1: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)16:55:33 ID:bagB


―――事務所


…………――……


李衣菜「……はっ。来た、来ましたよちひろさん!」

ちひろ「ほんとですか!? 行きましょう!」ガタッ

P「え? な、なんですか、どうしたんですかちひろさん。何が来たんだ李衣菜?」

李衣菜「焼き芋屋さんですよっ。ぴーーーって音が聴こえたので!」

ちひろ「今この街で大人気なんです! いつも神出鬼没なのに、すぐに行列ができてしまうくらい♪」

P「は、はぁ……。じゃあまぁ、気をつけて行ってきてください」

ちひろ「了解です! 今日こそは手に入れますよーっ!」タタタターッ

李衣菜「今日は駅前に現れたみたいです! 絶対ゲットだー!」テテテーッ


がちゃっ ばたんっ!


P「………………いや、まったく聞こえない……。李衣菜の耳ほんとどうなってるんだ」

2: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)16:56:28 ID:bagB
P「しかし焼き芋かぁ。最近食べた覚えがないな……」カタカタ…

P「…………」カタ…

P「……あ、もしもし李衣菜。悪いな走ってる最中。信号待ち? そっか、良かった……あの、俺にも――あ、そう? ありがとう。うん、うん……」


ぴっ


P「よっしゃ、がんばろ」カタカタ…カキカキ


がちゃ


泰葉「おはようございます」

加蓮「おはようございまーす。なんか李衣菜とちひろさんがだばだば走ってったけど、どしたの?」

3: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)16:57:31 ID:bagB
P「あぁおはよう泰葉、加蓮。焼き芋買いに行ったんだよ、2人は」

泰葉「焼き芋……そういえばこの前ちひろさんが話してましたね、売り切れ必至の移動販売ができたって」

加蓮「あー、昔ながらのぴーって鳴らしながら来るやつ?」

P「そうそう。その音が聞こえたみたいで『駅前に来てる!』って言って出てったんだ」

泰葉「え。駅前って、私たちそっちから来ましたけど……」

加蓮「全然聞こえなかったよ?」

P「ヒント、李衣菜」

「「あ~……」」

P「今に李衣菜、1km離れた場所に落ちた針の音まで聴き分けるようになるぞ……」

4: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)16:58:18 ID:bagB
加蓮「ポケットなモンスターかな」

泰葉「加蓮も匂い嗅いだだけでポテトの産地当てられるよね?」

加蓮「うん、よゆー♪ なワケないでしょ!」ペシ

泰葉「えへへ♪」

P「あはは。それで、今日はどうしたんだ? 何も予定なかったろ、2人とも」

加蓮「私は買い物のついでにね~。コスメやネイルの新作とか、洋服とか見てたの。そしたらカフェでコレ見つけて」ツン

泰葉「ぅに。見つかっちゃいました。私もお家にいると際限なく暖房使っちゃうので……」

P「あぁ分かるぞ……電気代怖いもんな」

泰葉「それでまぁ、どうせなら事務所まで足を運ぼうってなりまして」

加蓮「Pさんに会えるしあったかいだろうし~ってね。そしたら焼き芋まで食べられるなんてラッキー♪」

5: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)16:59:11 ID:bagB
泰葉「あ、でも加蓮。下ですれ違ったとき2人とも私たちに気づいてなかったよ? 買ってきてくれるかな」

加蓮「あ。すごい形相で走ってたからドン引きして声掛けなかったんだっけ」

P「まだ電話すれば間に合うんじゃないか? 駅前なら走っててももう少しかかるだろうし」

加蓮「うん、そうする! スマホ開いてトタチツテ~っと」プルルル


加蓮「やっほー李衣菜、いま大丈夫? そ、ならとーぜん買ってきてくれるよね? 何をとは言わないよ~知ってるんだから~♪ 私と泰葉の2人分追加ね♪」


泰葉「それじゃあ私は……よいしょ、よいしょ」ゴトゴト…

P「手伝おうか、こたつ出すの」

泰葉「Pさんはしっかりお仕事です」

P「うーす。もうすぐ一区切りつきそうだし、ご褒美は焼き芋だな~」カタカタ

6: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)16:59:53 ID:bagB
加蓮「こたつだこたつだ」ヌクヌク

泰葉「カーペットもぬくぬく……ぜいたく……♪」ヌクヌク

P「誘惑がすごい」

加蓮「早くおいで~Pさん~♪」

泰葉「ふふ、あたためてあげますよ」

P「もうちょっと、もうちょっとだから……!」カキカキサラサラ…!

