在期間で少年の事を調べたのである。

調査結果の中には名瀬の知りたい情報は一つもなかったが、学園都市を去った後、噂でこの少年の逸話を聞くことがあった。

980: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/17(木) 22:05:35.65 ID:uihTyTvw0
最強の超能力者を倒した。

世界中に人脈を持つ。

戦争を終わらせた。

全てを殺す。

そして、学園都市を崩壊させた。

噂だという分を差し引いた所で、火の無い所に煙は立たないと言う。

実際に彼は噂に近い事をやって来たのだろう。

『その子と僕は友達でね』

驚いている名瀬に球磨川の声がかかる。

そして名瀬は生徒会庶務・人吉善吉の母である人吉瞳の言葉を思い返した。

――この学園に集結している過負荷の中でも、二人は球磨川君に匹敵する。

名瀬は理解する。間違いない、この男が球磨川に匹敵する二人の内の一人だと。

『やっと、花が咲いてくれたんだ。幻想だけじゃなく、全てを殺すほどの魅力をもった花を』

『早く、会いたいな』

球磨川は心底嬉しそうな笑みを浮かべながら天井を仰ぐ。

名瀬は溜息をつき、リストを机の上に投げ捨てる。


一番上になったそのリストにはこう書かれていた。

981: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/17(木) 22:09:37.69 ID:uihTyTvw0










所属・二年-十三組
過負荷・幻想殺し
氏名・上条当麻
備考・転校生

983: 1 ◆d.DwwZfFCo 2011/02/17(木) 22:14:25.37 ID:uihTyTvw0










そして物語は

過負荷と異常と特別と普通の戦いへと

進んでいく――















球磨川『学園都市?』

VeryVery BAD END

引用元: 球磨川『学園都市?』2