加蓮「がんばれ~♪ はぁ~……あったかあったか――あ、ねぇ泰葉、泰葉」

泰葉「なぁに?」

加蓮「さっき電気代のこと言ってたけどさ、今日泊まりに行っても平気?」

泰葉「うん、構わないよ? 1人だとなんだかもったいないな、って思っただけだから。むしろ大歓迎」

7: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:03:17 ID:bagB
加蓮「やった♪ お礼に新作ネイルの実験台にしてあげる!」

泰葉「実験台……。はい、私は実験台153号……」フッ…

加蓮「ちょ、ハイライト芸やめて」

泰葉「そして加蓮は実験台155号」

加蓮「私も!?」

泰葉「こたつでぬくぬくすると人はどこまで堕落するかの実験ね」

加蓮「あぁそれならいいや。……私は実験台155号……」フッ…

泰葉「ふふ、上手♪」

P「楽しそうでなにより。よいせっと」モゾモゾ

8: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:04:11 ID:bagB
加蓮「あ……Pさん……」

泰葉「お仕事終わりましたか……」

P「終わったけど2人とも濁った瞳でねっとり見てくるのやめてくれ怖い」

加蓮「えへ。ホラー映画いける?」ニパッ

P「いけるいける。良ければすぐにでも仕事持ってくるよ」

泰葉「ホラーと言えば、ゲームで幽霊のボイスならやったことありますよ、私」

加蓮「!?」

P「なぬ!?」

泰葉「カメラで撮影しておばけを倒すやつです。何作目だったかな……?」

加蓮「や、泰葉のキャリアほんと謎だよね……」

9: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:04:59 ID:bagB
P「ほ、ほんとだ。ウィキに名前が載ってる……」

泰葉「私の他にも何人か子役が集められてオーディションして……懐かしいなぁ」

加蓮「どういう声録ったの、幽霊役って?」

泰葉「うーん、『どこにいくの?』とか『いっしょにあそぼ』とか?」

加蓮「……耳元で囁かれたらゾワゾワする……」

P「キャラ紹介見ると後ろ手に拷問具持ってるみたいだけど」

加蓮「こっわ!?」

泰葉「そうそう、遊ぶって言ってもいたぶる方なんですよ。可愛い顔で爪を剥ごうと迫ってくるんです♪」ニコーッ

加蓮「可愛い顔で何言ってんのアンタ……」

10: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:05:47 ID:bagB
泰葉「今日のお楽しみはホラーゲームで決まりだね。李衣菜も巻き込んで♪」

加蓮「それ李衣菜がヘッドショット決めまくって無双するやつじゃん……面白いは面白いけど」

P「なるほど、ホラーゲーム実況プレイ。それだ」

加蓮「なんか企画決まったっぽいし」

泰葉「李衣菜が流れるように攻略しながら、私と加蓮は後ろで抱き合って怖がる。完璧ですね」

加蓮「待って、抱き合う必要ある?」

P「需要はあるぞ?」

加蓮「えー、変なの……」

泰葉「いつもと変わらないよ、今日だってどうせベッドでみんなくっついて眠るでしょう?」

加蓮「そりゃそうだけど。寒いし」

11: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:06:42 ID:bagB
P「あのベッドでよく3人寝られるよな?」

泰葉「かなりぎゅっとくっつきますけどね。李衣菜って寝相悪いので、2人で挟まないとダメなんです」

加蓮「油断すると落とされるからねー。逆に李衣菜を端っこにすると、確実に朝には床に落ちてるの。ふふっ」

P「あはは、冬にそれは風邪ひいちゃうな。ちゃんと部屋もあったかくして寝るんだぞ? 電気代ケチらずにな」

泰葉「うふふ。はい、もちろんです」

加蓮「病院代よりマシだもんね♪ ……で、なんでPさんは泰葉んちのベッド事情知ってるのかな?」

P「あ」

泰葉「あ。……それはね、私とPさんがつきあっ」

加蓮「ウソをつくなまんまる」コチョコチョ

泰葉「はぁぁぁあんあしうらよわいのおおぉぉお」

12: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:07:24 ID:bagB
泰葉「」ピクピク…

P「ひとり暮らしは何かと心配だからさ。送り迎えのときにたまに上がらせてもらってるんだよ」

加蓮「んー、心配は確かに。大人が出入りしてたら変なのも標的にしないのかな、分かんないけど」

P「まぁな。3人で集まってるときも油断しちゃダメだぞ」

加蓮「うん、ありがと。……Pさんが一緒に住んでくれたら私たちも安心なんだけどなー?」

P「加蓮もくすぐるか」

加蓮「やーん♪」

P「……いや、でも案外悪くないか……? リスク管理的にも……」

加蓮「え、あれっ。いける感じ? 思いつきっていうか願望だったんだけど」

13: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:08:02 ID:bagB
泰葉「Pさんと同棲っ?」ガバッ

加蓮「起きたけど変なノイズが!?」

P「泰葉、俺と暮らすことになったらどうする?」

加蓮「Pさんもふざけてない!?」

泰葉「幸せになりましょう!」

加蓮「ちょっとー!!」

P「まぁ冗談なんだけどさ」

泰葉「……………………」フッ…

P「ごめんごめんごめんハイライト戻して!」

加蓮「下手なホラーよりずっと怖い!」

14: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:08:42 ID:bagB
こたつ「呪います……乙女の純情を弄んだ罰です……。座敷わらしのようにPさんの家に取り憑いて」モゾモゾ…

加蓮「潜っちゃったし……」

P「お、おーい。そろそろちひろさんたち帰ってくるんじゃないか? 焼き芋タイムだぞー?」

こたつ「……Pさんの足裏、発見です」

P「あふん」

加蓮「なにしてんのばか!!」バッ

泰葉「見て加蓮、Pさんのあぐらだよ」

加蓮「、…………おぉ……」

P「おおじゃない! なんのフェチだ!?」

15: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:09:22 ID:bagB
泰葉「Pさんと暮らせばあぐらが見放題だよ加蓮……」

加蓮「ラフな格好のPさんがあぐらを……最高だね泰葉……」

P「アイドルだから! アイドルはあぐらに興奮しない!!」


がちゃっ


ちひろ「ただいまですー♪ いやぁ手に入りましたよ~♪♪」

李衣菜「外まで聞こえてたけど何してるんですかPさんたち……。買ってきましたよ、おひとり様2個限りで4個!」ホカホカ

P「ああっちひろさん、李衣菜! 助けて!」

泰葉「李衣菜っ!」

加蓮「Pさんのあぐら見たいよね!?」

李衣菜「ええっ? ……すごく見たい!」

P「女子高生わからん!!」

ちひろ「プロデューサーさん不潔です!」

P「なんで!?」

16: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:10:17 ID:bagB
泰葉「――でね、やっぱり大好きな人のあぐらにすっぽりと座りたいというのは……」モグモグ

加蓮「古来より女の子はぎゅっと抱きしめられるのが運命なんだよね……」モグモグ

李衣菜「うんうん、お腹に回された大きな手に自分のそれを重ねる瞬間がたまらなくロックだよね……」モグモグ


P「俺は自分のアイドルを何も理解しちゃいなかったんだ……。あぐらフェチおそろしや」

ちひろ「話は分かりました。ぎりぎり無罪ですプロデューサーさん」モキュモキュ

P「ぎ、ぎりぎりなんですね……」

ちひろ「一緒に暮らさなくても、ちゃんと私が防犯に関してお話してますからね? 何のためのアシスタントなんですか」

P「おっしゃる通りで……。いつも助かってます、ちひろさん」

ちひろ「いえいえ。どうぞ、助かりついでに焼き芋食べてください。せっかくホカホカなんですから」

P「は、はい。って、みんな半分にして俺に渡すから2つ分なんですけど。ちひろさんまでくれるし」

17: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:10:59 ID:bagB
加蓮「ふふっ、いいじゃん。全部食べたら太っちゃうもん」

李衣菜「えへへ。Pさんには美味しいものいっぱい食べてもらいたいですし」

泰葉「そうですよ。いつもPさんばかり割を食うじゃないですか?」

ちひろ「ダイエット中ですので♪」

P「俺だって太るのはちょっと……」

李衣菜「大丈夫ですよ、Pさんが太っても大好きなのは変わりませんから!」

P「いやそういうことじゃなくてね?」

泰葉「ぷにぷにPさん……イイ?」

加蓮「うーーーん…………イイ!」

P「だから変な性癖を暴露しないでくれ!」

ちひろ「うふふっ、相変わらず振り回されててイイですねぇ♪」

18: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:11:44 ID:bagB
P「ちひろさんまで妙なヘキがっ!?」

ちひろ「そうですよ~? 私、プロデューサーさんがみんなに振り回されてるのを見るのが大好きなんです♪」

P「衝撃の事実……!!」

泰葉「そう言いながらちひろさん、Pさんと隣同士でこたつに入ってるのはどうしてですか?」

ちひろ「何事も平等に、ですよ。でも……そうですね、プロデューサーさんに一番上手に焼き芋をあーんできたら……この位置を譲りましょうか♪♪」

泰葉「!!!!!!!!!!」

李衣菜「!!!!!!!!!!」

加蓮「!!!!!!!!!!!」

P「蛍光緑このやろう!!」

ちひろ「ふふふー頑張ってくださーい♪」

19: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:12:19 ID:bagB
李衣菜「Pさん!!!!!」

加蓮「食べて!!!!!」

泰葉「ください!!!!!」

P「食べるから! だから血走った目を向けないでくれ怖い!!」

ちひろ「おお……獲物を狙うケモノですね。これはアツい戦いが期待されます!」

P「実況やめてくださいよ! こ、こらのしかかってくるな危ないなんか当たってる耳に息を吹きかけるんじゃない普通に食べさせてくれえええええええええ」

ちひろ「さて、誰が勝つでしょう~♪」


ちひろ(ぎゅっと詰めてくっつけばみんな仲良く入れそうですが、黙っておきましょうか♪)

20: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:13:10 ID:bagB


―――どこかのお屋敷


がちゃり……


「ただいま戻りました」

「あ、おかえり♪ どう、買えた?」

「ええ、問題なく。ちょうど1人2個まででしたので、1つずついただきましょう」

「ありがとう、寒い中。暖炉つけておいたよ」

「ありがとうございます、お嬢さま。……また、ラジオに向けたメールを?」

「うん、大好きな僕ちゃんと焼き芋を食べた、ってね♪」

21: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:14:01 ID:bagB
「ふふ……ちゃんと、半分以上残してしまったとお書きくださいね」

「えー、まだ食べてないのにぃ? あは、予言どおり残しちゃいそうだけど」

「……あ。別に2つ買ってくる必要はありませんでしたね……はんぶんこすればいいのに」

「ううん、美味しいって評判でしょ? いっぱい食べて、感想を送らなきゃ♪」

「それは責任重大ですね。頑張ります」

「あ、ラジオネームも忘れないようにしないと。『真っ赤なカーディガン』……っと」

「食べやすいように切ってきますね」

「ああっ、お芋はなんでもかぶりつくのが礼儀なんだよ。ラジオでエバーリースのみんなが……というか加蓮ちゃんが言ってたもの」

22: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:14:56 ID:bagB
「……はぁ、すっかりハマっていますね。分かりました、私もそうしますから」

「千夜ちゃんこそ、実は毎週楽しみにしてるよね?」

「………………そんな、ことは」

(……うんうん。それでいいんだよ♪)

「……んんっ、ではいただきましょう。お手拭きを持ってきますので」

「はぁい♪♪」


「………………それにしても」

「あの行列に並んでいた……蛍光緑の人。その隣にいた……あの少女は」

「どこかで見たような、見ていないような……電話をしていた声も……?」

「まぁ、いいか」

「ちとせお嬢さま、お持ちしまし――あっ、勝手に食べてはなりません……!」


―――

――


23: ◆5F5enKB7wjS6 21/12/31(金)17:15:40 ID:bagB
加蓮「――ねー、ちひろさんて目立つ格好してるけどさ」

泰葉「うん、そうだね」

加蓮「李衣菜は周りにバレなかった? 焼き芋買ってるとき」

李衣菜「ううん、バレてないよ? 泰葉直伝の芸能隠遁術があるからね!」

泰葉「一子相伝の術、使いこなしてるね、李衣菜!」

加蓮「いや、一子相伝ではなくない??」


P「く、食いすぎた……うっぷ」

ちひろ「これは明日、プロデューサーさんもレッスンですね♪」



おわり

引用元: モバP「だりやすかれんと石焼き芋」